関連審決 | 無効2000-35387 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成14行ケ317審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 承継 / 同一技術分野(同一の技術分野) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の認定 / 周知技術 / 公知技術 / 先行技術 / 着想 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 請求の範囲 / 訂正明細書 / |
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事件 |
平成
14年
(行ケ)
318号
審決取消請求事件
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原告兼脱退原告株式会社呉商承継人 株式会社 サミット 訴訟代理人弁護士 辻公雄 同 阪口徳雄 同 谷口達吉 同 三井雅友 同 向井理佳 同 金藤力 訴訟代理人弁理士 中野収二脱退原告 株式会社 呉商 被告 ユーエフ産業株式会社 被告 アサヒ電機株式会社 被告 大一電機産業株式会社 被告 株式会社日恵製作所 被告ら訴訟代理人弁護士 本渡諒一 同 仲元紹 同 成末奈穂 同 西川真美子 同 鎌田邦彦 被告ら訴訟復代理人弁護士 井野辺陽 被告ら訴訟代理人弁理士 古川泰通 同 中嶋隆宣 同 清水久義 同 高田健市 同 谷川昌夫 同 足立勉 同 田中敏博 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/03/25 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が無効2000-35387号事件について平成14年5月24日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告らの負担とする。 2 被告ら 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「パチンコ台の表示装置」とする特許第2686497号の特許(昭和62年7月16日出願(以下「本件出願」という。)。平成9年8月22日登録。以下「本件特許」という。発明の数は1であり,請求項の数は3である。)の特許権者である。 被告らは,平成12年7月18日,本件特許を無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,この請求を無効2000-35387号事件として審理した。原告は,この手続の過程で,平成12年8月11日及び平成13年2月9日に本件特許の特許請求の範囲の訂正を含む訂正請求(以下,これらを併せて「本件訂正」という。)をした。 特許庁は,平成14年5月24日に,「訂正を認める。特許第2686497号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,同年6月5日にその謄本を原告に送達した。 2 特許請求の範囲(請求項1) (1) 本件訂正前 「パチンコ台毎に取付けられその台の作動状況等を表示するパチンコ台の表示装置において, 文字,図形を表示する表示板と,ランプと,呼出しスイッチと,制御装置とを一つの筺体に装着する一方,前記制御装置は複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備え,前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置」 (2) 本件訂正後(下線部が訂正個所である。) 「パチンコ台と別体の一つの筺体を備え,パチンコ台毎に取付けられその台の作動状況等を表示するパチンコ台の表示装置において, 文字,図形を表示する表示板と,ランプと,呼出しスイッチと,制御装置とをパチンコ台と別体の一つの筺体に装着する一方,前記制御装置は複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備え,前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置。」(以下,審決と同じく「本件発明」という。) 3 審決の理由の要点 別紙審決書の写し記載のとおりである。要するに,本件発明は,実願昭49-60659号(実開昭50-149186号)のマイクロフィルム(審判甲第6号証・本訴甲第4号証。以下,審決と同じく,「刊行物1」という。),特開昭54-29230号公報(審判甲第3号証・本訴甲第5号証。以下,審決と同じく,「刊行物2」という。),「あすのホール経営’86 プレイグラフ臨時増刊号」(昭和61年9月25日発行 第22巻第10号。審判甲第1号証の1・本訴甲第6号証。以下,審決と同じく,「刊行物3」という。),「娯楽産業」(昭和61年2月5日発行 第23巻第2号。審判甲第1号証の2・本訴甲第7号証。以下,審決と同じく,「刊行物4」という。)に記載された各発明(以下,刊行物の番号に従い,「刊行物1発明」などという。)及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,というものである。 審決が上記結論を導くに当たり認定した本件発明と刊行物1発明との一致点・相違点は,次のとおりである。 (一致点) 「パチンコ台と別体の一つの筺体を備え,パチンコ台毎に取付けられその台の作動状況等を表示するパチンコ台の表示装置において,文字・図形を表示する表示板と,ランプと,呼出しスイッチとをパチンコ台と別体の一つの筺体に装着する一方,CPUは呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させることを特徴とするパチンコ台の表示装置」 (相違点) (1)「本件発明の制御装置が,パチンコ台と別体の一つの筺体に装着されるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明(判決注・刊行物1発明)は,各パチンコ台に共通な制御装置であるCPUがカウンターにある点」(以下,審決と同様に「相違点1」という。) (2)「本件発明の制御装置は,複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUを備え,CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモりから読出して表示板およびランプに表示させるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明(判決注・刊行物1発明)のCPUは,呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させる点」(以下,審決と同様に「相違点2」という。) |
