関連審決 |
訂正2017-3 無効2019-800099 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10140号
審決取消請求事件
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5 原告株式会社ナンシン 同訴訟代理人弁護士 中島慧 同 福原裕次郎 10 同松原敦也 被告株式会社ルス・コム 同訴訟代理人弁護士 黒田健二 15 同吉村誠 同訴訟代理人弁理士 涌井謙一 同 梶原慶 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/11/16 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 特許庁が無効2019−800099号事件について令和3年1020 月18日にした審決中、請求項6及び9に係る部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告の、その余を被告の各負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
25 第1 請求 特許庁が無効2019-800099号事件について令和3年10月18 1 日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 本件は、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) 5 ? 被告は、平成14年9月24日、その名称を「電鋳管の製造方法及び電鋳 管」とする発明について特許出願(特願2002-278121号。以下「本 件出願」という。)をし、平成18年12月8日、その設定登録(特許第38 89689号、請求項の数9)を受けた(以下、この登録に係る特許を「本 件特許」という。 。 )10 平成29年9月19日、本件特許についての訂正審判(訂正2017-3 90094)が請求され、同年11月13日に特許請求の範囲の請求項1及 び明細書【0011】の訂正を認める審決がされ、そのころ確定した(以下、 この訂正を「前件訂正」という。 。 ) ? 原告は、令和元年11月21日付けで本件特許の請求項1、5、6及び915 に係る発明について特許無効審判請求(無効2019-800099号)を した。 特許庁が令和3年1月18日に本件特許の請求項1、5、6及び9に係る 発明についての特許を無効にするとの審決の予告をしたところ、被告は、同 年3月29日付けで本件特許の請求項5及び9に係る特許請求の範囲を訂正20 する訂正請求を行った(以下、この訂正を「本件訂正」という。 。 ) 特許庁は、令和3年10月18日、 「特許第3889689号の特許請求の 範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求 項5及び9について訂正することを認める。特許第3889689号の請求 項1、5、6及び9に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との25 審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月29日、原告に送 達された。 2 ? 原告は、令和3年11月22日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提 起した。 2 特許請求の範囲の記載等 前件訂正後の本件特許の請求項1、5、6及び9の発明(以下、請求項の番 5 号に応じて「本件発明1」のようにいう。)並びに本件訂正後の本件特許の請求 項5及び9の発明(以下、請求項の番号に応じて「訂正発明5」のようにいい、 本件発明1及び6並びに訂正発明5及び9を併せて「本件発明」という。)に係 る特許請求の範囲の記載は、それぞれ次のとおりである。なお、以下、本件出 願の願書に添付した明細書及び図面を前件訂正の前後を通じて、単に「本件明10 細書」という。 ? 本件発明1 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステ ンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記電 着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電15 鋳管を製造する方法であって、 前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前 記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、 前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように 変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記20 変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物また は前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特徴とす る、 電鋳管の製造方法。 ? 本件発明5及び訂正発明525 ア 本件発明5 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とす 3 る、 請求項1記載の電鋳管の製造方法。 イ 訂正発明5(下線部は、本件発明1との相違部分) 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたス 5 テンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲饒物を形成し、前 記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除 去して電鋳管を製造する方法であって、 前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または 前記囲饒物より電気伝導率が高いものとし、 10 前記細線材の両端側に前記電着物または前記囲繞物が形成されていない 部分を形成し、 前記細線材は一方または両方から引っ張って断面が小さくなるように変 形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記 変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物ま15 たは前記囲饒物の肉厚が50μm以下であり、 前記電着物または前記囲繞物はニッケルとし、前記導電層は金としたこ とを特徴とする、 電鋳管の製造方法。 ? 本件発明620 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細線 材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方また は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線 材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、 前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去25 して製造される電鋳管であって、 前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものと 4 し、 前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面多 角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm 以下であることを特徴とする、 5 電鋳管。 ? 本件発明9及び訂正発明9 ア 本件発明9 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とす る、 10 請求項6又は7記載の電鋳管。 イ 訂正発明9(下線部は、本件発明6との相違部分) 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細 線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成すると共に、前記細線 材の両端側に前記電着物または前記囲繞物が形成されていない部分を形15 成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変 形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変 形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記 導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、 前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いもの20 とし、 前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面 多角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50 μm以下であり、 前記電着物または前記囲繞物はニッケルとし、前記導電層は金としたこ25 とを特徴とする、 電鋳管。 5 3 本件審決の理由の要旨 本件審決は、@本件訂正のうち、令和3年3月29日付け訂正請求書(以下 「本件訂正請求書」という。)記載の訂正事項1(請求項5につき請求項 1 を引 用していたものを引用関係を解消して独立の請求項とするもの)及び2に係る 5 訂正事項(請求項5につき、前記2 イのように訂正するもの)を統合整理し た訂正事項(以下「訂正事項A」という。)及び本件訂正請求書記載の訂正事項 3(請求項9につき請求項6を引用していたものを引用関係を解消して独立の 請求項とするもの) 同4 、 (請求項7を引用していた訂正前の請求項9を削除す るもの)及び同5(請求項9につき、前記2 イのように訂正するもの)に係10 る訂正事項を統合整理した訂正事項(以下「訂正事項B」という。)はいずれも 訂正要件を満たす訂正事項であるから、本件訂正は適法である、A本件明細書 の発明の詳細な説明は、明確かつ十分に記載されたものといえるから、実施可 能要件に違反しない、B本件発明は、課題を解決するための手段が十分に反映 された発明となっているから、発明の詳細な説明に記載されたものといえる、 15 C本件発明6及び訂正発明9は明確である、D本件発明は、本願出願前に日本 国内において頒布された甲第1号証「特開2001-192882号公報」 (以 下「甲1文献」という。)に記載された発明(以下、方法の発明を「甲1方法発 明」と、物の発明を「甲1物発明」という。)と、甲第2号証「特開2002- 80991号公報」(以下「甲2文献」という。)に記載された事項(以下「甲20 2技術事項」という。 及び本願出願時の技術常識に基づいて本願出願前に当業 ) 者が容易に発明をすることができたものとはいえない旨判断した。 それぞれの論点に関する本件審決の理由の要旨は、以下のとおりである。 ? 本件訂正の適法性について ア 訂正事項Aについて25 本件発明1の引用に係る本件発明5の「前記細線材は一方または両方か ら引っ張って断面が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と 6 前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張 って除去する」操作を、訂正事項Aに係る、あらかじめ「前記細線材の両 端側に前記電着物または前記囲繞物が形成されていない部分を形成し」て から実施するものに限定することは、本件明細書【0084】 【図6】に 、 5 おいて示唆されており、また、当業者は、 「電着物55と隔壁部材88に機 械加工を施して形状を整え」る(【0106】)工程が、端部の電着物55 を除去する工程を含んでいると解することができ、細線材の両端側に電着 物又は囲繞物を電鋳によりいったん設けた後、これを除去することで、細 線材の両端側に電着物又は囲繞物が形成されていない部分を形成し、電鋳10 管を製造するような形態を理解することができるから、訂正事項Aは新規 事項追加とはならず、その他の訂正要件も満たされている。 イ 訂正事項Bについて 本件発明6の引用に係る本件発明9の「前記細線材の一方または両方を 引っ張って断面を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記15 導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電 着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去」す る操作を、訂正事項Bに係る、あらかじめ「前記細線材の両端側に前記電 着物または前記囲繞物が形成されていない部分を形成し」てから実施する ものに限定することが新規事項追加とはならず、その他の訂正要件も満た20 されていることは前記アと同旨。 ? 実施可能要件違反(無効理由1)の有無について 本件発明は、細線材を一方又は両方から引っ張って断面積が小さくなるよ うに変形させるものとされているが、その引っ張り対象の細線材としては、 @その両端側に導電層を設けない部分(細線材の露出部分)を備えるものと、 25 A導電層を設けない部分を備えないもの(細線材の露出部分がないもの)で あって、a)細線材の両端において、細線材外周面に電解メッキによる導電層 7 は設けられるものの、電鋳による電着物又は囲繞物までは設けられない場合 と、b)細線材の両端において、細線材外周面に電解メッキによる導電層が設 けられ、さらに電鋳による電着物又は囲繞物が設けられる場合がある。 ア 前記@の場合 5 本件明細書【0084】 【図6】の記載を参酌すると、両端側の導電層 、 を設けていない部分を引っ張ることで、引張力が導電層に直接かかり難く なり、導電層と基線材とが分離しやすく、また、導電層と電着物との密着 性も損なわれ難いという効果を奏しつつ、本件発明のように電着物又は囲 繞物の内面に導電層を残したまま細線材を引き抜いて除去できることが10 理解される。 イ 前記Aa)の場合 細線材としてステンレス製のもので、かつ、導電層として金メッキされ たものを採用する前提で、両端まで外周面に電解メッキによる導電層が設 けられた細線材を引っ張る操作によって、脆い導電層(金メッキ)は破断15 する一方、ステンレス製の細線材は、強靱、かつ、表面が不動態膜で覆わ れていて導電層との密着性は大きなものではないため、引っ張られること で断面積が小さくなるように変形し、変形した細線材と導電層の間には隙 間が形成されるため、電着物又は囲繞物の内面に導電層を残したまま細線 材を引き抜いて除去することができる(甲47)。 20 ウ 前記Ab)の場合 両端の電着物又は囲繞物を除去又は破断してから、当該両端を掴んで引 っ張ることで細線材の断面積が小さくなるような変形を図り、かつ、その 後に細線材の引き抜き除去を図ることは、当業者が過度な試行錯誤なく通 常期待される程度の創意工夫の範囲で実施可能である(甲21ないし23、 25 50ないし52)。 ? サポート要件違反(無効理由2)の有無について 8 ア 本件発明1及び訂正発明5 本件発明1及び訂正発明5の解決課題は、コンタクトプローブ用の管等、 電気を伝導するのに適した部品として使用できる微細な内径の電鋳管を 容易に製造する方法を提供すること(第1の課題)と把握される(本件明 5 細書【0003】 【0006】 【0008】 【0045】 。 、 、 、 ) 第1の課題解決には、@内面に導電層を設けた電鋳管を製造すること (【0045】。以下「電鋳管の構造要件(製法)」という。 、及び、A細線 ) 材を「一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ て、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成し」、これを「掴んで引10 っ張」り「除去」すること(【0041】 【0042】 、 。以下「細線材の除 去要件(製法)」という。)の2つの要件が必要であるところ、本件発明1 及び訂正発明5は、この2つの要件を兼ね備え、第1の課題解決のための 手段が十分に反映された発明である。 イ 本件発明6及び訂正発明915 本件発明6及び訂正発明9の解決課題は、コンタクトプローブ用の管等、 電気を伝導するのに適した部品として使用できる微細な内径の電鋳管を 提供すること(第2の課題)と把握される(本件明細書【0003】 【0 、 006】 【0008】 【0045】 。 、 、 ) 第2の課題解決には、B「導電層の材質によって電気伝導率が電着物ま20 たは囲繞物だけのときより良好にできる」ように内面に導電層を設けた電 鋳管とすること(【0045】。以下「電鋳管の構造要件(物)」という。 、 ) 及び、C細線材を「一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるよ うに変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成し」 「掴 、 んで引っ張る」ことで製造された構造物であること(【0041】【004 、 25 2】。以下「細線材の除去要件(物)」という。)の2つの要件が必要である ところ、本件発明6及び訂正発明9は、この2つの要件を兼ね備え、第2 9 の課題解決のための手段が十分に反映された発明である。 ? 