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関連審決 無効2017-800156
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事件 令和 1年 (行ケ) 10088号 審決取消請求事件

原告株式会社フクヨー
訴訟代理人弁護士 高橋早百合 八束和廣 川村敬子
訴訟代理人弁理士 小池晃 河野貴明 村上浩之
被告 株式会社Life−do.Plus
訴訟代理人弁護士 小西憲太郎 片木研司
訴訟代理人弁理士 小笠原宜紀
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/03/18
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2017-800156号事件について令和元年5月21日に した審決のうち,特許第3877000号の請求項1に係る部分を取り消す。
1
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 株式会社岸製作所は,平成17年4月22日,発明の名称を「シート状の 積層体」とする発明について,特許出願(特願2005-125264号。
以下「本件出願」という。)をし,平成18年11月10日,特許権の設定 登録(特許第3877000号。請求項の数1。以下,この特許を「本件特 許」という。)を受けた(甲1,2)。
原告は,株式会社岸製作所から,本件特許の特許権を譲り受け,平成20 年4月8日,その旨の移転登録を経由した(甲1)。
(2) 被告は,平成29年12月21日,本件特許について特許無効審判(無効 2017-800156号事件)を請求した。
原告は,平成30年9月5日付けの審決の予告を受けたため,同年11月 2日付けで,本件特許の特許請求の範囲及び本件出願の願書に添付した明細 書を訂正する訂正請求(以下「本件訂正」という。甲15の2)をした(以 下,本件訂正後の明細書を,図面を含めて「本件明細書」という。甲2,1 5の2)。
特許庁は,令和元年5月21日,本件訂正を認めた上で,「特許第387 7000号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決 (以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月30日,原告に送達 された。
(3) 原告は,令和元年6月14日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下, 請求項1に係る発明を「本件訂正発明」という。下線部は本件訂正による訂正 箇所である。甲15の2)。
2 【請求項1】 折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において, 上記シート状物はスパンレース不織布からなり, 上記シート状物の各々は,所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と, 上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第1の中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と, 上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と, 上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに,上記第1の中間片の幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ, 積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは,左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され, 各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に,上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。
3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,被告主張の無効理由1(実施可能要件違反),無効理由2(本 件出願前に頒布された刊行物である特開平11-56666号公報を主引用 例とする進歩性欠如),無効理由3(本件出願前に頒布された刊行物である 3 特許第2951187号公報を主引用例とする進歩性欠如)及び無効理由4 (明確性要件違反)について,無効理由1,3及び4は理由がないが,本件 訂正発明は,特開平11-56666号公報(審判甲1・本訴甲6。以下, 単に「甲6」という。)に記載された発明及び特開2002-85289号 公報(審判甲21・本訴甲7。以下,単に「甲7」という。)に記載された 技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるか ら,無効理由2は理由があり,本件訂正発明は,特許法29条2項の規定に より,特許を受けることができないというものである。
(2) 本件審決が認定した甲6に記載された発明(以下「甲6(審判甲1)発明」 という。 , ) 本件訂正発明と甲6(審判甲1)発明との一致点及び相違点は, 以下のとおりである。
ア 甲6(審判甲1)発明 複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウ ェットテシュー12とから成り,各右向き腰折ウェットテシュー11の下 部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aと, 各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bと各右向き腰折ウェ ットテシュー11の上部折片11aとを相の手に組んで多重ねにし,各腰 折ウェットテシュー11,12を順次連続して取出し得るようにした多重 腰折ウェットテシューにおいて, 腰折ウェットテシュー11,12の各々は,腰折ウェットテシュー11, 12の展開長の略五分の二の長さの,折線S1及び折線S3に挟まれた上 部中間片と, 上部中間片と折線S1を介して下側に折り返されて接続され,腰折ウェ ットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの,折線S1及び折 線S2に挟まれた下部中間片と, 下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続され,腰折ウェ 4 ットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの折り返し片11e, 12eと, 上部中間片と折線S3を介して上側に折り返されて接続され,腰折ウェ ットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ,又は腰折ウェット テシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ の折り返し片11f,12fとを有するように折り畳まれ, 右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12と は左右対称となるように折り畳まれており, 各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き 腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なり,各左向き腰 折ウェットテシュー12の下部折片12bの内面に各右向き腰折ウェット テシュー11の上部折片11aの内面が重なるよう積層されている, 多重腰折ウェットテシュー。
イ 一致点 「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層され たシート状物の積層体において, 上記シート状物の各々は,所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形 成された第1の中間片と, 上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第 1の中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第 2の中間片と, 上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略 同じ幅に形成された第1の折片と, 上記第1の中間片から積層方向上側に折り返される第2の折片とを有す るように折り畳まれ, 積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上 5 記シート状物とは,左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され, 各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記 第2の中間片によってできる谷部に,上記シート状物の次に積層される各 奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2 の折片によってできる山部を重ね合わせた, シート状物の積層体。」である点。
ウ 相違点 (相違点1) 第2の折片の幅について, 本件訂正発明は,「上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法 となるように調整するとともに,上記第1の中間片の幅の1/2未満で, かつ,上記第1の折片の幅より短い幅となる」のに対し, 甲6(審判甲1)発明は,「腰折ウェットテシュー11,12の展開長 の略五分の一の長さ,又は腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中 心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」である点。
