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関連審決 不服2019-3759
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事件 令和 1年 (行ケ) 10168号 審決取消請求事件

原告株式会社イナモク
同訴訟代理人弁理士 榊原靖 竹中一宣 木村満
被告特許庁長官
同 指定代理人大山健 見目省二 関口哲生 小出浩子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/08/12
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2019-3759号事件について令和元年11月6日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,特許発明進歩性の有無(引用発明の認定,本願発明の認定,容 易想到性の判断)である。
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,名称を「根菜類切削切断装置」とする発明について,平成26年2月28日に特許出願し(特願2014-38109号。以下,「本願」という。甲9),平成30年3月7日に手続補正(甲12)をし,同年8月29日に,再度,手続補正(以下, 「本件補正2」という。甲15)をしたが,平成31年1月11日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。甲16)を受けた。
原告は,平成31年3月20日,拒絶査定不服審判を請求し(不服2019-3759号。甲17),手続補正(以下,「本件補正3」という。甲18)をしたが,特許庁は,令和元年11月6日,本件補正3を特許法17条の2第5項に規定する要件に違反するとして却下し,審判の請求を不成立とする審決(以下,「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月18日に原告に送達された。
2 本件補正2後の特許請求の範囲(以下,本願の明細書及び図面〔甲9〕を「本願明細書」という。)【請求項1】 人参,牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は, この根菜類を切削切断する切削切断部と この根菜類を固定する固定部と, この固定部を直線運動させ,前記切削切断部に送込む送り部と,を備えており, 前記切削切断部は,この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段,及び根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において, 前記切削手段,及び前記切断手段により,前記根菜類に,角(RC)を備えた切削切断片(KS)を形成可能とし, また前記根菜類を,前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に,固定可能とし, 前記切断手段の刃物ユニット(BU)は,複数枚の切断刃(BC)と,この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1),(BU2)と,この切断刃(BC),及びスペーサ(BU1),(BU2)を固定する固定具とで構成したことを特徴とする根菜類切削切断装置。
【請求項2】 上記固定部に固定された根菜類が上記切削切断部の切削手段に当接する角度を調整できる角度調整機構と,上記切削手段によって削り出された切削対象部位の切断線の幅を調整するための切断手段調整機構,又は上記切断対象部位の切断線の幅を調整するための切断手段調整機構と,上記切断手段によって切断対象部位を削り出す切削対象部位の厚さを調整するための切削手段調整機構と,を備えたことを特徴とする請求項1に記載の根菜類切削切断装置。
【請求項3】 上記送り部は,フレームに備えられており,この送り部は,角度調整機構で,このフレームに対して,角度調整可能とし,上記固定部に固定された根菜類が,上記切削切断部の切削手段に当接する角度を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の根菜類切削切断装置。
【請求項4】 上記切削切断部は,上記切削手段によって削り出される切削対象部位の厚さを調整するための切削手段調整機構と,切削対象部位の切断数と切断間隔と切断深さを調整するための切断手段調整機構と,を備えたことを特徴とする請求項1に記載の根菜類切削切断装置。
【請求項5】 請求項1に記載の根菜類切削切断装置において, 上記固定部に固定された根菜類を回転させるための第1モータと,上記送り部において上記固定部を直線運動させるための第2モータと,上記切削切断部において,上記切削手段及び上記切断手段を回転させるための第3モータを備え,さらに第1 モータと第2モータと第3モータの回転数を夫々独立して制御できる制御器を備えた制御部を有することを特徴とする根菜類切削切断装置。
3 原査定の拒絶の理由(甲16) 本願の請求項1に係る発明は,甲1〜3に記載された発明及び甲7,8に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲1 特開2003-236793号公報 甲2 特開昭57-201198号公報 甲3 特開2010-42494号公報 甲7 実願昭61-187235号(実開昭63-91400号)のマイクロフィルム 甲8 実願昭59-160950号(実開昭61-75994号)のマイクロフィルム 4 本件審決の理由の骨子 (1) 甲1には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されている。
「ごぼう60のささがきを生成するささがき装置は, ごぼう60を挟持して円盤8に送るレバー40及びプーリ41を備えており, 前記円盤8が,このごぼう60の外周からささがきするささがき刃10,及びごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11を備えるささがき装置において, 前記ささがき刃10及び前記2つ割り刃11により,ごぼう60が2つ割りにささがきされる,ささがき装置。」 (2) 甲1発明との対比 ア 本件補正2後(本件補正3前)の本願の請求項1の発明(以下, 「本願発明」という。)と,甲1発明とを対比すると,甲1発明の「ごぼう60」は,本願発明の「人参,牛蒡の根菜類」又は「この根菜類」に相当し, 「ささがき装置」は「根菜類切削切断装置」に, 「円盤8」は「切削切断部」に, 「ごぼう60の外周」は「この根菜類の表面」又は「根菜類の切削対象部位」に, 「ささがきする」は「切削対象 部位を削り出す」に,「ささがき刃10」は「切削手段」に,「2つ割りにする」は「二片,又は多片の形状に切断するための」に,「2つ割り刃11」は「切断手段」に,それぞれ相当する。
また,甲1発明の「ごぼう60が2つ割りにささがきされ」ることは,物品が2つ割りにささがきされると角を備えた切削切断片となることは自明であるから,本願発明の「根菜類に,角を備えた切削切断片を形成可能とし」に相当する。
イ 以上のことから,本願発明と甲1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]「人参,牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は, この根菜類を切削切断する切削切断部とを備えており, 前記切削切断部は,この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段,及び根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において, 前記切削手段,及び前記切断手段により,前記根菜類に,角を備えた切削切断片を形成可能とした,根菜類切削切断装置。」[相違点1] 本願発明は, 「この根菜類を固定する固定部と,この固定部を直線運動させ,前記切削切断部に送込む送り部」を備え, 「また前記根菜類を,前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に,固定可能」とされているのに対し,甲1発明は,ごぼう60を挟持して円盤8に送るレバー40及びプーリ41を備えているものの,固定部及び送り部が本願発明のように特定されていない点。
[相違点2] 本願発明は, 「切断手段の刃物ユニット(BU)は,複数枚の切断刃(BC)と,この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1),(BU2)と,この切断刃(B C),及びスペーサ(BU1),(BU2)を固定する固定具とで構成」されているのに対し,甲1発明は,2つ割り刃11がそのような構成を有するものでない点。
(3) 判断 ア 相違点1について 甲2には, 「細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切削装置が,棒状根菜aを固定するチヤツカー39と,このチヤツカー39を直線運動させ,櫛刃19と刃物16を取り付けた刃物装着円板12に送込む昇降ブラケツト30を備え,前記棒状根菜aを,前記チヤツカー39に設けた昇降する軸40の螺旋針41に,固定可能とする。」との技術的事項(以下, 「甲2の技術的事項」という。)が記載されており,甲2の技術的事項の「棒状根菜a」は,本願発明の「根菜類」に相当し,以下同様に,「チヤツカー39」は「固定部」に,「櫛刃19と刃物16を取り付けた刃物装着円板12」は「切削切断部」に,「昇降ブラケツト30」は「送り部」に,「チヤツカー39に設けた昇降する軸40の螺旋針41」は「固定部に設けた昇降する軸の固定機構の固定針」 「細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切 に,削装置」は「根菜類切削切断装置」に,それぞれ相当する。
そして,甲1発明と甲2の技術的事項とは,ごぼう等の棒状根菜を,直線運動させながら回転円盤に送って切削切断をするとの技術分野及び機能の点で共通するため,甲1発明に甲2の技術的事項を適用して,ごぼう60を円盤8に送るための機構が,ごぼう60を固定する固定部と,この固定部を直線運動させ前記円盤8に送込む送り部を備え,ごぼう60を固定部に設けた昇降する軸の固定針に固定可能とすることは,当業者が容易になし得るものである。
