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関連審決 不服2002-22262
関連ワード 発明行為 /  インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  周知技術 /  技術分野の関連性 /  実施 /  構成要件 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 300号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁理士 澤田俊夫
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 辻本泰隆,佐藤伸夫,岡千代子,小曳満昭,山下弘綱,大橋 信彦
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/04
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-22262号事件について平成15年6月2日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告が出願人である本件特許出願(「メッセージ管理装置及び方法」,本件出願)は,平成12年10月16日の出願であって,平成14年10月17日付けで拒絶査定がされ,平成14年11月19日に拒絶査定に対する審判請求(不服2002-22262号)がされるとともに,同日付で手続補正(本件補正)がされたが,平成15年6月2日,審判請求は成り立たないとの審決があり,その謄本は同月11日原告に送達された。
2 補正発明(本件補正による請求項1に記載された発明。その余の請求項は省略)の要旨 【請求項1】 ユーザ装置により入力された,メッセージを表す,1又は複数の記号からなるメッセージ識別子を,ネットワークを介して受信する手段と,上記メッセージ識別子の受信に応答して,上記メッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段と,出力した上記メッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段とを有することを特徴とするメッセージ管理装置。
3 審決の理由の要点 (1) 本件補正 本件補正は,出願当初の明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであり,特許法17条の2第3項の規定に適合し,同条4項2号の特許請求の範囲減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(補正発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)-1 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された「訪問介護にiモード*ヘルパーのサービス管理*ジャパンケア」,北海道新聞朝刊全道,北海道新聞社,2000年4月11日,13頁(引用例)には,訪問介護を行っているヘルパーの訪問時間や介護サービスの内容などの記録を一括管理するシステムについて,次の事項が記載されている。
(a)「介護保険制度による訪問介護を行っているヘルパーに,NTTドコモグループのインターネット接続サービス「iモード」対応の携帯電話を持たせ,訪問時間や介護サービスの内容などの記録を本社で一括管理するシステムを導入した。」 (b)「携帯電話を持つのは,同社が道内,東北,関東の約百二十カ所に置いているヘルパーステーションから出勤するヘルパー。訪問先に到着した際,数字化された利用者の氏名のほか,「三十分間の身体介護」なら「111111」というように全国統一のコード番号でサービス項目など入力する。
(c)「ヘルパーの携帯電話からインターネット経由で送られた情報は,本社のサーバーと呼ばれるコンピュータに毎日蓄積される。これによって,毎月の介護報酬の請求やスタッフの賃金計算などを電子処理できるため「サービス内容や売り上げを即時に把握できる。」という。」 上記記載事項(b)からみて,ヘルパーが携帯電話に入力する情報は,介護サービス内容を表す,1又は複数の数字からなるコード番号であることは明らかである。
また,上記記載事項(a),(c)によれば,ヘルパーの携帯電話から,ネットワークの一種であるインターネットを介して送られた介護サービス内容の情報は,本社のサーバーに蓄積されることから,本社のサーバーは,携帯電話により入力された,介護サービス内容を表す,複数の数字からなるコード番号を,ネットワークを介して受信する手段を備えていることは明らかである。
