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事件 令和 3年 (ネ) 10040号 差止請求権不存在確認請求控訴事件
令和3年10月14日判決言渡 令和3年(ネ)第10040号差止請求権不存在確認請求控訴事件(原審・大阪地 方裁判所平成31年(ワ)第3273号) 口頭弁論終結日 令和3年8月31日 5判決
控訴人 株式会社しちだ・教育研究所
同訴訟代理人弁護士 山崎貴啓 10 同吉川武志
同 補佐人弁理士黒瀬雅一
同 及川周
被控訴人 株式会社キャニオン・マインド 15
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2021/10/14
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
20 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が,控訴人に対し,控訴人による原判決別紙物件目録記載の製品の 生産,使用,譲渡,貸渡し又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは 貸渡しのための展示を含む。)について,特許第4085311号の特許権に25 基づく差止請求権を有しないことを確認する。
第2 事案の概要等 1 1 事案の概要(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に 同じ。) 本件は,控訴人が,控訴人の製造販売する原判決別紙物件目録記載の製品(原 告製品)は被控訴人の有する特許第4085311号の特許権(本件特許権) 5 に係る請求項1の特許発明(本件発明)の技術的範囲に属しないとして,被控 訴人に対し,被控訴人が控訴人に対し本件特許権に基づく原告製品の生産等の 差止請求権(特許法100条1項)を有しないことの確認を求める事案である。
原判決は,原告製品を使用したコンピューターは,「一の組画の画像データ を選択する画像選択手段」(構成要件B2)及びこれを前提とする構成を備え10 ない点を除き,本件発明の構成要件を充足するところ,本件発明に係る特許請 求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属し, 原告製品は,このような原告製品を使用したコンピューターの「生産にのみ用 いる物」(同法101条1号)に当たるので,間接侵害が成立するとして,控 訴人の請求を棄却した。これを不服として,控訴人が本件控訴を提起した。
15 2 「前提事実」,「争点」及び「当事者の主張」は,後記3及び4のとおり, 控訴人の当審における当事者の補充主張及び追加主張を加えるほか,原判決の 「事実及び理由」欄の第2の2及び3並びに第3に記載するとおりであるから, これを引用する。
3 控訴人の当審における補充主張20 ? 争点1(原告製品が充足する本件発明の構成要件)について ア 原判決は,本件明細書において,「組画」は,原画,第一の関連画,第 二の関連画の合計3画から成ることを要するものの,そのような構成に限 定されず,「第一の関連画」,「第二の関連画」以外の付加画をさらに付 加する構成をも排除しないとし,原告製品のセット画に含まれる都道府県25 位置画は,都道府県の地図上の形状を一まとまりの地方単位で複数組み合 わせた画であり,原画の輪郭をその一部に含むことから,原画の特徴を抽 2 出して描かれたものということはでき,原告製品のセット画に都道府県位 置画が含まれることは,原告製品が本件発明の構成要件B1を充足すると の判断を妨げるものではないと判断している。
しかし,本件明細書には,「第一の関連画」,「第二の関連画」という 5 2つの関連画の実施例が記載されているのみである。また,請求項には全 体がそれによって構成されることを意味する「〜から成る」という文言が 用いられている。
また,本件明細書上,原判決が示す付加画として許容される「原画の特 徴を抽出して描かれた」画というのは,「記憶対象に対応する漫画」(【010 044】)である。そして,本件明細書上,漫画というのは第一の関連画 であることが想定されていて 【0019】 【0027】 【0028】 , ( , , ) 第一の関連画に当てはまる具体的な画としては漫画以外には想定されて いないところ,原告製品において,第一の関連画に当てはまる「漫画」に 対応するのは「イラスト画」であって,都道府県位置画は「漫画」に該当15 しない。また,第一の関連画は「漫画,抽象画,原画と順を追って示す」 ことにより段階的に原画に近づける中での最初の画であって,原画の後に 表示される都道府県位置画はその最初の画としての機能も有しない。この ように,原判決において都道府県位置画が「原画の特徴を抽出して描かれ た」ものとして構成要件を充足するというのは,これが許容される場合を20 示す本件明細書の記載にも反することになる。
構成要件B1にいう第一の関連画と第二の関連画の関係は,第一の関連 画は漫画であり,第二の関連画は漫画から記憶対象である原画に近づくた めの抽象画である。したがって,構成要件B1を充足する性質を持つ関連 画というのは,上記関連画の概念に当てはまる画のうち,「漫画及び漫画25 から段階的に原画に移行する機能を有する抽象画」ということになる 【0 ( 028】,【0029】)。
3 これに対し,原告製品における都道府県位置画は,原画を縮小している ものの原画と同じ形態を含み,この部分は原画と完全に一致し,漫画(イ ラスト画)から原画(都道府県形状画)に移行する過程の中で段階的に表 示するという性質を有していない。さらに,都道府県位置画は,隣接する 5 都道府県の輪郭に符合する形態を示しており,当該地方における当該都道 府県の位置を合わせて憶えるための機能がある。しかしこれは,上述した 構成要件B1における関連画の機能ではない。
したがって,都道府県位置画は,本件特許とは別の設計思想に基づいて 組み込まれた画であることから,構成要件B1における関連画(第一の関10 連画,第二の関連画)の概念には当てはまらず,原告製品を使用したコン ピューターは,構成要件B1を充足しない。
