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事件 平成 31年 (ワ) 3197号 特許実費等請求事件
5原告株式会社ワコー
同訴訟代理人弁護士 岩永利彦
被告第一精工株式会社
同訴訟代理人弁護士 重冨貴光 長谷部陽平 10 和田祐以子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2020/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,4506万0843円及びこれに対する平成30年6月13日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
15 3 訴訟費用は,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
20 1 主文1項と同旨 2 被告は,原告に対し,220万7070円及びこれに対する平成31年2月2 0日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,被告との間で特許の実施許諾等に係る契約を締結した原告が,同契約上被25 告において支払義務を負う費用のうち,平成29年10月1日から平成30年3月3 1日までの平成29年度第2半期(以下,この期間を指すときは単に「平成29年度 1 第2半期」という。)における特許に係る出願,登録及び維持に要する費用(以下,特 許に係る出願,登録及び維持に要する費用を「特許実費」という。)が4512万60 43円であり,また,平成30年4月1日から同年6月29日までの期間の実施料が 220万7070円である旨主張して,被告に対し,上記契約に基づき,特許実費45 521万6043円から既払の6万5200円を控除した残額4506万0843 円及びこれに対する約定の弁済期の翌日である同月13日から商事法定利率年6% の割合による遅延損害金並びに実施料220万7070円及びこれに対する訴状送 達により請求した日の翌日である平成31年2月20日から支払済みまで約定の年 14.6%の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。
10 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠(以下,書証番号は特 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) 当事者 ア 原告は,半導体の製造・販売等を目的とする株式会社である。
原告代表者A(以下「原告代表者A」という。)は,平成27年3月27日から15 平成30年3月29日までの間,被告の社外取締役を務めていた。
イ 被告は,精密電子部品等の設計・製造・販売等を目的とする株式会社である。
特許の実施許諾等に係る契約の締結(甲1) 原告は,平成27年4月1日,被告との間で,別紙「契約条項」の内容の特許の実 施許諾等に係る契約(以下「本件契約」といい,本件契約に係る契約書を「本件契約20 書」という。)を締結した。
被告による平成30年2月23日頃の原告に対する通知 被告は,平成30年2月23日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件契約2 条3項に基づき,本件特許権等について被告が有する全ての専用実施権を同年3月3 1日をもって非独占的通常実施権変更する旨を通知した(乙4。以下,この通知を25 「本件変更通知」という。。
) 原告による特許実費の請求等(甲2〜4,29) 2 原告は,平成30年4月23日,被告に対し,平成29年度第2半期における特許 実費が4512万6043円である旨をその明細及び支払先とともに報告した。
原告は,平成30年5月13日,被告に対し,上記特許実費の支払を請求し,その 結果,上記特許実費の弁済期は同年6月12日となった。
5 原告による本件契約解除の意思表示等(甲4) 原告は,平成30年6月21日頃,被告に対し,被告において前記 の特許実費を 支払わないことが本件契約に定める義務に違反するとして,同月29日までに上記特 許実費を支払うよう催告するとともに,同日までに上記支払がされないときには本件 契約を解除する旨の意思表示をした。
10 被告は,その後,原告に対し,本件契約に基づく平成29年度第2半期の特許実費 として6万5200円のみを支払った。
被告によるランニング・ロイヤルティの弁済供託等(甲5,33) ア 被告は,平成30年10月16日,原告に対し,平成30年4月1日から同年 9月30日までの期間における本件製品別の正味販売価格合計,主要販売先及びラン15 ニング・ロイヤルティ額が消費税相当額込みで448万7710円であることを報告 するとともに,請求書の送付を依頼した。
イ 原告が本件契約を解除したことを理由にランニング・ロイヤルティに係る請求 書の発行を拒絶したため,被告は,平成30年12月25日,原告がランニング・ロ イヤルティの受領を拒絶する意思を明確にしたことを理由として,前記アの期間のラ20 ンニング・ロイヤルティ448万7710円について民法494条に基づく供託をし た。
原告によるランニング・ロイヤルティの履行請求(顕著な事実) 原告は,平成31年2月19日,被告に対し,本件訴状の送達をもって,平成30 年4月1日から原告が解除により本件契約が終了したとする同年6月29日までの25 本件契約に基づくランニング・ロイヤルティ220万7070円の支払を請求した。
2 争点 3 被告が支払義務を負う特許実費の範囲(争点1) 被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲(争点2) 3 争点に対する当事者の主張 争点1(被告が支払義務を負う特許実費の範囲)について5 【原告の主張】 ア 被告が支払義務を負う特許実費の範囲について 次のとおり,被告は,本件契約に基づき,原告から専用実施権設定の許諾を受けた 本件特許権等の特許実費を支払う義務を負う。そして,平成29年度第2半期におけ る特許実費は4512万6043円である。
10 本件特許権等には,原告が将来に所有すべき特許権及び出願中の特許が含まれるこ と(本件契約書1条1号),原告は,被告に対し,専用実施権を許諾し,その設定登録 手続に協力する義務を負うにすぎないこと(本件契約書2条1項) 被告が, , 本件契約 締結前の交渉段階において,原告から専用実施権の許諾を受けた特許権等について特 許実費を負担する旨の提案をしており専用実施権設定登録が必要であるとはして15 いなかったことに照らすと,本件契約書5条1項の「専用実施権…を有している」の 文言は, 「専用実施権…を許諾された」又は「専用実施権…の許諾を有している」こと を意味し,専用実施権設定登録を要しないと解するべきである。
このことは,被告が,専用実施権設定登録のない特許権及び出願中の特許に係る 平成27年4月1日から平成29年9月30日までの期間における特許実費を現実20 に支払っていたことからも裏付けられる。
上記のとおり解しないと,原告は,被告において専用実施権設定登録手続を行わ ない限り特許実費の支払を受けられず,かつ,本件契約上,被告以外の第三者に実施 権を許諾し得ない反面,被告は,特許実費を支払うことなく特許権を排他的に使用す ることができることになって不合理である。また,被告が専用実施権設定登録を行25 う特許権を選別できることとなると,原告が特許実費の支払を受けられるものと受け られないものとが混在し,予測可能性が欠けることとなって,原告の法的地位が極め 4 て不安定なものとなる。