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原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本件発明と刊行物1発明との相違点を看過したのみならず,自らが認定した本件発明と刊行物1発明との相違点についての判断においても誤りを犯したものであって,上記各誤りが,それぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。 1 相違点の看過 (1) 一致点の認定の誤りによる相違点の看過 審決は,刊行物1に,「各パチンコ機台P毎の上方に取付けられ,呼び出し用表示部3,打止め指令に基づいて文字表示する文字表示部4と,呼び出し用表示ランプ11,文字表示用ランプ12と,呼び出し用スイッチ2とを備えた各パチンコ台Pと別体の表示ランプ本体1であって,前記呼び出しスイッチ2を押すことにより,呼び出し用表示ランプ11を点灯し呼び出し用表示部3に表示すると共に,カウンターのコンピュータ6を作動して上記文字表示部4にパチンコ機の打ち止めの文字を表示するパチンコ機用表示ランプ」(審決書11頁12行〜18行)が記載されている,と認定し,この認定に基づき,「CPUは呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させる」点を本件発明と刊行物1発明との一致点の一部として認定した。 しかし,刊行物1は,上記一致点に係る構成を開示していない。審決の上記認定は誤りである。 ア 刊行物1の呼出しスイッチ2は,CPUに対して作動状況を示す信号を入力していない。呼出しスイッチは,表示用ランプ11を点灯させるものであるにすぎない。 刊行物1中の配線図(第3図。別紙図面1参照)に記載されたパチンコ機no.1〜no.4についてみると,no.1は動作していない状態,no.2は「呼出しスイッチ2」を押した状態(接点18’が閉じ,電源16からの電流によりランプ11を点灯する。),no.3は「コンピュータ6」からの打止信号により補給打止切換用リレー13を作動することにより情報表示ランプ12,12を点灯して文字表示部4に文字を写し出す状態であり,no.4は「スイッチ2」と「コンピュータ6」の両方が作動した複合状態である。いずれの状態においても,呼出しスイッチ2はCPU6に対して作動状況を示す信号を入力していない。 イ 刊行物1中には,「遊技場によっては打止めの操作をしないところもあるので,このような場合には,パチンコ機に故障などあって遊技者がスイッチ2を押して呼び出し用表示ランプ11が点灯し呼び出し用表示部3,3に表示されると同時に,カウンターに伝達されコンピュータ6を作動して文字表示用ランプ12,12’を点灯して文字表示部4に,この場合には,しばらくお待ち下さいという意味の表示をして遊技者がその間いらいらした感情を起こさせないようにするものである」(甲第4号証2頁4欄6行〜15行。以下,審決が付した符号に従い,「記載D」という。)との記載がある。 しかし,上記記載からは,「カウンター」に向けて何かが伝達されることを把握することができるにすぎない。このような記載だけでは,呼出しスイッチ2からコンピュータ6に信号が入力されている,と認めることはできない。 刊行物1の技術は,パチンコ機no.2において,スイッチ2を押すことにより呼び出し用表示ランプ11,11を点灯状態に置いた場合を示していることから分かるとおり,スイッチ2を押しただけでは,コンピュータ6(CPU)は作動せず,これが情報表示ランプ12,12を点灯状態に置くことはない(文字表示部4による表示を行わない)ものである。記載Dは,遊技者がスイッチ2を押すと,常に必ず島上の代表ランプ5が点灯状態に置かれるので,これが店員に伝達され,店員によりコンピュータ6が操作される,という意味である。 ウ 刊行物1中には,「パチンコ機no.4のように,そのパチンコ機に球が出なくなって遊技者は呼び出しスイッチ2を押しそのために呼び出し用表示ランプ11が点灯して呼び出し用表示部3,3にこれを表示されると同時に,コンピュータ6からの打止め指令が発せられて,no.3と同様に情報表示部4にその字句が写し出されるものである」(甲第4号証3欄43行〜4欄5行。以下,審決が付した符号に従い,「記載C」という。)との記載がある。 この記載は,以下@,Aのいずれかの意味であると解釈すべきである。 @ パチンコ機no.4は,コンピュータ6により球が出ない「打止め」の状態とされており,コンピュータ6の打止め指令によりリレーコイル17が励磁され,文字表示ランプ12,12が点灯状態に置かれることにより文字表示部4に文字が写し出された状態とされている。このため,球が出ない(打止め)ことを不満に思う遊技者がスイッチ2を押すと「スイッチ2⇒呼び出し用表示ランプ11,11の点灯」という状態ができあがる。 A 球が出ないこと(故障)を不満に思う遊技者がスイッチ2を押すと島上の代表ランプ5が点灯状態に置かれるので,店員が確認して,カウンターに設置されたコンピュータ6を操作することにより,文字表示ランプ12,12を点灯させ,文字表示部4に文字を写し出すことができる。 エ 以上のとおり,刊行物1の技術は,「スイッチ2⇒呼び出し用表示ランプ11,11の点灯」と,「コンピュータ6(打止め時の打止指令又は店員による操作)⇒文字表示用ランプ12,12の点灯」という2系統を並設したにすぎない構成のものである。 刊行物1に記載された技術は,スイッチ2を押すことにより何らかの信号をコンピュータ6(CPU)に入力する,というものではない。審決の上記一致点の認定は誤りであり,審決は,相違点とすべきところを一致点と認定することにより,相違点を看過している。 オ 被告らは,刊行物1の第3図は,呼出し用スイッチとコンピュータとの配線関係を省略したものであると主張する。しかし,前記のとおり,記載C及びDは,スイッチを押すと何らかの信号がコンピュータ(CPU)に入力される,ということを意味するものではない,とすることによって,何らの矛盾なく極めて自然に理解することができる。図面に存在しない配線が実のところは存在する,との被告らの主張は,不自然な解釈であって,失当である。 被告らは,記載C及びDの解釈について,店員が代表ランプの点灯を見てコンピュータを操作するのであれば「同時に」とはいえない,と主張する。しかし,刊行物1発明において,呼出し用スイッチを押す動作と,コンピュータからの打止め指令の発信や文字表示部の表示を,寸分違わず同時に行う必要性は全くない。「同時に」の語は,時間的ずれを許してはならないということを意味しない。 (2) その他の相違点の看過 審決は,本件発明と刊行物1発明との次の相違点をも看過した。 ア 本件発明は,遊技者が望む表示を行うための表示装置を提供することを目的とするものであるのに対して,刊行物1発明は,遊技場の運営維持を目的とするものである点(以下「相違点A」という。)。 イ 刊行物1発明のコンピュータは,遊技場の営業上必要なすべての機能を備えたホールコンピュータであるのに対して,本件発明のメモリとCPUを備えた制御装置は,専ら遊技者が望んでいるパチンコ台ごとの作動状況等を表示板及びランプに表示させる機能のみを有する点(以下「相違点B」という。) 2 相違点についての判断の誤り (1) 刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせることの容易性についての判断の誤り 審決は,本件発明の推考容易性について,結論として,同発明は,刊行物1ないし刊行物4に記載された各発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,と判断した。しかし,相違点1,2についての審決の判断について具体的に検討するまでもなく,この判断は誤りであることが明らかである。刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせること自体,容易になし得ることではないからである。 刊行物2発明は,従来の中央制御装置を小型化することにより,これを各パチンコ台ごとに設置することを目的としたものであり,本件発明のような「遊技者が台を選択するに当たって望んでいる情報を表示する表示装置」の提供を目的としたものではない。 