関連審決 |
不服2021-17054 不服2021-1 |
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事件 |
令和
5年
(行ケ)
10024号
審決取消請求事件
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5 原告 デックスコム・インコーポレーテッド 同訴訟代理人弁理士 黒田晋平 10 阿部達彦 源田正宏 被告特許庁長官 同 指定代理人石井哲 15 渡戸正義 宮下誠 松本隆彦 清川恵子 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2024/01/22 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
20 1 特許庁が不服2021−17054号事件について令和4年10月24日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
25 主文同旨 |
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事案の概要
本件は、拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり、争点は、 補正要件違反の有無(新規事項の追加該当性、独立特許要件としての新規性欠如の 有無)及び手続違背の有無である。 1 特許庁における手続の経緯 5 原告は、発明の名称を「経皮的分析物センサを適用するためのアプリケータ、お よび関連した製造方法」とする発明につき、平成30年6月18日に特許出願(パ リ条約に基づく優先権を主張して米国で行われた特許協力条約に基づく国際出願。 特願2019-570026。優先日:平成29年6月19日、優先権主張国:米 国。以下「本願」といい、特許法184条の6第2項の規定に基づき願書に添付し10 て提出した明細書、請求の範囲及び図面とみなされる各翻訳文のうち、特許請求の 範囲の翻訳文を「特許請求の範囲」と、明細書及び図面の各翻訳文を「本願明細書」 という。甲3)をしたが、令和3年7月30日付けで拒絶査定を受けた。 原告は、同年12月10日、拒絶査定不服審判請求をすると同時に、同日付け手 続補正書(甲4)を提出して特許請求の範囲について補正した(以下、同手続補正15 書による補正を「本件補正」という。。特許庁は当該審判請求を不服2021-1 ) 7054号事件として審理し、令和4年10月24日、本件補正を却下した上で、 「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。なお、 出訴期間として在外者に対し90日を附加。)をした。本件審決の謄本は、同年11 月7日、原告に送達された。 20 原告は、令和5年3月7日、本訴を提起した。 2 発明の要旨 (1) 原告の本願に係る発明は、経皮分析測定システムを受容 の皮膚に適用する ためのシステム及び方法等に関するものであり、本件補正前の本願の特許請求の範 囲の請求項1及び請求項17の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る25 発明を「本願発明1」、請求項17に係る発明を「本願発明2」といい、これらを併 せて「本願発明」という。甲3)。 【請求項1】 皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケータであって、前記 アプリケータが、 前記皮膚上アセンブリの少なくとも一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するよ 5 うに構成された挿入アセンブリと、 前記挿入アセンブリを受容するように構成されたハウジングであって、前記皮膚 上アセンブリが通過するように構成される開孔を備える、ハウジングと、 作動時に、前記挿入アセンブリを作動させて、前記皮膚上アセンブリの少なくと も前記一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するように構成された作動部材と、 10 前記ハウジングの内部環境と前記ハウジングの外部環境との間に滅菌バリアおよ び蒸気バリアを提供するように構成された封止要素と、を備える、アプリケータ。 【請求項17】 前記封止要素が、金属箔、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、 蒸気メタライゼーションにより適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ15 素被覆ポリマー、または10グラム/100in2未満または好ましくは1グラム /100in2未満の水蒸気透過率を有する任意の材料のうちの少なくとも1つを 含む、請求項1に記載のアプリケータ。 (2) 本件補正後の請求項1及び請求項16の記載は次のとおりである(本件補正 による補正部分に下線を付した。。なお、本件補正により請求項15が削除された )20 ことから、前記(1)の請求項17は請求項16となった(以下、本件補正後の請求項 1に係る発明を「本願補正発明1」、請求項16に係る発明を「本願補正発明2」と いい、これらを併せて「本願補正発明」という。甲4)。 【請求項1】 皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケータであって、前記25 アプリケータが、 前記皮膚上アセンブリの少なくとも一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するよ うに構成された挿入アセンブリと、 前記挿入アセンブリを受容するように構成されたハウジングであって、前記皮膚 上アセンブリが通過するように構成される開孔を備える、ハウジングと、 作動時に、前記挿入アセンブリを作動させて、前記皮膚上アセンブリの少なくと 5 も前記一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するように構成された作動部材と、 前記ハウジングの内部環境と前記ハウジングの外部環境との間に滅菌バリアおよ び蒸気バリアを提供するように構成された封止要素と、を備え、 前記開孔を封止する前記封止要素が、前記作動部材も封止するように構成されて いる、アプリケータ。 10 【請求項16】 前記封止要素が、金属箔、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、 蒸気メタライゼーションにより適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ 素被覆ポリマー、または10グラム/100in2/24h未満または1グラム/ 100in2未満/24hの水蒸気透過率を有する任意の材料のうちの少なくとも15 1つを含む、請求項1に記載のアプリケータ。 3 本件審決の理由の要点 (1) 本願発明2に係る本件補正について 本願明細書の段落【0008】、 【0051】、 【0144】及び【0164】 (以下、 明細書の段落について、 「段落」の記載を省略する。)の記載に照らしても、 「封止要20 素」の「任意の材料」の「水蒸気透過率」の「10グラム/100in 2未満」また は「1グラム/100in2未満」との数値限定が「24h」 (24時間)当たりの 値であることは、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」(以下 「当初明細書等」という。)には記載されていない。また、「水蒸気透過率」におい て「グラム/100in2」で示された値を直ちに「24h」 (24時間)当たりの25 値であるとみるべき技術常識があるわけでもない。 してみると、本願発明2に係る本件補正は、当初明細書等に記載した事項の全て の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事 項を導入するものであり、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない。 したがって、本願発明2に係る本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する 要件を満たさないので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条 5 1項の規定により却下すべきものである。 (2) 本願補正発明1の独立特許要件(新規性欠如)について ア 本願補正発明1を分説すると次のとおりである。 「A 皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケータであって、 前記アプリケータが、 10 B 前記皮膚上アセンブリの少なくとも一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入す るように構成された挿入アセンブリと、 C 前記挿入アセンブリを受容するように構成されたハウジングであって、前記 皮膚上アセンブリが通過するように構成される開孔を備える、ハウジングと、 D 作動時に、前記挿入アセンブリを作動させて、前記皮膚上アセンブリの少な15 くとも前記一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するように構成された作動部材と、 E 前記ハウジングの内部環境と前記ハウジングの外部環境との間に滅菌バリア および蒸気バリアを提供するように構成された封止要素と、を備え、 F 前記開孔を封止する前記封止要素が、前記作動部材も封止するように構成さ れている、 20 G アプリケータ。」 イ 引用発明 甲1(特表2013-523216号公報)には、次の引用発明が記載されてい る(a〜gの各記号は、本願補正発明1のA〜Gにおおむね対応させて付与した。 各構成の末尾の括弧内に示された段落番号等は、甲1における引用箇所等を示す。。 )25 「a 被験者に、検体センサ等の様々な医療用装置を挿入するよう構成される、 挿入器400であって(【0089】【0138】、 、 ) 身体装着用電子装置1100は、センサ14に電気的に接続されると共に、ユー ザの身体の皮膚表面への取り付けのために接着層218に取り付けられ(【005 3】、 ) 身体装着用筐体122内には身体装着用電子装置1100およびセンサハブ12 5 3が配置され(【0109】、 ) 挿入器400は、ハンドル402と、シース442と、中に収容されている医療 用装置および鋭利部材の滅菌環境を維持するための取り外し可能な遠位キャップ4 04とを含み(【0138】、 ) 挿入器400は、医療用装置を被験者の皮膚内に前進させるために用いられ 【0 (10 138】、 ) 身体装着用筐体122と共にセンサ14が取り付けられ(【0112】、 ) 身体装着用筐体122の遠位面は被験者の皮膚表面Sに接着され(【0145】、 ) bd 針キャリア434は、ハンドル402内において軸方向に移動可能であり、 針キャリア434は、針ハブ436を支持し、針ハブ436からは、鋭利部材4215 4が挿入器400内において長手方向に延出し(【0143】、 ) ハンドル402を、ばね446の付勢に逆らってシース442に対して押下する と、針キャリア434が、近位位置から遠位位置へと長手方向に遠位へと移動し、 鋭利部材424が遠位へと付勢されると、鋭利部材424はセンサ14のセンサ挿 入部30を被験者の皮膚Sの皮下部分内に運び(【0144】、 )20 c ハンドル402の上面からは、内壁475を有する円筒状の壁が遠位へと延 び(【0142】、 ) ハンドル402の円筒状の壁の遠位端は開口部を形成し、 略円筒状のシース442が、ハンドル402の遠位端側の内壁側に位置し、 挿入器400の初期構成において、針ハブ436及び鋭利部材424はシース425 42の内部に収容され、 略円筒状のシース442の遠位端側には、中央にアパチャー420を有する接着 層418が配置され 挿入器400の初期構成において、鋭利部材424は接着層418のアパチャー 420から近位端側に離間した構成に配設され、 ユーザによるハンドル402の押下によって、身体装着用電子装置1100とセ 5 ンサ14の少なくとも一部分とが受容される筐体122を遠位へと前進させて設置 および挿入位置に至らせ ef キャップ404は、内周にねじ山411を有し、 ハンドル402は、ねじ山411(図44に示す)を介したキャップ404の取 り付けのためのねじ山410を外周に有し、 10 キャップ404は、ねじ山410とねじ山411との相互係合を介して、ハンド ル402の遠位部に取り付けられ、キャップ404は、乾燥剤タブレット490と、 金属箔シール492等のシールと、乾燥剤タブレット490と挿入器400の内部 との間の通気性を可能にするタイベック層494とを含む(【0141】、 ) g 挿入器400(【0138】。 )」15 ウ 本願補正発明1と引用発明の対比 (ア) 引用発明の構成cの「ハンドル402」及び「略円筒状のシース442」は、 「ハンドル402の上面からは、内壁475を有する円筒状の壁が遠位へと延び、」 「円筒状の壁の遠位端は開口部を形成し、「略円筒状のシース442が、ハンドル 」 402の遠位端側の内壁側に位置し」ていることから、両者で本願補正発明1の構 成Cの「ハウジング」に相当する。 5 引用発明の構成cの「針ハブ436及び鋭利部材424」 (挿入アセンブリ)は、 「挿入器400の初期構成において」「シース442の内部に収容され」「初期構成 において、鋭利部材424は接着層418のアパチャー420から近位端側に離間 した構成に配設され」ることから、引用発明の構成cの「シース442」 (ハウジン グ)は、「針ハブ436及び鋭利部材424」(挿入アセンブリ)を受容するように10 構成されたものということができる。 引用発明の構成aによれば、「身体装着用筐体122の遠位面は被験者の皮膚表 面Sに接着され」るものであって、同構成cの「略円筒状のシース442の遠位端 側」の「接着層418」で「身体装着用筐体122の遠位面」が「被験者の皮膚表 面Sに接着され」ることは明らかである。 15 さらに、同構成bdによれば、 「針キャリア434が、近位位置から遠位位置へと 長手方向に遠位へと移動し、鋭利部材424が遠位へと付勢されると、鋭利部材4 24はセンサ14のセンサ挿入部30を被験者の皮膚Sの皮下部分内に運」ばれて いる。 そうすると、引用発明の構成cの「シース442」の「中央にアパチャー42020 を有する接着層418が配置され」る「遠位端側」は、 「身体装着用筐体122」及 び「センサ14」 (皮膚上アセンブリ)が通過できる開口となっていることは明らか である。 してみると、引用発明の構成a、bd及びcは、本願補正発明1の構成Cに相当 する構成を備えるものである。 25 (イ) 引用発明の構成bdの「針キャリア434」は、「ハンドル402を」「押下 すると」「近位位置から遠位位置へと長手方向に遠位へと移動」するように「作動」 しているものであるから、本願補正発明1の構成Dの「作動部材」に相当する。 また、引用発明の構成bdの「針キャリア434」(作動部材)は、「針ハブ43 6を支持し、針ハブ436からは、鋭利部材424が挿入器400内において長手 方向に延出している」ことから、同構成dの「針キャリア434」(作動部材)は、 5 作動時に、「針ハブ436」及び「鋭利部材424」(両者で本願補正発明1の「挿 入アセンブリ」に相当)を作動させるものということができる。 また、引用発明の構成bdの「センサ14のセンサ挿入部30を被験者の皮膚S の皮下部分内に運」ぶことは、本願補正発明1の構成Dの「皮膚上アセンブリの少 なくとも前記一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入する」ことに相当する。 10 してみると、引用発明の構成bdは、本願補正発明1の構成Dに相当する構成を 備えるものである。 (ウ) 引用発明の構成efによれば、 「キャップ404」 (封止要素)は、 「内周にね じ山411を有し、「ハンドル402は、ねじ山411を介したキャップ404の 」 取り付けのためのねじ山410を外周に有し、「キャップ404」 」 (封止要素)は、 15 「ねじ山410とねじ山411との相互係合を介して、ハンドル402の遠位部に 取り付けられ」るものである一方、同構成bdによれば、「針キャリア434」(作 動部材)は「ハンドル402内において軸方向に移動可能」なものであるから、引 用発明の構成efによれば、 「キャップ404」 (封止要素) 「針キャリア434」 は、 (作動部材)も封止しているものといえる。 20 してみると、引用発明の構成bd及び構成efは、本願補正発明1の構成Fに相 当する構成を備えるものである。 (エ) その他、引用発明の構成aは本願補正発明1の構成Aに相当する構成を備え るものであり、同様に、構成bdは構成Bに、構成efは構成Eに、構成gは構成 Gにそれぞれ相当する構成を備えるものである。 25 (オ) そうすると、本願補正発明1と引用発明とに相違点は存在せず、本願補正発 明1は、引用発明である。 仮に本願補正発明1と引用発明に相違点があるとしても、本願補正発明1は、引 用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができ るものに該当しない。 5 エ 本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の 規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1 項の規定により却下すべきものである。 (3) 本願発明1について 本願発明1は、本願補正発明1から構成Fに係る限定を外したものであるから、 10 本願発明1は引用発明である。また、本願発明1は当業者が引用発明に基づいて容 易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明1は特許法29条1項3号、又は同法29条2項の規定に より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について 検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 15 第3 原告の主張する取消事由 1 取消事由1(本願発明2に係る本件補正における新規事項追加に関する判断 の誤り) 本件審決は、本願発明2に係る本件補正について、新規事項の追加に当たると判 断したが、次のとおり誤りである。 20 (1)ア 本願の優先日(平成29年6月19日)より前から、 「水蒸気透過率」の単 位として「グラム/100in2/24h」が用いられることは、技術常識であり (甲5〜8) JIS 、 K 7129-1においても、プラスチックフィルム及びシ ートの水蒸気透過度の求め方が規定され、当該規格において、水蒸気透過度は「2 4時間に透過した面積1平方メートル(m2)当たりの水蒸気のグラム(g)で表し25 た質量[g/(m2・24h)]で表す」と定められている(甲9)。 当業者であれば、本願の優先日の時点における技術常識に照らして、本願明細書 の【0051】及び【0144】に記載された水蒸気透過率の単位「g/100i n2」が、 「g/100in2/24h」であることは自明であると思料するから、上 記の点に係る本件補正は、新規事項の追加に当たらない。 イ 本願の優先日より前に発行された文献であって、本願補正発明に係る医療機 5 器に関連するものにおいては、水蒸気透過率の単位として、「/24h」や「/日」 が一般的に使用されている(甲12、13)。 (2) 仮に本願明細書の【0051】及び【0144】に記載される、 「10グラム /100in2 未満もしくは好ましくは1グラム/100in 2 未満の水蒸気透過 率を有する任意の物質」の水蒸気透過率の単位が「/hour」である可能性があ10 「10グラム/100in2/hour未満」の数値範囲に「10グ ったとしても、 ラム/100in2/day未満」の数値範囲が含まれるから、本願発明2に係る請 求項を、「10グラム/100in2/24h未満または1グラム/100in 2/ 24h未満の水蒸気透過率」とする本件補正は、本願明細書に記載された範囲内の ものである。 15 2 取消事由2(本願発明1に係る本件補正における独立特許要件に関する対比 及び判断の誤り) (1) 「作動部材」に相当する部材の認定の誤り 本件審決は、引用発明における針キャリア434が本願補正発明1の作動部材に 相当すると認定しているが、誤りである。 20 ア 本願補正発明1の「作動部材」は、本願明細書の【0132】にあるように、 挿入アセンブリを作動させるために必要な部材であり、「作動」とは、「機械の運動 部分の動き」のことである(甲10)から、 「作動部材」とは、挿入アセンブリを動 かす部材を意味する。 イ 引用発明における針キャリア434は、単に鋭利部材424が長手方向に延25 出している針ハブ436を針キャリア434に対して上下動しないように支持して いるだけである(甲1の【0143】。 ) また、針ハブ436及び鋭利部材424は、 針キャリア434と共に一体となって長手方向に移動するが(同【0144】 【0 〜 146】、針キャリア434が針ハブ436及び鋭利部材424を動かすものでは ) ない。針ハブ436及び鋭利部材424を作動させる部材は、キャリッジ430及 びばね446等である。 5 ウ したがって、針キャリア434を本願補正発明1の作動部材に相当するとし た本件審決の認定は誤りであり、これを前提に引用発明と本願補正発明1を対比し た独立特許要件の判断も誤りである。 (2) 本願補正発明1が引用発明であるとの判断の誤り ア 引用発明における「作動部材」10 甲1の【0142】〜【0146】によると、引用発明においては、ハンドル4 02を押下させる力は、キャリッジ430に伝達されてキャリッジ430を下方に 移動させ、キャリッジ430と係合している針キャリア434に伝達されて針キャ リア434を下方に移動させると共にばね446を圧縮させ、針キャリア434が 支持している針ハブ436及び鋭利部材424と共に針キャリア434を下方に移15 動させる。その後、ハンドル402を押下させる力は、キャリッジ430をフラン ジ470と係合させる一方でキャリッジ430と針キャリア434との係合を解除 させ、圧縮されたばね446が伸長することによって、針キャリア434が針ハブ 436及び鋭利部材424と共に上方に移動する。 すなわち、針キャリア434が針ハブ436及び鋭利部材424を下方に移動さ20 せているのではなく、ハンドル402が、ハンドル402を押下させることによっ て、針キャリア434と係合するキャリッジ430により、針キャリア434、ひ いては針ハブ436及び鋭利部材424を作動している。 したがって、引用発明においては、@ハンドル402、キャリッジ430及びば ね446、またはAハンドル402のみを「作動部材」に相当する部材であると解25 釈すべきである。 イ 上記を前提として本願補正発明1と引用発明を対比すると次のとおりである (本件審決の認定と異なる部分に下線を付した。 。 ) 本願補正発明1 引用発明 アプリケータ 挿入器1 皮膚上アセンブリ 身体装着用筐体122及びセンサ14 5 皮膚上アセンブリの一部分 センサ14 挿入アセンブリ 針ハブ436及び鋭利部材424 ハウジング シース442 作動部材 @ハンドル402、キャリッジ430及び ばね446又はAハンドル40210 バリア タイベックス層494 封止要素 キャップ404 ウ 前記イのように解釈した場合、引用発明における作動部材は、封止要素に相 当すると認定されているキャップ404によって覆われていないこととなるから、 本願補正発明1と引用発明とは、少なくとも構成要件Fにおいて一致しない。 15 したがって、引用発明と本願補正発明1とに相違点は存在しないとした本件審決 の認定及び判断には誤りがあり、本件補正を却下した決定には、審決の結論に影響 を及ぼす誤りがある。 3 取消事由3(手続違背、審理不尽) 被告は、本願に対して通知された拒絶理由通知書(甲11。以下「本件拒絶理由20 通知書」という。)においては、引用発明における「作動時に、前記挿入アセンブリ を作動させて、前記皮膚上アセンブリの少なくとも前記一部分を前記受容者の前記 皮膚に挿入するように構成された作動部材(アクチュエータ214、ハンドル30 2等)」が本願発明1の作動部材に相当すると認定していた。 ところが、被告は、原告に何ら通知することなく「作動部材」に係る解釈を変更25 し、本件審決において、本願補正発明1及び本願発明1の「作動部材」は、 「作動時 に、前記挿入アセンブリを作動させて、前記皮膚上アセンブリの少なくとも前記一 部分を前記受容者の前記皮膚に挿入するように構成された」ものであればよいとし て、引用発明における「針キャリア434」が、作動部材に相当すると認定した。 原告は、上記のように変更した解釈に対する反論の機会を与えられておらず、本 訴における主張内容を、審判の過程において説明できていれば、本件審決の結論が 5 変わった可能性が十分にある。 このような拒絶理由の認定判断の変更に対して何も通知せず、原告に反論の機会 を与えずに本件審決をしたことは、実質的に、拒絶理由を通知せずに本願を拒絶し たに等しいといえるので、本件審決には手続違背があり、また、審判の審理手続は 審理不尽である。したがって本件審決には、手続違背又は審理不尽の取消事由があ10 る。 |