明確性要件違反(無効理由3)の有無について 従来、細線材に電鋳することで微細な内径を有する管を作成する場合に細 線材を除去することは容易なことではなかったが、本件発明6及び訂正発明 5 9の各請求項に記載の方法に対応する「細線材を一方または両方から引っ張 って断面積が小さくなるように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の 間に隙間を形成し、掴んで引っ張る」などする(本件明細書【0041】の 3)抜き取り方法を用いることで、細線材を除去可能であり、コンタクトプ ローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できるこ10 とが理解される(本件明細書【0005】 【0006】 【0041】 【00 、 、 、 42】 。 ) そして、本件明細書の記載を踏まえると、上記細線材の抜き取り方法に関 する記載は、電鋳により製造された微細な管の構造又は特性として、細線材 が適切に除去されており、電鋳管がコンタクトプローブ用の管等として使用15 可能な程度の内面精度を有しているとの構造又は特性を表していると解釈す ることができる。 また、本件発明6及び訂正発明9の物の製造方法の特定により達成される 上記内面精度の構造又は特性を、どのように直接特定すれば的確に表現でき そうであるかを想定することができないし、かつ、本件発明の出願時におい20 て、これら構造又は特性を的確に直接特定することが一般に知られていたと も認められないから、当該電鋳管をその構造又は特性により直接特定するこ とが不可能であるか、又はおよそ実際的でない事情が存在したともいえる。 そうすると、本件発明6及び訂正発明9の物の製造方法を特定する記載に より、これら発明の内容が不明確になるとはいえない。 25 ? 進歩性欠如(無効理由4)の有無について ア 甲1方法発明及び甲1物発明の認定 10 甲1方法発明 断面が円形で径が0.126mmで長さが355mmのステンレス製 の線に金(抵抗率2.05×10 Ωcm)を10μmメッキして、直 径0.136mmの芯線を得、この芯線を電鋳用治具にセットし、スルフ 5 アミン酸ニッケルを主成分とする電鋳浴に、ニッケルの金属板をセット し、電鋳浴に浸漬し、芯線を陰極、ニッケル板を陽極にして、10A/ 2 dm 程度の電流密度で電鋳を18時間実施して、平均約2.5mmの直 径のニッケル電鋳品を得て、 この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端10 を中ぐり加工をし、該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上 にして、芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、 加工品の下から頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を 除去し、端面を研磨する、フェルールの製造方法。 甲1物発明15 断面が円形で径が0.126mmで長さが355mmのステンレス製 の線に金(抵抗率2.05×10 Ωcm)を10μmメッキして、直 径0.136mmの芯線を得、この芯線を電鋳用治具にセットし、スルフ アミン酸ニッケルを主成分とする電鋳浴に、ニッケルの金属板をセット し、電鋳浴に浸漬し、芯線を陰極、ニッケル板を陽極にして、10A/ 220 dm 程度の電流密度で電鋳を18時間実施して、平均約2.5mmの直 径のニッケル電鋳品を得て、 この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端 を中ぐり加工をし、該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上 にして、芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、 25 加工品の下から頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を 除去し、端面を研磨して製造されるフェルール。 11 イ 本件発明1と甲1方法発明との相違点 相違点1 本件発明1は、「前記電着物または前記囲繞物の内面に前記導電層を 残したまま細線材を除去」するものであるのに対し、甲1方法発明は、 5 「細線材を除去」する際に「前記電着物または前記囲繞物の内面」 「導 に 電層」が残るか不明な点。 相違点2 「導電層」のメッキ方法に関し、本件発明1は、 「電解メッキ」である のに対し、甲1方法発明は、メッキの方法が特定されていない点。 10 相違点3 「細線材」の除去方法に関し、本件発明1は、 「一方または両方から引 っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と 前記導電層の間に隙間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ 張って除去する」ものであるのに対し、甲1方法発明は、 この電鋳品を、 「15 NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端を中ぐり加工をし、 該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上にして、芯線打ち抜 き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、加工品の下からか ら頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を除去」するも のである点。 20 相違点4 「電着物または前記囲繞物」の「肉厚」に関し、本件発明1は、 「前記 電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である」のに対し、甲1 方法発明は、 「電鋳品」の「肉厚」が約1.182mm(1182μm)ま たは約1.187mm(1187μm)である点(なお、本件審決の「相25 違点4」には「本件発明1は、 「前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5 μm以上50μm以下である」」として「5μm以上」が加えられている 12 が、この点は誤記と認められる(当事者間に争いがない。 。 。 )) ウ 相違点4の容易想到性 甲1方法発明が製造の対象とするような光ファイバー接続用のフェルー ルは、一般に、径が0.126mm程度の細孔を有し、外径が2.5mmで、 5 長さが12mm程度の微細孔パイプであり(甲1【0002】 、当該記載 ) の寸法からみて、通常の肉厚が1187μm程度であることが認められる。 また、光コネクターが、0.125mm程度の太さの細くて折れやすい光フ ァイバーを円筒形の管に通して固定することにより、光ファイバーの中心 にあるコア同士の位置を正確に合わせて接続を図るものであり、その接続10 のために光ファイバーをコネクタに確実に固定する光コネクタ用部品が フェルールであるから(甲1【0003】 、フェルールが十分な強度を必 ) 要とすることは明らかである。 一方、本件発明1における電鋳管の50μm以下との極端に薄い肉厚で は、強度が得られないおそれがあり、フェルールの製造方法である甲1方15 法発明において製造されるフェルールの肉厚を50μm以下とする動機 は生じ得ないばかりか、強度不足となる観点から阻害要因もある。 したがって、相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到 し得たことではない。 エ 本件発明1について小括20 以上から、相違点1ないし3について判断するまでもなく、本件発明1 は、甲1方法発明及び技術常識等に基づいて、当業者が容易に発明をする ことができたものではない。 オ 本件発明6について 本件発明6と甲1物発明とは、それぞれ前記イの相違点3及び相違点25 1と同旨の相違点5及び相違点6で相違するほか、以下の相違点7とで 相違する。 13 (相違点7) 「電着物または前記囲繞物」の「肉厚」に関し、本件発明6は、「前 記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm以下である」の に対し、甲1物発明は、「電鋳品」の「肉厚」が約1.182mm(11 5 82μm)または約1.187mm(1187μm)である点。 相違点7は、相違点4と同様の相違点であるところ、相違点4が容易 に想到でないことは前記ウのとおりであるから、本件発明6は、甲1物 発明及び技術常識等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができ たものではない。 10 カ 訂正発明5について 訂正発明5と甲1方法発明とは、前記イの相違点1、2及び4で相違 するほか、以下の相違点3′とで相違する。 (相違点3′) 「細線材」の除去方法に関し、訂正発明5は、 「前記細線材の両端側に15 前記電着物または前記囲繞物が形成されていない部分を形成し、 「前記 」 細線材は一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形 させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して、前記 変形させた細線材を掴んで引っ張って除去する」ものであるのに対し、 甲1方法発明は、 「この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切20 断し、一方の端を中ぐり加工をし、該加工品を縦にして、中ぐり加工し ていない面を上にして、芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有する ハンマーで叩き、加工品の下からから頭を出した芯線の一部を引き抜く ことによって、芯線を除去」するものである点。 前記ウのとおり、相違点4は容易想到ではないから、訂正発明5は、 25 甲1方法発明及び技術常識等に基づいて当業者が容易に発明をすること ができたものではない。 14 キ 訂正発明9について 訂正発明9と甲1物発明とは、前記オの相違点6及び7で相違するほ か、以下の相違点5′とで相違する。 (相違点5′) 5 「細線材」の除去方法に関し、訂正発明9は、 「前記細線材の両端側に 前記電着物または前記囲繞物が形成されていない部分を形成し、前記細 線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前 記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた 細線材を引き抜」くものであるのに対し、甲1方法発明は、 「この電鋳品10 を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端を中ぐり加工 をし、該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上にして、芯線 打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、加工品の下 からから頭を出した芯線の一部を引き抜く」ものである点。 前記オのとおり、相違点7は容易想到ではないから、訂正発明9は、 15 甲1物発明及び技術常識等に基づいて当業者が容易に発明をすることが できたものではない。 4 取消事由 ? 訂正要件に関する判断の誤り(取消事由1) ? 実施可能要件違反(無効理由1)に関する判断の誤り(取消事由2)20 ? サポート要件違反(無効理由2)に関する判断の誤り(取消事由3) ? 進歩性欠如(無効理由4)に関する判断の誤り(取消事由4) ? 明確性要件違反(無効理由3)に関する判断の誤り(取消事由5) 第3 当事者の主張 1 取消事由1(訂正要件に関する判断の誤り)の有無について25 ? 原告 ア 本件発明5及び9における訂正要件違反について 15 訂正事項A又はBに係る「前記細線材の両端側に前記電着物または前 記囲繞物が形成されていない部分を形成し、 との方法には、 」 @細線材に マスキングを施し、初めから細線材の両端側に電着物又は囲繞物が形成 されないようにする方法と、Aいったん細線材に電着物又は囲繞物を形 5 成させた後で、細線材の両端側に形成された電着物又は囲繞物を事後的 に除去する方法が含まれ、本件訂正が新規事項の追加に該当しないため には、上記@及びAの各方法がいずれも本件明細書において開示されて いる必要がある。しかしながら、本件明細書には、少なくとも上記Aの 方法は記載されていないから、本件訂正は、新たな技術的事項を導入す10 るものである。 これに対して、本件審決は、 「電着物55と隔壁部材88に機械加工を 施して形状を整え」る(【0106】)工程が、端部の電着物55を除去 する工程を含んでいると解することができると認定して、本件訂正が新 規事項追加に当たらないと判断したが、誤りである。 15 本件明細書【0106】における電鋳管の製造においては、製造用治 具8のうち開口部81以外の箇所には電解液21が浸からないようにマ スキング処理が施されるため、開口部81内に位置しない細線材35の 両端部には電鋳がなされず、電着物55は存在しないから【0096】 ( 、 【0097】 【0101】 【0103】 【図7】 【図8】 、端部の電着 、 、 、 、 )20 物55を除去する工程を含んでいるはずがない。これを踏まえると、上 記【0106】の記載は、開口部81内に位置し、電着物55により一 体にされた細線材35及び隔壁部材88を、保持部材87から分離した 際の分離面を平滑にして形状を整えることを意味していると解するのが 合理的である。 25 したがって、本件訂正を新規事項追加としなかった本件審決の判断に は、誤りがある。 16 仮に、細線材35の両端部にはマスキングがされておらず、細線材3 5の両端部に電着物55が存在すると解したとしても、本件明細書【0 106】には、単に、 「電着物55と隔壁部材88に機械加工を施して形 状を整えて(図9参照)」と記載されているにすぎず、図9を見ても、端 5 部の電着物55を除去することは一切記載されていないから、上記記載 は、電着物55により一体にされた細線材35及び隔壁部材88を、保 持部材87から分離した分離面を平滑にして形状を整えることを意味す るものと解される。これを、被告が主張するように、細線材35の両端 部の、マスキングがされていない箇所に電着物又は囲繞物が形成された10 部分の除去を指すと解するのは不自然である。 イ 小括 以上のとおり、本件訂正に関する本件審決の判断には、誤りがある。 ? 被告 ア 本件発明5及び9における訂正要件違反の主張について15 本件明細書【0103】は、 「製造用治具8のうち開口部81以外の箇 所」にマスキング処理が施されとしているから、細線材35にマスキン グ処理が施されると理解することはできない。また、 「機械加工を施して 形状を整えて(図9参照) 電着物55から細線材35を除去する。 【0 、 」 ( 106】とあるから、機械加工は細線材35を除去する前である。そう20 すると、 「電着物55と隔壁部材88に機械加工を施して形状を整え」る (【0106】)とは、保持部材87と接している面を除く電着物55の 端面が不整な形状であることから、その形状を整えるものと理解できる。 この機械加工の中には、細線材の両端部の、マスキングがされていない 箇所に電着物又は囲繞物が形成された部分を除去することも含まれる。 25 仮に、細線材35のうち隔壁部材88と接していない部分がマスキン グされていたとしても、電鋳により成長した電着物55は細線材のマス 17 キングされた部分の一部も覆うこととなり、この部分の電着物を機械加 工により除去すれば、細線材の両端部に電着物又は囲繞物が形成されて いない部分が形成されることになる。 イ 小括 5 以上のとおり、本件訂正に関する本件審決の判断には、誤りはない。 2 取消事由2(実施可能要件違反に関する判断の誤り)の有無について ? 原告 ア 本件発明が包含する発明の態様 本件発明は、細線材の両端の外周面に電解メッキによる導電層が設けら10 れ、その上に電鋳による電着物又は囲繞物が設けられる態様を含む。そし て、この態様について、以下の細線材の除去方法が想定される。 @ 細線材の両端部に電着物又は囲繞物が設けられた状態で、端部の電 着物又は囲繞物を除去又は破断することなく電着物又は囲繞物ごと細線 材を掴んで引っ張って除去する方法(以下「除去方法@」という。 。 )15 A 細線材の両端部に設けられた電着物又は囲繞物を除去し(端部の細 線材の露出) 新たに露出した細線材を掴んで引っ張って除去する方法 、 (以 下「除去方法A」という。 。 ) B 細線材の両端部に設けられた電着物又は囲繞物のみを破断し、細線 材を被覆する電着物又は囲繞物ごと細線材を掴んで引っ張って細線材を20 除去する方法(以下「除去方法B」という。 。 ) イ 除去方法@について 細線材をどのように掴んで引っ張れば電着物又は囲繞物の内面に導電層 を残したまま細線材を除去することができるのかについて、本件明細書か ら理解をすることができないことは明白であり、その方法を開示する文献25 もない。 ウ 除去方法A及びBについて 18 本件明細書には、そもそも、細線材の両端部まで電着物又は囲繞物が 形成される場合の記載も示唆もないから、当然のことながら、除去方法 Aは何ら記載も示唆もされていない。 本件明細書【0084】には、 「図6に示すように細線材34の両端側 5 に導電層(例えば、金メッキ340)を設けない部分(マスキング部3 41、341)を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張るよ うにする」と記載されているが、いったん、細線材の両端側まで電着物 又は囲繞物を形成し、その両端部の電着物又は囲繞物を除去することの 記載や示唆ではない。 10 本件明細書【0106】は、前記1?アのとおり、除去方法Aについ ての記載や示唆とはならない。 甲第21号証「特開2001-152383号公報」 (以下「甲21文 献」という。)には、電鋳棒の円周上にX字溝を形成して、電鋳部のみを 破断して細線材を引き抜く細線材の除去方法の記載があるが(【00215 0】、図5?)、この除去方法は、細線材を両端から掴んで引っ張って除 去しているものではないから、除去方法Aではない。