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関連審決 不服2019-892
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事件 令和 1年 (行ケ) 10114号 審決取消請求事件

原告グリー株式会社
訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 小林英了
訴訟代理人弁理士 松野知紘
被告特許庁長官
指定代理人樫本剛
同 梶尾誠哉
同 清水正一
同 間宮嘉誉
同 石塚利恵
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/09/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2019-892号事件について令和元年7月16日にした審 決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,平成30年5月8日に出願した特願2018-89612号(以下 「原出願」という。)を分割して,平成30年8月1日に「アクターの動きに 基づいて生成されるキャラクタオブジェクトのアニメーションを含む動画を配 信する動画配信システム,動画配信方法及び動画配信プログラム」の発明につ いて出願(特願2018-144682号。以下「本願」という。)をした。
原出願に添付された明細書(甲4。以下「本件明細書」という。)は,原出願 の後,補正されていない。
原告は,本願につき,平成30年11月28日付けの拒絶査定を受けたので, 平成31年1月23日,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は上記請求を不服2019-892号事件として審理した上,令和元 年7月16日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄 本は令和元年7月30日に原告に送達された。
原告は,令和元年8月29日,審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
2 本願発明 ? 特許請求の範囲の記載 本願の請求項に係る発明は,平成31年4月25日になされた手続補正に より補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特 定される。
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりであ る。なお,本願発明の各構成の符号は,説明のために審決において付与され たものであり,以下,各構成に付された符号に従って「構成A」のように称 する。
(本願発明) (A)アクターの動きに基づいて生成されるキャラクタオブジェクトのアニ メーションを含む動画を配信する動画配信システムであって, (B)一又は複数のコンピュータプロセッサを備え, (C)前記一又は複数のコンピュータプロセッサは,コンピュータ読み取り 可能な命令を実行することにより, (D1)前記動画を視聴する視聴ユーザから前記動画の配信中に前記動画へ の装飾オブジェクトの表示を要求する第1表示要求がなされ, (D2)前記動画の配信中に前記動画の配信をサポートするサポーター又は 前記アクターによって前記装飾オブジェクトが選択された場合に, (D3)前記装飾オブジェクトに設定されている装着位置情報に基づいて定 められる前記キャラクタオブジェクトの部位に関連づけて (D4)前記装飾オブジェクトを前記動画に表示させる, (A)動画配信システム。
? 図面 本願に添付された図面の抜粋を別紙1に示す。
3 審決の理由の要旨 ? 理由の骨子 本願発明は,本願の出願日前に日本国内又は外国において,頒布された又 は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記甲1に記載された発明, 同甲2に記載された技術,及び周知技術(その一例として同甲3)に基づい て,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する 者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規 定により特許を受けることができない。
記 甲1 特開2015-184689号公報 甲2「ファンと一緒に放送をつくろう! 「AniCast」にユーザーギフティン グ機能を追加」,[online],2018年4月5日,株式会社エクシヴ ィ,インターネット(別紙2として写しを添付す る。) 甲3 特開2010-33298号公報? 引用発明の認定 甲1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
なお,引用発明の符号(a)〜(k)は,説明のために審決において付さ れたものである。
