関連審決 |
不服2019-6665 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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令和4ネ10002特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
令和2行ケ10144 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和3行ケ10021 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和2行ケ10079 審決取消請求事件 令和2行ケ10083 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和4ネ10003特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10135号
審決取消請求事件
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5 原告 ザ・チルドレンズ・ホスピタル ・オブ・フィラデルフィア 10 同訴訟代理人弁護士 笠継正勲 同訴訟代理人弁理士 村越智史 被告特許庁長官 同 指定代理人伊藤良子 15 同福井悟 同 吉森晃 同 井上千弥子 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/11/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 20 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
25 特許庁が不服2019-6665号事件について令和3年6月23日にし た審決を取り消す。 1 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) ? 原告は、発明の名称を「スタッファー/フィラーポリヌクレオチド配列を 含むベクターおよびその使用方法」とする発明について、平成26年3月1 5 4日に国際出願(特願2016-502935号。優先日平成25年3月1 5日、優先権主張国米国。以下「本願」という。)をした。 原告は、平成31年1月17日付けで拒絶査定を受けたため、同年5月2 2日付けで拒絶査定不服審判(不服2019-6665号事件)を請求する とともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正をした。 10 原告は、令和2年9月2日付けで拒絶理由通知を受けたため、令和3年3 月3日付けで特許請求の範囲について手続補正をし、また、同月4日付けで 特許請求の範囲について手続補正をした(以下、同日付けの補正を「本件補 正」という。)が、特許庁は、同年6月23日、「本件審判の請求は、成り 立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同15 年7月13日に原告に送達された(附加期間90日)。 原告は、令和3年11月9日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。 2 特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲は、請求項1ないし50からなり、その請求項20 1及び30の記載は、次のとおりである(以下、本件補正後の請求項30に係 る発明を「本願発明30」といい、請求項1に係る発明と併せて「本願発明」 ということがある。)。 【請求項1】 異種ポリヌクレオチド配列を含むベクターゲノムと、 25 第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を含ん でなり、 2 前記異種ポリヌクレオチド配列が4.7Kbを下回る長さを有し、かつアデ ノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の内側に位置し、前記不活性の フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウイルス(A AV)の二つのITR配列の外側に位置し、該第1の不活性のフィラーまたは 5 スタッファーポリヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有す る組換えベクタープラスミド。 【請求項30】 請求項1ないし27のいずれかの組換えベクタープラスミドのベクターゲノ ムを含んでなるAAV粒子。 10 3 本件審決の要旨 本願発明30 本願発明30は、本願の請求項1ないし27を引用する形式で記載されて いるところ、そのうちの請求項1を引用する部分に係る発明は以下のとおり である。 15 a 異種ポリヌクレオチド配列を含むベクターゲノムと、 b 第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を含 んでなり、 a-1 前記異種ポリヌクレオチド配列が4.7Kbを下回る長さを有 し、かつアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の内側20 に位置し、 b-1 前記不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列 はアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の外側に位置 し、該第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチ ド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する25 組換えベクタープラスミドの ベクターゲノムを含んでなるAAV粒子。 3 本件優先日(平成25年3月15日)前に日本又は外国において頒布され た刊行物(Molecular Therapy. (2009) vol.17, no.1, p.144-152。以下「引用 例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。) 「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン、及びヒト凝 5 固第\因子をコードする4297ntの導入遺伝子を有するITR含有ベク タープラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションして調製された、 当該ITR含有ベクタープラスミド由来のDNA不純物が有意に減少した組 換えAAV。」 ア 新規性欠如10 本願発明30に係る「AAV粒子」は、本願発明30における「組換え ベクタープラスミド」の、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置 し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領 域と、当該領域の外側、すなわち、AAVの二つのITR配列の外側に位 置する領域に由来する残存プラスミドDNAをごく少量(60pg/10 915 vg程度)含む「ベクターゲノム」を含んでなるものである。 引用発明に係る「組換えAAV」は、引用発明における「ITR含有ベ クタープラスミド」のAAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、 「ヒト凝固第\因子をコードする4297ntの遺伝子」を含む領域と、 当該二つのITR配列の外側に位置する6980bpの領域に由来する20 DNA不純物を少量含む「ベクターゲノム」を含んでなるものである。 ここで、引用発明における「ヒト凝固第\因子をコードする4297n tの遺伝子」は、本願発明30における「4.7Kbを下回る長さを有す る異種ポリヌクレオチド配列」に相当する。 また、引用発明における「DNA不純物」は、引用発明における「IT25 R含有ベクタープラスミド」の二つのITR配列の外側に位置する698 0bpの領域に由来するものであるから、本願発明30における「残存プ 4 ラスミドDNA」に相当する。そして、引用例1に記載された「オーバー サイズ(6980bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用 いて調製された5つのロット(ロット06002、003A、NHP、0 802、0803)」は、ITR含有ベクタープラスミド由来のDNA不 5 純物を11〜17.7pg/10 9 vg(平均14.2±2.6pg/10 9 vg)含んでいるところ、この数値は、本願明細書で示されている残存プ ラスミドDNAの量(60pg/10 9vg程度)と同等であるから、引用 発明に係る「組換えAAV」のベクターゲノムに含まれている「DNA不 純物」、すなわち、「残存プラスミドDNA」は、本願発明30と同程度10 にごく少量であるといえる。 そうすると、本願発明30に係る「AAV粒子」に含まれている「ベク ターゲノム」と、引用発明に係る「組換えAAV」に含まれている「ベク ターゲノム」とは、いずれも、AAVの二つのITR配列と、その内側に 位置し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含15 む領域と、当該二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プ ラスミドDNAをごく少量含む点で相違ないから、そのような「ベクター ゲノム」を含むAAVである、本願発明30に係る「AAV粒子」と引用 発明に係る「組換えAAV」との間にも相違はないことになる。 したがって、本願発明30は、引用例1に記載された発明である。 20 イ 進歩性欠如 仮に、本願発明30に係る「AAV粒子」と、引用発明に係る「組換え AAV」との間に差異があったとしても、そのような差異はわずかである といえ、本願発明30は、引用発明、引用例1の記載、及び本願優先日当 時のAAVに関する周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発明で25 あって、本願の願書に添付した明細書(甲2。以下,図面を含めて「本願 明細書」という。)の記載を参酌しても、本願発明30が奏する効果に顕 5 著な点があるとはいえない。 したがって、本願発明30は、引用発明、引用例1の記載及び本願優先 日当時のAAVに関する周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発 明である。 5 以上のとおり、本願発明30は、特許法29条1項3号及び2項に該当し、 特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討する までもなく、本願は拒絶されるべきものである。 4 取消事由 本願発明30の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(引用発明との相違点の10 看過、一致点の認定の誤り) |
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当事者の主張
