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関連審決 無効2017-800061 訂正2018-390066 無効2018-800125
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事件 令和 2年 (行ケ) 10024号 審決取消請求事件

原告 東芝映像ソリューション株式会社
同訴訟代理人弁護士 松永章吾
同訴訟代理人弁理士 片山健一
被告日亜化学工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 牧野知彦 加治梓子
同訴訟代理人弁理士 田村啓 山尾憲人 玄番佐奈恵 奥西祐之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/11/04
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2018-800125号事件について令和2年1月15日にした審決のうち,特許第6056934号の請求項1〜12に係る部分を取り消す。
事案の概要
本件は,特許無効審判事件の審決のうち審判の請求が成り立たないとする部分の取消訴訟である。争点は,サポート要件違反についての認定判断の誤りの有無である。
1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,平成27年10月9日,発明の名称を「発光装置,樹脂パッケージ,樹脂成形体並びにこれらの製造方法」とする特許出願(特願2015-200794号。平成20年9月3日にされた特許出願(特願2008-225408号)の一部を新たな特許分割出願としたもの。)をし,平成28年12月16日,その設定登録を受けた(特許第6056934号。請求項の数22。以下「本件特許」といい,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。甲41)。
(2) 被告は,平成30年4月3日,本件特許の請求項1〜12についての訂正請求(訂正2018-390066号。甲42)をし,特許庁は,同年8月30日,上記訂正を認める旨の審決をし(甲43),同審決は同年9月7日に確定した。
(3) 原告は,平成30年10月19日,本件特許の無効審判請求(以下「本件審判請求」という。甲29)をし(無効2018-800125号事件),被告は,令和元年10月7日付けで本件特許の請求項1〜22についての訂正請求(以下「本件訂正請求」という。甲37。請求項13〜22についての部分は,それらの請求項をいずれも削除する旨のものである。)をした。特許庁は,令和2年1月15日,本件審判請求について,本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)を認めた上で,「特許第6056934号の請求項1-12に係る発明についての本件審判の請求は,成り立たない。特許第6056934号の請求項13-22についての本件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,本件審決の謄本は,同月23日に原告に送達された。
2 本件特許に係る発明の要旨 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項に係る発明を,それぞれ請求項の番号に応じて「本件発明1」などといい, 本件発明1〜12を併せて「本件発明」という。また,以下,単に「請求項」という場合,本件訂正後の本件特許の請求項をいう。甲37,41,43)。
【請求項1】 リード及び熱硬化性樹脂である樹脂部を有し,上側から見た外形が略四角形で4つの外側面を有する発光装置の製造方法であって, リードフレームと,光反射性物質を含有する熱硬化性樹脂である樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって,前記樹脂成形体付リードフレームの上側には凹部が複数設けられ,前記凹部の底面には前記リードフレームが前記樹脂成形体で分割されて露出されており,前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ,且つ前記樹脂成形体付リードフレームの底面にて前記リードフレームが露出している,樹脂成形体付リードフレームを準備する工程と, 前記凹部の底面に発光素子を載置する工程と, 前記凹部内に,前記発光素子を被覆する封止部材を配置する工程と, 分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程と,を有することを特徴とする発光装置の製造方法
【請求項2】 前記切り欠き部は,製造される前記発光装置の全包囲周の1/2以上にわたって設けられている,請求項1に記載の発光装置の製造方法
【請求項3】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において, 前記複数の発光装置に分離する工程において,分離後の発光装置が,前記リードとして正リード及び負リードを有し,前記正リードの一部が対向する2つの外側面のうち一方の外側面の少なくとも2か所にて露出し,前記負リードの一部が前記対 向する2つの外側面のうち他方の外側面の少なくとも2か所にて露出するように,前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法
【請求項4】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において, 前記複数の発光装置に分離する工程において,分離後の発光装置が,前記リードとして正リード及び負リードを有し,前記正リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出し,且つ前記負リードの一部が少なくとも2つの外側面に露出するように,前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法
【請求項5】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において, 前記複数の発光装置に分離する工程において,分離後の発光装置が,前記リードとして正リード及び負リードを有し,前記正リードの一部が3つの外側面に露出し,前記負リードの一部が3つの外側面に露出するように,前記切り欠き部を設けておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の製造方法
【請求項6】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程は, 前記切り欠き部が設けられたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と, 前記リードフレームを前記上金型と前記下金型とで挟み込むことにより形成された,前記切り欠き部を含めた空間内に光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂を入り込ませた後,前記リードフレームが底面に露出した複数の凹部が形成され,且つ前記リードフレームの底面が露出するように,前記リードフレームと一体に樹脂成形体を形成して樹脂成形体付リードフレームを得る工程と, を有する,請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項7】 前記樹脂成形体付リードフレームは, 前記切り欠き部が設けられたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と, 前記リードフレームを前記上金型と前記下金型とで挟み込むことにより形成された,前記切り欠き部を含めた空間内に光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂を入り込ませた後,前記リードフレームが底面に露出した複数の凹部が形成され,且つ前記リードフレームの底面が露出するように,前記リードフレームと一体に樹脂成形体を形成して樹脂成形体付リードフレームを得る工程と,を経て製造されたものである,請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項8】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において,前記リードフレームは,全面に銀メッキ処理が施されている,請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項9】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において,前記リードフレームは,前記切り欠き部を画定する部分すべてに,段差又は凹凸を有する,請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項10】 前記樹脂成形体付リードフレームを準備する工程において,前記リードフレームは,前記リードフレームを貫通しないように片面からエッチングされた部分を有する,請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項11】 前記樹脂成形体は,トリアジン誘導体エポキシ樹脂を含む,請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
