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事件 特許権侵害損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/03/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令和5年3月23日判決言渡

令和4年(ネ)第10073号、同年(ネ)第10096号 特許権侵害損害賠償

請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第4331号)

口頭弁論終結日 令和5年2月14日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 控訴人の控訴に基づき、原判決主文1、2項を次のとおり変更する。

(1) 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して2253万6467円及

びこれに対する令和2年3月10日から支払済みまで年5分の割合

による金員を支払え。

(2) 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

2 被控訴人らの本件附帯控訴をいずれも棄却する。

3 訴訟費用(控訴費用、附帯控訴費用を含む。)は、第1、2審を通

じてこれを10分し、その3を被控訴人らの負担とし、その余を控

訴人の負担とする。

4 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。

5 控訴人のために、この判決に対する上告及び上告受理申立てのため

の付加期間を30日と定める。

事 実 及 び 理 由

用語の略称及び略称の意味は、本判決で定義するもののほかは、原判決に従うも

のとする。また、原判決の引用部分の「被告ジョウズ」を「被控訴人ジョウズ」に、

「被告アンカー」を「被控訴人アンカー」にそれぞれ読み替える。

第1 当事者の求めた裁判

1 控訴人の控訴の趣旨

(1) 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。




(2) 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して4652万8663円及びこれに対

する令和2年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被控訴人らの附帯控訴の趣旨

(1) 原判決中、被控訴人ら敗訴部分を取り消す。

(2) 上記の部分につき、控訴人の請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要等

1 事案の概要

(1) 本件は、発明の名称を「加熱式エアロゾル発生装置、及び一貫した特性のエ

アロゾルを発生させる方法」とする発明に係る本件特許権を有する控訴人が、被控

訴人らに対し、被控訴人らが共同で加熱式タバコ用デバイスである原判決別紙物件

目録記載の被告製品(被告製品1〜3)の販売、輸出、輸入及び販売の申出をする

ことが本件特許権の侵害に当たると主張して、不法行為(民法709条)に基づき、

選択的に、@特許法102条2項損害額●●●●●●●●●円(同項の推定の覆

滅が認められた場合に当該覆滅部分について予備的に同条3項に基づく売上額の2

0%相当の損害額)又はA同条3項の損害額●●●●●●●●●円を請求するとと

もに、B弁護士・弁理士費用相当額●●●●●●●●円(上記@の同条2項の損害

額の1割に相当する額)を請求するものとして、●●●●●●●●●円及びこれに

対する不法行為の後であり被控訴人らへの各訴状送達の日の翌日である令和2年3

月10日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5

分の割合による遅延損害金の連帯支払を原審で求めた事案である。

(2) 原審は、@特許法102条2項による被控訴人らが受けている利益の額は3

706万0935円と推定されるが、被告製品の売上げにはそれらが別件発明の実

施品であることも貢献しているため5割の推定覆滅を認めるのが相当であり、同項

損害額は1853万0467円となる(また、上記の覆滅の理由からして上記覆

滅部分についての同条3項の適用は認められない。)とする一方で、A実施料率は

10%を下らないものと認めるのが相当であり、同条3項の損害額は1975万2




707円となるところ、より高額である上記Aの損害額をもって控訴人の損害額

認め、これに弁護士・弁理士費用としてその1割である197万5270円を加え

た2172万7977円及びこれに対する前記遅延損害金の連帯支払を被控訴人ら

に求める限度で控訴人の請求を一部認容し、その余の控訴人の請求をいずれも棄却

した。

(3) 原判決を不服として、控訴人が控訴を、被控訴人らが附帯控訴をそれぞれ提

起した。

控訴人は、当審において、@特許法102条2項損害額については、4954

万2879円に消費税相当額495万4287円を加算した5449万7166円

であると主張を改め、これに併存して、A被控訴人らによる商品原価を下回る価格

での被告製品の売却に関して同条3項に基づく損害額800万4715円が認めら

れるとし、B弁護士・弁理士費用575万4759円(上記@の消費税相当額加算

前の4954万2879円と上記Aの損害額800万4715円の合計5754万

7594円の1割に相当する額)が認められると主張して、さらに、以上の合計額

6825万6640円から原判決が認めた損害金元本2172万7977円を差し

引いた4652万8663円及びこれに対する令和2年3月10日から支払済みま

で年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を、控訴人敗訴部分について、被控訴

人らに対して求める旨を明らかにした。

したがって、控訴人敗訴部分についての当審における審理の対象(控訴人の不服

の範囲)は、上記の請求額の範囲に限定されている。

2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり改め、3のと

おり争点4(控訴人の損害額)についての当審における当事者の補充主張及び追加

主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」(以下、

単に「原判決の第2」という。)の1及び2並びに「第3 争点に関する当事者の

主張」に記載するとおりであるから、これを引用する。

(1) 原判決3頁12行目の「スイス連邦の法人」を「スイス連邦の法により設立




された法人」に、同頁20行目の「スマートフォンやタブレット」を「モバイルバ

ッテリー、急速充電器等」に、それぞれ改める。

(2) 原判決10頁3行目(行数は、原判決の本文左に付された行番号による。以

下同じ。 〜4行目の
) 「Light、Medium、Fullの3つのモードが選択できるところ(甲

7、21)」を「Low(低)、Mid(中)、High(高)の3つのモードが選択でき(甲

7、21)、これらは侵害分析レポート(甲24)においては、被告製品3のアプ

リケーションの設定温度(加熱プロファイル)としてLight、Medium、Full flavor

を選択することができるものとして説明されているところ」に改める。

(3) 原判決13頁20行目の「原告」を「BAT」に、同頁25行目の「の支払」

を「及びこれに対する令和2年1月1日からの遅延損害金の支払」に、同14頁2

行目の「の支払」を「及びこれに対する前記遅延損害金の支払」にそれぞれ改め、

同14頁3行目末尾の次に「被控訴人ジョウズは、別件訴訟判決に対して控訴を提

起せず、別件訴訟判決は確定した。」を加える。

(4) 原判決24頁11行目の「(Ph1)」、同頁12行目の「(T1)」、同

頁15行目の「(Ph2)」、同頁15行目〜16行目の「(T1)」、同頁16

行目の「(T2)」、同頁19行目の「(Ph3)」並びに同頁20行目の「(T

2)」及び「(T3)」をいずれも削除する。

(5) 原判決26頁7行目の「一貫とする」を「一貫したものとする」に、同27

頁13行目の「乙7発明1及び2」を「乙8発明1及び2」にそれぞれ改める。

(6) 原判決29頁12行目の「(Ph1)」、同頁13行目の「(T1)」並び

に同頁16行目の「(T1)」及び「(T2)」をいずれも削除し、同頁20行目

の「第3段落(Ph3)」を「第3段階」に改め、同頁21行目の「(T2)」及

び「(T3)」をいずれも削除する。

(7) 原判決33頁14行目の「一貫とする」を「一貫したものとする」に、同3

4頁22行目の「乙9発明」を「乙8発明」に、同35頁15行目の「一貫とする」

を「一貫したものとする」に、同38頁19行目の「明細書等」を「本件明細書等」




に、同43頁9行目、同頁26行目及び同44頁15行目の各「被告ら」をいずれ

も「被控訴人アンカー」に、同46頁15行目及び同頁16行目の各「売上戻し高」

をいずれも「売上戻り高」にそれぞれ改める。

(8) 原判決51頁21行目及び同頁22行目の各「本件各発明」をいずれも「本

件各発明に係る性能」に改める。

(9) 原判決52頁26行目末尾に続けて「(予備的主張)」を加え、同53頁1

6行目の「20%」を「20%である●●●●●●●●●円」に、同頁17行目の

「予備的主張」を「選択的主張」に、同頁19行目の「下回らないので」を「下回

らず」にそれぞれ改める。

3 争点4(控訴人の損害額)についての当審における当事者の補充主張及び追

加主張

(控訴人の主張)

(1) 控除すべき経費についての補充主張

ア 原判決は、支出した費用が「被告製品を販売しなければ支出されなかったも

の」か、「被告製品の販売がなければ負担する必要のなかったもの」かという緩や

かな基準で支払手数料に係る費用控除を認めており、「侵害品の製造販売に直接関

連して追加的に必要となったもの」という限定(知財高裁平成30年(ネ)第10

063号令和元年6月7日特別部判決(以下「令和元年大合議判決」ということが

ある。)参照)の実質的意味を無視した点において誤りがある。また、限界利益の

額の主張立証責任は特許権者側にあるが、被告製品の製造販売に直接関連して追加

的に必要となった経費であることの主張立証責任は、事実上侵害者側に転嫁されて

いると解すべきであり、被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった

経費であると証拠上認められない限りは、控除を認めるべきではない。

そうすると、次のイ及びウのとおり、支払手数料及び宣伝広告費を控除した原判

決の判断には誤りがある。

イ 支払手数料




(ア) Amazonでの販売手数料

a 在庫保管手数料や返品手数料

AmazonのFBA手数料のうち、少なくとも「在庫保管手数料」、「長期在庫保管

手数料」、「購入者返品手数料」及び「在庫保管超過手数料」は、在庫の保管や購

入者による商品の返品により生じた費用であって、被告製品の販売に直接関連して

追加的に必要になった費用ではないから、控除すべき経費ではない。在庫の保管費

用は、商品が販売されないほど増える、すなわち被告製品の販売に反比例して生じ

る費用であり、商品の返品費用は、商品の欠陥や顧客の不満足といった事情により

生じるものであって、被告製品の販売に間接的に関連して生じた費用であるにとど

まる。この点、被控訴人らが被告製品以外の製品を販売しなかったことについては、

結果的にそうなっただけであって、被控訴人らはVAPEという電子タバコ用の製品で

ある「jouz S」やアクセサリー製品の販売を具体的に予定し、公表していたから、

上記事情は在庫保管手数料や返品手数料を経費として控除すべき理由とはならない

(甲32、乙A42、45〜48、51、52)。

上記の理由により控除すべきでない金額の合計は●●●●●●●●円であり(甲

A42)、限界利益から控除する金額の合計は●●●●●●●●●円である(甲A

38、42)。この金額から、マイナスのAmazonへの支払手数料として計上されて

いる金額(支払手数料の返金額と理解される。)の合計額である●●●●●●●円

を控除すると、●●●●●●●●●円となる(甲A42、43)。

b 令和元年7月のFBA運搬費

(a) 令和元年7月のFBA運搬費は、他の月に比べて異常に高額である。直前数

か月間は、FBAの手数料(handling charge)と運搬費(haulage expenses)は後

者が前者より2〜6万円高い程度であったのに対し、同年7月だけは、同手数料が

●●●●●●●円で直前数か月と同レベルであるにもかかわらず、同運搬費が●●

●●●●●●円と極めて高額になっており、●●●●円程度は超過している(甲A

38、42)。同年7月の売上げがその前の数か月と同レベルである(甲A44)




