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事件 |
令和
3年
(ネ)
10079号
特許権侵害差止等請求控訴事件
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令和4年3月16日判決言渡 令和3年(ネ)第10079号 特許権侵害差止等請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所令和元年(ワ)第27053号) 口頭弁論終結日 令和4年1月19日 5判決 控訴人ニプロ株式会社 同訴訟代理人弁護士 牧野知彦 10 同岡田健太郎 被控訴人株式会社トップ 同訴訟代理人弁護士 渡邉佳行 15 同鈴木隆太郎 同訴訟代理人弁理士 吉田雅比呂 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2022/03/16 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 20 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙物件目録記載の各製品の生産、譲渡、輸出、輸入又は譲渡の申出をしてはならない。 25 3 被控訴人は、前項記載の製品を廃棄せよ。 4 被控訴人は、控訴人に対し、288万3600円及びこれに対する令和元年110月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(以下、略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)1 事案の概要5 本件は、名称を「留置針組立体」とする発明に係る特許(特許第6566159号。本件特許。)の特許権者である控訴人が、原判決別紙物件目録記載の各製品(被告製品)を被控訴人が生産、譲渡等をし、これが本件特許権を侵害する旨主張して、被控訴人に対し、本件特許権に基づき、被告製品の生産、譲渡等の差止め及びその廃棄を求めるとともに、本件特許権侵害の不法行為に基づ10 く損害賠償金288万3600円(特許法102条2項適用)及びこれに対する不法行為後の日で本件訴状送達日の翌日である令和元年10月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被告製品は本件発明の構成要件1EC(本件発明1)、同2EC(本15 件発明2)及び同3ED(本件発明3)をいずれも充足しないものであるから、 本件発明の技術的範囲に属しないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人は、原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提となる事実「前提となる事実」は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理20 由」第2の1 「前提事実」 に記載されたとおりであるから、 ( ) これを引用する。 ? 3頁12行目の「請求項1及び2」を「請求項2及び3」と改める。 ? 6頁5行目冒頭から9行目末尾までを次のとおり改める。 「 筒状の周壁を有し、前記針ハブに外挿装着されて針先側へ移動することで該留置針の針先を覆う針先プロテクタとを備え、 25 該留置針の針先側へ該針先プロテクタが移動せしめられた所定位置において、該針先プロテクタに設けられた係止片が該針ハブに対して係止2されることで該留置針の針先の再露出が防止されるようになっている留置針組立体であって、」? 8頁14行目を次のとおり改める。 「3EA 1E@と同じ。 5 3EB 1EAと同じ。 3EC 1EBと同じ。」? 9頁21行目の「受け部」を「受部」と改める。 ? 11頁6行目の「2E@」の次に「、3EA」を加え、同15行目の「中華人民共和国実用新型考利CN204219517U」を「中国実用新案10 第204219517号明細書」と、同17行目の「米国特許公報US2007/0260190A1」を「米国特許出願公開第2007/0260190号明細書」と、同19行目の「中華人民共和国実用新型考利説明書CN200951238Y」を「中国実用新案第200951238号明細書」とそれぞれ改める。 15 3 争点「争点」は、原判決の「事実及び理由」第2の2(「争点」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。 4 争点に関する当事者の主張「争点に関する当事者の主張」は、次のとおり補正し、後記5に当審におけ20 る当事者の補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の3 「争(点に関する当事者の主張」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。 ? 14頁9行目の「受け部」を「受部」と改め、同18行目の「「係止片」」の次に「(構成要件1EC、2EC又は3EDの「前記小径部側には設けられておらず」という部分を充足するか否かの検討対象となるべき係止片。以下25 同旨。 」を加える。 )? 15頁24行目から25行目にかけての「第2突出部」を「受部」と改め3る。 ? 16頁下から8行目の「小径部側壁部が存在する」を「小径部側壁部が小径部側に存在する」と改める。 ? 18頁15行目の「被告製品」の次に「の接続筒部の突出部」を加え、同5 20行目、19頁2行目、同下から2行目及び21頁1行目の各「3EA」をいずれも「3EB」と改める。 ? 23頁下から2行目の「中華人民共和国実用新型考利CN204219517U」を「中国実用新案第204219517号明細書」と改める。 ? 32頁8行目の「係止受部1」を「係止受部」と改める。 10 ? 38頁13行目の「特許法」を「独占禁止法」と改める。 