関連審決 |
無効2019-800083 |
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事件 |
令和
3年
(行ケ)
10058号
審決取消請求事件
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原告 エフシーツー,インク. 同訴訟代理人弁護士 壇俊光 宮川利彰 被告株式会社ドワンゴ 同訴訟代理人弁護士 根本浩 濱田慧 同訴訟代理人弁理士 井上正 森川元嗣 澤井光一 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/03/23 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2019-800083号事件について令和3年1月15日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
本件は、特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、請求項1及び9に係る特許発明の新規性の有無並びに請求項1、2、5、6、9及び10に係る特許発明の進歩性の有無である。 1 特許庁における手続の経緯等 被告は、名称を「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」とする発明についての特許(特許第4734471号。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 本件特許に係る出願は、平成18年12月11日の出願である特願2006-333851号の一部を平成22年11月30日に新たな出願としたものであり(以下、特願2006-333851号の出願日である平成18年12月11日を「本件原出願日」という。)、本件特許は、平成23年4月28日に設定登録(請求項の数は10)がされたものである(甲38。以下、設定登録時の明細書(甲38)を「本件明細書」という。)。 原告は、令和元年10月10日、請求項1、2、5、6、9及び10に係る本件特許を無効にすることについて特許無効審判を請求し、特許庁は、これを無効2019-800083号事件として審理した上、令和3年1月15日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月25日、原告に送達された(出訴のための附加期間は90日)。 原告は、令和3年4月28日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 本件特許に係る発明の要旨(甲38) (1) 本件特許に係る特許請求の範囲のうち請求項1、2、5、6、9及び10の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る特許発明を請求項の番号に対応させて「本件発明1」などといい、本件発明1、2、5、6、9及び10を総称して「本件各発明」という。)。なお、本件発明1の各構成には、便宜上符号を付すこととする(以下、当該符号が付された本件発明1の構成を「構成1A」ないし「構成1F」という。)。 【請求項1】 (1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置で あって、 (1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 (1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、 (1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有し、 (1E)前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、 (1F)前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、 前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する (1A)ことを特徴とする表示装置。 【請求項2】 前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。 【請求項5】 前記コメント表示部は、前記コメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する際、前記第1の表示欄と前記第2の表示欄とにまたがるように表示させる ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項6】 前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部と、 前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項9】 動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置のコンピュータを、 前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生手段、 コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメント表示手段、 として機能させるプログラム。 【請求項10】 前記コメント表示手段は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項9記載のプログラム。 (2) なお、請求項5及び6が引用する請求項3及び4の記載は、次のとおりである。 【請求項3】 前記コメント表示部は、前記コメントを前記第1の表示欄内から当該第1の表示欄外であって前記第2の表示欄内へ移動表示させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示装置。 【請求項4】 前記コメント表示部が前記コメントを表示する前記第2の表示欄は、前記第1の表示欄よりも大きいサイズである ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の表示装置。 3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件発明1及び9の新規性(甲1を引用例とするもの。無効理由1-1)について ア 本件発明1について(ア) 甲1(特開2004-193979号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)の認定 「(1a)カメラサーバ101、102と、クライアント端末(ビューワ)200とがそれぞれネットワークに接続された映像配信システムにおけるクライアント端末200であって、 (1a1)クライアント端末200からネットワークを介してリクエストがカメラサーバ101、102へ送られ、 (1a2)カメラサーバ101、102でこのリクエストが受け入れられると、カメラサーバ101、102からクライアント端末200へ映像データが配送され、これにより、クライアント端末200でカメラ映像を見ることが可能となり、 (1b)クライアント端末200内には、カメラ映像の表示を担当する映像表示部504と、コメントなどの音声注釈データを注釈サーバ400に送付する注釈入力部505と、蓄積映像の再生時に対応する注釈などを同期させる同期再生部506とが含まれており、 (1c1)ここで、400は注釈サーバであり、カメラサーバ101、102が提供する映像データに関する注釈を収集および管理するものであり、 (1c2)注釈サーバ400には、得られた注釈を蓄えるデータベース部507と、対応する映像に対する同期記述を生成する同期生成部508とがあり、 (1d)ビューワマシンであるクライアント端末200は、 (1d1)ステップS601において、ビューワマシン上のWebブラウザが、 指示されたURLに対応するWWWサーバ700に接続し、HTML形式で記述されたWebページデータをリクエストし、 (1d2)ステップS602において、ビューワマシンは、WWWサーバ700からWebページデータを受け取り、これをWebブラウザに表示し始め、ここで受け取ったWebページデータの中には、本実施形態の映像配信システムのビューワを起動し、カメラサーバ101、102や注釈サーバ400などへ接続するための接続情報が含まれ、 (1d3)ステップS604において、ビューワマシンは、上記取得した接続情報の識別子に対応するプログラム、すなわち本映像配信システムのビューワプログラムを起動し、 (1d4)ステップS605において、上記起動したビューワプログラムにより、 接続情報に記載されているカメラサーバ101、102を構成する映像サーバ502のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを映像サーバ502へ接続し、 (1d5)ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラム(実現方法としては、スレッドあるいはプロセスの起動となる)が起動され、この映像表示用スレッドは、終了までステップS631の処理を繰り返し、すなわち、ビューワマシンは、映像サーバ502からの映像データが届くたびにそれを受け取り、ディスプレイ装置404cなどに表示し、 (1d6)ステップS606において、上記起動したビューワプログラムは、上記接続情報に記載されている注釈サーバ400のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続し、 (1d7)ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラムが(スレッドあるいはプロセスとして)起動され、この注釈用スレッドは、終了までステップS621からステップS624までの処理を繰り返し、すなわち、ビューワマシンは、 注釈サーバ400との間で注釈データの受け渡しをし、 (1d8)ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する処理(ステップS606)で起動する上記注釈用スレッドでは、まず、ステップS621において、ビューワマシン上の音声入出力装置404dを初期化し、 (1d9)ステップS622において、一定時間(例えば、1秒間)音声データを取得(キャプチャ)し、 (1d10)ステップS624において、上記得られた一定レベル以上の音声データと合わせて、映像サーバ502の識別子(典型的には、前記接続情報に記載されている映像サーバのアドレスおよび接続ポート情報である)、映像サーバ502との接続のセッション識別子、現在表示している映像のタイムスタンプなどの情報を注釈サーバ400に送信し、 (1e1)蓄積映像にアクセスする際のビューワマシンにおける動作の流れも同様であり、映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得し、 (1e2)ディスプレイ装置404cの表示画面の内容は、蓄積映像の再生制御インターフェースを表示し、 (1e3)再生映像に関するタイムスケールを表示し、再生している映像が、どの映像であるのかをユーザに伝え、さらに、注釈音声の存在を明示するためのアイコン(ビューワ画面1400の左下に表示されているベルのマーク)を表示し、 (1f)注釈サーバ400の動作の一例を説明するフローチャートは、 (1f1)リクエスト内容が、音声注釈データの登録である場合には、ステップS1310に進み、リクエストに付随する映像サーバ502とのセッション識別子、 タイムスタンプ、および音声注釈データなどの情報を取り出し、そして、それらの情報から同期記述を生成し、受け取った音声注釈データとともにデータベース部を介して保存し、 (1f2)リクエストで要求された映像サーバ識別子に関して、指定された時間帯の注釈データを、データベース部を介して抽出し、そして、得られた同期記述と注釈データとをクライアント(ビューワマシン)に配送する処理を有し、 (1g)同期記述の一例は、 (1g1)同期記述1500には、アドレス(bar.xyz.co.jp)に配置されたカメラサーバ101のカメラ装置 camera0 の2000年10月21日10時30分45秒から2000年10月21日10時45分20秒までの期間の蓄積映像について、アドレス(foo.xyz.co.jp)に配置されている注釈サーバ400から4つの音声注釈データを取り出して同期再生することが記述されており、 (1g2)同期記述は、videoタグにおいて参照されるmp4動画データのクエリにおける動画の開始及び終了時刻、「2000oct21.10:30:45」から「2000oct21.10:45:20」に対して、audioタグにおける開始時刻は「00m08s」、「03m18s」、「03m55s」、「08m06s」の4つの時刻で指定されるように、各音声注釈の再生開始時刻は動画の開始からの時刻によって指定され、 (1h1)これによって、蓄積映像を参照するユーザは、映像に同期する形で、 それに付随する適切な注釈を得ることが可能となり、 (1h2)このように本実施形態では、映像に付与された注釈を再生することが可能になり、映像アーカイブの作成や、映像を介したコミュニティ形成を効果的に進めることが可能となり、 (1h3)例えば、本実施形態の映像配信システムを利用して、結婚式会場の映像を中継および蓄積する際に、結婚式映像を見ている傍観者ユーザの祝辞や感想を、 適切に再現し、 (1i1)同様の手法で、テキスト注釈を付与することも可能であり、この場合には、ビューワを実装するプログラム上での注釈の扱いにおいて、音声注釈データの処理に加えて(あるいは、代えて)、テキスト注釈データの処理を実装すればよく、 (1i2)表示画面1800において、テキスト注釈はふきだしの形態で映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示され、テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部(蓄積映像)の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出さない、 (1a)クライアント端末200。」(イ) 本件発明1と甲1発明との対比 (一致点) (1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、 (1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 (1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、 (1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する (1A)ことを特徴とする表示装置。 (相違点1-1) 本件発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲1発明はそのような構成を有しない点。 (ウ) 本件発明1の新規性についての判断 上記(イ)のとおり、本件発明1と甲1発明には相違点1-1があり、当該相違点1-1は実質的な相違点であるといえる。 したがって、本件発明1は甲1発明ではない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 イ 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。 甲1発明は、コンピュータにより構成し、ビューワプログラムを動作させて甲1発明のクライアント端末200として機能させることができるものである。 すなわち、甲1から甲1発明と同様のプログラム発明(以下「甲1プログラム発明」という。)を認定することができる。 そして、本件発明9とそのような甲1プログラム発明とを対比すると、上記アにおいて検討したのと同様に、上記ア(イ)の(相違点1-1)と同様の相違点が存在するといえる。 よって、本件発明9は、甲1プログラム発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由1-1は理由がない。 (2) 本件発明1及び9の新規性(甲2を引用例とするもの。無効理由1-2)について ア 本件発明1について (ア) 甲2(特開2004-297245号公報)に記載された発明(以下「甲2発明」という。)の認定 「(2a)ウェブサーバ1、ストリーミングサーバ2、利用者端末(クライアントであるコンピュータ)4からなるストリーミング配信システムにおける利用者端末4であって、 (2b1)ストリーミングサーバ2と利用者端末4とは動画データのストリーミング配信が可能なネットワーク3により接続され、前者が後者へのテキストデータを重畳した動画のストリーミング配信を行い、当該動画はウィンドウ41に表示され、 (2b2)ストリーミング配信は、周知のSMIL(SynchronizedMultimedia Integrated Language )を用いて行われ、これにより、ストリーミングサーバ2から、ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとが同期されて1個のコンテンツにまとめて配信され、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示することができ、 (2c1)利用者端末4は、各々、ストリーミングサーバ2から動画コンテンツの配信を受け、その画面40のウィンドウ41にその動画を表示し、これを見た利用者は、利用者端末4から、同一画面40上において、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板42のようなテキスト書込部42(以下「テキスト書込部42」ともいう。)にテキストデータからなるメッセージを書き込み、 (2c2)テキスト書込部42に利用者端末4により書き込まれたテキストデータはウェブサーバ1により逐次収集され、当該収集したテキストデータはその収集の順にウェブサーバ1が備える書込ログファイル11に格納され、 (2d1)ストリーミングサーバ2により、ウェブサーバ1の書込ログファイル11に格納されたテキストデータが収集され、 (2d2)ウェブサーバ1からの利用者端末4により書き込まれたテキストデータの収集が周期的に繰り返され、例えば、この周期はおよそ1〜2秒とされ、 (2d3)収集されたテキストデータがストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳され、テキストデータの重畳された動画コンテンツが利用者端末4に配信され、 (2e1)収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、ウィンドウ41における表示位置が設定され、 (2e2)例えば、動画コンテンツがサッカーの試合である場合、選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされ、 (2e3)テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示され、テキストデータの表示位置は、表示可能数と同一の数だけ、予め定められ、 (2e4)収集されたテキストデータの少なくとも1個について、その内容に応じて、当該テキストデータとは異なる内容の新たなテキストデータ(メッセージ)が同時に重畳され、 (2f1)ストリーミングサーバ2により、表示リスト222が作成され(ステップS15)、 (2f2)表示数に基づいて、表示時間を設定する、即ち、表示時間設定部227に格納し(ステップS17) (2f3)表示リスト222内に格納されているメッセージが、その先頭から順に読み出されて、当該表示時間に従ってSMILを用いて動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信されることにより、そのウィンドウ41に表示される(ステップS18)、 (2a)利用者端末4。」(イ) 本件発明1と甲2発明との対比 (一致点) (1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、 (1B’)前記コメントを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 (1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、 (1D’)コメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する (1A)ことを特徴とする表示装置。 (相違点2-1) 「コメント情報記憶部」において、本件発明1は、記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれるものであるのに対し、 甲2発明が記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、 動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれておらず、「コメント表示部」において、本件発明1は、前記コメント情報記憶部からのコメントの読み出しが「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメント」に対して行われるものであるのに対し、甲2発明は、動画コンテンツとテキストデータを同期させて表示するものの、動画コンテンツの再生時間に基づいて、テキストデータを書き込んだ時刻に対応するテキストデータを読み出すものではない点。 (相違点2-2) 本件発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点。 (ウ) 本件発明1の新規性についての判断 上記(イ)のとおり、本件発明1と甲2発明には相違点2-1及び相違点2-2があり、当該相違点2-1及び相違点2-2は実質的な相違点であるといえる。 したがって、本件発明1は甲2発明ではない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 イ 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。 甲2発明は、構成2aにあるとおり、クライアントであるコンピュータでもあるから、プログラムを動作させて甲2発明の利用者端末4として機能させることができるものである。 すなわち、甲2から甲2発明と同様のプログラム発明(以下「甲2プログラム発明」という。)を認定することができる。 そして、本件発明9とそのような甲2プログラム発明とを対比すると、上記アにおいて検討したのと同様に、上記ア(イ)の(相違点2-1)及び(相違点2-2)と同様の相違点が存在するといえる。 よって、本件発明9は、甲2プログラム発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由1-2は理由がない。 (3) 本件発明1及び9の新規性(甲3を引用例とするもの。無効理由1-3)について ア 本件発明1について (ア) 甲3(特開2004-15750号公報)に記載された発明(以下「甲3発明」という。)