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事件 |
令和
5年
(行ケ)
10075号
審決取消請求事件
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5 原告 メディカル・イノベイション株式会社 原告 ヤマゾエRAD株式会社 10 原告栃木精工株式会社 上記3名訴訟代理人弁理士 畝本正一 15 同畝本継立 同 沖田正樹 同訴訟代理人弁護 士畝本卓弥 被告特許庁長官 20 同指定代理人井上哲男 同 佐々木一浩 同 栗山卓也 同 井上千弥子 同 清川恵子 25 主文 1 原告らの請求を棄却する。 12 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁が不服2022−17568号事件について令和5年6月6日にした 5 審決を取り消す。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 原告らは、令和元年9月26日、名称を「イントロデューサ針」とする発明 10 につき特許出願(特願2019−175086号。請求項の数7。 「本願」 以下 という。甲2〜4)をしたが、令和3年5月7日付け拒絶理由通知書(甲5) を受領した。 原告らは、令和3年7月16日に意見書(甲7)を提出し、同日、手続補正 (請求項の数9。発明の名称を「イントロデューサ針およびアダプタ」と変更。 15 甲6)をしたが、同年12月22日付け拒絶理由通知書(甲8)を受領した。 原告らは、令和4年3月3日に意見書(甲10)を提出し、同日、手続補正 (請求項の数9。以下「本件補正」という。甲9)をしたが、同年7月25日 付けで拒絶査定(甲11)を受けた。 原告らは、令和4年11月2日、拒絶査定に対し不服の審判請求(甲12) 20 をした。特許庁は、同請求を不服2022−17568号事件として審理した が、令和5年6月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以 下「本件審決」という。その内容は別紙1審決書(写し)のとおりである。) をし、その謄本は、同月20日、原告らに送達された。 原告らは、令和5年7月18日、本件訴訟を提起した。 25 2 発明の内容 本件補正後の請求項は前記のとおり1ないし9から成るが、そのうち請求 2項8に係る発明の内容(以下「本願発明」といい、その明細書を「本願明細書」 という。本願明細書の内容は別紙2のとおりである。)は、以下のとおりであ る。 「内部に挿通孔を有する筒状部材である外套管と、 5 内部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第 1の孔部および前記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、 前記外套管の一端側に接続された第1の本体部と、 前記第1の本体部の外周部を収納する外装ケースと、前記第1の孔部に 挿入される押圧部とを有し、前記外周部に対してネジ機構により係合する 10 とともに、回動によって進退する第2の本体部と、 前記押圧部と、前記第1の孔部と前記第2の孔部の連通部分に形成され た段差壁と、該段差壁に面して前記第1の孔部内に設置され、内孔を有す る筒状形状であるストッパとで構成され、前記第2の本体部の回動により 前記押圧部と前記段差壁からの押圧で前記ストッパを変形させて前記内 15 孔の開度を切換える開度調整機構部と、 を備え、前記開度調整機構部は、前記内孔に器具が挿通されていない場 合に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態と前記器具を挿通可能な 状態とに前記内孔の開度を調整し、前記内孔に前記器具が挿通されている 場合に、前記第2の本体部の回動によって前記内孔の開度を狭めて前記器 20 具の周面を前記ストッパで押圧することで前記器具を固定保持すること を特徴とするアダプタ。」 3 本件審決の内容 ? 本件審決の内容は別紙1のとおりであるところ、その理由の要点は、本願 発明は、引用文献1(米国特許第5591137号明細書、甲1。その抄訳 25 及び図面の記載は別紙3のとおりである)に記載された発明(以下「引用発 明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特 3許法29条2項により特許を受けることができない、というものである。 ? なお、本件審決は、上記判断をするに当たり、引用発明の内容、本願発明と 引用発明との一致点及び相違点を、次のとおり認定した。 [引用発明の内容] 5 「患者10の血管系と流体連通する遠位端部を有する導入器12と、 圧縮チャンバ58と、圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有す る内部表面70を有している、導入器12と流体結合する通路56を有す る管状体18と、 第1筒部129と、軸部136とを有し、本体18の近位端24に設けた 10 第1係合ねじ57と回転、ねじ係合するために構成された第2係合ねじ1 34を有する回転ナット48と、 軸部136と、管腔66の近位端部68と圧縮チャンバ58の遠位端部 62の間に拡大されている肩部72と、通路90を有するシール52とで 構成され、回転ナット48の回転により軸部136を圧縮チャンバ58に 15 前進させ、本体50の肩部72と軸部136との間でシール52を押圧し、 通路90を閉鎖する弁アセンブリ26と、 を備え、弁アセンブリ26が、回転ナット48の回転により、軸部136 をシール52を通る通路90を閉鎖しシールするまで前進し、細長い部材 28が使用されるときは、回転ナット48の回転により、軸部136を細長 20 い部材28の外面29の周囲を押圧してシールを維持しながら、細長い部 材28を通路90内で前進又は後進させるアダプタ。」 [一致点] 「内部に挿通孔を有する筒状部材である外套管と、 内部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第 25 1の孔部および前記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、 前記外套管の一端側に接続された第1の本体部と、 4前記第1の本体部の外周部を収納する外装ケースと、前記第1の孔部に 挿入される押圧部とを有し、前記外周部に対してネジ機構により係合する とともに、回動によって進退する第2の本体部と、 前記押圧部と、前記第1の孔部と前記第2の孔部の連通部分に形成され 5 た段差壁と、該段差壁に面して前記第1の孔部内に設置され、内孔を有する 筒状形状であるストッパとで構成され、前記第2の本体部の回動により前 記押圧部と前記段差壁からの押圧で前記ストッパを変形させて前記内孔の 開度を切換える開度調整機構部と、 を備え、前記開度調整機構部は、前記内孔に器具が挿通されていない場合 10 に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態と前記器具を挿通可能な状 態とに前記内孔の開度を調整し、前記内孔に前記器具が挿通されている場 合に、前記第2の本体部の回動によって前記内孔の開度を狭めて前記器具 の周面を前記ストッパで押圧するアダプタ。」である点。 [相違点] 15 内孔に器具が挿通されている場合に、第2の本体部の回動によって内孔 の開度を狭めて前記器具の周面を押圧するストッパが、本願発明では、器具 を固定保持するのに対し、引用発明では、シールを維持しながら、細長い部 材28を通路90内で前進又は後進させる点。 4 原告らの主張する取消事由 20 ? 取消事由1 引用発明の認定、一致点及び相違点の認定の誤り ? 取消事由2 進歩性判断の誤り 第3 当事者の主張 25 1 取消事由1(引用発明の認定、一致点及び相違点の認定の誤り) 〔原告らの主張〕 5? 引用発明の認定の誤り 本件審決が引用発明として認定した内容のうち、「圧縮チャンバ58と、 圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有してい る、導入器12と流体結合する通路56を有する管状体18」の部分を、本 5 願発明の「内部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ 前記第1の孔部および前記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有 し、前記外套管の一端側に接続された第1の本体部」に対応する構成として 認定したのは誤りである。 本件審決は、引用文献1の「導入器12」、「管状体18」をそれぞれ本 10 願発明の「外套管」、「第1の本体部」に対応する構成であると認定したが、 本願発明は、この「第1の本体部」について、「内部に第1の孔部と、前記 第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および前記外套管の前 記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側に接続された 第1の本体部」との構成を有しており、「外套管」は「一端側」に「第1の 15 本体部」が接続されるとの内容となっている。 これに対し、引用文献1について対応する「導入器12」に関する記載を 参照すると、次の記載がある(甲1の5欄30〜41行、以下に示すのは該 当箇所の訳文であり、以下甲1(引用文献1)について同じである。図につ いては、別紙3参照。)。 20 「図1を参照すると、患者10は、患者10の血管系と流体連通する遠位 端部(図示せず)を有する導入器12と共に示されている。導入器12の近 位端部14は、患者10の身体外部に突出しており、本発明の特徴を組み込 んだアダプタ16の1つの実施形態に接続されている。アダプタ16は、互 いに反対側の端縁に位置する遠位端部20と近位端部24を持つ、外側表面 25 19を有する管状体18を含む。回転可能なコネクタ22が遠位端部20に 設けられている。回転可能なコネクタ22は、図1に示されているように導 6入器12と管状体18との間の流体結合を提供する。」 この記載によると、「導入器12」は、図1において明らかなように、「管 状体18」に直接接続されているのではなく、あくまで「コネクタ22」に 接続されている。このことは、前記のとおり「回転可能なコネクタ22は、 5 図1に示されているように導入器12と管状体18との間の流体結合を提供 する」とされていることからも分かる。このように、引用文献1では、「導 入器12」は「管状体18」ではなく「コネクタ22」に接続されており、 「コネクタ22」が間に介在して初めて「管状体18」との間の液体結合を 達成することができる。この引用文献1に記載の内容は、本願発明の「第1 10 の本体部」が「前記外套管の一端側に接続された」との構成を有しているの とは異なる。 本件審決は、「導入器12」がこの「コネクタ22」を介して流体結合し ている点を看過し、「導入器12」と「管状体18」とが直接接続されてい るかのように認定しており、誤りである。 15 よって、本件審決は、引用発明を認定する際、本願発明の「第1の本体部」 に対応する構成について、「圧縮チャンバ58と、圧縮チャンバ58の内径 よりも小さい内径を有する内部表面70を有し、一端側に設けられたコネク タ22が導入器12の近位端部14に接続されることで、コネクタ22を介 して導入器12と流体結合する通路56を有する管状体18」とすべきとこ 20 ろを、この「コネクタ22」の存在を看過して認定した違法がある。 ? 一致点及び相違点の認定の誤り 前記?のように、本件審決は引用発明の認定を誤っており、その結果、本 願発明と引用発明との一致点及び相違点についても認定を誤っている。 前記のとおり、本件審決が引用発明として認定した内容のうち、「圧縮チ 25 ャンバ58と、圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面 70を有している、導入器12と流体結合する通路56を有する管状体18 7と」との記載は誤りであり、正しくは「圧縮チャンバ58と、圧縮チャンバ 58の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有し、一端側に設けら れたコネクタ22が導入器12の近位端部14に接続されることで、コネク タ22を介して導入器12と流体結合する通路56を有する管状体18」と 5 されなければならない。 そして、このことを前提とすると、本願発明にはこの「コネクタ22」に 対応する記載はないから、本願発明の「内部に第1の孔部と、前記第1の孔 部よりも開口幅が小さく、かつ前記第1の孔部および前記外套管の前記挿通 孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側に接続された第1の 10 本体部」は一致点ではなく、相違点となる。 よって、本件審決は、一致点及び相違点の認定を誤り、「第1の本体部」 における相違を看過したまま進歩性を判断した点で違法がある。 〔被告の反論〕 ? 引用発明の認定の誤りについて 15 本願発明は、「前記外套管の一端側に接続された第1の本体部」と特定し ており、第1の本体部が外套管の一端側に接続されたことを特定しているだ けであって、外套管と第1の本体部の具体的な接続構造については特定して いない。また、本願明細書を参酌しても、段落【0015】には、「・・・ この外套管4と外套ハブ10は、たとえば接着材や図示しない係止構造など 20 により強固に接続されるほか、インサート成形などにより一体化して形成さ れてもよい。」と記載されており、具体的な接続構造としては様々な接続構 造があることが記載されているから、本願発明の「接続された」との特定は、 様々な接続構造による接続を含むものである。 一方、引用発明の認定にあたっては、本願発明との対比及び判断を誤りな 25 くすることができるように行うことで足りるところ、具体的には、本願発明 の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足り、本願 8発明の発明特定事項との対応関係を離れて、引用発明を必要以上に限定して 認定する必要はない。このような引用発明の認定手法は、裁判例(知財高裁 平成25年(行ケ)第10069号(平成25年10月30日判決)、同平 成26年(行ケ)第10131号(平成27年1月28日判決))等におい 5 ても採られているところである。 そうすると、本願発明が、接着剤を介して接続された等の、外套管と第1 の本体部の具体的な接続構造を特定せずに、単に「接続された」と特定して いる以上、引用発明の認定にあたっても、上記具体的な接続構造に相当する 「コネクタ22」を認定する必要はなく、「流体結合された」と認定すれば 10 足りるものである。 したがって、原告の上記主張は前提において誤りである。 そして、引用文献1には、「回転可能なコネクタ22が遠位端部20に設 けられている。回転可能なコネクタ22は、図1に示されているように導入 器12と管状体18との間の流体結合を提供する。」(甲1の5欄37〜4 15 0行)と記載されているから、導入器12と管状体18とは流体結合されて いる。 よって、本件審決が、引用発明について「圧縮チャンバ58と、圧縮チャ ンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有している、導入 器12と流体結合する通路56を有する管状体18」を備えると認定したこ 20 とに誤りはない。 なお、引用文献1には、「本発明は、また、患者10の体との流体連通に 使われる導入器12のような医療装置と管状体18の遠位端部20の接続手 段を提供する。限定的でない一例として、接続手段は、上述したような回転 可能なコネクタ22を含むが、そこで説明した代替実施形態のすべてを含む。」 25 (甲1の14欄下から10行〜4行目)と記載されており、引用文献1にお いては、回転可能なコネクタ22は限定的でない一例にすぎないから、引用 9発明を認定するにあたり、ことさらコネクタ22を取り出して認定する理由 は見当たらない。 以上のとおり、引用発明の認定に当たり、「コネクタ22」を認定する必 要はなく、本件審決の引用発明の認定に誤りはない。 5? 一致点及び相違点の認定の誤りについて 前記?で主張したとおり、本件審決の引用発明の認定に誤りはないから、 原告の主張は前提において誤りである。 よって、本件審決が、引用発明の「圧縮チャンバ58と、圧縮チャンバ5 8の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有している、導入器12 10 と流体結合する通路56を有する管状体18」は、本願発明の「内部に第1 の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および 前記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端 側に接続された第1の本体部」に相当するとしたことにも誤りはなく、本件 審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない。 