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関連審決 不服2021-4300
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事件 令和 4年 (行ケ) 10004号 審決取消請求事件
5
原告 パナソニックIPマネジメン ト株式会社
同訴訟代理人弁理士 宗田悟志 10 同村上雄一
被告特許庁長官
同 指定代理人山澤宏
同 篠原功一 15 同児玉崇晶
同 宮下誠
同 清川恵子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2023/01/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
20 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2021-4300号事件について令和3年11月24日に した審決を取り消す。
25 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 1 ? 原告は、発明の名称を「電力変換装置」とする発明について、平成30年 (2018年)9月13日を国際出願日とする特許出願(特願2019-5 46605号(優先権主張:平成29年10月6日、日本国)。請求項の数1 4。以下「本願」といい、本願の際に添付された明細書及び図面を併せて「本 5 願明細書等」という。)をした。(甲1) ? 原告は、令和2年9月7日付けで拒絶理由通知を受けたため、同年11月 12日に意見書と共に手続補正書(甲2。補正後の請求項の数13。以下「本 件補正」という。)を提出したが、同年12月25日付けで拒絶査定を受けた ため、令和3年4月2日、拒絶査定不服審判を請求した。(甲3、4)10 ? 特許庁は、上記請求を不服2021-4300号事件として審理した上、
令和3年11月24日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以 下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年12月14日、原告に送達 された。
? 原告は、令和4年1月13日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起15 した。
2 特許請求の範囲の記載 本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に記載 された発明を「本願発明」という。 。
) (甲2) 「直流電源と並列に直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第20 2のフライングキャパシタ回路と、
前記直流電源及び前記直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び 第2のフライングキャパシタ回路と並列に直列接続された第3のフライングキ ャパシタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路と、
前記第1のフライングキャパシタ回路及び前記第2のフライングキャパシタ25 回路の出力端子間に直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッ チング素子と、
2 前記第3のフライングキャパシタ回路及び前記第4のフライングキャパシタ 回路の出力端子間に直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッ チング素子と、
前記直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の 5 中点に設けられた第1の出力端子と、
前記直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の 中点に設けられた第2の出力端子と、
を備え、
前記第1のフライングキャパシタ回路と第2のフライングキャパシタ回路の10 接続点、及び前記第3のフライングキャパシタ回路と第4のフライングキャパ シタ回路の接続点は、直流電源電圧の中点に接続され、
前記第1のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S5aスイッチング素子、第S5bスイッチング素子、第 S5cスイッチング素子、及び第S5dスイッチング素子と、
15 前記第S5aスイッチング素子と第S5bスイッチング素子との接続点と、
第S5cスイッチング素子と第S5dスイッチング素子との接続点との間に接 続された第1キャパシタFC1と、を含み、
前記第2のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S6aスイッチング素子、第S6bスイッチング素子、第20 S6cスイッチング素子、及び第S6dスイッチング素子と、
前記第S6aスイッチング素子と第S6bスイッチング素子との接続点と、
第S6cスイッチング素子と第S6dスイッチング素子との接続点との間に接 続された第2キャパシタFC2と、を含み、
前記第3のフライングキャパシタ回路は、
25 直列接続された第S7aスイッチング素子、第S7bスイッチング素子、第 S7cスイッチング素子、及び第S7dスイッチング素子と、
3 前記第S7aスイッチング素子と第S7bスイッチング素子との接続点と、
第S7cスイッチング素子と第S7dスイッチング素子との接続点との間に接 続された第3キャパシタFC3と、を含み、
前記第4のフライングキャパシタ回路は、
5 直列接続された第S8aスイッチング素子、第S8bスイッチング素子、第 S8cスイッチング素子、及び第S8dスイッチング素子と、
前記第S8aスイッチング素子と第S8bスイッチング素子との接続点と、
第S8cスイッチング素子と第S8dスイッチング素子との接続点との間に接 続された第4キャパシタFC4とを含み、
10 前記第1の出力端子と前記第2の出力端子から交流電力を出力することを特 徴とする電力変換装置。」 3 本件審決の理由の要旨 ? 理由の骨子 本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりであり、要するに、