? 争点2(均等侵害の成否)について ア 第1要件について (ア) 補正前請求項1に構成要件B2を新たに付加して限定して補正した15 経緯,構成要件B2により,コンピューターによる画像の選択によって, 覚えにくい記憶対象に関する組画を繰り返し選択して表示することや 既に記憶した記憶対象の組画を除外した残りの組画を選択して表示す ること等が可能となり,学習能率の向上にも寄与するとしているという 作用効果を奏する(【0057】)ことに鑑みると,本件発明の本質的20 部分には,学習者が記憶対象とする一の組画を任意に選択してコンピュ ーターの処理によってこれを繰り返し学習できるようにしていること も含まれるというべきである。
原告製品を使用したコンピューターは,特定の地方の選択により,当 該地方の各都道府県は作成者(控訴人)が設定した順序で自動的に逐次25 再生されるものであるから,記憶対象である都道府県のセット画を一つ ずつ選択して再生することはできないし,セット画の表示順についても 4 ユーザーが決めることはできない。このように,原告製品を使用したコ ンピューターは,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」を 有しておらず,本件発明の本質的部分と共通しない。
(イ) 仮に,本件発明の本質的部分を原判決と同様に解するとしても,原 5 告製品の構成bは,都道府県位置画を含めた4画をセット画として1単 位としており,イラスト画,形状・イラスト画,都道府県形状画の3画 を1単位として媒体に記録するものではない。
また,原告製品を使用したコンピューターは,画像表示手段によって 表示するに際しても,第一の関連画,第二の関連画,原画の順に表示し10 て,これに対応する語句の音声データと同期して再生するというもので はなく,4画を表示することと都道府県位置画に対応する語句が存在し ないという点で,本件発明とは本質的部分において相違するものである。
(ウ)a 本件特許の出願前に,以下の学習用具が公然実施されていた(甲 13の1ないし4。以下この公然実施に係る発明を「甲13発明」と15 いう。) 「対応する都道府県の名称が存在する都道府県の地図上の形態を前記 都道府県の名称と結び付けて憶えるための学習用具であり, 学習用具が, ある都道府県の地図上の形態の画が描かれた都道府県形状カード,20 前記都道府県形状カードに描かれたある都道府県の地図上の形態の画 の輪郭に似た輪郭を有する漫画が描かれた第一の関連カード,及び前 記都道府県形状カードに描かれた前記画と前記第一の関連カードに描 かれた前記漫画との両方を連想させる抽象画が描かれた第二の関連カ ードをユニットにした全国の都道府県のカード群と,25 前記第一の関連カード,前記第二の関連カード,及び前記都道府県 形状カードに対応する語句を歌詞とする語呂合わせの歌の音声が記録 5 されたカセットテープと, を含み, 前記第一の関連カード,前記第二の関連カード,及び前記都道府県 形状カードの順に表示し, 5 前記カセットテープは,前記第一の関連カード,前記第二の関連カ ード,及び前記都道府県形状カードを,前記語呂合わせの歌の歌詞で ある前記対応する語句と同期させて使用される学習用具。」 b 原判決の認定する本件発明の本質的部分は,甲13発明を,単にコ ンピューターを使用する物の発明としたものにすぎず,このように貢10 献度の低い発明の保護範囲は,特許請求の範囲と同義に限定されると いうべきである。
イ 第2要件について (ア) 本件発明では,反復する記憶学習における効率を上げるため,コン ピューターによって学習者が任意に記憶対象の画像を選択することで,15 記憶対象群から覚えにくい記憶対象を繰り返して学習したり,表示の順 番を変えたりすることが予定され,本件明細書上も,「このような画像 の選択は,学習能率の向上に寄与する」(【0057】)としてその効 果が強調されている。
(イ) 原告製品を再生する場合,地方単位でしか選択できないことから,20 学習者は任意の一つの記憶対象に絞った選択はできず,複数の記憶対象 に関する各4画とそれに対応する歌を視聴する必要がある。他に本件明 細書【0057】に記載する,「既に記憶した記憶対象に関する組画を 除いて残りの組画を表示すること」 「組画の表示の順番を変える選択」 や もできない。他方,原告製品では,都道府県位置画により,記憶対象の25 属する地方における位置関係という記憶対象が加わり,その記憶喚起の 契機が生じることになる。このように,原告製品を使用したコンピュー 6 ターは,本件発明とは別の作用機序を有する学習用具である。
本件発明に原告製品を使用したコンピューターを置き換えた場合,構 成要件B2の「画像選択手段」によって達成される効果とは全く異なる こととなるから,本件発明と同一の作用効果が生じるものとはいえない 5 ことは明らかであり,原告製品を使用したコンピューターは均等第2要 件を充足しない。
ウ 第4要件について 仮に,原告製品を使用したコンピューターが均等第1要件ないし第3要 件を充足する場合,原告製品を使用したコンピューターの構成は,本件発10 明の技術的範囲に含まれるという判断となるところ,本件発明は,後記4 ?のとおり,関係各文献,常套手段,及び周知の技術事項に基づいて,そ の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前 に容易に推考することができたものであるから,原告製品を使用したコン ピューターの構成も,本件特許出願時における公知技術と同一又は当業者15 が同出願時に容易に推考できたものということができる。
エ 第5要件について (ア) 原判決は,客観的,外形的に見ると,被控訴人が,物の構成として, 逐次又は一斉に表示する構成を,一般的に除外する旨を表示したとはい えないと判示する。
