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事件 令和 3年 (ワ) 9530号 特許権侵害差止等請求事件
5 大阪府箕面市粟生新家2丁目1番90号
原告日本テクノ株式会社
同 代表者代表取締役
同 訴訟代理人弁護士山崎邦夫
同 石川直基 10 同山根睦弘
同 寺西慶晃
同 渡邊麻衣
同 南力斗
同 補佐人弁理士森田拓生 15 大阪市福島区吉野1丁目20番30号
被告基礎建販株式会社
同 代表者代表取締役
同 訴訟代理人弁護士檜垣誠次
同 鎌倉利光 20 同寺廣映輝
同 畑中一平
同 齋木進太朗
同 訴訟代理人弁理士寒川潔
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2022/11/28
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 25 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は、被告の製造等する別紙「被告製品目録」記載1〜3の製品を販売し又は販売の申出をしてはならない。
5 2 被告は、被告の製造等する別紙「被告製品目録」記載4及び5の製品を販売してはならない。
3 被告は、被告が販売した別紙「被告製品目録」記載4及び5の製品を回収しなければならない。
4 被告は、原告に対し、293万6670円及びこれに対する令和3年1010 月30日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要本件は、発明の名称を「スクリューオーガ用掘削ヘッド」とする特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告が本件特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明の技術的範囲に属する15 別紙「被告製品目録」記載1〜5の各製品(以下、順に「被告製品1」などといい、これらを併せて「被告各製品」と総称する。)を販売等することは本件特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告各製品の販売等の差止め及び販売済みの被告製品4及び5の回収を求めるとともに、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償293万6670円及20 びこれに対する不法行為の日の後(本訴状送達の日の翌日)である令和3年10月30日から支払済みまで民法所定年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)25 (1) 当事者原告は、土木及び建設機械の製造、販売等を目的とする株式会社である(甲1)。
2被告は、建設機械及び建設機材の製造、販売、修理、リース業等を目的とする株式会社である。
(2) 本件特許権原告は、次の本件特許権を有している。本件特許権の特許請求の範囲、明細書5 及び図面(以下、明細書及び図面を「本件明細書」という。)の記載は、別紙「特許公報」のとおりである(甲3)。
ア 登録番号 特許第4147314号イ 出願日 平成14年8月30日ウ 公開日 平成16年3月25日10 エ 登録日 平成20年7月4日オ 発明の名称 スクリューオーガ用掘削ヘッド(3) 構成要件本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の構成要件は、次のとおり分説される。
15 A 外周部に螺旋翼が設けられたスクリューオーガロッドの先端部に装着される掘削ヘッドであって、
B 基部が前記スクリューオーガロッドに取り付けられる基軸の外周部に、外径の等しい3条の螺旋翼が設けられ、
C これら3条の螺旋翼の先端部に固着された複数のホルダに、円錐状の尖っ20 た刃先部を有する複数のコニカルビットが軸回りに回転自在にそれぞれ取り付けられ、
D 該複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されていることを特徴とするE スクリューオーガ用掘削ヘッド。
25 (4) 被告各製品の構成被告各製品の構成については当事者間に争いがあるが、被告各製品が、構成要3件A〜C及びEを充足することは当事者間に争いがない。
(5) 被告の行為等被告は、顧客からの注文を受けて、その都度、設計及び製造をして、スクリューオーガ用掘削ヘッドを販売している。
5 被告製品1〜3は、被告のウェブサイト又はパンフレットに掲載されたものであり、被告製品4及び5は、被告が製造して、令和3年5月頃、九建総合に販売したものである(別紙「被告製品目録」参照)。
2 争点(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)10 (2) 本件発明の無効理由の有無(争点2)ア 明確性要件違反の有無(争点2−1)イ サポート要件違反の有無(争点2−2)ウ 登録実用新案公報(登録実用新案第3068462号公報(乙3。以下「乙3公報」という。))に記載された発明(以下「引用発明1」という。)に基づ15 く本件発明の進歩性欠如の有無(争点2−3)(3) 損害の発生及びその額(争点3)(4) 差止め等の必要性の有無(争点4)第3 争点についての当事者の主張1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)20 (原告の主張)(1) 被告各製品の構成被告各製品の構成は、別紙「被告各製品の構成」の各「原告の主張」欄記載のとおりである。
(2) 構成要件Dの充足性25 ア 「中央部が突出する概略円錐状」の意義「中央部が突出する概略円錐状」とは、スクリューオーガ用ヘッドの螺旋翼の4先端部に取り付けられたコニカルビット群の配置に関する形状を指しているのであるから、当該コニカルビット群の配置として成り立つ凸面の概略円錐状であって、効率よく安定した掘削を行うという本件発明の技術的意義を有するか、これと同一の作用効果を奏するもの、すなわち、3条の螺旋翼の先端部に取り付け5 られた複数のコニカルビットが概略錐面状に並んで配置されることを意味する。