1 原告の主張 相違点(不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さ) の看過15 ア 本願発明30と引用発明を対比すると、本願発明の組換えベクタープラ スミドは、7.0ないし10.0Kbの長さを有する第1の不活性のフィ ラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を有するのに対し、引用発明 のITR含有ベクタープラスミドは、6.98Kbよりも短い不活性のフ ィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を有する点で相違する。本20 件審決には、この点を相違点として認定していない誤りがある。 すなわち、本願発明30に係る請求項30は、「請求項1のベクタープ ラスミドのベクターゲノムを含んでなるAAV粒子」であるとの発明特定 事項を含むものであり、請求項1は「異種ポリヌクレオチド配列を含むベ クターゲノム」との発明特定事項を含むから、本願発明30のベクターゲ25 ノムは、「異種ポリヌクレオチド配列」を含む。また、本願発明30の「ベ クターゲノム」は、異種ポリヌクレオチド配列のほかに微量ではあるが残 6 存DNA不純物を含むものであるところ、AAV粒子に含まれる残存DN A不純物の量は、組換えベクタープラスミドに含まれるバックボーンの長 さによって変わる(【0172】、【0177】、図5、図6)。そして、 本願明細書の【0083】、図5に記載されているように、第1の不活性 5 のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、ベクタープラスミ ドのバックボーンに存在するから、AAV粒子に含まれる残存DNA不純 物の量は、組換えベクタープラスミドに含まれるバックボーン中の第1の 不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さ(本願発 明30においては7.0ないし10.0Kb)によって変わることになる。 10 他方、引用発明の組換えAAVは、アンピシリン耐性遺伝子を含む69 80bpのバックボーンを含むベクタープラスミドをトランスフェクシ ョンすることで調製されるものであり、バックボーンのサイズは6980 bpであるから、そのバックボーン中のフィラー又はスタッファーポリヌ クレオチド配列のサイズは、当然ながら6980bp(6.98Kb)よ15 りも短くなる。そうすると、引用発明の組換えAAVは、6980bpよ り短い長さのフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列に応じた 量の残存DNA不純物を有する。 また、後記 のとおり、本願発明30と引用発明における各AAV粒子 に含まれる残存DNA不純物の量の相違は、上記の不活性のフィラー又は20 スタッファーポリヌクレオチド配列の長さの相違によるものであるとい えるから、不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長 さの相違は実質的な相違点であるといえる。 したがって、不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列 の長さの違いが相違点として認定されるべきである。 25 イ これに対して、被告は、後記2 アのとおり、不活性の7.0ないし1 0.0Kbの長さを有するフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配 7 列は、本願発明30のAAV粒子に含まれる構成要素ではない旨主張する。 しかし、本願明細書の【0172】には、「ベクタープラスミド『バッ クボーン』DNAのパッケージングが、ITRからの『逆転パッケージン グ』を介してかなりの程度で起こり」との記載があるように、組換えベク 5 タープラスミドのITR外側にあるバックボーンは、逆転パッケージング というメカニズムによりAAV粒子に残存DNA不純物としてパッケー ジングされる。 また、前記アのとおり、AAV粒子に含まれる残存DNA不純物(残存 プラスミドDNA)の量は、バックボーンの長さに応じて変わるものであ10 り、バックボーンの長さは「不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌ クレオチド配列」の長さによって規定されるものであるから、本願発明3 0における「第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチ ド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する」という点は、引用発 明との相違点と判断する際にAAV粒子に残存DNA不純物がどの程度15 含まれるかという観点から考慮されるべき発明特定事項である。 したがって、被告の主張は誤りである。 一致点(残存DNA不純物量が同程度である。)の認定の誤り ア 本件審決は、前記第2の3 アのとおり、本願発明におけるDNA不 純物の含有量とされている60pg/10 9 vgと引用発明におけるD20 NA不純物の含有量である14.2±2.6pg/10 9 vgとを比較し てDNA含有量が同程度にごく少量であると結論づけている。しかし、 以下のとおり、6.9Kbの長さのサイズ超過バックボーンを用いて調 製されたベクター中のプラスミドDNA不純物の量の平均が60pg/ 10 9 vgであることを理由にして、このような一致点の認定をするこ25 とは誤りである。 本願明細書には、7.0ないし10.0Kbの長さの第1の不活性の 8 フィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を含む組換えベクタ ープラスミドをパッケージ化したAAV粒子に含まれる残存DNA不 純物の量について直接の記載はないものの、本願明細書の図5には、2. 5Kbのバックボーンを含むベクタープラスミドがパッケージ化され 5 た比較例としてのAAVベクターのマップ(図5の上側)、7.1Kb のバックボーンを有するベクタープラスミドがパッケージ化された実 施例2に係るAAVベクターのマップ(図5の下側)が示されており、 実施例2に係るAAVに含まれるDNA不純物の量は、2.5Kbのバ ックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製されたAAVに10 含まれるDNA不純物の量の約40分の1にまで減少することが開示 されている。そして、図5には、AAV粒子に残存するDNA不純物の 量は記載されていないが、比較例のバックボーンの長さは、引用例1に 示されている2620bp又は2638bp(2.62Kb又は2.6 38Kb)と近い2.5Kbであるため、比較例におけるAAV粒子に15 含まれるDNA不純物の量は、引用例1に示されているDNA不純物の 数値(2620bp又は2638bpのバックボーンを有するベクター プラスミドを用いて調製されたAAVには平均値107.6±27.6 pg/10 9 vgのDNAが含まれていたことが記載されている(別紙 2の1-2)。)と同程度のDNAと考えられる。そうすると、7.120 Kbのバックボーンを有するベクタープラスミドをパッケージ化され た実施例2に係るAAV粒子に含まれるDNA不純物の量は、引用例1 に示される値の40分の1である2.69±0.69pg/10 9vg程 度であると推定される。 また、本願明細書の【0177】、図6には、サイズ超過バックボー25 ンを含まないベクタープラスミドを用いて調製されたベクター中のプラ スミドDNA不純物の平均は、301pg/10 9 vgであり、このDN 9 A不純物の量は、6.9Kbの長さのサイズ超過バックボーンを用いて 調製されたベクター中のプラスミドDNA不純物の量の平均である60 pgと比較して5倍であったことが開示されているが、図5には、図6 で示されている6.9Kbよりも長い7.1Kbの長さのサイズ超過バ 5 ックボーンを用いることで残存DNA不純物の量が1/40減少するこ とが記載されているから、本願明細書の記載により、サイズ超過バック ボーンの長さを長くすることで残存DNA不純物の量の減少幅が大きく なると当業者は理解することができる。そして、本願発明30の組換え ベクタープラスミドは、7.0ないし10.0Kbの長さの第1の不活10 性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を含むから、バッ クボーンの長さは7.1Kbを超えるものであり、7.1Kbよりも長 いバックボーンを含む組換えベクタープラスミドをパッケージ化した本 願発明30のAAV粒子に含まれる残存DNA不純物の減少割合は、実 施例2で説明される1/40よりも大きいと理解できる。したがって、 15 本願発明30のAAV粒子に含まれる残存DNA不純物の量は、2.6 9±0.69pg/10 9 vgよりも更に少なくなると理解することが できる。 他方、引用文献1には、6980bpのバックボーンを有するベクタ ープラスミド(ロット 06002、003A、NHP、0802、020 803)で測定された平均残留プラスミドDNAレベルは、14.2± 2.6pg/10 9 vgであったことが記載されている(別紙2の1- 2)。 以上を前提として、本願発明30と引用発明とを対比すると、引用発 明のAAV粒子には、14.2±2.6pg/10 9 vg程度のDNA不25 純物が含まれるのに対し、本願発明30のAAV粒子に含まれるDNA 不純物の量は、2.69±0.69pg/10 9 vg程度かそれよりも少 10 なく、本願発明30のAAV粒子に含まれるDNA不純物の量と引用発 明の組換えAAVに含まれる残存DNA不純物の量は相違している。 本願発明30の組換えベクタープラスミドは7.0ないし10.0K bの長さの第1の不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド 5 配列を有しており、本願明細書の【0177】に記載されている6.9 Kbの長さのバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製し たAAV粒子は本願発明30の技術的範囲外であるから、6.9Kbの 長さのバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製されたA AV粒子に含まれる残存DNA不純物の量である60pg/10 9 vg10 と、引用発明におけるDNA不純物の含有量を比較して同程度にごく少 量であると結論付けた本件審決の判断は、その前提において誤りがある。 イ これに対して、被告は、後記2 ア のとおり、本願明細書には、本 願発明30の実施例は記載されておらず、加えて、DNA不純物の量は、 同じバックボーンでもバッチによって差異が生じるから、本願発明3015 のAAV粒子が有するDNA不純物の量を具体的に特定することも引用 発明との間に差異を見出すこともできない旨主張する。 確かに、本願明細書には、第1の不活性のフィラー又はスタッファー ポリヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する組換 えベクタープラスミドを用いて調製したAAV粒子に含まれるDNA不20 純物を定量化したデータは含まれていないが、前記ア のとおり、引用 例1には、本願明細書の図5で比較例とされている2.5Kbのバック ボーンと近い長さを有する2.62Kb又は2.638Kbの長さのバ ックボーンの長さを有するベクタープラスミドを用いて調製されたDN A不純物の量の平均値が記載されているから、図5の実施例2(バック25 ボーンの長さが7.1Kbの場合)におけるDNA不純物の量は推定で きる。 11 また、同じバックボーンサイズでも実験条件によってDNA不純物の 量に差異が生じるが、バックボーンサイズで得られた複数のDNA不純 物の量の平均値を用いて比較を行えば問題はなく、被告の主張は理由が ない。 5 被告は、後記2 イのとおり、本願明細書の図5には、DNA不純物 の量が約40分の1になるとの結論を導いた実験条件や元データの詳細 は記載されておらず、「約40分の1」という数字には根拠がない旨主 張する。 しかし、本願明細書の実施例(【0161】ないし【0177】)で10 は、分子生物学の分野での標準的な手法に従ってDNA不純物の量を定 量している。本願明細書の図5には具体的な実験データは記載されてい ないが、当業者は、実施例3(【0173】ないし【0177】)に関 して明記されているAAV粒子の産生方法やDNA不純物の定量方法を 参照し、図5に示されている結果はこれと同様の標準的な手法に従って15 定量されたDNA不純物の量に基づいて減少幅を1/40と評価してい ると理解できるのであるから、被告の主張は理由がない。 小括 以上のとおり、本件審決には、前記 のとおり、不活性のフィラー又はス タッファーポリヌクレオチド配列の長さに係る実質的な相違点を看過した誤20 り、及び前記 のとおり、残存DNA不純物量が同程度であるとした一致点 に関する認定の誤りがあるから、このような誤った相違点及び一致点を前提 にしてされた新規性及び進歩性の判断も誤りである。 2 被告の主張 相違点(不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さ)25 の看過の主張について AAVベクターは、「2つのITR配列及びその間に目的の遺伝子(治療 12 遺伝子)が挟まれたゲノム」を含むものであり、上記ゲノムとバックボーン を含むベクタープラスミドそのものを丸ごと含むものではないから、ITR 外側のバックボーン配列は、実質的にはAAVベクターに含まれないもので ある。そうすると、引用発明のAAVベクターゲノムである「組換えAAV」 5 においてパッケージングされている「ベクターゲノム」は、「アンピシリン 耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン、及びヒト凝固第\因子をコ ードする4297ntの導入遺伝子を有するITR含有ベクタープラスミド」 のうち、「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン」を 除いたものであり、2つのITRとその間に挟まれた目的遺伝子である「ヒ10 ト凝固第\因子をコードする4297ntの導入遺伝子」であることは当業 者に明らかである。 他方、本願発明30の「AAV粒子」に含まれている「ベクターゲノム」 は、「二つのITR配列」及びその「内側に位置し」「4.7Kbを下回る 長さを有」する「異種ポリヌクレオチド配列」である。そして、引用発明の15 「ヒト凝固第\因子」は本願発明30の「異種ポリヌクレオチド配列」に相 当し、引用発明の「4297nt」は本願発明30の「4.7Kbを下回る 長さ」に相当する。 