関連審決 |
無効2019-800050 |
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事件 |
令和
2年
(行ケ)
10053号
審決取消請求事件
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5 原告ネオケミア株式会社 同訴訟代理人弁護士 高橋淳 宮川利彰 10 被告 株式会社メディオン・ リサーチ・ラボラトリー ズ 同訴訟代理人弁護士 山田威一郎 15 柴田和彦 同訴訟代理人弁理士 田中順也 水谷馨也 迫田恭子 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2021/07/20 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
20 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告25 特許庁が無効2019-800050号事件について令和2年4月2日にし た審決を取り消す。 1 2 被告 ? 本案前の答弁 本件訴えを却下する。 ? 本案の答弁 5 主文第1項と同旨 |
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事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) ? 被告は,平成11年5月6日に出願した特許出願(特願平11-1259 03号)の一部を分割して出願した特許出願(特願2007-15421610 号)の一部を更に分割して出願した特許出願(特願2011-8226号) の一部を分割して,平成25年4月26日,発明の名称を「二酸化炭素経皮・ 経粘膜吸収用組成物」とする発明について新たな特許出願(特願2013- 93612号。以下「本件出願」という。)をし,平成26年11月7日,特 許権の設定登録(特許第5643872号。請求項の数4。以下,この特許を15 「本件特許」といい,これに基づく特許権を「本件特許権」という。)を受け た。 本件特許権の存続期間は,令和元年5月6日をもって満了している。 ? 原告は,令和元年7月31日,本件特許について特許無効審判を請求した。 特許庁は,上記請求を無効2019-800050号事件として審理を行20 い,令和2年4月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以 下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年4月10日,原告に送達さ れた。 ? 原告は,令和2年4月24日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。 25 2 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである 2 (甲75。以下,請求項の番号に応じて,請求項1に係る発明を「本件発明1」 などという。)。 【請求項1】 気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からな 5 るパック化粧料を得るためのキットであって, 水及び増粘剤を含む粘性組成物と, 炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤とを含み, 前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が,前記粘性組成物と,前記複合顆 粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤とを混合することにより得られ,前記二酸10 化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の前記増粘剤の含有量が1〜15質量%で ある, キット。 【請求項2】 前記複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤が,酸として,クエン酸,コ15 ハク酸,酒石酸,乳酸,及びリン酸ニ水素カリウムからなる群から選択された少 なくとも1種を含む,請求項1に記載のキット。 【請求項3】 前記粘性組成物が,増粘剤として,天然高分子,半合成高分子,及び合成高分 子からなる群から選択された少なくとも1種を含む,請求項1または2に記載20 のキット。 【請求項4】 前記粘性組成物が,増粘剤として,アルギン酸ナトリウム,カルボキシビニル ポリマー,カルボキシメチルスターチナトリウム,カルボキシメチルセルロー スナトリウム,キサンタンガム,クロスカルメロースナトリウム,結晶セルロー25 ス,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,及 びポリビニルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種を含む,請 3 求項1〜3のいずれかに記載のキット。 3 本件審決の要旨 ? 本件審決の理由の要旨は,本件発明1ないし4は,甲第1号証(「エキスパ ートナース MOOK 16 最新!褥瘡治療マニュアル 創面の色に着目 5 した治療法」,照林社,1993年12月10日。以下,書証については単に 「甲1」などと略記する。 に記載された発明に公知技術等を適用することに ) より,当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから,本件特許 を無効とすることはできないというものである。 ? 本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。),10 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア 甲1発明 「褥瘡を治療又は予防するために使用される組成物を得るための剤であ って, 炭酸水素ナトリウムを含み,湯に溶かして炭酸ガスを発生させるもので15 ある入浴剤バブを割った剤であり, 前記組成物は,前記入浴剤バブを割った剤を湯に完全に溶かした組成物 である,剤。」 イ 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点 (ア) 一致点20 「二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からな る組成物を得るためのものであって,炭酸塩を含むもの。」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 「二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物から25 なる組成物」が,本件発明1においては,「増粘剤の含有量が1〜15 質量%である」「気泡状の二酸化炭素を含有する」「パック化粧料」で 4 あるのに対し,甲1発明においては,「入浴剤バブを割った剤を湯に完 全に溶かした組成物」である「褥瘡を治療又は予防するために使用され る組成物」である点。 