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関連審決 不服2019-14072
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事件 令和 3年 (行ケ) 10095号 審決取消請求事件
5
原告 シー・アール・バード・ インコーポレイテッド 10 同訴訟代理人弁護士 末吉剛
同 高橋聖史
同 吉野海希
同訴訟代理人弁理士 星野修
同 田上靖子 15
被告特許庁長官
同 指定代理人井上哲男
同 千壽哲郎
同 井上千弥子 20 同山田啓之
同 宮部愛子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2022/06/02
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
25 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
1事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が不服2019−14072号事件について令和3年4月5日にした審決を取り消す。
5 第2 事案の概要1 特許庁における手続の経緯等? 原告は、平成26年(2014年)11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成25年(2013年)11月21日 アメリカ合衆国)を国際出願日として、発明の名称を「マルチ内腔構造を備えるカテーテルア10 センブリ」とする特許出願を行った(平成27年(2015年)5月28日国際公開、WO2015/077560、平成28年(2016年)12月1日国内公表、特表2016−537126号。国内移行により出願番号は特願2016−533038号とされた。以下、本願の願書に添付された明細書と図面を併せて「本願明細書等」という。本願明細書等は、特表20115 6−537126公報である甲2のとおりである。。
)? 原告は、平成30年10月5日付け拒絶理由通知を受けたため、平成31年4月11日、意見書及び手続補正書を提出したが、令和元年6月20日付けで拒絶査定がされた。
そこで、原告は、令和元年10月23日、拒絶査定不服審判(不服20120 9−14072号、以下「本件審判」という。)を請求するとともに、同日付け手続補正書を提出し、特許請求の範囲の請求項1ないし18を補正した(以下「本件補正」という。。その後、原告は、令和2年9月25日付け拒絶理)由通知を受けたため、同年12月23日付けの意見書を提出した。
特許庁は、令和3年4月5日、本件審判について、本件補正後の請求項125 記載の発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1(特表2011−502583号公報、甲1)記載の発明((以下「引2用発明1」という。 及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容)易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものであるとして、結論を「本件審判の請求は、成5 り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。本件審決は、別紙1のとおりである。)をし、その謄本は、同月20日、原告に送達された。なお、
出訴期間として90日が附加された。
? 原告は、令和3年8月17日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
10 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲請求項1記載の発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである(本件審決第2、1〔本件審決2頁〕。なお、構成要件)を分説する記号は、本判決において付した。
「A カテーテルアセンブリであって、
15 B 対向する平坦な側部を有する長円形の断面形状を有する外面を含み、第1の内腔と第2の内腔と第3の内腔とを形成する細長いカテーテルチューブを備え、
C 前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、前記第3の内腔に隣接して配置される凹部を断面に備え、
20 D 前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、第1の角部および第2の角部を断面に備え、
E 前記凹部は、前記第1の角部側にオフセットされた形態で前記第1の角部と前記第2の角部との間に介在し、
F 前記第3の内腔は、実質的に円形の断面形状を備え、
25 G 前記カテーテルチューブは、
前記第1の内腔に流体連通し、前記カテーテルチューブの外面に開口3する第1の側方開口であって、該第 1 の側方開口における前記第1の内腔の軸線が前記カテーテルチューブの軸方向に対して傾斜するように形成された第1の側方開口と、
前記第2の内腔に流体連通し、前記カテーテルチューブの外面に開口5 する第2の側方開口であって、該第2の側方開口における前記第2の内腔の軸線が前記カテーテルチューブの前記軸方向に対して傾斜するように形成された第2の側方開口とを備えるH カテーテルアセンブリ。」10 3 本件審決の理由の要旨? 主引用発明本件審決が主引用例とした引用文献1記載の引用発明1は、次のとおりである(本件審決第4、3〔本件審決15〜16頁〕。
)「カテーテル10であって、
15 横長の断面構成を有する外壁86を含み、その基端11Aから末端11Bまで長手方向に伸びる第1の管腔12と第2の管腔14と第3の管腔15とを画定している細長いカテーテル本体11を備え、
上記第1の管腔12、第2の管腔14および第3の管腔15は隣接配置され、円形の断面形状を備えており、
20 上記カテーテル本体11は、
上記第1の管腔12に流体連通し、上記カテーテル本体11の外壁86の側方部分に画定される静脈用側方開口60であって、静脈用側方開口60の傾斜穿孔切断の長軸が、上記カテーテル本体11の長手方向軸に対し約35度の角度 θ1を画定する静脈用側方開口60と、
25 上記第2の管腔14に流体連通し、上記カテーテル本体11の外壁86の側方部分に画定される動脈用側方開口62であって、動脈用側方開口624の傾斜穿孔切断の長軸が、上記カテーテル本体11の長手方向軸に対し約35度の角度 θ1を画定する動脈用側方開口62とを備えるカテーテル10。」5 ? 本願発明と引用発明1の対比本件審決が行った本願発明と引用発明1の対比は次のとおりである(本件審決第5、2〔本件審決17頁〕。
)ア 一致点「カテーテルアセンブリであって、
10 対向する平坦な側部を有する長円形の断面形状を有する外面を含み、第1の内腔と第2の内腔と第3の内腔とを形成する細長いカテーテルチューブを備え、
前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、第3の内腔に隣接して配置される部分を断面に備え、
15 前記第3の内腔は、実質的に円形の断面形状を備え、
前記カテーテルチューブは、
前記第1の内腔に流体連通し、前記カテーテルチューブの外面に開口する第1の側方開口であって、該第 1 の側方開口における前記第1の内腔の軸線が前記カテーテルチューブの軸方向に対して傾斜するように形成20 された第1の側方開口と、
前記第2の内腔に流体連通し、前記カテーテルチューブの外面に開口する第2の側方開口であって、該第2の側方開口における前記第2の内腔の軸線が前記カテーテルチューブの前記軸方向に対して傾斜するように形成された第2の側方開口と25 を備えるカテーテルアセンブリ。」5イ 相違点第1の内腔および第2の内腔の各々の断面形状に関し、本願発明は、第3の内腔に隣接して配置される凹部を備え、第1の角部および第2の角部を備え、凹部は、第1の角部側にオフセットされた形態で第1の角部と第5 2の角部との間に介在するのに対し、引用発明1は、円形である点。
? 副引用発明本件審決が本願発明の容易想到性を判断するに当たり引用発明1との組合せを検討した引用文献1(甲1)記載の事項(本件審決でいう「図17実施例」、以下「副引用発明」という。)は、次のとおりである(本件審決第6、
10 1〔本件審決18頁〕。
)「第1の管腔12および第2の管腔14がカテーテル本体11の直径方向の隔壁990を介して対向配置されており、第1の管腔12および第2の管腔14の断面形状は、各々、カテーテル本体11の円形断面に沿った円弧状部分と、上記隔壁990に沿った直線状部分と、カテーテル本体11の中心軸15 から軸方向にオフセットして配置された第3の管腔の円形断面に隣接し、当該第3の管腔の円形断面に沿った凹状部分と、上記円弧状部分と上記直線状部分との間並びに上記円弧状部分と上記凹状部分との間の角状部分とを有する断面形状となっている実施例」? 本願発明の容易想到性の判断の概要20 本件審決における本願発明の容易想到性の判断の概要は次のとおりである(本件審決第6、1〔本件審決18頁〕。
)引用文献1(甲1)には、第1の管腔と第2の管腔の断面形状について種々の断面形状を採用し得ることが示唆されており、当業者は、副引用発明(図17実施例)の断面形状が、採用し得る断面形状の一つであると理解するこ25 とができる。そうすると、カテーテルの断面に占める内腔の断面積の割合が大きくなるように工夫するというカテーテルの技術分野における一般的な課6題に照らして、第1の内腔及び第2の内腔の断面積の占める割合を大きくするために副引用発明(図17実施例)を採用することは、当業者が容易になし得たことであり、前記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、格別顕著なものとはいえない。したがって、本願発明は、引用発5 明1及び引用文献1(甲1)記載の事項(副引用発明(図17実施例))に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 原告主張の取消事由? 取消事由1(本願発明及び副引用発明の認定の誤り)? 取消事由2(相違点の認定の誤り)10 ? 取消事由3(相違点の判断の誤り)第3 当事者の主張1 取消事由1(本願発明及び副引用発明の認定の誤り)について〔原告の主張〕? 本願発明の認定(「オフセット」の意義)について15 本願明細書等(甲2)の【図24】によれば、動脈内腔1312と静脈内腔1314は、それぞれ凹部1394を有し、凹部1394の曲線は、頂部角部1396Aと交差軸線1388の間に形成されており、頂部角部1396A側の曲線形状は、交差軸線1388側の曲線形状と比較して、やや急な傾斜になっているから、凹部1394の曲線形状は、左右非対称である。
「オ20 フセット」という語には、
「ずれ、片寄り、食い違い」という意味があり(乙1、2)、凹部の左右の曲線形状にはずれ又は食い違いがあるから、本願発明の「第1の角部側に『オフセット』された形態」とは、第1の内腔及び第2の内腔の各々に配置される凹部の曲線形状において、第1の角部側の立ち上がりの傾斜が反対側の立ち上がりの傾斜よりも急であることを意味する。本25 願明細書の段落【0069】の「各頂部角部1396Aの半径は、約0.012インチ」及び「頂部角部と対向する凹部の端部での半径(交差軸線13788のまわりのところ)は、約0.030インチ」という記載は、原告が主張する上記オフセットの解釈と整合する。
? 副引用発明(図17実施例)の認定について引用文献1(甲1)の【図17B】によれば、凹状部分の曲線形状は左右5 対称であり、少なくとも、凹状部分の左右の二つの角部における傾斜の違いを読み取ることはできないため、副引用発明(図17実施例)の凹状部分は、
「オフセット」された形態であるとはいえない。そうすると、副引用発明(図17実施例)の認定においては、凹状部分が左右対称の形状にあることを加えるとともに、第3の管腔の配置は、
「オフセット」という語を用いずに、
「第10 1の管腔12および第2の管腔14がカテーテル本体11の直径方向の隔壁990を介して対向配置されており、第1の管腔12および第2の管腔14の断面形状は、各々、カテーテル本体11の円形断面に沿った円弧状部分と、
上記隔壁990に沿った直線状部分と、カテーテル本体11の中心軸から軸方向にずれて配置された第3の管腔の円形断面に隣接し、当該第3の管腔の15 円形断面に沿った左右対称の凹状部分と、上記円弧状部分と上記直線状部分との間並びに上記円弧状部分と上記凹状部分との間の角状部分とを有する断面形状となっている実施例」下線部は本件審決の認定と異なる部分である。
( )と認定されるべきである。したがって、本件審決による副引用発明(図17実施例)の認定は誤りである。
20 〔被告の主張〕? 〔原告の主張〕?(本願発明の認定(「オフセット」の意義)について)に対し「オフセット」という語は、一般的には、
「ずれ」あるいは「片寄り」を意味するから(乙1、2)、本件訂正後の請求項1中の「前記凹部は、前記第125 の角部側にオフセットされた形態で前記第1の角部と前記第2の角部との間に介在し」は、凹部が第1の角部側に「ずれ」た形態で第1の角部と第2の8角部との間に介在することを意味すると理解される。
本願明細書等において、
「オフセット」の記載は、段落【0052】ないし【0055】【0057】及び【0058】にあり、全て遠位端開口の配置、
を表現する語として用いられており、
