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関連審決 不服2020-7563
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事件 令和 3年 (行ケ) 10116号 審決取消請求事件

原告グリー株式会社
同訴訟代理人弁護士 大野聖二 小林英了
同訴訟代理人弁理士 松野知紘
被告 特許庁長官
同 指定代理人藤本義仁 藤田年彦 佐々木創太郎 青木良憲 山田啓之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/06/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2020-7563号事件について令和3年8月3日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は、特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、進歩性欠如及びそれを理由とする独立特許要件違反(特許法17条の2第6項126条7項)の各判断の誤りの有無並びに手続違背の有無である。
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は、発明の名称を「ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置」とする発明について、平成29年2月22日に特許出願(特願2017-31023号。以下「本願」といい、本願の際に添付された明細書と図面を併せて「本願明細書」という。本願は、平成25年9月27日(以下「分割原出願日」という。)にされた特許出願(特願2013-201791号)の一部を新たな特許分割出願として平成26年4月18日にされた特許出願(特願2014-86284号)の一部を新たな特許分割出願として平成27年1月22日にされた特許出願(特願2015-10739号)の一部を新たな特許分割出願として平成27年9月30日にされた特許出願(特願2015-192696号)の一部を新たな特許分割出願としたものである。 をし、
) 平成30年4月26日付け及び同年12月7日付けでそれぞれ手続補正をした上、令和元年10月9日付けで手続補正をした(いずれも特許請求の範囲のみを補正対象とするものであった。 が、
) 同日付け補正については令和2年2月26日付けで補正の却下の決定を受けるとともに、同日付けで拒絶査定を受けた。(甲3、5、8、11、13、14、弁論の全趣旨) そこで、原告は、同年6月3日、同拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2020-7563号。以下「本件審判請求」といい、本件審判請求に係る審判手続を「本件審判手続」という。)をし、同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。
特許請求の範囲のみを補正対象とするものであった。)をした。(甲15、16) (2) 特許庁は、令和3年8月3日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。 をし、
) その謄本は、同月24日に原告に送達された。
2 本願に係る発明 (1) 本件補正前(平成30年12月7日付け手続補正書による補正後)の本願の特許請求の範囲の請求項(以下「本件補正前請求項」ということがある。)のうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。(甲8) 【請求項1】 ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、
ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出された少なくとも一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、
前記設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、
前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能と、
を実現させるゲームプログラム。
(2) 本件補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。(甲16。下線部は、本件補正に係る補正部分である。) 【請求項1】 ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、
ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出された少なくとも一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、
前記設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、
前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザ が前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能と、
を実現させ、
前記条件は、さらに、
所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること、
前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと、
前記ゲームの総プレイ時間が所定時間より長いこと、
の少なくとも1つを含む、ゲームプログラム。
3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件補正の内容について 本件補正は、本件補正前の発明特定事項である「条件」について、
「さらに、所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること、前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと、前記ゲームの総プレイ時間が所定時間より長いこと、の少なくとも1つを含む」との限定を付加するものである。
そして、本願発明と本願補正発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書(本願明細書)の段落【0037】〜【0039】及び【0041】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(2) 独立特許要件について 本件補正の目的が、特許請求の範囲減縮を目的としているので、本願補正発明が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
ア 甲1(「6月7日 アップデート予告」MMOバトルシューティング「コズミ ックブレイク」、2012年(平成24年)6月6日(2019年(令和元年)5月8日検索)。本件審決における「引用例」)から把握できる発明 甲1(引用例)からは、次の発明(以下「引用発明」という。)が把握できる。
「サーバにネットワークを介して接続された複数の端末でプレイするMMOバトルシューティング・ゲーム「コズミックブレイク」のアップデートされたゲームプログラムであって、
2012年6月7日(木)13:00より「カムバックキャンペーン」が開催され、
キャンペーン内容は、キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、対象となるキャンペーンアイテムをゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼントするものであって、
キャンペーン対象は、既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザであり、
キャンペーンの対象となるユーザに、登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送る、
機能を実現させる、サーバにネットワークを介して接続された複数の端末でプレイするMMOバトルシューティング・ゲーム「コズミックブレイク」のアップデートされたゲームプログラム。」 イ 本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明は、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
(一致点) 「ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、
ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくと も一のユーザを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出された少なくとも一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、
前記設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、
前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージが送信された前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能と、
を実現させるゲームプログラム。」 (相違点1) コンピュータに実現させる機能が、本願補正発明は、メッセージ送信機能により送信されたメッセージを「受信した一のユーザ」に報酬を付与する報酬付与機能であるのに対し、引用発明は、ご案内メールを「送」ったキャンペーンの対象となるユーザに、キャンペーンアイテムをプレゼントする機能である点。
(相違点2) 「ユーザのゲーム状況に関する抽出条件」が、ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含み、さらに、本願補正発明は、
「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること、前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと、前記ゲームの総プレイ時間が所定時間より長いこと、の少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、引用発明は、さらなる条件は特定されない点。
ウ 判断 (ア) 相違点1について a 引用発明は、
「キャンペーンの対象となるユーザ」である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」が、
「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012 年7月5日(木)10:00まで)、ゲーム内にログインされた際」に「対象となるキャンペーンアイテム」がもれなくプレゼントされるものであるところ、前記「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」には、「ご案内メール」が送られているのであるから、「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、ゲーム内にログインされた際」に「対象となるキャンペーンアイテム」がプレゼントされた「ユーザ」は、
「ご案内メール」が送られた「ユーザ」である。
b ここで、引用発明は、
「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで) ゲーム内にログイン」 、 した「ユーザ」であっても、
「キャンペーンの対象となるユーザ」である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」でなければ、
「対象となるキャンペーンアイテム」がプレゼントされないのであるから、「サーバ」は、「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、ゲーム内にログインされた際」「対象となるキャンペーンアイテム」をプレゼントした「ユーザ」に対しては、
「キャンペーンの対象となるユーザ」である「既にユーザーアカウントを所持しており、
最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」であることを確認した上で、キャンペーンアイテムをプレゼントしているものと推認できる。
c 「サーバ」は、
「キャンペーンの対象となるユーザ」である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」に、ご案内メールを送っているのであるから、
「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、ゲーム内にログイン」した「ユーザ」に対して、「キャンペーンの対象となるユーザ」である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」であることを確認するとは、
「ご案内メール」が送ら れた「ユーザ」であるのか否かを確認していることと理解できる。
d ここで、本願補正発明の「メッセージを受信した一のユーザ」とは、メッセージの送信機能に不具合等がなければ、メッセージが送信されたユーザと同一視できるところ、本願補正発明の「前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能」について、本願明細書及び本願の特許請求の範囲には、
「上記報酬は、メッセージを受信した他のユーザがゲームに再び参加した場合、付与されてもよい。(段落【0043】 」 )と記載されているだけで、メッセージを受信したユーザを特定する機能については何ら記載されていないことからすると、「報酬付与機能」における「メッセージを受信した位置(判決注: 「一」の誤記と認める。)のユーザがゲームに参加した場合」とは、実質的に、メッセージを送信したユーザがゲームに参加したことを特定していると解するのが相当である。
e そうすると、引用発明の「対象となるキャンペーンアイテム」がプレゼントされた「ユーザ」は、
「ご案内メール」が送られた「ユーザ」が「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、ゲーム内にログイン」した「ユーザ」であるのだから、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
f 仮に、本願補正発明の「メッセージを受信した一のユーザ」を、メッセージ送信機能等に不具合が生じた場合に、メッセージは送信されているものの、メッセージを受信していないユーザと峻別し、そのような「メッセージを受信していないユーザ」には、
「対象となるキャンペーンアイテム」をプレゼントしないことを特定するためであったとしても、メッセージを送受信する技術において、メッセージの送信先のユーザがメッセージを開封したかを確認する技術は、例を示すまでもなく、