の認定 「(3a)ライブ配信サーバ100と、クライアントであるライブ配信者10のライブ配信者端末11と、クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21とが通信ネットワーク1を介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末21であって、 (3b)ライブ閲覧者20は、ライブ配信サーバ100から配信されるライブを閲覧し、チャットに参加するクライアントであり、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21には、以下の機能(又は装置)が備えられており、 (3b1)通信装置22は、ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続するための装置であり、 (3b2)メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われ、 (3b3)チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能であり、 (3b4)表示装置26は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置であり、 (3c)ライブ配信サーバ100内の各データベースには以下のデータが格納され、各データベースのデータ構成例は、 (3c1)ライブデータデータベース(ライブデータDB)111は、「ライブを保存する」を選択した場合にコンテンツを保存しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「コンテンツ情報(ライブデータファイル名、画像データファイル名、チャット情報ID)」などであり、 (3c2)レイアウトデータベース(レイアウトDB)112は、各ライブのレイアウトがどのような属性を持っているかを保持しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「属性ID」、「属性内容(チャット、静止画、ライブ動画)」等であり、 (3c3)チャット情報データベース(チャット情報DB)113は、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等であり、 (3d)ライブ配信システムにおける「ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順の流れ」は、 (3d1)ライブ配信サーバ100では、チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信し(ステップS35、S36)、 (3d2)チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、 ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合、 (3d3)あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力し、 (3d4)配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示され、 (3d5)別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力し、 (3d6)配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示され、 (3d7)配信映像bが所定の枠内に表示され、チャットが指定された領域に基づいて所定の位置に表示され、領域1〜6はいずれも配信映像bの表示領域に重畳しており、各チャットの表示は、領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出しておらず、 (3e)ライブデータDB111に保存されたライブデータは、ユーザにより後で検索できるように格納され、ライブ閲覧者端末21からライブデータDB111の閲覧(検索)要求があった場合は(ステップS71)、ライブデータDB111を検索し、該当するライブデータがオンデマンドで配信される(ステップS72、 S73、S74)、 (3a)ライブ閲覧者端末21。」(イ) 本件発明1と甲3発明との対比 (一致点) (1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、 (1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 (1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、 (1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する (1A)ことを特徴とする表示装置。 (相違点3-1) 本件発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲3発明はそのような構成を有しない点。 (ウ) 本件発明1の新規性についての判断 上記(イ)のとおり、本件発明1と甲3発明には相違点3-1があり、当該相違点3-1は実質的な相違点であるといえる。 したがって、本件発明1は甲3発明ではない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲3発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 イ 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。 甲3発明は、構成3b及び構成3b2にあるとおり、「メディア再生プレイヤー23」を備え、「メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われ」るものであるから、コンピュータにより構成し、プログラムを動作させて甲3発明のライブ閲覧者端末21として機能させることができるものである。 すなわち、甲3から甲3発明と同様のプログラム発明(以下「甲3プログラム発明」という。)を認定することができる。 そして、本件発明9とそのような甲3プログラム発明とを対比すると、上記アにおいて検討したのと同様に、上記ア(イ)の(相違点3-1)と同様の相違点が存在するといえる。 よって、本件発明9は、甲3プログラム発明ではないから、特許法29条1項3号に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由1-3は理由がない。 (4) 本件発明1及び9の進歩性(甲1を主引用例とするもの。無効理由2-1)について ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明との対比 前記(1)ア(イ)のとおり、本件発明1と甲1発明とには(相違点1-1)が存在する。 (イ) 相違点1-1についての判断 a 本件発明1について 本件発明1は、「放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステム」という背景技術を前提とし、「コメントの読みにくさを低減させる」という課題を解決するための発明であり、相違点1-1に係る構成1E及び構成1Fによって、「オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようにして、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させることができる」という効果を奏するものであると認められる。 そして、本件発明1の「コメント」とは、表示装置において、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものと解されるものである。 b 甲4に記載された技術について (a) 甲4(特開2003-111054号公報)に記載された技術(以下「甲4技術」という。)の認定 「(4a)動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツをネットワーク経由で配信する動画配信システムに関する技術であって、 (4a1)動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成され、 (4b1)サーバ100において、動画コンテンツ112および表示関連コマンド114は、通信部130を介して、放送設備150へ送信され、 (4b2)放送された動画コンテンツおよび表示関連コマンドは、情報端末装置200の放送受信手段により受信され、 (4c1)サーバ100内の記憶部120には、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)を代表とするマークアップ言語で記述されたデータコンテンツが格納され、 (4c2)データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストを含み、 (4d1)情報端末装置200の内部構成では、コマンド解釈エンジン255は、 初期的には、デフォルトコマンド222を受けて、動画コンテンツの表示エリアおよびデータコンテンツの表示エリアのサイズや表示態様(重ね合わせ状態、動画エリアの伸縮、コンテンツ間の表示の切替や一方のコンテンツの一時消去等)を定め、 その結果をWWWブラウザ260および動画ビューワ265に指示し、 (4d2)コマンド解釈エンジン255は、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与え、これに加えて、デフォルトの表示態様を、放送により受信されたコマンドに基づいて更新し、 (4d3)コマンド解釈エンジン255は姿勢センサ232の出力を受けて、表示態様を更新することもでき、 (4d4)表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させ、 (4e)動画エリアとデータエリアの重ね合わせの態様は、 (4e1)両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態であって、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねてもよく、 (4e2)通常、動画はテレビ画面に相当した4:3や16:9のような横長であり、これを横長画面に最大収容した場合には、モニタ画面内の動画エリアの残りの空き領域はごく狭いエリアとなり、したがって、このような場合は、指示された重ね合わせ態様に関わらず、強制的にオーバレイ表示状態とするようにしてもよく、 (4e3)オーバレイ表示状態では、データエリアの一部が動画エリアに重なり、 他の一部が動画エリアの外側となり、 (4f1)縦長状態で動画コンテンツとして映画を表示しているときに、登場人物のプロフィールをデータコンテンツとして表示している場面は、タイル表示状態であって、 (4f2)横長状態では、動画エリアの残りの空き領域の横幅が小さいためにタイル表示ではデータエリアの横幅が十分ではなく、強制的にタイル表示状態からオーバレイ表示状態に切り替えた状況であってもよく、データエリアの一部が動画エリアに重なり、他の一部が動画エリアの外側となる、 (4a)動画配信システムに関する技術。」(b) 甲4技術の内容 甲4技術の動画コンテンツを表示する動画エリアが、本件発明1の「第1の表示欄」に相当するといえるとしても、データコンテンツであるテキストを表示するデータエリアは、本件発明1の「コメントを表示する領域である第2の表示欄」に相当するものではなく、甲4技術は、相違点1-1に係る「前記第2の表示欄のうち、 一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)に相当するものではない。 c 甲5に記載された技術について (a) 甲5(国際公開第2006/059779号)に記載された技術(以下「甲5技術」という。)の認定 「(5a)コンテンツの映像である主映像のアスペクト比とは独立したアスペクト比で、字幕などの主映像を補足等する理由で表示される映像である副映像を表示することができるようにした復号装置に関する技術であって、 (5b)ビデオデコーダ66の一例の処理は、 (5b1)ステップS10で、多重化分離部71で分離された主映像の符号化データが主映像復号部72で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた主映像のアスペクト比等のデータが抽出され、主映像画枠サイズ変換部74で主映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換され、ステップS11で、多重化分離部71で分離された副映像の符号化データが副映像復号部73で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた副映像のアスペクト比等のデータが抽出され、 副映像画枠サイズ変換部75で副映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換され、ステップ12で、加算器76により、表示装置のアスペクト比に合わせて決められた主映像に副映像が重ね合わされ、この主映像に副映像が重ね合わされた映像が表示され、 (5b2)主映像画枠サイズ変換部74は、ビデオ出力端子68に接続されている表示装置のアスペクト比と、主映像復号部72から供給された主映像のアスペクト比に基づいて、出力する主映像の画枠サイズを変換し、加算器76に供給し、 (5b3)例えば、表示装置のアスペクト比が16:9である場合において、主映像のアスペクト比が4:3であるときには、主映像画枠サイズ変換部74は、主映像を、横方向(水平方向)に縮小するとともに、左右に黒色を表示させるデータを付加して出力し、 (5c)ビデオデコーダ66の副映像画枠サイズ変換部75の動作は、 (5c1)ステップS21において、副映像画枠サイズ変換部75は、副映像復号部73から、いま副映像画枠サイズ変換部75に供給されている副映像のアスペクト比を示すフラグを取得し、 (5c2)ステップS22において、副映像画枠サイズ変換部75は、表示装置のアスペクト比が4:3(例えば、360×270)であるか16:9(例えば、 480×270)であるかを判定し、 (5c3)表示装置のアスペクト比が16:9であると判定された場合、ステップS24に進み、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9および4:3のいずれでもよいことを示すフラグであるか、また16:9または4:3のいずれか1つのアスペクト比を示すフラグであるかを判定し、いずれか1つのアスペクト比を示すフラグであると判定した場合、ステップS25に進み、 (5c4)ステップS25において、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9であることを示すフラグかまたは4:3であることを示すフラグかを判定し、16:9であることを示すフラグであると判定した場合、ステップS26に進み、 (5c5)ステップS26において、副映像画枠サイズ変換部75は、字幕の映像の720×480の画枠サイズを、16:9のアスペクト比に合うように変換し(ピクセルアスペクト比=40:33)、その結果得られた字幕データを、加算器76に出力し、 (5c6)主映像のアスペクト比が4:3である場合には、横方向に縮小されて左右に黒色を表示させるデータが付加された主映像に、16:9のアスペクト比の字幕の映像が重ね合わされて表示される、 (5a)復号装置に関する技術。」(b) 甲5技術の内容 甲5技術の主映像を表示する領域が、本件発明1の「第1の表示欄」に相当するといえるとしても、字幕データの副映像を表示する領域は、本件発明1の「コメントを表示する領域である第2の表示欄」に相当するものではなく、甲5技術は、相違点1-1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)に相当するものではない。 d 甲4技術及び甲5技術の適用について 上記b及びcのように、技術常識を踏まえた甲4技術及び甲5技術は、相違点1-1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を有するものではなく、甲1発明に、技術常識を踏まえた甲4技術及び/又は甲5技術を適用したとしても、本件発明1の構成にはならない。 e まとめ したがって、本件発明1は、甲1発明、甲4技術、甲5技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、甲4技術、甲5技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 イ 本件発明9について 前記(1)イにおいて検討したように、本件発明9と甲1プログラム発明には、 (相違点1-1)と同様の相違点が存在する。 そして、相違点1-1は、上記アにおいて検討したのと同様に、技術常識を踏まえた甲4技術及び/又は甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明9は、甲1プログラム発明、甲4技術、甲5技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-1は理由がない。 (5) 本件発明1及び9の進歩性(甲2を主引用例とするもの。無効理由2-2)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲2発明には、前記(2)ア(イ)において検討したとおり、(相違点2-1)及び(相違点2-2)が存在し、そのうち(相違点2-2)に係る構成は、 (相違点1-1)に係る構成と同じである。 そして、前記(4)アにおいて検討したとおり、甲4技術のデータコンテンツ及び甲5技術の字幕データは、本件発明1のコメントとは異なるものであって、相違点2-2は、相違点1-1と同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、原告は、甲11(特許庁総務部技術調査課が平成14年5月17日付けで作成した「デジタルコンテンツ配信・流通技術に関する特許出願技術動向調査」と題する書面)を挙げて、ストリーミング配信及びダウンロード配信が公知であった旨を主張するものの、甲11には、デジタルコンテンツの配信・流通方法がダウンロードとストリーミングに大別されることが記載されているにとどまり、上述の相違点2-2に係る構成が容易に発明をすることができたものでないという判断に影響を及ぼすものではない。 よって、本件発明1は、甲2発明、甲11に記載された技術、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 イ 本件発明9について 前記(2)イにおいて検討したように、本件発明9と甲2プログラム発明には、 (相違点2-1)及び(相違点2-2)と同様の相違点が存在する。 そして、そのうちの相違点2-2は、上記アにおいて検討したのと同様に、甲11に記載された技術、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明9は、甲2プログラム発明、甲11に記載された技術、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-2は理由がない。 (6) 本件発明1及び9の進歩性(甲3を主引用例とするもの。無効理由2-3)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲3発明には、前記(3)ア(イ)において検討したとおり、(相違点3-1)が存在し、(相違点3-1)に係る構成は、(相違点1-1)に係る構成と同じである。 そして、前記(4)アにおいて検討したとおり、甲4技術のデータコンテンツ及び甲5技術の字幕データは、本件発明1のコメントとは異なるものであって、相違点3-1は、相違点1-1と同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲3発明、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 イ 本件発明9について 前記(3)イにおいて検討したように、本件発明9と甲3プログラム発明には、 (相違点3-1)と同様の相違点が存在する。 そして、相違点3-1は、上記アにおいて検討したのと同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明9は、甲3発明、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法29条2項の規定に該当しない。 ウ まとめ 以上によれば、本件発明1及び9に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-3は理由がない。 (7) 本件発明2の進歩性(甲1、甲2又は甲3を主引用例とするもの。無効理由2-4)及び本件発明10の進歩性(甲1、甲2又は甲3を主引用例とするもの。 無効理由2-7)について 本件発明2は、本件発明1を引用する発明である。また、本件発明10は、本件発明9を引用する発明である。 したがって、本件発明2及び10は、甲1発明又は甲1プログラム発明、甲2発明又は甲2プログラム発明及び甲3発明又は甲3プログラム発明と対比すると、上述のとおり、本件発明1及び9と同じ相違点を有する。 そして、本件発明1及び9は、前記(4)〜(6)において検討したとおり、特許法29条2項の規定に該当しない。 また、甲6〜10には、Webブラウザ等の表示制御技術においてテキストを移動表示する技術が記載されているものの、当該技術は、相違点1-1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」、「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成に対応するものではなく、当該技術が慣用技術であったとしても、上記の検討に影響を与えるものではない。 したがって、本件発明1又は9を引用する本件発明2及び10も、特許法29条2項の規定に該当しない。 以上によれば、本件発明2及び10に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-4及び無効理由2-7は理由がない。 (8) 本件発明5の進歩性(甲1、甲2又は甲3を主引用例とするもの。無効理由2-5)について 本件発明5は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明である。 したがって、本件発明5は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明と対比すると、上述のとおり、本件発明1と同じ相違点を有する。 そして、本件発明1は、前記(4)〜(6)において検討したとおり、特許法29条2項の規定に該当しない。 したがって、本件発明1を直接又は間接に引用する本件発明5も、特許法29条2項の規定に該当しない。 以上によれば、本件発明5に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-5は理由がない。 (9) 本件発明6の進歩性(甲1、甲2又は甲3を主引用例とするもの。無効理由2-6)について 本件発明6は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明である。 したがって、本件発明6は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明と対比すると、上述のとおり、本件発明1と同じ相違点を有する。 そして、本件発明1は、前記(4)〜(6)において検討したとおり、特許法29条2項の規定に該当しない。 また、甲22〜24には、動画において文字情報を表示する際、文字列が重複するか否かを判定し、重複する場合には重複しないように位置を変更する技術が記載されているものの、当該技術は、相違点1-1に係る「前記第2の表示欄のうち、 一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」、「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成に対応するものではなく、当該技術が慣用技術であったとしても、上記の検討に影響を与えるものではない。 したがって、本件発明1を直接又は間接に引用する本件発明6も、特許法29条2項の規定に該当しない。 以上によれば、本件発明6に係る本件特許について、原告の主張する無効理由2-6は理由がない。 |