さらに,上記記載事項(c)によれば,ヘルパーの携帯電話から送られたコード番号で表された情報が本社のサーバーに蓄積されることにより,サービス内容や売り上げを即時に把握できることから,ヘルパーの管理者等が介護サービス内容を即時に把握できるようにするために,サーバーは,コード番号を蓄積すると,対応する介護サービス内容を目視等により把握可能とする手段を実質的に有していることも明らかである。
したがって,上記(a)〜(c)の記載から,引用例には,「携帯電話により入力された,介護サービス内容を表す,1又は複数の数字からなるコード番号を,ネットワークを介して受信する手段と,上記コード番号の受信に基づいて,対応する介護サービス内容を把握可能とする手段とを有することを特徴とするサーバー。」が記載されていると認められる。
(1)-2 対比 補正発明と引用例に記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明の「携帯電話」は,利用者であるヘルパーが送信すべき情報を入力することに用いているから,補正発明の「ユーザ装置」に相当し,また,引用例記載の発明の「介護サービス内容」は携帯電話から入力されて本社に送信する一種のメッセージであり,「コード番号」は記号の一種である数字からなり,「介護サービス内容」を表す識別子として利用されることから,引用例記載の発明の「介護サービス内容」,「コード番号」は,補正発明の「メッセージ」,「メッセージ識別子」に相当する。
そして,補正発明のメッセージ管理装置において,メッセージ識別子を受信すると,対応するメッセージに変換して,ユーザが把握可能となるようにメッセージをユーザ装置に供給することから,補正発明と引用例記載の発明とは,メッセージ識別子の受信に基づいて,対応するメッセージを把握可能とする点で一致すると認められる。
よって,両者は「ユーザ装置により入力された,メッセージを表す,1又は複数の記号からなるメッセージ識別子を,ネットワークを介して受信する手段を有し,上記メッセージ識別子の受信に基づいて,対応するメッセージを把握可能とすることを特徴とするメッセージ管理装置。」である点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点] 補正発明は,メッセージ識別子の受信に応答して,該メッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段と,出力した該メッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段を有して,受信したメッセージ識別子に対応するメッセージを把握可能としているのに対して,引用例記載の発明は,コード番号の受信に基づいて,対応する介護サービス内容を把握可能とする手段を有するものの,その手段が機能を実現するための詳細な構成については特に記載がない点。
(1)-3 相違点についての判断 上記相違点について検討する。
補正発明では,メッセージ管理装置が,受信したメッセージ識別子に対応するメッセージを出力する手段を有しているが,例えばPOSシステムのように,1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムにおいて,ホスト装置がユーザ装置から入力された特定情報を表す識別子の受信に応答して,内部の変換テーブルを用いて該識別子に対応する特定情報の内容を変換出力し,変換出力した該特定情報の内容をネットワークを介してユーザ装置に供給して把握可能とすることは周知の技術手段である(必要とあれば,特開昭61-156470号公報,特開平10-208150号公報を参照のこと)。そして,この周知の技術手段を引用例記載の発明のコード番号の受信に基づいて,対応する介護サービス内容を把握可能とする手段として採用し,補正発明のようにすることは当業者が容易になし得たものであるから,上記相違点を格別のものとは認めることはできない。
そして,補正発明の作用効果も,引用例に記載された発明及び周知の技術手段から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって,補正発明は,引用例に記載された発明及び周知の技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(1)-4 補正の可否について 以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり,特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下されるべきものである。
