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関連審決 無効2020-800056
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事件 令和 3年 (行ケ) 10070号 審決取消請求事件
令和4年6月28日判決言渡 令和3年(行ケ)第10070号 審決取消請求事件 口頭弁論終結日 令和4年4月26日 5判決
原告 ファミリーイナダ株式会 社
同訴訟代理人弁理士 坂本寛 10 同丹羽愛深
被告 オシム・インターナショナル・ ピーティーイー・リミテッド (審決書記載の名称 オシム・インターナショナル・リミテッド) 15
同訴訟代理人弁理士 丹治彰
同 阿部達彦
同 高橋史生
同 松尾直樹 20 同野村進
同 淺野耕一朗
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/06/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2020−800056号事件について令和3年4月20日にした審決を取り消す。
25 2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
1事 実 及 び 理 由第1 請求主文第1、2項同旨第2 事案の概要5 1 特許庁における手続の経緯等被告は、平成25年(2013年)6月3日を国際出願日として、発明の名称を「マッサージ関連サービスを提供するシステムおよび方法」とする発明について特許出願(以下、その明細書と図面を併せて「本件明細書等」という。
)をし、令和2年2月17日、特許権(特許第6662767号。請求項の数110 7。以下、この特許を「本件特許」という。 の設定登録を受けた) (甲14の1、
甲30)。
原告は、令和2年5月29日、本件特許について特許無効審判(無効2020−800056号、以下「本件無効審判」という。)を請求し(甲31)、特許庁は、令和3年4月20日、結論を「本件審判の請求は、成り立たない。」と15 する審決(以下「本件審決」という。別紙1のとおり。)をし、その謄本は、同年5月6日、原告に送達された。
原告は、令和3年5月28日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載20 本件特許の請求項1ないし17の記載は次のとおりである(以下、請求項1ないし17に記載された発明を、請求項の番号に応じてそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明17」といい、これらをまとめて「本件各発明」という。甲14の1)。
? 請求項1(本件発明1)25 マッサージ装置であって、
マッサージ部と、
2リモートコントローラと、
前記マッサージ部の運動を駆動するように機能する駆動部と、
前記駆動部と接続された、縮小命令セットコンピュータであるマイクロコトローラとを備え、前記マイクロコントローラは、
5 外部装置と接続し、
前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードと、前記マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを、暗号化された形式で前記外部装置から受信して前記マッサージプログラムをメモリに保存し、
10 前記外部装置から受信した前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを復号し、
前記アイコンを前記リモートコントローラに保存させ、
一連のマッサージ動作を身体に施すために前記マッサージ部を介して前記復号されたマッサージプログラムを実行する15 ように構成される、マッサージ装置。
? 請求項2(本件発明2)前記マイクロコントローラは前記外部装置から受信した前記マッサージプログラムを保存するための内部メモリを含む、請求項1に記載のマッサージ装置。
20 ? 請求項3(本件発明3)前記内部メモリは電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリを含む、請求項2に記載のマッサージ装置。
? 請求項4(本件発明4)前記マッサージ装置が無線通信インターフェースをさらに含み、前記マイ25 クロコントローラが前記無線通信インターフェースを経由して前記マッサージプログラムを前記外部装置から受信する、請求項1に記載のマッサージ装3置。
? 請求項5(本件発明5)前記無線通信インターフェースはブルートゥースインターフェースおよび/または Wi-Fi インターフェースを含む、請求項 4 に記載のマッサージ装置。
5 ? 請求項6(本件発明6)前記マイクロコントローラが前記マッサージプログラムを前記外部装置から受信する際に経由するユニバーサルシリアルバスインターフェースをさらに含む、請求項1に記載のマッサージ装置。
? 請求項7(本件発明7)10 前記マイクロコントローラは、
前記アイコンを前記リモートコントローラの第2のメモリに保存するように構成された、請求項1に記載のマッサージ装置。
? 請求項8(本件発明8)前記アイコンは、ビットマップファイルとして定義されている、請求項715 に記載のマッサージ装置。
? 請求項9(本件発明9)前記リモートコントローラは、前記マッサージプログラムを実行するために選択可能な、前記第2のメモリに保存された前記アイコンを表示するように機能するディスプレイ画面を有する、請求項7に記載のマッサージ装置。
20 ? 請求項10(本件発明10)マッサージチェアとして構成された、請求項1に記載のマッサージ装置。
? 請求項11(本件発明11)マッサージ関連サービスを提供するシステムであって、
請求項1に記載のマッサージ装置と、
25 第1および第2のサーバコンピュータと、
前記マッサージプログラムを購入するために前記第1のサーバコンピュ4ータと取引を実施し、
前記マッサージプログラムを前記第2のサーバコンピュータからダウンロードし、
前記マッサージプログラムを前記マッサージ装置に転送する5 ように機能する端末装置とを備える、システム。
? 請求項12(本件発明12)前記端末装置は、インターネット接続を介して前記第2のサーバコンピュータから前記マッサージプログラムをダウンロードし、ブルートゥース接続10 を介して前記ダウンロードされたマッサージプログラムを前記マッサージ装置に転送するように機能する、請求項11に記載のシステム。
? 請求項13(本件発明13)前記マッサージプログラムは、前記マッサージ装置により復号可能な暗号化された形式で、前記端末装置にダウンロードされる、請求項11に記載の15 システム。
? 請求項14(本件発明14)マッサージ装置を動作させるための方法であって、
サーバコンピュータから端末装置へ、前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムと、前記マッサージプロ20 グラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを転送するステップであって、前記マイクロコントローラは縮小命令セットコンピュータである、ステップと、
前記端末装置と前記マッサージ装置との間の接続を、前記端末装置によって、確立するステップと、
25 1つまたは複数の暗号化されたファイルに含まれる前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを前記端末装置から前5記マッサージ装置に、前記端末装置によって、転送するステップと、
前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、復号するステップと5 前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサージ装置のリモートコントローラに、
前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、保存するステップと、
前記アイコンを前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに、前記10 マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、表示するステップと、
前記復号されたマッサージプログラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、実行するステップと、
を含む、方法。
? 請求項15(本件発明15)15 前記マッサージプログラムは、インターネット接続を介して前記サーバコンピュータから前記端末装置に転送される、請求項14に記載の方法。
? 請求項16(本件発明16)前記マッサージプログラムは、無線接続を介して前記端末装置から前記マッサージ装置に転送される、請求項14に記載の方法。
20 ? 請求項17(本件発明17)前記無線接続は、ブルートゥース接続を含む、請求項16に記載の方法。
3 本件無効審判において主張された無効理由の概要? 無効理由1(サポート要件違反)本件発明1及び14において、受信ないし転送されているのは、
「縮小命令25 セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な」マッサージプログラムのプログラムコード、すなわち、機械が実行可能なプログ6ラム(機械語のプログラム)であるのに対して、本件特許の発明の詳細な説明において、受信ないし転送されているのは、機械が実行可能な形式に変換」「されていないマッサージプログラムのプログラムコード、すなわち、機械が実行できない形式のプログラム(高水準言語のプログラム)である。
5 したがって、本件発明1及び14のように、受信ないし転送されているのが、「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な」マッサージプログラムのプログラムコード、すなわち、機械が実行可能なプログラム(機械語のプログラム)であることは、発明の詳細な説明には記載されておらず、サポート要件違反である。
10 本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2ないし13並びに本件発明14の発明特定事項を包含する本件発明15ないし17についても、同様の理由によってサポート要件違反である。
したがって、本件発明1ないし17は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法(以下、単に「法」という。)36条6項1号に規定する要15 件(サポート要件)を満たしていないものであるから、それらの特許は法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
? 無効理由2(実施可能要件違反)無効理由1(前記?)に示したように、
「機械が実行可能な形式に変換」する前のプログラムは機械が実行できないことは技術常識(甲10参照)であ20 り、それにもかかわらず、
「機械が実行可能な形式に変換」する前において受信ないし転送されているプログラムが実行可能なものであるとすると、それが一体どのようなものであるのかは、発明の詳細な説明には一切記載されていない。そのため、発明の詳細な説明技術常識とに基づいて、本件発明1ないし17を実施しようとした場合に、どのように実施するかを当業者は理25 解することができず、発明の詳細な説明は、本件発明1ないし17を当業者が実施することができる程度に記載されておらず、実施可能要件違反である。
7したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1ないし17を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、
36条4項1号に規定する要件を満たしていないものであるから、それらの特許は法123条1項4号に該当し、無効とすべきものである。
5 ? 無効理由3(原文新規事項の追加)本件特許の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(WO 2014/196922 A2、甲14の2、以下「本件原文明細書等」という。)の段落[0037]から[0039]には、その翻訳文である甲14の3(特表2016−523111号公報)の段落【0029】から【0031】に10 示されるとおりの記載があり、この記載は本件明細書等(甲14の1)の段落【0029】から【0031】までの記載と同様である。この記載によれば、受信ないし転送されているのは、
「機械が実行可能な形式に変換」されていないマッサージプログラムのプログラムコードであり、受信ないし転送されているのが、「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ15 によって実行可能な」マッサージプログラムのプログラムコードであることは、本件原文明細書等(甲14の2)には一切記載されていない。
被請求人(特許権者)は、本件特許に係る拒絶査定不服審判の手続中に提出された令和元年11月1日提出の意見書(甲16)の2頁において、本件明細書等の段落【0009】及び【0016】を根拠として挙げるが、本件20 明細書等の段落【0009】及び【0016】を参照しても、マッサージ装置において、マッサージプログラムを実行するのは、縮小命令セットコンピュータであることが記載されているだけであり、段落【0032】に記載されている「機械が実行可能な形式に変換」する前において、受信ないし転送されているプログラムが、縮小命令セットコンピュータによって実行可能で25 あることは、本件原文明細書等には記載も示唆もされていない。
そのため、本件発明1及び14のように、受信ないし転送されているのが、
8「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な」マッサージプログラムのプログラムコードであることは、本件原文明細書等に記載した事項の範囲内にないから、原文新規事項追加の違反があり、
本件特許は、法184条の18の規定によって読み替える法123条1項55 号に該当し、無効とすべきものである。
? 無効理由4(進歩性欠如)本件発明1ないし17は、本件特許の国際出願日前に頒布又は利用可能となった甲1の1に記載された発明及び甲2ないし甲13、甲18ないし甲29から把握される公知技術技術常識ないしは周知技術に基づいて、当業者10 が容易に発明をすることができたものであり、法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
? 無効理由5(明確性要件違反)本件発明1における「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコント15 ローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」並びに本件発明14における「マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」及び「前記マイクロコントローラは縮小命令セットコンピュータである」は、多義的な解釈が可能であり、不明確である。特に、
「縮小命令セットコンピュータであるマイクロ20 コントローラ」という限定の存在を前提とすると、本件各発明における「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」は、何を包含し、何を包含しないのか、多義的な解釈が可能であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、本件発明1及び14並びにこれらを引用する本件発明2ない25 し13、15ないし17は明確性要件違反であり、法36条6項2号に規定する要件を満たしていないものであるから、それらの特許は、法123条19項4号に該当し、無効とすべきものである。
4 本件審決の判断の要旨無効理由に対する本件審決の判断の要旨は、次のとおりである。なお、本件審決は、無効理由5、無効理由1ないし4の順で判断した。
5 ? 無効理由5(明確性要件違反)についてア 本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という発明特定事項は、技術思想として明確に理解できるものであるから、このことによって本件発明1が不明確にな10 っているとはいえない。(本件審決第5、2?〔本件審決21〜22頁〕)イ 本件発明14の「マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」及び「前記マイクロコントローラは縮小命令セットコンピュータである」という発明特定事項は、技術思想として明確に理解できるものであるから、このことによって本件発明14が不明確になっているとは15 いえない。(本件審決第5、2?〔本件審決23頁〕)ウ そうすると、本件発明1ないし17は、法36条6項2号に規定する要件を満たしているから、それらの特許は、法123条1項4号に該当しない。(本件審決第5、2?〔本件審決23頁〕)? 無効理由1(サポート要件違反)について20 ア 本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。そして、本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2ないし13についても当然に、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
25 また、本件発明14は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が当該発明の課題を解決できる10と認識できる範囲のものであるといえる。そして、本件発明14の発明特定事項を包含する本件発明15ないし17も当然に、上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(本件審決第5、3?〔本件審決26頁〕)5 イ そうすると、本件発明1ないし17は、法36条6項1号に規定する要件を満たしているから、それらの特許は、法123条1項4号に該当しない。
(本件審決第5、3?〔本件審決28頁〕)? 無効理由2(実施可能要件違反)についてア 本件明細書等の発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要す10 ることなく、本件発明1ないし10のマッサージ装置、本件発明11ないし13のシステムを製造し、使用することができる程度の記載があるといえ、また、本件発明14ないし17のマッサージ装置を作動させるための方法についても、当該発明を使用することができる程度の記載があるといえる。したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件各15 発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。(本件審決第5、4?〔本件審決29頁〕)イ そうすると、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は法36条4項1号に規定する要件を満たしているから、本件特許は、法123条1項4号に該当しない。(本件審決第5、4?〔本件審決29〜30頁〕)20 ? 無効理由3(原文新規事項の追加)についてア 本件原文明細書 等 (甲14の2)の 段落 [0024 ]には 、「In oneembodiment, the microcontroller 130 can exemplary be a 32-bit ReducedInstruction Set Computing (RISC) microcontroller.」と記載されており、
これに対応する本件明細書等の段落【0016】には、
「一実施形態におい25 て、マイクロコントローラ 130 は典型的な例として、 ビットの縮小命令32セットコンピューティング(RISC)マイクロコントローラであり得る。」と11記載されている。したがって、本件原文明細書等には、マイクロコントローラ 130 が縮小命令セットコンピュータであることが記載されていると認められる。
「In stepまた、本件原文明細書等(甲14の2)の段落[0040]には、
5 608, in response to an activation signal, the microcontroller 130 thencan execute the new massage program through the massage unit 120 toapply a sequence of massage actions on the body of the user.」と記載されており、これに対応する本件明細書等の段落【0032】には、
「ステップ 608 で、起動信号に応じてマイクロコントローラ 130 は、一連のマッサ10 ージ動作をユーザの身体に施すため、マッサージ部 120 を介して新しいマッサージプログラムを実行し得る。 と記載されており、
」 マッサージプログラムは、マイクロコントローラ 130 によって実行可能であることが記載されていると認められる。
したがって、本件発明1に記載の「縮小命令セットコンピュータである15 マイクロコントローラ」「前記マイクロコントローラによって実行可能な、
マッサージプログラム」という事項は、本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものである。また、本件発明1に係るその余の発明特定事項についても本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものである。(本件審決第5、5?〔本件審決30頁〕)20 イ 原告(請求人)は、【0009】「 【0016】を参照しても、マッサージ装置において、マッサージプログラムを実行するのは、縮小命令セットコンピュータであることが記載されているだけであり、
【0032】に記載されている『機械が実行可能な形式に変換』する前において、受信ないし転送されているプログラムが、縮小命令セットコンピュータによって実行可25 能であることは、本件原文明細書等には記載も示唆もされていないから、
本件発明1及び14のように、受信ないし転送されているのが、
『縮小命令12セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な』マッサージプログラムのプログラムコードであることは、本件特許の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、原文新規事項追加の違反がある。(上記の【0009】」 、
5 【0016】及び【0032】は、本件明細書等の段落を指す。)と主張する。
しかしながら、マッサージプログラムが変換される前の受信ないし転送されている状態については、マイクロコントローラによって実行する段階ではないことから、この状態においてマッサージプログラムをどのような10 形式のものとしておくかは当業者が適宜に設定し得るものと理解できる。
一方、請求人が主張する 『機械が実行可能な形式に変換』「 する前において、
受信ないし転送されているプログラムが、縮小命令セットコンピュータによって実行可能であること」は、請求人独自の解釈に基づく理解であって、
本件特許の特許請求の範囲、本件明細書等に記載した事項を正解したもの15 とはいえない。
したがって、原告(請求人)の主張は当を得たものではなく、採用することはできない。
ウ そうすると、本件特許の特許請求の範囲、本件明細書等に記載した事項は、本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、本件特20 許は、法184条の18の規定によって読み替えた法123条1項5号には該当しない。(本件審決第5、5?〔本件審決31頁〕)? 無効理由4(進歩性欠如)についてア 主引用発明の認定本件特許の国際出願日前に頒布又は利用可能となった甲1の1(米国特25 許出願公開第2011/0055720号明細書)に記載された発明(主引用発明)は、次のとおりである。
13(ア) 甲1発明1「治療用健康装置100であって、
治療機構260、265とタブレットコンピュータまたはスマートフォン190と、
5 前記治療機構260、265と接続された主データ処理装置200とを備え、
前記主データ処理装置200は、
外部計算装置と接続し、
プログラミング言語に類似するテキストベースの治療用健康装置の指10 示言語からなる治療プログラムまたはシーケンスであって、パスワードを用いてタグ付けされた治療プログラムまたはシーケンスを前記外部計算装置からパスワードを入力してダウンロードし、
前記治療用健康装置100を動作させるための前記治療プログラムまたはシーケンスを使用する、
15 治療用健康装置100。 (本件審決第5、6?ア(ウ)〔本件審決53」頁〕)(イ) 甲1発明2「タブレットコンピュータまたはスマートフォン190及び主データ処理装置200を備える治療用健康装置100を動作させるための方法で20 あって、
電子設備から外部計算装置へ、治療プログラムまたはシーケンスを転送するステップと、
前記外部計算装置と前記治療用健康装置100との間の接続を、前記外部計算装置によって、確立するステップと、
25 前記治療プログラムまたはシーケンスを前記外部計算装置から前記治療用健康装置100に、前記外部計算装置によって、転送するステップ14と、
前記治療プログラムまたはシーケンスを、前記治療用健康装置100の前記主データ処理装置200によって、使用するステップと、
を含む、方法。(本件審決第5、6?ア(エ)〔本件審決53頁〕」 )5 イ 本件発明1の容易想到性について(ア) 本件発明1と甲1発明1の対比a 一致点「マッサージ装置であって、
マッサージ部と、
10 リモートコントローラと、
前記マッサージ部の運動を駆動するように機能する駆動部と、
前記駆動部と接続されたマイクロコントローラとを備え、
前記マイクロコントローラは、
