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事件 |
令和
3年
(ネ)
10072号
特許権侵害行為差止請求控訴事件
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控訴人 ジョウズ・ジャパン株式会社 控訴人 アンカー・ジャパン株式会社 上記両名訴訟代理人弁護士 小林幸夫木村剛大 藤沼光太 平田慎二 被控訴人 フィリップ・モーリス・プロ ダクツ・ソシエテ・アノニム 同訴訟代理人弁護士 本多広和 江幡奈歩 同訴訟代理人弁理士 新井剛 石原俊秀 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/04/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件各控訴をいずれも棄却する。 12 控訴費用は控訴人らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 |
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事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)
1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「加熱式エアロゾル発生装置、及び一貫した特性のエ アロゾルを発生させる方法」とする特許第6125008号の特許(以下「本 件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者 である被控訴人が、控訴人らが別紙物件目録記載の各製品(以下「被告製品」 と総称し、個々の製品をそれぞれの番号に応じて「被告製品1」などという。) を共同で販売、輸入等をする行為が本件特許権の侵害又は間接侵害(特許法1 01条5号)に当たる旨主張して、控訴人らに対し、同法100条1項及び2 項に基づき、被告製品の販売、輸入等の差止め及び廃棄を求める事案である。 原審は、被控訴人の請求を全部認容したことから、控訴人らが、原判決を不 服として、本件各控訴を提起した。 2 前提事実 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のと おりであるから、これを引用する。 (1) 原判決2頁末行の「被告ジョウズは」を「控訴人ジョウズ・ジャパン株式 会社(以下「控訴人ジョウズ」という。)は」と改める。 (2) 原判決3頁3行目の「被告アンカーは」を「控訴人アンカー・ジャパン株 式会社(以下「控訴人アンカー」という。)は」と、同頁10行目の「特許権」 を「本件特許権」と、同頁20行目を「本件特許の特許請求の範囲は、請求 項1ないし26からなり、その請求項1及び15の記載は、次のとおりであ 2 る(甲2) 」と改め、同頁21行目の「以下」の次に「、請求項1に係る発 。 明を」を加える。 (3) 原判決4頁11行目の「(以下「本件発明2」という。 」を「 ) (以下、請求 項15に係る発明を「本件発明2」といい、本件発明1及び2を併せて「本 件各発明」という。 」と改める。 ) (4) 原判決11頁19行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「エ 被告方法の構成1a及び1bは、本件発明1の構成要件1A及び1B をそれぞれ充足し、被告製品の構成2a及び2bは、本件発明2の構成 要件2A及び2Bをそれぞれ充足する。」 (5) 原判決13頁1行目の「認容した」を「認容する仮処分決定をした」と改 める。 3 争点 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の3記載のと おりであるから、これを引用する。 (1) 原判決13頁21行目の「本件特許」を「請求項1及び15に係る本件特 許」と改める。 (2) 原判決14頁2行目を「(3) 共同不法行為の成否(争点3)」と改める。 |
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争点に関する当事者の主張