周知の技術手段(以下「本件周知技術」という。)であるから、引用発明において、
ご案内メールが送られたユーザがご案内メールを受信したことを確認するようにし、
相違点1の構成とすることは、本件周知技術に照らすと、当業者が適宜なし得る程 度のことである。
(イ) 相違点2について 例えば、甲2(「10%が復活も!休眠顧客の“掘り起こし”DM・手紙の成功事例」株式会社ファインドスター、2011年(平成23年)12月16日(2020年(令和2年)8月19日検索)」に記載されているように、休眠顧客の中でも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」のお客様にお手紙を送ったところ、前記「ロイヤル休眠」のお客様は復活しやすいことが、本願の分割原出願日以前に周知の事項であることからすると、メッセージを送信するユーザの条件として、休眠期間の他に、サービスの利用頻度が高い顧客とすること、すなわち、所定の頻度以上ゲームをプレイしているユーザとする条件を加え、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が適宜なし得るものである。
(ウ) まとめ したがって、本願補正発明は、特許法29条2項の規定により、当業者が容易に発明できた発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法17条の2第6項の規定に違反してされたものである。
以上のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
(3) 本願発明について ア 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明は、次の相違点で相違する。
(相違点1) コンピュータに実現させる機能が、本願補正発明は、メッセージ送信機能により送信されたメッセージを「受信した一のユーザ」に報酬を付与する報酬付与機能で あるのに対し、引用発明は、ご案内メールを「送」ったキャンペーンの対象となるユーザに、キャンペーンアイテムをプレゼントする機能である点。
イ 判断 前記(2)ウにおける検討内容を踏まえると、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ まとめ 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
原告主張の取消事由
1 取消事由1(本願補正発明と引用発明の一致点・相違点の認定誤り) (1) 取消事由1-1(相違点3の看過) ア(ア) 本願補正発明は、「前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能と、 としており、
」 メッセージの送信対象となる少なくとも一のユーザを抽出する条件である「抽出条件」は、「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件を含む。
一方、引用発明は、
「キャンペーン対象は、既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザであり、キャンペーンの対象となるユーザに、登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送る」としており、メールの送信対象となるユーザを抽出する条件は、
「最終ログインが2012年4月5日10:00以前」という条件を含む。
その上で、本件審決は、引用発明の「最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」は、本願補正発明の「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件」との「ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて」抽出さ れる「ユーザ」に相当するとして、要するに、引用発明の「最終ログイン」が本願補正発明の「ゲームをプレイ」に相当すると判断した。
(イ) しかし、引用発明における「ログイン」とは、
「自分の端末とホストコンピュータを接続して、データのやり取りができる状態にすること。(甲17)を意味す 」る技術用語であるところ(甲18も参照) ログインしてホストコンピュータと接続 、
しただけではゲームをプレイしたことにはならないから、本願補正発明における「ゲームをプレイ」と異なるものであることは明らかである。
すなわち、
「ゲームをプレイ」するためには、まずユーザが「ログイン」のための操作を行い、ユーザ端末とサーバとを接続してデータを送受信できる状態 「ログイ (ン」状態)にする必要があるが、
「ログイン」した時点でゲームが開始するわけではない。ログイン」 「 状態になった後であれば、ユーザは任意の時点でゲームを開始し、
また、終了することができ、それらの間が「ゲームをプレイ」に相当する。ゲームが終了した時点で「ログイン」状態が解除されるわけではなく、
「ログイン」状態は維持され、ユーザは、再度、任意の時点でゲームを開始し、また、終了することができる。
「ログイン」状態である限り、ユーザは任意の時点で「ゲームをプレイ」できるのである。そして、その後、ユーザが「ログイン」状態を解除(ログアウト)するための操作を行った時点で、
「ログイン」状態が解除され、ユーザ端末とサーバとがデータを送受信できなくなる。そうすると、
「ゲームをプレイ」することもできなくなる。
以上のような「ログイン」と「ゲームをプレイ」との関係によると、本願補正発明の「ゲームをプレイしていない期間」とは、
「ログイン」状態において最後に「ゲームをプレイ」してそれを終了した時点以降の期間を意味する。
(ウ) また、引用発明における「(最終)ログイン」とは、ユーザが「ログイン」操作(例えば、IDやパスワードの確認)を行った時点をいうのか、
「ログイン」状態が解除された時点(ログアウトされた時点)をいうのか不明である(例えば、2012年4月5日10:00より前に「ログイン」操作を行い、同日10:00より 後にログアウトしたユーザは抽出されるのか不明である。。したがって、本願補正 )発明と対比できる程度に引用発明が認定されているとはいえない。
この点、(最終)ログイン」について、善解して、
「 「ログイン」を最後にした時点をいうものとみ得るとしても、「ログイン」状態において最後に「ゲームをプレイ」してそれを終了した時点をいうものとみることはできない。
(エ) したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の相違点3が認定されるべきところ、本件審決はこれを看過した。
(相違点3) 本願補正発明における「抽出条件」は、
「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件を含むのに対し、引用発明における「抽出条件」は、
「最終ログインが2012年4月5日10:00以前」との条件を含むものの、
「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件を含むか否か不明である点。
(オ) そして、相違点3が当業者にとって容易想到であることを示す証拠はないから、相違点3を看過した本件審決には、結論に影響を及ぼす違法がある。
イ 被告の主張について (ア) 被告は、甲1の「※キャンペーンアイテムは、ゲーム内にログインされた際にお送り致します。」等の記載を指摘して、引用発明における「ログイン」をもって「ゲームをプレイ」している状態を意味すると解釈するのが適当であると主張するが、上記記載からなぜ「ログイン」が「ゲームをプレイ」している状態を意味することになるのか、合理的な説明はされていない。被告の主張は、
「ログイン」の意味を無視したものであって、失当である。
(イ) また、本件審決が、本願補正発明の「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」に対応すると判断した、引用発明の「最終ログインが2012年4月5日10:00以前」という構成は、甲1の「◆キャンペーン対象 ・ 「カムバックキャンペーン」 既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前の方。」との記載に基づいて認定されたものであり、相違 点3はその点に係るものであるから、被告が指摘する前記(ア)の甲1の記載は、相違点3に係る本願補正発明の構成とは無関係である。同記載は、相違点3の存在を否定する根拠とはなり得ない。
(ウ) さらに、「ログイン」に関する甲1の他の記載を斟酌しても、被告が前記(ア)のとおり主張するような解釈はとり得ない。
被告の前記解釈によると、例えば、@甲1の「※キャンペーンアイテムは、ゲーム内にログインされた際にお送り致します。 という記載について、
」 キャンペーンアイテムは、端末をサーバに接続した際ではなく、ゲームをプレイしている状態で付与されることになるが、ゲームをプレイしている最中に(何の脈絡もなく)キャンペーンアイテムが付与された旨の表示がなされると、ゲームの趣向性が損なわれてしまう一方、そのような表示がなされない場合は、キャンペーンアイテムが付与されたことすら認識されなくなる。被告の前記解釈によって甲1の上記記載を合理的に理解することは、困難である。また、被告の前記解釈によると、A甲1(1頁下から4行目)の「また、初回ログイン時に選択可能なキャラクターを、下記へと変更いたします。 との記載について、
」 ゲームをプレイしている状態でキャラクターが選択可能になることになるが、ゲームをプレイしている最中に(何の脈絡もなく)キャラクターが選択可能になるというのは極めて不自然である。
(エ) 被告は、
「2012年4月5日10:00以前に「コズミックブレイク」に接続し同月7日までゲームをプレイしログアウトしたユーザ」(被告のいう「ユーザA」)について検討するところ、当該ユーザは、遅くとも2012年4月5日10:00に「ログイン」し、早くても同月7日午前零時までは「ログイン」していたとの趣旨と解されるから、少なくとも38時間「ログイン」していたこととなる。しかるに、被告が主張するように「ログイン」を、端末をサーバに接続した上で「ゲームをプレイ」している状態を意味すると解釈する場合には、当該ユーザは少なくとも38時間も「ゲームをプレイ」していたことになるが、そのようなことはおよそ考えられず、非現実的な仮定である。そのように矛盾が生じるのは、「ログイン」 についての前記解釈が誤っているからであり、被告自身の主張からその誤りが裏付けられている。
(オ) 甲1に関し、被告は、後記第4の1(1)ア(イ)のとおり、
「ユーザA」〜「ユーザD」の例を挙げるが、
「ログイン」の意味に関する被告の主張が失当であることは既に述べたとおりであり、上記の例についての被告の指摘は、甲1の「コズミックブレイク」のキャンペーンに記載のない事項(サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイしている状態)を付加して、甲1とは異なる新たなキャンペーンを作出するものにすぎない。被告は、「ユーザA」〜「ユーザD」の場合において、
被告が指摘するように「カムバックキャンペーン」と「サンクスキャンペーン」が実際に振り分けられていることを立証できておらず、被告の主張は、単なる想像にすぎない。
(カ) 被告は、甲1における「最終ログイン」について、ログアウトされた時点を意味するといえると主張するが、
「ログアウト」 「ログイン」 は の対義語であるから、
「ログイン」が「ログアウト」された時点を意味するなどとは到底考えられない。
また、仮に「最終ログイン」が「ログアウト」された時点を意味するとしても、
その時点は、本願補正発明の「ゲームをプレイしていない期間」の起算点である、
「ログイン」状態において最後に「ゲームをプレイ」してそれを終了した時点(前記ア(イ))とは異なっており、相違点3が存在する。
(2) 取消事由1-2(相違点4の看過) ア 本願補正発明は、
「前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する」としており、ゲームに参加した場合に報酬を付与するものである。
一方、引用発明は、
「キャンペーンアイテムをゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼントする」としており、ログインされた際に報酬を付与するものである。
その上で、本件審決は、引用発明の「ログインされた」が本願補正発明の「ゲームに参加」と共通すると判断した。
イ しかし、前記(1)のように、引用発明における「ログイン」と本願補正発明における「ゲームに参加」は異なる。
前記(1)ア(イ)で述べた「ログイン」 「ゲームをプレイ」 と との関係を踏まえると、
本願補正発明における「ゲームに参加した場合」は、
「ログイン」した上で「ゲームをプレイ」し始めた時点に対応するもので、両者が異なるのは明らかである。
ウ したがって、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の相違点4が認定されるべきところ、本件審決はこれを看過した。
(相違点4) 本願補正発明は、
「ゲームに参加した場合」に報酬を付与するのに対し、引用発明は、「ログインした場合」に報酬を付与するものの、「ゲームに参加した場合」に報酬を付与するか否か不明である点。
エ そして、相違点4が当業者にとって容易想到であることを示す証拠はないから、相違点4を看過した本件審決には、結論に影響を及ぼす違法がある。
2 取消事由2(相違点の容易想到性の判断の誤り) (1) 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り) ア 相違点1が実質的な相違点であること (ア) 本願補正発明の構成 a 本願補正発明における「メッセージを受信した前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する」との構成(以下「対象ユーザの構成」ということがある。)では、
「メッセージを受信した」 「一のユーザ」に対して報酬が付与されることが特定されている。そのように、
「メッセージを送信した(送信された)前記一のユーザが」ではなく「メッセージを受信した前記一のユーザ」と特定されている以上、対象ユーザの構成については、
「一のユーザ」が「メッセージを受信した」ことが報酬付与の条件となっている(すなわち、メッセージを受信しない限り報酬は付与されない。 と解釈すべきであって、
) 本件審決が判断するように「実質的に、メッセージを送信したユーザがゲームに参加したことを特定し ていると解する」ことなどできない。
この点、本願補正発明において、メッセージの送信機能に不具合がないことは特定されておらず、本願補正発明は、メッセージの送信機能に不具合がある場合や、
受信機能に不具合がある場合、送信先となる「一のユーザ」がメッセージを受信拒否する場合、一のユーザ」 「 の受信先が変更されている場合等も当然に想定している。
そして、メッセージの送信機能に不具合がある場合や、