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被告の主張
1 取消事由1(本願発明2に係る本件補正における新規事項追加に関する判断 の誤り)について 様々な技術分野において、本願の優先日より前から、水蒸気透過率の単位時間と15 して、 「24h」 (24時間)ではなく、 「1h(1hr)(1時間)が用いられてお 」 り、水蒸気透過率の単位時間が全て「/24h」ではないことが明らかであって、 単位時間を省略する場合は「/24h」であるという技術常識があるものではない。 そうすると、本願明細書の「グラム/100in 2」が「グラム/100in2/ 24h」であることが自明であるとはいえない。 20 2 取消事由2(本願発明1に係る本件補正における独立特許要件に関する対比 及び判断の誤り)について 広辞苑(甲10)にあるように、 「作動」は「機械の運動部分の動き」を意味する にすぎず、他部材を動かすための操作起点となる部材の動きだけではなく、動力伝 達部材等の単に可動する部材の動きも「作動」に含む。また、本願明細書(例えば25 【0111】【0117】 、 )を参照しても、「作動」は、押しボタンのような挿入ア センブリを動かすための操作起点となる部材の動きに限られない。 引用発明の「針キャリア434」は、 「ハンドル402を」 「押下すると」 「近位位 置から遠位位置へと長手方向に遠位へと移動」するものであり(甲1の【0143】、 【0144】、 )「針ハブ436を支持し、針ハブ436からは、鋭利部材424が挿 入器400内において長手方向に延出し」ていることから、 「針キャリア434」の 5 移動に伴って「針ハブ436」及び「鋭利部材424」を移動させ、 「センサ14の センサ挿入部30を被験者の皮膚Sの皮下部分内に運」ぶように構成されている。 したがって、引用発明の「針キャリア434」は、本願補正発明1の「作動部材」 に相当する。 3 取消事由3(手続違背、審理不尽)について10 本件審決は、引用発明において、作動時に、 「挿入アセンブリ」に相当するものを 作動させるものが「作動部材」に相当するとした上で本願補正発明1との対比を行 っており、原告の主張するように「作動部材」を、自身が作動する部材という解釈 に実質的に変更していない。 また、本件拒絶理由通知書には、「作動時に、前記挿入アセンブリを作動させて、 15 前記皮膚上アセンブリの少なくとも前記一部分を前記受容者の前記皮膚に挿入する ように構成された作動部材(アクチュエータ214、ハンドル302等)」と記載し ており、 「アクチュエータ214、ハンドル302」は作動部材の一例として例示し たにすぎないところ、本件審決においては、本件補正により特定された発明特定事 項に応じて、甲1に記載された事項から引用発明を認定したものであって、解釈を20 変更したものではないから、手続違背又は審理不尽はない。 |
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当裁判所の判断
当裁判所は、本件補正のうち本願発明2に係るものは新たな技術的事項を導入す るものではなく、本願発明1に係るものは独立特許要件の充足性に関する本件審決 の検討は不十分であって、本件補正の却下は相当ではないから、本件補正前の本願25 発明について特許を受けることができないものと判断し、本願を拒絶すべきとした 本件審決は取り消されるべきものと考える。 1 本願補正発明について (1) 本願明細書には、別紙1「本願明細書の記載(抜粋)」のとおりの記載がある (甲3)。 (2) 本願補正発明の概要 5 前記(1)の記載及び本件補正後の特許請求の範囲の記載によると、本願補正発明 は、次のとおりのものと認められる。 本願補正発明は、皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケー タ、それらの使用、製造の方法に関するものである(本願明細書の【0002】。 ) 従来、糖尿病患者は、自己監視血糖(SMBG)モニタを持ち運び、1日当たり210 〜4回グルコースレベルを測定していたが、これは不快な指穿刺法を要するもので あった。皮膚上センサアセンブリを含むセンサシステムによって連続的にグルコー スレベルを監視する方法もあるが(【0004】、異物が人体と接触すると、感染の ) 可能性があり、深刻な健康被害を引き起こす可能性があることから、アプリケータ の滅菌が多くの状況で必要とされ、加えて、水分(水蒸気)がアプリケータ内部に15 進入すると、アプリケータ内の金属部品(針、バネ等)を腐食する可能性があり、 受容者の皮膚に入る針の腐食は、深刻な健康被害を引き起こす可能性がある上、水 分は感染症病原体の成長を促進し、やはり健康被害を引き起こす可能性があること から、水分の進入からアプリケータを封止することが望ましい場合がある 【004 ( 3】。さらに、使い捨てアプリケータの場合、アプリケータを時期尚早に又は予期 )20 せずに展開させるのは苛立たしいか、又は危険である(【0045】。そこで、本願 ) 補正発明は、皮膚上センサアセンブリを含むセンサシステムにおいて、滅菌バリア と水蒸気バリアを提供し、かつ、封止要素を有するアプリケータを提供することに より、これらの課題を解決するというものである。 2 取消事由1(本願発明2に係る本件補正における新規事項追加に関する判断25 の誤り)について (1) 本願発明2に係る本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項17の 「10グラム/100in 2未満または好ましくは1グラム/100in 2 未満の 「10グラム/100in2/24h未満ま 水蒸気透過率を有する任意の材料」を、 たは1グラム/100in2未満/24hの水蒸気透過率を有する任意の材料」へ と補正するものである(下線は補正部分)。 5 (2) 本件補正は、本願についての拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判請求(特 許法121条1項)をする場合に、その審判の請求と同時にしたものである(同法 17条の2第1項4号)。 (3) 特許請求の範囲等の補正は、 「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲 又は図面に記載した事項の範囲内」においてしなければならない(同法17条の210 第3項)。これは、出願当初から発明の開示が十分に行われるようにして、迅速な権 利付与を担保するとともに、出願時に開示された発明の範囲を前提として行動した 第三者が不測の不利益を被ることのないようにしたものと解され、「願書に最初に 添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、 明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技15 術的事項(以下、単に「当初技術的事項」という。)を意味すると解するのが相当で あり、補正が、当初技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しない ものであるときは、当該補正は、 「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項 の範囲内において」するものということができる。 (4) 本件補正前の特許請求の範囲及び本願明細書の記載によれば本件補正は、次20 のとおり、 「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」さ れたものと認められる。 ア(ア) 本願発明2に係る特許請求の範囲の記載は「前記封止要素が、金属箔、金 属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタライゼーションによ り適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ素被覆ポリマー、または1025 グラム/100in 2 未満または好ましくは1グラム/100in 2 未満の水蒸気 透過率を有する任意の材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のアプ 「10グラム/100in2未満ま リケータ」というものである。当該記載からは、 たは好ましくは1グラム/100in2未満の水蒸気透過率を有する任意の材料」 が封止要素を構成する材料であると理解することができるものの、その余の特許請 求の範囲の記載を踏まえても、上記の水蒸気透過率の単位が24時間単位であるこ 5 とをうかがわせる記載はない。 (イ) 次に本願明細書をみると、封止要素の水蒸気透過率については、0008】 【 、 【0051】、 【0144】、 【0164】の各段落において、 「水分(例えば、水蒸気) に対して不浸透性の任意の好適な材料、例えば、金属箔(例えば、アルミニウムも しくはチタン)、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタラ10 イゼーションによって適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ素で被覆 されたポリマー」等と同様の不浸透性を有する材料の例として、 「10グラム/10 0in^2未満または好ましくは1グラム/100in^2未満の水蒸気透過率を 有する任意の材料」 「10グラム/100in2未満もしくは好ましくは1グラ 又は ム/100in2未満の水蒸気透過率を有する任意の物質」との記載がされている。 15 しかし、これらの記載においても当該任意の材料の水蒸気透過率が24時間単位の ものであるかは判然としない。したがって、本願明細書の記載からは、本願発明2 の「10グラム/100in 2未満または好ましくは1グラム/100in 2未満」 における「グラム/100in2」が、 「グラム/100in2/24h」という24 時間単位のものであることを直ちに読み取ることはできない。また、当該任意の材20 料は、封止要素に用いられるものであって、水分(水蒸気)に対して実質的に不浸 透性の材料を意味するものと理解することができるものの、「実質的に不浸透性の 材料」であるということから、当該任意の材料の水蒸気透過率を示す「10グラム /100in2」又は「1グラム/100in2」との記載が24時間単位であるこ とを意味するものとは直ちに認めることはできない。 25 イ 本願の出願日当時の技術常識について検討するに、平成20年3月20日改 正の日本工業規格「プラスチック-フィルム及びシート-水蒸気透過度の求め方(機 器測定法) JIS K 7129」 (甲9)には、エンボスなどのない表面が平滑 な、プラスチックフィルム、プラスチックシート及びプラスチックを含む多層材料 の感湿センサ法、赤外線センサ法及びガスクロマトグラフ法による水蒸気透過度の 求め方について規定した規格について、 「水蒸気透過度は、24時間に透過した面積 5 1平方メートル当たりの水蒸気のグラム数〔g/(m 2・24h)〕で表す。」