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関連審決 無効2018-800048
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事件 令和 1年 (行ケ) 10075号 審決取消請求事件

原告 株式会社ユポ・コーポレーション
同訴訟代理人弁護士 蜑コ彰彦 篠田淳郎
被告 ヨウルチョン ケミカ ル カンパニー,リミテッド
同訴訟代理人弁護士 山口健司 石神恒太郎 佐藤信吾
同訴訟復代理人弁護士 薄葉健司
同訴訟代理人弁理士 胡田尚則 橋正俊
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/05/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1(1) 特許庁が無効2018−800048号事件について平成31年4月15日にした審決のうち,特許第5934355号の請求項7及び8に係る部分を取り消す。
(2) 原告のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
3 被告に対し,この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
-1-事実及び理由第1 請求特許庁が無効2018−800048号事件について平成31年4月15日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要1 特許庁における手続の経緯等? 被告は,平成24年6月29日,発明の名称を「ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルム」とする発明について特許出願をし(特願2014−520113。優先権主張:平成23年7月15日,韓国),平成28年5月13日,設定の登録を受けた(特許第5934355号。甲37。請求項の数8。以下「本件特許」という。。
)(2) 原告は,平成30年4月26日,請求項6ないし8についての無効審判を請求し,無効2018−800048号事件として係属した。被告は,平成30年8月14日付けの訂正請求書により,請求項7及び8からなる一群の請求項を訂正する旨の訂正請求(甲29。以下「本件訂正」という。)をした。
(3) 特許庁は,平成31年4月15日,本件訂正を認めた上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月25日,原告に送達された。
(4) 原告は,令和元年5月24日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項6ないし8の記載は,以下のとおりである(甲29)。以下,各請求項に係る発明を「本件発明6」などといい,その明細書を,図面を含めて,「本件明細書」という(甲37) なお,。 文中の「/」は,原文の改行箇所を示す(以下同じ。。
)【請求項6】第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレ-2-フィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,/前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,/前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,/前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に熱封着樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,/前記熱封着樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,及び/前記第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップと,/を含み,/前記第2の冷却ステップは,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることであり,/前記冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有することを特徴とする,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法
【請求項7】第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層からなるポリオレフィンフィルムの第1のスキン外層上に熱封着樹脂層がさらに形成されたポリオレフィン延伸フィルムであって,/第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層はともに縦延伸されたものであり,/第1のスキン外層,コア層,第2のスキン内層および熱封着樹脂層はともに横延伸されたものであり,前記熱封着樹脂層は縦延伸されていないことを特徴とする,熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム。
【請求項8】前記第1のスキン外層は,ベース樹脂としてポリエチレン系樹脂を含み,/前記コア層は,ベース樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含み,/前記第2のスキン内層は,ベース樹脂としてポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選択された一種以上を含み,/前記熱封着樹脂層は,熱封着樹脂層の原料としてエチレンビニルアセテート,エチレンメチルアセテート,エチレンメタクリル酸,エチレングリコール,エチレン酸ターポリマー,及びエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマーよりなる群から選択された一種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム。
3 本件審決の理由の要旨-3-? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件訂正を認めた上で,@本件発明6ないし8は,下記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない,A本件発明6ないし8は,下記イの引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない,B本件発明7は,下記ウの引用例3の請求項1に係る発明(以下「先願発明1」という。)と,本件発明8は,同請求項4に係る発明(以下「先願発明4」という。)と,同一の発明に該当するものではない,C本件発明6は,実施可能要件に適合する,D本件発明6は,サポート要件に適合する,E本件発明6は,明確性要件に適合する,などというものである。
ア 引用例1:特開平1−182040号公報(甲1)イ 引用例2:特開平3−260689号公報(甲2)ウ 引用例3:特許第5807070号公報(甲11。出願人:被告,出願日:平成24年1月6日,優先日:平成23年1月6日,優先権主張国:韓国)(2) 本件審決が認定した引用発明1A及び1B,本件発明6と引用発明1Aとの一致点及び相違点,本件発明7と引用発明1Bとの一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 引用例1に記載された発明引用発明1Aメルトインデックス(MI)0.8のホモポリプロピレン(融点164℃)90重量%と高密度ポリエチレン8重量%の混合物(A)と,MI4.0のポリプロピレン87重量%,高密度ポリエチレン10重量%および平均粒径1.5ミクロンの重質炭酸カルシウム粉末3重量%の混合物(B)を,それぞれ別々の押出機で溶融混練後,一台のダイに供給し,ダイ内で三層(B/A/B)に積層し,ついで250℃でダイよりシート状に共押出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得,このシートを,155℃に加熱後,縦方向に5倍延伸して5倍延伸シートを得,/MI-4-4.0のホモポリプロピレン(D)と,MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し,ダイ内で積層して共押出したシートを上記5倍延伸シートの両面に(D)が外側になるように積層して七層積層物を得,ついでこの七層積層物を185℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行なって,七層のフィルムを得る多層複合フィルムの製造方法
引用発明1Bメルトインデックス(MI)0.8のホモポリプロピレン(融点164℃)90重量%と高密度ポリエチレン8重量%の混合物(A)と,MI4.0のポリプロピレン87重量%,高密度ポリエチレン10重量%および平均粒径1.5ミクロンの重質炭酸カルシウム粉末3重量%の混合物(B)を,それぞれ別々の押出機で溶融混練後,一台のダイに供給し,ダイ内で三層(B/A/B)に積層し,ついで250℃でダイよりシート状に共押出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得,このシートを,155℃に加熱後,縦方向に5倍延伸して5倍延伸シートを得,/MI4.0のホモポリプロピレン(D)と,MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し,ダイ内で積層して共押出したシートを上記5倍延伸シートの両面に(D)が外側になるように積層して七層積層物を得,ついでこの七層積層物を185℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行なって得た七層のフィルム。
イ 本件発明6と引用発明1Aとの一致点及び相違点(一致点)第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,/前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,/前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,/前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に樹脂-5-層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,/前記樹脂層が形成されたフィルムを横延伸する横延伸ステップと,/を含む,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法
(相違点1−1)「第2の押出ステップ」において,「形成」される「樹脂層」が,本件発明6においては,「熱封着樹脂層」であるのに対し,引用発明1Aにおいては,「MI4.0のホモポリプロピレン(D)と,MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し,ダイ内で積層して共押出したシート」(以下「(D)と(C)の積層シート」という。)であって,「熱封着樹脂層」であるかどうかの特定がない点。
(相違点1−2)本件発明6においては,「第2の押出ステップ」と「横延伸ステップ」の間に「熱封着樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ」を有しているのに対し,引用発明1Aにおいては,そのようなステップを有するかどうかの特定がない点。
(相違点1−3)本件発明6においては,「第2の冷却ステップ」は,「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることであり,/前記冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有する」ものであるのに対し,引用発明1Aにおいては,そのような特定がない点。
ウ 本件発明7と引用発明1Bとの一致点及び相違点(一致点)第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層からなるポリオレフィンフィルムの第1のスキン外層上に樹脂層がさらに形成されたポリオレフィン延伸フィルムであって,/第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層はともに縦延伸-6-されたものであり,/第1のスキン外層,コア層,第2のスキン内層および樹脂層はともに横延伸されたものであり,前記樹脂層は縦延伸されていないポリオレフィン延伸フィルム。
(相違点1−4)「樹脂層」に関して,本件発明7においては,「熱封着樹脂層」であるのに対し,引用発明1Bにおいては,「MI4.0のホモポリプロピレン(D)と,MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し,ダイ内で積層して共押出したシート」(D)と(C)の積層シート)であ(って,「熱封着樹脂層」であるかどうかの特定がない点。
(相違点1−5)用途に関して,本件発明7においては,「熱ラミネート用」であるのに対し,引用発明1Bにおいては,そのような特定がない点。
(3) 本件審決が認定した引用発明2A及び2B,本件発明6と引用発明2Aとの一致点及び相違点,本件発明7と引用発明2Bとの一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 引用例2に記載された発明引用発明2Aメルトフローレート(MFR)0.8,融点164℃のホモポリプロピレン70重量%,融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し,270℃に設定した押出機にて混練した後,シート状に押し出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得,/次いで,このシートを145℃に加熱した後,縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸シートを得,/一方,MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と,融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を,それぞれ別の押出機を用いて270℃の-7-温度で溶融混練した後,一台のダイに供給して,該ダイ内で積層(B層−C層)した後,この積層物(B層−C層)をダイよりフィルム状に押し出して,前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し,これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して,該積層構造フィルムのC層側に,0.3mm間隔(80線),谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工し,/他方,上記(B)の混合物を,前記A層のシートの表面側にラミネートし,紙状層(B層)を形成して,四層構造の積層フィルムを得,/次いで,この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後,横方向に7倍延伸し,次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後,これを55℃まで冷却した後,耳部をスリットして,(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙を得る方法。
引用発明2Bメルトフローレート(MFR)0.8,融点164℃のホモポリプロピレン70重量%,融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し,270℃に設定した押出機にて混練した後,シート状に押し出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得,/次いで,このシートを145℃に加熱した後,縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸シートを得,/一方,MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と,融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を,それぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後,一台のダイに供給して,該ダイ内で積層(B層−C層)した後,この積層物(B層−C層)をダイよりフィルム状に押し出して,前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し,これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して,該積層構造フィルムのC層側に,0.3mm間隔(80線),谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工し,/他方,上記(B)の混合物を,前記A層のシートの表面-8-側にラミネートし,紙状層(B層)を形成して,四層構造の積層フィルムを得,/次いで,この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後,横方向に7倍延伸し,次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後,これを55℃まで冷却した後,耳部をスリットして製造された,(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙。
イ 本件発明6と引用発明2Aとの一致点及び相違点(一致点)ポリオレフィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,/前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,/前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,/前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に熱封着樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,/前記熱封着樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,及び/前記第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップと,/を含む,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法
(相違点2−1)「ポリオレフィンフィルム」に関して,本件発明6においては,「第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルム」であるのに対して,引用発明2Aにおいては,「メルトフローレート(MFR)0.8,融点164℃のホモポリプロピレン70重量%,融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し,270℃に設定した押出機にて混練した後,シート状に押し出し」た一層のものである点。
(相違点2−2)「熱封着樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ」に関して,本件発明6においては,「第2の冷却ステップは,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることであり,/前記冷却ロー-9-ルに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有する」と特定されているのに対し,引用発明2Aにおいては,「これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して,該積層構造フィルムのC層側に,0.3mm間隔(80線),谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工し」と特定されている点。
ウ 本件発明7と引用発明2Bとの一致点および相違点(一致点)ポリオレフィンフィルム上に熱封着樹脂層がさらに形成されたポリオレフィン延伸フィルムであって,/ポリオレフィンフィルムは縦延伸されたものであり,/ポリオレフィンフィルムおよび熱封着樹脂層はともに横延伸されたものであり,前記熱封着樹脂層は縦延伸されていないポリオレフィン延伸フィルム。
(相違点2−3)「ポリオレフィンフィルム」に関して,本件発明7においては,「第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルム」であるのに対して,引用発明2Bにおいては,「メルトフローレート(MFR)0.8,融点164℃のホモポリプロピレン70重量%,融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し,270℃に設定した押出機にて混練した後,シート状に押し出し」た一層のものである点。
(相違点2−4)用途に関して,本件発明7においては,「熱ラミネート用」であるのに対し,引用発明2Bにおいては,特定されていない点。
(4) 本件審決が認定した先願発明1,4は次のとおりである。
