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事件 |
令和
2年
(ワ)
17423号
損害賠償請求事件
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5原告 カワサキ機工株式会社 同訴訟代理人弁護士 矢野千秋 同 山岸勇紀 同 補佐人弁理士東山喬彦 同 東山裕樹 10 被告 落合刃物工業株式会社 同訴訟代理人弁護士 小松勉 同 市川静代 同 三輪拓也 同訴訟代理人弁理士 山下幸彦 15 同補佐人弁理士小橋立昌 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2022/05/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
20 第1 請求 1 被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和2年8月22日から支払 済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、1億3000円及びこれに対する令和3年3月2日か ら支払済みまで、別紙被告製品目録記載2の製品の製造販売時点が令和2年325 月31日までのものについては年5分、同時点が同年4月1日以降のものにつ いては年3%の各割合による金員を支払え。 1 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを 具えた茶刈機」とする特許第4349999号の特許(以下「本件特許」とい 5 う。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、 被告に対し、別紙被告製品目録記載1及び2の各製品(以下「被告製品1」、 「被告製品2」といい、これらを合わせて「被告各製品」という。)が本件特 許の特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下「本件発明1」という。)及 び同請求項13に係る発明(以下「本件発明2」といい、本件発明1と合わせ10 て「本件各発明」という。)の各技術的範囲に属し、被告による被告各製品の 製造販売が本件各発明の実施に当たると主張して、主位的に、民法709条に 基づく損害賠償請求として、予備的に、同法703条に基づく不当利得返還請 求として、以下の金員の支払を求める事案である。 (1) 被告製品1に係る損害賠償金又は不当利得金合計2億3000万円のうち15 1億円(特許法102条2項若しくは同条3項に基づく損害賠償金又は不当 利得金8696万円並びに弁護士及び弁理士費用1304万円)及びこれに 対するに対する訴状送達日の翌日である令和2年8月22日から支払済みま で平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」とい う。)所定の年5分の割合による遅延損害金20 (2) 被告製品2に係る損害賠償金又は不当利得金合計3億7590万円のうち 1億3000万円(特許法102条2項若しくは同条3項に基づく損害賠償 金又は不当利得金1億0925万円並びに弁護士及び弁理士費用2075万 円)並びにうち被告製品2の製造販売時点が令和2年3月31日までのもの に係る金員に対する訴えの変更申立書送達日の翌日である令和3年3月2日25 から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち 被告製品2の製造販売時点が令和2年4月1日以降のものに係る金員に対す 2 る令和3年3月2日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損 害金 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 5 (1) 当事者 ア 原告は、製茶機械の製造及び販売、農業機械の製造及び販売等を業とす る会社である。 イ 被告は、茶摘鋏の製造及び販売、農機具類の製造及び販売等を業とする 会社である。 10 (2) 本件特許 原告は、平成16年8月12日、本件特許に係る特許出願(特願2004 -235170号。以下「本件出願」という。)をし、平成21年7月31 日、本件特許権の設定の登録(請求項の数15)を受けた(甲1、2。以下、 本件出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。 15 また、明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと、図を 【図1】などと、それぞれ記載する。)。 (3) 本件各発明に係る特許請求の範囲 本件特許の特許請求の範囲の請求項7(本件発明1)及び請求項13(本 件発明2)の各記載は、以下のとおりである(甲1)。 20 ア 本件発明1 【請求項7】 茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内 部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力 風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の25 位置まで移送する装置であって、 前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される 3 移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成り、 また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に背面風 (W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移 送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉 5 (A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものであることを特徴とす る茶枝葉の移送装置。 イ 本件発明2 【請求項13】 茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、 10 この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う 茶刈機体と、 この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部(4) と、 刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移送15 する移送装置(5)とを具え、 目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、 前記移送装置(5)は、請求項7、8、9、10、11または12記載の装 置が適用されて成ることを特徴とする茶刈機。 (4) 本件各発明の構成要件の分説20 本件各発明は、以下の構成要件に分説することができる(以下、各構成要 件につき、頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。 ア 本件発明1 A 茶葉や枝幹等の茶枝(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内 部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧25 力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所 定の位置まで移送する装置であって、 4 B 前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始され る移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて 成り、 C また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に背面 5 風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、 D この吹出口(38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによ って、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送す るものであることを特徴とする茶枝葉の移送装置。 イ 本件発明210 E 茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、 この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行 う茶刈機体と、 この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部 (4)と、 15 刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移 送する移送装置(5)とを具え、 目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、 F 前記移送装置(5)は、請求項7、8、9、10、11または12記載の 装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈機。 20 (5) 被告による被告各製品の販売等 被告は、遅くとも平成22年10月から令和元年8月まで、被告製品1を 製造販売していた。 また、被告は、被告製品2を製造販売している。 (6) 被告各製品の構成要件充足性25 被告各製品は、構成要件B、C及びEを充足する(弁論の全趣旨)。 3 争点 5 (1) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1) (2) 無効の抗弁の成否 ア 特開平11-346535号公報(乙1。