イ 被告の主張についての反論 特許実費の仮払の主張について 本件契約には特許実費の仮払に関する定めもなく,前記アの被告による過去の特許5 実費の支払に当たっても,被告は,原告に対し,仮払である旨を説明したことはない。
コンサルタント契約との関係の主張について 本件契約と被告主張に係るコンサルタント契約とは互いに独立した関係のもので あるし,仮に関係があるとしても,上記コンサルタント契約では特許権等の帰属を規 定し,本件契約では帰属の決定した特許権等のうち原告のみに帰属するものについて10 その実施許諾を規定したという関係があるにすぎないから,上記コンサルタント契約 の規定を根拠として被告の主張する本件契約の解釈が成り立つものではない。
本件特許権等の出願等が原告の裁量のみによるものであったとの主張につい て 被告は,原告から,半期に一度,直近に出願等した特許について少なくとも被告に15 おいて当該特許の要不要を十分に判断できる程度の内容の説明を受けており,原告に 対して出願の取下げを求めることもできたのであるから,実質的に本件特許権等の終 局的な管理処分権を有していたといえる。
本件変更通知後の特許実費について 被告は,平成30年2月23日,原告に対し,本件変更通知をしているが,本件変20 更通知により非独占的通常実施権への変更の効果が生じるのは平成30年3月31 日であるから,原告が本件変更通知後同日までの特許実費を請求することには何らの 問題もない。
また,被告は,原告において本件変更通知後に必要のない特許出願をしてその特許 実費を被告に請求した旨を主張するが,原告は,対象となった特許出願についての依25 頼を平成29年11月10日までに行っており,特許事務所の事務の遅れにより,同 事務所からの請求が平成30年2月23日以降になったものがあるにすぎず,本件変 5 更通知後に必要のない特許出願をしたわけではない。
【被告の主張】 ア 被告が支払義務を負う特許実費の範囲について 次のとおり,被告は,本件契約上,本件特許権等のうち,被告において専用実施権5 の設定登録を受けたものに限り特許実費の支払義務を負うにすぎない。そして,平成 29年度第2半期における特許実費は特許第04948630号(甲2のNo.37) に係る6万5200円である。
本件契約書5条1項の文言からも,本件契約締結の交渉段階で被告が専用実施 権及び独占的通常実施権を有する本件特許権等の特許実費に限り被告の負担とする10 旨の合意がされ,これに基づき本件契約が締結されたという経緯からも,同項は,被 告が本件契約書2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を現に 有している本件特許権等に限り被告において特許実費を負担することを規定すると 解するべきである。そして,専用実施権は,その設定登録をしなければ効力が発生し ないから,本件契約書5条1項は,被告において専用実施権設定登録を受けた特許15 権のみを特許実費の支払対象とするものであると解するべきである。
原告と被告は,本件契約の締結に先立ち,原告が被告に対してトルクセンサ等 の開発に当たって技術的な助言,指導をすることを目的とするコンサルタント契約を 締結している。そして,同契約では,原告又は被告が単独でした発明及び考案につい ては,それぞれが単独で出願し単独で権利者になること,これらの出願に関する費用20 は権利者となる者の負担とすることが定められている。本件契約は,上記コンサルタ ント契約における上記費用負担の定めの存在を前提とした上で,その例外として,被 告が専用実施権を有するものについてはその特許実費を負担することを定めたもの である。
実際に,被告は,特許実費を負担する必要があることを専用実施権設定の要否の検25 討の際の考慮要素とするなど,前 。
また,原告が,被告に対して,自らの判断で特許を出願等した後に出願に係る発明 6 の図面や要約を説明するのみであったこと,原告が出願した特許の多くにつき拒絶査 定又は原告による出願取下げ等により特許権が発生していないこと,原告が被告に対 して特許実費を請求してきた特許権等のほとんどが被告の製造販売等する製品を権 利範囲に含んでいないことからしても,専ら原告がその裁量で自己の権利として本件5 特許権等の出願等を管理していたということができる。他方で,被告が判断できるの は本件特許権等について専用実施権設定登録を受けるか否かの点のみである。
以上の各事情に照らしても,前 合理的なものである。
イ 本件変更通知後の特許実費の主張について 仮に,本件契約の解釈につき原告の主張を前提としたとしても,被告が本件特許権10 等につき専用実施権を有しないことが本件変更通知により明確となった以上,本件変 更通知後に発生した特許実費1846万3556円については,本件契約上被告が負 担すべきものと解釈されるべきではない。仮にそのように解釈されたとしても,上記 の特許実費の発生原因となった原告による特許出願等が被告にとって必要性がなく, また,早期に行われる必要もないものであったことも踏まえると,原告が上記の特許15 実費を請求することは権利の濫用に該当し許されない。
ウ 原告の主張についての反論 本件契約の解釈について 専用実施権設定登録の前に許諾の段階は存しないから,原告の主張は特許法と整 合しないものであるし,仮に原告の主張する内容を規定するのであれば,端的に「許20 諾されている」 「許諾を有している」 とか という文言を使用すれば足りたはずである。
被告が本件契約締結前の交渉段階において許諾の文言を用いて提案をしていたの は,専用実施権に対応する外国の実施権をも含めたためであり,これと専用実施権設定登録とを併せて許諾と表現したにすぎない。
過去の特許実費の支払について25 原告と被告は,本件契約の締結に当たり,締結日から3年間を目途として,相互に 事業性及びビジネスパートナーとしての適格性を確認することとしていた(本件契約 7 書2条2項参照) 被告は, 。 原告の求めに応じ,上記3年間の確認期間経過後に精算す ることを前提に,専用実施権の設定されていない本件特許権等に係る特許実費を仮払 したにすぎない。
争点2(被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲)について5 【原告の主張】 次のとおり,被告は,原告の特許権等が存在しない国や地域での販売額も含めてラ ンニング・ロイヤルティの支払義務を負う。平成30年4月1日から同年6月29日 までのランニング・ロイヤルティ額は,同年4月1日から同年9月30日までの18 3日間のランニング・ロイヤルティ額448万7710円を同年4月1日から6月210 9日までの90日の期間で日割り計算した220万7070円である。
ア 本件契約書4条1項2号の「本件特許権等」には,外国における将来所有すべ き特許権や外国における出願中の特許が含まれるから,現時点で有効に特許権が存続 していない国における本件製品の販売についてもランニング・ロイヤルティの対象に 含まれる。また,本件契約書1条1号において,本件特許権等は, 「本件製品を技術的15 範囲に含む」ものとされてはいるが,他方で,技術的範囲未確定である将来に所有す べき特許権及び出願中の特許を含むことから,上記の「技術的範囲に含む」との文言 も, 「技術的範囲に含み得る」と解するべきである。このように,本件契約は,本件製 品の販売について一般的,包括的に実施許諾をするというものである。
イ 被告は,平成27年4月1日から平成30年3月31日までのランニング・ロ20 イヤルティにつき,被告の販売した本件製品が個々の特許権の技術的範囲に属するか 否かを問題とすることなくランニング・ロイヤルティを支払ってきた。また,被告は, 前記第2の1 イのとおり,平成30年4月1日から同年9月30日までのランニン グ・ロイヤルティについても上記同様の前提のもとで計算して弁済供託したほか,同 年10月1日から平成31年3月31日までのランニング・ロイヤルティについても,25 上記同様の前提のもとで計算をしている。
