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関連審決 無効2018-800032
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事件 平成 31年 (行ケ) 10047号 審決取消請求事件

原告 河村電器産業株式会社
訴訟代理人弁護士 松山智恵 濱田慧
訴訟代理人弁理士 鎌田徹 津田拓真
被告 テンパール工業株式会社
訴訟代理人弁護士 白木裕一
訴訟代理人弁理士 藤本昇 中谷寛昭 北田明
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/07/22
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2018-800032事件について平成31年2月26日 にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成14年3月29日,発明の名称を「回路遮断器の取付構造」 1 とする発明について,特許出願(以下「本件出願」という。)をし,平成2 1年1月23日,特許権の設定登録(特許第4249427号。請求項の数 2。以下,この特許を「本件特許」という。)を受けた。
(2) 原告は,平成30年3月19日,本件特許について特許無効審判(無効2 018-800032号事件)を請求した(甲16)。
被告は,平成30年6年8日付けで,本件出願の願書に添付した特許請求 の範囲の請求項2を訂正し,請求項1を削除し,明細書を訂正する旨の訂正 請求(以下「本件訂正」という。甲18)をした。
その後,特許庁は,平成31年2月26日,本件訂正を認めた上で,「特 許第4249427号の請求項2に係る特許についての本件審判の請求は, 成り立たない。特許第4249427号の請求項1に係る特許についての本 件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし, その謄本は,同年3月7日,原告に送達された。
? 原告は,平成31年4月5日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2の記載は,次のとおりである(以下, 訂正後の請求項2に係る発明を「本件訂正発明」という。下線部は本件訂正に よる訂正箇所である。甲18)。
【特許請求の範囲】 【請求項2】 取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子 を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に 母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に 装着される回路遮断器の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板 には係合部を設けるとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌 2 合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器の取付構造において, 前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え, 該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と回路遮断器の取付構造。
3 本件審決の理由の要旨? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。
その要旨は,本件訂正は適法であるとした上で,@本件訂正発明は,本件 出願前に頒布された刊行物である甲1(特開平10-248122号公報) に記載された発明及び甲2(実公平6-44246号公報)に記載された発 明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないか ら,原告主張の無効理由2(請求項2に係る発明についての進歩性欠如)は 理由がない,A原告主張の無効理由1(甲1及び2に基づく請求項1に係る 発明についての進歩性欠如)及び無効理由3(請求項1に係る発明について の明確性要件違反)による本件審判の請求は,請求項1を削除する本件訂正 により審判の対象が存在しないものとなったから,却下すべきものであると 3 いうものである。
? 本件審決が認定した甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。), 本件訂正発明と甲1発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 甲1発明 「箱体1の底面上に装着されたベース14上に装着される主幹開閉器1 5に接続された導電バー3とねじ無しで接続を行うための接続端子16を 電源側に設けたプラグインタイプの分岐開閉器4であって,接続端子16 に導電バー3が差し込まれるように負荷側から導電バー3の方向にスライ ドさせてベース2に装着される分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5 の,取り付け部材5の側片5bの下面と鉛直な方向の動きを規制すべく, ベース2には長孔22を設けるとともに,分岐開閉器4を取り付けた取り 付け部材5には長孔22と前記スライド方向で嵌合する係止爪23を設け, しかも,分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の負荷側には取り付け 部材5の側片5bの下面から突出する・しないを択一的に選択可能な板ば ね25を設けるとともに,ベース2には分岐開閉器4を取り付けた取り付 け部材5の板ばね25が突出した際に分岐開閉器4を取り付けた取り付け 部材5がベース2の端部側に移動することを規制する係止孔24をベース 2の端部近傍に有するベース2と分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材 5の取付構造において, 前記板ばね25は,前記突出した状態で分岐開閉器4を取り付けた取り 付け部材5の側片5bの下面から突出し,前記突出しない状態で分岐開閉 器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出しないように 構成された先端部25aと,前記分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材 5の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え, 該板ばね25は,前記先端部25aが分岐開閉器4を取り付けた取り付 け部材5の側片5bの下面から突出した状態で保持されるように構成され 4 ているベース2と分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の取付構造。」イ 甲2発明 「電源架台6と,これに差込まれたときプラグイン式コネクタによる負荷回路などに接続され,操作用取手1を用いて架台に対して引出し又は差込みを行う電源ユニット2を備えた架台搭載引出し型電源装置において, 操作用取手11と,上下方向にスライド可能な係止アーム12と,係止アーム12の半固定ばね体15を設け, 操作用取手11を水平に位置させると,係止アーム12が電源架台6の係止溝5内から引抜かれ,引留め解除位置となり,電源ユニット2を電源架台6から引出すことができ, 電源ユニット2を電源架台6に差し込んだのち,操作用取手11を垂直に位置させる操作で,係止アーム12が下方に移動し係止溝5内に入り,引留め位置となり,電源ユニット2を電源架台6に引留めることができ, 係止アームの半固定用ばね体15により係止アーム12の引留め位置,および引留め解除位置が保持されるようにした引留め構造。」ウ 本件訂正発明と甲1発明の一致点及び相違点(一致点) 「母線とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器を含んだ部材の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設けるとともに,回路遮断器を含んだ部材には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合部を設け,しかも,回路遮断器を含んだ部材の負荷側には取付面から突出する・しないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮断器を含んだ部材のレバーが突出した際に回路遮断器を含んだ部材が取付用板の端部側に移動する 5 ことを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器を含んだ部材の取付構造において, 前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出しないように構成された突出部と,前記回路遮断器を含んだ部材の挿入方向に対して傾斜する傾斜面と,を備え, 該レバーは,前記突出部が回路遮断器を含んだ部材の取付面から突出した状態で保持されるように構成されている取付用板と回路遮断器を含んだ部材の取付構造。」である点。
(相違点1) 母線に関して, 本件訂正発明においては,「取付用板側に設けられ」ているとの構成を備えているのに対して, 甲1発明においては,かかる構成を備えているか否か明確でないものの,「箱体1の底面上に装着されたベース14上に装着される主幹開閉器15に接続され」ている点。
(相違点2) 「回路遮断器を含んだ部材」に関して, 本件訂正発明においては,「回路遮断器」であるのに対して, 甲1発明においては,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」である点。
(相違点3) 回路遮断器の取付面と鉛直な方向の動きを規制するための「被係合部」に関して, 本件訂正発明においては,「回路遮断器」に設けているのに対して, 甲1発明においては,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」に 6 設けている点。
(相違点4) 回路遮断器が取付用板の端部側に移動することを規制するための「レバー」に関して, 本件訂正発明においては,レバーは, その設ける対象及び場所は,「回路遮断器の負荷側側面」で, その突出については,「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成された突出部」を備えており, 「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」のに対して, 甲1発明においては,板ばね25(「レバー」に相当。)は, その設ける対象及び場所は,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の負荷側」で, その突出については,「前記突出した状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出し,前記突出しない状態で分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5の側片5bの下面から突出しないように構成された先端部25a」を備えており, 本件訂正発明のように,「取付面から突出しない状態で保持される」ようにはなっておらず,「突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせる」こと,及び,そのとき 7 に「前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引 っ込む」ことについては,不明な点。
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 相違点2の認定及び判断の誤り 本件審決は,本件訂正発明と甲1発明は,甲1発明の「分岐開閉器4を取 り付けた取り付け部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当すると はいえない点(相違点2)において相違すると認定し,また,甲1発明にお いて,分岐開閉器4をベース2に取付ける際に,取り付け部材5を介在させ ないようにすることについては,動機付けはないから,相違点2に係る本件 訂正発明の構成は,当業者が容易に想到し得たこととはいえない旨判断した。
ア(ア) しかしながら,本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)には, 本件訂正発明の「回路遮断器」をロックレバーや被嵌合部をその筐体に 一体不可分に設けた構成の回路遮断器に限定する記載はなく,甲1発明 のように「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」として構成され た回路遮断器を本件訂正発明の「回路遮断器」から除外する記載はない。
また,一般に,回路遮断器は,取付板に取り付けられた状態で用いら れるものであるから,回路を遮断する機能だけでなく,取付板に取り付 けられる機能,構造をも当然に有する必要がある。そして,甲1の【0 014】の「分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で取り付 け部材5と一緒に分岐開閉器4が次のように装着される。」との記載及 び図面(第1図)によれば,「分岐開閉器4」及び「取り付け部材5」 は,予め一体とされた後,一体となった状態のまま,ベース2に取り付 けられるものであり,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け 部材5」は,「回路遮断器の取り付け構造」における「回路遮断器」と して用いられるものであるから,本件訂正発明の「回路遮断器」とその 8 機能及び用途において何ら相違するものではない。