また、本件発明の ように肉厚が5ないし50μmという薄肉の電着物又は囲繞物に対して、 果たして旋盤、グラインダーなどを使用して断面形状V字形の溝を切削 できるのか不明である。 20 甲第50号証「英国特許公開第1118150号明細書」 (以下「甲5 0文献」という。)には、メッキされたワイヤーを切断してワイヤーの端 からニッケルを除去して、銅線を徐々に伸ばして破断し、銅がニッケル から外れるようにする方法が開示されているが、メッキされたワイヤー の端からニッケルを除去する方法は何ら開示されていない。 25 甲第51号証は、メッキ作業を行うことに伴い接点に付いた析出金属 (接点メッキぶとり)を剥離する方法に関するものであり、細線材の除 19 去方法は何ら開示がない。 甲第52号証は、電線の樹脂被覆を除去するものにすぎず、細線材の 除去方法は何ら開示がない。 エ 小括 5 以上のとおり、前記アの態様において、電鋳管の製造方法を実現する細 線材除去方法を見出すには、当業者において過度の試行錯誤を要するとい え、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明を実施することができる 程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 ? 被告10 ア 除去方法@について 当業者であれば、除去方法@で除去することなく除去方法A又は除去方 法Bで細線材を除去するから、除去方法@の実施可能性を検討する必要は ない。 イ 除去方法A及びBについて15 本件明細書には、「治具や工具等が電着物または囲繞物に引っ掛けた りできるようにして」 (【0008】 、 )「電着物または囲繞物を固定した状 態にして細線材が除去できる」【0043】【0117】 、 ( 、 )「電着物を固 定した状態にして細線材30が除去できる」 (【0076】 との記載があ ) り、冶具や工具を用いて、細線材の露出部分がない部分である「電着物20 または囲繞物」を固定して、細線材を除去することが記載されている。 そして、 「導電層(例えば、金メッキ340)を設けない部分(マスキ ング部341、341)を形成し、この導電層を設けていない部分を引 っ張るようにすることが好ましい。 ( 」 【0084】)と、導電層を設けな い部分(細線材の露出部分)を備えるものについて、 「好ましい」態様とし25 て記載されていることからすると、細線材の両端まで電着物又は囲繞物 が設けられている場合は、好ましい」 「 態様以外の態様であると理解する。 20 そうすると、両端側に導電層を設けていない部分が形成されている場合 には当該導電層を設けていない部分を引っ張るようにすることで細線材 を除去することが可能と認識している当業者は、 「細線材」の両端部まで 「電着物または囲繞物」が形成されている場合であっても、両端部の「電 5 着物または囲繞物」を除去すればよいと当然に理解する。 また、 「機械加工を施して形状を整え」ている(【0106】)のは、細 線材35を除去する前であるから、この機械加工により整形することで、 電着物55が除去され細線材35が露出すると当業者は理解する。 本件出願時において、細線材の両端まで「電着物または囲繞物」が設10 けられている場合の端部の電着物又は囲繞物の除去方法として、電鋳管 を折って中の細線材を抜く周知技術があった(甲21文献【0020】、 図5?、 【0022】、甲22【0022】、甲23【0024】 。これら ) の技術事項を参照して、細線材の全体に導電層を設け、その上に電着物 を形成した後、当該細線材の両端にそれぞれ溝を形成して溝の部分では15 細線材が露出するようにし、細線材の両端側における溝より外側の部分 を引っ張ることで細線材を除去できることは、当業者には自明である。 これら技術事項における、旋盤、グラインダーは溝加工の一例にすぎず、 また、ワイヤ等の加工対象物への溝加工は古くからある技術であるから、 旋盤、グラインダーのみならず、カッターやバイトにより溝を形成する20 ことは当業者であれば適宜行えることである。 両端部までニッケルの電着物が形成されている場合であっても、甲5 0文献の方法のように、ワイヤにニッケルを電鋳した後、ワイヤの端に 形成された電着物であるニッケルを除去し、その上で、電鋳管からワイ ヤを取り除くことができる。 25 甲第51号証には、めっきにおけるひっかけ治具の接点である枝骨に 付着した析出金属(接点めっきぶとり)を剥離(除去)する方法として、 21 @物理的にペンチやハンマーで除く方法、A化学的に酸で溶解する方法、 B電気化学的に溶解する方法が記載されている。 甲第52号証には、被覆部11に対して、カッター2を用いて、被覆 部11を破断すること(破断の結果、芯線部13が一部露出している) 5 が記載されている。また、ビニール被覆の導線において、端部の芯線を 露出させるために、ペンチやカッターで被覆部を除去するということは、 家電製品のアース線やプラモデル等のリード線の加工においても用いら れているような、極めて基礎的な事項である。 3 取消事由3(サポート要件違反に関する判断の誤り)の有無について10 ? 原告 前記2?のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明の記載によ り当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、 また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発 明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。 15 ? 被告 前記2?と同旨。 4 取消事由4(進歩性欠如に関する判断の誤り)の有無について ? 原告 ア 本件発明1について20 甲1方法発明及び相違点4の各認定誤りについて 甲1文献においては、 「本発明は、特に、長尺で、内径が0.126m m程度と小さいフェルール用の微細孔パイプを電鋳で製造するに際して、 外径が均一で小さい内径を有し、かつ、同軸性の高いフェルールを形成 するための微細円柱を効率よく製造する方法を提供しようとするもので25 ある。 ( 」 【0009】)とされ、径が0.126mmのステンレス線に金 を10μmメッキし、ニッケルを電鋳した後、芯線を除去することによ 22 りフェルール形成用微細円柱を製造することが開示されているところ (【0023】 、 ) 金メッキ層まで一緒に引き抜かれた場合、金メッキ層の 厚さは10μm(=0.01mm)であって、細孔の内径が0.136m mとなってしまうから、ステンレス線のみが除去され、ニッケル層の内 5 側に金メッキ層が残っていることは明らかである。したがって、甲1方 法発明は、フェルール形成用微細円柱の製造方法の発明であり、また、 当該電鋳品の肉厚は、金メッキ層を残すため、約1.187mm 2.5??-0.126?? ( 2 ) となる。 以上からすると、相違点4は、本来、次のとおりに認定されるべきで10 ある(以下「相違点4B」という。下線部は相違点4との差異部分であ る。 。 ) (相違点4B) 「電着物または前記囲繞物」の「肉厚」に関し、本件発明1は、 「前記 電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である」のに対し、甲115 方法発明は、 「電鋳品」の「肉厚」が約1.187mm(1187μm)で ある点。 相違点4の容易想到性判断の誤りについて a 本件審決が認定した相違点4に係る構成は、本件発明1における電 着物又は囲繞物の肉厚の数値範囲を「50μm以下」に限定するもの20 であるところ、任意にした数値限定は技術的意義がなく、当業者にお いて容易に想到することができるものであるから、逆に、相違点4に 係る構成について容易想到性が否定されるためには、上記数値限定に より異質な効果が生じるか、あるいは上記数値限定が臨界的意義を有 していなければならない。本件明細書には、 「50μm以下」という数25 値範囲に異質な効果を生じたり臨界的意義を有する旨の記載は全くな 23 く、この数値範囲は、単に電着物又は囲繞物の肉厚が薄いということ を意味するために設定されたものにすぎない。 b 仮に、進んで動機付けや阻害要因について判断する必要があるとし ても、金属電鋳管の肉厚を50μm以下にすることは本件出願時の技 5 術常識であるから(甲3、7、8、89ないし93)、甲1方法発明の 電鋳管の肉厚を「50μm以下」とする動機付けはあるといえる。ま た、甲第25号証「特開平11-193485号公報」 (以下「甲25 文献」という。)には、人工衛星のスラスタエンジン用フィードチュー ブ(細孔チューブ)に応用できる一般的な細孔チューブの製造方法が10 開示されているところ、甲1文献には、甲25文献が従来技術として 引用され、金属フェルールの製造に基本的に使用できるとの記載があ るから(【0005】ないし【0007】 、甲1方法発明のフェルール ) 形成用微細円柱の製造方法と、甲25文献記載の一般的な細孔チュー ブの製造方法とが共通した技術分野として取り扱われており、その製15 造技術が相互に適用できることが明示されているし、甲第94号証「特 開2001-192883号公報」(以下「甲94文献」という。)に も、細径を有するパイプを製造する方法により光ファイバー接続用の フェルールを製造することができる旨の記載がある 【0006】 。 ( )そ して、甲第3号証「特開平10-335135号公報」 (以下「甲3文20 献」という。)には、内径の下限を10μm、肉厚を50μm以下とす る一般的な細孔チューブの製造方法が開示されているところ 【002 ( 5】 、甲1文献には、甲1方法発明が、一般的な細孔チューブの製造 ) 方法である甲3文献記載の発明の課題である径不均一化を解決するも のであることが明記されている(【0014】ないし【0016】 。 )25 そうすると、甲1方法発明のフェルール形成用微細円柱の製造方法 を一般的な細孔チューブの製造方法に置換することについては、甲1 24 文献の記載から動機付けられるものであるから、当業者が容易になし 得たことである。 また、フェルールは「電鋳管」の一種にすぎないのであり、また、 フェルールの中には、例えば厚さが0.15mm(=150μm)のも 5 のも存在するから(甲108の1及び2、甲109)、甲1方法発明に より製造される物がフェルールであることを理由として、同発明にお ける電着物又は囲繞物(ニッケル)の肉厚を「50μm」にすること ができないと解すべき理由はなく、細孔チューブの強度の違いをもっ て阻害要因があるともいえない。したがって、フェルールの通常の肉10 厚が1187μm程度であることから相違点4の容易想到性を否定し た本件審決の判断は、前提において誤りである。 イ 本件発明6について 前記ア のとおり、相違点7は、本来、次のとおりに認定されるべき である(以下「相違点7B」という。下線部は相違点7との差異部分で15 ある。 。 ) (相違点7B) 「電着物または前記囲繞物」の「肉厚」に関し、本件発明6は、 「前記 電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm以下である」のに 対し、甲1物発明は、 「電鋳品」の「肉厚」が約1.187mm(118720 μm)である点。 相違点7の容易想到性判断の誤りについて 前記ア と同旨。 ウ 訂正発明5について 前記アと同旨。 25 エ 訂正発明9について 前記イと同旨。 25 ? 被告 ア 本件発明1について 甲1方法発明及び相違点4の各認定誤りについて 甲1文献には、径が0.126mmのステンレス製の線に金を10μm 5 (0.01mm)メッキしたもの(直径0.136mm) 「芯線」 ( を とし 【0 023】 、その上で、金メッキが施されている「芯線」を除去している ) ことが記載されているが(【0024】 、他方で、電鋳品であるフェルー ) ルの内面に金メッキの導電層が残されていることは開示されていない。 これは、以下のとおり、フェルールの内面に金メッキの導電層が残され10 ることは想定されていないからである。 すなわち、従来のステンレス製の芯線を用いたフェルール形成用微細 円柱では(【0007】 、芯線の電気抵抗により、芯線表面の電着量が不 ) 均一となり、電鋳体であるフェルール形成用微細円柱の外径が不均一に なったという課題があったことから(【0008】【0009】【001 、 、 15 6】、図3?)、甲1方法発明は、この課題解決のために、芯線表面の抵 抗率を小さく(望ましくはゼロ、好ましくは5×10 Ωcm以下)す ることとし(【0017】 、芯線自身の抵抗率を小さくすること、又は、 ) 抵抗率の大きい金属線の表面に抵抗率の小さい金属の薄い層をメッキし たものを芯線とすることにより、外径の均一なフェルール形成用微細円20 柱を得ることしたものである(【0018】 。さらに、甲1文献には、芯 ) 線の表面に抵抗率の低い金属をメッキすることで、芯線の外表面が平滑 になるということ 【0020】 、 ( ) 芯線表面を抵抗率の小さい物質で被覆 することで、均一な外径のフェルール形成用微細円柱が得られることが 開示されている(【0026】 。そうすると、甲1方法発明の芯線の外表 )25 面が平滑になるというメリットとは、芯線の外表面が平滑になることに よりフェルールの内面精度が高くなるということを意味していることは 26 明らかであるから、フェルールから除去されるのは、外表面が平滑にな った芯線、すなわち、表面に抵抗率の低い金属がメッキされている芯線 にほかならない。また、フェルールの内径は、0.136mm又は0. 146mmになることもあり得る(甲26の11頁参照)。 5 相違点4の容易想到性判断の誤りの主張について 甲1文献には、甲3文献に開示された一般的な細孔チューブの製造方 法とフェルール形成用微細円柱の製造方法とを「相互に」使用できるこ とは記載されていない。甲1文献には、フェルールの内径が極めて細い ため、フェルール形成用微細円柱の中の芯線を溶出したり引き抜くこと10 が困難であることが記載されており 【0006】 、 ( ) 甲25文献の製造方 法を甲1方法発明に適用することの問題点が指摘されている。また、甲 1文献には、甲3文献の技術の問題点が指摘されている(【0006】、 【0016】 。 ) 仮に、甲1文献の記載から、甲25文献及び甲3文献に開示された一15 般的な細孔チューブの製造方法を甲1文献のフェルール形成用微細円柱 の製造方法に適用することができると理解したとしても、相互に適用で きることが明示されているということはない。 甲1文献のフェルールが、光ファイバ用のコネクタである(【000 1】 のに対して、 ) 原告が指摘する甲第108号証の1及び2並びに甲第20 109号証のフェルールは、光ファイバ用のコネクタではなく、電線用 のコネクタであるから、甲1方法発明のフェルールの肉厚を薄くする動 機付けにはなり得ない。 イ 本件発明6、訂正発明5及び9について 前記アと同旨。 25 5 取消事由5(明確性要件違反に関する判断の誤り)の有無について ? 原告 27 ア 不可能・非実際的事情について 仮に、被告が主張するように、本件発明6及び訂正発明9の細線材の除 去方法が、電鋳管がコンタクトプローブ用の管等として使用可能な程度の 「内面精度」を有しているとの構造又は特性を表していると解したとして 5 も、プロダクト・バイ・プロセスクレームの形式をとることが許容される 要件である、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定す ることが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下、両 事情を合わせて「不可能・非実際的事情」という。)は存在しない。 そもそも被告は、電鋳管をその構造又は特性により直接特定することが10 不可能であるか、又はおよそ実際的でない事情について、何ら具体的な主 張立証をしていないが、本件出願時、外観観察、光学顕微鏡観察、走査型 電子顕微鏡(SEM)観察及びEDX分析を実施することができる装置は 既に普及しており、電鋳管の内面精度を観察することは技術的に可能であ ったし、当該装置を用いた観察は、著しく過大な経済的支出や時間を要す15 ることなく行うことができるものである。 イ 被告は、プロダクト・バイ・プロセスクレームの形式をとっていたとし ても、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から物の構造又は特性が一義 的に明らかである場合には明確性要件を充足すると主張するが、このよう な見解をとったとしても、本件発明6及び訂正発明9は上記場合には当た20 らないので、明確性要件を充足しない。 被告が主張するように、本件発明6及び訂正発明9の細線材の除去方法 が、電鋳管がコンタクトプローブ用の管等として使用可能な程度の「内面 精度」を有しているという構造又は特性を表していると解したとしても、 本件明細書においては、本件発明6及び訂正発明9が規定する細線材の除25 去方法と電鋳管の「内面精度」との関係性に関する記載及び示唆は一切な いし、細線材を除去する方法として様々な方法が記載されているところ 28 (【0070】ないし【0074】 、これらの方法は同等なものとして列挙 ) されており、本件明細書【0116】の@ないしCの細線材の除去方法を 用いて製造された電鋳管は、いずれも、電鋳管がコンタクトプローブ用の 管等として使用可能な程度の内面精度を有しているとの構造又は特性を 5 有しているから、微細な管の構造又は特性において区別することができな い。そうすると、本件発明6及び訂正発明9の細線材の除去方法により製 造された電鋳管が、他の細線材の除去方法により製造された電鋳よりも良 好な「内面精度」を有すると解すべき根拠はない。したがって、当該製造 方法がどのような電鋳管の「内面精度」を表しているのかが一義的に明ら10 かであるとはいえない。 ? 被告 ア 本件発明6及び訂正発明9について、不可能・非実際的事情が存在しな いことは、認める。 