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関連審決 無効2019-800091
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審判番号(事件番号) データベース 権利
令和4ネ10002特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
令和2行ケ10144 審決取消請求事件 判例 特許
令和3行ケ10021 審決取消請求事件 判例 特許
令和2行ケ10079 審決取消請求事件 令和2行ケ10083 審決取消請求事件 判例 特許
令和4ネ10003特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
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事件 令和 4年 (行ケ) 10082号 審決取消請求事件
5
原告 ロシュダイアグノスティックス ゲーエムベーハー 10
同 訴訟代理人弁理士細田芳徳
同 細田芳弘 15 被告 アボット・ラボラトリーズ
被告 アボットジャパン合同会社
同 代表者代表社員 セント・ジュード・メディカル・ア 20 ジアパシフィックホールディングス 合同会社
上記両名訴訟代理人弁護士 米山朋宏
上記両名訴訟代理人弁理士 小林純子 25 同丸山智裕
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/01/16
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 11 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
5 事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が無効2019−800091号事件について令和4年4月14日にした審決のうち、特許第5981914号の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし38、40、45ないし53、55、
10 57ないし69、71、72に係る部分を取り消す。
第2 事案の概要1 特許庁における手続の経緯等? 被告は、出願日を平成23年7月8日とし(以下「本件出願日」という。 、
)発明の名称を「PIVKA−IIに関する抗体およびその使用」とする発明15 について特許出願(特願2013−521798号。優先権主張(米国):平成22年7月26日(以下「本件優先日」という。))をし、平成28年8月5日、特許権の設定登録(特許第5981914号。請求項の数75。
以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。(甲22)? 原告は、令和元年10月29日、本件特許の請求項3ないし5、13、120 5ないし22、25ないし31、33ないし38、40、45ないし53、
55、57ないし69及び71ないし74につき、無効審判請求をした(無効2019−800091号事件。以下「本件無効審判」という。)。
? 特許庁は、当事者双方に対し、令和3年2月10日付けの審決の予告を通知した(請求項38は理由なし)。被告らは、令和3年7月19日付けで特許25 請求の範囲及び明細書の訂正請求(以下「本件訂正」といい、本件訂正後の本件特許に係る明細書及び図面を併せて「本件明細書等」という。)をした。
2原告が主張した無効理由にかかる請求項のうち、請求項38は訂正請求の対象に含まれず、請求項73及び74は本件訂正により削除された。(甲30、
乙7)? 特許庁は、令和4年4月14日、本件訂正を認めた上で、「特許第5985 1914号の請求項3〜5、13、15〜22、25〜31、33〜38、
40、45〜53、55、57〜69、71、72に係る発明についての無効審判請求は、成り立たない。特許第5981914号の請求項73及び74に係る発明についての無効審判請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月22日、原告に送達された(附加10 期間90日)。
? 原告は、令和4年8月10日、本件審決のうち、本件特許の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし38、40、45ないし53、55、57ないし69、71、72に係る部分の取消しを求めて本件訴えを提起した(以下、本件特許に係る発明のうち原告が取消しを15 求める上記各請求項に係る発明を、順に「本件訂正発明3」等といい、併せて「本件各訂正発明」と総称する。ただし、前記?のとおり、請求項38は本件訂正による訂正がされておらず、請求項38については単に「本件発明38」という。)。
2 特許請求の範囲の記載20 本件特許に係る本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、別紙1「訂正特許請求の範囲」記載のとおりである。(甲30)3 本件無効審判で主張された無効理由原告は、本件無効審判において、次の無効理由を主張した。
? 無効理由1(新規性欠如)25 本件特許の訂正前の請求項3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲4(The Journal of Biological3Chemistry,Vol.263, No.13 (1988)、6259〜6267頁)に記載された発明(以下「甲4発明」という。)であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、当該発明についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
5 ? 無効理由2(進歩性欠如)本件特許の訂正前の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし38、40、45ないし53、55、57ないし69、
71ないし74に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲4及び甲1(Biochimica et Biophysica Acta10 1586 (2002)、287〜298頁)、甲5ないし10の各文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、当該発明についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
15 ? 無効理由3(拡大先願)本件特許の訂正前の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし38、40、45ないし53、55、57ないし69、
71ないし74は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた他の特許出願であるPCT/JP2011/0647220 4の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(甲11)に記載された発明(以下「甲11発明」といい、上記出願を「甲11出願」という。)と同一であり、しかも、本件特許の出願に係る発明の発明者が当該他の特許出願に係る発明の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願時の出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の25 規定により、特許を受けることができないものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
4? 無効理由4(サポート要件違反)本件特許の訂正前の請求項45ないし51及び訂正後の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71、72に係る発明についての特許5 は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
? 無効理由5(実施可能要件違反)本件特許の訂正前の請求項22、25ないし30、45ないし51、7410 及び訂正後の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、
33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71、72に係る発明についての特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
15 ? 無効理由6(明確性要件違反)本件特許の訂正前の請求項29、45ないし51及び訂正後の請求項3ないし5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、
45ないし53、55、57ないし69、71、72に係る発明についての特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に20 対してされたものであるから、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
4 本件審決の理由等? 本件審決の理由は、別紙2審決書(写し)記載のとおりであり、原告の主張に対する判断の要旨は次のとおりである。なお、本件審決は、次のアから25 カの順に判断している。
ア 無効理由6(明確性要件違反)について5訂正後の請求項3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」については、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)における6位及び/又は7位のGlu(脱カルボキシル化されたグルタミン酸残基)が、プロトロンビンの6位及び7位のGla(カ5 ルボキシル化されたグルタミン酸残基)とは異なる特異的な構造部位であるといえるから、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」が、当該特異的な構造部位により「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであることが理解できる。したがって、訂正後の請求項3が不明確であるとはいえない。
10 本件訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、
33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及び72は、いずれも、訂正後の請求項3を直接又は間接的に引用するか、
それと同様の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むから、訂正後の請15 求項3と同様、明確性要件を満たすものである。
イ 無効理由4(サポート要件違反)について本件各訂正発明(原告がサポート要件違反を主張していない本件発明38を除く。)は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得るから、特20 許法36条6項1号に規定される要件(サポート要件)を満たす。
ウ 無効理由5(実施可能要件違反)について本件明細書等の記載からすると、当業者であれば、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」を、過度の試行錯誤を要することなく製造し、使用することが可能である。
25 本件訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、
33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及6び72は、いずれも、訂正後の請求項3を直接又は間接的に引用するか、
それと同様の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むところ、上記のとおり、本件明細書等には、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、
5 単離された結合性タンパク質」について当業者が実施できる程度の記載がされているから、同様に、実施可能要件を満たす。
エ 無効理由1(新規性欠如)について本件訂正発明3は、甲4と同一であるとは認められない。
オ 無効理由2(進歩性欠如)について10 本件訂正発明3は、甲4発明に、甲1、甲5ないし10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
本件発明38は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
15 その余の本件各訂正発明も、本件訂正発明3と同様の理由により、甲4発明に甲1、甲5ないし10に記載された事項を組み合わせ、又は、甲1に記載された発明(以下「甲1−1発明」という。)に甲4ないし10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
20 カ 無効理由3(先願発明との同一性)について本件各訂正発明は、甲11発明と同一ではない。
? 本件審決は、上記判断をするに当たり、甲4発明、甲1−1発明及び甲11発明の各内容並びに本件各訂正発明と上記各発明との各一致点及び各相違点を、次のとおり認定した。
25 ア 甲4発明(ア) 本件審決は、甲4には以下の二つの発明が記載されていると認定した7(以下、aの発明を「甲4−1発明」、bの発明を「甲4−2発明」という。)。
a 甲4−1発明「精製したヒトプロテインCをマウスに注射することによって生産5 されたマウスモノクローナル抗体H−11。」b 甲4−2発明「マウスモノクローナル抗体H−11を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、BALB/cマウスを、精製したヒトプロテインCで免疫化し、4、8、12週に追加免疫を行い、最後10 の追加免疫の6週後にプロテインC抗体の力価を測定する、免疫化ステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集し、精製するステップ、ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびにプロテインCに結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、マウスモノクローナル15 抗体H−11を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法。」(イ) 本件審決が認定した、本件訂正発明3と甲4−1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕「単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP−1120 259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明3では、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸25 1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4−1発明では、その8ような特定がない点。
(ウ) 本件審決が認定した、本件訂正発明13、本件訂正発明31、本件訂正発明40、本件訂正発明52及び本件訂正発明55と、甲4−1発明との各一致点及び各相違点は、次のとおりである。
5 a 本件訂正発明13と甲4−1発明〔一致点〕「抗体(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕10 (相違点1)抗体が、本件訂正発明13では、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4−1発明では、そのような特定が15 ない点。
(相違点2)本件訂正発明13は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、その具体的なステップが特定されているのに対して、
甲4−1発明は、そのような特定がない点。
20 b 本件訂正発明31と甲4−1発明〔一致点〕「抗体(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕25 (相違点1)本件訂正発明31は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出す9る方法であって、その具体的なステップが特定されているのに対して、
甲4−1発明は、そのような試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法ではなく、具体的なステップが特定されていない点。
(相違点2)5 本件訂正発明31では、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する際に利用する抗体が、さらに「PIVKA−IIを特異的に認識して結合するもの」であるのに対し、甲4−1発明は、この点が明記されていない点。
c 本件訂正発明40と甲4−1発明10 〔一致点〕「結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕15 (相違点1)単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明40では、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4−1発明20 では、そのような特定がない点。
(相違点2)本件訂正発明40では、「結合性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、薬剤組成物。」であるが、甲4−1発明では、そのような特定がない点。
25 d 本件訂正発明52と甲4−1発明〔一致点〕10「結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕5 (相違点1)単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明52では、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4−1発明10 では、そのような特定がない点。
(相違点2)本件訂正発明52では、「結合性タンパク質を含有する容器を含む、
試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキット。 であるが、
」 甲4−1発明では、そのような特定がない点。
15 e 本件訂正発明55と甲4−1発明〔一致点〕「抗体(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
〔相違点〕20 (相違点1)抗体が、本件訂正発明55では、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4−1発明では、そのような特定がない点。
25 (相違点2)本件訂正発明55では、
「抗体を含む検出試薬、ならびに試験試料中11のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するための指示書を含む、試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキット。」であるのに対し、甲4−1発明では、そのような特定がない点。
5 (エ) 本件審決が認定した、本件訂正38と甲4−2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、マウスを、抗原で、前記マウスが10 前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集し、精製するステップ、
ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびに抗原に結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、結合性タンパク質を発現するハイブ15 リドーマ細胞系統を生成する方法。」〔相違点〕(相違点1)本件発明38では、抗原がPIVKA−IIのアミノ酸1−17を含むものであるのに対し、甲4−2発明は、プロテインCである点。
20 (相違点2)本件発明38では、免疫化するマウスがGANPマウスであるのに対し、甲4−2発明は、BALB/cマウスである点。
(相違点3)本件発明38では、マウスの脾臓から収集する細胞が「8つ」である25 ことを特定しているのに対し、甲4−2発明は、そのことが明記されていない点。
12イ 甲1−1発明(ア) 本件審決は、甲1には以下の発明(甲1−1発明)が記載されていると認定した。
「試験試料中のデス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)を検5 出する方法であって、a)試験試料を、デス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17−27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU−3と、接触させるステップ、b)西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを、MU−3とデス−γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)10 の複合体に、加えるステップ、ならびにc)西洋ワサビペルオキシダーゼによって生成される蛍光を測定し、試験試料中のデス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出するステップを含む、試験試料中のデス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法。」15 (イ) 本件審決が認定した、本件訂正発明22、45、68及び71と甲1−1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
a 本件訂正発明22と甲1−1発明〔一致点〕「試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、試験20 試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA―II25 抗原を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA−I抗原を検出する方法。」13〔相違点〕第2の抗体が、本件訂正発明22では、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合するのに対して、甲1−1発明では、ウサギ抗プ5 ロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。
b 本件訂正発明45と甲1−1発明〔一致点〕10 「試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標15 識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA―II抗原を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法。」〔相違点〕(相違点1)20 第2の抗体が、本件訂正発明45では、PIVKA−II抗原のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを有し、PIVKA−IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1−1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA−II抗原のアミノ酸1−13に結合する抗原25 結合性ドメインを有し、PIVKA−IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。
14(相違点2)本件訂正発明45は、予め決定されたレベルを超えるPIVKA−II抗原の量が、患者におけるHCCまたは肝癌の存在を示す、シグナルの強度を測定することによって生物学的試料中に存在するPIV5 KA−II抗原の量を測定するステップを含む、HCCまたは肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する方法であるのに対して、甲1−1発明は、そのようなステップを含む方法ではない点。
c 本件訂正発明68と甲1−1発明10 〔一致点〕「PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する結合性タンパク質。」〔相違点〕(相違点1)15 本件訂正発明68は、試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキットであるのに対して、甲1−1発明は、そのようなキットではない点。
(相違点2)本件訂正発明68では、使用されるもう一つの抗体が、PIVKA20 −IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1−1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する25 ことが特定されていない点。
d 本件訂正発明71と甲1−1発明15〔一致点〕「PIVKA−IIのアミノ酸1−33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含む結合性タンパク質」を使用する、試料中のPIVKA−IIの量を決定する方法である点。
5 〔相違点〕本件訂正発明71では、使用されるもう一つの抗体が、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1−1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特10 定されるのみで、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。
ウ 甲11発明(ア) 本件審決は、甲11には以下の七つの発明が記載されていると認定し15 た(以下、順に「甲11−1発明」ないし「甲11−7発明」という。 。
)a 甲11−1発明「精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P−16。」b 甲11−2発明20 「血清試料を、精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P−16と、Ru標識P−11モノクローナル抗体を加え、30℃で9分間反応させるステップ、およびRuの発光量を測定し、検体中のPIVKA−IIを検出する方法。」25 c 甲11−3発明「血清試料中のPIVKA−IIを検出する方法であって、試料を、
16抗PIVKA−IIモノクローナル抗体(MU−3)と、精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P−16とを使用する二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法によって検出する方法。」5 d 甲11−4発明「PIVKA−IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、a)BALB/Cマウスを、クマジン血漿より精製したPIVKA−IIで、皮下に2週間間隔で4回投与して免疫化するステップ、b)マウスの脾臓から脾臓細胞を得るステッ10 プ、c)ハイブリドーマを生成するために、脾臓細胞と骨髄腫細胞と融合するステップ、ならびにd)PIVKA−IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択するステップを含む方法。」e 甲11−5発明「精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産さ15 れたモノクローナル抗体P−16を含む測定試薬。」f 甲11−6発明「血清試料中のNX−PVKAを検出して肝がんを判定する方法であって、試料を、抗PIVKA−IIモノクローナル抗体(MU−3)と、精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産20 されたモノクローナル抗体P−16とを使用する二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法によって検出する方法。」g 甲11−7発明「抗PIVKA−IIモノクローナル抗体(MU−3)と、精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産されたモノク25 ローナル抗体P−16を含む測定試薬。」(イ) 本件訂正発明3と甲11−1発明、本件訂正発明13と甲11−2発17明、本件訂正発明22と甲11−3発明、本件訂正発明31と甲11−2発明、本件発明38と甲11−4発明、本件訂正発明40と甲11−5発明、本件訂正発明45と甲11−6発明、本件訂正発明52と甲11−5発明、本件訂正発明55と甲11−5発明、本件訂正発明68と5 甲11−7発明及び本件訂正発明71と甲11−3発明との各一致点及び各相違点は、次のとおりである。
a 本件訂正発明3と甲11−1発明〔一致点〕「単離された結合性タンパク質。」10 〔相違点〕本件訂正発明3では、単離された結合性タンパク質が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11215 59で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」ものであるのに対し、甲11−1発明は、この点が明記。
されていない点。
b 本件訂正発明13と甲11−2発明〔一致点〕20 「試験試料を抗体と、抗体−抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、前記抗体−抗原複合体の存在が前記試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、前記抗体−抗原複合体の存在を検出するステップ、を含む、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法。」25 〔相違点〕本件訂正発明13では、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出18する際に使用する抗体が、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニ「ストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドー5 マにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」ものであるのに対。
し、甲11−2発明は、この点が明記されていない点。
c 本件訂正発明22と甲11−3発明〔一致点〕「試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、試験10 試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体、及び、第2の抗体を使用する方法。」〔相違点〕(相違点1)本件訂正発明22は、第2の抗体が、
「プロトロンビン誘導ビタミン15 KアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」もの。
であるのに対し、甲11−3発明は、この点が明記されていない点。
20 (相違点2)具体的な検出方法について、本件訂正発明22は、試験試料を第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を、第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によるシグナルを測定してPIVKA−II抗原を検出す25 るステップであることを特定しているのに対して、甲11−3発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法であることの19みが特定されている点。
d 本件訂正発明31と甲11−2発明〔一致点〕「試験試料を、抗体を使用し、試験試料中のPIVKA−II抗原を5 検出する方法。」〔相違点〕(相違点1)本件訂正発明31は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する際に使用する抗体が、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニス「10 トII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、
受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」ものであるのに対し、

甲11−2発明は、この点が明記されていない点。
