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事件 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
令和6年1月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 令和5年(ネ)第1384号、同第1886号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件 (原審 大阪地方裁判所令和3年(ワ)第11472号) 口頭弁論終結日 令和5年10月24日 5判決
控訴人兼附帯被控訴人(一審被告) P1 (以下「一審被告」という。) 10 同訴訟代理人弁護士 三坂和也
同 桝田甲佑
被控訴人兼附帯控訴人(一審原告) ANSON株式会社 (以下「一審原告」という。) 15
同訴訟代理人弁護士 姜永守
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2024/01/26
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 一審被告の本件控訴を棄却する。
2 一審原告の附帯控訴に基づき、原判決主文1、2項を次のとおり変更する。
20 (1) 一審被告は、一審原告に対し、5万3179円及びこれに対する令和3年10月25日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(2) 一審原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを20分し、その1を一審被告の負担とし、その余を一審原告の負担とする。
25 4 この判決は、2項(1)に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 一審被告の控訴の趣旨 (1) 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 上記部分につき、一審原告の請求を棄却する。
5 (3) 訴訟費用は、第1、2審とも一審原告の負担とする。
2 一審原告の附帯控訴の趣旨 (1) 原判決中一審原告敗訴部分を取り消す。
(2) 一審被告は、一審原告に対し、68万2128円及びこれに対する令和3 年10月25日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
10 (3) 訴訟費用は、第1、2審とも一審被告の負担とする。
(4) 仮執行宣言
事案の概要
以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。
1 本件は、アマゾンジャパン合同会社(アマゾン)の運営するインターネット15 ショッピングサイト(アマゾンサイト)上に開設した原告サイトにおいて商品 を販売している一審原告が、被告サイトにおいて同種商品を販売している一審 被告に対し、一審被告がアマゾンに対して原告サイト上に掲載された画像(原 告各画像)及び商品名が一審被告の著作権を侵害しているとして申告した行為 (本件各申告)が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為又20 は不法行為に該当する旨主張して、不競法4条又は民法709条による損害賠 償請求権に基づき、本件各申告によって被ったとする損害73万4620円 (逸失利益9万1200円、問題対応に要した人件費14万3420円及び弁 護士費用相当額50万円の合計額)の損害賠償及びこれに対する最終申告日の 後の日である令和3年10月25日から支払済みまで民法所定の年3パーセン25 トの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、本件各申告が不競法2条1項21号の虚偽事実の告知に当たると判 断した上、同法4条に基づき、一審原告の請求を5万2492円(本件申告1、
3ないし7、9及び10に係る不正競争行為による損害額合計)及びこれに対 する上記遅延損害金の支払を求める限度で認容したため、これを不服とする一 審被告が敗訴部分について本件控訴を提起し、一審原告が敗訴部分について附 5 帯控訴を提起した。
2 前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄第2の1 (原判決2頁11行目から3頁20行目まで)に記載のとおりであるから、こ れを引用する。
(1) 原判決2頁25行目から同頁26行目にかけての「別紙表の各「対応する10 被告画像」欄記載の証拠番号の画像」を、「別紙表の各「対応する被告画像 目録」記載の別紙被告画像目録1の1ないし10の2の画像」に改める。
(2) 原判決3頁8行目の「「ASIN」(識別番号)」を「「ASIN」(商品に関す るアマゾン標準識別番号)」に改める。
(3) 原判決3頁10行目の「できる」の後に「。申告を受けたアマゾンは、同15 申告を審査し、これを有効と認めた場合、アマゾンサイト上において申告さ れたコンテンツの削除などを行う」を加える。