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原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(甲1発明及び甲1プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-1関係)について (1) 本件審決は、甲1の図18に基づき、甲1発明の構成1i2について、 「テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部の枠の外側まではみ出さない」と認定した。 しかしながら、以下によると、図18を見た当業者は、テキスト注釈の文字数が一定以上である場合には、同図に描かれたふきだしのうち映像表示部の枠の外側まではみ出している部分にもテキスト注釈が表示され、その結果、テキスト注釈自体も映像表示部の枠の外側まではみ出すということを直ちに認識するものといえるから、甲1発明は、テキスト注釈の文字が映像表示部の枠の外側まではみ出すという構成を備えている。したがって、甲1発明の構成1i2につき上記のように認定した本件審決は誤りである。 なお、甲1プログラム発明の認定についても、上記と同様に誤りがある。 ア 図18において、ふきだしは、その右側の約5分の1にも及ぶ部分が映像表示部の枠の外側まではみ出している。 イ 図18に描かれたふきだし内の文字は、願書に添付された小さな図面の中でも判読可能とするため、あえて文字数が少ない言葉を選択したものと考えられるから、図18に描かれたテキスト注釈は、文字数の少ないものが採用され、中央揃えでふきだし内に配置された結果、たまたま映像表示部の枠の外側まではみ出さない形となったにすぎないと考えられる(図18は、テキスト注釈が映像表示部の枠の外側まではみ出さないことをあえて例示するものではない。)。 ウ そもそも、ふきだし内のテキスト注釈の文字数をどの程度とするか、また、 テキスト注釈をふきだし内のどの位置に表示するかは、プログラムごとに様々であり、これは、当業者にとって自明である。例えば、文字列を右揃えにすることは周知技術であるところ、図18に描かれたテキスト注釈を右揃えにすれば、テキスト注釈は、映像表示部の枠の外側まではみ出して表示されることになる。 (2) 本件審決が甲1発明の構成1i2について「テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部の枠の外側まではみ出さない」と認定したことは、前記(1)のとおりである。 しかしながら、以下のとおり、甲1発明において、映像表示部に表示される動画のアスペクト比が変更可能であることは当業者にとって自明であるところ、当業者は、そのような変更により、テキスト注釈の少なくとも一部が映像表示部の枠の外側まではみ出して表示されるものと認識し得るから、この点でも、甲1発明は、テキスト注釈の文字が映像表示部の枠の外側まではみ出すという構成を備えているといえる。したがって、甲1発明の構成1i2につき上記のように認定した本件審決は誤りである。 なお、甲1プログラム発明の認定についても、上記と同様に誤りがある。 ア インターネットを介して配信される映像には、アスペクト比を4:3又は16:9とするもののほか、4:5や9:16とするものなど、多様なアスペクト比を有するものが含まれるところ、甲1発明には、撮影される映像のアスペクト比についての限定はない。また、甲1発明においては、「カメラサーバ101、102」とあるとおり、複数のカメラサーバが接続されることが明示され、かつ、多数のカメラサーバをネットワークに接続する形態が排除されていないところ、カメラサーバで録画される動画のアスペクト比の設定がそれぞれ異なるものであれば、映像表示部にアスペクト比の異なる複数種の映像が表示されることは、当業者にとって明らかである。仮に、甲1発明において、1種類のビデオカメラによる映像のみが表示されるものであると限定して解したとしても、1つのビデオカメラにおいて異なるアスペクト比の動画を撮影し得ることは、本件原出願日当時の技術常識であった(甲31、32)。なお、被告は、本件特許に係る特許権に基づき、原告を被告として特許権の侵害差止め等を求める訴訟(以下「別件訴訟」という。)を提起しているところ、被告は、別件訴訟において、ネットワークを介して動画を配信する装置における動画表示画面のアスペクト比を変更することが当業者の技術常識であったことを認める旨の主張をしているのであるから(甲21)、被告が甲1発明におけるアスペクト比の変更可能性が当業者にとって自明のことではないという主張をすることは、禁反言により許されない。 以上によれば、甲1発明において不特定多数の動画が表示されることは、当業者にとって自明のことであり、そのような不特定多数の動画のアスペクト比は、当然に複数種に及ぶことになる(この点につき、甲1における示唆等は必要ない。)。 イ 甲1の映像表示部において、映像表示部のアスペクト比と異なるアスペクト比を有する動画が再生される場合、通常の技術によれば、動画の端部をカットするのではなく、下記の図(赤枠で囲まれた部分が映像表示部である。)のように余白が表示されることになる(甲28、29)。 他方、テキスト注釈を始めとするオブジェクトの表示領域は、通常は、動画を表示する領域とは別個に宣言され、当該オブジェクトの表示位置は、任意に付与されるものである。また、甲1には、テキスト注釈の表示を動的に変更することを示唆する記載はない(なお、映像の大きさやアスペクト比の変更に合わせてテキスト注釈等のオブジェクトの表示を動的に変更することは、技術上の困難を伴う。)。そうすると、甲1に接した当業者にとって、上記の図のように、動画のアスペクト比にかかわらずふきだしやテキスト注釈を変更せずにそのまま用いることは明らかである。 2 取消事由2(相違点の認定の誤り1・無効理由1-2関係)について 本件審決は、本件発明1と甲2発明の相違点2-1として、「「コメント情報記憶部」において、本件発明1は、記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれるものであるのに対し、甲2発明が記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれておらず、 「コメント表示部」において、本件発明1は、前記コメント情報記憶部からのコメントの読み出しが「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメント」に対して行われるものであるのに対し、甲2発明は、動画コンテンツとテキストデータを同期させて表示するものの、動画コンテンツの再生時間に基づいて、テキストデータを書き込んだ時刻に対応するテキストデータを読み出すものではない点。」を認定した。 しかしながら、以下のとおり、甲2発明は、それ自体、相違点2-1に係る本件発明1の構成を備えているといえるから、本件審決の上記認定は誤りである。 なお、本件発明9と甲2プログラム発明の相違点の認定についても、上記と同様に誤りがある。 (1) 動画とコメントを同期させる方法として、動画の最初を基準とした動画再生時間により制御することは、本件原出願日当時の技術常識であったから、甲2に接した当業者は、本件発明1のような「コメント付与時間」による制御を瞬時に想起できたものである。 (2) 甲2発明においては、ストリーミングサーバがログ収集周期の到来するごとにテキストデータを収集し、表示するテキストデータの表示リストを作成した上、 表示リストに含まれるテキストデータの数に応じた表示時間を設定し、表示リストに格納されているコメントを配信するとの方法により、動画の適切なタイミングにユーザからのコメントを付与しているところ、これは、動画とコメントを同期させるという制御に当たる。 (3) 甲2発明において採用された上記(2)の方法は、本件発明1における動画とコメントの同期方法(コメント付与時間による同期)と同様、上記(1)の「動画とコメントを同期させる方法として、動画の最初を基準とした動画再生時間により制御する」とのアイデアの一つの実現方法に当たるといえる。 3 取消事由3(相違点の認定の誤り2・無効理由1-2関係)について 本件審決は、本件発明1と甲2発明の相違点2-2として、「本件発明1は、 「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、 及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点。」を認定した。 しかしながら、以下のとおり、本件審決が認定した甲2発明は、相違点2-2に係る本件発明1の構成を備えているといえるから、本件審決の上記認定は誤りである。 なお、本件発明9と甲2プログラム発明の相違点の認定についても、上記と同様に誤りがある。 (1) 甲2発明が不特定多数の動画の表示に供されることは、甲1発明の場合と同様、当業者にとって自明のことであり、そのような不特定多数の動画のアスペクト比は、当然に複数種に及ぶことになる。そうすると、甲2発明の動画表示においても、表示される動画に合わせてアスペクト比が変更されることになることは明らかである(なお、この点につき、甲2における示唆等は必要ない。)。したがって、 本件原出願日当時の当業者は、そのようなアスペクト比の変更により、テキストデータの少なくとも一部が動画の表示位置の外側に表示されることを認識し得た。 (2) 甲2発明においては、甲2の図4に描かれたふきだしが表示され得る領域の全てに動画が表示されるものではないから、動画が表示される領域の大きさとふきだしが表示される領域の大きさ又はふきだしの大きさは、下記の図のとおり別個の構成である。下記の図の赤枠で囲まれた部分が本件発明1の「第2の表示欄」に相当し、本件発明1の「第1の表示欄」に相当する部分は、青枠により例示するとおり、表示される動画のアスペクト比が調整される結果、動画が表示され得る部分の全域となる。 4 取消事由4(甲3発明及び甲3プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-3関係)について 本件審決は、甲3の図9に基づき、甲3発明の構成3d7について、「配信映像bが所定の枠内に表示され、チャットが指定された領域に基づいて所定の位置に表示され、領域1〜6はいずれも配信映像bの表示領域に重畳しており、各チャットの表示は、領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出しておらず」と認定した。 しかしながら、甲3発明も、甲1発明と同様、ネットワークを介して動画の配信がされる発明であるから、その配信映像の表示領域のサイズがアスペクト比に合わせて変更されることは明らかである。そして、図9を見ると、そのようなアスペクト比の変更により、甲3発明のチャットの少なくとも一部が、配信映像の表示領域の枠を越える範囲まではみ出して表示されるようになることは、甲1発明の場合と同様、当業者にとって明らかであった。したがって、甲3発明の構成3d7につき上記のように認定した本件審決は誤りである。 なお、甲3プログラム発明の認定についても、上記と同様に誤りがある。 5 取消事由5(相違点1-1についての判断の誤り・無効理由2-1関係)について 本件審決は、@甲4技術のデータコンテンツであるテキストをユーザによって付与可能なコメントとする理由はない、A甲4技術のオーバレイ表示の状態は、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対しユーザが書き込んだものであることを把握可能とし、コメントの読みにくさを低減させるために行われるものでもない、B甲5技術の字幕データは、動画に対しその再生時間の任意の時点にユーザが付与するコメントとは異なる、C甲5技術は、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対しユーザが書き込んだものであることを把握可能とし、コメントの読みにくさを低減させるためのものでもないとして、甲4技術及び甲5技術は、いずれも本件発明1の構成1E及び1Fに相当するものではないと判断し、その結果、甲1発明に甲4技術及び甲5技術を適用しても、相違点1-1に係る本件発明1の構成は得られないと判断した。しかしながら、以下のとおり、相違点1―1に係る本件発明1の構成は、甲1発明に甲4技術及び甲5技術を適用することで得られるものであるし、また、以下のとおり、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、設計的事項にすぎないから、本件審決の上記判断は誤りである。 なお、本件発明9についても、本件審決には同様の誤り(相違点1-1についての判断の誤り)がある。 (1) 本件原出願日当時、いわゆるWEB2.0(送り手と受け手が流動化し、 誰もがウェブサイトを通して自由に情報を発信できるように変化したウェブの利用状態を指す。)が社会現象として技術常識となっていたから(甲13〜19)、甲4に触れた当業者が、甲4技術のデータコンテンツが「ユーザによって付与されたコメント」を含むものとして解釈したことは明らかである。また、「テキスト」は、 文字コードから成るデータを意味するもの(データの形式に着目したもの)であり、 「コメント」は、文字コードが表現する内容が論評、解説、説明等であることを意味するもの(データの内容に着目したもの)であるから、両者は、相互に排他的なものではない。さらに、甲4技術にいう「テキスト」は、ユーザが入力するものも含む。そうすると、甲4のデータコンテンツである「テキスト」は、本件発明1の「コメント」と同義であるというべきである。 (2) 仮に、甲4技術のオーバレイ表示の状態がモニタ画面のサイズに依存して形成されるものであるとしても、そのことは、甲4技術のオーバレイの技術を本件発明1のオーバレイの技術(第1の表示欄と第2の表示欄との重なり)と同視することを妨げるものではない(これは、別件訴訟における被告の主張からも明らかである。)。 (3) 甲5技術に関し、確かに、甲5技術の「字幕」は、ユーザが入力するものではないが、これは、端末に表示させる局面においては、本件発明1の「コメント」と同様(本件明細書の段落【0041】)、文字列データとして処理されるものである。また、上記(1)のとおり、本件原出願日当時、WEB2.0は、社会現象として技術常識であったから、甲5に接した当業者にとって、ユーザからの情報発信を想定し、甲5技術の「字幕」をユーザが入力する「コメント」に置換することは容易であった。そうすると、甲5技術は、本件発明1と同様、テキストそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対しユーザが書き込んだものであることを把握可能とし、テキストの読みにくさを低減させるためのものであるといえる。 (4) 以上のとおり、甲4技術のデータコンテンツである「テキスト」及び甲5技術の「字幕」は、いずれも甲1発明においてユーザが入力する「コメント」と同視できるか、あるいはこれに容易に置換できるものであるから、甲4技術及び甲5技術を甲1発明に適用する動機付けは強く認められ、したがって、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、甲1発明に甲4技術及び甲5技術を適用することで当業者が容易に想到し得るものである。 (5) また、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、ふきだしの大きさ並びにふきだし中のコメントの文字長、フォントの大きさ及び表示位置により生じるものであり、設計的事項にすぎない。 6 取消事由6(相違点2-2についての判断の誤り・無効理由2-2関係)について 本件審決が認定した本件発明1と甲2発明の相違点2-2は、本件審決が認定した本件発明1と甲1発明の相違点1-1と構成を同じくするところ、前記5のとおり、相違点1-1についての本件審決の判断は誤りであるから、相違点2-2についての本件審決の判断も誤りである。 本件審決は、甲4技術のデータコンテンツ及び甲5技術の字幕データは、本件発明1のコメントとは異なるものであって、相違点2-2は、相違点1-1と同様に、 甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとし、原告からの甲11に基づくストリーミング配信及びダウンロード配信が公知であった旨の主張につき、甲11には、デジタルコンテンツの配信・流通方法がダウンロードとストリーミングに大別されることが記載されているにとどまり、相違点2-2に係る構成が容易に発明することができたものではないという判断に影響を及ぼすものではないとして、原告の主張を採用しなかった。しかし、 甲11における「デジタルコンテンツには、電子書籍、音楽、影像、ゲーム/ソフトウェアなどがあり、その配信・流通方法には、ダウンロードとストリーミングに大別される。大きな違いは、いつから再生できるか、端末またはメディアにデータを残すかどうか、の2点である。」(1頁末行から3行目〜末行)との記載は、ダウンロード及びストリーミングが、甲11作成当時において、 あらゆるコンテンツにおいて汎用されていたことを前提とするものであることは明らかである。甲11につき、ストリーミング配信及びダウンロード配信が公知であったことを基礎づけるものではないとした本件審決の判断は誤りである。 なお、本件発明9についても、本件審決には同様の誤り(相違点2-2についての判断の誤り)がある。 7 取消事由7(相違点3-1についての判断の誤り・無効理由2-3関係)について 本件審決が認定した本件発明1と甲3発明の相違点3-1は、本件審決が認定した本件発明1と甲1発明の相違点1-1と構成を同じくするところ、前記5のとおり、相違点1-1についての本件審決の判断は誤りであるから、相違点3-1についての本件審決の判断も誤りである。 なお、本件発明9についても、本件審決には同様の誤り(相違点3-1についての判断の誤り)がある。 8 本件発明2及び10(無効理由2-4及び2-7関係)について 本件審決は、本件発明2は本件発明1を引用する発明であり、本件発明10は本件発明9を引用する発明であるから、本件発明2又は10を甲1発明若しくは甲1プログラム発明、甲2発明若しくは甲2プログラム発明又は甲3発明若しくは甲3プログラム発明とそれぞれ対比すると、本件発明1又は9と甲1発明若しくは甲1プログラム発明、甲2発明若しくは甲2プログラム発明又は甲3発明若しくは甲3プログラム発明の各相違点と同じ相違点があることになるところ、同各相違点に係る本件発明1及び9の構成はいずれも当業者が容易に想到し得るものではないから、 本件発明2又は10と甲1発明若しくは甲1プログラム発明、甲2発明若しくは甲2プログラム発明又は甲3発明若しくは甲3プログラム発明の各相違点に係る本件発明2及び10の構成も当業者が容易に想到し得るものではないと判断した。 しかしながら、本件審決がした甲1発明及び甲1プログラム発明の認定、本件発明1又は9と甲2発明又は甲2プログラム発明の相違点の認定(相違点2-1及び2-2の認定)、甲3発明及び甲3プログラム発明の認定、本件発明1又は9と甲1発明又は甲1プログラム発明の相違点である相違点1-1についての判断、本件発明1又は9と甲2発明又は甲2プログラム発明の相違点である相違点2-2についての判断並びに本件発明1又は9と甲3発明又は甲3プログラム発明の相違点である相違点3-1についての判断がいずれも誤りであることは、前記1ないし7において主張したとおりである。 したがって、本件発明2又は10と甲1発明若しくは甲1プログラム発明、甲2発明若しくは甲2プログラム発明又は甲3発明若しくは甲3プログラム発明の各相違点に係る本件発明2及び10の構成がいずれも当業者において容易に想到し得るものではないと判断した本件審決も同様に誤りである。 9 本件発明5及び6(無効理由2-5及び2-6関係)について 本件審決は、本件発明5及び6はいずれも本件発明1を直接又は間接に引用する発明であるから、本件発明5及び6を甲1発明、甲2発明又は甲3発明とそれぞれ対比すると、本件発明1と甲1発明、甲2発明又は甲3発明の各相違点と同じ相違点があることになるところ、同各相違点に係る本件発明1の構成はいずれも当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明5又は6と甲1発明、甲2発明又は甲3発明の各相違点に係る本件発明5及び6の構成も当業者が容易に想到し得るものではないと判断した。 しかしながら、前記1ないし7において主張したとおり、本件審決がした甲1発明の認定、本件発明1と甲2発明の相違点の認定(相違点2-1及び2-2の認定)、甲3発明の認定、本件発明1と甲1発明の相違点である相違点1-1についての判断、本件発明1と甲2発明の相違点である相違点2-2についての判断並びに本件発明1と甲3発明の相違点である相違点3-1についての判断は、いずれも誤りである。 したがって、本件発明5又は6と甲1発明、甲2発明又は甲3発明の各相違点に係る本件発明5及び6の構成がいずれも当業者において容易に想到し得るものではないと判断した本件審決も同様に誤りである。 |
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被告の主張