5 当審における当事者の補充主張(構成要件1EC、2EC及び3EDの充足性について)? 控訴人ア(ア) 構成要件1ECの「前記係止片」 構成要件1Dにおけるは、 「係止片」15 を指しているから、 「所定位置」においてそれ自体として直接に針先の再露出を防止する機構である。 (イ) 本件発明では「係止片」という用語を使用しているところ、 「片」とはその名が示すとおり「片」(へん)状の部材であるから、「係止片」とは「片状(へんじょう)の部材」の意味である。 20 (ウ) 構成要件1ECの「前記係止片」が「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、 との文言は、 」径方向に対向する一対の係止片が、小径部側ではなく大径部側に設けられているという係止片の配置を規定しているにすぎず、何らかの「係止片」といえるような形状の部材が小径部側に設けられていないというこ25 と自体に特有の技術的意義があるわけではない。 構成要件1ECは、 「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内4側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、 と規定しており、 」 「前記係止片」 「前が記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、 と規定するとともに、 」 同じく「前記係止片」が「前記大径部側に・・一体形成される一方、前記小5 径部側には設けられておらず」と規定しているのであるから、大径部側に一体形成される係止片と、小径部側に設けられていない係止片が同じ「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」する係止片であると理解するのが自然な解釈である。したがって、大径部側に一体形成される係止片のみならず、小径部側に設けられてはならない係止片も、 「前記針ハ10 ブに向かって傾斜した内側面を有し」ている係止片である。被控訴人が主張するように、大径部側に一体形成される係止片と小径部側に設けられてはならない係止片が異なる係止片であると解釈するのは不自然である。 そして、本件明細書にも、針先の再露出防止のための部材である「係15 止片74」が大径部側に設けられ、小径部側には設けられていない旨が示されており(【0073】【0077】【0078】【図6】 、このよ、 、 、 )うな本件明細書の開示によれば、当業者は、大径部側に設けられている「係止片」の具体的態様と、小径部側に設けられてはならない「係止片」の具体的態様とが異なるものであると理解することはない。 20 (エ) 以上によれば、本件発明の「係止片」は、その機能として、@「所定位置」において、それ自体として針先の再露出を直接防止するものであること(構成要件1D、2D、3D) その形状として、 「片状の部材」、 Aであること、B「針ハブに向かって傾斜した内側面を有」すること、C「前記大径部に前記円筒状部と一体形成され」ていること、D「前記小25 径部側には設けられて」いないこと(以上、構成要件1EC、2EC及び3ED)との構成要素を全て充足するものに限る(以下、専ら構成要5件1ECについて論じるが、2EC及び3EDについても同旨である。。 )したがって、本件発明においては、上記形状において針先の再露出を防止するものを「係止片」としたのであって、たとえ針先の再露出を防止するものであっても、上記形状を有しない係止片は本件発明の「係止5 片」には該当せず、そのような係止片が小径部側に設けられていたとしても、そのことは、構成要件1ECの充足を左右しない。 イ 控訴人は、令和元年6月19日付け補正書による補正(以下「本件補正」という。)において、本件発明について、「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、 「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成」10 される一方、前記小径部側には設けられておらず、 と補正したが、 」 これは、 針先の再露出防止機構である「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」する「係止片」が、 「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、 前記小径部側には設けられておらず」との構成を有することを特定したものである。 15 ここで、控訴人が本件補正の際に提出した意見書(乙15。以下「本件意見書」という。)において、係止片が針先の先端側への移動を阻止する具体的態様に言及していなかったのは、「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」するとの点は主引例との相違点ではなかったからにすぎず、 「係止片」が「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」する係止片に限定20 されていることは明らかである。 ウ 被告製品の小径部側壁部は、「片状の部材」ではなく、「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し」ておらず、 「前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される」ものではないから、本件発明における「係止片」には該当しない。また、前記ア(ア)のとおり、構成要件1ECの「前記係止片」は、 25 「所定位置」において針先の再露出を防止するものであるところ、大径部係止手段と協働して針先の先端側への移動を阻止する構成となる部材で6あれば「係止片」であるとすれば、大径部係止手段が「所定位置」において機能することから、必然的に、当該部材も「所定位置」において協働することになってしまい、このような協働関係から小径部側壁部について「所定位置」で再露出を防止するとの構成要素を充足することを認めるの5 であれば、 「所定位置」との限定を設けて「係止片」を特定しようとした本件発明の趣旨に反する。