【請求項12】 前記封止部材を配置する工程において,前記封止部材として蛍光物質を含有する封止部材を用いる,請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法
3 本件審決の理由の要旨等 (1) 原告による無効理由3の主張 ア 原告は,本件審判請求においては9個の無効理由を主張したが,本件訴訟においては,そのうちの1個である無効理由3(サポート要件違反)についてのみ,本件審決の判断を争っている。同無効理由についての原告の主張の要旨は,下記イのとおりである。
イ 本件発明は, 「廃棄されるランナーを低減する」ことを目的の一つとするものであって,特許請求の範囲には,本件発明の「分離する工程」が, 「前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断すること」により実行されると記載されており,本件発明は,切断時に切断手段の幅の分以上のリードフレームの無駄が生じたりする態様も包含し得るところ,本件明細書等にはそのような態様の開示はない。
したがって,本件発明は,いずれも,発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含するものであるから,本件特許は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号を満たしていない特許出願に対してされたものであり,特許法123条1項4号により,無効とされるべきである。
(2) 上記無効理由3についての本件審決の判断の要旨 ア 本件明細書における問題についての記載(本件明細書の段落【0007】,【0009】)や,目的及び効果についての記載(同【0011】【0030】 , )から,発明の詳細な説明に記載された課題として, 「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高くすること」「短時間に多数個の発光装置を製造すること」及 ,び「廃棄されるランナーを低減すること」を認識できる。
イ 「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高くすること」の 課題(以下,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性を向上するという課題を「密着性の課題」ということがある。)に対して,「切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができる。(本件明細書の 」段落【0014】, )「切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する・・・このように切り欠き部21aを設けることにより,切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また,リードフレーム21の上面だけでなく,切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため,リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する」(同【0078】)との記載があり,密着性の課題は,切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されることと,切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断することで,解決されることが把握される。
一方,請求項1には, 「前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置のいずれにも前記(熱硬化性樹脂である)樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ」ること,及び「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程」が記載されており,密着性の課題を解決する手段が反映されているといえる。
また,密着性の課題を解決する手段のうちの「前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程」は, 「一度に多数個の発光装置を得ることができ」 (同【0014】)るようにする工程であり, 「短時間に多数個の発光装置を製造すること」の課題に対応する解決手段でもあるといえる。
ウ 上記アのとおり本件明細書の記載から複数の課題が把握されるところ,上記イのとおり,請求項1には,少なくとも一部の課題を解決するための手段が反映されているといえるから,請求項1は,発明の詳細な説明に記載したものである。
また,請求項2〜12は,全て請求項1を引用するものであるから,請求項1と同様に,少なくとも一部の課題を解決するための手段が反映されており,発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
エ 仮に,本件明細書に記載された複数の課題が,一体的な課題であり, 「廃棄されるランナーを低減すること」の課題も含めて請求項1に反映されるべきであるとした場合であっても,次のとおり,請求項1には,同課題を解決するための手段が反映されているといえる。
本件明細書の段落【0006】及び【0007】の記載によると, 「廃棄されるランナー」とは, 「リード」または「リードフレーム」をトランスファ・モールドする際に,金型の樹脂注入口経路や発光素子の周囲等に生じ,離型後に廃棄される樹脂であることが明らかであり,本件発明は, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」 (例えば,トランスファ・モールド)を用いることを前提とする発明である。
そして,発光装置1個ずつトランスファ・モールドする場合に比べて,多数個同時の場合には,発光装置1個に対しての金型の樹脂注入口経路の数や周囲の長さが減少するから,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂の量が減少することは,当業者であれば容易に理解できることである。
そうすると,「廃棄されるランナーを低減すること」の課題の解決手段は,「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」を前提に,多数個同時に製造することであるといえる。
辞典(甲26〜28)に説明されている「成形」の意味からすると, 「成形」により得られる「樹脂成形体」がリードフレームに付いてなる(すなわちリードフレームに一体に形成されている)「樹脂成形体付リードフレーム」は,「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」で得られたものと解釈できる。
したがって,請求項1の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」「前記 ,リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離 する工程」 「金型にリードフレームを挟み, は, 樹脂を充填する製造方法」を前提に,多数個同時に製造する手段であるといえるから,請求項1には, 「廃棄されるランナーを低減すること」の課題を解決するための手段が反映されているといえる。