1 取消事由1(甲1発明及び甲1プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-1関係)について (1) 以下のとおりであるから、甲1の図18に基づき、甲1発明の構成1i2について、「テキスト注釈の文字は映像表示部の枠の外側まではみ出さない」と認定した本件審決に誤りはない。 なお、本件発明9は、本件発明1の表示装置に対応する表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明(甲1プログラム発明)であるから、甲1発明の認定に誤りがない以上、甲1プログラム発明の認定に係る本件審決の判断にも誤りはない。 ア 原告は、テキスト注釈の文字数が一定以上である場合には、当業者において当該テキスト注釈が映像表示部の枠の外側まではみ出すことを直ちに認識すると主張する。原告が主張する一定以上の文字数のテキスト注釈がどの程度の文字数のものを意味するのか不明であるが、甲1の図18には3つのふきだしが図示され、各ふきだし中には「来賓客にズームします」、「おめでとう」及び「お幸せに!」との文字が配置され、「来賓客にズームします」との文字は3行にわたってふきだし中に配置されているのであるから、図18は、3行から成るテキスト注釈の場合であっても、映像表示部の枠の外側まではみ出すことがないように当該テキスト注釈を表示するということを図示しているといえる。したがって、図18は、原告が主張するように、テキスト注釈の文字数が一定以上である場合に当該テキスト注釈が映像表示部の枠の外側まではみ出すことを図示するものではない。 イ 原告は、甲1の図18に描かれたテキスト注釈は文字数の少ないものが採用された結果、たまたま映像表示部の枠の外側まではみ出さない形となったにすぎないと主張する。しかしながら、図18に描かれた「来賓客にズームします」との文字は、3行にわたってふきだし中に配置されているのであるから、原告の上記主張は、図18の図示に基づかないものである。 (2) 以下のとおりであるから、映像表示部に表示される動画のアスペクト比は変更可能であり、そのような変更により、当業者においてテキスト注釈の少なくとも一部が映像表示部の枠の外側まではみ出して表示されるものと認識し得るとして、 甲1発明の認定に係る本件審決の判断が誤りであるとする原告の主張は、理由がない。 なお、前記(1)と同様に、甲1発明の認定に誤りがない以上、甲1プログラム発明の認定に係る本件審決の判断にも誤りはない。 ア 甲1には、甲1発明の映像表示部にアスペクト比の異なる動画が表示される旨の開示も示唆もない。 イ 甲1には、動画のアスペクト比が変更された場合の映像表示部の領域とテキスト注釈を表示する領域との位置関係につき、これを特定する記載はない。 2 取消事由2(相違点の認定の誤り1・無効理由1-2関係)について 以下のとおりであるから、取消事由2に係る原告の主張は失当であり、本件発明1と甲2発明の相違点として相違点2-1を認定した本件審決に誤りはない。 なお、本件発明1と甲2発明の相違点として相違点2-1を認定できる以上、本件発明9と甲2プログラム発明の相違点としても相違点2-1を認定できるものである。 (1) 甲2発明のストリーミングサーバは、単純にログ収集周期が到来するごとにテキストデータを収集してそれを配信しているにすぎず、表示している動画と表示するテキストデータの同期をとるなどの処理を行うものではない。 (2) 甲2発明においてテキストデータが収集される時刻は、周期的な時刻であるから、これは、テキストデータが書き込まれた時刻ではないし、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す「動画再生時間」でもない。 3 取消事由3(相違点の認定の誤り2・無効理由1-2関係)について 以下のとおりであるから、取消事由3に係る原告の主張は失当であり、本件発明1と甲2発明の相違点として相違点2-2を認定した本件審決に誤りはない。 なお、本件発明1と甲2発明の相違点として相違点2-2を認定できる以上、本件発明9と甲2プログラム発明の相違点としても相違点2-2を認定できるものである。 (1) 甲2には、アスペクト比の変更可能性についての記載又は示唆は全くない。 仮に、甲2発明のような動画を表示する装置においてアスペクト比が変更され得ることが周知の事項であったとしても、甲2に上記記載又は示唆がないことに変わりはない。 (2) 甲2発明は、ウインドウ41上にテキストデータが重畳された動画を再生するものであり、テキストデータを表示する領域は、動画を再生して表示する領域の上に重畳されるものである。 (3) 甲2には、当業者においてテキストデータの少なくとも一部が動画と重なり合うと認識し得る記載はない。 4 取消事由4(甲3発明及び甲3プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-3関係)について 原告は、甲3の図9を見ると、アスペクト比の変更により、甲3発明のチャットの少なくとも一部が、配信映像の表示領域の枠を越える範囲まではみ出して表示されるようになることは、当業者にとって明らかであったと主張する。しかしながら、 図9には、本件審決が認定した甲3発明の構成3d7が記載されている。また、甲3には、アスペクト比の変更について何らの開示も示唆もない。さらに、甲3には、 甲3発明においてチャットの一部が配信映像の表示領域の枠を越える範囲まではみ出して表示されると当業者が認識し得る根拠につき、何らの開示も示唆もない。原告の主張は、甲3の記載に基づくものではない。 したがって、取消事由4に係る原告の主張は失当であり、甲3発明の構成3d7について、「各チャットの表示は、領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲まではみ出しておらず」と認定した本件審決に誤りはない。 なお、本件発明9は、本件発明1の表示装置に対応する表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明(甲3プログラム発明)であるから、甲3発明の認定に誤りがない以上、甲3プログラム発明の認定に係る本件審決の判断にも誤りはない。 5 取消事由5(相違点1-1についての判断の誤り・無効理由2-1関係)について 以下のとおり、取消事由5に係る原告の主張は失当であるから、相違点1-1に係る本件発明1の構成が当業者において容易に想到し得るものではないとした本件審決の判断に誤りはない。 なお、相違点1-1に係る本件発明1の構成が当業者において容易に想到し得るものでない以上、相違点1-1に係る本件発明9の構成もまた、当業者において容易に想到し得るものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 (1) 原告は、本件原出願日当時、WEB2.0が社会現象として技術常識となっていたから、甲4に触れた当業者は甲4技術のデータコンテンツが「ユーザによって付与されたコメント」を含むものとして解釈したと主張する。しかしながら、 原告は、WEB2.0と表現される環境が一般的に知られていたという背景技術を主張するだけであって、甲4の段落【0002】の記載がWEB2.0を示すと解する根拠はない。仮に、同段落の記載がWEB2.0を示すと解釈し得たとしても、 甲4には、「ユーザによって付与されたコメント」に係る技術が不可欠のものとなることについて、記載も示唆もみられない。したがって、原告の上記主張は全く根拠がない。 (2) 原告は、仮に甲4技術のオーバレイ表示の状態がモニタ画面のサイズに依存して形成されるものであるとしても、そのことは甲4技術のオーバレイの技術を本件発明1のオーバレイの技術と同視することを妨げるものではないと主張する。 しかしながら、甲4技術のオーバレイ表示の状態は、動画エリアとデータエリアの重ね合わせの態様の一つとして形成されるものであるから(甲4の段落【0040】)、甲4技術のデータエリアに表示されるテキストは、動画に対し動画の再生開始後の任意の時点にユーザが付与するコメントに相当しない。したがって、甲4技術のオーバレイの技術を本件発明1のオーバレイの技術と同視することはできない。 (3) 原告は、甲5技術の「字幕」も、本件発明1の「コメント」と同様、文字列データとして処理されるものであると主張する。しかしながら、本件発明1の「コメント」につき、データ処理(本件明細書の段落【0041】)が行われているからといって、これを技術的に異なる甲5技術の「字幕」と同列に扱う根拠にはならない。 (4) 原告は、本件原出願日当時、WEB2.0は技術常識であったから、甲5に接した当業者にとって、甲5技術の「字幕」をユーザが入力する「コメント」に置換することは容易であったと主張する。しかしながら、甲5技術の「字幕」の技術的意義(表示装置の画面上に、左右に黒色を表示させるデータを付加した主映像の上に字幕データの副映像を重ね合わせた映像を表示するもの)及び本件発明1の「コメント」の技術的意義(動画に対し動画再生時間の任意の時点にユーザが付与するもの)を比較考慮すれば、両者が置換可能であるということはできない。なお、 単にWEB2.0が技術常識であったというだけでは、「字幕」をユーザが入力する「コメント」に置き換えることの理由にはならない。さらに、甲5技術は、本件発明1のように、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対しユーザが書き込んだものであることを把握可能とし、コメントの読みにくさを低減させるものでもない。したがって、本件原出願日当時の当業者にとって、甲5技術の「字幕」をユーザが入力する「コメント」に置換することが容易であったということはできない。 (5) 上記のとおり、甲4技術の「テキスト」を本件発明1の「コメント」と同視することはできず、甲5技術の「字幕」を本件発明1の「コメント」に置換することもできない。また、甲1発明と甲4技術及び甲5技術とでは、技術分野や課題等も相違するから、甲1発明に甲4技術及び甲5技術を適用する動機付けはない。 (6) 原告は、相違点1-1に係る本件発明1の構成はふきだしの大きさ並びにふきだし中のコメントの文字長、フォントの大きさ及び表示位置により生じるものであり設計的事項にすぎないと主張する。しかしながら、甲1には、ふきだしの大きさ並びにふきだし中のテキスト注釈の文字長、フォントの大きさ及び表示位置に応じたテキスト注釈の表示について記載も示唆もされていないから、原告の上記主張は、前提を誤るものである。また、前記1(1)アにおいて主張したとおり、甲1の図18は、3行から成るテキスト注釈の場合であっても、映像表示部の枠の外側まではみ出すことがないように当該テキスト注釈を表示することを図示している。 したがって、相違点1-1に係る本件発明1の構成が設計的事項にすぎないとする原告の主張は失当である。 6 取消事由6(相違点2-2についての判断の誤り・無効理由2-2関係)について 相違点1-1についての本件審決の判断に誤りがないことは前記5において主張したとおりであるから、同様の理由により、相違点2-2についての本件審決の判断にも誤りはない。 なお、相違点2-2に係る本件発明1の構成が当業者において容易に想到し得るものでない以上、相違点2-2に係る本件発明9の構成もまた、当業者において容易に想到し得るものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 7 取消事由7(相違点3-1についての判断の誤り・無効理由2-3関係)について 相違点1-1についての本件審決の判断に誤りがないことは前記5において主張したとおりであるから、同様の理由により、相違点3-1についての本件審決の判断にも誤りはない。 なお、相違点3-1に係る本件発明1の構成が当業者において容易に想到し得るものでない以上、相違点3-1に係る本件発明9の構成もまた、当業者において容易に想到し得るものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 8 本件発明2及び10(無効理由2-4及び2-7関係)について 本件発明1及び9について、本件審決がした甲1発明及び甲1プログラム発明の認定、本件発明1又は9と甲2発明又は甲2プログラム発明の相違点の認定(相違点2-1及び2-2の認定)、甲3発明及び甲3プログラム発明の認定、本件発明1又は9と甲1発明又は甲1プログラム発明の相違点である相違点1-1についての判断、本件発明1又は9と甲2発明又は甲2プログラム発明の相違点である相違点2-2についての判断並びに本件発明1又は9と甲3発明又は甲3プログラム発明の相違点である相違点3-1についての判断にいずれも誤りがないことは、前記1ないし7において主張したとおりである。 そして、本件発明2が本件発明1を引用する発明であり、本件発明10が本件発明9を引用する発明であることからすると、本件発明2及び10につき進歩性がないとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。 9 本件発明5及び6(無効理由2-5及び2-6関係)について 本件発明1について、本件審決がした甲1発明の認定、本件発明1と甲2発明の相違点の認定(相違点2-1及び2-2の認定)、甲3発明の認定、本件発明1と甲1発明の相違点である相違点1-1についての判断、本件発明1と甲2発明の相違点である相違点2-2についての判断並びに本件発明1と甲3発明の相違点である相違点3-1についての判断にいずれも誤りがないことは、前記1ないし7において主張したとおりである。 そして、本件発明5及び6がいずれも本件発明1を直接又は間接に引用する発明であることからすると、本件発明5及び6につき進歩性がないとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 本件各発明の概要(1) 本件明細書(図面を含む。以下同じ。)の記載 本件明細書には、次の記載がある。 【技術分野】【0001】 本発明は、動画とともにコメントを表示する場合における表示装置、コメント表示方法、及びプログラムに関する。 【背景技術】【0002】 従来から、例えば、放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステムがある。 例えば、地域ごとに放送時間が異なるテレビ番組等に関する掲示板において、テレビ番組の1シーンに対する書き込みを、放送開始からの正味時間に対応させて記憶しておき、掲示板を閲覧する時間が異なっていても、以前に書き込まれた内容がテレビ番組のシーンに合わせて表示させるシステムがある…。このシステムによれば、ユーザは放送時間のタイムラグを感じることがなく、テレビ番組を見ながら、 コメントを閲覧して楽しむことができる。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】 しかしながら、上述した従来技術におけるシステムを利用すると、以下のことが考えられる。すなわち、動画上に多数のコメントが書き込まれたとすると、コメント同士が重なり合ってしまい、コメントを読みにくくなってしまう。また、ユーザ毎にコメントを表示する位置を割り当ててしまうと、重なることを解消することができるが、同じ画面上にコメントを書き込めるユーザの数が限られてしまうため、 大人数でコメントを交換する面白みが低減してしまう。 【0005】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のコメントが書き込まれても、コメントの読みにくさを低減させることができる表示装置、 コメント表示方法、及びプログラムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0006】 上述した課題を解決するために、本発明は、動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有し、前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示することを特徴とする。 【0007】 また、本発明は、上述の表示装置において、前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする。…【0008】 また、本発明は、上述の表示装置において、前記コメント表示部は、前記コメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する際、前記第1の表示欄と前記第2の表示欄とにまたがるように表示させることを特徴とする。 【0009】 また、本発明は、上述の表示装置において、前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部と、前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、を備えることを特徴とする。 【0011】 また、本発明は、動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置のコンピュータを、前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生手段、コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメント表示手段、として機能させるプログラムである。 また、本発明は、上述のコメント表示手段が、前記コメントを移動表示させることを特徴とする。 【発明の効果】【0012】 以上説明したように、この発明によれば、動画を第1の表示欄に再生させ、コメント情報のうち、動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み出し、第1の表示欄と一部が重なり他の部分が重ならない表示領域である第2の表示欄における、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に、読み出したコメントの少なくとも一部を表示するようにした。これにより、例えば、オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようにして、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させることができる。 【0019】 …図5は、表示装置34に表示される情報の一例を示す図である。…表示欄104には、第1の表示部によって表示される動画が表示される。表示欄105には、 第2の表示部によって表示されるコメントが表示される領域であり、ここでは、表示欄104によって表示される動画上にコメントが表示される。また、ここでは、 表示欄105は、表示欄104よりも大きいサイズに設定されており、オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようになっており、 コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となっている。 【0034】 次に、コメントが画面上に表示された場合について図面を用いて説明する。ここでは、図6の「最近のコメント一覧」において、「有名シェフのオムライス」の動画に対応付けされた「料理の感想を言おう!」というスレッドが選択された場合について説明する。このスレッドが選択されると、「有名シェフのオムライス」の動画が例えば、図5の表示欄104の領域内に再生される。そして、動画再生時間に応じてコメントが動画上に順次表示される。図5では、動画再生時間が9秒の場合の画面が示してあり、ここでは、コメント付与時間が9秒のユーザFのコメントである「おいしそう〜!」が、画面の右側から左側に移動表示される(符号115)。 そして、動画の再生が進み、動画再生時間が13秒になると、図9に示すような画面が表示される。ここでは、コメント付与時間が9秒のコメントである「おいしそう〜!」が、画面左側に移動しており、表示欄104の外側であって表示欄105の内側にトリミングされた状態で「そう〜!」の部分だけ表示されている(符号200)。また、コメント付与時間が10秒のユーザZのコメントである「有名シェフの作品はいいねぇ。」のコメントがユーザBのコメントの下の位置に表示されているとともに(符号201)、コメント付与時間が12秒のユーザEのコメントである「どこの卵を使ってるの?」が画面の下方の位置に表示される(符号202)。 このようにして、コメントが順次表示される。 【図5】【図9】 (2) 本件明細書の上記記載によると、本件各発明の概要は、次のとおりであると認められる。すなわち、本件各発明は、動画と共にコメントを表示する表示装置及びプログラムに関するものである。従来から、放送されたテレビ番組等の動画に対してユーザが発信したコメントをその動画と併せて表示するシステムがあったところ、このシステムを利用した場合、動画上に多数のコメントが書き込まれると、 コメント同士が重なってしまい、コメントが読みにくくなるという課題があった。 かかる課題を解決し、複数のコメントが書き込まれた場合であってもコメントの読みにくさを低減させることができるような表示装置及びプログラムを提供することを目的として、本件各発明は、動画を第1の表示欄に再生させた上、動画再生時間に対応するコメント付与時間を対応付けたコメントの少なくとも一部を、第1の表示欄と一部のみが重なる第2の表示欄の内側であり、かつ、第1の表示欄の外側に表示するようにしたものである。これにより、本件各発明は、コメントそのものが動画に含まれるものではなく、動画に対しユーザが書き込んだものであることを把握可能にし、コメントの読みにくさを低減させる効果を奏する。 2 取消事由1(甲1発明及び甲1プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-1関係)について(1) 甲1の記載 甲1には、次の記載がある。 【0019】…本発明は、撮影された映像データを配信するための映像配信装置と、上記映像データに付与する注釈データを配信するための注釈配信装置と、上記映像配信装置から配信された映像データに基づく映像と、上記注釈配信装置から配信された注釈データに基づく注釈とを再生する再生装置とをネットワークを介して通信可能に接続した映像配信システムであって、上記注釈配信装置は、上記注釈データを含む関連データを取得するデータ取得手段と、上記データ取得手段により取得された注釈データを記録媒体に保存する注釈保存手段と、上記データ取得手段により取得された関連データに基づいて、上記映像データと、上記注釈保存手段により保存された注釈データとを対応付けるための情報を記述した同期記述を作成する同期記述作成手段とを有し、上記再生装置は、上記同期記述作成手段により作成された同期記述に基づいて、上記映像配信装置から配信された映像データに基づく映像と、上記注釈保存手段により保存された注釈データに基づく注釈とを同期させて再生する再生手段を有することを特徴としている。 かかる構成では、映像データと注釈データとを対応付ける同期記述に基づいて、上記映像データに基づく映像に、上記注釈データに基づく注釈を同期させて付与する。 【0020】【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明の映像配信システムの第1の実施形態を、図面を参照して説明する。 第1の実施形態では、カメラサーバ101、102から送られる映像に、携帯電話端末601、602から入力した音声注釈を連動させる例について説明する。 【0021】この中で、注釈サーバ400が音声注釈を収集し、それを蓄積映像再生と合わせてユーザに提供するための同期記述を生成する例についても説明する。特に、本実施形態の注釈サーバ400では、カメラ制御権をもつユーザによる音声注釈を、他ユーザによる注釈と区別するための手段を提供する点に特徴がある。 【0022】図1は、本発明の実施の形態を示し、映像配信装置を適用した映像配信システムの構成の一例を示した図である。 101および102はカメラサーバ、200はクライアント端末(ビューワ)である。カメラサーバ101、102と、クライアント端末200とはそれぞれネットワークに接続される。クライアント端末200からネットワークを介してリクエストがカメラサーバ101、102へ送られる。 【0023】カメラサーバ101、102でこのリクエストが受け入れられると、カメラサーバ101、102からクライアント端末200へ映像データが配送される。これにより、クライアント端末200でカメラ映像を見ることが可能となる。 【0024】また、クライアント端末200からカメラ制御コマンドがカメラサーバ101、102へ送られる。これにより、カメラのズーム、パン、チルトなどの操作が可能となる。さらに、ネットワーク上には、中継サーバ300が置かれ、クライアント端末200とカメラサーバ101、102との通信を中継することがある。 【0025】さらに、400は注釈サーバであり、カメラサーバ101、102が提供する映像データに関する注釈を収集および管理する。 また、500はネットワークと携帯電話回線網とを仲介するルータである。601および602は、ビューワプログラムを搭載した携帯電話端末である。このルータ500を介して、ネットワークに接続された機器と携帯電話端末601、602とが通信する。 【0047】図6は、クライアント端末200や携帯電話端末601、602の動作の一例を説明するフローチャートである。なお、以下では、クライアント端末200及び携帯電話端末601、602を総称してビューワマシンと称する。 