イ 本件発明6及び訂正発明9に係る電鋳管がどのような構造又は特性を表15 しているのかは、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明ら かである。 本件発明の細線材の除去方法は、本件明細書【0116】のBの方法で あるところ、この方法は、 「細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を 除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物20 から支障なく除去できる」【0044】 ( )ことから、良好な内面精度の電鋳 管という構造又は特性を有する。一方、本件明細書【0116】の@の方 法では、電着物又は囲繞物を加熱して熱膨張すると所定の径の電鋳管が得 られないことになる上、細線材を冷却して収縮させても支障なく除去でき るものではない。また、同Aの方法では、細線材と電着物又は囲繞物が接25 触している箇所を滑りやすくしているものの、微小な凹凸があることが多 いから(甲1【0020】 、細線材と電着物又は囲繞物が接触したまま引 ) 29 き抜くと、当該凹凸により、電着物または囲繞物の内面に線状痕のような キズがついてしまい、電鋳管の内面精度が低いものとなる。 さらに、同Cの方法では、内面精度の点で実用性がない(甲2【000 7】 。 ) 5 以上から、本件発明6及び訂正発明9に係る電鋳管は内面精度の高い電 鋳管であるといえ、どのような構造又は特性を表しているのかは、特許請 求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかである。 このことは、試作分析報告書(甲29)において、本件発明6及び訂正 発明9の細線材除去方法により製造された電鋳管(試料1)と、液中に浸10 して又は液をかけることにより、細線材と電着物又は囲繞物が接触してい る箇所を滑りやすくする方法により製造された電鋳管(試料2-@ないし 試料2-B)を試作し、これら試料の内面性状を、外観観察(寸法測定を 含む。 、光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡(SEM)観察及びEDX分 ) 析したところ、試料1の内面は概ね平滑であり、キズ状のものは確認でき15 ず、Fe、Cr又はMn等のステンレス線に由来する元素は検出されなか ったのに対し、試料2-@ないし試料2-Bについては、いずれも、内面 にキズ又は剥がれ様の領域が散在しており、内面のキズの領域にFe、C r又はMn等のステンレス線に由来する元素が検出されたことからも、明 らかである。 20 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について 本件明細書(甲95)には、別紙1「本件明細書の記載事項(抜粋)」のとお りの記載があり、この記載によると、本件発明について、次のような開示があ ると認められる。 25 ? 技術分野 本件発明は、微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管に関するも 30 のである(【0001】 。 ) ? 従来技術及びその課題 電極の電気的導通を検査するプローブ装置において、最新の集積回路に対 応できるように、コンタクトプローブの数を増やし(多ピン化)、線径も細く 5 し(細線化)、コンタクトプローブ間の間隔もより狭く(狭ピッチ化)するこ とが求められているところ、現在のコンタクトプローブ用の管は、外径が1 10μm、内径が88μmのものが世界最小とされているが、更に小型化す ることが必要とされている(【0003】 。 ) 電鋳技術により、中空部が断面円形状であり、直径が10μmから85μ10 mまでの細線材の外面に最小5μmの金属の膜を付着させることができるが、 電着させた金属から細線材を除去することは、電着した金属が細線材の外面 に密着しているので容易なことではなかった(【0006】 。 ) そこで、本件発明は、微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管を 提供することを目的とする(【0008】 。 )15 ? 課題を解決するための手段 前記?の目的を達成するため、本件発明は、請求項1、5、6及び9の構 成をとった。 ? 作用及び効果 ア 電鋳によって形成された電着物等から、細線材の一方又は両方から引っ20 張って細線材を断面積が小さくなるように変形させて電着物等の間に隙 間を形成し、掴んで引っ張る方法で細線材を除去することにより、例えば、 直径が10μmから85μmまでの細線材の外面に5μm以上50μm 以下の肉厚を有するように形成した電着物等からでも、細線材を除去する ことができ、微細な内径を有する電鋳管が製造できる(【0041】【00 、 25 42】 【0116】 。 、 ) イ 細線材に形成される端部側の電着物等の量を多くして電鋳管を製造する 31 と、細線材を電着物等から引き抜いたり押し遣ったりして除去する際に、 治具や工具等を電着物等の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりす ることができ、細線材が除去しやすい(【0043】 【0117】 。 、 ) ウ 細線材を外方に引っ張って伸ばしたときの横ひずみの変形量が断面積の 5 5%以上あるようすると、細線材と電着物等の間に、細線材を除去するの に十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物等から支障なく除去でき る可能性が高い(【0044】 【0118】 。 、 ) エ 外面に導電層が設けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内面に残る ように細線材を除去すれば、内面に金メッキ等を設けた電鋳管が製造でき、 10 内面に設ける導電層の材質によって電気伝導率が電着物等だけのときよ り良好にできるので、電気を伝導するのに適した部品として使用できる (【0045】 【0119】 。 、 ) オ 細線材を除去して形成される中空部を複数個備えたものは、中空部が一 つしか設けられていない管を複数並べて製造されていた部品と置き換え15 て使用することができる(【0047】 【0121】 。 、 ) カ 両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が 設けられていない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が 導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離しやすく、また、 導電層と電着物等との密着性も損なわれ難い 【0049】 ( 、 【0123】 。 )20 ? 発明の実施の形態 ア 電鋳装置を使用して細線材を電鋳し、細線材を一方又は両方から引っ張 って断面積が小さくなるように変形させて、電着物と細線材の間に隙間を 形成し、細線材を掴んで引っ張り除去することにより、微細な内径(中空 部)を有する、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な電鋳管がつ25 くられる(【0050】ないし【0070】【0073】【0075】【図 、 、 、 1】 。 ) 32 イ 電着物の一端側に外径の大きな径大部を形成すると、治具や工具を径大 部の端面に引っ掛けて、細線材を除去しやすくなる 【0076】 ( 、 【図2】 。 ) ウ 細線材は、外径が10μm以上85μm以下であれば使用でき、略15 2 00N/mm の引張力をかけたときに、横ひずみの変形量が断面積の 5 5%以上であればよい(【0078】【0079】 。また、少なくとも略5 、 ) μm以上の肉厚を有するように細線材の周りに電着させることができれ ば、細線材を除去した後でも電鋳管が形成できる(【0080】 。 ) エ 細線材は、芯部を金属や合成樹脂等で作り、その外面に導電層(例えば 金メッキ)を設けたものを使用でき、この場合、導電層を電着物の内周面10 に残して、細線材のみを除去し、内周面に導電層が施された電鋳管を形成 できる(【0081】 。このような電鋳管は電気伝導率が良いので、コンタ ) クトプローブ用の管等の電気を伝導するのに適した部品として使用でき る(【0082】 。 ) 外周部に導電層が設けられた細線材を、断面積が小さくなるように変形15 させて析出した金属から除去する場合、細線材の両端側に導電層を設けな い部分(マスキング部)を形成しこの部分を引っ張ると、引張力が導電層 に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離しやすく、導電層と電着 物との密着性も損なわれ難い(【0084】 【図6】 。 、 ) オ 複数本の細線材が張設可能な治具を用いて、中空部が複数個ある電鋳管20 を製造できる(【0085】ないし【0107】【図7】ないし【図9】 。 、 ) 2 取消事由1(訂正要件に関する判断の誤り)の有無について ? 本件発明5及び9における訂正について 本件訂正は、本件発明5及び9について、 「前記細線材の両端側に前記電着 物または前記囲繞物が形成されていない部分を形成し、 との事項 」 (訂正事項25 Aを構成する訂正事項2及び訂正事項Bを構成する訂正事項5)を追加する 訂正を含む。 33 本件明細書には、細線材として、外周面に導電層を設けたものを使用でき ること、例えば外周面に金メッキを設けた細線材に電着物を形成した場合、 金メッキを電着物の内周面に残して、細線材のみを除去し、内周面に金メッ キが施された電鋳管を形成できることが記載され(【0081】【図4】 、外 、 ) 5 周面に導電層(例えば、金メッキ)が設けられた細線材を、断面積が小さく なるように変形させて除去する場合は、細線材の両端側に導電層を設けない 部分(マスキング部)を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張る ようにすることが好ましく、このようにすることで引張力が導電層に直接か かり難くなり、導電層と細線材とが分離しやすく、また、導電層と電着物と10 の密着性も損なわれ難いことが記載されている(【0084】 【図6】 。 、 ) そして、 【図6】を参照すると、細線材の両端部では細線材が露出し、導電 層も電着物等も設けられていない部分、すなわち、細線材の両端側に電着物 等が形成されていない部分が形成されている。 そうすると、本件明細書には訂正事項1について記載されているといえる15 のであって、訂正事項1を追加する訂正は、本件明細書に記載した事項の範 囲内においてするものである。 ? 原告の主張について 原告は、前記第3の1?のとおり、訂正事項1が新規事項の追加に該当し ないためには、@細線材にマスキングを施し、初めから細線材の両端側に電20 着物等が形成されないようにする方法、及び、Aいったん細線材に電着物等 を形成させた後で、細線材の両端側に形成された電着物等を事後的に除去す る方法のいずれもが本件明細書に開示されている必要があるが、少なくとも Aの方法は開示されていないから、訂正事項1を追加する訂正は、新規事項 追加になると主張する。 25 しかしながら、前記?のとおり、本件明細書には、細線材の端部において 細線材を露出させることにより細線材の除去が容易に行えることが記載され 34 ている。そして、既に、1968年発行の甲50文献には、直径が1mm以 下の導管を電鋳によって製造すること、具体的には、銅線をニッケルメッキ した後、銅線の端部からニッケルを除去し、銅線を徐々に引き伸ばし、銅が 破断した後、銅線の破断片を取り除いてニッケルの導管を製造したことが記 5 載されており、さらに、被覆された細線材から被覆物を除去する方法に関す る平成13年頃発行の複数の公知文献も存在するから(甲21文献、甲22、 23、51) どのような具体的な手法により電着物等を除去して細線材を露 、 出するかについては、従来より慣用されている、これら方法又は適宜の方法 をとれば足りるものと認められ、前記Aの方法を含む訂正事項1を追加した10 ことが新規事項追加になるとはいえないというべきである。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ? 小括 以上のとおりであるから、取消事由1は理由がない。 3 取消事由5(明確性要件違反に関する判断の誤り) について15 事案に鑑み、次に取消事由5を検討する。 ? 判断基準 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載 されている場合において、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に いう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時20 において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能である か、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる(最高裁 判所平成24年(受)第1204号同27年6月5日第二小法廷判決・民集 69巻4号700頁)。 もっとも、上記のように解釈される趣旨は、物の発明について、その特許25 請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・ プロセス・クレーム) 当該発明の技術的範囲は当該製造方法により製造され 、 35 た物と構造、特性等が同一である物として確定されるところ(前掲最高裁判 決) 一般的には、 、 当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表して いるのか、又は物の発明であってもその発明の技術的範囲を当該製造方法に より製造された物に限定しているか不明であり、特許請求の範囲等の記載を 5 読む者において、当該発明の内容を明確に理解することができず、権利者が その範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪う結果となり、 第三者の利益が不当に害されることが生じかねないところにある。 そうすると、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製 造方法が記載されている場合であっても、上記一般的な場合と異なり、出願10 時において当該製造方法により製造される物がどのような構造又は特性を表 しているのかが、特許請求の範囲、明細書、図面の記載や技術常識より一義 的に明らかな場合には、第三者の利益が不当に害されることはないから、不 可能・非実際的事情がないとしても、明確性要件違反には当たらないと解さ れる。 15 ? 検討 ア 本件発明6及び訂正発明9は、 「電鋳管」に係る発明であるところ、本件 発明6は、「外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層 を設けた細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細 線材の一方または両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前20 記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた 細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を 残したまま細線材を除去して製造される」という製造方法による特定が、 訂正発明9は、「外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導 電層を設けた細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成する25 と共に、前記細線材の両端側に前記電着物または前記囲繞物が形成されて いない部分を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小 36 さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を 形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞 物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される」という 製造方法による特定を含む。 5 イ そこで、本件発明6及び訂正発明9の製造方法により製造された電鋳管 の構造又は特性、具体的には被告が主張する電鋳管の内面精度が、一義的 に明らかであるか否かについて検討する。 まず、特許請求の範囲の記載から本件発明6及び訂正発明9の製造方法 により製造された電鋳管の内面精度が明らかでないことはいうまでもな10 く、また、本件明細書には、本件発明6及び訂正発明9の製造方法により 製造された電鋳管の内面精度について、何ら記載も示唆もされていない。 そして、本件明細書には、細線材を除去する方法として、@電着物等を 加熱して熱膨張させ、又は細線材を冷却して収縮させることにより、電着 物等と細線材の間に隙間を形成する方法、A液中に浸して又は液をかける15 ことにより、細線材と電着物等が接触している箇所を滑りやすくする方法、 B一方又は両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、細 線材と電着物等の間に隙間を形成したりして、掴んで引っ張るか、吸引す るか、物理的に押し遣るか、気体又は液体を噴出して押し遣る方法、C熱 又は溶剤で溶かす方法が記載されている(【0041】 【0116】 、 )が、 20 これらの方法と、製造される電鋳管の内面精度との技術的関係についても 一切記載がなく、ましてや、本件発明6及び訂正発明9の製造方法(上記 Bの方法に含まれる。 が、 ) 他の方法で製造された電鋳管とは異なる特定の 内面精度を意味することについてすら何ら記載も示唆もない。