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関連審決 審判1998-19618
関連ワード 物の発明 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  手続違反 /  発明の詳細な説明 /  援用権(援用) /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 133号 審決取消請求事件
原告 サン・アンド・シイ・コンサルタント株式会社
訴訟代理人弁理士 弓田昌弘
同 前原清美
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 伊波 猛
同 山口由木
同 田中弘満
同 高木 進
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/04/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が平成10年審判第19618号事件について平成13年2月7日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実等
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成7年8月4日,名称を「単一工法による地盤改良法であると共に地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法」とする発明につき,特許出願(平成7年特許願第229559号。以下「本件出願」という。同出願に係る願書に添付された明細書を以下「本願明細書」という。甲第4号証の1は,補正後の明細書が添付された,平成10年4月8日付け手続補正書である。)をし,平成10年11月4日付けで拒絶査定を受け,同年12月14日,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は,これを,平成10年審判第19618号事件として審理し,その結果,平成13年2月7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年3月2日,その謄本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲(請求項1) 「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして,それらの両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤であっても,二以上の工法を併用させることなく,施工可能なることを特徴とする地盤改良法であると共に地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法。」(以下「本願発明」という。) 3 審決の理由 別紙審決書写し記載のとおりである。要するに,本願発明は,「基礎工」(1991年 Vol.19.No.6 総合土木研究所発行)(甲第5号証。以下,審決と同様,「引用刊行物」という。)記載の発明(以下「引用発明」という。)と周知技術とから,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項に該当する,というものである。
4 審決が認定した,引用発明の内容,本願発明と引用発明との一致点・相違点 (1) 引用発明の内容 「軟弱地盤を改良するために,支持力の弱い粘性土層に対してはその排水機能に基づく圧密機能を有するドレーン工法と支持力の強い砂質土層に対してはバイブロハンマーの起振力による締め固め機能を有する振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法。」(2頁27行目〜31行目) (2) 本願発明と引用発明との一致点 「軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,軟弱地盤であっても,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法。」(2頁35行目〜38行目)である点。
(3) 本願発明と引用発明との相違点 「(1) 本願の請求項1に係る発明は,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして施工するのに対し,引用刊行物記載の発明は,特に,そのような軟弱地盤に生かして施工するものであることの記載がない点,及び (2) ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法による地盤改良法を,本願の請求項1に係る発明は,地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法であるとしているのに対し,引用刊行物の発明は,特に,そのような工法であるとの記載のない点。」(審決書3頁1行目〜9行目) (以下,それぞれ「相違点(1)」,「相違点(2)」という。)
原告の主張の要点
審決は,引用発明の認定を誤り,その結果,本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定を誤って,相違点を看過した。審決は,自らが認定した相違点についての判断においても誤りを犯した。審決は,新たな引用例の適用に際して,原告に意見を述べる機会を与えず,手続違背も犯している。これらの誤りがそれぞれ結論に影響することは明らかである。
したがって,審決は,取り消されるべきである。
1 引用発明の認定の誤り及び一致点認定の誤り (1) 引用発明のパックドレーン工法は,振動締固め工法を備えるものでない。
ア ドレーン工法は,粘性土地盤を対象とする地盤改良工法であって,砂質土地盤を対象とする工法ではない。
ドレーン工法とは,通常,粘性土層の中に複数本の縦方向の砂の柱(ドレーン)を形成し,載荷荷重による圧力を加えてこの圧密作用により粘性土層の中に生じる間隙水圧を,この砂の柱を通じて粘性土層から絞り出して排出する工法のことであって,一種の縦方向の暗渠を造成するものということができる。そして,造成後もドレーン効果が維持される。
砂を使用してドレーン道を造成したドレーンを,サンド系ドレーンといい,それを形成する工法をサンドドレーン工法という。サンドドレーン工法の改良型に,引用発明のパックドレーン工法がある。
イ 土質工学上,粘性土地盤は,振動や撹乱を与えると強度が低下することが知られているため,なるべく振動を与えない方法でドレーンを施工することが常識とされている。そのため,米国,欧州では,アースオーガー,ジェットウォーターを使用した排土方式(粘性土を排出してドレーンを形成する方式)を採用している。日本のみ,排出した粘性土の処理に莫大な費用を要するため,やむを得ず,振動が生じるという欠点はあるものの,バイブロハンマーを使用してケーシングを打ち込む非排土方式を採用している。
粘性土地盤に適用されるパックドレーン工法を含むサンドドレーン工法において,バイブロハンマーを用いるのは,ケーシングの打ち込み及びホッパー内の砂をケーシング内に落とし込むためであり,これにより粘性土地盤の圧密時間を短縮することができる。しかし,このバイブロハンマーは,地盤の振動締固めをするものではない。
ウ 砂質土地盤に対しドレーン工法で地盤改良をすることは,通常行われていない。仮に砂質土地盤にドレーン工法を施工したとしても,支持力の増加は期待できない。要するに,引用発明では,砂質土地盤に対する地盤改良は全く考慮されていないのである。
以上のとおり,引用発明が,バイブロハンマーの起振力を利用して砂質土層の締め固めをする機能を有しているとした審決の認定は,明らかに誤っている。
エ 粘性土と砂質土とが混在する地盤の支持力は,通常時(地震時以外)においては粘性土地盤に左右されることが多く,砂質土地盤によるところは少ない。
砂質土地盤は,通常時(地震時以外)には十分な支持力を有しているとしても,地震時には,液状化により支持力が極度に低下する。
そこで,本願発明では,引用発明におけるのと異なり,砂質土地盤に対し,地震時における支持力の低下を抑制する手段も採られている。これは,ドレーン効果に基づくものである。
本件出願以前には,粘性土層,砂質土層の混在する地盤に適用できるドレーン工法は存在しなかった。
(2) 引用発明のパックドレーン工法は,本願発明でいう「単一工法」でも,「二つ以上の工法を併用させることなく施工可能なる地盤改良法」でもない。
ア 上記のとおり,引用発明のパックドレーン工法は,粘性土地盤に適用されるものである。バイブロハンマーのような振動装置を備えているとしても,これは,粘性土地盤の改良の施工中,せいぜい,ケーシングの打設及びケーシング内への砂の落とし込みの目的で使用されるものであり,それに足りる程度の起振力しか持たない。むしろ,粘性土層への振動は,その地盤強度を落とすことになるので,なるべく与えないように配慮して使用される。
パックドレーン工法自体,本来,砂質土層の地盤に適用されるものでなく,砂の締め固めの必要のない地盤への適用工法であることを考慮すれば,このバイブロハンマーの振動が,砂の締め固めをするに必要とされるほどの強力で大きな振動ではないことは,明白である。
イ このように,引用発明のパックドレーン工法は,振動式締固め工法としての振動締固め機能を有しない工法であるから,これを,パックドレーン工法と振動締固め工法との双方の特色を生かして,それらの両工法の機能を同時に発揮することが可能な工法であるとすることはできない。上記パックドレーン工法は,本願発明のように,「ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な」,「単一工法」とはなり得ない(単一である,とわざわざいっている以上,複数の機能を有する一つの工法を意味することは明らかである。)。
審決の上記認定は誤っている。
