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事件 |
令和
2年
(ネ)
10048号
職務発明対価等請求控訴事件,同附帯控訴事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2021/05/31 |
権利種別 | その他 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
令和3年5月31日判決言渡 令和2年(ネ)第10048号 職務発明対価等請求控訴事件,同附帯控訴事件(原 審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第36424号) 口頭弁論終結日 令和3年3月12日 5 判 決 控訴人・附帯被控訴人 X (以下「控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士 岩 永 利 彦 10 被控訴人・附帯控訴人 株 式 会 社 セ ガ (以下「被控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士 川 田 篤 15 主 文 1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用中,附帯控訴に係る費用は被控訴人の負担とし,その余は控訴人の 負担とする。 事 実 及 び 理 由 20 第1 当事者が求めた裁判 1 控訴の趣旨 (1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,4000万円及びこれに対する平成30年1 2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 25 2 附帯控訴の趣旨 (1) 原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。 1 (2) 上記の部分につき,控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 (1) 本件は,被控訴人の従業員であった控訴人が,在職中に,被控訴人の業務 5 範囲に属し,かつ,控訴人の職務に属する競争ゲームに関する発明をし(こ の発明について,控訴人は,@被控訴人の特許となっているもの(競争ゲー ムのベット制御方法に関するもの)については共同発明者4人のうちの1人 として発明し,A被控訴人の特許となっていないもの(競争ゲームに関する ノウハウ。以下「本件ノウハウ」という。)については単独で発明したと主張 10 する。 ,その特許を受ける権利(@については4分の1の持分,Aについて ) は全部)を被控訴人に承継させたと主張して,被控訴人に対し,特許法35 条3項(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。 に基づき, ) @については885万0466円,Aについては36億0643万4391 円の一部である3114万9534円の合計4000万円及びこれに対する 15 訴状送達の日の翌日である平成30年12月11日から支払済みまで民法 (平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。 所定の年5分の ) 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 原審は,上記@については,発明の一部が被控訴人の製造販売した製品に おいて実施されたことが認められるなどとして,17万0625円及び遅延 20 損害金の支払を求める限度で請求を認容したが,上記Aについては,本件ノ ウハウに係る控訴人の被控訴人に対する対価請求権が存するということはで きないとして,請求を棄却した。 (3) これを不服として,控訴人は本件控訴をし,被控訴人は本件附帯控訴をし た。 25 2 前提事実及び争点 前提事実及び争点は,原判決「事実及び理由」第2の1及び2(原判決2頁 2 13行目ないし6頁23行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 なお,本件各発明を構成要件に分説した結果は,別紙1のとおりであり,被 告各製品の名称は,別紙2のとおりである。 3 争点に関する当事者の主張 5 争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,後記4のとおり当審にお ける補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3(原判決6頁2 4行目ないし19頁11行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決14頁10行目冒頭から同頁22行目末尾までを次のとおり改め る。 10 「(2) 完全確率抽選方式(毎回の抽選が,過去の抽選結果に影響されずに独立 して行われる方式をいう。 の下で, ) 競馬のレース結果を予想するゲーム(以 下「予想ゲーム」という。)に,プレイヤーが馬主として競走馬を生産して 所有し,調教した後,レースに出走させ,その競争成績によって賞金(メ ダル)を得るゲーム(以下,このような競馬レースに出場する競走馬を育 15 成するゲームを「馬主ゲーム」といい,馬主ゲームのプレイヤーが育成し て予想ゲームのレースに出走させた馬を「プレイヤー馬」という。)