15 本願発明は、甲5の公開特許公報(特開2015-91179号。以下「引 用文献」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)であるか ら、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないというも のである。
? 引用発明の認定20 本件審決が認定した引用発明は、次のとおりである。
「直流電圧源である直流キャパシタ1に対して三相分の3つの交直変換 回路4を並列に接続し、あるいは、1つの直流キャパシタ1と2つの交直変 換回路4によって構成される単相の構成であってもよいマルチレベル電力変 換装置において、
25 直流キャパシタ1は第1および第2のキャパシタCDC1、CDC2の直 列体により構成され、該直列体の共通接続点を中性点端子NPとし、正極側 4 を正極端子Pとし、負極側を負極端子Nとして、
交直変換回路4は、共通回路2、電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回 路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)を備え、三相の場合 は、この交直変換回路4が三相分(4-1、4-2、4-3)直流キャパシ 5 タ1に並列に接続されており、
共通回路2は、第1のスイッチング素子S1、第1のフライングキャパシ タCFC1、第2のスイッチング素子S2、第3のスイッチング素子S3、
第2のフライングキャパシタCFC2および第4のスイッチング素子S4を 順次直列接続した回路であって、スイッチング素子S1の非接続側端は端子10 15を介して前記直流キャパシタ1の正極端子Pに接続され、スイッチング 素子S4の非接続側端は端子11を介して前記負極端子Nに接続され、スイ ッチング素子S2、S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子N Pに接続されており、
電圧選択回路3は、1つの共通回路2に対して、同様に構成された2つの15 電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第 2の電圧選択回路)が並列に接続されるものであって、
電圧選択回路3.1は、前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端 間に第5および第6のスイッチング素子S5. S6. 1、 1を直列に接続し、
前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第7および第8のスイ20 ッチング素子S7.1、S8.1を直列に接続し、前記第5および第6のス イッチング素子S5.1、S6.1の共通接続点(16.1)と前記第7お よび第8のスイッチング素子S7.1、S8.1の共通接続点(17.1) との間に第9および第10のスイッチング素子S9.1、S10.1を直列 に接続して構成されており、
25 電圧選択回路3.2は、前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端 間に第11および第12のスイッチング素子S5.2、S6.2を直列に接 5 続し、前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第13および第 14のスイッチング素子S7.2、S8.2を直列に接続し、前記第11お よび第12のスイッチング素子S5.2、S6.2の共通接続点(16.2) と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2、S8.2の共通接 5 続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2、
S10.2を直列に接続して構成されており、
前記スイッチング素子S9.1、S10.1の共通接続点を第1の交流出 力端子18.1として、前記スイッチング素子S9.2、S10.2の共通 接続点を第2の交流出力端子18.2として、
10 三相の場合に、各第1の交流出力端子18.1は、三相電圧源VsのR、
S、T相に各々リアクトルLを介して接続され、各第2の交流出力端子18. 2は、三相負荷MのU、V、W相に各々接続され、2つの異なる三相交流電 源もしくは負荷と、ひとつの直流電圧源の間で、交流-直流電力変換を行う 機能を有する交流-直流電力変換器であるマルチレベル電力変換装置。」15 4 原告の主張する取消事由 本願発明の引用発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り
当事者の主張
〔原告の主張〕 以下のとおり、本願発明と引用発明との間に相違点はないとした本件審決の判20 断は誤りである。
1 引用発明においては、三相分の三つの交直変換回路4-1ないし4-3のそ れぞれが本願発明の「電力変換装置」に相当するのであって、三つの交直変換 回路4-1ないし4-3を備えたマルチレベル電力変換装置の全体が本願発 明の「電力変換装置」に相当するものではない。すなわち、引用発明は、本願25 発明の「電力変換装置」を三つ備える発明として把握されるから、引用発明の 「マルチレベル電力変換装置」における一つの「交直変換回路4」は、本願発 6 明の「電力変換装置」に相当するものの、もう一つの「交直変換回路4」は、
本願発明とは別の「電力変換装置」に相当するものである。
したがって、引用発明は、本願発明の「第1のフライングキャパシタ回路及 び第2のフライングキャパシタ回路」に相当する構成を備えるものの、
「第3の 5 フライングキャパシタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路」に相当する 構成を備えないから、本願発明と同一ではない。
2 本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出力端子から交流電力を出力 する」とは、第1の出力端子OUT1と第2の出力端子OUT2との間の電位 差を複数段に切り替えることにより交流電力を出力することを意味しており、
10 引用発明のように一つの「交直変換回路4」の「交流出力端子18.2」及び 別の「交直変換回路4」の「交流出力端子18.2」がそれぞれ別の交流電力 を出力することを意味するものではないことは、本願明細書等の記載及び本願 の出願時における技術常識に照らして明らかである。
したがって、引用発明は、本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出15 力端子から交流電力を出力する」という特徴を備えていないから、本願発明と 同一ではない。