ア 先願発明1多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;- 10 -前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップ;前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および,前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップを含み,前記第1押出成形ステップは,前記多層ポリオレフィンフィルムが,スキン外層,コア層およびスキン内層を含むように遂行され,前記縦方向延伸ステップは,前記スキン外層,コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって,前記第2押出成形ステップでは,ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法
イ 先願発明4前記スキン外層は,ポリプロピレン(PP)からなり,前記コア層は,ポリプロピレン(PP)からなり,前記スキン内層は,ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる,請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フイルムの製造方法
(5) 本件審決後に確定した甲21による訂正後の特許第5807070号の請求項1及び請求項4は,次のとおりである(以下,訂正後の請求項1に係る発明を「訂正先願発明1」,訂正後の請求項4に係る発明を「訂正先願発明4」という。訂正箇所には下線部を付した。。
)ア 訂正先願発明1多層ポリオレフィンフィルムの押出成形を遂行する第1押出成形ステップ;前記第1押出成形されたフィルムを冷却させる第1冷却ステップ;- 11 -前記第1冷却されたフィルムを縦方向に延伸する縦方向延伸ステップ;前記縦方向延伸されたフィルム上に1層以上のヒートシール樹脂層がラミネーションされるように押出成形する第2押出成形ステップであって,当該押出成形が前記縦方向延伸ステップ後に行われるインライン押出である,第2押出成形ステップ;前記ヒートシール樹脂層がラミネーションされたフィルムを冷却する第2冷却ステップ;および,前記第2冷却されたフィルムを横方向に延伸する横方向延伸ステップを含み,前記第1押出成形ステップは,前記多層ポリオレフィンフィルムが,スキン外層,コア層およびスキン内層を含むように遂行され,前記縦方向延伸ステップは,前記スキン外層,コア層およびスキン内層を含む多層ポリオレフィンフィルムを縦延伸するものであって,前記第2押出成形ステップでは,ヒートシール樹脂層が前記スキン外層およびスキン内層からなる群より選択された一つ以上にラミネーションされるように遂行される多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法
イ 訂正先願発明4前記スキン外層は,ポリプロピレン(PP)からなり,前記コア層は,ポリプロピレン(PP)からなり,前記スキン内層は,ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる,請求項3に記載の多層ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法
ウ なお,請求項4が引用する請求項3は,以下のとおりである。
前記第2押出成形ステップは,前記ヒートシール樹脂層として,メタロセン樹脂,エチレン酢酸ビニル,エチレン酢酸メチル,エチレンメタクリル酸,およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する,請求項1または2に記載の多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法
- 12 -4 取消事由(1) 本件発明6ないし8に係る引用例1に基づく新規性及び進歩性判断の誤り(取消事由1)(2) 本件発明6ないし8に係る引用例2に基づく進歩性判断の誤り(取消事由2)(3) 本件発明7,8に係る引用例3に基づくダブルパテントの判断の誤り(取消事由3)(4) 本件発明6に係る実施可能要件の判断の誤り(取消事由4)(5) 本件発明6に係るサポート要件の判断の誤り(取消事由5)(6) 本件発明6に係る明確性要件の判断の誤り(取消事由6)第3 当事者の主張1 取消事由1(本件発明6ないし8に係る引用例1に基づく新規性及び進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件発明6についてア 相違点1−1相違点1−1の認定について本件発明6の「熱封着樹脂層」とは,特許請求の範囲の記載からすると,熱で封をして接着する性質を有する樹脂層一般をいうものと解釈され,本件明細書を参酌しても,熱で溶融して接着する性質を有する樹脂層一般をいうものと解釈される。そして,この樹脂層一般には,ポリオレフィン樹脂を原料とする樹脂層も含まれることになる。
他方,引用発明1Aも,3層(B/A/B)に積層される(C)の原料に,ポリプロピレン及び高密度ポリエチレンとのポリオレフィン樹脂が使用されており,その上に積層される(D)の原料もホモポリプロピレン樹脂が使用されている。樹脂が高温になると軟化して粘り気のある状態になることは技術常識であるから,ポリプロピレン,高密度ポリエチレン,ホモポリプロピレンも熱が加えられると溶融して- 13 -柔らかくなる性質を有することは明らかである。
したがって,(C)(D)は,いずれも,本件発明6の「熱封着樹脂層」に含まれ,るから,相違点1−1は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1−1が相違点であるとしても,当業者が発揮する通常の創作能力をもって容易に乗り越えられるものである。
合成紙をインモールド用ラベルとして用いることは技術常識であり,インモールドラベルでは,表面層にヒートシール性を有する接着層を必然的に用いることになるので,合成紙として用いる引用発明1Aをインモールド用ラベルとして熱封着樹脂層を用いることは,当業者であれば容易に想到できる。
よって,相違点1−1は,引用発明1Aより容易に想到することができる。
イ 相違点1−2「フィルムを冷却する第2冷却ステップ」は引用例1に記載されているに等しい事項であるから,相違点1−2は実質的な相違点ではないか,当業者の設計事項である。
ウ 相違点1−3引用例1記載の発明は,ポリプロピレン系樹脂多層複合フィルムを「ポスター」,「インクジェット記録紙」や「熱転写被記録基材」に使用する旨が記載されるとおり,合成紙に使用可能な発明である。合成紙をインモールド用ラベルに用いてエンボス加工を行うことは技術常識であって,インモールドラベルのエンボス加工が,凹凸構造が5μm〜30μmの深さを有するエンボス模様が形成された冷却ロールを用いて行われることも周知である。
本件明細書をみても,「凹凸構造が5μm〜30μmの深さを有するエンボス模様が形成された冷却ロール」を用いる点に,技術的意義はなく,数値範囲は公知の範囲を適宜定めたものにすぎない。
そうすると,引用例1の合成紙の発明に接した当業者が,技術常識及び周知技術に基づき,相違点1−3を容易に想到できることは明らかである。
- 14 -エ 小括以上によれば,相違点1−1,1−2の認定は誤りであり,仮にこれらの相違点が存在するとしても,当業者は,引用発明1Aから相違点1−1,1−2及び1−3を容易に想到できる。
(2) 本件発明7についてア 相違点1−4引用発明1Aの(D)と(C)の積層シートは,いずれも,本件発明の「熱封着樹脂層」であるから,相違点1−4は,実質的な相違点とならない。
仮に,「熱封着樹脂層」と特定されていない点をもって相違点1−4が存在するとの前提に立っても,本件明細書の記載や技術常識に鑑みるなら,この相違点は設計事項にすぎず,当業者が容易に想到できるものである。
イ 相違点1−5本件明細書【0045】に「熱ラミネーション(熱封着)」と記載があるとおり,「熱ラミネート」と「熱封着」とは同義である。したがって,「熱ラミネート」という用途は,「熱封着樹脂層」を設けることで達成され,本件発明7の「熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム」は,「熱封着樹脂層が形成されたポリオレフィン延伸フィルム」を意味している。そうすると,相違点1−5は相違点1−4と同じであるから,実質的な相違点とはならない。
仮に「熱ラミネート用」と特定されていない点をもって相違点1−5が存在するとの前提に立っても,本件明細書の記載や技術常識に鑑みるなら,当業者が容易に想到できるものである。
ウ 小括以上によれば,相違点1−4,1−5の認定は誤りであり,仮にこれらの相違点が存在するとしても,当業者は,引用発明1Bから相違点1−4及び1−5を容易に想到できる。
(3) 本件発明8について- 15 -本件発明7は,請求項7を直接引用し,本件発明7の発明特定事項を全て有するものであるから,本件発明7と同様に,引用発明1Bと同一であるか,引用発明1Bから容易に発明をすることができたものである。
〔被告の主張〕(1) 本件発明6についてア 相違点1−1相違点1−1の認定について請求項6の記載によれば,「熱封着樹脂層」は,「第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルム」の「第1のスキン層上」に別途形成される層であることから,「熱封着樹脂層」と「第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルム」とは,異なるものである。
そして, 熱封着樹脂層」「 に関して本件明細書の記載を参酌すると,本件発明6は,「熱ラミネート用樹脂層の形成の際に,融点の低い樹脂の場合であっても押出による連続工程で積層形成が可能になるようにすることで,製造工程が単調で製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができ,また層間接着力に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供する」【0014】( )との課題を前提とするものであるから,当業者は,本件発明6の「熱封着樹脂層」を,当該課題とは無関係に,単に,熱で溶融して柔らかくなって接着する性質を有する樹脂層一般と理解することはなく,低温の熱によって熱ラミネーション(熱封着)をするための樹脂層,であり,実際に「熱封着」のために使用する樹脂層と理解する。
他方,引用発明1Aは,プロピレン系樹脂多層複合フィルムにおいて,光沢度の改良,不透明度の低下との課題を,「表面層を結晶化度の高い(50〜85%)プロピレンのホモポリマーもしくはプロピレン系ランダム共重合体を用いることにより複合フィルムの透明性,光沢を向上させる」「表面層(D)は,光沢度を複合フィル,ムに付与するために結晶性のプロピレンのホモ重合体を用いる」等の手段を採用す- 16 -ることにより解決する発明であるから,本件発明6の課題を全く認識していない。
そして,引用例1においては,引用発明1Aの「(D)と(C)の積層シート」について,熱封着のために使用する樹脂層であることを示す記載はない。また,引用例1には,(C)層,(D)層とは別に,低温ヒートシール性フィルムを表面層の一方に設けることとされており,(C)層,(D)層は,低温ヒートシール性フィルムの機能や用途を有しない層であることが明らかである。
したがって,(D)と(C)の積層シート」は,本件発明6の「熱封着樹脂層」で「はなく,相違点1−1は,実質的相違点である。
相違点1−1の容易想到性について上記のとおり,引用例1には,(C)層,(D)層とは別に,低温ヒートシール性フィルムを表面層の一方に設けることとされているから,当業者は,引用発明1Aの「(D)と(C)の積層シート」を「熱封着樹脂層」に変更する動機付けはない。むしろ,別途低温ヒートシール性フィルムを設けるとされているのであるから,「(D)と(C)の積層シート」を「熱封着樹脂層」に変更することには,阻害要因があるというべきである。
よって,当業者は,相違点1−1に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
イ 相違点1−2引用例1には,「フィルムを冷却する第2冷却ステップ」について何ら記載がなく,記載されているに等しいともいえないから,相違点1−2は実質的相違点である。
ウ 相違点1−3本件発明6の「第2冷却ステップ」が「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることであり,前記冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有する」との発明特定事項は,横延伸されたフィルムが巻取ロールに巻き取られる工程で,しわが寄り,しわが取れにくくなるとの課題を解決するためのものであるところ,引用例1には,かかる課題の認識はない。
- 17 -そもそも,引用例1には,第2の冷却ステップの記載がなく,当該ステップが「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させる」ことや「冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有する」ようにすることについて,何ら動機付けとなる記載はない。
したがって,当業者は,引用発明1Aに基づき,相違点1−3に係る構成を容易に想到することができたとはいえない。
(2) 本件発明7についてア 相違点1−4本件発明7の「熱封着樹脂層」について,低温の熱によって熱ラミネーション(熱封着)をするための樹脂層であり,実際に「熱封着」のために使用する樹脂層と理解すべきことは,前記(1) のとおりであるから,相違点1−4は,実質的相違点である。
また,引用発明1Aの「(D)と(C)の積層シート」を「熱封着樹脂層」に変更する動機付けはなく,むしろ阻害要因があることは,前記のとおりであるから,当業者は,相違点1−4に係る構成を容易に想到することができたとはいえない。
イ 相違点1−5相違点1−5については,相違点1−4と同様に実質的相違点である。
また,引用発明1Aの「(D)と(C)の積層シート」を「熱封着樹脂層」に変更する動機付けはなく,むしろ阻害要因があることは,相違点1−4と同様であるから,当業者は,相違点1−5に係る構成を容易に想到することができたとはいえない。
(3) 本件発明8について本件発明8は,請求項7を直接引用し,本件発明7の発明特定事項を全て有するものであるから,本件発明7と同様に,引用発明1Bとは異なり,また,引用発明1Bに基づいて当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
2 取消事由2(本件発明6ないし8に係る引用例2に基づく進歩性判断の誤り)- 18 -について〔原告の主張〕(1) 本件発明6についてア 相違点2−1インモールド用ラベルの基材層として3層以上の構造の基材層を使用することは,引用例2が前提とする従来技術(甲33)に記載されており,3層以上を共押出で製造することや,最後の1層は別途ラミネートする製法を選択できることも記載されている。
加えて,引用例2にも,基材層を積層体とすることが当然の前提とされており,その形成方法に関しては一段階の押出が前提とされているので,基材層を積層体とする場合には,共押出を採用することが想定されている。
したがって,引用発明2Aには,3層構造の基材層を使用する動機付けがある。
また,甲3によれば,OPPフィルムにおいてコア層,スキン外層,スキン内層を用いることは技術常識であり,引用例1,甲34にも,合成紙において基材を3層延伸フィルムとしたものとすることの記載がある。
よって,相違点2−1は,当業者が容易に想到できたものである。
イ 相違点2−2本件発明6の「空気チャンネル」とは,本件明細書の記載を参酌するなら,樹脂層40に形成される凹凸構造をいうにすぎないものと要旨認定されるべきである。
引用例2にはかかる構成が記載されているから,相違点2−2は実質的な相違点とはならない。仮に相違点になるとの前提に立っても,本件発明6は所定の深さの凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に凹凸構造を形成するという内容であって,まさにインモールド用ラベルで必須とされるエンボス加工そのものである。
そして,凹凸構造を5μm〜30μmの深さを有するようにする技術的意義はないから,相違点2−2は,引用発明2Aに基づき当業者が容易に想到できる設計事項にすぎない。
- 19 -ウ 小括以上によれば,相違点2−2の認定は誤りであり,仮に相違点2−2が存在するとしても,当業者は,引用発明2Aから相違点2−1及び2−2を容易に想到できる。
(2) 本件発明7についてア 相違点2−3相違点2−3は,相違点2−1と同じ内容である。相違点2−3が,技術常識の付加にすぎないものであって当業者にとって容易想到(設計事項そのもの)であることは,相違点2−1と同様である。
イ 相違点2−4相違点2−4は,相違点1−5と同じ内容であり,本件発明7の「熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム」は,結局「熱封着樹脂層が・・・形成されたポリオレフィン延伸フィルム」を意味する。
他方,引用発明2Bは,「熱封着樹脂層が・・・形成されたポリオレフィン延伸フィルム」であるから,相違点2−4は実質的な相違点とはならない。
仮に,「熱ラミネート用」と特定されていない点をもって相違点2−4が存在するとの前提に立っても,本件明細書の記載や技術常識に鑑みると,この相違点は当業者の設計事項にすぎない。
ウ 小括以上によれば,相違点2−3の認定は誤りであり,仮に相違点2−3が存在するとしても,当業者は,引用発明2Bから相違点2−3及び2−4を容易に想到できる。
(3) 本件発明8について本件発明8は,請求項7を直接引用し,本件発明7の発明特定事項を全て有するものであるから,本件発明7と同様に,引用発明2Bから容易に発明をすることができたものである。
- 20 -〔被告の主張〕(1) 本件発明6についてア 相違点2−1引用例2には,単に「基材層は…二層以上の積層された構造であってもよい」と記載されているにすぎないし,甲33にも,単に3層以上とすることが記載されているにすぎないから,あえて「3層」とする動機付けはないし,相違点2−1に係る発明特定事項である「第1のスキン層と,コア層,および第2のスキン層とを含む」構造の3層の積層された構造を採用する動機付けはない。
また,引用例2には,本件発明6のように第1の押出段階の中で,3層を共に押し出して形成する積層構造であるとは記載されておらず,なおかつ熱封着樹脂層に対して単独で押出して横方向に延伸することができるとは記載されていないことからも,引用発明2Aにおいて,基材層として,「第1のスキン層と,コア層,および第2のスキン層とを含む」構造を採用する動機付けはない。
甲3によっても,合成紙一般について,基材を3層延伸フィルムとすることが技術常識であるとは認められず,ましてやインモールド用ラベルに用いる合成紙について基材を3層延伸フィルムとすることが技術常識であるとはいえない。
よって,当業者は,相違点2−1に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
イ 相違点2−2本件発明6の「空気チャンネル」は,樹脂層の形成の際,従来のようにコーティング工程等によらずに,縦延伸後の連続的な追加の押出工程(第2の押出ステップ)により樹脂層を積層するため,巻取時にしわが寄り,そのしわが取れにくくなることがあり,特に,樹脂層の原料として,融点の低い樹脂を用いた場合,しわ寄り現象がひどくなる傾向があるとの課題を解決するため,樹脂層に「空気流れ通路」を形成し,「巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する」ものであり,これにより,外観性が確保されるものであり,空気を外部に抜けさせるために樹脂- 21 -層に形成される「空気流れ通路」と認定されるべきものである。
他方,引用発明2Aの「逆グラビア型のパターン」は,「稜線で囲まれた独立した凹部構造を多数備える逆グラビア型パターン」であって,ガスや空気を少量ずつ凹部内に分散した形で封じ込めるものであり,各部屋の気体が自由に移動できる凸型の正グラビア型のパターンではないため,本件発明6の「空気流れ通路」に相当するものではない。
したがって,相違点2−2は,実質的相違点である。
引用例2においては,「逆グラビア型のパターン」を,各部屋の気体が自由に移動できる凸型の正グラビア型のパターンにすると,発明の効果を発揮することができないと記載されているから,引用発明2Aの「逆グラビア型のパターン」を空気を外部に抜けさせるために樹脂層に形成される「空気流れ通路」である「空気チャンネル」とすることには,阻害要因がある。
よって,当業者は,相違点2−2に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
(2) 本件発明7についてア 相違点2−3相違点2−3は,相違点2−1と同じであるから,実質的相違点であり,また,当業者が容易に想到できたものではない。
イ 相違点2−4相違点2−4は,相違点1−5と同じであるから,当業者が容易に想到できたものではない。
(3) 本件発明8について本件発明8は,請求項7を直接引用し,本件発明7の発明特定事項を全て有するものであるから,本件発明7と同様に,引用発明2Bに基づいて当業者が容易に想到できたものであるともいえない。
3 取消事由3(本件発明7,8に係る引用例3に基づくダブルパテントの判断の誤り)について- 22 -〔原告の主張〕(1) 本件発明7についてア 訂正先願発明1の製造方法で得られる多層ポリオレフィン延伸フィルム(以下「先願発明1フィルム」という。)は,以下の構造を有する。