さらに、大径部係止手段と協働して針先の再露出を防止しているものを全て「係止片」とするにしても、その協働する部分の形状が片状でなければ構成要件1ECの「係止片」には該当しないが、 たまたまその形状が片状であれば「係止片」に該当することになってしま10 い不合理である。本件発明の「係止片」に針ハブの回動を防止する部材まで含めて解釈することは、本件発明が想定している「係止片」の概念から逸脱している。 以上のとおり、本件発明の「係止片」に該当し得ない小径部側壁部を「係止片」にあてはめ、 「係止片」ではない小径部側壁部が構成要件1ECの「前15 記小径部側には設けられておらず」との構成要素を充足するか否かを論じることは無意味なことである。 ? 被控訴人ア(ア) 本件発明の特許請求の範囲からは、 「係止片」それ自体の意義は、 「留置針の針先の再露出を防止するために針先プロテクタを針ハブに対して20 係止する片状の部材」というところで尽くされており、それ以上に「係止片」に該当するために具体的な形状を必要とするよう特定・限定がされているのではない。 (イ) 「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」しは、係止片が大径部に存在した場合にその形状を特定するものであり、小径部に存在しては25 ならない係止片の形状を特定するものではない。なぜなら、小径部に「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」する係止片がある場合には本7件発明を充足しないのに対し、小径部に「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有」しない係止片がある場合には本件発明を充足することになるのでは、合理性がなく、いかなる技術思想があるかもうかがうことができないからである。 5 (ウ) 本件補正は、小径部側に設けられてはならない係止片の形状を特定するための記載ではない。なぜなら、形状のいかんを問わず、そもそも小径部側には係止片は存在していないのだから、前記針ハブに向かって「傾斜した内側面を有」しない係止片を除外するために本件補正がされたというわけではないからである。 10 (エ) 控訴人は、特定の形状に限定されたものが本件発明の「係止片」に該当する旨主張するが、特許請求の範囲の記載上、構成要件1ECのあてはめの前提となる「係止片」にはそのような限定がないことは明らかであるし、当該形状を有しない「係止片」であれば、それが小径部側に設けられて針先の再露出防止機能を有していても、対象製品が本件発明の15 技術的範囲に属することを妨げないとする根拠も不明である。 イ 仮に、被告製品に小径部側壁部が存在しない場合、針基の受部が大径部係止手段をすり抜けて針基が前進し、針先が再露出することになるから、 小径部側壁部は針先再露出の防止に不可欠な存在である。このように、被告製品の小径部側壁部は、他の部材と協働してであれ、 「針先プロテクタを20 針ハブに対して係止」しており、それによって「留置針の針先の再露出を防止」するための不可欠の部材であるから、「係止片」に含まれる。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、被告製品は本件発明の構成要件1EC(本件発明1)、同2EC(本件発明2)及び同3ED(本件発明3)をいずれも充足しないものである25 から、本件発明の技術的範囲に属せず、したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。 8その理由は、後記1のとおり原判決を補正し、後記2に当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」第3の1及び2に記載されたとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の補正5 (1) 45頁13行目から14行目にかけての「被告製品の小径部側壁部は、 係止片は大径部側に一体形成される一方小径部側には設けられていないという文言を充足するか」を「被告製品の小径部側壁部が、本件発明で小径部側に設けられてはならないとされている「係止片」に当たらないといえるか」と改める。 10 (2) 45頁18行目の「安全性などの向上」の次に「や拡開部の内部スペースの効率的利用等」を、24行目の「構成は」の次に「積極的に」をそれぞれ加える。 (3) 47頁3行目の「以上によれば、」の次に次のとおり加える。 「本件発明においては、針先の再露出防止のための「係止片」が大径部にあ15 ればよいとしたのではなく、当該「係止片」が大径部にのみある構成に限定したものと理解すべきであり、係止片」「 が小径部側に設けられている構成は、 当該「係止片」の形状いかんを問わず積極的に排除されているものといわなければならない(なお、構成要件1EC、2EC及び3EDの「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒20 状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、」は、上記理由のみならず、その文言からしても、 「再露出防止機構としての前記係止片は、@前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し前記大径部側に前記円筒状部と一体形成され、かつ、A前記小径部側には設けられておらず、」と理解すべきであり、 「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側25 に前記円筒状部と一体形成される再露出防止機構としての前記係止片は、前記小径部側には設けられておらず、」とは理解し得ない。 