そうすると、引用発明の「ヒト凝固第\因子をコードする4297ntの 導入遺伝子を有するITR」は、本願発明の「二つのITR配列」とその「内20 側に位置し」「4.7Kbを下回る長さを有」する「異種ポリヌクレオチド 配列」である「ベクターゲノム」に相当するから、本願発明と引用発明は、 「二つのITR配列」とその「内側に位置し」「4.7Kbを下回る長さを 有」する「異種ポリヌクレオチド配列」である「ベクターゲノム」を含む観 点において、構成要素が相違しない。 25 一致点(残存DNA不純物量が同程度である。)の認定の誤りの主張につ いて 13 ア 本願明細書の【0035】の記載から、本願発明30の課題は、残存 DNA不純物量を少なくするか、又はこれを含まない組換えAAV粒子 の提供にあるといえる。これに対して、引用例1には、DNA不純物を 最小限に抑えることが記載され(別紙2の1-1)、「ベクタープラス 5 ミドのバックボーンサイズがDNAの不純物レベルに与える影響」 「ベ 、 クタープラスミドのバックボーンサイズが、組換えAAV2及びAAV 6に残留するプラスミドDNA不純物の量に及ぼす影響が評価された。 、 」 「ベクター製造用プラスミドに特大のバックボーンを使用することで、 プラスミド由来のDNA不純物の大幅な削減が達成された」(別紙2の10 1-2)との記載があるから、引用発明の解決しようとする課題も、組 換えAAVにおけるDNA不純物量を最小限に抑えることであるといえ る。そうすると、本願発明30と引用発明は、DNA不純物を減少させ るという同じ課題を有するものである。 本願明細書の【0171】、図1によると、AAV粒子に含まれる残15 存プラスミドDNAは、導入遺伝子カセットサイズが2.7Kbでは1 64pg/10 9vg、サイズが3.7Kbでは42.7pg/10 9v g、サイズが4.3Kbでは14.0pg/10 9vgであることが記載 されており、導入遺伝子カセットサイズがパッケージング許容限界サイ ズ(約4.7Kb)に近づくにつれてDNA不純物が減少することが理20 解できるから、本願明細書には、パッケージング許容限界サイズに近い 導入遺伝子カセットサイズを採用すると、導入遺伝子カセットサイズの 長さに応じてDNA不純物が減少することが開示されているといえる。 そして、前記 のとおり、本願発明と引用発明は、「4.7Kbを下 回る長さを有」する「異種ポリヌクレオチド配列」を有する「ベクター25 ゲノム」を含む点で共通するから、導入遺伝子カセットサイズにより生 じる「DNA不純物」の量において実質的な差異はない。 14 また、本願明細書の【0172】、図5には、ベクタープラスミド「バ ックボーン」DNAのパッケージングがITRからの「逆転パッケージ ング」を介してかなりの程度で起こり、それはサイズ超過(>4.7K b)のバックボーンを用いることで大幅に減少すること、サイズ超過バ 5 ックボーンを用いると残存プラスミドDNAは約40分の1(0.1〜 1.0%)に減少することが記載されており、これを具体的に裏付ける ものとして、本願明細書の【0177】、図6には、サイズ超過バック ボーンを含まないベクタープラスミドを用いて調製されたベクター(A AV粒子)中の10 9 vg(ベクターゲノム)当たりのプラスミドDNA10 不純物の平均は301pgであるのに対し、サイズ超過のバックボーン を用いて調製された10 9vg(ベクターゲノム)当たりのプラスミドD NA不純物の平均は60pgであることが記載されている。このように、 本願明細書には、ベクタープラスミド内のサイズ超過バックボーンを用 いることにより、ウイルスベクター(AAV粒子)中のDNA不純物が15 大きく低減することが記載されているから、ベクタープラスミドのバッ クボーンサイズがサイズ超過である本願発明の「AAV粒子」は、DN A不純物が大幅に減少しているといえる。 これに対し、引用文献には、バックボーンが組換えAAV2のパッケ ージング容量を超えるように改変した特大のバックボーンを持つプラス20 ミドでは、プラスミドDNA不純物のレベルが大幅に減少することが記 載されている(別紙2の1-2、1-4)から、引用発明の「組換えA AV」もDNA不純物が大幅に減少しているといえる。 したがって、本願発明と引用発明は、サイズ超過(>4.7Kb)の バックボーンを用いるものであり、大幅に減少し、ごく少量のDNA不25 純物を有する点で一致する。 なお、本願明細書の図5には、「AAVのパッケージング許容限界を 15 超えるサイズ超過プラスミドバックボーン(7.1Kb)は、非ベクタ ーDNAのパッケージングを著しく低下させる。」と記載され、図5の 下の図における「DNA Stuffer」が本願発明でいうところの 「第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列」 5 に対応するが、「DNA Stuffer」の長さは「バックボーン7. 1Kb」よりも大幅に短いことは図面上明らかである。そうすると、図 5には、「第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチ ド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する」組換えベクタープ ラスミドのベクターゲノムを含んでなる本願発明30のAAV粒子が記10 載されているとはいえず、その他、本願明細書には、本願発明30のA AV粒子を具体的に裏付ける実施例の記載はない。 加えて、本願明細書の図6によると、DNA不純物の量は、同じサイ ズ超過バックボーンを採用したとしても、バッチ(実験条件)によって 差異が生じることが読み取れるから、本願発明30のAAV粒子が有す15 るDNA不純物の量を具体的に特定することも、引用発明との間に差異 を見出すこともできない。 以上のとおり、本願発明と引用発明は、「大幅に減少」し、「ごく少 量」のDNA不純物を有する点で一致し、DNA不純物の量について差 異はなく、「DNA不純物」の観点で相違するものではない。 20 なお、本件審決は、前記第2の3 アのとおり、本願発明30に係る 「AAV粒子」は、「AAVの二つのITR配列の外側に位置する領域 に由来する残存プラスミドDNAをごく少量(60pg/10 9 vg程 度) 「ベクターゲノム」 含む を含んでなるもの」と認定し、 「ごく少量」、 「程度」の文言を用いており、本願発明30のAAV粒子に含まれる残25 存DNA不純物の量が6.9Kbの長さを有するベクタープラスミドを 用いて調製したAAV粒子の場合と同じ60pg/10 9 vgであると 16 までは認定していない。 イ これに対して、原告は、前記1 アのとおり、AAV粒子に含まれる残 存DNA不純物の量が組換えベクタープラスミドに含まれるバックボー ンの長さによって変わるものであり、本願明細書の図5、図6によれば、 5 当業者は、サイズ超過バックボーンの長さを長くすることにより、残存D NA不純物の量の減少幅が大きくなることを理解することができる旨主 張する。 しかし、本願明細書には、サイズ超過のバックボーンを用いると残存D NA不純物の量が大きく減少することが記載されているにすぎず、4.710 Kbを超えるバックボーン同士で比較した場合において、バックボーンの 長さを長くすればするほどDNA不純物の量が減少することは記載され ていない。前記ア のとおり、本願明細書には、本願発明30のAAV粒 子を具体的に裏付ける実施例の記載はなく、「7.0ないし10.0Kb の長さを有する」配列は好ましい範囲として記載されていたものでもない。 15 そうすると、パッケージング許容限界サイズ(約4.7Kb)を超える範 囲で「フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列」の長さを「7. 0ないし10.0Kb」の範囲に調整することでDNA不純物の量が減少 することが本願明細書に説明されているとはいえない。 加えて、本願明細書の図5には、DNA不純物の量が約40分の1にな20 るとの記載があるが、実験条件及び元データ詳細の記載はなく、図5の「1 /40」と図6の「1/5」の数値の違いが、バックボーンの長さの差で ある0.2Kb(7.1Kb-6.9Kb)のみに起因するとはと考えら れない。 そうすると、本願明細書には、バックボーンの長さ又はバックボーンの25 一部である「フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列」を長く すればするほど、残存DNA不純物の量の減少幅が大きくなることは記載 17 されているとはいえず、原告の主張は本願明細書の記載に基づくものでは ない。 小括 以上によれば、引用発明に係る「組換えAAV」のベクターゲノムに含ま 5 れる残存DNA不純物、すなわち、残存プラスミドDNAは、本願発明30 と同程度にごく少量であり、本願発明30に係るAAV粒子に含まれている ベクターゲノムと、引用発明に係る「組換えAAV」に含まれている「ベク ターゲノム」とは、いずれもAAVの二つのITR配列と、その内側に位置 し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領域10 と、当該二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミド DNAをごく少量含む点で相違ないから、そのような「ベクターゲノム」を 含むAAVである本願発明30に係る「AAV粒子」と引用発明に係る「組 換えAAV」との間には相違点は存在しない旨の本件審決の判断に誤りはな く、原告主張の取消事由は理由がない。 15 第4 当裁判所の判断 1 本願明細書の記載事項について 本願明細書(甲2)には、別紙1のとおりの記載があり、この記載事項に よれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明30に関して、次の とおりの事項が開示されていると認められる。 20 ア 組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ベクター中に存在す るDNA不純物の除去のためにヌクレアーゼ処理を行ってもDNA断片 がパッケージされるなどの問題があった(【0002】)。AAV内のカ プシド化した残存DNAの多くは、逆方向末端反復配列(ITR)を含む ベクタープラスミドテンプレートに由来する(【0003】)。 25 本願の発明者らは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の本来のパ ッケージング許容限界サイズ(約4.7Kb)より短いベクター発現カセ 18 ットを含むrAAVベクタープラスミドでは残留プラスミドDNA不純 物レベルが上昇し、配列がrAAVの本来のパッケージング許容限界サイ ズより短いほど不純物のレベルが上昇したことを明らかにした(【003 4】)。 5 本願発明は、ウイルス(AAV)の本来のパッケージング許容限界サイ ズに近いサイズの配列を有する組換えベクター(例えばAAV)プラスミ ド及び該組換えベクター(例えばAAV)プラスミドを、例えば、残存D NA不純物量を少なくしたか、又はこれを含まない組換えウイルス粒子を 作成するために用いる方法を提供するものであり、例えば、ベクターゲノ10 ム配列のサイズを最適化することで、抗生物質抵抗性を生じる細菌遺伝子 のような望ましくない核酸配列のベクターを介した導入に関わる潜在的 危険性を軽減することができる(【0035】)。 イ 本願発明の組換えベクタープラスミドは、AAV等のウイルスの野生型 ゲノムに由来し、分子学的手法を用いてウイルス(例えばAAV)から野15 生型ゲノムを取り除き、異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療的遺伝 子発現カセット)のような外来の核酸で置換したものであり、「ベクター ゲノム」は、ウイルス(例えば、AAV)によってパッケージ又はカプシ ド化される異種ポリヌクレオチド配列を含む組換えベクタープラスミド の一部を指すものである(【0040】、【0080】)。 20 ウ 本願発明の組換えベクタープラスミドは、パッケージ又はカプシド化さ れて感染能力のあるウイルス粒子を形成するウイルスゲノム配列の正常 なサイズ、又はそれに近いサイズに長さを変更又は調節する追加的なフィ ラー/スタッファー核酸配列を含むものであり、種々の実施形態では、フ ィラー/スタッファー核酸配列は、核酸の非翻訳(タンパクをコードしな25 い)断片(segment)である。AAVベクターの特定の実施形態で は、異種ポリヌクレオチド配列は、その長さが4.7Kb未満であり、フ 19 ィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド 配列と合わせた(例えばベクター内に挿入された)時の全長が約3.0K b〜5.5Kb、4.0〜5.0Kb、4.3〜4.8Kbである。(【0 082】) 5 エ 図4は、短い導入遺伝子カセットを含むベクター内のプラスミドDNA のカプシド化を示す略図である(【0031】)。 