「一のユーザ」が受信拒否している場合には、送信されたメッセージを「一のユーザ」が受信しないから、
「メッセージを受信した一のユーザ」と「メッセージが送信されたユーザ」は一致せず、
両者は同一視できない。
対象ユーザの構成において「メッセージを受信した」という文言を無視することはできず、また、「場合」とは「仮定的条件を示…す用語」(甲19)であるから、
対象ユーザの構成は、
「メッセージを受信した一のユーザがゲームに参加した」という条件が満たされた場合に限り「一のユーザに報酬を付与する」もので、同条件が満たされない場合(例えば、メッセージを受信していない一のユーザがゲームに参加した場合)には「前記一のユーザに報酬を付与しない」ことを意味するもの、すなわち、@メッセージを受信した一のユーザがゲームに参加した場合には、一のユーザに報酬を付与するが、Aメッセージを受信していない一のユーザがゲームに参加した場合には一のユーザに報酬を付与しないというものと解釈すべきである。
b また、メッセージを受信したユーザを特定する機能について、本願の特許請求の範囲や本願明細書に何ら記載されていないとしても、対象ユーザの構成において「メッセージを受信した前記一のユーザが」とされている以上、
「一のユーザ」によるメッセージ受信を判定していることは、特許請求の範囲の文言上明らかである。
それにもかかわらず、
「メッセージを受信した前記一のユーザ」を「メッセージを送った(送信された)ユーザ」と同一視した本件審決は、本願補正発明の要旨認定を誤ったものである。
(イ) 引用発明の構成 引用発明では、
「ご案内メールが送られた」ことは報酬付与の条件となっているものの、
「ご案内メールを受信した」ことは報酬付与の条件となっていないから、仮に「ご案内メール」を受信しなかったとしても、ゲーム内にログインすることで報酬が付与され得る。
(ウ) 対比 以上のとおり、本願補正発明の場合、メッセージが送られたユーザであっても、
そのメッセージを受信しなければ報酬が付与されることはない一方、引用発明の場合、メッセージ(ご案内メール)が送られたユーザであれば、仮に当該ユーザがメッセージを受信しなかったとしても、報酬が付与され得る。このような明確な違いが存在するから、相違点1は実質的な相違点である。
イ 相違点1が容易想到でないこと (ア) 本件審決が判断するように、メッセージを受信したかを確認することが周知技術(本件周知技術)であるとしても、メッセージを受信したことが確認されたことを条件として報酬を付与する(メッセージを受信したことが確認されなければ報酬を付与しない)という事項までが周知技術であったとはいえない。
(イ) また、仮に、メッセージを受信したことが確認されたことを条件として報酬を付与するという事項が周知技術であったとしても、引用発明では「ご案内メールが送られた」ことが報酬付与の条件として構成されており、かかる構成に対し、
「メッセージを受信したことが確認されたことを条件として報酬を付与する」という構成にあえて変更する理由はないから、かかる周知技術を引用発明に適用する動機付けがない。
(ウ) さらに、実質的な相違点である相違点1が容易想到であるというためには、
本願補正発明の対象ユーザの構成に係る前記ア(ア)aのAの「メッセージを受信していない一のユーザがゲームに参加した場合には、一のユーザに報酬を付与しない」という構成に至る必要がある。
この点、引用発明は、
「ご案内メールを受信していないユーザがゲーム内にログイ ンした場合にもキャンペーンアイテムがプレゼントされる」という構成であるところ、引用発明が上記構成となっている理由は、休眠ユーザにゲームを再開してもらうことを目的としているからであり、その目的を達成するために、案内メールを受信したか否かに関わらず(すなわち、案内メールを受信しなかったとしても)、プレイを再開した休眠ユーザにはキャンペーンアイテムをプレゼントするようにして、
休眠ユーザにゲームの再開を促しているのである。
しかるに、仮に、案内メールを受信していない休眠ユーザがゲームを再開した場合にキャンペーンアイテムがプレゼントされないとすれば、休眠ユーザが自ら積極的にゲームを再開しようとするモチベーションは生じにくく、休眠ユーザにゲームを再開してもらうという目的を達成できない。
したがって、引用発明において、
「ご案内メールを受信していないユーザがゲーム内にログインされた場合にはキャンペーンアイテムがプレゼントされない」という構成に変更する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
(エ) 以上より、相違点1に係る本願補正発明の構成は、当業者において容易に想到できたものではない。
ウ 被告の主張について (ア) 被告の主張は、対象ユーザの構成の「メッセージを受信した」という文言を無視するもの、又はそれを「メッセージを送った(メッセージを送信された)」という文言と同一視するもので、本願補正発明の要旨認定を誤るものである。
(イ) 被告の主張は、引用発明においては、
「ご案内メールを受信していないユーザがゲーム内にログインした場合にもキャンペーンアイテムがプレゼントされる」というものであるが、それは、対象ユーザの構成の前記ア(ア)aAの意味と相違している。
(2) 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り) ア 本件審決は、甲2を根拠とする周知事項を指摘して、相違点2が容易想到である旨判断した。
しかし、本願補正発明が「ゲームプログラム」に係るもので、その技術分野はゲームである一方、甲2はゲームとは全く関連性がないWebページである。ゲーム分野の当業者が、技術分野に関連性のない甲2に記載された事項を引用発明に適用することなどあり得ない。
また、わずか一つのWebページの記載から周知事項を認定することなどできない。
イ 前記アの点を措くとしても、甲2において「復活しやすい」とされているのは「過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」のお客様」であって、
ゲームの利用頻度が高いユーザが当該ゲームに復活しやすいかどうかは、甲2からは不明である。
本件審決は、甲2に記載された「購入頻度や金額などが高かった客」を、
「サービスの利用頻度が高い顧客」に上位概念化した点で誤っているほか、
「サービス」という上位概念を「ゲーム」という下位概念に当てはめた点でも誤っている(上位概念から当然に下位概念が導かれるわけではない。。甲2に記載された「購入頻度や金 )額が高い」ことと、本件補正発明における「ゲームの利用頻度が高い」こととを、
直接、上位概念化したり下位概念化したりすることなく対比すれば、両者が異なることは明らかである。
したがって、ゲーム分野の当業者が仮に甲2に接したとしても、甲2の記載に基づいて相違点2に係る構成を容易に想到し得るとはいえない。
ウ 以上のとおり、相違点2に係る本願補正発明の構成は、当業者において容易に想到できたものではない。
エ 被告の主張について (ア) 被告は、
「休眠顧客の中でも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」の顧客は復活しやすいこと」は、広く一般的に周知の事項であったといえると主張するが、甲2に「・・・お客様は、復活しやすいことが知られています。」という記載があるとしても、それが広く一般的に周知の事項であったというのは論理 の飛躍であって、誤りである。甲2はゲームとは無関係のWebページであり、少なくともゲームという技術分野において、上記の点が周知の事項であったとはいえない。
この点、被告は、本願補正発明の「ネットワークを介してプレイするゲーム」も甲2の「化粧品・健康食品通販」も顧客を対象としたサービスの一例とみることができると主張するが、不当な上位概念化であり、被告の上記主張は失当である。
(イ) 被告は、本願補正発明の「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしている」ことと、甲2の「過去に購入頻度や金額などが高かった」こととは、
「サービスの利用頻度が高かった」との概念で一致すると主張し、また、甲2の「休眠顧客のなかでも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」の顧客は復活しやすい」という周知の事項は、
「休眠ユーザのなかでも、サービスの利用頻度が高かったユーザは復活しやすい」と言い換えることができると主張するが、いずれも不当な上位概念化であり、被告の上記主張はいずれも失当である。
(ウ) 被告は、本件審決で引用されていない、乙3(「BtoB向けメールマーケティングの活用と戦略」2013年 、 (平成25年)6月17日)及び乙4(「カスタマー・ランクアップ・プログラム」)を挙げる。
しかし、乙3は、そのタイトルから明らかなように、本願補正発明が関連する一般消費者向けのゲーム(あるユーザから「一のユーザ」にメッセージを送信するものである本願補正発明が、一般消費者向けのゲームに関連するものであることは明らかである。)とは全く関連せず、また、乙4は、「来店」との記載から明らかなように、本願補正発明が関連するネットワークゲームとは全く関連しない。乙3及び4は、甲2と同様、いずれも本願補正発明とは技術分野を全く異にする。同様に、
これらは引用発明とも技術分野を全く異にしている。
したがって、甲2、乙3及び乙4を根拠として相違点2の容易想到性が肯定されることはあり得ない。
(エ) 被告は、乙3及び4から、サービスの利用頻度の高かった顧客に対して、メッセージとなるメールを送信し、サービスの利用を促すことは、商慣行として一般に行われていることであると主張するが、被告の主張は、乙3の「購入頻度」及び乙4の「来店頻度」を「サービスの利用頻度」と不当に上位概念化するものであって適切でない。乙3及び4を考慮したとしても、上記の点について、一般に行われている、又は周知の事項であるとは認められない。
また、仮に、乙3及び4の技術分野において商慣行として行われていることがあるとしても、乙3及び4はゲームとは全く関連しないから、少なくとも、それがゲームの分野において商慣行として行われているとはいえない。乙3及び4は、せいぜい「購入頻度や来店頻度が高かった顧客に対して、メッセージとなるメールを送信し、サービスの利用を促すこと」が、乙3及び4が属する技術分野において行われていたことを示すものにすぎない。
(オ) 被告は、乙5(「カムバック&サンクスキャンペーン(2/25 17:30 更新)」。令和2年2月26日付け補正の却下の決定(甲13)における「引用文献2」に記載された事項を引用発明に適用することについても主張する。
) しかし、審決取消請求事件の審理対象は、引用発明と甲2に開示された周知の事項とに基づいて相違点2の容易想到性を認めた本件審決における判断の当否であって、それとは異なる理由を本件訴訟で主張することは許されない。この点、拒絶査定(甲14)とともにされた補正の却下の決定(甲13)では、本願補正発明と同じ令和元年10月9日付け手続補正書(甲11)に記載された請求項1に係る発明について、甲1及び乙5に基づいて進歩性が否定された一方、本件審決は、乙5を引用することなく本願補正発明の進歩性を否定したもので、乙5を根拠として進歩性を否定した審査官の判断を撤回し、別の理由によって判断を示したものである。
しかるに、本件訴訟の段階において、被告が撤回済の乙5を再度持ち出すことは許されない。
上記の点を措くとしても、乙5について、
「クラスレベルが10以上となっている キャラクター」を所有することと、ゲームのプレイ頻度は無関係である。例えば、
ゲームのプレイ頻度が低くても、ゲームをプレイした累積時間が長かったり、プレイが巧かったりすればレベルは上がり得る一方、プレイ頻度が高くても、ゲームをプレイした累積時間が短かったり、プレイが拙かったりすればレベルは上がらないこともある。乙5では、クラスレベルが10以上であれば報酬付与の対象になるのに対し、本願補正発明では、レベル(すなわち、ゲームプレイの累積時間やプレイの巧拙)ではなく、プレイ頻度が所定頻度以上であることを抽出条件とし得ることを特定しており、両者は異なっている。
したがって、仮に引用発明に乙5に記載された事項を適用したとしても、相違点2に係る本願補正発明の構成には至らず、相違点2が容易想到であるとはいえない。
3 取消事由3(手続違背) (1) 本件審決における拒絶理由が甲1及び2に基づく進歩性欠如であった一方、
本願の拒絶査定における拒絶理由は、甲1を主引用例とする進歩性欠如であり、拒絶査定までに甲2は一度も引用されていなかった(甲4、 10、
7、 13及び14)。
本件審決における拒絶理由は、拒絶査定における拒絶理由とは異なる理由であるから、本来であれば、本件審判手続の段階で拒絶理由が通知されるべきであった(特許法159条2項で準用する同法50条) 仮に拒絶理由が通知されていれば、
。 原告においては、意見を述べるだけでなく、本願について、甲2に記載された事項との差異をより明確にする補正も可能であり、そのような補正によって不服審判請求成立審決という異なる結論が得られた可能性もあった。
したがって、本件審判手続の段階で拒絶理由が通知されなかったことは、本件審決の結論に影響を及ぼす違法に当たる。
(2) 被告の主張について ア 被告は、特許法第50条ただし書きによると、補正却下の決定をするときには拒絶理由を通知する必要がない旨を主張するが、補正を却下する際に拒絶理由を通知しなかったことを違法とする裁判例は、現に複数存在しており(知財高裁平成 18年(行ケ)第10102号同年12月20日判決、知財高裁平成18年(行ケ)第10281号平成19年4月26日判決)、杓子定規に補正を却下する際には拒絶理由を通知する必要がないということはできない。補正後の請求項が実質的に拒絶査定における拒絶理由と異なる拒絶理由を有するのであれば、手続保障の観点から、直ちに補正を却下するのではなく、拒絶理由の通知により反論の機会が与えられるべきである。
イ 本願補正発明は、本件補正前請求項3及び4に係る発明と実質的に同じであるところ、拒絶査定において拒絶理由について引用されている令和元年5月30日付け拒絶理由通知書(甲10)では、本件補正前請求項3及び4について、甲1及び乙5に基づいて進歩性を欠く旨の判断がされていた。それゆえ、本件審判手続において審理されるべきは、本願補正発明(すなわち本件補正前請求項3及び4に係る発明)について、甲1及び乙5に基づいて進歩性を欠くとした拒絶査定の当否であった。
したがって、審理の結果、@拒絶査定は妥当(本願補正発明は甲1及び乙5に基づいて進歩性を欠く)との判断であれば、直ちに審判請求不成立審決がされるべきである一方、A拒絶査定は妥当ではなく、かつ、本願補正発明は進歩性を有するとの判断であれば、審判請求成立審決がされるべきであるが、B拒絶査定は妥当ではない(甲1及び乙5によっては進歩性を否定できない)ものの、本願補正発明は別の理由で進歩性を欠くとの判断の場合には、拒絶査定における拒絶理由とは異なる拒絶理由であるから、本件審判手続段階で、原告に拒絶理由が通知されるべきであったところ、本件審決は、本願補正発明について、甲1及び乙5によっては進歩性を否定できないものの、甲1及び2に基づいて進歩性を欠くと判断したのであるから、原告に拒絶理由が通知されるべきであった。かかる拒絶理由が通知されなかったことは、本件審決の結論に影響を及ぼす手続違背である。
