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関連審決 不服2020-16608
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事件 令和 4年 (行ケ) 10131号 審決取消請求事件
5
原告X
同訴訟代理人弁理士 市川ルミ 10 一角哲也 辻政宏
被告特許庁長官
同 指定代理人須原宏光 15 山本章裕 平瀬知明 篠原功一 森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/11/15
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 20 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
25 第1 請求 特許庁が不服2020-16608号事件について令和4年8月9日にした審 1 決を取り消す。
第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は、平成28年(2016年)9月30日を国際出願日とする特許出願 5 (特願2018-513846、以下「本願」という。甲5)をした。
(2) 原告は、令和元年8月28日付け(甲8)及び令和2年2月10日付け(甲 11)各手続補正書によりいずれも特許請求の範囲を補正したが、本願につき、同 年7月29日付け拒絶査定(甲13)を受けたので、同年12月2日、拒絶査定不 服審判(不服2020-16608)を請求するとともに特許請求の範囲を補正し10 た(甲14、15)。
その後、原告は、令和3年11月29日付け(甲19)及び令和4年4月14日 付け(甲22)各手続補正書によりいずれも特許請求の範囲を補正した(令和4年 4月14日付け手続補正書による補正後の請求項の数は9。以下、同手続補正書に より補正された特許請求の範囲の請求項1の記載により特定される本願の請求項115 に係る発明を「本願発明」という。また、本願に係る明細書及び図面を併せて「本 願明細書」という。) (3) 特許庁は、令和4年8月9日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする 審決(以下「本件審決」という。本件審決は別紙審決書(写し)のとおりである。) をし、その謄本は、同年8月23日、原告に送達された。
20 (4) 原告は、令和4年12月19日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 本願発明に係る請求項1の記載は、次のとおりである(甲22。分説記号は当裁 判所が付したものであり、これらの各分説について「構成A」 構成B」 「 などという。 。
)25 【請求項1】 A:熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物を含み、前記熱伝導性ワイヤの直径 2 dは、0.01mm≦d≦2mmであり、
B:前記熱伝導性編物は金属枠を含み、前記熱伝導性編物の金属枠が鋳造又は溶 接により形成され、
C:放熱又は吸熱を必要とするデバイスは溶接、熱伝導性接着又は鋳込により前 5 記熱伝導性編物の金属枠に接続され、
D:かつ、前記デバイスと熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に 伝導することを保証し、
E:熱が熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイヤの表面によ り空気又は他の流体を加熱又は冷却し、対流により放熱又は吸熱を実現し、
10 F:放熱を必要とする前記デバイスにより生成された熱を、最短の距離で最大の 放熱面に迅速に伝導することができ、
G:熱交換の他方の面、つまり吸熱も全く同様であることを特徴とする H:熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置。
3 本件審決の理由15 (1) 理由の要旨 本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりである。その理由の要旨は、
本願発明は、甲1に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基 づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規 定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものであ20 る、というものである。
(2) 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点) 熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物を含み、前記熱伝導性ワイヤの直径dは、
25 0.01mm≦d≦2mmであり、
前記熱伝導性編物は形状保持部材を含み、
3 放熱又は吸熱を必要とするデバイスは前記熱伝導性編物の形状保持部材に接続さ れ、
かつ、前記デバイスと熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝導 することを保証し、熱が熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイ 5 ヤの表面により空気又は他の流体を加熱又は冷却し、対流により放熱又は吸熱を実 現し、放熱を必要とする前記デバイスにより生成された熱を、最短の距離で最大の 放熱面に迅速に伝導することができ、熱交換の他方の面、つまり吸熱も全く同様で ある熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置。
(相違点1)10 形状保持部材が、本願発明は「金属枠」であり、
「金属枠が鋳造又は溶接により形 成され」ているのに対して、引用発明の「固定部材11」は、可撓導体線の輪の中 央部を挟むものであるが、材質や形成方法などが特定されてない点。
(相違点2) 本願発明は「放熱又は吸熱を必要とするデバイスは、溶接、熱伝導性接着又は鋳15 込により前記熱伝導性編物の金属枠に接続され」ているの対して、引用発明は「L ED基板7とLEDチップ8を有」する「ヒートパイプ4」は「ヒートシンク5中 央部を貫く連結部材10とそれを固定する固定部材11でヒートシンク5に固定さ れ」る点。
(3) 容易想到性の判断20 ア 相違点1について 引用発明の「固定部材11」は、ヒートパイプ4を可撓導体6に熱的に接続する ものであり熱伝導性が求められるから、熱伝導性に優れた金属製の枠を選択するこ とは、適宜なし得る設計的事項にすぎない。そして、金属枠を鋳造又は溶接により 形成することは一般的なことである。
25 金属枠である「固定部材11」を鋳造又は溶接により形成する際に、
「固定部材1 1」と「可撓導体6」を鋳造又は溶接により一体的にすることは、適宜なし得るこ 4 とである。