を加え た競馬ゲームを設計しようとする場合において,何らの工夫もせずにゲー ムを設計すると,能力値の高い馬はレースでの賞金等を得やすくメダル獲 得の期待値が高いことから,プレイヤーが能力値の高い馬ばかりを購入す 20 るようになり,馬主ゲームの面白みが失われてしまう。他方で,この問題 を解消しようとして各馬の能力値を同一にすると,予想ゲームにおけるオ ッズが同一になってしまい,今度は予想ゲームの面白みが失われてしまう。 このように,完全確率抽選方式の下で予想ゲームと馬主ゲームとを組み合 わせた競馬ゲームにおいては,公平性を担保したまま,現実の競馬同様の 25 醍醐味・臨場感を生じさせる工夫が必要であるという課題があった。 本件ノウハウは,馬主ゲームにおける馬ごとのメダル獲得の期待値を公 3 平なものにすることにより,上記課題を解決する発明である。具体的には, プレイヤー馬について,活力値という,レース出走時の出走登録料をメダ ルで支払うことにより増加し,レース結果として賞金を得たときにも増加 し,馬の生産,調教,餌やりなどの育成過程によっても増加する指標を導 5 入し,レースで消費した価値(活力値)と賞金等で得られる価値(活力値) の期待値とを等しくすることで,馬ごとの不公平さをなくすものである (活力値は,一定の割合でメダル数と相互に換算される。 。 ) (3) また,同じレースに複数のプレイヤー馬が出走する場合もあるところ, プレイヤー馬の能力値が当初は未確定であることから,各プレイヤー馬の 10 増加活力値,消費活力値及び能力値について,一旦暫定値を用いて計算し, 必要に応じて数値を再調整する計算方法を採っており,この部分が本件ノ ウハウの核心部であるといえる(この計算のプロセスは,別紙「本件ノウ ハウの核心部のフローチャート」のとおりである。 。 )」 (2) 原判決の別紙として,本判決別紙3を加える。 15 4 当審における補充主張 (1) 本件発明1−2の実施の有無(争点2)について (控訴人の主張) 原判決は,本件発明1−2につき, 「設定されたオッズの範囲の組合せが全 て表示され」るものであると認定したが,本件明細書の段落【0089】に 20 は,「その範囲のオッズの組み合わせが全て表示するようにしてもよい。」と しか記載されておらず,上記認定には誤りがある。 そして,上記の誤った事実認定に基づく法的判断,すなわち被告製品2に よる本件発明の実施の有無についての判断も,当然に誤りである。 (被控訴人の主張) 25 争う。 (2) 本件ノウハウに係る対価請求権の有無(争点3)について 4 (控訴人の主張) ア 本件ノウハウが画期的である点 (ア) 本件ノウハウが画期的である最大の点は,予想ゲームと馬主ゲーム とを,完全確率抽選方式の下で組み合わせて楽しめるようにすることが 5 できた(同時進行できるようにした)点である。 すなわち,完全確率抽選方式の下で予想ゲームと馬主ゲームとを組み 合わせた競馬ゲームを設計すること自体はさほど難しくはないものの, 原審で主張したとおり,これらを単純に組み合わせると,馬主ゲームに おける馬ごとのメダル獲得の期待値に不公平が生じるなどの問題がある 10 ことから,このような競馬ゲームを現実の競馬に匹敵するほどのゲーム 性(リアルさ,臨場感等)を持たせた上で実現するのは非常に困難なこ とであり,この点をブレークスルーした本件ノウハウは,極めて画期的 であるといえる。 (イ) 本件ノウハウの画期的さに最も貢献したのは,プレイヤー馬につい 15 て,能力値とは異なる活力値を導入したことであり,投資(活力値)に 応じた期待値を設定することにより,馬主ゲームにおける公平さを担保 している。 また,本件ノウハウは,活力値の導入だけではなく,その使い方にも 工夫がある。例えば,レース結果に応じて,メダルの形でプレイヤーの 20 目に見える賞金や出走料のみならず,プレイヤーが認識することもない 活力値も増減させた上,次回以降の競馬ゲームに影響を与えるようにし ている。これにより,本件ノウハウは,ゲーム性(リアルさ,臨場感等) を醸成し,プレイヤーを惹きつけることに成功した。 (ウ) 以上のとおり,本件ノウハウは,活力値を導入し,その使い方を工 25 夫することにより,完全確率抽選方式の下で,予想ゲームと馬主ゲーム とを組み合わせて楽しめるようにしたものである。 5 イ メインゲーム及びサブゲームによるゲームの構築 (ア) 少なくとも本件ノウハウの発明時点において,控訴人は認識してい なかったものの,本件ノウハウにおいては,予想ゲーム及び馬主ゲーム のそれぞれを,ペイアウト率90%のメインゲームとペイアウト率10 5 0%のサブゲームとに分けることにより,非常にセンシティブなトレー ドオフの関係にあるゲームセンターと顧客との間の利害のバランスが とられている点が,画期的である。 すなわち,ゲームセンターの利益を生むメインゲームとプレイヤーが 損をせずに楽しむことができるサブゲームとでゲームを構築することに 10 より,ゲームセンターの利益を確保した上で,プレイヤーに楽しさを提 供することができ,スターホースシリーズは,このような形で利害のバ ランスがとられていたことにより,大ヒットゲームとなったものである。 (イ) 上記の点は,被控訴人の元従業員であり,メダルゲームプランナー であるC(以下「訴外C」という。)の陳述書(甲24)においても指摘 15 されており,特に,馬主ゲームにおいて,プレイヤーが知らないうちに メインゲームからサブゲームに移行する点が非常に巧妙であるなどと 称賛されている。 