20 しかし,出願過程において,乙6文献の再生方法に「逐次表示する点 および,同時表示する点」が記載されていて,これらの点(記憶する内 容と関連画の選択・作成に関する点を含む。)に技術的進歩性を奏する 構成を伴わないと判断され,これに対し,被控訴人は,進歩性の要件を 具備し得るようにするため,組画の表示方法として「組画記録媒体に記25 録された複数個の組画の画像データから,一の組画の画像データを選択 する画像選択手段」だけを新設し,その旨補正したのであって,客観的, 7 外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願している被控訴 人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構成を削除したの であるから,画像選択手段を含むコンピューターにより出力されるとい う構成においても「逐次又は一斉に表示」という構成を意識的に除外し 5 たものといえる。
(イ) 原判決は,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」を付加 したことは,複数の組画を選択する構成を意識的に除外する旨を表示し たものとは見られないと判示するが,他方,被控訴人が「一の組画」の 画像データを選択してこれを表示することを「念頭に置いた」ことを認10 めているし,学習用具の記録媒体に複数の記憶対象のデータが記録され ている場合に,学習方法として,複数の記憶対象をまとめて選択するこ とは技術常識であるという以上,複数の組画を選択する構成を除外しな い意図であるならば,「一又は複数の組画」や単に「組画」等といった 記載にすることは極めて容易であるから,本件特許の出願経過を客観的,15 外形的に見るならば,一の組画の画像データを選択する画像選択手段」 「 を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意識的に除外したとい う結論になる。
4 控訴人の当審における追加主張(特許法104条の3第1項) ? 控訴人の主張20 ア 引用発明について (ア) 甲第12号証 本件特許の出願日前である平成10年11月24日に頒布された刊行 物である甲第12号証(特開平10-312151号公報。乙6に同じ。
以下「甲12文献」という。)には,次のとおりの発明(以下「甲1225 発明」という。)が記載されている。
「パソコンを備え,対応する英単語の和単語を該英単語と結びつけて憶 8 えるための学習支援装置であり, 前記パソコンが, 完全文字を表示した英単語画面,英単語をスペリング要素毎に分けた パーツ,パーツ関連アニメ,及び他のアニメを表示した連想文画面,並 5 びにパーツ結合を表示する確認画面等,から成る組画の画像データが, 複数個記録された記録媒体と, 前記組画の画像データにより,前記英単語画面,前記連想文画面,及 び前記確認画面の順に表示するディスプレイと, 前記英単語画面,前記連想文画面,及び前記確認画面に対応する語句10 の音声データが記録された記録媒体と, 前記記録媒体から,前記語句の音声データを選択する音声選択手段と, 前記選択された語句の音声データを再生するスピーカと, を含み, 前記ディスプレイが,前記英単語画面,前記連想文画面,及び前記確15 認画面を,対応する語句の再生と同期して表示し, 前記記録媒体が,組画の画像が記録された磁気ディスク,光磁気ディ スク,または半導体メモリである学習支援装置。」 (イ) 甲13発明 本件特許の出願日前の遅くとも2001年(平成13年)4月30日20 に公然と知られており,又は公然と実施されていた学習用具であって, 前記3?ア(ウ)aのとおりである。
(ウ) 甲第14号証 本件特許の出願日前である平成11年7月30日に頒布された刊行 物である甲第14号証(特開平11-202750号公報。以下「甲125 4文献」という。)には,次のとおりの発明(以下「甲14発明」とい う。)が記載されている。
9 「学習者が暗記すべき事項をクイズ形式として表に問題,裏に解答とし た学習カードを順次表示させるカラーモニター並びにエンターキー,矢 印キー,OK,FUZZY,NOキーを配し, 複数の上記学習カードがグループ別に学習装置内部メモリに保存され, 5 表示するカードのグループを選択後,任意のキーを押すことにより, 学習カード表示が入力された順番で表-裏-次カード表と進む通常再生 モードを有する電子手帳型機器の学習装置。」 イ 本件発明と甲12発明の一致点及び相違点 (ア) 一致点10 A コンピューターを備え,対応する語句の記憶対象の内容を該語句と 結びつけて憶えるための学習用具であり, B 前記コンピューターが, B1 複数の画面から成る組画の画像データが,複数個記録された組画 記録媒体と,15 B3 前記複数の画面を順に表示する画像表示手段と, B4 前記複数の画面に対応する語句の音声データが記録された音声 記録媒体と, B5 前記音声記録媒体から,前記語句の音声データを選択する音声選 択手段と,20 B6 前記選択された語句の音声データを再生する音声再生手段と, を含み, C 前記画像表示手段が,前記複数の画面を,対応する語句の再生と同 期して表示する学習用具。
(イ) 相違点25 a 相違点1 本件発明は,対応する語句の記憶対象の内容が,「対応する語句が 10 存在する原画の形態」であるのに対し,甲12発明は,対応する英単 語の和単語である点。
b 相違点2 本件発明は,複数の画面が,「前記原画,該原画の輪郭に似た若し 5 くは該原画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第一の関 連画,並びに,該原画及び第一の関連画に似た若しくは該原画及び第 一の関連画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第二の関 連画」であるのに対し,甲12発明は,完全文字を表示した英単語画 面,英単語をスペリング要素毎に分けたパーツ,パーツ関連アニメ,10 及び他のアニメを表示した連想文画面,並びにパーツ結合を表示する 確認画面等である点。
c 相違点3 本件発明は,「前記組画記録媒体に記録された複数個の組画の画像 データから,一の組画の画像データを選択する画像選択手段」を有す15 るのに対し,甲12発明は,そのようなものを有していない点。