本件発明の技術的意義は、@3条の螺旋翼の先端部の複数のコニカルビットが概略錐面状に並んで配置されること(構成要件C、D)で、掘削時、中心寄りのコニカルビットから外周寄りのコニカルビット/隣接するコニカルビットへと順に、概略錐面形状の配置に沿って岩盤等に当接して、掘削形状を段階的に削り10 拡げることにより安定した掘削を効率よく行う、A基軸の外周部に外径の等しい3条の螺旋翼を並列に設けること(構成要件B、C)で、螺旋翼自体の側周面が同一径のまま螺旋状に形成され、螺旋翼の螺旋進行部の外径が軸方向に向かって変化しない、いわゆるストレート部を有することで、掘削された穴壁によって軸芯が維持され、穴曲がりが生じにくく、安定した掘削を行うものである(本件明15 細書【0016】【0020】)。そうすると、本件発明は、螺旋翼の先端部の複数のコニカルビットが概略錐面状に並んで配置されることで効率的に掘削するという発明の課題に対応した効果を奏するものであるから、構成要件Dのコニカルビットには、基軸上の小型のコニカルビットや、螺旋翼の先端部以外の箇所に取り付けられたコニカルビットは含まれない。また、@の技術的意義を踏まえると、構20 成要件Dの充足性は、螺旋翼の先端部に取り付けられた複数の小型ビットが「概略錐面」を呈するかどうかで判断すべきであり、この判断をする上で、円錐台の天面を具備するかどうかは、同構成要件の充足において論じるべきではない。
イ 被告各製品はいずれも螺旋翼の先端部に取り付けられた複数の小型ビットの先端によって「中央部が突出する概略錐面」が形成され、かつ、効率よく安25 定した掘削を行うという効果が奏されるから、構成要件Dを充足する。
(被告の主張)5(1) 被告各製品の構成被告各製品の構成は、別紙「被告各製品の構成」の各「被告の主張」欄記載のとおりである。
(2) 構成要件Dの非充足性5 ア 「中央部が突出する概略円錐状」の意義複数のコニカルビット群が「概略円錐状」を構成することと、複数のコニカルビット群が単に何らかの円錐の錐面上に配置されることは意味が異なる。「概略錐面状」なる用語は本件明細書には示されておらず、「概略円錐状」をそのように理解することも述べられていない。また、構成要件として「中央部が突出する」10 と記載されているからには、円錐の頂点の側面視角度が鋭角という程度には対象を限定する意味があると解すべきである。
イ 被告各製品は、いずれも、螺旋翼に設置されたビットのみに着目しても、
3条の螺旋翼の先端部に設けられたコニカルビットから円錐をイメージすることはできず、イメージすることができたとしてもせいぜい円錐台であるから、
「中15 央部が突出する概略円錐状」の要件を満たさない。
2 本件発明の無効理由の有無(争点2)別紙「無効主張一覧表」記載のとおり。
3 損害の発生及びその額(争点3)(原告の主張)20 被告は、令和3年5月頃、九建総合に対し、被告製品4及び5を販売したところ、原告がこれらを販売する場合の見積額の合計は293万6670円であるから、原告は、被告による本件特許権の侵害により、少なくとも同金額の損害を被った。
(被告の主張)25 被告が九建総合に被告製品4及び5を販売したことは認め、その余はいずれも否認し又は争う。
64 差止め等の必要性の有無(争点4)(原告の主張)被告は被告各製品の製造販売又は販売の申出を行っており、原告の営業上の利益が侵害され又はそのおそれがあるから、販売等の行為の差止め、及び、既に販5 売した被告製品4及び5の回収を求める必要性がある。
(被告の主張)本件特許の出願日は平成14年8月30日であり、令和4年8月30日でその存続期間は満了しているから、差止請求等が認められる余地はない。
第4 当裁判所の判断10 1 本件明細書には次の記載がある。
(1) 発明の属する技術分野「本発明は、土木工事等で地中に穿孔するために使用されるスクリューオーガ用の掘削ヘッドに関するものである。」(【0001】)(2) 従来の技術15 「外周部に螺旋翼が設けられた回転軸の先端部に掘削ヘッドを装着し、軸回りに回転させつつ地中に穿孔するスクリューオーガ装置(アースオーガとも呼ばれる)が土木工事、建設工事等に使用されている。従来このスクリューオーガ装置に使用されてきた掘削ヘッドは、例えば鋼製の台金の先端部に超硬合金製の尖った刃先を有する複数の小形ビットを植設したものである。」(【0002】)20 (3) 発明が解決しようとする課題「上記従来の掘削ヘッドは、複数の小形ビットが台金に固着されていたので、
掘削中に岩石等に当たった時に刃先が逃げることができず、損傷を受けやすいという問題点があった。また、掘削によって生じた繰粉が穴底からうまく排出されにくいという問題点もあった。」(【0003】)25 「このような問題点を解決するものとして、直径方向に対向するように設けられた2条の螺旋翼を有する掘削刃の前記螺旋翼の周縁部及び下端に多数の小形7ビットを取り付けたスクリューオーガ用掘削刃が提案されている(意匠登録第1105595 号、実用新案登録第 3068462 号) 。この新しく開発された掘削刃は、軸回りに回転自在な小形のビット(コーン刃)が設けられていて、岩石等に当たった時に当該コーン刃が回転して逃げることができるため、損傷しにくいという利5 点があるが、2条の螺旋翼が直径方向に対向するように設けられ、これら2条の螺旋翼にそれぞれ設けた小型ビットで掘削を行うものであるから、掘削中に岩石等に遭遇したときは、2条の螺旋翼に設けたビットが当該岩石に当たるたびに断続的な衝撃を受け、スクリューオーガ装置全体が上下に振動して、円滑な掘削ができなくなるおそれがある。また、螺旋翼自体が先端側の外径が小さくなるよう10 に全体として円錐状の尖った形状となっているので、芯ぶれにより、掘削される穴が曲がりやすいというおそれもある。」(【0004】)「そこで本発明は、掘削中に岩石等に当たってもビットの刃先が損傷しにくく、