刊行物1発明と刊行物2発明とをいかに組み合わせたとしても,本件発明が目的とする,「パチンコ遊技場において,遊技者は台を選択するに当たって台毎の打止め回数や,開放台であるか否か,あるいは優秀台であるか否か等の情報を得たいと思っている。」(本件訂正に係る全文訂正明細書参照)という要請にこたえる表示装置の着想は生まれない。 (2) 相違点1についての判断の誤り 審決は,本件発明と刊行物1発明との相違点の一つ(「本件発明の制御装置が,パチンコ台と別体の一つの筺体に装着されるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明(判決注・刊行物1発明)は,各パチンコ台に共通な制御装置であるCPUがカウンターにある点」。相違点1)について,「甲第6号証(刊行物1)記載の発明(判決注・刊行物1発明)に甲第3号証(刊行物2)又は甲第1号証の1及び2(刊行物3,4)記載の上記点を組み合わせて制御装置もパチンコ台と別体の一つの筺体に装着し,本件発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである」(審決書14頁下から2行〜15頁2行)と判断した。しかし,この判断は誤りである。 ア 刊行物2発明は,パチンコ遊技場における中央制御装置を不要にするという目的で,中央制御装置の役割及び機能のすべてを「電子制御装置」により代替させたものであり,パチンコ台を制御したり管理するために必要なあらゆる機能を具備している。したがって,刊行物2発明の「電子制御装置」をすべてのパチンコ台に対して個別に取り付けることは,むしろ,本件発明の「システムが非常に簡単で安価になり,小規模のパチンコ遊技場にも適する」という目的に反する。 審決は,本件の実施例を参照して,「本件発明の表示装置と甲第3号証(刊行物2)の電子管理装置とは格別な差異は認められず,甲第3号証(刊行物2)記載の上記技術を甲第6号証(刊行物1)記載の発明に適用できない理由は見あたらない」(審決書14頁31行〜33行)と述べている。しかし,本件発明と刊行物2発明との間に格別な差異は認められないから,刊行物2発明の技術を刊行物1発明に適用できるとする審決の論理は,全く不可解である。公知技術の組み合わせが可能であるとの論法を立てるならば,刊行物1発明と刊行物2発明とが技術的に相反しないから,一方を他方に適用することが容易であり,それにより得られる技術に対し本件発明が格別な差異を有しないというように理論構成しなければならない。審決の上記論理は理論的に誤りである。 審決は,本件発明の実施例の記載を引用し,そこには,電子管理装置が稼動状況にあるときの表示が記載されているのみならず,パチンコ台の玉の供給を停止して使用不能にすることも記載されていることを指摘する。しかし,本件発明の実施例が「打止め」に関してパチンコ台の玉の供給を停止する点は,特許請求の範囲に記載された事項とは全く無関係のことである。 審決は,「甲第3号証(刊行物2)の第2図(判決注・別紙図面2参照)には,表示部10が電子制御装置4と一体的に,即ち電子制御装置4と表示部10とが一つの筐体に設けられていることが開示されている」(審決書14頁23行〜25行)と述べている。しかし,刊行物2の第2図は,図面の簡単な説明に「説明図である」と記載されるように装置の概略を示すブロック図であるにすぎない。このような図を根拠に,「一つの筐体」が開示されていると断定することはできない。 イ 審決は,「甲第1号証の1及び2(刊行物3,4)には,マイコンと,ランプと,押ボタンスイッチと,表示板とを一つの筐体に装着した押釦スイッチ(表示装置)が記載されており,このマイコンは上記押釦スイッチ(表示装置)を制御しているものと推認される」(審決書14頁34行〜37行)と述べている。 しかしながら,刊行物3は,「業界初のマイコン搭載押ボタンスイッチ「ステイタスカウンター」・・・」として,装置全体を「押ボタンスイッチ」と称している。 同説明からは,本件発明の「呼出しスイッチ」に相当するものが存在するのかどうか,全く不明である。刊行物4については,本件発明の「文字・図形を表示する表示板」に相当するものが存在するのかどうかが全く不明である。 審決は,刊行物3と刊行物4という別個の刊行物に記載されている各技術があたかも一つの刊行物に記載されているかのように認定した点においても,誤りである。両者は別個の刊行物であるから,本件発明に対する先行技術としては,刊行物3に記載された技術と,刊行物4に記載された技術との二つの先行技術として認定されなければならない。 上に述べたところによれば,刊行物1発明に,刊行物2又は刊行物3,4に記載された技術を組み合わせても,制御装置をパチンコ台と別体の一つの筐体に装着し,本件発明の相違点1に係る構成とすることはできない。相違点1についての審決の判断は誤りである。 (3) 相違点2についての判断の誤り 審決は,本件発明と刊行物1発明との相違点の一つ(「本件発明の制御装置は,複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUを備え,CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモりから読出して表示板およびランプに表示させるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明のCPUは,呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させる点」。相違点2)について,「甲第9号証(刊行物5)に記載されるような周知技術(判決注・「表示装置において,その制御のために「複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える」制御装置を用いること)を甲第6号証(刊行物1)記載の発明に適用し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明において,CPUのメモリに複数の表示内容を記憶させ,CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読出して表示板およびランプに表示させ,本件発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到しえる程度のことというべきである。」(審決書15頁15行〜21行)と判断した。しかし,この判断は誤りである。 上記相違点の認定中,刊行物1発明が「呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動上表に対応する表示内容を前記表示板に表示させる」ものである,との認定が誤っていることは前記1で述べたとおりである。 審決は,刊行物5に,「複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える」制御装置が記載されていると認定した。しかしながら,刊行物5に記載された技術は,マイコンと液晶板とを備えたゲーム機をパチンコの盤面に組み込むことにより,パチンコの遊技と同時にゲームをプレイできるように構成したものであり,ハンドルで弾かれたパチンコ球をゲームの操作手段とするため,球がチャッカーを通過したとき,マイコンに信号を与え,ゲームを進行させるものにすぎない。 マイコンを備えたゲーム機であれば,通常,「(ゲーム)制御のために複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置」が含まれていることは当たり前のことであり,刊行物5には,そのようなゲーム機をパチンコ台に組み込んだことが開示されているにすぎない。