外部装置と接続し、
15 前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードを、前記外部装置から受信して、
一連のマッサージ動作を身体に施すために前記マッサージ部を介してマッサージプログラムを実行するように構成される、マッサージ装置。(本件審決第5、6?イ〔本件」20 審決82頁〕)b 相違点1駆動部と接続されたマイクロコントローラによる処理に関し、本件発明1は、マッサージプログラムのプログラムコードと、前記マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツ25 とを、暗号化された形式で外部装置から受信して前記マッサージプログラムをメモリに保存し、前記外部装置から受信した前記マッサージ15プログラムと前記アイコンのグラフィカルコンテンツとを復号し、前記アイコンを前記リモートコントローラに保存させており、マッサージ部を介して実行される前記マッサージプログラムが「復号された」ものであるのに対し、甲1発明1は、マッサージプログラムのプログ5 ラムコードと、マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを、暗号化された形式で前記外部装置から受信しているかは明らかでなく、マッサージプログラムをメモリに保存しているかも明らかでなく、外部装置から受信したマッサージプログラムとアイコンのグラフィカルコンテンツとを復号しているかも明ら10 かでなく、アイコンをリモートコントローラに保存させているかも明らかでなく、したがって、マッサージ部を介して実行されるマッサージプログラムが「復号された」ものであるかも明らかでない点。
(本件審決第5、6?イ〔本件審決82〜83頁〕)c 相違点215 マイクロコントローラに関し、本件発明1は、縮小命令セットコンピュータであるのに対し、甲1発明1は、縮小命令セットコンピュータであるかは明らかでない点。
(本件審決第5、6?イ〔本件審決83頁〕)(イ) 相違点についての判断20 相違点1における本件発明1の「マッサージプログラムのプログラムコードと、マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを、暗号化された形式で外部装置から受信してマッサージプログラムをメモリに保存し、外部装置から受信したマッサージプログラムとアイコンのグラフィカルコンテンツとを復号し、アイコンを25 リモートコントローラに保存させ」るという一連の処理を「駆動部と接続したマイクロコントローラ」によって行うことは、甲2ないし甲13、
16甲18ないし甲29のいずれにも記載されていない。(本件審決83頁)甲2において、制御端末110は、テレビ100、テレビ電話101、
オーディオコンボ102と例示される複数の家電機器を制御対象とするものであるが、当該家電機器がその装置内部において当該機器の各種機5 能を駆動する駆動部と当該駆動部の制御を行う制御部を備えるものであることが技術常識であるところ、上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものと解される。そうすると、上記制御端末110は、家電機器の駆動部に接続して制御する装置ではないから、本件発明1の「駆動部に接続されたマ10 イクロコントローラ」に相当するものではない。(本件審決84頁)したがって、甲2に記載のシステムにおいて、制御端末110が被制御端末の操作実行ファイル及びその操作に対応するアイコンを受信し、
リモコン端末140に対して上記アイコンなどの識別子を送信しているとしても、上記相違点1における「駆動部に接続されたマイクロコント15 ローラによる処理」に関するものではなく、上記相違点1における本件発明1に係る構成を開示するものとはならない。(本件審決84頁)甲3において、AV用集中制御装置(12)は、CDプレーヤ等と例示される複数のAV用機器(14)を制御対象とするものであるが、当該AV用機器がその装置内部において当該機器の各種機能を駆動する駆動部と当20 該駆動部の制御を行う制御部を備えるものであることが技術常識であるところ、上記AV用集中制御装置(12)から複数のAV用機器(14)に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものと解される。
そうすると、上記AV用集中制御装置(12)は、AV用機器の駆動部に接続して制御する装置ではないから、本件発明1の「駆動部に接続された25 マイクロコントローラ」に相当するものではない。(本件審決84頁)したがって、甲3に記載のシステムにおいて、AV用集中制御装置(12)17が被制御端末のコマンド及びそのコマンドに対応するアイコンソースを受信し、リモコンに対して上記アイコンソースを送信しているとしても、
上記相違点1における「駆動部に接続されたマイクロコントローラによる処理」に関するものではなく、上記相違点1における本件発明1に係5 る構成を開示するものとはならない。(本件審決84頁)したがって、甲2及び甲3から共通して「制御装置が、プログラムと当該プログラムと関連づけられたアイコンとを併せて受信し、当該アイコンはリモートコントローラ等の操作手段に保存させる」という技術的事項が把握し得るとしても、当該制御装置が、本件発明1の「駆動部に10 接続されたマイクロコントローラ」に相当するものでない以上、上記相違点1における「駆動部に接続されたマイクロコントローラによる処理」に適用しようとする動機は生じ得ない。(本件審決84〜85頁)甲4において、アイコン情報を保存する対象は、携帯電話装置1が有するアイコン情報記憶領域13cであって、リモートコントローラでは15 ない。(本件審決85頁)したがって、甲4に記載のシステムにおいて、携帯電話装置1がMIDletアプリケーション及びアイコンをダウンロードし、ダウンロードしたアイコン情報をアイコン情報記憶領域13cに上書き保存しているとしても、上記相違点1における「アイコンをリモートコントローラ20 に保存」していないことから、上記相違点1における本件発明1に係る構成を開示するものとはならない。(本件審決85頁)甲5ないし甲7には、プログラムをダウンロードするシステムにおいて、購入手続き用のサーバコンピュータと、プログラムダウンロード用のサーバコンピュータとを利用することが記載されているものと認めら25 れるが、上記相違点1における本件発明1に係る構成に相当するものではない。そのほか甲8ないし甲12、甲18ないし甲29についてみて18も、いずれにも上記相違点1における本件発明1に係る構成の記載や示唆は見当たらない。(本件審決85頁)そうすると、相違点1における本件発明1に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。(本件審決85頁)5 (以上につき、本件審決第5、6?ウ)したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、
甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される公知技術技術常識ないしは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。(本件審決86頁)10 (以上につき、本件審決第5、6?オ)ウ 本件発明2ないし13の容易想到性について本件発明2ないし13は、本件発明1を直接あるいは間接に引用したものであり、本件発明1を発明特定事項に含むものであるところ、甲1発明1と対比すると、少なくとも相違点1及び相違点2を含むものとなる。し15 たがって、本件発明2ないし13も、本件発明1と同様に、甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される公知技術技術常識ないしは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(本件審決第5、6?〔本件審決86頁〕)20 エ 本件発明14の容易想到性について(ア) 本件発明14と甲1発明2の対比a 一致点「マッサージ装置を動作させるための方法であって、
サーバコンピュータから端末装置へ、前記マッサージ装置のマイク25 ロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムを転送するステップと、
19前記端末装置と前記マッサージ装置との間の接続を、前記端末装置によって、確立するステップと、
前記マッサージプログラムを前記端末装置から前記マッサージ装置に、前記端末装置によって、転送するステップと、
5 前記マッサージプログラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、実行するステップと、
を含む、方法。(本件審決第5、6?イ〔本件審決87頁〕」 )b 相違点3マッサージ装置のマイクロコントローラでの処理に関し、
10 本件発明14は、サーバコンピュータから端末装置を介してマッサージ装置に転送される情報が、マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムと当該マッサージプログラムと関連づけられたアイコンのグラフィカルコンテンツとが1つまたは複数の暗号化されたファイルに含まれるようにして転送されて、
15 前記マッサージプログラムと前記アイコンのグラフィカルコンテンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを、
前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって復号するステップと、前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサージ装置のリ20 モートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって保存するステップと、前記アイコンを前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって表示するステップと、前記復号されたマッサージプログラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラ25 によって実行するステップと、を有しているのに対し、
甲1発明2は、マイクロコントローラによって実行可能なマッサー20ジプログラムと当該マッサージプログラムと関連づけられたアイコンのグラフィカルコンテンツとが、1つまたは複数の暗号化されたファイルに含まれるようにして転送されているかは明らかでなく、したがって、前記マッサージプログラムと前記アイコンのグラフィカルコン5 テンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって復号するステップと、前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサージ装置のリモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコ10 ントローラによって保存するステップと、前記アイコンを前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって表示するステップと、前記復号されたマッサージプログラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって実行するステップと、を有しているかも明らかでない15 点。
(本件審決第5、6?イ〔本件審決87〜88頁〕)c 相違点4マイクロコントローラに関し、本件発明14は、縮小命令セットコンピュータであるのに対し、甲1発明2は、縮小命令セットコンピュータであるかは明らかでない点。
(本件審決第5、6?イ〔本件審決820 8頁〕)(イ) 相違点についての判断相違点3は、その内容からみて、本件発明1と甲1発明1との相違点1に実質上対応するものであるところ、相違点3における本件発明14のマッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサー25 ジプログラムと当該マッサージプログラムと関連づけられたアイコンのグラフィカルコンテンツとが1つまたは複数の暗号化されたファイルに21含まれるようにして転送されて、前記マッサージプログラムと前記アイコンのグラフィカルコンテンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを復号するステップと、前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコン5 テンツを前記マッサージ装置のリモートコントローラに保存するステップと、前記アイコンを前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに表示するステップと、前記復号されたマッサージプログラムを実行するステップとからなる一連のステップを、マッサージ装置のマイクロコ「ントローラ」で行うことは、甲2ないし甲13、甲18ないし甲29の10 いずれにも記載されておらず、相違点1についての判断に示したとおり、
当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、本件発明14は、相違点4について検討するまでもなく、
甲1発明2及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される公知技術技術常識ないしは周知技術に基づいて、当業者が15 容易に発明をすることができたものとはいえない。
(本件審決第5、6?ウ〔本件審決88〜89頁〕)オ 本件発明15ないし17の容易想到性について本件発明15ないし17は、本件発明14を直接あるいは間接に引用したものであり、本件発明14を発明特定事項に含むものであるところ、甲20 1発明2と対比すると、少なくとも相違点3及び相違点4を含むものとなる。したがって、本件発明15ないし17も、本件発明14と同様に、甲1発明2及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される公知技術技術常識周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(本件審決第5、6?〔本件審25 決89頁〕)カ 小括22本件発明1ないし17に係る特許は、法29条2項に違反してされたものではないから、法123条1項2号には該当しない。
(本件審決第5、6?〔本件審決89頁〕)5 原告主張の取消事由5 ? 取消事由1請求項1の原文新規事項の判断の誤りないし理由不備(無効理由3関係)? 取消事由2請求項14の原文新規事項の判断遺脱(無効理由3関係)? 取消事由310 本件発明1ないし13のサポート要件の判断の誤り(無効理由1関係)? 取消事由4本件発明14ないし17のサポート要件の理由不備(無効理由1関係)? 取消事由5明確性要件の判断の誤り(無効理由5関係)15 ? 取消事由6実施可能要件の判断の誤り(無効理由2関係)? 取消事由7進歩性の判断の遺脱ないし審理不尽(無効理由4関係)? 取消事由820 甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定の誤り(無効理由4関係)? 取消事由9相違点の判断の誤り(無効理由4関係)第3 当事者の主張25 1 取消事由1(請求項1の原文新規事項の判断の誤りないし理由不備〔無効理由3関係〕)について23〔原告の主張〕? 本件発明1におけるマイクロコントローラが受信するプログラムコードの意味本件発明1には、前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサー「5 ジプログラムのプログラムコード(中略)を、暗号化された形式で(中略)受信し」という工程(以下「受信工程」という。)がある。受信工程において用いられている「実行可能」という語は、技術用語であって、
「コンピュータの中央処理装置(CPU)が、直ちに『実行』できる形になったもの、そのための準備が完了したものについて用いられる。(英和コンピュータ用語大」10 辞典第3版「executable」の項、438頁〜439頁、甲48)のであって、
プログラムが「実行可能」な段階になる前の「実行不可能(non-executable)」(英和コンピュータ用語大辞典第3版「executable program」の項、439頁、甲48)な段階にあるプログラムとは区別される概念である。そして、
本件特許の請求項1(本件発明1)には、
「縮小命令セットコンピュータであ15 るマイクロコントローラ」という記載があるから、受信工程でいう「前記マイクロコントローラ」は、縮小命令セットコンピュータである。
したがって、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに20 縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味する。
? 本件原文明細書等の記載ア 本 件 原 文 明 細 書 等 ( 甲 1 4 の 2 ) の 段 落 [ 0 0 4 0 ] に は 、 the「microcontroller 130 then can execute the new massage program・・」25 (マイクロコントローラ 130 はマッサージプログラムを実行し得る・・)との記載があるだけであって、単に、マッサージプログラムを実行する時点24において、最終的に、マッサージプログラムを実行し得る(can execute)ことが記載されているにすぎず、本件発明1の受信工程において受信したときのプログラムコードの形式についての記載は全く存在せず、受信したときにプログラムコードが「実行可能」(executable)であることを意味する5 ものではない。
イ 本件原文明細書等の段落[0039]には、受信した後のマッサージプログラムコードに関し、
「・・復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能な形式に変換」(… decrypt … 、convert the code of themassage program into a machine executable form)することが記載され10 ており、この記載は、プログラムコードの受信・復号の後に、そのプログラムコードを機械が実行可能な形式に変換することで、機械が実行可能な形式のプログラムコードになることを示しているから、本件原文明細書等に記載されているのは、受信・復号の後に、実行可能形式に変換して、実行することだけであり、受信したときに既に実行可能形式であるものは、
15 記載されていない。
ウ そうすると、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導かれるマイクロコントローラは、受信・復号した後に、マッサージプログラムのプログラムコードを、機械が実行可能な形式に変換する「変換機能を備えるマイクロコントローラ」だけである。そのため、受信されるプログ20 ラムコードは、機械が実行可能な形式にマイクロコントローラによって変換される前の形式のものであり、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードではない。
? 原文新規事項の追加の有無25 そうすると、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」は、受信されるプログラムコ25ードの形式について、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するところ、このようなプログラムコードは、本件原文明細書等には記載されていない。
5 本件審決は、本件発明1を構成する各事項を総合して導かれる受信工程の技術的意義から離れ、単に受信工程に含まれる「前記マイクロコントローラ」(=縮小命令セットコンピュータ)「マッサージプログラム」「実行可能」、 、
という事項を、本件原文明細書等の段落[0040]に記載された「microcontroller(マイクロコントローラ)、
」「massage program(マッサー10 ジプログラム)、
」「can execute(実行し得る)」という用語と形式的に対比したにすぎず、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、受信工程が新たな技術的事項を導入するものであるか否かという判断を示しておらず、理由不備であるとともに、原文新規事項の追加の判断を誤ったものである。
15 ? 被告の主張に対し被告が指摘する本件原文明細書等の段落[0017]の「a plurality ofmassage programs that are executable on the massage apparatus 106」(マッサージ装置 106 上において実行可能な複数のプログラム)という記載は、当業者にとって、マッサージプログラムが実行可能となる場所が、
「マッ20 サージ装置 106 上において」であることを説明した記載であるとしか理解できないから、このような記載に接しても、当業者は、マッサージプログラムの言語の形式について、機械語に変換するようなことを要せず直ちにマイクロコントローラによって実行可能なプログラムであることを説明したものと理解することはできない。
25 また、被告の指摘する本件原文明細書等の段落[0024]の記載は、マイクロコントローラの機能・種類を説明したものにすぎず、当業者は、マッサ26ージプログラムの言語の形式を説明したものと理解することはできない。
被告の主張は、マッサージプログラムが実行可能となる場所の説明、及びマイクロコントローラの機能・種類の説明から、これらとは別の技術的事項である「マッサージプログラムのプログラムコードの言語の形式」という技5 術的事項を作出するものであって、失当である。
被告は、本件原文明細書等の段落[0039]に関し、
「復号、変換、保存のそれぞれが『行われ得る』ことを開示しているものであるから、プログラムコードを機械が実行可能な形式に変換する以外の態様を排除する記載ではない。」と主張しているが、仮に、
「排除する記載ではない」としても、
「縮小10 命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という言語の形式が、本件原文明細書等に記載されているわけではないから、被告の主張は失当である。
〔被告の主張〕本件原文明細書等の段落[0017]及び[0024] 本件明細書等の段落( 【015 009】及び【0016】)の記載から、本件原文明細書等の段落[0017]にいう「マッサージ装置 106 で実行可能な複数のマッサージプログラム」は、マッサージ装置 106 のマイクロコントローラ 130 によって実行されるプログラムを意味することは明らかである。そして、本件原文明細書等の段落[0024](本件明細書等の段落【0016】)の記載から、マッサージ装置 106 の動作を20 制御し監視するマイクロコントローラ 130 は、RISC マイクロコントローラ(縮小命令セットコンピューティングマイクロコントローラ)であり得るから、サーバコンピュータ 103 に保存される「マッサージ装置 106 で実行可能な複数のマッサージプログラム」は、マッサージ装置のマイクロコントローラ 130 が縮小命令セットコンピューティングマイクロコントローラである場合には、縮小25 命令セットコンピュータであるマイクロコントローラで実行可能な(executable)プログラムである。
27また、本件原文明細書等の段落[0025]及び[0034](本件明細書等の段落【0017】及び【0026】)には、このマッサージプログラムのファイルは、サーバコンピュータ 103 から、端末装置 104 にダウンロードされ、端末装置 104 からマッサージ装置 106 に転送されることが記載され、さらに、マッ5 サージプログラムのファイルは、マッサージ装置 106 でのみ復号可能な暗号化された形式で端末装置 104 にダウンロードされ得ることが記載されている。
さらに、本件原文明細書等の段落[0039](本件明細書等の段落【0031】)には、「the microcontroller 130 can decrypt the file(s) to recoverthe massage program code and the graphical icons (the icons may be10 defined as bitmap files), convert the code of the massage program intoa machine executable form, and then respectively store the massageprogram code and the icons in the memory 136 and the remote controller150.」と、復号、変換、保存のそれぞれが「行われ得る」ことを開示しているものであるから、プログラムコードを機械が実行可能な形式に変換する以外の15 態様を排除する記載ではない。
以上によれば、本件原文明細書等には、請求項1の「縮小命令セットコンピュータである」「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」を、暗号化された形式でサーバコンピュータ 103(外部装置)から端末装置 104 にダウンロード(受信)することが記載されているから、本件発20 明1について、本件審決による原文新規事項の追加の判断に誤りはない。
原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコ25 ードであることを意味すると主張するが、その主張は根拠がない。