3 争点 (1) 本件各申告が虚偽事実の告知(不競法2条1項21号)又は不法行為に該 当するか(争点1・請求原因)20 (2) 一審原告の損害の有無及びその額(争点2・請求原因) (3) 一審原告の本訴提起及び訴訟追行が不法行為といえるか(争点3・相殺の 抗弁) 4 争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び 理由」欄第3(原判決3頁26行から11頁5行目まで)に記載のとおりであ25 るから、これを引用する。
(1) 原判決4頁8行目末尾に「仮に単語帳及び卓上カレンダーの写真について 著作物性が肯定されるとしても、創作性の程度が極めて低いことから、著作 権の保護が及ぶ範囲は限定され、当該写真をそのままコピーして利用した場 合に複製権侵害となるにとどまる。」を加える。
(2) 原判決4頁12行目の末尾に改行して次のとおり加える。
5 「したがって、著作権侵害をいう本件各申告は、虚偽事実の告知に当たる。」 (3) 原判決4頁14行目冒頭に「一審被告による本件各申告当時、原告サイト に掲載していた本件各商品の画像は、別紙表の「原告主張の原告画像」欄記 載の証拠番号の画像(以下、別紙表の符号に従い「原告画像1」などとい う。)である。そのうち、原告画像3は、別紙原告画像目録3の画像(甲110 5の2)であり、その余の各原告画像は、いずれも対応する番号の被告画像 とほぼ同一である。」を加える。
(4) 原判決5頁15行目の「いすれの」から同頁18行目末尾までを次のとお り改める。
「いずれの画像についても、商品の状態を的確に伝え、需要者の購入意欲を15 促進するため一審被告が独自の工夫を凝らしたものであって、具体的には、
手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を自ら行い、光の 入り方に気を配って撮影場所にもこだわり、複数のアングルで多くの写真を 撮影して、その中の一番良い写真についてさらに彩度、色合いを編集して、
どの媒体で商品写真を見ても最も綺麗に見えるよう調整している。特に、大20 量の商品を扱うインターネットショッピングサイトにおいては、購入商品を 選択する検討材料の中で商品写真が占める重要性は極めて大きく、一見あり ふれた写真に見えるような場合であっても、その裏には、上記のような細や かな工夫が様々に凝らされているから、このような点において個性が発露し ている場合には、著作物性が認められるべきである。したがって、被告各画25 像には創作性があり、一審被告は、被告各画像に係る著作権を有している。」 (5) 原判決5頁22行目の「商品名を付して販売している。」の後に「また、
本件各商品のいくつかに一審被告がつけた「Premium Photo Book」という商 品名は、どの部分を大文字とし又は小文字とするか、スペースを入れるのか 入れないのか、スペースを入れるとしても半角か全角かといった点を熟慮の 上で選択したものである。大量の商品を扱うインターネットショッピングサ 5 イトにおいては、消費者は検索結果画面をスクロールしながら商品を選択す るため、ありふれた商品名に見えるような場合であっても、一審被告は、一 見して自分の商品を選択してもらえるように細やかな工夫を様々に凝らして いる。」を加える。
(6) 原判決6頁10行目末尾に「本件各申告当時、原告サイトに掲載されてい10 た原告各画像は、被告各画像と同一である。一審原告が本件各申告当時に原 告サイトに掲載していたと主張する原告画像1ないし3、5は、アマゾンの 原告サイトとは無関係な「Yahoo!ショッピング」サイト上に一審原告 が開設しているサイト(以下「原告ヤフーサイト」という。)の商品画像で あって、本件各申告当時にアマゾンの原告サイトに掲載されていた画像とは15 異なる。」を加える。
(7) 原判決6頁17行目から同頁18行目にかけての「知的財産権侵害フォー ムから申告するよう案内されたため」を「アマゾンブランド登録又は侵害通 知用のオンラインフォーム(以下「侵害通知フォーム」といい、これによる 申告を「権利侵害申告」という。)を利用して申告するよう案内されたため」20 に改める。
(8) 原判決7頁7行目から同頁8行目にかけての「やむを得ず著作権侵害とい う選択肢を選んだにすぎない」を「アマゾンから、侵害通知フォームを利用 して申告するよう案内されたため、侵害通知フォームにある選択肢の中から やむを得ず著作権侵害という選択肢を選んだにすぎない」に改める。
25 (9) 原判決7頁10行目末尾に「そして、被告各画像等に著作物性がないため、
著作権侵害をいう本件各申告が客観的には虚偽の事実の告知に該当するとし ても、不競法2条1項21号による損害賠償責任の有無を検討するに当たっ ては、諸般の事情を考慮して違法性や故意・過失の有無を判断すべきであ る。」を加える。
(10) 原判決8頁4行目末尾に改行して次のとおり加える。
5 「 なお、原告サイトの一部商品について出品停止が解消されたとしても、出 品停止が全面的に解消されない限り、出品停止が解消された商品の販売に影 響が及ぶことは否定できないから、損害額は、商品ごとに算定した逸失利益 を合算する手法で認定すべきではない。また、出品停止直前期に偶々販売実 績がなかったからといって、出品停止期間中にその商品の販売につき逸失利10 益が生じなかったということはできない。」 (11) 原判決8頁5行目の「対応人件費」を「問題対応に要した人件費(以下 「対応人件費」という。)」に改める。