ウ 被告が指摘する知財高裁平成30年(行ケ)第10149号令和元年11月13日判決は、明細書及び図面に記載された事項をクレームアップする内容の審判 請求時の補正に関する事案に係るもので、補正前の従属請求項に限定する内容の本件補正とは経緯を異にしており、同判決における判断は、本件に当てはまらない。
被告の主張
1 取消事由1(本願補正発明と引用発明の一致点・相違点の認定誤り)について (1) 取消事由1-1(相違点3の看過)について ア 引用発明における「ログイン」について (ア) 甲1における「ログイン」の解釈 甲1に、「■「カムバックキャンペーン」&「サンクスキャンペーン」を同時開催!」 「新たな姿へと生まれ変わったクリムローゼ達を手に入れるチャンス!」 、 、
「さらにパワーアップしたコズミックブレイクの世界を、ぜひ体感してみてくださいね!」と記載され、また、
「※キャンペーンアイテムは、ゲーム内にログインされた際にお送り致します。」と記載されていることからすると、甲1において、「ログイン」とは、ただ単に端末をサーバに接続している状態を意味しているのではなく、
端末をサーバに接続した上で「ゲームをプレイ」している状態を意味していると解釈するのが適当である。
したがって、引用発明における「ログイン」と本願補正発明における「ゲームをプレイ」とは異なるのが明らかであるという原告の主張には、理由がない。
(イ) 甲1における「最終ログイン」の解釈 次のとおり、甲1における「最終ログイン」は、ログアウトされた時点を意味するものといえるから、引用発明における「(最終)ログイン」について、ユーザがログイン操作を行った時点をいうのかログアウトされた時点をいうのか不明であるという原告の主張には理由がない。
a 甲1には、@「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前の方」には「カムバックキャンペーン」が適用され、A「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月 5日10:01以降の方」には「サンクスキャンペーン」が適用されることが記載されている。
b(a) 2012年4月5日10:00以前に「コズミックブレイク」に接続し同月7日までゲームをプレイしログアウトしたユーザ(以下「ユーザA」という。 と、
)同月6日に「コズミックブレイク」に接続し同日中にゲームをプレイしログアウトしたユーザ(以下「ユーザB」という。)について、甲1における「ログイン」が、
「コズミックブレイク」に接続した時点を意味するとの前提に立って検討すると、
ユーザAに対しては「カムバックキャンペーン」が適用され、ユーザBに対しては「サンクスキャンペーン」が適用されることとなる。
(b) ゲーム分野における「カムバックキャンペーン」とは、休眠ユーザにゲームのプレイを再開してもらうことを目的としたキャンペーンであることが技術常識といえる(乙1、2)から、前記(a)の場合、「カムバックキャンペーン」が適用されるユーザAは休眠ユーザとみなされることになるが、ユーザBが休眠ユーザとみなされるか否か不明であるにもかかわらず、ユーザBよりキャンペーン実施期間の始期(2012年6月7日(木)13:00)に近い時までプレイしていたユーザAが休眠ユーザとみなされるという矛盾が生ずることとなる。
(c) したがって、甲1における「ログイン」が「コズミックブレイク」に接続した時点を意味するとの前記(a)における前提は、誤りであると解することができる。
c(a) 次に、サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイし2012年4月5日10:00以前にログアウトしたユーザ(以下「ユーザC」という。)と、
サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイし同日10:01以降にログアウトしたユーザ(以下「ユーザD」という。 について、
) 甲1における「ログイン」とは、サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイしている状態を意味するとの前提に立って検討すると、ユーザCに対しては「カムバックキャンペーン」が適用され、ユーザDに対しては「サンクスキャンペーン」が適用されることとなる。
(b) そうすると、ユーザCよりキャンペーン実施期間の始期(2012年6月7日(木)13:00)に近い時までプレイしていたユーザDに対して、
「サンクスキャンペーン」が適用され、ユーザDよりキャンペーン実施期間の始期(2012年6月7日(木)13:00)から遠い時点でプレイを止めてログアウトしたユーザCに対して、「カムバックキャンペーン」が適用されることとなる。
この場合、前記b(b)の技術常識に則して、ユーザCを休眠ユーザとみなしても、
何ら矛盾は生じない。
d 以上のことから、甲1における「ログイン」とは、サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイしている状態を意味するものと解するのが適当であるといえ、そうすると、甲1の「最終ログイン」とは、最後にサーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイした終期、つまり、ログアウトされた時点を意味するといえる。
イ 原告の主張について 前記アのとおり、引用発明の「最終ログイン」とは、ログアウトされた時点を意味するといえ、引用発明の「最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」は、2012年4月5日10:00からキャンペーンの始期である2012年6月7日(木)13:00までの所定期間以上、ゲームをプレイしていないユーザであるといえるから、原告が主張する相違点3の看過はない。
したがって、取消事由1-1には理由がない。
(2) 取消事由1-2(相違点4の看過)について 前記(1)のとおり、甲1における「ログイン」とは、サーバにネットワークを介して接続しゲームをプレイしている状態を意味するものと解し得るから、「ログインされた際」とは、サーバにネットワークを介して接続し、ゲームをプレイしている状態に移行することといえる。そうすると、引用発明の「ログインされた際」は、
本願補正発明の「ゲームに参加した場合」に相当するといえるから、相違点4の看過はない。
したがって、取消事由1-2には理由がない。
2 取消事由2(相違点の容易想到性の判断の誤り)について (1) 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り)について ア 相違点1が実質的な相違点であるとの主張について (ア) 本件審決は、本願補正発明の「メッセージを受信した一のユーザ」について、
「メッセージの送信機能に不具合等がなければ、メッセージが送信されたユーザと同一視できる」としたところ、そこにいう「メッセージの送信機能に不具合等がなければ」とは、原告が主張するような、メッセージが送信されているにもかかわらず受信しないという想定外の場合(メッセージの送信機能に不具合がある場合、受信機能に不具合がある場合、送信先となる「一のユーザ」がメッセージを受信拒否する場合、
「一のユーザ」の受信先が変更されている場合等)ではないことを意味している。
本件審決は、そのような想定外の場合を除く通常の想定の範囲内であれば、
「メッセージを受信した一のユーザ」 「メッセージが送信されたユーザ」 は、 と同一視でき、
実質的に、
「メッセージを受信した一のユーザがゲームに参加した場合」とは、メッセージを送信した(メッセージが送信された)ユーザがゲームに参加したことを特定していると解するのが相当であると判断したもので、その点において、本件審決の判断に何ら誤りはない。
(イ) 原告が主張するように、本願補正発明が想定外の場合を含み、
「メッセージを受信した一のユーザ」と「メッセージが送信されたユーザ」を同一視できない場合について検討する。
引用発明において、「ご案内メール」が「送」られ、「対象となるキャンペーンアイテムをゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼント」される「ユーザ」については、@「ご案内メール」が「送」られた「ユーザ」であって、
「ご案内メール」を受信した「ユーザ」と、A「ご案内メール」が「送」られた「ユーザ」であって、
「ご案内メール」を受信しなかった「ユーザ」(これが前記(ア)の「想定外の場合」 に相当する。)が考えられるところ、引用発明においては、上記@及びAのいずれのユーザであっても、ゲームにログインすれば、キャンペーンアイテムがプレゼントされることになるものの、引用発明のゲームプログラムは、少なくとも上記@のユーザに対してキャンペーンアイテムをプレゼントする点で、本願補正発明の「メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した一のユーザ」に「報酬を付与する」ことと何ら相違するものではない。
(ウ) したがって、相違点1が実質的な相違点とはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。
イ 相違点1が容易想到でないとの主張について 仮に、相違点1が実質的な相違点であったとして、相違点1に係る構成が当業者にとって容易に想到できたものであるかについて検討する。
前記1(1)ア(イ)b(b)のとおり、ゲーム分野における「カムバックキャンペーン」とは、休眠ユーザにゲームのプレイを再開してもらうことを目的としたキャンペーンであることがゲーム分野における技術常識といえるから、引用発明のゲームプログラムが「カムバックキャンペーン」を開催する目的も、案内メールを送ることにより、休眠ユーザにゲームのプレイを再開してもらうことであり、プレイを再開した対価としてキャンペーンアイテムをプレゼントしているといえる。
そうすると、引用発明においては、案内メールを送っても、当該メールがユーザに受信されなければ、上記目的は達成されないことになり、案内メールを送ったユーザであって当該メールを受信しなかったユーザに対してまでキャンペーンアイテムをプレゼントすることが上記目的と整合しないことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明に接した当業者であれば、案内メールを送ったユーザの代わりに、案内メールを受信したユーザにキャンペーンアイテムをプレゼントするように変更する理由は、十分にあるといえるから、相違点1に係る構成は、当業者にとって容易に想到できたものといえる。
ウ まとめ 以上のとおり、相違点1が実質的な相違点とはいえないとした本件審決の判断に誤りはなく、仮に相違点1が実質的な相違点であったとしても、相違点1に係る構成は当業者が容易に想到できたものであるから、取消事由2-1には理由がない。
(2) 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り)について ア 甲2について (ア) 甲2の記載によると、
「休眠顧客のなかでも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」の顧客は復活しやすいこと」は、広く一般的に周知の事項であったといえる。
(イ) また、乙3に、メール配信のターゲットとして、
「お客様の業態や過去の購買頻度などを基に、とりわけ大事にすべきお客様(優良顧客)をセグメント化していきます。…具体的には、配信対象となりうる顧客リスト(データベース)を作成」と記載され、乙4に、
「再来店お願いレター…よく来ていたが、最近来店していないお客様には離反防止のDMと…」と記載されているように、サービスの利用頻度の高かった顧客に対して、メッセージとなるメールを送信し、サービスの利用を促すことは、商慣行として一般に行われていることである。
したがって、甲2を周知技術の例示として採用した本件審決に誤りはない。
イ 相違点2が容易想到であるとの主張について (ア) 本願補正発明の「ネットワークを介してプレイするゲーム」も甲2の「化粧品・健康食品通販」も、顧客を対象としたサービスの一例とみることができることからすると、本願補正発明の「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしている」ことと、甲2の「過去に購入頻度や金額などが高かった」こととは、
「サービスの利用頻度が高かった」との概念で一致することが明らかである。そうすると、甲2の「休眠顧客のなかでも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」の顧客は復活しやすい」という周知の事項は、
「休眠ユーザのなかでも、サービスの利用頻度が高かったユーザは復活しやすい」といい換えることができる。
そして、引用発明は、「キャンペーンの対象となるユーザ」を、「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」つまり休眠ユーザとしているところ、
、 引用発明の「カムバックキャンペーン」も休眠ユーザにゲームのプレイを再開してもらうことを目的としていることからすると、当該目的をより達成しやすくするために、対象ユーザの条件として、休眠ユーザであることのほかに、上記周知の事項に照らし、サービスの利用頻度が高かったユーザ、すなわち所定の頻度以上ゲームをプレイしているユーザとの条件を加え、
相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
(イ) また、ゲーム分野において、乙5には、
「2013年1月9日(水)以降にゲームにログインしていなかったアカウントで、キャンペーン期間中にいずれかのクラスレベルが10以上となっているキャラクターでログインした方」を対象に「獲得経験値+50% 4個、レアドロップ倍率+50% 4個」をプレゼントすることが記載されている。
上記の記載のうち「2013年1月9日(水)以降にゲームにログインしていなかった」が、本願補正発明の「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」に相当することは明らかである。また、
「クラスレベルが10以上となっているキャラクター」を所有することは、全くゲームをプレイしなければクラスレベルが上がることはなく、クラスレベルを所定値以上まで上げるためには所定の頻度以上ゲームをプレイしなければならないことは明らかであるから、本願補正発明の「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること」に相当するといえる。
したがって、本願補正発明の「メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する」「抽出条件」に関して、引用発明に乙5の上記記載事項を適用して、「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件のほかに「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること」という条件を加え、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が適宜なし得るものであるといえる。