3 引用文献の表4に示されるスイッチングパターンにおいては、「電圧選択回 路3.1」及び「電圧選択回路3.2」の双方が動作しており、これらの一方 のみが動作し、他方が動作しないスイッチングパターンは存在しない。すなわ20 ち、引用発明の「マルチレベル電力変換装置」は、一つの「交直変換回路4」 の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」並びにもう一つの「交直変換回 路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」が動作して、一つの「交 直変換回路4」の「第2の交流出力端子18.2」及びもう一つの「交直変換 回路4」の「第2の交流出力端子18.2」から交流電力を出力するものでは25 なく、それぞれの「交直変換回路4」において、
「共通回路2」「電圧選択回路 、
3.1」及び「電圧選択回路3.2」の全てが動作し、それぞれの「交直変換 7 回路4」が別々の交流電力を出力するものである。
したがって、本件審決が、引用発明の「マルチレベル電力変換装置」のうち 一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」並び にもう一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」 5 を、本願発明と対比したのは誤りである。
〔被告の主張〕 1 〔原告の主張〕1に対し ? 本願発明は、三つの交直変換回路を備えたマルチレベル電力変換装置とい う構成を排除するものではなく、本願明細書等の図1に示されるような単数10 の交直変換回路からなる構成のみに限定されるものでもないから、本願発明 に係る原告の上記主張は、その前提を欠くものである。
? 引用発明において、三相負荷に対して出力される交流電力は、120°の 位相差で各相から出力されるものであり、各相が独立に制御されるものでは ないから、各相から別の交流電力が出力されるものであるとはいえない。引15 用文献の表4は、一つの「交直変換回路4」についての制御(スイッチング パターン)を示しているだけであり、三つの「交直変換回路4」がそれぞれ 独立に制御されていることを示すものではない。
2 〔原告の主張〕2に対し ? 本願発明においては、スイッチング素子やフライングキャパシタ回路など20 の接続配置が特定されているだけであって、スイッチング素子のオンオフを どのように制御するかは一切特定されておらず、
「第1の出力端子」と「第2 の出力端子」との間の電位差を複数段に切り替えることによって交流電力を 出力すると特定されているものでもない。
? 仮に、本願発明が「第1の出力端子と第2の出力端子との間の電位差を複25 数段に切り替えることによって交流電力を出力する」ものであると解釈した としても、引用発明においては、三相又は単相のいずれの場合においても、
8 それぞれの交流出力端子から出力される交流電力は、位相が異なり、その出 力時点における電位も異なる。そうすると、引用発明は、一つの「交直変換 回路4」の「交流出力端子18.2」ともう一つの「交直変換回路4」の「交 流出力端子18.2」との間の電位差を複数段に切り替えることによって交 5 流電力を出力するものであるから、本願発明との間に相違点はない。
3 〔原告の主張〕3に対し ? 本願発明は、その特許請求の範囲の記載から明らかなように、二つの「電 圧選択回路3.1」及び「電圧選択回路3.2」を備えた「マルチレベル電 力変換装置」という構成を排除するものではないし、一つの「電圧選択回路10 3.2」からなる構成のみに限定されるものでもない。
? 引用文献の表4の記載からも明らかなように、
「出力端子18.2」からの 「出力電圧」の出力は、
「電圧選択回路3.1」のスイッチングの状態に依存 せず、
「共通回路2」と「電圧選択回路3.2」のスイッチングの状態によっ て定まるものである。そして、引用文献の記載によれば、引用発明において15 は、
「出力端子18.2」から出力する「出力電圧」及び「出力端子18.1」 から出力する「出力電圧」を独立して任意に選択し得ることは明らかである。
したがって、本件審決が、引用発明の「マルチレベル電力変換装置」のう ち一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」 並びにもう一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路20 3.2」を、本願発明と対比したことに誤りはない。
当裁判所の判断
1 本願発明 ? 特許請求の範囲 本願発明の特許請求の範囲の記載は、前記第2の2のとおりである。
25 ? 本願明細書等の記載 本願明細書等には、次のとおりの記載がある(甲1。図1については、別 9 紙本願明細書等図面目録記載のとおりである。 。
) ア 技術分野 「本発明は、電力変換装置に関する。 (段落【0001】 」 ) イ 背景技術 5 「インバータモータや太陽光発電システム、蓄電池、燃料電池などに接 続されるパワーコンディショナーなどにおいて、マルチレベルインバータ を含む電力変換装置が利用されている(特許文献1(判決注:特許第56 26293号公報)。 (段落【0002】 )」 ) ウ 発明が解決しようとする課題10 「特許文献1に記載されたインバータ装置は、2つのフライングキャパ シタ型の3レベル回路を直列に接続しているので、スイッチ素子S1〜S 8のそれぞれに低耐圧のスイッチ素子を使用することができるが、出力段 のブリッジクランプ回路130を構成するスイッチ素子S1U、S2U、