さらに、上 記各方法により内面精度の相違が生じるかについての技術常識が存在し25 たとも認められない。 そうすると、本件発明6及び訂正発明9の製造方法により製造された電 37 鋳管の構造又は特性が一義的に明らかであるとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、本件発明6及び訂正発明9が明確であるとい えるためには、本件出願時において、本件発明6及び訂正発明9の電鋳管 をその構造又は特性により直接特定することについて不可能・非実際的事 5 情が存在するときに限られるところ、被告はこのような事情が存在しない ことは認めている。 ? 被告の主張について 被告は、前記第3の5?イのとおり、本件発明6及び9の製造方法により 製造された電鋳管の構造又は特性は、本件明細書の「細線材と電着物または10 囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材 が電着物または囲繞物から支障なく除去できる」 (【0044】)との記載から 理解できるものであり、文献(甲1、2)の記載や試作分析報告書(甲29) の内容も参酌すれば、良好な内面精度を有するという構造又は特性を表して いることが、特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかであ15 る旨主張する。 しかしながら、被告が指摘する本件明細書【0044】の記載からは、細 線材と電着物等の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できると細 線材を支障なく除去できる可能性が高いということが理解できるにすぎず、 本件発明6及び訂正発明9の製造方法により製造された電鋳管が、良好な内20 面精度の電鋳管という構造又は特性を表していることまでを理解することは できない。また、被告が主張する甲1文献や甲2文献の記載は製造の難易さ を記述するにすぎないものであって内面精度については記載されておらず、 試作分析報告書(甲29)の分析結果は、本件出願時の技術常識それ自体を 示すものではないところ、同報告書に記載された内容が本件出願時の技術常25 識であることは何ら明らかにされていない。 以上によれば、本件発明6及び9の製造方法により製造された電鋳管が良 38 好な内面精度の電鋳管という構造又は特性を表していることが、特許請求の 範囲、本件明細書の記載及び技術常識から一義的に明らかであるとはいえな い。 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。 5 ? 小括 よって、本件発明6及び訂正発明9は明確であるということはできず、取 消事由5は理由がある。 4 取消事由2(実施可能要件違反に関する判断の誤り)の有無について ? 検討10 前記3のとおり、本件発明6及び訂正発明9は明確性要件を充足せず無効 であるから、以下、本件発明1及び訂正発明5についてのみ検討する(後記 5及び6も同じ。 。 ) 本件明細書の発明の詳細な説明には、電鋳管の製造方法に関し、電鋳装置 を用いて細線材に電鋳を行った後、細線材を一方又は両方から引っ張って断15 面積が小さくなるように変形させて、電着物と細線材の間に隙間を形成し、 細線材を掴んで引っ張る等の方法を用いて、細線を除去することが記載され ている(【0061】ないし【0114】 【図1】 【図6】ないし【図9】 。 、 、 ) そして、電着物の一端側に外径の大きな径大部を形成して細線材を引っ張 るなどの方法によれば、細線材が除去しやすくなること(【0076】 【図 、 220 2】 、細線材に外方に向けて略1500N/mm の引張力をかけるなどし ) て、細線材の横ひずみの変形量が断面積の5%以上となればよいこと 【00 ( 79】 、少なくとも略5μmの肉厚を有するように細線材の周りに電着させ ) ることができれば、細線材を除去した後でも電鋳管が形成できること 【00 ( 80】 、ステンレス製で、外面に導電層(金メッキ)を設けた細線材を使用 )25 することにより、内周面に金メッキが施された電鋳管が形成できること 【0 ( 081】 、 外周部に導電層(金メッキ)が設けられた細線材を、断面積が小 ) 39 さくなるように変形させて除去する場合では、細線材の両端側に導電層を設 けない部分を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張るようにする ことで、引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し やすく、導電層と電着物との密着性も損なわれ難いことや、細線材の両端で 5 は導電層も電着物等も設けられておらず細線材が露出している図が示されて いる(【0084】 【図6】 。 、 ) これらの記載に接した当業者であれば、導電層を設けたステンレス製の細 線材の周りに電着物等を形成し、細線材を、一方又は両方から引っ張って細 線材の断面積が小さくなるように変形させ、細線材と導電層の間に隙間を形10 成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、電 鋳管を製造することができること、及び、径大部を形成したり、細線材の端 部において細線材を露出させることにより、また、電着物の肉厚や細線材の 横ひずみの変形量を適当な値とすることにより、細線材の除去が容易に行え ることを理解するといえる。 15 以上からすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1 及び訂正発明5を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したも のといえる。 ? 原告の主張について 原告は、前記第3の2?アないしウのとおり、細線材の除去方法@ないし20 Bに関して本件明細書には記載も示唆もされておらず、これらの方法が周知 技術として認定できるともいえないから、本件発明1及び訂正発明5の電鋳 管の製造方法を実現する細線材除去方法を見い出すには、当業者において過 度の試行錯誤を要する旨主張する。 しかしながら、そもそも除去方法について、原告が主張するような除去方25 法@ないしBに分類した上で、その全てについてそれぞれ具体的な実施方法 を記載する必要があるとはいえない。前記?のとおり、本件明細書の記載に 40 接した当業者であれば、細線材の端部において細線材を露出させること等に より細線材の除去が容易に行えることを理解するというべきである。そして、 前記2?において説示するとおり、どのような具体的な手法により電着物等 を除去して細線材を露出するかについては、従来より慣用されている方法又 5 は適宜の方法をとれば足りるものと当業者は当然に理解するといえるから、 当業者が過度の試行錯誤を強いられるとはいえない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ? 小括 以上のとおりであるから、取消事由2は、理由がない。 10 5 取消事由3(サポート要件違反に関する判断の誤り)の有無について 前記1?のとおり、本件発明1及び訂正発明5の課題は、コンタクトプロー ブ用の管等、電気を伝導するのに適した部品として使用できる微細な内径の電 鋳管を容易に製造する方法を提供することである(本件明細書【0003】、 【0 006】 【0008】 。 、 )15 また、前記1?のとおり、本件明細書には、電鋳装置を用いて、細線材に電 鋳を行い、電鋳後、 細線材を一方又は両方から引っ張って断面積が小さくなる ように変形させて、電着物と細線材の間に隙間を形成し、細線材を掴んで引っ 張る等の方法を用いて、細線材を除去して電鋳管を製造することが記載されて いる(本件明細書【0050】ないし【0070】 【0073】 【0075】 、 、 、 20 【0076】 【0078】ないし【0082】 【0084】 【図1】 【図2】 、 、 、 、 、 【図6】 。 ) そして、前記1?エ及び同?エのとおり、外周面に金メッキ等の導電層が設 けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内周面に残るように細線材を除去す ることにより、コンタクトプローブ用の管等の電気を伝導するのに適した部品25 として使用できる電鋳管を製造できることも記載されている 【0045】 ( 、 【0 081】 【0082】 。 、 ) 41 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者は、細線材を一方又は両方 から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、電着物と細線材の間 に隙間を形成し、細線材を掴んで引っ張ること、外周面に導電層を設けたス テンレス製の細線材の周りに電着物等を形成し、電着物等の内面に導電層を 5 残したまま細線材を除去することの特定を有する本件発明1及び訂正発明5 について、前記イの記載により同アの課題を解決できると認識できる範囲の ものであると理解するといえるから、本件発明1及び訂正発明5は、サポー ト要件を充足しているといえる。 原告は、本件発明1及び訂正発明5がサポート要件を充足しない旨を主張10 するが、前記4?と同旨の理由により、その主張を採用することはできない。 以上のとおりであるから、取消事由3は、理由がない。 6 取消事由4(進歩性欠如に関する判断の誤り)の有無について ? 甲1方法発明の認定について 甲1文献の記載は、別紙2「甲1文献の記載事項(抜粋) のとおりであり、 」15 これによると、概ね、本件審決が認定するものと同旨の甲1方法発明が少な くとも記載されていると認められる。ただし、甲1文献には、 「断面が円形で 径が0.126mmで長さが355mmのステンレス製の線に金(抵抗率2. 05×10 Ωcm)を10μmメッキした、直径0.136mmの芯線を 得た。( 」【0023】)と記載されているものの、直径0.126mmのステン20 レス製の線の表面に厚さ10μmの金をメッキした場合に得られる芯線の直 径は0.146mm(0.126mm+10μm+10μm)であるから、上 記記載中の「0.136mmの芯線」は「0.146mmの芯線」の誤記と認 められる。また、甲1文献には、 「金属フェルール形成用微細円柱の製法」 (【発 明の名称】)及び「・・・フェルール形成用微細円柱」の製造方法(製法)【請 (25 求項1】ないし【請求項4】)との記載があり、これに【図1】に示されたと ころを参酌すると、甲1方法発明は、 「フェルールの製造方法」ではなく、 「フ 42 ェルール形成用微細円柱の製造方法」の発明とするのがより正確である。 したがって、甲1方法発明は、少なくとも次のような発明と認定すること ができる(本件審決が認定した甲1方法発明と実質的に異なる認定部分に波 線を付した。 。 ) 5 「 断面が円形で径が0.126mmで長さが355mmのステンレス製の線に 金(抵抗率2.05×10 Ωcm)を10μmメッキして、直径0.146 mmの芯線を得、この芯線を電鋳用治具にセットし、スルフアミン酸ニッケ ルを主成分とする電鋳浴に、ニッケルの金属板をセットし、電鋳浴に浸漬し、 2 芯線を陰極、ニッケル板を陽極にして、10A/dm 程度の電流密度で電10 鋳を18時間実施して、平均約2.5mmの直径のニッケル電鋳品を得て、 この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端を中 ぐり加工をし、該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上にして、 芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、加工品の下 から頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を除去し、端面を15 研磨する、フェルール形成用微細円柱の製造方法。」 ? 相違点4の認定について 前記?の甲1方法発明の認定を前提にすると、甲1方法発明の約2.5mm の直径のニッケル電鋳品の肉厚は、金メッキが電鋳品内面に残る場合には芯 2.5??-0.126?? 線の直径のみを控除した約1.187mm ( ) と算出され、 220 金メッキが電鋳品内面に全く残らない場合には芯線の直径と金メッキの厚さ 2.5??-0.146?? を控除した約1.177mm ( ) と算出される。 2 以上からすると、本件発明1と甲1方法発明とは、少なくとも、次の相違 点4Cの点で相違し、この相違点は、相違点4Bを包含するものである(原 告の主張する相違点4Bと実質的に異なる認定部分に波線を付した。 。 ) 43 (相違点4C) 「電着物または前記囲繞物」の「肉厚」に関し、本件発明1は、 「前記電着 物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である」のに対し、甲1方法発明 は、「電鋳品」の「肉厚」が約1.177mm(1177μm)又は約1.1 5 87mm(1187μm) である点。」 なお、甲 1 方法発明や相違点4の認定を上記のとおり変更したが、この点 は、以下の結論に影響を及ぼさない。 ? 相違点4Cの容易想到性について ア 以下、相違点4Cを前提にその容易想到性について検討する。 10 甲1方法発明は、金属フェルール形成用微細円柱の製造方法に関するも のであるところ、通信分野で使用されるフェルールは、径が0.126mm 程度の細孔のある、外径が2.5mmで長さが12mm程度の微細孔パイ プを有するものであり、細くて折れやすい太さ0.125mm程度の光フ ァイバーをコネクタに確実に固定する部品である(甲1文献【0002】、 15 【0003】 。甲1方法発明は、従来、電鋳により細孔パイプを製造する ) ことは公知であるが、フェルールの内径はきわめて細いので、芯線をエッ チング液で溶出するのは困難であり、引き抜く際にも芯線が断線しやすい という問題があったこと(【0005】 【0006】 、及び、0.126m 、 ) m径の芯線(ステンレス線)の外表面にニッケル等を電鋳してこれを切断20 後、芯線を引き抜いてフェルールを製造する方法は、電源から遠い芯線部 分で電流密度が小さくなることに起因して、芯線が長いほど外径が不均一 な電鋳体が得られる傾向があるという問題があったこと 【0007】 ( 、 【0 008】)を踏まえ、特に長尺で、内径が0.126mmと小さいフェルー ル用の微細孔パイプを電鋳で製造するに際して、外径が均一で小さい内径25 を有し、かつ同軸性の高いフェルールを形成するための微細円柱を効率よ く製造する方法を提供しようとするものである 【0001】 ( 、 【0009】。 ) 44 イ 甲1方法発明は、フェルール形成用微細円柱の製造方法に関する発明で あるところ、一般にフェルール又はフェルール形成用微細円柱の内径は0. 126mm、直径は2mmから2.5mmであることは本件出願時の技術 常識であると認められ(甲1、22、23、84ないし88、94)、これ 2.5??-0.126?? 5 によると、その肉厚は、通常、約1187μm ( ) ない 2 2.0??-0.126?? し約937μm ( ) であると認められる。このような肉 2 厚をもって光ファイバーを固定する部品であるフェルール又はフェルー ル形成用微細円柱の肉厚を、上記技術常識の厚さの約20分の1若しくは それ以下である50μm以下に当然に変更できると当業者が考えるとは10 認め難い。 そうすると、フェルール形成用微細円柱を効率よく製造するための方法 である甲1方法発明において、その「約1.177mm(1177μm)」 又は「約1.187mm(1187μm)」である肉厚を「50μm以下」 に変更することは到底動機付けられない。 15 したがって、相違点4Cは、当業者が容易に想到し得るものではない。 そして、原告が主張する相違点4Bは相違点4Cの択一的記載事項の一部 を削除したものであるから、その択一的記載事項の双方で構成される相違 点4Cが容易に想到できないのであれば、その択一的記載事項の一部であ る相違点4Bも容易に想到できないことは明らかである。 20 そうすると、いずれにしても、本件発明1を甲1方法発明に基づいて容 易に発明することはできないとした本件審決の判断には誤りはない。 ? 原告の主張について ア 原告は、前記第3の4?ア aのとおり、本件発明1の「50μm以下」 という数値限定は、任意にされた、技術的意義のないものであるし、異質 45 な効果を生じたり、臨界的意義を有したりするものとして特定されたもの ではないから、金属電鋳管の肉厚を50μm以下にする本件出願時の技術 常識に従って相違点4に係る本件発明1の構成とすることは容易想到で あると主張する。 5 しかしながら、前記?のとおり、本件発明1は、プローブ装置用の管と して用いることのできる電鋳管の製造方法に係るものであり、この電鋳管 は、最新の集積回路に対応できるように、コンタクトプローブの数を増や し(多ピン化)、線径も細くし(細線化)、コンタクトプローブ間の間隔も より狭く(狭ピッチ化)することが求められ、本件出願時、外径が11010 μm、内径が88μmのものが世界最小とされているが、更に小型化する ことが必要とされているというものであるから 【0003】 、 ( ) 管の直径を 微細にしなければならず、そのためには管の内径が微細であることのみな らず、管の肉厚が薄いことをも必須の要請とされている技術分野に関する 発明である。そうすると、管の肉厚が相当程度薄いことは本件発明1の電15 鋳管の肉厚の発明特定事項として技術的意義を有することであり、これを 当業者において任意になすべき設計事項のごとき捉え方をすることはで きないから、 「50μm以下」とすることには具体的な動機付けが必要であ り、金属電鋳管の肉厚を50μm以下にする技術常識があれば直ちに動機 付けられるものと捉えることはできない。 20 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 イ 原告は、前記第3の4?