(相違点2) シート状物について, 本件訂正発明は,「スパンレース不織布」からなるのに対し, 甲6(審判甲1)発明は,「ウェットテシュー」である点。
4 取消事由 甲6を主引用例とする本件訂正発明の進歩性の判断の誤り
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 相違点1の認定の誤り 特許法施行規則24条の2は,特許発明の技術上の意義ある部分は,「発 明が解決しようとする課題及びその解決手段その他」により特定される旨規 6 定していることからすると,発明は,解決課題(目的あるいは作用・効果)と解決手段(構成)とで特定しなければならない。
そして,本件明細書記載の本件訂正発明の課題を踏まえると,本件訂正発明は,第2の折片の幅が加減できる構成となっているため,シート全体の大きさが大きくなったとしても,「他の片の幅を変えずに」折り畳むことができ,この構成によって,包装体の変更を要せずに従来の包装体に収納できるようにするという課題を達成することができる。
他方,甲6に記載された発明は,シート全体を5等分することになるので,シート全体の大きさが大きくなると,第2の折片の幅が変わることはもちろん,他のすべての片の幅も変更になってしまう結果,積層体が大きくなり,従来の包装体には収納することができなくなる。
したがって,本件訂正発明と甲6に記載された発明の相違点を捉えるには,第2の折片と他の片との関係性をシート全体の折構造で把握する必要があるから,本件審決における甲6(審判甲1)発明の認定は適切ではなく,相違点1は,次のとおり認定すべきである。これと異なる本件審決における相違点1の認定は誤りである。
(原告主張の相違点1) 本件訂正発明は,従来の発明が,大きさが従来より大きいサイズのウェットティッシュを使用し,従来からの折り畳み構造を有する積層体を製造すると,必然的に出来上がる積層体の幅は従来のものより大きくなり包装体の大きさを変更しなければならず,ウェットティッシュの積層体の製造装置の設計変更に加え,包装体の製造装置の設計変更もしなければならず,また,包装体の大きさを変更すると,製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさも変更しなければならず,在庫スペースの変更も生じ,ウェットティッシュ1枚の大きさの変更で,規格変更をしなければならない箇所が多数でてくるという問題点に鑑み,包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら, 7 より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを目的とし,特に,シート状物の各々は,所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と,上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第1の中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と,上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と,上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに,上記第1の中間片の幅の1/2「未満で,かつ,上記第1の折片の幅より短い幅」となる第2の折片とを有するように折り畳まれる構成によって,上記課題を解決した発明であるのに対し, 甲6に記載された発明は,従来の多重腰折ウェットテシューは定寸法のウェットテシューを二つ折りして略二分の一の折片を他の折片と相の手に組むようにした構成なために,使用に際して上位の腰折ウエットテシュー1又は2を取り出した時に,容器3の取出口3aから下位の腰折ウェットテシュー1又は2の略二分の一の折片が誘出されてしまい,誘出長が長すぎ美感を損なうと指摘されていた点,殊に多重腰折ウェットテシュー4は薬液等を湿潤した状態であり,上記のように容器3の取出口3aから誘出された部分が乾いてその効用を喪失するので,誘出長をできるだけ短くすることが望まれている点,各腰折ウェットテシューの折片がその端末から相当の長さに亘って薬液により接着するので,取出口より取り出そうとする腰折ウェットテシューの次に続く腰折ウェットテシューの全体が友連れされて取り出されてしまう欠点,上記ウエットテシュー長の略二分の一の腰折巾を有する多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と,これを収容する容器3の小形化が要望されている点を課題とし,ウェットテシューを略5等分して5分の3の位置に腰折 8 り用の折線S1を設定し,5分の2の部分を略2等分する位置に折り返し用 の折線S2を設定し,5分の3の部分を略3等分し遊離端から3分の1の位 置に折り返し用の折線S3を設定して折り返し,相の手に組んで多重ねにす る構成によって,上記課題を解決した発明である点。
(2) 相違点1の判断の誤り 本件審決は,本件審決認定の相違点1について,本件訂正発明と甲6(審 判甲1)発明とは,「第2の折片」に関して構造上差異が無く,相違点1は, 文言上は相違するとしても,実質的な差異ではない旨判断したが,以下のと おり,誤りである。
ア 相違点1のうち,本件訂正発明の「第2の折片の幅」が「第1の中間片 の幅の1/2未満で,かつ,第1の折片の幅より短い幅」である構成に差 異はないとした判断の誤り 本件審決は,甲6(審判甲1)発明の「折り返し片11f,12f」(第 2の折片)の長さ(幅)は,「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅) の1/2か,それより小さい値であるから,甲6(審判甲1)発明は本件 訂正発明の「第2の折片」の幅が「上記第1の中間片の幅の1/2未満」 となる点で差異はなく,また,甲6(審判甲1)発明の「略五分の一の長 さの折り返し片11e,12e」(第1の折片)は「略五分の二の長さ」 の「上部中間片」(第1の中間片)の1/2の長さ(幅)であるから,甲 6(審判甲1)発明の「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長 さ(幅)は,「折り返し片11e,12e」(第1の折片)の長さ(幅) より短いともいえるので,甲6(審判甲1)発明は本件訂正発明の「第2 の折片」の幅が「上記第1の折片の幅より短い幅となる」点で差異はない 旨判断した。
(ア) しかしながら,甲6に記載された発明は,多重腰折ウェットテシュ ーの縮小化とこれを収容する容器の小型化を解決する発明であるから, 9 第2の折片の幅は中心線上にまで達する幅が望ましいこと,甲6の特許請求の範囲(請求項1)には,「上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び各左向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端と各左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び各右向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシューの左半部側と右半部側に按分され」との記載があることからすると,甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅が,「按分」すなわち,「2分の1」であることは明らかである。
また,甲6の【0022】及び【0023】の記載によれば,折線S3で区切られた折り返し片の幅(全体の略五分の一の長さ)(「第2の折片」)は,折線S3とS1で区切られた上部中間片の幅(全体の略五分の二の長さ)(「第1の中間片」)の約2分の1となるから,甲6における「折り返し片11f,12f」(「第2の折片」)の幅が,「按分」すなわち,「2分の1」であることは明らかである。そのため,甲6の【0026】の「各腰折ウェットテシュー11,12の上部短巾重畳端11c,12cの折り返し片11f,12fの先端が多重腰折ウェットテシュー14の中心線Y付近,好ましくは図3Aに示すように,上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定する。」との記載中の「上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した」長さとは,甲6の特許請求の範囲(請求項1)に「左半部側と右半部側に按分され」との文言があるように,右向き腰折ウェットテシューの折り返し片(第2の折片)の幅と,左向き腰折ウェットテシューの折り返し片(第2の折片)の幅とが中央で按分される幅,すなわち,上部中間片(第1の中間片)の2分の1の幅となることを指していると解すべきである。
仮に甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅 10 が上部中間片(第1の中間片)の2分の1未満の幅も含むとすれば,単 に【0026】は「中心線Yを越えない長さ」と記載すればよいのであ って,あえて「中心線Yを越えず且つこれに接近した」という表現を用 いる必要はない。
(イ) また,仮に甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折 片)の幅が上部中間片(第1の中間片)の2分の1未満の幅も含むとす れば,甲6の【0024】記載の腰折ウェットテシューの製造工程は, @「各ウェットテシューの一端部をウェットテシュー長の五分の一より 小さい値に相当する長さだけ外側へ折り返して上部短巾重畳端11c, 12cを形成する」,A「同様に各ウェットテシューの他端部をウェッ トテシュー長の上記五分の一より小さい値に相当する長さだけ外側へ折 り返して下部短巾重畳端11d,12dを形成する」こととなり,「上 部中間片がその分長くなる」か,又は「下部中間片がその分長くなる」 かのいずれかの状況が生じ,「ウエットテシュー長の略二分の一の腰折 巾を有する多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と,これを収容する容 器3の小形化」(【0006】)の課題を達成することができず,「こ の発明では同五分の二の巾に縮小できる」(【0027】)との効果を 得ることもできない。
