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関連審決 不服2021-5843
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事件 令和 4年 (行ケ) 10052号 審決取消請求事件
5
原告 エバートロンホールディングス ピーティーイー リミテッド
同訴訟代理人弁護士 関裕治朗 10 同訴訟代理人弁理士 米山毅
被告特許庁長官
同 指定代理人門前浩一
同 関根裕 15 同亀ヶ谷明久
同 井上千弥子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/02/16
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2021-5843号事件について令和4年1月6日にした審25 決を取り消す。
事案の概要
1 本件は、特許拒絶査定の不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) ? 原告は、平成31年7月4日、名称を「水分制御装置、水分制御方法、プ ログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備」とする発明に 5 ついて、特許出願(特願2019-536612号。平成30年12月31 日〔優先権主張 平成29年12月31日 平成30年2月9日 平成30 年7月30日、平成30年7月31日、日本国〕を国際出願日とするPCT /2018/048626号を国内移行したもの。 「本件出願」 以下 といい、
これに基づく特許を「本件特許」という。請求項の数・下記本件補正後は110 6)をし、令和元年8月26日付けの拒絶理由通知を受けたことから、令和 2年3月2日、手続補正書を提出したが(以下、この手続補正書による補正 を「前件補正」という。 、令和3年1月29日付けの拒絶査定を受けた(以 ) 下、この拒絶査定を「本件拒絶査定」という。 。
) ? 原告は、令和3年5月6日、拒絶査定不服審判請求をし、同日、手続補正15 書を提出したところ(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」とい う。 、特許庁は、上記請求を不服2021-5843号事件として審理を行 ) い、令和4年1月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以 下「本件審決」という。附加期間90日)をし、その謄本は、同月25日、
原告に送達された。
20 ? 原告は、令和4年5月25日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 前件補正後の請求項1の発明(以下「本願発明」という。)及び本件補正後の 請求項1の発明(以下「本件補正発明」という。)に係る特許請求の範囲の記載25 は、次のとおりである。
? 本願発明 2 少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定 の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から電場、磁場、電磁場、
及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを発生させ、
前記電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分の界面張力を低 5 下させた状態とするか、又は、
前記電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分が連珠配列とな るように結合状態とするか、
の少なくともいずれか一方の状態とすることを特徴とする水分制御装置。
? 本件補正発明(下線部は本件補正による補正箇所)10 少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定 の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁 場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電 場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させ15 ることにより、前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態 とすることを特徴とする水分制御装置。
3 本件審決の理由の要旨 本件審決は、@本件補正発明は、本件出願の優先日前に頒布等された甲第1 号証「特開2016-129672号公報」本件審決における引用例3であり、
(20 以下「甲1文献」という。)に記載の発明(以下「引用発明」という。)と技術 常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件補 正は独立特許要件(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7 項)を欠くとして、本件補正を却下し、A本願発明の発明特定事項を全て含み、
さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が容易に発明をするこ25 とができたものであるから、本願発明も同様に容易に発明をすることができた ものであるとして、本件出願を拒絶すべきものと判断した。その判断の要旨は 3 以下のとおりである。
? 引用発明の認定 食用油をためて食物を加熱調理するための貯油槽と、
貯油槽に対向して立設される対向平板アンテナと、
5 対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電 磁波を発生させるために対向平板アンテナを駆動する駆動部と、
貯油槽にためられた食用油を摂氏120度から摂氏200度に加熱して食 物を調理するための加熱部と、
駆動部の出力の大小を制御する出力制御部を有し、
10 駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部 をさらに有するフライヤー。
? 本件補正発明と引用発明との一致点 少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定 の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁15 場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電 場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させ る装置。
? 本件補正発明と引用発明との相違点20 本件補正発明は、「物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状 態とすることを特徴とする水分制御装置」であるのに対して、引用発明は、
「フライヤー」である点。
? 相違点の容易想到性 ア 本件審決第2の3?ア(21頁ないし22頁)の判断(以下「観点アの25 判断」という。) 甲1文献には引用発明に係るフライヤーが「そうすると粒状の水に接 4 した親水基が振動するために徐々に水粒が細粒化されてゆく。 【007 ( 」 9】)という作用を有することが記載されている。
前記 の説明は、甲第2号証「特開昭48-23044号公報」 (以下 「甲2文献」という。)に「前記乳化は連続相と不連続相となる2つの液 5 体の界面に適当な電圧が加わると、連続相に向って1つ又はそれ以上の 不連続相の液体の突起が生じ、この突起の尖端から分散が開始し拡大す る。 (1頁右下欄20行目ないし2頁左上欄4行目)との記載と符合す 」 る。
界面活性剤が水/油の界面の界面張力を低下させることで、エマルシ10 ョンを形成するものであることは技術常識である。
エマルションの小滴化が界面張力の低下を原因とすることは、甲2文 献の「正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減少が認められる。こ の現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくなってゆくのですぐ わかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小さくなり、つい15 には霧状に分散し始める。 (2頁左上欄11ないし20行目)との記載 」 及び甲第3号証「Satoshi Nishimura外5名、“Electrocapillary Pheno mena at Edible Oil/Saline Interfaces”、Journal of Oleo Scien ce、2017年3月1日、Vol.66、No.3、P.235-249」(以下「甲3文献」 という。)の「電気キャピラリー現象は、2つの不混和相間の電位差を印20 加することによって生じる界面の分極による界面張力の変化であると定 義される。 235頁左下欄1ないし5行目。
( 」 訳は本件審決11頁参照) との記載から、本件特許の優先日前の技術常識であったと認められる。
以上からすると、前記 の記載に接した当業者は、引用発明は、
「前記 物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特25 徴とする水分制御装置」でもあることを容易に想到できる。
相違点による作用効果上の差異も予測を超えるものではない。
5 イ 本件審決第2の3?イ(22頁ないし23頁)の判断(以下「観点イの 判断」という。) 引用発明における「食物」は、具体的にどのようなものかは規定され ていないところ、引用発明は「フライヤー」であり、
「食物」が食用油で 5 加熱調理されるものであるから、食物としては、内部に水分を含むもの であると解される。また、甲1文献の【0086】には、キュウリ等の 野菜、同【0087】には、貝類として赤貝等が例示され、これらは、
いずれも内部に水分を含むものであるから、引用発明の「食物」には、
内部に水分を含むものが想定されているといえる。
10 引用発明においては、「親水基の部分に電磁波が働き食用油中にて振 動する」【0078】 ( )程度の強さの電磁波が「食物」に対して照射され ているから、
「食物」の内部に電磁波が侵入して「食物」の内部の水が振 動して加熱されており、さらに、甲第4号証「特開平4-260751 号公報」(以下「甲4文献」という。)でも例示されているように、対向15 平板アンテナによる電磁波によって、
「食物」の内部の水が加熱されるこ とは当業者にとって明らかである。
甲第5号証「特開平6-230325号公報」 (以下「甲5文献」とい 2 う。)に「水の表面張力は、20〜100℃の範囲でγ=a-bt-ct の式 で近似されることが知られている(ただし、t:液温度(℃)、a:76.24、
20 b:0.1379、c:3.124×10 で、Wilhelmy法による) 」【0015】 。( )と 記載されているように、水の温度が上昇すると界面張力(「表面張力」と 同義である。)が低下することは、技術常識である。
以上からすると、当業者は、引用発明において、電磁波によって、
「食 物」内部の水の温度が上昇し、水の界面張力が低下するものであること25 を認識するというべきである。
電磁波は、
「駆動部」及び「周波数制御部」によって、その強さや周波 6 数が制御され、電磁波の強さや周波数によって、
「食物」の内部の水の温 度の上昇の程度が異なるものであることは明らかであるから、引用発明 のフライヤーを、食物の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状 「 態とする水分制御装置」としても用いることは、当業者は容易に想到し 5 得る。
? 本願発明について 本願発明は、本件補正発明から、
「電極に対向して配置された物質の内部に 存在する水分」の状態について、選択肢を付加し、
「制御」に係る限定事項を 削除したものである。
10 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加 したものに相当する本件補正発明が、引用発明及び技術常識に基づいて当業 者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に当 業者が容易に発明をすることができたものである。
4 取消事由15 ? 本件補正を補正要件違反とした判断の誤り(取消事由1) ? 引用発明に基づく本願発明の進歩性判断の誤り(取消事由2) ? 手続違反(取消事由3)
当事者の主張
1 取消事由1(本件補正を補正要件違反とした判断の誤り)の有無20 ? 原告 ア 独立特許要件違反とした判断の誤り 引用発明の認定誤り a 本件審決は、引用発明が「駆動部の出力の大小を制御する出力制御 部」を有する旨認定するが、甲1文献の【0052】及び【0056】25 の記載からみて、これらの記載に従って、温度計側部により測定され た温度に基づく温度フィードバックによる出力制御部と認定されるべ 7 きであるから、本件審決の上記認定は、引用発明の技術思想を離れて 過度に上位概念化したものであって、誤りである。
b 本件審決は、引用発明が「駆動部によって形成される電磁波の周波 数を制御するための周波数制御部」を有する旨認定するが、甲1文献 5 の【0053】及び【0057】の記載からみて、これらの記載に従 って、酸化度センサーにより測定された酸化度に基づく酸化度フード バックによる周波数制御部と認定されるべきであるから、本件審決の 上記認定は、引用発明の技術思想を離れて過度に上位概念化したもの であって、誤りである。
10 甲2文献から導かれる技術常識の認定誤り a 甲2文献の方法は、第1図の実験装置を使用し、直流電圧印加と分 散乳化との関係を調べたものであって、界面張力を直接測定したもの ではない。甲2文献の、
「正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減 少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さ15 くなってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはま すます小さくなり、ついには霧状に分散し始める。 (2頁左上欄11 」 ないし20行目)との記載は、直流電圧印加及び分散乳化の関係をい うものであって、界面張力の減少をいうものではない。
しかも、甲2文献の方法における分散乳化は、第1図のような実験20 装置の環境、すなわち、毛細管として構成され、白金電極が設けられ た滴下電極(1)と、水槽(2)内に設けたリング状の白金電極(6) との間に直流電圧を印加した状態で、毛細管から水槽(2)内の水相 (A)へ油相(B)を滴下したという限定的な環境下のものであって (1頁左下欄11行目ないし2頁左上欄4行目) 液体の種類もドデシ 、