(12) 原判決10頁15行目の「原告の本訴提起の態様等が不法行為となるか」 を「一審原告の本訴提起及び訴訟追行が不法行為といえるか」に改める。
15 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、一審原告の請求は一審認容額を増額した5万3179円及びこ れに対する令和3年10月25日から支払済みまで年3パーセントの割合によ る遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断する。その理由は、次の とおりである。
20 2 争点1(本件各申告が虚偽事実の告知又は不法行為に該当するか)について (1) 認定事実 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第4の1(1)ないし(3) (原判決11頁8行目から18頁1行目まで)に記載のとおりであるから、
これを引用する。
25 ア 原判決11頁10行目冒頭から同頁20行目末尾までを次のとおり改める。
「 被告画像1、2、4ないし8は、それぞれ特定の芸能人ないし芸能人グル ープの写真集である本件商品1、2、4ないし8の平面的な表紙及び裏表紙 (上記芸能人ないし芸能人グループの写真が全面に印刷されている。)を、
できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影しており、被写体となってい る写真集の表紙及び裏表紙以外に背景や余白はない。
5 被告画像3は、63枚の単語カード並びに表紙及び裏表紙のカードの左上 穴に金具のリングを通して一つの単語帳となっている本件商品3を、一審被 告が撮影したものである。具体的には、被告画像3は、上記金具のリングか ら取り外した表紙及び裏表紙のカード(いずれもある特定の芸能人を撮影し た写真が全面に印刷されている。)を左側に上下に並べ、その右側に一部裏10 表紙と重なる形で、金具のリングで一体となった残る63枚の単語カードを、
一番上になるカード(同カードには、上記と同一の芸能人を撮影した写真が 全面に印刷されている。ただし、白い縁取りがある。)の写真だけが全面的 に見えるように、金具のリングを要として扇状に広げたものを正面から撮影 したものであり、その背景は白である。
15 被告画像9及び10は、ある特定の芸能人を被写体にした写真を掲載した 卓上カレンダーである本件商品9及び10の平面的な表紙及び裏表紙(表紙 にはほぼ全面に上記芸能人の写真が印刷され、裏表紙には同芸能人の各写真 が掲載された12か月分のカレンダーが印刷されている。)を、できるだけ 忠実に再現するため真正面から撮影したものであり、被写体となっている卓20 上カレンダーの表紙及び裏表紙以外に背景や余白はない(なお、表紙の画像 にのみカレンダーを綴る上部のリングが映っている。)。」 イ 原判決14頁3行目冒頭から同頁9行目末尾までを次のとおり改める。
「 一審原告は、一審被告によって本件各申告がされた当時、原告サイトに本 件各商品の画像として原告画像1ないし9を掲載していた(本件商品10の25 原告サイトにおける当時の画像の詳細は不明である。)。
原告画像3についての事実認定を補足すると、原告画像3は、一審原告の デザイナーが作成した韓国語の単語帳商品を紹介するための画像テンプレー トに、本件商品3の表紙を真正面から撮影した画像を挿入したものである。
上記画像テンプレートは、ピンク色及び緑色を背景として韓国語単語が記載 された側を上にして並べられた5枚ほどの個別の単語カードと、その左側に 5 一部同各単語カードの上に重なる状態で、無地の黄色・ピンク色・緑色・水 色・オレンジ色の30枚ほどの単語カードが左上穴に通された金具のリング を要として扇状に広げた単語帳とからなり、その背景は白であって、上記単 語帳の表紙部分に実際の商品である単語帳の表紙を撮影した画像を挿入する 形式となっており、原告画像3には、その表紙の画像以外には本件商品3を10 撮影した部分はない。原告画像3を立証する証拠(甲15の2)は、本件申 告3当時の原告サイト上のものではなく、令和3年8月5日にアマゾンによ って原告サイトにおける本件商品3が出品停止とされ、その画像も削除され た後、これに近接した同月19日に、一審原告が原告ヤフーサイトに出品し ている本件商品3の画像をスクリーンショットによって保存したものである。
15 しかし、同画像は上記出品停止に先立つ同年7月27日に一審原告において 作成されたものであることは認められるし(甲54の1・2)、販売業者が、
同じ商品を複数のインターネットショッピングサイト上で販売する場合に、
異なるインターネットショッピングサイトに同じ商品画像を掲載することは 何ら不自然ではないこと、そもそも一審原告において上記画像削除前に原告20 サイトにおける本件商品3の画像を保存することを期待することは困難であ ったと考えられるのに対し、権利侵害を主張する一審被告においては本件申 告3を行うに当たって同画像を保存してもおかしくないと考えられるのに、