したがって,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」 は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するから,本件審決における 相違点2の認定は誤りである。
(イ) この点に関し被告は,甲1には分岐開閉器が同じ構成で取り付け部 材の高さが違う実施形態が記載されており,取り付け部材は,分岐開閉 器をベースに取り付けるためのスペーサとして機能するから,分岐開閉 器の一部を構成するものではない旨主張する。
しかしながら,甲1には,分岐開閉器の一定の寸法に限定することを 示す記載や導電バーを分岐開閉器の寸法に合わせた位置に配置すること ができないことを示す記載はなく,取り付け部材が,所定形状の分岐開 閉器を導電バーの異なる高さに合わせるためのスペーサとして機能する ことを示す記載はない。また,発明を構成するある部材について,当該 発明の実施例として異なる形状や寸法のものが記載されていたとしても, そのことから直ちに当該部材が「スペーサ」として機能すると解される ものではない。
したがって,被告の上記主張は失当である。
イ 仮に本件審決における相違点2の認定に誤りがないとしても,甲1発明 における分岐開閉器4と取り付け部材5とを一体とするか否かは設計事項 にすぎない。そして,作業省略,コスト低減等の観点から,むしろ分岐開 閉器4と取り付け部材5とを一体にしようとするのが自然であることから すると,甲1発明において,分岐開閉器4と取り付け部材5を一体不可分 の構造とし,相違点1に係る本件訂正発明の「回路遮断器」の構成とする ことは当業者が容易に想到することができたものである。
したがって,本件審決における相違点2の判断は誤りである。
(2) 相違点3の認定及び判断の誤り 9 本件審決は,本件訂正発明と甲1発明は,甲1発明の「取り付け部材5に 設けられた係止爪23」を,本件訂正発明の「回路遮断器に設けられた嵌合 部または被嵌合部」ということはできない点(相違点3)において相違する と認定し,また,甲1発明において,分岐開閉器4をベース2に取付ける際 に,取り付け部材5を介在させないようにし,取り付け部材5に設けられた 係止爪23を,分岐開閉器4に設ける動機付けもないから,相違点2に係る 本件訂正発明の構成は,当業者が容易に想到し得たとはいえない旨判断した。
しかしながら,前記(1)アで述べたように,甲1発明の「分岐開閉器4を取 り付けた取り付け部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するも のであり,取り付け部材5は回路遮断機の一部であることに照らすと,嵌合 部及び被嵌合部のうちの一方が,本件訂正発明において「回路遮断器に設け られている」ことと,甲1発明において「取り付け部材5に設けられている」 こととは,構成において相違しない。
したがって,本件審決における相違点3の認定は誤りである。また,仮に 甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は,本件訂正発明 の「回路遮断器」に相当するものではないとしても,前記(1)イで述べたよう に,甲1発明において,分岐開閉器4と取り付け部材5を一体不可分の構造 とし,本件訂正発明の「回路遮断器」の構成とすることは当業者が容易に想 到することができたものであるから,本件審決における相違点2の判断も誤 りである。
(3) 相違点4の認定の誤り ア 前記(1)アで述べたように,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り 付け部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当することに照らす と,本件審決認定の相違点4のうち,本件訂正発明におけるレバーの設け る対象及び場所が「回路遮断器の負荷側側面」である点,本件訂正発明に おけるレバーは,「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し, 10 前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成され た突出部」を備えている点に係る相違点は実質的な相違点に当たらない。
イ 次に,甲1の記載(【0014】,図7等)から,甲1発明における板 ばね25の先端部25a(突出部) 操作片25bが操作されない限り, は, 取付面から突出した状態において保持されるものであること,板ばね25 の先端部25a(突出部) 取付面から突出して保持された状態のまま, は, 「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」を母線の方向にスライドさ せていくと,板ばね25がベース2(取付用板)に当接し,このとき,板 ばね25のうちベース2に当接する部分には,「分岐開閉器4を取り付け た取り付け部材5」の挿入方向に対して傾斜する傾斜面が形成され,板ば ね25がベース2に当接した後は,板ばね25が弾性変形することにより, 「前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ 込む」ことが理解できることからすると,本件審決認定の相違点4のうち, 本件訂正発明では「前記突出部が突出して保持された状態で,前記プラグ イン端子に前記母線が差し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板 に対して負荷側から母線の方向にスライドさせる」点,本件訂正発明にお けるレバーは,回路遮断器を上記のようにスライドさせると,「前記傾斜 面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように 構成されている」点に係る相違点は,実質的な相違点に当たらない。
ウ そうすると,本件審決認定の相違点4のうち,実質的な相違点といえる のは,本件訂正発明におけるレバーは,「前記突出部が回路遮断器の取付 面から突出しない状態で保持されるように構成され」るのに対し,甲1発 明における板ばね25(「レバー」に相当。)は,「取付面から突出しな い状態で保持される」ようにはなっていない点のみであり(以下,この相 違点を「相違点4’」という場合がある。),それ以外の相違点の認定は 誤りである。
11 (4) 相違点4の容易想到性の判断の誤り 本件審決は,@甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」 は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するとはいえず,また,甲1発明 において,分岐開閉器4をベース2に取付ける際に,取り付け部材5を介在 させないようにすることについては,動機付けはなく,仮に甲1発明に甲2 発明を適用しても,甲1発明の板ばね25が設けられた「取り付け部材5」 に甲2発明の係止アーム12を適用することとなるから,「回路遮断器の負 荷側側面に」に設けられたレバーの構成(相違点4に係る本件訂正発明の構 成)とはならない,A?甲1発明の板ばね25を甲2発明の係止アーム12 に置換することに関し,甲1の記載を参酌すれば,甲1発明は,作業者が片 手で持ち上げられる程度の大きさ及び重量の分岐開閉器を分電盤に取り付け るための構造に関する技術であるのに対し,甲2の記載を参酌すれば,甲2 発明は,振動による電源ユニットの電源架台からの抜け出し防止,及び係止 アームの抜け出し防止を課題とした,架台搭載引出し型電源装置の架台への 引留め構造に関する技術であり,甲1発明と甲2発明とは,取り付け対象物, その大きさ及び重量も異なり,両者の属する技術分野が同じであるとはいえ ないこと,?甲1発明の「板ばね25」と甲2発明の「係止アーム12」と は,形状及び操作の形態が大きく異なり,単純に,甲1発明の「板ばね25」 を甲2発明の「係止アーム12」の構造に置換できるものではないこと,? 仮に甲1発明の板ばね25が取り付け部材5の側片5bの下面から突出する, しないを操作片25bで択一的に選択保持可能にしたとすると,「分岐開閉 器4を取り付けた取り付け部材5」をスライドさせた際に,スライドさせた だけで板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が 動かないように止められるという作用を奏さなくなるから,甲1発明の「板 ばね25」に甲2発明の「係止アーム12」を引留め位置及び引留め解除位 置に保持することを適用して,「突出する,しないを外部つまみで択一的に 12 選択保持可能」とすることについては阻害要因があることからすると,甲1発明の「板ばね25」を甲2発明の「係止アーム12」に置換することについての動機付けはないとして,相違点4に係る本件訂正発明の構成は,当業者が容易に想到しえたこととはいえない旨判断した。
しかしながら,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。
ア @について 前記(1)アで述べたように,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り 付け部材5」が,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するから,甲1発 明の板ばね25が設けられた「取り付け部材5」に甲2発明の係止アーム 12を適用して得られる構成は,「回路遮断器」(回路遮断器の負荷側側 面)に設けられたレバーの構成(相違点4に係る本件訂正発明の構成)と みなすことができる。また,仮に甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた 取り付け部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するものでは ないとしても,前記(1)イで述べたように,甲1発明において,分岐開閉器 4と取り付け部材5を一体不可分の構造とし,本件訂正発明の「回路遮断 器」の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものである。
これに反する本件審決の判断は誤りである。
イ Aについて (ア) 一般に,対象部材の移動を規制するための規制部材のスライドをロ ックするための機構において,ロックされた状態と,ロックが解除され た状態のそれぞれを択一的に選択保持可能とすること自体は,極めて単 純な機構であり,様々な技術分野で採用されている周知技術である。例 えば,対象部材としてのドアに設けられる規制部材としてのスライドロ ック(甲24)や,デスクトップパソコンにおいて対象部材としてのメ モリを取付用スロットに差し込んだ後の移動を規制する規制部材として のロック機構(甲25)等がある。
13 そして,甲2には,機器の底面から突出することによって機器のスラ イドを防止するための部材を,突出する状態と突出しない状態のそれぞ れにおいて択一的に選択「保持」可能な構成とするという技術事項及び その具体的構成(操作用取手11の操作により,係止アーム12を突出 する状態と突出しない状態を選択「保持」可能とする構成。第4図,第 5図参照)が記載されている。このように甲2には,上記周知技術を採 用した例が開示されている。
(イ)a 甲1発明及び甲2発明は,いずれも,プラグコネクタに接続され た機器のスライドを防止する機構という共通の技術分野に属する発明 である。
甲1発明及び甲2発明は,電源装置等において,プラグコネクタの 接続が外れてしまう方向に電子機器がスライドすることを防止すると いう共通の課題,機器の底面から部材を突出させることで,プラグコ ネクタの接続が外れてしまう方向への電子機器の移動を規制するとい う共通の作用・機能を有している。
また,甲1発明及び甲2発明が属する技術分野においては,取り付 け対象が架台であるか盤であるかの峻別はされておらず,取り付け対 象の大きさや重量も個別製品の事情によるものであり,甲1及び甲2 にも,甲1発明及び甲2発明が適用される製品の大きさや重量を特定 する記載はない。そして,甲1発明における板ばねの役割及び甲2発 明に係止アームの役割は,いずれも機器のスライドを防止するという ものであり,機器の大きさや重量によって何ら変わるものではない。
したがって,甲1発明と甲2発明とは,取り付け対象物,その大き さ及び重量も異なり,両者の属する技術分野が同じであるとはいえな いとした本件審決の判断は誤りである。
b 甲1に接した当業者においては,甲1発明は,分岐開閉器がプラグ 14 コネクタの接続が解除される方向にスライドしてしまうことを板ばね を底面から突出させることによって防止する構成(板ばねでロックす る構成)であり,プラグコネクタの接続を解除する方向に分岐開閉器 をスライドさせる際においては,板ばねの先端部25aが底面から突 出していない状態になるように(板ばねのロックが外れる状態になる ように),板バネの操作片25bを手で持ち上げた状態に維持する必 要があり,かかる状態のまま,プラグコネクタの接続を解除するほど の力をかけながら分岐開閉器をスライドさせる必要があること,この ように板ばねによるロックを外した状態のまま保持することができな いため,甲1発明には分岐開閉器の取り外しが困難であるという課題 があることが理解できる。
他方で,甲2には,「また一方の手で係止アーム(3b)を持ち上 げたのち,他方の手により操作用取手(1)を操作して電源ユニット (2)を引き出さなければならない手段に比べて操作が簡単になる。」 (3頁左欄19行〜22行)との記載がある。この記載から,当業者 は,甲2発明においては引留め構造,すなわち係止アームを電源ユニ ットの底面から突出しない状態(ロックを外した状態)や底面から突 出した状態(ロックをした状態)に選択「保持」可能な構造を有して いることにより,そのような構造を有さない従来の構造に比べて,電 源ユニットの引き出しが容易になることを理解できる。