(2) 補正前発明について 平成14年11月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,請求項1に係る補正前発明は,平成14年7月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「ユーザ装置により入力された,メッセージを表す,1又は複数の記号からなるメッセージ識別子を,ネットワークを介して受信する手段と,受信したメッセージ識別子に基づいてメッセージを出力する手段と,出力した上記メッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段とを有することを特徴とするメッセージ管理装置。」 (2)-1 引用例に記載された事項及び発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記(1)に記載したとおりである。
(2)-2 対比・判断 補正前発明は,前記(1)で検討した補正発明の「メッセージを出力する手段」の限定事項を「受信したメッセージ識別子に基づいて」としたものである。
そうすると,補正前発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,前記(1)に記載したとおり,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正前発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)-3 むすび 以上のとおり,補正前発明は,引用例に記載された発明及び周知の技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(補正発明に関する一致点の認定の誤り) (1) 補正発明がメッセージ(サービス利用者に対する報告,伝言等)を扱い,そのためにメッセージ識別子を用いるのに対し,引用例に記載された発明は,介護サービス内容を管理するために,その識別コードを用いてサーバーに入力するものであり,メッセージやメッセージ識別番号を扱うものではない。
(2) 補正発明における「メッセージ」の発信者は,例えば,介護スタッフ等のユーザであり,人間であって機械(コンピュータ)ではない。また,「メッセージ」の受領者は,例えば,出力メッセージを一時的に受け取る介護スタッフ等や,これを最終的に受領する被介護者の家族や引き継ぎ介護スタッフ等であり,これも人間であって機械ではない。また,発信者が発信した「メッセージ」の内容と受信者が受領した「メッセージ」の内容とが同一であるというメッセージの伝達の本質を具備する。
すなわち,補正発明における「メッセージ」は,人間であるユーザがメッセージ識別子をもって特定し,人間であるユーザ自体あるいは最終的なメッセージ受領者(同じく人間である。)を宛名人として予定しており,かつ,メッセージ識別子を入力して発信しようとするメッセージと,宛名人に受領されるメッセージとは1対1に対応したものである。
これに対し,引用例では,サービス項目を表すコード番号は,介護報酬の請求やスタッフの賃金計算のために入力されるものである。特定のメッセージ受領者が予定されて,この受領者に向けてメッセージを送るべくメッセージに対応するコード番号を入力するわけではない。また,引用例の「サービス内容や売り上げを即座に把握できる。」というのは,売り上げとの関係でサービス項目ごとの累計が把握できると解釈するのが妥当であって,コード番号により入力された「サービス項目」と,管理者等に把握可能とされる「サービス内容」とが1対1に対応して把握可能とされるものではない。
(3) よって,審決には,補正発明と引用例に記載された発明との間の一致点の認定に誤りがある。
2 取消事由2(補正発明に関する相違点の判断の誤り) (1) 審決が周知例に引用した特開昭61-156470号公報(甲第5号証),特開平10-208150号公報(甲第6号証)は,POSシステムに関するものであり,メッセージ管理技術とは関係がない。審決が周知の技術手段であるとする,「1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムにおいて,ホスト装置がユーザ装置から入力された特定情報を表す識別子の受信に応答して,内部の変換テーブルを用いて該識別子に対応する特定情報の内容を変換出力し,変換出力した該特定情報の内容をネットワークを介してユーザ装置に供給して把握可能とすること」は,報告や伝言を第三者に残すためのメッセージ管理技術の技術分野においては,周知ではない。
補正発明は,製品化以前のコンセプトに近いものであり,発明行為の時点では,コンピュータシステムネットワークやシステムエンジニアとは無関係であるから,甲第5号証や甲第6号証のPOSシステムとは,技術分野の関連性がない。
(2) 引用例に記載された発明と甲第5号証,甲第6号証のPOSシステムとを組み合わせることには困難性があるので,両者に基づいて補正発明が容易に発明をすることができたということもできない。
すなわち,引用例に記載された発明の効果は,毎月の介護報酬請求や賃金計算などを電子処理できるため「サービス内容や売り上げを即時に把握できる」というものである。要するに,訪問介護サービスの業務管理を電子化により容易に行なえるというものである。