【図14B】及び【図17B】等から看5 取される遠位端開口とカテーテル本体の中央軸線との位置関係からみて、これらの記載においては、遠位端開口の軸線が、カテーテル本体の中央軸線から「ずれ」ていることを「オフセット」と表現していると解され、
「オフセット」という語の一般的な意味と整合している。
本願明細書等の段落【0065】の記載から、「凹部1394」について、
10 交差軸線1388の中心に位置するのとは対照的に、上方に「ずれ」た配置が、本願発明にいう「オフセット」の意味であると解釈される。
原告の主張する「オフセット」という文言の解釈は、本願明細書等に記載がなく、示唆もない。本願明細書等の段落【0069】の記載は、
「凹部1394」の両端部の傾斜に差がないことを示唆しているといえるし、【図24】15 から「凹部1394」の両端部の傾斜に差があることを看取することはできない。
? 〔原告の主張〕?(副引用発明(図17実施例)の認定について)に対し本件審決は、引用文献1(甲1)の段落【0054】の記載、【図17A】及び【図17B】から、副引用発明(図17実施例)を認定しており(本件20 審決第6、1〔本件審決18頁〕、本件審決第4、2?〔本件審決15頁〕 、
)副引用発明(図17実施例)の認定に誤りはない。副引用発明(図17実施例)の「凹状部分」は、
【図17B】において、円弧状部分と凹状部分との間の角状部分側に「ずれ」て(「オフセット」して)配置されている。
凹状部分の曲線形状が左右対称であるかどうかは、本願発明との対比に必25 要な事項ではないから、副引用発明(図17実施例)の認定に当たり加えるべき事項ではなく、また、副引用発明(図17実施例)の認定にあたり「オ9フセット」との用語を使用することに何ら誤りはない。
2 取消事由2(相違点の認定の誤り)について〔原告の主張〕内腔は、カテーテルチューブの内部に配置されており、カテーテルチューブ5 の外面形状に制約され、その影響を受けるから、内腔の断面形状とカテーテルチューブの外面形状は、一体の相違点として認定されるべきである。引用文献1(甲1)の「カテーテル本体11の横長の断面構成により管腔12、14、
15に対し円形の断面形状を用いることができるようになり、それらは流体の流れの点で『D』形状または他の形状の管腔よりもかなり効率的である」(段落10 【0040】)という記載は、カテーテルチューブの外面の形状により、用いられる内腔の断面形状が変化し得ることを示している。
カテーテルの内腔は、カテーテルの用途に起因する要求(使用態様に適した強度及び内部を流通する液体の流量が含まれる。 を考慮し、
) 外面形状の範囲内に収まるよう設計される。仮に、強度や流量を無視するのであれば、内腔の断15 面形状をカテーテルの外面形状から独立して自由に設計することも可能であるが、そのような設計は、カテーテルの業界における現実の要請から乖離しており、カテーテルの内腔の断面形状は、外面の形状に制約される。そのため、
両者は、独立に設計することが可能であるとはいえない。
引用文献1(甲1)において、第1の管腔及び第2の管腔に凹部が設けられ20 ている図17の実施例のカテーテルチューブの外面形状は円形であり、本願発明のような長円形ではなく、カテーテルの内腔の断面形状は外面の形状に制約されるから、長円形であるか否かという点を、本願発明と引用発明1の相違点として認定すべきである。
したがって、本願発明と引用発明1の一致点からは、
「対向する平坦な側部を25 有する長円形の断面形状を有する外面を含み」という文言を削除し、相違点は、
「対向する平坦な側部を有する長円形の外面の内側に配置される」という文言10を加え、「対向する平坦な側部を有する長円形の外面の内側に配置される第1の内腔および第2の内腔の各々の断面形状に関し、本願発明は、第3の内腔に隣接して配置される凹部を備え、第1の角部および第2の角部を備え、凹部は、
第1の角部側にオフセットされた形態で第1の角部と第2の角部との間に介5 在するのに対し、引用発明1は、円形である点。(下線部が本件審決の認定し」た相違点と異なる点である。)と認定されるべきである。
〔被告の主張〕引用文献1(甲1)の段落【0013】には、内腔の断面形状を様々な形状に変更し得ることが示唆されているといえる。引用文献1(甲1)の段落【010 040】の記載は、カテーテルチューブの外面形状により採用し得る内腔の断面形状が規定されることまでは示唆していない。乙4(特開2011−72792号公報。 「乙4文献」以下 という。 の段落) 【0063】ないし【0065】、
【図2】【図2A】及び【図2B】には、カテーテルチューブの外面形状は同、
じでありながら、内腔の断面形状が異なるものが記載されており、乙5(米国15 特許第5556390号明細書。以下「乙5文献」という。)の5欄4ないし62行、図6及び図7には、内腔の断面形状は同じでありながら、カテーテルチューブの外面形状が異なるものが記載されており、このように、カテーテルチューブの外面形状と内腔の断面形状は、それぞれ独立に設計可能なものである。
本願発明と引用発明1との対比において、カテーテルチューブの外面形状と20 内腔の断面形状のうち、前者が一致し、後者が相違する場合に、前者を一致点、
後者を相違点として両者を分けて認定することに誤りはない。
3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について〔原告の主張〕? 管腔の断面形状として円形を採用することについて25 ア 引用文献1(甲1)の段落【0040】には、
「加えて、カテーテル本体11の横長の断面構成により管腔12、14、15に対し円形の断面形状11を用いることができるようになり、それらは流体の流れの点で『D』形状または他の形状の管腔よりもかなり効率的である。 と記載されており、
」 カテーテルチューブの外面形状が長円形の場合、管腔の断面形状について、
円形が他の形状よりも効率的であることが明記されている。このような記5 載に接した当業者が、あえて効率が悪くなるような、円形以外の、凹部を有するような形状を採用することについては、阻害事由がある。
イ また、引用文献1(甲1)の段落【0040】の記載によれば、当業者が円形以外の形状を採用するためには、効率が悪くなってもなおその形状を採用すべき積極的な動機付けが必要であるが、そのような動機付けはな10 い。
ウ 引用文献1(甲1)の段落【0013】には、内腔は「円形、楕円形、
D字型断面形状、またはそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の断面形状を有することができる。」と記載されているため、円形、楕円形、D字型断面形状以外の断面形状は、積極的に推奨されているわけではない。ま15 た、引用文献1(甲1)には、
【図8A】の実施例について「前述のカテーテル組立体構成に様々な改変がなせることは、理解されたい。(段落【0」043】)という記載があるが、カテーテル組立体構成の改変には、内腔の断面形状の改変以外にも様々な改変(例えば、カテーテル本体の改変及び側方開口の改変)が含まれており、内腔の断面形状の改変を具体的に述べ20 ているわけではない。したがって、本件審決が、引用文献1(甲1)の上記の段落【0013】及び【0043】の記載について、種々の断面形状を採用し得ることが示唆されているとしたのは誤りである。
? 乙5文献等について乙5文献、乙6(特開平2−209158号公報。以下「乙6文献」とい25 う。、 (特表2001−513374号公報。 「乙7文献」) 乙7 以下 という。)は、本件審決での主引例及び副引例の何れでもなく、本願発明における内腔12の断面形状を開示しているわけではないから、審決取消訴訟である本件訴訟において、乙5ないし乙7文献に基づいて、円形以外の断面形状を採用し得るという主張をすることはできない。
? 本願発明の効果について5 本願明細書等の段落【0069】の記載は、【図24】の断面構造により、
カテーテルの断面サイズを13フレンチサイズから12フレンチサイズに小さくしても、13フレンチサイズと同等の流量が維持できることを意味しており、この効果は、予想外かつ顕著というべきであり、実際の実験によって見出されている(甲6)。物理的には一見小さくみえる工夫であっても、医療10 機器としての作用効果及び臨床上の意義は大きいから、副引用発明(図17実施例)の管腔の断面形状を採用することは容易になし得たとした本件審決の判断は、カテーテルの製品としての性質及び本願発明の作用効果に対する適切な検討を欠いており、誤っている。
〔被告の主張〕15 ? 〔原告の主張〕?(管腔の断面形状として円形を採用することについて)に対し引用文献1(甲1)の段落【0013】には、内腔の断面形状として、種々の断面形状を採用し得ることが示唆されており、この記載と段落【0043】の記載を合わせれば、
【図8A】に係る実施例の内腔の断面形状も改変し得る20 ことが示唆されているといえる。乙4文献ないし乙7文献によれば、カテーテルの内腔に円形以外の断面形状を採用できることは周知である。引用文献1(甲1)の段落【0040】における、円形断面形状が流体の流れの点で他の断面形状よりも効率的であるという記載は、様々取り得る断面形状のうち好適な例を提示する程度のものであって、そのことをもって、他の断面形25 状を採用し得ないことまで示唆するものとはいえない。
そして、乙5ないし乙7文献によれば、細径のカテーテル断面について内13腔の流路を最大限確保するために、カテーテルの断面に占める内腔の断面積の割合が大きくなるように工夫することは、カテーテルの技術分野における一般的な課題である。
そうすると、引用発明1の内腔の断面積の割合を大きくするために、副引5 用発明の断面形状を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
? 〔原告の主張〕?(乙5文献等について)に対し原告の主張は争う。乙5ないし乙7文献によれば、カテーテルの技術分野における一般的な課題が認められるということを示すにすぎない。
? 〔原告の主張〕?(本願発明の効果について)に対し10 原告の主張は争う。
第4 当裁判所の判断1 本願発明の内容? 本願明細書等の記載本願発明は、前記第2、2のとおりであり、本願明細書等には、次のとお15 りの記載がある。
ア 技術分野「[01]本出願は、
「3つの内腔先端を備えるカテーテルアセンブリ」という表題の2011年12月16日に出願された一部継続出願である米国特許出願第13/329,156号(現在は、米国特許第8,894,6020 1号)(これは、「3つの内腔先端を備えるカテーテルアセンブリ」という表題の2008年10月31日に出願された継続出願である米国特許出願第12/262,820号(現在は、米国特許第8,092,415号)であり、
「3つの内腔先端を備えるカテーテルアセンブリ」という表題の2007年11月1日に出願された米国仮特許出願第60/984,66125 号の利益を主張している)である。また、本出願は、
「マルチ内腔構造を備えるカテーテル」という表題の2013年11月21日に出願された米国14仮特許出願第61/907,344号の利益を主張する。上述の出願の各々は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。(段落【00」01】)イ 課題を解決するための手段5 「[02]簡単に要約すると、本発明の実施形態は、腎機能代替療法または他の適切な治療の間に患者の血管系または他の血管にアクセスするのに使用するためのカテーテルアセンブリを対象としている。一実施形態では、
カテーテルアセンブリは、少なくとも第1および第2の内腔を形成するカテーテル本体を備えている。カテーテル本体は、遠位先端領域を形成する。
10 遠位先端領域は、第1の内腔に流体連通するとともに遠位対向部分を備える少なくとも1つの静脈側方開口と、第2の内腔に流体連通するとともに遠位対向部分を備える少なくとも1つの動脈側方開口と、を備えている。
少なくとも1つの動脈側方開口は、少なくとも1つの静脈側方開口に対して実質的にずれのない構成で対向して位置決めされる。遠位端開口が、遠15 位先端領域に形成され、流体がそこを通過する大きさを有している。一実施形態では、遠位端開口は、カテーテル本体の第3の内腔と流体連通する。
第3の内腔は、例えば、造影剤の高圧注入に関連する流体の大きな流速に耐えることができる。(段落【0002】」 )「[03]他の実施形態では、第1の内腔と第2の内腔とを形成するカテーテ20 ルアセンブリが開示される。カテーテル本体は、遠位先端領域を備えており、この遠位先端領域は、遠位方向に収束する外面を形成するノーズ部分を備えている。第1の内腔に流体連通する静脈側方開口は、遠位方向に向かう外面に少なくとも部分的に形成される。第2の内腔に流体連通する静脈側方開口も遠位方向に向かう外面に少なくとも部分的に形成される。静25 脈側方開口および動脈側方開口は、互いに対して実質的にずれのない位置に対称的に配置される。遠位先端部分は、さらに、静脈内腔および動脈内15腔のうちの一方に流体連通する遠位端開口を備えており、遠位端開口は、
ガイドワイヤがそこを通過する大きさを有している。」(段落【0003】)「[04]さらに別の実施形態では、第1の内腔および第2の内腔の各々は、
全体的に、腎臓形断面形状を備えており、一方、第3の内腔は、実質的に5 丸く、第1の内腔と第2の内腔との間に介在しており、圧力注入可能である。(段落【0004】」 )「[05]本発明のこれらおよび他の特徴は、次の説明および添付の特許請求の範囲から、いっそう完全に明らかになり、また、本明細書で以降に説明されるように本発明を実施することによって理解することができる。(段」10 落【0005】)「[06]本発明の上述および他の利点および特徴をさらに明確にするために、
