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関連審決 無効2018-800132
無効2010-800092
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成29ワ31544 特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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令和2ワ4332 特許権侵害行為差止請求事件 判例 特許
平成27ワ8736 特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
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事件 平成 29年 (ワ) 24210号 特許権侵害差止等請求事件
5
原告 パラマウントベッド株式会社
同訴訟代理人弁護士 古城春実 服部謙太朗 10 同訴訟代理人弁理士 堀口浩
同 補佐人弁理士石川隆史
被告株式会社プラッツ 15 同訴訟代理人弁護士 藤原宏 飯村敏明 武田昇平 植松大雄 吉原祐介 20 同訴訟復代理人弁護士 黒川直毅
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2020/09/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,3億8122万2226円並びにうち155万2677円に対する平成22年1月1日から,うち1817万3504円に対する平成23年1月1日から,うち3472万2903円に対す25 る平成24年1月1日から,うち3071万4417円に対する平成25年1月1日から,うち5863万1119円に対する平成26年1月11日から,うち6732万2747円に対する平成27年1月1日から,うち8087万7601円に対する平成28年1月1日から,うち6590万0120円に対する平成29年1月1日から及びうち2332万7138円に対する平成30年1月1日から,各支払済みまで年5分5 の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
10 事 実 及 び 理 由第1 請求等1? 主位的請求被告は,原告に対し,13億3092万4409円並びにうち484万1535円に対する平成22年1月1日から,うち3946万4541円に対する15 平成23年1月1日から,うち7310万2987円に対する平成24年1月1日から,うち6482万5470円に対する平成25年1月1日から,うち1億8315万7051円に対する平成26年1月1日から,うち2億1592万1711円に対する平成27年1月1日から,うち2億8374万6274円に対する平成28年1月1日から,うち2億4193万9100円に対す20 る平成29年1月1日から,うち1億6805万7826円に対する平成30年1月1日から及びうち5586万7914円に対する平成31年1月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
? 予備的請求(上記?の一部につき)被告は,原告に対し,6億2928万9464円並びにうち484万15325 5円に対する平成22年1月1日から,うち3946万4541円に対する平成23年1月1日から,うち7310万2987円に対する平成24年1月12日から,うち6482万5470円に対する平成25年1月1日から,うち1億8315万7051円に対する平成26年1月1日から,うち1億5644万1006円に対する平成27年1月1日から,うち6945万3112円に対する平成28年1月1日から,うち3609万6670円に対する平成295 年1月1日から,うち189万7717円に対する平成30年1月1日から及びうち9375円に対する平成31年1月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,別紙物件目録記載6の被告製品(以下「被告製品6」という。以下,同目録記載の各被告製品につき各番号に応じて同じ。)を販売,販売の申出又は10 輸入をしてはならない。
3 被告は,被告製品6を廃棄せよ。
4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,@被告による被告製品3及び5の販売は,原告15 の有する特許第3024698号の特許権(以下「本件特許権1」という。)を侵害すると主張して,不法行為(民法709条,以下同じ。)による損害賠償請求権に基づき,被告製品3につき別紙「原告の主張」の「被告製品3」の「総計」欄記載の2億4696万2222円及びうち年ごとの損害額である同各「合計」欄記載の額に対する各不法行為より後の日である各翌年1月1日から支払済み20 まで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金,被告製品5につき同「被告製品5」の「総計」欄記載の5億6324万8383円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求め,A被告による被告製品4の販売は,原告の有する特許第5252542号の特許権(以下「本件特許権2」という。)を侵害すると主張して,不法行為による損害賠償請求権25 に基づき,別紙「原告の主張」の「被告製品4」の「総計」欄記載の3億8232万7242円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求め,B被告に3よる被告製品6の販売等は,原告の有する特許第4141233号の特許権(以下,「本件特許権3」といい,本件特許権1から3を併せて「本件各特許権」という。)を侵害すると主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,別紙「原告の主張」の「被告製品6」の「総計」欄記載の1億3838万6562円5 及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を求めるとともに,特許権による侵害停止,予防請求権(特許法100条1項)に基づき,被告製品6の販売,販売の申出及び輸入の差止めを,侵害行為組成物廃棄等請求権(同条2項)に基づき,被告製品6の廃棄を求める事案である。
また,原告は,被告による被告製品3及び4の販売につき,予備的に,不当利10 得返還請求権(民法703条)に基づき,上記の被告製品3及び4の販売に係る損害額の合計と同額の6億2928万9464円及びこれに対する上記の遅延損害金と同額の利息(同法704条)の支払を求める。
なお,原告は,訴え提起時には,被告製品3及び5の他に被告製品1及び2の販売も本件特許権1の侵害であるとして損害賠償請求をしていたが,令和2年615 月18日付けの「訴え変更申立書」による訴え変更後は,被告製品3及び5の販売について本件特許権1の侵害であるとして損害賠償請求をする。
1 前提事実(当事者間に争いがない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)20 ? 当事者ア 原告は,金属製及び木製各種ベッド並びにこれに付帯する什器備品の製造及び販売,医療福祉機器及び設備の製造及び販売等を目的とする株式会社である。(甲1)イ 被告は,介護ベッド,マットレス及び車椅子等福祉用具の製造,販売及び25 輸出入等を目的とする株式会社である。(甲2)被告は,ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)に子会社4であるプラッツ・ベトナム・カンパニー・リミテッド(PLATZ VIETNAMCo., LTD.,以下「プラッツベトナム」という。 を有する。
) (弁論の全趣旨)? 本件各特許権原告は,以下の本件各特許権を有する。(甲3〜8)5 ア 本件特許権1特許番号 第3024698号出願日 平成9年6月24日(特願平9−167519号)登録日 平成12年1月21日発明の名称 ベッド等におけるフレーム構造10 イ 本件特許権2特許番号 第5252542号出願日 平成20年3月31日(特願2008−91607号)登録日 平成25年4月26日発明の名称 ベッドにおける取付品支持位置可変機構15 ウ 本件特許権3特許番号 第4141233号出願日 平成14年11月11日(特願2002−327631号)登録日 平成20年6月20日発明の名称 電動ベッド20 ? 特許請求の範囲の記載本件各特許権に係る特許(以下,番号に応じて「本件特許1」などといい,併せて「本件各特許」という。また,本件各特許の願書に添付された各明細書及び図面(その内容は,別紙図面「本件特許1」「本件特許2」及び「本件特,許3」記載のとおり。)を番号に応じて「本件明細書1」などという。)の特許25 請求の範囲等は次のとおりである。
なお,被告は,平成30年11月28日,本件特許3について,特許無効審5判を請求し(無効2018−800132),原告は,令和元年12月2日,特許請求の範囲の請求項1の訂正をすることについて訂正請求したところ,令和2年3月30日,請求のとおり訂正することを認める,審判の請求は成り立たない旨の審決がされた。同審決は確定していない(甲154〜156,弁論5 の全趣旨)。原告は,本件訴訟においては,訂正の対抗主張はしていない。
ア 本件特許1(甲4)本件特許1の特許請求の範囲の請求項1から3の記載は次のとおりである。
【請求項1】ベッド等において,床板を支えるフレームを,使用者の体格に10 対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成したことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。
【請求項2】ベッド等において,床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,異なった15 寸法規格のものに,交換装着可能に構成したことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。
【請求項3】前記足側床板に,マットレス保持枠を,フットボード側に指向して突設する一方,このマットレス保持枠に,延長マットレスを載置するようにして,床部のギャッチ動作を行うようにした20 ことを特徴とする請求項2記載のベッド等におけるフレーム構造。
上記のうち請求項1及び2に係る発明(以下,請求項番号に応じて「本件発明1−1」,「本件発明1−2」といい,併せて「本件発明1」ということがある。)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれ25 を符号に応じて「構成要件1−1A」などという。本件特許2及び3についても同じ。。
)6(ア) 本件発明1−11−1A ベッド等において,1−1B 床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換5 え可能に構成した1−1C ことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。
(イ) 本件発明1−21−2A ベッド等において,1−2B 床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレー10 ムを,使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のものに,交換装着可能に構成した1−2C ことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。
イ 本件特許2(甲6)本件特許2の特許請求の範囲の請求項1及び5から7の記載は次のとお15 りである。
【請求項1】ベッドフレーム側の棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能に支持する構成とし,前記取付品支持部材には前記棒状部材を係合可能な溝形部材を突設し,棒状部材と溝形部材には,前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合20 状態となる係合手段を構成する突起と係合部を設けると共に,前記係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付孔を設け,係合手段と螺合手段は,係合と螺合の位置を,棒状部材の長さ方向に複数構成したことを特徴とするベッド等における25 取付品支持位置可変機構。
【請求項5】係合手段は,棒状部材側に設けた突起と,溝形部材側の長さ方7向に複数設けた係合部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載のベッドにおける取付品支持位置可変機構。
【請求項6】螺合手段は,棒状部材側に設けた雌ねじ部と,溝形部材側の長さ方向に複数設けた取付孔とから構成されることを特徴とす5 る請求項1に記載のベッドにおける取付品支持位置可変機構。
【請求項7】取付品支持部材に取り付ける取付品はベッドの長手方向端部側に取り付けるボードであり,棒状部材はベッドフレームの長手方向部材であることを特徴とする請求項1〜6に記載のベッドにおける取付品支持位置可変機構。
10 上記各請求項に係る発明(以下,請求項番号に応じて「本件発明2−1」などといい,本件発明2−1及び2−5から2−7を併せて「本件発明2」ということがある。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
(ア) 本件発明2−12−1A ベッドフレーム側の棒状部材の長手方向に取付品支持部材を15 着脱可能に支持する構成とし,2−1B 前記取付品支持部材には前記棒状部材を係合可能な溝形部材を突設し,2−1C 棒状部材と溝形部材には,前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する突起20 と係合部を設けると共に,2−1D 前記係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付孔を設け,2−1E 係合手段と螺合手段は,係合と螺合の位置を,棒状部材の長さ25 方向に複数構成した2−1F ことを特徴とするベッドにおける取付品支持位置可変機構。
8(イ) 本件発明2−52−5A 係合手段は,棒状部材側に設けた突起と,溝形部材側の長さ方向に複数設けた係合部とから構成される2−5B ことを特徴とする請求項1に記載のベッドにおける取付品支5 持位置可変機構。
(ウ) 本件発明2−62−6A 螺合手段は,棒状部材側に設けた雌ねじ部と,溝形部材側の長さ方向に複数設けた取付孔とから構成される2−6B ことを特徴とする請求項1に記載のベッドにおける取付品支10 持位置可変機構。
(エ) 本件発明2−72−7A 取付品支持部材に取り付ける取付品はベッドの長手方向端部側に取り付けるボードであり,棒状部材はベッドフレームの長手方向部材である15 2−7B ことを特徴とする請求項1〜6に記載のベッドにおける取付品支持位置可変機構。
ウ 本件特許3(甲8〜10)本件特許3の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は次のとおりである。
20 【請求項1】寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フレームの昇降25 が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,9前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間の中間停止位置LMで,前記下降ス5 イッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介10 護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さであることを特徴とする電動ベッド。
【請求項2】寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させ15 る昇降位置と,この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときに,前記操作20 ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,そのときの前記フレームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フレームを降下させた後,前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状25 態であっても一旦停止させ,その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下10降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定位置LSよりも低い場合に,前記操作ボックスの下降スイッチの押5 し状態が継続している間,前記フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させるものであり,前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さであることを特徴とする電動ベッド。
10 上記各請求項に係る発明(以下,請求項番号に応じて「本件発明3−1」,「本件発明3−2」といい,併せて「本件発明3」ということがある。)を構成要件に分説すると,次のとおりである。
(ア) 本件発明3−13−1A 寝床部を支持するベッドフレームと,15 3−1B 床上に設置される台部と,3−1C この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,3−1D この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御20 装置と,3−1E スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,3−1F 前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信25 号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,前記11フレームの上位置LHと下位置LLとの間の中間停止位置LMで,前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ,3−1G その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が5 解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,3−1H 前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さで10 ある3−1I ことを特徴とする電動ベッド。
(イ) 本件発明3−23−2A 寝床部を支持するベッドフレームと,3−2B 床上に設置される台部と,15 3−2C この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降位置と,3−2D この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,20 3−2E スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,3−2F 前記制御装置は,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続し25 ている間,前記フレームを下降させるが,そのときの前記フレームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間12の予め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フレームを降下させた後,前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状態であっても一旦停止させ,3−2G その後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が5 解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,3−2H 前記操作ボックスから下降信号が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定位置LSよりも低い場合に,前記操作10 ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させるものであり,3−2I 前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さで15 ある3−2J ことを特徴とする電動ベッド。
? 被告の行為等ア 被告は,平成19年11月に被告製品3のレギュラータイプの販売を,平成21年11月にショートタイプの販売をそれぞれ開始し,平成26年1220 月から平成27年11月までの間に被告製品3の販売を終了した。被告製品3はプラッツベトナム等で製造され,被告はベトナムからこれを輸入していた。
被告製品3は,別紙図面「被告製品3」記載のとおり,背ボトム,腰ボトム及びひざ脚ボトムから成る床板を,ヘッドフレーム,センターフレーム及25 びフットフレームから成るベッドフレームにより支え,ベッドの長手方向両端部にボードを取り付ける構造となっている。ヘッドフレームとフットフレ13ームには,レギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドに対応した長さの異なる2種類がある。センターフレームには,レギュラータイプのベッドに対応したヘッドフレーム・フットフレーム及びショートタイプのベッドに対応したヘッドフレーム・フットフレームのいずれも組み合わせるこ5 とが可能であり,購入したのとは異なるタイプのベッドに対応したヘッドフレーム・フットフレーム等を別途購入することなどにより,ベッドフレームを異なる長さとすることができる。ベッドフレームの長さの変更に対応して,フレームのほか背ボトム及びひざ脚ボトム並びにボードの交換が必要となる(以下,各被告製品において,ベッドの全長を変えて利用するために必要10 な交換用の各部材の一式を「交換用パーツ」といい,その各部材について「交換用パーツ単体」ということがある。。
)(本項につき,甲12,14,72,弁論の全趣旨)イ 被告は,平成23年12月に被告製品4のレギュラータイプ及びショートタイプの販売を開始し,平成28年9月から平成29年7月までの間に被告15 製品4の販売を終了した。被告製品4はプラッツベトナム等で製造され,被告はベトナムからこれを輸入していた。
被告製品4は,別紙図面「被告製品4」記載のとおり,背ボトム,腰ボトム及びひざ脚ボトムから成る床板を,ヘッドフレーム,センターフレーム及びフットフレームから成るベッドフレームにより支え,ベッドの長手方向両20 端部にボードを取り付ける構造となっている。フレームは,レギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドで共通であり,背ボトムとひざ脚ボトムには,レギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドに対応した大きさの異なる2種類があり,ベッド本体と別に別途購入することが可能である。(本項につき,甲12,15,16,72,弁論の全趣旨)25 ウ 被告は,平成26年9月に被告製品5のレギュラータイプ及びショートタイプの販売を開始した。被告製品5の本体は主にプラッツベトナム等で製造14され,被告はベトナムからこれを輸入している。
被告製品5は,別紙図面「被告製品5」記載のとおり,背ボトム,腰ボトム及びひざ脚ボトムから成る床板を,ヘッドフレーム,センターフレーム及びフットフレームから成るベッドフレームにより支え,両端にボードを取り5 付ける構造となっている。ヘッドフレーム及びフットフレームには,レギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドに対応した長さの異なる2種類がある(なお,ベッドの幅に応じて90cm幅専用のものと83cm幅専用のものがある。)。センターフレームには,レギュラータイプのベッドに対応したヘッドフレーム・フットフレーム及びショートタイプのベッド10 に対応したヘッドフレーム・フットフレームのいずれも組み合わせることが可能であり,購入したのとは異なるタイプのベッドに対応するヘッドフレーム・フットフレーム等を別途購入することなどにより,ベッドフレームを異なる長さとすることができる。ベッドフレームの長さの変更に対応して,フレームのほか背ボトム及びひざ脚ボトムの交換が必要となる。
15 (本項につき,争いがない事実のほか,甲12,17,弁論の全趣旨)エ 被告は,平成29年1月に被告製品6の販売を開始した。被告製品6の本体は主にプラッツベトナム等で製造され,被告はベトナムからこれを輸入している。
被告製品6は,制御装置によって,ベッドフレームの一部であるベースフ20 レームに取り付けられた昇降モータの昇降駆動を制御し,ベースフレームを昇降移動させる電動ベッドであり,手元スイッチの「高さボタン」を押すことによって制御装置にベースフレームの昇降を指示する信号が出力される。
ベースフレームは,床面高57cm(最高位)から15cm(最低位)まで昇降させることができ,「高さボタン」のうちフレームの下降を指示する下25 降スイッチの押し状態を継続してフレームを下降させた場合,フレームの床面高が24cmになるとブザーを鳴らして下降を停止する。その後,下降ス15イッチから手を離して再度下降スイッチを押すと,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる。また,床面高が24cmで下降を停止した後,そのまま約2秒以上下降スイッチの押し状態を継続すると,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる。
5 (本項につき,争いがない事実のほか,甲12,18,21,23,24,弁論の全趣旨)被告は,平成31年1月までの間に被告製品6の仕様を変更した。(乙152〜158,弁論の全趣旨)? 引用例等10 以下の文献や製品が存在する。
ア 1976年(昭和51年)3月23日発行の米国特許3945064号公報(乙15。以下「乙15公報」といい,乙15公報に記載された発明を「米国特許発明1」という。)。その図面1の内容は,別紙図面「引用例」記載1のとおりである。(乙15)15 イ ハンセン・マッケ株式会社(現在はゲティンゲグループ・ジャパン株式会社) 昭和63年9月当時,は, 「マッケ手術台システム1120」(MAQUETOPERATING TABLE 1120)という製品名の手術用寝台をカタログに掲載し,販売していた。その手術用寝台のうち型番1120.21−B(以下「マッケ1120」という。)は,別紙図面「引用例」記載2のとおりである。
20 (乙4,5)ウ 原告は,平成9年2月,別紙図面「引用例」記載3の「キューマアウラベッド」という製品名の介護用ベッド(以下「キューマアウラベッド」という。)を発表し,同年3月には新聞広告を掲載し,同年4月1日から販売を開始した。(乙9,10)25 エ フランスベッドメディカルサービス株式会社は,平成9年当時,ヒューマンケアベッド「FB−730」,同「FB−720」という製品名の介護用16ベッド(以下,併せて「FB730/720」という。)を製造,販売していた。(乙42)オ 2001年(平成13年)12月6日公開の米国特許2001/0047547 A1号公報(乙17。以下「乙17公報」といい,乙17公報に記5 載された発明を「米国特許発明2」という。)。
2 本件の争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,本件特許1について,争点1−1 被告製品3及び5が本件発明1の技術的範囲に属するか。
10 争点1−2 本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。
無効理由1−1 マッケ1120からの新規性欠如無効理由1−2 マッケ1120からの進歩性欠如無効理由1−3 キューマアウラベッドからの新規性欠如15 無効理由1−4 キューマアウラベッドからの進歩性欠如無効理由1−5 サポート要件違反争点1−3 本件特許権1の侵害行為について被告に過失がなかったか。
争点1−4 損害の発生及び額,ないし,被告製品3に係る不当利得の発生及び額20 争点1−5 原告が平成21年11月に被告製品3の販売による損害の発生を知ったか。
本件特許2について,争点2−1 被告製品4が本件発明2の技術的範囲に属するか。
争点2−2 本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認め25 られるか。
無効理由2−1 米国特許発明1からの新規性欠如17無効理由2−2 米国特許発明1からの進歩性欠如無効理由2−3 サポート要件違反争点2−3 本件特許権2の侵害行為について被告に過失がなかったか。
争点2−4 損害の発生及び額,ないし,不当利得の発生及び額5 争点2−5 原告が平成23年12月までに被告製品4の販売による損害の発生を知ったか。
本件特許3について,争点3−1 被告製品6が本件発明3−1の技術的範囲に属するか,また,仕様変更前の被告製品6が本件発明3−2の技術的範囲に属して10 いたか。
争点3−2 本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。
無効理由3−1 本件発明3−1の米国特許発明2からの新規性欠如15 無効理由3−2 本件発明3−1の米国特許発明2からの進歩性欠如無効理由3−3 本件発明3−2のサポート要件違反無効理由3−4 本件発明3−2の明確性要件違反争点3−3 本件特許権3の侵害行為について被告に過失がなかったか。
20 争点3−4 損害の発生及び額争点3−5 廃棄の必要性である。
? 争点1−1(被告製品3及び5が本件発明1の技術的範囲に属するか。)について25 (原告の主張)ア 被告製品3及び5は,いずれも使用者の体格に対応させるべく,フレーム18を置換え可能に構成されたものである。
すなわち,介護用ベッドのレンタル卸業者等は,被告製品3が販売された平成19年以前から,長さの異なる介護用ベッドを提供する目的は使用者の体格に対応することにあるとの認識を有していた。被告は,平成24年に,5 被告製品4について「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせレギュラーサイズとショートサイズをご用意しました。」と記載するとともに,被告製品3についても同様にレギュラータイプとショートタイプが販売されている旨を紹介したカタログを作成し,被告製品3の後継製品である被告製品5について使用者の体格に応じて2つのタイプを用意した旨をカタログ10 やウェブサイトに明記した。そして,被告製品3は,レギュラータイプ及びショートタイプにそれぞれ対応した長さの異なる2種類のヘッドフレーム及びフットフレームを交換装着可能に構成されているところ,上記の業者者等の認識やカタログの記載内容等に照らせば,その目的が使用者の体格に対応するためであることは明らかである。したがって,被告製品3は,使用者15 の体格に対応させるべく足側フレームを置き換え可能に構成したものであり,構成要件1−1B及び1−2Bを充足し,また,構成要件1−1A,1−1C,1−2A及び1−2Cも充足するから,本件発明1−1及び1−2の技術的範囲に属する。
また,被告製品5は,レギュラータイプ及びショートタイプにそれぞれ対20 応した長さの異なる2種類のヘッドフレーム及びフットフレーム等を交換装着可能に構成されており,カタログやウェブサイトで上記のように紹介されていることから,上記のように構成されている目的が使用者の体格に対応するためであることは明らかである。したがって,被告製品5は,使用者の体格に対応して足側フレームを交換装着可能に構成されたもので,構成要件25 1−1B及び1−2Bを充足し,また,構成要件1−1A,1−1C,1−2A及び1−2Cも充足するから,本件発明1−1及び1−2の技術的範囲19に属する。
イ 本件発明1の特許請求の範囲の記載は,機能的,抽象的な記載ではない。
本件発明1の奏する作用効果は,長さの異なるフレームに交換することによって得られ,交換装着用のフレームを取り付ける機構の差異によって影響を5 受けるものではなく,当業者は公知技術等を参照しつつ適宜その構成を工夫すれば足りるから,構成要件1−1Bの「置き換え可能」及び構成要件1−2Bの「交換装着可能」という文言は,発明に係る物の構造を十分に具体的に特定している。また,外観上の課題についても,足側床部に延長用床部を突設するという手法では延長用床部に対応するフレームを欠き,延長用床部10 がはみ出しているように見えるという従来技術における課題が,フレーム自体を交換するという本件発明1において開示された構成により解決されていることは当業者に明らかである。
仮に本件発明1を限定解釈する必要があるとしても,同じ外観で異なる長さのフレームを用意し,これらを交換可能とした構成であれば本件発明1の15 課題を解決することが可能であるから,構成要件1−1Bを「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を『同じ外観で』異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成した」と読み替え,構成要件1−2Bを「床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,『同じ外観で』異なった寸法20 規格のものに,交換装着可能に構成した」と読み替えれば足りる。そして,被告製品3及び5は,長さ以外の点で外観が同じレギュラータイプ及びショートタイプにそれぞれ対応したフレームが用意されているから,構成要件1−1B及び1−2Bを充足する。
(被告の主張)25 ア 被告製品3及び5は,構成要件1−1B及び1−2Bを充足しない。
被告は,被告製品3及び5について,サイズの異なる組立式のベッド2種20類をそれぞれ別製品として販売しているにすぎず,被告製品3及び5は本件発明1が意味するところの「置き換え可能」又は「交換装着可能」な構成を具備していない。
また,被告製品3及び5についてレギュラータイプの他にショートタイプ5 が用意されているのは,専ら部屋の大きさに対応するためであって,使用者の体格に対応するためではない。なお,通常より身長が低い使用者については,その大腿部の長さに合わせて床板の長さを変更する必要があるとしても,ベッドフレームを短いものにする必要は全くないのであり,本件発明1における「体格に対応させる」とは,本件明細書1の記載に照らしても,通常よ10 り身長の高い使用者に適合させるために通常のサイズのフレームを長いものに置き換える構成を意味し,被告製品のようにレギュラーサイズからショートサイズに変更する構成は含まれない。被告は,被告製品3については,当初レギュラータイプしか製造,販売していなかったものの,省スペース化の需要に応えるために,平成21年からショートタイプを製造,販売するこ15 ととなった。そして,現に,被告製品3のカタログには,身長に適合するためにショートタイプを用意しているかのような記載はどこにもない。また,被告製品5のカタログにそのような記載があったとしても,平成27年8月までの被告製品5のカタログ等の記載は不正確であったにすぎない。