15 (相違点2)具体的な検出方法について、本件訂正発明31は、試験試料を、検出可能なシグナルを生成することができる検出可能な標識に付いている、PIVKA−IIレファレンス抗原、及びPIVKA−II抗原に対する抗体と、PIVKA−IIレファレンス抗原/抗体複合体を20 形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、検出可能な標識によって生成されるシグナルを検出するステップ、試験試料中に検出されるPIVKA−II抗原の量が、抗体に結合しているPIVKA−IIレファレンス抗体の量に逆比例するステップを含むのに対して、甲11−2発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免25 疫学的測定方法であることのみが特定されている点。
e 本件発明38と甲11−4発明20〔一致点〕「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、マウスを、抗原で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、
5 免疫化するステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集するステップ、
ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびに抗原に結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法。」10 〔相違点〕(相違点1)マウスを免疫化するステップにおいて、本件発明38では、PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原を使用するのに対して、甲11−4発明では、クマジン血漿より精製したPIVKA−IIを抗15 原として使用する点。
(相違点2)本件発明38では、免疫化するマウスがGANPマウスであるのに対し、甲11−4発明は、BALB/cマウスである点。
(相違点3)20 本件発明38では、マウスの脾臓から得る細胞が「8つ」であり、
さらに精製するステップを含むことが特定されているのに対し、甲11−4発明は、そのことが明記されていない点。
f 本件訂正発明40と甲11−5発明〔一致点〕25 「結合性タンパク質を含む薬剤組成物。」〔相違点〕21(相違点1)本件訂正発明40は、結合性タンパク質が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認5 識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
ものであるのに対し、甲11−5発明は、この点が明記されていない点。
(相違点2)10 本件訂正発明40では、薬剤組成物に含まれるものが、薬学的に許容される担体を含むのに対して、甲11−5発明ではそのような特定がない点。
g 本件訂正発明45と甲11−6発明〔一致点〕15 「肝癌を有することが疑われる患者における肝癌の存在を決定する方法であって、試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体、及び、第2の抗体を使用してPIVKA−II抗原の量を測定する方法。」〔相違点〕20 (相違点1)本件訂正発明45は、第2の抗体が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定される25 ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」もの。
であるのに対し、甲11−6発明は、この点が明記されていない点。
22(相違点2)具体的な検出方法について、本件訂正発明45は、試験試料を第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を、第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出5 可能な標識によるシグナルを測定してPIVKA−II抗原を検出するステップであることを特定しているのに対して、甲11−6発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法であることのみが特定されている点。
h 本件訂正発明52と甲11−5発明10 〔一致点〕「結合性タンパク質を含有する、試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキット。」〔相違点〕(相違点1)15 本件訂正発明52は、結合性タンパク質が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
20 ものであるのに対し、甲11−5発明は、この点が明記されていない点。
(相違点2)本件訂正発明52が、結合性タンパク質を含有する容器を含むものであるのに対して、甲11−5発明は容器を含むものであることが特25 定されていない点。
i 本件訂正発明55と甲11−5発明23〔一致点〕「抗体を含む、試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキット。」〔相違点〕5 (相違点1)本件訂正発明55は、検出試薬中の抗体が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定10 されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」。
ものであるのに対し、甲11−5発明は、この点が明記されていない点。
(相違点2)本件訂正発明55が、「試験試料中のPIVKA−IIの量を検出15 および/または定量するための指示書を含む」ものであるのに対して、
甲11−5発明は、そのような指示書を含むものであることが特定されていない点。
j 本件訂正発明68と甲11−7発明〔一致点〕20 「(PIVKA−IIに対する)第1の結合性タンパク質、及び、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する第2の結合性タンパク質を含む、試験試料中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するためのキット。」〔相違点〕25 本件訂正発明68は、第1の結合性タンパク質が、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸241−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」ものであるのに対し、甲11−7発明は、この点が明記され。
5 ていない点。
k 本件訂正発明71と甲11−3発明〔一致点〕「少なくとも2つの異なる結合性タンパク質の使用を含み、前記結合性タンパク質の各々が、PIVKA−IIのアミノ酸1−33のサブ10 セットに特異的に結合する抗原結合性部分を含み、前記結合性タンパク質の各々の抗原結合性部分が、PIVKA−IIのアミノ酸1−33の異なるサブセットに結合する、試料中のPIVKA−IIの量を決定するための方法。」〔相違点〕15 本件訂正発明71は、結合性タンパク質の少なくとも一つが、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクロー20 ナル抗体を除く) 」ものであるのに対し、甲11−3発明は、この点。
が明記されていない点。
5 原告の主張する取消事由? 取消事由1本件訂正発明3の甲4−1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤25 り? 取消事由225本件各訂正発明の甲4−1発明、甲1−1発明又は甲4−2発明に対する進歩性の有無に関する判断の誤り? 取消事由3本件各訂正発明と甲11に記載された発明との同一性(拡大先願との同一5 性)に関する判断の誤り? 取消事由4本件各訂正発明の明確性要件違反の有無に関する判断の誤り? 取消事由5本件各訂正発明のサポート要件違反の有無に関する判断の誤り10 ? 取消事由6本件各訂正発明の実施可能要件違反の有無に関する判断の誤り第3 当事者の主張1 取消事由1(本件訂正発明3の甲4−1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り)について15 〔原告の主張〕? 本件審決は、甲4−1発明の抗体H−11は、PIVKA−IIの1−12位にも結合するものであって、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」との特性を有さないことを理由として、本件訂正発明3が甲4−1発明に対して新規性を有すると判断したが、この判断には20 誤りがある。
上記の誤りは、本件審決における本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の解釈の誤りに由来する。
本件審決は、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位の脱カルボキシル化されたグルタミン酸残基(Glu)が、プロトロンビンの6位及び725 位のグルタミン酸残基(Gla)とは異なる特異的な構造部位であるといえ、
訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」は、当該特異的な構造部位に26より「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであると理解できると指摘しており、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の意味は、
「PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluが、プロトロンビンの6位又は7位のGlaとは異なる特異的な構造部位である」ことを5 前提にした解釈をしている。
しかし、本件訂正発明3は、PIVKA−IIの「アミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」と規定しているだけであり、アミノ酸1−13は6位及び/又は7位がGluであるPIVKA−IIに限定されていることはなく、結合又は特異10 性について6位及び/又は7位がGluでなければならないと規定していることもない。
本件明細書等の段落【0002】には、
「タンパク質プロトロンビンIIは(中略)、ビタミンKの存在下、合成後修飾を受け、GLA−ドメインにおける10個のグルタミン酸残基(GLA)がg−カルボキシグルタミン酸にカ15 ルボキシ化されている。カルボキシ化のプロセスは、プロトロンビンがPIVKA−II(ビタミンK欠乏時誘導蛋白)に変換される病状およびプロセスにおいて異常であり、不完全である。」と記載されている。また、PIVKA−IIは、本件明細書等の段落【0028】において、
「PIVKA−IIタンパク質のGLAドメインは、10個のGLAアミノ酸を含む、アミノ酸20 1−46(またはプロトロンビン配列の44−88)からなる。PIVKAタンパク質は、脱炭酸されたGLAの位置および数に関して変化する複数の形態において存在する。」と定義されている。
このように、本件明細書等が定義する「PIVKA−II」の用語は、Glaドメイン中の10個のGla残基のうち少なくとも一つでも脱炭酸され25 たもの、すなわちGlu残基を有する全ての異常プロトロンビン種を含む。
PIVKA−IIのアミノ酸の中でγ−カルボキシル化できるアミノ酸位置27は6位及び7位であるから、
「PIVKA−II」には、以下の四つのタイプが含まれることになる(以下、それぞれ「タイプ(i)「タイプ(ii)」 」などという。 。
)(i)6位及び7位にGluを有し、他の部位はGlu及び/又はGlaで5 あるPIVKA−II(ii)6位にGluを、7位にGlaを、それぞれ有し、他の部位はGlu及び/又はGlaであるPIVKA−II(iii)6位にGlaを、7位にGluを、それぞれ有し、他の部位はGlu及び/又はGlaであるPIVKA−II10 (iv)6位及び7位にGlaを有し、他の部位はGlu及び/又はGlaであるが、少なくとも一つはGluであるPIVKA−II本件明細書等の記載に基づけば、タイプ(iv)が排除される理由はなく、
本件審決におけるPIVKA−IIに関する前記解釈は誤りである。
そして、本件明細書等の記載及び当業者の技術常識に基づけば、
「PIVK15 A−IIを特異的に認識して結合する」とは、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に存在するエピトープを認識してPIVKA−IIに結合することにほかならない。
すなわち、本件明細書等の段落【0035】には、
「本明細書で用いられる『結合』『特異的結合』または『特異的に結合する』の語は、抗体、タンパ、
20 ク質またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用は化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基もしくはエピトープ)の存在に依拠することを意味し・・」とあり、
「特異的に結合する」とは、PIVKA−IIのエピトープの存在に依存して結合することであると定義している。
「特異的に認識して」の「認識して」については、本件明細書等に明示の定25 義はないが、当業者の技術常識では、
「特異的に認識して」の「認識」は結合プロセスの一部として含まれており、
「特異的に結合する」と同じ意味を有す28る。
また、一般に、抗原のエピトープは「6〜10個のアミノ酸残基より成るペプチド部分」であり、エピトープが抗原分子上の抗原抗体反応の特異性を決定している構造であることは技術常識である(甲15)。
5 そして、甲4−1発明の抗体H−11は、6位及び7位にGlaを有するPIVKA−IIのアミノ酸にもプロトロンビンのアミノ酸1−13にも結合する。そして、6位及び7位にGlaを有するPIVKA−IIのアミノ酸にも結合するということは、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の範囲内にエピトープがあるからであり、エピトープに結合するということは、そ10 の部位を「特異的に認識して結合する」ものであると理解するのが、本件明細書等の記載及び技術常識に沿っている。
したがって、本件明細書等の記載及び当業者の技術常識に基づいて解釈すれば、甲4−1発明の抗体H−11は「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるから、本件訂正発明3に係る結合性タンパク質は、
15 甲4−1発明の抗体H−11と区別することはできず、抗体H−11を含むものであるから、本件訂正発明3は甲4−1発明と同一であって、新規性を有さない。
? 仮に、審決の認定に沿って、
「特異的に認識して結合する」という用語に関し、反応性を入れて解釈したとしても、甲4の抗体H−11は本件訂正発明20 3の「結合性タンパク質」に該当するから、本件訂正発明3は新規性を有さない。
すなわち、甲18(Blood, Vol. 74, No.7 (1989)、2418〜2425頁)図3Aにおいて、血中のカルシウムイオン濃度である1.8mM程度の条件下での甲4−1発明の抗体H−11の結合性について推論すると、抗体H−25 11は、血液中に含まれる程度の「通常の」カルシウムイオン濃度の条件下で、PIVKA−IIとプロトロンビンとの間で反応性が明確に異なること29になるから、抗体H−11は「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」に該当するというべきである。
被告は、甲18の記載を参酌して甲4−1発明の抗体H−11の反応性を解釈することは許されないと主張する。しかし、刊行物に、発明の主題に係5 るものの属性が示されていない場合に、当業者が再現実験によりその属性を確認できる場合は、刊行物の記載とその再現実験により確認される属性も含めて、
「広義の刊行物記載発明」と評価することができる(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10324号事件判決参照)。本件において、甲18は、甲4を引用してH−11の同一性を示していることから、その実験は甲10 4より後に行われており、当業者が再現実験によりその属性(H−11の反応性)を確認できたものといえる。H−11の反応性は、H−11自体の属性であり、再現実験によりH−11を作製すれば、その属性である反応性は容易に確認し得た。したがって、甲18の記載を参酌して、甲4−1発明の抗体H−11の反応性を解釈することは許される。
15 〔被告の主張〕? 本件審決(審決書83頁16行〜84頁28行)は、本件訂正後の請求項3の文言及び本件明細書等(段落【0028】、
【0029】 の記載を踏まえ、
)本件訂正発明3の「結合性タンパク質」とは、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位により「PIVKA−I20 Iを特異的に認識して結合する」ものと正しく説示したものであって、この内容に誤りはない。このことは、本件訂正発明3の解決課題及び解決手段について述べた本件明細書等の段落【0001】 【0002】 【0005】及、 、
び【0028】によっても裏付けられる。
? 取消事由1に関する原告の主張は、本件訂正発明3の内容を誤って解釈し25 た上で、本件訂正発明3は甲4−1発明と同一であるとするものであって、
理由がない。
30「甲4には、・・・抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されていてもされていなくてもH−11抗体は認識することが記載されている」 審(決書90頁22〜26行目)のであって、抗体H−11は、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものとは認められない5 から、甲4−1発明の抗体H−11は、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」と同一であるとは認められない。
? 本件訂正発明3の新規性を検討するに当たり、主引例である甲4とは別の引例である甲18の記載を参酌することは許されず、前記〔原告の主張〕?の主張は前提において失当である。
10 また、甲18に記載されているのは、カルシウムイオン濃度10mMの条件下でのH−11のPIVKA−II等への結合性であって、カルシウムイオン濃度1.8mMの条件下でのH−11のPIVKA−II等への結合性については何ら記載されていない。
仮に、カルシウムイオン濃度1.8mMの条件下でのH−11の反応性を15 考慮したとしても、H−11は本件訂正発明3の「結合性タンパク質」と同一とは認められない。すなわち、甲18によれば、H−11のプロトロンビン(正確には、「プロトロンビンとカルシウムイオンの複合体」)に対する反応性とPIVKA−IIに対する反応性の違いは、カルシウムイオンに起因するコンフォメーション変化及びそれによる抗原性部位の被覆が生じるか否20 かによるものであって、H−11が、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別することによるものではない。
2 取消事由2(本件各訂正発明の甲4−1発明、甲1−1発明又は甲4−2発明に対する進歩性の有無に関する判断の誤り)について25 〔原告の主張〕? 本件訂正発明3について31ア 本件審決は、本件訂正発明3と甲4−1発明との相違点を第2の4?ア(イ)のとおり認定した上で、甲4の全体をみても、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することは記載されていないし、甲1、5〜10にも、当該抗体に関する記載や示唆5 が見当たらないから、甲4−1発明における「マウスモノクローナル抗体H−11」を、PIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けられるとはいえないと判断した。
また、本件審決は、甲18を参酌しても、甲4に記載された抗体H−11が、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の6位及び/又は7位における10 特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ものであるとは認められないとも判断した。
しかし、甲4には、
「脱カルボキシル化タンパク質でのデータによると、
グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化は抗体認識に必要とされないことを示す。」との記載があり(甲4の6262頁14〜16行目)、この記15 載は、抗体H−11は、プロトロンビンのみならず、脱カルボキシル化タンパク質であるPIVKA−IIにも結合するが、抗体認識にはグルタミン酸残基のγ−カルボキシル化(Gla)でなくGluでもよいことを述べている。
また、甲4の図8(別紙4「文献の記載」1?キ)は、H−11のプロ20 トロンビンに結合する箇所を示しており、6位と7位のアミノ酸残基であるグルタミン酸残基を含むエピトープを特異的に認識して結合する抗原結合性部分であることを示している。
上記2点を合わせ読むと、@H−11はプロトロンビンのみならず、プロトロンビンの脱カルボキシル化タンパク質であるPIVKA−IIに25 も結合すると認められ、AH−11が特異的に認識して結合するのに必要な箇所は6位と7位のアミノ酸残基であるグルタミン酸残基を含む領域32であることが甲4に記載されているといえ、B甲4には、H−11の抗原結合性部分が本件訂正発明3に係る「アミノ酸1−13」に結合するとの文言上の記載はないが、6位と7位のアミノ酸残基を含む6ないし10個のアミノ酸残基よりなるエピトープに結合するのであるから、これは同時5 に「アミノ酸1−13」にも結合するというべきである。
そして、前記1〔原告の主張〕?のとおり、抗体H−11がPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合するということは、アミノ酸1−13の中に存在するエピトープ部分に特異的に結合することを意味する。
したがって、甲4−1発明に係る抗体H−11が、PIVKA−IIに10 も特異的に認識して結合し、その結合箇所が6位と7位のアミノ酸残基を含む6ないし10個のアミノ酸残基よりなるエピトープ部分であり、これを含むアミノ酸1−13に結合するものであることは、甲4の記載から十分に示唆され、実質的にその特定がされている。
そうすると、甲4−1発明は、本件訂正発明3と実質的に相違する点は15 なく、仮に相違点があるとしても、甲4−1発明に係る当業者であれば、
抗体H−11をPIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることは、容易に動機付けられる。
イ 仮に、本件審決は、
「特異的に認識して結合する」の用語に関し、本件審決のように反応性を考慮に入れて解釈したとしても、6位及び7位の構造20 が特異的な構造部位であることは、甲4−1発明に記載されているに等しいか、あるいは容易に想到し得る。
すなわち、甲18の図3Aの左図に係るプロトロンビンの1−13位と、
右図に係る脱カルボキシル化プロトロンビン(PIVKA−II)の1−13位は、抗体H−11の結合する部位であるが、当該部位で異なる残基25 は6位及び7位のものであり(プロトロンビンではGla、PIVKA−IIではGluである。 、この違いが図3Aの左図と右図での反応性の違)33いとなって検出されていると理解される。
したがって、甲18を参酌することで、甲4−1発明に係る抗体H−11が、6位及び7位の残基の違いによる異なる反応性、すなわち所定の反応特異性を示すことは、容易に理解されることである。
5 ウ 本件訂正発明3の効果は、本件訂正発明3の一つの実施例である抗体6H6において、ヒト血清中のPIVKA−IIを検出できるという程度のものでしかなく、抗体として当然に予測されるものに過ぎない。
エ したがって、本件訂正発明3は、甲4−1発明に基づいて、出願当時の技術常識、さらに要すれば甲18を参酌することで、当業者が容易に想到10 し得たものである。
? 本件訂正発明22について本件訂正発明22は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法の発明である。
本件審決は、甲1−1発明を主引例、甲4発明を副引例として、本件訂正15 発明22と甲1−1発明との相違点を第2の4?イ(イ)aのとおり認定した上で、甲4には「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することの記載はないから、甲1−1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けら20 れるとはいえないと判断した。
本件審決の上記判断は、要するに本件訂正発明3での指摘事項を繰り返しているにすぎず、前記?のとおり、甲4における抗体H−11は、PIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体であり、あるいは甲18を参酌することでPIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体で25 あると当業者が容易に認識するものであるから、甲1−1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA−IIに対して特異的34に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けられる。
したがって、本件訂正発明22について、進歩性を肯定する根拠は何ら存在しない。
? 本件発明38について5 本件発明38は、ハイブリドーマ細胞系統を生成する方法の発明である。
本件審決は、本件発明38と甲4−2発明の相違点を第2の4?ア(エ)のとおり認定した上で、相違点1について、甲4には、PIVKA−II抗体を取得しようとする技術的思想はなく、PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原でマウスを免疫化することは当業者が容易に想到できたもので10 はないと判断した。
しかし、甲4には、プロテインCを用いて免疫化することで、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質(モノクローナル抗体H−11)を取得したことの開示がある。当業者であれば、抗体H−11とは別のPIVKA−II抗体を取得しようとす15 ることは容易に動機付けられることであり、その際に、取得しようとする抗体に合わせて抗原を適宜選択し使用することは一般的なことであり、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗体を取得するには「PIVKA−IIのアミノ酸1−13を含む抗原」を使用すればよいので、そのような抗原として、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」でマウスを20 免疫化することは、当業者が容易に想到できたものである。
したがって、甲4−2発明において、プロテインCに代えて「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」を使用することは、当業者が適宜行うことであり、格別の困難性はない。
また、甲4の標題には「数種類のヒトビタミンK依存性タンパク質の保存25 されたエピトープ」とあるから、プロテインC以外のヒトビタミンK依存性タンパク質でマウスを免疫化することは十分に動機付けられることであり、
35得られたハイブリドーマの中から、プロテインC以外のヒトビタミンK依存性タンパク質に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマを選択することも十分に動機付けられる。
したがって、本件発明38について進歩性は認められない。
5 ? その余の本件各訂正発明についてア 本件訂正発明13、31、40、52及び55に関する本件審決の判断は、その進歩性を肯定する根拠として、本件訂正発明3での指摘事項を単に繰り返しているだけにすぎず、本件訂正発明45、68及び71に関する本件審決の判断は、本件訂正発明22と同様の理由で進歩性を肯定して10 いるものであって、いずれも誤りである。
イ その余の本件各訂正発明は、前記?から?まで及び?アに掲げられた請求項の従属項であるから、同様に進歩性は否定される。
ウ 本件訂正発明68、69、71、及び72について、原告は本件無効審判に係る審判請求書(甲23)において、甲4発明を主引例とし、これに15 甲1、甲6発明を副引例として参酌することで進歩性を欠く旨を主張した。
しかしながら、本件審決は、上記各訂正発明に関し、主引例と副引例を入れ替えて、甲1を主引例、甲4を副引例とする、原告の全く主張していない理由に対し、進歩性欠如の理由がないとの判断を下している。
上記各訂正発明についての審決の判断は、原告の主張する無効理由に対20 するものではないため、審理不尽の瑕疵ないしは判断遺脱の違法がある。
〔被告の主張〕? 本件訂正発明3についてア 甲4には、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に対して「特異的に認識して結合する」抗体を取得しようとする技術的思想については、記載も25 示唆もない。このことは、原告が副引例として挙げる甲1及び甲5ないし10も同様である。
36イ 甲18を参酌することができないことは、前記1〔被告の主張〕?のとおりである。
? 本件発明38について甲4に接した当業者が、H−11以外の抗体を取得しようと動機付けられ5 ることはなく、まして、PIVKA−IIのアミノ酸1−13という具体的なタンパク質を標的として、それに結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を取得しようと動機付けられることはない。
また、プロテインC以外のタンパク質でマウスを免疫化すること、得られたハイブリドーマの中から、プロテインC以外のタンパク質に結合する抗原10 結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマを選択することを動機付けられることもない。
? その余の本件各訂正発明についてア 上記?と同様に、その余の本件訂正発明にも進歩性欠如の無効理由は存しない。
15 イ 本件審決は、本件訂正発明68の進歩性欠如の有無の判断に先立ち、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の意義並びに甲4、甲1及び甲6の記載内容を詳細に検討した上で、上記進歩性欠如の有無の判断において、甲4、甲1及び甲6を含む「いずれの甲号証にも、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の6位及び/又は7位における特異的な構造を20 認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない」ことから、
「甲4には、H−11が『PIVKA−IIを特異的に認識して結合する』抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から『PIVKA−IIを特異的に認識して結合する』も容易に想到し、本件訂正発明68も容易想到である」との請求人(原告)25 の主張は失当であると説示している。
以上のとおり、本件審決は、原告主張の進歩性欠如の無効理由が成り立37たないことを説示しており、本件訂正発明68の進歩性欠如の無効理由について審理不尽又は判断遺脱はない。
本件訂正発明69、71及び72の進歩性欠如の無効理由にしても、本件訂正発明68と同様、本件審決に審理不尽又は判断遺脱はない。
5 審決予告(乙7)の84頁以下では、本件訂正前の請求項68に係る発明について、甲1−1発明に基づき進歩性を欠くと説示されている。この審決予告後に被告が訂正請求をしたことを受けて、原告は審判事件弁駁書を提出したが、審決予告の上記説示について審理不尽又は判断遺脱の違法性があるとは主張せず、本件訂正発明68が甲4−1発明に基づき進歩性10 を欠くとの主張だけをしている。このことは、本件審決が甲1−1発明に基づく進歩性欠如の無効理由についても判断することが原告に対する不意打ちとならないことを原告が自認していたことの証左であり、本件訴訟に至って原告が本件審決の審理不尽又は判断遺脱を主張することはできない。
15 3 取消事由3(本件各訂正発明と甲11に記載された発明との同一性(拡大先願との同一性)に関する判断の誤り)について〔原告の主張〕? 本件審決は、甲11出願の優先権に関し、甲11には実施例1ないし4の記載がある一方、甲11出願の優先権明細書である甲12(特願2010−20 147784号。以下「先願明細書」という。)には、実施例1ないし3は記載されているが、実施例4が記載されておらず、P−16モノクローナル抗体及びP−11モノクローナル抗体のエピトープに関する記載も存しないから、実施例4に記載されている箇所は、甲11発明(先願発明)の認定に組み入れることはできないと判断した。
25 しかし、P−16モノクローナル抗体及びP−11モノクローナル抗体のエピトープに関する記載が先願明細書にないとしても、エピトープに関する38事項は、各モノクローナル抗体に内在している特性であって、当業者であれば甲11出願の出願時において容易に知り得た情報である。
したがって、実施例4に記載されているエピトープに関する事項は、先願明細書に明示の記載はないものの、各モノクローナル抗体をそのような所定5 のエピトープを内在した抗体として認定すべきであり、本件審決の上記判断は誤りである。