b 相違点2 5 「炭酸塩を含むもの」が,本件発明1においては,「水及び増粘剤を 含む粘性組成物と,炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒剤,ま たは複合粉末剤と,を含み,前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物 が,前記粘性組成物と,前記複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末 剤とを混合することにより得られ」る,「キット」であるのに対し,甲10 1発明においては,「炭酸水素ナトリウムを含み,湯に溶かして炭酸ガ スを発生させるものである入浴剤バブを割った剤」である点。 ? 本件発明1について,相違点の容易想到性についての本件審決の判断理由 の要旨は以下のとおりである。 ア 相違点1について15 (ア) 甲1発明の「褥瘡を治療又は予防するために使用される組成物」と, 本件発明1の「パック化粧料」とは,技術分野が異なり,適用対象や適用 目的なども異なる。 (イ) 本件発明1における二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物は,増粘 剤を1〜15重量%含有することにより,気泡状の二酸化炭素を保持で20 きる程度の粘性を有するものと解される。 甲1発明が,組成物中に含まれる炭酸ガスの血行改善効果と,湯の温熱 作用による血行改善効果を利用して,褥瘡の治療又は予防を図ろうとす るものであることを踏まえると,甲1発明の当該組成物中には,当然,血 行改善効果が期待できる濃度で炭酸ガスが存在していると考えるのが相25 当であり,甲1発明において,当該組成物中の炭酸ガス濃度が褥瘡の治 療又は予防に不十分であり,バブを湯に完全に溶かす際や使用時に拡散 5 する炭酸ガスを極力保持する必要があるとの課題が認識できるとはいえ ない。 (ウ) 温湿布する際に,保温と炭酸ガスの拡散防止のためにビニールを当 てることが記載されている文献はあるが,これらは,入浴剤バブを溶か 5 した湯を特定の態様で用いる場合に,別の部材を用いることで炭酸ガス の保持を図るものにすぎず,入浴剤バブを溶かした湯自体に,炭酸ガス を保持するための手段を採用することは記載も示唆もない。そうすると, 甲1発明の当該組成物において,炭酸ガスを気泡状で保持するための手 段を採用するという課題が認識できるとはいえない。 10 (エ) 甲1発明の「入浴剤バブを割った剤を湯に完全に溶かした組成物」 に,増粘剤を1〜15質量%添加し,二酸化炭素を気泡状で保持できる 程度の粘性を付与すると,それによって足浴や温湿布とするに当たり使 用感が大きく変化してしまい,人工炭酸泉であるバブ浴の概念とかけ離 れたものとなることは明らかであるから,上記のような構成とすること15 には阻害要因がある。 (オ) (ア)ないし(エ)によれば,甲1発明の「入浴剤バブを割った剤を湯 に完全に溶かした組成物」である「褥瘡を治療又は予防するために使用 される組成物」に,増粘剤を1〜15重量%添加して,気泡状の二酸化炭 素を含有するパック化粧料とし,相違点1に係る本件発明1の発明特定20 事項を採用することを,当業者が容易に想到することができたとはいえ ない。 イ 相違点2について 相違点2は,相違点1の「増粘剤の含有量が1〜15質量%である」「気 泡状の二酸化炭素を含有するパック化粧料」とするための具体的な組成に25 関するものであるから,甲1発明において,相違点1に係る本件発明1の 発明特定事項を採用することを当業者が容易に想到することができたとは 6 いえない以上,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を採用すること も,当業者が容易に想到することができたとはいえない。 ? 本件発明2ないし4の進歩性についての本件審決の判断理由の要旨は以下 のとおりである。 5 本件発明2ないし4については,いずれも本件発明1の全ての発明特定事 項を含むものであるから,本件発明1について説示したのと同様の理由によ り,甲1に記載された発明に公知技術等を適用することにより,当業者が容 易に発明をすることができたものとはいえない。 4 原告の破産10 原告は,令和2年11月19日に,神戸地方裁判所に破産申立てを行い,令和 2年12月7日午後3時に破産手続開始決定(同裁判所令和2年(フ)第971 号。以下「本件破産開始決定」という。)がされ,破産管財人が選任された。 破産管財人は,令和3年4月12日,本件訴訟における原告に係る地位の放 棄の許可を同裁判所に申請し,同月13日,許可がされた。 15 同年5月10日,原告の株主総会において,Aが清算人に選任された。 |
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当事者の主張
1 訴えの利益について(被告の本案前の主張) ? 被告の主張 ア 無効審判の請求人は,利害関係人に限られているところ(特許法12320 条2項),特許権消滅後の特許無効審判請求を不成立とする審決に対する 審決取消訴訟の訴えの利益に関しては,知的財産高等裁判所平成30年4 月13日判決(平成28年(行ケ)第10260号)が,「訴えの利益が消 滅したというためには,客観的に見て,原告に対し特許権侵害を問題にさ れる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり,特許権の存25 続期間が満了し,かつ,特許権の存続期間中にされた行為について,原告に 対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科された 7 りする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必 要であると解すべきである。」と判示している。 イ 原告は,本件特許権の実施行為に相当する行為を行っていないと考えら れ,被告は,本件特許権に基づく損害賠償請求権ないし不当利得返還請求 5 権を有していない。 仮に,原告が,本件特許権の実施行為に相当する行為を行っており,か つ,本件特許権に基づく損害賠償請求権や不当利得返還請求権の時効がま だ完成していないとしても,原告については,前記第2の4のとおり本件 破産開始決定がされ,破産管財人が選任され,破産手続廃止決定がされる10 見込みであり,その時点で原告は消滅するため,被告から原告に対し,今 後,新たに本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求や不当利得返還請求が 行われる可能性は全くない。既に破産申立てを行っており,財産がほぼな い会社に対し,時間や費用をかけて金銭請求を行うメリットは全くない。 ウ また,前記イのとおり,原告は,本件特許権の実施行為に相当する行為を15 行っていないと考えられる以上は,刑事罰が科される可能性はないし,仮 に,原告が,本件特許権の実施行為に相当する行為を行っており,かつ,本 件特許権侵害による刑事罰の時効がまだ完成していないとしても,上記の とおり,原告は,破産手続廃止決定により消滅する存在であり,被告人であ る法人が存続しなくなったときは公訴が棄却されるため(刑事訴訟法3320 9条1項4号) 現実的に, , 刑事罰を確定させる時間的猶予はなく,事実上, 刑事罰が科される可能性も全くない。 