次に、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、次の開示があ る。 10 ア 実施例1 カプシド化されたDNAのサイズは、短い導入遺伝子カセット(271 6bp)を有するベクターと長い導入遺伝子カセット(4297bp)を 有するカセットとで同等であり、AAVウイルスのパッケージング許容限 界(4.5Kb)にほぼ対応し、短い導入遺伝子カセットを有するベクタ15 ー内にパッケージされたDNAは、ゲノムに隣接するプラスミド配列を含 むことが示された(【0164】、【0166】、図2B、図2D)。 20 イ 実施例2 導入遺伝子プラスミドのバックボーン内の導入遺伝子カセットの5’I TRの近傍に位置するKanR又はAmpR遺伝子に特異的なプライマ ーとプローブを用いて測定された残存プラスミドDNAのレベルを、2. 5 7Kb、3.7Kb(当審注:図1には「3.9Kb」とあるが「3.7 Kb」の誤記と認める。)、4.3Kbのサイズの一本鎖標準導入遺伝子 発現カセットを含むAAV2ベクターにおいて評価した結果、rAAV A(サイズは2.7Kb)は164pg/10 9 vg、rAAV B(サイ ズは3.7Kb)は42.7pg/10 9vg、rAAV C(サイズは4.10 3Kb)は14.0pg/10 9 vgの残存プラスミドDNAをそれぞれ含 むことが示された(【0168】ないし【0171】、図1)。 また、ベクタープラスミド「バックボーン」DNAのパッケージングが、 ITRからの「逆転パッケージング」を介してかなりの程度で起こり、サ15 イズ超過(>4.7Kb)(当審注:【0172】には「>4.7bp」 とあるが「>4.7Kb」の誤記と認める。)のバックボーンを用いるこ とで大幅に減少する(【0172】、図5)。 21 ウ 実施例3 サイズ超過バックボーンを用いずに調製されたベクターのDNA不純 物と、サイズ超過バックボーンを用いて調製したベクターのDNA不純物 5 を比較した結果、ベクタープラスミドバックボーンが3.8Kbの長さの 場合は平均で301pg/10 9 vgであったのに対して、ベクタープラ スミドバックボーンが6.9Kbの長さの場合は平均で60pg/10 9 vgであり、ベクタープラスミド内のサイズ超過バックボーンは、ウイル スベクターの調製において不純物の低減に使用することができる(【0110 73】ないし【0177】、図6)。 前記 及び の本願明細書の開示事項によれば、本願発明30は、残存D NA不純物の量を少なくし、又はこれを含まない組換えAAV粒子を提供す ることをその課題とするものであり(前記 ア)、4.7Kbを下回る長さ の異種ポリヌクレオチド配列(AAVの二つのITR配列の内側に位置する15 もの)と、不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を含ん だベクタープラスミドを用いて、上記課題を解決する(【0166】、図1、 22 図2及び図4。なお、この点については後記3 エで詳述する。)ものであ ると認められる。 2 引用例1の記載事項について 引用例1には、別紙2のとおりの記載(ただし、訳文は乙1による。)が 5 あり、この記載事項によれば、次のとおりの事項が開示されていると認めら れる。 ア これまでの研究で、キャプシド形成するプラスミドDNA不純物は、主 にITR含有ベクター製造用プラスミドのバックボーンに由来するもの であることが報告されているところ、組換えAAV2及びAAV6に残留10 するプラスミドDNA不純物量に対するベクタープラスミドのバックボ ーンサイズの影響を評価した(別紙2の1-2)。 ヒト凝固第\因子を発現するAAV2ベクター8ロットとAAV6ベク ター2ロットは、AAVのパッケージング限界である約4700ntを超 過する6980bpのバックボーンを含むベクタープラスミドを用いて15 作製し、比較対象として、1ロットのAAV2と4ロットのAAV6ベク ターが、2620bp又は2638bpのバックボーンを持つベクタープ ラスミドを用いて作製された(別紙2の1-3、1-5)。 イ 残留プラスミドDNAのレベルは、ベクター生成に使用した3つの産生 プラスミドに共通する配列であるAmp R(アンピシリン耐性遺伝子)に特20 異的なプライマーとプローブを用いたQ-PCRで測定した結果、特大 (6980bp)のバックボーンを持つベクタープラスミドを用いて作製 された5ロットで測定された平均残留プラスミドDNAレベルは14.2 ±2.6pg/10 9 vgであり、より小さい(2620bp又は2638 bp)バックボーンを持つベクタープラスミドを用いて作製された5ロッ25 トで測定された平均値107.6±27.6pg/10 9 vgよりも7.6 倍低く、ベクター製造用プラスミドに特大のバックボーンを使用すること 23 で、プラスミド由来のDNA不純物の大幅な削減が達成された(別紙2の 1-2、1-3(表1))。 ウ 今回の研究では、AAVのパッケージング限界よりも小さいバックボー ンを持つベクタープラスミドを用いてHEK293細胞に遺伝子導入(ト 5 ランスフェクション)してAAVベクターを作製したところ、得られたベ クターに含まれるヌクレオチド耐性プラスミドDNAの不純物は2.9〜 5.7%であった。バックボーンがAAV2のパッケージング容量を超え るようにスタッファー配列を改変したベクタープラスミドを使用した場 合の効果を調べると、キャプシド形成したプラスミドDNA不純物のレベ10 ルが大幅に減少することが判明した(7.6倍)。(別紙2の1-4)。 前記 の開示事項によると、引用例1には、本件審決が認定した引用発明 (前記第2の3 )が記載されていると認められる。 3 取消事由(本願発明30の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(引用発明と の相違点の看過、一致点の認定の誤り))について15 本願発明30の技術的意義について ア 原告は、前記第3の1 のとおり、本願発明30と引用発明を対比する と、不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さが相 違し、かつ本願発明30と引用発明における各AAV粒子に含まれる残存 DNA不純物の量の相違は、この長さの相違によるものであるといえるか20 ら、この長さの相違は実質的な相違点であるといえる旨主張するので、ま ず、本願発明30の技術的意義について検討する。 イ 本願発明30に係る請求項30は、請求項1ないし27の「組換えベク タープラスミド」を引用する形式で記載されている。このうち請求項1で 引用する部分に係る発明(本願発明30)は、次のとおり特定される(下25 線部は当審で付した。)。 「異種ポリヌクレオチド配列を含むベクターゲノムと、 24 第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を 含んでなり、 前記異種ポリヌクレオチド配列が4.7Kbを下回る長さを有し、かつ、 アデノ随伴ウィルス(AAV)の二つのITR配列の内側に位置し @、前記 5 不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随 伴ウィルス(AAV)の二つのITR配列の外側に位置し、該第1の不活 性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列が7.0ないし1 0.0Kbの長さを有する A 組換えベクタープラスミドの ベクターゲノムを含んでなるAAV粒子」10 ウ 前記イのとおり、本願発明30は、「フィラーまたはスタッファーポリ ヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する」との構成 を有するところ、引用発明においては、この点に関する記載がないことは 明らかである。原告は、前示のとおり、本願発明30と引用発明の相違は、 この長さの相違によるものであるといえるから、この長さの相違は実質的15 な相違点である旨主張しているので、以下、この点について検討する。 本願発明30は、下線部@とAで構成される組換えベクタープラスミド のベクターゲノムを含んでなるAAV粒子であり、組換えベクタープラス ミド自体を含んでなるとは構成されていない。AAV粒子は、一般的に二 つのITRの間に目的の導入遺伝子を挿入したベクタープラスミド、AA20 Vヘルパープラスミド、アデノウィルスヘルパープラスミドの3種類のプ ラスミドベクターを293細胞にトランスフェクションし、二つのITR の間にある導入遺伝子がAAV内にカプシド化されるものである(乙5の 図3)から、本願発明30の「ベクターゲノムを含んでなるAAV粒子」 とは、本願明細書の図4も参照すると、アデノ随伴ウィルス(AAV)の25 二つのITRの内側に位置する4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリ ヌクレオチド配列(下線部@の構成)を含むものであるとはいえるものの、 25 下線部Aの構成に係るフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列 を含むものであるとまでは当然にはいえない。被告は、この点を重視して、 前記第3の2 のとおり、AAVベクター(AAV粒子)は、「2つのI TR配列及びその間に目的の遺伝子(治療遺伝子)が挟まれたゲノム」を 5 含むものであり、上記ゲノムとバックボーンを含むベクタープラスミドそ のものを丸ごと含むものではないから、ITR外側のバックボーン配列は、 実質的にはAAVベクターに含まれないものであるとし、本願発明と引用 発明は、「二つのITR配列」とその「内側に位置し」「4.7Kbを下 回る長さを有」する「異種ポリヌクレオチド配列」である「ベクターゲノ10 ム」を含む観点において、構成要素が相違しない旨主張する。しかし、本 件審決は、前記第2の3 アのとおり、ベクターゲノムは異種ポリヌクレ オチド配列を含む領域にとどまらず、当該領域の外側、すなわち、AAV の二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミドD NAをごく少量含むものと認定しているところであり、ベクターゲノムが15 ITR外側のバックボーン配列を一部なりとも含む可能性は否定し難い し、いずれにしても本願発明30の技術的意義が下線部@の構成に限られ ず、下線部Aの構成にも存在するのであれば、本件発明30の構成要素と して下線部@の構成のみを取り上げるのは相当とはいえないから、さらに、 本願発明30の技術的意義について検討する。 20 エ 本願明細書には、「ここに開示される研究は、組換えアデノ随伴ウイ ルス(rAAV)の本来のパッケージング許容限界サイズ(約4.7k b)より短いベクター発現カセットを含むrAAVベクタープラスミド では、残留プラスミドDNA不純物のレベルが上昇したこと、および配 列がrAAV本来のパッケージング許容限界サイズより短いほど不純物25 のレベルが上昇したことを示す。・・・」(【0034】)との記載が あり、また、図2には、短い導入遺伝子カセット(2.7Kb)と長い 26 導入遺伝子カセット(4.3Kb。【0164】には「4.2kb」と あるが図2には「4297bp」とあるので「4.3Kb」の誤記と認 める。 を含むベクタープラスミドをパッケージングした実験結果 【0 ) ( 164】)と共に、「カプシド化されたDNAのサイズ(例えばベクタ 5 ーゲノムサイズと併せたDNase耐性プラスミドバックボーンDNA) は、短いゲノムを有するベクターと長いゲノムを有するベクターとで同 等であり、AAVウイルスのパッケージング許容限界(4.5Kb)(当 審注:【0034】等の記載から4.7Kbの誤記であると認める。) にほぼ対応した。短いゲノムを有するベクター内にパッケージされたD10 NAは、ゲノムに隣接するプラスミド配列を含み、短いゲノムを有する ベクターは、AAVウイルスの最大パッケージング許容限界までのサイ ズのプラスミド配列をパッケージすることが示された」 【0166】 ( ) との記載がある。さらに、図4には、AAV粒子のパッケージング許容 限界サイズ(約4.7Kb)の導入遺伝子カセットの長さがAAV粒子15 のパッケージング許容限界サイズ(約4.7Kb)であるときと比較し て、導入遺伝子カセットが短い(<4.7Kb)場合には、DNase に抵抗性のプラスミドDNA断片もカプシド化されることを表す略図が 開示されていることに加え、前記1 イの実施例2の開示事項を総合す ると、異種ポリヌクレオチドをベクタープラスミドを用いてカプシド化20 したAAV粒子には、導入遺伝子(異種ポリヌクレオチド)に隣接する プラスミド配列もパッケージング許容限界サイズ(4.7Kb)までパ ッケージングされること、導入遺伝子がパッケージング許容限界サイズ より短いサイズであればあるほど、精製されたAAVベクター(AAV 粒子)に含まれるプラスミドDNA不純物の量が増えるものと理解する25 ことができる。 また、本願明細書には、「ある態様では、フィラーまたはスタッファ 27 ーポリヌクレオチド配列は不活性または無害であり、機能や活性を有し ない。