【0048】ステップS601において、ビューワマシン上のWebブラウザが、指示されたURLに対応するWWWサーバ700に接続し、HTML形式で記述されたWebページデータをリクエストする。 【0049】続いて、ステップS602において、ビューワマシンは、WWWサーバ700からWebページデータを受け取り、これをWebブラウザに表示し始める。ここで受け取ったWebページデータの中には、本実施形態の映像配信システムのビューワを起動し、カメラサーバ101、102や注釈サーバ400などへ接続するための接続情報が含まれる。 【0052】次に、ステップS604において、ビューワマシンは、上記取得した接続情報の識別子に対応するプログラム、すなわち本映像配信システムのビューワプログラムを起動する。 【0053】次に、ステップS605において、上記起動したビューワプログラムにより、上記取得(ダウンロード)した接続情報を読み出す。そして、上記読み出した接続情報に記載されているカメラサーバ101、102を構成する映像サーバ502のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを映像サーバ502へ接続する。 【0054】ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラム(実現方法としては、スレッドあるいはプロセスの起動となる)が起動され、この映像表示用スレッドは、終了までステップS631の処理を繰り返す。すなわち、ビューワマシンは、映像サーバ502からの映像データが届くたびにそれを受け取り、ディスプレイ装置404cなどに表示する。 【0055】さらに、ステップS606において、上記起動したビューワプログラムは、上記接続情報に記載されている注釈サーバ400のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する。 【0056】ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラムが(スレッドあるいはプロセスとして)起動され、この注釈用スレッドは、終了までステップS621からステップS624までの処理を繰り返す。すなわち、ビューワマシンは、注釈サーバ400との間で注釈データの受け渡しをする。なお、この動作の詳細に関しては、後述する。 【0062】ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する処理(ステップS606)で起動する上記注釈用スレッドでは、まず、ステップS621において、ビューワマシン上の音声入出力装置404dを初期化する。 【0063】次に、ステップS622において、一定時間(例えば、1秒間)音声データを取得(キャプチャ)する。 そして、ステップS623において、上記取得した音声データのホワイトノイズを除去した上で、一定レベル(音量)以上の音声データが所定の処理結果から得られた場合には、それをエンコード/圧縮して、ステップS624に進む。一方、一定レベル(音量)以上の音声データが得られない場合には、ステップS622に戻る。 【0064】そして、ステップS624において、上記得られた一定レベル以上の音声データと合わせて、映像サーバ502の識別子(典型的には、前記接続情報に記載されている映像サーバのアドレスおよび接続ポート情報である)、映像サーバ502との接続のセッション識別子、現在表示している映像のタイムスタンプ、カメラ制御権の有無、パンやズームや逆光補正などカメラ制御パラメータなどの情報を注釈サーバ400に送信する。そして、最後に、ステップS622に戻る。 【0065】なお、本実施形態では、ユーザからの音声注釈の有無をレベル(音量)から自動判別しているが、ユーザが明示的に注釈の開始と終了を指定してもよい。この場合、 例えば、予め設定したキーボード404b上のキーや、ディスプレイ装置404cの画面上に表示されているボタンを押し下げた(KeyDown)時点で、注釈音声の取得を開始し、キーを上げた(KeyUp)時点で注釈音声の取得を終了するようにすればよい。 【0066】蓄積映像にアクセスする際のビューワマシンにおける動作の流れも、図6に示したものと同様である。異なる部分は、カメラ制御サーバ501への接続を行わない点と、映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得する点である。 【0067】一方、ディスプレイ装置404cの表示画面の内容は大きく異なり、カメラ制御インターフェースに変わって、蓄積映像の再生制御インターフェースを表示する(図14を参照)。 【0068】また、再生映像に関するタイムスケールを表示し、再生している映像が、どの映像であるのかをユーザに伝える。さらに、注釈音声の存在を明示するためのアイコン(図14のビューワ画面1400の左下に表示されているベルのマーク)を表示する。 【0126】以上の構成で、携帯電話端末601、602上に実装されたビューワを使う複数のユーザは、映像サーバ502が提供する映像データを携帯電話端末601、602上の画面に見ながら、必要に応じて、リアルタイムで適切な注釈を音声で入力する。 そして、ビューワに内蔵された注釈用スレッドが、入力した注釈を注釈サーバ400に転送し、注釈サーバ400が適切な同期記述を生成した上で、入力した注釈を保存する。 【0127】これによって、蓄積映像を参照するユーザは、映像に同期する形で、それに付随する適切な注釈を得ることが可能となる。 特に、カメラ制御権を取得してカメラ制御を行うユーザの注釈に、予鈴音声を合成するようにしたので、他の傍観者の注釈と区別することができるとともに、カメラ制御を行った意図を示す注釈を、容易に認識することが可能となる。 【0128】このように本実施形態では、映像に付与された注釈を分別して再生することが可能になり、映像アーカイブの作成や、映像を介したコミュニティ形成を効果的に進めることが可能となる。 【0129】例えば、本実施形態の映像配信システムを利用して、結婚式会場の映像を中継および蓄積する際に、カメラを制御するユーザによって行われた映像のパンやズームなどの意図と、結婚式映像を見ている傍観者ユーザの祝辞や感想とを、適切に再現し、 これらを明確に区別することが可能となる。 【0130】以上で、映像蓄積機能を備えるカメラサーバ101がネットワークを介して映像を配信する映像に、複数のユーザが携帯電話端末601、602を介してリアルタイムで音声注釈を付与することができる。しかも、本実施形態の注釈サーバ400では、カメラ制御権をもつユーザを識別し、その音声注釈データには、予鈴音声を挿入(前置きに)するようにしたので、カメラ制御権をもつユーザによる注釈と、他の傍観者ユーザによる注釈とを再生時に区別できる。また、注釈が付与された映像を再生する場合にも、それらの注釈を区別できる。 【0136】また、本実施形態では、ライブ映像に音声注釈を付与する例について説明しているが、同様の手法で、テキスト注釈を付与することも可能である。この場合には、ビューワを実装するプログラム上での注釈の扱いにおいて、音声注釈データの処理に加えて(あるいは、代えて)、テキスト注釈データの処理を実装すればよい。 【0137】近年では、メイルやSMS(Short Message Service)の普及から、多くの携帯電話端末において、テキスト作成/表示機能が実装されており、これを利用してテキスト注釈の入力/再生を実現することができる。 【0138】また、本実施形態では、予鈴音声を合成することで、カメラ制御中の注釈を他の注釈と区別するようにしたが、これらを区別する方法は、予鈴音声の合成に限定されない。例えば、携帯電話端末のバイブレーション機能を使う方法や、図17のように表示画面1700上へテロップを挿入する方法や、図18のように表示画面1800上でふきだし表示する際のふきだしの形状を変える方法や「、音声注釈データのエンコード時にフィルターを適用して他の音声との区別を図る方法などを用いてカメラ制御中の注釈を他の注釈と区別するようにしてもよい。 【図1】【図14】【図18】 (2) 上記(1)のとおり、甲1には、映像配信システムにおいて付与される注釈として、主として音声データによる注釈の場合が記載され、テキスト注釈の場合に言及しているのは、段落【0136】ないし【0138】及び図18のみである。そこで、コメントが「第2の表示欄」に表示され得るもの、すなわち、文字により表示されるものであることを前提とする本件発明1(前記1(1)の段落【0002】、 【0004】、【0005】、【0012】、【0019】及び【0034】並びに図5及び図9参照)との対比判断を行う目的で甲1発明を認定するため、本件発明1の構成1E及び1F(「第1の表示欄」と「第2の表示欄」との位置関係及びコメントの表示位置に係る各構成)に対応する甲1発明の構成を認定するに当たっては、甲1においてテキスト注釈に言及している段落【0136】ないし【0138】及び図18の記載を参酌するほかないところ、甲1の段落【0136】ないし【0138】には、映像データが表示される映像表示部とテキスト注釈が表示される領域との位置関係及びテキスト注釈の表示位置に係る記載は全くないから、結局、 甲1における上記構成の有無及びその内容の認定は、専ら甲1の図18に基づいてするのが相当である。 そこで、甲1の図18をみると、テキスト注釈が表示された3個のふきだしには、 全て映像表示部の枠内に収まるもの(1個)及びふきだしの一部が映像表示部の枠の外側にはみ出しているもの(2個)があるが、これらのふきだし内に表示されたテキスト注釈(3個)自体は、いずれも映像表示部の枠内に収まっている。したがって、本件発明1の構成1E及び1Fに対応する甲1発明の構成を「表示画面1800において、テキスト注釈はふきだしの形態で映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示され、テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部(蓄積映像)の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出さない」と認定した本件審決に誤りはない。 なお、上記説示したところに照らすと、本件審決がした甲1プログラム発明の認定にも誤りはない。 (3) 原告の主張について ア 原告は、甲1の図18に描かれたふきだし内の文字(テキスト注釈)はあえて文字数が少ないものとされ、さらに、それらが中央揃えの方法により表示されたことから、たまたま映像表示部の枠内に収まったにすぎないし、そもそも、ふきだし内のテキスト注釈の文字数をどの程度とするか、テキスト注釈をふきだし内のどの位置に表示するかは、プログラムごとに様々であり、図18においてテキスト注釈を右揃えの方法により表示すれば、当該テキスト注釈は映像表示部の枠の外側にはみ出して表示されることになるのであるから、図18を見た当業者はテキスト注釈の文字数が一定以上である場合に当該テキスト注釈が映像表示部の枠の外側にはみ出すことを直ちに認識したとして、甲1発明はテキスト注釈の文字が映像表示部の枠の外側まではみ出すという構成を備えていると主張する。 しかしながら、甲1には、図18に描かれたふきだし内のテキスト注釈があえて文字数の少ないものとされた旨の記載も示唆もなく、当該テキスト注釈がたまたま映像表示部の枠内に収まったとする旨の記載も示唆もない(そもそも、図18の左上部分に表示されたテキスト注釈は、3行にわたるものであって、これが原告のいう文字数が少ないテキスト注釈に該当するかどうかも疑問である。)。また、甲1には、テキスト注釈をふきだしの右枠や左枠に寄せて表示する旨の記載も示唆もない(なお、原告は、右揃えの方法で文字列を表示することは周知技術であったと主張するが、仮にそうであるとしても、甲1発明においてテキスト注釈を右揃え又は左揃えの方法で表示した場合、当該テキスト注釈の右側又は左側が必ず映像表示部の枠の外側にはみ出すとはいえない。)。そうすると、図18を見た当業者において、テキスト注釈の文字数が一定以上である場合に当該テキスト注釈が映像表示部の枠の外側にはみ出すことを直ちに認識したとはいえないから、原告の上記主張を採用することはできない。 イ 原告は、甲1発明において、映像表示部に表示される動画のアスペクト比は様々なものに変更され得るものであるところ、当業者はそのような変更がされれば、 テキスト注釈の少なくとも一部が映像表示部の枠の外側まではみ出して表示されるものと認識し得たとして、甲1発明はテキスト注釈の文字が映像表示部の枠の外側まではみ出すという構成を備えていると主張する。 しかしながら、仮に、映像表示部に表示される映像のアスペクト比が様々なものに変更され得るものであるとしても、甲1には、映像のアスペクト比が変更された場合の映像表示部と前記(2)のふきだし(テキスト注釈が表示される領域)との位置関係及びテキスト注釈の表示位置がどのように変化するかについての記載又は示唆は全くない(前記(2)のとおり、甲1においてテキスト注釈に言及しているのは、 段落【0136】及び【0137】並びに図18のみである。)。原告は、映像表示部に表示される映像のアスペクト比につき一定の変更がされれば、映像表示部が必ず横方向に収縮し、その結果、テキスト注釈の全部又は一部が必ず映像表示部の左右の枠の外側にはみ出す旨の主張をするが、そのようにいうことのできる技術的根拠を認めるに足りる証拠はない。そうすると、当業者において、映像表示部に表示される映像のアスペクト比の変更がされれば、テキスト注釈の少なくとも一部が映像表示部の枠の外側まではみ出して表示されるものと認識し得たとはいえないから、原告の上記主張を採用することはできない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、取消事由1は理由がない。そして、甲1発明及び甲1プログラム発明に係る本件審決の認定に誤りがない以上、本件発明1又は9と甲1発明又は甲1プログラム発明との間には、本件審決が認定した相違点1-1が存在するといえるから、無効理由1-1は理由がない。 3 取消事由3(相違点の認定の誤り2・無効理由1-2関係)について 事案に鑑み、次に取消事由3について判断する。 (1) 本件審決は、甲2発明につき前記第2の3(2)ア(ア)のとおり認定した上、 本件発明1と甲2発明の対比判断において、甲2発明は本件発明1の構成1E及び1Fを備えていないと判断し、相違点2-2を認定した。原告は、本件審決がした甲2発明の認定自体は争わずに、上記対比判断を争うものと解されるので、以下、 本件審決が認定した甲2発明を前提に、これが本件発明1の構成1E及び1Fを備えているといえるかにつき検討する。 (2) 甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 【0008】【課題を解決するための手段】本発明のストリーミング配信方法は、ストリーミングサーバが、ストリーミング配信中の動画コンテンツに関連するテキストデータであって利用者端末により書き込まれたテキストデータを収集し、収集されたテキストデータをストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し、テキストデータの重畳された動画コンテンツを前記利用者端末に配信する。 【0009】本発明のストリーミング配信方法によれば、利用者から入力された掲示板上のテキストデータが、配信又は放送されているコンテンツと共に、これに重畳されてストリーミング配信される。従って、利用者は、少なくとも、配信又は放送されているコンテンツと共に、これについてウェブ掲示板やチャットに書き込まれたテキストデータ(文章)を同一の画面上で同時に見ることができ、非常に便利である。これにより、利用者は会場の客席の様な雰囲気を味わうことができ、この結果、ストリーミング配信の視聴者の増加を期待することができる。また、視聴者の声をリアルタイムで得ることができるので、オークションやアンケート等の視聴者参加型のストリーミング配信を行うことができる。 【0010】【発明の実施の形態】図1はストリーミング配信システム構成図であり、本発明のストリーミング配信方法を実現するストリーミング配信システムの構成を示す。 【0011】ストリーミング配信システムは、ウェブサーバ1、ストリーミングサーバ2、利用者端末(クライアントであるコンピュータ)4からなる。1個の利用者端末4の1個の画面40において、例えば2個のウィンドウ41及び42が開かれる。ウェブサーバ1とストリーミングサーバ2とは、ネットワーク3により接続され、相互に通信を行う。ストリーミングサーバ2と利用者端末4とは動画データのストリーミング配信が可能なネットワーク3により接続され、本発明に従って前者が後者へのテキストデータを重畳した動画のストリーミング配信を行う。当該動画はウィンドウ41に表示される。利用者端末4とウェブサーバ1とは、ネットワーク3により接続され、相互に通信を行う。即ち、利用者端末4の利用者は、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板(42)にテキストデータ(文字データ)からなるメッセージを書き込む。ウェブ掲示板はウィンドウ42に表示される(以下、ウェブ掲示板42とも言う)。利用者端末4は、1又は複数であってよい。 【0012】ストリーミングサーバ2は、動画コンテンツを格納するコンテンツファイル21を備え、これから読み出した動画コンテンツをネットワーク3を介して1又は複数の利用者端末4にストリーミング配信する。コンテンツファイル21は周知の動画像を格納するファイルとされる。この例では、ストリーミング配信は、周知のSMIL(Synchronized Multimedia Integrated Language)を用いて行われる。これにより、ストリーミングサーバ2は、ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとを同期させて1個のコンテンツにまとめて配信し、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示することができる。 【0013】利用者端末4は、各々、ストリーミングサーバ2から動画コンテンツの配信を受け、 その画面40のウィンドウ41にその動画を表示する。これを見た利用者は、利用者端末4から、同一画面40上において、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板42のようなテキスト書込部42(以下、テキスト書込部42とも言う)にテキストデータからなるメッセージを書き込む(登録する)。 【0014】ウェブサーバ1は、ネットワーク3を介して、利用者端末4にテキスト書込部42を提供する。テキスト書込部42は、例えばストリーミング配信中の動画コンテンツに関連付けられたウェブ掲示板42又はチャット書込領域42であり、ウェブサーバ1により予めストリーミング配信中の動画コンテンツに関連付けられている。 テキスト書込部42には、利用者端末4によりストリーミング配信中の動画コンテンツに関連する1又は複数のテキストデータが書き込まれる。テキストデータは、 ウェブ掲示板42に利用者端末4から書き込まれた(登録された)メッセージ、チャットにおいて利用者端末4から書き込まれた(登録された)メッセージ等である。 メッセージは、例えば、当該動画コンテンツがスポーツの試合であれば、選手に対する応援の言葉等である。テキストデータはウェブ掲示板42及びチャット書込領域42以外のテキスト書込部42から収集されてもよい。 【0015】ウェブサーバ1は、書込ログファイル11を備え、テキスト書込部42に利用者端末4により書き込まれたテキストデータを逐次収集し、当該収集したテキストデータをその収集の順に書込ログファイル11に格納する。 【0016】ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1の書込ログファイル11に格納されたテキストデータを収集する。従って、ストリーミングサーバ2により収集されるテキストデータは、ストリーミング配信中の動画コンテンツに関連するテキストデータであって、当該動画コンテンツに関連付けられたテキスト書込部42に対して、 1又は複数の利用者端末4により書き込まれたテキストデータである。収集されるテキストデータは1又は複数個である。ウェブサーバ1は複数であってもよい。 【0017】ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1からの利用者端末4により書き込まれたテキストデータの収集を周期的に繰り返す。この周期は、後述するログ収集周期設定部223に設定されたログ収集周期とされ、初期設定処理において予め設定される。例えば、この周期はおよそ1〜2秒とされる。 【0018】ストリーミングサーバ2は、収集されたテキストデータをストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し、テキストデータの重畳された動画コンテンツを利用者端末4に配信する。このために、ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1からその書込ログファイル11に書き込まれたテキストデータを収集して、一時データ格納部22の書込リスト221に一時的に格納する。また、ストリーミングサーバ2は、テキストデータを収集した後、当該収集により書込リスト221に格納されたテキストデータの数をカウントし、当該カウント値を以下の書込数設定部225に格納する。 【0025】…以上のような類似メッセージの処理により、図4に示すように、ストリーミング配信されているサッカーの試合の動画上に、「GOGO!」「決めろよ〜!」のようなテキストデータが重畳された画面が、利用者端末4において得られる。 【0030】ストリーミングサーバ2は、図5に示すように、収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、 ウィンドウ41における表示位置又は色(背景色又はフォントの色)を設定する。 ウィンドウ41における表示位置又は色は、当該テキストデータ毎に予め定められる。このために、ストリーミングサーバ2は、メッセージ表示DB24を備える。 メッセージ表示DB24の一例を図2(C)に示す。メッセージ表示DB24は、 テキストデータの中で出現頻度の高いと思われる又は関心の高いと思われる固有名詞をキーワードとして、当該キーワード毎に、その(およその)表示位置、表示色を格納する。 【0031】例えば、動画コンテンツがサッカーの試合である場合、選手名がキーワードとされる。選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされる。これにより、同一チームへの声援が相互に近い位置に表示されるので、 重畳されたテキストデータが見易くなる。選手Xの属するチームのチームカラー(ユニフォームの色)が「青」であれば、その表示色(テキストデータを表示するボックスの背景色又はフォントの色)は「青」とされる。表示リスト222内に当該選手名(であるテキストデータ)が存在する場合、これを動画コンテンツに重畳する際、その表示位置又は色は、メッセージ表示DB24に従った表示位置又は色とされる。 【0032】ウィンドウ41における表示位置又は色は、表示位置又は色の一方のみを設定しても、双方を設定してもよい。また、サッカーの試合のように、前半と後半とでサイド(又はコート)チェンジをする場合、これに伴って表示位置を変えるようにしてもよい。 【0033】テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示される。テキストデータの表示位置は、表示可能数と同一の数だけ、予め定められる。