2 取消事由2(請求項14の原文新規事項の判断遺脱〔無効理由3関係〕)につ28いて〔原告の主張〕? 本件特許の請求項14の原文新規事項の追加の有無の判断本件発明1では「受信し」とされている事項が、本件発明14では「転送5 する」として特定されているから、本件発明1と本件発明14は、共通する事項があるとしても、異なる事項を含んでおり、本件特許の請求項1と請求項14は、それぞれ独立項であり、引用関係にあるわけでもないから、本件特許の請求項14(本件発明14)の原文新規事項の追加の有無は、請求項1(本件発明1)の原文新規事項の追加の有無とは別個に判断されるべきで10 あるが、本件審決がこれらを別個に判断していないのは誤りである。
なお、原文新規事項の追加の判断が実質的にされていると評価するには、
「転送する」を含む特許請求の範囲の請求項14(本件発明14)が、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かという判断がさ15 れていることが必要であるところ、本件審決は、そもそも、請求項1(本件発明1)とともに、そのような手法による判断を欠いている。仮にそのような判断をしていると解したとしても、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」とは、
プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するよう20 なことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムであることを意味するにもかかわらず、本件審決の判断は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」は、直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムに限られないことを前25 提とするものであり、本件発明 1 の原文新規事項の追加の判断と同様に誤っている。
29? 被告の主張に対し「転送する」ことが本件原文明細書等に記載されているとしても、単にそれだけでは、請求項14が本件原文明細書等に記載されていることにはならないから、被告の主張は失当である。
5 〔被告の主張〕本件原文明細書等には「マッサージプログラム DMP は、サーバコンピュータ(例、サーバコンピュータ 103)から端末装置 104 にダウンロードされ、次いでメモリ 136 に保存するために端末装置 104 からマッサージ装置 106 に転送され得ること」が記載されている。
10 したがって、本件発明14について、
「縮小命令セットコンピュータである」「マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」を「転送する」ことが本件原文明細書等に記載されているから、本件審決における原文新規事項の追加の判断に誤りはない。
原告は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによ15 って実行可能なマッサージプログラム」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムであることを意味すると主張するが、その主張は根拠がなく、採用することができない。
3 取消事由3(本件発明1ないし13のサポート要件の判断の誤り〔無効理由20 1関係〕)について〔原告の主張〕? 本件発明1のサポート要件の判断の誤り前記1の〔原告の主張〕?のとおり、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、
25 プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッ30サージプログラムのプログラムコードであることを意味するところ、これは、
本件原文明細書等には記載されておらず、そのため、本件原文明細書等の翻訳である本件明細書等にも記載されていない。
本件明細書等の発明の詳細な説明の「・・復号し、マッサージプログラム5 のコードを機械が実行可能な形式に変換」(段落【0031】 という記載は、
)プログラムコードの受信・復号の後に、そのプログラムコードを機械が実行可能な形式に変換することで、機械が実行可能な形式のプログラムコードになることを示しているから、発明の詳細な説明に記載されているのは、受信・復号の後に、実行可能形式に変換して実行することだけであって、受信した10 ときに既に実行可能形式であるプロググラムコードは、記載されていない。
そうすると、本件発明1の受信工程 「前記マイクロコントローラによって(実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード(中略)を、暗号化された形式で(中略)受信し」という工程)は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
15 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるとする本件審決の判断は誤りである。
? 本件発明2ないし13のサポート要件の判断の誤り本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な20 説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえず、サポート要件を充足しないから、本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2ないし13も、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえず、サポート要件を充足しない。
25 したがって、本件発明2ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決で31きると認識できる範囲のものであるといえるとする本件審決の判断は誤りである。
〔被告の主張〕取消事由1に関して述べたように、本件原文明細書等には、請求項1の「縮5 小命令セットコンピュータである」「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」 暗号化された形式でサーバコンピュータ 103を、
(外部装置)から端末装置 104 にダウンロード(受信)することが記載されており、本件原文明細書等の翻訳文である本件明細書等についても同様である。
そのため、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の10 詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を充足する。
したがって、本件発明1がサポート要件を充足するという本件審決の判断に誤りはない。
また、本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2ないし13も、発明15 の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を充足する。
したがって、本件発明2ないし13がサポート要件を充足するという本件審決の判断にも誤りはない。
20 原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味すると主張するが、その主張には根拠がない。
25 4 取消事由4(本件発明14ないし17のサポート要件の理由不備〔無効理由1関係〕)について32〔原告の主張〕? 本件発明14ないし17のサポート要件の判断本件発明1では「受信し」とされている事項が、本件発明14では「転送する」として特定されているから、本件発明1と本件発明14は、共通する5 事項があるとしても、異なる事項を含んでおり、本件特許の請求項1と請求項14は、それぞれ独立項であり、引用関係にあるわけでもないから、本件発明14のサポート要件違反の有無は、本件発明1のサポート要件違反の有無とは別個に判断されるべきであるが、本件審決がこれらを別個に判断していないのは誤りである。
10 また、仮に本件審決が、本件発明14についてサポート要件の充足の判断をしていると解したとしても、その判断は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」は、直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムに限られないことを前提とするものであり、このような本件審決の判15 断は誤っている。
? 被告の主張に対し「転送する」ことが本件原文明細書等に記載されているとしても、単にそれだけでは、請求項14が本件原文明細書等に記載されていることにはならないから、被告の主張は失当である。
20 〔被告の主張〕取消事由2に関して述べたように、本件原文明細書等には、
「縮小命令セットコンピュータである」「マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」を「転送する」ことが記載されており、本件原文明細書等の翻訳文である本件明細書等についても同様である。そのため、本件発明14は、発25 明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要33件を充足する。
したがって、本件発明14がサポート要件を充足するという本件審決の判断に誤りはない。
また、本件発明14の発明特定事項を包含する本件発明15ないし17も、
5 発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を充足する。
したがって、本件発明15ないし17がサポート要件を充足するという本件審決の判断に誤りはない。
10 原告は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムであることを意味すると主張するが、その主張には根拠がない。
15 5 取消事由5(明確性要件の判断の誤り〔無効理由5関係〕)について〔原告の主張〕本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という発明特定事項は、取消事由1において主張したよう20 に、受信したプログラムが(暗号化された形式であること以外に)、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味すると解される。しかし、本件審決は、本件明細書等における発明の詳細な説明参酌することにより、上記の発明特定事項について、
「暗号化25 された形式でマイクロコントローラが受信している状態においても、マッサージプログラムのプログラムコードがマイクロコントローラで実行可能な状態34にあることまで特定するものと解すべきではないし、そのような必然性はない」と認定しているから、上記の発明特定事項は、多義的であり、あるいはどのように解釈すべきであるかが不明であって、第三者は、本件発明1の技術的範囲に含まれるものと含まれないものを明確に区別できない。そのため、本件発明5 1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、明確性要件を充足しない。
また、本件発明14も、本件発明1と同様に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、明確性要件を充足しない。
そうすると、請求項1を引用する請求項2ないし13に係る本件発明2ない10 し13、請求項14を引用する請求項15ないし17に係る本件発明15ないし17も同様に明確性要件を充足しない。
したがって、本件発明 1 ないし17は明確性要件を充足するとした本件審決は誤りである。
〔被告の主張〕15 本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という発明特定事項は、明確に理解できるものであるから、
本件発明1は明確性要件を充足する。
原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッ20 サージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するという主張を前提として、本件発明1は明確性要件を充足しないと主張するが、その前提とする主張は根拠がないし、本件発明125 が多義的であると解する余地もない。
また、本件発明14も、本件発明1と同様に明確性要件を充足する。
35そして、請求項1を引用する請求項2ないし13に係る本件発明2ないし13、請求項14を引用する請求項15ないし17に係る本件発明15ないし17も明確性要件を充足する。
したがって、本件発明 1 ないし17は明確性要件を充足するとした本件審決5 の判断に誤りはない。
6 取消事由6(実施可能要件の判断の誤り〔無効理由2関係〕)について〔原告の主張〕本件明細書等の発明の詳細な説明には、受信した後のマッサージプログラムコードに関し、
「・・復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能10 な形式に変換」(段落【0031】)することが記載されており、この記載は、
プログラムコードの受信・復号の後に、そのプログラムコードを機械が実行可能な形式に変換することで、機械が実行可能な形式のプログラムコードになることを説明しているものと、当業者であれば理解する。しかし、他方で、取消事由1の〔原告の主張〕のとおり、本件発明1の「前記マイクロコントローラ15 によって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味し、本件発明1の受信工程は、
マッサージプログラムのプログラムコードを受信したときに、そのプログラム20 コードが実行可能な形式のプログラムコードであり、そのようなプログラムコードを暗号化された形式で受信していることを特定している。そうすると、プログラムコードの受信・復号の後に、そのプログラムコードを機械が実行可能な形式に変換することで、機械が実行可能な形式のプログラムコードになることを説明していると理解される段落【0031】を前提として、本件発明1の25 ように実行可能な形式のプログラムを暗号化された形式で受信するというのは、一体どのような技術を意味しているのか、当業者は、理解することはでき36ない。そのため、当業者は、本件発明1に係る物をどのように製造し、使用すればよいか理解することができないから、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足しない。
また、本件発明14に関しても同様に、プログラムコードの受信・復号の後5 に、そのプログラムコードを機械が実行可能な形式に変換することが説明された段落【0031】を前提とすると、実行可能な形式のプログラムを暗号化された形式で転送するというのは一体どのような技術を意味しているのか、当業者は理解することができない。そのため、当業者は、本件発明14に係る方法をどのように使用すればよいか理解することができないから、本件明細書等の10 発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足しない。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明実施可能要件を充足するとする本件審決の判断は誤りである。
〔被告の主張〕当業者は、本件明細書等の発明の詳細な説明及び出願当時の技術常識に基づ15 いて、本件発明1ないし13に係る物を製造、使用し、本件発明14ないし17に係る方法を使用することができる。
したがって、本特発明1ないし17について、実施可能要件を充足するとした本件審決の判断に誤りはない。
原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッ20 サージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するという主張を前提として、本件発明1は実施可能要件を充足しないと主張し、本件発明14についても同様な主張をするが、その25 前提とする主張は根拠がない。
7 取消事由7(進歩性の判断の遺脱ないし審理不尽〔無効理由4関係〕)について37〔原告の主張〕? 本件発明1ないし13についての進歩性の判断の誤り本件審決は、本件発明1と甲 1 発明1との一致点として、
「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」を含めて認定している一方で、相違点1の冒頭5 において「駆動部と接続されたマイクロコントローラによる処理に関し」として、一致点として認定された「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」が、相違点1の一部に形式的に含まれるように特定している。ここで、相違点1における実質的な相違点は、「駆動部と接続されたマイクロコントローラによる処理に関し」の後に続いて記載されている「処理内容」にあること10 が明らかであるにもかかわらず、本件審決では、一貫して、一致点である「駆動部と接続されたマイクロコントローラ」に着目して判断しており、相違点1における実質的な相違点である「処理内容」についての容易想到性の判断は存在しない。そのため、本件審決では、相違点1に関する判断が、形式的には存在するが、相違点1として認定された実質的な相違点についての判断15 が存在せず、相違点2についての判断も存在しないから、結局、本件審決は、
実質的には、本件発明1の相違点についての判断を何ら示していないものである。
したがって、本件審決には、本件発明1の進歩性の判断に誤りがある。また、請求項1を引用する請求項2ないし13に係る本件発明2ないし13の20 進歩性の判断にも誤りがある。
? 本件発明14ないし17についての進歩性の判断の誤り本件審決は、本件発明14と甲 1 発明2との一致点として、
「前記マッサージ装置のマイクロコントローラ」を含めて認定している一方で、相違点3の冒頭において「マッサージ装置のマイクロコントローラでの処理に関し」と25 して、一致点として認定された「前記マッサージ装置のマイクロコントローラ」が、相違点3の一部に形式的に含まれるように特定している。ここで、
38相違点3における実質的な相違点は、「マッサージ装置のマイクロコントローラでの処理に関し」の後に続いて記載されている「処理内容」にあることが明らかであるにもかかわらず、本件審決では、一貫して、一致点である「前記マッサージ装置のマイクロコントローラ」に着目して判断しており、相違5 点3における実質的な相違点である「処理内容」についての容易想到性の判断は存在しない。そのため、本件審決では、相違点3に関する判断が、形式的には存在するが、相違点3として認定された実質的な相違点についての判断が存在せず、相違点4についての判断も存在しないから、結局、本件審決は、実質的には、本件発明14の相違点についての判断を何ら示していない10 ものである。
したがって、本件審決には、本件発明14の進歩性の判断に誤りがある。
また、請求項14を引用する請求項15ないし17に係る本件発明15ないし17の進歩性の判断にも誤りがある。
〔被告の主張〕15 本件審決は、相違点1に関し、本件発明1と甲1発明1とが共通に備える一致点として認定した「前記駆動部と接続されたマイクロコントローラ」が相違するとして、相違点1の認定を行っているのではなく、
「マイクロコントローラによる処理に関し」「暗号化された形式で外部装置から受信して前記マッサー、
ジプログラムをメモリに保存」 「前記マッサージプログラムと前記アイコンし、
20 のグラフィカルコンテンツとを復号」 「前記アイコンを前記リモートコントし、
ローラに保存させ」、
「前記マッサージプログラムが『復号された』ものである」か否かという点が相違すると認定していることは、本件審決の文言上明らかである。
また、本件審決は、相違点3に関し、本件発明14と甲1発明2とが共通に25 備える一致点として認定した「マッサージ装置のマイクロコントローラ」が相違するとして、相違点3の認定を行っているのではなく、
「マイクロコントロー39ラでの処理に関し」「マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可、
能なマッサージプログラムと当該マッサージプログラムと関連づけられたアイコンのグラフィカルコンテンツとが1つまたは複数の暗号化されたファイルに含まれるようにして転送」 「前記1つまたは複数の暗号化されたファイし、
5 ルを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって復号」し、
「前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサージ装置のリモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって保存」 「前記アイコンし、
を前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに、前記マッサージ装置の10 前記マイクロコントローラによって表示」 「前記復号されたマッサージプロし、
グラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって実行する」か否かという点が相違すると認定していることは、本件審決の文言上明らかである。
したがって、本件審決の相違点の認定及びそれに基づく進歩性の判断に誤り15 はなく、取消事由7に理由はない。
8 取消事由8(甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定の誤り〔無効理由4関係〕)について〔原告の主張〕? 本件審決は、甲2に関して、
「当該家電機器がその装置内部において当該機20 器の各種機能を駆動する駆動部と当該駆動部の制御を行う制御部を備えるものであることが技術常識であるところ、上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものと解される。(本件審決第5、6?ウ〔本件審決84頁〕」 )と認定しているが、証拠に基づかずに技術常識を認定しており、さらに、証拠に基づかない技術常識25 を前提に、
「上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものと解される。 という解釈を、
」 やはり40証拠に基づかず導いており、理由不備の瑕疵がある。
甲2の段落【0035】の記載によれば、甲2の制御端末110は、家電機器である被制御端末を操作するものであるから、その被制御端末(家電機器)が備える駆動部には、制御端末110からの信号が伝わるのが当然であ5 る。そうすると、甲2の制御端末110は、駆動部に信号が伝わるように駆動部に接続されているといえるから、甲2の制御端末110は、
「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」といえる。本件審決が認定した、証拠に基づかない技術常識及び解釈は、甲2の記載自体から導かれる理解に反するものであり、誤っている。
10 仮に、本件審決が認定した「制御部」を考慮した場合であっても、甲2の制御端末110は、少なくとも、制御部を介して駆動部に間接的に接続されているといえるところ、本件発明1では「駆動部に、直接、接続されたマイクロコントローラ」と限定されているわけではないから、制御部を介した間接的な接続であっても、
「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」といえ15 ることは明らかである。本件審決は、かかる点においても誤っている。
しかも、
「上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものと解される。」との本件審決の解釈は、甲2の「上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令」が、
「駆動部」に対して「実行されるものではない」という解釈を示すことを意20 図していると解されるところ、甲2の「上記制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令」が、
「駆動部」に対して実行されるものではないという解釈は、甲2の記載自体に反する。
? さらに、本件審決は、甲3に関し、甲2と同様に、証拠に基づかず、
「当該AV用機器がその装置内部において当該機器の各種機能を駆動する駆動部と25 当該駆動部の制御を行う制御部を備えるものであることが技術常識である」(本件審決第5、6?ウ〔本件審決84頁〕)として、技術常識を認定してお41り、理由不備の瑕疵がある。
? そうすると、本件審決が甲2及び甲3の記載事項から認定した技術事項は、
証拠に基づかないものであって、誤りである。
〔被告の主張〕5 甲2及び甲3に記載された技術事項に関して、本件審決の認定(前記第2、
4?イ(イ)、本件審決第5、6?ウ〔本件審決83〜84頁〕)に誤りはない。
本件審決では、相違点1に係る本件発明1の構成に関して、「甲2〜甲13、
甲18〜甲29のいずれにも記載されていない」(本件審決第5、6?ウ〔本件審決83頁〕)と各証拠による認定をしていることは明らかである。また、甲210 及び甲3に関して原告が指摘する本件審決の記載は、甲2及び甲3に相違点1に係る本件発明1の構成が記載されていないことについて、より詳細に検討した部分であり、甲2又は甲3に相違点1に係る本件発明1の構成が記載されていることについては、無効審判請求人である原告に主張立証責任があるところ、
原告は、各証拠にそれが記載されていることについて具体的な主張立証を行っ15 ていない。そうすると、本件審決においては、証拠に基づく判断がされており、
進歩性の判断に誤りはないから、取消事由8は理由がない。
9 取消事由9(相違点の判断の誤り〔無効理由4関係〕)について〔原告の主張〕? 本件発明1と甲1発明1との相違点について20 取消事由7の〔原告の主張〕のとおり、本件審決では、相違点1における実質的な相違点について容易想到性の判断を行っていないが、本件審決が行った相違点の判断についても、次のとおり誤りがある。