? 本件審決は、甲11−1発明から甲11−7発明までを、前記第2の4?ウ(ア)のとおり認定した。
しかし、甲11には、PIVKA−IIと反応する2種の抗体を用いた二10 抗体サンドイッチ法によりPIVKA−IIを測定することが開示され、使用される抗体はPIVKA−IIに特異的な抗体であり、モノクローナル抗体が好適であること、このような抗体を得るにはPIVKA−IIを免疫原にして、公知の方法によりハイブリドーマを作製し、所定のハイブリドーマ選択基準により所望のハイブリドーマを選択し、公知の方法によりPIVK15 A−IIと反応するモノクローナル抗体を得ることが開示されている。そして、ハイブリドーマの一例として、FERM BP−11258で特定されるハイブリドーマ及びFERM BP−11259で特定されるハイブリドーマが記載され、抗体の一例として、これらのハイブリドーマから得られるP−11モノクローナル抗体及びP−16モノクローナル抗体が開示されて20 いる(甲11の明細書の段落【0010】 【0011】 【0015】 【00、 、 、
30】 【0031】 【0032】 【0038】〜【0044】 。これらは、
、 、 、 )先願明細書(甲12)にも記載されている(甲12の明細書の段落【0009】 【0010】 【0014】 【0025】 【0026】 【0027】 【0、 、 、 、 、 、
033】〜【0038】 。
)25 そうすると、甲11には、二抗体サンドイッチ法によるPIVKA−IIの測定に使用される2種の抗体として、
「モノクローナル抗体P−11」、
「モ39ノクローナル抗体P−16」のみが開示されているのではなく、モノクローナル抗体P−11、P−16をそれぞれ一例として含む、
「PIVKA−IIに特異的な抗体」が開示されていると読むのが相当である。
以上によれば、甲11−1発明は以下の「甲11−1’発明」のとおり認5 定されるべきである(下線部は本件審決の認定と異なる箇所である。 。
)〔甲11−1’発明〕「精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産される、モノクローナル抗体P−16を一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル抗体。」10 甲11−2発明、甲11−3発明、甲11−5発明ないし甲11−7発明についても、本件審決の認定中「モノクローナル抗体P−16」とある箇所を「モノクローナル抗体P−16を一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル抗体」に訂正した内容として認定すべきである。
? 本件訂正発明3と甲11発明の同一性15 ア 本件審決は、本件訂正発明3と甲11−1発明の一致点及び相違点を前記第2の4?ウ(イ)aのとおり認定した上で、@先願(優先)明細書(甲11、12)には、モノクローナル抗体P−16のエピトープはおろか、当該抗体の変性PIVKA−II、変性プロトロンビン、トロンビン、プロトロンビンフラグメント、Gla残基非含有ペプチドに対する反応性につ20 いても記載がないこと、A甲11−1の「モノクローナル抗体P−16」のエピトープは、プロトロンビンフラグメント1のN末端から5残基(配列番号14で表すaa1−5)の範囲であり、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合す25 る抗体が、甲11に記載されているに等しい事項であるとも認められないこと、及びB甲11−1発明の「モノクローナル抗体P−16」は、
「受託40番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより生産されるモノクローナル抗体」であり、当該抗体は本件訂正発明3から明示的に除かれていることから、前記相違点が先願(優先)明細書(甲11、
12)に記載され、又は記載されているに等しい事項であるとは認められ5 ず、本件訂正発明3が甲11−1発明と同一ではないと判断した。
イ しかし、@については、本件訂正発明3は、エピトープや「変性PIVKA−II、変性プロトロンビン、トロンビン、プロトロンビンフラグメント、Gla残基非含有ペプチドに対する反応性」を構成要件とする発明ではないから、本件訂正発明3の請求項に記載のない要件を持ち出して、
10 その記載の有無によって甲11−1との同一性を判断することは失当である。
ウ Aについては、甲11の記載(明細書の段落【0063】 【0066】、 、
【0067】【0069】、 )を総合すると、P−16のエピトープは、PIVKA−IIの1ないし5位(ANTFL)にあり、このエピトープを含15 むPIVKA−IIの1−16のペプチドに対し反応性を示したことから、P−16は、PIVKA−IIのアミノ酸1−13にも当然に結合するものであり、したがって、P−16はPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含む抗体であると理解される。
そして、前記?のとおり、P−16はPIVKA−IIに特異的に結合20 するモノクローナル抗体の一例であり、
「特異的に結合する」とは「特異的に認識して結合する」と同義であるから、P−16はPIVKA−IIを特異的に認識して結合する抗体である。甲11に記載のPIVKA−IIの1−16(配列番号4)における1−13位のアミノ酸配列は、本件明細書等に記載のPIVKA−IIの1−13位のアミノ酸配列と同一で25 あり、P−16と本件訂正発明3の抗体は、1−13位が同一配列であるPIVKA−IIに対して同様に反応性を示す抗体である。
41エ Bについては、甲11−1発明は前記?のとおり、P−16のみからなる発明ではないものと認定されるべき(甲11−1’発明)であるから、
P−16の抗体がピンポイントで除外されたとしても、P−16と同様にPIVKA−IIに特異的に結合する他のモノクローナル抗体まで除か5 れたわけでなく、本件訂正発明3の残余の部分において、甲11−1’発明と区別することはできない。したがって、本件訂正発明3においてP−16が除かれたことは、同一性を否定する根拠とならない。
オ さらに、本件審決は、甲11にはPIVKA−IIの1−5位に結合する抗体という技術的思想が記載されているとの原告の主張に対し、甲1110 の段落【0069】は甲11出願の先願明細書(甲12)に記載がないから優先権主張の利益を受けることができないとか、先願明細書に記載されていたとしても、本件訂正発明3の結合性タンパク質は、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合するものであるから、1−5位に結合する抗体とは技術的思想15 が異なるなどと指摘する。
しかし、抗体に本質的に内在するエピトープに関して優先権の有効性が問題とならないことは前記?のとおりであり、「6位及び/又は7位における特異的な構造」を理由とする指摘は、本件訂正発明3に記載のない事項であって、請求項の記載に基づかない指摘であるから、失当である。
20 カ 以上を総合すると、本件訂正発明3は甲11−1’発明と同一である。
? 本件発明38と甲11発明の同一性本件審決は、本件発明38と甲11−4発明の一致点及び相違点を前記第2の4?ウ(イ)eのとおり認定した上で、少なくとも相違点1(マウスを免疫化するステップにおいて、本件発明38では、PIVKA−IIのアミノ酸25 1−17を含む抗原を使用するのに対して、甲11−4発明では、クマジン血漿より精製したPIVKA−IIを抗原として使用する点。 は、
) 課題解決42のための具体化手段における微差(周知技術慣用技術の追加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえないから、両者は実質同一であるとはいえず、本件発明38は甲11−4発明と同一ではないと判断した。
5 しかし、「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」とは、「PIVKA−IIのアミノ酸1−17からなる抗原」ではなく、
「PIVKA−IIのアミノ酸配列として1−17の部分を含んでいる抗原」と読むのが自然であり、これはPIVKA−II自体をも包含するものである。したがって、
甲11−4発明における「PIVKA−II抗原」は本件発明38の「PI10 VKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」の一例といえるから、実質的な相違点であるとはいえない。
また、取得しようとする抗体に合わせて抗原を適宜使用することは周知であるので、甲11−4発明において、PIVKA−II抗原ではなく、PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原として使用することは、甲1115 −4発明に対する周知技術の付加、削除、転換等に当たる。
そして、甲11−4発明により得られるP−16モノクローナル抗体は、
アミノ酸1−16のペプチドに反応性を示すものであり(甲11の段落【0067】参照) PIVKA−II抗原もPIVKA−IIのアミノ酸1−1、
7を含む抗原も、エピトープ部分を共通に含む抗原であるから、新たな効果20 を奏するものではない。
したがって、本件発明38は、甲11−4発明と同一である。
? その余の本件各訂正発明についてア 本件審決は、本件訂正発明13、22、31、40、45、52、55、
68、71と甲11発明との相違点を前記第2の4?ウのとおり認定した25 上で、本件訂正発明3の場合と同様の理由により、相違点については先願明細書に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認め43られないとして、甲11発明と同一ではないと判断した。
しかし、本件訂正発明3と甲11発明との同一性に関する本件審決の判断が失当であることは前記?のとおりであり、上記各訂正発明も先願発明と同一である。
5 イ その余の本件各訂正発明については、本件各訂正発明3又は上記アに掲げた各訂正発明の従属項であるところ、本件審決は、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであることを理由に、先願発明と同一でないと判断しているが、前記?及び上記アと同様、本件判断は誤りである。
10 ? したがって、本件各訂正発明は、先願発明と同一であり、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、同法123条1項2号に該当する。
〔被告の主張〕? 先願発明の認定について15 甲11発明(先願発明)となり得るのは、甲11出願に係る優先権明細書である先願明細書(甲12)に記載されている事項、及び、先願明細書に記載されているに等しい事項から把握される発明である。先願明細書に記載されていない、甲11の実施例4中のモノクローナル抗体P−16のエピトープに関する記載は、先願発明の認定に組み入れることはできない。
20 原告は、先願明細書に、モノクローナル抗体P−16だけでなく、当該抗体を「一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル抗体」なるものが開示されていると主張するが、原告の主張する事実は認められない。
? 本件訂正発明3について25 本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、前記1〔被告の主張〕?に記載のとおりの意義である。
44しかし、先願明細書には、モノクローナル抗体P−16のエピトープはおろか、当該抗体の変性PIVKA−II、変性プロトロンビン、トロンビン、
プロトロンビンフラグメント、Gla残基非含有ペプチドに対する反応性についての記載もない。よって、甲11−1発明は、本件訂正発明3と実質的5 に同一とは認められない。
加えて、甲11の段落【0069】(実施例4中の段落)の記載を参酌してモノクローナル抗体P−16のエピトープを甲11−1発明の内容とすることができたとしても、モノクローナル抗体P−16のエピトープが、アミノ酸1−5の範囲であることが記載されているから、本件訂正発明3とは異な10 るものである。
さらに、甲11−1発明のモノクローナル抗体P−16は、
「受託番号FERMBP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体」であるところ、当該抗体は、本件訂正発明3から明示的に除かれている。
15 ? 本件発明38について本件発明38の「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」には、
PIVKA−IIの全長タンパク質(甲11−4発明の「クマジン血漿より精製したPIVKA−II」)は含まれないから、かかる構成は、甲11−4発明との実質的な相違点である。
20 また、本件発明38と甲11−4発明とは、課題が異なるから、抗原についての両発明の相違点は、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
? その余の本件各訂正発明についてその余の本件各訂正発明は、前記?と同様、先願発明と同一とは認められ25 ない。
4 取消事由4(明確性要件違反)について45〔原告の主張〕? 前記1〔原告の主張〕?のとおり、本件訂正発明3における「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」の用語に関する本件審決の解釈には誤りがあり、訂正後の請求項3等の「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合」5 し、かつ「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するという規定における「PIVKA−II」の用語の意義が多義的であり、当業者にとって一義的に明確に理解できることができない。
すなわち、本件訂正発明3では、単に「PIVKA−II」と記載されているに留まり、いずれかのタイプ(前記1〔原告の主張〕?に掲げた「タイ10 プ(i)」ないし「タイプ(iv) )に限定されることの規定はないが、タイ」プ(iv)のPIVKA−IIとプロトロンビンとはアミノ酸1−13の配列が同一であるので、アミノ酸1−13における結合性を区別することはできない。したがって、タイプ(iv)のPIVKA−IIは、本件訂正発明3に記載の「PIVKA−II」ではあっても、本件審決が認定するような15 「プロトロンビンのアミノ酸1−13により、置換されない特性を有する」とはいえず、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合」し、かつ「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するという、訂正後の請求項3が規定する「PIVKA−II」の意義は、PIVKA−IIのタイプの違いによって異なることになり、意義を一義的に理解することはできない。
20 被告らは、「本件訂正発明3の結合性タンパク質はHCCまたは肝癌の検出用に限定されたもの」との前提で、解決課題及び解決手段の観点から「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」という用語を解釈しており、本件訂正発明3は「結合性タンパク質」という化合物の発明であるにも関わらず、
意図的に特定用途に対する解決課題を取り込んで、請求項の記載に基づかな25 い被告ら独自の見解を主張している。
? 仮に、審決が認定したように、PIVKA−IIをタイプ(i)ないしタ46イプ(iii)のものと限定的に捉えたとしても、タイプ(ii)とタイプ(iii)のPIVKA−IIに対する結合特異性を測定した実施例はなく、
タイプ(i)と同様の結合特異性を示すとはいえないので、PIVKA−IIのタイプの違いによって意義が異なることになり、意義を一義的に理解す5 ることはできない。
また、仮に、タイプ(i)ないしタイプ(iii)のものと限定的に捉え、
かつ、本件審決が認定したように、
置換されない特性」の点から結合特異性を判断するとしても、その基準や程度は、訂正後の請求項3に係る発明にも本件明細書等にも明示の定義がなく全く不明であり、「PIVKA−IIを10 特異的に認識して結合する」という点において、タイプ(ii)とタイプ(iii)とがタイプ(i)と同様の結合特異性を示すとは到底いえず、
置換されない特性」も同様であるとはいえない。
? 以上のとおり、訂正後の請求項3は明確性要件に違反する。
また、同様の記載を含む訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、
15 25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及び72も、明確性要件に違反する。
〔被告の主張〕本件訂正後の請求項3の記載、本件明細書等の記載及び技術常識を踏まえれば、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」とは、PIVKA−IIにおける20 6位及び/又は7位のGluを含む構造と、それとは異なる構造、例えば、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なることを意味することが当業者にとって明らかであるから、本件訂正後の請求25 項3等の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。
475 取消事由5(サポート要件違反)について〔原告の主張〕本件訂正発明3は「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」と規定されているだけで、6位及び/又は7位のGluを認識して結合するとの規定5 はなく、本件審決が述べている結合特異性は、実施例2の抗体6H6に係る事項でしかなく、本件訂正発明3の発明特定事項ではない。
仮に多種多様のPIVKA−IIの中の特定のPIVKA−II(タイプ(i) に対して抗体6H6が所定の結合特異性を示したとしても、
) それは広範に機能的に規定された本件訂正発明3に含まれる結合性タンパク質の1例に過10 ぎず、タイプ(ii)とタイプ(iii)のPIVKA−IIに対してすらプロトロンビンとは異なる結合特異性を示すか否かは不明であるから、請求項の範囲全体にわたって課題が解決できると認識することはできない。
また、仮に、
「特異的に認識して結合する」という規定について、本件審決の前提に従い、プロトロンビンとの反応性の違いを考慮するとすれば、プロトロ15 ンビンとの結合性と比較して多少なりとも反応性に違いさえあれば、抗体6H6と比較して結合特異性が低いものでも「特異性」があるとして、それらを全て包含した発明であるとみることになるところ、反応性の違いが低い抗体であっても、HCC又は肝癌を検出できることを合理的に推論することは困難である。
20 以上の事情を総合すれば、本件訂正発明3は、HCC又は肝癌を検出することのできない結合性タンパク質を広く包含することになり、請求項の範囲全体にわたって「HCCまたは肝癌を検出するための、結合性タンパク質を提供する」という課題が解決できると認識することはできず、このような結合性タンパク質を含む本件訂正発明3はサポート要件に違反する。
25 また、同様の記載を含む訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし6489、71及び72も、サポート要件に違反する。
〔被告の主張〕本件明細書等(段落【0002】)によると、
「PIVKA−IIは・・・HCC患者の場合に上昇することが知られている」ところ、
「腫瘍学において、HCC5 または肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要」であることから、本件訂正発明3は、HCC又は肝癌を検出するための、
「PIVKA−II・・・のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含む単離された結合性タンパク質を提供する」(段落【0005】)ことを解決課題とするものであること、上記解決課題を解決するために、本件訂正発明3は、PIVKA10 −IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、それとは異なる構造、例えば、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」の両者に対する反応性が異なるという特徴を有する「結15 合性タンパク質」を提供するものであり、本件明細書等の実施例(段落【0174】)において、上記「結合性タンパク質」の一つである抗体6H6が、肝細胞癌などで発生するPIVKA−IIを特異的に認識して結合することが実験データにより具体的に裏付けられていることから、本件訂正後の請求項3(及び他の請求項)の記載は、当業者が、上記の解決課題を解決できると認識し得20 る範囲のものと認められ、サポート要件を満たす。
6 取消事由6(実施可能要件)について〔原告の主張〕本件訂正発明3は、HCC又は肝癌を検出するための、結合性タンパク質を提供することを技術的課題にするものであるが、前記4〔原告の主張〕?のよ25 うに、タイプ(ii)とタイプ(iii)のPIVKA−IIに対してすらプロトロンビンとは異なる結合特異性を示すか否かは不明であり、
「特異性」の程49度が不明なもの、あるいは特異性が低いものでも「特異的」であるとして包含するものであるから、調製した結合性タンパク質がHCC又は肝癌を検出するのに使用できるか否かは、逐一実験をしなければ明らかでないことになる。
これは、当業者に過度の試行錯誤を必要とするものであり、実施可能要件を5 充足しているとはいえない。
また、同様の記載を含む訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及び72も、実施可能要件に違反する。
〔被告の主張〕10 本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、前記5〔被告の主張〕に示した性質を持つものとして特定されており、本件明細書等の記載を踏まえると、当業者であれば、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」を、過度の試行錯誤を要することなく製造し、かつ、本件訂正発明3の解決課題を解決できる形で使用することが可能と理解する。
15 第4 当裁判所の判断1 本件各訂正発明の技術的意義等? 特許請求の範囲本件訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲は、前記第2の2記載のとおりである。
20 ? 本件明細書等の記載本件明細書等の記載は、別紙3のとおりである。
? 本件各訂正発明の技術的意義等上記?の特許請求の範囲及び上記?の本件明細書等の記載によれば、本件各訂正発明に係る課題、技術的意義等は、以下のとおりである。
25 ア 技術分野、背景技術本件訂正発明は、肝細胞癌(HCC)、肝癌の診断等に用いられ得る抗体50及びイムノアッセイ方法に関するものである。(段落【0001】)PIVKA−IIは分子量72kDaを有する大型の糖タンパク質であり、病気等でビタミンKが欠乏した時に、プロトロンビンからカルボキシル化が不完全なものとして変換されるものであるが、HCC患者の場合5 に上昇することが知られている(段落【0002】 。
)イ 本件各訂正発明における従前の課題生物マーカーの使用によってHCC又は肝癌を検出するための利用可能な効果的な方法はなく、さらに、HCC若しくは肝癌を効果的に検出するイムノアッセイにおいて有用である又はHCC若しくは肝癌を処置す10 るために必要とされる結合特異性を有するモノクローナル抗体は殆んど知られていなかった(段落【0002】 。
)また、従来、利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイは、
一部分のタンパク質だけ(主に、環状ジスルフィド結合のアミノ酸17−23の配列) 及び周囲の配列、
、 すなわちアミノ酸13−27を検出するも15 のであり、アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。)は検出されていなかった(段落【0028】 。
)このため、腫瘍学において、HCC又は肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要とされていた(段落【0002】 。
)本件訂正発明は、肝細胞癌(HCC)又は肝癌を検出するのに有効に用20 いられ得るモノクローナル抗体を提供することを課題とするものである(段落【0001】 【0002】 。
、 )ウ 本件各訂正発明の効果本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」における脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することが25 でき、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる(段落【0028】 。
)51このため、本件各訂正発明は、これをPIVKA−IIに対するイムノアッセイに用いることにより、従来、利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイでは不可能であったPIVKA−IIの「アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。 」の検出を可能にし)5 た新たな抗体として、「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分」を含む単離された結合性タンパク質(抗体)を提供するという技術的意義を有するものといえる。
PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗PIVKA抗体、及びPIVKA−IIのアミノ酸1−110 3に結合する抗原結合性部分を有する第2の抗PIVKA抗体(これが本件訂正発明3に該当する)の両方の抗体をアッセイにおいて用いることで、
高レベルの特異性でPIVKA13−27及びPIVKA1−27の両方を検出することができ、したがってPIVKA13−27単独を検出することによって生成されるものよりも強力なシグナルを生成する(段落15 【0028】 。
)エ 具体的な実施形態及び実施例(ア) 前記ウのとおり、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を有する第2の抗PIVKA抗体(本件訂正発明3に該当)は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することがで20 き、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる。
本開示は、37±4nM又はそれ未満の解離定数(K d )で、好ましくは1×10 −9M又はそれを超える範囲の、好ましくは約1×10 10M 9又はそれを超える、PIVKA−IIペプチドに対するK dで、PIVK25 A−IIの一つ又は複数のエピトープに結合する結合性タンパク質、特に、本件明細書等において「6H6」と呼ぶモノクローナル抗体を提供52する。特に、本開示の結合性タンパク質又は抗体は、約1×10 −9M又はそれを超える、好ましくは約1×10−10 M又はそれを超える、PIVKA−IIのアミノ酸領域1−13に対するK d を有する。抗体はこのように、PIVKA−IIを特異的に認識し結合することができる。抗5 体がPIVKA−IIに結合した後は、例えば、プロトロンビンによって置換されない。抗体がPIVKA−II及びプロトロンビンに同時に曝露された場合、本開示の6H6抗体は、PIVKA−IIよりもプロトロンビンに対して約10倍から約1000倍低い親和性を有するものである(段落【0029】 。
)10 (イ) ここで、上記(ア)の「37±4nM」というPIVKA−IIペプチドに対する解離定数K d 及び「PIVKA−IIよりもプロトロンビンに対して約10倍から約1000倍低い親和性を有するものである」という性質は、いずれも実施例2(段落【0172】〜【0175】)における「6H6モノクローナル抗体」のPIVKA−IIペプチド(1−115 3)に対する親和性の結果を示したものである。
(ウ) 6H6モノクローナル抗体についての実施例(実施例1〜3)実施例1は、本件訂正発明3の結合性タンパク質(抗体)に包含される「6H6モノクローナル抗体」の調製である(段落【0166】〜【0171】 。
)20 実施例2は、前記(イ)のとおり、6H6モノクローナル抗体(mAb 6H6)のPIVKA−IIペプチド(1−13)又はプロトロンビンペプチド(1−13)に対する親和性を比較するものである(段落【0172】〜【0175】 。
実施例3は、自動化イムノアッセイにおける6H6モノクローナル抗25 体の使用例である(段落【0176】〜【0181】 。
発明の詳細な説明に、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」として、
53調製例及び使用例が具体的に開示されているのは、6H6モノクローナ「ル抗体」のみである。
2 本件優先日及び本件出願日当時の技術常識? 甲2(動脈硬化 Vol.23[1996], No.10、567〜571頁)及び甲3(特開5 平5−249108号公報)の記載によれば、PIVKA−IIは、ビタミンK依存性血漿タンパク質の一つであるプロトロンビンの前駆物質であって、
アミノ末端領域にあるGlaドメインにおける10個のグルタミン酸残基についてのγ‐カルボキシル化の程度が不完全なもの(脱炭酸、すなわち脱カルボキシル化されたもの)であり、10個のグルタミン酸残基中いくつがγ10 −カルボキシル化を受けるかに応じて数種類のPIVKA−IIが存在し得る構造的特徴を有すること、及びPIVKA−IIがHCC患者において上昇することは、本件優先日及び本件出願日当時の技術常識であったと認められる。
? 甲6(免疫生物学−免疫系の正常と病理−(原書第5版)、笹月健彦監訳、
15 株式会社南江堂、2005年7月15日、619〜628頁)によれば、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素免疫測定法(ELISA)はいずれも、抗体もしくは抗原への直接結合を測定する目的で使われる手法であり、
抗原を検出するには、当該抗原のエピトープを認識する抗体を標識して用いること、そして、抗体(モノクローナル抗体)をハイブリドーマ技術によっ20 て調製することは、いずれも本件優先日及び本件出願日当時の技術常識であったと認められる。
? 甲15(多田富雄他編、免疫学用語辞典 第三版、最新医学社、1993年、47頁)及び甲16(免疫学ハンドブック、免疫学ハンドブック編集委員会編、株式会社オーム社、平成17年10月25日、11〜13頁)の記25 載によれば、抗原分子上の抗体が結合する部位を抗原決定基あるいはエピトープといい、抗原分子上で分子量400ないし1000程度の大きさの構造、
54すなわち、6ないし10個のアミノ酸残基より成るペプチド部分、5ないし8個の単糖より成る多糖体部分がこれを形成していると考えられており、抗原がタンパク質のような分子である場合、異なる抗原決定基(エピトープ)が多数存在することが知られている。
5 そして、免疫グロブリン(抗体)の抗原結合部位(本件訂正発明3の「抗原結合性部分」)と、抗原のエピトープとは、幾つもの弱い非共有結合〔静電気的結合、水素結合、ファン デル ワールス(van der Waals)結合など〕が合わさって、最終的には強く結合されることも、本件優先日及び本件出願日当時の技術常識であったと認められる。
10 3 本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の意義について原告は、各取消事由に関する主張において、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の意義に関する本件審決の解釈に誤りがあり、この誤りが各取消事由に係る本件審決の判断の誤りにつながっていると15 いう趣旨の主張をしている。そこで、まず、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」の意義について検討する。
? 本件訂正発明3は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、
PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク20 質(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) 」である。

そして、本件審決は、本件明細書等に開示された抗体の一つである第2の抗体、すなわち訂正後の請求項3に係る結合性タンパク質は、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応し、反応25 後(結合後)は、脱炭酸されていない通常のアミノ酸1−13、すなわち、
プロトロンビンのアミノ酸1−13により、置換されない特性を有すると認55定した。
また、本件審決は、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluが、プロトロンビンの6位及び7位のGlaとは異なる特異的な構造部位であるといえ、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」は、当該特異5 的な構造部位により「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであると理解できると判断した。