S1W、S2Wには高耐圧のスイッチ素子を使用する必要がある。本発明15 者らは、出力段のスイッチ素子にも、より安価で高性能な低耐圧のスイッ チング素子を使用可能な電力変換装置を開発することを課題として認識 した。 (段落【0007】 」 ) 「本発明は、前記従来の課題を解決するもので、より安価で高性能な電 力変換装置を提供することを目的とする。 (段落【0008】 」 )20 エ 課題を解決するための手段 「上記課題を解決するために、本発明のある態様の電力変換装置は、直 流電源と並列に直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第 2のフライングキャパシタ回路と、直流電源及び直列接続された第1のフ ライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路と並列に25 直列接続された第3のフライングキャパシタ回路及び第4のフライング キャパシタ回路と、第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライン 10 グキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第1のスイッチング素 子及び第2のスイッチング素子と、第3のフライングキャパシタ回路及び 第4のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第3の スイッチング素子及び第4のスイッチング素子と、直列接続された第1の 5 スイッチング素子及び第2のスイッチング素子の中点に設けられた第1 の出力端子と、直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッ チング素子の中点に設けられた第2の出力端子と、を備え、第1のフライ ングキャパシタ回路と第2のフライングキャパシタ回路の接続点、及び第 3のフライングキャパシタ回路と第4のフライングキャパシタ回路の接10 続点は、直流電源電圧の中点に接続され、第1の出力端子と第2の出力端 子から交流電力を出力する。 (段落【0009】 」 ) オ 発明の効果 「本発明によれば、より安価で高性能な電力変換装置を提供することが できる。 (段落【0011】 」 )15 カ 発明を実施するための形態 「図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の回路図であ る。電力変換装置10は、直流電源電圧を入力する第1入力端IN1、第 2入力端IN2と、直流電源と並列に直列接続された第1のフライングキ ャパシタ回路11及び第2のフライングキャパシタ回路12と、直流電源20 及び直列接続された第1のフライングキャパシタ回路11及び第2のフ ライングキャパシタ回路12と並列に直列接続された第3のフライング キャパシタ回路13及び第4のフライングキャパシタ回路14と、第1の フライングキャパシタ回路11及び第2のフライングキャパシタ回路1 2の出力端子間に直列接続された第1のスイッチング素子S1及び第225 のスイッチング素子S2と、第3のフライングキャパシタ回路13及び第 4のフライングキャパシタ回路14の出力端子間に直列接続された第3 11 のスイッチング素子S3及び第4のスイッチング素子S4と、直列接続さ れた第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2の中 点に設けられた第1出力端OUT1と、直列接続された第3つのスイッチ ング素子S3及び第4のスイッチング素子S4の中点に設けられた第2 5 出力端OUT2とを備える。 (段落【0013】 」 ) 「図1に示した電力変換装置10では、第1〜第4のフライングキャパ シタ回路11〜14として、3レベルの電圧を出力可能な3レベル回路が 使用されている・・・。 (段落【0015】 」 ) 「第1入力端IN1と第2入力端IN2との間には、容量値が同じであ10 る2つのキャパシタC1及びC2が直列接続される。2つのキャパシタC 1及びC2が同じ容量値を有するので、2つのキャパシタC1及びC2の それぞれの端子間電圧は直流電源電圧Eの半分(E/2)に等しい。した がって、第1入力端IN1の電位をE[V]、第2入力端IN2の電位を0 [V]とすると、キャパシタC1とキャパシタC2との接続点の電位はE15 /2[V]となる。このように、図1に示した電力変換装置10では、2 つのキャパシタC1及びC2により直流電源電圧を分圧している・・・。
第1のフライングキャパシタ回路11と第2のフライングキャパシタ回 路12の接続点、及び第3のフライングキャパシタ回路13と第4のフラ イングキャパシタ回路14の接続点は、2つのキャパシタC1及びC2に20 より分圧された直流電源電圧の中点に接続される。 (段落【0016】 」 ) 「第1〜第4のフライングキャパシタ回路11〜14は、全て、フライ ングキャパシタ形の3レベル回路であり、それぞれ、直列接続された4つ のスイッチング素子と、1つのフライングキャパシタにより構成され る。・・・」(段落【0017】)25 「第1のフライングキャパシタ回路11は、4つのスイッチング素子S 5a、S5b、S5c、S5dと、1つのフライングキャパシタFC1に 12 より構成される。4つのスイッチング素子S5a〜S5dは、Nチャネル のMOSFETにより構成され、それぞれのMOSFETのソース・ドレ イン間にボディーダイオードが接続されている。4つのスイッチング素子 S5a〜S5dは、S5a、S5b、S5c、S5dの順に直列接続され、
5 スイッチング素子S5aは第1入力端IN1に接続され、スイッチング素 子S5dはキャパシタC1とキャパシタC2との接続点に接続される。フ ライングキャパシタFC1の一端はスイッチング素子S5aとスイッチ ング素子S5bとの接続点に接続され、フライングキャパシタFC1の他 端はスイッチング素子S5cとスイッチング素子S5dとの接続点に接10 続される。したがって、スイッチング素子S5bとスイッチング素子S5 cとの接続点に設けられた出力端からは、スイッチング素子S5aから入 力される電位E[V]と、スイッチング素子S5dから入力される電位E /2[V]の間の範囲の電位が出力されるが、フライングキャパシタFC 1はE/4[V]の電圧になるようにプリチャージされ、E/4[V]の15 電圧を中心として充放電を繰り返されるので、第1のフライングキャパシ タ回路11からは、概ね、E[V]、3E/4[V]、E/2[V]の3レ ベルの電位が出力されることになる。 (段落【0018】 」 ) 「第2のフライングキャパシタ回路12は、4つのスイッチング素子S 6a、S6b、S6c、S6dと、1つのフライングキャパシタFC2に20 より構成される。4つのスイッチング素子S6a〜S6dは、Nチャネル のMOSFETにより構成され、それぞれのMOSFETのソース・ドレ イン間にボディーダイオードが接続されている。4つのスイッチング素子 S6a〜S6dは、S6a、S6b、S6c、S6dの順に直列接続され、
スイッチング素子S6aはキャパシタC1とキャパシタC2との接続点25 に接続され、スイッチング素子S6dは第2入力端IN2に接続される。