ア 相違点1の判断について(ア) 甲1の1には、治療用健康装置(マッサージチェア)のプログラムを25 ユーザが選択するために、対話型グラフィカルユーザインターフェースが利用されることが開示されているから、甲1の1のプログラムは、ア42イコンによって選択されることが予定されているものであり、プログラムが治療用健康装置(マッサージチェア)にダウンロードされる際には、
プログラムとともにアイコンのグラフィカルコンテンツも併せてダウンロードされていると考えるのが当業者の自然な理解であり、プログラム5 とともにアイコンのグラフィカルコンテンツを併せてダウンロードしていることは、甲1の1に記載されているに等しい事項といえる。仮に、
アイコンが併せてダウンロードされていなければ、ユーザは、ダウンロードしたプログラムを選択することができず、技術的にみて、そのようなことをすることはあり得ない。このことは、
「プログラムを装置の外部10 からインターネット等を通じて受信し実行する装置において、当該プログラムだけでなく、それと関連づけられたアイコンのグラフィカルコンテンツも併せて受信し、前記アイコンを操作手段に保存させること」が、
周知技術として、
周知技術1」と定義されていること(本件無効審判の審判請求書(甲31)51頁)(このような技術は、甲2〜甲4、甲42、
15 甲43に記載されている。)からも裏付けられる。また、これは、プログラムが格納されるファイルにはプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツも併せて格納されることが、周知慣用技術であって、当業者にとって常套手段であることによっても裏付けられる(甲44、甲45)。
20 したがって、本件審決が認定した相違点1のうち、マッサージプログラムのプログラムコードを、暗号化された形式で受信する際に、
「前記マッサージプログラムのプログラムコードと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツも、暗号化された形式で受信する」ことは、実質的な相違点ではない。
25 仮に、上記の点が、甲1の1に記載されているに等しい事項でないとしても、アイコンによって選択されることが予定されているプログラム43をダウンロードする際にアイコンも併せて受信しなければ、ダウンロードしたプログラムを選択することができなくなるから、アイコンによって選択されることが予定されているプログラムをダウンロードする際に、そのプログラムがアイコンによって選択できるように対処すべきこ5 とは、当業者が当然考慮すべき普遍的な課題であり、その普遍的課題の解決の手段として、プログラムをダウンロードする際にアイコンも併せて受信すること自体が周知技術であるから、プログラムをダウンロードする際にアイコンも併せて受信することは、当業者であれば容易になし得たことである。
10 (イ) さらに、甲1発明1の治療用健康装置は、マッサージプログラムのプログラムコードを、インターネット等を通じて受信するものであるところ、インターネット等の通信では、情報保護のために、SSLなどの暗号化/復号技術が広く行われている(甲28、甲29)。したがって、
甲1発明1のインターネット通信において、情報保護のために、広く行15 われている暗号化/復号技術を採用することは、当業者の設計的事項にすぎない。そして、甲1発明1において、プログラムの受信に用いられるインターネット通信を暗号化すると、プログラム等の受信側である治療用健康装置では、必然的に、プログラム等を暗号化した形式で受信し、
復号することになる。そのような暗号化/復号をすることにより格別な20 効果を奏するものでもない。
しかも、装置の外部からプログラム等を受信する際に、プログラム等を暗号化された形式で受信し、受信した装置で復号すること(暗号化/復号技術)も、コンピュータ(コンピューティング)技術ないしデータ通信技術の技術分野において周知性の高い技術である(甲26、甲27)。
25 そうすると、甲1発明1において、ダウンロードに際して、周知性の高い暗号化/復号技術を採用することも、当業者の設計的事項にすぎず、
44それにより格別な効果を奏するものでもない。
(ウ) また、ダウンロードしたプログラムをメモリに保存することは、通常行う事項であり、甲1発明1においても当然実行しているものであり、
この点は実質的な相違点ではない。
5 (エ) そして、相違点1においては、
「アイコンをリモートコントローラに保存させること」が特定されているが、アイコンはプログラム選択という操作に利用されるものであり、甲1発明1においては、操作手段としてリモートコントローラを有しているのであるから、アイコンによって選択されることが予定されているプログラムをダウンロードした後、そ10 のプログラムがアイコンによって選択できるように対処すべきことは、
当業者が当然考慮すべき普遍的な課題であり、その普遍的課題に照らして、甲1発明1に操作手段として備わっているリモートコントローラにアイコンを保存させることは、当然に必要とされることであるとともに、
アイコンをリモートコントローラに保存しなければ、プログラムを選択15 できないことになるから、当業者であれば当然に考慮する設計的事項にすぎず、当業者であれば、容易に想到することができる。しかも、ダウンロードしたアイコンを、リモートコントローラに保存することは、周知の技術である(甲2、甲3、甲42)から、上記の普遍的課題を考慮して、当業者であれば、容易に採用することができる。
20 (オ) さらに、上記のとおり、主データ処理装置200が受信した治療プログラム等を復号することは、当業者が適宜なし得ることである。すなわち、暗号化されたものを利用するために復号するのは、当業者にとって当然であるので、マッサージ部を介して実行されるマッサージプログラムを「復号された」ものとすることも、当業者が当然なし得ることで25 ある。
(カ) そうすると、本件審決が認定した相違点1に係る本件発明1の構成45は、甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
イ 相違点2の判断について相違点2に関し、甲1発明1では、マッサージプログラムのプログラム5 コードを実行するマイクロコントローラがどのようなコンピュータであるのか明らかでないが、コンピュータのプロセッサアーキテクチャは、RISC(縮小命令セットコンピュータ)とCISC(複合命令セットコンピュータ)との二種類であることが技術常識(甲8、甲9)である。マッサージ装置の技術分野の当業者は、マッサージ装置を設計・製造するに当10 たり、マッサージ装置を構成する部品であるマイクロコントローラを選択する必要があるところ、マイクロコントローラはRISCとCISCのいずれかであり、二つの選択肢から一つの選択肢である縮小命令セットコンピュータを選択することに、およそ困難性はない。二者択一の選択は、当業者が容易に適宜選択し得る事項であり、そのような選択をすることによ15 り、格別な効果を奏するものでもない。
また、プロセッサアーキテクチャの一種としてのRISC(縮小命令セットコンピュータ) マッサージ装置の技術分野において周知の技術は、 (甲8、甲9、甲21の1、甲21の2、甲25の1、甲25の2、甲25の3)であり、さらに甲8にはRISCが主流となっているという記載があ20 るから、甲1発明1において、治療プログラムを実行する主データ処理装置200(マイクロコントローラ)として、周知技術のRISCを採用することは、当業者が容易になし得ることであるし、それにより、格別な効果を奏するものでもない。
そうすると、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明1及び甲225 ないし甲12、甲18ないし甲29記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
46ウ 相違点の判断の誤りの有無したがって、本件発明1と甲1発明1との相違点についての本件審決の判断には誤りがある。
? 本件発明14と甲1発明2との相違点について5 相違点1について述べたのと同様に、本件審決が認定した相違点3に係る本件発明14の構成は、甲1発明2及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであり、相違点4に係る本件発明14の構成は、甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に想10 到することができたものである。
したがって、本件発明14と甲1発明2との相違点についての本件審決の判断には誤りがある。
? 被告の主張に対しア 被告は、相違点1の容易想到性に関する原告の主張は、相違点1を細か15 く分断したそれぞれの要素について個別に容易である旨を主張するものであるから、本件審決の相違点1の判断に誤りがあることを理由づけるものとはいえないと主張する。
しかし、本件発明1においては、細かく分断される事項それぞれの有機的な組み合わせが、何らかの格別の技術的効果を生じさせているわけでは20 なく、本件発明1は、細かく分断された事項(周知技術ないし設計的事項)の寄せ集めにすぎないから、相違点1全体を一体としてのみ判断すべきとはいえない。しかも、本件審決自体が、相違点1を細かく分断して認定している。
したがって、原告の上記主張は、本件審決が相違点1を細かく分断して25 認定していることに照らしても、正当である。
イ 被告は、相違点2の実質的な内容として後記相違点2’を主張するもの47の、相違点2の存在自体を否定するものではないから、相違点2’について検討するまでもなく、進歩性の判断としては、相違点2が容易想到であるかどうかを検討すれば足りる。そして、相違点2は、甲1発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから、
5 本件発明1は進歩性を欠くものである。
なお、念のため、相違点2’について検討しても、甲12(特開2000−334011号公報)の段落【0107】及び【0108】には、マッサージ情報として「CPUが直接実行可能な形式」のプログラムが記載されており、当業者であれば、甲1発明1に甲12のプログラムを適用し、
10 相違点2’に係る構成を容易に想到することができる。相違点2’に関し被告の主張する阻害事由は、甲1発明1に甲12のプログラムを適用することを阻害するほどのものではない。
〔被告の主張〕? 相違点1の容易想到性に関する原告の主張は、相違点1を細かく分断した15 それぞれの要素について個別に容易である旨を主張するものであるから、本件審決の相違点1の判断に誤りがあることを理由づけるものとはいえない。
? 本件審決が判断するとおり、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないか20 ら、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、進歩性の要件を充足する。本件発明2ないし13は、本件発明1を発明特定事項に含むものであるから、本件発明2ないし13も進歩性の要件を充足する。
また、本件審決が判断するとおり、相違点3に係る本件発明14の構成は、
甲1発明2及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握25 される技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明14は、相違点4について検討するまでもなく、進歩性48の要件を充足する。本件発明15ないし17は、本件発明14を発明特定事項に含むものであるから、本件発明15ないし17も進歩性の要件を充足する。
? 本件審決は、甲1発明1の「治療プログラムまたはシーケンス」を「プロ5 グラミング言語に類似するテキストベースの治療用健康装置の指示言語からなる治療プログラムまたはシーケンス」と認定しているから、本件審決の認定した相違点2は、実質的に以下の相違点2’として認定したものといえる。
(相違点2’)「マイクロコントローラに関し、本件発明1は、縮小命令セットコンピュー10 タであり、外部装置からダウンロードし、実行するプログラムが、前記縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであるのに対し、甲1発明1は、縮小命令セットコンピュータであるかは明らかでなく、外部装置からダウンロードし、使用するプログラムが、プログラミング言語に類似するテキストベ15 ースの治療用健康装置の指示言語からなる治療プログラムまたはシーケンスである点。
」そして、相違点2’について検討すると、甲1の1に記載されているのは、
一般のユーザ又はオペレータや、医療提供者が、外部コンピューティングデバイスを使用して、特定のユーザのプリセットまたはプリファレンスに応じ20 た比較的複雑な操作または一連の操作を実施することであり、このような操作は、有線リモートコントローラのコマンドボタンと同程度の高レベルのコマンドアプローチによって実現されているところ、コンピュータプログラムを作成する知識を有することが期待されない一般のユーザや治療者が、縮小命令セットコンピュータの命令などの低レベルのプロセッサ固有の命令を用25 いて治療用プログラムを作成することは想定されない。
そして、仮に低レベルの命令でプログラムを構成することを考えるとする49と、このような命令で構成されたプログラムは、プロセッサや機器の構成に固有のものであり、そのプログラムの対象となる機器以外で動作するものではない。そうすると、他の種類の機器で、類似のコマンドを見つけて置き換えるようなことはできないから、甲1発明1において、低レベルのプロセッ5 サ固有の命令で構成されたプログラムをダウンロード可能にサーバーに格納する構成とすることには阻害事由が存在するというべきである。
さらに、他の種類の機器が、同じプロセッサを用いていることは全く期待できないから、甲1の1の記載に基づいて、「縮小命令セットコンピュータ(RISCプロセッサ) のプログラムなど、
」 プロセッサごとに異なる命令体10 系で作成された治療用プログラムを用いることは、何ら示唆されるものではない。
以上により、いかに当業者といえども、甲1の1の記載によっては、本件発明1の相違点2’に係る「前記駆動部と接続された、縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラを備え」る構成とし、縮小命令セット15 コンピュータである「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」 「前記マッサージプログラムと関連と、
付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツ」とを、暗号化された形式で」「前記外部装置から受信する構成を容易に想到することはできない。
第4 当裁判所の判断20 1 本件各発明の技術的意義? 本件明細書等の記載本件明細書等には、次のような記載がある。
ア 技術分野「本発明は、マッサージ装置を使用したマッサージ関連サービスを提供す25 るシステムおよび方法に関する。(段落【0001】」 )イ 背景技術、発明が解決しようとする課題50「現在市場で利用可能なマッサージ装置には、ユーザの身体に様々な形態のマッサージを施し得るマッサージ部材を備えたマッサージチェアが含まれる。必要に応じてユーザは、ある種の好ましいリラックス効果を生み出す、マッサージ部材の動きや圧力を加える動作の所定の組み合わせに対5 応したマッサージプログラムを選択し得る。しかし、既存のマッサージ装置は通常、変更できない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置を柔軟に使用することができず、マッサージの効果を限定してしまうことがある。(段落【0002】」 )「したがって、少なくとも前述の問題を解決し、改善されたマッサージ体10 験を提供できるマッサージ装置が求められている。(段落【0003】」 )ウ 課題を解決するための手段「本出願は、マッサージ装置を使用したユーザ体験を強化し得る、マッサージ関連サービスを提供するシステムと方法を説明する。一実施形態において、マッサージ装置は、マッサージ部と、マッサージ部の運動を駆動す15 るように機能する駆動部と、駆動部と接続されたマイクロコントローラとを含む。マイクロコントローラは、外部装置と接続し、外部装置からマッサージプログラムのプログラムコードを受信してマッサージプログラムをメモリに保存し、一連のマッサージの動作を身体に施すためにマッサージ部を介してマッサージプログラムを実行するように構成される。(段落」20 【0004】)「特定の実施形態において、マッサージ装置はさらに、マッサージ装置で利用可能なマッサージプログラムと関連付けられた 1 つまたは複数のアイコンを表示するように機能するリモートコントローラを含む。新しいマッサージプログラムがダウンロードされると、リモートコントローラに表示25 されるグラフィカルインターフェースも、新しくダウンロードされたマッサージプログラムを実行するためにユーザが選択可能なグラフィカルア51イコンにより更新される。(段落【0005】」 )「他の実施形態において、マッサージ関連サービスを施行する方法が説明される。方法は、マッサージ装置を提供するステップと、端末装置とサーバコンピュータとの間の接続を確立するステップと、マッサージ装置で実5 行可能なマッサージプログラムをサーバコンピュータから端末装置に転送するステップと、端末装置とマッサージ装置との間の接続を確立するステップと、マッサージプログラムを端末装置からマッサージ装置に転送するステップとを含む。(段落【0006】」 )エ 発明を実施するための形態10 「図 1 は、マッサージ関連サービスを提供するシステム 100 の一実施形態を描写する概略図である。システム 100 は、 台のサーバコンピュータ 1022と 103、端末装置 104、およびマッサージ装置 106 を含み得る。サーバコンピュータ 102 は、端末装置 104 が多様なアプリケーションプログラムを閲覧してダウンロードし、様々な取引を実施できるようにする、デジタルア15 プリケーション配信プラットフォーム 112 をホストし得る。サーバコンピュータ 102 にホストされるデジタルアプリケーション配信プラットフォームの例は、Apple Inc.が開発した iOS オペレーティングシステムが実行されている端末装置向けの Apple App Store や、Google Inc.が開発したAndroid オペレーティングシステムが実行されている端末装置向けの20 Google Play Store を含み得る。(段落【0008】」 )「サーバコンピュータ 103 は、マッサージ装置 106 で実行可能な複数のマッサージプログラムを保存し、端末装置 104 を介してマッサージ装置 106に 1 つまたは複数のマッサージプログラムを転送するために端末装置 104に接続し得る。一実施形態において、サーバコンピュータ 103 は、マッサ25 ージプログラムの販売元により維持され運用され得る一方で、サーバコンピュータ 102 は取引のプラットフォームとしての機能を果たし得る。マッ52サージプログラムは、端末装置 104 とサーバコンピュータ 102 との間で実施される購入取引の結果として、サーバコンピュータ 103 から端末装置 104に転送され得る。(段落【0009】」 )「端末装置 104 は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ラップ5 トップ型コンピュータ、パーソナルコンピュータなどを含み得る。端末装置 104 は、マッサージ関連サービスを提供するために端末装置 104 にサーバコンピュータ 102 および 103、ならびにマッサージ装置 106 と交信させ得るアプリケーションプログラム 114 を実行し得る。より具体的には、端末装置 104 で実行されたアプリケーションプログラム 114 は、新しいマッ10 サージプログラムのリリースに関する通知の受信、新しいマッサージプログラムを取得するための購入取引の実施、マッサージプログラムのサーバコンピュータ 103 からのダウンロードなどを含む、様々な取引を実施するために、サーバコンピュータ 102 および 103 と接続し得る。アプリケーションプログラム 114 はまた、マッサージ装置 106 の現在の設定の表示、購15 入済みマッサージプログラムのマッサージ装置 106 への転送、マッサージ装置 106 の特定の機能の制御など、様々な役割を実施するためにマッサージ装置 106 と接続し得る。(段落【0010】」 )「マッサージ装置 106 は、身体にマッサージを施し得るあらゆる種類の装置であり得る。一実施形態において、マッサージ装置 106 はマッサージチ20 ェアであり得る。他の実施形態において、マッサージ装置 106 はまた、マッサージベルト、フットマッサージ装置などであり得る。マッサージ装置106 は、マッサージを施し、音楽を再生し、対話型コンテンツを提供し、
端末装置 104 などの外部装置から新しいマッサージプログラムの更新を受信し得る。一実施形態において、マッサージ装置 106 は、操作を容易にす25 るためにリモートコントローラ 150 を備え得る。特に、リモートコントローラ 150 は、ユーザが選択するためのマッサージプログラムのリストを表53示可能なディスプレイを含み得る。(段落【0011】」 )「図 2 は、マッサージ装置 106 の一実施形態を描写する簡略化されたブロック部である。マッサージ装置 106 は、マッサージ部 120、マッサージ部120 と関連付けられた駆動部 122、制御インターフェース 124、無線通信イ5 ンターフェース 126、マイクロコントローラ 130 およびリモートコントローラ 150 を含み得る。マッサージ部 120 は、揉むおよび/または叩く動作、
擦る動作など様々な形態のマッサージ動作を施し得る、1 つまたは複数の機械部品を含み得る。マッサージ部 120 の部品の例は、モータ、アクチュエータ、ポンプ、ソレノイドなどを含み得る。(段落【0012】」 )10 「駆動部 122 は、マイクロコントローラ 130 とマッサージ部 120 との間のインターフェースを提供する電気回路であることができ、マイクロコントローラ 130 が出力する制御信号に従ってマッサージ部 120 の部品の動作を駆動するように機能し得る。(段落【0013】」 )「制御インターフェース 124 は、センサと接続され、マッサージ装置 10615 に配置されたスイッチを制御し、ユーザの身体的な高さ、動きの限界、モータの回転などの情報を提供するために、マイクロコントローラ 130 に様々な検出信号を伝達し得る。(段落【0014】」 )「無線通信インターフェース 126 は、マッサージ装置 106 のマイクロコントローラ 130 と他の外部装置との間の無線によるデータ交換を可能にする、
20 ブルートゥースインターフェースおよび/または Wi-Fi インターフェースを含み得る。(段落【0015】」 )「マイクロコントローラ 130 は、マッサージ装置 106 の動作を制御し監視し得る。一実施形態において、マイクロコントローラ 130 は典型的な例として、 ビットの縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロコン3225 トローラであり得る。マイクロコントローラ 130 は、内部に保存された複数のマッサージプログラムのうち 1 つを選択し、ユーザの身体に一連のマ54ッサージ動作を施すためにマッサージ部 120 を介してマッサージプログラムを実行し、無線通信インターフェース 126 を介して端末装置 104 と交信し得る。一実施形態において、マイクロコントローラ 130 は、処理装置 132、
マッサージプログラムコードを保存するための第 1 のメモリ 134 と第 2 の5 メモリ 136、処理装置 132 がマッサージ部 120 の駆動部 122 および制御インターフェース 124 と信号を交換する際に経由する入力/出力(I/O)ポート138、通信インターフェース 130 とのデータ交換のための送受信機 140、およびユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース 142 を含み得る。」(段落【0016】)10 「メモリ 134 は、マッサージ装置 106 で最初から利用可能なマッサージプログラム IMP のプリセットプログラミングコードを保存し得る。別のメモリ 136 は、ユーザにより外部装置からマッサージ装置 106 に読み込まれるマッサージプログラム DMP のプログラミングコードを保存し得る。一実施形態において、メモリ 134 は典型的な例として、フラッシュ読み取り専用15 メモリ(ROM)であることができ、メモリ 136 は典型的な例として、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)であり得る。マッサージプログラム DMP は、サーバコンピュータ(例、サーバコンピュータ 103)から端末装置 104 にダウンロードされ、次いでメモリ 136 に保存するために端末装置 104 からマッサージ装置 106 に転送され得る。マッサージプロ20 グラム DMP は、無線通信インターフェース 128 または USB インターフェース 142 を介して、マッサージ装置 106 に外部装置から転送され得る。(段」落【0017】)「送受信機 140 は、データがマイクロコントローラ 130 の処理装置 132 に受信され、マイクロコントローラ 130 外の構成要素に送信される際に経由25 する汎用非同期送受信機であり得る。(段落【0018】」 )「リモートコントローラ 150 は、マイクロコントローラ 130 と接続され得55る。リモートコントローラ 150 は、表示制御部 152 に駆動される表示画面と、リモートコントローラ 150 へのユーザの入力を受信し、リモートコントローラ 150 の表示画面に表示されるグラフィカルコンテンツを制御し、
マイクロコントローラ 130 と交信するように機能し得るマイクロコントロ5 ーラ 154 を含み得る。一実施形態において、リモートコントローラ 150 のマイクロコントローラ 154 は、マッサージプログラム IMP と DMP と関連付けられているグラフィカルアイコンを保存する内部メモリ 156 を含み得る。