そのような措置を何らとっていないこと等の事情を併せ考えると、本件申告 3当時の原告サイトにおける本件商品3の画像は、一審原告の主張するとお25 り、一審原告が同じ頃原告ヤフーサイトに出品していた本件商品3の画像 (原告画像3)と同一であったと認めるのが相当である。」 ウ 原判決14頁12行目の「本件商品6」の前に「本件商品5は「JUNG KOOK ジョングク(防弾少年団/BTS) グッズ - プレミアム フォトブック 写真集 (Premium Photo Book) 220mm×305mm SIZE(34p)」、」を加える。
エ 原判決14頁20行目の「甲3の1、」の後に「5の2、」を加える。
5 オ 原判決15頁25行目の「旨を記載した。」の後に次のとおり加える。
「そして、侵害通知フォームには、「以下に入力された連絡先情報は、申告 の対象となる相手方に共有されます。」旨付記された上、「問い合わせ先情 報」を記入することになっているところ、一審被告は、本件申告1に際し、
「問い合わせ先情報」として一審被告の屋号及びEメールアドレスを記載し10 た。また、侵害通知フォーム末尾には、太字で、「「送信」をクリックする ことで、以下の内容に同意するものとみなされます。」との注意書がされて おり、その直下に@「私は、申告した画像や商品が、私または権利所有者の 権利を侵害する客観的根拠があり、かつ違法であることを確信していま す。」、A「申告者は、本申告に含まれる情報が正しくかつ正確であること、
15 および申告者が、権利者または権利者の代理人であることを表明・保証しま す。」、B「私は、この申告が受理された場合、ここに含まれる情報が、注 文番号を除き、Amazonから申告の対象であるすべての出品者に対して共有さ れる可能性があることを理解しています。」との記載がされているところ、
一審被告は、本件申告1に際し、以上を前提としてその直下の「送信」をク20 リックした。」 カ 原判決16頁17行目の「同月11日」を「同月14日」に改める。
キ 原判決17頁25行目の「原告は」から同頁26行目の「ことに対し、」 までを「アマゾンは、本件申告2ないし10についても、本件申告1の場合 と同様、一審被告から著作権侵害の申告がされたことを理由として、別紙表25 の各「出品停止日」に、原告サイト上の本件各商品の出品を停止し、原告各 画像を原告サイト上から削除した(甲2〜10の各1、3の2)。一審原告 は、これらに対し、」 (2) 本件各申告における告知内容 ア 本件各申告の内容及び態様並びにこれに対するアマゾンの対応(前記(1) で補正の上で引用した認定事実(3)イからエ、カ、ク、ケ)によれば、一審 5 被告は、アマゾンに対し、本件各申告によって、一審被告の著作権を侵害し ている旨告知したと認められる。なお、一審被告は、侵害通知フォームの詳 細欄に、「一審被告が作成したカタログの商品画像、商品名を盗用」してい る旨記載しているが、ここにいう「盗用」は著作権侵害が原告各画像及び商 品名に依拠して同一のものを作成してなされていることをいっているものと10 解される。
イ これに対し、一審被告は、アマゾンに一審原告に係るASIN重複の規約違反 を申告しようとしたにすぎず、侵害通知フォームの詳細欄には著作権侵害と は記載していないから、アマゾンに対して著作権侵害の告知をしたものでは ない旨主張する。確かに、一審被告は、侵害通知フォームの詳細欄に、著作15 権侵害とは記載していないが、侵害通知フォームには、当該フォームが知的 財産権の侵害を申告するためのものであって、その他の規約違反の報告は別 の方法によるべきことが明記されている上、侵害通知フォーム自体が、知的 財産権侵害のいずれかを選択しなければ申告手続が次の段階に進まない、す なわち申告できない仕組みになっていることは明らかであって、これが認識20 できないはずがないのであるから(乙28の1ないし4)、一審被告が、自 ら権利侵害の種類として「著作権侵害」を選択し、「著作権のある商品/著 作物を提示するサイトへのリンク」を選択して対応する被告サイトのURLを 記載して本件各申告をした以上は、一審被告はアマゾンに対して著作権侵害 の告知をしたというほかなく、一審被告の上記主張は採用できない。
25 (3) 被告各画像等の著作物性 ア 被告各画像の著作物性 (ア) 被告画像1、2及び4ないし10について 写真集及び卓上カレンダーに係る被告画像1、2及び4ないし10は、
インターネットショッピングサイトにおいて販売する商品がどのような ものかを紹介するために、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面 5 的な表紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影 した画像であり、上記表紙及び裏表紙以外に背景や余白はないのであっ て、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、背景 等に選択の余地がなく、上記表紙及び裏表紙ひいてはそこに印刷された 芸能人を被写体とする写真を忠実に再現する以外に、その画像の表現自10 体に何らかの形で撮影者の個性が表れているとは認められないから、上 記各被告画像には創作性が認められない。したがって、上記各被告画像 は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号) とはいえず、著作物とは認められないから、一審被告が上記各被告画像 について著作権を有するとは認められない。