本発明を、添付図面に図示されたその具体的な実施形態を参照することによっていっそう特定的に説明する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、したがって、その範囲を制限するものと捉15 えられるべきではないことが理解される。本発明は、添付図面の使用を通して、追加的な特定性および詳細とともに記載され、説明される。(段落」【0006】)ウ 発明を実施するための形態(段落【0052】から【0058】までの記載に係る実施形態は、本願20 発明の実施例ではないが、これらのうち【0056】を除く各段落には「オフセット」という語が用いられている。段落【0059】から段落【0071】までが本願発明の実施例の説明である。)「[040]同様の構造に同様の符号が付された図面を参照する。図面は、例としての実施形態の概略図であり、これらの実施形態に限定されるものでは25 なく、また、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解される。(段」落【0008】)16「[041]明確化のために、「近位」との用語は、本明細書で説明されるデバイスを使用する臨床医に相対的に近い方向をいい、一方、
「遠位」との用語は、臨床医から相対的に遠い方向をいうことが理解されるべきである。例えば、患者の体内に配置されるカテーテルの端部は、カテーテルの遠位端5 と見なされ、一方、体外に留まるカテーテル端部は、カテーテルの近位端と見なされる。また、本明細書で使用される「備えている(including)、
」「有する(has)、
」「有している(having)」との用語は、特許請求の範囲を含め、
「備えている(comprising)」と同じ意味を有している。(段落【0」009】)10 「[042]図1〜20Dは、本発明の諸実施形態の様々な特徴を示しており、
これらは、概して、腎機能代替療法(例えば、血液透析または血液浄化法)の間に患者の血管系または他の血管にアクセスするのに使用するための先が尖ったカテーテルアセンブリを対象としており、本発明の原理を通じて、これらに加えて他の用途で採用される他のカテーテルにも拡張され得15 る。そのような先が尖ったカテーテルは、典型的には、短期配置計画(例えば、30日未満の配置)で採用され、本明細書で記載される原理を通じて、中期カテーテル配置や長期カテーテル配置にも適用できる。」(段落【0010】)「[046]まず、図1を参照する。図1は、一例の実施形態にしたがった、全20 体が10で指示された血液透析カテーテルアセンブリの様々な特徴を示している。図示されるように、カテーテル10は、近位端11Aと遠位端11Bとを有する細長いカテーテル本体11を備えている。細長いカテーテル本体11は、第1の内腔12と、第2の内腔14と、第3の内腔15(図7A)と、を備えている。第1の内腔12、第2の内腔14および第25 3の内腔15は、その近位端11Aから遠位端11Bまで長手方向に延在している。内腔12、14、15は、それらのそれぞれの長さに沿って117つ以上の断面形状を有していてもよい。このような断面形状には、丸形断面形状、長円形断面形状、D形断面形状、または、これらの任意の組み合わせが含まれる。一実施形態では、第1の内腔12および第2の内腔14は、血液透析に必要な流体流速(すなわち、約250mmHgの圧力で約5 300mL/分)を受け入れるような大きさを有している。一実施形態では、第3の内腔は、そこを通る採血および流体吸引/点滴を受け入れるために、約0.035〜約0.038インチの直径を有する大きさを有している。(段落【0014】」 )「[047]三叉ハブ20が、カテーテル本体近位端11Aのところに備えられ10 ており、第1の内腔12、第2の内腔14および第3の内腔15と、動脈延長レッグ16、静脈延長レッグ18および圧力延長レッグ19と、の間の流体連通をそれぞれ提供する。延長レッグ16、18、19は、それぞれ、ルアーコネクタ16A、18A、19Aと、クランプ16B、18B、
19Bとを備えている。そのように構成されているので、延長レッグ16、
15 18によって、患者の中心静脈系からの流体の点滴または吸引が可能となるように、第1の内腔12と第2の内腔14との流体連通が提供される。
このため、流体点滴デバイスまたは流体吸引デバイス(例えば、例えば、
血液透析装置)は、ルアーコネクタ16A、18Aを介してカテーテルアセンブリ10に接続されることができ、このため、患者への血管内アクセ20 スが提供される。同様に、延長レッグ19によって、対応するデバイスがコネクタ19Aを介してそれに接続されるときに静脈からの流体の点滴/吸引を可能にするために、第3の内腔15との流体連通が提供される。
ここで詳述される延長レッグのそれぞれの位置および構成は、特定のカテーテルアセンブリの設計に応じて変えることができ、したがって、限定と25 して捉えられないことに留意されたい。カテーテル本体11は、さらに、
カテーテル本体を患者に固定するための接合翼部21を備えている。(段」18落【0015】)「[084]図14A〜14Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域650を示しており、遠位先端領域650は、カテーテル末端部分650Aとノーズ部分650Bとを備えている。遠位先端領域650は、さらに、第15 の内腔12に流体連通する静脈側方開口660と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口662と、を備えている。また、遠位端開口664が、ノーズ部分650Bの遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口660、662の各々は、図14Dで最もよく分かるように、
10 図12Cの視点から見て長円形の外周を形成しており、対称的に互いに対向している。(段落【0052】」 )「[085]図15A〜15Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域750を示しており、遠位先端領域750は、カテーテル末端部分750Aとノーズ部分750Bとを備えている。遠位先端領域750は、さらに、第115 の内腔12に流体連通する静脈側方開口760と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口762と、を備えている。また、遠位端開口764が、ノーズ部分750Bの遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口760、762の各々は、図15Dで最もよく分かるように、
20 図15Cの視点から見て長円形の外周を形成しており、対称的に互いに対向している。(段落【0053】」 )「[086]図16A〜16Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域850を示しており、遠位先端領域850は、第1の内腔12に流体連通する静脈側方開口860と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口86225 と、を備えている。また、遠位端開口864が、遠位先端領域850の遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線19方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口860、862の各々は、図16Dで最もよく分かるように、図16Cの視点から見て長円形の外周を形成しており、対称的に互いに対向している。(段落【00」54】)5 「[087]図17A〜17Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域950を示しており、遠位先端領域950は、第1の内腔12に流体連通する静脈側方開口960と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口962と、を備えている。また、遠位端開口964が、遠位先端領域850の遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線10 方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口960、962は、セプタム990によって分離されており、側方開口960、962の各々は、図16Cの視点から見て、カテーテル本体外壁986の一部分とともに鋭角形状の外周を形成している。上述と同様に、側方開口960、
962は、図17Dで最もよく分かるように、対称的に互いに対向してい15 る。(段落【0055】」 )「[088]図18A〜18Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域1050を示しており、遠位先端領域1050は、カテーテル末端部分1050Aとノーズ部分1050Bとを備えている。遠位先端領域1050は、さらに、第1の内腔12に流体連通する静脈側方開口1060と、第2の内20 腔14に流体連通する動脈側方開口1062と、を備えている。また、遠位端開口1064が、ノーズ部分1050Bの遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線方向に対して中央に配置されている。本実施形態では、側方開口1060、1062は、セプタム1090によって分離されており、側方開口1060、1062の各々は、
25 図18Cの視点から見て、部分的な長円形の外周を形成している。上述と同様に、側方開口1060、1062は、図18Dで最もよく分かるよう20に、対称的に互いに対向している。(段落【0056】」 )「[089]図19A〜19Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域1150を示しており、遠位先端領域1150は、ノーズ部分1150Bを備えている。遠位先端領域1150は、さらに、第1の内腔12に流体連通す5 る静脈側方開口1160と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口1162と、を備えている。また、遠位端開口1164が、遠位先端領域1150の遠位端のところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口1160、1162の各々は、図19Dの視点から見て三角形の外周を形成10 しており、図19Dで最もよく分かるように、対称的に互いに対向している。(段落【0057】」 )「[090]図20A〜20Dは、カテーテルアセンブリの遠位先端領域1250を示しており、遠位先端領域1250は、カテーテル末端部分1250Aとノーズ部分1250Bとを備えている。遠位先端領域1250は、さ15 らに、第1の内腔12に流体連通する静脈側方開口1260と、第2の内腔14に流体連通する動脈側方開口1262と、を備えている。また、遠位開口1264が、ノーズ部分1250Bのところに形成されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸線方向にオフセットされている。本実施形態では、側方開口1260、1262はセプタム1290によって分20 離されており、側方開口1260、1262の各々は、図20Cの視点から見て円錐台の外周を形成している。上述と同様に、側方開口1260、
1262は、図20Dで最もよく分かるように、対称的に互いに対向している。カテーテル末端部分1250Aは、側方開口1260、1262に加えて、さらに、複数の静脈開口1260Aと、複数の動脈開口126225 Aと、を備えている。開口1260A、1262Aは、側方開口1260、
1262よりも相対的に小さく、血管壁に吸着する可能性をさらに低減す21るように、カテーテル本体の外周のまわりに分散配置されている。(段落」【0058】)「[091]図21〜24は、一実施形態実施形態にしたがったカテーテルアセンブリ1310の様々な詳細を示している。以下で説明される実施形態は、
5 上述した実施形態との様々な類似点を備えているので、選択された態様についてのみ以下に説明する。(段落【0059】」 )「[092]図示するように、カテーテルアセンブリ1310は、細長いカテーテルチューブすなわちカテーテル本体1311を備えている。カテーテル本体1311は、近位端1311Aから遠位端1311Bまで延在する複10 数の内腔を形成する。カテーテル本体1311の近位端1311Aは、分岐点1320に動作可能に取り付けられており、分岐点1320は、延長レッグ、すなわち、動脈延長レッグ1316、静脈延長レッグ1318、
および、そこを通る流体の圧力注入に適した圧力延長レッグ1319に動作可能に取り付けられている。カテーテル本体内腔および延長レッグの数15 ならびにそれらの構成は、本明細書で図示され説明されるものから変わり得る。例えば、図21では直線状に示されているものの、一実施形態では、
動脈レッグ1316および静脈レッグ1318は、それぞれU字状の形態に湾曲していてもよい。これらおよび他の変形形態も考えられる。
「分岐点」には、2つ以上の流体経路を提供するハブが含まれることにも留意された20 い」(段落【0060】)「[093]引き続き図21を参照しつつ、図22Aおよび図22Bを参照する。