? 本件各訂正発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書等には、「PIVKA−II」の明確な定義又は限定は示されていない。
しかし、本件明細書等には、
「PIVKA−IIタンパク質のGLAドメイ10 ンは、10個のGLAアミノ酸を含む、アミノ酸1−46(またはプロトロンビン配列の44−88)からなる。PIVKAタンパク質は、脱炭酸されたGLAの位置及び数に関して変化する複数の形態において存在する。(段」落【0028】)と記載されている。
これは、甲3(前記2?)における「PIVKA−IIはビタミンK依存15 性血漿蛋白質の一つであるプロトロンビンの前駆物質であって、アミノ末端領域にある10個のグルタミン酸残基についてのγ−カルボキシル化の程度が不完全なもの」をいい、
「10個のグルタミン酸残基中いくつがγ−カルボキシル化を受けるかにより数種類のPIVKA−IIが混在した状態で存在している」という記載(甲3の【発明の詳細な説明】【0002】)と整合し、
20 本件出願日当時及び本件優先日当時の技術常識であったといえる。
そうすると、本件訂正発明3における「PIVKA−II」は、10個のグルタミン酸残基中のγ−カルボキシル化の程度の違いによる複数の形態のもの(全て又は一部が脱炭酸されたグルタミン酸残基であるもの)を包含するといえる。
25 そして、本件訂正発明3で特定される「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の配列に着目した場合、脱炭酸され得るグルタミン酸残基は、6位及56び7位にのみ存在するから、原告が主張するように(前記第2の1〔原告の主張〕?)、6位及び7位の構造の違い(カルボキシル基の有無)により、タイプ(i)(6位及び7位がGlu)、タイプ(ii)及びタイプ(iii)(6位又は7位の一方がGluで、他方がGla)並びにタイプ(iv)(65 位及び7位がGla)が存在し得ることになる(カルボキシル基を有する場合が「Gla」、有しない場合が「Glu」である。 。
)? 抗体の「抗原結合性部分」とは、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の一つ又は複数のフラグメントを意味し、抗体の抗原結合性の機能は、
全長の抗体の一つ又は複数のフラグメントによって行われ得る(本件明細書10 等段落【0037】 。
)他方、抗体によって結合される抗原の領域は、エピトープ(抗原決定基、
抗原性決定基)と呼ばれ、抗原分子上の抗原抗体反応の特異性及び免疫原性を決定している構造であり、抗原分子上で分子量400ないし1000程度の大きさの構造(6〜10個のアミノ酸残基より成るペプチド部分、5〜815 個の単糖より成る多糖体部分がこれを形成していると考えられている。)を有する(本件明細書等段落【0046】、甲15、甲16(前記2?) 。
)つまり、抗体は、そのフラグメントである抗原結合性部分において、抗原の特定のペプチド部分等の構造(抗原性決定基又はエピトープ)と結合する。
そうすると、本件訂正発明3においては、
「PIVKA−IIのアミノ酸120 −13に結合する抗原結合性部分」とは、抗原であるPIVKA−IIにおいて、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の範囲内にエピトープが存在し、当該エピトープに結合する「抗原結合性部分」であることを意味するものと認められる。
? 本件明細書等の段落【0029】には、
「抗体はこのように、PIVKA−25 IIを特異的に認識し結合することができる。」という記載が存在する。
上記段落【0029】は、本件明細書等の段落【0028】から始まる「発57明を実施するための形態」のうちの「A.序文および定義」の項目に含まれるものである。
段落【0028】は、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分」を有する新たな抗体である「第2の抗PIVKA抗体」につ5 いて述べており、この「第2の抗PIVKA抗体」は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができるものであり、これをPIVKA−IIに対するイムノアッセイに用いることにより、従来、利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイでは不可能であったPIVK10 A−IIの「アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。 」の検出を可能にし、アッセイにおいて、
) 「第1の抗PIVKA抗体」と共に用いることにより、
「高レベルの特異性」でPIVKA13−27及びPIVKA1−27の両方を検出することが可能となるとされている。つまり、
アミノ酸1−13のカルボキシル化されたアミノ酸残基(プロトロンビン)15 よりも、アミノ酸1−13の脱炭酸されたアミノ酸残基(PIVKA−II)と強力に反応する特性を有する「第2の抗PIVKA抗体」を用いることにより、従来、利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイでは不可能であったPIVKA−IIの「アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。 の検出が可能になるものといえる。このような段落)20 【0028】の内容からすると、同段落の「高レベルの特異性」は、PIVKA−IIの脱炭酸されたアミノ酸残基(Glu)と強力に反応することによって、PIVKA−IIをプロトロンビンと十分に識別することを意味すると解される。
そして、これを受けて、本件明細書等の段落【0029】は、新たな「抗25 体」ないし「結合性タンパク質」が、
「したがって37±4nMまたはそれ未満の・・・PIVKA−IIペプチドに対するKdで、PIVKA−IIの1つ58または複数のエピトープに結合する結合性タンパク質」であること、特に、
「約1×10 −9Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10 −10 Mまたはそれを超える、PIVKA−IIのアミノ酸領域1−13に対する解離定数(Kd )を有する」ことを記載した上で、
「抗体はこのように、PIVKA−II5 を特異的に認識し結合することができる。」と記載している。
以上によれば、本件明細書等の段落【0029】の「抗体はこのように、
PIVKA−IIを特異的に認識し結合することができる」 「このように」のとは、
「抗体」ないし「結合性タンパク質」が、アミノ酸1−13のカルボキシル化されたアミノ酸残基(プロトロンビン)よりも、アミノ酸1−13の10 脱炭酸されたアミノ酸残基(PIVKA−II)と強力に反応する特性を有することにより、従来、利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイでは不可能であったPIVKA−IIの「アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。 」) の検出を可能にし、 高レベルの特異性」「で、すなわち抗体(結合性タンパク質)のPIVKA−IIとプロトロンビ15 ンとの反応性の違いに基づいて、プロトロンビンと十分に識別してPIVKA13−27及びPIVKA1−27の両方を検出することを指すものと認められる。そして、このように、抗体のPIVKA−IIとプロトロンビンとの反応性の違いに基づいて、PIVKA−IIをプロトロンビンと識別して結合することが「PIVKA−IIを特異的に認識し結合する」ことを意20 味するものと解される。
段落【0029】は、これに引き続いて、抗体がPIVKA−IIに結合した後は、プロトロンビンによって置換されないこと、 本開示の6H6抗体」「がPIVKA−IIよりもプロトロンビンに対して低い親和性を有することが記載されており、いずれも、抗体が、プロトロンビンよりもPIVKA−25 IIと強力に反応することを説明したものといえるから、それ以前の記載内容と整合する。
59以上によれば、本件審決において、
「その抗体の一つ(第2の抗体、すなわち訂正後の請求項3に係る結合性タンパク質)は、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応し、反応後(結合後)は、脱炭酸されていない通常のアミノ酸1−13、すなわち、プロトロンビ5 ンのアミノ酸1−13により、置換されない特性を有し、 「PIVKA−I」Iを特異的に認識し、結合することができるものであることが理解できる。」とした認定(審決書84頁)に誤りはなく、本件訂正発明3の「単離された結合性タンパク質」における「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分10 を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という発明特定事項は、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の範囲内にエピトープが存在し、PIVKA−IIの脱炭酸されたアミノ酸残基(Glu)と強力に反応することによって、抗原であるPIVKA−IIを「プロトロンビン」と識別して結合することであると認められる。
15 前記1?イのとおり、本件訂正発明は、肝細胞癌(HCC)又は肝癌を検出するのに有効に用いられ得るモノクローナル抗体を提供することを課題とするものであるが、PIVKA−IIは、HCC患者の場合に上昇することが知られているのであるから、本件訂正発明の結合性タンパク質(抗体)が、
PIVKA−II及びプロトロンビンの反応性の差異を利用して、PIVK20 A−IIをプロトロンビンと識別して結合するものであるという上記解釈は、
本件訂正発明の技術的意義とも合致する。
? 前記?のとおり、
「PIVKA−II」には、10個のグルタミン酸残基中のγ−カルボキシル化の程度の違いによる複数の形態のもの(全て又は一部が脱炭酸されたグルタミン酸残基であるもの)が包含されること、つまり、
25 プロトロンビンのγ−カルボキシル化されたグルタミン酸残基(Gla)のうち、少なくとも一つが脱炭酸されてグルタミン酸残基(Glu)となった60ものがPIVKA−IIであることが、本件優先日及び本件出願日当時の技術常識であった。
また、本件訂正発明3で特定される「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の配列に着目した場合、脱炭酸され得るグルタミン酸残基は、6位及び5 7位にのみ存在する(前記?)。この点は当事者間に争いがなく、本件出願当時の技術常識であったと認められる。したがって、プロトロンビンとアミノ酸残基が異なり得る箇所が、
「6位及び/又は7位のグルタミン酸残基」におけるカルボキシル基の有無のみであることも、本件出願当時の技術常識からみて自明である。
10 これらのことからすると、当業者は、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」における「脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる」(本件明細書等の段落【0028】)という性質を利用して、イムノアッセイにおいてPIVKA−IIを検出可能とするためには、6位及び7位が15 Glaであるプロトロンビンと、当該位置におけるアミノ酸残基が異なるPIVKA−IIとを識別できる抗体(結合性タンパク質)であればよいことも理解できる。
以上の本件明細書等の記載(アミノ酸残基による反応性の違い)及び本件出願当時の技術常識を踏まえれば、「PIVKA−IIにおけるアミノ酸120 −13」と「プロトロンビンにおけるアミノ酸1−13」とは、
「6位及び/又は7位のグルタミン酸残基」におけるカルボキシル基の有無(カルボキシル基を有する場合は「Gla」、有しない場合は「Glu」)によって、その配列の違いにより、構造の違いを生じ得るから、
「PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGlu」 「プロトロンビンにおける6位及び7位のが、
25 Gla」とは異なる特異的な構造部位であるといえる。
? 前記?及び?によれば、本件明細書等の記載及び特許出願当時の技術常識61を踏まえれば、当業者であれば、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するとは、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」が、
PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構5 造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なることを意味すると理解することができる。
? この点に関して原告は、前記第3の1〔原告の主張〕?のとおり、本件明細書等の記載及び当業者の技術常識に基づけば、「PIVKA−IIを特異10 的に認識して結合する」とは、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に存在するエピトープを認識してPIVKA−IIに結合することを意味するにほかならないと主張する。
確かに、本件明細書等の段落【0035】には、
「本明細書で用いられる『結合』『特異的結合』または『特異的に結合する』の語は、抗体、タンパク質、
15 またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基もしくはエピトープ)の存在に依存すること」を意味するとある。
しかし、本件訂正発明3で用いられている語句は「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」であり、段落【0035】の「特異的に結合する」20 と全く同一ではない。そして、
「特異的に認識して結合する」の語句は段落【0029】に存在するところ、本件明細書等の文脈も踏まえた同段落の上記語句の解釈は、前記?のとおりである。そして、本件明細書等の段落【0029】の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」と、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」とを別異に解すべき25 根拠となる事情は認められないから、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という発明特定事項は、前記?のとおり、
「P62IVKA−IIのアミノ酸1−13」の範囲内にエピトープが存在し、PIVKA−IIの脱炭酸されたアミノ酸残基(Glu)と強力に反応することによって、抗原であるPIVKA−IIを「プロトロンビン」と識別して結合することであると認めることができる。
5 これに加え、前記?の説示内容も併せれば、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」は前記?のとおり解するのが相当であり、単にPIVKA−IIのアミノ酸1−13に存在するエピトープを認識してPIVKA−IIに結合することを意味すると解することはできない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
10 4 取消事由1(本件訂正発明3の甲4−1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り)について? 甲4の記載内容は、別紙4「文献の記載」1に記載のとおりである。
上記のとおりである甲4の記載内容によれば、甲4に記載された発明の一つとして、本件審決が認定した甲4−1発明(前記第2の4?ア(ア)a)があ15 ると認められる。この甲4−1発明が甲4に記載されていることについては、
当事者間に争いがない。
甲4−1発明の内容に照らせば、本件訂正発明3と甲4−1発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定した前記第2の4?ア(イ)のとおりであると認められる。したがって、本件訂正発明3と甲4−1発明との間には上記の20 相違点があり、後記5?のとおり、同相違点は実質的な相違点であるから、
本件訂正発明3と甲4−1発明とが同一であるとは認められない。
? 原告の前記第3の1〔原告の主張〕の主張についてア 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕?のとおり、本件明細書等の記載及び当業者の技術常識に基づいて解釈すれば、甲4−1発明の抗体H−125 1は「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものであるから、
本件訂正発明3に係る結合性タンパク質は、甲4−1発明の抗体H−1163と区別することはできず、本件訂正発明3は甲4−1発明と同一であって、
新規性を有さないと主張する。
しかし、前記3のとおり、本件明細書等の記載及び本件優先日当時の技術常識を踏まえれば、本件訂正発明3の「単離された結合タンパク質」に5 おける「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という発明特定事項は、抗原であるPIVKA−IIのうち、上記「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の範囲内にエピトープが存在し、PIVKA−IIの脱炭酸されたアミノ10 酸残基(Glu)と強力に反応することによって、抗原であるPIVKA−IIを「プロトロンビン」と識別して結合することであると認められる。
これに対し、甲4には、抗体H−11について、
「数種類の他のビタミンK依存性タンパク質は、当該抗体(抗体H−11)への免疫抗原プロテインCの結合を阻害することが見出された。」との記載がある(別紙4「文献15 の記載」1?ア、?オ)。これはすなわち、抗体H−11が、数種類のビタミンK依存性タンパク質に結合する(この結合のため、抗体H−11が免疫抗原プロテインCと結合することが阻害される。)ことを意味しており、
プロトロンビンも抗体H−11のプロテインCとの結合を阻害したことが記載されている(別紙4「文献の記載」1?オ)。さらに、甲4には、プ20 ロトロンビン上の抗原性部位が、Gla残基の熱による脱カルボキシル化の後にも反応性であり、この結果は、グルタミン酸残基のγ‐カルボキシル化が抗体認識に必要とされないことを示すことが記載されている(別紙4「文献の記載」1?カ)。
これらの記載内容からすれば、甲4−1発明の抗体H−11は、抗原決25 定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されたプロトロンビンであっても、脱カルボキシル化されたPIVKA−IIであっても、認識し、結64合すると認められるから、本件訂正発明3の「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものに相当するとはいえない。
5 イ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕?のとおり、甲18を参酌すれば、
抗体H−11は、血液中に含まれる程度の「通常の」カルシウムイオン濃度の条件下で、PIVKA−IIとプロトロンビンとの間で反応性が明確に異なっているから、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」に該当すると主張する。
10 しかし、甲4は、抗体H−11について、
「抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されたプロトロンビンであっても、脱カルボキシル化されたPIVKA−IIであっても、認識し、結合する」ことを開示するにとどまる。確かに、甲18は甲4の後に公開された文献であって、同文献の記載からは、カルシウムイオン濃度10mMの条件下でのH−11の15 PIVKA−II等への結合性という甲4では開示されていなかった新たな実験に基づくH−11に関する性質を開示するものであると認められるものの、カルシウムイオン存在等の条件によって、抗体H−11のプロトロンビン及びPIVKA−IIに対する反応性に変化があることは、
甲4の開示から当業者が認識できるものではない。そうすると、甲18に20 おけるカルシウムイオン濃度10mMの特殊な条件下での結果による反応性の違いという知見は、追加実験による新たな反応性の知見を提示するものであって、甲4の開示を超えた新たな性質の発見に基づく発明を認定するものといえるから、甲4の記載の再現実験により確認された属性ということはできない。
25 したがって、甲4を主引例とする新規性の判断において、甲18を参酌して甲4発明の内容を認定することは許されないと解すべきである。
65甲4及び甲18によれば、各文献の著者の一部が同一であることが認められ、この事実からすると、甲4の記載の基となっている研究と、甲18の記載の基となっている研究が関連するものである可能性は否定できないが、仮に上記各研究が関連するものであったとしても前記結論は左右さ5 れない。
ウ 以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
? 取消事由1に関する結論以上によれば、本件訂正発明3の甲4−1発明に対する新規性の有無に関する本件審決の判断に誤りはなく、取消事由1には理由がない。
10 5 取消事由2(本件各訂正発明の甲4−1発明、甲1−1発明又は甲4−2発明に対する進歩性の有無に関する判断の誤り)について? 本件訂正発明3の甲4−1発明に対する進歩性についてア 前記4?及び?アのとおり、甲4の記載によれば、甲4−1発明の抗体H−11は、抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されたプロ15 トロンビンであっても、脱カルボキシル化されたPIVKA−IIであっても認識し、結合すると認められるから、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するものとは認められない。
そして、甲4の記載内容は別紙4「文献の記載」1に記載のとおりであるところ、甲4には、前記3のとおりの意味における「PIVKA−II20 を特異的に認識して結合する」ものが記載も示唆もされているとは認められないから、甲4−1発明の抗体H−11を、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものとすることは、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
イ 原告の前記第3の2〔原告の主張〕?の主張について25 (ア) 原告は、抗体H−11はPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合するものであり、これはアミノ酸1−13の中に存在するエピトープ部66分に特異的に結合することを意味するのであって、抗体H−11はPIVKA−IIにも特異的に認識して結合するものであるから、甲4−1発明は、本件訂正発明3と実質的に相違する点はなく、仮に相違点があるとしても、甲4−1発明に係る当業者であれば、抗体H−11をPI5 VKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることは、容易に動機付けられると主張する。
しかし、前記3のとおり、本件明細書等の記載及び特許出願当時の技術常識を踏まえれば、本件訂正発明3の「単離された結合タンパク質」における「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIV10 KA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という発明特定は、抗原であるPIVKA−IIのうち、上記「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」の範囲内にエピトープが存在し、PIVKA−IIの脱炭酸されたアミノ酸残基(Glu)と強力に反応することによって、抗原であ15 るPIVKA−IIを「プロトロンビン」と識別して結合することを意味すると解される。そして、上記理解に基づけば、甲4−1発明が本件訂正発明3と実質的に相違する点がないとはいえず、抗体H−11をPIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることについて当業者が容易に動機付けられるとも認められない。
20 (イ) 原告は、「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」を上記(ア)のとおり解するとしても、甲18を参酌することで、甲4−1発明に係る抗体H−11が、6位及び7位の残基の違いによる異なる反応性、すなわち所定の反応特異性を示すことが認められると主張する。
しかし、甲18の性質及び内容は、前記4?イのとおりであり、抗体25 H−11について甲4の開示を超え、新たな実験に基づく新たな性質を開示するものであるところ、甲18で開示された抗体H−11の新たな67性質が本件優先日当時の技術常識であったとはいえない。また、甲4を主引例とする進歩性の判断において、抗体H−11について、甲4では開示されておらず甲18で開示された性質を、甲18を副引例として用いることで認定することは許されないというべきである。
5 (ウ) 原告は、本件訂正発明3の効果は、本件訂正発明3の一つの実施例である抗体6H6において、ヒト血清中のPIVKA−IIを検出できるという程度のものでしかなく、抗体として当然に予測されるものに過ぎないと主張する。
しかし、抗体6H6、さらには本件訂正発明3の「PIVKA−II10 を特異的に認識して結合する」「単離された結合性タンパク質」が、PIVKA−IIを検出することができる性質を有することが、抗体として「当然に予測されるものに過ぎない」とは解されず、このような理由で、
本件訂正発明3と甲4発明との相違点について当業者が容易想到であるとは認められない。
15 (エ) 以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
? 本件訂正発明22の甲1−1発明に対する進歩性についてア 甲1の記載内容は、別紙4「文献の記載」2に記載のとおりである。
上記のとおりである甲1の記載内容によれば、甲1には本件審決が認定した甲1−1発明(前記第2の4?イ(ア))が記載されていると認められる。
20 甲1−1発明の内容については当事者間に争いがない。
甲1−1発明の内容に照らせば、本件訂正発明22と甲1−1発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定した前記第2の4?イ(イ)aのとおりであると認められる。
そして、前記?及び前記4のとおり、甲4には、
「PIVKA−IIのア25 ミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合」する抗体は記載されておらず、容易に想到できたも68のともいえないから、甲4を副引例としたとしても、甲1−1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合」する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けられ5 るとはいえない。
イ 原告の前記第3の2〔原告の主張〕?における主張について原告は、甲1−1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けられると主張する。
10 しかし、原告の主張は、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」を、前記3において認定した内容と異なる内容と解することを前提としており、そもそもこの前提が誤りであるから、原告の上記主張は採用することができない。
? 本件発明38について15 ア 本件発明38の内容は以下のとおりである。
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、
a)GANPマウスを、PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原20 で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、b)前記マウスの脾臓から8つの細胞を収集し、精製するステップ、c)ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびにd)PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む前記結合性タ25 ンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、
PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを69含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する前記方法。」イ 甲4の記載内容は、別紙4「文献の記載」1に記載のとおりであるところ、この記載内容によれば、甲4には、甲4−1発明のほか、本件審決が5 認定した甲4−2発明(前記第2の4?ア(ア)b)が記載されていると認められる。この甲4−2発明が甲4に記載されていることについては、当事者間に争いがない。
甲4−2発明の内容に照らせば、本件発明38と甲4−2発明との一致点及び相違点は、本件審決が認定した前記第2の4?ア(エ)のとおりである10 と認められる。
相違点のうち相違点1(本件発明38では、抗原がPIVKA−IIのアミノ酸1−17を含むものであるのに対し、甲4−2発明は、プロテインCである点。)について検討すると、甲4は、マウスに精製ヒトプロテインCを注射することによって調製された抗体H−11が、脱カルボキシル15 化されたプロトロンビンであるPIVKA−IIにも結合することを見い出したものに過ぎず、甲4の記載全体からしても、当業者が、抗体H−11以外のPIVKA−IIに結合する抗体を取得しようとすること、プロテインC以外のタンパク質でマウスを免疫化することや、得られたハイブリドーマの中から、プロテインC以外のタンパク質に結合する抗原結合20 性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマを選択することを動機付けられるとは認められない。
したがって、甲4−2発明に基づいて、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含むもの」を抗原とすることを、当業者が容易に想到できたとはいえない。
25 ウ 原告の前記第3の2〔原告の主張〕?における主張について原告は、当業者であれば、抗体H−11とは別のPIVKA−II抗体70を取得しようとすることは容易に動機付けられることであり、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗体を取得するには「PIVKA−IIのアミノ酸1−13を含む抗原」を使用すればよいから、そのような抗原として、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」でマウス5 を免疫化することは、当業者が容易に想到できたと主張する。
しかし、甲4においてPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む抗体H−11を取得したことの開示があるからといって、当業者が、抗体H−11とは別のPIVKA−II抗体を取得しようと動機付けられるなどとはいえない。
10 また、甲4の表題が「数種類のヒトビタミンK依存性タンパク質のエピトープ」とあることをもって、当業者が、甲4から上記動機付けを得られると解することもできない。
そして、他に、甲4において、抗体H−11とは別のPIVKA−II抗体を取得することを示唆する記載があるとはいえず、当業者が上記動機15 付けを得るとは解されない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
? その余の本件各訂正発明についてア 本件訂正発明4、5、13、15ないし21、31、33ないし37、
40、52、53、55、57ないし67について20 (ア) 本件審決が認定した、本件訂正発明13、本件訂正発明31、本件訂正発明40、本件訂正発明52及び本件訂正発明55と、甲4−1発明との各一致点及び各相違点は、前記第2の4?ア(ウ)のとおりであり、この点については当事者間に争いがない。
上記各訂正発明と甲4−1発明との相違点には、本件訂正発明3と甲25 4−1発明との相違点と同様に、上記各訂正発明には「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」ものの要素が含まれるのに対して、甲714−1発明では、そのような特定がない点が含まれる。
そうすると、前記?のとおり本件訂正発明3は、甲4−1発明に基づき、当業者が容易に想到できたものではないから、上記各訂正発明についても、同様の理由により容易に想到できたものとはいえない。
5 (イ) 本件訂正発明4、5、15ないし21、33ないし37、53、57ないし67は、本件訂正発明3又は前記(ア)に掲げた各訂正発明の従属項であるから、本件訂正発明3又は前記(ア)に掲げた各訂正発明と同様、甲4−1発明に基づき当事者が容易に想到できたものとは認められない。
イ 本件訂正発明22、25ないし30、45ないし51について10 (ア) 本件審決が認定した、本件訂正発明45と、甲1−1発明との各一致点及び各相違点は、前記第2の4?イ(イ)bのとおりであり、この点については当事者間に争いがない。