イ 本件特許1の請求項1及び2の特許請求の範囲の記載は,解決しようとす20 る課題や目的をそのまま記載したものにすぎず,極めて機能的,抽象的で,交換装着用のフレームをメインフレームと結合する具体的な機構の構成や,延長用床部がはみ出ている等の外観上の課題を解決する具体的な構成が何ら明らかにされていない。そして,本件発明1は,本件特許1の請求項3及び本件明細書1の記載において開示された構成を意味するものと限定解釈25 され,具体的には,本件発明1−1は,「ベッド等において,「」『延長用床部に相当するマットレス保持枠を,ギャッチ操作可能な足側床板に突設し, 」』21「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,「」『足側又は頭側フレームの先端に係止部を1箇所設け,」『中間部フレームに,この係』「止部を係止させるためのピンを一箇所設け,」』「『足側フレーム又は頭側フレームを,中間部フレームに,床板幅方向外側から挟み込むようにして係止さ5 せ,これらをボルトで1箇所螺着させて固定する手段によって,」』「フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成した」「ことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。」と読み替えられ,本件発明1−2は,「ベッド等において,「」『延長用床部に相当するマットレス保持枠を,ギャッチ操作可能な足側床板に突設し,」』「床板を支えるフレー10 ムのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,」「『足側フレームの先端に係止部を1箇所設け,」『中間部フレームにこの』「係止部を係止させるためのピンを一箇所設け,」『足側フレームを,中間部』「フレームに,床板幅方向外側から挟み込むようにして係止させ,これらをボルトで1箇所螺着させて固定する手段によって,」』「異なった寸法規格のも15 のに,交換装着可能に構成した」「ことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造。」と読み替えられる。
そして,被告製品3及び5は,いずれも上記の限定解釈によって定められる構成要件を充足しない。すなわち,被告製品3は,フレームの長さが変更されたことに対応して床板を延長する際に床板全体を交換する構成となっ20 ており,延長用床部に相当するマットレス保持枠をギャッチ操作可能な足側床板に突設する構成となっておらず,ヘッドフレーム及びフットフレームとセンターフレームの接合方法が,ヘッドフレーム及びフットフレームの先端をセンターフレームに設けたキャップで受け止める構成となっており,ヘッドフレーム及びフットフレームに設けた係止部とセンターフレームに設け25 たピンによる係止の構成を採用していない。また,被告製品5は,フレームの長さが変更されたことに対応して床板を延長する際に床板全体を交換す22る構成となっており,延長用床部に相当するマットレス保持枠をギャッチ操作可能な足側床板に突設する構成となっていない。
? 争点1−2(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)について5 (被告の主張)本件特許1には,次のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア 無効理由1−1(マッケ1120からの新規性欠如)本件発明1−1及び1−2は,マッケ1120に係る発明と同一である。
10 マッケ1120カタログによれば,マッケ1120は,「患者を乗せる手術用寝台において,」「フレームに相当するレールに載置した背板上部(頭板),背板下部,座板,上部足板及び下部足板からなる床板について,背板上部に延長用頭板を取り付けること,背板下部と座板の間に補助部材を取り付けて背板側を長くすること,座板と上部足板の間に補助部材を取り付けて足板側15 を長くすること,背板の代わりに短い背板を取り付けること,背板と足板を反対に取り付けること,更にその上で足板を外して短い背板を取り付けること等を可能に構成した」ものとなっている。このうち,延長用頭板や補助部材,長さの異なる背板の取付け等部材の置換え又は交換装着が可能に構成された点は,マッケ1120カタログ等の記載内容から,その目的が患者の体20 格に対応することにあることは明らかであり,本件発明1−1及び1−2の構成は,マッケ1120の構成と一致する。
イ 無効理由1−2(マッケ1120からの進歩性欠如)使用者の体格に対応するために足側フレーム等について同種の異なるサイズのフレームを用意して交換装着可能とするという本件発明1−1及び25 1−2の構成をマッケ1120が備えておらず,その点で本件発明1−1及び1−2とマッケ1120との間に相違点があったとしても,その違いは,23技術の具体的な適用に伴う設計変更事項にすぎず,当業者は,上記相違点について容易に想到し得たから,本件発明1−1及び1−2は進歩性を欠く。
ウ 無効理由1−3(キューマアウラベッドからの新規性欠如)本件発明1−1及び1−2は,キューマアウラベッドに係る発明と同一で5 ある。
キューマアウラベッドは,「ベッド等において,「床板を支えるフレーム」が,頭側フレーム,足側フレーム,中間部フレームからなり,各フレームの先端に係止部を1箇所設け,中間部フレームに,この係止部を係止させるためのピンを1箇所設け,アクセサリフレームに形成したボルト穴を介して挿10 通した固定ボルトを螺着するための螺子穴を設けた構成」となっており,本件明細書1に記載されたものと同一のフレームの結合に係る機構を備え,物理的に「異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能」又は「異なった寸法規格のものに,交換装着可能」な構成を具備している。本件特許1の出願日前はキューマアウラベッドには1種類の大きさしかなかったが,仮に,15 キューマアウラベッドが,上記のフレーム構造を「使用者の体格に対応させるべく」採用し,「異なった交換装着用フレーム」又は「異なった寸法規格」を用意したものでなかったとしても,それは新規性を肯定する理由として十分なものではない。
したがって,本件発明1−1及び1−2の構成は,キューマアウラベッド20 の構成と一致する。
エ 無効理由1−4(キューマアウラベッドからの進歩性欠如)キューマアウラベッドのフレーム構造が,「使用者の体格に対応させるべく」「異なった交換装着用フレーム」又は「異なった寸法規格」を用意した,という本件発明1−1及び1−2の構成を有していなかったとしても,本件25 特許1の出願当時,当業者は,キューマアウラベッドにマッケ1120を組み合わせることにより,上記相違点について容易に想到し得たから,本件発24明1−1及び1−2は進歩性を欠く。
すなわち,キューマアウラベッドに接する当業者は,本件特許1の出願当時,使用者の体格に応じてフレーム等の長さを変更するという一般的な課題を等しく抱えており,他方,マッケ1120は,使用者の体格に応じてフレ5 ームの一部を異なった長さのフレームに交換装着することが可能な構成を開示していた。介護用ベッドと手術台には,医療現場において使用者を横たわらせるための場所として技術分野の関連性があり,キューマアウラベッド及びマッケ1120には,1つの規格で様々な体格の使用者に対応することができる経済合理性の高い構成のベッド等を開発するという課題や,複数の10 異なる長さのフレームを選択し装着してベッドの全長を調整することを可能にするという作用及び機能を,本件発明1−1及び1−2と共通して有していること等に照らせば,キューマアウラベッドには,マッケ1120を組み合わせることにより,本件発明1−1及び1−2を想到する動機付けないし示唆が存在した。
15 オ 無効理由1−5(サポート要件違反)当業者は,本件明細書1の記載により本件発明1−1及び1−2の課題を解決できると認識できるとはいえず,また,出願当時の技術常識に照らし上記課題を解決できると認識できるともいえないから,本件発明1−1及び1−2は,本件明細書1の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえな20 い。
すなわち,本件明細書1の記載では,従来技術においてはボードを取り付ける目板を使用して足側床部に延長用床部を継ぎ足すことにより生ずる外観上の問題があったところ,本件発明1によってこれを解決したとされている。しかし,床板について何らかの措置を講じなければ,ボードと床板との25 間の隙間が生じマットレスの先端部が落ち込むため,外観上の問題は何ら解消されない。従来技術における外観上の問題は,フレームの構成ではなくフ25レームにより支持される床板の構成に起因するものであり,本件特許1の請求項3に係る発明に開示された床板を延長する構成によって解消される。請求項1及び2には,延長用床部の取付けに関係する技術的事項は何も記載されておらず,フレームの構成を記載しているにすぎないから,本件明細書15 の記載や出願当時の技術常識によって補足しても,上記外観上の問題がどのように改善されたかを当業者は認識することができない。
(原告の主張)ア 無効理由1−1について本件発明1−1及び1−2には,マッケ1120に係る発明との間に相違10 点が存在し,新規性を欠くとはいえない。
すなわち,マッケ1120においては,頭板や補助部材を継ぎ足す方式が開示されているものの,フレームを置換え又は交換装着可能な構成ではないのに対し,本件発明1−1及び1−2においては,部材を追加するのではなく,あらかじめ長さの異なる交換装着用フレームを用意しておき,使用者の15 体格に対応する際に,対応した長さの交換装着用フレームを選択してこれを交換する。マッケ1120においては「足側」について継ぎ足す方式は開示されていないのに対し,本件発明1−2においては,「足側」フレームを交換装着する。
さらに,マッケ1120においては,フレームの一部を置換可能とする構20 成は開示されているが,いずれも手術部位等に応じて交換するために用意されているもので,利用者の体格に応じるための構成ではない。
イ 無効理由1−2について上記アの各相違点について,継足式を置換式にすることや,手術部位等に応じた手術台の置換を体格に応じた介護用ベッドの置換に適用することが,25 設計変更により可能になる理由はなく,当業者が容易に本件発明1−1及び1−2の構成に想到し得たとはいえない。本件発明1−1及び1−2が進歩26性を欠くとはいえない。
ウ 無効理由1−3について本件発明1−1及び1−2には,キューマアウラベッドとの間に相違点が存在し,新規性を欠くとはいえない。
5 すなわち,本件特許1の出願当時,キューマアウラベッドには1種類の大きさしかなく,異なる寸法規格に対応するための交換用の延長用フレームはなかったから,キューマアウラベッドは,「使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能」(構成要件1−1B)又は「使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のもの10 に,交換装着可能」(構成要件1−2B)という構成を具備しておらず,本件発明1−1及び1−2は,キューマアウラベッドと相違している。
エ 無効理由1−4について上記ウの相違点について,当業者が容易に想到し得たとはいえず,本件発明1−1及び1−2が進歩性を欠くとはいえない。
15 すなわち,マッケ1120において開示されたのは手術術部位等に応じた手術台の置換の技術であり,介護用ベッドであるキューマアウラベッドとは,根本的な思想,用途,機能,技術分野が異なる上,キューマアウラベッドは本件特許1の出願当時には1種類の大きさしか存在せず,当業者がこれに接したとしても「使用者の体格に応じて」ベッドフレームを「置き換え」又は20 「交換装着」可能にするという解決課題を読み取ることはできず,当業者がキューマアウラベッドにマッケ1120を組み合わせる動機付けは存在しない。仮に,キューマアウラベッドのベッドフレームの長さを変更しようと考えた当業者がマッケ1120に接したとしても,使用者の体格に対応するための構成としては継足式の構成を採用とすると考えられ,当業者が頭板や25 背板を置き換え可能な構成に着目するとは考え難い。
オ 無効理由1−5について27従来技術においては,延長用床部を足側床部に取り付けたため,延長した床部に対応するフレームを欠くとともに,延長用床部がその他のフレームに比してはみ出ていることによって外観上の問題が生じていたものの,本件発明1においては,フレーム自体を交換するため,延長した床部に対応するフ5 レームを具備し,かつ,フレームからはみ出す床部が存在しないため,従来技術に比して外観が向上する。したがって,当業者は,本件明細書1の記載により課題を解決できると認識できるから,本件発明1の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反しない。
? 争点1−3(本件特許権1の侵害行為について被告に過失がなかったか。)10 について(被告の主張)本件特許権1の侵害行為について被告には過失がなかった。
被告は,本件特許権1の存在を知らなかったから侵害行為について認識がなかったし,被告製品3及び5が本件発明1の技術的範囲に属すると認識する余15 地はなかったから,侵害行為について認識し得なかったことについて相当な理由がある。
(原告の主張)否認する。
? 争点1−4(損害の発生及び額,ないし,被告製品3に係る不当利得の発生20 及び額)について(原告の主張)原告は,被告による被告製品3及び5の販売により損害を受けたところ,被告は,被告製品3及び5の販売により利益を受けており,このうちの限界利益につき本件発明1の貢献の程度を考慮すれば,別紙「原告の主張」の「被告製25 品3」及び「被告製品5」の各「小計」欄記載の額が原告の損害額であると推定される(特許法102条2項) また,。 原告が本訴追行に要した弁護士費用の28うち上記の各「弁護士費用」欄記載の額は,被告の各不法行為相当因果関係があるものとして被告が負担すべきである。
なお,被告は被告製品3の販売によって法律上の原因なく利益を得,原告は損失を被り,同不当利得額は,被告製品3の売上額の10%相当額である。
5 ア 被告製品の売上高について被告製品3及び5の販売により被告が受けた利益には,ベッド本体並びに交換用パーツ及び交換用パーツ単体の販売の全部に加え,少なくともベッド本体と同時に販売されたサイドレールの販売に係る利益が含まれるというべきである。
10 (ア) ベッド本体について本件発明1は,被告製品3及び5において,必要に応じてベッドの大きさをレギュラータイプ又はショートタイプに交換可能にするものであり,いずれのタイプも本件発明1の技術的範囲に属するから,原告は被告製品3及び5のレギュラータイプ及びショートタイプの販売全部について損15 害を受けたものであり,本件特許権1の侵害は,ベッド本体と交換用パーツを同時に販売した場合に限られない。
被告は,被告製品3及び5について,レギュラータイプとショートタイプの2種類があり,部材の交換が可能である旨取扱説明書やホームページで紹介している。被告製品の主たる顧客はレンタル卸業者及び福祉用具貸20 与事業者であるところ,これらの顧客は,レギュラータイプ及びショートタイプが交換可能であることにより,保管すべき部材を少なくすることができ保管費用を節約できること等から,上記の交換可能であるという構成を重視して製品を購入し,また,レギュラータイプとショートタイプの間だけでなく同じタイプの間においても部材の交換がされることを前提と25 して,部材ごとに保管,管理を行っているから,ベッド本体の販売全部について本件発明1の実施の効果が影響しており,その貢献度は極めて高い。
29原告の調査結果によっても,交換可能な構成は,事業者の間で高く評価されており,本件発明1は高い顧客誘引力を有し,購買動機を形成している。
(イ) 交換用パーツ及び交換用パーツ単体について被告製品3及び5の交換用パーツは,被告製品3及び5の専用品でそれ5 のみでは用をなさないものであり,ベッドの大きさを変更するために購入されていることは明らかであり,上記顧客の購入動機,保管,管理の在り方に照らし,原告はその販売について損害を受けた。
また,交換用パーツ単体についても,原告の調査の結果,事業者はベッド利用者の体格に応じレギュラータイプとショートタイプの交換をする10 ためにこれを購入しており,交換用パーツ同様,原告はその販売について損害を受けた。なお,原告の経験に照らせば,交換用パーツ単体の販売数は,交換用パーツ(一式)の販売数の約6倍である。
(ウ) サイドレールについて被告の販売する付属品のうちサイドレールについて,ベッド本体を購入15 せずにこれを購入する者はおらず,また,介護用ベッドについては転落防止等の観点から専用のサイドレールの購入は通例となっている。このように,サイドレールは,被告製品3及び5の販売に付随して販売されているのであり,被告はサイドレール単体の販売についても利益を受け,原告は損害を受けているといえ,少なくとも,ベッド本体と同時にサイドレール20 が販売された場合には,被告は本件発明1−1及び1−2の実施によって利益を受け,他方,原告は損害を受けている。そして,ベッド本体と同時にサイドレールが販売される場合は,原告の経験に照らせばベッド本体の販売台数の75%であるから,同数についてサイドレールが販売されたものと推測され,原告はその販売について損害を受けている。
25 (エ) 値引き,歩引きについて被告製品の売上額について,値引き及び歩引きは主力かつ人気商品であ30るベッド本体についてされるのではなく,付属品等をベッド本体と抱き合わせて販売した上で付属品等から値引くのが通常である。そうすると,値引き及び歩引きの額を,単純に,商品の販売額で按分するのは相当ではない。
5 イ 控除すべき経費について限界利益の算定に当たり控除すべき経費は,売上高や生産高に比例して発生する費用,すなわち,原価,仕入費用,荷造包装費及び運送費に限られるというべきである。なお,原価について,被告は,被告製品を100%子会社であるプラッツベトナムから仕入れており,100%子会社の利益は配当10 等を通じて親会社が享受できるから,控除すべき原価は仕入価格からプラッツベトナムの内部利益を控除した額になる。
限界利益の算定に当たって被告が主張する費用のうち,金型費,試験研究費,商品開発部の旅費交通費,JIS取得費用及び広告宣伝費は,いずれも売上高や生産高に比例して発生する費用ではなく固定費であり,控除すべき15 でない。なお,上記試験研究費には,被告製品の開発に直接関係がない基礎研究などの費用も含まれており,また,旅費交通費は,多くは通常の出勤手当であって被告製品の開発とは無関係に当該期間に発生するものである。
さらに,人件費(物流部門)は,自社従業員が物流業務を行っている場合には,販売の多寡にかかわらず固定的に発生するものであるし,品質保証費20 (アフターサービス費)及び人件費(品質部門)も,大部分は固定的に発生するものであるから,これらを控除すべきではない。
また,原告の利益率に照らせば,交換用パーツ及び交換用パーツ単体の限界利益率はベッド本体の限界利益率より15%高い。
ウ 推定覆滅事由について25 被告の顧客がベッドのタイプを交換する場合が実際にも相当程度あること等に照らせば,被告製品3及び5の販売に本件発明1以外の技術の影響が31あり,同販売に係る被告の利益額が原告の損害額であるとの推定が一部覆滅されるとしても,その程度は,被告製品3について9割,被告製品5について7割を超えるものではない。なお,仮に,顧客が本件発明1の実施に係る機能を現実に利用しなかったとしても,顧客が交換可能な構成を高く評価し5 ていることを踏まえれば,本件発明1の実施が被告製品3及び5の販売に寄与していないとはいえず,その利益全額について原告の損害額であるとの推定が覆滅されることにはなり得ない。
エ 小括以上によれば,被告製品3及び5のベッド本体,交換用パーツ,交換用パ10 ーツ単体の販売に係る損害額は,別紙「原告の主張」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載の額となる。また,ベッド本体と同時に販売された場合のサイドレールの販売に係る損害額は, 「原告の主張」 「被別紙 の告製品3」及び「被告製品5」の各「サイドレールα」欄及び「サイドレールβ」欄記載の額の合計であり,このうちベッド本体及び交換用パーツと同15 時にサイドレールを販売した場合の損害額が各「サイドレールα」欄記載の額である。
(被告の主張)否認ないし争う。
そもそも,被告による被告製品3及び5の販売がなかったならば原告が利益20 を得られたであろうという事情が存在するとはいえない。また,仮にそうでないとしても,被告の利益額が原告の損害額であるとの推定を覆滅させる事情がある。
ア 原告の損害の不発生について被告製品3及び5の販売によって原告が損害を受けたとはいえない。
25 被告製品3及び5において,使用者の体格に対応させるという効果は,電動ベッドにおいて背上げ時に利用者の膝の位置とベッドの床板の屈曲する32位置を適合させる機能(以下「膝フィッティング機能」という。)によって実現されており,本件発明1の実施は何ら寄与していない。
特に,被告製品3は,当初はレギュラータイプしか販売しておらず,カタログにおいても,タイプ変更が可能であることについての記載は一切なく,5 ショートタイプについて使用者の体格に対応するという目的には言及しておらず,使用者の体格に対応するという効果は全く生じていないから,本件発明1の実施は売上げに全く反映されていない。被告製品5についても,使用者の体格に対応してタイプの選択が可能であることは製品の特徴の1つにすぎず,カタログにおいても大きく触れられていないことから,本件発明10 1の実施は販売に寄与していない。
被告製品の顧客は,消費税の免除を受けるためベッド全体を購入する動機を有することに加え,専ら設置場所の広さによってレギュラータイプとショートタイプのいずれを選択するかを決定するところ,いずれかのタイプのベッドを一旦購入した後に,更に相当な費用をかけて,かつ,交換用パーツ等15 の保管場所を確保してまで他方のタイプへの交換用パーツを購入することはない。実際,被告の調査結果によれば,上記のような購入がされたのはごく限られた場合にすぎない。特に,被告製品3については,ショートタイプの販売台数は全体の1%にも満たない上,ショートタイプへの交換用パーツも4台分しか販売されていない。
20 イ 被告製品の売上高について仮に,被告製品3及び5の販売による被告の利益額が原告の損害額であると推定される場合があるとしても,ベッド本体及び交換用パーツが同時に販売された場合のこれらの販売並びにこれらと同時に販売された場合のサイドレールの販売に係る被告の利益に限られる。
25 (ア) ベッド本体,交換用パーツ及び交換用パーツ単体について上記のとおり被告製品の顧客が異なるタイプへの変更を想定せずにベ33ッドを購入していることに照らせば,被告が被告製品3及び5の販売において本件発明1の実施によって利益を得るのは,ベッド本体と交換用パーツを同時に販売した場合に限られ,その余の販売によっては本件発明1の実施の作用効果は何ら生じず,その利益額が原告の損害額であるとはいえ5 ない。
原告が主張する保管費用の節約は解決すべき課題として何ら想定されておらず,また,分解できる製品において部材ごとに保管ができることは当然であり,被告製品3及び5を購入した顧客が部材ごとに保管,管理していたとしても,本件発明1の実施とは何らの関係もない。また,原告は,10 無効理由1−3及び1−4(争点1−2)に関して,本件特許1の出願当時,キューマアウラベッドに1種類の大きさしかなく交換用のフレームが用意されていなかったことをもって,本件発明1と相違しているなどと主張していたところ,ベッド本体と同時に交換用パーツが販売されていない場合をも本件特許権1の侵害行為に当たると主張するのは矛盾であり,禁15 反言により許されない。
そして,被告が本件発明1の実施によって利益を得たといえるのは,ベッド本体が販売され更にタイプ変更目的で交換用パーツが販売された場合(便宜上ベッド本体と交換用パーツが同時に販売されていない場合も含む。)を前提にしたとしても,被告製品3のレギュラータイプの販売のう20 ち0.004%,同ショートタイプの販売のうち2.73%,被告製品5のレギュラータイプの販売のうち0.07%,同ショートタイプの販売のうち0.51%である。
(イ) サイドレールについて付属品のうちサイドレールの販売によって被告が得た利益は,本件製品25 3及び5の販売による被告の利益に含まれない。すなわち,被告の販売する付属品のうちサイドレールは,ベッド本体とは別の製品で2種類あり,34被告製品3及び5のほか,被告製品4及び6,ミオレットV,プリモレット,アーデル等の製品に対応するものであり,上記のどの製品に使用するものとして売り上げられたのかを特定することはできないし,被告製品3及び5とは無関係の売上げである可能性もあるものであって,本件発明15 の実施とは無関係に販売されている。顧客は,そもそもベッド本体を購入するに当たりサイドレールを購入する必要はないし,購入したサイドレールを複数の製品間で使い回すことも可能である。実際,ベッド本体とサイドレールを同時に購入しない例は常態的に存在する。
仮にそうでないとしても,被告がサイドレールの販売において本件発明10 1の実施によって利益を得るのは,被告製品3及び5のベッド本体及び交換用パーツを販売すると同時にサイドレールを販売した場合に限られ,その余の販売に係る利益額が原告の損害額であるとはいえない。
(ウ) 値引き,歩引きについて被告製品の売上額について,被告においては取引ごとに売上額の総額か15 ら値引き及び歩引きを行っていることから,売上額の算定に当たっては,値引き及び歩引きの額を商品の販売額により按分するのが相当である。
ウ 控除すべき経費について一般に,限界利益とは,製品の売上額から変動費及び直接(個別)固定費を控除した額をいい,控除される経費には,原価,仕入費用,荷造包装費及20 び運送費のほか,以下のものを含む。なお,原価について,被告が子会社であるプラッツベトナムから被告製品を仕入れているからといって,控除すべき原価から当事者ではない上に外国法人であるプラッツベトナムの内部利益を控除すべきであるということにはならない。ベトナムとの取引に関しては移転価格税制が適用されることからも被告が仕入価格を不当に高額に設25 定することはできない。
金型費(被告製品の製造に金型は必要不可欠である。,試験研究費,商品)35開発部の旅費交通費,JIS取得費用及び宣伝広告費は,いずれも製品を売り上げるために直接支出した費用であり控除すべき直接(個別)固定費である。このうち,商品開発部の旅費交通費について,商品開発部の従業員は,各被告製品の少なくとも5か月前から発売後2か月までの間,当該被告製品5 の開発のみに従事していたから,同期間に商品開発部が支出した旅費交通費は,当該被告製品開発のための直接の費用である。
また,人件費(物流関係),品質保証費(アフターサービス費)及び人件費(品質部門)も,介護用ベッドの製造,販売には不可欠であり,売上げの割合に応じて控除すべき変動費又は直接(個別)固定費となる。
10 エ 推定覆滅事由について上記のとおり,本件発明1の実施は基本的には被告製品3及び5に寄与していないのであるから,前記の被告が本件発明1の実施によって利益を得られる場合があるとしても,本件発明1の実施が販売に寄与した程度は,被告製品3について0%,被告製品5について2.86%であり,その余の利益15 については,本件特許権1の侵害によって原告が受けた損害との間で因果関係がなく,特許法102条2項の推定が覆滅され,結局,原告が受けた損害額は,被告製品3について0円,被告製品5について最大で4万0292円にすぎない。
? 争点1−5(原告が平成21年11月に被告製品3の販売による損害の発生20 を知ったか。)について(被告の主張)被告製品3の構成は外観から極めて容易に認識可能であり,原告には展示会等被告製品3の構成を認識する機会が多数あったから,原告は,被告が被告製品3のショートタイプの販売を開始した平成21年11月には,被告製品3の25 販売及び損害の発生を知った。
したがって,本件訴え提起の日の3年前の平成26年7月19日以前の被告36製品3の販売に係る損害賠償請求権については,消滅時効が完成している。
被告は,平成31年4月19日の本件の弁論準備手続期日において,平成26年7月19日以前に発生した被告製品3の販売等に係る原告の被告に対する損害賠償請求債権について,消滅時効援用する旨の意思表示をした。
5 (原告の主張)原告は,被告が本件特許権3を侵害する被告製品6を販売するようであるとの情報を得て,被告の他の製品も含めて調査した結果,平成28年11月頃,被告製品3の販売による本件特許権1の侵害及び損害の発生を知った。
? 争点2−1(被告製品4が本件発明2の技術的範囲に属するか。)について10 (原告の主張)被告製品4は,本件発明2の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属することは明らかである。
本件特許2の特許請求の範囲の記載は,具体的な構成を特定しており,機能的,抽象的ではなく,仮にそうでないとしても,サポート要件を充足している15 から,これを限定解釈する必要はない。
(被告の主張)本件特許2の特許請求の範囲の記載は,きわめて機能的,抽象的で,係合手段を構成する突起及び係合部の位置や形状,係合と螺合の位置を複数構成する具体的な態様が何ら明らかにされていない。
20 もっとも,本件明細書2の記載を考慮すれば,本件発明2−1及び2−5は,本件明細書2において開示された構成,すなわち,突起とスリット形状の係合部の構成のみ,また,一方の部材に突起を1つ及び他方の部材に係合部を複数設ける構成,溝形部材の先端に突起を1つ及び棒状部材に係合部を複数設ける構成,棒状部材に突起を1つ及び溝形部材に係合部を複数設ける構成のみを意25 味すると限定解釈される。したがって,本件発明2−1は,「ベッドフレーム側の棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能にする構成とし,「前記取」37付品支持部材には前記棒状部材を係合可能な溝形部材を突設し,「」『前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する溝形部材の底面に突起1個所と,棒状部材に複数個所の係合部(スリット形状)を設けると共に,」『又は,これに代えて』前記溝形部材を前記棒状』「5 部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する『棒状部材に突起1個所と,溝形部材の底面に複数個所の係合部(スリット形状) を設け』ると共に,」「前記係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付孔を設け,「係合手段と螺合」手段は,係合と螺合の位置を,棒状部材の長さ方向に複数構成した」「ことを特10 徴とするベッドにおける取付品支持位置可変機構。」と読み替えられ,本件発明2−5は,「係合手段は,棒状部材側に設けた突起と,溝形部材の長さ方向に複数設けた係合部 (スリット) から構成される」『 』 「ことを特徴とする請求項1に記載のベッドにおける取付品支持位置可変機構。」と読み替えられる。
被告製品4は,上記の限定解釈によって加わった構成要件を充足しない。す15 なわち,被告製品4は,係合手段が複数の係合軸と1つの係合部(フック)で構成されており,また,係合軸が棒状部材の側面に,係合軸と係合する係合部(フック)が溝形部材の側面に設けられ,溝形部材が棒状部材の側面に設けた係合軸と衝突するのを回避すべく溝形部材にU字型の大きな切込み(係合部ではない。)を入れるという本件明細書2に開示されていない構成を採用してい20 る。
そして,被告製品4は,本件発明2−1及び2−5の構成要件を充足しない以上,構成要件2−6Bを充足せず,また,本件発明2−1,2−5及び2−6の構成要件を充足しない以上,構成要件2−7Bを充足しない。
したがって,被告製品4は,本件発明2の技術的範囲に属しない。
25 ? 争点2−2(本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)について38(被告の主張)本件特許2には,次のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア 無効理由2−1(米国特許発明1からの新規性欠如)5 本件発明2−1及び2−5から2−7は,米国特許発明1と同一である。
すなわち,乙15公報の特許請求の範囲及び明細書には,ベッドフレームである第一の細長い要素の長手方向に第二の細長い要素を着脱可能に支持する構成とし,これらの細長い要素を係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する突起と係合部を設けると共に,前記係合手段が係合状10 態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部とねじを貫通させる孔を設け,係合と螺合の位置が細長い要素の長さ方向に複数構成することにより,ベッドにおける幅又は長さの可変機構の発明である米国特許発明1が記載されている。そして,「ベッドフレーム」の一般の語義及び用例に照らし,本件発明2にいう取付品支持部材及び溝形部材はベッドフレームを15 構成し,その一部である(本件明細書2にもこれを前提とした記載がある。)から,本件発明2の構成は,米国特許発明1の構成と一致する。米国特許発明1におけるベッドフレームには,ボード等取付品を支持する機能を有することが当然に想定されているから,本件発明2における取付品支持部材はこれに含まれるといえ,この取付品支持部材に相当するフレームに直角に固定20 された別のフレームは,溝形であっても良いこととされているから,本件発明2における溝形部材はこれに含まれる。そして,この溝形部材に相当するフレームには,本件発明2における棒状部材に相当する別のフレームを係合,螺合することができ,その位置は可変である。したがって,本件発明2の構成は,米国特許発明1と同一である。
25 イ 無効理由2−2(米国特許発明1からの進歩性欠如)本件発明2−1及び2−5から2−7と,米国特許発明1との間で相違点39があるとすれば,ベッドフレームを構成する部材にベッドフレームを構成しない取付品を着脱式に支持できるようにする構成が開示されているか否かという点である。しかし,ベッドフレームにボード等の部材を取り付けることは通常想定されており,上記の点は,出願当時,介護用ベッド業界におい5 て周知の構成であったから設計変更にすぎないし,仮にそうでないとしても,FB730/720は,ベッドフレームの一部である着脱可能な取付品支持部材にボード等の取付品を取り付ける構成,ベッドフレームに取付品支持部材を着脱する位置を複数設けることにより取付品支持位置を可変とし,ベッドの長さを変更することができる構成となっており,FB730/720に10 おいて開示され公然実施されていた。したがって,これと米国特許発明1を組み合わせることにより上記相違点は解消され,当業者は,上記相違点に係る本件発明2−1及び2−5から2−7の構成に容易に想到し得たものであり,本件発明2−1及び2−5から2−7は進歩性を欠く。