原告主張の取消事由
1 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り(その1)) (1) 本件発明は,トランスファ モールドによる樹脂成形を前提とするもので, ・これと切り離して本件発明の課題を認定することはできないから,特許請求の範囲においては,樹脂成形法としてのトランスファ・モールドが特定されることが求められる。しかるに,請求項1〜12には,本件発明の効果を奏するための前提となるトランスファ・モールドによる樹脂成形が発明特定事項として含まれていない。
(2) 本件発明の課題について ア 本件審決が指摘した「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高くすること」「短時間に多数個の発光装置を製造すること」及び「廃棄される ,ランナーを低減すること」の複数の課題は,発光装置を多数個同時製造する際の樹脂成形法としてトランスファ・モールドを採用することにより同時に解決される課題であって,トランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的な課題である。このことは,以下の本件明細書の記載から明らかである。
(ア) 本件明細書の段落【0006】〜【0009】及び【0011】の記載によると,本件発明は,従来の個別封止型のトランスファ・モールド成型では,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難であり,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題が存在していること,この問題に鑑みてされた従来の多数個同時製造型のトランスファ・モールド成型では,ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題があることに鑑みてされたものであり,樹脂成形方法としてトランスファ・モールド成型による多数個同時製造方法を選択し,当該方法において用いるリードフレームに「切り欠き部」を設けることとして,これによりリードフレームと熱硬化性 樹脂組成物との密着性を高めることとしたものである。
(イ) そして,本件明細書の段落【0007】【0008】の記載からも明 ,らかなように, 「短時間に多数個の発光装置を製造すること」及び「廃棄されるランナーを低減すること」という課題は,従来のトランスファ・モールド成型による多数個同時製造方法で既に解決済みの課題である。前者は多数個同時製造方法の採用により解決される課題であり,後者は多数個同時製造方法においてトランスファ・モールドを採用することにより解決されている。
このことは,本件明細書の段落【0014】において,本件発明に係る発光装置の製造方法が, 「上金型と下金型とで挟み込まれた金型内に,光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして,リードフレームに樹脂成形体を形成する工程」を備えるものとされ,それにより, 「一度に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。 とされてい 」ることからも明らかである。
イ したがって,本件発明はトランスファ・モールドによる樹脂成形を前提とするものであり,その課題の認定は,トランスファ・モールドと切り離してはなし得ない。
ウ 本件明細書に,トランスファ・モールド以外の樹脂成形法についての言及が一切ないことも,本件発明の課題がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的なものであることを裏付けている。この点,本件明細書の段落【0008】【0009】の記載においては, , 「トランスファー成型機により」樹脂成形するとされているから,当該樹脂成形方法はトランスファ・モールドに他ならず,本件発明の樹脂成型方法がトランスファ・モールドに限定されないとはいえない。
また,本件特許の分割親出願に係る特許第5825390号の無効審判事件(無効2017-800061号事件)の審決取消請求事件である知財高裁令和元年(行ケ)第10115号の判決(甲44)の判断内容に照らしても,本件審決の認定し た複数の課題は,トランスファ・モールドと一義的な関係性を有しており,個々に認定されるべきものではない。
(3) 本件審決の認定判断の誤り ア 本件審決のうち,本件明細書に記載された複数の課題がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的なものであることを前提としない部分は,本件発明の課題の認定を誤ったものである。
イ 本件審決は,上記複数の課題が一体的な課題であるとした場合の予備的な検討(前記第2の3(2)エ)において,本件明細書の段落【0006】, 【0007】の記載を指摘し,「廃棄されるランナー」とは,「リード」又は「リードフレーム」をトランスファ・モールドする際に,金型の樹脂注入口経路や発光素子の周囲等に生じ,離型後に廃棄される樹脂であることが明らかであるとして,本件発明の一体的な課題の一つがトランスファ・モールドする際の課題であることを認めている。
また,本件審決が,多数個同時の場合には,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂の量が減少することを当業者であれば容易に理解できるとしている部分も,多数個同時にトランスファ・モールドする場合についていうものとみるのが自然である。
しかるに,他方で,本件審決は,何ら理由を説明することなく,本件発明がトランスファ・モールドによる樹脂成形ではなく「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」を用いることを前提とする発明であるとの拡張した誤った認定に至るとともに, 「廃棄されるランナーを低減すること」の課題の解決手段についても,トランスファ・モールドには限定されない「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」を前提に,多数個同時に製造することであるといえると判断した。そして,本件審決は,それらを前提として,本件明細書に記載された複数の課題が一体的な課題であって「廃棄されるランナーを低減すること」の課題も含めて請求項1に反映されるべきであるとした場合であっても,請求項1には,当該課題を解決するための手段が反映されているといえると判断した。
ウ 以上のように,本件審決は,本件発明の課題について,その検討の際にはそれがトランスファ・モールドと一義的な関係にあるとの理解を示す一方,その認定の際には,理由を明らかにすることなく,トランスファ・モールドに限定されない「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」についてまで拡張して判断し,その結果,本件発明の一体的な課題の認定を誤るに至ったものである。
そして,本件発明の「一体的な課題」の認定の誤りは,樹脂成形法としてトランスファ・モールドの特定がない請求項1はもとより,請求項2〜12がサポート要件を満たしていないにもかかわらず,無効理由3を認めない本件審決の結論に直結する。
2 取消事由2(サポート要件についての判断の誤り(その2)) (1) 本件明細書には, 「金型」を用いたトランスファ・モールドによる「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」のみが開示されているから,特許請求の範囲において, 「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」が「金型」を用いるものであることの特定が求められる。ところが,請求項1には,そのような特定がない。
(2) 請求項1の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」について ア 請求項1において,「樹脂成形体付リードフレーム」を準備するに際し,これをトランスファ・モールドにより行うことはもとより, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」により行うことの限定は一切ない。