また,甲3には, 「ごぼうのささがき装置1が,ごぼうtを固定する回転ホルダ8と,この回転ホルダ8を直線運動させ,切刃3を取り付けた回転盤16に送込む送り装置5を備え,前記ごぼうtを,昇降する回転軸27の前記回転ホルダ8に設けた針部材8aに,固定可能とする。 という技術的事項 」 (以下, 「甲3の技術的事項」という。)が記載されており,甲1発明と甲3の技術的事項とは,ごぼう等の棒状根 菜を,直線運動させながら回転円盤に送って切削するとの技術分野及び機能の点で共通するため,甲1発明に甲3の技術的事項を適用して,ごぼう60を円盤8に送るための機構が,ごぼう60を固定する固定部と,この固定部を直線運動させ前記円盤8に送込む送り部を備え,ごぼう60を固定部に設けた昇降する軸の固定針に固定可能とすることは,当業者が容易になし得るものであるともいえる。
したがって,甲1発明及び甲2の技術的事項又は甲3の技術的事項により,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2について 野菜を切断する装置において,切断手段の刃物ユニットを,複数枚の切断刃と,この切断刃を支持する多数枚のスペーサと,この切断刃及びスペーサを固定する固定具とで構成することは,従来周知の技術的事項(甲7の5頁下から1行〜8頁16行及び第1図〜第5図,甲8の5頁2行〜12行及び第3図〜第6図B等)である。
そして,甲1には, 「上記実施の形態においては,8個のささがき刃10及び2つ割り刃11を設けたが,この個数は特に限定されるものではない。 と記載されてい 」るから,2つ割り刃11の刃の個数を設計変更することは示唆されている上に,甲1発明と従来周知の技術的事項とは野菜を切断する機能の点で共通するため,甲1発明に従来周知の技術的事項を適用して,切断手段として,2つ割り刃11に換えて,複数枚の切断刃と多数枚のスペーサと,この切断刃及びスペーサを固定する固定具とで構成された刃物ユニットでごぼう60を切断する(割る)ようにして,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得るものである。
したがって,甲1発明及び甲7及び8にみられる従来周知の技術的事項により,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。
ウ 効果について 本願発明の効果は,甲1発明,甲2の技術的事項又は甲3の技術的事項及び甲7及び8にみられる従来周知の技術的事項から,当業者が予測し得るものであって格 別なものとはいえない。
エ 以上のとおり,本願発明は,甲1発明,甲2の技術的事項又は甲3の技術的事項及び甲7及び8にみられる従来周知の技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができないから,本願は拒絶されるべきである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(甲1発明の認定の誤り) 本件審決は,甲1には, 「ごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11を備える」ことが記載されていると認定している。
しかし,甲1の段落【0024】には, 「2つ割り刃11の刃部11aによってごぼう60に縦溝が入れられた直後にささがき刃10の刃部10aによってささがきされる」と記載されており, 「2つ割り刃11」は,その名称の中に「2つ割り」との語句が含まれているものの,実際には, 「ささがき刃10」が「ごぼう60」の外周からささがきしたものを2つ割りにするものではなく, 「ささがき刃10」が「ごぼう60」の外周をささがきする前に, 「ごぼう60」に「縦溝を入れる」ためのものである。
「2つ割り刃11」によって縦溝が入れられた部位は,ごぼう60の他の部位によって繋がっており,2つに割れているとはいえない。
「2つ割り」という用語は,「全体を二つに分けること。また,そのもの」という意味であり,「縦溝を入れる」ことには, 「2つ割りする」という意味は含まれていない。甲1の「2つ割り刃11」は, 「ささがき刃10」と共働することにより,結果として2つ割りになるものを形成できるのであって, 「2つ割り刃11」単独では,ささがきを2つ割りにすることはできない。甲1には,この「2つ割り刃11」が,ごぼう60に“縦溝を入れる”機能を有することしか記載されておらず,2つ割りにするといった機能や作用についての開示は一切なく,示唆もない。
したがって,甲1に, 「ごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11を備える」ことが記載されているとした本件審決の認定は,誤りである。
2 取消事由2(甲1発明との一致点,相違点の認定の誤り) (1) 本件審決は,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,本願発明の「この根菜類の表面」又は「根菜類の切削対象部位」に相当すると認定している。
ア(ア) 本願の請求項1には,「及び根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段」との記載の直前に「この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段」と記載されており, 「根菜類の切削対象部位」 「切 は,削手段」の切り出しの対象であり, 「切断手段」によって二片,又は多片の形状に切断される対象である。
「切断」とは,物をたち切ること,切り離すことを意味するから,本願発明において,根菜類から「切削手段」によって削り出す前の「根菜類の切削対象部位」に対し,「切断手段」によって縦溝を入れることは可能であっても,「切断」を行うことはできない。したがって,本願発明において「切断手段」の切断対象である「根菜類の切削対象部位」は,本願明細書を参酌するまでもなく, 「切削手段」によって「この根菜類の表面」から削り出された後のものであると一義的に理解できる。
また,本願明細書を考慮しても,段落【0048】には, 「工程的には切削と切断が順次,又は略同時に行われる」と記載されているとともに, 【図16】には,さきがけを形成する工程として,切削と切断とを順次に行うことが例示されているから,本願発明の「切断手段」 「切削手段」 は, によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位」を「二片,又は多片の形状に切断するための」ものと解釈できる。
(イ) 「外周」という用語は, 「物に沿った外側の一周り。また,その長さ。」という意味であり,「根菜類の表面」から削り出されたものは,「外周」とはいえない。
(ウ) したがって,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,本願発明の「根菜類の切削対象部位」と異なるものである。
イ 被告の主張に対する反論 被告は,本願明細書を考慮すると,本願発明の「根菜類の切削対象部位を二片, 又は多片の形状に切断するための切断手段」との記載は, 「切断手段」による切断と「切削手段」による切削の順序を特定しているものではないから,本願発明の「切断手段」は, 「切削手段」によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するためのもの」に限定されず,甲1発明のように先に切断工程を行い,その後に切削手段によって切削工程を行うものも含まれていると主張する。
しかし,発明の認定は請求項の記載に基づいて行われるところ,本願の請求項1の記載によると, 「切断手段」が切断するための「根菜類の切削対象部位」が根菜類から「切削手段」によって削り出された後のものと理解できることは,前記アのとおりである。
また,本願明細書の段落【0048】には, 「図示しないが,切断工程の切断手段1aが先で,切断線を備えた人参に,切削工程の切削手段1Aが担当する他の例もあり得る(但し,切削手段1Aと切断手段1aの構造が,逆となる)」と記載され 。
ており,先に切削工程を行い,その後に切断手段によって切断工程を行う「実施例1」と,先に切断工程を行い,その後に切削手段によって切削工程を行う「他の例」とが,区別して記載されている。さらに,段落【0052】には, 「これにより,切削片KS(切削対象部位)は確実に切削切断片KS1,KS2,KS3(図16e),(図16f)として切断される。」と記載されており,根菜類の表面から削り出された切断前の「切削片KS」が,請求項記載の「切削対象部位」に相当するものであることが記載されている。
したがって,原告の主張は,本願明細書の記載内容にも整合している。
請求項に係る発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない(特許法36条6項1号)とされているが,発明の詳細な説明に記載されている発明が,特許請求の範囲に記載されていないこともあり得るから,本願明細書に,本願発明の「切断手段」が,先に切断工程を行い,その後に切削手段によって切削工程を行うものも記載されているとしても,その記載をもって原告 の主張が本願明細書の記載に整合していないことにはならない。
(2) 本件審決は,甲1発明の「2つ割り刃11」は,本願発明の「切断手段」に相当すると認定している。
しかし,前記1のとおり,甲1の「2つ割り刃11」は,ごぼう60に縦溝を入れるためのものであり, 「ささがき刃10」がごぼう60の外周からささがきしたものを2つ割りにするものではないから,甲1発明の「2つ割り刃11」は,本願発明の「切断手段」には相当しない。
(3) 上記(1)(2)によると,本願発明と甲1発明の一致点及び相違点は, ,次のとおりとなる。
ア 一致点「人参,牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は, この根菜類を切削切断する切削切断部とを備えており, 前記切削切断部は,この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段を備える根菜類切削切断装置において, 前記切削手段により,前記根菜類に,角を備えた切削切断片を形成可能とした,根菜類切削切断装置。」 イ 相違点 本願発明と甲1発明は,本件審決で認定された相違点1,2に加えて,下記の相違点3で相違する。