すなわち,米国特許発明1やFB730/720において開示された構成15 は,いずれも,組立式ベッドにおいて,その大きさを変更するために交換用の部材が多く必要になるという課題を,部材を一部共通化することにより解決するものであり,技術分野,課題,作用及び機能を本件発明2と共通して有していること等に照らせば,米国特許発明1には,FB730/720を組み合わせることにより,本件発明2を想到する動機付けないし示唆が存在20 した。
ウ 無効理由2−3(サポート要件違反)当業者は,本件明細書2の記載により本件発明2−1の課題を解決できると認識できるとはいえず,また,出願当時の技術常識に照らしても上記課題を解決できると認識できるともいえないから,本件発明2−1は,本件明細25 書2の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
すなわち,本件特許2の請求項1の記載からは,本件明細書2に記載され40ていない構成,例えば,突起が複数で係合部が1つしかない構成や係合手段の位置が溝形部材の側面に設けられた構成,更にこれらの構成を組み合わせた構成等幅広く考え得るが,これらの構成はそのままでは突起と他方の部材が衝突するなど係合が不可能であるにもかかわらず,本件明細書2は構成を5 実施するために必要な加工については何ら触れておらず,出願当時の技術常識によって補足しても,本件発明2−1の課題を解決することができると認識することはできない。
(原告の主張)ア 無効理由2−1について10 本件発明2−1には,米国特許発明1との間に相違点が存在し,本件発明2−1が新規性を欠くとはいえない。
米国特許発明1は,ベッドフレームをスライド式に延長可能としたものである。これに対し,本件発明2−1は,米国特許発明1とは技術思想を根本的に異にし,ベッドフレームとは別の部材である取付品支持部材の構造及び15 取付方法を工夫したベッドにおける取付品支持位置可変機構に係るものであり,ベッドフレームに着脱可能な取付品支持部材及びこれに突設する溝形部材,ベッドフレームと取付品支持部材とを係合,螺合する構成,取付品支持位置可変機構を有する構成を有する。
イ 無効理由2−2について20 前記アの各相違点について,当業者が容易に想到し得たとはいえず,本件発明2−1及び2−5から2−7が進歩性を欠くとはいえない。
すなわち,従来技術やFB730/720においては,ベッドフレームとは別に取付品支持部材を設けることは開示されておらず,米国特許発明1にFB730/720を組み合わせたとしても,上記各相違点は解消されない。
25 また,米国特許発明1とFB730/720は技術分野は同一ではあるものの,乙15公報にはベッドの大きさを変更するために交換用の部材が多く必41要になるという課題は示されておらず,FB730/720から同課題を読み取ることは困難であるし,部材を一部共通化するといっても,その具体的適用場面,手段は異なっており,当業者には米国特許発明1にFB730/720を組み合わせる動機付けは存在しない。
5 ウ 無効理由2−3について被告が主張するような本件明細書2に記載がない例についても,当業者は,出願時の技術常識に照らし,係合部(係合手段)を更に設けたり溝形部材の形状を変更したりすることにより,本件発明2−1の課題を解決できると認識できるから,本件特許2の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反し10 ない。
? 争点2−3(本件特許権2の侵害行為について被告に過失がなかったか。)について(被告の主張)本件特許権2の侵害行為について被告には過失がなかった。
15 被告は,本件特許権2の存在を知らなかったから侵害行為について認識がなかったし,被告製品4が本件発明2の技術的範囲に属すると認識する余地はなかったから,侵害行為について認識し得なかったことについて相当な理由がある。
(原告の主張)否認する。
20 ? 争点2−4(損害の発生及び額,ないし,不当利得の発生及び額)について(原告の主張)原告は,被告による被告製品4の販売により損害を受けたところ,被告は,被告製品4の販売により利益を受けており,このうちの限界利益につき本件特許発明2の貢献の程度を考慮すれば,別紙「原告の主張」の「被告製品4」の25 各「小計」欄記載の額が原告の受けた損害額であると推定される(特許法102条2項) また,。 原告が本訴追行に要した弁護士費用のうち上記の各「弁護士42費用」欄記載の額は,被告の不法行為相当因果関係があるものとして被告が負担すべきである。
なお,被告は被告製品4の販売によって法律上の原因なく利益を得,原告は損失を被り,同不当利得額は,被告製品4の売上額の10%相当額である。
5 具体的な主張は,以下のとおりであるが,争点1−4と共通し得る主張については,争点1−4における原告の主張と同じである。
ア 被告製品の売上高について被告製品4の販売により被告が受けた利益には,ベッド本体並びに交換用パーツの販売全部に加え,少なくともベッド本体と同時に販売されたサイド10 レールの販売に係る利益が含まれるというべきである。
(ア) ベッド本体について本件発明2は,取付品支持部材に係る発明であり,被告製品4は,タイプの別にかかわらず本件発明2の技術的範囲に属する構成を有しており,また,顧客らの購入動機,保管,管理の在り方に照らしても,原告は被告15 製品4のレギュラータイプ及びショートタイプの販売全部について損害を受けたものであり,本件特許権2の侵害は,ベッド本体を販売し更に交換用パーツを販売した場合に限られない。
(イ) 交換用パーツについて被告製品4の交換用パーツは,被告製品4の専用品でそれのみでは用を20 なさないものであり,顧客らの購入動機,保管,管理の在り方に照らし,原告はその販売について損害を受けた。
(ウ) サイドレールについてサイドレールは,被告製品4の販売に付随して販売されているのであるから,少なくとも,ベッド本体と同時にサイドレールが販売された場合に25 は,被告は本件発明2の実施によってサイドレールの販売について利益を受け,他方,原告は損害を受けている。
43イ 推定覆滅事由について被告製品4の販売に本件発明2以外の技術の影響があり,同販売に係る利益額が原告の損害額であるとの推定が一部覆滅されるとしても,その程度は7割を超えるものではない。なお,仮に,顧客が本件発明2の実施に係る機5 能を現実に利用しなかったとしても,本件発明2の実施が被告製品4の販売に一切寄与していないとはいえず,その利益全額について原告の損害額であるとの推定が覆滅されることにはなり得ない。
ウ 小括以上によれば,被告製品4のベッド本体,交換用パーツの販売に係る損害10 額は,別紙「原告の主張」の「被告製品4」の各当該欄記載となる。また,ベッド本体と同時にサイドレールが販売された場合のサイドレールの販売に係る損害額は,同「サイドレールα」欄及び同「サイドレールβ」欄記載の額の合計である。
(被告の主張)15 被告による被告製品4の販売がなかったならば原告が利益を受けたであろうという事情が存在するとはいえないが,仮にそうでないとしても,被告の利益額が原告の損害額であるとの推定を覆滅させる事情がある。
具体的な主張は,以下のとおりであるが,争点1−4と共通し得る主張については,争点1−4における被告の主張と同じである。
20 ア 原告の損害の不発生について被告製品4においては,カタログにレギュラーサイズをショートサイズに変更可能である旨の記載はあるものの,顧客が,レギュラータイプとショートタイプのいずれかのタイプのベッドを一旦購入した後に,更に費用をかけて交換用パーツを購入することはなく,実際に購入されたのはごく限られた25 場合にすぎない。本件発明2の実施によって得られる効果は,長短2種類の取付品支持部材を用意することによっても得ることができるところ,本件発44明2を実施することによって,逆に,製造,管理,購入費用は増大する。
イ 被告製品の売上高について仮に,被告製品4の販売による被告の利益額が原告の損害額であると推定される場合があり得るとしても,ベッド本体及び交換用パーツが同時に販売5 された場合のこれらの販売並びにこれらと同時に販売された場合のサイドレールの販売に係る被告の利益に限られる。
(ア) ベッド本体及び交換用パーツについてベッドの長さを変更することを目的としてベッド本体を購入する場合には交換用パーツの購入が不可避であるから,被告が,被告製品4の販売10 において本件発明2の実施によって利益を得るのは,ベッド本体と交換用パーツを同時に販売した場合に限られ,その余の販売による利益額が原告の損害額であるとはいえない。
この被告が本件発明2の実施によって利益を得る場合は,ベッド本体が販売され更にタイプ変更目的で交換用パーツが販売された場合(便宜上ベ15 ッド本体と交換用パーツが同時に販売されていない場合も含む。)を前提にしたとしても,被告製品4のレギュラータイプの販売のうち0.62%,同ショートタイプの販売のうち0.34%である。
(イ) サイドレールについてサイドレールの販売によって被告が得た利益は,本件製品4の販売によ20 る被告の利益に含まれない。仮にそうでないとしても,被告がサイドレールの販売において本件発明2の実施によって利益を得るのは,被告製品4のベッド本体及び交換用パーツの販売と同時にサイドレールを同時に販売した場合に限られ,その余の販売に係る利益額が原告の損害額であるとはいえない。
25 ウ 推定覆滅事由について被告製品4のパンフレットには「4つのポイント機構」が記載されていて,45これらの技術が販売の8割に貢献しており,この他にも8の機能が存在しているから,前記の被告が本件発明2の実施によって利益を得られる場合があるとしても,本件発明2の実施が販売に寄与した程度は上記8割を控除した2割の約8分の1の2.5%を超えず,その余の利益については,本件特許5 権2の侵害によって原告が受けた損害との間で因果関係がなく,特許法102条2項の推定が覆滅され,結局,原告が受けた損害額は最大でも13万4034円にすぎない。
? 争点2−5(原告が平成23年12月までに被告製品4の販売による損害の発生を知ったか。)について10 (被告の主張)被告製品4の構成は外観から極めて容易に認識可能であり,原告には展示会等被告製品4の構成を認識する機会が多数あったから,原告は,被告が被告製品4を展示会に出展した平成23年10月,遅くとも被告が被告製品4の販売を開始した平成23年12月までには,被告製品4の販売及び損害の発生を知15 った。
したがって,本件訴え提起の日の3年前の平成26年7月19日以前の被告製品4の販売に係る損害賠償請求権については,消滅時効が完成している。
被告は,平成30年12月26日の本件の弁論準備手続期日において,平成26年7月19日以前に発生した被告製品4の販売等に係る原告の被告に対20 する損害賠償請求債権について,消滅時効援用する旨の意思表示をした。
(原告の主張)原告は,被告が本件特許権3を侵害する被告製品6を販売するようであるとの情報を得て,被告の他の製品も含めて調査した結果,平成28年11月頃,被告製品4の販売による本件特許権2の侵害及び損害の発生を知った。
25 ? 争点3−1(被告製品6が本件発明3−1の技術的範囲に属するか,また,仕様変更前の被告製品6が本件発明3−2の技術的範囲に属していたか。)に46ついて(原告の主張)ア 本件発明3−1について被告製品6は,下降スイッチの押し状態を継続してフレームを下降させた5 場合,フレームの床面高が中間停止位置である24cmになると下降を停止する(構成要件3−1F)ものであり,その他本件発明3−1の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属する。このことに基づき,被告製品6の販売(仕様変更の前後を問わない。)について損害賠償を求めるとともに,その販売等の差止めを求める。
10 なお,構成要件3−1Fは,下降スイッチの押し状態が解除されない場合に中間停止位置における停止状態が継続することを意味するものではなく,構成要件3−1Gも,上記の停止後,下降スイッチの押し状態を解除して再度下降スイッチを押下した場合に「のみ」フレームを最低位まで下降させることを意味するものではなく,本件発明3−1は,上記の停止後,そのまま15 下降スイッチの押し状態が解除されずに継続した場合に,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる構成を含むことを排除するものではない。本件特許3の特許請求の範囲の記載を限定解釈等する必要はない。なお,本件特許3の出願経過や無効審判手続において,一旦停止したフレームの下降動作再開の方法については何ら問題とされていなかった。
20 イ 本件発明3−2について仕様変更前の被告製品6は,中間停止位置からごくわずかにフレームを上昇させた後に下降スイッチの押し状態を継続した場合,フレームを中間停止位置で停止させることなく下降させるもので,特定位置LSを具備する(構成要件3−2F及び3−2H)。その特定位置LSは,中間停止位置の1m25 mより上で3mmよりも低い位置の間(おそらく中間停止位置よりも2.2mm高い位置近傍)ものであり,その他本件発明3−2の各構成要件を充足47し,その技術的範囲に属していた。このことに基づき,仕様変更前の被告製品6の販売について損害賠償を求める。
本件特許3の特許請求の範囲の記載は,これを限定解釈する必要はないし,仮に限定解釈する必要があるとしても,特定位置は,フレームと床との間に5 患者等の足が存在しても挟み込みが生じないような中間停止位置よりも若干高い位置と限定解釈すれば足り,特定位置を本件明細書3の実施例に記載された位置に限定する理由はない。そして,仕様変更前の被告製品6は,特定位置を具備するから,本件発明3−2の技術的範囲に属していた。
(被告の主張)10 ア 本件発明3−1について被告製品6は,構成要件3−1Fを充足しない。
すなわち,構成要件3−1F及び3−1G並びに本件明細書3の記載によれば,構成要件3−1Fは,下降スイッチの押し状態が解除されない場合には中間停止位置における停止状態が継続することを意味するものと限定解15 釈され,又は,包袋禁反言の法理から上記のように解釈すべきであり,時間経過やその他の条件によって下降スイッチの押し状態が解除されずに継続した場合にもフレームを再度下降させる構成を含む場合は含まれないというべきで,構成要件3−1Fは,「前記制御装置は,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときに,「前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態」20 が継続している間,前記フレームを下降させるが,「前記フレームの上位置」LHと下位置LLとの間の中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ『(前記下降スイッチの押し状態が解除しない限り,再度,下降しないものであるが), と読み替えられる。
』」そして,被告製品6は,中間停止位置における停止後,下降スイッチの押25 し状態を解除して再度下降スイッチを押下した場合にフレームを再下降させる構成とともに,上記の停止後,そのまま下降スイッチの押し状態が解除48されずに継続した場合に,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる構成を含むことから,限定解釈等によって加わった構成要件を充足せず,本件発明3−1の技術的範囲に属しない。
イ 本件発明3−2について5 仕様変更前の被告製品6は,構成要件3−2F及び3−2Hを充足していなかった。
すなわち,構成要件3−2Fは,下降スイッチの押し状態が解除されない場合には中間停止位置における停止状態が継続することを意味するものと限定解釈され(前記ア),また,構成要件3−2F及び3−2Hの特定位置10 は,本件発明3−2の請求項及び本件明細書3に矛盾する記載も存在し,その具体的位置が不明確であるものの,実施例の記載を考慮すれば,中間停止位置より10mm高い位置を意味するものと限定解釈され,結局,構成要件3−2Fは,「前記制御装置は,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときに,」「前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,15 前記フレームを下降させるが,「そのときの前記フレームの位置が,前記上」位置LHと前記中間停止位置LMとの間の『中間停止位置LMから10mm上方に離れた位置と』定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記フレームを降下させた後,前記中間停止位置LMで前記下降スイッチが押し状態であっても一旦停止させ,(前記下降スイッチの押し状態が解除しな『20 い限り,再度,下降しないものであるが),』」と読み替えられる。
そうすると,仕様変更前の被告製品6は,中間停止位置における停止後,下降スイッチの押し状態を解除して再度下降スイッチを押下した場合にフレームを再下降させる構成とともに,上記の停止後,そのまま下降スイッチの押し状態が解除されずに継続した場合に,ブザーを鳴らしながらフレーム25 を最低位まで下降させる構成を含むことに加え,中間停止位置より5mm高い位置から下降させた場合にも中間停止位置で停止し,特定位置を具備して49いないことから,限定解釈によって加わった構成要件を充足せず,本件発明3−2の技術的範囲に属しない。
仮に,仕様変更前の被告製品6において中間停止位置からごくわずかにフレームを上昇させた後に下降スイッチの押し状態を継続した場合にフレー5 ムを中間停止位置で停止させることなく下降することがあったとしても,そのような動きは被告製品6において想定されたものでなく不具合というべきものである。被告は,同不具合を修正したプログラムを作成してこれをインストールし,被告製品6の仕様を変更した。
? 争点3−2(本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認め10 られるか。)について(被告の主張)本件特許3には,次のとおり無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア 無効理由3−1(本件発明3−1の米国特許発明2からの新規性欠如)15 本件発明3−1は,米国特許発明2と同一である。
乙17公報には,スイッチの押し状態が継続している間だけ作動状態となり,スイッチの押し状態を解除(release)した場合には停止状態となる方式(モーメンタリスイッチ)を念頭に置いており,下降スイッチの押し状態を解除し,又は,センサーによりフレームが所定の位置まで下降したことを感20 知するまでは下降を続けるから,「操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,フレームを下降させ」(構成要件3−1F),「操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除され」る(構成要件3−1G)ことがある構成(構成要件3−1F及び3−1G)が記載されている。そして,乙17公報には,上記のセンサーによりフレームが所定の位置まで下降した25 ことを感知した場合に,あらかじめ設定した下中間停止位置でフレームを停止させ,さらに,その後,スイッチが解除され,再作動(re-actuation)され50ると,制御システムを再作動させる(reactivate)と記載されているから,「フレームを一旦停止させ」る(構成要件3−1F)構成,「再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更にフレームを下位置まで下降させる」(構成要件3−1G)構成が開示されている。また,乙17公報の記載や介5 護用ベッドで用いられるマットレスの通常の厚さ等に照らすと,下中間停止位置が床面から12cm以上の位置に設定されているということができ,米国特許発明2に係る特許の出願前に出願された複数の発明(特開2002−125808号公報(乙19)に記載された発明,特開平9−187336号公報(乙72)に記載された発明)において患者等の足を含む身体の一部10 の挟み込みを防止するための対策がされ,米国特許発明2においてもこの点を念頭に置いていたことは明らかであるから,「フレームと床との間に(利用者の)足が存在しても,挟み込みが生じないような高さである」(構成要件3−1H)構成も開示されている。
イ 無効理由3−2(本件発明3−1の米国特許発明2からの進歩性欠如)15 米国特許発明2に,中間停止位置が,フレームと床との間に患者等の足が存在しても挟み込みが生じないような高さである(構成要件3−1H)という構成が開示されていないとしても,米国特許発明2に上記構成を適用することは,技術の具体的な適用に伴う設計変更にすぎず,当業者は,上記相違点について容易に想到し得たから,本件発明3−1は進歩性を欠く。
20 すなわち,患者等の足の挟み込み防止のためにベッドフレームと床との間に一定の高さの空間を設けるという技術仕様は,平成12年7月に製品安全協会が作成した日本国内の電動介護用ベッドの安全性に関する基準である「電動介護用ベッドの認定基準及び基準確認方法」(乙18。以下「SG基準という。)等にも示されており,当業者に周知であったから,当業者が米国」25 特許発明2を実施するに当たって任意に設定可能な下中間位置を足の挟み込みが生じないような高さに設定することは,技術の具体的な適用に伴う設51計変更によって可能であったし,仮にそうでないとしても,米国特許発明2に,本件特許3の出願当時開示されていた介護用又は医療用ベッドにおいて人の挟み込みを防止するために器具の昇降を一定の高さで停止する技術(特開2002−125808号公報(乙19)に記載された技術,実開昭615 −63205号公報(乙20)に記載された技術)を組み合わせることにより,容易に想到し得た。
ウ 無効理由3−3(本件発明3−2のサポート要件違反)本件明細書3には,本件発明3−2の課題を解決することができない実施態様で特定位置LSを設ける構成が記載されており,当業者は,出願当時の10 技術常識で補足しても,上記課題を解決できると認識できないから,本件発明3−2は,本件明細書3の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
すなわち,本件明細書3は,中間停止位置LMについて更にフレームを下降させると足を挟み込んでしまうような位置であるとしながら,「中間停止15 位置LMよりも若干高い位置である」特定位置LS(例えば,中間停止位置LMより10mm高い位置であるとされている。)について,これより低い位置からフレームを下降させる場合には「中間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが生じる虞はな」いと中間停止位置LMが担う足の挟み込み防止機能を一部無効化する矛盾した説明をしており,同記載から特定位置20 LSを特定することは困難である。
エ 無効理由3−4(本件発明3−2の明確性要件違反))本件発明3−2は,本件明細書3に,本件発明3−2の課題を解決することができない実施態様で特定位置LSを設ける矛盾した構成が記載されており,明確であるとはいえない。
25 (原告の主張)ア 無効理由3−1について52本件発明3−1には,米国特許発明2との間に相違点が存在し,新規性を欠くとはいえない。
すなわち,乙17公報には,ベッド制御のための手動入力を最小限に抑えながら操作者にとって便利な高さにフレームを移動させるという観点から,5 一度スイッチを押すと作動状態になり,スイッチの押し状態を解除したとしても,作動状態を保持する動作方式(オルタネイトスイッチ)が採用され,また,下中間位置及び上中間位置が定められ,フレームの移動は下中間位置又は上中間位置で自動的に終了し,下中間位置より下方又は上中間位置より上方に継続して移動することを志向していないことから,本件発明3−1に10 おいて採用しているスイッチの押し状態が継続している間だけ作動状態となり,スイッチの押し状態を解除した場合には停止状態となる方式(モーメンタリスイッチ)に係る「操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,フレームを下降させ」(構成要件3−1F),「操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除され」る(構成要件3−1G)ことがある15 構成は開示されていないし,「フレームを一旦停止させ」 (構成要件3−1るF)構成,「再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更にフレームを下位置まで下降させる」(構成要件3−1G)構成,中間停止位置について「フレームと床との間に(利用者の)足が存在しても,挟み込みが生じないような高さである」(構成要件3−1H)構成は記載されていない。なお,米20 国特許発明2に係る特許の出願当時,電動介護用ベッドについて患者等の足の挟み込み防止の対策はされていなかったし,同特許の出願前に出願された複数の発明に係る明細書にこの点に係る記載はない。
イ 無効理由3−2について中間停止位置が,フレームと床との間に患者等の足が存在しても挟み込み25 が生じないような高さである(構成要件3−1H)という相違点について,当業者が容易に想到し得たとはいえず,本件発明3−1が進歩性を欠くとは53いえない。
米国特許発明2は,ベッド制御のための手動入力を最小限に抑えながら操作者にとって便利な高さにフレームを移動させるための技術であり,患者等の足の挟み込み防止という課題を解決するものではなく,介護用ベッドに求5 められるものとは根本的な思想,機能を異にする上,実施例における最下位置のフレーム下面の床上高さは120mm未満となり,SG基準を満たさないから,そもそも当業者が乙17公報を主引用例とすることはない。また,被告が指摘する本件特許3の出願当時開示されていた介護用又は医療用ベッドに係る技術は,足の挟み込みの防止を課題とするものではないから,当10 業者が米国特許発明2明にその技術を組み合わせる動機付けは存在しない。
ウ 無効理由3−3について当業者は,本件明細書3の記載に基づき,フレームと床との間に患者等の足が存在しても挟み込みが生じないような高さである中間停止位置LMより若干高い位置に特定位置LSを設定することにより本件発明3−2の課15 題を解決できると認識できるから,本件特許3の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反しない。
エ 無効理由3−4について本件発明3−2は明確であり,本件特許3の特許請求の範囲の記載は明確性要件に違反しない。
20 ? 争点3−3(本件特許権3の侵害行為について被告に過失がなかったか。)について(被告の主張)本件特許権3の侵害行為について被告には過失がなかった。
被告は,本件特許権3の存在を知らなかったから侵害行為について認識がな25 かったし,被告製品6が本件発明3の技術的範囲に属すると認識する余地はなかったから,侵害行為について認識し得なかったことについて相当な理由があ54る。
(原告の主張)否認する。
? 争点3−4(損害の発生及び額)について5 (原告の主張)原告は,被告による被告製品6の販売により損害を受けたところ,被告は,被告製品6の販売により利益を受けており,このうちの限界利益につき本件特許発明3−1及び3−2の貢献している程度を考慮すれば, 「原告の主張」別紙の「被告製品6」の各「小計」欄記載の額が原告の受けた損害額であると推定10 される(特許法102条2項) また,。 原告が本訴追行に要した弁護士費用のうち上記の各「弁護士費用」欄記載の額は,被告の不法行為相当因果関係があるものとして被告が負担すべきである。
具体的な主張は,以下のとおりであるが,争点1−4と共通し得る主張については,争点1−4における原告の主張と同じである。
15 ア 被告製品の売上高について被告製品6の販売により被告が受けた利益には,ベッド本体の販売に加え,少なくともベッド本体と同時に販売されたサイドレールの販売に係る利益が含まれるというべきである。
(ア) ベッド本体について20 本件発明3は,超低床介護ベッドにおいて使用者の安全を確保するため極めて重要な機能を提供するものであり,このうち本件発明3−2は,現場において実際に生じやすい場面(起床の際に立ち上がりやすい中間停止位置よりやや高い位置にベッドを上昇させ,ベッドを使用する際に下位置までベッドを下降させる。)において作業を煩雑にしないために有効な技25 術に関するものであり,その価値は極めて高い。被告製品6の使用者から何らの苦情もないのが,本件発明3−2による機能が奏功していることの55証左である。
(イ) サイドレールについてサイドレールは,被告製品6の販売に付随して販売されているのであるから,少なくとも,ベッド本体と同時にサイドレールが販売された場合に5 は,被告は本件発明3−2の実施によってサイドレールの販売について利益を受け,他方,原告は損害を受けている。
イ 推定覆滅事由について被告製品6の販売に本件発明3−2以外の技術の影響があり,同販売に係る利益額が原告の損害額であるとの推定が一部覆滅されるとしても,その程10 度は9割を超えるものではない。なお,仮に,顧客が本件発明3−2の実施に係る機能を現実に利用していなかったとしても,その利益全額について原告の損害額であるとの推定が覆滅されることにはなり得ない。
ウ 小括以上を前提にすると,被告製品6のベッド本体の販売に係る損害額は,別15 紙「原告の主張」の「被告製品6」の当該欄記載の額となる。また,ベッド本体と同時にサイドレールが販売された場合のサイドレールの販売に係る損害額は,同「サイドレールβ」欄記載の額である。
(被告の主張)被告による被告製品6の販売がなかったならば原告が利益を受けたであろ20 うという事情が存在するとはいえない。また,仮にそうでないとしても,被告の利益額が原告の損害額であるとの推定を覆滅させる事情がある。
仮に,被告製品6において中間停止位置からごくわずかにフレームを上昇させた後に下降スイッチの押し状態を継続した場合にフレームを中間停止位置で停止させることなく下降することがあったとしても,そのような動きは被告25 製品6において想定されたものでなく不具合というべきものであり,被告はそのような動きを前提として被告製品6を売り出したことはなく,購入者及び使56用者もそのような動きを認識していないのであるから,その存在は被告製品6の販売に何ら影響していない。
そうすると,仮に被告が本件発明3−2の実施によって利益を得た場合があったとしても,本件発明3−2の実施は被告製品6の販売に全く寄与していな5 いから,利益の全部について,本件特許権3の侵害によって原告が受けた損害との間で因果関係がなく,特許法102条2項の推定が覆滅される。
? 争点3−5(廃棄の必要性)について(原告の主張)本件特許権3の侵害を予防するためには,侵害行為組成物である被告製品610 の廃棄が必要である。
(被告の主張)否認ないし争う。
第3 本件特許1に関する当裁判所の判断1 本件発明1について15 ? 本件明細書1の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。なお,図面は別紙図面「本件特許1」記載のとおりである。(甲4)【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,寸法規格の異なる足側のフレームを用意しておき,使用者の体格,すなわち身長に応じて,適合する足側のフレームを選択的に装着するようにした,ベッド等におけるフレーム構造20 に関するものである。
【0002】【従来の技術】従来,ベッドは,所定の規格を基に形成されており,例えば使用者の中には,前記規格のベッドでは適合しない人(身長が高すぎてマットレス上に乗ると,足がフットボードに当たって,大腿部から下肢部を伸ばすことができない人)もおり,このような使用者のために,予め25 フレーム全長を通常の寸法規格よりも長く設定しておき,足側床部に,延長用床部をボード取付け部の目板を利用して取り付けて対処してきた。
57【0003】【発明が解決しようとする課題】そのため,背上げ,膝上げ機構を備えたベッドにあっては,背上げ,膝上げ操作(ギャッチ操作)を行なうと,前記延長用床部は,足側床部と分離しているために起伏することはなく,フレーム側に保持され取り残されたままとなり,足側床部と延長用床部とが離5 隔状態となって,ギャッチ時の違和感があった。また,本来ボードを取り付ける目板を使用して,足側床部に延長用床部を継ぎ足すため,外観上の問題もあった。本発明はこのような課題を改善するために提案されたものであって,寸法規格の異なる足側のフレームを用意しておき,使用者の体格,すなわち身長に応じて,適合する足側のフレームを選択的に装着するようにした,10 ベッド等におけるフレーム構造を提供することを目的とする。
【0004】【課題を解決するための手段】前記した課題を解決するために,本発明は,ベッド等において,床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成した。また本発明は,ベッド等において,床板を支えるフレー15 ムのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のものに,交換装着可能に構成した。さらに前述の構成において,足側床板に,マットレス保持枠を,フットボード側に指向して突設する一方,このマットレス保持枠に,延長マットレスを載置するようにして,床部のギャッチ動作を行なうようにした。
20 【0005】【発明の実施の形態】次に,本発明にかかるベッド等におけるフレーム構造について,一つの実施の形態を示すと共に,添付の図面に基づいて,以下説明する。図1,図2に本発明にかかるフレーム構造を適用したベッド1における足側の箇所を示す。このベッド1は,例えば基部フレーム(図示省略)に,脚部を介してメインフレームを支持し,メインフレーム上に床板25 を保持する構成としたもので,図では,メインフレームのうちの交換装着可能な足側フレーム2を示し,この足側フレーム2に足側床板3が支持されて58いる。また,前記足側フレーム2のフレーム長手方向末端側には,フットボード4が装着され,フットボード4と足側床板3との間には,隙間Gが存在しており,この隙間Gに形成され,この隙間Gに,延長マットレス5を保持するマットレス保持枠6が突設されている。
5 【0006】前記足側フレーム2は,図3に示すようにベッド全体の長さ,すなわち床板全長を調節決定づける長さLを有する一対の縦フレーム2a,2aと,床板幅に対応した寸法の横フレーム2bとを有し,さらに前記双方の縦フレーム2aに,床板幅方向外側に突出するようにアクセサリフレーム7が設けられている。
10 【0007】前記縦フレーム2aは,ベッド中央側に指向する側の端部に,後述するメインフレームにおける中間部フレームに着脱可能に係止させるための合成樹脂製の係止部8を設けている。一方,アクセサリフレーム7におけるベッド足側端部に相当する端部側には,フットボード4を着脱自在に装着するための支持金具9を備えている。そして,前記アクセサリフレーム715 と縦フレーム2aとは,縦フレーム2aのベッド中央側に指向する側の端部における係止部8近傍において,連結部材10を介して連結しており,また双方のアクセサリフレーム7は,ベッド足側端部に相当する端部側の支持金具9近傍において,補強用の横梁11によって連結している。
