関連審決 |
不服2020-7323 |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙2PDFを見る |
元本PDF | 裁判所収録の別紙3PDFを見る |
事件 |
令和
3年
(行ケ)
10097号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告 ショットスコープ テクノロジーズ リミテッド 同訴訟代理人弁理士 鴨田哲彰 小山剛史 武藤正樹 被告 特許庁長官 同 指定代理人藤本義仁 吉村尚 佐々木創太郎 青木良憲 冨澤美加 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/04/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
---|---|
請求
特許庁が不服2020-7323号事件について令和3年4月6日にした審 1 決を取り消す。 |
|
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 原告は、発明の名称を「ゴルフスイングモニタリングシステム」とする発明 について、平成27年4月22日を国際出願日とする特許出願(特願2016 -563421号、優先日平成26年4月24日、優先権主張国英国。以下「本 願」という。)をした。 原告は、平成30年4月20日付けで特許請求の範囲について手続補正(甲 5の1)をした後、平成31年3月25日付けの拒絶理由通知(甲6)を受け たため、令和元年8月13日付けで特許請求の範囲について手続補正(甲7の 1)をしたが、令和2年1月28日付けで拒絶査定(甲8)を受けた。 ? 原告は、令和2年5月29日、拒絶査定不服審判(不服2020-7323 号。甲9の1)を請求するとともに、特許請求の範囲について手続補正(以下 「本件補正」という。甲9の2)をした。 その後、特許庁は、令和3年4月6日、本件補正を却下する旨の決定をした 上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」とい う。)をし、その謄本は、同月27日、原告に送達された。 ? 原告は、令和3年8月19日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し た。 2 特許請求の範囲の記載 ? 本件補正前(令和元年8月13日付け手続補正後) 本件補正前の請求項1ないし21の記載は、次のとおりである(甲7の1)。 【請求項1】 スポーツ器具による物体の打撃を伴うプレーヤまたはユーザにより実行され るスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報を少なくとも1個のセンサから 自動的に収集するためのシステムであって、 2 該システムは、少なくとも1個のタグと、身体装着型装置とを備え、 前記少なくとも1個のタグは、少なくとも1個のRFIDタグまたはNFCタグからなり、かつ、前記スポーツ器具に取り付けられるよう構成されており、 前記身体装着型装置は、ストラップと、前記少なくとも1個のセンサと、タグ読取装置とを備え、 前記少なくとも1個のセンサは、少なくとも1個のスイングセンサと、少なくとも1個の物体接触センサとを備え、該少なくとも1個の物体接触センサは、 前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されており、 該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、該読み取り値に応答して、前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるよう構成されており、および、 前記タグ読取装置は、RFIDタグ読取装置またはNFCタグ読取装置からなり、かつ、前記ストラップの少なくとも一部またはすべてに沿ってまたはその周囲に延在するアンテナを備える、 システム。 【請求項2】 前記少なくとも1個の物体接触センサの1個以上は、衝撃および/または振動センサを備え、および/または、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの1個以上は、音センサを備え、 該システムは、前記衝撃および/または振動センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた衝撃および/または振動を少なくとも部分的に検知し、および/または、前記音センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた音を少なくとも部分的に検知して、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 3 該システムは、前記プレーヤまたはユーザにより実行されるゴルフスイングのパフォーマンスに関する情報を自動的に収集するためのシステムであって、 前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、前記物体が、該ゴルフクラブにより打撃されるゴルフボールであり、前記少なくとも1個の物体接触センサが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの接触を検知するように構成されている、 請求項2に記載のシステム。 【請求項4】 前記身体装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着される手首装着型装置からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。 【請求項5】 前記手首装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザが前記ゴルフクラブを把持した際に、該プレーヤまたはユーザの上側に来る手の手首に装着されるように構成されている、請求項3に従属する請求項4に記載のシステム。 【請求項6】 該システムは、前記スポーツ器具が使用されていること、および、該スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを、自動的に検知するように構成されていて、 前記少なくとも1個のタグは、前記スポーツ器具の、前記プレーヤまたはユーザに隣接する部分、前記プレーヤまたはユーザに近接する部分、あるいは、 前記プレーヤまたはユーザによって把持される部分のいずれかに取り付け可能であり、 前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを判定するように 4構成されている、 請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。 【請求項7】 前記少なくとも1個のタグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部に取り付けられるか、前記スポーツ器具のハンドルまたはグリップ内に少なくとも部分的に配置されるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項6に記載のシステム。 【請求項8】 該システムは、前記少なくとも1個のタグと前記タグ読取装置とが接近していることを判定し、かつ、前記スポーツ器具上の前記タグが、前記タグ読取装置の少なくとも一部に隣接または近接しているときに、前記スポーツ器具が前記プレーヤまたはユーザにより保持されていると判定するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。 【請求項9】 前記手首装着型装置の少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に配置可能であり、前記アンテナの少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置するように構成されている、請求項4に従属する請求項8に記載のシステム。 