・・・フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はタン パク質やペプチドをコードする配列ではなく、フィラーまたはスタッフ ァーポリヌクレオチド配列は異種ポリヌクレオチド配列、AAV逆方向 5 末端反復配列(ITR)、発現制御要素、複製起点、選択マーカーまた はポリアデニン(poly-A)配列のいずれとも異なる配列である」 (【0012】)、「ここで定義される組換えベクタープラスミドは、 パッケージまたはカプシド化されて感染能力のあるウイルス粒子を形成 するウイルスゲノム配列の正常なサイズ、またはそれに近いサイズに長10 さを変更または調節する、追加的なフィラー/スタッファー核酸配列を 含む。種々の実施形態では、フィラー/スタッファー核酸配列は、核酸 の非翻訳(タンパクをコードしない) (segment) 断片 である。・ 」 ・・ (【0082】)、「・・・別の態様では、フィラーまたはスタッファ ーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の5’末端およ15 び/または3’末端の外側にそれぞれ隣接する5’側および/または3’ 側ITR配列に隣接して配置されるものとする。 ・ ( ・ ・」 【0007】) との記載があり、これらの記載を総合すると、ITR外側の不活性のフ ィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、残存プラスミドDN Aと評価される組換えプラスミドベクターの配列がパッケージ又はカプ20 シド化されることを防止するために挿入される、機能や活性を有しない 核酸の断片であると理解することができる。 前記 で指摘した本願明細書で開示されている事項を総合すると、前 記1 のとおり、本願発明30は、残存DNA不純物の量を少なくし、 又はこれを含まない組換えAAV粒子を提供することがその課題であ25 ると認められるところ、本願発明30の技術的意義は、AAV粒子を、 二つのITRの内側に位置する異種ポリヌクレオチド配列の長さがA 28 AV粒子のパッケージング許容限界(約4.7Kb)を下回るときに、 不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチドを、導入遺伝子で ある異種ポリヌクレオチド配列と合わせた長さが少なくともパッケー ジング許容限界を超えるように調製されたベクタープラスミドのベク 5 ターゲノムを含むものとすることで、プラスミドに由来する残存DNA 不純物の量を減らし,上記の課題を解決することにあるものと理解でき る。 オ 原告は、前記第3の1 のとおり、AAV粒子に含まれる残存DNA不 純物の量は、組換えベクタープラスミドに含まれるバックボーン中の第110 の不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さ(本願 発明30においては7.0ないし10.0Kb)によって変わることにな る旨主張するところ、本願明細書には、「不活性のフィラーまたはスタッ ファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウィルス(AAV)の二つのI TR配列の外側に位置し、該第1の不活性のフィラーまたはスタッファー15 ポリヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する」構成 (下線部Aの構成)に調製したベクタープラスミドを用いて作製されたA AV粒子に含まれる残存DNA不純物を示す実施例の開示はない。もっと も、本願明細書には、サイズ超過(AAV粒子のパッケージング許容限界 の超過を意味するものと解される。)のバックボーン(7.1Kb)を有20 するベクタープラスミドを用いると残存プラスミドDNA不純物の量は 約40分の1(0.1〜1.0%)に減少すること(図5)、サイズ超過 バックボーン6.9Kbを有するベクタープラスミドを用いると、サイズ 超過していないバックボーン(3.8Kb)を有するベクタープラスミド を用いた場合と比較して、DNA不純物の量が約5分の1まで低減したこ25 と(実施例3)が開示されており、ここでいう「バックボーン」とは、ベ クタープラスミドにおける二つのITR配列の外側の領域であり、不活性 29 のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列が含まれるものであ ると解される(本願明細書の図5も、ベクタープラスミドのうち、導入遺 伝子が内側に位置する二つのITRの外側にある部分をバックボーンと 記載している。)。 5 他方、本願明細書には、図5の上段と下段ではベクタープラスミドに含 まれる導入遺伝子の長さは異なるものと認められるものの、具体的な長さ については記載がなく、また、図6にも,3.8Kbと6.9Kbのバッ クボーンサイズのベクタープラスミドに含まれる導入遺伝子の長さにつ いての記載はない。また、前記1 ア、同 ア、イ、図1及び図4の各開10 示事項によれば、本願明細書には、パッケージング許容限界サイズ(4. 7Kb)により近い導入遺伝子カセットを採用するとDNA不純物の量が 減少し、許容限界サイズより短いほどDNA不純物の量が上昇したことが 開示されているのにとどまるから、導入遺伝子の長さに関係なく、フィラ ー又はスタッファーポリヌクレオチドを含むバックボーンの長さを長く15 すればするほどDNA不純物の量が著しく減るものと理解することはで きない。 そうすると、前記図5や実施例3においてDNA不純物の量が減少した と記載されていても、これをもって直ちに、この減少がフィラー又はスタ ッファーポリヌクレオチドを含むバックボーンが長いことによるものと20 理解することはできず、フィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列 が7.0ないし10.0Kbの長さを有すること(下線部A)は、その長 さそれ自体に独自の技術的意義を見出すことはできないが、前記エ の技 術的意義に照らし課題の解決に資する長さを構成するという限度では有 意であると理解すべきである。 25 カ 以上によれば、本願発明30の構成要素として下線部@の構成のみを取 り上げるのは相当とはいえず、本願発明30の「AAV粒子」には、下線 30 部Aの構成がそのままパッケージ化されるものではないとしても、この構 成を含めて、引用発明との対比をすべきであるから、この点においては、 本件審決の判断には誤りがある。 本願発明30と引用発明との対比について 5 ア 原告は、本願発明30の下線部Aの構成が本願発明30と引用発明の実 質的な相違点であると主張するので、以下、前記 における認定を前提に して、本願発明30と引用発明との対比を行う。 前記 イのとおり、本願発明30は、「前記異種ポリヌクレオチド配列 が4.7Kbを下回る長さを有し、かつ、アデノ随伴ウィルス(AAV)10 の二つのITR配列の内側に位置し」との構成を有する。これに対して、 引用発明は、「ヒト凝固第\因子をコードする4297ntの導入遺伝子 を有するITR含有」のベクタープラスミドの構成を有するものであると ころ、本願発明30の「異種ポリヌクレオチド」は、引用発明の「ヒト凝 固第\因子」に相当し、ともに「4.7Kb」を下回るベクタープラスミ15 ドを含む点で共通する。 イ 次に、本願発明30は、「前記不活性のフィラーまたはスタッファーポ リヌクレオチド配列はアデノ随伴ウィルス(AAV)の二つのITR配列 の外側に位置し、該第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌク レオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する」構成を有する。 20 これに対して、引用発明は、「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980 bpのバックボーン」のベクタープラスミドの構成を有するものである。 そして、引用例1には、「ヒト凝固第\因子(AAV-hFIX)を発現 するAAV2ベクター8ロットとAAV6ベクター2ロットは、AAVの パッケージング限界である約4700ntを超過する6980bpのバ25 ックボーンを含むベクタープラスミドを用いて作製した。」(別紙2の1 -5)、「バックボーンがAAV2のパッケージング容量を超えるように 31 スタッファー配列を改変したベクタープラスミドを使用した場合の効果 を調べたところ、この戦略により、キャプシド形成したプラスミドDNA 不純物のレベルが大幅に減少することが判明した(7.6倍、P<0.0 01)」(別紙2の1-4)との各記載があるから、引用発明は、バック 5 ボーンがAAVのパッケージング許容限界を超えるようにスタッファー 配列を改変したベクタープラスミドを使用することで、AAV粒子に含ま れるプラスミド由来のDNA不純物の量を減少させるという課題を解決 した発明であると理解することができる。 そうすると、本願発明30と引用発明では、導入遺伝子とスタッファー10 ポリヌクレオチド配列を含むベクタープラスミドを用いて調製したとき のAAV粒子に含まれるプラスミド由来のDNA不純物の量を減少させ るという課題の共通性があり、また、前記アのとおり、導入遺伝子がいず れもパッケージング許容限界である4.7Kbを下回るものであるが、ベ クタープラスミドの不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチ15 ド配列の長さにおいて相違する。 しかしながら、本願発明30においては、ベクタープラスミドのフィラ ー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さが「7.0ないし10. 0Kbの長さ」という特定の範囲の長さであることには技術的意義がなく、 AAV粒子を、導入遺伝子の長さがAAV粒子のパッケージング許容限界20 (約4.7Kb)を下回るときに、不活性のフィラー又はスタッファーポ リヌクレオチドを導入遺伝子である異種ポリヌクレオチド配列の長さと 合わせて少なくともパッケージング許容限界の長さを超えるように調製 されたベクタープラスミドのベクターゲノムを含むものとすることにそ の技術的意義があると理解できることは、前記 エ のとおりである。そ25 うすると、引用発明においても、バックボーンがAAVのパッケージング 許容限界を超えるようにスタッファー配列を改変するものであり、導入遺 32 伝子の長さ(4297nt(約4.297Kb))とこのバックボーン(6 980bp(約6.980Kb))に含まれるスタッファー配列の長さが 少なくともパッケージング許容限界である4.7Kbを上回るものと理解 できるから、本願発明30と引用発明とは、その技術的意義において同一 5 であり、本願発明30において、ベクタープラスミドのフィラー又はスタ ッファーポリヌクレオチド配列の長さを「7.0ないし10.0Kbの長 さ」という特定の範囲の長さにしたことは実質的な相違点とはいえない。 加えて、引用発明の「6980bpのバックボーン」は「サイズ超過バッ クボーン」(【0173】ないし【0177】参照)であるところ、前記10 オのとおり、本願明細書の記載からは、本願発明30の「7.0ないし 10.0Kbの長さ」を有する「不活性のフィラーまたはスタッファーポ リヌクレオチド配列」は、サイズ超過バックボーンを構成するものと理解 できるにすぎないから、この観点においても、両者が相違するものとはい えない。 15 原告の主張について ア 原告は、前記第3の1 ア のとおり、@本願明細書の図5には、7. 1Kbのバックボーンを用いて調製されたAAVに含まれるDNA不純 物の量は、2.5Kbのバックボーンを含むベクタープラスミドを用いた 場合と比較して40分の1にまで減少されていることが開示されており、 20 A図5の比較例のバックボーンの長さ(2.5Kb)は引用例1に示され ている2620bp又は2638bpのバックボーンと近いことから、図 5の比較例の2.5Kbのバックボーンを有するベクタープラスミドを用 いて調製されたAAV粒子には、引用例1に開示されている2620bp 又は2638bpのバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて25 調製されたAAV粒子に含まれるDNA残存量と同程度であるとし、その 値を前提として実施例2の7.1Kbのバックボーンの長さを有するDN 33 A不純物の量(40分の1)を推定した上で、B本願明細書の【0177】、 図5、図6、【0172】の各記載を参照することで、本願明細書には、 サイズ超過のバックボーンの長さを長くすることで残存DNA不純物の 量の減少幅が大きくなることが開示されていることを前提として、本願発 5 明30の組換えベクタープラスミドは7.1Kbのバックボーンの長さを 超過するものであるから、本願発明30のAAV粒子に含まれるDNA残 存量は、Aで推定された値よりも更に少ないものと理解することができる 旨主張する。 