(a)動画生成出力システム10と,ユーザ端末80と,ユーザ端末81とを 備えるインタラクティブシステム5であって,(b)動画生成出力システム10は,カメラ20と,モーションセンサ30と, カメラ40と,表示装置50と,動画処理装置100とを備え,動画処理 装置100は,プロセッサで実現され,(c)動画処理装置100の処理は,プロセッサがプログラムに従って動画処 理装置100を制御することにより実現され,(d)動画生成出力システム10は,ユーザ端末80と,ネットワーク9を介 して通信し,(e)ユーザ90は,ユーザ端末80のユーザであり,(f)動画生成出力システム10は,声優60の動作に応じて動くキャラクタ の動画であるキャラクタ動画を生成するとともに,声優60の音声をキャ ラクタ動画にリアルタイムに合成して,キャラクタ動画をユーザ端末80 に配信し,(g)ユーザ端末80は,ネットワーク9を通じて,動画生成出力システム1 0から動画の配信を受け,(h)ユーザ端末80は,ユーザ90から入力されたテキストメッセージ等の データを,動画生成出力システム10に送信し,(i)動画生成出力システム10は,ユーザ端末80から取得したテキストメ ッセージを受信すると,受信したテキストメッセージを声優60が見るこ とができる位置に設けられる表示装置50に表示し, (j)動画生成出力システム10は,声優60は,表示されたメッセージを見 て,メッセージに対して動作及び音声でリアクションを行うと,声優60 が行った動作に応じて動き,声優60が発した音声を含むキャラクタ動画 を生成して,ネットワーク9を通じてユーザ端末80に配信し,(k)動画生成出力システム10は,ユーザ90が発したメッセージに対して, キャラクタがリアルタイムに反応する,ライブ感のある動画を配信でき, ユーザ90は,まるでキャラクタと会話しているような感覚でチャットを 楽しむことができる(a)インタラクティブシステム5。
? 一致点及び相違点(一致点) アクターの動きに基づいて生成されるキャラクタオブジェクトのアニメ ーションを含む動画を配信する動画配信システムであって, 一又は複数のコンピュータプロセッサを備え, 前記一又は複数のコンピュータプロセッサは,コンピュータ読み取り可 能な命令を実行することにより, 前記動画を視聴する視聴ユーザから前記動画の配信中に前記動画への表 示を要求する第1表示要求がなされ, 前記動画の配信中に前記動画の配信をサポートするサポーター又は前記ア クターによって所定の動作が行われた場合に, 前記動画に表示させる 動画配信システム。
(相違点1) 構成D1につき, 表示を要求する対象が,本願発明においては,「装飾オブジェクト」で あるのに対して,引用発明においては,リアルタイムに反応する「キャラ クタ動画」である点。
(相違点2) 構成D2につき, 「前記動画の配信をサポートするサポーター又は前記アクターによっ て」行われる動作が,本願発明においては,「装飾オブジェクト(の)選 択」であるのに対して,引用発明においては,「リアクション」である点。
(相違点3) 構成D3につき, 上記相違点1に伴い,「装飾オブジェクトを動画に表示させる」という 処理が,本願発明においては,「前記装飾オブジェクトに設定されている 装着位置情報に基づいて定められる前記キャラクタオブジェクトの部位に 関連づけて」行われるのに対して,引用発明においては,そのように関連 づけて行われない点。
? 相違点1について 甲2に記載された技術は,3DCGキャラクターをライブ配信するライブ 配信プラットフォームにおいて,ユーザギフティング機能を追加して,視聴 者が創作したギフトをVR空間内に登場させ,配信者は,VR空間内で,ギ フトを装着するという表現を行い,3DCGアニメーションの主人公がユー ザギフティング機能を使って放送内で視聴者からの作品を装着する技術であ る。
ここで,甲2に記載された技術における「ギフト」は,「装着するという 表現」に用いられるものであるから,本願発明の「装飾オブジェクト」に相 当する。
また,甲2に記載された技術における3DCGキャラクターをライブ配信 するライブ配信プラットフォームにおいて,ギフトを装着するという表現を 行うことは,「ギフト」をライブ配信される動画に表示させることにほかな らない。
そうすると,甲2に記載された技術は,表示の対象を「装飾オブジェク ト」とするものである。
引用発明及び甲2に記載された技術は,キャラクタ動画を配信する動画配 信システムに関する点で共通するものであるから,引用発明に甲2に記載さ れた技術を適用して,引用発明において,甲2に記載された技術の「装飾オ ブジェクト」を表示の対象とすることは,当業者が容易に想到し得ることで ある。
よって,引用発明において,相違点1を本願発明のようにすることは,甲 2に記載された技術を適用して,当業者が容易になし得ることである。
? 相違点2について 引用発明の「声優60」は,本願発明の「アクター」に相当する。
上記?で述べたように,甲2に記載された技術における3DCGキャラク ターをライブ配信するライブ配信プラットフォームにおいて,ギフトを装着 するという表現を行うことは,「ギフト」をライブ配信される動画に表示さ せることにほかならない。
甲2に記載された技術において,「配信者は,VR空間内で,ギフトを装 着するという表現を行い」とは,当該ライブ配信プラットフォームを用いて ライブ配信を行う配信者が,「視聴者が創作したギフト」を「キャラクター に装着する」を行うことであることは明らかである。そして,ライブ配信プ ラットフォームにおいて,配信者が「キャラクターに装着する」とは,配信 者が「キャラクターに装着」を行うかあるいは行わないかを判断して,装着 を実行するための動作を行うことであるから,「配信者によって装着するギ フトが選択された」といえる。