【請求項10】 前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、 該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位置、周囲長さ、 形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナ 5の少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 該システムが、複数のアンテナ整合回路またはシステム、および/または、 調整可能な整合回路またはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記整合回路またはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じられるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、 前記ストラップセンサによって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するように構成されている、 請求項8または9に記載のシステム。 【請求項11】 前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、 該システムが、前記少なくとも1個のスイングセンサを使用して、所定のスイング動作をモニタするように構成されており、 該システムが、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して、前記少なくとも1個のスイングセンサを作動させ、かつ、前記プレーヤまたはユーザによるスイング動作中の所定期間に前記少なくとも1個の物体接触センサを作動さ 6せるように構成されており、 該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能であり、かつ、該少なくとも1個のスイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、前記スイング動作を検知するように構成されたスイング検知器を備え、さらに、 前記スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成されており、 前記スイング検知器は、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知するように構成されており、 前記動作パターンが、所定の空間定義域および時間定義域内における範囲またはパターンを含み、 前記スイング検知器が、前記動作が行われていることを示す所定の範囲内の読み取り値に関して、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタし、次にスイングの次の段階を示す別の動作をモニタするように構成されている、 請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。 【請求項12】 前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、および、前記スイング検知器が、 ゴルフスイングを検知するように構成されており、前記1個以上の運動のパターンは、前記ゴルフスイングが通常示す少なくとも1個のパターンからなる、 請求項3に従属する請求項11に記載のシステム。 【請求項13】 該システムは、 位置データと、 時間データと、 7 前記スポーツ器具のタイプおよび/または識別データと、 前記少なくとも1個のスイングセンサ、および、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの少なくともいずれかからの読み取り値から得られたスイングデータと、 前記身体装着型装置からの内部変数と、 前記少なくとも1個のスイングセンサ、前記少なくとも1個の物体接触センサ、および、前記身体装着型装置殻の前記内部変数のうちの少なくともいずれかから得られたスイングタイプデータと、および、 ショットカウントと、 のうちの1個以上を収集するように構成されており、 該システムが、前記1個以上の物体接触センサを使用して、前記プレーヤまたはユーザによる前記スポーツ器具のスイング中に前記物体との接触が起こったかどうかを判定することによって、練習スイングと、前記スポーツ器具が前記物体と接触する実スイングとを区別するように構成されており、 該システムが、前記実スイングと1以上の前記練習スイングを含み、かつ、 所定の時間定義域および空間定義域内で行われる、一群のスイングの位置情報を使用して、前記実スイングの最終位置を決定するように構成されている、 請求項1〜12のいずれかに記載のシステム。 【請求項14】 該システムは、1個以上のユーザインタフェースを備え、該1個以上のユーザインタフェースは、前記ユーザまたはプレーヤが、前記スポーツ器具と前記物体との接触による該物体のショットをログ記録し、および/または、前記ショットが行われたかどうかについての前記プレーヤまたはユーザからの明示を受け取ることを可能に構成されており、 該システムは、 前記少なくとも1個の通信インタフェースを介して、1個以上のリモートサ 8ーバと通信して、 収集情報、追加情報、前記身体装着型装置からの内部変数、および、これらから得られたデータを送信し、および、マップまたはその他の位置固有情報を受信することが可能であり、 前記収集された情報を解析し、あるいは、前記1個以上のリモートサーバに解析させて、統計データを生成し、かつ、 実スイングショットが行われたことを判定し、その判定に従ってスコアカードを自動的に更新するように、構成されている、 請求項1〜12のいずれかに記載のシステム。 【請求項15】 前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、 該システムは、前記スイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、スイング動作を検知するように構成され、 前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能である、スイング検知器を備え、 該スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成され、 前記スイング検知器が、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知して、前記スイングのパフォーマンスまたは特徴を識別するように構成されており、 および、 前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信し、 該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが 9使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプを判定するように構成されている、 請求項1に記載のシステム。 【請求項16】 前記アンテナは、フレキシブルプリント基板の一部として形成され、該アンテナは、前記ストラップに沿って伸長しており、前記プレーヤまたはユーザが前記身体装着型装置を装着し、前記スポーツ器具を保持した際に、該アンテナは、該プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置し、該アンテナから離間した前記少なくとも1個のタグと通信する、請求項1に記載のシステム。 【請求項17】 請求項1〜16のいずれかに記載のシステムとともに使用するように構成されている携帯装置であって、 該携帯装置が、前記身体装着型装置により構成され、 前記物体接触センサが、衝撃および/または振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上のジャイロスコープ、および/または、 1個以上の音センサのうちの1個以上を備える、 携帯装置。 【請求項18】 位置センサを備え、かつ、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着可能である、請求項17に記載の携帯装置。 【請求項19】 請求項1〜16のいずれかに記載のシステムに使用されるタグであって、固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されている、タグ。 【請求項20】 10 該タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留め されるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けられ るか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたは グリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、 請求項19に記載のタグ。 