ア bのとおり、甲1文献は、フェルール形成 用微細円柱の製造方法と、一般的な細孔チューブの製造方法とを共通した 技術分野として取り扱っているから、甲1方法発明のフェルール製造方法 を一般的な細孔チューブ製造方法に置換することは、当業者が容易になし25 得た事項である旨や、現にフェルールの中にも肉厚が0.15mmのもの が存在する旨主張する。 46 細孔チューブの製造方法に共通する部分があり、それが技術横断的な技 術常識として存在しているとしても、そもそも甲 1 方法発明の製造方法に つき、肉厚を薄くする必要性がなければ当該技術を用いて肉厚を薄くする ことを動機付けられないというべきである。そして、光ファイバーを固定 5 する部品である甲1方法発明のフェルール形成用微細円柱の製造方法に おいて、その製造に係るフェルールの肉厚を薄くすることがフェルール製 造方法の技術分野の進展方向であるとは認め難いから、この点に関する原 告の主張は当を得たものとはいえない。 なお、甲1文献は、甲25文献(「ロケットや人工衛星等の推進装置にお10 いて、ヒドラジン等の推進薬を流通させるフィードチューブ」 (【0002】) の製造方法を記載)や甲3文献(光スイッチ等のマイクロ部品のカテゴリ ーに入る中空構造体(【0001】 【0006】 【0032】 、 、 )の製造方法 を記載)を引用している(甲1文献【0005】 【0014】 。しかしな 、 ) がら、甲1文献は、甲25文献の細孔チューブの製造方法に関して「光フ15 ァイバコネクタ用の金属フェルールを製造するに際して、基本的にはこの 方法を使用することができる」と記載するも、 「問題は、フェルールの内径 は0.126mm程度のものときわめて細いので、フェルール形成用微細 円柱の芯線をエッチング液で溶出するのは極めて困難である。また、芯線 を引き抜く際にも、芯線が断線し易いという問題があった。」 (甲1文献【020 006】 と記載しているのだから、 ) 甲25文献に記載された技術を使用し てフェルールの製造を行う際の問題点を記載しているというべきであっ て、むしろ、甲1文献の技術分野と甲25文献の技術分野とを区別して記 載していると理解できる。また、甲1文献は、甲3文献の中空構造体の製 造方法を、細径を有するパイプを電鋳により製造し、芯材をエッチングに25 より除去する技術を開示する文献の例として引用しているにすぎず(【0 014】 、甲1文献に記載の技術と甲3文献に記載の技術とを共通した技 ) 47 術分野として取り扱うこと等については記載されていない。さらに、甲9 4文献は、光ファイバー接続用コネクタに使用されることを前提とした金 属フェルールに関する技術を開示するところ 【0001】 ( 、 【0002】 、 ) 「光ファイバーの外径は、規格により0.125mmと定められており、従 5 って、フェルールの内径は、0.126mm程度のものになっている。フェ ルール自身の長さは12mm程度で、外径は2.5mm程度である。 ( 」 【0 007】 と記載され、 ) フェルールの肉厚を薄くすることを示唆するもので はない。 また、本件出願時に「フェルール」と称するものの中には管の肉厚が0.10 15mmのものもあったことがうかがわれないではないが(甲108の 1)、内径が1.1mm(1100μm)から10.30mm(10300μ m)となっており、電線用のものと認められ(甲108の2、109)、内 径を0.126mmとする甲1方法発明の製造方法に係るフェルール形成 用微細円柱が対象とするフェルールとは全く異なる用途のものである認15 められる。 したがって、原告の上記主張も採用することができない。 ? 訂正発明5について 訂正発明5は、本件発明1の特定に加えて、さらに、細線材の両端側に電 着物等が形成されていない部分を形成すること及び電着物等はニッケルとし、 20 導電層は金メッキとするとの特定を有するものであり、甲1方法発明との間 には、少なくとも相違点4Cが存在するから、本件発明1と同様の理由によ り、訂正発明5は、当業者が、甲1方法発明と技術常識に基づいて容易に発 明をすることができたものではない。したがって、いずれにしても、本件審 決の判断には誤りはないといえる。 25 ? 小括 以上のとおりであるから、取消事由4は理由がない。 48 7 結論 以上のとおり、取消事由5は理由があるから、本件審決中、本件発明6及び 訂正発明9に係る部分を取り消し、その他の取消事由は理由がないから、本件 発明1及び訂正発明5に係る部分の取消請求を棄却することとして、主文のと 5 おり判決する。 |
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10裁判長裁判官菅野雅之15裁判官本吉弘行20裁判官中村恭49(別紙1)本件明細書の記載事項(抜粋)(「▲1▼」のような記載がされている部分は、 「@」のように丸数字に置き換えた。 下線部は前件訂正による訂正箇所を示す。)5【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、電気鋳造(本明細書では「電鋳」という)管の製造方法及び電鋳管、電10鋳管を製造するための細線材に係り、更に詳しくは、微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管に関する。また、微細な内径を有する電鋳管を製造するための細線材に関する。 【0002】【従来技術及びその課題】15従来からLSI等の集積回路を製造する際には、半導体パターンが設計通りに出来上がっており、電気的導通が良好であるかどうかの検査が行われている。この検査は、多数のコンタクトプローブを備えた装置(本明細書では「プローブ装置」という)を用い、コンタクトプローブのピンを形成した各電極に接触させて行われる。 コンタクトプローブは、所要長さを有する極細の管の内部にバネが設けてあり、ピ20ンを管内に進退可能に設けた構造を有している。 【0003】ところで近年の半導体製造技術の進化は目覚ましいものがあり、集積度はますます高密度化する傾向にある。これに伴い電極の電気的導通を検査するプローブ装置においても最新の集積回路に対応できるように、コンタクトプローブの数を増やし(多25ピン化)、線径も細くし(細線化)、コンタクトプローブ間の間隔もより狭く(狭ピッチ化)することが求められている。現在のコンタクトプローブ用の管は、外径が50110μm、内径が88μmのものが世界最小とされている(例えば、非特許文献1参照)。 しかしながら、上記したように半導体製造技術はますます進化しているため、コンタクトプローブも更に小型化することが必要とされている。 5【0004】また、微細な内径を有する管の必要性は、半導体産業以外の例えばバイオテクノロジーや医療の分野においても高まっている。 つまり、このような微細な内径を有する管の開発は産業界全体から強く要請されている。 10【0005】本発明者は、電鋳に関する研究を行っており、以前に電鋳によって径小な管を製造することに成功している。このときの電鋳管は、中空部が断面円形状であり、内径が126μmのものである(例えば、特許文献1参照)。従って、本発明者は電鋳技術を使えば、コンタクトプローブ用の微細な内径(中空部)を有する管もつくれる15のではないかとの着想を得た。 【0006】そして更に研究を重ねたところ、直径が10μmから85μmまでの細線材を用い、 この細線材の外面に最小5μmの金属の膜を付着させることに成功した。そうして、 この金属から上記細線材が除去できれば、微細な内径(中空部)を有する管がつく20れることを知見した。 しかし、電着(析出)させた金属から細線材を除去することは、電着した金属が細線材の外面に密着しているので、容易なことではなかった。 【0008】(本発明の目的)25本発明の目的は、 @微細な内径を有する電鋳管の製造方法及び電鋳管、この電鋳管を製造するための51細線材を提供することにある。 A細線材を電着物または囲繞物から除去する際に、治具や工具等が電着物または囲繞物に引っ掛けたりできるようにして、細線材を除去し易くする電鋳管の製造方法を提供することにある。 5B内面に金メッキ等の導電層を設けて、電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良いようにする電鋳管の製造方法及び電鋳管、この電鋳管を製造するための細線材を提供することにある。 ・・・D中空部を複数備えた電鋳管の製造方法及び電鋳管を提供することにある。 10・・・F細線材を除去する際において、内面に設けた導電層に引張力がかかり難くして、 導電層と基線材とを分離し易くし、導電層と電着物または囲繞物との密着性が損なわれ難いようにする電鋳管の製造方法を提供することにある。 【0011】15【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。 第1の発明にあっては、 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けたステンレス製の細線材の周りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記電着物または前20記囲繞物の内面に前記導電層を残したまま細線材を除去して電鋳管を製造する方法であって、 前記導電層は、電解メッキで形成されたものであり、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、前記細線材は、一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙25間を形成して、前記変形させた細線材を掴んで引っ張って除去することにより、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が50μm以下である電鋳管を製造することを特52徴とする、 電鋳管の製造方法である。 【0018】第5の発明にあっては、 5電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、 第1の発明に係る電鋳管の製造方法。 【0027】第6の発明にあっては、 外周面に電着物または囲繞物とは異なる材質の金属の導電層を設けた細線材の周10りに電鋳により電着物または囲繞物を形成し、前記細線材の一方又は両方を引っ張って断面積を小さくなるよう変形させ、前記変形させた細線材と前記導電層の間に隙間を形成して前記変形させた細線材を引き抜いて、前記電着物または前記囲繞物の内側に前記導電層を残したまま細線材を除去して製造される電鋳管であって、 前記導電層は、前記電着物または前記囲繞物より電気伝導率が高いものとし、 15前記細線材を除去して形成される中空部の内形状が断面円形状又は断面多角形状であって、前記電着物または前記囲繞物の肉厚が5μm以上50μm以下であることを特徴とする、 電鋳管である。 ・・・20第9の発明にあっては、 電着物または囲繞物はニッケルとし、導電層は金としたことを特徴とする、 第6又は7の発明に係る電鋳管である。 【0041】(作用)25本発明によれば、電鋳によって形成された電着物または囲繞物から細線材が除去できる。 53細線材は、@電着物または囲繞物を加熱して熱膨張させ、または細線材を冷却して収縮させることにより、電着物または囲繞物と細線材の間に隙間を形成したり、A液中に浸してまたは液をかけることにより、細線材と電着物または囲繞物が接触している箇所を滑り易くしたり、B一方または両方から引っ張って断面積が小さくな5るように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、 掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。また、C熱または溶剤で溶かしても除去できる。 【0042】10細線材の除去に際して、このような方法を用いれば、例えば、直径が10μmから85μmまでの細線材を用いて、この細線材の外面に5μm以上50μm以下の肉厚を有するように形成した電着物または囲繞物からでも、細線材を除去することができる。従って、この細線材の除去方法を用いることにより、例えば、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できる。 15【0043】細線材に形成される端部側の電着物または囲繞物の量を多くして電鋳管を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いたり押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞物の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりすることができる。従って、この場合では、電着物または囲繞20物を固定した状態にして細線材が除去できるようになるので、細線材が除去し易い。 【0044】細線材を外方に引っ張って伸ばしたときの横ひずみの変形量が断面積の5%以上あるようにした電鋳管の製造方法によれば、細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲繞物か25ら支障なく除去できる可能性が高い。仮に横ひずみの変形量が断面積の5%未満しかなかった場合では、隙間が十分でないので、除去に際して支障が生じる場合があ54る。 【0045】外面に導電層が設けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内面に残るように細線材を除去する電鋳管の製造方法によれば、内面に金メッキ等を設けた電鋳管が製造5できる。このような電鋳管は、例えば、内面に設ける導電層の材質によって電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良好にできるので、この場合では電気を伝導するのに適した部品として使用できる。 なお、内面に電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある電鋳管や、 外面に、電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある細線材について10も、同様に電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良い電鋳管が形成できる。 【0047】細線材を除去して形成される中空部を複数個備えたものは、例えば、中空部が一つしか設けられていない管を複数並べて製造されていた部品と置き換えて使用するこ15とができる。この電鋳管によれば、個々の管を並べて設置する手間を無くすことができる。また、中空部の間の間隔も電着物または囲繞物で固定されているのでずれない。 【0049】両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が設けられて20いない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が導電層に直接かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い。 【0050】【発明の実施の形態】25本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。 図1は本発明に係る電鋳管を製造するための電鋳装置の一例を示す断面説明図であ55る。 まず、電鋳管を製造する電鋳装置について説明する。 【0051】電鋳装置100は、電鋳槽10と、この電鋳槽10を内側に収容する外槽11を備5えている。電鋳槽10及び外槽11は上部が開口しており、電鋳槽10内には運転時において常時電解液(電鋳液)20が供給されている。こうして電解液20が電鋳槽10の上部からあふれ出して、外槽11内に流れ込むようになっている。本実施の形態で電解液20としては、例えば、スルファミン酸ニッケル液に光沢剤やビット防止剤を加えたものを使用している。 10【0052】電鋳槽10からあふれ出て外槽11内に流れ込んだ電解液20は、濾過装置(図示省略)によって濾過され、再び電鋳槽10内に供給されている。つまり電解液20は、運転時において電鋳槽10と外槽11の間を絶えず循環している。なお、電鋳槽10に電解液20を供給する供給手段は、公知手段が使用できる(図示省略)。 15【0053】本実施の形態において電鋳槽10の上部からあふれ出している部分の電解液20は、 便宜的にオーバーフロー部12と称す。電鋳装置100では、このオーバーフロー部12において電鋳が行われる。電鋳手順については後述する。 【0054】20電鋳槽10の下部には、水平アジャスター装置13が設けられている。この水平アジャスター装置13は、電鋳槽10を略水平に維持し、これにより電鋳槽10の上部全域に略水平なオーバーフロー部12が形成され、オーバーフロー部12内の各所に電解液20が均一に分布するようにできる。 【0055】25符号4は、電鋳用の型部材(母材)となる細線材30を保持する保持治具を示している。保持治具4は、所要長さを有する水平部材40と、この水平部材40の両端56側に垂下させてある一対の垂設部材41、41を備えている。保持治具4は、垂設部材41、41が電鋳槽10の側方に位置するように設けられている。 【0056】垂設部材41、41には、所要の長さを有する棒状の線材固定部材42、43が、 5それぞれ略水平方向に延びて設けられている。線材固定部材42、43は、垂設部材41、41に回転可能に設けられている。一方の線材固定部材42の電鋳槽10側の端部には、電極44が設けられている。また、他方の線材固定部材43の電鋳槽10側の端部には、細線材30を引っ張るテンション装置45と、電極44が設けられている。線材固定部材42、43には、細線材30の一端と他端がそれぞれ10固定されて、テンション装置45によって緊張した状態で設けられる。 【0057】垂設部材41、41の間には、回転軸46が回転可能に架設されている。符号47は回転軸46を駆動させる駆動モータを示している。回転軸46は垂設部材41、 41を貫通しており、両端側には歯車480、481が固着されている。 15【0058】上記した線材固定部材42、43は、垂設部材41、41を貫通して設けてある。 垂設部材41を貫通した線材固定部材42には、歯車482が固着されている。