1 争点1-1(被告製品が「前記装置の動作の直後の第1段階において前記加 熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇し、 (構成要件2C)との構 」 成を備えるか)、争点1-2(被告製品が「第3段階において前記加熱要素の 温度が前記第2の温度より高い第3の温度に上昇し、 (構成要件2C)との 」 構成を備えるか)について 原判決の「事実及び理由」の第3の1及び2記載のとおりであるから、これ を引用する。 2 争点2-1(乙7発明に基づく新規性欠如)について 3 原判決24頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加えるほか、原判決の「事 実及び理由」の第3の3記載のとおりであるから、これを引用する。 「(4) 原判決は、乙7公報の図3及び図4によれば、乙7発明は、エアロゾル 形成基材の最適な加熱温度を中心とした上下一定幅の温度を設定した上 で、上限の設定温度になったときにスイッチ手段をオフにし、一定時間経 過後にスイッチ手段をオンにするなどの制御を繰り返すことにより、被加 熱物体の温度を安定的に維持するという発明であると認められ、その技術 思想は、本件各発明の技術思想、すなわち、エアロゾル形成基材の加熱期 間にわたり、エアロゾルの送達量を一貫させるために送達量の増加に応じ て第1の温度から第2の温度へと温度を低下させ、逆にエアロゾル形成基 材の枯渇及び熱拡散の低下に応じて第2の温度から第3の温度へと温度 を上昇させるとの技術思想とは異なるものというべきである、このように、 本件各発明と乙7発明では、加熱要素の制御方法やその技術思想が異なる というべきであるから、乙7発明が本件各発明の第1〜第3の温度及び第 1〜第3段階に相当する構成を有するということはできないとして、乙7 発明が相違点に係る7-Aの構成を備えていない旨判断した。 しかし、本件各発明の特許請求の範囲(請求項1及び15)は、加熱要素 の温度が、第1の温度、第2の温度、第3の温度の順に変化することを特 定するのみであり、各温度がどの程度の時間維持されるのか、各温度がど の程度の高さなのかといった事項については一切特定されていないから、 原判決が認定するような本件各発明の技術思想は、発明の要旨として認定 することはできない。 したがって、原判決の上記判断は、誤りである。」3 争点2-2(乙8発明に基づく新規性・進歩性欠如)について 原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のとおりであるから、これを引用 する。 44 争点2-3(サポート要件違反)について 原判決36頁13行目末尾に次のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理 由」の第3の5記載のとおりであるから、これを引用する。 「また、少なくとも、持続時間が5秒〜30秒の場合又は360秒以上の場合 について本件各発明の課題を解決できると認識することはできない。」5 争点2-4(明確性要件違反)、争点2-5(実施可能要件違反)について 原判決の「事実及び理由」の第3の6及び7記載のとおりであるから、これ を引用する。 6 争点3(共同不法行為の成否)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の8記載のと おりであるから、これを引用する。 (1) 原判決40頁20行目の「評価し得る。」を「評価し得るから、控訴人らに ついて本件特許権侵害の共同不法行為が成立する。」と改める。 (2) 原判決42頁16行目から19行目までを次のとおり改める。 「 Ankerグループの日本法人である控訴人アンカーは、控訴人ジョウ ズから、控訴人ジョウズ及び控訴人アンカー間の平成30年3月1日付け 「業務委託契約書」 (以下「本件業務委託契約書」という。乙40)の2条 1項に示されるように、@控訴人ジョウズの喫煙具製品の開発補助業務及 びそれに付随する一切の業務、A控訴人ジョウズの喫煙具製品のマーケテ ィング及びそれに付随する一切の業務、B控訴人ジョウズの会計事務及び 経営管理に関する一切の業務、Cその他控訴人ジョウズと控訴人アンカー の協議の上決定された業務等、控訴人ジョウズの事業及び経営に関する実 質的に全ての業務を受託していた。」 (3) 原判決43頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 このように、控訴人アンカーは、Ankerグループの製品である被告 製品の日本における販売に関して、開発補助業務やマーケティング等の販 5 売活動を行っていたのであるから、控訴人アンカーが控訴人ジョウズと共 同して被告製品の販売等を行っていたことは明らかである。」 (4) 原判決44頁12行目の「複数の会社」の次に (株式会社スクランブル、 「 株式会社エスクリ、株式会社マイクロアドプラス、株式会社WRAINBO W、株式会社ウィルゲート、The Rocket Science Gr oup、LLC、株式会社BitStar、株式会社NEWSY、株式会社 日本経済広告社等。乙23、30、31の1及び2、32ないし35、41 ないし45等)」を、同頁13行目の「固定額であり、」の次に「控訴人アン カーが得る報酬は、 を、 」 同頁20行目末尾に「このように控訴人アンカーは、 被告製品の販売等に関する業務を一切行っていない。」を加える。 (5) 原判決45頁9行目末尾に「Ankerグループや中国アンカー社が被告 製品に関する事業に関与していることと、控訴人アンカーが被告製品の販売 等の実施主体であることとは全くの別問題である。 を加え、 」 同頁11行目の 「多数存在する。」を「多数存在する(乙47) 」と改める。 。 (6) 原判決45頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「(3) まとめ 以上のとおり、控訴人ジョウズは、自己の名義及び計算によって、被 告製品の輸入、販売、広告宣伝等を行っていたのに対し、控訴人アンカ ーは、控訴人ジョウズから業務委託を受けていた複数の会社のうちの一 つとして、被告製品の返品及びマーケティング業務等の委託を受けてい ただけであり(乙40) 被告製品の販売等に関する業務を一切行ってい 、 ないから、控訴人アンカーが控訴人ジョウズと共同して被告製品の販売 等を行っていたということはできない。」7 争点4(差止めの必要性)について 原判決の「事実及び理由」の第3の9記載のとおりであるから、これを引用 する。 6 |
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当裁判所の判断
当裁判所も、被控訴人の請求はいずれも理由があるものと判断する。その理 由は、以下のとおりである。 1 本件各発明の内容、争点1-1(被告製品が「前記装置の動作の直後の第1 段階において前記加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇し、 (構成 」 要件2C)との構成を備えるか)、争点1-2(被告製品が「第3段階において 前記加熱要素の温度が前記第2の温度より高い第3の温度に上昇し、 (構成要 」 件2C)との構成を備えるか)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の1ないし3 記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決62頁11行目の「エアロゾル形成基材を加熱することによって」 を削る。 (2) 原判決64頁11行目から12行目にかけての「(段落【0021】 」を ) 削る。 (3) 原判決65頁9行目の「直ちに」を「直後の」と改める。 2 争点2-1(乙7発明に基づく新規性欠如)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の4記載のと おりであるから、これを引用する。 (1) 原判決81頁3行目から86頁2行目までを次のとおり改める。 「(2) 構成要件1C及び2Cの技術的意義について ア 本件発明1の構成要件1Cは、 「前記方法は、前記加熱要素に供給さ れる前記電力を、前記装置を動作させた直後の第1段階において前記 加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇するように電力が前 記少なくとも1つの加熱要素に供給され、第2段階において前記加熱 要素の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に低下するが、前 記エアロゾル形成体の揮発温度より低くならないように電力が供給さ 7 れ、第3段階において前記加熱要素の温度が前記第2の温度より高い 第3の温度に上昇するように電力が供給されるよう制御するステップ を含む」というものである。本件発明1の特許請求の範囲の請求項1 の記載によれば、本件発明1の構成要件1Cは、エアロゾル発生装置 におけるエアロゾルの発生を制御する方法の構成として、エアロゾル 発生装置が備える加熱要素に供給される電力を制御するステップを規 定したものと理解できる。 