【被告の主張】 8 ア 被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲について 次のとおり,被告は,本件特許権等の権利範囲に属する本件製品に関してのみラン ニング・ロイヤルティの支払義務を負うところ,平成30年4月1日から同年6月2 9日までのランニング・ロイヤルティの額は,三木プーリ株式会社(31台),三益H5 DS株式会社(1台),株式会社ディスコ(6台),橋本義肢製作株式会社(1台),株 式会社北川鉄工所(2台)及びI-PEX ES-Gripper(5台)への販売 額合計の3%相当額である17万1000円に8%の消費税相当額1万3680円 を加えた18万4680円である。
実施料は,特許発明実施の禁止の解除ないしは専用実施権を設定する場合には10 同権利付与に対する対価であるから,特段の事情のない限り特許発明実施を基準に 算定されるべきである。
そして,本件契約書4条1項柱書は,本件契約書2条実施許諾対価としてラン ニング・ロイヤルティ等を支払う旨定めているところ,本件契約書2条1項は,本件 特許権等の有効期間中,本件特許権等に基づき本件製品を開発,製造(製造委託を含15 む) 販売等をすることにつき, , 専用実施権(専用実施権に対応する外国の実施権を含 む)を設定及び許諾する旨規定し,ランニング・ロイヤルティ等の対象を,有効期間 中の本件特許権等に基づく製品の販売等,すなわち,本件特許権等に係る特許発明実施品の販売等であると特定している。
また,本件契約書4条1項2号は,「本件特許権等が有効に存続している国におい20 て本件製品を販売したときは,当該国における販売分について」のみランニング・ロ イヤルティの支払義務が生じる旨を規定しているところ, 「本件特許権等」とは「本件 製品を技術的範囲に含む…特許権…」とされている(本件契約書1条1号) このよう 。
に,本件契約書4条1項2号における「本件製品を販売したとき」とは,本件製品を 技術的範囲に含む特許権等が有効に存続している場合を意味するから,本件特許権等25 の技術的範囲に含まれる製品の販売のみがランニング・ロイヤルティの対象であるこ とは明確である。
9 さらに,本件契約書3条1項は,本件製品にランニング・ロイヤルティ支払対象の ものと支払対象外のものの両方が含まれることを前提として,完全独占実施権設定の 対価の支払とランニング・ロイヤルティの支払とを調整するための規定であって,ラ ンニング・ロイヤルティの対象について,本件特許権等の権利範囲に属する製品の販5 売のみであるとの理解をすることにより,初めて意味を持つ規定である。
以上によれば,本件契約書の各規定はいずれも前記の実施料の原則的な法的性質と 整合的であり,前記の特段の事情は存在しない。
本件契約締結前の交渉段階においても,被告は,原告に対し,ランニング・ロ イヤルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定することを提案していた。
10 イ 原告の主張についての反論 本件契約におけるランニング・ロイヤルティの支払義務につき原告の主張するよう に解釈するのであれば,本件契約書1条1号につき「本件製品を技術的範囲に含む」 ではなく「本件製品を技術範囲に含み得る」と規定すべきものである。また,同4条 1項2号につき「本件特許権等が有効に存続している国において」や「当該国におけ15 る販売分について」との限定を付す必要はなく,単に本件製品を販売したときにラン ニング・ロイヤルティを支払う旨規定すれば足りることになる。このように,原告の 主張する解釈は,本件契約書の規定に沿わないものである。
争点に対する判断
1 事実認定20 前記前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定するこ とができる。
原,被告間のコンサルタント契約の締結 ア 原告と被告は,平成25年9月20日,@静電容量の変化を利用し,回転軸周 りの静止トルクを検出するセンサであるトルクセンサ及びAMEMS技術を利用し25 て製造され,錘に作用した加速度(力)を圧電効果で電荷に変換して発電する発電機 であるマイクロ発電機を開発するに当たり,原告が被告に対して技術的な助言及び指 10 導をすることを目的とし,期間を契約日から1年間,被告の支払う対価を2500万 円とするコンサルタント契約を締結した。同コンサルタント契約においては,上記各 製品の開発に当たって原告又は被告が単独でした発明及び考案についてはそれぞれ が単独で出願し単独で権利者になること,これらの出願に関する費用は権利者となる5 者の負担とすることがそれぞれ定められていた(乙1の1)。
イ その後,原告と被告は,平成26年9月20日,前記ア@及びAの各製品に, B圧電効果を利用し,3次元空間の加速度を3軸成分に分けて検出するセンサである 高感度加速度センサ,C静電容量の変化を利用し,2次元平面の圧力分布を検出する センサである触覚センサ及びDMEMS技術を利用して製造され,圧電効果で反射板10 が2軸周りに回転振動する反射装置であるMEMSミラーを加え,期間を1年間,被 告の支払う対価を2300万円とした上で,原告又は被告が単独でした発明及び考案 の権利関係及び出願費用の負担につき前記アと同内容の規定を含むコンサルタント 契約を締結した(乙1の2)。
ウ さらに,原告と被告は,平成27年4月1日,本件契約と開始時期をそろえる15 ために,前記イのコンサルタント契約をいったん合意解約した上で,再度,対象製品 を前記ア@及びA並びに前記イBないしDの各製品,期間を1年間,被告の支払う対 価を2300万円とし,原告又は被告が単独でした発明及び考案の権利関係及び出願 費用の負担につきに前記アと同内容の規定を含むコンサルタント契約を締結した(乙 1の3。以下,前記アないしウのコンサルタント契約を併せて「本件コンサルタント20 契約」ということがある。。
) 本件契約締結に至る経緯 ア 原告は,平成26年9月10日,被告に対し, 「第一精工株式会社殿と弊社との 取り組み(案) と題する書面により, 」 原告及びその関連会社等が権利を有する@圧電 型加速度センサ(L字タイプ),A触覚センサ(薄型力覚センサ),Bトルクセンサ,25 Cマイクロ発電機及びDMEMSミラーの各商品に関する特許権の独占的通常実施 権又は専用実施権を被告又はその関係会社に許諾することを提案した。同書面におけ 11 る提案には,被告が販売価格の3%のランニング・ロイヤルティを支払うこと,契約 締結後は,同書面に記載された日本国及び外国の特許権又は出願中の特許合計42件 の全部につき維持年金,外国出願費用,翻訳料,代理人費用及びその他の経費を被告 が全額負担するほか,上記@ないしDの各製品に関して原告が単独で出願した特許に5 ついても被告が独占権を有し,特許出願に関する費用を被告が全額負担することが含 まれていた(乙5)。