のに対し、Amazon seller centralの支払手数料の推移(甲A43)においては同年

7月が突出して高額である。

(b) 同年7月のFBA運搬費が異常に高額であることは、被控訴人らが提出した

証拠(乙A78、79)からも明らかである。同年1月のFBAご利用商品の売上

額●●●●●●●●●円に対し、FBA配送代行手数料は●●●●●●●●円(約

13%)であった(乙A78)ところ、同手数料は商品のサイズに応じて商品当た

り定額が定められているから(乙A76)、売上げに伴うFBA配送代行手数料で

あれば売上げに応じて増減するはずである。しかるに、同年7月のFBAご利用商

品の売上額●●●●●●●●円に対し、FBA配送代行手数料は●●●●●●●●

円(●●●%)を占めており(乙A79)、異常な値となっている。

この点、同年7月25日には、被控訴人ジョウズによる別件特許権の侵害を理由

として、被告製品1及び2の譲渡等を禁止する仮処分決定(東京地方裁判所平成3

0年(ヨ)第22122号。乙26。以下「別件仮処分決定」ということがある。)

が出されていた。また、被控訴人らから開示された「JouzPLまとめ」と題するエ

クセルファイルの「19BS」というシート見出しの表によると、令和元年5月に

残高●●●●●●●●●円であった商品が同年6月以降は●●●●●●●●円とな

り、●●●●●●●●●円減少しており(甲46)、他方、同エクセルファイルの

「PL3期分」というシート見出しの表によると、同年6月に商品評価損●●●●

●●●●●円及びマイナスの期末商品棚卸高●●●●●●●●円の合計として、同

額の●●●●●●●●●円が計上されている(甲47)。したがって、同年6月頃

に被控訴人らが別件仮処分決定が出されることを予期して、被告製品の在庫につい

て何らかの処理を行ったと考えられる。

以上からすると、同年7月の運搬費の超過額については、被控訴人らがAmazonか

ら被告製品の在庫の返送を受けたか、Amazonに対し廃棄を依頼した可能性が合理的

に推認される(甲A39)。

(c) さらに、控訴人が改めて、被控訴人らから開示を受けた被告製品の販売に関




するデータ(以下「開示販売データ」という。)を精査したところ、令和元年7月

30日及び同月31日の2日間だけで、全て金額が●●●円の大量の「FBA Per Unit

Fulfillment Fee」(FBA配送代行手数料)が計上されていること、そのほとんど

には「Fjp-20190724PATENT-3」といった番号が付されていること(末尾の番号は3か

ら16まである。)、数十件ごとに同じ末尾番号が付されており、それらには全て同

じ日付と時間が記載されており、付されているその他の識別番号も同じであること、

また、これらには「Non-Amazon」と記載されていることが判明した。そこで、その

中から「Fjp-20190724PATENT」という番号が付された項目を抽出し、 ●●●●」と記


載された行を抽出すると、それらの合計金額は、●●●●●●●●円(●●●円×

●●●●件)に上った(甲51。以下、このように抽出されたFBA配送代行手数

料をまとめて「本件FBA配送代行手数料」という。)。開示販売データ中、本件

FBA配送代行手数料以外のFBA配送代行手数料をみると、●●●円とされてい

たり、同じ●●●円であってもそれぞれ識別番号や日付、時刻が異なっており(甲

52)、本件FBA配送代行手数料は、明らかに他のFBA配送代行手数料とは異

なるもので、通常の商品販売取引における費用ではない異常な支出であることが分

かる。上記の点からすると、本件FBA配送代行手数料をもって、Amazon以外のe

−コマースでの注文に係る費用であると考えることも、明らかに不自然かつ不合理

であり、また、本件FBA配送代行手数料の発生は別件仮処分決定が出された後で

あり被告製品1及び2の販売が許されない時期であったところ、被告製品の中で最

も高額な被告製品3(甲7の1・2)が、突然2日間で●●●●点売れることもあ

り得ない。

そして、FBAサービスには、販売不可の在庫などの余剰在庫の返送/廃棄を依

頼するものがあり、その依頼方法として、「在庫ファイルを使用して、スプレッド

シート(Excel)ファイルに入力した在庫リストの返送/所有権の放棄を一括で依頼

する」ことも可能であること(甲53の1)、在庫の返送/放棄に際しては、「配

送先住所を選択すると、在庫を指定した受取人(出品者の倉庫、メーカー、リサイ




クルセンターなど)に返送でき」ること(甲53の2)、その場合は、Amazonによ

る出荷ではなく「FBAマルチチャネルサービス」による出荷となり、マルチチャ

ネルサービスのFBA配送代行手数料が生じること(甲53の3)、マルチチャネ

ルサービスのFBA配送代行手数料の標準4というサイズの料金は700円である

こと(甲53の4)などからすると、本件FBA配送代行手数料は、被控訴人らが

Excelなどのスプレッドシートを用いて一括して在庫の返送の依頼をしたことに係

るものであることが合理的に推認できる。また、「Fjp-20190724PATENT」という番

号からも、本件FBA配送代行手数料と別件仮処分決定との関連を合理的に推認で

きる。

(d) 以上より、令和元年7月のFBA運搬費のうち、少なくとも本件FBA配送

代行手数料●●●●●●●●円については、別件仮処分決定と関連して余剰在庫の

返送が依頼されたことに係るものと合理的に推認でき、費用として控除されるべき

ではない。

(イ) 楽天市場での販売手数料

開示販売データの「Jouz PLまとめ」エクセルシートの「マージン計算」のシート

(以下「マージン計算シート」という。)の「【原】支払手数料」のRakutenの合計

額●●●●●●●●円に、初期登録費用6万円(税別)及び2年分の月額登録費用

(スタンダードプランは月額5万円(税別))が含まれていることは、甲A37の

3頁に、初回出店料として、月額5万円の6か月分及び初期登録費用の6万円の合

計である36万円(税別)の支払が生じる旨が記載され、税込み(8%)の金額は

38万8800円となるところ、被控訴人らが平成30年6月にRakutenの支払手

数料として●●●●●●●円を支払っていること(甲49)からも裏付けられてい

る。

初期登録費用や月額登録費用は、楽天市場にオンライン店舗を出店するに当たり

必要となる固定費であって、被告製品の売上げに応じて増加する変動費ではないか

ら、被告製品の販売に直接関連して追加的に必要となった経費ではない。この点、




前記(ア)のとおり、被控訴人らが被告製品以外の製品を販売しなかったことは、あく

までも結果論であって、他の製品(jouz S等)を販売することも具体的に予定し、

対外的に公表までしていたのであるから、上記各費用を控除すべき理由にはならな

い。

したがって、初期登録費用及び2年分の月額登録費用の合計136万0800円

(消費税(令和元年10月1日までは8%)込み)を●●●●●●●●円から控除

した●●●●●●●円が控除し得る上限となる。

(ウ) その他の手数料

Bar Codes Talk、Score Japan、square、TDL express japanについては、単発で

一度きりの費用が発生しているものであり(甲49)、被告製品の製造販売に直接

関連して追加的に必要となった経費なのか否かが明らかではなく、Amazonで商品を

販売するためのバーコードを購入するための費用(Bar Codes Talk)は、固定費で

ある消耗品費であって変動費ではない。その他の費用(Jouz.com、Veritrans、net

protections)についても、一部サービス概要のウェブサイト(乙A77)があるだ

けであり、具体的にどのような性質の費用なのか明らかではない。

(エ) 小括

以上によると、被告製品の売上げから控除し得る支払手数料の額は、@Amazon

seller centralとして控除し得る経費として、前記(ア)aの●●●●●●●●●円

から本件FBA配送代行手数料●●●●●●●●円を控除した●●●●●●●●●

円、AAmazon payへの支払手数料●●●●●●円(●●●●●●円から●●●●円

を差し引いたもの)(甲A43、49)、B前記(イ)の●●●●●●●円の合計●●

●●●●●●●円を超えることはない。

ウ 宣伝広告費のうちAdvertorialのための費用

そもそも宣伝広告費は、卸・小売業において、人件費や交通費、通信費等と同様

に固定費として算入するのが通例であることからすると(甲50)、例外的に、被

告製品の販売と直接関連して追加的に必要となった宣伝広告費であると認められる




場合に限り、限界利益の算定において控除し得ると解すべきである。また、記事や

YouTubeの動画の内容が被告製品に関するものであるからといって、直ちに、被告製

品の販売と直接関連して追加的に必要となった宣伝広告費であると認められるもの

ではなく、当該記事やYouTubeの動画が被告製品の広告であることが明らかである