(1a) スキン内層,コア層及びスキン外層から構成される多層ポリオレフィンフィルムのスキン内層上にヒートシール樹脂層がラミネーションされた多層ポリオレフィン延伸フィルム(4層構造)であって,(1b) スキン内層,コア層及びスキン外層は縦延伸されたものであり,(1c) スキン内層,コア層,スキン外層及びヒートシール樹脂層は共に横延伸されたものであり,ヒートシール樹脂層は縦延伸されていない(1d) 多層ポリオレフィン延伸フィルムイ 本件発明7は,以下の内容である。
7A 第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層からなるポリオレフィンフィルムの第1のスキン外層上に熱封着樹脂層がさらに形成されたポリオレフィン延伸フィルムであって,7B 第1のスキン外層,コア層および第2のスキン内層はともに縦延伸されたものであり,7C 第1のスキン外層,コア層,第2のスキン内層および熱封着樹脂層はともに横延伸されたものであり,前記熱封着樹脂層は縦延伸されていないことを特徴とする,7D 熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム。
ウ 対比先願発明1フィルムの「スキン内層」「コア層」及び「スキン外層」は,本件発明,7の「第1のスキン外層」,「コア層」及び「第2のスキン内層」にそれぞれ該当する。また,先願発明1フィルムの「ヒートシール樹脂層」は,本件発明7の「熱封着樹脂層」に該当する。
「熱ラミネート」と「熱封着」とは同義であるから,「熱- 23 -ラミネート用」という用途は「熱封着樹脂層」を設けることで達成されていることになる。構成要件7Dの「熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム」は,結局,「熱封着樹脂層が…形成されたポリオレフィン延伸フィルム」を意味する。
そして,本件発明7の「熱封着樹脂層」は,先願発明1フィルムの「ヒートシール樹脂層」と同一である。
そうすると,先願発明1フィルム(1a)及び(1d)の「ヒートシール樹脂層がラミネーションされた…多層ポリオレフィン延伸フィルム」は,本件発明7の「熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム」に該当する。
エ 明細書の記載また,本件明細書には,本件発明7の作用効果として,「押出によるインライン ( In-Line) 工 程 に よ り 積 層 形 成 が 可 能 」 と な る こ と , 製 造 工 程 が 簡 潔 で「(simple),且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる」ことが挙げられているのに対し,引用例3には,訂正先願発明1の作用効果として,「連続的な押出を通じてラミネーションして多層ポリオレフィン延伸フィルムを製造することができる」こと,「製造工程が単純かつ時間の所要が少なく,製品の生産単価を下げることができる」ことが挙げられており,両者の作用効果は同一である。
オ 以上によれば,訂正先願発明1と本件発明7とは,共にポリオレフィン延伸フィルムに関するもので使用領域が同じであり,作用効果においても同一であるから,本件発明7は,訂正先願発明1に対して,それ自体何らの発明性を有しないから,両者は表現が形式的に異なるだけであり,実質的に同一である。
また,訂正先願発明1を実施すれば,本件発明7の生産になることは明白であるから,両者の発明に係る特許権の効力の範囲は重なる関係にあり,両者は,単なるカテゴリー表現上の差異しかなく,同一の発明である。
(2) 本件発明8についてア 訂正先願発明4の製造方法で得られる多層ポリオレフィン延伸フィルム(以- 24 -下「先願発明4フィルム」という。)は以下の構造を有する。
(4a) スキン内層はポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)より選択された1つ以上からなる(4b) コア層はポリプロピレン(PP)からなり(4c) スキン外層はポリプロピレン(PP)からなり,(4d)ヒートシール樹脂層は,その原料として,エチレン酢酸ビニル,エチレン酢酸メチル,エチレンメタクリル酸,およびエチレン酸ターポリマーからなる群より選択された一つ以上を含む原料を使用する(4e)多層ポリオレフィン延伸フィルムイ 本件発明8は,以下の内容である。
8A 前記第1のスキン外層は,ベース樹脂としてポリエチレン系樹脂を含み,8B 前記コア層は,ベース樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含み,8C 前記第2のスキン内層は,ベース樹脂としてポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選択された一種以上を含み,8D 前記熱封着樹脂層は,熱封着樹脂層の原料としてエチレンビニルアセテート,エチレンメチルアセテート,エチレンメタクリル酸,エチレングリコール,エチレン酸ターポリマー,及びエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマーよりなる群から選択された一種以上を含むことを特徴とする8E 請求項7に記載の熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム。
ウ 対比先願発明4フィルムの「スキン内層」「コア層」「スキン外層」及び「ヒートシ, ,ール樹脂層」は,本件発明8の「第1のスキン外層」,「コア層」,「第2のスキン内層」及び「熱封着樹脂層」にそれぞれ該当する。また,先願発明4フィルム(4d)及び(4e)の「ヒートシール樹脂層…多層ポリオレフィン延伸フィルム」は,本件発明8の構成要件8Eの「熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルム」に該当する。
エ 以上によれば,本件発明8は,訂正先願発明4を「物の発明」に書き換えた- 25 -ものにすぎず,両者は表現が形式的に異なるだけであり,実質的に同一である。
したがって,本件発明8と訂正先願発明4とは,単なるカテゴリー表現上の差異しかなく,同一の発明である。
〔被告の主張〕? 本件発明7についてア 本件発明7は,熱ラミネート用ポリオレフィン延伸フィルムに係る発明であり,訂正先願発明1は,多層ポリオレフィン延伸フィルムの製造方法に係る発明であって,両者は発明のカテゴリーが相違するため,一致するところはなく,全て相違点である。
イ また,本件発明7は,ポリオレフィン延伸フィルムが特定の積層構造を有すること及びその各層それぞれの延伸構造を特定したものであり,製造方法の如何を問わず,特定の構造を有するポリオレフィン延伸フィルムを提供することに技術的意義を有する発明であるのに対し,訂正先願発明1は,特定の順序で,それぞれ複数の押出成形ステップ,延伸ステップ,冷却ステップを行うことを特定した,特定の製造方法を提供することに技術的意義を有する発明であるから,両者は,その技術的意義が異なり,異なる技術思想に基づく発明である。
ウ したがって,本件発明7と訂正先願発明1とは,単に発明のカテゴリーが相違するだけではなく,異なる技術思想に基づく発明であるから,実質同一ということはできない。
? 本件発明8について本件発明8と訂正先願発明4も,本件発明7と訂正先願発明1と同様に,単に発明のカテゴリーが相違するだけではなく,異なる技術思想に基づく発明であるから,実質同一ということはできない。
4 取消事由4(本件発明6に係る実施可能要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕本件明細書の【0042】【0066】〜【0067】, ,図4の記載によれば,樹- 26 -脂層40とは反対側の面に,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを当てることで,外観性等の巻取品質が非常に優れているとの実験結果が得られている。
本件明細書の【0049】【0051】【0062】, , ,図4の記載によれば,実験による裏付けはないものの,樹脂層40に,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて空気チャンネルを形成すると,【0050】記載の作用が奏され,巻取時のしわ寄りが効果的に防止されるとされる。
本件発明6では,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを樹脂層(熱封着樹脂層)に当てているが,空気チャンネルの形成によって巻取時のしわ寄りが効果的に防止されるとの効果が奏されるか否かについては,実験的な確認がなく,上記効果が奏されることについての技術常識も存在しないから,空気チャンネルの形成によって上記効果が実際に奏されるのかは不明ということになる。
そうすると,本件明細書は,その物の生産する方法の使用ができる程度に記載されていないことになり,本件発明6には,実施可能要件違反の無効理由が存することになる。
〔被告の主張〕本件明細書の記載から,当業者が本件発明6の製造方法を使用して,発明の作用効果を奏する形でその方法を使用することができることは明らかであるから,実施可能要件を充足する。
請求項6及び【0049】【0051】【0062】の記載によれば,当業者は,, ,【0043】の「多層フィルム上」を,多層フィルムFの上部(上側)と理解することはなく,多層フィルムの表面(外面)と理解し,樹脂層40が多層フィルムFの表面(外面)に積層される際に,冷却ロール400と密着する側に積層されるものと理解し,図4との関係でいえば,樹脂供給部150及び第2の押出機100−2の部分において,多層フィルムFの表面(外面)に樹脂層が積層され,図4の装置を用いても,本件発明の作用効果を奏するものと理解するのが当然である。
5 取消事由5(本件発明6に係るサポート要件の判断の誤り)について- 27 -〔原告の主張〕実施例及び比較例の記載(【0066】〜【0075】)では,図4の装置を用いており,表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層には当たらず,樹脂層とは反対側の面に当たるようになっている。そのため,これらの記載からは,本件発明6によって「優れた層間接着強度でラミネートされた多層ポリオレフィン延伸フィルムを提供」されているのか否かを理解することができない。
仮に,実施例において本件発明6の製造方法が使用されているとの前提に立っても,実施例及び比較例の実験結果からは,「優れた層間接着強度でラミネートされた多層ポリオレフィン延伸フィルムを提供」されているか否かを理解することはできない。
層間接着強度の実験結果のうち,実施例1,2及び比較例1に着目すると,比較例1は,実施例1,2に対して層間接着強度が劣る結果となっているが,この差が,実施例1,2と比較例1との製造方法の違いに基づくものなのか否かはわからず,これらの記載から,本件発明6のような製造方法を採用することによって「層間接着強度が優れる」との課題が解決すると理解することはできない。
また,実施例2及び比較例2に着目すると,同一の結果になっているが,これは同じ材料の組合せの界面の接着強度であるから同じ値になったものと理解することができ,これらの記載から,本件発明6のような製造方法を採用することによって「層間接着強度が優れる」との課題が解決すると理解することはできない。
そうすると,実施例及び比較例の記載では,本件発明6の課題解決がなされているのかを理解することはできないから,サポート要件違反である。
〔被告の主張〕実施例及び比較例は図4の装置を用いているが,図4について,樹脂供給部150及び第2の押出機100−2の部分において,多層フィルムFの表面(外面)に樹脂層が積層され,図4の装置を用いても,表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層に当たるものと理解することができる。
- 28 -また,本件明細書【0011】【0013】【0014】【0019】【002, , , ,0】の記載によれば,「層間接着強度」とは,樹脂層と被着体との層間接着強度のみならず,第1のスキン層と樹脂層との層間接着力でもあることは明らかである。そして,実施例の記載によれば,樹脂層と被着体の層間接着強度について,実施例1及び2が,従来のフィルムである比較例1及び2よりも同等かそれよりも優れる評価を示すとされ(【0074】,また,第1のスキン層と樹脂層との層間接着強度に)関しても,実施例1及び2が,比較例2よりも効果を奏していることが確認できる(【0075】。
)さらに,空気チャンネルがあることで空気が外部に逃げることは明らかであり,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が抜ければしわが寄ることを効果的に防止できることは自明である。
以上によれば,当業者は,本件明細書の記載から,本件発明6によって課題を解決できることを理解することができ,サポート要件を充足する。
6 取消事由6(本件発明6に係る明確性要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕本件明細書には,ステップ及び冷却ロールがどのようなものか詳細に記載されているとはいえないし,空気チャンネルが樹脂層の表面であって,冷却ロールに接触する面に形成されることが明らかであるともいえないから,本件発明6は不明確であり,明確性要件に違反する。
〔被告の主張〕本件明細書には,ステップ及び冷却ロールがどのようなものか詳細に記載されており,当業者は,これらを発明特定事項とする本件発明6を理解することができる。
また,空気チャンネルが樹脂層の表面であって,冷却ロールに接触する面に形成されることも当業者に明らかであり,多義的に解釈される余地はない。
以上によれば,本件発明6は明確性要件を充足する。
第4 当裁判所の判断- 29 -1 本件各発明について(1) 本件明細書の記載本件各発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(下記記載中に引用する「図1〜5」及び「表1」については別紙本件明細書図面目録参照)。
ア 技術分野【0001】本明細書における開示は,各種の包装材などに用いられるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムに関する。より詳しくは,多層構造のポリオレフィン系延伸フィルムに熱ラミネート樹脂層を積層するに際し,押出工程および縦延伸工程の後に追加の押出工程を含み,該追加の押出工程を通じて熱ラミネート樹脂層を積層することで,融点の低い樹脂の場合であっても連続的な押出による積層が可能となるため,製造工程が単調で且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。本明細書における開示は,層間接着強度に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムにも関する。
イ 背景技術【0002】一般に,包装材(食品など)などに用いられるフィルムとしては,表面に熱ラミネート用樹脂層が形成された延伸フィルムが多用されている。この種の熱ラミネート用フィルムとして,ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがあるが,PVCフィルムは,焼却時にダイオキシン等の有害物質を排出し,また,PETフィルムは,経済性に劣り且つリサイクルに困難性がある。
【0003】このため,経済性やリサイクル等において有利なポリオレフィン系延伸フィルム,特に二軸延伸により製造した多層構造の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム;Biaxially Oriented Polypropylene Film)が,多用されてい- 30 -る。ポリプロピレン(PP)は,経済性やリサイクルに有利であるのみならず,引張強度,剛性,表面硬度,耐衝撃強度などの機械的物性や光沢性,透明性などの光学的特性,そして無毒性,無臭性などの食品衛生性等でも優れており,包装材(食品等)やラミネート・コーティング(合紙;sheet lamination)用等に有用である。
【0004】図1は,従来の一般的なBOPPフィルムの断面構成を示す図であり,図2は,従来技術に係るBOPPフィルムの製造方法を説明するための製造装置の概略的な構成を示す図である。
【0005】図1を参照して説明すると,一般に,BOPPフィルムは,コア層3としてのPP層と,前記コア層3の上部および下部に積層された第1のスキン層1(first skin layer),および第2のスキン層2(second skin layer)とを含む。このとき,第1のスキン層1および第2のスキン層2とは,PP層から構成される。そして,前記第1のスキン層1上には,熱ラミネート,すなわち熱融着(heat fusion)のための樹脂層4が積層される。
【0006】例えば,前記したようなBOPPフィルムをラミネートコーティング(合紙)用,具体的に2枚のBOPPフィルムの間に写真や身分証明書,印刷物,または献立等の認識物を挟み込んでから熱融着させるラミネートコーティング(合紙)用フィルムや,食品等の包装用フィルムとして用いる場合,前記樹脂層4同士が熱ラミネート(熱融着)してシール性が図られる。このとき,前記樹脂層4には,低温熱融着(熱封着;heat sealing)が可能なエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の低温接着性樹脂が用いられる。
【0007】また,図2を参照して説明すると,従来は,前記のような多層構造のBOPPフィルムの製造の際は,押出機5にて第1のスキン1,コア層3,および第2のスキン層2を同時に押出させながら,押出ダイで前記3つの層1,2,3を合体する(laminated)ことで成形していた。そして,前記押出された多層フィルムを冷却ロール6に通して冷却させた後,二軸延伸,すなわち,縦延伸(MDO;MachineDirection Orientation)と,横延伸(TDO;Transverse Direction Orientation)を連続- 31 -的に施して製造していた。
【0008】すなわち,図2に示すように,多数のロールRの組み合わせを有する縦延伸機7に通して機械方向(長手方向)への縦延伸(MDO)を行なった後,連続して横延伸機8に通して,レールパターン(rail pattern)によって幅方向への横延伸(TDO)を行なう。次いで,縦延伸および横延伸されたフィルムは,即時に巻取ロール9(winding roll)に巻き取られる。
【0009】従来,多層構造のBOPPフィルムの製造の際は,前記のように押出→冷却→縦延伸→横延伸工程を連続して行い,図1に示すようにPP層/PP層/PP層の3層構造を有する多層フィルムを製造していた。
【0010】また,前記のような連続的な工程を通じて多層フィルムを製造した後は,前記のように第1のスキン層1上に熱ラミネートのためのエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の樹脂層4を積層形成する必要がある。このとき,従来技術においては,図1に示したように第1のスキン層1上にアンカー層(anchor layer)5をコートした後,該アンカー層5上に,T−ダイ(T−Die)押出コーティングを行なって樹脂層4を形成していた。
【0011】このとき,前記樹脂層4の形成の際,アンカー層5を形成することなく,多層押出コーティング時にスキン(skin)押出部に低温接着性樹脂を投入し,同時共押出により第1のスキン層1上に直接樹脂層4を形成する方法が考えられる。
しかしながら,この場合には,前記低温接着性樹脂とPPからなる第1のスキン層1との物理化学的性状の差が大きいため,同時共押出が難しく且つ層間接着力が低い。すなわち,エチレン−ビニルアセテ−ト(EVA)等の低温接着性樹脂は,PPとの融点の差のため同時共押出が難しく,また二つの物質間の性状の差が大きいため,直接の接着は難しく且つ層間接着力(接着強度)が低い。
【0012】更に,前記低温接着性樹脂を前記のように共押出した場合,低温接着性樹脂が押出ダイで熱分解し,設備を腐食させる等の原因にもなる。また,低融点特性のため,縦延伸機7のロールRを通る過程で樹脂層4にスクラッチが発生す- 32 -ることにより製品の外観性が劣る。加えて,樹脂層4がロールRにくっ付く(stuck)現象が発生することで,同時共押出が困難である。
【0013】そのため,前記のように従来技術においては,熱ラミネート用樹脂層4の形成の際には,第1のスキン層1上にアンカー層5を予めコートしておき,その上に別途のT−ダイ押出コーティングにより樹脂層4を形成していた。しかしながら,この場合,アンカー層5のコーティング工程および樹脂層4の押出コーティング工程という追加の工程を伴うこととなり,コストおよび時間が多くかかり,工程が複雑となる。これは,製品の生産コストのアップの原因になる。また,前記アンカー層5は,環境の面でも望ましくない。
ウ 発明が解決しようとする課題【0014】そこで,本発明の態様(embodiments)においては,熱ラミネート用樹脂層の形成の際に,融点の低い樹脂の場合であっても押出による連続工程で積層形成が可能になるようにすることで,製造工程が単調で製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができ,また層間接着力に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供する。
エ 課題を解決するための手段【0015】前記目的を達成するために,本発明の態様においては,第1のスキン層と,コア層,および第2のスキン層と,を含むポリオレフィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,前記樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,および前記第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップと,を含む- 33 -ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法を提供する。