【請求項21】 前記スポーツ器具が前記物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマ ンスに関する情報を自動的に収集する方法であって、請求項1〜16のいずれ かに記載のシステム、請求項17または18に記載の携帯装置、あるいは、請 求項19または20に記載のタグを使用して、前記スポーツ器具が前記物体に 当たることを自動的に検知することを含む、方法。 ? 本件補正後 本件補正後の請求項1ないし22の記載は、次のとおりである(下線部は本 件補正による補正箇所である。甲9の2)。 【請求項1】 スポーツ器具による物体の打撃を伴うプレーヤまたはユーザにより実行され るスポーツ動作のパフォーマンスに関する情報をセンサから自動的に収集する ためのシステムであって、 該システムは、少なくとも1個のタグと、身体装着型装置とを備え、 前記少なくとも1個のタグは、少なくとも1個のRFIDタグまたはNFC タグからなり、かつ、前記スポーツ器具に取り付けられるよう構成されており、 前記身体装着型装置は、ストラップと、前記センサと、タグ読取装置とを備 え、 前記センサは、少なくとも1個のスイングセンサと、少なくとも1個の物体 接触センサとを備え、該少なくとも1個の物体接触センサは、前記スポーツ器 具による前記物体との接触を検知するように構成されており、 11 該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、該読み取り値に応答して、前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるよう構成されており、および、 前記タグ読取装置は、RFIDタグ読取装置またはNFCタグ読取装置からなり、かつ、前記ストラップの少なくとも一部またはすべてに沿ってまたはその周囲に延在するアンテナを備える、 システム。 【請求項2】 前記少なくとも1個の物体接触センサの1個以上は、衝撃および/または振動センサを備え、および/または、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの1個以上は、音センサを備え、 該システムは、前記衝撃および/または振動センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた衝撃および/または振動を少なくとも部分的に検知し、および/または、前記音センサを使用して、前記スポーツ器具による前記物体との接触によって生じた音を少なくとも部分的に検知して、前記スポーツ器具による前記物体との接触を検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 該システムは、前記プレーヤまたはユーザにより実行されるゴルフスイングのパフォーマンスに関する情報を自動的に収集するためのシステムであって、 前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、前記物体が、該ゴルフクラブにより打撃されるゴルフボールであり、前記少なくとも1個の物体接触センサが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの接触を検知するように構成されている、 請求項2に記載のシステム。 【請求項4】 前記身体装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザの手首に装着される手首 12装着型装置からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。 【請求項5】 前記手首装着型装置は、前記プレーヤまたはユーザが前記ゴルフクラブを把持した際に、該プレーヤまたはユーザの上側に来る手の手首に装着されるように構成されている、請求項3に従属する請求項4に記載のシステム。 【請求項6】 該システムは、前記スポーツ器具が使用されていること、および、該スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを、自動的に検知するように構成されていて、 前記少なくとも1個のタグは、前記スポーツ器具の、前記プレーヤまたはユーザに隣接する部分、前記プレーヤまたはユーザに近接する部分、あるいは、 前記プレーヤまたはユーザによって把持される部分のいずれかに取り付け可能であり、 前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが可能であり、該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプのうちの少なくとも1つを判定するように構成されている、 請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。 【請求項7】 前記少なくとも1個のタグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部に取り付けられるか、前記スポーツ器具のハンドルまたはグリップ内に少なくとも部分的に配置されるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されている、請求項6に記載のシステム。 13【請求項8】 前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、 該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 該システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、 調整可能な整合回路もしくはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されている、 請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。 【請求項9】 該システムは、前記少なくとも1個のタグと前記タグ読取装置とが接近していることを判定し、かつ、前記スポーツ器具上の前記タグが、前記タグ読取装置の少なくとも一部に隣接または近接しているときに、前記スポーツ器具が前記プレーヤまたはユーザにより保持されていると判定するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。 【請求項10】 前記手首装着型装置の少なくとも一部が、前記プレーヤまたはユーザの手首の下側に配置可能であり、前記アンテナの少なくとも一部が、前記プレーヤま 14たはユーザの手首の下側に位置するように構成されている、請求項4に従属する請求項9に記載のシステム。 【請求項11】 前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整可能であり、 該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたストラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 該システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、 調整可能な整合回路もしくはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、前記複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じられるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、 前記ストラップセンサによって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電 15気特性に基づいて、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するように構成されている、 請求項9または10に記載のシステム。 