c 以上によれば,甲1及び2に接した当業者においては,甲1発明及 び甲2発明は技術分野,課題及び作用・機能において共通すること, 甲1発明においては,プラグコネクタの接続を解除する方向に分岐開 閉器をスライドさせる際においては,板ばねの先端部25aが底面か ら突出しない状態に維持(ロックを外した状態に維持)させなければ ならないという課題があることを認識するといえるから,甲1発明に 15 おいて,この課題を解決し,分岐開閉器の取り外しを容易にするため に,甲1発明の板ばねに係る構成部分に甲2発明の係止アーム及び操 作用取手(ロックを外した状態を維持できる構造)を適用することを 試みる動機付けがあるといえる。
d この点に関し本件審決は,甲1発明の「板ばね25」に甲2発明の 「係止アーム12」を引留め位置及び引留め解除位置に保持すること を適用して,「突出する,しないを外部つまみで択一的に選択保持可 能」とすると,甲1発明における「分岐開閉器4を取り付けた取り付 け部材5」をスライドさせた際に,スライドさせただけで板ばね25 の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないよ うに止められるという作用を奏さなくなるから,上記適用には阻害要 因がある旨判断した。
しかしながら,そもそも,甲1には,「分岐開閉器4を取り付けた 取り付け部材5」をスライドさせた際に,「スライドさせただけで板 ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動 かないように止められるという作用」を奏することの記載は一切ない こと,甲1発明に甲2発明を適用した場合,スライドをさせた上で, ロックをかけるというだけのことであり,分岐開閉器を取り付ける際 に特段の問題が生じないこと,分岐開閉器を取り外すためにスライド させる際には,板ばね25が底面から突出していない状態を手で維持 する必要がなくなるという,新たな作用が得られることとなるため, 分岐開閉器の取り付け及び取り外しの操作が明らかに容易になること に照らすと,上記適用に阻害要因があるといえないから,本件審決の 上記判断は失当である。
(ウ) 甲1発明に甲2発明を適用するに当たっては,甲2に記載された機 器の底面から突出することによって機器のスライドを防止するための部 16 材を,突出する状態と突出しない状態のそれぞれにおいて択一的に選択「保持」可能な構成とするという技術的思想を甲1発明に適用すれば足りる。
そして,係止アーム等の形状や構成を機器に合わせて適宜変更することは,当業者であれば当然に行う設計的な事項であり,何ら困難性を伴うものではなく,具体的な方法としては種々の方法が考えられる。
例えば,甲2発明の係止アームや操作用取手をその具体的な構成を維持したまま,甲1発明の板ばねと置き換えた構成として,別紙原告主張図面記載の図1及び図2に示した構成が考えられる。図1は,係止アーム12が機器の底面から突出しない状態(ロック解除状態)を示し,図2は,係止アーム12が機器の底面から突出した状態(ロック状態)を示している。
次に,甲1発明の板ばねの形状を概ね維持したまま,甲2発明における選択「保持」可能という技術事項(技術的思想)を甲1発明に適用した構成として,別紙原告主張図面記載の図3及び図4のように,分岐開閉器に突起Aを,分岐開閉器の板ばねに突起Bを設け,板ばねが取付板に対して非係合状態である場合に,分岐開閉器及び板ばねに設けた突起が互いにかみ合う構成とすることが考えられる。図3の状態から,板ばねを持ち上げて図4の状態にすると,突起Aが突起Bに係合することにより,板ばねが持ち上げられた状態,すなわち,底面から突出しない状態に「保持」されることとなる。また,別紙原告主張図面記載の図5のように,突起C及びDを取り付け部材の両側面に配置して,板ばねが突起C及びDに接することで取付板から突出した状態と持ち上げられた状態とを保持できるようにすることも考えられる。この例では,板ばねを持ち上げると,板ばねは突起C及びDに接することで,取付板から突出しない状態とが保持され,逆に,板ばねを押し下げると,取付板から突 17 出した状態が保持される。
このように甲2に記載された選択保持可能という技術的思想を甲1発 明に適用することは可能であり,かつ,その適用において特段の技術的 困難はない。
(エ) 以上によれば,甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において, プラグコネクタの接続を解除する方向に分岐開閉器をスライドさせる際 に,板ばねの先端部25aが底面から突出しない状態に維持(ロックを 外した状態に維持)させなければならないという課題があることを認識 し,この課題を解決し,分岐開閉器の取り外しを容易にするために,甲 1発明の板ばねに係る構成部分に甲2発明の係止アーム及び操作用取手 (ロックを外した状態を維持できる構造)を適用し,相違点4’に係る 本件訂正発明の構成(本件訂正発明におけるレバーは,「前記突出部が 回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され」 る構成)とすることを容易に想到することができたものである。
これに反する本件審決の判断は誤りである。
? 小括 以上によれば,本件訂正発明は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業 者が容易に発明をすることができたものであるから,これを否定した本件審 決の判断は誤りである。
2 被告の主張 (1) 相違点2の認定及び判断の誤りの主張に対し ア 本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項2)には,「プラグイン端子に 母線が差し込まれるように負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用 板に装着される回路遮断器回路遮断器」,「回路遮断器には係合部と前記 スライド方向で嵌合する被係合部を設け」,「取付用板と回路遮断器の取 付構造」と記載され,本件訂正後の明細書(以下,図面を含めて「本件訂 18 正明細書」という。甲15,18)には,本件訂正発明の実施形態として, 被係合部やレバーを含む1つの部材として回路遮断器が構成されている実 施形態のみが記載されている。これらの記載から,本件訂正発明は,回路 遮断器を取付板に直接取り付けることを前提にした発明であるといえる。
一方,甲1の記載(請求項1,【0003】,図6,7,14,15) によれば,@甲1発明は,取り付け部材を介在させて分岐開閉器をベース に取り付ける場合に生じる問題(【0003】)を課題とし,取り付け部 材を介在させて分岐開閉器をベースに取り付けることを前提にした発明で あること,A甲1には分岐開閉器が同じ構成で取り付け部材の高さが違う 実施形態が記載されており(第1実施形態(図6,7),第2実施形態(図 14,15)),取り付け部材は,分岐開閉器をベースに取り付けるため のスペーサとして機能する別部材であることからすれば,取り付け部材は, 回路遮断器の一部を構成するものではない。また,甲1発明の分岐開閉器 及び分電盤のそれぞれは,甲5及び6の電灯分電盤用協約形配線用遮断器 及び甲4の電灯分電盤に酷似した構成であって,取り付け部材は甲7の分 岐取付台(協約形ブレーカ用)と同じ役割を果たすものであるところ,甲 1発明において,分岐開閉器は協約形ブレーカであり,取り付け部材はそ れに用いられる分岐取付台であるから,「分岐開閉器4を取り付けた取り 付け部材5」を本件訂正発明の回路遮断器とみなすことはできない。
したがって,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」 は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するものといえないから,本件 審決における相違点1の認定に原告主張の誤りはない。
イ また,甲1には,取り付け部材をなくしたり,分岐開閉器に組み込んだ りして,分岐開閉器を直接ベースに取り付ける構成とすることについての 開示も示唆もないから,甲1発明において相違点2に係る本件訂正発明の 構成とする動機付けはない。
19 したがって,本件審決における相違点2の判断に誤りはない。
(2) 相違点3の認定及び判断の誤りの主張に対し 前記1(1)アのとおり,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部 材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するものといえないし,ま た,甲1発明において相違点3に係る本件訂正発明の構成とする動機付けは ないから,本件審決における相違点3の認定及び判断に誤りはない。
(3) 相違点4の認定の誤りの主張に対し ア 前記1(1)アのとおり,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け 部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するものといえないか ら,本件審決認定の相違点4のうち,本件訂正発明におけるレバーの設け る対象及び場所が「回路遮断器の負荷側側面」である点,本件訂正発明に おけるレバーは,「前記突出した状態で回路遮断器の取付面から突出し, 前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しないように構成され た突出部」を備えている点に係る相違点は,実質的な相違点であるから, これに反する原告の主張は失当である。
イ 本件訂正発明では,「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない 状態で保持されるように構成され」と特定され,これを受けて「前記突出 しない状態に引っ込むように構成されている」と特定しており,本件訂正 発明では,レバーは,取付用板上で回路遮断器をスライドさせて傾斜面が 取付用板の端部に当接して引っ込んで,突出しない状態で保持されるよう に構成されているのに対し,甲1発明では,板ばねは突出しない状態で保 持されないものであるから,板ばねの先端部が取り付け部材から突出した 状態でベースに対してスライドさせるとしても,突出しない状態とはなる が,その状態を保持する構成ではない。
したがって,本件審決認定の相違点4のうち,本件訂正発明では「前記 突出部が突出して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差 20 し込まれるように前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線 の方向にスライドさせる」点,本件訂正発明におけるレバーは,回路遮断 器を上記のようにスライドさせると,「前記傾斜面が前記取付用板の端部 に当接し,前記突出しない状態に引っ込むように構成されている」点に係 る相違点は,実質的な相違点であるから,これに反する原告の主張は失当 である。
ウ 以上によれば,本件審決における相違点4の認定に誤りはない。
(4) 相違点4の容易想到性の判断の誤りの主張に対し ア 前記1(1)アのとおり,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け 部材5」は,本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するものといえないか ら,甲1発明に甲2発明を適用しても,甲1発明の板ばね25が設けられ た「取り付け部材5」に甲2発明の係止アーム12を適用することとなる から,「回路遮断器の負荷側側面に」に設けられたレバーの構成(相違点 4に係る本件訂正発明の構成)とはならないとした本件審決の判断に誤り はない。
イ(ア) 原告は,甲2には,機器の底面から突出することによって機器のス ライドを防止するための部材を,突出する状態と突出しない状態のそれ ぞれにおいて択一的に選択「保持」可能な構成とするという技術事項が 記載されている旨主張する。
しかしながら,甲2発明は,係止アームの上下の保持用切欠部に,半 固定用ばね体の保持用折曲部が係止することで係止アームが引留め位置, 引留め解除位置で保持されるが,係止アームの上下動は,係止アームに リンク機構を介して連結された操作用取手に連動する構成となっており, 少なくとも係止アームと半固定用ばね体とリンク機構と操作用取手が揃 ってはじめて係止アームが係止溝に入るように下方に動いて保持された り,係止溝から出るように上方に動いて保持されたりする動き(作用) 21 を奏するものであることに照らすと,原告主張の甲2記載の技術的事項 は,所定の作用効果を奏するのに必要な構成を欠いて特定し,甲2発明 の係止アーム,半固定用ばね体,操作用取手,リンク機構を含む具体的 構成を抽象化・一般化・上位概念化したものであって,甲2に記載され たものではないから,甲1発明に適用することはできない。
(イ) 甲1発明に係る分岐開閉器は,工場等の業務用分電盤において,産 業機器等へ電気の供給と分配を行うブレーカである一方で,甲2発明に 係る電源ユニットは,通信事業者の通信基地局において,情報通信機器 等に対して電源の整流と供給を行う装置であることからすると,甲1発 明と甲2発明とは,機器としての使う場所も役割も明らかに異なり,全 く関連しないから,両発明は,同一の技術分野に属するものとはいえな い。
次に,甲2発明は,電源ユニットが大型で重量のあるものでレールの 上に載っているだけのものであることにより生じる「電源ユニットの自 重による抜け出し」や「係止アームの振動による抜け出し」の防止を課 題とする架台搭載引出し型電源装置に関する発明であるのに対し,甲1 発明は,片手で持って作業できる小型・軽量であってベースに対する鉛 直方向の動きが規制される分岐開閉器(ブレーカ)の取り付け構造に関 する発明であるから,甲1発明においては,甲2発明のような大型・重 量物が単にレールに載っているだけであるからこそ生じる問題は起こり えず,この問題に関する課題が想定され得ない。