[相違点3] 本願の切削切断部は,根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段を備えるのに対して,甲1発明では, 「円盤8」がそのような構成を備えるものではない点。
3 取消事由3(容易想到性の認定判断の誤り) (1) 本件審決は,相違点1,2に係る本願発明の構成とすることが,当業者が容易になし得たものであるか否かを判断しており,相違点3に係る本願発明の構 成とすることが,当業者が容易になし得たものであるか否かを判断していない。
したがって,本件審決の容易想到性の判断は不十分である。
(2) また,相違点3は容易想到ではない。
ア 本願発明は, 「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づけること」を目的とし(本願明細書の段落【0047】, )「切削切断部」は,「根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段」に加えて,相違点3に係る構成である「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段」を備える。
「人間が刻むささがきsh形状は,例えば,図15(a)(b)に示すが,裏面は ,略平坦で,表面は,小山から,裾野に向かって,緩やかな傾斜となり,全体視して,小高い山形形状と考えられる。この小山が,歯応えと,根菜類の旨みを醸成する」(本願明細書の段落【0047】)のであるから,本願発明は,人間が“刻む”行為に近づけることにより,根菜類の旨みを醸成できるという格別な効果を有する。
また,本願明細書の段落【0047】には,本願発明の作用の一例として, 「切削手段で,図16(a)に示した切削片KSを切削し,この切削片KSの長手方向に切断手段で二つに切離す(2条の切断線SSを形成する)ことが示されているから, 」本願発明は,(@)切削手段による切削の工程と,(@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うことが可能な「切削切断部」を備えることにより, 「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づける」という目的を達成し,この結果, “刻む”行為に基づいて,根菜類の旨みを醸成させるという効果を奏することができる。
これに対して,甲1発明では,明細書の段落【0024】に, 「2つ割り刃11の刃部11aによってごぼう60に縦溝が入れられた直後にささがき刃10の刃部10aによってささがきされる」と明記されているように, “刻む”という行為を含んでいないから,本願発明の「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づける」目的を達成できず,人間が“刻む”行為に近づけることにより根菜類の旨みを醸成できるという効果を奏しない。
したがって,甲1発明の「2つ割り刃11」と本願発明の「切断手段」とは,技 術的,機能的意義が異なり,甲1には,相違点3に係る構成の開示や示唆がない。
また,相違点3に係る構成は,甲2,3,7及び8にも,開示や示唆がない。このため,当業者が,甲1〜3,7及び8に基づいて,本願発明を容易に発明するのは困難である。
このように,本件審決の容易想到性の認定判断には誤りがある。
イ 被告の主張に対する反論 (ア) 被告は,本願発明は, (@)切削手段による切削の工程と, (@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うことにより, “刻む”行為に基づいて根菜類の旨みを醸成させるという効果を奏するとの原告の主張は,本願明細書の記載に基づくものではないと主張する。
しかし,前記アのとおり,本願明細書の段落【0047】の記載によると,本願発明は,(@)の工程と,(@@)の工程とをその順に行うことが可能な「切削切断部」を備えることにより, 「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づける」という「本願発明の目的」を達成することができ, “刻む”行為に基づいて,根菜類の旨みを熟成させるという「本願発明の効果」を奏することができるものであると解釈するのが自然である。
また,本願明細書の段落【0053】には, 「距離L1の調整は,切削手段1Aの螺子b1を螺戻し,切削刃BTを図14のX3-X4方向に動かすことにより行う」と記載され, (i)の切削の工程に用いる切削刃BTは,X3-X4方向に進退自在に配置されていることが開示されている。一方,本願明細書の段落【0054】には,「距離L2の調整は,図14にて,切断手段1aの螺子b3を螺入(方向X5)螺戻(方向X6)することにより行う」と記載され, (ii)の切断の工程に用いる切断刃BCは,X8-X7方向に進退自在に配置されていることが開示されている。
これらの開示により,例えば,切削刃BTを大きく突出させて配置するなど,切削刃BT及び切断刃BCのそれぞれの突出量を適宜調整することで, (i)切削手段による切削の工程と, (ii)切断手段による切断の工程とをその順に行うことが可能 であることが理解できる。段落【0052】には, 「切削片KS(切削対象部位)は確実に切削切断片KS1,KS2,KS3(図16e)(図16f)として切断さ ,れる」と明確に記載され,また,段落【0048】にも, 「工程的には切削と切断が順次,又は略同時に行われる」旨が記載され,さらには,本願明細書の【図16】には,ささがきを形成する工程として,切削と切断とを順次に行うことが示されている。このため,原告の「本願発明は,(i)の切削の工程と,(ii)の切断の工程とをその順に行うことが可能な『切削切断部』を備える」との主張は,本願発明に基づくとともに,本願明細書及び図面に記載,開示されているといえる。
(イ) 被告は,甲1発明の「2つ割りにささがき」されたものも,略90°の角を備えると理解できるから,根菜類の旨みを醸成させるという効果は甲1発明においても奏されると考えられ,格別顕著なものであるとはいえないと主張する。
しかし,完成した料理の形態,見た目が似ていても,料理の作り方,使用される根菜の切り方の順序が変われば,完成する料理の味が変わることは当然にあり得ることである。被告は,ささがきが形成される過程,調理される過程を軽視し,本願明細書に記載された完成後のささがきの形状と,甲1の記載から予想され得る完成後のささがけの形状とが似ているであろうという推測だけで,本願発明の効果は甲1発明においても奏されると決めつけており,被告の主張には根拠がない。
被告の主張
1 取消事由1(甲1発明の認定の誤り)について (1) 甲1の段落【0015】及び【図2】,段落【0024】及び【0025】によると,甲1発明は,ささがき装置の円盤8が回転すると,ささがき刃10及び2つ割り刃11も回転方向に進行し,ごぼう60の下端部分は,進行方向前方に配置された2つ割り刃11によって外周から縦溝が入れられ,この部分が2つ割りされた上で,続いて進行してきたささがき刃10によって外周の表面がささがきされるものであると理解される。
このように,ごぼう60の下端部分は,ささがき装置により,2つ割りにされた ささがきに成形されることになる。そして, 「2つ割り刃11」は,単なる名称によるイメージからではなく,甲1に記載された構成や作用を詳細に検討することにより,ごぼう60下端部分の外周から縦溝を入れることで,ささがきが形成される部分を2つ割りする機能を有するものであることが理解できる。
したがって,甲1に基づき, 「円盤8が,このごぼう60の外周からささがきするささがき刃10,及びごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11を備える」とした本件審決の甲1発明の認定に誤りはない。
(2) 原告は,甲1に記載の「2つ割り刃11」は,ささがき刃10がごぼう60の外周をささがきする前にごぼう60に「縦溝を入れる」ためのものであって,ささがき刃10がごぼう60の外周からささがきしたものを2つ割りにするものではないと主張する。
しかし,2つ割り刃11によって縦溝が入れられて,ささがき刃10によってささがきがされるごぼう60の外周は,2つ割りになるものであるから,ささがきしたものを2つ割りにしたか否かにかかわらず,甲1の「2つ割り刃11」は,ごぼう60の外周を2つ割りにするものであるといえるから,原告の上記主張は失当である。
2 取消事由2(甲1発明との一致点,相違点の認定の誤り)について (1) 本願発明の「切削対象部位」について,請求項1には,「この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段」及び「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段」とのみ特定されている。これらの特定からみて,本願発明の「根菜類の切削対象部位」とは, 「切削手段」が「根菜類の表面から」「削り出す」対象の部位であることは理解できるが,原告が主張するように,根菜類から切削手段によって削り出された後のものに限定されるか否かは,明らかではない。
本願明細書において関連する記載を参酌すると,段落【0048】では,実施例1の根菜類切削切断装置Nにおいて,切削手段1Aで切削切断片KSを形成する直 前に,その部分を切断手段1aで切削切断片KS1,KS2,KS3となるように切断することが示されている。また,段落【0052】によると,実施例1の根菜類切削切断装置Nにおいて,切削片KS(切削対象部位)が切断手段1aで切断された後に切削手段1Aで切削されて切削切断片KS1,KS2,KS3となることが理解される。
このように,本願明細書の記載を参酌すると, 「切削対象部位」である切削片KSは,切断された後に切削により切り取られる態様のものも含まれており,必ずしも切断される前に切削手段によって削り出されたものに限定されるとは解されない。
「切断手段」による切断と「切削手段」による切削のどちらを先に行っても又は同時に行っても, 「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断する」との目的や機能は達せられるものである。
そうすると, 「根菜類の切削対象部位」とは,根菜類から切削手段によって削り出された後のものに限定されるものではなく,切削手段が根菜類の表面から削り出す対象の部位を意味するものと解される。