25 ル-メチル-アンモニウムクロリド(DTAC)及びメチル-イソブ チル-ケトン(MIBK)に限定されているから(4頁左上欄18行 8 目ないし右上欄2行目) 上記記載も、
、 任意の実験環境でも再現可能な 一般的なことをいうものではない。
したがって、本件審決が、甲2文献から「エマルションの小滴化は 界面張力の低下を原因とする」という技術常識を認定したことは誤り 5 である。
b 被告は、甲2文献の第2図が液滴法で界面張力を直接測定したグラ フである旨主張するが、@グラフの縦横軸に数値が全くないこと、A 測定データをプロットした形跡がないこと、B曲線における変曲点が 不自然であることからみて、同図は、せいぜい、電圧と界面張力との10 関係を模式的に表した想像図程度のものである。
甲3文献から導かれる技術常識の認定誤り a 甲3文献の研究は、第1図のように、電気毛細管現象(エレクトロ キャピラリー)を調べることを目的として、食用油及び生理食塩水の 界面張力を対象にして、両相間に電界を印加する滴重法を用いている15 ものである。
甲3文献の記載(235頁左下欄1ないし5行目、同5ないし12 行目)から把握できるのは、特別な2つの異なる液相間に対し、特定 の実験装置を使用して電位差を与えたときには、液相間の界面張力が 変化するということにすぎないのであって、この結果を任意の環境下20 での界面張力の変化ということにまで一般化することはできない。ま た、甲3文献には、
「PBS(pH7.2〜7.4)および生理食塩水 (pH5.4〜5.6)ともにγ*?γ の値はほぼ1であり、両相間に 電界をかけても界面張力に変化はないことが確認された。 、PBSと 」「 生理食塩水では γ*?γ の値は?1と等しかった。また、OA濃度が1 -5 -1 *25 0 〜10 Mの範囲では、γ ?γ がPBSと生理食塩水で〜1 の値を示すことを確認した。OA-油では、無添加油と同様に界面張 9 -3 力に変化はなかった。 、
」「図10に、食用油に10 MのSOを添加 * した場合の γ ?γ の測定値を、オフセット電圧の関数として示す。
PBSの場合(図10(a) 。
) )の場合、オフセット電圧のない交流電 * 界下ではγ ?γ は〜1に等しかった。しかし、オフセット電圧の正負 5 にかかわらず、γ/γ は0.8〜0.9に減少した。生理食塩水(図 * 10(b) では、
) オフセット電圧のない交流電界下で γ ?γ は約0. * 9まで減少した。さらに、γ ?γ はオフセット電圧-100Vと+1 00Vでそれぞれ約0.8と<0.4まで減少し」と記載されている のであるから、甲3文献の研究は、特殊な条件下でのみ界面張力の低10 下が認められたというにすぎない。
したがって、本件審決が、甲3文献から「エマルションの小滴化は 界面張力の低下を原因とする」という技術常識を認定したことは誤り である。
b 甲3文献のリング状電極と針による測定値と本件補正発明の平板状15 電極による測定値(明細書【図26】【図27】 、 )がそれぞれ異なるこ とから明らかなとおり、測定から得られる界面張力は、電極の形状、
物体の種類及びその他の実験条件に応じて全く異なる。
甲4文献から導かれる技術常識の認定誤り a 甲4文献には、特殊な条件下で、電磁波による加熱が実現できるこ20 とが記載されているにすぎず、任意の電磁波印加により食物の内部の 水の温度が上昇するということは記載されていないから、本件審決が、
甲4文献から、電磁波によって食物の内部の水の温度が上昇するとの 技術常識を認定したことは誤りである。
b 甲第22号証にIHクッキングヒーターにおけるIHの加熱条件が25 開示され、甲第23号証にマイクロ波による加熱条件がそれぞれ開示 されていることから明らかなとおり、単に電磁波を印加すれば加熱す 10 るものではないことは、当業者にとって明らかである。
甲5文献から導かれる技術常識の認定誤り a 甲5文献には、理想状態で、水の温度が上昇すると界面張力が低下 することが記載されているにすぎないところ、界面張力の変化が水の 5 温度以外の多様な条件に応じて変化するものであることからみて、こ の結果を任意の条件にまで一般化することができず、本件審決が、甲 5文献から、水の温度が上昇すると界面張力が低下するという技術常 識を認定したことは誤りである。
b 被告が指摘するエトヴェシュの法則は、多くの例外が存在し、特定10 の条件が整ったときのみに妥当するにすぎず、どのような系にでも成 り立つものではないし、界面張力は、温度にのみ依存するものではな い(甲24)。
したがって、実験環境や例外について検討することなく、すべから く水の温度が上昇すると界面張力が低下するという、上位概念化した15 技術認識を認定することは誤りである。
一致点及び相違点の認定誤り 本件補正発明の特定事項である「前記電極から発生させる電場、磁場、
電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、前記電 極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、
20 磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させ ることにより、前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた 状態とすることを特徴とする水分制御装置」 (以下「発明特定事項A」と いう。)における「制御」とは、「前記電極から発生させる電場、磁場、
電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つ」を制御するもの25 であると同時に、
「前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電 極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくとも 11 いずれか1つを作用させることにより、前記物質の内部に存在する水分 の界面張力を低下させた状態とする」ものであるから、単なる制御一般 をいうものではない。
したがって、発明特定事項Aを細分化することによって「制御」の意 5 味を拡大解釈し、甲1文献に記載すらされていないにもかかわらず、引 用発明が「前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波 の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、前記物質の内 部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」ものと認定して 一致点及び相違点の認定をすることはできない。
10 そうすると、本件補正発明と引用発明との一致点は、
「少なくとも1つ の電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし 電流を印加する装置」であり、両発明の相違点は、発明特定事項Aのと おりであるから、本件審決は、一致点及び相違点の認定を誤っている。
容易想到性判断の誤り15 a 観点アの判断について 引用発明の装置においては、物質の内部に存在する水分に電極が 触れていないのに対し、甲2文献の方法で用いられた装置は、滴下 電極及びリング状の白金電極という環境下で、水相及び油相に直流 電圧を印加するものであるから、引用発明と甲2文献の方法で用い20 られた装置とでは、電極の構造、印加電圧・周波数等の諸条件が全 く異なるのであって、両者において同じ現象が生じているはずがな い。
したがって、両者で同じ現象が生じていることを前提とする本件 審決の判断は誤りである。
25 ? また、引用発明は、界面活性剤を使用して水/油の界面の界面張 力を低下させるものではない。
12 したがって、界面活性剤が、水/油の界面の界面張力を低下させ ることでエマルションを形成するものであることを容易想到性の 根拠とする本件審決の判断には誤りがある。
? さらに、甲2文献及び甲3文献の記載からエマルションの小滴化 5 は界面張力の低下を原因とするとの技術常識を認定することはで きないし、加えて、甲2文献の方法で用いられた装置及び甲3文献 の研究で用いられた装置は、いずれも、水分に電極が触れる形で直 接電極から水分に電圧を印加するものであるから、これら文献の記 載から、引用発明が「電極に対向して配置された物質の内部に存在10 する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水 分制御装置」と容易に想到できるものではない。
b 観点イの判断について 甲4文献及び甲5文献には、発明特定事項Aは記載も示唆もされ ていないから、引用発明のフライヤーを、
「食物の内部に存在する水15 分の界面張力を低下させた状態とする水分制御装置」としても用い ることを容易に想到することはできない。
? 引用発明のように、フライヤーの油内に一対の平板電極を対向配 置した環境下における加熱条件は、甲4文献の装置のようなマイク ロ波を用いた加熱や渦電流による加熱等のような加熱条件とは異20 なるので、マイクロ波等を用いた加熱のように、印加した電磁波に より物質中の液体の温度が上昇するといった認定を直ちにするこ とはできない。さらに、引用発明はフライヤーの技術であるが、甲 4文献の装置は金属容器内の液体を電磁波にて加熱する技術であ り、甲5文献の方法は光学部品の洗浄の技術であるので、これら全25 く異なる技術分野に係る文献に記載された技術を引用発明に組み 合わせる動機付けはない。
13 c 発明の効果について 本件補正発明は、@界面張力と、電極に印加される交流電圧の周波 数及び電圧値との関連性を利用して、電極に印加される交流電圧の周 波数及び電圧値を調整することにより、界面張力の最適化が可能とな 5 る(以下「効果@」という。 、A水分制御の効果と界面張力との関係 ) が明らかになったことにより、フライヤーの場合だけはなく、他の適 用対象、例えば保冷や保蔵等に用いる場合にも、界面張力との関係か らその効果の最適化を図ることが可能となる(以下「効果A」という。 、
) B界面張力の測定は比較的容易であるため、水分制御装置の最適化を10 界面張力との関係から分析できることになり、電極に印加する電圧の 制御をより適切に、かつ、より容易に行うことができる(以下「効果 B」という。)との優れた効果を奏する。
イ 小括 以上のとおり、本件補正発明は独立して特許を受けることができるもの15 であるから、本件補正を独立特許要件に違反するとして却下した本件審決 の判断には、誤りがある。
? 被告 ア 独立特許要件違反とした判断の誤りの主張について 引用発明の認定誤りの主張について20 本件審決は、甲1文献【請求項1】の記載を引用する【請求項3】を 更に引用する【請求項4】の記載に基づいて引用発明を認定している。
引用発明の認定に際しては、対象となる発明との対比に必要な範囲で認 定すればよいところ、本件補正発明は、具体的なステップを有する出力 制御部や周波数制御部を特定してはいないから、引用発明として、具体25 的なステップを有する出力制御部や周波数制御部を認定する必要はない。
甲2文献から導かれる技術常識の認定誤りの主張について 14 a 界面張力が低下するとエマルションの液滴のサイズが小さくなるこ とは、例えば、書籍(乙6。1998年)にも記載されているような 技術事項であって、改めて証拠を示して技術常識であることを裏付け るまでのものではない。
5 b 甲2文献の第2図は、電圧と界面張力の関係を示すグラフであると ころ(4頁左上欄18行目ないし右上欄2行目) 第2図について、
、 「液 滴法では測定できないが、外挿すると-100V附近で界面張力零を 通過することになる。 (2頁右上欄9ないし11行目)と記載されて 」 いるから、第2図は、液滴法で界面張力を直接測定したグラフである。
10 そして、界面張力は、
「γ=V(ρ1-ρ2)gφ/r(γ:界面張力、V: 生理食塩水の液滴の体積、ρ1:生理食塩水の比重、ρ2:オイルの 比重、gは重力加速度、φはHarkins-Brown補正項、rはキャピラ リーの外径の半径) で計算することができ 」 (甲3の236頁右欄15 行目) また、
、 キャピラリーから遊離する液滴の体積から界面張力が計15 算できる旨の文献もある(乙8の「ドロップボリューム法」の項)。そ うすると、甲2文献の方法においても、先端が毛細管となっている滴 下電極の先端の滴の体積を計測すれば、界面張力γが計算できる。
c 甲2文献には、「なお本発明においては加える電圧の波形は、直流、
交流、脈流の何れを用いてもよく、又電圧の大きさを変えたり、3者20 を適当に重畳させて印加する等の操作により、生成するエマルション の粒度分布をコントロールすることができる。 (4頁左上欄6ないし 」 11行目)と記載されているから、交流を用いる引用発明においても、
甲2文献の方法と同様に界面張力が低下するという現象が起こること が読み取れる。
25 d 甲2文献には、「第1図は本発明を実施する装置の一例を原理的に 示したものであり」 (1頁左下欄11行目ないし2頁左上欄4行目)と 15 記載されているところ、甲2文献の方法に用いられた装置の電極の形 状は、引用発明の「対向して立設される対向平板アンテナ」の形状と は異なるが、電圧が印加された空間内に油中の水粒(エマルション) が存在することは同じである。また、甲2文献の方法における液体の 5 種類は限定されているものの、その記載からみて、
「電気乳化」に一般 化できることが読み取れる。
甲3文献から導かれる技術常識の認定誤りの主張について a 前記 aと同旨。
b 甲3文献は、電位差を与えることで界面張力の低下が起こる条件を10 調べるために行われた研究論文であり、界面張力の低下が起こる条件 と界面張力の起こらない条件との両方が記載されている。甲3文献に は、特定の器具を用い、特定の2つの異なる液相間に対して電位差を 与えたときの例が記載されているが、その結果を、電位差を与えるこ とによりエマルションの表面張力が低下するとの「電気キャピラリー15 現象」として一般化していることは、甲3文献の記載から明らかであ る。
甲4文献から導かれる技術常識の認定誤りの主張について 甲4文献には、柱状体31が液体20に電磁波を照射することにより 加熱することが記載されており(【0005】【0006】 、その際の電 、 )20 磁波の放射は特殊な条件とはいえず、電磁波が照射されると一般的に水 が加熱されることは、甲4文献から読み取り得る。
甲5文献から導かれる技術常識の認定誤りの主張について 甲5文献には、「水の表面張力は、20〜100℃の範囲でγ=a-bt 2 -ct の式で近似されることが知られている(ただし、t:液温度(℃)、