断続的な衝撃をうけにくく、しかも穴曲がりが生じにくい掘削ヘッドを提供することを課題としている。」(【0005】)15 「上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、
本発明にかかるスクリューオーガ用掘削ヘッドは、外周部に螺旋翼が設けられたスクリューオーガロッドの先端部に装着される掘削ヘッドであって、基部が前記スクリューオーガロッドに取り付けられる基軸の外周部に、外径の等しい3条の螺旋翼が設けられ、これら3条の螺旋翼の先端部に固着された複数のホルダに、
20 円錐状の尖った刃先部を有する複数のコニカルビットが軸回りに回転自在にそれぞれ取り付けられ、該複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されていることを特徴としている。」(【0006】)「この掘削ヘッドは、3条の螺旋翼が並列に設けられているので、円周方向における螺旋翼同士の間隔が小さく、先端部における小形ビットの密度も高くなる。
25 このため、掘削中に岩石等掘削しにくい物体に当たっても、断続的な衝撃が比較的小さくてすむ。この小形ビットとしては、円錐状の刃先部を有し、該刃先部が8軸回りに回転自在な、いわゆるコニカルビットを用いるのが好ましい。また、胴部における3条の螺旋翼の外径をほぼ一定にしておくことにより、芯ぶれが生じにくくなる結果、穴曲がりが少なくなる。」(【0007】)(4) 発明の実施の形態5 「基軸2の外周部には3条の螺旋翼10(10a,10b,10c)が等間隔で並列に溶接固着されている。これら3条の螺旋翼10a,10b,10cのうち、1番目の螺旋翼10aの基部側端部は、前記カラー9に溶接固着されている。
また、2番目の螺旋翼10bの基部側端部は、前記カラー9よりも先端側の基軸胴部に溶接固着されており、3番目の螺旋翼10cの基部はさらに先端側に溶接10 固着されている。なお、3条の螺旋翼10a,10b,10cの外径はほぼ等しくなっている。」(【0010】)「3条の螺旋翼10a,10b,10cの先端部は、ほぼ同じレベルに切り揃えられていて、その先端側には、概略円錐状のヘッド15が機軸2の先端部に固着されている。このヘッド15は、基部を基軸2に嵌合してロックピン16で固15 定されるもので、特に摩耗しやすい掘削ヘッド先端部が摩耗した時に、このヘッド15を取り外して新しいものと交換できるようになっている。このヘッド15と3条の螺旋翼10a,10b,10cには複数の小形ビット20,…がそれぞれ取り付けられている。これら小型ビット20,…は、それぞれが取り付けられている螺旋翼10の傾斜方向にほぼ沿うように傾けて設けられている。また、
20 前記ヘッド15には複数(図示例では3個)の小型ビット20,…が設けられていて、掘削ビットの先端部は、これら小型ビット群によって側面視概略円錐状を呈している。」(【0011】)「図示例では、小形ビット20は、円錐状の刃体を有し、軸回りに回転自在に保持されたいわゆるコニカルビットである。このビット20は、図に示すように、
25 螺旋翼10に溶接固着される円筒状のホルダ21と該ホルダに回転自在に嵌合するビット本体22とで構成される。ビット本体22は、前記ホルダ21に嵌合9する軸部22aと円錐状に尖った頭部(刃先部)22bと、該頭部と軸部の境界部に設けられた鍔22cとからなる。頭部22bには、超硬合金製の円錐状チップ23が植設されている。なお、コニカルビット20は、螺旋翼10の伸びる方向に沿って傾斜させて設けられている。」(【0012】)5 「掘削ヘッド1の先端部には、全体形状が概略円錐状となるように多数のコニカルビット20,…が設けられているので、これらビットにより効率よく掘削が行われる。掘削によって生じた繰粉(土砂等)は、掘削ヘッド1の3条の螺旋翼10に案内されて上向きに送られ、スクリューロッド5の螺旋翼に引き渡されて、
該螺旋翼によって案内されつつ穴外に排出される。この掘削ヘッド1は、先端部10 以外の胴部の外径がほぼ等しくなっていて、掘削された穴壁によって軸心が維持されるので、穴曲がりが生じにくい。」(【0016】)「一方、掘削箇所の地中に岩石等が存在している場合は、掘削ヘッド1の刃先部(先端部)に配置されている多数のコニカルビット群が当該岩石に当接して衝撃を受ける。岩石は掘削されにくく、コニカルビットの刃先部に大きな抵抗力が15 負荷されるが、コニカルビットは、ホルダ21の軸回りに回転自在であるから、
刃先の特定の部分に大きな力が作用することが避けられ、損傷が生じにくい。」(【0017】)「さらに、この掘削ヘッドは、3条の螺旋翼10a,10b,10cが軸心回りに等間隔(120度間隔)で設けられているので、先端部のビットの密度が高20 く、岩石等が存在しても断続的な衝撃は比較的小さい。このため、ビットの損傷が生じにくいのみならず、掘削装置100に上下方向の大きな振動等が生じず、
掘削装置のトラブルや騒音の発生等も少なくてすむ。」(【0018】)「このように、岩石等に当接した時の衝撃を小さくする点では、螺旋翼の数が多いほど有利であるが、4条以上とすると、螺旋翼同士の間隔が小さくなり過ぎ25 て、繰粉の排出に支障が生じるおそれがある。このため、螺旋翼の数は、3条とするのが最も好ましい。なお、以上の説明では、小形ビット20として、円錐状10の刃先を有する軸回りに回転自在なコニカルビットを設けた例について説明したが、場合によっては、通常の硬質刃先部を有する固定式の小形ビットでもよい。」(【0019】)(5) 発明の効果5 「以上の説明から明らかなように、本発明にかかる掘削ヘッドは、スクリューロッドに取り付けられる軸の回りに3条の螺旋翼を並列に設け、その先端部にそれぞれ複数の小形ビットを設けたので、穴曲がりが生じず安定した掘削を効率よく行うことが可能である。また、螺旋翼が3条設けられており、ほぼ同じレベルに切り揃えられたその先端部に、それぞれ複数の小形ビットが設けられているの10 で、掘削ヘッド刃先部のビットの密度が高く、掘削中に岩石に遭遇した場合にも断続的な衝撃が少なく、円滑に掘削を行うことができるようになった。なお、上記小形ビットとしては、円錐状の尖った刃先部を有し、該刃先部が軸回りに回転自在に保持されたコニカルビットを設けておくのが、損傷防止上好ましい。」(【0020】)15 2 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)(1) 被告各製品の構成について被告各製品が、構成要件A〜C及びEに係る構成を有することは当事者間に争いがない。争いのある構成要件Dの充足性 「該複数のコニカルビット群により、