これに対し,甲第5号証,甲第6号証のPOSシステムでは,POS端末はサーバー装置のテーブル(表)を参照するものであり,価格や商品名等の変更をPLU(price look up)に反映させるだけでよく,個々のPOS端末に対する変更作業が不要であるという効果がある。
このように,引用例のサーバーの構成・作用効果と甲第5号証,甲第6号証のPOSシステムの構成・作用効果とは基本的な構成が異なり,引用例のサーバーの構成と甲第5号証,甲第6号証のPOSシステムの構成とを組み合わせて補正発明を構成することは,木に竹を継ぐようなものであり,そのような組合せに合理的な動機付けは存在しない。
3 取消事由(補正発明に関する顕著な効果の看過) 補正発明の構成によれば,ユーザ装置でメッセージ識別子を利用して簡易にメッセージを出力しようとする際に,単に,メッセージ識別子をメッセージ管理装置に送信するだけで済む。ユーザ装置は,メッセージ識別子をメッセージに変換する機能を備えることなしに,メッセージ識別子の指定に接着したタイミングで,メッセージ識別子からメッセージを取得することができる。この結果,極めて簡単な構成で,しかもメッセージ識別子を入力するという簡単な操作でメッセージを取得しそれを確認等することができる。メッセージを書き慣れていない人も容易にメッセージの入力が可能になる。
さらに,メッセージ識別子をメッセージに変換する機能をメッセージ管理装置(サーバー装置)に配置するので,メッセージ識別子とメッセージとの対応関係を更新する際にも,単に,メッセージ管理装置の対応関係を更新するだけで済む。ユーザ装置が多数ある場合でも,ユーザ装置ごとに更新作業を行う必要がない。
引用例に記載された発明では,このような格別な効果は実現できない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(補正発明に関する一致点の認定の誤り)について (1) 引用例に記載された発明の「介護サービス内容」が補正発明のメッセージに相当するものであるかどうかは,一般的な「メッセージ」(伝言)の用語の意味だけでは必ずしも明らかではないので,明細書の記載に基づいて検討する。
補正後の本願明細書(甲第3,第4号証)には,「メッセージ」に関して,次のように記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,伝言等のメッセージを管理する技術に関する。
【0002】【背景の技術】在宅介護を行う場合,利用者に対して複数の介護スタッフ(ヘルパー,看護婦,入浴スタッフ等)が継続してサービスを提供することが多い。各スタッフのサービス時間が基本的に重複していないので,利用者の状態等を直接口頭で引き継ぐことが困難であり,連絡ノート等を用いて,次に訪問してくる介護スタッフや利用者の家族等に伝言を残すことが望ましい。
【0003】しかしながら,現実には,介護時間が短く,また,介護スタッフ自体も限られた時間内で忙しくサービスの提供を行っているため,確実かつ適切に伝言を残すことが困難となっている。また,すべての介護スタッフが文章を書くことに慣れていないことから,伝言を用いても,十分に内容を伝えることができない場合も多い。
【0004】さらに,伝言を介護事業者等に提供して効率よく介護が行われるようにすることも望まれる。
【0005】【発明が解決する課題】この発明は,以上の事情を考慮してなされたものであり,簡単に伝言等のメッセージを残すことができ,さらに,伝言等のメッセージを収集して管理できる技術を提供することを目的としている。」「【0012】【発明の実施の形態】以下,この発明の実施例について説明する。
【0013】[実施例1]まず,この発明の実施例1について説明する。図1は,この発明のメッセージ管理システムの実施例1を示している。この実施例のメッセージ管理システムは,ウェブベースでサービスを提供するものであり,サービスを提供するメッセージ管理センタ10,クライアント装置(携帯電話機20)及び各種ネットワークにより実現される。この実施例では,介護スタッフがウェブベースでメッセージ管理センタ10のサービスを利用して介護内容の基本項目(図14),業務報告メッセージ(図20),伝言メッセージを作成する。この例では,「基本項目」は,介護スタッフ,利用者,時間等の介護の基本的な項目を指す。
「業務報告メッセージ」は介護の内容の詳細を記載するものである。また,「伝言メッセージ」は業務報告メッセージ以外の引継ぎ事項等を記載するものである。もちろん,これらメッセージの呼び方はこれに限らず種々採用できる。」「【0050】なお,この発明は上述の実施例に限定されるものではなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば,上述実施例では介護に関するメッセージの管理について説明したが,その他,種々のメッセージに用いることができる。たとえば,家族の間の伝言に用いることもできるし,オフィスにおける伝言にも用いることができる。」 以上の記載によれば,補正発明の「メッセージ」は,例えば,在宅看護における介護スタッフから他の介護スタッフ,利用者の家族あるいは介護事業者への伝言あるいは報告,その他,在宅介護にかかわらず,家族間の伝言,オフィスにおける伝言等の種々のメッセージであり,識別子を用いて伝達されるものであるということができる。