25 a:76.24、b:0.1379、c:3.124×10 で、Wilhelmy法による) 」【0 。( 015】)との記載があり、また、「岩波 理化学辞典 第5版(199 16 8) (乙3の2)にも「界面張力・・・は温度とともに減少し(→エト 」 ヴェシュの法則) と記載されているように、
」 水の温度が上昇すると界面 張力が低下することは当業者にとって周知である。
一致点及び相違点の認定誤りの主張について 5 発明特定事項Aのうち、前記電極から発生させる電場、
「 磁場、電磁場、
及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、前記電極に対向 して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電 磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させること」 と「前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」10 ことは、電場等を作用させることと水分の状態という個別の事項を特定 したものであるから、独立に論ずることができ、両者を一体として判断 しなければならない理由はない。
そして、甲1文献【請求項1】【請求項3】【請求項4】【0041】 、 、 、
等の記載からみて、本件補正発明と引用発明とは、本件審決で示したと15 おりの点で一致し、また相違する。
容易想到性判断の誤りの主張について a 観点アの判断について 甲2文献は、エマルションの小滴化が界面張力の低下を原因とす る旨の技術常識を示すための文献であるから、引用発明の装置と甲20 2文献の方法で用いられた装置の電極の構造、印加電圧・周波数等 の諸条件が全く異なっていることは、その技術常識を示すことと関 係しない。
? 引用発明は、界面活性剤を含むとも、含まないとも特定されてい ないものとして認定されているところ、甲1文献には、
「長鎖脂肪酸25 塩はカルボキシル鎖が親水基、炭化水素鎖の部分が親油基として機 能する。つまり食用油中の油成分と、食用油に投入される食品の表 17 面に存在する水成分とをなじませる働きがある。 ( 」 【0077】)と 記載されており、引用発明は、界面活性剤により界面張力の低下し たエマルションに電位をかける態様も含む発明である。
? エマルションの小滴化が界面張力の低下を原因とすることは、本 5 件特許の優先日前の技術常識である。そして、甲2文献及び甲3文 献に物質の内部に存在する水分の界面張力について記載がないと しても、引用発明において印加された電圧は物質の内部にも及ぶの であるから、引用発明の物質の内部に存在する水分についても界面 張力が低下した状態となることは、当業者であれば容易に想到でき10 る。
b 観点イの判断について 本件審決が認定する、本件補正発明と引用発明との相違点に誤りは ないから、発明特定事項Aが甲4文献及び甲5文献に記載されていな いことは、本件審決の結論に影響しない。
15 c 発明の効果について 原告が本件補正発明の効果として主張する効果@ないし効果Bにつ いては、界面張力を測定する特定事項がなく、最適な界面張力といえ るための目標値や、その目標値とするためにどのように調整するのか についての特定事項もないから、特許請求の範囲の記載に基づいた主20 張とはいえない。
イ 小括 以上のとおり、本件補正が独立特許要件に違反するとして却下した本件 審決の判断には、誤りがない。
2 取消事由2(引用発明に基づく本願発明の進歩性判断の誤り)の有無25 ? 原告 本件補正が独立特許要件に違反するとの本件審決の認定は誤りであるので、
18 本件補正発明ではなく本願発明について進歩性判断をした本件審決の判断に も誤りがある。
? 被告 本件補正発明が独立特許要件に違反するとの本件審決の認定には誤りはな 5 いので、本件補正が却下されたことを前提に、本件審決が本願発明について 進歩性判断をしたことに誤りはない。
3 取消事由3(手続違反)の有無 ? 原告 原告は、審判手続中の令和3年11月24日、甲第14号証「特開平1-10 160472号公報」本件審決における引用例1であり、 「甲14文献」 ( 以下 という。)又は甲1文献に基づき本件補正発明が拒絶されるべきものとする 内容の前置報告を受けて、審判合議体との面接に臨み、本件補正発明の技術 説明及び本件補正発明と本件拒絶査定時の引用例との対比説明を行った上、
甲第10号証のような補正をするので、新たな拒絶理由が採用されるのであ15 れば、原告に対して補正及び反論の機会を与えるように要請し、審判合議体 はこれを了承した。それにもかかわらず、本件審決は、原告に対して補正及 び反論の機会を与えることのないまま、甲2文献ないし甲5文献を採用して 審判請求不成立の判断をした。
甲1文献は、本件拒絶査定時において主引用例とされたものではない。被20 告は、甲1文献(引例3)が本件拒絶査定時に主引用例とされた旨を主張す るが、本件拒絶査定における「引例1-3」とは、「引例1」を主引用例と、
「引例2」及び「引例3」を副引用例とする趣旨であり、このように解さず に、これら3つの引例の任意のものを主引用例として自由自在に組み合わせ るとの趣旨と解するのは、引用発明の認定及び本願発明との対比といった進25 歩性判断の枠組みを無視し、説明責任を放棄するものとしかいいようがない。
そして、甲2文献ないし甲5文献は、本件拒絶査定時に提示されることのな 19 かった新たな引用文献であり、本件審決の判断は、審判請求後の新たな拒絶 理由に基づく判断である。
このように、審判請求後に新たな拒絶理由が発見されたときには、原告に 対して最初の拒絶理由通知がされ、補正及び意見書提出の機会が与えられる 5 べきものであり、ましてや、審判合議体がこのような場合には補正の機会を 与えることを了承していたという経過にも鑑みれば、なおさらそうであった にもかかわらず、そのような機会のないままに本件審決がされている。
そうすると、本件審決は不意打ちの程度が極めて高く、審判手続も審理が 尽くされていないものであるから、本件審決には、適正手続違背の手続違反10 がある。
? 被告 ア 令和3年11月24日に原告と審判合議体との面接が行われ、本件補正 発明の技術説明及び本件補正発明と本件拒絶査定時の引用例との対比説 明がされたことは認めるが(乙2参照) 新たな拒絶理由が発見されたとき 、
15 には甲第10号証のような補正案による補正及び反論の機会を付与する ことを了承したとの事実はない。審判合議体が作成した面接記録(乙2) には原告代表者及び原告代理人2名の自筆による署名があるが、その「6. 面接内容」の選択肢には、
「d.補正書、補正案、訂正請求書、訂正案等の 説明」との項目があるにもかかわらず選択されていない。また、仮に補正20 案が提示されていた場合には、面接記録にこれを添付するのが通例である が、その添付もない。
このように面接において原告からの補正案の提示はそもそもなかったの であれば、審判合議体が面接で補正の機会を与えるという合意をしたこと があり得るはずはない。
25 イ 本件拒絶査定前の令和3年1月25日に行われた審査官との2回目の面 接時には、原告自身が本願発明と甲1文献(引例3)とを対比し、相違点 20 を抽出して主張、反論をしており(乙7)、本件拒絶査定(甲13)には、
甲1文献が主引用例とされた旨が明確に記載されている。
ウ 本件審決は、甲2文献の記載を引用して、甲1文献【0079】の記載 内容を補足説明し、また、甲2文献ないし甲5文献の記載を引用して、技 5 術常識を説明しているものであり、甲2文献ないし甲5文献は、主引用例 との相違点を付加したり、置換したりする文献ではなく、当業者の技術常 識を示す文献にすぎない。
そして、本件審決に示した理由は、本件拒絶査定と異なる理由ではない から、特許法159条2項にいう「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見10 した場合」に該当しない。したがって、本件審決は、同項の規定により読 み替えて準用する特許法50条の規定に反するものではない。
当裁判所の判断
1 本件補正発明について 本件特許に係る明細書(甲6、8。以下、図面を含めて「本願明細書」とい15 う。)には、別紙1「本願明細書の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があり、
この記載によると、本件補正発明について、次のような開示があると認められ る。
? 技術分野 本件補正発明は、物質に含まれる水分を制御する水分制御装置等に関する20 (【0001】 。
) ? 背景技術 所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の調理を行うこ とにより、食用油の酸化・劣化防止、調理された食物の食味向上等の優れた 効果を得られるとされており、甲1文献記載のように、所定の範囲の周波数25 の電磁波が発生している空間内で食物の加熱調理を行うことにより、調理さ れた食物の食味が非常に優れるフライヤーが知られている(【0002】 。
) 21 ? 発明が解決しようとする課題 甲1文献記載のフライヤー及びその加熱調理方法においては、食味向上の 原理について十分に考察されておらず、食味向上の効果を得るための技術を 全ての食物に適用することや、他の調理方法へ適用することや、あるいは、
5 食物以外のものに適用することは困難であった(【0004】 。
) そして、所定の範囲の周波数の電磁波が食物に与える影響についての分析 の結果、食物中に含まれる水分の制御が重要であること、水分の制御は食物 以外のものについても重要であることが見いだされたことから 【0005】 、
( ) 本件補正発明は、水分を制御することにより物質の特性を向上することがで10 きる水分制御装置等を提供することを目的とする(【0006】 。
) ? 課題を解決するための手段 前記?の目的は、本件補正発明の構成をとることによって達成される 【0 ( 007】 。
) ? 発明の効果15 本件補正発明に係る水分制御装置等によれば、水分を制御することにより、
物質の特性を向上することができる(【0009】 。
) ? 発明を実施するための形態 本件補正発明の「物質に含まれる水分」には、例えば水溶液、水、エマル ションに含まれる微小水滴等が含まれ 【0011】、
( ) 本件補正発明の「物質」20 には、肉、魚、野菜等の食品等、飲料、動植物細胞、油等が含まれる(【00 46】 。
) 本件補正発明の水分制御装置は、冷蔵庫、フライヤー、栽培容器(水耕栽 培用等)、医療機器、乗り物等多様な筐体に設置することが可能である(【0 024】 。
)25 フライヤーを用いて食用油で食物を揚げる場合等のW/Oエマルション (水/油エマルション)において、本件補正発明の水分制御装置によって電 22 磁場を印加した場合に、油/水界面の界面張力を低下させることができる (【0077】 【0079】 。
、 ) 電極に印加した交流電圧を、周波数を10kHないし50kHz、電圧を 0Vないし75Vの間で変化させた場合、食用油と水の界面張力は、電極に 5 印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性を有しており、周波数が低 下するほど界面張力が減少し、電圧値が上昇するほど、界面張力は減少する (【0123】【図26】 。したがって、これらの界面張力と電極に印加され 、 ) る交流電圧の周波数及び電圧値との関連性を利用することにより、本件補正 発明の水分制御装置は、印加電圧の調整による界面張力の制御が可能である10 (【0123】 。また、界面張力は測定ないし予測可能であるため、界面張力 ) を制御パラメータの1つとして利用することも可能である(【0123】 。
) 電極に印加した交流電圧を、周波数を10kHzないし20kHz、電圧 を0Vないし160Vの間で変化させた場合でも、食用油と水の界面張力は、
電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性があり、この関連性15 を利用して、電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値を調整すること により、界面張力の最適化が可能となる(【0124】 【図27】 。
、 ) 2 取消事由1(本件補正を補正要件違反とした判断の誤り)の有無について ? 引用発明の認定誤りの有無について 甲1文献には、別紙2「甲1文献の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があ20 り、これによると、本件審決が認定するとおりの引用発明が認められ、本件 審決の認定に誤りはない。なお、引用発明は、
「対向平板アンテナ間に10キ ロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平 板アンテナを駆動する駆動部」 (【請求項1】、
)「駆動部の出力の大小を制御す る出力制御部」【請求項3】 ( )及び「駆動部によって形成される電磁波の周波25 数を制御するための周波数制御部」 (【請求項4】 を有することによって、
) 「対 向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波」 23 の出力及び周波数が制御されるものであるから、引用発明が「駆動部の出力 の大小を制御する出力制御部及び駆動部によって形成される電磁波の周波数 を制御するための周波数制御部」を有していることは明らかである。
? 一致点及び相違点の認定誤りの有無について 5 本件補正発明と引用発明とを対比すると、まず、引用発明の「対向平板ア ンテナ」は、本件補正発明の「電極」に相当する。そして、本件補正発明の 「物質」は、特許請求の範囲の記載上、
「電極に対向して配置された物質」で あること以外は特に限定のないものであるところ、引用発明は、
「貯油槽に対 向して立設される対向平板アンテナ」を有するから、引用発明の「食用油を10 ためて食物を加熱調理するための貯油槽」内の食用油と食物は「対向平板ア ンテナ」に対向して配置されていると認められ、本件補正発明の「電極に対 向して配置された物質」に相当すると認められる。
また、引用発明は、前記?のとおり、
「対向平板アンテナ間に10キロヘル ツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平板アン15 テナを駆動する駆動部」 「駆動部の出力の大小を制御する出力制御部」 と、 と、
「駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部」 を有するものであるところ、上記「出力制御部」と「周波数制御部」は、対 向平板アンテナから発生させる電磁波を制御するものであり、甲1文献の「例 えば対向平板アンテナに供給された交流電圧」 (【0041】 、