(中央部が突出する概略円錐状に形成されている」といえるか)につき、検討する。
20 (2) 「中央部が突出する概略円錐状」の意義についてア 構成要件Dは、「該複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されている」と規定しているところ、「該複数のコニカルビット群」とは、3条の螺旋翼の先端部に固着された複数のホルダに取り付けられたコニカルビットを指す(構成要件C)から、構成要件Dは、3条の螺旋翼の先端部25 に取り付けられた複数のコニカルビットのみにより、中央部が突出した概略円錐状に形成されていることを要すると解される。その他、本件発明に係る請求項に11おいて、「中央部が突出する概略円錐状」に関する記載はない。
イ 本件明細書には以下の内容が示される。
従来の掘削ヘッドは、複数の小形ビットが台金に固着されていたので、掘削中に岩石等に当たった際、刃先が逃げることができず、損傷を受けやすいという問5 題点や掘削によって生じた繰粉が穴底からうまく排出されにくいという問題点があった(【0003】)。このような問題点を解決するものとして、直径方向に対向するように設けられた2条の螺旋翼を有する掘削刃の螺旋翼の周縁部及び下端に多数の小形ビットを取り付けたスクリューオーガ用掘削刃がある。これには、
軸回りに回転自在な小形のビット(コーン刃)が設けられていて、岩石等に当た10 った時に当該コーン刃が回転して逃げることができるため、損傷しにくいという利点があるが、2条の螺旋翼が直径方向に対向するように設けられ、これら2条の螺旋翼にそれぞれ設けた小型ビットで掘削を行うものであるから、掘削中に岩石等に遭遇したときは、2条の螺旋翼に設けたビットが当該岩石に当たるたびに断続的な衝撃を受け、スクリューオーガ装置全体が上下に振動して、円滑な掘削15 ができなくなるおそれがあるほか、螺旋翼自体が先端側の外径が小さくなるように全体として円錐状の尖った形状となっているので、芯ぶれにより、掘削される穴が曲がりやすいというおそれもある(【0004】)。本件発明は、掘削中に岩石等に当たってもビットの刃先が損傷しにくく、断続的な衝撃をうけにくく、しかも穴曲がりが生じにくい掘削ヘッドを提供することを目的とし、基部がスクリュ20 ーオーガロッドに取り付けられる基軸の外周部に、外径の等しい3条の螺旋翼が設けられ、これら3条の螺旋翼の先端部に固着された複数のホルダに、円錐状の尖った刃先部を有する複数のコニカルビットが軸回りに回転自在にそれぞれ取り付けられ、該複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されていることを特徴とする構成をとるものである(【0005】【0006】)。
25 3条の螺旋翼が並列に設けられていることにより、掘削中に岩石等の掘削しにくい物体に当たっても、断続的な衝撃が比較的小さくてすむようになるとともに、
12胴部における3条の螺旋翼の外径をほぼ一定にしておくことにより芯ぶれが生じにくくなる結果、穴曲がりが少なくなるという効果を奏するものである 【0006】(【0007】【0020】)。これらの本件明細書の記載内容に加え、図面(【図1】〜【図4】)に照らすと、外径の等しい3条の螺旋翼の先端部に取り付けられた複5 数のコニカルビット群により、「中央部が突出する概略円錐状に形成されていること」の技術的意義は、胴部における3条の螺旋翼の外径を変えることなく、該複数のコニカルビット群により、基軸先端方向に向かって径が小さくなる円錐状の形状にすることで、穴曲がりが生じることを防ぎつつ、掘削効率を高めることにあるものと認められる。
10 また、本件明細書には、発明の実施形態に関して、「小型ビット20,…は、
それぞれが取り付けられている螺旋翼10の傾斜方向にほぼ沿うように傾けて設けられている。また、前記ヘッド15には複数(図示例では3個)の小型ビット20,…が設けられていて、掘削ビットの先端部は、これら小型ビット群によって側面視概略円錐状を呈している。」(【0011】)、「掘削ヘッド1の先端部15 には、全体形状が概略円錐状となるように多数のコニカルビット20,…が設けられているので、これらビットにより効率よく掘削が行われる。」(【0016】)との記載もある。
ウ 証拠(乙1、2)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成19年7月3日付けの拒絶理由通知書(乙1)により、特許庁から、本件発明は、引用発明120 及び2に基づき進歩性を欠くとの拒絶理由を通知されたことに対し、構成要件Dに該当する部分を付加して補正した上で、意見書(乙2)において、引用発明1は、螺旋翼が2条で、円周方向における螺旋翼同士の間隔が大きく、ヘッド先端部のビットの密度が低くなり、しかもヘッド先端部のビットの先端はほぼ同一平面状に位置していて、仮想先端面が平板状を呈しているのに対し、本件発明は、
25 3条の螺旋翼の先端部に複数のコニカルビットが取り付けられ、ヘッド先端部が、
全体として中央部が突出する概略円錐状の外形に形成されているから、引用発明131と本件発明とは構成が大きく相違している旨を主張したことが認められる。