しかし、前記 オのとおり、本願明細書の図5の上段と下段では、バッ10 クボーンの長さがそれぞれ2.5Kb、7.1Kbのベクタープラスミド であることが示されているものの、ベクタープラスミドに含まれる導入遺 伝子の長さについて記載はなく、導入遺伝子の長さは図5の上段と下段で は異なるものと認められるため、同じ導入遺伝子を用いてバックボーンの 長さだけを調整した結果としてカプシド化した後のAAV粒子に含まれ15 る残存DNAの量が「約40分の1」に減少したものと読み取ることはで きない。のみならず、下段のベクタープラスミドについて「サイズ超過バ ックボーンを用いると残存プラスミドDNAは約40分の1(0.1〜1. 0%)に減少する」との記載があるものの、その実験条件や具体的な実験 結果の記載は伴っておらず、どのように算出されたのかも不明であるから、 20 本願明細書には上記@で主張されているような事項が開示されていると はいえず、また、図5の「2.5Kbのバックボーンの長さを有する」ベ クタープラスミドの導入遺伝子と引用例1の「2620bp又は2638 bp」のバックボーンの長さを有するベクタープラスミドの導入遺伝子が 同じものであるかは明らかでないにもかかわらず、引用例1で開示されて25 いるAAV粒子に含まれるDNA不純物の量を参照して、本願明細書の図 5の下段の7.1Kbのバックボーンの長さを有するベクタープラスミド 34 を用いて調製されたAAV粒子に含まれるDNA不純物の量を推定する ことも相当ではない。 加えて、Bで原告が指摘する本願明細書の記載については、そもそもベ クタープラスミドに含まれる導入遺伝子の長さが不明であるところ、サイ 5 ズ超過のバックボーンを含まないベクタープラスミドを用いて調製され たAAV粒子中のプラスミド由来のDNA不純物の量と、サイズ超過のバ ックボーンを含むベクタープラスミドを用いて調製されたAAV粒子中 のプラスミド由来のDNA不純物の量を比較したものにすぎず、サイズ超 過のバックボーンを有するベクタープラスミド間でバックボーンの長さ10 とプラスミドDNA不純物の量の関係を示す実験結果ではなく、これらの 記載は、パッケージング許容限界より長いサイズ超過のバックボーンをよ り長くすればするほどDNA不純物の量が減少することを示すものでは ないから、本願明細書には、サイズ超過のバックボーンの長さを長くする ことでDNA不純物の量の減少幅が大きくなることが開示されていると15 はいえない。 以上によれば、上記アの@ないしBを論拠として、本願発明30のAA V粒子に含まれる残存DNAの量が2.69±0.69pg/10 9vgよ りも更に少ないと直ちに認めることはできないし、残存DNAの量の減少 が生じたとしても、その減少がサイズ超過のバックボーンの長さを長くし20 たことによるものと直ちに認めることもできないから、原告の上記主張は、 その前提において誤りがある。 イ なお、本件審決は、前記第2の3 アのとおり、本願発明30に含まれ るDNA不純物の量は「60pg/10 9vg程度」として引用発明との対 比判断をするが、この値は、実施例3の6.9Kbのバックボーンの長さ25 を有するプラスミドを用いて調製したAAV粒子に含まれるプラスミド 由来のDNAの不純物の量であるところ(【0177】、図6)、本願発 35 明30の「フィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列」の長さが7. 0ないし10.0Kbを有するベクタープラスミドはこの実施例のバック ボーンの長さを超えるものであるから、原告が前記第3の1 ア におい て指摘するとおり、何ら説明を加えることなく,実施例3の値を参照して 5 対比判断をした本件審決の判断には相当ではない部分があるが、これまで 説示したところによれば、結論を左右するものではない。 小括 以上によれば、本願発明30と引用発明を対比すると、本願発明30と引 用発明における各AAV粒子に含まれる残存DNA不純物の量やその程度が10 不活性のフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さにより相違 することについては、これを直ちに認めることはできず、また、不活性のフ ィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列の長さが相違するものの、発 明の技術的意義に照らし有意なものと認めることはできないから、この長さ の相違は実質的な相違点であるということはできない。そうすると、本願発15 明30は、引用文献1に記載された発明であるといえるから、新規性を欠く ものというべきである。原告は、その他、るる主張するが、いずれも上記結 論を左右し得ない。 4 結論 以上によれば、原告が主張する取消事由は理由がなく、本願発明30は、特20 許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項 に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであると した本件審決は、結論において相当であるから、原告の請求は棄却されるべき である。 よって、主文のとおり判決する。 25 |
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追加 | |
36裁判長裁判官菅野雅之5裁判官中村恭10裁判官岡山忠広37(別紙1)本願明細書(抜粋)【発明の詳細な説明】5【0002】組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、今日までにいくつかの初期臨床試験において治療用途に極めて有望であることが複数のグループによる報告で示されている。この新規なクラスの生物学的製品を後期臨床試験に進め、最終的に医薬品としての認可を得るためにはベクターの特性解析および品質管理手法を更に改善10する必要がある。例えば、臨床等級の精製ベクターにおける不純物プロファイルに、 ベクター設計と製造工程パラメータがどのように影響するかについての更なる理解が必要である。AAVベクター中に存在するDNA不純物の除去は、ベクター精製中に処理可能な核酸を効率良く取り除くことが出来るヌクレアーゼ処理を行っても、 DNA断片がパッケージされ、ベクター粒子の完全性を保ち得るような様式で行わ15れるヌクレアーゼ処理に対しては抵抗性になる可能性があるという事実によって複雑なものとなる。 【0003】rAAV作製システムの設計における重要な目的は、野生型・偽野生型AAV種(wtAAV)、AAV内でカプシド化された残存DNA不純物および空のカプシ20ドを含む、ベクター関連不純物の特性を分析し、それらの生成を極小化・管理し得る戦略を遂行することである。このような生成物関連不純物はベクターそのものと酷似しており、精製過程中に真正のベクターから容易に分離できない。ベクター以外のDNA不純物はベクター粒子精製物の総DNA量の1〜8%を占めると報告されている(SmithPHWrightJF.QuG.etal200253,Mo.Therapy,7:8348;ChadeufG.CironC.MoullierP.SalvettiA.,Mo.Therap38y2005,12:744.ヒト用医薬品委員会(CHMP)遺伝子治療専門家会合による報告.欧州医薬品庁EMEA/CHMP2005,183989/2004)。カプシド化した残存DNAの多くは、逆方向末端反復配列(invertedterminalrepeat,ITR)を含むベクタープラスミ5ドテンプレートに由来する。 【発明の概要】【0004】本発明は、組換えベクタープラスミドおよびベクターゲノムを含む(カプシド化する、またはパッケージする)ウイルス粒子を提供する。一実施形態では、組換えベ10クタープラスミドは、異種ポリヌクレオチド配列と、フィラー(filler)ポリヌクレオチド配列またはスタッファー(stuffer)ポリヌクレオチド配列を含む。 【0005】本発明はまた、AAVベクタープラスミドおよびAAVベクターゲノムを含む(カ15プシド化する、またはパッケージする)AAV粒子を提供する。一実施形態では、 組換えAAVベクタープラスミドは、異種ポリヌクレオチド配列と、フィラーポリヌクレオチド配列またはスタッファーポリヌクレオチド配列を含む。 【0006】種々の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列の長さは約4.7Kb未満とす20る。特定の態様では、異種ポリヌクレオチド配列は。長さが約4.7Kb未満で、 アデノ随伴ウイルス(AAV)の二か所のITR配列の内側に位置するものとする。 特定の態様では、異種ポリヌクレオチド配列とフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を合わせた全体の長さは、約3.0〜5.5Kb、または約4.0〜5.0Kb、または約4.3〜4.8Kbとする。 25【0007】フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、ベクターの機能または活39性を損なわない限り、ベクター内の任意の所望の位置に配置することができる。ある態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の5’末端および/または3’末端の外側にそれぞれ隣接する5’側および/または3’側ITR配列の間には配置されないものとする。別の態様では、 5フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の5’末端および/または3’末端の外側にそれぞれ隣接する5’側および/または3’側ITR配列の間に配置されるものとする。さらに別の態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の5’末端および/または3’末端の外側にそれぞれ隣接する5’側および/または3’側10ITR配列に隣接して配置されるものとする。またさらに別の態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、例えばゲノム核酸中のイントロンのように異種ポリヌクレオチド配列内に配置されるものとする。 【0008】従って、種々の実施形態では、1つのフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチ15ド配列は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の2か所のITR配列の内側に位置する、 または、1つのフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の2か所のITR配列の外側に位置する、または、2つのフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列があり、第1のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウイルス(AAV)の2か所のITR20配列の内側に位置し、第2のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウイルス(AAV)の2か所のITR配列の外側に位置することになる。 【0009】さらにまた種々の実施形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、その長さが1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、 2550〜60、60〜75、75〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜400、400〜500、500〜750、 40750〜1,000、1,000〜1,500、1,500〜2,000、2,000〜2,500、2,500〜3,000、3,000〜3,500、3,500〜4,000、4,000〜4,500、4,500〜5,000、5,500〜6,000、6,000〜7,000、7,000〜8,000または8,0050〜9,000ヌクレオチドの配列とする。 【0010】さらに特定の態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列がアデノ随伴ウイルス(AAV)の二か所のITR配列の間に位置する場合には、異種ポリヌクレオチド配列とフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を合わ10せた全体の長さは、約3.0〜5.5Kb、または約4.0〜5.0Kb、または約4.3〜4.8Kbとする。また別の特定の態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列がアデノ随伴ウイルス(AAV)の二か所のITR配列の外側に位置する場合には、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列の長さは4.7Kbを超えるものとし、約5.0〜10.0Kbまたは約6.0〜8.150Kbとする。 【0012】ある態様では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は不活性または無害であり、機能や活性を有しない。