15 なお、仮に、引用発明を、原告が主張するように、「圧縮チャンバ58と、 圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有し、一 端側に設けられたコネクタ22が導入器12の近位端部14に接続されるこ とで、コネクタ22を介して導入器12と流体結合する通路56を有する管 状体18」と認定したとしても、既に述べたとおり、本願発明の「接続され 20 た」との特定は、様々な接続構造による接続を含むものであり、引用発明の 「コネクタ22を介して」「流体結合する」は、本願発明の「接続された」 に相当するから、結局、本件審決の一致点及び相違点の認定と変わりはない。 以上のとおり、本件審決における引用発明の認定に誤りはなく、一致点及 び相違点の認定にも誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。 25 2 取消事由2(進歩性判断の誤り) 〔原告らの主張〕 10 ? 「第1の本体部」の差異を看過して進歩性判断をしたことの誤り 前記のとおり、本願発明の「第1の本体部」が、「内部に第1の孔部と、 前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および前記外套管 の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側に接続さ 5 れた第1の本体部」との構成を有するのに対して、引用発明は、「圧縮チャ ンバ58と、圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面7 0を有し、一端側に設けられたコネクタ22が導入器12の近位端部14に 接続されることで、コネクタ22を介して導入器12と流体結合する通路5 6を有する管状体18」との構成を有している(以下、この相違を「原告主 10 張相違点」という)。 この点に関し、引用文献1にも、「患者10は、患者10の血管系と流体 連通する遠位端部を有する導入器12と共に示されている。導入器12の近 位端部14は、患者10の身体外部に突出しており、本発明の特徴を組み込 んだアダプタ16の1つの実施形態に接続されている。アダプタ16は、互 15 いに反対側の端縁に位置する遠位端部20と近位端部24を持つ、外側表面 19を有する管状体18を含む。回転可能なコネクタ22が遠位端部20に 設けられている。回転可能なコネクタ22は、図1に示されているように導 入器12と管状体18との間の流体結合を提供する。」(甲1の5欄30〜 41行)として、導入器12と管状体18の間にコネクタ22を介在させる 20 ことで導入器12と管状体18との間の流体結合を提供するとしか述べてお らず、コネクタ22を介在させずに導入器12と管状体18とを接続するこ とについては何ら述べていない。 他の箇所を参照しても、コネクタ22を介在させない構成について示唆す るような記載もない以上、当業者が引用発明の「管状体18」を、原告主張 25 相違点の構成に想到できるものではない。 よって、かかる引用発明に対して大きな差異である原告主張相違点を看過 11 したまま進歩性判断をした点は、進歩性判断の結論を左右する重大な違法で あることは明らかである。 ? 本件審決が認定した相違点に関する判断の誤り ア 本件審決の相違点の判断について 5 本件審決では、本願発明と引用発明との相違点として、前記第2の3? のとおり認定した。この相違点の認定については原告も異議はない。 ところが、本件審決は、この相違点の判断として、引用発明について「変 形可能なシール52の通路90に細長い部材28が挿通されている場合 に、回転ナット48の回動によってシール52を軸方向に押圧し、シール 10 52を圧縮することにより、シール52を半径方向に膨張させ通路90を 絞り細長い部材28の周面をシール52で押圧するものであって、シール を維持しながら、細長い部材28を通路90内で前進又は後進させるもの である」とした上で、「細長い部材28を通路90で固定保持することは 明記されていないが、細長い部材28を前進又は後進させて、位置を調整 15 した後に固定することは当業者であれば当然に想到し得ることであり、そ のための構成としてシール52の構造や素材等を好適に変更する程度の ことは当業者であれば容易に想到できたことである」として本願発明の進 歩性を否定した。 しかし、この理由付けは、引用文献1において記載された発明の目的、 20 課題に合わないものであり、誤りである。 イ 引用文献1の課題及び構成の違いについて 本願発明は、「前記内孔に前記器具が挿通されている場合に、前記第2 の本体部の回動によって前記内孔の開度を狭めて前記器具の周面を前記 ストッパで押圧することで前記器具を固定保持する」との構成を有してい 25 る。 これに対し、引用文献1には、「従って、本発明の目的は、改良された 12 止血弁を提供することにある。また、本発明の目的は、患者の心臓血管系 内へカテーテルまたはガイドワイヤを挿入するために使用できる改良さ れた止血弁を提供することにある。 本発明の別の目的は、血液の漏れを最 小限に抑える、改良された止血弁を提供することにある。本発明のさらに 5 別の目的は、血液漏れのリスクを増大させることなく、所望の大きな通路 を有する改良された止血弁を提供することにある。」(甲1の3欄12〜 21行)と記載されている。 この記載のとおり、引用文献1では改良された止血弁の提供を目的とす る。そして、併せて止血や血液の漏れを抑えることを課題としてあげるほ 10 か、止血した上でカテーテルまたはガイドワイヤを挿入、つまり前進又は 後退できるように改良した止血弁をあげている。つまり、引用発明では、 単に止血や血液の漏れを抑えるという従来からある止血弁とは異なる止 血弁を提供しようとしているのであり、止血とともにカテーテルまたはガ イドワイヤの挿入(前進又は後退)できるものを開示している。そのため、 15 引用発明は、あくまで止血とカテーテルまたはガイドワイヤの挿入(前進 又は後退)の、両方を達成できなければならない。 引用文献1の他の箇所でも、「これに代えて、図5Aに示すように、カ テーテルまたはガイドワイヤのような細長い部材28は、図1に関して説 明したように、患者の血管系内に挿入するための通路56を通って長手方 20 向に配置することができる。細長い部材28がそのように使用されるとき には、軸部136は、シール52の内面88が細長い部材28の外面29 の周囲を押圧してシールするように圧縮されるまで、圧縮チャンバ58内 で選択的に前進することができる。軸136を前進又は後退させることに より、細長い部材28上のシール52により加えられる圧力の量を選択的 25 に制御することができる。このように、管腔66を通って逆流する血液ま たは他の流体の漏れを防止するために細長い部材28の周りのシールを 13 維持しながら、細長い部材28を通路56内で前進又は後退させることが できる。」(甲1の8欄66行〜9欄13行)と記載しているように、止 血とともにカテーテルまたはガイドワイヤの挿入(前進または後退)の両 方を達成できることを必須の構成としている。 5 かかる内容の引用発明では、カテーテルまたはガイドワイヤといった細 長い部材28の前進又は後退をできなくする「保持固定」はその課題とは 合致せず、むしろ課題に反した内容となることから、全く想定していない ことは明白である。このような引用発明の内容からすれば、引用発明に触 れた当業者において、引用発明が解決しようとする課題に反し、かつ、そ 10 の作用効果を否定する内容である細長い部材を固定するように変更する ことは、考えられないというべきである。 よって、本件審決がいう「細長い部材28を前進又は後進させて、位置 を調整した後に固定すること」は引用発明に接した当業者が想到できるも のではなく、当業者は引用発明をそのように変更する動機付けもない。こ 15 のことから、本件審決において上記相違点について「そのための構成とし てシール52の構造や素材等を好適に変更する程度のこと」とした判断は 誤りである。 ウ 本願発明の作用効果 引用文献1とは課題が異なり、相違点に想到する動機付けがないことに 20 加えて、本願発明の作用効果を考慮しても、引用発明から上記相違点に想 到できるものではない。 すなわち、本願発明は、本願明細書の段落【0011】にあるとおり、 「(1)開度調整機構部によりストッパを変形させることで流路面積を調整 できる。(2)挿通させる器具の径に対応して内部流路の開度の設定が可能 25 となる。(3)開度を調整して、内部流路に挿通された器具に対してストッパ を押し当てることで、器具の周面を通じて内部流路から血液などが噴出す 14 るのを防止できる。(4)挿通された器具に接触したストッパを締め込むこ とで、器具を固定保持させることができる。(5)器具の固定保持機能により、 治療または検査時に機器を任意の位置に留置することが可能となり、施術 者が他の器具の選択や操作などを行うことができ、施術者の自由度が高め 5 られる。」との効果を奏する。 これに対し、引用発明では、既に述べたように、止血とともにカテーテ ルまたはガイドワイヤの挿入(前進または後退)を両立するのみであるか ら、本願発明の効果を予想することはできない。 このように、本願発明が引用発明にはない顕著な効果を奏することも、 10 本願発明が引用発明に対して進歩性を有する論拠となるものである。本件 審決は、かかる有利な効果を考慮せずに進歩性判断をしている点で誤りが ある。 〔被告の反論〕 ? 「第1の本体部」の差異を看過して進歩性判断をした誤りの主張について 15 既に述べたように、本件審決の引用発明の認定、一致点及び相違点の認定 に誤りはなく、原告主張相違点は存しないから、原告の主張は前提において 誤りがある。 なお、仮に本願発明の「接続」が、コネクタを介さない接続であり、その 点が相違点であるとしても、本願発明の「外套管」や「第1の本体部」のよ 20 うな筒状部材の接続構造として、コネクタを介さずに接続する構造は周知技 術にすぎない。 例えば、「カテーテル組立体」に関する乙1(特開2001−13735 1号公報)の段落【0039】には、「図5、図6に示すように、カテーテ ル本体2の基端部は、第1のコネクタ3の先端部内部に挿入され、例えば、 25 融着、接着等の方法により液密に固定されている。」と記載されている。図 5、6によれば、上記「カテーテル本体2」及び「第1のコネクタ3」は、 15 コネクタを介さずに接続しているところ、これらは、それぞれ本願発明の「外 套管」及び「第1の本体部」に相当するから、乙1には、「外套管」及び「第 1の本体部」のような部材の接続構造として、コネクタを介さずに接続する 構造が記載されている。 5 また、「留置針装置」に関する乙2(特開2015−181671号公報。 拒絶査定における引用文献3)の段落【0020】には、「外ハブ25は略 漏斗形状を有し、そのシールド筒21とは反対側端(前端)に軟質の外針2 7が固定されている。」及び「外ハブ25及び外針27を、上記の軟質材料 を用いて一体に形成してもよい。」と記載されている。図2によれば、上記 10 「外針27」及び「外ハブ25」は、コネクタを介さずに接続しているとこ ろ、これらは、それぞれ本願発明の「外套管」及び「第1の本体部」に相当 するから、乙2には、「外套管」及び「第1の本体部」のような部材の接続 構造として、コネクタを介さずに接続する構造が記載されている。 さらに、「ロック機構付き複合針」に関する乙3(国際公開第2010/ 15 116493号公報。拒絶査定における引用文献1)の段落【0014】に は、「外針2の基端には筒状基部3が固定されている。 と記載されている。 」 図2によれば、上記「外針2」及び「筒状基部3」は、コネクタを介さずに 接続しているところ、これらは、それぞれ本願発明の「外套管」及び「第1 の本体部」に相当するから、乙3には、「外套管」及び「第1の本体部」の 20 ような部材の接続構造として、コネクタを介さずに接続する構造が記載され ている。 以上のとおり、本願発明の「外套管」や「第1の本体部」のような筒状部 材の接続構造として、コネクタを介さずに接続する構造は、周知技術にすぎ ない。 25 そして、引用文献1(甲1)には、既に述べたように、接続手段として回 転可能なコネクタ22の利用は限定的でない一例にすぎないとされているか 16 ら、引用発明の接続手段に当該周知技術を採用して、外套管と第1の本体部 の接続構造を、コネクタを介さない接続構造とすることは、当業者が容易に なし得たことであり、結局、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易 に発明をすることができたものであるとの本件審決の判断に誤りはない。 5? 本件審決で認定した相違点に関する判断の誤りの主張について ア 引用発明のような、カテーテルまたはガイドワイヤなどの細長い器具を 挿入、配置、操作するための装置において、細長い部材を保持固定する必 要があることは周知の課題にすぎない。 例えば、「ガイドワイヤ固定具およびそれを備えたカテーテルセット」 10 に関する乙4(特開平9−51954号公報)の段落【0027】には、 「締め付けナット56を接合筒体54に螺合して締め付けることで、押圧 部74が弾性部材58を軸方向に圧縮し、弾性部材58の内径が縮み、弾 性部材58がガイドワイヤ42の外周を締め付け、ガイドワイヤ固定具5 2に対してガイドワイヤ42の軸方向移動を固定する。」と記載されてい 15 る。図1、図2によれば、上記「ガイドワイヤ42」及び「弾性部材58」 は、それぞれ引用発明の「細長い部材」及び「シール」に相当するから、 乙4には、カテーテルまたはガイドワイヤなどの細長い部材を挿入、配置、 操作するための装置において、シールを締め付けることで細長い部材を保 持固定することが記載されている。 20 さらに、「コネクタ」に関する乙5(特開平7−163666号公報。 拒絶査定における引用文献5)の段落【0022】ないし【0024】に は、「図4は、弁体5および操作体6の作用を説明するための、弁体5付 近を示す断面図である。図4(a)は、器具15を器具挿通路21に挿通 し、かつ、操作体6が弁体5を全く押圧せず、器具15が弁体5内を抵抗 25 なく摺動可能な状態を示している。この状態においても、弁体5の最小内 径を器具15の径よりもわずかに大きく設定することにより、くびれ部5 17 2において器具15と弁体5との隙間が狭まって、弁体5と器具15との 間から漏出する血液の量を少なくできる。・・・図4(b)は、同図(a) の状態から、取手61を把持して操作体6を先端方向へ向けて時計回りに 回転し、操作体6を先端方向に所定距離押し込んだ状態を示している。こ 5 の状態において、操作体6は弁体5を基端より押圧、変形してその内径を 縮小し、くびれ部52の内面を器具15にほぼ隙間なく接触させている。 これにより、弁体5は器具15を液密に圧迫、保持している。他方、この 状態において、弁体5と器具15とは、弁体5の内面全体ではなく、くび れ部52の最小内径の位置を中心としたごく小さい面積で接触し、これに 10 より、器具15を弁体5内で摺動する際の摩擦抵抗も小さくなっている。 このため、この位置に操作体6を係止することにより、器具15はこの弁 体5により液密に保持され、かつ、弁体5内で良好に摺動できる。・・・ 図4(c)は、同図(b)の状態から、取手61を把持して操作体6をさ らに回転し、操作体6をさらに押し込んだ状態を示している。この状態に 15 おいて、操作体6は図4(b)の状態から弁体5をさらに押圧して、弁体 5をさらに圧縮変形している。そして、変形したくびれ部52が図4(b) の時よりも広い面積で器具15と接触し、器具15を圧迫して摺動不能に 保持、固定している。」と記載されている。 上記「器具15」は、例えばカテーテルであり(段落【0014】)、 20 「弁体5」は、弾性体であるから(段落【0019】)、「器具15」及 び「弁体5」は、それぞれ引用発明の「細長い部材」及び「シール」に相 当する。 そうすると、乙5には、カテーテルやガイドワイヤなどの細長い器具を 挿入、配置、操作するための装置において、シールを押圧して圧迫するこ 25 とで細長い部材を保持固定することが記載されている。 以上によれば、引用発明のような、カテーテルまたはガイドワイヤなど 18 の細長い器具を挿入、配置、操作するための装置において、細長い部材を 保持固定する必要があることは周知の課題であり、引用発明においても内 在する課題であるということができる。 したがって、同じくカテーテルやガイドワイヤを挿入するために使用す 5 る引用発明において、保持固定を全く想定していないなどということはな く、原告の主張は誤りである。 イ そして、引用発明は、「弁アセンブリ26が、回転ナット48の回転に より、軸部136をシール52を通る通路90を閉鎖しシールするまで前 進」可能なものであるから、「細長い部材28が使用されるとき」におい 10 て、軸部136を前進させてシール52を強く押圧可能であることは明ら かである。そうすると、引用発明は「細長い部材28が使用されるときは、 回転ナット48の回転により、軸部136を細長い部材28の外面29の 周囲を押圧してシールを維持しながら、細長い部材28を通路90内で前 進又は後進させる」ものであるところ、引用文献1には、「軸136を前 15 進又は後退させることにより、細長い部材28上のシール52により加え られる圧力の量を選択的に制御することができる。このように、管腔66 を通って逆流する血液または他の流体の漏れを防止するために細長い部 材28の周りのシールを維持しながら、細長い部材28を通路56内で前 進又は後退させることができる。」(甲1の9欄7〜9行)と記載され、 20 シール52により加えられる圧力の量を選択的に制御することで、細長い 部材28の周りのシールを維持しながら、細長い部材28を前進又は後退 させているのであるから、さらに軸部136を前進させて強くシール52 を押圧することで、細長い部材28を保持固定できることは明らかである。 