甲1の段落【0025】の「ごぼう60は回転させられながら下端部分の外周がささがき刃10及び2つ割り刃11によってささがきされる。」という記載によると,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,ささがき刃10がささがきする対象となる部位を含むから,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,本願発明の「根菜類の切削対象部位」に相当するといえる。
したがって,本件審決の一致点,相違点の認定に誤りはない。
(2) 原告の主張に対する反論 ア 原告は,本願明細書の段落【0048】の記載や【図16】の例示によると,本願発明の「切断手段」は, 「切削手段」によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための」ものと解釈できると主張する。
しかし,本願明細書の【図16】で(a)→(b)→(c)→(d)→(e)の 順に例示されたものは,あくまで一般的な概念として,根菜類Kから「切削片KSを切削し,この切削片KSの長手方向に切断手段で二つに切離す」 (本願明細書の段落【0047】)方法を説明したものにすぎない。本願明細書の段落【0048】には, 「実施例1の根菜類切削切断装置Nにおいては,切削工程を切削切断部1の切削手段1Aが担当すると同時に,切断工程を切断手段1aが担当する。この一例では,図16(a)(b)に示す,切削手段1Aで切削切断片KSを形成する。
, 」と記載され,図16】 【 と実施例1の根菜類切削切断装置Nとの関係も説明されているところ,切削切断装置Nの実際の構成については,段落【0048】に, 「この切削片KSが得られる直前に,その部分を切断対象部位として切断手段1aで,一片,又は多片状の切削切断片KS1,KS2,KS3を切断するが,工程的には切削と切断が順次,又は略同時に行われる。」と記載されているから,【図16】についても,切断工程を先に切削工程を後に行う切断手段1a及び切削手段1Aの配置構成を前提とした説明がされているといえる。
また,「図示しないが,切断工程の切断手段1aが先で,切断線を備えた人参に,切削工程の切削手段1Aが担当する他の例もあり得る(但し,切削手段1Aと切断手段1aの構造が,逆となる)」と記載されているように,段落【0048】には, 。
【図16】で示された切削工程後に切断工程を行う方法だけでなく,逆に切断工程を先に行って切断線を付与した人参に対して切削工程を行う方法についても開示されている。
そうすると,本願明細書を考慮すると,本願発明の「切断手段」は,「切削手段」によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための」ものに限定されず,甲1発明のような先に切断工程を行い,その後に切削手段によって切削工程を行うためのものも含まれていると解するのが自然である。
イ 原告は,本願発明と甲1発明とを対比した場合,両者は,本件審決で認定された相違点1,2に加えて,相違点3で相違する旨主張する。
しかし,甲1の段落【0024】及び【0025】の記載によると,2つ割り刃11は,ごぼう60の外周でささがき刃10がささがきする対象の部位に縦溝を入れて2つ割りにするものであるから,甲1発明の「2つ割りにする2つ割り刃11」は,本願発明の「二片,又は多片の形状に切断するための切断手段」に相当する。
本願発明の「根菜類の切削対象部位」及び「切断手段」の点について,本願発明と甲1発明との本件審決の一致点,相違点の認定に誤りはなく,原告が主張する[相違点3]は存在しない。
3 取消事由3(容易想到性の認定判断の誤り)について (1) 原告は,本件審決の容易想到性の判断が不十分であると主張するが,原告が主張する[相違点3]は存在しないから,原告の主張は,前提において誤りである。
(2) 原告は,本願発明は, (@)切削手段による切削の工程と, (@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うことが可能な「切削切断部」を備えることにより, 「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づける」という目的を達成し,この結果, “刻む”行為に基づいて,根菜類の旨みを醸成させるという効果を奏することができる旨主張する。
しかし,本願発明の「根菜類の切削対象部位」が「この根菜類の表面」から削り出された後のものであること,本願発明の「切断手段」は「切削手段」によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための」ものであることは本願発明に基づく事項ではないから,本願発明は, (@)切削手段による切削の工程と, (@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うものであるとはいえない。本願明細書の段落【0047】及び【0048】の記載を参酌しても,本願発明は,(i)切削手段による切削の工程と, 「 (ii)切断手段による切断の工程とをその順に行うことが可能な『切削切断部』を備える」ものに限定されず,甲1発明のような切断手段による切断工程を行ってから切削手段によって切削工程を行う切削切断部を備えるものも含まれていると解される。
また,本願明細書の段落【0003】及び【0047】の記載によると,ささがきの断面が90°前後の角を備えることによって根菜類の旨みが醸成されると理解できるから,(@)切削手段による切削の工程と,(@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うことにより, “刻む”行為に基づいて根菜類の旨みを醸成させるという効果を奏するとの原告の主張は,本願明細書の記載に基づくものとはいえない。そして,甲1の【図2】に図示される「2つ割り刃11」と「ささがき刃10」との配置に鑑みると,甲1発明の「2つ割りにささがき」されたものも,略90°の角を備えると理解できるから,根菜類の旨みを醸成させるという効果は甲1発明においても奏されると考えられ,格別顕著なものであるとはいえない。
当裁判所の判断
1 本願発明について (1) 本願明細書(甲9)には,次の記載がある。
発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】 本発明は,根菜類,特に人参のような大径の根菜類を切削切断してささがきを生成する根菜類切削切断装置に関する。
【背景技術】【0002】 人参等の大径,ごぼう等の根菜類を回転させながら切削してささがきを生成する根菜類ささがき装置は既存である。例えば,特許文献1の実開平6-79296号公報,特許文献3の特開2008-168410号公報がある。さらに,ごぼうをささがきにする根菜類ささがき装置としては,特許文献3の特開2010-42494号公報がある。また,これらに類する根菜類ささがき装置として,特許文献2の特開2000-117687号公報(長尺野菜の乱切り機)を挙げておく。
【0003】 特許文献1の根菜類のささがき装置は,1基のモータで切削刃が装着された円盤を回転させ,切削刃に適切な角度をもって根菜類を押圧し,ささがきを生成する。
根菜類をそのままの状態で押圧しただけでは,ささがきができないので,手で根菜類を把持して回転を与えながら装置内に押し込んでいく必要がある。従って,少量生産であり,かつ作業員の手数を要する等の改良点が考えられる。また,ささがきの形状に要望される「山」 (ささがきの断面が略長方形状あるいは略三角形状となって生じる90°前後の角のことをいう)も生じないことから,問題である。
【0004】 特許文献3の根菜類の切削機は,ケーシング内に複数の刃物を備えた構造であり,この刃物の回転で根菜類をささがきに切削する。この装置も,人手での作業であり,特許文献1と同様に改良点と問題点を抱えている。
【0005】 特許文献4のごぼうのささがき装置は,ごぼうを固定しながら,順次,押圧する構造であって,このごぼうを,単品刃物(1枚刃)を利用して,ささがきに切削する。この装置は,ささがき類似品であり,本来のささがきとは考えられず,前述した特許文献1と同様に改良点と問題点を抱えている。
発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0008】 本発明は,下記の課題を解決する。
<1> 人参のような大径の根菜類の場合は,回転させながら切削刃に押圧させただけでは,ささがき3本分位の幅広い切削片ができ商品化には問題である。また,ささがきの形状に不可欠の「山」もできない。
<2> 人参のような大径の根菜類を切削してささがきを製造するために必要な,根菜類の投入角度と,切削片の厚さとを微調整できる機構がない。
<3> 根菜類を安定的に搬送し,適切な力で切削刃に押圧できる搬送,投入のた めの機構を有する装置とする。
<4> 搬送,回転,切削に夫々独立させた駆動機構を当て,さらに各駆動機構を,人参のような大径の根菜類からささがきを製造するための最適の構成としたい。
【課題を解決するための手段】【0009】 上記の<1>〜<4>を解決するために請求項1〜請求項5を提供する。
【発明の効果】【0010】 請求項1の発明は,根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段,及び切削手段で切削された根菜類の切削対象部位を長手方向に切断するための切断手段を有するか,又は根菜類の切削対象部位を長手方向に切断するための切断手段,及び切断手段で切断された根菜類の切削対象部位を切削するための切削手段を有する構造であるので,ささがきに可能な限り近い形状の切削片,すなわち棒状で「山」を有する切削片を製造できる。
【0011】 請求項2,或いは請求項3の発明は,根菜類が切削切断部の切削手段に当接する角度を調整できる角度調整機構を有しているので,根菜類の投入角度を微調整して所望のささがきを安定して生成することができる。請求項4の発明は,切削対象部位の厚さを調整できる切削手段調整機構と,切断対象部位の切断数と切断間隔と切断深さを調整できる切断手段調整機構を有しているので,根菜類の投入角度のみならず,切削片の厚さも微調整でき,さらに切削片の切断数や切断間隔の調整も可能であり,これにより,投入される根菜類の直径にかかわらず,常にささがき形状の切削切断片を得ることが可能である。