【0008】また,前記アクセサリフレーム7には,フレーム幅方向外側端面20 に,例えば車椅子,介護器具,その他の器具類がぶつかった際の衝撃を緩和すると共に,車椅子,器具類側並びにベッド双方が傷つかないようにしたり,人がぶつかっても負傷しないようにするための軟質な合成樹脂製のバンパ12が装着されている。また,アクセサリフレーム7の上面には,側柵や介助部材を着脱自在に装着するための取付け穴13が,所定の間隔を持って複25 数穿設されている。
【0009】以上のように構成される足側フレーム2は,使用する人の体格(身59長)が通常より高い場合に対応させたものであり,フットボード4と足側床板3との間に形成された隙間Gにおいて,突設したマットレス保持枠6に前記延長マットレス5を保持するようにし,ギャッチ操作によって,作動する足側床板3にマットレス保持枠6を介して前記延長マットレス5を連動さ5 せるようにしている。なお,以上のように構成される足側フレーム2は,通常規格のものに置き換える場合,フットボード4と足側床板3との間の隙間Gがなくなるので,マットレス保持枠6を足側床板3から取り外して,足側床板3に載る別サイズのマットレス保持枠(図示省略)を装着するようにしている。
10 【0010】そして以上のように構成される足側フレーム2を,着脱可能に取り付けるためのメインフレームにおける中間部フレーム20を図4,図5に示して説明する。中間部フレーム20は,ベッド中央部に位置し,床板を起伏調節したり,昇降調節するための駆動部,すなわち駆動源21と,リンク類22を保持したものである。かかる中間部フレーム20は,ベッド長手方15 向の一対の外フレーム23の幅方向寸法が,床板幅方向に比較して狭く設定してあり,前記足側フレーム2における縦フレーム2aが中間部フレーム20の外フレーム23に,幅方向外側から挟み込むように係止する構造としてある。すなわち,前記中間部フレーム20側に,足側フレーム2における縦フレーム2aの係止部8を係止させるためのピン部材24と,前記縦フレー20 ム2aに形成したボルト穴25を介して挿通した固定ボルト26を螺着するための螺子穴(図示省略)が設けられている。
【0011】以上のように構成されるベッド等におけるフレーム構造によれば,使用者の身長に応じてその身長に適合した足側フレーム2を交換装着して対応させるようにしたので,特に通常人より身長の大きい人にも問題なく使25 用することができる。このように異なった寸法規格の足側フレーム2を交換して対応するだけであるから,ベッド自体は一つの規格のもので足り,異な60る規格のベッドの生産ライン設備は不要であり,また,一規格のベッドを最大限に使用することが可能となり,コストダウンにもつながる。
【0012】そこで,足側フレーム2を中間部フレーム20に装着する手順を説明する。作業者は,足側フレーム2における双方のアクセサリフレーム75 を手に持って,中間部フレーム20の頭側寄りの斜め上方から中間部フレーム20側のピン部材24に,足側フレーム2における縦フレーム2aの係止部8を向けて,この係止部8を係止するように近づけて,前記係止部8をピン部材24に係止させると共に(図5参照),前記縦フレーム2aのボルト穴25と,中間部フレーム20側の螺子穴とを合わせて,固定ボルト26を10 挿通して六角レンチ27等により締め付け固定することができる(図6参照)。
【0013】そして,前記足側フレーム2上に足側床板3を載せる。この際,足側フレーム2が,通常人より身長の大きい人に対応するものであるときは,フットボード4と足側床板3との間に隙間Gが出現するので,隙間Gをカバ15 −するように,足側床板3にマットレス保持枠6を突設して,延長マットレス5を保持することができる。これにより,ギャッチ操作を行なうと,足側床板3の作動と共にマットレス保持枠6が連動するので,前記延長マットレス5は,足側床板3上のマットレス本体Mの動きに追随し(図2参照) 途中,でマットレス間で不連続となるようなことはなく,使用感も外観上も違和感20 のないものとすることができる。
【0014】【発明の効果】以上の通り,本発明によれば,フレーム交換式なので,延長した時にも外観が向上した。また,延長したフレームに交換した際,マットレスの延長分をマットレス保持枠で保持するため,従来のようにギャッチ操作時に延長用床部がフレーム側に保持され取り残されたままとなり,25 足側床部と延長用床部とが離隔状態となる事に起因する違和感はなくなり,体とマットレスのギャッチ時の一体感も向上した。
61? 本件明細書1の記載によれば,本件発明1は,次のような技術的意義を有すると認められる。
従来,ベッドは,所定の規格を基に形成されており,例えば身長が高すぎて上記の規格のベッドでは適合しない使用者もいることから,予めフレーム全長5 を通常の寸法規格よりも長く設定しておき,足側床部に,延長用床部をボード取付け部の目板を利用して取り付けて対処してきた。しかし,背上げ,膝上げ機構を備えたベッドにあってはギャッチ操作を行なうと,延長用床部は,足側床部と分離しているために起伏することはなく,フレーム側に保持され取り残されたままとなり,足側床部と延長用床部とが離隔状態となって違和感があっ10 た。また,本来ボードを取り付ける目板を使用して足側床部に延長用床部を継ぎ足すため,外観上の問題もあった。(段落【0002】【0003】)そこで,本件発明1は,寸法規格の異なる足側のフレームを用意しておき,ベッドにおけるフレーム構造を,フレームを使用者の体格に対応させるために,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成15 し(本件発明1−1) また,, 足側床板に対応する足側フレームを異なった寸法規格のものに交換装着可能に構成すること(本件発明1−2)により,ベッドを延長したときの外観が向上するという効果を奏するようにした(段落【0003】【0004】。また,足側床板に,マットレス保持枠をフットボード側に)指向して突設する一方,このマットレス保持枠に,延長マットレスを載置して,20 床部のギャッチ操作を行うようにする構成(【請求項3】)により,上記ギャッチ操作時の違和感を解消した。
2 争点1−1(被告製品3及び5が本件発明1の技術的範囲に属するか。)について?ア 構成要件1−1Bは,「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応さ25 せるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成した」というものである。この文言から,本件発明1−1のフレ62ーム構造は,「フレームの一部」について,その「フレームの一部」とは長さが異なり,装着することによってフレームを構成することとなる「交換装着用フレーム」に交換することができるように構成されているものと理解することができる。また,「使用者の体格に対応させるべく」とされていることか5 ら,「交換装着用フレーム」は使用者の体格に対応させるために用意されているものといえる。
構成要件1−2Bは,「床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のものに,交換装着可能に構成した」というものである。この文言から,本件発明1−10 2のフレーム構造は,フレームのうちの「足側床板に対応する足側フレーム」について,それとは異なった寸法規格の「足側フレーム」に交換することができるように構成されているものと理解することができる。また,「使用者の体格に対応して」とされていることから,異なった寸法規格の「足側フレーム」は使用者の体格に対応させるために用意されているフレームであると15 いえる。
イ 特許請求の範囲には,「使用者の体格に対応」させるために用意されるフレーム(「交換装着用フレーム」(構成要件1−1B)「足側フレーム」, (構成要件1−2B))について,交換装着前のフレームの長さとの関係で特定のものに限定する記載はない。本件明細書1には,従来の技術として身長が高20 すぎる使用者のためにあらかじめフレーム全長を通常の寸法規格より長く設定していたこと等やこれに伴って解決すべき課題が生じていたことの記載がある(段落【0002】【0003】)が,本件発明1は,そのような課題を解決するために「寸法規格の異なる足側のフレームを用意しておき,使用者の体格,すなわち身長に応じて,適合する足側のフレームを選択的に装25 着するようにした」もの(段落【0003】)であって,寸法規格の異なるフレームを用意し,選択的に装着することで課題を解決したことが記載されて63おり,用意されるフレームが交換装着前のフレームとの関係で特定の長さに限定される記載はない。また,発明の実施の形態として,使用者の身長が通常より高い場合に対応した足側フレームを装着した場合のフレーム構造が示された上で,これを「通常規格のものに置き換える場合」が示され(段落5 【0005】〜【0009】,本件発明1により「使用者の身長に応じてそ)の身長に適合した足側フレーム…を交換装着して対応させるようにした」(段落【0011】 と記載されている。
) これらの特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載によれば,「使用者の体格に対応」させるために用意されるフレームとは,使用者の体格に適合させるために用意されるフレームを10 意味するが,その用意されるフレームは,通常より身長が高い使用者に適合させる場合に用意されるフレームのみに限定されるものではないと解される。被告は,「体格に対応させる」とは,通常より身長の高い使用者に適合させるために通常のサイズのフレームを長いものに置き換える構成を意味すると主張するが,上記に照らし,採用できない。
15 また,本件発明1−1の特許請求の範囲には,フレームの交換を可能にするフレームの構成やフレームの結合に係る機構を特定のものに限定する記載はない。そして,本件明細書1の記載に照らせば,本件発明1は,床板を支えるフレームを,その一部を異なる長さのフレームに交換可能に構成するという構成をとり,従来のベッドにおいて長さを延長した場合に生じていた20 外観上の問題等を解消することによって課題を解決するものであり(段落【0002】〜【0004】【0014】,特許請求の範囲に記載された本件)発明1−1の上記構成は,そのような課題を解決するための物の構成であることを理解することができる。フレームの交換を可能とするためのフレームの構成やフレームの結合に係る機構自体は,当業者が分割されたフレームの25 構成を公知の固定手段を用いて結合するなど適宜工夫すれば足りるというべきものであり,本件明細書1に,それらの機構が本件明細書1に記載され64たものに限定されることを示唆等する記載もない。被告は,本件発明1について,本件明細書1に記載された具体的な構成に限定して解釈されるべきであると主張し,本件発明1−1について,「ベッド等において,「」『延長用床部に相当するマットレス保持枠を,ギャッチ操作可能な足側床板に突設し,」』5 「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,「」『足側又は頭側フレームの先端に係止部を1箇所設け,」『中間部フレームに,この係』「止部を係止させるためのピンを1箇所設け,」』「『足側フレーム又は頭側フレームを,中間部フレームに,床板幅方向外側から挟み込むようにして係止させ,これらをボルトで1箇所螺着させて固定する手段によって,」』「フレー10 ムの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成した」「ことを特徴とするベッド等におけるフレーム構造」と限定して解釈されるべきであると主張するが,上記に照らして,採用することができない。
また,被告は,本件発明1−2について,本件発明1−1と同様に本件明細書1に記載された具体的な構成に限定して解釈されるべきであると主張15 するが,上記と同様の理由により採用できない。
? 被告製品3及び5について前提事実,証拠(各項末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 被告は,平成19年11月に被告製品3のレギュラータイプの販売を,平20 成21年11月にショートタイプの販売をそれぞれ開始した。
被告製品3は,主に,@ベースフレーム,Aセンターフレーム及び腰ボトム,Bヘッドフレーム及びフットフレーム,C背ボトム及びひざ脚ボトム並びにDヘッドボード及びフットボードの5つの構成品群から構成され,これらがベッド本体を購入する際の最小の単位となっている。床板(ボトム)を25 支えるフレームのうちヘッドフレーム及びフットフレーム(B),背ボトム及びひざ脚ボトム(C)並びに各ボード(D)についてレギュラータイプの65ベッド及びショートタイプのベッドに対応した長さ等の異なる2種類があり,購入したのとは異なるタイプのベッドに対応したフットフレーム等の交換用パーツを別途購入などし交換してセンターフレームに装着すること等によりベッドの長さを変更することが可能である。(甲14)5 被告は,ベッドのタイプを変更するための交換用パーツのみを別途販売していた。(乙212,251〜254)被告製品3の取扱説明書等では,「適合周辺機器」のうちマットレスについて,レギュラータイプのベッドには長さ190から195cmのものが,ショートタイプのベッドには長さ180から183cmのものが推奨され10 ていた。(甲14,乙84〜89)イ 平成24年の被告製品の総合カタログでは,医療介護ベッドとして,まず新商品である被告製品4が紹介され,引き続いて被告製品3が紹介されている。その被告製品4の部分において,特徴の1つとして,「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズとショートサイズをご用意15 しました。背ボトム・脚ボトムのみの購入で,全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。」などと記載されていた。それに引き続いて紹介された被告製品3の紹介では,仕様として,「レギュラータイプ」,「ショートタイプ」があることや,それぞれの全長が記載されていた。
(甲55)20 ウ 被告は,平成26年9月に,「ミオレット」という名称である被告製品3の後継製品であり,「ミオレットU」という名称である被告製品5のレギュラータイプ及びショートタイプの販売を開始し,被告製品3の販売は同年12月から平成27年11月までの間に終了した。(乙121)被告製品5は,主に,@ベースフレーム,Aセンターフレーム,Bヘッド25 フレーム及びフットフレーム,C背ボトム,腰ボトム及びひざ脚ボトム並びにDヘッドボード及びフットボード又はヘッドボード2つの5つの構成品66群から構成され,これらがベッド本体を購入する際の最小の単位となっている。床板(ボトム)を支持するフレームのうちヘッドフレーム及びフットフレーム(B)並びに背ボトム及びひざ脚ボトム(C)についてレギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドに対応した長さの異なる2種類5 があり,購入したのとは異なるタイプのベッドに対応したフットフレーム等の交換用パーツを別途購入するなどし交換してセンターフレームに装着すること等によりベッドの長さを変更することが可能である。(甲16)被告は,ベッドのタイプを変更するための交換用パーツのみを別途販売していた。(乙212,251〜254,弁論の全趣旨)10 平成26年頃の被告製品5のカタログには,「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズとショートサイズをご用意しました。
全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。※背ボトム・ひざ脚ボトム・ヘッドフレーム・フットフレームの交換が必要となります。」と記載されていた。平成27年から平成29年の被告製品の総合カタ15 ログの被告製品5の部分には,使用者の体格や部屋の大きさに対応して2種類のサイズが用意されている旨の記載は見られないが,被告製品5の前に紹介されている被告製品4の部分には,特徴の1つとして,平成26年頃の被告製品5のカタログにおける上記記載と同様の記載がされており,また,平成29年7月13日時点において被告のウェブサイトに掲載されていた被20 告製品5の製品紹介部分にも,「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズとショートサイズをご用意しました。全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。※背ボトム・ひざ脚ボトム・ヘッドフレーム・フットフレームの交換が必要となります。 との記載」がされていた。(甲19,63,乙121〜124)25 被告製品5の取扱説明書等では,「適合周辺機器」のうちマットレスについて,レギュラータイプのベッドには長さ190から192cmのものが,67ショートタイプのベッドには長さ182cmのものが推奨されていた。(甲17,乙121〜124)? 被告製品3が本件発明1の技術的範囲に属するかについて被告製品3については,平成21年11月にショートタイプの販売が開始さ5 れ,床板(ボトム)を支えるフレームのうちヘッドフレーム及びフットフレームについてレギュラータイプ及びショートタイプに対応した長さの異なる2種類が用意されることとなり,これらを交換してセンターフレームに装着することによりベッドの長さを変更することが可能となった。そして,被告製品3のレギュラータイプとショートタイプは別の製品として販売されているが,そ10 れらに加えて,ベッドのタイプを変更するための交換用パーツ(フットフレームを含む。)がベッド本体とは別に販売されていた(前記?ア)。したがって,ショートタイプの販売が開始された後の被告製品3は,レギュラータイプ又はショートタイプのいずれのベッドについても,フットフレームを含むフレームの一部について,あらかじめ用意された長さの異なる交換装着用フレームに選15 択的に交換装着することが想定された製品であったと認められる。
被告製品3について,レギュラータイプとショートタイプの2種類のタイプのベッドが用意されている理由について,それが体格に応じたものであることはカタログ等に直接明記はされていないが,平成24年には,被告製品3と被告製品4がいずれも販売されていたところ,当時の被告製品の総合カタログで20 は,被告製品4について,特徴の1つとして,使用者の身長や部屋の大きさに対応してレギュラーサイズとショートサイズの2種類のタイプのベッドが用意されている旨が記載され,被告製品3は被告製品4に引き続いて紹介され,被告製品3に「レギュラータイプ」と「ショートタイプ」があることやそれぞれの全長が明記されていて(同イ),上記の記載内容から,被告製品3の「レギ25 ュラータイプ」「ショートタイプ」が使用者の身長に対応するものであること,が読みとれるといえる。また,平成26年以降のカタログ等では,被告製品368(「ミオレット」)の後継製品である被告製品5(「ミオレットU」)について,身長に応じてレギュラーサイズとショートサイズがある旨の記載がされている(同ウ)。なお,被告は,その記載が不正確であったなどと主張するが,理由がない。
5 これらからすると,被告製品3についてのみ,被告製品4や被告製品5とは別の理由で2種類のベッドが用意されていたとは考え難く,被告製品3についても使用者の身長に対応して2種類のタイプのベッドが用意されていたものと認められる。なお,被告製品4や被告製品5について,2種類のタイプのベッドが用意されていることについて,部屋の大きさに合わせて選択できる旨の10 記載があるが,2種類のタイプのベッドが用意されたことの理由の1つとしてそのような理由があったとしても,このことは,被告製品3において2種類のタイプのベッドが用意された理由として,体格に応じて選択できるという理由があるとの上記の認定を左右するものではない。
以上によれば,被告製品3は,床板を支えるフレームについて,使用者の体15 格に対応させるために,レギュラータイプのベッドについてはそのフレームの一部であるヘッドフレーム又はフットフレームを,ショートタイプに変更するための異なった長さの交換用パーツのヘッドフレーム又はフットフレームに交換して装着可能であり,ショートタイプのベッドについては,そのフレームの一部であるヘッドフレーム又はフットフレームを,レギュラータイプに変更20 するための異なった長さの交換用パーツのヘッドフレーム又はフットフレームに交換して装着可能なものであり,「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成し」(構成要件1−1B)たものであるといえる。そして,被告製品3はベッドであり(構成要件1−1A) フレーム構造, (構成要件1−25 1C)を有するから,本件発明1−1の技術的範囲に属する。
また,被告製品3は,床板を支えるフレームについて,使用者の体格に対応69させるために,レギュラータイプのベッドについてはその足側床板に対応するフットフレームを,ショートタイプに変更するための異なった長さの交換用パーツのフットフレームに交換して装着可能であり,ショートタイプのベッドについては,その足側床板に対応するフットフレームを,レギュラータイプに変5 更するための異なった長さの交換用パーツのフットフレームに交換して装着可能なものであり,「床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のものに,交換装着可能に構成した」(構成要件1−2B)ものといえる。そして,被告製品3はベッドであり(構成要件1−2A),フレーム構造(構成要件1−2C)を有する10 から,本件発明1−2の技術的範囲に属する。
? 被告製品5が本件発明1の技術的範囲に属するかについて被告製品5については,平成26年9月にレギュラータイプ及びショートタイプの販売が開始され,床板(ボトム)を支えるフレームのうちヘッドフレーム及びフットフレームについてレギュラータイプ及びショートタイプに対応15 した長さの異なる2種類が用意されることとなり,これらを交換してセンターフレームに装着することによりベッドの長さを変更することが可能となった。
被告製品5のレギュラータイプとショートタイプは別の製品として販売されているが,ベッドのタイプを変更するための交換用パーツ(フットフレームを含む。)もベッド本体とは別に販売されていた(前記?ウ)から,被告製品520 は,レギュラータイプのものについても,ショートタイプのものについても,フットフレームを含むフレームの一部を,あらかじめ用意された長さの異なる交換装着用フレームに選択的に交換装着することが想定された製品であったと認められる。
そして,上記のフレーム構造について,平成26年頃のカタログ等では,被25 告製品5について,使用者の身長や部屋の大きさに対応して2種類のタイプのベッドが用意されている旨記載されている。
70以上によれば,被告製品5は,本件発明1−1及び1−2との関係では,被告製品3と同様の構成を有するものであり,ベッドにおいて(構成要件1−1A及び1−2A),「床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換え可能に構成5 し」(構成要件1−1B),また,「床板を支えるフレームのうち,足側床板に対応する足側フレームを,使用者の体格に対応して,異なった寸法規格のものに,交換装着可能に構成した」(構成要件1−2B)ことを特徴とするベッドのフレーム構造(構成要件1−1C及び1−2C)を具備していると認められる。
したがって,被告製品5は本件発明1−1及び1−2の技術的範囲に属する10 と認められる。
3 争点1−2(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。 のうち無効理由1−1) (マッケ1120からの新規性欠如)及び1−2(マッケ1120からの進歩性欠如)について? マッケ1120について15 ア マッケ手術台システム1120は,昭和63年9月頃までには,発表され,発売されていた手術台である。
マッケ手術台システム1120は,そのカタログ(乙5)等によれば,手術室中央に設置される手術台支柱(コラム) 着脱式テーブルトップ, (床板)等によって構成され,患者取扱い上の優れた機能性,手術室スペースの有効20 利用,互換性のあるテーブルトップによる機能的な手術室運営等を可能にするという特徴を有する手術台システムである。(乙5(2頁))マッケ手術台システム1120には,テーブルトップの構成等を異にする複数の製品があるが,マッケ1120はこのうちユニバーサルテーブルトップとされているもの(型番1120.21−B)である。
(乙4(7,10頁),25 乙5(2〜6頁),6,7,28(6頁))イ マッケ1120のテーブルトップは,背板上部(頭板),背板下部,座板271枚(上下),上部足板2枚(左右),下部足板2枚(左右)の8セクション(付属品の頭板を含めると9セクション)によって構成され,その一部を取り外し,又は,角度をつけて取り付けるなどすることができる。それにより,患者に解剖学的に必要なあらゆる手術姿勢を取らせ,手術に携わる医療従事者5 は障害なく術野に接近することが可能となり,外科手術の大半を処理できる。
(乙5(2,4,6頁),7(2頁),28(6頁))なお,マッケ1120には,手術台全体を形作るフレーム(骨組み)は存在せず,一部のテーブルトップに付属品を取り付けるためのレールが具備されているにとどまる。(乙4〜6,7(2頁),28)10 ウ マッケ1120におけるテーブルトップの配置として,マッケ1120の使用説明書(乙7)等によれば,次のようなものがあった。
まず,基本的な配置として,背板と足板の位置を入れ替える2とおりの取付方法により,エックス線検査を施す部位が支柱の上に来ないように調節することができる。(乙7(7頁))15 頭部外科手術等の際には,支柱の上に背板を配置する取付方法によった上,足板の代わりに付属品であるサポートアームのついた短い背板(長さ360mm)を座板に取り付け,患者を,上半身がオプションの短い背板側に,下半身が背板側に来るように寝かせることができる。この場合において,患者の身長が非常に高いときには,背板の先に更に付属品の頭板を取り付けるこ20 とができる。
(乙7(8頁),28(3,4,20頁)。なお,乙7における短い背板は乙28における背板(短)(型番1005.59)と類似のものと推認される。他方,乙7における頭板(型番1002.73)は,乙28(18頁)における頭板(型番1002.86),乙45(25頁)における頭板(型番1002.73AO)等と類似のものである可能性があるが,その形25 状等は不明である。)また,施術のため,座板と足板の間に,補助部材(ソケット)を取り付け72ることができる。載石位による手術の場合,ソケットに付属品の膝支えを取り付けて患者の足を膝支えに乗せた上で,足板を取り外し,手術を行う。下腹部及び会陰部同時手術の場合には,事前に足板を取り外した上で,ソケット及び膝支えを取り付け,膝支えを水平以下の位置に調節して,手術を行う。
5 (乙6,7(9頁),28(15頁)。なお,乙7におけるソケット(型番1003.30)は乙5及び28におけるソケット(型番1003.20A)と類似のものと推認される。)このほか,付属品の頭板として,形状等の異なる複数のもの(背板と連続性のあるもの,高さ調整が可能であるもの,細い幅のもの等)が存在する(長10 さ250mm〜260mm)(乙28(3,18頁)。 )エ マッケ・ゲティンゲ株式会社が,不明の時期に製造,販売していた「アルファマッケ万能テーブルトップ1150.30」という製品のカタログには,同製品の特徴として,多様な分割テーブルトップを選択することにより手術台を患者の身長に適した長さに調整することができるなどと記載されてい15 る。(乙29)? マッケ1120に係る発明,同発明と本件発明1−1との対比ア マッケ1120に係る発明の内容前記?によれば,手術台において,人を乗せる部分のテーブルトップを,背板上部(頭板),背板下部,座板2枚(上下),上部足板2枚(左右)によ20 って構成し,手術部位に応じた患者の体位や術野を確保するため,@背板と足板の位置を入れ替えること,A足板の代わりに短い背板(長さ360mm)を座板に取り付けること,B背板に複数の種類の頭板を取り付けること,C座板と足板の間に補助部材であるソケットを取り付けること等を可能とする手術台の構造の発明と認められる。
25 イ 一致点ベッド等において,人を乗せる部分の支持部材を,支持部材の一部を異な73った支持部材に置換え又は交換装着可能に構成したことを特徴とするベッド等における支持部材の構造。
ウ 相違点1本件発明1−1においては,上記の支持部材は,床板を支えるフレームで5 あるのに対し,マッケ1120においては,上記の支持部材は,床板そのものであり,これとは別にフレームに相当する部分は存在しない点。
エ 相違点2本件発明1−1においては,支持部材の置換え又は交換は,「使用者の体格に対応させるべく」されるものであるのに対し,マッケ1120において10 は,専ら手術部位に応じた患者の体位や術野を確保するためにされるものであり,患者の身長に応じてされるものであるとは認められない点。
オ 相違点3本件発明1−1においては,支持部材の一部を異なった長さ又は寸法規格のものに置き換え又は交換するのに対し,マッケ1120においては,@背15 板と足板の位置を入れ替えること,A足板の代わりに短い背板(長さ360mm)を座板に取り付けること,B背板に複数の種類の頭板を取り付けること,C座板と足板の間に補助部材であるソケットを取り付けること等を可能にするものである点。
カ マッケ1120に係る発明の内容及び相違点2及び3の認定について20 マッケ1120の使用説明書(乙7)には,患者の身長が高いときに背板に付属品の頭板を取り付けることができるとする記載がある。もっとも,これは,床板を付加するものであって,支持部材を置き換え又は交換するものではない。
また,ハンセン・マッケ株式会社に勤務していたAは,マッケ1120に25 ついて,各病院は,各テーブルトップを個別に購入して保管しており,医療従事者は患者の身長に応じてテーブルトップを適宜組み合わせて使用して74いた旨陳述する(乙75)。しかし,マッケ1120のカタログ(乙4,5)にそのような使用例の説明はなく,また,使用説明書(乙7)等にもそのような使用例に関する説明は全くない。このことを考慮すると,上記のような使用例に係る構成が,マッケ1120において開示されていたとは直ちに認5 められない。
なお,「アルファマッケ万能テーブルトップ1150.30」のカタログには,テーブルトップの選択により手術台を患者の身長に適した長さに調整することができる旨の記載はある。しかし,同製品が製造,販売されていた時期は不明である上,これは,マッケ1120とは異なる製品についての記載10 であり,これによって,マッケ1120について,選択によって身長に適した長さに調整する構成が開示されていたとは認められない。
以上によれば,マッケ1120においては,床板の交換は,専ら手術部位に応じた患者の体位や術野を確保するためにされるものであり,患者の身長に応じてされるものであるとは認められず,相違点2が認められる。
15 また,相違点3に係るマッケ1120の構成について,マッケ1120はもともとの構成部分である床板の位置を入れ替えるものにすぎず(相違点3の@) 足板と短い背板が異なる長さの床板であるとは認めるに足りない, (足板の代わりに短い背板を取り付ける配置は,患者を上下逆に乗せる場面で用いられていることから,左右2枚の床板から成る足板の代わりに1枚の背板20 を取り付けて患者の上半身を確実に支えることを目的としているものとも考えられ,テーブルトップの長さを変更する必要性は存在しない。相違点3のA)。また,付属品である頭板はもともとの構成部分に付加するものであって,置き換え又は交換するものではない上,異なる長さのものが複数用意されているとは認められず(相違点3のB),補助部材であるソケットは床25 板ではない上,付加するものであって,置き換え又は交換するものではなく,手術台の長さを変更するための部材であるとも認められない(相違点3の75C)。
? 相違点の容易想到性についてマッケ1120は,専ら手術部位に応じた患者の体位や術野を確保するために支持部材の一部である床板を置き換え又は交換することがあるものである。
5 そして,マッケ1120では,床板について,床板の一部を同種の長さの異なる床板への交換がされることは想定されておらず,また,そのことについての示唆があるわけではない。そうすると,少なくとも,マッケ1120に接した当業者が相違点3に係る本件発明1−1の構成に至る動機付けがあるとはいえず,その構成を容易に想到できたとはいえない。
10 ? マッケ1120に係る発明と本件発明1−2との対比本件発明1−2とマッケ1120との間には,本件発明1−1と同様の相違点1及び2があるほか,相違点3として,本件発明1−2においては,足側の支持部材を異なった長さ又は寸法規格のものに置き換え又は交換するのに対し,マッケ1120においては,@背板と足板の位置を入れ替えること,A足15 板の代わりに短い背板(長さ360mm)を座板に取り付けること,B背板に複数の種類の頭板を取り付けること,C座板と足板の間に補助部材であるソケットを取り付けること等を可能にするものである点がある。そして,本件発明1−1について述べたのと同様の理由により,少なくとも,マッケ1120に接した当業者が上記相違点3に係る本件発明1−2の構成に至る動機付けが20 あるとはいえず,その構成を容易に想到できたとはいえない。
? 以上によれば,本件発明1とマッケ1120に係る発明との間には相違点があり,本件発明1がマッケ1120に係る発明により新規性を失うとはいえず,無効理由1−1についての被告の主張は採用できない。また,当業者においてマッケ1120に係る発明に基づいて容易に本件発明1を想到することがで25 きたとは認められず,無効理由1−2についての被告の主張は採用できない。
4 争点1−2(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認めら76れるか。 のうち無効理由1−3) (キューマアウラベッドからの新規性欠如)及び無効理由1−4(キューマアウラベッドからの進歩性欠如)について? キューマアウラベッドについてア キューマアウラベッド(全長206cm)は,原告によって,平成9年25 月に発表され,同年4月から販売された組立式の介護用ベッドであり,駆動部,アクセサリフレーム(頭側及び足側),ベースフレーム,ボトム(背ボトム,背湾曲ボトム,腰ボトム,足ボトムセット),ボードセット(ヘッドボード及びフットボード)から構成されており,駆動部,アクセサリフレーム及びベースフレームを組み立てることにより全体としてのボトム(床板)を支10 える1つのベッドフレームとして機能する。具体的には,まず,ベースフレームに駆動部を取り付け,駆動部の両端(頭側及び足側)にそれぞれアクセサリフレームを,ボルトで係止し固定する方法により取り付ける。頭側フレームと足側フレームは長さが異なっており,これらを入れ替えることはできない。(乙11)15 イ 平成9年7月に作成された原告の総合カタログには,キューマアウラベッドの付属品として延長用フレームが掲載され,「ベッドの全長を14cm長くできます。長身の方にも余裕をもってベッドをお使いいただけます。」と紹介されている。延長用フレームの出荷開始予定日は同年8月18日とされていた。
