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追加

関連審決 無効2018-800055
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事件 令和 1年 (行ケ) 10084号 審決取消請求事件

原告ネオケミア株式会社
訴訟代理人弁護士 高橋淳
訴訟復代理人弁護士 渡邊亮祐 宮川利彰
被告 株式会社メディオン・リサーチ・ ラボラトリーズ
訴訟代理人弁護士 山田威一郎 松本響子 柴田和彦
訴訟代理人弁理士 田中順也 水谷馨也 迫田恭子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/08/05
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2018-800055号事件について令和元年5月7日に 1 した審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 被告は,平成11年5月6日に出願した特許出願(特願平11-1259 03号)の一部を分割して出願した特許出願(特願2007-154216 号)の一部を更に分割して出願した特許出願(特願2011-8226号) の一部を分割して,平成25年4月26日,発明の名称を「二酸化炭素経皮 ・経粘膜吸収用組成物」とする発明について新たな特許出願(特願2013 -93612号。以下「本件出願」という。)をし,平成26年11月7日, 特許権の設定登録(特許第5643872号。請求項の数4。以下,この特 許を「本件特許」という。)を受けた(甲79,80)。
? 原告は,平成30年5月7日,本件特許について特許無効審判を請求した (甲88)。
特許庁は,上記請求を無効2018-800055号事件として審理を行 い,令和元年5月7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以 下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月17日,原告に送達され た。
? 原告は,令和元年6月6日,本件審判の取消しを求める本件訴訟を提起し た。
2 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである (以下,請求項の番号に応じて,請求項1に係る発明を「本件発明1」などと いう。甲79)。
【請求項1】 気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からな るパック化粧料を得るためのキットであって, 2 水及び増粘剤を含む粘性組成物と, 炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤と を含み, 前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が,前記粘性組成物と,前記複合 顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤とを混合することにより得られ,前記 二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の前記増粘剤の含有量が1〜15質 量%である, キット。
【請求項2】 前記複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤が,酸として,クエン酸, コハク酸,酒石酸,乳酸,及びリン酸ニ水素カリウムからなる群から選択され た少なくとも1種を含む,請求項1に記載のキット。
【請求項3】 前記粘性組成物が,増粘剤として,天然高分子,半合成高分子,及び合成高 分子からなる群から選択された少なくとも1種を含む,請求項1または2に記 載のキット。
【請求項4】 前記粘性組成物が,増粘剤として,アルギン酸ナトリウム,カルボキシビニ ルポリマー,カルボキシメチルスターチナトリウム,カルボキシメチルセルロ ースナトリウム,キサンタンガム,クロスカルメロースナトリウム,結晶セル ロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロー ス,及びポリビニルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種を含 む,請求項1〜3のいずれかに記載のキット。
3 本件審決の要旨 ? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,本件発明1ないし4は,本件出願前に頒布された刊行物であ 3 る甲1(特開昭60-215606号公報)に記載された発明及び本件優先 日当時の技術常識に基づいて,又は本件出願前に頒布された刊行物である甲 2(特公平7-39333号公報)に記載された発明及び本件優先日当時の 技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえ ないから,本件特許を無効とすることはできないというものである(なお, 本件審決にいう「本件優先日当時」は「本件出願日当時」の誤記と認める。
以下同じ。)。
(2) 本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。 , ) 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 甲1発明 「平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万の ポリビニルアルコール4部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノー ル6部,カルボキシメチルセルロースナトリウム3部,亜鉛華4部,炭酸 水素ナトリウム5部,香料0.3部,色素を微量及び水53.7部から製 造したA剤と, 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポ リビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール 5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,酒石酸5部,香料0.3部,色 素を微量及び水56.8部から製造したB剤の組み合わせからなるパック 剤であって, 使用時にA剤2重量部とB剤3重量部を混合することで,pHが6.2 となるとともに,発生する炭酸ガスによる血行促進作用により,皮膚の血 流を良くし皮膚にしっとり感を与えるパック剤」。
イ 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点 (一致点) 「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物か 4 らなるパック化粧料を得るためのキットであって, 水及び増粘剤を含む粘性組成物 を含むキット。」である点 (相違点1-1) キットの構成について,本件発明1では,「水及び増粘剤を含む粘性組 成物と,炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末 剤と,を含み」,両者を混合することにより二酸化炭素経皮・経粘膜吸収 用組成物が得られることが特定されるのに対し,甲1発明では,「炭酸水 素ナトリウム」,「水」及び「ポリビニルアルコール」,「カルボキシル メチルセルロースナトリウム」を含む「A剤」と,「酒石酸」,「水」及 び「ポリビニルアルコール」を含む「B剤」とからなり,両者を混合する ことにより二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が得られる点 (相違点1-2) 二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の増粘剤の含有割合が,本件発 明1では,「1〜15質量%」に特定されるのに対し,甲1発明では,2 1.8質量%と算出される点
当事者の主張
1 取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)につ いて ? 原告の主張 ア 相違点1-1の容易想到性の判断の誤り 本件審決は,甲1及び他の甲号証の記載を検討しても,甲1発明におい て,A剤とB剤の剤形を,「水及び増粘剤を含む粘性組成物」同士の組み 合わせから,「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と「複合顆粒剤,複合細 粒剤,または複合粉末剤」の組み合わせ(相違点1-1に係る本件発明1 の構成)に代えることを当業者に動機付けるに足りる根拠を見いだすこと 5 はできない旨判断したが,以下のとおり,本件審決の判断は誤りである。
(ア) 炭酸ガスを利用する発泡性化粧料は,炭酸ガスを肌に作用させるこ とから,炭酸ガスを大気中に拡散してしまわずに保留させることは,本 件出願日当時,周知の課題であった(甲5,18,60ないし64)。
そして,甲1に接した当業者は,甲1発明は,炭酸水素ナトリウム, 水及びポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロースナトリウム を含むA剤と,酒石酸,水及びポリビニルアルコールを含むB剤とから なり,両剤を混合させることにより二酸化炭素を発生させ,経皮吸収を させるものであり,A剤もB剤も剤形が含水性組成物であるため,これ らを混合させると直ちに酸と炭酸塩が反応し,二酸化炭素が短時間で空 気中に発散してしまうという問題点があることを認識し,かかる問題点 を解消するために酸と炭酸塩との反応を遅延させる必要があるものと認 識する。