さらには,「下部中間片がその分長くなる」場合には,下部中間片は, 長くなった分だけ中心線Yを超えることになるため,中心線Y近傍で左 右のシート状物が重なり合うことになり,積層体の中央部分が嵩高とな り,見栄えが悪く,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状 物の積層体とすること(【0008】)という課題にも反するものであ る。
したがって,甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折 片)の幅が上部中間片(第1の中間片)の2分の1未満の幅も含むもの 11 と解釈することは妥当でない。
(ウ) 以上によれば,甲6における「折り返し片11f,12f」(第2 の折片)の幅は,上部中間片(第1の中間片)の「1/2より小さい値」 ではないから,本件訂正発明の「第2の折片の幅」が「上記第1の中間 片の幅の1/2未満」となる点で差異はないとした本件審決の判断は誤 りである。
イ 相違点1のうち,本件訂正発明の「第2の折片の幅」について「第1の 中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成に差 異はないとした判断の誤り 本件審決は,本件訂正発明と甲6(審判甲1)発明とは,「第2の折片」 を設けることにより積層体の大きさを変えずにシートの大きさを大きくで きる点で共通しており,甲6(審判甲1)発明において「第2の折片」の 幅を変えることは,結果としてシートの幅と積層体の幅を変えることにな るので,甲6(審判甲1)発明の「第2の折片」の幅は「第1の中間片」 の幅を所望とする積層体の幅寸法となるように調整していると解すること ができるから,甲6(審判甲1)発明の「第2の折片」の幅は「第1の中 間体の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成に差異 はない旨判断した。
しかしながら,本件明細書の記載によれば,本件訂正発明の「所望とす る積層体の幅寸法となるように調整する」とは,シート状物全体の大きさ を第2の折片の面積分を限度に大きいサイズ,又は,小さいサイズに変更 した場合であっても,積層体の幅寸法は所望の幅寸法で変わらないように 「第2の折片」の幅を調整するというものであり,これによって,出来上 がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず,さらには, 製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず,在庫スペー スの変更も必要が無くなるという効果を得る(【0011】)。
12 一方,甲6に記載された発明においては,甲6における「折り返し片1 1f,12f」(第2の折片)は,シート状物全体の略5分の1の長さで 固定されるため(【0007】,【0008】,【0023】),そもそ も「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅を変えるという発想 には至らないし,また,シート状物全体の大きさを変更すれば,積層体の 幅も変更されてしまうから,「折り返し片11f,12f」(第2の折片) の幅を変更しても,積層体の幅寸法を所望の幅とすることはできない。
したがって,甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折片) は,本件訂正発明の「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法とな るように調整する」という機能を有しているとはいえない。これと異なる 本件審決の判断は誤りである。
(3) 小括 以上のとおり,本件審決における相違点1の認定及び判断に誤りがあるか ら,本件訂正発明は,甲6(審判甲1)発明及び甲7に記載された技術事項 に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件 審決の判断は誤りである。
したがって,本件審決は違法として取り消されるべきものである。
2 被告の主張 (1) 相違点1の認定の誤りの主張に対し 特許法施行規則24条の2は,明細書の記載要件に関し,「発明が解決し ようとする課題及びその解決手段」が,当業者がその発明の技術上の意義を 理解するために必要な事項であることを示すものにすぎないから,同条から, 原告が主張する「発明は,解決課題(目的あるいは作用・効果)と解決手段 (構成)とで特定しなければならない」との解釈が直ちに導かれるものでは ない。
したがって,原告主張の相違点1は,その前提を欠くものであるから,理 13 由がなく,本件審決における相違点1の認定に誤りはない。
(2) 相違点1の判断の誤りの主張に対し ア 本件訂正発明の「第2の折片の幅」が第1の中間片の幅の1/2未満で, かつ,第1の折片の幅より短い幅」である構成について 本件訂正発明の「第2の折片」に係る「第1の中間片の幅の1/2未満」 という構成について,甲6(審判甲1)発明では,「第2の折片」に相当 する「折り返し片11f,12f」は,「腰折ウェットテシュー11,1 2の幅方向の中心線Yを超えず且つこれに接近した長さ」とされている (【0026】)。
この「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且 つこれに接近した長さ」とは,その文言上,「上部中間片」の中心線Yま で届かない長さ,すなわち短い長さを意味することは明らかであるから, 甲6(審判甲1)発明においては,「第2の折片」に相当する「折り返し 片11f,12f」は,「第1の中間片」に相当する「上部中間片」の長 さ(幅)の1/2より小さい値であると解するほかない。
かかる解釈は,甲6(審判甲1)発明における「折り返し片11f,1 2f」が取出口から誘出される部分に該当するところ,甲6(審判甲1) 発明が,湿潤状態のシート状物の乾燥を防ぐために,容器の取出口から誘 出される部分の長さをできるだけ短くすることを課題とすること(【00 04】)からも裏付けられる。
したがって,甲6には,「第2の折片の幅」が第1の中間片の幅の1/ 2未満で,かつ,第1の折片の幅より短い幅」である構成(相違点1に係 る本件訂正発明の構成)が開示されている。
イ 本件訂正発明の「第2の折片の幅」について「第1の中間片の幅が所望 とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成について 本件訂正発明の「第2の折片」が「第1の中間片」の幅を「調整する」 14 とは,「第1の中間片」(積層体)の幅寸法が変わらずに,「第2の折片」 の「幅」が変われば,シート状物の大きさ(幅)が変わることをいうもの である。そして,甲6の記載(【0006】,【0008】,【0027】) によれば,本件訂正発明と甲6(審判甲1)発明は,「第2の折片」を設 けることにより積層体の大きさ(幅)を変えずにシートの大きさ(幅)を 大きくできる点で共通しており,甲6(審判甲1)発明においても,「折 り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅を変えれば,結果として, シートの幅と積層体の幅が変わることになるので,「折り返し片11f, 12f」(第2の折片)の幅は,「上部中間片」(第1の中間片)の幅を 所望とする積層体の幅寸法となるように「調整」していることは明らかで ある。
したがって,甲6には,「第2の折片の幅」について「第1の中間片の 幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成(相違点1に 係る本件訂正発明の構成)が開示されている。
ウ まとめ 以上のとおり,本件訂正発明の「第2の折片」について,「第1の中間 片の幅の1/2未満で,かつ,第1の折片の幅より短い幅」であり,「第 1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」とい う構成は,甲6(審判甲1)発明の「折り返し片11f,12f」も備え ることが甲6に開示されているから,相違点1に係る本件訂正発明の構成 は実質的な相違点ではない。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
(3) 小括 以上によれば,本件審決における相違点1の認定及び判断に誤りはないか ら,原告主張の取消事由は理由がない。
当裁判所の判断
15 1 本件明細書の記載事項について (1) 本件明細書(甲2,15の2)には,次のような記載がある(本件明細書 の「図1」ないし「図4」については別紙1を参照)。
ア 【技術分野】 【0001】 本発明は,シート状物の積層体に関し,特に,湿式のウェットティッシ ュの折りたたまれた状態で,このウェットティッシュを連続して取り出せ るように積層したシート状物の積層体に関する。
【背景技術】 【0002】 従来,アルコール,保湿剤,界面活性剤等を含む薬液を紙,織布又は不 織布の繊維素材に含浸させたウェットティッシュは,気密性や液密性を有 する包装体に収容される。ウェットティッシュは,皮膚の汚れ拭き取り, 化粧落とし,幼児のお尻拭き,トイレの清掃等,様々な用途に用いられて いる。この種の包装体は,包装体の一箇所に開閉蓋を有する取出口が設け られ,この取出口から内部に収容されたウェットティッシュを取出すこと ができる。また,このウェットティッシュは,様々な形に折り畳まれ,複 数枚が積層され,一のウェットティッシュを持ち上げると,その下に積層 されたウェットティッシュも持ち上がり,連続して取り出せるように積層 した,いわゆるポップアップ式の積層体を形成している。
【0003】 図4(A)に示すように,従来のウェットティッシュの積層体100は, 複数のウェットティッシュ101が折り畳まれ,積層されたものである。
詳述すると,ウェットティッシュ101は,折れ線102において折られ て形成される上部折片103と下部折片104と,下部折片104の遊離 端側を折れ線102で折られた方向とは逆の方向に折り返して短巾の重畳 16 端105を形成している。また,上述のように折られたウェットティッシュ101は,折れ線102において折られる方向によって,右向き腰折りウェットティッシュ101Rと左向き腰折りウェットティッシュ101Lとに分けられる。ウェットティッシュの積層体100は,各右向き腰折りウェットティッシュ101Rの短巾重畳端105を各左向き腰折りウェットティッシュ101Lの上部折片103の遊離端側と相の手に組み,各左向き腰折りウェットティッシュ101Lの短巾重畳端105を各右向き腰折りウェットティッシュ101Rの上部折片103の遊離端側と相の手に組むことにより形成される。また,ウェットティッシュの積層体100は,ウェットティッシュ101の短巾重畳端105が左半部側と右半部側とに按分される構成を有している(特許文献1参照。)。