これに対し,本件発明は,パチンコ遊技場において,遊技者が台を選択するに当たっての情報に関する作動状況に対応する表示内容をメモリに記憶させ,CPUにこれを読み出して表示させるものである。審決がこの点を刊行物5により周知であるというのは全くの見当違いである。 審決は,周知技術の認定に関して,刊行物1には,パチンコ機用表示ランプ(遊技機の表示装置)に表示するための複数の表示内容が記載されている,と認定した。しかし,この認定は誤りである。審決は,刊行物1の「呼び出し用表示ランプ11及び呼び出し用表示部3」と「文字表示部4」について,前者が本件発明の「ランプ」に相当し,後者が「文字・図形を表示する表示板」に相当すると認定している(審決書13頁24行〜29行)。刊行物1発明が「呼び出し用表示部3」と「文字表示部4」との両者により相互に異なる複数の文字表示を行っていると解する場合は,その両者が本件発明の「文字・図形を表示する表示板」に相当することになって,刊行物1発明には本件発明の「ランプ」に相当するものが存在していないことになり,審決の一致点の認定が誤りであることになる。 審決は,相違点2を本件発明と刊行物1発明との相違点としているのであるから,再び刊行物1に戻って,相違点2に係る本件発明の構成は刊行物1に記載された周知技術であるというのは,明らかに矛盾している。 審決は,周知技術の認定に関して,刊行物2には,遊技機から入力される信号により稼働状況の表示をする点が記載されている,と認定した。しかし,この認定は誤りである。審決は,刊行物2発明の「計数記憶部」が,本件発明のメモリに相当するとしている。しかし,それは「検出器2からの検出信号を計数して記憶する」(甲第5号証2頁右下欄7行〜8行)ものであり,記憶された内容を表示出力部により表示部に表示させるものであるから,「計数記憶部」には表示方法を選択するプログラムのようなものは全く存在しないと考えるのが自然である。これに対して,本件発明のメモリは,請求項1に明確に記載されているように「複数の表示内容を記憶」するとともに「作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを読出して表示させる」ものであるから,刊行物2発明の「計数記憶部」とは異なる。 審決が「制御のために複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置」が周知であるというために,刊行物2を引用したことは,明らかな誤りである。 審決の相違点2についての判断は誤りである。 |
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被告の反論の要点
審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 1 原告の主張1(相違点の看過)について (1) 一致点の認定の誤りによる相違点の看過の主張について 刊行物1には,記載Cに,呼び出し用スイッチ2を押すという動作に基づいてコンピュータ6が文字表示部4にno.3と同様の表示内容を表示させることが記載されており,呼び出し用スイッチ2から打止めという作動状況に応じた信号がCPU(コンピュータ6)に入力されていることは明らかである。また,刊行物1には,記載Dに,パチンコ機の故障という作動状況に応じた信号がスイッチ2からCPU(コンピュータ6)に伝達されていることが明記されている。カウンターにはコンピュータ6が設置されており,コンピュータは入力された信号により作動するものであり,呼出しスイッチ2とコンピュータ6が動作において関連づけられているから,「カウンターに伝達されコンピュータ6を作動」するとの表現は,信号がカウンターに設置されたコンピュータ6に入力され,コンピュータ6を作動するという意味であることを容易に理解することができる。 刊行物1の第3図は,図面の簡単な説明に「パチンコ機に同ランプを取付けた配線図」とあることから分かるように,呼出し用表示ランプ11と文字表示用ランプ12の配線関係を主体とした概念図であり,呼出し用スイッチ2とコンピュータ6との配線関係は煩雑になるので省略したまでである。そもそも,図面は発明の内容を理解しやすくするための補助的手段にすぎず,明細書の本文の説明と離れて第3図だけから刊行物1発明をとらえることはできない。 原告の主張は,刊行物1発明の内容を第3図に直接記載された内容に限定した上で,それに合うように記載Cと記載Dを無理矢理解釈しており,正に本末転倒というほかない。記載Cについての第一の解釈では,順序が記載Cに記載されたものとは全く反対になっており,この機械は打止めになりましたという字句が写し出されているにもかかわらず,遊技者が打止めを不満に思ってスイッチ2を押すということになり,きわめて不合理である。このような解釈の立場から記載Cを理解することはできない。記載Cについての第二の解釈では,店員の介在を必要不可欠とするものとなる。このようなことは,明細書に全く記載されていないばかりか,これでは同時性は実現できないことになるから,この解釈は,記載Cと明らかに矛盾するものである。記載Dを読めば,スイッチ2を押したことによりパチンコ機の故障という作動状況に応じた信号がカウンターに伝達されコンピュータ6を作動する,という意味であることが明らかである。 (2) その他の相違点の看過の主張について 原告が審決が看過したとする相違点Aについての主張は,単に目的の相違をいうものにすぎず,相違点Bについての主張は,特許請求の範囲の記載に基づかず本件発明の要旨を限定するものである。いずれも失当である。 2 原告の主張2(相違点についての判断の誤り)の主張について (1) 刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせることの容易性についての判断の誤り,の主張について 刊行物1発明と刊行物2(ないし刊行物5)発明は,いずれもパチンコ台の表示装置という同一技術分野に属する同種の装置に関するものである。当業者にとって,発明の目的のいかんにかかわらず,刊行物1発明と刊行物2(ないし刊行物5)発明とを組み合わせて,本件発明の表示装置のように構成することは容易に想到できることである。 (2) 相違点1についての判断の誤り,の主張について ア 刊行物2発明の「電子制御装置4」と本件発明の制御装置とは,表示を行なう点で一致しており,両者の間に根本的に異なるところはない。 刊行物2発明の「電子制御装置4」は,個別のパチンコ台に取り付けられるものである(甲第5号証3頁左上欄5行〜6行参照。)。刊行物2発明は,「高価な大規模な装置を必要とせず,設置台数の少ない遊技場でも安価に導入することができる」(甲5号証3頁左下欄8行〜10行)ものである。刊行物2発明と本件発明とは,目的,効果において一致している。 審決は,本件発明の表示装置と刊行物2発明の電子制御装置とが対応するものであることを示すために,刊行物2発明の電子制御装置の作用,効果,目的を検討しているものである。本件発明と刊行物2発明との間には格別な差異が認められないとして,これを根拠に刊行物2発明の技術を刊行物1発明の技術に適用することができる,と判断したわけではない。 刊行物2の第2図(別紙図面2参照)には,一つの枠体として表示された電子制御装置4に表示部10が一体として図示されている。同図を見れば,電子制御装置4と表示部10とが一つの筐体に設けられていることは明らかである。この枠体の外面側には,出入力端子9が設けられている。このことも,電子制御装置4と表示部10等とが一つの筐体に設けられてユニットとなっていることを裏付けるものである。 