d 相違点4 本件発明は,画像表示手段が,「前記選択された」組画の画像デー タにより,「前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画の 順に」表示するのに対し,甲12発明は,前記組画の画像データによ20 り,前記英単語画面,前記連想文画面,及び前記確認画面の順に表示 する点。
e 相違点5 本件発明は,音声記録媒体が,「前記関連画及び原画」に対応する 語句の音声データが記録されたものであるのに対し,甲12発明は,25 前記英単語画面,前記連想文画面,及び前記確認画面に対応する語句 の音声データが記録されたものである点。
11 f 相違点6 本件発明は,画像表示手段が,「前記第一の関連画,前記第二の関 連画,及び前記原画」を,対応する語句の再生と同期して表示するの に対し,甲12発明は,前記英単語画面,前記連想文画面,及び前記 5 確認画面を,対応する語句の再生と同期して表示する点。
ウ 相違点の容易想到性 (ア) 相違点1,2,5及び6について 甲13発明は,上記相違点1,2,5及び6に係る本件発明の発明特 定事項を備えている。
10 また,甲13発明は,複数のカードと語呂合わせの歌を使用して対応 する都道府県の地図上の形態を前記都道府県の名称と結び付けて憶える ための学習用具であるから,楽しみを感じながら知らず知らずのうちに 容易に,かつ,忘却しにくい状態で暗記するという自明の課題を有する ものである。
15 そして,甲12発明と甲13発明とは,学習用具という共通の技術分 野に属し,共に容易に,かつ,忘却しにくい状態で暗記するという課題 を有するものであるから,甲12発明において,甲13発明を適用する 動機付けがある。
したがって,甲12発明において,甲13発明を適用することにより,20 相違点1,2,5及び6に係る本件発明の発明特定事項とすることは, 当業者が容易に想到し得るものである。
(イ) 相違点3について 甲14発明には,「記録媒体に記録された複数個の画像データのグル ープから,一のグループの画像データを選択する画像選択手段」が示さ25 れている。
そして,甲12発明と甲14発明とは,学習用具という共通の技術分 12 野に属し,共に容易に,かつ,忘却しにくい状態で暗記するという課題 を有するものであるから,甲12発明において,甲14発明を適用する 動機付けがある。
さらに,甲12発明は,「記録媒体に複数個記録された組画の画像デ 5 ータ」との発明特定事項を有するものであるから,甲12発明に甲14 発明の前記画像選択手段を適用すれば,必然的に上記相違点3に係る本 件発明の「前記組画記録媒体に記録された複数個の組画の画像データか ら,一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との発明特定事項 を構成することになる。
10 したがって,甲12発明において,甲14発明を適用することにより, 上記相違点3に係る本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容 易に想到し得るものである。
また,一般にある記憶対象を暗記しようとする場合,暗記しにくい記 憶対象について,暗記作業を幾度となく繰り返して暗記することは,常15 套手段であるから,甲12発明の使用者も,暗記しにくい記憶対象につ いては,暗記作業を幾度となく繰り返していることは,明らかであって, 甲12発明において,暗記しにくい記憶対象を容易に繰り返し作業でき るような手段を設けることは,当業者における創作力の範囲内である。
そして,甲14発明には,「記録媒体に記録された複数個の画像デー20 タのグループから,一のグループの画像データを選択する画像選択手段」 が示されている。
しかも,問題を出し,それに答えさせることが可能なコンピューター 装置において,問題を選択するために,記録媒体に記録された複数個の 画像データから,一の画像データを選択する画像選択手段を備えること25 は,周知の技術事項である。
以上を照らし合わせると,上記相違点3に係る本件発明の発明特定事 13 項とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
(ウ) 相違点4について 甲13発明は,上記相違点4に係る本件発明の「前記第一の関連画, 前記第二の関連画,及び前記原画の順に」表示するとの発明特定事項を 5 備えている。
また,甲14発明は,上記相違点4に係る本件発明の「前記選択され た」画像データとの発明特定事項を備えていることは前記(イ)のとおり である。
そして,前記(ア)及び(イ)のとおり,甲12発明において,甲13発明10 及び甲14発明を適用する動機付けがある。
したがって,甲12発明において,甲13発明及び甲14発明を適用 することにより,上記相違点4に係る本件発明の発明特定事項とするこ とは,当業者が容易に想到し得るものである。
さらに,甲14発明,前記常套手段,及び前記周知の技術事項に照ら15 せば,上記相違点4に係る本件発明の構成のうち「前記選択された」画 像データとの発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るも のである。
エ 小括 以上のとおりであるから,本件発明は,甲12発明に甲13発明及び甲20 14発明を適用し,又は甲12発明に甲13発明,甲14発明,常套手段 及び周知の技術事項を適用することで,当業者が特許出願前に容易に想到 することができたものであるから,本件特許は特許無効審判により無効に されるべきものである。
よって,特許法104条の3第1項により,被控訴人は,本件特許権の25 権利行使ができない。
? 被控訴人の主張 14 争う。
第3 当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の請求には理由がないものと判断する。その理由は後記 1のとおり原判決の補正をし,後記2及び3のとおり控訴人の当審における補 5 充主張及び追加主張に対する判断を加えるほかは,原判決の第4の1ないし3 に記載するとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正 ? 原判決44頁8行目の末尾に「なお,乙6文献は,本件発明の出願過程に おいて,進歩性欠如の拒絶理由通知(甲8)で引用文献とされているもので10 ある。」を加える。