15 (イ) 被告画像3について 単語帳に係る被告画像3も、インターネットショッピングサイトにお いて販売する商品がどのようなものかを紹介するための写真ではあるが、
芸能人を被写体とする写真が印刷された表紙及び裏表紙を金具のリング から取り外し、各写真を表にして平面上に上下に並べ、その右側に一部20 裏表紙と重なる形で、63枚の単語カードを写真側を表にして金具のリ ングを要として扇状に広げたものを撮影したものであり、正面から撮影 されたものではあるものの、上記単語カードを扇状に広げることによっ てその重なり合いによる陰影が表現され、また、2枚目以降の単語カー ドの白い縁取りからわずかに各写真が垣間見えるように広げることによ25 って各単語カードにそれぞれ異なる写真が印刷されていることを表現し ており、白い背景によって表紙及び裏表紙の写真等を浮き立たせる効果 も生んでいるといえる。このような手法が商品としての単語帳を紹介す る際にまま見られるもの(乙62、63)であったとしても、その被写 体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、背景の選択には 複数の余地があり、被告画像3の表現自体に撮影者の個性が表れている 5 と認められる。したがって、被告画像3は、「思想又は感情を創作的に 表現したもの」といえ、著作物性が認められるから、その撮影者である 一審被告は被告画像3について著作権を有すると認められる。
(ウ) 以上に対し、一審被告は、被告画像1、2及び4ないし10についても、
手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を行い、光の10 入り方に気を配って撮影場所にこだわり、複数の写真を撮影してその中 の一番良い写真について彩度、色合いを編集するなどの独自の工夫を凝 らしている旨主張するが、一審被告が主張するそのような工夫は、商品 である写真集ないし卓上カレンダーの表紙及び裏表紙、ひいてはそこに 印刷された芸能人を被写体とする写真を忠実に再現するためのものであ15 って、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られ たとしても、その表現自体に何らかの形で撮影者である一審被告の個性 が表れているとは認められない。したがって、上記一審被告の主張は上 記(ア)の判断を左右しない。
イ 本件各商品の商品名の著作物性20 (ア) 一審被告が被告サイトに掲載した本件各商品の商品名は、いずれも本件 各商品自体に印刷された商品名の欧文字の大文字表記を小文字表記にし たり、欧文字を日本語表記にしたりしたほか、「大型写真集」「+ケー ス付」「+メッセージカード」といった本件各商品の特徴をありふれた 表現で説明したにとどまり、「思想又は感情を創作的に表現したもの」25 とは認められない。したがって、被告サイト上の上記商品名に著作物性 は認められないから、一審被告はこれら商品名について著作権を有しな い。
(イ) これ に対 し 、 一審 被告は 、 例 えば 本件 商品9 の表 紙に は 欧 文字 で 「PHOTO DESK CALENDAR」としか書かれていないのに対し、「卓上カレン ダー2022〜2023年(2年分)+ステッカーシール[12点セッ 5 ト]」という自ら考えた商品名を付した旨主張するが、その商品名なる ものは、上記商品自体に付された商品名の欧文字の一部を日本語表記に し、商品自体の特徴をありふれた表現で複数付け足したにすぎず、商品 のどのような特徴を付記するか等につき一審被告が何らか考慮したとし ても、上記表現が著作権法上における創作的表現と認められるものでは10 ない(そもそも本件商品9の裏表紙には「CHA EUN WOO 2022-2023 PHOTO DESK CALENDAR」及び「CALENDAR+STICKER」の文字が印刷されており、
一審被告が付記した同商品の特徴の選択にも独自性はない。)。一審被 告は、本件商品1、2、4ないし8に印刷された「PREMIUM PHOTOBOOK」 について、一審被告がつけた「Premium Photo Book」という商品名は、ど15 の部分を大文字とし又は小文字とするか、スペースを入れるのか入れな いのか、スペースを入れるとしても半角か全角かといった点を熟慮の上 で選択したものであるなどとも主張するが、それがインターネットショ ッピングサイトにおいて消費者の関心を惹くよう考慮した結果であると しても、商品本体に印刷されている商品名の表記につき通常のゴシック20 体のアルファベットの大文字と小文字の組み合わせやスペースの入れ方 によって工夫すること自体はアイデアの類にすぎず、著作権法上保護さ れる思想又は感情の「表現」には当たらない。したがって、一審被告の 上記主張はいずれも採用できない。