図22Aおよび図22Bは、本実施形態にしたがったカテーテルアセンブリ1310の遠位部分と、その細長いカテーテル本体チューブ1311と、
を示している。図示するように、カテーテル本体1311の遠位部分は、
25 図1〜5に示される特徴(上述した)と同様の特徴を備えており、カテーテル本体のより近位部分の円柱状に平坦化された長円形形状の外面とは22対照的なテーパ状の遠位先端領域1350と、静脈側方開口1360と、
動脈側方開口1362と、を備えている。静脈側方開口1360および動脈側方開口1362は、それぞれの動脈内腔および静脈内腔と流体連通する。動脈内腔および静脈内腔は、以下で言及され、カテーテル本体1315 1によって形成される。静脈側方開口1360および動脈側方開口1362の各々は、上述と同様に、カテーテルチューブ1311の長手方向軸線に対する角度方向成分を、
(動脈遠位開口を介して)カテーテルチューブに入るか、
(静脈遠位開口を介して)カテーテルチューブから出る流体に付与するように、角度付けられたスカイブによって形成される。(段落【00」10 61】)「[094]第3の内腔遠位端開口1364は、遠位先端領域1350の遠位端のところに備えられ、以下で説明するように、カテーテル本体1311によって形成される第3の内腔に流体連通する。さらに、複数の側穴1342が、遠位先端領域1350の近位にあるカテーテル本体1311に備え15 られる。これらの側穴1342は、動脈内腔および静脈内腔のうちの一方と流体連通する。そのような側穴は、静脈側方開口1360および動脈側方開口1362に加えて、代替の流体路を提供する。様々な側方穴および側穴開口の特定の構成は、本明細書に図示され説明されるものから変わり得ることに留意されたい。(段落【0062】」 )20 「[095]図23A〜23Cは、本実施形態にしたがったカテーテル本体1311の内腔構成を示している。図示するように、実質的に平坦化された長円形断面構成を有する外周すなわち外壁1386は、カテーテル1311の外側部分を形成する。実際、外壁1386は、第1の動脈内腔1312と第2の静脈内腔1314と第3の内腔1315とを上述したように境25 界付ける。セプタム1390は、外壁1386と協働して、これらの内腔1312、1314、1315の特定の形状形態を形成し、内腔1312、
231314、1315の各々は、カテーテル本体1311の長手方向長さだけ実質的に延在する。図23Bは、動脈内腔1312および静脈内腔1314が動脈側方開口1362および静脈側方開口1360と連通する態様を示しており、一方、図23Cは、第3の内腔1315が、遠位先端領5 域1350上で、遠位端開口1364に向けて遠位方向に延在する態様を示している。(段落【0063】」 )「[096]図24は、本実施形態にしたがったカテーテル本体1311の断面内腔構成に関するさらなる詳細を示している。図示するように、カテーテル本体1311の平坦化された長円形の外壁1386およびセプタム110 390は、上述したように、動脈内腔1312、静脈内腔1314および第3の内腔1315を形成する。図24は、第3の内腔1315が、実質的に丸い断面形状を有しており、一実施形態では、典型的には圧力注入に関連する流体圧力(例えば、一例では、約300psi)に耐えるように構成されていることを示している。(段落【0064】」 )15 「[097]動脈内腔1312および静脈内腔1314の断面構成は、図24に1389で示される中心線(「CL」)を横断するように互いの鏡像投影である。特に、動脈内腔1312および静脈内腔1314の両方は、変形したインゲン豆状の断面内腔プロファイル(本明細書では、変形腎臓形状とも呼ぶ)を断面に形成する。より詳細には、動脈内腔1312および静脈20 内腔1314の各々は、凹形部分すなわち凹部1394を断面に形成する。
凹部1394は、腎臓形内腔形状に寄与する。内腔1312、1314の各々についての凹部1394は、図24に示されるように、図24の視点から見て、カテーテル本体1311の交差軸線1388の上方に配置される。内腔1312、1314の各々の凹部1394を交差軸線1388の25 上方に配置することによって、凹部が交差軸線の中心に位置するのとは対照的に、変形腎臓形構成がもたらされる。ただし、凹部の大きさおよび配24置は、本明細書に図示され説明されるものから変わり得ることが理解される。実際、一実施形態では、凹部は、略腎臓形(変形していないインゲン豆形)形状を形成するように位置決めされ得る。(段落【0065】」 )「[098]内腔1312、1314の各々は、それぞれの凹部1394と対向5 してアーチ状部分すなわち主円弧1398を備えている。主円弧1398は、外壁1386に隣接する各内腔の外側部分を形成する。各内腔1312、1314の主円弧1398は、頂部角部1396Aおよび底部角部1396Bによっていずれかの端部で境界付けられる。この構成は、頂部角部1396Aを主円弧1398と凹部1394との間に介在させる。頂部10 角部1396Aおよび底部角部1396Bは、実質的に丸く形成されており、動脈内腔1312および静脈内腔1314を通る流体の層流を確実に生じさせ、したがって、流体流れの停滞領域が生じることを望ましく防止する。(段落【0066】」 )「[099]図24に示されるように、動脈内腔1312と静脈内腔1314と15 第3の内腔1315とを分離するためにセプタム1390が備えられる。
セプタム1390は、中心線1389上に中央配置されている。セプタム1390は、交差軸線1388から(図24に示される視点から見て)下方に向けて全体的に延在する単一化部分1390Aと、交差軸線から上方に向けて全体的に延在する分岐部分1390Bと、を備えている。特に、
20 セプタム1390は、内腔の上述の形状を形成するのを補助する。例えば、
セプタム1390の単一化部分1390Aは、砂時計状の断面形状を全体的に形成して、丸い底部角部1396B、ならびに、動脈内腔1312および静脈内腔1314の両方の内側部分を形成するのを補助する。一方、
セプタムの分岐部分1390Bは、外壁1386と協働して、第3の内腔25 1315の断面形状と、動脈内腔および静脈内腔の凹部1394と、を形成する。セプタム1390の略砂時計状の構成は、セプタムに構造的な強25度を追加することにも留意されたい。(段落【0067】」 )「[0100]本実施形態における図24に示される断面構成は、カテーテル本体1311の近位端1311Aから動脈側方開口1362および静脈側方開口1360まで遠位方向に延在するが、他の実施形態では、これは変5 形され得る。直上で説明されたカテーテル本体1311の様々な断面の特徴は、大きさ、形状および位置が、本明細書で図示され説明されるものから変わり得ることに留意されたい。(段落【0068】」 )「[0101]一実施形態によれば、上述した様々な特徴には、次の断面寸法が含まれる。外壁1386の外周は、約0.195インチの幅と、約0.110 28インチの高さと、を備える。第3の内腔の直径は、約0.040インチである。セプタム1390の単一化部分1390Aの厚みは、約0.015インチである。セプタム1390の分岐部分1390Bの各枝部分の厚みは、それぞれの凹部1394の中点のところで約0.010インチである。外壁の外面と、第3の内腔の最も近い位置と、の間の距離は、約0.15 010インチである。外壁の厚みは、主円弧1398の略中点のところで約0.015インチである。同一の動脈内腔1312および静脈内腔1314の各凹部の半径は、第3の内腔の中心点から計測して約0.030インチである。各頂部角部1396Aの半径は、約0.012インチである。
各底部角部1396Bの半径は、約0.020インチである。各主円弧の20 半径は、約0.052インチである。頂部角部と対向する凹部の端部での半径(交差軸線1388のまわりのところ)は、約0.030インチである。外壁の外面と、その底部角部の近傍の動脈内腔または静脈内腔の最も近い位置と、の間の距離は、約0.010インチである。本実施形態の内腔構成によって、そこを通る流体流れが、12フレンチサイズのカテーテ25 ルのみの大きさを占めつつ、既知の13フレンチサイズのカテーテルと等しくなることができることに留意されたい。勿論、カテーテル本体および26そのそれぞれの内腔の大きさは、必要/要求に応じて拡縮され得る。(段」落【0069】)「[0102]一実施形態におけるカテーテル本体1311は、適切な熱可塑性材料(例えば、ポリウレタン)を含有する。いくつかの実施形態では、カ5 テ ー テ ル チ ュ ー ブ を 形 成 す る た め に 、 TECOFLEX ( 登 録 商 標 )、
CARBOTHANE ( 登 録 商 標 ) CHRONOFLEX ( 登 録 商 標 ) お よ び、
QUADRIFLEX(登録商標)との商標で販売されている熱可塑性ポリウレタンが使用されてもよい。他の適切な生体適合性材料も使用され得ることに留意されたい。一実施形態では、カテーテルチューブ12は、ショアD10 硬度が60のポリウレタンを含有しており、このポリウレタンは、ねじれの防止を補助し、そこを通る圧力注入を可能にし、例えば先の尖った透析計画において、患者の体への挿入性を向上させる。他の非限定的な実施形態では、カテーテルチューブの硬度は、約55Dから約65Dまで変わり得る。カテーテル本体を形成する材料についての望ましい特性には、一実15 施形態では、患者の体に挿入した後、材料が柔らかくなるような熱感受性や、カテーテルアセンブリが受ける圧力注入の圧力に耐えるための適切なポリマー強度が含まれる。(段落【0070】」 )「[0103]一実施形態では、遠位先端領域1350の無傷先端は、ショアA硬度が85のポリウレタンを含有する。非限定的な実施形態では、無傷先20 端は、ショアA硬度が85から75まで変動してもよい。一実施形態では、
カテーテル本体1311および無傷先端の材料は、X線撮像においてカテーテルアセンブリを可視化するために、X線透過性材料(例えば、バリウムまたはタングステン)を含有していてもよい。(段落【0071】」 )「[0104]図25は、他の実施形態にしたがったカテーテル本体1311を25 示している。動脈内腔1312および静脈内腔1314は、図24に示されるものと異なる断面構成を備えている。図示するように、実質的に同一27の動脈内腔1312および静脈内腔1314の各々は、主円弧1398と、
それに対向する、セプタム1390によって形成される平坦化された側部1402と、を断面で形成する。(段落【0072】」 )「[0105]図26は、他の実施形態にしたがったカテーテル本体1311を5 示している。動脈内腔1312および静脈内腔1314は、図24に示されるものと異なる断面構成を備えている。図示するように、断面が実質的に丸い形状の第4の内腔1410が備えられている。さらに、実質的に同一の動脈内腔1312および静脈内腔1314の各々は、主円弧1398と、それに対向する、セプタム1390によって形成される凸部141410 と、を断面で形成する。特に、セプタム1390は、中央に配置された単一化部分1390Aと、第1の分岐部分1390Bおよび第2の分岐部分1390Cと、を備えている。第1の分岐部分1390Bおよび第2の分岐部分1390Cは、単一化部分のいずれかの側に配置されており、第3の内腔1315および第4の内腔1410を大きく形成している。(段落」15 【0073】)「[0115]本発明の実施形態は、その趣旨および本質的な特性から逸脱することなく他の具体的な形態でも実施され得る。説明された実施形態は、あらゆる点で、例示に過ぎず、限定ではないものとして捉えられるべきである。したがって、本発明の実施形態の範囲は、上述の説明ではなく、添付20 の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および均等物の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に包含される。」段落【0083】)28エ 図面【図1】510 【図14A】 【図14B】15【図15A】 【図15B】2029【図16A】 【図16B】5【図17A】 【図17B】1015【図18A】 【図18B】202530【図19A】 【図19B】510 【図20A】 【図20B】15【図21】202531【図22A】 【図22B】510 【図23A】 【図23B】15【図23C】202532【図24】 【図25】510 【図26A】 【図28】15? 本願発明の技術的意義20 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載(本願発明)及び前記?の本願明細書等の記載によれば、本願発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。
ア 技術分野本願発明は、
「マルチ内腔構造を備えるカテーテル」に関するもので、特25 に、腎機能代替療法又は他の適切な治療の間に患者の血管系又は他の血管にアクセスするのに使用するためのカテーテルアセンブリを対象として33いる(段落【0001】及び【0002】。
)イ 課題を解決するための手段本願発明は、対向する平坦な側部を有する長円形の断面形状を有する外面(1386)を含み(請求項1、段落【0063】、第1の内腔(13)5 14)と第2の内腔(1312)と第3の内腔(1315)とを形成する細長いカテーテルチューブ(1311)を備え、前記第1の内腔及び前記第2の内腔の各々は、前記第3の内腔に隣接して配置される凹部(1394)を断面に備え、前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、第1の角部(頂部角部1396A)および第2の角部(底部角部1396B)10 を断面に備え、前記凹部は、前記第1の角部側にオフセットされた形態で前記第1の角部と前記第2の角部との間に介在し、前記第3の内腔は、実質的に円形の断面形状を備える構成を有する(請求項1、 【0004】段落 、