そうすると,甲2に記載された技術は,「動画に表示させる」という処理 を,「配信者」によって「装飾オブジェクトが選択」された場合に行うもの である。
引用発明及び甲2に記載された技術は,キャラクタ動画を配信する動画配 信システムに関する点で共通するものであり,引用発明の「声優60」及び 甲2に記載された技術における「配信者」は動画配信を行う者である点で共 通するから,引用発明に甲2に記載された技術を適用して,引用発明におい て,「動画に表示させる」という処理を行うために,アクターによって行わ れる動作を,「装飾オブジェクトの選択」とすることは,当業者が容易に想 到し得ることである。
よって,引用発明において,相違点2を本願発明のようにすることは,甲 2に記載された技術を適用して,当業者が容易になし得ることである。
? 相違点3について 上記?で述べたように,引用発明において,甲2に記載された技術の「装 飾オブジェクト」を表示の対象とすることは,当業者が容易に想到し得るこ とである。
またその際に,オブジェクトに設定されている装着位置情報に基づいて定 められる部位にオブジェクトを表示させるという甲3(段落0060〜00 86,図2〜5等)に記載の周知技術を採用して,引用発明において,「装 飾オブジェクトを動画に表示させる」という処理を,「前記装飾オブジェク トに設定されている装着位置情報に基づいて定められる前記キャラクタオブ ジェクトの部位に関連づけて」行われるようにすることは,当業者が適宜な し得ることである。
よって,引用発明において,相違点3を本願発明のようにすることは,甲 2に記載された技術を適用して,当業者が容易になし得ることである。
原告の主張(審決取消事由)
1 取消事由1(相違点4の看過) 本願発明の構成D2は,文言上,動画の配信中に「サポーター」及び「アク ター」のいずれもが「選択」を行うことが可能であることを前提とし,その少 なくとも一方が「選択」を行った場合に装飾オブジェクトを動画に表示させる ことを規定する。例えば,アクターが「選択」を行わなかったとしても,「サ ポーター」が「選択」すれば装飾オブジェクトが表示される。このように解す べきことは,本件明細書の【0082】【0083】【0089】の記載から も裏付けられる。
これに対し,引用発明は本願発明の「サポーター」に相当する構成を有して おらず,「声優60」以外の者が「リアクション」を行うことを全く想定して いない。
よって,審決では以下の相違点4が看過されており,このことは審決の結論 に影響を及ぼす。
[相違点4] 本願発明は,「前記動画の配信中に…サポーター又は前記アクターによって 前記装飾オブジェクトが選択され」るものであって,アクターだけでなくサポ ーターも所定の動作(選択)を行えるのに対し,引用発明は,アクターだけが 所定の動作(リアクション)を行える点。
2 取消事由2(相違点5の看過) 本願発明の構成D1の「第1表示要求」は,「動画への装飾オブジェクトの 表示を要求する」ものであり,この装飾オブジェクトが選択された場合に,装 飾オブジェクトが動画に表示される。よって,「第1表示要求」において,要 求の対象である「装飾オブジェクト」は,当該要求が行われる時点においては 未だ表示されていない。
これに対し,引用発明の「テキストメッセージ等のデータ」に関し,「テキ ストメッセージ」の対象である「キャラクタ動画」は,当該データが入力され る時点において既に表示されている。このことは,甲1の【0014】〜【0 016】の記載によって裏付けられる。
審決では,引用発明の「テキストメッセージ等のデータ」が本願発明の「第 1表示要求に相当するとして,「前記動画への表示を要求する第1表示要求が なされ」る点が一致点であると認定された。しかし,このような認定は正しく なく,以下の相違点5が看過されており,このことは審決の結論に影響を及ぼ す。
[相違点5] 本願発明は,「第1表示要求」が行われる時点では未だ表示されていない 「装飾オブジェクト」の表示を要求するのに対し,引用発明は,「テキストメ ッセージ等のデータ」が入力される時点で既に表示されている「キャラクタ動 画」のキャラクタに対して「テキストメッセージ等」に応じて動くよう要求す る点。
3 取消事由3(相違点1の容易想到性の判断誤り) 審決は,甲2に記載された技術を引用発明に「適用」することは容易である とする。ここでいう「適用」が,@引用発明の「リアルタイムに反応するキャ ラクタ動画」を甲2記載の「ギフト」(装飾オブジェクト)に置換すること, A引用発明の「リアルタイムに反応するキャラクタ動画」に甲2記載の「ギフ ト」(装飾オブジェクト)を追加すること,のいずれであるのか判然としない が,次のとおり,いずれにせよ審決の判断は誤りである。
? 仮に@(置換)であるとすれば,置換によって「リアルタイムに反応する キャラクタ動画」が表示されなくなり,「リアクションがキャラクタ動画に リアルタイムに反映されて…ライブ感のあるチャットを楽しむことができ る。」(甲1の【0035】)という引用発明の効果を没却させることとな る。したがって,引用発明に対して@のような置換を行うのには阻害要因が ある。