ウ まとめ 以上のとおり、甲2を周知の事項の例示としたことに誤りはなく、相違点2に係る本願補正発明について当業者が適宜なし得るものであるとした本件審決の判断にも誤りはない。また、ゲーム分野においても、相違点2に係る本願補正発明の構成は公知の事項といえるから、相違点2について本願補正発明のように構成することは当業者が適宜なし得るものであるとした本件審決に誤りはない。
3 取消事由3(手続違背)について ア 特許法159条2項において読み替えて準用する同法50条ただし書の規定からすると、拒絶査定不服審判の請求と同時にした補正について、補正の却下の決定をするときには、特許出願人(審判請求人)に拒絶理由を通知しなければならないとはされていない。
イ そして、次のとおり、本件審判手続において、合議体が拒絶理由を通知しなかったことに手続違背はない。
(ア) 本件審決が主たる引用例とした甲1は、拒絶理由通知(甲10)、補正の却下の決定(甲13)、拒絶査定(甲14)のいずれにおいても主引用例とされていたものである。そして、本件審決は、相違点2について、甲2を例示して、
「休眠顧客のなかでも、過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」のお客様にお手紙を送ったところ、前記「ロイヤル休眠」のお客様は復活しやすいこと」は周知の事項であるとして、引用発明から当業者が適宜なし得るものと判断したものである。
(イ) 本件補正により本願発明について付加された特定事項のうち、「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること」を「特定事項A」「前記ゲームのプレイ期 、
間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと」を「特定事項B」「前記ゲ 、
ームの総プレイ時間が所定時間より長いこと」を「特定事項C」とすると、まず、
特定事項Aと、本件補正前請求項3の「前記抽出機能は、所定の期間以上前記ゲームをプレイしておらず、所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていた休眠ユーザを、
前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する」との特定事項(以下「特定 事項D」という。)とは、「休眠ユーザ」との事項を備えているか否かという点で相違し、特定事項Aは、特定事項Dを拡張したものと認められる。
次に、特定事項Bと、本件補正前請求項4の「前記抽出機能は、
(iv)前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が多いユーザを、前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する、」との特定事項(以下「特定事項E」という。)とは、「所定数より」との事項を備えているか否かという点で相違し、特定事項Bは、
特定事項Eを減縮したものと認められる。
さらに、特定事項Cと、本件補正前請求項4の「前記抽出機能は、(v)前記ゲームの総プレイ時間が長いユーザを、前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する、」との特定事項(以下「特定事項F」という。)とは、
「所定時間より」との事項を備えているか否かという点で相違し、特定事項Cは、特定事項Fを減縮したものと認められる。
以上のように、特定事項A〜Cは、補正前の特定事項(特定事項D〜F)に対して、新たな特定事項を付加して限定したり、特定事項を削除して拡張したりするもので、本件補正により本願の特許請求の範囲の請求項1に新たに付加された事項と認められる。
それゆえ、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、本件補正により付加した事項であるところ、この点について新たな副引用例を追加し、拒絶理由を通知することなく補正却下の決定を行ったことに違法はない。この点、知財高裁平成30年(行ケ)第10149号令和元年11月13日判決では、拒絶理由、拒絶査定と同じ主引用例を用いた上で、審判請求時の補正により付加した事項に係る相違点について新たに副引用例を追加し、拒絶理由を通知することなく補正却下の決定を行ったことに違法はない旨の判断が示されている。
ウ したがって、取消事由3は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願明細書の記載及び本願補正発明の概要等 (1) 本願明細書の記載 本願明細書(甲3)には、次の記載がある。
【技術分野】 【0001】 本発明は、ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置に関し、特に、
ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】 【0002】 近年、スマートフォンやタブレット等の電子デバイスの普及に伴い、これら電子デバイスでプレイを行うためのゲームが盛んに開発されている。
【0003】 例えば、特許文献1には、ネットワークを介してプレイするゲームのゲームシステムが開示されている。この技術は、ユーザ同士のネットワークを介した交流と関連付けて所定のポイントをユーザに付与し、ポイントの所定量の消費と引き換えに、
報酬の得られるゲームのプレイを許可するゲームシステムに関するものである。
【0004】 このようなゲームでは、ユーザ間の交流の度合いに応じた報酬が与えられるのが一般的であった。この交流の度合いは、フレンド数および/または他のユーザへのアイテム等の送信回数や数量により評価され、報酬が決定されていた。
【0005】 しがしながら(判決注: 「しかしながら」の誤記と認める。、特許文献1記載の技 )術は、ユーザ間の交流によって直接的にゲームに関連する報酬が得られず、また、
ゲームに参加しなくなった休眠ユーザに対して効果が無いため、交流を活性化させるには不十分であった。
発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記事情に鑑み、本発明は、ユーザ間の交流をより活性化させることができるゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一実施態様に係る、ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムは、コンピュータに、ゲームをプレイしていない期間に関する条件を少なくとも含む、他のユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一の他のユーザを抽出する抽出機能と、抽出機能により抽出された少なくとも一の他のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、
設定機能により設定された少なくとも一の他のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、(i)メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した他のユーザがゲームに参加した場合に、一のユーザに報酬を付与する、
(ii)メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した他のユーザがゲームに参加した場合に、他のユーザに報酬を付与する、及び、(iii)メッセージ送信機能により他のユーザへメッセージが送信された場合に、(のユーザ(判決注:「一のユーザ」の誤記と認める。)に報酬を付与する、(i)〜(iii)の少なくともいずれかを実行する報酬付与機能とを実現させる。
【0009】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、抽出機能は、所定の期間以上ゲームをプレイしていない休眠ユーザを、メッセージを送信する他のユーザとして抽出する 【0010】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、抽出機能は、所定の期間 以上ゲームをプレイしておらず、所定の頻度以上ゲームをプレイしていた休眠ユーザを、メッセージを送信する他のユーザとして抽出する。
【0011】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、抽出機能は、
(iv)ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が多い他のユーザ、(v)ゲームの総プレイ時間が長い他のユーザ、及び、vi) ( ゲームにおけるバトル戦績が良い他のユーザ、
(iv)〜(v)の少なくともいずれかを、メッセージを送信する他のユーザとして抽出する・・・。
【0013】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、メッセージは、ゲームへの参加を促すメッセージである。
【0015】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、報酬付与機能は、さらに、
他のユーザがゲームをプレイしていなかった期間の長さに応じて、他のユーザに対して報酬を付与する。
【0016】 本発明の一実施態様に係るゲームプログラムにおいて、報酬付与機能は、さらに、
他のユーザのゲームにおける成績に応じて、他のユーザに対して報酬を付与する 【発明の効果】 【0019】 本発明のゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置によれば、メッセージの送信者に対し報酬を付与することにより、ユーザ間の交流をより活性化させることができる。
【発明を実施するための形態】 【0021】 初めに、本発明の情報処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明す る。
【0022】 図1に示すように、上記情報処理装置10は、ネットワークを介してプレイするゲームの情報処理装置10であって、選択受付部11、抽出部12、メッセージ送信部13、報酬付与部14を備える。なお、図1では、上記情報処理装置10が、
さらに、画面表示制御部15、設定部16および確認部17とを備える例が示されている。
【0023】 選択受付部11は、一のユーザによる他のユーザにメッセージを送信するか否かの選択を受け付ける。上記メッセージは、例えば一のユーザによって自由に作成された文章、定型文から一のユーザによって選択された文章、または、情報処理装置10により自動で選択された文章とすることができる。
【0024】 抽出部12は、所定の条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一の他のユーザを抽出する。この抽出は、選択受付部11が、上記メッセージを送信するか否かの選択を受け付ける前に行われることもできるし、上記メッセージを送信するか否かの選択を受け付けた後に行われることもできる。
【0025】 上記所定の条件とは、抽出対象に応じた抽出条件である。例えば、抽出条件は、
休眠ユーザを抽出対象とする場合、所定の期間、ゲームをプレイしていない等の条件とすることができる。
【0026】 メッセージ送信部13は、選択受付機能が他のユーザにメッセージを送信するとの選択を受け付けた場合に、抽出された少なくとも一の他のユーザにメッセージを送信する。
【0027】 報酬付与部14は、メッセージ送信部13が、抽出された少なくとも一の他のユーザにメッセージを送信した場合に、一のユーザに報酬を付与する。
【0028】 上記報酬は、例えば、ゲーム内の通貨、アイテム、または、特定の権利として付与されるものとすることができる。特定の権利とは、例えば、ゲーム内においてユーザの操作するキャラクタが敵に倒された際に、キャラクタを復活させ、ゲームを継続することのできるコンティニューの権利や、ユーザがイベントの進行において行き詰った際に、イベントを再度やり直すことのできる権利とすることができる。
【0029】 このように、本発明の情報処理装置10によれば、メッセージの送信者に報酬を付与することによりメッセージの送信を促すことができる。これにより、本発明の情報処理装置10は、ユーザ間の交流をより活性化させることができる。
【0030】 画面表示制御部15は、一のユーザに対し、抽出された少なくとも一の他のユーザ情報を含むメッセージの送信を促す画面を表示することができる。
【0031】 設定部16は、抽出された少なくとも一の他のユーザを、一のユーザの選択によらず、メッセージの送信先として設定することができる。
【0032】 確認部17は、一のユーザが、所定の期間内に、少なくとも一の他のユーザにメッセージを送信するとの選択を行っているか否かを確認する。確認部17は、一のユーザが送信したメッセージ数および/または送信対象を記憶してもよい。
【0033】 画面表示制御部15は、一のユーザに対し、メッセージの送信を促す画面を表示する。また、画面表示制御部15は、確認部17が、一のユーザが、所定の期間内に、少なくとも一の他のユーザにメッセージを送信するとの選択を行っていないこ とを確認した場合に、一のユーザに対し、メッセージの送信を促す画面を表示することができる。
【0034】 上記メッセージ送信を促す画面は、ユーザの操作やゲームの進行を妨げない所定の時期、所定のゲーム画面、所定の表示位置および所定の表示サイズで表示されることができる。
【0037】 上記他のユーザは、ゲームをプレイしたことがあり、かつ、所定の期間以上ゲームをプレイしていない休眠ユーザとすることができる。休眠ユーザがメッセージを受信することにより、休眠ユーザに、ゲームのプレイを再開するきっかけを与えることができる。
【0038】 上記所定の期間は、ゲームやユーザの状況によりその長短を変更させることができる。例えば、所定の期間は、ゲーム中のイベント期間終了日や他のユーザの保有するアイテム等の使用期限日前には短縮されることができる。
【0039】 上記他のユーザは、所定の期間、ゲームのプレイ頻度が高かった休眠ユーザとすることができる。このような休眠ユーザは、メッセージを受信した場合に、ゲームのプレイを再開する可能性が高いためである。
【0040】 上記他のユーザは、プレイ期間中において活動が活発であったユーザとすることができる。活動が活発であったユーザとは、例えば、アイテムの取得数が多い、ゲームの総プレイ時間が長いまたは、ゲーム内でのバトル戦績が良い等のユーザ等である。
【0041】 上記一のユーザは、ゲームを所定の頻度以上でプレイするアクティブユーザとす ることができる。
【0042】 上記一のユーザは、ゲーム内において活動が活発であるユーザとすることができる。一のユーザは、例えば、アイテムの取得数が多い、または、ゲーム内でのバトル戦績が良い等のユーザとすることができる。
【0043】 上記報酬は、メッセージを受信した他のユーザがゲームに再び参加した場合、付与されてもよい。報酬は、ゲームに再び参加したユーザの数および/またはユーザの状況に応じて付与されてもよい。ユーザの状況は、例えば、ユーザの休眠期間の長さおよび/または過去の成績等とすることができる。