これらのグラフィカルアイコンは、ユーザによるマッサージ装置 106 の設定、制御および操作を容易にするため、リモートコントローラ 150 の画面10 上に表示され得る。(段落【0019】」 )「図 1 および図 2 と関連して、図 3 はサーバレベルでの新しいマッサージプログラムを提供するための方法のステップを描写するフローチャートである。第 1 のステップ 302 で、新しいマッサージプログラムはサーバコンピュータ 103 にアップロードされ得る。新しいマッサージプログラムは、
15 悪意のあるエージェントによる破損を防止するため、1 つまたは複数の暗号化されたファイルの形式でアップロードされ得る。マッサージプログラムに加えて、暗号化されたファイルはまた、マッサージプログラムと関連付けられたグラフィカルアイコンを定義するグラフィカルコンテンツを含み得る。(段落【0020】」 )20 「ステップ 304 で、サーバコンピュータ 103 は、新しいマッサージプログラムのリリースについての通知を送信し得る。この通知は、サーバコンピュータ 102 を介して端末装置 104 に中継され得る。端末装置 104 は、アプリケーションプログラム 114 を介して新しいマッサージプログラムのリリースについて通知され得る。(段落【0021】」 )25 「ステップ 306 で、サーバコンピュータ 102 は、端末装置 104 から購入依頼を受信し、支払手続きを開始し、サーバコンピュータ 103 に購入済みマ56ッサージプログラムのダウンロードの要求を送信し得る。(段落【002」2】)「サーバコンピュータ 102 からのダウンロード要求に応じて、サーバコンピュータ 103 はステップ 308 で、購入済みマッサージプログラムの 1 つま5 たは複数のファイルを端末装置 104 に送信し得る。購入済みマッサージプログラムは、例として、インターネット接続を介してサーバコンピュータ103 から端末装置 104 にダウンロードされ得る。(段落【0023】」 )「図 1 および図 2 と関連して、図 6 は、マッサージ装置 106 が実行する方法のステップを描写するフローチャートである。ステップ 602 で、マッサ10 ージ装置 106 のマイクロコントローラ 130 は、端末装置 104 から受信した、
端末装置 104 とマッサージ装置 106 との間の接続を確立する要求に応じて、
無線通信インターフェース 128 を起動し得る。無線通信インターフェース128 の切換えはシステムにより自動で実行することもできるし、リモートコントローラ 150 を使用して手動で実行することもできる。(段落【00」15 29】)「ステップ 604 で、マッサージ装置 106 は、1 つのマッサージプログラムのプログラムコードとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルデータを含む、1 つまたは複数の暗号化されたファイルを受信し得る。ファイルの転送は、無線通信インターフェース 128、例としてブルートゥース20 接続を介して実施し得る。(段落【0030】」 )「ステップ 606 で、マイクロコントローラ 130 は、マッサージプログラムコードとグラフィカルアイコン(アイコンはビットマップファイルとして定義し得る)を復元するためにファイルを復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能な形式に変換し、次いでマッサージプログラム25 コードとアイコンをそれぞれ、メモリ 136 とリモートコントローラ 150 に保存し得る。リモートコントローラ 150 のグラフィカルユーザインターフ57ェースはこのようにして、ダウンロード済みマッサージプログラムと関連付けられたアイコンを表示するように更新され得る。
(略)(段落【003」1】)「ステップ 608 で、起動信号に応じてマイクロコントローラ 130 は、一連5 のマッサージ動作をユーザの身体に施すため、マッサージ部 120 を介して新しいマッサージプログラムを実行し得る。ユーザは、例として端末装置104 またはリモートコントローラ 150 を使用して新しいマッサージプログラムを実行するために、マッサージ装置 106 を起動し得る。(段落【00」32】)10 オ 発明の効果「本明細書で説明されているシステムと方法の少なくとも 1 つの利点は、
新しいマッサージプログラムをダウンロードし、マッサージ装置のリモートコントローラのグラフィカルユーザインターフェースの更新を実行し、
マッサージ装置で新しくダウンロードされたマッサージプログラムを実15 行するためにリモートコンローラーまたは外部装置を使用する能力を含む。したがって、マッサージ装置はより柔軟な仕方で使用することができ、
ユーザはマッサージ装置の強化されたマッサージ体験を楽しむことができる。(段落【0034】」 )? 本件各発明の技術的意義20 本件明細書等の記載からすると、本件各発明の技術的意義は、次のとおり認められる。
ア 既存のマッサージ装置は、通常、変更できない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置を柔軟に使用することができず、マッサージの効果を限定してしまうことがある。本件各発明は、上記25 の「通常、変更できない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置を柔軟に使用することができず、マッサージの効果を58限定してしまう」という問題を解決し、改善されたマッサージ体験を提供できる「マッサージ装置」によって課題を解決しようとするものである。
(段落【0002】及び【0003】)イ 本件各発明は、上記の課題を解決する手段として、
5 「マッサージ装置は、マッサージ部と、マッサージ部の運動を駆動するように機能する駆動部と、駆動部と接続されたマイクロコントローラとを含む。マイクロコントローラは、外部装置と接続し、外部装置からマッサージプログラムのプログラムコードを受信してマッサージプログラムをメモリに保存し、一連のマッサージの動作を身体に施すためにマッサージ部10 を介してマッサージプログラムを実行するように構成される」(段落【0004】)こと、「マッサージ装置はさらに、マッサージ装置で利用可能なマッサージプログラムと関連付けられた1つまたは複数のアイコンを表示するように機能するリモートコントローラを含む」(段落【0005】)こと、マッサージ関連サービスを施行する方法は、
「マッサージ装置を提供す15 るステップと、端末装置とサーバコンピュータとの間の接続を確立するステップと、マッサージ装置で実行可能なマッサージプログラムをサーバコンピュータから端末装置に転送するステップと、端末装置とマッサージ装置との間の接続を確立するステップと、マッサージプログラムを端末装置からマッサージ装置に転送するステップとを含む」(段落【0006】)こ20 「マイクロコントローラ 130 は典型的な例として、32 ビットの縮小命と、
令セットコンピューティング(RISC)マイクロコントローラであり得る」(段落【0016】)こと、「マッサージ装置 106 は、1 つのマッサージプログラムのプログラムコードとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルデータを含む、1 つまたは複数の暗号化されたファイルを受信し得25 る」(段落【0030】 「マイクロコントローラ 130 は、マッサージ)こと、
プログラムコードとグラフィカルアイコン(アイコンはビットマップファ59イルとして定義し得る)を復元するためにファイルを復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能な形式に変換し、次いでマッサージプログラムコードとアイコンをそれぞれ、メモリ 136 とリモートコントローラ 150 に保存し得る」(段落【0031】)こと、「リモートコントローラ5 150 のグラフィカルユーザインターフェースはこのようにして、ダウンロード済みマッサージプログラムと関連付けられたアイコンを表示するように更新され得る」(段落【0031】)こと、
「起動信号に応じてマイクロコントローラ 130 は、一連のマッサージ動作をユーザの身体に施すため、
マッサージ部 120 を介して新しいマッサージプログラムを実行し得る」10 (段落【0032】)こととした。
ウ そして、当該「マッサージ装置」は、
「新しいマッサージプログラムをダウンロードし、マッサージ装置のリモートコントローラのグラフィカルユーザインターフェースの更新を実行し、マッサージ装置で新しくダウンロードされたマッサージプログラムを実行するためにリモートコンローラー15 または外部装置を使用する能力を含む」ものとなり、
「より柔軟な仕方で使用することができ、ユーザはマッサージ装置の強化されたマッサージ体験を楽しむことができる」という効果を奏するものとなった(段落【0034】)2 取消事由1(請求項1の原文新規事項の判断の誤りないし理由不備〔無効理20 由3関係〕)について? 原文新規事項の追加の判断手法法184条の4第1項の外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(本件特許の特許請求の範囲、本件明細書等、
甲14の1)に記載された事項が、同項の国際出願日における国際出願の明25 細書、請求の範囲又は図面(本件原文明細書等、甲14の2)に記載した事項の範囲内にあるかどうか(法184条の18、法123条1項5号)は、
60当業者によって、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(本件原文明細書等)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるかどうかにより判断されるべきである。
5 ? 原文新規事項の追加の有無本 件 原 文 明 細 書 等 ( 甲 1 4 の 2 ) の 段 落 [ 0 0 2 4 ] に は 、 In one「embodiment, the microcontroller 130 can exemplary be a 32-bit ReducedInstruction Set Computing (RISC) microcontroller.」と記載されており、これに対応する本件明細書等(甲14の1)の段落【0016】には、
「一実施10 形態において、マイクロコントローラ 130 は典型的な例として、 ビットの32縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロコントローラであり得る。」と記載されている。したがって、本件原文明細書等には、マイクロコントローラ 130 が縮小命令セットコンピュータであることが記載されていると認められる。
15 また、本件原文明細書等の段落[0040]には、「In step 608, in responseto an activation signal, the microcontroller 130 then can execute the newmassage program through the massage unit 120 to apply a sequence ofmassage actions on the body of the user.」と記載されており、これに対応する本件明細書等の段落【0032】には、「ステップ 608 で、起動信号に20 応じてマイクロコントローラ 130 は、一連のマッサージ動作をユーザの身体に施すため、マッサージ部 120 を介して新しいマッサージプログラムを実行し得る。」と記載されており、本件原文明細書等には、マッサージプログラムは、マイクロコントローラ 130 によって実行可能であることが記載されていると認められる。
25 そうすると、本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージ、
61プログラム」という事項は、本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められ、本件原文明細書等(甲14の2)、本件原文明細書等の翻訳文(甲14の3)、本件明細書等(甲14の1)によれば、本件発明1に係るその余の発明特定事項についても本件原文明細書等に記載した事項の範5 囲内のものであると認められる。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(本件発明1)は、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであると認められ、原文新規事項の追加があるとは認められない。
10 ? 原告の主張に対する判断ア 原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラム15 のプログラムコードであることを意味する(〔原告の主張〕?)という主張を前提として、そのようなプログラムコードは本件原文明細書等に記載されていないから原文新規事項の追加がある旨主張し〔原告の主張〕 ?)( ?、 、
被告の主張は失当である旨主張する(〔原告の主張〕?)。
イ(ア) しかし、本件特許の請求項1(本件発明1)の記載から、
「マッサー20 ジプログラムのプログラムコード」 「縮小命令セットコンピュータでは、
あるマイクロコントローラによって実行可能な」ものであることが理解されるところ、これは、少なくともマッサージプログラムのプログラムコードがマイクロコントローラで実行される際に実行可能な状態となっていればよいと解されるものであり、マッサージプログラムのプログラ25 ムコードとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを暗号化された形式でマイクロコントローラが受信している時点におい62て、マッサージプログラムのプログラムコードがマイクロコントローラで実行可能な状態にあることまで特定するものと解すべき根拠はない。
むしろ、マッサージプログラムは、受信ないし転送されている段階では、
マイクロコントローラによって実行される段階にはないから、その段階5 においてマッサージプログラムをどのような形式のものとしておくかは当業者が適宜に設定し得るものと理解される。
(イ) このことは、補正の経過によっても裏付けられる。すなわち、縮小命令セットコンピュータ(RISC)とは、コンピュータのハードウェアの命令を、頻繁に使われるものだけに限定し、プロセッサー(CPU)10 の構造を簡単にして、より高速な処理を実現しようとするものをいい(甲46、甲49)、命令セットとは、コンピュータのハードウェアで用意されている命令(インストラクション)、つまり、機械語の組(セット)をいう(甲49) そして、
。 令和元年11月1日付けの手続補正書(甲17)により、本件特許の請求項1において、
「前記駆動部と接続されたマイク15 ロコントローラ」が「前記駆動部と接続された、縮小命令セットコンピュータであるマクロコントローラ」と補正され、
「マッサージプログラムのプログラムコード」が「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」と補正されたところ、同日付けの意見書(甲16)によれば、これは、拒絶理由通知書(甲15)20 で引用された引用文献1(甲1の1)に記載されたマッサージチェア等の治療用健康装置が、プログラミング言語に類似のテキストベースの治「療健康デバイス命令言語」を使用するために、命令言語の簡易さゆえにマッサージ部の複雑な運動を定義できないものであるのに対して、本件発明1のマイクロコントローラは縮小命令セットコンピュータであり、
25 何の制約もなくマッサージ部の運動を定義できることを明らかにしたものであり、プログラムコードの言語の「種類」(簡易な定義しかできない63か複雑な定義ができるか)が違うことを特定するために補正されたと認められるものであって、プログラムの「形式」について、機械語に変換することなく「マイクロコントローラによって実行可能」な形式であることを特定するために補正されたものとは認められない。
5 (ウ) さらに、本件明細書等には、実施形態の記載ではあるものの、段落【0030】及び【0031】に次の記載がある。
「ステップ 604 で、マッサージ装置 106 は、1 つのマッサージプログラムのプログラムコードとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルデータを含む、1つまたは複数の暗号化されたファイルを受信し得る。
10 ファイルの転送は、無線通信インターフェース 128、例としてブルートゥース接続を介して実施し得る。(段落【0030】。
」 )「ステップ 606 で、マイクロコントローラ 130 は、マッサージプログラムコードとグラフィカルアイコン(アイコンはビットマップファイルとして定義し得る)を復元するためにファイルを復号し、マッサージプロ15 グラムのコードを機械が実行可能な形式に変換し、次いでマッサージプログラムコードとアイコンをそれぞれ、メモリ 136 とリモートコントローラ 150 に保存し得る。(段落【0031】。
」 )上記各記載より、マイクロコントローラ 130 がファイルを受信している状態では、マッサージプログラムコード」「グラフィカルアイコン」「 と20 とが、1つまたは複数の暗号化されたファイルの状態となっていることが把握され、この暗号化されたファイルを復号した後、マッサージプログラムのコードは機械が実行可能な形式に変換されて、マイクロコントローラのメモリに保存されていることが把握される。そのため、マッサージプログラムのプログラムコードは、マイクロコントローラで実行さ25 れる際に実行可能な状態となっているものの、受信された段階では、機械語に変換することなく「マイクロコントローラによって実行可能」な64形式となっておらず、上記の実施形態の記載は、前記(ア)の解釈に沿うものである一方、原告主張の解釈(前記ア)には沿わないものである。
ウ そうすると、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式5 について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味する(〔原告の主張〕?)という原告の主張を採用することはできず、そのような主張を前提とする原文新規事項の追加に関する原告の他の主張も採用することはできない。
10 ? 小括したがって、取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(請求項14の原文新規事項の判断遺脱〔無効理由3関係〕)について? 原文新規事項の追加の有無15 前記2?と同様の理由により、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」「前記マイ、
クロコントローラは縮小命令セットコンピュータである」という事項は、本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められ、本件原文明細書等(甲14の2)、本件原文明細書等の翻訳文(甲14の3)、本件明20 細書等(甲14の1)によれば、本件発明14に係るその余の発明特定事項についても本件原文明細書等に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項14に記載された事項(本件発明14)は、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導か25 れる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであると認められ、原文新規事項の追加があるとは認められない。
65? 原告の主張に対する判断ア 原告は、本件発明1では「受信し」とされている事項が、本件発明14では「転送する」として特定されているから、本件発明1と本件発明14は、共通する事項があるとしても、異なる事項を含んでおり、本件特許の5 請求項1と請求項14は、それぞれ独立項であり、引用関係にあるわけでもないから、本件特許の請求項14(本件発明14)の原文新規事項の追加の有無は、請求項1(本件発明1)の原文新規事項の追加の有無とは別個に判断されるべきであるが、本件審決がこれらを別個に判断していないのは誤りであると主張する。
10 しかし、前記?のとおり、本件発明1についてと同様の理由により、本件発明14について、原文新規事項の追加があるとは認められない。そして、本件発明1と本件発明14は、物の発明方法の発明というカテゴリーの相違はあるものの、いずれも、「外部装置(端末装置)」とマッサージ装置の「マイクロコントローラ」とを接続して、
「マッサージプログラム」15 の受け渡しを行うものであり、この受け渡しの態様について、本件発明1は「マイクロコントローラ」側からみて「受信し」と特定し、本件発明14は「外部装置(端末装置)」側からみて「転送する」と特定したものであって、その技術的内容は本質的に相違するものではない。原告(審判請求人)も、本件無効審判において、
「本件発明1及び14のように、受信ない20 し転送されているのが、『縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な』マッサージプログラムのプログラムコードであることは、本件特許の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、原文新規事項追加の違反がある。」(本件審決第3、 〔本件審決9頁〕 審判請求書4? 、 (甲31)25 21〜22頁)として、本件発明1と本件発明14とをひとまとまりの技術と捉えた主張をしており、本件審決は、このような主張に対して、マッ66サージプログラムが変換される前の受信ないし転送されている状態については、マイクロコントローラによって実行する段階ではないことから、
この状態においてマッサージプログラムをどのような形式のものとしておくかは当業者が適宜に設定し得るものと理解できる一方、請求人が主張5 する「『機械が実行可能な形式に変換』する前において、受信ないし転送されているプログラムが、縮小命令セットコンピュータによって実行可能であること」は、原告(審判請求人)独自の解釈に基づく理解であって、特許請求の範囲、明細書、又は図面に記載した事項を正解したものとはいえないと判断しているから(前記第2、4?イ、本件審決第5、5?〔本件10 審決30〜31頁〕、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
)イ また、原告は、本件審決は、本件特許の請求項1(本件発明1)及び請求項14(本件発明14)について、本件原文明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かという判断を欠いていると主張するが、本15 件審決は、本件原文明細書等(甲14の2)の段落[0024]及び[0040]等の記載に基づいて、本件発明1及び本件発明14の発明特定事項が本件原文明細書等に記載した範囲内のものであると判断しているから(本件審決第5、5?〔本件審決30頁〕、本件原文明細書等の全ての記載を総)合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事20 項を導入するものであるか否かという判断をしているものと認められ、原告の上記主張は採用することができない。
さらに、原告は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要25 せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムであることを意味すると主張するが、前記2?のとおり、本件発67明1の「マッサージプログラムのプログラムコード」は、直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードに限られず、同様の理由により、本件発明14の「マッサージプログラム」も、直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマ5 ッサージプログラムに限られないから、その点に関する本件審決の判断に誤りはなく、原告の上記主張は採用することができない。
? 小括したがって、取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(本件発明1ないし13のサポート要件の判断の誤り〔無効理由10 1関係〕)について? サポート要件の判断手法特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載15 により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
? 本件明細書等に記載された課題とその解決手段20 ア 本件各発明が解決しようとする課題は、既存のマッサージ装置が、通常、
変更できない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置を柔軟に使用することができず、マッサージの効果を限定してしまうという問題を解決し、改善されたマッサージ体験を提供できるマッサージ装置を提供することである(前記1?ア、本件明細書等の段落【0025 02】及び【0003】。
)イ このような課題を解決する手段として、本件明細書等には、次の構成が68記載されている。
(ア) マッサージ装置は、マッサージ部と、マッサージ部の運動を駆動するように機能する駆動部と、駆動部と接続されたマイクロコントローラとを含むこと。また、マイクロコントローラは、外部装置と接続し、外5 部装置からマッサージプログラムのプログラムコードを受信してマッサージプログラムをメモリに保存し、一連のマッサージの動作を身体に施すためにマッサージ部を介してマッサージプログラムを実行するように構成されること。