このような出願経過に照らすと、原告は、構成要件Dに該当する部分を付加して補正することで、3条の螺旋翼の先端部に取り付けられた複数のコニカルビットにより、ヘッド先端部が全体として中央部が突出する概略円錐状の外形である5 ことを特定したものと解される。
エ 前記アないしウのとおり、構成要件C及びDの文言、本件明細書の内容、
「中央部が突出する概略円錐状に形成されていること」の技術的意義出願経過に照らすと、「中央部が突出する概略円錐状」とは、3条の螺旋翼の先端部に取り付けられたコニカルビットのみにより、側面視を含む全体形状において基軸先10 端方向に向かって径が小さくなる円錐状をしていることを意味しているものと解するのが相当である。本件明細書には、発明の実施形態として、3条の螺旋翼の先端側に、概略円錐状のヘッド15が、基部を基軸2に固定されており、ヘッド15に取り付けられた小型ビットを含む小型ビット群が側面視概略円錐状を呈しているものが示される(【0011】)ことから、発明の実施形態には、3条の15 螺旋翼の先端部に取り付けられたコニカルビットが側面視を含む全体形状において基軸先端方向に向かって径が小さくなる円錐状をしており、かつ、ヘッド15に取り付けられた小型ビットを含む小型ビット群が側面視概略円錐状を呈する形態を含むものと解する余地があるが、前記アの構成要件C及びDの文言に照らすと、「中央部が突出する概略円錐状」の上記解釈は左右されない。
20 (3) 被告各製品についてア 被告製品1争いのない事実、証拠(甲5、乙10の1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、
被告製品1は、その3条の螺旋翼20の先端部に設けられた3〜4基のコニカルビット30により、側面視(基軸10先端方向を上に向けた場合。以下同じ。)25 において、中央部が平坦又は間隙のある、浅いハ字状に線が描かれていること、
全体形状として、基軸10から放射状に3本の緩やかな曲線(ほぼ直線)が描か14れていることが認められる。
イ 被告製品2争いのない事実、証拠(甲5、6、乙11の1〜6)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品2は、その3条の螺旋翼20の先端部に設けられた2〜3基のコニ5 カルビット30により、側面視において、中央部が平坦又は間隙のある、深いハ字状に線が描かれていること、全体形状として、基軸10から放射状に3本の直線が描かれていることが認められる。
ウ 被告製品3争いのない事実、証拠(甲6、乙12の1〜5)及び弁論の全趣旨によれば、
10 被告製品3は、その3条の螺旋翼20の先端部に設けられた5〜6基のコニカルビット30により、側面視において、中央部が平坦又は間隙のある、浅いハ字状に線が描かれていること、全体形状として、基軸10から放射状に3本の緩やかな曲線が描かれていることが認められる。
エ 被告製品415 争いのない事実、証拠(甲7、乙13の1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、
被告製品4は、その3条の螺旋翼20の先端部に設けられた1〜2基のコニカルビット30により、側面視において、2点又は点及び線が描かれていること、全体形状として、基軸10付近に2点及び基軸10から螺旋翼20の周縁部に向かって1本の直線が描かれていることが認められる。
20 オ 被告製品5争いのない事実、証拠(甲8、14、19、20)及び弁論の全趣旨によれば、
被告製品5は、その3条の螺旋翼20の先端部に設けられた3基のコニカルビット30により、側面視において、中央部が平坦又は間隙のある、浅いハ字状に線が描かれていること、全体形状として、基軸10から放射状に3本の緩やかな曲25 線が描かれていることが認められる。
カ 以上のとおり、被告各製品の3条の螺旋翼の先端部に取り付けられたコニ15カルビットは、いずれも、側面視を含む全体形状において、直線、緩やかな曲線又は点を形成するにすぎず、同コニカルビットのみにより、基軸先端方向に向かって径が小さくなる円錐状を形成しているとはいえず、構成要件Dを充足するとは認められない。
5 (4) 原告の主張について原告は、「中央部が突出する概略円錐状」とは、効率よく安定した掘削を行うという本件発明の技術的意義を有するか、これと同一の作用効果を奏するもの、
すなわち、3条の螺旋翼の先端部に取り付けられた複数のコニカルビットが「概略錐面状」に並んで配置されることを意味し、当業者は、本件明細書の記載から10 そのように理解する旨を主張し、当業者の認識や技術常識を裏付ける証拠として、
公開特許公報(甲23の1〜12)、パンフレット等(甲24の1〜3)、アンケート結果(甲25の1〜8)、大学教授の意見書(甲28の1、29の1)を提出する。
しかし、前記(2)のとおり、構成要件Dは「該複数のコニカルビット群により、
15 中央部が突出する概略円錐状を形成」と規定しており、本件明細書や出願経過等をみても、コニカルビットが概略錐面状に並んで配置していることと解すべき記載等はないから、同構成要件を充足するには、コニカルビット群のみにより、
(中央部が突出する)概略円錐状を形成する必要がある。
原告は、前記各証拠は、回転式の土木用掘削ヘッドにおいて、コニカルビット、
20 掘削刃などの掘削ビット類の配列、又は複数の掘削ビット類の全体形状を、当業者は「概略円錐状」と表現することを示すものである旨述べる。しかし、原告が提出する公開特許公報(甲23の1〜12)に係る特許の中には、本件特許の出願後に出願又は公開されたものが含まれており、それらは本件特許出願時の当業者の認識を裏付けることにはならない。この点は措くとしても、これらの公報の25 内容は、掘削爪等の配置、スクリュー刃全体、ヘッドの先端やヘッド部分全体、