【0065】及び【0066】)ものである。
ウ 本願発明の効果15 本願発明の内腔構成によって、内腔を通る流体流れが、12フレンチサイズのカテーテルのみの大きさを占めつつ、既知の13フレンチサイズのカテーテルと等しくなることができるという効果を奏する(段落【0069】。
)2 カテーテルの技術分野における技術常識20 本件においては、カテーテルの内腔及び外径の断面形状が問題となることから、これらに関して、カテーテルの技術分野において当業者が一般に認識している技術常識について検討する。
? 本願の優先日前の公知文献の記載平成23年(2011年)4月14日に公開された乙4文献は、名称を「低25 再循環性および可逆性を提供する設計を有する医療用カテーテル」とする特許出願に係るもので、
発明の詳細な説明」及び「図面」として、別紙2のと34おりの記載がある。
平成8年(1996年)9月17日に特許された乙5文献は、名称を「CATHERTER WITH OVAL OR ELLIPTICAL LUMENS(卵形又は楕円形の内腔を備えたカテーテル) とする特許に係るもので、
」 別紙3のとおりの記載が5 ある。
平成2年(1990年)8月20日に公開された乙6文献は、名称を「多重ルーメンカテーテルおよびその製造方法」とする特許出願に係るもので、
発明の詳細な説明」及び「図面」として、別紙4のとおりの記載がある。
平成13年(2001年)9月4日に公表された乙7文献は、名称を「バ10 ルーンカテーテルおよびその使用方法」とする特許出願に係るもので、
発明の詳細な説明」及び「図面」として、別紙5のとおりの記載がある。
? カテーテルの内腔の断面形状カテーテルの内腔の断面形状に関して、引用文献1(甲1)の段落【0013】)に、円形、楕円形、D字形断面形状、又は、それらの任意の組み合わ15 せを含む一つ以上の断面形状を有することができることが記載されているほか、乙4文献の段落【0063】(別紙2の【0063】)には、長楕円形、
腎臓形、D型、円形、パイ型など、目的に対して適切な任意の断面形状とすること、乙5文献の5欄4〜62行(別紙3の?)には、卵型、楕円形、長円形となすこと、乙6文献の7頁右下欄3〜13行、10頁右上欄14行な20 いし左下欄5行(別紙4の?、?)には、略C字形、D字状となすこと、乙7文献の段落【0030】(別紙5の【0030】)には、非円形断面、円形、
楕円形、正方形、台形、菱形、その他の任意の断面形状となすこと、がそれぞれ記載されている。
これらによれば、カテーテルの内腔の断面形状に関して、円形又は非円形25 などの様々な形状を選択し得ることは、本願の優先日前の技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認められる。
35? カテーテルの外径と内腔の形状との関係カテーテルの外径と内腔の形状に関して、乙5文献の2欄35ないし42行(別紙3の?)の記載から、内腔における鋭い隅や流量制限領域を最小とすることと内腔の断面積を最大にすること、同様に、小さい外径とすること5 と壁のたわみを最小にすることは、一方を追求すると他方が犠牲になるトレードオフ(バランス)の関係にあることが認められる。
また、乙6文献の7頁右下欄3ないし13行、10頁右上欄6ないし14行、10頁右上欄14行ないし左下欄5行(別紙4の?ないし?)の記載から、カテーテルの外径の重要性が小さい場合には、乙6文献の第9図(別紙10 4の第9図)のようにD字状の横断面を備えて、内腔の断面積とカテーテルの断面積との比率を小さくすることができることが認められ、カテーテルの外径の重要性が大きい場合には、第4図、第5図(別紙4の第4図、第5図)のようにC字形の横断面を備えて、内腔の断面積とカテーテルの断面積との比率を大きくする必要があることが認められる。
15 さらに、乙7文献の段落【0030】【0044】及び【0045】、 (別紙5の段落【0030】【0044】及び【0045】、 )の記載から、カテーテルを、最小の外径とし、他方で、内腔の最大サイズの断面積(最大流通容量)を有するように構成するためには、非円形の断面形状とすることが有用であると認められる。
20 以上の記載から共通して理解できることとして、カテーテルの外径と内腔の断面形状はトレードオフ(バランス)の関係にあり、外径の重要性が大きく、カテーテルの外径を小さくする必要がある場合は、内腔の流量を確保するために、内腔の断面積とカテーテルの断面積との比率を大きくし、内腔を非円形(鋭い隅などを有する)とすること、逆に、外径の重要性が小さく、
25 カテーテルの外径を大きくし得る場合は、カテーテルの剛性を確保するために、内腔の断面積とカテーテルの断面積との比率を小さくし、内腔を円形(鋭36い隅や流量制限域を小さくするような形状)とすることは、本願の優先日前の技術常識(以下「技術常識2」という。)であったと認められる。
そして、このような技術常識2から、内腔の断面形状は、カテーテルの用途に応じて許容される外径の大きさにより制限を受けるものではあるが、他5 方で、カテーテルの外面が円形であるか長円形であるかなどの外面形状によって内腔の断面形状が必ずしも影響を受けるものではないことが認められる。
このことは、乙5文献の図6と図7(別紙3の図6と図7)において、カテーテルの外面形状が円形であるか長円形であるかによらず、同じ内腔の形状を選定していることと整合する。そうすると、カテーテルアセンブリにおい10 て、外面形状と内腔断面形状は、それぞれ独立に設計することが可能であることが認められる。
3 取消事由1(本願発明及び副引用発明の認定の誤り)について? 本願発明の認定(「オフセット」の意義)について原告は、本件審決は、本願発明の「オフセット」という文言の解釈を誤り、
15 本願発明の認定に誤りがあると主張するので、
「オフセット」という文言の解釈及び本願発明の認定について検討する。
発明の要旨認定の方法発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載に基づいて行うべきであり、
発明が属する技術分野における技術常識を考慮した通常の意味内容によ20 り特許請求の範囲の記載を解釈するのが相当である。もっとも、特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるものの、そのような定義又は説明がない場合には、上記のとおり解釈するのが相当である。
25 イ 本願発明の認定(ア) 特許請求の範囲の記載37本件訂正後の特許請求の範囲請求項1(本願発明)には、次の記載がある。
a 第1の内腔と第2の内腔と第3の内腔とを形成する細長いカテーテルチューブを備え、(構成要件Bの一部)5 b 前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、前記第3の内腔に隣接して配置される凹部を断面に備え、(構成要件C)c 前記第1の内腔および前記第2の内腔の各々は、第1の角部および第2の角部を断面に備え、(構成要件D)d 前記凹部は、前記第1の角部側にオフセットされた形態で前記第110 の角部と前記第2の角部との間に介在し、(構成要件E)(イ) 特許請求の範囲の記載に基づく「オフセット」の解釈構成要件B(前記(ア)a)によれば、細長いカテーテルチューブには、
第1の内腔、第2の内腔及び第3の内腔とが形成されており、構成要件C及びD(前記(ア)b、c)によれば、第1の内腔及び第2の内腔の各々15 は、第1の角部、第2の角部、及び第3の内腔に隣接して配置される凹部を備える断面形状を有しているものと認められる。
構成要件E(前記(ア)d)には、
「前記凹部は、前記第1の角部側にオフセットされた形態で」という記載があるところ、「形態」とは、
「ありさま。形に現れた姿。形式。(広辞苑第7版)を意味するから、この記」20 載は、第1の内腔及び第2の内腔の断面形状を構成する凹部が、第1の角部側にオフセットされたありさまや姿を定めているものと認められる。
そして、英語で「offset」という語は、機械の分野では「片寄り、オフセット〈障害物を避けるために設けたパイプなどの曲がった部分〉(軸;などの)ずれ、片寄り」を意味するものとされ(ジーニアス英和大辞典、
25 乙1) 日本語の機械用語としても、
、 「オフセット」という語は、
「offset」を指し、
「食い違い、片寄り、心違い、段違いを指す言葉」とされる(図38解機械用語辞典第3版、乙2) そうすると、
。 「オフセット」という語は、
一般的に「ずれ」又は「片寄り」を意味するものと認められ、このような通常の意味内容に従えば、構成要件E(前記凹部は、前記第1の角部側にオフセットされた形態で前記第1の角部と前記第2の角部との間に5 介在し、(前記(ア)d)により、
) 「凹部が、第1の角部側にずれた又は片寄ったありさまや姿で第1の角部と第2の角部との間に介在すること」が示されているものと理解することができる。
これらを踏まえると、本願発明において、第1の内腔、第2の内腔及び第3の内腔とが形成された細長いカテーテルチューブにおいて、第110 の内腔及び第2の内腔の各々は、第1の角部、第2の角部、及び第3の内腔に隣接して配置される凹部を備える断面形状を有しており、構成要件Eの「オフセット」という語により、そのような断面形状において、
「凹部が、第1の角部側にずれた又は片寄ったありさまや姿で第1の角部と第2の角部との間に介在すること」を意味しているものと認められ15 る。
(ウ) 本願明細書等の記載本件訂正後の請求項3は「請求項1に記載のカテーテルアセンブリであって、 前記第3の内腔は、該第3の内腔を通る流体の圧力注入に耐えるように構成されたカテーテルアセンブリ。」であり、請求項4は、「請20 求項3に記載のカテーテルアセンブリであって、前記カテーテルチューブは、さらに、前記第3の内腔に流体連通する遠位端開口を備えるカテーテルアセンブリ。」であり、「遠位端開口」という用語は、請求項4で用いられている。
本願明細書等において、
「オフセット」という文言は、 【0052】段落25 ないし【0055】【0057】及び【0058】で、遠位端開口の配、
置を表現する用語として記載され、
「遠位端開口(略)が(略)カテーテ39ル本体(略)の中央軸線から軸線方向にオフセットされている。」と説明されている。
「オフセット」という文言が記載された上記段落は、それぞれ、図14Aないし14D(段落【0052】、図15Aないし15D)(段落【0053】、図16Aないし16D(段落【0054】、図1) )5 7Aないし17D(段落【0055】、図19Aないし19D(段落【0)057】)及び図20Aないし20D(段落【0058】)に係る実施例を説明するものであるところ、これらの図のうち遠位端開口の位置が示されている図14B、15B、16B、17B、19B及び20Bから看取される遠位端開口とカテーテル本体の中央軸線との位置関係からみ10 て、上記各段落の記載においては、遠位端開口が、カテーテル本体の中央軸線の中央から「ずれ」て又は「片寄」っていることを「オフセット」と表現していると解釈するのが相当であると認められる。
なお、図18Aないし18Dに係る実施例において、遠位端開口の位置を示す図18Bには、遠位端開口が中央軸線上の中央に配置されてい15 ることが図示されているところ、この実施例に対応する段落【0056】では、
「遠位端開口(略)が(略)カテーテル本体(略)の中央軸線から軸線方向に対して中央に配置されている。 と説明されており、
」 前記の段落と異なり、オフセット」「 という文言が用いられておらず、このことは、
「オフセット」という文言が、上記のように、中央からから「ずれ」て20 又は「片寄」っていることを表現していると解することに整合する。
そして、本願明細書等全体を見ても、
「オフセット」という語が、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されているとは認められない。
そうすると、本願発明の「オフセット」という用語は、前記(イ)におい25 て認定したとおり、通常の意味内容として解釈すべきである。
(エ) 「オフセット」におけるずれ又は片寄りの基準40前記(イ)のとおり、本願発明の「オフセット」とは、断面形状において、
「凹部が、第1の角部側にずれた又は片寄ったありさまや姿で第1の角部と第2の角部との間に介在すること」を意味しているものと認められるところ、
「ずれ」とは、
「基準となるもの…からはずれていること」(乙5 3)であるから、ずれの基準について検討する。
本願発明の請求項1には、ずれの基準については明示されていない。
発明の詳細な説明を見ると、本願発明の実施例に当たる【図24】に係る実施例の説明は、本願明細書等の段落【0059】ないし【0071】に記載されており、いずれの段落においても、
「オフセット」の語は用い10 られていないものの、段落【0065】の「内腔1312、1314の各々についての凹部1394は、図24に示されるように、図24の視点から見て、カテーテル本体1311の交差軸線1388の上方に配置される。内腔1312、1314の各々の凹部1394を交差軸線1388の上方に配置することによって、凹部が交差軸線の中心に位置する15 のとは対照的に、変形腎臓形構成がもたらされる。 という記載を踏まえ」ると、
「凹部1394」の交差軸線1388の中心位置を「ずれ」の基準としているものと解することができる。本願発明では、交差軸線は特定されていないが、