また、本件発明2の構成要件2Cは、 「前記電気回路は、前記加熱要 素に供給される前記電力を、前記装置の動作の直後の第1段階におい て前記加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇し、第2段階 において前記加熱要素の温度が前記第1の温度より低い第2の温度に 低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度より低くはならず、第 3段階において前記加熱要素の温度が前記第2の温度より高い第3の 温度に上昇し、前記第1、第2及び第3段階中に電力が前記加熱要素 に供給されるように制御するよう構成される」というものである。本 件発明2の特許請求の範囲の請求項15の記載によれば、本件発明2 の構成要件2Cは、電気作動式エアロゾル発生装置が備える電気回路 が加熱要素に供給される電力を制御する構成を規定したものと理解で きる。また、構成要件2Cの記載から、第1の温度、第2の温度及び 第3の温度は、いずれもエアロゾル形成体の揮発温度よりも低くない 温度であることを理解できる。 イ(ア) 本件明細書等には、構成要件1C及び2Cに関し、次のような 記載がある。」(2) 原判決87頁4行目の「本件各発明における第1〜第3の温度制御」 「構 を 成要件1C及び2Cにおける加熱要素の温度制御」と改め、同頁16行目の 「提供する」の次に「(段落【0005】 」を加える。 ) 8 (3) 原判決87頁18行目から89頁20行目までを次のとおり改める。 「(3) 乙7公報を主引用例とする新規性の欠如の有無について ア 控訴人らは、乙7公報には、乙7発明1及び2の開示があり、乙7 発明1は本件発明1の構成要件をすべて備えるから、本件発明1と同 一であり、乙7発明2は本件発明2の構成要件をすべて備えるから、 本件発明2と同一である旨主張するのに対し、被控訴人は、乙7発明 1は構成要件1Cの構成を備えておらず、乙7発明2は構成要件2C の構成を備えていないから、控訴人らの主張は理由がない旨主張する。 イ そこで検討するに、乙7公報には、乙7公報記載の加熱制御装置が、 構成要件1Cのうち「第2段階において前記加熱要素の温度が前記第 1の温度よりも低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体 の揮発温度より低くならないように電力が供給され」るとの構成及び 構成要件2Cのうち「前記…第2…段階中に電力が前記加熱要素に供 給されるように制御する」との構成を備えることの開示があるものと 認められないから、少なくとも、この点において、本件各発明と控訴 人ら主張の乙7発明1及び2は相違するものと認められる。」 (4) 原判決89頁21行目の「被告らは、相違点7-Bに関し」を「ウ 控訴 人らは、 と、 」 同頁23行目の「乙7発明」 「乙7発明1及び2」 を と改める。 (5) 原判決90頁16行目の「乙7発明」を「乙7公報記載の加熱制御装置」 と、同頁21行目の「乙7発明1」を「乙7発明1及び2」と、同頁同行目 の「相違点7-B」を「構成要件1C及び2Cの前記各構成」と、同頁23 行目の「(5)」を「(4)」と、同頁24行目の「乙7発明」を「乙7公報」と改 める。 3 争点2-2(乙8発明に基づく新規性・進歩性欠如)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の5記載のと おりであるから、これを引用する。 9(1) 原判決101頁22行目から106頁18行目までを次のとおり改める。 「(2) 乙8公報を主引用例とする新規性の欠如の有無について ア 控訴人らは、乙8公報には、乙8発明1及び2の開示があり、乙8 発明1は本件発明1の構成要件をすべて備えるから、本件発明1と同 一であり、乙8発明2は本件発明2の構成要件をすべて備えるから、 本件発明2と同一である旨主張するのに対し、被控訴人は、乙8発明 1は構成要件1Cの構成を備えておらず、乙8発明2は構成要件2C の構成を備えていないから、控訴人らの主張は理由がない旨主張する。 イ そこで検討するに、乙8公報には、乙8公報記載の気化式電子タバ コが、構成要件1Cのうち「第2段階において前記加熱要素の温度が 前記第1の温度よりも低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル 形成体の揮発温度より低くならないように電力が供給され」るとの構 成並びに構成要件2Cのうち「前記…第2…段階中に電力が前記加熱 要素に供給されるように制御する」との構成及び「第2段階において 前記加熱要素の温度が前記第1の温度より低い第2の温度に低下する が、前記エアロゾル形成体の揮発温度より低くはならず」との構成を 備えることの開示があるものと認められないから、少なくとも、この 点において、本件各発明と控訴人ら主張の乙8発明1及び2は相違す るものと認められる。」