イ 被告は,平成26年11月5日,原告に対し, 「株式会社ワコー殿と弊社取り組 みについてのご提案」と題する書面により,前記アの原告の提案に対する対案を提示 した。同書面における提案には,被告が原告から前記アの@ないしDの各商品に加え10 て,E イのコンサルタント契約締結期間中に原告単独又は原,被告共同で新規 開発した商品に関する専用実施権(独占権)の許諾を受けること,許諾期間を契約締 結から15年間とし,同期間経過後は対象特許権の存続期間満了日まで被告が通常実 施権を有すること,被告が原告に対し契約日から15年間又はロイヤルティ総額が3 0億円に達するまでのいずれか早い時点まで許諾特許を使用する商品の売上高の15 3%をランニング・ロイヤルティとして支払うこと,上記@ないしEの各商品に関し て原告が単独で出願した特許についても,被告が専用実施権(独占権)を有する期間 (15年間)において,特許出願,専用実施権登録に関する費用を被告が負担するこ と,専用実施権を許諾された特許に関する契約締結後の維持年金,外国出願費用,翻 訳料,代理人費用及びその他の経費を被告が全額負担することが含まれていた(乙6)。
20 ウ 原告は,平成27年1月30日,被告に対し, 「第一精工株式会社殿と弊社との 取り組み(案) と題する書面により, 」 前記イの被告の提案に対する対案を提示した。
同書面における提案には,許諾する権利を専用実施権ではなく独占的通常実施権とす ること,前記イEの商品のうち原告が単独で新規に開発した商品については被告が優 先的に交渉権を有するにとどめること,許諾期間を契約締結から15年間とし,同期25 間経過後は対象特許権の存続期間満了日まで被告が通常実施権を有すること,特許の 有効期間中は,被告がランニング・ロイヤルティを支払うこと,契約締結後に出願さ 12 れた特許につき,対象商品に関するものと原告が単独で出願した特許について,被告 が独占的通常実施権を有し,かつ特許が有効である期間中は,特許出願等に関する費 用を被告が全額負担すること,独占的通常実施権に関する対象商品の特許経費につい ては被告が全額を負担することが含まれていた(乙7)。
5 エ 被告は,平成27年2月24日,原告に対し, 「株式会社ワコー殿と当社取り組 みについてのご提案(4次案) と題する書面により, 」 前記ウの原告の提案に対する対 案を提示した。同書面における提案には, イのコンサルタント契約期間中の原 告単独開発商品については前記ウのとおり被告が優先的に交渉権を有すること,契約 期間を対象商品の許諾特許の有効期間,許諾実施権専用実施権とすること,対象商10 品の売上高ベースで3%をランニング・ロイヤルティとして支払うこと,専用実施権 許諾特許については被告がその特許費用を負担すること,被告が,契約期間中,対象 製品のうちいずれかを個別に又は全てを一括して許諾実施権専用実施権から通常 実施権変更できる権利を留保することが含まれていた(乙8)。
オ 原告は,平成27年2月26日,被告に対し,前記エの被告の提案に対し,許15 諾する実施権の内容につき,契約から3年間は専用実施権としそれ以降は独占的通常 実施権とすることを要望した(乙10)。
カ 前記アからオまでのやり取りを経て,原告と被告は,実施許諾契約について大 筋で合意が整ったとして,被告において実施許諾契約書案を作成した上で細部を詰め ることとし,被告訴訟代理人作成の実施許諾契約書案(乙11)を基礎として契約条20 項についての調整を重ね,本件契約の締結に至った。同実施許諾契約書案(乙11) における本件特許権等及び本件製品の定義部分(1条1号,3号) 本件特許権等につ , き原告が被告に対して専用実施権等を設定及び許諾する部分(2条1項),ランニン グ・ロイヤルティの決定方法に関する部分(4条1項2号) 被告が特許実費を支払う , べき範囲に関する部分(5条1項)及び被告が特許実費支払義務を免れる場合に関す25 る部分(同条2項)の各規定は,専用実施権等について再実施許諾権付であることが 削除されたほかは,いずれも文言の変更なく,本件契約に引き継がれた(乙9〜16)。
13 本件契約締結後の当事者間のやり取りの状況等 被告は,本件契約期間中,原告に対し,原告が出願した特許の内容の説明を求め, これに応じて原告も被告に対してその概要を説明していた(甲18〜23) また, 。 被 告は,原告からの特許実費請求に対し,必要に応じてその内容についての説明や出願5 に係る特許の明細書や請求項等の出願書類の写しの提供を求め,これに応じて原告も 回答するなどしていた。被告は,原告の回答も踏まえ,原告の特許実費請求の内容を 確認し,原告に対し特許実費を支払っていた(甲20,24〜29)。
被告内部におけるやり取りの状況等 被告の知的財産部知財管理課に所属するB(以下「B」という。)は,平成28年110 1月30日,被告の常務取締役を務めるC(以下「C常務」という。)及び知的財産部 の部長を務めるD(以下「D部長」という。)に対し,原告が出願して特許権の設定登 録がされた8件の特許について専用実施権設定登録を申請するに際し,本件契約で は,専用実施権設定登録期間中特許実費を支払うとされているとして,使用が見込 まれない特許権について専用実施権設定登録をしないことを含め,設定の要否の検15 討をするように依頼した(乙2)。
被告による本件契約に基づく特許実費及びランニング・ロイヤルティの支払状 況等 ア 原告は,被告に対し,原告が有する特許権又は単独で発明して出願した出願中 の特許で本件製品に関するものに関し,専用実施権設定登録がされていないものも20 含めて,平成27年4月1日から平成29年9月30日までの間に発生した特許実費 の全額を請求し,被告はこれを支払った。被告が上記のとおり支払った特許実費の対 象となる特許権及び出願中の特許の中には,その権利範囲に,被告の製造販売等に係 るいずれの製品も含まないものが多数あったほか,平成29年度第2半期分の特許実 費請求の対象である特許権又は出願中の特許も複数含まれていた(甲2,6〜15,25 24〜28) 。
イ 被告は,原告に対し,本件特許権等の実施の有無を区別することなく本件製品 14 の正味販売価格を計算し,圧電加速度センサについては原告との合意により正味販売 価格の10%を基礎とした上で,これらに実施料率3%を乗じる方法で平成27年4 月1日から平成30年3月31日までの期間のランニング・ロイヤルティを計算して 支払っていた。また,被告は,平成30年10月16日,原告に対し,上記同様の計5 算方法に基づき,同年4月1日から同年9月30日までのランニング・ロイヤルティ の額が448万7710円(消費税相当額を含む。 である旨報告し, ) 同年12月25 日には,原告が同年4月1日から同年9月30日までのランニング・ロイヤルティの 受領を拒絶する意思を明確にしたとして,同額について民法494条に基づく供託を した。さらに,被告は,平成31年4月26日,原告に対し,上記同様の計算方法に10 基づき,平成30年10月1日から平成31年3月31日までのランニング・ロイヤ ルティの額を計算して報告した(甲5,33,36〜42)。
被告による本件変更通知 ア 被告は,平成29年9月12日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件特 許権等のうち外国特許を含む25件の特許権について被告が有する専用実施権につ15 き,同年5月24日をもって非独占的通常実施権変更することを通知した(乙3)。
イ 被告は,平成30年2月23日頃,同日付け書面により,原告に対し,本件特 許権等について被告が有する全ての専用実施権につき,同年3月31日をもって非独 占的通常実施権変更する旨の本件変更通知をした(乙4)。
原告による平成29年度第2半期における特許実費の請求及び被告によるそ20 の支払拒絶の経緯等(甲29) ア 原告は,平成30年4月23日,被告に対し,平成29年度第2半期における 特許実費として請求する費用の一覧(甲2)をメールで送付するとともに,同月24 日,被告に宛てて,原告の支払先から原告宛ての請求書の写しを郵送した。
原告の請求に係る特許実費の対象とされた特許権及び出願中の特許は,本件製品の25 いずれかに関する発明を含むものであり,これらに係る特許実費は4512万604 3円であった(甲2,弁論の全趣旨)。