イ 相違点2について 上記アのとおり、引用発明の「固定部材11」を金属枠で形成することは適宜な し得ることである。そして、放熱を必要とするデバイスを、ヒートシンクに、溶接、
5 熱伝導性接着又は鋳込を用いて、接続することは周知技術である。
(4) 小括 以上によると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発 明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けるこ とができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
10 第3 当事者の主張 1 取消事由1(相違点の認定の誤り) (1) 原告の主張 ア 取消事由1-1(構成Bにおける相違点の認定の誤り) (ア) 「枠」とは、大辞泉において「物の周囲をふちどる線。また、境などを示す15 ため、四方を取り囲むもの。」と定義されており、本願発明の「熱伝導性編物の金属 枠」は、熱伝導性編物の周囲をふちどって、熱伝導性編物を一定の形状構造に保持 するものであるのに対し、引用発明の固定部材11は、可撓導体6の一部を単に挟 むだけであり、ヒートシンクの周囲をふちどって、ヒートシンクを一定の形状構造 に保持するものではなく、物の周りをふちどったり、物の境界を示したりする「枠」20 ではない。
(イ) 本願発明において、熱伝導性編物は金属枠を含み、前記熱伝導性編物の金属 枠が鋳造又は溶接により形成される点が限定されており、金属枠は、熱伝導性編物 からなるものであり、熱伝導性編物において、鋳造又は溶接することにより形成さ れるものであって、金属枠と熱伝導性編物とは別々の部材ではなく、金属枠も熱伝25 導性編物であるのに対し、引用発明では、固定部材11は、可撓導体6とは別に設 けられる部材であり、可撓導体6自身からなる部材ではない。このため、固定部材 5 11を可撓導体6の輪の中央部を挟んだとしても、可撓導体6自体の更なる加工や 使用が便利になることはない。
(ウ) したがって、構成Bに関し、上記の(ア)(イ)の点を看過して相違点1を認定し た本件審決は誤りである。
5 イ 取消事由1-2(構成Cにおける相違点の認定の誤り) (ア) 本願発明では、
「放熱を必要とする前記デバイスにより生成された熱」と特定 されており、放熱を必要とするデバイスは、熱を生成するデバイスであるのに対し、
引用発明において、熱を生成する部材は「LEDチップ8」であり、
「LED基板7」 や「ヒートパイプ4」は、熱を生成する部材ではない。
10 (イ) 本願発明では、
「デバイスは、溶接、熱伝導性接着又は鋳込により金属枠に接 続されている」と限定されており、この場合、二つの接続対象である「デバイス」 と「金属枠」の間に、溶接、熱伝導性接着又は鋳込の接続に使用される接着剤等の 物質を除き、他の構成が存在しないと解釈するのが自然であり、デバイスと金属枠 とが他の構成を介して接続する構成については排除されていると解釈するのが相当15 である。
(ウ) したがって、構成Cに関し、上記(ア)(イ)の点を看過して相違点2を認定した 本件審決は誤りである。
ウ 取消事由1-3(構成Dにおける相違点の認定の誤り) 本願発明では、
「前記熱伝導性編物は金属枠を含み、前記熱伝導性編物の金属枠が20 鋳造又は溶接により形成され、放熱又は吸熱を必要とするデバイスは溶接、熱伝導 性接着又は鋳込により前記熱伝導性編物の金属枠に接続され、かつ、前記デバイス と熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝導することを保証する」 ことが明確に示されている。これに対し、引用発明は、LEDチップ8とヒートシ ンク5の間にヒートパイプ4及びLED基板7があり、デバイスと可撓導体6との25 間に複数の部材が存在しているから、
「熱を効果的に伝導することを保証し」たもの ではない。
6 したがって、構成Dに関し、上記の相違点を看過した本件審決は誤りである。
エ 取消事由1-4(構成Eにおける相違点の認定の誤り) 本願発明では、
「対流により放熱又は吸熱を実現する」点により、ファンで強制換 気するか、又は空気が熱により膨張して軽くなって上昇する特徴等を利用し、通路 5 を構成し、空気を自動的に流動させるという対流放熱が実現する条件を保証するこ とが示されているのに対し、甲1のヘッドライトバルブユニットでは、ヘッドライ トバルブユニットを収めるヘッドライトランプハウジングが狭い空間である等、こ れらの条件を明らかに備えず、本願発明と比べて、正常に対流放熱を実現すること ができないから、引用発明は構成Eを備えていない。
10 したがって、構成Eに関し、上記の相違点を看過した本件審決は誤りである。
オ 取消事由1-5(構成Fにおける相違点の認定の誤り) 本願発明には、
「熱が熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイヤ の表面により空気又は他の流体を加熱又は冷却し、放熱を必要とする前記デバイス により生成された熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導することができる」15 点が明確に示されている。また、本願発明には「熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導 性編物を含み、前記熱伝導性ワイヤの直径dは、 01mm≦d≦2mmである」 0. 点が規定されており、可能な限り細い熱伝導性材料ワイヤを使用しても、
「放熱を必 要とする前記デバイスにより生成された熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に 伝導することができる」。
20 これに対し、上記ウのとおり、引用発明にはデバイスと可撓導体6との間に複数 の部材が存在しているから、引用発明は本願発明と比べて「放熱を必要とする前記 デバイスにより生成された熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導する」こ とができない。
したがって、上記の相違点を看過した本件審決は誤りである。
25 カ 小括 以上のとおり、本件審決は、本願発明と引用発明との対比において相違点の認定 7 の判断に誤りがあり、この誤りは、本件審決の結論に影響を及ぼすものであるから、
本件審決は取り消されるべきである。
(2) 被告の主張 ア 取消事由1-1(構成Bにおける相違点の認定の誤り) 5 特許請求の範囲及び本願明細書の記載(【0025】等)に照らせば、「金属枠」 とは、@熱伝導性編物を一定の形状構造に保持し、A放熱を必要とするデバイスか らの熱を熱伝導性ワイヤに伝導する、という二つの機能に係る条件を満たす「金属 製」の部材を意味するものと解するのが相当である。
そうすると、引用発明の固定部材11は、リボン形状を成すように、可撓導体610 の輪の中央部を挟むものであるから、前記@の条件を満たすものであり、また、中 央部を挟むことで効果的な放熱を可能としたものであるから(甲1の【0022】 、