【0016】このとき,前記第1の押出ステップにおいては,第1のスキン層の原料としてポリエチレン系樹脂を含む原料を用いることが好ましい。
【0017】更に,前記第2の冷却ステップにおいては,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて冷却させると同時に,樹脂層に空気チャンネルを形成させることが好ましい。
【0018】また,本発明の態様においては,該製造方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供する。
オ 発明の効果【0019】本発明の態様によれば,縦延伸後の追加の押出/冷却工程(第2の押出/第2の冷却ステップ)を含み,前記追加の押出を通じて樹脂層が積層形成され,融点の低い樹脂の場合であっても,押出によるインライン(In-Line)工程により積層形成が可能となる。
【0020】その結果,本発明の態様によれば,多層構造のポリオレフィン系延伸フィルムの製造の際に,樹脂層を含む各層を連続的な押出工程を通じて積層するにより,製造工程が簡潔で(simple),且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。また,層間接着力,すなわち樹脂層と被着体(adherent)との接着力のみならず,第1のスキン層と樹脂層との層間接着力にも優れるという効果を奏する。
カ 発明を実施するための形態【0024】図3は,本発明の態様に従い製造されたポリオレフィン系延伸フィルム(以下,「延伸フィルム」と略する)の一例を示す断面構成図である。
【0025】図3を参照して,本発明の態様に従い製造された延伸フィルムは,少なくとも3層以上のポリオレフィンフィルムF(以下, 多層フィルム」「 と略する)と,前記多層フィルムF上に積層形成された樹脂層40とを含む。
【0026】このとき,前記多層フィルムFは,3層以上の層が共押出により- 34 -(through)同時に積層成形されてなり,各層は,ベース樹脂(主原料)として,少なくともポリオレフィン系樹脂を含む。前記多層フィルムFは,具体的に図3に示すようにコア層30と,前記コア層30の上部に積層された第1のスキン層10,および前記コア層30の下部に積層された第2のスキン層20とを含む。前記多層フィルムFは,前記した3層,すなわち第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20が順次積層されてなる3層構造を含む。前記3層に加えて,1層以上の他の層を更に含んでいてよい。
【0027】このとき,前記各層10,20,30は,ベース樹脂(主原料)としてポリオレフィン系樹脂を含む。好適な態様においては,前記コア層30はベース樹脂(主原料)としてポリプロピレン(PP)系樹脂を含み,前記第1のスキン層10はベース樹脂(主原料)としてポリエチレン(PE)系樹脂を含み,前記第2のスキン層20はベース樹脂(主原料)としてポリプロピレン(PP)系樹脂およびポリエチレン(PE)系樹脂から選択された一種以上を含むものであってよい。
【0028】また,本発明の態様に係る延伸フィルムは,前記多層フィルムF上に積層形成された樹脂層40を含み,該樹脂層40は,1層または2層からなり,第1のスキン層10上に積層形成される。このとき,前記樹脂層40は,後述するように,従来のようにアンカー層5(図1参照)をコートした後,別途の押出コーティング工程により形成されることなく,本発明の態様においては,縦延伸後に行なわれる追加の押出工程により多層フィルムF上に積層形成される。
【0029】図4は,本発明の態様に係る製造方法を具現するための製造装置の一例を示す図である。図4に示した製造装置は本発明の理解を助けるために例示的に図示したものであって,該製造装置は,図4に示した形態以外の種々の形態で実現可能である。
【0030】図4を参照して,製造装置は,第1の押出機100−1,第1の冷却ロール200,縦延伸機300,第2の押出機100−2,第2の冷却ロール400,横延伸機500,および巻取ロール600を含む。これらの各装置は,連続工程が- 35 -可能になるように順次配置される。各装置の構造は特に制限されず,例えば,縦延伸機300は,図4に示すように多数のロールRが組み合わされてなるものであってよい。図4中のR1およびR2は,それぞれ第1の冷却ロール200および第2の冷却ロール400に隣接して設置されたガイドロールを示す。
【0031】本発明の態様に係る製造方法は,前記したような,少なくとも3層10,20,30を含む多層フィルムFが形成されるように押出成形する第1の押出ステップと,前記押出成形されてなる多層フィルムFを冷却させる第1の冷却ステップと,前記第1の冷却ステップを経た多層フィルムFを縦延伸する縦延伸ステップと,前記縦延伸された多層フィルムF上に1層以上の樹脂層40が積層形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,前記樹脂層40が積層形成された多層フィルムFを冷却させる第2の冷却ステップ,および前記第2の冷却ステップを経た多層フィルムFを横延伸する横延伸ステップを含む。そして,これらの各ステップは連続的である。
【0032】先ず,前記第1の押出ステップにおいては,第1の押出機100−1により少なくとも3層10,20,30を含む多層フィルムFを押出成形する。具体的には,第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20を含む少なくとも3層が積層形成されるように共押出して多層フィルムFを成形する。このとき,前記第1の押出機100−1は,多層フィルムFの層数に対応する押出部を有し,押出ダイで各層10,20,30がラミネートされる。例えば,第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20からなる3層構造を有する多層フィルムFを成形したい場合,前記第1の押出機100−1は,これに対応する3つの押出部を有していてよい。
【0033】また,前記多層フィルムFの押出成形のための原料,すなわち前記第1の押出機100−1に投入される原料としては,ポリオレフィン系樹脂組成物が用いられる。前記ポリオレフィン系樹脂組成物は,ベース樹脂(主原料)として,少なくとも1種以上のポリオレフィン系樹脂を含む。前記ポリオレフィン系樹脂は,- 36 -ポリオレフィンであれば特に制限されず,好ましくは,ポリプロピレン(PP)系,ポリエチレン(PE)系,およびこれらの共重合体等から選択された一種以上を用いていてよい。また,前記ポリオレフィン系樹脂としては,エチレンおよびプロピレンから選択された一種以上の共重合体であって,例えばプロピレン−エチレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−メタクリル酸等の2元共重合体,そしてエチレン−メタクリル酸−エステルの3元共重合体等を用いていてよいが,必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0034】更には,前記ポリオレフィン系樹脂組成物は,少なくともポリオレフィン系樹脂を含み,必要に応じて他の樹脂やその他添加剤等を更に含んでもよい。
このとき,特に限定するものではないが,前記ポリオレフィン系樹脂組成物は,ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し,他の樹脂やその他添加剤を0〜40重量部,より具体的には,5〜20重量部の範囲で含んでもよい。前記添加剤は,当業界において通常用いるものを用いてもよく,好ましくは,帯電防止剤,スリップ剤およびブロッキング防止剤等から選択された一種以上が挙げられる。
【0035】前記第1の押出ステップによる多層フィルムFの成形の際に,各層は互いに同一の原料,または互いに異なる原料が用いてもよい。例えば,コア層30はポリプロピレン(PP)をベース樹脂(主原料)としてPP層になるように成形していてよい。そして,前記第2のスキン層20は,ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)から選択された一種以上をベース樹脂(主原料)としてPP層,PE層,またはPP−PE混合層になるように成形していてよい。このとき,第2のスキン層20は,ポリプロピレン(PP)をベース樹脂(主原料)とし,光沢のあるように具現することができ,またはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)とを適正に混合して,例えば1:0.5〜2(PP:PE)の重量比で混合して光沢のないように具現することができる。また,このように第2のスキン層20をポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)との混合により構成する場合,前記二種の樹脂の混合物をマスターバッチ(master batch) 例えば,化, ペレット(pellet)- 37 -状に成形して第1の押出機100−1に投入すればよい。
【0036】好適な態様においては,前記第1のスキン層10の原料としては,ポリエチレン(PE)系樹脂を含んでもよい。このように,第1のスキン層10がポリエチレン(PE)系樹脂を含む場合,樹脂層40を構成するエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の低温接着性樹脂(低融点樹脂)との相溶性がよいため,層間接着力(接着強度),すなわち第1のスキン層10と樹脂層40との層間接着力(接着強度)が改善する。第1のスキン層10の原料としては,具体的にポリエチレン(PE)系樹脂としてのホモポリエチレン(PE)およびエチレン重合体等から選択されるものであってもよく,より具体的には,低密度ポリエチレン(LDPE),より具体的には,線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等から選択されるものが層間接着力の面で有利である。
【0037】また,前記第1の押出ステップにおいて,各層10,20,30の原料として,ベース樹脂(ポリオレフィン系樹脂)の他,前述したように帯電防止剤およびブロッキング防止剤等から選択された一種以上の添加剤を更に含む原料を用いてもよく,このとき,前記コア層30の場合は,スルホン酸塩やアンモニウム塩等の帯電防止剤を含む原料を用いてもよく,前記第2のスキン層20の場合は,シリカ,珪藻土,およびタルク等のブロッキング防止剤を含む原料を用いてもよい。
【0038】また,前記第1の押出ステップによる多層フィルムFの成形の際は,各層の厚さを適宜調節していてよい。例えば,図3を参照して説明すると,第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20とからなる3層構造を有し,前記第1のスキン層10の厚さT10は延伸フィルムの全厚さTの1〜10%,前記コア層30の厚さT30は延伸フィルム全体厚さTの30〜70%,また,第2のスキン層20の厚さT20は延伸フィルム全厚さTの1〜10%となるように成形してもよい。更には,前記第1の押出ステップにおける押出温度は,用いられる原料に応じて多様な温度範囲を有していてよく,例えば,140〜320℃の温度範囲で行なわれてもよい。
- 38 -【0039】図4を参照すると,前記等の第1の押出ステップにより押出成形された多層フィルムFは,第1の冷却ロール200に通されて第1の冷却ステップを経る。このとき,図4においては,前記第1の冷却ロール200が製造装置内に1つ設置された態様を例示したが,前記第1の冷却ロール200は製造装置内に1つまたは2つ以上の複数が連続配置されていてもよい。この第1の冷却ステップにおける冷却温度,すなわち前記第1の冷却ロール200の温度は,例えば5〜80℃の範囲に設定されてもよいが,必ずしも該温度範囲に制限されるものではない。
【0040】前記第1の冷却ステップを経た多層フィルムFは,ガイドロールR1に沿って縦延伸機300へ搬送され,機械方向(長手方向)に縦延伸(MDO)される。例えば,図4に示すように,複数のロールRによって縦延伸されてもよい。この縦延伸ステップの延伸温度,すなわち前記縦延伸機300に設置されたロールRの温度は,例えば80〜160℃の範囲に設定されてもよいが,必ずしも該温度範囲に制限されるものではない。また,縦延伸ステップにおいては,2〜10倍(延伸比),具体的な例としての3〜7倍(延伸比),より具体的な例としての4〜5倍(延伸比)に縦延伸されてもよい。このような縦延伸比は,ロールRの速度によって実現することができる。
【0041】前記縦延伸ステップを経た多層フィルムFは,本発明の態様においては追加の押出工程(第2の押出ステップ),およびこれと同時に行なわれる冷却工程(第2の冷却ステップ)を連続的に経る。
【0042】前記第2の押出ステップにおいては,多層フィルムF上に樹脂層40が積層形成される。具体的には,図4を参照して,多層フィルムFは,縦延伸された後,第2の押出機100−2に送られる。このとき,前記第2の押出機100−2には,樹脂層40の形成のための原料を供給する樹脂供給部150が設置されてもよい。前記第2の押出機100−2には,多層フィルムFが通され,これと同時に樹脂供給部150から原料が供給されるにより樹脂層40が押出されながら,ダイ(Dies)で多層フィルムF上への樹脂層40のラミネートが行なわれる。
- 39 -【0043】本発明の態様における前記樹脂層40の原料,すなわち前記樹脂供給部150から第2の押出機100−2へ供給される原料は,特に制限されない。樹脂層40の原料は,低温接着性樹脂(低融点樹脂)であって,熱ラミネート(熱融着)が可能なものであれば制限されない。前記樹脂層40の原料は,例えば,ポリオレフィン系樹脂,シリコン系樹脂,ウレタン系樹脂,アクリル系樹脂,ポリアミド系樹脂,メタロセン樹脂,ナイロン樹脂,エチレン−ビニルアセテート(EVA),エチレンメチルアセテート(EMA),エチレンメタクリル酸(EMAA),エチレングリコール(EG),エチレン酸ターポリマー(ethylene acid ter-polymer)およびエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマー等からなる群から選択された一種以上を含む原料を用いてもよい。
【0044】本発明の態様によれば,従来のように縦延伸後に直ちに横延伸を行なうことなく,縦延伸後に追加の押出工程,すなわち前記第2の押出ステップにより樹脂層40を積層形成するにより,連続押出によるインライン工程により樹脂層40が形成されるため工程が簡潔である。また,前記樹脂層40の原料としては,多層フィルムFを構成するベース樹脂,すなわち,第1のスキン層10を構成するベース樹脂とは物理化学的性状が異なるもの,すなわちポリオレフィンより融点が低いかまたは高い樹脂の使用が可能である。特に,ポリオレフィン系樹脂より融点の低い樹脂の使用が可能である。
【0045】すなわち,本発明の態様によれば,前記第2の押出ステップにおいて,樹脂層40の原料として,第1の押出ステップで用いた原料よりも融点の低い樹脂を含む原料を用いることができる。例えば,低温の熱によって熱ラミネーション(熱封着)が可能な低温接着性樹脂として,エチレン−ビニルアセテート(EVA),エチレンメチルアセテート(EMA),エチレンメタクリル酸(EMAA),低温メタロセン樹脂,エチレングリコール(EG),エチレン酸ターポリマー,およびエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマー等のように融点が低く且つシール性に優れる樹脂の使用が可能であり,これらの樹脂を連続押出によるインライン工程によ- 40 -り積層形成することができる。更には,従来のようにアンカー層5(図1参照)を形成することなく,第1のスキン層10と樹脂層40とに優れた接着力を持たせることから,層間接着力が改善する。
【0046】加えて,本発明の態様によれば,前記のように樹脂層40が追加の押出工程(第2の押出ステップ)により積層され,且つ樹脂層40の原料が制限されないため,樹脂層40は多様な機能性を有することができる。例えば,本発明の好適な態様においては,前記樹脂層40の原料としては,帯電防止剤を含む原料を用いることができる。このとき,樹脂層40は,熱ラミネート(熱融着)機能とともに帯電防止能を有する。前記帯電防止剤の種類は前述したとおりである。該帯電防止剤は,例えば樹脂層40を構成する低温接着性樹脂100重量部に対し,0.01〜10.0重量部で含まれてもよい。
【0047】また,前記第2の押出ステップにおいて,前記樹脂層40の厚さT40は,延伸フィルムの全厚さTの10〜68%の範囲となるように成形することができる。更には,前記第2の押出ステップにおける押出温度は,樹脂層40の使用原料,すなわち樹脂層40を構成する低温接着性樹脂の種類および融点を考慮して多様な温度範囲に設定されてもよい。例えば,150〜330℃の温度範囲に設定して押出することができる。このとき,押出温度が150℃未満と低すぎると押出が難しくなり,また,330℃を超えて高すぎると流動性が高いため好ましくない。例えば,エチレン−ビニルアセテート(EVA)等の低融点樹脂を用いる場合は,180〜250℃の温度範囲で押出してもよい。
【0048】図4を参照して,前記等の第2の押出ステップにより樹脂層40が積層形成されてなる多層フィルムFは,連続的に第2の冷却ロール400に通されて,第2の冷却ステップを経る。このとき,第2の冷却ロール400に通す際に,第2の冷却ロール400のロール表面に樹脂層40が密着するように位置させて冷却したほうがよい。また,図4においては,前記第2の冷却ロール400が製造装置内に1つ設置された態様を例示したが,前記第2の冷却ロール400は製造装置内- 41 -に1つまたは2つ以上の複数が連続配置されていてもよい。この第2の冷却ステップにおける冷却温度,すなわち前記第2の冷却ロール400の温度は,例えば5〜80℃の範囲に設定されてもよいが,必ずしも該温度範囲に制限されるものではない。
【0049】また,本発明の好適な態様において,前記第2の冷却ステップでは,樹脂層40の冷却と同時に樹脂層40に空気チャンネル(air channel)を形成させてもよい。本発明の態様によれば,前記空気チャンネルによってフィルムの巻取品質が向上する。後述するように,横延伸されたフィルムは,巻取ロール600に巻き取られることとなり,このとき,巻取工程でしわが寄り,該しわが取れ難くなることがある。樹脂層40の形成の際,従来のようにコーティング工程等によらずに,縦延伸後の連続的な追加の押出工程(第2の押出ステップ)により樹脂層40を積層するため,巻取時にしわが寄り,該しわが取れ難くなることがある。樹脂層40の原料として,融点の低い樹脂を用いた場合,前記しわ寄り現象はひどくなる傾向を有することがある。
【0050】このとき,前記空気チャンネルは,空気流れ通路を提供することにより,巻取時のしわ寄りを効果的に防止する。すなわち,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する。前記空気チャンネルは複数であって,その形状は制限されない。前記空気チャンネルは,樹脂層40の表面に長手方向または幅方向に,例えば一字状または格子状に形成されるか,或いは規則的または不規則的に形成されてもよい。
【0051】また,前記空気チャンネルは,第2の冷却ステップで形成され,このとき,前記空気チャンネルの形成は,表面に凹凸構造を有する第2の冷却ロール400を用いることにより実現することができる。具体的には,図4に示すように,前記第2の冷却ロール400として,その表面に凹凸構造450が形成された冷却ロールを用いて,樹脂層40に空気チャンネルを形成する。すなわち,第2の押出- 42 -ステップにおいて樹脂層40が形成された多層フィルムFを,第2の冷却ロール400に通させて冷却させるとともに,表面に凹凸構造450が形成された第2の冷却ロール400に樹脂層40が密着するように通させて,空気チャンネルを形成する。
【0052】このとき,前記第2の冷却ロール400に形成された凹凸構造450は,空気チャンネルを形成できるものであれば,その形状や構造は制限されず,多様な形状や構造により形成されてもよい。
【0053】例えば,前記凹凸構造450は,第2の冷却ロール400の軸方向に平行または直交して一字状または格子状に形成されていてよく,凹凸構造450は,更に第2の冷却ロール400の表面に規則的または不規則的に形成されていてもよい。前記凹凸構造450は,図5に示すように突部452と溝部454とを含むものであってもよく,このようなの突部452と溝部454の個数や深さ(高さ)等は,制限されない。
【0054】前記第2の冷却ロール400は,空気チャンネルを形成できる表面凹凸構造450を有するものであればよく,例えば,マットタイプロール(Matt typeroll)やエンボスタイプロール(Emboss type roll)を用いてもよいが,マットタイプロールが好ましい。
【0055】前記マットタイプロールは,表面がサンディング(sanding)処理が施されたものであって,これは,例えばサンディング処理によって50〜150目(好ましくは,均一度80〜120目)を有するものを用いてもよい。より具体的には,50〜150メッシュ(mesh)大きさのサンド(sand)によって規則的または不規則的に格子状の突部452が形成されたものを用いてもよい。
【0056】また,前記マットタイプロールは,サンディング処理によって溝部454が形成され,前記溝部454は,5μm〜30μmの深さD454 を有してもよい。このとき,サンディングによる溝部454の深さD454 が5μm未満であれば,空気チャンネルの大きさが小さすぎるか,空気チャンネルの分布率(形成率)が低- 43 -くなる傾向がある。他方,溝部454の深さD454 が30μmを超過すれば,密着力が低くなって樹脂層40と被着体との接着力が多少低くなる傾向がある。このような点を考慮するとき,前記溝部454は,10μm〜20μmの深さD454 を有してもよい。この範囲の深さD454 を有するマットタイプロールによって空気チャンネルが形成される場合,巻取時のしわ寄り現象を効果的に防止することにより,被着体との良好な接着力を得ることができる。