20 また,原告は,平成14年11月頃から,キューマアウラベッドのミニサイズ(全長194.5cm)を製造,販売するようになった。
(本項につき,甲40,乙12(232頁),13)? キューマアウラベッドに係る発明,同発明と本件発明1−1との対比ア キューマアウラベッドに係る発明の内容25 キューマアウラベッドに係る発明は,ベッドにおいて,ボトム(床板)を支えるフレームがアクセサリフレーム(頭側及び足側)とベースフレームと77いう2つのフレームを組み立てる構成のフレーム構造の発明と認められる。
イ 一致点ベッド等において,床板を支えるフレームを,複数の部材を組み立てる構成としたことを特徴とするフレーム構造。
5 ウ 相違点本件発明1−1においては,使用者の体格に対応させるため,フレームの置換え又は交換を可能としているのに対し,キューマアウラベッドにおいては,フレームの置換え又は交換を想定しておらず,そのような交換をすることを可能にする構成があるとはいえない点。
10 エ キューマアウラベッドに係る発明の内容及び相違点の認定についてキューマアウラベッドは,原告によって,平成9年2月に発表され,同年4月から販売された組立式の介護用ベッドである。しかし,その頃,キューマアウラベッドにおいて,フレームの置換え又は交換が可能であったことを認めるに足りる証拠はない。同年7月に作成された原告の総合カタログには,15 キューマアウラベッドの付属品として延長用フレームが掲載されているが,その構成等が必ずしも明らかではないほか,その総合カタログは,本件発明1に係る本件特許1の出願日である同年6月24日より後に作成されたものであり,その出願日より前に,キューマアウラベッドにおいて,延長用フレームがあったことや,フレームの置換え又は交換を想定していたことを認20 めるに足りる証拠はない。したがって,本件特許 1 の出願日前のキューマアウラベッドにおいては,フレームの置換え又は交換を想定していないと認められ,上記相違点が認められる。
? 相違点の容易想到性についてキューマアウラベッドは,フレームを複数の部材を組み立てる構成としてい25 るものの,使用者の体格に対応するためにフレームの一部を長さの異なるフレームに置き換え又は交換することは想定されておらず,そのような交換をする78ことを可能にする構成があるとはいえない(相違点に係る構成)。本件特許1の出願日当時,一部の業者においてベッドの長さを変更することを目的とする発明を試みていた(乙46)ものの,キューマアウラベッドに接した当業者において,ベッドの長さを延長した場合に生じていた外観上の問題等を解消する5 という本件発明1−1の課題の設定が容易であったとまでは認められず,その課題を解決するための動機付けがあったとは認められない。
また,被告は,キューマアウラベッドの構成にマッケ1120の構成を適用することにより本件発明1−1の構成を容易に想到できた旨主張する。しかし,マッケ1120においては,手術部位に応じた患者の体位や術野を確保するた10 めに支持部材の一部である床板を置き換え又は交換することがあるものではあるが,長さの異なる床板への交換は必ずしも想定されておらず,一部,患者の身長が高いときに床板を付加することが示されているにすぎない(前記3?,?)。そうすると,キューマアウラベッドにマッケ1120を適用したとしても,相違点に係る本件発明1−1に至るものでもない。
15 したがって,当業者においてキューマアウラベッド及びマッケ1120に係る各発明に基づいて容易に本件発明1−1を想到することができたとは認められない。
? キューマアウラベッドに係る発明と本件発明1−2との対比本件発明1−2とマッケ1120とは,本件発明1−2は,使用者の体格に20 対応させるため,足側床板に対応する足側フレームの交換を可能とする構成を有するのに対し,キューマアウラベッドにおいては,同種のフレームの交換を想定しておらず,そのような交換を可能にする構成がない点が相違する。そして,本件発明1−1について述べたのと同様の理由により,当業者においてキューマアウラベッド及びマッケ1120に係る各発明に基づいて容易に本件25 発明1−2を想到することができたとは認められない。
? 以上によれば,本件発明1とキューマアウラベッドに係る発明との間には相79違点があり,本件発明1が,キューマアウラベッドに係る発明により新規性を失うとはいえず,無効理由1−3についての被告の主張は採用できない。また,当業者においてキューマアウラベッドに係る発明に基づいて容易に本件発明1を想到することができたとは認められず,無効理由1−4についての被告の5 主張は採用できない。
5 争点1−2(本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)のうち無効理由1−5(サポート要件違反)について特許請求の範囲の記載が,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることという要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と10 発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解され15 る。
特許請求の範囲の記載によれば,本件発明1−1は,床板を支えるフレームを,使用者の体格に対応させるべく,その一部を異なる長さのフレームに交換可能に構成するものであり,本件発明1−2は,足側フレームを,使用者の体格に対応させるべく,異なる長さのフレームに交換可能に構成するものである。本件明細20 書1の発明の詳細な説明には,従来のベッドにおいては,「足側床部に,延長用床部をボード取付け部の目板を利用して取り付けて」「足側床部に延長用床部を継ぎ足」していたため外観上の問題が生じていた(段落【0002】【0003】)のに対し,使用者の身長に対応して,足側フレームを長さの異なるものに交換装着することが記載されているとともに(段落【0004】〜【0013】,それ)25 により外観が向上したことが記載されている(段落【0014】。
) 本件発明1は,上記の発明の詳細な説明に記載された発明であり,また,当業者は,フレームの80交換をせずに単に延長用床板を継ぎ足す場合に比べ,本件発明1の構成をとって,フレームの一部自体を別のフレームに交換することによって,外観が向上することを理解することができるといえるから,発明の詳細な説明の記載により,当該発明の課題を解決できると認識できるといえる。
5 したがって,本件発明1の特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するとは認められず,無効理由1−5の被告の主張には理由がない。
6 争点1−3(本件特許権1の侵害行為について被告に過失がなかったか。)について被告が被告製品3を販売する行為は特許権侵害行為であるところ,その行為に10 は過失が推定され(特許法103条),仮に被告が本件特許権1の存在を知らなかった等の事情があったとしても,そのことのみで本件特許権1の侵害行為について被告に過失がなかったとはいえないし,他に被告に過失がなかったと認めるに足りる証拠もない。
7 争点1−4(損害の発生及び額,ないし,被告製品3に係る不当利得の発生及15 び額)について? 特許法102条2項の適用について前記のとおり,被告製品3(平成21年11月以降のもの)及び被告製品5は,本件発明1−1及び1−2の技術的範囲に属し,これらを販売する行為は,本件特許権1を侵害する行為である。
20 そして,特許権者に,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,特許法102条2項の適用が認められるところ,原告は,本件発明1−1及び1−2の実施品であるベッド(「楽匠」「楽匠Z」シリーズ)を販売している(甲65,73,弁論の全趣,旨)。したがって,本件では,原告に,被告による本件特許権1の侵害行為であ25 る被告製品3及び5の販売がなかったならば利益を得られたであろうという事情が存在すると認められ,特許法102条2項に基づき損害が推定される。
81? 被告が受けた利益について特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を販売等することによりその販売等に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した利益の額である。
5 ア 被告製品3及び5の売上高について(ア) ベッド本体の販売について被告製品3及び5のベッド本体は,レギュラータイプ及びショートタイプのいずれについても,床板(ボトム) フレーム及びボード等によって構,成されており,被告製品3及び5が販売される場合の最小の構成単位はベ10 ッド本体であり(前記2?),そのベッド本体の販売が本件発明1−1及び1−2の実施となり,本件特許権1を侵害する。したがって,被告製品3及び5のベッド本体の販売により被告が得た利益は,特許法102条2項により原告が受けた損害と推定される。
この点について,被告は,被告製品3及び5のベッド本体(構成品のセ15 ット)に加えて,それと同時にサイズ交換を行うのに必要な構成品(交換用パーツ)が同時に販売され,かつ,それが,サイズ交換目的で購入されたときに限り,特許法102条2項の利益が発生すると主張し,その理由として,そのような販売形態でない限り,本件発明1の作用効果が発生せず,非侵害的態様による販売であるとする。
20 しかし,本件発明1−1は,床板を支えるフレームについて,フレームの一部を異なった長さの交換装着用フレームに置き換えることを可能に構成したフレーム構造の発明であり,本件発明1−2は,床板を支える足側フレームについて,異なった寸法規格のものに交換装着可能に構成したフレーム構造の発明であり,いずれもフレーム構造の発明である。そして,25 被告製品3及び5は,いずれも,本件発明1−1及び1−2の技術的範囲に属するフレーム構造を有し,それらのベッドが販売された場合,それが82レギュラーサイズのベッドの販売であっても,ショートサイズのベッドの販売であっても,そのベッドの販売が本件発明1の実施となり,交換用パーツが同時に販売されているか否かなどの事情にかかわらず,本件特許権1を侵害する。そして,特許法102条2項は特許権の侵害があった場合5 に,それにより侵害者が得た利益を損害と推定する旨の規定である。当該ベッドの購入の際に,購入者がサイズ交換を予定していて,本件発明1の作用効果を奏することを動機として購入したか否かなどに関係する事情が上記の損害の推定が覆滅されるか否かの場面において考慮されるとしても,特許法102条2項の上記趣旨に照らせば,同項により損害と推定10 される範囲の利益の基礎となる売上げの範囲が被告の主張のように限定されることになるとは解されない。被告の上記主張は採用できない。
被告は,平成21年11月以降,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各「売上台数」欄記載のとおり被告製品3及び5のベッド本体を販売し,その売上金額は,同各「売上金額」欄記載のとおりであ15 ったと認められる。(甲152,乙250)(イ) 交換用パーツ及び交換用パーツ単体の販売について被告は,被告製品3及び5のための交換用パーツを販売しているところ,原告は,これらがベッド本体と共に販売され,また,交換用パーツ単体で販売された場合,その販売により得た利益が特許法102条2項の利益に20 含まれる旨主張する。
しかし,被告製品3及び5が販売される場合の最小の構成単位はベッド本体である。上記の交換用パーツは,本件発明1−1及び1−2の実施品であるベッド本体とは別の製品として販売されていて,ベッド本体と一体として販売されているわけではないし,ベッド本体に不可欠のものとして25 ベッド本体と一体となるべきものであるともいえない(前記2?)。このことに照らすと,交換用パーツ及び交換用パーツ単体の販売による利益に83ついて,ベッド本体が本件特許権1を侵害する場合の特許法102条2項の利益に含まれるとはいえない。
(ウ) サイドレールの販売について一般的に,サイドレールは,介護用ベッドと共に複数販売されている場5 合が相当程度見受けられる。もっとも,被告においては,サイドレールは,本件発明1−1及び1−2の実施品であるベッド本体とは別の製品として,被告製品3から6のほか,ミオレットV,プリモレット,アーデル等の製品にも対応する仕様のものとして販売されているものである(乙233〜236)。そして,被告製品3及び5が販売される場合の最小の構成10 単位はベッド本体であり,本件では,サイドレールは,ベッド本体と一体として販売されているとまではいえないことに照らすと,サイドレールの販売による利益を本件特許権1の侵害(直接侵害)に係る特許法102条2項の被告の利益に含めることは相当ではない。
(エ) 値引き,歩引きについて15 被告においては,1つ又は複数の商品を組み合わせて販売した場合に,その取引の売上金額の総額から一定額を控除する値引きを行うことがあった。
被告における上記値引きは通常の商取引の過程で行われたものといえ,被告製品3及び5が値引きされた場合,特許法102条2項の利益額の算20 定の際の販売額は,値引後の金額とするのが相当である。
そして,値引きは取引単位で行っていることに照らせば,被告製品3及び5に係る値引額については,一定期間の値引額の合計額に,被告の総売上金額における被告製品3及び5の売上金額の割合を乗ずる方法によって算出することができるといえる。
25 原告は,値引きは,付属品等をベッド本体と共に販売した上で付属品等から値引くのが通常であり,値引額を商品の売上金額で按分するのは相当84でない旨主張するが,被告において,被告製品3及び5(ベッド本体)については値引きをせず,それらと共に販売した付属品等について専ら値引きをしていたことをうかがわせる事情はなく,この点に関する原告の主張は理由がない。
5 また,被告においては,一定の取引のある特定の顧客に対し月ごとの売上金額に応じて一定割合の額を控除する歩引きを行うことがあった。
被告における上記歩引きは通常の商取引の過程で行われたものといえ,被告製品3及び5が歩引きされた場合,特許法102条2項の利益額の算定の際の販売額は,歩引後の金額とするのが相当である。
10 そして,歩引きは顧客ごとかつ月ごとに行っていることから,被告製品3及び5に係る歩引額については,顧客ごとに,月ごとの歩引額の合計額に,当該顧客の取引に係る総売上金額における被告製品3及び5の売上金額の割合を乗ずる方法によって算出すべきである。
以上を前提にすると,被告製品3及び5の値引額及び歩引額は, 「損別紙15 害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(本項につき,甲125,乙250,弁論の全趣旨(なお,被告製品3の値引額について,平成26年8月は27万8942円,同年9月は66万3970円,同年12月は23万7594円,平成27年3月は28万820 156円,同年8月は1493円,また,被告製品5の値引額について,平成26年8月は38万3004円,同年9月は161万9131円,同年12月は206万0816円,平成27年3月は328万6939円,同年6月は574万2423円,同年7月は228万6856円,同年9月は365万6774円,同年11月は101万5925円,平成28年25 1月は101万1535円,同年7月は177万0528円,平成29年2月は157万9096円,同年5月は144万4661円,同年6月は85130万6493円であったと認められ,その余の月は証拠上争いがない。))(オ) 小括以上から,被告の被告製品3及び5の売上高は,別紙「損害額」の「被5 告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりとなる。
イ 控除すべき経費について(ア) 原材料費(原価)について被告は,被告製品3及び5を子会社であるプラッツベトナムから仕入れている(前記第2の1?ア, 。
ウ) その仕入れのためにプラッツベトナムに10 対して支払った額は原材料費として控除すべきである。
原告は,被告の仕入価格からプラッツベトナムの内部利益を控除すべきである旨主張する。しかし,プラッツベトナムは,被告とは別の法人格を有する外国法人であって,プラッツベトナムの利益が被告の利益であるということは直ちにはできない。また,被告の仕入価格が不当に高額に設定15 された上でこのことによるプラッツベトナムの利益が被告に移転しているというような特段の事情も認めるに足りないから,控除すべき原価について,被告の仕入価格からプラッツベトナムの内部利益を控除すべきであるとはいえない。
被告製品3及び5の原価は,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被20 告製品5」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(甲152,乙250)(イ) 金型費について平成21年11月以降の被告製品3の販売及び被告製品5の販売開始時以降の販売は特許権の侵害であるところ,被告は,平成21年以降被告25 製品3の製造のために,平成26年以降被告製品5の製造のために,それぞれ金型を購入したから,その購入に要した金型費は,侵害品の販売等に86直接関連して追加的に必要となった経費であるといえる。上記被告製品3及び5の金型費について,各年の償却額は,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(乙134,178,250)5 (ウ) 仕入費用,荷造包装費及び運送費について被告製品3及び5の販売等に要した仕入費用,荷造包装費及び運送費(売上高から控除すべき費用であることは当事者間に争いがない。)の額は,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(甲66,152,乙131,135,110 69,172,206,207,250,弁論の全趣旨(なお,原告は,甲152において控除したこれらの費用を利益の算定に当たって控除することを認めるところ,甲152においてはこれらの費用を商品の販売額で按分して売上高から控除する計算方法を採用している。被告製品4において同じ。))15 (エ) その他経費について被告主張に係るその他の経費のうち,被告製品3及び5の販売前後にその開発のために行ったと認められる試作品の製造や各種検査に要した試験研究費,被告製品3及び5の日本産業規格(JIS)の適合性審査等に要した費用(JIS取得費用),被告製品3及び5のチラシの作成費用や20 展示会出品に要した費用等の広告宣伝費は,被告製品3及び5の販売等に直接関連して追加的に必要となった経費であるといえ,それぞれ別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(乙131,138,140〜142,144,169,175,176,179,181,206,210,211,229,225 30,250,弁論の全趣旨)他方,人件費(物流関係),商品開発部の旅費交通費,品質保証費(アフ87ターサービス費),人件費(品質部門)は,いずれも,被告製品3及び5以外の製品のための経費ともなり得るものであるところ,被告製品3及び5の販売等に直接関連して追加的に必要となった経費と認めるに足りる証拠はない。
5 (オ) 小括以上から,被告の被告製品3及び5の利益は,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各当該欄記載のとおりとなる。
? 推定覆滅事由についてア 特許法102条2項と推定の覆滅10 特許法102条2項による推定は,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がある場合に覆滅すると解される。
イ 掲記の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 平成24年の被告製品の総合カタログでは,医療介護ベッドとして,まず被告製品4が紹介され,引き続いて被告製品3が紹介されており,被15 告製品4の特徴の1つとして,「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズとショートサイズをご用意しました。背ボトム・脚ボトムのみの購入で,全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。」などと記載されていた。それに引き続いて紹介された被告製品3の紹介では,「レギュラータイプ」,「ショートタイプ」があるこ20 とやそれぞれの全長の数値が記載されている一方,「Point!」として記載されていたのは,「利用者の膝の位置に合わせ曲がる位置を調節できるフィッティング機構」という膝フィッティング機構を始めとする3つの機構であり,体格に応じたフレームに変換することについての記載はなかった。(甲55)25 (イ) 平成26年頃の被告製品5のカタログには,被告製品5について「膝のフィッティングが好評の「ミオレット」に待望の後継機登場!」などと88説明され,製品の特徴として,「対象者の拡大」「安全性への配慮」「操作, ,性への配慮」「組立設置・アフターサービスへの配慮」が掲げられ,それ,ぞれ,「ベッドと車椅子の間を無くし移乗をより安全にできるようになりました。足先上げにより,心疾患や下部のむくみに対応しました」「JI,5 S規格準拠による重症事故対応はもちろん,多発する手すりの乗り越え事故に対応しました。,」「片麻痺の方など障がいをお持ちの方に配慮した手元スイッチ,伝い歩きを考慮したボード形状を実現しました。,」「レンタルベッドとして求められる,組立設置,アフターサービスのしやすさを追求しました。総重量77kgを実現し,搬送時の腰への負担軽減を追求し10 ました。」と記載されている。そして,「身体のズレ軽減」に対応した4つ「のポイント機構」として,「背上げ時のずれを控える膝位置のフィッティング機構」を始めとする4つの機構が説明された。その後のページで,「床面高さが25〜59cmまで昇降することで介助者の腰痛を防止できます。,」「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイ15 ズとショートサイズを用意しました。,」「車椅子との移乗も隙間がなく安心な収納式再サイドレールホルダー」との見出しのもとでそれぞれの説明がされ,異なるサイズが用意されたことについて,「全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。,」「※背ボトム・ひざ脚ボトム・ヘッドフレーム・フットフレームの交換が必要になります。 などの」20 記載がされてレギュラータイプとショートタイプの全長が記載され,また,「サイズ切替が可能」という説明とともに,人が横たわったベッドの図が掲載されていた。平成27年から平成29年の被告製品の総合カタログの被告製品5の部分には,「身体のズレ軽減」に対応した4つのポイント機「構」として,膝フィッティング機能などが記載されていたが,体格に応じ25 てサイズを用意したことの記載はなかった。平成29年7月13日時点において被告のウェブサイトに掲載されていた被告製品5の製品紹介部分89には,「身体のズレ軽減」に対応した4つのポイント機構」として,膝フ「ィッティング機能などの4つの機能が説明された後,「床面高さが25〜59cmまで昇降することで介助者の腰痛を防止できます。,」「使用される方の身長やお部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズとショートサイ5 ズを用意しました。」などの見出しのもとにそれぞれの説明がされ,異なるサイズが用意されたことについて,「全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。※背ボトム・ひざ脚ボトム・ヘッドフレーム・フットフレームの交換が必要となります」などの記載がされ,人が横たわっていて,レギュラータイプとショートタイプの全長が記載された10 ベッドの図が掲載されていた。(甲19,63,乙121〜124)(ウ) 被告製品3及び5は,介護ベッドとして使用され,このような介護ベッドは,ほとんどはレンタル卸業者及び福祉用具貸与事業者(以下,これらについて「レンタル業者等」という。)が購入し,最終的にベッドの利用者にレンタルされている。原告が販売する「楽匠」「楽匠Z」シリーズも,15 同様である。(甲73,弁論の全趣旨)(エ) 平成21年11月以降の被告製品3のレギュラータイプの販売台数は,6万3223台であり,ショートタイプの販売台数は,594台であった。
(乙250)(オ) 被告製品5のレギュラータイプの販売台数は,合計4万9727台で20 あり,ショートタイプの販売台数は,合計4434台であった。(乙250)(カ) 被告は,被告製品3及び5の売上げの上位50社(これらの売上金額は被告製品3及び5の売上総額の80%を超える。)に対してヒアリングをした。
25 それによると,被告製品3について,売上げ上位50社に対し,合計5万2910台が販売され,そのうち,最終的に個人・介護施設へ販売され90たものが3779台であり,その余がレンタル業者等へ販売されたものだった。レギュラータイプのみを購入したレンタル業者等は17社で,そのレギュラータイプの販売台数は8250台であり,その中に,ショートタイプにするための交換用パーツを購入したレンタル業者等はいなかった。
5 ショートタイプのみを購入したレンタル業者等はおらず,その余のレンタル業者等は,レギュラータイプとショートタイプの双方を購入していた。
これらのレンタル業者等の中には交換用パーツを購入した業者もおり,その交換用パーツの総数(不具合対応のために購入と回答した台数を除く。)は,合計45セットである。
10 被告製品5について,売上げ上位50社に対し,合計5万1762台が販売され,そのうち,最終的に個人・介護施設へ販売されたものが841台であり,その余がレンタル業者等へ販売されたものだった。レギュラータイプのみを購入したレンタル業者等は16社で,そのレギュラータイプの販売台数は,5457台であり,そのうち,ショートタイプにするため15 の交換用パーツ(ショートタイプにするためのフレーム,背ボトム,ひざ脚ボトムのセット)を購入したレンタル業者等は1社であり,同社への販売は7セットであった。ショートタイプのみ購入したレンタル業者等はいなかった。他のレンタル業者等は,レギュラータイプとショートタイプの双方を購入していた。これらのレンタル業者等の中には交換用パーツを購20 入した業者もおり,その交換用パーツの総数(不具合対応のために購入と回答した台数を除く。 は,) 合計88セットであった。 乙214〜216,(251〜254)(キ) 原告が取引先を対象として実施したアンケートの結果等によれば,レンタル事業者等においては,半数以上が,購入したベッドをレギュラータ25 イプ又はショートタイプにするための交換用パーツの構成品ごとに管理して,レンタル時に購入時とは別の構成品を組み合わせ得る管理をしてい91た。また,柔軟性や保管の便宜等の理由から,ベッドの大きさを変更できる機能を高く評価していて,実際に購入したベッドについて耐用年数(概ね6から8年)の間にその大きさを変更することがあると回答した業者が相当数存在する。(甲73,75〜147)5 ウ 本件発明1は,ベッドにおけるフレーム構造を,使用者の体格に対応させるために,フレーム又は足側フレームを異なった長さの交換用フレームに置き換え可能に構成し,外観を向上したという効果を奏するようにしたものである。
ここで,被告製品3においては,総合カタログにおいて,特徴として,膝10 フィッティング機能が強調して記載されるほか,その他の機能も記載されていたが,体格に応じたフレームの交換が可能なこと自体は記載されていなかった(前記イ(ア))。被告製品5においては,平成26年頃のカタログや少なくとも平成29年7月13日時点における被告のウェブサイトには,体格に応じてフレームを交換することができることが記載されていたが,いずれに15 おいても,被告製品5の特徴として,膝フィッティング機能をはじめとする複数の機能が記載され,その後に記載された複数の特徴の1つとして,体格に応じたベッドのサイズを用意したことが記載されていた。平成27年から平成29年の被告の総合カタログの被告製品5の部分には,体格に応じてフレームを交換することができること自体の記載がなかった(同(イ))。
20 本件発明1について,ベッドの利用者において事実上上記の発明の効果を奏するのは,体格に応じた交換用フレームを用いて交換をした場合であるともいえるところ,交換用フレーム(交換用パーツ)が販売された数は,被告製品3及び5全体の販売台数に比べると極めて少ないことがうかがわれる(同(カ)) 被告製品3及び5はほとんどがレンタル業者等により購入されて。
25 いて,レンタル業者等において,交換用パーツの購入とは別に,購入したベッド本体を部品ごとに管理するなどして,異なるタイプのベッドに対応した92フレームを適宜交換することもあり得るのであるが(同(ウ),(カ),(キ)),そもそも被告製品3及び5のショートタイプのベッド本体の販売数が,レギュラータイプの販売台数に比べて相当少なく(同(エ),(オ)) 上記のような管理,を基礎としたフレームの交換がされるとしてもその数は,全体の販売台数に5 対して相当に限られる。
以上によれば,被告製品3及び5は,そのカタログ等において,本件発明1とは別の機能が強調されていて,相当数が本件発明1に係る特徴とは別の機能等の特徴に惹かれて購入されたことがうかがわれる。それに加えて,本件発明1は,被告製品3及び5のタイプを同じくするベッド本体を購入した10 だけではベッドの利用者においては事実上その効果を奏しないという特徴があるともいえるところ,上記の交換用パーツの販売数(売上げ上位50社に対するもの)やショートタイプの販売台数等からすると,ベッドの利用者において事実上本件発明1の効果を奏する形で使われたのは全体の販売台数のうちの極めて限られた台数と認められるのであり,このことからも,販15 売された被告製品3及び5の大部分は,本件発明1に係る特徴とは別の機能等の特徴に惹かれて購入されたものと認めることができる。このような被告製品3及び5が本件発明1の実施に係る部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力等の事情を考慮すると,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を大きく阻害する事情があるといえ,特に交換用パーツ20 及びショートタイプの販売が少ない被告製品3については,侵害者が得た利益の9割5分について,被告製品5については侵害者が得た利益の9割について,その推定が覆滅するとするのが相当である。
エ 被告は,被告が被告製品3及び5の販売において利益を得たといえるのは,ベッド本体と交換用パーツを同時に販売した場合に限られ,その余の販売で25 の利益額が原告の損害額とはいえないことや,被告が本件発明1の実施によって利益を得たといえる場合は,ベッド本体が販売され更にタイプ変更目的93で交換用パーツが販売された場合に限られ,極めて小さな割合である旨主張する。
しかし,被告製品3及び5のベッド本体の販売が本件発明1の実施といえ,推定の覆滅については被告に主張立証責任があるところ,被告は,体格に応5 じてフレームの交換ができることをベッドの図を掲載するなどしてカタログ等で記載したことがあり,結果的に交換用パーツの購入等がされなかった場合であっても,上記記載に基づいてベッドが購入された場合もあり得ること,被告製品3及び5の購入者の特性から交換用パーツを購入しなくともレギュラータイプ及びショートタイプ双方のベッド本体を購入すれば本件発10 明1の効果を奏するようなフレーム交換をし得ることなどから,推定は大きく覆滅するとは認められるが(前記ウ),被告が指摘する場合以外の販売に係る利益についての推定が全て覆滅するとまでは認めるに足りない。
オ そうすると,特許法102条2項によって推定される被告の本件特許権1の侵害により原告が受けた損害の額は,別紙「損害額」の「被告製品3」及15 び「被告製品5」の各「損害額」欄記載のとおりとなる。
? 弁護士費用原告が,本件特許権1の侵害について本訴を追行するために要した弁護士費用のうち,別紙「損害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各「弁護士費用」欄記載の額は,被告の不法行為相当因果関係のある損害として被告が20 負担すべきである。
? 小括以上から,被告の本件特許権1の侵害により原告が受けた損害額は, 「損別紙害額」の「被告製品3」及び「被告製品5」の各「合計」欄記載のとおりとなる。
25 ? 被告製品3に係る不当利得の発生及び額について仮に,被告が被告製品3の販売により法律上の原因なく利益を受け原告に損94失を与えたとしても,同不当利得の額は,前記?の損害額を超えない。
8 争点1−5(原告が平成21年11月に被告製品3の販売による損害の発生を知ったか。)について被告は,原告には展示会等で被告製品3の構成を認識する機会が多数あったか5 ら,被告製品3のショートタイプの販売を開始した平成21年11月には被告製品3の販売及びその損害の発生を原告が知ったと主張して,消滅時効を主張する。
確かに,被告は,平成20年9月24日から同月26日まで,平成21年9月29日から同年10月1日まで,平成22年10月5日から同月7日まで,「国際福祉機器展H.C.R」に,平成21年4月16日から同月18日まで,平成10 22年4月15日から同月17日まで,平成23年4月14日から同月16日まで,「高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展バリアフリー」に,それぞれ被告製品3を出展した。上記の各展示会には原告も参加しており,原告の展示ブースが被告の展示ブースに近接して設けられていたこともあった。(乙182〜197)15 しかしながら,上記事実から,原告が被告製品3の存在自体は知っていたことがうかがわれるとしても,原告が,被告が被告製品3のショートタイプの販売を開始した平成21年11月の時点で,被告製品3が本件発明1の技術的範囲に属するものであり,その販売によって本件特許権1が侵害されるものであることを認識したとは直ちには認められず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
20 原告が平成21年11月に被告製品3の販売による損害の発生を知ったとは認められず,被告の消滅時効の主張は理由がない。
9 第3の結論以上から,原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告の被告製品3の販売による本件特許権1の侵害につき,1億1459万19225 5円及びうち別紙「損害額」の「被告製品3」の年ごとの「合計」欄記載の各額に対する各翌年1月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正95前の民法所定の年5分の割合(以下,遅延損害金について同じ。 による遅延損害)金の支払を,被告製品5の販売による本件特許権1の侵害につき,1億5734万5847円及びうち同「被告製品5」の年ごとの「合計」欄記載の各額に対する各翌年1月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求5 めることができる。