イ 刊行物3と刊行物4は,同一の「ステイタスカウンター」に関するものである。両刊行物は,ほぼ同時期に発行された雑誌であり,それらに掲載された押釦スイッチ(押ボタンスイッチ)は共に「ステイタスカウンター」という名称で株式会社大成商会から発売された商品であるから,刊行物3と刊行物4のそれぞれに記載されている各押釦スイッチ(押ボタンスイッチ)が同じ物であることは明らかである。これら刊行物に掲載された遊技機の表示装置に,本件発明の「呼出しスイッチ」に相当する押ボタンスイッチが存在し,本件発明の「文字・図形を表示する表示板」に相当する表示板が存在することは明らかである。 (3) 相違点2についての判断の誤り,の主張について 審決は,刊行物5の記載から,遊技者の必要に応えるための表示をすることが周知であると認定したわけではない。審決は,一般的に,表示装置において,その制御のために「複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置」を用いることは周知であること,刊行物5にはこのような表示装置が本件発明と同じ分野であるパチンコ機に用いられていることが記載されていること,刊行物1にはパチンコ機用表示ランプ(遊技機の表示装置)に表示する複数の表示内容が記載されていること,刊行物2には遊技機から入力される信号により稼動状況の表示をする点が記載されていることから,これらの点を考え併せると,前記周知技術を刊行物1発明に適用し,相違点2に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである,と判断したものである。 刊行物1には,ランプ表示と文字表示とに基づく複数の表示内容が記載されており,複数の文字表示による表示内容も開示されているから,複数の表示内容を表示する表示装置が記載されている,ということができる。 刊行物5の「図面の簡単な説明」の項目(甲第8号証6頁3行〜7頁2行)には,押釦スイッチがゲームの開始又はゲームの進行の選択ないしはゲーム終了のリセット等の信号を発し,その信号はマイクロコムピューターに入力されることが記載されているから,押釦スイッチ10,10の信号がマイクロコムピューター20に入力されることは明らかである。被告は,押釦スイッチ10,10が呼出しのためのスイッチであると主張しているのではなく,押釦スイッチ10,10から入力される作動状況を示す信号に基づいてマイクロコムピューター20のCPUにより作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリー24,25から読出して液晶表示板2および発光ダイオード3,3,3にさせる,という技術が開示されていると主張しているのである。 |
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当裁判所の判断
1 原告の主張1(相違点の看過)について (1) 一致点の認定の誤りによる相違点の看過の主張について ア 原告は,刊行物1には,「CPUは呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させる」との構成が開示されていないから,刊行物1に同構成が開示されていることを前提としてなされた審決の本件発明と刊行物1発明との一致点の認定は誤りである,と主張する。 刊行物1には,次の記載がある。 (ア)「表示ランプ本体1に故障などの呼び出し用スイッチ2の押圧と関連して点灯表示する呼び出し用表示部3と打止め指令および場合によっては故障などの指令により点灯表示する文字表示部4とを設けたパチンコ機用表示ランプ」(甲第4号証・実用新案登録請求の範囲) (イ)「従来パチンコ遊技場において,パチンコ機に何等かの故障を生じた時は,遊技者がパチンコ機に附設してあるスイッチを押すと,遊技者には,呼出用表示ランプが点灯し,また,故障を起こした島の適所に設けられた代表ランプが点灯しその島が表示されるようになっている。これは遊技者に対して一見親切な取扱いであるように見られるが,遊技者は従業員が修理に来るまでの間はやはりいらいらした気分を起すことは否めない。」(同1頁10行〜19行) (ウ)「またあるパチンコ機が非常に球がよく入って規定以上の賞球を出した場合,コンピューターにより,そのパチンコ機が打止めとされるということが一般に行われているが,そのパチンコ機にその打止めの自動表示がなされないので,この場合は従業員がわざわざそのパチンコ機台まで行って,この台が打止めである旨を書いた表示板を吊下げて来る外はなかった。」(同1頁20行〜2頁7行) (エ)「本考案は,このような不便を解消するために,打止めとなった時は直ちに自動的にこれをそのパチンコ機台に表示すると共にその旨を説明字句で表示し遊技者に感謝の意を表明するようにし,また場合によってはパチンコ機に故障など生じた時遊技者がスイッチを押すことによりカウンターに報告すると共に呼出用表示ランプが点灯すると同時にしばらくお待ち下さいというような意味のことを遊技者に表明することによりパチンコ遊技場の運営維持を円滑に計らんとするものである。」(同2頁8行〜17行) (オ)「第3図において,パチンコ機no.1は各表示ランプ11,12が全然動作していない状態であって,この場合は,補給用電源19はリレー接点14,14’を通って補給用回路に通電される。すなわちソレノイド20は可動状態であってパチンコ機には適宜玉が補給されている。 同no.2においては,表示ランプ本体1のスイッチ2を押した状態で,表示ランプ用電源16より接点18´に電流は流れて呼び出し用表示ランプ11を点灯させて呼び出し用表示部3に表示しこれと同時に接点18”にも流れて代表ランプ5を点灯させる。 同no.3においては,コンピューター6よりの打止信号により補給打止切換用リレー13のリレーコイル17が励磁し,リレー接点14,14’より接点15,15’に切換えられて文字表示ランプ12,12が点灯して文字表示部4に表示する。そしてリレー接点14,14’が切断しているので補給用電源19よりの電流は遮断され,この打止めになったパチンコ機には球の補給をすることができない。 同no.4においては,スイッチ2を押し呼び出し用表示ランプ11,11が点灯し,かつ,コンピューター6よりの打止め信号により文字表示ランプ12,12が点灯している状態が示されている。」(3頁17行〜4頁19行) (カ)「パチンコ機no.3の作動説明のように,パチンコ機の打止めがコンピューター6により指令され打止めの作動がなされると同時に文字表示ランプ12,12’が点灯し,「ありがとうございました。この機械は打止めになりました」という字句が文字表示部4に写し出され,そして遊技者にそのパチンコ機が打止めになったことを自動的に知らせると共に感謝の意を表明するものである。」(同4頁左欄20行〜5頁7行) (キ)「パチンコ機no.4のように,そのパチンコ機に球が出なくなって遊技者は呼び出し用スイッチ2を押しそのために呼び出し用表示ランプ11が点灯して呼び出し用表示部3,3にこれが表示されると同時に,コンピューター6からの打止め指令が発せられて,no.3と同様に文字表示部4にその字句が写し出されるものである。」(同5頁8行〜14行。記載C) (ク)「遊技場によっては打止めの操作をしないところもあるので,このような場合には,パチンコ機に故障などあって遊技者がスイッチ2を押して呼び出し用表示ランプ11が点灯し呼び出し用表示部3,3に表示されると同時に,カウンターに伝達されコンピューター6を作動して文字表示用ランプ12,12’を点灯して文字表示部4に,この場合には,しばらくお待ちくださいという意味の表示をして遊技者がその間いらいらした感情を起させないようにするものである。」