掘削面や地盤改良体等の形状が、それぞれ円錐状であるなどと個別に特定するも16のであり、これらの公報全体をみても、回転式の掘削ヘッドにおいて掘削ビット類の配列や全体形状が一般的に「概略円錐状」と表現されているとは認められない。そして、少なくとも、これらの公報の中に、被告各製品のようにコニカルビット(3条の螺旋翼の先端部に取り付けられたもの)が並んでいる形状を指して5 (中央部が突出する)概略円錐状と表現することを示すものはない。また、パンフレット等(甲24の1〜3)には、「円錐ヘッド」や「円錐型ヘッド」として、
螺旋翼の外周部から中心軸に近づくにつれてビットが先端に向かって高い位置に取り付けられている掘削ヘッドの写真が掲載されているものの、どの部分を指して円錐形状と表現しているかについては明らかでないし、被告各製品のように10 コニカルビットが並んでいる形状そのものを指して概略円錐状と表現するものとも認められない。さらに、アンケート結果(甲25の1〜8)については、8名の回答者の中に本件特許の発明者や同発明者の出身会社の代表者、原告と何らかの取引関係があると考えられる者が含まれている(甲25の1、2、8、弁論の全趣旨)など、アンケート対象者の中立性等に疑義があることに加え、質問の15 形式も、被告各製品の螺旋翼先端部のコニカルビット群の形状をどう表現するかと問うのではなく、「「螺旋翼先端部のコニカルビット群」を見て「(概略)円錐状」と認識できますか?」と一定の結論を示唆するものであって、適切とは言い難い。回答者は、当該質問に対して、いずれも「できる」と回答しているものの、その理由として、「ビットの高さが違う」「外側より先端部の方が飛び出し20 ている」「掘削後円錐に断面がなる」「写真より(中略)円錐形状を推定・想像が行える」「日本テクノ製のコニカルヘッドと認識した」などとコメントしており、コニカルビットが並んでいる形状を概略円錐状と表現した趣旨か否かが不明である回答が含まれているほか、理由の説明内容が区々であり、このアンケート結果から、当業者が一般的に被告各製品のようにコニカルビットが並んでいる形25 状を(中央部が突出する)概略円錐状と認識するものと理解することは困難である。そして、大学教授の意見書のうち、甲第28号証の1には、ヘッドが回転し17たときにどのような軌跡を描いているかを立体的にイメージすれば、ビットの軌跡でトレースされる立体的形状が円錐状に近い形になることが指摘されているが、「複数のコニカルビット群により、中央部が突出する概略円錐状に形成されている」(構成要件D)ことに、「回転する複数のコニカルビット群の軌跡によ5 り、中央部が突出する概略円錐状に形成されている」ことを含むと解釈することは文理に沿わないし、当業者が一般的に、掘削ヘッドの「複数のコニカルビット群」との文言から、その形状(配置)をヘッドが回転したときの軌跡でイメージすることを裏付ける資料もない。甲第29号証の1には、「概略円錐状」とは、
数学的(幾何学)な意味での円錐ではなく、中央が尖った錐状立体に近い概形を10 意味していることが指摘されているが、その根拠は不明である。
以上から、原告が提出する証拠は、いずれも回転式の土木用掘削ヘッドにおいて、掘削ビット類の配列又は全体形状を、当業者が「概略円錐状」と表現することを示すものとはいえず、被告各製品のようにコニカルビット(3条の螺旋翼の先端部に取り付けられたもの)が並んでいる形状を、当業者が一般的に(中央部15 が突出する)概略円錐状と理解することを裏付けるものでもないから、原告の前記主張は採用できない。
3 結論以上から、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
20大阪地方裁判所第21民事部25 裁判長裁判官武 宮 英 子185 裁判官杉 浦 一 輝10裁判官峯 健 一 郎19(別紙)被 告 製 品 目 録1 製品名 コニカルヘッド5 品番 不明被告のウェブサイトの「製造販売修理」>「ヘッド」のウェブページにおいて、次のとおり掲載されている製品10202 製品名 コニカルヘッド品番 不明被告のウェブサイトの「製造販売修理」>「ヘッド」のウェブページにおいて、次のとおり掲載されている製品5213 製品名 3枚羽根コニカルヘッド品番 不明被告の製品パンフレット(2016.07.1000。甲6)5頁に次のとおり掲載されている製品5224 製品名 3枚羽根コニカルヘッド品番 不明被告が令和3年5月頃に株式会社九建総合開発(以下「九建総合」という。)に納品した次の製品5235 製品名 3枚羽根コニカルヘッド(カッタービット付き)品番 不明被告が令和3年5月頃に九建総合に納品した次の製品5以上24 P25〜31※別紙「特許公報」につき添付省略(別紙) 被告各製品の構成 ???被告製品1 被告製品2本件発明の構成要件 原告の主張 被告の主張 原告の主張 被告の主張外周部に螺旋翼が設けられたスクリュー外周部に螺旋翼が設けられたスクリューオーガA オーガロッドの先端部に装着される掘削 a1 被告の主張と同じ。 a2 被告の主張と同じ。 a1に関する被告の主張と同じ。
ロッドの先端に装着される掘削ヘッドである。
ヘッドであって、
中空円筒形状の基軸10を有し、基軸10の基端側にはスクリューオーガロッドに取り付けら基部が前記スクリューオーガロッドに取れるオスタイプのジョイント11が設けられB り付けられる基軸の外周部に、外径の等 b1 被告の主張と同じ。 b2 被告の主張と同じ。 b1に関する被告の主張と同じ。
る。
しい3条の螺旋翼が設けられ、
基軸10の外周部に、外径のほぼ等しい3条の螺旋翼20が設けられている。
基軸10の先端側の端部と3条の螺旋翼20の先端部とにそれぞれ複数のコニカルビット30 基軸10の先端側の端部と3条の螺旋翼20の先これら3条の螺旋翼の先端部に固着され が設けられるとともに、各螺旋翼20の翼面下 端部とにそれぞれ複数のコニカルビット30が設た複数のホルダに、円錐状の尖った刃先 にそれぞれ1基のコニカルビット30が設けら けられている。
C c1 被告の主張と同じ。 c2 被告の主張と同じ。
部を有する複数のコニカルビットが軸回 れている。 コニカルビット30は、円錐状の尖った刃先部をりに回転自在にそれぞれ取り付けられ、 コニカルビット30は、円錐状の尖った刃先部 有しており、軸回りに回転自在な状態でホルダ3を有しており、軸回りに回転自在な状態でホル 1内に収容されている。