)「例えば対向平20 板アンテナに所定の範囲の周波数の交流電圧が供給される」 (【0045】 と ) の記載によれば、引用発明の電磁波の発生は交流電圧によってもよいものと 認められるから、引用発明のこれらの構成は、本件補正発明の「電極に対し て直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加するこ とにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中25 の少なくともいずれか1つを制御」に相当するものと認められる。そして、
本件補正発明における「装置」と甲1発明のフライヤーとは、
「装置」である 24 点で共通する。
そうすると、本件補正発明と甲1発明の一致点及び相違点(以下「相違点 B」という。)は、次のとおりと認めるのが相当である。
[一致点] 5 少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所 定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、
磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された 電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用10 させる装置。
[相違点B] 本件補正発明は、電極に対向して配置された物質に対して、前記電極か ら発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれ か1つを作用させることにより、「前記物質の内部に存在する水分の界面15 張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置」であるのに 対して、甲1発明は、装置が「フライヤー」であり、電極に対向して配置 された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、
電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、「前記物 質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」ことは特定20 されていない点。
なお、本件審決は、本件補正発明と引用発明との相違点を前記第2の3 ?のとおりに認定するが、「物質の内部に存在する水分の界面張力を低下 させた状態とすること」は、
「電極に対向して配置された物質に対して、前 記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくと25 もいずれか1つを作用させる」ことによるものであり、
「装置」がフライヤ ーであるか否かによるものではないから、相違点Bのように認定するのが 25 より適切であるが、この点は結論に影響するものではない。
? 容易想到性判断の誤りの有無について 本件審決の認定する相違点と本判決が認定する相違点Bとの差異部分であ る「前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」と 5 の部分は、本件審決においてはいずれも容易想到性判断の中で考慮されてい るものであって、実質的に相違点として審理されているものであるから、引 き続いて、本件審決の観点アの判断の当否につき、以下検討する。
ア 甲1文献の記載について 甲1文献には、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リ10 ン、亜鉛、鉄のいずれか一以上を含有する食物を食用油での加熱調理対象 とすることや 【0083】 、
( ) このような食物の調理を少なくとも過去に一 度以上行ったことがある食用油を再利用することにより 【0084】 、
( )貯 油槽内の食用油に長鎖脂肪酸塩を含ませること 【0079】 ( 、
【0085】) が記載されている。さらに、甲1文献には、長鎖脂肪酸塩は食用油中の油15 成分と食用油に投入される食物の表面に存在する水成分とをなじませる 働きがあり、長鎖脂肪酸塩を含む食用油内では、加熱調理対象である食物 の表面に存在する粒状態の水の表面に整列した長鎖脂肪酸塩が電磁波に より水の表面近傍で振動して、徐々に水粒が細粒化されることが記載され ている(【0077】ないし【0079】 。
)20 このように、甲1文献には、貯油槽の食用油中で、電磁波により水粒が 細粒化されることが記載されているから、相違点Bのうち、電極に対向し て配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、
及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、
「前 記物質の内部に存在する水分」に作用する装置であることまでは記載又は25 示唆されているが、甲1文献の記載から、それら水粒の細粒化が「水分の 界面張力の低下」によるものであるとは記載されていない。
26 そこで、さらに、食用油中の水粒の細粒化に関する技術常識について検 討する。
イ 食用油中の水粒の細粒化に関する技術常識について 昭和48年公開の甲2文献には、別紙3「甲2文献の記載事項(抜粋)」 5 のとおりの記載があり、これによると、「まずW/O型 エマルジョンの場 合における界面張力との関係について説明すると次のとおりである。すな わち界面活性剤(以下SAAという)を含む油水界面に電圧をかけると、
そのイオン性にしたがつて正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減 少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくな10 ってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小 さくなり、ついには霧状に分散し始める。 (2頁左上欄11ないし20行 」 目)との記載があり、1995年発行の書籍である乙第6号証には「水/ 油の界面張力が低下するとともにエマルションはより容易に形成される ようになり、液滴のサイズも小さくなる。」との記載がある。ここで、界面15 張力とは、分子間に働く引力によって2相の境界面に沿って働く張力をい い(乙3の2)、エマルションとは、液体中に液体粒子がコロイド粒子ある いはそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなすものをいい(乙3の 2)、いずれも1998年発行の理化学辞典(乙3の1)にも掲載されてい る技術用語である。そうすると、水/油型エマルションで水粒(水滴)が小20 さくなることが水の界面張力の低下によるものであることは、本件特許の 優先日当時の技術常識であると認められる。
容易想到性について 前記イの技術常識に鑑みると、当業者は、前記アの引用発明の貯油槽の 食用油中で、電磁波により長鎖脂肪酸塩が水の表面近傍で振動して水粒が25 細粒化したことは水の界面張力の低下によるものであると理解するもの と認められるから、当業者は、引用発明の「貯油槽にためられた食用油」 27 を長鎖脂肪酸塩を含む食用油として、引用発明の「フライヤー」を、この 食用油の「内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」もの として、もって、引用発明のフライヤーを、電極に対向して配置された物 質にして、前記電極から発生された電磁波を作用させることにより、
「前記 5 物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特 徴とする水分制御装置」との相違点に係る本件補正発明の構成とすること に、容易に想到し得るものと認められる。
エ 発明の効果について 原告は、前記第3の1?ア のとおり、本件補正発明には、効果@ない10 し効果Bのような優れた効果がある旨主張するが、本件補正発明は、特許 請求の範囲の記載において、界面張力を測定する方法も、最適な界面張力 といえるための目標値も、その目標値とするための調整方法も何ら特定す るものではなく、また、本願明細書の記載を参酌しても、この点について は何ら明らかにされていない(本願明細書【0122】ないし【0124】、
15 【図26】【図27】参照) 、 。結局、本件補正発明は、界面張力の値につい て任意の数値でよいとするものであるから、優れた効果を奏する界面張力 は何ら明らかにはされておらず、ただ単に水粒の細粒化が界面張力の低下 を原因とすることを開示したにとどまる(この開示事項自体は本件特許の 優先日当時の技術常識にすぎない。 。
) そうすると、原告が主張する効果は、
20 本件訂正発明の構成から直ちに生じるものではなく、その効果に係る主張 は、特許請求の範囲の記載又は明細書の記載のいずれにも基づいたもので はなく、そのような効果を、予測できない顕著な効果と認めることはでき ない。
? 原告の主張について25 ア 原告は、前記第3の1?ア のとおり、甲1文献の具体的な記載を離れ て、引用発明が「駆動部の出力の大小を制御する出力制御部」や「駆動部 28 によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部」のよ うな過度に上位概念化した構成を有すると認定したのは誤りである旨主 張する。
しかしながら、引用発明の「出力制御部」と「周波数制御部」を本件審 5 決のように認定するか、原告の主張するように認定するかによっては、引 用発明と本件補正発明と一致点及び相違点には何ら変動が生じず、また、
容易想到性判断にも直接又は間接のいずれの影響を及ぼすものでもない から、この点の認定の差異によって本件の結論は何ら左右されない。した がって、原告の上記主張は取消事由を構成するものではなく、失当である。
10 イ 原告は、前記第3の1?ア のとおり、本件補正発明の発明特定事項A を細分化して一致点及び相違点を認定することはできない旨主張する。
しかしながら、発明特定事項Aのうち、「前記電極から発生させる電場、
磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、前 記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、
15 磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させる こと」は電場等を作用させることであり、
「前記物質の内部に存在する水分 の界面張力を低下させた状態とする」ことは、作用させた水分の状態であ り、両者は技術的事項として独立したものであるから、
「電場等を作用させ ること」を一致点とし、電場等を作用させる結果「界面張力を低下させた20 状態とする」ことを前記?のとおりの相違点Bとに分けて認定することは 不適切なものではない。そして、前記?ウのとおり、電場等を作用させる 結果として「界面張力を低下させた状態とする」ことに係る相違点Bの構 成は容易想到であるから、いずれにしても本件審決の相違点の認定の当否 は、本件審決の結論を左右するものではない。
25 原告の上記主張を採用することはできない。
ウ 原告は、前記第3の1?ア のとおり、@甲2文献には界面張力の減少 29 に関する記載はない、A甲2文献の方法における実験は限定された環境下 のみで妥当するものである、B甲2文献の第2図は想像図であるから甲2 文献から「エマルションの小滴化は界面張力の低下を原因とする」という 技術常識を認定することは誤りである旨主張する。
5 しかしながら、甲2文献は、甲1文献の「食用油中における水粒の細粒 化」が「水粒の界面張力の低下により生じている」ことを明らかにするた めに、その前提となる「エマルションの小滴化は界面張力の低下を原因と する」との一般的な技術常識を提示するために引用された文献であるから、
その旨の記載(2頁左上欄11ないし20行目)に加えて、甲2文献の方10 法において用いる装置の具体的態様やその本来の目的、引用発明の装置と の間における電極の構造、印加電圧・周波数等の諸条件の相違等が引用発 明のものと同じであることまでが、甲2文献を上記一般的な技術常識の認 定のための資料として用いることに必要なものではない。そして、前記? イのとおり、甲2文献等によれば、
「エマルションの小滴化は界面張力の低15 下を原因とする」ことが本件特許の優先日当時の技術常識であることは明 らかである。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
エ 原告は、前記第3の1?ア aのとおり、@引用発明の装置と甲2文献 の方法で用いられた装置が同じ現象を生じさせたはずはない、A引用発明20 は界面活性剤を用いてはいないから、界面活性剤が水/油の界面の界面張 力を低下させることでエマルションを形成するものであることは容易想 到性の根拠とはならない、B甲2文献及び甲3文献の記載からエマルショ ンの小滴化が界面張力の低下を原因とするとの技術常識を認定すること はできない、C水分に電極が触れる形で直接電極から水分に電圧を印加す25 る甲2文献の方法で用いられた装置及び甲3文献の研究で用いられた装 置から引用発明が物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させる装 30 置であることを想到するのは容易ではない旨主張する。
しかしながら、上記@に主張する点は、前記第3の1?ア と同趣旨の 主張であるから、前記ウのとおり、
「エマルションの小滴化は界面張力の低 下を原因とする」との一般論を認定することの妨げとはならない。また、
5 上記Aに主張する点については、前記?アのとおり、甲1文献には長鎖脂 肪酸が電磁波により食物の表面に存在する粒上の水の表面に整列して振 動し水粒が細粒化されることが記載されており、そして、長鎖脂肪酸塩が 界面活性剤として機能することは文献を示すまでもなく技術常識といえ るから、引用発明は界面活性剤を用いる態様のものを含むものであり、そ10 の前提に誤りがある。次に、上記Bに主張する点は、前記?イのとおり、
甲3文献を引用するまでもなく上記技術常識が認定できるから、やはり前 提に誤りがある。
さらに、同Cに主張する点は、
「エマルションの小滴化は界面張力の低下 を原因とする」との一般的な技術常識が認定できる以上、甲2文献の方法15 で用いられた装置の具体的構成は容易想到性判断を左右するものではな いし、甲3文献はそもそも技術常識の認定に用いるまでもないことは上記 のとおりである。なお、本件審決は、引用発明において、本件補正発明の 「物質」に相当するのは、甲1文献の「電磁波が発生している空間内で食 物が調理される」【0041】 ( )との記載等からみて「食物」であると認定20 しているが、前記?アのとおり、引用発明において、本件補正発明の「物 質」に相当するのは対向平板アンテナに対向して配置されている貯油槽内 の食用油と食物であり、本件補正発明の「物質の内部に存在する水分」に 相当するのは、食用油又は食物の中に存在する水分であるところ、甲1文 献には、引用発明のフライヤーにおいて、少なくとも食用油中の食物の表25 面に存在する水粒が細粒化されることが記載されているから、引用発明が 電磁波を「物質の内部に存在する水分」に作用させる装置であることは、