上記相違点のうち相違点1は、本件訂正発明22と甲1−1発明との相違点と同様であるといえる。
15 そうすると、前記?のとおり本件訂正発明22は、甲1−1発明に基づき、当業者が容易に想到できたものではないから、本件訂正発明45についても、同様の理由により容易に想到できたものとはいえない。
(イ) 本件訂正発明25ないし30は本件訂正発明22をさらに特定した発明であるから、本件訂正発明22と甲1−1発明との相違点に加え、さ20 らに上記特定による相違点があるといえる。そうすると、上記各訂正発明は、本件訂正発明22と同様、甲1−1発明に基づき当事者が容易に想到できたものとはいえない。
本件訂正発明46ないし51は本件訂正発明45をさらに特定した発明であるから、本件訂正発明45と甲1との相違点に加え、さらに上記25 特定による相違点があるといえる。そうすると、上記各訂正発明は、本件訂正発明45と同様、甲1−1発明に基づき当事者が容易に想到でき72たものとはいえない。
ウ 本件訂正発明68、69、71及び72について本件審決は、上記各訂正発明について、甲1−1発明に甲4ないし10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができ5 たものとはいえないと判断した。
これに対し、原告は、本件審決において上記各訂正発明について原告が主張したのは、甲4発明を主引例とし、これに甲1、甲6発明を副引例として参酌することで進歩性を欠いていることであったから、本件審決には審理不尽又は判断遺脱の瑕疵があると主張する。
10 本件審決は、本件訂正発明68と甲1−1発明との一致点及び相違点を、
前記第2の4?イ(イ)cのとおり認定した上で、甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点2)を取得することは記載されておらず、甲1、甲5ないし10にもそのよう15 な記載や示唆は見当たらないから、甲1−1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA−IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機付けられるとはいえず、
相違点1を検討するまでもなく、本件訂正発明68は、甲1に記載された発明に、甲4ないし10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易20 に発明することができたものとはいえないと判断した。
さらに、本件審決は、本件審決の請求人である原告の主張に関し、
「請求人は、甲4には、H−11が『PIVKA−IIを特異的に認識して結合する』抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から『PIVKA−IIを特異的に認識して結合する』も容易に想25 到し、本件訂正発明68も容易想到であると主張するが、上述のとおり、
いずれの甲号証にも、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の6位及び/73又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。」と判断した。
本件訂正発明68において「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結5 合する抗原結合性部分を含み、PIVKA−IIを特異的に認識して結合する第2の単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く) と特定された」 「第2の単離された結合性タンパク質」は、
本件訂正発明3の「結合性タンパク質」と同じである。
10 そうすると、仮に、甲4発明を主引例とし、これに甲1、甲6発明を副引例として参酌する原告主張の無効理由を検討する場合には、本件訂正発明68は、本件訂正発明3と甲4発明との相違点と同じ相違点を少なくとも有することになる。
審決で判断されているのは、
「甲1を主引例」とする理由ではあるが、原15 告の主張に対する判断の中で、甲4、甲1及び甲6を含むいずれの甲号証にも、
「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点2)」を取得することについて、記載も示唆もされておらず、相違点2の構成とすることが容易ではない旨説示しているから、原告主張の無効理由20 についての相違点(本件訂正発明3と同じ相違点)も、甲4、甲1及び甲6を含むいずれの甲号証を踏まえても容易に想到し得ないことは審決において実質的に説示されていたといえる。
したがって、本件訂正発明68の進歩性欠如の有無に関し、本件審決について、審理不尽又は判断遺脱があるためにこれを取り消すべきであると25 は解されない。
本件訂正発明71に関しても、本件訂正発明68と同様に、甲4を主引74例とする進歩性に関して本件審決が実質的に判断しているといえるから、
本件審決について審理不尽又は判断遺脱があるためにこれを取り消すべきであるとは解されない。
本件訂正発明69は本件訂正発明68を引用するものであって、本件訂5 正発明68と同じ相違点を少なくとも有しており、本件訂正発明72は本件訂正発明71を引用するものであって、本件訂正発明71と同じ相違点を少なくとも有しているから、これらの訂正発明についても、本件訂正発明68及び本件訂正発明71と同様、甲4を主引例とする進歩性に関して本件審決が実質的に判断しているといえ、本件審決について審理不尽又は10 判断遺脱があるためにこれを取り消すべきであるとは解されない。
そして、以上の説示内容に照らせば、本件訂正発明68、69、71及び72の進歩性に関する本件審決の判断については、本件訂正発明3と同様、誤りがあるとは認められない。
? 取消事由2に関する結論15 以上によれば、本件各訂正発明の甲4−1発明、甲1−1発明又は甲4−2発明に対する進歩性の有無に関する本件審決の判断に誤りはなく、取消事由2には理由がない。
6 取消事由3(本件各訂正発明と甲11発明との同一性(拡大先願との同一性)に関する判断の誤り)について20 ? 甲11発明の認定についてア 甲11の記載内容は、別紙4「文献の記載」3に記載のとおりである。
上記のとおりである甲11の記載内容によれば、甲11には本件審決が認定した甲11−1発明ないし甲11−7発明(前記第2の4?ウ(ア))が記載されていると認めることができる。
25 イ これに対し、原告は、前記第3の3〔原告の主張〕?のとおり、甲11には、二抗体サンドイッチ法によるPIVKA−IIの測定に使用される752種の抗体として、
「モノクローナル抗体P−11」、
「モノクローナル抗体P−16」のみが開示されているのではなく、モノクローナル抗体P−11、P−16をそれぞれ一例として含む、
「PIVKA−IIに特異的な抗体」が開示されていると読むのが相当であるから、原審決の認定した甲15 1発明について、甲11−1発明は「甲11−1’発明」のとおり認定されるべきであり、甲11−2発明、甲11−3発明、甲11−5発明ないし甲11−7発明についても、本件審決の認定中「モノクローナル抗体P−16」とある箇所を「モノクローナル抗体P−16を一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル抗体」に訂正した内容と10 して認定すべきであると主張する。
しかし、甲11及び甲12の記載をみても、P−11、P−16以外のモノクローナル抗体は得られておらず、これらの抗体が「一例」に過ぎないことや、これら以外の「一例として含む、PIVKA−IIに特異的な抗体」が開示されているとする根拠も見いだせない。
15 したがって、甲11−1発明を原告の主張する「甲11−1’発明」のとおり認定すべきと解することはできず、甲11−2発明、甲11−3発明、甲11−5発明ないし甲11−7発明についても、本件審決の認定中「モノクローナル抗体P−16」とある箇所を「モノクローナル抗体P−16を一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル20 抗体」に訂正した内容として認定すべきと解することはできない。甲11に記載された発明は、本件審決のとおり、甲11−1発明ないし甲11−7発明のとおり認定することができる。
? 本件訂正発明3について甲11−1発明は、「精製したPIVKA−IIをマウスに注射すること25 によって生産されたモノクローナル抗体P−16。」である。
そして、甲11の記載によれば、甲11−1発明にある「モノクローナル76抗体P−16」 「受託番号FERMは、 BP−11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体」であるところ(後記第4「文献の記載」3?カ、キ、ク)、当該抗体は本件訂正発明3から明示的に除かれている。
5 そして、前記?のとおり、甲11−1発明を原告の主張する「甲11−1’発明」(精製したPIVKA−IIをマウスに注射することによって生産される、モノクローナル抗体P−16を一例とする、PIVKA−IIに特異的に結合するモノクローナル抗体。)と認定することはできない。すなわち、
甲11−1発明にモノクローナル抗体P−16以外の抗体が含まれていると10 は認められない。
以上によれば、甲11−1発明は本件訂正発明3と同一ではない。
? 本件発明38についてア 本件審決は、本件発明38と甲11−4発明との一致点及び相違点(相違点1ないし3)を前記第2の4?ウ(イ)eのとおり認定した上で、少なく15 とも相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術
慣用技術の追加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえないから、両者は実質同一であるとはいえないと判断した。
これに対し、原告は、本件発明38の「PIVKA−IIのアミノ酸120 −17を含む抗原」とは、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17からなる抗原」ではなく、
「PIVKA−IIのアミノ酸配列として1−17の部分を含んでいる抗原」と読むのが自然であり、これはPIVKA−II自体をも包含するものであるから、甲11−4発明における「PIVKA−II抗原」は「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」の一例と25 いえ、実質的な相違点であるとはいえないと主張する。
イ 本件明細書等には、「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」77の定義や説明は記載されていない。
しかし、本件明細書等における実施例1(段落【0166】〜【0171】)には、「6H6モノクローナル抗体」を調製するための「ハイブリドーマ6H6のクローン」(ハイブリドーマ細胞系統)を生成したことが記載5 されている。段落【0116】には、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分」を有する「第2の抗体」が「例えば、6H6、すなわち、ATCC受託番号PTA−10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体」であると記載されており、本件明細書等の実施例2(段落【0172】 【0175】 には、
〜 )10 実施例1のクローンにより得られた「6H6モノクローナル抗体」は、PIVKA−IIのアミノ酸1−13ペプチドに対する高い親和性(平衡解離定数K d =37±4nM)を有することが記載されている。これらの記載によれば、上記実施例1が、本件発明38の「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発15 現するハイブリドーマ細胞系統を調製する方法」の具体例に該当すると認められる。
また、段落【0166】には、
「PIVKA−II(すなわち、血液凝固II因子の非存在下ビタミンKによって誘導されるタンパク質)特異的領域のPIVKA−II 1−17におけるアミノ酸長17個のペプチド」20 を免疫原として選択し、当該ペプチドの17位のアミノ酸に、担体として、
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)をコンジュゲート(結合)させ、6H6モノクローナル抗体は、担体としてKLHに連結している合成ペプチド(その配列は【0167】に示されているものである。)を用いて生成されたことが記載されている。すなわち、実施例1には、
「PIVK25 A−IIのアミノ酸1−17」のペプチドに、それ以外の構成要素として、
担体であるKLHを結合させて抗原としたことが記載されている。
78そして、本件明細書等において、実施例1以外に、本件発明38の「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を調製する方法」の具体例に該当するものが記載されているとは認められない。
5 そうすると、本件明細書等中、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」の記載の根拠は実施例1の記載にしかなく、それによれば、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」とは、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17のペプチド」に、ペプチド以外の構成要素(担体としてのKLH等)を「含む」ものを意味すると解され、PIVKA−II自10 体がこれに含まれると解することはできない。
ウ 甲11には、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIである「非肝がん症例のクマジン血漿(ビタミンK拮抗物質投与患者の血漿)より精製したPIVKA−II」を免疫原にして、公知の方法によりハイブリドーマを作製することが記載されているものの(別紙4「文献の記載」3?エ、
15 オ、 、
カ) それ以外の抗原の使用については何ら記載ないし示唆されていない。
そして、甲11で用いられた抗原に代えて、別の特定の配列のペプチドを抗原として選択することが、周知技術の付加、削除、転換等に当たるとはいえない。
20 そうすると、甲11−4発明において、
「PIVKA−II」自体ではなく、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原」として使用することが、甲11−4発明に対する周知技術の付加、削除、転換等であるとはいえない。
エ 上記イ及びウによれば、本件発明38と甲11−4発明との相違点1は25 実質的な相違点であるということができる。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3798が甲11−4発明と同一であるとはいえない。
? その余の本件各訂正発明についてア 本件訂正発明13と甲11−2発明、本件訂正発明22と甲11−3発明、本件訂正発明31と甲11−2発明、本件訂正発明40と甲11−55 発明、本件訂正発明45と甲11−6発明、本件訂正発明52と甲11−5発明、本件訂正発明55と甲11−5発明、本件訂正発明68と甲11−7発明及び本件訂正発明71と甲11−3発明との各一致点及び各相違点は、本件審決が認定した第2の4?ウ(イ)のとおりであると認められる。
10 上記相違点の内容によれば、上記各訂正発明は、甲11に記載された各発明との関係において、いずれも本件訂正発明3と甲11−1発明との相違点と同様の相違点を有するということができるから、本件訂正発明3の場合と同様の理由により、甲11に記載された各発明と同一であるとは認められない。
15 イ その余の本件各訂正発明については、本件訂正発明3又は上記アに掲げた各訂正発明の従属項であるか、これらの訂正発明をさらに特定したものであるから、甲11に記載された各発明との関係において、いずれも本件訂正発明3と甲11−1発明との相違点と同様の相違点を有するということができる。したがって、本件訂正発明3と同様の理由により、甲1120 に記載された各発明と同一であるとは認められない。
? 取消事由3に関する結論以上によれば、本件各訂正発明と甲11発明(先願発明)との同一性に関する本件審決の判断に誤りはなく、取消事由3には理由がない。
なお、上記同一性の判断に関連して、甲11に記載された抗体P−16の25 性質の認定に際して、甲11には記載があるが先願明細書(甲12)に記載のない事項を参酌することができるか否かについて、当事者間に争いがある。
80しかし、前記?から?までの判断内容に照らせば、甲11には記載があるが先願明細書に記載のない事項を参酌することができるか否かによって、前記?から?までの結論は左右されないと解されるから、上記の点については判断しない。
5 7 取消事由4(明確性要件違反)について? 判断基準特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、そ10 の技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断するのが相当である。
? 本件訂正発明3の明確性について本件訂正発明3は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII15 (PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含み、
PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という性質で特定された事項を含む「結合性タンパク質」という物の発明である。
そして、前記3の説示のとおり、本件明細書等の記載及び特許出願当時の技術常識を踏まえれば、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認20 識して結合」するとは、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」が、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なる25 ことを意味すると当業者は理解することができる。
したがって、本件訂正発明3について、特許請求の範囲の記載が、その技81術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとは認められない。
? 本件訂正発明4、5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及び72につ5 いて原告が明確性要件違反を主張する上記各訂正発明は、いずれもその特許請求の範囲の記載に「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」という語句が含まれるか、又はこの語句を用いた請求項を引用している。したがって、本件各訂正発明3が明確性を欠くと認められないのと同様、上記各訂正10 発明についても明確性を欠くとは認められない。
? 原告の前記第3の4〔原告の主張〕における主張についてア 原告は、前記第3の4〔原告の主張〕?のとおり、タイプ(iv)のPIVKA−IIは、本件訂正発明3に記載の「PIVKA−II」ではあっても、本件審決が認定するような「プロトロンビンのアミノ酸1−1315 により、置換されない特性を有する」とはいえず、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合」し、かつ「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するという、訂正後の請求項3が規定する「PIVKA−II」の意義は、PIVKA−IIのタイプの違いによって異なることになり、意義を一義的に理解することはできないと主張する。
20 しかし、前記?のとおり、当業者は、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」との特定事項について、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部25 位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なることを意味すると理解することができる。
82そうすると、当業者は、プロトロンビンと配列が同一であるタイプ(iv)(6位及び7位がGla)のPIVKA−IIは、
「PIVKA−II」自体には含まれるとしても、「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」と特定された場合の「PIVKA−II」には該当しないものとな5 ることも理解することができると認められる。
したがって、本件訂正発明3が規定する「PIVKA−II」の意義がPIVKA−IIのタイプの違いによって異なるために明確性を欠くと解することはできない。
イ(ア) 原告は、前記第3の4〔原告の主張〕?のとおり、@PIVKA−II10 のタイプ(ii)とタイプ(iii)がタイプ(i)と同様の結合特異性を示すとはいえないので、PIVKA−IIのタイプの違いによって意義が異なることになり、意義を一義的に理解することはできない、A仮に、本件審決が認定したように「置換されない特性」の点から結合特異性を判断するとしても、その基準や程度は本件訂正発明3にも本件明15 細書等にも明示の定義がなく全く不明であり、PIVKA−IIを特異「的に認識して結合する」という点において、タイプ(ii)とタイプ(iii)がタイプ(i)と同様の結合特異性を示すとは到底いえず、
置換されない特性」も同様であるとはいえないと主張する。
(イ) しかし、上記@については、前記3?のとおり、タイプ(ii)及びタ20 イプ(iii)のPIVKA−IIが、
「PIVKA−II」自体に含まれることは明らかである。
そして、
「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する」と特定された場合の「PIVKA−II」であることを考慮したとしても、タイプ(ii)又は(iii)のPIVKA−IIは、6位又は7位のいずれ25 かにGluを含む構造を有するものであって、プロトロンビンの「6位及び7位のGla」を含む構造と異なることから、当該「PIVKA−83II」に含まれることは当業者が明確に把握できる。
したがって、タイプ(ii)又は(iii)についてのPIVKA−IIに対する結合特異性を測定した実施例がなければ、 PIVKA−I「Iを特異的に認識して結合する」と特定された場合の「PIVKA−I5 I」の意味内容を当業者が理解できないとはいえず、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとすることはできない。
(ウ) 上記Aについては、前記3及び前記?の説示によれば、本件明細書等の段落【0028】及び【0029】の記載等から、本件訂正発明3の10 「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原性結合部分」を含み、かつ「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するという「結合性タンパク質」は、前記?のとおりの意味であることが明確であり、
置換されない特性」の基準や程度によって、本件訂正発明3が規定されているわけではないから、
置換されない特性」の基準や程度が不明で15 あるために本件訂正発明3が不明確であると解することはできない。
ウ したがって、原告の上記各主張は、いずれも採用することができない。
? 取消事由4に関する結論以上によれば、明確性要件違反に関する本件審決の判断に誤りはなく、取消事由4には理由がない。
20 8 取消事由5(サポート要件違反)について? 判断基準特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載25 により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の84技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
? 本件各訂正発明の課題前記1?イのとおり、本件明細書等の記載によれば、本件各訂正発明は、
5 肝細胞癌(HCC)又は肝癌を検出するのに有効に用いられ得るモノクローナル抗体を提供することを課題とするものであると認められる。
? 本件訂正発明3についてア 前記1?ウのとおり、本件各訂正発明は、これをPIVKA−IIに対するイムノアッセイに用いることにより、従来、利用可能なPIVKA−10 IIに対するイムノアッセイでは不可能であったPIVKA−IIの「アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。 」の検出)を可能にした新たな抗体として、「PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分」を含む単離された結合性タンパク質(抗体)を提供するという技術的意義を有する。
15 また、
「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」における「脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる」(本件明細書等の段落【0028】 という性質を利用して、
) イムノアッセイにおいてPIVKA−IIを検出可能とするためには、6位及び7位がGlaであるプロトロ20 ンビンと、当該位置におけるアミノ酸残基が異なるPIVKA−IIとを識別できる抗体(結合性タンパク質)であればよいことを当業者は理解することができるところ、「PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGlu」が、
「プロトロンビンにおける6位及び7位のGla」とは異なる特異的な構造部位である(前記3?)。
25 したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明には、本件各訂正発明の課題を解決するために、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位の85Gluを含む構造と、プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なるという特徴を有する「結合性タン5 パク質」を提供することが記載されていると認めることができる。
イ 本件明細書等の実施例2によれば、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」の具体例である6H6モノクローナル抗体は、プロトロンビンペプチド(1−13)に比してPIVKA−IIのアミノ酸1−13ペプチドに高い親和性を有しており(段落【0172】〜【0175】 、実施例3に)10 よれば、6H6モノクローナル抗体を試薬として用いた自動イムノアッセイについて、ヒト血清中のPIVKA−IIを検出するアッセイの能力を実証したことが記載されており(段落【0176】〜【0181】 、HC)C患者の場合に上昇することが知られているPIVKA−IIを実際に検出できたことが裏付けられている。
15 ウ 上記ア、イの各事情を総合すれば、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無に依存して、PIVKA−IIとプロトロンビンに対する反応性が異なるという本件訂正発明3の「結合性タンパク質」の特徴を有することにより、HCC患者の場合に上昇することが知られているPIVKA−IIを有効に検出でき、HC20 C又は肝癌を検出するのに有効に用いられ得るといえるから、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は前記?の課題を解決できるものと認められる。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時における技術常識に照らし、本件訂正発明3は、当業者が前記?の課25 題を十分に解決できると認識できる範囲のものであり、かつ、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
86? その余の本件各訂正発明について本件審決は、訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、71及び72について、いずれも、訂正後の請求項3を直接又は間接的に引用5 するか、訂正後の請求項3と同様の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むものであるところ、訂正後の請求項3と同様に、サポート要件を満たす旨判断しているが(審決書86頁)、この判断は相当であるといえる。
? 原告の前記第3の5〔原告の主張〕における主張について10 原告は、本件訂正発明3は、HCC又は肝癌を検出することのできない結合性タンパク質を広く包含することになり、請求項の範囲全体にわたって「HCCまたは肝癌を検出するための、結合性タンパク質を提供する」という課題が解決できると認識することはできず、このような結合性タンパク質を含む本件訂正発明3はサポート要件に違反すると主張する。
15 しかし、前記?のとおり、本件明細書等の記載から、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」について、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の範囲内における「脱炭酸されたアミノ酸残基」に対する反応性(相互作用)と、
「カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基」に対する反応性(相互作用)とが、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的20 な構造部位の有無に依存して異なることが裏付けられているといえる。
6H6モノクローナル抗体が、タイプ(i)(6位及び7位がGlu)とは異なる他のタイプのPIVKA−IIのペプチド(1−13)に対して結合特異性を示すか否かが明らかでなかったとしても、少なくとも、アミノ酸残基の脱炭酸の程度が最も大きいタイプ(i)のPIVKA−IIペプチドを、
25 プロトロンビンと識別して結合するのであるから、HCC患者の場合に上昇することが知られているPIVKA−IIを検出でき、HCC又は肝癌を検87出するのに有効に用いられ得るといえる。
さらに、@本件明細書等には、第2の抗体(本件訂正発明3の結合性タンパク質)が「PIVKA−IIのアミノ酸1−13」における「脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常5 の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる」との記載があること(段落【0028】 、
) A実施例2において、6H6モノクローナル抗体について、
6位及び7位の二つのアミノ酸残基のみが異なるPIVKA−IIペプチド(1−13)及びプロトロンビンとの関係で解離定数の値が大きく異なるという反応性(相互作用)の差異がある事実が明らかになっていること、並び10 にBPIVKA−IIにタイプ(i)ないし(iv)が存在するという技術常識があることを踏まえれば、当業者は、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」が、「6位及び/又は7位のグルタミン酸残基(Glu)」の部分でPIVKA−IIとプロトロンビンとを識別することを理解し、「6位又は7位の一方のみがGlu」であるタイプ(ii)及びタイプ(iii)のPI15 VKA−IIペプチド(1−13)についても、
「6位及び7位がGla」であるプロトロンビンペプチド(1−13)との配列の違いがあることから、
反応性(相互作用)に違いがあると理解するものといえる。
したがって、6H6モノクローナル抗体が、タイプ(ii)又は(iii)のPIVKA−IIに対し結合特異性を有することが確認できていないため20 に、HCC又は肝癌を検出するのに有効でなく、上記課題を解決できるものでないとは認められない。
以上によれば、本件訂正発明3がHCC又は肝癌を検出することのできない結合性タンパク質を広く包含するために前記?の課題を解決できると認識することはできないとの理由で、本件訂正発明3がサポート要件に違反する25 とは解されない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
88? 取消事由5に関する結論以上によれば、サポート要件違反に関する本件審決の判断に誤りはなく、
取消事由5には理由がない。
9 取消事由6(実施可能要件違反)について5 ? 判断基準特許法36条4項1号に規定する実施可能要件については、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているかを検討すべきである。
10 ? 本件訂正発明3についてア 本件訂正発明3は、
「単離された結合性タンパク質」という物の発明である。
そして、前記3?のとおり、本件訂正発明3の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合」するとは、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」15 が、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、