) 前記Aの条件を満たすことも明らかである。したがって、引用発明の固定部材11 は、金属の選択という材質の設計変更を施せば、本願発明の「金属枠」に相当する ものであるといえる。
15 本願発明において「枠」という形状に格別な意義はなく、本願発明と機能的に同 じである「固定部材11」は「枠」とみなすことができる。
イ 取消事由1-2(構成Cにおける相違点の認定の誤り) 「発熱部を有するヒートパイプ4」は、発熱部であるLEDチップ8からの熱を 「放熱機能を持つヒートシンク5」に伝達して放熱をしている。したがって、
「発熱20 部を有するヒートパイプ4」は、放熱を必要とするデバイスである。
本願発明は「放熱又は吸熱を必要とするデバイスは溶接、熱伝導性接着又は鋳込 により前記熱伝導性編物の金属枠に接続され」ているが、
「放熱又は吸熱を必要とす るデバイス」が直接「金属枠」に接続しているとは特定されていない。そうすると、
本願発明には、
「放熱又は吸熱を必要とするデバイス」が「金属枠」との間に、他の25 部品を挟んで接続する態様もその部品が熱伝導性である限り含まれている。
ウ 取消事由1-3(構成Dにおける相違点の認定の誤り) 8 本願発明に係る請求項1と本願明細書の【0026】の記載に照らすと、構成D の「前記デバイスと熱伝導性編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝導する ことを保証し」は、
「熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物を含み」「前記熱伝導 、
性編物は金属枠を含み」 「放熱又は吸熱を必要とするデバイスは溶接、熱伝導性接 、
5 着又は鋳込により前記熱伝導性編物の金属枠に接続され」と特定された熱交換装置 が持つ機能を表現した文言であると捉えるのが適当である。つまり、デバイスで発 生した熱を金属枠を介して熱伝導性編物に伝導すれば実現できる事項である。
そして、構成Dは、デバイスで発生した熱を金属枠を介して熱伝導性編物に伝導 すれば実現できる本願発明の機能を示したものであるところ、引用発明も「発熱部10 を有するヒートパイプ4」と「可撓導体6」の「銅線」との間で熱を効果的に伝導 することを保証する機能がある。
したがって、構成Dに係る相違点の認定に誤りはない。
エ 取消事由1-4(構成Eにおける相違点の認定の誤り) ヘッドライトハウジング内でも対流放熱が起こることは明らかであり、また、引15 用発明は「固定部材11」により可撓導体6の形状構造を、対流放熱が実現可能な 形状構造に保持しているといえる。
したがって、構成Eに係る相違点の認定に誤りはない。
オ 取消事由1-5(構成Fにおける相違点の認定の誤り) 本願発明の構成Fの「放熱を必要とする・・・伝導することができ」は、デバイ20 スで生成された熱が、金属枠から最大の放熱面である熱伝導性編物の熱伝導性ワイ ヤに伝導することを示しているにすぎず、熱を受け取った編物状シートから他の部 分に熱が伝導するのは明らかである。そして、引用発明は銅線の直径が具体的に示 されており、隙間の充?については本願発明でも特定されていない。
そうすると、本願発明と引用発明とは、放熱を必要とするデバイスからの熱が、
25 熱伝導性編物の形状を保持する部材を経て、最大の放熱面である熱伝導性編物に伝 導することで共通しており、引用発明においても、放熱を必要とするデバイス(ヒー 9 トパイプ4)により生成された熱を、最短の距離で最大の放熱面(可撓性導体6) に迅速に伝導することができる点で相違しない。
2 取消事由2(相違点の容易想到性の判断の誤り) (1) 原告の主張 5 ア 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り) 本願発明では、熱伝導性編物が「金属枠」を含むことで、熱伝導性編物を様々な 形状に加工することができるのに対し、引用発明は可撓導体6の形状がリボン形状 と限定されており、固定部材11は、輪にした可撓導体6の中央部を挟んでリボン 形状になすための部材である以上、固定部材11を可撓導体6の輪の中央部以外の10 周りの部分をふちどるようにする動機付けがない。すなわち、甲1には、可撓導体 6の形状がリボン形状と限定されているにもかかわらず、「固定部材11」として 「金属枠」を選択する動機付けがない上、リボン形状の可撓導体6に対して更なる 加工と使用は想定していないにもかかわらず、
「固定部材11」として「金属枠」を 選択するのは、リボン形状が別の形状に加工される可能性があるため、阻害要因が15 ある。したがって、引用発明において、
「固定部材11」として金属製の「枠」を選 択することは、当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、引用発明において、
「固定部材11」として熱伝導性に優れた金属製 の枠を選択することは、適宜なし得る設計的事項と判断した本件審決は誤りである。
イ 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り)20 自動二輪車交換用ヘッドライトバルブユニットに関する引用発明において、連結 部材は、
「ヒートパイプ4」と「固定部材11」との間の熱伝導効率を高めるととも に、ヘッドライトバルブユニットの故障を抑制する上で非常に重要な部材であるた め、この連結部材の機能及び作用を犠牲(ヒートパイプを使用する意義を失う可能 性もある)にしてまで、
「ヒートパイプ4」と「固定部材11」とを溶接、熱伝導性25 接着又は鋳込により接続する動機付けが、引用発明や周知技術にはない。このため、
引用発明において、
「ヒートパイプ4」と「固定部材11」とを溶接、熱伝導性接着 10 又は鋳込により接続することは、当業者が容易になし得ることではない。
ウ 取消事由2-3(予測できない顕著な効果) 本願発明は、厳格な数学理論の導出及び大量の実験データの重複な証明によって 導き出されたものであり、本願発明では、放熱部の温度上昇は数十分の1、数百分 5 の1に圧縮することができ、引用発明や従来技術では解決することができなかった 大パワーLEDのようなデバイスのボトルネック問題である放熱問題が完璧に解決 されるものであるから、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される以 上の格別顕著な効果を奏する。
エ 小括10 以上のとおり、本件審決は、相違点の容易想到性の判断に誤りがあり、この誤り は、本件審決の結論に影響を及ぼすものであるから、本件審決は取り消されるべき である。
(2) 被告の主張 ア 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り)15 引用発明において、放熱が求められるヒートシンク5の構成の一部である「固定 部材11」に、熱伝導性に優れた金属製の部材を用いることは普通のことであり、
「固定部材11」は「可撓導体6」を挟んでリボン状にする必要があるので、金属 製の部材を用いることは、当業者が適宜なし得ることであるといえる。
そうすると、引用発明において「固定部材11」を金属製の部材としたものは、
