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関連ワード 製造方法 /  発明の詳細な説明 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 641号 特許取消決定取消請求事件
原告 ユニ・チャーム株式会社
訴訟代理人弁理士 白浜吉治
同 小林義孝
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 鈴木 美知子
同 杉原進
同 高木進
同 宮川久成
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/03/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−72452号事件について平成14年11月6日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「使い捨てパンツの製造方法」とする特許第3143132号発明(平成3年1月28日特許出願,平成12年12月22日設定登録,以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
平成13年9月6日,本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議2001-72452号事件として特許庁に係属したところ,原告は,平成14年5月21日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
特許庁は,同特許異議事件について審理した上,同年11月6日,「訂正を認める。特許第3143132号の請求項5に係る特許を取り消す。同請求項1ないし4に係る特許を維持する。」との決定(以下,同決定中『特許第3143132号の請求項5に係る特許を取り消す。』との部分を「本件決定」という。)をし,その謄本は,同月25日,原告に送達された。
(2) 原告は,本件決定の取消しを求める本訴を提起した後,平成15年2月17日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ,特許庁は,同請求を訂正2003-39030号事件として審理した上,同年5月19日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は,同月29日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 設定登録時の特許請求の範囲【請求項5】の記載 a.組み立てステーションへ移動する第1連続ウエブの内面中央域に第1および第2連続弾性部材を連続的に導入して,該第1連続弾性部材をサインカーブ状に配置して接着し,かつ,該第2連続弾性部材をサインカーブ状にしかも該第1連続弾性部材のサインカーブ状の凹曲部および凸曲部と該第2連続弾性部材の凸曲部および凹曲部とが前記第1連続ウエブの幅方向に対向するように配置して接着するとともに,該第1および第2連続弾性部材を交差させることで,該第1および第2連続弾性部材の各凹曲部と各凸曲部とで前記第1連続ウエブの長さ方向へ並列する各環状部を形成すること; b.前記第1連続ウエブの前記内面に組み立てステーションへ移動する第2連続ウエブの内面を重ね合せ接着して連続複合ウエブを構成すること; c.前記連続複合ウエブをその長さ方向中心線を介して二つに折り畳むこと; d.前記第1および第2連続弾性部材で形成された前記各環状部であって前記連続複合ウエブの長さ方向における一つおきの該各環状部の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除してレッグホール用切欠を形成すること; e.前記折り畳んだ連続複合ウエブをその幅方向へ横切るとともに前記レッグホール用切欠の中央部とウエストラインに相当する前記複合ウエブの一側縁との間に帯状シール域を設けて連続パンツを構成すること;および f.前記連続パンツを前記帯状シール域において前記連続複合ウエブの長さ方向に二分されるように該連続パンツの幅方向に分断して個々のパンツをうること;を含む使い捨てパンツの製造方法において; g.前記a工程における前記第1および第2連続弾性部材による前記環状部を,前記第1連続ウエブの長さ方向へ大きい環状部と小さい環状部とを互に配列するように形成するとともに,前記第1連続ウエブに接着する前記環状部を前記大きい環状部とすること; 前記d工程における前記レッグホール用切欠の形成を,前記第1および第2連続弾性部材による前記大きい環状部の各々の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除することでなすこと;および 前記bの工程を終えるまでの間または該工程の後,前記第1および第2連続弾性部材の交差部の間の該部材による前記小さい環状部の各々の該部材部分を切断して該部分を収縮させること; を特徴とする前記製造方法
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲【請求項5】の記載 a.組み立てステーションへ移動する第1連続ウエブの内面中央域に第1および第2連続弾性部材を連続的に導入して,該第1連続弾性部材をサインカーブ状に配置して接着剤を介して 接着し,かつ,該第2連続弾性部材をサインカーブ状にしかも該第1連続弾性部材のサインカーブ状の凹曲部および凸曲部と該第2連続弾性部材の凸曲部および凹曲部とが前記第1連続ウエブの幅方向に対向するように配置して接着剤を介して 接着するとともに,該第1および第2連続弾性部材を交差させることで,該第1および第2連続弾性部材の各凹曲部と各凸曲部とで前記第1連続ウエブの長さ方向へ並列する各環状部を形成すること; b.前記第1連続ウエブの前記内面に組み立てステーションへ移動する第2連続ウエブの内面を重ね合せ接着して連続複合ウエブを構成すること; c.前記連続複合ウエブをその長さ方向中心線を介して二つに折り畳むこと; d.前記第1および第2連続弾性部材で形成された前記各環状部であって前記連続複合ウエブの長さ方向における一つおきの該各環状部の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除してレッグホール用切欠を形成すること; e.前記折り畳んだ連続複合ウエブをその幅方向へ横切るとともに前記レッグホール用切欠の中央部とウエストラインに相当する前記複合ウエブの一側縁との間に帯状シール域を設けて連続パンツを構成すること;および f.