15 イ Bは,平成30年5月2日,原告代表者Aに対し,前記アの請求について,特 に同年2月の最終週以降に費用が計上された案件について支払の対象かどうか判断 できかねる点があるとして,PCT出願の移行期限に余裕がある4件の特許出願につ いて移行の手続をとった理由,1件の米国出願について特許審査ハイウェイ(Patent5 Prosecution Highway と英文表記される。以下「PPH」という。)の申請をした理由 等をメールで質問した。
ウ 原告代表者Aは,平成30年5月8日,Bに対し,発明者であり,原告におい て,外国出願に対する拒絶理由が発せられた際に対応することができる唯一の者であ る原告代表者Aが高齢となっているため,早期の権利化をすべく移行の手続をとった10 こと,同様の理由により,PPHの申請の効果が期待できなくても早期の権利化を優 先したこと等をメールで回答した。
エ Bは,平成30年5月9日,原告代表者Aに対し,少なくとも権利化されてい ない案件については被告において独占的に実施できる機会がなかったため,本件契約 上の特許実費の対象とならず,したがって,前記アの請求に係る費用のうち上記案件15 の費用については被告が支払う必要がないと考えている旨をメールで伝えた。
オ 原告代表者Aは,平成30年5月9日,Bに対し,本件契約書1条1号に定め る本件特許権等には将来所有する特許権及び出願中の特許も含むことから,同年3月 までに出願した本件製品に係る全ての特許について特許実費を請求したこと,過去2 年間も同様に請求し,被告から支払を受けていることをメールで回答した。
20 カ Bは,平成30年5月10日,原告代表者Aに対し,被告が専用実施権を有し ている特許権に限り特許実費を負担する旨が本件契約書5条1項において定められ ているため,被告が専用実施権を有していない本件特許権等の特許実費については被 告が負担すべきものではないこと,過去の特許実費についても精査を開始する意向で あることをメールで回答した。
25 さらに,Bは,平成30年5月16日,原告代表者Aに対し,過去に被告が特許実 費を支払ったもののうち2391万8150円については特許権が発生してないも 16 のに関する費用であること,上記費用のうち,原告により出願取下げとなったものの 費用115万1459円を除く2276万6691円については,将来的に独占的な 実施権を得られるであろうとの期待から自発的に支払ったものにすぎず,本件契約上 被告において支払義務のないものであること,少なくとも,上記出願取下げとなった5 ものの費用及び本件変更通知後特許実費については,独占的な実施権を将来的に被告 において設定し得ないことが明らかなものに関する費用であるから支払に応じかね ることなどをメールで伝えた。
2 争点1(被告が支払義務を負う特許実費の範囲)について 本件契約の解釈等10 ア 特許実費の支払義務を負う対象となる権利の範囲について,本件契約書5条1 項は,「専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等」と規定してい るところ,このうち,まず, 「専用実施権又は独占的通常実施権を有している」との文 言の解釈が問題となる。
法律上,専用実施権又は独占的通常実施権を有効に設定することができる対象は,15 特許権として成立したものであり,出願中の特許,将来出願される特許又は将来発生 する特許権は含まれない。
1条において定義される本件特許権等についてのものであるとされ(前文),本件特 許権等について,原告において現に所有する特許権のみならず,現に所有する出願中20 の特許,将来所有すべき特許権及び出願中の特許を含むものと定義されるとともに, これに含まれるものを例示した一覧には,出願中の特許も掲げられ(1条1号,別紙 1) その上で, , 支払義務を負う特許実費の範囲として,特許権又は出願中の特許に係 る出願,登録及び維持に要する実費であるとされている(5条2項)。また,本件契約 書には,被告から原告に対して,本件製品の全部又は一部を単位として専用実施権又25 は独占的通常実施権を非独占的通常実施権変更する旨の通知(2条3項)をした際 には,当該通知がされた対象特許権又は出願中の特許について特許実費の負担義務を 17 免れるとされ(5条2項),専用実施権又は独占的通常実施権の対象に出願中の特許 を含むことが示されている。
このように,本件契約書には,特許実費の支払対象を専用実施権又は独占的通常実 施権の設定された特許権のみであると明確に限定する旨の規定はなく,かえって,既5 に成立した特許権のみならず,出願中の特許,将来出願される特許及び将来成立する 特許権を含めて専用実施権又は独占的通常実施権の設定及び許諾の対象とし,かつ, 特許実費の支払対象として出願中の特許を含める規定が設けられているのである。そ うすると,本件契約書5条1項の「専用実施権又は独占的通常実施権を有している」 との文言は,専用実施権又は独占的通常実施権が法律上有効に成立するか否かを問わ10 ず,特許権又は出願中の特許で,原,被告間において専用実施権若しくは独占的通常 実施権を設定する旨の合意又はこれらと同等の許諾をする旨の合意がされているこ とを意味すると解するのが相当である。
求の対象に含まれる特許権又は出願中の特許に係る費用も含め,原告の有する特許権15 又は単独で発明して出願した出願中の特許で,本件製品に関するものについて,平成 27年4月1日から平成29年9月30日までの間に発生した特許実費の全額を支 払っていたのであるが,このことは,上記解釈と整合するものである。
イ 次に,本件契約書5条1項の「専用実施権又は独占的通常実施権を有している 本件特許権等」のうち, 「本件特許権等」との文言について,本件契約書1条1号にお20 いて,本件特許権等が本件製品を技術的範囲に含むものと定義されていることとの関 係で,その範囲の解釈が問題となる。
この点,本件契約書1条1号の定義において本件特許権等について本件製品を技術 的範囲に含むとする概括的な表現とされていることに加えて,本件契約締結に至る交 渉の状況を踏まえれば,上記の「本件特許権等」との文言は,いずれかの本件製品が25 その技術的範囲に属するとして発明を実施すると解されるものに限らず,本件製品の いずれかに関する発明を含むものを意味すると解するのが相当である。すなわち,本 18 件契約締結に係る交渉において,原告は,被告に対し,本件契約締結後は,原告の有 する本件製品に関する特許を対象として実施許諾をし,その対価として被告が販売価 格の3%のランニング・ロイヤルティ 告は,いったんは許諾特許を使用する商品の売上高の3%をランニング・ロイヤルテ5 ィとして支払う旨の提案をしたものの(同イ) その後に, , 許諾特許を使用する商品と 原告単独開発製品を対象商品としてその売上高の3%をランニング・ロイヤルティと その後,ランニング・ロイヤルティの支払条件として本件特許権等の実施の有無やそ10 の数については何ら触れられないまま,本件製品の正味販売価格に実施料率を乗じた 額のランニング・ロイヤルティを支払う旨を定めた本件契約書が作成されているので ある。
告が支払った特許実費の対象となる特許権及び出願中の特許の中には,その権利範囲15 に,被告の製造販売等に係るいずれの製品も含まないものが多数あったこと,同イの とおり,被告が,平成27年4月1日から平成31年3月31日までのランニング・ ロイヤルティにつき,原告に対し,本件特許権等の実施の有無を区別することなく支 払又は算定をしていたことは,前記解釈と整合するものである。