以下「乙1公報」という。) を引用例とする新規性欠如(争点2-1) 5 イ 乙1公報を主引用例とする進歩性欠如(争点2-2) ウ サポート要件違反(争点2-3) (3) 特許権不行使の合意の成否(争点3) (4) 損害額及び不当利得額(争点4) 第3 争点に関する当事者の主張10 1 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について (原告の主張) (1) 「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)の解釈 「圧力風の作用のみによって」とは、「圧力風」以外の移動のための力学 的作用(例えば、ベルトコンベアへの載置による移送作用、回転ブラシとの15 接触による押出作用等)を用いることなく、単に移送ダクト内を流れる「圧 力風」の風送作用を受けることを意味すると解すべきである。 (2) 被告各製品が「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)を備えること ア 被告各製品は、別紙概要断面図(同図は、被告各製品の進行方向を右と して、被告各製品を真横から見た断面図である。)記載のとおり、茶葉や20 枝幹等の茶枝葉を刈り取るバリカン式の刈刃(22')に対して、内部に空気流 を流す移送ダクト(6')を備え、この移送ダクト(6')内に流す圧力風の作用 によって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22')から所定の位置まで移 送する装置であり、刈刃(22')の前方に回転ブラシRを備える。 そして、上記回転ブラシRは、刈り取られた茶枝葉(A)の移送に全く寄与25 しておらず、茶枝葉(A)は、移送ダクト(6')内に供給される背面風の作用の みによって、移送ダクト(6')内を移送される。 6 イ この点について、回転ブラシを取り外した状態で被告各製品を用いたと しても茶枝葉を移送することができれば(実用上遜色ない移送性能を発揮 することができれば)、回転ブラシが茶枝葉の移送に全く寄与しておらず、 被告各製品は「圧力風の作用のみによって」茶枝葉を移送するということ 5 ができる。 そこで、原告は、令和元年7月25日、回転ブラシを備える被告製品1 と回転ブラシを取り外した被告製品1について、摘採する長さを120m m、90mm及び30mmとしたときの茶枝葉の摘採量を測定する実験を 行ったところ、以下の結果(甲5。以下「原告実験結果1」という。)を10 得た。 被告製品1 被告製品1 摘採する長さ (回転ブラシあり) (回転ブラシなし) 120mm 31.58kg 32.90kg 90mm 17.22kg 18.10kg 30mm 1.50kg 0.92kg また、原告は、令和2年10月22日、回転ブラシを備える被告製品2 と回転ブラシを取り外した被告製品2について、上記と同様の実験を行っ15 たところ、以下の結果(甲6。以下「原告実験結果2」といい、原告実験 結果1と合わせて「原告各実験結果」という。)を得た。 被告製品2 被告製品2 摘採する長さ (回転ブラシあり) (回転ブラシなし) 120mm 16.24kg 17.82kg 7 90mm 13.18kg 12.86kg 30mm 3.98kg 3.62kg 原告各実験結果によれば、茶農家が茶葉を摘採するに当たり現実的に設 定する120mm及び90mmの各長さの摘採では、回転ブラシの有無で 摘採量に有意な差はなく、回転ブラシを取り外した被告各製品であっても 5 十分に実用に足りる摘採をすることができており、むしろ、被告製品1に ついては120mm及び90mmの各長さの摘採において、被告製品2に ついては120mmの長さの摘採において、回転ブラシを外した方が摘採 量が多かった。 原告各実験結果によれば、30mmの長さの摘採では、回転ブラシを備10 える被告各製品の摘採量の方が多い。しかし、30mmの長さの摘採は、 茶の品質を競う品評会向けの茶葉を得るためなど、営農上の収益性を度外 視したものであり、実用上採用される寸法設定ではなく、極めて限られた 場合にとどまるものであるから、この結果を重視すべきではない。 したがって、被告各製品は、回転ブラシがなくても、背面風の作用のみ15 によって茶枝葉を移送することができるから、「圧力風の作用のみによっ て」を備える。 ウ これに対して、被告は、@ 令和元年5月17日に、回転ブラシを備える OHC-5DVBU型乗用型摘採機(以下「訴外被告製品」という。)と 回転ブラシを取り外した被告製品2について、前記イと同様の実験(以下、 20 この実験結果を「被告実験結果」という。)を行ったところ、回転ブラシ を備える訴外被告製品の方が摘採量が多く、A 回転ブラシを取り外した被 告製品2で摘採作業を行うと、刈刃で刈り取られた茶枝葉が大量に茶畝上 や茶畝間に飛び散ってしまい、適切に収容されず、B そもそも、摘採量は、 茶畝ごとにばらつきがあり、参考値にすぎないと主張する。 8 しかし、上記Aについて、機械類の性能は、客観的な数字により判断さ れなければならないところ、茶枝葉の摘採機を比較するのであれば、定量 的かつ客観的な茶枝葉の摘採量によらなければならず、摘採時における茶 枝葉の飛散量が多かったなどという感覚的かつ主観的な印象を述べたとこ 5 ろで、摘採機の性能評価としては無意味というほかない。 また、上記@について、被告は、回転ブラシを備える訴外被告製品と回 転ブラシを取り外した被告製品2を比較しているところ、機種が違えば性 能が異なる可能性があるし、同一機種であっても同一機械でなければ正確 な比較にならないから、被告実験結果は、回転ブラシの効果を検証するた10 めの比較として無意味である。特に、訴外被告製品は、被告製品2と異な り、補助吹出口を備える2段吹上式であり、被告はこれにより茶枝葉の摘 採量を増加させることが可能となるとして特許出願をしており、このよう な訴外被告製品と被告製品2を比較することは相当でない。さらに、被告 実験結果によれば、90mmの長さで摘採したときより、30mmの長さ15 で摘採したときの方が摘採量が多くなっており、不自然である。 上記Bについて、摘採量に関して茶畝ごとにばらつきがあるとしても、 被告各製品は実用機であり、ばらつきが当然に予想される茶畑で実用に供 されることを前提にして製造販売されたものであるから、ばらつきの可能 性のある実際の茶畑において、回転ブラシを備えた被告各製品とこれを取20 り外した被告各製品とで実験を行い、その結果として客観的かつ定量的に 測定された摘採量を比較して、回転ブラシによる効果の有無を検証するこ とは、当然である。 したがって、被告の上記主張は理由がない。 (3) 小括25 以上のとおり、被告各製品は、「圧力風の作用のみによって」を備えるか ら構成要件Aを充足し、これにより、構成要件D及びFも充足するから、本 9 件各発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張) (1) 「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)の解釈 本件出願当時、乗用型茶葉摘採機には、刈り取った後の茶枝葉の移送態様 5 について、回転ブラシ等の機械的移送手段を使わずに圧力風による風送のみ により茶枝葉を移送するものと、回転ブラシ等による機械的移送と圧力風に よる風送とを併用するものがあった。 原告は、本件出願の審査の過程において、引用例(乙2、4)に、刈り取 り後の茶枝葉の移送形態として、回転ブラシによる機械的移送と圧力風によ10 る風送とを併用する形態が記載されているとして、特許法29条1項、同条 2項及び同法29条の2により特許を受けることができない旨の拒絶理由の 通知を受けたことから、本件特許の特許請求の範囲の請求項7について、 「この移送ダクト内の風送によって」とあったのを「この移送ダクト(6)内に 流す圧力風の作用のみによって」と補正して、回転ブラシ等による機械的移15 送と圧力風による風送とを併用するものを除外し、圧力風による風送のみに より茶枝葉を移送するものを対象とすることによって、上記拒絶理由を回避 しようとした。 このことは、本件発明1の技術思想からも明らかである。すなわち、本件 明細書によれば、乗用型茶葉摘採機では、従来は刈刃前方に設置された送風20 管からの送風(正面風)により茶葉を移送する構造が一般的であったため、 水平移送部が不可欠であり、機械が大型化してしまうという問題があったと ころ(【0002】及び【0003】)、本件発明1は、この課題を解決す るために、刈刃後方に配置した吹出口から背面風を吹き出すことによって、 その負圧吸引作用により刈り取り後の茶葉を背面風の吹出口まで引き寄せ、 25 その後、背面風で茶葉を移送する(【0051】)という構造をとることに より、背面風のみによる茶葉の移送を可能とし、正面風をなくして水平移送 10 部を廃止することで、摘採機のコンパクト化を実現したもの(【0021】) である。 そうすると、本件発明1は、圧力風による風送のみにより茶枝葉を移送す る摘採機に特有の問題である、正面風のために水平移送部が不可欠となり、 5 機械が大型化してしまうという技術的課題を解決するために、上記構造をと ったものであり、回転ブラシ等による機械的移送と圧力風による風送とを併 用するものについては、そもそも水平移送部自体が存在せず、本件発明1が 解決すべき技術的課題自体が存在しないのであるから、本件発明1が回転ブ ラシ等による機械的移送と圧力風による風送とを併用する摘採機を対象とし10 ていないことは明白である。 したがって、「圧力風の作用のみによって」とは、回転ブラシ等による機 械的移送手段を使用することなく、圧力風のみによって移送することを意味 すると解される。 (2) 被告各製品が「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)を備えないこと15 ア 被告各製品は、別紙概要断面図記載のとおり、茶枝葉を刈り取るバリカ ン式の刈刃(22')を備え、刈刃(22')の前方に、回転ブラシRと、上方に、 内部に空気流を流して茶枝葉を移送する移送ダクト(6')を備え、回転ブラ シRの回転と移送ダクト(6')内に流す圧力風との双方の作用によって、刈 り取り後の茶枝葉(A)を刈刃(22')から所定の位置(コンテナ部)まで移送20 する装置である。 