「長円形の断面形状を有する外面」を備えるカテーテルにおいて交差軸線を観念できることは自ずと明らかであり、これを基準20 とし、
「オフセット」は、このような基準からのずれを意味すると理解することができる。このような理解は、本願発明の「オフセット」が、
「凹部が、第1の角部側にずれた又は片寄ったありさまや姿で第1の角部と第2の角部との間に介在すること」を意味しているものと認められるという、上記(イ)の解釈とも整合するものと認められる。
25 ウ 原告の主張に対する判断(ア) 原告は、本願明細書等の【図24】に基づき、本願発明の「第1の角41部側に『オフセット』された形態」とは、第1の内腔及び第2の内腔の各々に配置される凹部の曲線形状において、第1の角部側の立ち上がりの傾斜が、反対側よりもより急であることを意味し、本願明細書等の段落【0069】の「各頂部角部1396Aの半径は、約0.012イン5 チ」及び「頂部角部と対向する凹部の端部での半径は、約0.030インチ」という記載は、原告が主張する上記オフセットの解釈と整合する、
と主張する(前記第3、1〔原告の主張〕?)。
(イ) しかしながら、発明の要旨認定は、前記アのとおり、特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常とは異なるものと10 して定義又は説明されているような特段の事情のない限り、発明が属する技術分野における技術常識を考慮した通常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈して行うのが相当である。本願発明においては、
「オフセット」という文言の意味内容について、本願明細書等において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されているような特段15 の事情はないから、その意味は、通常の意味に従って特許請求の範囲の記載を解釈すべきである。原告の上記主張は、
「オフセット」という用語の通常の意味や特許請求の範囲に基づく解釈とは関係なく、発明の詳細な説明や図面の記載のみに基づいて、特許請求の範囲の「オフセット」の意味の解釈を行うものであり、採用することができない。
20 また、原告の指摘する本願明細書等の【図24】及び段落【0069】は、いずれも実施例の一つを説明するものであり、その具体的な記載によって特許請求の範囲が限定されると解することはできない。さらに、
特許出願の願書に添付された図面は、当該発明の技術内容を説明する便宜のために描かれるものであり、設計図面に要求されるような正確性を25 もって描かれているとは限らない。そのため、本願明細書等の【図24】において、凹部1394の左右における曲線形状にわずかな相違がある42ように見えても、それに基づいて、特許請求の範囲(本願発明)の「第1の角部側に『オフセット』された形態」という文言が、第1の内腔及び第2の内腔の各々に配置される凹部の曲線形状において、第1の角部側の立ち上がりの傾斜が、反対側よりもより急であることを意味すると5 解釈することはできない。
したがって、原告の主張を採用することはできない。
エ 本件審決の認定の誤りの有無そうすると、本件審決による本願発明の認定に誤りはない。
? 副引用発明の認定について10 ア 副引用発明(図17実施例)の認定引用文献1(甲1)には、次のとおりの【図17B】が記載されている。
1520 引用文献1(甲1)の段落【0054】には、図17Aから図17Dまでの説明として、「末端開口964は末端領域850の末端にも画定されており、カテーテル本体11の中央軸線から軸方向にオフセットしている。」という記載がある。また、引用文献1(甲1)の【図17B】には、
第3の管腔に相当する964が、カテーテル本体の中心よりもカテーテル25 本体の端に寄ったところに存在することが示されており、カテーテル本体の中心と第3の管腔(964に相当)の中心を結ぶ軸線に沿って考えると43するならば、第3の管腔は、カテーテル本体の中心から、上記軸線に沿って、端の方にずれた位置に(換言すれば、オフセットして)配置されているということができる。そして、第1の管腔12(960に相当)及び第2の管腔14(962に相当)の断面形状は、第3の管腔が存在する部分5 においては、第3の管腔の外周の円弧を避けるように形成された凹状部分を形成しており、隔壁990に沿った直線状部分は、上記の凹状部分と連結され、上記の円弧状部分も、カテーテルの外周側に張り出した角状部分により、上記の凹状部分と連結されている。上記の円弧状部分と上記の直線状部分は、カテーテル本体の中心を挟んで、第3の管腔が存在するのと10 は反対側において、カテーテルの外周側に張り出した角状部分により、連結されている。
そうすると、副引用発明を「第1の管腔12および第2の管腔14がカテーテル本体11の直径方向の隔壁990を介して対向配置されており、
第1の管腔12および第2の管腔14の断面形状は、各々、カテーテル本15 体11の円形断面に沿った円弧状部分と、上記隔壁990に沿った直線状部分と、カテーテル本体11の中心軸から軸方向にオフセットして配置された第3の管腔の円形断面に隣接し、当該第3の管腔の円形断面に沿った凹状部分と、上記円弧状部分と上記直線状部分との間並びに上記円弧状部分と上記凹状部分との間の角状部分とを有する断面形状となっている」と20 した本件審決の認定(本件審決第6、1〔本件審決18頁1〜9行目〕には、誤りはないというべきである。
イ 原告の主張に対する判断(ア) 原告は、引用文献1(甲1)の図17実施例の凹状部分の曲線形状は、
左右対称であり、少なくとも二つの角部における傾斜の違いを読み取る25 ことはできないため、図17実施例の凹状部分は、
「オフセット」された形態であるとはいえないとした上で、副引用発明の認定について、凹状44部分が左右対称の形状であることを加え、第3の管腔の配置は、
「オフセット」との用語を使用せずに行うべきであるとし、
「第1の管腔12および第2の管腔14が…カテーテル本体11の中心軸から軸方向にずれて配置された第3の管腔の円形断面に隣接し、当該第3の管腔の円形断面5 に沿った左右対称の凹状部分と、…を有する断面形状」と認定されるべきであると主張する(前記第3、1〔原告の主張〕?)。
(イ) しかしながら、凹状部分の曲線形状の左右の形状は、本願発明において特定されておらず、本願発明との対比に必要な事項とはいえないから、
引用発明の認定に当たり、凹状部分について左右対称の形状であるこ10 とは、これを付け加えるべき事項ということはできない。また、前記?ウ(イ)で述べたとおり、特許出願の願書に添付された図面は、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らないから、本願明細書等の【図24】から、凹部1394の左右における曲線形状が相違していることを認定することはできないし、引用文献1(甲1) 【図の15 17B】から、第1の内腔及び第2の内腔の各々に配置される凹部の曲線形状が左右対称であることも認定することはできない。
原告が主張する認定の「カテーテル本体11の中心軸から軸方向にずれて配置され」における「ずれて」は、
「オフセット」という語の一般的な意味そのもの(前記?イ(イ))であり、
「オフセット」という語とのそ20 の意味は辞典類に掲載された一般的なものであるから、
「オフセット」という用語を使用せずに同義の「ずれ」という用語に換言して認定しなければならない理由はない。
したがって、原告の主張を採用することはできない。
ウ 本件審決の認定の誤りの有無25 そうすると、本件審決による副引用発明の認定に誤りはない。
? 取消事由1の成否45以上によれば、取消事由1には理由がない。
4 取消事由2(相違点の認定の誤り)について? 長円形の断面形状を有する外面についての認定引用文献1(甲1)の段落【0040】及び【図8A】の記載は、次のと5 おりである。
「【0040】ここで、カテーテル本体11に関する様々な細部を描写する図8Aから図8Cを参照する。詳しくは、図8Aは末端領域50の基部近くの点におけるカテーテル本体11の断面図を示すものであり、第1の管腔12と第2の管10 腔14と第3の管腔15とを示している。3個の管腔12、14、15は、
カテーテル本体11の長手方向の長さに沿って画定してあり、外周縁すなわち壁86によって、境界付けられている。本実施形態におけるカテーテル本体11の外壁86は横長の形状を画定しており、第1の管腔12と第2の管腔14とを交差してカテーテル本体の幅にまたがる横軸88を含む。第3の15 管腔をそれらの下側に配置した状態での第1の管腔12と第2の管腔14相互の隣接配置は、カテーテル本体11のねじれを介する管腔の偶然の閉塞に抵抗する頑丈な管腔構成をもたらす。加えて、カテーテル本体11の横長の断面構成により管腔12、14、15に対し円形の断面形状を用いることができるようになり、それらは流体の流れの点で『D』形状または他の形状の20 管腔よりもかなり効率的である。」「【図8A】25」46引用文献1(甲1)の段落【0040】及び【図8A】によれば、引用発明1の「カテーテル本体11」の「横長の断面構成を有する外壁86」は、
対向する平坦な側部を有する長円形の断面形状といい得るものと認められるから、本願発明の「カテーテルチューブ」の「対向する平坦な側部を有する5 長円形の断面形状を有する外面」に相当する(本件審決第5、1?〔本件審決16頁〕)。。したがって、本件審決が、「対向する平坦な側部を有する長円形の断面形状を有する外面を含」むことを、本願発明と引用発明1の一致点として認定したことに誤りはない。
? 原告の主張に対する判断10 ア 原告は、引用文献1(甲1)の「カテーテル本体11の横長の断面構成により管腔12、14、15に対し円形の断面形状を用いることができるようになり、それらは流体の流れの点で『D』形状または他の形状の管腔よりもかなり効率的である」(段落【0040】)という記載は、カテーテルチューブの外面の形状により、用いられる内腔の断面形状が変化し得る15 ことを示しているとし、内腔の断面形状とカテーテルチューブの外面の形状は一体として相違点として認定されるべきであるとして、対向する平坦「な側部を有する長円形の断面形状を有する外面を含」むことは、一致点ではなく相違点として認定されるべきであると主張する(前記第3、2〔原告の主張〕。
)20 しかしながら、カテーテルの外径と内腔の断面形状はトレードオフ(バランス)の関係にあるという技術常識2を踏まえると、引用文献1(甲1)の上記記載は、カテーテルの外径の重要性が小さい場合について言及していることは、当業者にとって自ずと明らかであり、このような場合においては、横長の断面構成という大きな外径を採用し、その結果、内腔の断面25 積を確保するために鋭い隅部など流量制限領域を伴う断面形状とせず、円形の断面形状を採用したとしても十分に内腔の断面積を確保できること47を示唆しているにすぎないのであって、 【0040】段落 の上記記載から、
カテーテルチューブの外面の形状に依存して内腔の断面形状が変化し得ると理解することはできない。
イ また、原告は、カテーテルの内腔は、カテーテルの用途に起因する要求5 (使用態様に適した強度及び内部を流通する液体の流量が含まれる。を考)慮し、外面形状の範囲内に収まるよう設計されるものであり、仮に、強度や流量を無視するのであれば、内腔の断面形状をカテーテルの外面形状から独立して自由に設計することも可能であるが、そのような設計は、カテーテルの業界における現実の要請から乖離しており、カテーテルの内腔の10 断面形状は、外面の形状に制約され、そのため、両者は、独立に設計することが可能であるとはいえないと主張する(前記第3、 〔原告の主張〕。
2 )しかしながら、カテーテルの外面形状を越えて内腔断面を設定することは物理的に不可能であるから、カテーテルの内腔は、外面形状の範囲内に収まるよう設計されるものであり、この意味で、外面形状の制約を受ける15 ものではあるが、より重要なのは、カテーテルの用途や使用態様に適した強度と、内部を流通する液体の流量のバランスを確保することであり、このことは、技術常識2から明らかであり、むしろこのバランスの制約の下で、カテーテルの外径や内腔の断面形状を設計するものであると解するのが相当であるから、専ら外面形状の制約により、内腔の断面形状を設計す20 るものであるとの原告の主張には理由がない。
ウ 原告は、引用文献1(甲1)の【図17B】の実施例のカテーテルチューブの外面形状は円形であり、本願発明のような長円形ではなく、カテーテルの内腔の断面形状は外面の形状に制約されるから、長円形であるか否かという点を、本願発明と引用発明1の相違点として認定すべきであると25 主張する(前記第3、2〔原告の主張〕。
)しかし、前記?のとおり、
「対向する平坦な側部を有する長円形の断面形48状を有する外面を含」むことは本願発明と引用発明1の相違点ではなく一致点であるから、原告の上記主張は、採用することができない。
? 取消事由2の成否以上によれば、本件審決による相違点の認定に誤りはなく、取消事由2に5 は理由がない。
5 取消事由3(相違点の判断の誤り)について? 相違点の判断について引用文献1(甲1)の段落【0013】には、カテーテルの第1の管腔と第2の管腔の断面形状について、
「円形、楕円形、D字形断面形状、またはそ10 れらの任意の組み合わせを含む1つ以上の断面形状を有することができる。」という記載があり、カテーテルの内腔の断面形状が様々な形状を選択し得ることは、技術常識技術常識1)でもあるから、引用発明1において、円形以外の断面形状を採用することの動機付けがあるといえる。