【0044】 上記一のユーザは、ゲーム内において報酬を必要とするユーザとすることができる。一のユーザは、例えば、ゲーム内の通貨の所持数が少ない、アイテム数の所持数が少ない、および/または、バトル戦績が悪い等のユーザとすることができる。
【0045】 上記メッセージは、ゲームへの参加を促すメッセージとすることができる。メッセージは、例えば、ゲーム内のイベントに関する情報、新しいクエストに関する情報、または、ゲームに対するユーザの評価等とすることができる。
【0047】 上記他のユーザは、メッセージを受信し、ゲームに再び参加した場合、報酬を付与されてもよい。報酬は、他のユーザの状況に応じて付与されることができる。他のユーザの状況は、例えば、他のユーザの休眠期間の長さおよび/または過去の成績等とすることができる。
【0056】 続いて、本発明の実施形態に従うゲームプログラムの一例について説明する。
【0057】 本発明のゲームプログラムは、ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであって、コンピュータに選択受付機能と、抽出機能と、メッセージ送信機能と、報酬付与機能とを実現させることを特徴とする。
【0058】 選択受付機能では、一のユーザによる他のユーザにメッセージを送信するか否かの選択を受け付ける。例えば上述した選択受付部11によって実現されることができる。選択受付部11における処理については上述した通りである。
【0059】 抽出機能では、選択受付部が他のユーザにメッセージを送信するとの選択を受け付けた場合に、所定の条件に基づいてメッセージを送信する少なくとも一の他のユーザを抽出する。例えば上述した抽出部12によって実現されることができる。抽出部12における処理については上述した通りである。
【0060】 メッセージ送信機能では、抽出された他のユーザにメッセージを送信する。例えば上述したメッセージ送信部13によって実現されることができる。メッセージ送信部13における処理については上述した通りである。
【0061】 報酬付与機能では、メッセージ送信機能が抽出された少なくとも一の他のユーザにメッセージを送信した場合に、一のユーザに報酬を付与する。例えば上述した報酬付与部14によって実現されることができる。報酬付与部14における処理については上述した通りである。
【0062】 上記ゲームプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されて提供することができる。記録媒体としては、CD-ROMやDVD等、コンピュータが読み取り可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0067】 図4は、本発明のゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置10により実現されるゲームのフローの一例を説明するためのフローチャートである。
【0068】 図4に示すように、ユーザがゲームを開始すると、ゲームトップ画面が表示され、
イベントの選択を経て、ステージの選択画面が表示される(S10)。次に、ステージが選択されると、休眠ユーザに対するゲームへ参加を促すメッセージであるリクエストの送信が行われているかが判断される(S20、S30)。リクエスト送信が行われている場合、パートナー選択画面に進む(S50)。リクエスト送信が行われていない場合、リクエスト送信画面を表示し、ユーザが操作を行った後に、パートナー選択画面に進む(S40、S50)。ユーザによりクエスト送信(判決注:「リクエスト送信」の誤記と認める。)の操作が行われた場合、ユーザに対してリクエスト送信の報酬であるコンティニューの権利が与えられる(S45)。
【0069】 次に、パートナーの選択を経て、バトルが開始される(S60)。
【0070】 ユーザがバトルに勝った場合には、勝敗の結果が表示され、バトルが終了する(S70、S120)。
【0071】 ユーザがバトルに負けた場合には、バトルが中断され、コンティニュー画面が表示される(S80)。リクエスト送信のコンティニューの権利が残っている場合は、
コンティニューの選択画面が表示される(S90〜S100) リクエスト送信のコ 。
ンティニューの権利が残っていない場合は、他アイテム使用によるコンティニューの選択画面が表示される(S110)。
【0072】 コンティニューの実施が選択された場合、中断していたバトルが再開し、選択されなかった場合、勝敗の結果が表示され、バトルが終了する(S120)。再開され たバトルは、中断前の戦況を引き継ぐこともできる。中断前の戦況の引き継ぎとは、
例えば、中断前に敵に与えたダメージが残っているおよび/または中断前に使用したアイテムの効果が持続している等とすることができる。
【0075】 上記リクエスト送信画面は、図7に示すように、1以上の送信対象を表示することができる。表示する内容は、各ユーザのユーザ名および/またはユーザのアバター等とすることができる。
表示されるユーザはメッセージの送信先として設定されており、
「送信する」ボタンをユーザが押すことにより、ユーザがメッセージの送信を選択した場合、表示された全ユーザに対してメッセージが一括で送信することができる。また、情報処理装置における画面表示領域を考慮して、表示されるユーザの数に上限を設けることが出来る。さらに、休眠ユーザであって、ゲームをプレイしていない所定期間の短いユーザ、所定の期間におけるゲームのプレイ頻度が高かったユーザ、もしくは、
プレイ期間中において活動が活発であったユーザを優先して、送信画面に表示することができる。
【図1】 【図4】【図7】 (2) 本願発明及び本願補正発明の概要 前記第2の2(1)及び(2)の本願の本件補正の前後の特許請求の範囲の各請求項1の記載並びに前記(1)で認定した本願明細書の記載からすると、本願発明及び本願補正発明について、次のとおり認められる。
ア 技術分野 本願発明及び本願補正発明は、ゲームプログラム、ゲーム処理方法及び情報処理装置、特に、ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラム、ゲーム処理方法及び情報処理装置に関する。(本願明細書の段落【0001】) イ 本願発明及び本願補正発明の課題 (ア) スマートフォンやタブレット等の電子デバイスでプレイを行うためのゲームに関し、例えば、ネットワークを介してプレイするゲームのゲームシステムで、ユーザ同士のネットワークを介した交流の度合いをフレンド数、他のユーザへのアイテム等の送信回数や数量等により評価し、それと関連付けて所定のポイントをユーザに付与し、ポイントの所定量の消費と引換えに報酬の得られるゲームのプレイを許可するといった技術があったが、ユーザ間の交流によって直接的にゲームに関連する報酬が得られず、また、ゲームに参加しなくなった休眠ユーザに対して効果が無いため、交流を活性化させるには不十分であった。 【0002】 【0005】 (同 〜 ) (イ) 本願発明及び本願補正発明は、ユーザ間の交流をより活性化させることができるゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置を提供することを目的 とする。(同【0007】) ウ 課題を解決するための手段 (ア) 本願発明及び本願補正発明に係るネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムは、コンピュータに、ゲームをプレイしていない期間に関する条件を少なくとも含む、ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能と、抽出機能により抽出された少なくとも一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザがゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能とを実現させる。
(本願の本件補正の前後の特許請求の範囲の各請求項1、本願明細書の段落【0008】) (イ) 本願補正発明は、前記(ア)の条件について、さらに、所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること、前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと、前記ゲームの総プレイ時間が所定時間より長いこと、の少なくとも1つを含む。
(本願の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、本願明細書の段落【0010】【0011】 、 ) エ 本願発明及び本願補正発明の効果 本願発明及び本願補正発明のゲームプログラム、ゲーム処理方法及び情報処理装置によると、メッセージの送信者に対し報酬を付与することにより、ユーザ間の交流をより活性化させることができる。(同【0019】) (3) 本件補正前請求項2〜4の記載 本件補正前請求項2〜4の記載は、次のとおりである。(甲8) 【請求項2】 前記抽出機能は、所定の期間以上ゲームをプレイしていない休眠ユーザを、前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】 前記抽出機能は、所定の期間以上前記ゲームをプレイしておらず、所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていた休眠ユーザを、前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】 前記抽出機能は、
(iv)前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が多いユーザ、
(v)前記ゲームの総プレイ時間が長いユーザ、及び、
(vi)前記ゲームにおけるバトル戦績が良いユーザ、前記(iv)〜(v)の少なくともいずれかを、前記メッセージを送信する一のユーザとして抽出する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
2 引用発明について (1) 2012年(平成24年)6月6日にインターネット上で公開されたものと認められる甲1には、次の記載がある。
「6月7日(木)の定期メンテナンスにて アップデートされる内容の一部を以下にお知らせいたします。」 「■「カムバックキャンペーン」&「サンクスキャンペーン」を同時開催! 新たな姿へと生まれ変わったクリムローゼ達を手に入れるチャンス! 2012年6月7日(木)13:00より「カムバックキャンペーン」、
及び「サンクスキャンペーン」を開催いたします! さらにパワーアップしたコズミックブレイクの世界を、ぜひ体感してみてくだ さいね! ◆キャンペーン内容 キャンペーン期間中、対象となるキャンペーンアイテムを もれなくプレゼントいたします。
◆キャンペーン対象 ・「カムバックキャンペーン」 既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5 日10:00以前の方。
※対象となる方には、登録時に使用されたメールアドレスへと ご案内メールをお送りしております。
・「サンクスキャンペーン」 既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5 日10:01以降の方。
各々のキューブの開封条件を満たす事で、素敵なアイテムを入手することが できます。
※キャンペーンアイテムの詳しい内容は、当日のアップデート情報をご確認 ください。
※キャンペーンアイテムは、ゲーム内にログインされた際にお送り致します。
※キャンペーンアイテムは、1ユーザーアカウントにつき1度まで受け取る 事ができます。
◆キャンペーン実施期間 2012年6月7日(木)13:00(アップデート終了後)から 2012年7月5日(木)10:00(アップデート開始前)まで。」 (2) 前記(1)によると、前記第2の3(2)アのように本件審決が認定したとおりの次の引用発明が認められる。
「サーバにネットワークを介して接続された複数の端末でプレイするMMOバトルシューティング・ゲーム「コズミックブレイク」のアップデートされたゲームプログラムであって、
2012年6月7日(木)13:00より「カムバックキャンペーン」が開催され、
キャンペーン内容は、キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)、対象となるキャンペーンアイテムをゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼントするものであって、
キャンペーン対象は、既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザであり、
キャンペーンの対象となるユーザに、登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送る、
機能を実現させる、サーバにネットワークを介して接続された複数の端末でプレイするMMOバトルシューティング・ゲーム「コズミックブレイク」のアップデートされたゲームプログラム。」 3 取消事由1(本願補正発明についての一致点・相違点の認定誤り)について (1) 本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と前記2(2)の引用発明とを対比すると、前記第2の3(2)イのように本件審決が認定したとおりの次の一致点及び相違点が認められる。
(一致点) 「ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、
ユーザのゲーム状況に関する抽出条件に基づいて、メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能と、
前記抽出機能により抽出された少なくとも一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能と、
前記設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能と、
前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージが送信された前記一のユーザが前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する報酬付与機能 と、
を実現させるゲームプログラム。」 (相違点1) コンピュータに実現させる機能が、本願補正発明は、メッセージ送信機能により送信されたメッセージを「受信した一のユーザ」に報酬を付与する報酬付与機能であるのに対し、引用発明は、ご案内メールを「送」ったキャンペーンの対象となるユーザに、キャンペーンアイテムをプレゼントする機能である点。
(相違点2) 「ユーザのゲーム状況に関する抽出条件」が、ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含み、さらに、本願補正発明は、
