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事件 令和 2年 (ネ) 10042号 損害賠償請求控訴事件

控訴人有限会社PXZ
同訴訟代理人弁護士 鷹見雅和
同訴訟代理人弁理士 森哲也
同 補佐人弁理士田中秀
被控訴人 東日本高速道路株式会社
同訴訟代理人弁護士 山上芳和 藤井圭子 平井佑希 丸田憲和
同訴訟代理人弁理士 齋藤晴男
同 補佐人弁理士齋藤貴広
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/07/06
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、2693万0317円並びにうち1000万円にする平成31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1693万0317円に対1する令和3年11月12日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
3 控訴人の当審におけるその余の拡張請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを5分し、その4を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。
5 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、1億3437万2126円及びうち1000万円にする平成31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1億2437万2126円に対する令和3年11月12日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、原審における1000万円及びこれに対する平成31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の損害賠償請求を、このように拡張した。。
) 3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行宣言
事案の概要
本件は、いずれも、発明の名称を「車両誘導システム」とする本件特許1及び2(以下、併せて「本件特許」という。)の特許権(以下、本件特許1に係る特許権を「本件特許権1」、本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)の特許権者である控訴人が、被控訴人の使用に係る被控訴人システム1〜3が本件特許権1 2 を、被控訴人システム4が本件特許権1及び2を侵害すると主張して、被控訴人に対し、不法行為による損害賠償請求として民法709条及び特許法102条3項に基づき、又は不当利得返還請求として民法703条に基づき、損害賠償金又は不当利得金として1000万円及びこれに対する不法行為の後であり請求の後の日である平成31年4月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は、被控訴人各システムが本件特許の技術的範囲に含まれないとして控訴人の請求を棄却し、控訴人が控訴した。なお、控訴人は、当審において、被控訴人に対する不法行為に基づく請求を、1億3437万2126円並びにうち1000万円にする平成31年4月2日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち1億2437万2126円に対する令和3年11月12日(訴えの変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものへと拡張した。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお、以下、書証において枝番号の記載を省略したものは、
枝番号を含む。) 次のとおり補正するほかは、原判決2頁13行目から6頁17行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決2頁13行目から3頁2行目までを次のとおり改める。
「(1) 本件特許 ア 訴外A(以下「A」という。)は、平成16年9月13日(以下「本件原出願日」という。、発明の名称を「車両誘導システム」とする発明について、特許出願 )(特願2004-300749号。以下「本件親出願」といい、本件親出願に係る明細書及び図面を「本件親出願明細書」という。)をし、その後、別紙1のとおり、
3 分割出願をした。(甲12、乙40、41) イ 上記アの分割出願の中で、Aは、平成26年4月23日、第3世代に当たる特願2013-24483号の一部を特願2014-89069号として分割出願し、平成27年7月3日に特許第5769141号として設定登録を受けた(本件特許2。請求項の数は2である。本件特許2に係る明細書及び図面を「本件明細書2」という。)ところ、本件特許権2について、平成30年3月14日を受付日として、控訴人に対し、特定承継による本権の移転を原因とする特許権移転登録が経由された。(甲3、4、乙41) ウ Aは、平成26年12月2日、上記特願2014-89069号の一部を特願2014-243621号として分割出願(第5世代)した後、平成27年5月13日、その一部を特願2015-98590号(以下「本件特許1親出願」という。)として分割出願し(第6世代)、平成28年4月4日、更にその一部を特願2016-75107号として分割出願して、平成29年6月16日に特許第6159845号として設定登録を受けた(本件特許1。請求項の数は2である。本件特許1に係る明細書及び図面を「本件明細書1」と、本件明細書1、2を併せて「本件明細書」といい、また、以下、本件明細書の段落又は図面を示す場合、特に断わらない限り、本件明細書1及び2双方の段落又は図面を示すものである。。本件特 )許権1について、平成30年3月14日を受付日として、控訴人に対し、特定承継による本権の移転を原因とする特許権移転登録が経由された。
(甲1、2、15、16、乙1、8、46、47) エ 本件特許1親出願について、分割要件違反等を理由とする平成28年3月14日付け拒絶理由通知がされ、同年9月28日付けで拒絶査定がされた。同拒絶査定は確定した。(乙16、42)」 (2) 原判決4頁26行目の「A1ないしK2」を「A2ないしK2」と改める。
(3) 原判決6頁1行目の「閉鎖空間」を「閉鎖区間」と改める。
4 (4) 原判決6頁17行目末尾に改行して、以下を加える。
「(5) 本件各発明の構成要件の充足について 被控訴人各システムは、本件各発明の構成要件E1、E2、G1、G2、H1及びH2を充足する。」 2 争点 (1) 被控訴人各システムの本件発明1-1、1-2(以下、併せて「本件発明1」という。)の技術的範囲への属否、被控訴人システム4の本件発明2-1、2-2(以下、併せて「本件発明2」という。)の技術的範囲への属否(争点1) ア 構成要件A1、A2の「車両を誘導するシステム」、構成要件J1、K2の「車両誘導システム」との文言への充足性(争点1-ア) イ 「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」と、「通信手段」との位置関係に関する、構成要件B1、C1、D1、B2、C2、D2への充足性(争点1-イ) ウ 構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言への充足性(争点1-ウ) エ 「遮断機を下ろす」と共に「第1の遮断機」を開く構成に関する、構成要件I1、K1、J2、L2への充足性(争点1-エ) オ 構成要件I2の「前記第2の遮断機と前記第4の遮断機との間に閉鎖区間を形成し」との文言への充足性(争点1-オ) (2) 無効理由1(本件各発明の、第1の検知手段、第1の遮断機、通信手段などに関する明確性要件違反)の有無(争点2) (3) 無効理由2(乙35発明に基づく本件各発明の進歩性欠如)の有無(争点3) (4) 無効理由3(本件特許1親出願の分割要件違反を前提とした、乙45又は甲 12の公報に基づく本件発明1の新規性欠如及びサポート要件違反)の有無(争 点4) (5) 無効理由4(本件発明2について各遮断機を開けるタイミングに関するサポ 5 ート要件違反)の有無(争点5) (6) 損害又は不当利得の発生及びその額(争点6) 3 争点に関する当事者の主張 以下のとおり補正し、後記4に当審における当事者の主張を補足するほかは、原判決7頁13行目から12頁14行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決8頁1行目冒頭から同頁6行目末尾までを以下のとおり改める。
「(控訴人の主張) ア 本件各発明においては、
「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」と「通信手段」との間には必然的な位置関係が存在するわけではなく、本件各発明の課題は「第2のレーン」を備えていれば解決することができる。また、本件各発明は、第1の遮断機手前で車両が一旦停止するか否かについては何ら特定しておらず、一旦停止する車両の態様を排除するものではない。
イ 本件各発明は、一般車がETC車用入口に進入した場合又はETC車に対してETCシステムが正常に動作しない場合であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供することで、ETCのシステムを利用した車両誘導システムにおいて、例えば、逆走車の走行を許さず、又は先行車と後続車の衝突を回避し得る、
安全な車両誘導システムを提供するというものである(本件明細書の段落【0027】【0028】。したがって、被控訴人が主張するような「機器の配置」は、本 、 )件各発明の目的、作用効果とは関連性がなく、被控訴人が主張するような限定解釈を行う必要はない。」 (2) 原判決8頁13行目及び同頁14行目の「発信制御機@」 「発進制御機@」 をと、同頁15行目の「本件発明」を「本件各発明」とそれぞれ改める。
(3) 原判決8頁19行目冒頭から9頁1行目末尾までを以下のとおり改める。
「(控訴人の主張) 6 ア 本件各発明は、全ての作用が人の手を介さずに全自動で行われることに限定しているものではなく、正常通信ができない場合の問題は、再進入レーンを設けることで解決したものであり、人が介在しない全自動化を行ったことにより解決したものではない。そして、被控訴人各システムは、全てレーンdという再進入レーン(「第2のレーン」に相当)に該当する構成を有しているから、本件各発明の課題を解決する手段を構成として有しているということができ、構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言を充足する。
イ 被控訴人は、被控訴人各システムにおいて発進制御機@の手前で一時停止することや「人的対応」をしていることを指摘するが、これらの点は、本件各発明の目的、作用効果とは関連性がなく、被控訴人が主張するような限定解釈を行う必要はない。」 (4) 原判決8頁13行目、14行目、9頁25行目の各「発信制御機@」を「発進制御機@」と、同頁4行目の「発信制御機D」を「発進制御機D」と、同頁23行目の「段落【0042】」を「本件明細書の段落【0042】」と、10頁17行目「発信制御機C」を「発進制御機C」と、同頁17〜18行目の「発信制御機H」を「発進制御機H」とそれぞれ改める。
(5) 原判決11頁14行目冒頭から12頁9行目末尾までを以下のとおり改める。
「(7)争点3(無効理由2(乙35発明に基づく本件各発明の進歩性欠如)の有無)(被控訴人の主張) ア 本件各発明は、乙35発明(平成2年8月20日公開の実開平2-104469号公報記載の発明)に基づいて当業者が容易に想到することができるから、進歩性を欠き無効なものである。
すなわち、本件各発明と乙35発明との間には、下記イの相違点(1)〜(3)があるが、これらの相違点は、当業者においては、乙35発明に、乙20(特開平7-320106号公報。公開日平成7年12月8日)、乙22(特開2002-2488 7 1号公報。公開日平成14年1月25日)、乙36(特開平11-328583号公報。公開日平成11年11月30日)等に記載された周知技術を組み合わせるか、
乙20、乙21(特許第3427496号公報。公開日平成8年2月6日)、乙22に開示された構成を適用することにより容易に想到することができる。
イ(相違点(1))乙35発明は、本件各発明における第1の検知手段に対応して設置される第1の遮断機に相当する遮断機を備えていない点。また当該第1の遮断機の動作について、第1の検知手段により車両の進入が検知された場合、車両が通過した後に、第1の遮断機を下ろす構成を備えていない点。
(相違点(2))乙35発明は、本件各発明における第2のレーン(バイパスV)に設けられる第3の遮断機に相当する遮断機を備えていない点。また本件発明1-2及び2-2との関係では、当該第3の遮断機の動作について、第3の検知手段により車両の進入が検知された場合、車両が通過した後に、第3の遮断機を下ろす構成を備えていない点。
(相違点(3))乙35発明は、本件発明2における第1のレーンに設けられる車両検知器及び遮断機が1組(車両分離器18、19及び遮断機17)であるのに対し、
本件発明2では、第2の車両検知器と第2の遮断機、第4の車両検知器と第4の遮断機の2組を備えている点。
ウ 控訴人は、上記各相違点に加え、乙35発明において遮断機17が常時開であることを指摘するが、予め開いていて適正車両はそのまま通すゲートと、閉じていて適正車両が到来したときに開いて通行を許容するゲートとの間には、格別の差異はないといえる。」 4 当審における当事者の主張 (1) 争点1-イ(「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」と、「通信手段」との位置関係に関する、構成要件B1、C1、D1、B2、C2、D2への充足性)に関する補充主張 8 (控訴人の主張) ア 本件特許の課題、目的、効果等 (ア) 本件特許は、いずれも本件親出願からの分割出願に係るものであり、本件各発明は、その出願当初から本件親出願の特許請求の範囲に記載されているものではなかった。しかし、原判決は、本件親出願の請求項に係る発明に対応していた課題、
目的等を持ち出し、本件各発明が、当該課題を解決していなければならないと誤った認定をした上で判断を行っており、その手法及び結論はいずれも誤りである。
(イ) 本件親出願(甲12)の出願当初の請求項における特徴的な構成は、請求項1が@「離脱手段」、請求項6がA「バック走行・後続車両進入防止」、請求項9がB「不正車両逆進入防止」であり、本件親出願明細書の段落【0010】 【0027】が@に、同段落【0011】【0028】がA及びBに対応していた。
(ウ) これに対し、本件各発明は、複数の遮断機を備えた車両誘導システムにおいて、複数の遮断機それぞれの下ろすタイミングを工夫することで、一旦レーンに進入した全ての車両につき、バック走行や逆走を許さず又は先行車と後続車の衝突を回避し得るという効果を奏するだけでなく、レーン出口方向から進入しようとする車両の逆走も防止する効果を有するものである。
ここで、