(4) 原告画像3の掲載が被告画像3についての著作権侵害に当たるか25 ア 上記のとおり、被告サイト上の被告各画像及び商品名のうち、そもそも著 作物性が認められるのは被告画像3のみであり、その余については著作物性 自体が認められず、一審被告が著作権を有しないから、一審原告がその著作 権を侵害した事実はおよそ存在しない。そこで、原告画像3の掲載が被告画 像3についての一審被告の著作権侵害に当たるかにつき、以下検討する。
イ 被告画像3の表現上の本質的特徴は、前記(3)ア(イ)のとおり、本件商品3 5 を撮影する際の被写体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、
背景の選択等を総合した表現に認められるところ、画像テンプレートを利用 して作成された原告画像3は、単語帳から取り外した一部の表紙等を並べて その横に単語帳を扇状に広げて置くなどの点で商品の見せ方に関する基本的 なアイデアに被告画像3との共通点はあるが、取り外して並べられたのが表10 紙や裏表紙の写真面か、単語カードの韓国語単語が記載された面か、その枚 数、色彩及び配置、金具のリングを要として扇状に広げられた単語帳がその 右側に配置されているか左側に配置されているか等の配置、同単語帳の1枚 目のカードに印刷された写真内容、同単語帳の単語カードの枚数、色彩、扇 状の広がり方及び陰影等で異なっていることが一見して明らかであって、そ15 の素材の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、色彩の配合、素 材と背景のコントラスト等において被告画像3と異なるから、被告画像3の 表現上の本質的特徴を直接感得させるものとはいえない。なお、原告画像3 で選択された素材のうち、本件商品3の表紙を正面から撮影した画像部分の みは被告画像3と共通するが、その画像自体は、被告画像1、2及び4ない20 し10について検討したと同様、平面的な上記表紙を忠実に再現したのみで 創作性が認められない部分であるから、同画像部分が共通しているからとい って、原告画像3が被告画像3と類似しているとは到底認められない。した がって、一審原告が原告画像3を原告サイトに掲載したことが、被告画像3 に係る一審被告の著作権を侵害するものとは認められない。
25 以上によれば、一審被告が、本件各申告によってアマゾンに告知した、一 審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名についての一審被告の著作権 を侵害しているとの本件各申告の内容は、全て虚偽の事実であったというこ とになる。そして、前記第2の2で原判決を補正した上で引用した前提事実 (1)によれば、一審原告と一審被告は競争関係にあるといえ、また、上記著 作権侵害の事実を申告する行為は一審原告の営業上の信用を害する虚偽の事 5 実を告知する行為といえるから、本件各申告は、客観的に不競法2条1項2 1号に該当するということになる。
(5) 一審被告による本件各申告の違法性ないし故意・過失の有無 ア 本件各申告は、アマゾンがあらかじめ設けている知的財産権侵害を申告す るための侵害通知フォームを利用して行われたものであるところ、同フォー10 ムにおいては、申告者において、申告した画像や商品が申告者又は権利所有 者の権利を侵害する客観的根拠があり、かつ違法であることを確信している こと、当該申告に含まれる情報が正しくかつ正確であることを表明・保証す ることに同意した上で権利侵害申告を行うものとされている。そして、アマ ゾンに対する権利侵害申告がされた場合には、アマゾンによって申告対象の15 コンテンツが削除されるなどしてアマゾンサイトへの出品自体が停止され、
当該出品者が直接的に経済的損害を被ることがあることが明らかであるから、
侵害通知フォームによって著作権についての権利侵害申告をする者には、権 利侵害申告をするに当たり、権利侵害の客観的根拠があり、かつ違法である ことについて調査検討すべき注意義務を負っていると解すべきである。
20 これに対し、一審被告は、著作物かどうかの判断は困難なものであり、こ れを正確に行ってアマゾンに申告することが求められるとすれば、その権利 行使を不必要に委縮させるから、本件において、結果的に被告各画像等に著 作物性がないとされた場合であっても、不競法2条1項21号による損害賠 償責任の有無を検討するに当たっては、諸般の事情を考慮して違法性や故25 意・過失の有無を判断すべきであると主張する。しかし、上記のとおり、権 利侵害申告をする者に対しては、侵害通知フォーム所定の同意事項の同意を 義務付けることで明確に上記注意義務が課せられ、これに反した場合に被申 告者に損害が発生することも容易に予見できることであるから、著作権侵害 という法的判断を伴う事実を申告する以上、著作物性の判断が困難であるの であれば専門家に問い合わせることも検討されるべきであって、その判断の 5 ための調査検討を怠って虚偽の事実の申告となる権利侵害申告をすることが 許されるわけではなく、一審被告の上記主張は採用できない。