請求項1の従属項である請求項6及び7で「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」が「金型」を用いるものと特定されていることに照らしても,請求項1は,文言上, 「樹脂成形体付リードフレーム」を準備するに際し,それが「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」以外の手法で実行される発光装置の製造方法を包含する。請求項6及び7による請求項1の限定からして,請求項1に記載の「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」が「リードフレームを金型に取り付け,一回の成形工程で樹脂成形体とリードフレームとを一体化して成形」 する以外の工程を包含することや,請求項1に記載の「樹脂成形体付リードフレーム」が「リードフレームを金型に取り付け,一回の成形工程で樹脂成形体とリードフレームとを一体化して成形」する以外の工程を経て製造されたものを包含することは,一見して明らかである。
イ 発光装置の技術分野においては,金型を用いることなく成形されたものを「樹脂成形体」としているものがある(例えば,甲21,40)。
甲40(特開2011-77090号公報)には, 「製造コストを抑えつつリフレクター部を一体成型することができ,高放熱特性と高光利用特性を備える発光素子用リードフレーム基板の製造方法及びこれを用いて製造した発光素子用リードフレーム基板並びに発光モジュールを提供することを目的とする」発明が開示されているところ(段落【0011】,当該発明は,金型を用いることなく, ) 「リフレクター部を一体成型した発光素子用リードフレーム基板を一般的なフォトエッチング法を用いて製造すること」により,製造コストの上昇を招くことなく, 「低コストで,大量に発光素子用リードフレーム基板及び発光モジュールを製造すること」を可能とするものである(段落【0010】【0029】 【0030】。そして,甲40の , , )図5について, 「リードフレーム部4の開口部23」はリードフレームの「切り欠き部」に他ならず, 「充填樹脂25」は熱硬化性樹脂であり得る。また,リードフレーム基板Bは,一般的なフォトエッチング法を用いて製造された,リフレクター部16を一体成型した発光素子用リードフレーム基板Bであり(段落【0051】【0 ,053】等参照),本件発明と同様に多数個同時製造に用いられるもので(段落【0057】等参照),リフレクター部16を一体成型して,低コストで,大量に発光素子用リードフレーム基板B及び発光モジュールAを製造することを可能とするものである(段落【0065】等参照)。したがって,「キャビティーH内に充填樹脂25が充填されてリフレクター部16を備える樹脂部5が成型され」た発光素子用リードフレーム基板Bは,本件審決にいう「樹脂成形体」がリードフレームに付いてなる(すなわち,リードフレームに一体に形成されている) 「樹脂成形体付リードフ レーム」に他ならず,当該「樹脂成形体付リードフレーム」は,必ずしも「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」で得られたものには限られないところである。
なお,サポート要件を問題とする取消事由2において,甲21及び甲40が本件特許の出願後の文献であることは,原告の主張が妥当性を欠く理由とはならない。
また,仮に,得られる発光装置の形態の観点から,甲21に開示の方法が特殊な方法であるとしても,甲40に開示の方法については,その図2や図3から明らかなように,得られる発光装置の形態が本件発明のそれと類似しているところであり,しかも,図5に図示されたリフレクター部を一体成型してなる発光モジュールの製造方法は,何ら特殊な方法などではない。
(3) 本件審決の認定判断の誤り ア 本件審決は,請求項1の「樹脂成形体付リードフレーム」が, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」で得られたものと解釈できるとして,請求項1には, 「廃棄されるランナーを低減すること」の課題を解決するための手段が反映されているといえると判断した。これは,請求項1の「樹脂成形体」の「成形」は,甲26〜28に説明されている「成形」の意味に他ならず,当該「成形」は金型を用いてされるものであるので,請求項1に記載の「樹脂成形体付リードフレーム」は, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」で得られたものと解釈できるとしたものである。
しかし,甲26には「通常,金型を用いる圧縮成形,トランスファ成形,射出成形,ブロー成形などの成形」とあり,また,甲28には「成形材料に熱と圧力をかけて流動化させ,金型などを用いて所定の形に賦形すること」とあり,これらの記載から明らかなように, 「成形」に際して「金型」が必須のものとされているわけではなく,上記(2)イのように,金型を用いずに樹脂成形する態様が存在する。
本件審決の判断は,請求項1に記載されていない「金型」を恣意的に当該請求項中に読み込むものに他ならず, 「金型」なる文言は,請求項1の従属項である請求項 6及び7において記載されているにすぎないという特許請求の範囲の記載の整合性の観点から,極めて不自然かつ不適切である。発光装置の技術分野において,金型」 「を用いない製造方法が存在する以上, 「金型」の限定がない請求項1の記載についてはそのままにサポート要件を判断すればよく,記載されてもいない「金型」を請求項1に読み込む必要性はない。仮に,請求項1に記載の「樹脂成形体付リードフレーム」が金型成形により得られるものと解されるべきものであれば,金型を用いて」 「などと明記する訂正を行えばよいだけである。
イ また,本件審決は,リードフレームが切り欠き部を有していることから,熱硬化性樹脂はリードフレームを上下に貫通する部分を有しているものであり,このことを踏まえると,金型を用いる場合に上下に金型が必要であることは,請求項1に記載された構成から当業者が理解し得ることであるという判断をするが,請求項6及び7と異なり,請求項1には「前記切り欠き部が設けられたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程」という限定がない以上,本件発明1は,当該工程を備えない態様を包含する。
ウ 以上のように,本件審決の認定は,本件発明1を本件発明6及び7と同一視してされたものと評価するほかなく,特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえない。
そして,本件審決は,上記誤りの結果,請求項1についてのサポート要件の充足性の判断を誤り,この誤りは,無効理由3についての本件審決の結論に直結する。
被告の主張
1 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り(その1))について (1) 本件発明の複数の課題は,それぞれ別個のものである。@「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性」は,形成方法とは関係なく,平板状のリードフレームと熱硬化性樹脂組成物の密着面積が小さいことによる課題であり(本件明細書の段落【0008】【0009】,A「短時間に多数個の発光装置を製造する , )こと」は,形成方法によらず,発光装置の樹脂部を一つずつ個別に成形することに より生じる課題であり(同【0006】【0007】 , 。これは,例えば,原告が指摘する甲40のような成形方法を採用しても生じる。,B「廃棄するランナーを低減 )すること」は,発光装置の樹脂部を個別に金型で成形する際に個々の金型空間に樹脂を導入するランナーが必要となることで生じる課題であり(同【0006】 【0 ,007】,これらは別個の課題である。
) そして,密着性の課題は,リードフレームに切り欠き部を設けることで, 「短時間に多数個の発光装置を製造すること」は,リードフレームと樹脂とを同時に切断して複数の発光装置に分離することで, 「廃棄されるランナーを低減すること」は,トランスファ・モールドに限られず, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」に共通する課題であって,個別の領域を有しない金型を用いて多数個を同時に製造することで,それぞれ解決されるものである。