また、カテーテルの外径と内腔の断面形状はトレードオフ(バランス)の15 関係にあることが技術常識技術常識2)であることを踏まえると、外径の重要性が大きく、カテーテルの外径を小さくする必要がある場合には、円形ではなく、D形状等その他の形状を採用するのであって、そのような選択は、
一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用というべきものであり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない20 というべきである。
そうすると、引用発明1につき、カテーテルの外径を小さくする必要がある場合には、具体的な形状として、引用文献1(甲1)の【図17B】に示されたように、第1の管腔と第2の管腔の断面に、第3の管腔を避けるための凹部形状を設ける断面形状を採用して、相違点に係る本願発明の構成とな25 すことは当業者にとって容易になし得ることであったと認められる。
? 原告の主張に対する判断49ア 管腔の断面形状として円形を採用することについて(ア) 原告は、引用文献1(甲1)の段落【0040】には、横長の断面構成においては、管腔の断面形状について、円形が他の形状よりも効率的であることが明記されており、このような記載に接した当業者が、あえ5 て効率が悪くなるような、円形以外の、凹部を有するような形状を採用することについては、阻害事由があると主張する(前記第3、3〔原告の主張〕?ア)。
しかしながら、引用文献1(甲1)の「カテーテル本体11の横長の断面構成により管腔12、14、15に対し円形の断面形状を用いるこ10 とができるようになり、それらは流体の流れの点で『D』形状または他の形状の管腔よりもかなり効率的である。(段落【0040】」 )という記載は、カテーテルの外径と内腔の断面形状はトレードオフ(バランス)の関係にあるという技術常識技術常識2)を踏まえると、当業者は、
この記載から、カテーテルの外径を大きくすることが許容される用途に15 あっては、カテーテルを横長の断面構成として外径を大きくする一方で、
内腔については円形の断面(すなわち、内腔に鋭い隅部などの流量制限領域の存在を最小とする構成)とし得ることが記載されていると理解するものと認められる。そして、引用発明1の具体化に当たり、カテーテルの外径を小さくする必要がある用途においては、内腔の断面積を確保20 するためには、円形の断面形状を採用し得ないのであって、その余の断面形状を選考することは当然であり、円形以外の形状を採用することについて阻害事由があるとは認められない。
(イ) また、原告は、当業者が円形以外の形状を採用するためには、効率が悪くなってもなおその形状を採用すべき積極的な動機付けが必要である25 とも主張する(前記第3、3〔原告の主張〕?イ)。
しかしながら、技術常識2のとおり、カテーテルの外径を小さくしな50ければならないという制約の下で、内腔の断面形状を円形とするのでは必要な断面積が確保できない場合には、流れの効率が悪くなるような断面形状であっても、それを採用せざるを得ないのであって、このようなトレードオフにあることが自ずと明らかな事項の最適化は、当業者の通5 常の創作能力の発揮にすぎないから、原告の主張するような積極的な動機付けが必要であるとはいえない。
結局のところ、本願発明は、カテーテルの用途に起因する外径の縮小という要求に応じて適宜設計したというものであって、そのような設計変更は当業者にとって容易であると評価せざるを得ないから、原告の主10 張は採用できない。
したがって、本件審決(19頁)が、【図8A】の実施例において、
「管腔12、14が円形の断面形状であることで、流体の流れの点で『D』形状または他の形状の管腔よりもかなり効率的であるとの記述があること」 すなわち、
、 引用文献1(甲1)の段落【0040】の記載について、
15 「種々取り得る断面形状のうち好適な例を提示する程度のものであって、
そのことをもって、
(中略)他の断面形状をおよそ採用し得ないことまでを示唆するものであるとはいえない。」と判断したことに誤りはない。
(ウ) 原告は、本件審決が、引用文献1(甲1)の段落【0013】及び【0043】の記載について、種々の断面形状を採用し得ることが示唆され20 ているとしたのは誤りであると主張する(前記第3、3〔原告の主張〕?ウ)。
本件審決は、
「引用文献1には、第1の管腔と第2の管腔の断面形状について、
『円形、楕円形、D字形断面形状、またはそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の断面形状を有することができる。(段落【001』25 3】)としており、引用発明1として着目した【図8A】の実施例は円形の断面形状ではあるものの、当該実施例について『前述のカテーテル組51立体構成に様々な改変がなせることは、理解されたい。(段落【004』3】という記載があるように種々の断面形状を採用し得ることが示唆さ)れている」(本件審決第6、1〔本件審決18頁〕)と説示した。
引用文献1(甲1)の段落【0043】の上記の記載は、様々な改変5 のうちで断面形状の変更を排除するものではなく、また、段落【0013】の上記の記載は、断面形状を特定のものに限定するものではなく、
さらに、カテーテルの内腔の断面形状が様々な形状を選択し得ることが技術常識技術常識1)であることも考慮すると、本件審決が、これらの記載を指摘して、種々の断面形状を採用し得ることが示唆されている10 と判断したことに誤りはないから、原告の上記主張は採用することができない。
イ 乙5文献等について原告は、乙5ないし乙7文献は、本件審決での主引用例及び副引用例の何れでもなく、乙5文献は、本願発明における内腔の断面形状を開示して15 いるわけではないから、審決取消訴訟である本件訴訟において、乙5ないし乙7文献に基づいて、円形以外の断面形状を採用し得るという主張をすることはできないと主張する(前記第3、3〔原告の主張〕?)。
しかしながら、乙5ないし乙7文献は、拒絶理由において適示されていないものの、本願発明に関係する技術分野で周知性が高く、技術の理解の20 上で当然又は暗黙の前提となる知識、すなわち技術常識技術常識1及び2)を裏付けるものとして用いられているのであって、引用発明として新たに引用されているものではなく、特許法29条2項容易想到性の認定判断の中で用いることが許容されるものであるから、原告の上記主張は採用することができない。
25 ウ 本願発明の効果について原告は、本願明細書等の段落【0069】の記載は、
【図24】の断面構52造により、カテーテルの断面サイズを13フレンチサイズから12フレンチサイズに小さくしても、13フレンチサイズと同等の流量が維持できることを意味しており、この効果は、予想外かつ顕著というべきで、実際の実験によって見出されているところ(甲6) 物理的には一見小さくみえる、
5 工夫であっても、医療機器としての作用効果及び臨床上の意義は大きいから、本件審決の判断は、カテーテルの製品としての性質及び本願発明の作用効果に対する適切な検討を欠いており誤っている、と主張する(前記第3、3〔原告の主張〕?)。
しかしながら、技術常識2のとおり、カテーテルの外径を小さくする必10 要がある場合には、円形以外の断面形状にして必要な流量を確保することは技術常識であるところ、引用発明1において、引用文献1(甲1)の【図17B】のように第1の管腔及び第2の管腔が凹部を有する内腔断面形状を採用すれば、第1の管腔及び第2の管腔につき、円形の断面形状に比べて、カテーテルの外径を小さくでき、かつ、必要な流量を確保し得ること15 は、当業者にとって自明の効果にすぎない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
? 取消事由3の成否以上によれば、本件審決による相違点の判断に誤りはなく、取消事由3には理由がない。
20 6 結論以上のとおり、原告主張の取消事由1ないし3はいずれも理由がない。
よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部2553裁判長裁判官5 東 海 林 保裁判官10 中 平 健裁判官15 都 野 道 紀(別紙1審決書写し省略)54別紙2 乙4(特開2011−72792号公報)【0002】(1.技術分野)本開示は、カテーテルアセンブリに関し、詳細には、二方向の流体の流れを容易にするように適合された血液透析カテーテルアセンブリに関する。
【0063】図1〜2Aを参照すると、カテーテル部材14は、外壁28を含み、長手方向軸「X」を画定する。カテーテル部材14の外壁28は、必要または所望であれば、その安定性および剛性を増加させるために、補強材を含み得ることが想定されている。図2に示されるように、本開示の一実施形態において、カテーテル部材14は、二重管腔の構成を取り得、該二重管腔の構成は、隔壁34によって分離される第1の内部管腔30および第2の内部管腔32を含み、カテーテル部材14の長さに沿って延び得るか、または延び得ないことがあり得る。この実施形態において、第1の長手方向の管腔30および第2の長手方向の管腔32はそれぞれ、例えば血液と流体連通するような構成および寸法とされ、長楕円形、腎臓形、D型、円形、パイ(pie)型などを含むが、これらに限定されない意図された目的に対して適切な任意の断面構成を含み得る。管腔30、32のいずれもが取入(動脈)管腔またはリターン(静脈)管腔として機能し得ることが想定されているが、以下の論議全体を通して、管腔30は静脈管腔と称され、管腔32は動脈管腔と称される。管腔30、32は、図2においては配向が並列として示されているが、同軸関係でも配置され得る。
【0064】図2Aに見られるように、代替実施形態において、カテーテル部材14は、当技術分野で公知かつ慣例的であるように、ガイドワイヤチャネル36を含み得、ガイドワイヤチャネル36は、例えば脈管器官のような標的の組織部位の中にカテーテル部材14を入れることを容易にするために利用されるガイドワイヤ(図示されず)を受け入れ、かつこれを通すような構成および大きさとされる。ガイドワイヤチャネル36は、例えば薬剤など流体の注入に使用され得ることも想定されている。あるいは、カテーテル部材14を貫通する長手方向の管腔30、32のうちの1つが、静脈または動脈管腔のいずれかとして機能することに加えて、ガイドワイヤチャネルとして役立ち得る。
【0065】カテーテル部材14は、図2および図2Aにおいて、二重管腔の構成で示されているが、カテーテル部材14は、任意の適切な数のさらなる内部管腔を含み得ることも本明細書において想定されている。例えば、カテーテル部材14は、図2Bに示されているように、三重管腔の構成を取り得、該三重管腔の構成は、隔壁34、34A、34Bによって分離された3つの内部管腔30、32A、32Bを含む。
75【図2】 【図2A】 【図2B】76別紙3 乙5(米国特許第5556390号明細書)(訳文は乙5添付の部分訳による。)? 2欄35〜42行「The present invention provides an optimal balance between the need to maximize thecross sectional area of the lumen of a catheter while minimizing the existence of sharpcorners or flow restriction areas in the lumens. Similarly, the present invention providesan optimal balance between the need to minimize the occurrence of septum or walldeflection while providing a catheter with the smallest possible outer diameter for theintended use.」(翻訳)「本発明は、内腔における鋭い隅または流量制限領域の存在を最小にしつつ、カテーテルの内腔の断面積を最大にする必要性との最適なバランスを提供する。同様に、本発明は、