(イ) しかるところ,炭酸塩と酸を水溶液中に徐々に放出する機能を有す る複合顆粒の存在は,本件出願日当時,周知技術であったこと(甲23, 24,71ないし77,81ないし86)に照らすと,甲1に接した当 業者においては,甲1発明の前記問題点を解決するため,上記周知技術 を適用して,甲1発明のA剤とB剤のうちいずれか一方を複合顆粒に置 換する動機付けがあるものといえるから,上記置換により,甲1発明に おいて,A剤を炭酸塩を含有する含水粘性組成物とし,B剤を炭酸塩と 酸から構成される複合顆粒とする構成(相違点1-1に係る本件発明1 の構成)とすることを容易に想到することができたものである。
したがって,これを否定した本件審決の前記判断は誤りである。
イ 相違点1-2の容易想到性の判断の誤り 本件審決は,甲1発明のパック剤は,使用時に皮膚上で皮膜を形成して 作用するものであり,その主剤である水性粘稠液を構成する「ポリビニル 6 アルコール」や「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は,皮膜形成 に寄与するものといえるものであるところ,甲1や他の甲号証の記載を検 討しても,それらの成分の含有割合を「21.8質量%」から低下させ, 「1〜15質量%」の範囲とすること(相違点1-2に係る本件発明1の 構成)を当業者に動機付けるに足る根拠を見いだすことはできない旨判断 した。
しかしながら,化学の分野において成分の調整をすることは,通常適宜 なされていること,本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」 という。甲79)には,水性粘稠液の含有割合が「1〜15質量%」であ ることの臨界的意義はもとより技術的意義の記載はないことに照らすと, 甲1発明の増粘剤の含有量を調整することは,当業者であれば,適宜なし 得る設計事項であるから,動機付けの有無を問うまでもなく,甲1発明に おいて,増粘剤である「ポリビニルアルコール」及び「カルボキシメチル セルロースナトリウム」の含有量を調整し,その含有割合を相違点1-2 に係る本件発明1の構成の範囲内のものとすることを容易に想到すること ができたものである。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
ウ 小括 以上のとおり,本件審決における相違点1-1及び1-2の容易想到性 の判断に誤りがあり,本件発明1は,甲1発明及び本件出願日当時の技術 常識ないし周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたも のであるから,これを否定した本件審決の判断は誤りである。
? 被告の主張 ア 相違点1-1の容易想到性の判断の誤りの主張に対し (ア) 甲1には,甲1発明は,使用時に皮膚上で乾燥して皮膜を形成し, 「短時間で」優れた血行促進作用を示すパック剤の発明であることの記 7 載があること(1頁左欄下から3行〜右欄7行,3頁左下欄末行〜右下 欄4行,3頁右下欄6行〜5頁右下欄4行)に照らすと,甲1発明は, 気泡状の二酸化炭素を効率的に発生・保持することを課題とするもので はなく,二酸化炭素を経皮吸収させることを意図とした発明でもないか ら,甲1発明には,そもそも二酸化炭素が短時間で空気中に発散してし まうという問題点は存在しない。
したがって,甲1発明において,かかる問題点を解消するために,二 酸化炭素の発生を遅延させ,二酸化炭素の空気中の発散を抑制するよう に改良する必要性はないから,甲1発明の剤形を変更する動機付けがあ るなどということはできない。
(イ) 原告は,甲23,24,81ないし86などを根拠として挙げて, 炭酸塩と酸を含む複合顆粒の技術が周知である旨主張する。
しかしながら,甲23及び24は,いずれも経口投与用薬剤に関する 文献であって,皮膚に適用する化粧料に関するものではなく,甲81な いし86も,皮膚に適用する化粧料の発明に関するものではないのみな らず,含水粘性組成物と混合して使用するものではないから,原告の上 記主張は失当である。
また,炭酸塩と酸を含む複合顆粒に「炭酸塩と酸とを水溶液中に徐々 に放出する機能」があるとの技術常識は存在せず,それが周知技術であ るということもできない。
したがって,炭酸塩と酸を含む複合顆粒の技術や炭酸塩と酸を含む複 合顆粒に「炭酸塩と酸とを水溶液中に徐々に放出する機能」があること が周知であることを前提として,甲1発明のA剤とB剤のうちいずれか 一方を複合顆粒に置換する動機付けがあるとの原告の主張は,その前提 において失当である。
(ウ) 以上によれば,甲1発明において,A剤とB剤の剤形を,「水及び 8 増粘剤を含む粘性組成物」同士の組み合わせから,「水及び増粘剤を含 む粘性組成物」と「複合顆粒剤,複合細粒剤,または複合粉末剤」の組 み合わせ(相違点1-1に係る本件発明1の構成)に代えることを当業 者に動機付けるに足りる根拠を見い出すことはできないとした本件審決 の判断に誤りはない。
イ 相違点1-2の容易想到性の判断の誤りの主張に対し (ア) 甲1発明のパック剤は,使用時に皮膚上で皮膜を形成して作用する ものであり,甲1発明の増粘剤の含有量(「21.8質量%」)は,皮 膚上で皮膜を形成する作用を達せられるように調整されており(甲1記 載の「製造例4」),その含有量には重要な技術的な意義がある。
したがって,甲1発明の増粘剤の含有割合を本件発明1に規定される 数値範囲内に変更することが数値範囲の最適化又は好適化であるという ことはできない。
(イ) また,本件発明1は,増粘剤の含有量を「1〜15質量%」と規定 しているが,これは粘性組成物中に発生した二酸化炭素を効率的に保持 して,二酸化炭素による経皮的効能を効果的に享受させることを可能と し,かつ,皮膚に塗布するのに適した粘度を保持するのに適する割合を 規定したものである。そして,本件明細書の【0052】には「1〜1 5重量%」の数値範囲は好ましい範囲として明示されているから,増粘 剤の含有量を「1〜15質量%」の数値範囲としたことに技術的意義が ないとはいえない。
(ウ) 以上によれば,甲1発明の増粘剤の含有割合を相違点1-2に係る 本件発明1の構成の範囲内とすることが設計事項であるとはいえないか ら,本件審決における上記構成の容易想到性の判断の誤りをいう原告の 主張は理由がない。
ウ 小括 9 以上によれば,本件発明1は,甲1発明及び本件出願日当時の技術常識 に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから, これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤 り)について ? 原告の主張 本件審決は,本件発明2ないし4は,いずれも,本件発明1の全ての発明 特定事項を含むものであるから,本件発明1と同様の理由により,甲1発明 及び本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することがで きたものとはいえない旨判断した。
しかしながら,前記1?で述べたとおり,本件審決における本件発明1の 進歩性の判断に誤りがあるから,本件審決の上記判断は誤りである。
? 被告の主張 前記1?で述べたとおり,本件審決における本件発明1の進歩性の判断に 誤りはないから,本件審決における本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤 りをいう原告の主張は,その前提において理由がない。
したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項について (1) 本件明細書(甲79)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下 記記載中に引用する表20及び表21については別紙を参照)。
ア 【技術分野】 【0001】 本発明は,二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物,該組成物の製造用キ ット,該組成物を含む皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ, 10 末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍,冷感,しびれ感;歯科疾患,皮膚粘膜損傷,化膿性皮膚疾患,角化異常症,筋骨格系疾患及び神経系疾患からなる群から選ばれるいずれかの疾患の予防ないし治療剤及び化粧料に関する。
【背景技術】【0002】 痒みの治療に対して,局所療法として外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などが一般に使用される。これらは痒みが発生したときに使用され,一時的にある程度痒みを抑える。湿疹に伴う痒みに対しては外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤の使用が一般的であり,これらは炎症を抑えることにより痒みの発生を防ごうとするものである。
【0003】 しかしながら,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤はアトピー性皮膚炎,水虫や虫さされの痒みにはほとんど効果がない。外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤は,痒みに対する効果は弱く,即効性もない。