2 一致点の認定の誤り (1) 前記のとおり,引用発明は,「単一工法」でも,「二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法を採り得る工法」でもない。
したがって,審決が,本願発明と引用発明とを,「両者は,「軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と,振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,軟弱地盤であっても,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法。」である点で一致」している,とした認定は誤りである。
(2) 審決は,相違点(1)で挙げた事項を,一致点であるともしており,矛盾している。
審決が一致点として挙げている「軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と,振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,軟弱地盤であっても,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法」との点と,相違点(1)で,本願発明にあるものとして挙げている「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして施工する」との点,引用発明にないものとして挙げている「特に,そのような軟弱地盤に生かして施工するものである」との点とは,表現において異なるものの,同じことを意味している。
すなわち,前者は,両工法をどう組み合わせて(単複)施工するかという,組合せ形態の観点において,本願発明が,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法を併用することなく,単一工法として施工することが可能な工法であることをとらえて表現したものであり,後者は,施工の対象となる複数の土壌の性質に着目し,いずれの地盤改良にも有効なように両工法の特徴を生かして施工する,ということを表現したものである。いずれも,本願発明の単一工法が,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の性質・特徴を備えていて,両工法から,施工する地盤の異なる土層にふさわしい工法の一つを選択し,施工する土壌改良工法であることを,意味しているものである。
すなわち,審決は,相違点として挙げている点を,同時に一致点として認定しており,この点で矛盾している。
3 相違点の看過について (1) 本願発明は,要約していえば,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を備え,両工法を併用することなく,両工法を生かして施工し得る単一工法による軟弱地盤改良のための工法であるのに対して,引用発明のパックドレーン工法は,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮させることが可能な工法ではなく,また,両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法ではなく,さらに,二つ以上の工法を併用することなく施工することが可能な地盤改良法を採り得る工法でもない。
(2) したがって,本願発明と引用発明とは,前者が単一工法であり,かつ単一工法による施工形態をとる点で相違している。審決は,本願発明が,「軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と,振動式締固め工法の両工法の機能を同時に発揮させることが可能な工法にした単一工法により,軟弱地盤であっても,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法」であるのに対し,後者がそうでない点も,相違点として挙げるべきであった。
(3) 本願発明は,砂質土層と粘性土層とを区別し,砂質土層に対してはより強い振動を加えて積極的に締め固めるものであって,引用発明とは,この点でも相違する。
(4) 本願発明のドレーンは,施工後もドレーン効果を維持し,地震時の砂質地盤の液状化を防止する機能を有している。これに対し,引用発明のサンドドレーンにおいては,施工後のドレーン効果の喪失は,問題とされていない。
(5) 審決は,これらの点につき相違点を看過している。
4 相違点についての判断の誤りについて (1) 審決は,相違点(1)について, 「本願の出願前,ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法による地盤改良法を,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは,双方の土層が混在する地盤に適用することは,周知である(必要なら,「改訂現場技術者のための基礎工法」改訂1版(判決注・本訴甲第6号証,以下「甲6文献」という。),理工図書株式会社,1993年12月10日,p.256の図6・11及びp.269-271のサンドコンパクションパイル工法の項,特開平2-296924号公報(判決注・本訴甲第7号証,以下「甲7公報」という。),特開平4-73311号公報(判決注・本訴甲第8号証,以下「甲8公報」という。),特開平7-26546号公報(判決注・本訴甲第9号証,以下「甲9公報」という。)を参照されたい)と認める。
そうしてみると,本願の請求項1に係る発明の相違点(1)の構成は,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,地盤改良法のドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を有する引用刊行物記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到できた程度のものと認める。」(審決書3頁13行目〜25行目), としている。
この判断は,引用発明が,上記「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,地盤改良法のドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を有する」工法である,との誤った認定を前提として,本願発明と引用発明との相違点を看過したままでなされた,誤ったものである。
(2) 審決は,相違点(2)について, 「地震の際砂質土層の間隙水圧が上昇したときこの砂質土層中の水分はサンドドレーンを通じて地上へ排水されることによって,砂質土層の液状化が防止されることは,本願の出願前,特開平1-250514号公報(判決注・本訴甲第10号証,以下「甲10公報」という。),特開平2-225711号公報(判決注・本訴甲第11号証,以下「甲11公報」という。)等に示すように周知技術にすぎないから,引用刊行物記載の発明の地盤改良法が適用された砂質土層中のサンドドレーンが,上記地震の際の液状化防止機能を有することは当業者において明らかである。
そうしてみると,本願の請求項1に係る発明の相違点(2)の構成は,引用刊行物記載の発明が有する周知の機能を発明の構成とすることで当業者が容易に想到できた程度のものと認める。
そして,本願の請求項1に係る発明の効果も,引用刊行物記載の発明及び上記周知技術の機能に基づき当業者が普通に予測できる程度のものであって,格別なものがあるとは認められない。」(審決書3頁27行目〜38行目), としている。
引用発明のパックドレーン工法は,ドレーン工法によるドレーン機能と振動締固め工法による砂質土層締固め効果の両機能を,それぞれの工法を併用することなく,発揮することができる,というものではない。これに対して,本願発明は,ドレーン機能及び砂質土層締固め効果の両機能を,それぞれの工法を併用することなく,粘性土層と砂質土層の互層或いは混在する地盤に対しても発揮することのできる有効な工法であり,地震時の砂質地盤の液状化を防止することもできるという格別の効果を有するものである。審決は,本願発明の効果を看過し,その結果,進歩性の判断を誤っている。
(3) 審決は,周知技術を示すものとして,甲6文献,甲7公報,甲8公報,甲9公報,甲10公報,甲11公報,「新しい軟弱地盤処理工法」(近代図書株式会社・乙第1号証。以下,「乙1文献」という。)を挙げている。
原告は,後記「5 手続違背について」のとおり,そもそもこれらに基づき周知技術を認定することは,新たな拒絶理由の追加に当たり,手続上許されないと主張するものである。そして,仮にこれが許されるとしても,以下のとおり,上記各証拠には,審決が認定するような周知技術は開示も示唆もされていないのである。
ア 前記のとおり,審決は,「本願の出願前,ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能にした単一工法による地盤改良法を,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは,双方の土層が混在する地盤に適用することは,周知である」ことの根拠として,甲6文献及び甲7公報ないし甲9公報を挙げる。
イ(ア) 甲6文献記載のサンドコンパクションパイル工法は,ドレーン効果を有しない。このことは,サンドコンパクションパイル工法が,残留沈下量を小さく抑えるとしていること,形成するものが締め固められた砂杭(サンドコンパクションパイル)であることから,明らかである。もっとも,載荷重工法を併用すれば,この工法もドレーン効果を生じる。しかし,それでは,本願発明の「単一工法」,「二以上の工法を併用させることなく」の要件を満たさない。
(イ) 被告は,サンドコンパクションパイル工法の一種であるバイブロコンポーザー工法は,種々の地盤に対して同一の機械をもって施工でき,粘性土地盤に適用した場合には,せん断抵抗の大きい砂杭と粘性土からなる複合地盤が形成されて地盤全体の安定度を高くするとともにドレーン効果を有し,粘性土地盤に適用した場合には,砂質土層の締固め効果を奏する,と主張している。