特許実費の範囲20 以上の解釈を踏まえた上で,平成29年度第2半期における特許実費についてみる 中の特許は,本件製品のいずれかに関する発明を含むものであり,これらに係る特許 実費は4512万6043円であるから,平成29年度第2半期における特許実費は 4512万6043円であると認められる。
25 被告の主張について ア 被告は,その文言からも,本件契約締結の経緯からも,本件契約書5条1項は, 19 被告が本件契約書2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を現 に有している本件特許権等に限り被告において特許実費を負担することを規定する ものであり,専用実施権は,その設定登録をしなければ効力が発生しないから,本件 契約書5条1項は,被告において専用実施権設定登録を受けた特許権のみを対象と5 すると解するべきである旨主張する。
本件契約書5条1項が被告において専用実施権設定登録を受けた特許権のみを特 許実費支払の対象とするものと解することはできない。
また,前記1 のとおりの本件契約締結前の原,被告間の交渉における原告の提案10 内容や,原告が,本件契約締結後も,専用実施権設定登録がされていないものにつ いての特許実費を請求していたことに照らすと,原告は,一貫して特許実費の対象が 被告において専用実施権設定登録を受けた特許権に限られないことを前提とした 行動をとっている。これに対し,被告は,原告に対し,被告が専用実施権(独占権) を有する期間中は,本件製品等に関して原告が単独で出願した特許に係る特許出願,15 専用実施権登録に関する費用を被告が負担し,専用実施権を許諾された特許に関する 契約締結後の維持年金,外国出願費用,翻訳料,代理人費用及びその他の経費を被告 が負担する旨や( イ),専用実施権を許諾された特許について被告がその特 許費用を負担する旨の提案をしたにとどまり( エ),これらの提案内容から は,被告が,本件契約締結前の時点で,明確に専用実施権設定登録された特許権に20 限り特許実費の支払の対象とする旨の意向を示していたとまでは認め難い。そうする と,本件契約締結前の交渉時の事情が直ちに被告の主張を裏付けるものとはいえない。
よって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 被告は,@本件契約は,本件コンサルタント契約において,原告が単独でした 発明の出願に関する費用は原告の負担とする定めがあることを前提とした上で,その25 例外として,被告が専用実施権を有するものについてその特許実費を負担することを 定めたものであること,A被告が特許実費を負担する必要があることを専用実施権設 20 定の要否の検討の際の考慮要素としていること,B本件特許権等の出願等は,専ら原 告がその裁量で自己の権利として管理しており,被告が判断できるのは本件特許権等 について専用実施権設定登録を受けるか否かの点のみであることから,本件契約書 5条1項は,被告において専用実施権設定登録を受けた特許権のみを特許実費の支5 払対象とするものと解するべきである旨を主張する。
上記@の点につき,前記1 のとおり,本件コンサルタント契約では,製品の開発 に当たって原告又は被告が単独でした発明及び考案について,それぞれが単独で出願 し単独で権利者になり,これらの出願に関する費用は権利者となる者の負担とすると されており,本件製品と本件コンサルタント契約の対象となった製品には重複するも10 のも存在するのであるが,本件コンサルタント契約の上記条項は, のコンサルタント契約時から同内容のままであったのに対し,最初のコンサルタント 契約締結から約1年して交渉が開始されて本件契約が締結されるに至ったことから すれば,原,被告間においては,本件契約の締結により,原告が単独で発明して出願 し権利者となった特許についても,本件契約の対象となる限りは,本件契約に従って15 特許実費を負担する旨の合意がされたものと解すること すほどの不合理な点はない。
上記Aの点について,前記1 のとおり,Bは,平成28年11月30日,C常務 及びD部長に対し,原告が出願して特許権の設定登録がされた8件の特許について専 用実施権設定登録を申請するに際し,本件契約では,専用実施権設定登録期間中20 特許実費を支払うとされているとして,使用が見込まれないような特許権について専 用実施権設定登録をしないことを含め,設定の要否の検討をするように依頼してい るのであるが,前記1 アのとおり,上記のやり取り以降も含め,被告が原告に対し, 専用実施権を設定していないものも含めて原告が有し又は単独で発明し出願した本 件製品に関する特許権及び出願中の特許を対象として平成27年4月1日から平成25 29年9月30日までの特許実費の全額を支払っていたことに照らすと,上記の被告 21 上記Bの点について,原告が被告の了承を得ることなく本件特許権等の出願等をし ていたとしても,前記1 のとおり,被告は,原告から,出願した特許の概要の説明 を受けていたほか,必要に応じて原告に対して原告の出願に係る特許に係る明細書や 請求項等の出願書類の写しの提供を求めていたものである。そして,被告は,これら5 を踏まえ,本件契約書2条3項に基づき,いつでも専用実施権の許諾を受けた権利に つき非独占的通常実施権変更し,特許実費の負担を免れることができたのであるか ら(本件契約書5条2項) ものであると はいえない。
ウ 被告は,本件変更通知以降は,被告が本件特許権等につき何らの専用実施権を10 有しないことが明確となった以上,それ以降に発生した本件変更通知後特許実費につ いては,本件契約上,被告が負担すべきものと解釈されるべきではないし,仮にその ように解釈されたとしても,本件変更通知後特許実費の発生原因となった原告による 特許出願等が被告にとって必要性がなく,また,早期に行われる必要もないものであ ったことも踏まえると,原告の本件変更通知後特許実費の請求は権利の濫用に該当す15 る旨主張する。
しかしながら,前記 のとおり,本件契約上,原,被告間に本件特許権等について の専用実施権の設定合意が存在する間は,被告が本件特許権等の特許実費を負担すべ きであると解されるところ, 本件変更通知によって上記の合意 が解消されるのは平成30年3月31日である上に,本件変更通知の対象には本件特20 許権等に含まれる出願中の特許は含まれておらず, アの本件特許権等の文言の 解釈を前提とすると,本件変更通知の対象とされたのは本件契約の対象となる本件特 許権等のうちの一部にとどまることとなるから,本件変更通知により被告が本件特許 権等につき何らの専用実施権を有しないことが明確になったともいえない。
また,証拠(甲2,43)及び弁論の全趣旨によれば,原告の請求に係る平成2925 年度第2半期における特許実費のうち,原告において平成29年11月10日以前に 特許事務所に対して出願等の依頼をしたにもかかわらず,特許事務所からの実際の請 22 求が平成30年2月23日以降にされたにすぎないものも相当額含まれていること が認められるし,また,これに当たらないものに関し,原告において,同日以降に殊 更同年3月31日までに特許出願等の特許実費を発生させる行為をしたと認めるに 足りる証拠もないこと,本件契約上,被告における実施の必要性がないこと等を理由5 として被告において特許実費の負担を免れることができる旨の定めも存在しないこ とに照らすと,原告の本件変更通知後特許実費の請求が権利の濫用に該当するともい えない。
エ 被告は,過去に原告の有する本件製品に関する特許権及び出願中の特許を対象 としてその特許実費全額を支払っていた点について,後に精算することを前提に仮払10 したにすぎない旨主張する。