20 本願発明の「金属枠」と同等な機能を持っているので、
「金属枠」に相当するもので ある。
イ 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り) 引用発明の「固定部材11」を金属枠で形成したものにおいて、
「ヒートパイプ4」 と「固定部材11」とを熱伝導性接着等の周知技術を用いて接続することは、当業25 者が容易になし得たことであると判断した本件審決に誤りはない。
ウ 取消事由2-3(予測できない顕著な効果) 11 本願明細書には厳格な数学理論の導出は記載されていない。また、本願明細書に おけるLEDチップの温度上昇を確認した実施例は1及び2のみであり、大量の実 験データが記載されているわけではない。引用発明について、設計変更を施すとと もに、周知技術を組み合わせるならば、変更後の引用発明は、本願発明の熱交換装 5 置の作用、機能についてもおのずから奏することになるから、本願発明は、引用発 明及び周知技術の奏する作用効果から予測される以上の格別顕著な効果を奏すると はいえない。
第4 当裁判所の判断 1 本願発明について10 (1) 本願明細書(甲5)の記載 本願明細書には次の記載がある(下記記載中に引用する図については別紙のとお りである。 。
) 【技術分野】 【0001】15 本発明は、熱伝導の分野に属し、具体的には熱交換装置に関する。
【背景技術】 【0002】 いわゆる放熱とは、常に熱を最終的には空気に放熱することをいう。対流も熱放 射も物体の放熱面積に関係する。発熱デバイスのパワーの増加に伴い、放熱器の放20 熱面積を増加させるために、現在の放熱器は、ますます大きく、重くなっているが、
効果がわずかである。特に、放熱面が増加するにつれて、発熱素子から放熱面まで の距離も大幅に増加し、この距離での熱の伝導に必要な温度差も大幅に増加する。
発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】25 【0003】 これにより、大パワーLEDチップのようなデバイスの放熱が行き詰まっており、
12 現在、LED照明の迅速な発展を阻害する重大な要因になっている。
【0004】 熱交換の他方の面、つまり吸熱も全く同様である。
【課題を解決するための手段】 5 【0005】 上記問題を効果的に解決するために、本発明は、熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱 交換装置を提供する。具体的な技術的解決手段は、次のとおりである。
【0006】 熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置は、熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導編10 物を含み、前記熱伝導性ワイヤの直径dは、0.01mm≦d≦2mmであり、前 記熱伝導性編物は、溶接、熱伝導性接着又は鋳込により接続された発熱物又は吸熱 物を有する。
【0007】 さらに、前記編物全体は、圧力鋳造又は溶接により形成された金属枠を含む。
15 【0018】 いわゆる放熱とは、常に熱を最終的には空気に放熱することをいう。対流も放熱 も物体の放熱面積に関連する。一本の銅ポストと一束の同一体積の銅線は、その面 積が数十倍から数百倍まで差がある。したがって、発熱デバイスにより生成された 熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導して、放熱を効果的に実現すること20 ができる。乱雑な熱伝導性ワイヤの使用と加工が困難であることを考慮すると、熱 伝導性ワイヤを必要に応じて編物に編み、特に金属枠を有する場合に、更なる加工 と使用が便利になり、可能になっている。
【0020】 本発明では、熱交換装置を一般的な大型で重いアルミニウムプロファイルから少25 量の金属ワイヤの編物に変更することにより、熱交換装置の重量と体積を大幅に減 少させることができる。熱交換装置に対して、これは根本的な改革である。例えば、
13 LEDの放熱に用いられる場合、放熱器の重量と体積は、少なくとも90%以上減 少させることにより、LEDの迅速な発展を常に制限する放熱の問題を根本的に解 決することができる。
【図面の簡単な説明】 5 【0022】 【図1】銅線編物での圧力鋳造金属枠とLEDチップである。
【図2】パワー80ワットのLEDランプの構造である。
【図3】パワー40ワットのLEDランプの構造である。
【0024】10 本発明は、熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物1を含み、前記熱伝導性ワイ ヤの直径は0.01ミリメートルよりも大きく、2ミリメートルよりも小さいこと を特徴とする熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置を提供することを目的とする。
前記熱伝導性編物1は、溶接、熱伝導性接着剤の接着、鋳込等の方法で発熱物又は 吸熱物に固定され、かつ、前記発熱物又は吸熱物と熱伝導性編物1の熱伝導性ワイ15 ヤとの間で熱を効果的に伝導することを保証し、熱が熱伝導性編物1の熱伝導性ワ イヤで伝導され、熱伝導性ワイヤの表面により空気又は他の流体を加熱又は冷却し、
対流により放熱又は吸熱を実現する。
【0025】 本発明に係る前記熱伝導性編物1には、鋳込又は溶接等の方法で、一定の形状構20 造を保持して他の加工を容易にする金属枠4を形成する。
【0026】 本発明に係る熱交換装置は、放熱又は吸熱を必要とするデバイスが溶接、熱伝導 性接着等の方法で編物又はその金属枠に固定され、かつ、前記放熱又は吸熱を必要 とするデバイスと編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝導することを保証25 し、熱が編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイヤの表面により空気又は 他の流体を加熱又は冷却し、対流熱交換により、最終的に前記放熱又は吸熱を必要 14 とするデバイスに対する放熱又は吸熱を実現することを特徴とする。
【0027】 本発明に係る熱交換装置は、前記熱伝導性ワイヤ編物が独立して又は他の材料と 共に袋型構造を構成し、ファンが袋の開口部に取り付けられ、ファンが空気を袋に 5 送り込んで、編物の隙間から吹き出すことにより、編物の熱伝導性ワイヤの放熱面 が大量の空気を加熱又は冷却し、効果的な放熱又は吸熱を実現することを特徴とす る。
【0029】 本発明に係る熱交換装置は、前記編物が溶接、熱伝導性接着、鋳込等の方法で熱10 交換を必要とする管路外の管路壁に固定され、管路壁が熱伝導性材料から構成され、
編物の金属枠が管路壁の一部となるか、又は管路壁の熱伝導性材料と緊密に接触し て、前記熱交換を必要とする管路と編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝 導することを保証し、熱が編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイヤの表 面によりそれと接触する空気又は他の流体を加熱又は冷却し、対流により熱交換を15 実現し、最終的に管路壁と管路外の空気又は他の流体との間の熱交換を実現するこ とを特徴とする。