フライングキャパシタFC2の一端はスイッチング素子S6aとスイッ 13 チング素子S6bとの接続点に接続され、フライングキャパシタFC2の 他端はスイッチング素子S6cとスイッチング素子S6dとの接続点に 接続される。したがって、スイッチング素子S6bとスイッチング素子S 6cとの接続点に設けられた出力端からは、スイッチング素子S6aから 5 入力される電位E/2[V]と、スイッチング素子S6dから入力される 電位0[V]の間の範囲の電位が出力されるが、フライングキャパシタF C2はE/4[V]の電圧になるようにプリチャージされ、E/4[V] の電圧を中心として充放電を繰り返されるので、第2のフライングキャパ シタ回路12からは、概ね、E/2[V]、E/4[V]、0[V]の3レ10 ベルの電位が出力されることになる。 (段落【0019】 」 ) 「第3のフライングキャパシタ回路13は、4つのスイッチング素子S 7a、S7b、S7c、S7dと、1つのフライングキャパシタFC3に より構成される。4つのスイッチング素子S7a〜S7dは、Nチャネル のMOSFETにより構成され、それぞれのMOSFETのソース・ドレ15 イン間にボディーダイオードが接続されている。4つのスイッチング素子 S7a〜S7dは、S7a、S7b、S7c、S7dの順に直列接続され、
スイッチング素子S7aは第1入力端IN1に接続され、スイッチング素 子S7dはキャパシタC1とキャパシタC2との接続点に接続される。フ ライングキャパシタFC3の一端はスイッチング素子S7aとスイッチ20 ング素子S7bとの接続点に接続され、フライングキャパシタFC3の他 端はスイッチング素子S7cとスイッチング素子S7dとの接続点に接 続される。したがって、スイッチング素子S7bとスイッチング素子S7 cとの接続点に設けられた出力端からは、スイッチング素子S7aから入 力される電位E[V]と、スイッチング素子S7dから入力される電位E25 /2[V]の間の範囲の電位が出力されるが、フライングキャパシタFC 3はE/4[V]の電圧になるようにプリチャージされ、E/4[V]の 14 電圧を中心として充放電を繰り返されるので、第3のフライングキャパシ タ回路13からは、概ね、E[V]、3E/4[V]、E/2[V]の3レ ベルの電位が出力されることになる。 (段落【0020】 」 ) 「第4のフライングキャパシタ回路14は、4つのスイッチング素子S 5 8a、S8b、S8c、S8dと、1つのフライングキャパシタFC4に より構成される。4つのスイッチング素子S8a〜S8dは、Nチャネル のMOSFETにより構成され、それぞれのMOSFETのソース・ドレ イン間にボディーダイオードが接続されている。4つのスイッチング素子 S8a〜S8dは、S8a、S8b、S8c、S8dの順に直列接続され、
10 スイッチング素子S8aはキャパシタC1とキャパシタC2との接続点 に接続され、スイッチング素子S8dは第2入力端IN2に接続される。
フライングキャパシタFC4の一端はスイッチング素子S8aとスイッ チング素子S8bとの接続点に接続され、フライングキャパシタFC4の 他端はスイッチング素子S8cとスイッチング素子S8dとの接続点に15 接続される。したがって、スイッチング素子S8bとスイッチング素子S 8cとの接続点に設けられた出力端からは、スイッチング素子S8aから 入力される電位E/2[V]と、スイッチング素子S8dから入力される 電位0[V]の間の範囲の電位が出力されるが、フライングキャパシタF C4はE/4[V]の電圧になるようにプリチャージされ、E/4[V]20 の電圧を中心として充放電を繰り返されるので、第4のフライングキャパ シタ回路14からは、概ね、E/2[V]、E/4[V]、0[V]の3レ ベルの電位が出力されることになる。 (段落【0021】 」 ) 「本実施の形態に係る電力変換装置10では、4つの3レベル回路を全 てフライングキャパシタ形の3レベル回路により構成するので、4つのフ25 ライングキャパシタ回路11〜14を構成する全てのスイッチング素子 の耐圧をE/4[V]とすることができる。これにより、安価で高性能な 15 MOSFETなどの低耐圧スイッチング素子を使用することができるの で、安価で高性能な電力変換装置を提供することができる。・・・」(段落 【0022】) 「本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の電力 5 変換装置は、直流電源と並列に直列接続された第1のフライングキャパシ タ回路及び第2のフライングキャパシタ回路と、直流電源及び直列接続さ れた第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ 回路と並列に直列接続された第3のフライングキャパシタ回路及び第4 のフライングキャパシタ回路と、第1のフライングキャパシタ回路及び第10 2のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第1のス イッチング素子及び第2のスイッチング素子と、第3のフライングキャパ シタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続 された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子と、直列接続 された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の中点に設15 けられた第1の出力端子と、直列接続された第3のスイッチング素子及び 第4のスイッチング素子の中点に設けられた第2の出力端子と、を備え、
第1のフライングキャパシタ回路と第2のフライングキャパシタ回路の 接続点、及び第3のフライングキャパシタ回路と第4のフライングキャパ シタ回路の接続点は、直流電源電圧の中点に接続され、第1の出力端子と20 第2の出力端子から交流電力を出力する。 (段落【0094】 」 ) 「この態様によると、出力段の第1〜第4のスイッチング素子の耐圧を 下げることができるので、安価で高性能な電力変換装置を実現することが できる。 (段落【0095】 」 ) ? 本願発明の技術的意義25 上記?及び?によれば、本願発明の技術的意義は、次のとおりであると認 められる。
16 ア 本願発明は、電力変換装置に関する発明である。(段落【0001】) イ 従来のマルチレベルインバータを含む電力変換装置においては、二つの フライングキャパシタ型の3レベル回路を直列に接続していることから、