【0004】 ところで,多用途に用いられるウェットティッシュは,1枚のウェットティッシュの大きさが大きいものが望まれている。
【0005】 しかしながら,大きさが従来より大きいサイズのウェットティッシュを使用し,従来からの折り畳み構造を有する積層体を製造すると,必然的に出来上がる積層体の幅は従来のものより大きくなり包装体の大きさを変更しなければならず,ウェットティッシュの積層体の製造装置の設計変更に加え,包装体の製造装置の設計変更もしなければならない。また,包装体の大きさを変更すると,製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさも変更しなければならず,在庫スペースの変更も生じ,ウェットティッシュ1枚の大きさの変更で,規格変更をしなければならない箇所が多数でてくる。
【0006】 また,特許文献1に示す取り出し構造では,出来上がった積層体は,図4(B)に示すように,確かに,断面が略矩形状になっている。しかしな 17 がら,この積層体を内包した包装体を商品として陳列する場合に用いられ る積み重ね陳列は,断面が略矩形状のため,一見して安定感があるようで あるが,出来上がる商品は運搬時等の影響を受けて安定が悪いものとなる こともあった。
イ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 そこで,本発明は,上述の問題点に鑑みて,包装体の大きさが従来と変 わらない大きさでありながら,より大きなサイズのシート状物を積層でき る構造を提供するとともに,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシ ート状物の積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明に係るシート状物の積層体は,折り畳まれた複数枚のシート状物 が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において,上 記シート状物はスパンレース不織布からなり,上記シート状物の各々は, 所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と,上 記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第1の 中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第2の 中間片と,上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中 間片と略同じ幅に形成された第1の折片と,上記第1の中間片から積層方 向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法と なるように調整するとともに,上記第1の中間片の幅の1/2未満で,か つ,上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折 り畳まれる。そして,積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート 状物と奇数番目の上記シート状物とは,左右対称となるように折り畳まれ た状態で積層され,各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1 18 の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に,上記シート状物の 次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中 間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴と する。
ウ 【発明の効果】 【0011】 本発明は,従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので, その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物で あっても,従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。そ のため,出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せ ず,さらには,製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せ ず,在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0012】 また,本発明は,各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記 第2の中間片によってできる谷部に,上記シート状物の次に積層される各 奇数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってで きる山部を重ね合わせて交差掛けとし,同様に,各奇数番目のシート状物 の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に,上記シ ート状物の次に積層される各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及 び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとしている。
そのため,形成されるシート状物積層体自体は,各シート状物の上記第1 の折れ線及び上記第3の折れ線近傍において,第2の折片が設けられた大 きさ分だけ,肉厚部分が形成され,積層体同士を重ね合わせた際の安定感 を向上させることができる。
エ 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 19 以下,本発明に係るシート状物積層体の最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】 図1は,本発明に係るシート状物積層体のシート状物10の展開図を示す。図1に示すように,シート状物10は,所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片11と,積層方向下側に折られ,第1の中間片11の略1/2の幅に第1の中間片11に隣接して形成された第2の中間片12と,第2の中間片12から積層方向下側に折り返され第2の中間片12と略同じ幅に形成された第1の折片13と,第1の中間片11から積層方向上側に折り返され第1の中間片11の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する第2の折片14とから構成されている。
また,図2に示すように,シート状物10は折られ,各シート状物10が折り重ねられ,シート状物積層体1を形成している。
【0015】 なお,説明上,本発明においては,図2に示すx軸方向,つまりシート状物10の長辺と平行する方向をシート状物10の長さ方向,図2に示すy軸方向,つまりシート状物10の長辺と直交する方向をシート状物10の幅方向,図2に示すz軸方向,つまり各シート状物10が折り重ねられ形成されるシート状物積層体1の積層される方向を各シート状物10が積層される積層方向と称する。
【0016】 シート状物10は,長辺10a,10b,及び短辺10c,10dとによって形成される略矩形の布帛からなり,例えば,天然繊維又は合成繊維が織布,不織布,編布に形成された布帛を用いる。この中でも汎用性やコスト等から不織布からなる布帛が最も好ましく用いられる。具体的に,天然繊維としては,例えば綿,絹,麻,ウール,パルプなどが挙げられ,合 20 成繊維としては,例えばポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン,アクリル,ナイロン,ビニロン,ポリ塩化ビニル,ポリウレタン,レーヨン等が挙げられる。また,これら天然繊維と合成繊維とを混合させた布帛を用いることができる。本発明においては,合成繊維からなる不織布,特に,合成繊維に高圧ウォータージェット流(繊維を交絡させるための水)を施し,繊維を交絡させて,乾燥状態では使用に耐え得る十分な強度を有するとともに,液体による湿潤状態ではウェブ形状を保持し,極めて容易且つ速やかな吸水性を有するスパンレース不織布が最も好ましく用いられる。また,シート状物10は,図1に示すように,シート状物10の一方の短辺10cから長さ方向にかけて,第2の折片14,第1の中間片11,第2の中間片12,第1の折片13が順に設けられている。
【0017】 第1の中間片11は,図1に示すように,シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a,10bと,シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第3の折れ線17とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a,10bの第1の中間片11の長さにあたる部分,つまり第1の折れ線15と第3の折れ線17との距離Aは,その長さが最終的に形成されるシート状物積層体1の幅と略同一となる長さである。
【0018】 第2の中間片12は,第1の中間片11と隣接し,シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a,10bと,シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第2の折れ線16とによって囲まれる部分である。
シート状物10の長辺10a,10bの第2の中間片12の長さにあたる部分,つまり第1の折れ線15と第2の折れ線との距離Bは,第1の中間片11の長さ11aの略1/2の長さである。