31 甲1文献に既に記載されていることである。そうすると、いずれにせよ、
エマルションの小滴化が界面張力の低下を原因とするとの本件特許の優 先日前の技術常識に基づき、引用発明が「物質の内部に存在する水分」の 界面張力を低下させる装置であると想到することは容易であるというべ 5 きであり、本件審決が「物質」を「食物」と認定したことが本件の結論を 左右するものではない。
以上によれば、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
? 小括 以上のとおり、観点イの判断の当否について検討するまでもなく、本件補10 正発明は、観点アの判断のとおり、特許法29条2項の規定により、特許出 願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件補正は、特許 法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に反するもの と認められるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同 法53条1項の規定により却下すべきものであり、本件審決が本件補正につ15 いて補正却下の決定をした点に誤りはない。
したがって、取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(引用発明に基づく本願発明の進歩性判断の誤り)の有無につい て 前記2のとおり、本件補正が独立特許要件に違反するとして本件補正を却下20 した本件審決の判断に誤りはないところ、原告は、本件補正が独立特許要件に 違反するとした本件審決の認定が誤りであることを取消事由2として主張する のみであり、その他の本件審決の本願発明の進歩性判断の誤りを主張するもの ではないから、取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(手続違反)の有無について25 ? 手続違反の要件について 拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合 32 には、特許法50条本文による拒絶理由の通知及び意見書提出の機会の付与 (同法159条2項で準用される同法50条本文)や同法17条の2第1項 による補正の機会の付与がされるところ、拒絶査定不服審判請求と同時にす る補正が補正要件(同法17条の2第3項から第6項まで)に違反している 5 ときはその補正を却下しなければならない旨が定められ(同法159条1項 で読み替えて準用される同法53条1項) この際、
、 拒絶理由の通知や意見書 提出の機会も付与されない(同法159条2項により読み替えて準用される 同法50条ただし書)。
しかしながら、新たな引用文献に基づいて独立特許要件違反が判断される10 場合、当該引用文献に基づく拒絶理由を回避するための補正については当該 引用文献を示されて初めて検討が可能になる場合が少なくないとみられるこ とを考慮すると、特許法159条2項により読み替えて準用される同法50 条ただし書に当たる場合であっても、特許出願に対する審査手続や審判手続 の具体的経過に照らし、出願人の防御の機会が実質的に保障されていないま15 まに補正が却下されたと認められるような場合には、適正手続の観点から、
審判手続が違法となる余地があると解される。
? 原告の主張について ア 原告は、前記第3の3?のとおり、@甲1文献は本件審決で初めて主引 用例とされた、A甲2文献ないし甲5文献は本件審決で初めて提示された、
20 B本件補正発明に拒絶理由がある場合には補正及び意見書提出の機会を 付与すると審判合議体が原告に約束したから、原告に最初の拒絶理由通知 がされ、補正及び意見書提出の機会が与えられないままされた本件審決に は適正手違背の手続違反がある旨主張する。
イ そこで、まず前記ア@の点について検討するところ、拒絶理由通知書(甲25 19)及び本件拒絶査定(甲13)には次の記載がある(甲1文献は「引 例3」とされている。 。
) 33 拒絶理由通知書 「●理由5について ・請求項1、10、16-18、35、48-50、52-55 ・引用文献等1-6 5 ・備考 引例1には、・・・。
引例2には、・・・。
引例3には、食用油及び食物に対して電磁波処理を行う方法であって、
前記電磁波処理により、酸化・劣化の抑制された食用油を得ること、及10 び、油の浸透が抑制された食物を得ることができる方法が記載されてい る(請求項1、4、10、段落0001、0002、0045等参照)。
引例4には、・・・ 引例5には、・・・ 一方、引例1-6には、
「物質の内部に存在する水分同士を結合状態と15 し、」という事項は記載されていない。しかしながら、本願の水分制御装 置で各種(電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波)処理を行う にあたり「物質の内部に存在する水分同士を結合状態とし、前記物質の 有する性質を向上する」ために、具体的にどのような条件が必要である かは本願明細書を参酌しても不明であるところ、引例1-6に記載の各20 方法は、いずれも各種処理が被処理物内の水分に作用し、且つ、本願明 細書に記載された食品に関する作用効果(鮮度の保持(段落0070)、
みずみずしさの維持(段落0074) ドリップ量の抑制 、 (段落0075)、
油分の浸透抑制(段落0080))を奏するものである。
してみれば、引例1-6に記載の各方法において、上記作用効果を得25 ることができる範囲内で「物質の内部に存在する水分同士を結合状態」 とする程度に上記各種処理を行うことは、当業者が適宜なしえたことで 34 ある。」 本件拒絶査定 「●理由5(特許法第29条第2項)について ・請求項1-54 5 ・引用文献等1-3 ・・・ しかしながら、以下の理由により、出願人の上記主張を採用すること はできない。すなわち、本願明細書には・・・。
一方、引例1に記載された発明は、
・・・。また、引例2に記載された10 発明は、
・・・。そうすると引例1及び引例2に記載された各発明におい て・・・当業者が容易になし得たことである。
また、引例3に記載された発明は、食用油及び食物に電磁波を作用さ せ、酸化・劣化の抑制された食用油を得ること、及び、油の浸透が抑制 された食物を得るものであるところ(請求項1、4、10、段落00015 1、0002、0045等参照)、引例3には、特に食用油に長鎖脂肪酸 塩を含み、食物の表面に粒状に水が存在する場合、前記長鎖脂肪酸塩が 水の表面に整列し、振動することで、食用油中の水粒が細粒化されるこ と、それにより、食物の内部から水分が排出されることが防止され、油 はね現象が生じず、食物の表面をパリっと仕上げ、食物内部の水分を保20 ったジューシーな仕上がりになることも開示されている(段落0077 -0079)。ここで、油中における水粒の細粒化は、水粒の界面張力の 低下により生じている蓋然性が高い。そうであれば、引例3に記載され た発明において、長鎖脂肪酸塩を含む食用油を適用し、
「物質の内部に存 在する水分の界面張力を低下させた状態」、及び、「物質の内部に存在す25 る水分の界面張力を低下させると共に、水分粒子を微細化する」状態と することは、引例3の上記開示に基づき、当業者が容易になし得たこと 35 である。
更に、引例3に記載された発明は、本願明細書中で水粒子を整列させ る作用があると説明された電場、磁場、電磁場、電磁波の少なくとも一 つを作用させる点、水分子を配列する点、及び、
「食材から水分が離脱し 5 にくくなる」 突沸を抑制することで食物内への油分の浸透を抑制する」 「 、
及び「調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる」との 作用を奏する点で本願発明と共通するものである。してみれば、引例3 には、電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波の少なくとも一つ を作用させることにより上記各状態とすることが明記されていないもの10 の、
「食材から水分が離脱しにくくなる」、
「突沸を抑制することで食物内 への油分の浸透を抑制する」及び「調理された食物の食感及び食味が非 常に優れたものとなる」との作用効果を得られる範囲で電磁波を調整し、
物質の内部に存在する水分又は水分子に係る上記各状態とすることは、
当業者が容易になし得たことである。」15 前記イの記載からみて、少なくとも甲1文献を含む文献を主引例とし て本件拒絶査定がされていたことは明らかであり、原告の前記主張は前 提事実を誤るものであって、採用することができない。
ウ 次に、前記アAの点について検討するところ、前記イ 及び からみて、
本件拒絶査定は、甲1文献に開示の事項と「油中における水粒の細粒化は、
20 水粒の界面張力の低下により生じている蓋然性が高い」との技術事項に基 づき本願発明は容易に想到できるとしたものと認められる。そして、本件 審決は、 (注 「 甲1文献【0079】)の説明は、・・・特開昭48-23 044号公報(注 甲2文献)に『前記乳化は連続相と不連続相となる2 つの液体の界面に適当な電圧が加わると、連続相に向って1つ又はそれ以25 上の不連続相の液体の突起が生じ、この突起の尖端から分散が開始し拡大 する。』という記載と符合するものである。(21頁)「エマルションの小 」 、
36 滴化が界面張力の低下を原因とすることは、
・・・特開昭48-23044 号公報(注 甲2文献)の『正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減 少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくな ってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小 5 さくなり、ついには霧状に分散し始める。』という記載及び(注 甲3文献 の) [電気キャピラリー現象は、電界をかけることで、界面の分極によって 生じる2つの不混和相間の電位差により界面張力が変化することと定義 される。]という記載から、本件優先日前の技術常識であったと認められ る。 (21頁) 「引用例3(注 」 、 甲1文献)の段落【0079】に接した10 当業者は、引用発明は、
「前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下 させた状態とすることを特徴とする水分制御装置。」でもあることは容易 に想到できるといえる。」 (21頁)との判断過程を経ている。そうすると、
本件審決は、
「油中における水粒の細粒化は、水粒の界面張力の低下により 生じている蓋然性が高い」との本件拒絶査定で認定された技術的事項を、
15 少なくとも甲2文献を含む文献から「界面張力の低下により水粒の細粒化 が生じる」との技術常識として確定し、甲1文献に記載された発明(引用 発明)とこの技術常識に基づいて本件補正発明は容易想到であるとしてい るのであり、その判断は本件拒絶査定と同旨であり、理由の論旨を変更す るものではない。
20 そして、技術常識は、ある特許の出願前に頒布された刊行物に記載され た刊行物記載発明(特許法29条1項3号)のような文献の記載そのもの から認定されなければならないものではなく、社会経済的事実として認定 されるものであり、技術常識が立証命題となった場合の各文献は、それを 裏付ける一資料にすぎず、それら文献の追加によって立証すべき技術常識25 は変動しないのであるから、本件審決が「界面張力の低下により水粒の細 粒化が生じる」との技術常識を裏付けるものとして甲2文献を含む文献を 37 用いたとしても、本件拒絶査定の理由とは異なる拒絶の理由を用いたとは いえず、不意打ちとも審理不尽ともいえないし、これと異なる認定をすべ き事情もうかがわれない。
以上のとおりであるから、原告の上記主張を採用することができない。
5 エ また、前記アBの点について検討するところ、審判合議体が原告に対し てこのような特別扱いの措置を原告に付与する理由も見いだし得ないし、
そのような約束をしたとの事実を認めるに足りる証拠もないから、原告の この点に係る主張は採用し得ない。
? 小括10 以上のとおりであり、観点アの判断について本件審決の判断過程に手続違 反があったとは認められないから、その他の点について検討するまでもなく、
取消事由3は理由がないというというべきである。
5 結論 よって、取消事由は全て理由がないから、原告の請求を棄却することとして、
15 主文のとおり判決する。
追加
20裁判長裁判官菅野雅之25裁判官本吉弘行38 裁判官中村恭39 (別紙1)本願明細書の記載事項(抜粋)(下線部は、本件補正による補正箇所であり、その他は前件補正後のものである。)5【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、物質に含まれる水分を制御する水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備に関する。
10【背景技術】【0002】所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の加熱調理を行うことにより、調理された食物の食味が非常に優れるフライヤーが知られている(特許文献1参照)。なお、本明細書中に特許文献1の明細書、特許請求の範囲、図面全体15を参考として取り込むものとする。所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の調理を行うことにより、食用油の酸化・劣化防止、調理された食物の食味向上等の優れた効果を得られるとされている。
先行技術文献】【特許文献】20【0003】【特許文献1】特開2016-129672号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】25しかしながら、特許文献1に記載のフライヤー及び加熱調理方法では、食味向上の原理について十分に考察されておらず、食味向上の効果を得るための技術を全て40 の食物に適用することや、他の調理方法へ適用することや、あるいは、食物以外のものに適用することは困難であった。
【0005】本発明者等は所定の範囲の周波数の電磁波が食物に与える影響について様々な観5点から分析を重ねてきた。その結果、食物中に含まれる水分(自由水等を含む)の制御が重要であり、この水分を制御する方法を見出し、さらに、水分の制御は食物以外のものについても重要であることを見出し、本発明の水分制御装置及び水分制御方法を完成するに至った。