ウ 計算の複雑性 スターホースシリーズにおいては,最高12頭立て(プレイヤー馬は最 20 高8頭まで),3着までが入賞という,非常に複雑・高度な条件の下でレー スが行われることから,消費活力値や増加活力値,勝率の計算においても, 暫定値を用いるなど極めて高度で複雑な工夫がされている。 (被控訴人の主張) ア 本件ノウハウは,発明とはいい難い。仮に,本件ノウハウが発明に当た 25 るとしても,対価請求権が認められるためには,特許を受ける権利として 新規性及び進歩性等を含めた特許性を備えるものでなければならないが, 6 本件ノウハウは,このような特許性が肯定されるようなものではなく,ノ ウハウとして秘匿すべき何らの価値もない。 イ スターホース(初代)における勝率及びオッズの決め方は,次のような ものであるところ,(ア)は控訴人が活力値と呼んでいるものであると考え 5 られ,また,(イ)は馬主ゲームの勝率に予想ゲームにおけるオッズを合わ せる必然的な構成である。 (ア) 馬主ゲームにおいて,レースに出走して入賞することにより得られ るメダル数と,レースへの出走に伴うメダル数及び入賞しないときに失 われるメダル数にペイアウト率を乗じたものとが,期待値において釣り 10 合うように勝率を決める。 (イ) 上記(ア)で決められた勝率に基づいて,予想ゲームのペイアウト率 を考慮して,そのオッズを決める。 (ウ) 上記(ア)で決められた勝率において,完全確率抽選により入賞を決 める。 15 ウ 他社の予想ゲームと馬主ゲームとを組み合わせた競馬ゲームを紹介する 雑誌記事(乙4)に加え,平成11年7月30日に行われた同競馬ゲーム のロケテストにおいて被控訴人が収集した情報(乙8,9)によれば,同 競馬ゲームに接した当業者は,同競馬ゲームが上記イ(ア)ないし(ウ)の要 素をいずれも備えていることを推認するといえるから,本件ノウハウは進 20 歩性を欠くものである。 エ 訴外Cの陳述書は,控訴人が本件ノウハウと称しているものをどのよう に具体化したかを例示的に述べるものにすぎず,本件ノウハウが画期的な ものであることを何ら裏付けるものではない。 (3) 消滅時効の成否(争点6)について 25 (控訴人の主張) ア 被控訴人が控訴人とのやり取りの際に送付した資料(甲16の2) 「実 の 7 績補償」欄には, 「実績(ライセンス収入等)無し」との記載が存するもの の,本件発明1−1は対価請求権が認められるものであったから,この記 載は誤りである。 そうであれば,本来的なあるべき記載によって「実績補償の支払を認め 5 た旨の記載が存する」と認定すべきであり,この認定に基づいて,被控訴 人が債務を承認したと認定すべきである。 イ また,被控訴人は,時効援用をする機会があったにもかかわらず,本件 訴訟に至るまで時効援用をしなかったものである上,控訴人に対して職務 発明規程の開示をせず,上記アのやり取りの際に自社実施が補償の対象と 10 ならないとの虚偽の事実を述べたことからすれば,債務の承認に等しい行 動をとったといえる。 ウ 以上によれば,被控訴人は,時効の中断により,又は信義則違反により 時効援用権を喪失したから,消滅時効を援用することはできない。 (被控訴人の主張) 15 ア 被控訴人が,控訴人とのやり取りにおいて,債務の承認をした事実は存 しない。 イ 被控訴人が,本件訴訟以前における控訴人からの請求に対して消滅時効 を援用しなかったのは,同請求が主に本件ノウハウに係るものであったか らである。また,被控訴人は,控訴人に対し,控訴人の代理人である弁護 20 士の立会いの下で,職務発明に係る勤務規則を閲覧する機会を与えるなど していた。 したがって,被控訴人が消滅時効を援用することは,信義則に反しない。 (4) 本件各発明に係る相当の対価の額(争点4)について (控訴人の主張) 25 ア 本件各発明に係る相当の対価の額 (ア) 本件発明1−1に係る売上高 8 仮に,本件発明1−1に係る対価請求の対象がスターホースプログレ スリターンズに限られるとしても,対価額の算定の基礎となる売上高に ついては,ソフトウェアであるCVTセットのみではなく,ハードウェ アの価格も対象とすべきである。そして,ハードウェアの価格は1台1 5 680万円であるから,その総額は,100億6320万円(1680 万円×599店舗)となる。 また,ゲーム機の場合,店舗の運営によって日々収入を得ることがで きるから,上記売上高に被控訴人の直営店の収入を加えるべきである。 そして,ゲーム機1台当たりの1年間の粗利は4057万円であるから, 10 スターホースプログレスリターンズのリリースから約10年経った現在 までの収入総額は,340億7880万円(4057万円×10年×8 4店舗)となる。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 15 ●●●●●●●●●●●●●●44億6880万円が,本件発明1−1 に係る売上高となる。 (イ) 本件発明1−2に係る売上高 本件発明1−2に係る売上高は,本件ノウハウの寄与分として9割を 控除すると,35億4839万8720円となる。 20 (ウ) 会社の貢献度 そもそも,被控訴人が控訴人に用意したのはパソコンのみであり,大 規模な投資は全くしていないことなどからすれば,被控訴人の寄与度は せいぜい90%程度である。 (エ) 相当の対価の額 25 以上を前提に,超過売上げの割合を50%,仮想実施料率を5%,発 明者の数を4名として計算すると,控訴人に支払われるべき相当の対価 9 の額は,本件発明1−1の実施分が279万3000円,本件発明1− 2の実施分が221万7749円となる(合計501万0749円)。 