第4 本件特許2に関する当裁判所の判断1 本件発明2について? 本件明細書2の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。また,図面は別紙図面「本件特許2」記載のとおりである。(甲6)10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ベッドにおける取付品,例えばベッドの長手方向端部側に取り付けるボード(ヘッドボード,フットボード)や,ベッドの幅方向端部側に取り付けるサイドレールやIVポール等の付属品を支持する位置を変更可能とすることにより,ベッドの床長または床幅の変更に適用できるようにしたベッドにおける取付品支持位置可変機構15 に関するものである。
【背景技術】【0002】例えば,病院や在宅において老人や病人等が使用するベッドの床長は,短いと使い勝手が悪く,また必要以上に長いと所要スペースが大きくなってしまう。そこで製造者側では,標準的な床長のベッドに加えて,それよりも短いベッドや長いベッドを提供可能としている。
20 【0003】床長の異なったベッドを構成するための従来の方法としては,床長毎に異なるベッドフレームを設ける方法,ベッドの頭側又は足側に延長フレームを後付けして床長を延長する方法や,ベッドの足側のフレームをスライド式に延長可能とする方法等が行われている。
【0004】その他,特許文献1(特開2004−298530号公報)では,25 ベッドのボトムを支持する支持台を,ヘッド支持台,フット支持台及び中間支持台とから構成し,それらの間の間隔を調整可能に構成することにより,96床長を調節可能に構成している。
【0005】また特許文献2(特開2005−204992号公報)では,ベッドフレームを,ベッドフレームとフットフレームと,それらの間の伸縮自在のサイドフレームと,ヘッド側サイドフレームと連結されたインナー及び5 アウタージョイントとから構成し,これらのインナー及びアウタージョイントに対してフット側サイドフレームを進退させて固定することにより,床長を調節可能に構成している。
【0006】そして,以上のようなベッドにおいては,その側部にサイドレールやIVポール等の付属品を取り付けて支持するための支持機構を設けて10 いる。この支持機構としては,例えば特許文献3(特開2000−166703号公報)に示すように,ボトムを支持するベッドフレームの長手方向部材に取付孔を設けて付属品支持部材を取り付ける機構が多く用いられている。
【0007】一方,ベッドにおいて,床幅,即ち,ボトムの幅は,例えば8315 0mmのものと910mmのものの2種類が多く用いられている。
【0008】このような床幅の異なるボトムを用いる場合においても,サイドレール等の付属品をベッドフレームの所定位置に取り付けられようにするために,従来は,幅の異なるボトム毎に,異なる幅のベッドフレームを構成している。
20 【0009】その他,特許文献4(特開平10−85081号公報)では,中枠を交換せずに頭枠と足枠を変更するだけでベッドフレームの幅をボトムの床幅に対応させるようにしている。
【発明が解決しようとする課題】【0010】以上の従来の技術においては,まず床長に関して次のような課題がある。
25 1.床長毎に異なるベッドフレームを設ける方法では,床長の種類分のベッドフレームが必要となり,製造コストや管理コストが増大する。
972.延長フレームを後付けする方法では,それ自体が比較的大きくなってしまうので,保管や移動性が悪い。
3.フレームをスライド式に延長可能とする方法では,機構部品が大掛かりとなり,部品点数の増加や製造コストの増大につながる。
5 4.特許文献1に示されるような方法では,ベッドの構成に制約があり,また特許文献2に示されるような方法では,床長の変更に際してはベッドフレームを分解しなければならず,面倒である。
【0011】また,以上の従来の技術において,床幅に関しては次のような課題がある。
10 1.付属品をベッドフレームの所定位置に取り付けられようにするために,幅の異なるボトム毎に異なったベッドフレームを構成するのでは,コスト高となってしまう。
2.特許文献2のように,異なったボトムの幅に対して,ベッドフレームの一部,即ち中枠を共通化しているが,一部の共通化であるのでコストの低減15 効果は比較的小さく,組立も面倒である。
本発明は,以上のような課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】【0012】上述した課題を解決するために,本発明では,ベッドフレーム側の棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能に支持する構成とし,前記取付品支持部材には前記棒状部材を係合可能20 な溝形部材を突設し,棒状部材と溝形部材には,前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する突起と係合部を設けると共に,前記係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付孔を設け,係合手段と螺合手段は,係合と螺合の位置を,棒状部材の長さ方向に複数構成し25 たベッドにおける取付品支持位置可変機構を提案する。
【0013】また本発明では上記の構成において,係合手段は,溝形部材側に98設けた突起と,棒状部材側の長さ方向に複数設けた係合部とから構成することを提案する。また本発明では,この構成において,溝形部材に支持片を突設し,支持片の先端側に突起を設けることを提案する。またこの構成において,支持片に補強用リブを形成することを提案する。
5 【0014】また本発明では上記の構成において,係合手段は,棒状部材側に設けた突起と,溝形部材側の長さ方向に複数設けた係合部とから構成することを提案する。
【0015】更に本発明では,以上の構成において,取付品支持部材に取り付ける取付品は,ベッドの長手方向端部側に取り付けるボードであり,棒状部10 材はベッドフレームの長手方向部材であるベッドにおける取付品支持位置可変機構を提案する。
【0016】更に本発明では,以上の構成において,取付品支持部材に取り付ける取付品は,ベッドの側部に取り付ける付属品であり,棒状部材は,ベッドフレームの長手方向部材から横方向に突設した部材であるベッドにおけ15 る取付品支持位置可変機構を提案する。
【発明の効果】【0017】本発明では,取付品支持部材に突設した溝形部材の開口側をベッドフレーム側の棒状部材に向け,係合手段を構成する突起といずれかの係合部を位置合わせした状態で,溝形部材を横方向から棒状部材に係合する。棒状部材は上下辺と一方の側辺が溝形部材で覆われ,この状態に20 おいては,螺合手段を構成する雌ねじ部といずれかの取付孔が対応しており,こうして取付孔から取付ボルトを貫通させて,雌ねじ部に螺合することにより,溝形部材を棒状部材に固定することができ,従って取付品支持部材をベッドフレームに対して固定することができる。
【0018】この際,溝形部材は上述したとおり棒状部材の上下辺と一方の側25 辺を覆うと共に,溝形部材と棒状部材が取付ボルトで螺合により結合され,更に突起と棒状部材に設けた係合部が係合するので,溝形部材,そして取付99品支持部材は,棒状部材に対して遊び無く強固に取り付けることができる。
【0019】このような取付状態において,取付ボルトを外して溝形部材の螺合を解除し,この状態で,突起を,他の所望の係合部に位置合わせして係合すると,雌ねじ部と他の取付孔が対応するので,この状態において,取付孔5 から取付ボルトを貫通させて,雌ねじ部に螺合することにより,溝形部材を,棒状部材の長手方向に移動した位置で固定することができる。
【0020】こうして取付品支持部材は,棒状部材との長手方向の位置関係を変更して遊び無く強固に取り付けることができる。
【0021】取付品支持部材に取り付ける取付品を,ベッドの長手方向端部側10 に取り付けるボードとした場合には,このボード,即ちヘッドボード又はフットボードの支持位置を変更することにより,ベッドフレームの床長の変更に対応させることができる。
【0022】また取付品支持部材に取り付ける取付品を,サイドレールやIVポール等の,ベッドの側部に取り付ける付属品とした場合には,共通のベッ15 ドフレームに対して,支持するボトムの幅を変更した場合にも,取付品支持部材を適切な位置に支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】【0023】次に本発明のベッドにおける取付品支持位置可変機構の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図7は本発明のベッドにおける取付品支持位置可変機構の第1の20 実施の形態を示すもので,この実施の形態において,取付品支持部材に取り付ける取付品は,ベッドの長手方向端部側に取り付けるボード,即ち,ヘッドボードやフットボードである。
まず図1は本発明を適用したベッドを,ボトムを省略して示す斜視図であり,本発明における支持位置可変機構は,ベッドの頭側及び足側の両側の個25 所,即ち,4個所に適用するものである。図2,図3は,本発明機構を構成する要素を拡散図で示したもので,また図4,図5は取り付けた状態,図6,100図7は取り付けた状態を,図4,図5とは反対側から見た状態を夫々示す斜視図である。尚,この実施の形態では,ベッドの床長は,標準的な床長と,それよりも短い床長に変更可能な構成を示しており,夫々図2,図4及び図6が標準状態,図3,図5及び図7が短い状態に対応するものである。
5 【0024】これらの図において,符号1はベッドフレームで,2はその長手方向部材であり,この長手方向部材2が棒状部材に相当する。Bはボード,即ち,ヘッドボードやフットボードであり,符号3がボードBを取り付けるボード受けを示すもので,このボード受け3が取付品支持部材に相当する。
ボード受け3は,ボードBに設けた取付金具等の取付手段(図示省略)を装10 着してボードBを支持するもので,取付手段等に応じて適宜の構成を採ることができる。
【0025】ボード受け3には,開口側4を横方向に向けて溝形部材5を突設しており,この溝形部材5には支持片6を延長させている。そして支持片6の先端に,溝形部材5の開口側4方向に向けて鉤状部7を形成している。一15 方,長手方向部材2には,鉤状部7を係合する係合部8a,8b,この場合,スリット形状の係合部を,長手方向部材2の長手方向に複数形成している。
更に長手方向部材2の先端側には雌ねじ部9を形成すると共に,溝形部材5には,雌ねじ部9に螺合する取付ボルト10を貫通可能な取付孔11a,11bを,上記係合部8a,8bに対応して複数形成している。符号12は取20 付ボルト10に設けて回転操作するノブであり,13は支持片6に設けた補強リブである。
【0026】以上の構成において,例えば図2に示すように,溝形部材5の開口側4をベッドフレーム1の長手方向部材2に向け,支持片6の突起7,この場合,鉤状部を,長手方向部材2の係合部8bに位置合わせした状態で,25 溝形部材5を横方向から長手方向部材2に係合する。これにより,長手方向部材2は図4及び図6に示すように,上下辺と一方の側辺が溝形部材5で覆101われ,この状態においては,溝形部材5に形成した取付孔11bが長手方向部材2の雌ねじ部9に対応しているので,図2に示すように取付孔11bから取付ボルト10を貫通させて,雌ねじ部9に螺合することにより,溝形部材5を長手方向部材2に固定することができる。
5 【0027】この状態において図1に示すように左右一対のボード受け3によりボードBを取り付けて,所定の床長,この場合,標準的な床長のベッドを構成することができる。
【0028】ここで,床長を変更する場合には,ボード受け3からボードBを外した後,取付ボルト10を外して溝形部材5を移動可能とし,この状態で10 図3に示すように,支持片6の突起7を,今度は,他の係合部8aに位置合わせた状態で,溝形部材5を横方向から長手方向部材2に係合する。これにより長手方向部材2は図5及び図7に示すように,上下辺と一方の側辺が溝形部材5で覆われ,この状態においては,溝形部材5に形成した取付孔11aが長手方向部材2の雌ねじ部9に対応しているので,図3に示すように取15 付孔11aから取付ボルト10を貫通させて,雌ねじ部9に螺合することにより,溝形部材5を長手方向部材2に固定することができる。
【0029】そして,この状態において左右一対のボード受け3によりボードBを取り付けて,所定の床長,この場合には,短い床長のベッドフレームを構成することができる。
20 【0030】次に図8〜図10は本発明のベッドにおける取付品支持位置可変機構の第2の実施の形態を示すもので,図8は構成要素を示す拡散図,図9,図10は取り付けた状態を示す斜視図である。この実施の形態において,取付品支持部材に取り付ける取付品は,第1の実施の形態と同様にベッドの長手方向端部側に取り付けるボード,即ち,ヘッドボードやフットボードであ25 り,この第2の実施の形態は,第1の実施の形態における溝形部材5の開口側が向いた方向を異ならせたもので,図において対応する構成要素には同一102の符号を付している。
【0031】即ち,第2の実施の形態において,ボード受け3には,開口側4を下方向に向けて溝形部材5を突設しており,この溝形部材5には支持片6を延長させている。そして支持片6の先端に,溝形部材5の開口側4方向に5 向けて鉤状部7を形成している。一方,長手方向部材2の上面側には,鉤状部7を係合する係合部8a,8b,この場合,スリット形状の係合部を,長手方向部材2の長手方向に複数形成している。更に長手方向部材2の先端上面側には雌ねじ部9を形成すると共に,溝形部材5には,雌ねじ部9に螺合する取付ボルト10を貫通可能な取付孔11a,11bを,上記係合部8a,10 8bに対応して複数形成している。符号12は第1の実施の形態と同様に,取付ボルト10に設けて回転操作するノブである。
【0032】以上の構成においては,第1の実施の形態と同様に,溝形部材5の開口側4をベッドフレーム1の長手方向部材2に向け,支持片6の鉤状部7を,長手方向部材2の係合部8a又は8bに位置合わせした状態で,溝形15 部材5を上方から長手方向部材2に係合する。これにより,長手方向部材2は図9又は図10に示すように,上辺と両側の側辺が溝形部材5で覆われると共に,取付孔11a又は11bから取付ボルト10を貫通させて,雌ねじ部9に螺合し,ノブ12により締め付けることにより,溝形部材5を長手方向部材2に強固に固定することができる。
20 【0033】このようにして図9の場合には,図4と同様に標準的な床長のベッドフレームを構成して対応する位置にボードを取り付けることができ,また図10の場合には,図5と同様に短い床長のベッドフレームを構成することができる。尚,図10の場合が標準的な床長,図9の場合が長い床長に対応させることもできることは勿論である。
25 【0034】次に図11,図12は本発明のベッドにおける取付品支持位置可変機構の第3の実施の形態を示すもので,この実施の形態において,取付品103支持部材に取り付ける取付品は,ベッドの側部に取り付ける付属品,例えばサイドレールやIVポール等(図示省略)である。この第3の実施の形態において,第1の実施の形態と同様な構成要素には,図中に同一の符号を付して重複する説明は省略する。
5 【0035】符号14は上記取付品支持部材に相当する付属品受けであり,その上側には,サイドレールやIVポール等(図示省略)の支柱部を嵌合して支持する取付孔15を設けている。そしてこの実施の形態では,上記溝形部材5は,付属品受け14の両端部に一対突設している。一方,ベッドフレーム1の長手方向部材2から横方向に,一対の幅方向部材16を突設しており,10 この幅方向部材16が棒状部材に相当する。この実施の形態では,取付孔11a,11b,11cは3個所に設けており,これに対応して係合部8も3個所に設けられている。
【0036】以上の構成においては,付属品受け14は,両端側に突設した一対の溝形部材5を,上述した第1の実施の形態と同様な動作により,幅方向15 部材16に強固に固定することができ,この際,突起7に係合する係合部(8b以外は図示を省略している。,そして雌ねじ部9に対応する取付孔11a,)11b,11cを選択して,突起7を係合部に係合すると共に,対応した取付孔から取付ボルト10を貫通させて,雌ねじ部9に螺合することにより,ベッドフレーム1の長手方向部材2から付属品受け14までの距離を変更20 して支持することができる。
【0037】このため,共通のベッドフレーム1に対して,支持するボトムの幅を変更した場合にも,付属品取付用部材を適切な位置に支持することができる。例えば,ボトムの床幅として,830mm幅のボトムを用いる際には,付属品受け14を,ベッドフレーム1の長手方向部材2からの距離が最も近25 い位置に支持している場合に格納状態,次の位置に支持している場合に使用状態とすることができ,また910mm幅のボトムを用いる際には,付属品104受け14を,ベッドフレーム1の長手方向部材2からの距離が最も遠い位置に支持している場合に使用状態とすることができる。
【0038】以上に説明した実施の形態では,溝形部材5側に設けた突起7と,棒状部材(2,16)側の長さ方向に複数設けた係合部8a,8bとから係5 合手段を構成しているが,これとは逆に棒状部材(2,16)側に設けた突起と,溝形部材5側の長さ方向に複数設けた係合部とから係合手段を構成することもできる。
【0039】更に以上に説明した実施の形態では,溝形部材5に支持片6を延長して,この支持片6の先端側に突起7を設けているが,支持片6を設けず10 に,溝形部材5に突起,又は係合部を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】【0040】以上のとおりであるので,本発明では,以下に示すような利点があり,病院や在宅において使用されるベッドに適用して産業上の利用可能性が大である。
【0041】本発明では,ベッドの床長に関して次の利点がある。
15 1.ボトムを外したり,ボードを外すという作業の他は,ベッドフレームを分解せずに,その長さを変更することができ,非常に作業性が良い。
2.異なった床長のベッドフレームを共通化することができるので,製造性が良く,製造コスト,管理コスト,購入コストの低減を図ることができる。
3.棒状部材に対して独立して構成したボード受けを,溝形部材により遊び20 無く強固に棒状部材に取り付けることができ,ベッドとしての使用性を悪化させない。
【0042】本発明では,ベッドの床幅に関して次の利点がある。
1.共通のベッドフレームに対して,支持するボトムの床幅を変更した場合にも,付属品取付用部材を適切な位置に支持することができる。
25 2.従ってベッドフレームを共通化することができるので,コストの低減を図ることができる。
1053.付属品取付用部材の位置の変更は,特別な工具を必要とせずに行うことができ,また非常に強固にガタ無く支持することができる。
? 本件明細書2の記載によれば,本件発明2は,次のような技術的意義を有すると認められる。
5 本件発明2は,ベッドの取付品の支持位置を変更可能とすることにより,ベッドの床長又は床幅の変更に適用できるようにしたベッドにおける取付品支持位置可変機構に関する発明である(段落【0001】。従来,床長の異なる)ベッド等を構成するため,床長ごとにベッドフレームを設ける方法,頭側又は足側に延長フレームを後付けする方法,足側のフレームをスライド式に延長可10 能にする方法等があったが,これらには製造,管理コストや利便性の面から問題があった(段落【0002】〜【0011】。そこで,本件発明2は,ベッ)ドフレームの棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能に支持する構成とし,取付品支持部材に棒状部材を係合可能な溝形部材を突設し,棒状部材と溝形部材に,係合手段となる突起と係合部,螺合手段となる雌ねじ部と取付15 ボルトを貫通させる取付穴を設けるとともに,係合と螺合の位置を複数構成し(本件発明2−1),また,上記の構成において,係合手段を,棒状部材に設けた突起と溝形部材の長さ方向に複数設けた係合部から構成し(本件発明2−5) また,, 螺合手段を,棒状部材に設けた雌ねじ部と溝形部材の長さ方向に複数設けた取付穴から構成し(本件発明2−6) また,, 取付品支持部材に取り付20 ける取付品はボードであり,棒状部材はベッドの長手方向部材である(本件発明2−7)という構成等を採用することにより(段落【0012】〜【0039】,作業性の向上,製造,管理及び購入コストの低減等の効果を奏するよう)にしたものである(段落【0040】〜【0042】。
)2 争点2−1(被告製品4が本件発明2の技術的範囲に属するか。)について25 ? 本件発明2−1の特許請求の範囲には,ベッドにおける取付品支持位置可変機構であり,取付品支持部材について,ベッドフレームの棒状部材の長手方向106に着脱可能にし,取付品支持部材には溝形部材を突設し,棒状部材と溝形部材には係合手段を構成する突起と係合部を設けることや,係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付穴を設けること,そして,係合及び螺合の位置を複数構成するとい5 う構成が記載されている。
本件発明2−1の特許請求の範囲には,係合手段を構成する突起及び係合部の位置や形状,係合と螺合の位置を複数構成する具体的な態様について特定のものに限定する記載はない。そして,本件明細書2に照らすと,従来,床長の異なるベッド等を構成するため,床長ごとにベッドフレームを設ける方法など10 があったが,それらには製造,管理コスト等の課題があったところ,本件発明2−1は,その課題を解決するため,ベッドの取付品支持部材の支持位置を変更可能とすることにより,ベッドの床長又は床幅の変更に適用できるようにしたベッドにおける取付品支持位置可変機構に関する発明であり,当業者は,特許請求の範囲に記載された構成が,上記の課題を解決するための具体的な構成15 であることを理解することができる。そして,2つの部材について,係合状態となる係合手段を構成する突起と係合部を設ける構成や,螺合手段を構成する雌ねじ部と取付ボルトを貫通させる取付孔を設けること自体は公知技術といえ,当業者は,本件発明2−1において,係合手段を構成する突起及び係合部の位置や形状,係合と螺合の位置を複数構成する具体的な態様は公知技術等を20 参照しつつ適宜工夫すれば足りるというべきものである。本件明細書2に,本件発明2−1における係合手段を構成する突起及び係合部の位置や形状等について,発明の詳細な説明に記載された具体的な態様を特定のものに限定する記載はないし,そのような限定をする根拠となる記載はない。被告は,本件発明2−1の特許請求の範囲の記載は,極めて機能的,抽象的で,係合手段を構25 成する突起及び係合部の位置や形状,係合と螺合の位置を複数構成する具体的な態様が明らかにされていないとして,本件発明2−1は,本件明細書2にお107いて開示された構成,すなわち,「ベッドフレーム側の棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能にする構成とし,「前記取付品支持部材には前記棒」状部材を係合可能な溝形部材を突設し,「」『前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する溝形部材の底面に5 突起1個所と,棒状部材に複数個所の係合部(スリット形状)を設けると共に,」』「『又は,これに代えて』前記溝形部材を前記棒状部材に係合させる動作において係合状態となる係合手段を構成する『棒状部材に突起1個所と,溝形部材の底面に複数個所の係合部(スリット形状) を設けると共に,』 」「前記係合手段が係合状態において螺合可能状態となる螺合手段を構成する雌ねじ部と取付10 ボルトを貫通させる取付孔を設け,「係合手段と螺合手段は,係合と螺合の位」置を,棒状部材の長さ方向に複数構成した」「ことを特徴とするベッドにおける取付品支持位置可変機構」を意味すると限定解釈されると主張する。しかし,上記に述べたところにより,被告の上記主張は作用できない。
また,本件発明2−5についても同様であり,本件明細書2に記載された係15 合手段を構成する突起及び係合部の位置や形状等に限られるとの被告の主張は,同様に理由がない。
? 被告製品4は,主に,@ベースフレーム,Aセンターフレーム,Bヘッドフレーム,Cフットフレーム及びランバー,D背ボトム,腰ボトム及びひざ脚ボトム,Eヘッドボード及びフットボードの6つの構成品群から構成され,これ20 らがベッド本体を購入する際の最小の単位となっている。床板(ボトム)を支えるフレームはレギュラータイプ及びショートタイプで共通であり,背ボトム及びひざ脚ボトム(D)には,レギュラータイプのベッド及びショートタイプのベッドに対応した大きさの異なる2種類があり,購入したのとは異なるタイプのベッドに対応した背ボトム等の交換用パーツを別途購入するなどし交換25 することが可能である。(甲15)ヘッドフレーム及びフットフレームは,その長手方向部材である棒状部材の108長手方向端部側に取付品であるボードの支持部材を着脱可能に支持する構成となっており,同支持部材には上記棒状部材を係合可能なコ字状の溝形部材が突設されている。
そして,上記棒状部材にはその長さ方向に2つの突起及び1つの雌ねじ部が,5 上記溝形部材には1つの係合凹部(先端部の切込み部)及びその長さ方向に2つの貫通孔がそれぞれ設けられており,突起と係合凹部を係合状態にし,雌ねじ部及び貫通孔をボルトにより螺合状態にすることにより,上記棒状部材と上記溝形部材を係合状態とする。係合及び螺合の位置は,棒状部材の長さ方向にレギュラータイプ用とショートタイプ用に複数構成されている。
10 レギュラータイプに対応する場合には,棒状部材の先端に近い方に設けられた突起と溝形部材に設けられた係合凹部を係合させ,また,棒状部材に設けられた雌ねじ部と溝形部材の取付品支持部から遠い方に設けられた貫通孔を貫通したボルトを螺合させることにより,また,ショートタイプに対応する場合には,棒状部材の先端から遠い方に設けられた突起と溝形部材に設けられた係15 合凹部を係合させ(なお,この場合において,棒状部材の先端に近い方に設けられた突起と溝形部材の中間部に設けられたU字型の切込みが組み合わさるが,同切込みは上記突起との衝突を回避するために設けられたものであり,係合手段として設けられた係合凹部ではない。,棒状部材に設けられた雌ねじ部)と溝形部材の取付品支持部に近い方に設けられた貫通孔を貫通したボルトを20 螺合させることにより,それぞれ取付品支持部材を係合する。
(本項につき,甲12,15,16,弁論の全趣旨)? 前記?によれば,被告製品4は,ヘッドフレーム及びフットフレームが,その長手方向部材である棒状部材の長手方向に取付品であるボードの支持部材を着脱可能に支持する構成となっており(構成要件2−1A),同支持部材に25 は上記棒状部材を係合可能なコ字状の溝形部材が突設され(構成要件2−1B),上記棒状部材にはその長さ方向に2つの突起及び1つの雌ねじ部が,上109記溝形部材には1つの係合凹部及びその長さ方向に2つの貫通孔がそれぞれ設けられており,突起と係合凹部を係合状態にし,雌ねじ部及び貫通孔をボルトにより螺合状態にすることにより,上記棒状部材と上記溝形部材を係合状態とし(構成要件2−1C,2−1D),係合及び螺合の位置は,棒状部材の長さ5 方向にレギュラータイプ用とショートタイプ用に複数構成されていて(構成要件2−1E),ベッドにおける取付品支持位置可変機構を具備するものである(構成要件2−1F)。
したがって,被告製品4は本件発明2−1の技術的範囲に属すると認められる。
10 被告製品4の螺合手段は,棒状部材に設けた雌ねじ部と溝形部材の貫通孔とから構成されており(構成要件2−6A),被告製品4が本件発明2−1の技術的範囲に属する取付品支持機構を有すること(構成要件2−6B)から,被告製品4は,本件発明2−6の技術的範囲に属すると認められる。
取付品であるボードは,長手方向端部側に取り付けられるものであり,棒状15 部材はベッドフレームの長手方向部材であり(構成要件2−7A),被告製品4が本件発明2−1,2−6の取付品支持位置可変機構を有することから(構成要件2−7B),被告製品4は,本件発明2−7の技術的範囲に属すると認められる。
他方,被告製品4においては,係合手段は,棒状部材側にその長さ方向に220 つ設けた突起及び溝形部材に設けた1つの係合凹部により構成されているものであり,溝形部材側には係合部が複数設けられているとはいえないことから,被告製品4は,構成要件2−5Aを充足せず,本件発明2−5の技術的範囲に属するとは認められない。
3 争点2−2(本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認めら25 れるか。 のうち無効理由2−1) (米国特許発明1からの新規性欠如)及び無効理由2−2(米国特許発明1からの進歩性欠如)について110? 米国特許発明1について乙15公報には,以下の記載がある。
ア 発明の名称「調節可能なベッドフレーム構造」イ 請求項1の記載5 【請求項1】ベッドフレーム部材であって,間隔を空けて並行配置された一対の他のベッドフレーム部材の間で横方向に伸長され,選択された複数の位置の1つに保持されるように構成され,次のものから成る。
第1の細長い要素であって,一端に隣接して前記第1の要素を前記他のベッドフレーム部材の一方に固定するための第1の手段を有し,前記第1の手10 段は概ね直角な第1と第2の平たい辺部を有し,第2の細長い要素であって,一端に隣接して前記第2の要素を前記一対のすなわち他のベッドフレーム部材の他方に固定するための第2の手段を有し,前記第2の手段は概ね直角な第1と第2の平たい辺部を有し,前記第1の辺部のうちの一方に間隔を空けて長手方向に配置された複数の穴であって,各穴は前記選択可能な位置の15 1つに対応し,前記第1の辺部のうちの他方に設けられた突起であって,前記第1と第2の要素の同類の辺部どうしが相互に面対面で隣接して配置されたときに,前記要素が相互に縦の両方向に移動しないよう保持するために前記穴の1つに係合可能であり,1つの位置が選択されかつ前記要素の辺部どうしが相互に面対面で隣接して配置されたときに,前記要素どうしを分離20 しないよう保持するための協働的なロック手段であって,前記ロック手段は,前記第1の要素の前記第1の辺部に縦に間隔を空けて配置された複数のねじ式の開口を有し,各開口は前記穴の1つに関連づけられかつ前記選択可能な位置の1つに対応し,各ねじ式の開口とそれに関連する各穴の間隔は同じであり,前記第2の要素の前記第1の辺部に設けられたねじ式の開口を有し,25 その開口は前記第1の要素の前記第1の辺部の前記ねじ式の開口と同じ直径を持ち,前記第2の要素の前記第1の辺部の前記開口のねじ山は部分的に111除去されており,さらに,解除可能なロック部材を有し,前記ロック部材は,前記第2の要素の前記第1の辺部の前記開口に受け入れられて,前記第2の要素にねじ手段を永久的に搭載する部分的に除去されたねじ山を持つねじ手段によって成り,前記ねじ手段は,前記第1と第2の要素を分離しないよ5 うするため,前記第1の要素の前記第1の辺部の前記開口の1つのねじ山に螺合可能であり,また,前記ねじ手段は,各ねじ式の開口とそれに関連する各穴との間の間隔に等しい距離だけ前記突起から離れている。
実施例として,別紙図面「引用例」記載3のとおりの図面が添付されている。同実施例において,クロスフレーム部材10は,細長い要素11及び110 2から成り,一対の他のベッドフレーム部材であるサイドフレーム部材17及び18に固定され,クロスフレーム部材10と間隔を空けて平行に構成されたクロスフレーム部材との組合せによりベッドフレームを形成する(2〜3欄)。
? FB730/720について15 ア フランスベッドメディカルサービス株式会社は,平成9年当時,FB730/720を販売していた。業界紙に掲載された広告には,FB730/720について,全長211.5cm(ショートサイズ199cm)である旨記載されている。(乙42)イ フランスベッド株式会社が製造,販売した「FB−730」という製品名20 の介護用ベッド(全長211.5cm)は,その取扱説明書によれば,メインフレーム,床板,ヘッドボード及びフットボード等によって構成され,ヘッドボード及びフットボードは,メインフレームの四隅に設けられた取付穴に差し込む方法により取り付ける。上記取扱説明書に,メインフレームが分解ないし着脱可能であるとか,ベッドの長さを変更可能である旨の記載は見25 当たらない。(甲51)ウ フランスベッド株式会社が平成12年に製造した「FB−730」という112製品名の介護用ベッド(全長211.5cm)のメインフレームのうち,ボードの取付穴の設けられているベッドフレームの短辺に相当する部分(頭側及び足側の部分)を取り外すと,ベッドフレームの長辺に相当する棒状部材にはその長手方向に2つの穴が設けられており,穴どうしの間隔は1.5c5 mである。(乙35,43,44)? 米国特許発明1の内容,同発明と本件発明2−1との対比ア 米国特許発明1の内容前記?によれば,米国特許発明1は,ベッドフレームにおいて,2つの細長い要素のベッドフレームが相互に,調節可能に,複数の位置で係合及び螺10 合するための構造を有する発明であると認められる。
イ 一致点ベッドフレームの棒状部材を有するベッド等における機構。
ウ 相違点本件発明2−1は,ベッドフレームの棒状部材と,その長手方向に着脱可15 能にしたベッドフレームとは別の部材である取付品支持部材に突設した溝形部材とを,複数の位置で係合及び螺合可能に構成した取付品支持位置可変機構であり,その係合及び螺合のための構成を有するものであるのに対し,米国特許発明1は,ベッドフレーム自体を2の部材から構成し,複数の位置で係合及び螺合するための構成を有する調節可能なベッドフレーム構造で20 あり,ベッドフレームとは別の,着脱可能な取付品支持部材及び取付品支持位置可変機構に係る構成は開示されていない点。
エ 上記相違点の認定について本件発明2−1において,取付品支持部材は,ベッドフレーム側の棒状部材に着脱可能に支持されるものであって,ベッドフレーム側の棒状部材とは25 異なるものであると理解することができる。そして,本件明細書2の段落【0041】【0042】における本件発明2−1によりベッドフレームを共通,113化することができるとの記載その他の本件明細書2の記載も,取付品支持部材がベッドフレームとは別の部材であることを前提としているのであり,本件発明2−1の取付品支持部材は,ベッドフレームとは別の部材であると認められる。
5 そうすると,ベッドフレーム自体を2の部材から構成し調整可能な構成をした米国特許発明1と本件発明2−1には,上記の相違点があると認められる。本件発明2−1における取付品支持部材がベッドフレームに含まれることを前提とする被告の主張は理由がない。
? 相違点の容易想到性について10 米国特許発明1と本件発明2−1には,上記?の相違点があるところ,被告は,米国特許発明1に対し,FB730/720に係る発明を組み合わせることで,本件発明2−1を容易に想到することができた旨主張する。
しかし,「FB−730」では,米国特許発明1同様,ベッドフレームで取付品を支持する構成が採用されており,取付品支持部材は存在しない上に,ベッ15 ドフレームの一部を着脱することも想定されておらず,前記?の相違点に係る本件発明2−1の構成を備えていない。そうすると,米国特許発明1に,「FB−730」に係る発明を組み合わせたとしても,相違点に係る本件発明2−1の構成に想到することが容易であるとはいえない。なお,FBのうち「FB−720」という製品の詳細は不明である。また,フレームに係る米国特許発明20 1に対し,フレームとは別の部材を前提とする,上記相違点に係る本件発明2−1の構成を適用することが適宜の設計変更であるとは認められない。