? 原判決54頁5行目の「遂行」を「推考」に改める。
2 控訴人の当審における補充主張に対する判断 ? 争点1(原告製品が充足する本件発明の構成要件)について ア 控訴人は,前記第2の3?のとおり,本件明細書には,2つの関連画の15 実施例が記載されているのみであり,また,請求項には全体がそれによっ て構成されることを意味する「〜から成る」という文言が用いられている し,原告製品における都道府県位置画は,漫画から段階的に原画に近づけ て原画の輪郭と語句を記憶させる機能はなく,当該地方における都道府県 の位置を合わせて記憶するという本件特許とは別の設計思想に基づいて20 組み込まれた画であること等から,都道府県位置画は,構成要件B1にお ける関連画(第一の関連画,第二の関連画)の概念には当てはまらず,構 成要件B1は充足しない旨主張する。
イ しかし,構成要件B1に用いられている「から成る」の文言が,当然に 「第一の関連画」及び「第二の関連画」以外の付加画を更に付加する構成25 を排除すると解するのは相当でない。
引用に係る原判決の第4の1?における説示のとおり,特許請求の範囲 15 及び本件明細書において,本件発明における「組画」を構成する画が原画 1画と関連画2画のみに限定されることを前提とした記載は見当たらな い。ある記憶対象に関する漫画,抽象画及び原画から成る組画は,原画及 び原画に関連する関連事項又は関連像を表現する1又は複数種の関連画 5 から構成されるとされ(【0035】【0036】 ,組画を構成する関連画 , ) の数は,必ずしも2つに限定されておらず,かえって,漫画,抽象画及び 原画のほか,原画に関連するキーワードの文字からなる文字画を加えるこ とも想定されており(【0039】 ,都道府県位置画は,原画に関連する関 ) 連事項又は関連像を表現するものということができる。このような本件発10 明の趣旨に照らせば,本件発明が「第一の関連画」及び「第二の関連画」 以外の付加画を更に付加する構成を排除するものとは認められず,都道府 県位置画のような関連画を付加することも,その構成に含むものと解する のが相当である。
また,原告製品における都道府県位置画は,原告製品に,漫画から段階15 的に原画に近づけて原画の輪郭と語句を記憶させる機能を備えた上で,当 該地方における都道府県の位置を合わせて記憶するという追加機能を備 えさせるものであるから,都道府県形状画についての追加情報を学習者に 提供するための付加的な画ということができ,原告製品が本件発明と別個 の設計思想に基づくものということもできない。
20 ウ よって,原告製品を使用したコンピューターは,本件発明の構成要件B 1を充足するものというべきである。
? 争点2(均等侵害の成否)について ア 第1要件について (ア) 控訴人は,前記第2の3?ア(ア)のとおり,補正前請求項1に構成要25 件B2を新たに付加して限定して補正した経緯及び上記構成要件B2に より,コンピューターによる画像の選択によって,覚えにくい記憶対象 16 に関する組画を繰り返し選択して表示することや既に記憶した記憶対象 の組画を除外した残りの組画を選択して表示すること等が可能となり, 学習能率の向上にも寄与するとしているという作用効果を奏することに 鑑みると,本件発明の本質的部分には,学習者が記憶対象とする一の組 5 画を任意に選択してコンピューターの処理によってこれを繰り返し学習 できるようにしていることも含まれると主張する。
しかし,甲11文献には,ビデオテープ等による再生等も記載されて いるのであり(5頁左欄上段10行目〜16行目) 控訴人が主張するよ , うに「画像選択手段」を「従来技術に見られない特有の技術的思想を構10 成する特徴的部分」に含めるべき理由はないといえ,引用に係る原判決 の第4の2?ウにおける説示のとおり,この点に関する控訴人の主張は 採用できない。
(イ) 控訴人は,前記第2の3?ア(イ)のとおり,本件発明の本質的部分を 原判決のように理解するとしても,原告製品の構成bは,都道府県位置15 画を含めた4画をセット画として1単位としており,イラスト画,形状・ イラスト画,都道府県形状画の3画を1単位として媒体に記録するもの ではないこと,原告製品は,画像表示手段によって表示するに際しても, 4画を表示することと都道府県位置画に対応する語句が存在しないと いう点で,本件発明とは本質的部分において相違すると主張する。
20 しかし,引用に係る原判決第4の2?イ及び前記?イにおいて説示す るとおり,原告製品を使用したコンピューターにおける都道府県位置画 は,第一の関連画,第二の関連画,原画がこの順に表示され,これに対 応する語句の音声データと同期して再生された後に,付加的なものとし て表示されるものにすぎないというべきであり,本件発明もこのような25 構成を含んでいるものと解されるから,控訴人主張の点をもって,本件 発明と原告製品を使用したコンピューターが本質的に相違するとはいえ 17 ない。
(ウ) 控訴人は,前記第2の3?ア(ウ)のとおり,原判決の認定する本件発 明の本質的部分は,甲13発明を,単にコンピューターを使用する物の 発明としたものにすぎず,このように貢献度の低い発明の保護範囲は, 5 特許請求の範囲と同義に限定されると主張する。
甲13発明に係る学習用具は,各都道府県の形態の画に似た輪郭を有 する漫画が描かれた第一の関連カード,第一の関連カードに書かれた漫 画を連想させる抽象画が描かれた第二の関連カードと,別売りの日本地 理カード(都道府県の形が示されている。)を利用し,歌に合わせて第一10 の関連カード,第二の関連カード,日本地理カードを見せて,都道府県 名と地形を覚えるためのものであり,歌詞は,各カードに対応する語呂 合わせとなっており,カセットテープによって再生されるというもので ある。また,証拠(甲17ないし21,26の1及び2,27)によれ ば,甲13発明に係る学習用具は,遅くとも平成12年4月に,被控訴15 人により販売されていたことが認められる。そうすると,そのころ,控 訴人が前記第2の3?ア(ウ)aで主張する甲13発明が公然実施されて いたものと認められる。
