審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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令和4ネ10002特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
令和2行ケ10144 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和3行ケ10021 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和2行ケ10079 審決取消請求事件 令和2行ケ10083 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
令和4ネ10003特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
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事件 |
令和
4年
(ネ)
1273号
損害賠償請求控訴事件
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令和4年9月30日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 令和4年(ネ)第1273号 損害賠償請求控訴事件(原審 神戸地方裁判所平成31 年(ワ)第488号) 口頭弁論終結日 令和4年7月8日 5判決 控訴人(一審原告) 医療法人再生未来 同訴訟代理人弁護士 小松陽一郎 同 中原明子 同 原悠介 10 同千葉あすか 被控訴人(一審被告) 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 同訴訟代理人弁護士 高島浩 同 高橋弘毅 15 同平田尚久 同 井口奈緒子 |
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裁判所 | 大阪高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/09/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原判決を取り消す。 2 本件を大阪地方裁判所に移送する。 20 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、116万7012円並びにうち113万3325円に対する令和3年2月10日から、うち3万3687円に対する令和3年25 4月29日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 - 1 -第2 事案の概要以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。 1 本件は、免役細胞(マクロファージ)を活性化させるGcMAF(ジーシーマフ。Gc Protein-derived macrophage activating factor)と呼ばれる物質を5 合成し大量生産する方法を開発するため、被控訴人に研究を委託する契約(本件契約)を締結した控訴人が、被控訴人の理事である研究者(以下「本件研究者」という。)により発明された活性型GcMAFを合成する新たな方法(本件発明)が、本件契約に基づく研究(本件受託研究)により得られた成果物であることを前提として、本件研究者個人が本件発明を単独で特許出願したことが、被控10 訴人による本件契約上の協議義務の違反等に当たる旨主張して、被控訴人に対し、債務不履行に基づく損害賠償として、本件発明に係る特許無効審判請求に要した費用等の合計116万7012円及びうち113万3325円に対する催告の日の翌日である令和3年2月10日から、うち3万3687円に対する催告の日の翌日である同年4月29日から各支払済みまでそれぞれ年3%の割15 合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人に控訴人主張に係る本件契約上の協議義務違反等の債務不履行があるとは認められないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。なお、上記出願後、本件発明に係る特許を受ける権利は被控訴人に承継されて特許出願人の名義は被控訴人に変更され、原審20 審理中に本件発明に係る特許権が被控訴人を特許権者として設定登録された。 2 争いのない事実等は、原判決「事実及び理由」中の第2の2(原判決2頁12行目から5頁末行まで)のとおりであり、争点は、同3(原判決6頁2行目から同頁5行目まで)のとおりであり、当事者の主張は、同4(原判決6頁7行目から14頁13行目まで)のとおりであるから、これらを引用する。 25 第3 当裁判所の判断1 本件の訴状(以下「本件訴状」という。)に記載された「請求の原因」は、 - 2 -別紙のとおりであり、原審における審理経過及び判断内容は、概要以下のとおりである。 (1) 原審は、本件訴訟における争点を、@本件契約(14条)の内容と被控訴人の負う協議義務、A控訴人には被控訴人との共同研究に参加しなかったと5 いう債務不履行があるため、本件契約14条に基づく権利行使が信義則に反するか、B控訴人に生じた損害の有無、損害額と整理した。 (2) 被控訴人は、争点@において、本件発明が本件契約に基づく本件受託研究の成果に含まれない旨主張した。