念のため付け加えると、乙5の段落【0022】ないし【0024】に 25 は、上記のとおり、図4(a)は、「器具15が弁体5内を抵抗なく摺動 可能な状態」で、図4(b)は、「操作体6を先端方向に所定距離押し込 19 んだ状態」で、「器具15はこの弁体5により液密に保持され、かつ、弁 体5内で良好に摺動でき」、図4(c)は、「同図(b)の状態から、操 作体6をさらに押し込んだ状態」で、「操作体6は図4(b)の状態から 弁体5をさらに押圧して」、「器具15を圧迫して摺動不能に保持、固定 5 している」ことが記載されている。すなわち、乙5には、器具15を液密 に保持し、かつ、摺動可能な状態から、弁体をさらに押圧することで器具 を保持固定することが記載されているから、引用発明においても同様に、 細長い部材の周りのシールを維持しながら前進又は後退させることがで きる状態から、さらに強くシールを押圧することで細長い部材を保持固定 10 できることは明らかである。 そして、上記のとおり、カテーテルやガイドワイヤなどの細長い部材を 挿入、配置、操作するための装置において、細長い部材を保持固定する必 要があることは周知の課題であるから、引用発明のシール52の構造や素 材等を細長い部材28の保持固定が可能なものとする程度のことは、当業 15 者が容易に想到できたことである。 ウ また、原告が本願発明の効果として主張する(1)ないし(5)も、引用発明 は「弁アセンブリ26が、回転ナット48Bの回転により、軸部136を シール52を通る通路90を閉鎖しシールするまで前進」するものである から、バルブアセンブリ26によりシール52を変形させることで流路調 20 整するものである。したがって、上記効果(1)は、引用発明が奏する効果で ある。また、引用発明は「細長い部材28が使用されるときは、回転ナッ ト48の回転により、軸部136を細長い部材28の外面29の周囲を押 圧して、シールを維持しながら、細長い部材28を通路90内で前進又は 後進させる」ものであるから、細長い部材28の径に対応して通路90の 25 開度を設定可能であり、また、開度を調整して、通路に挿通された細長い 部材28に対してシール52を押し当てることで細長い部材28の周面 20 を通じて通路90から血液などが噴出するのを防止できるものである。よ って、上記効果(2)及び(3)も、引用発明が奏する効果にすぎない。 また、上記効果(4)及び(5)については、上記のとおり、引用発明のシー ル52として、通常用いられる周知のものを採用すれば、細長い部材28 5 に接触したシール52を締め込むことで、細長い部材28を保持、固定さ せることができるから、弁アセンブリ26により、治療または検査時に細 長い部材28を任意の位置に留置することが可能となり、施術者が他の器 具の選択や操作などを行うことができ、施術者の自由度を高められること は明らかである。したがって、上記効果(4)及び(5)は、引用発明から当業 10 者が予測し得る程度の効果である。 よって、本件審決の相違点に係る判断に誤りはなく、本件審決の進歩性 の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由2は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(引用発明の認定、一致点及び相違点の認定の誤り)について 15 ?ア 原告らは、本件審決が、引用発明においてコネクタ22を介して導入器 12と管状体18とが接続している点を看過して、その内容を認定したの は誤りであり、これにより本件審決の本願発明と引用発明との一致点及び 相違点の認定も誤りである旨を主張する。 引用発明の記載された引用文献1(甲1)には、別紙3のとおりの記載 20 (図を含む)があるところ、本願発明の第1の本体部に対応する引用発明 の管状体18は、圧縮チャンバ58と、圧縮チャンバ58の内径よりも小 さい内径を有する内部表面70を有し、導入器12と流体結合する通路5 6を有するところ(前記第2の3?)、引用文献1の図1、2には、管状 体18は、コネクタ22を介して導入器12と結合する様が示されている。 25 ここで、引用発明の「圧縮チャンバ58」及び「通路56」は、それぞれ 機能及び構造上、本願発明の「第1の孔部」及び「第2の孔部」に相当す 21 るものと認められる。 引用文献1には、発明が解決しようとする課題について、「本発明の目 的は、改良された止血弁を提供することにある。また、本発明の目的は、 患者の心臓血管系内へカテーテルまたはガイドワイヤを挿入するために 5 使用できる改良された止血弁を提供することにある。本発明の別の目的は、 血液の漏れを最小限に抑える、改良された止血弁を提供することにある。 本発明のさらに別の目的は、血液漏れのリスクを増大させることなく、所 望の大きな通路を有する改良された止血弁を提供することにある。」(甲 1の3欄12〜21行)と記載されているところ、そこに記載の「目的」 10 は、発明の課題として理解することができる。その課題について、引用発 明は、「弁アセンブリ26が、回転ナット48の回転により、軸部136 をシール52を通る通路90を閉鎖しシールするまで前進し、細長い部材 28が使用されるときは、回転ナット48の回転により、軸部136を細 長い部材28の外面29の周囲を押圧してシールを維持しながら、細長い 15 部材28を通路90内で前進又は後進させるアダプタ」 (引用発明の内容、 前記第2の3?)とされる、弁アセンブリの動作に係るアダプタの構造に より解決するところ、そこにおいて、導入器12と管状体18とが直接接 続されているか、他の部材を介して間接的に接続されているかは、上記課 題の解決に全く関係していないということができる。 20 そうすると、引用発明において、コネクタ22が欠くことのできない構 成であるとは認められないから、引用発明の内容の認定に当たり、本件審 決がコネクタ22を含めなかった点に誤りがあるものとはいえない。 イ 一方で、本願発明の第1の本体部について、特許請求の範囲及び本願明 細書には、これが単体の部材のみからなる旨や、外套管と第1の本体部と 25 は直接接続されているものに限られる旨の記載はされていない。この点に 関し、本願明細書には、「外套管4には、たとえば図2に示すように、一 22 端側に外套ハブ10が接続されている」(段落【0015】、図2は別紙 2参照)と記載されているところ、これは記載のとおり例示と解されるほ か、同段落には「この外套管4と外套ハブ10は、たとえば接着材や図示 しない係止構造などにより強固に接続されるほか、インサート成形などに 5 より一体化して形成されてもよい。」とも記載されていて、外套管4と外 套ハブ10(第1の本体部)との接続態様として様々な構成を含んでおり、 これらが直接接続される態様のみに限られると解すべき根拠はない。 そうすると、本願発明において、第1の本体部が複数の部材を組み合わ せて構成される部材である場合も排除されていないところ、本願発明は、 10 前記第2の2の本願発明の内容のとおり、第2の本体部の回動による締付 け量、もしくはその位置に応じて、ストッパの遮断性能が調整されるよう な特定の構造の開度調整機構部を備えることにより課題解決を図るもの であって、外套管と第1の本体部との関係を特定する「内部に第1の孔部 と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および前記 15 外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側 に接続された第1の本体部」(前記第2の2)との構成において、「外套 管」と「第1の本体部」とが直接接続していなければ本願発明の課題解決 が図られない特段の事情もない。これらによれば、本願発明の上記構成は、 「外套管」と「第1の本体部」とが何らかの接続部材を介して接続される 20 場合を排除するものではない。 そうすると、仮に、引用発明の「管状体18」の内容について、原告の 主張するとおり、コネクタ22を介するものとして、「圧縮チャンバ58 と、圧縮チャンバ58の内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有 し、一端側に設けられたコネクタ22が導入器12の近位端部14に接続 25 されることで、コネクタ22を介して導入器12と流体結合する通路56 を有する管状体18」と認定したものとしても、かかる「管状体18」は、 23 いずれにしろ、本願発明の「内部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも 開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および前記外套管の前記挿通孔に連 通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側に接続された第1の本体 部」に相当するものといえる。 5 以上によれば、原告らの主張のとおり引用発明の内容を認定したとして も、本願発明と上記引用発明の内容に基づき引用発明とを対比した際の一 致点及び相違点は、結局、本件審決と同一の内容となり、本件審決の一致 点・相違点の認定には誤りがないことになるから、原告らの主張は、いず れにしろ本件審決の結論を左右するものとはいえない。 10 ウ 以上によれば、本件審決の引用発明の内容の認定に誤りはなく、本願発 明と引用発明との一致点及び相違点の認定にも誤りはないから、原告らの 主張する取消事由1は理由がない。 ? 原告らの主張に対する判断 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕のとおり、本願発明には引用文献 15 1のコネクタ22に対応する記載はないから、本件審決の引用発明の内容の 認定及び本願発明との一致点及び相違点の認定は誤りである旨を主張する。 しかし、前記?のとおり、本願発明において、外套管4と外套ハブ10と の接続態様が直接接続される態様のみに限られるとは解されず、コネクタ2 2を引用発明の内容に含めなかった本件審決の引用発明の内容の認定に誤り 20 はなく、本願発明の構成にも照らせば、引用発明との一致点及び相違点の認 定にも誤りはないから、本件審決の結論に影響を与える誤りは認められない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について ? 本件審決が「第1の本体部」の差異を看過して進歩性判断をしたことの誤 25 りついて 原告らは、本件審決が、引用発明におけるコネクタ22の存在を看過して 24 第1の本体部についての認定をしたのは誤りであり、これにより相違点に係 る進歩性判断を誤ったものと主張するが、前記1で検討したとおり、本件審決 の引用発明の認定に誤りはなく、原告らの上記主張はその前提において誤り があるほか、仮に原告らの主張のとおり引用発明の認定をしたとしても、この 5 点が本件審決の本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定に誤りがあ ることにはならないことについても、既に検討したとおりである。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ? 本件審決の相違点についての進歩性判断の誤りについて 本件審決が認定した、本願発明と引用発明との相違点は前記第2の3?の 10 とおり、 「内孔に器具が挿通されている場合に、第2の本体部の回動によって 内孔の開度を狭めて前記器具の周面を押圧するストッパが、本願発明では、器 具を固定保持するのに対し、引用発明では、シールを維持しながら、細長い部 材28を通路90内で前進又は後進させる点」であるところ、この点に関して は、以下のとおり認められる。 15 ア 引用文献1の記載(図は別紙3参照) 「アダプタ」に関し、引用文献1には、 「通路56を閉鎖するために、回 転ナット48は、軸部136が第1係合ねじ57と、第2係合ねじ134 との間の係合の結果、圧縮チャンバ58内に前進するように本体18に対 して回転される。軸部136が前進すると、シール52は、本体18の肩 20 部72とスリップリング50との間で圧縮される。シール52の圧縮は、 シール52の内面88を内向きに突出させ、それによってシール52を通 って延びる通路90を絞る。図5に示すように、軸部136はシール52 の内面88が完全に押しつぶされ、シール52を通る通路90の内面88 を閉鎖しシールするまで前進し続ける。これと同時に、シール52は、シ 25 ールを形成するように、圧縮チャンバ58の内面60に対して半径方向外 側に圧縮する。この位置では、遠位部分154は、管腔66内に僅かに延 25 び、近位部分156は、スリップリング50の開口部109内に僅かに延 びている。これに代えて、図5Aに示すように、カテーテルまたはガイド ワイヤのような細長い部材28は、図1に関して説明したように、患者の 血管系内に挿入するための通路56を通って長手方向に配置することが 5 できる。細長い部材28がそのように使用されるときには、軸部136は、 シール52の内面88が細長い部材28の外面29の周囲を押圧してシ ールするように圧縮されるまで、圧縮チャンバ58内で選択的に前進する ことができる。軸136を前進又は後退させることにより、細長い部材2 8上のシール52により加えられる圧力の量を選択的に制御することが 10 できる。このように、管腔66を通って逆流する血液または他の流体の漏 れを防止するために細長い部材28の周りのシールを維持しながら、細長 い部材28を通路56内で前進又は後退させることができる。(甲1の8 」 欄49行〜9欄13行)と記載されており、これによれば、回転ナット4 8の回動によってシール52を軸方向に押圧し、シール52を圧縮するこ 15 とにより、シール52を半径方向に膨張させ通路90を絞るという動作の 仕組みが記載されているということができる。 この記載に加え、引用文献1の図5及び図5Aの記載を参酌すると、引 用文献1には、@図5のように、通路90にカテーテルまたはガイドワイ ヤのような細長い部材28が配置されていない場合に、シール52の内面 20 88が完全に押しつぶされ、シール52を通る通路90の内面88を閉鎖 しシールすること、A図5Aのように、通路90に細長い部材28が配置 されている場合に、細長い部材28の周面をシール52で押圧しながら、 細長い部材28を通路90内で前進又は後進させること、の二つの使用態 様が記載されているものといえる。 25 さらに引用文献1には、 「軸136を前進又は後退させることにより、細 長い部材28上のシール52により加えられる圧力の量を選択的に制御 26 することができる。(甲1の9欄7〜9行)と記載されており、引用発明 」 のシール52により細長い部材28に加えられる圧力の量は、選択的に制 御することができることも示されている。 イ 相違点に係る引用発明の構成について 5 (ア)引用発明は、前記第2の3?の引用発明の内容のとおり、 「軸部13 6と、管腔66の近位端部68と圧縮チャンバ58の遠位端部62の間 に拡大されている肩部72と、通路90を有するシール52とで構成さ れ、回転ナット48の回転により軸部136を圧縮チャンバ58に前進 させ、本体50の肩部72と軸部136との間でシール52を押圧し、 10 通路90を閉鎖する弁アセンブリ26」に関し、 「弁アセンブリ26が、 回転ナット48の回転により、軸部136をシール52を通る通路90 を閉鎖しシールするまで前進し、細長い部材28が使用されるときは、 回転ナット48の回転により、軸部136を細長い部材28の外面29 の周囲を押圧してシールを維持しながら、細長い部材28を通路90内 15 で前進又は後進させる」という使用目的を示す特定を備えるものである。 (イ) そして、上記アの引用文献1における記載を参酌すると、上記(ア)の とおりの引用発明は、回転ナット48の回動によってシール52を軸方 向に押圧し、シール52を圧縮することにより、シール52を半径方向 に膨張させ通路90を絞る機構を備える弁アセンブリ26について、通 20 路90に細長い部材28が配置されていない場合は通路90を閉鎖す ることが可能であり、通路90に細長い部材28が配置されている場合 は、シール52により細長い部材28へ加えられる圧力の量が「シール を維持しながら、細長い部材28を通路90内で前進又は後進させる」 ように制御可能になっていることを示すものである。そして、「細長い 25 部材28」は、あくまで「アダプタ」における「弁アセンブリ26」と ともに用いることができる部材を指し、発明の対象たる「アダプタ」自 27 体を構成する部材であるとは認められない。 なお、引用発明の「アダプタ」において、通路90内に配置される場 合の「細長い部材28」の太さは何ら特定されていないものの、引用文 献1(甲1)の図5において示された使用態様の@(上記ア)のように、 5 本願発明の「弁アセンブリ26」は、「シール52の内面88が完全に 押しつぶされ、シール52を通る通路90の内面88を閉鎖しシールす る」ことができる、すなわち、通路90が閉鎖されるよう実質的には完 全に閉じた状態に調整できるものであって、通路90に細長い部材28 が配置される場合には、それがどのような太さの部材であったとしても、 10 その周面をシールできるまでにシール52によって通路90を狭める ことは、当然可能であると解される。 ウ 一方、本願の出願前の技術水準を示す文献である乙4、5には、以下の 記載がある(図は別紙3参照。下線は判決で付記)。 (ア) 乙4(特開平9−51954号公報、公開日平成9年2月25日、発 15 明の名称「ガイドワイヤ固定具およびそれを備えたカテーテルセット」) 「本発明に係るガイドワイヤ固定具において、前記固定手段および接合 手段に加えて、締め付け調整手段をさらに有することが好ましい。締め 付け調整手段は、ガイドワイヤを固定する力を調整するための手段であ り、これによりガイドワイヤの締め付け力を調整してガイドワイヤの位 20 置を固定または移動可能にでき、操作性がさらに向上する。(段落【0 」 013】) 「締め付けナット56を接合筒体54に螺合して締め付けることで、押 圧部74が弾性部材58を軸方向に圧縮し、弾性部材58の内径が縮み、 弾性部材58がガイドワイヤ42の外周を締め付け、ガイドワイヤ固定 25 具52に対してガイドワイヤ42の軸方向移動を固定する。(段落【0 」 027】) 28 (イ) 乙5(特開平7−163666号公報、公開日平成7年6月27日、 発明の名称「コネクタ」) 「筒体4は、その途中でY字状に分岐した形状をなしており、2つの端 部41、42を有している。これらの端部41、42にはそれぞれ開口 5 が形成されており、端部41は、カテーテル10に挿通して使用する器 具15(例えば上記拡張体付きカテーテル)をコネクタ1内に挿入する ための器具挿通用ポートとして、また端部42は、狭窄部拡張後の血流 の改善を確認するための造影剤をカテーテル10の内腔を介して血管 内に注入するための注入ポートとして使用される。筒体3および筒体4 10 の構成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、 ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱 可塑性樹脂が好適に使用できる。(段落【0014】 」) 「図4(b)は、同図(a)の状態から、取手61を把持して操作体6 を先端方向へ向けて時計回りに回転し、操作体6を先端方向に所定距離 15 押し込んだ状態を示している。この状態において、操作体6は弁体5を 基端より押圧、変形してその内径を縮小し、くびれ部52の内面を器具 15にほぼ隙間なく接触させている。これにより、弁体5は器具15を 液密に圧迫、保持している。他方、この状態において、弁体5と器具1 5とは、弁体5の内面全体ではなく、くびれ部52の最小内径の位置を 20 中心としたごく小さい面積で接触し、これにより、器具15を弁体5内 で摺動する際の摩擦抵抗も小さくなっている。このため、この位置に操 作体6を係止することにより、器具15はこの弁体5により液密に保持 され、かつ、弁体5内で良好に摺動できる。(段落【0023】 」) 「図4(c)は、同図(b)の状態から、取手61を把持して操作体6 25 をさらに回転し、操作体6をさらに押し込んだ状態を示している。この 状態において、操作体6は図4(b)の状態から弁体5をさらに押圧し 29 て、弁体5をさらに圧縮変形している。そして、変形したくびれ部52 が図4(b)の時よりも広い面積で器具15と接触し、器具15を圧迫 して摺動不能に保持、固定している。・・・」(段落【0024】 ) エ 相違点についての検討 5 (ア)本願発明は、治療や検査を行う部位に対してカテーテルなどの器具の 挿入、配置、操作するためのルートを確保しつつ、器具の挿抜性および逆 流防止機能を両立させるアダプタ(本願明細書の段落【0007】、本願 発明の内容(前記第2の2))を提供することを課題とするものであり、 開閉キャップ12の締付け量、もしくはその位置に応じて弁体25の遮 10 断性能が調整される(段落【0024】、 ) 特定構造の開度調整機構部を備 えることにより、課題を解決するものと解される。また、本願発明のアダ プタを構成する上記開度調整機構部に関し、本願明細書の段落【002 4】には、 「押圧部46は、たとえば図6のAに示すように外套ハブ10 に対して開閉キャップ12が締め込まれるのに応じて第1の孔部22A 15 の内側に変移していく。そして弁体25は、押圧部46の変移に応じて端 面側から押圧力F1を受けるとともに、この押圧力F1に対する反力F 2を段差壁42側から受ける。このとき弁体25は、両端側からの押圧 と、押圧部46の変移による収納容積の減少で、内孔26側に向けて圧縮 変形する。このとき弁体25の内孔26の内周面には、たとえば所定の圧 20 縮力F3が中心軸に向けて作用し、内孔26内に挿通された器具40の 周面を押圧する。すなわちこの弁体25、押圧部46および段差壁42 は、本発明の開度調整機構部の一例であり、開閉キャップ12の締付け 量、もしくはその位置に応じて弁体25の遮断性能が調整される。そして 弁体25は、圧縮力F3が大きくなれば血液の逆流を阻止するとともに、 25 挿通孔6や孔部22、28に挿通している器具40を固定保持すること が可能となる。」と、同段落【0025】には、 「さらに、弁体25は、た 30 とえば図6のBに示すように、内孔26内に器具40が挿通されていな い場合、開閉キャップ12を深く締め込むことで押圧力F1と段差壁4 2からの反力F2による変形量が大きくなり弁体25の対向面同士が接 触して、内孔26が遮断状態になる。このように弁体25は、開閉キャッ 5 プ12の変位量に応じて、任意に内孔26の開度を調整することができ る。そして、この開度調整により、挿通孔6を通じて生体内部と外気との 遮断または器具40を挿通させるための開度に切換えるほか、挿通され ている器具40の固定保持などを行うことができる。」と、それぞれ記載 されており、そこに示された図6のA及び図6のBの記載(別紙2参照) 10 にもよれば、開閉キャップ12が締め込まれると、弁体25が内孔26側 に向けて圧縮変形することで、開閉キャップ12の変位量に応じて、任意 に内孔26の開度を調整することができるとの動作の仕組みとともに、 @図6Bのように内孔26内に器具40が挿通されていない場合に、内 孔26が遮断状態になること、A図6Aのように内孔26内に器具40 15 が挿通されている場合に、弁体25が、その内孔26の内周面が器具40 の周面を押圧し、血液の逆流を阻止するとともに、器具40を固定保持す ること、の二つの使用態様が示されているものといえる。 そして、本願発明は、「前記第2の本体部の回動により前記押圧部と前 記段差壁からの押圧で前記ストッパを変形させて前記内孔の開度を切換 20 える開度調整機構部」に関し、 「前記開度調整機構部は、前記内孔に器具 が挿通されていない場合に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態 と前記器具を挿通可能な状態とに前記内孔の開度を調整し、前記内孔に 前記器具が挿通されている場合に、前記第2の本体部の回動によって前 記内孔の開度を狭めて前記器具の周面を前記ストッパで押圧することで 25 前記器具を固定保持する」との使用目的を示す発明特定事項を備えるも のである。本願発明におけるアダプタにおいて、内孔に挿通される場合の 31 器具の太さは特定されてはいないものの、図6B(別紙2参照)のように、 本願発明の「開度調整機構部」は、 「内孔に器具が挿通されていない場合 に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態」 「前記内孔の開度を調 に 整」できる、すなわち、 「遮断状態」となるよう実質的には内孔が完全に 5 閉じた状態に調整できるものであって(前記第2の2、本願発明の内容)、 器具が挿通される場合には、それがどのような太さの器具であったとし ても、その周面を押圧できるまでにストッパの内孔を狭めることは、当然 可能であると解される。 (イ) そして、引用発明の「弁アセンブリ26」「回転ナット48」「シール 、、 10 52」、 「通路90」、及び「細長い部材28」は、それぞれ本願発明の「開 度調整機構部」「第2の本体部」「ストッパ」「内孔」 、、、 、及び「器具」に 相当するところ、上記(ア)のとおりの本願発明の「開度調整機構部」の動 作機構の特徴を、上記イのとおりの引用発明の「弁アセンブリ26」の動 作機構の特徴と比較すると、両者に特段の差異は見られないものという 15 べきである。すなわち、内孔に器具が挿通されている場合に、第2の本体 部の回動によって内孔の開度を狭めて前記器具の周面を押圧するストッ パが、本願発明においては、器具を固定保持するのに対し、引用発明にお いては、シールを維持しながら、細長い部材28を通路90内で前進又は 後進させるという本願発明と引用発明との相違点は、本願発明と引用発 20 明とで使用目的に多少の差異があることを示すにすぎず、これら使用目 的の差異により、本願発明と引用発明とで構造や素材等についての相違 があると解すべき根拠は存しない。 加えて、引用文献1において、カテーテルまたはガイドワイヤのような ものとして説明される「細長い部材28」のような器具について、ストッ 25 パで押圧しながら移動できるようにしたり、押圧して保持固定したりす ることを、その押圧力調整によりいずれも可能とすることは、上記ウのと 32 おりの、乙4の記載事項(特に段落【0013】及び【0027】)や、 乙5の記載事項(特に別紙3に示された図4(b)及び図4(c)、段落 【0014】【0023】及び【0024】 、 )にあるとおり、本願の出願 前における技術常識といえる。また、その際に、器具を移動できるように 5 する場合より、器具を保持固定する場合のほうが押圧力が高くなること については、乙5の上記記載事項からも明らかなとおり、当業者において 容易に理解する事項といえる。 (ウ) そうすると、本願発明の相違点に係る構成は、引用発明に接した当業者 において、上記技術常識から当然に予測される使用目的の範囲内で実現 10 し得た、設計上の微差といえる程度のものであり、これにより、予測し得 ない顕著な効果を奏するものともいえない。 したがって、本件審決の相違点についての進歩性の判断に誤りはない。 (エ) 上記によれば、本件審決の認定した相違点に係る進歩性の判断に誤り はなく、原告ら主張の取消事由2には理由がない。 15 ? 原告らの主張に対する判断 ア 原告らは、前記第3の2〔原告らの主張〕?ア及びイのとおり、引用発 明に他の技術を組み合わせる動機付けはなく、本件審決の進歩性判断は誤 りである旨を主張する。 しかし、原告らの主張は、引用発明における細長い部材28が、弁アセ 20 ンブリ26で止血しながら前進又は後退できるものであることをもって、 引用文献1の記載からは示唆されない「保持固定される状態」とすること には引用発明の課題に反した内容となるとするところ、シールへの押圧力 を変えることで「前進又は後進できる状態」と「保持固定される状態」と の切り替えを図り、必要な場面ごとにどちらも実現可能とすることに、特 25 段支障となる根拠は見当たらないというべきである。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 33 イ 原告らは、前記第3の2〔原告らの主張〕?ウのとおり、本願発明は予 測し得ない顕著な効果を奏し、進歩性を有する旨を主張する。 しかし、原告らの上記主張に係る、引用発明の細長い部材28を保持固 定することは当業者が容易に想到し得なかったとする前提について、上記 5 アのとおり理由がないものと解されるほか、原告らの主張する本願発明の 顕著な効果(前記第3の2〔原告らの主張〕?ウ)のうち、(1)ないし(3) の効果は、細長い部材28の保持固定とは関係がなく、細長い部材28が 弁アセンブリ26で止血しながら前進又は後退できるようにした引用発 明においてもともと奏する効果であり、(4)及び(5)の効果は、引用発明の 10 細長い部材28の保持固定が実現される際に、自ずと予測し得る効果とい うことができる。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 3 結論 以上のとおり、本件審決の認定及び判断に誤りは認められず、原告ら主張の 15 取消事由1及び2は、いずれも理由がない。 よって、原告らの請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 20 裁判長裁判官 東海林保 25 裁判官 34 今井弘晃 5 裁判官 水野正則 (別紙1 審決書写し省略) 35 別紙2 本願明細書の記載(令和3年7月16日付け手続補正書(甲6)による補正及び本 件補正後のもの) 【発明の名称】イントロデューサ針およびアダプタ 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、たとえばカテーテルなどの器具を目的部位に挿入、配置、操作するための ルート確保やガイドに用いられるイントロデューサ針やアダプタに関する技術である。 【背景技術】 【0002】 狭心症や心筋梗塞などの心臓の血管、または脳梗塞や脳出血などの脳血管に生じる疾 患に対する治療として、カテーテルという細い管を血管内に通し、疾患の原因部分に対 して治療器具を運ぶ手法がとられている。このような治療方法では、たとえば足の付け 根などから太い血管に対してカテーテルを挿入することになる。カテーテルを血管内に 案内補助するためには、イントロデューサなどの医療器具が用いられる。イントロデュ ーサは、治療対象の皮膚を通して目的とする血管またはその他の部位に向けて穿刺し、 その目的部位に達したところで留置させたのちにカテーテルを体内に導く。このときイ ントロデューサにより体内にある血管やその他の部位と体外とが挿通状態となるため、 血液や体液などが外部に流出するおそれがある。 【0003】 このような血液などの流出について、カテーテルなどを通過させる小穴の周囲に切れ 目を設けたスリットや内側面側の周囲にスリットを設けた案内器具用逆止弁が知られて いる(たとえば、特許文献1)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】 特開2002−239012号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 カテーテルを用いた治療や検査では、血液の脱血や逆流、体液の流出などを防止する とともに、穿刺したイントロデューサを通じてカテーテルやその他の器具の挿抜をスム ーズに挿抜させる必要がある。すなわち、イントロデューサには、内部流路の挿抜性 と、治療対象に対する遮断性の両機能が求められる。 しかしながら、従来のように挿入される器具などへの接触によって内部流路が閉状態 となる逆止弁構造を採用する場合、内部流路の遮断性は高められるが、接触による摩擦 などによりカテーテルやその他の器具の挿入を阻害するおそれがある。逆に、内部流路 の遮断強度を抑えて挿通性を高めると、イントロデューサを通じて体外に血液などの逆 流を許すことになるおそれがあるという課題がある。 【0006】 1/19 斯かる課題について、特許文献1に開示された構成では解決することができない。 【0007】 そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、治療や検査を行う部位に対してカテーテ ルなどの器具の挿入、配置、操作するためのルートを確保しつつ、器具の挿抜性および 逆流防止機能を両立させることにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記目的を達成するため、本発明のイントロデューサ針の一側面は、内部に挿通孔を 有する筒状部材であり、一端側から所定長さまで穿刺対象内に挿入される外套管と、内 部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ前記第1の孔部および前 記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外套管の一端側に接続され た第1の本体部と、前記第1の本体部の外周部を収納する外装ケースと、前記第1の孔 部に挿入される押圧部とを有し、前記外周部に対してネジ機構により係合するととも に、回動によって進退する第2の本体部と、前記押圧部と、前記第1の孔部と前記第2 の孔部の連通部分に形成された段差壁と、該段差壁に面して前記第1の孔部内に設置さ れ、内孔を有する筒状形状であるストッパとで構成され、前記第2の本体部の回動によ り前記押圧部と前記段差壁からの押圧で前記ストッパを変形させて前記内孔の開度を切 換える開度調整機構部とを備え、前記開度調整機構部は、前記内孔に器具が挿通されて いない場合に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態と前記器具を挿通可能な状態 とに前記内孔の開度を調整し、前記内孔に前記器具が挿通されている場合に、前記第2 の本体部の回動によって前記内孔の開度を狭めて前記器具の周面を前記ストッパで押圧 することで前記器具を固定保持する。 【0009】 このイントロデューサ針において、さらに、穿刺方向に向けて先端側に穿刺刃を備え ており前記挿通孔内に挿通されて穿刺対象に対して挿抜される針部と、該針部の他端に 接続された径大な蓋部とを有する穿刺針とを備えてよい。 このイントロデューサ針において、前記ストッパは、前記第2の本体部の閉操作によ り、前記内孔の開度が狭まることで前記第1の孔部および前記第2の孔部に挿通された 器具の外周を挟持し、または前記第2の本体部の開操作により、前記第1の孔部および 前記第2の孔部から前記器具を挿抜可能に前記内孔を開放させてよい。 このイントロデューサ針において、前記ストッパは、前記第2の本体部の閉操作によ り、前記内孔を遮断させてよい。 