プロトロンビンにおける6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なることを意味すると当業者は理解することができる。
20 本件明細書等の段落【0073】ないし【0080】には、モノクローナル抗体の調製方法として、抗体の技術分野において知られている技術を用いて調製され得ることが記載されており、特に、段落【0075】ないし【0080】に記載のハイブリドーマ技術を用いて抗体を調製する方法は、当該技術分野において日常的であり、よく知られている方法であるこ25 とが記載されている。
そして、本件明細書等の実施例1(段落【0166】〜【0171】)で89は、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」に該当する「6H6モノクローナル抗体」を製造するにあたり、PIVKA−IIのアミノ酸1−17(6位及び7位がGlu)の配列を有するペプチドを免疫原として用いてマウスを免疫化し、PIVKA−IIに対して最高の反応性を示し、プロ5 トロンビンに対して最小の反応性を示したマウスを選択し、また、PIVKA−IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択するなどして、ハイブリドーマ6H6のクローンを確立するという、モノクローナル抗体の製造方法が用いられている。
さらに、本件明細書等の実施例2(段落【0172】〜【0175】)に10 は、実施例1のハイブリドーマ6H6のクローンから生成される「6H6モノクローナル抗体」のPIVKA−IIペプチド(1−13)及びプロトロンビンペプチド(1−13)に対する親和性を比較し、PIVKA−IIペプチド(1−13)に対する解離定数(K d )の値が、プロトロンビンペプチド(1−13)に対する解離定数の値よりも大幅に低い(すなわ15 ち、高い親和性を有する)ものであったことが示されており、上記両ペプチドの配列の違いを踏まえると、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」の、PIVKA−IIのアミノ酸1−13の範囲内における「脱炭酸されたアミノ酸残基」に対する反応性(相互作用)と、
「カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基」に対する反応性(相互作用)とが、PIVKA20 −IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無に依存して異なることが裏付けられているといえる(前記8?、 。
?)以上を総合すると、発明の詳細な説明の記載事項によれば、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位に高い反応性を示す抗体を得るために、対応するPIVKA−IIのアミノ25 酸1−17の配列を有するペプチドを免疫原として用いた一般的な製造方法により、本件訂正発明3の所定の「抗原結合性部分」を有する「結合90性タンパク質」(抗体)を調製することは、当業者が過度の負担なくなし得ることといえる。
イ 本件明細書等の段落【0114】には、抗体を使用する方法として、本件明細書等に記載される抗体については、PIVKA−II、そのエピト5 ープ又はその部分に結合する抗体の能力を考慮すると、従来の競合的又は非競合的イムノアッセイを用いて、生物学的試料(例えば、血清、血液、
組織もしくは血漿など)中のPIVKA−IIの量を検出及び/又は定量するのに用いられ得ること、そして、当該検出が、生物学的試料が得られた患者に対するHCC又は肝癌の診断に用いられ得ることが記載されて10 いる。
このうち、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法としては、
試験試料を「PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体」 「PIVKA−IIのアミノ酸1−13にと、
結合する抗原結合性部分」を有する「第2の抗体」に接触させ、第1の抗15 体/抗原/第2の抗体の複合体の形成を標識によって測定する方法が記載されており、その「第1の抗体」が「例えば、mAb 3C10、すなわち、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体」であり、
「第2の抗体」 「例は、
えば、6H6、すなわち、ATCC受託番号PTA−10541を有する20 ハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体」であること(段落【0116】)が開示されている。
また、前記8?のとおり、本件明細書等の実施例3(段落【0176】〜【0181】)には、実施例2の特徴を有する6H6モノクローナル抗体を試薬として用いた自動化イムノアッセイについて、ヒト血清中のPIV25 KA−IIを検出するアッセイの能力を実証したことが記載されており、
HCC患者の場合に上昇することが知られているPIVKA−IIを実91際に検出できたことが裏付けられている。
以上の発明の詳細な説明の記載によれば、本件訂正発明3の「抗原結合性部分」を有する「結合性タンパク質(抗体)」が、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む構造と、プロトロンビンにおける5 6位及び7位のGlaを含む構造とを識別し、両者の構造の違い(すなわち、PIVKA−IIにおける6位及び/又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無)に依存して、その両者に対する反応性が異なることを利用して、従来の競合的又は非競合的イムノアッセイにより、生物学的試料(例えば、血清、血液、組織もしくは血漿など)中のPIVKA−II10 の量を検出及び/又は定量するのに使用することや、生物学的試料が得られた患者に対するHCC又は肝癌の診断に使用することは、当業者が過度の負担なくなし得ることといえる。
ウ 上記ア及びイによれば、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、
その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要すること15 なく、本件訂正発明3を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
? その余の本件各訂正発明について本件審決は、訂正後の請求項4、5、13、15ないし22、25ないし31、33ないし37、40、45ないし53、55、57ないし69、720 1及び72について、いずれも、訂正後の請求項3を直接又は間接的に引用するか、訂正後の請求項3と同様の「PIVKA−IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むものであるところ、訂正後の請求項3と同様に、実施可能要件を満たす旨判断しているが(審決書89頁)、この判断は相当であるといえる。
25 ? 原告の前記第3の6〔原告の主張〕における主張について原告は、タイプ(ii)とタイプ(iii)のPIVKA−IIに対して92すらプロトロンビンとは異なる結合特異性を示すか否かは不明であり、「特異性」の程度が不明なもの、あるいは特異性が低いものでも「特異的」であるとして包含するものであるから、調製した結合性タンパク質がHCC又は肝癌を検出するのに使用できるか否かは、逐一実験をしなければ明らかにな5 らず、これは当業者に過度の試行錯誤を必要とするものであり、実施可能要件を充足しているとはいえないと主張する。
しかし、前記8?のとおり、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、
「6位又は7位の一方のみがGlu」であるタイプ(ii)及びタイプ(iii)のPIVKA−IIペプチド(1−13)についても、
「6位及び7位10 がGla」であるプロトロンビンペプチド(1−13)と反応性(相互作用)に違いがあると考えられ、かつ、当業者がこれを理解することができるといえる。
そして、前記?アの説示内容からすれば、タイプ(ii)又は(iii)についても、そのアミノ酸1−13の配列部分において、6位又は7位のG15 luを含む構造を有するペプチドを免疫原として用いて、所定の「抗原結合性部分を有する」モノクローナル抗体を一般的な製造方法により製造し、プロトロンビンとの反応性がPIVKA−IIにおける6位又は7位のGluを含む特異的な構造部位の有無に依存して異なるという特徴を有する抗体を調製できるといえる。
20 そうすると、タイプ(ii)及びタイプ(iii)がPIVKA−IIに対する結合特異性を示すか否かが不明である、あるいは結合特異性が低いために、逐一実験をしなければ調製した結合性タンパク質がHCC又は肝癌を検出するのに使用できるか否かが不明であり、当業者が過度の試行錯誤を要するとはいえない。
25 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
? 取消事由6に関する結論93以上によれば、実施可能要件違反に関する本件審決の判断に誤りはなく、
取消事由6には理由がない。
10 結論以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がないから、
5 原告の請求は棄却されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部10裁判長裁判官東 海 林 保15裁判官今 井 弘 晃20裁判官25 水 野 正 則94(別紙1 訂正特許請求の範囲写し、別紙2 審決書写し省略)95別紙3本件明細書等の記載1 技術分野5 「本開示は、例えば、肝細胞癌(HCC)、肝癌および関連の病状の診断、処置および予防において用いられ得る抗体およびイムノアッセイ方法に関する。 (段落」【0001】)2 背景技術、課題「タンパク質プロトロンビンIIはII因子としても知られており、ビタミンK10 の存在下、合成後修飾を受け、GLA−ドメインにおける10個のグルタミン酸残基(GLA)がg−カルボキシグルタミン酸にカルボキシ化されている。カルボキシ化のプロセスは、プロトロンビンがPIVKA−II(ビタミンK欠乏時誘導蛋白)に変換される病状およびプロセスにおいて異常であり、不完全である。
PIVKA−IIは分子量72kDaを有する大型の糖タンパク質であり、HC15 C患者の場合に上昇することが知られている(文献略)。現在、生物マーカーの使用によってHCCまたは肝癌を検出するための利用可能な方法は効果的でない(文献略) さらに、
。 このような状態を効果的に検出するイムノアッセイにおいて有用であるため、またはこのような状態を処置するために必要とされる結合特異性を有するモノクローナル抗体は殆んど知られていない(Naraki ら、Biochemica20 et Biophysica Acta(2002年) 1586巻、
、 287−298頁) したがって、

腫瘍学において、HCCまたは肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要とされている。 (段落【0002】」 )3 課題を解決するための手段「一態様において、本開示は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託25 番号PTA−10541によって表されるハイブリドーマ細胞系統を提供する。
本開示は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA−10541によって表されるハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体も提供する。 (段落【0004】」 )「別の一態様において、本開示は、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を含5 む単離された結合性タンパク質を提供する。例示の一実施形態において、単離された結合性タンパク質は約4.0×10−9 Mまたはそれより低い結合解離定数を有する。 (段落【0005】」 )「別の一態様において、本開示は、方法が、a)試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を有する抗体と、抗体−抗原複合10 体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、およびb)抗原−抗体複合体の存在は試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、抗原−抗体複合体の存在を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出するための方法を提供する。抗体は、ATCC受託番号PTA−10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体であ15 ることができる。 (段落【0009】」 )「別の一態様において、本開示は、a)GANPマウスを、PIVKA−IIのアミノ酸1−17を含む抗原で、マウスが抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、b)マウスの脾臓から細胞8個を収集し、精製するステップ、c)ハイブリドーマを生成するために、脾臓細胞をミ20 エローマ細胞と融合するステップ、ならびにd)PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、PIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法を提供する。本方法において、ハイブリドー25 マ細胞系統は、ATCC受託番号PTA−10541を有する細胞系統であることができる。 (段落【0013】」 )4 発明を実施するための形態? 序文および定義「PIVKA−IIタンパク質のGLAドメインは、10個のGLAアミノ酸を含む、アミノ酸1−46(またはプロトロンビン配列の44−88)からな5 る。PIVKAタンパク質は、脱炭酸されたGLAの位置および数に関して変化する複数の形態において存在する。現在利用可能なPIVKA−IIに対するイムノアッセイは一部分のタンパク質だけ(主に、環状ジスルフィド結合のアミノ酸17−23の配列) および周囲の配列、
、 すなわちアミノ酸13−27を検出する。その結果、アミノ酸17−23のGLAの外側(脱炭酸されたG10 LAを含む。)は検出されない。本明細書に開示する新たな抗体および方法は、
PIVKAのアミノ酸1−17、およびアミノ酸17−23の領域における脱炭酸された残基を検出するための方法を提供する。これは、例えば、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗PIVKA抗体、およびPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結15 合性部分を有する第2の抗PIVKA抗体を用いることによって実現され得る。
第2の抗体は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる。アッセイにおいて両方の抗体を用いることで、高レベルの特異性でPIVKA13−27およびPIVKA1−27の両方を検出することがで20 き、したがってPIVKA13−27単独を検出することによって生成されるものよりも強力なシグナルを生成する。 (段落【0028】」 )「本開示は、したがって37±4nMまたはそれ未満のK d で、好ましくは1×10−9 Mまたはそれを超える範囲の、好ましくは約1×1010 Mまたはそれを超える、PIVKA−IIペプチドに対するK dで、PIVKA−IIの1つま25 たは複数のエピトープに結合する結合性タンパク質、特に、本明細書以後「6H6」と呼ぶモノクローナル抗体を提供する。特に、本開示の結合性タンパク質または抗体は、約1×10 −9 Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10−10Mまたはそれを超える、PIVKA−IIのアミノ酸領域1−13に対する解離定数(K d)を有する。抗体はこのように、PIVKA−IIを特異的に認識し結合することができる。抗体がPIVKA−IIに結合した後は、例え5 ば、プロトロンビンによって置換されない。抗体がPIVKA−IIおよびプロトロンビンに同時に曝露された場合、本開示の6H6抗体は、PIVKA−IIよりもプロトロンビンに対して約10倍から約1000倍低い親和性を有することは注目すべきことである。 (段落【0029】」 )「本明細書で用いられる『結合』 『特異的結合』または『特異的に結合する』、
10 の語は、抗体、タンパク質またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基もしくはエピトープ)の存在に依存することを意味し、例えば、抗体は、一般的にタンパク質よりもむしろ特異的なタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ『A』に特異的である場合、標識化されている『A』および抗体を含む反応15 における、エピトープA(または遊離の、非標識のA)を含む分子の存在は、
抗体に結合する標識化されているAの量を低減する。 (段落【0035】」 )「本明細書で用いられる『抗体』の語は、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖からなるあらゆる免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的なエピトープ結合性の性質を保持している、あらゆる機20 能上のこれらのフラグメント、変異体、変形もしくは誘導体を広く意味する。
このような変異体、変形、または誘導体の抗体のフォーマットは、当技術分野において知られている。この非制限的な実施形態を以下に論じる。全長の抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2お25 よびCH3の3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域に散りばめられる、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。VHおよびVLは各々、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、
5 CDR3、FR4の順番においてアミノ末端からカルボキシ末端まで配列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。免疫グロブリン分子はあらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、
クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってよい。 (段落【0036】」 )10 「本明細書で用いられる、抗体の『抗原結合性部分』 または、 『抗原部分』( 単に )の語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを意味する(例えば、PIVKA−IIの1つまたは複数のエピトープ) 抗体の抗原結合性の機能は、
。 全長の抗体の1つまたは複数のフラグメントによって行われ得ることが示されている。このような抗体の実施形態は、二重15 特異性(bispecific)、二特異性(dual specific)、または多重特異性であってもよく、2つまたはそれを超える異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合性部分」の語の範囲内に包含される結合性フラグメントの例は、(i)VL、
VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価のフラグメントであるFabフラグメント、
(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている220 つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントであるF(ab’ 2フラグ)メント、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、
(v)単一の可変ドメインを含むDAbフラグメント(文献略)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメント25 の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは組換え方法を用いて、VL領域およびVH領域の対が1価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成のリンカーによって、連結され得る。このような単鎖抗体も、抗体の『抗原結合性部分』の語の範囲内に包含される。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは2価の、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリ5 ペプチド鎖上に発現される二重特異性抗体であるが、非常に短いので同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするリンカーを用いて、それによってドメインを別の鎖の相補的なドメインと対を作らせ、2つの抗原結合性部位を作り出す。 (段落【0037】」 )「本明細書で用いられる『単離された抗体』は、異なる抗原特異性を有する他10 の抗体が実質的にない抗体(例えば、本開示の抗体が反応性であるPIVKA−IIの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合し、PIVKA−II内に存在するもの以外の抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体が本質的にない、単離された抗体)を意味するものとされる。 (段落【0039】」 )「『活性』の語は、本開示の抗体が反応性である抗原または抗原(複数)などの、
15 抗原に対する抗体の結合特異性/親和性などの活性を含む。 段落」( 【0045】)「『エピトープ』の語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるポリペプチドの決定基を含む。ある実施形態において、
エピトープ決定基は、アミノ酸、糖の側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面のグループ分けを含み、ある実施形態において、
20 特異的な3次元構造の特徴、および/または特異的な電荷の特徴を有することがある。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある実施形態において、抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合体混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。 (段落【0046】」 )25 「本明細書で用いられる『Kd 』の語は、当技術分野において知られている、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を意味するものとされる。 (段落【005」0】)「本明細書で用いられる『標識化されている結合性タンパク質』の語は、結合性タンパク質の同定をもたらす、組み入れられている標識を有するタンパク質を意味する。好ましくは、標識は検出可能なマーカー、例えば、放射標識され5 たアミノ酸の組入れ、または標識化されているアビジンによって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドに対する付着である(例えば、光学的方法または比色法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)。ポリペプチドに対する標識の例は、それだけには限定されないが、
以下:放射性同位体または放射性核種(例えば、3 H、14 C、35 S、90 Y、9910 Tc、111In、125 I、131 I、177 Lu、166 Hoまたは153 Sm)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、リン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、2次レポーターによって認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、215 次抗体に対する結合性部位、金属結合性ドメイン、エピトープタグ)、ならびにガドリニウムキレートなどの磁性物質を含む。 (段落【0051】」 )「『抗体コンジュゲート』の語は、治療物質または細胞毒性物質などの第2の化学部分に化学的に連結している、抗体などの結合性タンパク質を意味する。」(段落【0052】)20 ? モノクローナル抗体の調製「モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはこれらの組合せの使用を含む、当技術分野において知られている広範囲の技術を用いて調製され得る。例えば、本開示のモノクローナル抗体は、当技術分野において知られており、教示されているものを含むハイブリ25 ドーマ技術(中略)を用いて生成されるのが好ましい。 (段落【0073】」 )「本明細書で用いられる『モノクローナル抗体』の語は、ハイブリドーマ技術によって生成される抗体に限定されない。
『モノクローナル抗体』の語は、あらゆる真核生物、原核生物、またはファージクローンを含めた単一のクローンに由来する抗体を意味し、それによってそれが生成される方法ではない。 (段落」【0074】)5 「ハイブリドーマ技術を用いて特異的な抗体を生成し、スクリーニングするための技術は、当技術分野において日常的であり、よく知られている。一実施形態において、本開示は、モノクローナル抗体、および本開示の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法によって生成される抗体を産生する方法を提供し、ハイブリドーマは、本開示の抗原で免疫化されたマウスか10 ら単離される脾細胞をミエローマ細胞と融合し、次いで本開示のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに対して、融合物から得られるハイブリドーマをスクリーニングすることによって産生されるのが好ましい。簡潔に述べると、マウスは対象の抗原で免疫化され得る。」(段落【0075】)15 「動物が抗原で免疫化された後、抗体および/または抗体産生細胞は動物から得ることができる。抗体を含有する血清は、動物から、動物を出血させ、または屠殺することによって得られる。血清は、動物からそれが得られたまま用いられてよく、免疫グロブリン分画は血清から得られてよく、または抗体は血清から精製されてよい。このやり方で得られた血清または免疫グロブリンはポリ20 クローナルであり、したがって不均一な配列の性質を有する。 (段落【007」6】)「例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されるなど、免疫反応が検出された後、マウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次いで、脾臓細胞を、よく知られている技術によって、アメリカ培養細胞系統保存機関(Man25 assas、VA)から入手できる細胞系統SP20からの細胞など、あらゆる適切なミエローマ細胞に融合する。ハイブリドーマを選択し、限外希釈法によってクローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、対象のペプチドまたは抗原に結合することができる抗体を分泌する細胞に対して、当技術分野において知られている方法によってアッセイする。一般的に高レベルの抗体を含んでいる腹水は、ポジティブのハイブリドーマクローンで免疫化したマウ5 スによって産生され得る。 (段落【0077】」 )「別の実施形態において、抗体生成性の不死化ハイブリドーマは、免疫化した動物から調製され得る。免疫化後、動物を屠殺し、当技術分野においてよく知られている通り、脾臓B細胞を不死化したミエローマ細胞と融合する。
・・・融合および抗生物質選択の後、ハイブリドーマは、抗原もしくはその部分、また10 は抗原を発現する細胞を用いてスクリーニングされる。好ましい一実施形態において、最初のスクリーニングは、酵素結合免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを用いて行われる。ELISAスクリーニングの一例は、参照により本明細書に組み込む、国際公開第00/37504号に提供されている。 (段落【0078】」 )15 「抗体生成性ハイブリドーマが選択され、クローニングされ、ハイブリドーマの活発な成長、抗体の高生成性、および下記にさらに論じる所望の抗体の特徴を含めた望ましい性質に対してさらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、ヌードマウスなどの免疫系を欠く動物などの同質遺伝子的な動物においてインビボで、またはインビトロの細胞培養において培養および拡張されてもよ20 い。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、拡張する方法は、当業者にはよく知られている。 (段落【0079】」 )「好ましい一実施形態において、ハイブリドーマは、上記に記載した通り、マウスのハイブリドーマである。別の好ましい一実施形態において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマなどの非ヒトの、非マ25 ウスの種において生成される。別の一実施形態において、ハイブリドーマは、
ヒトの非分泌性のミエローマが抗体を発現するヒトの細胞と融合しているヒトハイブリドーマである。 (段落【0080】」 )? 抗体を使用する方法「PIVKA−II、またはそのエピトープもしくはその部分に結合する本明細書に記載する抗体の能力を考慮すると、本明細書に記載する抗体は、従来の5 競合的または非競合的なイムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫測定、サンドイッチアッセイもしくは免疫組織化学)を用いて、生物学的試料(例えば、血清、血液、組織もしくは血漿など)中のPIVKA−IIの量を検出および/または定量するのに用いられ得る。次いで、このような検出は、生物学的試料が得られた患10 者に対するHCCまたは肝癌の診断をもたらし得る。 (段落【0114】」 )「生物学的試料中のPIVKA−IIを検出するための方法は、例えば、第1の抗体−抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、生物学的試料を本開示の抗体(またはその抗体部分)と接触させ、抗原/抗体複合体の形成を検出することによってPIVKA−IIまたは部分(例えば、そのエピトープ)を検15 出することを含む。抗体は、結合している抗原もしくは非結合の抗原(すなわち、PIVKA−II)の検出および/または定量を促進するために、検出可能な物質で直接的または間接的に標識化され得る。 (段落【0115】」 )「試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法は、a)試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性部分を有する第120 の抗体と、第1の抗体−抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、b)第2の抗体がPIVKA−IIのアミノ酸1−13に結合する抗原結合性部分を有し、検出可能な標識にコンジュゲートしている、第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に、第1の抗体/抗原/第2の抗体の複合体を形成するのに十分な時間および条件下、加えるステップ、ならびにc)検出25 可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出するステップを代替的に含むことができる。第1の抗体は、例えば、mAb 3C10、すなわち、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である。第2の抗体は、例えば、6H6、すなわち、ATCC受託番号PTA−10541を有するハイブリドーマ細胞系統に5 よって生成されるモノクローナル抗体である。 (段落【0116】」 )「イムノアッセイに基づく定量方法はよく知られており、例えば、イムノアッセイの出力から決定されたPIVKA−IIの量を、閾値またはカットオフ値など、PIVKA−IIのレベルがそれを超えるとHCCもしくは肝癌であることを示す、予め決定されたレベルに比べることを含むことができる。 (段落」10 【0117】)「抗体を標識化するのに適切な検出可能な物質は、様々な酵素、補欠分子族、
蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。 (段落【0121】」 )「上記のイムノアッセイによって試験され得る生体液の例は、血漿、 全血、
尿、