意図された用途のために可能な限り小さい外径を備えるカテーテルを提供しつつ、隔壁又は壁のたわみの発生を最小にする必要性との最適なバランスを提供する。」? 5欄4〜62行「FIGS. 5, 6 and 7 are illustrative of a dual lumen catheter formed in accordance with thepresent invention. The dual lumen catheter includes a body portion 12 with a tip member14 at the distal end thereof. The proximal end of this embodiment includes a hub member16 and a pair of extension members 18 thereon. As shown in FIG. 6, the preferred form ofthis embodiment includes a pair of generally egg or elliptically shaped lumens. The firstlumen 32 is formed by a first curved end 34 and a second curved end 36. In thisembodiment, the radius of the first curved end 34 is generally less than the radius of thesecond curved end 36 and preferably less than about one-half of the radius of the secondcurved end 36. The first side 38 and second side 40 of the first lumen 32 are formed bygenerally straight surfaces which interconnect the first and second curved ends to formthe preferred ovoid shape of the lumen 32. The second lumen 42 is formed by a firstcurved end 44 and a second curved end 46. As with the first lumen 32 , the radius of thefirst curved end 44 of the second lumen 42 is generally less than the radius of the secondcurved end 46 and preferably less than about one-half of the radius of the second curvedend 46. The first side 48 and second side 50 of the second lumen 42 are formed bygenerally straight surfaces which interconnect the first and second curved ends to formthe preferred ovoid shape of the second lumen 42.As shown in FIG. 6, the first and second lumens are 180 degrees opposed in orientationwith respect to each other to form a septum 52 therebetween. The septum 52 is formed bythe second side 40 of the first lumen 32 and the second side 50 of the second lumen 42 andmay be formed to vary in thickness between the lumens (FIGS. 6 and 7) to minimizedeflection of the septum 52 during use of the catheter. The preferred shape of the sept um52 generally resembles a slightly deformed I-beam shape such that the ends of the septum7752 are thicker and stronger than the middle portion thereof.As with the prior embodiment, the outer wall 54 of the present embodiment preferablyvaries in thickness to minimize the likelihood that the catheter will kink when bent,curved or under internal pressure. The thickness of the outer wall increases along thesecond side 40 and 50 of the first and second lumens, 32 and 42, respectively from secondcurved ends, 36 and 46, to the first curved ends, 34 and 44, of the respective lumens.Additionally, the portion of the outer wall adjacent to the ends of the septum 52 form aneven thicker and generally diamond shaped area 56 which further reinforces the cathetersto minimize deflection of the septum 52 and kinking of the catheter during use.FIG. 7 is illustrative of a further embodiment of the present invention wherein the crosssectional shape of the catheter is generally oblong. The dual lumen catheter of thisembodiment includes a body portion with a tip member at the distal end thereof asdescribed above. The proximal end of this embodiment may also include a hub memberand a pair of extension members thereon. As with the embodiment shown in FIGS. 5 and6, this embodiment preferably includes a pair of generally egg or elliptical shaped lumensalthough, oblong lumens (not shown) may also be used with the embodiment shown inFIGS. 5 and 6 or 7.」(翻訳)「図5、図6及び図7は、本発明に従って形成された二重内腔カテーテルを例示している。二重内腔カテーテルは、その遠位端に先端部材14を有する本体部12を備えている。
実施形態の近位端は、ハブ部材16と、その上に一対の延長部材18を備えている。図6に示すように、本実施形態の好ましい態様は、概ね卵形又は楕円形の一対の内腔を有している。
第1の内腔32は、第1の湾曲端部34及び第2の湾曲端部36により形成されている。本実施形態では、第1の湾曲端部34の半径は、概ね第2の湾曲端部36の半径より小さく、好ましくは、第2の湾曲端部36の半径の約半分より小さい。第1の内腔32の第1の側部38と第2の側部40は、概ね真っ直ぐな面により形成され、第1及び第2の湾曲端部を相互接続して内腔32の好適な卵形を形成している。第2の内腔42は、第1の湾曲端部44及び第2の湾曲端部46により形成されている。第1の内腔32と同様に、第2の内腔42の第1の湾曲端部44の半径は、概ね第2の湾曲端部46の半径より小さく、好ましくは、第2の湾曲端部46の半径の約半分より小さい。第2の内腔42の第1の側部48と第2の側部50は、概ね真っ直ぐな面により形成され、第1及び第2の湾曲端部を相互接続して第2の内腔422 の好適な卵形を形成している。
図6に示すように、第1及び第2の内腔は、その間に隔壁52を形成するように互いに対して180度逆向きに配置されている。隔壁52は、第1の内腔32の第2の側部40と第2の内腔42の第2の側部50によって形成され、カテーテルの使用中に隔壁52のたわみを最小にするように内腔の間の厚さが変化するように形成されてもよい(図6及び7)。隔壁52の好ましい形状は、隔壁52の両端部が中央部よりも厚く頑丈になるように、わずかに変形し I 型梁形状に概ね類似する。
前述の実施形態と同様に、本実施形態の外壁54は、屈曲、湾曲又は内圧が加わった際にカ78テーテルがよじれる可能性を最小限とするように、好ましくは、厚さが変化する。外壁の厚さは、各内腔のそれぞれ第2の湾曲端部36及び46から第1の湾曲端部34及び44に向けて、
第1及び第2の内腔32及び42の第2の側部40及び50に沿って増加する。加えて、隔壁52の両端部に隣接する外壁の部分は、より厚く概ねダイヤモンド形状の領域56を形成することで、使用中に隔壁52のたわみとカテーテルのよじれを最小限にするようカテーテルをさらに補強する。
図7は、本発明の他の実施形態を例示し、ここではカテーテルの断面形状は概ね長円形である。上述のように、本実施形態の二重内腔カテーテルは、その遠位端に先端部材を備えた本体部を有する。本実施形態の近位端もまた、ハブ部材と、その上に一対の延長部材を備えてもよい。図5及び図6に示す実施形態と同様、本実施形態は、好ましくは、概ね卵形又は楕円形の一対の内腔を備えるが、長円形の内腔(図示せず)もまた、図5及び6又は7に示す実施形態において用いることができる。」【図6】 【図7】【図12】 【図14】79別紙4 乙6(特開平2−209159号公報)? 公報7頁右下欄3〜13行「次に、チップ29を含む先端部28を示す第3乃至6図に関して説明する。本体26は、
外壁46と、本体26を横切って直径方向へ延びかつ取出しルーメン50および戻しルーメン52を画定する一体化された隔壁48とを備えており、双方のルーメンは、横断面が略C字形をなし、基端部から先端部へ向けて延びている。第4図に明瞭に示すように、隔壁48の球状中間部53がルーメン50と52の中に突出し、かつ、基端部から先端部へ本体26の長手方向の軸線に沿って延びる静脈ルーメン(以下、「IVルーメン」とも云う)54を包含している。このルーメンは、IVチューブ35の延長部であり、本実施例においては、約0.96mm(0.038インチ)の直径のセルディンガワイヤを収容するように適合されている。」? 公報10頁右上欄6〜14行「上記したカテーテルはいずれも、IVルーメンを収容するにように球状の中間部を有する隔壁に特徴がある。しかしながら、本発明のカテーテルは、このような特定の横断面形状に限定されるものではなく、例えば、第9図に示すような横断面とすることができる。理解を容易にするため、第9図においては、上記した好ましい実施例の部材と対応する部材には、同じ参照番号の先頭に『2』を付して三桁で示してある。」? 10頁右上欄14行〜左下欄5行「図示のカテーテルは、取出しルーメン 250 と戻しルーメン 252 とがD字状の横断面を有するように、平坦な側面を有する隔壁 248 を備えている。隔壁 248 をこのように一層厚肉にすると、カテーテルを形成するのにより多くの材料を必要とするとともに、取出しおよび戻しルーメンの横断面積とカテーテルの横断面積との比率を小さくすることになる。しかしながら、この横断面が有利である場合、例えば、カテーテルの外径の重要性が小さい場合には、多くの用途があり、血液透析のために静脈において使用することができる。」(判決注:第9図に係る実施例のカテーテルの横断面についての説明)エ 図面【第4図】 【第5図】 【第9図】80別紙5 乙7(特表2001−513374号公報)【0029】しばしば、一般に数秒間または数分間という比較的短時間の間に比較的多量の薬剤44または他の治療液を体通路12内に注入したい場合がある。かくして、注入管孔28aは、高粘性流体を含む多量の薬剤44を通すことができるように、カテーテル本体20に沿う充分に大きい断面積に形成すべきである。
【0030】注入管孔28aは、図3および図4に最も良く示すように、長手方向軸線22に沿う最大断面積である非円形の断面形状にすることができる。この非円形の断面形状は、複数の管孔28a〜28dの全流通容量(total volume capacity)を最大化すると同時にカテーテル本体20より詳しくは外壁30の全外径を最小化すべく、残余の複数の管孔28a〜28dに隣接して適合できる最適形状にすることができる。非円形断面形状は、外側輪郭が丸められたほぼ三角形の形状にするのが好ましい。注入管孔28aは、円形、楕円形、正方形、台形、菱形または他の任意の断面形状にすることができる。
【0044】カテーテル本体20は、最小の外径を有することが好ましい。この外径を最小化することにより、小さい血管および体通路12内、並びに非常に閉塞度合いの大きい体通路内でのバルーンカテーテル器具10の使用が可能になる。しかしながら、前述のように、複数の管孔28a〜28dのうちの少なくとも幾つかは、カテーテル本体20に沿う最大サイズの断面積をもつように構成するのが好ましい。より詳しくは、カテーテル本体20の最大強度および最小直径を保持しつつ、流体の最大流通容量が得られるように構成するのが好ましい。
【0045】各管孔28a〜28dの断面積を最大にすると同時に、カテーテル本体20の直径を最小にするため、管孔28a〜28dのうちの少なくとも1つに、長手方向軸線2に対して非円形の断面形状が設けられる。例えば、ほぼ円形の断面形状をもつカテーテル本体20を使用する場合、管孔28a〜28dのうちの2つはほぼ円形の断面形状とし、他の2つは、全体として丸められた三角形のような形状にすることができる。三角形の形状は、カテーテル本体20の実質的強度を損なうことなく、2つの円形管孔28a〜28dの間の断面積を効率的に利用できる。かくして、任意の形状の管孔断面形状を利用できる。
【図4a】 【図4b】81
事実及び理由
全容