。したがって、 ) 」9(4) 47頁4行目の「ものではなく、」の次に「いかなる形状のものであってもよいのであるから、」を加える。 (5) 47頁16行目、48頁10行目及び20行目の各「受け部」をいずれも「受部」と改める。 5 ? 47頁17行目末尾に次のとおり加える。 「そして、被告製品の添付文書(甲5)によると、日常的な使用時に作用し得る程度の外力によっても針基の屈曲や針先再露出といった状態が生じ得ることがうかがわれるから、被告製品に小径部側壁部が存在しない場合において針先再露出を生じさせる外力は、かなり小さいもので足りると考えられる。 10 すなわち、小径部側壁部がない場合、大径部係止手段はほぼ無効な手段であり、大径部係止手段のみでは留置針の針先を再露出するための手段としての実用性はないといえる。」? 47頁21行目から22行目にかけての「これによれば、 「係止片」が針先抜出防止機構を含むものであるか否かに関わらず」を次のとおり改める。 15 「本件発明において小径部側に設けられてはならない「係止片」が針先抜出防止機構を有するものを含むか否かについては、当事者間に争いがあるものの、上記説示のとおり、被告製品が針先再露出防止機能を有している以上は、 「係止片」が針先抜出防止機構を有するものを含むか否かにかかわらず」? 48頁18行目の「しかしながら、」の次に次のとおり加える。 20 「「所定位置」というのは、針先の再露出を防止するため針先プロテクタが移動されて係止される位置であって(構成要件1D、2D及び3D、本件明細書【0032】 、当該係止の際の「係止片」の位置を示すための限定ではな)い。仮にそうではないと解するとしても、」? 49頁8行目冒頭から23行目末尾までを次のとおり改める。 25 「 しかしながら、(1)において既に判示したとおり、構成要件1EC、2EC及び3EDの「前記係止片は、前記針ハブに向かって傾斜した内側面を10有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される一方、前記小径部側には設けられておらず、」は、「再露出防止機構としての前記係止片は、@前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し前記大径部側に前記円筒状部と一体形成され、かつ、A前記小径部側には設けられておらず、」と理解5 すべきであり、 「前記針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、前記大径部側に前記円筒状部と一体形成される再露出防止機構としての前記係止片は、前記小径部側には設けられておらず、」とは理解し得ないから、針ハブに向かって傾斜した内側面を有しない係止片が小径部側に設けられていても、対象製品は本件発明の技術的範囲に属しないのであり、控訴人の上10 記主張は、当を得ないというべきである。」2 当審における控訴人の補充主張に対する判断? 控訴人は、前記第2の5?アのとおり、本件発明の「係止片」は、@所定位置において、それ自体として針先の再露出を直接防止し、A片状の部材であり、B針ハブに向かって傾斜した内側面を有し、C大径部に円筒状部と一15 体形成され、D小径部側には設けられていないものをいうから、上記構成要素から特定される形状を有しない係止片が小径部側に設けられていても構成要件1ECの充足を左右しない旨主張しており、同イ及びウの主張もこのような理解を前提とするものである。 しかしながら、引用に係る原判決第3の2(1)(補正後のもの)のとおり、 20 本件発明の技術的意義及び出願経過からみて、針先の再露出を防止する機能を有する係止片は小径部側には設けられてはならず(係止片が小径部側に設けられていないことに特有の技術的意義がある。 、したがって、小径部に設)けられることで構成要件1ECの充足が妨げられる係止片は、その形状を問われないものであるから、針先の再露出を防止する機能を有する係止片が小25 径部側に存することは、対象製品が構成要件1ECを充足することを妨げるものである。 11また、控訴人は、係止片は針先の再露出を「それ自体」として、かつ、 「直接」に防止しなければならない旨主張するところであるが、特許請求の範囲及び本件明細書の記載上、根拠を見いだし難い(いずれにせよ、大径部係止手段と小径部側壁部から構成される「係止片」は、それ自体により直接に針5 先の再露出を防止していると認められる。 。 )さらに、控訴人は、「係止片」という用語を使用している以上、「片」とはその名が示すとおり「片」(へん)状の部材であるから、「係止片」とは「片状(へんじょう)の部材」を指すものである旨主張するところ、確かに、控訴人は、本件補正により「係止部」を「係止片」と改めたものではあるが、 10 上記のような本件発明の技術的意義及び出願経過からすれば、充足性の判断に当たり、針先の再露出を防止するために小径部に設けられる係止部材を片状のものに限定する意義は見いだせない。また、いずれにしても、被告製品は、小径部側壁部の突端面により縦リブの側面を挟持するものであるところ(引用に係る原判決第2の1(3)イd(補正後のもの) 、小径部側壁部の突端)15 面を「片」と理解することに支障があるとは思えない。 以上によれば、控訴人の上記主張は、いずれも採用することができない。 ? そのほか、控訴人はるる主張するところであるが、既に説示したところからその主張を採用することができないことは明らかである。 3 結論20 よって、控訴人の請求はいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部2512裁判長裁判官菅 野 雅 之5裁判官本 吉 弘 行10裁判官中 村 恭1513 |
事実及び理由 | |
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全容
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