? 仮にA(追加)であるとすれば,甲2には,視聴者から配信者へギフトを 贈ることが動画配信中に行われるとの記載はないので,甲2記載の技術を追 加したとしても「動画配信中に行われた表示要求に応じて,装飾オブジェク トを表示する」という本願発明の構成には至らない。
また,甲1には創作したギフトを配信者に贈ることの開示はないから,甲 1から認定される引用発明に,創作したギフトを贈るという甲2記載の技術 を組み合わせる動機付けはない。
さらに,「動画をリアルタイムで提供する」こと(甲1の【0003】) を課題とする引用発明に対して,甲2記載の技術を追加しようとするならば, 配信者から,手で持つ,動かす,装着する,拡大縮小するなどの表現を受け 取り,当該表現に応じてギフトを装着等させるという追加の処理が必要とな るために,動作が重くなって遅延が生じることから,引用発明の上記課題を 解決することが困難となる。よって,引用発明に対してAのような追加を行 うのは阻害要因がある。
4 取消事由4(相違点3の容易想到性の判断誤り) ? 相違点3に係る本願発明の構成に至るには,引用発明に対して,甲2記載 の技術(ギフト(装飾オブジェクト)を表示すること)を適用し,更に審決 認定の周知技術(装着位置情報に基づき身体等の部位に表示すること)を採 用する必要がある。このような2段階の変更を伴う相違点の克服は,容易想 到とはいえない。
? 上記3?のとおり,引用発明に対して甲2記載の技術を適用すると,動作 が重くなって動画をリアルタイムで提供するという課題を解決できなくなる おそれがある。しかも,甲2記載の技術を適用する際に審決認定の周知技術 (装着位置情報に基づく表示)を採用すると,追加の処理が必要となって, 更に動作が重くなる。したがって,引用発明に甲2記載の技術を適用した上, 更に周知技術を採用することには,二重に阻害要因がある。
? 甲2記載の技術は,ギフトを「装着する」以外にも「手に持つ」「動か す」「拡大縮小する」等の「多彩な表現」を行うものである。これに対し, 審決認定の周知技術では,「オブジェクト」の表示位置は「装着位置情報に 基づいて定められる」特定の部位に限定されている。このように二つは全く 性質が異なる技術なので,引用発明に甲2記載の技術を適用する際に,審決 認定の周知技術を採用する動機付けはない。
? 「装飾オブジェクト」が通常の装飾品であれば身体のどの部位に装着する か決まっているから,審決認定の周知技術を適用し得るとしても,甲2記載 の「めぐアクセサリー」には視聴者が創作した物もあり,その場合は身体の どの部位に装着するか決まっていないという点で,通常とは異なる事情があ るから,同周知技術を採用することは,当業者が適宜なし得る設計事項では ない。また,仮に同周知技術の採用を試みたとしても,視聴者が創作した 「めぐアクセサリー」を装着する部位を誰がいかにして定めるかは同周知技 術からは判らないので,甲2記載の技術を適用するに当たって,同周知技術 を採用することはできない。
5 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断誤り) 本願発明は「前記アクターによって前記装飾オブジェクトが選択された場合 に,…前記装飾オブジェクトを前記動画に表示させる」というものであり, 「選択」されることによって「装飾オブジェクト」が「表示」されるが,「選 択」されなければ「装飾オブジェクト」は「表示」されない。すなわち,本願 発明は,装飾オブジェクトを表示させるか否かを「選択」可能な構成を前提と しているのであり,「装飾オブジェクトの選択」とは,当該装飾オブジェクト を表示させるか否かの「選択」を意味している。
一方,甲2記載の技術は,ギフトを表示させることを前提としており,ギフ トを表示させないという態様は示されていない。
したがって,仮に引用発明に甲2記載の技術を適用したとしても,「装飾オ ブジェクトの選択」すなわち「装飾オブジェクトを表示させるか否かの選択」 という本願発明の構成には至らない。
被告の反論
原告の主張は,次のとおり理由がない。
1 取消事由1(相違点4の看過)について 本願発明の構成D2は「サポーター又は前記アクターによって前記装飾オブ ジェクトが選択」されるものであるから,装飾オブジェクトの「選択」が「サ ポーター」によって行われる発明と,「アクター」によって行われる発明との 両方を含むものである。このことは,本件明細書の記載によっても裏付けられ る。
そして,引用発明の「声優60」は,本願発明の「アクター」に相当する。
そうすると,「アクター」を発明特定事項として有する点で一致するから, 引用発明において,本願発明の「サポーター」に相当する構成がないことは相 違点とはいえず,審決に一致点の認定の誤りはない。
2 取消事由2(相違点5の看過)について 引用発明の「テキストメッセージ等のデータ」と本願発明の「第1表示要 求」とは,「前記動画を視聴する視聴ユーザから前記動画の配信中に」なされ るものである点で共通するから,審決の認定に誤りはない。
また,原告の主張する相違点5は,換言すれば,「第1表示要求」が要求す る表示の対象について,本願発明では「装飾オブジェクト」であるのに対し, 引用発明では「テキストメッセージ等のデータ」に応じて動く「キャラクタ動 画」であるということもできる。そうすると,原告の主張する相違点5は,審 決の認定した相違点1と同様の相違点であるともいえるから,このことからも, 審決に相違点の看過はない。