同様に垂設部材41を貫通した線材固定部材43には、歯車483が固着されている。 こうして歯車480と歯車482、歯車481と歯車483とが噛み合わせてある。 20従って、駆動モータ47を作動させて、回転軸46と共に歯車480、481を回転させることにより、歯車482、483と線材固定部材42、43が回転し、ひいては細線材30が回転するようにできる。細線材30の回転速度は、特に限定するものではない。例えば、15r.p.m.以下に制御される。 【0059】25線材固定部材42、43の外側の端部には、それぞれ導電性を有する電極接触部材49、49が設けられている。電極接触部材49.49は、保持治具4が電鋳槽1570の上方に配置されたときに、電鋳槽10と外槽11との間に設けられた電極部14、14と接触する。電極部14、14は電源のマイナス極と接続されている。従って、電極接触部材49、49は、電極部14、14と接触した状態で、電源のマイナス極と電気的に接続された状態となる。 5【0060】符号15は電源のプラス極と電気的に接続された電極部を示している。電極部15は、電鋳槽10の底部に設けられている。電極部15は、例えば、チタン鋼からなるメッシュ状または穴あきのケース内に電鋳用の金属ペレット(例えば、ニッケルペレット)を収納して構成されたもの等が使用できる。 10【0061】電鋳装置100を使用した電鋳管の製造方法について説明する。 まず、線材固定部材42、43に細線材30の一端部と他端部をそれぞれ固定させて、線材固定部材42、43の間で細線材30を緊張した状態にする。このとき電解液20は電鋳槽10に供給されており、電鋳槽10の上部からあふれ出して(オ15ーバーフロー部12を形成して)、外槽11内に流れ込むようになっている。また、 オーバーフロー部12は、水平アジャスター装置13によって電鋳槽10を略水平にし、各所に電解液20が均一に分布するように調整されている。 【0062】本実施の形態で細線材30は、直径50μmの断面略円形状を有するステンレス製220で、外方に引っ張る略1500N/mmの引張力をかけたときに横ひずみの変形量が断面積の10%になるものを使用した。 【0063】次に、駆動モータ47を作動させて、回転軸46と共に歯車480、481を回転させる。これにより歯車482、483と線材固定部材42、43が回転し、細線25材30が回転する。 【0064】58電極接触部材49、49を電極部14、14と接触させて、垂設部材41、41を電鋳槽10の側方に位置させ、細線材30のみをオーバーフロー部12中に浸ける。 電極接触部材49、49が電極部14、14と接触することにより、電極部15が電源のプラス極と電気的に接続されているので、細線材30が電源のマイナス極と5電気的に接続された状態となって電鋳が始まる。こうして細線材30の周りに金属(本実施の形態で示す電解液20によればニッケル)が電着(析出)される。細線材30の周りに電着する金属は電着物(または囲繞物)である。 【0065】細線材30を所要時間オーバーフロー部12内に浸け、電着した金属の外径が全長10にわたり略70μmになるまで電鋳する。目標外径に到達したら、細線材30をオーバーフロー部12より取り出して電鋳を止める。金属の電着量(析出量)、つまり細線材に電着する金属の肉厚は、電流や電圧、電鋳時間等によって予め制御可能である。 【0066】15電鋳装置100では、各所にて電解液20が均一に分布するようにオーバーフロー部12が調整されており、しかも、細線材30は回転させているので、仮に電解液20内の電流密度に不均一な箇所が発生した場合であっても、細線材30における金属の電着状態(析出状態)にはばらつきが生じ難い。従って、細線材30の周囲には、全長にわたって略均等な肉厚を有するように金属が電着する。これにより電20鋳管は、細線材30を除去するだけで高精度のものが製造できる。 【0067】また、電鋳装置100は、オーバーフロー部12で電鋳しており、あふれ出た電解液20は再び電鋳槽10に戻って循環している。つまり、電鋳にあたってはオーバーフロー部12が形成できれば良く、このため少量の電解液20でも電鋳を行うこ25とが可能である。 【0068】59電鋳装置100では、細線材30を固定する線材固定部材42、43が、オーバーフロー部12の外側に配置されるので、線材固定部材42、43は電解液20に浸からない。従って、線材固定部材42、43等が電解液20と反応して不純物を発生させるようなことがない。また、電解液20が線材固定部材42、43等に付着5して持ち出されてしまうこともなく、電鋳槽10から電解液20が無駄に減ることもない。 【0069】そして、周りに金属が電着した細線材30を線材固定部材42、43から取り外し、 最後に形成された電着物(囲繞物)から細線材30を除去する。 10【0070】細線材30は、外面に電着物が密着しているので、単に、細線材30を掴んで引っ張ったり、吸引したり、物理的に押し遣ったり、気体または液体を噴出して押し遣ったりするだけでは除去が困難である。従って、細線材30は、以下に示す(1)〜(4)のいずれかの方法を用いて除去される。 15【0071】(1)電着物を加熱して熱膨張させ、または細線材30を冷却して収縮させて、電着物と細線材30の間に隙間を形成し、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、 物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 20【0072】(2)洗浄剤を溶解させた液体中に浸したり、この液体をかけたりして、細線材30と電着物とが接触している箇所を滑り易くする。そして、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 25【0073】(3)細線材30を一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形さ60せる。そして、電着物と細線材30の間に隙間を形成し、細線材30を掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去する。 【0074】5(4)細線材30を熱によって溶かしたり、またはアルカリ性溶液や酸性溶液等の溶剤によって溶かしたりして除去する。 【0075】こうして細線材30を除去することにより、残った電着物によって微細な内径(中空部)を有する電鋳管がつくられる。この電鋳管は、コンタクトプローブ用の管等10として使用可能である。 【0076】本実施の形態では、全長にわたって略均等な肉厚を有する電着物から細線材を除去するようにしたが、これは限定するものではない。例えば、図2に示すように、電着物50の一端側に外径の大きな径大部500を形成して、細線材30を引っ張る15か、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去することもできる。このように径大部500を形成することで、引き抜いたり押し遣ったりする際において、治具や工具が径大部500の端面に引っ掛けることができる。従って、この場合では、電着物を固定した状態にして細線材30が除去できるようになるので、細線材が除去し易くなる。なお、こ20のように一部分の電着量を多くする作業は、他の電鋳装置に移し替えられて行われることもある。 【0077】また、上記実施の形態にて細線材30は、直径50μmの断面略円形状を有するものを使用した。しかし、細線材の太さや断面形状はこれに限定するものではな25い。・・・【0078】61上記した細線材は、断面形状が略円形状を有するものでは、外径が10μm以上85μm以下であれば、また、外形状が断面多角形状を有するものでは、内接円の直径が10μm以上85μm以下であれば、微細な内径を有する電鋳管の製造において使用できることが、本発明者の実験によりわかっている。 5【0079】2また、本実施の形態で示す細線材30は、外方に引っ張る略1500N/mmの引張力をかけたときに横ひずみの変形量が断面積の10%になるものを使用した。 しかし、細線材の横ひずみの変形量は特に限定するものではない。本発明者が実験したところによれば、少なくとも断面積の5%以上の変形量があれば良いようであ10る。 【0080】本実施の形態では直径50μmの断面略円形状を有する細線材30の周りに、略10μmの肉厚で金属を電着させて、全体として略70μmの外径となるように形成したが、電着させる金属の肉厚は特に限定するものではない。本発明者が実験した15ところによれば、少なくとも略5μmの肉厚を有するように細線材30の周りに電着させることができれば、細線材30を除去した後でも電鋳管が形成できることがわかっている。 【0081】本実施の形態で細線材30はステンレス製のものを使用し、この細線材30の周り20に金属を直接電着させるようにした。しかし、電鋳装置100で使用可能な細線材は、導電性を有するようにしてあれば特に限定するものではなく、例えば、芯部を金属や合成樹脂等でつくり、その外面に導電層(メッキ(金属層(膜))やカーボン等)を設けたもの等を使用することもできる。このような細線材を使用することにより、例えば、図4に示すように、外周面に金メッキ321を設けた細線材32に25電着物52を形成した場合では、金メッキ321を電着物52の内周面に残して、 基線材320のみを除去することも可能である。この場合では、内周面に金メッキ62321が施された電鋳管が形成できる。 【0082】内周面に金メッキ321が施された電鋳管は、金メッキ321を設けないときよりも電気伝導率を良くすることができるので、例えば、コンタクトプローブ用の管等5の電気を伝導するのに適した部品として使用できる。 【0083】更に例えば、細線材は、上記したメッキ等による導電層の外周側に、更にこれとは材質の異なる他の導電層を設けたものを使用することもできる。・・・【0084】10このように外周部に導電層(例えば、金メッキ)が設けられた細線材を、断面積が小さくなるように変形させて析出した金属から除去する場合では、図6に示すように細線材34の両端側に導電層(例えば、金メッキ340)を設けない部分(マスキング部341、341)を形成し、この導電層を設けていない部分を引っ張るようにすることが好ましい。このようにすることで引張力が導電層に直接かかり難く15なり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物54との密着性も損なわれ難い。 【0085】図7は本発明に係る電鋳管を製造するための電鋳装置の他の例を示す断面説明図、 図8は図7で示す電鋳装置で使用する製造用治具を示す分解斜視説明図、 20図9は図8で示す製造用治具を使用して製造される電鋳管を示す拡大断面説明図である。 電鋳装置101は、細線材を縦方向(図7において垂直方向)に緊張した状態で設けるタイプのものである。 【0086】25電鋳装置101は、電鋳槽60を備えている。電鋳槽60は、内部に槽部61を有し、上方が開口した箱状に形成してある。電鋳槽60の上縁部には、外方に拡がる63蓋載置部62が全周にわたり設けてあり、蓋載置部62には蓋体64が電鋳槽60の開口部を塞ぐように被せられている。 【0087】槽部61の上方には掛止部63が設けてある。掛止部63には、電源のプラス極と5電気的に接続された陽極部66が取り付けてある。陽極部66には収容体660が取り付けられており、収容体660には多数のニッケル球が詰められている。符号65は、電源のマイナス極と電気的に接続された陰極部を示している。陰極部65には、後述する製造用治具8と接続するための陰極線650が下方に垂らして設けてある。 10【0088】本実施の形態では収容体660にニッケル球を詰めるようにしたが、収容体660に詰めるものはこれに限定するものではなく、析出させる金属の種類に応じて選択される。・・・【0089】15槽部61の内部には治具固定用枠体7が収容してある。治具固定用枠体7には製造用治具8が五段に積み重ねて設けてある。 【0090】電鋳槽60の槽部61には電解液21が充填してある。電解液21は、陽極部66及び治具固定用枠体7が完全に浸かるように入れてある。本実施の形態で電解液2201は、スルファミン酸ニッケルを主成分とするものを使用している。 【0091】図8を参照する。製造用治具8は複数本の細線材35が張設可能であり、複数の中空部を有する電鋳管を製造するためのものである。なお、本実施の形態で示す細線材35は、電鋳装置100で使用したものと同じものを使用したので、説明は省略25する。 【0092】64製造用治具8は所要長さを有する板状の治具本体80を備えている。治具本体80の略中央部には、貫通した開口部81が形成されている。図8において上下端側となる治具本体80の両端側(短辺側)には、細線材35を固定する固定部材82、 83が、幅方向に所要間隔をもって複数個(具体的には8箇所ずつ)設けられてい5る。本実施の形態で固定部材82、83はビス状のものを使用したが、これは特に限定するものではない。 【0093】また、固定部材82、83より更に内側の部分には、固定部材82、83が設けられた間隔よりも更に間隔を幅狭にして、それぞれ案内ピン84が複数個(具体的に10は8箇所ずつ)設けられている。 【0094】更に、案内ピン84より内側の部分となる開口部81の近傍には、細線材35の張設位置を決めるための位置決め部材85、85が設けられている。位置決め部材85、85は、治具本体80の幅と略同じ長さを有する帯状の板状体であり、略中央15部分には細線材35を嵌め入れるためのV字状の溝(図では外れ防止部材850(後述)で覆われており見えない)が形成されている。この溝は、位置決め部材85の全幅(図8において上下方向)にわたって、また長さ方向(図8において左右方向)に複数個(具体的には8箇所に)連設して形成されている。 【0095】20各位置決め部材85の上面側には、この位置決め部材85と略同じ幅を有するが、 長さの短い板状体で形成された外れ防止部材850を設けて、嵌めた細線材35が溝から外れないようにしてある。本実施の形態で位置決め部材85の溝は、隣り合う細線材35との間に10μmの隙間が設けられるように形成したが、これは限定するものではなく、細線材35の間隔は適宜設定可能である。 25【0096】製造用治具8には、複数本(具体的には8本)の細線材35が取り付けられる。各65細線材35は次のようにして取り付けられる。 まず、細線材35の他端(図8において下側)に引張バネ86を取り付ける。そして、細線材35の一端(図8において上側)を固定部材82で止める。固定部材82で止めた細線材35は、隣接する案内ピン84、84の間を通して、各位置決め5部材85に形成してある溝に嵌めて、位置決め部材85、85間に架け渡す。 【0097】溝に嵌めた細線材35の他端側は、上端側と同様に隣接する案内ピン84、84の間を通して、引張バネ86を固定部材83で止める。細線材35は、引張バネ86の引張力によって、細線材35の開口部81と対応した部分が緊張した状態となっ10て取り付けられる。 【0098】なお、製造用治具8において細線材35は、隣り合うものとの間に10μmの隙間を有して取り付けられているが、図8で上記間隔は理解を容易にするために誇張して表している。 15【0099】符号87は隔壁部材88を取り付けるための保持部材を示している。保持部材87は、開口部81の開口形状と略同じ大きさを有する長方形状の板状体で形成してある。 【0100】20隔壁部材88は、保持部材87の図8における上下方向の長さと略同じ長さを有しており、厚みの薄い帯状形状を有している。詳しくは隔壁部材88は、略8μmの厚みを有する絶縁基部材880を備え、絶縁基部材880の表裏面に略2〜3μmの厚みを有するメッキ等による導電層(膜)881が設けられた構造を有している。 導電層881を形成する材質は、導電性を有していれば良く、特に限定するもので25はない。しかし、電鋳による電着物と密着性(接着性)が良好な性質を有するものが好ましい。 66【0101】隔壁部材88は、導電層881が対向するように所要間隔を設けて複数個(具体的には7個)並べて、保持部材87の表面の略中央部に、図8の上下方向の全長に延びて着脱可能に取り付けてある。本実施の形態で隔壁部材88は、上記した細線材535が略10μmの隙間を形成して治具本体80に取り付けられるようにしたので、 これと対応するように同じく略10μmの間隔で取り付けてある。 【0102】隔壁部材88が設けられた保持部材87は、開口部81を縦断して張設してある細線材35間に、隔壁部材88を側方(矢印方向)から差し込んで入れ、細線材3510の張力によって隔壁部材88が狭持されることで治具本体80に取り付けられる。 つまり、細線材35と隔壁部材88(詳しくは導電層881)は接触している。 【0103】製造用治具8は、保持部材87を上記したようにして治具本体80に取り付け、電気が細線材35に流れるように陰極線650を接続(図8では図示省略)した後に、 15槽部61の治具固定用枠体7内に収容して、電解液21中に浸けて電鋳する。なお、 具体的な説明は省略するが、製造用治具8のうち開口部81以外の箇所には、電解液21が浸からないようにマスキング処理が施される。 【0104】電鋳装置101によれば、通電することにより細線材35の周りと導電層881の20表面に電着物が形成される。そして、電着物55により細線材35と隔壁部材88が、所要の程度囲繞されたところで電鋳を止める。電着物55の電着量(析出量)は、電流や電圧、電鋳時間等によって予め制御可能である。 【0105】電鋳を止めた製造用治具8は電解液21から取り出され、再び、治具本体80と保25持部材87に分解される。このとき隔壁部材88は、析出した電着物55によって細線材35の間にて固定されているので、保持部材87から分離される。その後、 67電着物55により一体にされた細線材35と隔壁部材88を治具本体80より取り外す。 【0106】そして、電着物55と隔壁部材88に機械加工を施して形状を整えて(図9参照)、 5電着物55から細線材35を除去する。なお、細線材35の除去は、上記電鋳装置100で製造されたものと同様の方法で行うので、説明は省略する。 こうして中空部が複数個(具体的には8個)ある電鋳管がつくられる。 