乾燥全血、血清、脳脊髄液、唾液、涙液、鼻洗浄液または組織および細胞の水15 性抽出物を含む。 (段落【0126】」 )5 実施例「〔実施例1〕6H6モノクローナル抗体の開発免疫原のデザイン:PIVKA−II(すなわち、血液凝固II因子の非存在下ビタミンKによって誘導されるタンパク質)特異的領域のPIVKA−I20 I 1−17におけるアミノ酸長17個のペプチドを免疫原として選択した。PIVKA−IIにおけるアミノ酸長17個のペプチド中にグルタミン酸の脱炭酸されたアミノ酸が4個存在し、プロトロンビン(II因子)はアミノ酸長17個のペプチド中にカルボキシル化されたグルタミン酸(GLA)を4個有していた。C末端にシステインを有する、PIVKA−II特異的なアミノ酸長17個25 のペプチドは、マレイミド活性化されたキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に選択的にコンジュゲートしていた。PIVKA−II(1−17)C末端コンジュゲートしたKLHを使用することで、抗原としてPIVKA−IIのN末端部分が提示される。ペプチドの合成およびKLHに対するコンジュゲートは標準方法で行った。ペプチドのN末端領域はKLHに結合していた。6H6モノクローナル抗体は、担体としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)5 に連結している以下の合成ペプチド(配列番号18)を用いて生成された。 (段」落【0166】)「【化9】」10 (段落【0167】)「免疫化:ペプチドKLHを用いて、図1に示す通り、胚中心関連DNAプライマーゼ(GANP)トランスジェニックBalb/cマウス3匹およびGANPトランスジェニックC57BL/6マウス3匹を免疫化した。GANPトランスジェニックマウスの生成方法および免疫化方法は、Sakaguchi ら、The Journal15 of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁に記載されている方法にしたがった。PIVKA−IIおよびプロトロンビンに対する反応性の決定:プロトロンビン乾燥粉末(Sigma F5132)を110℃で8時間加熱することによって、PIVKA−II抗原を調製した(Bajaj ら、J.Biol.Chem.(1982年4月10日) 257巻、 (7) 3726−31頁を参照されたい。 。
、 )20 免疫化から8週間を超えた後、マウスの血清を出血させ、PIVKA−IIに対する反応性およびプロトロンビンに対する反応性を、以下の手順を用いて決定した:PIVKA−II 1ug/mLまたはプロトロンビン5ug/mLを、96ウエルのエンザイムイムノアッセイ(EIA)プレート中に加え、PIVKA−IIまたはプロトロンビンをウエル表面にコーティングした。Block Aceを含む溶液によってブロックした後、マウス血清を希釈し、次いでウエルに加えた。洗浄ステップの後、西洋ワサビのペルオキシダーゼ(HRP)によって標識化した抗マウス抗体を加えた。もう洗浄ステップをさらに1回行った後、基質5 溶液を加え、次いで分光光度計によって吸光度を測定した。各群においてPIVKA−IIに対して最高の反応性を示し、プロトロンビンに対して最小の反応性を示したマウスを、次のステップのために選択した。 (段落【0168】」 )「融合:GANPトランスジェニックBalb/cおよびGANPトランスジェニックC57BL/6の各群から選択したマウス1匹からの脾臓細胞を、
10 Sakaguchi ら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁において記載されている標準方法でミエローマ細胞に融合した。ハイブリドーマ細胞を限外希釈法によって希釈し、次いで培養上清をハイブリドーマのスクリーニングに用いた。 (段落【0169】」 )「ハイブリドーマのスクリーニング:以下の手順を用いることによってハイブリ15 ドーマのスクリーニングを行った:(1)PIVKA−IIに対する反応性:PIVKA−II 1ug/mLを96ウエルのEIAプレート中に加え、PIVKA−IIをウエル表面上にコーティングした。Block Aceを含む溶液によってブロックした後、次いでハイブリドーマの上清をウエルに加えた。洗浄ステップの後、西洋ワサビのペルオキシダーゼによって標識化した抗マウス抗体を20 加えた。洗浄ステップをさらに1回行った後、基質溶液を加え、次いで分光光度計によって吸光度を測定した。高い反応性を示したウエルを次のステップのために選択した。
(2)mAb 3C10(抗PIVKA−II 17−24抗体)を用いたサンドイッチ反応性:マウスFcに対する抗体10ug/mLを96ウエルEIAプレート中に加え、抗マウスFc抗体をウエル表面上にコーティングした。
25 Block Aceを含む溶液によってブロックした後、次いで、1:100倍希釈したハイブリドーマの上清をウエルに加えた。洗浄ステップの後、異好性ブロッカー試薬(heterophilic blocker reagent)(HBR)をウエルに加えて、予めコーティングした抗マウスFc抗体の残存する反応部位をキャッピングした。洗浄ステップの後、ビオチン化した抗PIVKA17−24モノクローナル抗体(Clone#3C10)をウエルに加えた。洗浄ステップの後、西洋ワサビのペルオ5 キシダーゼによって標識化したアビジンを加えた。洗浄ステップをさらに1回行った後、基質溶液を加え、次いで分光光度計によって吸光度を測定した。結果を図2に示した。1ODを超える吸光度を示したハイブリドーマを、次のステップのために選んだ。 (段落【0170】」 )「クローンの確立:ハイブリドーマ6H6ハイブリドーマのクローニングを、
10 Sakaguchi ら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁において記載されている標準手順を用いて行った。次いで6H6のクローンを確立した。 (段落【0171】」 )「〔実施例2〕6H6モノクローナル抗体親和性のキャラクタリゼーション蛍光相関分光法(FCS)を用いて、mAb 6H6およびPIVKA−II15 ペプチド(1−13) mAb 6H6およびプロトロンビンペプチド、 (1−13)のK dを決定した。FCSは、蛍光分子の拡散係数を測定することができる、溶液相の、単分子レベルの蛍光技術である。遊離の、および抗体結合したAlexa488−ペプチドの分子量における大きな差が拡散係数における実質的な変化をもたらし、次にこの変化を用いてペプチドと抗体との相互作用をモニタリング20 することができる。 (段落【0172】」 )「PIVKA−IIペプチド(1−13)の配列はAlexa488−CANTFLEEVRKGNL(配列番号19)であり、プロトロンビンペプチド(1−13)の配列はAlexa488−CANTFLE * E * VRKGNL(配列番号20)であった。標識化したペプチドの濃度を、Σ 495 =71000M −1cm −125 を用いて1cmキュベット中の吸光度によって決定した。mAb 6H6の濃度を、Σ 280 =218000M −1cm −1 を用いて決定した。Nikon Eclipse TE300蛍光倒立顕微鏡(Nikon InsTech Co.,Ltd、神奈川、日本)と一体化した2チャンネル蛍光相関分光計ALBA(ISS、Champaign、
IL)を用いて、FCS実験を行った。詳しい情報は S. Y. Tetin ら(2006年)、
「Interactions of two monoclonal antibodies with BNP : high resolution epitope5 mapping using fluorescence correlation spectroscopy.」、Biochemistry、45巻(47)、14155−65頁)に記載されている。ペプチドおよびペプチドの抗体の平衡解離係数(K d )を、直接結合実験において、mAb 6H6の存在下、
蛍光標識化したペプチドの自己相関曲線における変化をモニタリングすることによって測定した。Alexa−488で標識化したペプチドを2nMで維持し、
10 抗体濃度を、一連の15個の試料において、ナノモル以下からマイクロモルまで増加性に増大した。抗体結合したペプチドの分画を、2成分適合モデル (twocomponent-fitting model)を用いて各自己相関曲線から算出した。適合のルーチン(fitting routine)およびKd の算出は S. Y. Tetin ら(2006年)において記載されている。 (段落【0173】」 )15 「結合性の測定は全て、0.15M NaCl、3mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20を含む10mM HEPESバッファーpH7.4中で行った。図3は、mAb 6H6およびAlexa488−PIVKA−IIペプチドの結合曲線を示す。PIVKA−IIペプチドに対するmAb 6H6のK dは37±4nMである。図4は、mAb 6H6およびAlexa488−プロト20 ロンビンペプチド(1−13)の結合曲線を示す。曲線上の各データ点を、各自己相関曲線の適合から抽出した(データは示さず)。6H6 mAbおよびプロトロンビンペプチドのK d は4.6±0.5uMである。 (段落【0174】」 )「PIVKA−IIペプチドCys1−13の標識化:Alexa488PIVKA−IIペプチド(1−13)を調製するために、PIVKA−II(cys25 1−13)6mgを4mLガラスバイアル中に秤量し、50mM MES pH6.2 2mL中 に溶解 し、この 溶液に、 D MF(す なわち、 ジ メチルホ ルミ ド(dimethylformide) 0 . 2 m L 中 A l e x a F l u o r 4 8 8 マ リ ミ ド(malimide)1mgを加えた。混合物を室温で2時間インキュベートした。Alexa488 PIVKA−IIペプチド(1−13)を、60分間、アセトニトリル水(10−40%)の勾配を用いてPhenomenex Luna 10u、
5 C18(2)250×50mmカラム(Phenomenex、Torrance、CA)上で精製した。ピークの純粋な分画をプールし、凍結乾燥して乾燥粉末0.6mgを得た。
標識化したペプチドの濃度を、E495=71000M−lcm−1を用いて1cmキュベット中の吸光度によって決定した。(段落【0175】)「〔実施例3〕イムノアッセイ自動化イムノアッセイにおける6H6の使用10 無血清培地中でハイブリドーマを培養した。培養上清中の抗体を、タンパク質Aカラムで精製した。精製した3C10 PIVKA−II特異的モノクローナル抗体を、磁性微粒子にコーティングした(カルボキシル基を、微粒子(AbbottLaboratories、IL)の表面上に、塩酸1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)を用いて共有結合で付けた。 。コーティン)15 グした微粒子を、ウシ血清アルブミン(試薬Aを作成するためのBSA)を含んでいたバッファー溶液中に分散させた。 (段落【0176】」 )「アクリジニウムコンジュゲートを、上記に記載した6H6モノクローナル抗体から作成した。抗体を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化したアクリジニウムエステル(Abbott Laboratories、IL)を用いて標識化した。標識20 化した抗体を、BSAを含むバッファー中に希釈して試薬Bを調製した。TritonX−100を含むバッファー溶液を試薬Cとして調製した。イムノアッセイを、ARCHITECTi2000(Abbott Laboratories、IL)の自動化イムノアッセイシステムを利用した以下の手順で自動的に行った。特に、試薬A50uLおよび試薬C50uLを、試料50uLと混合した。混合物を37℃で125 8分間インキュベートして、試料中の磁性微粒子上にコーティングされた抗体および反応性物質(PIVKA−II)を結合させた。磁性微粒子を磁石によって引きつけ、次いで残余の溶液を除去した。磁性微粒子の表面上に非特異的に結合した不純物が除去されるように、磁性微粒子をリン酸緩衝食塩水(PBS)によって洗浄した。次いで、試薬B 50uLを微粒子に加え、次いで(抗体がコーティングした磁性微粒子)−(試料中のPIVKA−II)−(アクリジニウム標5 識化した抗体)の複合体が形成された。PBSによる洗浄ステップの後、アルカリ性条件下でペルオキシドを加え、次いでアクリジニウムエステルが発光シグナルを生成し、このシグナルを光電子増倍管(PMT)によって検出した。 (段落」【0177】)「PIVKA−II溶液を、磁性微粒子上にコーティングした4つの抗体を用い10 て、Architectイムノアッセイで試験した(図2) クローン3C10は、

PIVKA−II抗原に対して最も強い反応性を示した。これらの結果は3C10抗体がPIVKA−IIに対して高い特異性を示し、PIVKA−IIと高度に反応性であったことを示していた。アッセイは、BSAおよび抗微生物剤を含むpH7.4のリン酸バッファー中PIVKA 0から30000mAU/mL15 の濃度の6つのキャリブレーターを用いてキャリブレートされる。ヒトPIVKA−II分子の図を抗体反応性の部位とともに図5Aに示す。アッセイフォーマットの図を図5Bに示す。 (段落【0178】」 )「アッセイ性能の評価:6つのキャリブレーターを5回繰り返してアッセイし、
ヒトプロトロンビン(Abbott Japan、東京、日本)に対する対照のコンジュゲー20 トおよび6H6コンジュゲートの反応を用いて各キャリブレーターに対するRLU(相対的な光単位)の平均値を、表Bおよび図6に示す通り比較した。両方のコンジュゲートともアッセイにおいて良好な応答をもたらした。 (段落【01」79】)【表2】(段落【0180】)「2つのARCHITECT PIVKA−IIアッセイからの結果を、ポリクローナル抗ヒトプロトロンビンコンジュゲートを用いる市販のPIVKA−I5 Iアッセイ(Picolumi、EISAI、日本)からの結果に比較した。見かけ上健康な人からの試料(ProMedDx LLC、Norton、Massachusetts)および肝細胞癌患者か ら の 試 料 ( Clinical Research Center of Cape Cod 、 West Yarmouth 、
Massachusetts)を用いた。両方のアッセイフォーマット対Picolumiに対する相関を図7−8に示す。これらの結果は、ヒト血清中のPIVKA−II10 を検出するこれらのアッセイの能力を実証している。 (段落【0181】」 )6 図面(各図面に付記した説明は、段落【0027】の「図面の簡単な説明」に記載のものである。)? 図13匹の胚中心関連DNAプライマーゼ(GANP)トランスジェニックBa15 lb/Cマウスおよび3匹のGANPトランスジェニックC57BL/6マウスを免疫化するためのペプチドKLHの使用を示す模式図である。
? 図2mAb 3C10(抗PIVKA−II 17−24)を用いたサンドイッチ反応性を用いたハイブリドーマスクリーニングの結果を示す棒グラフである。
5? 図3PIVKA−II 1−13ペプチドに対するmAb 6H6のK d が37±4nMであることを示す、mAb 6H6(抗PIVKA−II 1−13)およびAlexa488標識化したPIVKA−IIペプチド(1−13)の結合曲線を示すグラフである。
? 図45 プロトロンビンペプチドに対する6H6 mAbのK d が4.6±0.5μMであることを示す、mAb 6H6およびAlexa488標識化したプロトロンビンペプチド(1−13)の結合曲線を示すグラフ)? 図5A抗体反応性の部位を示すヒトPIVKA−II分子を示す模式図である。
? 図5BmAb 6H6を用いた自動化イムノアッセイフォーマットを示す模式図である。
? 図6図5において示したアッセイフォーマットによる、対照のコンジュゲート(MAC1−18)および6H6コンジュゲートの測定性能に用いた6個のPIV5 KA−IIキャリブレーター各々に対するRLU(相対的な光単位)値を示すグラフである。
以 上別紙4文献の記載1 甲4(Journal of Biological Chemistry, 1988, 263(13),p.6259-6267:和訳は甲5 19)? 標題「数種類のヒトビタミンK依存性タンパク質の保存されたエピトープ抗原性部位の位置および抗体結合に対する金属イオンの影響」? 要約10 ア 「マウスに精製ヒトプロテインCを注射することによって産生されるマウスモノクローナル抗体(H−11と称される)は、数種類のヒトビタミンK依存性タンパク質に結合することが見出された。抗体をマイクロタイタープレート上に固定化した固相競合ラジオイムノアッセイを使用して、当該抗体への 125I標識プロテインCの結合を、プロテインC、プロトロンビン、な15 らびに第X因子および第VII因子の量を1×10 −8 〜1×10 −6 Mの濃度範囲にわたって増加させていくことによって阻害した。 (6259頁左欄」1〜9行目)イ 「プロトロンビンのキモトリプシン消化およびプロトロンビンのアミノ末端残基1−44を表すペプチドのQAE Sephadexでの単離により、
20 そのモノクローナル抗体によって認識される抗原性部位を、高度に保存されたγ−カルボキシグルタミン酸含有ドメインにさらに位置付けた。抗体H−11の抗原決定基の正確な位置を、合成ペプチドを使用して証明した。抗体H−11は、第VII因子の残基1〜12およびプロテインCの残基1〜22に相当する合成ペプチドに特異的に結合した。ウシとヒトのビタミンK依25 存性タンパク質のタンパク質配列の比較は、配列Phe−Leu−Glu−Glu−Xaa−Arg/Lysが抗体結合に必要とされることを示唆する。 (6259頁左欄27〜41行目)」? 本文ア 「モノクローナル抗体は、タンパク質の表面決定基に対する有用なプローブである。それらがコンフォメーションエピトープおよび金属イオン依存性5 エピトープの両方を認識する能力があることから、抗体は、プロトロンビンの金属イオン誘導性構造変化をポリペプチドの個別のセグメントに位置付けるために有用であることが証明されてきた。この報告では、我々は、マウスに精製ヒトプロテインCを注射することによって調製され、数種類の他のビタミンK依存性タンパク質に特異的に結合することが示された、単一のモノ10 クローナル抗体(抗体H−11と称される)を記載する。我々は、抗原性部位の位置を定義し、H−11の決定基が金属イオン−タンパク質複合体の形成の際に失われることを見出した。 (6260頁左欄19〜30行目)」イ 「ハイブリドーマH−11の調製−完全フロイントアジュバント中の50μgのプロテインCで、BALB/cマウスの複数の部位に皮下免疫した。
15 完全フロイントアジュバント中の50μgのブースター注射を、4週間、8週間、および12週間で与えた。最後の注射の6週間後に、プロテインC抗体の存在に関して血清力価を決定し、最高の抗プロテインC力価を有するマウスに、生理食塩水中の100μgのプロテインCを静脈内に与えた。4日後、当該マウスをクロロホルムで殺し、その脾臓を取り出した。2匹のマウ20 スからの脾細胞(3×10 8個)を3×10 7 個の骨髄腫細胞と混合し、遠心分離した。その細胞ペレットを、3mlの50%ポリエチレングリコール1000に注意深く再懸濁し、3分間、穏やかに混合した。次いで、その懸濁物を、3分間、1000rpmで遠心分離し、その上清を廃棄し、そのペレットを15mlのウシ胎仔血清に再懸濁した。その容積を培養培地で72m25 lにし、その細胞混合物のうちの0.1mlを、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにピペットで移した。翌日、各ウェルに20%ウシ胎仔血清およびヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジンを含む培養培地の0.1mlを与えた。融合の2日後、フィーダー細胞として機能するように胸腺細胞を添加した。抗プロテインC抗体についての、そのハイブリドーマ上清のスクリーニングを、当該ハイブリドーマが目に見えるようになったと5 きに行った。抗プロテインC抗体を産生するハイブリドーマを、限界希釈によって3回クローニングした。 (6260頁右欄9〜30行目)」「ハイブリドーマスクリーニングアッセイ−抗プロテインC抗体についての、そのハイブリドーマのスクリーニングを、プロテインCをコーティングしたマイクロタイタープレートを用いて酵素結合免疫吸着アッセイによっ10 て行った。 (6260頁右側31〜33行目)」ウ 「固相イムノアッセイ−ビタミンK依存性タンパク質への抗体H−11の結合を、プレート表面上に直接吸着させたかまたは精製ウサギ抗マウス免疫グロブリンで間接的に吸着させた抗体H−11を有するプラスチック製96ウ ェ ル マ イ ク ロ タ イ タ ー プ レ ー ト ( Dynatech Laboratories, Inc. 、
15 Removawells)中で行った。プレートを、50mM炭酸ナトリウム緩衝液、
pH9.0中の抗体H−11または精製ウサギ抗マウス免疫グロブリンで一晩4℃においてコーティングした。次いで、そのプレートを、TBS(10mMTris、0.15M NaCl、pH7.4)で洗浄した。非特異的タンパク質結合部位を、TBS中の1%(w/v)ウシ血清アルブミン(B20 SA/TBS)を室温において1〜2時間添加することによってブロックした。そのプレートをまた、BSA/TBS中−20℃で貯蔵した。ウサギ抗マウス免疫グロブリンでコーティングしたプレートを抗体H−11とともに2時間室温においてインキュベートし、放射性標識したプロテインCを添加する前に、そのウェルをTBSで3回洗浄した。プロテインCを、以前に記25 載されたように、クロラミンTを使用して放射性標識した。20μCi/μgタンパク質の比活性を、この手順によって慣用的に得た。放射性標識した抗原(典型的には、50,000cpm)を、当該ウェルにおいて、TBS中0.5%BSA中で2〜4時間室温においてインキュベートした。次いで、
当該ウェルをTBSで3回洗浄し、当該ウェルと関連する放射活性を、Beckman Biogammaカウンターで決定した。
5 イムノブロッティング−タンパク質を、Laemmliによって記載されるように、5〜15%ポリアクリルアミドスラブゲル上での電気泳動後に、
Towbin et al.に記載されるようにニトロセルロースへと電気泳動的に転写した。転写後に、そのニトロセルロースを、BSA/TBS中で1〜2時間室温においてインキュベートした。次いで、そのニトロセルロースブロットを、
10 TBS中0.2%(w/v)BSAの抗体(5μg/ml)溶液の中に、2時間室温において入れた。そのニトロセルロースブロットを、0.5%(v/v)Nonidet P−40界面活性剤を含む氷冷TBSで3回、合計30分間で洗浄し、次いで、0.2%BSA/TBS中で1:2000希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫15 グロブリンの溶液の中に入れた。振盪機上で1時間室温において第2のインキュベーションを行った後に、そのブロットを、Nonidet P−40を含むTBSで再び3回洗浄した。結合した抗体の位置を、0.8mM о−ジアニシジンジハイドロクロリドを含むTBSおよび0.001%H 2 O 2 、
または0.6mg/ml 4−クロロ−1−ナフトールおよび0.1%H 2O20 2 中で、当該ブロットをインキュベートすることによって可視化した。当該ブロットを0.2%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTBS中で洗浄し、数枚の濾紙の間でそのブロットを乾かすことによって、その反応を停止させた。
ドットブロットまたはスロットブロットいずれかのテンプレートを使用して当該タンパク質をニトロセルロース上に直接ブロットすることによっても、
25 イムノブロッティングを行った。50μl中に2〜0.05μgの全タンパク質量を含む、各タンパク質サンプルのいくつかの希釈物を、各ウェルにおいてブロットし、上記のように免疫検出を行った。そのブロットを、Shimadzu CS−930スキャナーを使用してデンシトメトリーによって分析した。 (6260頁右欄49行〜6261頁左欄17行目)」エ 「プロトロンビンを、Bajaj et al.によって記載される方法によって脱カル5 ボキシル化した。 (6261頁左欄46〜47行目)」オ 「結果抗体H−11の特徴付けの間に、数種類の他のビタミンK依存性タンパク質は、当該抗体への免疫抗原プロテインCの結合を阻害することが見出された。抗体H−11を96ウェルマイクロタイタープレートに吸着させた固相10 競合ラジオイムノアッセイを使用して、放射性標識したプロテインCを、精製ビタミンK依存性タンパク質の濃度を増加させながら、その存在下、ウェルにおいてインキュベートした。当該タンパク質の各々を、使用前に抗プロテインCモノクローナル抗体カラムに通過させた。図1にまとめられたデータは、プロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子および第VII因15 子が濃度依存的様式において10 −8 〜10 −6 Mの範囲にわたって 125 I−プロテインCの結合を阻害できたことを示す。また、プロテインSは、使用した最高濃度(1.45μM)においてより小さい程度の阻害を示した。第IX因子は、同様の濃度範囲にわたって抗体への 125 I−プロテインCの結合を阻害せず、2種の他のタンパク質、骨Glaタンパク質およびアンチト20 ロンビンIIIも阻害しなかった(データは示さず)。これらのデータは、抗体H−11によって認識されるエピトープが、全てではないが数種類のビタミンK依存性タンパク質上で見出されることを示した。 (6261頁右欄1」2〜31行目)カ 「抗体H−11によって認識される抗原性部位の化学的性質を理解するた25 めに、プロトロンビンを消化または化学に改変し、抗体H−11がその改変プロトロンビンに結合する能力を、ドットブロット装置またはスロットブロット装置を使用して決定した。当該抗体が数種類のウシビタミンK依存性タンパク質に結合する能力もまた、この様式で評価した。その抗原を、種々の濃度でニトロセルロース上に固定化し、抗体H−11(5μg/ml)とともにインキュベートした。当該抗体−固定化タンパク質複合体を、西洋ワサ5 ビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンおよび基質(ニトロセルロース上の当該抗原−抗体複合体付近で着色したスポットを形成する)を使用して可視化した。
そのスポットの密度を、デンシトメーターを使用して定量した。図2に示されるデータは、ニトロセルロース上に固定化したウシプロテインC、ウシ10 プロトロンビン、およびウシ第IX因子への抗体H−11の結合を示し、他のウシタンパク質のうちの数種類への結合ならびにその化学的におよび酵素的に改変したプロトロンビン誘導体への結合に関するデータを、表Iにまとめる。陽性の反応性は、図2に示されるデータによって例示されるように、
抗体H−11が、固定化した抗原と用量依存的に反応したことを示す。
15 プロトロンビン上の抗原性部位は、種々の処理(SDSによる変性、メルカプトエタノールによるジスルフィドの還元もしくは還元に続いてのカルボキシメチル化、シトラコネートによるリジン残基の標識、CNBrを用いたメチオニン残基における切断、及びGla残基の熱による脱カルボキシル化を含む)の後に反応性であった。プロトロンビン、シトラコネートによりリ20 ジン残基が改変されたプロトロンビン、またはシステイン残基において還元およびカルボキシメチル化されたプロトロンビンの、トリプシンによる切断は、抗体H−11によって認識される抗原性部位を破壊した。 (6261頁」右欄32行目〜6262頁右欄4行目)「脱カルボキシル化タンパク質からのデータはまた、グルタミン酸残基の25 γ−カルボキシル化が抗体認識に必要とされないことを示す。 (6262頁」右欄14〜16行目)キ 「図3に示されるデータは、抗体H−11が、プロテインCの軽鎖上および第X因子上の決定基に、ならびにプロトロンビン上および第VII因子上に見出される決定基に結合することを示す。 (6262頁右欄23〜26行」目)5 ク 「抗体H−11抗原決定基の直接的な証拠および抗体H−11抗原決定基のGlaドメインのより小さな領域へのさらなる位置づけを、ビタミンK依存性タンパク質の既知の配列を含む合成ペプチドを用いて得た。合成したペプチドは、第VII因子の残基1〜12、第VII因子の残基13〜29を含むペプチド、およびプロテインC軽鎖の残基1〜22を表すペプチドを含10 んだ。Glaドメイン配列における当該ペプチドの位置を、図5に示す。図5に示される配列は、ヒトプロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子、第VII因子、および第IX因子の配列である。アスタリスクは、抗体H−11に結合する4種のタンパク質において同一の残基を示す。精製した合成ペプチドを、96ウェルマイクロタイタープレートの底に固定化した。
15 当該ペプチドへの抗体H−11の結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたウサギ抗マウス免疫グロブリン二次抗体および色素生成性基質を使用して測定した。図6に示されるように、抗体H−11は、固定化したプロトロンビン、第VII因子−(1〜12)−ペプチド、およびプロテインC−(1〜22)−ペプチドに結合したが、第VII因子−(13〜20 29)−ペプチドには結合しなかった。このアッセイのコントロールは、任意の配列の別のペプチドおよび当該ペプチドの各々とインキュベートされる、
非ビタミンK依存性タンパク質に対する別のモノクローナル抗体を含んだ。
これらのコントロールウェルはいずれも、同一のインキュベーションおよびアッセイ条件下でいかなる発色をも示さなかった。これらのデータは、抗体25 H−11が、Glaドメインのアミノ末端セグメントに位置する残基に結合することを証明する。なぜなら抗体H−11は第VII因子−(1〜12)−ペプチドおよびプロテインC−(1〜22)−ペプチドの両方に特異的に結合したからである。また、当該データは、γ−カルボキシグルタミン酸が抗体結合に直接的に必要とされないという、脱カルボキシル化プロトロンビンで見られた結果を確認する。なぜなら当該ペプチドは、グルタミン酸で合5 成されたからである。 (6263頁右欄24行目〜6264頁左欄9行目)」ケ 「この報告におけるデータは、抗体H−11が、ヒトおよびウシのプロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子および第VII因子のGlaドメインのアミノ末端に位置した進化的に保存された抗原決定基を認識することを示す。 (6264頁右欄27〜30行目)」10 コ 「タンパク質および合成ペプチド化学の組み合わせを使用して、我々は、
抗体H−11の抗原決定基をGlaドメインのアミノ末端ドデカペプチドにマッピングした。ヒトおよびウシ両方のビタミンK依存性タンパク質に関するこの領域の比較を図8に示す。表Iにまとめられた情報のほかに、公知のタンパク質配列のこのような比較は、抗体H−11結合部位内のアミノ酸の15 さらなる特定を可能にする。図8に示されるように、抗体H−11に結合するそれらタンパク質によって共有される最小のコンセンサス配列は、FLEEである。天然のタンパク質において、グルタミン酸は、ビタミンK依存性カルボキシラーゼによるカルボキシル化の部位である。シトラコニル化ヒトプロトロンビンのトリプシンによる切断は、抗原性部位がArgも含むかも20 しれないことを示す。そのタンパク質の各々は、塩基性アミノ酸(ArgまたはLysのいずれか、FLEEのカルボキシル末端に向かって2残基)を含む。これは、その抗原決定基内の残基の最小配列がFLEEXR/Kであることを示唆するかもしれない。抗体H−11に結合しないタンパク質、具体的には、ウシおよびヒトの第IX因子およびプロテインSは、その保存さ25 れたトリペプチドLEEのアミノ末端においてフェニルアラニン残基を含まない。これは、この残基が抗体H−11結合に必要であることを意味する。」(6264頁右欄45行目〜6265頁左欄2行目)? 表及び図面ア 図2(6262頁)「5(注:縦軸の「AREA」は面積、横軸の「PROTEIN」は「タンパク質」を意味する。)図2.固定化したウシビタミンK依存性タンパク質への抗体H−11の結合。精製ウシビタミンK依存性タンパク質を、その量を減少させながら、ス10 ロットブロット装置を使用してニトロセルロース上に固定化した。そのニトロセルロースシートを抗体H−11(5μg/ml)とともにインキュベートした後、抗原−抗体複合体を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンおよび色素生成性基質使用して可視化した。ニトロセルロースの発色した領域の密度を、Shimadzu CS15 −930デンシトメーターを使用して定量した。当該デンシトメーターのトレースの相対的面積を、各スロットにブロットしたタンパク質の総質量に対してプロットした。プロトロンビン(●) プロテインC、 (■) 第IX因子、 (〇)の代表的データを示す。同様に得られたデータを表Iにまとめる。」イ 表I(6262 頁)「」ウ 図3(6262 頁)「5(注:縦軸の「Molecular wt. ×10-3」は「分子量×10-3」を意味する。)図3.抗体H−11によるヒトビタミンK依存性タンパク質のイムノブロット。タンパク質を、2%SDSの存在下で、2%β−メルカプトエタノールで還元し、100℃において加熱した。A、タンパク質サンプル(8μg)5 のクマシーブルー染色;B、5〜15%SDSポリアクリルアミドゲルでの電気泳動、ニトロセルロースへの電気泳動的転写、および抗体H−11でのブロット後のタンパク質サンプル(6μg)のイムノブロット。抗原−抗体複合体の検出を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリン二次抗体およびo−ジアニシジンおよび基質としての10 過酸化水素を使用して行った。」エ 図4(Aのみ)(6263 頁)「(注:「PROTHROMBIN」は「プロトロンビン」を意味する。)15 図4.キモトリプシンで消化したプロトロンビンの、抗体H−11を用いたイムノブロット、およびQAE SephadexにおけるプロトロンビンGlaドメインの単離。A、キモトリプシンによるプロトロンビン消化の時間経過。示された時間において、サンプルを取り出し、2%SDSに入れ、