「バック走行」とは、本件明細書及び本件親出願明細書の段落【0035】にあるように、正規のルートを進んできた車両が、あるところからギアをバックに入れて後ろ向きに走行すること、すなわち、車両がそのままの状態で後退する態様一般を示している。
また、
「逆走」は、上記の「バック走行」の意味に加え、本件明細書の段落【0054】にあるように、前進走行でレーンを正規の方向とは逆に走る場合を含んでおり、料金不払など不正の目的を有した車両が正規のルートとは反対方向に走行する態様を表したものである。
(エ) 以上のとおり、本件各発明は、本件親出願の請求項6、9に係る各発明とは 9 別の観点で、本件親出願の請求項1の発明における「離脱しえる手段」を設けただけでは解決できない課題や新たに生じる可能性がある課題を解決することを更なる目的とした発明である。明細書の所定の欄に発明の課題や効果が記載されていなくても、明細書中の記載事項や技術常識から当業者であれば十分にその課題や効果を認識することができることは、本件特許の審査において指摘されなかったことからも容易に推察できる。
イ 原判決の誤り (ア) 本件各発明の解釈の誤り 原判決は、通信手段とのやりとりの結果、進入不可とされた車両のみが「バック走行」又は「逆走」を行うと不当に狭く限定し、それに基づき「第1の遮断機」が、
「通信手段」よりもETCレーンの入口側になければいけないと解釈している。
しかし、スマートインターチェンジ(以下、インターチェンジを「IC」、スマートインターチェンジを「スマートIC」ということがある。)等において防止するべき「逆走」及び「バック走行」は、
「第1の遮断機」を通過してレーンに進入した全ての車両の「逆走」及び「バック走行」であって、
「第1の遮断機」を通過した後に「通信手段で進入不可とされた車両のみ」に限定するべきものではない。また、前記ア(ウ)のレーンの出口方向から不正に進入する車両の「逆走」を防止することにも大きな意義がある。
原判決がいう「目標とする進路への通行を止められた車両のバック走行及び後続車との衝突防止を図ること」は、本件明細書の段落【0035】にあるとおり、本件親出願の請求項1の「離脱手段」にてある程度は解決されており、
「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」を設けて適切に制御することは、
「離脱手段」のみを設けた場合よりも、
「第1の遮断機」を通過した全ての車両の「逆走」 「バック走行」 及びを、より効果的に防止するものであり、原判決のような限定解釈は許されない。
(イ) 被控訴人各システムの認定の誤り 10 原判決は、被控訴人各システムにあっては、通信手段(路側無線装置B)によってETC専用レーンから離脱させるべきと判定された車両が、第1の遮断機(発進制御機@)の手前で停止させられている状態では簡単に逆走できることから、通信手段の先に第1の遮断機が配置されている被控訴人各システムは、本件特許が解決できるはずの課題を解決していないから、本件特許の技術的範囲に属しないと判断した。
この判断は、
「逆走したい」という運転者の意思が第1の遮断機の手前側でのみ発生するという誤った前提の下になされているが、ETC専用レーンから離脱させるべきと判定された車両の運転者が、第2のレーンの直前で「バック走行したい」との意思を有することも当然に考えられるから、前提に誤りがある。
(ウ) 逆走防止の効果について そして、
「料金不払などを目的とした不正車両が、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入する」という逆走を考えると、
本件各発明は、複数の遮断機が閉じるタイミングを適切に制御できるため、逆進入(逆走)を阻止するという効果が期待できる。この効果は、特に本件特許2の構成(閉鎖区間)を設けた上で、各遮断機の閉じるタイミングを適切に制御することによって、より充実する(本件明細書の【0054】参照)。
被控訴人各システムも、かかる逆進入防止効果を奏するものであり、特に、被控訴人システム4は、本件発明2と同様に、三段の遮断機が並んだ構成を備えているため、より顕著な逆進入防止効果が得られる。
(被控訴人の主張) ア 本件各発明の課題、目的、効果等 分割出願の明細書に記載されている課題は、当然に、分割出願に係る発明の課題であるものと解釈されるところ、原判決は、本件明細書に記載の課題、目的等を基にして本件各発明の課題解決原理(技術的思想)を判断しており、その手法は妥当 11 であり、結論にも誤りはない。
なお、本件親出願については後に二度補正がなされ、請求項1、6、9についてはいずれも、複数の遮断機を備え、それぞれの下ろすタイミングを工夫することにより、後続車両の追突、バック走行、逆走を防止し得る車両誘導システムに補正されており(乙40)、本件親出願の発明の技術的思想は、本件各発明の技術的思想と変わりのないものである。
イ 原判決に誤りはないこと (ア) 「第1の遮断機」と「通信手段」の位置関係について 通信手段とのやりとりの結果、進入可とされた車両が、そこからバック走行することは考えられず、控訴人がいかなる状況を想定しているか理解に苦しむ。
そして、本件明細書中の記載事項や技術常識からすると、
「第1の遮断機」と「通信手段」との位置関係は、本件明細書の【図4】に示される態様以外の説明がないのであるから、当業者は、当然に図4に示される態様のものであると理解する。
(イ) 被控訴人各システムの認定について 被控訴人各システムにおいて、車両が第2のレーンに向かっている状況下においてバック走行するという控訴人が主張するようなことは、通常あり得ないことである。仮に、バック走行を行うとしたら、ETC不適正車であるとの判定がなされた時点、即ち、第1の遮断機(発進制御機@)の手前であると考えられる。そして、
その場合は、後続車に衝突する危険があるが、その危険は被控訴人各システムにおける第1の遮断機(発進制御機@)で防ぐことはできない。
したがって、被控訴人各システムは、開閉バーが下りて通行を止められた車両が、
「レーンからバック走行をして後続の車両と衝突する危険」を回避しようとする本件各発明の課題を解決することができないことは明らかであり、原判決の判断に誤りはない。
(ウ) 逆走防止の効果について 12 控訴人は、出口側からの逆進入をいうが、出口側に一番近い遮断機(第2の遮断機4-1)が開いているのは、ETC適正車が正に第2の遮断機4-1を通り抜けようとしているときであろうから、そのような正面衝突のおそれのある状況の時にあえて逆進入することはあり得ず、現実離れした空想事例である。
なお、本件各発明の作用効果である「不正車両の逆走を防止する」とは、仮に単独の遮断機(第4の遮断機)からの逆進入を許したとしても、その先の遮断機(第2の遮断機)が閉じていることで、それ以上進行車両がいるエリアまで進むことができないようにするという意味であるから、第4の遮断機が開くタイミングで第2の遮断機を閉じているのでなければ、本件各発明の効果を奏しない。
(2) 争点1-ウ(構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言への充足性)に関する補充主張(控訴人の主張) ア 原判決の誤り 原判決は、
「第2のレーンへ誘導する誘導手段」は係員を呼び出すなどの所作を要することなく誘導手段自身によって第2のレーンへ誘導する構成であることが必要であると判示したが、本件明細書には、係員を呼び出すことが不要になるとはどこにも記載されていないし、示唆されてもいないから、原判決は本件各発明の技術的範囲について不当な限定解釈をしていることになり、誤りである。係員を現場まで呼び出す回数が減るだけでも渋滞になる可能性は低減されるし、係員を呼び出すにしても、係員が車両を誘導・後退させて待避させる必要はなく、前進走行により待避させられるから、待避に要する時間が短くなり、渋滞の可能性は低減されるのである。
そして、被控訴人各システムにおいては、係員を呼び出したとしても前進走行で待避させられるから、渋滞の低減という効果が奏される。また、被控訴人各システムは、「再通信処理が不可の場合は係員が車線監視制御装置の開ボタンを押して発 13 進制御機を開くもの」であるから、現地に係員が出向かなくても車両を待避させることが可能な構成となっている。
イ 本件明細書における「係員」「渋滞」について 、
本件明細書の段落【0008】には【発明が解決しようとする課題】として、車両を止めてインターホンで係員を呼び出すことで「料金所の渋滞が助長され」ることが問題であるとの記載があるが、
【課題を解決するための手段】 【請求項】 や には、
係員を不要とする旨の記載は一切ない。本件各発明では、
「渋滞」を少しでも軽減するような構成であることが必要とされているのであって、係員を不要とするというのが本件各発明の内容ではない。
本件明細書の段落【0035】【0046】には、渋滞の発生防止の課題が、
、 「再進入レーンEを設けること」によって解決できることが示されているが、その場合においても、係員が不要になるとはされていない。係員を呼び出したとしても、係員が現場まで出向かずに、当該車両が安全に退避できるのであれば、それで「渋滞が助長」されることを十分防止することができるといえる。
(被控訴人の主張) ア 原判決に誤りがないこと 本件明細書には、本件各発明又は実施形態に記載された構成において、係員を呼び出すことが必要となる場合についての記載はなく、示唆もないから、原判決の認定に誤りはない。被控訴人各システムは、本件各発明ではなく、本件各発明が従来技術と位置付けているシステムを実施しているに他ならない。
イ 本件明細書における「係員」「渋滞」について 、
本件明細書の段落【0008】においては、
「従来技術の場合は、ETC不具合の場合の処理を人的対応で行っていた」ことが料金所の渋滞原因となっていたと説明されているのであるから、料金所の渋滞回避のためには、ETC不具合の場合の処理を人的対応によらずに行なう必要があることを示唆しているとみるのが素直な解 14 釈である。そして、本件明細書の段落【0035】における記載は、
「再進入レーンEを設けることにより、開閉バー4-1が下りても、何ら人的対応を要せずに車両を再進入レーンEに誘導することができるため、人的対応に起因する料金所の渋滞を回避することが可能となった」ことを意味しており、段落【0046】における「ETCレーンに進入した後ETC無線通信が不能・不可であっても再進入レーンEが用意されているので渋滞が発生しない。」との記載も同趣旨であって、段落【0008】の記載に整合している。
したがって、本件各発明において係員が不要になることは特定されていないとする控訴人の主張には理由がない。
(3) 争点2(無効理由1(本件各発明の、第1の検知手段、第1の遮断機、通信手段などに関する明確性要件違反)の有無)に関する補充主張(被控訴人の主張) 本件各発明は、第1、第2及び第4の各遮断機(第4の遮断機は本件発明2についてのみ)が閉じるタイミングを規定しているが、開くタイミングは特定されておらず、ETCによる料金徴収が不可能な車両が差し掛かった時に、第1の遮断機がどのような動作をするのか(停車することなく通過することができるのか否かなど)も特定されておらず、当業者は、これらの遮断機や第2と第4の遮断機の間に形成される閉鎖区間がどのような技術的意義を有するのか理解できない。また、本件各発明には、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、第3の遮断機を下ろすことが規定されているだけで、第3の遮断機と閉鎖区間Gを形成すべき遮断機1-3や閉鎖区間Gに車両が存在しないことを確認する閉鎖区間センサー17のような手段が規定されていないから、当業者は、第3の検知手段や第3の遮断機を下ろすことが、どのような技術的意義を有し、何のために設けられているのか理解できない。
したがって、本件各発明は明確性を欠き、無効とされるべきである。
15 (控訴人の主張) 本件各発明は、車両通過後に各遮断機を適切に閉じることで不正車両の逆走を防止すること、或いは先行車と後続車の衝突を回避するという効果を発揮するものである。そして、各遮断機の開くタイミングは、本件各発明の実施者が、望む効果の程度等の諸事情を勘案して決めることが可能なものであり、請求項中で特定はしておらず、不明確であるという主張は当たらない。なお、閉鎖区間F及びGは必須のものではない。本件各発明の技術的範囲につき、請求項の記載に無関係に本件明細書記載の実施例や図面に記載された構成に限定しようとする被控訴人の主張は、そもそもが間違っている。
(4) 争点4(無効理由3(本件特許1親出願の分割要件違反を前提とした、乙45又は甲12の公報に基づく本件発明1の新規性欠如及びサポート要件違反)の有無)についての主張(被控訴人の主張) ア(ア) 本件特許1親出願については、分割要件違反を指摘する拒絶理由通知(乙16)がされた後、何ら補正等をすることもなく、いずれの拒絶理由も解消しないままに、
拒絶理由通知書に記載した理由によって」拒絶査定が行われたから、本件特許1親出願には、分割要件違反があることが確定している。
(イ) 仮にそうでないとしても、本件特許1親出願の特許請求の範囲の請求項1(乙46)は、本件発明2-1とほぼ同じであり、第1の遮断機がどのようなタイミングで開くのかという点について何も限定されておらず、形式的には、本件明細書の段落【0006】〜【0008】で説明されている従来技術の課題が生じてしまうようなシステムまで、同請求項1に記載された発明(以下「本件特許1親発明」という。)の技術的範囲に属することになってしまう。また、本件特許1親出願の原出願(特願2014-243621号)の出願当初の明細書及び図面(乙47)には、
遮断機1-2や閉鎖区間Fの有無にかかわらず「第2の検知手段により車両の通過 16 が検知された場合、前記車両が通過した後に、第2の遮断機を下ろす」ような発明は記載されていない。そうすると、本件特許1親発明は、その原出願の出願当初の明細書及び図面の記載を超えているから、本件特許1親出願は分割要件を欠く。なお、本件特許1親出願の原出願の当初明細書及び図面(乙47)は本件明細書2とほぼ同じである。
(ウ) 上記のとおり、本件特許1親出願は分割要件を欠いており、特許法44条2項本文の出願日の遡及効は享受できず、その出願日は現実の出願日である平成27年5月13日となる(乙42の2)。
イ 平成27年1月15日には、第4世代の分割出願である特願2014-89069(本件特許2に係る出願)に関して平成26年11月26日付け手続補正書をもって行われた補正を掲載した公報(乙45)が発行されているところ、そこに記載されている補正後の請求項1、2は、本件特許1の請求項1、2とそれぞれ同一であるから、特許法29条1項3号により、本件発明1は新規性を欠く。
ウ 本件明細書1は、本件親出願の公開特許公報(甲12。平成18年3月23日公開)の記載と同一であるから、本件発明1は新規性を欠き無効である。仮に本件発明1が甲12に開示されていないのであれば、本件発明1はサポート要件を欠く。
(控訴人の主張) ア 本件特許1親出願に対する拒絶理由通知(乙16)には、請求項1、2について「出願日の遡及は認められない。」旨の審査官の指摘はあるが、その指摘を受けていない他の請求項(請求項12〜14、16)に係る発明や、明細書又は図面に開示された他の発明について出願日が遡及しないとは認定していない。分割出願の要件を満たさないとして出願全体として出願日遡及を否定することはできないから、
被控訴人の主張は誤りである。