【0006】10すなわち、本発明の目的は、水分を制御することにより、物質の特性を向上することができる水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】【0007】15上記した本発明の目的は、少なくとも1つの電極に対して、直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁20場、電磁波、及び、電磁波の中の少なくともいずれか一つを作用させることにより、前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置、
少なくとも1つの電極に対して、直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁25場、電磁波、音波及び超音波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分同士を結合状態とし、
41 前記物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁波、及び、電磁波の中の少なくともいずれか一つを作用させることにより、前記物質内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御方法、又は前記水分制御方法を実行することを特徴とするプログラムによって達成される。
5【0008】なお、水分としての自由水とは、化学的には種々の程度はあるが、結合している状態にある水を結合水というのに対し、それ以外の自由に移動できる通常の状態の水のことである。また、自由水は、食品では、組織間にあり、機械的に保持されている水で、普通の水の性質を示す水である(参考資料:日本大百科全書(ニッポニ10カ)、デジタル大辞泉、栄養・生化学辞典)。
【発明の効果】【0009】本発明に係る水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備によれば、水分を制御することにより、物質の特性を向15上することができる。
【図面の簡単な説明】【0010】【図1】実施形態1に係る電極の概念図である。
【図2】水分子の模式図であり、図2Aは自由に活動している状態の水分子で20あり、図2Bは連珠配列のときの水分子である。
【図3】自由水の顕微鏡写真であり、図3Aは電場を印加する前の自由水の状態を示し、図3Bは電場を印加した際の自由水の状態を示す。
【図4】水粒子の電位のシミュレーション結果であり、図4Aはシミュレーションモデルの説明図であり、図4Bは電位シミュレーションの結果である。
25【図26】印加電圧の周波数と電圧値(0〜75V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。
42 【図27】電極への印加電圧の周波数と電圧値(0〜150V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。
【発明を実施するための形態】【0011】5以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体及び生成された物質について説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体及び生成された物質を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等し10く適用し得るものである。なお、実施形態では物質に含まれる水分としての自由水を例に挙げて説明しているが、本発明では物質に含まれる水分としては自由水に限定されるものではなく、例えば水溶液、水、エマルションに含まれる微小水滴等に広く適用可能である。
【0024】15水分制御装置1を設置するために専用の筐体を設けることもできるが、これに限定されるものではなく、例えば既存の筐体に設置することも可能である。水分制御装置1を設置できる既存の筐体としては、冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵倉庫、冷凍倉庫、
貯蔵庫、倉庫、冷蔵車、冷凍車、クーラーボックス、搬送用コンテナ、保管用コンテナ、ショーケース、棚、引き出し、フライヤー、栽培容器(水耕栽培用等)、燃20料タンク、パソコン、携帯電話、椅子ベッド、家具、寝具、家電機器、工場内の各種製造機器、加工機器、医療機器、健康機器、美容機器、調理機器、研磨機器、乗り物、半導体の洗浄機器、製錬工程、焼き付け工程、乾燥工程で冷却時に出る水蒸気の制御機器等多様な筐体を選択することができる。
【0025】25冷蔵庫の場合には、一対の電極13、14を例えば冷蔵庫内の天井面と底面に沿って、対向する側壁面に沿って、天井面や棚板や底面に沿って、天井面や底面と側43 面とに沿って、又は、扉側内面と奥側側面とに沿って配置することができる。フライヤーの場合には、例えば油容器の内側の両側面に沿って配置される。すなわち、
一対の電極13、14が対向するように配置されていれば、どのように配置しても構わない。また、一対の電極が平行になるように配置する必要なく、例えば両電極5が垂直となる位置関係とすることも可能であり、両電極の間に処理対象となる物質を配置できる空間を設けることができれば両電極はどのような配置としても構わない。電極の個数、配置、形状は、特に特定されるものではなく、その個数は一対に限定されるものではく、1枚でも、3枚以でも、2対以上でもよく、例えば後述の図30〜41等を参照されたい。
10【0027】[電極に印加される電圧について]コントローラ10から一対の電極13、14には、少なくとも直流成分電圧が印加され、これに加えて、交流成分電圧を印加することも可能である。直流成分電圧は特に限定されるものではないが、例えば0Vから2000Vの間で調整可能であ15り、例えば0V〜500Vの間で調整することも可能であり、例えば0V〜200Vの間で調整することも可能であり、例えば0V〜100Vの間で調整することも可能であり、また、例えば5V〜20Vの間で調整することも可能であり、さらに、
例えば10V〜15Vの間で調整することも可能である。また、極性は正とすることも負とすることもできる。すなわち、例えば0V〜200Vの間で調整する場合、
20正負両極性を考慮した場合には、-200V〜+200Vの間で調整することができる。電源電圧については、直流電源を用いるようにしてもよいし、交流電源を用いるようにしてもよい。直流電源を用いるようにした場合には、電源として例えば電池を用いることができるため、可搬性に優れる。また、交流電源を用いるようにした場合には、例えば商用電源を用いることができるため、容易に電源を確25保することができる。電源電圧については、例えば交流100V〜400Vとすることができる、例えば直流5V〜20Vとすることができ、また、例えば直流1044 V〜15Vとすることができる。
【0040】[コントローラの制御について]水分制御装置1は、コントローラ10により駆動され、一対の電極13、14間5に電場が発生する。このとき、電極13、14は、アンテナとして機能し、両電極13、14間に電磁波が放射されることにより、電磁場が発生する。また、電極13、14に対して、電気的、磁気的あるいは機械的な手段により振動を与えることにより、電極間に音波及び/又は超音波を発生させることもできる。電極間に音波及び/又は超音波を発生させる手段としては例えばピエゾ素子等の圧電素子を用い10ることができる。したがって、両電極13、14間には、電場、磁場、電磁場、電磁波、音波及び超音波の中の少なくとも1つが発生する。電場、磁場、電磁場又は電磁波に加えて、音波及び/又は超音波を用いることにより、物質の特性を向上する効果が増大する。
【0045】15図2は水分子の模式図であり、図2Aは自由に活動している状態の水分子であり、
図2Bは連珠配列のときの水分子である。
【0046】対象となる物質、例えば、肉、魚、野菜等の食品等、飲料、動植物細胞、及び、
油等は、自由水等の水分としての水分子を含んでいる。
20【0047】通常、水分子(H2O)は、図2Aに示すように、不規則に配列している。そのため、水素原子Hが活性酸素30を取り込んだり、水素結合を発生したりし、水分子のサイズが大きくなり、水分子の動きが鈍くなる。そして、水分子の酸化が始まる。
25【0048】これに対して、一対の電極13、14間に電場が発生すると、水分子は、一定の45 向きに配列しようとする。なぜならば、水分子は、電子を引っ張る力が強い酸素原子Oが少しマイナスに、電子を出しやすい水素原子Hが少しプラスなり、それぞれが一対の電極13、14との間の電場の方向に向こうとするからである。
【0049】5コントローラ10により交流成分電圧を発生させると、水分子は交互に向きを変える。この時、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変え、振動しているような状態となる。そして、この振動を繰り返すうち、水分子は、図2Bに示すように、活性酸素30又は他の成分との水素結合が切り離されて、徐々に水分子がそれぞれ規則的に細粒化して配列するようになる。
10【0050】物質内に存在する自由水等の水分としての水粒子(微細な水滴)間についても同様の作用があるため、一対の電極13、14間の電場によって、水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0051】15一対の電極13、14間に直流成分電圧が印加される場合には、この直流成分電圧による電場の向きに沿って、水分子が配列しようとする力の成分が存在する。このため、直流成分電圧のみを一対の電極13、14間に印加した場合にも、水分子は規則的に配列するようになる。さらに、直流成分電圧に対して交流成分電圧が印加されると、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変え、かつ、一方向に水20分子が配列しようとする力の成分も存在するため、水分子がより規則的に配列しやすくなる。水粒子の状態についても、これと同様に、一対の電極13、14間の電場によって、自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0052】25なお、一対の電極13、14間に印加する電圧に直流成分電圧が含まれていない場合にも、交流成分電圧によって、水分子は交流成分電圧と同じ周波数で向きを変46 え、振動しているような状態となる。そして、この振動を繰り返すうち、水分子は、
活性酸素30又は他の成分との水素結合が切り離されて、徐々に水分子がそれぞれ規則的に細粒化して配列するようになる。また、一対の電極13、14間に印加する電圧に直流成分電圧が含まれていない場合に、交流成分電圧による作用は、水粒5子の状態についても同様に、一対の電極13、14間の電場によって、自由水等の水分としての水粒子同士が引き合うようにして連珠配列を形成する。
【0053】なお、音波又は超音波には水分子を振動させる作用があるため、一対の電極13、
14間に直流成分電圧及び/又は交流成分電圧を印加する際に、さらに所定の周波10数及び強度の音波及び/又は超音波を電極間に発生させることにより、水分子の配列を促進する効果を奏する。また、所定の音波及び/又は超音波により水分子を振動させた場合には、電極間に電圧を印加しない場合であっても、水分子を整列させることが可能である。
【0054】15水は、
「結合水」と「自由水」とに分けることができる。結合水は、他の成分と水素結合により結びつき安定した状態である。これに対して、自由水は、自由に活動している状態であり、物質が食品である場合には食品が新鮮でみずみずしい状態である。しかしながら、自由水は、分子が他の成分と結合しやすく、自由水を含む食品は腐敗しやすい。すなわち、雑菌、ウィルス、微生物又は、活性酵素が自由水と20結合することで腐食が進みやすい。また、結合水の状態においても時間経過や温度上昇、乾燥環境の中では結合水が自由水になり、その時、水素結合していた細胞の成分の一部をもぎ取ることで腐敗しやすくなる。そこで、自由水を連珠配列した結合状態(上記「結合水の状態」とは区別される。)または他の細胞等に結合した状態にすることで鮮度維持を可能にする。
25【0055】本実施形態の水分制御装置1によって連珠配列された水分子は、自由水同士が結47 合して結合水のような安定した状態となる構造を形成すると考えられる。すなわち、
実施形態の水分制御装置1によって規則的に配列された水分子は、物質内に保持されながら、他の成分と結合しないため、食品を新鮮でみずみずしい状態に保つことができる。
5【0056】したがって、本実施形態の水分制御装置1を容器に設置しておけば、容器内の物質の自由水の配列を制御することができ、物質が食品、薬品、細胞である場合には、
食品、薬品、細胞の鮮度を維持することが可能となる。例えば、水分制御装置1を輸送容器として使用することで、従来よりも長距離の輸送でも鮮度を維持したまま10食品を輸送することができる。なお、容器は例えば発泡スチロール等でもよく、本実施形態の水分制御装置1を既存の発泡スチロール等に取り付けることで、輸送容器を構成することができる。
【0057】また、本実施形態の水分制御装置1によって一度規則的に配列した水分子は、数15日間、規則的に配列した状態で保持される。したがって、対象となる物質が食品、
薬品、細胞である場合、本実施形態の水分制御装置1により自由水を連珠配列の状態にした後に、別の容器に移して保存しても、食品、薬品、細胞の鮮度を維持することが可能となる。
【0058】20また、電極13、14に所定の電圧が印加されると、物質の水分中の水分子は、
電気的に整列し、略一定方向(電場の向き)に配向する。この時、水分子が整列することによって、物質の導電率が増大する。物質が液体の場合にも水分子を整列させることが可能であり、これにより例えば純水の場合にも、導電率を上昇させることができる。また、水分子は電場中では一定の周波数で微振動するため、0℃付近25では結晶化しない。
【0059】48 また、電極13、14に所定の電圧が印加されると、物質中の水分子の水素結合が抑制されるため、水素結合が少なくなるため、例えば生理的な水を得ることが可能である。さらにこの水に対して、マイクロバルブ、マイクロナノバブル又はナノバブル等の微小気泡を添加することにより、より高機能な水を得ることができる。
5このような電場及び微小気泡による液体の高機能化は水だけに限定されるものではなく、例えば水溶液、エマルジョン、油等にも適用可能である。
【0060】また、電極13、14に所定の電圧が印加されると、物質の水分中の水分子の水和が促進される。例えば、物質に含まれる蛋白質等が水和され、水分子と結合して10蛋白質等が水分子で囲まれた状態となると、物質の劣化を抑制することができる。