また,甲1発明は,「操作片を有する板ばね」を備えることで「板ば ねのばね力で係止孔に係止する」,「操作片を持ち上げて板ばねを弾性 変形させて係止孔への係止を解除する」作用を奏する発明であるのに対 し,甲2発明は,「上下各位置(引留め位置及び引留め解除位置)で位 置保持される係止アームの上下動が操作用取手の回動に連動している」 22 構成とすることにより,「操作用取手を操作する位置(水平位置)とす ると係止アームが引留め解除位置(上位置)に抜け出し,操作用取手を 収納する位置(垂直位置)とすると係止アームが引留め位置(下位置) に突出する」作用を奏する発明であるので,両発明は,分岐開閉器或い は電源ユニットのスライド方向の動きを規制する形状(構成),その形 状を操作するための態様(作用)が全く異なり,作用機能の共通性はな い。
このように甲1発明と甲2発明とは,技術分野が異なるだけでなく, 技術分野の相違に基づく課題,この課題を解決するための構成並びにそ の作用において異なること,さらには,甲1発明においては,「操作片 を有する板ばね」を設けることによって,板ばねがそのばね力によって スライドさせるだけで係止孔に係止させてスライド方向の動きを規制し, 操作片を持ち上げれば,板ばねの係止が外れてスライドさせることがで きるという作用・効果を奏すること(【0009】,【0020】,【0 021】等)からすると,甲1発明において,このような作用・効果を 奏さなくなる「係止した状態としない状態とに選択保持可能な構成」を 適用する動機付けは一切ないし,かえって阻害要因がある。
(ウ) 原告は,甲1発明に甲2発明を適用する方法としては,例えば,@ 甲2発明の係止アームや操作用取手をその具体的な構成を維持したまま, 甲1発明の板ばねと置き換えた構成(別紙原告主張図面記載の図1及び 図2に示した構成),A甲1発明の板ばねの形状を概ね維持したまま, 甲2発明における選択「保持」可能という技術事項(技術的思想)を甲 1発明に適用した構成(別紙原告主張図面記載の図3ないし図5)が考 えられるから,甲2に記載された選択保持可能という技術的思想を甲1 発明に適用することは可能であり,かつ,その適用において特段の技術 的困難はない旨主張する。
23 しかしながら,甲1発明に係るブレーカである分岐開閉器は,手のひら サイズであるから,取り付け部材における板ばねが設けられている端部 の大きさは,せいぜい1〜2cmのスペースしかないのに対し,甲2発 明は,100kgを超える大型の電源ユニットに係止アームや操作用取 手が設けられており,操作用取手は,電源ユニットを押し込み,引き出 しするために作業者が把持する(握る)ことができる程度の大きさであ り,甲2発明における係止アーム,操作用取手,半固定用ばね体,リン ク機構を含む引き留め構造は,甲1発明の取り付け部材の端部よりも大 きく,むしろ分岐開閉器よりも大きい構造であり,しかも,引き留め構 造は,係止アームと操作用取手とがリンク機構で連結する複雑な構造で あることからすると,甲2発明における大きく複雑な構造の引き留め構 造を,甲1発明の板ばねという小さく単純なものと置換して,わずか1 〜2cmという小さいスペース(取り付け部材の端部のスペース)に設 けることは,現実からかけ離れすぎており,当業者において想定できる ことではないし,甲1発明に甲2発明を適用,置換しても,本件訂正発 明の「回路遮断器の底面から突出する,しないを外部つまみで択一的に 選択保持可能なロックレバーが回路遮断器の負荷側に設けられた」構成 にはならないから,原告主張の@の適用の方法は失当である。
次に,前記(ア)で述べたように,原告主張の甲2に記載された選択保 持可能という技術的思想は,所定の作用効果を奏するのに必要な構成を 欠いて特定し,甲2発明の係止アーム,半固定用ばね体,操作用取手, リンク機構を含む具体的構成を抽象化・一般化・上位概念化したもので あって,甲2に記載されたものではなく,甲1発明に適用することはで きないから,原告主張のAの適用の方法は失当である。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ウ 以上によれば,相違点4に係る本件訂正発明の構成は当業者が容易に想 24 到し得たこととはいえないとした本件審決の判断に誤りはない。
(5) 小括 以上のとおり,本件審決における相違点2ないし4の認定及び判断に誤り はないから,本件訂正発明は,甲1発明及び甲2に記載された事項に基づい て,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原告主張の取消事由は理由がない。
当裁判所の判断
1 本件訂正明細書の記載事項について ? 本件訂正明細書(甲15,18)の発明の詳細な説明には,次のような記 載がある(下記記載中に引用する図1ないし図6については別紙1を参照)。
ア 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は機器を取付用板に取り付けるための構 造に関し,特に回路遮断器を分電盤などの取付用板に容易に取り付けるた めの構造に関するものである。
【0002】 【従来の技術】従来, 回路遮断器を分電盤などに設けられた取付用板に取 り付ける構造としては,図1から図4(特願2000-339733)に 示すように,取付用板2に対し鉛直な方向の動きを規制しいずれか一方に 開放された爪部4を取付用板に設けるとともに前記爪部4と対応し爪部と は反対方向に開放した凹部6を回路遮断器1に設け,回路遮断器1の底面 から突出する・しないを外部つまみで択一的に選択可能なロックレバー7 を回路遮断器に設けるとともに,取付用板には前記ロックレバーの嵌合部 8を設け,ロックレバー7を底面から突出しない状態にした回路遮断器を 取付用板に載置して取付用板の爪部と凹部を嵌合させた後,ロックレバー を底面から突出させて回路遮断器の抜け止めをする取付構造があった。
【0003】 25 【発明が解決しようとする課題】しかしながら図1に示すようなプラグイ ンタイプの回路遮断器は,取付用板側に設けられた母線11,12とねじ 無しで接続を行うためのプラグイン端子15 ,15を電源側に設けており, 取付用板の上に回路遮断器を載置し,続いてプラグイン端子金具に母線が 差し込まれるように負荷側(図の右方) から母線の方向にスライドさせて 取付板に装着する必要がある。そのため, 回路遮断器をスライドさせる前 に,ロックレバー7が底面から突出していた場合には,取付用板の端面8 01 にロックレバーが引っ掛かってロックレバーが折損する恐れがあっ た。
【0004】本発明は,上述の問題を解決し,取付用板には取付面と鉛直 な方向の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放 した係合部を設け,機器側には前記の端部側から前記係合部に挿入して嵌 合する被係合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択 一的に選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した 際に機器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部 近傍に有する取付用板と機器の取り付け構造において,レバーが底面から 突出したままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレ バーが破損する恐れがなく容易に取付ができる機器の取付用板への取付構 造を提供することを目的としている。
イ 【0006】そこで, 本件の発明は,取付用板側に設けられた母線とね じ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタ イプの回路遮断器であって,プラグイン端子に母線が差し込まれるように 負荷側から母線の方向にスライドさせて取付用板に装着される回路遮断器 の,取付面と鉛直な方向の動きを規制すべく,取付用板には係合部を設け るとともに,回路遮断器には係合部と前記スライド方向で嵌合する被係合 部を設け,しかも,回路遮断器の負荷側側面には取付面から突出する・し 26 ないを択一的に選択可能なレバーを設けるとともに,取付用板には回路遮 断器のレバーが突出した際に回路遮断器が取付用板の端部側に移動するこ とを規制する規制部を取付用板の端部近傍に有する取付用板と回路遮断器 の取付構造において,前記レバーは,前記突出した状態で回路遮断器の取 付面から突出し,前記突出しない状態で回路遮断器の取付面から突出しな いように構成された突出部と,前記回路遮断器の挿入方向に対して傾斜す る傾斜面と,を備え,該レバーは,前記突出部が回路遮断器の取付面から 突出した状態で保持されると共に,前記突出部が回路遮断器の取付面から 突出しない状態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出 して保持された状態で,前記プラグイン端子に前記母線が差し込まれるよ うに前記回路遮断器を前記取付用板に対して負荷側から母線の方向にスラ イドさせると,前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記突出しな い状態に引っ込むように構成されていることを特徴とする取付用板と機器 の取付構造である。
ウ 【0007】 【発明の実施の形態】この発明の実施例について図面を用いて以下に詳細 に説明する。図1から図4は前述の回路遮断器の取付用板への取付構造を 示したものである。図と本件発明の請求項の関係について説明する。2は 取付用板で該取付用板の取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と略平 行で取付用板の端部側801の方向に開放した係合部4を有する。1は機 器で取付面側には前記の端部801側から前記係合部4に挿入して嵌合す る被係合部6を有するとともに機器1の取付面から突出する・しないを択 一的に選択保持するレバー7を有する。
【0008】取付用板2には機器1のレバー7が突出した際に機器が前記 の端部801側に移動することを規制する規制部8を取付板の端部近傍に 有する。機器1の取付用板2への取り付けはすでに述べたとおりであるの 27 で説明を省略する。なお,10は機器1の取付用板に対する位置決め用の突起,3は4と同様に端部801側に開放された係合部,5は3の係合部に係合する機器1側の被係合部であるが,前記係合部4の位置や6の被係合部との寸法関係を適当に選べばなくてもよい。
【0010】図5と図6はレバー7周辺の機器1のハウジング内の断面説明図であり, 図5は本件発明実施例の図,図6は従来例の図である。図において702はつまみ部で指でつまんでレバー7を機器底面から突出する・しないを操作する。703は突出部である。17は機器のハウジング側の突起で, レバー7の凹み部18または19に係合する。図5,図6ともに突出部703が底面から突出して保持されている状態を示しており,突起17は凹み部18に係合して位置を保持している。レバー7は樹脂製で若干の弾性を有しており, 図の状態からつまみ部702を引き上げると,突起17が凹み部18と19の間を乗り越えて19側に移動して係合し突出部703は機器1の底面から突出しない状態になる。
【0011】図5の20は本件訂正発明のレバー7の機器の挿入方向に設けた傾斜部である。図のようにレバー7が機器1の底面から突出した状態で図1のように取付用板2に機器1を取り付けようとした際,図6のような従来例では,突出部703が取付用板2の端部801に引っ掛かって折損する恐れがあるが, 図5の本件発明では, 取付用板2の端部801が突出部に当接した際に傾斜部20の作用により,レバー7が傾斜面の分力で自動的に突出しない状態に引っ込むことになって折損する恐れがない。
係合部4が完全に被係合部6に係合後,手動でレバー7を押し下げれば,突出部703が規制部8内に突出して機器1の取付用板2への取り付けが完了する。したがって,レバー7の突出状態を気にすることなく取付用板に機器を挿入固定できる。
【0012】以上の説明において傾斜部20の傾斜角度や形状は本件発明 28 の範囲内で任意に変更可能である。また, 実施例には回路遮断器の図を用 いたが,回路遮断器以外の機器においても取付用板との関係で本件発明は 適用可能である。
エ 【0013】 【効果】以上のように本発明によれば, 取付用板には取付面と鉛直な方向 の動きを規制し取付面と略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した係 合部を設け,機器側には前記の端部側から前記係合部に挿入して嵌合する 被係合部を設けるとともに機器の取付面から突出する・しないを択一的に 選択保持するレバーを設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機 器が前記の端部側に移動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に 有する取付用板と機器の取り付け構造において,レバーが底面から突出し たままの状態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが 破損する恐れがなく容易に取付ができる機器の取付用板への取付構造を提 供することを目的としている。
(2) 前記(1)の記載事項によれば,本件訂正明細書には,本件訂正発明に関し, 次のような開示があることが認められる。
ア 従来,プラグイン方式の回路遮断器を分電盤などに設けられた取付用板 に取り付ける構造としては,回路遮断器1の底面から突出する・しないを 外部つまみで択一的に選択可能なロックレバー7を回路遮断器に設けると ともに, 取付用板には前記ロックレバーの嵌合部8を設け,ロックレバー 7を底面から突出しない状態にした回路遮断器を取付用板に載置して取付 用板の爪部と凹部を嵌合させた後,ロックレバーを底面から突出させて回 路遮断器の抜け止めをする取付構造があったが,このプラグイン方式の回 路遮断器の場合,回路遮断器をスライドさせる前に,ロックレバー7が底 面から突出していた場合には,取付用板の端面801 (図1)にロックレ バーが引っ掛かってロックレバーが折損する恐れがあった 【0002】 ( , 29 【0003】)。