テキストデータの表示色の指定がない場合、テキストデータは、当該ウィンドウ41の背景色と同一の背景色に通常のフォント(例えば、黒)で表示される。 【0034】ストリーミングサーバ2は、図6に示すように、収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、 当該テキストデータとは異なる内容の新たなテキストデータ(メッセージ)を同時に重畳する。この新たなテキストデータは、当該テキストデータ毎に予め定められる。このために、ストリーミングサーバ2は、応答メッセージDB25を備える。 応答メッセージDB25の一例を図2(D)に示す。応答メッセージDB25は、 テキストデータの中で出現頻度の高いと思われる又は関心の高いと思われる固有名詞をキーワードとして、当該キーワード毎に、同時に重畳すべき新たなテキストデータを格納する。 【0038】図7は、ストリーミング配信処理フローであり、本発明のストリーミング配信システムにおけるテキストデータを重畳された動画コンテンツのストリーミング配信処理について示す。 【0039】動画コンテンツの配信処理を開始する前に、システム管理者により、初期設定が行われる。即ち、システム管理者が、ストリーミングサーバ2のキーボード(図示せず)等の入力装置から、ログ収集周期設定部223にログ収集周期を設定し、表示可能数設定部224に画面同時表示可能数を設定する。 【0040】動画コンテンツの配信処理が開始されると、ストリーミングサーバ2は、当該動画コンテンツを利用者端末4に対してストリーミング配信する。この時、ストリーミングサーバ2は、SMIL等により動画コンテンツ(スポーツの試合の中継映像等)とウェブ掲示板42のテキストデータとを同期させ1個のコンテンツにまとめて配信する。これにより、利用者端末4は、動画コンテンツの映像とテキストデータとを同時に同一ウィンドウ41で表示する。また、これを見た利用者は、随時、利用者端末4からウェブサーバ1のウェブ掲示板42等に応援や感想のメッセージ(テキストデータ)を書き込む。 【0041】ストリーミングサーバ2は、ログ収集周期設定部223のログの収集周期が経過したか否かを調べ(ステップS11)、経過しない場合、ステップS11を繰り返す。 ログの収集周期が経過した場合、ストリーミングサーバ2は、ウェブ掲示板42に新規に書き込まれたテキストデータを、ウェブサーバ1の書込ログファイル11から収集し、収集したテキストデータを書込リスト221に格納する。これにより、 ストリーミングサーバ2は、当該収集周期における書込リスト221を作成する(ステップS12)。この後、ストリーミングサーバ2は、書込リスト221に格納したテキストデータの数をカウントして、これを書込数として取得する、即ち、 書込数設定部225に格納する(ステップS13)。 【0042】ストリーミングサーバ2は、書込数が表示可能数設定部224の表示可能数よりも大きいか否かを調べ(ステップS14)、書込数が表示可能数よりも大きい場合、 前述のように、テキストデータを整理した上で、表示リスト222を作成する(ステップS15)。これについては、図8を参照して後述する。ストリーミングサーバ2は、更に、表示リスト222に格納したテキストデータの数をカウントして、 これを表示数として取得する、即ち、表示数設定部226に格納する(ステップS16)。ストリーミングサーバ2は、表示数に基づいて、表示時間を設定する、即ち、表示時間設定部227に格納する(ステップS17)。この時、前述のように、 表示時間は表示数に比例して短くされる。 【0043】この後、ストリーミングサーバ2は、表示リスト222内に格納されているメッセージを、その先頭から順に読み出して、当該表示時間に従ってSMILを用いて動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信することにより、そのウィンドウ41に表示し(ステップS18)、ステップS11以下を繰り返す。ステップS14において書込数が表示可能数よりも大きくない場合、ステップS12で作成した書込リスト221内に格納されているメッセージを、その先頭から順に読み出して、当該表示時間に従って動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信することにより、 そのウィンドウ41に表示し(ステップS19)、ステップS11以下を繰り返す。 【0046】以上、本発明をその実施の態様に従って説明したが、本発明は、その主旨の範囲内において種々の変形が可能である。 【0047】例えば、図9に示すように、ストリーミングサーバ2が、ストリーミング配信中の動画コンテンツを表示するウィンドウ41内に、これに関連付けられたテキスト書込部42を表示させるようにしてもよい。即ち、図10に示すように、ストリーミング配信された動画コンテンツを再生するウィンドウ41内に、テキスト書込部42が設けられる。このために、ストリーミングサーバにより、1個のHTML内にSMILコンテンツとテキスト書込部42のCGIとが各々埋め込まれる。SMILコンテンツとテキスト書込部42のCGIとには、各々、異なるURLが割り当てられる。これにより、利用者は、1個のウィンドウ41を見るだけで、ストリーミング配信された動画コンテンツを見ながら、ウェブ掲示板42の内容を見て、その場でウェブ掲示板42への書き込みも行うことができる。 【0048】以上から判るように、本発明の実施の形態の特徴を列記すると、以下の通りである。 (付記1) ストリーミングサーバが、ストリーミング配信中の動画コンテンツに関連するテキストデータであって利用者端末により書き込まれたテキストデータを収集し、 ストリーミングサーバが、前記収集されたテキストデータを前記ストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し、 ストリーミングサーバが、前記テキストデータの重畳された動画コンテンツを前記利用者端末に配信することを特徴とするストリーミング配信方法。 …(付記10) 前記ストリーミングサーバが、前記収集されたテキストデータの少なくとも1個について、その内容に応じて、画面における表示位置又は色を設定することを特徴とする付記1に記載のストリーミング配信方法。 (付記11) 前記画面における表示位置又は色は、当該テキストデータ毎に予め定められることを特徴とする付記10に記載のストリーミング配信方法。 …【0049】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ストリーミング配信方法において、利用者から入力されたウェブ掲示板上のテキストデータが、配信又は放送されているコンテンツと共に、これに重畳されてストリーミング配信される。従って、利用者は、 少なくとも、配信又は放送されているコンテンツと共に、これについてウェブ掲示板やチャットに書き込まれたテキストデータを同一の画面上で同時に見ることができる。これにより、利用者は会場の客席の様な雰囲気を味わうことができる。一方、 ストリーミング配信の事業者は、ストリーミング配信の視聴者の増加を期待することができ、また、視聴者の声をリアルタイムで得ることができるので、オークションやアンケート等の視聴者参加型のストリーミング配信を行うことができる。 【図1】【図4】【図5】【図6】【図10】 (3) 上記(2)のとおり、甲2(図面を除く。)には、動画とテキストデータが「重畳」されるとの記載は多数みられるものの(なお、段落【0025】及び図4の記載によると、「重畳」とは、必ずしも動画とテキストデータが重なり合うことを意味しないものと解される。)、動画が表示される領域(以下「動画表示領域」という。)とテキストデータが表示される領域(以下「テキストデータ表示領域」という。)との位置関係、テキストデータ表示領域中のテキストデータが表示される具体的な位置等については、「ストリーミングサーバ2は、…収集されたテキストデータ…の少なくとも1個について、その内容に応じて、ウィンドウ41における表示位置又は色…を設定する。ウィンドウ41における表示位置又は色は、当該テキストデータ毎に予め定められる。」(段落【0030】)、「選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされる。これにより、同一チームへの声援が相互に近い位置に表示されるので、重畳されたテキストデータが見易くなる。…表示リスト222内に当該選手名(であるテキストデータ)が存在する場合、これを動画コンテンツに重畳する際、その表示位置又は色は、 メッセージ表示DB24に従った表示位置又は色とされる。」(段落【0031】)、「ウィンドウ41における表示位置又は色は、表示位置又は色の一方のみを設定しても、双方を設定してもよい。また、サッカーの試合のように、前半と後半とでサイド(又はコート)チェンジをする場合、これに従って表示位置を変えるようにしてもよい。」(段落【0032】)、「テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示される。テキストデータの表示位置は、表示可能数と同一の数だけ、予め定められる。」(段落【0033】)、「(付記10) 前記ストリーミングサーバが、前記収集されたテキストデータの少なくとも1個について、その内容に応じて、 画面における表示位置又は色を設定することを特徴とする付記1に記載のストリーミング配信方法。(付記11) 前記画面における表示位置又は色は、当該テキストデータ毎に予め定められることを特徴とする付記10に記載のストリーミング配信方法。」(段落【0048】)等の記載がみられるのみであり、これらによっても、動画表示領域とテキストデータ表示領域との位置関係やテキストデータ表示領域中のテキストデータが表示される位置を具体的に明らかにすることはできない。 また、図4ないし6及び10をみても、動画表示領域及びテキストデータ表示領域がいずれもウィンドウ41内にあり、動画表示領域とテキストデータ表示領域とが一切の重なり合いを持たないことがうかがわれるのみである。そうすると、甲2によっても、本件審決が認定した甲2発明が本件発明1の構成1E及び1Fを備えているとは認められないといわざるを得ない。したがって、本件発明1と甲2発明の対比判断において、甲2発明は本件発明1の構成1E及び1Fを備えていないと判断し、相違点2-2を認定した本件審決に誤りはない。 なお、上記説示したところに照らすと、本件発明9と甲2プログラム発明との間において相違点2-2が認められるとした本件審決の認定にも誤りはない。 (4) 原告の主張について 原告は、甲2発明のウィンドウ41に表示される動画のアスペクト比は数種類に変更され得るところ、当業者はそのような変更がされれば、テキストデータの少なくとも一部が動画表示領域の外側に表示されることを認識し得たとして、本件審決が認定した甲2発明は相違点2-2に係る本件発明1の構成(構成1E及び1F)を備えているといえると主張する。 しかしながら、仮に、動画表示領域に表示される動画のアスペクト比が複数種に変更され得るとしても、甲2には、動画のアスペクト比が変更された場合の動画表示領域とテキストデータ表示領域との位置関係及びテキストデータの表示位置がどのように変化するかについての記載又は示唆が全くみられない(そもそも、前記(3)において説示したとおり、甲2発明においては、当該アスペクト比が一定であるとしても、動画表示領域とテキストデータ表示領域との位置関係及びテキストデータの具体的な表示位置は、全く明らかでない。)。原告は、アスペクト比の変更により求められる動画表示領域は必ずテキストデータ表示領域に内包されることになると主張するが(前記第3の3(2)に記載された図面参照)、そのように断定し得る技術的根拠を認めるに足りる証拠はない。そうすると、当業者において、ウィンドウ41に表示される動画のアスペクト比が数種類に変更されれば、テキストデータの少なくとも一部が動画表示領域の外側に表示されることを認識し得たとはいえないから、原告の上記主張を採用することはできない。 (5) 小括 以上のとおりであるから、取消事由3は理由がない。そうすると、取消事由2について判断するまでもなく、無効理由1-2は理由がない。 4 取消事由4(甲3発明及び甲3プログラム発明の認定の誤り・無効理由1-3関係)について (1) 甲3の記載 甲3には、次の記載がある。 【0005】【課題を解決するための手段】…本発明のライブ配信サーバは、マルチメディアコンテンツのライブ映像を配信するライブ配信サーバと、該ライブ配信サーバを介してライブ映像を配信するクライアントの端末と、ライブ映像を閲覧するクライアントの端末とが通信ネットワークで接続されたライブ配信システムにおける前記ライブ配信サーバであって、前記ライブ配信を行うクライアントの端末から、ライブ配信する画面内の1または2以上のレイアウトの指定情報と各レイアウトごとの属性情報を受信しデータベースに保存するためのレイアウト及び属性情報格納手段と、前記ライブ配信を行うクライアントの端末から送信されるライブ映像を、前記データベースを参照して指定されたレイアウトに割り当て、各レイアウトのライブ映像を同期させてライブ配信するためのライブ映像同期配信手段と、配信されたライブ映像を閲覧中のクライアントの端末から、該クライアントが入力するコミュニケーション情報とレイアウト指定情報を受信した場合には、前記データベースを参照して指定されたレイアウトに割り当て、該コミュニケーション情報を前記ライブ映像と同期させてライブ配信するためのコミュニケーション情報同期配信手段とを具備することを特徴とする。 これにより、配信されるライブ映像を閲覧しながら、チャットなどのコミュニケーション情報を同じ画面上でリアルタイムで表示できる。 【0007】また、本発明のライブ配信サーバは、前記コミュニケーション情報がテキスト文字のチャット情報を含むマルチメディアコンテンツであることを特徴とする。これにより、クライアントは、配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができる。 【0012】また、本発明のコンピュータプログラムは、マルチメディアコンテンツのライブ映像を配信するライブ配信サーバと、該ライブ配信サーバを介してライブ映像を配信するクライアントの端末と、ライブ映像を閲覧するクライアントの端末とが通信ネットワークで接続されたライブ配信システムにおける前記ライブ配信サーバ内のコンピュータに、前記ライブ配信を行うクライアントの端末から、ライブ配信する画面内の1または2以上のレイアウトの指定情報と各レイアウトごとの属性情報を受信しデータベースに保存するためのレイアウト及び属性情報格納手順と、前記ライブ配信を行うクライアントの端末から送信されるライブ映像を、前記データベースを参照して指定されたレイアウトに割り当て、各レイアウトのライブ映像を同期させてライブ配信するためのライブ映像同期配信手順と、配信されたライブ映像を閲覧中のクライアントの端末から、該クライアントが入力するコミュニケーション情報とレイアウト指定情報を受信した場合には、前記データベースを参照して指定されたレイアウトに割り当て、該コミュニケーション情報を前記ライブ映像と同期させてライブ配信するためのコミュニケーション情報同期配信手順とを実行させるためのプログラムである。 【0017】…本発明のライブ配信サーバは、ライブ放送の際に、該ライブ放送と同期して、ユーザが同じ画面上でチャットなどのコミュニケーション情報の交換をリアルタイムで行うことを可能にすると共に、配信データを保存しオンデマンドで閲覧することを可能にするために、以下の機能を備えている。 ・複数のカメラからの映像を制御し、複数のレイアウトで同時に配信する機能・ライブ放送の映像と、チャットなどのユーザが入力するコミュニケーション情報とを同一の画面で配信する機能・ユーザからのコミュニケーション情報(チャット、動画、静止画、音声情報など)の入力があると、ライブ放送画像中にリアルタイムで反映する機能・ユーザからのコミュニケーション情報(チャット、動画、静止画、音声情報など)を入力する際に、ライブ放送のどの場所に表示するか指定する機能・ライブ放送画像と、ユーザが入力するコミュニケーション情報(チャット、動画、 静止画、音声情報など)の内容とを1つのコンテンツとして保存する機能・ユーザ(ライブ配信者)がライブ配信の予約時に、画面のレイアウトの指定、及び各レイアウトごとに閲覧する人数などを設定する機能・チャットルーム中で、チャット参加中のユーザがライブ配信を行い、閲覧者間で共有する機能【0022】[ライブ配信システムの構成例]また、図2は、本発明のライブ配信サーバを用いたライブ配信システムの構成例を示す図であり、本発明に直接関係する部分について示したものである。 【0023】図2に例示するライブ配信システムは、ライブ配信サーバ100と、クライアントであるライブ配信者10のライブ配信者端末11と、クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21とが通信ネットワーク1を介して接続されて構成される。なお、ライブ配信者10及びライブ閲覧者20は予めライブ配信サーバ100に登録されたユーザであり、ユーザID(識別コード)やユーザ認証情報(パスワードなど)が発行されているユーザである。 【0024】ライブ配信者10は、映像や音声などのマルチメディアコンテンツを作成し、ライブ配信サーバ100にライブ配信(ストリーミングによるリアルタイム配信)を予約し、ライブ予約で指定した時間にライブ配信を行うクライアントである。…【0025】ライブ閲覧者20は、ライブ配信サーバ100から配信されるライブを閲覧し、チャットに参加するクライアントであり、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21には、以下の機能(又は装置)が備えられている。 ・通信装置22は、ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続するための装置である。 ・メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われる。例えば、RealPlayer(登録商標)などがある。 ・チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能である。 ・入力装置25は、キーボード、マウス等の入力装置である。 ・表示装置26は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置である。 【0036】・チャット情報データベース(チャット情報DB)113は、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、 XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等である。 【0039】[ライブ放送中でのチャットの実施手順]次に、図2に例示するライブ配信システムにおける「ライブ放送上でのチャットの実施手順の流れ」について説明する。 【0044】(2)ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順また、図5は、図2に例示するライブ配信システムにおける「ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順の流れ」を示す図であり、以下、図5を基に、 その手順の流れについて説明する。 ライブを閲覧したいユーザ(ライブ閲覧者20)は、ライブ閲覧者端末21かライブ配信サーバ100のライブ配信ページにログインし、閲覧したいコンテンツを選択しているものとする(ステップS21〜ステップS24)。 ▲1▼ コンテンツアクセス管理処理部104は、閲覧管理DB114を参照して、 コンテンツを選択したユーザ(ライブ閲覧者20)のチェックを行い、アクセス権限があるレイアウト(領域)を確認する(ステップS25)。 【0045】▲2▼ コンテンツアクセス管理処理部104は、▲1▼で確認したレイアウト(領域)をライブ閲覧者端末21に表示し、ライブ閲覧者20に閲覧するレイアウトを選択させる(ステップS26、S27)。 【0046】▲3▼ライブ配信サーバ100では、ライブ閲覧者20が表示したいと選択したレイアウト(領域)のデータのみを、ライブ閲覧者端末21に配信する(ステップS28、S29)。この場合、同期マルチメディア言語ファイル生成処理部108は、 ライブ閲覧者20が選択指定したレイアウトを持つ同期マルチメディア言語ファイルを生成し、ライブ閲覧者端末21のメディア再生プレイヤー23に向けて送信する。 【0047】▲4▼コンテンツアクセス管理処理部104は、ライブ閲覧者20がチャット領域にアクセスし、ライブ閲覧者端末21からチャット情報格納処理部105にチャット入力情報が送られてきた場合に(ステップS30、S31)、ライブ閲覧者20がチャット情報を入力した領域(レイアウト)がチャット可能な領域であるかどうか判断し(ステップS32)、チャット情報格納処理部105に送信する。 【0048】▲5▼チャット情報格納処理部105はコンテンツアクセス管理処理部104によりチャットの許可が得られた場合、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24から入力されたチャット情報を受け取る(ステップS33)。許可が得られなかった場合は、チャット入力情報の受け取りを拒否する(ステップS34)。 【0049】▲6▼チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信する(ステップS35、S36)。 【0050】また、図9は、チャット入力画面の例を示す図であり、チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合の例を示す図である。 ▲1▼あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力する。 ▲2▼配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示される。 ▲3▼別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力する。 ▲4▼配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示される。 【0059】以上説明したコミュニケーションを中心としたライブ放送の具体的な画面の例を図10に示す。図10示す例では、チャットルーム作成者(例えば、ライブ配信者10)により、レイアウト1がライブ映像領域、レイアウト2が静止画領域、レイアウト3がチャット(テキスト)入力領域に指定された場合の例である。この場合、 ライブ配信を許可されたユーザが「ライブ配信開始ボタン200」をクリックすることで、該ユーザの端末のライブ配信装置(エンコード装置)が立ち上がり、ライブ放送が開始される。また、静止画像の配信を許可されたユーザが「静止画表示ボタン201」をクリックすることで、該ユーザの端末から静止画像ファイルがアップロードされて表示される。また、チャット入力を許可されたユーザが、該ユーザの端末にチャット文を入力し「チャット入力ボタン202」を押すことで、メッセージが表示される。 【0060】[放送したライブチャットの保存と検索]ライブ放送とコミュニケーション情報(チャットなど)の動画配信は、リアルタイムでライブ放送として配信するほかに、コミュニケーション情報(チャットなど)の入力も含むオンデマンドのビデオクリップとして保存することが可能である。 【0061】図8は、ライブ放送時のチャットの保存と閲覧の手順を示す図であり、ライブ放送時のチャットの保存と閲覧は以下のようにして行われる。 (1)ライブ配信が開始され(ステップS61〜S63)、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によりレイアウトの選択とチャット入力による発言があった場合(ステップS64)、選択されたレイアウトがチャット入力可能な領域であるかが確認される(ステップS65)。 【0062】(2)チャット入力が可能な領域である場合は、ライブデータとチャット入力情報とを同期させて、リアルタイムで配信する(ステップS66、67)。 (3)また、チャット情報格納処理部105はチャット情報DB113に、「発言のあったライブ放送のライブID」、「発言時刻(ライブの開始時刻からの差分)」、「発言者のユーザID」、「発言場所(領域)」、「発言した内容」などを保存する(ステップS68)。 【0063】(4)ライブ終了時に(ステップS69)、同期マルチメディア言語ファイル生成処理部108は、生成したファイル(ライブ配信データ)をライブデータDB111に保存する(ステップS70)。 【0064】(5)また、ライブデータDB111に保存されたライブデータは、ユーザにより後で検索できるように格納される。ライブ閲覧者端末21からライブデータDB111の閲覧(検索)要求があった場合は(ステップS71)、ライブデータDB111を検索し、該当するライブデータをオンデマンドで配信する(ステップS72、 S73、S74)。 例えば、動画とチャット情報が保存されたライブデータDB111から、「おはよう」などのテキスト文字を検索できるようにし、「おはよう」を含む部分のライブデータをオンデマンドで閲覧できるようにする。 【0068】【発明の効果】以上説明したように、本発明のライブ配信サーバ、及びライブ配信方法においては、 ライブ配信を行うクライアントの端末から、ライブ配信する画面内のレイアウトの指定情報と各レイアウトごとの属性情報を受信しデータベースに保存する。また、 ライブ配信を行うクライアントの端末から送信されるライブ映像と、ライブを閲覧するクライアントの端末から送信されるコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを同期させ、それぞれを同じ画面内の指定されたレイアウトにリアルタイムで表示させる。 これにより、配信されるライブ映像を閲覧しながら、チャットなどのコミュニケーション情報を同じ画面上でリアルタイムで表示できる。 【0069】また、本発明のライブ配信サーバにおいては、ライブ映像とコミュニケーション情報を同期させて表示するために、各レイアウトの配信データを含む同期マルチメディア言語ファイルを生成する。 これにより、同期マルチメディア言語の機能を活用して、ライブ映像とコミュニケーション情報との同期制御が容易に行えるようになる。 【0070】また、本発明のライブ配信サーバにおいては、ライブ映像と同期して表示するコミュニケーション情報がテキスト文字(チャット入力情報)を含むマルチメディアコンテンツである。 これにより、クライアントは、配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができる。 【図2】【図9】【図10】(2) 上記(1)によると、甲3発明の表示装置16及び26に配信映像及びチャット文が具体的にどのように表示されるのかについては、段落【0050】及び【0059】並びに図9及び10の記載を参酌して認定するのが相当である(その余の段落及び図面の記載によっても、配信映像及びチャット文が甲3にいう「レイアウト」(ライブ配信者が指定し、ライブ閲覧者が選択するもの)に従って表示されることはうかがわれるものの(段落【0005】、【0012】、【0017】、 【0044】、【0046】、【0047】、【0059】、【0061】、【0068】等)、当該レイアウトにおいて、配信映像が表示される領域(以下「配信映像表示領域」という。)とチャット文が表示される領域(以下「チャット文表示領域」という。)とがどのような位置関係にあるか、チャット文がチャット文表示領域中のどの位置に表示されるかなどについては、上記その余の段落及び図面に何らの記載も示唆もない。)。 そして、段落【0050】及び図9の記載によると、チャット文表示領域は、配信映像表示領域に完全に包含され、また、チャット文は、配信映像表示領域の外側にはみ出さない態様で表示されていると認められる(なお、段落【0059】及び図10の記載によると、配信映像表示領域とチャット文表示領域は全く重なり合いを持たず、したがって、チャット文の全部又は一部が配信映像表示領域と重なることもないと認められるところ、これも、本件発明1の構成1Eに相当するものではない。)。したがって、本件発明1の構成1E及び1Fに対応する甲3発明の構成を「領域1〜6はいずれも配信映像bの表示領域に重畳しており、各チャットの表示は、…いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出しておらず」と認定した本件審決に誤りはない。 なお、上記説示したところに照らすと、本件審決がした甲3プログラム発明の認定にも誤りはない。 (3) 原告の主張について 原告は、甲3発明において、配信映像表示領域の大きさは配信映像のアスペクト比に合わせて変更されるところ、そのようなアスペクト比の変更によりチャット文の少なくとも一部が配信映像表示領域の枠を越える範囲まではみ出して表示されるようになることは当業者にとって明らかであったとして、本件審決の上記認定は誤りであると主張する。 しかしながら、仮に、配信映像のアスペクト比が変更され得るものであるとしても、甲3には、配信映像のアスペクト比が変更された場合の配信映像表示領域とチャット文表示領域との位置関係及びチャット文の表示位置がどのように変化するかについての記載又は示唆は全くない(なお、図9の記載を前提とする限り、チャット文を配信映像表示領域の外側に表示することは不可能であると認められる。)。 そうすると、配信映像のアスペクト比が変更されればチャット文の少なくとも一部が配信映像表示領域の枠を越える範囲まではみ出して表示されるようになることが当業者にとって明らかであったとはいえないから、原告の上記主張を採用することはできない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、取消事由4は理由がない。そして、甲3発明及び甲3プログラム発明に係る本件審決の認定に誤りがない以上、本件発明1又は9と甲3発明又は甲3プログラム発明との間には、本件審決が認定した相違点3-1が存在するといえるから、無効理由1-3は理由がない。 5 取消事由5(相違点1-1についての判断の誤り・無効理由2-1関係)について (1) 本件審決がした甲1発明及び甲1プログラム発明の認定に誤りがないこと並びにその結果本件発明1又は9と甲1発明又は甲1プログラム発明の相違点が本件審決の認定した相違点1-1となることは、前記2において説示したとおりである。そこで、本件発明1及び9の進歩性の有無(無効理由2-1関係)については、 本件審決がした相違点1-1についての判断の当否のみが問題となる(取消事由5)。 (2) 甲4技術について ア 甲4の記載 甲4には、次の記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、動画コンテンツを配信する動画配信システムに係り、特に、動動画コンテンツとその動画の再生に伴って所定のデータコンテンツへアクセスするためのアクセス情報とを放送情報として送信するとともに、前記動画の再生に伴ってアクセス情報に基づき要求されたデータコンテンツを通信データとして送信するサービスを行うサーバおよびそのサービスを受ける情報端末装置からなる動画配信システムに関する。 【0002】【従来の技術】近年、デジタル放送技術および通信技術の発達により、従来の放送局からユーザへの一方的な情報伝達のみならず、ユーザからも情報を発信できる双方向の情報伝達が行える環境が整ってきた。 【0003】【発明が解決しようとする課題】このような背景において、ユーザの情報端末装置に対して、動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツをネットワーク経由で配信するサービスが検討されている。ここでいうデータコンテンツとは、テキストデータや静止画像データ等である。 【0004】このようなサービスでは、情報端末装置のモニタ画面(表示画面)内に動画コンテンツとデータコンテンツとを同時に表示する必要がある。例えば、動画の再生に伴って、その場面に応じたテキスト情報を自動的に画面に表示するなどの用途が考えられる。 【0005】ところで、情報端末装置には、携帯電話端末、PDA( PersonalDigital Assistant)、カーナビゲーション装置、ゲーム装置、パーソナルコンピュータ、家庭用テレビ等、種々の装置があり、それぞれにそのモニタ画面のサイズや縦横比はまちまちである。また、携帯電話端末ひとつをとっても、そのモニタ画面のサイズは様々であり、通常縦長のものが多いが、横長のものも存在する。 【0006】したがって、このような種々のモニタ画面に動画コンテンツとデータコンテンツとを同時に、かつ、ユーザによって見やすく表示させる場合には、何らかの工夫が必要となる。特に、携帯電話端末などの比較的モニタ画面が小さい情報端末装置では、動きのある動画像はなるべく大きく表示したいという要請がある一方、テキストなどのデータコンテンツも読みやすさが損なわれないことが望まれる。 【0007】本発明は、このような従来の課題に対して、個々のモニタ画面に応じて、または、ユーザの希望に応じて、動画コンテンツとデータコンテンツとをより適切な表示形態でモニタ画面上に表示させることができる動画配信システムおよび情報端末装置を提供することを目的とする。 【0008】【課題を解決するための手段】本発明による動画配信システムは、動画コンテンツと、その動画の再生に伴って所定のデータコンテンツへアクセスするためのアクセス情報およびその再生時刻情報を放送データとして送信するとともに、前記動画の再生に伴って前記アクセス情報に基づき要求されたデータコンテンツを通信ネットワークを介して通信データとして送信するサーバと、前記サーバから受信した動画コンテンツおよびデータコンテンツをモニタ画面上に表示する情報端末装置とを備え、前記サーバは、前記アクセス情報およびその再生時刻情報に加えて、前記情報端末装置の画面内の動画コンテンツおよびデータコンテンツの表示態様を決定する表示態様コマンドを送信し、前記情報端末装置は、自己のモニタ画面上に、前記動画コンテンツを再生するとともに、この再生に伴って前記アクセス情報に基づいて前記データコンテンツを前記通信ネットワークを介して逐次要求・受信し、前記表示態様コマンドに従って前記動画コンテンツおよびデータコンテンツの表示を行うことを特徴とする。 【0026】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。 【0027】図1に、本発明の一実施の形態に係る動画配信システムの概略構成を示す。この動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成される。情報端末装置200は図の例では携帯電話端末を例として説明する。 【0028】サーバ100は、大別して二つの記憶部110、120、およびこれらにそれぞれ対応する二つの通信部130、140を有する。記憶部110は、放送対象の動画コンテンツ112およびこれとともに配信する表示関連コマンド114を格納している。動画コンテンツ112および表示関連コマンド114は、通信部130を介して、放送設備150へ送信される。放送設備150は、地上波、衛星波のいずれの放送設備であってもよい。動画コンテンツ112は、多チャンネル化等を考慮すればデジタル放送であることが好ましいが、アナログ放送を排除するものではない。アナログ放送の場合には、デジタルデータが放送波に混在して送信される。 【0029】この放送された動画コンテンツおよび表示関連コマンドは、情報端末装置200の放送受信手段により受信される。表示関連コマンドには、後述するデータコンテンツ再生スケジュール情報および表示態様コマンドを含む。 【0030】一方、サーバ100内の他方の記憶部120は、HTML(HyperText Markup Language)を代表とするマークアップ言語で記述されたデータコンテンツを格納する部位である。このデータコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含みうる。ここでは、情報端末装置200のモニタ画面280の縦長/横長の別に応じて、実質的に同じ内容の縦長用と横長用の二つのデータコンテンツ122、124を用意している。両者は、単にテキストの1行当たりの文字数が異なるだけでなく、実質的な内容が変わらない範囲で文章の表現を変更したものであってもよい。単に1行当たりの文字数を変更しただけでは、読みやすさが改善されないからである。 【0032】図2に示したブロック図により、情報端末装置200の内部構成例を説明する。 【0033】図1に示した放送設備150からの放送電波は放送受信部240により選択受信される。放送受信部240で選択受信された動画情報は、動画ビューワ265へ送られる。後述するようにこの動画ビューワ265は映像伸縮機能(動画のサイズ変更機能)も有している。この放送電波からの受信信号には動画情報に加えて、前記データコンテンツ再生スケジュール情報および前記表示態様コマンドを含む。本実施の形態での放送受信部240は、この表示関連コマンドを抽出するコマンド抽出部242を有する。抽出されたコマンドはコマンド受信部250を介してコマンド解釈エンジン225に入力される。コマンド受信部250は、初期的には、ROM220内に予め格納されたデフォルトの表示態様コマンドであるデフォルトコマンド222を受けて、コマンド解釈エンジン255に渡す。 【0034】デフォルトコマンド222は、その情報端末装置200に固有のモニタ画面のサイズや縦長/横長の別に応じた相応しい重ね合わせ状態、動画エリア指定(例えばアスペクト比保存またはサイズ)の表示態様コマンド等が格納されている。また、当該モニタ画面の縦長/横長の別自体の情報をデフォルトコマンド222として保持しておいてもよい。ROM220をフラッシュROMのような書き換え可能な不揮発性メモリで構成すれば、製品出荷時のデフォルトコマンドをユーザが変更することも可能である。 【0035】コマンド解釈エンジン255は、初期的には、デフォルトコマンド222を受けて、動画コンテンツの表示エリアおよびデータコンテンツの表示エリアのサイズや表示態様(重ね合わせ状態、動画エリアの伸縮、コンテンツ間の表示の切替や一方のコンテンツの一時消去等)を定め、その結果をWWWブラウザ260および動画ビューワ265に指示する。例えば、コマンド解釈エンジン255は、 動画エリア情報が「アスペクト比保存」を示しているとき、動画のアスペクト比を保存しつつ当該モニタ画面の画面幅に合わせて動画エリアのサイズを決定する。本実施の形態ではモニタ画面の原点位置は画面の左上端の位置であり、動画エリアの位置はモニタ画面の原点位置に動画エリアの左上端を合わせるように設定される。 動画エリア情報が特定の動画エリアサイズを指定している場合には、そのサイズ情報(幅wおよび高さh)を動画ビューワ265に与える。すなわち、動画ビューワ265は、指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する機能を有する。動画エリア情報がアスペクト比保存を指定している場合には、原則的に、その動画エリアサイズは当該モニタ画面に収納される最大サイズに設定される。 【0036】コマンド解釈エンジン255は、また、後に詳述するような、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与える。これに加えて、デフォルトの表示態様を、放送により受信されたコマンドに基づいて更新する。これにより、コンテンツ作製者側では、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様を指定することができる。また、コマンド解釈エンジン255は操作パネル210のキー群212(テンキーや矢印キー、スイッチ等)からのユーザ指示または姿勢センサ232の出力を受けて、表示態様を更新することもできる。 姿勢センサ232は本発明に必須のものではないが、これを設ければ携帯端末の90°回転の有無を自動的に検知し、モニタ画面の表示を切り替えることができる。 これは特に、通常縦長のモニタ画面の場合に、動画エリアを拡大できる点で有意義である。姿勢センサ232としては任意の公知のものを利用できる。例えば、重力に従う光遮蔽部材と光インタラプタ(いずれも図示せず)の組み合わせを利用することができる。この姿勢センサ232は少なくとも動画の表示時に連続的にまたは周期的(例えば数100m秒毎)に作動させれば足りる。 【0037】WWWブラウザ260は、通信部245を介してネットワーク170に接続され、所定のプロトコル(例えばhttp: hyper text transfer protocol)に従って、指定されたURLに存在するデータである例えばHTML(Hyper TextMarkup Language)文書を要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立てる機能を有する。また、本実施の形態では、前述したように、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジン255から受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ272内位置に表示データを展開する機能を有する。 【0038】表示メモリ272は、本実施の形態では、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別としている。これにより、両コンテンツの重ね合わせや一方の一時表示停止などの制御が容易となる。(但し、本発明は両コンテンツを同一のメモリプレーンに書き込む場合を排除するものではない。)表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる。 一方の表示プレーンの非表示などの制御はコマンド解釈エンジン255から表示制御部270を直接制御することで行うことができる。 【0040】ここで、図3により、動画エリアとデータエリアの重ね合わせの態様について説明する。本実施の形態では、図3(a)は縦長画面の場合の「タイル」表示状態を示している。タイル表示は、両エリアを重ね合わせるのではなく、互いに重複しないように隣接配置するものである。すなわち、図の例では動画エリアは動画のアスペクト比を保存した状態でモニタ画面に収まる最大サイズとし、データエリアはその残りの矩形エリアとしている。具体的には、データエリアの左上座標は動画エリアの左下座標に一致し、データエリアの右下座標はモニタ画面の右下座標に一致する。 【0041】データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である。本実施の形態においてデータエリアが動画エリアに隣接する方向(動画エリアの右側か下側か)は、モニタ画面が縦長の場合には動画エリアの下側、モニタ画面が横長の場合には動画エリアの右側である。但し、サーバ側から隣接する方向をタイルコマンドとともに指示し、それに応じるかどうかは端末側で決定するようにしてもよい。 【0042】図3(c)に示すように、動画エリアが具体的なサイズで指定された場合にも、データエリアはその残りの空き領域内の最大矩形エリアとなる。動画エリアがサイズ指定される場合のサイズは通常、比較的小さいサイズで指定されることが想定される。但し、指定サイズがモニタ画面に収納されない場合にはモニタ画面に収納されるように自動的に動画エリアサイズを縮小するようにすることが好ましい。 【0043】図3(b)は両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態を示している。この例では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねている。この場合、データコンテンツと動画コンテンツが同時に見えるように、 アルファブレンディングのような表示処理操作を施すことが好ましい。 【0044】図3(d)は動画エリアが具体的なサイズで指定された場合のオーバレイ状態を示している。この場合も、モニタ画面全体をデータエリアとすることに代わりはない。 【0045】ところで、通常、動画はテレビ画面に相当した4:3や16:9のような横長であり、これを横長画面に最大収容した場合には、図3(f)に示すように、モニタ画面内の動画エリアの残りの空き領域はごく狭いエリアとなる。(図では動画エリアの右側に空き領域は発生する場合を示したが、モニタ画面および動画エリアのそれぞれの縦横比によって、空き領域が動画エリアの下側に生じる場合もありうる。)したがって、このような場合は、指示された重ね合わせ態様に関わらず、強制的にオーバレイ表示状態とするようにしてもよい。これに対して、横長画面の場合でも、図3(e)に示すように、比較的小サイズの動画エリアが指定された場合であって、その残りのエリア内に所定の横幅以上の矩形エリアが利用できる場合には、当該矩形エリアをデータエリアとすることができる。 【0050】図5は、縦長状態で動画コンテンツとして映画を表示しているときに、 登場人物のプロフィールをデータコンテンツとして表示している場面を示している。 図5(a)はタイル表示状態を示している。このとき、データコンテンツは縦長用をサーバに要求している。この状態から、ユーザのキー(またはスイッチ)の操作による指示またはセンサ出力の変化に応じてモニタ画面が90°回転したとき、モニタ画面全体は横長になる。この例では、アスペクト比保存状態を示しており、動画エリアはモニタ画面に合わせて回転および拡大されている。当然ながら、動画エリアの回転および拡大に合わせてその中に表示される動画も同様に回転・拡大される。図5(b)の例では、動画エリアの残りの空き領域の横幅が小さいためにタイル表示ではデータエリアの横幅が十分ではなく、強制的にタイル表示状態からオーバレイ表示状態に切り替えた状況を示している。図5(c)のオーバレイ表示状態ではデータエリアの横幅はモニタ画面の長辺一杯を利用できるので、横長用のデータコンテンツを選択している。図5(a)での重ね合わせ状態がオーバレイ表示の場合にも、そのモニタ画面回転時は図5(b)のようになる。 【0068】【発明の効果】本発明によれば、情報端末装置の個々のモニタ画面に応じて、または、ユーザの希望に応じて、動画コンテンツとデータコンテンツとをより適切な表示形態でモニタ画面上に表示させることができる。 【図1】【図2】【図3】【図5】 イ 甲4技術の内容 上記アによると、甲4には、本件審決が認定したとおりの技術(甲4技術。前記第2の3(4)ア(イ)b(a))が記載されていると認められる(原告も、この認定を争うものではない。)。 ウ 甲4技術が本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構成を有するといえるか。 甲4技術は、動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツ(テキストを含む。)をネットワーク経由で配信するものであり、 動画及びデータコンテンツは、情報端末装置のモニタ(ディスプレイ)に表示される。そして、甲4技術においては、動画及びデータコンテンツのモニタにおける表示態様につき、動画を表示する動画エリア及びデータコンテンツを表示するデータエリアが設けられた上、動画エリアとデータエリアが重なり合うオーバレイ表示の状態となることもあり、その場合、データエリアの一部が動画エリアに重なり、その余の一部が動画エリアの外側になるとされている。