また,ステロイド剤は副作用が強いため,使用が容易でない。
【0004】 炭酸ガスは血行をよくすることが知られており,炭酸ガスを含む湿布剤が提案されている(特許文献1) しかしながら, 。 特許文献1の湿布剤は,炭酸塩と有機酸を用いて発生させた炭酸ガスを水に溶かして溶存炭酸ガスとして利用するものであり,水に溶解する炭酸ガスの絶対量は極めて少ないため,実質的に効果は期待できない【0005】 特許文献2は,各々コーティングを施したアスコルビン酸と炭酸塩を含有する発泡性固形組成物を開示するが,該組成物は使用時までにアスコルビン酸と炭酸塩が反応して炭酸ガスを発生しないように安定化したものであり,その用途は,該文献の4頁左上欄及び実施例に記載されるように発 11 泡性の粉末飲料,錠剤等の食品,発泡性浴剤,コンタクトレンズ,トイレ,浴槽などの洗浄剤に用いられるものであり,発生した炭酸ガスを保持する技術的課題は存在しない。
【0006】 特許文献3は,爪のクチクラに対し軟化作用を有する気泡性水溶液の製造方法を開示し,気泡性は製品を気持ちよく快適にさせるものであると記載されており,発生する二酸化炭素の作用については何ら記載されていない。また,二酸化炭素の発生のための酸成分として,その塩が尿素の軟化作用を補完するピロリドンカルボン酸を用いており,他の酸は一切開示されていない。また,その実施例1〜5で得られる溶液はいずれも発生する炭酸ガスを保持するのに十分な粘性はなく,発生した炭酸ガスは速やかに空気中に拡散するものである。
【0007】 特許文献4は,性交時の潤滑性及び膣の乾燥防止のためのムース状潤滑剤を開示する。該潤滑剤には高分子凝集剤であるポリアクリルアミド,グリセリン,ビタミンE及び炭酸ガスが含まれているが,該ムース状潤滑剤は容器から取り出したときの容積を大きくするために炭酸ガスを使用するものであり,容器から出されたムース状潤滑剤は速やかに炭酸ガスを失い,性器に塗布する時点では炭酸ガスはほぼ完全に消失している。また,潤滑剤用途のためには非常に薄く塗布する必要があり,炭酸ガスを保持することができないものである。
【0008】 特許文献5は,酸,炭酸塩,増粘剤または沈殿防止剤とともに,水不溶性またはマイクロカプセル化された薬剤を含む固形医薬組成物であり,該組成物に水を加えると薬剤が懸濁するものである。該公報の4頁左下欄〜右下欄に記載されるように,酸性物質及び塩基の処方への添加は増粘剤の 12 水和は促進するが,発泡が生じないような量で行われ,二酸化炭素の発泡 により増粘剤で被覆した顆粒は浮かんだ状態のままとなる傾向があり,こ の物質の溶解を遅らせ,所望の効果に対し反対の効果を生じさせることに 留意する必要がある。すなわち,特許文献5は,酸と炭酸塩を有する固形 医薬組成物を開示するが,該組成物を水に溶かせたときに,二酸化炭素に よる発泡は実質的に起こらないものである。
イ 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾 皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包 炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃 糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚 粘膜障害に伴う痒みに有効な組成物を提供することにある。
【0010】 また本発明は,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂, びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不 全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患; 閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈 瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウ マチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経 痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗 癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹, 毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患; 除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌 の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問 題及び部分肥満に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物,該組成物 13 製造用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】【0011】項1. 水,増粘剤及び気泡状二酸化炭素を含有し,二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収させることができる組成物。
項2. 水及び増粘剤の合計量に対し,水60〜99.9重量%,増粘剤0.1〜40重量%を含有する項1に記載の組成物。
…項27.項1〜11のいずれかの組成物,或いは,項18または25の組成物を含む,しみやそばかすを減少ないし目立たなくさせる作用,美白作用,肌の若返り作用,肌の引き締め作用,顔,脚,腕,腹部,脇腹,背中,首,顎などの部分肥満を改善する作用,肌質改善作用及び除毛後の再発毛抑制作用のいずれかの作用を有する化粧料。
項28. 化粧料がクリーム,パック,ジェル,ペーストまたはマスクである請求項27に記載の化粧料。
項29.炭酸塩と酸と増粘剤と水を実質的に二酸化炭素を発生しない状態で含み,炭酸塩と酸と増粘剤と水を混合することにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得ることができる下記の(i)〜(iv)のいずれかのキット:(i)水,増粘剤及び炭酸塩を含有する塩基性組成物と水,増粘剤及び酸を含有する酸性組成物を含むキット。
(ii)炭酸塩及び固体酸(顆粒,細粒,粉末),並びに水及び増粘剤から成る粘性組成物を含むキット。
(iii)水及び増粘剤から成る粘性組成物,及び炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤を含むキット。
(iv)炭酸塩と酸と増粘剤と水を含むキット。
14 ウ 【発明の効果】 【0020】 本発明の組成物は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹, 乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛 包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬, 粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮 膚粘膜障害に伴うかゆみ;褥創,創傷,熱傷,口角炎,皮膚潰瘍,き裂, びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不 全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患; 閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈 瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウ マチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経 痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗 癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹, 毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患; 除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌 の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問 題などを副作用をほとんどともなわずに治療及び予防あるいは改善でき, また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる。
【0030】 本発明の二酸化炭素経皮 経粘膜吸収用組成物をそばかすを減少させる, ・ もしくは目立たなくさせる目的で使用する場合は,所望の部位のみを覆う よう塗布してもよいが,美白作用や部分肥満を改善する作用などが塗布部 位に同時に現れるため,できる限り広範囲に,例えば顔の場合は顔全体に 0.5mm以上,好ましくは1.0mm以上,より好ましくは1.5mm 以上,さらに好ましくは2.0mm以上,最も好ましくは3.0mm以上 15 の厚さに,5分以上,好ましくは10分以上,より好ましくは15分以上,さらに好ましくは20分以上,最も好ましくは30分以上塗布する。このとき該組成物の上を食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不透過性物質などで覆えば一層効果が高まる。本発明の組成物は1日1回〜数回を週1回以上,好ましくは3日に1回,より好ましくは2日に1回,最も好ましくは毎日,総塗布回数が10回以上,好ましくは15回以上,より好ましくは20回以上,最も好ましくは30回以上塗布する。塗布終了後は拭き取るか,水などで洗い流すか,あるいはその両方を行ってもよい。