「所定の頻度以上前記ゲームをプレイしていること、前記ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと、前記ゲームの総プレイ時間が所定時間より長いこと、の少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、引用発明は、さらなる条件は特定されない点。
(2) 取消事由1-1(相違点3の看過)について ア(ア) 原告は、前記(1)の一致点中、「前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、ユーザのゲーム状況に関する抽出条件」に関し、
「ログイン」とは「自分の端末とホストコンピュータを接続して、データのやり取りができる状態にすること。 甲17) 」 ( を意味する技術用語であって、ログイン」 「の時点と「ゲームをプレイ」し始める時点とは異なっており、そのような「ログイン」と「ゲームをプレイ」という文言の意味内容の差異等からすると、引用発明におけるキャンペーンの対象である「最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」との条件が「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件を含むか否かは不明であって、前記第3の1(1)ア(エ)の相違点3が認められるべきである旨を主張する。
(イ) そこで検討するに、まず、前記2(1)のように、甲1において、「ログイン」 の語は、「最終ログイン」という記載のほか、「ゲーム内にログインされた際に」という記載において用いられており、それら各記載における「ログイン」の語は、同一の意味内容を指すものと解するのが合理的であるから、甲1における「ログイン」は、「ゲーム」に対してされるものであると理解される。
そして、上記の理解と前記2(1)の甲1の記載のほか、「ログイン」の語が、一般に、コンピューター ネットワークを使用する場合に、
「 ・ 利用開始の宣言をすること。
ログオン。」という意味を有する語であること(「広辞苑 第六版」 (平成20年1月11日発行。株式会社岩波書店)3005頁。なお、甲18は「広辞苑 第七版」(平成30年1月12日発行)である。)を踏まえると、甲1における「ログイン」とは、
「コズミックブレイク」というゲームについて取得された「ユーザーアカウント」を用いて、コンピューター・ネットワークを介し、
「ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること」を基本的な意味とするものと解される。
なお、甲1には、前記2(1)で指摘した記載のほか、新規にアカウントを取得したユーザに対する「ウェルカムキャンペーン」についての記載があり、そこでも、
「キャンペーン期間中に新規アカウントを取得された方に、
・・・をもれなくプレゼントいたします。、
」「※キャンペーンアイテムは、ゲーム内にログインされた際にお送り致します。、
」「※キャンペーンアイテムは、1ユーザーアカウントにつき1度まで受け取る事ができます。、
」「また、初回ログイン時に選択可能なキャラクターを、下記へと変更いたします。といった記載がされている 」 (甲1の1枚目)ところであって、
これらの記載も、上記のように、「ログイン」が、「ユーザーアカウント」をもって「ゲーム」に対してされるものであるとの理解と整合するものである。
(ウ) また、乙1(『メイプルストーリー』カムバック&育成キャンペーン実施」 「。2006年(平成18年)3月27日)及び乙2( 「ファンタジーアース ゼロ」でなぜ今ワールド統合を行わなければならないの 「か? その理由と今後の展望を二人のプロデューサーにズバリ聞いてみた」。2011年(平成23年)12月22日)によると、本 願の分割原出願日当時、ネットワークを介してプレイするゲームの分野において、
「カムバックキャンペーン」とは、休眠ユーザにゲームの利用を再開してもらうことを目的としたキャンペーンであることが技術常識であったといえる。
(エ) その上で、甲1に記載されたキャンペーンは、ゲームのユーザを広く対象として、ゲームの利用への意欲を高めることを目的とするものであるところ、甲1はそのようなキャンペーン内容について、ゲーム運営関係者から一般に広く告知しようとするものであって、必ずしも技術的に厳格な意味で用語を使用しているとは考えられない。この点、そのうち前記(ウ)のように休眠ユーザにゲームの利用を再開してもらうことを促すための「カムバックキャンペーン」については、一定の期間ゲームを利用していないユーザを対象とするものと考えられ、ゲームを利用していない期間に着目して同キャンペーンの対象者とするか否かの判断基準としているものであると認められるところ、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をした 「ロ (グイン」をした)後、その利用を継続している間はなおゲームを利用しているものといえるから、ゲームを利用していない期間に着目する際には、ゲームの利用を終了した時点に着目するのが合理的であるといえる。そして、本願の分割原出願日当時、必ずしもネットワーク関連の技術用語について厳密な理解を有しているとは限らない一般のユーザにおいて、「ログイン」の語が、「利用開始の宣言」をした特定の時点のみならず、当該時点以降ゲームの利用を終了するまでの間、すなわち、
「ユーザーアカウント」を用いてゲームシステムに「ログイン」して以降利用が継続されている状態(ログイン状態)を指すものとしても用いられ得るものであったことは、公知の事実であるというべきである。
(オ) 前記(イ)〜(エ)を踏まえると、甲1における「ログイン」とは、「コズミック 「ブレイク」というゲームについて取得された「ユーザーアカウント」を用いて、ネットワークを介し、同ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること及び当該宣言以降その利用が継続されている状態」を意味するものと解すべきである。
(カ) 他方、本願明細書(甲3)において、「ゲームをプレイ」することの意義は、
必ずしも明確でなく、また、「ログイン」の語は全く用いられていないため、「ゲームをプレイ」することと「ログイン」との関係も明確ではないものの、本願明細書の段落【0001】〜【0003】【0008】〜【0011】【0013】【0 、 、 、
015】【0022】【0025】【0037】【0039】〜【0041】【0 、 、 、 、 、
057】【0075】等の記載のほか、前記(ウ)で指摘した点を踏まえると、本願明 、
細書における「ゲームをプレイ」することについても、
「ネットワークを介し、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること及び当該宣言以降その利用が継続されている状態」を指すものと解釈することができる。この点、同【0005】の「ゲームに参加しなくなった休眠ユーザ」との記載や同【0009】の「所定の期間以上ゲームをプレイしていない休眠ユーザ」との記載のほか、上記のうち例えば同【0037】の「ゲームをプレイしたことがあり、かつ、所定の期間以上ゲームをプレイしていない休眠ユーザ」との記載や同【0039】の「このような休眠ユーザは・・・ゲームのプレイを再開する可能性が高い」との記載、さらには本願補正発明においても、「前記ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上との条件を少なくとも含む、ユーザのゲーム状況に関する抽出条件」とされ「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」という条件が基礎的な条件とされていることは、
「ゲームをプレイ」することの意義について、休眠ユーザに関する「カムバックキャンペーン」に係る前記(ウ)の技術常識を踏まえて上記のように解釈することに整合するものといえる。
(キ) 以上によると、引用発明におけるキャンペーン対象である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」とは、
「既にユーザーアカウントを所持しており、ゲームへのログイン状態の最終の時点が2012年4月5日10:00以前のユーザ」であると解され、このことと、引用発明におけるキャンペーン内容である「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)・・・ 、
ゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼントする」ということを併せ考慮す ると、引用発明においては、
「2012年4月5日10:01以降同年6月7日12:59までゲームへのログイン状態がないこと」が条件とされているといえ、これは、
本願補正発明における「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件に相当するものというべきである。
したがって、原告の主張する相違点3は認められない。
(ク) 上記に関し、原告の前記(ア)の主張に鑑み、前記(エ)及び(オ)の点は措いて、前記(イ)の「ユーザーアカウント」を用いて、コンピューター・ネットワークを介し、
「ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること」という「ログイン」の意味をあくまで前提とした場合について付言するに、その場合、引用発明におけるキャンペーン対象である「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」とは、
「既にユーザーアカウントを所持しており、ゲームのシステムに対して最後に利用開始の宣言をした時点が2012年4月5日10:00以前のユーザ」であると解され、このことと、引用発明におけるキャンペーン内容である「キャンペーン期間中(2012年6月7日(木)13:00から2012年7月5日(木)10:00まで)・・・ゲーム内にログ 、
インされた際にもれなくプレゼントする」ということを併せ考慮すると、引用発明においては、
「2012年4月5日10:01以降同年6月7日12:59まで、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をしていないこと」が条件とされているといえる。
他方、本願補正発明では、
「ネットワークを介してプレイするゲームのゲームプログラムであ」るという構成(なお、この点において本願補正発明と引用発明とが一致することは、原告も争っていない。)及び「前記ゲームをプレイしていない期間」に係る構成において、
「ゲームをプレイ」するという語が用いられているところ、
「プレイ」という語が「遊ぶ」ことを典型的な意味内容とする英語「play」を片仮名で記したものと解されることからすると、
「ゲームをプレイ」するとは、一般には「ゲームを遊ぶ(ゲームをする)」という程度の相応に広い意味を有するものと解され、
前記(カ)で指摘した本願明細書の記載等からして、直ちにこれをより限定的に解すべき事情も見当たらない(なお、前記(カ)のとおり、前記(ウ)の技術常識を考慮すると、本願明細書における「ゲームをプレイ」することについて、
「ネットワークを介し、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること及び当該宣言以降その利用が継続されている状態」を指すものと解釈することができるが、これも上記の「ゲームを遊ぶ(ゲームをする)」という意味に含まれるものといえる。 。
) その上で、「ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること」は、「ゲームを遊ぶ(ゲームをする)」ことを開始することに相当するものといえるから、前記の本願補正発明における「ゲームをプレイ」することの意味を踏まえると、
「ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をする」ことは、
「ゲームをプレイ」することの開始に相当するものである。そして、
「2012年4月5日10:01以降同年6月7日12:59まで」は約2か月にわたる期間であり、2012年4月5日10:00以前に利用開始の宣言をしたユーザが同年6月7日12:59まで利用終了をすることなく継続して「ゲームを遊ぶ(ゲームをする)」状態を継続していることは考え難い。それゆえ、
「2012年4月5日10:01以降同年6月7日12:59まで、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をしていないこと」という上記の条件は、
「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件に相当するものというべきである。
したがって、引用発明における「ログイン」の語を前記(イ)の意味にあくまで限定して理解した場合であっても、原告の主張する相違点3が認められないことに変わりはない。
なお、上記の場合、引用発明における「ログイン」が本願補正発明における「ゲームをプレイ」することの開始に当たっての行為を指すものであることから、両者がその点においては異なるものと理解し得るとしても、前記の本願補正発明における「ゲームをプレイ」することの相応に広い意味からすると、
「ゲームをプレイしていない期間」をどの時点(例えば、ゲームシステムへのログインの時点やログアウ トの時点、あるいは、ゲーム内で一定の行為をした時点等)を基準として算定するかは、当業者において任意に選択し得る事項にすぎないものと解されるから、引用発明について「ゲームをプレイしていない期間が所定期間以上」との条件を含むか否かが不明であるなどということはできず、相違点3が認められないとの前記判断は左右されない。
イ(ア) 原告は、
「ログイン」が「自分の端末とホストコンピュータを接続して、データのやり取りができる状態にすること。(甲17)を意味する技術用語であって 」「ゲームをプレイ」することとは別個の概念である旨を主張し、そのような意味での「ログイン」の理解を前提として様々な主張をするが、前記ア(イ)及び(エ)で指摘した諸点に照らし、上記前提を採用することはできず、いずれの主張にも理由がない。
上記に関し、前記ア(カ)で指摘した本願明細書の各段落の記載、殊に同【0040】には「プレイ期間中において活動が活発であったユーザ」という記載やその一例としての「ゲームの総プレイ時間が長い・・・ユーザ」との記載があり、
「プレイ」が複数の「プレイ時間」を含む「期間」という単位でも用いられている概念であることを考慮しても、本願補正発明における「ゲームをプレイ」について、それが「ログイン」と「ログアウト」との間に存在する一定時間を指す厳密な概念であるかのようにいう原告の主張が採用できないことは、明らかである。むしろ、例えば、同【0039】の「このような休眠ユーザは・・・ゲームのプレイを再開する可能性が高い」という記載は、本願明細書における「ゲームのプレイ」の開始が「ゲームシステムの利用開始の宣言」に相当するという理解に整合するものといえる。