イ 「本発明」は,前記問題を解決し,レバーが底面から突出したままの状 態で取付用板の端部側から機器を取付ようとしたときレバーが破損する恐 れがなく容易に取付ができる機器(プラグインタイプの回路遮断器)の取 付用板への取付構造を提供することを目的とし,この課題を解決するため の手段として,取付用板には取付面と鉛直な方向の動きを規制し取付面と 略平行で取付用板の端部側の1方向に開放した係合部を設け,機器側には 前記の端部側から前記係合部に挿入して嵌合する被係合部を設けるととも に,機器の取付面から突出する・しないを択一的に選択保持するレバーを 設け,取付用板には機器のレバーが突出した際に機器が前記の端部側に移 動することを規制する規制部を取付板の端部近傍に有する取付用板と機器 の取り付け構造において, 前記レバーは,突出しない状態で機器の取付面 から突出しないように構成された突出部と,機器の挿入方向に対して傾斜 する傾斜面とを備え,該レバーは,前記突出部が機器の取付面から突出し た状態で保持されると共に,前記突出部が機器の取付面から突出しない状 態で保持されるように構成され,しかも,前記突出部が突出して保持され た状態で,プラグイン端子に取付用板に設けられた母線が差し込まれるよ うに機器を取付用板に対して負荷側から母線の方向にスライドさせると, 前記傾斜面が前記取付用板の端部に当接し,前記傾斜面の作用により該レ バーが自動的に前記突出しない状態に引っ込むようにした構成を採用した (【0004】,【0006】,【0011】)。
2 相違点4の容易想到性の判断の誤りについて 本件審決は,相違点4に関し,@甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取 り付け部材5」を本件訂正発明の「回路遮断器」に相当するとはいえず,本件 訂正発明の「回路遮断器」の構成にする動機付けないこと,A甲1発明の「板 ばね25」を甲2発明の「係止アーム12」に置換することについての動機付 30 けはないことを理由に,相違点4に係る本件訂正発明の構成は,当業者が容易に想到しえたこととはいえない旨判断した(以下,@を「相違点4の容易想到性の判断?」,Aを「相違点4の容易想到性の判断?」という。)。
そこで,以下において,本件審決における相違点4の容易想到性の判断?及び?の誤りの有無について,順次判断する。
? 甲1の記載事項について ア 甲1には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし図 16については別紙2を参照)。
(ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1】 主幹開閉器と,この主幹開閉器に電気的に接続された複 数の導電バーと,これらの導電バーの長手方向と直交する幅方向の少な くとも一方側に並設されて少なくとも1本の導電バーに差し込み接続す る受け刃状の接続端子を有するとともに導電バーへの差し込み方向と同 方向である長手方向の両側に引っ掛け凹所を形成した複数の分岐開閉器 と,これらの分岐開閉器の引っ掛け凹所に引っ掛けられる引っ掛け爪を 夫々有してベースに取り付けられる複数の取り付け部材とを備えた分電 盤において,前記各取り付け部材は,分岐開閉器における長手方向の導 電バー側の一方の引っ掛け爪が分岐開閉器における長手方向の他方の引 っ掛け爪から見て変位自在に形成されるとともに分岐開閉器における長 手方向の他方の引っ掛け爪が略剛体にされたことを特徴とする分電盤。
【請求項2】 導電バーに接続端子を差し込む方向で取り付け部材を進 退自在に保持するスライド保持部をベースに設けるとともに,スライド 保持部に保持される被スライド保持部を取り付け部材に設けたことを特 徴とする請求項1記載の分電盤。
【請求項3】 前記スライド保持部は,長孔または長孔の周縁を表裏両 面から挟む挟持部のうちの一方により構成されるとともに前記被スライ 31 ド保持部は,長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの 他方により構成されたことを特徴とする請求項2記載の分電盤。
【請求項4】 被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさ せて導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した状態で取り付 け部材を係止する係止部をベースに設けるとともに,前記取り付け部材 に係止部に係止される被係止部を設けたことを特徴とする請求項2また は請求項3記載の分電盤。
【請求項5】 前記係止部は,係止孔または係止孔に係止される弾性体 のうちの一方より構成されるとともに,前記被係止部は,係止孔または 係止孔に係止される弾性体のうちの他方で形成されたことを特徴とする 請求項4記載の分電盤。
(イ) 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,分電盤に関し,詳しくは分岐開閉 器を取り付ける構造に関するものである。
【0002】 【従来の技術】従来の分電盤にあっては,図16に示すように箱体1の 底面のベース2を設け,ベース2の上に主幹開閉器と接続した導電バー 3を配置してあり,導電バー3の長手方向と直交する両側に分岐開閉器 4を並列に並べてある。各分岐開閉器4は分岐開閉器4の下に設けた取 り付け部材5を介して取り付けられる。取り付け部材5は一端側をベー ス2の係止爪6に係止すると共に他端側をベースにビス7にて固定する ことで取り付けてある。分岐開閉器4の長手方向(入出力端子方向)の 両端面には引っ掛け凹所8を設けてあり,取り付け部材5の両端には引 っ掛け爪9を設けてあり,引っ掛け爪9を引っ掛け凹所8に引っ掛ける ことで取り付け部材5に分岐開閉器4を取り付けてある。両端の引っ掛 け爪9のうち導電バー3と反対側の引っ掛け爪9は弾性変形可能な係脱 32 用引っ掛け爪9aとなっている。また導電バー3と分岐開閉器4のねじ 端子との間には接続金具10が配置され,接続金具10の一端を導電バ ー3にネジ11にて接続してあると共に接続金具10の他端を分岐開閉 器4のねじ端子に接続してある。図16で,12は開閉自在な中蓋,1 3は開閉扉である。
(ウ) 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記従来例の場合,取り付け部材5を 介して分岐開閉器4を取り付けた後,接続金具10をねじにて導電バー 3や分岐開閉器4に接続することができるためにに取り付けの仕方や分 岐開閉器4の外れの問題がないが,受け刃状の接続端子を一体に有する 分岐開閉器の場合次の問題がある。受け刃状の接続端子を有する分岐開 閉器の場合,分岐開閉器を横方向から差し込むと共に接続端子を導電バ ーに差し込み,分岐開閉器の両端の引っ掛け凹所に取り付け部材の引っ 掛け爪を引っ掛け係止しなけらない。しかも横からスライドさせて差し 込むとき外側の引っ掛け爪9が邪魔になって装着しにくいという問題が ある。また装着することができても外側の引っ掛け爪9が弾性変形可能 な係脱用引っ掛け爪9aであるために抜けやすいという問題がある。ま た分岐開閉器4を予め取り付け部材5に装着してから各取り付け部材5 をベース2に固定することも考えられるが,取り付け部材5はビス7の 締め付けにて取り付けているために分岐開閉器4を取り付けたままでは ベース2に取り付けることができないという問題があった。
【0004】本発明は叙述の点に鑑みてなされたものであって,差し込 み式の分岐開閉器の取り付けがしやすく,しかも取り付けた後の分岐開 閉器が外れにくい分電盤を提供することを課題とする。
(エ) 【0005】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の請求項 33 1の分電盤では,主幹開閉器と,この主幹開閉器に電気的に接続された複数の導電バーと,これらの導電バーの長手方向と直交する幅方向の少なくとも一方側に並設されて少なくとも1本の導電バーに差し込み接続する受け刃状の接続端子を有するとともに導電バーへの差し込み方向と同方向である長手方向の両側に引っ掛け凹所を形成した複数の分岐開閉器と,これらの分岐開閉器の引っ掛け凹所に引っ掛けられる引っ掛け爪を夫々有してベースに取り付けられる複数の取り付け部材とを備えた分電盤において,前記各取り付け部材は,分岐開閉器における長手方向の導電バー側の一方の引っ掛け爪が分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪から見て変位自在に形成されるとともに分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪が略剛体にされたことを特徴とする。導電バー側の引っ掛け爪を変位させることにより取り付け部材の長手方向の2つの引っ掛け爪間に分岐開閉器を配置して引っ掛け爪を引っ掛け凹所に引っ掛けて分岐開閉器を容易に取り付けることができるとともに,導電バーと反対側の引っ掛け爪が略剛体であるため各分岐開閉器の接続端子を導電バーに差し込み接続した状態で分岐開閉器を取り付け部材に取り付けた後,分岐開閉器が外れにくくなる(導電バー側の引っ掛け爪が変位可能でも接続端子を導電バーに係止していることで外れにくい)。
【0006】本発明の請求項2の分電盤では,請求項1において,導電バーに接続端子を差し込む方向で取り付け部材を進退自在に保持するスライド保持部をベースに設けるとともに,スライド保持部に保持される被スライド保持部を取り付け部材に設けたことを特徴とする。分岐開閉器を取り付け部材に取り付けた状態で被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせるだけで各分岐開閉器の接続端子を導電バーに接続することができ,各分岐開閉器の接続端子と導電バーとの接続作業が容易にできる。
34 【0007】本発明の請求項3の分電盤では,請求項2において,前記 スライド保持部は,長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部の うちの一方により構成されるとともに前記被スライド保持部は,長孔ま たは長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの他方により構成され たことを特徴とする。スライド保持部及び被スライド保持部が長孔また は長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部で構成されているので,構造が 簡単になる。
【0008】本発明の請求項4の分電盤では,請求項2または請求項3 において,被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせて 導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した状態で取り付け部 材を係止する係止部をベースに設けるとともに,前記取り付け部材に係 止部に係止される被係止部を設けたことを特徴とする。取り付け部材を ベースのスライド保持部に沿って各分岐開閉器の接続端子が導電バーに 差し込み接続する位置までスライドさせると,被係止部と係止部が係止 されるので,分岐開閉器の接続端子が導電バーから外れる方向に取り付 け部材が移動するのを抑えることができ,分岐開閉器を強固に固定でき る。
【0009】本発明の請求項5の分電盤では,請求項4において,前記 係止部は,係止孔または係止孔に係止される弾性体のうちの一方より構 成されるとともに,前記被係止部は,係止孔または係止孔に係止される 弾性体のうちの他方で形成されたことを特徴とする。弾性体を変形させ ることにより取り付け部材をベースから外すことができ,分岐開閉器の 交換作業が容易にできる。
(オ) 【0010】 【発明の実施の形態】まず,図1乃至図13に示す実施の形態から述べ る。図1乃至図3に示すように箱体1の底面上にはベース2,14を装 35 着してあり,ベース14の上にはブレーカのような主幹開閉器15を装着してあり,ベース2の上にはブレーカのような分岐開閉器4を多数並べて装着してある。ベース2,14上で箱体1の幅方向の中央には箱体1の長手方向に長い導電バー3を配置してあり,導電バー3の一端を主幹開閉器15に接続してある。本例の場合,単相3線の電源が供給されるものであって,導電バー3は第1導電バー(電圧極バー)3a,第2導電バー(電圧極バー)3b,第3導電バー(中性極バー)3cの3線で構成され,これらの3線は平行に設けてある。この導電バー3の両側に夫々上記分岐開閉器4を並列に並べて装着される。箱体1の開口には開閉自在な開閉扉13が装着してあり,開閉扉13の内側に中蓋12を開閉自在に装着してある。
【0011】分岐開閉器4には100V仕様のものと200V仕様のものがある。100V仕様の分岐開閉器4には端子を第1導電バー3aと第3導電バー3cに接続するもの(以下L 1 という)と,第2導電バー3bと第3導電バー3cに接続するもの(以下L 2 という)とがある。
分岐開閉器4には受け刃状の接続端子16が設けられるのであるが,本例の場合,別体の導電金具17を取り付けることで接続端子16を設けるものである。導電金具17の一端には受け刃状の接続端子16を設けてあり,導電金具17の他端にはU字状の切り欠きを有する結合部27を設けてある。結合部27は分岐開閉器4の端子台部の端子板18と端子ねじ19との間にねじ締め固定できるようになっている。導電金具17には第1導電金具17a,第2導電金具17b,第3導電金具17c及び第4導電金具17dの4種類のものがある。また導電金具17を取り付ける部分ではこの部分を覆う保護カバー20が設けられるが,保護カバー20には第1挿通空間21a,第2挿通空間21b及び第3挿通空間21cを設けてある。この保護カバー20は分岐開閉器4の入力端 36 子側に当接するように配置される。