【0031】 本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を美白や肌の引き締め,肌質改善目的で使用する場合は,所望の部位を覆うように0.2mm以上,好ましくは0.5mm以上,より好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは1.5mm以上,最も好ましくは2.0mm以上の厚さに,5分以上,好ましくは10分以上,より好ましくは15分以上,さらに好ましくは20分以上,最も好ましくは30分以上塗布する。このとき該組成物の上を食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不透過性物質で覆えば一層効果が高まる。本発明で言う肌質改善とは,滑らかできめが細かく,透明感があって化粧乗りのよい肌にすることを言う。美白効果や肌の引き締め効果,肌質改善効果は本発明の組成物を1回塗布するだけでも得られるが,1日1回〜数回を週1回以上,好ましくは3日に1回,より好ましくは2日に1回,最も好ましくは毎日,可能な限り継続する。塗布終了後は拭き取るか,水などで洗い流すか,あるいはその両方を行ってもよい。
【0032】 本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を肌の若返り目的で使用 16 する場合は,所望の部位を覆うように0.2mm以上,好ましくは0.5mm以上,より好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは1.5mm以上,最も好ましくは2.0mm以上の厚さに,5分以上,好ましくは10分以上,より好ましくは15分以上,さらに好ましくは20分以上,最も好ましくは30分以上塗布する。このとき該組成物の上を食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不透過性物質で覆えば一層効果が高まる。本発明で言う肌の若返りとは,微視的皮膚表面の形状において皮溝,皮丘が消失もしくは不明瞭で,部分的もしくは広範囲に角質の剥離が生じている皮膚を皮溝,皮丘が明瞭で整った肌にすることを言う。本発明の組成物は1日1回〜数回,3日に1回以上,より好ましくは2日に1回以上,最も好ましくは毎日,総塗布回数が10回以上,好ましくは15回以上,より好ましくは20回以上,最も好ましくは30回以上塗布する。
塗布終了後は拭き取るか,水などで洗い流すか,あるいはその両方を行ってもよい。
【0033】 本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を顔,脚,腕,腹部,脇腹,背中,首,顎などの部分肥満を改善する目的で使用する場合は,所望の部位を覆うように0.2mm以上,好ましくは0.5mm以上,より好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは1.5mm以上,最も好ましくは2.0mm以上の厚さに,5分以上,好ましくは10分以上,より好ましくは15分以上,さらに好ましくは20分以上,最も好ましくは30分以上,1日1回〜数回,3日に1回以上,より好ましくは2日に1回以上,最も好ましくは毎日,総塗布回数が20回以上,好ましくは25回以上,最も好ましくは30回以上塗布する。このとき該組成物の上を食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不透過性物質で覆えば一層効果が高まる。塗布終了後は拭き取るか,水などで洗い流すか,あるいは 17 その両方を行ってもよい。
【0034】 本発明の組成物は肌のくすみを取る作用があり,1回の塗布で美白効果 が得られるが,該組成物を唇や乳頭などに塗布すれば色素沈着等でくすん だ色のこれらの部位を健康的な色にできる。この場合,本発明の組成物を 所望の部位を完全に覆うように0.2mm以上,好ましくは0.5mm以 上,より好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは1.5mm以上, 最も好ましくは2.0mm以上の厚さに,5分以上,好ましくは10分以 上,より好ましくは15分以上,さらに好ましくは20分以上,最も好ま しくは30分以上,1日1回〜数回,3日に1回以上,より好ましくは2 日に1回以上,最も好ましくは毎日,効果が現れるまで塗布する。このと き該組成物の上を食品用合成樹脂ラップフィルムやビニールなどの気体不 透過性物質で覆えば一層効果が高まる。塗布終了後は拭き取るか,水など で洗い流すか,あるいはその両方を行ってもよい。
エ 【発明を実施するための形態】 【0036】 本発明の組成物は,正常であるか,何らかの疾患や損傷による異常があ るかを問わず,血管系を有する皮膚や粘膜組織,皮下組織などに適用され る。皮膚としては,手掌や足底,頭皮を含む外皮全てが含まれる。粘膜組 織としては,鼻粘膜や口腔粘膜,歯周組織粘膜,口唇粘膜,外性器粘膜, 肛門周囲粘膜などが含まれる。皮下組織としては,筋膜,皮下脂肪,真皮 などが含まれる。
【0037】 二酸化炭素は,炭酸飲料や発泡性製剤のように短時間,例えば数秒から 数分以内に消失するものではなく,本発明の組成物に気泡状態で保持され, 持続的に放出される。
18 【0038】 本発明において,「二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収させること ができる組成物」とは,好ましい具体例では,二酸化炭素を5分以上,好 ましくは20分以上,より好ましくは30分以上,さらに好ましくは1時 間以上,特に好ましくは1.5時間以上,最も好ましくは2時間以上二酸 化炭素を経皮・経粘膜吸収させることができる組成物を意味する。
【0039】 本発明において,「気泡状二酸化炭素」とは,例えば炭酸塩と酸を反応 させて二酸化炭素を発生させた場合や,二酸化炭素ボンベから二酸化炭素 を吹き込んだ場合に,組成物中に気泡として含まれる二酸化炭素を意味し, 該気泡は二酸化炭素のみからなっていてもよく,二酸化炭素とともに空気 などを含んでいてもよい。「気泡状二酸化炭素」中の二酸化炭素の割合は 30容量%以上,好ましくは50容量%以上,さらに好ましくは70容量% 以上,特に好ましくは90容量%以上,最も好ましくは100容量%であ る。
オ 【0042】 本発明の組成物は二酸化炭素の持続的経皮・経粘膜吸収が目的であるの で,組成物を対象部位に適用する際には組成物中に気泡状二酸化炭素がよ り多く含まれていることが好ましく,組成物で対象部位を完全に覆うよう に厚めに塗布することが好ましい。流動性が低い組成物の場合にはガーゼ や不織布などの吸収性素材などに吸収させて組成物の塗布時の厚みを持た せればよい。塗布する厚さは対象疾患や目的によって異なるが,0.2m m以上,好ましくは0.5mm以上,より好ましくは1.0mm以上,さ らに好ましくは1.5mm以上,最も好ましくは2.0mm以上である。
ただし,厚みがありすぎては組成物の適用が困難になるため,塗布する組 成物もしくは組成物を含浸する吸収体の厚みは5cm以下,より好ましく 19 は4cm以下,さらに好ましくは2cm以下,最も好ましくは1cm以下 である。
【0043】 本発明の組成物は,広範囲の皮膚もしくは粘膜組織に適用してもよく, 例えば足全体を本発明組成物中に浸けることにより,水虫の痒みの治療を 含むフットケア用途に用いてもよいし,ふくらはぎや下腿等を本発明組成 物中に浸しておけば,所望する部位の部分的な美肌効果などが得られ,部 分痩せも可能である。
【0045】 本発明の組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的, 又は皮膚や粘膜に対する美容目的で使用する場合は,該組成物を直接使用 部位に塗布することもできるし,あるいはガーゼやスポンジ等の吸収性素 材に含浸させるか,またはこれらの素材を袋状に成形してその中に該組成 物を入れて使用部位に貼付してもよい。該組成物を塗布又は貼付した部位 を通気性の乏しいフィルム,ドレッシング材などで覆う閉鎖療法を併用す れば更に高い効果が期待できる。また該組成物を満たした容器に所望部位 を浸すことも有効である。その場合,二酸化炭素ボンベなどを用いて該組 成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続する。
【0046】 本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物は,密閉容器等に保存す ることにより,長期間有効性を失うことなく使用が可能である。また,用 時調製により使用することも可能である。用時調製では二酸化炭素の発生 に伴う吸熱反応により二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が冷たくなる ため,電子レンジや湯煎などにより調製用の材料を体温付近の温度など適 当な暖かさに暖めておくか,又は調製後に該組成物を暖めてもよい。
カ 【0048】 20 本発明の組成物の製造は,常圧又は加圧の二酸化炭素雰囲気下に行うの が,気泡状二酸化炭素中の二酸化炭素の割合を高めるため好ましい。