(イ) 原告は、引用発明における「(最終)ログイン」の意味内容が不明であり、本願補正発明と対比できる程度に引用発明が認定されているとはいえないと主張するが、引用発明における「ログイン」の意味は前記ア(イ)〜(オ)のとおり理解することができる(そして、同(カ)のとおり、その意味内容は本願発明における「ゲームをプレイ」することの意味内容よりも明確である。)のであって、原告の上記主張には理 由がない。
(ウ) その他、原告が主張する点は、いずれも前記アの認定判断を左右するものではない。
ウ 以上より、取消事由1-1の主張には理由がない。
(3) 取消事由1-2(相違点4の看過)について ア 原告は、前記(1)の一致点中、「前記ゲームに参加した場合に、前記一のユーザに報酬を付与する」という構成に関し、
「ログイン」と「ゲームをプレイ」という文言の意味内容の差異等からすると、上記構成と引用発明における「ゲーム内にログインされた際にもれなくプレゼントする」という構成は異なり、前記第3の1(2)ウの相違点4が認められるべきである旨を主張する。この点、原告の主張からすると、原告は、本願補正発明における「ゲームをプレイ」することと「ゲームに参加する」ことは、基本的に同義のものと理解しているものと解される。
イ しかし、
「ログイン」と「ゲームをプレイ」という文言の意味内容の差異についての原告の主張が採用できないことは、前記(2)で説示したとおりである。
また、
「ゲームをプレイ」することの意味とは別に「ゲームに参加」することの意味を検討したとしても、本願明細書の段落【0005】【0014】【0043】 、 、 、
【0045】【0047】及び【0068】の記載からして、
、 「ゲームに参加」するという語は、前記(2)ア(ク)で「ゲームをプレイ」するという語について述べたのと同様に、「ゲームをする」といった程度の意味で用いられているものと解される。
そして、前記(2)で認定説示したところに照らすと、引用発明における「ゲーム内にログインされた際」は、本願補正発明における「ゲームに参加した場合」に相当するものというべきである。
ウ したがって、原告の主張する相違点4は認められず、取消事由1-2の主張には理由がない。
4 取消事由2(相違点の容易想到性の判断の誤り)について (1) 取消事由2-1(相違点1の容易想到性の判断の誤り)について ア 相違点1に関し、引用発明は、ご案内メールを「送」ったユーザがゲームに参加した場合に報酬を付与するものであるところ、前記2(2)の引用発明の内容、特に、キャンペーン対象は、
「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザであり」「対象となるユーザに、登 、
録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送る」という構成からすると、
引用発明は、
「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」であるか否かという客観的な基準からキャンペーン対象となるユーザであるか否かを決定するもので、当該基準を満たすユーザの範囲と「登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送」られたユーザの範囲とは一致するものと解され、そして、
「ご案内メール」以外に甲1のような形でキャンペーン対象となるユーザに係る上記の客観的な基準が広く開示されていることも考慮すると、少なくとも甲1の記載からは、引用発明においては、上記の客観的な基準に該当する限り、仮に、「登録時に使用されたメールアドレス」に「送」られた「ご案内メール」を受信することができなかったユーザであっても、キャンペーン対象に含まれるものと解するのが相当である。
イ(ア) 他方、本願補正発明は、
「受信した一のユーザ」に報酬を付与するものであるが、メッセージを「受信」する前提として、メッセージが「送」られることは明らかであり、
「送」られたメッセージが「受信」されないという例外的な場合を除き、
メッセージを「送」られたユーザとメッセージを「受信した」ユーザは一致するものといえる。
この点、本願補正発明に係るゲームプログラムは、
「メッセージを送信する少なくとも一のユーザを抽出する抽出機能」「前記抽出機能により抽出された少なくとも 、
一のユーザを、メッセージの送信先として設定する設定機能」及び「前記設定機能により設定された少なくとも一のユーザに、メッセージを送信するメッセージ送信機能」を前提として、
「前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザ」を対象とする「報酬付与機能」を実現させるものと解される ところ、上記「抽出機能」「設定機能」及び「送信機能」並びに前記1(1)の本願明 、
細書の記載を踏まえると、
「報酬付与機能」に係る「前記メッセージ送信機能により送信されたメッセージを受信した前記一のユーザ」という記載においては、単に、
「送信」の語を受けるものとして「受信」の語が用いられていると解するのが合理的であり、それと異なる解釈をすべき技術思想も認められない。本願補正発明の構成上、上記「抽出機能」「設定機能」及び「送信機能」から容易に特定し得るもの 、
と解されるメッセージを「送」られたユーザは選び出された者といえるが、更にその中から、特にメッセージを「受信した」ユーザを特定し、これを選び出すという技術思想は認められないところである。本願明細書には、
「メッセージを受信することにより、休眠ユーザに、ゲームのプレイを再開するきっかけを与える」との記載(段落【0037】)や「このような休眠ユーザは、メッセージを受信した場合に、
ゲームのプレイを再開する可能性が高い」との記載(同【0039】)があるが、それらの記載をもって、メッセージが「送」られたユーザの中から特にメッセージを「受信」したユーザを特定し、選び出すとの技術思想が開示されているとまでいうことはできず、他にそのような技術思想を開示する記載もみられない。
そうすると、相違点1に係る本願補正発明の構成と引用発明の構成とは、実質的に異なるものではないというべきである。
(イ) また、仮に、相違点1に係る本願補正発明の構成と引用発明の構成とが、送」 「られたメッセージが「受信」されないという例外的な場合においては実質的に異なるものとであるとみ得るとしても、一般に、メッセージを送受信する技術において、
メッセージの送信先のユーザがメッセージを開封したかを確認する技術は、周知の技術(本件周知技術)であると解され、引用発明において、ご案内メールを「送」ったユーザがそれを受信したことを確認するよう構成することは、当業者が適宜なし得る程度のことであるといえる。
ウ(ア) 原告は、本願補正発明について、@メッセージを受信した一のユーザがゲームに参加した場合には、一のユーザに報酬を付与するが、Aメッセージを受信し ていない一のユーザがゲームに参加した場合には一のユーザに報酬を付与しないというものと解釈すべきであり、それゆえに相違点1は実質的な相違点であるなどと主張するが、同主張を採用できないことは、前記イのとおりである。
(イ) 原告は、メッセージを受信したかを確認することが周知技術(本件周知技術)であるとしても、メッセージを受信したことが確認されたことを条件として報酬を付与する(メッセージを受信したことが確認されなければ報酬を付与しない)という事項までが周知技術であったとはいえないと主張するが、引用発明の構成中、キャンペーンの対象となるユーザにご案内メールを送るという構成に本件周知技術を適用すると、キャンペーンの対象となるユーザでご案内メールを受信したユーザという構成に至るから、相違点1に係る本願補正発明の構成に至るものと解される。
(ウ) 原告は、
「ご案内メールが送られた」ことを報酬付与の条件として構成されている引用発明について、「メッセージを受信したことが確認されたことを条件として報酬を付与する」という構成にあえて変更する理由はない、引用発明において、
「ご案内メールを受信していないユーザがゲーム内にログインされた場合にはキャンペーンアイテムがプレゼントされない」という構成に変更することには、むしろ阻害要因があるなどと主張するが、前記(1)ア及び前記2のとおり、甲1が、キャンペーン対象者について、
「既にユーザーアカウントを所持しており、最終ログインが2012年4月5日10:00以前のユーザ」であるか否かという客観的な基準を示した上で、さらに、
「※対象となる方には、登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールをお送りしております。」として、「キャンペーンの対象となるユーザに、登録時に使用されたメールアドレスへとご案内メールを送る」という構成を付加していることからすると、そのような構成について、ご案内メールでキャンペーンの対象となることを確認したユーザがゲーム内にログインした場合に係る構成へと変更することは、当業者において適宜選択し得るものと解されるから、原告の上記主張にはいずれも理由がない。
(エ) その他、原告が主張する点は、いずれも前記アの認定判断を左右するもので はない。
エ したがって、取消事由2-1の主張には理由がない。
(2) 取消事由2-2(相違点2の容易想到性の判断の誤り)について ア(ア) 甲2によると、本願の分割原出願日当時、商品販売の業界において、
「商品を購入しなくなってしまった休眠顧客」の中でも、
「過去に購入頻度や金額などが高かった「ロイヤル休眠」のお客様は、復活しやすいこと」は、広く一般的に周知の事項であったと認められる。
また、乙3及び4によると、本願の分割原出願日当時、マーケティング業界において、サービスの利用頻度の高かった「優良顧客」 (過去の購買頻度や購買金額、来店頻度、最終来店日の近さ等により判断される。)に対し、メールを送信してサービスの利用を促すという商慣行があったことが認められる。
(イ) 引用発明は、ネットワークを介して接続された複数の端末でプレイするゲームにおける「カムバックキャンペーン」に係るものであるところ、乙1及び2によると、前記3(2)ア(ウ)のとおり、本願の分割原出願日当時、ネットワークを介してプレイするゲームの分野において、
「カムバックキャンペーン」とは、休眠ユーザにゲームの利用を再開してもらうことを目的としたキャンペーンであることが技術常識であったといえ、また、引用発明が「キャンペーンアイテム」を「プレゼント」するものであることからすると、引用発明に係るゲームにおいては、通常、有償でアイテムが購入されること等が容易に理解される(なお、乙1の1枚目には、
「カムバックキャンペーン…と銘打ち、対象者に通常は課金アイテムとして購入する“ポイントアイテム”をプレゼントするというもの」との記載があり、本願の分割原出願日当時、
「カムバックキャンペーン」に、通常有償であるアイテムを用いることも広く知られていたことが窺われる。。
) そうすると、そのような引用発明に係る当業者においては、商品販売の業界における甲2に係る前記(ア)の周知の事項や、マーケティング業界における乙3及び4に係る前記(ア)の商慣行を踏まえ、引用発明に接するものというべきである。
(ウ) したがって、引用発明に接した当業者において、キャンペーン対象となるユーザとして、少なくとも、
「所定の頻度以上ゲームをプレイしていること」 (これは、
前記(ア)のうち、例えば、来店頻度に相当するものといえる。)や、
「ゲームのプレイ期間中におけるアイテムの取得数が所定数より多いこと」これは、
( 前記(ア)のうち、
例えば、購買頻度に相当するものといえる。)という条件を加え、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、前記(ア)の周知の事項及び商慣行を踏まえて適宜選択し得るものであったというべきである。
イ(ア) 原告は、ゲーム分野の当業者が、技術分野に関連性のない甲2や乙3及び4に記載された事項を引用発明に適用することはない旨を主張するが、前記ア(イ)で説示したところに照らし、原告の上記主張は採用できない。前記ア(ア)で指摘した周知の事項や商慣行は、商品販売の業界(甲2)やマーケティング業界(乙3,4)において広く認められるべきものであり、原告が主張するようなゲーム分野等、上記各業界といった単位よりも細かな特定の技術分野に限定して適用されるべき特定の技術的な特徴等に関わる事項ではない。
(イ) その他、原告が主張する点は、いずれも前記アの認定判断を左右するものではない。
5 取消事由3(手続違背)について (1) 原告は、相違点2に関し、本願拒絶査定における拒絶理由までに甲2は一度も引用されていなかったにもかかわらず、本件審決は、甲2を踏まえて進歩性欠如という判断をしたから、本件審判手続の段階で拒絶理由が通知されて意見書提出の機会が与えられるべきであった旨を主張する。
(2) そこで検討するに、相違点2は原告が本件審判請求と同日付けで本件補正をしたことで付加された事項に係るものである(前記第2の2(1)及び(2))。
また、前記1(3)の本件補正前請求項2〜4を踏まえると、相違点2に係る本願補正発明の構成は、本件補正前請求項3の構成及び本件補正前請求項4の構成の一部を特許請求の範囲の請求項1に取り込んだものといえるところ、本件補正前請求項 3及び4に対しては、令和元年5月30日付け拒絶理由通知書(甲10)で、引用発明に乙5(引用文献2)の記載事項を組み合わせると当業者が容易になし得たことである旨又は乙5(引用文献2)の記載事項を適用する際に当業者が必要に応じて適宜なし得る事項であることが記載されていた。この際、乙5(引用文献2)の記載事項は、要旨、
「オンラインゲームのカムバックキャンペーンに関して、カムバックキャンペーンの対象となるユーザは、所定日以降にゲームにログインしていなかったアカウントで、いずれかのクラスレベルが10以上となっているキャラクターでログインしたユーザである点」と記載されていたところ、当該記載事項は、前記4(2)ア(ア)の周知の事項や商慣行をオンラインゲームのカムバックキャンペーンに適用した一場合に係るものであったといえる。
そして、本件審決は、引用発明と甲2によって認定することができる周知の事項を組み合わせると、メッセージを送信するユーザの条件について、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が適宜なし得るものと判断したものであって、主引用例は何ら変更されておらず、これと組み合わせる対象となる副引用例が変更されたものでもなく、上記拒絶理由通知書で指摘されていた乙5(引用文献2)の背景にある一般的な周知の事項を明らかにしたものといえる。この点、
前記4(2)ア(ア)のように、本件審決における甲2に基づく周知の事項の認定は基本的に相当なものと認められ、それが商品販売の業界という相応に広い業界で一般的に認められる周知の事項であることからしても、その点に対して個別の反論の機会が与えられなかったことによって原告が特段の不利益を被ったものとは認め難い。
以上の点に照らし、本件審決について、改めて拒絶理由通知等が行われなかったことをもって手続違背があるということはできない(特許法159条2項50条ただし書)。
(3) 以上に反する原告の主張は、いずれも採用することができない。
結論
よって、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のとお り判決する。
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 中島朋宏
裁判官 勝又来未子