3 取消事由3(相違点1の容易想到性の判断誤り)について ? 甲2の記載によれば,「ギフト」を「装着する」ことは「手に持つ」等の 例示された四つの表現の一つであるから,「装着する」ことを甲2記載の技 術として認定したことに誤りはない。また,本願発明の「装飾オブジェク ト」にも甲2記載の「ギフト」にも「アクセサリー」が含まれているから, 甲2記載の「ギフト」は本願発明の「装飾オブジェクト」に相当する。
? 甲2の記載によれば,視聴者がライブ配信を視聴中,すなわち,動画配信 中に配信者へギフトを贈っていることは明らかである。
また,甲1と甲2はライブ配信システムという共通の技術分野に関するも のであり,視聴者から配信者への要求に応じて配信者が視聴者へ動画を配信 するという方法においても共通するから,甲2記載の技術を引用発明に追加 する動機付けがある。
さらに,引用発明において「リアルタイム」に反応することとは,予め定 められた一定の時間内に動画が提供されることを意味し,一切の遅延なく提 供されることまでは求められない。そうすると,甲2記載の技術を適用する ことによって追加の処理のために多少の遅延が生じても,引用発明の課題の 解決に影響を及ぼすものではないから,その適用に阻害要因はない。
4 取消事由4(相違点3の容易想到性の判断誤り)について ? 上記3?のとおり,引用発明の「リアルタイム」は一切の遅延が許されな いものではないので,相違点3に係る処理が更に追加されるとしても引用発 明の課題解決に影響を及ぼすような遅延とはいえない。そうすると,引用発 明に甲2記載の技術を適用する際に,審決認定の周知技術を採用することに, 阻害要因はない。
? 上記3?のとおり,甲2記載の「ギフト」のうちアクセサリー等はCGキ ャラクターに装着されるものであって,審決認定の周知技術と全く性質が異 なる技術であるとはいえないから,引用発明に甲2記載の技術を適用する際 に,審決認定の周知技術を採用することの動機付けはある。
5 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断誤り)について ? 甲2記載の「ギフト」が本願発明の「装飾オブジェクト」に相当すること は,上記3?のとおりである。
? 甲2には,視聴者が創作したギフトをVR空間内に登場させるか否かをア クターが「選択」することに関する明示的な記載はない。しかしながら,甲 2記載の技術のライブ配信プラットフォームにおいて,配信者側が,視聴者 が創作した「ギフト」の量や質によって,ギフトをVR空間内に登場させる か否かの判断をすることは,ライブ配信を行う配信者ならば通常想定できる 範囲内のことである。甲2記載の技術においても,ギフトを表示させるか否 かの「選択」を行っていることは明らかである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点4の看過)について ? 原告は,本願発明の構成D2は,「サポーター」及び「アクター」のいず れもが所定の動作(選択)を行うことが可能であることを前提とする点にお いて,「声優」だけが所定の動作(リアクション)を行える引用発明とは異 なるから,この点を相違点4として認定すべき旨主張する。
しかしながら,本件明細書では,【0082】以下において,「装飾オブ ジェクト選択画面」が「サポーターコンピュータ」に表示され,「サポータ ー」がこれを操作して「装飾オブジェクト」を選択する態様について説明し た後,【0089】において,「装飾オブジェクト選択画面」が「サポータ ーコンピュータ」に代えて「アクター」の前のディスプレイ等に表示され, 「アクター」がこれを操作して装飾オブジェクトを選択する態様が開示され ている(下線は当裁判所が付した。)。すなわち,本件明細書には,装飾オ ブジェクトの選択を「アクター」のみが行う態様が含まれており,本願発明 の構成D2も,このような態様も含むと解するのが相当である。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
? 原告は,装飾オブジェクトの選択を「アクター」のみが行う態様は実施例 の一つとして開示されているにすぎず,かえって,請求項には「サポーター 又は前記アクターによって装飾オブジェクトが選択された場合に」と明示さ れているのであるから,「サポーター」及び「アクター」のいずれもが「選 択」を行える態様を特許請求したのが本願発明である旨主張する。
しかしながら,本願発明の請求項は,発明の構成として,動画配信システ ムの配信者側には「アクター」の外に「サポーター」が必ず存在することや, 「サポーターコンピュータ」及び「(アクターが視認・操作する)ディスプ レイ」の両方に「装飾オブジェクト選択画面」が表示されることを特定して いるわけではないのであるから,本願発明の構成として,「サポーター」が もともと存在しない動画配信システムも排除されていないといわざるを得な い。そして,この構成は,まさに引用発明と共通する構成であるということ ができる。
原告の上記主張は,請求項の文言及び本件明細書の記載を離れて,特許請 求人としての主観をいうものであって,採用することができない。