エ 以上によれば,本件については,本件特許権の存続期間中にされた行為 について,原告に対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑 事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が25 存し,訴えの利益が消滅したものというべきである。 ? 原告の主張 8 ア 原告は,平成13年に設立されて以降,自社の主力商品として,多様な炭 酸ジェルパックを長期間にわたり製造販売しており,被告が原告に対し, 損害賠償請求権を行使する可能性が全くないとはいえない。 本件破産手続では,令和3年6月10日に第2回債権者集会が予定され 5 ているが,同日に破産手続が終了するとは限らない。 仮に,本件破産手続の終了が数か月以内に見込まれ,原告が財産をほぼ 有しない会社であるとしても,被告から原告に対し損害賠償請求権又は不 当利得返還請求権を行使すること自体は可能であるし,原告に対して刑事 罰を確定させる時間的猶予がないともいい切れない。 10 また,被告は,原告が本件特許権の関連特許権(特許第4659980号 及び特許第4912492号)を侵害したとして,原告の代表取締役や取 締役であった者に対する損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起し(令 和元年(ワ)第5444号。以下「別件侵害訴訟」という。),係属中であ る。 15 別件侵害訴訟は原告を当事者とするものではないが,原告の代表取締役 及び取締役であった者の責任の存否が争われているから,その実質は,原 告に対する特許権侵害を理由とする損害賠償請求と同視されるべきである。 また,侵害されたとする特許権も本件特許権とは異なるが,発明の構成を ほぼ同じくし,同訴訟で争われている無効理由も本件特許の無効理由とほ20 ぼ同じであるから,本件特許の無効理由の存否は,別件訴訟に直接関わる 事項であるといえる。 イ 以上によれば,本件については,本件特許権の存続期間中にされた行為 について,原告に対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑 事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が25 存するとはいえないから,訴えの利益は消滅していない。 2 取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)につ 9 いて ? 原告の主張 ア 甲1発明の認定に誤りがあることについて (ア) バブは,「炭酸ナトリウム塩とコハク酸の混合錠剤である花王バブ 5 錠」(甲71)であり,炭酸塩と酸を含む固形物であるバブを割った(砕 いた)ものは,炭酸塩と酸を含む複合顆粒剤であるから,甲1発明は, 「炭 酸塩と酸を含む複合顆粒剤とお湯からなり,複合剤をお湯に溶かし水中 で炭酸塩と酸を反応させることにより二酸化炭素を発生させるもの」で あり,これと異なる認定をした本件審決には誤りがある。 10 (イ) 一致点及び相違点の認定に誤りがあることについて (ア)のとおり正しく認定された甲1発明を前提とすると,本件発明1 と甲1発明の一致点及び相違点2は,以下のとおりである。 なお,相違点1については本件審決の認定のとおりでよい。 a 一致点15 二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からな る組成物を得るためのものであって,炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤 を含むものである点。 b 相違点2 「炭酸塩を含むもの」が,本件発明1においては,「水及び増粘剤を20 含む粘性組成物と,炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒剤,ま たは複合粉末剤と,を含み,前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物 が,前記粘性組成物と,前記複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末 剤とを混合することにより得られ」る,「キット」であるのに対し,甲 1発明においては,お湯と,炭酸水素ナトリウム及びコハク酸を含む,25 複合顆粒剤を含み,二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が,前記お湯 と,前記複合顆粒剤とを混合することで得られるものである点。 10 (ウ) 小括 以上によれば,本件審決には,甲1発明の認定に誤りがあり,ひいては, 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点2の認定に誤りがある。 イ 相違点1の容易想到性の判断に誤りがあることについて 5 (ア) 転用の可能性について 本件審決は,甲1発明の「褥瘡を治療又は予防するために使用される組 成物」と,本件発明1の「パック化粧料」とは,技術分野が異なるとした が,医学における技術要素が化粧品に転用されることは慣用事項であり, 血行促進を目的とする褥瘡に関する技術を,血行促進を目的とする化粧10 品に転用することは当業者には容易である。 (イ) 容易想到性について a 課題の認識について 本件発明1の「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課 題は自明又は容易に発見できるのであるから,それが甲1発明から認15 識できるか否かを判断する必要はなく,当該課題が自明又は容易に発 見し得たか否かについて判断すべきである。 炭酸ガスを利用する発泡性化粧料において,炭酸ガスを肌に作用さ せるのであるから,炭酸ガスが大気中に拡散してしまわないで保留さ れることが望ましいことは自明であるし,現に,当業者においても,ガ20 ス保留性に優れたものを開発することが課題として認識されており (甲48),ガス保留性(気泡状の二酸化炭素の持続性)については, 諸文献(甲6,12,49ないし54)に記載がある。このように,気 泡状の二酸化炭素を利用する発明において,その効果を高めることは 古くから認識されていた課題であり,気泡状の二酸化炭素の持続性を25 維持することを目的とした研究が古くから行われてきた。 b 動機付けについて 11 ? 甲1発明は,気泡状の二酸化炭素を発生させて利用する技術分野 に関するものであり,当該技術分野において,二酸化炭素発生の持続 性を高めるために,媒質に粘性を持たせるという技術は周知技術で ある(甲4ないし6,12,13,26,45,57ないし59。以 5 下「本件周知技術」という。)。 甲1発明も本件周知技術も,二酸化炭素を経皮吸収させる技術分 野に属する。二酸化炭素が空気中に拡散せず,患部に長く接した方が 皮膚における二酸化炭素の吸収効率を高め,褥瘡やかゆみなどの治 療効果が高くなることは周知であるから,二酸化炭素の経皮吸収に10 よる褥瘡治療を目的とする甲1発明の課題は,気泡状の二酸化酸素 の経皮吸収の持続化であり,本件周知技術を基礎づける文献(上記甲 号証)も気泡状の二酸化炭素の持続性の研究についてのものであっ て,課題は共通する。 