イ また、本件特許1親出願が分割不適とされた理由は、請求項1、2に係る発 17 明が、その原出願(特願2014-243621)の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないという点であるが、原出願(甲15)と本件特許1親出願(乙46)の請求項1及び2は完全に同一であったから、審査官が事実を誤認していたことが明らかである。
ウ そうすると、本件特許1の出願日は平成16年9月13日に遡及するから、
被控訴人の主張は前提に誤りがある。
(5) 争点5(無効理由4(本件発明2について各遮断機を開けるタイミングに関するサポート要件違反)の有無)についての主張(被控訴人の主張) 仮に、本件発明2において、各遮断機をどのようなタイミングで開けてもよいものと解釈するのであれば、本件発明2は、明細書に開示された範囲を超えて、解決すべき課題を何ら解決していないものまで含んでいるといわざるを得ず、サポート要件を欠く。
(控訴人の主張) 本件発明2は、車両通過後に各遮断機を適切に閉じることで不正車両の逆走を防止すること、或いは先行車と後続車の衝突を回避するという効果を発揮するものであり、遮断機の開くタイミングは、実施者が任意に選定できるが、タイミングが早くなればそれだけ効果が小さくなるので、望む効果の程度等の諸事情を勘案して実施者が決めることが可能である。そうすると、本件特許2において、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかであって、被控訴人の主張は誤りである。
(6) 争点6(損害又は不当利得の発生及びその額)についての主張(控訴人の主張) ア 控訴人は、被控訴人に対し、被控訴人が被控訴人各システムを実施(使用) 18 して通過車両から料金を徴収して売上を得ていることについて、民法709条及び特許法102条3項により損害賠償請求をする。また、選択的に、民法703条に基づく不当利得返還請求をする。
イ 被控訴人は、佐野SAスマートICを通過する車両から、@ターミナルチャージ及びA走行距離に基づく料金を徴収している。
ターミナルチャージとは、高速道路の利用1回当りの料金のことを言い、車両の利用距離に関係なく固定的に徴収される料金であり、被控訴人会社の高速道路では150円と設定されている。高速道路を一回利用すると、入口と出口で二度ICを利用することになるので、上記額の2分の1(75円)が佐野SAスマートIC利用によるものといえる。
また、佐野SAスマートICに被控訴人各システムが設置されたことにより、従前は同ICの一つ手前又は一つ先のICを利用していた車両が、被控訴人各システムを利用して高速道路に乗ったり高速道路から降りたりするようになったから、少なくとも、被控訴人各システムを利用する車両が支払う走行料金のうち、佐野SAスマートICと隣のICとの間を走行することによる料金部分については、被控訴人各システムの売上と見做すことができる。佐野SAスマートICから隣のICまでの距離は、上り側(佐野藤岡ICまで)が2.7km、下り側(佐野田沼ICまで)が11.2kmであるから、その平均距離は6.95kmであり(甲22)、走行距離に応じた料金は原則24.6円/kmである。そうすると、被控訴人各システムを利用した各車両が走行距離に応じて支払う料金の最低額の平均値は、約170円(24.6円/km×6.95km)である。
本件では、佐野SAスマートICを利用する車両台数に、上記単価(75円+170円)を乗じたものが、被控訴人各システムの使用による売上げに当たる。
ウ 佐野SAスマートICを利用した車両台数は、別紙2記載のとおりである。
上記車両台数の算定に当たっては、被控訴人各システムが4分の1ずつ使用された 19 として、本件特許1を使用した車両が上記台数の4分の3、本件特許2を使用した車両が上記台数の4分の1と仮定し、本件特許の登録日(本件特許権1が平成29年6月16日、本件特許権2が平成27年7月3日)から最新データの入手可能月(令和3年7月)分までを算出した。
エ 本件各発明の被控訴人各システムに対する実施料率は10%を下らない。
オ 損害の具体的な計算は次のとおりである。
(ア) 損害金額 合計1億1232万0568円 a ターミナルチャージ収入に基づく損害金額 @被控訴人システム1〜3 308万5926台×75円×10%=2314万4445円 A被控訴人システム4 149万8587台×75円×10%=1123万9402円 b 走行距離収入に基づく損害金額 @被控訴人システム1〜3 308万5926台×170円×10%=5246万0742円 A被控訴人システム4 149万8587台×170円×10%=2547万5979円 (イ) 消費税 合計983万5911円 a 消費税8%分(〜令和元年9月分まで) (a) 車両台数 @被控訴人システム1〜3の通行車両台数 178万4493台 A被控訴人システム4の通行車両台数 106万4776台 (b) ターミナルチャージ収入に基づく損害金額に係る消費税 @被控訴人システム1〜3 178万4493台×75円×10%×8%=107万0695円 20 A被控訴人システム4 106万4776台×75円×10%×8%=63万8865円 (c) 走行距離収入に基づく損害金額に係る消費税 @被控訴人システム1〜3 178万4493台×170円×10%×8%=242万6910円 A被控訴人システム4 106万4776台×170円×10%×8%=144万8095円 b 消費税10%分(令和元年10月〜令和3年7月分) (a) 車両台数 @被控訴人システム1〜3の通行車両台数 130万1433台 A被控訴人システム4の通行車両台数 43万3811台 (b) ターミナルチャージ収入に基づく損害金額に係る消費税 @被控訴人システム1〜3 130万1433台×75円×10%×10%=97万6074円 A被控訴人システム4 43万3811台×75円×10%×10%=32万5358円 (c) 走行距離収入に基づく損害金額に係る消費税 @被控訴人システム1〜3 130万1433台×170円×10%×10%=221万2436円 A被控訴人システム4 43万3811台×170円×10%×10%=73万7478円 c 消費税基本通達5-2-5によれば、知的財産権の侵害に基づく損害賠償金は、消費税法上の資産の譲渡等の対価に該当し、消費税の課税対象となる(消費税法2条1項8号4条1項)。本件の損害賠償金も、特許権の侵害に基づく損害賠償金であり、消費税の課税対象となる(甲35)から、令和元年9月までは消費税率 21 は8%、同10月以降は消費税率10%を乗じて算出した。
(ウ) 弁護士費用 1221万5647円 控訴人は、本件訴訟のために訴訟代理人弁護士に委任せざるを得ず、本件請求と相当因果関係のある弁護士費用の損害は、上記(ア)及び(イ)の合計金の10%である1221万5647円となる。
なお、弁護士費用も、消費税法上の役務の提供に該当し、消費税が課税されることから、消費税を加算した金額が控訴人の損害となる。
(エ) 合計 1億3437万2126円(被控訴人の主張) ア ターミナルチャージは、IC施設の建設費等の償還のために受領するものであって、その本質的な性質からしておよそ被控訴人の売上げと言えるものではない上、スマートICであろうが、有人の通常のICであろうが、全く同額が課されるものであって、本件各発明の使用とは無関係である。
また、通行料金は、高速道路の本線の建設費等の償還のために受領するものであって、その本質的な性質からしておよそ被控訴人の売上げと言えるものではない上、
「本線」の利用距離に応じて課されるものであって、本線に含まれないICの使用とは関係がなく、ましてや本件各発明の使用とは無関係である。
加えて、佐野SAスマートIC設置の前後で利用台数の増加は見られないし、スマートICの設置により、車両が従前よりも手前のICで降りることとなって、支払う通行料金が減少するというパターンも存在するのであって、佐野SAスマートICの設置によりターミナルチャージや通行料金の徴収額が増加したとはいえない。
したがって、ターミナルチャージ及び通行料金をロイヤリティベースと捉えるべきではない。
イ さらに、本件各発明の特徴(作用効果)として、@ETC通信の可否を判定すること、AそのうちのETC通信不可の車両について退避路に誘導すること、B 22 第1の遮断機で、進入した車両のバックを防止すること、C第2、第3の遮断機で逆走車の進入を防止することがあるとしても、このうち、@とAについては、ETC通信の可否を判定した結果、通信ができず退避路に誘導される車両は、スマートICに差し掛かる車両のうちごく僅かであり、また、BとCについても、スマートIC内の狭い導線において、バックしたり、逆進入する車両は皆無である上に、ETC通信ができない車両や逆進入する車両からは、ターミナルチャージ等を徴収できない。したがって、本件各発明の特徴は、被控訴人によるターミナルチャージ等の徴収とは無関係である。
ウ(ア) 仮にターミナルチャージをロイヤリティベースと捉えるとしても、その全額ではなく2分の1(75円)と評価した上で、佐野SAスマートIC施設の建築費全体に占める被控訴人各システムの設置費の構成割合(プログラムの費用は含まないものとして7.8%。仮に含む場合には8.3%)で按分すべきであり、さらには第2のレーン(退避路)に誘導される車両の割合(0.22%)に応じて按分すべきである。
(イ) 通行料金はいかなる意味においても被控訴人各システムの利用とは関係がない金員であるが、仮にこれについてもロイヤリティベースと捉える場合であっても、
どんなに多く見積もってもターミナルチャージに関して述べた上記割合(7.8%×0.22%)を超える部分をロイヤリティベースと捉える合理性はない。
(ウ) 本件各発明の特徴とされる前記イの@〜Cについては、従来技術にみられるありふれた構成であること、被控訴人各システムにおいてはこれらの特徴がもたらす逆走防止などの作用効果を奏していないことからすると、実施料率は限りなくゼロに近い。
(エ) したがって本件各発明の実施に対して支払われるべき金銭の額は限りなくゼロに近い。
当裁判所の判断
23 1 本件各発明について (1) 本件明細書(甲2、4)の記載 本件明細書には以下の記載がある。
【技術分野】【0001】 本発明は車両誘導システムに関し、更に具体的には有料道路の出入口に設置されたETC車用出入口に利用される車両を安全に誘導する車両誘導システムに関する。
【背景技術】【0002】 近年、有料道路の料金所にETCシステム(Electronic Toll Collection System:ノンストップ料金自動支払いシステム)が設置されるようになってきた。図1に示すように、ETCシステムは、料金所ゲートに設置した路側アンテナ3、5と、車両14に装着した車載器20との間で無線通信を用いて自動的に通行料金の決済を行ない、料金所をノンストップで通行することができるシステムである。・・・【発明が解決しようとする課題】【0006】 しかし、現時点では全車両がETCシステム対応車ではないので、有料道路の料金所のレーンには、「ETC専用」と表示されたETC車専用レーンと、「ETC一般」と表示されたETC車も一般車も混在して通れるレーンと、
「一般」と表示されたETCシステムを利用出来ないレーンとが混在している。このため、一般車が誤ってETC車専用レーンに進入する場合が起こり得る。なお、この出願書類では、
「ETC車」とは、ETCによる料金徴収が可能な車両をいい、
「一般車」とは、ETCシステムを利用出来ない車両を言う。
【0007】 更に、ETC車であっても、その車載器が路側アンテナと正常通信が出来ない場 24 合も起こり得る。例えば、車載器に対するETCカードの未挿入、不完全挿入、直前挿入等の場合である。
【0008】 このような場合、開閉バーが下りて進行出来なくなるので、車両を止めてインターホンで係員を呼び出す必要がある。これにより、料金所の渋滞が助長され、ETCの本来の目的に沿わなくなる。また、開閉バーが下りて通行を止められた車両が、
レーンからバック走行をして出ようとすると、後続の車両と衝突するおそれもあり、
非常に危険である。
【課題を解決するための手段】【0010】 従って、本発明は、一般車がETC車用出入口に進入した場合又はETC車に対してETCシステムが正常に動作しない場合(路側アンテナと車載器の間で通信不能・不可)であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供することを目的とする。
【0011】 更に本発明は、ETCシステムを利用した車両誘導システムにおいて、例えば、
逆走車の走行を許さず、或いは先行車と後続車の衝突を回避し得る、安全な車両誘導システムを提供することを目的とする。
【0012】(本件明細書1) 上記目的に鑑みて、本発明に係る車両誘導システムは、一般道路と有料道路との間の料金所にETC車用レーンを有するインターチェンジに利用される車両誘導システムであって、路側アンテナと車載器と間で(判決注: 「との間で」の誤記と認める。 通信不能又は通信不可が発生したとき、
) 車両が前記ETC車用レーンから離脱しえる手段を設けたことを特徴とする。
【0012】(本件明細書2) 25 上記目的に鑑みて、本発明に係る車両誘導システムは、有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されている、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステムであって、前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両を検知する第1の検知手段と、前記第1の検知手段に対応して設置された第1の遮断機と、車両に搭載されたETC車載器とデータを通信する通信手段と、前記通信手段によって受信したデータを認識して、
ETCによる料金徴収が可能か判定する判定手段と、前記判定手段により判定した結果に従って、ETCによる料金徴収が可能な車両を、ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートへ通じる第1のレーンへ誘導し、ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する誘導手段と、を備え、前記誘導手段は、前記第1のレーンに設けられた第2の遮断機と、
前記第2のレーンに設けられた第3の遮断機と、を含み、さらに、前記第2の遮断機を通過した車両を検知する第2の検知手段と、前記第3の遮断機を通過した車両を検知する第3の検知手段と、を備え、さらに、前記ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入った位置または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出た位置に第4の遮断機と車両を検知する第4の検知手段とを設け、それにより、前記第2の遮断機と前記第4の遮断機との間に閉鎖区間を形成し、前記第1の検知手段により車両の進入が検知された場合、前記車両が通過した後に、前記第1の遮断機を下ろし、前記第2の検知手段により車両の通過が検知された場合、前記車両が通過した後に、第2の遮断機を下ろし、前記第4の検知手段により車両の通過が検知された場合、該車両が通過した後に、前記第4の遮断機を下ろすことを特徴とする。