(以下「構成a」という。(前記1?イ、本件明細)書等の段落【0004】)10 (イ) マッサージ装置はさらに、マッサージ装置で利用可能なマッサージプログラムと関連付けられた1つまたは複数のアイコンを表示するように機能するリモートコントローラを含むこと。(以下「構成b」という。(前記1?イ、本件明細書等の段落【0005】) )(ウ) マッサージ関連サービスを施行する方法は、マッサージ装置を提供15 するステップと、端末装置とサーバコンピュータとの間の接続を確立するステップと、マッサージ装置で実行可能なマッサージプログラムをサーバコンピュータから端末装置に転送するステップと、端末装置とマッサージ装置との間の接続を確立するステップと、マッサージプログラムを端末装置からマッサージ装置に転送するステップとを含むこと。(以20 下「構成c」という。(前記1?イ、本件明細書等の段落【0006】) )(エ) マイクロコントローラの典型例として、32 ビットの縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロコントローラを用い得ること。(以下「構成d」という。(前記1?イ、本件明細書等の段落【0016】) )(オ) マッサージ装置は、1 つのマッサージプログラムのプログラムコー25 ドとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルデータを含む、1 つまたは複数の暗号化されたファイルを受信し得ること。
(以下「構成e」69という。(前記1?イ、本件明細書等の段落【0030】) )(カ) マイクロコントローラは、マッサージプログラムコードとグラフィカルアイコンを復元するためにファイルを復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能な形式に変換し、次いでマッサージプログ5 ラムコードとアイコンをそれぞれ、マイクロコントローラのメモリとリモートコントローラに保存し得ること。
(以下「構成f」という。(前記)1?イ、本件明細書等の段落【0031】)(キ) リモートコントローラのグラフィカルユーザインターフェースはこのようにして、ダウンロード済みマッサージプログラムと関連付けられ10 たアイコンを表示するように更新され得ること。(以下「構成g」という。(前記1?イ、本件明細書等の段落【0031】) )(ク) 起動信号に応じて、マイクロコントローラは、一連のマッサージ動作をユーザの身体に施すため、マッサージ部を介して新しいマッサージプログラムを実行し得ること。
(以下「構成h」という。(前記1?イ、
)15 本件明細書等の段落【0032】)? 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるかについてア 本件発明1の発明特定事項のうち「マッサージ装置」が、
「マッサージ部と、リモートコントローラと、前記マッサージ部の運動を駆動するように20 機能する駆動部と、前記駆動部と接続された、縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラとを備え」る点は、構成a、b及びdに記載されている。
イ 本件発明1の発明特定事項のうち「前記マイクロコントローラは、外部装置と接続」する点は、構成aに記載されている。
25 ウ 本件発明1の発明特定事項のうち「前記マイクロコントローラ」が、
「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプロ70グラムコードと、前記マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを、暗号化された形式で前記外部装置から受信して前記マッサージプログラムをメモリに保存」する点は、構成a及びeに記載されている。
5 エ 本件発明1の発明特定事項のうち「前記マイクロコントローラ」が、
「前記外部装置から受信した前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを復号し、前記アイコンを前記リモートコントローラに保存させ」る点は、構成f及びgに記載されている。
オ 本件発明1の発明特定事項のうち「前記マイクロコントローラ」が、
「一10 連のマッサージ動作を身体に施すために前記マッサージ部を介して前記復号されたマッサージプログラムを実行する」点は、構成hに記載されている。
カ したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
? 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業15 者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて本件各発明が解決しようとする課題は、前記?アのとおりであるところ、
本件発明1は、「前記マイクロコントローラ」が、「外部装置と接続し」「前、
記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログ20 ラムコードと、前記マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを、暗号化された形式で前記外部装置から受信して前記マッサージプログラムをメモリに保存し」「前記外部装置から受信した前、
記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを復号し、前記アイコンを前記リモートコントローラに保存させ」「一連のマ、
25 ッサージ動作を身体に施すために前記マッサージ部を介して前記復号されたマッサージプログラムを実行するように構成される」という発明特定事項を71有することにより、発明の詳細な説明に記載された「新しいマッサージプログラムをダウンロードし、マッサージ装置のリモートコントローラのグラフィカルユーザインターフェースの更新を実行し、マッサージ装置で新しくダウンロードされたマッサージプログラムを実行するためにリモートコンロー5 ラーまたは外部装置を使用する能力を含む」ものとなり、
「より柔軟な仕方で使用することができ、ユーザはマッサージ装置の強化されたマッサージ体験を楽しむことができる」という効果を奏すること(前記1?ウ、本件明細書等の段落【0034】、すなわち、既存のマッサージ装置が、通常、変更で)きない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置10 を柔軟に使用することができず、マッサージの効果を限定してしまうという問題を解決し、改善されたマッサージ体験を提供できるマッサージ装置を提供してするという課題を解決していることを、当業者であれば十分理解できると認められる。
? サポート要件の充足の有無15 以上によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。そして、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるもので20 あることから、本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2ないし13についても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
? 原告の主張に対する判断原告は、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマ25 ッサージプログラムのプログラムコード」とは、プログラムの形式について、
受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命72令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するという原告の主張を前提とし、本件発明1は本件明細書等の発明の詳細な説明に記載したものではないとして、サポート要件違反を主張する。
5 しかし、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」に関する原告の上記主張を採用できないことは前記2?のとおりであるから、原告の上記主張を前提とするサポート要件違反の主張も採用することができない。
? 小括10 したがって、取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(本件発明14ないし17のサポート要件の理由不備〔無効理由1関係〕)について? 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるかについて15 本件明細書等に記載された課題とその解決手段は、前記4?のとおりである。
ア 本件発明14の発明特定事項のうち「マッサージ装置を作動させるための方法」であること、
「サーバコンピュータから端末装置へ、前記マッサージ装置のマイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム20 と、前記マッサージプログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツとを転送するステップ」 構成aないしcに記載されており、
は、
「マイクロコントローラが縮小命令セットコンピュータである」ことは、
構成dに記載されている。
イ 本件発明14の発明特定事項のうち「前記端末装置と前記マッサージ装25 置との間の接続を、前記端末装置によって、確立するステップ」は、構成cに記載されている。
73ウ 本件発明14の発明特定事項のうち「1つまたは複数の暗号化されたファイルに含まれる前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを前記端末装置から前記マッサージ装置に、前記端末装置によって、転送するステップ」は、構成a、c及びeに記載されて5 いる。
エ 本件発明14の発明特定事項のうち「前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、復号するステップ」 構成fに記載されている。
は、
10 オ 本件発明14の発明特定事項のうち「前記マッサージプログラムに関連付けられた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサージ装置のリモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、保存するステップ」は、構成fに記載されている。
15 カ 本件発明14の発明特定事項のうち「前記アイコンを前記マッサージ装置の前記リモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、表示するステップ」は、構成gに記載されている。
キ 本件発明14の発明特定事項のうち「前記復号されたマッサージプログラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、実行20 するステップ」は、構成hに記載されている。
ク したがって、本件発明14は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
? 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かに25 ついて本件各発明が解決しようとする課題は、前記4?アのとおりであるところ、
74本件発明14は、
「前記端末装置と前記マッサージ装置との間の接続を、前記端末装置によって、確立するステップ」「1つまたは複数の暗号化されたフ、
ァイルに含まれる前記マッサージプログラムと前記アイコンの前記グラフィカルコンテンツとを前記端末装置から前記マッサージ装置に、前記端末装5 置によって、転送するステップ」「前記マッサージプログラムと前記アイコ、
ンの前記グラフィカルコンテンツとを復元するために前記1つまたは複数の暗号化されたファイルを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、復号するステップ」「前記マッサージプログラムに関連付けら、
れた前記アイコンの前記復号されたグラフィカルコンテンツを前記マッサ10 ージ装置のリモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、保存するステップ」「前記アイコンを前記マッサージ、
装置の前記リモートコントローラに、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、表示するステップ」「前記復号されたマッサージプロ、
グラムを、前記マッサージ装置の前記マイクロコントローラによって、実行15 するステップ」という発明特定事項を有することにより、発明の詳細な説明に記載された「新しいマッサージプログラムをダウンロードし、マッサージ装置のリモートコントローラのグラフィカルユーザインターフェースの更新を実行し、マッサージ装置で新しくダウンロードされたマッサージプログラムを実行するためにリモートコンローラーまたは外部装置を使用する能20 力を含む」ものとなり、
「より柔軟な仕方で使用することができ、ユーザはマッサージ装置の強化されたマッサージ体験を楽しむことができる」という効果を奏すること(前記1?ウ、本件明細書等の段落【0034】、
) すなわち、
既存のマッサージ装置が、通常、変更できない一連の所定のマッサージプログラムを含み、そのためマッサージ装置を柔軟に使用することができず、マ25 ッサージの効果を限定してしまうという問題を解決し、改善されたマッサージ体験を提供できるマッサージ装置を提供するという課題を解決している75ことを、当業者であれば十分理解できると認められる。
? サポート要件の充足の有無以上によれば、本件発明14は、発明の詳細な説明に記載された発明で、
その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると5 認識できる範囲のものであると認められ、サポート要件を充足するものであると認められる。そして、本件発明14が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるものであることから、本件発明14の発明特定事項を包含する本件発明15ないし17についても、当業10 者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
? 原告の主張に対する判断ア 原告は、本件発明1では「受信し」とされている事項が、本件発明14では「転送する」として特定されているから、本件発明1と本件発明1415 は、共通する事項があるとしても、異なる事項を含んでおり、本件特許の請求項1と請求項14は、それぞれ独立項であり、引用関係にあるわけでもないから、本件特許の請求項14(本件発明14)のサポート要件違反の有無は、請求項1(本件発明1)のサポート要件違反の有無とは別個に判断されるべきであるが、本件審決がこれらを別個に判断していないのは20 誤りであると主張する。
しかし、前記?ないし?のとおり、本件発明14はサポート要件を充足するものである。そして、本件発明1と本件発明14は、物の発明方法の発明というカテゴリーの相違はあるものの、いずれも、
「外部装置(端末装置)」とマッサージ装置の「マイクロコントローラ」とを接続して、「マ25 ッサージプログラム」の受け渡しを行うものであり、この受け渡しの態様について、本件発明1は「マイクロコントローラ」側からみて「受信し」76と特定し、本件発明14は「外部装置(端末装置) 側からみて」 「転送する」と特定したものであって、その技術的内容は本質的に相違するものではない。そして、原告(審判請求人)も、本件無効審判において、
「本件発明1及び14において、受信ないし転送されているのは、
『縮小命令セットコン5 ピュータであるマイクロコントローラによって実行可能な』マッサージプログラムのプログラムコードである、すなわち、機械が実行可能なプログラムであるのに対して、本件特許の発明の詳細な説明において、受信ないし転送されているのは、
『機械が実行可能な形式に変換』されていないマッサージプログラムのプログラムコードである、すなわち、機械が実行でき10 ない形式のプログラムである。換言すると、本件発明1及び14において、
受信ないし転送されているのは、機械語のプログラムであるのに対して、
本件特許の発明の詳細な説明において、受信ないし転送されているのは、
高水準言語のプログラムである。したがって、本件発明1及び14のように、受信ないし転送されているのが、
『縮小命令セットコンピュータである15 マイクロコントローラによって実行可能な』マッサージプログラムのプログラムコードであることは、発明の詳細な説明には記載されておらず、サポート要件違反である。(本件審決第3、4?ウ〔本件審決8頁〕」 、審判請求書(甲31)19〜20頁)として、本件発明1と本件発明14とをひとまとまりの技術と捉えた主張をしており、本件審決は、このような主張20 に対して、『本件発明1及び14において、受信ないし転送されているの「は、機械語のプログラムである』と限定的に解すべき余地はない。(本件」審決第5、3?〔本件審決27頁〕)とし、『本件特許の発明の詳細な説明「において、受信ないし転送されているのは、高水準言語のプログラムである』と限定的に解すべき余地はない。 と判断しているから」 (本件審決第5、
25 3?〔本件審決28頁〕 、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。
)イ また、原告は、本件発明14の「前記マッサージ装置のマイクロコント77ローラによって実行可能なマッサージプログラム」とは、プログラムの形式について、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムであることを意味するという原告の主張を前提とし、本件発明145 は本件明細書等の発明の詳細な説明に記載したものではないとして、サポート要件違反を主張する。
しかし、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」に関する原告の上記主張を採用できないことは、前記2?のとおりであるから、原告の上記主張を前提10 とするサポート要件違反の主張も採用することができない。
? 小括したがって、取消事由4は理由がない。
6 取消事由5(明確性要件の判断の誤り〔無効理由5関係〕)について? 明確性要件の判断手法15 請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
? 本件発明1ないし17の明確性20 本件特許の請求項1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」という記載から、「マイクロコントローラ」は、「縮小命令セットコンピュータ」であることが把握され、「縮小命令セットコンピュータ」は、
本件特許の出願時に公知となっているプロセッサアーキテクチャであることから(甲46、甲49)「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコン、
25 トローラ」という発明特定事項は、当業者が十分理解し得るものである。また、請求項1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージ78プログラムのプログラムコード」という記載から、「マッサージプログラム」は、マイクロコントローラによって実行可能な」「 ものであることが把握され、
「マッサージプログラム」が、
「マイクロコントローラ」によって実行されるものであることを勘案すれば、「マッサージプログラムのプログラムコード」5 が、
「マイクロコントローラによって実行可能な」ものであることは当業者が十分理解し得るものである。
したがって、本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という発明特定事項は明確であり、本10 件発明1は、具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者は理解することができ、発明の範囲は明確であって、明確性要件を充足する。
また、本件発明14の「マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラム」及び「前記マイクロコントローラは縮小命令セットコンピ15 ュータである」という発明特定事項についても、上述したような技術的思想として明確に理解できるものであるから、本件発明14は明確性要件を充足する。
そうすると、請求項1を引用する請求項2ないし13に係る本件発明2ないし13、請求項14を引用する請求項15ないし17に係る本件発明1520 ないし17も同様に明確性要件を充足する。
したがって、本件発明 1 ないし17は明確性要件を充足する。
? 原告の主張に対する判断原告は、本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコントローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージ25 プログラムのプログラムコード」という発明特定事項は、受信したプログラムが(暗号化された形式であること以外に)、受信したときにおいて、機械語79に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するという主張を前提として、本件発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、明確性要件を充足せず、また、本件発明14も、本件発5 明1と同様に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、明確性要件を充足しないと主張する。
しかし、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」に関する原告の上記主張を採用できないことは、前記2?のとおりであるから、上記主張を前提として、本件10 発明1が明確性要件を充足しないという主張は採用することができず、また、
本件発明14が明確性要件を充足しないという主張も同様に採用することができない。
? 小括したがって、取消事由5は理由がない。
15 7 取消事由6(実施可能要件の判断の誤り〔無効理由2関係〕)について? 実施可能要件の判断手法本件発明1ないし10は「マッサージ装置」本件発明11ないし13は、 「システム」という物の発明であるところ、発明の詳細な説明物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出20 願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要するものと解される。
また、本件発明14ないし17は「マッサージ装置を動作させるための方法」という方法の発明であるところ、発明の詳細な説明方法の発明につい25 て実施可能要件を満たすためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出80願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要するものと解される。
? 本件各発明の実施可能性本件各発明について、本件明細書等の発明の詳細な説明には、@マイクロ5 コントローラ 130 が、縮小命令セットコンピュータであること(段落【0016】、Aマッサージ装置 106 が、1つのマッサージプログラムのプログラ)ムコードとそれに関連付けられたアイコンのグラフィカルデータを含む、1つ又は複数の暗号化されたファイルを受信すること(段落【0030】、B)マイクロコントローラ 130 は、マッサージプログラムコードとグラフィカル10 アイコンを復元するためにファイルを復号し、マッサージプログラムのコードを機械が実行可能な形式に変換し、次いでマッサージプログラムコードとアイコンをそれぞれ、メモリ 136 とリモートコントローラ 150 に保存すること(段落【0031】、Cマイクロコントローラ 130 は、一連のマッサージ)動作をユーザの身体に施すため、マッサージ部 120 を介して新しいマッサー15 ジプログラムを実行し得ること(段落【0032】)が記載されている。
そうすると、本件明細書等の発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1ないし10のマッサージ装置、本件発明11ないし13のシステムを製造し、使用することができる程度の記載があると認められ、また、本件発明14ないし17のマッサージ装置を作動させ20 るための方法についても、これらの発明を使用することができる程度の記載があると認められる。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、明確性要件は充足されていると認められる。
25 ? 原告の主張に対する判断原告は、本件発明1の「縮小命令セットコンピュータであるマイクロコン81トローラ」及び「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」という発明特定事項は、受信したプログラムが(暗号化された形式であること以外に)、受信したときにおいて、機械語に変換するようなことを要せず直ちに縮小命令セットコンピュータによって5 実行可能なマッサージプログラムのプログラムコードであることを意味するという主張を前提として、本件発明1は実施可能要件を充足せず、本件発明14も同様に実施可能要件を充足しないと主張する。
しかし、本件発明1の「前記マイクロコントローラによって実行可能なマッサージプログラムのプログラムコード」に関する原告の上記主張を採用で10 きないことは、前記2?のとおりであるから、上記主張を前提として、本件発明1が実施可能要件を充足しないという主張は採用することができず、本件発明14が実施可能要件を充足しないという主張も同様に採用することができない。
? 小括15 したがって、取消事由6は理由がない。