バイブロコンポーザー工法は,サンドコンパクションパイル工法の一種であり,砂杭を形成する工法の一種であって,粘土層に乱れを与えるという欠点を有している。しかも,本願発明のようなドレーン効果を有しない。
バイブロコンポーザー工法が,種々の地盤に対して同一の機械で施工できるものであるとしても,甲6文献には,粘性土層と砂質土層の両者の互層又はこれらが混在する地盤についても適用できることまでは,開示されていない。この点で,本願発明と,サンドコンパクションパイル工法とは,対象となる地盤も,工法の適用形態も異なる(本願発明は,両土層が混在等する地盤であっても,複数の工法を併用することなく施工できる,というものである。)。
ウ 被告は,甲7公報の地盤の締固め工法は,ドレーン柱の形成,砂地盤の液状化防止という,本願発明の機能を有していると主張する。
甲7公報には,「粘土質またはシルト質の地盤に形成したドレーン柱に対し締め固め用パイルを介して打撃装置により圧縮衝撃を繰り返し加えると,前記締め固め用パイルは前記ドレーン柱に入っていく。すると,この締め固め用パイルの進入に伴い,前記ドレーン柱を構成するドレーン材が圧縮衝撃による圧密作用を受け,さらには前記ドレーン柱内に進入した前記締め固め用パイル自体が有する体積による影響等を受けて,前記ドレーン柱自体に変形や膨出等の現象が圧縮衝撃ごとに発生し,その結果,前記ドレーン柱の周囲に存在する地盤が圧密を起こし締め固まる。また,同様に,砂質の地盤に形成したドレーン柱に対し前記締め固め用パイルを介して圧縮衝撃を加えると,前記圧縮衝撃と,当該圧縮衝撃を加える際に生じる振動と,さらには,ドレーン材の受ける圧密作用や締め固め用パイル自体の有する体積による影響を受けて変形,膨出等を起こして発生する圧力等によって間隙水の圧力が急激に上昇し,液状化が発生する。その結果,前記ドレーン柱に隣接する当該他のドレーン柱は,前記砂質の地盤の間隙水を排出し,前記砂質の地盤は締め固まる。」(2頁右上欄8行目〜左下欄9行目),と記載されている。
これは,パイルによる締め固め施工に際しての事前処置及び締固め施工中の現象の解決に関する記載である。本願発明は,パイル介在の衝撃を与えずに,ドレーン工法を行うものであるから,甲7公報の施工方法とは,施工の態様が異なる。
甲7公報の工法は,複合地盤を対象してはいるものの,締固めのみのものである。本願発明のように,単一工法にして複数の機能を有しているものではない。
エ 被告は,甲8公報に,良質層や地盤支持力を増大したい土層や沈下対策を必要とする土層などの種々の土層を有する地盤対策に,一度の施工によりドレーンパイルを形成することが示されている,とする。
しかし,甲8公報の地盤改良工法により施工されるのは,ドレーンパイルと固化パイルであり,支持力を増強する杭である。本願発明の,施工後のドレーン効果をも考慮し,地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法とは異なる。甲8公報のドレーンパイルには,施工後においても,地震時に砂質地盤の液状化を防止するドレーン効果はない。
オ 被告は,甲9公報には,粘土質土砂層及び硬質土砂層を有する地盤に,ケーシングパイプ及び加圧貫入装置を用い,一連の施工によって砂杭を形成することが開示されている,とする。
しかし,甲9公報の工法は,「【0003】ケーシングパイプの下端部には,通常,ケーシングパイプを軟弱地盤内に打ち込む際に,そのケーシングパイプ内に粘土質土砂が進入しないように,先端蓋が取り付けられている。」(2頁1欄23行目〜26行目)と記載されていることから分かるとおり,砂杭を打ち込む作業が存在するものである。これは,締め固められた砂杭であって,本願発明のドレーンとは明らかに異なる。
甲9公報の工法の施工対象は,粘土質土砂層及び硬質土砂層である。本願発明の対象となる,「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤」とは異なる。
カ 被告は,引用発明は砂質土層の振動締固めの機能を有する,と考えるべき根拠として,乙1文献には,ジェット式サンドドレーン工法を砂地盤に適用した場合,打ち込まれた鋼管の体積分の粒子が周囲の土の間隙内に強制的に貫入させられ,締められることが開示されていること,を挙げる。
(ア) しかし,そのような変化は,局所的なものにすぎず,地盤全体の改良をもたらすものではない。本願発明の意図する,砂質土層の締固め工法の機能を奏するものではない。
(イ) 引用発明は,サンドドレーン工法ではなく,サンドコンパクションパイル工法である。サンドドレーン工法に関する記載を援用して,引用発明を理解することはできない。
(ウ) 乙1文献には,サンドコンパクションパイル工法も開示されている。
しかし,これは,前述のとおり締め固められた砂杭であって,ドレーン効果も,地震時の液状化を防止する効果も有しない。また,乙1文献のサンドコンパクションパイル工法を,「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤」に適用することができるとしても,同一の機械を使用する以上,粘性土に対してドレーン効果を発揮することができるような,形の大きい砂杭を設けることはできない。乙1文献のサンドコンパクションパイルも,単一の砂質土地盤ないし単一の粘性土地盤のそれぞれに,個別に適用されるものとしか理解できない。
キ 結局,審決が周知技術として挙げる甲6文献及び甲7公報ないし甲9公報並びに被告が提出した乙1文献は,いずれも砂質土地盤改良のための締固め工法に係る技術を示すものであり,引用発明とは,地盤改良工法という次元では同じであっても ,具体的な技術としては異なる。
すなわち,甲6文献及び甲7公報ないし甲9公報,乙1文献において開示されているのは,サンドコンパクションパイル工法等の砂質土地盤改良用締固め工法であり,これらは,引用発明のサンドドレーン工法等の粘性土地盤改良用ドレーン工法とは異なる。のみならず,砂質土地盤の振動締固め工法と,振動を嫌う粘性土地盤のドレーン工法とは,相反する技術であり,一方を他方に適用することに困難を伴う関係にある。
このように,審決ないし被告が周知技術として挙げるものは,拒絶理由の基礎となる引用発明の機能を補完する技術であるどころか,技術的に相反する工法なのである。
「単一」とされる工法の構成,適用の対象となる地盤,工法の適用の形態,ドレーン機能の作用のいずれの点においても,引用発明の技術的内容を補完することのできない甲6文献,甲7公報ないし甲9公報,乙1文献記載の技術をもって,本願発明と同様の構造,機能を有すると主張すること自体,誤っている。
ク 被告は,甲10公報,甲11公報を提出し,砂層土層中のドレーンが,地震時の液状化を防止する機能を有することは周知であった,と主張する。
甲10公報及び甲11公報記載のドレーンは,砂質地盤の液状化を防止するためのものであって,引用発明の,粘性土地盤の圧密を促進させるためのドレーンと,適用対象の地盤が異なることが明らかである。ところが,前者における周知技術が後者にも当てはまることを根拠付けるものは,上記各公報のいずれにも,開示されていない。
引用発明のドレーンが地震時の液状化を防止する機能を有しているとしても,それと,本願発明のドレーンとが,同じ構成・機能である,と考えるための根拠となるものは,どこにも見いだすことができない。
ケ 原告は,粘性土層及び砂質土層の両層が混在する地盤が周知であったことを否定するものではない。しかし,従来,サンドドレーン工法又は振動式締固め(サンドコンパクションパイル工法等)のうち,どちらか一つのみを採用して(すなわち併用せず),両方の土層を有する地盤を施工する場合,優勢な土層に適する工法を採用し,他方の土層の地盤改良は犠牲にしてきた。
本願発明は,単一の工法で,両方の土層の地盤改良をするものである。
このようなことは,被告が挙げる証拠のどれにも開示されていない。
5 手続違背について (1) 仮に,甲6文献,甲7公報ないし甲9公報,乙1文献記載の技術が,周知例として適切なものであるとしても,審判が継続している間に,審決が採用すべき新たな周知例に対して何ら意見を述べる機会を与えず,まして補正の機会を奪うような審理の在り方は,特許法の精神に反するものである。
被告は,甲6文献,甲7公報ないし甲9公報,乙1文献を全体として勘案すると,その主張に係るような技術の存在を認定することができる,としている。
これは,審判において審理判断された拒絶理由ではない。この点でも,被告の主張は,新たな拒絶理由を発するに等しい。
(2) 審決は,甲10公報及び甲11公報に基づき,地震時の液状化防止技術は容易に推考できたものである,とする。しかし,最終拒絶理由には,そのような拒絶理由は付されていない。すなわち,これは,審決において初めて通知された,新たな拒絶理由というべきである。ところが,原告は,これに対して意見を述べる機会を与えられていない。
拒絶理由通知で引用されたことのある文献(甲10公報が,初回の拒絶理由通知で引用されていることは事実である。もっとも,最終の拒絶理由通知では挙げられていない。甲11公報に至っては,審決において初めて示されたものである。)であっても,これに基づき,審判において新たな拒絶理由を追加することは,特許法159条2項,50条の規定に反し許されない,と解すべきである。 もし,このような手続による処理が許容されるならば,極端な例として,ある文献が拒絶理由通知において引用されていれば,当初の拒絶理由とは全く異なる理由であっても,当該文献により裏付けることができる以上,その理由により自由に後付けで拒絶査定ができることになる。このような,拡大解釈といえる処理は法の意図するところではないはずである(特許法50条1項,159条2項)。
(3) 審決には,以上のとおり,特許法159条2項,同法17条の2等の手続違背があるから,取り消されるべきである。
被告の反論の要点