種々の特定の実施形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は細菌のポリヌクレオチド配列ではなく、フ20ィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はタンパク質やペプチドをコードする配列ではなく、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は異種ポリヌクレオチド配列、AAV逆方向末端反復配列(ITR)、発現制御要素、複製起点、選択マーカーまたはポリアデニン(poly-A)配列のいずれとも異なる配列である。 25【0014】本発明の組換えベクター(例えばAAV)プラスミドおよび組換えベクター(例え41ばAAV)ゲノムを含む(カプシド化する、またはパッケージする)ウイルス(例えばAAV)粒子において、異種ポリヌクレオチド配列は転写され引き続きタンパクに翻訳されるか、またはそれ自体で機能や活性を有する転写物に転写され得る。 ある実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は治療効果を有するタンパク質をコ5ードする。特定の実施形態では、当該タンパク質は、血液凝固因子(例えば第XIII因子・・・)、・・・である。 【0018】本発明の組換えベクター(例えばAAV)プラスミドおよび組換えベクター(例えばAAV)ゲノムを含む(カプシド化する、またはパッケージする)ウイルス(例10えばAAV)粒子は、シスまたはトランスで機能する追加の要素を含む。特定の実施形態では、組換えベクター(例えばAAV)プラスミドおよび/または組換えベクター(例えばAAV)ゲノムを含む(カプシド化する、またはパッケージする)ウイルス(例えばAAV)粒子はまた、異種ポリヌクレオチド配列の’5末端または3’末端に隣接する一つ以上の逆方向末端反復配列(ITR)、異種ポリヌクレ15オチド配列の転写を駆動する発現調節配列(例えば構成的または制御可能な調節配列の様に異種ポリヌクレオチド配列の転写に寄与するプロモーターまたはエンハンサー、または組織特異的発現調節要素)、異種ポリヌクレオチド配列の3‘に位置するポリアデニン配列、選択マーカー(例えばカナマイシン抵抗性の様な抗生物質抵抗性を付与するタンパク質)、および/または複製の起点を含む。 20【図面の簡単な説明】【0027】【図1】精製されたAAVベクター調製物に含まれるプラスミドDNA不純物のレベルが導入遺伝子カセットの大きさに依存することを示す。 【0028】25【図2】PCRおよび導入遺伝子カセットと上流側のプラスミドバックボーン配列にわたる領域をカバーする一連のプライマーを用いて行ったベクターゲノムの5’42末端のマッピングを、DNase1処理の前後で示す。導入遺伝子カセット内部に位置する単独のプライマー(円で囲む)を、導入遺伝子カセットと抗生物質耐性遺伝子(KanRおよびAmpR)を含むプラスミドバックボーンの隣接断片の配列にわたるプライマーと組み合わせて使用した。PCR反応は1%アガロースゲル電5気泳動法で解析された。 【0029】図2A〜2Dは、DNase処理の前後のショートまたはロング導入遺伝子カセットを含むベクターのPCRを示す。 【図2A】DNase処理前のショート導入遺伝子カセット(2.7kb)を含む10ベクターのPCRを示す。 【図2B】DNase処理およびDNA精製後のショート導入遺伝子カセット(2.7kb)を含むベクターのPCRを示す。 【図2C】DNase処理前のロング導入遺伝子カセット(4.3kb)を含むベクターのPCRを示す。 15【図2D】DNase処理およびDNA精製後のロング導入遺伝子カセット(4.2kb)を含むベクターのPCRを示す。 【0030】図3A〜3Bは、導入遺伝子カセットを含む生産プラスミドDNAに対して前述の一連のプライマーセットを用いて行ったプラスミドコントロール(対照)PCR20を、DNase1処理の前後で示す。 【図3A】導入遺伝子カセット(2.7kb)を含むプラスミドを示す。 【図3B】導入遺伝子カセット(4.3kb)を含むプラスミドを示す。 【図3C】DNase処理後のプラスミドサンプルを示す。 【0031】25【図4】ショート導入遺伝子カセットを含むベクター内へのプラスミドDNAのカプシド化(encapsidation)の略図を示す。 43【0032】【図5】トランス(trans)に存在するAAVのパッケージング許容限界サイズを超えるサイズ超過プラスミドバックボーン(7.1Kb)が、ベクター以外のDNAのパッケージングを著しく低下させることを示す。 5【0033】【図6】通常サイズ(円)対サイズ超過(三角)のバックボーンを含むベクタープラスミドを用いて作成されたAAVベクターの精製物中に含まれる残存プラスミドDNAを示す。 【発明を実施するための形態】10【0034】ここに開示される研究は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の本来のパッケージング許容限界サイズ(約4.7kb)より短いベクター発現カセットを含むrAAVベクタープラスミドでは、残留プラスミドDNA不純物のレベルが上昇したこと、および配列がrAAVの本来のパッケージング許容限界サイズより短いほど15不純物のレベルが上昇したことを示す。具体的な例を示すと、rAAVのA(2.7kbサイズ)は164pg/109vgの残存プラスミドDNAを含んでいた(n=9)。rAAVのB(3.7kbサイズ)は42.7pg/109vgの残存プラスミドDNAを含んでいた(n=32)。rAAVのC(4.3kbサイズ)は14.0pg/109vgの残存プラスミドDNAを含んでいた(n=29)よって、 。 20これらの研究は、ベクターの設計時に発現カセットの長さをウイルス(AAV)のカプシドの(本来の)パッケージング許容限界サイズと同じかそれに近くなるように調整することで、夾雑核酸のカプシド化を低減または阻止でき、よってカプシド化した核酸不純物を含むウイルス(AAV)粒子が減少することを示す。 【0035】25従って本発明は、ウイルス(AAV)の本来のパッケージング許容限界サイズに近いサイズの配列を有する組換えベクター(例えばAAV)プラスミド、および該組44換えベクター(例えばAAV)プラスミドを、例えば、残存DNA不純物量を少なくしたかまたはこれを含まない組換えウイルス粒子を作成するために用いる方法を提供する。例えば、ベクターゲノム配列のサイズを最適化することで、抗生物質抵抗性を生じる細菌遺伝子の様な望ましくない核酸配列のベクターを介した導入に関5わる潜在的危険性を軽減できる。 【0036】パッケージされた(カプシド化された)領域(「ベクター」または「ベクターゲノム」と称される)がウイルス(例えばAAV)の本来のパッケージング許容限界サイズに近いサイズを有する本発明の組換えベクター(例えばAAV)プラスミドは、 10望ましいまたは治療的効果を提供するタンパク質をコードする配列(遺伝子)の様な異種ポリヌクレオチド配列、ならびに望ましくないまたは欠陥のある(たとえば病原性の)遺伝子の発現を低下または阻害する抑制性(例えばアンチセンス)核酸の導入・送達に用いることができ、従って種々の疾病を治療し得る。例えば、パッケージされた(カプシド化された)領域(ベクターゲノム)がウイルス(AAV)15の本来のパッケージング許容限界サイズに近いサイズの配列を有する組換えベクター(例えばAAV)プラスミドは、A型またはB型血友病の様な遺伝的欠損疾患、 他の代謝または血漿タンパク質の欠陥の治療、および他の治療目的のために治療的遺伝子を導入・送達するために用いることができる。 【0040】20組換え「ベクタープラスミド」および「AAVベクタープラスミド」は、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムに由来し、分子学的手法を用いてウイルス(例えばAAV)から野生型ゲノムを取り除き、異種ポリヌクレオチド配列(例えば治療的遺伝子発現カセット)の様な外来の核酸で置換している。通常は、AAVの場合には、 野生型AAVゲノムの逆方向末端反復(ITR)配列の片方または両方がAAVベ25クタープラスミドに残される。ウイルスゲノムの全体または一部が異種ポリヌクレオチド配列によって置換されており、該異種ポリヌクレオチド配列は通常はウイル45ス(例えばAAV)ゲノム核酸に対しては外来の核酸であるので、ウイルスベクター(例えばAAV)はウイルス(例えばAAV)ゲノムとは区別される。 【0078】「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドの挿入または組み込みによって操作5することができるプラスミド、ウイルス(例えばAAVベクター)、コスミドまたは他の輸送媒体(vehicle)を指す。そのようなベクターは、ポリヌクレオチドを細胞内に導入・移入し、細胞内に挿入されたポリヌクレオチドを転写または翻訳するための遺伝子操作(すなわち「クローニングベクター」)に用いることができる。ベクタープラスミドは一般に、細胞内で増殖するための複製起点を少なく10とも一つ含み、随意に、異種ポリヌクレオチド配列、発現調節因子(例えばプロモーター、エンハンサー)、選択マーカー(例えば抗生物質抵抗性)、ポリアデニン配列のような追加因子を含む。 【0080】組換えベクタープラスミドについては、ベクターゲノムは、ウイルス(例えばAA15V)によってパッケージまたはカプシド化され、異種ポリヌクレオチド配列を含むベクタープラスミドの一部を指す。組換えベクタープラスミドのプラスミド部位は、 ヘルパー細胞のトランスフェクションおよび細胞によるベクターゲノムをパッケージ/カプシド化するウイルスの産生に用いられるバックボーン配列を含むが、それ自体はウイルス(例えばAAV)によってパッケージ/カプシド化されない。 20【0082】ここで定義される組換えベクタープラスミドは、パッケージまたはカプシド化されて感染能力のあるウイルス粒子を形成するウイルスゲノム配列の正常なサイズ、 またはそれに近いサイズに長さを変更または調節する、追加的なフィラー/スタッファー核酸配列を含む。種々の実施形態では、フィラー/スタッファー核酸配列は、 25核酸の非翻訳(タンパクをコードしない)断片(segment)である。AAVベクターの特定の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、その長さが4.746Kb未満であり、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列と合わせた(例えばベクター内に挿入された)時の全長が約3.0〜5.5Kb、または4.0〜5.0kb、または4.3〜4.8kbである。・・・【0083】5ここで開示されるように、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、 異種ポリヌクレオチド配列、調節因子、ITR、複製起点、選択マーカー等の他の配列に対して、組換えベクタープラスミド内のベクター機能と両立できる任意の位置にあってよい。ある特定の形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の3’末端と5’末端にそれぞれ隣接する103’ITRと5’ITRとの間に位置し、例えばAAVベクタープラスミドにおいては、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、組換えベクタープラスミドのベクターゲノム部分内に存在し、従ってウイルスのパッケージ/カプシド化に用いられる。別の特定の形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の3’末端と5’末端にそれぞれ隣接する153’ITRと5’ITRの外側に位置し、例えばAAVベクタープラスミドにおいては、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、組換えベクタープラスミドのバックボーンまたはプラスミド部分内に存在する。また別の特定の形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、異種ポリヌクレオチド配列の内部に位置し、例えばAAVベクタープラスミドにおいては、異種ポリヌク20レオチド配列の内部に位置するフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、組換えベクタープラスミドのベクターゲノム部分内に存在し、従ってウイルスのパッケージ/カプシド化に用いられる。 実施例実施例125【0162】標準的PCRを、PCR増幅の陽性対照としてAAVベクターゲノム配列を含む47プラスミッドDNA(図3、パネルAとB)、精製ベクター調製物から抽出されたベクターゲノムDNA(図2、パネルAとC、それぞれベクターゲノムサイズが2.7Kbおよび4.2Kb)、およびベクターをDNaseIで処理した後抽出されたベクターゲノムDNA(図2、パネルBとD、それぞれベクターゲノムサイズが52.7Kbおよび4.2Kb)に対して実施した。