【0012】 請求項5の発明は,固定部,送り部,切削切断部の夫々に独立したモータを配し,夫々のモータの回転数を独立して制御できるので,根菜類を安定的に搬送し,適切 な力で切削刃に押圧でき,さらに,各駆動機構を,人参のような大径の根菜類からささがきを製造するための最適の構成とすることができる。すなわち,固定部,送り部,切削切断部の夫々のモータの回転数を,投入される根菜類の直径に適したものに独立して調整可能であり,結果として,投入される根菜類の直径によらず,最適の形状のささがきを得ることができる。
【図面の簡単な説明】【0013】 【図1】本発明の根菜類切削切断装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の根菜類切削切断装置の右側面図である。
【図3】本発明の根菜類切削切断装置の一部を省略した正面図である。
・・・【0014】 ・・・ 【図5】(a)本発明の根菜類切削切断装置の切削切断部の左側面図である。
【0015】(b)本発明の根菜類切削切断装置の切削切断部の正面図である。
【図6】(a)図5(b)のA-A線端面図である。
【0016】(b)図6(a)において,回転盤以外の構成を取り除いた状態を示す端面図である。
【図7】(a)図6(a)の主要部の正面図である。
【0017】(b)図7(a)において,回転盤以外の構成を取り除いた状態を示す正面図である。
【0022】 ・・・ 【図9】(a)上記切削切断部の切断手段の支持板の正面図である。
【0023】(b)図9(a)のD-D線断面図である。
【0024】(c)上記支持板の外観斜視図である。
【図10】(a)上記切削切断部の切断手段のホルダーの正面図である。
【0025】(b)図10(a)のE-E線断面図である。
【0026】(c)上記ホルダーの外観斜視図である。
【図11】上記ホルダーの組付構成を説明する説明図である。
【図12】(a)上記切断手段の組付構成を説明する説明図である。
【0027】(b)上記切断手段の左側面図である。
【図13】(a)〜(d)上記ホルダーの様々な組付状態を説明する説明図である。
【図14】上記切削切断部の作用を説明するための説明図である。
【図15】(a)(b)人間が包丁で刻むささがきを説明するもので, , (a)はささがきの平面図,(b)はささがきの裏面図 【図16】(a)〜(f)上記切削切断部の作用を説明するもので,(a)は切削片を形成した平面図,(b)は切削片を拡大した切断線を示した図,(c)は(a)の切削片を拡大した断面図,(d)は切削切断片を拡大した平面図,(e)は(d)の断面図,(c)は(a)の斜視図 ・・・【発明を実施するための最良の形態】【0028】 図1〜図5に,本発明の実施例1の根菜類切削切断装置Nの全体構成を示す。実施例1の根菜類切削切断装置Nは,箱型のフレーム2の正面に切削切断部1を備え,フレーム2の上面に送り部4が装着され,送り部4には根菜類K(一例として,人参で説明する)を切削切断部1に当接させるように固定する固定部3が設けられている。フレーム2の背面には箱型の制御部5が設けられ,フレーム2と制御部5はキャスターの付いた架台6に固着されている。なお,以後の説明にては,図1,図2のX1方向を前(正面),X2方向を後(背面)とする。
【0029】 フレーム2にはモータ21が収容されており(図2参照) モータ21からの出力 ,は,ギアボックス22で方向と速度を変換されて,フレーム2の前板24を貫通して正面水平方向に突設されている軸23を回転させる。軸23には,切削切断部1が装着されている。切削切断部1は,図3,図5に見るように,軸23に枢設されてモータ21により回転される円盤状の回転盤11と,回転盤11に装着された5カ所の切削手段1A,1B,1C,1D,1E,及び5カ所の切断手段1a,1b,1c,1d,1eから構成されている。・・・【0030】 フレーム2の上板26には,送り部4のアーム41a,41bが固着されており,アーム41a,41bの正面側端部には枢軸42が渡設され,枢軸42には送り部4の本体40が回動自在に枢設されている。本体40は筐体状になっており,左側面43の下端背面が枢軸42を中心とする半円状に突出されて凸部431となり,凸部431の外周面側には円弧状のスリット432が穿設されている。また,右側面44の下端背面も枢軸42を中心とする半円状に突出されて凸部441となり,凸部441の外周面側には円弧状のスリット442が穿設されている。
【0031】 図1,図2で,スリット442には螺子443,444がスリット442を貫通しアーム41bに螺入されており,これにより,右側面44はアーム41bに固定 される。左側面は示さないが,同様の構成により左側面43がアーム41aに固定される。したがって,送り部4全体が,地面に水平な線から角度 α(図2参照)にて固定される。角度 α の値を変更したいときには,螺戻により左側面43とアーム41a,及び右側面44とアーム41bの固定状態を解除し,送り部4全体を枢軸42によって回動させ,角度 α が望みの値になった時点にて左側面43をアーム41aに,右側面44をアーム41bに,螺着により固定する。この機構が,請求項2,或いは請求項3に記載の角度調整機構に相当する。
【0032】 本体40の上面上端部にはモータ45が固着されており,モータ45の出力は,噛合するギア461,462を介してボールねじ機構47のスクリュー軸471を回転させる。これにより,ボールねじ機構47の可動部472はスクリュー軸471に沿って前進(図2のF方向)後退(図2のR方向)する。・・・【0033】 可動部472の正面側には,固定部3が固着されている。固定部3は,筐体31に掩蔽されたモータ32と,モータ32により回転される軸33と,軸33の下端部に固着された固定機構34より構成され,全体が可動部472の動きに追随して前進(方向F)あるいは後退(方向R)する。固定機構34の端部には,数本の固定針35が突設されており,この固定針35に根菜類Kの上端部(葉があった側)を突き刺して根菜類Kを固定部3に固定する。したがって,根菜類Kは,固定部3の前進に同期して前進(方向F)あるいは後退(方向R)すると同時に,軸33の回転により回転される固定機構34と連動して回転される。すなわち,固定部3の前進(F方向)によって,根菜類Kは切削切断部1に到る(当接/押圧される)。
【0034】 フレーム2の正面には平面視にてコの字状のカバー板25が係着されており,フレーム2の正面にある切削切断部1を掩蔽している。カバー板25の正面左側には正面視が長方形の投入口251が穿設され,投入口251の下部には重ね構造のV 形でなる受け板252が設けられている。受け板252は上部が正面側に迫り出し平面視がくの字状で,図2に見るように,投入口251に搬送される根菜類Kを正面側にて承支し,根菜類Kが安定的に切削切断部1に適切に当接されるように補助する。
【0036】 次に,切削切断部1の構成について述べる。切削切断部1は,図2,図3に示すように軸23に枢設されてモータ21により回転される円盤状の回転盤11と,回転盤11の周方向に等間隔で装着された5カ所の切削手段1A,1B,1C,1D,1E,及び5カ所の切断手段1a,1b,1c,1d,1eから構成されている。
以下,図5〜図13にて,さらに詳細に説明する。図5において,回転盤11の中心には中心孔111が穿設されており,この中心孔に上記軸23を挿通螺着する。
【0037】 また,略径方向に長手方向を有する長方形状の貫通孔11α,11β,11γ,11δ,11ε が周方向に等間隔で穿設されている。また,背面には,上記貫通孔に接して,略径方向に長手方向を有する長方形状の凸部11a,11b,11c,11d,11eが周方向に等間隔で突設されている。さらに,正面には,上記貫通孔近傍に,略径方向に長手方向を有する長方形状の凹部11A,11B,11C,11D,11Eが周方向に等間隔で穿設されている。
【0038】 切削手段1Aは凹部11Aに,切削手段1Bは凹部11Bに,切削手段1Cは凹部11Cに,切削手段1Dは凹部11Dに,切削手段1Eは凹部11Eに,夫々装着されている。また,切断手段1aは貫通孔11α と凸部11aに,切断手段1bは貫通孔11β と凸部11bに,切断手段1cは貫通孔11γ と凸部11cに,切断手段1dは貫通孔11δ と凸部11dに,切断手段1eは貫通孔11ε と凸部11eに,夫々装着されている。上記切削手段1A〜1Eは5カ所共構成が同じであり,また,上記切断手段1a〜1eも5カ所共構成が同じであるので,以下,切 削手段1A〜1Eについては切削手段1Aによって,切断手段1a〜1eについては切断手段1aによって説明する。
【0039】 図6,図7に見るように,切削手段1Aは押え板Pと切削刃BTから構成されている。押え板Pは,図8(a)〜(c)に見るように,略長方形の板状で,一定の厚さの本体P1の下端背面がテーパ面P2となり,下方に向かうに従いその厚さを減じている。なお,ここでいう上下方向は,図3,図5の上下方向をそのまま用いている。本体P1には,螺子孔P3が2カ所穿設されている。切削刃BTは,図8(d)〜(f)に見るように,略長方形の板状で,一定の厚さの本体BT1の下端正面がテーパ面BT2となり,下方に向かうに従いその厚さを減じており,先端部に刃先BT3が形成されている。
【0040】 図6,図7に見るように,押え板Pは,回転盤11の凹部11Aに螺着され,切削刃BTは押え板Pと凹部11Aの間に挟着固定される。すなわち,凹部11Aは上端に段部d1を,下端にテーパ面t1を有し,螺子孔h1が2カ所穿設されており,押え板Pは,本体P1の上端部背面が段部d1に当接されテーパ面P2が切削刃BTを介して凹部11Aのテーパ面t1に押圧される構成で,螺子b1を以て螺子孔P3と螺子孔h1にて押え板Pを凹部11Aに螺着することによって,切削刃BTの本体BT1は押え板Pのテーパ面P2と凹部11Aのテーパ面t1の間に挟着固定される。この際,切削刃BTの刃先BT3は,回転盤11の正面側下方に,垂直線に対して鋭角に突出される。
【0041】 また,回転盤11には貫通孔11α が穿設されているが,切削刃BTの刃先BT3は,この貫通孔11α の正面側に差し掛けられるように突出される。刃先BT3と回転盤11の正面の間には,図14に見るように,距離L1が形成されている。
・・・ 【0042】 次に,切断手段1aの説明を行う。図6,図7に見るように,切断手段1aは支持板Sと刃体ユニットBUから構成されている。支持板Sは,図9に見るように,縦断面が逆L字状に屈曲された板状で,水平板S1と垂直板S2が一体に形成されている。垂直板S2には,上端部近傍に螺子孔S21が3カ所,下端部近傍に螺子孔S22が2カ所,夫々穿設されている。