? 米国特許発明1と本件発明2−6及び2−7との対比上記相違点は,米国特許発明1と,本件発明2−6及び2−7の相違点でもあるから,上記と同様の理由により,当業者は,本件発明2−6及び2−7を25 容易に想到できたとは認められない。
? 以上によれば,本件発明2−1,2−6及び2−7と米国特許発明1との間114には相違点があり,本件発明2−1,2−6及び2−7が,米国特許発明1により新規性を失うとはいえず,無効理由2−1についての被告の主張は採用できない。また,当業者において米国特許発明1に基づいて容易に本件発明2−1,2−6及び2−7を想到することができたとは認められず,無効理由2−5 2についての被告の主張は採用できない。
4 争点2−2(本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)のうち無効理由2−3(サポート要件違反)について本件発明2−1,2−6及び2−7は,特許請求の範囲によれば,ベッドフレームの棒状部材と,その長手方向に着脱可能にしたベッドフレームとは別の部材10 である取付品支持部材に突設した溝形部材とを,複数の位置で係合及び螺合可能に構成した取付品支持位置可変機構に係る発明であって,それらの構成は,本件明細書2の発明の詳細な説明(段落【0012】〜【0016】等)に記載されており,また,それらの実施の形態(段落【0023】〜【0039】)も記載されていて,当業者は,本件発明2の課題を解決できると認識できるといえる。そ15 して,当業者は,実施の形態に記載された構成でなくとも,出願時の公知技術等に照らして,部材の形状を工夫するなどすることにより,本件発明2−1,2−6及び2−7の特許請求の範囲に記載された構成をとることで課題を解決できると認識できるといえる。
したがって,本件発明2−1,2−6及び2−7についてサポート要件に違反20 するとは認められない。
5 争点2−3(本件特許権2の侵害行為について被告に過失がなかったか。)について被告が本件製品4を販売する行為は特許権侵害行為であるところ,その行為には過失が推定され(特許法103条),仮に被告が本件特許権2の存在を知らな25 かった等の事情があったとしても,そのことのみで本件特許権2の侵害行為について被告に過失がなかったとはいえないし,他に被告に過失がなかったと認める115に足りる証拠もない。
6 争点2−4(損害の発生及び額,ないし,不当利得の発生及び額)? 特許法102条2項の適用について前記のとおり,被告製品4は,本件発明2−1,2−6及び2−7の技術的5 範囲に属し,これを販売する行為は,特許権を侵害する行為である。
そして,原告は,上記発明の実施品であるベッド(「楽匠S」シリーズ)を販売している(甲73,弁論の全趣旨)。したがって,本件では,原告に,被告による本件特許権2の侵害行為である被告製品4の販売がなかったならば利益を得られたであろうという事情が存在し,特許法102条2項に基づき損害が10 推定される。
? 被告が受けた利益について特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の売上高から,侵害者において侵害品を販売等することによりその販売等に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した利益の額である。
15 ア 被告製品4の売上高について(ア) ベッド本体の販売について被告製品4のフレームは本件発明2−1,2−6及び2−7の技術的範囲に属する取付品支持位置可変機構を具備しているところ,被告製品4のベッド本体は,レギュラータイプ及びショートタイプのいずれについても,20 被告製品4が販売される場合の最小の構成単位は,ベッド本体であり(前記2?) そのベッド本体の販売が,, 本件発明2−1,2−6及び2−7の実施となり,本件特許権2を侵害する。したがって,被告製品4のベッド本体の販売により被告が得た利益は,特許法102条2項の利益といえる。
この点について,被告は,ベッド本体と,ベッドの長さを変更して利用25 するための交換用パーツを同時に販売した場合のみ,利益が発生する旨主張する。
116しかし,本件発明2−1,2−6及び2−7は,取付品支持位置可変機構の発明である。そして,被告製品4は,本件発明2−1,2−6及び2−7の取付品支持位置可変機構を有し,それらのベッドが販売された場合,そのベッドの販売が本件発明2−1,2−6及び2−7の実施となり,交5 換用パーツが同時に販売されているか否か等の事情にかかわらず,本件特許権2を侵害する。そして,特許法102条2項は特許権の侵害があった場合に,それにより被告が得た利益を損害と推定する旨の規定である。当該ベッドの購入の際に,購入者がサイズ交換を予定していて,本件発明2−1,2−6又は2−7の作用効果を奏することを動機として購入したか10 否かなどに関係する事情が上記の損害の推定が覆滅されるか否かの場面において考慮されるとしても,特許法102条2項の上記趣旨に照らせば,同項により損害と推定される範囲の利益の基礎となる売上げの範囲が被告の主張のように限定されることになるとは解されない。被告の上記主張は採用できない。
15 被告は,平成25年4月以降,別紙「損害額」の「被告製品4」の「売上台数」欄記載のとおり被告製品4のベッド本体を販売し,その売上金額は,同「売上金額」欄記載のとおりであったと認められる。
(甲152,250,弁論の全趣旨)(イ) 交換用パーツ,サイドレールについて20 原告は,交換用パーツ,サイドレールの販売により被告が得た利益が特許法102条2項の利益に含まれる旨主張する。
しかし,被告製品4が販売される場合の最小の構成単位は,ベッド本体であり,本件において,交換用パーツやサイドレールは,ベッド本体とは別の製品として販売され,ベッド本体と一体として販売されているといえ25 るものではない(前記2?) そうすると,。 交換用パーツ及びサイドレールの販売による利益が本件特許権2の侵害(直接侵害)に係る特許法102117条2項の利益に含まれるとはいえない。
(ウ) 値引き,歩引きについて被告においては,値引き,歩引きをしていたところ,前記第3の7?ア(エ)に述べたところと同様の理由により,被告製品4についても,特許法5 102条2項の利益額の算定の際の売上額は,値引後及び歩引後の金額とするのが相当である。
被告製品4の値引額及び歩引額は,別紙「損害額」の「被告製品4」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(甲125,乙250,弁論の全趣旨(なお,値引額について,平成25年4月は48万1093円,10 平成26年1月は114万0585円,同年8月は107万3280円,同年9月は214万8057円,同年12月は97万2385円,平成27年3月は172万4055円,同年6月は181万8309円,同年7月は87万4564円,同年9月は105万4464円,同年11月は34万5654円,平成28年2月は46万4052円,同年3月は89万15 8284円,同年4月は43万9927円,同年7月は30万4505円,同年9月は123万2292円,平成29年1月は11万3664円,同年2月は7万6778円,同年3月は4万6050円,同年5月は3万8453円,同年6月は3万6341円であったと認められ,その余の月は証拠上争いがない。))20 (エ) 小括以上から,被告の被告製品4の売上高は,別紙「損害額」の「被告製品4」の当該欄記載のとおりとなる。
イ 控除すべき経費について被告は,被告製品4をプラッツベトナムから仕入れている(前記第2の125 ?イ)。その仕入れのためにプラッツベトナムに対して支払った額は原材料費として控除すべきである。この点について,原告は,仕入価格からプラッ118ツベトナムの内部利益を控除すべきである旨主張するが,前記第3の7?イ(ア)のとおり,理由がない。
また,被告製品4の販売等に要した仕入費用,荷造包装費及び運送費(売上高から控除すべき費用であることは当事者間に争いがない。,) 被告製品45 の製造のために要した金型費,被告製品4の販売前後にその開発の一環として行ったと認められる試作品の製造や各種検査に要した試験研究費,JIS取得費用,被告製品4のチラシの作成費用や展示会出品に要した費用等の広告宣伝費は,被告製品4の販売等に直接関連して追加的に必要となった経費として,売上高から控除すべきであり,その額は,それぞれ別紙「損害額」10 の「被告製品4」の各当該欄記載のとおりであったと認められる。
(甲66,152,乙131,133,135,137,140〜142,169,172,175,176,210,211,229,230,250,弁論の全趣旨)他方,人件費(物流関係),商品開発部の旅費交通費,品質保証費(アフタ15 ーサービス費),人件費(品質部門)は,いずれも,被告製品4の販売等に直接関連して追加的に必要となった経費と認めるに足りる証拠はない。
以上から,被告の被告製品4の利益は,別紙「損害額」の「被告製品4」の各当該欄記載のとおりとなる。
? 推定覆滅事由について20 ア 掲記の証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成23年12月,被告製品4のレギュラータイプ及びショートタイプの販売を開始した。平成24年の被告製品の総合カタログでは,被告製品4について,製品の特徴として,「医学的配慮」「安全性への配,慮」 操作性への配慮」 組立設置アフタサービスへの配慮」,「 ,「 が掲げられ,25 それぞれ,「5つの機構により,背上げ時に発生する「背圧・腹圧・ズレ」の低減・緩和を目指しました。,」「JIS規格は勿論,様々な事故事例,ヒ119ヤリハットを参考に0から設計を見直しました。,」「片麻痺の方など障がいをお持ちの方に配慮した手元スイッチ,伝い歩きを考慮したボード形状を目指しました。,」「レンタルベッドとして求められる,組立設置,アフターサービスのしやすさを追求しました。」と記載されている。そして,「背5 上げ時に発生する「背圧・腹圧・ズレ」に配慮した5モーション機構」として,「利用者の膝の位置に合わせ,曲がる位置を調節できる2段階フィッティング機構」その他の5つの機構が説明されている。そして,その後ろに,「Point!」として,4つの事項が記載されている。その3番目に,「使用される方の身長や部屋の大きさに合わせ,レギュラーサイズと10 ショートサイズをご用意しました。,」「背ボトム・脚ボトムのみの購入で,全長サイズをレギュラーサイズからショートサイズへ切替が可能。」などの記載がされ,レギュラータイプとショートタイプの全長が掲げられ,また,「サイズの切替可能」との記載や人が横たわっているベッドの図が掲載されていた。(甲55)15 (イ) 被告製品4は,主に介護ベッドとして使用され,このような介護ベッドは,レンタル業者等が購入し,最終的にベッドの利用者にレンタルされている。原告が販売する「楽匠S」シリーズも同様である。(甲73)(ウ) 被告製品4のレギュラータイプの販売は,3万4539台であったのに対し,ショートタイプの販売は,3614台であった。(乙250)20 (エ) 被告は,被告製品4の売上げの上位50社(これらの売上金額は被告製品4の売上総額の95%を超える。)に対してヒアリングをした。それによると,被告製品4について,売上げ上位50社に対し,合計3万7373台が販売され,そのうち,最終的に個人・介護施設へ販売されたものが761台であり,その余がレンタル業者等へ販売されたものだ25 った。レギュラータイプのみを購入したレンタル業者等は22社で,そのレギュラータイプの販売台数は,3609台であり,そのうち,ショ120ートタイプにするための交換用パーツを購入したレンタル業者等はなかった。ショートタイプのみ購入したレンタル業者等はいなかった。他のレンタル業者等は,レギュラータイプとショートタイプの双方を購入していた。これらのレンタル業者等の中には交換用パーツを購入した業5 者もおり,その交換用パーツの総数(不具合対応のために購入と回答した台数を除く。)は,合計12セットであった。
(乙214〜216,251〜254)。
イ 本件発明2は,床長の異なるベッド等を構成するため,ベッドフレームの棒状部材の長手方向に取付品支持部材を着脱可能に支持する構成として,取10 付品支持部材に棒状部材を突設し,棒状部材と溝形部材に係合と螺合の位置を複数構成するなどの本件発明2の各構成を有することで,作業性の向上,製造,管理及び購入コストの低減等の効果を奏するようにしたものである。
ここで,被告製品4においては,総合カタログにおいて,膝フィッティング機能をはじめとする複数の機能がまず記載され,その後に記載されている15 複数の特徴の1つとして,体格に応じたベッドのサイズを用意したことが記載されていた(前記ア(ア))。
本件発明2−1,2−6及び2−7について,ベッドの利用者においてベッドの全長を異にした態様で利用して事実上上記の発明の効果を享受するのは,利用しているタイプとは異なるタイプのベッドに対応した背ボトム等20 からなる交換用パーツを用いてベッドの全長を変更した場合であるともいえるところ,交換用パーツが販売された数は,被告製品4全体の販売台数に比べると極めて少ないことがうかがわれる(同(エ))。被告製品4はほとんどがレンタル業者等により購入されていて(同(イ),(エ)) レンタル業者等にお,いて,交換用パーツの購入とは別に,購入したベッド本体を部品ごとに管理25 するなどして,タイプの異なるベッドに対応した背ボトム等を適宜利用することもあり得るのであるが(前記第3の7?イ(キ)),そもそも被告製品4の121ショートタイプのベッド本体の販売数が,レギュラータイプの販売台数に比べて相当少なく(前記ア(ウ)),上記のような管理を基礎とした背ボトム等の利用がされるとしても,その数は全体の販売台数に対して相当に限られる。
以上によれば,被告製品4は,そのカタログ等において,本件発明2−1,5 2−6及び2−7とは別の機能が強調されていて,相当数が本件発明2−1,2−6及び2−7とは別の機能等の特徴に惹かれて購入されたことがうかがわれる。そのことに加えて,本件発明2−1,2−6及び2−7は,被告製品4のタイプを同じくするベッド本体を購入しただけではベッドの利用者においては事実上その効果を奏しないという特徴があるともいえるとこ10 ろ,上記の販売台数からすると,ベッドの利用者において事実上本件発明2−1,2−6及び2−7の効果を奏する形で使われたのは全体の販売台数のうちの極めて限られた台数と認められるのであり,このことからも,販売された被告製品4の大部分は,本件発明2−1,2−6及び2−7とは別の機能等の特徴に惹かれて購入されたものと認めることができる。このような被15 告製品4が本件発明2−1,2−6及び2−7の実施に係る部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力等の事情を考慮すると,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を大きく阻害する事情があるといえ,侵害者が得た利益の9割について,その推定が覆滅するとするのが相当である。
20 ウ 被告は,被告が被告製品4の販売において利益を得たといえるのは,ベッド本体と交換用パーツを同時に販売した場合に限られ,その余の販売での利益額が原告の損害額とはいえないことや,被告製品4には多くの機能があることから,本件発明2の実施が寄与した割合は極めて低い旨主張する。
しかし,被告製品4のベッド本体の販売が本件発明2−1,2−6及び225 −7の実施といえ,推定の覆滅については被告に主張立証責任があるところ,被告は,被告製品4のフレームの長さの変更ができることをベッドの図を掲122載するなどしてカタログ等で記載しているのであり,実際にはベッドの全長を変更しなかった場合であっても,上記記載に基づいて購入された場合もあり得ること,被告製品4の購入者の特性から交換用パーツを購入しなくともレギュラータイプ及びショートタイプ双方のベッド本体を購入すれば本件5 発明2−1,2−6及び2−7の効果を奏するようなフレームの長さの変更をし得ることなどから,推定は大きく覆滅するとは認められるが(前記イ),被告が指摘する場合以外の販売に係る利益についての推定が全て覆滅するとまでは認めるに足りない。
エ そうすると,特許法102条2項によって推定される被告の本件特許権210 の侵害により原告が受けた損害の額は,別紙「損害額」の「被告製品4」の「損害額」欄記載のとおりとなる。
? 弁護士費用原告が,本件特許権2の侵害について本訴を追行するために要した弁護士費用のうち,別紙「損害額」の「被告製品4」の「弁護士費用」欄記載の額は,15 被告の不法行為相当因果関係のある損害として被告が負担すべきである。
? 小括以上から,被告の本件特許権2の侵害により原告が受けた損害額は, 「損別紙害額」の「被告製品4」の「合計」欄記載のとおりとなる。
? 不当利得の発生及び額について20 仮に,被告が被告製品4の販売により法律上の原因なく利益を受け原告に損失を与えたとしても,同不当利得の額は,前記?の損害額を超えない。
7 争点2−5(原告が平成23年12月までに被告製品4の販売による損害の発生を知ったか。)被告は,平成23年10月5日から同月7日まで,平成24年9月26日から25 同月28日まで,平成25年9月18日から同月20日まで,「国際福祉機器展H.C.R」に,平成24年4月19日から同月21日まで,平成25年4月11238日から同月20日まで,平成26年4月17日から同月19日まで,「高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展バリアフリー」に,それぞれ被告製品4を出展した。上記の各展示会には原告も参加しており,原告の展示ブースが被告の展示ブースに近接して設けられていたこともあった。(乙92〜114)5 もっとも,上記事実に加え,被告製品4の構成等被告が指摘する事情を考慮しても,原告が,被告が被告製品4の販売を開始した平成23年12月の時点で,被告製品4が本件発明2−1,2−6及び2−7の技術的範囲に属するものであり,その販売によって本件特許権2が侵害されるものであることを認識したとは直ちには認められず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
10 原告が平成23年12月までに被告製品4の販売による損害の発生を知ったとは認められない。
8 第4の結論以上から,原告は,被告に対し,被告の被告製品4の販売による本件特許権2の侵害につき,不法行為による損害賠償請求権に基づき,1億0928万44515 4円及びうち別紙「損害額」の「被告製品4」の年ごとの「合計」欄記載の各額に対する各翌年1月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
第5 本件特許3に関する当裁判所の判断1 本件発明3について20 ? 本件明細書3の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。なお,図面は別紙図面「本件特許3」記載のとおりである。(甲8)【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ベッドの背の部分及び膝の部分等を上げたり,下げたりすることができる電動ベッドにおいて,ベッド全体を昇降することができる電動ベッドに関する。
25 【0002】【従来技術】介護用ベッドは,フレーム上に,例えば,背ボトム及び膝ボトムを配置し,背ボトムをその膝ボトム側の部分を中心として回動可124能に設け,膝ボトムをその背ボトム側の部分を中心として回動可能に設けており,アクチュエータにより,背ボトム及び膝ボトムを駆動することにより,ベッドの背の部分及び膝の部分を上げたり,下げたりすることができるようになっている。また,介護用ベッドは,その全体もアクチュエータにより駆5 動されて昇降することができるようになっている。これにより,患者がベッド上に横たわっている場合には,寝返りを打ってベッドから落下した場合の衝撃を軽減するために,ベッド全体を下降させて下位置(例えば,マットレスの上面が床から250mm)に設定し,患者を診察又は介護する場合には,介護者が患者に対して診察又は介護しやすいように,ベッド全体を上昇させ10 て上位置(例えば,マットレスの上面が床から600mm)に設定することができる。
【0003】このような電動ベッドにおいて,背ボトム及び膝ボトムを上昇下降させる場合及びベッド全体を昇降させる場合には,操作ボックスに設けられたスイッチボタンを押すことによって,アクチュエータが動作して,この15 アクチュエータに駆動されて背ボトム,膝ボトム及びベッドフレームが移動する。
【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,近時,電動ベッドは柵等の種々の付属品をフレームに取り付けるようになっており,フレームの構造自体が上下に大きなものになっている。このため,フレームの下端と20 床との間の隙間が小さくなっており,ベッド全体を下降させるために,アクチュエータを駆動してフレームを下降させると,患者又は介護者の足を挟んでしまう危険性が増えてきた。しかし,従来の電動ベッドはこのようにベッド全体を下降させたときの問題に対する対策がなされていなかった。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって,ベッドを25 下降させたときに,フレームと床との間で,介護者又は患者の足を挟んでしまうことを防止することができる電動ベッドを提供することを目的とする。
125【0006】【課題を解決するための手段】本発明に係る電動ベッドは,寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LH(例えば,床高さで600mm)と下位置LL(例えば,床高さで250mm)との間で前記フレー5 ムを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する制御装置と,スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,前記フレームの上位置LHと下位置LL10 との間の中間停止位置LM(例えば,床高さで290mm)で,前記フレームを一旦停止させた後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させることを特徴とする。なお,床高さとは,ベッドの上にマットレスを敷いた場合に,そのマットレスの上面の床15 からの高さである。
【0007】本発明に係る他の電動ベッドは,寝床部を支持するベッドフレームと,床上に設置される台部と,この台部と前記フレームとの間に配置され前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間で前記フレームを昇降移動させる昇降装置と,この昇降装置による前記フレームの昇降駆動を制御する20 制御装置と,スイッチ操作により前記フレームの昇降が指示されたときに前記制御装置に前記フレームの昇降を指示する信号を出力する操作ボックスとを有し,前記制御装置は,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときに,そのときの前記フレームの位置が,前記上位置LHと前記中間停止位置LMとの間の予め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合に,前記25 フレームを降下させた後,前記中間停止位置LMで一旦停止させた後,前記操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレー126ムの下降スイッチが押下された場合に更に前記フレームを前記下位置LLまで下降させるものであり,前記操作ボックスから下降信号が入力されたときの前記フレームの位置が,前記特定位置LSよりも低い場合に,前記フレームを前記中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させるこ5 とを特徴とする。
【0008】【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る電動ベッドの構造を示す斜視図,図2は同じくその正面図,図3はそのリンクの動作を示す図である。台車7上に頭側及び足側の2つのリンク装置10及び11を10 介して,フレーム1が支持されている。フレーム1には,背ボトム2,背湾曲部(図示せず),腰ボトム3,膝ボトム4,膝湾曲部5及び足ボトム6がこの順に配置されている。背ボトム2は膝ボトム4側を中心として回転可能にフレーム1に設置されており,膝ボトム4は背ボトム2側を中心として回転可能にフレーム1に設置されている。腰ボトム3は固定されており,足ボト15 ム6は膝ボトム4の上昇下降にあわせて連動して上下動する。背湾曲部及び膝湾曲部5は湾曲してその両側の各ボトムを滑らかに連結するものであり,両者は同一の構造を有する。フレーム1の下部に設置されたアクチュエータ13,14は夫々膝ボトム4及び背ボトム2を駆動するものである。
【0009】台車7の4隅部には,車輪8が配置されていて,台車7を任意の20 方向に移動させることができるようになっている。また,台車7の頭側の端部及び足側の端部には,夫々ベッド幅方向に離隔する各1対のリンク支持部20,21が固定されている。頭側のリンク支持部20の上端には,頭側のリンク装置10が支持され,足側のリンク支持部21に上端には,足側のリンク装置11が支持されている。
25 【0010】リンク装置10においては,リンク22がリンク支持部20の上端(固定支点F1)に回動可能に連結されている。また,フレーム1におけ127るリンク支持部20に整合する位置には,1対のフレーム支持部27(図1のみ図示)が下方に突出するように固定されており,この1対のフレーム支持部27の下端(固定支点F2)にはベッド幅方向に延びる回転軸31が架け渡されて回転可能に支持されている。リンク22の上端はこのフレーム支5 持部27に支持された回転軸31に固定されており,従って,リンク22はこの固定支点F2を中心として揺動することができる。また,この回転軸31には,1対のリンク23の下端が固定されており,リンク22とリンク23とが所定の一定角度をなして回転軸31に固定され,固定支点F2に連結されている。これにより,リンク22,23は前記所定角度を維持したまま,10 固定支点F2の周りに回転する。
【0011】フレーム1の下面にはアクチュエータ12が設置されており,アクチュエータ12のピストンロッドの先端がリンク24を介して移動支点M1によりリンク23の上端に回転可能に連結されている。
【0012】また,リンク装置11においては,リンク支持部21の上端(固15 定支点F3)に,リンク25が回転可能に連結されている。そして,フレームの足側のリンク支持部21に整合する位置には,ベッド幅方向に離隔する1対のフレーム支持部28が下方に突出するようにして固定されており,フレーム支持部28間には回転軸32が架け渡されて回転可能に支持されている。そして,リンク25の上端がこの回転軸32に固定されている。これ20 により,リンク25は回転軸32を介してフレーム支持部28(固定支点F4)に回転可能に支持されている。
【0013】回転軸31及び回転軸32には,夫々リンク29及び30が固定されており,このリンク29及び30間に,連絡棒26がリンク29,30に対して回転可能に連結されている。従って,回転軸31が回転すると,回25 転軸32はリンク29,30及び連絡棒26を介して回転軸31に従動して回転する。
128【0014】従って,アクチュエータ12のピストンロッドがシリンダ内に退入すると,リンク24を介してリンク23を図2上で時計方向に回転させ,リンク23に固定された回転軸31(図1参照)を同様に時計方向に回転させる。これにより,連絡棒26及びリンク30を介して回転軸31に連結さ5 れた回転軸32も時計方向に回転する。そして,回転軸31に固定されたリンク22及び回転軸32に固定されたリンク25が夫々固定支点F2及び固定支点F4を中心として時計方向に回転する。これにより,固定支点F1及び固定支点F3がフレーム1に近づく方向に移動し,結局,フレーム1と台車7との間隔が短くなり,フレーム1が下降する。フレーム1を上昇させ10 る場合には,アクチュエータ12のピストンロッドを進出させることにより,前述と逆の回転により,フレーム1と台車7との間隔が大きくなり,フレーム1が上昇する。
【0015】フレーム1の高さは,図2に示すリンク機構により,アクチュエータ12のピストンロッドの進出長から幾何学的に算出することができる。
15 即ち,移動支点M1の位置がわかると,リンク23及び22の角度がわかり,リンク22及び23の長さから,幾何学的計算により,フレーム1と台車7との間隔,即ち,フレーム1の床からの高さを算出することができる。
【0016】ピストンロッドの位置を検出する方法としては,例えば,ピストンロッドの進出退入に伴い変化する抵抗を測定するポテンショメータと,モ20 ータ回転量を検出し,又はモータの回転速度を所定値に制御しこのモータ回転速度に動作時間を積算してモータ回転量を求め,これによりピストンロッドの位置を検出するものとがある。モータ回転量を検出するセンサとしては,モータ回転軸等の運動機構にスリット円板を取付け,発光ダイオードからの光がスリット円板で遮られたり通過することで,回転角度又は回転数を計測25 するもの,ホール素子を利用して磁気的に回転数を検出するもの,モータの回転に伴い変化する抵抗を測定するポテンショメータがある。更に,モータ129の回転速度を制御するセンサとしては,モータの回転に伴う逆起電圧を検出して電力制御することによりモータを一定速度で回転させ,この回転速度で回転した動作時間を積算してモータ回転量を求めるもの,モータにタコジェネレータ(発電機)を連結し,発生電圧を検出してモータを一定速度で回転5 するように電力制御し,この回転速度で回転した動作時間を積算してモータ回転量を求めるものがある。
【0017】このアクチュエータ12のピストンロッドの位置を検出するセンサ(図示せず)の検出結果は,制御装置(図示せず)に入力され,制御装置は,このピストンロッドの位置に基づいてアクチュエータ12の駆動を制御10 する。操作ボックス(図示せず)には,ベッドの上昇及び下降を指示するスイッチが設けられており,このベッドの上昇及び下降を指示する信号は制御装置に入力される。
【0018】次に,上述のごとく構成された電動ベッドの動作について説明する。図4は本実施形態の動作を示す制御装置のフローチャート図,図5はフ15 レーム高さの変化を示す図である。先ず,床高さで,ベッドの上位置LHが600mm,下位置LLが250mmであり,ベッドの昇降によりこの250mmと600mmとの間を上下するとする。そして,中間停止位置LMを290mm,特定位置LSを300mmとする。この場合に,現在のフレーム高さL(アクチュエータのピストンロッドの位置検出結果から求まる)が,20 床高さで,LS(300mm)以上か否かを判断し(ステップS1),LがLS以上である場合に,操作ボックスのベッド下降スイッチがオンか否かを判断し(ステップS2) 下降スイッチがオンの場合に,, アクチュエータ12のピストンロッドを退入させて,フレーム1の下降動作を開始する(ステップS3)。これをフレーム高さLがLMに低下するまで継続する(ステップS25 4) 但し,。 途中で,下降スイッチがオフになった場合にはフレームの下降を停止し(ステップS2),ステップS1に戻る。
130【0019】そして,フレーム高さLが中間停止位置LM(床高さで290mm)まで低下した場合に(ステップS4) フレーム1の下降を一旦停止する,(ステップS5)。そして,ブザーを鳴らして警報する(ステップS6)。
【0020】その後,ベッド下降スイッチがオンか否かを判断し(ステップS5 7),ベッド下げスイッチがオンのままの場合には,ベッド下降の停止状態を継続する(ステップS8)。操作ボックスのベッド下降スイッチがオフになった場合に(ステップS7) ステップS1に戻り,, そのときのフレーム高さLが当然にLS未満であるので,ステップS9に移る。そして,ベッド下降スイッチが再度オンになった場合に,ベッド下げ動作(フレーム下降動作)10 を再開する(ステップS10) そして,。 フレーム高さLが下位置LLに達するまで,フレームを下降させる(ステップS11)。このように,ステップS5でフレーム下降が一旦停止した後,操作者が操作ボックスのベッド下降スイッチの押し状態を解除し(ステップS7のNo) その後,, 再度ベッド下降スイッチを押下した場合に(ステップS9のYes),ベッド下げ動作が再15 開され,フレーム下降が一旦停止した後,操作者がベッド下降スイッチを一旦解除しない限りは,フレームの下降が再開されないようになっている。
【0021】このときのベッド下降パターンを図5の▲1▼に示す。即ち,下降開始時のベッド高さL(例えば,600mm)が,特定位置LS(例えば,300mm)より高い場合は,一旦中間停止位置LM(例えば,290mm)20 で下降を停止し,その後,操作者が再度下降ボタンを押したときに,最下位位置LL(例えば,250mm)まで下降する。なお,上記例におけるベッド高さとは,床面と,フレーム1の縁部の下面との間の距離である。また,特定位置LSは,中間停止位置LMよりも若干高い位置である。中間停止位置LMは,フレーム1と床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟25 み込み等が生じないような高さであり,これ以上フレーム1が下降すると,足を挟み込んでしまうような高さである。本実施形態においては,上述のよ131うに,ベッドを下降させた場合に,一旦中間停止位置LMで停止するので,フレーム1の下方に足が存在しないことを確認した後,操作者が再度下降ボタンを押した場合に,ベッドを最下位位置LLまで下降させるので,介護者又は患者の足を挟み込んだり,周辺機器を挟み込んでしまうことを確実に防5 止することができる。
【0022】一方,操作者が操作ボックスのベッド下降スイッチを押したときに,既に,フレーム1の高さLがLS(床高さで300mm)未満である場合は(ステップS1) ステップS9に移り,, ベッド下降スイッチがオンか否かを判断し,ベッド下降スイッチがオンである場合に,フレーム1の下降動10 作を開始する(ステップS10) このフレーム1の下降は,。 フレーム高さLが低位置LL(床高さで250mm)に低下するまで継続し,ベッド高さが一気に下位置LLまで下降する(ステップS11) 従って,。 ベッド高さLがフレーム1の中間停止位置LMを通過しても,ベッドの下降は停止しない。
ステップS9でベッド下降信号が入力されていないと判断されると,ベッド15 の下降は停止したまま,ステップS1に戻る。フレーム高さLが低位置LLまで低下した時にベッドの下降を停止する(ステップS12)。
【0023】この下降パターンは図5の▲2▼又は▲3▼に示す。即ち,▲2▼のパターンのように,下降信号を入力した時点のベッド高さ位置Lが特定位置LS(300mm)より低い場合には,ベッドは,中間停止位置LM(220 90mm)で停止することなく,最下位位置LLまで下降する。これは,下降スイッチが押された時点で,既に相当低い位置まで下降しており,その後,中間停止位置LMで停止しなくても,足の挟み込みが生じる虞はなく,また,操作者が下降スイッチを押した後,すぐに,ベッドが停止してしまうと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまう。このため,この場合25 は,中間停止位置LMで停止させない。