したがって,本件審決が認定した三つの課題は,一体的な課題ではなく,トランスファ・モールドと一義的な関係性を有するものでもない。
しかも,本件発明に最も近い従来技術として本件明細書に記載された特許文献4(甲1)に対する新規な特徴は,リードフレームの所定位置に設けた切り欠き部にあるところ,その特徴によって解決されるのは,特許文献4のような多数個を同時生産する方式でのリードフレームと熱硬化性樹脂の密着性という課題である(特許文献4の段落【0008】, 【0009】, 【0014】, 【0016】, 【0078】 。
等)したがって, 「短時間に多数個の発光装置を製造」すると同時に「リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性」を高めることが本件発明の本質的な課題といえ,それら二つの本質的な課題を解決している以上,本件発明にサポート要件違反はない。
また,仮に,本件審決の認定する課題を一体的なものとみたところで,本件発明がサポート要件を満たしていることは,本件審決が認定判断するとおりである。
(2) 本件明細書では,個別に金型で封止する場合には個別の領域を有する金型に樹脂を導入するためのランナーが必要であるのに対し,本件発明のように個別の 領域を有しない金型を用いるようにすれば,その分ランナーの数が減り,そこに残る樹脂が減少することを開示しているところ ,このような作用効果がトランスファ・モールドに限定されず, 「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」一般に妥当することは自明である。本件審決がそのような自明な事項について詳細な説明を省略していたとしても ,それゆえに本件審決が違法となるものではない。
なお,本件審決のうち, 「本件発明は,発光装置1個ずつトランスファ・モールドする場合に比べて,多数個同時の場合には,発光装置1個に対しての金型の樹脂注入口経路の数や周囲の長さが減少するから,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂の量が減少することは,当業者であれば容易に理解できることである。」という部分については,「トランスファ・モールド」と記載されてはいるものの,その趣旨が「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造方法」一般に妥当することは,特段の説明を加えるまでもない自明な事項である。本件審決は,「廃棄されるランナーを低減すること」がトランスファ・モールドする際の課題であると認定したものではない。
2 取消事由2(サポート要件についての判断の誤り(その2))について (1) 本件審決は,本件発明が少なくとも二つの課題を解決しているから,サポート要件を充足するとの認定を行っている。それを踏まえると,原告の主張する取消事由2は,独立の取消事由として成立するものではない。
(2) 本件審決において, 「樹脂成形体付リードフレーム」が「金型にリードフレームを挟み,樹脂を充填する製造?法」で得られたものと解釈できるとした点や,金型を用いる場合に上下に金型が必要であることは請求項1に記載された構成から当業者が理解し得ることであるとした点に,誤りはない。
甲26に記載されているとおり, 「成形」をするには「通常,金型」を用いるところ,特許請求の範囲に記載された用語は通常の技術用語の意味として解釈すべきであるから, 「成形」との用語から「金型を用いる」と理解することは通常の理解であ る。しかも,本件明細書には,金型を用いた例のみが記載されている。
これに対し,甲21も甲40も本件特許出願後の文献であり,しかも,いずれにもかなり特殊な方法が記載されている。このような二つの特許公報を根拠に,一般的な用語の意味として「成形」が金型を用いた方法を示すことを否定できるものではない。
当裁判所の判断
1 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。
2 本件発明について (1) 本件明細書の記載 本件明細書(甲41)には,以下の記載がある(ただし,段落【0005】の「熱硬化性樹脂は樹脂の流動性が低いため」は「熱可塑性樹脂は樹脂の流動性が低いため」の誤記と認められる。。
)【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】 本発明は,照明器具,ディスプレイ,携帯電話のバックライト,動画照明補助光源,その他の一般的民生用光源などに用いられる発光装置及び発光装置の製造方法などに関する。
【背景技術】【0002】 発光素子を用いた発光装置は,小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。
また,この発光素子は半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ,振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため,発光ダイオード(LED),レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いる発光装置は,各種の光源として利用されている。
【0004】 従来,発光装置を製造する方法として,リードフレームを非透光性で光反射性を有する白色樹脂でインサート成形し,リードフレームを介して所定の間隔で凹部形状のカップを有する樹脂成形体を成形する方法が開示されている・・・。ここでは白色樹脂の材質が明示されていないが,インサート成形することや図面から,一般的な熱可塑性樹脂が用いられる。・・・【0005】 しかしながら,熱可塑性樹脂はリードフレームとの密着性に乏しく,樹脂部とリードフレームとの剥離を生じやすい。また,熱硬化性樹脂は樹脂の流動性が低いため複雑な形状の樹脂成形体を成形するには不適切であり,耐光性にも乏しい。特に近年の発光素子の出力向上はめざましく,発光素子の高出力化が図られるにつれ,熱可塑性樹脂からなるパッケージの光劣化は顕著となってきている。
【0006】 これらの問題点を解決するため,樹脂成形体の材料に熱硬化性樹脂を用いる発光装置が開示されている・・・。
・・・図18は,従来の発光装置の製造方法を示す概略断面図である。この発光装置は,金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線を形成し,ついで,金属配線を所定形状の金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入し,トランスファ・モールドすることが開示されている。
【図18】【0007】 しかし,この製造方法は,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難である。また,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題がある。
【0008】 異なる発光装置及びその製造方法として,配線基板状に光反射用熱硬化性樹脂組成物層を有する光半導体素子搭載用パッケージ基板及びその製造方法が開示されている・・・。図19は,従来の発光装置の製造工程を示す概略図である。この光半導体素子搭載用パッケージ基板は,平板状のプリント配線板を金型に取り付け,光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファー成型機により加熱加圧成型し,複数の凹部を有する,マトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製している。また,プリント配線板の代わりにリードフレームを用いることも記載されている。
【図19】【0009】 しかし,これらの配線板及びリードフレームは平板状であり,平板状の上に熱硬化性樹脂組成物が配置されており,密着面積が小さいため,ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題がある。