被告各製品では、刈り取られた茶枝葉は、まず回転ブラシRによって刈 刃(22')後方に機械的に移送された後、回転ブラシRの回転により上方にか き上げられ、移送ダクト(6')内に機械的に送り込まれるとともに、刈刃 (22')後方にある吹出口(38')からの圧力風によってコンテナ部まで風送さ25 れるものであり、回転ブラシRの回転による機械的移送と圧力風による風 送の双方の作用によって行われるものである。この回転ブラシRの回転に 11 よる機械的移送が欠けた場合には、刈刃(22')によって刈り取られた茶枝葉 が、風送開始部である吹出口(38')及び移送ダクト(6')内に円滑に移送され ず、茶畝上や茶畝間に大量に飛び散って適切に収容されないこととなり、 到底実用に耐えるものではなくなってしまう。 5 したがって、被告各製品は、回転ブラシ等による機械的移送と圧力風に よる風送とを併用して摘採後の茶枝葉を移送する形態の摘採機であり、 「圧力風の作用のみによって」を備えないことは明らかである。 イ 前記アを確認するために、被告は、令和元年5月17日、回転ブラシを 備える訴外被告製品と回転ブラシを取り外した被告製品2について、摘採10 する長さを120mm、90mm及び30mmとしたときの茶枝葉の摘採 量を測定する実験を行ったところ、以下のとおりの被告実験結果(乙5の 2)を得た。なお、被告は、上記実験に当たり、原告に対して立会いを求 めたが、原告は現れなかった。 訴外被告製品 被告製品2 摘採する長さ (回転ブラシあり) (回転ブラシなし) 120mm 13.75kg 11.20kg 90mm 7.35kg 4.25kg 30mm 10.05kg 8.70kg15 被告実験結果によれば、回転ブラシを備える訴外被告製品の方が摘採量 が多く、回転ブラシを取り外した被告製品2で摘採作業を行った場合、刈 刃で刈り取られた茶枝葉が大量に茶畝上や茶畝間に飛び散ってしまい、適 切に収容されなかった。 20 そもそも、茶枝葉の生育度合いは、茶畝ごとにばらつきが大きく、茶枝 葉の密集度や茶畝の下の地面の状況(起伏等)等も一定ではないから、可 12 能な限り同じ条件で摘採しても、茶畝ごとに摘採量にかなりのばらつきが 生じることは避けられない。したがって、摘採量の比較のみで判断するこ とはできず、摘採量はあくまでも参考値にすぎないというべきである。も っとも、そうであったとしても、上記のとおり、回転ブラシを備える摘採 5 機とこれを取り外した摘採機とで摘採量に有意な差が認められたし、回転 ブラシを取り外した被告製品2では茶枝葉が大量に飛散している状況が確 認できたことからすると、被告各製品は、回転ブラシがなければ、満足な 収容作業が実施できないことが明らかとなった。 ウ これに対して、原告は、原告各実験結果によれば、茶農家が茶葉を摘採10 するに当たり現実的に設定する120mm及び90mmの長さの摘採では、 回転ブラシの有無で有意な差はなく、むしろ回転ブラシを取り外した被告 各製品の方が摘採量が多いこともあったことからすると、被告各製品は回 転ブラシがなくても背面風の作用のみによって茶枝葉を移送することがで き、「圧力風の作用のみによって」を備えると主張する。 15 しかし、原告は、被告に何ら連絡することなく実験を行い、原告実験結 果1を得たものであり、このように被告をあえて排除した状況の下での実 験の信頼性は、極めて低いといわざるを得ない。 また、原告実験結果1に用いられたのは、後記5(被告の主張)のとお り、原告及び被告が平成22年に本件特許権を侵害しないことを確認し、 20 原告は被告に対して本件特許権を行使しないことを合意した3段階調整方 式の被告製品1である。この合意の趣旨からすると、回転ブラシを備える 摘採機の摘採量とこれを取り外した摘採機の摘採量との間に、原告実験結 果1程度の差異があった場合は、原告は、回転ブラシの効果があるものと して、本件特許権を侵害しないことを認めていると理解すべきであり、両25 者の間に、原告実験結果1程度の差異すらない場合にのみ、回転ブラシの 効果がないものとして、本件特許権を侵害すると考えるべきである。 13 さらに、原告実験結果1について、原告が実験で摘採した茶畝は、目視 でも容易に分かる程度の大きなばらつきがあり、また、摘採速度も、回転 ブラシを取り外した被告製品1の方が回転ブラシを備える被告製品1より かなり早くなっており、摘採実験の条件が統一されていない。摘採条件が 5 同等であったのであれば、回転ブラシを取り外した摘採機の摘採量が回転 ブラシを備える摘採機の摘採量を上回るなどということは考えられないか ら、条件設定の適正さに重大な疑問がある。 原告実験結果2についても、茶畝の幅が、最も長いもので1600mm、 最も短いもので1400mmと、最大200mmも相違しており、摘採量10 にも大きな相違が生じることは避けられず、この実験で使用された茶畝は、 ばらつきが大きく、均質性の乏しいものであって、実験には不適切なもの であったというべきである。 また、原告実験結果2においては、3段階調整方式の回転ブラシを備え る被告製品2を使用しているところ、120mmの長さの摘採では回転ブ15 ラシを最も高く設定し、90mmの長さの摘採では真ん中に設定し、30 mmの長さの摘採では最も低く設定している。しかし、被告各製品におい ては、回転ブラシの軸部分である刈取機回転ブラシシャフト(以下「ブラ シシャフト」という。)と芽の高さを同じくらいにすることが適切であり、 被告製品2の場合、回転ブラシを最も高く設定すると、刈刃からブラシシ20 ャフトまでの高さは約200mmとなり、150mm以上の長さの摘採に ふさわしく、回転ブラシを真ん中に設定すると、刈刃からブラシシャフト までの高さは約150mmとなり、100ないし200mmの長さの摘採 にふさわしく、回転ブラシを最も低く設定すると、刈刃からブラシシャフ トまでの高さは約100mmとなり、0ないし150mmの長さの摘採に25 ふさわしい。そうすると、原告実験結果2についていえば、120mmの 長さの摘採及び90mmの長さの摘採において、回転ブラシの高さが高す 14 ぎるため、適切な実験であったとはいえない。 したがって、原告各実験結果は信用することができず、原告の上記主張 は理由がない。 エ また、原告各実験結果について、30mmの長さの摘採では回転ブラシ 5 を備える被告各製品による摘採量の方が回転ブラシを取り外した被告各製 品による摘採量より多いところ、原告は、30mmの長さの摘採は営農上 の収益性を度外視したものであり、実用上採用される寸法設定ではなく、 極めて限られた場合にとどまるから、重視すべきではないと主張する。 しかし、30mmの長さの摘採を行う茶農家は相当数存在し、また、一10 番茶及び二番茶を摘採した後に実施する番刈の際に、30mmの長さの摘 採を行う茶農家はかなりある。一般的に、摘採する茶葉の長さは茶葉の品 質に直結し、短いと摘採量は少なくなるが上質となり、逆に長いと摘採量 は増えるが品質が低くなるところ、近年、ペットボトルのお茶のための茶 葉の需要が高まり、長い茶葉を摘採することが増えてきてはいるものの、 15 品質の高い茶葉の需要がなくなったわけではない。 したがって、30mmの長さの摘採が極めて限られた場合にとどまると いうことはなく、原告の上記主張は理由がない。 (3) 小括 以上のとおり、被告各製品は、「圧力風の作用のみによって」を備えない20 から、構成要件Aを充足せず、構成要件D及びFも充足しないから、本件各 発明の技術的範囲に属さない。 2 争点2-1(乙1公報を引用例とする新規性欠如)について (被告の主張) (1) 乙1公報に記載された発明25 本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙1公報には、以 下の発明(以下「乙1発明」という。乙1公報の図面は別紙乙1公報図面の 15 とおりであり、乙1発明中の番号は同別紙にある番号に対応する。)が記載 されている。 「バリカン刃を適用した刈刃(34)に対して、ダクト状の摘採作用部(36)と茶 葉移送路(52a)を具え、ダクト状の摘採作用部(36)と茶葉移送路(52a)内に流 5 す送風ダクト(35)からの風と送風ダクト(52)を介した風の作用のみによって、 刈刃(34)によって摘採された茶葉(A)を刈刃(34)から収容部(4)(或いは収葉 袋(6)が取り付けられた茶葉吐出口(54))まで移送する装置であって、 ダクト状の摘採作用部(36)と茶葉移送路(52a)は、そこで茶葉(A)の移送が 開始される摘採作用部(36)における摘採機フレーム基板(32)が、その前方ほ10 ぼ延長上に刈刃(34)が設けられるように配置されて成り、 また、この装置は、送風ダクト(52)を介して吹き上げファン(51)から吹き 出された風を摘採作用部(36)に送り込むことによって、摘採された茶葉(A)を 刈刃(34)から収容部(4)(或いは収葉袋(6)が取り付けられた茶葉吐出口(54)) まで移送するものである茶葉の移送装置。」15 (2) 一致点 ア 本件発明1と乙1発明を対比すると、以下の点で一致する。 「茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取るバリカン式の刈刃に対して、内部に空 気流を流す移送ダクトを具え、この移送ダクト内に流す圧力風の作用のみ によって、刈り取り後の茶枝葉を前記刈刃から所定の位置まで移送する装20 置であって、 前記移送ダクトは、ダクト内において茶枝葉の移送が開始される移送開 始部の下部が、前記刈刃との位置関係を特定して配置されて成り、 また、この装置には、前記刈刃の後方から移送ダクト内に背面風を送り 込む吹出口が設けられるものであり、この吹出口から移送ダクト内に背面25 風を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉を前記刈刃から所定の位 置まで移送するものである茶枝葉の移送装置。」 16 イ また、本件発明2と乙1発明を対比すると、以下の点で一致する。 