場合に限り、控除を認めるべきである。

また、Advertorialのための費用●●●●●●●●円に係る記事の多く(乙A42、

45〜48、51、52)は、VAPE用製品である「jouz S」やアクセサリーも紹介

する内容の記事である。

以上によると、上記●●●●●●●●円の全額を被告製品の販売と直接関連して

追加的に必要となった経費であると原判決が認定したことは、明らかに誤りであっ

て、被告製品の売上高から控除できる広告費用は、別件訴訟判決が認定した200

万円(税抜)を超えることはないというべきである。

エ 被控訴人らの補充主張に対する反論

(ア) DSPのための費用及び楽天市場の広告宣伝費

被控訴人らは、DSPのための費用及び楽天市場の広告宣伝費について具体的な

広告内容の立証がないことを自認しており、また、被控訴人らが提出する証拠は、

DSPに関する一般的な説明に係るもの(乙A58)にとどまる。そのため、被控

訴人らが主張するDSPのための費用が具体的に何に対する支出であるのかも、被

告製品の販売とどのように関連するのかも、全く不明である。他方で、被控訴人ら

は、被告製品以外にもVAPE用製品である「jous S」やアクセサリーの販売を具体的

に予定していた(乙A42、45〜48、51、52)。

したがって、仮に被控訴人らが被告製品以外のデバイスを結果的に販売しなかっ

たとしても、DSPのための費用及び楽天市場の広告宣伝費は、被告製品の販売に

直接関連して追加的に必要となった経費であるとはいえず、被告製品の売上高から

控除されるべきものではない。

(イ) 自動車レースでの宣伝広告費




前記のとおり、被控訴人らは、日本において被告製品以外にもVAPE用製品である

「jouz S」やアクセサリーの販売を具体的に予定していた。また、被控訴人らのグ

ループは、「jouz.com」のウェブサイトでは、「jouz S」やアクセサリーも販売し

ており(甲59)、また、中国のウェブサイトでは、「jouz C」「jouz C Pro」と

いう製品を販売し(甲60)、韓国のウェブサイトでは「JOUZ A」という製品も販

売するなど(甲61)、海外では被告製品以外の製品も販売していた。

被控訴人らにおいては、令和元年7月25日に別件仮処分決定が出されなければ、

被告製品以外の製品も販売していた可能性が高く、自動車レースでの宣伝広告は、

被告製品のみならず、被控訴人らが将来販売する可能性のある様々な製品の販売に

資することを期待して、被控訴人ジョウズの知名度やジョウズブランドのイメージ

向上を図るために行われたものであることが明らかである。また、自動車レースで

の宣伝広告が行われた令和元年(平成31年)4月及び5月には、別件仮処分決定

が出される可能性が既に高まっていたもので、仮に被告製品の販売だけを目的にし

ていれば、そのような時期にあえて追加的に多額の費用を支出して自動車レースで

の宣伝広告をしようとはしなかったであろうとみられ、この点からも、将来販売す

る製品やジョウズブランドのイメージ向上や知名度アップを狙ったものであったと

みるのが合理的である。

したがって、自動車レースでの宣伝広告費は、被告製品の販売に直接関連して追

加的に必要となった費用ではなく、被告製品の売上高から控除されるべき経費では

ない。

(2) 推定覆滅事由についての補充主張

ア 原判決は、被告製品が控訴人の保有する別件特許に係る別件発明の実施品で

あることを理由に、
「別件発明は、安価で耐久性のある製品を提供するものとして、

本件各発明と相等しく、被告製品の付加価値を高め、顧客吸引力を有するものとし

て、被告製品の売上げに貢献しているものと認めるのが相当である。」とし、別件

発明による貢献が推定覆滅の事情に当たるとして、5割の覆滅を認めた。しかし、




この判断には、次のとおり誤りがある。

(ア) 原審において、被控訴人らは、損害金の二重払いを認めるべきではないから、

別件特許権の侵害を理由とする差止請求事件において被告製品の製造等が控訴人の

特許権を侵害すると認定されたこと自体をもって損害額の推定の5割は覆滅される

べきであると主張していたにとどまり、被告製品が別件発明の実施品であることが

推定覆滅事由に当たるとの主張はしていなかった。しかるに、被控訴人らが主張し

ていない推定覆滅の事情を認めた点で、原判決には誤りがある。

(イ) 特許法102条2項における推定の覆滅の趣旨は、侵害者が得た利益全額に

ついて特許権者の損害額と推定されるところ、侵害者の側で、侵害者が得た利益の

一部又は全部について、特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主

張立証した場合には、その限度で上記推定は覆滅されるというものである。そして、

侵害者が得た利益の一部又は全部について、特許権者が受けた損害との相当因果関

係が欠ける場合というのは、顧客誘引力ないし顧客の購買動機の形成に影響を与え

る(貢献・寄与する)事情が存することによって、被告製品の販売がなかった場合

にこれに対応する需要が全て原告製品に向かったとはいえない場合をいうと解され

る。

この点、令和元年大合議判決は、「侵害品が他の特許発明実施品であるとして

も、そのことから直ちに推定の覆滅が認められるのではなく、他の特許発明実施

したことが侵害品の売上げに貢献しているといった事情がなければならないという

べきである。」と判示したが、他の特許発明実施したことが侵害品の売上げに貢

献していれば、直ちに推定の覆滅が認められると述べてはいない。特許法102条

2項の推定覆滅の趣旨に立ち返ると、侵害品が他の特許発明実施品であることは、

令和元年大合議判決が例示する「侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の

特徴)」に関連又は類似する一事情となると理解すべきである。すなわち、他の特

許発明の実施により得られる侵害品の性能が顧客誘引力ないし顧客の購買動機の形

成に寄与していることによって、被告製品の販売がなかった場合にこれに対応する




需要が全て原告製品に向かったとはいえない場合に、他の特許発明実施が推定覆

滅事由となり得ると理解すべきである。

本件において、別件発明は、控訴人が有する別件特許権に係る発明であり、被控

訴人らや第三者の特許発明ではない。そして、被告製品は、「iQOS専用たばこ

スティック対応」、「日頃お使いのたばこスティックをそのまま使用可能」、「I

QOS用のたばこスティックに対応しているため、今お使いのたばこスティックを

そのままご使用可能です」などとして、iQOS互換機であることをうたって販売

されており(甲3〜5の各1、甲8の1〜3)、被告製品の需要者は、「iQOS

専用たばこスティック」をそのまま使用できる互換機であるからこそ、被告製品を

購入するのである。したがって、仮に被告製品が存在しなかった場合にこれに対応

する需要が向かう先は、iQOS(原告製品)であり、これ以外にはない。

また、本件各発明は、被告製品の全体について実施されている上、被告製品の説

明においても、「たばこ本来の風味の実現 独自の内部構造で最適な加熱環境を実

現。たばこ本来の風味をお楽しみいただけます」、「精密かつ均一な温度管理と独

自の内部構造に最適な加熱環境を作り出し、たばこ本来の香りと味を忠実に再現」、

「均一な温度管理と最適な加熱環境でたばこ本来の香りと味を忠実に再現」などと

して(甲3〜5の各1、甲8の1〜3)、本件各発明の実施によりもたらされる効

果をうたっている。

そうすると、被告製品が、控訴人の本件各発明に加えて別件発明も実施している

という事情は、侵害者が得た利益の一部又は全部について、特許権者が受けた損害

との相当因果関係が欠けることを示す事情では全くないから、これを推定覆滅の事

情とした原判決の認定には、明らかな誤りがある。

(ウ) なお、二重払いのリスクは、実際には、確定した別件訴訟判決に基づき被控

訴人ジョウズが控訴人に対して特許法102条2項に基づく損害賠償額の全額の支

払を行った後に、本件の確定判決に基づき控訴人が被控訴人ジョウズに対して特許

102条2項に基づく損害賠償額について執行を行った場合に、別件訴訟判決に




基づく既払部分と重複する部分について問題となるにすぎない。仮に、被控訴人ジ

ョウズが控訴人に対して別件訴訟判決に基づき特許法102条2項に基づく損害賠

償債務の履行を行った場合には、その支払われた金額の部分については、控訴人は、

被控訴人ジョウズに対して本件の確定判決に基づく特許法102条2項に基づく損

害賠償請求はできないと解される。また、本件において、被控訴人らの損害賠償債

務は不真正連帯債務の関係に立つから、被控訴人アンカーの特許法102条に基づ

く損害賠償債務は、控訴人が支払を受けた範囲において義務を免れると解される。

したがって、二重払いの問題は生じず、仮にそれが懸念されるのであれば、判決

文において、同じ侵害品に関する侵害者の利益を特許権者の受けた損害と推定する

特許法102条2項の適用においては、同じ侵害者の利益を特許権者の受けた損害