しかし,甲13発明を新たに従来技術として考慮したとしても,本件 発明におけるような,特定の語句の再生と特定の画像の表示とを同期す20 る点は,課題の解決手段における特徴的原理であって,甲13発明を含 む従来技術には存在しない本質的部分であると認定することができる。
したがって,貢献度の低い発明の保護範囲は,特許請求の範囲と同義に 限定されるべきであるとする控訴人の主張の当否については措くとして も,本件発明が貢献度の低い発明であると決めつけることはできないか25 ら,控訴人の主張は採用し得ない。
イ 第2要件について 18 (ア) 控訴人は,前記第2の3?イのとおり,本件発明に原告製品を置き 換えた場合,構成要件B2の「画像選択手段」によって達成される効果 とは全く異なることとなるから,原告製品は均等の第2要件を充足しな いと主張する。
5 (イ) しかし,均等の第2要件における「作用効果」は,特許発明の出願時 における従来技術と特許発明との対比により確定されるものであって, 基本的には,明細書の「発明の効果」の項の記載に基づいて確定される べきものであるところ,本件明細書の「発明の効果」の欄には, 「楽しみ を感じながら知らず知らずに特定の国家や自治体,行政単位に関連する10 地域の地図上の形状,又は該地域を象徴する国旗,シンボルマーク等の 模様,等の記憶対象が憶えられる。 ( 」 【0059】)と明記されており, 原告製品を使用したコンピューターにおいても,イラスト画,形状・イ ラスト画,都道府県形状画が,これに対応する語句の音声データと同期 して再生されることで,都道府県の形状を覚えることができるのであっ15 て,本件発明の効果を奏するものということができ,組画を地方単位で しか選択できない(都道府県単位で選択できない)からといって,上記 効果を奏しないとはいえない。
また,原告製品を使用したコンピューターにおいて,イラスト画,形 状・イラスト画,都道府県形状画以外に都道府県位置画が存在すること20 は,既に説示したとおり,本件発明の効果を奏した上で付加的な効果を 生じさせるものにすぎず,均等の第2要件を充足しないという根拠とな るものではない。
ウ 第4要件について 控訴人は,前記第2の3?ウのとおり,原告製品を使用したコンピュー25 ターは,関連各文献,常套手段及び周知の技術事項に基づいて,その発明 の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易 19 に推考することができたと主張するが,同主張が採用できないことは後記 3のとおりである。
エ 第5要件について (ア) 控訴人は,前記第2の3?エ(ア)のとおり,本件特許の出願過程の経 5 緯から客観的,外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願 している被控訴人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構 成を削除したのであるから,画像選択手段を含むコンピューターにより 出力されるという構成においても「逐次又は一斉に表示」という構成を 意識的に除外したと主張する。
10 しかし,当該出願経過によれば,被控訴人は,明確性要件違反の拒絶 理由(甲8)に対し,本件補正により,コンピューターを構成に含む学 習用具と記載し,また,被控訴人が甲第10号証と併せて提出した意見 書(甲9)3頁の「(4)記載不備の拒絶への対処」では「作業の主体を 「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除致しました。」としている15 のであり,他の部分も削除したことを外形的に示す説明はない。
また, 「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との構成を付 加した点について,客観的には,組画を構成する複数の画のうち任意の 1つの画像データ(ユニット画)を選択すること(例えば第一の関連画 のみを選択すること)が意識的に除外されているとはいい得るとしても,20 二以上の組画の画像データを選択することが意識的に除外されたとは いえない。また, 「逐次」の文言が用いられている本件明細書【0037】, 【0038】及び【0052】 において,「逐次」及び「一斉」の両方 が用いられているのは特定の組画を構成するユニット画について記載 している【0038】に「特定の組画を構成するユニット画は,全て一25 斉に表示してもよいが,前述のように逐次表示するほうが,学習効果が 増して好ましい。」とあるのみであるから,本件補正前の「それぞれの前 20 記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対 象を記憶する」との記載は,特定の組画を構成するユニット画を逐次又 は一斉に表示することを指していると解するべきであり,「逐次又は一 斉に表示」という構成を削除したからといって,複数の組画を選択する 5 構成を除外する意図であったと認めることはできない。
さらに,被控訴人が,上記意見書で進歩性に関して主張したところは, 本件発明が,@対応する語句が存在する原画の形態を,その形態に対応 する語句と結びつけて記憶することを目的すること,A関連画の輪郭が, 原画に類似等しており,一定の意味内容を有することから,学習対象者10 が,意味内容と原画との関連付けにより,記憶することに苦痛を感じる ことなく楽しみを感じながら,原画を記憶することができること,B関 連画及び原画に対応する語句の音声データを再生し,関連画及び原画の 表示は対応する語句の再生と同期して行うこと,C原画又は原画に対応 する語句を思い出すことを目的とするため,関連画の表示及び関連画に15 対応する語句の再生を行った後に,原画の表示及び原画に対応する語句 の再生を行うこと,D第一の関連画,第二の関連画,及び原画の順に表 示し,しかも,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を, 対応する語句の再生と同期して表示することにより,4通りのルートに よって原画及び対応する語句を思い出すことができることを挙げるもの20 であるが(甲9),これらの特徴は,複数の組画を選択する構成と矛盾す るものではなく,これを意識的に除外する旨を表示したものとはいえな い。