1 原告の主張1(引用発明の認定の誤り)に対して (1) ドレーン工法は,地盤の振動締固め機能を有する。
ア ドレーン工法が,一般に,粘性土地盤を対象とする地盤改良工法であるとしても,通常の軟弱地盤が単一の土層のみからなることはまれで,「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤」が遍在することは,常識である。そうすると,ドレーン工法が粘性土層,砂質土層の混在する地盤にも施工されることも,よくあることである。
このことは,本願発明もそのような地盤の一般的な事情を前提として発明されたものであること,甲6文献においても,図6・11に砂質土層と粘性土層とが混在する地盤にドレーンを形成することが記載されていること,甲7公報に,砂質のみならず粘性質の地盤又はそれらの複合地盤にドレーン柱を形成することが記載されていること,乙1文献の「第3章 軟弱地盤処理工法」,「第3節 振動等を利用した締め固め圧入工法」,「3.3.2 サンドコンパクションパイル工法(振動式)」に,「わが国の複雑な土質構成に対応して,砂質土にも粘性土にも適用できるよう開発されたものである。すなわち,砂質土に対しては砂の振動により地盤を締め固め,粘性土に対しては径の大きい砂クイと一体になった複合地盤を造成して,地盤全体の安定性を高めることを主な目的とするもので,両者に対し同一の機械・方法で適用される。」(140頁本文4行目〜7行目),と記載されていることからも,明らかである。
イ 軟弱粘土地盤に用いられる鋼管打込式のサンドドレーン工法が,砂質土地盤に適用される場合には,打ち込まれた鋼管の体積分だけ土が側方に移動し圧密されることで,砂質土地盤を締め固める機能がある。例えば,乙1文献には,その「第3章 軟弱地盤処理工法」,「第2節 脱水工法」,「3.2.1 サンドドレーン」,「(3)ジェット式サンドドレーン」の項に,「鋼管打込式でサンドドレーンを設置する場合の,地盤に与える影響を考えてみるとつぎの通りである。地盤に管が打込まれると,その管の体積分だけの土は側方に移動しなければならないが,もし砂地盤であったとすると,その周囲の砂の粒子と粒子との間にあった水は逃水し,そのかわり管の体積分の粒子が周囲土の間ゲキ内に強制的に貫入させられて間ゲキ比が減少し締まった状態になるのである。」(103頁7行目〜11行目)と記載されている。
ウ 引用刊行物には,サンドドレーン工法(パックドレーン工法)に関し,「1.ケーシング打込み-機械を所定の位置に固定し,ケーシングの底蓋を閉じ垂直を保ったままの状態で,バイブロハンマーの起振力によりケーシングの打込みを開始する。・・・3.砂の充填-網袋の挿入が終わるとただちに砂投入口のシャッターを開き,・・・砂をバイブロハンマーの振動により,4本同時に砂を充填する。4.ケーシング引抜き-砂が網袋の上端まで充填されたらケーシングの上蓋を閉じ,コンプレッサーから送られるエアーでケーシング内のパックドレーンを押さえながら,再び振動を加えケーシングを引抜く。・・・」の工程が,図面とともに記載されている。
エ これによれば,引用発明のパックドレーン工法におけるバイブロハンマーの起振力の利用形態が,ケーシング打ち込みのためであり,また,ケーシング内へ砂を落とし込むためのものにすぎないとしても,ケーシング周囲の土が砂質土であれば,底蓋を閉じたケーシング打ち込みの際,その打ち込まれたケーシングの体積分だけ砂質土が側方に移動するとともにバイブロハンマーによる振動により締め固められ,また,ケーシング内へ砂を落とし込む際のバイブロハンマーによる振動によっても締め固められる,ということができる。
オ 以上のとおりであるから,一般に軟弱粘土地盤に用いられるものと考えられている引用発明のパックドレーン工法が,砂質土層を一部に有する地盤にも適用されることも当然あり得ること,その場合,引用発明のパックドレーン工法に,砂質土地盤を締め固める機能があることは,明らかである。
(2) 引用発明は,「単一工法」であり,「二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる」地盤改良法である。
ア 本願発明の「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために」,「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは,双方の土層が混在する地盤であっても,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なることを特徴とする地盤改良法」を施工するための,「ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして,それらの両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法」に関し,本願明細書の実施例の箇所には,「バイブロハンマーのような振動装置を有し,バーチカルドレーン打設用のケーシングを備え,そのケーシングは被施工地盤に振動を伝達し得る機能を有する」(平成10年4月8日付け手続補正書(甲第4の1号証)5頁13行目〜15行目)装置を用いて,「バイブロハンマーのような振動装置を使用して,バーチカルドレーンを施工することにより,粘性土層にはドレーン効果をもたらすとともに過剰間隙水圧を生じさせて,初期の圧密を促進させる。他方で,砂質土層は,振動装置でドレーンを打設するためにその振動効果により,砂質土層が締め固められて砂質土層の地盤強化が図られる。」(同手続補正書5頁23行目〜27行目)ようにした工法が記載されている。
イ 引用発明のパックドレーン工法は,バイブロハンマーの起振力を利用する全工程が,バイブロハンマー及びケーシングを備えた一つの機械により行われており,この一つの機械が,ドレーンの設置とともに振動締固めをも行うものであるから,本願発明の,「ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして,それらの両工法の機能を同時に施工可能な工法」に用いられる,上記実施例に示された装置と実質的に同じ装置であることが明らかである。
ウ 本願発明にいう振動式締固め工法に関して,本願明細書には,「その被施工地盤に与える振動効果をより大きくするために,2本以上のバーチカルドレーン打設用のケーシングを同時に打設することができる。」(平成10年4月8日付け手続補正書5頁15行目〜17行目)と記載されており,締固めのための振動が,2本以上のケーシングを同時に打設する程度の振動により得られることが示されている。
他方,引用刊行物に,「@開閉できる底蓋を有する内径12.4cmのケーシングを,1.2m正方形に配置した4本を同時に所定の深さまで打設する。」(15頁右欄24行目〜26行目),「1.ケーシング打込み-機械を所定の位置に固定し,ケーシングの底蓋を閉じ垂直を保ったままの状態で,バイブロハンマーの起振力によりケーシングの打込みを開始する。」(16頁左上図「1.ケーシング打込み」工程の説明参照)と記載され,4本のケーシングを同時にバイブロハンマーの起振力により打ち込むことが示されていることからすると,引用発明のパックドレーン工法の振動の大きさは,砂質土地盤を締固めることができるほどのものであるとみるのが合理的である。
エ 以上のとおりであるから,引用発明のパックドレーン工法は,粘性土層にも砂質土層にも同じ装置を使用することができる工法であり,本願発明のいう「単一工法」であるということができる。
オ 前記のとおり,引用発明は,軟弱地盤を改良するための工法であって,粘性土層に対してはその排水機能に基づく圧密機能を有するドレーン工法の機能を有し,砂質土層が存在すれば,これに対しては,バイブロハンマーの起振力による締め固め機能を有する。一つの工法で土層に応じて両者のいずれをも施工することを可能とした「両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法」ということができる。
カ このように,引用発明は,粘性土層にも砂質土層にも同じ装置を使用することができる工法である単一工法であり,これにより,一方では粘性土層に対するドレーン工法を施工することができ,他方では砂質土層に対する締固め工法を施工することができ,それぞれ個別に工法を使い分けすることが可能な工法である。
したがって,引用発明は,本願発明にいう「二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる」工法ともいうことができる。
(3) 以上のとおりであるから,審決の引用発明の認定に誤りはない。
2 原告の主張2(一致点認定の誤り)に対して (1) 1で述べたとおり,引用発明は,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することが可能な工法を備えるものであり,また,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法であり,さらに,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法により,軟弱地盤であっても,「二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる」地盤改良法,である。
したがって,審決の,本願発明と引用発明の一致点の認定に誤りはない。
(2) 原告は,審決が,本願発明の同一の構成を,一方で一致点として摘示し,他方で相違点として摘示しており,論理矛盾がある,と主張する。
相違点(1)は,工法を適用する地盤の土質に対する配慮の観点から,複数の工法を生かして施工する対象地盤の土質について,これが「支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤」であることが,引用刊行物に記載されていないので,形式的に相違点として抽出したものである。本来,これは,引用刊行物の記載に包含されているに等しい技術事項である。