【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0011】 本発明は上述した問題に鑑みて,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く,短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】【0013】 本明細書において,個片化された後の発光装置には,リード,樹脂部,樹脂パッケージなる用語を用い,個片化される前の段階では,リードフレーム,樹脂成形体 なる用語を用いる。
【0014】 本発明は,熱硬化後の,波長350nm〜800nmにおける光反射率が70%以上であり,外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置の製造方法であって,切り欠き部を設けたリードフレームを上金型と下金型とで挟み込む工程と,上金型と下金型とで挟み込まれた金型内に,光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして,リードフレームに樹脂成形体を形成する工程と,切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断する工程と,を有する発光装置の製造方法に関する。かかる構成によれば,切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されるため,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができる。また,熱可塑性樹脂よりも粘度が低い熱硬化性樹脂を用いるため,空隙が残ることなく,切り欠き部に熱硬化性樹脂を充填することができる。
また,一度に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。
【0016】 リードフレームは,切断部分における切り欠き部が全包囲周の約1/2以上であることが好ましい。これによりリードフレームを軽量化でき,安価な発光装置を提供することができる。また,リードフレームにおける切断される部分が少なくなり,リードフレームと熱硬化性樹脂との剥離をより抑制することができる。
【0021】 本発明は,熱硬化後の,波長350nm〜800nmにおける光反射率が70%以上であり,外側面において樹脂部とリードとが略同一面に形成されている樹脂パッケージを有する発光装置であって,リードは底面及び上面の少なくともいずれか一面にメッキ処理が施されており,かつ,外側面はメッキ処理が施されていない部 分を有する発光装置に関する。これによりメッキ処理されていないリードの露出を防止でき,かつ,一度に多数個の発光装置を得ることができる。・・・【0028】 本発明は,熱硬化後の,波長350nm〜800nmにおける光反射率が70%以上であり,凹部が複数形成され,該凹部の内底面は,リードフレームの一部が露出されている,樹脂成形体の製造方法であって,切り欠き部を設けたリードフレームを用い,樹脂成形体において隣り合う凹部が成形される位置に凸部を有する上金型と下金型とでリードフレームを挟み込む工程と,上金型と下金型とで挟み込まれた金型内に,光反射性物質が含有される熱硬化性樹脂をトランスファ・モールドして,切り欠き部に熱硬化性樹脂を充填させ,かつ,リードフレームに樹脂成形体を形成する工程と,を有する樹脂成形体の製造方法に関する。かかる構成によれば,一度に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。
【発明の効果】【0030】 本発明にかかる発光装置及びその製造方法によれば,リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができる。また,短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】【0032】<第1の実施の形態>(発光装置) 第1の実施の形態に係る発光装置を説明する。
・・・図3は,第1の実施の形態に用いられるリードフレームを示す平面図である。
【図3】【0062】 ・・・(第1の実施の形態に係る発光装置の製造方法) 第1の実施の形態に係る発光装置の製造方法について説明する。図4は,第1の実施の形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。図5は,第1の実施の形態に係る樹脂成形体を示す平面図である。
【図4】 【図5】 【0063】 第1の実施の形態に係る発光装置の製造方法は,切り欠き部21aを設けたリードフレーム21を上金型61と下金型62とで挟み込む工程と,上金型61と下金型62とで挟み込まれた金型60内に,光反射性物質26が含有される熱硬化性樹脂23をトランスファ・モールドして,リードフレーム21に樹脂成形体24を形成する工程と,切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する工程と,を有する。
【0067】 突出部はトランスファ・モールドの際にリードフレーム21と接触する部分であって,その接触部分に熱硬化性樹脂23が流れ込まないようにすることにより,リードフレーム21の一部が樹脂成形体24から露出される露出部を形成できる。突出部は,本体部から下方に突出しており,外壁に囲まれるように形成されている。
突出部は,リードフレーム21と接触する部分が平坦に形成されている。樹脂成形体24の上面の面積あたりに効率よく凹部を形成するためには,一方向かつ等間隔に突出部が形成され,各突出部においてその一方向から90°方向かつ等間隔に突出部が形成されることが好ましい。
【0078】 次に,切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する。
複数の凹部27が形成された樹脂成形体24は,隣接する凹部27の間にある側壁を略中央で分離されるように長手方向及び短手方向に切断する。切断方法はダイシングソーを用いて樹脂成形体24側からダイシングする。これにより切断面は樹脂成形体24とリードフレーム21とが略同一面となっており,リードフレーム21が樹脂成形体24から露出している。このように切り欠き部21aを設けることにより,切断されるリードフレーム21は少なくなりリードフレーム21と樹脂成形体24との剥離を抑制することができる。また,リードフレーム21の上面だけ でなく,切り欠き部21aに相当する側面も樹脂成形体24と密着するため,リードフレーム21と樹脂成形体24との密着強度が向上する。
実施例】【0103】 実施例1に係る発光装置を説明する。第1の実施の形態で説明したところと重複するところは説明を省略することもある。
・・・図3は、第1の実施の形態に用いられるリードフレームを示す平面図である。
【0105】 この発光装置は以下のようにして製造される。
【0107】 次に,所定の大きさのリードフレーム21を上金型61と下金型62とで挟み込む。リードフレーム21は平板状であって,個片化する発光装置の大きさに応じた切り欠き部21aを設けている。切り欠き部21aは樹脂パッケージ20に個片化した際に四隅が露出し,四隅以外は露出しないように縦横に設けられている。また,切り欠き部21aは,樹脂パッケージ20に個片化した際に電気的に絶縁されるように横方向に設けられており,上金型61と下金型62とでこの切り欠き部21aを挟み込んでいる。
【0108】 上金型61と下金型62とで挟み込まれた金型60内に,光反射性物質26を含有する熱硬化性樹脂23をトランスファ・モールドして,リードフレーム21に樹脂成形体24を形成する。光反射性物質26を含有した熱硬化性樹脂23をペレット状にし,熱と圧力を加えて金型60内に流し込む。このとき切り欠き部21aにも熱硬化性樹脂23が充填される。流し込まれた熱硬化性樹脂23を仮硬化した後,上金型61を取り外し,更に熱を加えて本硬化を行う。これによりリードフレーム21と熱硬化性樹脂23とが一体成形された樹脂成形体24が製造される。
【0111】 以上の工程を経ることにより,一度に多数個の発光装置100を製造することができる。
(2) 本件発明の課題及び効果 前記第2の2で認定した本件訂正後の特許請求の範囲の記載及び前記(1)で認定した本件明細書の記載からすると,背景技術を踏まえた本件発明の課題及び効果について,次のとおり認められる。