【0057】一方,前記第2の冷却ロール400によって形成された空気チャンネルは,延伸フィルムの製品化時または使用時に除去しやすい。具体的には,巻取ロール600に巻き取られた延伸フィルム(製品)は,適切な大きさに切断して製品化することができるが,このとき,延伸フィルムに人為的な熱を加えると,前記空気チャンネルは容易に除去できる。すなわち,延伸フィルムに所定の熱を加えると,空気チャンネルが除去され,延伸フィルムは平坦化を保つ。また,延伸フィルムの使用過程で前記空気チャンネルを容易に除去することができる。例えば,延伸フィルムは包装材用,ラベル用およびラミネートコーティング(合紙)用等として用いられるが,このとき,シーリングのために熱を加えたり,コーティング密着のために熱を加えたりした場合,前記熱によって空気チャンネルを容易に除去することができる。
【0058】また,図4を参照して,前記第2の冷却ステップを経たフィルムは,ガイドロールR2に沿って横延伸機500へ搬送され,幅方向に横延伸(TDO)される。前記横延伸機500は,通常のものを用いてもよい。この横延伸ステップの延伸温度,すなわち前記横延伸機500の温度は,例えば100〜200℃の範囲に設定されてもよいが,該温度範囲に制限されるものではない。また,横延伸ステップにおいては,2〜15倍(延伸比) 具体的な例としての5〜12倍, (延伸比),より具体的な例としての8〜10倍(延伸比)で横延伸されていてよく,このような横延伸比は,レールパターン(Rail pattern)によって具現することができる。
【0059】前述したように,横延伸された延伸フィルムは,巻取ロール600- 44 -に巻き取られてから製品化されてもよい。このとき,横延伸後は,通常のようにトリミング(trimming)工程が施されてから巻き取られてもよい。具体的には,横延伸機500によってフィルムの両端が厚さにおいて差を示す場合,両端を除去するトリミング工程を施してから,巻取ロール600に巻き取ってもよい。
【0060】…縦延伸後に直ちに横延伸を行なうことなく,縦延伸工程と横延伸工程との間に追加の押出(第2の押出ステップ)および冷却工程(第2の冷却ステップ)を含み,前記追加の押出工程(第2の押出ステップ)により樹脂層40が積層され,融点の低い樹脂の場合であっても押出による積層が可能となる。この結果,樹脂層40を含む多層延伸フィルムの製造の際に,連続的な押出によるインライン工程により多層の具現が可能となり,製造工程が簡潔で且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。更には,延伸フィルムを長幅により製造することができるため価格競争力が高く,且つ前記樹脂層40は被着体に対し優れる接着力を有する。
【0061】また,前記第1のスキン層10がポリエチレン系樹脂を含む場合,樹脂層40を構成する低温接着性樹脂,例えばエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の低融点樹脂との接着力が改善し,優れている第1のスキン層10と樹脂層40との層間接着力(接着強度)を有する。
【0062】更には,前記第2の冷却ステップにおいて,凹凸構造450が形成された第2の冷却ロール400を用いる場合,樹脂層40に空気チャンネルが形成されるにより巻取時のしわ寄りが防止され,外観性が確保される。
実施例1および2【0066】図4に示す装置を利用して,先ず,共押出により第1のスキン層10/コア層30/第2のスキン層20が積層されてなるフィルムを作製した後,第1の冷却を行ない,次いで,縦延伸比4倍で縦延伸を行なった。そして,縦延伸後,連続押出によるインライン(In-Line)工程により前記第1のスキン層10上に樹脂層40としてのEVA層を押出積層した後,冷却ロールに通させて第2の冷却を行- 45 -ない,次いで,横延伸比8倍で横延伸して,図3に示すような4層構造の延伸フィルムを作製した。このとき,前記コア層30と第2のスキン層20とは,いずれもPP層により構成し,前記第1のスキン層10の場合は,LLDPE層により構成した。
【0067】また,前記樹脂層40の押出後,冷却する際に,実施例1の場合は,凹凸構造のない冷却ロール(一般のロール)に通させて冷却を行なった。他方,実施例2の場合は,サンディング処理が施されたマットタイプロールに通させて冷却を行なった。
ク 比較例1および2【0068】現在市販中のEVA熱ラミネート製品を購入して,本比較例の試片として用いた。具体的には,共押出により第1のスキン層(PP層)/コア層(PP層)/第2のスキン層(PP層)を形成/冷却し,縦延伸比4倍,横延伸比8倍にして縦延伸と横延伸とを連続的に行なったものを,本比較例に係る試片として用いた。
【0069】このとき,第1のスキン層(PP層)上に通常のように接着剤(グルー(GLUE))をコーティング,塗布して作製したものを,比較例1に係る試片として用いた。そして,通常のようにOFF−LINE工程により第1のスキン層(PP層)上にアンカー層を形成した後,前記アンカー層上にEVA層をT−ダイ押出コーティングしてなるものを,比較例2に係る試片として用いた。
【0070】前記各実施例および比較例に係る熱ラミネートフィルム試片に対し,次のように層間接着強度評価を行い,その結果を下記の表1に表した。このとき,層間接着強度の評価は,第1のスキン層10と樹脂層40とに対して,そして樹脂層40と被着体とに対して行なった。
【0071】*層間接着強度(剥離強度)(1)ラミネート機を利用して前記作製された熱ラミネートフィルム試片を被着体(印刷された紙)面と合紙した後,カッターバー(cutter bar)を利用して各合紙試片を横(15m)×縦(15cm)にカットしたサンプルを用意した。
- 46 -(2)前記所定の大きさにカットされたサンプルの側面を剃刀で所定の長さだけ層間剥離した。
(第1のスキン層10と樹脂層40との間,樹脂層40と被着体との間)(3)前記所定の部分の層間剥離されたサンプルに対し,引張強度テスト機を利用して,180度の剥離角で層間接着強度(剥離強度)測定を行なった。
【0073】前記[表1]に表すように,本発明の実施例において,第1のスキン層10上にインライン連続押出により樹脂層(EVA層)を形成してみた結果,優れる接着強度(剥離不可)を有し,且つ容易に形成されることが判明した。
【0074】また,前記[表1]に表すように,樹脂層40と被着体(紙)との層間接着強度において,本発明の実施例においては第1のスキン層10をPE層(LLDPE)で構成し,インライン押出により樹脂層40を積層してなるフィルム(実施例1および2)が,従来のフィルム(比較例1および2)よりも同等かそれより優れる評価結果を示すことが判明した。
【0075】更には,本発明の実施例に係るフィルムの場合,巻取後の外観性においても良好であることが分かり,特に実施例2の試片は,外観性等の巻取品質が非常に優れていることが判明した。
(2) 前記(1)によれば,本件各発明の特徴は,次のとおりである。
本件各発明は,各種の包装材などに用いられるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,及び該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムに関する。
より詳しくは,多層構造のポリオレフィン系延伸フィルムに熱ラミネート樹脂層を積層するに際し,押出工程及び縦延伸工程の後に追加の押出工程を含み,該追加の押出工程を通じて熱ラミネート樹脂層を積層することで,融点の低い樹脂の場合であっても連続的な押出による積層が可能となるため,製造工程が単調で且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。本明細書における開示は,層間接着強度に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,及び該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムにも関する。
(【0001】)- 47 -一般に,包装材(食品など)などに用いられるフィルムとしては,表面に熱ラミネート用樹脂層が形成された延伸フィルムが多用されている。この種の熱ラミネート用フィルムとして,ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがあるが,PVCフィルムは,焼却時にダイオキシン等の有害物質を排出し,また,PETフィルムは,経済性に劣り且つリサイクルに困難性がある。このため,経済性やリサイクル等において有利なポリオレフィン系延伸フィルム,特に二軸延伸により製造した多層構造の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム)が,多用されている。【0002】【0003】( , )従来,多層構造のBOPPフィルムの製造の際は,前記のように押出→冷却→縦延伸→横延伸工程を連続して行い,図1に示すようにPP層/PP層/PP層の3層構造を有する多層フィルムを製造していた。また,前記のような連続的な工程を通じて多層フィルムを製造した後は,前記のように第1のスキン層1上に熱ラミネートのためのエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の樹脂層4を積層形成する必要がある。このとき,従来技術においては,図1に示したように第1のスキン層1上にアンカー層5をコートした後,該アンカー層5上に,T−ダイ押出コーティングを行なって樹脂層4を形成していた。
しかしながら,この場合,アンカー層5のコーティング工程及び樹脂層4の押出コーティング工程という追加の工程を伴うこととなり,コスト及び時間が多くかかり,工程が複雑となって,製品の生産コストのアップの原因になる。また,前記アンカー層5は,環境の面でも望ましくない。【0009】【0010】【0013】( , , )そこで,本件各発明の態様においては,熱ラミネート用樹脂層の形成の際に,融点の低い樹脂の場合であっても押出による連続工程で積層形成が可能になるようにすることで,製造工程が単調で製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができ,また層間接着力に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,及び該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供することを目的とし,第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層と,を含むポリオレ- 48 -フィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,前記樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,及び,前記第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップと,を含むポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法を提供する。【0014】【0015】( , )本件各発明の態様によれば,縦延伸後の追加の押出/冷却工程(第2の押出/第2の冷却ステップ)を含み,前記追加の押出を通じて樹脂層が積層形成され,融点の低い樹脂の場合であっても,押出によるインライン工程により積層形成が可能となる。その結果,本件各発明の態様によれば,多層構造のポリオレフィン系延伸フィルムの製造の際に,樹脂層を含む各層を連続的な押出工程を通じて積層することにより,製造工程が簡潔で,且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。また,層間接着力,すなわち樹脂層と被着体との接着力のみならず,第1のスキン層と樹脂層との層間接着力にも優れるという効果を奏する。【0019】【0020】( , )2 取消事由1(本件発明6ないし8に係る引用例1に基づく新規性及び進歩性判断の誤り)について(1) 引用発明についてア 引用例1には,以下の記載がある(下記記載中に引用する第1図は,別紙引用例1図表目録参照。。
)産業上の利用分野(2頁左上欄6〜12行)本発明は,ブックカバー,半透明ラベル,電飾看板やポスター,OHP,サーマルレントゲンフィルム,インジェクト記録紙或いは熱転写被記録体基材として有用な半透明のプロピレン系樹脂多層複合フィルムに関する。
本発明の複合フィルムは光沢に優れ,耐水性を有し,半透明である。
- 49 -従来技術(2頁左上欄14行〜右上欄19行)ブックカバーとしては,従来,パラフィン紙の片面にサンドブラスト処理した半透明のものが使用されていた。
しかし,強度が弱く,破れやすいので,無機微細粉末を含有するポリプロピレンの2軸延伸フィルムを基材層とし,この基材層よりも無機微細粉末を多量に有するポリプロピレンの1軸延伸フィルムを表面層とする複合フィルムよりなり,その不透明度(JIS P−8138)が30〜38%,表面光沢度(JIS P−8142)が5〜7%のものが王子油化合成紙(株)よりユポTPG(商品名)として販売され,使用されている。
このユポTPGは,電飾看板やポスター,製図用のトレース紙としても用いられている。このユポTPGは,鉛筆筆記性をも目的としているので表面層に無機微細粉末を多量に含有している。それ故,光沢度が5〜7%と低く,ブックカバーとして更に光沢度の改良が望まれている。
また,不透明度が30〜38%であり,トレース紙としては良好で,複写に便利であるが,OHPや電飾看板やポスター,サーマルレントゲンフィルム基材,透明な瓶や容器の中身が透視できるラベルやクッキー,チョコ等の菓子類を収納した箱本体の封止のために用いる耐水性フィルムとしては,更に不透明度を低下させることが望まれている。
問題点を解決する手段(2頁左下欄2行〜右下欄15行)本発明においては,表面層を結晶化度の高い(50〜85%)プロピレンのホモポリマーもしくはプロピレン系ランダム共重合体を用いることにより複合フィルムの透明性,光沢を向上させる。
複合フィルム中,肉厚が一番厚い基材層の2軸延伸フィルム層には無機微細粉末を含有させないかあっても不透明化に実質的に影響のない量(3重量%以下)で透明性を向上させる。
基材層と表面層の間の中間層〔後述の(C)層〕には無機微細粉末を含有させるこ- 50 -とにより,かつ,延伸時に中間層(C)に微細なボイドが生じないように該中間層を構成する素材樹脂の融点より高い温度でフィルムを延伸する(フィルムは配向しない)ことにより得られる複合フィルムの不透明度を8〜20%に調達する。
即ち,本発明はプロピレン系樹脂75〜95重量%,高密度ポリエチレン25〜5重量%よりなる樹脂フィルムの2軸延伸物を基材層(A)とし,該基材層(A)の少くとも片面に接着剤層(B)を介して,(a)プロピレン系樹脂80〜95重量%,(b)高密度ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体,低密度ポリエチレンより選ばれたオレフィン系樹脂10〜0重量%および(c)無機微細粉末20〜5重量%よりなるオレフィン系樹脂組成物よりなるフィルム(c)とプロピレンのホモ重合体またはプロピレン系ランダム共重合体のフィルム(D)との積層物の一軸延伸物が,後者のプロピレンのホモ重合体フィルムの一軸延伸物(D)が表面層となるように積層された複合フィルムであって,この複合フィルムのJIS P−8138の規格で測定した不透明度が3〜25%,表面層(D)側よりJIS P−8142の規格で測定した光沢度が65〜95%である半透明のプロピレン系樹脂多層複合フィルムを提供するものである。
各層の組成物(2頁右下欄17行〜3頁右下欄2行)(A)基材層(a”)プロピレン系樹脂 75〜95重量%(b”)高密度ポリエチレン 25〜5重量%(B)接着剤層(a’)プロピレン系樹脂 85〜94.5重量%(b’)高密度ポリエチレン 5〜15重量%(c’)無機微細粉末 0.5〜5重量%(C)中間層(a)プロピレン系樹脂 80〜95重量%(b)高密度ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体,低密度ポリエチレン- 51 -より選ばれたオレフィン系樹脂10〜0重量%(c)無機微細粉末 5〜20重量%(D)表面層プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)然して,基材層(A)においては,配向を施し,腰の剛性を高める。延伸により微細なボイドが生じるのを防ぐため,基材層には実質的(3重量%以下)には無機微細粉末を含有させない。
高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体等と比較し,プロピレン系樹脂は高い融点と高い剛性,高い結晶化度を有する。
接着剤層(B)の組成は,基材層(A)と中間層(C)の接着力を良好とするため,プロピレン系樹脂を主体とする。好ましくは,高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体を5〜15重量%含有させると更に接着力は向上する。接着剤層(B)は,基材層(A)と共にダイより積層構造で共押出され,縦延伸,中間層(C)との接着,続いての横延伸の運命を共にする。この基材層との共押出は,基材層単味では冷却時間が長く,かつ,フィルムの厚みの変動が幅方向において±15%程度あるので,接着剤層中に無機微細粉末を0.5〜5重量%含有させ,共押出フィルムの冷却を促進させて肉厚変動率を低下させるのが好ましい。この無機微細粉末の存在は,その錨効果により基材層と中間層との接着力をより向上させる。
中間層(C)の組成中の無機微細粉末の含有量は,各層の肉厚と共に得られる複合フィルムの不透明度を決定する大きな要因となる。従って無機微細粉末は5〜20重量%の割合で含有される。プロピレン系樹脂は剛性を,ポリエチレン等は延伸性を付与する。
表面層(D)は,光沢度を複合フィルムに付与するために結晶性のプロピレンのホモ重合体を用いるのが好ましい。プロピレン・エチレンブロック共重合体では高い光沢度を得ることができないことが多い。また,この層は実質的に無機微細粉末- 52 -を含有しない。プロピレン系ランダム共重合体としては,プロピレンを主体(80重量%以上)とし,これとエチレン,ブデン−1,4−メチルペンテン−1,ヘキサン等のモノオレフィンの1種または2種以上を共重合して得られる結晶化度が50〜85%のランダム共重合体が挙げられる。
基材層,(接着剤層),中間層を構成するプロピレン系樹脂としては,プロピレンのホモ重合体,上述のランダム共重合体,プロピレン・エチレンブロック共重合体,無水マイレン酸グラフトポリプロピレン等が利用できる。
又,無機無細粉末としては,平均粒径が0.03〜16ミクロンの重質炭酸カルシウム,焼成けいそう土,クレイ,シリカ,タルク,ゼオライト,酸化チタン,硫酸バリウム等が利用できる。
複合フィルムの製造(3頁右下欄4行〜4頁左上欄6行)本発明の複合フィルムは,基材層(A)形成樹脂組成物と,接着剤層(B)形成用樹脂組成物をそれぞれ別々の押出機を用いて溶融混練し,1台のダイに供給し,ダイ内で積層した後,共押出し,シート状に押し出す。
次いで,この多層樹脂シートを基材層のプロピレン系樹脂の融点より低い温度,例えば40〜85℃まで冷却し,再び基材層のプロピレン系樹脂の軟化点まで加熱した後,縦方向に3〜10倍延伸する。この延伸により,基材層フィルムは縦方向に配向する。
続いて,別々の押出機を用いて中間層形成用樹脂組成物(C)と表面層形成用樹脂(D)を溶融混練し,一台のダイに供給し,次いでシート状に共押出して前述の縦延伸(多層)樹脂シートの両面または片面に溶融積層(ラミネート)し,(C)層のプロピレン系樹脂の融点より少くとも10℃以上高い温度で横方向に4〜12倍延伸し〔融点より高い温度で延伸するので中間層(C)においては無機微細粉末を核とした微細なミクロボイドは殆んど見受けられない。 必要によりアニーリング処理〕し,続いて耳部をスリットすることより本発明の複合フィルムは製造される。
複合フィルム(4頁左上欄8行〜右上欄19行)- 53 -この複合フィルムの層の構造は,第1図に示すような表面層(D)/中間層(C)/接着剤層(B)/基材層(A)/接着剤層(B)/中間層(C)/表面層(D)の7層構造,D/C/B/A/Cの5層構造が代表的であるが,必要により他の樹脂層をこの各層の間に,または表面層の上に設けてもよい。ガスバリヤー性のポリアミドやポリエチレンテレフタレート,ケン化エチレン・酢酸ビニル共重合体のフィルム層を例えば中間層と接着剤層の間に設けたり,表面層の一方(通常は用途によって裏面層といわれる)の上に低温ヒートシール性のフィルムをラミネートする等のことである。
この複合フィルムの不透明度は3〜25%,好ましくは5〜20%,光沢度は65〜95%である。不透明度が3%未満では透明フィルムと外観が変らず,ブックカバー,ラベル等の装飾効果が少くなり,またサーマルプリントフィルムでは画像を見る時不透明な紙などを裏におく必要が出てくる。
光沢度が65%未満では,ラベル,ブックカバー等の装飾効果が少くなる。更に,95%を越える光沢度は成形上難しい。
肉厚は,複合フィルム全体で40〜500ミクロン,好ましくは80〜250ミクロンであり,基材層(A)は,全体の肉厚の30〜80%を占め,接着剤層(B)の肉厚は0.2〜10ミクロン,表面層(D)の肉厚は0.5〜10ミクロン,中間層(C)は,基材層の肉厚の40〜100%が一般的である。
表面層(D)は中間層(C)の無機無細粉末の複合フィルムからの脱落を防止する。