しかし,引用刊行物に具体的な記載がないことから,敢えて相違点として抽出したものである。
引用発明が,本来的に,粘性土層に対してはドレーン工法の機能を有し,砂質土層に対しては締固め機能を有する,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法であることと,この工法を実際にどのような土質の地盤に施工するかは別の事項である。審決は,後者に関し,引用刊行物に具体的な記載がないため,これを形式的に相違点(1)として挙げたまでのことであり,このことは,一致点の認定相違点の認定の間に論理矛盾をもたらすものではない。
3 原告の主張3(相違点の看過)に対して 前記のとおり,引用発明は,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と,振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することが可能な工法を備えるものであり,また,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法であり,さらに,軟弱地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することを可能にした単一工法により,軟弱地盤であっても,二つ以上の工法を併用することなく,施工することが可能な地盤改良法である。
したがって,原告が主張するような相違点の看過はない。
4 原告の主張4(相違点についての判断)に対して (1) 審決の,引用発明の認定,一致点及び相違点の認定に原告主張のような誤りはない。相違点についての判断にも原告主張のような誤りはない。
(2) 相違点(1)について ア 甲6文献には,それに記載されたサンドコンパクションパイル工法の一種であるバイブロコンポーザー工法が,種々の地盤に対して同一の機械をもって施工でき,砂質土地盤に対しては,砂の振動と圧入とにより,締固めの効果を発揮し,粘性土地盤に適用した場合には,せん断抵抗の大きい砂杭と粘性土とからなる複合地盤が形成されて地盤全体の安定度を高くするとともに,載荷重工法を併用すれば,ドレーン効果を,すなわちサンドドレーンと同等の機能を発揮できるものであること,この工法が,砂質土層が混在する軟弱粘性土層から成る地盤に適用されることが開示されている。
イ 甲7公報には,地盤に複数のドレーン柱を形成して土中の水を排出することにより,軟弱地盤を改良する,又は,砂質地盤の液状化を防止する,地盤の締固め工法が開示され,それが,砂質と粘土質の複合地盤に適用できることも開示されている。
ウ 甲8公報には,良質層や地盤支持力を増大したい土層や沈下対策を必要とする土層などの種々の土層を有する地盤対策に,一度の施工により,支持力が問題となる土層に対しては固化パイルを,沈下が問題となる土層に対してはドレーンパイルを形成する工法が開示されている。
エ 甲9公報には,粘土質土砂層及び硬質土砂層を有する地盤に,ケーシングパイプ及び加圧貫入装置を用い,一連の施工によって砂杭を形成することが開示されている。
オ 乙1文献には,地中に鋼管を打ち込んでその中に砂を投じてから管を引き抜いて行う鋼管打込工法(ジェット式サンドドレーン工法)でサンドドレーンを設置する場合,砂地盤においては,打ち込まれた鋼管の体積分の粒子が周囲の土の間隙内に強制的に貫入させられ,締められること,振動する中空管を用いて軟弱地盤に砂杭を造成して地盤の安定化を図る工法(バイブロコンポーザー工法)は,砂質土層及び粘性土層のいずれにも,同一の機械・方法で適用できること,砂質土層に対しては砂の振動による締固めの効果が,粘性土層に対しては径の大きい砂杭と一体となった複合地盤を造成して安定性を高めることができること,が開示されている。
カ これらからいえることは,@日本には,粘性土層と砂質土層とが混在している軟弱地盤が普通に存在していること,Aサンドドレーン工法は,砂質土層を含む軟弱地盤にも適用できること,Bバイブロコンポーザー工法は,砂質土層及び粘性土層の混合地盤に対して,同一の機械で施工できること,C上記Bの工法を適用すると,粘性土層に対しては,地盤の安定性を増すとともに,ドレーン効果を奏し,砂質土層に対しては,締固め効果を奏することができること,である。
したがって,ドレーン工法と振動締固め工法とをその両方の機能を同時に発揮することが可能な単一工法にして,これを,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層に,あるいはそれらが混在する土層に適用することは,周知であったということができる。
この周知技術を引用発明に適用して,それを,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層に,あるいはそれらが混在する土層に適用することに想到することは,容易である。
(3) 相違点(2)について 甲10公報及び甲11公報からは,砂質土層中のドレーンが地震時における砂質地盤の液状化を防止することが周知であることを認めることができる。
そうすると,引用発明のドレーンに,地震時の砂質土層の液状化を防止する機能を持たせることは,当業者が容易に推考できることである。
(4) 本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づき当業者が普通に予測できる程度のものであって,格別なものではない。
したがって,本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである,とした審決の判断に誤りはない。
5 原告の主張5(手続違背)に対して (1) 審決において,甲6文献,甲7公報ないし甲9公報を挙げた趣旨は,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層あるいは双方の土層が混在する地盤が周知であって,ドレーン工法や振動締固め工法が粘性土層,砂質土層の混在する地盤にも施工されることが周知であることを例示するためである。
審決は,拒絶査定(甲第2号証の2)がその理由として挙げた,平成10年7月1日付け拒絶理由通知書(甲第2号証の4)に記載した,「バーチカルドレーンはドレーンと振動締勝固め(被告注:原文のまま)の両者の機能を有しており,粘性土と砂質土の両者の混在する地盤においても施工可能であることは示唆されている。」及び拒絶査定に記載した「バーチカルドレーン工法の際に振動締固めを行うことは周知である。」ことを裏付ける証拠として甲6文献,甲7公報ないし甲9公報を示したものである。新たな拒絶理由を提示したものではない。
(2) 甲10公報及び甲11公報を挙げたのも,砂質土層中のドレーンが地震時における砂質地盤の液状化を防止することが周知であることを例示するためである(なお,甲10公報は,平成10年2月3日付け拒絶理由通知(甲第4号証の2)に引用文献5として示されている。)。
審決において新たな拒絶理由を追加したものではない。
(3) したがって,拒絶理由通知に記載のない文献を審決等で付け加えたとしても,特許法第159条第2項の「異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものではなく,同項において準用する特許法第50条の規定に何ら反するところはない。
当裁判所の判断
1 本願発明の理解について (1) 本願発明を特定する特許請求の範囲を,構成要件ごとに分けて掲げると,以下のとおりとなる。
A 支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために, B ドレーン工法と振動式締固め工法を生かして, C それらの両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により, D 支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,或いは双方の土層が混在する地盤であっても, E 二以上の工法を併用させることなく,施工可能なることを特徴とする F 地盤改良法であると共に G 地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法 (2) 特許請求の範囲の上記の文言からは,本願発明は,地盤改良法であるとともに地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法でもあって,ドレーン工法の機能と振動締固め工法の機能とを同時に発揮することが可能であり,単一の工法であって二つ以上の工法を併用する必要がなく,施工の対象となる地盤は支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,あるいは双方の土層が混在する地盤を含むものであると認められる。
しかし,ドレーン工法と振動式締固め工法との双方を生かすこと,あるいはこれらの機能を同時に発揮することが可能な工法の内容等を,具体的に把握するための手掛かりとなる文言は,特許請求の範囲の中にはない。
そこで,本願明細書中の発明の詳細な説明の記載を検討する。
(3) 本願明細書において,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層の互層,あるいは双方の土層が混在する地盤をいかにして改良するかについて,以下のような記載がある。
ア「【従来の技術】 従来から,支持力の弱い粘性土層は,その間隙水を除去することによりその土層を強化することが一般的に採用されてきた。その粘性土層から間隙水を除去して地盤を強化する方法は,圧密現象を利用した工法である。その圧密現象を利用し,圧密現象を促進するために,一般的な工法としてドレーン工法が採用されてきた。他方で,支持力の強い砂質土層では,砂質土層の地盤をさらに強化するために砂質地盤に振動を与えることにより,締固めを行い地盤を強化することが一般的である。」(本願明細書1頁20行目〜27行目) イ「・・・支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層が積層している地盤を改良する場合,粘性土層の地盤から砂質土層の地盤に変わる際にその都度,それに適したドレーン工法を採用したり,或いは振動式締固め工法を採用したりしてその労力が大変であった。また,双方の土層が混在する地盤を改良する場合,粘性土層が多い地盤にはドレーン工法を使用し,砂質土層が多い地盤には振動式締固め工法を使用するといった具合にいずれか一方の土層を優先し,他方を犠牲にするしかなかった。本発明は,上記問題を解決することを第1の課題とする。