【0061】図3は自由水の顕微鏡写真であり、図3Aは電場を印加する前の自由水の状態を示し、図3Bは電場を印加した際の自由水の状態を示す。図3Bに示すように、電場を印加した際の自由電子では、白色の下線でマーキングした箇所において、水粒15子の連珠配列が確認できる。これに対して、図3Aに示すように、電場を印加する前の自由水では、水粒子の連珠配列は確認できない。図3より、本実施形態の水分制御装置1により自由水を連珠配列の状態にすることができることが確認できた。
【0062】図4は水粒子の電位のシミュレーション結果であり、図4Aはシミュレーション20モデルの説明図であり、図4Bは電位シミュレーションの結果である。図4Aに示すようにシミュレーションモデルは自由水として、中央部に4個の連珠配列の水粒子が存在し、その左側には独立した2個の水粒子が存在するものである。
【0063】図4Bでは水粒子の縦方向に沿った鉛直方向断面における等電位の領域が3箇所25示されている。一番右側の断面において、水粒子が連珠配列している箇所では、連珠配列内の水粒子内は等電位であることが示されている。また、図面の中央部に存49 在する4個の連珠配列の水粒子の領域は略同じ色によって着色されていることから、
4個の連珠配列の水粒子の領域の電位は略等しいことが分る。
【0064】連珠配列している4個の水粒子には電気力線が走っていることから、この4個の5水粒子が引き付け合っていること分かる。さらに、連珠配列している4個の水粒子から左側に離れて存在する2個の独立した水粒子に対しても連珠配列している4個の水粒子からの電気力線が走っていることから、これら2個の独立した水粒子に対しても、連珠配列している4個の水粒子へ引き付ける方向の力が作用していることが考えられ、2個の独立した水粒子にが、連珠配列している4個の水粒子の配列に10加わる可能性が考えられる。
【0077】[界面張力の低下について]W/Oエマルション(例えば食用油中の微小水滴)において、本実施形態の水分制御装置1によって電磁場を印加した場合に、界面張力を低下させることができる。
15この場合、界面張力の低下は例えば10%以上を実現することができ、また電磁場の条件によっては20%以上を実現することができ、さらに、例えば直流成分電圧及び交流成分電圧を適切に制御すると、界面張力を60%以上低下させることができる。これは、電磁場の印加によって形成される界面分極の増大によるものと考えられる。
20【0078】例えば食用油中で食物を調理するとき、食物に含まれる水分が食用油中で水蒸気となる際に、食物から食用油中に離脱する水滴は、微小水滴であり。このような微小水滴に、界面張力を低下させるのに十分な界面分極が生じていると、双極子間引力による微小水滴の連珠配列が形成される。
25【0079】フライヤーを用いて食用油で食物を揚げる場合に、フライヤーに対して本実施形50 態の水分制御装置1の一対の電極13、14を設置しておくと、油/水界面の界面張力を低下させることができる。一般に、食物の加熱調理を行うと、食物に内包される水分は、食用油中で水蒸気となって、突沸が発生する。本実施形態の水分制御装置1によれば、所定の電磁場を発生させることにより、油/水界面の表面張力を5低下させることができる。これにより、食物に内包される水分が離脱する際に、食用油中で粒径の小さな微小水滴となって分散しやすくなるため、加熱されている食用油中で水蒸気となって気化しても、発生する突沸は小さくなる。また、食物に内包される自由水は印加される電磁場によって連珠配列されることにより、食材から水分が離脱しにくくなる。このように食物に内包される水分を制御して突沸を抑制10することで食物内への油分の浸透を抑制する効果を奏する。また、それにより、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる。
【0122】図26及び図27には、本実施形態の水分制御装置1により食用油と水との界面張力が低下することを示すグラフである。図26は、印加電圧の周波数と電圧値(015〜75V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフであり、図27は、電極への印加電圧の周波数と電圧値(0〜150V)を変化させた際の食用油と水の界面張力のグラフである。図26及び図27は、前述の[界面張力の低下について]の項目で説明した測定装置と異なり、円筒状の容器内に、下層に水を、上層に食用油を、両者の界面が接する状態で入れ、この容器内に一対のステンレス電極を挿入20し、様々な周波数及び電圧値の交流電圧を印加しながら、食用油と水との界面張力を測定した。界面張力の測定にはFaceAutomaticSurfaceTensiometer(協和界面科学株式会社)を用いた。なお、電極としては一対の平板電極を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば円筒状の容器の内壁に沿うような曲面状の電極、あるいは、ステンレス箔のようなフレキシブルな電極を容器の内面に沿うよう25に配置させてもよい。
【0123】51 図26は、電極に印加した交流電圧は、周波数を10kHz〜50kHz、電圧を0V〜75Vの間で変化させた時の食用油と水の界面張力のグラフである。図26から、食用油と水の界面張力は、電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性を有することが分かる。すなわち、周波数が50kHzから、20kHz5へ、さらに、10kHzに低下するほど、界面張力が減少している。また、電圧値が0Vから75Vへ上昇するほど、界面張力は減少している。したがって、これらの界面張力と電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性とを利用することにより、水分制御装置1は印加電圧を調整することにより、界面張力を制御することが可能である。例えば、水分制御装置1をフライヤーに適用する場合には、
10前述のように界面張力が低下すると食物に内包される水分が離脱する際に、食用油中で粒径の小さな微小水滴となって分散しやすくなるため、加熱されている食用油中で水蒸気となって気化しても、発生する突沸は小さくなるが、この際に、水分制御装置1により界面張力を制御することにより、突沸の程度を調節できるようになるため、様々なフライヤーによる調理条件、食材の種類や状態や量等に応じた電極15への印加電圧の設定が可能となる。これにより、フライヤーによる調理条件が異なる場合にも、適切な電圧を電極に印加することにより、界面張力を適正に制御できるので、調理された食物の食感及び食味が非常に優れたものとなる。これは、電極に印加する電圧をフィードバック制御する場合にも有用である。また、界面張力は測定ないし予測可能であるため、界面張力を制御パラメータの1つとして利用する20ことも可能である。
【0124】図27は、電極に印加した交流電圧は、周波数を10kHz〜20kHz、電圧を0V〜160Vの間で変化させた時の食用油と水の界面張力のグラフである。図27は、特定の実験装置による測定例であり、この測定結果を全ての測定系に拡大25することはできないまでも、界面張力と電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性があることが示されている。この関連性を利用して、電極に印加され52 る交流電圧の周波数及び電圧値を調整することにより、界面張力の最適化が可能となる。本実施形態の水分制御装置1の効果と、界面張力との関係が明らかになったことにより、フライヤーの場合だけは無く、他の適用対象、例えば保冷や保蔵等に用いる場合にも、界面張力との関係からその効果の最適化を図ることが可能とな5る。上述の界面張力の測定は比較的容易であるため、本実施形態の水分制御装置1の最適化を、界面張力との関係から分析できることにより、電極に印加する電圧の制御をより適切に、かつ、より容易に行うことができる。
【符号の説明】【0193】101水分制御装置10コントローラ11交流成分電圧発生部12直流成分電圧発生部13〜23電極1530活性酸素31マンマシンインターフェイス32物質検出センサ35通信部36CPU2037記憶部38検出器39外部電源40サーバ41連結具2545データベース50筐体53 51加熱部54 【図1】【図2】55 【図3A】【図3B】56 【図4A】【図4B】57 【図26】【図27】58 (別紙2)甲1文献の記載事項(抜粋)【請求項1】5食用油をためて食物を加熱調理するための貯油槽と、
貯油槽に対向して立設される対向平板アンテナと、
対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平板アンテナを駆動する駆動部と、
貯油槽にためられた食用油を摂氏120度から摂氏200度に加熱して食物を調10理するための加熱部と、
を有するフライヤー。
【請求項2】電磁波の出力を投入される食物の種類、量の変化に対しても所定の出力に安定させるために駆動部を制御する出力安定部をさらに有する請求項1に記載のフライヤ15ー。
【請求項3】駆動部の出力の大小を制御する出力制御部をさらに有する請求項1又は2に記載のフライヤー。
【請求項4】20駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載のフライヤー。
【請求項5】貯油槽の食用油の温度を計測する温度計測部と、
温度計測部によって計測される温度が投入される食物の種類、量の変化に対して25も所定の温度となるように加熱部を制御する加熱制御部をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載のフライヤー。
59 【0038】以下、本件発明について図面と共に説明する。なお、本件発明は明細書や図面の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
5≪実施形態1≫<機能的構成>【0039】図1は、本件発明のフライヤーの概要を示す側面図である。例えば本件発明のフライヤーは、主に貯油槽(0101)と、対向平板アンテナ(0102)と、駆動10部(0103)と、加熱部(0104)と、から構成される。
【0040】貯油槽(0101)は、食用油(0105)をためて食物を加熱調理するために設けられる。すなわち、貯油槽内の加熱された食用油中に食物を投入することにより、食物がフライ調理(揚げ調理)される。貯油槽には食物が投入され、さらに貯15油槽の内面は高温の油と接触するため、貯油槽は人体に害がなく、高温・長期の使用でも劣化の少ない材質(例えばステンレス等)を用いて構成されることが好ましい。なお、貯油槽の容積や形状については、フライヤーの設置場所やフライヤーで一度に加熱調理を行う食物の分量等に応じて任意に設定される。
【0041】20対向平板アンテナ(0102)は、貯油槽に対向して立設される。対向平板アンテナ間に所定の範囲の周波数の電磁波を発生させ、電磁波が発生している空間内で食物が調理される。対向平板アンテナはその表面が絶縁性の物質により被覆されていることが好ましい。本構成とすると、例えば対向平板アンテナに供給された交流電圧が貯油槽へと伝わり、フライヤーの使用者の感電やフライヤー付近の装置の故25障等の恐れを防止することができる。
【0045】60 図2に本件発明のフライヤーを用いた食物(0201)の加熱調理の概要を示す。
例えば対向平板アンテナに所定の範囲の周波数の交流電圧が供給されると、対向平板アンテナ間に所定の範囲の周波数の電磁波(0202)が形成される。所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の加熱調理を行うと、食物内への5油分の浸透の抑制、食物内の水分による油はねの抑制、調理時の油温度の減少、食物の調理時間の減少とそれに伴う食用油の酸化の抑制等、優れた効果を得ることができる。また、調理された食物は、食味が非常に優れたものとなる。
【0046】なお、本件発明のフライヤーは、電磁波の出力を投入される食物の種類、量の変10化に対しても所定の出力に安定させるために駆動部を制御する出力安定部をさらに有していても良い。例えば貯油槽内に食物を投入すると、食物の水分含有量や食物の投入量によって電磁波の吸収量が異なるため、電磁波の出力が変化してしまう場合がある。電磁波の出力が変化してしまうと、調理された食物の食味を損ねてしまう場合があるため、電磁波の出力が当初設定されていたものに対して変化した場合15に、出力安定部がその変化を察知して、出力を安定させる構成とすると、どのような食物であっても、またどのような分量の食物を調理する際にも安定して食物を調理し、調理された食物の優れた食味を得ることができる。
【0047】また、本件発明のフライヤーは、駆動部の出力の大小を制御する出力制御部をさ20らに有していても良い。例えば調理する食物によって、調理に適切な電磁波の強度が異なる場合がある。そこで、フライヤーに出力制御部を設けることにより、どのような食物であってもその食物に適した電磁波の強度で調理を行うことができる。
なお、駆動部の出力として、例えば対向平板アンテナの底面部の長さと対向平板アンテナ間の距離をそれぞれ5cmから20cmとした時に、両電極の電位差を1ボ25ルトから50ボルト程度とすることができる。
【0048】61 また、本件発明のフライヤーは、駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部をさらに有していても良い。例えば調理する食物によって、調理に適切な電磁波の周波数が異なる場合がある。そこで、フライヤーに周波数制御部を設けることにより、どのような食物であってもその食物に適した電磁波5の周波数で調理を行うことができる。
【0049】加熱部(0104)は、貯油槽にためられた食用油を摂氏120度から摂氏200度に加熱して食物を調理するために設けられる。加熱の方法としては種々の方法を用いることが可能であるが、例えば金属パイプ内に発熱コイルを収容し、発熱コ10イルに電流を流すことにより熱を発生させて加熱する方法や、ガスを燃焼させて加熱する方法を用いることができる。なお、図1に示す加熱部は貯油槽の外に設けられているが、貯油槽の中に設けられても、また貯油槽と一体として構成されても良い。
【0050】15本件発明のフライヤーは、貯油槽の食用油の温度を計測する温度計測部と、温度計測部によって計測される温度が投入される食物の種類、量の変化に対しても所定の温度となるように加熱部を制御する加熱制御部をさらに有していても良い。一例として、油に食物を投入すると、通常油温度は低下してしまう。油温度が低下してしまうと、食物の調理に時間がかかることとなり、調理された食物の食味を損ねて20しまう場合がある。そこで、温度計測部により貯油槽の食用油の温度を計測しておき、食物を投入して油温度が低下した場合にも、加熱制御部により油温度を設定温度に調整するような構成とすると、油温度の低下を最小限に抑えることができ、好適である。なお、温度を計測する方法は種々の方法を用いることができる。