「茶畝を跨いで走行する走行機体と、 この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶 刈機体と、 5 この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、 刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈機体から収容部まで移送する移 送装置とを具え、 目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、 前記移送装置が、 10 茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取るバリカン式の刈刃に対して、内部に空 気流を流す移送ダクトを具え、この移送ダクト内に流す圧力風の作用のみ によって、刈り取り後の茶枝葉を前記刈刃から所定の位置まで移送する装 置であって、 前記移送ダクトは、ダクト内において茶枝葉の移送が開始される移送開15 始部の下部が、前記刈刃との位置関係を特定して配置されて成り、 また、この装置には、前記刈刃の後方から移送ダクト内に背面風を送り 込む吹出口が設けられるものであり、この吹出口から移送ダクト内に背面 風を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉を前記刈刃から所定の位 置まで移送するものである茶刈機。」20 (3) 相違点 ア 本件各発明の「移送開始部の下部」が「刈刃とほぼ同じ高さに設定され るものであり、」と特定されているのに対し、「移送開始部の下部」に相 当する乙1発明の「摘採機フレーム基板」がその前方ほぼ延長上に「刈刃」 が設けられるように配置されている点(以下「相違点1」という。)にお25 いて、両者は形式的には相違する。 しかし、乙1発明における「摘採機フレーム基板(32)が、その前方ほぼ 17 延長上に刈刃(34)が設けられるように配置されて成」る状態では、「摘採 機フレーム基板」が前後方向でほぼ水平に延設されていれば、「摘採機フ レーム基板」と「刈刃」はほぼ同じ高さに設定されることになる。そして、 この「摘採機フレーム基板」は、「摘採作用部」における茶葉の円滑な移 5 送を考慮すると、茶畝の上面に沿って前後方向はほぼ水平に配置されるこ とが自明であるといえるから、「摘採機フレーム基板(32)が、その前方ほ ぼ延長上に刈刃(34)が設けられるように配置されて成」る構成は、本件各 発明の「移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定さ れて成」(構成要件B)る構成と、実質的に同じことを指している。 10 したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 イ 原告は、相違点として、本件各発明が刈刃後方側からダクト内に送り込 む背面風によって摘採した茶葉を刈刃から刈刃後方側に移送するのに対し、 乙1発明は刈刃前方から正面風を送り込むことによって摘採した茶葉を刈 刃から刈刃後方側に移送する点(以下「相違点2」という。)を主張する。 15 しかし、本件各発明では、「この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用の みによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移 送する装置であって、」(構成要件A及びF)として、前提となる構成を 特定し、その後に特定される「背面風」が「圧力風」の下位概念であるこ とを明示しており、「背面風」だけで茶葉を移送するとは特定していない。 20 また、原告自身、本件各発明において正面風を補助的に作用させることを 認めている。 したがって、原告が主張する相違点2は、相違点とは認められない。 ウ 原告が主張するその他の相違点については、いずれも否認ないし争う。 (4) 小括25 以上によれば、本件各発明はいずれも乙1公報に記載された発明であるか ら、本件特許は無効とされるべきものと認められ、原告は被告に対してその 18 権利を行使することができない(特許法104条の3第1項、123条1項 2号、29条1項3号)。 (原告の主張) (1) 相違点2 5 本件明細書によれば、従来、刈刃前方側から強力な送風(正面風)を行っ て茶葉を移送する手法が主流であり(【0002】ないし【0004】)、 摘採した茶葉を刈刃前方側から機械的に移送するという技術思想が固定観念 となっていた。そこで、本件各発明においては、刈刃後方から背面風を送り 込み、この背面風の作用によって刈刃で刈り取った茶葉を刈刃後方に移送し10 (負圧吸引作用による水平移送)、さらに、この背面風の作用によって、所 定の位置まで移送(例えば、上昇移送)するものであり、この背面風による 移送手法こそが本件各発明の大きな特徴である。ただし、背面風に加え、正 面風を補助的に作用させることは、本件各発明を逸脱するものではない。 これに対して、乙1公報には、「その際茶葉Aは、図5(a)に示すよう15 に送風ダクト35から排出される風により摘採作用部36の後方に送られる。 次いで茶葉Aは、図5(b)に示すように送風ダクト52を介して吹き上げ ファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送され、 収葉袋6が取り付けられた茶葉吐出口54に至る。」(【0019】)と記 載されており、これによれば、乙1発明は、刈刃34の前方側から送り込む20 正面風を大前提とし、これに刈刃後方側から茶葉移送路52a内に送り込む 後方風を付加したものであるところ、茶葉を刈刃から刈刃後方側まで移送 (水平移送)する作用はあくまでも正面風が担うものであり、後方風にこの 水平移送作用はなく、後方風は、刈刃後方側に送り込まれた茶葉を、上昇移 送するものである。 25 したがって、本件各発明が刈刃後方側からダクト内に送り込む背面風によ って摘採した茶葉を刈刃から刈刃後方側に移送するのに対し、乙1発明は刈 19 刃前方から正面風を送り込むことによって摘採した茶葉を刈刃から刈刃後方 側に移送する点(相違点2)において、両者は相違する。 (2) その他の相違点 ア 本件発明1の「圧力風」が、「吹出口(38)」から供給される上昇方向の 5 「背面風(W)」と、この「背面風(W)」の吹出しによる「負圧吸引効果」 (茶葉を刈刃部分から「吹出口(38)」側に引き寄せる効果)に伴って生じ る風と、さらに、「負圧吸引効果」に伴う風が茶葉の水平方向の移動作用 に充分ではなかった場合に補助的に供給する水平方向の風(【図7】(b) の「分岐ノズル47」からの風、【図5】(b)の「正面風W1」)とに10 よって構成されるのに対し、乙1発明の圧力風が、「送風ダクト(35)」か らの水平方向の風(前方風)と「送風ダクト(52)」からの上昇方向の風 (後方風)とが合流した風である点において、両者は相違する。 イ 本件発明1の「吹出口(38)」が、例えば、本件明細書の【図4】のよう に、刈刃(22)の直後方に設けられているのに対し、乙1発明の「送風ダク15 ト(52)」の吹出口は、刈刃から見れば後方側にあるものの、ダクトの開始 部(先端側開口部)の奥のダクト屈曲部に設けられている点において、両 者は相違する。 ウ 本件発明1には、刈り取られた茶葉を水平移動した後に上方に移送路を 変えるための、後方に傾斜した壁部材が存在しないのに対し、乙1発明に20 は、乙1公報の【図5】に記載される送風ダクト52の吹出口前に、上記 壁部材が存在する点において、両者は相違する。 (3) 小括 本件各発明と乙1発明との間には、前記(1)及び(2)の相違点が認められる から、本件各発明は、いずれも乙1公報に記載された発明であるとはいえず、 25 本件特許は無効とされるべきものとは認められない。 3 争点2-2(乙1公報を主引用例とする進歩性欠如)について 20 (被告の主張) 仮に、本件各発明と乙1発明との相違点1が実質的な相違点であるとしても、 次のとおり、当業者は、当該相違点に係る構成を容易に想到することができた ものである。 5 乙1発明における「摘採機フレーム基板(32)が、その前方ほぼ延長上に刈刃 (34)が設けられるように配置されて成」る状態では、「摘採機フレーム基板」 が前後方向でほぼ水平に延設されていれば、「摘採機フレーム基板」と「刈刃」 はほぼ同じ高さに設定されることになる。そして、この「摘採機フレーム基板」 は、「摘採作用部」における茶葉の円滑な移送を考慮すると、茶畝の上面に沿10 って前後方向をほぼ水平に配置することは単なる設計事項であるといえるから、 「摘採機フレーム基板(32)が、その前方ほぼ延長上に刈刃(22)が設けられるよ うに配置されて成」る構成を、本件各発明のように、「移送開始部(31)の下部 が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成」る構成(構成要件B)にす ることは、当業者が容易になし得たことである。 15 したがって、本件各発明については、いずれも、当業者が乙1発明に基づい て容易に発明をすることができたといえるから、請求項7及び13に係る本件 特許はいずれも無効とされるべきものと認められ、原告は被告に対してその権 利を行使することができない(特許法104条の3第1項、123条1項2号、 29条2項)。 20 (原告の主張) 否認ないし争う。 4 争点2-3(サポート要件違反)について (被告の主張) (1) 本件明細書には、茶葉の移送に関して、@ 刈刃後方から「背面風」を吹き25 出して、「背面風」のみで、刈り取り後の茶葉を上昇させるもの(【図 4】)、A 刈刃後方から「背面風」を作用させて、「背面風」のみで、茶葉 21 を刈刃からそのまま後方に送るもの(【図7】(a))、B 刈刃から「背面 風」の吹出口までの距離を比較的長くして、刈刃前方に正面ダクトによる分 岐ノズルを設け、刈刃前方からの送風を補助的に行い、かつ「背面風」で茶 葉を上昇させるもの(【図7】(b))が記載されている。 5 これに対して、本件特許の請求項7には、「この移送ダクト(6)内に流す圧 力風の作用のみによって」と記載されているが、「背面風のみ」という限定 はされておらず、この「圧力風」の作用に関しては、「前記刈刃(22)の後方 から移送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り後の茶 枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する」としか特定されていな10 い。 