【0049】 本発明の組成物には,二酸化炭素の気泡を効率よく組成物中に含ませる ために界面活性剤を加えることができる。界面活性剤としては,以下のも のが例示される。… 【0050】 界面活性剤の量は,水,増粘剤及び界面活性剤の合計量あるいは組成物 全量に対し,0.01〜10重量%,好ましくは0.05〜7重量%,よ り好ましくは0.01〜5重量%,最も好ましくは0.1〜2重量%であ る 【0051】 界面活性剤は,最初から二酸化炭素を気泡状で含む組成物のみならず, 用時調製型の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の製造キットの場合で も,塩基性組成物もしくは酸性組成物に界面活性剤を含んでいればの発泡 性がよくなるために,気泡状二酸化炭素の含有量が増えるために好ましい。
キ 【0052】 本発明の組成物の増粘剤としては,天然高分子,半合成高分子,合成高 分子,無機物からなる群の中から選ばれる1種または2種以上を使用でき る。増粘剤の使用量は,本発明の組成物に0.1〜40重量%,好ましく は1〜15重量%,より好ましくは3〜10重量%含まれる。
【0056】 本発明で増粘剤に用いる半合成高分子の中のセルロース系高分子として はエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース及びその塩類,カルボ キシメチルエチルセルロース及びその塩類,カルボキシメチルスターチ及 びその塩類,クロスカルメロース及びその塩類,結晶セルロース,酢酸セ 21 ルロース,酢酸フタル酸セルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒド ロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒド ロキシプロピルメチルセルロースフタレート,粉末セルロース,メチルセ ルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロースなどがあげられる。
【0058】 本発明で増粘剤に用いる半合成高分子の中のアルギン酸系高分子として はアルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステルなど があげられる。
【0060】 本発明で増粘剤に用いる合成高分子としては,カルボキシビニルポリマ ー,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリビニルアセタールジエチルアミノア セテート,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,メタアクリル 酸-アクリル酸エチルコポリマー,メタアクリル酸-メタアクリル酸エチ ルコポリマー,メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルア ンモニウムエチルコポリマー,メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メ タアクリル酸メチルコポリマーなどがあげられる。
ク 【0062】 水は,本発明の組成物に60〜99.9重量%程度,好ましくは75〜 99重量%程度,より好ましくは85〜97重量%程度含まれる。
【0063】 本発明の組成物に気泡状の二酸化炭素を含有,保持させる方法としては, 水と増粘剤を含む組成物に炭酸ガスボンベなどを用いて二酸化炭素を直接 吹き込む方法がある。
【0064】 また,反応により二酸化炭素を発生する物質を水と増粘剤を含む組成物 中で反応させて二酸化炭素を発生させるか,又は本発明のキットの各成分 22 を混合することにより本発明の組成物中に二酸化炭素を含有,保持させる ことができる。
ケ 【0065】 本発明に用いる炭酸塩としては,酸と反応して二酸化炭素を発生するも のであれば特に限定されないが,好ましくは炭酸アンモニウム,炭酸水素 アンモニウム,炭酸カリウム,炭酸水素カリウム,セスキ炭酸カリウム, 炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,セスキ炭酸ナトリウム,炭酸リチ ウム,炭酸水素リチウム,セスキ炭酸リチウム,炭酸セシウム,炭酸水素 セシウム,セスキ炭酸セシウム,炭酸マグネシウム,炭酸水素マグネシウ ム,炭酸水素カルシウム,炭酸カルシウム,炭酸水酸化マグネシウム,炭 酸バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩,炭酸水 素塩,セスキ炭酸塩,塩基性炭酸塩があげられこれらの1種または2種以 上が用いられる。
【0066】 本発明に用いる酸としては,有機酸,無機酸のいずれでもよく,これら の1種または2種以上が用いられる。
【0067】 有機酸としては,ギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸等の直鎖脂 肪酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリ ン酸,フマル酸,マレイン酸,フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸等 のジカルボン酸,グルタミン酸,アスパラギン酸等の酸性アミノ酸,グリ コール酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,乳酸,ヒドロキシアクリル酸, α-オキシ酪酸,グリセリン酸,タルトロン酸,サリチル酸,没食子酸, トロパ酸,アスコルビン酸,グルコン酸等のオキシ酸などがあげられる。
【0068】 無機酸としてはリン酸,リン酸二水素カリウム,リン酸二水素ナトリウ 23 ム,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸カリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム,ピロ亜 硫酸カリウム,酸性へキサメタリン酸ナトリウム,酸性ヘキサメタリン酸 カリウム,酸性ピロリン酸ナトリウム,酸性ピロリン酸カリウム,スルフ ァミン酸などがあげられる。
コ 【0069】 本発明の組成物は化粧料としては,美白,肌質改善,そばかす改善,肌 の若返り,肌の引き締め,部分痩せ,除毛後の再発毛抑制,髪の艶改善効 果などがあり,クリーム,ジェル,ペースト,パック,マスクなどの形状 で使用できる。また,香料や色材が添加でき,香料としては天然香料,合 成香料,調合香料などがあげられる。
【0070】 パックに配合できる添加物としては,パック時の清涼感を付加するため に揮発性アルコールとしてエタノールなどを0.1〜20重量%配合でき る。また皮膚に潤いを与える目的などでポリエチレングリコール,グリセ リン,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,1,3-ブチレ ングリコール,ソルビトールなどの糖類を0.1〜15重量%,コンドロ イチン硫酸ナトリウムなどのムコ多糖類などを保湿剤として0.1〜25 重量%配合できる。皮膚を軟化させる目的でオリーブ油,マカデミアナッ ツ油,ホホバ油,流動パラフィン,スクワラン,オレイン酸オクチルドデ シルなどの油脂類を0.01〜10重量%配合できる。美白,美肌,肌の 若返り効果等を増強する目的でビタミンCとその誘導体やアルブチン,コ ウジ酸などの美白剤を0.01〜15重量%,パントテニールエチルエー テルやプラセンタエキスなどの細胞賦活剤などを0.01〜20重量%配 合できる。アラントインやグリチルリチン塩などの消炎剤を0.01〜1 0重量%,クロルヘキシジンやアクリノールなどの殺菌剤を0.1〜20 重量%,メチルパラベンや1,2-ペンタンジオールなどの防腐剤などを 24 0.1〜25重量%配合することもできる。油脂類の分離を防ぐ目的でポ リキシエチレンノニルフェニルエーテルやソルビタンモノステアレートな どの界面活性剤を0.01〜10重量%配合できる。
サ 【実施例】 【0079】 実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが,本発明はこれらの実施 例に限定されるものではない。尚,表中の数字は特にことわらない限り重 量部を表す。
実施例1〜84 塩基性組成物と酸との組み合わせよりなる本発明の二酸化炭素経皮・経 粘膜吸収用組成物を表1〜表7に示す。
製造方法〕 増粘剤と精製水,炭酸塩を表1〜表7のように組み合わせ,塩基性組成 物をあらかじめ調製する。酸は,固形の場合はそのまま,又は粉砕して, 又は適当な溶媒に溶解又は分散させて,液体の場合はそのまま,又は適当 な溶媒で希釈して用いる。塩基性組成物と酸を混合し,二酸化炭素経皮・ 経粘膜吸収用組成物を得る。
<塩基性組成物の製造> ビーカー等の容器中で精製水に増粘剤を溶解又は膨潤させ,炭酸塩を溶 解又は分散させる。このとき必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解, 膨潤を促進してもよいし,増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておい て用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えて もよい。
〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕 <発泡性> 塩基性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmの カップに入れ,その体積を測定する。これを10秒間に20回攪拌混合し 25 二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い発泡性を評価する。