よって,当業者において,本件周知技術を採用し,相違点1に係る15 構成を採用する動機付けがある。 なお,被告は,後記(2)イ(イ)bのとおり,甲1発明は,気泡状の 二酸化炭素を使用していないから,甲1発明に接する当業者が甲1 発明に「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課題がある と認識するとはいえないと主張する。しかし,甲1発明において,温20 湿布を行う際は気泡の発生は収まっているものの,バブを溶解する 過程においてバブから気泡状の二酸化炭素が発生し,当業者は,二酸 化炭素の発生の持続性向上という課題を認識した上で,この現象を 視認することになる。甲1発明は炭酸ガスの経皮吸収を目的とする ものであるため,バブからの気泡状の二酸化炭素の発生を視認した25 当業者は,湯に溶解せず空気中に二酸化炭素が発散してしまうこと を防ぎ,これらも効率的に経皮吸収させることに思い至るはずであ 12 る。 したがって,被告の主張は失当である。 ? 甲1自体に,相違点1に係る本件周知技術の構成を採用する動機 付けの示唆がある。 5 甲1には「バブが溶けた湯にガーゼやタオルを浸し,それを褥瘡部 に当てて温湿布をする」という記載があり,甲1と同一の書籍(甲7 6)には,「3.創面を被覆する」の項(23頁ないし24頁記載) に,本件発明の粘性組成物の代表例であるアルギン酸塩をガーゼに 塗布する挿絵があるほか,「4)特殊ガーゼ類」の項(24頁記載)10 には,「抗菌作用を有したり,生体面と固着しないように処理された ガーゼ(メッシュ)」で褥瘡を被覆する方法が記載されている。 また,ガーゼが生体面と固着しないようにする手段としてアルギ ン酸ナトリウムなどの粘性組成物を染み込ませたガーゼを用いるこ とは周知技術であり,また,甲77に「止血剤としてアルギン酸ナト15 リウム塩等が汎用されている。」との記載があること,さらに,上記 甲76にバブ浴の記載(24頁)があることは,バブ浴において,複 合顆粒剤を添加する水溶液を単なるお湯から増粘剤が添加された粘 性組成物に置換することを示唆する。 なお,被告は,後記(2)イ(イ)bのとおり,甲76の24頁の挿絵20 は,23頁の2の項の「さまざまな作用を有する軟膏類,散剤など・ ・・ガーゼにのばして」いる挿絵にすぎないと主張するが,アルギン 酸ナトリウムは増粘剤であり,含水粘性組成物,すなわちゲルとして も用いられるものであり,これをガーゼに塗布して用いることは当 業者が容易に思いつく。 25 また,被告は,甲76の24頁の「バブ浴」の記載は,「6.理学 療法」の1つとして紹介されているにすぎず,アルギン酸塩被覆材や 13 特殊ガーゼ類を使用した「3.創面を被覆する」というフェーズとは 全く異なるものであり,これらを同時に行うことはあり得ないとも 主張するが,「6.理学療法」については,「主に「浅い褥瘡」に適 用する」と記載されているから,褥瘡の程度によっては,甲76の2 5 3頁以下に「褥瘡の治療法」として列挙されている「2.外用剤を創 部局所に使用する」や「3.創面を被覆する」の項目の記載も併せて 読まれることになるものと考えられ,バブ浴すなわち甲1発明に対 して,他の項目の記載を組み合わせることを検討することが想定さ れる。 10 したがって,被告の主張は失当である。 (ウ) 阻害要因がないことについて 本件審決は,使用感の大きな変化を理由に,甲1発明の「入浴剤バブを 割った剤を湯に完全に溶かした組成物」に,増粘剤を1〜15質量%添 加し,二酸化炭素を気泡状で保持できる程度の粘性を付与することにつ15 いては阻害要因があると判断するが,褥瘡治療目的のガーゼを患部に当 てる態様の湿布を,粘性組成物を塗布した上で利用することは,通常の 湿布の使用方法であり,温湿布としてのバブ浴の使用感が大きく変化す るなどとはいえないし,仮に使用感が変化するとしても,本件発明の課 題解決には何ら支障はないのであるから,この点は阻害要因とはならな20 い。 また,被告は,後記(2)イ(ウ)のとおり,原告が主張する使用態様は, 甲1発明の湯を,増粘剤を添加した粘性組成物に置換した態様に合致し ていない旨主張する。しかし,甲1発明の湯を粘性組成物に置換すると いうことは,炭酸ガスを経皮吸収させる媒介物を湯から粘性組成物に置25 換することを意味するのであり,この場合に,バケツ又は洗面器一杯に 粘性組成物を用意し,それにガーゼ又はタオルを浸すというような不合 14 理な方法をあえて選択するはずがなく,ガーゼ又はタオルに必要な量の みの粘性組成物を塗布する方法に変更するはずであり,このような変更 は設計事項にすぎない。化粧品において,大量の湯を用いることを要す る構成は使用上不便であるため一般に採用されず,また,顆粒と粘性組 5 成物といった2剤型にすることは慣用されている。したがって,甲1発 明に触れた当業者は,大量の湯にタオル又はガーゼを浸すという方法か ら,タオル又はガーゼに粘性組成物を必要量のみ塗布するという方法に 置換することを容易に思いつくといえる。 さらに,被告は,甲1発明において湯を他の物に置換すると,湯による10 温熱作用が喪失し,治療効果の低減を招くから,阻害要因となるとも主 張する。しかし,甲1には,温熱作用についての記載は一切なく,甲1発 明がバブの投入対象をお湯と記載しているのは,入浴剤であるバブがお 湯に加えられることが通常であるからである。炭酸ガスの経皮吸収が目 的であれば,媒体に溶解する炭酸ガスの濃度が高い方が望ましいが,液15 状の媒体の温度が低い方が溶解する気体の量が増えることは技術常識で あり,温熱作用が褥瘡治療に不可欠といえないことは明白である。 ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤りがあることについて 本件審決の相違点2の容易想到性の判断には,相違点1の容易想到性の 判断と同様の誤りがある。 20 エ 小括 以上のとおり,本件発明1は周知技術に基づいて当業者が容易に発明を することができたものといえないとした本件審決の判断は,誤りである。 ? 被告の主張 ア 甲1発明の認定や一致点及び相違点の認定に誤りがあるとの主張につい25 て 原告は,甲1発明の認定の誤りについて前記(1)アのとおり主張するとこ 15 ろ,同主張は,相違点2の認定に影響を及ぼすものであるが,相違点2の容 易想到性の主張に連動しないものであり,原審決の認定の違法性を基礎付 ける根拠にはなり得ない。 イ 相違点1の容易想到性の判断の誤りの主張について 5 (ア) 転用の可能性について 原告は,前記(1)イ(ア)のとおり,血行促進を目的とする甲1発明の褥 瘡に関する技術を,血行促進を目的とする化粧品である本件発明1に転 用することは当業者には容易であると主張するが,両発明の適用目的を 「血行促進」とすることは,適用目的をことさらに上位概念化するもの10 であり,妥当でない。 (イ)a 課題の認識について 原告は,前記(1)イ(イ)aのとおり,本件発明1の「気泡状の二酸化 炭素を持続的に保持する」という課題は自明又は容易に発見できるの であるから,それが甲1発明から認識できるか否かを判断する必要は15 ないと主張するが,本件発明が甲1発明から容易に想到できたか否か を考えるに当たっては,甲1発明に接する当業者が甲1発明からどの ような課題を認識できるかを考えることが必要になるのであり,原告 の主張は失当である。 