との記 載があることが認められるが、本願発明2においては、封止要素の材料はプラスチ ック又はこれを含むものに限られるものではなく、また、水蒸気透過度の測定方法 も特定されていないから、上記日本工業規格をそのまま本願発明2に適用すること ができるということはできない。 10 また、本願の出願日以前に公開されていた文献には、シートやフィルム等の水蒸 気透過度について、「g/m2/24hr」「g/100in.2/24hr」(甲5・ 特表2009-503279号公報)「g/100in2/日」 、 (甲6・国際公開第 2016/097951号、特表2018-501127) 「g/1m2/24時 、 間」「g/100in2/24時間」(甲7・特開2014-148361号公報)、 15 「g/m2・day」 (甲8・特開平11-43175号公報)「g/24h/m2」 、 (甲12・米国特許出願公開第2016/0058380号明細書)「mg/日」 、 (甲13・特表2012-519038号公報)などと、24時間又は一日当たり の値を示すものがある一方で、水分バリアーポリマーについて「g-mil/10 0in2/h」を用いるもの(乙1の1・2・米国特許第5799450号明細書)、 20 絶縁基板について「g/m2/h」を用いつつ、樹脂封止シートについては「g/m 2 ・day」を用いるもの(乙2・特開2014-67918号公報)、透明性樹脂 シートについて「g/m2・1hr」を用いるもの(乙3・特開2010-2842 50号公報)、火傷創傷包帯の基材について「グラム/1h/1平方フィート」を用 いるもの(乙4の1・2・米国特許第4820302号明細書)があり、1時間単25 位の値が用いられているものもみられるから、本願の出願日当時、水蒸気透過率に ついて24時間単位で表すことが通常であったということはできない。原告は、医 療分野では24時間又は一日単位が一般的に使用されていると主張するが、そうで あるとしても、前記の各文献における使用例に照らすと、本願の出願日当時、医療 分野において、水蒸気透過率を表す場合に時間単位が用いられることはなかったと いうことはできない。 5 そうすると、当業者が、本願発明2に係る特許請求の範囲及び本願明細書の「1 0グラム/100in2未満または好ましくは1グラム/100in 2未満」との記 「10グラム/100in2/24h未満または好ましくは1グラム/ 載をもって、 100in2/24h未満」を意味するものと当然に理解するとは認められない(な お、本願発明2に係る本件補正は、特許請求の範囲を「10グラム/100in 2/10 24h未満または好ましくは1グラム/100in2未満/24h」とするもので 「1グラム/100in2未満/24h」 「1グラム/100in2/24 あるが、 は h未満」の誤記であることが自明である。。 ) ウ もっとも、前掲各証拠上、水蒸気透過率について1時間単位又は24時間(1 日)単位で表すことが通常であると認められ、これを前提とすると、本願発明2の15 「10グラム/100in2未満または好ましくは1グラム/100in 2未満」と 「10グラム/100in2/h未満または好ましくは1グラム/100 の記載は、 in2/h未満」又は「10グラム/100in2/24h未満または好ましくは1 グラム/100in2/24h未満」のいずれかを意味することが当業者にとって 「10グラム/100in2/h未満また 自明であるということはできる。そして、 20 は好ましくは1グラム/100in2/h未満」を24時間単位に換算すると「24 0グラム/100in 2 /24h未満または好ましくは24グラム/100in 2 /24h未満」となる。 そうすると、本願補正発明2は、本願発明2の特許請求の範囲の記載と同じか又 はそれよりも狭い範囲で水蒸気透過率を定めたものであり、また、この限定により25 何らかの技術的意義があることはうかがえないことからすると、本件補正により、 本願発明2に関し、新たな技術的事項が付加されたということはできない。 したがって、本件補正は、本願発明2に関し、当初技術的事項との関係において、 新たな技術的事項を導入するものではない。 (5) 以上のとおり、本願発明2に係る本件補正について、新たな技術的事項を導 入するものであって特許法17条の2第3項の要件を満たさないと判断した本件審 5 決には誤りがある。 3 取消事由2(本願発明1に係る本件補正における独立特許要件に関する対比 及び判断の誤り)について (1) 引用発明について ア 甲1の記載10 平成25年6月17日に公表された甲1(特表2013-523216号公報) には、別紙2「甲1の記載(抜粋)」のとおりの記載がある。 イ 引用発明の認定 前記アの記載によると、甲1に記載されている引用発明の内容は、前記第2の3 (2)イのとおりであると認められる。 15 (2) 本願補正発明1の「作動部材」の意義 ア 本願補正発明1の特許請求の範囲には、 「作動時に、前記挿入アセンブリを作 動させて、前記皮膚上アセンブリの少なくとも前記一部分を前記受容者の前記皮膚 に挿入するように構成された作動部材」との記載がある。この記載によると、 「作動 部材」とは、挿入アセンブリを作動させて、皮膚上アセンブリの少なくとも一部分20 を受容者の皮膚に挿入するようにするものである。 イ 次に、本願明細書の記載について検討する。 (ア) 「ハウジング104の側面は、作動部材(図1A〜図1Cには図示せず)を 受容するように構成された開口120をさらに備えてもよい。 ・・・ハウジング10 4の側面上に作動部材を設けることにより、アプリケータ100は、皮膚上アセン25 ブリ102の容易な片手展開を受容者に提供することができる。( 」【0049】)及 び【図1A】の各記載によると、ハウジングの側面に作動部材を設けることにより、 本願補正発明1のアプリケータの受容者(利用者)が、容易に片手でアプリケータ を展開することができるのであるから、受容者が、片手でアプリケータを保持し、 ハウジングの側面にある「作動部材」を押して挿入アセンブリを作動させて、皮膚 上アセンブリを皮膚に挿入させて使用することが想定されている。なお、本願明細 5 書【0074】にも上記同様の記載がある。 (イ) 「アプリケータ200は、作動時に、挿入アセンブリ118(図1Bを参照) に、皮膚上アセンブリ102(図1Bを参照)の少なくとも一部分を、開孔106 を通して受容者の皮膚に挿入するように構成された作動部材250(例えば、押し ボタン)をさらに備えてもよい。 ・・・取り外し可能なキャップ212は、作動部材10 250を包むハウジング204の遠位部分を覆う。このように作動部材250を包 むことは、偶発的な作動を防ぐことができる。( 」【0070】、 )【図1B】及び【図 2B】の各記載によると、作動部材は例えば「押しボタン」であり、これをキャッ プで包むことによって偶発的な作動を防止することが想定されている。 (ウ) 「封止層764は、作動部材750(すなわち、キャップ)とハウジング715 04との間に配設される。作動部材750は、キャップを遠位方向に移動させるこ とによって作動されるように構成される。( 」【0085】)及び【図7B】の各記載 によると、作動部材はキャップ自体である場合があり、作動部材であるキャップを 押すなどして移動させることにより、挿入アセンブリを作動させることも想定され ている。なお、【0090】及び【図8B】によると、「入れ子式キャップ」を作動20 部材とする例もある。 (エ) 「図11Aに示されるように、可撓性部材1160は、可撓性セクション1 162が押されると作動部材1150が作動するように、作動部材1150の上に 配設されるように構成された可撓性部材1162を備えてもよい。( 」【0096】) 及び【図11A】の各記載によると、作動部材の上に可撓性部材が配設されて、可25 撓性部材を介して作動部材を押す場合も想定されている。 (オ) 「作動部材1550をさらに封止するように構成された剥離可能層1524 を含む・・・アプリケータ1500は、剥離可能層1524を除去し、それによっ て開孔106および作動部材1550の両方を露出させることによって使用の準備 ができる。( 」【0102】)及び【図15B】の各記載によると、作動部材を封止す る剥離可能層を除去して、作動部材を露出させると使用の準備ができるのであるか 5 ら、露出した作動部材を利用者が押すなどして作動させることが想定されている。 なお、作動部材が露出することで準備ができる旨の記載は本願明細書の【0103】、 【0104】【0105】【0125】にもある。 、 、 (カ) 「作動部材3650をユーザが押して、内部挿入アセンブリをトリガするこ とができる。( 」【0107】)及び【図36B】の各記載によると、利用者が作動部10 材を押して挿入アセンブリを作動させることが想定されている。作動部材を押す旨 の記載は本願明細書の【0108】【0109】【0117】【0132】にもあ 、 、 、 る。 (キ) 以上を総合すると、本願明細書においては、 「作動部材」は、押しボタンやキ ャップなど利用者が直接又は可撓性部材を介して押したり移動させたりすることが15 できる部材であって、これを移動させることがトリガとなって、挿入アセンブリが 作動することとなる部材を指すものと解するのが相当であり、このような理解は、 作動部材が挿入アセンブリを「作動させる」ものであるという特許請求の範囲の記 載とも整合する。そして、本願明細書にはこれに反する記載はない。 ウ したがって、本願補正発明1における「作動部材」は、当該部材に対する押20 すなどの作用がトリガとなって、挿入アセンブリが作動することとなる部材を指す と認めるのが相当である。 (3) 引用発明における「作動部材」 引用発明(前記(1)イ)においては、ユーザが「ハンドル402」を押下すると、 「針キャリア434」が移動し、これによって針ハブ及びこれから延出する鋭利部25 材424が、センサ14のセンサ挿入部30を、被験者の皮膚Sの皮下部分内に運 ぶから、ユーザが、 「ハンドル402」を押下することがトリガとなって、挿入アセ ンブリに相当する「針ハブ及び鋭利部材424」が作動することとなるものと認め られる。そうすると、引用発明において、本願補正発明1の「作動部材」に相当す るものは「ハンドル402」である。 (4) 本願補正発明1の構成Fについて 5 前記(2)及び(3)を前提として検討すると、引用発明における「ハンドル402」 は本願補正発明1の「作動部材」に相当するところ、 「ハンドル402」はアプリケ ータの最上面に存在しており、ハンドル402の円筒状の壁の遠位端の開口部を封 止する「キャップ404」が、ハンドル402を覆っているものではないから(甲 1【図47】参照)、引用発明においては作動部材が、開口部を封止する封止要素に10 より封止されていないことが明らかである。そうすると、本願補正発明1が「前記 開孔を封止する前記封止要素が、前記作動部材も封止するように構成されている」 のに対し、引用発明はそのような構成を有していない点において両者は相違するこ とになる。確かに引用発明においても、挿入アセンブリの動作が制限されることに より、ハンドル402の押下が制限され、結果的に作動部材の偶発的作動を防ぐと15 いう目的が達成されることになると考えられるが、 「ハンドル402」そのものが封 止されているわけではない以上、その相違する部分が引用発明の本質的部分に係る ものかどうかは別として、相違点が認められることに変わりはない。 (5) 小括 そうすると、本願補正発明1と引用発明が同じであるとはいえないから、本願補20 正発明1に、独立特許要件としての引用発明に基づく新規性欠如の拒絶理由がある ということはできない。 そうすると、本願補正発明1が引用発明と同じであるとした本件審決の判断には 誤りがある。また、本件審決は、仮に本願補正発明1と引用発明に相違点があると しても容易に発明することができたとしたが、当該判断が前提とした相違点は何ら25 特定されておらず、本件審決では前記相違点に関する具体的検討がされていない以 上、少なくとも、独立特許要件違反に関する本件審決の判断は不十分であったとい わざるを得ない。したがって、本願補正発明1について独立特許要件違反を理由に 本件補正を却下した本件審決の判断には誤りがあるから、取消しを免れない。 4 取消事由3(手続違背、審理不尽)について 特許法159条2項において読み替えて準用する同法50条ただし書の規定によ 5 れば、拒絶査定不服審判の請求と同時にされた本件補正について同法159条1項 において読み替えて準用する同法53条1項の規定による却下の決定をするときは 拒絶の理由の通知をすることを要しないとされているが、審査手続及び審判手続の 具体的経過に照らし、出願人の防御の機会が実質的に保障されていないと認められ るような場合には、拒絶の理由の通知をしないことが手続違背の違法となる余地が10 あるものと解される。しかし、本件においては、前記のとおり、本件補正を却下し たことは相当ではなかったと認められるのであるから、それだけで本件審決は取消 しを免れない。そして、本件補正を却下しない場合において、被告が本願補正発明 について査定の理由と異なる拒絶の理由を発見したときは、特許法159条2項に おいて読み替えて準用する同法50条本文の規定により拒絶の理由を通知すること15 になるはずであるから、手続違背を理由に本件審決を取り消さなくても原告の利益 保護に欠けるところはない。したがって、取消事由3については判断することを要 しない。 |