ダ31内に収容されている。
基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコ基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニニカルビット30及び3条の螺旋翼20の先端 ニカルビット30及び3条の螺旋翼20の先端 ニカルビット30及び3条の螺旋翼20の先端カルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に部に設けられた3〜4基のコニカルビット30 部に設けられた3〜4基のコニカルビット30 部に設けられた2〜3基のコニカルビット30該複数のコニカルビット群により、中央 設けられた2〜3基のコニカルビット30によにより、側面視において、外側に向かって徐々 により、側面視において、中央部が平坦で、外 により、側面視において、外側に向かって基端D 部が突出する概略円錐状に形成されてい d1 d2 り、側面視において、中央部が平坦で、外側に向に基端側に後退する浅いハ字状にコニカルビッ 側に向かって徐々に基端側に後退する浅いハ字 側に大きく後退する深いハ字状にコニカルビッることを特徴とする かって基端側に大きく後退する深いハ字状にコニト30が配置されている。 状にコニカルビット30が配置されている。 ト30が配置されている。
カルビット30が配置されている。
(別紙「別紙1訂正図」の赤字による図面参 (別紙「別紙1訂正図」の黒字による図面参 (別紙「別紙2訂正図」の赤字による図面参(別紙「別紙2訂正図」の黒字による図面参照)照) 照) 照)E スクリューオーガ用掘削ヘッド。 e1 掘削ヘッド。 掘削ヘッド。 e2 e1に関する原告の主張と同じ。 e1に関する被告の主張と同じ。
32(別紙) 被告各製品の構成被告製品3 被告製品4 被告製品5原告の主張 被告の主張 原告の主張 被告の主張 原告の主張 被告の主張a3 被告の主張と同じ。 a1に関する被告の主張と同じ。 a4 被告の主張と同じ。 a1に関する被告の主張と同じ。 a5 被告の主張と同じ。 a1に関する被告の主張と同じ。
b3 被告の主張と同じ。 b1に関する被告の主張と同じ。 b4 被告の主張と同じ。 b1に関する被告の主張と同じ。 b5 被告の主張と同じ。 b1に関する被告の主張と同じ。
基軸10の先端側の端部と3条の螺旋翼20の先端部とにそれぞれ1又は2基のコニカルビット30が設けられるとともに、各螺旋翼20の翼面下にそれぞれ1基のコニカルビット30が設けられc3 被告の主張と同じ。 c1に関する被告の主張と同じ。 c4 被告の主張と同じ。 c5 被告の主張と同じ。 c1に関する被告の主張と同じ。
ている。
コニカルビット30は、円錐状の尖った刃先部を有しており、軸回りに回転自在な状態でホルダ31内に収容されている。
基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニ 基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニ基軸10の先端側の端部に設けられた3基のコニカルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に カルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に カルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に カルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に カルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部にカルビット30及び3条の螺旋翼20の先端部に設けられた5〜6基のコニカルビット30によ 設けられた5〜6基のコニカルビット30によ 設けられた1〜2基のコニカルビット30によ 設けられた3基のコニカルビット30により、側 設けられた3基のコニカルビット30により、側設けられた1〜2基のコニカルビット30によd3 り、側面視において、外側に向かって徐々に基端 り、側面視において、中央部が平坦で、外側に向 d4 り、側面視において、外側に向かって徐々に基端 d5 面視において、外側に向かって徐々に基端側に後 面視において、中央部が平坦で、外側に向かってり、側面視において、ほぼ水平にコニカルビット側に後退する浅いハ字状にコニカルビット30が かって徐々に基端側に後退する浅いハ字状にコニ 側に後退する浅いハ字状にコニカルビット30が 退する浅いハ字状にコニカルビット30が配置さ 徐々に基端側に後退する浅いハ字状にコニカル30が配置されている。
配置されている。 カルビット30が配置されている。 配置されている。 れている。 ビット30が配置されている。
(別紙「別紙4訂正図」の黒字による図面参照)(別紙「別紙3訂正図」の赤字による図面参照) (別紙「別紙3訂正図」の黒字による図面参照) (別紙「別紙4訂正図」の赤字による図面参照) (別紙「別紙5訂正図」の赤字による図面参照) (別紙「別紙5訂正図」の黒字による図面参照)e3 e1に関する原告の主張と同じ。 e1に関する被告の主張と同じ。 e4 e1に関する原告の主張と同じ。 e1に関する被告の主張と同じ。 e5 e1に関する原告の主張と同じ。 e1に関する被告の主張と同じ。
333435363738(別紙) 無効主張一覧表無効被告の主張 原告の主張
事実及び理由
全容