21 【0019】 第1の折片13は,第2の中間片12と隣接し,シート状物10の長さ 方向に平行な長辺10a,10bと,第2の折れ線16と,短辺10dと によって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a,10bの第 1の折片13の長さにあたる部分,つまり第2の折れ線16と短辺10d との距離Cは,距離Bと略同一の長さである。
【0020】 第2の折片14は,第1の中間片11と隣接し,シート状物10の長さ 方向に平行な長辺10a,10bと,第3の折れ線17と短辺10cとに よって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a,10bの第2 の折片14の長さにあたる部分,つまり第3の折れ線17と短辺10cと の距離Dは,D 【0021】 以上のような部分から構成されるシート状物10は,図2及び図3(A) に示すように,各折れ線15,16,17において折り返される。つまり, シート状物10は,第1の折れ線15において積層方向とは反対方向(- z方向)に折り返し第1の中間片11及び第2の中間片12を形成し,第 2の折れ線16において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第 1の折片13を形成し,第3の折れ線17において積層方向(z方向)に 折り返し第2の折片14を形成する。
オ 【0022】 次に,シート状物積層体1の積層構造について,図2,図3(A)及び 図3(B)を用いて説明する。
【0023】 シート状物積層体1は,シート状物10が所定の位置において交差掛け 22 される。つまり,シート状物積層体1は,偶数番目に積層されるシート状 物10Rと奇数番目に積層されるシート状物10Lとが,互いに交差掛け される。
【0024】 なお,便宜上,シート状物10の第1の中間片11に対し,第2の中間 片12及び第1の折片13が図2中の右側に設けられるシート状物をシー ト状物10Rとし,シート状物10の第1の中間片11に対し,第2の中 間片12及び第1の折片13が図2中の左側に設けられるシート状物をシ ート状物10Lと称する。また,本説明におけるシート状物10Rとシー ト状物10Lとは,シート状物10を短辺10c(y軸と平行する方向) に対して対称になるように折り返されたものであり,上述したシート状物 10と同様の構成を有する。また,シート状物10Rは,図2及び図3(A) に示す偶数番目に積層されるシート状物であり,シート状物10Lは,図 2及び図3(A)に示す奇数番目に積層されるシート状物である。
【0025】 具体的には,シート状物積層体1は,各シート状物10Rの第1の中間 片11及び第2の中間片12によってできる谷部に,各シート状物10R の次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片1 4によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし,各シート状物10L の第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に,各シー ト状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び 第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとして積層体 を形成する。
カ 【0026】 以上のように構成されたシート状物積層体1は,従来の積層構造におい てはない第2の折片14を有することで,従来と変わらない積層体の幅と 23 しても,第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。具体的には,シート状物10は,従来使用されるシート状物の大きさと比較して,第2の折片14の面積分,つまり上述のD変更することができ,約25%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。そのため,積層されるシート状物の大きさを変更したとしても,シート状物積層体の製造装置の設計変更のみで,出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず,さらには,製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず,在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0027】 また,シート状物積層体1は,各シート状物10Rの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に,各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし,各シート状物10Lの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に,各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとする。そのため,形成されるシート状物積層体1自体は,図3(B)に示すように,嵩高状態が第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍,つまりシート状物積層体1の端部近傍において,第2の折片14の大きさ分だけ積層体の嵩が高くなっている。つまり,シート状物積層体1は,第2の折片14が設けられた大きさ分だけ,各シート状物10の第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍において,肉厚部分が形成され,積層体の躯体部分が補強されることになり,積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。
【0028】 24 なお,第2の折片14は,シート状物10のサイズを大きくするととも に,シート状物積層体1の躯体部分を補強する目的で設けられ,そのため, 第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dが距離Cより も大きくなると,出来上がるシート状物積層体1において,各シート状物 10R(又はシート状物10L)の第2の折片14と各シート状物10L (又はシート状物10R)の第1の折片13とが重なり合い,全体の嵩高 状態が,中央部が膨らみ不安定なものとなる。従って,本発明においては, 第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離DをD(2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件訂正発明に関し,次 のような開示があることが認められる。
ア 薬液を繊維素材に含浸させたウェットティッシュは,気密性や液密性を 有する包装体に収容され,様々な形に折り畳まれ,複数枚が積層され,一 枚のウェットティッシュを持ち上げると,その下に積層されたウェットテ ィッシュも持ち上がり,連続して取り出せるように積層した,いわゆるポ ップアップ式の積層体を形成しているところ(【0002】),従来のウ ェットティッシュの積層体は,各右向き腰折りウェットティッシュ101 Rの短巾重畳端105を各左向き腰折りウェットティッシュ101Lの上 部折片103の遊離端側と相の手に組み,各左向き腰折りウェットティッ シュ101Lの短巾重畳端105を各右向き腰折りウェットティッシュ1 01Rの上部折片103の遊離端側と相の手に組むことにより形成され, ウェットティッシュ101の短巾重畳端105が左半部側と右半部側とに 按分される構成を有していた(【0003】,図4(A))。
しかるところ,ウェットティッシュは,1枚の大きさが大きいものが望 まれているが,従来のウェットティッシュの積層体は,ウェットティッシ ュ1枚の大きさの変更で,包装体の大きさ,製品出荷時に用いられる段ボ 25 ール等の大きさの規格変更をしなければならず,在庫スペースの変更も生 じ,また,従来のウェットティッシュの積層体を内包した包装体を商品と して積み重ねて陳列する場合には,断面が略矩形状のため,一見して安定 感があるようであるが,運搬時等の影響を受けて安定が悪いものとなるこ ともあった(【0004】ないし【0006】,図4(B))。
イ 「本発明」は,上述の問題点に鑑み,包装体の大きさが従来と変わらな い大きさでありながら,より大きなサイズのシート状物を積層できる構造 を提供するとともに,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状 物の積層体を提供することを目的とし,その課題を解決するための手段と して,シート状物の各々は,所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形 成された第1の中間片と,シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下 側に折られ,第1の中間片の略1/2の幅に,第1の中間片に隣接して形 成された第2の中間片と,第2の中間片から積層方向下側に折り返され第 2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と,第1の中間片から積層 方向上側に折り返され第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法とな るように調整するとともに,第1の中間片の幅の1/2未満で,かつ,上 記第1の折片の幅より狭い幅となる第2の折片とを有するように折り畳ま れ,積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の 上記シート状物とは,左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され, 各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第 2の中間片によってできる谷部に,上記シート状物の次に積層される各奇 数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の 折片によってできる山部を重ね合わせる構成を採用した(【0008】, 【0009】)。