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結論
以上の次第で、原告の請求は理由があるから本件審決を取り消すこととして、主20 文のとおり判決する。 |
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追加 | |
25裁判長裁判官清水響裁判官5勝又来未子裁判官浅井憲は、差支えのため署名押印できない。 10裁判長裁判官清水響別紙1本願明細書の記載(抜粋)【発明の詳細な説明】5【技術分野】【0002】皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケータ、ならびにそれらの使用および/または製造の方法が提供される。より具体的には、受容者の血中グルコースを正確に測定するために経皮分析物アセンブリを受容者の皮膚に適用す10るための装置、ならびにそれらの使用および/または製造の方法が提供される。 【背景技術】【0003】真性糖尿病は、膵臓が十分なインスリンを作ることができない(I型もしくはインスリン依存性)かつ/またはインスリンが有効ではない、(2型もしくは非インス15リン依存性)疾患である。糖尿病の状態において、被害者は高血糖に悩まされ、それは、小血管の悪化と関連した多くの生理学的な障害、例えば、腎不全、皮膚潰瘍、 または眼球の硝子体液への出血を引き起こす可能性がある。低血糖反応(Hypoglycemicreaction)(低血糖(lowbloodsugar))は、インスリンの不注意の過剰投与によって、または異常な運動もしくは不十20分な食物摂取を伴うインスリンもしくはグルコース降下薬の正常な投与後に誘発され得る。 【0004】従来、糖尿病を患う人は、自己監視血糖(SMBG)モニタを持ち運び、それは典型的には、不快な指穿刺法を必要とする。快適さおよび便利さに欠けるため、糖25尿病を患う人は通常、1日当たり2〜4回グルコースレベルを測定するのみである。 残念ながら、そのような時間間隔はあまりに離れて分散されるため、糖尿病を患う人は、高血糖または低血糖状態を知るのが手遅れになる可能性があり、時に危険な副作用を招く。グルコースレベルは、あるいは、皮膚上センサアセンブリを含むセンサシステムによって連続的に監視され得る。センサシステムは、測定データを受信機に送信する無線送信機を有してもよく、受信機は、測定値に基づき情報を処理5および表示することができる。 【発明の概要】【0007】第1の態様によれば、皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に適用するためのアプリケータが提供される。アプリケータは、センサアセンブリの少なくとも一部分を受10容者の皮膚に挿入するように構成された挿入アセンブリを含む。アプリケータは、 挿入アセンブリを収容するように構成されたハウジングを含む。ハウジングは、センサアセンブリが通過するように構成される開孔を含む。アプリケータは、作動すると、挿入アセンブリにセンサアセンブリの少なくとも一部分を受容者の皮膚に挿入させるように構成された作動部材を含む。アプリケータは、ハウジングの内部環15境とハウジングの外部環境との間に滅菌バリアおよび蒸気バリアを提供するように構成された封止要素を含む。 【0008】いくつかの実施形態において、封止要素は、アプリケータから解放可能である。 いくつかの実施形態において、アプリケータは、皮膚上アセンブリをさらに含む。 20いくつかの実施形態において、皮膚上アセンブリは、センサを備える。いくつかの実施形態において、皮膚上アセンブリは、送信機を備える。いくつかの実施形態において、皮膚上アセンブリは、皮膚上アセンブリを受容者の皮膚に接着するように構成された接着層を含む。いくつかの実施形態において、アプリケータは、挿入アセンブリの少なくとも横方向の動きを阻止するように構成された支持部材をさらに25含む。いくつかの実施形態において、支持部材は、エラストマー膜を含む。いくつかの実施形態において、挿入アセンブリは、針を備える。いくつかの実施形態において、アプリケータは、受容者に把持の触覚表示を提供するように構成された1つ以上のリッジまたは凹部をさらに含む。いくつかの実施形態において、アプリケータは、受容者に把持の触覚表示を提供するように構成された断面形状を有する。いくつかの実施形態において、アプリケータは、アプリケータの回転を阻止するよう5に構成された少なくとも1つの突出部をさらに含む。いくつかの実施形態において、 ハウジングは、滅菌ガスに対して透過性であるように構成された通気孔を備える。 いくつかの実施形態において、封止要素は、通気孔を封止するように構成される。 いくつかの実施形態において、封止要素は、開孔および作動部材の両方を封止するように構成される。いくつかの実施形態において、作動部材は、滅菌ガスに対して10透過性である材料を含む。いくつかの実施形態において、封止要素は、金属箔(例えば、アルミニウム、チタン)、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタライゼーションにより適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ素被覆ポリマー、または10グラム/100in^2未満または好ましくは1グラム/100in^2未満の水蒸気透過率を有する任意の材料のうちの少なくと15も1つを含む。 【0013】いくつかの実施形態において、作動部材は、ハウジングの側面上に配設される。 いくつかの実施形態において、作動部材は、ハウジングの近位部分上に配設される。 いくつかの実施形態において、作動部材は、ハウジングの近位部分に埋め込まれて20いる。いくつかの実施形態において、作動部材は、ハウジングの近位部分に結合されたキャップを備える。いくつかの実施形態において、作動部材は、キャップを遠位方向に移動することによって作動するように構成される。いくつかの実施形態において、封止要素は、キャップとハウジングとの間に配設された封止層をさらに含む。いくつかの実施形態において、キャップは、封止層を貫通し、それによって挿25入アセンブリを作動させるように構成された突出部を備える。いくつかの実施形態において、挿入アセンブリは、バネ力によって駆動される。いくつかの実施形態において、挿入アセンブリが皮膚上アセンブリを挿入した後、針は、挿入アセンブリから後退する。いくつかの実施形態において、アプリケータは、作動部材の作動を防止するように構成されたセーフティ部材をさらに含む。いくつかの実施形態において、セーフティ部材は、易破壊性部材を備え、易破壊性部材は、少なくとも易破5壊性部材が破壊されるまで、作動部材の作動を防止するように構成される。 【発明を実施するための形態】【0024】以下の記載および実施例は、開示された発明のいくつかの例示的な実施形態を詳細に例示する。・・・10【0043】アプリケータの滅菌および封止異物が人体と接触すると、感染の可能性があり、深刻な健康被害を引き起こす可能性がある。したがって、アプリケータ(および/または受容者の身体部分に接触する、または挿入されるアプリケータの部分)の滅菌は望ましいだけでなく、多く15の状況で必要とされる。実施形態において、加熱滅菌、ガンマ線滅菌、電子ビーム滅菌、およびガス(例えば、酸化エチレン)滅菌を含むがこれらに限定されない様々な滅菌方法を使用することができる。ガス滅菌に適合した実施形態において、アプリケータは、少なくとも1つ以上の製造工程中に、1つ以上の滅菌工程中にガスの進入および排出を可能にするように構成されている1つ以上の開孔と共に構成され20得る。加えて、いくつかの実施形態において、水分(例えば、水蒸気)の進入からアプリケータを封止することが望ましい場合がある。水分、特に水蒸気は、アプリケータ内の金属部品、たとえば針、バネ、または任意の他の金属構造を腐食(例えば、錆び、変色)させ得る。特に針が受容者の皮膚に入る場合、受容者と接触するこのような腐食は、深刻な健康被害を引き起こす可能性がある。水分はまた、感染25性病原体の成長を促進し、それらの増殖の媒体を提供し、深刻な健康被害を引き起こす可能性がある。本出願は、以下の図1A〜40のうちの少なくともいくつかに関連してより詳細に説明されるように、例えば、頂部端(例えば、近位)または底部端(例えば、遠位)上の1つ以上の取り外し可能なキャップの使用による、統合キャップを含む1つ以上のトリガ機構による、アプリケータの1つ以上のオリフィス、開孔、または通気孔を覆う1つ以上の封止層による、滅菌可能なガス透過性ポ5リマーによる、滅菌可能なガス透過性トリガ機構による、保護カップによる、またはそれらの任意の組み合わせによる、ガス滅菌可能であり、かつ/または水分(例えば、水蒸気)封止を含む、アプリケータの様々な実施形態を提供する。 【0045】さらに、特に使い捨てアプリケータの場合、アプリケータを時期尚早にまたは予10期せずに展開させるのは苛立たしいか、または危険であり得る。したがって、消費者は、時期尚早の作動の発生を実質的に低減または防止するために、アプリケータが時期尚早の展開防止特徴部を含むことが望ましいと感じる場合がある。時期尚早の展開防止特徴部の例は、以下の図1A〜40のうちの少なくともいくつかに関連してより詳細に説明される。 15【0049】取り外し可能なキャップを含む実施形態いくつかの実施形態は、滅菌封止および/または水分バリアとして機能するように構成された取り外し可能なキャップを含むことができる。例えば、図1Aは、いくつかの実施形態による、封止要素110を含む、皮膚上アセンブリ102を受容20者の皮膚に適用するためのアプリケータ100の分解切断図である。アプリケータ100は、挿入アセンブリ118(図1Bを参照)を収容するように構成されたハウジング104を備える。ハウジング104は、展開中に皮膚上アセンブリ102(図1Bを参照)が通過するように構成された開孔106を備える。ハウジング104の側面は、作動部材(図1A〜図1Cには図示せず)を受容するように構成さ25れた開口120をさらに備えてもよい。そのような作動部材は、作動すると、挿入アセンブリ118に皮膚上アセンブリ102の少なくとも一部分を受容者の皮膚に挿入させるように構成することができる。作動部材は、開口120の領域のハウジング104の側面上に配設される。ハウジング104の側面上に作動部材を設けることにより、アプリケータ100は、皮膚上アセンブリ102の容易な片手展開を受容者に提供することができる。 5【0051】アプリケータ100は、ハウジング104の内部環境とハウジング104の外部環境との間に滅菌バリアおよび/または蒸気バリアを提供するように構成された封止要素110をさらに備える。図1Aに示すように、封止要素110は、ハウジング104の一部分と結合するように構成された取り外し可能なキャップ112を備10える。