イ 被控訴人の主張に対する反論 (ア) 被控訴人が競馬ゲーム機関連の特許等として主張し,乙第7号証の 5 陳述書に記載されている30件余りの特許等のうち,スターホースプロ グレスリターンズにおいて実施されているのは本件特許のみである上, 上記特許等には無効審判によって無効となったものも含まれていること などからすれば,被控訴人の主張及び立証は,何ら参考となるものでは ない。 10 (イ) また,被控訴人が主張するレーザープリンターのクロスライセンス の例も,競馬ゲーム機とは技術分野が異なる上,本件とは異なるクロス ライセンスの事案であるから,全く参考にならない。 (被控訴人の主張) ア 本件発明1−1に係る相当の対価の額 15 (ア) 被控訴人における平成21年度の会計年度が開始した平成21年 4月1日の時点で,被控訴人において,競馬ゲーム機関連の特許権若し くは実用新案権として既に設定登録がされたもの又は特許出願若しく は実用新案登録出願がされて後に特許権又は実用新案権の設定登録が されたものが30件余りあったことからすれば,本件発明1−1の超過 20 売上げの割合を50%とするのは高すぎる。 (イ) また,上記(ア)の事情に加え,レーザープリンターの包括クロスラ イセンスにおける実施料率が3%程度とされた例等を踏まえると,本件 発明1−1の仮想実施料率は,高くとも1%程度にすぎない。 (ウ) 以上によれば,本件発明1−1に係る相当の対価の額は,原判決の 25 認容額の5分の1である3万4125円以下とされるべきである。 イ 控訴人の主張に対する反論 10 (ア) 競馬ゲーム機のハードウェアにおいて,本件発明1−1は必須のも のではないから,ハードウェアの価格を基礎とすべきではない。 (イ) スターホースプログレスリターンズは,全国のゲームセンターに販 売されており,被控訴人の直営店において独占的に本件発明1−1を実 5 施しているわけではなく,いわゆる独占の利益は生じていないから,被 控訴人の直営店の収入を加えるべきではない。 (ウ) 競馬ゲーム機は,被控訴人の当該技術分野における長年の研究開発 の結晶であり,その売上げも多数の関係者の努力の結果であるから,被 控訴人の貢献度は,少なくとも95%とすべきである。 10 第3 当裁判所の判断 1 本件各発明の内容 本件各発明の内容は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」 第4の1(原判決19頁14行目ないし24頁25行目)に記載のとおりであ るから,これを引用する。 15 (1) 原判決23頁6行目の「…」を次のとおり改める。 「本具体例によれば,希望するオッズの範囲を指定するだけでよいので, 初心者であっても適切なベットを短時間で行うことができる。」 (2) 原判決23頁18行目末尾に改行して次のとおり加える。 「【0096】まず,プレイヤは,…軸となる馬番を選択する(…)。軸と 20 なる馬番を選択すると,…軸となる馬番を中心として馬連の予想とそのオッ ズが表示される。 【0097】また,…オッズ設定ボタンM2が表示される。プレイヤがオッ ズ設定ボタンM2のいずれかにタッチするとオッズが指定される(…) 指定 。 されたオッズの範囲に該当する全ての予想が表示され,その他の予想は表示 25 されなくなる。」 (3) 原判決24頁25行目の「【0088】〜【0090】」の後に「,【00 11 96】 【0097】 , 」を加える。 2 本件発明1−1に係る対価請求権の有無(争点1) 当裁判所も,原審と同様に,被控訴人は被告製品1を製造販売することによ って本件発明1−1を実施していたものといえるから,控訴人の被控訴人に対 5 する本件発明1−1に係る対価請求権が存するものと判断する。 その理由は,原判決「事実及び理由」第4の2(原判決24頁26行目ない し25頁25行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 本件発明1−2に係る対価請求権の有無(争点2) 当裁判所も,原審と同様に,被控訴人が被告製品2を製造販売することによ 10 って本件発明1−2を実施していたものとはいえないから,本件発明1−2に 係る対価請求権が存するということはできないと判断する。 その理由は,(1)のとおり原判決を補正し,(2)のとおり当審における補充主 張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第4の3(原判決 25頁26行目ないし33頁14行目)に記載のとおりであるから,これを引 15 用する。 (1) 原判決の補正 ア 原判決26頁19行目の「着順可能性が」の後に「オッズと共に」を加 える。 イ 原判決26頁23行目の (甲7) を (甲7, 「 」 「 乙3)及び弁論の全趣旨」 20 に改める。 ウ 原判決27頁6行目の「ベットされ,」を「ベットされる。」に改め,同 7行目を「D上記ベット後, 「購入馬券一覧」ボタンを選択すると,ベット した馬連がオッズと共に表示される。」に改める。 エ 原判決27頁9行目の「(甲7)」を「(甲7,乙3)及び弁論の全趣旨」 25 に改める。 オ 原判決27頁19行目の「ベットされ,」を「ベットされる。」に改め, 12 同20行目を「D上記ベット後, 「オッズ」ボタンを選択すると,ベットし た馬連を含む全馬連がオッズと共に表示される。」に改める。 カ 原判決28頁11行目の「着順可能性が」の後に「オッズと共に」を加 える。 5 キ 原判決28頁19行目の「着順可能性)」の後に「及びそのオッズ」を加 える。 