これにより「本発明」は,従来の積層構造にはない第2の折片が設けら れているので,その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズ 26 のシート状物であっても,従来と変わらないサイズの積層体を形成するこ とができるため,積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず, 製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず,在庫スペー スの変更も必要が無くなり,また,第1の中間片及び第2の折片によって できる山部を重ね合わせて交差掛けとしているため,形成されるシート状 物積層体自体は,各シート状物の第1の折れ線及び第3の折れ線近傍にお いて,第2の折片が設けられた大きさ分だけ,肉厚部分が形成され,積層 体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができるという効果を 奏する 【0011】,【0012】,【0026】ないし【0028】)。
(2 甲6の記載事項について (1) 甲6には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図1」ないし 「図4」については別紙2を参照)。
ア 特許請求の範囲 【請求項1】各右向き腰折ウェットテシューの下部折片と,各左向き腰折 ウェットテシューの上部折片とを相の手に組んで多重腰折ウェットテシュ ーを形成し,該多重腰折ウェットテシューを容器内に収容し,該容器に設 けた取出口より最上位の腰折ウェットテシューの上部折片を引き出すこと により上記相の手組部において摩擦係合する下位の腰折ウェットテシュー の上部折片の遊離端を上記取出口より誘出させ連続取出しが行われるよう にした多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造において,上記各右向 きと左向き腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を各腰 折ウェットテシューの腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳 端と下部重畳端を形成し,上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾 重畳端を各左向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端と相の手に組み, 上記各左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を各右向き腰折ウェ ットテシューの下部短巾重畳端と相の手に組み,上記各右向き腰折ウェッ 27 トテシューの上部短巾重畳端及び各左向き腰折ウェットテシューの下部短 巾重畳端と各左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び各右向き 腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシューの 左半部側と右半部側に按分され,上記各上部短巾重畳端を腰折ウェットテ シューの取出し手段としたことを特徴とする多重腰折ウェットテシューの 連続取出し構造。
イ 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は多重腰折ウェットテシューを容器に収容し,容器に設けた取 出口より各腰折ウェットテシューを順次連続して取出し得るようにした多 重腰折ウェットテシューの連続取出し構造に関する。
【0002】 【従来の技術】 従来の多重腰折ウェットテシューは図1に示すように,二つ折りした各 右向き腰折ウェットテシュー1の下部折片1aと各左向き腰折ウェットテ シュー2の上部折片2bとを相の手に組んで多重腰折ウェットテシュー4 を形成し,該多重腰折ウェットテシュー4を容器3内に収容し,容器3の 天板に設けた取出口3aより最上位の腰折ウェットテシュー1又は2の上 部折片1b又は2bを引き出すことにより,上記相の手組部において摩擦 係合する下位の腰折ウェットテシュー1又は2の上部折片1b又は2bの 遊離端を上記取出口3aより誘出させて連続取出しが行えるように構成さ れている。
【0003】 【発明が解決しようとする課題】 上記多重腰折ウェットテシュー4は旧来より普遍的に用いられてきてい るが,この多重腰折ウェットテシューは定寸法のウェットテシューを二つ 28 折りして略二分の一の折片を他の折片と相の手に組むようにした構成なた めに,使用に際して上位の腰折ウエットテシュー1又は2を取り出した時 に,容器3の取出口3aから下位の腰折ウェットテシュー1又は2の略二 分の一の折片が誘出されてしまい,誘出長が長すぎ美感を損なうと指摘さ れている。
【0004】 殊に多重腰折ウェットテシュー4は薬液等を湿潤した状態であり,上記 のように容器3の取出口3aから誘出された部分が乾いてその効用を喪失 するので,誘出長をできるだけ短くすることが望まれている。
【0005】 又各腰折ウェットテシューの折片がその端末から相当の長さに亘って薬 液により接着するので,取出口より取り出そうとする腰折ウェットテシュ ーの次に続く腰折ウェットテシューの全体が友連れされて取り出されてし まう欠点を有している。
【0006】 又上記ウエットテシュー長の略二分の一の腰折巾を有する多重腰折ウエ ットテシュー4の縮小化と,これを収容する容器3の小形化が要望されて いる。
ウ 【0007】 【課題を解決するための手段】 この発明は上記課題を解決する手段として,各右向き腰折ウェットテシ ューと左向き腰折ウェットテシューとを相の手に組んで多重腰折ウェット テシューを形成し,この多重腰折ウェットテシューを容器内に収容して上 部折片を摘出し連続取出しを行うようにする場合に,上記各右向きと左向 き腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を各腰折ウェッ トテシューの腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳端と下部 29 重畳端を形成し,上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端と 各左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端とを上位の腰折ウェット テシューの下部短巾重畳端と相の手に組むようにして各腰折ウェットテシ ューの上部折片の誘出量を充分に短縮できるようにすると共に,上記右向 き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び左向き腰折ウェットテシュ ーの下部短巾重畳端と左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び 右向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシ ューの左半部側と右半部側に按分されるようにし,各上位の腰折ウェット テシューの上部短巾重畳端を摘持して容器に設けた取出口より連続的に取 出す構成としたものである。
エ 【0008】 【作用】 この発明によれば,各腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊 離端側を折り返して上部短巾重畳端と下部短巾重畳端を形成し,この両者 を相の手に組んで多重ねを行っているので,各腰折ウェットテシュー間に おける上記相の手組部の寸法(重畳巾の寸法)をウェットテシュー長の略 五分の一に縮小でき,この結果,上位の腰折ウェットテシューの上部短巾 重畳端を摘持して引き出したときの容器の取出口から誘出される下位の腰 折ウェットテシューの誘出寸法を上部短巾重畳端の重畳巾に短縮できる。
この時各下位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端は,各上位の腰折 ウェットテシューの下部短巾重畳端とウェットテシュー長の略五分の一の 巾で薬液により接着しているのみで他の五分の四には引張力が作用しない。
【0009】 又各腰折ウェットテシューの下部折片と各下位の腰折ウェットテシュー の上部折片の相の手組部の寸法を縮小して,上位の腰折ウェットテシュー の取出しに伴って下位の腰折ウェットテシューの上部折片が過度に引き出 30 されたり,或いは下位の腰折ウェットテシュー全体が引き出されてしまう 問題点を有効に解消できる。
【0010】 よって,多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの 上部折片の誘出量を縮小し,併せて上記誘出された上部短巾重畳端の重ね 合わせ部内面における薬液の乾燥が極力抑えられる。
【0011】 又誘出された上部短巾重畳端を摘持してウェットテシューの連続取出し を行うことができ,この摘持部に上部短巾重畳端による強度を持たせるこ とができる。
【0012】 又上記腰折ウエットテシューの腰折巾を縮小できるため,これを収容す る容器の小形化を達成できる。
オ 【発明の実施の形態】 以下この発明の実施形態例を図2乃至図4に基づき説明する。
【0014】 多重腰折ウェットテシュー14は,右向きの腰折ウェットテシュー11 と左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り,各右向き腰折ウェット テシュー11の下部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上 部折片12aとを相の手に組んで多重ねにしている。換言すると各右向き 腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェッ トテシュー12の上部折片12aの内面が重なるように交叉掛けにする。
これを相の手と称する。
【0015】 又右向き腰折ウェットテシュー11とは左側に腰折り用の折線S1を有 して右オープンとなされた腰折ウェットテシューを意味し,左向き腰折ウ 31 ェットテシュー12とは右側に腰折り用の折線S1を有して左オープンとなされた腰折ウェットテシューを意味する。