b 動機付けがないことについて20 原告は,前記(1)イ(イ)bのとおり,本件周知技術を採用し,相違点 1に係る構成を採用する動機付けがある旨主張するところ,甲1発明 は,約42℃の湯(洗面器〜バケツ)に,入浴剤(バブ片)の1〜数片 を投入し,入浴剤が完全に溶けた後(すなわち,気泡状の二酸化炭素の 発生終了後) 褥瘡治療に使用しており に, (甲1の72頁の【使用方法】25 及び図17参照) バブ片が投入された湯において, , 気泡状の二酸化炭 素が発生している間(すなわち,バブ片が溶けている最中)は褥瘡治療 16 に使用されていない。すなわち,甲1発明においては,湯に溶存してい る二酸化炭素が経皮吸収されることにより血行促進作用の一端を担っ ているものと考えられ,発生した気泡状の二酸化炭素を保持させるこ とは必要とされていない。 5 そうすると,甲1発明は,気泡状の二酸化炭素を使用していないので あるから,甲1発明に接する当業者が甲1発明に「気泡状の二酸化炭素 を持続的に保持する」という課題があると認識するとはいえず,甲1発 明において,入浴剤を投入する湯に対して二酸化炭素を気泡状で保持 させる機能を付与することが動機付けられることはあり得ない。 10 したがって,「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課題 に基づき,甲1発明において,お湯を増粘剤を添加した粘性組成物に置 換することが容易であるといえないことは明らかである。 原告が甲1自体に本件周知技術を採用する動機付けの示唆があると して主張する甲76の24頁の挿絵は,23頁の2の項の「さまざまな15 作用を有する軟膏類,散剤など・・・ガーゼにのばして」いる挿絵にす ぎず,また,24頁には,「4)特殊ガーゼ類」として,抗菌剤を含む ガーゼや非固着性のガーゼについて様々な製品が紹介されているが, これ自体が抗菌剤を含んだり,非固着性を有する完成品であり,これに アルギン酸ナトリウムを染み込ませることはあり得ないし,甲77に20 記載のあるCalgitex gauzeは,アルギン酸塩を繊維状 に加工したガーゼで,血液を吸収するものである。 したがって,甲76及び甲77の記載は,アルギン酸ナトリウムを含 む粘性組成物にガーゼを浸すことを示唆するようなものではない。 さらに,甲76の24頁に「バブ浴」の記載はあるが,「6.理学療25 法」の1つとして紹介されているにすぎず,アルギン酸塩被覆材や特殊 ガーゼ類を使用した「3.創面を被覆する」というフェーズとは全く異 17 なるものであり,これらを同時に行うことはあり得ない。よって,同記 載も,バブ浴において,複合顆粒剤を添加する水溶液を単なるお湯から 増粘剤が添加された粘性組成物に置換することを示唆するものではな い。 5 (ウ) 阻害要因があることについて 甲1発明における褥瘡の治療は,入浴剤を溶かした湯にガーゼやタオ ルを浸し,それを褥瘡部に当てたり,その湯に褥瘡が生じた足を入れて 足湯したりするものであるが,入浴剤を溶かす湯の代わりに,気泡状の 二酸化炭素を保持できる含水粘性組成物をガーゼやタオルに浸すことは10 そもそも困難であるし,含水粘性組成物をガーゼやタオルに浸した場合 の使用感は,湯を浸した場合の使用感とは大きく異なったものとなる。 また,甲1発明では,バケツや洗面器に収容する多量の湯が必要とされ るところ,そのような多量の湯の代わりに,多量の含水粘性組成物を2 剤タイプの製品の一剤として提供することは,著しい利便性の低下をき15 たすことになる。 さらに,甲1発明においては,「バブが溶けた湯にガーゼやタオルを浸 し,それを褥瘡部に当てて温湿布をするか(冷めないように湿布の上か らビニールカバーをかぶせ,約42度の湯枕を当てるとよい)」 (72頁) と記載されていることからも明らかなように,入浴剤を投入する対象が20 「湯」に限定されている。すなわち,甲1発明では,湯の中で発生する炭 酸ガスによる作用と,「湯」による温熱作用との双方を利用することによ り,局所の血行を改善し,褥瘡の治療を試みているのであり,甲1発明に おいて,褥瘡治療に不可欠である「湯」を他のものに置換すると,「湯」 による温熱作用が喪失し,その結果,褥瘡の治療効果の低減を招くこと25 が懸念される。 以上の点に鑑みると,甲1発明において,入浴剤を投入する湯の代わり 18 に「アルギン酸ナトリウムを含み,二酸化炭素を気泡状で保持できる含 水粘性組成物」を2剤タイプの製品の一剤として提供することには,本 件審決が認定した使用感の観点のほか,使用に当たっての利便性や褥瘡 の治療効果の観点からみても,阻害要因がある。 5 なお,原告は,前記(1)イ(ウ)のとおり,褥瘡治療目的のガーゼを患部 に当てる態様の湿布を,粘性組成物を塗布した上で利用することは,通 常の湿布の使用方法であると主張するが,甲1発明におけるガーゼは, 入浴剤を溶かした湯を浸して,褥瘡部に当てるために使用されるもので あり,粘性組成物を塗布した上に当てて使用する態様とは異なっている。 10 また,原告は,仮に使用感が変化するとしても,本件発明の課題解決に は何ら支障がないのであるから,この点は,阻害要因とはならないとも 主張するが,阻害要因があるか否かは,甲1発明の効果が阻害されるか 否かとの観点から判断されるべきものであり,本件発明の課題解決に支 障がないことは,阻害要因の存在を否定する根拠にはならない。 15 ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤りの主張について 本件審決の相違点1の容易想到性の判断に誤りはないから,これを前提 とする相違点2の容易想到性の判断にも誤りはない。 エ 小括 以上のとおり,本件審決における相違点1及び2の容易想到性の判断に20 は誤りはなく,本件発明1は,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明を することができたものといえないとした本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤 り)について ? 原告の主張25 本件審決は,本件発明2ないし4は,いずれも,本件発明1の全ての発明特 定事項を含むものであるから,本件発明1と同様の理由により,甲1発明及 19 び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができ たものとはいえない旨判断した。 しかしながら,前記2?のとおり,本件審決における本件発明1の進歩性 の判断に誤りがあるから,本件審決の上記判断は誤りである。 5 ? 被告の主張 前記2?のとおり,本件審決における本件発明1の進歩性の判断に誤りは ないから,本件審決における本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤りをい う原告の主張は,その前提において理由がない。 したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。 