【0030】 本発明に係る熱交換装置は、前記熱伝導性ワイヤ編物が空気又は他の流体が流れ る管路内の管路壁に固定され、管路壁が熱伝導性材料から構成され、編物の金属枠20 が管路壁の一部となるか、又は管路壁の熱伝導性材料と緊密に接触して、前記熱交 換を必要とする管路と編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に伝導することを 保証し、熱が編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、熱伝導性ワイヤの表面によりそれ と接触する空気又は他の流体を加熱又は冷却し、対流により熱交換を実現し、最終 的に管路壁と管路内の空気又は他の流体との間の熱交換を実現することを特徴とす25 る。
【0031】 15 本発明に係る熱交換装置は、前記熱伝導性ワイヤ編物がそれぞれ空気又は他の流 体が流れる管路内壁と管路外壁に固定され、管路壁が熱伝導性材料から構成され、
管路内と管路外には、編物が管路壁の熱伝導性材料と緊密に接触するか又は管路壁 の一部となる金属枠を有して、管路と編物の熱伝導性ワイヤとの間で熱を効果的に 5 伝導することを保証し、熱が管路壁と両側の編物の熱伝導性ワイヤで伝導され、管 路壁の内外には、両側の編物が熱伝導性ワイヤの表面によりそれと接触する空気又 は他の流体を加熱又は冷却し、対流によりそれと接触する空気又は他の流体との熱 交換を実現し、最終的に管路壁により伝導されて、管路内外の空気又は他の流体と の間の熱交換を実現することを特徴とする。
10 【0033】 本発明に係る熱交換装置は、前記熱伝導性ワイヤ編物がそれぞれ二つの管路の管 路内壁に固定され、二つの管路壁が熱伝導性材料から構成され、一体的に接続され るか又は緊密に接触し、両側の編物の金属枠がいずれも管路壁の熱伝導性材料と緊 密に接触するか、又は管路壁の一部となることにより、管路と編物の熱伝導性ワイ15 ヤとの間で熱を効果的に伝導することを保証し、熱が管路壁と両側の編物の熱伝導 性ワイヤで伝導され、二つの管路壁内には、各々の編物が熱伝導性ワイヤの表面に よりそれと接触する空気又は他の流体を加熱又は冷却し、対流によりそれと接触す る空気又は他の流体との熱交換を実現し、最終的に管路壁により伝導されて、二つ の管路内の空気又は他の流体の間の熱交換を実現することを特徴とする。
20 【0036】 <実施例1>パワー80ワットのLEDランプ 銅で編まれた一部の熱伝導性編物1において、圧力鋳造法で金属枠4を形成して、
円筒を得る。円筒の一端が編みテープ又は他の材料で密封され、他端がファン3に 接続されている。LEDチップ2は熱伝導性接着剤で金属枠4に接着されている。
25 ファン3とLEDチップ2をワイヤで接続して、パワー80ワットのLEDランプ を得る。
16 【0037】 このLEDランプの長さと幅と高さの最大寸法は100(ミリメートル)×40 (ミリメートル)×40(ミリメートル)である。(図2参照) 【0038】 5 安定動作時にLEDチップの放熱面(裏面)の温度上昇は25℃〜28℃である。
【0039】 <実施例2>40ワットのLEDランプ 銅で編まれた一部の熱伝導性編物1において、圧力鋳造法で金属枠4を形成して、
円錐台筒を得る。円錐台筒の一端が編みテープで密封され、他端がファン3に接続10 されている。LEDチップ2は熱伝導性接着剤で金属枠4に接着されている。ファ ン3とLEDチップ2をワイヤで接続して、パワー40ワットのLEDランプを得 る。
【0040】 このLEDランプの構造を図3に示す。
15 【0041】 安定動作時にLEDチップの放熱面(裏面)の温度上昇は25℃ よりも小さい。
(2) 本願発明の技術的意義 本願発明は、熱交換装置に関する発明であるところ、発熱デバイスのパワー増加 に伴い放熱器の放熱面積を増加させるため、現在の放熱器は大きく重くなっている20 が、放熱又は吸熱の改善効果は僅かであり、また、発熱素子から放熱面までの距離 の増加、熱伝導に必要な温度差の増加により、デバイスの放熱は行き詰まり、LE D照明の発展を阻害する要因となっていた。
本願発明は上記問題を解決するため、熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置を 提供するものであり、具体的には、直径dが0.01mm≦d≦2mmである熱伝25 導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物を含み、前記熱伝導性編物は、鋳造又は溶接に より形成された金属枠を含む熱交換装置を提供する。放熱を必要とするデバイスは、
17 溶接、熱伝導性接着又は鋳込により前記金属枠に接続され、また、熱交換装置を大 型で重いアルミニウムから少量の金属ワイヤの編物に変更することにより、熱交換 装置の重量と体積を大幅に減少させることができるものといえる。
2 引用発明について 5 (1) 引用発明(甲1)について ア 引用発明は、発光ダイオード(LED)を光源とする自動二輪車交換用ヘッ ドライトバルブユニットに関するものであり、LEDが熱に弱いことからヘッドラ イトユニットとして使用するには放熱や小型化など解決する課題が多くあった。そ こで、引用発明は、LEDを光源とし、放熱部を備え小型化された自動二輪車交換10 用ヘッドライトバルブユニットを提供することを目的とするものといえる(甲 1 の 【0001】 【0007】 【0009】 。
、 、 ) イ 次に、引用発明は、以下の構成を備えることで、上記目的を達成する。
「発熱部を有するヒートパイプ4と放熱機能を持つヒートシンク5からなる ヘッドライトランプ2であって、
15 ヒートパイプ4の前方はLED基板7とLEDチップ8を有し、ヒートパイプ4 の後方はヒートシンク5中央部を貫く連結部材10とそれを固定する固定部材11 でヒートシンク5に固定され、
ヒートシンク5は約0.1mmの銅線を編んだ織物状のシートをリボン形状にし た可撓導体6であって、幅50mmの可撓導体線を輪にした後、輪の中央部を固定20 部材11で挟むことでリボン形状を成す、
ヘッドライトランプ2。」 上記の構成により、LEDを光源としたヘッドライトランプにおいて、ヒートパ イプの効率的な熱伝導構造を利用し、それを主たる構造とした可撓導体により効果 的な放熱を可能にしたヘッドライトバルブユニットを提供するとの効果を奏するも25 のであるといえる(甲1の【0011】 。
) 3 取消事由1(相違点の認定の誤り)について 18 (1) 取消事由1-1(構成Bにおける相違点の認定の誤り) ア 本願明細書の記載(【0007】【0018】【0025】【0026】【0 、 、 、 、