(同5頁15行〜6頁4行。記載D) (ケ)「なお呼び出し用表示部3,3には呼び出し用表示ランプ11,11の点灯を示すと同時にここに「しばらくお待ち下さい」の字句を表示し,文字表示部4には打止めの指令に基いて「ありがとうございました。この機械は打止めになりました」という字句を表示するようにしてもよい。」(同6頁5行〜10行) (コ)「本考案は以上のようにパチンコ機台が打止めとなった時は自動的にその打止め作動をなすと同時にこれを感謝の意をもって表示するので,従業員がわざわざその台のところまで行ってこれを表示するような煩雑さがなく,しかも遊技者には感謝の意を表明することができ,またパチンコの故障などあった時遊技者がスイッチを押すと同時に,しばらくお待ち下さいという意味の表示をすることにより遊技者の感情を柔らげることができるので,パチンコ遊技場の維持運営を円滑にすることができる。」(同6頁11行〜20行) 上に認定した刊行物1の記載によれば,従来のパチンコ機においては,故障時に遊技者がスイッチを押すと,呼出用表示ランプ及び島の代表ランプが点灯状態に置かれるだけであったため,遊技者は従業員が修理に来るまでいらいらした気分になるという問題点や,打止め時にその旨の自動表示がなされず従業員が出向く必要があるという問題点があったことから,刊行物1発明は,このような問題点を解決するため,表示ランプ本体に,呼び出し用スイッチの押圧と関連して点灯表示する呼び出し用表示部と,打止め指令や故障などの指令により点灯表示する文字表示部とを設けることにより,打止めとなったときは,直ちに,自動的に,「ありがとうございました。この機械は打止めになりました。」などの字句により,その旨をパチンコ機台に表示するとともに感謝の意を表明するようにし,パチンコ機に故障など生じたときに遊技者がスイッチを押すと,これがカウンターに報告されるとともに呼出用表示ランプが点灯状態に置かれ,同時に,上記同様に打止めの表示をする(打止めの操作をしない遊技場においては,「しばらくお待ち下さい」と表示する)ようにすることにより,遊技者の感情を柔らげてパチンコ遊技場の維持運営を円滑にするという作用効果を奏するものである,ということができる。 上に認定した刊行物1の記載状況,特に,パチンコ機の故障時に関して,「遊技者がパチンコ機に附設してあるスイッチを押すと,遊技者には,呼出用表示ランプが点灯し,また,故障を起こした島の適所に設けられた代表ランプが点灯しその島が表示されるようになっている。・・・遊技者は従業員が修理に来るまでの間はやはりいらいらした気分を起すことは否めない。」(上記(イ)),「そのパチンコ機にその打止めの自動表示がなされないので,この場合は従業員がわざわざそのパチンコ機台まで行って,この台が打止めである旨を書いた表示板を吊下げて来る外はなかった。」(上記(ウ))との解決すべき課題,「打止めとなった時は直ちに自動的にこれをそのパチンコ機台に表示すると共にその旨を説明字句で表示し遊技者に感謝の意を表明するようにし,また場合によってはパチンコ機に故障など生じた時遊技者がスイッチを押すことによりカウンターに報告すると共に呼出用表示ランプが点灯すると同時にしばらくお待ち下さいというような意味のことを遊技者に表明することによりパチンコ遊技場の運営を円滑に計らんとする」(上記(エ))との課題解決手段,「パチンコ機台が打止めとなった時は自動的にその打止め作動をなすと同時にこれを感謝の意をもって表示するので,従業員がわざわざその台のところまで行ってこれを表示するような煩雑さがなく,しかも遊技者には感謝の意を表明することができ,またパチンコの故障などあった時遊技者がスイッチを押すと同時に,しばらくお待ち下さいという意味の表示をすることにより遊技者の感情を柔らげることができる」(上記(コ))との効果の記載からみて,反対に解すべきよほど強力な根拠が認められない限り,刊行物1発明においては,スイッチ2とコンピュータ6とが接続されており,スイッチ2を押すことによって,そこからの信号がコンピューター6に入力され,これを作動させるものである,と解する以外にないというべきである。刊行物1の上記記載状況の下で,反対に解することになれば,従来,遊技者になすべき表示が人を介してしかなされなかったことにより生じていた,表示すべき事態の発生と表示との間に時間が生じるという不都合を,表示すべき事態が生じるのと同時にコンピュータを通じて自動的に表示することによって回避しようとの刊行物1発明を,合理的に把握することは,ほとんど不可能としかいいようがないからである。 この点について,原告は,刊行物1記載の第3図の配線図(別紙図面1参照)においては,スイッチがコンピュータと接続されていないことを強調する。 しかし,上記配線図は,出願されている発明(考案)についての理解を助け,これを容易にするために出願に当たって添付されていたものにすぎず,それ以上の意味はないものである。出願の対象とされている技術の理解にとって重要な事項については,比較的正確に記載されることが多いであろう,とまではいい得るとしても,当該出願にとって重要でない事項についてまで正確に記載されることは,もともと期待されていないのである。刊行物1発明はスイッチとコンピュータとの接続自体の技術的困難さには,何ら関心を持たず,むしろ,接続自体には格別の困難はないことを当然の前提にするものであることは,上記部分を中心に刊行物1全体を見れば,明らかである。このようなとき,上記配線図においてスイッチとコンピュータとが接続されていないことを根拠に,刊行物1の上記記載と矛盾する解釈をしようとするのは,本末転倒というほかはない。他にも上記根拠になるべきものは,本件全資料を検討しても見いだし得ない。 原告の主張は採用することができない。 (2) その他の相違点の看過の主張について 原告は,本件発明は,遊技者が望む表示を行うための表示装置を提供することを目的とするものであるのに対して,刊行物1発明は,遊技場の運営維持を目的とするものであるから,発明の目的が相違(相違点A)し,さらに,刊行物1発明のコンピュータはホールコンピュータであるのに対して,本件発明のメモリとCPUを備えた制御装置は表示の機能のみを有するものであるから,制御装置の機能が相違する(相違点B)にもかかわらず,審決はこれらの相違点を看過したと主張する。 しかしながら,原告の主張する相違点A及びBは,いずれも本件発明と刊行物1発明との構成上の相違を指摘するものではない。これらの相違は,発明の対比に当たって相違点として抽出すべきものではないことが明らかである。 原告の主張は主張自体失当である。 2 原告の主張2(相違点についての判断の誤り)について (1) 刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせることの容易性についての判断の誤り,の主張について 原告は,刊行物2発明は,従来の中央制御装置を小型化することにより,これを各パチンコ台ごとに設置することを目的としたものであり,遊戯者が台を選択するに当たっての情報を得たいという要請に応えることを目的とする本件発明とは目的を異にするから,刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせても,本件発明のように,遊技者が台を選択するに当たっての情報を得たいという要請に応え得るような「表示装置」の着想は生まれない,と主張する。 しかしながら,両発明の目的が異なるというだけで,一方の発明を他方の発明に適用することができないということはできない。原告の主張は,それ自体で失当である。 