ク 原判決28頁19行目ないし20行目の「選択の後に初めて表示される」 を「選択後に,更に「購入馬券一覧」ボタン又は「オッズ」ボタンを選択 することによって初めて表示される」に改める。 10 ケ 原判決28頁22行目の「上記馬連」の後に「及びそのオッズ」を加え る。 コ 原判決28頁24行目の「とはなっていない」の後に「上, 「オールベッ ト」ボタンの選択後に更に特定のボタンを選択しなければ上記馬連及びそ のオッズが表示されない」を加える。 15 サ 原判決29頁2行目の「馬連」の後に「及びそのオッズ」を加える。 シ 原判決29頁18行目ないし19行目の「オールベットボタンを押し, 選択したオッズの範囲の馬連が表示された後で,」を次のとおり改める。 「オールベットボタンを押した後,更に「購入馬券一覧」ボタン又は「オ ッズ」ボタンを選択することにより,選択したオッズの範囲の馬連及びそ 20 のオッズが表示された後で,」 ス 原判決31頁9行目の「着順可能性を」の後に「オッズと共に」を加え る。 セ 原判決32頁18行目ないし19行目の「そのことによって,初心者で あっても,希望するオッズの範囲を指定するなどするだけで, を次のとお 」 25 り改める。 「オールベットボタンに相当する上記単一のベットボタンを表示する 13 前に,希望の範囲に属する複数の馬連をオッズと共に提示することによっ て,初心者であっても,希望するオッズの範囲を指定するなどするだけで, ベットするか否かの判断に必要な情報を簡易に,しかも一括して得ること ができ,」に改める。 5 ソ 原判決32頁26行目の「被告製品2においては, を次のとおり改める。 」 「上記(4)アのとおり,被告製品2においては,オッズの範囲を示すボタ ンを選択しても,それだけでは希望の範囲に属する馬連及びそのオッズは 表示されず, 「オールベット」ボタンの選択後に更に「購入馬券一覧」ボタ ン等を選択して初めて,当該馬連及びオッズが表示されるというものであ 10 って,」 (2) 当審における控訴人の補充主張に対する判断 ア 控訴人は,原判決における本件発明1−2の認定に誤りがあり,これを 前提とした本件発明1−2の実施の有無についての判断も当然に誤りで ある旨主張する。 15 イ しかしながら,控訴人の上記主張は,本件発明1−2の認定を誤ったこ とが同発明の実施の有無に関する判断にいかなる影響を与えるのかにつ いて具体的に主張するものではなく,失当である。この点を措くとしても, 原判決は,本件発明1−2は別紙1の2記載の構成を有するものであるこ とを前提に判断をしているものであるところ,同構成は,本件発明1−2 20 の請求項の記載に即したものであって,そこに誤りは認められない。 ウ したがって,控訴人の主張は,採用することができない。 4 本件ノウハウに係る対価請求権の有無(争点3) 当裁判所も,原審と同様に,本件ノウハウに係る控訴人の被控訴人に対する 対価請求権が存するということはできないと判断する。 25 その理由は,次のとおりである。 (1) 本件ノウハウは,特許登録がされていない職務発明として主張されてい 14 るものであるところ,特許性を有する発明でなければ,これを実施すること によって独占の利益が生じたものということはできず,特許法35条3項に 基づく相当の対価を請求することはできないと解される。 そこで,以下,控訴人が主張する内容に基づき,本件ノウハウが特許性を 5 有する発明といえるか否かについて検討する。 (2) 原審及び当審における控訴人の主張によれば,控訴人が主張する本件ノ ウハウの特徴は,次のとおり理解することができる。 ア 完全確率抽選方式の下で,何らの工夫もせずに予想ゲームと馬主ゲーム とを組み合わせた競馬ゲームを設計すると,馬主ゲームにおいて購入する 10 馬の能力値によって馬ごとのメダル獲得の期待値に不公平が生じるため, プレイヤーが能力値の高い馬ばかりを購入するようになり,馬主ゲームの ゲーム性が損なわれてしまう。他方で,各馬の能力値を同一にすることに よってこの問題を解消しようとすると,今度は予想ゲームのゲーム性が損 なわれてしまう。このように,上記のような競馬ゲームの設計においては, 15 馬主ゲームにおける馬ごとのメダル獲得の期待値の不公平さを解消して 公平性を確保しつつ,現実の競馬同様のゲーム性を持たせる工夫をする必 要があるという課題があった。 イ 本件ノウハウは,上記の課題を解決するために,@プレイヤー馬につい て,能力値とは別に,一定の割合でメダル数と相互に換算される活力値と 20 呼ばれる指標を導入した上で,A馬主ゲームにおいて,レースに出走する ために消費する活力値(以下「消費活力値」という。)とレース結果に応じ て増加する活力値(以下「増加活力値」という。)の期待値とを等しくする ことにより,馬主ゲームにおける馬ごとのメダル獲得の期待値の不公平さ が生じないようにするものである。 25 また,消費活力値及び増加活力値の算出においては,B同じレースに複 数のプレイヤー馬が出走する場合もあるところ,プレイヤー馬の能力値が 15 当初は未確定であることから,各プレイヤー馬の増加活力値,消費活力値 及び能力値について,一旦暫定値を用いて計算し,必要に応じて数値を再 調整する計算方法が採られている。 さらに,C活力値は,メダルとして目に見える賞金や出走料とは異なり, 5 プレイヤーに認識されない形で増減され,次回以降の競馬ゲームに影響を 与えるように導入されており,これにより,ゲーム性が醸成されている。 (以下,上記@ないしCの点を,順に「特徴@」などという。) (3) 以下,控訴人が主張する本件ノウハウが特許性を有する発明といえるか 否かにつき,特徴@ないしCを基に検討する。 