具体的には、一例として、取り外し可能なキャップ112は、ネジ山114を介してハウジング104の遠位部分と結合するように構成される。例えば、取り外し可能なキャップ112上に配設されたネジ山114は、ハウジング104上に配設されたネジ山108と嵌合するように構成されてもよい。取り外し可能なキャップ112は、ネジ山114とネジ山108が互いに嵌合しなくなるまで、取り外15し可能なキャップ112をハウジング104に対してねじる、またはその逆によって、次いでハウジング104および取り外し可能なキャップ112を引き離すことによって、ハウジング104から離すことができる。封止要素110は、取り外し可能なキャップ112を取り外す前に、取り外し可能なキャップ112とハウジング104との間に保持要素138をさらに備えてもよい。示されるように、取り外20し可能なキャップ112は、ハウジング104の側面上に配設される作動部材によって作動部材を覆う。封止要素110は、滅菌ガス(例えば、エチレンオキシド、 またはETO)に対して透過性である第1の層122をさらに備えてもよい。第1の層122は、Tyvek(登録商標)材料を含んでもよいが、滅菌ガスに対して透過性の任意の他の材料を利用してもよい。取り外し可能なキャップ112への第251の層122の適用は、製造中の滅菌ガスの進入および排出を可能にし得る。封止要素110は、水分(例えば、水蒸気)に対して実質的に不浸透性である第2の層124をさらに備え得る。第2の層124は、金属箔を含むことができるが、水分(例えば、水蒸気)に対して不浸透性の任意の好適な材料、例えば、金属箔(例えば、アルミニウムもしくはチタン)、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタライゼーションによって適用された金属で被覆されたポリマー、 5二酸化ケイ素で被覆されたポリマー、または10グラム/100in2未満もしくは好ましくは1グラム/100in2未満の水蒸気透過率を有する任意の物質が利用されてもよい。第1の層122および第2の層124は、取り外し可能なキャップ112の底部の開口126を封止することができる。滅菌後の第1の層122の上への第2の層124の適用は、第1の層を介して滅菌性をさらに維持し、第2の10層を介して水分バリアを追加することができる。一緒に、封止要素110の上記の特徴部は、アプリケータ100の共同滅菌および水分封止を提供し得る。 【0070】図2Bは、図2Aのアプリケータ200の部分分解図である。図2Bにより明確に示されるように、アプリケータ200は、作動時に、挿入アセンブリ118(図151Bを参照)に、皮膚上アセンブリ102(図1Bを参照)の少なくとも一部分を、 開孔106を通して受容者の皮膚に挿入するように構成された作動部材250(例えば、押しボタン)をさらに備えてもよい。図1A〜1Cと同様に、取り外し可能なキャップ212は、ハウジング204の側面上に配設された作動部材250のおかげで作動部材250を覆い、取り外し可能なキャップ212は、作動部材25020を包むハウジング204の遠位部分を覆う。このように作動部材250を包むことは、偶発的な作動を防ぐことができる。封止要素210は、図1Bに関連して前述したように、第1の層122および第2の層124をさらに備えてもよい。第1の層222および第2の層224は、取り外し可能なキャップ212の底部の1つ以上の開孔226の上に配設されてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上25の開孔226は、アプリケータ200の滅菌および/または通気を容易にする。封止要素210の上記の特徴部は、アプリケータ200の共同滅菌および水分封止を提供し得る。 【0074】図3Cは、いくつかの実施形態による、図3Aおよび図3Bのアプリケータ300の別の拡大切断図である。示されるように、ハウジング304の側面は、図1A5および1Bに関連して前述したように、作動部材(図3A〜3Cには図示せず)を受容するように構成された開口120をさらに含み得る。ハウジング304の側面上に作動部材を設けることにより、アプリケータ300は、皮膚上アセンブリ102(図3Cには図示せず)の容易な片手展開を受容者に提供することができる。 【0085】10アプリケータ700は、ハウジング704の近位部分に結合された入れ子式キャップを備える作動部材750をさらに備える。したがって、封止層764は、作動部材750(すなわち、キャップ)とハウジング704との間に配設される。作動部材750は、キャップを遠位方向に移動させることによって作動されるように構成される。したがって、作動部材750は、キャップが遠位方向に移動すると、封15止層764を貫通し、それによってハウジング704内の挿入アセンブリ118(図示せず)を作動させるように構成された突出部752をさらに備え得る。いくつかの実施形態において、作動部材750は、作動部材750を作動させるのに十分に遠位方向にキャップを移動するために閾値を超える圧力が必要とされるようにバネ荷重されてもよい。 20【0090】図8Bは、作動部材850(例えば、入れ子式キャップ)が遠位方向に移動するときに、封止層764を突き刺す準備ができた位置にある作動部材850の突出部752をさらに示す。アプリケータ800は、図7Aおよび図7Bに関連して前述したように、作動部材850の付勢力が負荷された態様を提供するように構成され25たバネ特徴部854(例えば、成形または統合されたバネ特徴部)を含むものとしてさらに示される。 【0096】可撓性シェルを含む実施形態いくつかの実施形態は、シェルまたはカバーとして構成された可撓性部材を含むことができ、これはハウジングの上に配設され、作動部材に動作可能に結合される。 5例えば、図11Aは、いくつかの実施形態による、ハウジング1104の少なくとも一部分の上に配設された可撓性部材1160を含む、皮膚上アセンブリ102を受容者の皮膚に適用するための別のアプリケータ1100を示す。図示されていないが、アプリケータ1100は、少なくとも図1A〜図1Cに関連して記載されているように、挿入アセンブリ118および皮膚上アセンブリ102をさらに含むこ10とができる。アプリケータ1100は、挿入アセンブリ118および皮膚上アセンブリ102を封入し得るハウジング1104を備える。アプリケータ1100は、 ハウジング1104の側面上に配設され、作動時に、挿入アセンブリ118に皮膚上アセンブリの少なくとも一部分を受容者の皮膚に挿入させるように構成された作動部材1150をさらに備えてもよい。アプリケータ1100は、ハウジング111504の上に配設された可撓性部材1160をさらに備えてもよい。アプリケータ1100は、可撓性部材1160の遠位部分を封止し得る第2の層124をさらに備えてもよい。したがって、第2の層124は、可撓性部材1160と共に、ハウジング1104の内部環境と外部環境との間に滅菌バリアおよび蒸気バリアを提供するように構成された封止要素を提供する。図11Aに示されるように、可撓性部材201160は、可撓性セクション1162が押されると作動部材1150が作動するように、作動部材1150の上に配設されるように構成された可撓性部材1162を備えてもよい。いくつかの実施形態において、可撓性セクション1162は、2つの状態:第1の装填状態および第2の展開状態を有するという点で双安定であってもよい。そのような実施形態において、可撓性セクション1162は、第2の展25開状態にあるとき、プラスの視覚的タンパー表示を提供し得る。さらに、可撓性部材1160の可撓性の性質は、さもなければアプリケータ1100に物理的衝撃を与える可能性のあるエネルギーを吸収することにより、時期尚早の展開防止および落下保護特徴部をさらに提供し得る。 【0102】追加の実施形態5代替として、または取り外し可能なキャップに加えて、様々な実施形態は、滅菌封止および/または水分バリアを提供するように構成された1つ以上の他の特徴部を含むことができる。そのような実施形態のサブセットは、頂部キャップまたは底部キャップのない単一のハウジングを備えてもよい。例えば、図15Aは、いくつかの実施形態による、ハウジング1504の遠位開口106を封止し、作動部材110550をさらに封止するように構成された剥離可能層1524を含む、皮膚上アセンブリ102を受容者の皮膚に適用するためのアプリケータ1500の斜視図を示す。アプリケータ1500は、挿入アセンブリ118を収容するように構成されたハウジング1504を備え、皮膚上アセンブリ102が通過できる開孔106を備える。アプリケータ1500は、ハウジング1504の側面上に配設され、作動時15に、挿入アセンブリ118に皮膚上アセンブリの少なくとも一部分を受容者の皮膚に挿入させるように構成された作動部材1550をさらに備える。いくつかの実施形態において、剥離可能層1524は、ハウジング1524の少なくとも一部分に結合される。例えば、少なくとも図15Aに示されるように、剥離可能層1524は、開孔106および作動部材1550を封止するように構成される。したがって、 20剥離可能層1524は、ハウジング1504の内部環境と外部環境との間に滅菌バリアおよび/または蒸気バリアを提供するように構成された封止要素を形成する。 いくつかの実施形態において、剥離可能層1524は、封止要素を形成する単一片である。アプリケータ1500は、剥離可能層1524を除去し、それによって開孔106および作動部材1550の両方を露出させることによって使用の準備がで25きる。このようにして、剥離可能層1524はまた、タンパー表示、時期尚早の展開防止、および落下保護特徴部を同時に提供してもよい。図15Bは、剥離可能層1524が除去された図15Aのアプリケータ1500を示す。 【0104】・・・図17Bおよび17Cに関連してより詳細に説明されるように、アプリケータ1700は、剥離可能層1724および差し込みプラグ1770を除去するこ5とにより使用する準備ができ、それによって開孔106および作動部材1750がそれぞれ露出する。このようにして、剥離可能層1724および/または差し込みプラグ1770は、少なくともタンパー表示および時期尚早の展開防止特徴部を同時に提供することができる。 【0105】10図17Bは、差し込みプラグ1770が除去された図17Aのアプリケータ1700を示す。示されるように、差し込みプラグ1770が除去されると、作動部材1750が露出され、作動の準備が整う。 【0107】図36Aは、いくつかの実施形態による、ハウジング3604、スライド式セー15フティロック特徴部3640、および作動部材3650を含むアプリケータ3600の斜視図を示す。セーフティロック特徴部3640は、ハウジング3604の頂部近くに位置する少なくとも1つのボタンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、セーフティロック特徴部3640は、ハウジング3604の頂部の両側に位置する2つのボタンを含む。図36Aに示されるように、作動部材3650は、 20作動部材3650の外面がハウジング3604の外面3606と同一平面にあり得るロック位置にある。このロック位置では、作動部材3650をユーザが押して、 内部挿入アセンブリをトリガすることはできない。図36Bに示されるように、セーフティロック特徴部3640が押されている。セーフティロック特徴部3640を作動させることにより、内部ラッチコンポーネントは、作動部材3650をロッ25ク位置からロック解除位置まで解放する。作動部材3650の外面は、ハウジング3604の外面3606から半径方向外向きに突出する。このロック解除位置では、 作動部材3650をユーザが押して、内部挿入アセンブリをトリガすることができる。 【0108】図37Aは、いくつかの実施形態による、ハウジング3704およびトグル可能5な作動部材3750を含むアプリケータ3700の斜視図を示す。 ・・・トグル可能な作動部材3750を半径方向内側に押して、内部挿入アセンブリをトリガすることができる。 【0109】図38Aは、いくつかの実施形態による、 ・・・図に示されるように、作動部材310850は、ハウジング3804の内部に含まれるバネボタンである。 ・・・この状態では、ユーザが作動部材3850を半径方向内側に押して、内部挿入アセンブリをトリガすることができる。 