【0043】 刃体ユニットBUは,図10,図11に見るように,全体形状は略直方体形状であるが,スペーサBU1と,スペーサBU1よりやや薄いスペーサBU2と,切断刃BCを積層し,固定具となる螺子棒BU3を二カ所に貫通させ,夫々の両端をナットBNにて固定して形成されている。切断刃BCの厚さはスペーサBU2の厚さと同一なので,図13に見るように,任意の箇所のスペーサBU2を切断刃BCと交換することにより,刃体ユニットBUの任意の箇所に切断刃BCを植設することができる。切断刃BCは,図10(b)に見るように,本体BC1の一端に本体BC1と一体として刃先BC2が形成されており,図12(a)に見るように,少なくとも,正面視にて刃先BC2が上方に刃体ユニットBUから突出されている。刃先BC2は正面向きである。図示しないが,刃体ユニットBUは,枠体内に,スペーサBU1〜スペーサBU2と,切断刃BCとを収容する構造も可能である。
【0044】 図6,図7に見るように,支持板Sは,回転盤11の凸部11aの背面に穿設された2カ所の螺子孔h2に,垂直板S2の2カ所の螺子孔S22に螺入した螺子b2,b2を螺着して固定される。この際,刃体ユニットBUは,凸部11aの上端面と支持板Sの水平板S1の間に挟着固定される。刃体ユニットBUの背面には,支持板Sの垂直板S2の3カ所の螺子孔S21に螺入した螺子b3の端部が押圧された状態となっている。この状態で,少なくとも,切断刃BCの刃先BC2は正面側に,上向きに突出した状態であり,切削手段1Aの切削刃BTの刃先BT3の直 下に切断刃BCの刃先BC2の先端部分が位置する構成となっている。
【0045】 また,刃体ユニットBUは,一枚〜複数枚の切断刃BC,BC等(以下,BC)と,積層する多数のスペーサBU1,スペーサBU2等と,後述する一基(一本)〜複数基(複数本)の固定具で構成する,例えば,図13に示すように,切断刃BC,BCの間隔や切断刃BCの本数,又は切断線ssの幅を調整することが可能である。すなわち,図13(a)に示すように,2枚の切断刃BCを間隔BL1(スペーサBU1を4枚分とスペーサBU2を3枚分の間隔)にて設けることもできれば,これを組替えて,図13(b)に示すように,2枚の切断刃BCを間隔BL2(スペーサBU1を6枚分とスペーサBU2を5枚分の間隔)にて設けることも,図13(c)に示すように,2枚の切断刃BCを間隔BL3(スペーサBU1を2枚分とスペーサBU2を1枚分の間隔)にて設けることもできる。この際,BL3【0046】 また,図13(d)に示すように,3枚の切断刃BCを間隔BL1にて設けることもできる。その他の例として,4枚,5枚の切断刃BCを設けることも,さらに間隔をBL1,BL2,BL3とは異なった値にすることも可能である。一般的に,根菜類Kの直径が大となれば切断刃BCの間隔を開き,あるいは本数を増やすことが適切と考えられる。・・・【0047】 次に,本発明の実施例1の根菜類切削切断装置Nの作用について説明する。本発明は,人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)に近づけることを目的とする。
人間が刻むささがきsh形状は,例えば,図15(a)(b)に示すが,裏面は略 ,平坦で,表面は,小山から,裾野に向かって,緩やかな傾斜となり,全体視して,小高い山形形状と考えられる。この小山が,歯応えと,根菜類の旨みを醸成すると考えられる。そこで,本発明は,図16(a)〜(g)に示した,「山」を形成し, 前記小山の感覚と,旨みの要素を生成する。即ち,この一例では,切削手段で,図16(a)に示した切削片KSを切削し,この切削片KSの長手方向に切断手段で二つに切離す(2条の切断線SSを形成する)。この切離しで形成された(切削切断片(ささがき片)KS1〜KS3には,拡大図の図16(f)で見ると,夫々に角RC(山)を有している。
【0048】 実施例1の根菜類切削切断装置Nにおいては,切削工程を切削切断部1の切削手段1Aが担当すると同時に,切断工程を切断手段1aが担当する。この一例では,図16(a)(b)に示す,切削手段1Aで切削切断片KSを形成する。この切削 ,片KSが得られる直前に,その部分を切断対象部位として切断手段1aで,一片,又は多片状の切削切断片KS1,KS2,KS3を切断するが,工程的には切削と切断が順次,又は略同時に行われる。図示しないが,切断工程の切断手段1aが先で,切断線を備えた人参に,切削工程の切削手段1Aが担当する他の例もあり得る(但し,切削手段1Aと切断手段1aの構造が,逆となる)。
以下,順次工程を説明する。
【0049】 事前準備として,送り部4の角度を調整する。送り部4の角度調整は,根菜類Kの直径や形状に合わせて行うため,同一種類の根菜類を連続的に切削切断する際には,一度調整すれば作業中に再調整する必要はない。調整方法については,構成の項にて記述した通りであり,これが請求項2,並びに請求項3の発明の「角度調整機構」に相当する。次に,切削切断工程に入る。根菜類切削切断装置Nに根菜類を固定する工程のみは人の手で行われる。このとき,固定部3は,送り部4の上端に位置する状態である。固定部3の固定機構34の固定針35に根菜類Kの大径側端部(葉が付いていた面)を突き刺し固定すると,スイッチ盤55にあるスタートスイッチを押す。
【0050】 これにより,フレーム2のモータ21,送り部4のモータ45,固定部3のモータ32が夫々の回転を開始する。夫々のモータの回転数は,予め,制御部5のモータ制御器52,53,54にて定めておく。モータ21は切削切断部1の回転盤11を回転させ,モータ45はボールねじ機構によって固定部3を前進(図2のF方向)させ,モータ32は固定部3の軸33を回転させる。これにより,固定部3に固定された根菜類Kは,回転しながら前進し,フレーム2のカバー板25の投入口251を通過し,切削切断部1の回転盤11に回転しながら押圧される。
【0051】 根菜類Kは,切削手段1A,1B,1C,1D,1Eにより切削されると略同時に切断手段1a,1b,1c,1d,1eによって切断されて,図16(d)(e) , ,(f)に示す切削切断片KS1,KS2,KS3となり,回転盤11の貫通孔11α,11β,11γ,11δ,11ε を通過して下方に落下する。切断切削部1の下部は開放されているので,切削切断片KS1,KS2,KS3はそのまま落下し,架台6の内部に収集用の籠(図示せず)を用意してこれを受ける。
【0052】 この際,上記切削手段と上記切断手段の調整について述べる。この調整は,切削切断を行う前に行われる。図14に示すように,切削手段1Aの切削刃BTの刃先BT3と回転盤11の正面との距離をL1とし,切断手段1aの切断刃BCの刃先BC2の先端と回転盤11の正面との距離をL2とを比較した場合,必ずL2がL1よりやや大となるように調整する。これにより,切削片KS(切削対象部位)は確実に切削切断片KS1,KS2,KS3(図16e)(図16f)として切断さ ,れる。L2【0053】 距離L1の調整は,切削手段1Aの螺子b1を螺戻し,切削刃BTを図14のX3-X4方向に動かすことにより行う。切削刃BTをX3方向に摺動させることにより距離L1は増大し,X4方向に摺動させることにより距離L1は減少する。距 離L1は切削片KSの厚さになるので(図16b) (図16c) , (参照),根菜類Kの直径が大きくなればL1を大とし,直径が小になればL1を小とする。適切な距離L1が決定されれば螺子b1により押え板Pを螺着することにより切削刃BTを挟着固定する。これが,請求項4の発明にいう「切削手段調整機構」に相当する。
【0054】 距離L2の調整は,図14にて,切断手段1aの螺子b3を螺入(方向X5)螺戻(方向X6)することにより行う。螺入により刃体ユニットBUは方向X7に移動し距離L2は増大する。螺戻により刃体ユニットBUは方向X8に移動し距離L2は減少する。この調整は,実際には,螺子b2を螺戻して刃体ユニットBUの挟着状態を解除して行う。また,常にL2>L1となるように調整するのは前述の通りである。これが,請求項4の発明にいう「切断手段調整機構」の一部に相当する。
「切断手段調整機構」には,前述の切断刃BCの間隔や本数を調整することも含まれる。
【0055】 上記の「切削手段(切削手段1A〜1E)調整機構」と「切断手段(切断手段1a)調整機構」とで適宜調整を行うことによって,生成されるささがきが所望の寸法形状,又は枚数(生産量)になるようにある程度調整することが可能である。その場合,切削手段調整と切断手段調整の相関関係を常に考慮して,双方を同時に調整することが好ましい。例えば,図示しないが,切削手段1A〜1Eで,切削片KSの切削面積の大小とし,これに併せて,切断手段1a〜1eで,切断刃BCの間隔,又は切断刃BCの枚数を調整し,切削切断片KS1〜KS3等の数の変更をする等の調整を行うことができる。
【0056】 最後に,モータ21,45,32の調整について述べる。根菜類Kの回転を司るモータ32の回転数と,根菜類Kを切削切断部1に押圧する速度を司るモータ45の回転数には密接な関連があり,両者の回転数をうまく調整しないと,図17に示 すような歪んだ切削片KS5が生じる。すなわち,モータ32の回転数を上げすぎると切削片は円弧状に歪むことになる。このような切削片KS5は,切断してもやはり円弧状で(ssは切断線),ささがき形状としては違和感の強く,かつ調理素材としてはて良くない。できるだけ直線的な棒状のささがき形状を得るために,モータ32とモータ45の回転調整は必要当接押圧されるである。
【0057】 また,モータ21の回転数は切削片KSの長さに関連するので,これも,ささがき形状の決定に大きな要素となる。各モータの回転数は,前述のようにモータ制御器52,53,54の調整によって行われるが,試行錯誤の結果,モータ21の回転数をモータ制御器52にて毎分50ヘルツ〜60ヘルツ,モータ32の回転数をモータ制御器53にて毎分45ヘルツ〜55ヘルツ,モータ45の回転数をモータ制御器54にて毎分20ヘルツ〜30ヘルツとした場合,理想的な形状に近いささがき形状が得られる。
【0058】 前述した各構造は,本発明の好ましい一例の説明である。従って,本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく,発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか,同じ特徴と効果を達成できる構造,等は,本発明の範疇である。