【請求項12】 前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、 該システムが、前記少なくとも1個のスイングセンサを使用して、所定のスイング動作をモニタするように構成されており、 該システムが、前記タグ読み取り装置が前記少なくとも1個のタグの1つを読み取ることにより、前記スポーツ器具が検知されたことに起因して、前記少なくとも1個のスイングセンサを作動させ、かつ、前記プレーヤまたはユーザによるスイング動作中の所定期間に前記少なくとも1個の物体接触センサを作動させるように構成されており、 該システムは、前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能であり、かつ、該少なくとも1個のスイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、前記スイング動作を検知するように構成されたスイング検知器を備え、さらに、 前記スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成されており、 前記スイング検知器は、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知するように構成されており、 前記動作パターンが、所定の空間定義域および時間定義域内における範囲またはパターンを含み、 前記スイング検知器が、前記動作が行われていることを示す所定の範囲内の読み取り値に関して、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタし、次に 16スイングの次の段階を示す別の動作をモニタするように構成されている、 請求項1〜11のいずれかに記載のシステム。 【請求項13】 前記スポーツ器具がゴルフクラブであり、および、前記スイング検知器が、 ゴルフスイングを検知するように構成されており、前記1個以上の運動のパターンは、前記ゴルフスイングが通常示す少なくとも1個のパターンからなる、 請求項3に従属する請求項12に記載のシステム。 【請求項14】 該システムは、 位置データと、 時間データと、 前記スポーツ器具のタイプおよび/または識別データと、 前記少なくとも1個のスイングセンサ、および、前記少なくとも1個の物体接触センサのうちの少なくともいずれかからの読み取り値から得られたスイングデータと、 前記身体装着型装置からの内部変数と、 前記少なくとも1個のスイングセンサ、前記少なくとも1個の物体接触センサ、および、前記身体装着型装置からの前記内部変数のうちの少なくともいずれかから得られたスイングタイプデータと、および、 ショットカウントと、 のうちの少なくとも前記スイングデータを含む1個以上を収集するように構成されており、 該システムが、前記1個以上の物体接触センサを使用して、前記プレーヤまたはユーザによる前記スポーツ器具のスイング中に前記物体との接触が起こったかどうかを判定することによって、練習スイングと、前記スポーツ器具が前記物体と接触する実スイングとを区別するように構成されており、 17 該システムが、前記実スイングと1以上の前記練習スイングを含み、かつ、 所定の時間定義域および空間定義域内で行われる、一群のスイングの位置情報を使用して、前記実スイングの最終位置を決定するように構成されている、 請求項1〜13のいずれかに記載のシステム。 【請求項15】 該システムは、1個以上のユーザインタフェースを備え、該1個以上のユーザインタフェースは、前記ユーザまたはプレーヤが、前記スポーツ器具と前記物体との接触による該物体のショットをログ記録し、および/または、前記ショットが行われたかどうかについての前記プレーヤまたはユーザからの明示を受け取ることを可能に構成されており、 該システムは、 前記少なくとも1個の通信インタフェースを介して、1個以上のリモートサーバと通信して、 収集情報、追加情報、前記身体装着型装置からの内部変数、および、これらから得られたデータを送信し、および、マップまたはその他の位置固有情報を受信することが可能であり、 前記収集された情報を解析し、あるいは、前記1個以上のリモートサーバに解析させて、統計データを生成し、かつ、 実スイングショットが行われたことを判定し、その判定に従ってスコアカードを自動的に更新するように、構成されている、 請求項1〜14のいずれかに記載のシステム。 【請求項16】 前記少なくとも1個のスイングセンサは、1個以上の慣性センサを備え、 該システムは、前記スイングセンサから受け取ったデータに少なくとも部分的に基づいて、スイング動作を検知するように構成され、 前記少なくとも1個のスイングセンサと通信可能である、スイング検知器を 18備え、 該スイング検知器が、所定の順序および/または所定の時間枠内における所定の動作範囲について、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタするように構成され、 前記スイング検知器が、スイングを表す1個以上の動作パターンを備え、前記少なくとも1個のスイングセンサをモニタして、前記動作パターンと同様の動作を検知して、前記スイングのパフォーマンスまたは特徴を識別するように構成されており、 および、 前記タグのそれぞれが、識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信し、 該システムが、前記識別子に基づいて、前記スポーツ器具のうちのいずれが使用されているか、あるいは、使用されている前記スポーツ器具のタイプを判定するように構成されている、 請求項1に記載のシステム。 【請求項17】 前記アンテナは、フレキシブルプリント基板の一部として形成され、該アンテナは、前記ストラップに沿って伸長しており、前記プレーヤまたはユーザが前記身体装着型装置を装着し、前記スポーツ器具を保持した際に、該アンテナは、該プレーヤまたはユーザの手首の下側に位置し、該アンテナから離間した前記少なくとも1個のタグと通信する、請求項1に記載のシステム。 【請求項18】 前記身体装着型装置が、前記物体接触センサを備え、 前記物体接触センサが、衝撃および/または振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上のジャイロスコープ、および/または、 1個以上の音センサのうちの1個以上を備える、 19 請求項1〜17のいずれかに記載のシステム。 【請求項19】 前記センサは、位置センサを備え、かつ、前記身体装着型装置は、前記プレ ーヤまたはユーザの手首に装着可能である、請求項18に記載のシステム。 【請求項20】 前記タグは、固有識別子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそ のまま送信することが可能であり、かつ、前記スポーツ器具に取り付け可能で あるように構成されている、請求項1〜17のいずれかに記載のシステム。 【請求項21】 前記タグは、該タグの一部または全部が、前記スポーツ器具の上部にねじ留 めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに取り付けら れるか、あるいは、前記ハンドルまたはグリップの下面または該ハンドルまた はグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構成されてい る、請求項20に記載のシステム。 【請求項22】 スポーツ器具が物体に当たることを伴うスポーツ動作のパフォーマンスに関 する情報を自動的に収集する方法であって、 請求項1〜21のいずれかに記載のシステムを使用して、 少なくとも1個のスイングセンサからの読み取り値に基づいて、あるいは、 該読み取り値に応答して、少なくとも1個の物体接触センサを作動させ、およ び、前記スポーツ器具が前記物体に当たることを自動的に検知することを含む、 方法。 3 本件審決の理由の要旨 ? 本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりである。 その要旨は、@本件補正は、特許法17条の2第5項の第1号ないし4号に 掲げられたいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、同項の規定に 20 違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項 の規定により却下されるべきものである、A本件補正前の請求項19ないし2 1に係る各発明は、いずれも本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2 013-509968号公報に記載された発明と同一であり、同法29条1項 3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項 に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものであるという ものである。 (2) 本件審決が、本件補正が特許法17条の2第5項に違反するとした理由は、 以下のとおりである。 ア 本件補正後の請求項1ないし7、9ないし17は、それぞれ、本件補正前 の請求項1ないし16に対応するものと認められるから、本件補正後の請求 項8は、本件補正により追加された請求項である(以下、本件補正のうち、 本件補正後の請求項8を追加する補正を「補正事項1」という。)。 本件補正後の請求項8に対応する本件補正前の請求項を見出せないから、 補正事項1は、本件補正前の請求項のうちのいずれかの請求項に記載された 発明特定事項をさらに限定するものとはいえない。