【0013】 26 更に、上述の車両誘導システムにおいて、前記ETC車用レーンから離脱しえる手段は、前記ETC車用レーンから分岐して前記車両が前記料金所へ再進入するレーン又は一般車用レーンへ誘導されるレーンとすることができる。
【0014】(本件明細書1のみ) 更に、上述の車両誘導システムにおいて、前記路側アンテナは、車載器との間で無線通信可能か否かを判定するためのゲート前アンテナと入口情報及び料金情報の送受信を行なうETCアンテナとを有するようにすることもできる。
【0015】 更に、上述の車両誘導システムにおいて、前記システムは、遮断機、第1の車両検知装置、ゲート前アンテナ、第2の車両検知装置、誘導手段、第3の車両検知装置、第4の車両検知装置及びETCゲートを有し、前記第1の車両検知装置が車両の進入を検知すると、前記遮断機を閉じて後続車との間を一定の間隔を空けるようにし、前記第2の車両検知装置が進入車両を検知すると、車両がゲート前アンテナを通過したことを確認して、このタイミングで通信可能又は通信不能・不可のいずれであるかを判定し、前記第3又は第4の車両検知装置が進入車両を検知すると、
後続車のために前記遮断機を開くようにすることもできる。
【0016】 更に、上述の車両誘導システムにおいて、少なくとも1つの誘導装置を有し、前記ゲート前アンテナが車載器との間で通信可能又は通信不可 不能と判定したとき、
・その判定結果に基づいて前記誘導装置により車両を所定の誘導先に誘導するようにすることもできる。
【0017】 更に、本発明に係る車両誘導システムは、ETC車載器搭載車が一般道路と有料道路との出入りをする時に、ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステムであって、一般道路と有料道路との出入りをする車両を検知する検知手段 27 と、車両に搭載されたETC車載器とデータを通信する通信手段と、前記通信手段によって受信したデータを認識して、ETCによる料金徴収が可能か判定する判定手段と、前記判定手段により判定した結果に従って、ETCによる料金徴収が可能な車両を、ETCゲートを通って一般道路から有料道路へ入る、または有料道路から一般道路へ出るルートへ誘導し、ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口へ誘導する誘導手段を備え、前記検知手段により車両の進入が検知された場合、遮断機を下ろすことにより、進入した車両のバック走行と後続の車両の進入を防ぐことを特徴とする。
【0023】 更に、本発明に係る車両誘導方法は、一般道路と有料道路との間の料金所にETC車用レーンを有するインターチェンジに利用される車両誘導方法であって、前記インターチェンジには、路側アンテナと車載器と間で(判決注: 「との間で」の誤記と認める。)通信不能又は通信不可が発生したとき車両を前記ETC車用レーンから離脱させるためのレーンが設けられ、前記ETC車用レーンから離脱させるためのレーンは、前記車両を前記料金所へ再進入させるレーン又は一般車用レーンへ誘導するレーンであり前記車両誘導方法は、前記第1の車両検知装置が車両の進入を検知すると、第1の遮断機を閉じて後続車との間を一定の間隔を空けるようにし、
前記第2の車両検知装置が進入車両を検知すると、車両がゲート前アンテナを通過したことを確認して、このタイミングで通信可能又は通信不能・不可のいずれであるかを判定し、通信可能と判断された時、第2のゲートを開けてETCゲート及び第3の車両検知装置に導き、所望の道路に送り出し、通信不能・不可と判断された時、第3のゲートを開けて第4の車両検知装置に導き、前記再進入レーンに送り出し、前記第3又は第4の車両検知装置が進入車両を検知すると、後続車のために前記第1の遮断機を開く、各ステップを含む。
【0024】 28 更に、本発明に係る車両誘導方法は、一般道路と有料道路との間の料金所にETC車用レーンを有するインターチェンジに利用される車両誘導方法であって、前記インターチェンジには、第1の遮断機、第1の車両検知装置、ゲート前アンテナ、
第2の車両検知装置、閉鎖区間を作るための遮断機を含む誘導手段を有しており、
前記分岐する地点から先の、前記ETC車用レーンに第1の閉鎖区間センサーを有し、前記分岐する地点から先の、前記ETC車用レーンの第1の閉鎖区間に、第3の車両検知装置、ETCゲート、第2の遮断機及(判決注: 「遮断機」の誤記と認める。)を有し、前記第1の閉鎖区間の先に第4の車両検知装置を有し、また前記分岐する地点から先の、前記離脱レーンに第2の閉鎖区間センサーを有し、前記離脱レーンの第2の閉鎖区間に、第5の車両検知装置、第3の遮断機を有し、前記第2の閉鎖区間の先に第6の車両検知装置を有し、前記車両誘導方法は、前記第1の車両検知装置が車両の進入を検知すると、前記第1の遮断機を閉じて後続車との間を区切るようにし、前記第2の車両検知装置が進入車両を検知すると、車両がゲート前アンテナを通過したことを確認して、このタイミングで通信可能又は通信不能・不可のいずれであるかを判定し、前記閉鎖区間において車両検知装置が進入車両を検知すると、誘導手段の遮断機を閉じ、前記閉鎖区間の先に備えられた車両検知装置が車両の通過を検知すると閉鎖区間出口の遮断機を閉じることによって、別の(不正)車両が閉鎖区間の出口側から逆進入することを防止し、万一、別の不正車両が閉鎖区間を出る車両とすれ違いに逆進入した場合でも、閉鎖区間センサーが閉鎖区間に車両がいると判定すると、監視センターへ通報する等の処理を行ない、閉鎖区間センサーが閉鎖区間に車両がいないと判定すると、後続車のために第1の遮断機を開く、各ステップを含む。
【発明の効果】【0027】 本発明によれば、一般車がETC車用出入口に進入した場合又はETC車に対し 29 てETCシステムが正常に動作しない場合であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供することが出来る。
【0028】 更に本発明によれば、ETCシステムを利用した車両誘導システムにおいて、例えば、逆走車の走行を許さず、或いは先行車と後続車の衝突を回避し得る、安全な車両誘導システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】【0032】 車両は、一般道路8から有料道路7向かって進行し、その間に料金所9が設けられている。従来、料金所9には、3つのレーンが用意されていた。レーン(A→D)はETC専用、レーンB,Cは一般車用である。本実施形態では、新たにAから分岐するレーンE(「再進入レーン」ともいう。)が用意されている。ここで、ルートA→DはETCゲート5を通り有料道路7へ進むルートであり、ルートA→Eは料金所9へ再進入するたのための(判決注:「再進入するための」の誤記と認める。)レーンである。
【0033】 レーンA→Dには、基本的には、路側アンテナ3、5が備えられ、車載器との間で無線通信を行なっている。図4はレーンA→D、A→Eの詳細を示し、これに沿って更に説明する。車両が、一般道路8から進入して、予め開いている遮断機1を通り、車両検知装置2aにより検知され、無線通信が可能か否かを判定する路側アンテナ(ゲート前アンテナ)3の側を通過し、車両検知装置2bにより検知される。
【0034】 ゲート前アンテナ3との間で無線通信が可能と判定されたとき、誘導装置4-2は閉じたままで誘導装置4-1が開き、車両検知装置2cの側を通り、路側アンテナ(ETCゲート)5から車載器に対する入口情報を受信して、車両は有料道路7 30 へと進むことが出来る。
【0035】 ゲート前アンテナ3との間で無線通信が不能又は不可と判定されたとき、誘導装置4-1は閉じたままで誘導装置4-2が開き、レーンEに進んで、車両検知装置2dの側を通り、再度レーンA、B、Cのいずれかを選択する地点に戻る。従来、
再進入レーンEが存在しなかったので、開閉バー4-1が下りて進行出来なくなると、車両を止めてインターホン等で係員を呼び出す必要があった。これにより、料金所9の渋滞が助長され、ETCの本来の目的が達成できない状態となる。また、
開閉バー4-1が下りて通行を止められた車両が、レーンDからバック走行をしてレーンAから出ようとすると、後続の車両と衝突するおそれもあり、非常に危険であった。しかし、再進入レーンEを設けることで、このような不具合、危険をシステム的に解決することができる。
【0037】 図4に戻り、ゲート前アンテナ3には、車両に搭載されたETC車載器とデータを通信する通信手段および受信したデータを認識して、ETCによる料金徴収が可能か判定する判定手段とが備えられている。
【0038】 誘導装置4-1、4-2としては、例えば遮断機の形態にし、ルートDへ誘導する時にはルートD側の遮断機を開けてルートE側の遮断機を閉じ、ルートEへ誘導する時にはルートE側の遮断機を開けてルートD側の遮断機を閉じて誘導する方法がある。また、表示パネルの形態にし、それぞれのルートで「通行可能」 「通行不可」などの文字を表示させてもよいし、通行可能なルートには「↑」(矢印)、通行不可能なルートには「×」(バツ印)などの記号や絵を表示させてもよい。また、「ETC読み取り不能」等のルートEへ誘導する理由を表示させてもよい。また、遮断機形式と表示パネル形式とを併用してもよい。
31 【0040】 図4に示す複数個の車両検知装置2a、2b、2c、2dの機能について着目しながら、図5に示すフローを使って、図3、4の車両誘導システムの誘導方法を簡単に説明する。最初の車両検知装置2aが車両の進入を検知すると(ステップS02) 遮断機1を閉じて後続車との間を一定の間隔を空けるようにしている 、 (ステップS03)。遮断機1は、(中略)車両検知装置2c又は2dが車両を検知しないと開かないので、先行車と後続車の衝突が回避でき、また先行車がレーンAを逆走するのを阻止できる。2番目の車両検知装置2bが進入車両を検知すると(ステップS05) 車両がゲート前アンテナ3を通過したことを確認し、
、 このタイミングで通信可能又は通信不能 不可のいずれであるかを判定する ・ (ステップS06、S07)。
判定時期を確定し、車両が通過していない状態と車両の通過した(判決注: 「車両が通過した」の誤記と認める。 にも拘わらず無線通信が行なわれなかった状態とを識 )別できるようにしている。
【0041】 通信可能であれば、誘導装置4-1が開きレーンDに誘導され有料道路7に進む(ステップS 08)。反対に、通信不能・不可であれば、誘導装置4-2が開きレーンEに誘導され、再度レーンA、B、Cを選択する場所に戻る(ステップS 13)。
ここで、
「通信不能・不可」には、一般車が誤って進入した場合、及びETC車が何らかの理由で無線通信に成功しなかった場合を含んでいる。
【0042】 3番目の車両検知装置2cが進入車両を検知すると(ステップS09) この車両は 、
レーンA→Dから脱出しつつあるので遮断機1を開き(ステップS10)、同様に、4番目の車両検知装置2dが進入車両を検知すると(ステップS14) レーンA→Eか 、
ら脱出しつつあるので遮断機1を開くようにしている(ステップS15)これにより、

1台の車両が、遮断機1から車両検知装置2c、2dの区間に進入しているときは 32 この区間は一種の閉鎖領域となり、1台の車両のみの存在が許されるようになっている。このため、この閉鎖領域では先行車と後続車の衝突は起こらない。なお、ETCシステムが正常に働いている限り、遮断機1が閉じている時間は、車両が遮断機1からETCゲート5を通過するまでの時間であり、ほんの数秒であり、ETCシステム本来のノンストップ走行は実質的に確保されている。
【0046】 この実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)本実施例は、従来のインターチェンジに大幅な変更を加えることなく、新たに再進入レーンEを用意するだけで実現できる。
(2)ETCレーンに進入した後、ETC無線通信が不能・不可であっても再進入レーンEが用意されているので渋滞が発生しない。
(3)車両検知装置2aが進入車両を検知すると遮断機1を閉じ、その後車両検知装置2c、2dが進入車両を検知しないと遮断機1を開けないので、進入車両の不法な逆方向走行を阻止することができる。
(4)更に、遮断機1と車両検知装置2c、2dの間にある車両は1台限定される(判決注:「1台に限定」の誤記と認める。)ので、進入車両と後続車両との間で衝突事故が回避できる。
【0054】 [その他の応用例](逆進入防止機能を充実させたインターチェンジ) しかしながら図4で説明した実施例では、料金不払いなどを目的とした不正車両が、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入することを防ぐことが出来ないという問題点を有している。これを解決するため、次に説明する実施形態では、レーンD及びレーンEの各々に対して、同様に遮断機と車両検知装置の組み合わせによる逆走防止手段を設けている。
33 【0055】 図9は、図4の変形例であり、逆進入防止機能を充実させたインターチェンジの構成を示す図である。図10は、図9の車両誘導システムの誘導方法を説明するフローチャートである。
【0056】 図9のインターチェンジの構成を、図4のそれと比較すると、図4で説明した閉鎖区間(遮断機1〜遮断機4-1、4-2の区間)に加えて、閉鎖区間F(遮断機1-2〜遮断機4-1の区間)と閉鎖区間G(遮断機1-3〜遮断機4-2の区間)とを形成している。図9に示すように、閉鎖区間Fを形成するため、新たに遮断機1-2、車両検知装置2e、閉鎖区間センサー16を設け、また、閉鎖区間Gを形成するため、新たに遮断機1-3、車両検知装置2f、閉鎖区間センサー17を設け、更に閉鎖区間センサー18を設けている。
【0057】 図10のフローを、図8のそれと比較すると、その相違は実質的には、図10にはステップS50〜54、56、59〜62が新たに追加されている点にある。
【0058】 図9、10を参照しながら、この実施形態を簡単に説明すると、レーンDに車両が入る時は、車両検知装置2cが車両を検知すると(ステップS49)、遮断機4-1を閉じて遮断機1-2を開き(ステップS50) その後ゲート前アンテナ3が後続車 、
両を認識判断するまで(ステップS48)遮断機4-1を閉じたままにしておく。車両検知装置2eが車両を検知すると(ステップS52)遮断機1-2を閉じ(ステップS53) レーンDの出口から不正車両が逆進入することを防ぐ。
、 車両区間センサー16が閉鎖区間Fに車両がいないことを確認すると(ステップS54) 遮断機1を開 、
いて(ステップS55)後続車両の進入が可能となる。万一、別の不正車両が閉鎖区間Fを出る車両とすれ違いに逆進入した場合でも、閉鎖区間センサー16が閉鎖区 34 間Fに車両がいると判定すると(ステップS54) 監視センターへ通報する等の処理 、
を行なって、不正車両をそれ以上進入させない。
【0059】 レーンEに関しても同様である。レーンEに車両が入る時は、車両検知装置2dが車両を検知すると(ステップS58)、遮断機4-2を閉じて遮断機1-3を開き(ステップS59) その後ゲート前アンテナ3が後続車両を認識判断するまで 、 (ステップS57)遮断機4-2を閉じたままにしておく。車両検知装置2fが車両を検知すると(ステップS60)遮断機1-3を閉じ(ステップS61)、レーンEの出口から不正車両が逆進入することを防ぐ。車両区間センサー17が閉鎖区間Gに車両がいないことを確認すると(ステップS62)、遮断機1を開いて(ステップS63)後続車両の進入が可能となる。万一、別の不正車両が閉鎖区間Fを出る車両とすれ違いに逆進入した場合でも、閉鎖区間センサー17が閉鎖区間Gに車両がいると判定すると(ステップS62)、監視センターへ通報する等の処理を行なって、不正車両をそれ以上進入させない。