このイントロデューサ針において、前記第2の本体部は、前記第1の本体部に対する 前記第2の本体部の開閉位置に応じて前記ストッパを変形させて前記ストッパの一部を 前記内孔内に突出させてよい。 このイントロデューサ針において、前記外套管は、外周面に穿刺対象に対する挿入距 離を表す表示部を備えてよい。 このイントロデューサ針において、前記蓋部は、前記穿刺針と同軸上であって、内壁 面に前記第2の本体の外周側とネジ機構により係合する係合部を備え、前記穿刺針は、 穿刺方向に対する前記挿通孔、前記第1の孔部および前記第2の孔部を合わせた長さよ りも長く、かつ前記蓋部と前記第2の本体が係合したときに少なくとも前記外套管の先 端側から前記穿刺刃が突出する長さでよい。 上記目的を達成するため、本発明のアダプタの一側面は、内部に挿通孔を有する筒状 部材である外套管と、内部に第1の孔部と、前記第1の孔部よりも開口幅が小さく且つ 2/19 前記第1の孔部および前記外套管の前記挿通孔に連通する第2の孔部とを有し、前記外 套管の一端側に接続された第1の本体部と、前記第1の本体部の外周部を収納する外装 ケースと、前記第1の孔部に挿入される押圧部とを有し、前記外周部に対してネジ機構 により係合するとともに、回動によって進退する第2の本体部と、前記押圧部と、前記 第1の孔部と前記第2の孔部の連通部分に形成された段差壁と、該段差壁に面して前記 第1の孔部内に設置され、内孔を有する筒状形状であるストッパとで構成され、前記第 2の本体部の回動により前記押圧部と前記段差壁からの押圧で前記ストッパを変形させ て前記内孔の開度を切換える開度調整機構部とを備え、前記開度調整機構部は、前記内 孔に器具が挿通されていない場合に、前記第2の本体部の回動によって遮断状態と前記 器具を挿通可能な状態とに前記内孔の開度を調整し、前記内孔に前記器具が挿通されて いる場合に、前記第2の本体部の回動によって前記内孔の開度を狭めて前記器具の周面 を前記ストッパで押圧することで前記器具を固定保持する。 このアダプタにおいて、前記第2の本体部は、前記第1の本体部に対する前記第2の 本体部の開閉位置に応じて前記ストッパを変形させて前記ストッパの一部を前記内孔内 に突出させてよい。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。 【0011】 (1) 開度調整機構部によりストッパを変形させることで流路面積を調整できる。 (2) 挿通させる器具の径に対応して内部流路の開度の設定が可能となる。 (3) 開度を調整して、内部流路に挿通された器具に対してストッパを押し当てること で、器具の周面を通じて内部流路から血液などが噴出するのを防止できる。 (4) 挿通された器具に接触したストッパを締め込むことで、器具を固定保持させるこ とができる。 (5) 器具の固定保持機能により、治療または検査時に機器を任意の位置に留置するこ とが可能となり、施術者が他の器具の選択や操作などを行うことができ、施術者の自由 度が高められる。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】一実施の形態に係るイントロデューサ針の外観構成例を示す図である。 【図2】イントロデューサ針の分解構成例を示す図である。 【図3】外套管を対象物に留置させた状態の一例を示す図である。 【図4】外套ハブ内部の構造を示す断面図である。 【図5】Aは外套ハブの内部構成の一例を示す断面図であり、Bは開度調整機構部の構 成例を示す部分拡大図である。 【図6】Aは挿通させた器具が弁体で保持された状態例を示す図であり、Bは内孔を遮 断する状態例を示す図である。 【図7】穿刺針を内部流路に挿入させる状態例を示す図である。 【図8】Aは、実施例に係るイントロデューサ針の穿刺状態の一例を示す図であり、B は留置した外套管から穿刺針を抜去する状態例を示す図である。 【図9】外套管を留置した状態および開度調整機構の操作状態の一例を示す図である。 【図10】Aは外套ハブ内部構造の変形例を示す断面図であり、Bは開度調整機構部の 構成例を示す部分拡大図である。 3/19 【発明を実施するための形態】 【0013】 〔一実施の形態〕 【0014】 図1は、一実施の形態に係るイントロデューサ針の外観形状を示している。図1に示 す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されない。 このイントロデューサ針2は、治療または検査対象である生体の目的部位に向けて、 外部から経皮的に穿刺し、血管内または体組織に対して器具をガイドするためのルート を形成する。体内にガイドされる器具は、たとえば血管内治療を行うためのカテーテル やカテーテルを導くガイドワイヤーなどのカテーテル治療に用いる器具、その他の治療 や検査に利用される器具などが含まれる。イントロデューサ針2は、図1に示すように 外套管4とその内部の挿通孔6内に配置された穿刺針8、外套管4の一端に接続された 外套ハブ10、開閉キャップ12、および内針ハブ14を有する。 【0015】 外套管4は、イントロデューサ針2の外針の一例であり、穿刺針8を内部の挿通孔6 に収納した状態で治療または検査される体内に穿刺される。外套管4は、たとえばステ ンレスなどの金属材料、または硬度なプラスチック材料などであって、両端が開放され た筒状に形成されている。そして外套管4は、一部が体内に留置されることで、挿通孔 6を通じて体内に器具を挿入または抜去させるガイド手段として機能する。外套管4に は、たとえば図2に示すように、一端側に外套ハブ10が接続されている。この外套管 4と外套ハブ10は、たとえば接着材や図示しない係止構造などにより強固に接続され るほか、インサート成形などにより一体化して形成されてもよい。外套管4の挿通孔6 には、外套ハブ10が接続された端部側から穿刺針8が挿入されていく。 【0016】 穿刺針8は、イントロデューサ針2の内針の一例であり、生体の皮膚を穿孔し、外套 管4とともに生体内部の目的部位まで穿刺する。穿刺針8は、たとえばステンレスなど の金属材料で形成されており、先端側を鋭利にさせるための傾斜面とした穿刺刃16を 有している。この穿刺刃16は、たとえば挿通孔6から突出する部分の長さに対応して 形成されている。また穿刺針8は、挿通孔6の径と同等またはそれよりも径小に形成さ れており、たとえば外径が16G(1.65±0.03〔mm〕)や17G(1.46± 0.03〔mm〕)を採用してもよい。 【0017】 外套ハブ10は、イントロデューサ針2の第1の本体部の一例であり、開閉キャップ 12と係合する係合本体部18と、施術者や補助者などの操作者により把持される把持 本体部20を有する。また外套ハブ10の内部には、係合本体部18と把持本体部20 を貫通するとともに、外套管4の挿通孔6と連通する孔部22を有する。孔部22は、 挿通孔6と同軸上で連通している。これにより穿刺針8は、外套ハブ10の一端側から 孔部22を通過して挿通孔6側に導かれる。 係合本体部18は、外周面に開閉キャップ12と係合させるための係合部23が形成 されており、開閉キャップ12を回転させることで穿刺方向に対して前後に変移する。 把持本体部20は、内部に外套管4の一端側が挿入され、挿通孔6と孔部22とが連 通状態となるように接続されている。この把持本体部20には、外周面に所定間隔で突 出させた複数のリブ24を備える。これらのリブ24は、たとえば係合本体部18の外 周面にあるネジ山と同等またはそれよりも小さく形成されればよい。これによりリブ2 4/19 4は、たとえば操作者によって把持されることで、開閉キャップ12の回動、または図 示しない器具などの挿抜の際に外套管4の変移や回転、脱落などを防止し、開閉キャッ プ12の開閉操作性、またはイントロデューサ針2の保持性を高めている。 なお、リブ24はたとえば施術者の手や指の大きさなど基づいて突出間隔が設定され ればよい。そのほかリブ24の表面には、把持本体部20の把持性を高めるために、表 面部分に複数本のストッパ溝が形成されてもよい。 さらに、外套ハブ10は、孔部2 2内に弁体25を備えている。この弁体25は、内孔26を有する筒状形状であり、外 部からの加圧により変形する弾性部材で形成されている。この内孔26の開口中心軸 は、孔部22の中心軸線上に設定されている。これにより、内孔26は、挿通孔6と連 通して、穿刺針8やその他の器具などを通過させる経路として機能する。また、弁体2 5は、本発明のストッパの一例であり、内孔26の開口面積を調整することで挿通孔6 に通じる経路を遮断または制限する。 【0018】 開閉キャップ12は、イントロデューサ針2の第2の本体部の一例であり、外套ハブ 10と係合することで本発明の本体部を構成している。開閉キャップ12の内部には、 孔部22の中心軸の延長線上に中心軸が配置され、穿刺針8を挿通可能に開口した孔部 28が形成されている。そして開閉キャップ12は、係合本体部18に対する締め込み 量により配置位置が決まる。 【0019】 内針ハブ14は、穿刺針8の後端部に設置されており、挿通孔6における穿刺針8の 位置を特定し、または移動方向を規制する手段であるとともに、穿刺針8の挿抜におい て操作者などに触れさせる操作手段の一例である。この内針ハブ14は、少なくとも開 閉キャップ12の孔部28よりも径大に形成されており、挿通孔6に穿刺針8を挿入し ていくことで、開閉キャップ12の後端部分に接触して挿入量が規制される。また内針 ハブ14を開閉キャップ12に接触させることで、穿刺針8が抜去されるまで孔部28 が外気に露出するのを抑えることができる。そのほか、穿刺針8の挿抜処理において、 操作者に内針ハブ14を把持させることにより、穿刺針8に対する外気や施術者などの 接触を防止でき、挿通孔6や孔部22、28の内壁の清浄性が確保できる。 【0020】 <イントロデューサ針2の使用状態について> 図3は、外套管を対象物に留置させた状態の一例を示している。 血管内治療またはその検査では、たとえば図3に示すように対象物である生体部位3 0の皮膚32および皮下組織34内の血管36に対して斜め方向にイントロデューサ針 2が穿刺される。穿刺処理では、たとえば図示しない検査手段によって穿刺させる位置 や血管36の深さ、内部組織38までの距離などを予め確認した上で行うほか、斯かる 確認処理を行いながら施術を行う。 そして、イントロデューサ針2は、所定の位置および深さまで穿刺されると、挿通孔 6内から穿刺針8を抜去し、外套管4および本体部である外套ハブ10と開閉キャップ 12のみの状態にする。 【0021】 <遮断機構について> 図4は、外套ハブの内部構造を示す断面図である。 イントロデューサ針2の本体部内には、挿通孔6を介して血管36と外部との接続を 遮断する遮断機構として、弁体25を備えている。弁体25は、変形により内孔26の 5/19 面積を調整することで挿通孔6に連通した挿通経路を制限もしくは遮断する。外套ハブ 10は、たとえば図4のAに示すように、弁体25を「開」状態とする場合、内孔26 の開口幅が第1の値L1に調整される。このときイントロデューサ針2には、たとえば 穿刺針8などの器具40が挿通孔6および内孔26に挿抜可能な状態となる。 また外套ハブ10は、たとえば図4のBに示すように、弁体25を「保持」状態とす る場合、内孔26の開口幅が第2の値L2に調整される。このとき弁体25は、内孔2 6の内壁面が器具40の周面に圧接状態となり、器具40を挿抜できない、もしくは挿 抜し難い状態に保持する。 さらに、外套ハブ10は、たとえば図4のCに示すように、弁体25を「閉」状態と する場合、内孔26が閉口状態になるように調整される。このとき弁体25の内孔26 には、器具40などが抜去されている。 イントロデューサ針2は、外套ハブ10内に設置された遮断機構により挿通孔6を通 じて血管36から血液や体液などが外部に噴出するのを防止する。 【0022】 図5、図6は、外套ハブの内部構成例を示している。図5、図6に示す構成は一例で ある。 外套ハブ10の内部には、たとえば図5のAに示すように、係合本体部18側に形成 された第1の孔部22Aと、把持本体部20側に形成された第2の孔部22Bを有す る。第1の孔部22Aと第2の孔部22Bは、同一直線上に中心軸を配置させて連通し ている。また、第1の孔部22Aは、第2の孔部22Bよりも径大な開口幅となってい る。このように第1の孔部22Aと第2の孔部22Bとの連通部分は、開口幅の差分に より段差壁42がある。そして第1の孔部22A内には、段差壁42に一端面を接触さ せて弁体25が配置される。また、第2の孔部22Bは、たとえば第1の孔部22Aと の連通部分から外套管4との接続部分に向けて、開口幅を減少させたテーパ状に形成さ れてもよい。 なお、挿通孔6と第2の孔部22Bとの接続部分および第2の孔部22Bと開度を最 も大きくしたときの弁体25の内孔26の開口幅は、たとえば器具40の出し入れのし 易さなどにより同等に形成されている。 【0023】 開閉キャップ12は、たとえば係合本体部18のみ、またはこれと把持本体部20の 一部を内部に収納するように径大に形成された外装ケース44を有する。この外装ケー ス44の内壁面の一部には、係合本体部18の係合部23と係合する係合部45が形成 されている。これにより、開閉キャップ12は、係合部23、45同士を係合させると ともに、開閉キャップ12を所定方向Ra(または逆方向Rb)に回動すると、ネジ山 などで構成された係合部23、45の重なり合いにより、開閉キャップ12の回動方向 に応じて開閉キャップ12が所定方向に進退する。 また、開閉キャップ12の内部には、外套ハブ10の第1の孔部22Aの開口側から 内部に向けて挿入される押圧部46を有する。この押圧部46は、器具40を挿通させ る孔部28を構成する筐体部の一部分であり、孔部28の開口部分を弁体25の内孔2 6内に向けて配置させている。押圧部46は、たとえば図5のBに示すように、開閉キ ャップ12が外套ハブ10側に締め込まれるに従って第1の孔部22A内に挿入されて いき、所定の距離まで進むと弁体25の側面側に面接触するように配置されている。 【0024】 6/19 押圧部46は、たとえば図6のAに示すように外套ハブ10に対して開閉キャップ1 2が締め込まれるのに応じて第1の孔部22Aの内側に変移していく。そして弁体25 は、押圧部46の変移に応じて端面側から押圧力F1を受けるとともに、この押圧力F 1に対する反力F2を段差壁42側から受ける。このとき弁体25は、両端側からの押 圧と、押圧部46の変移による収納容積の減少で、内孔26側に向けて圧縮変形する。 このとき弁体25の内孔26の内周面には、たとえば所定の圧縮力F3が中心軸に向け て作用し、内孔26内に挿通された器具40の周面を押圧する。すなわちこの弁体2 5、押圧部46および段差壁42は、本発明の開度調整機構部の一例であり、開閉キャ ップ12の締付け量、もしくはその位置に応じて弁体25の遮断性能が調整される。そ して弁体25は、圧縮力F3が大きくなれば血液の逆流を阻止するとともに、挿通孔6 や孔部22、28に挿通している器具40を固定保持することが可能となる。 【0025】 さらに、弁体25は、たとえば図6のBに示すように、内孔26内に器具40が挿通 されていない場合、開閉キャップ12を深く締め込むことで押圧力F1と段差壁42か らの反力F2による変形量が大きくなり弁体25の対向面同士が接触して、内孔26が 遮断状態になる。 このように弁体25は、開閉キャップ12の変位量に応じて、任意に内孔26の開度 を調整することができる。そして、この開度調整により、挿通孔6を通じて生体内部と 外気との遮断または器具40を挿通させるための開度に切換えるほか、挿通されている 器具40の固定保持などを行うことができる。 【0026】 なお、弁体25は、たとえば押圧力F1を受けて変形可能であるとともに、挿通孔6 を通じて逆流する血液や体液などの噴出圧力に対して変形させない剛性を有する材料、 もしくは形状であればよい 【0027】 <本体部と内針ハブの係合状態について> 開閉キャップ12には、たとえばイントロデューサ針2の後端部分に係合部48が形 成されている。この係合部48は、たとえば図7のAに示すように、穿刺針8が外套管 4内に挿入されると同時に、穿刺針8に接続された内針ハブ14に形成された開口部5 0内に収納される。この開口部50の内部には、たとえば係合部48と係合するたとえ ば螺子溝などが形成されている。 これにより、穿刺針8は、たとえば図7のBに示すように、内針ハブ14を開閉キャ ップ12に接触させるとともに所定方向に回動されることで、係合部48と開口部50 内の螺子溝が係合しながら、挿通孔6内に挿入されていく。そして、イントロデューサ 針2は、係合部48が開口部50内に収納されていくに従って、外套管4の先端側から 穿刺刃16が突出していく。またイントロデューサ針2は、穿刺針8を挿通孔6から引 き抜く場合、穿刺針8の挿入時と反対方向に内針ハブ14が回動されることで、係合部 48に対する開口部50との係合が解除されていき、外套管4から離間する方向に穿刺 針8を挿抜させることができる。 【0028】 <一実施の形態の効果> この実施の形態に示した構成により、次のいずれかの効果が得られる。 7/19 (1) 開閉キャップ12を所定方向に回転させて締付けることで、本体内部に配置した 弁体25の内孔26の開度を狭めるように調整することができるので、その締付け度合 いにより穿刺針8や挿通状態の器具40に対して接触による固定保持が可能となる。 (2) 係合部48と内針ハブ14の開口部50とを螺子などにより係合させることで、 作業者が意図しない状態で挿通孔6から穿刺針8やその他の器具が脱落するのを防止で きる。 (3) ストッパの開度調整機構として、開閉キャップ12の締付け量またはその位置に より弁体25の内孔26の開度が調整できるので、挿通された穿刺針8や器具40など の異なる外径に対応することが可能となる。 (4) 開閉キャップ12の位置により弁体25の開度を調整することで、挿通孔6に挿 通される器具40や穿刺針8を任意の位置で固定させることができる。 (5) 開閉キャップ12の締め込み位置を変えて弁体25の内孔26の開度が調整され ることで、挿抜時に器具40や穿刺針8と弁体25との接触を回避し、またはその接触 圧を低下させることができ、器具40や穿刺針8または挿通孔6や孔部22A、22 B、28内孔26の内壁の損傷などを回避できる。 【0029】 〔実施例〕 【0030】 図8、図9は、実施例に係るイントロデューサ針の穿刺処理の実施例を示している。 図8、図9に示す構成は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。 この穿刺処理では、たとえば包装からイントロデューサ針2を取り出すとともに、図 示しない保護チューブを取り外す。この保護チューブは、たとえば突出する穿刺刃16 や内部に穿刺針8が収納された外套管4を覆っており、外気やその他外部にある物質と の物理的接触を阻止するための手段の一例である。 次に、施術者は、たとえば超音波穿刺用プローブなどを利用して穿刺対象の位置や深 さを確認して穿刺位置を設定するとともに、超音波画像の針先をエコーなどで確認しな がらイントロデューサ針2を生体に穿孔させる。このときイントロデューサ針2は、た とえば図8のAに示すように、設定された穿孔角度および深さに穿刺させる。このとき 穿刺針8は、たとえば先端の穿刺刃16と外套管4の先端側の一部が血管36内に配置 される。 【0031】 穿刺処理では、たとえば図8のBに示すように、目標部位に穿刺針8の刃先が刺入れ られたことが確認されると、外套管4および本体部を保持して固定した上で、内針ハブ 14を回動させながら穿刺針8を挿通孔6から抜去する。このとき、挿通孔6を通じて 血管36内から血液などの逆流が想定される場合は、挿通孔6の任意の位置に配置する とともに、開閉キャップ12の締め込みにより弁体25を変形させて穿刺針8に対して 所定の押圧となるように設定されている。 そして、カテーテルやガイドワイヤーなどの機器を開閉キャップ12の開口部側から 所定の距離まで挿入して、配置させる。 なお、イントロデューサ針2を通じて体内から体液や血管などの逆流が確認された場 合、施術者は、開閉キャップ12を所定方向に回転させながら締め込むことで、弁体2 5により内孔26の開度を狭小もしくは遮断状態としてもよい。 【0032】 8/19 開閉キャップ12は、たとえば図9のAに示すように、施術者またはその他の者が手 動で開閉作業を行う。このイントロデューサ針2は、たとえば生体部位30に対し、設 定された深さまで穿刺し、穿刺針8が抜去された後である。外套管4の外周面には、た とえば先端側からの距離を表す複数の表示部58A、58B、58C、58D、58E が付されている。この表示部58A、58B、58C、58D、58Eは、たとえば一 定の距離として、1〔cm〕の間隔が取られており、外套管4が挿入されている長さが 目視によって把握できる識別情報が表示されている。この識別情報は、たとえば先端側 からの距離が大きくなるのに従って、表示数を増加させた線や図形などの表示のほか、 距離の値を表す数字や記号などの情報表示などが用いられる。このような表示部58 A、58B、58C、58D、58Eにより、施術者は、図示しない検査手法によって 特定した対象部位への位置に対して穿刺作業の精度を高めることができるほか、カテー テルなどの器具の挿抜において外套管4の穿刺深さのずれなどの確認が容易となり、作 業負担を軽減することができる。 施術者は、生体部位30への穿刺位置が表示部58 A、58B、58C、58D、58Eからずれないように開閉キャップ12の開閉操作 を行う。そして施術者は、たとえば一方の手などの保持手段60Aで把持本体部20の リブ24を把持するとともに、他方の保持手段60Bで開閉キャップ12の外周部分を 把持する。そして、保持手段60A、60Bの一方を回動し、または両方を反対方向に 回動させることで、開閉キャップ12を締め込みもしくは開放させることで、内部の弁 体25の変形量を調整し、内孔26の開度を設定する。 【0033】 また、イントロデューサ針2は、たとえば図9のBに示すように、生体部位30の表 面に対して直交方向に穿刺された場合も図9のAと同様に把持本体部20および開閉キ ャップ12を把持して回動作業を行えばよい。 なお、このイントロデューサ針2は、たとえば開閉キャップ12を締め込んだ状態で も把持本体部20の露出長さが保持手段60Aを構成する指などの接触部分と同等に形 成されている。これにより、外套管4が生体部位30に深く穿刺される場合でも、一方 の保持手段60に把持本体部20を把持させることができるほか、把持本体部20を把 持した際に生体部位30の表面に保持手段60Aが接触して、穿刺距離が変ってしまう のを防止できる。 【0034】 〔他の実施の形態〕 以上説明した実施の形態または実施例について、変形例を以下に列挙する。 【0035】 上記実施の形態では、弁体25の変形量を調整して経路の開度を調整する開度調整機 構の一例として、開閉キャップ12に形成された押圧部46を弁体25の端面に接触さ せ、開閉キャップ12の開閉量もしくは開閉位置に応じて弁体25に負荷する押圧力F 1を調整するものを示したがこれに限らない。弁体25は、たとえば開閉キャップ12 の開閉操作によって押圧される係合本体部18を通じて外周面から負荷される押圧力に より変形させることで、内孔26の開度を調整してもよい。この外套ハブ10の内部に は、たとえば図10のAに示すように、係合本体部18の内部に弁体25が収納され、 またはインサート成形などにより一体化されている。つまり弁体25は、一端側が段差 壁42に接触しており、かつ他端側が係合本体部18の中心軸側に形成された壁部62 に接触して保持されている。さらに、この係合本体部18は、たとえば図10のBに示 すように、外周面に形成された係合部64が所定の角度θ1のテーパ状に形成されてい 9/19 る。このような構成において、開閉キャップ12は、係合本体部18に対して締め込ん で行くと、テーパ状の係合部64により、係合部45との接触圧力が増加していく。こ のとき開閉キャップ12の外装ケース44は、たとえば係合本体部18よりも剛性の高 い部材、または構造で形成されている。そのため、係合本体部18は、係合部45、6 4間で生じた押圧力F4により中心軸方向に向けて変形していく。そして、この変形に 応じて弁体25は、外周面から押圧されて変形し、内孔26が中心軸方向に圧縮状態と なる。 弁体25は、開閉キャップ12の締付け量、もしくはその位置に応じて変形量が増減 し、ストッパとしての遮断性能が決まるほか、内部に挿通する器具40の固定保持能力 も設定される。 【0036】 なお、弁体25は、たとえば押圧力F4を受けて変形可能であるとともに、挿通孔6 を通じて逆流する血液や体液などの噴出圧力に対して変形させない剛性を有する材料、 もしくは形状であればよい。 係合部64に形成されたテーパ部の角度θ1は、たとえば開閉キャップ12の開閉操 作に対して過剰な負荷とならず、かつ弁体25を変形させるのに必要な押圧力F4が発 生可能な角度が採用されればよい。また、係合部64は、一部にテーパ部が形成される 場合に限らず、全体にテーパ部を形成してもよい。またテーパ部の角度θ1は一定の角 度に設定される場合に限らない。角度θ1は、たとえば係合本体部18の先端から把持 本体部20との接合側に向けて、徐々に角度を増加させるようにしてもよい。 【0037】 以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明 は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実 施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更 が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。 【産業上の利用可能性】 【0038】 本発明のイントロデューサ針およびアダプタは、外套管と連通する本体部の孔部内に 形成されたストッパと、このストッパを変形させて孔部の開度を調整する開度調整機構 部とを備えることで、生体部位側から血液などの逆流防止機能を有しつつ、外套管に対 する内針やその他の器具の挿抜性が高められ、有用である。 【符号の説明】 【0039】 2 イントロデューサ針4 外套管6 挿通孔8 穿刺針10 外套ハブ 12 開閉キャップ 14 内針ハブ 16 穿刺刃 18 係合本体部 20 把持本体部 22、28 孔部 10/19 22A 第1の孔部 22B 第2の孔部 24 リブ 25 弁体 26 内孔 30 生体部位 32 皮膚 34 皮下組織 36 血管 38 内部組織 40 器具 42 段差壁 44 外装ケース 45、64 係合部 46 押圧部 48 係合部 50 開口部 58A、58B、58C、58D、58E 表示部 60A、60B 保持手段 62 壁部 【図1】 11/19 【図2】 【図3】 12/19 【図4】 13/19 【図5】 14/19 【図6】 15/19 【図7】 16/19 【図8】 17/19 【図9】 18/19 【図10】 19/19 別紙3 甲1、乙4及び乙5の記載事項(点線(・・・)は記載抽出の省略を表す。なお、下 線は判決で付記) ? 甲1(米国特許第5591137号明細書:原文英語)の記載及びその抄訳 ア 「Accordingly,it is an object of the present invention to provide improved hemostasis valves. It is also an object of the present invention to provide improved hemostasis valves usable for inserting a catheteror guidewire within a cardiovascularsystem of a patient.It is another object of the present invention to provide improved hemostasis valves which minimize blood leakage. It is yet another object of the present invention to provide improved hemostasis valves having a desiredlarge passageway without increasing the risk of blood leakage.」〔3欄12〜21行〕 (従って、本発明の目的は、改良された止血弁を提供することにある。 また、本発明の目的は、患者の心臓血管系内へカテーテルまたはガイドワイヤを挿入 するために使用できる改良された止血弁を提供することにある。 本発明の別の目的は、血液の漏れを最小限に抑える、改良された止血弁を提供するこ とにある。 本発明のさらに別の目的は、血液漏れのリスクを増大させることなく、所望の大きな 通路を有する改良された止血弁を提供することにある。) イ 「Toachieve the foregoing objects, and in accordance with the invention as embodied and broadly described herein, an adapter is provided having a valveassembly used for constricting or blocking a passageextending therethrough and used in fluid communication with the cardiovascular system of a patient.The valve assembly comprises a tubularbody having a distalend, a proximalend, and an interior surface defining a passagelongitudinally extending therethrough. The passage comprises a compressionchamber positioned at the proximal end of the valve body. The compression chamber also has a proximalend, a distalend, and an interior surface defining an inner diameter.」〔3欄 33〜45行〕 (上記目的を達成するため、及びここに具体化され概括的に記載された本発明によれ ば、アダプタは、患者の血管系を通って延在する流路を絞り、あるいは閉塞したり、流 体連通したりするために使用される弁アセンブリを有するものとして提供される。弁ア センブリは、遠位端、近位端、および長手方向に延在する通路を画定する内面を有する 管状体を含む。この通路は、弁本体の近位端に位置する圧縮チャンバを含む。圧縮チャ ンバは、また、近位端、遠位端、および内径を画定する内面を有する。) 1/17 ウ 「Referringto FIG. 1, a patient10 is shown having an introducer 12 with adistal end (not shown) in fluid communication with the cardiovascular system of patient 10. A proximalend 14 of introducer 12 projects outside the body of patient 10 and is connected to one embodiment of an adapter 16 incorporating features of the present invention. Adapter 16 comprises a tubularbody 18 having an exterior surface 19 with a distalend 20 and a proximalend 24 positioned at opposing ends thereof. A rotatableconnector 22 is positioned at distal end 20. Rotatable connector 22 is shown in FIG. 1 asproviding a fluidcoupling between introducer 12 and tubular body 18. Positioned at proximal end 24 is a valveassembly 26. As will be discussed later in greater detail, valve assembly 26 can be used to achieve alternative objectives. In one position, valve assembly 26 can be used to completely block off proximal end 24 of tubular body 18 so as to prevent the escape of blood or other bodily fluids flowing from patient 10, through introducer 12, and into adapter 16. Alternatively, valve assembly 26 can be used to form a sealaround an elongated member 28, such as a catheteror guidewire, when elongated member 28 is received within valve assembly 26 and passed through tubular body 18, introducer 12, and into the cardiovascular system of patient 10. Valve assembly 26 thus also prevents the backflow of bodily fluids from introducer 12 from leaking out of adapter 16 where elongated member 28 is received within valve assembly 26.」〔5欄30〜56行〕 (図1を参照すると、患者10は、患者10の血管系と流体連通する遠位端部(図示せ ず)を有する導入器12と共に示されている。導入器12の近位端部14は、患者10 の身体外部に突出しており、本発明の特徴を組み込んだアダプタ16の1つの実施形態 に接続されている。アダプタ16は、互いに反対側の端縁に位置する遠位端部20と近 位端部24を持つ、外側表面19を有する管状体18を含む。回転可能なコネクタ22 が遠位端部20に設けられている。回転可能なコネクタ22は、図1に示されているよ うに導入器12と管状体18との間の流体結合を提供する。 