【図1】 【図2】【図3】 【図5】 【図6】 【図7】【図9】 【図10】 【図11】【図12】 【図13】 【図14】 【図15】【図16】 (2) 前記第2の2の本件補正2後の特許請求の範囲の請求項1及び上記(1)によると,本願発明は,以下のものと認められる。
「 人参,牛蒡の根菜類を切削切断する切削切断部と,この根菜類を固定する固定部と,この固定部を直線運動させ,前記切削切断部に送込む送り部と,を備えており, 前記切削切断部は,この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段,及び根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段を備えており,前記切削手段,及び前記切断手段により,前記根菜類に,角(RC)を備えた切削切断片(KS)を形成可能とし,前記根菜類を,前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に,固定可能とし,前記切断手段の刃物ユニット(BU)は,複数枚の切断刃(BC)と,この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1),(BU2)と,この切断刃(BC),及びスペーサ(BU1),(BU2)を固定する固定具とで構成したことを特徴とする前記根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置。」 2 取消事由1(甲1発明の認定の誤り)について (1) 甲1には,次の記載がある。
発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ごぼう等の棒状野菜のささがき装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来,棒状野菜のささがき装置の概略構造は,次のようになっている。支柱にスライダが上下動可能に設けられ,スライダには,ごぼう回転用モータが固定されており,ごぼう回転用モータの出力軸には,棒状野菜の上端をチャックするチャック爪が設けられている。支柱の上端部にはプーリが回転自在に設けられており,プーリに掛けられたワイヤの一端は,前記スライダに固定され,ワイヤの他端には,ワイヤの一端に加わるごぼう回転用モータ,チャック爪等の重量とほぼ 等しいバランス重りが固定されている。一方,チャック爪の下方には,ささがき刃を有して回転する円盤が傾斜して配設され,円盤は円盤回転用モータによって回転させられる。チャック爪の下方の円盤の前方には,チャック爪にチャックされたごぼうの下端を受けるチャック爪が配設されている。
【0003】次に作用について説明する。ごぼう回転用モータを手で上方に移動させ,かつチャック爪が開いた状態でチャック爪にごぼうの上端部をチャックさせる。
そして,ごぼうの下端をごぼう受の上方に位置させる。次に,ごぼう回転用モータを保持している手を離すと,ごぼうが取付けられたワイヤ側は,バランス重りのワイヤ側よりごぼうの重量分重いので,チャック爪にチャックされたごぼうは下降して下端がごぼう受で受けられる。
【0004】この状態でごぼう回転用モータ及び円盤回転用モータを駆動させる。
ごぼう回転用モータが駆動すると,チャック爪と共にごぼうが回転する。円盤回転用モータが駆動すると,円盤に取付けられたささがき刃でごぼうがささがきされる。
ごぼうが順次ささがきされてごぼうの残部が一定長さになると,ごぼう回転用モータが停止する。そこで,ごぼう回転用モータを手で上方に移動させ,チャック爪を開いてごぼうの残部を取り除く。その後,前記した操作によって新しいごぼうをチャック爪にチャックさせる。
【0005】【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は,ごぼうの取付け及び残部の排出が手動であり,またごぼう回転用モータ及びチャック爪等を手動で上昇させる操作を行なう必要があるので,作業効率が悪く,多大の作業時間を要している。またごぼうの送りは,プーリの両側のワイヤに加わる重量の差で送られるので,ごぼうの長さが短くなると送り量も小さくなる。即ち,ごぼうの送り量が安定しないので,ささがきの品質が悪い。またごぼうが短くなるとごぼうの送りが遅くなり,ごぼうが送られないことがあるので,ごぼう回転用モータを下方に押す等の操作をする必要があった。
【0006】本発明の課題は,作業能率の向上が図れると共に,ささがきの品質の向上が図れる棒状野菜のささがき装置を提供することにある。
【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の請求項1は,ささがき刃を有して回転駆動される円盤に,該円盤と相対的に斜めに棒状野菜を供給してささがきする棒状野菜のささがき装置において,前記円盤の前記ささがき刃の前方で上方に配設され,上方より供給された棒状野菜の下方部をばねの付勢力で挟持し,棒状野菜を回転及び前記円盤の方向に送る棒状野菜供給手段と,この棒状野菜供給手段で供給された棒状野菜の下端を支持するように前記円盤の前方に配設された棒状野菜受手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1に示すように,架台1上には箱型の支持枠2が固定されており,架台1の前面部には支持枠2の前面に当接するように支持板3が固定されている。架台1上には,円盤回転用モータ4が固定されており,円盤回転用モータ4の出力軸には,回転軸5の一端が連結部材6を介して連結されている。回転軸5は,支持枠2及び支持板3に固定された軸受7に回転自在に支承されており,回転軸5の先端部には円盤8が固定されている。
【0015】図2に示すように,円盤8には,8個のささがき刃10が等間隔で放射状に配設され,ささがき刃10は,刃部10aが円盤8の回転方向Cになるように円盤8に固定されている。また円盤8には,各ささがき刃10の刃部10aに対向して2つ割り刃11が配設され,2つ割り刃11は,刃部11aがささがき刃10の刃部10aに直角になるように円盤8に固定されている。刃部10a,11aに対応した円盤8の部分には,ささがきされたごぼうを円盤8の裏面側に排出するための排出孔8aが形成されている。
【0016】円盤8の外側には,該円盤8の左半分に対応し,かつ円盤8と若干の 隙間を有するように半円状に形成された支持枠12が配設されている。支持枠12の右端部には,ささがき刃10及び2つ割り刃11が接触しないように前方に折り曲げられた支持部12aが設けられ,支持枠12の左端部にも,前方に折り曲げられた支持部12bが設けられている。支持部12a,12bには,ささがき刃10及び2つ割り刃11が接触しないように支持板13が固定されている。
【0023】次に作用について説明する。円盤回転用モータ4及びごぼう回転送り用モータ51が駆動した状態で,ごぼう60を支持板50のごぼう挿入穴50aより筒状体31のごぼう挿入孔31aを通して,ごぼう60の先端がごぼう受15,15に当接するまで挿入する。ごぼう60の挿入により,3個のプーリ41がばね44に抗して拡げられ,ごぼう60は3個のプーリ41のベルト42の部分によってばね44の付勢力で挟持された状態となる。
【0024】円盤回転用モータ4の駆動によって円盤8が矢印C方向に回転し,2つ割り刃11及びささがき刃10が回転する。これにより,2つ割り刃11の刃部11aによってごぼう60に縦溝が入れられた直後にささがき刃10の刃部10aによってささがきされる。2つ割りにささがきされたごぼうは,円盤8に形成された排出孔8aより円盤8の裏面側に排出され,図示しない製品収納箱に収納される。
【0025】ごぼう回転送り用モータ51の駆動によってギア52,減速ギア54を介して筒状体31が回転する。筒状体31にはギア支持板33が固定されているので,ギア支持板33が回転し,ギア支持板33と共にレバー40が回転する。また3個のプーリ41はばね44の付勢力でごぼう60を挟持しているので,レバー40の回転によってごぼう60が回転させられる。ごぼう60は,円盤8に対して傾斜しているので,ごぼう60は回転させられながら下端部分の外周がささがき刃10及び2つ割り刃11によってささがきされる。
【0026】またギア支持板33に固定された支軸34に回転自在に支承されたウオームホイル35は,ウオームギア30に噛合しているので,前記のようにギア支持板33が回転すると,これにより,ベルト42が回転してごぼう60の先端をご ぼう受15,15に押し付ける。即ち,ごぼう60は回転させられながら下方に送られる。
【0030】次にごぼう60が当たるささがき刃10の位置の調整について説明する。支持枠12を支持板3に開閉自在に固定している図示しないトグルクランプによる支持枠12の固定を解除し,支持枠12を左右に移動させると,支持枠12に固定された摺動部材20が支軸21に沿って移動する。これにより,支持部12a,12bと共に該支持部12a,12bに保持された部材が左右に移動するので,ごぼう60が当たるささがき刃10の位置を変えることができる。即ち,ごぼう60の中心を2つ割り刃11に合わせることができる。また2つ割りにする必要がない時は,2つ割り刃11より離れたささがき刃10にごぼう60が当たるように調整できる。また一定期間使用した後に,ごぼう60が当たる位置を調整することにより,ささがき刃10の長寿命化が図れる。
【0032】なお,上記実施の形態においては,8個のささがき刃10及び2つ割り刃11を設けたが,この個数は特に限定されるものではない。また2つ割りする必要がない場合には2つ割り刃11は設けなくてよいことは言うまでもない。また上記実施の形態においては,筒状体31にギア部31bを形成し,ごぼう回転用モータ51の回転をギア52,減速ギア54を介して筒状体31に伝達したが,ごぼう回転用モータ51の回転をベルトを介して筒状体31に伝達してもよい。またウオームホイル35を3個設け,3個のプーリ41でごぼう60を挟持する場合について説明したが,ウオームホイル35を2個又は4個設け,2個又は4個のプーリ41でごぼう60を挟持するようにしてもよい。
【図1】 【図2】 (2)ア 上記(1)によると,甲1には,前記第2の4(1)の甲1発明が記載されていると認められる。
イ これに対し,原告は,甲1の「2つ割り刃11」は,「ささがき刃10」が「ごぼう60」の外周をささがきする前に, 「ごぼう60」に「縦溝を入れる」ためのものであるところ,「2つ割り」という用語は,「全体を二つに分けること。また,そのもの」という意味であり,「縦溝を入れる」ことには,「2つ割りする」という意味は含まれていないから,「2つ割り刃11」は,「ごぼう60」を2つ割りにするものではないと主張する。