【0051】25また、本件発明のフライヤーに温度計測部が設けられる場合に、周波数制御部は、
温度計測部で計測される温度に応じて電磁波の周波数を制御するための温度依存周62 波数制御手段を有していても良い。例えば油の温度に応じて食物の調理に最適な電磁波の周波数が異なる場合も考えられ、本構成を取ることによって調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
【0052】5また、本件発明のフライヤーに温度計測部が設けられる場合に、出力制御部は、
温度計測部で計測される温度に応じて駆動部の出力の大小を制御するための温度依存出力制御手段を有していても良い。例えば油の温度に応じて食物の調理に最適な電磁波の強度は異なる場合が考えられ、本構成をとることによって調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
10【0053】本件発明のフライヤーは、貯油槽の食用油の酸化度(例えばTPM)を測定する酸化度センサーを有し、その際に周波数制御部は、酸化度センサーにより測定される食用油の酸化度に応じて電磁波の周波数を制御するための酸化度依存周波数制御手段を有していても良い。例えば食用油の酸化度に応じて食物の調理に最適な電磁15波の周波数は異なる場合が考えられ、本構成をとることによって調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
【0054】本件発明のフライヤーは、貯油槽の食用油の酸化度(例えばTPM)を測定する酸化度センサーを有し、その際に出力制御部は、酸化度センサーにより測定される20食用油の酸化度に応じて駆動部の出力の大小を制御するための酸化度依存出力制御手段を有していても良い。例えば食用油の酸化度に応じて食物の調理に最適な電磁波の強度は異なる場合が考えられ、本構成をとることによって調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
<加熱調理方法>25【0055】図12に本件発明の加熱調理方法の処理の流れの一例を示す。例えば本件発明の63 加熱調理方法として、まずステップS1201において、食用油を120度から200度の範囲に加熱する(食用油加熱ステップ)次にステップS1202において、

加熱されている食用油中に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させる(電磁波発生ステップ)。そして、ステップS1203において、食用5油中に加熱調理の対象となる食物を投入する(食物投入ステップ)加熱調理が終わ。
ると、食用油中から食物は取り出される。なお、本加熱調理方法は上述したフライヤーを用いて行われることが好ましいが、特に限定するものではない。所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の加熱調理を行うことにより、調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
10【0056】図13に本件発明の加熱調理方法の処理の流れの別の一例を示す。例えば本件発明の加熱調理方法の別の一例として、まずステップS1301において、食用油を120度から200度の範囲に加熱する(食用油加熱ステップ)次にステップS1。
302において、加熱されている食用油中に10キロヘルツから150キロヘルツ15の周波数の電磁波を発生させる(電磁波発生ステップ)。そして、ステップS1303において、食用油中に加熱調理の対象となる食物を投入する(食物投入ステップ)。
そして、ステップS1304において、食用油の温度を測定する(温度測定ステップ)。そして、ステップS1305において、測定された温度に応じて電磁波の周波数又は/及び出力を制御する(第一制御ステップ)。加熱調理が終わると、食用油20中から食物は取り出される。例えば食用油の温度に応じて食物の調理に最適な電磁波の周波数又は/及び温度が異なる場合も考えられ、本構成の加熱調理方法を用いて食物を調理することにより、調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。
【0057】25図14に本件発明の加熱調理方法の処理の流れの別の一例を示す。例えば本件発明の加熱調理方法の別の一例として、まずステップS1401において、食用油を64 120度から200度の範囲に加熱する(食用油加熱ステップ)次にステップS1。
402において、加熱されている食用油中に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させる(電磁波発生ステップ)。そして、ステップS1403において、食用油中に加熱調理の対象となる食物を投入する(食物投入ステップ)。
5そして、ステップS1404において、食用油の酸化度を測定する(酸化度測定ステップ)。そして、ステップS1405において、測定された酸化度に応じて電磁波の周波数又は/及び出力を制御する(第二制御ステップ)。加熱調理が終わると、食用油中から食物は取り出される。例えば食用油の酸化度に応じて食物の調理に最適な電磁波の周波数又は/及び温度が異なる場合も考えられ、本構成の加熱調理方法10を用いて食物を調理することにより、調理された食物の食味をより優れたものとすることができる。なお、本図に示すステップの他に上述した第一制御ステップを有していてもよい。その際に、第一制御ステップと第二制御ステップの順序はどちらが先でもよく、また同時に行われていても良い。
【0058】15なお、図示しないが、本件発明の加熱調理方法の別の一例として、まず食用油を120度から200度の範囲に加熱する(食用油加熱ステップ)。次に、加熱されている食用油中に10キロヘルツから150キロヘルツの第一周波数の電磁波を発生させる(電磁波発生ステップ)。そして、食用油中に加熱調理の対象となる食物を投入する(食物投入ステップ)。そして、食物投入と同時に食用油中の電磁波の周波数20を第一周波数より高い周波数とする(第一周波数変化ステップ)もしくは第一周波。
数変化ステップに変えて、食物投入と同時に食用油中の電磁波の周波数を第一周波数より低い周波数とする(第二周波数変化ステップ)本構成の加熱調理方法を用い。
ることにより、食物投入後の食用油中の電磁波の周波数を調整することで、調理された食物の食味にバリエーションを与えることができる。
25【0059】また、図示しないが、本件発明の加熱調理方法の別の一例として、まず食用油を65 120度から200度の範囲に加熱する(食用油加熱ステップ)。次に、加熱されている食用油中に10キロヘルツから150キロヘルツの第一周波数の電磁波を発生させる(電磁波発生ステップ)。そして、食用油中に加熱調理の対象となる食物を投入する(食物投入ステップ)。そして、食物投入と同時に食用油中の電磁波の周波数5を第一周波数より低い周波数とする(第二周波数変化ステップ)もしくは第一周波。
数変化ステップに変えて、食物投入と同時に食用油中の電磁波の出力を第二出力より低い出力とする(第二出力変化ステップ)本構成の加熱調理方法を用いることに。
より、食物投入後の食用油中の電磁波の出力を調整することで、調理された食物の食味にバリエーションを与えることができる。
10≪実施形態2≫【0076】・・・<実施例1>【0077】15本実施例は、実施形態1の発明を基礎とし、特に実施形態1に記載の加熱調理方法を実施する場合に、さらに前記食用油には長鎖脂肪酸塩が含まれている加熱調理方法である。長鎖脂肪酸塩としては、炭素数12以上のものがあげられ、特にラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ペンタデシル酸塩、パルチミン酸塩、パルミトレイン酸塩、マルガリン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、バクセン酸塩、リノール20酸塩、αリノレン酸塩、γリノレン酸塩、アラキジン酸塩、アラキドン酸塩、エイコサペンタエン酸塩(EPA塩)、ドコサヘキサエン酸塩(DHA塩)などが含まれる。長鎖脂肪酸塩はカルボキシル鎖が親水基、炭化水素鎖の部分が親油基として機能する。つまり食用油中の油成分と、食用油に投入される食物の表面に存在する水成分とをなじませる働きがある。特に食物の表面に粒状に水が存在する場合には25これらの長鎖脂肪酸塩が水の表面に整列し、さらに電磁波発生ステップにて与えられる電磁波によって長鎖脂肪酸塩が水の表面近傍で振動する。
66 【0078】例えば図15に示すラウリン酸ナトリウムの場合には親水基の部分に電磁波が働き食用油中にて振動する。
【0079】5そうすると粒状の水に接した親水基が振動するために徐々に水粒が細粒化されてゆく。この現象のためにたとえ食物を高温の食用油に投入した直後にその食物表面に粒状の水が存在したとしても瞬間的に細粒化されてゆくのでいわゆる油はね現象が生じない。さらに長鎖脂肪酸塩が食物の表面にも食物側を親水基、食用油側を親油基として配列し、食用油が食物の内部に浸透することをある程度妨げるものと考10えられる。したがって、油の侵入によって食物が脂濃くなったり、食物の内部から水分が排出されることもある程度防止できていると考えられる。これらの複合作用によって、加熱調理は、食物の表面をパリッと仕上げ、食物内部の水分も保ったジューシーな仕上がりになるものと考えられる。
<実施例5>15【0083】本実施例は、実施形態1の発明や実施形態2の実施例1から4の発明を基礎として、加熱調理の対象となる食物は、前記脂肪酸塩を構成する原子である、カリウム、
ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄のいずれか一以上を含有する食物である加熱調理方法を提供する。
20【0084】さらに、前記食用油は、加熱調理の対象となる食物として、前記脂肪酸塩を構成する原子である、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、
鉄のいずれか一以上を含有する食物の調理を少なくとも過去に一度以上行ったことがある再利用の食用油加熱調理方法である。
25【0085】食物中のこららの原子が加熱された食用油中の脂肪酸の加水分解とともに塩を生67 成するように仕向けるためである。例えばカリウムを多く含む食物としてはイモ類、
でんぷん類をあげることができる。
【0086】カルシウムを多く含む食物としては、砂糖や野菜類をあげることができる。野菜5としては、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、サヤインゲン、ササゲ、オクラ、スイカ、メロン、シロウリ、カボチャ、トマト、トウガラシ、完熟ピーマン、
イチゴ、実エンドウ、ソラマメ、エダマメ、スイートコーン、インゲンマメ、ソラマメ、タイサイ、コマツナ、タカナ、ホウレンソウ、キクナ、ネギ、ワケギ、セロリ、ハクサイ、キャベツ、メキャベツ、レタス、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、
10アスパラガス、ウド、コールラビ、タケノコ、ブロッコリー、マツタケ、シイタケ、
ヒラタケ、エノキタケ、マッシュルーム、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ、サツマイモ、ヤマイモ、ジネンジョ、ジャガイモ、サトイモ、レンコン、クワイ、チョロギ、オニユリ、ヤマユリなどをあげることができる。
【0087】15鉄を多く含む食物としては、貝類をあげることができる。赤貝、あさり、アワビ、かき、シジミ、タニシ、はまぐり、ほたて、などである。
【0088】リンは魚介類、きのこ類に多く含まれている。
【0089】20亜鉛も貝類に多く含まれている。特にかきには多く含まれている。
68 【図1】【図2】69 【図12】【図13】70 【図14】【図15】71 (別紙3)甲2文献の記載事項(抜粋)[1頁左下欄2ないし6行目]51.発明の名称電気乳化方法2.特許請求の範囲油水界面に電圧を印加してエマルジョンを生成させることを特徴とする電気乳化方法。
10[1頁左下欄11行目ないし2頁左上欄4行目]乳化法の一つとして電気乳化法があることは周知である。しかし周知の電気乳化法は主としてエアロゾルを対象に行なわれており、又数万ボルトにも及ぶ電圧を必要とするなどおよそ実用的な面から掛け離れたものである。
15本発明は簡単な手段でしかも低い電圧でエマルジョンを作る方法を提供するもので、以下その実施の態様を例示図面および試験研究の結果に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明を実施する装置の一例を原理的に示したものであり、該装置に基づきO/W型エマルジョン(連続相である水に不連続相となる油を滴下する)調製20の場合について説明する。すなわちこの装置は先端を毛細管にした滴下電極(1)を水相(2)に満した水相(A)に浸漬し、又前記滴下電極(1)は油相(B)で満たしてある。そして油相(B)の流速はレギュレータ(3)で調整できるようにしてあり、流速と流量はミクロビユレット(4)で直接測定できるようにしている。
(5)および(6)は油水両相にそれぞれ浸した白金電極であり、両白金電極は例25えば直流電源(7)に接続している。
上記のような装置において白金電極(5)(6)間に電圧をかけると、適当な条件72 のもとで毛細管つまり滴下電極(1)の先端で乳化が起り、滴下極側の液相である油相か霧状に分散してここにO/W型エマルジョンができるのである。
・・・前記乳化は連続相と不連続相となる2つの液体の界面に適当な電圧が加わると、連続相に向って1つ又はそれ以上の不連続相の液体の突起が生じ、この突起の尖端から分散5が開始し拡大する。
[2頁左上欄11ないし20行目]まずW/O型エマルジョンの場合における界面張力との関係について説明すると次のとおりである。すなわち界面活性前(以下SAAという)を含む油水界面に電10圧をかけると、そのイオン性にしたがって正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくなってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小さくなり、ついには霧状に分散し始める。
15[2頁右上欄9ないし11行目]液滴法では測定できないが、外挿すると-100V附近で界面張力零を通過することになる。
[4頁左上欄6ないし11行目]20なお本発明においては加える電圧の波形は、直流、交流、脈流の何れを用いてもよく、又電圧の大きさを変えたり、3者を適当に重畳させて印加する等の操作により、生成するエマルジョンの粒度分布をコントロールすることができる。
[4頁左上欄18行目ないし右上欄2行目]254.図面の簡単な説明第1図は本発明方法の実施の態様を例示した説明図であり、第2図はDTACを73 含むMIBK相にKCl水溶液を滴下する場合の電圧と界面張力の関係を示すグラフ・・・74 【第1図】【第2図】75