【0070】 以上、本発明に係る車両誘導システムに係る実施形態について記載したが、以上の記載は、例示であって、この記載により本発明は何ら限定されるものではないことを承知されたい。当業者がなし得る変更・改良は本発明の技術的範囲内のものである。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】【0071】【図3】本発明の実施形態に係る入口料金所用のETCシステム利用車両誘導システムの構成を示す図である。
【図4】図3の車両誘導システムの部分拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係る出口料金所用のETCシステム利用車両誘導シス 35 テムの構成を示す図である。
【図7】図6の変形例である。
【図9】図4の変形例であり、逆進入防止機能を充実させたインターチェンジの構成を示す図である。
【図11】本発明の応用例であり、スマートインターチェンジに応用した例を示す図である。
【図3】 【図4】 36 【図6】 【図7】【図9】 【図11】 37 (2) 本件各発明の課題及び作用効果 本件特許の特許請求の範囲に表れた構成及び前記(1)の本件明細書の記載からすると、本件各発明は、有料道路の出入口に設置されたETC車用出入口で利用される車両を安全に誘導する車両誘導システムに関するものであり(本件明細書の段落【0001】、ETCによる料金徴収ができない車両がETC専用レーンに進入し )た場合、開閉バーが下りて進行できなくなり、インターホンで係員を呼び出す必要があるので渋滞が助長され、また、上記車両がバック走行をして出ようとすると後続の車両と衝突するおそれがあって危険であるという課題があることから(同段落【0006】〜【0008】、複数の遮断機、検知手段及び通信手段を設置し、@ )一般車がETC車用出入口に進入した場合又はETC車に対してETCシステムが正常に動作しない場合であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供すること(以下「本件作用効果1」という。)及びAETCシステムを利用した車両誘導システムにおいて、車両が通過した後に各遮断機を適切に下ろすことなどで、
逆走車の走行を許さず、或いは先行車と後続車の衝突を回避し得る、安全な車両誘導システムを提供すること(以下「本件作用効果2」という。)をその課題及び作用効果とするものである(同段落【0017】、
【0027】、
【0028】 0058】。

【 )なお、上記Aの「逆走車」の中には、正規ルートで進入したが、バック走行する車両のみならず、料金不払などを目的として、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入する車両も含まれる(同段落【0040】【0054】。
、 ) 2 争点1(被控訴人各システムの本件発明1の技術的範囲への属否、被控訴人システム4の本件発明2の技術的範囲への属否)について (1) 争点1-ア(構成要件A1、A2の「車両を誘導するシステム」、構成要件J1、K2の「車両誘導システム」との文言への充足性)について ア 原判決別紙被控訴人システム目録記載の被控訴人各システムは、いずれも、
38 ETC車専用出入口を通過しようとする車両について、無線通信可能な場合には、
発進制御機[開閉バー]@及びCが開くことにより、佐野SA内、一般道又はデータ取得区間(レーンe)へと前進するように誘導し(ステップS104、S203)、
無線通信が不能又は不可の場合には、発進制御機[開閉バー]@及びDが人的操作によって開かれることにより、退出ルートdへと誘導する(ステップS106、S205)ものであるから、
「車両を誘導するシステム」及び「車両誘導システム」に当たる。そうすると、被控訴人各システムは、構成要件A1、A2の「車両を誘導するシステム」、構成要件J1、K2の「車両誘導システム」との文言を充足する。
イ 被控訴人は、被控訴人各システムは、実質的には料金徴収システムであるから「車両を誘導するシステム」「車両誘導システム」に当たらないと主張するが、

料金徴収と車両誘導は両立し得る機能であって、被控訴人各システムが料金徴収システムであることをもって、車両誘導システムには当たらないなどとはいえないから、上記被控訴人の主張には理由がない。
ウ そして、被控訴人各システムは、佐野SAに設置されたETC車専用出入口から、有料道路である東北自動車道に出入りをする車両を誘導するシステムであるから、構成要件A1、A2、J1、K2を充足する。
(2) 争点1-イ(「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」と、「通信手段」との位置関係に関する、構成要件B1、C1、D1、B2、C2、D2への充足性)について ア(ア) 本件各発明の特許請求の範囲の記載は、原判決別紙の特許公報(特許第6159845号及び特許第5769141号)の該当部分記載のとおりであり、
「第1の検知手段」については、有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに出入りをする車両を検知することや、
「第1の遮断機」が「第1の検知手段」に対応して設置されたこと、「第1の検知手段」により車両の進入が検知された場合、
前記車両が通過した後に、第1の遮断機を下ろす旨の記載があるのみであって、そ 39 れ以上に、
「第1の遮断機」「第1の検知手段」及び「通信手段」が設置される位置 、
関係を特定する記載はないから、それぞれが設置される位置関係によって構成要件該当性が左右されるものではないというべきである。
(イ) これを前提に被控訴人各システムについてみると、車両検知器Aは、被控訴人各システムにおいて車両の通過を検知するものであり(ステップS105、S204)、被控訴人各システムが設置されている「サービスエリア」である佐野SAスマートICに出入りする車両を検知するものであるから、
「第1の検知手段」に当たり、車両検知器Aが車両の通過を検知すると発進制御機[開閉バー]@が閉じることから(ステップS105、S204)、発進制御機[開閉バー]@は「第1の検知手段」である車両検知器Aに対応して設置された「第1の遮断機」に当たる。そして、車両に搭載されたETC車載器との間で無線通信を行う(ステップS103、
S202)路側無線装置Bが「通信手段」に当たり、路側無線装置BがETC車載器から受信したデータにより、無線通信が可能な場合と不能又は不可の場合のいずれに当たるかの判定(ステップS104、S106、S203、S205)、すなわちETCによる料金徴収が可能か判定されているといえる。
そうすると、被控訴人各システムは、構成要件B1、C1、D1、B2、C2、
D2を充足する。
イ(ア) 被控訴人は、本件各発明においては、「通信手段」は、「第1の遮断機」及び「第1の検知手段」より先に配置されるべきであるところ、被控訴人各システムにおいては、路側無線装置Bが発進制御機[開閉バー]@の手前に配置されていて、
発進制御機[開閉バー]@の手前に停止している車両に対して無線通信を行うから、
被控訴人各システムは、本件各発明の構成要件B1、C1、D1、B2、C2、D2をいずれも充足しないと主張する。
(イ) しかし、前記ア(イ)のとおり、本件特許の特許請求の範囲には、「通信手段」と「第1の遮断機」の位置関係については何ら特定されていない。
40 また、前記1(2)のとおり、本件各発明は、本件作用効果1(一般車がETC車用出入口に進入した場合又はETC車に対してETCシステムが正常に動作しない場合であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供すること)を奏するものであるところ、
「通信手段」がETC車載器から受信したデータにより、ETCによる料金徴収が可能か判定され、各遮断機が適切なタイミングで動くことにより車両が安全に誘導できるのであれば本件作用効果1は奏するのであって、「通信手段」がETC車載器からデータを受信するタイミングにつき、車両が第1の遮断機を通過する前後のいずれであっても、本件作用効果1を奏することが可能である。
また、本件作用効果2(ETCシステムを利用した車両誘導システムにおいて、
逆走車の走行を許さず、或いは先行車と後続車の衝突を回避し得る、安全な車両誘導システムを提供すること)についてみると、本件各発明にいう「逆走車」には、
料金不払などを目的として、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入する車両も含まれ、そのような「逆走車」の走行を防止することと、
「通信手段」と「第1の遮断機」の位置関係とは関係がないことは明らかであるし、通信手段の位置にかかわらず、車両が第1の遮断機を通過した後に第1の遮断機を下ろすことで、後退による逆走を防止することができる。
たしかに、本件明細書には、第1の遮断機(遮断機1)及び第 1 の検知手段(車両検知装置2a)の先に通信手段(ゲート前アンテナ3)が位置する構成を有する例が記載されているが(【図4】、これは実施例にすぎないというべきであって、上 )記に照らすと、本件各発明について、上記構成に限定して解釈すべき理由はない。
したがって、本件各発明の課題及び作用効果との関係で、
「通信手段」と「第1の遮断機」の位置関係が、被控訴人が主張するように特定されるとはいえない。
(ウ) また、被控訴人は、本件各発明においては、第1の遮断機を通過した走行中の車両に対して走行状態のまま無線通信を行うものであるところ、被控訴人各システムにおいては、発進制御機[開閉バー]@の手前に停止している車両に対して無 41 線通信を行うから、本件各発明と構成や作用が異なると主張する。
しかし、本件特許の特許請求の範囲においては、無線通信を行う際に車両が走行中であるか停止しているかについては特定されていないし、本件明細書の段落【0042】に「1台の車両が、遮断機1から車両検知装置2c、2dの区間に進入しているときはこの区間は一種の閉鎖領域となり、1台の車両のみの存在が許されるようになっている。このため、この閉鎖領域では先行車と後続車の衝突は起こらない。なお、ETCシステムが正常に働いている限り、遮断機1が閉じている時間は、
車両が遮断機1からETCゲート5を通過するまでの時間であり、ほんの数秒であり、ETCシステム本来のノンストップ走行は実質的に確保されている。 とあるこ 」とからすると、本件各発明においては、先行車両が存在する場合、後続車両が第1の遮断機の手前で停止することも予定されているといえる。そうすると、本件各発明について、第1の遮断機を通過した走行中の車両に対して走行状態のまま無線通信を行うものであると限定的に解釈することはできない。
したがって、被控訴人各システムにおいて、無線通信を行う際に車両が停止しているという点をもって、本件各発明の構成要件B1、C1、D1、B2、C2、D2の充足性が否定されるものではない。
(エ) 以上のとおり、被控訴人の上記各主張は採用することができない。
(3) 争点1-ウ(構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言への充足性)について ア(ア) 被控訴人各システムにおいては、ETC車載器との「無線通信が不能又は不可の場合」 すなわち、
、 ETCによる料金徴収が不可能な場合に、
「運転者に対し、
インターホンによる音声でその旨の報知がなされ、レーンd手前の発進制御機[開閉バー]@及びDが人的操作によって開かれ、車両は退出ルートdに退出する」ものとされている(ステップS106、S205)。被控訴人各システムにおける退出ルートdは、構成要件F1、F2の「ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に当 42 たる。また、被控訴人各システムは、ETCによる料金徴収が不可能な車両に対して、レーンd手前の発進制御機[開閉バー]@及びDを人的操作によって開くことによって、レーンdへと誘導しているから、構成要件F1、F2の「ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に通じる「第2のレーンへ誘導する誘導手段」を備えているといえる。そうすると、被控訴人各システムは、構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言を充足する。
(イ) そして、被控訴人各システムでは、路側無線装置Bが受信したデータの判定結果によって、無線通信が可能な場合は、発進制御機[開閉バー]@及びCが開いてサービスエリア内に入るレーン又はサービスエリアから一般道に出るルートへ通じるレーンに誘導するか(ステップS104)、データ取得区間(レーンe)へと誘導する(ステップS203)が、データ取得区間(レーンe)はサービスエリアに通じるルート上に存在するから、データ取得区間(レーンe)への誘導は、サービスエリアに入るルートへ通じる第1のレーンへの誘導に当たる。また、被控訴人各システムは、前記(ア)のとおり、無線通信が不能又は不可の場合は、「ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に通じる「第2のレーンへ誘導する誘導手段」を備えている。
したがって、被控訴人各システムは、本件各発明の構成要件F1、F2を充足する。
イ 被控訴人は、被控訴人各システムでは、車両が退出ルートdに自動誘導されるわけではなく、係員の手を煩わせることになってETC本来の目的が達成できない状態となるから、構成要件F1、F2の「第2のレーンへ誘導する誘導手段」との文言を充足しないと主張する。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲の記載をみても、
「第2のレーンへ誘導する誘導手段」が自動誘導である旨の記載はなく、本件明細書をみても、誘導手段」 「に係員が関与することを除外する記載はない。そして、被控訴人各システムにおい 43 ては、発進制御機[開閉バー]@及びDが人的操作によって開かれているものの、
インターホンで係員を現地に呼び出す必要はないし、また、発進制御機[開閉バー]@及びDが開くことで、車両は第2のレーンの方向に前進することができるので、
バック走行によりレーンから出ようとするおそれはないから、「インターホンで係員を呼び出す必要があるので渋滞が助長されること」「車両がバック走行をして出 、
ようとすると後続の車両と衝突するおそれがあって危険であること」という本件各発明の課題を解決することができ、「車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供する」 先行車と後続車の衝突を回避し得る安全な車両誘導システムを提供する」 、
「という作用効果を奏することができる。なお、本件各発明においても、車両が第1の遮断機の手前で停止することが想定されているといえることは、前記(2)イ(ウ)で説示したとおりである。
そうすると、
「第2のレーンへ誘導する誘導手段」について、被控訴人の主張するとおりに限定的に解釈すべき理由はなく、上記被控訴人の主張は採用できない。