【0111】図40は、いくつかの実施形態による、ハウジング4004、セーフティボタン154040、および作動部材4050を含むアプリケータ4000の斜視図を示す。 図に示されるように、セーフティボタン4040は、ハウジング4004の頂部に位置してもよい。そのような実施形態において、セーフティボタン4040を遠位方向に押して、作動部材4050をロック状態からロック解除状態に変えることができる。セーフティボタン4040の作動は、内部トリガロック特徴部を解除し、 20作動部材4050の作動を防止する。 【0117】アプリケータ3400は、ハウジング3404と一体に形成された作動部材3450(例えば、押しボタン)を含み得る。作動部材3450は、ユーザが押して内部挿入アセンブリ3470を作動させるように構成され得る(図34Bを参照)い。 25くつかの実施形態において、取り外し可能なキャップ3410を取り外した後、ハウジング3404は、作動部材3450をロック解除するために表面(例えば、ユーザの皮膚)に押し付けられるように構成される。ハウジング3404は、内側ハウジング3406に沿って作動されて、作動部材3450を挿入アセンブリ3470のトリガアームと整列させることができる。次いで、作動部材3450を横方向に押して、トリガアームを作動させ、挿入アセンブリ3470を作動させることが5できる。 【0125】図21Bおよび図21Cにより詳細に示されるように、剥離可能層2124および挿入キャップ2170を除去することにより、アプリケータ2100を使用する準備ができ、それによって開孔106および作動部材2150をそれぞれ露出させ10る。このようにして、剥離可能層2124および/または差し込みプラグ2170は、少なくともタンパー表示および時期尚早の展開防止特徴部を同時に提供することができる。 【0132】作動部材の代替例15本出願は、複数の異なるアプリケータの実施形態を説明する。しかしながら、本出願は、記載された単離された実施形態のみに限定されない。例えば、任意の記載された実施形態の任意の作動部材は、必要に応じて、前述した任意の他の作動部材に置き換えることができる。任意の作動部材を使用して、挿入アセンブリ118(図示せず)などの挿入アセンブリを作動させることができる。例えば、任意のアプリ20ケータは、代替として、ハウジングの側面上に配設された作動部材(図1A〜6B、 11A、11B、13A〜17C、および25を参照)、ハウジングの近位(すなわち、頂部)部分上に配設された作動部材(図12A、12B、および18A〜22Bを参照)、内部またはそれ自体がキャップである作動部材(図7A〜10Bを参照)、押し下げにより装備し、屈曲部(図9を参照)、一般的なプッシュボタン、双25安定ボタン(図11A〜12Bを参照)を押すことにより作動する作動部材、または上記の例のうちのいずれかであるが、さらに滅菌ガスに対して透過性であるもの(図25A〜25Bを参照)を備え得る。いくつかの実施形態において、任意のアプリケータは、複数の作動部材を備えてもよく、複数の作動部材のうちの1つ以上の押し下げが、挿入アセンブリを作動させることができる。いくつかの実施形態において、挿入アセンブリを作動させるために、少なくとも2つの作動部材を同時に5または順番に押すことが必要になる場合がある。 【0144】第1の層2922は、Tyvek(登録商標)を含んでもよいが、滅菌ガスに対して透過性の任意の他の材料を利用してもよい。取り外し可能なキャップ2912への第1の層2922の適用は、製造中の滅菌ガスの後次進入および排出を可能に10し得る。第2の層2924は、金属箔を含むことができるが、水分(例えば、水蒸気)に対して不浸透性の任意の他の材料、例えば、金属箔(例えば、アルミニウム、 チタン)、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタライゼーションによって適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ素で被覆されたポリマー、または10グラム/100in2未満もしくは好ましくは1グラム/11500in2未満の水蒸気透過率を有する任意の物質が適用されてもよい。第1の層2922および第2の層2924は、取り外し可能なキャップ2912の開口(図示せず)を封止することができる。滅菌後の第1の層2922の上への第2の層2924の適用は、アプリケータ2900に水分障壁をさらに提供し得る。第2の層2924は、複数のアプリケータに同時に適用され得るため、バッチ滅菌および/20または蒸気封止が達成され得る。 【0164】さらに他の実施形態において、ハウジングの内部環境をハウジングの外部環境から封止することは、図29に関連して前述したように、複数のアプリケータのそれぞれの少なくとも一部分上に、滅菌ガスに対して不透過性の層を堆積させることを25含む。いくつかのそのような実施形態において、層は、金属箔(例えば、アルミニウム、チタン)、金属基材、酸化アルミニウム被覆ポリマー、パリレン、蒸気メタライゼーションにより適用された金属で被覆されたポリマー、二酸化ケイ素被覆ポリマー、または10グラム/100in2未満または好ましくは1グラム/100in2未満の水蒸気透過率を有する任意の材料のうちの少なくとも1つを含む。 【図1A】【図1B】5【図2B】【図3C】【図4B】【図5B】【図6B】【図7B】【図8B】【図9B】【図10B】【図11A-11B】【図12A】【図13A】【図14】【図15B】【図16B】【図17B】5【図18B】【図19B】【図20B】【図21B】【図22A】【図25A】【図35A】【図36B】【図37A】5【図38A】【図39】【図40】別紙2甲1の記載(抜粋)【技術分野】5【0003】本発明は、医療用装置を被験者の皮膚に挿入する装置、医療用装置を用いる方法、 および医療用装置挿入システムに関する。 【背景技術】【0004】10特定の個人のグルコースレベルや、乳酸、酸素、A1C等の他の検体を検出および/またはモニタリングすることは、彼らの健康にとって極めて重要である。例えば、グルコースのモニタリングは、糖尿病の個人にとって特に重要である。糖尿病患者は、一般的に、グルコースレベルをモニタリングして、彼らのグルコースレベルが臨床的に安全な範囲内に維持されるか否かを判定し、また、この情報を用いて、 15彼らの体内のグルコースレベルを低減するためにインスリンが必要か否か(および/またはいつ必要か)、または彼らの体内のグルコースレベルを高めるために追加のグルコースが必要か否かを決定し得る。 【0005】増大する臨床データにより、グルコースモニタリングの頻度と血糖管理とに強い20相関があることが示されている。そのような相関にも関わらず、糖尿病の状態を有すると診断された多くの個人は、簡便性、検査の自由裁量、グルコース検査に伴う痛みおよび費用を含む要因の組み合わせにより、グルコースレベルのモニタリングを然るべき頻度で行っていない。 【0006】25血流や間質液(ISF)等の体液や他の生物学的流体中における、グルコース等の検体を自動でモニタリングするための装置が開発されている。このような検体測定装置には、インビボのモニタリングを達成するために、少なくとも装置の一部がユーザの皮膚の表面下(例えば、ユーザの血管や皮下組織内)に配置されるよう構成されたものがある。 【発明の概要】5【発明が解決しようとする課題】【0007】検体モニタリング装置およびシステムの継続的な開発と共に、頻繁な検体モニタリングを奨励して血糖管理を向上させるために、コスト効果があって、簡便で、痛みが少なく、配慮のあるモニタリングを提供する検体モニタリング装置、システム10および方法、並びに、検体モニタリング装置およびシステムの製造方法が必要とされている。 【課題を解決するための手段】【0008】特定の実施形態において、医療用装置を被験者の皮膚に挿入する装置が提供され15る。この装置は、被験者の皮膚上への配置のための遠位面を画成するシースと、近位位置と遠位位置との間を移動可能な装置支持部であって、医療用装置を支持するよう構成された装置支持部と、近位位置と遠位位置との間を移動可能な鋭利部材支持部であって、該鋭利部材支持部は、医療用装置を被験者の皮膚に挿入するための鋭利部材であって装置支持部の一部分を通って延びる鋭利部材を支持するよう構成20され、装置支持部が、鋭利部材支持部を装置支持部に取り外し可能に結合する第1の係合部材と、医療用装置と係合する第2の係合部材とを有する、鋭利部材支持部と、シースに対して近位位置と遠位位置との間を移動可能なハンドルであって、鋭利部材を被験者の皮膚に挿入するために装置支持部および鋭利部材支持部を近位位置から遠位位置へと付勢するよう構成されたハンドルと、鋭利部材支持部が遠位位25置に到達したときに、鋭利部材支持部を近位位置に向かって前進させる駆動器とを含む。 【0053】インビボモニタリングシステムの実施形態限定ではなく説明の目的で、本明細書に記載される挿入器は、図1に示されている例示的な検体モニタリングシステムと関連して用いられ得る。本明細書に記載さ5れる挿入器は、それ自体でまたはシステムと関連して、任意の医療用装置と共に用いられ得ることを理解されたい。図1は、本開示の複数の実施形態による例示的なインビボベースの検体モニタリングシステム100を示す。図示されるように、特定の実施形態では、検体モニタリングシステム100は身体装着用電子装置1100を含み、身体装着用電子装置1100は、インビボ検体センサ14(図1にはそ10の近位部が示されている)に電気的に接続されると共に、ユーザの身体の皮膚表面への取り付けのために接着層218に取り付けられている。身体装着用電子装置1100は、内部区画を画成する身体装着用筐体122を含む。 【0089】挿入アセンブリ15被験者に医療用装置を設置するために用いられる挿入アセンブリが提供される。 幾つかの実施形態では、挿入アセンブリは、挿入器および医療用装置を含む。挿入器は、被験者に、例えば、検体センサ、輸液セットまたはカニューレ等の様々な医療用装置を挿入するよう構成され得る。幾つかの実施形態では、挿入器は、そのような装置の組み合わせ(例えば、組み合わされたセンサ/輸液セット等)を同じま20たは異なるタイミングで、同じまたは異なる位置に設置するよう構成され得る。例えば、特定の実施形態では、所与の挿入器は、第1の装置および第2の装置を異なるタイミングで設置するよう構成され得る。これに関して、挿入器は再使用可能であり得る。例えば、挿入器は、例えば、アダプタを取り付けることにより、且つ/または挿入器の一部分を取り外すことにより、2以上の医療用装置(2以上のタイ25プの医療用装置を含む)と共に用いられるよう変更可能であり得る。挿入器は、被験者の皮膚の下にまたは皮膚を通して医療用装置を設置できるか、または、医療用装置を皮膚の表面に配置できる。医療用装置は、挿入後に装置を皮膚に対して適切な位置に維持するための、例えば、棘状部、タブ、接着剤等の特徴または構造を有し得る。挿入装置は、例えば、医療用装置を挿入または設置せずに皮膚を突き通すためのランセットとしても用いられ得る。 5【0097】挿入装置例示的な一実施形態による挿入器200が図4に示されている。挿入器200は、 筐体202と、中に収容されている医療用装置および鋭利部材の滅菌環境を維持するための取り外し可能な遠位キャップ204とを含む。幾つかの実施形態では、挿10入器200の最大直径は約30mm〜約60mm(例えば、約40mm、約43mm、約43.5mm、約50.5mm、約54.5mm等)である。幾つかの実施形態では、挿入器200の最大高さは約40mm〜約80mm(例えば、約44mm、約46mm、約50mm、約53mm、約67mm、約71mm等)である。 幾つかの実施形態では、挿入器200の体積は約35cm3〜約110cm3(例15えば、約40cm3、約41cm3、約50cm3、約60cm3、約61cm3、 約62cm3、約69cm3、約70cm3、約79cm3、約90cm3、約106cm3等)である。挿入器200の場合には、寸法は筐体202に関して定められる。 【0098】20筐体202および遠位キャップ204は、金属、プラスチック等の任意の適切な材料から作られ得る。幾つかの実施形態では、キャップ204は、ポリマーまたはプラスチック材料から作られ得る。