出力段のブリッジクランプ回路を構成するスイッチ素子には高耐圧のス 5 イッチ素子を使用する必要があった。
(段落【0002】及び【0007】) ウ 本願発明は、出力段のスイッチ素子についてもより安価で高性能な低耐 圧のスイッチング素子を使用することができる電力変換装置を提供する ことを目的とする発明である。(段落【0008】) エ 本願発明は、特許請求の範囲記載の構成とし、四つのフライングキャパ10 シタ回路を構成する全てのスイッチング素子の耐圧を低くすることによ り、上記の課題を解決するものである。(段落【0009】 【0013】 、 、
【0015】ないし【0022】及び【0094】) オ 本願発明は、より安価で高性能な電力変換装置を実現することができる という効果を奏する。(段落【0011】及び【0095】)15 2 引用発明 ? 引用文献の記載 引用文献には、発明の名称を「マルチレベル電力変換装置」とする発明に 関し、次のとおりの記載がある(甲5。図1、4及び7については、別紙引 用文献図面目録記載のとおりである。 。
)20 ア 技術分野 「本発明は、直流電圧源から複数の電圧レベルに変換した複数の交流出 力を生成するマルチレベル電力変換装置に関する。 (段落【0001】 」 ) イ 発明を実施するための形態 「以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明25 は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1〜図4は本発明のマ ルチレベル電力変換装置の一実施形態例を示している。」 (段落【0023】) 17 「本実施形態例は、直流キャパシタ1(共通の直流電圧源)に対して三 相分の交直変換回路4-1、4-2、4-3を並列に接続した例を示して いるが、これに限らず、単相の構成(1つの直流キャパシタ1と2つの交 直変換回路(4)による構成)であっても、4相以上の構成であってもよ 5 い。 (段落【0024】 」 ) 「図1において、直流キャパシタ1は第1および第2のキャパシタCD C1、CDC2の直列体により構成され、該直列体の共通接続点を中性点 端子NPとし、正極側を正極端子Pとし、負極側を負極端子Nとしている。」 (段落【0025】)10 「交直変換回路4は、図4に示すように共通回路2、電圧選択回路3. 1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回 路)を備え、この交直変換回路4が図1に示すように三相分(4-1、4 -2、4-3)直流キャパシタ1に並列に接続されている。 (段落【00 」 26】)15 「図2、図4において、共通回路2は、第1のスイッチング素子S1、
第1のフライングキャパシタCFC1、第2のスイッチング素子S2、第 3のスイッチング素子S3、第2のフライングキャパシタCFC2および 第4のスイッチング素子S4を順次直列接続した回路であって、スイッチ ング素子S1の非接続側端は端子15を介して前記直流キャパシタ1の20 正極端子Pに接続され、スイッチング素子S4の非接続側端は端子11を 介して前記負極端子Nに接続され、スイッチング素子S2、S3の共通接 続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続されている。 (段落 」 【0027】) 「また、スイッチング素子S1およびフライングキャパシタCFC1の25 共通接続点を端子14’とし、フライングキャパシタCFC1およびスイ ッチング素子S2の共通接続点を端子14とし、スイッチング素子S3お 18 よびフライングキャパシタCFC2の共通接続点を端子12’とし、フラ イングキャパシタCFC2およびスイッチング素子S4の共通接続点を 端子12としている。 (段落【0028】 」 ) 「図2の共通回路2は、図1において三相分が共通回路2-1、2-2、
5 2-3として設けられ、スイッチング素子S1〜S4、フライングキャパ シタCFC1、CFC2および端子11〜15、12’、14’には、末尾 に_1、_2、_3を各々付している。 (段落【0029】 」 ) 「電圧選択回路3は、図4のように1つの共通回路2に対して、同様に 構成された2つの電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧10 選択回路3.2(第2の電圧選択回路)が並列に接続されるものであり、
図3は1つの電圧選択回路を示している。 (段落【0030】 」 ) 「図4において、電圧選択回路3.1は、前記第1のフライングキャパ シタCFC1の両端間(端子14’、14間)に第5および第6のスイッチ ング素子S5.1、S6.1を直列に接続し、前記フライングキャパシタ15 CFC2の両端間(端子12’、12間)に第7および第8のスイッチング 素子S7.1、S8.1を直列に接続し、前記第5および第6のスイッチ ング素子S5.1、S6.1の共通接続点(16.1)と前記第7および 第8のスイッチング素子S7.1、S8.1の共通接続点(17.1)と の間に第9および第10のスイッチング素子S9.1、S10.1を直列20 に接続して構成されている。 (段落【0031】 」 ) 「前記スイッチング素子S9.1、S10.1の共通接続点を第1の交 流出力端子18.1としている。 (段落【0032】 」 ) 「また電圧選択回路3.2は、前記第1のフライングキャパシタCFC 1の両端間(端子14’、14間)に第11および第12のスイッチング素25 子S5.2、S6.2を直列に接続し、前記フライングキャパシタCFC 2の両端間(端子12’、12間)に第13および第14のスイッチング素 19 子S7.2、S8.2を直列に接続し、前記第11および第12のスイッ チング素子S5.2、S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13お よび第14のスイッチング素子S7.2、S8.2の共通接続点(17. 2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2、S10. 5 2を直列に接続して構成されている。 (段落【0033】 」 ) 「前記スイッチング素子S9.2、S10.2の共通接続点を第2の交 流出力端子18.2としている。 (段落【0034】 」 ) 「図4の第1の電圧選択回路3.1は図1において三相分が電圧選択回 路3.1-1、3.1-2、3.1-3として設けられ、スイッチング素10 子S5.1〜S10.1および端子16.1、17.1、18.1には各々 末尾に_1、_2、_3を各々付している。 (段落【0035】 」 ) 「図4の第2の電圧選択回路3.2は図1において三相分が電圧選択回 路3.2-1、3.2-2、3.2-3として設けられ、スイッチング素 子S5.2〜S10.2および端子16.2、17.2、18.2には各々15 末尾に_1、_2、_3を各々付している。 (段落【0036】 」 ) 「前記第1の交流出力端子18.1_1、18.1_2、18.1_3 は、後述する図7のように、例えば三相電圧源VsのR、S、T相に各々 リアクトルLを介して接続され、第2の交流出力端子18.2_1、18. 2_2、18.2_3は、例えば三相負荷MのU、V、W相に各々接続さ20 れている。 (段落【0037】 」 ) 「また、第1の交流出力端子(18.1_1、18.1_2、18.1 _3)に三相負荷Mを、第2の交流出力端子(18.2_1、18.2_ 2、18.2_3)に三相電圧源Vsを接続してもよく、また三相負荷M の代わりに第2の三相電圧源を接続してもよい。 (段落【0038】 」 )25 「図1のように構成された回路は、2つの異なる三相交流電源もしくは 負荷と、ひとつの直流電圧源の間で、交流-直流電力変換を行う機能を有 20 する交流-直流電力変換器である。またそれは同時に、二つの交流電源も しくは負荷間において、交流-交流電力変換を行う機能を有する交流-交 流電力変換器である。 (段落【0039】 」 ) ? 引用発明の内容 5 上記?によれば、引用発明の内容は、本件審決が認定したとおり(前記第 2の3?)であると認められる(原告も争っていない。 。
) 3 本願発明の引用発明に対する新規性の有無 ? 本願発明と引用発明との対比 前記1及び2に基づき、本願発明と引用発明とを対比する。
10 ア 引用発明は、三つの「交直変換回路4」 (三相構成の場合)又は二つの「交 直変換回路4」 (単相構成の場合)を回路構成として含む「電力変換装置」 であるところ、このうち一つの「交直変換回路4」についてみると、引用 発明の「交直変換回路4」を構成する回路構成のうち「第1のスイッチン グ素子S1」 「第11のスイッチング素子S5.2」 「第12のスイッチ 、 、
15 ング素子S6.2」 「第2のスイッチング素子S2」及び「第1のフライ 、
ングキャパシタCFC1」からなるフライングキャパシタ回路並びに「第 3のスイッチング素子S3」 「第13のスイッチング素子S7.2」 「第 、 、
14のスイッチング素子S8.2」 「第4のスイッチング素子S4」及び 、
「第2のフライングキャパシタCFC2」からなるフライングキャパシタ20 回路は、本願発明の「直流電源と並列に直列接続された第1のフライング キャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路」に相当する。
また、引用発明の「交直変換回路4」を構成する回路構成のうち「第1 5のスイッチング素子S9. 及び 2」 「第16のスイッチング素子S10. 2」は、本願発明の「前記第1のフライングキャパシタ回路及び前記第225 のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第1のスイ ッチング素子及び第2のスイッチング素子」に相当する。
21 さらに、引用発明の「交直変換回路4」を構成する回路構成のうち「第 2の交流出力端子18.2」は、本願発明の「前記直列接続された第1の スイッチング素子及び第2のスイッチング素子の中点に設けられた第1 の出力端子」に相当する。
5 そして、上記の各回路構成における各素子の接続関係は同一である。
以上によれば、引用発明における一つの「交直変換回路4」は、本願発 明の「第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ 回路」並びにこれらに接続されたスイッチング素子及び出力端子に係る構 成を全て含むものといえる。
10 イ また、前記のとおり、引用発明は、三つの「交直変換回路4」 (三相構成 の場合)又は二つの「交直変換回路4」 (単相構成の場合)を有する「電力 変換装置」であるから、上記アのとおり本願発明の「第1のフライングキ ャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路」並びにこれらに接続 されたスイッチング素子及び出力端子に係る構成を全て含む「交直変換回15 路4」とは別に、同様の構成であるもう一つの「交直変換回路4」を有す るものであるところ、この「交直変換回路4」は、本願発明の「第3のフ ライングキャパシタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路」並びにこ れらに接続されたスイッチング素子及び出力端子に係る構成を全て含む ものといえる。
20 ウ さらに、上記アで検討した引用発明における一つの「交直変換回路4」 及び上記イで検討した引用発明におけるもう一つの「交直変換回路4」は、
並列に接続されるものであるから、これらは本願発明の「前記直流電源及 び前記直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフラ イングキャパシタ回路と並列に直列接続された第3のフライングキャパ25 シタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路」に相当する。
エ そして、引用発明が「直流キャパシタ1」を「直流電圧源」とし、上記 22 の各「交直変換回路4」が有する「第2の交流出力端子18.2」が交流 電力を出力することは、本願発明が「直流電源」と接続され、
「前記第1の 出力端子と前記第2の出力端子から交流電力を出力する」ものであること に相当する。
5 オ 以上によれば、引用発明は、本願発明の発明特定事項を全て備えるもの といえる。
? 新規性の有無について 上記?で検討したところによれば、本願発明と引用発明との間に相違点が あるとはいえないから、本願発明は、引用発明に対する新規性を欠くものと10 認められる。
4 原告の主張に対する判断 ? 前記第3〔原告の主張〕1の主張について ア 原告は、引用発明における三つの「交直変換回路4」のそれぞれが本願 発明の「電力変換装置」に相当するのであって、三つの「交直変換回路4」15 を備えたマルチレベル電力変換装置の全体が本願発明の「電力変換装置」 に相当するものではないから、引用発明の一つの「交直変換回路4」は本 願発明の「第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパ シタ回路」に相当する構成を備えるものの、