【0080】<評価基準1>増加率 発泡性70%以上 +++50%〜70% ++30%〜50% +30%以下 0 体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ,それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。
<気泡の持続性> 塩基性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。
【0081】<評価基準2>減少率 気泡の持続性20%以下 +++20%〜40% ++40%〜60% +60%以上 0 26 体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成 物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を 入れ,それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。
シ 【0113】 実施例227〜249 炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物の組み合わせよりなる二酸化 炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表20〜表21に示す。
製造方法〕 増粘剤と精製水,炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸),マトリック ス基剤を表20〜表21のように組み合わせ,炭酸塩と酸の複合顆粒剤と 含水粘性組成物をあらかじめ調製する。炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘 性組成物を混合し,二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。炭酸塩 と酸の複合顆粒剤は炭酸塩と酸が徐放性であってもよい。
<炭酸塩と酸の複合顆粒剤の製造> マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は,ビーカー等の容器 中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に炭酸塩と酸を加えて 十分攪拌,混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加 えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し,固まるまで放 置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マト リックス基剤に低融点化合物を用いない場合はビーカー等の容器中でマト リックス基剤を無水エタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ, 炭酸塩と酸を溶解又は分散させ,十分混合した後にオーブン等で加熱して 溶媒を除去し,乾燥させる。完全に固まったら粉砕し,顆粒とする。この とき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。
<含水粘性組成物の製造> ビーカー等の容器中で増粘剤を精製水に溶解又は膨潤させる。このとき 27 必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解又は膨潤を促進してもよいし,増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておいて用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。
【0114】 なお,本発明において上記の炭酸塩と酸の複合顆粒の製造方法は本実施例に限定されることはなく,乾式破砕造粒法や流動層造粒法,高速攪拌造粒法,押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。
〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕<発泡性> 含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。
含水粘性組成物と炭酸塩と酸の複合顆粒剤の混合物を10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い,発泡性を評価する。
【0115】 体積の測定は,実施例1〜84の〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕の<発泡性>に記載の方法に従い測定する。
<気泡の持続性> 含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。
【0116】 28 体積の測定は,実施例1〜84の〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成 物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。
(2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件 発明1に関し,次のような開示があることが認められる。
ア 従来から,炭酸ガスが血行を良くすることが知られており,炭酸塩と有 機酸を用いて発生させた炭酸ガスを水に溶かして利用する湿布剤が提案さ れているが,水に溶解する炭酸ガスの絶対量が少ないため,実質的な効果 は期待できないこと,特許文献に開示されたコーティングを施したアスコ ルビン酸と炭酸塩を含有する発泡性固形組成物は,使用時までにアスコル ビン酸と炭酸塩が反応して炭酸ガスを発生しないように安定化したもので あるが,その用途は,発泡性の粉末飲料,錠剤等の食品,発泡性浴剤,コ ンタクトレンズ,トイレ,浴槽などの洗浄剤に用いられるものであり,発 生した炭酸ガスを保持する技術的課題は存在しないこと,特許文献に開示 された爪のクチクラに対し軟化作用を有する気泡性水溶液の製造方法に係 る溶液は,発生する炭酸ガスを保持するのに十分な粘性はなく,発生した 炭酸ガスは速やかに空気中に拡散するものであること,特許文献に開示さ れた酸と炭酸塩を有する固形医薬組成物は,該組成物を水に溶かしたとき に,二酸化炭素による発泡は実質的に起こらないことなどの課題等があっ た(【0004】ないし【0006】,【0008】)。
イ 「本発明」は,皮膚粘膜損傷,生着不全,歯科疾患,末梢循環障害に基 づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感,筋骨格系疾患,神経系疾患,角化異常症, 化膿性皮膚疾患,除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理),そばかす,肌荒れ, 肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪な どの美容上の問題及び部分肥満に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組 成物,該組成物製造用キットを提供することを目的とするものであり,「本 発明」の組成物は,上記各副作用をほとんど伴わずに,上記疾患,問題等 29 の治療及び予防あるいは改善でき,また,所望する部位に使用すれば,そ の部位を痩せさせられるという効果を奏する 【0010】 ( 【0020】 。
) ウ 「本発明」の組成物は二酸化炭素の持続的経皮・経粘膜吸収を目的とす るものであり(【0042】),二酸化炭素は,炭酸飲料や発泡性製剤の ように短時間,例えば数秒から数分以内に消失するものではなく,「本発 明」の組成物に気泡状態で保持され,持続的に放出される 【0037】 。
( )2 甲1の記載事項について (1) 甲1(特開昭60-215606号公報)には,次のような記載があるこ とが認められる。
ア 「特許請求の範囲 1.炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有することを特徴とするパック剤。
2.炭酸ガス発生物質が炭酸塩と酸である特許請求の範囲第1項記載のパ ック剤。
3.炭酸ガスの存在する雰囲気がpH4〜7である特許請求の範囲第1項 又は第2項記載のパック剤。」(1頁左下欄4行〜11行) イ 「本発明はパック剤に関し,更に詳細には,炭酸ガスによる血行促進作 用によって皮膚をしっとりさせることができるパック剤に関する。
パック剤は,通常ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース, 各種天然ガム質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合 したもので,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進すると 共に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つである。
パック剤には,一般に添加成分の一つとして,血行促進作用を有する合 成又は天然エキス等が配合されるが,これらは少量の配合では効果が不充 分であり,また多量の配合では血行は促進されるが,その反面適用部位に 不快な刺激感を与えると共に,連続使用すると皮膚炎を惹起するなどの欠 点があり,その改善が所望されていた。