本件明細書の記載内容と本件特許の請求項7の記載内容を比較すると、後 者が前者を包含し、後者は「圧力風」として「背面風」以外の構成を含むも のと理解することができるところ、本件特許の請求項7について、本件出願 当時の技術常識に照らし、「背面風」以外のいかなる「圧力風」が包含され15 るかは、本件明細書の記載から不明であるから、本件明細書に記載された内 容を超える権利範囲が設定されているといえる。 したがって、本件各発明は、本件明細書に記載したものであるとはいえな いから、サポート要件(特許法36条6項1号)に違反する。 (2) 乙1公報の記載から明らかなように、刈刃後方側から移送ダクトに背面風20 を送り込んで刈り取った茶枝葉を収容部等に移送することは、本件出願当時、 公知であったことからすると、本件各発明の課題は、刈り取った茶枝葉を水 平移送させずに上方等に移送することで、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、 摘採機をコンパクトに構成できるようにすることにあるといえる。 しかし、本件各発明と乙1発明との相違点(相違点1)が摘採機の前後の25 寸法に関係しないことは明らかであり、乙1発明のように、背面風により茶 枝葉を移送するだけでは摘採機の前後の寸法を短縮することができないこと 22 も明らかである。 そうすると、本件特許の請求項7及び13で特定される事項が、どのよう にして本件各発明の課題の解決につながるのかが、本件明細書の記載を見て も不明であるから、本件各発明は、この点においても、サポート要件(特許 5 法36条6項1号)に違反するというべきである。 (3) 以上のとおり、本件各発明はサポート要件に違反するから、本件各発明に 係る本件特許は無効とされるべきものと認められ、原告は被告に対してその 権利を行使することができない(特許法104条の3第1項、123条1項 4号、36条6項1号)。 10 (原告の主張) (1) サポート要件に違反するかは、本件出願の審査の過程において、既に十分 に検討されているので、本件各発明には、基本的に同要件に係る瑕疵はない。 (2) 乙1公報に記載のある後方風と本件発明における背面風とは全く異なるも のであるから、刈刃後方側から移送ダクトに背面風を送り込んで刈り取った15 茶枝葉を収容部等に移送することが公知であったとはいえない。 したがって、被告のサポート要件違反の主張は、その前提を欠いている。 5 争点3(特許権不行使の合意の成否)について (被告の主張) (1) 原告と被告との間では、平成21年8月頃から、被告が当時製造販売して20 いたコンテナ式乗用型摘採機が本件特許権を侵害するか否かが争われていた。 そこで、原告及び被告は、平成22年10月、被告は、それまで製造販売し ていた摘採機の設計を変更し、回転ブラシを取り付けたもの(以下「Vブロ ーブラシ方式摘採機」という。)を製造販売すること、Vブローブラシ方式 摘採機は本件特許権を侵害せず、原告は被告に対してVブローブラシ方式摘25 採機について本件特許権に基づく権利行使をしないこと、当該合意により、 原告と被告との間の本件特許権をめぐる紛争を解決したものとすることを内 23 容とする合意(以下「平成22年合意」という。)をした。 Vブローブラシ方式摘採機は、刈り取る茶枝葉の長さに応じて回転ブラシ の位置を調節する必要があるところ、平成22年合意当時のVブローブラシ 方式摘採機は、回転ブラシの高さを上下3段階(高低差は100mm)で調 5 整することができる3段階調整方式のものであった。その後、ペットボトル のお茶や菓子、食品等に含まれる加工用原料に用いるために、約300mm の長い茶葉の需要が増えてきたことから、被告は、平成26年に、より長い 茶葉を刈り取ることができるように、回転ブラシの高さを上下5段階(高低 差は200mm)で調整することができる5段階調整方式のものを製造販売10 するようになった。平成22年合意においては、茶葉を摘採する長さに応じ て回転ブラシの高さを調整することは当然の前提となっており、3段階調整 方式から5段階調整方式への変更は、茶葉の摘採事情の変化に応じて、相当 な範囲内で設計を変更したにすぎないから、平成22年合意に反するもので はない。 15 したがって、原告が被告に対して被告各製品につき本件特許権を侵害する と主張することは、平成22年合意に違反するものであり、許されない。 (2) これに対して、原告は、平成22年合意について、被告の製造販売するV ブローブラシ方式摘採機は、回転ブラシの作用なしには円滑に茶枝葉を摘採 し、収容することができないから、本件特許権を侵害するものではないこと20 を確認したものであると主張する。 しかし、平成22年合意は、当時、原告と被告との間に存在した特許権侵 害に係る紛争を解決するためにされたものであり、この合意の内容が原告の 主張するようなものであったとすると、当然のことを述べたにすぎず、何の ために何を決めたのかが全く不明であり、合意する意味が全くない。 25 したがって、原告の上記主張は理由がない。 (原告の主張) 24 原告と被告との間では、平成21年8月頃から、本件特許権侵害の有無をめ ぐり紛争が生じていたが、原告及び被告は、平成22年10月に、被告が以後 製造販売する被告製品1をVブローブラシ方式摘採機に変更することとする平 成22年合意をした。 5 このVブローブラシ方式摘採機について、被告は、「弊社のVブローブラシ 方式は、回転ブラシを必須条件として設計しているため、弊社製品の構造では 回転ブラシの作用無しに円滑な茶葉摘採、収容を行うことができません。」と 述べ(乙6別紙5-A)、被告の生産開発部のZも、「当社の設計変更品であ るVブローブラシ方式の摘採機では、ブラシが作用しない状況で摘採作業を行10 うと刈り取った茶葉をうまく収容できない(大量の茶葉を茶木の上や茶畝間に 取りこぼしてしまい、満足に収容できない)上、茶畝の刈り取り後の状態が不 揃い(虎刈りのような状態)になってしまって、摘採性能が著しく悪化するこ とになるため、このような状態での摘採作業は全く想定していません」と述べ ている(乙6)。したがって、Vブローブラシ方式摘採機は、回転ブラシを必15 須条件として設計しているため、回転ブラシの作用なしに円滑に茶枝葉を摘採 し、収容することができないということになる。 そうすると、平成22年合意においては、Vブローブラシ方式摘採機は、回 転ブラシを必須条件として設計しているため、回転ブラシの作用なしに円滑に 茶枝葉を摘採し、収容することができないから、本件特許権を侵害するもので20 はないことを確認したものであり、被告各製品が、回転ブラシの作用がなくて も円滑に茶枝葉を摘採し、収容することができるのであれば、原告が平成22 年合意に拘束されなければならない理由はない。 そして、原告各実験結果によれば、回転ブラシを取り外した被告各製品も円 滑に茶枝葉を摘採し、収容することができているので、平成22年合意の効力25 は及ばない。 6 争点4(損害額及び不当利得額)について 25 (原告の主張) (1) 特許法102条2項に基づく損害額 ア 被告は、平成22年10月から令和2年3月31日までの間、被告製品 1を400台以上製造販売した。被告製品1の販売価格は1台当たり約5 5 00万円であり、限界利益はその10%を下らない。 したがって、被告は、本件特許権を侵害する被告製品1を製造販売した ことにより、少なくとも2億円(500万円×0.1×400台)の利益 を受けたと認められるから、原告の受けた損害の額は、同金額と推定され る。 10 イ また、被告は、平成22年10月以降、被告製品2を180台以上製造 販売した。被告製品2の販売価格は1台当たり約390万円であり、限界 利益はその45%を下らない。 したがって、被告は、本件特許権を侵害する被告製品2を製造販売した ことにより、少なくとも3億1590万円(390万円×0.45×1815 0台)の利益を受けたと認められるから、原告の受けた損害の額は、同金 額と推定される。 (2) 特許法102条3項に基づく損害額 ア 原告が被告製品1について本件各発明の実施を許諾する場合の実施料相 当額は、売上額の10%を下らない。 20 したがって、被告が本件特許権を侵害する被告製品1を製造販売したこ とについて、本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額は、少なくとも 2億円(500万円×400台×0.1)である。 イ また、原告が被告製品2について本件各発明の実施を許諾する場合の実 施料相当額は、売上額の20%を下らない。 25 したがって、被告が本件特許権を侵害する被告製品2を製造販売したこ とについて、本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額は、少なくとも 26 1億4000万円(390万円×180台×0.2=1億4040万円) である。 (3) 不当利得額 被告は、本来支払うべき実施料を支払うことなく被告各製品を製造販売し 5 たものであるから、法律上の原因なく実施料相当額の利益を受け、これによ り、原告は、同額の損失を被った。 したがって、原告は、被告に対し、被告各製品の製造販売について、前記 (2)と同額の不当利得返還請求権を有する。 (4) 弁護士及び弁理士費用10 ア 被告が本件特許権を侵害する被告製品1を製造販売したことと因果関係 のある弁護士及び弁理士費用相当額は、3000万円を下らない。 イ また、被告が本件特許権を侵害する被告製品2を製造販売したことと因 果関係のある弁護士及び弁理士費用相当額は、6000万円を下らない。 (被告の主張)15 いずれも否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等 (1) 本件明細書(甲1)には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用 する図は別紙本件明細書図面参照)。 20 ア 【技術分野】 【0001】 本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈機に関するものであっ て、特にこれら摘採茶葉や剪除枝幹など刈り取り後の茶枝葉の新規な移送 手法と、これを適用した茶刈機に係るものである。 