弁アセンブリ26は、近位端部24に配置される。後に詳細に説明するように、弁ア センブリ26は、他の目的を達成するために使用することができる。1つの位置では、 弁アセンブリ26は、導入器12を通り、アダプタ16に、患者10から流れる血液又 は他の体液の漏れを防止するため、管状体18の近位端部24を完全に閉塞するために 使用することができる。あるいは、弁アセンブリ26は、細長い部材28、例えば、カ テーテル又はガイドワイヤが弁アセンブリ26内に受容され、管状体18と、導入器1 2を通り、患者10の血管系に導入されるとき、細長い部材28の周りにシールを形成 するために使用することができる。弁アセンブリ26はまた、細長い部材28が弁アセ ンブリ26に受容されるとき、導入器12からの体液が逆流し、アダプタ16の外に漏 れるのを防止することができる。) エ 「Valveassembly 26 is depicted in FIG. 2 asfurther comprising a rotationnut 48, a slipring 50, and a tubularseal 52. The configuration and interrelationship of these components are more clearly shown in FIG. 3 whichdiscloses a cross-sectionalexploded view of valve assembly 26. As depicted in FIG. 3, tubular body 18 has an interior surface 54 defining a passage56 2/17 longitudinally extending through body 18. At proximal end 24, passage 56 is shown as comprising a compressionchamber 58 positioned at a proximalterminus 59 of body 18. Compression chamber 58 has an inner diameter defined by an interior surface 60 extending between a distalend 62 and a proximalend 64. Passage 56 further comprises a lumen66 communicating at a proximalend 68 thereof to distal end 62 of compression chamber 58. Lumen 66 is concentric with compression chamber 58 and has an interior surface 70 having an inner diameter smaller than the inner diameter of compression chamber 58. Lumen 66 and compression chamber 58 are preferably substantially cylindrical. An annular shoulder 72 extends between proximal end 68 of lumen 66 and distal end 62 of compression chamber 58. An annular first ridge 74 proximally projects from annular shoulder 72 and adjacently encircles lumen 66. First ridge 74 comprises an annular end face 76 and an annular sidewall 78. First ridge 74 has an outer diameter smaller than the inner diameter of compression chamber 58. As such, an annular first receiving groove 80 is formed between sidewall 78 of first ridge 74 and interior surface 60 of compression chamber 58.」〔6欄14〜 43行〕 (弁アセンブリ26は、図2に示されているように、回転ナット48、スリップリング 50と、管状シール52をさらに備える。これらの構成要素の構成及び相互関係は、弁 アセンブリ26の分解断面図を開示する図3においてより明確に示されている。図3に 示されるように、管状体18は、管状体18を通って長手方向に伸長する通路56を画 定する内面54を有している。近位端部24で、通路56は、管状体18の近位末端5 9に位置する圧縮チャンバ58を含むものとして示されている。圧縮チャンバ58は、 先端部62と基端部64との間に延在する内部表面60によって規定される内径を有し ている。 通路56は、その近位端部68において、圧縮チャンバ58の遠位端部62に連通す る管腔66を含む。管腔66は、圧縮チャンバ58と同心であり、圧縮チャンバ58の 内径よりも小さい内径を有する内部表面70を有している。管腔66及び圧縮チャンバ 58は、実質的に円筒形であることが好ましい。 環状肩部72は、管腔66の近位端部68と圧縮チャンバ58の遠位端部62の間で 拡大されている。環状の第1隆起部74は、環状肩部72から近位側に突出しており、 これに隣接して管腔66を取り囲み、第1隆起部74は環状の端面76と環状の側壁7 8を有する。第1隆起部74は、圧縮チャンバ58の内径よりも小さい外径を有してい る。このようにして、第1隆起部74の側壁78と圧縮チャンバ58の内部表面60と の間に環状の第1収容溝80が形成される。) オ 「Asshown in FIG. 3, rotation nut 48 has a substantiallycylindrical configuration and includes a housing122 with a distalend 124 and an opposing proximal end 126. A proximalend wall 128 radially extends inward at proximal end 126. Housing 122 has an exterior surface 127 comprising a firstcylindrical portion 129 positioned at distal end 124. A pluralityof gripping ribs 131 radially extend outward on first cylindrical portion 129 and are aligned with the longitudinal access of body 18. Exterior surface 127 further comprises asecond cylindrical portion 133 positioned at proximal end 126 of housing 122 3/17 and having an outer diameter greater than the outer diameter of first cylindrical portion 129. A pluralityof gripping fibs 135 also radially outwardly extend on second cylindrical portion 133 and are aligned with longitudinal access of body 18. Housing 122 also has an interior surface 130 defining a recessedchamber 132 opened at distal end 124. An annular second compression lip 137 radially, inwardly extends from interior surface 130 and has an inner diameter slightly smaller than the outer diameter of first compression ring 55. Positioned proximal of second compression ring 137 on interior surface 130 are second engagement threads 134 configured for rotational, threaded engagement with first engagement threads 57 on proximal end 24 of body 18. Rotation nut 48 further comprises a tubularshaft 136 distally projecting from proximal end wall 128 within recess chamber 132 of housing 122. Shaft 136 extends to a distalend 145 having a distalend face 146. Shaft 136 also has an exterior surface 138 having an outer diameter and an interior surface 140 defining an entryway 142 longitudinally extending through shaft 136 and proximal end wall 128. Interior surface 140 radially outwardly expands at proximal end 126 of housing 122 to form an enlarged receiving mouth 144.」〔7 欄38行〜8欄3行〕 (図3に示すように、回転ナット48は、実質的に円筒形の形状を有し、遠位端部12 4と、反対側の近位端部126を有するハウジング122を含む。基端壁128は、近 位端部126で内向きに放射状に延びている。ハウジング122は、遠位端部124に 位置する第1筒部129を含む外面127を有している。複数の把持リブ131は、第 1筒部129の半径方向外方に伸長し、本体18の長手軸線と整列している。外側面1 27は、ハウジング122の近位端部126に配置され、第1筒部129の外径よりも 大きな外径を有している第2筒部133を備えている。複数の把持リブ135もまた、 第2筒部133の半径方向外方に伸長し、本体18の長手軸線と整列している。 ハウジング122はまた、遠位端部124で開口する凹部132を画定する内部表面 130を有している。環状の第2圧縮リング137は内表面130から半径方向内方へ 延在し、第1圧縮リング55の外径よりも若干小さい内径を有する。内表面130の第 2圧縮リング137の近位側には、本体18の近位端24に設けた第1係合ねじ57と 回転、ねじ係合するために構成された第2係合ねじ134を有する。 回転ナット48は、ハウジング122の凹部132内で基端壁128から突出してい る管状軸部136を備えている。軸部136は、末端面146を有する末端部145ま で延びている。軸部136はまた、外径を有する外面138と、軸部136と基端壁1 28を貫通して延びる入口通路142を画定する内面140を有する。内面140は、 半径方向外側にハウジング122の近位端部126において拡張する受入口144を形 成する。) カ 「Toblock off passage 56, rotation nut 48 is rotated relative to body 18 causing shaft 136 to advance within compression chamber 58 as a resultof the engagement between first engagement threads 57 and second engagement threads 134. As shaft 136 advances, seal 52 is compressed between shoulder 72 of body 18 and slip ring 50. The compression of seal 52 causes interior surface 88 of 4/17 seal 52 to radially project inward, thereby constricting passageway 90 extending through seal 52. As depicted in FIG. 5, shaft 136 continues to advance until interior surface 88 of seal 52 presses together completely closing and sealing passageway 90 through seal 52. Simultaneously, seal 52 radially, outwardly compresses against interior surface 60 of compression chamber 50 so as to form a sealtherebetween. In this position, a distalportion 154 slightly extends within lumen 66 while a proximalportion 156 slightly projects within opening 109 of slip ring 50. In an alternative use, as shown in FIG. 5A, an elongated member 28, such as acatheter or guidewire, can be longitudinally disposed through passage 56 for insertion within the cardiovascular system of a patient,as discussed with regard to FIG. 1. When elongated member 28 is so used, shaft 136 can be selectively advanced within compression chamber 58 until interior surface 88 of seal 52 constricts to press and seal around an exterior surface 29 of elongated member 28. By selectively advancing or retracting shaft 136, the amount of pressure applied by seal 52 on elongated member 28 can be selectively controlled. As such, elongated member 28 can be advanced or retracted within passage 56 while maintaining a sealaround elongated member 28 that prevents leakage of blood or other fluids back flowing through lumen 66. Seal 52 is preferably made from a deformable,resilient material which allows seal 52 to compress and either independently seal or seal around a memberpositioned therethrough. The material should also enable seal 52 to independently conform back to its original configuration as shaft 136 is retracted from compression chamber 58. The preferred material for seal 52 is silicone however, other kinds of conventional rubbers can also be used.」〔8欄 49行〜9欄21行〕 (通路56を閉鎖するために、回転ナット48は、軸部136が第1係合ねじ57と、 第2係合ねじ134との間の係合の結果、圧縮チャンバ58内に前進するように本体1 8に対して回転される。軸部136が前進すると、シール52は、本体18の肩部72 とスリップリング50との間で圧縮される。シール52の圧縮は、シール52の内面8 8を内向きに突出させ、それによってシール52を通って延びる通路90を絞る。図5 に示すように、軸部136はシール52の内面88が完全に押しつぶされ、シール52 を通る通路90の内面88を閉鎖しシールするまで前進し続ける。これと同時に、シー ル52は、シールを形成するように、圧縮チャンバ58の内面60に対して半径方向外 側に圧縮する。