また、甲4の図5には、動画が横長の状態で表示される場合には、データコンテンツの一部が動画エリアの内側に表示され、その余の一部が動画エリアの外側に表示される様子が図示されている。 そして、甲4技術の上記内容及び本件発明1の構成に照らすと、甲4技術にいう「動画エリア」が本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第1の表示欄」(動画を表示する領域)に相当するものであることは明らかである。 しかしながら、甲4技術によると、表示されるデータコンテンツは、インターネットのホームページに対応するものであり、その例として、動画が映画である場合の登場人物のプロフィールが挙げられている。このように、甲4技術におけるデータコンテンツは、動画の配信時に既に存在するものである。これに対し、本件明細書の記載(段落【0006】、【0012】、【0034】等)によると、本件発明1のコメントは、動画に対し任意の時間にユーザが付与するものであると認められる。 また、甲4の記載(段落【0045】、図3等)によると、甲4技術においては、 動画を横長の状態で、かつ、モニタ画面内に最大限に大きく表示する場合、モニタ画面の余白部分が非常に狭くなるところ、動画エリアとデータエリアをタイル表示の状態にすると、データエリアが非常に狭くなり、ここに表示されるデータコンテンツが読みづらいものとなるため、この問題を解消する目的で、動画エリアとデータエリアとのオーバレイ表示の状態を作出するものであると認められる。これに対し、本件発明1は、コメントを表示する領域である第2の表示欄の一部を、動画を表示する領域である第1の表示欄と重なり合わせた上、コメントの少なくとも一部を第1の表示欄の外側であって第2の表示欄の内側である領域に表示することとし、 これにより、動画とのオーバレイ表示がされたコメントが動画に含まれるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握できるようにすることを目的とするものである(本件明細書の段落【0012】等)。 以上のとおり、甲4技術の「データエリア」は、本件発明1にいう「コメント」を表示する領域ではないから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第2の表示欄」(コメントを表示する領域)に相当するということはできない。また、 甲4技術において動画エリアとデータエリアとのオーバレイ表示の状態を発生させるのは、本件発明1のようにコメントが動画に含まれるものでないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握できるようにすることを目的とするものではなく、この点からも、甲4技術の上記内容が本件発明1の構成1E及び1Fに相当するということはできない。したがって、甲4技術は、本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構成を有するものではない。 エ 原告の主張について(ア) 原告は、本件原出願日当時にはWEB2.0が技術常識であったから、甲4に触れた当業者は甲4技術の「データコンテンツ」(テキスト)が「ユーザによって付与されたコメント」を含むものとして解釈したし、「テキスト」と「コメント」は相互に排他的な概念ではないから、甲4技術にいう「データコンテンツ」は本件発明1にいう「コメント」と同義であると主張する。 しかしながら、前記説示したとおり、甲4技術にいう「データコンテンツ」は、 動画の配信時に既に存在するものであり、動画に対し任意の時間にユーザが付与する本件発明1の「コメント」とは、その概念を異にする(したがって、甲4技術にいう「データコンテンツ」と本件発明1にいう「コメント」は、重なり合いを持たない相互に排他的な概念である。)。また、甲4には、甲4技術にいう「データコンテンツ」が本件発明1にいう「コメント」を含むとの開示も示唆もない。そうすると、仮に、本件原出願日当時、原告が主張するような内容のWEB2.0という社会現象が生じていたとしても、そのことから直ちに、甲4に接した本件原出願日当時の当業者において、甲4技術にいう「データコンテンツ」が本件発明1にいう「コメント」を含むものと解釈したとはいえず、したがって、甲4技術にいう「データコンテンツ」と本件発明1にいう「コメント」につき、これらが同義であると認めることはできない(なお、上記説示したところに照らすと、これらが相互に置換可能であると認めることもできない。)。よって、原告の上記主張は採用できない。 (イ) 原告は、仮に甲4技術のオーバレイ表示の状態がモニタ画面のサイズに依存して形成されるものであるとしても、そのことは甲4技術のオーバレイの技術を本件発明1のオーバレイの技術と同視することを妨げるものではないと主張する。 しかしながら、前記説示したとおり、甲4技術のオーバレイ表示の技術は、動画エリアとデータエリアがタイル表示の状態で表示されることから来るデータエリアの狭小化に伴うデータコンテンツの読みづらさを解消する目的で採用されたものであるのに対し、本件発明1のオーバレイの技術は、動画とのオーバレイ表示がされたコメントが動画に含まれるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握できるようにすることを目的とするものであり、 両者は、その技術課題を異にするものであるし、そもそも、前記説示したとおり、 甲4技術においてオーバレイ表示がされる「データコンテンツ」は、本件発明1においてオーバレイ表示がされる「コメント」とは異なるものであり、両者の技術的意義は異なるのであるから、これら2つのオーバレイ表示に係る技術を同視することはできない。よって、原告の上記主張を採用することはできない。 (3) 甲5技術について ア 甲5の記載 甲5には、次の記載がある。 「技術分野 本発明は、符号化装置および方法、復号装置および方法、プログラム、記録媒体、 ならびに、データ構造に関し、主映像のアスペクト比とは独立したアスペクト比で、 副映像を表示することができるようにした符号化装置および方法、復号装置および方法、プログラム、記録媒体、ならびに、データ構造に関する。 背景技術 コンテンツの映像(以下、適宜、主映像と称する)に、字幕などの主映像を補足等する理由で表示される映像(以下、適宜、副映像と称する)を重ね合わせて表示されることがある。 通常、副映像のアスペクト比は、主映像のアスペクト比に関連づけられており、 主映像のアスペクト比が、a:bであれば、副映像もa:bのアスペクト比で、また主映像のアスペクト比が、c:dであれば、副映像もc:dのアスペクト比で、 主映像に重ね合わされるようになされている。 具体的な例としては、表示装置のアスペクト比が16:9である場合であって、 主映像のアスペクト比が4:3であるとき、第1図に示すように、主映像の画枠サイズを変更して左右に黒色を表示させるデータが付されて表示されるが、そのとき字幕は、必ず4:3のアスペクト比で表示される(特許文献1「特開平10-308924号公報」参照)。 しかしながら、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯性を重視した小型の電子機器には、通常画面が小さい表示装置が設けられているので、その表示画面のアスペクト比が16:9である場合であって、主映像のアスペクト比が4:3であるとき、字幕が、サイドパネル部分があるにもかかわらず、第1図に示したように4:3のアスペクト比で表示されると、見えづらくなってしまう場合があった。 発明の開示 本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、主映像のアスペクト比とは独立したアスペクト比で、副映像を表示することができるようにするものである。」(明細書1頁5行目〜2頁11行目) 「第8図のフローチャートは、ビデオデコーダ66の一例の処理を概略的に示す。 先ず、第8図のフローチャートを用いてビデオデコーダ66における一例の表示処理を概略的に説明する。ステップS10で、多重化分離部71で分離された主映像の符号化データが主映像復号部72で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた主映像のアスペクト比等のデータが抽出され、主映像画枠サイズ変換部74で主映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換される。ステップS11で、多重化分離部71で分離された副映像の符号化データが副映像復号部73で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた副映像のアスペクト比等のデータが抽出され、副映像画枠サイズ変換部75で副映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換される。そして、次のステップS12で、加算器76により、表示装置のアスペクト比に合わせて決められた主映像に副映像が重ね合わされ、この主映像に副映像が重ね合わされた映像が表示される。」(明細書15頁3〜17行目) 「主映像画枠サイズ変換部74は、ビデオ出力端子68に接続されている表示装置のアスペクト比と、主映像復号部72から供給された主映像のアスペクト比に基づいて、出力する主映像の画枠サイズを変換し、加算器76に供給する。 例えば、表示装置のアスペクト比が16:9である場合において、主映像のアスペクト比が4:3であるときには、主映像画枠サイズ変換部74は、主映像を、横方向 (水平方向) に縮小するとともに、左右に黒色を表示させるデータを付加して出力する。」(明細書16頁12〜19行目) 「次に、第9図のフローチャートを参照して、ビデオデコーダ66の副映像画枠サイズ変換部75の動作を説明する。 ステップS21において、副映像画枠サイズ変換部75は、副映像復号部73から、いま副映像画枠サイズ変換部75に供給されている副映像のアスペクト比を示すフラグを取得する。 ステップS22において、副映像画枠サイズ変換部75は、表示装置のアスペクト比が4:3(例えば、360×270)であるか16:9(例えば、480×270)であるかを判定し、4:3であると判定した場合、ステップS23に進み、 副映像を表示可能な720×480の画枠サイズを、4:3のアスペクト比に合うように変換し(ピクセルアスペクト比=10:11)、その結果得られた字幕データを、加算器76に出力する。」(明細書17頁10〜21行目) 「ステップS22で、表示装置のアスペクト比が16:9であると判定された場合、ステップS24に進み、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9および4:3のいずれでもよいことを示すフラグであるか、また16:9または4:3のいずれか1つのアスペクト比を示すフラグであるかを判定し、いずれか1つのアスペクト比を示すフラグであると判定した場合、ステップS25に進む。 ステップS25において、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9であることを示すフラグかまたは4:3であることを示すフラグかを判定し、16:9であることを示すフラグであると判定した場合、ステップS26に進む。 ステップS26において、副映像画枠サイズ変換部75は、字幕の映像の720×480の画枠サイズを、16:9のアスペクト比に合うように変換し(ピクセルアスペクト比=40:33)、その結果得られた字幕データを、加算器76に出力する。 すなわち副映像は、主映像のアスペクト比に関係なく、16:9のアスペクト比で表示される。 主映像のアスペクト比が4:3である場合には、第19図に示すように、横方向に縮小されて左右に黒色を表示させるデータが付加された主映像に、16:9のアスペクト比の字幕の映像が重ね合わされて表示される。すなわち、このように表示装置の表示画面をフルに用いて、字幕を表示することができるので、表示装置が小型の装置であって表示画面が小さいときでも、字幕を大きく表示することができる。」(明細書18頁26行目〜19頁23行目) イ 甲5技術の内容 上記アによると、甲5には、本件審決が認定したとおりの技術(甲5技術。前記第2の3(4)ア(イ)c(a))が記載されていると認められる(原告も、この認定を争うものではない。)。 ウ 甲5技術が本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構成を有するといえるか。 甲5技術は、コンテンツの映像(主映像)及び主映像を補足するなどの理由で表示される字幕等の映像(副映像)を表示することができるようにした復号装置に係る技術である。甲5技術においては、主映像及び副映像は、表示装置の画面(甲5の第19図参照)上に設けられた各画枠の内部に表示されるところ、主映像の画枠のサイズは、表示装置のアスペクト比及び主映像のアスペクト比に基づいて変換され、副映像の画枠のサイズも、表示装置のアスペクト比及び副映像のアスペクト比に基づいて変換される。このようにしてサイズが変換された主映像及び副映像の各画枠は、表示装置の画面上に配置されるが、その際、例えば表示装置のアスペクト比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるなどの条件を満たす場合、副映像の画枠の一部は、主映像の画枠と重なり合い、副映像の一部は、主映像の画枠の内側に表示されるが、その余の部分は、主映像の画枠の外側に表示されるという事象が生じるものである。 そして、甲5技術によると、主映像の画枠は、主映像が表示される領域であると解されるから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第1の表示欄」(動画を表示する領域)に相当するものであることは明らかである。 しかしながら、甲5技術によると、副映像の画枠に表示される副映像の例として挙げられているのは字幕であり、甲4技術の「データコンテンツ」と同様、主映像の配信時に既に存在するものである(なお、甲5によると、甲5技術の副映像に当たる字幕は、映像データであることがうかがわれる。甲5には、字幕がテキストデータであるとの開示又は示唆はない。)。これに対し、本件発明1のコメントは、 前記のとおり、動画に対し任意の時間にユーザが付与するものである。 また、甲5の記載(明細書1頁5行目〜2頁11行目)によると、従来、副映像のアスペクト比は、主映像のアスペクト比に関連付けられており、例えば、表示装置のアスペクト比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるとき、 副映像(字幕)のアスペクト比は必ず4:3となるため、小型の電子機器においては字幕が見えづらくなってしまうという問題があったところ、甲5技術は、主映像のアスペクト比から独立したアスペクト比で副映像を表示することにより、副映像を見やすくすることを目的とするものであると認められる。これに対し、本件発明1は、前記のとおり、動画と重なって表示されたコメントが動画に含まれるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握できるようにすることを目的とするものである。 以上のとおり、甲5技術の「副映像の画枠」は、本件発明1の「コメント」を表示する領域ではないから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第2の表示欄」に相当するということはできない。また、甲5技術において、副映像の画枠の一部が主映像の画枠と重なり、副映像の一部が主映像の画枠の内側に表示され、 その余の部分が主映像の画枠の外側に表示されるという事象を生じさせるのは、副映像のアスペクト比が主映像のアスペクト比と関連付けられていたことから来る副映像の見づらさを解消するためであり、本件発明1のようにコメントが動画に含まれるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握できるようにすることを目的とするものではなく、この点からも、甲5技術の上記内容が本件発明1の構成1E及び1Fに相当するということはできない。 したがって、甲5技術も、本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構成を有するものではない。 エ 原告の主張について 原告は、甲5技術の「字幕」はユーザが入力するものでないものの、これを端末に表示させる局面においては本件発明1と同様に文字列データとして処理されるものであるし、本件原出願日当時にWEB2.0が技術常識であったことからしても、 甲5に接した当業者にとって、甲5技術の「字幕」を本件発明1の「コメント」に置換することは容易であったと主張する。 しかしながら、甲5技術の「字幕」と本件発明1の「コメント」の技術的意義の相違は、前記ウにおいて説示したとおりであるところ、仮に、甲5技術及び本件発明1において「字幕」及び「コメント」が文字列データとして処理される場面があるとしても(ただし、甲5に甲5技術の字幕がテキストデータであるとの開示又は示唆がないことは、前記ウにおいて説示したとおりである。)、そのことにより上記相違の本質が解消されるものではない。また、前記(2)エ(ア)において説示したところに照らすと、仮に、本件原出願日当時、原告が主張するような内容のWEB2.0という社会現象が生じていたとしても、そのことから直ちに、甲5技術にいう「字幕」(副映像)と本件発明1にいう「コメント」につき、これらが相互に置換可能であると認めることはできない。よって、原告の上記主張は失当である。 (4) 前記(2)及び(3)のとおり、甲4技術及び甲5技術は、いずれも本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構成を有するものではないから、甲1発明に甲4技術及び甲5技術を適用しても、相違点1-1に係る本件発明1の構成を得ることはできない。 (5) なお、原告は、相違点1-1に係る本件発明1の構成は甲1発明においてふきだしの大きさ並びにふきだし中のコメント(テキスト注釈)の文字長、フォントの大きさ及び表示位置を適宜変更することにより得られるものであるから、設計的事項にすぎないと主張する。 しかしながら、甲1の図18によると、甲1発明においては、ふきだしが映像表示部の枠の外側にはみ出すこととされる一方、テキスト注釈については、それが3行にわたる場合を含め、ふきだし中の上側、下側、左側及び右側にあえて十分な余白を設けて、テキスト注釈が映像表示部の枠の外側にはみ出さないようにしていると認められるから、ふきだしの大きさ並びにふきだし中のテキスト注釈の文字長及びフォントの大きさをどのようにするかが設計的事項であるとしても、ふきだしと映像表示部との位置関係及びテキスト注釈の表示位置につき、これを相違点1-1に係る本件発明1の構成(構成1E及び1F)とすることについてまで設計的事項であるということはできない。よって、原告の上記主張を採用することはできない。 (6) 小括 以上のとおりであるから、相違点1-1についての本件審決の判断に誤りはない。 そして、前記2(4)のとおり、本件発明9と甲1プログラム発明との間にも、相違点1-1と同様の相違点が存在するといえるところ、上記説示したところに照らすと、この相違点についての本件審決の判断にも誤りはない。取消事由5は理由がない。よって、無効理由2-1は理由がない。 6 取消事由6(相違点2-2についての判断の誤り・無効理由2-2関係)について (1) 本件発明1と甲2発明の相違点である相違点2-2は、本件発明1と甲1発明の相違点である相違点1-1と同じものであるところ、相違点1-1についての本件審決の判断に誤りがないことは前記5において説示したとおりであるから、 同様に、相違点2-2についての本件審決の判断にも誤りはない(なお、前記5(2)及び(3)において説示した甲4技術及び甲5技術の内容に照らすと、引用発明が甲2発明であることにより、結論が左右されるものではない。)。 (2) この点に関し、原告は、甲11によってもストリーミング配信及びダウンロード配信は本件原出願日当時に公知であったとはいえないとした本件審決の判断は誤りであると主張する。しかしながら、そもそも甲4技術及び甲5技術が相違点1-1に係る本件発明1の構成(相違点2-2に係る本件発明1の構成)に相当する構成を有していないことは、前記5(2)及び(3)において説示したとおりであるから、ストリーミング配信又はダウンロード配信が本件原出願日当時に公知であったとの事実は、甲2発明に甲4技術及び甲5技術を適用しても相違点2-2に係る本件発明1の構成は得られないとの結論を左右するものではない。よって、原告の主張は失当である。 (3) 小括 以上のとおり、相違点2-2についての本件審決の判断に誤りはない。そして、 前記3(3)のとおり、本件発明9と甲2プログラム発明との間にも、相違点2-2と同様の相違点が認められるところ、上記説示したところに照らすと、この相違点についての本件審決の判断にも誤りはない。取消事由6は理由がない。よって、無効理由2-2は理由がない。 7 取消事由7(相違点3-1についての判断の誤り・無効理由2-3関係)について 本件発明1と甲3発明の相違点である相違点3-1は、本件発明1と甲1発明の相違点である相違点1-1と同じものであるところ、相違点1-1についての本件審決の判断に誤りがないことは前記5において説示したとおりであるから、同様に、 相違点3-1についての本件審決の判断にも誤りはない(なお、前記5(2)及び(3)において説示した甲4技術及び甲5技術の内容に照らすと、引用発明が甲3発明であることにより、結論が左右されるものではない。)。 そして、前記4(4)のとおり、本件発明9と甲3プログラム発明との間にも、相違点3-1と同様の相違点が存在するといえるところ、上記説示したところに照らすと、この相違点についての本件審決の判断にも誤りはない。取消事由7は理由がない。よって、無効理由2-3は理由がない。 8 本件発明2及び10(無効理由2-4及び2-7関係)について 本件発明2は、本件発明1を引用する発明であり、本件発明10は、本件発明9を引用する発明である。そして、前記5ないし7において説示したところによると、 本件発明1は、引用発明を甲1発明、甲2発明又は甲3発明のいずれとした場合においても進歩性を欠くとはいえず、本件発明9も、引用発明を甲1プログラム発明、 甲2プログラム発明又は甲3プログラム発明のいずれとした場合においても進歩性を欠くとはいえないから、本件発明2及び10も、進歩性を欠くとはいえない。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 よって、無効理由2-4及び2-7はいずれも理由がない。 9 本件発明5及び6(無効理由2-5及び2-6関係)について 本件発明5及び6は、本件発明1を直接又は間接に引用する発明である。そして、 前記5ないし7において説示したところによると、本件発明1は、引用発明を甲1発明、甲2発明又は甲3発明のいずれとした場合においても進歩性を欠くとはいえないから、本件発明5及び6も、進歩性を欠くとはいえない。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 よって、無効理由2-5及び2-6はいずれも理由がない。 10 結論 以上の次第であるから、原告の請求は理由がない。 |
裁判長裁判官 | 本多知成 |
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裁判官 | 浅井憲 |
裁判官 | 中島朋宏 |