2 取消事由2(相違点5の看過)について ? 原告は,本願発明は,「第1表示要求」が行われる時点では未だ表示され ていない「装飾オブジェクト」の表示を要求するのに対し,引用発明は, 「テキストメッセージ等のデータ」が入力される時点で既に表示されている 「キャラクタ動画」のキャラクタに対して「テキストメッセージ等」に応じ て動くよう要求する点で相違する旨主張する。
よって,以下検討する。
? 本願発明の「第1表示要求」及び「装飾オブジェクト」等について ア 本件明細書には,次の開示がある。
(ア) 視聴ユーザは,ギフトオブジェクトを購入して,アクターへのデジタ ル的なギフトとすることができる【0052】【0054】。
(イ) ギフトオブジェクトには,エフェクトオブジェクト,通常オブジェク ト及び装飾オブジェクトがある【0052】。
(ウ) 装飾オブジェクトは,キャラクタオブジェクトの特定の部位と関連付 けて表示画面に表示されるオブジェクトであり,例えば,アクセサリー (カチューシャ,ネックレス,イヤリングなど)である【0055】 【0056】。
(エ) 本願発明の動画配信システムは,アクターの体及び表情の動きに同期 して動くキャラクタオブジェクトのアニメーションを生成する【006 0】【0063】。
(オ) 視聴ユーザから特定の装飾オブジェクトの表示要求を受け付けると, 当該表示要求に基づいて,表示が要求された装飾オブジェクトを候補リ ストに追加する(装飾オブジェクトの表示要求は,第1表示要求の例で ある。)。サポーターが操作するサポーターコンピュータには,装飾オ ブジェクト選択画面が表示される。装飾オブジェクト選択画面は,例え ば,候補リストに含まれている複数の装飾オブジェクトの各々を表示す る【0080】【0082】。
(カ) サポーターは,この装飾オブジェクト選択画面に含まれている装飾オ ブジェクトのうちの一又は複数を選択することができる。選択された装 飾オブジェクトは,これと関連付けられたキャラクタオブジェクトの当 該特定部位の動きに付随して動くように,表示画面に表示されてもよい。
例えば,カチューシャを装着したキャラクタオブジェクトの頭部が動く と,あたかもカチューシャがキャラクタオブジェクトの頭部に装着され ているかのごとく,カチューシャを示す選択装飾オブジェクトもキャラ クタオブジェクトの頭部に付随して動く【0083】。
(キ) 装飾オブジェクト選択画面は,サポーターコンピュータに代えて,ス タジオルーム内のディスプレイ等に表示されてもよく,この場合,アク ターが所望の装飾オブジェクトを選択することができる【0089】。
イ 上記開示事項によれば,原告主張の相違点5に係る本願発明の構成は, より具体的には以下のような態様を有するといえる。
(ア) 動画配信の継続中は,アクターの体及び表情の動きに同期して,キャ ラクタオブジェクトのアニメーションが動き続けている。
(イ) 視聴ユーザが第1表示要求において例えばカチューシャ(装飾オブジ ェクトの一例)の表示を要求することは,単にカチューシャを画面上に 表示するよう要求することではなく,キャラクタオブジェクトがカチュ ーシャを頭部に装着した状態で動くよう要求することを意味する。
(ウ) 装飾オブジェクトの表示要求がなされた場合,配信者側のコンピュー タ上の装飾オブジェクト選択画面にそれが追加して表示され,サポータ ー又はアクターは,表示リストの中から装飾オブジェクトを選択する。
(エ) カチューシャが選択された場合,それ以前は頭部にカチューシャを装 着せずに動いていたキャラクタオブジェクトのアニメーションが,それ 以後は頭部にカチューシャを装着して動くようになる。
? 本願発明の上記構成によれば,本願発明が,原告のいうように「『第1表 示要求』が行われる時点では未だ表示されていない『装飾オブジェクト』の 表示を要求する」ものであるとしても,それは,物としての「装飾オブジェ クト」だけの表示を要求するのではなく,キャラクタオブジェクトのアニメ ーションが既に動いている状態を前提として,装飾オブジェクトを装着しな い状態から装着した状態に変わるよう要求することを意味している。すなわ ち,本願発明においても,「第1表示要求」の時点で既に表示されているキ ャラクタのアニメーション(動画)に対して,新たに「装飾オブジェクト」 を装着しての動きを要求していることになる。
これに対し,引用発明においては,「テキストメッセージ」が入力される 時点で既に表示されている「キャラクタ動画」に対して,「テキストメッセ ージ」に応じた新たな「リアクション」(動作)をすることを要求している。
そうすると,本願発明と引用発明との相違は,視聴ユーザがアクター/声 優に要求する対象が,「装飾オブジェクトを装着した状態で動くこと」(本 願発明)か,具体的な内容の特定がない「リアクション(動作)」(引用発 明)か,という点であり,この点は,相違点1として審決が認定した内容と 実質的に同一である(審決の相違点1では,本願発明においては「装飾オブ ジェクト」という「物」,引用発明においては「リアルタイムに反応する 『キャラクタ動画』」という「人」,と表現しているが,これらも,正しく は,上述したところに照らして,「状態」又は「動作」として表現すべきも のである。)。
したがって,審決は,原告のいう相違点5も相違点1として実質的に検討 しているから,相違点を看過した誤りはなく,原告の主張は採用することが できない。