また,地盤沈下や地盤の変形などの変化に対しても,使用中の透水性材料の収納袋の連続性の維持を可能とし,細長い筒状構造の透水性材料の収納袋でありながら,地震によって過剰間隙水圧が生じた時にその細長い筒状構造の透水性材料の収納袋の中に収納された砂などの透水性材料を通り抜けて,加圧水が地上に噴出するようにし,その結果,細長い筒状構造の透水性材料の収納袋の存在で,ドレーンの連続性を損なうことなく地震によって生じる過剰間隙水圧を低下させることを可能とし,砂質地盤に特有の地震時に生じる液状化現象を防ぐことができる地盤改良法を提供することを本発明の第2の課題とする。
さらにまた,粘性土層と砂質土層の互層の地盤,或いは双方の土層が混在する地盤を改良するために,ドレーン工法と振動式締固め工法の長所を生かして,それらの両工法の機能を同時に施工可能にした単一工法により,粘性土層と砂質土層の互層の地盤,或いは,双方の土層が混在する地盤であっても,二つ以上の工法を併用することなく施工可能にすることを本発明の第3の課題とする。」(2頁8行目〜28行目) ウ「【作用】 本発明の工法は,バイブロハンマーのような振動装置を使用して,バーチカルドレーンを施工することにより,粘性土層にはドレーン効果をもたらすとともに過剰間隙水圧を生じさせて,初期の圧密を促進させる。他方で,砂質土層は,振動装置でドレーンを打設するためにその振動効果により,砂質土層が締め固められて砂質土層の地盤強化が図られる。さらに,地震時には,ドレーン効果により,地震によつて生じる過剰間隙水圧を低下せしめる効果があり,砂質土層の地盤に特有の地震時に生じる液状化現象を防ぐことができる。少なくとも,地震時に生じる液状化現象を軽減することは可能である。」(3頁10行目〜18行目)。
エ「また,使用中の透水性材料でなる収納袋は,地盤の沈下や変形などの変化に対しても,その連続性を維持することができ,その透水性材料でなる収納袋は細長い筒状構造でありながら,地震によって過剰間隙水圧が生じた時に,その細長い筒状構造の透水性材料でなる収納袋の中に収納された砂などの透水性材料を通り抜けて,加圧水が地上に噴出する。その結果,この細長い筒状構造の収納袋の存在で,地震によって生じる過剰間隙水圧を低下させることが出来,液状化現象を防ぐことができる。」(4頁27行目〜5頁4行目) (4) 本願明細書の以上の記載から,本願発明は,@単一の工法にして,A振動装置を使用してバーチカルドレーンを施工するものであり,B粘性土層に対してはドレーン効果により圧密を促進させるものであり,C砂質土層に対しては,ドレーンを打設する際の振動効果により締め固めの効果を発揮し,Dまた,砂質土層に対し,ドレーン効果により,地震時の液状化現象を少なくとも軽減させ,E細長い筒状構造の透水性材料で成る収納袋(内容物は,砂などの透水性材料である。)を用いるもの,と理解することができる。
上記の振動装置について,「バイブロハンマーのような」との説明しかない。また,締固めの効果を発揮する機序については,ドレーンを打設する際の振動効果によるとの説明しかなく,砂質土層の締固めの程度・範囲についての具体的な記載もない。
2 引用発明の認定について (1) 原告は,引用発明が圧密工法に属するドレーン工法の一種(改良されたドレーン工法)であるパックドレーン工法(袋詰めサンドドレーン工法)に関するものであり,本質的に振動式締固め工法とは相違するから,審決が,引用刊行物に,「「軟弱地盤を改良するために,支持力の弱い粘性土層に対してはその排水機能に基づく圧密機能を有するドレーン工法と支持力の強い砂質土層に対してはバイブロハンマーの起振力による締め固め機能を有する振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法。」という発明が実質的に記載されていると認める。」と認定したのは誤りである,と主張する。
(2) 引用発明は,粘性土層を圧密する工法の一種であるドレーン工法に属し,基本的には粘土層地盤の改良に採用される工法である。粘性土層は振動を嫌う(振動が与えられると乱れて強度が落ちる。)ものであるから,引用発明も,ケーシングの打設の際に大きな振動が生じないように施工されるものと理解するのが合理的である。したがって,引用発明を,バイブロハンマーの振動や衝撃により,積極的に砂地盤を締め固める,振動式締固め工法と同一視することは不適切である,と認められる。原告の主張は,この点を指摘するものとしては正しい。
(3) しかし,引用刊行物には,「開閉できる底蓋を有する内径12.4cmのケーシングを,1.2m正方形に配置した4本を同時に所定の深さまで打設する」(15頁右欄24〜26行)との記載があり,16頁上欄左の「1.ケーシング打込み」の図の説明として,「機械を所定の位置に固定し,ケーシングの底蓋を閉じ垂直を保ったままの状態で,バイブロハンマーの起振力によりケーシングの打込みを開始する。」と,上欄右の「3.砂の充填」の図の説明として,「網袋の挿入が終わるとただちに砂投入口のシャッターを開き,トラクターショベルでホッパーに満たされた砂をバイブロハンマーの振動により,4本同時に砂を充填する。」と,下欄左の「4.ケーシング引抜き」の説明として,「砂が網袋の上端まで充填されたらケーシングの上蓋を閉じ,コンプレッサーから送られるエアーでケーシング内のパックドレーンを押さえながら,再び振動を加えケーシングを引抜く。」と,それぞれ記載されている。
引用刊行物の以上の各記載を総合すると,同刊行物には,バイブロハンマーの起振力によって複数のケーシングを打ち込み,それらの中に砂を充填し,さらにケーシングを引き抜くこと,ドレーンに透水性のある袋体に砂を詰めたものが使用されること,バイブロハンマーの振動は周囲の地盤内にも振動効果を与えることが,開示されていると認められる。
(4) 日本において,砂質土層と粘性土層とが混在する地盤が存在することは,当事者間に争いがなく,証拠上も,その事実を認めることができる(甲6文献の図6・10,図6・11等)。
引用発明のパックドレーン工法は,サンドドレーン工法の一種であり,これを,砂質土層と粘性土層の混在する地盤に対して施工する場合,地盤に管(ケーシング)を打ち込むことにより,その管の体積分の土が側方に移動することになり,砂地盤に対しては,管周囲の水が逃げる代わりに,管の体積分の粒子が管周辺の土の間隙内に強制的に貫入して,間隙比が減少し締まった状態となるものと認められる。すなわち,引用発明では,ドレーン(しかも,引用刊行物の記載によると4本)の打ち込みにより,上記の機序で,締固めの効果を生じることになるのである。
(乙1文献)。
(5) 前記のとおり,本願発明は,バイブロハンマーのような振動装置を用いて,これによるドレーンの打設の際の振動効果を利用して砂質土層を締め固めるもの(少なくとも,そのような態様をも包摂するもの)と認められる。そして,本願明細書には,この振動装置からバイブロハンマーが除外されていると理解する根拠となる記載はないから,バイブロハンマーそのものも含まれると認められる。また,砂質土層を締め固める振動効果についても,「ドレーンの打設の際の振動」との説明しかなく,その態様や程度について特段限定はなく,また,砂質土層を締め固める範囲,程度についても明確な説明はない。要するに,本願発明は,広範かつ様々な構成を包含し得るものである。
そうすると,同じくバイブロハンマーを備え,これにより複数のドレーンを打設し(引用発明のケーシングの打込み,砂の充填がこれに該当することは明らかである。),その際に振動を生じる工法であり,かつ砂質土層と粘性土層の混在する地盤に適用された場合,砂質土層に対しては,ある程度の締固めの効果を有する引用発明を,審決が行ったように,「軟弱地盤を改良するために,支持力の弱い粘性土層に対してはその排水機能に基づく圧密機能を有するドレーン工法と支持力の強い砂質土層に対してはバイブロハンマーの起振力による締め固め機能を有する振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法により,二つ以上の工法を併用させることなく,施工可能なる地盤改良法。」であるとすることは,本願発明との対比の前提としてなされる認定としてみる限り,正当であることは明らかというべきである。
(6) 一般的な理解として,引用発明のパックドレーン工法が,振動式締固め工法のように,砂質土層の締固めを主たる目的とするものではなく,砂質土層の締固めの程度もそれに遠く及ばないことは,前記認定のとおりである。
しかし,新規性進歩性の判断における,引用発明の理解は,あくまで特許性が争われている発明の理解との関係でなされるべきものである。本件においても,引用発明の理解は,本願発明との一致点・相違点の認定の前提としてなされるべきは当然である。引用発明の締固めの効果が,サンドコンパクションパイル等一般的な振動式締固め工法のそれとは比較にならないほど小さいものであるとしても,一方で,本願発明の構成が,様々な態様を含み得る広範なものであり,他方で,引用発明も一定程度はドレーン打設の際の振動により砂質土層に対する締固めの効果を有する以上,本願発明との対比に関する限り,引用発明が砂質土層の締固めの効果を有すると認定することを,誤りとすることはできない。別の面からいえば,引用発明が,一般的な振動式締固め工法に匹敵するほどに強力な,砂質土層に対する締固め効果を有するか否かは,本願発明の特許性の判断において意味を持たないのである。
(7) 引用発明のパックドレーン工法が,単一の工法であることは明らかであり,したがって,二つ以上の工法を併用することなく施工することが可能な地盤改良法であることもまた,明らかである。