一方,引用例(甲第2号証)には,前記審決の理由の要点中(1)-1の(a)〜(c)の記載がある。
上記記載において,ヘルパーが補正発明の介護スタッフに相当し,本社が補正発明の介護事業者に相当するのは明らかであり,介護サービス内容は,ヘルパーからコード番号を用いて本社である介護事業者に伝達され,本社では記録として一括管理され,毎月の介護報酬の請求やスタッフの賃金計算などに利用されるものである。そうすると,引用例に記載された発明の「介護サービス内容」は,介護スタッフから介護事業者への報告に相当するものとして,本願明細書に記載の「業務報告メッセージ」に相当するものと認めることができる。
(2) 原告は,本件の「メッセージ」は人間である発信者から人間である受領者へ伝達されるものであると主張するが,引用例の介護サービス内容は,本社において記録として一括管理され,管理された情報は広く利用することができるのであるから,累計されて毎月の介護報酬の請求やスタッフの賃金計算などに電子処理されるだけでなく,管理者への報告更にはヘルパー(介護スタッフ)への送信内容として個別に扱われることも想定されていると認められる。このように,引用例に記載された発明において,コード番号で伝達されるサービス内容はメッセージに相当するものであって,コード番号を送信したヘルパーあるいは別のヘルパーが,送信されたコード番号に対応するサービス内容を出力することは,引用例の記載においても想定していることと認められる。すなわち,ヘルパーが報告するサービス内容は,毎月の介護報酬の請求やスタッフの賃金計算を処理するために用いられるのであるから,報告したヘルパーや,介護を受けた利用者あるいはその家族が,その内容について確認する必要があることは,当然に想定しているところである。
この場合には,発信者から人間である受領者へ伝達されることになるので,原告主張の点が,補正発明と引用例記載の発明との間の相違点となるものではない。
原告は,発信者が発信した内容と受信者が受領した内容とが同一で1対1に対応したものであると主張するが,引用例のサービス内容も,ヘルパーの携帯電話から送られる情報と本社のサーバーに蓄積される情報は同一で,上記のようにヘルパーなどの受信者に送信された情報についてみると,発信者が発信した内容と受信者が受領した内容が同一で1対1に対応したものとなっているものと認められるから,原告の主張には理由がない。
(3) したがって,引用例に記載された発明の「介護サービス内容」がメッセージに相当するとした審決に誤りはない。
2 取消事由2(補正発明に関する相違点の判断の誤り)について (1) 原告は,審決が相違点の判断で引用した周知技術が,POSシステムに関するものであり,メッセージ管理技術とは関係がないと主張する。補正発明と引用例に記載された発明の相違点である,「メッセージ識別子の受信に応答して,該メッセージを出力する手段と,出力したメッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段を有する」点について,補正後の本願明細書(甲第3,第4号証)には,次のように記載されている。
「【0008】・・・ユーザ装置に供給されたメッセージは印刷装置により印刷されたり,伝言表示装置に表示されたりする。メッセージを印刷した場合には印刷物を伝言メモとして残すことができる。」「【0030】さらに,メッセージ入力ウェブページ100a3(図15)を用いて業務報告メッセージのメッセージ番号が入力される(図16)。このメッセージ番号は,ウェブサーバー100を介してアプリケーションサーバー101のメッセージ変換部101aに送られ,メッセージ変換部101aがメッセージ変換テーブル103aを参照して対応するメッセージを出力する。このメッセージを含むメッセージ確認ウェブページ100a4(図17)が携帯電話機20に送られる。メッセージ番号の入力及びメッセージ内容の確認はメッセージごとに行ってもよいし,複数のメッセージ番号を一括して入力し,そのメッセージ内容を一括して確認するようにしてもよい。入力したメッセージ番号は,メッセージ番号を指定して変更削除加入することができる。」「【0035】・・・<ステップS16>:業務報告メッセージの入力ステージに移る。まず,ウェブサーバー100がメッセージ入力ウェブページ100a3を携帯電話機20に送る。
<ステップS17>:介護スタッフが携帯電話機20を用いてメッセージ番号を入力する。メッセージ番号がウェブサーバー100を介してアプリケーションサーバー101のメッセージ変換部101aに送られる。