029】【0030】【0031】【0033】【0036】【0039】 、 、 、 、 、 )による と、本願発明における「金属枠」について、本願明細書には、(a)一定の形状構造を 5 保持して他の加工を容易にする、更なる加工と使用を便利にする機能、及び、(b)接 続されたデバイスや管路の熱を伝導する機能、という二つの機能を備えることが記 載され、上記(a)については、熱伝導性編物を円筒や円錐台筒に加工した例が記載さ れている。一方、「金属枠」自体の物理的な形状や、形状のもたらす効果について、
本願明細書には特に記載されていない。
10 そうすると、本願発明における「金属枠」とは、
「熱伝導性編物を一定の形状構造 に保持し、熱を伝導する機能を有する部材」(以下「形状保持部材(枠)」という。) のうち、材質が金属であるものを特定したものであると認められる。すなわち、本 願発明における「金属枠」とは、「金属」製の「形状保持部材(枠)」のことである といえる。
15 一方、引用発明における「固定部材11」は、
「可撓導体6」を「幅50mmの可 撓導体線を輪にした後、輪の中央部を固定部材11で挟むことでリボン形状を成す」 機能を有するものであるから、本願発明における「金属枠」と「熱伝導性編物を一 定の形状構造に保持」する機能の点で一致する。
また、引用発明における「固定部材11」は、
「放熱機能を持つヒートシンク5」20 の「可撓導体6」を保持するものであり、
「連結部材10」とともに「放熱機能を持 つヒートシンク5」と「発熱部を有するヒートパイプ4」とを相互に固定する部材 であるから、
「固定部材11」が発熱部からの熱をヒートシンク5へ伝導する機能を 有する部材であることは明らかである。
イ 以上を踏まえ、構成Bについて本願発明と引用発明とを対比する。
25 まず、引用発明における「約0.1mmの銅線を編んだ織物状のシートをリボン 形状にした可撓導体6」は、本願発明における「熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導 19 性編物」に相当する。
次に、引用発明における「固定部材11」は、熱伝導性編物を一定の形状構造に 保持し熱を伝導する機能を有する部材である点で、上記「形状保持部材(枠)」と一 致するといえる。そうすると、本願発明における「金属枠」と引用発明における「固 5 定部材11」は、共に「形状保持部材(枠)」である点で共通し、引用発明の「固定 部材11」は金属製であるとは特定されていない点で相違する。
また、本願発明は「前記熱伝導性編物の金属枠が鋳造又は溶接により形成され」 ているのに対し、引用発明では「可撓導体6」の「固定部材11」が「鋳造又は溶 接により形成」されていない点で相違する。
10 したがって、本件審決が、相違点1として、本願発明と引用発明とは「前記熱伝 導性編物は形状保持部材を含む点で共通」し、
「形状保持部材が、本願発明は「金属 枠」であり、
「金属枠が鋳造又は溶接により形成され」たのに対して、引用発明の「固 定部材11」は、可撓導体線の輪の中央部を挟むものであるが、材質や形成方法な どが特定されてない点で相違する。」と認定した点に誤りはない。
15 ウ 原告の主張について (ア) 原告は、
「枠」とは、大辞泉において「物の周囲をふちどる線。また、境など を示すため、四方を取り囲むもの。」と定義されており、本願発明の「熱伝導性編物 の金属枠」は、熱伝導性編物の周囲をふちどって、熱伝導性編物を一定の形状構造 に保持するものであるのに対し、引用発明の固定部材11は、可撓導体6の一部を20 単に挟むだけであり、ヒートシンクの周囲をふちどって、ヒートシンクを一定の形 状構造に保持するものではなく、物の周りをふちどったり、物の境界を示したりす る「枠」ではないと主張する。
しかしながら、
「枠」は「木・竹・金属などの細い材で造り、器具の骨または縁と したもの。フレーム」(広辞苑第六版)との意味もあり、「枠」の語をもって「四方25 を取り囲むもの」という意味が一義的に明らかになるものとはいえず、本願明細書 の記載内容を考慮すると、前記アのとおり、本願発明における「枠」は「形状保持 20 部材(枠) 、すなわち、熱伝導性編物を一定の形状構造に保持し、熱を伝導する機 」 能を有する部材として特定されたものであり、その形状が特定されているものでは ないから、引用発明における「固定部材11」の形状が原告の主張する意味での「枠」 の形状であるか否かは、本願発明と引用発明の相違点の認定を左右しない。
5 (イ) 原告は、本願発明において、熱伝導性編物は金属枠を含み、前記熱伝導性編 物の金属枠が鋳造又は溶接により形成される点が限定されており、金属枠は、熱伝 導性編物からなるものであり、金属枠は、熱伝導性編物において、鋳造又は溶接す ることにより形成されるものであって、金属枠と熱伝導性編物とは別々の部材では なく、金属枠も熱伝導性編物であるのに対し、引用発明では、固定部材11は、可10 撓導体6とは別に設けられる部材であり、可撓導体6自身からなる部材ではない、
このため、固定部材11を可撓導体6の輪の中央部を挟んだとしても、可撓導体6 自体の更なる加工や使用が便利になることはないと主張する。
しかしながら、本願発明の構成Bの記載は「熱伝導性編物は金属枠を含み」であっ て、
「金属枠は、熱伝導性編物からなるもの」とは記載されていない。また、構成B15 の「前記熱伝導性編物の金属枠が鋳造又は溶接により形成され」との記載は、鋳造 又は溶接により形成された結果である、ものの形状・構造を特定する記載であり、
「熱伝導性編物」とは別体の「金属枠」を鋳造又は溶接により一体化したものも当 該記載に含まれるといえる。
そうすると、原告の主張する本願発明との相違としての「引用発明では、固定部20 材11は、可撓導体6とは別に設けられる部材であり、可撓導体6自身からなる部 材ではない」ことを指摘する点は理由がない。
また、原告は、引用発明が「固定部材11」によっては「可撓導体6自体の更な る加工や使用が便利になることはない。 点も相違点として主張しているが、
」 本願明 細書【0018】 「特に金属枠を有する場合に、
の 更なる加工と使用が便利になり」25 との記載における「更なる加工」が、熱伝導性編物のいかなる加工を意味するもの であるかは特定されておらず、織物上のシートであった可撓導体6(甲1【002 21 0】)を引用発明にある「輪にした後、輪の中央部を固定部材11で挟むことでリボ ン形状を成す」ことも、「更なる加工」に含まれるものといえる。
したがって、原告の上記主張はいずれも採用できない。
(2) 取消事由1-2(構成Cにおける相違点の認定の誤り) 5 ア 構成Cについて本願発明と引用発明を対比する。
前記2(1)イのとおり、引用発明は「発熱部を有するヒートパイプ4と放熱機能を 持つヒートシンク5からなるヘッドライトランプ2」であって、「発熱部を有する ヒートパイプ4」と「放熱機能を持つヒートシンク5」の二つの装置から構成され ている。そして、
「発熱部を有するヒートパイプ4」は、発熱部であるLEDチップ10 8からの熱を「放熱機能を持つヒートシンク5」に伝達して放熱をしているもので あるから、発熱部を有するヒートパイプ4」 放熱を必要とするデバイスである。
「 は、
したがって、引用発明における「発熱部を有するヒートパイプ4」は、本願発明 の「放熱又は吸熱を必要とするデバイス」に相当する。