この位置では、遠位部分154は、管腔66内に僅かに延び、近位部分 156は、スリップリング50の開口部109内に僅かに延びている。 これに代えて、図5Aに示すように、カテーテルまたはガイドワイヤのような細長い 部材28は、図1に関して説明したように、患者の血管系内に挿入するための通路56 を通って長手方向に配置することができる。細長い部材28がそのように使用されると きには、軸部136は、シール52の内面88が細長い部材28の外面29の周囲を押 圧してシールするように圧縮されるまで、圧縮チャンバ58内で選択的に前進すること ができる。軸136を前進又は後退させることにより、細長い部材28上のシール52 により加えられる圧力の量を選択的に制御することができる。このように、管腔66を 通って逆流する血液または他の流体の漏れを防止するために細長い部材28の周りのシ 5/17 ールを維持しながら、細長い部材28を通路56内で前進又は後退させることができ る。 シール52は、圧縮し、独立してシールするか、または、シール52を貫通して位置 決めされた部材の周りにシールすることを可能にする、変形可能な弾性材料から作られ ることが好ましい。この材料は、軸部136が圧縮チャンバ58から引き戻されるとき に、シール52が元の形状に自ら戻ることを可能にすべきである。シール52のための 好ましい材料はシリコーンであるが、他の種類の従来のゴムも使用することができ る。) キ 「Inan alternative embodiment, as shown in FIG. 5B, valve assembly 26 can be configured without the use of slip ring 50. In this embodiment, annular second ridge 148 on shaft 136 is received within second recess 106 of seal 52 while simultaneously annular second tongue 100 is received within second receiving groove 149 on shaft 136. In this embodiment, however, it is preferred that shaft 136 and seal 52 have a relationshipwhich permits shaft 136 to advance under rotation without twisting or rotating seal 52. This can be accomplished by either the addition of lubricants or by forming seal 52 out of a materialhaving a relativelylow coefficient of friction.」〔9欄47〜59 行〕 (別の実施形態では、図5Bに示すように、弁アセンブリ26は、スリップリング50 を使用せずに構成することができる。この実施形態では、軸部136の環状の第2のリ ッジ148は、シール52の第2の凹部106内に受容されると同時に、環状の第2の 舌状部100は、軸部136上の第2の収容溝149に収容される。しかし、この実施 形態では、軸部136とシール52は、シール52が捻り又は回転することなしに軸部 136を回転し前進させることを可能にする関係にすることが好ましい。これは、潤滑 剤のいずれかを加えることにより、または相対的に低い摩擦係数を有する材料からシー ル52を形成することによって達成することができる。) ク 「Thepresent invention also provides means for connecting distal end 20 of tubular body 18 to a medicaldevice, such as introducer 12, used in fluid communication with the body of patient 10. By way of example and not by limitation, the means for connecting comprises rotatable connector 22, as disclosed above, and includes all of the alternative embodiments as discussed therewith.」〔14欄下から10〜4行〕 (本発明は、また、患者10の体との流体連通に使われる導入器12のような医療装置 と管状体18の遠位端部20の接続手段を提供する。限定的でない一例として、接続手 段は、上述したような回転可能なコネクタ22を含むが、そこで説明した代替実施形態 のすべてを含む。) 6/17 ケ 「図1 」 コ 「図2 」 7/17 サ 「図3 」シ 「図4 」 8/17 ス 「図5 」セ 「図5A 」 9/17 ソ 「図5B 」 タ 「図9 」 10/17 ? 乙4(特開平9−51954号公報) ア 課題「【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところが、前述の実開昭64−22359号および実開 平6−17,751号に示す技術では、カテーテルと操作用具との位置を固定することが できないため、医療処置中にガイドワイヤの位置がずれてしまうおそれがあり、操作性に 難がある。 【0006】また、特開平2−271874号に示す技術では、カテーテルのルーメン内 にガイドワイヤ締め付け固定手段が設けてあるため、生体管腔に挿入する極細のカテーテ ルのルーメン内に複雑な構造の固定手段を設ける困難性があり、比較的太いカテーテルに のみ適用できる。また、この技術では、カテーテルの押圧性を向上させる目的で、カテー テルの遠位端でガイドワイヤをカテーテルに固定自在にしたものであり、ガイドワイヤの 操作性については考慮されていない。 【0007】なお、単にガイドワイヤとカテーテルとを固定する目的で、カテーテルのル ーメンの通路を狭めるような構造物を取り付けるとすると、薬液等の注入が困難になり、 また血液が逆流した時には、その構造物に凝結する。本発明は、カテーテルの薬液供給な どの機能を阻害せず、生体管腔に挿入するガイドワイヤの操作性を向上するためのガイド ワイヤ固定具およびそれを備えたカテーテルセットを提供することを目的とする。」 イ 解決手段「【0013】締め付け調整手段 本発明に係るガイドワイヤ固定具において、前記固定手段および接合手段に加えて、締め 付け調整手段をさらに有することが好ましい。締め付け調整手段は、ガイドワイヤを固定 する力を調整するための手段であり、これによりガイドワイヤの締め付け力を調整してガ イドワイヤの位置を固定または移動可能にでき、操作性がさらに向上する。」 ウ 第1実施態様(ア)「【0027】締め付けナット56を接合筒体54に螺合して締め付けることで、押圧 部74が弾性部材58を軸方向に圧縮し、弾性部材58の内径が縮み、弾性部材58がガ イドワイヤ42の外周を締め付け、ガイドワイヤ固定具52に対してガイドワイヤ42の 軸方向移動を固定する。 」(イ)「【0031】ガイドワイヤ42を該位置に固定するには、図1に示すように、固定具 52をカテーテル50の近異端に接合すると共に、固定具52の締め付けナット56を接 合筒体54に螺合させることで、弾性部材58を圧縮する。その結果、ガイドワイヤ42 が固定具52およびカテーテル50に対して所望の位置で固定される。押し進める方向を 決めるには、ガイドワイヤ42の遠位端を進める方向に向けることにより行う。その場合 は、固定具52を接合した状態のままカテーテルセット全体を回しても良いし、固定具5 2の接合を解きガイドワイヤ42のみを回してもよい。このときに、固定具52はガイド ワイヤ把持部としての役目をする。また、固定具52の締め付けナット56を緩めて、ガ イドワイヤ42の締め付けを緩め、ガイドワイヤ42のみを回しても良い。 」(ウ)「【図1】 11/17 」(エ)「【図2】 」 ? 乙5(特開平7−163666号公報) ア 従来技術「【0002】 【従来の技術】 従来より、代表的な脈管形成法として、動脈硬化等により狭窄した血管(脈 管)の治療のために、先端部に拡張体を有するカテーテルを狭窄部に挿入し、拡張体を膨 張させることにより狭窄部を拡張し、末梢側の血流を改善する経皮的経管式動脈形成術 (PTCA)が行われている。この手技においては、拡張体付カテーテルを血管内に挿入 するに先立ち、拡張体付カテーテルを狭窄部位へ導くためのガイドカテーテルを血管内に 留置しておき、このガイドカテーテルの基端部に予め接続しておいたY字型コネクタより 拡張体付カテーテルを挿入することが一般的である。 【0003】そして、このY字型コネクターのカテーテル挿入用ポートは、例えば実公昭 53−44870号公報、実公平4−8918号公報に記載のように、環状の弾性体(O リング)からなる弁体と、本体基端に嵌合または螺合し、弁体を外部から変形操作してそ の内径を変化させる操作体とを備えた構造となっており、操作体を本体内にねじ込むこと により弁体を押圧変形し、この弁体に挿通された拡張体付きカテーテルを液密に圧迫保持 できるようになっている。 」 イ 発明の課題 12/17 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のコネクタにおいては、 弁体は拡張体付カテーテルの外径よりも大きい一定の内径を有する単なる円筒状のもの であり、弁体を全く押圧しないで拡張体付カテーテルを弁体内で摺動させると、血圧によ ってコネクタ内へ流入してきた血液がカテーテルと弁体との隙間から漏出する。これを防 ぐために、操作体により弁体を押圧しその内径を縮小して血液の漏出を阻止しようとする と、弁体内面の大部分が器具と接触し圧迫することにより拡張体付カテーテルの摺動抵抗 が大きくなり、拡張体付カテーテルの操作性が損なわれていた。さらには、弁体の圧縮変 形により拡張体付カテーテルを圧迫する力、およびカテーテルとの接触面積が大きすぎて カテーテルに損傷を与え、場合によっては使用不可能としてしまうこともあった。 【0005】したがって、弁体の内径が一定の円筒状をなしている従来のコネクタにおい ては、弁体の液密性と挿通する器具の摺動性とを同時に満足するように調整することは非 常に困難であった。本発明は、上記問題点を解決し、弁体の液密性と挿通する器具の摺動 性とを同時に満足するように確実に調整でき、器具を不本意に損傷することのないコネク タを提供することを目的とする。」 ウ 作用「【0007】 【作用】本発明のコネクタは、くびれ部が形成された通路を有する弾性部材からなる弁体 と、該弁体を本体外部から変形操作し該弁体の内径を縮小させる操作体とを備えるため、 操作体を操作せず弁体が変形していない状態であっても、くびれ部により弁体と該弁体に 挿通した器具との隙間が狭まり、弁体と器具との間から体液等が漏れにくくなる。 【0008】かつ、操作体を操作して弁体を変形し、弁体の内径を縮小して器具を液密に 保持した時は、弁体と器具とはくびれ部の最小内径の位置を中心とするごく小さい面積で 接触し、接触面積が小さいことによる摩擦抵抗の減少から高い摺動性が得られる。したが って、器具を弁体内で良好に摺動でき、また圧迫による器具の不本意な損傷も防止される。 【0009】加えて、操作体をさらに操作し、弁体を変形して器具を摺動不能に圧迫固定 した時でも、弁体はくびれ部のみで器具を圧迫固定するため、器具に対する弁体の圧迫力 が最小限となり、器具の不本意な損傷の虞れを大幅に低減する。」 エ 構成例(ア)「【0012】本発明のコネクタ1は、図1に示すように、拡張体付きカテーテルを冠 動脈入口まで案内するためのガイドカテーテル10と先端において液密に接続される本 体2と、 本体2の基端より突出した操作体6により形成されている。図示の例においては、 ガイドカテーテル10は、接続具11を介して本体2に接続されている。接続具11は、 カテーテル10の基端部に同心的に設けられ、この基端部に固着されている。接続具11 の外周面には雄ねじ(図示せず)が形成され、後述するコネクタ1の接続部31の雌ネジ と螺合可能となっている。 【0013】図2に示すように、本体2は、筒体3と筒体4をOリング7を介して嵌合し 液密に連結することにより構成されている。筒体3の先端部はガイティングカテーテル1 0を接続するための接続部31となっている。この接続部31は、内面に雌ねじ32が形 成された凹部と、この凹部の中央から突出して形成された突出部33とからなっている。 そして、カテーテル10の内腔の基端に突出部33を挿入して、雌ねじ32と、接続具1 1に設けられた雄ねじとを螺合することにより、カテーテル10が接続具11を介してコ 13/17 ネクタ1に接続される。 【0014】 筒体4は、その途中でY字状に分岐した形状をなしており、2つの端部41、 42を有している。これらの端部41、42にはそれぞれ開口が形成されており、端部4 1は、カテーテル10に挿通して使用する器具15(例えば上記拡張体付きカテーテル) をコネクタ1内に挿入するための器具挿通用ポートとして、また端部42は、狭窄部拡張 後の血流の改善を確認するための造影剤をカテーテル10の内腔を介して血管内に注入 するための注入ポートとして使用される。筒体3および筒体4の構成材料としては、ポリ カーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン −スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。 」(イ)「【0017】弁体5は、図3に示すように、一端から他端に向かって開口した通路5 1と、くびれ部52を有する弾性部材により構成されている。通路51は、その両端から 中央付近に向かって内面が曲線状となるように縮径し、通路51の内方にくびれるくびれ 部52が形成されている。 」(ウ)「【図1】 」 14/17 (エ)「【図2】 」 (オ)「【図3】 」 オ 弁体および操作体の作用を説明するための断面図(ア)「【0022】図4は、弁体5および操作体6の作用を説明するための、弁体5付近を 示す断面図である。図4(a)は、器具15を器具挿通路21に挿通し、かつ、操作体6 をが弁体5を全く押圧せず、器具15が弁体5内を抵抗なく摺動可能な状態を示している。 この状態においても、弁体5の最小内径を器具15の径よりもわずかに大きく設定するこ とにより、くびれ部52において器具15と弁体5との隙間が狭まって、弁体5と器具1 5との間から漏出する血液の量を少なくできる。 【0023】図4(b)は、同図(a)の状態から、取手61を把持して操作体6を先端 15/17 方向へ向けて時計回りに回転し、操作体6を先端方向に所定距離押し込んだ状態を示して いる。この状態において、操作体6は弁体5を基端より押圧、変形してその内径を縮小し、 くびれ部52の内面を器具15にほぼ隙間なく接触させている。これにより、弁体5は器 具15を液密に圧迫、保持している。他方、この状態において、弁体5と器具15とは、 弁体5の内面全体ではなく、くびれ部52の最小内径の位置を中心としたごく小さい面積 で接触し、これにより、器具15を弁体5内で摺動する際の摩擦抵抗も小さくなっている。 このため、この位置に操作体6を係止することにより、器具15はこの弁体5により液密 に保持され、かつ、弁体5内で良好に摺動できる。 【0024】図4(c)は、同図(b)の状態から、取手61を把持して操作体6をさら に回転し、操作体6をさらに押し込んだ状態を示している。この状態において、操作体6 は図4(b)の状態から弁体5をさらに押圧して、弁体5をさらに圧縮変形している。そ して、変形したくびれ部52が図4(b)の時よりも広い面積で器具15と接触し、器具 15を圧迫して摺動不能に保持、固定している。・・・」 (イ)「【図4】 」 16/17 カ 手技「【0032】コネクタ1と図1に示すガイドカテーテル10を用いたPTCAの手技に おいては、予め血管内に挿入したガイドカテーテル用ガイドワイヤーに沿ってガイドカテ ーテル10を進行させる際、および、血管に挿入したガイドカテーテル10内で拡張体付 きカテーテルを目的部位に向けて進行させる際に、操作体6を操作して図4(b)に示す 位置とすることにより、このガイドワイヤーまたは拡張体付きカテーテルがガイドカテー テル10に液密に接続された状態で、かつ不本意な損傷を被ることなく、上記進行を行う ことができる。また、これらのガイドワイヤーおよび拡張体付きカテーテルをガイドカテ ーテル10を経て抜去する際においても、操作体6を同図(b)に示す状態とすれば、コ ネクタ1より血液が漏出することなくこれらの抜去を円滑に行うことができる。さらに、 ガイドカテーテル10により案内され、目的部位に達した拡張体付きカテーテルを、その 拡張体を狭窄部に位置させて固定する際には、操作体6を操作して図4(c)に示す位置 とすることにより、拡張体付きカテーテルを損傷なく固定できる。」 17/17 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2024/02/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
事実及び理由 | |
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全容
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