(4) 争点1-エ 「遮断機を下ろす」 ( と共に「第1の遮断機」を開く構成に関する、
構成要件I1、K1、J2、L2への充足性)について ア 被控訴人各システムにおいては、車両検知器Aが車両の通過を検知すると発進制御機[開閉バー]@が閉じ、車両検知器Eが車両の通過を検知すると発進制御機[開閉バー]Cが閉じ(ステップS105、S204)、また、車両検知器Fが車両の通過を検知すると発進制御機[開閉バー]Dが閉じる(当事者間に争いがない。)構成となっているところ、車両検知器A及び発進制御機[開閉バー]@は、
「第1の検知手段」及び「第1の遮断機」に、車両検知器E及び発進制御機[開閉バー]Cは、
「第2の検知手段」及び「第2の遮断機」に、車両検知器F及び発進制御機[開閉バー]Dは、
「第3の検知手段」及び「第3の遮断機」にそれぞれ当たるから、被控訴人各システムは、構成要件I1、K1、J2、L2を充足する。
イ 被控訴人は、本件明細書の段落【0042】の記載を根拠に、本件各発明に 44 おいては、第2の検知手段により車両の通過が検知された場合や、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、第2又は第3の遮断機を下ろすとともに第1の遮断機が開かれるという解釈を前提に、被控訴人各システムが構成要件I1、
K1、J2、L2を充足しないと主張する。
しかし、本件特許の特許請求の範囲には、第2の検知手段により車両の通過が検知された場合や、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、第1の遮断機を開くことは特定されていない。
また、第2の検知手段により車両の通過が検知された場合や、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、第1の遮断機を開く旨が記載された本件明細書の段落【0042】は、一つの実施例に関するものであり、これを直ちに一般化することはできない上、第2の検知手段により車両の通過が検知された場合や、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、第1の遮断機を開くという構成でなければ本件各発明の作用効果が奏しないというものでもない。
そうすると、被控訴人らの上記主張は採用できない。
(5) 争点1-オ(構成要件I2の「前記第2の遮断機と前記第4の遮断機との間に閉鎖区間を形成し」との文言への充足性)について ア 被控訴人システム4の発進制御機[開閉バー]C及びHは、本件発明2の「第2の遮断機」及び「第4の遮断機」にそれぞれ該当し、車両検知器Iは本件発明2の「第4の検知手段」に該当する。また、証拠(甲10、11)によると、被控訴人システム4では、車両検知器Eが車両の通過を検知すると発進制御機[開閉バー]Cが閉じ、路側無線装置Lとの2回目の無線通信終了後に発進制御機[開閉バー]Hが開くまでの間に、発進制御機[開閉バー]Cと発進制御機[開閉バー]Hの双方が閉じた状態で閉鎖区間が形成されるものと認められる。
そうすると、被控訴人システム4は、本件発明2の構成要件I2を充足する。
イ 被控訴人は、本件発明2の構成要件I2は、閉鎖区間内に車両1台のみが存 45 在するようにして追突を防止するところに意味があるところ、被控訴人システム4では、発進制御機[開閉バー]Cと同Hとの間に形成される区間には複数の車両が存在することができ、追突の可能性があるから、構成要件I2を充足しないと主張する。
しかし、本件特許2の特許請求の範囲では、構成要件I2の閉鎖区間内に車両1台のみが存在するかどうかは特定されていない。
また、本件明細書2の段落【0054】〜【0058】及び【図9】からすると、
本件発明2において、第2の遮断機と第4の遮断機との間に形成される閉鎖区間は、
主にETC車用のレーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入することを防ぐための構成であると認められ、このことからしても、閉鎖区間に車両1台のみが存在することは要求されていないものと認められる。
したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。
(6) 小括 訂正の上引用する原判決第2の1(5)のとおり、被控訴人各システムは、本件各発明の構成要件E1、E2、G1、G2、H1及びH2を充足する。
そして、前記(1)〜(5)のとおり、被控訴人各システムは本件各発明の構成要件A1、B1、C1、D1、F1、I1、J1、K1、A2、B2、C2、D2、F2、
J2、K2及びL2を充足し、被控訴人システム4は本件発明2の構成要件I2を充足するから、被控訴人システム1〜3は本件発明1の技術的範囲に、被控訴人システム4は本件各発明の技術的範囲に属すると認められる。
3 争点2(無効理由1(本件各発明の、第1の検知手段、第1の遮断機、通信手段などに関する明確性要件違反)の有無)について (1) 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに 46 不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2) 被控訴人は、本件各発明は、@いかなる状況(形状)のレーンに配置されるシステムなのか、A第1の検知手段、第1の遮断機、通信手段、誘導手段、第2の検知手段、第3の検知手段、第3の遮断機、第1の遮断機を下ろす手段、第2の遮断機を下ろす手段、第3の遮断機を下ろす手段がそれぞれどの位置に配置され、どのような位置関係にあるのか、B誘導手段がいかなる構成のもので、どのようにして車両を誘導するのか、C第1、第2、第4の遮断機が開くタイミング、D第1の遮断機の動作、E第3の検知手段が車両を検知したときの他の構成の動作及び第3の遮断機の動作について、それぞれ明確でなく、特許法36条6項2号に規定する明確性の要件を満たしていないと主張するので、以下検討する。
ア @(いかなる状況(形状)のレーンに配置されるシステムなのか)について 本件特許の特許請求の範囲には、第1のレーンが、有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに入る、又は、有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出るルートに通じるものであり、かつ、第2のレーンが、再度ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じるものであることが記載されており(構成要件F1、F2)、また、本件明細書には、第1のレーンと第2のレーンの実施例が、
【図3】【図4】【図6】【図7】【図9】【図11】で 、 、 、 、 、
示されているから、本件各発明がどのような状況(形状)のレーンに設置されるものであるかという点について、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
イ A(遮断機、検知器等が配置される位置及び位置関係)について 本件各発明においては、各構成要素の位置関係が必ずしも特定されているものではないが、その機能的な関係を特定することなどにより発明の範囲が明確に特定されているのであれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
47 本件特許の特許請求の範囲には、車両が、第1の検知手段を通過した場合に第1の遮断機が下りること及び第2の検知手段を通過した場合に第2の遮断機が下りること(構成要件I1、J2)、第4の検知手段を通過した場合に第4の遮断機が下りること(構成要件J2) 通信手段がETC車載器から受信したデータによりETC 、
による料金徴収が可能か判断し(構成要件E1、E2)、第2の遮断機を含む誘導手段により第 1 のレーンに誘導するか、第3の遮断機を含む誘導手段により第2のレーンに誘導すること(構成要件F1、G1、F2、G2)がそれぞれ規定されており、本件各発明の構成要素は、上記を実現可能な位置関係をもって設置される必要がある。このことに、本件明細書の【図3】【図4】【図6】【図7】【図9】【図 、 、 、 、 、
11】を併せ考慮すると、第1のルートと第2のルートに分岐する前のETC専用レーン上に第1の遮断機、第1の検知手段及び通信手段が、第1のルート上に第2の遮断機及び第2の検知手段並びに第4の遮断機及び第4の検知手段が、第2のルート上に第3の遮断機及び第3の検知手段がそれぞれ設けられることが分かる。
以上からすると、上記Aの点について、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
ウ B(誘導手段の構成及び誘導の仕方)について 本件明細書の段落【0038】には、誘導手段の具体例として、遮断機を適宜開閉して車両を誘導する方法や、
「通行可能」などの文字や記号、絵などを用いて車両を誘導したりする方法、遮断機形式と表示パネル形式を併用する方法が記載され、
さらに、【図4】には、誘導装置の具体例として、「→」の記号を表示した表示パネルが用いられた構成が示されている。
したがって、誘導手段の構成や誘導方法が特許請求の範囲で具体的に特定されていないとしても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
エ C(第1、第2、第4の遮断機が開くタイミング)について 本件特許の特許請求の範囲には、第1、第2の各遮断機の開くタイミングについ 48 ては特定がされておらず、本件特許2の特許請求の範囲には、第4の遮断機の開くタイミングについては特定がされていない。
しかしながら、本件各発明は、前記1(2)のとおり、車両が通過した後に各遮断機を適切に下ろすことなどで、逆走を防止し、後続車との衝突を回避し得る安全な車両誘導システムを提供するというものであり(本件作用効果2) 各遮断機を下ろす 、
タイミングが特定されており、上記逆走防止等の効果を損なわない程度の時間各遮断機が下りた状態にあるのであれば、本件各発明は上記効果を奏するといえる。そして、当業者は、本件各発明を実施するに当たり、上記効果がどの程度奏されるべきかという観点から任意のタイミングで各遮断機を開けるよう選択することが可能である。
そうすると、第1、第2、第4の各遮断機が開くタイミングについては特定がされていないことをもって、本件各発明が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
オ D(第1の遮断機の動作)について 本件特許の特許請求の範囲には、ETCによる料金徴収ができない車両が差し掛かった時に、第1の遮断機がどのような動作をするのか(停車することなく通過することができるのか否かなど)は特定されていない。
そして、本件明細書には、【発明を実施するための最良の形態】として、「予め開いている遮断機1」(段落【0033】、
)「最初の車両検知装置2aが車両の進入を検知すると(ステップS02) 遮断機1を閉じて後続車との間を一定の間隔を空け 、
るようにしている(ステップS03)。遮断機1は、後述するように、車両検知装置2c又は2dが車両を検知しないと開かないので、先行車と後続車の衝突が回避でき、また先行車がレーンAを逆走するのを阻止できる」(段落【0040】)との記載があり、遮断機1(第1の遮断機)があらかじめ開いており、車両が通過した後に一度閉じて、車両検知器2c(第2の検知手段)又は2d(第3の検知手段)が 49 先行車を検知しなければ開かないという構成の実施例が示されている。
しかしながら、同実施例は、本件各発明を実施するための最良の形態であって、
上記形態でなければ本件各発明の作用効果を奏しないというものではない。そうすると、上記実施例に示された構成が特許請求の範囲において特定されていないことをもって、本件各発明が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに明確性を欠くということはできない。
カ E(第3の検知手段が車両を検知したときの他の構成の動作や第3の遮断機の動作)について 本件各発明においては、第3の検知手段が車両の通過を検知した場合、車両の通過後に第3の遮断機を下ろすことが特定されており(構成要件K1、L2)、第3の検知手段が車両を検知したときの他の構成の動作について、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに明確性を欠くとはいえない。
被控訴人は、本件明細書の段落【0059】の記載を根拠として、同段落に記載されている遮断機1-3や閉鎖区間センサー17、閉鎖区間Gについて、本件各発明には規定されていないことから、明確性を欠くと主張するが、上記段落に記載されているのは本件各発明を実施するための最良の形態の応用例であって、同応用例の構成を採らなければ本件各発明の作用効果が生じないというものではないから、
上記被控訴人の主張は採用できない。
(3) 以上からすると、本件各発明が明確性要件に違反するとはいえない。
4 争点3(無効理由2(乙35発明に基づく本件各発明の進歩性欠如)の有無)について (1) 乙35には次の記載がある。
「2.実用新案登録請求の範囲 料金収受システムに、磁気カードシステムと、非接触カードシステムとの双方のシステムを混在したシステムにおける有料道路の料金収受装置であって、料金所の 50 ゲートを磁気カードシステム専用車線と、非接触カードシステム専用車線に分けて構成し、非接触カードが読取り不良、あるいは読取り不能あるいは、不良カードの場合にこれを検出して非接触カードシステム専用車線の進入ゲートを閉とし、車両を磁気カードシステム専用車両に導入する誘導手段を具備していることを特徴とする料金収受装置。
3.考案の詳細な説明〔産業上の利用分野〕 本考案は、有料道路の料金収受装置に関する。(乙35の明細書1頁) 」「〔考案が解決しようとする課題〕 前述した様に、有料道路の料金収受システムに非接触カードを通行券の代わりに使用した場合、料金所入口、及び料金所出口は、無人にしてよいはずであるが、例えば、非接触カードの情報が読めなかった場合、あるいはカードの送受信部が故障した場合等に、例えば、カード読取り不良の場合に料金収受が不能になるため、このカードを持つ車両は有料道路の走行が不可能となる。
したがって、この様な事態を避ける様なシステムを構築しなければならない。」(同2〜3頁)「〔実施例〕 1.構成 第1図は、本考案の有料道路の料金収受システムの料金所のレイアウトを示したものである。入口(I)は、非接触カードを使用した車線、及び入口(U)は磁気カードシステムの車線である。11及び12は車両分離器であり、通行車両を1台ずつ分離検出する。13は、軸数、輪距検知器であり、通行車両の車軸数及び車輪数の検出を行なうものである。14は、路上機であり、車載機の情報を読み取る。
15は、車線制御装置であり、入口(I)、及び入口(U)の車線機器の車線制御を行うものである。16は案内表示盤であり、非接触カードが読取り不能を起こした 51 車両に対し、スムーズに有人車線に導入するべく表示するためのものである。17は遮断機であり、通常は開のままであるが、非接触カードの読取り不良を起こしたものに対し、非接触カード車線からの侵入を阻止するためのものである。18、19は、11、12と同じ車両分離器である。110は軸数検知器であり、通行車両の車軸数を計測するものである。車両分離器18、19、軸数検知器110の組み合わせにより通行車両の通過検出を行なって、非接触カード車線のシステムを初期の状態に戻す機能を有する。111、112は前述した11、12と同じ車両分離器である。113についても前述したよう13と同じ軸数・輪距検知器であり、通行車両の車軸数、及び車輪数の検出を行うものである。114は通行券処理機であり、磁気カード車線入口(U)の通行券を発行するものである。