25 【背景技術】 【0002】 27 例えば茶葉の摘採を行う摘採機としては、比較的大型の乗用型摘採機が 存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナ を搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部 を形成する等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。 5 そして、このような摘採機にあっては、例えば図9に示すように、刈刃 22′の前方側に茶葉移送のための分岐ノズル47′付きの送風管を配し、 この分岐ノズル47′からの送風によって茶葉Aを移送するのが一般的で あった。また、刈刃22′から収容部4′まで茶葉Aを移送する移送路は、 刈刃22′のほぼ後方に延びる水平移送部Xと、その後に収容部4′の上10 部に臨むように接続された上昇移送部Yとを具えるのが一般的であった (例えば特許文献1参照)。 【0003】 この際、上昇移送に先立ち、まず茶葉Aを刈刃後方側に水平移送するの は、刈刃前方からの送風形態を採ることに起因する。すなわち、茶葉Aを15 上昇移送するには、その前までに茶葉Aに、ある程度の流速を持たせる必 要があり、このために刈り取り直後の茶葉Aをまず後方側(水平)に送り、 充分に加速するものである。言い換えれば水平移送部Xは上昇移送に備え て茶葉Aの流速を増すため、もしくはエネルギーを蓄積するための助走路 の作用を担うものである。 20 しかしながら、このような移送形態(送風形態)では、水平移送部Xを 要する分、移送装置5′ひいては摘採機の前後長が長くなり、摘採機の取 り回し性を低下させてしまうという問題があった。 このため水平移送部Xを極力短縮、もしくは排除することが考えられる が、分岐ノズル47′からの送風は、茶葉Aを上昇移送するのに充分な送25 風力を有するものであり、刈刃22′の前方から、このような強力な送風 を行っている状態では、急激に移送方向を水平から上向きに切り換えると、 28 茶葉Aに傷みが生じ易く、刈刃前方からの送風形態を採りながら、水平移 送部Xを排除することは不可能であった。 【0004】 一方、装置の前後長を短縮化したい、という要請が顕在化するものとし 5 ては、二段刈摘採機等の複数段刈茶刈機が挙げられる。ここで二段刈摘採 機としては、例えば異なった刈り取り高さに設定できる二基の刈刃を前後 に配するとともに、各刈刃毎に上昇移送路を具えたものがある。この際、 刈刃同士の前後方向における離反距離が空き過ぎていると、茶畝地の凹凸 面が摘採面に現れ易く、刈り取りが綺麗に行えないことがあった。この場10 合、摘採茶葉の均一性が低下し、収穫した茶芽(例えば新芽)に古葉が混 入することがあり、その後の製茶加工も円滑に行えないことがあった。 このため、二段刈摘採機等においても、極力、刈刃同士の前後間隔を狭 めることが強く望まれていたが、刈刃前方からの従来の送風形態では、上 昇移送部Yの前段に水平移送部Xを要するため、刈刃同士の前後間隔を狭15 めるには一定の限界が生じていた。 このようなことから、本出願人は、半ば技術常識となっていた、刈刃前 方からの送風形態を根本から見直し、送風形態(移送形態)そのものから 移送装置ひいては摘採機の短縮化を試みたものである。 【発明の開示】20 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、主に送風 形態に着眼し、例えば上昇移送を伴う摘採機等の場合、水平移送部を設け ることなく、刈り取り直後、即、茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機25 の前後寸法の短縮化を図り、摘採機をコンパクトに構成できるようにした 新規な茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを適用した茶刈機 29 の開発を試みたものである。 イ 【課題を解決するための手段】 【0012】 また請求項7記載の茶枝葉の移送装置は、 5 茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を刈り取るバリカン式の刈刃(22)に対して、内 部に空気流を流す移送ダクト(6)を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力 風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の 位置まで移送する装置であって、 前記移送ダクト(6)は、ダクト内において茶枝葉(A)の移送が開始される10 移送開始部(31)の下部が、前記刈刃(22)とほぼ同じ高さに設定されて成り、 また、この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に背面風 (W)を送り込む吹出口(38)が設けられるものであり、この吹出口(38)から移 送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り後の茶枝葉 (A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送するものであることを特徴とし15 て成るものである。 【0018】 また請求項13記載の茶刈機は、 茶畝(T)を跨いで走行する走行機体(2)と、 この走行機体(2)に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う20 茶刈機体と、 この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部(4) と、 刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉(A)を茶刈機体から収容部(4)まで移送 する移送装置(5)とを具え、 25 目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした茶刈機であって、 前記移送装置(5)は、請求項7、8、9、10、11または12記載の装 30 置が適用されて成ることを特徴として成るものである。 【発明の効果】 【0021】 これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られ 5 る。すなわち請求項1または7記載の発明によれば、刈刃後方から移送ダ クト内に空気流を送り込んで茶枝葉を所望の部位に移送するため、例えば 刈り取り直後の茶枝葉を水平移送せずに、上方等に移送することができ、 極めて斬新且つ画期的な移送形態が採り得る。 【0027】10 また請求項13記載の発明によれば、上述した移送手法を茶刈機に適用 するため、例えば刈り取り後の茶枝葉を上昇移送する茶刈機にあっては、 刈り取り直後、水平移送部を設けることなく、そのまま茶枝葉を上昇移送 することができ、前後長の短縮化が図れ、コンパクトな茶刈機が実現でき る。また、上昇移送を伴わない茶刈機、すなわち刈り取り後の茶枝葉を刈15 刃後方側にそのまま移送する茶刈機にあっては、刈刃前方から作用させる 正面風の送風力を格段に低減できる、もしくはこのような正面風を全く省 略でき、シンプルな構造の茶刈機が実現できる。 ウ 【発明を実施するための最良の形態】 【0030】20 本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りである。なお説明に あたっては、まず本発明の茶刈機として摘採機を例に挙げながら、その全 体構成を概略的に説明し、併せて本発明装置である茶枝葉の移送装置につ いて説明する。また、この摘採機としては、刈り取った茶葉Aを上昇移送 して収容部に収容する、いわゆる大型の乗用式摘採機(茶畝跨走型摘採機25 1)を例に挙げて説明する。 なお本発明の移送手法そのものは、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、 31 樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、 このようなことに因み、本発明の名称中や請求項等に記載した「茶枝葉」 とは、摘採した茶葉Aと剪除した枝幹とを総称するものである(茶枝葉に も茶葉と同一の符号Aを付す)。また、「茶刈」もしくは「茶刈機」とは、 5 摘採(摘採機)と剪枝(剪枝機)とを総称するものである。なお剪枝作業 の具体的形態については後述する。 【0049】 本発明の茶刈機の一例であり、また本発明の移送手法を適用した茶畝跨 走型摘採機1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、この10 ような摘採機における茶葉Aの移送態様を説明しながら、実質的に本発明 方法である茶枝葉の移送方法について説明する。なお、説明にあたっては、 背面風Wの形成過程を説明した後、これによる茶葉Aの移送態様について 説明する。 【0050】15 (1)背面風の形成過程 背面風Wを生じさせるには、まず走行機体2上の原動機16を駆動し、 送風機17によって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、送 風ダクト18(フレキシブルダクト18A)を通して導入部8に導かれ、 ここでガイド板43に案内されて、導入口39から背面ダクト7内に取り20 込まれる。背面ダクト7内に導入された圧力風は、次いで、背面ダクト7 内に設けられた拡開案内体40によって、刈刃22の幅方向にほぼ均一に 拡がるようにガイドされ、刈刃後方の吹出口38から背面風Wとして移送 ダクト6(移送開始部31)内に送り込まれる。この背面風Wは、刈刃2 2の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送25 ダクト6の吐出口33(移送終端部32)まで搬送する移送能力を有する。 【0051】 32 (2)茶葉の移送態様 このような背面風Wによって、茶葉Aは、一例として図4に示すように、 刈り取り直後、まず刈刃22の後方側に引き寄せられる。これは、刈刃2 2の後方から背面風Wを吹き出すことにより、刈刃22の後方付近、具体 5 的には、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成され、茶葉Aが刈刃部分 から吹出口38側に引き寄せられるものと考えられる(以下、これを背面 風Wの負圧吸引作用と称する)。