3 取消事由3(相違点1の容易想到性の判断誤り)について ? 審決は,引用発明に甲2記載の技術(その内容は別紙2に記載のとおり) を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは容易想到である旨判 断した。そして,被告の主張に照らすと,ここでいう「適用」は「置換」で はなく「追加」を意味すると解されるので,以下,この前提で判断する。
? ユーザーギフティングを動画配信中に行うことについて ア 原告は,甲2には,視聴者から配信者へギフトを贈ること(ユーザーギ フティング)が動画配信中に行われるとの記載はないので,引用発明に甲 2記載の技術を追加したとしても「動画配信中に行われた表示要求に応じ て,装飾オブジェクトを表示する」という本願発明の構成には至らない旨 主張する。
しかしながら,甲2には,CGキャラクターへのユーザーギフティング を動画配信中に行うことについての記載はないものの,これを排除する旨 の記載もなく,この点は,配信時間の長さ,ギフト装着のための準備,予 想されるギフトの数等を踏まえて,配信者が適宜決定し得る運用上の取り 決め事項といえるから,甲2のユーザーギフティング機能において,CG キャラクターが装着するための作品を贈る時期は,配信開始前に限定され ているとはいえない。したがって,引用発明に上記ユーザーギフティング 機能を追加することによって,相違点1に係る「前記動画を視聴する視聴 ユーザから前記動画の配信中に前記動画への装飾オブジェクトの表示を要 求する第1表示要求がなされ」るという構成を得ることができる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ なお,原告は,甲2記載のCGキャラクター「東雲めぐ」が登場する実 際の番組において,ユーザーギフティングが配信開始前に締め切られてい ること(甲9の2,甲10)を指摘する。しかしながら,そのことは,当 該番組における運用上の取り決め事項として,ユーザーギフティングの時 期を配信開始前と定めたことを示すにとどまり,上記アの判断を左右しな い。
? 動機付けについて ア 甲2には,配信も可能なVRアニメ作成ツール「AniCast」にユーザー ギフティング機能を追加することが記載されている。一方,引用発明は, 声優の動作に応じて動くキャラクタ動画を生成してユーザ端末に配信する ものであるから,引用発明も「配信も可能なVRアニメ作成ツール」とい える。
また,ユーザーギフティング機能のような新たな機能を追加することに よって,動画配信システムの興趣が増すことは明らかである。
そうすると,当業者にとって,「配信も可能なVRアニメ作成ツール」 である引用発明に対して,甲2記載の技術であるユーザーギフティング機 能を追加することの動機付けがあるといえる。
イ 原告は,甲1には創作したギフトを配信者に贈ることの開示はないから, 引用発明に甲2記載のユーザーギフティング機能を組み合わせる動機付け はない旨主張する。
しかしながら,動画配信システムの興趣を増すことは当該技術分野にお いて一般的な課題であると考えられるから,甲1自体にユーザーギフティ ング機能又はこれに類する技術の開示又は示唆がないとしても,引用発明 を知った上で甲2の記載に接した当業者は,興趣を増す一手段として甲2 記載のユーザーギフティング機能を引用発明に適用することを動機付けら れるといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
? 阻害要因について 原告は,引用発明に甲2記載の技術を追加するとプログラムの処理が重く なって遅延が生じ,「動画をリアルタイムで提供する」という引用発明の目 的の達成が困難になるから,かかる追加には阻害要因がある旨主張する。
しかしながら,引用発明における「リアルタイム」とは,声優の動作に応 じてほぼ同時にキャラクタ動画が生成されることをいうのであり(甲1の 【0014】【0033】),声優がテキストメッセージを認識してから動 作などの「リアクション」を行うまでの所要時間については特に限定がない (なお,【0017】には,メッセージの送信からキャラクタの反応までが 「リアルタイム」である旨の記載があるが,【0035】の記載も参照する と,【0017】の「リアルタイム」も,声優の反応とキャラクタ動画の反 応がほぼ同時であることを意味すると解される。)。
もちろん,「リアクション」(反応)と称する以上は,それなりに短い時 間内に反応がされるのでなければ実用性に欠けるといえようが,原告は,処 理すべき操作が増えれば処理する時間も増えるという一般的な問題点を指摘 するのみであって,実用性に欠けるような遅延が生じるおそれがあることに ついては何ら具体的な説明をしていない。かえって,甲11によれば,甲2 記載のユーザーギフティング機能を追加されたプログラムを用いた番組が, 商業ベースで一般ユーザーにも受け入れられるものとして配信されているこ とが認められるのであるから,当業者が,処理が重くなることを懸念して甲 2記載の技術を採用することを妨げられるとは考え難い。そうすると,引用 発明に甲2記載のユーザーギフティング機能を追加することに阻害要因があ るとまではいえない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