と推定する以上は、損害額の支払がされた部分について、侵害者は損害額の支払を

免れる旨が明示されれば足りる。

しかも、被控訴人ジョウズには、支払の意向も能力もないことが明らかである(甲

45)から、本件で二重払いの問題は生じない。

イ 被控訴人らの補充主張に対する反論

(ア) 顧客にアピールする何らかの優れた性能があるだけで、推定覆滅事由が認め

られるものではない。そして、僅かなレビュー(乙A65、82。なお、乙A65

において、5つ星を付けた投稿者の名称は「A」であり、「加熱式たばこ、デビュ

ーしました。」との記載もユーザーレビューとしては表現が不自然であって、被控

訴人らに勤務していたA’(甲17の2)による投稿の可能性もある。 を根拠に、


被告製品についてうたわれていた連続喫煙機能に顧客吸引力があると認めることは

できない。被告製品の連続喫煙機能に顧客吸引力があるとは認められず、またそれ

が被告製品の売上げに貢献しており、侵害者が得た利益の一部について特許権者が

受けた損害との相当因果関係が否定されるとも認められないから、被控訴人らの主

張は失当である。

(イ) 被控訴人らが主張する原告製品の互換品について、その市場占有率は明らか




でなく、全く知られていない商品であることからすると、販売数量において微々た

るものであることが明らかである。また、特許法102条2項の推定覆滅事由とし

て考慮される競合品は、被告製品の販売がなかったとしたら被告製品の購入者の需

要が向かった先であり、特許権侵害品などの販売が認められない製品ではないこと

が前提となるところ、被控訴人らが主張する原告製品の互換品は、控訴人の特許を

侵害している蓋然性が極めて高い。したがって、被控訴人らが主張する被告製品以

外の原告製品の互換品の存在は、推定覆滅事由に当たらない。

(3) 消費税の取扱いについての追加主張

消費税法基本通達5−2−5を勘案した近時の裁判例の傾向に従い、特許法10

2条2項の損害には、消費税相当額10%が加算されるべきである。

(4) 特許法102条3項の損害金についての追加主張

ア(ア) 控訴人においてマージン計算シートを精査したところ、平成31年4月に

●●●●●●●●●円、同年(令和元年)5月に●●●●●●●円、同年6月に●

●●●●●●●●円の合計●●●●●●●●●円の商品評価損が計上されていた

(甲55の5〜7頁)。商品評価損が計上されたということは、商品の時価が商品

の原価を下回ったということであるが、上記各時点で、特例事情、すなわち被告製

品が災害によって著しい損傷を受けたり、破損や型崩れなどの品質劣化があったり、

流行性が極めて強いなどといった特別な事情も認められないことからすると、上記

商品評価損の計上は、被控訴人らが被告製品を原価を下回る価格で実際に販売した

ためであると合理的に推測できる(甲56)。

(イ) 他方で、令和元年(平成31年)4月ないし6月には、それまで月に数十万

円程度であった「自社サイトその他」の売上げが数百万円と大きく増加しており、

その内訳として、「TOJO」、「over-the-counter」、「square」、「モビリティラ

ンド」、「T&B business」という新しい取引先への売上げが発生していることが判

明した(甲55の1〜4頁)。

このうち、「TOJO」については、ゲーム関連商品、日用雑貨、家電製品等の買取




業者である株式会社TOJOであると推測される(甲57)。「over-the-counter」に

ついては、中古品買取の業界の用語法から、店頭買取と考えられる(甲58の1〜

3)。「square」及び「T&B business」については不明であるが、上記の各点のほ

か、同年4月の時点では別件仮処分決定が出される蓋然性が極めて高くなっており

(特許侵害に係る仮処分事件の実務に照らして、同月頃には裁判所の心証が事実上

明らかになっていたといえる。)、被控訴人らにおいて被告製品を中古品買取業者

に安価で販売することについて強い動機があったと認められることを踏まえると、

「TOJO」と同様の中古品買取業者である可能性が高いと考えられる。なお、「モビ

リティランド」については、被控訴人らが同年5月にSUPER GTの鈴鹿サーキットで

のイベントを計画していたことからすると、鈴鹿サーキット等の運営を行うホンダ

モビリティランド株式会社である可能性が考えられる。

そして、金額的に、新規取引先への売上高が多い同年6月には商品評価損の金額

が大きく、新規取引先への売上高が少ない同年5月には商品評価損の金額が小さく

なっており、金額の連動性が認められる。他方で、被控訴人らがそれまで被告製品

を定価販売していたAmazonや楽天、被控訴人らのオンラインストア(甲3〜9)に

おいて、通常の値引きの範囲を超えて原価割れするような極めて低価格で販売をす

ることは、通常考えられない。

そうすると、上記の同年4月ないし6月の新規取引先への売上げのうち、モビリ

ティランドへの売上げを除く合計●●●●●●●●円(以下「本件新規売上額」と

いう。)については、別件仮処分決定が出されることを予期して被控訴人らが買取

業者に商品原価を下回る価格で被告製品を販売したことに係るものである可能性が

高く、それゆえに、同時期に合計●●●●●●●●●円の商品評価損が計上されて

いると考えるのが合理的であって、他に合理的理由は考えられない。

なお、上記のように、商品評価損を計上するような事象があったということが重

要であって、令和元年度の期末の会計上の処理において商品評価損がどのように処

理されたかは、上記の見方と直接関係しない。また、マージン計算シートでは、あ




くまで上記の商品評価損は発生したものとして計算されており(甲55の5〜7頁、

甲62)、そして、被控訴人らが主張する商品原価●●●●●●●●●円は、マー

ジン計算シートに記載された仕入高の合計額●●●●●●●●●●●円から上記の

商品評価損を含む全体の商品評価損●●●●●●●●●円を引いたものであって、

商品評価損がないとの被控訴人らの主張は誤っている。

イ(ア) 前記アのとおり、被控訴人らが商品原価を下回る価格で被告製品を販売し

た場合、被告製品の販売により被控訴人らに利益は生じないことから、本件新規売

上額に係る被告製品の販売について特許法102条2項に基づく損害額の推定の額

はゼロということになるが、そのような場合には、同条3項に基づく「その特許発

明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」の損害賠償請求が認めら

れるべきである。

そして、その場合には、本来の通常価格で被告製品を販売したとした場合の売上

額を基礎として、実施料相当額を計算すべきである。

(イ) 本件新規売上額●●●●●●●●円及び前記商品評価損●●●●●●●●●

円からすると、本件新規売上額に係る被告製品の本来の商品原価は、その合計額で

ある●●●●●●●●●円となる。

被告製品全体の売上げに対する商品原価の割合は、約●●%(●●●●●●●●

●●●●●●●●●●●●●●円)であり、本件新規売上額●●●●●●●●円を

売上高と商品原価からそれぞれ引いた場合、売上げに占める商品原価の割合は、約

●●%(●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●円)である。

そこで、前記の本来の商品原価である●●●●●●●●●円を●●%で割ると、

本件新規売上額に係る被告製品についての本来の売上額は、●●●●●●●●●円

(1円未満切捨て)となる。

したがって、特許法102条3項に基づく実施料相当額として、前記●●●●●

●●●●円の10%である●●●●●●●●円の損害が認められるべきである。

(ウ) なお、前記(イ)の●●●●●●●●円は、本件新規売上額●●●●●●●●円




の約●●%となるが、別件仮処分決定直前の被告製品の捨て売りの悪質性及び特許

102条4項の趣旨に照らせば、当該金額は、同条3項に基づく実施料相当額

損害額として相当である。すなわち、近々別件仮処分決定が出ることが具体的に予

期されていた直前の時期において、被控訴人らが大量の被告製品を買取業者に商品

原価を著しく下回る価格(本件新規売上額は、本来の商品原価の4分の1以下と考

えられる。)で捨て売りをすることを控訴人が到底許容するはずはなく、当該特許

侵害があったことを前提として侵害者と仮に合意をしたとするならば、本件新規

売上額と同じか、それに近い金額を実施対価として定めたと考えられる。

また、特許権侵害差止めの仮処分決定は債務者に対する影響が大きいため、債

務者に不意打ちとならないよう、事前に裁判所から発令の予定や時期が開示されて

いるとしても、仮処分決定が出されることを予期して債務者が侵害品を捨て売るこ

とは裁判所も想定しておらず、それは、特許権侵害差止仮処分の実効性や制度趣

旨を没却するものであるから、本件新規売上額に係る被告製品の販売は、侵害態様

として極めて悪質であると評価すべきである。

(被控訴人らの主張)