10 第4 当裁判所の判断 1 本件については,事案の性質及び双方の主張立証の状況に鑑みると,本案に ついて容易に判断可能であるから,以下,まず本案について判断することとす る。 2 本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の記載事項15 について ? 本件明細書(甲75)には,別紙1の記載がある。 ? 前記?の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明1に関し,次のよう な開示があることが認められる。 ア 従来から,炭酸ガスが血行を良くすることが知られており,炭酸塩と有20 機酸を用いて発生させた炭酸ガスを水に溶かして利用する湿布剤が提案さ れているが,水に溶解する炭酸ガスの絶対量が少ないため,実質的な効果 は期待できなかった。 使用時までにアスコルビン酸と炭酸塩が反応して炭酸ガスを発生しない ように安定化した技術として,コーティングを施したアスコルビン酸と炭25 酸塩を含有する発泡性固形組成物があったが,その用途は,発泡性の粉末 飲料,錠剤等の食品,発泡性浴剤,コンタクトレンズ,トイレ,浴槽などの 20 洗浄剤であり,発生した炭酸ガスを保持する技術的課題は存在しなかった。 特許文献に開示された酸と炭酸塩を有する固形医薬組成物も,該組成物 を水に溶かしたときに,二酸化炭素による発泡は実質的に起こらないこと などの課題等があった(【0004】,【0005】,【0008】)。 5 イ 「本発明」は,褥創等の皮膚粘膜損傷,そばかす等の皮膚や毛髪などの美 容上の問題及び部分肥満等に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物, 該組成物製造用キットを提供することを目的とする(【0010】)。 「本発明」の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を褥創等の皮膚粘膜損 傷の治療に使用する場合は,患部を完全に覆うように0.5mm以上,最も10 好ましくは20分以上,損傷が治癒するまで塗布する。24時間持続的に 塗布しても問題はなく,褥創などの場合は長時間の連続塗布により効果が 高まるだけでなく,看護の大幅な省力化が可能である(【0022】)。 ウ 「本発明」において,二酸化炭素は,炭酸飲料や発泡性製剤のように短時 間,例えば数秒から数分以内に消失するものではなく,「本発明」の組成物15 に気泡状態で保持され,持続的に放出される(【0037】)。 「本発明」において,「二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収させるこ とができる組成物」とは,好ましい具体例では,二酸化炭素を5分以上,最 も好ましくは2時間以上経皮・経粘膜吸収させることができる組成物を意 味する(【0038】)。 20 「本発明」において,「気泡状二酸化炭素」とは,組成物中に気泡として 含まれる二酸化炭素を意味し,該気泡は二酸化炭素のみから成っていても よく,二酸化炭素とともに空気などを含んでいてもよい(【0039】)。 「本発明」の組成物は二酸化炭素の持続的経皮・経粘膜吸収が目的であ るので,組成物を対象部位に適用する際には組成物中に気泡状二酸化炭素25 がより多く含まれていることが好ましく,組成物で対象部位を完全に覆う ように厚めに塗布することが好ましい(【0042】)。 21 3 取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)につ いて ? 甲1の記載について ア 甲1には別紙2の記載がある。 5 イ アによれば,甲1には以下のような開示があることが認められる。 (ア) 重炭酸水素ナトリウム(重曹)を含む入浴剤バブを,湯に溶かすこと により発生する炭酸ガスを利用して,局所の血行を改善し,褥瘡を予防 又は治療する。これは,温泉の効果を応用するものである。 (イ) 人工炭酸泉は,細かく割った入浴剤バブ(花王バブ)を洗面器やバケ10 ツ中の約42度の湯に入れて溶かし,バブが完全に溶けるまで待つこと で得られる。この際,バブは炭酸ガスを出しながら溶ける。人工炭酸泉は, 温湿布又は足浴として褥瘡部に適用され,温湿布の場合,冷めないよう に湿布の上からビニールカバーをかぶせ,約42度の湯枕を当てる。 ? 甲1発明の認定の誤りの主張について15 原告は,前記第3の2?アのとおり,甲1発明の剤につき酸を含むものと 認定すべきであるから,本件審決の甲1発明の認定には誤りがあり,これを 前提とすると,本件審決における本件発明1と甲1発明の一致点,相違点2 の認定にも誤りがあると主張する。 確かに,甲73(前田真治ほか「人工炭酸泉浴剤の褥創温湿布療法における20 皮膚温の変化」日温気物医誌53巻4号,平成2年8月)には「炭酸水素ナト リウム,炭酸ナトリウム,コハク酸の混合錠剤である人工炭酸泉浴剤・花王バ ブ錠?」(196頁左欄18行〜20行)との記載があり,炭酸塩と酸が反応 して炭酸ガスが発生することが技術常識と考えられること,本件発明1に「炭 酸塩及び酸を含む, との発明特定事項があることからすれば, 」 本件発明1と25 甲1発明を対比する上では,甲1発明については原告主張のとおり認定する ことが妥当であるとはいえるものの,組成物自体に関する本件発明1と甲1 22 発明との相違点1は,甲1発明の剤につき酸を含むものと認定するか否かに かかわらず,本件審決が認定した相違点1である(相違点1については争い がない。)。そして,本件審決は,相違点2に固有の本件発明1の構成の容易 想到性を判断することなく,相違点1が容易想到でないことに基づいて相違 5 点2も容易想到でないと判断しているのであり,原告が主張する甲1発明の 認定の誤りは,相違点1及び2の容易想到性についての本件審決の判断に影 響しないから,本件発明1は進歩性を欠如しないとの本件審決の結論にも影 響を及ぼさない。 ? 相違点1の容易想到性の判断の誤りについて10 ア 甲1から認識できる課題ないし動機付けについて (ア) 原告は,前記第3の2?イ(イ)b?のとおり,甲1発明は,気泡状の 二酸化炭素を発生させて利用する技術分野に関するものであり,当該技術 分野において,二酸化炭素発生の持続性を高めるために,媒質に粘性を持 たせるという技術(本件周知技術)は周知であって,甲1発明と本件周知15 技術は,技術分野,課題,作用が共通するから,当業者において,本件周 知技術を採用し,相違点1に係る構成を採用する動機付けがあると主張す る。 しかし,甲1の図17には,「約42度の湯を入れた洗面器,バケツに バブ片を1〜数個入れ,完全に溶けるまで待つ」と明記されているから,20 褥瘡治療前に発泡は終了していることになる。そして,甲72(萬秀憲ほ か「人工炭酸浴に関する研究(第1報)炭酸泉の有効炭酸濃度について」 日温気物医誌47巻3・4号,昭和59年5月)には「今回,実験を行っ た150ppm以下の低濃度炭酸泉では大量の炭酸ガス気泡は発生せず, 測定された血流増加作用はガス気泡による物理的作用によるものではな25 く水中に溶存していた炭酸ガスの経皮吸収による化学的作用によると考 えられる。」(126頁右欄下から6行〜最終行)との記載があることを 23 参酌すれば,甲1発明において,あえてバブが「完全に溶けるまで待つ」 と記載されていることには,バブから十分な量の二酸化炭素が発生し, 水中に溶存するのを待つという技術的意義があると解される。 