(イ) 控訴人は,前記第2の3?エ(イ)のとおり,被控訴人が補正において, 構成要件B2の画像選択手段の構成を加えた点について,複数の組画を25 選択する構成を除外しない意図であるならば「一又は複数の組画」や単 に「組画」等といった記載にすることは極めて容易であり,本件特許の 21 出願経過を客観的,外形的に見るならば, 「一の組画の画像データを選択 する画像選択手段」を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意 識的に除外したことになると主張する。
しかし,仮に,他により容易な記載方法があったとしても,出願人が, 5 補正時に,これを特許請求の範囲に記載しなかったからといって,それ だけでは,第三者に,対象製品等が特許請求の範囲から除外されるとの 信頼を生じさせるとはいえない。客観的にみて, 「一の組画の画像データ を選択する」との記載が,組画を構成する画が維持された状態で選択す る限りにおいては,二以上の組画の画像データを選択することを意識的10 に除外するものとまでは認められないことは,前記(ア)のとおりである。
したがって,控訴人の主張は採用できない。
3 控訴人の追加主張に対する判断 ? 引用発明について ア 甲12発明について15 (ア) 甲12文献(乙6文献)には,別紙のような記載がある。
(イ) (ア)によれば,甲12文献には,次のとおりの甲12発明(原判決に おける乙6発明)が記載されていると認めることができる。
「パソコンを備え,対応する英単語の和単語を該英単語と結びつけて憶 えるための学習支援装置であり,20 前記パソコンが, 完全文字を表示した英単語画面,並びに英単語をスペリング要素毎に 分けたパーツ,パーツ関連アニメ,及び他のアニメを表示した連想文画 面,並びにパーツ結合を表示する確認画面等,並びに和単語を表示した 正答画面等,から成る組画の画像データが,複数個記録された記録媒体25 と, 前記組画の画像データにより,前記英単語画面,前記連想文画面,前 22 記確認画面及び前記正答画面の順に表示するディスプレイと, 前記英単語画面,前記連想文画面,前記確認画面及び前記正答画面に 対応する語句の音声データが記録された記録媒体と, 前記記録媒体から,前記語句の音声データを選択する音声選択手段と, 5 前記選択された語句の音声データを再生するスピーカと, を含み, 前記ディスプレイが,前記英単語画面,前記連想文画面,前記確認画 面及び前記正答画面を,対応する語句の再生と同期して表示し, 前記記録媒体が,組画の画像が記録された磁気ディスク,光磁気ディ10 スク,または半導体メモリである学習支援装置。」 イ 甲13発明について 前記第2の3?ア(ウ)aのとおりである。
ウ 甲14発明について (ア) 甲14文献には以下のような記載がある。
15 【請求項1】学習者が暗記すべき事項をクイズ形式として表に問題,裏 に解答とした学習カードを自ら作成し,その内容を順次表示させるカラ ーモニター並びにエンターキー,矢印キー,OK,FUZZY,NOキ ーを配した電子手帳型機器の学習装置。
【請求項2】本学習装置上で直接入力する方法,マルチメディアパーソ20 ナルコンピューター,ワードプロセッサ,ROMカードなど外部入力機 器で作成されたデータを転送する方法,専用カードリーダー(スキャナ ー)またはデジタルカメラで入力する方法により裏,表とも作成された 複数の学習カードがグループ別に学習装置内部メモリに保存され,保存 されたカードには,カードイメージを付加し,記憶内容のアウトプット25 を容易にするための手がかりとして,文字色を変更する機能及び背景, イラスト,付箋を貼付させる機能を持つ学習装置。
23 【請求項3】請求項1及び2の学習装置において,表示するカードのグ ループを選択後,任意のキーを押すことにより,学習カード表示が入力 された順番で表-裏-次カード表と進む通常再生モードによる学習方法。
(イ) (ア)によれば,甲14文献には,前記第2の4?ア(ウ)で控訴人が主 5 張するとおりの甲14発明が記載されているものと認められる。
? 引用に係る原判決第2の2の前提事実及び前記?アによれば,本件発明と 甲12発明の一致点及び相違点は,以下のとおりであると認めることができ る。
ア 一致点10 A コンピューターを備え,対応する語句の記憶対象の内容を該語句と結 びつけて憶えるための学習用具であり, B 前記コンピューターが, B1 複数の画面から成る組画の画像データが,複数個記録された組画記 録媒体と,15 B3 前記複数の画面を順に表示する画像表示手段と, B4 前記複数の画面に対応する語句の音声データが記録された音声記 録媒体と, B5 前記音声記録媒体から,前記語句の音声データを選択する音声選択 手段と,20 B6 前記選択された語句の音声データを再生する音声再生手段と, を含み, C 前記画像表示手段が,前記複数の画面を,対応する語句の再生と同期 して表示する学習用具。
イ 相違点25 (ア) 相違点1 本件発明は,対応する語句の記憶対象の内容が,原画の形態と,原画 24 に対応する語句であるのに対し,甲12発明は,英単語と,英単語に対 応する和単語である点。
(イ) 相違点2 本件発明は,複数の画面が, 「前記原画,該原画の輪郭に似た若しくは 5 該原画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第一の関連画, 並びに,該原画及び第一の関連画に似た若しくは該原画及び第一の関連 画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第二の関連画」であ るのに対し,甲12発明は,完全文字を表示した英単語画面,並びに英 単語をスペリング要素毎に分けたパーツ,パーツ関連アニメ,及び他の10 アニメを表示した連想文画面,並びにパーツ結合を表示する確認画面, 並びに和単語を表示した正答画面等である点。