(1) 控除すべき経費についての補充主張

ア 宣伝広告費

(ア) DSPのための費用及び楽天市場での宣伝広告費

被控訴人ジョウズにおいて、被告製品以外の製品は販売されていないから、宣伝

広告の内容のいかんにかかわらず、それが被告製品の販売のために行われたことは、

明らかであって、宣伝広告の内容が不明であっても、それは被告製品の販売のため

のものでしかあり得ない。「jouz S」についてDSPによる広告がされていること

の立証がない以上、DSP広告に被告製品が掲載されていたことが強く推認される。

同様に、楽天市場での宣伝広告も、被告製品のものであることが強く推認される。

したがって、DSPのための費用●●●●●●●●円及び楽天市場での宣伝広告

費●●●●●●●●円を限界利益の算定に当たり控除しなかった原判決には、誤り




がある。

(イ) 自動車レースでの宣伝広告費

多数の商品を販売する会社であれば、ブランドイメージの向上は、特定の製品の

販売のために行われるものとはいいきれないが、被控訴人ジョウズは、被告製品以

外の製品を販売していないから、ジョウズブランドのイメージ向上は、被告製品の

販売のために行われるもの以外にあり得ない。事実、当該自動車レースでは、被告

製品を試用できるブースを設けていたところ、それは、同レースに参戦するチーム

のスポンサーにならなければ実現できない宣伝方法である。

したがって、自動車レースでの宣伝広告費●●●●●●●●●円は、被告製品の

販売のために支払われた経費にほかならないにもかかわらず、これを限界利益の算

定に当たり控除しなかった原判決には、誤りがある。

上記に関し、「jouz S」は、ニコチンもタールも含まない水蒸気を吸引するため

のもので、タバコを吸うための被告製品とは異なるものであるから、別件仮処分決

定と「jouz S」の販売中止との間に一切因果関係はない。また、グループ会社が販

売していたという理由だけで、被控訴人ジョウズが販売するということにはならな

い。

イ 控訴人の補充主張に対する反論

(ア) Amazonでの販売手数料

a 在庫保管手数料や返品手数料

在庫の保管は、販売に向けて必要な行為であり、商品の返品も、Amazonでは原則

30日以内であれば対応しなければならず、一定の数の返品が生じることは避けら

れないものであり、当該返品商品に関しては、不具合がない限り、次の販売に向け

て保管するものであるから、在庫保管手数料や返品手数料は、商品の販売に際して

通常想定される費用であり、商品の販売のために直接必要となった経費にほかなら

ない。なお、「jouz S」は未発売で、その在庫や販売手数料は観念できないから、

販売手数料が被告製品のみの販売に直接必要となった経費であることは、明らかで




ある。

b 令和元年7月のFBA運搬費

控訴人の主張は、単なる推論にすぎない。詳細については、担当者が退職してい

るため不明であるが、FBAマルチチャネルサービスではAmazon以外のe−コマー

スで注文があったときも出荷することが可能であり、その手数料は1商品当たり7

00円となっている(甲53の3・4)。そのため、本件FBA配送代行手数料に

ついても、他のe−コマースで注文があったことによる出荷手数料と考えるのが自

然である。

なお、jouz20 Proは別件仮処分決定の対象となっていないから、当該手数料がど

の商品に関するものか不明であって、それがjouz20 Proである可能性もある以上、

かかる行為を非難されるいわれはない。

(イ) 楽天市場での販売手数料

被控訴人らが被告製品以外の商品を販売していない以上、楽天市場での販売手数

料は、被告製品の販売に直接必要となった経費にほかならない。

(ウ) その他の手数料

控訴人は、被控訴人らにおいて被告製品以外の販売をしていないという事実を無

視している。その他の手数料も、製品として被告製品のみを販売していた被控訴人

らにおいては、被告製品の販売がなければ負担する必要がなかった経費にほかなら

ない。

ウ 宣伝広告費のうちAdvertorialのための費用

確かに、控訴人の指摘する広告では「jouz S」の紹介もされているが、被告製品

の広告もされている。被控訴人らが被告製品のみを販売していたことを考慮すると、

Advertorialのための費用が被告製品の販売なくしては支払われなかった経費であ

ることは、明らかである。

(2) 推定覆滅事由について

ア 連続喫煙機能に魅力を感じて被告製品を購入している需要者がいることは明




らかであり(乙A65、82、86の1〜3)、少なくとも、被告製品の連続喫煙

機能に顧客吸引力があることは明らかであり、原判決の判断には誤りがある。

イ(ア) 令和2年12月の時点で、被告製品以外に原告製品の互換品が少なくとも

7種類販売されていたところ(乙A71)、それら互換品又はその前のモデルの販

売開始時期は、遅くとも次のとおりであった(乙A83の1〜4)。

histaste P6mini(Hitaste P8の前のモデル): 平成30年7月17日

UWOO Y1: 令和元年6月13日

AOKEY iX: 平成30年5月30日

LEAFTEC MINI: 令和元年6月18日

(イ) その他にも、次の原告製品の互換品が次の時期において販売されていた(乙

A84、85)。

iBuddy i1、KeCig2.0Plus、Ocean-C N1、EFOS E1: 平成30年1月15日

FyHit CS Pen: 平成30年2月6日

(ウ) 被告製品が販売されていた時期に、被告製品と同様に原告製品の互換品であ

る前記(ア)及び(イ)の製品が販売されていたことは明らかであるから、市場には、原

告製品のほか多数の競合品が存在していたといえる。それらの競合品は全て、原告

製品の互換品として、インターネット上で検索すればすぐに知り得るものであった。

そうすると、これらの市場占有率は不明であるものの、被告製品が販売されてい

ない場合でも、原告製品ではない互換品を被告製品の需要者が選択する可能性は十

分にあるから、競合品の存在は、控訴人の損害を覆滅する事情に該当する。

ウ 前記ア及びイを踏まえると、別件特許権の侵害の事実も考慮して覆滅割合を

5割にとどめた原判決の判断には誤りがあり、少なくとも損害の8割は覆滅される

べきである。

エ 控訴人の補充主張に対する反論

(ア) 他の特許発明実施により得られる性能が顧客吸引力ないし顧客の購買動機

の形成に寄与している場合、審理対象となる特許発明実施がなくとも当該製品を




購入するという関係にあることは、明らかである。令和元年大合議判決も、被告製

品の販売がなかった場合にこれに対応する需要が全て原告製品に向かったとはいえ

ないときに、他の特許発明実施が推定覆滅事由となり得るなどと判断してはいな

い。

仮に、控訴人の主張を前提とすると、控訴人の製品と被控訴人らの製品が、両方

とも審理対象となっていない他の特許発明実施しており、他の競合品が存在しな

いか、存在したとしても審理対象となっていない他の特許発明実施をしていない

というごく限られた場合にのみ覆滅がされるものとなり、相当ではない。

したがって、被告製品に他の特許発明実施があり、損害の推定の覆滅を認める

には、他の特許発明実施したことが被告製品の売上げに貢献しているといった事

情の立証があれば足りるというべきである。

(イ) 別件発明が顧客吸引力を有することは、原判決が認めたとおりであり、また、

別件訴訟では、被告製品に別件発明が実施されていることを前提として判断がされ、

既に別件訴訟判決は確定している。なお、控訴人は、別件訴訟において、「本件発

明は加熱式タバコシステムの中核的な存在である加熱アセンブリを対象とするもの

であり、それなくしては原告製品も被告製品も成立し得ないから、不可欠な構成要

素である。」と主張しており(乙A80)、控訴人自身、被告製品について別件発

明を実施したことが被告製品の売上げに貢献していることを自認している。

(ウ) 以上のとおり、別件発明は顧客吸引力を有するところ、別件発明の実施に基

づく損害は、別件訴訟判決で既に評価されているから、別件発明の実施の事実は推

定覆滅事由に該当する。

(3) 消費税の取扱いについての追加主張について

争う。

(4) 特許法102条3項の損害金の追加主張について

被告製品については、令和元年(平成31年)4月ないし6月には、それまで販

売していたAmazonや楽天などでも引き続き販売がされ、その売上げが計上されてい




る。そのように、新規取引先以外にも売上げがある状況で、控訴人が新規取引先へ

の売上げのみに限定して検討する根拠は不明である。

また、控訴人の指摘する商品評価損について、被控訴人ジョウズでは、令和元年

の期末の商品評価損調整で、これをゼロとする仕訳を行っている。そのことからも

明らかなとおり、会計上、同年において商品評価損は発生していないから、商品評

価損の計上を理由に原価割れの販売をしていたとする控訴人の主張には、誤りがあ

る。

したがって、控訴人の主張には理由がない。

(5) 弁済

被控訴人らは、控訴人に対し、原判決後の令和4年5月13日、原判決で認容さ

れた2172万7977円及びこれに対する令和2年3月10日から令和4年5月

13日までの遅延損害金の合計2409万4242円を支払ったことから,本件訴

訟に係る被控訴人らの控訴人に対する債務が存在していたとしても、既に弁済によ

り消滅している。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所は、被控訴人らに対して2253万6467円及びこれに対する令

和2年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める限

度で控訴人の本訴請求には理由があると判断する。その理由は、次のとおりである。

2 本件各発明の内容及び争点1から3までについての判断は、次のとおり改め

るほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第4 当裁判所の判断」(以下、単に

「原判決の第4」という。)の1から9までに記載するとおりであるから、これを

引用する。

(1) 原判決60頁8行目の「本件明細書等」を「本件明細書等(甲2)」に改め、

同64頁18行目の「400」の次に (判決注:
「 「400度」の誤記と認める。 」


を加える。

(2) 原判決77頁12行目の「被告ら主張」を「被控訴人らの主張」に、同頁1




3行目の「被告製品等の充足性」を「被告製品の構成要件充足性」に、同頁25行

目の「直ちに」を「直後の」に、原判決78頁6行目の「そのことは、」を「そも

そも構成要件2Cの「前記装置の動作の直後の」における「動作」が起動により開

始されるというべきこと(なお、このことは、構成要件1Cの「前記装置を動作さ

せた直後の」という記載においては、より明確である。)からして、起動までの時

間の長さが」に、同頁10行目の「設定を設定する」を「設定をする」に、同頁2

2行目の「と説明されており」を「旨の説明が記載されており」に、同頁25行目

〜26行目の「乙10の同図面に基づくとしても」を「同設計書に掲載された温度

制御に係る図を踏まえても」にそれぞれ改める。

(3) 原判決80頁9行目の「図8」を「【図8】」に改め、同頁16行目の「記

載も」の次に「、当該例において」を加え、同頁17行目の「上昇する」を「上昇

するものとして示されている」に、同頁21行目の「温度プロファイルは」を「温

度プロファイルの概略図が」に、同頁26行目の「充足性」を「構成要件充足性

にそれぞれ改める。

(4) 原判決97頁5行目〜6行目の「、「加熱制御装置」」を削除し、同110

頁11行目の「殻部1設けられ」を「殻部1に設けられ」に改め、同111頁2行

目の上(図5の下)に次のとおり加える。

「「図2、図3、図6に示すように、本実施形態の制御部3は、ワンチップ型マ

イクロコンピュータSTC12C5204ADを基に実装された制御回路基板であ

り、ワンチップ型マイクロコンピュータSTC12C5204ADに内蔵の8パス、

10ビットのアナログ/デジタル(AD)取得モジュールにより、温度や電圧等の

アナログ信号をデジタル信号に変換可能である。ワンチップ型マイクロコンピュー

タSTC12C5204ADは、そのピン4がLED3に接続され、また、ピン5

がLED4に接続されている。図示では制御スイッチ12はS1であり、ワンチッ

プ型マイクロコンピュータSTC12C5204ADのピン23に接続されている。

ワンチップ型マイクロコンピュータSTC12C5204ADは、ピン26(CO




NT1)を介して、スイッチ回路31に接続され、スイッチ回路31を介して電気

加熱片41を制御する。(段落[0032]」
」 )