第1図で、バイパス(V)は非接触カード持参の車両で、カード読取り不良、読取り不能、不良カード持参、カード非携帯の場合に、磁気カード車線に車両を導入するバイパス車線である。
(中略) 第3図は、本考案の有料道路の料金収受システムのブロック構成図である。 中略) (34は、路上機であり、車両の車載機(非接触カード)から送出されてきた情報を車線制御装置35に信号送出するものである。(同4〜6頁) 」「37は遮断機であり、非接触カード情報が読み取れなかった場合に、常時開状態の遮断機を閉とさせる。(同7頁) 」「〔考案の効果〕 本考案においては磁気カードシステムと、非接触カードシステムの双方のシステムを混在させる事により、非接触カードシステムのカード読み取り不良等の不都合が生じても、非接触カード車線から、磁気カード車線にスムーズに車両を導入出来るために、システムに不都合が生じる事はない。 (同16頁) 」 52 53 (2) 乙35発明の認定 前記(1)によると、乙35発明は、被控訴人の主張するとおり、次の構成を有するものと認められる。
A 料金収受システムに、磁気カードシステムと、非接触カードシステムとの双方のシステムを混在したシステムにおける有料道路の料金収受装置である。
B 通行車両を1台ずつ分離検出する車両分離機11及び12を備える。
D 車載機の情報を読み取る路上機14を備える。
E 車両の車載機(非接触カード)から送出されてきた情報を車線制御装置35に信号送出する路上機34(第1図及び第2図の14)を備える。
F’ 第1図でバイパス(V)は、非接触カード持参の車両で、カード読取り不良、読取り不能、不良カード持参、カード不携帯の場合に、磁気カード車線に車両を誘導するバイパス車線である。
54 G’ 第3図に示すブロック構成図において、非接触カード情報が読み取れなかった場合に、常時開の状態の遮断機17を閉とさせる遮断機37を備える。
H’ 遮断機17を通過した車両を検知する、
(第2の検知手段に相当する)車両分離機18、19と、バイパス(V)を通行する車両を検知する、車両分離機111、112を含む。
I’ 車両分離機18、19、軸数検知器110の組み合わせにより通行車両の通過検出を行って、非接触カード車線のシステムを初期の状態に戻す(閉じていた遮断機17を開く)機能を有する。
J 有料道路の料金収受装置である。
(3) 本件各発明と乙35発明の対比 本件各発明の構成と前記(2)の乙35発明の構成を比較すると、次の各相違点があると認められる。
ア 相違点1 乙35発明が、本件各発明における、第1の検知手段に対応して設置される第1の遮断機に相当する遮断機を備えていない点 イ 相違点2 乙35発明が、第1の検知手段により車両の進入が検知された場合に、車両が通過した後に、第1の遮断機を下ろす手段を備えていない点 ウ 相違点3 乙35発明が、第2の検知手段により車両の進入が検知された場合に、車両が通過した後に、第2の遮断機を下ろす手段を備えていない点 エ 相違点4 乙35発明が、第2のレーン(バイパスV)に設けられる第3の遮断機に相当する遮断機を備えていない点 オ 相違点5 55 乙35発明が、第3の検知手段により車両の通過が検知された場合に、車両が通過した後に、第3の遮断機を下ろす手段を備えていない点 カ 相違点6(本件発明2との関係のみ) 乙35発明が、本件発明2における閉鎖区間に相当する構成を備えてない点 (4) 乙20〜22、36の記載について ア 乙20には次の記載がある。
【発明の名称】有料道路料金自動支払いシステム【0001】【産業上の利用分野】本発明は、有料自動車道路の料金自動支払いシステムに関し、
特に無線通信装置を用いて信号の授受を行い車両を停止させることなく料金を支払うことができるようにした有料道路料金自動支払いシステムに関する。
【0003】【発明が解決しようとする課題】このような従来の支払いシステムでは、有料道路入口で通行券の受渡しのために車両(自動車)は必ず一旦停車しなければならず渋滞の原因になっており、特に、出口料金所においては車両は必ず一旦停車して有料道路料金の計算の後、料金支払い、釣り銭の授受等の作業を必要とし、少ないとはいえ時間が掛かるため渋滞の原因となっていた。・・・【0005】【実施例】図1は、本発明の実施例を示す模式図で、1は有料道路(有料自動車道路)、2は有料自動車道路の入口で、3は一般入口、4は一般入口3の通行券渡し所である。5は本発明システムの専用入口、6は専用入口ゲート、7は専用入口ゲート付近に設けられた入口用無線通信装置である。8は無線通信装置9を搭載した車両(自動車)である。10は有料道路の出口で、11は一般出口、12は一般出口11の料金支払所、13は料金支払所12のゲートである。14は本発明システムの専用出口、15は専用出口ゲート、16は専用出口ゲート15付近に設けられた 56 出口用無線通信装置である。17は中央制御装置、18は金融機関である。
【0006】本発明システムに係る車両8が有料道路の入口近くに進入したとき、
当該車両8の無線通信装置9から車両識別ID信号を発信する。この車両識別ID信号を有料道路の入口近くに設けられている入口用無線通信装置7が受信すると、
専用入口ゲート6を開き車両8の有料道路1への進入を可能とし、進入後専用入口ゲート6を閉める。・・・【0009】図2は、前述した本発明の実施例の各装置間の信号の授受、および当該信号に基づく各装置の動作並びに制御の状態を示す各装置相互間の動作流れ図である。この図2における(ゲート開閉又は一般出口へ)は、前述したように中央制御装置17から出口用無線通信装置16への支払可否情報により、支払可であれば専用出口ゲート15を開閉し、支払否であれば専用出口ゲート15は閉じたままで、
車両を一般出口に表示等で誘導させることである。・・・【図1】 【図2】イ 乙21には次の記載がある。
【発明の名称】駐車場エレベーターシステム【0001】【産業上の利用分野】 この発明は駐車場エレベーターシステムに関するものであ 57 る。
【0004】【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、従来の駐車場エレベーターシステムでは、各駐車場階の駐車可否の判断は駐車している車両の台数のみによって行っているので、車両サイズによって駐車可能な階が異なるような駐車場にこの駐車場エレベーターの駆動装置を用いると、第1呼び登録手段6によって自動的に選択された駐車場階に運ばれた車両が、その車両サイズと駐車場階の駐車可能なサイズが適合しないために駐車できないという現象が起き、再び駐車が可能な階へ移動し直さなければならないので、エレベーターの運転効率が悪くなるという問題があった。
【0027】実施例4.・・【0028】図7はサイズごとに分けられた駐車ゾーンを持つ駐車場階を表した図である。図7において、13はエレベーターのかご、27はAサイズの車両を駐車するための駐車ゾーンA、28はBサイズの車両を駐車するための駐車ゾーンB、
29はかご13から降車した車両12を駐車ゾーンへ案内する駐車ゾーン案内装置、
30は通路である。・・・【0033】実施例5.また、実施例4のような駐車ゾーンを持つ駐車場階の他の実施例として、図11に示すような駐車場階を実施例5に示し説明する。これは車両サイズに適合する駐車ゾーンに確実に駐車させることができる駐車場階である。
図11において、図7と同一の符号は同一又は相当部分である。38は駐車ゾーンA27と駐車ゾーンB28を分ける駐車ゾーン分離帯、39はかご13から降車してきた車両が誤った駐車ゾーンへ進入しないように、選択された駐車ゾーン以外の駐車ゾーンへ進入することを防ぎ、正しい駐車ゾーンへ駐車させるために開閉する遮断機である。
58 【0034】 ・・・図11において、車両を乗せたかご13がこの駐車場階へ到着すると、制御装置15による信号を受けて、その車両サイズに対応する駐車ゾーンにつながる遮断機39のみが開き、他の遮断機は閉じたままになる。同時に駐車ゾーン案内手段29は制御装置15による信号を受けて、その車両サイズに対応する駐車ゾーンへ車両を誘導するように働く。
【0035】このように構成したことにより、誤った駐車ゾーンへ駐車することがないので、駐車スペースを正確に管理することができる。また、駐車場を出る車の流れをこの遮断機39で制御すると、どの駐車ゾーンから車両が出たかが分かるので、駐車場を出る車両の車両サイズを測る必要が無くなる。
【図11】 ウ 乙22には次の記載がある。
【発明の名称】駐車管理システム【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、駐車管理システムに関し、特に、車両の入場路や出場路の通行を管理するための駐車管理システムに関する。
59 【0003】従来のこの種の駐車管理システムは、入場時は、車両検知センサで入場車両を検知してゲートを開き、入場を可能にし、駐車券発行機から入場時刻等の情報を記録した駐車券を自動発行する。入場車両の乗員は、発行された駐車券を抜き取って、空いている駐車スペースに駐車する。出場時は、入場時に発行された駐車券を料金精算機に挿入し、記録情報に基づいて表示される駐車料金を精算する。
駐車料金が精算されると、ゲートを開き出場を許可する。
【0004】【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の駐車管理システムでは、車両の入場、出場を規制するためのゲートが1つしかなかった。しかも、ゲートを通過する乗員の安全性や車両の破損事故防止等を考慮して、ゲートの下降速度を比較的にゆっくりに設定している。このため、前の車両が料金精算を済ませゲートが開いた際に、駐車料金を精算せずに前の車両に続いて不正に出車する、所謂、共連れ出車が可能であり、これを防止することが難しかった。
【0005】本発明は上記問題点に着目してなされたもので、共連れ出車を防止可能とした駐車管理システムを提供することを目的とする。
【0016】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。・・・【0021】次に、本実施形態の駐車管理システムによる車両の通行制御動作をフローチャートに従って説明する。図3及び図4には、入場側の第1ゲート3を通常閉状態とするクローズドモードの場合の入場時、出場時の各処理動作を示す。
【0022】まず、図3に従って入場処理動作を説明する。・・・【0024】ステップ5では、ループコイルLC1及び光センサS1が車両を検知しているか否かを判定し、両方から検知出力がなくなるのを待って両検知出力がなくなると入場車両が第1ゲート3を通過完了したと判断し、ステップ6に進む。従って、入場車両に対してはループコイルLC1及び光センサS1が第1車両検知手 60 段を構成している。
【0025】ステップ6では、第1ゲート3を下降駆動して第1ゲート3を閉じる。
これにより、ゲート3、4の間の領域を閉鎖して1台の入場車両だけしか進入できないようにしている。この際は、信号灯7を赤表示として後続車両の入場を禁止する。
【図1】 エ 乙36には次の記載がある。
【発明の名称】通行規制方法及び通行規制装置【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、指定地域における自動車(以下、車両という)の通行量を規制する通行規制方法及び通行規制装置に関する。
【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記有人方式の場合は、各進入路に係員を配置する必要があるため、人員の確保及び人件費の問題があるばかりでなく、天候などによる労働環境・条件が過酷であるなどの問題がある。また、車両の識別を容易かつ確実に行うことは困難であるという問題がある。さらに、一般車両 61 から料金を徴収する場合には、一般車両の運転者が常に必要な額又は種類の現金を所有しているとは限らず、料金支払いの際に困惑する事態が生じることが少なくない。さらに、徴収した現金を保管・運搬・後処理に多くの手間がかかり、また、現金の防犯性にも問題がある。上記無人方式の場合には、上記有人方式による問題である人員確保、人件費、労働条件及び車両識別の困難さ等の問題は解消されるものの、通行券の材料、印刷、配布にそれぞれコストがかかるとともに、現金収受機で収受した現金の防犯性の問題がある。・・・【0015】【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明の通行規制方法については、以下の本発明方法を使用する通行規制装置の中で併せて説明する。
【0036】 ・・・・まず、CPU100は、接近検知器15から車両の接近を示す検知信号の入力を待機し(ST20)、ST20が"Y"ならば、駆動部12に対して遮断バー14の開放動作を指令する(ST21)。これにより、駆動部12は遮断バー14を開放動作させる。次いで、CPU100は、通過検知器16から車両の通過を示す検知信号の入力を待機し(ST22)、ST22が"Y"ならば、駆動部12に対して遮断バー14の閉鎖動作を指令する(ST23)。これにより、駆動部12は遮断バー14を閉鎖動作させて、処理を終了する。上記動作によれば、遮断機1に対する車両の接近及び通過に基づいて、進入路の閉鎖の解除及び再閉鎖を行うので、遮断機1を通過する車両に対して適確な通行規制を行うことができる。
62 【図1】 (5) 相違点についての検討 前記(3)アの相違点1についてみると、乙35発明においては、車両分離器11、
12が本件各発明の「第1の検知手段」に相当するところ、乙35には、遮断機17の他に、車両分離器11、12に対応する遮断機を設けることについての記載はなく、示唆もない。
乙20、36には、有料道路や指定地域への進入路に設置するシステムに関する発明が記載されているが、いずれも、進行方向において一つの遮断機により車両の通行可否を制御するものであって、二つ以上の遮断機を設置することについての記載や示唆はない。
なお、乙22には進行方向に二つの遮断機を設ける構成が開示されているものの、
乙22は、駐車場において、駐車料金を精算せずに前の車両に続いて不正に出車することを防止するために二つの遮断機を設けたというものであり、本件各発明のように、高速道路のETCレーンにおいて逆走車の走行を防止することをも目的として、第1の検知手段に対応して第1の遮断機を設けることを動機付けるものとはいえない。また、乙21に記載された発明は、複数階にわたる駐車場において車両を 63 移動させるエレベーターシステムに関するものであるが、進行方向に二つの遮断機を設ける構成を有しているものではない。
そして、その他に高速道路のETCレーンにおいて進行方向に二つの遮断機を設けることが周知技術であったことを認めるに足りる証拠はない。
以上によると、相違点1は容易想到とはいえず、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人の乙35発明に基づく進歩性欠如の主張は理由がない。