(ウ) 相違点3 本件発明は,「前記組画記録媒体に記録された複数個の組画の画像デ ータから,一の組画の画像データを選択する画像選択手段」を有するの15 に対し,甲12発明は,そのようなものを有しているか否かが明確では ない点。
(エ) 相違点4 本件発明は,画像表示手段が, 「前記選択された」組画の画像データに より, 「前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画の順に」表20 示するのに対し,甲12発明は,前記組画の画像データにより,前記英 単語画面,前記連想文画面,前記確認画面及び前記正答画面の順に表示 する点。
(オ) 相違点5 本件発明は,音声記録媒体が, 「前記関連画及び原画」に対応する語句25 の音声データが記録されたものであるのに対し,甲12発明は,前記英 単語画面,前記連想文画面,前記確認画面及び前記正答画面に対応する 25 語句の音声データが記録されたものである点。
(カ) 相違点6 本件発明は,画像表示手段が, 前記第一の関連画, 「 前記第二の関連画, 及び前記原画」を,対応する語句の再生と同期して表示するのに対し, 5 甲12発明は,前記英単語画面,前記連想文画面,前記確認画面及び前 記正答画面を,対応する語句の再生と同期して表示する点。
? 相違点に係る構成の容易想到性について ア 相違点4の容易想到性について検討する。
甲12発明は英単語と,それに対応する和単語を結びつけて憶えるため10 のものであるところ,具体的な手段として,完全文字を表示した「英単語 画面」 英単語をスペリング要素毎に分けたパーツ, , パーツ関連アニメ及び 他のアニメを表示した「連想文画面」,パーツ結合を表示する「確認画面」 並びに和単語を表示した「正答画面」等から成る組画の画像データにより, 「英単語画面」 「連想文画面」 「確認画面」及び「正答画面」の順で表示 , ,15 するように構成されている。したがって,結びつけて憶える対象の一方で ある完全文字(英単語)を英単語画面として最初に表示し,英単語をスペ リング要素毎にいったん分ける連想文画面及びパーツ結合を示す確認画 面を表示した後に,結びつけて憶える対象の他方である和単語を正答画面 として最後に表示する構成により,効率的な暗記作業の支援 【0001】 ( )20 を可能にするものである。なお,甲12文献には,甲13発明のように憶 える対象の一方(特に英単語)を表示せずに音声のみを再生するように構 成することついての記載はない(甲12発明は「対応する英単語の和単語 を該英単語と結びつけて憶えるための学習支援装置」であるから,英単語 については,音声の再生だけでなく,いずれかの段階で完全文字(スペリ25 ング)で表示することが必須と考えられる。 。
) 他方,甲13発明は,第一の関連カード,第二の関連カード及び結びつ 26 けて憶える対象の一方である都道府県形状カードの順に表示し,結びつけ て憶える対象の他方である都道府県の名称はカードではなく,語呂合わせ の歌の歌詞の一部として音声で再生することで両者を憶えることができ るように構成した学習用具である。
5 この両者を比較すると,「対応する語句の記憶対象の内容を該語句と結 びつけて憶えるための学習用具」という観点に照らせば,結びつける対象 の一方(英単語)を最初に表示し,もう一方(和単語)は正答画面として 最後に表示する甲12発明と,結びつける対象の一方(都道府県の地図上 の形態)を最初ではなく最後に表示し,対象の他方(都道府県の名称)も10 最後に音声のみを再生する甲13発明とでは,対象を憶えるという課題解 決のための原理に係る手段(具体的には,憶える対象の一方を最初に表示 するか否か,憶える対象の他方は表示せずに音声のみとするか否か)にお いて大きく異なるというべきである。
そうすると,甲12発明において甲13発明を適用するに際して,憶え15 る対象の一方を最初に表示せず,憶える対象の他方も表示せずに最後に音 声のみを再生することで,相違点4に係る本件発明の構成とすることは, 憶え方を基本的に変更することになり,甲12発明に甲13発明を適用す る動機付けがあるとは認められないというべきである。
イ 小括20 以上のとおりであって,甲12発明に,甲13発明を適用することによ り,上記相違点4に係る本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が 容易に想到し得るものではない以上,画像選択手段に係る甲14発明の適 用に関する容易想到性等について判断するまでもなく,上記相違点4に係 る構成の容易想到性を認めることはできない。したがって,他の相違点に25 ついて判断するまでもなく,本件発明は,甲12発明に甲13発明及び甲 14発明を適用し,又は甲12発明と甲13発明,甲14発明,控訴人主 27 張の常套手段及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得る ものではなく,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな いものとはいえない。よって,被控訴人が,同法104条の3第1項によ り,本件特許権の権利行使ができないとはいえない。
5 第4 結論 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却した原判決は相 当である。したがって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文の とおり判決する。
裁判長裁判官 15菅野雅之
裁判官 20本吉弘行
裁判官 25岡山忠広
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