イ 以上を前提に検討するに、本件において、一審被告が著作権を有するとし て本件各申告をした被告各画像のうち、被告画像3を除く平面的な被写体を 忠実に再現しただけの写真といえる被告画像は、前記(3)アのとおり、いず10 れも著作物性が認められないところ、この種の写真に著作物性が認められな いことは過去の裁判例において明らかにされ、これについては一般に異論も 見られないところであるから、控訴人が著作物性判断のため著作権について 調査検討したのであれば、上記被告画像が著作物といえないことは容易に明 らかになったことといえる。
15 また、被告画像3は、著作物性が肯定されるものの、前記(4)のとおり、
原告画像3は被告画像3とは、商品の見せ方というアイデアで共通点がある にすぎず、表現における類似性がないことは明らかであるから、原告画像3 をもって、被告画像3について一審被告が有する著作権の侵害物とはいえな いところ、このようにアイデアで共通していても表現で異なる場合に著作権20 侵害をいえないことは、著作物性についてみたと同様、著作権について少し でも調査検討すれば容易に明らかになったことといえる。
さらに、被告サイト上の一審被告が付したとする商品名は、前記(3)イの とおり、いずれも本件各商品自体に印刷された商品名の表記を変え、本件各 商品の特徴をありふれた表現で付記するなどしたものにすぎず、およそ著作25 物性が肯定される余地のないものであり、この点も、上記被告各画像につい てみたと同様、著作権について少しでも調査検討すれば容易に明らかになっ たことといえる。
そうすると、一審被告がアマゾンに対して原告サイト上に掲載された原告 各画像及び商品名が一審被告の著作権を侵害している旨申告すること(本件 各申告)が虚偽の事実の告知に当たることは、一審被告がその申告をするに 5 当たり必要な調査検討をすれば容易に明らかになったといえるにもかかわら ず、一審被告がこれについて調査検討した様子はうかがわれず、漫然と本件 各申告をしたものと認められるから、一審被告は、権利侵害申告に当たって 求められる前記注意義務を怠ったものというべきである。
ウ そして、本件各申告がなされた経緯についてみると、一審被告は、本件申10 告1及び2を行った後、一審原告から、同各申告についてどのような点で著 作権侵害との判断をしたのか問い合わせるメールを受けたにもかかわらず、
これに何ら返信することなく本件申告3ないし5を行い、再度一審原告から 上記同様の問い合わせのメールを受け、さらに、一審原告代理人弁護士から 上記各申告に係る著作権侵害は存在しないとの内容証明郵便による通知さえ15 も受けたにもかかわらず、専門家に問い合わせるなどして著作権侵害の有無 について然るべき調査検討をしようとしないばかりか、何ら回答せずに無視 して、なお続けて本件申告6ないし10を行ったというのである。一審被告 が本件各申告を行うに当たっては、侵害通知フォーム上において、「問い合 わせ先情報」として一審被告の連絡先が申告の相手方(一審原告)に共有さ20 れる旨が明らかにされており(乙28の4)、一審原告から問い合わせ等が あった場合にはこれに適切に対応すべきことが予定されていたのであり、現 に、アマゾンにおいても、一審原告に対して、権利者が誤って通知を送信し たと考えられる場合は権利者に連絡して通知取り下げの申請を依頼するよう 通知していた(甲2の1、3の2、4の1、5の1、7の1)というのに、
25 一審被告は一審原告からの度重なる問い合わせ等に対して一切の対応をしな いまま、上記経緯のとおり本件各申告を繰り返したというのであるから、そ の申告態様からして、一審被告は、著作権の正当な権利行使の一環として本 件各申告をしたのでなく、むしろアマゾンサイト上で競争関係にある一審原 告の出品を妨害することによって自己が営業上優位に立とうとして本件各申 告をしたことがうかがわれるというべきである。
5 エ これに対し、一審被告は、当初、アマゾンに対して一審原告によるASINの 重複と被告各画像等の盗用の事実を報告したところ、アマゾンから侵害通知 フォームから申告するよう案内されたため、やむを得ず侵害通知フォームを 利用して「著作権侵害」の選択肢を選んだにすぎず、過失がないなどと主張 する。
10 この点、一審被告が、当初、アマゾンに対し、原告サイトの商品が被告サ イトの商品と重複している旨も併せて報告しようとした事実は認められるも のの、侵害通知フォーム自体が知的財産権の侵害を申告するためのものであ って、その他の規約違反の報告は別の方法によるべきことが明記されている のであるから(乙28の1ないし4)、その上で侵害通知フォームにおいて15 「著作権侵害」を選択したことについてやむを得ないという余地はなく、む しろこの弁解からは、著作権侵害の問題になり得ないことを認識しながら、
著作権侵害を申告したことを自認しているという見方さえでき、その場合、
一審被告には、虚偽の事実を申告することについて過失にとどまらず未必の 故意があったということになる。したがって、一審被告の上記主張は採用で20 きない。
オ 以上によれば、一審被告による本件各申告が、不競法2条1項21号の不 正競争行為に該当する違法な行為であることは明らかであり、それらにつき 一審被告には少なくとも過失が認められるというべきである。