ア 本件発明の課題 (ア) 発光ダイオード(LED),レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いる発光装置を製造する方法として,従来,リードフレームを非透光性で光反射性を有する白色樹脂でインサート成形し,リードフレームを介して所定の間隔で凹部形状のカップを有する樹脂成形体を成形する方法があったが,その材料として用いる熱可塑性樹脂は,リードフレームとの密着性に乏しいため,樹脂部とリードフレームとの剥離を生じやすく,また,樹脂の流動性が低いため複雑な形状の樹脂成形体を成形するには不適切であり,耐光性にも乏しいという問題があった。
(本件明細書の段落【0002】【0004】 【0005】 , , ) (イ) これらの問題点を解決するため,樹脂成形体の材料に熱硬化性樹脂を用い,金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線を形成し,次いで,金属配線を所定形状の金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入して,トランスファ・モールドするという製造方法がある。しかし,この製造方法には,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難であり,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題があった。(同【0006】【0007】 , ) (ウ) 異なる発光装置の製造方法として,平板状のプリント配線板又はリードフレームを金型に取り付け,光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファー成型機により加熱加圧成型し,複数の凹部を有する,マトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製するという方法があるが,これらの配線板又は リードフレームは平板状であり,平板状の上に熱硬化性樹脂組成物が配置されていて密着面積が小さいため,ダイシングする際にリードフレーム等と熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題があった。(同【0008】【0009】 , ) (エ) 本件発明は,以上の問題に鑑みて,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性が高く,短時間に多数個の発光装置を製造する簡易かつ安価な方法を提供することを目的とする。(同【0011】) イ 本件発明の効果 本件発明に係る発光装置の製造方法によれば,リードフレームと樹脂成形体との密着性の高い発光装置を提供することができる。また,短時間に多数個の発光装置を得ることができ,生産効率の大幅な向上を図ることができる。さらに,廃棄されるランナーを低減することができ,安価な発光装置を提供することができる。
(本件明細書の段落【0030】) 3 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り(その1))について (1) 前記2(2)によると,本件発明は,金属配線を金型に配置し,金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂を注入して,トランスファ・モールドするという従来の製造方法には,短時間に多数個の発光装置を製造することが困難であるという問題や,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂が大量になるという問題があること,また,平板状のプリント配線板又はリードフレームを金型に取り付け,熱硬化性樹脂組成物を注入し,トランスファ・モールドして複数の凹部を有するマトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製するという他の製造方法には,リードフレームと熱硬化性樹脂組成物とが剥離し易いという問題があることから,@リードフレームと熱硬化性樹脂組成物との密着性を向上させるという課題(密着性の課題) A短時間に多数個の発光装置を製造するとの課題, , 及びB廃棄されるランナーを低減するという課題を解決しようとするもので,そのような効果を有すると解される。
(2)ア 請求項1には,「前記リードフレームには前記外側面となる4つの位置 のいずれにも前記樹脂成形体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられ」ていることや,「分離後の各発光装置の前記4つの外側面のいずれにおいても前記リードと前記切り欠き部に入り込んだ前記樹脂部とが略同一面となるように,前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切断することにより,複数の発光装置に分離する工程」が記載されているところ,切り欠き部に熱硬化性樹脂が充填されることで,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着面積が大きくなり,リードフレームと熱硬化性樹脂との密着性を向上することができるものと認められる(本件明細書の段落【0014】【0016】【0078】 , , )から,上記のような,樹脂形成体の一部が入り込んだ切り欠き部が設けられていることや上記工程についての記載は,前記(1)の@の課題(密着性の課題)を解決する手段の記載であるといえる。
イ また,請求項1には, 「リードフレームと,光反射性物質を含有する熱硬化性樹脂である樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付リードフレームを準備する工程であって」,その「上側には凹部が複数設けられ」るなどしている「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」 「前記リードフレームと前記樹脂成形体とを切 や,断することにより,複数の発光装置に分離する工程」が記載されているところ,そのように後に個片化して複数の発光装置とされるべき樹脂形成体付リードフレームを作製し,それを分離することによって,短時間に多数個の発光装置を製造することができるものと認められる(本件明細書の段落【0014】【0021】【00 , ,28】【0030】【0067】【0078】【0111】 , , , , )から,上記工程についての記載は,前記(1)のAの課題を解決する手段の記載であるといえる。
ウ さらに,請求項1には,前記イで指摘した工程が記載されているところ,本件明細書の段落【0006】〜【0009】の記載からすると,前記(1)のBの課題における廃棄されるランナーとは,金型を用いた樹脂成形により発光装置を製造する際に,金型の樹脂注入口経路や発光装置の周囲等に生じ,離型後に廃棄される樹脂であることが明らかであるといえる。
そして,本件発明のように,樹脂成形体付リードフレームを作製した後,個々の 発光装置に個片化して多数個同時に製造する場合には,発光装置を個別に樹脂成形して製造する場合に比べて,発光装置1個に対しての金型の樹脂注入口経路の数や周囲の長さが減少し,発光装置1個に対して廃棄されるランナー部分の樹脂の量が減少することは,当業者であれば容易に理解できるというべきである。なお,本件発明が金型を用いたものであることは,後記4(2)のとおりである。
したがって,前記イで指摘した工程についての記載は,前記(1)のBの課題を解決する手段の記載であるといえる。
(3) 以上によると,本件発明1について,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ,サポート要件を欠くものとは認められない。本件特許の請求項2〜12は,全て請求項1を引用するものであるから,それらについても同様にサポート要件を欠くものとは認められない。よって,本件審決のサポート要件の判断に誤りはないから,取消事由1は認められない。
(4) 原告の主張について 原告は,前記(1)の@〜Bの課題は,いずれも樹脂成形法としてトランスファ・モールドを採用することにより同時に解決される課題であって,トランスファ・モールドと一義的な関係性を有する一体的な課題であると主張する。
