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事件 |
令和
5年
(行コ)
10001号
特許分割出願却下処分取消請求控訴事件
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令和5年9月28日判決言渡 令和5年(行コ)第10001号 特許分割出願却下処分取消請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所令和4年(行ウ)第382号) 口頭弁論終結日 令和5年8月29日 5判決 控訴人(第1審原告) 株式会社花雲 同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 10 同平田慎二 同 平塚健士朗 同補佐人弁理士 保立浩一 被控訴人(第1審被告) 国 15 処分行政庁特許庁長官 同 指定代理人八屋敦子 同 脇坂理絵 同 白幡朋之 20 同稲垣若菜 同 大谷恵菜 同 中島あんず |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2023/09/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 本件控訴を棄却する。 25 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 控訴人の請求 特許庁長官が令和3年3月30日付けでした本件出願についての本件却下処 5 分を取り消す。 2 原審の判断及び控訴の提起 原審は控訴人の請求を棄却する判決をしたところ、これを不服とする控訴人 が下記のとおり控訴を提起した。 【控訴の趣旨】10 (1) 原判決を取り消す。 (2) 上記1と同旨。 |
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事案の概要等
1 本件出願は、法44条1項2号所定の分割出願としてされたものであるが、 当該出願に先立って本件親出願に係る特許料納付を経て本件設定登録がされて15 いた。処分行政庁は、同項柱書きに「特許出願人」及び「特許出願」とされて いることから、同項の規定は分割出願のもととなる特許出願が特許庁に係属し ていることを前提とするところ、本件出願は、もとの特許出願について設定登 録がされた後にされたものであり、特許庁に係属していない特許出願をもとの 出願として行われたものであるから、同項所定の要件を満たしていない不適法20 な手続であってその補正をすることができないとして本件却下処分をしたもの である。 2 「前提事実」、「争点及び争点に関する当事者の主張」は、後記3のとおり 当審における控訴人の補充的主張を付加するほか、原判決の第2の1及び2 (2頁〜)に記載するとおりであるから、これを引用する。 25 3 当審における控訴人の補充的主張 (1) 取消事由1について 2 ア 法44条1項柱書の「特許出願人は」との文言は分割出願に係る出願人 と特許査定を受けた出願人とは同一でなければならないとする主体的要 件を、「特許出願の一部を」の文言は分割出願に係る発明がもとの特許出 願に係る発明に包含されていなければならないとする客体的要件を定め 5 たもので、分割出願の際にもとの出願が係属していなければならないとす ること(時期的要件)を定めたものではない。 イ 法44条1項2号は平成18年法律第55号(以下「改正法」という。) により新設されたものであるところ、同号は、特許料納付期限が30日で あることから、権利範囲を見直して分割するかどうかの判断の期間として10 特許査定謄本送達から30日を与えるということを立法趣旨とするもの であり、30日以内であっても設定登録後は分割できないという議論は立 法の過程では何らされておらず、処分行政庁による解釈は改正法の立法趣 旨に反する。 ウ 「特許出願人」と規定されていても「特許権者」と解釈すべき条文があ15 り(法65条1項)、法44条1項柱書に「特許出願人」と規定されている からといって、直ちに特許出願が特許庁に係属していることを要件とする と解することはできない。 エ 特許査定を起算日とした期間で分割出願を認めている中国や台湾におい ては、特許登録がいつされたかによって当該期間が影響を受けることがな20 いという運用を行っている。 (2) 取消事由2について 原審においても主張したとおり、特許登録という行政処分について、特許 権という独占権の発生という効果とは別に分割出願不可化という効果が生 じるのであれば、当該効果の部分については少なくともその名宛人である特25 許出願人に通知されて初めて効果が生じるのであり、したがって、分割出願 不可化の効力が生ずるのは、特許証を受領した日と解すべきである。この点、 3 原判決は、特許権の対世的効力が控訴人との関係においてのみ別異の時期に 発生すると控訴人が主張したと曲解して判断しているが、特許を含め、名宛 人のある行政処分については、その行政処分がその名宛人に対して告知され て初めて効果を生じるとの通説 判例として確立している解釈に反するもの ・ 5 である。 |
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当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。 その理由は、後記2のとおり当審における控訴人の補充的主張に対する判断 を付加するほか、原判決の第3(8頁〜)の説示のとおりであるから、これを10 引用する。 2 当審における控訴人の補充的主張に対する判断 (1) 取消事由1について 特許出願の分割は、もとの特許出願の一部について行うものであるから、 分割の際にもとの特許出願が特許庁に係属していることが必要であり、法415 4条1項の「特許出願人」及び「特許出願」との文言は、このことを示すも のである。同項1号から3号は、これを前提に、分割の時的要件を定めるも のであり、これに反する控訴人の主張は、同項所定の「特許出願」「特許出 、 願人」との文言を無視する独自の議論といわざるを得ず、採用できない。な お、控訴人は、法65条1項を「特許出願人」と記載されていても「特許権20 者」と解釈すべき例として挙げるが、同項の「特許出願人」 「警告をした」 は の主語でもあるところ、これが出願公開後、設定登録前の特許出願人を指す ことは明らかである。 また、控訴人は、設定登録後は分割出願できないとの処分行政庁の解釈は 法44条1項に関する改正法の立法趣旨に反する旨主張する。しかし、同項25 2号が、特許料納付期限(法108条1項)と平仄を合わせる形で、特許査 定の謄本送達日から「30日以内」を分割出願の期限と定めたのは、同期限 4 内であれば、特許査定を受けた特許出願人の意思によって「特許出願人」た る地位を継続することが可能であることを踏まえて、当該特許出願人が、特 許査定を受け入れてそのまま特許料の納付に進むのか、分割出願という選択 肢を行使するのかという表裏一体の判断を検討するための猶予期間を付与 5 したものと理解することができる。したがって、改正法の内容は、特許出願 が特許庁に係属していることを分割出願の要件とするとの解釈と何ら矛盾 するものではなく、むしろこれと整合するものといえる。 また、中国、台湾における取扱いを述べる控訴人の主張は、各国工業所有 権独立の原則、工業所有権の保護に関するパリ条約4条G(2)第3文に照10 らして、本件の判断に影響を及ぼすものとはいえない。 (2) 取消事由2について 控訴人は、特許登録について独占権発生という効果のほかに分割不可化と いう効果が生じるのであれば、当該効果の部分については特許出願人に通知 されて初めて効果が生じる旨主張する。 15 しかし、設定登録は分割不可化という効果を目的とする行政処分ではなく、 設定登録によりもとの出願が特許庁に係属しなくなることの派生的効果と して、結果的に適法な分割ができなくなるというにすぎないのであって、控 訴人の主張は、前提を欠くというべきである。 |
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結論
20 以上によれば、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ、これと同 旨の原判決は相当である。よって、本件控訴は理由がないから棄却することと し、主文のとおり判決する。 |