【0012】L1 の分岐開閉器4の場合,図8,図9に示すように第1挿通空間21aに第1導電金具17aの接続端子16部が挿通され,第2挿通空間21bに第2導電金具17bの接続端子16部が挿通され,第1導電金具17a及び第2導電金具17bの結合部27は端子ねじ19にてねじ締め固定される。第1導電金具17aの接続端子16は第1導電バー3aに差し込み接続するものであり,第2導電金具17bの接続端子16は第3導電バー3cに差し込み接続するものである。L2 の分岐開閉器4の場合,図10,図11に示すように第2挿通空間21bに第2導電金具17bの接続端子16部が挿通され,第3挿通空間21cに第3導電金具17cの接続端子16部が挿通され,第2導電金具17b及び第3導電金具17cの結合部27は端子ねじ19にてねじ締め固定される。第2導電金具17bの接続端子16は第3導電バー3cに差し込み接続するものであり,第3導電金具17cの接続端子16は第2導電バー3bに差し込み接続するものである。200Vの分岐開閉器4の場合,図12,図13に示すように第1挿通空間21aに第4導電金具17dの接続端子16部が挿通され,第3挿通空間21cに第3導電金具17cの接続端子16部が挿通され,第4導電金具17d及び第3導電金具17cの結合部27は端子ねじ19にてねじ締め固定される。
第4導電金具17dの接続端子16は第1導電バー3aに差し込み接続するものであり,第3導電金具17cの接続端子16は第2導電バー3bに差し込み接続するものである。なお,上記例では別体の導電金具17をねじ接合して接続端子16を形成したが,分岐開閉器4に一体に接続端子16を設けたものでもよい。
【0013】分岐開閉器4の長手方向(入出力端子方向)の両端には引っ掛け凹所8を設けてある。各分岐開閉器4の下には夫々取り付け部材 37 5を配置してあり,この取り付け部材5を介して分岐開閉器4をベース2を取り付けるようになっている。取り付け部材5は図6に示すように上片5aと両側の側片5bとで略コ字状に形成されている。取り付け部材5の長手方向の両端には上記引っ掛け凹所8に引っ掛け係止する引っ掛け爪9を設けてある。両端の引っ掛け爪9のうち導電バー3側の引っ掛け爪9は変位可能な形状にした係脱用引っ掛け爪9aとなっており,他方の引っ掛け爪9は略剛体になっている。取り付け部材5の上には分岐開閉器4が配置され,両端の引っ掛け爪9を分岐開閉器4の引っ掛け凹所8に引っ掛け係止することで取り付け部材5の上に分岐開閉器4を取り付けてある。このとき係脱用引っ掛け爪9aを用いて容易に分岐開閉器4を着脱できる。ベース2にはスライド保持部として取り付け部材5の長手方向に長い長孔22を穿孔してある。取り付け部材5には被スライド保持部として係止爪23を長孔22に対応するように設けてある。
この係止爪23は短い縦片23aと横に長い横片23bとで略L字状に形成されている。横片23bと側片5bのとの間の溝が長孔22の周縁に挿入されるようになっており,横片23bの上面と側片5bの下面が長孔22の周縁を表裏両面から挟持する挟持部となっている。またベース2には係止部としての係止孔24を穿孔してあり,取り付け部材5の長手方向の端部には被係止部としての略V字状の板ばね25を設けてあり,板ばね25の下方に尖った部分の先端部25aが係止孔24に係止するようになっている。また板ばね25には操作片25bも設けてある。
【0014】そして分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で取り付け部材5と一緒に分岐開閉器4が次のように装着される。取り付け部材5をベース2の上に配置して係止爪23が長孔23に挿入され,分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられる。分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると,接続端子 38 16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。この状態で係止爪23が長孔22の周縁の下の位置し,長孔22の周縁が係止爪23と側片5bとで挟持される。このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。このように分岐開閉器4を取り付けたとき,係脱用引っ掛け爪9aが導電バー3側に位置するため,導電バー3と接続端子16の係止にて係脱用引っ掛け爪9aと引っ掛け凹所8との係止が外れにくくなり,分岐開閉器4が外れにくいように取り付けることができる。また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。
【0015】なお,上記の実施の形態では,ベース2にスライド保持部としての長孔22を設けると共に取り付け部材5に被スライド保持部としての係止爪23を設けるものについて述べたが,これと逆にベース2にスライド保持部として係止爪23を設けると共に取り付け部材5に被スライド保持部として長孔22を設けてもよい。また上記の実施の形態では,ベース2に係止部として係止孔24を設けると共に取り付け部材5の被係止部として板ばね25を設けるものについて述べたが,これと逆にベース2に係止部として板ばね25を設けると共に取り付け部材5に被係止部として係止孔24を設けてもよい。
【0016】また図14,図15に示す実施の形態について述べる。本実施の形態も上記実施の形態を基本的に同じであるが,主にスライド保持部と被スライド保持部の構造が異なる。まず,本例の場合,取り付け部材5は平板状に形成されている。またベース2に設ける長孔22は幅広部22aと幅狭部22bとで形成されており,幅狭部22bの側方に被挟持部22cを設けてあると共に被挟持部22cの内縁に勾配22dを設けてある。また取り付け部材5に設ける係止爪23は縦片23aと 39 横片23bで構成されるが,横片23bは幅方向に突出している。また 係止爪23は取り付け部材5を打ち抜くことで形成されている。また取 り付け部材5の導電バー3と反対の端部には切り起こすことで引っ掛け 爪9を設けてあり,引っ掛け爪9を切り起こした残りの部分が断面略V 字状の板ばね25となっている。つまり,取り付け部材5自体に板ばね 25を設けてある。またこの板ばね25のある方に対応する長孔22の 幅広部22aが板ばね25の先端部25aの係止孔24となっている。
しかして長孔22の幅広部22aと係止爪23とを対応させた状態で係 止爪23を幅広部22aに挿入し,取り付け部材5をスライドさせると, 接続端子16が導電バー3に差し込まれ,係止爪23の横片23bが被 挟持部22cの下に位置して被挟持部22cが取り付け部材5の下面と 横片23bとで挟持され,板ばね25の先端部25aが幅広部22aの 係止孔24に係止される。
(カ) 【0017】 【発明の効果】本発明の請求項1の発明は,取り付け部材は,分岐開閉 器における長手方向の導電バー側の一方の引っ掛け爪が分岐開閉器にお ける長手方向の他方の引っ掛け爪から見て変位自在に形成されるととも に分岐開閉器における長手方向の他方の引っ掛け爪が略剛体にされたの で,導電バー側の引っ掛け爪を変位させることにより取り付け部材の長 手方向の2つの引っ掛け爪間に分岐開閉器を配置して引っ掛け爪を引っ 掛け凹所に引っ掛けて分岐開閉器を容易に取り付けることができるとと もに,導電バーと反対側の引っ掛け爪が略剛体であるため各分岐開閉器 の接続端子を導電バーに差し込み接続した状態で分岐開閉器を取り付け 部材に取り付けた後,分岐開閉器が外れにくくなるものである。
【0018】本発明の請求項2の発明は,請求項1において,導電バー に接続端子を差し込む方向で取り付け部材を進退自在に保持するスライ 40 ド保持部をベースに設けるとともに,スライド保持部に保持される被スライド保持部を取り付け部材に設けたので,分岐開閉器を取り付け部材に取り付けた状態で被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせるだけで各分岐開閉器の接続端子を導電バーに接続することができ,各分岐開閉器の接続端子と導電バーとの接続作業が容易にできるものである。
【0019】本発明の請求項3の発明は,請求項2において,前記スライド保持部は,長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの一方により構成されるとともに前記被スライド保持部は,長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部のうちの他方により構成されたので,スライド保持部及び被スライド保持部が長孔または長孔の周縁を表裏両面から挟む挟持部で構成されていて構造が簡単になるものである。
【0020】本発明の請求項4の発明は,請求項2または請求項3において,被スライド保持部をスライド保持部に沿ってスライドさせて導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した状態で取り付け部材を係止する係止部をベースに設けるとともに,前記取り付け部材に係止部に係止される被係止部を設けたので,取り付け部材をベースのスライド保持部に沿って各分岐開閉器の接続端子が導電バーに差し込み接続する位置までスライドさせると,被係止部と係止部が係止されるものであって,分岐開閉器の接続端子が導電バーから外れる方向に取り付け部材が移動するのを抑えることができ,分岐開閉器を強固に固定できるものである。
【0021】本発明の請求項5の発明は,請求項4において,前記係止部は,係止孔または係止孔に係止される弾性体のうちの一方より構成されるとともに,前記被係止部は,係止孔または係止孔に係止される弾性体のうちの他方で形成されたので,弾性体を変形させることにより取り 41 付け部材をベースから外すことができ,分岐開閉器の交換作業が容易に できるものである。
イ 前記アの記載事項によれば,甲1には,甲1発明(前記第2の3?ア) に関し,次のような開示があることが認められる。
(ア) 図16に示すように,箱体1の底面のベース2を設け,ベース2の 上に主幹開閉器と接続した導電バー3を配置し,導電バー3の長手方向 と直交する両側に並列に並べた分岐開閉器4が,分岐開閉器4の下に設 けた取り付け部材5の一端側をベース2の係止爪6に係止すると共に他 端側をベースにビス7で固定することにより,取り付け部材5を介して ベース2に取り付けてあり,分岐開閉器4と取り付け部材5の両端に設 けた引っ掛け爪を分岐開閉器4の両端に設けた引っ掛け凹所8に引っ掛 けることで取り付け部材5に分岐開閉器4を取り付けてあり,また,導 電バー3と分岐開閉器4のねじ端子との間には接続金具10が配置され, 接続金具10の一端を導電バー3にネジ11にて接続してある,従来の 分電盤においては,取り付け部材5を介して分岐開閉器4を取り付けた 後,接続金具10をねじにて導電バー3や分岐開閉器4に接続すること ができるために取り付けの仕方や分岐開閉器4の外れの問題がないが, 一方で,受け刃状の接続端子を有する分岐開閉器を取り付ける場合には, @分岐開閉器を横方向から差し込むと共に接続端子を導電バーに差し込 み,分岐開閉器の両端の引っ掛け凹所に取り付け部材の引っ掛け爪を引 っ掛け係止しなければならず,しかも横からスライドさせて差し込むと き外側の引っ掛け爪9が邪魔になって装着しにくいという問題,A装着 することができても外側の引っ掛け爪9が弾性変形可能な係脱用引っ掛 け爪9aであるために抜けやすいという問題,Bまた,分岐開閉器4を 予め取り付け部材5に装着してから各取り付け部材5をベース2に固定 することも考えられるが,取り付け部材5はビス7の締め付けにて取り 42 付けているために分岐開閉器4を取り付けたままではベース2に取り付 けることができないという問題があった 【0002】 【0003】 。
( , ) 「本発明」は,上記の問題に鑑みてされたものであって,差し込み式 の分岐開閉器の取り付けがしやすく,しかも取り付けた後の分岐開閉器 が外れにくい分電盤を提供することを課題とする(【0004】)。
(イ) 「本発明」の請求項4の分電盤は,前記課題を解決するため,請求 項2又は請求項3において,被スライド保持部をスライド保持部に沿っ てスライドさせて導電バーに分岐開閉器の接続端子を差し込み接続した 状態で取り付け部材を係止する係止部をベースに設けるとともに,前記 取り付け部材に係止部に係止される被係止部を設けた構成を採用し,こ の構成により,取り付け部材をベースのスライド保持部に沿って各分岐 開閉器の接続端子が導電バーに差し込み接続する位置までスライドさせ ると,被係止部と係止部が係止されるので,分岐開閉器の接続端子が導 電バーから外れる方向に取り付け部材が移動するのを抑えることができ, 分岐開閉器を強固に固定できるという効果を奏する(請求項4,【00 08】,【0020】)。
また,「本発明」の請求項5の分電盤は,前記課題を解決するため, 請求項4において,前記係止部は,係止孔または係止孔に係止される弾 性体のうちの一方より構成されるとともに,前記被係止部は,係止孔ま たは係止孔に係止される弾性体のうちの他方で形成された構成を採用し, この構成により,弾性体を変形させることにより取り付け部材をベース から外すことができ,分岐開閉器の交換作業が容易にできるという効果 を奏する(請求項5,【0009】,【0021】)。
? 甲2の記載事項について ア 甲2の記載事項について 甲2には,次のような記載がある(下記記載中に引用する第1図ないし 43 第5図については別紙3を参照)。
(ア) 「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】電源架台と,これに差込まれたときプラグイン式コネクタ による負荷回路などに接続される電源ユニットを備えた架台搭載引出し 型電源装置において, 前記電源ユニットの前記電源架台への引留め時には,前記電源ユニット の前面パネルに設けられた収容凹部内に垂直状態で収納され,引留め解 除時には水平状態に回動されるよう前記前面パネルに軸支された操作用 取手と, 該操作用取手のアーム部に一端が所定角度で固定された支承ループ部を 有する作動桿と, 前記前面パネルの裏面にその上下方向にスライド可能であって,その側 面に前記作動桿の支承ループ部に嵌入される支承軸が設けられた係止ア ームと, 該係止アームによる電源ユニットの前記電源架台への引留め時および引 留め解除時のそれぞれの状態位置に当該係止アームをその移動軸方向に 垂直に保持するばね機構とを備え, 前記操作用取手の回動操作により前記作動桿の支承ループ部の角度が変 わり,その支承ループ部に嵌入された支承軸の上下移動に伴って係止ア ームを上下移動させ,該係止アームの下方先端部を前記電源架台の係止 溝に係合または係合解除を行わせるようにし,前記操作用取手の回動操 作により前記電源ユニットを前記電源架台への引留めと引留め解除を行 うようにしたことを特徴とする架台搭載引出し型電源装置の電源ユニッ ト引留め構造。」(1頁左欄1行〜1頁右欄10行)(イ) 「(産業上の利用分野) 本考案は架台搭載引出し型電源装置の電源ユニット引留め構造に関する 44 ものである。」(1頁右欄12行〜14行)「(従来技術とその問題点)後部に例えばプラグコネクタを備えた電源装置ユニット1乃至複数台を,レセプタクルコネクタを備えた電源架台内に差込み収納して,上記コネクタにより電源装置ユニット相互および負荷回路などに接続するようにした,所謂架台搭載引出し型の電源装置においては,振動などにより動作中の電源ユニットが電源架台から抜け出して,負荷回路などへの電力の供給が遮断されるのを防止することが必要である。