【0024】なお,下降スイッチが押された時点で,ベッド高さLが既に中間132停止位置LMより低い場合(図5の▲3▼)は,ステップS1にて,LがLS未満であるので,ベッドは,当然に,最下位位置LLまで一気に下降する。
【0025】上述のように,本実施形態によれば,ベッド下降時に,ベッドのフレーム1と床との間に,介護者又は患者の足を挟み込んだり,周辺機器を5 挟み込む事故を確実に防止することができる。なお,本発明は,上記実施形態のように,背ボトム及び膝ボトムが回動する介護用ベッドに限らず,種々の電動昇降ベッドに適用することができることは勿論である。また,フレームの昇降装置は,上述の実施形態のように,リンク装置及びこれを駆動するアクチュエータに限らず,アクチュエータのような駆動装置が直接フレーム10 を昇降させるような構造としてもよい。
【0026】【発明の効果】以上,詳述したように,本発明によれば,ベッドの下降操作信号が入力されたときに,フレーム高さが所定高さになった時点で,フレーム下降が一旦停止するので,ベッド下降時に,介護者又は患者がフレームと床との間に足を挟んでしまう事故を確実に防止することができる。
15 ? 本件特許3の審査経過等ア 審査官は,平成20年1月28日,本件特許3に係る原告の特許出願について,本件発明3は,当業者が特開2000−24056号公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができるものであり,また,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合しないものであるとの理由20 により,拒絶をすべき旨の査定をした。
原告は,拒絶査定不服審判の請求をした上,同年4月4日,構成要件3−1G及び3−2Gの「における下降スイッチの押し状態が解除された後,再度フレームの下降スイッチが押下された」の部分を加えるなどの補正をし,「フレーム下降操作において,下降スイッチの押し状態が継続された場合に25 おいても,フレームが中間停止位置LMまで降下したときには,制御装置は,強制的に(自動的に)フレームの下降を停止させる。つまり,…操作者がス133イッチ操作してベッドの下降信号を制御装置に入力しつづけたとしても,フレームは中間停止位置LMで強制的に停止される。…その後,操作者が,操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態を一旦解除し,その後,再度フレームの下降スイッチを押下した場合に,フレームの再下降が開始される。
5 換言すれば,操作者が下降スイッチの押し状態を一旦解除しない限り,フレームの下降は再開しない。,」「本発明は,…自動的(強制的)にベッドの下降を中間停止位置LMで停止させ,操作者に安全を確認させるものであり,そのため,操作ボックスにおける下降スイッチの押し状態を一旦解除し,その後,再度フレームの下降スイッチを押下した場合に,フレームの再下降が開10 始されるように構成したものである。」等と主張した。
本件特許3は,同年6月20日,設定の登録がされた。
(本項につき,甲8,乙22〜24)イ フランスベッド株式会社は,平成22年5月17日,本件特許3について,特許無効審判を請求した(無効2010−800092)。
15 原告は,同年12月20日,構成要件3−1F及び3−1G並びに3−2F及び3−2Gの「前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,,」「前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ,その後」の部分,構成要件3−2Hの「前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,」の部20 分,構成要件3−1G及び3−1H並びに3−2H及び3−2Iの「ものであり,前記中間停止位置LMは,前記フレームと床との間に,介護者又は患者の足が存在しても,挟み込みが生じないような高さである」の部分を加える等の訂正をすることについての訂正請求をした。
平成23年3月25日,上記の訂正を認める,審判の請求は成り立たない25 旨の審判がされた。
(本項につき,甲9,10,乙25〜27)134? 本件明細書3の記載によれば,本件発明3は,次のような技術的意義を有すると認められる。
本件発明3は,ベッド全体を昇降することができる電動ベッドに関する発明である(段落【0001】。近時,電動ベッドはフレームの構造が上下に大型)5 化し,フレームの下端と床との間の隙間が小さくなったことにより,フレームを下降させたときに患者等の足を挟み込む危険性が増えているが,従来,上記の問題に対する対策がされていなかった(段落【0002】〜【0004】。
)そこで,本件発明3−1は,上位置LH(例えば,床高さで600mm)と下位置LL(例えば,床高さで250mm)との間でフレームを昇降移動させ10 ることができる電動ベッドにおいて,下降スイッチが押されたときに上位置LHと下位置LLとの間の中間停止位置LM(例えば,床高さで290mm)でフレームを一旦停止させ,下降スイッチの押し状態が解除された後,再度下降スイッチが押された場合に更にフレームを下位置LLまで下降させることを特徴とするものであり,これにより,フレームと床との間で患者等の足を挟み15 込むことを防止するという効果を奏するようにしたものである(段落【0005】【0006】【0025】【0026】。
)また,本件発明3−2は,フレームの位置が上位置LHと中間停止位置LMとの間の予め定められた特定位置LSかそれよりも高い場合には,下降スイッチが押されたときに中間停止位置LM(例えば,床高さで290mm)で一旦20 停止させ,下降スイッチの押し状態が解除された後,再度下降スイッチが押された場合に更に下位置LLまで再下降させるが,フレームの位置が特定位置LSよりも低い場合には,フレームを中間停止位置LMで停止させずに下位置LLまで下降させることを特徴とするものであり,フレームが中間停止位置LMよりも若干高い位置である特定位置LSすなわち既に相当低い位置まで下降25 している場合には,中間停止位置LMで停止しなくても足の挟み込みが生じるおそれはない一方,下降スイッチを押してすぐにベッドが停止してしまうと,135操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまうことから,中間停止位置LMで停止させないこととしたものである(段落【0007】【0023】。
)2 争点3−1(被告製品6が本件発明3−1の技術的範囲に属するか,また,仕様変更前の被告製品6が本件発明3−2の技術的範囲に属していたか。)につい5 て? 被告製品6が本件発明3−1の技術的範囲に属するかについてア(ア) 構成要件3−1Fは,「前記制御装置は,前記操作ボックスから前記フレームの下降信号が入力されたときに,前記操作ボックスの下降スイッチの押し状態が継続している間,前記フレームを下降させるが,前記フレー10 ムの上位置LHと下位置LLとの間の中間停止位置LMで,前記下降スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ」というものである。
そして,本件明細書3の記載に照らし,従来の技術では,電動ベッドでフレームを下降させた場合,フレームの下端と床との間が隙間が小さくな15 ったことにより,患者等の足を挟み込む危険性が増えていることから,本件発明3−1は,下降スイッチが押し状態であっても,フレームを一旦停止させることとしたものである。そして,本件発明3−1は,一旦停止後,下降スイッチの押し状態が解除され,再度フレームの下降スイッチが押下された場合に,フレームを更に下降させるものである(構成要件3−1G)。
20 (イ) 上記の点に関係し,被告は,構成要件3−1F及び3−1G,本件明細書3の記載によれば,構成要件3−1Fは,下降スイッチの押し状態が解除されない場合には中間停止位置における停止状態が継続することを意味するものと限定解釈されるべきであり,構成要件3−1Fは,「前記フレームの上位置LHと下位置LLとの間の中間停止位置LMで前記下降25 スイッチが押し状態であっても前記フレームを一旦停止させ(前記下降スイッチの押し状態が解除しない限り,再度,下降しないものであるが)」,136と読み替えられる旨主張する。
しかし,構成要件3−1Fは,下降スイッチの押し状態であっても,特定の位置で,フレームが「一旦停止」することを定めるが,その一旦停止に関係して被告のような限定を付す文言はない。すなわち,本件発明3−5 1は,「一旦停止後」後,フレームを更に下降させる場合,下降スイッチの押し状態が解除され,再度フレームの下降スイッチが押下された場合であることを定めるところ(構成要件3−1G),そのような構成を有する電動ベッドについて,その構成に加えて「一旦停止後」にそれとは別の動作によって,フレームが更に下降することがある場合にそれが構成要件3−10 1Fを満たさないことを定める文言はない。
本件明細書3には,実施例について,「フレーム下降が一旦停止した後,操作者が操作ボックスのベッド下降スイッチの押し状態を解除し…,その後,再度ベッド下降スイッチを押下した場合に…,ベッド下げ動作が再開され,フレーム下降が一旦停止した後,操作者がベッド下降スイッチを一15 旦解除しない限りは,フレームの下降が再開されないようになっている。」との記載がある(段落【0020】)ものの,それはその実施例についての記載である。そして,本件発明3−1は,下降スイッチが押し状態であっても,フレームを一旦停止させることにより,従来の技術の課題を解決したものであるところ,「一旦停止」した後,フレームが更に下降するための20 構成について,本件特許3の出願時に,複数の構成が知られていたとは認められず,本件明細書3に,そのための構成として,構成要件3−1Gの構成に加えてそれ以外のフレームが更に下降するための構成も有している場合は本件発明3−1の技術的範囲に入らなくなることを前提とする記載や,それを示唆する記載もない。そして,「一旦停止」すれば,その後,25 フレームが更に下降するための構成として,構成要件3−1Gの構成に加えて,例えば,その後下降スイッチを2秒継続して押し続けるという構成137を有する場合(後記?イ)であっても,「一旦停止」がされてその後にフレームが更に下降するための一定の構成を有することにより従来技術の課題を解決できるといえ,構成要件3−1Gの構成を有することが無意味になるわけではない。そうすると,例えば,「一旦停止後」,フレームが更に5 下降するために下降スイッチを2秒継続して押し続けるという構成を有することにより,構成要件3−1Gの構成を有する製品について,構成要件3−1Fを充足しなくなるとは認められない。
前記の審査経過等における補正等は,「一旦停止後」に本件発明3−1が構成要件3−1Gの構成を有することに関するものではあるが,「一旦10 停止後」の構成として構成要件3−1Gとは別の構成を有する場合について問題となっていた状況でされたものではなく,構成要件3−1Gとは別の構成を想定した上でその別の構成によりフレームが更に下降するベッドが本件発明3−1から排除されることを前提としているものとは解されない。構成要件3−1Fに関する被告の主張は採用できない。
15 イ 被告製品6は,制御装置によって,ベッドフレームの一部であるベースフレームに取り付けられた昇降モータの昇降駆動を制御し,ベースフレームを昇降移動させる電動ベッドであり,手元スイッチの「高さボタン」を押すことによって制御装置にベースフレームの昇降を指示する信号が出力される。
ベースフレームは,床面高57cmから15cmまで昇降させることができ,20 「高さボタン」のうちフレームの下降を指示する下降スイッチの押し状態を継続してフレームを下降させた場合,フレームの床面高が24cmになるとブザーを鳴らして下降を停止する。
その後,下降スイッチから手を離して再度下降スイッチを押すと,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる。また,床面高が24cm25 の位置で下降を停止した後,そのまま約2秒以上下降スイッチの押し状態を継続すると,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させる。(甲13821,22,23)ウ 前記イのとおり,被告製品6は,制御装置によって,ベッドフレームの一部であるベースフレームに取り付けられた昇降モータの昇降駆動を制御し,ベースフレームを昇降移動させる電動ベッドであり,手元スイッチの「高さ5 ボタン」を押すことによって制御装置にベースフレームの昇降を指示する信号が出力され,ベースフレームは,床面高57cmから15cmまで昇降させることができ(構成要件3−1A〜3−1E,3−1I) 「高さボタン」,のうちフレームの下降を指示する下降スイッチの押し状態を継続してフレームを下降させた場合,フレームの床面高が24cmになるとブザーを鳴ら10 して下降を停止し(構成要件3−1F) その後,, 下降スイッチから手を離して再度下降スイッチを押すと,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させるものであり(構成要件3−1G),上記の床面高が24cmとの位置は,床との間に患者等の足が存在しても挟み込みが生じない高さである(構成要件3−1H)。
15 これらによれば,被告製品6は,本件発明3−1の技術的範囲に属すると認められる。
なお,被告製品6は,中間停止位置で下降を停止した後,そのまま約2秒以上下降スイッチの押し状態を継続すると,ブザーを鳴らしながらフレームを最低位まで下降させるが,下降スイッチから手を放して再度下降スイッチ20 を押して最低位まで下降させるという構成に加え,このような構成を備えているからといって,被告製品6が本件発明3−1の技術的範囲に属さないことになるものではない。
? 仕様変更前の被告製品6が本件発明3−2の技術的範囲に属していたかについて25 ア 構成要件3−2Aから3−2E,3−2G,3−2I,3−2Jは,それぞれ,構成要件3−1Aから3−1E,3−1G,3−1H,3−1Iと同139じであり,前記?によれば,被告製品6は,構成要件3−2Aから3−2E,3−2G,3−2I,3−2Jを充足する。
構成要件3−2F及び3−2Hは,「特定位置LS」に係る構成であるところ,原告は,中間停止位置の1mmよりも上で3mmよりも低い位置の間5 (おそらく中間停止位置よりも2.2mm高い位置近傍)を特定位置LSとして設定していると考えられると主張する。
構成要件3−2F及び3−2Hについて,「特定位置LS」とは,中間停止位置LMで停止しなくても足の挟み込みが生じるおそれがない相当低い位置と評価される,中間停止位置LMよりも若干高い位置であり,下降スイッ10 チを押してすぐにベッドが停止してしまうと,操作者は装置の故障等を疑い,操作を煩雑にしてしまうことから,下降スイッチが押されたときに,フレームが特定位置LSより低い位置にある場合には,中間停止位置LMで停止させないこととしたものである(前記1?)。
したがって,特定位置LSは,中間停止位置LMよりも若干高い位置で,15 これより低い位置からフレームが下降した場合には,中間停止位置LMで停止しなくても,患者等の足の挟み込みが生じるおそれがない位置を意味するものと解される。
本件明細書3には,実施例として,中間停止位置LMより10mm高い位置に特定位置LSを設ける形態が記載されている(段落【0018】等)も20 のの,1つの例を示したものにすぎず,上記の意義を有する位置であれば,特定位置LSといえると解される。被告は,特定位置LSが,中間停止位置LMより10mm上方の場合に限定解釈されると主張するが,理由がない。
ウ 証拠(各項末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,仕様変更前の被告製品6について,次の各事実が認められる。
25 (ア) 原告従業員が,被告製品6のフレームを下降させ,所定の機能により一旦停止させた後,フレームをごくわずかに上昇させ,その後下降スイッ140チの押し状態を継続する動作を行ったところ,フレームは,先に一旦停止した位置で停止することなく下降した(甲25)。
(イ) 原告従業員は,仕様変更前の被告製品6のフレームを下降させる動作を合計6回行った。
5 それによれば,被告製品6のフレームを下降させ,所定の機能により一旦停止させた後,約1mm上昇させ,その後下降スイッチを押して下降させた第1から第3の実験においては,先に一旦停止した位置で停止することなく下降し(甲149の1(ア)(イ)(ウ)の実験), , ,被告製品6のフレームを下降させ,所定の機能により一旦停止させた後,約3mm上昇さ10 せ,その後下降スイッチを押して下降させた第4から第6の実験においては,フレームは最低位まで下降する前に一旦停止した(甲149の1(エ),(オ)(カ)の実験。甲149)とされている。
,なお,上記の実験では,一旦停止後の上昇を測定する際に株式会社ミツトヨ製ダイヤルゲージ(2046S)を台の上に設置して使用していると15 ころ,同ゲージの数値は,最初にフレームを下降させて一旦停止した各位置について,第1及び第2の実験(甲149の(ア)及び(イ)の実験)では約1.3mm,第3の実験(同(ウ)の実験)では約1.6mm,第4及び第5の実験(同(エ)及び(オ)の実験)では約2.1mmから2.2mm,第6の実験(同(カ)の実験)では約1.8mmの付近を指して20 いたことが看取できる。
(本項につき,甲149,158)(ウ) 被告従業員は,被告製品6のフレームを下降させる動作を合計15回行った。
それによれば,被告製品6のフレームを下降させ,一旦停止した位置は,25 各回で全く同じではなく,最大で0.1mmの違いがあったとされている。
また,フレームを下降させ一旦停止したうちの1回の位置を基準として141(以下,この位置を「基準位置」という。,フレームを下降させて一旦停)止させた後,基準位置より約2.2mm上方までフレームを上昇させ,その後,フレームを下降させた場合,15回中,11回は基準位置付近で停止し,4回は基準位置付近で停止することなく下降し,特に,基準位置よ5 り25mm高い位置からフレームを下降させて一旦停止した後,フレームを基準位置より2.2mm上方まで上昇させ,その後,フレームを下降させた場合,5回中,2回は基準位置付近で停止し,3回は基準位置付近で停止することなく下降したとされている。
(本項につき,乙266,267)10 (エ) 被告製品6においては,アクチュエータによりベッドの停止等を行っている。被告製品6のアクチュエータ(以下「本件アクチュエータ」という。 では,) ホールセンサーの累積のカウント数を利用して,ストローク長を把握しており,スピンドルが1回転するごとにホールセンサーが8回反応し,その反応の回数を制御ボックスが把握し,累積の反応回数を記録し15 ている。そして累積のカウント数(反応回数)により,ストローク長を把握し,ストローク長が48.00mm相当になるはずのカウント数(以下「中間停止位置カウント数」という。 を制御プログラム内で指定し,) それより上から下降してきた場合に,累積カウント数が中間停止位置カウント数に達すると,停止信号が発せられる。もっとも,ホールセンサーは,ス20 ピンドル1回転について8回しか反応しないため,本件アクチュエータによる位置の制御の精度は,上記頻度で反応していることによる限界がある。
(乙158,弁論の全趣旨)(オ) 被告製品6の上記(ア)の動作等は被告が意図していなかったもので,被告は,原告から指摘を受けるまで上記動作の存在を認識しておらず,上記25 動作について被告製品6の機能ないし特徴として広告宣伝したことはない。(弁論の全趣旨)142エ 本件発明3−2は,中間停止位置(LM)よりも若干高い位置で,足の挟み込みが生じるおそれがない特定位置(LS)よりも低い位置にフレームがあった場合において,下降スイッチを押してすぐにベッドが停止してしまうと,装置の故障等を疑い操作を煩雑にしてしまうことから,中間停止位置で5 停止させないこととしたものである。したがって,本件発明3−2の技術的範囲に属するベッドでは,上記のような効果を奏するため,当該ベッドにおいて,中間停止位置(LM)と,それよりも若干高い位置である特定位置(LS)が,それぞれ予め設定された上で,それらの位置を認識して本件発明3−2の動作を行うものといえる。
10 ここで,電動でフレームを上下させる介護用ベッドである被告製品6において,フレームを下降させた場合にフレームの下降が一旦停止する位置自体,一定の範囲でばらつきがあることがうかがえ(前記ウ(ウ)),また,被告製品6のフレームの動作の制御の方法からも,特定の位置で停止することを設定したとしても,一定の誤差が生じることがうかがえる(同(エ))。被告製品615 においては,フレームを下降させて,床面高が24cmになると一旦下降を停止するところ,原告従業員が行った実験の結果によれば,上記のようにフレームを下降させ一旦下降を停止した位置から,ごくわずか(約1mm)上昇させて下降スイッチを押した場合にそのまま下降したとされている(同(イ))。しかし,その実験においてされている測定の下ではそもそも一旦下降20 を停止した位置が実験ごとに同じであるかが必ずしも明らかでない(同(イ))ほか,一旦下降を停止した位置からごくわずか(約1mm)上昇させてから下降させた場合を問題としている。そして,被告製品6は介護用ベッドであって極めて微細な動作の制御は想定されておらず,そのフレームの制御に一定の精度的な限界を有すること(同(エ))を考慮すると,上記の原告従業員が25 行った実験において見られた被告製品6の動作は,下降スイッチを押すと最低位まで下降する位置(中間停止位置(LM) として設定されているとみる)143ことが相当な範囲において発生したものと解する余地もあり,被告製品6において,中間停止位置(LM)とは異なる位置である特定位置(LS)について,これが予め設定されていたと認めるには足りない。また,同じ位置からフレームを下降させた場合でも一旦停止する場合としない場合があり(同5 (ウ)),この点からも,被告製品6において,特定位置(LS)がどの位置に設定されていたかを直ちに認めることができず,それが設定されていたと認めるには足りない。
以上によれば,被告製品6は,構成要件3−2F及び3−2Hを充足しないから,本件発明3−2の技術的範囲に属するとは認められない。
10 3 争点3−2(本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)のうち無効理由3−1(本件発明3−1の米国特許発明2からの新規性欠如)及び3−2(本件発明3−1の米国特許発明2からの進歩性欠如)について? 米国特許発明2について15 乙17公報には,以下の記載がある。
【請求項1】高さ調節可能な医療ベッドにおいて,人を仰向け姿勢で支持する支持面と,前記ベッドの頭端と足端を規定した前記支持面を支持するメインフレームと,20 前記メインフレームを床面に対して相対的に上昇及び下降させる支持部材と,前記支持部材に接続され,前記メインフレームに対して相対的に前記支持部材を作動させることで,前記支持部材が前記メインフレームを最下位置と最上位置との間で移動させるように25 する駆動手段と,前記駆動手段を制御するための手動操作スイッチを有し,前記144メインフレームを前記最下位置へ向かって,又は,前記最下位置から遠ざかるように移動させるためのスイッチを含む制御システムを備え,前記制御システムは,前記メインフレームの前記最下位置から5 離れるが隣接した中間位置を検出するセンサを有し,それにより,前記制御システムは,前記メインフレームの移動を前記中間位置で自動的に終わらせる,ベッド。
【請求項2】前記制御システムは,前記中間位置で前記駆動手段を非作動に10 し,前記スイッチの1つが解除され,かつ,再作動すると,前記制御システムが前記駆動手段を再作動させて前記メインフレームを移動させる請求項1記載のベッド。
【0037】図4−7に,ベッドの4つの所定の停止位置が示される。図4は,15 ベッドの最下位置を示し,その位置では,より上方の,メインフレーム12により支持されるマットレスの患者支持面が,床から約8インチ(20cm)である。この位置では,頭端のキャスタ30,32と足端部材44,46が床面に触れないように上がって,キャスタ56,58,60,62が床面に接して床面でのベッドの回転移動を容易にする。…20 【0038】図5は,下中間位置にあるベッド10を示す。この位置では,頭端支持部材14のキャスタ30,32が床面に接し,足端支持部材16の足端部材44,46も同様である。図5に示した位置では,より上方の,メインフレーム12により支持されるマットレスの居住者つまり患者支持面が,床から約14インチであって,それは,ベッドから出ることのできる介護士25 施設の居住者/患者に要求されるであろうような,居住者/患者の移動を容易にする昼間位置を提供する。…先に述べられるように,図5の下中間位置145は,磁石112がホール効果センサ116の近傍に来ることで検知され,それにより,この位置に来た時に両方のモータ80,96の作動が停止される。
…【0044】…モータ80,96の動作は,ベッド上昇機能及びベッド下降機5 能を提供するために制御部124及び126…を装着した2つの頭板のうちの1つから手動指図入力を受信するコントローラ122によって制御される。…【0045】制御盤124と126は,ベッド上昇スイッチ128とベッド下降スイッチ130を含み,…10 【0048】…制御部124,126からの入力に応答してモータ80,96を作動させるための,コントローラ122用の制御回路が示される。スイッチ128,130は,反転器134a及び134bの入力ピンに接続され,これによって,同一のベッド上昇回路要素及びベッド下降回路要素への入力が行われる。…15 【0049】・・・ベッド上昇スイッチ128が作動させられると,直流+12vが反転器134aの入力ピンに印加され,反転器134aの出力が論理ローレベルになる。反転器134aの出力はセット・リセット(SR)フリップフロップ136aの入力ピンにダイオード138aを通じて与えられ,そして,反転器134aの出力が論理ローレベルに切り替わることで,SRフ20 リップフロップ136aのリセットピンからリセット信号が除去される。同時に,スイッチ128からの直流+12vが直ちにキャパシタ140aによりSRフリップフロップ136aのセットピンに与えられて,RSフリップフロップ136aの出力ピンの論理状態が切り替わり,反転器134aの入力をターンオンして論理ローレベルにする。SRフリップフロップの出力の25 オンへの切り替わりにより,キャパシタ140aが+12vに充電され,SRフリップフロップのセットピンの電圧が約100マイクロ秒で論理ロー146レベルに戻る。以下に詳述するように,SRフリップフロップの出力は,スイッチ128が解除されるか,ホール効果センサ116,118の1つから信号を受けるまで,オンに維持される。
【0050】反転器142aの論理ローレベルでの入力によって,反転器145 2aの出力は,反転器144aへの論理ハイレベル入力をもたらし,次いで論理ロー出力をもたらす。反転器144aの出力は,リレー148a及び150aを作動させるためのコイルの下側に接続されるエミッタフォロワ回路に接続されるPNPトランジスタ146aによってバッファリングされる。リレー148aはベッドの頭端を上方に移動させるために第1のモータ10 80を作動させ,リレー150aはベッドの足端を上方に移動させるために第2のモータ96を作動させる。
【0051】前述したように,ベッド下降スイッチ130に関連する回路要素も,上述したベッド上昇回路と同様なやり方で動作し,ベッド下降回路の作動は,リレー148bと150bを作動させて,モータ80と96をそれぞ15 れベッドを下方へ移動させるように作動させる。
【0053】…押されていたスイッチ128,130がまず解除されて,キャパシタ140a,140bを放電しなければならず,そして,スイッチ128,130が再作動されることで,モータ80,96が再び作動されてベッドを垂直方向に位置調節する。
20 ? SG基準について平成12年7月6日付けSG基準は,電動介護用ベッドの安全性品質及び使用者が誤った使用をしないための必要な事項を定め,一般消費者の身体に対する危害防止及び生命の安全を図ることを目的とし,通商産業大臣の承認を得て定められたものである。そこでは,ベッドの安全性品質として,ベッドの寸法25 の認定基準として,足が届く範囲の可動部と床面との間には,足を挟み込む危険のある部分がないことを定め,基準確認方法としては,足が届く範囲の可動147部と床面との間の最短距離がベッドの外端においては120mm以上であることを測定して確認することを定めている。(乙18)? 米国特許発明2の内容,米国特許発明2と本件発明3−1との対比ア 米国特許発明2の内容5 前記?によれば,米国特許発明2は,人を支持する支持面を支持するベッドのメインフレーム,床上に設置されるメインフレームの支持部材,メインフレームに対して相対的に支持部材を作動させることでメインフレームを昇降移動させる駆動手段,この昇降駆動を制御する制御装置,スイッチ操作により制御装置に信号を出力するスイッチを含む制御システムを備え,制御10 システムは,操作ボックスから下降信号が入力されたときに,下降スイッチの押し状態が継続している間メインフレームを下降させるが,メインフレームの上位置及び下位置の間に存在し,ベッドへの出入りに便利な高さに患者支持面を配置する昼間の好ましい位置である中間位置で,下降スイッチが押し状態であってもメインフレームを停止させ,その後,下降スイッチの押し15 状態が解除された後,再度,下降スイッチが押下された場合に更にメインフレームを下位置まで下降させるものである電動医療ベッドの発明であると認められる。
イ 一致点寝床部を支持するベッドフレーム,床上に設置される台部ないし支持部材,20 フレームを昇降移動させる昇降装置,この昇降駆動を制御する制御装置,スイッチ操作により制御装置に信号を出力する操作ボックスを備え,制御装置は,操作ボックスから下降信号が入力されたときに,下降スイッチの押し状態が継続している間フレームを下降させるが,フレームの上位置及び下位置の間に存在する中間停止位置で,下降スイッチが押し状態であってもフレー25 ムを一旦停止させ,その後,下降スイッチの押し状態が解除された後,再度,下降スイッチが押下された場合に更にフレームを下位置まで下降させるも148のである電動ベッド。
ウ 相違点中間停止位置について,本件発明3−1は,フレームと床との間に患者等の足が存在しても挟み込みが生じないような高さであるとする(構成要件35 −1H)のに対し,米国特許発明2は,ベッドへの出入りに便利な高さに患者支持面を配置する昼間の好ましい位置を想定しており,足の挟み込みを防止する高さとする構成は開示されていない点。
エ 米国特許発明2の内容及び上記相違点の認定について乙17公報には,その電動ベッドにおける中間停止位置を,ベッドへの出10 入りに便利な高さに患者支持面を配置する昼間の好ましい位置を想定しているとの記載はあるが,足の挟み込みを防止することについての記載はない。
被告は,別の特許公開公報等の記載に照らせば,米国特許発明2においても,足の挟み込みを防止することについての構成が当然に開示されていたと主張するが,乙17公報には,その構成の記載はないのであり,別の特許公開15 公報等の記載をもって上記構成が開示されていたとは認められず,この点に関する被告の主張は採用できない。
? 相違点の容易想到性について乙17公報は,中間停止位置として,ベッドへの出入りに便利な高さに患者支持面を配置する昼間の好ましい位置を想定しており,そこには,足の挟み込20 みを防止する高さとする構成は開示されていない。しかし,本件特許3の出願日である平成14年11月11日より前の平成12年には,電動介護用ベッドにおいて,足が届く範囲の可動部と床面との間に足を挟み込む危険のある部分がないこと,具体的には,足が届く範囲の可動部と床面との間の最短距離がベッドの外端においては120mm以上であることが,その安全性品質の基準と25 して求められていた(前記?)。安全性品質の基準として求められているものである以上,当業者において,上記課題は常に認識していたものというべきで149あるから,ベッドを下降させたときに,フレームと床との間で,患者等の足を挟んでしまうことを防止するという本件発明3が目的とした解決課題の設定は容易であり,かつ,その課題解決のために米国特許2に係る発明で開示された構成を採用することは容易であったといえる。仮に,乙17公報において開5 示された実施例がSG基準を満たしていない等原告の指摘する事情が認められるとしても,本件発明3が目的とした解決課題の上記のような性質によれば,これによって上記判断が左右されるものではない。そして,乙17公報には,マットレスの患者支持面が床から20cmの位置をもってベッドの最下位置とする記載がされており(段落【0037】,マットレスの厚み(7から18)10 cmとする例が見られる(甲18))を考慮すると,乙17公報におけるベッ。
ドの最下位置は足を挟み込む危険のある高さであるといえるから,乙17公報には,最下位置と最上位置との間の中間位置について,SG基準を組み合わせる動機付けがあると認められる。
したがって,当業者は米国特許2に係る発明に基づいて容易に本件発明3−15 1をすることができたと認められ,本件発明3−1は米国特許発明2から容易に想到できたと認められる。
? 以上によれば,本件発明3−1と米国特許発明2との間には相違点があり,本件発明3−1が米国特許発明2により新規性を失うとはいえず,無効理由3−1についての被告の主張は採用できないが,当業者において,米国特許発明20 2に基づいて容易に本件発明3−1を想到することができ,無効理由3−2についての被告の主張には理由がある。
本件特許3は特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
4 第5の結論以上から,仕様変更前の被告製品6は,本件発明3−2の技術的範囲に属さず,25 また,本件発明3−1に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきであるから,被告の被告製品6の販売等による本件特許権3の侵害を理由とする原告の150不法行為による損害賠償請求,侵害停止,予防請求権に基づく被告製品6の販売等の差止請求及び侵害行為組成物廃棄等請求権に基づく被告製品6の廃棄請求は,いずれも理由がない。
第6 結論5 以上の次第で,原告の請求は,被告の被告製品3及び5の販売による本件特許権1の侵害並びに被告製品4の販売による本件特許権2の侵害に係る不法行為による各損害賠償請求権に基づき,被告に対し,3億8122万2226円及びうち別紙「損害額」の「年ごとの集計」欄記載の各額に対する各翌年1月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があ10 るから同限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部15 裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 佐 伯 良 子20裁判官 棚 井 啓151別紙物 件 目 録1 PZBシリーズ電動ベッド2 ビカム・ベッド5 3 ミオレット4 ミオレット・フォーユー5 ミオレットU6 ラフィオ以 上10152(以下 別紙省略)153
事実及び理由
全容