図6 」

(5) 原判決112頁8行目の「役割を担う。」の次に「」」を加え、同115頁

21行目〜22行目及び同116頁11行目〜12行目の各「配置された電気加熱

片41及び天火4」をいずれも「構成された電気加熱片41を含む天火4」に、同

頁15行目の「電気回路B」及び同頁17行目の各「電気回路B」をいずれも「ス

イッチ回路31を備える制御部3」に、原判決117頁3行目の「気化式電気タバ

コ」を「気化式電子タバコ」に、同頁4行目〜5行目の「「電気加熱片41及び天

火4」、「バッテリ2」」を「「電気加熱片41を含む天火4」、「前記電気加熱

片41に電力を供給するためのバッテリ2」」に、同頁9行目の「気化式電気タバ

コ」を「気化式電子タバコ」に、同頁10行目の「「電気加熱片41」」から11

行目の「「電気回路B」」までを「「電気加熱片41を含む天火4」、「前記電気

加熱片41に電力を供給するためのバッテリ2」、「スイッチ回路31を備える制

御部3」」にそれぞれ改め、同頁13行目の「、「加熱要素」」を削除し、同12




0頁7行目の「発明とは」の次に「、加熱要素の制御方法や技術思想において」を

加える。

(6) 原判決124頁15行目の「判決」を「特別部判決」に改め、同125頁6

行目の「5】」の次に「)」を、同頁7行目の「プロファイル」の次に「の例」を

それぞれ加え、同頁12行目の「甲7公報」を「乙7公報」に、同頁13行目の「甲

8公報」を「乙8公報」にそれぞれ改め、原判決126頁10行目の「「第3段階

以降の段階」は」の次に「、その主張内容に照らし、正確には、「第3段階の次の

段階(いわば第4段階)以降の段階」をいうものと解されるところ、そのような段

階は」を、同頁14行目の「上記のとおり、」の次に「被控訴人らが主張する」を

それぞれ加え、同頁19行目の「第3段階以降の段階」を「前記「第3段階以降の

段階」」に改める。

(7) 原判決127頁23行目〜24行目の「当業者が、明細書の発明の詳細な説

明の記載及び」を「実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明

記載について、当業者において、その記載及び出願時の」に改める。

(8) 原判決128頁11行目の「及び」の次に「被告製品で用いられている」を

加え、同頁16行目の「前提事実(1)」を「訂正して引用した原判決の第2の1(1)

の事実」に改め、同頁23行目の「、13の1・2・4」を削除し、原判決129

頁10行目の「被告ジョウズの住所」を「「会社概要」には被控訴人ジョウズの商

業登記簿上の本店所在地が記載されていた一方、「営業時間について」及び「返品

(返金・交換)について」と題する項目においては、いずれも被控訴人ジョウズの

所在地」に、同頁11行目の「住所」を「当時の本店所在地」に、同頁15行目の

「住所地は、同住所に」を「「住所」として記載されていた(平成30年11月5

日当時)のは、上記場所に」にそれぞれ改め、同頁21行目の「11、」を削除す

る。

(9) 原判決130頁24行目〜25行目の「両社には緊密な一体関係がある」を

「両社の間には、被控訴人アンカーが被控訴人ジョウズの経営や事業運営を積極的




に支援し、あるいはそれらに対して強い影響力を有していたとみるべき事情がある」

に、同131頁4行目の「通常の事業活動をしていたものと認めることはできない」

を「被告製品の販売等の全てを独自に行うに足りる事業活動をしていたものとは認

め難い」に、同頁6行目の「受付」を「受付端末で表示される登録者」にそれぞれ

改め、同頁7行目〜8行目の「事業活動を」の次に「独力で」を、同頁12行目の

「認められる」の次に「というべき」をそれぞれ加え、同頁18行目の「被告アン

カーの」を「被控訴人アンカーに」に改める。

(10) 原判決132頁1行目の「被告ら」を「被控訴人アンカー」に、同頁2行目

及び13行目の各「被告らは」をいずれも「被控訴人アンカーは」に、同頁20行

目の「両社には緊密な一体関係があること」を「両社の間には、被控訴人アンカー

が被控訴人ジョウズの経営や事業運営を積極的に支援し、あるいはそれらに対して

強い影響力を有していたとみるべき事情があること」にそれぞれ改め、同頁25行

目末尾の次に「被控訴人らは、互いに協力しながら被告製品の販売等に関する業務

を行っていたものといえ、そうである以上、当該業務以外の業務においては被控訴

人らの間にそのような協力関係がなかったとしても、そのことは上記判断を左右す

るものではない。」を加える。

3 争点4(控訴人の損害額)について

(1) 特許法102条2項の損害金について

次のとおり改めるほかは、当事者の当審における補充主張及び追加主張に対する

判断を含め、原判決の第4の10(1)に記載するとおりであるから、これを引用する。

ア 原判決133頁14行目の「(ワ)」を「(ネ)」に、同頁17行目の「売

上戻し高」を「売上戻り高」に、同頁19行目の「売上戻し高として計上した額」

を「売上戻り高●●●●●●●●●円」にそれぞれ改める。

イ 原判決134頁21行目冒頭から同頁25行目末尾までを次のとおり改める。

「(a) 証拠(甲A43(「65」行「AT」列))及び弁論の全趣旨によると、

被控訴人ジョウズは、ECサイトや自社サイトで平成30年6月頃から令和元年1




2月までの間に被告製品を販売するための手数料等として、合計●●●●●●●●

●円を支払ったものと認められる。被控訴人らが被告製品以外の製品を販売しなか

ったこと(弁論の全趣旨)も踏まえると、上記手数料等については、特段の事情が

ない限り、被控訴人らにおいて被告製品を販売することによりその販売に直接関連

して追加的に必要となった経費に当たるとみるのが相当である。

なお、同じく証拠(甲A43)によると、勘定項目に従った上記金額の内訳は、

次のとおりであると認められる。

Amazon seller central ●●●●●●●●●円

Amazon pay ●●●●●●円

Rakuten ●●●●●●●●円

Jouz.com ●●●●●●●円

Veritrans ●●●●●●●円

Bar Codes Talk ●●●●円

Score Japan ●●●●●●●円

square ●●●●●●円

TDL express japan ●●●●●●円

net protecions ●●●●●●●円」

ウ 原判決134頁26行目の「これに対し」を「Amazon seller centralに係る

手数料等について」に改め、同135頁3行目の「、弁論の全趣旨によれば」を削

除し、同頁4行目の「生ずるのは」を「一定程度生ずることが一般に」に、同頁5

行目の「製品は販売するものではないため」から7行目の「いえるから」までを「製

品を販売しなかった(弁論の全趣旨)ところ、証拠(甲32、乙A42、45〜4

8、51)によると、平成31年4月の時点で同年(令和元年)夏に新製品である

「jous S」の発売が予定されていたことは認められるものの、当該製品について返

品が生じたことはもとより在庫の保管が必要となったことを認めるに足りる証拠も

ないところであって、他に被告製品以外のものについて在庫の保管や商品の返品に




係る手数料が生じたものとしてこれを差し引くべきというに足りる事情も認められ

ないから、被控訴人ジョウズの負担した在庫の保管や返品に係る手数料は」にそれ

ぞれ改める。

エ 原判決135頁11行目冒頭から24行目末尾までを次のとおり改める。

「(c) 同じくAmazon seller centralに係る手数料等について、控訴人は、令和元

年7月のFBA運搬費は異常に高額であり、少なくとも本件FBA配送代行手数料

●●●●●●●●円は控除されるべきものではないなどと主張する。

そこで検討するに、証拠(甲10、甲A38、44、甲46、47、51、52、

53の1〜4、54の1〜5、甲55、62、乙25、26)及び弁論の全趣旨に

よると、@令和元年7月分のAmazonのFBA手数料(Amazon FBA/handling charge)

は●●●●●●●円、FBA運搬手数料(Amazon FBA/haulage express)は●●●

●●●●●円であったこと、A平成30年7月から令和元年12月までの期間中、

FBA運搬手数料又はこれに相当し得るとみられる費用は、平成30年11月から

令和元年9月までの間において計上されているところ(ただし、平成30年11月

及び12月においては「Amazon /FBA haulage handling charge」である。)、同年

11月分及び12月分は●●●●円程度、平成31年1月分は●●●●円余りであ

ったものの、同年2月分から同年(令和元年)6月分まではいずれも●●●●円に

満たない額となっていたにもかかわらず、同年7月分として上記のとおり急激にそ

の額が増大し、その後、同年8月分として●●●円余り、同年9月分として●●●

円余りが計上された後、同年10月分以降は、FBA手数料とともにゼロ円となっ

たこと、B同年4月において、「商品評価損」●●●●●●●●●円の計上と「期

末商品棚卸高」の●●●●●●●●円の減少の計上により、「商品」が●●●●●

●●●●円減少し、同年5月において、「商品評価損」●●●●●●●円の計上と

「期末商品棚卸高」●●●●●●●●円の計上により、「商品」が●●●●●●●

●円増加し、同年6月において、「商品評価損」●●●●●●●●●円の計上と「期

末商品棚卸高」の●●●●●●●●円の減少の計上により、「商品」が●●●●●




●●●●円減少したこと、C同年7月30日及び同月31日の2日間に、「Fjp-

20190724PATENT-14」などの符号(末尾の数字のみ、3〜17の範囲で異なっている。)