(2) 原判決106頁19行目の「被告らは、相違点8-Bに関し」を「ウ(ア) 控訴人らは、」と、同頁21行目の「乙8発明」を「乙8発明1及び2」と、 同頁24行目の「前記4(4)イ」 「前記4(3)ウ」 を と、同頁末行の「乙8発明」 を「乙8公報記載の気化式電子タバコ」と改める。 (3) 原判決107頁4行目の「乙8発明は、相違点8-Bに係る構成を」 「乙 を 8発明1及び2は、第2段階で電力が供給される構成を」と改め、同頁6行 目を削り、同頁7行目の「被告らは」を「(イ) 控訴人らは」と、同頁8行目 10 及び18行目の各「乙8発明」をいずれも「乙8発明1及び2」と、同頁2 0行目の「相違点8-Cに係る構成」を「上記構成」と、同頁21行目を「(3) 乙8公報を主引用例とする進歩性の欠如の有無について」と改める。 (4) 原判決109頁3行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 乙8公報には、乙8公報記載の気化式電子タバコについて、構成要件1 Cのうち「第2段階において前記加熱要素の温度が前記第1の温度よりも 低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度より低く ならないように電力が供給され」るとの構成並びに構成要件2Cのうち 「前記…第2…段階中に電力が前記加熱要素に供給されるように制御す る」との構成及び「第2段階において前記加熱要素の温度が前記第1の温 度より低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度よ り低くはならず」との構成を備えることについての記載や示唆はない。」(5) 原判決109頁4行目の「乙9発明は」を「乙9公報記載のシステムは」 と改め、同頁11行目から末行までを次のとおり改める。 「 一方で、乙9公報には、乙9公報記載のシステムにおいて、構成要件1 Cのうち「第2段階において前記加熱要素の温度が前記第1の温度よりも 低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度より低く ならないように電力が供給され」るとの構成並びに構成要件2Cのうち 「前記…第2…段階中に電力が前記加熱要素に供給されるように制御す る」との構成及び「第2段階において前記加熱要素の温度が前記第1の温 度より低い第2の温度に低下するが、前記エアロゾル形成体の揮発温度よ り低くはならず」との構成を備えることについての記載はない。 そうすると、当業者が、乙8公報及び乙9公報に基づいて、乙8発明1 及び2において、上記相違点に係る本件発明1の構成要件1Cの構成及び 本件発明2の構成要件2Cの構成とすることを容易に想到することがで きたものと認めることはできない。」 11 (6) 原判決110頁3行目から4行目までを次のとおり改める。 「 以上によれば、控訴人ら主張の乙8公報を主引用例とする新規性・進歩 性欠如の主張は理由がない。」4 争点2-3(サポート要件違反)、争点2-4(明確性要件違反)、争点2- 5(実施可能要件違反)について 原判決111頁7行目から8行目の「 【図5】 ( 」を「 【図5】 」と改め、同頁 ( ) 14行目の「甲7公報」を「乙7公報」と、同頁15行目の「甲8公報」を「乙 8公報」と改めるほか、原判決の「事実及び理由」の第4の6ないし8記載の とおりであるから、これを引用する。 5 争点3(共同不法行為の成否)について 以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の9記載のと おりであるから、これを引用する。 (1) 原判決114頁11行目の「被告アンカーの責任主体性」を「共同不法行 為の成否」と改め、同頁12行目から15行目までを次のとおり改める。 「 被告方法が本件発明1の技術的範囲に属すること、被告製品が本件発明 2の技術的範囲に属することは、前記1ないし3のとおりである。 また、証拠(甲22ないし27)によれば、被告製品は、被告方法の使 用に用いる物であって、本件発明1による「課題の解決に不可欠なもの」 (特許法101条5号)に該当することが認められる。 被控訴人は、控訴人アンカーは、控訴人ジョウズと主観的かつ客観的に 共同して、被告製品の販売等をしていたと評価し得るから、控訴人らにつ いて本件特許権侵害の不法行為が成立する旨主張するので、以下において 判断する。」 (2) 原判決114頁18行目から同頁23行目までを次のとおり改める。 「ア(ア) 控訴人アンカーは、電化製品、コンピューター関連機器の企画、 製造、販売及び輸出入等を目的として、平成25年1月30日に設立 12 された株式会社であり、中国法人の中国アンカー社を中核企業とし、 米国、欧州、アジア各国でスマートフォンやタブレットの製造、販売 を行う国際的な企業グループ「Ankerグループ」の日本法人であ る。 控訴人ジョウズは、平成30年2月28日、喫煙具類や電子製品の 企画、製造、販売及び輸出入等を目的として設立された株式会社であ り、控訴人ジョウズの設立時の代表取締役は、控訴人アンカーの代表 取締役のA(以下「A」という。)であった(甲11)。 控訴人ジョウズの株式は、全てAが保有していたが、同年4月18 日、中国アンカー社の完全子会社である POWER MOBILE LIFE、 LLC に 対し、全て譲渡された(甲12)。 (イ) 控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、平成30年3月1日付け業 務委託契約書(乙40)を作成し、本件業務委託契約を締結した。本 件業務委託契約書には、控訴人ジョウズが控訴人アンカーに対し、控 訴人ジョウズの喫煙具製品の開発補助業務及びそれに付随する一切の 業務、喫煙具製品のマーケティング及びそれに付随する一切の業務、 会計事務及び経営管理に関する一切の業務、その他控訴人ジョウズと 控訴人アンカーの協議の上決定された業務の全部又は一部を委託する 旨の条項(2条1項)が存在する。」(3) 原判決116頁10行目から117頁22行目までを次のとおり改める。 「(2) 検討 前記(1)の認定事実によれば、@控訴人アンカー及び控訴人ジョウズは、 いずれも中国法人の中国アンカー社を中核企業とする国際的な企業グル ープ「Ankerグループ」の日本法人であり、控訴人ジョウズの全株 式は、中国アンカー社の完全子会社である POWER MOBILE LIFE、 LLC が 保有していること、A控訴人ジョウズの設立当時(平成30年2月28 13日)の代表取締役は、控訴人アンカーの代表取締役と同一人(A)であったこと、B控訴人ジョウズの本店所在地のオフィスの利用契約は、控訴人アンカーが契約し、同年4月16日、控訴人ジョウズに契約上の地位が譲渡されたものであり、かつ、利用契約上の利用者はA1名のみであること、C令和元年9月時点の控訴人ジョウズの従業員数は2名であり、そのうちの1名のBは、平成30年4月から平成31年4月末まで控訴人アンカーに在籍し、令和元年5月から控訴人ジョウズに在籍していたこと、D控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、控訴人ジョウズ設立日の翌日の平成30年3月1日付けで、控訴人ジョウズが控訴人アンカーに対し、控訴人ジョウズの喫煙具製品の開発補助業務及びそれに付随する一切の業務、喫煙具製品のマーケティング及びそれに付随する一切の業務、会計事務及び経営管理に関する一切の業務、その他控訴人ジョウズと控訴人アンカーの協議の上決定された業務の全部又は一部を委託する旨の本件業務委託契約を締結したこと、E被告製品は、同年6月以降、控訴人ジョウズのウェブサイトで販売が開始され、同年11月当時には、アマゾンサイト及び楽天市場のサイトで、控訴人ジョウズを販売者として販売されており、また、被告製品の輸入手続は、控訴人ジョウズを輸入者として行われたこと(乙14、37) Fアマゾンサイトでは、 、 被告商品について、 「米国・日本・欧州のEC市場において、スマートフォン・タブレット関連製品でトップクラスの販売実績を誇る『Anker』のサポートのもと、精密かつ均一な温度管理と…最適な加熱環境を作り出し、たばこ本来の香りと味を忠実に再現」などと紹介され(甲4の1、5の1)、また、Ankerグループのオフィシャルストアの海外のウェブサイトでは、被告製品が「Anker Jouz 20」などとして販売されていたこと(甲14) G被告製品1及び2の記者発表に 、 関する同年6月20日付け記事等(甲13の1ないし4)には、 「Ank 14erグループが技術的にサポートしたことから、アンカー・ジャパンのA社長がジョウズ ジャパンの代表取締役を兼任する」 ・ などと掲載され、 被告製品3の記者発表に関する2019年(平成31年)4月9日付け記事(甲32)には、当時控訴人アンカーの従業員であったBが「ジョウズ・ジャパン株式会社事業戦略本部マネジャー」との肩書きでプレゼンテーションを行ったことが掲載されたことが認められる。 