以上のとおりであるから,審決の,引用発明の認定に誤りはない。
3 一致点の認定について (1) 前記のとおり,引用発明は,単一の工法であり,二つ以上の工法を併用することなく施工することが可能な地盤改良法である,と認められる。
この点の認定の誤りをいう原告の主張は,理由がない。
(2) 原告は,審決が,一致点で認定したのと同じ構成を,相違点として挙げており,論理矛盾を犯している,と主張する。
審決が一致点として挙げているのは,引用発明の客観的な構成である。これに対し,相違点(1)で挙げているのは,引用刊行物には,引用発明を軟弱地盤に生かして施工するものであることの記載がないという,引用刊行物が,軟弱地盤に対して引用発明を施工することを意識していないという事実にすぎない。引用発明の構成を一致点として挙げることと,施工対象である地盤の一種について引用刊行物に記載がされていないことを相違点で挙げることは,何ら論理的に矛盾するものではない。
(3) 以上のとおりであるから,審決の一致点の認定に,何ら誤りはない。
4 相違点の看過について (1) 前記のとおり,本願明細書から理解される本願発明との比較に関する限り,引用発明は,ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に発揮することが可能であり,また,両工法の機能を同時に発揮することが可能な単一の工法であって,二つ以上の工法を併用する必要のないものである。
この点についての相違点の看過をいう原告の主張は,理由がない。
(2) 原告は,本願発明は砂質土層と粘性土層とを区別し,前者に対してはより強い振動を加えて積極的に締め固めるものであって,その点でも引用発明とは相違すると主張する。
しかし,そのようなことは,本願明細書のどこにも記載されておらず,これを本願発明の構成であると認めることはできない。そうである以上,原告主張の点を,相違点とすることはできない。
(3) 原告は,本願発明のドレーンが,施工後もドレーン効果を維持し,地震時の液状化防止機能を有しているのに対し,引用発明のサンドドレーンは,施工後のドレーン効果の喪失は問題とされていない,と主張する。
しかし,この点は,相違点(2)として「ドレーン工法と振動式締固め工法の両工法の機能を同時に施工可能な工法にした単一工法による地盤改良法を,本願の請求項1に係る発明は,地震時の砂質地盤の液状化を防止する工法であるとしているのに対し,引用刊行物記載の発明は,特に,そのような工法であるとの記載のない点」として,摘示されている。
この点について,相違点の看過をいう原告の主張も,理由がない。
5 相違点についての判断について (1) 相違点(1)について ア 相違点(1)についての審決の判断は,要するに,サンドコンパクションパイル法が,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を同時に発揮することが可能な単一の工法であり,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層との互層,あるいは双方の土層が混在する地盤に適用されることは,周知であるから,同様に,ドレーン工法と振動式締固め工法との両工法の機能を有する引用発明を,上記地盤に適用することに想到することも,また容易である,というものである。
イ 日本において,支持力の弱い粘性土層と支持力の強い砂質土層との互層,あるいは双方の土層が混在する地盤がまれなものでないことは,既に認定したとおりである。また,そのような地盤に対しては,労力とコスト(費用)をかけて,ドレーン工法と振動式締固め工法とを併用するか,あるいは,妥協してどちらか一方の工法だけを施工して済ませてしまう,という問題が従前からあったことは,本願明細書自体が指摘しているところである。
ドレーン工法と振動式締固め工法との両方の機能を同時に発揮することができる単一の工法が存在すれば,(条件によるものの)地盤改良の効果,労力,コスト,施工期間等について有利となり得ることは明白であるから,そのような工法を,上記のような互層ないし混合地盤に適用しようとすること自体は,引用文献などなくても(さらにいえば当業者でなくても),容易に考えつくことであることは,はいうまでもないところである。
したがって,これ以上検討するまでもなく,この点についての原告の主張は失当であることが明らかである。
念のため,以下では,本件で提出されている証拠から,そのような発想に到達できるか否かについて検討する。 ウ 原告は,上記の審決の認定のうち,その前提部分,すなわち,サンドコンパクションパイル工法が複数の機能を有していることはなく,上記地盤に適用されることも,どの証拠にも開示されていない,と主張している。
確かに,甲6文献において,サンドコンパクションパイル工法がドレーン効果を有するのは,「載荷重工法を併用」(270頁5行目)した場合であり,これを本願発明にいう単一の工法とはいうことはできない。また,乙1文献には,サンドコンパクションパイル工法が砂質土層にも粘性土層にも適用できることが記載されているものの,この工法は,粘性土に適用された場合,「圧密沈下が大幅に減少する。」(140頁17行目)とされており,ドレーン効果はほとんどないものと理解することが合理的である。甲6文献と乙1文献の理解に関する限り,原告の主張は正しい。
しかし,本願発明は,ドレーン効果の程度についても,具体的に言及するものではない。そして,少なくとも乙1文献は,圧密効果が大幅に減少する,といっているにとどまり,全くないとまではいっていない。そうすると,振動式締固め工法の効果と,わずかとはいえドレーン効果を併せ有する乙1文献記載のサンドコンパクションパイル工法が,砂質土層にも粘性土層にも適用できることが記載されている以上,その発想を参考にして,ドレーン効果とわずかの振動締固め効果を有する引用発明を,粘性土層と砂質土層の互層ないし混合地盤に適用することは,容易に想到できることというべきである(乙1文献の発行日は,昭和54年4月1日であるから,そこに開示された内容は,本件出願時には周知となっていたと認められる。周知技術は,当業者が知っていることが当然の前提とされるものであるから,拒絶査定や審決において言及されていなくても,なお参酌することは許される。)。
もっとも,乙1公報の工法を,複数の地盤に適用することが可能なのは,その固有の構成によってのことであるなど,特段の事情があれば,上記のような認定ができなくなることはいうまでもない。しかし,本件で,そのような特段の事情を認めることはできない。
エ 甲7公報には, 「本発明の要旨は,地盤に複数箇所堅穴を掘削してこれらの堅穴内に,前記地盤の土よりも透水係数の大きいドレーン材を詰めてドレーン柱を事前に形成する工程と,前記ドレーン柱に対し締め固め用パイルを介して打撃装置により圧縮衝撃を繰り返し加える工程とからなる地盤の締め固め工法に存在する。」(2頁左上欄18行目〜右上欄4行目), 「本発明は,以上のように構成されているので,以下に記載されるような効果を奏する。
本発明にかかる地盤の締め固め工法は,砂質のみならず粘土質の地盤にも使用することができる。したがって,当該工法をそれらの複合地盤にも使用することができる。
また,本発明にかかる地盤の締め固め工法は,砂質若しくは粘土質の地盤又は複合地盤にも使用することができるので,土質調査及び締め固め工法の選択に要する時間及び労力を省くことができる。」(4頁左下欄8行目〜18行目)。
と記載されている。すなわち,甲7公報には,単一の工法で,ドレーン工法の機能と振動式締固め工法の機能という二つの機能を有する工法が,砂質及び粘土質の複合地盤に適用できることが開示されている。
この開示内容に照らし,同様にドレーン工法の機能と振動式締固め工法の機能という二つの機能を有する引用発明を,砂質土層と粘性土層との複合地盤に適用することに想到するのは,容易であると優に認めることができる(甲7公報の公開日は,平成2年12月7日であり,そこに開示された内容は,やはり,本件出願時には周知となっていたと認められる。したがって,乙1文献について述べたとおり,その内容を参酌することは許される。)。
原告は,甲7公報記載の発明は,ドレーン効果を有するものではなく,締め固めのみを行うものであり,また,引用発明とも本願発明とも,施工態様等において異なる,と主張する。
しかし,原告自身摘示するとおり,甲7公報には,「・・・前記ドレーン柱に隣接する当該他のドレーン柱は,前記砂質の地盤の間隙水を排出し,前記砂質の地盤は締め固まる。」(2頁左下欄7行目〜9行目),と記載されており,そこに記載されている発明がドレーン効果を有することは明らかである。
甲7公報により認定するのは,ドレーン工法と振動式締固め工法の二つの機能を有する工法を,砂質土層と粘性土層との混合地盤に適用するという技術(厳密には発想というべきであろう。)が周知である,ということである。このような周知技術が認定できれば,同様に二つの機能を有する引用発明を,上記混合地盤に適用することが容易に推考できる,ということになる。甲7公報の記載の発明と,本願発明,あるいは引用発明との工法の違いは,基本的に問題となるものではない。
甲7公報の工法についても,複数の地盤に適用することが可能なのは,その固有の構成によってであるなど,特段の事情があれば,上記のような認定ができなくなることはいうまでもない。しかし,そのような特段の事情を認めることはできない。また,引用発明の認定において述べたとおり,その振動による砂質土層の締め固めの効果は,基本的にパックドレーン工法に通常伴われる程度のものにすぎないから,これを,粘性土層に適用することが不適当となるものではない。
カ 以上のとおりであるから,相違点(1)についての審決の判断に誤りはない。
(2) 次に,相違点(2)についての判断について検討する。
ア 審決は,要するに,甲10公報及び甲11公報を挙げて,砂質土層中のドレーンが,地震時の液状化を防止する機能を有することは周知であったとして,引用発明のサンドドレーンにそのような機能を持たせることは,当業者が容易に推考できる,とするものである。