【0016】 尚上記相の手組みした各腰折ウェットテシュー11,12を上記右向き又は左向きと定義したが,相の手組みの左右を逆にしても上記と同一組手の多重腰折ウェットテシュー14が形成される。
【0017】 上記多重腰折ウェットテシュー14は容器13に収容され,容器13の天板に設けた取出口13aより順次腰折ウェットテシュー11,12が引き出されて使用に供される。
【0018】 図2,図3に示すように,上記各右向きと左向き腰折ウェットテシュー11,12の上部折片11a,12aの遊離端側を各腰折ウェットテシュー11,12の腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳端11c,12cを形成し,この各上部短巾重畳端11c,12cを各腰折ウェットテシュー11,12の上記取出し手段とする。即ち上部短巾重畳端11c,12cを摘持して腰折ウェットテシュー11,12の取出しを行うようにする。
【0019】 更に上記各右向きと左向き腰折ウェットテシュー11,12の下部折片11b,12bの遊離端側を各腰折ウェットテシュー11,12の腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の下部重畳端11d,12dを形成する。
【0020】 上記上部短巾重畳端11c,12cは各右向きと左向きの腰折ウェットテシュー11,12の上部折片11a,12aの遊離端側を同折片の基部側外面へ折り返し形成する。又は同折片の基部側内面へ折り返し形成する 32 こともできる。同様に下部短巾重畳端11d,12dは各右向きと左向き の腰折ウェットテシュー11,12の下部折片11b,12bの遊離端側 を同折片の基部側外面へ折り返し形成する。又は同折片の基部側内面へ折 り返し形成することもできる。
カ 【0021】 図4は上記各腰折ウェットテシュー11,12の展開図を示し,S1は 腰折り用の折線,S2は上記下部折片11b,12bを折り返して下部短 巾重畳端11d,12dを形成するための折り返し用の折線,S3は上記 上部折片11a,12aを折り返して上部短巾重畳端11c,12cを形 成するための折り返し用の折線を夫々示す。
【0022】 上記折線S1はウェットテシューを略五等分して五分の三の位置に設定 し,該五分の三の長さの折片で上部折片11a,12aを形成し,残りの 五分の二の長さの折片で下部折片11b,12bを形成する。
【0023】 又折線S2は上記下部折片11b,12bを更に略二等分する位置に設 定し,折線S3は上部折片11a,12aを略三等分し遊離端から三分の 一の位置に設定する。従って折線S2によって折り返された折り返し片1 1e,12eは腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の 長さとなり,折線S3によって折り返された折り返し片11f,12fは 同様に腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さにな る。
【0024】 製造工程としては,各ウェットテシューの一端部をウェットテシュー長 の略五分の一に相当する長さだけ外側へ折り返して上部短巾重畳端11c, 12cを形成し,同様に各ウェットテシューの他端部をウェットテシュー 33 長の上記略五分の一に相当する長さだけ外側へ折り返して下部短巾重畳端11d,12dは形成し,上部短巾重畳端11c,12cと下部短巾重畳端11d,12dは何れか一方を形成した後,他方を形成し,次いでウェットテシュー長の上記略五分の三に相当する長さで腰折して各腰折ウェットテシュー11,12を形成する。
【0025】 こうして上記各右向き腰折ウェットテシュー11の上部短巾重畳端11cを上位の各左向き腰折ウェットテシュー12の下部短巾重畳端12dと相の手に組み,更に上記各左向き腰折ウェットテシュー12の上部短巾重畳端12cを上位の各右向き腰折ウェットテシュー11の下部短巾重畳端11dと相の手に組んで,図2に示すように多重腰折ウェットテシュー14を形成する。
【0026】 この時,上記各右向き腰折ウェットテシュー11の上部短巾重畳端11c及び各左向き腰折ウェットテシュー12の下部短巾重畳端12dと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部短巾重畳端12c及び各右向き腰折ウェットテシュー11の下部短巾重畳端11dとが多重腰折ウェットテシュー14の左半部側と右半部側とに按分される。又この時各腰折ウェットテシュー11,12の上部短巾重畳端11c,12cの折り返し片11f,12fの先端が多重腰折ウェットテシュー14の中心線Y付近,好ましくは図3Aに示すように,上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定する。
【0027】 上記多重腰折ウエットテシュー14はウエットテシュー長の略五分の二の腰折巾Wに形成され,従来の如き多重腰折ウエットテシューに比べ,その腰折巾が縮小される。従って,容器の巾と従来の腰折巾がウエットテシ 34 ューの略二分の一であるのに対し,この発明では同五分の二の巾に縮小で きる。
キ 【0035】 【発明の効果】 この発明によれば,各腰折ウェットテシュー間における上記相の手組部 の寸法(重畳巾Lの寸法)をウェットテシュー長の略五分の一に縮小でき, 上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘持して引き出したとき の容器の取出口から誘出される下位の腰折ウェットテシューの誘出寸法を 上部短巾重畳端の重畳巾に縮小できる。これにより従来に比べ腰折ウエッ トテシューの誘出量を縮小できると共に,上部重畳端の重ね合わせ部内面 における薬液の乾燥を極力抑えることができる。
【0036】 又上部短巾重畳端を摘持してウェットテシューの連続取出しを行うので, 取出しが容易であると共に,この摘持部に上部短巾重畳端による強度を持 たせて取出し時の紙切れの問題を解消できる。
【0037】 よって上位の腰折ウェットテシューの取り出しに伴って下位の腰折ウェ ットテシューの上部折片が過度に引き出されてウェットテシューに含浸さ せた殺菌液を乾燥させてその効力を喪失させてしまう問題点,或いは下位 の腰折ウェットテシュー全体が引き出されてしまう問題点を有効に解消で きる。
【0038】 又多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの上部折 片の誘出量を縮小したことにより,美感を良好にすることができる。
【0039】 又上記相の手組み構造によって腰折ウエットテシューの腰折巾を縮小で 35 き,これにより腰折ウエットテシューを収容する容器の小形化を達成でき る。
(2) 前記(1)の記載事項によれば,甲6には,次のような開示があることが認 められる。
ア 二つ折りした各右向き腰折ウェットテシューの下部折片と各左向き腰折 ウェットテシューの上部折片とを相の手に組んで形成した多重腰折ウェッ トテシューを容器内に収容し,上部折片を容器に設けた取出口から引き出 すことにより連続取出しが行えるように構成した従来の多重腰折ウェット テシューにおいては,定寸法のウェットテシューを二つ折りして略二分の 一の折片を他の折片と相の手に組むようにした構成であるため,上位の腰 折ウエットテシューを取り出したときに,容器の取出口から下位の腰折ウ ェットテシューの略二分の一の折片が誘出されてしまい,誘出長が長すぎ て美感を損ない,また,薬液等で湿潤した状態のウエットテシューの誘出 された部分が乾いてその効用を喪失するので,誘出長をできるだけ短くす ることが望まれ,さらには,多重腰折ウエットテシューの縮小化とこれを 収容する容器の小形化が要望されているなどの課題があった 【0001】 ( ないし【0006】)。
イ 「この発明」は,上記課題を解決する手段として,各右向きと左向き腰 折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を各腰折ウェットテ シューの腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳端と下部重畳 端を形成し,上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端と各左 向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端とを上位の腰折ウェットテシ ューの下部短巾重畳端と相の手に組むようにして各腰折ウェットテシュー の上部折片の誘出量を充分に短縮できるようにすると共に,右向き腰折ウ ェットテシューの上部短巾重畳端及び左向き腰折ウェットテシューの下部 短巾重畳端と左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び右向き腰 36 折ウェットテシューの下部短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシューの左 半部側と右半部側に按分されるようにし,各上位の腰折ウェットテシュー の上部短巾重畳端を摘持して容器に設けた取出口より連続的に取出す構成 を採用した(【0007】)。
「この発明」によれば,各腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片 の遊離端側を折り返して上部短巾重畳端と下部短巾重畳端を形成し,この 両者を相の手に組んで多重ねを行っているので,各腰折ウェットテシュー 間における相の手組部の寸法(重畳巾の寸法)をウェットテシュー長の略 五分の一に縮小でき,上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘 持して引き出したときの容器の取出口から誘出される下位の腰折ウェット テシューの誘出寸法を上部短巾重畳端の重畳巾に縮小できるため,従来に 比べ腰折ウエットテシューの誘出量を縮小できると共に,上部重畳端の重 ね合わせ部内面における薬液の乾燥を極力抑えることができ,このように 各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を縮小することにより,美感 を良好にすることができ,さらには,上記相の手組み構造によって腰折ウ エットテシューの腰折巾を縮小でき,これにより腰折ウエットテシューを 収容する容器の小形化を達成できるなどの効果を奏する(【0008】な いし【0012】,【0035】ないし【0039】)。