8 取消事由7(進歩性の判断の遺脱ないし審理不尽〔無効理由4関係〕、取消)事由8(甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定の誤り〔無効理由4関係〕)及び取消事由9(相違点の判断の誤り〔無効理由4関係〕)について? 本件発明1及び本件発明1420 本件発明1及び本件発明14は、前記第2の2?及び?のとおりである。
? 主引用発明甲1の1(米国特許出願公開第2011/0055720号明細書)には、
図面とともに別紙2のとおりの記載がある。
別紙2の甲1の1の記載によれば、甲1の1には、本件審決が認定したと25 おり、甲1発明1、甲1発明2が記載されているものと認められる。
(前記第2、4?ア(ア)、(イ)、甲1の1に甲1発明1及び甲1発明2が記載されてい82ることは、当事者間に争いがない。)? 公知文献に記載された技術事項ア 甲2(特開2005−332070号公報)(ア) 甲2の記載5 甲2には、次のとおりの記載がある。
a「現時点において、LANなどのネットワークを通じて操作可能なテレビ、テレビ電話、オーディオコンポを一般的な市販品として購入するのは困難であるが、UPnPやECHONETなどといった家電を含む端末機器を相互接続するための通信プロトコルやミドルウェアや10 規格が検討されており、それらを家電の実装することにより当該家電機器のネットワークを通じた操作は可能である。本実施形態例における、テレビ100、テレビ電話101、オーディオコンボ102は、
上記のようなネットワークを通じた操作が可能な端末であることを想定している。(段落【0025】」 )15 「図3に示された制御端末110は、図1における端末情報収集部11と端末制御部14を、端末操作検索装置120は端末操作部12を、
端末操作データベース130は端末操作データベース部13を、リモコン端末140は表示部15及び端末操作部16を、それぞれ含む。
各装置問は、イーサケーブルなどの有線で連絡しても、赤外線や無線20 LANなどの無線で連絡してもよい。以上のように、本実施形態例では、制御端末110と端末操作検索装置120と端末操作データベース130とリモコン端末140とにより一つの端末操作システムとして実現している。(段落【0026】」 )「図7のフローチャートを参照しながら本実施例のシステムの動作例25 について説明する。(段落【0027】」 )83「ステップS1では、ネットワークに接続された各被制御端末100〜103は、制御端末110に対して、端末の識別子とともに、操作可能な機能や性質、デバイスや自端末上で動作するアプリケーションなどのタスクの状態などを含む端末情報を、変更や変化があるたびに5 送信する。(段落【0028】」 )「ステップS2では、制御端末110は、ステップS1で収集された各被制御端末の情報を集約し、被制御端末の構成情報とともに端末操作検索装置120に送信する。(略)(段落【0029】」 )「ステップS3では、ステップS2において被制御端末の構成情報及10 び各端末の情報を受け取った端末操作検索装置120は、端末操作データベース130を参照し、当該データベースに含まれる操作一つ一つについて実行可能かどうかを判定する。(略)(段落【0030】」 )「ステップS4では、端末操作検索装置120が実行可能と判定した操作全てを制御端末110に送信する。この時、各操作に対応するリ15 モコン表示用のアイコンなどの識別子及び、当該操作を実行するためのファイル(以下、操作実行ファイルと称する)等が送られる。(段」落【0031】)「ステップS5では、制御端末110はリモコン端末140に対して、
実行可能な各操作に対応するアイコンなどの識別子を送信する。(段」20 落【0033】)「ステップS6では、ユーザは所望する操作に対応したアイコンなどの識別子をリモコン端末上で選択することにより、制御端末110に対して当該操作の実行を指示する。(略)(段落【0034】」 )「ステップS7では、制御端末110は、ユーザにより選択された操25 作の識別子に対応する操作実行ファイルを解釈し、関係する被制御端末に対して制御命令を順番に実行することにより、端末の操作を行う。
84(略)(段落【0035】」 )b 図3から、制御端末110に対して、各被制御端末100〜103、
端末操作検索装置120及びリモコン端末140がそれぞれ接続されていることを見て取ることができる。
5 (イ) 甲2記載の技術的事項前記(ア)によれば、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「制御端末に対して、各被制御端末、端末操作検索装置及びリモコン端末がそれぞれ接続されたシステムにおいて、端末操作検索装置から制御10 端末に、被制御装置の操作に対応するリモコン表示用のアイコンなどの識別子及び当該操作を実行するための操作実行ファイルを送るステップ」「制御端末がリモコン端末に対して、各操作に対応するアイコンな、
どの識別子を送信するステップ、ユーザが所望する操作に対応したアイコンなどの識別子をリモコン端末上で選択することにより、制御端末に15 対して当該操作の実行を指示するステップ」、及び「制御端末が、ユーザにより選択された操作の識別子に対応する操作実行ファイルを解釈し、
関係する被制御端末に対して制御命令を順番に実行することにより、端末の操作を行うステップ」を順次行うこと。
イ 甲3(特開2003−339084号公報)20 (ア) 甲3の記載甲3には、次のとおりの記載がある。
a「【発明の属する技術分野】この発明は、複数のAV(オーディオ・ビデオ)用機器を有するAVシステムに適用することができる集中制御装置に関する。(段落【0001】」 )25 「【従来の技術】AVシステムにおいて、CDプレーヤ等の複数のAV用機器がアンプにAVケーブルで接続され、例えば、CDの音楽をカ85セットテープにダビングする場合、ユーザは、アンプ、CDプレーヤ、
及びカセットテープレコーダをオンにし、CDプレーヤのプレイスイッチ及びカセットテープレコーダの録音スイッチを操作している。この場合、ユーザは、各AV用機器の所で操作を行う必要があり、操作5 が繁雑になる。(段落【0002】」 )「【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、この発明のAV用集中制御装置(12)は、AV用機器(14)の適宜接続及び切離しが自在で、AVデータ及び制御データの伝送に共用されるデータ伝送路(16)に接続された各AV用機器(14)からアイコンソース及びコマンド10 をダウンロードし、ダウンロードしたアイコンソースをリモコンに送り、そのAV用機器(14)、コマンド、及びそのアイコンソースに係るリモコンの上のアイコンの位置を対応させて記憶したアイコンテーブルを作成し、送ったアイコンソースに基づきリモコン(26)において行われるアイコンの選択に応じてリモコン(26)から送られる位置情報に15 対応するアイコンテーブル中のコマンドを、対応するAV用機器(14)に出力することを特徴とする。アイコンソースに基づいてリモコン上に表示されるアイコンについて、リモコンから位置の修正指示を受け取ったとき、受け取った修正位置に基づきアイコンテーブル中のアイコンの位置を更新するようにしてもよい。(段落【0006】」 )20 b 図2から、AV用集中制御装置(12)に対して、各AV用機器(14)及びリモコン(26)が接続されていることを見て取ることができる。
(イ) 甲3記載の技術的事項前記(ア)によれば、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
25 AV用集中制御装置に対して、各AV用機器及びリモコンが接続されたシステムにおいて、AV用集中制御装置は、各AV用機器からアイコ86ンソース及びコマンドをダウンロードし、ダウンロードしたアイコンソースをリモコンに送り、送ったアイコンソースに基づきリモコンにおいて行われるアイコンの選択に応じてリモコンから送られるコマンドを、
対応するAV用機器に出力すること。
5 ? 本件発明1、本件発明14と主引用発明の対比ア 本件発明1と甲1発明1の対比本件発明1と甲1発明1を対比すると、本件審決が認定したとおりの一致点、相違点1及び相違点2(前記第2、4?イ(ア))が認められる。
イ 本件発明14と甲1発明2の対比10 本件発明14と甲1発明2対比すると、本件審決が認定したとおりの一致点、相違点3及び相違点4(前記第2、4?エ(ア))が認められる。
? 相違点に関する容易想到性の判断ア 本件発明1について(ア) 相違点1について15 a アイコンとは、「コンピューターに与える指示・命令やファイル・プログラムなどをわかりやすく記号化した図形。絵文字。(広辞苑第」7版、株式会社岩波書店)を意味するところ、甲1の1には、図形が記されたボタン1967を選択すると、ユーザは個別の治療又はマッサージプログラム画面1828である「エスプレッソショット」と呼20 ばれる画面に移動することが記載されているから(図18A、段落[0125])、甲1の1のプログラムは、アイコンによって選択されることが予定されているものであるといえる。
そして、甲1の1には、プログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツをどのように入手するかは記載されていないが、
25 リモコン端末に表示されたアイコンによってプログラムを選択するシステムにおいて、制御装置がプログラムコードを受信する際に、当該87プログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツを合わせて受信して、当該アイコンを制御装置からリモコン端末に送るようにすることは、甲2及び甲3に記載されているように周知の技術的事項であり、甲1発明1にこのような周知技術を適用することは、当5 業者が容易に想起し得たものと認められる。
b 甲28(特開2000−276457号公報)には、
「なお、インターネットを安価な通信媒体として利用する場合には、通信経路からのデータ漏洩から守るために、送信データを暗号化して送信することが行なわれているが、このようなデータの暗号/復号化は、システムの10 いろいろなレベルで行なわれている。例えば、通信ソケットレベルで行なわれる暗号化サービスとしてSSL(secure sockets layer)が知られて(略)いる。(段落【0007】」 )と記載され、甲29(特開2006−191189号公報)には、
「パスワードはセッション記述プロトコル(SDP)に暗号化された文字列と15 して記載される。インターネットにおけるデータ通信の暗号方式として広く使われているSSL(Secure Socket Layer)プロトコルを使ってセッション記述を暗号化することでより安全にデータ送信を行うことも可能である。(段落【0027】」 )と記載されており、これらの記載から、インターネット等の通信では、情報保20 護のために、SSL(secure sockets layer)などの暗号化/復号技術が広く行われていることが認められる。
また、甲26(特開2007−233426号公報)には、
「このようなプログラム配信サービスにおいて、配信されるプログラムはそのプログラムの開発者の知的財産権で保護されており、これを悪意のあ25 る攻撃者が盗聴することは防がなくてはならない。また、悪意のある攻撃者により改ざんされたプログラムが、利用者やアプリ製作者の意88図しない動作をすることを防がなくてはならない。これらを実現するために、従来の電子機器は以下のような機能を備えている。」(段落【0003】、
)「暗号化したプログラムをダウンロードし、端末内部で復号することにより、通信途中の盗聴、改ざんを防止する。(段落【00」5 04】)と記載され、甲27(特開2008−017462号公報)には、
「さらに、家電機器用ソフトウェアの更新を行うには、配信されるソフトウェアに対するセキュリティも重要である。例えば、悪意の第三者の操作により、配信されるソフトウェアに不正なコードが混入されてソフトウェアが改ざんされたり、配信される情報の中からその家10 電機器に関するノウハウやアルゴリズムなどの秘密情報が解読されたりすることは、確実に防止されなければならない。そのためには、ソフトウェアおよびそれに付随する情報は、配信の際に暗号化する必要がある。(段落【0006】、(略)暗号鍵で暗号化されたダウンロ」 )「ードモジュールを受信して(略)暗号鍵でダウンロードモジュールを15 復号化する。(略)(段落【0007】」 )と記載されており、これらの記載から、装置の外部からプログラム等を受信する際に、プログラム等を暗号化された形式で受信し、受信した装置で復号すること(暗号化/復号技術)も、コンピュータ(コンピューティング)技術ないしデータ通信技術の技術分野において極めて周知の技術であることが認20 められる。
そうすると、甲1発明1の治療用健康装置は、マッサージプログラムのプログラムコードを、インターネット等を通じて受信するものであるところ(段落[0029])、上記のとおり、インターネット等の通信では、情報保護のために、SSL(secure sockets25 layer)などの暗号化/復号技術が広く行われており、しかも、
上記のとおり、装置の外部からプログラム等を受信する際に、プログ89ラム等を暗号化された形式で受信し、受信した装置で復号すること(暗号化/復号技術)も、コンピュータ(コンピューティング)技術ないしデータ通信技術の技術分野において極めて周知の技術であるから、
甲1発明1において、ダウンロードに際して、当該周知の暗号化/復5 号技術を採用することは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎないというべきである。
c さらに、ダウンロードしたプログラムをメモリに保存することは、
通常行う事項であり、甲1発明1においても当然実行しているものと認められるから、この点は実質的な相違点ではない。
10 d そして、本件発明1において、
「アイコンをリモートコントローラに保存させること」が特定されているが、アイコンはプログラム選択という操作に利用されるものであり、甲1発明1においては、操作手段としてリモートコントローラを有しているのであるから、アイコンによって選択されることが予定されているプログラムをダウンロード15 した後、そのプログラムがアイコンによって選択できるように対処すべきことは、当業者が当然考慮すべき普遍的な課題であるところ、その普遍的課題に照らして、甲1発明1に操作手段として備わっているリモートコントローラにアイコンを保存させることは、当然に考慮する設計的事項にすぎず、しかも、ダウンロードしたアイコンをリモー20 トコントローラに保存することも周知の技術である(甲2、甲3)から、当業者であれば、
「アイコンをリモートコントローラに保存させること」は、容易に想到し得たものと認められる。
e そうすると、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし甲225 9に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することが90できたものであり、そのことにより、格別な効果を奏するものではないと認められる。
(イ) 相違点2について甲8 「エンサイクロペディア情報処理2000−2001」( 情報処理5 学会)には、「RISC(Reduced Instruction Set Computer)とは、現在主流となっているプロセッサ設計思想である.(490頁)と記載されて」おり、これによれば、本件特許の出願時において、プロセッサアーキテクチャとしてはRISC(縮小命令セットコンピュータ)が主流となっていたことが認められる。
10 また、甲21の1(特表2009−520506号公報)には、
「本発明は、マッサージ装置…に関する」(段落【0001】、
)「本発明の各種構成要素を制御するために使用される制御システムは、略)( たとえば(略)Texas Instruments社製のプログラマブルマイクロコントローラMSP430である」(段落【0078】 と記載されており、
)15 甲21の2(MSP430 入門セミナー2007 資料)によれば、
「MSP430」は「16ビット RISC CPU」(2頁)である。また、甲25の1(特表2004−535844号公報)には、
「本発明は…マッサージ装置に関する」(段落【0001】、
)「マイクロコントローラ328は、
例えば、Holtek HT49R50のような(略)標準的な自蔵式20 の素子であっても良い」(段落【0037】)と記載されており、甲25の2(Chip Works Technology Limited 社ウェブページ)によれば、
「HT49R50」は「8ビット RISC プロセッサ(8-bit RISCprocessor)(1頁)であり、これらの記載によれば、マッサージ装置の」技術分野においてRISCを用いることも周知の技術であったと認めら25 れる。
このように、本件特許の出願時において、プロセッサアーキテクチャ91としてはRISC(縮小命令セットコンピュータ)が主流となっており、
また、マッサージ装置の技術分野においてRISCを用いることも周知の技術であったから、甲1発明1において、治療プログラムを実行する主データ処理装置200(マイクロコントローラ)としてRISCを採5 用し、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであり、そのことにより、格別な効果を奏するものでもないと認められる。
そうすると、甲1発明1において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明1並びに甲8、甲21の1、2及び甲25の1、
10 2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであり、そのことにより、格別な効果を奏するものではない。
(ウ) 容易想到性以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし甲29に記載された周知技術、甲8、甲15 21の1、2及び甲25の1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めるのが相当である。
イ 本件発明14について(ア) 相違点3について相違点3は、その内容からみて、本件発明1と甲1発明1との相違点20 1に実質上対応するものであるところ、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし29に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであることは前記ア(ア)eのとおりであるから、相違点3に係る本件発明14の構成も、甲1発明2並びに甲2及び甲3に記載25 された周知技術、甲26ないし29に記載された周知技術に基づいて、
当業者が容易に想到することができたものである。
92(イ) 相違点4について相違点4は、その内容からみて、本件発明1と甲1発明1との上記相違点2に実質上対応するものであるところ、相違点2に係る本件発明1の構成が、甲1発明1並びに甲8、甲21の1、2及び甲25の1、25 に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであることは前記ア(イ)のとおりであるから、相違点4に係る本件発明14の構成も、甲1発明2並びに甲8、甲21の1、2及び甲25の1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
10 (ウ) 容易想到性そうすると、本件発明14は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし甲29に記載された周知技術、甲8、甲21の1、2及び甲25の1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認めるのが相当である。
15 ? 取消事由7の理由の有無ア 原告は、取消事由7について、本件発明1と甲1発明1の相違点1における実質的な相違点は、駆動部と接続されたマイクロコントローラによる「処理に関し」の後に続いて記載されている「処理内容」にあることが明らかであるにもかかわらず、本件審決は、一貫して、一致点である「駆動部20 と接続されたマイクロコントローラ」に着目して判断しており、相違点1における実質的な相違点である「処理内容」についての容易想到性の判断を何ら示していないとして、本件発明1の進歩性の判断に誤りがあると主張し、また、請求項1を引用する請求項2ないし13に係る本件発明2ないし13の進歩性の判断にも誤りがあると主張する。
25 しかし、本件審決は、本件発明1と甲1発明1とが共通に備えることにより一致点として認定した「前記駆動部と接続されたマイクロコントロー93ラ」が相違するとして相違点1の認定を行っているのではなく、共通に備える「マイクロコントローラ」について、その具体的な処理内容が両者で相違するとして認定していることは、本件審決の文言上明らかであるから(本件審決第5、6?ウ〔本件審決83〜85頁〕、原告の上記主張は採)5 用することができない。
イ また、原告は、取消事由7について、本件発明14と甲1発明2の相違点3における実質的な相違点は、マッサージ装置のマイクロコントローラ「での処理に関し」の後に続いて記載されている「処理内容」にあることが明らかであるにもかかわらず、本件審決は、一貫して、一致点である「マ10 ッサージ装置のマイクロコントローラ」に着目して判断しており、相違点1における実質的な相違点である「処理内容」についての容易想到性の判断を何ら示していないとして、本件発明14の進歩性の判断に誤りがあると主張し、また、請求項14を引用する請求項15ないし17に係る本件発明15ないし17の進歩性の判断にも誤りがあると主張する。
15 しかし、本件審決は、本件発明14と甲1発明2とが共通に備えることにより一致点として認定した「マッサージ装置のマイクロコントローラ」が相違するとして相違点3の認定を行っているのではなく、共通に備える「マイクロコントローラ」について、その具体的な処理内容が両者で相違するとして認定していることは、本件審決の文言上明らかであるから(本20 件審決第5、6?ウ〔本件審決88〜89頁〕、原告の上記主張は採用す)ることができない。
ウ したがって、取消事由7は理由がない。
? 取消事由8の理由の有無ア 被告は、取消事由8について、甲2及び甲3についての本件審決の認25 定(前記第2、4?イ(イ)、本件審決第5、6?ウ〔本件審決83〜84頁〕)には誤りはないと主張する。
94本件審決は、甲2において、制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものであるから、制御端末110は家電機器の駆動部に接続して制御する装置ではなく、また、
甲3において、AV用集中制御装置(12)から複数のAV用機器(14)に対す5 る制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものであるから、AV用集中制御装置(12)はAV用機器の駆動部に接続して制御する装置ではないので、いずれも、本件発明1の「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」に相当するものではないと解釈した。しかし、甲2及び甲3に記載された技術的事項は、前記?ア(イ)、イ(イ)のとおり認定されるものであ10 って、本件審決のように、制御端末110が家電機器の駆動部に接続して制御する装置ではないこと、AV用集中制御装置(12)がAV用機器の駆動部に接続して制御する装置ではないことと限定的に解釈すべき根拠はなく、本件審決による甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定には誤りがある。
15 したがって、被告の上記主張は採用することはできない。
イ 以上のとおり、甲2及び甲3に記載された技術的事項は、前記?ア(イ)、
イ(イ)のとおり認定されるものであって、本件審決による認定は誤りであるから、取消事由8は理由がある。
? 取消事由9の理由の有無20 ア(ア) 被告は、本件審決が判断するとおり、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明1及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、進歩性の要件を充足し、本件発明2ないし13は、本件発25 明1を発明特定事項に含むものであるから、本件発明2ないし13も進歩性の要件を充足すると主張する。また、本件審決が判断するとおり、
95相違点3に係る本件発明14の構成は、甲1発明2及び甲2ないし甲12、甲18ないし甲29の記載事項から把握される技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明14は、相違点4について検討するまでもなく、進歩性の要件を充足し、
5 本件発明15ないし17は、本件発明14を発明特定事項に含むものであるから、本件発明15ないし17も進歩性の要件を充足すると主張する。
しかし、前記?アのとおり、本件発明1は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし甲29に記載された周知技10 術、甲8、甲21の1、2及び甲25の1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性の要件を充足せず、前記?イのとおり、本件発明14は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲26ないし甲29に記載された周知技術、甲8、甲21の1、2及び甲25の1、2に記載された15 周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性の要件を充足しないと解するのが相当であるから、被告の上記主張は採用することはできない。
(イ) また、被告は、相違点2に関して、独自の相違点2’を挙げて、容易想到でないと主張するものの、その主張は、本件審決による相違点2の20 認定自体が誤っているとするものではなく、また、相違点2’についての被告の主張を考慮しても、相違点2が容易想到であるという上記判断を覆すに足りるものではない。