導入遺伝子カセット内に位置するプライマー(図の赤丸)は、導入遺伝子カセット中の配列と、抗生物質耐性遺伝子(KanRまたはAmpR)を含むプラスミドバックボーンの隣接断片中の配列とをカバーする一組のプライマーと対を構成し、それぞれのPCRに用いられた。 PCR反応物は1%アガロース/EtBrゲル電気泳動法によって解析された。 10【0163】図3のデータ、PCR増幅の対照、プラスミドDNA。プラスミドDNAがテンプレートとして用いられたとき、すべてのプライマー対(9プライマー対、パネルAとB)についてPCR断片が生成し、本研究で使われたすべてのプライマー対がPCR産物を生成することが示唆された。すべてのPCR産物は、プラスミド配列と15プライマーの位置に基づいて予測される期待されたサイズを示した。期待されたとおり、PCR前にプラスミドサンプルがDNaseIで処理された場合には、PCR増幅は認められなかった(パネルC)。 【0164】図2のデータ。精製されたベクターから抽出されたDNAに対してPCRが行わ20れたときには、一組のプライマー対のみが実験でPCR産物を与えた(2.7Kbの短いゲノムを有するベクターに6プライマー対(パネルAとB)、4.2Kbの長いゲノムを有するベクターに4プライマー対(パネルCとD))。PCR産物の最大のサイズ(PCR増幅の外側のベクターゲノム配列と併せて)は、増幅されたDNAの最大サイズがAAVウイルスのパッケージング許容限界(4.5Kb)と25対応することを示した。 【0165】48ベクターからDNAを抽出する前にベクター調製物をDNaseIで処理しても(図2、パネルBとD)、PCR増幅パターンに変化は認められなかった(図2、 パネルAとCを、それぞれパネルBとDと比較)。すなわち、PCR産物を生成するプライマー対の数とPCR産物のサイズに変化は無く、PCRによって増幅され5た配列(ベクターゲノムおよび隣接配列)は、DNaseから保護され、カプシド化されていることが示唆された。 【0166】カプシド化されたDNAのサイズ(例えばベクターゲノムサイズと併せたDNase耐性プラスミドバックボーンDNA)は、短いゲノムを有するベクターと長い10ゲノムを有するベクターとで同等であり、AAVウイルスのパッケージング許容限界(4.5Kb)にほぼ対応した。短いゲノムを有するベクター内にパッケージされたDNAは、ゲノムに隣接するプラスミド配列を含み、短いゲノムを有するベクターは、AAVウイルスの最大パッケージング許容限界までのサイズのプラスミド配列をパッケージすることが示された。 15実施例2【0167】この実施例は、GMP適合の製造工程を用いた組換えAAVウイルスの生成および精製についての記述を含む。 【0168】20残存プラスミドDNAのレベルは、以下のサイズ範囲の一本鎖標準導入遺伝子発現カセットを含む一連のAAV2ベクターにおいて評価された。すなわち、rAAVAは2.7kb(野生型のサイズの57%)、rAAVBは3.7kb(野生型の83%)、およびrAAVCは4.3kb(野生型の91%)である。構築物毎に複数のロットを、同一のプロセスを用いて生成および精製した。ベクターは、 25HEK293細胞のヘルパーウイルスを必要としないトランスフェクションによって作出され、陽イオン交換クロマトグラフィー(forosSOHS)とisOQ49VCnic塩化セシウム超遠心の併用により精製された。 【0169】残存プラスミドDNAの濃度は、ベクター調製物1ml当たりのKanR遺伝子コピー数として測定され、KanR(AmpR)のコピー数は完全長プラスミドの5コピー数を示す(最悪の場合でも)と仮定して、ベクターゲノム(vg)の%、または109vg当たりのpgとして表した。ベクターの力価および残存プラスミドDNAの濃度は、導入遺伝子プラスミドのバックボーン内の導入遺伝子カセットの5’ITRの近傍に位置するKanRまたはAmpR遺伝子に特異的なプライマーとプローブを用い、TaqMan技術を製造者のプロトコールに従って使用してリ10アルタイム定量PCR(qPCR)により測定された。 【0170】DNase実験では、1x106コピーのベクターゲノムまたはプラスミドが、5UのDNase1によって消化された。増幅は、PCR反応毎に500コピー数のベクターゲノムまたはプラスミドを用いて標準的PCRによって行われた。短い導15入遺伝子カセットを有するAAVベクター中のプラスミドDNA不純物は、DNaseに抵抗性であり、ベクタープラスミドのITRの近傍のプラスミドDNA断片がカプシド化されたことが示された。 【0171】残存プラスミドDNAは、ベクターサンプル中の標的qPCR増幅産物のコピー20数の測定値に基づき、保守的方法により定量された。すなわち、コピー数にプラスミドのMrを乗じて算出された。導入遺伝子カセットサイズの関数としての不純物レベルを図1に要約した。評価により、rAAVA(サイズは2.7kb)は164pg/109vg(n=9)、rAAVB(サイズは3.7kb)は42.7pg/109vg(n=32)、そしてrAAVC(サイズは4.3kb)は14.250pg/109vg(n=29)の残存プラスミドDNAをそれぞれ含むことが示された。 50【0172】さらに、ベクタープラスミド「バックボーン」DNAのパッケージングが、ITRからの「逆転パッケージング」を介してかなりの程度で起こり、それはサイズ超過(>4.7bp)のバックボーンを用いることで大幅に減少する(図5)。 5実施例3【0173】この実施例は、サイズ超過バックボーンを用いずに調製されたベクターのDNA不純物を、サイズ超過バックボーンを用いて調製したベクターと比較した研究についての記述を含む。 10【0174】ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞の一過性トランスフェクションによるベクター産生に基づき、以下に記述するベクター産生および精製方法に従い、一連の12バッチの組換えAAVベクターを同一の方法で調製した。 HEK293細胞培養におけるベクター産生:151.T75フラスコ内でHEK293のマスター・セル・バンク細胞の培養を開始2.細胞を約二個のT225フラスコに継代3.細胞を約二個のローラーボトルに継代4.細胞を約10個のローラーボトルに継代5.細胞を約102個のローラーボトルに継代206.サイズ超過ベクターバックボーンを有するべクタープラスミド、またはサイズ超過ベクターバックボーンを有しないべクタープラスミドを含むプラスミドDNAで細胞をトランスフェクション7.無血清培地に交換ベクター精製(下流工程):258.ベクター含有細胞および培養液の回収9.回収物のタンジェンシャルフローろ過(TangentialFlowFi51ltration(TFF))(100kDa)による濃縮および透析ろ過10.濃縮された回収物の微細流動化11.微細流動化中間産物のろ過(0.65μm/0.2μm連続細孔径)12.イオン交換クロマトグラフィーによる精製513.塩化セシウム等密度勾配超遠心法による精製14.TFF(100kDa)によるバッファー交換15.製剤化および0.2μmろ過による精製バルクベクターの調製16.最終0.2μmろ過、バイアルへの充填、仕上げによるバイアル充填された精製ベクターの調製10【0175】サイズ超過バックボーンを含む生産プラスミドベクターを用いて調製された9バッチのベクター、およびサイズ超過バックボーンを含まない生産プラスミドベクターを用いて調製された3バッチのベクターの精製ベクターのサンプルを、精製されたベクター生産物の一部であることが意図されない(よって不純物である)アンピ15シリンおよびカナマイシン抵抗性遺伝子の残存レベルのqPCR測定によって決定される残存宿主細胞プラスミドDNAの測定に供した。この不純物の測定に用いた方法を以下に記す。 リアルタイムqPCRによる残存プラスミドDNA【0176】20記述されたTaqManRリアルタイムqPCR手法は、標的特異的Q-PCRプライマーおよびプローブを用いて、ベクター生成に用いられた生産プラスミド内の特異的配列(AmpRまたはKanR)を検出する。一つの標的がベクター製造で用いられたすべてのプラスミドに共通である場合には、総残存プラスミドは単回のqPCR試験で決定された。AmpRおよびKanRの両方がある特定のバッチの一25つ以上の生産プラスミド内に存在する場合には、総残存プラスミドはそれぞれ別々の試験で決定されたAmpRの残渣DNAとKanRの残渣DNAの和として算出52された。・・・【0177】図6に示される12の定量結果で得られた残存プラスミドDNA不純物レベルにおいては、サイズ超過バックボーンを含まない(欠く)ベクタープラスミドを用い5て調製されたベクター中の109ベクターゲノム当たりのプラスミドDNA不純物の平均は301pgで、これはサイズ超過バックボーンを用いて調製されたベクターで測定された109vg当たりのプラスミドDNA不純物の平均である60pgと比較して、5倍高い値であった。従って、ベクタープラスミド内のサイズ超過バックボーンは、ウイルスベクターの調製において不純物の低減に使用することがで10きる。 5354555657(別紙2)(1-1)「・・・臨床用ベクター中のキャプシド形成するDNA不純物を最小限に抑えるため、次の2つの方法が用いられた。(@)AAVのパッケージング限界を超え5るバックボーンを持つベクター(cis)製造用プラスミド;および(A)ベクターに関連する不純物(例:空キャプシド)からベクターの分離を達成するベクター精製工程。結論として、AAV2-hFIX臨床用ベクターによる導入後、残留capの発現は検出されなかった。」(1頁左欄14〜20行)10(1-2)「ベクタープラスミドのバックボーンサイズがDNAの不純物レベルに与える影響これまでの研究では、キャプシド形成するプラスミドDNA不純物は、主にITR含有ベクター(cis)製造用プラスミドのバックボーンに由来することが報告15されていた。ベクタープラスミドのバックボーンサイズが、組換えAAV2およびAAV6における残留プラスミドDNA不純物の量に及ぼす影響が評価された。残留プラスミドDNAのレベルは、ベクター生成に使用した3つの産生プラスミドに共通する配列であるAmpRに特異的なプライマーとプローブを用いたQ-PCRで測定した(表1)。この実験で比較したベクターは、それぞれ共通20の方法(chromatography-gradient)で生成及び精製されているため、ベクターの純度が高く、空キャプシドが除去されており、また非キャプシド形成型核酸の不純物が除去された、効率的なヌクレアーゼ消化工程が含まれた。ベクタープラスミドを用いて生成した5ロットの平均残留プラスミドDNAレベルを測定したところ、特大(6980bp)のバックボーンを持つプラスミド(ロット0256002、003A、NHP、0802、0803)は14.2±2.6pg/109vgで、それよりも小さい(2620bpまたは2638bp)のバックボ58ーンを持つベクタープラスミドを用いて作製された5ロット(ロットN0701、0701、0702、0703、0801)で測定された平均値107.6±27.6pg/109vgよりも7.6倍低かった(P<0.001)。そのため、ベクター製造用プラスミドに特大のバックボーンを使用することで、プラス5ミド由来のDNA不純物の大幅な削減が達成された。」(146頁右欄17〜40行)(1-3)10(147頁表1)(1-4)「今回の研究で、AAVのパッケージング限界よりも小さいバックボーンを持つベクタープラスミドを用いてHEK293細胞に遺伝子導入(トランスフェクシ15ョン)してAAVベクターを作製したところ、得られたベクターに含まれるヌクレオチド耐性プラスミドDNAの不純物は2.9〜5.7%であり、他者による過去の報告と一致していた。キャプシド形成するプラスミドDNAの主なソース59は、ITRを含むベクタープラスミドのバックボーンであった。 ・・・バックボーンがAAV2のパッケージング容量を超えるようにスタッファー配列を改変したベクタープラスミドを使用した場合の効果を調べたところ、この戦5略により、キャプシド形成したプラスミドDNA不純物のレベルが大幅に減少することが判明した(7.6倍、P<0.001)。AAV2以上のパッケージング容量を持つベクター血清型では、リバースパッケージングを防止するために必要なバックボーンサイズもそれに応じて大きくなることが予測される。」(149頁右欄下から10行〜150頁左欄8行)。 10(1-5)「材料および手法AAVの生成と精製。ベクターの生成は、改変した3個のプラスミドを用いたHEK293細胞のヘルパーウイルスフリーの遺伝子導入によって実施した。臨15床用AAV2-hFIXベクターロット1053は、2回の塩化セシウム勾配超遠心法(gradient-only法)により精製した。本研究では、さらに追加で14ロットのAAVベクターが製造され、分析が行われた。ヒト凝固第IX因子(AAV-hFIX)を発現するAAV2ベクター8ロットとAAV6ベクター2ロットは、AAVのパッケージング限界である約4700ntを超過する6980bp20のバックボーンを含むベクタープラスミドを用いて作製した。1ロットのAAV2、4ロットのAAV6が2620bpまたは2638bpのバックボーンを持つベクタープラスミドを用いて作製された。(150頁左欄下から11〜1行)」60 |