そうすると,甲1に接した当業者は,甲1の上記記載から,甲1発明で 5 は,バブ片を完全に溶かし,湯に溶存している二酸化炭素を経皮吸収さ せて血行促進作用を図るものと理解するから,甲1発明に「気泡状の二 酸化炭素を持続的に保持する」という課題があると認識するとは認めら れない。 原告は,前記第3の2?イ(イ)b?のとおり,甲1発明において,バブ10 からの気泡状の二酸化炭素の発生を視認した当業者は,湯に溶解せず空 気中に二酸化炭素が発散してしまうことを防ぎ,これらも効率的に経皮 吸収させることに思い至るはずであると主張する。しかし,上記のとお り,甲1には,バブ片が「完全に溶けるまで待つ」と明記されているので あり,当業者がバブからの気泡状の二酸化炭素の発生を視認したとして15 も,溶存二酸化炭素を作り出す過程・手段であるにすぎず,それ自体が経 皮吸収に寄与するとはいえない気泡状の二酸化炭素に着目するとは認め 難いし,そもそも甲1発明において,湯に溶解せず空気中に二酸化炭素 が発散してしまうことを防ぐことが課題とされていることを認めるに足 りる証拠もない。 20 なお,原告は,「気泡状の二酸化炭素を持続的に保持する」という課題 は自明又は容易に発見できるのであるから,それが甲1発明から認識で きるか否かを判断する必要はない旨主張するが,被告が主張するとおり, 本件発明が甲1発明から容易に想到できたか否かを考えるに当たっては, あくまで甲1発明に接する当業者が甲1発明からどのような課題を認識25 できるかを考えることが必要になるのであるから,原告の主張は失当と いうほかない。したがって,原告主張の文献において,気泡状の二酸化炭 24 素の発生及び保持を持続させるという課題及びこれに対する技術手段 (本件周知技術)が記載されているとしても,甲1発明に接する当業者 が同課題を認識するとは認められない以上は,甲1発明に本件周知技術 を組み合わせる動機がない。また,そもそも本件周知技術自体について 5 も,原告主張の文献を精査しても,甲1発明と共通する技術分野で,増粘 剤の粘性によって気泡状の二酸化炭素を保持することに関連するものは 見当たらず,上記技術分野で,このような技術手段が周知であるとはい えない。 (イ) 原告は,前記第3の2?イ(イ)b?のとおり,甲1自体に,相違点110 に係る本件周知技術の構成を採用する動機付けの示唆があると主張する。 しかし,原告が粘性組成物の代表例であるアルギン酸塩をガーゼに塗 布するものであると指摘する,甲76(甲1はその抜粋)の「3.創面を 被覆する」の項(23頁ないし24頁記載)の挿絵については,チューブ からガーゼに塗布されているペーストがアルギン酸塩を含むものとはい15 えない。確かに,同項には, 「3)アルギン酸塩被覆材」との記載があり, 「カルトスタット」という製品が紹介されているが,「カルトスタット」 は,アルギン酸塩繊維を絨絡したシート状にしたもの,又は,絨絡せずに 不定型の綿状にしたもので,粘性組成物ではなく,体液等を吸収するこ とを目的としたものであるから(乙1) チューブからガーゼに塗布され ,20 ているペーストとは異なるものであることは明らかであるし,上記挿絵 は,23頁の2の項の「さまざまな作用を有する軟膏類,散剤など・・・ ガーゼにのばして」いる様子を描いたものであることも明らかというべ きである。そして,原告が甲1自体に示唆があるとするその他の点は,そ もそもその主張自体判然としないものであるが,いずれもせいぜい褥瘡25 の治療法としての創面の被覆や外用剤の創部局所への使用に関する記載 に係るものにとどまり,本件周知技術の採用を示唆するものとは,到底 25 認め難い。 イ まとめ 以上によれば,甲1発明において,気泡状の二酸化炭素の発生及び保持 の持続という課題を当業者が認識することはできず,また,甲1発明と共 5 通する技術分野で,本件周知技術の存在を認めることもできない。そうす ると,その他の点について判断するまでもなく,相違点1に係る本件発明 1の発明特定事項を採用することを,当業者が容易に想到することができ たとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。 ? 小括10 以上のとおり,本件審決における相違点1の容易想到性の判断に誤りはな いから,その他の点について判断するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載 された発明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易に発明 をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。 したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。 15 4 取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤 り)について 本件発明2ないし4は,いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含むも のであるところ,前記3で説示したとおり,本件発明1は甲1に記載された発 明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることが20 できたものと認められないから,本件発明2ないし4も,当業者が容易に発明 をすることができたものと認められない。 したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取 消事由2は理由がない。 5 結論25 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決を取り 消すべき違法が認められないことは明らかであるから,被告による本案前の主 26 張については判断を留保し,原告が求める本案についての判断をすることが相 当であると考え,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
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5裁判長裁判官菅野雅之10裁判官本吉弘行15裁判官岡山忠広27(別紙1)【技術分野】【0001】本発明は,二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物,該組成物の製造用キット,該組5成物を含む皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ,末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍,冷感,しびれ感;歯科疾患,皮膚粘膜損傷,化膿性皮膚疾患,角化異常症,筋骨格系疾患及び神経系疾患からなる群から選ばれるいずれかの疾患の予防ないし治療剤及び化粧料に関する。 【背景技術】10【0004】炭酸ガスは血行をよくすることが知られており,炭酸ガスを含む湿布剤が提案されている(特許文献1)。