【0107】この電鋳管は、細線材35を除去して形成された中空部の間に、仕切るように隔壁10部材88が介在させてあるので、各中空部の周りを形成する部分ごとに独立して電気伝導が可能である。 【0108】なお、電鋳装置101でも、芯部を金属や合成樹脂等でつくり、その外面に導電層(メッキ(金属層(膜))やカーボン等)が設けられた細線材を使用することがで15きる。・・・【0109】本実施の形態では細線材35の間に隔壁部材88を設けて電鋳したが、これは限定するものではなく、例えば、隔壁部材を設けず、細線材のみの状態で電鋳することも可能である。 20【0110】電鋳管は、上記実施の形態で示す電鋳装置100,101以外の他の形態の電鋳装置を使用して製造することもできる。・・・【0111】本実施の形態で示す具体的な寸法(大きさ、長さ)を表す数値は、理解を容易に25するために記載したものであって、特に寸法を限定する意図はない。・・・【0112】68本実施の形態では、細線材の外面に電鋳による金属を電着させて細線材を覆うようにしたものを示したが、これは限定するものではなく、例えば、細線材の近傍に通電可能な導体(金属等)を設けて、この導体に電鋳による金属を電着させることで、 細線材も電着する金属によって覆われるようにして電鋳管をつくることもできる。 5【0113】上記実施の形態において電解液は、スルファミン酸ニッケルを主成分とするものを使用したが、電解液はこれに限定するものではなく、析出させる金属の種類に応じて選択される。電着(析出)する金属としては、例えばニッケル又はその合金、 鉄又はその合金、銅又はその合金、コバルト又はその合金、タングステン合金、微10粒子分散金属等の金属をあげることができる。・・・【0114】また、電鋳槽内には電解液を攪拌するための攪拌手段を設けることもできる。・・・【0116】【発明の効果】15本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明によれば、電鋳によって形成された電着物または囲繞物から細線材が除去できる。細線材は、@電着物または囲繞物を加熱して熱膨張させ、または細線材を冷却して収縮させることにより、電着物または囲繞物と細線材の間に隙間を形成したり、A液中に浸してまたは液をかけることにより、細線材と電着物または囲20繞物が接触している箇所を滑り易くしたり、B一方または両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させて、細線材と電着物または囲繞物の間に隙間を形成したりして、掴んで引っ張るか、吸引するか、物理的に押し遣るか、気体または液体を噴出して押し遣るかのいずれかの方法を用いて除去される。また、C熱または溶剤で溶かしても除去できる。 25細線材の除去に際して、このような方法を用いれば、例えば、直径が10μmから85μmまでの細線材を用いて、この細線材の外面に5μm以上50μm以下の肉69厚を有するように形成した電着物または囲繞物からでも、細線材を除去することができる。従って、この細線材の除去方法を用いることにより、例えば、コンタクトプローブ用の管等として使用可能な微細な内径を有する電鋳管が製造できる。 【0117】5(b)細線材に形成される端部側の電着物または囲繞物の量を多くして電鋳管を製造する方法によれば、例えば、細線材を電着物または囲繞物から引き抜いたり押し遣ったりして除去する際に、治具や工具等を電着物または囲繞物の量を多くした部分の端面等に引っ掛けたりすることができる。従って、この場合では、電着物または囲繞物を固定した状態にして細線材が除去できるようになるので、細線材が除去10し易い。 【0118】(c)細線材を外方に引っ張って伸ばしたときの横ひずみの変形量が断面積の5%以上あるようにした電鋳管の製造方法によれば、細線材と電着物または囲繞物の間に、細線材を除去するのに十分な隙間が形成できるので、細線材が電着物または囲15繞物から支障なく除去できる可能性が高い。仮に横ひずみの変形量が断面積の5%未満しかなかった場合では、隙間が十分でないので、除去に際して支障が生じる場合がある。 【0119】(d)外面に導電層が設けられた細線材を用い、導電層が電鋳管の内面に残るよう20に細線材を除去する電鋳管の製造方法によれば、内面に金メッキ等を設けた電鋳管が製造できる。このような電鋳管は、例えば、内面に設ける導電層の材質によって電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良好にできるので、この場合では電気を伝導するのに適した部品として使用できる。 なお、内面に電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある電鋳管や、 25外面に、電着物または囲繞物とは異なる材質の導電層が設けてある細線材についても、同様に電気伝導率が電着物または囲繞物だけのときより良い電鋳管が形成でき70る。 【0121】(f)細線材を除去して形成される中空部を複数個備えたものは、例えば、中空部が一つしか設けられていない管を複数並べて製造されていた部品と置き換えて使用5することができる。この電鋳管によれば、個々の管を並べて設置する手間を無くすことができる。また、中空部の間の間隔も電着物または囲繞物で固定されているのでずれない。 【0122】(g)中空部の間に、絶縁体の外面に導電層を設けて形成してある隔壁体を介在さ10せて、各中空部の周りを形成する部分ごとに独立して電気伝導ができるようにしてあるものは、各中空部ごとに独立して電気伝導が可能である。 【0123】(h)両端側に導電層が設けられていない部分がある細線材は、この導電層が設けられていない部分を外方に引っ張るようにすることにより、引張力が導電層に直接15かかり難くなり、導電層と基線材とが分離し易く、また、導電層と電着物または囲繞物との密着性も損なわれ難い。 【図面の簡単な説明】【図1】本発明に係る電鋳管を製造するための電鋳装置の一例を示す断面説明図。 【図2】電着物の一端側に径大部を形成した状態を示す説明図。 20【図4】外周面に導電層を設けた細線材の周りに電着物を形成した状態を示す断面説明図。 【図6】両端側に導電層を設けない部分を形成した細線材の周りに電着物を形成した状態を示す説明図。 【図7】本発明に係る電鋳管を製造するための電鋳装置の他の例を示す断面説明図。 25【図8】図7で示す電鋳装置で使用する製造用治具を示す分解斜視説明図。 【図9】図8で示す製造用治具を使用して製造される電鋳管を示す拡大断面説明図。 71【図1】72【図7】73【図8】74(別紙2)甲1文献の記載事項(抜粋)【特許請求の範囲】5【請求項1】芯線母型に電鋳を施すに際し、抵抗率が5×10Ωcm以下の芯線を使用することを特徴とするフェルール形成用微細円柱の製造方法。 【請求項2】芯線に、先ず抵抗率5×10Ωcm以下の第一金属の薄層をメッキし、次いで第二金属を所定径まで電鋳することを特徴とするフェルール形成用微細円柱の製法。 10【請求項3】芯線が、外径0.126mmのステンレス線である請求項2のフェルール形成用微細円柱の製法。 【請求項4】第一金属が、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらの金属を主体とする合金のいずれかからなり、第二金属がニッケル又はニッケルを主体とする合金からなる請求項1から請求項3のいずれか1項のフェルール形成用微細円柱の製法。 15【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバーのコネクタに使用する金属製フェルールを効率よく製造する方法に関する。特に、本発明は、フェルールの中間体であるフェルール形成用微細円柱を効率よく製造する方法に関するものである。 20【0002】【従来の技術】微細孔パイプは、産業上有用なものである。特に、通信分野で使用されるフェルールは図1に示したように、径が0.126mm程度の細孔を有し、外径が2.5mmで、長さが12mm程度の微細孔パイプである。 【0003】フェルールは、石英系光ファイバー接続用コネクタの構成部品の一部25として使用される。光ファイバーは細くて折れやすいので、その接続のためには光ファイバーをコネクタに確実に固定する必要がある。このための光コネクタ用部品75が、フェルールである。即ち、光コネクターは、0.125mm程度の太さの光ファイバーを円筒形の管に通して固定することにより、光ファイバーの中心にあるコア同士の位置を正確に合わせて接続を図るものである。 【0004】現在使用されているフェルールは、ジルコニア又はプラスチック製で5あり、ジルコニア製が主流を占めている。ジルコニア製のフェルールを製造するには、高価な射出成型機、押出成型機、金型を必要とし、また、成型機、金型の寿命が短い、ジルコニア・樹脂の成型物を500〜1200℃という高温で処理するためエネルギーコストが高い、中心部孔の寸法精度をだすために線状のダイヤモンド研磨体で該孔を研磨しなければならない、研磨は作業者の高度の熟練した手作業に10よるため生産性が低い、等の問題が指摘されている。外径の精度を上げるためには、 表面の研磨加工を行う。更に、内径と外径の同軸度の精度を上げるために、ワイヤセンタレス機による加工を行う。こうした、諸加工を行っても、内径、外径及び同軸度にバラツキが生じ、一個一個検査し、寸法による区分分けを行っているのが実状である。 15【0005】本発明は、このような高価なジルコニア製フェルールに代えて電鋳により金属フェルールを効率よく製造する方法に関する。電鋳により細孔パイプを製造することは既に知られている。例えば、特開平11-193485号公報には、 芯材の表面に金属皮膜を形成し、形成された金属皮膜を残して芯材を除去する細孔を有するチューブの製造方法が記載されている。また、特開昭56-90995号20公報、特開平4-311589号公報には、薬品にて溶解できる芯線の外周面に金属を電鋳メッキし、所定の寸法に切断後、芯線を薬品で溶解除去して細径パイプを製造する方法が記載されている。 【0006】光ファイバーコネクタ用の金属フェルールを製造するに際して、基本的にはこの方法を使用することができるが、問題は、フェルールの内径は0.12625mm程度のものと極めて細いので、フェルール形成用微細円柱の中の芯線をエッチング液で溶出するのは極めて困難である。また、芯線を引き抜く際にも、芯線が断76線し易いという問題があった。 【0007】本発明者等は、芯線として0.126mm径のステンレス線を使用しこの外表面にニッケル等を電鋳することにより外径2.5mmのフェルール形成用微細円柱を作り、これを例えば12mmの長さに切断した後、これから芯線を引き抜5いてフェルールを製造する方法を考案した。この製法の生産効率を高める為には、 芯線をできるかぎり長くし、例えば30〜40cmにして、この外表面に均一な外径となるように電鋳して長さ30〜40cmのフェルール形成用微細円柱を形成し、 これを所定の長さに切断することで効率的な製造が可能になる。 【0008】10【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芯線が長ければ長いほど、その外表面に電鋳により形成されたフェルール形成用微細円柱の外径は、図3(b)に示したように電源に近い側の径は大きくなり、電源から遠い側の径は小さくなるり、外径が不均一な電鋳体が得られる傾向がある。これば、電源に近い部分は電流密度は大きいが、電源から遠ざかる芯線部分ほど芯線の電気抵抗が大きくなり電流密度が15小さくなり、芯線表面への電着量が少なくなるからである。この結果、電流密度の大きい電源に近い部分ほど径が大きく、電源から遠い部分ほど径は小さくなる。 【0009】本発明は、特に、長尺で、内径が0.126mm程度と小さいフェルール用の微細孔パイプを電鋳で製造するに際して、外径が均一で小さい内径を有し、 かつ、同軸性の高いフェルールを形成するための微細円柱を効率よく製造する方法20を提供しようとするものである。 【0014】細径を有するパイプを電鋳による製造するには、例えば、特開平10-335135号公報によれば、まず、クロム芯材に軟磁性薄膜を電気メッキにより形成する。これをワイヤーソーで所定の長さに切断し、クロームエッチング液に浸漬してクローム芯材をエッチングして中空の円筒体を得ている。 25【0015】この方法では、生産性を高めるためには、できるだけ長い芯線に電鋳を施し、しかる後に、所定の長さに切断する方法が推奨される。 77【0016】既に述べたように、例えば、ステンレス製直径0.125mmの断面が円形の線を芯線として使用して電鋳を行うと(図2参照)図3(b)に示したように、 一端から他端に向かって、外径が次第に小さくなる外径が不均一な電鋳体が得られる。本発明者等は、この径の不均一化の問題を解決すべく種々研究の結果、芯線の5抵抗率が径の不均一化に大きく影響することを見出し、抵抗率が一定の値よりも小さい値をもつ金属を芯線として使用することにより、長尺の芯線を使用しても均一な外径を有するフェルール形成用微細円柱の製造が可能になったのである。 【0017】芯線表面の抵抗率をゼロにすることが望ましく、例えば、抵抗率5×10Ωcm以下のものを選択するのが好ましい。抵抗率が、この値よりも大きい10と、長尺の芯線を使用して電鋳を施した場合、外径の均一な電鋳品は得られ難い。 抵抗率が5×10Ωcm以下の物質としては、金、銀、銅、アルミニウム及びこれらを主体とする合金があげられる。また、リン青銅は抵抗率も低く、張力も大きいので、好適に使用できる。 【0018】抵抗率は、5×10Ωcm以下のものが好ましい。芯線自身、抵抗15率が5×10Ωcm以下のものを使用してもよいし、抵抗率の大きい金属、例えば、ステンレス線に10μm程度の薄い層に抵抗率の小さい金属をメッキしたものでもよい。これらの芯線を使用して電鋳を行うことにより、芯線の長さ方向に沿った電着量は均一となり、外径の均一なフェルール形成用微細円柱を得ることができる。抵抗率の低い第一金属をメッキする層の厚みは、良好な電気伝導度を確保する20厚みであればよく、数μm〜十数μmが好適に適用される。 【0019】【発明の実施の形態】次に、本発明を実施形態に基づいて説明する。電鋳装置は、 図2に示したようなものである。電鋳装置10は、陽極と陰極を含む。陽極15は、 電着すべき金属であって、金属板、金属球等を使用することができる。金属球を使25用する場合は、金属球を導電性を有する袋等に入れた状態で使用することができる。 陽極は電源11、例えば、電池の陽極に接続される。陰極は、電鋳を施す芯線1678であり、例えば、電池の陰極に接続される。芯線16は、支持枠14に支持されている。芯線16は支持枠14に支持された状態で、電鋳液18に浸漬され、モータ12で回転されながら、電鋳が施される。 【0020】母型に使用する線の基質としてステンレスを選択し、その表面に厚さ510μm程度の銀、金、銅メッキを施したものを芯線に使用することができる。また、基質が金、銀、アルミニウム、銅又はそれらを主体とする合金を使用することもできる。芯線の表面は平滑な表面であることが好ましいが、微小な凹凸があることが多い。表面に抵抗率の低い金属をメッキすることにより、芯線の外表面が平滑になるというメリットもある。また、ステンレス線やリン青銅線は張力が高いので、 10フェルール形成用微細円柱から芯線を引き抜くのに好都合である。 【0021】電鋳液18は、目的とする電鋳金属の種類によって、決まるものである。電鋳金属としては、ニッケル、鉄、銅、コバルト、タングステン又はこれらの合金などの電鋳金属を使用することができる。これらの金属に対応して、それぞれ、 電鋳液として、スルフアミン酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、スルフア15ミン酸第一鉄、ホウフッ化第一鉄、ピロリン酸銅、硫酸銅、ホウフッ化銅、ケイフッ化銅、チタンフッ化銅、アルカノールスルフォン酸銅、硫酸コバルト、タングステン酸ナトリウムなどの水溶液を主成分とする液を使用することができる。 【0022】これらのうち、特に、スルフアミン酸ニッケルを主成分とする電鋳液が、電鋳作業の容易性、製品の硬度などの物性、化学的安定性、溶接の容易性など220の面から好適に使用できる。直流電流7〜10A/dm程度の電流密度で、1日間程通電を行うことにより、直径3mm程度に成長した電鋳品を得る。この電鋳品から母型に使用した線を引き抜き、押し出すなどして、芯線16を除去する。 【0023】【実施例】以下本発明を、実施例に基づいて説明する。断面が円形で径が0.12625mmで長さが355mmのステンレス製の線に金(抵抗率2.05×10Ωcm)を10μmメッキした、直径0.136mmの芯線を得た。この芯線を図2示す79様に電鋳用治具にセットした。一方、スルフアミン酸ニッケルを主成分とする電鋳浴に、ニッケルの金属板をセットし、電鋳浴に浸漬した。芯線を陰極、ニッケル板2を陽極にして、10A/dm程度の電流密度で電鋳を18時間実施した。電鋳により、平均約2.5mmの直径のニッケル電鋳品を得た。電鋳品は、長さ方向に沿っ5て外径は2.5mm±0.05mmの範囲内にあり、均一な電鋳品が得られた。また、 真円度、同軸性も良好なものであった。 【0024】この電鋳品を、NC自動加工機で、長さ12mmに切断し、一方の端を中ぐり加工をした。該加工品を縦にして、中ぐり加工していない面を上にして、 芯線打ち抜き機にて上から芯線を突起を有するハンマーで叩き、加工品の下からか10ら頭を出した芯線の一部を引き抜くことによって、芯線を除去した。端面を研磨してフェルールとした。 【0026】【発明の効果】芯線表面の抵抗率が5×10Ωcm以下の物質で被覆するか、芯線として抵抗率5×10Ωcm以下の物質からなるものを使用することにより、 15外径が均一で、真円度、同軸度が高い、そして長尺のフェルールを形成するための微細円柱を製造することができる。電鋳によるフェルールの製造は、高価な成型機、 金型を必要とせず、設備としては安価な電鋳設備があればよい。また、高温で焼成する工程がないため、エネルギーコストが低い。更に、電鋳は寸法転写精度が極めて良いため、製品の寸法は、寸法の測定により区分分けする必要はないほど精度の20良いものである。 【図面の簡単な説明】【図1】フェルールを示す図である【図3】電鋳されたもの例を示す図である【符号の説明】251フェルール2細孔3光ファイバー導入孔80【図1】【図3】81 |