実施例,応用例(4頁左下欄2行〜5頁左上欄15行)a メルトインデックス(MI)0.8ホモポリプロピレン(融点164℃)90重量%と高密度ポリエチレン8重量%の混合物(A)と,MI4.0のポリプロピレン87重量%,高密度ポリエチレン10重量%および平均粒径1.5ミクロンの重質炭酸カルシウム粉末3重量%の混合物(B)を,それぞれ別々の押出機で溶融混練後,一台のダイに供給し,ダイ内で三層(B/A/B)に積層し,ついで250℃- 54 -でダイよりシート状に共押出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得た。
このシートを,155℃に加熱後,縦方向に5倍延伸した。
b MI4.0のホモポリプロピレン(D)と,MI4.0のポリプロピレン86.5重量%に平均粒径1.5μの炭酸カルシウム10重量%と高密度ポリエチレン3.5重量%を混合した組成物(C)とを別々の押出機で溶融混練し,ダイ内で積層して共押出したシートを(1)の5倍延伸シートの両面に(D)が外側になるように積層し,ついでこの七層積層物を185℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行なって,七層のフィルムを得た。
c この七層積層フィルムの表面をコロナ放電処理し,(D)/(C)/(B)/(A) (B) (C) (D)/ / / の各フィルムの肉厚が5/20/0.5/49/0.5/20/5ミクロンの七層構造物を得た。
この肉厚が100ミクロンの七層フィルムの物性は次の通りであった。
不透明度 (JIS P−8138) 11%光沢度 (JIS P−8142) 79%密度 0.94g/cm3平滑度 (TD/MD)1300秒/1900秒カール なし。
応用例1表面がエンボス加工されたガラスを素材とした緑色の内容量540ccの半透明瓶の内部にビールを充填し,栓を施した後,実施例1で得た肉厚100ミクロンの七層の半透明複合フィルムにバーコードを印刷したものをラベルとしてこの瓶の胴部に透明なアクリル系溶剤型接着剤を用いて貼合した。
このラベルを透して瓶内のビールを透視することができた。
応用例2透明なポリ塩化ビニールの中空形成容器(内容量300ml)ボトルに淡い緑色に着色した液体洗剤を充填し,キャップを施した後,実施例1で得た厚さ100ミ- 55 -クロンの半透明複合フィルムにバーコード及び文字を印刷したものをラベルとしてこのボトルの胴部に透明なゴム系エマルジョン型接着剤で貼合した。
このラベルを透してボトル内の液体洗剤を透視することができた。
イ 上記アによれば,引用例1には,本件審決が認定したとおりの引用発明1A及び1B(前記第2の3(2)ア)が記載されているものと認められる。
また,本件発明6と引用発明1Aとの一致点及び相違点,本件発明7と引用発明1Bとの一致点及び相違点は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(2)イ,ウ)であると認められる。
(2) 本件発明6についてア 相違点1−1について実質的な相違点であること本件発明6の「熱封着樹脂層」とは,第2の押出ステップにおいて,「縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に」形成されるものである。また,本件明細書には,「少なくとも3層以上のポリオレフィンフィルムF(以下,「多層フィルム」と略する)と,前記多層フィルムF上に積層形成された樹脂層40」【0025】 ,( )「本発明の態様に係る延伸フィルムは,前記多層フィルムF上に積層形成された樹脂層40を含み,該樹脂層40は,1層または2層からなり,第1のスキン層10上に積層形成される。(」【0028】 ,) 「樹脂層40の原料は,低温接着性樹脂(低融点樹脂)であって,熱ラミネート(熱融着)が可能なものであれば制限されない。前記樹脂層40の原料は,例えば,ポリオレフィン系樹脂,シリコン系樹脂,ウレタン系樹脂,アクリル系樹脂,ポリアミド系樹脂,メタロセン樹脂,ナイロン樹脂,エチレン−ビニルアセテート(EVA),エチレンメチルアセテート(EMA),エチレンメタクリル酸(EMAA) エチレングリコール, (EG) エチレン酸ターポリマー, (ethyleneacid ter-polymer)およびエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマー等からなる群から選択された一種以上を含む原料を用いてもよい。(」【0043】との記載がある。これらの記載によれば,本件発明6の「熱封着樹脂層」は,熱封着する性質を- 56 -有する樹脂層であるとともに,第1のスキン層,コア層,第2のスキン層から構成される多層フィルムの第1のスキン層上に設けられるものであると認められる。
他方,引用例1には,「この複合フィルムの層の構造は,第1図に示すような表面層(D)/中間層(C)/接着剤層(B)/基材層(A)/接着剤層(B)/中間層(C)/表面層(D)の7層構造,D/C/B/A/Cの5層構造が代表的であるが,必要により他の樹脂層をこの各層の間に,または表面層の上に設けてもよい。
…表面層の一方(通常は用途によって裏面層といわれる)の上に低温ヒートシール性のフィルムをラミネートする等のことである。(4頁左上欄8〜19行)との記」載があり,(C)層,(D)層とは別に,低温ヒートシール性フィルムを表面層の一方に設けることとされているから,引用発明1Aでは,熱ラミネートに用いるのは,複合フィルムの表面層の一方に設けられる低温ヒートシール性フィルムである。
そうすると,(C)層,(D)層は,多層フィルムを構成する層であり,多層フィルムとは別に設けられる熱ラミネートに用いる樹脂層ではないから,本件発明6の「熱封着樹脂層」に含まれない。
よって,相違点1−1は,実質的な相違点である。
容易想到性について引用例1には,光沢に優れ,耐水性を有する半透明のプロピレン系樹脂多層複合フィルムについて,ブックカバーとして使用する際には光沢度の改良が,耐水性フィルムとしてはさらに不透明度を低下させることが,それぞれ課題とされていることから(2頁左上欄14行〜右上欄19行) 表面層を結晶化度の高い, (50〜85%)プロピレンのホモポリマーもしくはプロピレン系ランダム共重合体を用いることにより複合フィルムの透明性,光沢を向上させること,複合フィルム中,肉厚が一番厚い基材層の2軸延伸フィルム層には無機微細粉末を含有させないかあっても不透明化に実質的に影響のない量(3重量%以下)で透明性を向上させること,基材層と表面層の間の中間層 (C) には無機微細粉末を含有させることにより,〔 層〕 かつ,延伸時に中間層(C)に微細なボイドが生じないように該中間層を構成する素材樹- 57 -脂の融点より高い温度でフィルムを延伸する(フィルムは配向しない)ことにより得られる複合フィルムの不透明度を8〜20%に調達することの記載がある。
(2頁左下欄2〜16行)そうすると,引用発明1Aの(C)層,(D)層は,複合フィルムの透明性,光沢を向上させるという課題を解決するために調製されているのであるから,これに低温ヒートシール性を付加する動機付けはない。
また,前記 のとおり,引用発明1Aは,低温ヒートシール性フィルムを(A)層ないし(D)層から構成される複合フィルムの表面層の一方に設けるとされているから,(C)層,(D)層は,ラミネート用の低温ヒートシール性フィルムとは異なる層であることが明らかであり,引用例1には,(C)層,(D)層をヒートシール性フィルムとして使用することの記載も示唆もない。
以上によれば,相違点1−1は,引用発明1Aから容易に想到することができたものではない。
原告の主張について原告は,本件発明6の「熱封着樹脂層」とは,熱で溶融して柔らかくなって接着する性質を有する樹脂層一般をいい,ポリオレフィン樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等)を原料とする樹脂層を含むところ,引用発明1Aにも,3層(B/A/B)に積層される(C)の原料に,ポリプロピレン及び高密度ポリエチレンとのポリオレフィン樹脂が使用されており,さらにその上に積層される(D)の原料もホモポリプロピレンとのポリオレフィン樹脂が使用されており,樹脂が高温になると軟化して粘り気のある状態になることは技術常識であるから,(C)層,(D)層はいずれも,熱で溶融して柔らかくなって接着する性質を有する樹脂層であって,本件発明6の「熱封着樹脂層」に含まれる旨主張する。
しかし,本件発明6の「熱封着樹脂層」は,熱封着する性質を有する樹脂層であるとともに,第1のスキン層,コア層,第2のスキン層から構成される多層フィルムの- 58 -溶融して柔らかくなって接着する性質を有する樹脂層であれば該当するわけではない。したがって,(C)層,(D)層の原料が,熱で溶解して柔らかくなって接着する性質を有するポリオレフィン樹脂であるとしても,(C)層,(D)層が「熱封着樹脂層」に該当するものではない。
また,原告は,合成紙をインモールド用ラベルとして用いることは技術常識であり,インモールドラベルでは,表面層にヒートシール性を有する接着層を用いるから,合成紙として用いる引用発明1Aをインモードラベルとして,熱封着樹脂層を用いることは,当業者であれば容易に想到できるとも主張する。
しかし,引用発明1Aにおいては,低温ヒートシール性フィルムを(A)層ないし(D)層から構成される複合フィルムの表面層の一方に設けることとされており,(C)層,(D)層は,低温ヒートシール性フィルムの機能や用途を有することを意図した層ではないから,当業者は,(C)層,(D)層を「熱封着樹脂層」に変更しようとはしないというべきである。
よって,原告の主張は採用できない。
イ 相違点1−3について引用発明1Aの(D)層は,複合フィルムの透明性,光沢を向上させるという課題を解決するために調製されていることは,上記アのとおりである。引用例1には,かかる課題を解決するために,本件発明6の第2の冷却ステップである「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させる」ことや「冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有すること」との構成を設けることの記載はなく,相違点1−3の構成を想到することの動機付けがあるとはいえない。
そうすると,相違点1−3は,引用発明1Aから容易に想到することができたものではない。
原告の主張について原告は,引用発明1Aは,合成紙に使用可能な発明であるところ,合成紙をイン- 59 -モールド用ラベルに用いてエンボス加工を行うことは技術常識であり,インモールドラベルのエンボス加工が,凹凸構造が5μm〜30μmの深さを有するエンボス模様が形成された冷却ロールを用いて行われることも周知であって,本件明細書を見ても,「凹凸構造が5μm〜30μmの深さを有するエンボス模様が形成された冷却ロール」を用いる点に,技術的意義はないから,引用発明1Aに接した当業者は,技術常識及び周知技術に基づき,相違点1−3を容易に想到できる旨主張する。
しかし,相違点1−3は,当業者が引用発明1Aから容易に想到することができルドラベルに用いるとの記載はないから,インモールドラベルの表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることの動機付けはない。また,本件明細書に凹凸構造を5μm〜30μmとすることの技術的意義が記載されていないとしても,結論を左右するものではない。
よって,原告の主張は採用できない。
ウ 小括以上によれば,本件発明6は,当業者が引用発明1Aに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件発明7について相違点1−4は,上記相違点1−1と同様であるから,少なくともこの点において,本件発明7は,引用発明1Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 本件発明8について本件発明8は,請求項7を直接引用し,本件発明7の発明特定事項を全て有するものであるから,引用発明1Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5) まとめよって,本件発明6ないし8は,引用例1に記載された発明と同一の発明ではな- 60 -く,容易に発明できたものでもないから,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(本件発明6ないし8に係る引用例2に基づく進歩性判断の誤り)について(1) 引用発明についてア 引用例2には,以下の記載がある(下記記載中に引用する第1〜4図及び第1表は,別紙引用例2図表目録参照。。
)産業上の利用分野(1頁右下欄4〜12行)本発明は,差圧成形,中空成形によって製造される合成樹脂製容器に容器成形と同時に貼着されるラベル(ブランクを含む)に用いられるインモールド用ラベルに関し,特に,金型内に予めラベルをセットし,その上より熱可塑性樹脂を中空成形又は真空成形もしくは圧空成形することによって,ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形して容器を加飾することのできるインモールド用ラベルに関する。
従来の技術(1頁右下欄14行〜2頁左上欄7行)従来,ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形するには,金型内に予めブランク又はラベルをインサートし,次いで射出成形,中空成形,差圧成形,発泡成形などにより容器を成形して,容器に絵付けを行なっている(特開昭58−69015号公報,ヨーロッパ公開特許第254923号明細書参照)。この様なラベルとしては,グラビア印刷された樹脂フィルム,オフセット多色印刷された合成紙(例えば,特公昭46−40794号公報,特公昭54−31030号公報,英国特許第1090059号明細書など),或いは,アルミニウム箔の裏面にポリエチレンをラミネートし,その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。
発明が解決しようとする課題(2頁左上欄9行〜左下欄3行)しかしながら,上記のラベルで加飾された樹脂成形容器の製造方法は,射出成形のような高圧(20〜200kg/m2)でラベルと溶融樹脂容器を融着する方法では外観の良好な製品が得られるが,差圧成形(2〜7kg/m 2,−50〜−650mmHg)や中空成形(1〜10kg/m2)などの低圧で成形する方法では,近時の- 61 -高速成形機の発展によりブランクと溶融容器間の空気の逃げが十分でなく,該容器とブランクとの間にところどころにブリスターが発生した容器が少量発生することが見い出された。
そこで,表面に凹部が設けられたエンボスロール(正エンボス型ロール)を用い,ラベルの容器と接着する裏面側に凸状のエンボス模様を施して,容器成形時の容器とラベル裏面との間の空気の逃げを容易としてブリスターのないラベル貼着容器を得ることが提案され,実施されている。
しかしながら,ラベル裏面(容器と貼着する面側)に凸状のエンボス模様を設けてブリスターを防止するこの方法では,成形加工条件が狭い範囲(特に成形時の樹脂温度が高い)においては有効な手段であったが,成形時の樹脂温度を更に低くして冷却に要する時間を短縮してより高速成形性を高めようとするとラベルの接着強度が不足することが判明した。
また,光沢のより優れた容器を得る目的で成形樹脂の温度を高くした場合には樹脂に添加された酸化防止剤や帯電防止剤などの分解ガスや昇華などによるガスが多くなるために,ラベルと成形物との間にかるガス溜まりが発生して,ブリスター防止適性が悪い。
したがって,この様なことから本発明においては,幅広い成形条件,例えば成形温度幅,ショットサイクル幅,成形物の形状に適応したラベルを作り上げるのが重要な技術的課題である。
課題を解決するための手段(2頁左下欄6行〜右下欄12行)本発明者らは,上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果,熱可塑性樹脂を中空成形又は真空成形もしくは圧空成形する際に,金型内に予めインモールド用ラベルをセットし,この金型に熱可塑性樹脂を供給して,この金型壁に該熱可塑性樹脂を押圧して貼着させるインモールド用ラベルにおいて,該ラベルの容器と接着する側の表面を逆グラビア型パターン(凹型)のエンボスとすることによって,該エンボスの凹部が独立した部屋構造となり,しかも,該凹部の部屋をラベル全面に分散し- 62 -て存在させることによりガスや空気を少量づつこの凹部内に分散した形で封じ込めれば,これによって一部にガスや空気が集合した状態のラベルの浮き上がり(ブリスター)の発生を大幅に改良させることができるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
すなわち,本発明のインモールド用ラベルは,ロールの線数を80〜200本/インチにして,逆グラビア型のパターンを樹脂フィルムにエンボス加工した後,該フィルムの延伸を行なって得られたインモールド用ラベルであって,延伸後の該フィルムのエンボス加工側の表面の凹凸の山と谷の振幅の中心の線より上の凸状の部分の表面積が占める割合がラベルの表面積の50〜90%を占め,該中心線より下の凹状の部分の平均深さが0.5〜10μmであること,を特徴とするものである。
発明の効果(2頁右下欄14行〜3頁右上欄1行)このような本発明のインモールド用ラベルは,熱可塑性樹脂を中空成形又は真空成形もしくは圧空成形する際に,金型内に予めインモールド用ラベルをセットし,この金型に溶融した熱可塑性樹脂を供給して,この金型壁に該熱可塑性樹脂を押圧して,前記インモールド用ラベルを熱可塑性樹脂に貼着させることによって,ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形されるので,ラベルの変形もなく,容器本体とラベルの密着強度が強固であり,ブリスターも無く,ラベルにより加飾された外観が良好な容器である。
特に本発明のインモールド用ラベルは,その接着層の容器との接着面がエンボス加工されて逆グラビア型に形成されているので,その凸部(容器とラベルの接着面)面積がラベル面積の過半数を占めており,正グラビア型パターンのエンボスロールを用いて得た凸型の模様を有する従来のラベルに比べて単位面積当たりの接着強度が上昇する。
また,接着層のエンボス部分を逆グラビア型とすることによって,凹部が独立した部屋構造となり,しかも,該凹部をラベル全面に分散して存在させることによりガスや空気を少量づつ分散した形で封じ込めることができることから,また,該凹- 63 -部の深さを0.5〜10μmとラベル全体の肉厚と比較して極めて小さい値としたことによって一部にガスや空気が集合した状態のラベルの浮き上がり(ブリスター)の発生を大幅に改良させることができる。
インモールド用ラベルの構造(3頁右上欄5行〜左下欄17行)本発明のインモールド用ラベルは,差圧成形又は中空成形によって合成樹脂製容器が製造される際に,金型内で容器に貼着されるラベルである。
このようなインモールド用ラベルは,裏面に上記構造のエンボス模様が形成された単層の延伸フィルム,裏面側に上記構造にエンボス模様が形成された融点が85〜130℃の樹脂接着層をより高温の樹脂によりなる基材層に接着された二層構造のもの,或いは,表面に無機微細粉末含有樹脂延伸フィルムによりなる紙状層を形成し,中間に基材層を形成し,裏面側に低融点の樹脂接着層を形成した三層構造としたもの,或いは,更に多層の構造としたものなど積層された紙片状のものであることが好ましい。
このようなインモールド用ラベルは,金型内で容器に貼着される前は紙片状であるが,貼着後は容器と一体になる。
該ラベルは,その裏面側(容器に貼着される側)が,ロールの線数を80〜200本/インチにして,逆グラビア型のパターンでエンボス加工された後,縦方向に4〜8倍または/及び,横方向に4〜12倍の延伸を行なって,延伸後のフィルム表面の凹凸の山と谷の振幅の中心線より凸部の表面積がラベル全体の50〜90%,好ましくは55〜80%を占め,更に該中心線より凹部の平均深さが0.5〜10μm,好ましくは1〜8μmを有した構造に形成したものである。
このようなインモールド用ラベルは,真空成形,圧空成形などの差圧成形や,パリソンを圧空により金型内壁に圧着する中空成形などのインモールド用ラベルとして使用することができる。もちろん,射出成形用のインモールド用ラベルとして使用できる。
インモールド用ラベルの製造(3頁右下欄2行〜4頁左下欄10行)- 64 -a 構成材料(a)基材層本発明の好ましい態様のインモールド用ラベルは,通常,基材層と接着層とから構成され,該基材層として用いられる材料としては,ポリプロピレン,高密度ポリチレン,ポリ塩化ビニル,ポリエチレンテレフタレート,ポリアミドなどの融点が135〜264℃の熱可塑性樹脂に,無機微細粉末を8〜65重量%含有させた樹脂フィルム,或いは,該樹脂フィルムの表面上に無機充填剤含有ラテックス(塗工剤)を塗工させたフィルム,或いは,前記樹脂フィルムにアルミニウムを蒸着させたものなどを挙げることができる。このような基材層は単層であっても,或いは,二層以上の積層された構造であっても良い。
(b)接着層前記基材層の樹脂フィルムの裏面側(樹脂容器と接する側)には,接着層となる低密度ポリエチレン,酢酸ビニル・エチレン共重合体,エチレン・アクリル酸共重合体,エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩などの,融点が85〜135℃のヒートシール性樹脂よりなるフィルム層が積層される。また,これら樹脂のエマルジョンや溶剤に溶かした溶液を塗布し,乾燥させて接着層を形成させてもよい。
このヒートシール性樹脂フィルム層の積層によって,インモールド用ラベルと樹脂容器との接着をより強固にさせることができる。但し,成形される樹脂とラベル素材の樹脂とが同一のときは,接着層を省略することもできる。
b エンボス加工そして,このヒートシール性樹脂フィルム層には,逆グラビア型のパターンの点又は線の数が,1インチ(2.54cm)当たり,80〜200本となるようなエンボス模様に形成した金属ロールとゴムロールによってエンボス加工が施される。