また、補正事項1は、特 許請求の範囲の請求項数を増加する補正であって、「n項引用形式請求項を n-1以下の請求項に変更する補正」にも、「発明特定事項が択一的なもの として記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれ ぞれ限定して複数の請求項に変更する補正」にも該当しない。 したがって、補正事項1は、特許法17条の2第5項1号ないし4号に掲 げられた事項を目的とするものに該当しない。 イ 本件補正後の請求項18ないし21は、それぞれ、本件補正前の請求項1 7ないし20に対応するものである(以下、本件補正のうち、本件補正前の 請求項17ないし20を本件補正後の請求項18ないし21とする補正をそ れぞれ「補正事項2ないし5」という。)。 21 補正事項2は、本件補正前の請求項17において特定されていた「システ ムとともに使用するように構成された携帯装置」に係る発明を、本件補正後 の請求項18において「システム」に係る発明を特定するものへと補正する ものであって、発明の対象を変更するものであり、また、本件補正前の請求 項において特定されている発明特定事項をさらに特定するものには該当しな いから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法17条の2第5項 2号)に該当せず、同項1号、3号、4号に掲げられた事項を目的とするも のにも該当しない。 補正事項3ないし5は、それぞれ、本件補正前の請求項18ないし20に おいて特定されていた「携帯装置」に係る発明、「タグ」に係る発明を、い ずれも本件補正後の請求項19ないし21において「システム」の発明を特 定するものへと補正し、その対象を変更するものであるから、補正事項2と 同様の理由により、補正事項3ないし5は、同項1号ないし4号に掲げられ た事項を目的とするものに該当しない。 ウ したがって、補正事項1ないし5を含む本件補正は、特許法17条の2第 5項の規定を満たすものではない。 4 取消事由 本件補正の特許法17条の2第5項適合性の判断の誤り |
|
当事者の主張
1 原告の主張 ? 補正事項1の判断の誤り ア 本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1ないし7に従属し、本件 補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件((a) ストラップは、該 ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変更するように調整 可能である点、(b) システムが、ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、 または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたス 22トラップセンサを備える点、(c) システムが、ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されている点、(d) システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムを備える点、(e) システムが、特定されたストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づいて、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されている点)を規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 そして、本件拒絶理由通知では、本件補正前の請求項1について新規性及び進歩性などの実体的要件に関する拒絶理由の指摘はなく、本件補正前の請求項1に特許性が認められていることからすると、本件補正後の請求項8は、 本件補正前の請求項1に対する従前の審査内容に沿って特許性を具備するものといえるから、本件補正前の請求項1についての審査を十分に有効活用して、補正された発明の審査を行うことが可能であり、新たな先行技術調査等を要求することで審査遅延などの事態を生じさせないことも明らかである。 そうすると、厳密には、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項ではないとしても、これに準ずるような対応関係に立つものであり、補正事項1は、既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を認めることとした特許法17条の2第5項の制度趣旨に反するものではなく、同項2号が許容する増項補正に相当するから、本件補正前の請求項1との関係で「特許請求の範囲の減縮」 (同号)を目的とするものに 23 該当する。 また、本件補正前の請求項1と本件補正後の請求項8とは、スポーツ動作 のパフォーマンスなどの動作パフォーマンスに関する情報を収集するための モニタリングシステムといった「産業上の利用分野」及びボールスポーツに おけるプレーヤのパフォーマンスをモニタリングするための改善された新し いシステムを提供するといった「解決しようとする課題」が同一である。 したがって、補正事項1は、同号の規定に適合するものである。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。 イ この点に関し被告は、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項11 から最終段落の構成要件を省いて上位概念化したものであり、これまで審査 されておらず、既にされた審査結果を有効に活用して迅速に審査をすること ができたものとはいえないから、補正事項1は、特許法17条の2第5項2 号の規定に適合しない旨主張する。 しかし、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項11との関係では、 同請求項から最終段落の構成要件を省いて上位概念化したものであったとし ても、本件補正後の請求項1ないし7との関係では、その下位概念を規定し たものであり、本件補正後の請求項1ないし7については十分審査がされて おり、本件補正後の請求項8の特許性の判断に際し、上記審査結果を有効に 活用して迅速に審査することは可能であるから、被告の上記主張は失当であ る。 ? 補正事項2ないし5の判断の誤り ア 本件補正後の請求項18は、本件補正後の請求項1ないし17に従属し、 本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件((a) 身体装着型装 置が、物体接触センサを備える点、(b) 物体接触センサが、衝撃および/ま たは振動センサ、慣性センサ、音響センサ、1個以上の加速度計、1個以上 のジャイロスコープ、および/または、1個以上の音センサのうちの1個以 24上を備える点)を規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 また、形式的には、本件補正前の請求項17の「携帯装置」に係る発明が「システム」に係る発明へ変更となったと解釈した場合であっても、発明の概念としては、本件補正後の請求項18は、本件補正前の請求項17に記載されていた発明特定事項から、 「システム」の構成(本件補正前の請求項1ないし16に規定される技術的範囲)から外れている部分に係る「携帯装置」の規定を除去することにより限定的に減縮するものといえる。 さらに、本件補正後の請求項18は、本件補正前の請求項17を削除して追加したものと解釈した場合であっても、実質的に、本件補正前の請求項17による請求項1ないし16の引用に基づいて、これらの請求項と一対一に準ずる対応関係を有するから、補正事項2は、本件補正前の請求項1ないし16の発明特定事項を限定するものである。 そして、本件補正の前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項2は、特許法第17条の2第5項2号の規定に適合する。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。 イ 本件補正後の請求項19は、本件補正後の請求項1ないし17に従属する 本件補正後の請求項18に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当 する追加的要件((a) センサが、位置センサを備える点、 (b) 身体装着型装 置が、プレーヤまたはユーザの手首に装着可能である点)を規定したもので あるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事 項を限定するものである。 