しかし,本件明細書の段落【0006】及び【0007】の記載からして,トランスファ・モールドを採用することにより直ちに前記(1)のA及びBの課題が解決されるものではないことは,明らかである。また,同【0008】及び【0009】の記載からして,トランスファ・モールドを採用することにより直ちに前記(1)の@の課題が解決されるものではないことも,明らかである。したがって,前記(1)の@〜Bの三つの課題がいずれも樹脂成形法としてトランスファ・モールドを採用することにより同時に解決される課題であるとの原告の主張は採用できない。
また,本件明細書の段落【0006】及び【0008】の記載のほか,証拠(甲3〔段落【0038】【0046】【0050】【0124】 ,甲9〔段落【00 , , , 〕 38】,甲26,28)及び弁論の全趣旨によると,トランスファ・モールドは, 〕金型を用いた成形の一態様であって,射出成形等と比較した場合のその特徴は,タブレット状の樹脂を用いる点にあるものとみられるところであり,このようなトランスファ・モールドの意義からすると,前記三つの課題がトランスファ・モールドを用いた場合に限って生ずるものであるとは考え難いから,これらの課題がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有するものとは認められない。
また,本件明細書では,従来技術の問題点を記載する中でトランスファ・モールドに言及しており(段落【0006】【0008】,課題を解決するための手段の , )記載においてもトランスファ・モールドに言及している(段落【0014】)が,このような従来技術の問題点やそれに対応する課題を解決するための手段の記載があるからといって,前記三つの課題がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有するということはできない。
さらに,トランスファ・モールドと一義的な関係を有するとは認められない前記三つの課題が一体的な課題であるということもできない。前記(2)で認定判断したとおり,本件発明における前記三つの課題の解決手段も一体ではない。
その他,原告は,本件明細書にトランスファ・モールド以外の樹脂成形法についての言及がないことや本件特許の分割親出願に関する審決取消訴訟の判断の内容についても主張するが,これらから,前記三つの課題がトランスファ・モールドと一義的な関係性を有するとか,これらの課題が一体的な課題であるということができないことは明らかである。
したがって,原告の主張は,前記(3)の認定判断を左右するものではない。
4 取消事由2(サポート要件についての判断の誤り(その2))について (1) 「成形」の語について ア 牧廣ほか著「図解プラスチック用語辞典」日刊工業新聞社(昭和56年発行)には,「成形」について,「一般には,プラスチック成形材料に熱および圧力を加えて軟化あるいは溶融流動化させたのち,金型ないしダイなどを用いて,所望 の形状にすることをいう。通常,金型を用いる圧縮成形,トランスファ成形,射出成形,ブロー成形などの成形をmo(u)ldingとい」うと掲載されている。(甲26) イ 大木道則ほか編集「化学大辞典」株式会社東京化学同人(1989年発行)には,「成形」について,「プラスチックやゴムの成形とガラス,セラミックスの成形があるが,いずれも加熱して流動状態にして,金型に圧入し,固化させる方法で,固化には冷却して固化させる場合と,反応させて硬化させる方法がある。前者の方法としてプラスチックでは射出成形,押出成形,ブロー成形,熱成形,圧縮成形,があり,射出,押出,圧縮成形は反応硬化の場合にも用いる。」と掲載されている。(甲27) ウ プラスチック大辞典編集委員会編「プラスチック大辞典」株式会社工業調査会(1994年発行)には,「成形」について,「成形材料に熱と圧力をかけて流動化させ,金型などを用いて所定の形に賦形すること。成形される材料には熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂,ゴム,バインダーを混ぜて流動性をもたせたセラミックスやメタルの粉末などがある。成形法には射出成形,押出成形,圧縮成形,トランスファー成形,ブロー成形,熱成形,積層成形,発泡成形,回転成形,注型,ディップ成形などがある。」と掲載されている。(甲28) (2) 前記(1)の「成形」の語の一般的な意義を踏まえると,請求項1の「リードフレームと,光反射性物質を含有する熱硬化性樹脂である樹脂成形体と,を有する樹脂成形体付リードフレーム」等にいう「樹脂成形体付リードフレーム」は,熱硬化性樹脂に熱や圧力を加えて流動化させて固化することにより作製されるものをいい,その際,金型を用いることが想定されているといえ,当業者においてもそのように理解するものということができる。
そうすると,請求項1における「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」については,金型を用いることが含意されているといえるから,請求項1で金型を用いることが明記されていないためにサポート要件を満たさないというべき事情はない。
よって,本件審決のサポート要件の判断に誤りはないから,取消事由2は認められない。
(3) 原告の主張について ア 原告は,請求項1の従属項である請求項6及び7で初めて「金型」を用いるとの特定がされていると主張するところ,確かに,請求項1の従属項である請求項6及び7には,「上金型と下金型で挟み込む」といった記載がある。
しかし,請求項6及び7は,請求項1について専ら金型を用いるという限定を加えるという趣旨のものではなく, 「樹脂成形体付リードフレームを準備する工程」が金型を用いるものであることを前提として,その具体的な工程について示すものと認められるから,それらの請求項に「上金型と下金型で挟み込む」といった記載があることは,前記(2)の認定判断を左右するものではない。
イ(ア) 原告は,発光装置の技術分野においては,金型を用いることなく成形されたものを「樹脂成形体」としているものがあると主張し,その例として,甲21(特開2018-157180号公報。平成30年10月4日公開)及び甲40(特開2011-77090号公報。平成23年4月14日公開)を指摘する。
(イ) 甲21は, 「樹脂成形体及び発光装置の製造方法並びに発光装置」を名称とする発明に係るもので,その出願日は平成29年8月21日である。また,当該発明により製造される発光装置の形態は,下記の図のとおりであり,搭載基板11上に発光素子12を搭載する工程と,発光素子を埋設するように搭載基板上に熱硬化性樹脂13Pを塗布する工程と,熱硬化性樹脂にプラズマ照射又は赤外線照射を行い,熱硬化性樹脂の表面部分13P1のみを硬化させる工程と,表面部分が硬化された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させ,樹脂成形体を形成する工程と,を含むものである。
(ウ)甲40は,「発光素子用リードフレーム基板の製造方法及び発光素子用リードフレーム基板並びに発光モジュール」を名称とする発明に係るもので,その出願日は平成21年9月29日である。また,当該発明は,別途製作したリフレクター(反射板)をリードフレーム基板上に取り付ける際には,高精度で取り付けることが必要で,その位置決め及び固定に時間を要していたこと(甲40の段落【0009】)や,一方,金型を用いたリフレクター部の一体成型には製造コストが高いという課題があること(同【0010】参照)を踏まえたもので,非常に高価な金型ではなく,安価に製作することが可能な樹脂版を用いてリフレクター部を一体成型するというもの(同【0029】)であって,下記の図のとおり,樹脂版24をリードフレーム部4の表面6a,7a側に配設する樹脂版設置工程と,リードフレーム部4の裏面6b,7bに充填樹脂25を塗工する充填樹脂塗工工程と,離型フィルム26を介して充填樹脂25を加圧し,キャビティーH内に充填樹脂25を充填してリフレクター部16を備える樹脂部5を成型する樹脂加圧/硬化工程とを含むものである。
(エ) 上記(イ)及び(ウ)のとおり,甲21や甲40は,いずれも本件特許の原出願後に出願された特許に係るもので,前記(1)の「成形」の語の一般的な意義とは異なる形で成形を行うことを特徴とする技術に係るものであるから,用語の一般的 意義を踏まえた前記(2)の認定判断を左右するものではないというべきである。
結論
以上の次第で,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 佐野信
裁判官 中島朋宏
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