イ 前記ア(ア)のとおり、本件発明1及び本件発明14はいずれも進歩性の要件を充足しないから、本件発明1及び本件発明14は容易に想到するこ25 とができないとした本件審決の判断は誤りである。
したがって、取消事由9は理由がある。
969 結論以上によれば、取消事由8及び取消事由9は理由があるから、本件審決には取り消すべき違法がある。
よって、原告の請求を認容することとし、主文のとおり判決する。
5 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官10 東 海 林 保裁判官15 中 平 健裁判官20 都 野 道 紀(別紙1審決書写し省略)97別紙2(甲1の1(米国特許出願公開第2011/0055720号明細書)の記載事項)([0029]から[0073]までの翻訳は審決により、その余の翻訳は甲1の1添付の翻訳による。)5「[0029]図1に示す本発明の一実施形態は、治療用健康装置100を備え、治療用健康装置100は、マッサージチェア、マッサージオットマン、または他の独立型治療装置であるかどうかにかかわらず、接続できる装置を備え、接続できる装置は、
例えば有線接続102を介してパーソナルコンピュータなどの外部計算装置17010 に接続でき、有線接続104を介してLAN・携帯電話ネットワーク・インタネットなどのパブリック又はプライベートローカル又はワイドエリアデータネットワーク180に接続でき、又はタブレットコンピュータ又はスマートフォン190などの無線トランシーバを含むデバイスへの無線接続を介して接続できる。多数の方法と有線および無線データ通信接続のタイプは、関連するコンピューティングおよび15 データネットワーキング技術の当業者にはよく知られている。
[0030]治療用健康装置への接続は、例えば、周辺装置としての治療用健康装置によって構成され、治療用健康装置に組み込まれたユニバーサルシリアルバスすなわちUSB ポートなどの有線ポート 105、110 または他の適切な接続を使用して確立することができる。他の使用可能な有線接続方式には、イーサネットポート、FireWire20 (IEEE 1394)ポート、標準の電話接続ポートなどがある。そのような有線接続は、
銅、光ファイバー、または他の任意の物理的伝送媒体を使用して実装することができる。
[0031]上記のように、治療用健康装置へのデータ通信接続はハードワイヤードである必要はなく、代わりにまたは追加でワイヤレスであってもよく、治療用健康装置25 の内部または接続されたトランシーバーを特徴とし、Bluetooth、Wi-Fi(IEEE802.11) ZigBee(IEEE 802.15.4)、 、または GSM(2G)、IMT-2000(3G)、また188は IMT Advanced(4G)モバイルテレフォニーなどのワイヤレス RF 標準を実装する。その他の使用可能なワイヤレス接続には、光学または赤外線トランシーバーが含まれる。同様に、有線、赤外線、光、RF ワイヤレスなどのその他のデータ通信システムも将来開発される可能性が高く、データ通信またはネットワーキングに適し5 たそれらのいずれも、本発明の実施形態で使用できる。このような通信接続は、着信データまたは発信データのいずれかのみを処理する単方向の場合もあれば、着信データと発信データの両方を処理する双方向の場合もある。」「[0037]治療用健康装置および補助デバイスが、ワイヤードネットワークの図1に示されている。本明細書に記載されているすべてのデータ接続と同様に、治療用健10 康装置と補助デバイスとの間のすべての接続は、無線だけでなく有線でもよい。したがって、図10は、本発明の別の実施形態を示し、治療用健康装置1000、無線外部計算装置1090、および補助デバイス1040から1052は、ブルートゥース接続規格の下で確立され、無線ピコネットを形成する無線トランシーバ1032を介して一緒に接続される。そのような構成では、治療用健康装置のワイヤレ15 ストランシーバは、治療用健康装置1000自体の内部に収容されるか、または接続された外部ドングル1030に含まれ得る。このようなピコネットでは、どのデバイスもマスターまたはスレーブとして動作する。
治療用健康装置の内部装置[0038]図2に示すように、本発明の1つまたは複数の実施形態による治療用健康装20 置は、外部計算装置またはデータ通信ネットワークから着信データを受信するとともに、発信データを送信するための、主要データ通信接続またはアンテナ210および一次データ通信処理装置215を備える。それは、さらに、入力データを処理、
変換、または解釈して治療用健康装置の動作に関連する構成と動作に変換し、コマンド接続230を介した信号によって治療機構260、265と位置決め機構 27025 にそのような構成と動作を実行させる主データ処理装置200を備える。例えば、
マッサージ機構および位置決め機構などのアイテムはマッサージ装置に最も関連し189ているが、他のタイプのウェルネス療法を実施するための他の同等のメカニズムを、
他のタイプの治療用ウェルネス装置に加えて、またはそれらの代わりに使用することができる。主データ処理装置200はまた、データ接続240を介してセンサ250、255からのデータ、ならびに治療用健康装置および治療使用情報および構5 成を処理および解釈し、それを出力データに変換する。本発明による治療用健康装置は、外部データ通信接続またはアンテナ220と、外部データを外部補助デバイスまたはデイジーチェーン治療用ウェルネスデバイスから受信および送信データを送信するための二次データ通信処理装置225とをさらに備え得る。二次データ通信処理装置225は、一次データ通信処理装置215および/またはメインデータ10 処理装置200と直接通信することができる。
[0039]治療用健康装置内の通信装置および/またはデータ処理装置は、データ通信接続自体をサポート、維持、または強化するために使用することもできる。そのような装置は、接続でセルフテストを実行して、正しく動作していることを確認する。
また、USB または Bluetooth 接続を特徴とする実施形態では、装置またはソフトウ15 ェアは、『プラグアンドプレイ』または照会/ページング構成でそのような接続をそれぞれサポートして、治療用健康装置の外部計算システムへの統合を自動化することができ、ユーザーやオペレーターが手動で接続したり、個別のソフトウェアデバイスドライバーを指定してインストールしたりする必要がなくなる。
[0040]治療用健康装置内の通信装置およびデータ処理装置は、例えば、1つまたは20 複数のマイクロプロセッサ、プログラマブルロジックデバイス、または特定用途向け集積回路によって制御され得る。このようなデータ処理装置は、不揮発性メモリをさらに特徴として、デバイスから電力が除去された場合でも、プログラムおよびデータが治療用ウェルネスデバイスに存続できるようにすることができる。本発明の一実施形態では、通信装置210、215、220および225は、主データ処25 理装置200と統合され、すべての装置は、共通のハードウェアおよび/またはソフトウェアを使用して一緒に実装され得る。対照的に、別の実施形態では、通信装190置210、215、220、および225は、主データ処理装置200とは別個に設計および/または実装され、別個に存在していた既存のユニットまたは以前に設計または製造された治療用健康装置のモデルに統合または改造することができる。
そのような既存の治療用ウェルネスデバイスは、ハードワイヤードのリモートコン5 トロールボックスで機能するように設計されている可能性があり、そのような製品構成は、本発明の実施形態によって効果的に使用できる。
[0041]本発明の一実施形態では、治療用健康装置内の通信装置および/またはデータ処理装置内のソフトウェア機能は、製造時に永続的に固定および制限されず、データ通信接続自体を介してリモートで交換またはアップグレードされ得る。そのよ10 うなリモートファームウェアまたはソフトウェアのアップグレードまたは交換のための特定のメカニズムおよび手順は、関連するコンピューティングおよびデータ通信技術の当業者にはよく知られている。このようなアップグレードまたは交換は、
ユーザーやオペレーターが手動で開始したり、ユーザーまたはオペレーターの制御下にあるプライベートまたはパブリックデータネットワークを介してリモートで開15 始したり、メーカー、ディストリビューター、またはその他のソフトウェアソースによって自動的に実行したりできる。
デバイスのコマンド、および既存の治療用健康装置シグナリングの模倣[0042]外部計算装置は、データ通信リンクを介してそれにコマンドを渡すことにより、治療用健康装置を制御し、これらのコマンドは、様々なレベルで治療用健康装20 置のデータ処理装置によって解釈され得る。本発明の一実施形態では、処理装置の内部プロセッサアーキテクチャを外部計算装置に「エクスポート」することができ、
低レベルの基本コマンドは、個々のマイクロコントローラの命令と同じように、治療用健康装置の処理装置に受け渡すことができ、データ処理装置内のマイクロコントローラまたはロジックチップにより直接実行される。別の実施形態では、対照的25 に、より高いレベルまたは『マクロ』コマンドを治療用健康装置の処理装置に渡すことができ、それにより単一のコマンドが治療用健康装置に比較的複雑な操作また191は一連の操作を実行させることができる。コマンドは、中間レベルの複雑さでもよい。
[0043]データリンク用の通信処理装置と治療用健康装置の主処理装置との間のコマンドレベルのマッチングは、データ通信リンクへのインターフェースが、治療用健5 康装置のメインエレクトロニクスの一部として製造されておらず、治療用健康装置とは別に、またはその改造として製造された状況では、非常に価値がある。データ通信リンクで高レベルのコマンドアプローチを使用すると、有線リモートコントロールボックスで使用するように設計およびプログラムされた治療用健康装置との便利で効率的なインターフェースが可能になる。このような治療用健康装置の処理装10 置は通常、定義された上位レベルのコマンドのセットに応答するようにプログラムされており、有線リモートコントロールボックスの個々のボタンは通常、これらのコマンドを押すとトリガーされるように配線されている。そのようなより高いレベルのコマンドアプローチを使用する実施形態では、データ通信処理装置を、治療用健康装置内の既存の事前にプログラムされたメイン処理ユニットに追加または改造15 することができる。このような改造された装置は、有線リモートコントロールボックスのボタンプレスをシミュレートする高レベルのコマンドを主処理装置に渡すことができるが、有線リモートコントロールボックスを介して達成されるものを超えて装置の機能を向上させることもできる。そのような装置は、有線リモートコントロールボックスに通常は配線されていない又は関連付けられていない高レベルのコ20 マンドを渡すことができ、あるいは、リモートコントロールボックスの個々のボタンを押して実際に生成できるものを超えた高レベルの『ボタンシミュレーション』コマンドの組み合わせ又はシーケンスを渡すことができる。」「外部計算装置による治療用健康装置の制御[0047]図1に示すように、ローカルまたはリモートのいずれかの外部計算装置1725 0、190とデータ通信する治療用健康装置は、従来の手持ちリモートコントロールボックス160に加えて、またはその代わりに、その外部計算装置から制御され192得る。そのような外部計算装置は、あらゆる種類の計算装置を含むことができる。
それは、例えば、適切なソフトウェアがロードされた汎用コンピュータを含み、キーボード175、マウス176、または音声認識装置174などのユーザーインターフェースデバイスによって操作されて、治療用健康装置のモードを設定したり、
5 コマンドを発行したりできる。手持ちリモートコントロールボックスと同じモード及びコマンドであっても追加のモード又はコマンドであっても、それらの一部は、
手持ちリモートコントロールボックスから簡便に発行するには複雑すぎることがある。それは、他の種類の計算装置をも含み得るものであり、例えば、パーソナルコンピュータまたはビデオゲームコンソール170、またはスマートフォン、パーソ10 ナルデジタルアシスタント(PDA)、ポータブル、ラップトップ、またはタブレットコンピュータ、デジタルメディアプレーヤー、メディアリーダー、パーソナルデジタルアシスタント、プログラム可能なワイヤレスリモートコントロール、または同様の手持ちデバイスまたはモバイルデバイス190である。そのようなワイヤレスデバイスの例としては、カリフォルニア州クパチーノにある Apple Inc.の iPod、
15 iPad、iPhone 製品、イリノイ州ショームバーグの Motorola、Inc.の Droid またはMilestone または韓国の Samsung Group の i7500 などの Android オペレーティングシステムを実行している製品、Samsung Group の i8910 などの Symbian オペレーティングシステムを実行している製品、または Research in Motion of Canada のBlackBerry がある。有線または無線のデータ接続を使用して、治療用健康装置の制20 御用に特別に設計されたハードウェアデバイスも使用できる。そのような外部計算装置は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラベースのデバイスに限定されず、プログラム可能な論理デバイス、特定用途向け集積回路、または他の任意の装置に基づくかどうかにかかわらず、計算が可能な任意のデバイスを含み得る。」「[0049]外部計算装置170または190を介した制御は、ハードワイヤードの手25 持ちリモートコントロールボックス160を置き換えることができるが、治療用健康装置は、両方の制御ソースからのコマンドを受け入れるように構成することもで193きる。治療用健康装置は、たとえば、いずれかのユニットから発行された最新のコマンドに応答するか、一方の制御ソースにのみ応答して一定期間または他の指示があるまで他のソースを『ロックアウト』するように指示するか、または他の方法またはスキームで両方のソースからのコマンド入力を組み合わせる。同様に、外部計5 算装置とリモートコントロールボックスはそれぞれ、他の制御ソースによって実行されるアクションを認識して対応でき、たとえば、他の制御ソースによって実行されるコマンドまたはアクションが変更する。このような表示の更新は、治療用健康装置における装置から生じたり、他の制御ソースから流れるコマンドデータをサンプリングまたは『スニッフィング』する各制御ソースから生じたり、または 2 つの10 制御ソース間を直接流れるデータから生じる。2つの制御ソース間のデータ接続により、追加タイプの機能とそれらの間の調整も可能になる。」「[0052]一実施形態では、図14に示すように、ユーザーがグラフィックディスプレイと対話して選択を行うと、アプリケーションは、グラフィックオブジェクトの選択またはドラッグなどのユーザー入力を受け入れ(1402) そのような入力に、
15 よって表される、ディスプレイ上のグラフィックオブジェクトの新しい値または位置を決定する(1404)。アプリケーションは、スカラ、ベクトル、または他の用語であるかどうかにかかわらず、新しいグラフィカルオブジェクト値と古いグラフィカルオブジェクト値の違いを決定する(1406)。アプリケーションは、グラフィカルオブジェクトの違いを、治療用健康装置の現在の構成と、グラフィカルオブ20 ジェクトのユーザーの操作に対応するデバイスの新しい構成との間の構成の違いに変換する(1408)。そのような変換は、例えば、ルックアップテーブルまたはプログラムされた式を介して達成され得るものであり、現在の構成を決定するために治療健康装置に問い合わせをするアプリケーションを含み得る。アプリケーションは、要求された構成変更を可能な構成と比較し(1410)、たとえば、加熱パッド25 に200度まで加熱するように命令する場合のように、要求された変更が治療用健康装置の能力を超える場合、構成の変更を修正又は制限(1412)する。一般に、
194アプリケーションは変更変更して、デバイスで可能な要求された変更に最も近い可能な変更にする。アプリケーションは、必要に応じて変更された構成変更を、治療用健康装置で認識可能な 1 つまたは複数のコマンドに変換する(1414)。この変換は、たとえばルックアップテーブルまたはプログラムされた式を使用して実5 行することもできる。アプリケーションは、治療用健康装置に 1 つ以上のコマンドを発行し(1416)、グラフィック表示も更新する。ディスプレイがデバイスの現在の構成に依存するように構成されていない場合(1418)アプリケーションは、

必要に応じて変更されたユーザーの入力に対応するように、ディスプレイ上のグラフィックオブジェクトを更新するだけである(1420)。一方、ディスプレイがデ10 バイスの現在の構成を反映するように構成されている場合、デバイスの構成変更が完了するまで(1422) アプリケーションは変更の最中にデバイスの現在の構成、
を取得し(1424)、現在のデバイス構成を反映するディスプレイを更新する(1426)。このようにして、ディスプレイは、治療用健康装置の動きまたはその他の変化を、発生時にリアルタイムで示す。」15 「リモートおよび複数の外部コンピューティング装置と治療用健康装置[0063]治療用健康装置の制御は、特定の外部コンピューティング装置から直接、またはマルチホップ、デイジーチェーン、または他のデータ通信トポロジを使用して間接的に、異なる外部コンピューティング装置からの制御を可能にすることができる。たとえば、スマートフォンまたは同様のポータブル外部コンピューティング装20 置は、Bluetooth ワイヤレス接続などを介して治療用健康装置を直接制御するとともに、直接または他のコンピューティングデバイスと直接またはパブリックまたはプライベートデータネットワークを介して他のコンピューティング装置と接続できます。そのような構成では、別のコンピューティング装置を使用して、ポータブル外部コンピューティング装置を介して間接的に治療用健康装置を制御することがで25 きる。また、外部のコンピューティング装置は、間接的に制御するデバイスから治療用健康装置にコマンドとデータを直接中継するか、または治療用健康装置の派生195されたまたは変換されたコマンドとデータに送信する前にフォーマット間で解釈、
変換、または処理するために使用できる。同様の複数の無線または有線接続は、外部コンピューティング装置がより大型のデスクトップコンピューターである場合に、
間接制御にも使用できる。」5 「[0068]特定の治療用健康装置を使用する以外に、ユーザーは定義済みの治療プリセットを取得するか、以下で説明するように、定義済みの治療プログラムまたはシーケンスを取得して、ホテル、空港のラウンジ、公共のマッサージやセラピー施設、
キオスク、飛行機、その他の移動手段にある公共施設の治療用健康装置を含む他の場所で使用できる他の治療用健康装置に転送できる。このような転送は、CD、デー10 タカード、USB フラッシュドライブなどのデータ保持メディアの使用、またはカードスワイプまたは近接キーチェーンデバイスによって開始されるネットワークデータ転送などのハイブリッド転送デバイスまたはプロセスによって、プライベートまたはパブリックデータネットワーク全体で直接行われる場合がある。外部計算装置は、そのような公的に利用可能な治療用健康装置の使用に対するユーザーの支払い15 を支援することもできる。」「[0071]マッサージや関連する活動や構成など、さまざまな治療のための治療用健康装置コマンドのプログラムまたはシーケンスが定義され、外部計算装置に関連付けて使用される。このプログラムまたはシーケンスは、さまざまな活動や構成を治療用健康装置に順次指令するために外部計算装置によって使用されてもよいし、そ20 の治療用健康装置又は他の治療用健康装置による事後的な実行のために一度にその治療用健康装置にダウンロードされてもよい。そのような治療プログラムまたはシーケンスは、外部計算装置で構成または定義することができる。そのような構成は、
プログラミング言語に類似したテキストベースの治療ウェルネスデバイスのコマンド言語を使用することによって達成することができる。この言語は、プロのプログ25 ラマーではないユーザーが自分の治療プログラムまたはシーケンスを作成するのに十分なほどシンプルでよい。そのような構成は、代替的又は追加的に、グラフィカ196ルコンパイラーを使って構成される。治療用健康装置のモデル、マップ、グラフィック描画が、所望の治療プログラム又はシーケンスを組みたてるためグラフィカルコンパイラーにおいて操作される。そのような治療プログラムまたはシーケンスはまた、時系列で様々な構成および活動を想定し、保持および共有または後で使用す5 るためにそのようなシーケンスを同時に『記録』または『取得』するように治療用健康装置に命令するユーザーによって定義されてもよい。そのようなシーケンスまたはプログラムは、外部計算装置を介して、パブリックまたはプライベートデータネットワークを介して他のユーザーと共有できる。たとえば、健康をテーマにしたブログやフォーラム、または MySpace または Twitter のようなソーシャルネット10 ワーキングサイトなどに投稿することで、他の治療用健康装置のユーザーや友人とのソーシャル目的で共有できる。
[0072]プログラムまたは治療用健康装置コマンドのシーケンスは、外部計算装置にダウンロードすることも、遠隔地から治療用健康装置に直接ダウンロードすることもできる。それらは、ユーザーの要求によって『プル』される場合と、遠隔地から15 発信された送信で『プッシュ』される場合がある。遠隔地には、治療用健康装置の製造業者や販売業者、またはサードパーティの治療プログラムの開発者やプロバイダーによって管理されている Web サイトや電子設備が含まれてもよい。複数の治療用健康装置の制御と組み合わせることで、視聴覚プログラムや治療プログラムの配布は、たとえば、販売促進において、治療用健康装置や、複数の異なる小売サイ20 トで同時に実施される治療セッションがマーケティングの誘因として提供される他の製品の視聴覚販売デモを可能にするアプリケーションを見つける。複数の治療用健康装置の制御と連携したこのような分散型の視聴覚プログラムは、共有のコンピュータ画面の形をとることができ、制御された治療用健康装置を使用または関連する人々は、指令又はまたは他の目的のための中央制御サイトで操作画面が操作され25 ていることを確認できるようになっている。そのような『分散型スクリーン』はさらに、他のサイトにいる人々がそのようなスクリーンの制御に参加することを可能197にし、したがって、1 つまたは複数の治療用健康装置の制御に参加することを可能にする。
[0073]このようなプログラムまたはシーケンスは、一般に公開される可能性があり;例えば、フィットネス、治療、またはリラクゼーションのコミュニティの著名人が5 好むまたは採用するマッサージシーケンスの『スクリプト』は、一般に公開されてもよい。他方、特定のプログラムまたはシーケンスは、特定のユーザーまたは複数のユーザーのために特に構築されてもよい。一実施形態では、図15に示すように、
患者は、特定の症状または状態を医療提供者に報告する(1502)医療提供者は、

特にその患者に対して、報告された症状または状態に対応するための治療用健康装10 置の最適な専門プログラムまたはシーケンスを決定する(1504)。もし(1506) そのようなプログラムまたはシーケンスがすでに存在する場合、
、 医療提供者はそれを選択する(1508) そのようなプログラムまたはシーケンスが存在しない。
場合、医療提供者はそれを構築する(1510)新しいプログラムが構築された後、

または、もし(1512)既存のプログラムがコードまたはパスワードでタグ付け15 されておらず、医療提供者、治療用健康装置の製造業者または販売業者、外部計算装置アプリケーションの製造業者または販売業者に属する Web サイトなどの公的にアクセス可能なデータリポジトリに配置されている場合、医療提供者(1514)は、プログラムを Web サイトまたは他の公的にアクセス可能なデータリポジトリに配置し、プログラムにコードまたはパスワードを割り当てる(1516)。医療提20 供者は、プログラムまたはシーケンスのコードまたはパスワードを患者に提供する(1518)。患者はウェブサイトにアクセスし(1520)、コードまたはパスワードを入力し(1522)、治療プログラムまたはシーケンスをダウンロードし(1524)、プログラムまたはシーケンスを使用して(1526)、治療用健康装置を操作する。
」25 「外部計算装置上のソフトウェアアプリケーションのフロート GUI 画面の例[0114]治療用健康装置を制御する外部計算装置のソフトウェアアプリケーションか198らのグラフィカルユーザインタフェース画面のチャートとフロー図が図18A−18Dに示されている。・・・・・」「[0125]ホーム画面1814又は他の画面からユーザーが選択できる別の項目は、
ユーザーがカスタム療法又はマッサージ動作を迅速かつ容易に実行できるようにす5 るモードであり、混合可能な個別のマッサージ構成要素に基づいてカスタム療法又はマッサージセッションを組み立てることができる。ホーム画面のボタン1967を選択すると、ユーザーは個別の療法又はマッサージプログラム画面1828、ここでは『エスプレッソショット』と呼ばれる画面に移動する。第1画面1828では、ユーザーは、病気又はユーザーが注意を望む身体の部分を選択することによっ10 て、単一の療法又はマッサージ活動を選択することができる。この選択スキャンは、
人体図1968などのグラフィカル模様から作成される。あるいは、治療用健康装置の図又は他の図を使用して、様々な治療またはマッサージ活動を示す様々な場所を選択するために用いられ得る。これに関連して、人体部分の図又は他の図は、ユーザーが選択を行うのを支援するために、色又は他のグラフィカル模様でコード化15 されてもよい。・・・・・」2025199「図18A」200
事実及び理由
全容