30 そこで,本発明者は,このような欠点がなく,血行をよく促進するパッ ク剤を提供すべく鋭意研究を行った結果,炭酸ガスを皮膚に直接作用させ ると皮膚の血流がよくなり,皮膚にしっとり感を与えることを見出し,本 発明を完成した。
すなわち,本発明は,炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有するパック 剤を提供するものである。」(1頁左下欄13行〜2頁左上欄9行)ウ 「本発明のパック剤は,次に示すように,従来のパック剤と併用するこ ともできるし,また単なる炭酸ガスパック剤として使用することもできる。
本発明のパック剤は次のような形態とすることができる。
@ 従来公知のパック剤を耐圧容器に入れ,これに高圧炭酸ガス,あるい は炭酸塩と酸,もしくはドライアイス等の炭酸ガス発生源を加えて密閉 する。
本パック剤は使用時内容物を吐出させて被パック部位に塗布する。
A 炭酸塩と酸を実質的に水の存在しない状態で,一つの不織布,布,紙 等の担体に担持させる。更にこの担体に公知のパック剤成分を一緒に担 持させておいてもよい。
本パック剤は,使用時被パック部位に付着させ,この上に蒸しタオル を重ねるとか,水を添加するとかの方法によってパック剤に水を供給し て,当該炭酸塩と酸とを反応させて炭酸ガスを発生させる。
B 炭酸塩と酸をそれぞれ異なる2つの上記担体に担持させる。この担体 には,Aと同様に公知のパック剤成分を担持させることも,また水分を 保持させることもできる。
本パック剤は,使用時被パック部位に重ねて付着させ,必要な場合(パ ック剤が水を含まない場合)には,Aと同様に水を供給して炭酸ガスを 発生させる。」(2頁左上欄10行〜左下欄8行)エ 「ところで,炭酸ガスは,pHが酸性の場合にはCO 2分子として存在 31 して血流促進作用を示すが,pHがアルカリ性側ではCO 32-イオンある いはHCO3-イオンとして存在するため血流促進作用を示さない。従って, 本発明においては,炭酸ガスの存在する雰囲気のpHが弱酸性,すなわち pH4〜7,好ましくは6.0〜6.7になるように調整されることが必 要である。」(2頁左下欄9行〜右上欄2行)オ 「本発明で使用される炭酸塩としては,例えば炭酸水素ナトリウム,炭 酸ナトリウム,セスキ炭酸ナトリウム,炭酸水素カリウム,炭酸カリウム, セスキ炭酸カリウム,炭酸水素アンモニウム塩,炭酸アンモニウム塩,セ スキ炭酸アンモニウム塩等が挙げられ,これらは単独又は2種以上を組合 わせて使用できる。
また,酸としては,有機酸及び無機酸の何れも使用できるが,水溶性で 固体のものが好ましい。有機酸としては,例えばギ酸,酢酸,プロピオン 酸,酪酸,吉草酸寺の直鎖脂肪酸;シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グル タル酸,アジピン酸,ピメリン酸,フマル酸,マレイン酸,フタル酸,イ ンフタル酸,テレフタル酸等のジカルボン酸;グルタミン酸,アスパラギ ン酸等の酸性アミノ酸;グリコール酸,乳酸,ヒドロキシアクリル酸,α -オキシ酪酸,グリセリン酸,タルトロン酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン 酸,サリチル酸(o,m,p),没食子酸,マンデル酸,トロパ酸,アス コルビン酸,グルコン酸等のオキシ酸;桂皮酸,安息香酸,フェニル酢酸, ニコチン酸,カイニン酸,ソルビン酸,ピロリドンカルボン酸,トリメリ ット酸,ベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸並びにこれら有機酸の 酸性塩が挙げられる。無機酸としては,例えば,リン酸,リン酸二水素カ リウム,リン酸二水素ナトリウム,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸カリウム, ピロ亜硫酸ナトリウム(メタ重亜硫酸ナトリウム),ピロ亜硫酸カリウム (メタ重亜硫酸カリウム),酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム,酸性ヘキ サメタリン酸カリウム,酸性ピロリン酸ナトリウム,酸性ピロリン酸カリ 32 ウム,スルファミン酸等が挙げられる。就中コハク酸等の脂肪族ジカルボ ン酸,フマル酸,リン酸及びこれらの酸性塩が好ましい。」(2頁右下欄 3行〜3頁右上欄9行) 「本発明においては,これらの炭酸塩と酸の量を調節することにより, 炭酸ガス発生雰囲気のpHを4〜7に調整することもできる。例えば公知 のパック剤組成物と併用する場合には,炭酸塩,酸の量はいずれも全組成 の1〜20重量%,特に2〜10重量%になるようにするのが好ましい。
また,本発明パック剤中における炭酸ガス濃度は60ppm以上であるこ とが好ましく,これより少ないと充分な効果が奏されない。」(3頁右上 欄10行〜左下欄4行)カ 「本発明のパック剤には上記必須成分のほかに,通常のパック剤に使用 される油性基剤,エモリエント剤,保湿剤,皮膜剤,ゲル化剤,増粘剤, アルコールおよび精製水,さらに必要に応じて界面活性剤,血行促進剤, 消炎剤,ビタミン類,殺菌剤などの薬効剤,防腐剤,香料,色素などを適 宜配合することができる。また本発明のパック剤に,ピールオフタイプの もの,ウォッシュオフタイプのものなどのタイプのものにも適用すること ができる。」(3頁左下欄5行〜14行) 「叙上の如く,本発明のパック剤は,短時間ですぐれた血行促進作用を 示し,また適用部位に不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連 続使用しても皮膚炎をおこす心配がないというすぐれた性質を示す。(3 」 頁左下欄15行〜右下欄4行)キ 「次に実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1 製造例1〜4で得た本発明のパック剤,従来法で得たパック剤〔(P) 及び(Q)〕について,血流量,NMF値及びしっとり感を測定した。
パック剤(P) 33 平均分子量40万のポリビニルアルコール15部,平均分子量10万のポリビニルアルコール6部,ポリエチレングリコール(平均分子量300)2部,1,3-ブチレングリコール6部,エタノール5部,酸化チタン3部,香料0.2部,ホウ砂0.1部,色素を微量,および水63.8部から常法により製造した。
パック剤(Q) 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,香料0.2部,色素を微量,および水61.8部から常法により製造した。
製造例1 パック剤(P)を耐圧容器に入れ,高圧の炭酸ガスを封入し,炭酸ガス含有のパック剤を得た。耐圧容器内の最終ガス圧は4気圧とした。使用時のpHは6.1。
製造例2 平均分子量40万のポリビニルアルコール15部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール20部,エタノール5部,スクワラン10部,酸化チタン5部,ポリエチレングリコール(平均分子量300)30部,炭酸水素ナトリウム5部,クエン酸5部から常法により製造した。使用時のpHは6.3。
製造例3 製造例2で製したパック剤を不織布に均一に塗布して得た。
製造例4 平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール4部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール6部,カルボキシメチルセルロースナトリウム3部,亜鉛華4部,炭酸水 34 素ナトリウム5部,香料0.3部,色素を微量および水53.7部から,常法により製造したものをA剤とした。
平均分子量40万のポリビニルアルコール16部,平均分子量5万のポリビニルアルコール5部,1,3-ブチレングリコール8部,エタノール5部,コラーゲン2部,酸化チタン2部,酒石酸5部,香料0.3部,色素を微量および水56.8部から常法により製造して得たものをB剤とした。使用時,A剤2重量部とB剤3重量部を混合する。使用時のpHは6.2。
〔測定方法〕(1) 血流量 レザードップラー血流計を用いて測定した。ヒト(24才,女性)の 左腕内側に血流計のプローブを装着し,平常時の血流を測定した後,プ ローブの周囲に多量のパック剤を塗布し,血流の変化を観察した。
(2) 皮膚水分量(NMF値) 電気伝導度が水分量に比例する原理を用いたソフィーナメーターによ って測定できるNMF値を角質水分量とした。
実験条件:被検者:女性(21〜24歳,両腕内側,n=4) 室温:25℃ 湿度:72〜76% 実験方法:入室10分後に両腕を石鹸で洗浄し,タオルでふきとり,1 5分間放置後,平常値を測定し一定面積(5×5cm)を両 腕内側に左右対称に設定し,従来のパック剤とCO 2含有パ ック剤を各0.8gとって均一に塗布する。
乾燥後(約30〜40分後)皮膜となったパック剤を剥離 した直後から,ソフィーナメーターによってNMF値を3分 おきに30分後まで測定する。
35 ソフィーナメーターによるNMF値はプルーブのあて方に よって誤差が生じやすいので,5回測定し,その平均値とし た。
(3) しっとり感 石鹸で洗顔後,パック剤を顔面に塗布し,乾燥後(約30〜40分) パック剤を剥離し,その30分後のしっとり感を評価した。評価は,非 常にしっとりする(3点),しっとりする(2点),ややしっとりする (1点),しっとりしない(0点)とし,健康な女性4人によって評価 した。
〔結果〕 その結果は第1表のとおりである。
第1表 (1) 血流量は,塗布前を1とした相対値で示した。