そして、吹出口38側に引き付けられた 茶葉Aは、その後、上昇流を形成する背面風Wに乗って、移送ダクト6内 を上昇し、吐出口33から収容部4に設けられた茶袋B内に収容される。 10 【0052】 本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであ るが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先の図1〜4に示した 実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを 移送するものであった。しかしながら、摘採する茶芽の生育状態、移送路15 の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17の能力等に よっては、例えば図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正 面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を 補助的に作用させることが可能である。この場合、正面風W1を生じさせ る正面ダクト9を移送ダクト6の正面側に密着状態に設けることが好まし20 く、これに因み上記ダクトユニット5Aは、移送ダクト6、背面ダクト7、 正面ダクト9とによって主に構成される。 【0053】 なお正面風W1を生じさせるにあたっては、例えば上記図5(b)に併 せて示すように、導入部8のガイド板43を、二枚の傾斜板により、側面25 視、山形状に形成するものである。すなわち導入部8に取り込んだ圧力風 をガイド板43(二枚の傾斜板)によって、背面ダクト7と正面ダクト9 33 とに振り分けるようにするものである。なおここで二枚の傾斜板を各別に 表示する場合には、その作用から背面ガイド板43Aと正面ガイド板43 Bとして区別する。また、この場合、例えば背面ガイド板43Aと正面ガ イド板43Bの合わせ位置、すなわちガイド板43の頂上の位置によって、 5 背面風Wと正面風W1の流量バランスが決定でき、ガイド板43が、背面 風Wと正面風W1との風量の調整作用をも担うものである。もちろん茶葉 Aの上昇移送は、主に背面風Wが担うため、背面ダクト7に導入する風量 (流量)が多く、大部分を占めるのが一般的である。 また、このようなことから正面ダクト9にも導入部8から圧力風を取り10 込む導入口46が、移送ダクト6側の壁面に開口されるものである。 【0057】 また、本発明の移送手法は、刈刃22の後方側に水平移送部Xを形成し なくても、茶葉Aを刈刃22のほぼ真上に移送できることから、上昇移送 を伴う摘採機に好適と考えられるが、刈刃22の後方側から圧力風(背面15 風W)を作用させて茶葉Aを移送する手法そのものは、極めて斬新且つ新 規なアイデアであるため、必ずしも上昇移送を伴わない種々の機種への適 用も考えられる。例えば図7(a)に示すように、茶葉Aを刈刃22から そのまま後方に送って、寝かせた状態にセットした茶袋B内に収容する、 いわゆる簡易型乗用摘採機または小型乗用摘採機と呼ばれるものへの適用20 が可能である。また剪除した枝幹を収容部4の内側を経由させずに、その まま畝端部に向けて風送して畝間に落とし込む剪枝機にも適用することが 可能である。そして、このような機種に、本発明の移送手法を適用した場 合、従来の刈刃前方から作用させていた移送風のエネルギーを低く抑えら れる、もしくは従来の刈刃前方からの送風は全て不要になり得る点で、本25 発明の移送手法は利用範囲が広く、また実現の可能性も高いものである。 【0058】 34 また本発明の移送手法は、刈刃後方からの背面風Wによって、その吹出 口38付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の 茶枝葉Aを刈刃後方側に引き寄せ、その後は茶枝葉Aを背面風Wに乗せて、 収容部4など適宜の部位に移送するものである。このため、背面風Wの負 5 圧吸引作用を効率的に利用するには、刈刃22の直後方から背面風Wを作 用させる構成が好ましいと考えられるが、例えば図7(b)に示すように、 刈刃22から背面風Wの吹出口38までの距離が比較的長いものにも本発 明を適用することが可能である。この場合、上述したように、背面風Wに よる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられるため、刈刃22の前10 方側には、正面ダクト9による分岐ノズル47を設け、刈刃前方からの送 風を補助的に行うことが好ましい。なお、この場合、上述したように、分 岐ノズル47による送風を行っても、従来、前方から風を送り込んでいた 送風力と比較すれば、分岐ノズル47の送風力は、極めて少ない送風力で 済むと考えられる。 15 (2) 前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件各発明に関し、以下の とおりの開示があると認められる。 ア 茶葉の摘採を行う摘採機としては、比較的大型の乗用型摘採機が存在し、 同摘採機は、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載した ものや、複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成する等、大20 量の茶葉を収容できるようにしたものが多いところ、このような摘採機に あっては、刈刃前方側に茶葉移送のための分岐ノズル付き送風管を配し、 分岐ノズルからの送風によって茶葉を移送するのが一般的であり、刈刃か ら収容部まで茶葉を移送する移送路は、刈刃のほぼ後方に延びる水平移送 部と、その後に収容部の上部に臨むように接続された上昇移送部を具える25 のが一般的であった(【0002】)。しかし、このような移送形態(送 風形態)では、水平移送部を要する分、移送装置、ひいては摘採機の前後 35 長が長くなり、摘採機の取り回し性を低下させてしまうという問題があっ た(【0003】)。 イ 「本発明」は、前記アの問題を解決するために、主に送風形態に着眼し、 例えば上昇移送を伴う摘採機等の場合、水平移送部を設けることなく、刈 5 取直後、即、茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機の前後寸法の短縮化 を図り、摘採機をコンパクトに構成できるようにしたものであり、移送ダ クト内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り後の茶枝葉を刈刃から 所定の位置まで移送する装置であって、刈刃の後方から移送ダクト内に背 面風を送り込む吹出口が設けられ、この吹出口から移送ダクト内に背面風10 を送り込むことによって、刈取後の茶枝葉を刈刃から所定の位置まで移送 するものであることを特徴としてなるものや、茶刈機体にこのような装置 が適用されて成ることを特徴して成るものである(【0005】、【00 12】及び【0018】)。 「本発明」によれば、刈刃後方から移送ダクト内に空気流を送り込んで15 茶枝葉を所望の部位に移送するため、例えば刈り取り直後の茶枝葉を水平 移送せずに、上方等に移送することができ、また、例えば刈り取り後の茶 枝葉を上昇移送する茶刈機にあっては、刈り取り直後、水平移送部を設け ることなく、そのまま茶枝葉を上昇移送することができ、前後長の短縮化 が図れ、コンパクトな茶刈機が実現でき、上昇移送を伴わない茶刈機、す20 なわち刈り取り後の茶枝葉を刈刃後方側にそのまま移送する茶刈機にあっ ては、刈刃前方から作用させる正面風の送風力を格段に低減でき、又はこ のような正面風を全く省略でき、シンプルな構造の茶刈機が実現できると いう効果を奏する(【0021】、【0027】及び【0057】)。 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について25 (1) 「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)の解釈 ア 本件発明1の特許請求の範囲には、「内部に空気流を流す移送ダクト(6) 36 を具え、この移送ダクト(6)内に流す圧力風の作用のみによって、刈り取り 後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する装置」(構成要 件A)、「この装置には、前記刈刃(22)の後方から移送ダクト(6)内に背面 風(W)を送り込む吹出口(38)が設けられる」(構成要件C)、「この吹出口 5 (38)から移送ダクト(6)内に背面風(W)を送り込むことによって、刈り取り 後の茶枝葉(A)を前記刈刃(22)から所定の位置まで移送する」(構成要件D) との記載がある。 これらの記載から、本件発明1の装置は、移送ダクトを備えており、こ の移送ダクト内には吹出口が設けられていること、圧力風とは、移送ダク10 トの内部に流される空気流であって、この圧力風の作用のみによって刈り 取り後の茶枝葉が刈刃から所定の位置にまで移送されること、背面風とは、 吹出口を通って、刈刃の後方から移送ダクト内に送り込まれ、刈り取り後 の茶枝葉を刈刃から所定の位置にまで移送することを理解でき、そして、 圧力風と背面風は、いずれも、移送ダクト内において、刈り取り後の茶枝15 葉を刈刃から所定の位置にまで移送するものであるが、背面風は、その送 り込まれる位置及び方向が限定されていることから、圧力風に含まれるも のと理解できる。 イ そして、本件明細書には、本件発明1について、「刈刃後方から移送ダ クト内に空気流を送り込んで茶枝葉を所望の部位に移送するため、例えば20 刈り取り直後の茶枝葉を水平移送せずに、上方等に移送することができ、 極めて斬新且つ画期的な移送形態が採り得る。」(【0021】)との記 載があり、また、実施例として、「背面風Wを生じさせるには、まず…送 風機17によって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、送風 ダクト18(フレキシブルダクト18A)を通して導入部8に導かれ、こ25 こでガイド板43に案内されて、導入口39から背面ダクト7内に取り込 まれる。背面ダクト7内に導入された圧力風は、…刈刃後方の吹出口38 37 から背面風Wとして移送ダクト6(移送開始部31)内に送り込まれる。 