のある一律●●●円のFBA配送代行手数料(FBA Per Unit Fulfillment Fee)が

●●●●件計上され、その合計額は●●●●●●●●円に上ったこと(本件FBA

配送代行手数料)、D同月におけるFBA配送代行手数料の支出において、そのよ

うに同一の符号をもって一律の金額で同時期に多数のものが計上されている例は、

他に認め難いこと、E控訴人は、別件仮処分決定に係る特許権侵害差止仮処分申立

事件(東京地裁民事第29部にて審理)において、令和元年7月11日付けで、被

控訴人アンカーに対する申立てを取り下げ、その後、同月25日、別件仮処分決定

がされたこと、F控訴人は、別途、被控訴人らを債務者として、特許権侵害差止

処分命令の申立て(東京地裁平成30年(ヨ)第22123号(東京地裁民事第4

0部にて審理))をしていたところ、当該事件で、被控訴人らは、令和元年9月3

0日付けの準備書面をもって、被控訴人ジョウズにおいては同月末までに被告製品

全ての在庫がなくなる予定であることから、保全の必要性がない旨を主張し、その

後、それを疎明する資料として、被控訴人ジョウズが同月にAmazonに対し被告製品

の所有権放棄の依頼をしたことを示す書面を提出した上、同年11月5日付けの準

備書面をもって、保全の必要性がない旨を改めて主張したことが認められる。

前記@〜Fの事情(なお、前記Cについて、「20190724PATENT」の符号は、令和

元年7月24日付けのもので、特許に関連するものであることを強くうかがわせる

ものである。)のほか、AmazonのFBAサービスに係る証拠(甲53の1〜4。余

剰在庫の管理等のために、Amazonフルフィルメントセンターに保管されている在庫

について、出品者、出品者の倉庫、仕入れ先又は販売業者に返送したり、その所有

権を放棄したりする旨を依頼するサービスがあることなどが記載されている。や、


配送手数料等についてはその対象となる行為が行われた後に請求がされるのも合理

的であると解され、本件FBA配送代行手数料が平成31年(令和元年)4月ない

し6月の在庫に係る会計上の処理と関連している可能性があることなども考慮する




と、本件FBA配送代行手数料●●●●●●●●円については、別件仮処分決定の

発令に関連して、また、前記Fの仮処分命令申立事件に対する対応やその準備等の

ために、大量の被告製品について一律に、通常の販売とは異なる特別の取扱いがさ

れたことから発生したものであることが強く推認され、この推認を覆すに足りる事

情は見当たらない。

したがって、Amazon seller centralに係る手数料等のうち、本件FBA配送代行

手数料●●●●●●●●円については、被告製品の販売に直接必要となった経費と

して控除すべきものではなく、控除が認められる支払手数料額は●●●●●●●●

●円となる。

上記に反する被控訴人らの主張は、いずれも採用することができない。なお、被

控訴人らは、当審で追加された特許法102条3項の損害に係る控訴人の主張に対

し、前記Bの商品評価損については、令和元年の期末の商品評価損調整でゼロとす

る仕訳を行ったなどと主張するところ、そのような事実を認めるに足りる証拠はな

いものの、仮に、そのような事後的な調整の事実があったとすれば、そのことは、

本件FBA配送代行手数料の支出が被告製品の販売とは直接関係なくされたもので

あるとの前記推認を裏付けるものであるとみることができる。」

オ 原判決136頁2行目の「認められることからすると」を「認められること

に加え、初期登録費用が6万円(税別)にとどまることや、月額登録費用も5万円

(税別)にとどまり、かつ、その名称のとおり月ごとに発生するものとみられるこ

と(甲A37。ただし、後者について支払方法は半年ごとの2回分割払であったこ

とがうかがわれる。)のほか、本件で問題となる被告製品の販売期間が平成30年

6月頃から平成元年12月頃までの約1年半にわたっていること(なお、控訴人は、

月額登録費用については2年分が含まれていると主張するが、控訴人が平成30年

6月に初期登録費用及び月額登録費用の支払があったことを裏付けるものとして提

出する証拠(甲49)からは、令和2年1月以降分の月額登録費用の支払がされた

ことはうかがわれない。)を考慮すると」に改め、同頁4行目の「、被告製品を」




から5行目の「いえるから」までを削除する。

カ 原判決136頁18行目の「被告製品の」から19行目末尾までを「被告製

品の販売に当たり支出されたものとみるのが合理的なものである。なお、証拠(甲

59〜60)によると、令和3年11月29日時点において、 jouz.com」 jouz.cn」
「 「


及び「jouz.kr」のウェブサイトには、「Jous S」、「jouz C Pro」、「jouz C」、

「JOUZ A」等の販売に係る表示がされていたものとみられるが、被控訴人らが被告

製品以外の製品は販売しなかったこと(弁論の全趣旨)に加え、本件で問題となっ

ている手数料の支出に係る被告製品の販売期間(平成30年6月頃から令和元年1

2月まで)に照らし、上記の点は、前記各支払手数料が被告製品の販売以外のため

に支出されたものを含むことをうかがわせるものではない。その他、控訴人が指摘

する事情も、上記認定を左右するものではない。」に改める。

キ 原判決137頁12行目の「ものがあり」の次に「、また、特定の商品の販

売を直接促進するためのものであっても、既に発売された商品を対象とするものの

ほか、発売予定の商品を対象とするものなどもあるのであるから」を加え、同13

8頁6行目〜7行目の「いえるから」から同行目末尾までを「みることが可能なも

のであるといえる。」に改め、同頁14行目〜15行目の「場合には」の次に「も

ちろん、被告製品の紹介のほかに被控訴人ジョウズの説明や新製品の情報等を含む

場合、あるいは被告製品自体の紹介はなくとも被告製品と同じ「jouz」シリーズの

商品の紹介等を含む場合、更には被控訴人ジョウズにおいて被告製品以外の製品は

販売していなかったこと(弁論の全趣旨)からすると、被告製品の紹介がなく単に

被控訴人ジョウズの説明等を内容とする場合であっても」を加え、同頁18行目の

「その費用は」から23行目末尾までを「控訴人が指摘するような事情から直ちに、

前記費用が被告製品の販売に直接必要なものであることが否定されるものではない

というべきである。 に改め、
」 同頁24行目冒頭から末尾までを次のとおり改める。

「その上で、前記各証拠に基づき具体的に検討すると、前記費用に係る広告等の

内容には、専ら被告製品の紹介等のためと認められるもの(乙A41、43、49、




50、53。なお、乙A43、49については、被告製品1ないし2の限定デザイ

ンの宣伝である。)のほか、併せて「jouz S」の発売予定等を告知したり、被控訴

人ジョウズがカーレースにスポンサーとして参加しているなどとして被控訴人ジョ

ウズ自体の説明をしたりするもの(乙A42、44〜48、52)や、むしろ「jouz

S」の紹介を中心とするもの(乙A51)があるところ、それらについても前記の観

点から被告製品の販売からみた場合の必要性を否定することはできないものの、被

告製品と同シリーズであるとはいえ「jouz S」の発売に向けての先行投資としての

宣伝費用に当たる部分の全てについてまで、単に結果的に被控訴人ジョウズにおい

て被告製品以外を販売しなかったとの事情をもって、被告製品の販売と直接関連し

て追加的に必要となったものとみるのは相当といえない。

以上の諸点のほか、同じく前記各証拠からすると平成31年4月の広告活動にお

いて特に「jouz S」の露出が顕著であることやその記事における割合、前記費用に

同月より後の費用は含まれていないこと、同月以降も同年(令和元年)12月まで

専ら被告製品が販売されるにとどまったこと等も考慮し、前記●●●●●●●●円

から、同年4月の広告活動に係る費用●●●●円(乙A54の1枚目・2枚目、乙

A57)の2割である●●●●円を差し引いた●●●●●●●●円の範囲で、被告

製品の販売と直接関連して追加的に必要となった費用として認めるのが相当であ

る。」

ク 原判決139頁2行目〜3行目の「DSPが、被告製品の販売との関連性が

明らかであるとはいえず」を「前記DSPのための費用について、被控訴人ジョウ

ズにおける広告のために用いられたものであって、一定の範囲では被告製品の販売

との関連性が推認されるとまではみ得るものの、それが具体的に被告製品の販売に

当たりどのように利用されたのかすらうかがうことができない。そのような点のほ

か、前記のとおり、被控訴人ジョウズにおいては「jouz S」の広告等も行っていた

ものであることも考慮すると」に改め、同頁12行目〜13行目の「証拠はなく」

の次に「、先にDSPのための費用について判断したのと同様」を加える。




ケ 原判決139頁22行目の「しかしながら、」を削除し、同頁23行目の「被

告ジョウズは、」の次に「平成31年4月から開催された」を加え、原判決140

頁5行目の「スポンサーに」を「スポンサーに!!」に改め、同頁6行目の「「」

の次に「今年から新たに」を、同頁11行目の「上記認定事実によれば」の次に「、

他方で、上記記事の中では被告製品1の紹介もされていること(乙A60)を考慮

しても」をそれぞれ加え、同頁14行目の「認められ」から15行目の「そのため」

までを「みるのが相当であり、それがその後の被告製品の売上げに一定の範囲で影

響を及ぼしたであろうことは推認し得るとしても、被告製品の販売に具体的にどの

ように影響を及ぼしたかは不明である。そのことと、前記のとおり支払われた費用

の内容や、その時期が、前記のとおり「jouz S」の露出が顕著となった時期とほぼ

重なるものであることも考慮すると、自動車レースでの宣伝広告費は」に改める。

コ 原判決140頁23行目の「●●●●●●●●円」 「●●●●●●●●円」


に改め、同頁25行目冒頭から原判決141頁2行目末尾までを次のとおり改める。

「f 以上によれば、被告製品の売上高から控除すべき経費は、●●●●●●●

●●●●円(●●●●●●●●●円+●●●●●●●●円+●●●●●●●●●円

+●●●●●●●●円+●●●●●●●●円)となる。」

サ 原判決141頁20行目冒頭から22行目末尾までを次のとおり改める。

「以上によれば、4097万2935円(●●●●●●●●●●●●●●●●●

●●●●●●●円)が、被控訴人らの本件特許権の侵害行為により控訴人が被った

損害の額と推定される。」

シ 原判決141頁25行目から26行目の「同条1項ただし書」を「令和元年

法律第3号による改正前の特許法102条1項ただし書」に、同142頁5行目か

ら6行目の「特許法102条1項ただし書の事情と同様、同条2項についても」を

「同ただし書の事情と同様、特許法102条2項についても」に、同頁13行目の

「前掲知財高裁特別部判決参照」を「令和元年大合議判決参照」にそれぞれ改め、

同頁26行目の次に改行して次のとおり加える。




「これに対し、被控訴人らは、連続喫煙機能に魅力を感じて被告製品を購入して

いる需要者がいることが明らかであり(乙A65、82、86の1〜3)、同機能

に顧客吸引力があることは明らかであると主張する。しかし、上記各証拠を含め、

本件全証拠をもってしても、同機能が、顧客においてどの製品を購入するかに当た