<ステップS18>:メッセージ変換部101aがメッセージ変換テーブル103aを参照してメッセージ内容を取り出し,メッセージ確認ウェブページ100a4を生成する。
<ステップS19>:ウェブサーバー100がメッセージ確認ウェブページ100a4を携帯電話機20に送る。
<ステップS20>:介護スタッフが携帯電話機20の表示部202の表示内容を確認し,修正がある場合には修正指示を入力してステップS18に戻り,修正がない場合には確認指示を入力してステップS21へ進む。ここで業務報告のメッセージ入力が終了する。
<ステップS21>:業務報告のメッセージ入力・確認(ステップS16〜S20)と同様の手順で伝言のメッセージ入力・確認が行われる。
<ステップS22>:アプリケーションサーバー101が一時記憶部101cに記憶されている基本項目及びメッセージ番号から介護情報(レコード)を生成して介護レコードデータベース103eに登録する。
<ステップS23>:介護スタッフのプリント操作に応じて携帯型プリンタ30を用いて介護内容を印刷する。この印刷内容は例えば図21に示すようなものである。」 以上によれば,補正発明のメッセージ管理装置が,「メッセージ識別子の受信に応答して,該メッセージを出力する手段と,出力したメッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給する手段を有する」ようにしたのは,介護スタッフが識別子を用いて作成したメッセージを確認するためであり,あるいは,伝言として残すためであるといえる。
そして,引用例に記載された発明において,コード番号を送信したヘルパーあるいは別のヘルパーが,送信されたコード番号に対応するサービス内容を出力することは,引用例記載の発明においても当然想定していることは,前記説示のとおりである。
(2) 審決は,相違点の判断において,「例えば,POSシステムのように,1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムにおいて,ホスト装置がユーザ装置から入力された特定情報を表す識別子の受信に応答して,内部の変換テーブルを用いて該識別子に対する特定情報の内容を変換出力し,変換出力した該特定情報の内容をネットワークを介してユーザ装置に供給して把握可能とすることは周知の技術手段である」と判断した。
補正発明において,メッセージ管理装置が出力したメッセージをネットワークを介してユーザ装置に供給するのは,本願明細書の上記記載によれば,メッセージ変換部及びメッセージ変換テーブルが管理装置側に設けられていることによると考えられる。審決で引用された特開昭61-156470号公報(甲第5号証)や特開平10-208150号公報(甲第6号証)に記載されている技術は,商品コードを商品名や価格データに変換する変換テーブル(プライス・ルック・アップ・テーブル)に関するものであり,該変換テーブルをホスト装置に設けることによりテーブルの管理・保守を簡素化する技術である。これらは,POSシステムに関するものではあるが,変換テーブル自体はデータ処理一般に用いられるものであり,1又は複数のユーザ装置がネットワークを介してホスト装置に接続されたシステムがPOSシステムに限られるものでないことは,明らかである。
審決の上記判断に誤りはない。
(3) 原告は,審決が認定した周知技術はメッセージ管理技術においては周知でないと主張するが,引用例に記載された発明や,補正発明のメッセージ管理装置においては,複数のユーザ装置はネットワークを介してメッセージ管理装置に接続されるものであり,識別子というデータを扱うものであるから,相違点に関する構成において,審決認定の周知技術が適用され得ないと認めることはできない。
(4) 以上のとおりであり,取消事由2も理由がない。
3 取消事由3(補正発明に関する顕著な効果の看過)について 原告は,補正発明の構成によれば,ユーザ装置がメッセージ識別子をメッセージに変換する機能を備えることなしに,単にメッセージ(識別子)をメッセージ管理装置に送信するだけでメッセージを作成することができ,また,変換機能をメッセージ管理装置に配置するので,メッセージ識別子とメッセージとの対応関係を更新する際も,単にメッセージ管理装置に対応関係を更新するだけで済むという格別な効果があると主張する。
しかしながら,原告主張の効果は,コード番号を用いてサービス内容を報告する引用例記載の発明や,変換テーブルをサーバー側に配置する周知技術に内在する効果にすぎないと認められるのであって,格別なものということはできない。
取消事由3も理由がない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
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