すなわち、本件受託研究は、被控訴人がGcMAFを大量合成する手法を網羅的に探索する業務を請け負ったのではな10 く、控訴人関連会社の役員が保有する知見をも参考に、2ステップ(@ヒトの血液を用いず、培養細胞を用いて不活性型Gc−Proteinを合成、 Aこれを構成する二つの糖鎖(Gal(ガラクトース)及びSA(シアル酸))を、酵素の作用により切断)を経る方法によって活性型GcMAFを生成する方法を研究するというものであるのに対し、本件発明は、被控訴人15 の本件研究者が控訴人関連会社の役員が保有する知見を使用せずに独自に研究を続行した結果、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来細胞)を特殊な培養条件下で合成し、酵素処理を要することなく1ステップで活性型GcMAFを生成することを可能としたものであるから、本件発明は本件受託研究の成果に含まれず、本件契約14条に基づく権利義務関係が問題とさ20 れる余地はない旨主張した。 (3) 原審は、争点@について、本件契約14条2項については、「被控訴人は、 前項の知的財産権を被控訴人が承継した場合には、控訴人に対して相当の対価と引換えにその全部を譲渡するものとする。」との内容が合意されたものと認定した上で、同条1項に基づく被控訴人の協議義務の内容は、上記認定25 を前提として控訴人と協議を尽くす必要があったとし、被控訴人が同協議義務を尽くしたか否かを判断する前提として、本件受託研究が、2ステップ- 3 -(@ヒトの血液を用いず、培養細胞を用いて不活性型Gc−Proteinを合成、Aこれを構成する二つの糖鎖(Gal(ガラクトース)及びSA(シアル酸))を、酵素の作用により切断)を経る方法によって活性型GcMAFを生成する方法を研究するというものか、又は、本件発明のように、 5 特定の細胞を特殊な培養条件下で合成し、酵素処理を要することなく1ステップで活性型GcMAFを生成する方法に関する研究をも含むものかといった点について、本件受託研究の範囲が2ステップで酵素処理を行うGcMAFの合成方法の点に限られるとはいえないから、1ステップで活性型GcMAFが合成する方法に係る本件発明が本件受託研究の成果でないということ10 はできないとする一方、本件発明について控訴人と被控訴人との間で十分協議がされていると認められるから、被控訴人に、本件契約14条1項及び2項の協議義務違反があったとは認められないとして、控訴人の請求を棄却した。 2 ところで、民訴法6条1項は、「特許権」「に関する訴え」については、東15 京地方裁判所又は大阪地方裁判所の管轄に専属する旨規定し、同条3項本文は、 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所が第1審として審理した「特許権」「に関する訴え」についての終局判決についての控訴は東京高等裁判所の管轄に専属する旨規定し、さらに知的財産高等裁判所設置法2条が、上記訴えは、同法に基づき東京高等裁判所に特別の支部として設置された知的財産高等裁判所が取20 り扱う旨規定している。上記各規定の趣旨は、「特許権」「に関する訴え」の審理には、知的財産関係訴訟の中でも特に高度の専門技術的事項についての理解が不可欠であり、その審理において特殊なノウハウが必要となることから、 その審理の充実及び迅速化のためには、第1審については、技術の専門家である調査官を配置し、知的財産権専門部を設けて専門的処理態勢を整備している25 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所の管轄に専属させることが適当であり、控訴審については、同じく技術の専門家である調査官を配置して専門的処理態勢- 4 -を整備して特別の支部として設置した知的財産高等裁判所の管轄に専属させることが適当と解されたことにあると考えられる。 そして、このような趣旨に加え、民訴法6条1項が「特許権」「に基づく訴え」とせず「特許権」「に関する訴え」として、広い解釈を許容する規定ぶり5 にしていることも考慮すると、「特許権」「に関する訴え」には、特許権そのものでなくとも特許権の専用実施権や通常実施権さらには特許を受ける権利に関する訴えも含んで解されるべきであり、また、その訴えには、前記権利が訴訟物の内容をなす場合はもちろん、そうでなくとも、訴訟物又は請求原因に関係し、その審理において専門技術的な事項の理解が必要となることが類型的抽10 象的に想定される場合も含まれるものと解すべきである。 なお、専属管轄の有無が訴え提起時を標準として画一的に決せられるべきこと(民訴法15条)からすると、「特許権」「に関する訴え」該当性の判断は、 訴状の記載に基づく類型的抽象的な判断によってせざるを得ず、その場合には、 実際には専門技術的事項が審理対象とならない訴訟までが「特許権」「に関す15 る訴え」に含まれる可能性が生じるが、民訴法20条の2第1項は、「特許権」「に関する訴え」の中には、その審理に専門技術性を要しないものがあることを考慮して、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所において、当該訴訟が同法6条1項の規定によりその管轄に専属する場合においても、当該訴訟において審理すべき専門技術的事項を欠くことその他の事情により著しい損害又は遅滞を20 避けるため必要があると認めるときは、管轄の一般原則により管轄が認められる他の地方裁判所に移送をすることができる旨規定しているのであるから、この点からも、上記「特許権」「に関する訴え」についての解釈を採用するのが相当である。 