しかしながら,本件契約書上,支払対象とならない特許実費に関する仮払やその精 算に関する定めは存在しない上に,証拠(甲6〜15,24〜28)及び弁論の全趣 旨によれば,被告が,原告の特許実費の請求に応じてその支払をするに当たり,仮払 であることや後に精算する必要があることを示すことなく支払をしたことが認めら15 れるほか,前記1 は,過去の特許実費の支払につき,仮払という説 明ではなく,支払当時将来的に独占的な実施権を得られるであろうとの期待から自発 的に支払ったなどと説明していたのであって,他に被告が原告に対して仮払であるこ とや精算の必要性があることを支払の際に示していたことをうかがわせる証拠もな いことに照らすと,被告の上記主張は採用することができない。
20 まとめ 以上によれば,被告は,原告に対し,本件契約に基づく平成29年度第2半期にお ける特許実費4512万6043円から支払済みの6万5200円を控除した残額 4506万0843円の支払義務を負うと認められる。
また,前記第2の2 被告による上記特許25 実費支払義務の不履行により,平成30年6月29日の経過をもって解除されたもの と認められる。
23 3 争点2(被告が支払義務を負うランニング・ロイヤルティの範囲)について 本件契約の解釈等 ランニング・ロイヤルティの支払義務を負う場合について,本件契約書4条1項2 号は, 「本件特許権等が有効に存続している国において」と規定しているところ,この5 うち, 「本件特許権等」については,原告が現に所有する特許権及び出願中の特許並び に原告が将来に所有すべき特許権及び出願中の特許を含むものであり(本件契約書1 条1号) これを踏まえれば, , 本件契約書4条1項2号の上記文言のうち「有効に存続 している」との文言については,本件特許権等のうち同号の対象となるものを限定す る趣旨であると解するのが自然である。そして,その文言に照らせば,本件特許権等10 のうち同号の対象となるのは,現に有効に存続している特許権,又は出願後に取り下 げられたり,拒絶査定が確定した等の事情が存在せず,特許権として発生する余地の ある特許出願であり,まだ出願すら存在しない将来所有すべき出願中の特許又は特許 権については除かれると解するべきである。さらに,本件契約書4条1項2号は,本 件特許権等が有効に存続している国において本件製品を販売したときに当該国にお15 ける販売分についてランニング・ロイヤルティの支払義務を課すものであるから,ラ ンニング・ロイヤルティの支払義務につき,本件特許権等に含まれる特許権又は出願 中の特許が存在する国における本件製品の販売に限定することを定めたと解するの が自然である。
また,前記2 イのとおり,本件契約書1条1号の「本件製品を技術的範囲に含む20 本件特許権等」とは,本件製品のいずれかに関する発明を含む本件特許権等を意味す るものである。
以上によれば,被告は,発明の対象が本件製品のいずれかに該当する特許権又は出 願中の特許が存在する国において本件製品を販売したときは,原告に対し,本件契約 書4条1項2号に基づき,当該国における販売分について,ランニング・ロイヤルテ25 ィとして,本件製品の正味販売価格の3%相当額及び消費税相当額を支払う義務を負 うということができる。
24 被告の主張について ア 被告は,実施料につき,特許発明実施の禁止の解除ないしは実施専有権付与に 対する対価であるから,特段の事情のない限り,特許発明実施を基準に算定される べきである旨主張する。
5 しかしながら,特許発明実施の禁止の解除ないしは実施権許諾の対価として実施料 の性質をとらえることができるとしても,多数の特許権等を一括して実施許諾する際 に,実施許諾の対象となる特許権及び出願中の特許の技術的範囲に属するか否かにか かわらず,製品の名称を特定しその販売額に応じてランニング・ロイヤルティを定め れば,実際に実施する特許権等の数にかかわらずランニング・ロイヤルティを一定額10 にとどめることができる上に,その算定に当たり実施の有無について争いとなること を防ぐこともできるという点において合理的なものであり,そのような合意をするこ と自体は何ら不自然なものではないから,特許権等の実施許諾契約において,特段の 事情のない限り,被告の主張するような実施料の算定に関する合意が存在するという ことはできない。出願中の特許についても,出願公開後に生じる補償金請求権の行使15 を回避できる上に,本件契約上,特許権が発生すれば当然に実施許諾の対象となるこ と(本件契約書2条1項)に照らすと,これを実施許諾の対象とすることも何ら不合理 ではない。
また,被告が本件契約書4条1項2号の解釈について種々主張する点は,いずれも 前 に判示したとおりであって,採用することができない。この点,被告の本件契20 約書3条1項に基づく主張については,同条項は原告及び被告が共同でした発明等に 関する規定であるから,原告において単独で有する本件特許権等に関するランニン グ・ロイヤルティの支払義務を定めた本件契約書4条1項2号の解釈に同条項が影響 を与えるものではない。
イ 被告は,本件契約締結前の交渉段階においても,被告は,原告に対し,ランニ25 ング・ロイヤルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定することを提案してい た旨主張する。この点,被告は, 当初は,ランニング・ロイヤ 25 ルティの支払対象を本件特許権等の実施品に限定する旨の提案をしてはいるものの, 同エのとおり,その後にされたランニング・ロイヤルティに関する提案にはそのよう な限定はされておらず,前記1 本件契約締結後も,本件特許権等の実 施の有無を区別することなくランニング・ロイヤルティを計算して支払っていたこと5 に照らすと, 被告が支払うべきランニング・ロイヤルティの額について 証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許権等が有効に存続する日本国内 において被告が販売した本件製品の 正味販売価格の 3%相当額は,平成30年4月につき67万8300円,同年5月につき72万2110 00円,同年6月につき118万8017円であり,その合計額は258万8417 円であると認められ,これに8%の消費税相当額20万7073円(1円未満の端数 切捨て)を加えた額は279万5490円となる。そして,上記金額と原告の請求す る220万7070円との差額である58万8420円を超えるランニング・ロイヤ ルティが,平成30年6月30日に発生したことをうかがわせる証拠はないから,本15 件契約に基づき被告が支払うべき同年4月1日から同年6月29日までのランニン グ・ロイヤルティの額は,原告の請求する220万7070円を下回るものではない と推認することができる。
被告による弁済供託について 前記第2の1 おり,被告は,平成30年12月25日,同年4月1日から同20 年9月30日までの本件契約に基づくランニング・ロイヤルティとして448万77 10円を供託しており,この供託は民法494条に基づく有効な供託として弁済の効 力を生じたと認められるから,これにより 原告が有していたランニング・ロ イヤルティの支払義務は消滅している。
まとめ25 以上によれば,原告のランニング・ロイヤルティ支払請求は理由がない。
結論
26 よって,原告の請求は,特許実費4506万0843円及びこれに対する平成30 年6月13日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金の支払 並を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないか ら棄却することとして,主文のとおり判決する。
5
追加
27 (別紙)契約条項5前文被告と原告は,原告が有する本件特許権等(定義は1条のとおり)の実施許諾に関し,以下のとおり契約を締結する。