「概略円錐状」という用語自体は明確である。また、出願時の技術常識 本件明細書、図面の記載や出願経過、さらには技術常識を考慮しても、本件 に加え、本件明細書の記載を見れば、基軸に溶接される外径の等しい3 明確性要件違反 発明における「概略円錐状」との記載が、どのような形状までを含めたもの 条の螺旋翼の先端部をその先端部同士で互いにほぼ同じレベルに切り揃 1 の有無 であるのかはおよそ不明確であるから、本件特許は明確性を欠き無効であ えることによって、上に凸面を有する湾曲面状となり、当該部分に取り (争点2 1) る。 付けられた複数のコニカルビット群は、概略円錐状を形成することは明 らかである。
本件発明は、請求項1においては「3条の螺旋翼の先端部に固着された複数 本件発明は、ヘッド15を必須とするものではないところ、本件明細書 のコニカルビット群」のみが「概略円錐状」を構成するとして、「ヘッド1 の段落【0011】や【0016】の記載は、ヘッド15を合わせて概略円錐 サポート要件 5」の存在が無視されているのに対し、本件明細書の段落【0011】では、 状になる場合と、ヘッド15なくして、概略円錐状になる場合の双方を39 2 違反の有無 「ヘッド15」を合わせて概略円錐状であることが特徴であるかのような記 含むことが示されているのであり、当業者は、これらの本件明細書の記 (争点2 2) 載がなされている。請求項1にいう「概略円錐状」の意義については、本件 載によって、請求項どおりのヘッドを製作することが可能である。
明細書の記載による裏付けがないから、サポート要件を欠き、無効である。 したがって、サポート要件違反はない。
本件発明は、引用発明1及び実願昭54 101701号(実開昭56 21080号のマ 本件発明は、引用発明1と引用発明2によっても容易に想到できるもの イクロフィルム(乙5)。以下「乙5公報」といい、これに記載された発明 ではなく、進歩性を有する。
を「引用発明2」という。)から、当業者が容易に想到し得るものである。
スクリューオーガ用の掘削ヘッドであって、螺旋翼の先端にコニカルビット 乙1発明の内容 を取り付けることを特徴とする発明 本件発明は、3条の螺旋翼の先端部に複数のコニカルビットが取り付けら れ、ヘッド先端部が全体として中央部が突出する概略円錐状の外形に形成さ れているのに対し、引用発明1は、螺旋翼が2条であるため、円周方向にお 被告主張の左記の相違点は争わない。
ける螺旋翼同士の間隔が大きく、ヘッド先端部のビットの密度が低くなり、
ヘッド先端部のビットの先端がほぼ同一平面状に位置していて、仮想先端面 本件発明と乙1 が平板状を呈している点 発明との相違点 前記1(原告の主張)(2)アのとおり、本件発明には二つの技術的意義 争う。 があるところ、これらの技術的意義を両備することは、乙3公報には開 示も示唆もされておらず、本件発明との相違点である。
引用発明1及び引用発明2の技術分野が共通すること及び掘削性能の低 下を課題とすることは認める。
しかし、引用発明2は回転自在なコニカルビットの装着を想定していな 引用発明1に基 引用発明1及び引用発明2は、技術分野及び課題(削孔刃にかかる掘削抵抗 い点で、ビットの刃先が損傷しにくく、断続的な衝撃を受けにくく、穴 づく進歩性欠如 の増加を防止して掘削性能を向上させる)が共通し、乙3公報及び乙5公報 3 曲がりが生じにくいヘッドを提供するという本件発明の課題に対応して の有無 ではスクリューオーガ用の掘削ヘッドでは、掘削する地面の条件に応じて掘 いない。また、引用発明1は、2条であり、ヘッド外径を先端に向けて (争点2 3) 削ヘッドのスクリューの構成(形状や条数)を変更することがある点が開示 小さくすることを想定している点で、断続的な衝撃を受けにくく穴曲が されているなど、乙3公報には引用発明1に引用発明2を適用することに関 りが生じにくいヘッドという本件発明の課題に対応していない。また、
する示唆もあるから、引用発明1における「先端に行くに従ってスクリュー 乙3公報において、スクリュー形状の変更が述べられているだけで、2 の外径が小さくなる2条の螺旋翼」との構成に代えて、引用発明2の「外径 条のスクリューから3条のスクリューに変更することまで示唆している の等しい3条の螺旋翼」との構成を採用する強い動機付けがある。したがっ とはいえない。さらに、引用発明1に引用発明2を適用しても、引用発 て、引用発明1に引用発明2を適用し、上記相違点に係る本件発明の構成を 明1及び引用発明2は、ヘッド先端を円錐状にすることは想定していな 得ることは、当業者が容易に想到し得る。
いから、ヘッド先端部のコニカルビット群が概略円錐状に構成されるこ とにより、ビットの刃先が損傷しにくく、断続的な衝撃を受けにくくす るという本件発明の構成に至らない。
容易想到性 乙5公報には3条の螺旋翼を設ける構造及び螺旋翼の外径を等しいままとす る構造が記載される。
特開平9 144465号公報(乙6)には、縦軸の周囲に2〜3枚のスクリュウ 2(螺旋翼に相当)を付設する旨が記載され、外径が等しいスクリュウ2が 図示(【0006】、図1)される。特開平4 176987号公報(乙7)には、ス クリュー羽根4(螺旋翼に相当)は3枚羽根のものがある旨記載され、外径 本件発明の二つの技術的意義(前記1(原告の主張)(2)アの@及び がほぼ等しいスクリュー羽根4が図示される。実願昭57 185594号(実開 A)を両備する発明は、被告が指摘する各公報等には開示も示唆もされ 昭59 89187号)のマイクロフィルム(乙8)の明細書には、軸部1に3枚 ていない。
のスクリュー2(螺旋翼に相当)が均等ピッチで設けられる旨が記載され、
したがって、本件発明は被告が指摘する各公報等により進歩性が否定さ 外径がほぼ等しいスクリュー2が図示される(図1、2)。実願昭57 れることはない。
40869号(実開昭58 145394号)のマイクロフィルム(乙9)の明細書に は、螺旋翼6の先端に3枚の翼7(螺旋翼に相当)が設けられる旨が記載さ れ、外径がほぼ等しい翼7が図示される。
このように3条の螺旋翼を用いることは周知技術であって、引用発明1にい うスクリュー形状の変更という文言を見れば、螺旋翼を3条にすることも、
変更の一形態として当然思いつくものというべきである。