また、形式的には、本件補正前の請求項18の「携帯装置」に係る発明が「システム」に係る発明へ変更となったとしても、発明の概念としては、本件補正後の請求項19は、本件補正前の請求項18に記載されていた発明特 25定事項から、 「システム」の構成(本件補正前の請求項1ないし16に規定される技術的範囲)から外れている部分に係る「携帯装置」の規定を除去することにより限定的に減縮するものといえる。 さらに、本件補正後の請求項19は、本件補正前の請求項18を削除して追加したものと解釈した場合であっても、前記アと同様の理由により、補正事項3は、本件補正前の請求項1ないし16の発明特定事項を限定するものである。 そして、本件補正の前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項3は、特許法第17条の2第5項2号の規定に適合する。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。 ウ 本件補正後の請求項20は、本件補正後の請求項1ないし17に従属し、 本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件(タグが、固有識別 子を備え、該識別子を符号化して送信するあるいはそのまま送信することが 可能であり、かつ、スポーツ器具に取り付け可能であるように構成されてい る点)を規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を 特定するために必要な事項を限定するものである。 また、形式的には、本件補正前の請求項19の「タグ」に係る発明が「システム」に係る発明と変更となったとしても、発明の概念としては、本件補正後の請求項20は、本件補正前の請求項19に記載されていた発明特定事項から、 「システム」の構成(本件補正前の請求項1ないし16に規定される技術的範囲)から外れている部分に係る「タグ」の規定を除去することにより限定的に減縮するものといえる。 さらに、本件補正後の請求項20は、本件補正前の請求項19を削除して追加したものと解釈した場合であっても、前記アと同様の理由により、補正事項4は、本件補正前の請求項1ないし16の発明特定事項を限定するもの 26である。 そして、本件補正の前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項4は、特許法第17条の2第5項2号の規定に適合する。これに反する本件審決の判断は誤りである。 エ 本件補正後の請求項21は、本件補正後の請求項1ないし17に従属する 本件補正後の請求項20に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当 する追加的要件(タグが、該タグの一部または全部が、スポーツ器具の上部 にねじ留めされるか、該スポーツ器具のハンドルまたはグリップのまわりに 取り付けられるか、あるいは、ハンドルまたはグリップの下面または該ハン ドルまたはグリップの中に配置されるかのうちの少なくとも1つが可能に構 成されている点)を規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載 した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 また、形式的には、本件補正前の請求項20の「タグ」に係る発明が「システム」に係る発明へ変更となったとしても、発明の概念としては、本件補正後の請求項21は、本件補正前の請求項20に記載されていた発明特定事項から、 「システム」の構成(本件補正前の請求項1ないし16に規定される技術的範囲)から外れている部分に係る「タグ」の規定を除去することにより限定的に減縮するものといえる。 さらに、本件補正後の請求項21は、本件補正前の請求項20を削除して追加したものと解釈した場合であっても、前記アと同様の理由により、補正事項5は、本件補正前の請求項1ないし16の発明特定事項を限定するものである。 そして、本件補正の前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、補正事項5は、特許法第17条の2第5項2号の規定に適合する。 これと異なる本件審決の判断は誤りである。 27 (3) 小括 以上のとおり、本件審決における補正事項1ないし5の判断に誤りがあり、 この判断の誤りは、本願の請求項19ないし21に記載された発明の要旨認定 の誤りに帰するから、本件審決は取り消されるべきものである。 2 被告の主張? 補正事項1の判断の誤りの主張に対し 特許法17条の2第5項2号は、一つの請求項を削除して新たな請求項をた てるというような態様による補正や、一つの請求項に係る発明を複数の請求項 に分割して新たな請求項を追加する補正(増項補正)は、補正後の各請求項の 記載により特定された発明が、全体として、補正前の請求項の記載により特定 される発明よりも限定されたものとなっているとしても、補正前後の請求項に 係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係にない限り、同号にいう「特 許請求の範囲の減縮」には該当しないことを規定したものである。 このような対応関係にない増項補正が認められるとすると、審査対象が追加 されることにより、新たな審査を必要とする場合を生じさせ、あるいは審査対 象が複雑化することにより、当該補正が補正前の請求項に係る発明を限定的に 減縮するものであるかどうか等の判断が複雑困難となるなどの事態を生じさせ ることとなり、それでは、迅速・的確な審査を実現するため、既にされた審査 結果を有効に活用して、補正された発明の審査を行うことができる範囲で補正 を認めるという同項の制度趣旨に合致しないことになるから、増項補正を認め ることは相当でない。 しかるところ、本件補正後の請求項8は、本件補正により新たに追加された 請求項であるから、補正事項1は、増項補正に当たる。 また、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項11(本件補正前の請 求項10を明確化したもの)から最終段落の「ストラップセンサ」に係る構成 要件を省いて上位概念化したものであるところ、本件補正前の請求項10(本 28件補正後の請求項11)に係る発明については、審査官によって審査され、特許性を具備することが示唆されていたといえるとしても、本件補正後の請求項11から最終段落の上記構成要件を省いて上位概念化した本件補正後の請求項8に係る発明については、これまで審査されておらず、その特許性については判断されていないから、既にされた審査結果を有効に活用して迅速に審査をすることができたものとはいえない。 さらに、原告が主張するように、仮に本件補正後の請求項1に係る発明に特許性があるとしても、同請求項に従属する全ての請求項に係る発明が、必ずしも特許性を具備するとは限らないことは自明であるから、本件補正後の請求項8に係る発明が、直ちに本来保護されるべきものと認められる発明に該当するとはいえない。 以上によれば、補正事項1は特許法第17条の2第5項2号の規定に適合するとの原告の主張は、理由がない。 ? 補正事項2ないし5の判断の誤りの主張に対し 補正事項2ないし5は、本件補正前の請求項17及び18において特定され ていた「携帯装置」に係る発明、本件補正前の請求項19及び20において特 定されていた「タグ」に係る発明を、それぞれ本件補正後の請求項18ないし 21において「システム」に係る発明へと補正するものであって、発明の対象 を変更するものであり、また、補正前の請求項において特定されている発明特 定事項をさらに特定するものとはいえないから、 「特許請求の範囲の減縮」を目 的とするものに該当しない。 また、仮に補正事項2ないし5は本件補正前の請求項1に内的付加に相当す る追加的要件を規定したものであるとの原告の主張を前提とすれば、補正事項 2ないし5は、本件補正前の請求項17ないし20を削除した上で、本件補正 前の請求項1を限定した新たな請求項19ないし21をたてるというような態 様による補正を行ったことになるが、このような補正は、増項補正に当たるも 29 のであるから、前記(1)と同様の理由により、特許法第17条の2第5項2号の 規定に適合するものではない。 したがって、補正事項2ないし5は同号の規定に適合するとの原告の主張は、 理由がない。 |
|
当裁判所の判断