この背面風Wは、刈刃22の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、 少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口33(移送終端部32)まで搬 送する移送能力を有する。」(【0050】)、「このような背面風Wに 5 よって、茶葉Aは、一例として図4に示すように、刈り取り直後、まず刈 刃22の後方側に引き寄せられる。これは、刈刃22の後方から背面風W を吹き出すことにより、刈刃22の後方付近、具体的には、背面風Wの吹 出口38近傍に負圧が形成され、茶葉Aが刈刃部分から吹出口38側に引 き寄せられるものと考えられる(以下、これを背面風Wの負圧吸引作用と10 称する)。そして、吹出口38側に引き付けられた茶葉Aは、その後、上 昇流を形成する背面風Wに乗って、移送ダクト6内を上昇し、吐出口33 から収容部4に設けられた茶袋B内に収容される。」(【0051】)、 「摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風W を生起させる送風機17の能力等によっては、例えば図5、8に示すよう15 に背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移 送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能であ る。」(【0052】)、「なお正面風W1を生じさせるにあたっては、 …導入部8に取り込んだ圧力風をガイド板43(二枚の傾斜板)によって、 背面ダクト7と正面ダクト9とに振り分けるようにするものである。」20 (【0053】)、「刈刃22から背面風Wの吹出口38までの距離が比 較的長いものにも本発明を適用することが可能である。この場合、上述し たように、背面風Wによる負圧吸引作用は幾らか低下することが考えられ るため、刈刃22の前方側には、正面ダクト9による分岐ノズル47を設 け、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが好ましい。」(【00525 8】)との記載があるが、本件各発明の「移送装置」が刈り取り後の茶枝 葉を所定の位置まで移送する際に「圧力風」以外の作用が加わることにつ 38 いての記載や示唆はない。 これらの記載から、送風機によって生起された圧力風が刈刃後方の吹出 口から背面風として移送ダクト内に送り込まれること、この背面風は、刈 刃の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉を移送ダ 5 クトの吐出口まで搬送する移送作用を有すること、刈刃の後方から背面風 を吹き出すことにより、吹出口近傍に負圧が形成されて、茶葉が、負圧吸 引作用により、刈刃部分から吹出口側に引き寄せられ、その後、上昇流を 形成する背面風に乗って、移送ダクト内を上昇し、吐出口から収容部に設 けられた茶袋内に収容されること、刈刃から背面風の吹出口までの距離が10 比較的長いものに本発明を適用する場合、背面風による負圧吸引作用は幾 らか低下することが考えられるため、圧力風を振り分けて生じさせた正面 風により、刈刃前方からの送風を補助的に行うことが好ましいことを理解 できる。 ウ 以上の各記載によれば、本件発明1の「圧力風」とは、移送ダクトの内15 部に流される空気流であって、背面風及び刈刃前方からの補助的な送風で ある正面風を含むものであり、「圧力風の作用のみによって」とは、刈り 取られた「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」までの移送が上記のよ うな「圧力風」の「作用」だけで実現されることと解するのが相当であり、 「圧力風」の「作用」以外の作用が加わって上記移送が実現される場合に20 は、「圧力風の作用のみによって」を備えるとは認められないというべき である。 (2) 被告各製品が「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)を備えるか ア 証拠(甲4ないし6、乙6、8)及び弁論の全趣旨によれば、被告各製 品の回転ブラシはブラシシャフト及びこれに取り付けられたブラシから成25 り、ブラシシャフトが回転することに伴ってブラシが回転する構造をして いること、被告各製品の回転ブラシR、刈刃(22')、移送ダクト(6')、吹出 39 口(38')及び収容部(4')の構造の概要は、別紙概要断面図記載のとおりであ り、被告各製品による摘採作業中、回転ブラシRは、160ないし300 rpmの回転数(1秒当たり2.6ないし5回転)で、茶枝葉を移送ダク ト(6')にかき込む向き(別紙概要断面図でいえば、時計回り)に回転し、 5 刈刃(22')後方の吹出口(38')から上方(W')に向かって吹き出した圧力風は、 移送ダクト(6')内を収容部(4')に向かって流れること、回転ブラシの高さ は、被告各製品のうち3段階調整方式のものは上下に約50mmずつ3段 階で、5段階調整方式のものは上下に約40ないし60mmずつ5段階で、 それぞれ調整することができることが認められる。これによれば、被告各10 製品は、その摘採作業中、摘採する長さに合わせて高さを設定した回転ブ ラシが高速で回転して刈刃により刈り取られた茶枝葉を移送ダクト内にか き込み、移送ダクト内を流れる圧力風が茶枝葉を収容部まで移送する構造 を有するということができる。 そして、証拠(乙9、10)によれば、被告各製品の取扱説明書には、 15 茶枝葉を長く刈り取る場合は回転ブラシを高く調整し、短く刈り取る場合 はこれを低く調整し、ブラシシャフトと芽の高さが同じくらいになるよう に設定する必要があり、回転ブラシの高さが適切に設定されなければ、茶 枝葉をスムーズに刈り取ることができない旨が記載されていたことが認め られ、これによれば、被告各製品は、刈り取る茶枝葉の長さに合わせて回20 転ブラシを設定することが予定されていたということができる。 さらに、被告各製品による摘採作業中、操縦者が回転ブラシを任意に回 転させたり、回転させなかったりすることができることを認めるに足りる 証拠はない。 以上によれば、被告各製品においては、回転ブラシを摘採する茶枝葉の25 長さに応じて適切な高さに設定することを前提とし、刈刃により刈り取ら れた茶枝葉は、摘採作業中、常時回転するブラシに当たって移送ダクト内 40 に送り込まれ、その後、上向きに吹き出し、移送ダクト内を流れる圧力風 により、移送ダクト内を通り、収容部に到達すると認めるのが相当である。 したがって、被告各製品においては、「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の 位置」までの移送が「圧力風」以外の作用である回転ブラシの回転作用が 5 加わることによって実現されているといえるから、被告各製品は「圧力風 の作用のみによって」を備えるものとは認められないというべきである。 イ これに対して、原告は、原告各実験結果によれば、回転ブラシを備える 被告各製品と回転ブラシを取り外した被告各製品とで摘採量に有意な差は なく、むしろ回転ブラシを取り外した被告各製品の方が摘採量が多いこと10 もあり、被告各製品は回転ブラシがなくても背面風(圧力風)の作用のみ によって茶枝葉を移送することができるので、「圧力風の作用のみによっ て」を備えると主張する。 しかし、前記(1)のとおり、「圧力風」以外の作用が加わって上記移送が 実現されている場合は、「圧力風の作用のみによって」を備えないという15 べきであるところ、被告各製品については、前記アのとおり、回転ブラシ を摘採する茶枝葉の長さに応じて適切な高さに設定した上で摘採すること が予定されており、刈刃により刈り取られた茶枝葉は、常時回転する回転 ブラシに当たって移送ダクトに送り込まれた上で、上向きに吹き出し、移 送ダクト内を流れる圧力風により、移送ダクト内を通り、収容部に到達す20 ることからすると、「圧力風」以外の作用である回転ブラシの回転作用が 加わることなく、刈り取られた「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」 までの移送が実現されているということはできない。 また、前記(1)の「圧力風の作用のみによって」(構成要件A)の解釈に よれば、被告各製品が「圧力風の作用のみによって」を備えるというため25 には、「圧力風」の「作用」以外の作用が加わっていない必要があるから、 回転ブラシを備える被告各製品における茶枝葉の移送態様自体が検討され 41 るべきであり、回転ブラシを備える被告各製品による摘採量とこれを取り 外した被告各製品による摘採量とを比較することによっては、「圧力風の 作用のみによって」を備えるか否かを明らかにすることはできないという べきである。 5 以上によれば、被告各製品においては、刈り取られた茶枝葉、回転ブラ シ、移送ダクト等の位置関係等からして、回転ブラシの回転作用が加わっ て茶枝葉の移送が実現されているといえ、原告各実験結果については、直 ちにこれらを採用することは困難であるといわざるを得ない。したがって、 原告の上記主張は採用することができない。 10 (3) 小括 以上のとおり、被告各製品は、「圧力風の作用のみによって」を備えず、 構成要件Aを充足しないから、本件発明1の技術的範囲に属するとは認めら れず、その結果として、構成要件Fを充足しないから、本件発明2の技術的 範囲に属するとも認められない。 15 第5 結論 したがって、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由 がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
20裁判長裁判官國分隆文25裁判官42小川暁裁判官佐々木亮は、転補につき、署名押印することができない。 5裁判長裁判官國分隆文43(別紙)被告製品目録1OHC-5VB型乗用型摘採機2OHC-5DVB型乗用型摘採機以上44(別紙)本件明細書図面【図1】【図2】45【図3】【図4】【図5】46【図7】【図9】以上47(別紙)概要断面図48(別紙)乙1公報図面【図1】【図2】49【図3】【図4】50【図5】以上51 |