4 取消事由4(相違点3の容易想到性の判断誤り)について ? 原告は,相違点3に係る本願発明の構成に至るには,引用発明に対して, 甲2記載の技術を適用し,更に審決認定の周知技術を採用するという2段階 の変更が必要となるから,容易想到ではない旨主張する。
しかしながら,CGの技術分野において,何らかのオブジェクト(例えば カチューシャ)をCGキャラクターが装着しているかのようにCGキャラク ターの動きに追従させて表示するためには,当該オブジェクトを装着する身 体の部位(カチューシャであれば頭部)のVR空間での座標に基づいて当該 オブジェクト(カチューシャ)を表示しなければならない。つまり,CGキ ャラクターの身体の部位とオブジェクトとを関連付ける装着位置情報に基づ いて当該オブジェクトの表示を行わなければ,当該オブジェクトを装着して いるかのように表示することはできない。そうすると,甲2記載のユーザー ギフティング機能において,身体に装着するアクセサリー等がギフトとして 想定されている場合(甲2記載の「東雲めぐ」もそのような場合である。) には,オブジェクトに設定されている装着位置情報に基づいて定められる部 位にオブジェクトを表示させるという審決認定の周知技術は,まさに甲2記 載の技術の一部をなしている(それは,適宜の手段によって実現されること が予定されているといえる。)のであって,甲2記載の技術とは別の技術と いうことはできないものというべきである。
よって,引用発明から本願発明の構成に至るに当たり,原告がいうように 2段階の変更を要するとはいえず,原告の上記主張は採用することができな い。
? 原告は,引用発明に対して,甲2記載の技術に加えて更に審決認定の周知 技術を採用すると,追加の処理の必要が増大し,動画をリアルタイムで提供 するという課題を解決できなくなるおそれが増大するので,阻害要因がある とか,甲2記載の技術と審決認定の周知技術とは全く性質の異なる技術なの であるから,引用発明に甲2記載の技術を適用する際に,審決認定の周知技 術を採用する動機付けはないなどと主張する。
しかしながら,甲2記載の技術に,更に周知技術が追加されるという原告 の前提自体に誤りがあることは,既に?において指摘したとおりであるから, この前提に立つ原告の上記主張は採用することができない。
? 原告は,ギフトとしてのアクセサリー等が視聴者の創作した物である場合 には,身体のどの部位に装着するかが決まっていないので,審決認定の周知 技術を採用することは,当業者が適宜なし得る設計事項ではない等と主張す る。
しかしながら,CGの技術分野において,CGキャラクターの身体に装着 するアクセサリー等を動画上に表示しようとすれば審決認定の周知技術が必 然的に採用されることは上記?に説示したとおりである。そうすると,アク セサリー等として視聴者の創作した物も受け入れる場合には,そのアクセサ リーに何らかの方法で装着位置情報を付与するための適宜の手段を講じるこ とも,当業者の通常の創意工夫の範囲内の設計事項であるというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
5 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断誤り)について 原告は,甲2記載の技術は,ギフトを表示させることを前提としており,ギ フトを表示させないという態様は示されていないから,引用発明に甲2記載の 技術を適用したとしても,「装飾オブジェクトの選択」すなわち「装飾オブジ ェクトを表示させるか否かの選択」という本願発明の構成には至らない旨主張 する。
しかしながら,例えば,甲2の2枚目の右側の図では,CGキャラクターが 両手に別々のギフトを持っている絵が示されているところ,これは,「手で持 つ」という表現において,右手で何を持ち左手で何を持つかという「選択」が 配信者の側で行われた結果と理解するのが自然である。このように,甲2記載 の技術においては,視聴者からギフトが送られてきた場合,配信者の何の判断 も経ることなく,いわば自動的にギフトが表示されることになるのではなく, ギフトを手で持つ,動かす,装着する,拡大縮小するなどの様々な表現態様の うち,どの表現態様で表示するのか,また,それをどの場所に表示するのかな どについての配信者の判断を経て,ギフトが表示されるものであると理解され る。そして,ギフトを,どのような態様により,どの位置に表示するかを判断 するためには,その前提として,そのギフトを上記の判断の対象にするという 操作が行われなければならないはずであるところ,この操作は,まさにギフト (装飾オブジェクト)を「選択」していることにほかならない。したがって, 甲2記載の技術には,相違点2に係る,「配信者による装飾オブジェクトの選 択」という構成が含まれていることになるから,原告の上記主張は採用するこ とができない。
6 結論 以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がないから,原告の 請求を棄却することとして主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 上田卓哉
裁判官 都野道紀
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