該エンボスは綾線で囲まれた独立した凹部構造を多数備える逆グラビア型のパターン(第5図参照)であることが重要で,第7図に示すような各部屋の気体が自由に移動できる凸形の正グラビア型のパターンでは本発明の効果を発揮することがで- 65 -きない。
c 延伸前記エンボス加工後の積層構造フィルムは,少なくとも一方向に,通常4〜12倍,好ましくは4〜8倍に延伸される。該延伸は基材層の樹脂の融点よりも低い温度で,かつヒートシール性樹脂の融点以上の温度で行われる。この延伸によって基材層は配向されるが,ヒートシール層は配向されない。
d その他の処理前記延伸後の積層構造フィルム(合成紙)は,必要であれば,コロナ放電加工,火炎処理,プラズマ処理などを施すことによって,表面の印刷性,接着性を改善しておくことができる。
前記基材層の表面側,例えば紙状層には,通常印刷が施される。この様な印刷としては,グラビア印刷,オフセット印刷,フレキソ印刷,スクリーン印刷などがあり,これによって,商品名,製造元,販売会社名,キャラクター,バーコード,使用方法などを印刷することができる。
e 抜打加工印刷及びエンボス加工された前記容器用ラベルは,抜打加工により必要な形状,寸法のラベルに分離される。このラベルは容器表面の一部に貼着される部分的なものであっても良いが,通常は差圧成形ではカップ状容器の側面を取り巻くブランクとして,中空成形では瓶状容器の表及び裏に貼着されるラベルとして製造される。
インモールド用ラベル(4頁左下欄12行〜5頁左下欄13行)上記の如くして製造された本発明のインモールド用ラベルは,前記のような構造をしたもので,真空成形,圧空成形などの差圧成形や,パリソンを圧空により金型内壁に圧着する中空成形などのインモールド用ラベルとして使用することができる。
以下に,本発明のインモールド用ラベルの代表例として,中空成形容器用ブランクを挙げて具体的に説明する。
第1図は,本発明のインモールド用ラベルの一例として挙げた,中空成形に用い- 66 -られる二層構造のインモールド用ラベルの断面図を表わす。
この第1図中の,1はインモールド用ラベルであり,2はそれを構成する熱可塑性樹脂フィルム基材層で,3は印刷で,4はヒートシール性樹脂フィルムより形成される接着層である。また,5は該ヒートシール性樹脂フィルムよりなる接着層に逆グラビアロールを用いたエンボス加工により格子模様を付与された綾(凸部)の頂上であり,6は格子模様の谷部(凹部)を示すものである。
第2図は,そのインモールド用ラベル1のヒートシール性樹脂フィルムよりなる接着層4側(インモールド用ラベルの裏面側)の平面図を表わし,第3図は,第1図に示すインモールド用ラベルを得るための,延伸前及び印刷前の積層構造フィルムの断面図を表わし,第4図は第3図に示す積層構造フィルムの部分拡大図である。
この第3図に示す積層構造フィルムのエンボス模様は,ロールの点又は線の数を,例えば1インチ(2.54cm)当たり,80〜200本となる数で設ける。上記範囲未満では凹部6の溝が深くなり過ぎて,貼着後にラベル表面(印刷される側)にエンボスパターンが現われ易く,オレンジピール(貼着されたラベルの印刷面側にまでエンボスの凹凸が現われること)の発生を容易にする。また,上記範囲を超えると凹部6の溝が浅くなり過ぎてガスや空気を封じ込める体積が不足し,ブリスター防止の効果が減少する。更に,上記範囲を超えるとエンボス加工時に一部の低融点樹脂の場合に冷却不足によるロールへの貼り付き現象が発生し,加工上問題がある。このような1インチ当たりの線の数を線数といい,エンボス模様の精粗の目安となる。この様なエンボス模様は本発明においては,逆グラビア型のパターンとすることが重要である。
エンボス模様の谷の深さ(h)は,好適には,ヒートシール樹脂層の肉厚(h 0)の1/3以上,好ましくは1/2以上であり,基材層内に食い込んでもよい(h>h0)。
このように逆グラビア型のパターンにエンボス加工された積層構造フィルムを延伸することにより積層構造フィルムの肉厚を減じ,また,エンボス模様を広げると- 67 -共にエンボスの谷間の深さも浅くなる。
そして,横延伸後のフィルム表面の凹凸の山(綾)5と谷6の振幅の中心線(h/2の位置)Lより凸部5の表面積Sがラベル全体の面積の50〜90%,好ましくは55〜80%を占め,更に該中心線Lより凹部の平均深さL 1が0.5〜10μm,好ましくは1〜8μmを有した構造に形成したものである。上記凸部の表面積が50%未満の場合はブリスターが発生しやすくなり,90%を超えると接着力が低下する。また,凹部の平均深さが上記範囲未満の場合はブリスターが発生しやすく,上記範囲を超える場合は接着強度が低下する。
また,ヒートシール性樹脂層の表面ベック平滑度(JIS−P8119)は20〜800秒,好ましくは30〜400秒,平均表面粗さ(Ra)は0.5〜5μmであるのが接着強度の点において好ましい。
本発明のインモールド用ラベルは上記のように構成されているので,特に逆グラビア型に形成されているので,延伸後のフィルムの接着層4の面の凹凸が中心線Lより上の凸部5の面積Sが増え,しかも低融点樹脂との接着においても接着面積が増えることにより,単位面積当たりの強度を大幅に上昇させることができる。また,逆グラビア型であるので,高温成形条件に於けるガスや空気の一箇所への溜まりを減少させて,多くの凹部6へ分散させて封じ込めることによりブリスターの発生を防止することができる。
実施例(5頁右下欄8行〜7頁)実施例1インモールド用ラベルの製造メルトフローレート(MFR)0.8,融点164℃のホモポリプロピレン70重量%,融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し,270℃に設定した押出機にて混練した後,シート状に押し出し,冷却装置により冷却して,無延伸シートを得た。
次いで,このシートを145℃に加熱した後,縦方向に5倍延伸して(A層)の縦- 68 -方向5倍延伸シートを得た。
一方,MFRが4.0のホモポリプロピレン58重量%と平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム42重量%との混合物(B)と,融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)を,それぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後,一台のダイに供給して,該ダイ内で積層(B層−C層)した後,この積層物(B層−C層)をダイよりフィルム状に押し出して,前記A層の縦方向5倍延伸シートの裏面側にC層が外側になるように押し出し,これを金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して,該積層構造フィルムのC層側に,0.3mm間隔(80線) 谷部の深さ30μmのドットを有する逆グラビア型のパターンをエンボス加工,した。
他方,上記(B)の混合物を,前記A層のシートの表面側にラミネートし,紙状層(B層)を形成して,四層構造の積層フィルムを得た。
次いで,この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後,横方向に7倍延伸し,次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後,これを55℃まで冷却した後,耳部をスリットして,(B)/(A)/(B)/(C)の各層の厚さがそれぞれ30/70/30/10μmからなる四層構造の合成紙を得た。
そして,この合成紙の紙状層(B層)側にオフセット印刷を施した後,更にこれを打抜加工して,インモールド用ラベル1(横60mm,縦110mm)を得た。
このラベルの(C)層表面の逆グラビア型パターンのエンボスの表面構造を表面粗さ計((株)小坂研究所製サーフコーダーSE−30)により測定し描き,調べたところ,該表面の凹凸の山5と谷6の振幅の中間である中心線Lより突出する凸部の表面積Sが,ラベル全体の65%を占め,該該中心線Lよりへこんでいる凹部6の平均深さが6μmであり,そのベック平滑度は30秒で,表面平均粗さ(Ra)は1.2μm,JIS−P8125の方法にて測定したデーバー硬度は,MD方向が1.8g−cm,TD方向が3.5g−cmであった。
貼着- 69 -このインモールド用ラベル1をブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側(B層)が金型と接するように固定した後,高密度ポリエチレン(融点134℃)のパリソンを155℃(低温パリソン)及び205℃(高温パリソン)で溶融押出し,次いで割型を型締めした後,4.2kg/cm 2の圧空をパリソン内に供給し,パリソンを膨脹させて容器状とすると共にインモールド用ラベルと融着させ,次いで該型を冷却した後,型開きをして中空容器を取り出した。
この中空容器は,印刷の退色もなく,ラベルの収縮やブリスターの発生も見受けられなかった。また,自動ラベル給紙装置によるブロー成形用割型へのラベルの供給は100枚連続で行ったがミス(型よりラベルが落ちるなど)は1回も無かった。
さらに,上記低温パリソン及び高温パリソンで溶融押出しした際のラベルの接着強度及びオレンジピールを測定した結果を第1表に示す。
実施例2〜6及び比較例1〜5インモールド用ラベルの構造を第1表に示す構造にした以外は,実施例1と同様にして実施した。
その結果を第1表に示す。
その評価は以下に示す基準にて行った。
ブリスターラベル貼着状況により次に示す5段階に分類した。
5:全面貼着4:ラベルの100%未満〜90%が貼着している。
3:ラベルの90%未満〜70%が貼着している。
2:ラベルの70%未満〜50%が貼着している。
1:ラベルの50%未満が貼着する。
ラベル接着強度貼着ラベルの15mm幅の接着強度(T字剥離)を測定した。
オレンジピール- 70 -○:オレンジピール発生せず。
△:オレンジピールが若干見える。
×:オレンジピールが目立つ。
また,実施例2及び比較例2における横延伸前及び横延伸後の(C)層の表面構造を(株)小坂研究所製サーフコーダーSE−30K型によって測定して表わされた図を,第5図〜第8図として示す。
第5図は本発明の100線逆型台形グラビアエンボスを形成したフィルム表面を表わす図であり,第6図は第5図のフィルムを横延伸した後のフィルム表面を表わす図である。
また,第7図は従来の100線正型台形グラビアエンボスを形成したフィルム表面を表わす図であり,第8図は第7図のフィルムを横延伸した後のフィルム表面を表わす図である。
また,第9図〜第11図は本発明の実施例2の100線における表面層膜厚と表面形態を表わす図であり,第9図は膜厚が2μm,第10図は膜厚が4μm,第11図膜厚が6μmのものの表面形態を表わす。
更に,第12図〜第14図は本発明の実施例4の150線における表面層膜厚と表面形態を表わす図であり,第12図は膜厚が2μm,第13図は膜厚が4μm,第14図膜厚が6μmのものの表面形態を表わす。
イ 上記アによれば,引用例2には,本件審決が認定したとおりの引用発明2A及び引用発明2B(前記第2の3(3)ア)が記載されているものと認められる。
また,本件発明6と引用発明2Aとの一致点及び相違点,本件発明7と引用発明2Bとの一致点及び相違点は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(3)イ,ウ)であると認められる。
(2) 本件発明6の容易想到性についてア 相違点2−1について引用例2には,A層について,「本発明の好ましい態様のインモールド用ラベ- 71 -ルは,通常,基材層と接着層とから構成され,該基材層として用いられる材料としては,ポリプロピレン,高密度ポリチレン,…などの融点が135〜264℃の熱可塑性樹脂に,無機微細粉末を8〜65重量%含有させた樹脂フィルム…などを挙げることができる。このような基材層は単層であっても,或いは,二層以上の積層された構造であっても良い」(3頁右下欄4〜16行)との記載があり,基材層が2層以上の積層された構造であってもよいことが開示されている。
また,引用例2には,従来技術として,ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形するには,金型内に予めブランク又はラベルをインサートし,次いで射出成形,中空成形,差圧成形,発泡成形などにより容器を成形して,容器に絵付けを行っていること(特開昭58−69015号公報,甲33)の記載があるところ,この従来技術には,中空成形,射出成形,圧空成形若しくは真空成形時に型内でラベルを成形品に貼着する方法に関する発明につき(1頁右下欄2〜4行),ラベルは,ポリプロピレンの延伸フィルムを紙状層とし,反対側の表面を構成するポリエチレンフィルムを裏面層とする少なくとも2層構造の複合フィルムよりなるラベルであり(2頁左下欄6〜17行) 中間層に2軸配向のポリプロピレンフィルム層を含む3層以上で,あることが好ましく(3頁左下欄4〜8行),複合フィルムが3層以上の場合,例えば(A)ポリプロピレン,(B)ポリプロピレン,(C)ポリエチレンを,ダイ内で(B)よりなるフィルムが中間層となるように積層し,共押出で製造する(3頁左上欄10〜20行)ことの開示がある。
そうすると,引用発明2Aの基材層は1層のものであるものの,引用例2自体に2層以上の積層構造であってもよいことが記載されていること,引用例2には,複合フィルムが,少なくとも2層構造の層数は中間層に2軸配向のポリプロピレンフィルム層を含む3層以上であることが好ましく,例えば(A)ポリプロピレン, B)( ,ポリプロピレン,(C)ポリエチレンを,ダイ内で(B)よりなるフィルムが中間層となるように積層し,共押出で製造された構造が従来技術(甲33)として記載されていることからすれば,引用発明2Aの基材層として,中間層に2軸配向のポリ- 72 -プロピレンフィルム層を含む3層の共押出で製造された複合フィルムを使用する動機付けはあるといえる。
他方,阻害事由の主張はないから,相違点2−1に係る構成は,引用発明2Aに従来技術(甲33)に記載された技術を適用して,当業者が容易に想到することができたものである。
被告の主張について被告は,引用例2には,基材層は2層以上の積層された構造であってもよいと記載されているにすぎないし,従来技術にも,単に3層以上とすることが記載されているにすぎないから,あえて3層とする動機付けはなく,「第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含む」構造の「三層」の積層された構造を採用する動機付けがない,また,引用例2には,第1の押出段階の中で3層をともに押し出して形成する積層構造であるとは記載されていない旨主張する。
しかしながら,引用例2に従来技術として記載されている甲33には,3層以上とすることが記載されている以上,3層を採用することは当然あり得るから,動機甲33には,中間層に2軸配向のポリプロピレンフィルム層を含む3層以上のフィルムを共押出で製造することの開示があるから,引用例2に接した当業者は,従来技術である甲33を参照して3層を共押出してフィルムを製造することを容易に想到できるというべきである。
よって,被告の主張は採用できない。
イ 相違点2−2について引用例2には,差圧成形,中空成形によって製造される合成樹脂製容器に容器成形と同時に貼着されるラベル(ブランクを含む)に用いられるインモールド用ラベルに関し,ラベル裏面(容器と貼着する面側)に凸状のエンボス模様を設けてブリスターを防止する方法では,成形加工条件が狭い範囲(特に成形時の樹脂温度が高い)においては有効な手段であったが,成形時の樹脂温度を更に低くして冷却に要する時間を短縮してより高速成形性を高めようとするとラベルの接着強度が不- 73 -足するとの問題があり,また,光沢のより優れた容器を得る目的で成形樹脂の温度を高くした場合には樹脂に添加された酸化防止剤や帯電防止剤などの分解ガスや昇華などによるガスが多くなるために,ラベルと成形物との間にガス溜まりが発生して,ブリスター防止適性が悪いことから,幅広い成形条件,例えば成形温度幅,ショットサイクル幅,成形物の形状に適応したラベルを作り上げるのが重要な技術的課題であること(2頁左上欄9行〜左下欄3行),かかる課題解決のため,熱可塑性樹脂を中空成形又は真空成形もしくは圧空成形する際に,金型内に予めインモールド用ラベルをセットし,この金型に熱可塑性樹脂を供給して,この金型壁に該熱可塑性樹脂を押圧して貼着させるインモールド用ラベルにおいて,該ラベルの容器と接着する側の表面を逆グラビア型パターン(凹型)のエンボスとすることによって,該エンボスの凹部が独立した部屋構造となり,しかも,該凹部の部屋をラベル全面に分散して存在させることによりガスや空気を少量ずつこの凹部内に分散した形で封じ込めれば,これによって一部にガスや空気が集合した状態のラベルの浮き上がり(ブリスター)の発生を大幅に改良させることができること(2頁左下欄6行〜右下欄1行)の記載がある。
したがって,引用発明2Aの逆グラビア型のパターンをエンボス加工する工程は,エンボスの凹部が独立した部屋構造となり,しかも,該凹部の部屋をラベル全面に分散して存在させることによりガスや空気を少量ずつこの凹部内に分散した形で封じ込めれば,これによって一部にガスや空気が集合した状態のラベルの浮き上がり(ブリスター)の発生を大幅に改良させるための加工であると理解することができる。
他方,本件明細書には,本件発明6の「第2の冷却ステップ」は「表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させる」が,形成される空気チャンネルは,フィルムの巻取品質を向上させるもので(【0049】,空気)流れ通路を提供することにより,巻取時のしわ寄りを効果的に防止するものである(【0050】)との記載があり,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在してい- 74 -た空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止するものであると理解することができる。
そうすると,引用発明2Aの逆グラビア型のパターンをエンボスする工程と,本件発明6の空気チャンネルを形成させる第2の冷却ステップとは,目的も異なる上,形成される構造も異なるのであって,両者は全く異なる工程であり,引用発明1Aの逆グラビア型のパターンをエンボスする工程を,本件発明6の空気チャンネルを形成させる第2の冷却ステップとすることの動機付けがあるとはいえない。
したがって,相違点2−2に係る構成は,当業者が容易に想到することができたものではない。
原告の主張について原告は,本件発明6は,所定の深さの凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に凹凸構造を形成するという内容であって,インモールド用ラベルで必須とされるエンボス加工そのものであり,本件明細書によれば「冷却ロールに形成された凹凸構造を5μm〜30μmの深さを有する」ようにすることには技術的意義はないから,相違点2−2は,引用発明2Aに基づき容易に想到できるものであると主張する。
しかし,引用発明2Aの逆グラビア型のパターンをエンボスする工程と,本件発明6の空気チャンネルを形成させる第2の冷却ステップとは,全く異なる工程であるから,引用発明2Aに空気チャンネルを形成させる第2の冷却ステップを適用すを5μm〜30μmとすることの技術的意義が記載されていないとしても,結論を左右するものではない。
よって,原告の主張は採用できない。
ウ 小括以上によれば,本件発明6は,当業者が引用発明2Aに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
- 75 -(3) 本件発明7の容易想到性についてア 相違点2−3について相違点2−3は,相違点2−1と同じであるから,当業者が容易に想到することができたものであることは,前記(2)アのとおりである。
イ 相違点2−4について本件明細書には,「樹脂層40の原料は,低温接着性樹脂(低融点樹脂)であって,熱ラミネート(熱融着)が可能なものであれば制限されない」【0043】( )との記載があるところ,かかる記載によれば,本件発明7の「熱ラミネート」との用途は,「熱封着樹脂層」に基づくものである。
一方,引用例2の「接着層となる…エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩などの,融点が85〜135℃のヒートシール性樹脂よりなるフィルム層」との記載によれば,引用発明2Bの「融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)からなるC層」は,「ヒートシール性樹脂よりなるフィルム層」であり,熱封着樹脂層である。
そうすると,本件発明7の「熱封着樹脂層」と引用発明2Bの「融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)からなるC層」とは,ともに熱封着樹脂層であるから,「熱ラミネート」用であるとの点において,相違はないものと認められる。
したがって,相違点2−4は,実質的な相違点ではない。
ウ 小括以上によれば,本件発明7は,当業者が引用発明2Bに基づいて容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明8の容易想到性について本件発明8は,本件発明7の「第1のスキン外層」をポリエチレン系樹脂,「コア層」をポリプロピレン系樹脂,「第2のスキン内層」をポリプロピレン樹脂及びポリエチレン系樹脂から選択された1種以上,「熱封着樹脂層」をエチレンビニルアセテート,エチレンメチルアセテート,エチレンメタクリル酸,エチレングリコール,エ- 76 -チレン酸ターポリマー,及びエチレン/プロピレン/ブタジエンターポリマーよりなる群から選択された1種以上に,それぞれ限定したものである。