2分間、100℃において加熱した。上側のパネルは、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動後のサンプル(6μg)のクマシーブルー染色;下側のパネルは、SDS−PAGEでの電気泳動およびニトロセルロースへの電気泳動的転写後の同じサンプル(3μg)の抗体H−11でのイムノブロット。上側のパネルの分子量標準は、ホスホリラーゼb(97,05 00)、ウシ血清アルブミン(68,000)、およびオボアルブミン(43,000)である。」オ 図5(6263 頁)「10(注:上から順に、プロテインC、プロトロンビン、第X因子、第VII因子、第IX因子)図5.ヒトビタミンK依存性タンパク質のGlaドメインの配列比較。配列を、the National Biomedical Research Foundation Protein Identification15 Resource Data Base においてそれらが表示されているとおりに列挙する。
グルタミン酸残基は、天然に存在するアミノ酸である、Glu(E)として示し、Glaとしては示さない。番号付けは、プロテインCに対してのものである。アスタリスクは、プロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子および第VII因子において同一の残基を示す。プロテインC配列の下線、
20 および第VII因子配列の上下の線は、合成されたペプチドの位置を示す。」カ 図6(6264 頁)「(注:縦軸:490nmでの吸光度、横軸:pmoles抗原)図6.合成ペプチドへの抗体H−11の結合。種々の量のペプチドを、炭酸緩衝液中、マイクロタイタープレートのウェル上にコーティングした。抗5 体H−11(BSA/TBS中20μg/ml)を、当該ウェル中でインキュベートし、そのウェルをTBSで洗浄し、抗体−ペプチド複合体の存在を、
西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンおよびo−フェニレンジアミンと基質としての過酸化水素を使用して測定した。その反応を4N H2 SO4 で停止させた後、酵素結合免疫吸着アッ10 セイプレートリーダーを使用する490nmでの吸光度測定によって、その発色を定量した。ヒトプロトロンビン(II)、因子(FVII)の残基1〜12および13〜29を表すペプチド、ならびにプロテインC(PC)の残基1〜22への、抗体H−11結合に関するデータを示す。」キ 図8(6265 頁)15 「図8.ビタミンK依存性タンパク質のアミノ末端配列のアラインメント。
ヒトおよびウシのビタミンK依存性タンパク質のアミノ末端配列を、これらタ ン パ ク 質 が 、 the National Biomedical Research Foundation Protein5 Identification Resource Data Base に表示されるとおりに列挙する。太字の残基は、抗体H−11の結合に必要とされるかもしれないアミノ酸を示す。」2 甲1(Biochimica et Biophysica Acta 1586 (2002)、287〜298頁。和訳は甲35。)? 標題10 「肝細胞癌に関連するデス−γ−カルボキシプロトロンビンのγ−カルボキシグルタミン酸の含量」(287頁)? 要約「血清デス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)は、肝細胞癌(HCC)の診断に有用なマーカーであるが、肝疾患におけるその合成の正確な機構15 及びその構造的特性は明らかになっていない。DCPを、モノクローナル抗体MU−3により測定する。この研究の目的は、MU−3のエピトープを検査して、HCCと良性の肝疾患との間のDCPの違いを明らかにすることであった。」(287頁1〜4行目)? 本文20 ア 「肝臓中で合成される血液凝固タンパク質であるプロトロンビンは、6、
7、14、16、19、20、25、26、29及び32位にあるGlaドメインの10個のGlu残基がビタミンK依存性γ−グルタミルカルボキシラーゼによってGlaにγ−カルボキシル化された後、活性形態に変換される。肝細胞癌(HCC)及び肝硬変等の肝疾患を有する患者において、プロ5 トロンビンの合成は低減され、そのγ−カルボキシル化は損なわれ、その結果、デス−γ−カルボキシプロトロンビン(DCP)、即ち、ビタミンKの非存在により誘導されるタンパク質(PIVKA−II)が代わりに形成される。 (287頁左欄1行目〜右欄8行目)」イ 「MU−3抗体は、Motohara らによって作製されたDCPに対するモノ10 クローナル抗体である。臨床研究で、MU−3抗体を使用するイムノアッセイは、HCCにおいてDCPに対して高い感度と特異性を有すること、DCP測定がHCCの早期検出に有用であることが証明されている。 (288頁」左欄34〜40行目)ウ 「2.5 直接結合ELISA15 MU−3抗体の、脱カルボキシル化タンパク質又は合成ペプチドに対する 反 応 性 を 、 9 6 ウ ェ ル マ イ ク ロ タ イ タ ー プ レ ー ト ( Nalge NuncInternational, Rochester, NY, USA)を使用して、ELISAにより測定した。TBS(50mM Tris−HCl、0.1M NaCl、 pH8.0)に希釈された脱カルボキシル化タンパク質又は合成ペプチドを、室温で20 5hインキュベートすることにより、マイクロタイタープレートのウェル上にコートした。TBSでの3回の洗浄の後、ウェルを、1%ウシ血清アルブミン−TBS(BSA−TBS)で1hブロックした。TBSでの洗浄の後、
0.1%Tween20−BSA−TBSで種々の濃度に希釈したMU−3抗体の溶液を、各ウェルに添加した。室温で2hのインキュベーション及び25 洗浄の後、MU−3抗体と反応させたウェルを、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウスIgG抗体(ICN Pharmaceuticals, Irvine, CA,USA)の溶液と、室温で1hさらにインキュベートした。さらなる洗浄の後、
ウェルを、0.1Mクエン酸バッファー、pH5.5中に溶解させた1mg/ml o−フェニレンジアミン及び2mM H 2 O 2 とインキュベートした。反応を、2N硫酸の添加により停止させ、492nmの吸光度を、マイ5 クロプレート光度計を使用して読みとった。 (289頁左欄25行目〜右欄」7行目)エ 「2.6 サンドイッチELISAサンドイッチELISAを、脱カルボキシル化タンパク質の代わりにMU−3抗体をウェルにコートさせ、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した10 ウサギ抗マウスIgG抗体の代わりにアフィニティ精製し西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを使用した以外は、直接結合ELISAに使用した方法により実施した。3%BSA−TBSで希釈した脱カルボキシル化プロトロンビンを、参照標準タンパク質として使用した。 (289頁右欄8〜17行目)」15 オ 「3.3 MU−3抗体エピトープの決定ペプチド−2中のエピトープをより詳細に特定するために、より小さなペプチドを用いた調査が必要であったが、ペプチド−2より小さなペプチドは、ウェルに直接結合させることが困難であった。従って、MU−3抗体のエピトープを、脱カルボキシル化プロトロンビンに対するペプチドの競合を20 用いて、MU−3抗体でコートしたウェルを用いたサンドイッチELISAにより調査した。各ペプチドとの競合後のMU−3抗体と脱カルボキシル化プロトロンビンとの活性を、相対活性として表した。ペプチド−5(残基13−27)及びペプチド−6(残基17−27)は、MU−3抗体に対する反応を阻害し、ペプチド−2と同じ反応性を示したが、ペプチド−7(残基25 17−24)はMU−3抗体と弱く反応しただけであった(図4)。これらの結果から、MU−3抗体のエピトープが少なくとも17−27位の残基からなることが明らかになる。 (291頁右欄1〜18行目)」3 甲11(国際公開第2012/002345号)甲11は、2011年6月28日を国際出願日とする国際出願PCT/JP2011/064724の国際公開公報であり、その優先権主張の基礎となる出願5 は、特願2010−147784号(2010年6月29日出願)(甲12)である。
以下の記載のうち、下線部並びに?シ、?ス及び?は、先願明細書(甲12)に記載されていない。
? 発明の名称10 「PIVKA−IIの測定方法、PIVKA−IIの測定試薬及び抗体」? 明細書ア 「 P I V K A − I I ( Protein Induced by Vitamin K Absence orAntagonist-II)は、AFP(α−フェトプロテイン)と並んで肝がんを診断するマーカーとして広く臨床検査室で測定されている。
15 PIVKA−IIはビタミンK依存性血漿タンパク質の一つであるプロトロンビンの前駆物質である。プロトロンビン(血液凝固第II因子)は、
分子量71,600のタンパクで、フラグメント1、2及びトロンビンの3領域から構成されており、アミノ酸配列も明らかにされている(非特許文献1) フラグメント1は、
。 N末端から41個のアミノ酸によって構成されるG20 laドメインを含む156個のアミノ酸からなる。このGlaドメイン中の10個のγ−カルボキシグルタミン酸(Gla)残基が正常に合成されたものが正常プロトロンビン、正常に合成されず、その全てあるいは一部がグルタミン酸(Glu)残基のままのものがPIVKA−IIである。従って、
PIVKA−IIとは正常プロトロンビンのγ−カルボキシグルタミン酸残25 基についての脱カルボキシル化体であるということもでき、異常プロトロンビンと呼ばれることもある。10個のグルタミン酸残基中いくつがγ−カルボキシル化を受けるかにより数種類のPIVKA−IIが混在した状態で存在している(非特許文献2) 」。 (段落【0002】)イ 「肝がんは他臓器の悪性腫瘍と異なり、もともと慢性肝炎や肝硬変であったところに肝がんが合併するため、肝がん症例の治療にあたっては腫瘍側因5 子だけではなく、肝障害度を考量した上で治療方針を決定する必要がある。
腫瘍マーカー検査としては、PIVKA−IIやAFPが用いられているが、
治療方針の決定に必要となる肝障害度や予後を必ずしも反映していない。こうした中、肝障害度や予後予測を反映する血液検査が望まれていた。 (段落」【0005】)10 「またPIVKA−II は、肝がんでない場合でも、ビタミンK不足、ビタミンK拮抗剤投与症例においても上昇することがわかっている。試薬の高感度化に伴いアルコール性肝炎等における偽陽性が散見され、さらにPIVKA−II が陽性にもかかわらず画像診断では肝がんが見つからない症例も報告されている。こうした中、より肝がんに特異性の高い測定方法の開発が望ま15 れていた。 (段落【0006】」 )ウ 「本発明者らは、鋭意検討を行い、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIと反応する2種の抗体を用いた二抗体サンドイッチ法によりPIVKA−IIを測定することで、肝がんにおける肝障害度の判定及び予後予測が可能となることを見出した。また、この抗体を用いて得られる測定値と従来20 の方法で行ったPIVKA−II測定値を比較することにより、アルコール性肝炎や肝硬変と肝がんを区別することが可能であり、肝がんの予後予測と、
特異性の高い肝がんの検出が可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のPIVKA−IIの測定方法は、
(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIV25 KA−IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA−IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIに特異的な抗体を使用することを特徴とする。 (段落【0010】 【0011】」 、 )「本発明のPIVKA−IIの測定方法は、
(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA−I5 Iを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA−IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIに特異的な抗体を使用するものである。本願明細書において、前記(a)工程で測定されたビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIをNX−PVKAと称することがある。 段落」( 【010 029】)エ 「前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体は、それぞれ、
ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIを抗原として作製されるビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIと反応する抗体であり、例えば、下記方法により製造される。
15 非肝がん症例のクマジン血漿(ビタミンK拮抗物質投与患者の血漿)より精製したPIVKA−II、すなわち、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIを免疫原にして、公知の方法によりハイブリドーマを作製し、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIと反応するハイブリドーマ株を選択する。該ハイブリドーマ株選択時に、人肝がん細胞培養細胞株より精製した20 PIVKA−IIやヒトトロンビンと反応しないハイブリドーマ株を選択することが好ましい。特に、プロトロンビンの10個のグルタミン酸残基についてのγ−カルボキシル化の割合が高いPIVKA−IIに反応性が高いハイブリドーマを選択することが好適であり、具体的には、正常プロトロンビンの脱炭酸処理時間が短いPIVKA−IIに対して高い反応性を示すハイ25 ブリドーマを選択することが好適である。例えば、プロトロンビンより脱炭酸処理時間30分及び6時間で調製したPIVKA−IIに対する反応性を比較する場合、30分で調製したPIVKA−IIに対する反応性を6時間で調製したPIVKA−IIに対する反応性で割った場合に1より大きくなるハイブリドーマを選択することが好ましい。前記ハイブリドーマとしては、
受託番号FERM BP−11258で特定されるハイブリドーマ及び受託5 番号FERM BP−11259で特定されるハイブリドーマが好ましい。
前記選択したハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製し、該モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを用いて公知の方法によりビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIと反応するモノクローナル抗体を得ることが好ましい。 (段落【0030】〜【0032】」 )10 オ 「前記(a)工程における二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法は、例えば、下記方法により実施される。
前記方法により、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIを抗原として2種のモノクローナル抗体を調製し、一方を固相化して用い、他方を標識して用いる。該2種の抗体は、互いに交差反応しない抗体である。
15 抗体を固相化する方法は特に制限はないが、例えば、磁気ビーズやマイクロプレート等の固相に固相化することが好適である。
抗体を標識する方法は特に制限はないが、Ru等の標識物質により標識することが好ましい。
前記固相化抗体及び標識抗体を用いて、検体中のビタミンK欠乏に起因す20 るPIVKA−IIを測定する。測定は、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法における通常の手順に従って行えばよい。なお、後述する実施例では、電気化学発光免疫測定法を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、化学発光法や放射性同位元素法等の公知の測定法を広く使用可能である。 (段落【0033】〜【0034】」 )25 カ 「(実施例1)モノクローナル抗体の調製? ハイブリドーマの調製クマジン血漿(UNIGLOBE RESEARCH CORPORATION社製)より精製したPIVKA−II(1mg/mL)とフロイドの完全アジュバント(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、50μg/100μmL(エマルジョン)で8週齢の雌BALB/Cマウス(日本チャ5 ールズリバー(株)製)の皮下に2週間間隔で4回投与後、最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O−Ag14とを10対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬工業(株)製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5×10 6 /mLになるようにHAT培地に懸濁し、
10 96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLずつ分注した。これを5%CO 2 インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清を、次に示すELISA法にしたがって評価し、PIVKA−IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。 (段落【0038】」 )15 「獲得したモノクローナル抗体の特異性を調べるため、プロトロンビン(Enzyme Research Laboratories 社)から Bajah らの方法に従い、脱炭酸時間の異なる各種PIVKA−IIを調製した。 (段落【0040】」 )「前記の各種PIVKA−IIのうち、脱炭酸処理時間30分及び6時間のPIVKA−II、及びプロトロンビンを0.1μg/mL固相化したマ20 イクロプレートを用いて、塩化カルシウムを4mmol/Lの濃度で共存させた条件で、選択したハイブリドーマの精製IgGの反応性を測定した。この条件でプロトロンビンに反応せず、且つ脱炭酸処理時間6時間のPIVKA−IIに比べて脱炭酸処理時間30分のPIVKA−IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択し、2種類のモノクローナル抗体産生ハイ25 ブリドーマ24211と24216(以下、それぞれ「ハイブリドーマ11」及び「ハイブリドーマ16」と表記することがある)を獲得した。前記得られたハイブリドーマ11及び16は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託され(受領日:2010年5月28日)、ハイブリドーマ11の受託番号はFERM BP−11258であり、ハイブリドーマ16の受託番号は5 FERM BP−11259である。 (段落【0041】」 )キ 「脱炭酸処理時間を表1及び図1に示した如く変更した以外は上記と同様の方法でプロトロンビンの脱炭酸処理を行い、5種類のPIVKA−IIを調製した。ハイブリドーマ11から調製したP−11モノクローナル抗体、
ハイブリドーマ16から調製したP−16モノクローナル抗体、及び従来試10 薬(ピコルミPIVKA−II(エーディア(株)製))の抗PIVKA−IIモノクローナル抗体の前記5種類のPIVKA−II及びプロトロンビン(脱炭酸処理時間0分)に対する反応性を上記と同様の方法で測定した。結果を表1及び図1に示す。表1及び図1において、
(1)はP−11モノクローナル抗体、(2)はP−16モノクローナル抗体、(3)は従来試薬の抗P15 IVKA−IIモノクローナル抗体(MU−3)である。なお、P−11モノクローナル抗体及びP−16モノクローナル抗体の調製は後述する方法により行った。 (段落【0042】」 )ク 「(2)モノクローナル抗体の調製ハイブリドーマ11及びハイブリドーマ16からそれぞれ下記方法によ20 りP−11モノクローナル抗体及びP−16モノクローナル抗体を調製した。
あらかじめ2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/Cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5×10 6個の量で腹腔内に投与した。約14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/L NaCl−1.5mol25 /L Glycine−NaOH、pH8.5)と混和後、濾過した。このろ液を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラム(ファルマシア社製)に通して抗体をカラムに吸着させた後、 1mol/Lクエン酸緩衝液0. (pH3. で溶出させてモノクローナル抗体を精製した。
0) 」(段落【0044】)ケ 「(実施例2)実施例1で得たP−16モノクローナル抗体及びP−11モノクローナ5 ル抗体を用い、下記方法により、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIの測定を行った。 (段落【0045】」 )「(3)ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIの測定前記調製したP−16モノクローナル抗体固相磁気ビーズ及びRu標識P−11モノクローナル抗体を用い、電気化学発光免疫測定法により検体中10 のビタミンK欠乏に起因するPIVKA−II(NX−PVKA)の測定値Aを求めた。検体として、手術を行っておらず、5年後の予後が判明している肝細胞癌患者63名の血清試料を用い、下記方法に従いNX−PVKA量を測定した。
各検体50μLにP−16モノクローナル抗体固相磁気ビーズを25μ15 Lと1μg/mLのRu標識P−11モノクローナル抗体を含むRu標識抗体液150μLを加え、30℃で9分間反応させた。反応後、磁気ビーズを磁石でトラップしながらピコルミBF洗浄液(エーディア(株)製)で3回洗浄した。0.1mol/Lトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液(エーディア(株)製)を300μL加えて、電極表面に送り、磁気ビーズ20 に結合したRuの発光量を自動分析装置ピコルミIII エーディア( (株)製)で測定し、検体中のNX−PVKA量を求めた。 (段落【0047】 【00」 、
48】)コ 「(比較例1)ピコルミPIVKA−II測定キット(エーディア(株)製)を用いて、
25 PIVKA−IIの測定を行った。結果を表2、図2(b)及び図3に示した。ROC分析における曲線下面積は、0.653であった。 (段落【00」51】)サ 「(実施例3)検体として肝細胞癌患者28人、肝硬変患者20人、慢性肝炎患者9人の血清試料を用い、PIVKA−IIとNX−PVKA量を測定した。PIV5 KA−II測定値をNX−PVKA測定値で割ったレシオ値(NX−PVKA−R)を算出した。NX−PVKA量の測定は実施例2と同様の方法で行った。PIVKA−IIの測定は、ピコルミPIVKA−II測定キット(エーディア(株)製)を用いて行った。測定値を表3に示す。 (段落【005」5】)10 「PIVKA−II測定値をグラフにしたものを図4に示した。PIVKA−II測定値をNX−PVKA測定値で割ったレシオ値の結果をグラフにしたものを図5に示した。表3、図4及び図5において、HCCは肝細胞癌、
CHは慢性肝炎、LCは肝硬変、BはB型肝炎、CはC型肝炎、NBNCは非B型非C型肝炎、NASHは非アルコール性肝障害、AIHは自己免疫性15 肝炎、ALDはアルコール性肝障害である。
表3、図4、図5に示した結果から明らかなように、従来の測定方法で得たPIVKA−II測定値をNX−PVKA測定値で割ったレシオ値(図5のNX−PVKA−R)により、従来の測定方法では偽陽性となっていた検体を区別することができ、肝がんに高い特異性を示した。 段落(」 【0057】)20 シ(先願明細書には記載なし)「(実施例4)実施例1で得たP−16モノクローナル抗体及びP−11モノクローナル抗体のエピトープを下記方法により調べた。
? Gla残基含有ペプチドに対する反応性25 PIVKA−II のN末端16残基に存在すると考えられるGla残基(γと表示)を含む下記配列番号1〜3で表わす3種のペプチド(PV002、
PV003、PV00(4)を合成した。
PV002: ANTFLEγVRKGNLγRγPV003: ANTFLEEVRKGNLγRγPV004: ANTFLEEVRKGNLERγ5 PV002のアミノ酸配列Ala Asn Thr Phe Leu Glu Gla Val Arg Lys Gly Asn Leu Gla Arg Gla(配列番号1)PV003のアミノ酸配列Ala Asn Thr Phe Leu Glu Glu Val Arg Lys Gly Asn Leu Gla Arg Gla(配10 列番号2)PV004のアミノ酸配列Ala Asn Thr Phe Leu Glu Glu Val Arg Lys Gly Asn Leu Glu Arg Gla(配列番号3) (段落【0058】 【0059】」 、 )「この3種のペプチドに対する反応性を調べるため次の方法で競合EL15 ISAを行った。
脱炭酸処理時間1時間のPIVKA−IIをPBSで0.1μg/mLの濃度に希釈した後、ELISA用96穴プレートに50μL/wellずつ分注し、4℃で一夜静置した。各wellを0.05%Tween20含有PBS(以下、
「PBST」という)で3回洗浄後(400μL/well)、
20 1%BSA含有PBST(以下、
「BSA−PBST」という)を100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行った。PBSTで3回洗浄後、各wellにBSA−PBSTで希釈した各濃度(20、
4、0.8、0.16、0.032μmol/L)のペプチド溶液を25μL/wellずつ分注し、続いてBSA−PBSTで200ng/mLの濃25 度に希釈した各モノクローナル抗体(P−16、P−11)溶液を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。PBSTで3回洗浄後、BSA−PBSTで3000倍希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(DAKO社製)溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。PBSTで3回洗浄後、オルトフェニレンジアミン(東京化成工業社製)を含む基質溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で10分間静置5 した。これに1.5N硫酸を50μL/wellずつ分注して反応を停止後、
マイクロプレートリーダー492nmにおける吸光度を測定した。その結果を図6に示す。
まず、P−16モノクローナル抗体は3種のペプチド全てに同等の反応性を示した。このことから、P−16モノクローナル抗体のエピトープは3種10 のペプチドの共通部位であるPIVKA−II のN末端の1〜6残基(図7に示すaa1−6)、又はPIVKA−II のアミノ酸配列のN末端から8〜13残基(図7に示すaa8−13)であることが示唆された。一方、P−11モノクローナル抗体は何れのペプチドとも反応しないことが判明した。本願明細書において、PIVKA−II のN末端からX〜Y残基のものをaaX15 −Yと称する。 (段落【0060】 【0061】」 、 )「? 変性PIVKA−II、変性プロトロンビン、及び変性トロンビンに対する反応性変性状態のPIVKA−II、プロトロンビン、及びトロンビンに対する各モノクローナル抗体の反応性をウエスタンブロット法により調べた。具体的20 には、脱炭酸処理時間 2 時間のPIVKA−II、0分のプロトロンビン、
及び市販精製トロンビン(ベネシス社製)に対する反応性を次の方法で調べた。0.1mg/mLPIVKA−II、0.1mg/mLプロトロンビン、
及び10U/mLトロンビンを、それぞれメルカプトエタノール含有のSDS処理液(コスモバイオ社製)と1対1で混和後、10分間煮沸処理した。
25 各サンプルをコスモバイオ社製のポリアクリルアミドゲル(マルチゲルIIミニ4/20)に5μL/wellずつ添加し、30mAで1時間電気泳動(SDS−PAGE)を行った。泳動後のゲルをセミドライブロッタ−(コスモバイオ社製)を用いPVDF膜に転写を行った(100mA、45分間)。
該PVDF膜をレーン毎に切り分けた後、BSA−PBSTに浸し、4℃で一夜ブロッキングを行った。PBSTで1回洗浄後、5μg/mLの濃度の5 各モノクローナル抗体液をPVDF膜と接触させ、室温で1時間静置した。
PBSTで3回洗浄後、BSA−PBSTで2000倍希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(DAKO社製)溶液入りの容器に移し、室温で1時間緩やかに振とうさせた。各PVDF膜をPBSTで3回、更にPBSで1回洗浄後、ジアミノベンチジン(同仁化学研究所社製)を含む基質溶液に10 浸して3分間反応させた後、精製水に移し反応を停止した。得られた染色像の結果を図8に示す。
まず、従来試薬の抗体はPIVKA−IIのみに反応しプロトロンビンには反応しなかったのに対し、P−11及びP−16モノクローナル抗体は何れもPIVKA−IIとプロトロンビンに対し同等に反応した。一方、トロ15 ンビンに対しては、何れの抗体も反応しなかった。このことから、P−11及びP−16モノクローナル抗体はPIVKA−IIとプロトロンビンの一次アミノ酸配列の共通部位即ちGla残基を含まない部位を認識していることが示唆された。 (段落【0062】 【0063】」 、 )ス(先願明細書には記載なし)20 「? Gla残基非含有ペプチドに対する反応性プロトロンビンのN末端から70番目まででGla残基を含まない(10個の Gla 残基全てが Gul 残基のままのPIVKA−II)配列番号4〜13で表わされる部分ペプチド10本を合成した。
aa1−16のアミノ酸配列25 Ala Asn Thr Phe Leu Glu Glu Val Arg Lys Gly Asn Leu Glu Arg Glu (配列番号4)(中略)上記?と同様の競合ELISAで各モノクローナル抗体と各ペプチドの反応性を調べた。その結果を表4に示す。まず、P−16モノクローナル抗体はaa1−16のペプチドに反応性を示し、aa7−22及び他のペプチ5 ドに対しては反応性を示さなかった。一方、P−11モノクローナル抗体は何れのペプチドとも反応しないことが判明した。 (段落【0066】 【00」 、
67】)「以上の結果をまとめると、次の通りである。
P−16モノクローナル抗体のエピトープは、該抗体の上記(1) (4)と10 に記載のペプチドに対する反応性、及び上記(2)に記載したPIVKA−IIとプロトロンビンに対する反応性から、プロトロンビンフラグメント1のN末端から5残基(配列番号14で表わすaa1−5)の範囲であることが判明した。
aa1−5のアミノ酸配列15 Ala Asn Thr Phe Leu (配列番号14)また、P−11モノクローナル抗体のエピトープは、上記(3)でフラグメント1(aa1−156)に反応すること、及び上記(4)でaa1−70に含まれる各ペプチドに反応しないことから、プロトロンビンフラグメント1のaa60−156の範囲に存在することが考えられた。 (段落【00」20 66】〜【0070】)? 請求の範囲ア 「[請求項1](a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA−IIの測定方法であって、
25 前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA−IIの測定方法。」イ 「[請求項6]二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIを測定するに当り、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA−IIに特異的な抗体を使用することを特徴とする5 PIVKA−IIの測定試薬。」ウ 「[請求項14]請求項2記載の方法によって得られた値により、肝がんを判定することを特徴とする肝がんの判定方法。」? 表310以 上
事実及び理由
全容