刊行物1発明も刊行物2発明も,いずれもパチンコ台の表示装置という同一技術分野に属する同種の装置に関するものであるから,両者を組み合わせることに想到することは容易であるというべきである。発明の直接の目的として記載されたところが異なるからといって,両発明を組み合わせることに想到することを困難であるとすることができないことは明らかである。 原告の主張は,採用することができない。 (2) 相違点1についての判断の誤り,の主張について 原告は,本件発明と刊行物1発明との相違点の一つ(「本件発明の制御装置が,パチンコ台と別体の一つの筺体に装着されるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明は,各パチンコ台に共通な制御装置であるCPUがカウンターにある点」。相違点1)について,審決が,「甲6号証(刊行物1)記載の発明に甲第3号証(刊行物2)又は甲第1号証の1及び2(刊行物3,4)記載の上記点を組み合わせて,制御装置もパチンコ台と別体の一つの筺体に装着し,本件発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである。」(審決書14頁下から2行〜15頁2行)と判断したのは誤りである,と主張する。 ア 原告は,その理由として次の4つの点を挙げる。 @ 刊行物2発明は,パチンコ遊技場における中央制御装置を不要にするという目的で,中央制御装置の役割及び機能のすべてを「電子制御装置」により代替させたものであり,「電子制御装置」をすべてのパチンコ台に対して個別に取り付けることは,本件発明の「システムが非常に簡単で安価になり,小規模のパチンコ遊技場にも適する」という目的に反する。 A 本件発明と刊行物2発明との間に格別な差異が認められないから,刊行物2発明の技術を刊行物1発明に適用することができる,とする審決の判断は理論的に誤りである。 B 審決は,刊行物2の第2図(別紙図面2参照)に関する記載から,電子制御装置4と表示部10とが一つの筐体に設けられていると認定した。しかし,第2図は装置の概略を示すブロック図にすぎず,同図から上記のように認定することはできない。 C 審決は,別個の刊行物である刊行物3と刊行物4に記載されている各技術があたかも一つの刊行物に記載されているかのように認定している点において誤っている。刊行物3,刊行物4のそれぞれ単独では,マイコンと,ランプと,押ボタンスイッチと,表示板とを一つの筐体に装着した押釦スイッチ(表示装置)が記載されていると認定することはできない。 しかしながら,原告の主張は,次のとおり,いずれも理由がない。 (@について) 刊行物2発明の「電子制御装置4」と本件発明の制御装置とは,表示を行なう装置である点で一致しており,両者の間に根本的に異なるところはない。原告は,刊行物2の「電子制御装置4」は,中央制御装置の機能をすべて具備するものであるため,これをすべてのパチンコ台に対して個別に取り付けると,「システムが非常に簡単で安価になり,小規模のパチンコ遊技場にも適する」という本件発明の目的に反することになる,と主張する。しかしながら,刊行物2発明の「電子制御装置4」は,個別のパチンコ台に取り付けられるものであること(甲第5号証3頁左上欄5行〜6行参照),「高価な大規模な装置を必要とせず,設置台数の少ない遊技場でも安価に導入することができる」ものであること(同号証3頁左下欄8行〜10行)において,本件発明の制御装置との間に共通点がある。両発明を組み合わせることに想到することは容易であるというべきである。 そもそも,本件発明の特許請求の範囲には,「制御装置」から中央制御装置の機能を具備するものを除外する旨の記載はないから,原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものというほかなく,この点においても,失当である。 (Aについて) 刊行物2発明の電子制御装置と本件発明の制御装置との間に差異があるか否かと,刊行物1発明に刊行物2発明を適用することが容易であるか否かとは関係がないことは,原告の主張するとおりである。 しかしながら,刊行物1発明と刊行物2発明とは,いずれもパチンコ台の表示装置という同一技術分野に属するものであるから,それを妨げる特段の事情が認められない限り,刊行物1発明に刊行物2発明を適用することは容易であるというべきである。審決の「甲第3号証(刊行物2)記載の上記技術を甲第6号証(刊行物1)記載の発明に適用できない理由は見あたらない。」(審決書14頁下から8行〜7行)との説示は,この趣旨と,上記特段の事情に当たるものが認められないことをまとめて述べたものと理解することができる。審決の「本件発明の表示装置と甲第3号証(刊行物2)の電子管理装置とは格別な差異は認められず」(審決書14頁下から9行〜8行)との説示が上記の判断と関係がないとしても,そのことは,上記の結論に影響を及ぼすものではないことが明らかである。 (Bについて) 刊行物2の第2図は,装置の概略を示すブロック図である。しかしながら,同図に関する刊行物2の記載と図面とを併せてみれば,刊行物2発明の電子制御装置等の構造を優に認定することができる。すなわち,刊行物2には,「各々の遊技機1に付帯させた電子制御装置4に表示部10を設けて情報を表示する」(甲第5号証3頁左上欄5行〜7行)と記載されており,同図には,筺体として表示された電子制御装置4に表示部10が一体として図示されていることからすれば,電子制御装置4と表示部10とが一つの筐体に設けられていることは明らかである。 (Cについて) 刊行物3,4は,同じ年に発行されたものであり,いずれも同じ商品である「ステイタスカウンター」についての文献であることが明らかである(甲第6,第7号証)。両刊行物に基づき一つの公知技術を認定したことに誤りはない。 同じ商品について,一方の刊行物からでは明確でない構成を他方の刊行物によって補うことによって,一つの公知技術を認定することができるのは,当然である。 イ 以上のとおりであるから,相違点1についての審決の判断に誤りはない。 (3) 相違点2についての判断の誤り,の主張について 原告は,本件発明と刊行物1発明との相違点の一つ(「本件発明の制御装置は,複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUを備え,CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモりから読出して表示板およびランプに表示させるのに対し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明のCPUは,呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を前記表示板に表示させる点」。相違点2)について,審決が,「甲第9号証(刊行物5)に記載されるような周知技術を甲第6号証(刊行物1)記載の発明に適用し,甲第6号証(刊行物1)記載の発明において,CPUのメモリに複数の表示内容を記憶させ,CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読出して表示板およびランプに表示させ,本件発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到しえる程度のことというべきである。」(審決書15頁15行〜21行)と判断したのは誤りである,と主張する。 