3 そこで、以上に基づき本件についてみると、本件訴状の記載によれば、本件25 が、本件契約の債務不履行に基づく損害賠償の訴えとして提起されたものであることは明らかであるが、訴状によって控訴人が主張する債務不履行に基づく- 5 -損害賠償請求は、本件発明が、本件契約に基づく研究(本件受託研究)により得られた成果物であるのに、被控訴人がこれを本件研究者個人の発明であり控訴人と共同出願することは出来ないとして、本件研究者単独で特許出願した行為が、本件契約14条1項に規定する「被控訴人は、本件研究の実施に伴い発5 明等が生じたとき・・・は、控訴人に通知の上、当該発明等に係る知的財産権の取扱いについて控訴人及び被控訴人が協議し決定するものとする。」との協議義務に違反し、また、控訴人が権利の承継について希望していたにもかかわらず、被控訴人が控訴人と協議を行うことなく本件研究者による特許出願を強行した行為が、本件契約14条2項に規定する「被控訴人は、前項の知的財産10 権を控訴人が承継を希望した場合には、控訴人に対して相当の対価と引き換えにその全部を譲渡するものとする。」との義務にも違反し、その結果、控訴人が本件発明に係る特許権を取得できなくなったことで余儀なくされた出捐をもって損害と主張するものである。 ところで、前者の本件契約14条1項の規定は「知的財産権」について規定15 しているが、本件では、未だ特許がされていない特許出願された段階の本件発明の取り扱いについて争われているから、本件発明に係る「特許を受ける権利」が同項にいう「知的財産権」に含まれることを前提に同項違反が主張されているものと解されるし、また、後者の本件契約14条2項の規定関係についても、 ここで控訴人が主張している権利は、上記同様、本件発明に係る特許を受ける20 権利と解されるから、ここでも同権利が同項にいう「知的財産権」に含まれることを前提に同項違反が主張されているものと解されるのであって、いずれも、 特許を受ける権利が本件の請求原因に関係しているといえる。 そして、控訴人は、本件発明に係る特許権を取得できなくなったことで余儀なくされた出捐をもって、上記各条項違反を理由とする債務不履行により生じ25 た損害と主張し、その賠償を被控訴人に求めているのであるが、本件訴状の記載によれば、被控訴人は、本件発明に係る特許を受ける権利が本件受託研究に- 6 -より得られた成果物でないことを理由として、本件研究者のした特許出願が本件契約14条1項、2項の債務に違反しないと争っていることが認められるから、本件訴状からうかがえる債務不履行に基づく損害賠償請求の成否は、本件発明が本件受託研究により得られた成果物であるか否かが争点として判断され5 るべきことが見込まれ、その判断のためには、本件発明が本件受託研究の成果物に含まれるかという専門技術的事項に及ぶ判断をすることが避けられないものと考えられる。 したがって、本件は、債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟として訴訟提起された事件であるが、その訴状の記載からは、その争点が、特許を受ける権利10 に関する契約条項違反ということで特許を受ける権利が請求原因に関係しているといえるし、その判断のためには専門技術的な事項の理解が必要となることが類型的抽象的に想定されることから、本件は「特許権」「に関する訴え」に含まれると解するのが相当である(なお、前記1(3)のとおり、原審は、控訴人主張に係る債務不履行の成否を判断する前提問題として、本件発明が、被控訴15 人が本件契約に基づき協議義務を負うべき本件受託研究の成果物に含まれるか否かの争点に関して、本件受託研究が、2ステップ(@ヒトの血液を用いず、 培養細胞を用いて不活性型Gc−Proteinを合成、Aこれを構成する二つの糖鎖(Gal(ガラクトース)及びSA(シアル酸))を、酵素の作用により切断)を経る方法によって活性型GcMAFを生成する方法を研究すると20 いうものか、又は、本件発明のように、特定の細胞を特殊な培養条件下で合成し、酵素処理を要することなく1ステップで活性型GcMAFを生成する方法に関する研究をも含むものか、といった専門技術的事項にわたると考えられる事項ついて審理判断をしている。)。 4 そうすると、大阪府内に主たる事務所を有する控訴人と神戸市内に主たる事25 務所を有する被控訴人との間における、控訴人の被控訴人に対する債務不履行の損害賠償請求である本件は、管轄の一般原則によれば債務の義務履行地であ- 7 -る控訴人の主たる事務所の所在地を管轄する大阪地方裁判所又は被控訴人の主たる事務所の所在地を管轄する神戸地方裁判所が管轄権を有すべき場合であるから、本件訴訟は、民訴法6条1項2号により大阪地方裁判所の管轄に専属するというべきであって、神戸地方裁判所において言い渡された原判決は管轄違5 いの判決であって、取消しを免れない。 第4 結論よって、民訴法309条により、原判決を取り消し、本件を管轄裁判所である大阪地方裁判所に移送することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部10裁判長裁判官15 森 崎 英 二裁判官20植 田 智 彦25 裁判官- 8 -渡 部 佳 寿 子- 9 - 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事実及び理由 | |
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全容
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