取り外し可能な近位カバー206も設けられ、 これは、特に挿入器200の意図しない配置を防止すると共に滅菌環境を維持するものである。幾つかの実施形態では、近位カバー206は、接着剤を用いて筐体22502の上面に固定された金属箔シート等のシート材料であり、カバー206の取り外しを補助するタブ208を含み得る。また、近位カバー206は、筐体202と共に密閉を構成するプラスチックシートまたはプラスチック部材であってもよい。 幾つかの実施形態では、近位カバー206は、取り外しを容易にするためのプルタブまたはミシン目部分を含み得る。 【0099】5図5に示されるように、挿入器200から取り外された近位カバー206および遠位キャップ204が示されている。遠位キャップ204は、例えば、ねじ山210を用いて筐体202に固定される。幾つかの実施形態では、遠位キャップ204は、締り嵌め、スナップ嵌め、バヨネット式マウント、接着剤等によって固定される。キャップ204の遠位部は、乾燥剤を保持するための窪みを含み得る。幾つか10の実施形態では、シリカゲルまたはモレキュラシーブが用いられ得る。そのような材料は、粒状形(ペレット)であってもよく、タブレット状にプレスされてもよく、 または別様であってもよい。幾つかの実施形態では、シリカゲルタブレットが用いられる。複数の実施形態は、乾燥剤および/または米国特許出願第12/714、 439号明細書(ここに参照してあらゆる目的で本明細書に組み込む)に記載され15ているようなパッケージを含み得る。キャップ204には、挿入器200の内部から水分を除去するために乾燥剤まで空気が通るのを可能にする1以上のアパチャーが設けられ得る。 【0100】筐体202は、被験者の皮膚上への配置のための遠位部212を含む。挿入器22000は、医療用装置を被験者の皮膚内に前進させるためのアクチュエータ214を含む。幾つかの実施形態では、アクチュエータ214は、筐体202の開口部216内に配設され、筐体202内で長手方向に可動であり得る。 【0101】25挿入器200の遠位部が図6に示されている。幾つかの実施形態では、両面に接着材料218を有する接着パッド218が、筐体202の遠位部212にわたって設けられる。接着パッド218には中心アパチャー220が設けられ得る。本明細書でより詳細に説明するように、挿入器200は、身体装着用筐体122(図示せず)等の医療用装置および鋭利部材224を支持する。幾つかの実施形態では、身体装着用筐体122は検体センサ14を含む。挿入中に、鋭利部材224はアパチ5ャー220を通って被験者の皮膚に入り、少なくともセンサ14を運ぶ。 【0109】図16〜図18は、針ハブ236および鋭利部材224に対する身体装着用筐体122の位置を示す。身体装着用筐体122は、センサ14の少なくとも一部分および身体装着用電子装置1100(本明細書では電子装置80とも称する)を保持10するよう構成され得る。図16に示されるように、鋭利部材224は、身体装着用筐体122のアパチャー168を通って延びる。従って、幾つかの実施形態では、 鋭利部材224は、身体装着用筐体122に連結されない。センサ14の遠位部は、 鋭利部材224内に配置される。更に図17に示されるように、身体装着用筐体122内には身体装着用電子装置1100およびセンサハブ123が配置される。セ15ンサ14は、センサハブ123のタブ129等の配置部材を受容する配置構造またはスリット127を必要に応じて含んでもよい。必要に応じて、電池(例えば、使い捨て電池または充電可能電池)等の電源82が設けられる。 【0112】身体装着用筐体122と共に取り付けられるセンサ14は、キャリッジ230の20窪み(例えばキャリッジ230の凹面状の窪み等)内に配置され得る。或いは、身体装着用筐体122と共に取り付けられるセンサ14は、支持構造とシース242(図示せず)の壁から延出する1以上の突起との間に配置され得る。更に別の例では、身体装着用筐体122と共に取り付けられるセンサ14は、鋭利部材224に対する解除可能な締り嵌め結合によって、適切な位置に保持され得る。このように、 25キャリッジは、身体装着用筐体と共に取り付けられるセンサが配置される窪みを有する必要は無い。挿入器200の初期構成(例えば、図7を参照)では、鋭利部材224は、キャリッジ230に形成された長手方向のアパチャー268を通って延びる。幾つかの実施形態では、アパチャー268は、鋭利部材224も針ハブ236もキャリッジ230と接触しないような適切なサイズを有する。従って、一方では針ハブ236(および鋭利部材224)が、他方ではキャリッジ230および身5体装着用筐体122が、互いに独立して同時に移動する。他の実施形態では、アパチャーと鋭利部材との締り嵌めが設けられ得る。 【0138】挿入器400は、一般的に、例えば、ハンドル402と、シース442と、中に収容されている医療用装置および鋭利部材の滅菌環境を維持するための取り外し可10能な遠位キャップ404とを含む。図41には、ハンドル402から取り外された遠位キャップ404が示されている。遠位キャップ404は、例えば、ねじ山410を用いて、ハンドル402に取り外し可能に固定される。シース442は、被験者の皮膚上への配置のための遠位面412を含む。挿入器400は、医療用装置を被験者の皮膚内に前進させるために用いられ得る。幾つかの実施形態では、医療用15装置を遠位へと且つ患者の皮膚内に前進させるために、ハンドル402がシース442に対して相対的に前進させられる。 【0139】図42〜図46には、挿入器400の構成要素が示されている。図42に示されるように、ハンドル402は、ねじ山411(図44に示す)を介したキャップ42004の取り付けのためのねじ山410を含む。キャップ404は、鋭利部材424の配置のための受容部425を含み得る。図43に示されるように、シース442は、長手方向の切欠482を含む。図45に示されるように、キャリッジ430の突起486は、シース442と係合して挿入器400内にキャリッジ430を固定するよう構成され、それにより、キャリッジが挿入器から外れるのを防止する。シ25ース442は、キャリッジ430の突起475を受容する切欠484も含む。切欠の底部は、キャリッジ430が挿入器400から落ちるのを防止する保持部として作用する。図49および図50に示されるように、突起475はシース442のラッチ要素470と係合する。図48〜図49に示され、本明細書においてより詳細に述べるように、キャリッジ430には、針キャリア436の肩部の壁476と係合するフィンガー部474も設けられる。 5【0140】図48に示されるように、シース442は、周方向の切欠496の遠位端に設けられたばね保持部448も含む。図46に示されるように、針キャリア434は、 ばね446のための上部係合面を提供する翼部450を含む。翼部450は、キャリッジ430のフィンガー部474と係合する肩部476も含む。 10【0141】図47には、使用前の、キャップ404を取り外す前の状態の挿入器400が断面で示されており、図示されているキャップ404は、ねじ山410とねじ山411との相互係合を介して、ハンドル402の遠位部に取り付けられている。キャップ404は、乾燥剤タブレット490と、金属箔シール492等のシールと、乾燥15剤タブレット490と挿入器400の内部との間の通気性を可能にするタイベック層494とを含む。 【0142】図48に示されるように、挿入器400の初期構成において、ハンドル402はシース442に対して近位位置に配設される。そのような構成では、鋭利部材42204は接着層418のアパチャー420から離間した構成に配設される。挿入器400の長手方向の軸Lが示されている。ハンドル402の上面からは、内壁475が遠位へと延びている。ユーザによってハンドル402が押下されると、壁475の遠位端部分は、キャリッジ430に対して下向きの力を与える。或いは、遠位へと延びる内壁を有するハンドルの代わりに、キャリッジが1以上の上に延びる壁また25は突起(図示せず)を含み得る。1以上の上に延びる内壁または突起は、ハンドル402の上面と接触するのに、或いは、ハンドル402の対応する下に延びる内壁と接触するのに十分な長さを有し得る。このように、ユーザによるハンドル402の押下によって、キャリッジの1以上の上に延びる壁または突起に下向きの力が与えられ、キャリッジ(および身体装着用ユニット)を遠位へと前進させて設置および挿入位置に至らせる。(図49〜図50を参照。)一実施形態では、ハンドル4052の下に延びる壁とキャリッジの対応する上に延びる壁とが位置合わせされており、 ユーザによるハンドル402の押下によって、上に延びる壁と下に延びる壁とが直接接触し、それによってキャリッジ430および身体装着用ユニットを遠位へと前進させるようになっている。そのような実施形態では、ハンドルの下に延びる内壁の遠位端は、シース442の最も近位の端部の近位に配設される。 10【0143】針キャリア434は、ハンドル402内において軸方向に移動可能である。針キャリア434は、針ハブ436を支持し、針ハブ436からは、鋭利部材424が挿入器400内において長手方向に延出している。幾つかの実施形態では、鋭利部材424は、皮膚表面に対して斜めの角度(例えば、約0°と90°との間)で支15持される。初期状態では、針キャリア434は、キャリッジ430のフィンガー部474と針キャリア434の肩部476との相互係合を介してキャリッジ430に接続される。シース442のばね保持部448と針キャリア434の翼部450(図46)との間に、ばね446が配設される。初期状態では、ばね446は伸張または半伸張状態にあり、一方、ハンドル402はシース442から近位に配設されて20いる。別の例示的な実施形態では、針キャリア434はハンドル402に固定され得る(例えば、下に延びる内壁475に固定される)。このように、針キャリアおよびキャリッジ430は、シース442に対して、図48に示されているLで定められる線に沿って長手方向に移動可能である。これに関して、針キャリア434は、 ハンドル402の1以上の下に延びる内壁475を受容する1以上のアパチャーを25含む。幾つかの実施形態では、針キャリア434および/またはキャリッジ430の長手方向の移動中、針キャリア434もキャリッジ430も、シース442とはスライド可能に接触しない(例えば、シース442から離間している)。 【0144】図49は、挿入中の挿入器400を断面で示す。ハンドル402を、ばね446の付勢に逆らってシース442に対して押下すると、キャリッジ430および針キ5ャリア434が、近位位置から遠位位置へと長手方向に遠位へと移動する。そのような下方向の近位への移動中に、ばね446は、ばね保持部448と針キャリア434の翼部450(図46)との間で圧縮される。鋭利部材424が遠位へと付勢されると、鋭利部材424はセンサ14のセンサ挿入部30(図17)を被験者の皮膚Sの皮下部分内に運ぶ。 10【0145】キャリッジ430が遠位位置(被験者の皮膚の近く)に到達すると、身体装着用筐体122の遠位面は接着パッド418の上面と係合し、それにより被験者の皮膚表面Sに接着される。フランジ470は、キャリッジ430に配設されたフィンガー部474と係合する。フィンガー部474は、フランジ470によって方向Tに15外側に回動される。フィンガー部474のそのような回動により、フィンガー部474が針キャリア434の肩部476から外れる。それにより、針キャリア434がキャリッジ430から外れる。また、フィンガー部474のそのような回動により、フィンガー部474の開口部がフランジ470と係合して、キャリッジ430を遠位位置に係止する。 20【0146】図50に示されるように、針キャリア434がキャリッジ430から外れると、 ばね446は伸張可能になり、それにより、針キャリア434を近位位置(被験者の皮膚から離れた位置)に進めて、センサ14を皮膚内に残したまま、被験者の皮膚表面Sの下から鋭利部材424を引き抜く。一旦、鋭利部材424が被験者から25引き抜かれたら、鋭利部材424はキャリアハンドル402内の近位位置に配置されるので、もはや挿入器400の遠位部からは接触できなくなり、被験者の皮膚に誤って接触することが不可能になる。 【図4】【図17】5【図26】【図40】【図41】【図44】【図46】5【図47】【図48】5 |