また、引用発明において、
「ヒートパイプ4」は「連結部材10とそれを固定する15 固定部材11でヒートシンク5に固定」されるものであるから、
「固定部材11」に 接続されているといえる。そして、上記(1)のとおり、引用発明の「固定部材11」 と本願発明の「金属枠」は、「熱伝導性編物の形状保持部材(枠)」である点で共通 する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「放熱又は吸熱を必要とするデバイスは前記20 熱伝導性編物の形状保持部材(枠)に接続され」との点で共通し、引用発明は、
「形 状保持部材(枠)」である「固定部材11」が金属であると特定されていない点及び 「溶接、熱伝導性接着又は鋳込により」接続されることが特定されていない点で本 願発明と相違する。
したがって、本件審決が、
「引用発明の「LED基板7とLEDチップ8を有」す25 る「ヒートパイプ4」が熱伝導性編物の形状を保持している「固定部材11」に接 続していることと本願発明とは、「放熱又は吸熱を必要とするデバイスは前記熱伝 22 導性編物の形状保持部材に接続され」ている点で共通」し、
「本願発明は「放熱又は 吸熱を必要とするデバイスは、溶接、熱伝導性接着又は鋳込により前記熱伝導性編 物の金属枠に接続され」るの対して、引用発明は「LED基板7とLEDチップ8 を有」する「ヒートパイプ4」は「ヒートシンク5中央部を貫く連結部材10とそ 5 れを固定する固定部材11でヒートシンク5に固定され」る点。 で相違すると認定 」 した点に誤りはない。
イ 原告の主張について (ア) 原告は、本願発明では、「放熱を必要とする前記デバイスにより生成された 熱」と特定されており、放熱を必要とするデバイスは、熱を生成するデバイスであ10 るのに対し、引用発明において、熱を生成する部材は「LEDチップ8」であり、
「LED基板7」 「ヒートパイプ4」 や は、熱を生成する部材ではないと主張する。
しかしながら、本願発明における「放熱又は吸熱を必要とするデバイス」との構 成は、
「放熱又は吸熱を必要とする」との性質によってのみデバイスを特定するもの であり、デバイス」 「 に含まれる具体的な部材等の範囲を何ら特定するものではない。
15 一方、甲1の「図2.はヘッドライトランプ2の全体を示す。ヘッドライトランプ 2は発熱部を有するヒートパイプ4と放熱機能を持つヒートシンク5からなり・ ・ ・」 (【0014】 との記載に照らし、
) 甲1において「発熱部を有するヒートパイプ4」 がまとまりのある一つの構成として認識されていると理解できる。そうすると、引 用発明の「発熱部を有するヒートパイプ4」は、本願発明の「放熱又は吸熱を必要20 とするデバイス」に相当するといえるから、原告の上記主張は理由がない。
(イ) 原告は、本願発明では、
「デバイスは、溶接、熱伝導性接着又は鋳込により金 属枠に接続されている」と限定されており、この場合、二つの接続対象である「デ バイス」と「金属枠」の間に、溶接、熱伝導性接着又は鋳込の接続に使用される接 着剤等の物質を除き、他の構成が存在しないと解釈するのが自然であり、デバイス25 と金属枠とが他の構成を介して接続する構成については排除されていると解釈する のが相当であると主張する。
23 しかしながら、本願発明の「デバイスは、溶接、熱伝導性接着又は鋳込により金 属枠に接続されている」との構成は、(@)デバイスは金属枠に接続されていると、
(A)溶接、熱伝導性接着又は鋳込により接続されているとの二つの事項を特定す るものであり、このうち(@)は、デバイスと金属枠を中間部材を介して接続した 5 構造を排除しておらず、
(A)は、デバイスと金属枠を接続する構造において、熱伝 導性接着又は鋳込みによる接続が用いられているものを含むものであるから、デバ イスと金属枠が直接接続されたもののみを特定する構成とはいえない。
そうすると、本願発明の上記構成は、デバイスと中間部材又は中間部材と金属枠 のうち少なくともいずれか一方に「溶接、熱伝導性接着又は鋳込」が用いられた構10 成を含むものであると理解できるから、原告の上記主張は採用できない。
(3) 取消事由1-3(構成Dにおける相違点の認定の誤り)及び1-5(構成F における相違点の認定の誤り) ア 取消事由1-3及び1-5についてまとめて検討する。
本願発明の構成D「効果的に伝導することを保証」との記載は、
「効果的」の比較15 の基準が明らかでなく一義的にその意味が特定できない記載であるところ、本願明 細書の【0024】〜【0026】の記載や実施例の記載をみると、少なくとも本 願発明の構成A〜Cを備えた熱交換装置であれば、「効果的に伝導することを保証」 した装置であると理解できる。同様に、本願発明の構成F「最短の距離で最大の放 熱面に迅速に伝導」との記載も、
「最短」「最大」「迅速」の比較の基準が明らかで 、 、
20 なく一義的にその意味が特定できない記載であるところ、本願明細書の【0024】 〜【0026】の記載や実施例の記載から、少なくとも本願発明の構成A〜Cを備 えた熱交換装置であれば、
「最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導」できる装置で あると理解できる。
したがって、本願発明の構成D及びFは、いずれも本願発明の構成A〜Cを備え25 ることで実現される作用を特定したにすぎないものといえる。
そうすると、後記4で検討するとおり、引用発明において本願発明の構成A〜C 24 を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるから、それに伴い 引用発明において本願発明の構成D及びFを備えることもおのずと充足されるとい える。ここで、本件審決は本願発明の構成D及びFを相違点として認定してはいな いものの、これらの点の判断は相違点1及び2の容易想到性の判断と軌を一にする 5 ものであり、後記のとおり本件審決の容易想到性の判断に誤りはないから、上記認 定の点は本件審決の結論に影響しない。
イ 原告の主張について (ア) 原告は、引用発明は、LEDチップ8とヒートシンク5の間にヒートパイプ 4及びLED基板7があるため、
「熱を効果的に伝導することを保証し」たものでは10 ない旨を主張する。
しかしながら、構成Dは構成A〜Cを備えることで実現される作用を特定したも のであるところ、構成Cにおける「放熱又は吸熱を必要とするデバイス」が物理的 な構成要素としてどのような部材を含むかは特定されていないから、引用発明の「発 熱部を有するヒートパイプ4」の内部にいかなる構成要素が含まれているかは、構15 成Cについての本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定容易想到性の判断 を左右するものではなく、構成Dについての判断にも影響を与えない。
(イ) 原告は、引用発明にはデバイスと可撓導体6との間に複数の部材が存在して いるから、引用発明は、本願発明と比べて「放熱を必要とする前記デバイスにより 生成された熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導する」ことができないと20 主張する。