上記認定の控訴人ジョウズと控訴人アンカーの人的及び物的な結合関係(@ないしC) 控訴人ジョウズの控訴人アンカーに対する本件業務委 、 託契約に基づく委託業務の範囲が控訴人ジョウズの業務全般にわたっていること(D)、被告製品の広告宣伝の態様(F、G)その他前記(1)認定の諸事情を総合考慮すると、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、被告製品の販売等に関し、緊密な一体関係があるものと認められるから、被告製品の販売及びその輸入手続が控訴人ジョウズ名義で行われていたこと(E)を勘案しても、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、平成30年6月以降、共同して被告製品の販売等を行っていたものと認めるのが相当である。 そして、被告製品は、被告方法の使用に用いる物であって、本件発明1による「課題の解決に不可欠なもの」に該当することは、前記のとおりであるところ、控訴人らは、遅くとも、本件仮処分命令の送達により、 本件発明1が特許発明であること及び被告製品が方法の発明である本件発明1の実施に用いられることを知ったものと認められるから、控訴人らによる被告製品の上記販売等の行為は、本件発明2に係る本件特許権の侵害(直接侵害)に該当するとともに、本件発明1に係る本件特許権の間接侵害(特許法101条5号)に該当するものと認められる。 したがって、控訴人らについて本件特許権侵害の共同不法行為が成立するものと認められる。」 15(4) 原判決118頁1行目の「左右されるものではないと主張する。」を「左 右されるものではなく、控訴人アンカーは、被告製品の販売等に関する業務 を一切行っていない旨主張する。 と改め、 」 同頁2行目から12行目までを次 のとおり改める。 「 そこで検討するに、本件業務委託契約書には、控訴人ジョウズは控訴人 アンカーに対し業務委託料として毎月100万円に消費税相当額を加算 した額を支払う旨の条項(5条1項)があり、同条項によれば、控訴人ア ンカーの業務委託料は固定額であるといえるが、一方で、前記(2)認定のと おり、控訴人ジョウズと控訴人アンカーは、被告製品の販売等に関し、緊 密な一体関係があるものと認められるから、控訴人アンカーの業務委託料 が固定額であるからといって、控訴人アンカーが被告製品の販売等に関す る業務を一切行っていないということはできない。」(5) 原判決118頁22行目の「密接な人的及び物的な関係があることは」を 「、被告製品の販売等に関し、緊密な一体関係があることは」と、同頁末行 の「評価し得ることも上記のとおりである。」を「評価し得る。」と改める。 (6) 原判決119頁2行目から3行目までを次のとおり改める。 「ウ 控訴人らは、控訴人ジョウズは、自己の名義及び計算によって、被告 製品の輸入、販売、広告宣伝等を行っていたのに対し、控訴人アンカー は、控訴人ジョウズから業務委託を受けていた複数の会社のうちの一つ として、被告製品の返品及びマーケティング業務等の委託を受けていた だけであり、被告製品の販売等に関する業務を一切行っていないから、 控訴人アンカーが控訴人ジョウズと共同して被告製品の販売等を行って いたということはできない旨主張する。 しかしながら、前記(2)で説示したとおり、控訴人ジョウズと控訴人ア ンカーは、被告製品の販売等に関し、緊密な一体関係があるものと認め られることからすれば、控訴人ジョウズが自己の名義及び計算によって 16 被告製品の販売等を行っていたとしても、控訴人ジョウズと控訴人アン カーは、共同して被告製品の販売等を行っていたものと認めるのが相当 であるから、控訴人らの上記主張は採用することができない。」 6 争点4(差止めの必要性)について 原判決の「事実及び理由」の第4の10記載のとおりであるから、これを引 用する。 |
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結論
以上のとおり、被控訴人の請求は、いずれも理由があるから認容すべきもの である。 したがって、原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がないから 棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 大鷹一郎 |
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裁判官 | 小川卓逸 |
裁判官 | 小林康彦 |