1 補正事項1の判断の誤りについて ? 本件補正後の請求項8と対応する補正前の請求項について ア 特許法17条の2第5項は、拒絶査定不服審判を請求する場合において、 その審判の請求と同時に特許請求の範囲についてする補正(同条1項ただし 書4号)は、同条5項1号から4号までのいずれかの事項を目的とするもの に限ると規定し、同項2号は、「特許請求の範囲の減縮」(同法36条5項の 規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するも のであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該 請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同 一であるものに限る。)と規定している。同法17条の2第5項の趣旨は、拒 絶査定を受け、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲の補正 について、既に行った先行技術文献調査の結果等を有効利用できる範囲内に 制限することにより、迅速な審査を行うことができるようにしたことにある ものと解される。このような同項の趣旨及び同項2号の文言に照らすと、補 正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するというためには、 補正後の請求項が補正前の請求項の発明特定事項を限定した関係にあること が必要であり、その判断に当たっては、補正後の請求項が補正前のどの請求 項と対応関係にあるかを特定し、その上で、補正後の請求項が補正前の当該 請求項の発明特定事項を限定するものかどうかを判断すべきものと解される。 また、補正により新しい請求項を追加する増項補正であっても、補正後の新 しい請求項がそれと対応関係にある補正前の特定の請求項の発明特定事項を 30 限定するものであれば、 「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当す るものと解される。 以上を前提に、補正事項1が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもの に該当するかどうかについて判断する。 イ 前記第2の2(1)のとおり、本件補正前の特許請求の範囲は、請求項1ない し21からなり、請求項1ないし16に係る発明はシステムの発明、請求項 17及び18に係る発明は携帯装置の発明、請求項19及び20に係る発明 はタグの発明、請求項21に係る発明は方法の発明である。 一方、前記第2の2(2)のとおり、本件補正後の特許請求の範囲は、請求項 1ないし22からなり、請求項1ないし21に係る発明はシステムの発明、 請求項22に係る発明は方法の発明である。 本件補正前の請求項1ないし16と本件補正後の請求項1ないし17を対 比すると、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の文言の一部を 補正したものであること、本件補正後の請求項2ないし7は、それぞれ本件 補正前の請求項2ないし7と同一の記載であること、本件補正後の請求項9 は、本件補正前の請求項8と同一の記載であること、本件補正後の請求項1 0ないし15は、それぞれ本件補正前の請求項9ないし14の文言の一部を 補正したものであること、本件補正後の請求項16及び17は、それぞれ本 件補正前の請求項15及び16と同一の記載であることが認められるから、 本件補正前の請求項1ないし16は、それぞれ本件補正後の請求項1ないし 7、9ないし17と対応関係にあることが認められる。 そうすると、本件補正後の請求項8は、本件補正により、新たに追加され た請求項であることが認められる。 ウ 次に、本件補正後の請求項8の記載は、 「 前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、また は長さを変更するように調整可能であり、 31 該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、また は長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたスト ラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの前記調 整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに 基づいて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記ア ンテナのための補償を調整するように構成されており、 該システムが、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/ま たは、調整可能な整合回路もしくはシステムを備え、該システムが、特定 された前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あ るいは、これらを示すデータに基づいて、前記複数のアンテナ整合回路も しくはシステム、および/または、調整可能な整合回路もしくはシステム のうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アン テナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償 を調整するように構成されている、 請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。」であるのに対し、 本件補正前の請求項10の記載は、 「 前記ストラップは、前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、また は長さを変更するように調整可能であり、 該システムが、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、また は長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するように構成されたスト ラップセンサを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位 置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに基づ いて、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテ ナのための補償を調整するように構成されており、 該システムが、複数のアンテナ整合回路またはシステム、および/また 32は、調整可能な整合回路またはシステムを備え、該システムが、特定された前記ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、 これらを示すデータに基づいて、前記整合回路またはシステムのうちの1個以上を選択および/または変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテナのための補償を調整するように構成されており、 前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じられるか固定されたときに、 第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサによって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するように構成されている、 請求項8または9に記載のシステム。」であること、本件補正前の請求項10が引用する請求項8は、本件補正前の「請求項1〜7」を、本件補正前の請求項9は「請求項4に従属する請求項8」を引用しているから、本件補正前の請求項10は、本件補正前の請求項1ないし7の従属項であることからすると、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項10の発明特定事項から、 「前記ストラップセンサが、前記ストラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第 33 2接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じ られるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上 の間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、 第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサ によって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、 前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するよ うに構成されている」との構成を削除した請求項であり、本件補正前の請求 項10と対応関係にあることが認められる。 