10 ア 特徴@について (ア) 予想ゲームのみの競馬ゲームを設計する場合であれば,各馬の能力 値を定めた上で,能力値に応じた適切なオッズを定めることにより,公 平性及びゲーム性を確保することができるといえるが,これにゲーム内 容が全く異なる馬主ゲームを組み合わせて新たな競馬ゲームを設計し 15 ようとするのであれば,能力値とは別の指標を導入する必要が生じるこ とは,いわば必然のことであるといえる。 (イ) また,上記(2)アによれば,完全確率抽選方式の下で予想ゲームと馬 主ゲームとを組み合わせた競馬ゲームを設計する場合,馬主ゲームで購 入する馬の能力値に差があることが原因となって馬ごとのメダル獲得 20 の期待値に不公平さが生じることにより,馬主ゲームのゲーム性が損な わる事態が生じ得るが,他方で,馬の能力値の差をなくすことによって この問題を解消しようとすると,今度は予想ゲームのゲーム性が損なわ れてしまうというのであるから,これらの問題を解決するためには,能 力値を調整するのみでは足りず,能力値とは別の指標を導入する必要が 25 あることは明らかである。 (ウ) 以上によれば,特徴@における活力値の導入は,完全確率抽選方式 16 の下で予想ゲームと馬主ゲームとを組み合わせた競馬ゲ ームを設計す る場合において,必然的に必要となる指標を導入したものにすぎないと いうべきである。 イ 特徴Aについて 5 (ア) 上記(2)アの馬主ゲームにおける馬ごとの不公平さは,能力値の高 い馬について,レースに出走するために消費するメダル数よりも,レー ス結果に応じて獲得するメダル数の期待値の方が大きくなることが原因 となって生じるものといえるところ,完全確率抽選方式の下で予想ゲー ムに馬主ゲームを組み合わせる場合にこのような問題が生じ得ることは, 10 当然に想定されるべきことといえる。そして,上記の問題は,消費メダ ル数と獲得メダル数の期待値とに差があることによって生じるのである から,両者が等しくなるように数値調整をすれば解消し得るものである ことは,誰もが容易に思い付くことであるといえる。そうすると,上記 の数値調整を行うために,一定の指標(例えば活力値)を導入し,消費 15 メダル数及び獲得メダル数を活力値に換算し,消費活力値と増加活力値 の期待値とが等しくなるように数値調整をすることは,課題解決のため に当然に採られ得る手段であるといえる。 (イ) 以上によれば,特徴Aにおける期待値の調整は,完全確率抽選方式 の下で予想ゲームに馬主ゲームを組み合わせる場合において,前記の課 20 題を解決するために当然に採られ得る手段であるといえる。 ウ 特徴Bについて (ア) プレイヤー馬に係る消費活力値と増加活力値の期待値とを等しく するための計算について,控訴人が主張する計算のプロセスは別紙3の とおりであり,その具体的内容は控訴人の陳述書(甲10〔13ないし 25 33頁〕,甲30〔1ないし13頁〕)に記載されている。その計算方法 は,要するに,あるプレイヤー馬(以下「A馬」という。)に係る増加活 17 力値等を算出するためには,他の馬の能力値の数値が必要であるところ, 当該レースに他のプレイヤー馬(以下「B馬」という。)も出走している 場合には,B馬の能力値がA馬と同様に当初は未確定であることから, 増加活力値等について一旦暫定的な数値を用いて計算を行った上で,必 5 要に応じて当該数値を再調整するなどして,A馬及びB馬に係る確定的 な増加活力値等を算出するというものである。 そして,複数の未確定の数値を基に確定的な数値を算出しようとする 場合において,上記のように,後で必要に応じて数値を再調整すること を前提として,一旦暫定的な数値を用いて計算を行うこと自体は,通常 10 よく採られる方法であるといえる。また,暫定値をどのような値に設定 するかや,数値の再調整をどの程度の幅で行うかなどは,上記の計算方 法を採用することに伴って当然に必要となる数値範囲の調整の問題に すぎないといえる。 (イ) 上記の点に関して,控訴人は,スターホースシリーズにおけるレー 15 スは最高12頭立てであり,プレイヤー馬も最大8頭が出走する上,3 着までが入賞とされることから,上記の計算には極めて高度で複雑な工 夫が必要である旨主張する。 確かに,控訴人が主張する条件の下においては,考慮すべき要素が増 えるため,計算量が大きく増加する可能性があることは事実である。し 20 かしながら,上記の計算の内容を具体的に説明する控訴人の陳述書(甲 10)をみても,いわば量の問題が質の問題に転化し,特殊な発想や解 法が要求されるに至っているとまではうかがわれないことからすれば, プレイヤー馬も含めて出走頭数が多いからといって,必要な計算量が増 大する以上に特別な処理等が必要になるものとまではいえない。 25 (ウ) 以上によれば,特徴Bにおける活力値の計算方法は,複数の未確定 の数値を基に確定的な数値を算出しようとする場合の計算方法として, 18 通常よく採られる方法を超えるものではないというべきである。 エ 特徴Cについて (ア) アないしウにおいて検討した結果に照らせば,活力値がプレイヤー に認識されない形で増減されることや,それが次回以降のゲームに影響 5 を及ぼすことは,特徴@ないしBを有する活力値を導入したことによる 当然の結果であり,それ以上に,特徴Cを実現させることについて特段 の工夫がされていることを認めるに足りる証拠はない。 (イ) 以上によれば,特徴Cは,それ自体としては,本件ノウハウの特許 性を根拠付ける事情には当たらないというべきである。 