ア 原告は,その理由として,刊行物5に記載された技術は,マイクロコンピュータと液晶板とを備えたゲーム機をパチンコの盤面に組み込むことにより,パチンコの遊技と同時にゲームをプレイできるように構成したものであり,ゲーム制御のために複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置とが含まれてはいるものの,「パチンコ遊技場において,遊技者が台を選択するに当たっての情報に関する作動状況に対応する表示内容をメモリに記憶せしめ,CPUにより読出して表示させるもの」でないから,このことが周知であるとした審決の認定は誤りである,と主張する。 しかしながら,審決が周知であると認定したのは,「表示装置において,その制御のために「複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える」制御装置を用いること」である。原告の上記主張は,審決の認定した周知事項を正しく理解したものとはいえず,その前提において既に誤っていることが明らかである。審決の認定した上記周知事項が刊行物5に記載されていることは,原告の主張自体からも明らかである。 イ 原告は,審決が,周知技術の認定に関して,「甲第6号証(刊行物1)には,パチンコ機用表示ランプ(遊技機の表示装置)に表示するための複数の表示内容が記載されている」(審決書15頁11行〜13行)と認定したのは誤りである,と主張する。 刊行物1には,「呼び出し用表示部3,3には呼び出し用表示ランプ11,11の点灯を示すと同時にここに「しばらくお待ち下さい」の字句を表示し,文字表示部4には打止めの指令に基いて「ありがとうございました。この機械は打止めになりました」という字句を表示するようにしてもよい。」(甲第4号証6頁5行〜10行)との記載がある。同記載によれば,同刊行物に,パチンコ機用表示ランプ(遊技機の表示装置)に表示するための複数の表示内容が記載されている,とした審決の認定に誤りはない。 原告は,審決は,刊行物1発明の「呼び出し用表示ランプ11及び呼び出し用表示部3」及び「文字表示部4」が,それぞれ,本件発明の「ランプ」及び「文字・図形を表示する表示板」に相当すると認定しているから,上記解釈では本件発明の「ランプ」に相当するものが刊行物1発明に存在しないことになってしまう,と主張する。 刊行物1には,呼び出し用スイッチ2を押すと呼び出し用表示ランプ11が点灯して呼び出し用表示部3にこれが表示されると同時に,文字表示部4にその字句が写し出されること(記載C),スイッチ2を押すと呼び出し用表示ランプ11が点灯し呼び出し用表示部3に表示されると同時に,文字表示用ランプ12を点灯して文字表示部4に,「しばらくお待ちください」という意味の表示をすること(記載D)が記載されている。これらの場合には,「呼び出し用表示ランプ11及び呼び出し用表示部3」は文字を表示するものではなく,本件発明のランプ(正確には,ランプ20及びランプカバー16)に相当する。審決は,上記の場合を念頭において,本件発明と刊行物1発明との対比において,刊行物1発明の「呼び出し用表示ランプ11及び呼び出し用表示部3」が本件発明の「ランプ」に相当し,刊行物1発明の「文字表示部4」が本件発明の「文字・図形を表示する表示板」に相当するとしたものである。 前記のとおり,刊行物1には,記載C,Dのほかに,呼び出し用表示部3には「しばらくお待ち下さい」の文字を,文字表示部4には「ありがとうございました。この機械は打止めになりました」の文字を表示するようにしてもよい,と記載されている。この場合には,呼出し用表示部3及び文字表示部4の双方に文字が表示されるため,両表示部が本件発明の「文字・図形を表示する表示板」に相当し,刊行物1の「呼び出し用表示ランプ11」が本件発明の「ランプ」に相当することになる。これは,審決が本件発明との対比のために行った刊行物1発明の認定に当たり示した対応関係とは整合しない。しかし,そのことは,刊行物1に「パチンコ機用表示ランプ(遊技機の表示装置)に表示するための複数の表示内容が記載されている」と認定することと矛盾するものではない。 ウ 原告は,審決は,相違点2を本件発明と刊行物1発明との相違点としているのであるから,再び刊行物1に戻って,相違点2に係る本件発明の構成は刊行物1に記載された周知技術であるというのは,明らかに矛盾していると主張する。 しかしながら,審決が,刊行物1に記載されているものとして認定した技術の中から,「各パチンコ機台P毎の上方に取付けられ,呼び出し用表示部3,打止め指令に基いて文字表示する文字表示部4と,呼び出し用表示ランプ11,文字表示用ランプ12と,呼び出し用スイッチ2とを備えた各パチンコ台Pと別体の表示用ランプ本体1であって,前記呼び出しスイッチ2を押すことにより,呼び出し用表示ランプ11を点灯し呼び出し用表示部3に表示すると共に,カウンターのコンピュータ6を作動して上記文字表示部4にパチンコ機の打ち止めの文字を表示するパチンコ機用表示ランプ」を選び出しこれを主引用発明として採用し,本件発明とこれとを対比して両発明の一致点・相違点を認定したものであることは,その説示自体で明らかである。審決がこのようにして認定した相違点についての認定判断において,同刊行物に記載されている他の技術を認定してこれを判断の資料としたからといって,これを誤りとすることはできない(このような判断を必要としない技術を主引用例としなかったことを,効率の悪い方法であるとして批判する余地はあり得る。しかし,これを誤りとすることはできない。)。 エ 原告は,審決が,周知技術の認定に当たり,「甲第3号証(刊行物2)には,遊技機から入力される信号により,稼働状況の表示をする点が記載されている」(審決書15頁13行〜15行)と認定したことは誤りであると主張する。 刊行物2には,「遊技機1の稼働状況は各々の情報に対応して設けられた検出器2から電気信号として電子制御装置4に送られて,計数記憶部5で情報の計数,記憶を行い,演算部6で計算,ゲームの打止数の設定数との比較等が行われ,遊技機1の稼働内容がゲームの打止設定数に達すると打止信号出力部7によって遊技機1に設けたゲーム打止装置3に電気信号が伝達されて,ゲームの打止操作が行われる。遊技機1の稼働状況の表示は表示出力部8によって電子制御装置4に設けた表示部10に表示されるか,又は外部に接続された電子操作表示器12に表示又は印字される。」(甲第5号証3頁右上欄3行〜左下欄4行)と記載されている。同記載によれば,同刊行物に,「遊技機から入力される信号により,稼働状況の表示をする点が記載されている」とした審決の認定に誤りはないというべきである。 原告は,審決が,「制御のために複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置」が周知であるというために,刊行物2を引用したことは誤りである,と主張する。 しかしながら,審決は,刊行物2を根拠に,「制御のために複数の表示内容を記憶するメモリと,CPUとを備える制御装置」が周知であるとしたものではなく,刊行物5を根拠に上記の点が周知であるとしたものであることは,審決の記載から明らかである。 オ 原告の主張は,いずれも採用することができない。 |
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結論
以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由は,いずれも理由がなく,その他,審決の認定判断にはこれを取り消すべき誤りは見当たらない。そこで,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 山下和明 |
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裁判官 | 設樂隆一 |
裁判官 | 阿部正幸 |