しかしながら,特許文献1の湿布剤は,炭酸塩と有機酸を用いて発生させた炭酸ガスを水に溶かして溶存炭酸ガスとして利用するものであり,水に溶解する炭酸ガスの絶対量は極めて少ないため,実質的に効果は期待できない。 15【0005】特許文献2は,各々コーティングを施したアスコルビン酸と炭酸塩を含有する発泡性固形組成物を開示するが,該組成物は使用時までにアスコルビン酸と炭酸塩が反応して炭酸ガスを発生しないように安定化したものであり,その用途は,該文献の4頁左上欄及び実施例に記載されるように発泡性の粉末飲料,錠剤等の食品,発20泡性浴剤,コンタクトレンズ,トイレ,浴槽などの洗浄剤に用いられるものであり,発生した炭酸ガスを保持する技術的課題は存在しない。 【0008】特許文献5は,酸,炭酸塩,増粘剤または沈殿防止剤とともに,水不溶性またはマイクロカプセル化された薬剤を含む固形医薬組成物であり,該組成物に水を加える25と薬剤が懸濁するものである。該公報の4頁左下欄〜右下欄に記載されるように,酸性物質及び塩基の処方への添加は増粘剤の水和は促進するが,発泡が生じないよ28うな量で行われ,二酸化炭素の発泡により増粘剤で被覆した顆粒は浮かんだ状態のままとなる傾向があり,この物質の溶解を遅らせ,所望の効果に対し反対の効果を生じさせることに留意する必要がある。すなわち,特許文献5は,酸と炭酸塩を有する固形医薬組成物を開示するが,該組成物を水に溶かせたときに,二酸化炭素によ5る発泡は実質的に起こらないものである。 【発明が解決しようとする課題】【0010】また本発明は,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,10義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛15包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物,該組成物製造用キットを提供することを目的とする。 【発明の効果】20【0020】本発明の組成物は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ褥創,;創傷,熱傷,25口角炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科29疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの5角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療及び予防あるいは改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる。 10【0022】本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を褥創,創傷,熱傷,口角炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷の治療に使用する場合は,患部を完全に覆うように0.5mm以上,好ましくは1.0mm以上,より好ましくは1.5mm以上,さらに好ましくは2.0mm以上,最も好ましくは3.0mm以上の厚15さに,5分以上,好ましくは10分以上,より好ましくは15分以上,最も好ましくは20分以上,損傷が治癒するまで塗布する。損傷部位が周囲皮膚粘膜より陥没している症例に対しては,損傷部位を該組成物で埋めて周囲皮膚粘膜組織と同じ高さに,好ましくは周囲皮膚粘膜組織より0.5mm以上高く,より好ましくは周囲皮膚粘膜組織より1.0mm以上高く,さらに好ましくは周囲皮膚粘膜組織より1.5m20m以上高く,最も好ましくは周囲皮膚粘膜組織より2.0mm以上高く該組成物を損傷部位上に盛り上げる。フィルムドレッシング材などの,粘着性が強く気体透過性の劣る素材でできた膜などで該組成物を覆って周囲皮膚に接着させ,該組成物を密閉すれば一層効果が高まるが,食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不透過性物質で覆っても効果は増大する。24時間持続的に塗布しても問題は25なく,褥創などの場合は長時間の連続塗布により効果が高まるだけでなく,看護の大幅な省力化が可能である。本発明の組成物は1日1回〜数回を週1回以上,好ま30しくは3日に1回,より好ましくは2日に1回,最も好ましくは毎日,皮膚粘膜損傷が治癒するまで塗布する。塗布終了後は生理的食塩水などで洗い流すか,清潔なガーゼなどで部分的に除去した後生理的食塩水などで洗い流し,創傷被覆材などで患部を保護すればよいが,連続投与する場合には部分的に組成物を除去した後に,残5った組成物の上から新しい本発明の組成物を追加投与してもよい。 【発明を実施するための形態】【0036】本発明の組成物は,正常であるか,何らかの疾患や損傷による異常があるかを問わず,血管系を有する皮膚や粘膜組織,皮下組織などに適用される。皮膚としては,10手掌や足底,頭皮を含む外皮全てが含まれる。粘膜組織としては,鼻粘膜や口腔粘膜,歯周組織粘膜,口唇粘膜,外性器粘膜,肛門周囲粘膜などが含まれる。皮下組織としては,筋膜,皮下脂肪,真皮などが含まれる。 【0037】二酸化炭素は,炭酸飲料や発泡性製剤のように短時間,例えば数秒から数分以内15に消失するものではなく,本発明の組成物に気泡状態で保持され,持続的に放出される。 【0038】本発明において,「二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収させることができる組成物」とは,好ましい具体例では,二酸化炭素を5分以上,好ましくは20分以上,20より好ましくは30分以上,さらに好ましくは1時間以上,特に好ましくは1.5時間以上,最も好ましくは2時間以上二酸化炭素を経皮・経粘膜吸収させることができる組成物を意味する。 【0039】本発明において,「気泡状二酸化炭素」とは,例えば炭酸塩と酸を反応させて二酸25化炭素を発生させた場合や,二酸化炭素ボンベから二酸化炭素を吹き込んだ場合に,組成物中に気泡として含まれる二酸化炭素を意味し,該気泡は二酸化炭素のみから31なっていてもよく,二酸化炭素とともに空気などを含んでいてもよい。「気泡状二酸化炭素」中の二酸化炭素の割合は30容量%以上,好ましくは50容量%以上,さらに好ましくは70容量%以上,特に好ましくは90容量%以上,最も好ましくは100容量%である。 5【0042】本発明の組成物は二酸化炭素の持続的経皮・経粘膜吸収が目的であるので,組成物を対象部位に適用する際には組成物中に気泡状二酸化炭素がより多く含まれていることが好ましく,組成物で対象部位を完全に覆うように厚めに塗布することが好ましい。流動性が低い組成物の場合にはガーゼや不織布などの吸収性素材などに吸10収させて組成物の塗布時の厚みを持たせればよい。塗布する厚さは対象疾患や目的によって異なるが,2mm以上,0.好ましくは0.5mm以上,より好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは1.5mm以上,最も好ましくは2.0mm以上である。ただし,厚みがありすぎては組成物の適用が困難になるため,塗布する組成物もしくは組成物を含浸する吸収体の厚みは5cm以下,より好ましくは4cm以下,15さらに好ましくは2cm以下,最も好ましくは1cm以下である。 32(別紙2)33 |