(2) NMF値は塗布30分後の値を塗布前を1とした相対値で示した。
(3) しっとり感はn=4の平均値を示した。
第1表から明らかなように,発明品は従来品に比較し,血流量,NM F値及びしっとり感の何れにおいても顕著に優れている。」(3頁右下 36 欄5行〜5頁右下欄4行) ク 「実施例2 実施例1の製造例1で製したパック剤を,かさつきが目立つ女性3人に 継続使用(1週間に3回,3週間)してもらったところ,不快な刺激感は なく,肌がしっとりしてきたとの評価を得た。また皮膚炎をおこすなどの 問題は生じなかった。」(5頁右下欄5行〜11行)(2) 前記(1)の記載事項によれば,甲1には,甲1発明に関し,次のような開 示があることが認められる。
ア 「ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース,各種天然ガム 質等の水性粘稠液を主剤とし,これに種々の添加成分を配合した「パック 剤」は,その造膜過程において皮膚に刺激を与えて血行を促進するととも に,皮膚表面の汚れを吸着して清浄する皮膚化粧料の一つであるところ, 従来の「パック剤」においては,添加成分の一つとして配合される血行促 進作用を有する合成又は天然エキス等が,少量の配合では効果が不充分で あり,多量の配合では血行は促進されるが,その反面,適用部位に不快な 刺激感を与えるとともに,連続使用すると皮膚炎を惹起させるなどの欠点 があった。
そこで,「本発明者」は,このような欠点がなく,血行をよく促進する パック剤を提供すべく鋭意研究を行った結果,炭酸ガスを皮膚に直接作用 させると皮膚の血流がよくなり,皮膚にしっとり感を与えることを見出し, 炭酸ガス又は炭酸ガス発生物質を含有する「本発明」のパック剤を完成し た。」(前記?イ) イ 「「本発明」のパック剤は,短時間で優れた血行促進作用を示し,また, 適用部位に不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連続使用して も皮膚炎を起こさないというすぐれた性質を有する。」(前記?カ)。
ウ 「本発明」の実施例1において,「製造例4」で得た「本発明」のパッ 37 ク剤(「甲1発明」)を両腕内側に塗布し,「乾燥後(約30分〜40分 後)皮膜となったパック剤を剥離した直後から,ソフィーナメーターによ って皮膚水分量(NMF値)を3分おきに30分後まで測定」し,また, 上記のパック剤(甲1発明)を顔面に塗布し,乾燥後(約30〜40分) パック剤を剥離し,その30分後の「しっとり感」について評価した結果, 「第1表」に示すとおり,いずれにおいても従来品に比べて顕著に優れて いた(前記?キ)。
3 取消事由1(甲1を主引用例とする本件発明1の進歩性の判断の誤り)につ いて (1) 相違点1-1の容易想到性の判断の誤りについて 原告は,@炭酸ガスを利用する発泡性化粧料は,炭酸ガスを肌に作用させ ることから,炭酸ガスを大気中に拡散してしまわずに保留させることは,本 件出願日当時,周知の課題であること(甲5,18,60ないし64)に照 らすと,甲1に接した当業者は,甲1発明は,炭酸水素ナトリウム,水及び ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロースナトリウムを含むA剤 と,酒石酸,水及びポリビニルアルコールを含むB剤とからなり,両剤を混 合させることにより二酸化炭素を発生させ,経皮吸収をさせるものであり, A剤もB剤も剤形が含水性組成物であるため,これらを混合させると直ちに 酸と炭酸塩が反応し,二酸化炭素が短時間で空気中に発散してしまうという 問題点があることを認識し,かかる問題点を解消するために酸と炭酸塩との 反応を遅延させる必要があるものと認識する,A炭酸塩と酸を水溶液中に 徐々に放出する機能を有する複合顆粒の存在は,本件出願日当時,周知技術 であったこと(甲23,24,71ないし77,81ないし86)からする と,甲1に接した当業者においては,甲1発明の上記問題点を解決するため, 上記周知技術を適用して,甲1発明のA剤とB剤のうちいずれか一方を複合 顆粒に置換する動機付けがあるものといえるから,上記置換により,甲1発 38 明において,A剤を炭酸塩を含有する含水粘性組成物とし,B剤を炭酸塩と酸から構成される複合顆粒とする構成(相違点1-1に係る本件発明1の構成)とすることを容易に想到することができたものであるとして,これを否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。
ア 甲1には,甲1のパック剤の形態に関し,@「従来公知のパック剤を耐 圧容器に入れ,これに高圧炭酸ガス,あるいは炭酸塩と酸,もしくはドラ イアイス等の炭酸ガス発生源を加えて密閉」し,「使用時内容物を吐出さ せて被パック部位に塗布する」形態,A「炭酸塩と酸を実質的に水の存在 しない状態で,一つの不織布,布,紙等の担体に担持させる。更にこの担 体に公知のパック剤成分を一緒に担持」させて,「本パック剤は,使用時 被パック部位に付着させ,この上に蒸しタオルを重ねるとか,水を添加す るとかの方法によってパック剤に水を供給して,当該炭酸塩と酸とを反応 させて炭酸ガスを発生させる」形態,B「炭酸塩と酸をそれぞれ異なる2 つの上記担体に担持させ」,「この担体には,Aと同様に公知のパック剤 成分を担持させることも,また水分を保持させることもでき」,「使用時 被パック部位に重ねて付着させ,必要な場合(パック剤が水を含まない場 合)には,Aと同様に水を供給して炭酸ガスを発生させる」形態について の記載はあるが(前記2?ウ),パック剤の剤型を,「水及び増粘剤を含 む粘性組成物」(A剤)と「炭酸塩及び酸を含む,複合顆粒剤,複合細粒 剤,または複合粉末剤」(B剤)とし,使用時に両者を混合して「炭酸ガ ス」(二酸化炭素)を発生させることについては記載も示唆もない。
イ 次に,甲18(特開昭6163-310807号公報)及び甲60(特 開平3-16145号公報)には,本件出願日当時,炭酸ガスを長時間保 持することができ,血行促進効果の持続性が高い薬用化粧料を提供するこ とが課題とされていたことについての開示がある。
しかるところ,前記2?の認定事実によれば,甲1には,従来の「パッ 39 ク剤」においては,添加成分の一つとして配合される血行促進作用を有す る合成又は天然エキス等が,少量の配合では効果が不充分であり,多量の 配合では血行は促進されるが,その反面,適用部位に不快な刺激感を与え るとともに,連続使用すると皮膚炎を惹起させるなどの欠点があったため, 甲1記載のパック剤は,短時間で優れた血行促進作用を示し,適用部位に 不快な刺激感を与えず,肌にしっとり感を与え,連続使用しても皮膚炎を 起こさない性質のパック剤を提供することを目的とするものである旨の記 載があることが認められる。
そうすると,甲1に接した当業者は,上記記載から,甲1発明のパック 剤は,「短時間で」優れた血行促進作用を示し,適用部位に不快な刺激感 を与えず,肌にしっとり感を与えることに技術的意義があるものと理解す るから,甲1発明において,二酸化炭素が短時間で空気中に発散してしま うという問題点を解消するために酸と炭酸塩との反応を遅延させる必要が あるものと認識するものとまで認めることはできない。
また,甲1発明の上記技術的意義に照らすと,甲1に接した当業者が, 甲1発明においても,炭酸ガスを高濃度で「長時間」保持することができ, 血行促進効果の持続性が高い薬用化粧料を提供することが課題であると認 識するものと認めることはできない。
ウ 以上によれば,甲1に接した当業者は,甲1発明において,A剤を炭酸 塩を含有する含水粘性組成物とし,B剤を炭酸塩と酸から構成される複合 顆粒とする構成(相違点1-1に係る本件発明1の構成)とする動機付け があるものと認めることはできないから,甲1及び本件出願当時の技術常 識に基づいて上記構成を容易に想到することができたものと認められない 旨判断した本件審決の判断に誤りはない。
したがって,原告の前記主張は理由がない。
? 小括 40 以上のとおり,本件審決における相違点1-1の容易想到性の判断に誤り はないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1は,甲1 に記載された発明及び本件出願日当時の技術常識に基づいて,当業者が容易 に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りは ない。
したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
4 取消事由2(甲1を主引用例とする本件発明2ないし4の容易想到性の判断 の誤り)について 本件発明2ないし4は,いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含むも のであり,前記3で説示したとおり,本件発明1は甲1に記載された発明及び 本件出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができた ものと認められないから,本件発明2ないし4も,同様に,当業者が容易に発 明をすることができたものと認められない。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取 消事由2は,理由がない。
5 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,本件審決を 取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 中村恭
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