「第3のフライングキャパシタ 回路及び第4のフライングキャパシタ回路」に相当する構成を備えない旨20 主張する。
しかしながら、本願発明に係る特許請求の範囲において、複数の交直変 換回路を備える電力変換装置を排除する構成は見当たらないことからす れば、本願発明は、三つの交直変換回路を備えたマルチレベル電力変換装 置を排除するものではないから、原告の上記主張は、その前提を欠くもの25 といわざるを得ない。
そして、引用発明における一つの「交直変換回路4」及びこれと並列に 23 接続されるもう一つの「交直変換回路4」が、
「前記直流電源及び前記直列 接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャ パシタ回路と並列に直列接続された第3のフライングキャパシタ回路及 び第4のフライングキャパシタ回路」に相当するものといえることは、前 5 記3?で検討したとおりである。
イ したがって、原告の上記主張は採用することができない。
? 同2の主張について ア 原告は、本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出力端子から交 流電力を出力する」とは、第1の出力端子OUT1と第2の出力端子OU10 T2との間の電位差を複数段に切り替えることにより交流電力を出力す ることを意味するものであり、引用発明は本願発明の「前記第1の出力端 子と前記第2の出力端子から交流電力を出力する」という特徴を備えてい ない旨主張する。
しかしながら、本願発明に係る特許請求の範囲の記載によれば、本願発15 明においては、直流電源や各素子からなる回路の接続関係は特定されてい るものの、各スイッチング素子に係るスイッチング動作やその動作電圧等 は何ら特定されていない。そうすると、本願発明の「前記第1の出力端子 と前記第2の出力端子から交流電力を出力する」との構成は、第1の出力 端子OUT1と第2の出力端子OUT2との間の電位差を複数段に切り20 替えることにより交流電力を出力する構成に限定されるものではないと いうべきであるから、原告の上記主張は、その前提を欠くものといわざる を得ない。
また、仮に、本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出力端子か ら交流電力を出力する」との構成につき、第1の出力端子OUT1と第225 の出力端子OUT2との間の電位差を複数段に切り替えることにより交 流電力を出力する構成を意味するものであると解したとしても、引用発明 24 の一つの「交直変換回路4」の「交流出力端子18.2」及びもう一つの 「交直変換回路4」の「交流出力端子18.2」からは、三相構成又は単 相構成のいずれの場合においても、位相及び出力時点における電位が異な る交流電力がそれぞれ出力されるのであるから、引用発明は、二つの出力 5 端子の間の電位差を複数段に切り替えることによって交流電力を出力す るとの構成を備えるものといえる。そうすると、この点において、本願発 明及び引用発明が相違するとはいえない。
イ したがって、原告の上記主張は採用することができない。
? 同3の主張について10 ア 原告は、引用発明につき、引用文献の表4に記載されたスイッチングパ ターンによれば、それぞれの「交直変換回路4」において、
「共通回路2」、
「電圧選択回路3.1」及び「電圧選択回路3.2」の全てが動作し、そ れぞれの「交直変換回路4」から別々の交流電力が出力されるから、本件 審決が、引用発明のうち一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び15 「電圧選択回路3.2」並びにもう一つの「交直変換回路4」の「共通回 路2」及び「電圧選択回路3.2」を、本願発明と対比したのは誤りであ る旨主張する。
しかしながら、上記?で検討したとおり、本願発明においては、直流電 源や各素子からなる回路の接続関係は特定されているものの、各スイッチ20 ング素子に係るスイッチング動作やその動作電圧等は何ら特定されてい ないのであるから、本願発明と引用発明とを対比するに当たっては、回路 に係る構成の同一性を判断すれば足り、回路に係る動作の同一性まで考慮 する必要はないというべきである。
また、確かに、上記表4を含めた引用文献の記載によれば、引用発明に25 おいては、それぞれの「交直変換回路4」において、
「共通回路2」「電圧 、
選択回路3.1」及び「電圧選択回路3.2」の全てが動作し、それぞれ 25 の「交直変換回路4」から別々の交流電力が出力されることが想定されて いるものといえる。しかしながら、上記表4の記載によれば、
「出力端子1 8.2」からの「出力電圧」の出力は、
「電圧選択回路3.1」のスイッチ ングの状態ではなく、
「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」のスイッ 5 チングの状態によって定まるものといえるところ、引用文献のその他の記 載も併せ考慮すると、引用発明の「出力端子18.1」及び「出力端子1 8.2」からは、それぞれ独立した「出力電圧」が得られるものと認めら れる。そして、上記?で検討したとおり、引用発明の一つの「交直変換回 路4」及びもう一つの「交直変換回路4」の各「交流出力端子18.2」10 からは、位相及び出力時点における電位が異なる交流電力がそれぞれ出力 される。このように、引用発明における「交流出力端子18.2」は、
「交 流出力端子18. とは独立して交流電力を出力するものであり、
1」 かつ、
二つの「交流出力端子18.2」からは位相及び出力時点における電位が 異なる交流電力が出力されるものであるから、これらの二つの「交流出力15 端子18.2」を本願発明と対比すること、すなわち、引用発明のうち一 つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路3.2」並 びにもう一つの「交直変換回路4」の「共通回路2」及び「電圧選択回路 3.2」を本願発明と対比することに誤りがあるとはいえない。
イ したがって、原告の上記主張は採用することができない。
20 5 結論 以上によれば、本願発明は引用発明に対する新規性を欠くとした本件審決の 判断に誤りはない。
よって、原告の請求は、理由がないからこれを棄却することとして、主文の とおり判決する。