甲1の明細書の段落【0015】及び【図2】並びに【0024】及び【0025】によると,甲1の円盤8上には,ささがき刃10と2つ割り刃11が,2つ割り刃11の刃部11aが,ささがき刃10の刃部10aの進行方向前方位置に刃部10aに直角となるように固定されており,ささがき装置円盤8が回転すると,ささがき刃10及び2つ割り刃11も回転方向に進行し,ごぼう60の下端部分は,進行方向前方に配置された2つ割り刃11によって縦溝が入れられ,進行してきたささがき刃10によって外周の表面からささがきされ,その結果,2つ割りにされ たささがきごぼうが成形されることが認められる。
そして,甲1の段落【0030】に, 「ごぼう60の中心を2つ割り刃11に合わせることができる。また2つ割りにする必要がない時は,2つ割り刃11より離れたささがき刃10にごぼう60が当たるように調整できる。」と記載され,段落【0032】には, 「2つ割りする必要がない場合には2つ割り刃11は設けなくてよいことは言うまでもない」と記載されていることからすると,甲1発明において, 「2つ割り刃11」は,ささがきされたごぼうに「2つ割り」という効果を生じさせるためにごぼう60の外周に縦溝を入れるものであり, 「ささがき刃10」と共働することにより,結果として2つ割りになったささがきごぼうを生成するものであることが認められる。
そうすると,甲1発明の「2つ割り刃」は, 「ごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11」ということができ,本件審決の甲1発明の認定に誤りがあると認めることはできない。
(3) よって,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(甲1発明との一致点,相違点の認定の誤り)について (1) 前記1及び2によると,本願発明と甲1発明の一致点及び相違点は,前記第2の4(2)イのとおり認められる。
(2) これに対し,原告は,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,本願発明の切断手段によって切断される「根菜類の切削対象部位」に相当しないと主張する。
ア 本願の請求項1は, 「前記切削切断部は,この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段,及び根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための切断手段の根菜類切削切断装置」としており,「切削手段」は,「根菜類の表面から切削対象部位を削り出す」ものであり,「切断手段」は,「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するためのもの」である。このような請求項1の文言によると, 「切削対象部位」は,切削手段により根菜類の表面から削り出されるものであるとともに,切断手段により二片,又は多片の形状に切断される ものであることは理解できるが, 「切断手段」が,切削手段によって切り出された後の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断することまでが記載されているということはできない。
また,上記請求項1の記載によると,本願発明の「切断手段」は, 「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するためのもの」であるから,先に根菜類の表面から切削対象部位を削り出し,その後,その切削対象部位を切断するものはもとより,先に根菜類の切削対象部位に縦溝を入れ,その後, 「切削手段」によって,根菜類の表面から切削対象部位が削り出され,根菜類の切削対象部位が二片,又は多片の形状に切断される状態になるものについても,請求項1の文言上, 「根菜類の切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するためのもの」ということができる。
原告は,本願発明において,根菜類から「切削手段」によって削り出す前の「根菜類の切削対象部位」に対しては,縦溝を入れることは可能であっても,物を断ち切ること,切り離すことを意味する「切断」を行うことはできないと主張するが,原告の上記主張は,上記で判断したとおり採用することはできない。
イ また,本願明細書を見ると,段落【0048】には,実施例1として,切削手段1Aで切削切断片KSを形成し,切削手段1Aで切削切断片KSを形成する直前に,その部分を切断手段1aで切削切断片KS1,KS2,KS3となるように切断するが,工程的には切削と切断が順次,又は略同時に行われることが示されているものの,切断工程の切断手段1aが先で,切断線を備えた人参に,切削工程の切削手段1Aが切断すると他の例もあり得ることも示されており,さらに,段落【0052】は,実施例1の根菜類切削切断装置Nにおいて,切削片KS(切削対象部位)が切断手段1aで完全でない切断がされた後に 「根菜類の表面から分離 (していない状態で」を意味すると解される。 切削手段1Aで切削されて切削切断片 )KS1,KS2,KS3となることが記載されているから,本願発明においては,「切削対象部位」である切削片KSは, 「切削手段」による切削の後に又は略同時に「切断手段」により切断される態様のみならず,根菜類から切断手段により完全で ない切断がされた後に切削手段により切り取られる態様のものも含まれているといえる。
ウ そうすると,本願発明において,「切削手段」による切削と「切断部分」による切断の前後関係は特定されておらず,前後関係がいずれであっても本願発明に含まれるということができる。
なお,原告は,本願明細書の【図16】の(a)(b)(d)は,先に切削部分 , ,から切削され,その後切断部分により切断される態様を示していることを指摘するが,本願明細書の段落【0047】によると, 【図16】の(a)(b)(d)は一 , ,実施例を示したものにすぎないと認められるから,上記判断を左右するものではない。
エ 以上によると,本願発明の「根菜類の切削対象部位」は,先に根菜類の表面から切削手段によって削り出された後のものに限定されるものではなく,先に切断手段によって切断された後に,切削手段によって根菜類の表面から切削されるものも含まれているといえるから,切断部分が切断するのは,根菜類の表面(外周)である場合も含まれることになる。
したがって,甲1発明の「ごぼう60の外周」は,本願発明の切断手段によって切断される「根菜類の切削対象部位」に相当しないとの原告の主張を採用することはできない。
(3) 原告は,甲1発明の「2つ割り刃11」は,本願発明の「切削手段」によって根菜類の表面から削り出された「切削対象部位を二片,又は多片の形状に切断するための」「切断手段」に相当しない旨主張する。
まず,本願発明は,先に根菜類の表面から切削手段によって切削対象部位を削り出し,その後,その切削対象部位を切断手段によって二片又は多片に切断するものに限られることはなく,先に切削対象部位を切断手段によって完全でない切断がされ,その後,根菜類の表面から切削手段によって切削対象部位を削り出すものも含まれることは,前記(2)のとおりである。
また,甲1発明において, 「2つ割り刃11」 ごぼう60の外周に縦溝を入れ, は,その後, 「ささがき刃10」がごぼうの外周の表面をささがきし,その結果,2つ割りになるささがきを生成するものであることは,前記2のとおりである。
そうすると,甲1発明の「2つ割り刃11」は,本願発明における「切断手段」に相当すると認められるから,この点に相違点があるとは認められない。
したがって,原告の上記主張を採用することができない。
(4) よって,本件審決の一致点,相違点の認定に誤りがあるとは認められず,原告が主張する[相違点3]を認めることはできないから,取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(容易想到性の認定判断の誤り)について (1) 上記3のとおり,原告の主張する[相違点3]は存在しないから,相違点3が存在することを理由とする原告の主張は理由がない。
(2) なお,原告は,本願発明は,(@)切削手段による切削の工程と,(@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うことが可能な「切削切断部」を備えることにより,根菜類の旨みを醸成させるという効果を奏することができる旨主張する。
しかし,本願発明が(@)切削手段による切削の工程と, (@@)切断手段による切断の工程とをその順に行うものに限られるものではないことは,前記3のとおりである。
また,本願明細書の段落【0047】には,人間が刻むささがきsh形状は, 「裏面は略平坦で,表面は,小山から,裾野に向かって,緩やかな傾斜となり,全体視して,小高い山形形状と考えられる。この小山が,歯応えと,根菜類の旨みを醸成すると考えられる。」とされ,この「山」を形成するために,実施例1として,「切削手段で, ・・・切削片KSを切削し,この切削片KSの長手方向に切断手段で二つに切離す(2条の切断線SSを形成する) という工程が記載されているが, 【0 」 段落048】には, 「切断工程の切断手段1aが先で,切断線を備えた人参に,切削工程 の切削手段1Aが担当する他の例もあり得る」と記載されており,また,段落【0052】には,実施例1の根菜類切断装置Nにおいて,切削片KS(切削対象部位)が切断手段1aで完全でない切断がされた後に切削手段1Aで切削されて切削切断片KS1,KS2,KS3となることが記載されているから,本願発明の目的である「人間が包丁で刻むささがき(ささがき形状)」に近づけ,歯ごたえと根菜類の旨みを醸成することは,原告が主張する順序によらなければならないとは認められず,(@@)切断手段による切断の工程と, (@)切削手段による切削の工程とをその順に行う場合も含むと認められる。
したがって,本願発明が甲1発明と比べて顕著な効果を有すると認めることはできない。
(3) 上記(1),(2)によると,取消事由3は理由がない。
5 以上の次第で,原告の請求には理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 眞鍋美穂子
裁判官 熊谷大輔