10 オ 小括 以上検討したところによれば,本件ノウハウにおける活力値の導入につ いては,必然的に導入すべき指標を用いたものにすぎないというべきであ る上,活力値を用いた期待値の算出等についても,課題解決のために当然 に採られ得る手段であるか,又は通常よく採られる方法を超えるものでは 15 ないというべきである。 (4) なお,控訴人は,本件ノウハウにおいては,ペイアウト率90%のメイン ゲームと同100%のサブゲームとが組み合わされ,ゲームセンターと顧客 との間の利害のバランスがとられている点が画期的であるとも主張する。 しかしながら,ペイアウト率をいくらに設定するかという問題は,それ自 20 体としては,技術の問題ではなく,取極めの問題にすぎないから,控訴人主 張の点は,本件ノウハウの特許性を根拠付ける事情には当たらない。 (5) 以上検討したところによれば,本件ノウハウは,特許性を有する発明であ るとは認められず,これを実施することによって被控訴人に独占の利益が生 じたということはできないから,本件ノウハウが控訴人によって職務発明と 25 して開発され,被告製品2において実施されたものであったとしても,控訴 人は,被控訴人に対し,本件ノウハウにつき,特許法35条3項に基づく相 19 当の対価を請求することはできない。 5 本件発明1−1の対価請求権に係る消滅時効の成否(争点6) 当裁判所も,原審と同様に,被告製品1のうち,スターホースプログレスリ ターンズ以外の機種における本件発明1−1の実施については,当該実施に対 5 応する控訴人の対価請求権は時効により消滅したものと判断する。 その理由は,(1)のとおり原判決を補正し,(2)のとおり当審における控訴人 の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第4の5 (原判決36頁9行目ないし41頁13行目)に記載のとおりであるから,こ れを引用する。 10 (1) 原判決の補正 ア 原判決40頁7行目の「認められるから,」の後に「本件訴えが提起され た時点において,」を加える。 イ 原判決40頁10行目の「10年が経過している」を「10年が既に経 過していた」に改める。 15 (2) 当審における控訴人の補充主張に対する判断 ア 控訴人は,被控訴人とのやり取りにおいて送付された資料(甲16の2) における「実績(ライセンス収入等)無し」との記載は誤りであったから, 本来的なあるべき記載によって「実績補償の支払を認めた旨の記載が存す る」と認定すべきであり,この認定に基づいて,被控訴人が債務を承認し 20 たと認定すべきである旨主張する。 しかしながら,控訴人の上記主張は,独自の見解というほかなく,採用 することはできない。また,被控訴人が上記やり取りにおいて本件発明1 −1に係る債務を承認したとの事実を認めることができないことは,前記 のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決40頁19行目ないし4 25 1頁7行目)のとおりである。 イ また,控訴人が指摘する種々の事情をもって,被控訴人が債務の承認に 20 等しい行動をとったとか,信義則違反により時効援用権を喪失したなどと いうことはできないというべきである。 ウ 以上によれば,控訴人の主張は,採用することができない。 6 本件各発明に係る相当の対価の額(争点4) 5 当裁判所も,原審と同様に,スターホースプログレスリターンズにおける本 件発明1−1の実施につき,控訴人が受けるべき相当の対価の額は,17万0 625円であると判断する。 その理由は,(1)のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を,(2) のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を,それぞれ付加する 10 ほかは,原判決「事実及び理由」第4の6(原判決41頁14行目ないし43 頁23行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 当審における控訴人の補充主張に対する判断 ア 控訴人は,本件発明1−1に係る売上高につき,ハードウェアの価格も 対象とすべきである旨主張する。 15 しかしながら,本件発明1−1は,競馬ゲームに係るベット制御方法の 発明であることからすれば,これが実施されるのは競馬ゲームのソフトウ ェアの部分に限られるから,その実施に係る相当の対価の額の算定におい て,ハードウェアの価格も対象とすべきであるとはいえない。 したがって,控訴人の主張は,採用することができない。 20 イ また,控訴人は,本件発明1−1に係る売上高につき,被控訴人の直営 店の収入を加えるべきである旨主張する。 しかしながら,上記主張における粗利の額は,1台のスターホースプロ グレスリターンズのサテライト機におけるメダルのイン・アウトから単純 に収支を計算した結果にすぎないことからすれば(甲25) 本件発明1− , 25 1の実施による被控訴人の直営店に生じた独占の利益を表すものとはい えず,相当の対価の額の算定に当たって考慮し得るものではないというべ 21 きである。また,本件各証拠をもっても,本件発明1−1に係る売上高に ついて,被控訴人の直営店の収入を加えるべき事情が存するものとは認め られない。 したがって,控訴人の主張は,採用することができない。 5 ウ このほか,控訴人は,種々の主張をするが,いずれも前記の結論を左右 するものではないというべきである。 (2) 当審における被控訴人の補充主張に対する判断 ア 被控訴人は,平成21年4月1日時点において被控訴人が保有するなど していた競馬ゲーム機関連の特許等が30件余りあったことを理由に,本 10 件発明1−1の超過売上げの割合を50%とするのは高すぎる旨主張す る。 しかしながら,被控訴人が上記主張の根拠として提出する陳述書(乙7) について,控訴人が,上記特許等のうちスターホースプログレスリターン ズにおいて実施されているのは本件特許のみであるなどとして,記載され 15 た内容の信用性を争っているにもかかわらず,被控訴人が何らの反論もし ていないことからすれば,同陳述書はにわかに信用することができない。 したがって,被控訴人の主張は,採用することができない。 イ このほか,被控訴人は,種々の主張をするが,いずれも前記の結論を左 右するものではないというべきである。 20 第4 結論 以上によれば,控訴人の請求は,本件発明1−1に係る対価請求権に基づき 17万0625円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年12 月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 求める限度で理由があるから,同限度で請求を認容すべきであり,これと同旨 25 の原判決は相当である。 よって,本件控訴及び本件附帯控訴は,いずれも理由がないから棄却するこ 22 ととして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 5 裁判長裁判官 鶴 岡 稔 彦 10 裁判官 中 平 健 15 裁判官 都 野 道 紀 23 (別紙1) 本件各発明の分説 1 本件発明1−1 5 1−1A 複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤがベットし,レー ス結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームを実行する制御手段 によるベット制御方法において, 1−1B 前記制御手段が,前記レースの複数の着順可能性から構成される複 数の予想情報を設定するステップと, 10 1−1C 前記予想情報をプレイヤに提示するステップと, 1−1D プレイヤの指定により前記複数の予想情報の中から所望の予想情報 を決定するステップと, 1−1E 決定された前記予想情報を構成する複数の着順可能性のすべてに対 してベットする単一のベットボタンを表示するステップと, 15 1−1F プレイヤによる前記ベットボタンへの操作を検出するステップと, 1−1G 前記ベットボタンへの操作を検出した場合には,前記複数の着順可 能性のすべてにベットするステップと 1−1H を実行することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法。 20 2 本件発明1−2 1−2A 複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤがベットし,レー ス結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームを実行する制御手段 によるベット制御方法において, 1−2B 前記制御手段が,レースの複数の着順可能性に対するオッズをそれ 25 ぞれ設定するステップと, 1−2C オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに 24 提示するステップと, 1−2D プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンのいずれかへの操作を 検出することにより,オッズの所望範囲を決定するステップと, 1−2E 決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズ 5 と共にプレイヤに提示するステップと, 1−2F プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする 単一のベットボタンを表示するステップと, 1−2G プレイヤによる前記ベットボタンへの操作を検出するステップと, 1−2H 前記ベットボタンへの操作を検出した場合には,前記複数の着順可 10 能性のすべてにベットするステップと 1−2I を実行することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法。 25 (別紙2) 被告各製品の名称 5 1 被告製品1 スターホース2001(平成13年) スターホース2002(平成14年) スターホースプログレス(平成15年) スターホースプログレスリターンズ(平成21年) 10 2 被告製品2 スターホース2FOURTH(平成20年) スターホース2FIFTH(平成21年) スターホース2FINAL(平成22年) スターホース3SeasonT(平成23年) 15 スターホース3SeasonU(平成25年) スターホース3SeasonV(平成26年) スターホース3SeasonW(平成27年) スターホース3SeasonX(平成28年) スターホース3SeasonY(平成29年) 20 スターホース3SeasonZ(平成30年) 3 被告製品3 スターホース(平成12年) スターホース2(平成17年) スターホース2SECOND(平成18年) 25 スターホース2THIRD(平成19年) スターボート 26 (別紙3) 本件ノウハウの核心部のフローチャート 5 27 |