しかしながら、構成Fにおいて比較の基準は特定されていないから、構成Fの「生 成された熱を、最短の距離で最大の放熱面に迅速に伝導する」とは、構成A〜Cを 備えた装置が有する機能であり何らかの基準との比較により特定される作用ではな い。また、上記(2)における検討のとおり、構成Cは、中間部材を介した接続構造を25 も含むものであるから、デバイスと可撓導体6との間に複数の部材が存在するとし ても、そのことが構成Fにおける「最短」「最大」「迅速」を妨げるとはいえない。
、 、
25 (ウ) したがって、原告の上記主張はいずれも採用できない。
(4) 取消事由1-4(構成Eにおける相違点の認定の誤り) ア 本願発明の構成Eにおける「熱伝導性ワイヤで伝導」 「加熱又は冷却」及び 、
「対流により放熱又は吸熱」との事項について、放熱現象において通常生じる「伝 5 導」「加熱又は冷却」及び「対流により放熱又は吸熱」の意味を超える特段の限定 、
はされていないから、本願発明の構成Eは、熱伝導性編物が空気中に放熱する作用 をそのまま記載した構成であるといえる。そうすると、本願発明の構成Eは、熱交 換装置に熱伝導性編物を用いることでおのずと備わる構成であり、可撓導体6を用 いた熱交換装置である引用発明にも備わる構成であるといえる。
10 したがって、この点に関する本件審決の認定に誤りはない。
イ 原告の主張について 原告は、本願発明では、
「対流により放熱又は吸熱を実現する」点により、ファン で強制換気するか、又は空気が熱により膨張して軽くなって上昇する特徴等を利用 し、通路を構成し、空気を自動的に流動させるという対流放熱が実現する条件を保15 証することが示されているのに対し、甲1のヘッドライトバルブユニットでは、ヘッ ドライトバルブユニットを収めるヘッドライトランプハウジングが狭い空間である 等、これらの条件を明らかに備えず、本願発明と比べて、正常に対流放熱を実現す ることができないから、引用発明は構成Eを備えていない旨を主張する。
しかしながら、本願発明において「対流により放熱」との文言によって、
「ファン20 で強制換気するか、又は空気が熱により膨張して軽くなって上昇する特徴等を利用 し、通路を構成し、空気を自動的に流動させるという対流放熱」には限定されるも のとは解されない。したがって、原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づかない ものであり、採用できない。
4 取消事由2(容易想到性の判断の誤り)について25 (1) 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り) 前記第4の3(1)のとおり、構成Bに関し本願発明と引用発明を比較すると、引用 26 発明の「固定部材11」は金属製であるとは特定されていない点及び引用発明では 「可撓導体6」の「固定部材11」が「鋳造又は溶接により形成」されていない点 で本願発明と相違する。
上記相違点について検討すると、引用発明における「固定部材11」は「発熱部 5 を有するヒートパイプ4」と「放熱機能を持つヒートシンク5」とを接続する部材 の一つであり、熱伝導性が高い方が好ましいことは当業者が容易に察知し得ること であり、金属が熱伝導性に優れた材料であることは当業者の技術常識であるから、
「固定部材11」の材料として金属を選択することは当業者が通常行う材料選択で あるといえる。
10 また、金属を用いた部材の形成において鋳造又は溶接により一体に形成すること も通常行われることであるから、引用発明において、金属製の「固定部材11」を 鋳造又は溶接により「可撓導体6」と一体化した構成とし、上記相違点に係る構成、
すなわち「前記熱伝導性編物の金属枠が鋳造又は溶接により形成され」た構成とす ることは、当業者が適宜なし得たことである。
15 したがって、本件審決において相違点1に係る構成は容易想到であると判断した 点に誤りはない。
(2) 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り) 前記第4の3(2)のとおり、引用発明は、
「形状保持部材(枠)」である「固定部材 11」が金属であると特定されていない点、及び、
「溶接、熱伝導性接着又は鋳込に20 より」接続されることが特定されていない点で本願発明と相違する。
しかしながら、上記(1)のとおり、「固定部材11」の材料を金属とすることは当 業者が通常行うことである。また、放熱を必要とするデバイスとヒートシンクの接 続に、溶接、熱伝導性接着又は鋳込を用いることは周知技術であるといえ、引用発 明における「発熱部を有するヒートパイプ」と「ヒートシンク」との接続構造に上25 記周知技術を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たこ とである。
27 したがって、本件審決において相違点2に係る構成を容易想到であると判断した 点に誤りはない。
(3) 取消事由2-3(予測できない顕著な効果) 原告は、本願発明は、厳格な数学理論の導出及び大量の実験データの重複な証明 5 によって導き出されたものであり、本願発明では、放熱部の温度上昇は数十分の1、
数百分の1に圧縮することができ、引用発明や従来技術では解決することができな かった大パワーLEDのようなデバイスのボトルネック問題である放熱問題が完璧 に解決されるものであるから、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測さ れる以上の格別顕著な効果を奏する旨を主張する。
10 上記主張につき検討すると、本願明細書において本願発明の効果に関係する記載 として、0020】 「放熱器の重量と体積は、
【 の 少なくとも90%以上減少させる」、
【0038】の「LEDチップの放熱面(裏面)の温度上昇は25℃ 〜28℃」、
【0041】 「LEDチップの放熱面 の (裏面)の温度上昇は25℃よりも小さい。」 との記載はあるものの、原告の上記主張に沿うような、大量の実験データの記載や、
15 放熱部の温度上昇の圧縮の定量的な記載は見られない。
そして、上記各記載は、本願発明の効果を示唆する記載ではあるものの、
【002 0】は具体例に基づくものではなく、
【0038】【0041】は改善の程度が不明 、
であるから、本願発明の構成から予測し得ない顕著ないし異質な効果が得られたこ との説明とはいえない。
20 そうすると、本願発明の効果は、本願発明の構成から予測し得る程度のものであ り、当業者の予測し得ない顕著ないし異質な効果と認めることはできない。よって、
本件審決の判断に誤りはない。
(4) 小括 以上のとおり、本件審決における本願発明についての引用発明に基づく進歩性25 の容易想到性等の判断に誤りはなく、取消事由2には理由がない。
第5 結論 28 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取 り消すべき違法は認められない。
したがって、原告の請求は棄却されるべきものであるから、主文のとおり判決す る。
裁判長裁判官 本多知成