そこで従来においては,第1図(a)(b)に示す斜視図と部分断面側面図のように,引出しおよび差込み用の操作用取手(1)を備えた電源ユニット(2)の前面パネル(2a)面に,パネル面(2a)外に突出する操作用ノブ(3a)を備えた係止アーム(3b)と,そのスライドケース(3c)からなる引留め金具(3)を取付けて,以下のように電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることが行われている。即ち操作用ノブ(3a)の上方への持上げ操作により,係止アーム(3b)の先端部をシャーシ(4)側に対応位置させて設けた係止溝(5)内から引き上げながら,電源ユニット(2)を電源架台(6)内に収容し,そののち操作用ノブ(3a)から手を離して係止アーム(3b)の先端を係止溝(5)内に図中点線のように自然落下させることにより,電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることが行われている。なお図中(7)は電源ユニット(2)側のプラグコネクタ,(8)は電源架台(6)側のレセプタクルユニットである。
しかしこのように係止アーム(3b)をその自重により自然落下させて係止するものでは,振動により係止アーム(3b)が上下に踊って係止溝(5)内から抜け出すおそれがある。このため電源ユニット(2)の自重による前方への移動を生じてコネクタの接続解除を招き,負荷回路などへの 45 電力の供給の遮断や不安定を生ずるおそれがある。
そこで,上記の如きストッパ装置を電源ユニット(2)の仮留め用とし て用い,電源架台(6)に固定して設けたL型金具(9)に,電源ユニ ット(2)のケース後面をねじ留めする手段をとって,前記のような振 動による不測の係止解除を防ぐことが行われている。
しかしこれでは電源ユニットの差込みと引抜きに当たって多くの時間労 力を必要とし,その程度は電源架台に搭載される電源ユニット数が大と なればなる程大となる。」(1頁右欄15行〜2頁左欄42行)(ウ) 「(問題点を解決するための本考案の手段) 本考案は上記問題点の解決はもとより,従来手段によって得ることので きない利点を有する引留め構造の提供を目的としてなされたもので,次 に実施例によって本考案を詳細に説明する。
(実施例) 第2図(a)(b)(c)および第3図(a)(b)(c)は電源ユニ ット(2)を電源架台(6)に引留めた状態と,引留めを解除した状態 における本考案引留め構造の一実施例の要部正面図,要部断面側面図, および要部背面図,第4図および第5図は引留め解除時および引留め時 における部分断面構成概略図である。
第2図において(2a)は第1図で前記した電源ユニットの前面パネル, (4)は電源架台のシャーシ,(5)はシャーシ(4)に設けた係止溝 であってこれらは第1図で説明した従来装置と同じである。(10)は操 作用取手の収容凹部であって,電源ユニット(2)の前面パネル(2a) 面に設けられ,操作用取手(11)がパネル面外に突出しないような深さ をもたせてある。
操作用取手(11)はその下部の両端の水平方向に固定して設けた支持軸 (11a)を,収容凹部(10)の下端両側壁面に設けた支承穴(10a)に支 46 承して,第2図(b)に示す垂直位置から第3図(b)に示す水平位置 まで約 90 度回動できるように作られる。(12)は係止アームであって, その左右側面には支承軸(12a)と,係止アームの保持用切欠部(12b) と(12c)が設けられる。(13)はスライドケースであって,操作用取手 の収容凹部(10)の裏面に固定されて係止アーム(12)の上下動を案内 する。(14)は係止アームの作動桿,(14a)は支承ループ部であって, 作動桿(14)の一端は操作用取手の収容凹部(10)に設けた移動穴(12d) を介して固定され,他端の支承ループ部(14a)は遊動しうるように係止 アーム(12)の支承軸(12a)により支承される。
そして第2図のように操作用取手(11)が収容凹部(10)内に収容され た状態では,作動桿(14)の下方への回動により係止アーム(12)が下 方に移動して係止溝(5)内に入る。また第3図のように操作用取手(11) を収容凹部(10)内から取り出して水平に位置させたとき,作動桿(14) の上方への回動により係止アーム(12)が係止溝(5)内から引抜かれ るように構成される。(15)は係止アームの半固定用ばね体,(15a)は 係止アームの保持用折曲部であって,スライドケース(13)に固定され て,係止アーム(12)がシャーシ(4)側の係止溝(5)内に入ったと き,第2図(c)のように保持用折曲部(15a)が係止アーム(12)に設 けた上部の保持用切欠部(12c)内にばね力により落ち込んで,係止アー ム(12)と操作用取手(11)の位置を保持する。また第3図(c)のよ うに係止アーム(12)が係止溝(5)から引抜かれた状態のときには, 先端の保持用折曲部(15a)が係止アーム(12)に設けた下部の保持用切 欠部(12b)内にばね力により落ち込んで,係止用アーム(12)と操作用 取手(11)の位置を保持する。」(2頁左欄43行〜2頁右欄45行)(エ) 「(考案の作用効果) 以上のように本考案では,第4図のように操作用取手(11)を水平に位 47 置させることにより,係止アーム(12)が電源架台(6)側の係止溝(5)から引抜かれ,操作用取手(11)を第5図のように垂直方向に位置させることにより,係止アーム(12)が電源架台(6)側の係止溝(5)内に差込まれるように構成される。
従って操作用取手(11)を水平に倒して電源ユニット(2)を電源架台(6)に差し込んだのち,操作用取手(11)を収容凹部(10)内に押し込んで垂直に位置させる簡単な操作で,電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留めることができる。また操作用取手(11)を水平に倒したのち電源ユニット(2)を引出す簡単な操作で引留めを解除して,電源ユニット(2)を電源架台(6)から引出すことができ,操作用取手(11)の操作のみで,電源ユニット(2)の電源架台(6)への引留めと引留めの解除を行いうる。
従って本考案の引留め構造を用いた引留め手段は第1図で前記した従来手段,即ち一方の手で係止アーム(3b)の操作用ノブ(3a)を持ち上げながら他方の手により電源ユニット(2)を電源架台(6)に押し込み,押し込みが完了したのを確かめたのち操作用ノブ(3a)の持ち上げを解除して係止アーム(3b)を係止溝(5)内に押し込むことにより引留め,また一方の手で係止アーム(3b)を持ち上げたのち,他方の手により操作用取手(1)を操作して電源ユニット(2)を引き出さなければならない手段に比べて操作が簡単になる。
また本考案では係止アームの半固定用ばね体(15)により係止アーム(12)の引留め位置,および引留め解除位置が保持されるため,従来のように振動により係止アーム(12)が上下に踊って引留めが解かれるおそれがないので,確実な引留めを行いうる。これに加えて本考案では電源ユニット(2)の電源架台(6)への搭載時には,操作用取手(1)が収容凹部(10)内に収容されており,従来手段のように係止アーム(12)の 48 操作用ノブ(3a)が電源ユニット(2)のケース面外に突出することが ない。従って従来のように点検保守者の衣服,器具などの操作用ノブ(3a) への引掛かりや接触により引留めが解除されるおそれがない。」(2頁 右欄46行〜3頁右欄9行)イ 前記アの甲2の記載事項によれば,甲2には,甲2発明(前記第2の3 ?イ))に関し,次のような開示があることが認められる。
(ア) プラグコネクタを備えた電源装置ユニットを,レセプタクルコネク タを備えた電源架台内に差込み収納して,上記コネクタにより電源装置 ユニット及び負荷回路などに接続するようにした「架台搭載引出し型の 電源装置」においては,振動などにより動作中の電源ユニットが電源架 台から抜け出して,負荷回路などへの電力の供給が遮断されるのを防止 することが必要であるため,従来の架台搭載引出し型の電源装置では, 引出しおよび差込み用の操作用取手(1)を備えた電源ユニット(2) の前面パネル(2a)面に,パネル面(2a)外に突出する操作用ノブ(3a) を備えた係止アーム(3b)と,そのスライドケース(3c)からなる引留 め金具(3)を取付け,操作用ノブ(3a)の上方への持上げ操作により, 係止アーム(3b)の先端部を電源架台のシャーシ(4)側に対応位置さ せて設けた係止溝(5)内から引き上げながら,電源ユニット(2)を 電源架台(6)内に収容したのち,操作用ノブ(3a)から手を離して係 止アーム(3b)の先端をり係止溝(5)内に自然落下させることにより, 電源ユニット(2)を電源架台(6)に引留め,また,振動により電源 ユニット(2)の自重による前方への移動が生じてコネクタの接続解除 を招き,負荷回路などへの電力の供給の遮断や不安定を生ずるおそれを 防止するため,ストッパ装置を電源ユニット(2)の仮留め用として用 い,電源架台(6)に固定して設けたL型金具(9)に電源ユニット(2) のケース後面をねじ留めする手段をとっていたが,このような従来の手 49 段では,電源ユニットの差込みと引抜きに当たって多くの時間労力を必 要とし,その程度は電源架台に搭載される電源ユニット数が大となれば なる程大となるという問題があった(第1図(a) (b) 前記ア(イ)) , 。 。
(イ) 「本考案」は,前記問題点を解決し,従来手段によって得ることの できない利点を有する引留め構造の提供を目的とするものであり,第4 図のように操作用取手(11)を水平に位置させることにより,係止アー ム(12)が電源架台(6)側の係止溝(5)から引抜かれ,第5図のよ うに操作用取手(11)を垂直方向に位置させることにより,係止アーム (12)が電源架台(6)側の係止溝(5)内に差込まれる構成を採用し, これの構成により,@操作用取手(11)を水平に倒して電源ユニット(2) を電源架台(6)に差し込んだのち,操作用取手(11)を収容凹部(10) 内に押し込んで垂直に位置させる簡単な操作で,電源ユニット(2)を 電源架台(6)に引留めることができ,また,操作用取手(11)を水平 に倒したのち電源ユニット(2)を引出す簡単な操作で引留めを解除し て,電源ユニット(2)を電源架台(6)から引出すことができ,操作 用取手(11)の操作のみで,電源ユニット(2)の電源架台(6)への 引留めと引留めの解除を行いうるので,一方の手で係止アーム(3b)の 操作用ノブ(3a)を持ち上げながら他方の手により電源ユニット(2) を電源架台(6)に押し込み,押し込みが完了したのを確かめたのち操 作用ノブ(3a)の持ち上げを解除して係止アーム(3b)を係止溝(5) 内に押し込むことにより引留め,一方の手で係止アーム(3b)を持ち上 げたのち,他方の手により操作用取手(1)を操作して電源ユニット(2) を引き出さなければならない従来の手段に比べて操作が簡単になる,A 「本考案」では係止アームの半固定用ばね体(15)により係止アーム(12) の引留め位置,および引留め解除位置が保持されるため,従来のように 振動により係止アーム(12)が上下に踊って引留めが解かれるおそれが 50 ないので,確実な引留めを行いうるなどの効果を奏する(前記ア(エ), (オ))。
? 相違点4の容易想到性の判断?の誤りの有無について 原告は,@甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は, 予め一体とされた後,一体となった状態のまま,ベース2に取り付けられ, 「回路遮断器の取り付け構造」における「回路遮断器」として用いられるも のであり,本件訂正発明の「回路遮断器」とその機能及び用途において相違 するものではないから,本件審決における相違点2の認定には誤りがある, A本件審決における相違点4の容易想到性の判断?は,本件訂正発明と甲1 発明との間に相違点2が存在することを前提とするから,その前提において 誤りがある旨主張する。
ア(ア) そこで検討するに,本件訂正発明の「取付用板側に設けられた母線 とねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグ インタイプの回路遮断器」,「取付用板」と「回路遮断機の取付構造」 との文言からすると,本件訂正発明の「取付用板側に設けられた母線と ねじ無しで接続を行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグイ ンタイプの回路遮断器」における「回路遮断器」は,取付用板に取り付 けられる取付機構を有するものと理解できる。
そして,「回路遮断器」の構成の一部である取付機構は,回路遮断機 能を有する機器そのものと予め一体不可分に作製する場合のほかに,回 路遮断機能を有する機器と別部材の取り付け部材とを一体化して作製す る場合などが考えられる。
しかるところ,本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項2)には,「回 路遮断器」の取り付け機構について,回路遮断機能を有する機器そのも のと予め一体不可分に作製されたものに限定する記載はない。また,本 件明細書においても,そのような限定をする趣旨の記載はない。