3 争点2(一審原告の損害の有無及びその額)について25 (1) 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第4の2(原判決21頁 11行目から23頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用す る。
ア 原判決22頁17行目冒頭から同頁20行目の「相当である。」までを次 のとおり改める。
「 本件商品2については、出品停止直前3か月間の販売実績が零個であるが、
5 一審被告の本件申告2による出品停止期間が91日間の長期に及んでいるこ と及び本件商品2の内容に照らせば、上記出品停止がなければ上記期間中に 少なくとも1個は同商品が販売できた高度の蓋然性が認められるというべき であるから、本件申告2によって、一審原告は、本件商品2の1個当たりの 利益相当額である687円の逸失利益の損害を被ったと認められる。一方、
10 本件商品8についても、出品停止直前3か月間の販売実績が零個であるとこ ろ、同商品については一審被告の本件申告8による出品停止期間がわずか1 日間であることから、出品停止による逸失利益の損害は零円とするのが相当 である。」 イ 原判決22頁23行目末尾に次のとおり加える。
15 「なお、一審原告は、原告サイトの一部商品について出品停止が解消されて も、出品停止が全面的に解消されない限り、出品停止が解消された商品の販 売に影響が及ぶことは否定できないことを損害額の算定に斟酌すべきように 主張するが、出品停止中の商品があることが、その余の商品の販売にどのよ うに影響したのかについての具体的な主張・立証がされていないから、一審20 原告の上記主張を採用することはできない。」 ウ 原判決22頁24行目の「4万7492円」を「4万8179円」に改め る。
エ 原判決23頁19行目の「本件各申告により」から同頁20行目末尾まで を「不正競争行為である本件各申告により、前記(1)及び(3)の合計額である25 5万3179円の損害が生じたものと認められる。なお、本件各申告が不法 行為に該当するとしても、それによる一審原告の損害は同額を上回るもので はない。」に改める。
(2) 以上のとおり、不正競争行為である本件各申告によって一審原告が被った損 害は、原審が認容した5万2492円に、前記(1)アで補正して認めた本件申告 2に係る不正競争行為により生じた687円の逸失利益を加算した5万317 5 9円であると認められる。
4 争点3(一審原告の本訴提起及び訴訟追行が不法行為といえるか)について 憲法上保障される裁判を受ける権利は、法治国家において最大限尊重されなけ ればならないから、民事訴訟における訴えの提起が違法な行為といえるのは、当 該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠く10 ものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にその ことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度 の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる場合に限られる(最高裁 昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)ところ、本訴 においては、前記2、3のとおり、一審被告による本件各申告は不競法2条1項15 21号の不正競争行為に該当し、一審被告は一審原告に対し損害賠償責任を負う のであるから、一審原告の主張した権利ないし法律関係は事実的、法律的根拠を 欠くものではない。したがって、一審原告による本訴提起は何ら違法ではなく、
一審原告が、訴え提起時に請求した損害賠償額292万3420円が過大であっ たとして原審途中で73万4620円に請求を減縮したことも、上記結論を全く20 左右しない。また、一審原告が上記請求減縮をするのに日数を要したとしても、
そのこと自体が独立して違法性を帯びることもない。
したがって、一審原告の本訴提起及び上記訴訟追行の態様に違法性はなく、一 審被告は一審原告に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有しないから、これ を自働債権とする一審被告の相殺の抗弁は理由がない。
25 5 以上によれば、一審原告の請求は5万3179円及びこれに対する令和3年1 0月25日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求 める限度で理由があるから同限度で認容すべきところ、これと異なり、本件申告 2に係る不正競争行為により生じた逸失利益を認定せず5万2492円及びこれ に対する上記遅延損害金の限度で請求を一部認容した原判決は一部失当であって、
一審被告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、一審原告の附帯控訴は理由 5 があるから、原判決主文1、2項を変更することとして、主文のとおり判決する。