そして、前記?イのとおり、本件補正後の請求項11は、本件補正前の請 求項10と対応関係にあるから、本件補正前の請求項10は、本件補正後の 請求項8及び11の両請求項と対応関係にあることが認められる。 以上によれば、補正事項1は、新たに本件補正後の請求項8を追加する増 項補正に当たり、また、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項10 と対応関係にあることが認められる。 エ これに対し原告は、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1ない し7に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件((a) ストラップは、該ストラップの調整位置、周囲長さ、形状、または長さを変 更するように調整可能である点、(b) システムが、ストラップの調整位置、 周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータを特定するよ うに構成されたストラップセンサを備える点、(c) システムが、ストラップ の調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータ に基づいて、アンテナの少なくとも1個の動作パラメータまたは前記アンテ ナのための補償を調整するように構成されている点、(d) システムが、複数 のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調整可能な整合回 路もしくはシステムを備える点、(e) システムが、特定されたストラップの 調整位置、周囲長さ、形状、または長さ、あるいは、これらを示すデータに 34 基づいて、複数のアンテナ整合回路もしくはシステム、および/または、調 整可能な整合回路もしくはシステムのうちの1個以上を選択および/または 変更することによって、前記アンテナの少なくとも1個の動作パラメータま たは前記アンテナのための補償を調整するように構成されている点)を規定 したものであり、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必 要な事項を限定するものであるから、本件補正前の請求項1と一対一で対応 する請求項ではないとしても、これに準ずるような対応関係に立つ旨主張す る。 しかしながら、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1のほか、 請求項2ないし7の発明特定事項を引用するものであり、本件補正後の請求 項1の従属項であるのみならず、請求項2ないし7の従属項でもあること、 本件補正後の請求項1は、本件補正後の請求項2ないし7の発明特定事項を 含むものではないことからすると、本件補正後の請求項8は、本件補正にお いて、本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項に該当しないのはも とより、これに準ずるような対応関係に立つものと認めることはできない。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (2) 補正事項1の「特許請求の範囲の減縮」の目的該当性について ア 前記(1)ウ認定のとおり、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項1 0と対応関係にあることが認められる。 しかるところ、前記(1)ウ認定のとおり、本件補正後の請求項8は、本件補 正前の請求項10の発明特定事項から、 「前記ストラップセンサが、前記スト ラップの第1の部分に備えられた1個以上の第1接点と、前記ストラップの 第2の部分に備えられた1個以上の第2接点とを備えるか、あるいは、第1 接点および第2接点と通信可能であり、第1接点のうちの1個以上が、第2 接点のうちの1個以上と選択的に接触可能であり、前記ストラップが閉じら れるか固定されたときに、第1接点の1個以上および第2接点の1個以上の 35 間の接触により測定回路を完成させるように構成されている導体によって、 第1接点と第2接点とが結合されて、該システムが、前記ストラップセンサ によって測定された前記測定回路の少なくとも1つの電気特性に基づいて、 前記ストラップの前記調整位置、周囲長さ、形状、または長さを特定するよ うに構成されている」との構成を削除した請求項であるところ、この削除に よって、本件補正前の請求項10の発明特定事項を限定したものと認めるこ とはできず、かえって、本件補正前の請求項10に係る発明を上位概念化し たものといえるから、補正事項1は、 「特許請求の範囲の減縮」を目的とする ものと認められない。 イ これに対し原告は、@本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1な いし7に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件を 規定したものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定する ために必要な事項を限定するものである、A本件拒絶理由通知では、本件補 正前の請求項1について新規性及び進歩性などの実体的要件に関する拒絶理 由の指摘はなく、本件補正前の請求項1に特許性が認められていることから すると、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項1に対する従前の審 査内容に沿って特許性を具備するものといえるから、本件補正前の請求項1 についての審査を十分に有効活用して、補正された発明の審査を行うことが 可能であり、新たな先行技術調査等を要求することで審査遅延などの事態を 生じさせないことも明らかである、B厳密には、本件補正後の請求項8は、 本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項ではないとしても、これに 準ずるような対応関係に立つものであり、補正事項1は、既にされた審査結 果を有効に活用できる範囲内で補正を認めることとした特許法17条の2第 5項の制度趣旨に反するものではなく、同項2号が許容する増項補正に相当 するから、本件補正前の請求項1との関係で「特許請求の範囲の減縮」同号) ( を目的とするものに該当する旨主張する。 36 しかしながら、前記(1)エで説示したとおり、本件補正後の請求項8は、本 件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項に該当しないのはもとより、 これに準ずるような対応関係に立つものと認めることはできないから、この 点において、原告の上記主張は、その前提を欠くものである。 また、前記アで説示したとおり、本件補正後の請求項8は、本件補正前の 請求項10の発明特定事項の構成の一部を削除した請求項であるが、本件に おいては、本件補正前の請求項10の発明特定事項から上記構成を削除した 請求項について、サポート要件等の記載要件の審査が行われた形跡はうかが われず、かかる審査が新たに必要となるものと考えられるから、本件補正後 の請求項8は、本件補正前の請求項1に対する従前の審査内容に沿って特許 性を具備するものと直ちにいえるものではなく、この点においても、原告の 上記主張は、その前提を欠くものである。 したがって、補正事項1は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと 認められないから、原告の上記主張は、採用することができない。 ? 小括 以上のとおり、補正事項1は、特許法17条の2第5項2号の「特許請求の 範囲の減縮」を目的とするものと認められないから、その余の点について判断 するまでもなく、補正事項1を含む本件補正は同号に適合しない。 したがって、本件補正は同号に違反するものとして、これを却下した本件審 決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由は理由がない。 2 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消す べき違法は認められない。 したがって、原告の請求は棄却されるべきものであるから、主文のとおり判決 する。 37 |
裁判長裁判官 | 大鷹一郎 |
---|---|
裁判官 | 小川卓逸 |
裁判官 | 小林康彦 |