前記連続パンツを前記帯状シール域において前記連続複合ウエブの長さ方向に二分されるように該連続パンツの幅方向に分断して個々のパンツをうること;を含む使い捨てパンツの製造方法において; g.前記a工程における前記第1および第2連続弾性部材による前記環状部を,前記第1連続ウエブの長さ方向へ大きい環状部と小さい環状部とを互に配列するように形成するとともに,前記第1連続ウエブに接着する前記環状部を前記大きい環状部とすること; 前記d工程における前記レッグホール用切欠の形成を,前記第1および第2連続弾性部材による前記大きい環状部の各々の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除することでなすこと;および 前記bの工程 の後,前記第1および第2連続弾性部材の交差部の間の該部材による前記小さい環状部の各々の該部材部分を切断して該部分を収縮させること; を特徴とする前記製造方法。(注,下線が訂正部分。) (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲【請求項5】の記載 a.組み立てステーションへ移動する第1連続ウエブの内面中央域に第1および第2連続弾性部材を連続的に導入して,該第1連続弾性部材をサインカーブ状に配置して接着剤 を介して 接着し,かつ,該第2連続弾性部材をサインカーブ状にしかも該第1連続弾性部材のサインカーブ状の凹曲部および凸曲部と該第2連続弾性部材の凸曲部および凹曲部とが前記第1連続ウエブの幅方向に対向するように配置して接着剤 を介して接着するとともに,該第1および第2連続弾性部材を交差させることで,該第1および第2連続弾性部材の各凹曲部と各凸曲部とで前記第1連続ウエブの長さ方向へ並列する各環状部を形成すること; b.前記第1連続ウエブの前記内面に組み立てステーションへ移動する第2連続ウエブの内面を重ね合せ接着して連続複合ウエブを構成すること; c.前記連続複合ウエブをその長さ方向中心線を介して二つに折り畳むこと; d.前記第1および第2連続弾性部材で形成された前記各環状部であって前記連続複合ウエブの長さ方向における一つおきの該各環状部の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除してレッグホール用切欠を形成すること; e.前記折り畳んだ連続複合ウエブをその幅方向へ横切るとともに前記レッグホール用切欠の中央部とウエストラインに相当する前記複合ウエブの一側縁との間に帯状シール域を設けて連続パンツを構成すること;および f.前記連続パンツを前記帯状シール域において前記連続複合ウエブの長さ方向に二分されるように該連続パンツの幅方向に分断して個々のパンツをうること;を含む使い捨てパンツの製造方法において; g.前記a工程における前記第1および第2連続弾性部材による前記環状部を,前記第1連続ウエブの長さ方向へ大きい環状部と小さい環状部とを互に配列するように形成するとともに,前記第1連続ウエブに接着する前記環状部を前記大きい環状部とすること; 前記d工程における前記レッグホール用切欠の形成を,前記第1および第2連続弾性部材による前記大きい環状部の各々の内側に位置する前記連続複合ウエブ部分を切除することでなすこと;および 前記bの工程 の後,前記第1および第2連続弾性部材の交差部の間の該部材による前記小さい環状部の各々の該部材部分を切断して該部分を収縮させること; を特徴とする前記製造方法。(注,下線が訂正部分。なお,二重下線は,上記(2)との相違部分である。) 3 本件決定の理由 本件決定は,本件訂正請求に係る訂正を認め,本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲【請求項5】の記載(上記2(2))によれば,同項に係る発明は,第1連続ウエブ内面に接着剤を塗布して接着域を形成する方法以外の,例えば,第1及び第2連続弾性部材に接着剤を付与した状態で第1連続ウエブに接着する方法をも含んでいることになるが,本件明細書の発明の詳細な説明には,【請求項5】に係る発明においても,第1連続ウエブの内面中央域に第1及び第2連続弾性部材を接着剤を介して接着する方法として,従来技術のような,連続弾性部材に接着剤を塗布した状態で連続ウエブに接着する方法は含まれないことが記載されているから,本件明細書の特許請求の範囲【請求項5】の記載は,発明の詳細な説明に記載したもの以外の事項を含んでいることが明らかであって,特許法36条5項1号(特許法等の一部を改正する法律〔平成6年法律第116号〕附則6条2項の規定により,なお従前の例によるとされる,同法による改正前の特許法36条5項1号〔以下「旧36条5項1号」という。〕の趣旨と解される。)に規定する要件を満たさず,【請求項5】に係る本件特許は,拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであり,同附則14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過規定を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により,取り消されるべきものであるとした。
当事者の主張
1 原告 本件決定が,本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲【請求項5】の記載(上記第2の2(2))を前提に旧36条5項1号所定の記載要件の充足性を判断した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲【請求項5】の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。そして,この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから,本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲【請求項5】の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲【請求項5】の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがない。
そうすると,本件決定が,本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲【請求項5】の記載(上記第2の2(2))を前提に旧36条5項1号所定の記載要件の充足性を判断したことは,結果的に誤りであったことに帰し,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