り比較衡量する一事情であるという意味において相応の顧客吸引力を有するもので

あること自体は認められることを超えて、被控訴人らが得た利益と控訴人が受けた

損害との相当因果関係を部分的にでも阻害する程度に被告製品の売上げに貢献して

いたとの事情までを認めるには足りない(そもそも連続喫煙機能の優位性について

は、その有無のみならず、連続喫煙可能回数が尽きてから次に喫煙が可能となるま

でにかかる時間や手間等も踏まえなければ評価し難いものと解されるという点をお

くとしても、例えば、証拠(乙A68、69)によると、連続利用回数が多いこと

は被告製品3の利点である一方で、重さ、Bluetooth連携ができる端末の種類、価格

といった点で難点もある旨が指摘されていたことが認められ、顧客においても、そ

れらの要素が同列の比較対象として理解されていたことがうかがわれるところであ

る。)。」

ス 原判決143頁8行目の「販売時期、」を削除し、同頁11行目末尾の次に

続けて「被控訴人らは、当審において追加の証拠(乙A83の1〜4、乙A84、

85)を提出するが、それらの証拠を併せて考慮しても、被告製品が販売されてい

た時期に原告製品の互換機が複数販売されていたという事実を超えて、市場におい

て、被告製品と競合関係にあり、それゆえ被告製品がなかったとすればその需要が

原告製品ではなく他の互換機に向かったであろうというべき事情を認めるには足り

ない。」を加える。

セ 原判決144頁9行目冒頭に「a 」を加え、同頁21行目の「別件訴訟に

おいて」から25行目末尾までを「別件発明が被告製品の売上げに貢献した部分に

ついて推定覆滅の事情として考慮することを超えて、別件訴訟判決で認容された5

185万2556円について覆滅を認めるべきであると主張する。しかし、別件訴




訟判決においてどのような金額が認定されようと、これに基づき実際に損害の?補

が行われた場合は別として、そのことによって、被告製品の販売によって控訴人が

被った損害が何ら左右されるものではない。また、別件訴訟判決における認容額を

基準に本件における覆滅の程度等を検討することは、訴訟物を異にし、主張立証の

内容や裁判所の判断も異なる別件訴訟と本件訴訟との間で、別件訴訟判決の理由中

の判断に事実上の拘束力を認めるものともなりかねないものであって、相当でない。

さらに、別件訴訟判決は、被控訴人ジョウズの控訴人に対する損害賠償義務を認め

たものにすぎないところ(乙A80)、そのような別件訴訟判決によって被控訴人

アンカーの損害賠償債務の減少を認めることは、共同不法行為者として被控訴人ア

ンカーが負担すべき被控訴人ジョウズの資力不足等の危険を控訴人に転嫁するもの

であって、到底認められるものではない。」に改め、同頁26行目末尾の次に改行

して次のとおり加える。

「b(a) これに対し、控訴人は、そもそも被控訴人らにおいて被告製品が別件発

明の実施品であることが推定覆滅事由に当たるとの主張をしていなかったことから

原判決には誤りがあると主張するが、別件訴訟判決において被告製品の製造等につ

いて別件特許権の侵害が認められ損害賠償請求が認められた旨をいう被控訴人らの

主張により、被告製品が別件発明の実施品であるという事実は明確に表れているの

であって、控訴人の上記主張は採用することができない。

(b) また、控訴人は、被告製品の販売がなかった場合にこれに対応する需要が全

て原告製品に向かったとはいえないときに、他の特許発明実施が推定覆滅事由と

なり得ると理解すべきであるなどと主張する。

しかし、控訴人の別件特許権に係る別件発明が被告製品において実施され、その

ことが被告製品の売上げに貢献しているものと認められる以上、当該売上げ部分に

係る控訴人の損害と本件特許権の侵害との相当因果関係は否定されることから、そ

のことを推定覆滅事由と解することが不合理であるというべき事情はなく、控訴人

の上記主張は、この判断を左右するものではない。控訴人の主張は、「被告製品の




販売がなかった場合」として、少なくとも実質的には、本件各発明の実施がなかっ

たことのみならず、別件発明の実施がなかったことも同時に前提とするものと見ざ

るを得ないが、本件特許権の損害の算定に当たって前提として想定すべき事実状態

は、本件特許権の侵害がなかったこと、すなわち被告製品において本件各発明の実

施がなかったことであり、それに加えて、別件特許権の侵害がなかったことまでも

が損害の算定の前提となる事実状態として想定されるものではない。

(c) なお、二重払いの問題が生じないことについて控訴人が主張する点は、被告

製品が別件発明の実施品でもあるという事実に何ら影響を与えるものではなく、以

上の認定判断を左右するものではない。」

ソ 原判決145頁6行目冒頭から8行目末尾までを次のとおり改める。

「 本件特許権の侵害について特許法102条2項により算定される損害額は、

2048万6467円(4097万2935円×(1−0.5)(1円未満切捨て。

以下同じ。))となる。

なお、控訴人は、特許法102条2項の損害について、消費税相当額10%が加

算されるべきであると主張するが、弁論の全趣旨によると、本件において被控訴人

らが受けた利益の額を算定する際に基礎とした売上高等は消費税相当額を含んだも

のとみられる(訂正して引用した原判決の第4の10(1)ア(ウ)参照)本件において、

上記金額に消費税相当額を加えるべき理由は認め難い。」

タ 原判決145頁15行目の「本件各発明」から16行目の「数量」までを「本

件各発明の貢献ではなく別件発明の貢献によって被控訴人らが得たというべき利益

に係る被告製品の販売」に改め、同頁18行目の「べきである」の次に「(知財高

裁令和2年(ネ)第10024号同4年10月20日特別部判決参照)」」を加え、

同行目の「当該数量」を「覆滅部分」に改める。

(2) 特許法102条3項の損害金について

ア 原判決146頁13行目〜14行目の「前掲知財高裁特別部判決参照」 「令


和元年大合議判決参照」に、同頁18行目及び20行目の各「ロイヤリティ率」を




いずれも「ロイヤリティ料率」に、同頁25行目の「10%」を「10%を下らな

いもの」にそれぞれ改め、イのとおり控訴人の当審における追加主張に対する判断

を加えるほかは、原判決の第4の10(2)に記載するとおりであるから、これを引用

する。

イ 控訴人の特許法102条3項の損害金の追加主張について

控訴人は、本件新規売上額については、被控訴人らが買取業者に商品原価を下回

る価格で被告製品を販売したことに係るものとみるのが合理的であるから、本来の

通常価格で被告製品を販売したとした場合の売上額について、特許法102条3項

の損害が認められるべきである旨を主張する。

この点、証拠(甲47)によると、令和元年(平成31年)4月ないし6月に控

訴人の主張する商品評価損の計上が認められることは、訂正して引用した原判決の

第4の10(1)ア(ウ)c(c)で認定したとおりである。

しかし、同じく証拠(甲47)によると、平成30年の決算調整としても、商品

評価損●●●●●●●●●円が計上されている。また、証拠(甲32、乙A42、

45、47、48、51)によると、訂正して引用した原判決の第4の10(1)ア(ウ)

e(宣伝広告費)でも触れたように、平成31年4月は、被控訴人ジョウズが同年

夏に販売開始予定とされていた新製品「jous S」を広く広告するなどしていた時期

で、既存の商品の市場価値に変動があり得た時期である。そして、同年(令和元年)

7月末には、訂正して引用した原判決の第4の10(1)ア(ウ)c(c)で認定したとお

り、本件FBA配送代行手数料に係る取引が●●●●件計上されたところであり、

その計上に関連して同月前後に他の時期とは異なる何らかの会計上の処理がされた

可能性も否定できない。

それらの事情も考慮すると、同年4月ないし6月の商品評価損の計上について、

控訴人が指摘する証拠(甲55〜57、58の1〜3)を踏まえても、それが商品

原価を下回る価格で被告製品が販売されたことによるものであるとの事実を推認す

ることまではできず、他に当該事実を認めるに足りる証拠はないから、控訴人の上




記主張は、その余の点について判断するまでもなく、採用することができない。

(3) 総括

ア 以上の認定判断と異なる控訴人及び被控訴人らの主張は、いずれも採用する

ことができない。

そうすると、特許法102条2項の損害金の額2048万6467円が、同条3

項に係る損害金の額1975万2707円より高いから、同条2項に係る損害金の

額をもって控訴人の損害額と認めることになる。

そして、被控訴人らによる本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士・

弁理士費用については、本件訴訟の難易度、審理の経過、認容する請求の内容その

他本件において認められる諸般の事情を考慮して、205万円と認めるのが相当で

ある。

したがって、控訴人の損害額は、合計で2253万6467円となる。

イ 被控訴人アンカーは、控訴人に対し、原判決の言渡し後の令和4年5月13

日、原判決で認容された2172万7977円及びこれに対する令和2年3月10

日から令和4年5月13日までの遅延損害金として、2409万4242円を支払

ったと主張し、これに証拠(乙A81)を提出する。

しかし、証拠(甲45)及び当審における被控訴人らの主張を踏まえると、被控

訴人アンカーによる上記支払は、任意弁済ではなく、原判決の仮執行によるものと

みるべきであるから、実体法上の弁済として考慮しない。

ウ したがって、控訴人の本訴請求は、被控訴人らに対し、2253万6467

円及びこれに対する令和2年3月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延

損害金の連帯支払を求める限度で理由があるというべきである。

第4 結論

よって、控訴人の本訴請求は、前記第3の3(3)の限度で理由があるから認容し、

その余は理由がないから棄却すべきであるところ、これと異なる原判決は一部失当

であって、控訴人の控訴は一部理由があり、被控訴人らの附帯控訴は理由がないこ




とから、控訴人の控訴に基づき原判決主文1、2項を変更し、被控訴人らの附帯控

訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部




裁判長裁判官

本 多 知 成




裁判官

中 島 朋 宏




裁判官

勝 又 来 未 子





(別紙)

当事者目録




控訴人兼附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

フィリップ モーリス プロダクツ ソシエテ アノニム




同訴訟代理人弁護 士 本 多 広 和

江 幡 奈 歩

同訴訟代理人弁理 士 石 原 俊 秀



被控訴人兼附帯控訴人 ジョウズ・ジャパン株式会社

(以下「被控訴人ジョウズ」という。)




被控訴人兼附帯控訴人 アンカー・ジャパン株式会社

(以下「被控訴人アンカー」という。)



上記両名訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

木 村 剛 大

藤 沼 光 太

平 田 慎 二