1条(定義)本件契約において,別段の定めがある場合を除き,次の各用語は,次に定める意味10を有するものとする。
@「本件特許権等」とは,本件製品を技術的範囲に含む原告が現に所有し又は将来に所有すべき特許権及び出願中の特許(これらに対応する外国における特許権及び出願中の特許を含む。本号において以下同じ。の総称を意味する。
)本件特許権等には別紙1(判決注・本件契約書に添付された別紙である。に係る対象特許目録記載の特)15許権及び出願中の特許,並びにこれらの特許権及び出願中の特許に関する分割出願,継続出願,一部継続出願,再発行,更新,延長及び追加が含まれる。
B「本件製品」とは,圧電型加速度センサ(L字タイプ)触覚センサ(薄型力,覚センサ)トルクセンサ,マイクロ発電機,,及びMEMSミラーを意味する。
C「正味販売価格」とは,被告が第三者に本件製品を販売した販売高の税抜金額20を意味する。
2条(本件特許権等の実施許諾)1原告は,被告に対し,本件特許権等の有効期間中,本件特許権等に基づき,被告が全世界において本件製品を開発,製造(製造委託を含む。,販売,使用,販売の)申出,輸出及び輸入することにつき,専用実施権(専用実施権に対応する外国の実施25権を含む。)を設定及び許諾する。原告は,本件契約締結後速やかに,被告が本項所定の専用実施権設定登録を行う手続に協力する。
28 2前項の定めにかかわらず,本件契約締結日から3年間を経過したときは,前項の専用実施権独占的通常実施権(独占的通常実施権に対応する外国の実施権を含む。)に変更されるものとする。ただし,本項本文の変更を除き,被告が有する実施権の内容については維持されるものとする。
53本件契約における他の定めにかかわらず,被告は,本件契約の有効期間中,自己の選択により,本件製品の全部又は一部を単位として,本件契約に定める専用実施権及び独占的通常実施権を非独占的通常実施権変更する権利を有する。被告は,当該変更をするときは,書面による変更通知を原告に対して行うものとする。被告による当該変更通知をもって被告の実施権変更対象製品について非独占的通常実施権10に変更されるものとするが,独占性以外の実施権の内容については維持されるものとする。
4原告及び被告は,原,被告間で別途締結するコンサルタント契約の有効期間中に原告が開発した製品について,被告が当該製品の事業化を希望したときは,原告は被告に対して当該製品に関する特許権及び出願中の特許の実施許諾を含む契約締結15に関する優先交渉権を付与するものとし,両者は契約締結に向けて誠実に協議するものとする。
3条(原,被告共有の発明及び考案に係る知的財産権の実施)原告及び被告は,2条4項のコンサルタント契約の有効期間中に原,被告が共同で成した発明及び考案(以下「共同特許」という。)については,相手方に何らの支払を20要せず原,被告それぞれが自ら実施できることを相互に確認し,本件製品を技術的範囲に含む原,被告共有の発明及び考案に係る知的財産権について原告又は被告が単独での実施を希望し,相手方と協議の上その承諾を得て独占的に実施(第三者への実施委託を含む。)及び実施許諾を行う権限(以下「完全独占実施権」という。)を得たときは,当該相手方が当該知的財産権を自己又は第三者をして実施しないことを条件に,25本項に定める知的財産権の出願,登録及び維持に要する実費を負担するほか,完全独占実施権を有している期間に限り,完全独占実施権実施して本件製品を販売したと29 きは,相手方に対し,完全独占実施権設定の対価として,本件製品の正味販売価格の3%相当額(税別)を支払う。ただし,完全独占実施権実施対象製品が本件契約書4条1項2号所定のランニング・ロイヤルティ支払対象の本件製品と重複し被告がランニング・ロイヤルティを支払う場合,被告は,本項所定の完全独占実施権設定の対5価の支払義務を負わない。
4条(実施料)1被告は,原告に対し,2条実施許諾対価(以下「実施料」という。)を支払う。
@一時金10被告は,原告に対し,本件契約締結日から60日以内に,本件契約締結日時点において本件特許権等の出願に関して原告が支出した別表1(判決注・本件契約書に添付された別表である。)に示す特許の実費総合計6748万8800円を一括して支払う。
Aランニング・ロイヤルティ15被告は,本件特許権等が有効に存続している国において本件製品を販売したときは,当該国における販売分について,原告に対し,ランニング・ロイヤルティとして,本件製品の正味販売価格の3%相当額(税別)を支払う。
B最低保証実施料前2号のほか,被告は,2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施20権を有している期間に限り,原告に対し,1年間(始期を毎年4月1日,終期を翌年3月31日とする。当たり以下に定める最低保証実施料を支払う。
)具体的には,本項前A号にて定めるランニング・ロイヤルティの実績金額が本号所定の最低保証実施料に係る金額に満たない場合に限り,被告は,最低保証実施料と実績金額の差額分を原告に支払う。
25(i)2条4項のコンサルタント契約の有効期間中1年間当たり1500万円(税別)30 (ii)(i)以外の場合1年間当たり3500万円(税別)2被告は,本条前項A号に係るランニング・ロイヤルティに関し,本件契約期間中の各半期(第1半期を4月1日〜9月30日,第2半期を10月1日〜3月31日とする)の終了後30日以内に当該半期における本件製品別の正味販売価格合計,主5要販売先及びランニング・ロイヤルティ額を原告に報告するとともに,当該報告に基づいて原告が請求書を被告に送付して被告が受領した日から30日以内に当該ランニング・ロイヤルティ額を支払う。
4被告が,原告に対し,実施料を支払期限までに支払わなかった場合,被告は当然に期限の利益を失い,加えて,当該支払期限から実際に支払を行う日までの期間に10つき,年14.6%の割合による遅延損害金を原告に支払う。
5条(本件特許権等に関する費用)1被告は,2条1項及び2項に定める専用実施権又は独占的通常実施権を有している本件特許権等に限り,当該特許権又は出願中の特許に係る出願,登録及び維持に要する実費(以下「特許実費」という。)を負担する。ただし,当該独占的通常実施権15下において原告が自己の実施権を行使しようとするときはあらかじめ被告に通知するものとし,以降の費用負担は原,被告折半とする。
2被告が本件特許権等の全部又は一部について2条3項に基づく非独占的通常実施権への変更通知をしたときは,当該変更通知がなされた対象特許権及び/又は出願中の特許については,前項の費用負担義務を免れるものとし,以降は,原告が自己20の責任と費用をもって当該対象特許権及び/又は出願中の特許の維持を行う。
3原告は,本件契約期間中の各半期(第1半期を4月1日〜9月30日,第2半期を10月1日〜3月31日とする)の終了後30日以内に当該半期における特許実費を集計して,その明細及び支払先とともに被告に報告する。被告は当該報告に基づいて原告が請求書を被告に送付して被告が受領した日から30日以内に特許実費を25支払う。
10条(契約期間)31 本件契約の有効期間は,本件契約締結日から本件特許権等の最終の存続期間満了の日までとする。ただし,理由の如何を問わず,本件特許権等の存続期間満了前に本件特許権等がすべて消滅した場合には,本件契約は当該全部消滅日をもって自動的に終了する。
511条(契約の解除)1原告及び被告は,相手方が本件契約に定める義務に違反した場合は,催告の上,本件契約を解除することができる。
以上32
裁判長裁判官 10山田真紀
裁判官 15神谷厚毅
裁判官 20矢野紀夫
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