引用発明2Bの「融点が90℃のエチレン・メタクリル酸共重合体(C)からなるC層」は,「ヒートシール性樹脂よりなるフィルム層」,すなわち,「熱封着樹脂層」であるから,「エチレンメタクリル酸」を原料とする「熱封着樹脂層」が開示されている。
また,引用発明2の基材層として,従来技術(甲33)に開示された構成を採用する動機付けがあることは,前記(2)アのとおりであるところ,甲33に開示された複合フィルムは,ポリプロピレン,ポリプロピレン,ポリエチレンからなるから,「第1のスキン外層」をポリエチレン系樹脂,「コア層」をポリプロピレン系樹脂,「第2のスキン内層」をポリプロピレン樹脂及びポリエチレン系樹脂から選択された1種以上にすることも容易に想到できる。
他方,阻害事由の主張はない。
したがって,引用発明2Bの層構成を本件発明8のものとすることは,当業者が容易に想到することであるから,本件発明8は,当業者が引用発明2Bに基づいて容易に発明をすることができたものである。
(5) まとめ本件発明6は,引用例2に記載された発明から容易に発明できたものではないが,本件発明7,8は,いずれも,引用例2に記載された発明から容易に発明できたものであり,取消事由2は,本件発明7,8に係る部分に限り,理由がある。
4 取消事由4(本件発明6に係る実施可能要件の判断の誤り)について(1) 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載事項- 77 -ア 本件明細書には,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法について,図4とともに,以下の記載がある。
「第1の押出ステップにおいては,第1の押出機100−1により少なくとも3層10,20,30を含む多層フィルムFを押出成形する。具体的には,第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20を含む少なくとも3層が積層形成されるように共押出して多層フィルムFを成形する。このとき,前記第1の押出機100−1は,多層フィルムFの層数に対応する押出部を有し,押出ダイで各層10,20,30がラミネートされる。例えば,第1のスキン層10,コア層30,および第2のスキン層20からなる3層構造を有する多層フィルムFを成形したい場合,前記第1の押出機100−1は,これに対応する3つの押出部を有していてよい。」(【0032】)「第1の押出ステップにより押出成形された多層フィルムFは,第1の冷却ロール200に通されて第1の冷却ステップを経る。(」【0039】)「第1の冷却ステップを経た多層フィルムFは,ガイドロールR1に沿って縦延伸機300へ搬送され,機械方向(長手方向)に縦延伸(MDO)される。(」【0040】)「縦延伸ステップを経た多層フィルムFは,本発明の態様においては追加の押出工程(第2の押出ステップ),およびこれと同時に行なわれる冷却工程(第2の冷却ステップ)を連続的に経る。…第2の押出ステップにおいては,多層フィルムF上に樹脂層40が積層形成される。具体的には,図4を参照して,多層フィルムFは,縦延伸された後,第2の押出機100−2に送られる。…第2の押出機100−2には,多層フィルムFが通され,これと同時に樹脂供給部150から原料が供給されるにより樹脂層40が押出されながら,ダイ(Dies)で多層フィルムF上への樹脂層40のラミネートが行なわれる。(」【0041】【0042】, )「第2の押出ステップにより樹脂層40が積層形成されてなる多層フィルムFは,連続的に第2の冷却ロール400に通されて,第2の冷却ステップを経る。(」【00- 78 -48】)「第2の冷却ステップを経たフィルムは,ガイドロールR2に沿って横延伸機500へ搬送され,幅方向に横延伸(TDO)される。(」【0058】)イ これらの記載によれば,当業者は,本件発明6の製造方法が,第1のスキン層,コア層,及び第2のスキン層を含むポリオレフィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップ,押出成形されたフィルムを冷却させる第1の冷却ステップ,第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップ,縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップ,樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップからなることを理解することができる。
また,本件明細書には,「本発明の好適な態様において,前記第2の冷却ステップでは,樹脂層40の冷却と同時に樹脂層40に空気チャンネル(air channel)を形成させてもよい。(」【0049】,)「空気チャンネルは,第2の冷却ステップで形成され,このとき,前記空気チャンネルの形成は,表面に凹凸構造を有する第2の冷却ロール400を用いることにより実現することができる。具体的には,図4に示すように,前記第2の冷却ロール400として,その表面に凹凸構造450が形成された冷却ロールを用いて,樹脂層40に空気チャンネルを形成する。すなわち,第2の押出ステップにおいて樹脂層40が形成された多層フィルムFを,第2の冷却ロール400に通させて冷却させるとともに,表面に凹凸構造450が形成された第2の冷却ロール400に樹脂層40が密着するように通させて,空気チャンネルを形成する。(」【0051】)との記載があり,かかる記載によれば,当業者は,「第2の冷却ステップは,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させる」ものであることを理解することができる。
ウ そうすると,当業者は,本件明細書の記載から,本件発明6の実施をすることができるといえる。
- 79 -(3) 原告の主張について原告は,実施例及び比較例の記載(【0066】〜【0075】)は,図4の装置を前提に,表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層40とは反対側の面に当てる態様を開示しており,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを樹脂層40表面に当てる態様については,空気チャンネルの形成によって巻取時のしわ寄りが効果的に防止されるとの効果が奏されるとの実験的な確認がなく,実施可能要件に適合しない旨主張する。
本件明細書には,図4に示す装置を前提に,「先ず,共押出により第1のスキン層10/コア層30/第2のスキン層20が積層されてなるフィルムを作製した後,第1の冷却を行ない,次いで,縦延伸比4倍で縦延伸を行なった。そして,縦延伸後,連続押出によるインライン(In-Line)工程により前記第1のスキン層10上に樹脂層40としてのEVA層を押出積層した後,冷却ロールに通させて第2の冷却を行ない,次いで,横延伸比8倍で横延伸して,図3に示すような4層構造の延伸フィルムを作製した。…冷却する際に,…実施例2の場合は,サンディング処理が施されたマットタイプロールに通させて冷却を行なった。 【0066】」( ,【0067】)との記載があり,第2の冷却ステップで凹凸構造を有する冷却ロールが第2のスキン層に当てられ,第2のスキン層に空気チャンネルが形成される実施例2が記載されている。
しかしながら,実施例2を参照した場合でも,請求項6や【0051】の記載を参照して,第2の押出ステップにより成形されたフィルムを実施例2と上下逆にすれば,第2の冷却ステップで凹凸構造を有する冷却ロールを樹脂層40に当てることは容易にできるから,過度の試行錯誤を要することなく,本件発明6の空気チャンネルを形成することはできるというべきである。
そして,実施可能要件は,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要するとするものであって,作用効果を- 80 -奏することの実験的な確認を要するものではない。
以上によれば,原告の主張は採用できない。
(4) 小括よって,本件発明6について,実施可能要件違反はないから,取消事由4は理由がない。
5 取消事由5(本件発明6に係るサポート要件の判断の誤り)について(1) 特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件発明6の課題とその解決手段についてア 本件明細書の「発明が解決しようとする課題」には,本件発明6の課題として,「熱ラミネート用樹脂層の形成の際に,融点の低い樹脂の場合であっても押出による連続工程で積層形成が可能になるようにすることで,製造工程が単調で製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができ,また層間接着力に優れるポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供する」【0014】( )との記載がある。
イ 本件明細書の「発明を実施するための形態」には,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法に関して,図4とともに,前記4(2)ア,イのとおりの記載があるほか,以下の記載がある。
「本発明の態様によれば,…従来のようにアンカー層5…を形成することなく,第1のスキン層10と樹脂層40とに優れた接着力を持たせることから,層間接着力が改善する。(」【0045】)「…空気チャンネルは,空気流れ通路を提供することにより,巻取時のしわ寄り- 81 -を効果的に防止する。すなわち,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する。(」【0050】)「…本発明の態様によれば,多層構造のポリオレフィン系延伸フィルムの製造の際に,樹脂層を含む各層を連続的な押出工程を通じて積層することにより,製造工程が簡潔で(simple),且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。また,層間接着力,すなわち樹脂層と被着体(adherent)との接着力のみならず,第1のスキン層と樹脂層との層間接着力にも優れるという効果を奏する。(」【0020】)「…縦延伸後に直ちに横延伸を行なうことなく,縦延伸工程と横延伸工程との間に追加の押出(第2の押出ステップ)および冷却工程(第2の冷却ステップ)を含み,前記追加の押出工程(第2の押出ステップ)により樹脂層40が積層され,融点の低い樹脂の場合であっても押出による積層が可能となる。この結果,樹脂層40を含む多層延伸フィルムの製造の際に,連続的な押出によるインライン工程により多層の具現が可能となり,製造工程が簡潔で且つ製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができる。更には,延伸フィルムを長幅により製造することができるため価格競争力が高く,且つ前記樹脂層40は被着体に対し優れる接着力を有する。/また,第1のスキン層10がポリエチレン系樹脂を含む場合,樹脂層40を構成する低温接着性樹脂,例えばエチレン−ビニルアセテート(EVA)等の低融点樹脂との接着力が改善し,優れている第1のスキン層10と樹脂層40との層間接着力(接着強度)を有する。/第2の冷却ステップにおいて,凹凸構造450が形成された第2の冷却ロール400を用いる場合,樹脂層40に空気チャンネルが形成されるにより巻取時のしわ寄りが防止され,外観性が確保される。(」【0060】〜【0062】)「…本発明の実施例において,第1のスキン層10上にインライン連続押出により樹脂層(EVA層)を形成してみた結果,優れる接着強度(剥離不可)を有し,且- 82 -つ容易に形成されることが判明した。/また,樹脂層40と被着体(紙)との層間接着強度において,本発明の実施例においては第1のスキン層10をPE層(LLDPE)で構成し,インライン押出により樹脂層40を積層してなるフィルム(実施例1及び2)が,従来のフィルム(比較例1及び2)よりも同等かそれより優れる評価結果を示すことが判明した。/本発明の実施例に係るフィルムの場合,巻取後の外観性においても良好であることが分かり,特に実施例2の試片は,外観性等の巻取品質が非常に優れていることが判明した。 (」【0073】〜【0075】)ウ 以上の記載によれば,本件発明6のポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法において,第1の押出ステップ,第1の冷却ステップ,縦延伸ステップ,第2の押出ステップ,第2の冷却ステップ,横延伸ステップの各ステップについて,縦延伸ステップと横延伸ステップとの間に第2の押出ステップ及び第2の冷却ステップを含み,第2の押出ステップにより,融点の低い樹脂の場合であっても押出による積層が可能となることや,連続的な押出によるインライン工程により,製造工程が簡潔で,かつ製造にかかる時間が短くなるため,製品の生産コストを下げられることが理解できる。
また,実施例1は,第2の冷却工程で凹凸構造のない冷却ロールが第2のスキン層に当てられ,第2のスキン層に空気チャンネルがないポリオレフィン系延伸フィルムであり,実施例2は,第2の冷却工程で凹凸構造を有する冷却ロールが第2のスキン層に当てられ,第2のスキン層に空気チャンネルが形成されたポリオレフィン系延伸フィルムであるが,ともに,第1のスキン層と樹脂層との優れた層間接着強度,樹脂層と被着体(紙)との優れた層間接着強度を有していることが示されている。
したがって,本件明細書の記載に接した当業者は,本件発明6は,「熱ラミネート用樹脂層の形成の際に,融点の低い樹脂の場合であっても押出による連続工程で積層形成が可能になるようにすることで,製造工程が単調で製造にかかる時間が短くなるため製品の生産コストを下げることができ,また層間接着力に優れるポリオレ- 83 -フィン系延伸フィルムの製造方法,および該方法により製造されたポリオレフィン系延伸フィルムを提供する」との課題を解決し得るものであることを認識することができる。
(3) 原告の主張について原告は,実施例及び比較例の記載(【0066】〜【0075】)は,図4の装置を用いており,表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層には当たらず,樹脂層とは反対側の面に当たるようになっているから,これらの記載によっても,本件発明6によって,「優れた層間接着強度でラミネートされた多層ポリオレフィン延伸フィルムを提供」されているのか否かを理解することができず,サポート要件に違反する旨主張する。
本件発明6の製造方法の各ステップを経て製造されたポリオレフィン系延伸フィルムは,実施例1のポリオレフィン系延伸フィルムとは,本件発明6の空気チャンネルが実施例1では形成されない点で異なり,実施例2のポリオレフィン系延伸フィルムとは,空気チャンネルの形成場所が本件発明6では樹脂層であるのに対し,実施例では第2のスキン層である点で異なる。
しかし,本件明細書の「空気チャンネルによってフィルムの巻取品質が向上する。
…横延伸されたフィルムは,巻取ロール600に巻き取られることとなり,このとき,巻取工程でしわが寄り,該しわが取れ難くなることがある。樹脂層40の形成の際,従来のようにコーティング工程等によらずに,縦延伸後の連続的な追加の押出工程(第2の押出ステップ)により樹脂層40を積層するため,巻取時にしわが寄り,該しわが取れ難くなることがある。(」【0049】,)「空気チャンネルは,空気流れ通路を提供することにより,巻取時のしわ寄りを効果的に防止する。すなわち,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する。(」【0050】,)「本発明の実施例に係るフィルムの場合,巻取後の外観性においても良好であることが分かり,特に実施例2の試片は,外観性等の巻取品質が非常に優れていることが判明- 84 -した。(」【0075】)との記載によれば,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する空気流れ通路を提供することで,巻取時のしわ寄りを効果的に防止することを理解することができる。
そして,表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層40側に当てられた場合であっても,巻き取られたフィルムに空気チャンネルが形成されることは,スキン層に空気チャンネルが形成された実施例2の場合と同様であるから,巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより,しわが寄ることを効果的に防止する空気流れ通路を提供し,巻取時のしわ寄りを防止する効果を奏するものと解される。
また,本件発明6の製造方法の各ステップを経て製造されたポリオレフィン系延伸フィルムは,実施例1,2のポリオレフィン系延伸フィルムと各層の材料は同じであり,各層の層間の状態に違いがあることはうかがわれない上,空気チャンネルは,空気流れ通路を提供することにより,巻取時のしわ寄りを効果的に防止するものであるから,空気チャンネルが設けられているのが,フィルムの表面であるか樹脂層の側であるかによって,層間接着強度が大きく変わると解すべき根拠はない。
そうすると,当業者は,実施例,比較例をみれば,本件発明6のポリオレフィン系延伸フィルムについても,実施例1,2と同様に,第1のスキン層と樹脂層との優れた層間接着強度,樹脂層と被着体(紙)との優れた層間接着強度を有することや,巻取時のしわ寄りを防止する効果を奏することが理解できるというべきである。
したがって,図4の装置を用いた実施例及び比較例の記載の記載が本件発明6と整合しないとしても,それのみをもってサポート要件違反となるものではない。
よって,原告の主張は採用できない。
(4) 小括以上によれば,本件発明6について,サポート要件違反はないから,取消事由5は理由がない。
- 85 -6 取消事由6(本件発明6に係る明確性要件の判断の誤り)について(1) 明確性要件について特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者の利益が不当に害されることがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2) 明確性要件の適否請求項6の記載から,本件発明6は,ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法であって,@第1のスキン層と,コア層,及び第2のスキン層とを含むポリオレフィンフィルムを押出成形する第1の押出ステップと,A前記押出成形されてなるフィルムを冷却させる第1の冷却ステップと,B前記第1の冷却ステップを経たフィルムを縦延伸する縦延伸ステップと,C前記縦延伸されたフィルムの第1のスキン層上に熱封着樹脂層が形成されるように押出成形する第2の押出ステップと,D前記熱封着樹脂層が形成されたフィルムを冷却させる第2の冷却ステップ,及びE前記第2の冷却ステップを経たフィルムを横延伸する横延伸ステップとを含むこと,前記第2の冷却ステップは,表面に凹凸構造を有する冷却ロールを用いて樹脂層に空気チャンネルを形成させることであり,前記冷却ロールに形成された凹凸構造は,5μm〜30μmの深さを有することを特徴とすることを理解することができる。
よって,請求項6の記載は,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず,明確性要件に適合するものというべきである。
(3) 原告の主張について- 86 -原告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,各ステップ及び冷却ロールがどのようなものか詳細に記載されているとはいえないから,これを発明特定事項とする本件発明6がどのようなものかを当業者は理解することができないし,また,空気チャンネルが樹脂層の表面であって,冷却ロールに接触する面に形成されることが明らかであるともいえないことからから,本件発明6は不明確であり,明確性要件違反である旨主張する。
しかし,請求項6の記載自体から,各ステップ及び冷却ロールがどのようなものかを理解することができ,空気チャンネルが樹脂層の表面に形成され,冷却ロールに接触する面に形成されることも理解できることは,前記(2)のとおりである。
もっとも,前記のとおり,本件明細書には,実施例2として,第2の冷却工程で凹凸構造を有する冷却ロールが第2のスキン層に当てられ,第2のスキン層に空気チャンネルが形成されるとの記載がある(図4,【0066】【0067】。しかし,, )本件発明6は,熱封着樹脂層に空気チャンネルが形成されるものであることは,請求項6の記載から一義的に明らかである以上,実施例の記載が請求項の記載と整合しないとしても,それのみをもって明確性要件を欠くことにはならないというべきである。
よって,原告の主張は採用できない。
(4) 小括以上によれば,本件発明6について,明確性要件違反はないから,取消事由6は理由がない。
7 結論よって,その余の取消事由について判断するまでもなく,原告の請求は,請求項7及び8に係る部分の取消しを求める限度において理由があるから,これを認容することとし,その余の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部- 87 -裁判長裁判官 部 眞 規 子裁判官 小 林 康 彦裁判官関根澄子は,差支えのため,署名押印することができない。
裁判長裁判官 部 眞 規 子- 88 -別紙 本件明細書図面目録【図1】 【図2】【図3】 【図4】【図5】【表1】- 89 -別紙 引用例1図表目録第1図- 90 -別紙 引用例2図表目録第1図 第2図第3図第3図 第4図- 91 -第1表[評価]ブリスター5:ラベルが全面に貼着,4:100%未満〜90%,3:90%未満〜70%,2:70%未満〜50%,1:50%未満,ラベル接着強度貼着ラベルの15mm幅の接着強度(T字剥離)オレンジピール○:発生せず,△:若干見える,×:目立つ- 92 -
事実及び理由
全容
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