これに対し,原告は,審決の引用する甲10公報及び甲11公報のドレーンは,もともと砂質地盤の液状化を防止するためのものであって,引用発明の,粘性土地盤の圧密を促進するためのドレーンとは,適用地盤が異なるにもかかわらず,前者の技術を後者に適用できる根拠は何ら示されておらず,また,引用発明のドレーンが,本願発明のドレーンと同じ構成・機能であるといい得る理由も示されていない,というものである。
イ 前記認定のとおり,本願発明のドレーンが,地震時の砂質土層の液状化防止の機能を果たせるのは,地震によって過剰間隙水圧が生じた時に,ドレーンを通じて加圧水を地上に逃がすため,この過剰間隙水圧を低下させることができるためと認められる。
そうすると,引用発明のドレーンが,地盤改良の施工完了後も,ドレーン効果を維持するようなものであれば,相違点(2)の審決の判断も是認されることになる。
ウ 審決が認定するとおり,引用発明のドレーン柱の施工後の効果の有無については,引用刊行物には記載されていない。しかし,単に,引用刊行物には上記効果は記載されていないというだけであって,この効果がそこで否定されているわけではない。原告も,準備書面(1)において「ドレーン工法は,粘性土層地盤に対して施工される工法で,粘性土層から,粘性土層に含まれる水分を圧密作用により絞り出して排水する工法で,ドレーンを通じて排水する盲暗渠の造成を伴う工法である。造成後もドレーン効果が維持される。」(8頁17行目〜19行目)としている。以上からは,ドレーン工法は,通常,施工後もドレーン効果が維持されるものと理解することができる。
本願発明は,その請求項の文言にはないものの,前記のとおり発明の詳細な説明において,透水性の材料(砂等)を,透水性の収納袋に収納することにより,ドレーンの連続性を維持できる,としている。そうすると,同様に透水性の材料を透水性の収納袋に収納してドレーンを形成する引用発明が,同程度に,ドレーンの連続性を維持できることは明らかである。
原告は,引用発明のドレーンが,本願発明のそれと同一の構成・機能を有しているといえる理由が示されていない,と主張する。しかし,前記のとおり,本願明細書からは,本願発明のドレーンは,振動装置を使用して施工されるバーチカルドレーンであり,粘性土層に対してはドレーン効果により圧密を促進させるものであり,砂質土層に対し,ドレーン効果により,地震時の液状化現象を少なくとも軽減させるものであり,細長い筒状構造の透水性材料でなる収納袋(内容物は,砂などの透水性材料である。)を用いる(少なくとも,そのような構成を含む),という程度のものとしか理解できない。引用発明のドレーンがこれに該当することは,既に述べたとおりである。
そうすると,同程度にドレーン効果を維持することができる引用発明が,地震時の液状化現象を防止ないし軽減し得ることもまた,甲10公報や甲11公報を参酌するまでもなく,認められるものというべきである。
以下,念のため,甲10公報及び甲11公報による開示内容に基づき,審決の結論が是認されるか否かについて検討する。 エ 甲10公報には,「2.特許請求の範囲 砕石等のグラベルからなるドレーン杭を所要本数軟弱地盤中に埋設し,これらドレーン杭を通じて軟弱地盤中の水分を地上に吸上排出するようにした軟弱地盤の液状化防止工法において,上記ドレーン杭に,砕石等のグラベルを透水性のある長尺状袋体で袋詰めにしてなるドレーン杭を,各ドレーン杭の頭部と接するように架け渡すことを特徴とする軟弱地盤の液状化防止工法」(1頁左欄4行目〜12行目),「本発明は,軟弱地盤,特に液状化し易い砂地盤中に,透水性の良いグラベル(砕石,礫,鉱滓等)からなるドレーン杭を所要本数埋設して,地震の際に砂地盤の間隙水圧が上昇したときその地盤中の水分をこれらのドレーン杭を通じて地上へ吸上排出させるようにし,それによって地震時にも砂地盤の支持力を失わせることのないよう安全な地盤にするための軟弱地盤の液状化防止工法に関する。」(1頁左欄15行目〜右欄3行目)と記載され,甲11公報には,「本発明は,液状化の主因である過剰間隙水圧の発生が地盤の透水係数(砂:10-2〜10-3cm/sec,砂利や礫:10-1〜10-2cm/sec)に関連し,透水性のよい砂利あるいは礫では過剰間隙水圧が発生しないことに着目し,液状化の虞れのある砂層地盤に砂利,細石,鉱滓その他の材料からなる透水性の良い所定長のドレーン柱を打設し,このドレーン柱の透水性の高い点を利用して,地震時の間隙水圧の急上昇を防止,消散しようとしたものであり・・・」(2頁左上欄18行目〜右上欄7行目)と記載されている。すなわち,これらの工法には,透水性の材料を用いたドレーンにより,地震時の砂質土層の水が排出されて過剰間隙水圧が減少し,液状化が防止できることが記載されている。甲10公報には,透水性材料を透水性の長尺状袋に詰めてドレーンを形成することまで開示されている。
これらの開示内容に照らし,同じく透水性の材料を透水性袋の袋に詰めてドレーンを形成するという点で類似する引用発明において,施工後もドレーン効果を維持させるようにして,地震時の液状化防止の機能を果たさせようとすること自体は,当業者が容易に想到できるものと認められる(甲10公報の公開日は平成元年10月5日であり,甲11公報の公開日は平成2年9月7日である。いずれも,その開示内容は,本件出願時に周知となっていたと認められるので,参酌することは許される。)。
オ 原告は,甲10公報及び甲11公報記載の工法を,引用発明に適用することができる根拠は示されていない,とする。しかし,ここで検討すべきことは,前者の工法を後者の工法に適用すること自体ではなく,液状化を防止するために施工後もドレーン効果を維持するという考えを読み取って,引用発明においてもそのような構成を備えさせることの容易想到性である。そして,前記のとおり,ドレーン工法では,一般的にその施工後もドレーン効果が維持されると認められるから,引用発明においても,施工後にドレーン効果を維持させることが,技術的に不可能ないし困難であると認めることはできない。
カ 以上のとおりであるから,審決の相違点(2)についての判断も,相当であると認められる。
(3) したがって,本願発明の進歩性を肯定した審決の判断に誤りはない。原告の主張は失当である。
6 手続違背について (1) 原告は,審決が,甲6文献,甲7公報ないし甲9公報,乙1文献記載の技術について,原告に意見を述べる機会を与えなかったこと,審決が甲6文献,甲7公報ないし甲9公報,乙1文献を全体として勘案して周知技術を認定したことは,新たな拒絶理由を発するに等しいものであること,等を理由として,決定には特許法159条2項等の手続違背がある,と主張する。
原告は,また,地震時の液状化防止技術が周知であり,これを引用発明に備えさせることは容易に推考できる,ということは,最終の拒絶理由で挙げられていないものであり,審決がこれを認定したことは,新たな拒絶理由を追加するものであり,同様の手続違背がある,と主張する。
(2) 平成10年4月8日付けの手続補正書後の,平成10年7月1日付けの拒絶理由通知書で,特許庁は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」,「引用文献1(判決注・甲5公報),2(判決注・甲第12号証)に記載されているバーチカルドレーンはドレーンと振動締勝固め(判決注・「振動締固め」の誤記と認める。)の両者の機能を有しており,粘性土と砂質土の両者の混在する地盤においても施工可能であることは示唆されている。」との拒絶理由を通知し,拒絶査定において,「この出願については,平成10年7月1日付け拒絶通知理由書に記載した理由によって,拒絶査定する。・・・備考 バーチカルドレーン工法の際に振動締固めを行うことは周知である。」と,通知している。
(甲第2号証の2,4) 審決は,上記拒絶理由通知及び拒絶査定と,同一の法条(特許法29条2項)に基づき,同一の引用例を引用して,拒絶査定を維持したものであるから,新たな拒絶理由を加えたものではないことは明らかである。
本判決の「第3 原告の主張」の4(1)及び(2)において摘示されている審決の説示からは,審決が甲6文献,甲7公報ないし甲11公報,乙1文献を引用したのは,周知技術の存在ないしその内容を明らかにするためであると認められる。
当業者であれは当然知っているべき周知技術を明らかにするための証拠であるから,審決について新たに付け加えることは,許されないことではない。
(3) 原告が主張するとおり,平成10年4月8日付け手続補正書による補正後の拒絶理由通知(平成10年7月1日付),拒絶査定(平成10年11月4日付)のいずれも,地震時の液状化防止技術の周知性及びそれを引用発明に備えさせることの容易推考性について,言及していない。
しかし,前記認定のとおり,本願発明にいう地震時の液状化防止の機能は,細長い筒状構造の透水性材料の収納袋で構成されるドレーンが,施工完了後もドレーン効果を保持するということにより発揮されるものである。そして,引用発明のドレーンもまた,一般的に,施工後もドレーン効果を保持することは,周知であるから,同様に液状化防止機能を有することは明らかである。
本願発明の特許性の判断に関する限り,地震時の液状化防止機能は,引用発明の工法が通常備える周知の機能を構成要件としたものにすぎないと認められる以上,拒絶査定がこれについて言及していなくても,審決がこれを拒絶査定を維持する理由として採り上げることは,新たな拒絶理由を追加したことにはならない,というべきである。
手続違反をいう原告の主張は,失当である。
7 結論 以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は,いずれも理由がなく,その他,審決には,取消しの事由となるべき誤りは認められない。そこで,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久
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