51 そうすると,別部材の取付部材を有する回路遮断器は,本件訂正発明 の「回路遮断器」に含まれるものと解すべきである。
(イ) これに対し被告は,本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項2)に は,「回路遮断器を分電盤などの母線が設けられた取付板に取り付ける ための前記回路遮断器と取付板の構造」,「前記回路遮断器の前記母線 とは反対側の負荷側には…ロックレバーを設け」,「前記取付板と前記 回路遮断器とに夫々対応して設けられた嵌合部と被嵌合部」との記載が あること,本件訂正明細書には,本件発明の実施形態として,凹部やロ ックレバーを含む1つの部材として回路遮断器が構成されている実施形 態のみが記載されていることからすると,本件訂正発明は,回路遮断器 を取付板に直接取り付けることを前提にした発明であるといえる旨主張 する。
しかしながら,前記(ア)認定のとおり,本件発明1の「回路遮断器」 は,取付板に取り付けられる取付機構を有するものであるところ,本件 訂正発明2の特許請求の範囲(請求項2)には,「回路遮断器」の取り 付け機構について,回路遮断機能を有する機器そのものと予め一体不可 分に作製されたものに限定する記載はなく,また,本件訂正明細書にお いても,そのような限定をする趣旨の記載はないから,被告の上記主張 は採用することができない。
イ(ア) 次に,甲1には,取り付け部材5に関し,「各分岐開閉器4の下に は夫々取り付け部材5を配置してあり,この取り付け部材5を介して分 岐開閉器4をベース2を取り付けるようになっている。取り付け部材5 は図6に示すように上片5aと両側の側片5bとで略コ字状に形成され ている。取り付け部材5の長手方向の両端には上記引っ掛け凹所8に引 っ掛け係止する引っ掛け爪9を設けてある。両端の引っ掛け爪9のうち 導電バー3側の引っ掛け爪9は変位可能な形状にした係脱用引っ掛け爪 52 9aとなっており,他方の引っ掛け爪9は略剛体になっている。取り付け部材5の上には分岐開閉器4が配置され,両端の引っ掛け爪9を分岐開閉器4の引っ掛け凹所8に引っ掛け係止することで取り付け部材5の上に分岐開閉器4を取り付けてある。」(【0013】),「そして分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で取り付け部材5と一緒に分岐開閉器4が次のように装着される。取り付け部材5をベース2の上に配置して係止爪23が長孔23に挿入され,分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5が導電バー3の方にスライドさせられる。分岐開閉器4と取り付け部材5をスライドさせると,接続端子16が導電バー3に差し込まれて電気的に接続される。…このとき板ばね25の先端部25aが係止孔24に係止して取り付け部材5が動かないように止められる。
このように分岐開閉器4を取り付けたとき,係脱用引っ掛け爪9aが導電バー3側に位置するため,導電バー3と接続端子16の係止にて係脱用引っ掛け爪9aと引っ掛け凹所8との係止が外れにくくなり,分岐開閉器4が外れにくいように取り付けることができる。また板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができる。 ( 」 【0014】)との記載がある。この記載によれば,甲1発明の取り付け部材5と分岐開閉器4は,別部材ではあるが,分岐開閉器4を取り付け部材5に取り付けた状態で,ベース2の上に配置し,取り付け部材5と一緒に分岐開閉器4を導電バー3の方向にスライドさせていくと前記導電バー3が接続端子16に差し込まれていき,ベース2に分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5が取り付けられること,板ばね25の先端部25aの係止を外して上記と逆にスライドさせることで分岐開閉器4と一緒に取り付け部材5を取り外すことができることからすると,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」は,予め一体とされた後一体となった状態 53 のまま,ベース2に取り付けられ,また,一体となった状態のままベー スから取り外されるのであるから,「分岐開閉器4を取り付けた取り付 け部材5」における取り付け部材5は,分岐開閉器4と一体化された分 岐開閉器4の取付機構としての機能を有するものと認められる。
そうすると,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」 は,本件訂正発明の「取付用板側に設けられた母線とねじ無しで接続を 行うためのプラグイン端子を電源側に設けたプラグインタイプの回路遮 断器」における「回路遮断器」に相当するものと認められる。
したがって,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」 は,本件発明の「回路遮断器」に相当するものでないとした本件審決の 認定は誤りであるから,本件審決における相違点4の容易想到性の判断 ?も誤りである。
(イ) これに対し被告は,@甲1の記載によれば,甲1発明は,取り付け 部材を介在させて分岐開閉器をベースに取り付ける場合に生じる問題 (【0003】)を課題とし,取り付け部材を介在させて分岐開閉器を ベースに取り付けることを前提にした発明である,A甲1には分岐開閉 器が同じ構成で取り付け部材の高さが違う実施形態が記載されており, 取り付け部材は,分岐開閉器をベースに取り付けるためのスペーサとし て機能する別部材であるから,取り付け部材は,回路遮断器の一部を構 成するものではない,B甲1発明において,分岐開閉器は協約形ブレー カであり,取り付け部材はそれに用いられる分岐取付台であるから, 「分 岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」を本件発明の回路遮断器とみ なすことはできないなどとして,甲1発明の「分岐開閉器4を取り付け た取り付け部材5」は,本件発明の「回路遮断器」に相当するものとい えない旨主張する。
しかしながら,前記(1)イ認定の甲1の開示事項によれば,甲1には, 54 「本発明」は,差し込み式の分岐開閉器の取り付けがしやすく,しかも取り付けた後の分岐開閉器が外れにくい分電盤を提供することを課題とし,本件審決認定の甲1発明は,「請求項4の分電盤」に係る構成を採用することにより,分岐開閉器の接続端子が導電バーから外れる方向に取り付け部材が移動するのを抑えることができ,分岐開閉器を強固に固定できるという効果を奏するとともに,「請求項5の分電盤」に係る構成を採用することにより,弾性体を変形させることにより取り付け部材をベースから外すことができ,分岐開閉器の交換作業が容易にできるという効果を奏することが開示されているものと認められることに照らすと,甲1発明は,取り付け部材を介在させて分岐開閉器をベースに取り付ける場合に生じる問題のみを課題としたものとはいえない。
次に,甲1には,分岐開閉器の一定の寸法に限定することを示す記載や導電バーを分岐開閉器の寸法に合わせた位置に配置することができないことを示す記載はなく,取り付け部材が,所定形状の分岐開閉器を導電バーの異なる高さに合わせるためのスペーサとして機能することを示す記載はない。また,前記(ア)認定のとおり,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」における取り付け部材5は,分岐開閉器4と別部材であるが,分岐開閉器4と一体化された分岐開閉器4の取付機構としての機能を有するものであるから,取り付け部材5が別部材であることは,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」が本件発明の「回路遮断器」に該当しないことの根拠となるものではない。
さらに,甲1には,甲1発明において分岐開閉器は協約形ブレーカであり,取り付け部材はそれに用いられる分岐取付台であることについての記載はないし,また,仮に分岐開閉器と取り付け部材がそのような関係にあるからといって,「分岐開閉器4を取り付けた取り付け部材5」が本件発明の「回路遮断器」に該当しないことの根拠となるものではな 55 い。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
ウ 以上のとおり,本件審決における相違点4の容易想到性の判断?には誤 りがある。
? 相違点4の容易想到性の判断?の誤りの有無について 原告は,@甲1及び2に接した当業者においては,甲1発明及び甲2発明 は技術分野,課題及び作用・機能において共通すること,甲1発明において は,プラグコネクタの接続を解除する方向に分岐開閉器をスライドさせる際 においては,板ばねの先端部25aが底面から突出しない状態に維持(ロッ クを外した状態に維持)させなければならないという課題があることを認識 するといえるから,甲1発明において,この課題を解決し,分岐開閉器の取 り外しを容易にするために,甲1発明の板ばねに係る構成部分に甲2発明の 係止アーム及び操作用取手(ロックを外した状態を維持できる構造)を適用 することを試みる動機付けがあるといえる,A甲1発明に甲2発明を適用す るに当たっては,甲2に記載された機器の底面から突出することによって機 器のスライドを防止するための部材を,突出する状態と突出しない状態のそ れぞれにおいて択一的に選択「保持」可能な構成とするという技術的思想を 甲1発明に適用すれば足りるものであり,例えば,別紙原告主張書面記載の 図1ないし図5に示した構成が考えられ,甲2に記載された選択保持可能と いう技術的思想を甲1発明に適用することは可能であり,かつ,その適用に おいて特段の技術的困難はない,Bそうすると,甲1及び甲2に接した当業 者は,甲1発明において,プラグコネクタの接続を解除する方向に分岐開閉 器をスライドさせる際に,板ばねの先端部25aが底面から突出しない状態 に維持(ロックを外した状態に維持)させなければならないという課題があ ることを認識し,この課題を解決し,分岐開閉器の取り外しを容易にするた めに,甲1発明の板ばねに係る構成部分に甲2発明の係止アーム及び操作用 56 取手(ロックを外した状態を維持できる構造)を適用し,相違点4に係る本件訂正発明の構成(本件訂正発明におけるレバーは,「前記突出部が回路遮断器の取付面から突出しない状態で保持されるように構成され」る構成)とすることを容易に想到することができたものである旨主張する。
ア しかしながら,甲1には,甲1発明の板ばねの係止が解除された状態(上 方に撓んだ状態)で保持されることについての記載や示唆はない。また, 甲1の【0014】の記載によれば,甲1発明においては,取り付け部材 5の側片5bの下面から板ばね25が自動的に突出してベース2の係止 孔24に係止することにより取り外し方向の規制が行われるから,取り外 し方向の規制を行う際に,規制部材を突出した位置に保持する必要もない。
そうすると,甲1発明において,甲2発明の構造を適用して,機器の底 面から突出して機器のスライドを防止するための部材を,操作用取手を用 いることで突出する状態と突出しない状態のそれぞれにおいて択一的に 選択保持可能な構成とするという動機付けがあるものと認めることはで きない。
イ また,仮に原告が主張するように甲1発明において,プラグコネクタの 接続を解除する方向に分岐開閉器をスライドさせる際においては,板ばね の先端部25aが底面から突出しない状態に維持(ロックを外した状態に 維持)させなければならないという課題があることを認識し,当業者が, 甲1発明において,甲2発明の係止アーム及び操作用取手(ロックを外し た状態を維持できる構造)の構成を適用することを検討しようとしたとし ても,具体的にどのように適用すべきかを容易に想い至ることはできない というべきであるから,結局,甲1発明に甲2発明の上記構成を適用する 動機付けがあるものと認めることはできない。
この点に関し,原告は,甲1発明に甲2発明の上記構成を適用する具体 例として,別紙原告主張図面の図1ないし5で示した構成が考えられる旨 57 主張するが,板ばねや分岐開閉器のような小さな部材にさらに操作用取手 や突起等を設け,その精度を保つ構造とすることを想起することが容易で あったものとは考え難い。
ウ 以上によれば,甲1発明における板ばねに係る構成部分に,甲2に記載 された発明の係止アーム及び操作用取手(ロックを外した状態を維持でき る構造)を適用する動機付けがあるものと認めることはできないから,本 件審決における相違点3の容易想到性?の判断に誤りはない。
したがって,原告の前記主張は理由がない。
? 小括 以上のとおり,本件審決における相違点4の容易想到性?の判断に誤りは あるが,相違点4の容易相当性?の判断について誤りはないから,その余の 点について判断するまでもなく,本件訂正発明は,甲1発明及び甲2発明に 基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはでき ない。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の 取消事由は理由がない。
3 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がないから,本件審決を取り消す べき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
追加
58 裁判官本吉弘行裁判官岡山忠広59 (別紙1)明細書図面【図1】【図2】【図3】【図4】60 【図5】【図6】61 (別紙2)甲1図面【図1】【図2】【図3】62 【図4】【図5】63 【図6】【図7】64 【図8】【図9】65 【図10】【図11】66 【図12】【図13】67 【図14】【図15】68 【図16】69 (別紙3)甲2図面【第1図】【第2図】70 【第3図】【第4図】【第5図】71 (別紙)原告主張図面【図1】72 【図2】73 【図3】【図4】74 【図5】75
裁判長裁判官 大鷹一郎
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