5 争点4(無効理由3(本件特許1親出願の分割要件違反を前提とした、乙45又は甲12の公報に基づく本件発明1の新規性欠如及びサポート要件違反)の有無)について (1) 被控訴人は、本件特許1親出願(特願2015-098590)に分割要件違反があり、特許法44条2項により本件親出願の出願日に出願したとみなされることはないから、本件特許1親出願からの分割出願である本件特許1についても、
その出願日が、本件特許1親出願の出願日(平成27年5月13日)より前に遡ることはないと主張する。
(2) 上記について被控訴人は、本件特許1親出願が分割要件違反により拒絶査定を受けており、この判断が確定している旨主張するので検討する。
本件特許1親出願の拒絶査定(乙42の1)には、
「平成28年3月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。 との記載があると 」ころ、同拒絶理由通知書(乙16)には、分割要件違反により出願日が遡及しないことを前提とする新規性欠如及び進歩性欠如が指摘されている。しかしながら、同拒絶理由通知書には、これに加えて「発明の単一性」「サポート要件」「明確性」の点についても拒絶理由に当たるとの指摘がされているところ、上記拒絶査定には、
「出願日(遡及日)平成16年9月13日」との記載もあり、本件親出願の出願日に本件特許1親出願が出願されたとみなしているものと認められ、特許庁審査官は、
分割要件違反を前提とする新規性欠如及び進歩性欠如以外の理由により、拒絶査定 64 をしたものと推認されるから、特許庁審査官が本件特許1親出願について、分割要件違反を理由として拒絶査定をしたと認めることはできない。
なお、上記拒絶理由通知書には、本件特許1親出願について、請求項1、2に係る発明が原出願(特願2014-243621号)の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないことを理由として分割要件違反に当たる旨の記載があるが、本件特許1親出願の請求項1、 (乙46) 2 とその原出願の請求項1、
2(甲15)を比較すると、完全に一致することが認められるから、上記の拒絶理由通知書における記載は誤りであったものというほかなく、また、その他に本件特許1親出願について分割要件違反があったことを認めるに足りる証拠はない。
(3) そうすると、被控訴人の主張する無効理由3はその前提を欠く。また、本件明細書1の記載に照らすと、本件発明1について、同明細書1の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。したがって、被控訴人の主張する無効理由3には理由がない。
6 争点5(無効理由4(本件発明2について各遮断機を開けるタイミングに関するサポート要件違反)の有無)について (1) 被控訴人は、本件発明2について遮断機を開けるタイミングについて特定されていないことがサポート要件違反に当たると主張するところ、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。
(2) 本件特許2の特許請求の範囲においては、第1〜第4の各検知手段が車両の進入を検知した場合、車両の通過後に、それぞれ対応する第1〜第4の遮断機を下 65 ろすものとされているが(構成要件J2、L2)、各遮断機を開けるタイミングについては特定されていない。
しかし、本件明細書2の段落【0058】には、(図9の)「レーンDに車両が入る時は、車両検知装置2cが車両を検知すると(ステップS49)、遮断機4-1を閉じて遮断機1-2を開き(ステップS50) その後ゲート前アンテナ3が後続車両を 、
認識判断するまで(ステップS48)遮断機4-1を閉じたままにしておく。「車両 」区間センサー16が閉鎖区間Fに車両がいないことを確認すると(ステップS54) 、
遮断機1を開いて(ステップS55)後続車両の進入が可能となる。」との記載、同段落【0059】には、
「レーンEに車両が入る時は、車両検知装置2dが車両を検知すると(ステップS58)遮断機4-2を閉じて遮断機1-3を開き 、 (ステップS59)、
その後ゲート前アンテナ3が後続車両を認識判断するまで(ステップS57)遮断機4-2を閉じたままにしておく。車両検知装置2fが車両を検知すると(ステップS60)遮断機1-3を閉じ(ステップS61)、レーンEの出口から不正車両が逆進入することを防ぐ。車両区間センサー17が閉鎖区間Gに車両がいないことを確認すると(ステップS62)、遮断機1を開いて(ステップS63)後続車両の進入が可能となる。」との記載があり、後続車両との衝突を回避し、不正車両の逆進入を防ぐために適切な遮断機を開けるタイミングの例が示されている。
また、本件発明2は、車両の通過後に遮断機を下ろすことで、車両の逆走を防止し、また、先行車と後続車との衝突を回避するという効果を奏するものであるから、
その効果を得るために必要な範囲で遮断機を開くタイミングを決定すれば足りることは、当業者が容易に理解できる。また、第2、第4の遮断機については、これらにより閉鎖区間を形成するものとされているから(構成要件I2) 閉鎖区間を形成 、
するに足るタイミングで第2、第4の遮断機を開けるものと特定されているということができる。
以上によると、当業者は、本件明細書2の記載を踏まえて、本件発明2における 66 各遮断機を開けるタイミングを容易に決定することが可能であり、本件発明2は、
本件明細書2の発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるということができる。
(3) そうすると、本件発明2について、各遮断機を開けるタイミングが特定されていないことがサポート要件違反に当たる旨の被控訴人の主張は採用できない。
7 争点6(損害又は不当利得の発生及びその額)について (1) 被控訴人が、平成23年4月28日以降、被控訴人各システムを佐野SAスマートICに設置し、同システムによって、通過する車両から通行料金等を徴収していることについては当事者間に争いがない。
そして、被控訴人が、本件各発明の技術的範囲に含まれる被控訴人各システムを設置して、同システムにより佐野SAスマートICから東北自動車道に出入りする車両を誘導していることは、本件各発明の「使用」による実施に当たる(特許法2条3項1号)。
本件において、控訴人は、特許法102条3項により実施料相当額の損害を請求しているが、一般に実施料は、売上額に実施料率を乗じて算定される。被控訴人各システムを利用して東北自動車道に出入りする車両が被控訴人に支払う金員(通行料金等)は、高速道路の利用1回に対して課する固定額150円(ターミナルチャージ)と、利用距離に対して課する可変額部分(通行料金)であり、通行料金は1km当たり24.6円(普通区間、普通車)である(乙48)。高速道路を一度利用すると、出入口を2回(佐野SAスマートICを利用する車両については、佐野SAスマートICと他のICとの2か所)通過することになるから、少なくとも上記ターミナルチャージの半額である75円は被控訴人各システムの使用と関係がある売上げに当たる。また、佐野SAスマートICから出入りする車両は、少なくとも隣接するICである佐野藤岡IC又は佐野田沼ICと佐野SAスマートICとの間、
東北自動車道を走行するから、佐野SAスマートICから隣接するICまでの距離 67 に対応する可変額部分(通行料金)は、被控訴人各システムの使用と関係がある売上げに当たるとみることができる。上記通行料金は、佐野藤岡ICから佐野SAスマートICまでの距離が2.7km(甲22の1)、佐野田沼ICから岩舟ジャンクションを経由して佐野SAスマートICまでの距離が11.2km(甲22)であることから、その平均距離6.95kmに1km当たりの額24.6円を乗じて、
170円(1円未満切り捨て)と計算される。
そうすると、被控訴人各システムの使用による車両1台当たりの売上げは、少なくとも245円である。
(2) 次に、証拠(甲23、甲34の1〜72)によると、平成27年7月から令和3年7月までの各月について、佐野SAスマートICを通過した車両の台数(一日当たり平均)は、別紙2の「台数/日」欄記載のとおりと認められ、これに各月の日数を乗じて月当たりの通過台数を計算すると、同別紙の「台数/月」欄記載のとおりとなる(なお、平成27年7月3日〜同月31日の通過台数は、7万4153台と計算されるが、控訴人の主張する7万4152台の限度で認めた。。
)そして、
佐野SAスマートICには4つの被控訴人各システムが設置されているから、それぞれの通過台数が各4分の1であるものとすると、本件特許権1が登録された平成29年6月16日から令和3月7月31日までの被控訴人システム1〜3の通過台数は308万5926台、本件特許権2が登録された平成27年7月3日から令和3月7月31日までの被控訴人システム4の通過台数は149万8587台と推定され、合計台数は458万4513台である。
(3) 上記から、被控訴人各システムの使用による売上額は、11億2320万5685円(=245円×458万4513台)と計算される。
(4) 証拠(甲26、31、乙51、55)によると、@被控訴人各システムはスマートICに設置されるものであるところ、被控訴人は、スマートICの導入により、従前10kmであったIC間の平均距離を欧米並みの5kmに改善し、地域生 68 活の充実・地域経済の活性化を推進しようとしていること、A設置コストは、通常のICが30〜60億円であるのに対し、スマートICが3〜8億円、管理コストは、通常のICが1.2憶円/年であるのに対し、スマートICが0.5憶円/年と、スマートICを設置することで、被控訴人はコスト削減ができていること、B既存のサービスエリアに被控訴人各システムを設置することで、出入口を増やすことができ、高速道路の利便性が上がるので、利用者増加につながる可能性があること、Cもっとも、佐野SAスマートICの設置により東北自動車道の利用台数が顕著に増加したとはいえないこと、D被控訴人は、本件特許に抵触しないスマートICも設置しており、代替技術があること(控訴人の主張によると、本件特許に抵触しないスマートICが半数弱存在する。、E控訴人は、自ら本件特許を実施してお )らず、今後も実施する可能性がないこと、F佐野SAスマートICの施設に占める被控訴人各システムの構成割合(価格の割合)は7.8%であること、G被控訴人は、控訴人からの警告を受けた後も本件特許の実施を継続していること、がそれぞれ認められる。
上記各事情を総合すると、本件において、本件特許の実施料率は、2%と認めるのが相当である。
(5) 上記をもとに損害額を算定する。
実施料相当額 11億2320万5685円×2%=2246万4114円 (1円未満四捨五入。以下同じ。) イ 消費税額 (ア) 令和元年9月までの分 通過台数285万9269台、消費税率8% (245円×285万9269台)×2%×8%=112万0833円 (イ) 令和元年10月以降の分 通過台数172万5244台、消費税率10% (245円×172万5244台)×2%×10%=84万5370円 (ウ) 小計 196万6203円 69 ウ 弁護士費用 事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌すると、本件の不法行為相当因果関係にある弁護士費用は、250万円と認めるのが相当である。
エ 合計額 2693万0317円 なお、控訴人は、請求額の内金1000万円に対して平成31年4月2日から支払済まで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているところ、上記2693万0317円のうち1000万円を超える部分が同日以前の不法行為により生じているから、遅延損害金については、2693万0317円のうち1000万円について平成31年4月2日から支払済まで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を、残部については令和3年11月12日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を認容することする。また、本件において、不当利得に基づく請求の額が上記額を超えるとは認められないので、不法行為に基づく請求を認容することとする。
(6) 被控訴人は、ターミナルチャージ及び通行料金について、建設費等の償還のために受領するものであるから売上げに当たらないと主張するが、これは売上金の使途に関する主張をしているにすぎず、ターミナルチャージ及び通行料金が、実施料算定の基礎とすべき売上げと評価すべきではないとする理由となるものではない。
また、被控訴人は、スマートICではなくとも通行料金等が課されるから、通行料金等は本件各発明の使用と関係がない、佐野SAスマートICの設置による利用台数の増加がない等とも主張するが、これらの事情は実施料率の認定において考慮すれば足り、通行料金等を売上げとみることを否定する事情に当たるとはいえない。
被控訴人は、佐野SAスマートICの設置により、車両が従前よりも手前のICで降りることとなって、支払う通行料金が減少するというパターンも存在すると主張するが、前記のとおり、佐野SAスマートICから出入りする車両は被控訴人各システムを利用しており、その車両が支払う通行料金は被控訴人各システムの使用と 70 関係がある売上げに当たるから、上記被控訴人の主張は通行料金等を売上げとみるべきとする判断を左右しない。
さらに、被控訴人は、ETC通信の可否を判定した結果、通信ができず退避路に誘導される車両は、スマートICに差し掛かる車両のうちごく僅かであり、また、
スマートIC内の狭い導線において、バックしたり、逆進入する車両は皆無である上に、ETC通信ができない車両や逆進入する車両からは、ターミナルチャージ等を徴収できないことから、本件各発明の特徴は、被控訴人によるターミナルチャージ等の徴収とは無関係であるとか、仮にターミナルチャージをロイヤリティベースと捉えるとしても、被控訴人各システムの構成割合(7.8%)と第2のレーン(退避路)に誘導される車両の割合(0.22%)で按分すべきであると主張するが、
佐野SAスマートICにより出入りする車両は、被控訴人各システムを必ず使用しており、被控訴人各システムが第1のレーンへ誘導する車両も本件各発明を使用しているものであることに加え、被控訴人各システムを使用することによって、円滑で安全なICにおける通行を確保するとの利益を得ており、このような利益を含めた対価としてターミナルチャージを含めた通行料を支払っていると認めることができるものであるから、上記被控訴人の主張は採用できない。
結論
以上のとおり、控訴人の原審における1000万円及びこれに対する平成31年4月2日から支払済まで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める損害賠償請求は全部理由があるからこれを認容すべきところ、これを全部棄却した原判決は不当であるから、本件控訴には理由があり、また控訴人の当審における拡張請求は、
被控訴人に対し、1693万0317円及びこれに対する令和3年11月12日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこの限度で認容し、その余の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
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裁判長裁判官 本多知成
裁判官 浅井憲
裁判官 勝又来未子