3 相違点1の認定の誤りについて (1) 前記2(1)の甲6の記載事項(図2ないし4を含む。)を総合すれば,甲 6には,本件審決が認定するとおり,甲6(審判甲1)発明が記載されてい ることが認められる。
そして,本件訂正発明と甲6(審判甲1)発明を対比すると,本件訂正発 明の第2の折片の幅と甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェットテシュ ー11f,12f」(第2の折片に相当)の幅について,本件訂正発明は, 「上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する 37 とともに,上記第1の中間片の幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の 幅より短い幅となる」のに対し,甲6(審判甲1)発明は,「腰折ウェット テシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ,又は腰折ウェットテシュ ー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」である 点で相違すること(本件審決認定の相違点1)が認められる。
したがって,本件審決における相違点1の認定に誤りはない。
(2) これに対し原告は,@特許法施行規則24条の2は,特許発明の技術上の 意義ある部分は,「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他」 により特定される旨規定していることからすると,発明は,解決課題(目的 あるいは作用・効果)と解決手段(構成)とで特定しなければならない,A 本件訂正発明と甲6に記載された発明の相違点を捉えるには,第2の折片と 他の片との関係性をシート全体の折構造で把握する必要があるなどとして, 本件審決における甲6(審判甲1)発明の認定は適切ではなく,本件審決認 定の相違点1は,原告主張の相違点1(前記第3の1(1))のとおり認定すべ きである旨主張する。
しかしながら,特許出願に係る発明の要旨の認定は,特許出願の願書に添 付した特許請求の範囲の記載に基づいてすべきものであるところ,原告主張 の相違点1は,本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)記載の発明特定 事項以外の事項(本件明細書記載の「背景技術」,「発明が解決しようとす る課題」等)をも含めて本件訂正発明の要旨を認定することを前提として, 本件訂正発明と甲6に記載された発明とを対比するものであるから,その前 提において,採用することができない。また,特許法施行規則24条の2は, 特許法36条4項1号の経済産業省令の定めるところによる記載は,発明が 解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分 野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必 要な事項によりしなければならない旨規定し,明細書の発明の詳細な説明の 38 記載要件を定めた規定であるから,原告主張の相違点1が適切であることの 根拠となるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
4 相違点1の判断の誤りについて (1) 本件訂正発明の「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第 1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに, 上記第1の中間片の幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の幅より短い 幅となる第2の折片」にいう「調整」の意義について ア 本件訂正発明の「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記 第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとと もに,上記第1の中間片の幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の幅 より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ」との記載から, 本件訂正発明の「第2の折片」は,「第1の中間片の幅の1/2未満で, かつ,上記第1の折片の幅より短い幅」であって,「第1の中間片から積 層方向上側に折り返され」,「第2の折片」によって「第1の中間片の幅 が所望とする積層体の幅寸法となるように調整」することができることを 理解できる。
一方で,本件訂正発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「上記第1 の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とす る積層体の幅寸法となるように調整する」にいう「調整」について,具体 的な調整方法等について規定した記載はない。
イ 次に,本件明細書には,「調整」に関し,「調整」の語について定義し た記載はなく,「図1に示すように,シート状物10は,所望とする積層 体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片11と,積層方向下側 に折られ,第1の中間片11の略1/2の幅に第1の中間片11に隣接し て形成された第2の中間片12と,第2の中間片12から積層方向下側に 39 折り返され第2の中間片12と略同じ幅に形成された第1の折片13と, 第1の中間片11から積層方向上側に折り返され第1の中間片11の幅が 所望とする積層体の幅寸法となるように調整する第2の折片14とから構 成されている。」(【0014】)との記載がある。また,本件明細書に は,「第2の折片」に関し,「第2の折片14は,第1の中間片11と隣 接し,シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a,10bと,第3の 折れ線17と短辺10cとによって囲まれる部分である。シート状物10 の長辺10a,10bの第2の折片14の長さにあたる部分,つまり第3 の折れ線17と短辺10cとの距離Dは,D変更することができ,約2 5%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。」(【00 26】)との記載がある。
ウ 以上の本件訂正発明の特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載及び図 1によれば,本件訂正発明の「上記第1の中間片から積層方向上側に折り 返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調 整する」にいう「調整」とは,シート状物の第1の中間片の幅が所望とす る積層体の幅寸法となるように,「第2の折片」の幅を「第1の中間片の 幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の幅より短い幅」となるように 設定することを意味するものと解される。
以上を前提に,本件審決における相違点1の判断の誤りの有無について 40 検討する。
(2) 相違点1のうち,本件訂正発明の「第2の折片の幅」が第1の中間片の幅 の1/2未満で,かつ,第1の折片の幅より短い幅」である構成に差異はな いとした判断の誤りについて ア 前記3(1)認定のとおり,甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェット テシュー11f,12f」は,本件訂正発明の「第2の折片」に相当する ものであり,「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の 長さ,又は腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず 且つこれに接近した長さ」を有している。
そして,甲6には,甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェットテシ ュー11f,12f」に関し,「図4は上記各腰折ウェットテシュー11, 12の展開図を示し,S1は腰折り用の折線,S2は上記下部折片11b, 12bを折り返して下部短巾重畳端11d,12dを形成するための折り 返し用の折線,S3は上記上部折片11a,12aを折り返して上部短巾 重畳端11c,12cを形成するための折り返し用の折線を夫々示す。」 (【0021】),「上記折線S1はウェットテシューを略五等分して五 分の三の位置に設定し,該五分の三の長さの折片で上部折片11a,12 aを形成し,残りの五分の二の長さの折片で下部折片11b,12bを形 成する。」(【0022】),「又折線S2は上記下部折片11b,12 bを更に略二等分する位置に設定し,折線S3は上部折片11a,12a を略三等分し遊離端から三分の一の位置に設定する。従って折線S2によ って折り返された折り返し片11e,12eは腰折ウェットテシュー11, 12の展開長の略五分の一の長さとなり,折線S3によって折り返された 折り返し片11f,12fは同様に腰折ウェットテシュー11,12の展 開長の略五分の一の長さになる。」(【0023】),「この時,上記各 右向き腰折ウェットテシュー11の上部短巾重畳端11c及び各左向き腰 41 折ウェットテシュー12の下部短巾重畳端12dと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部短巾重畳端12c及び各右向き腰折ウェットテシュー11の下部短巾重畳端11dとが多重腰折ウェットテシュー14の左半部側と右半部側とに按分される。又この時各腰折ウェットテシュー11,12の上部短巾重畳端11c,12cの折り返し片11f,12fの先端が多重腰折ウェットテシュー14の中心線Y付近,好ましくは図3(A)に示すように,上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定する。」 【0026】 との記載がある。
( ) 上記記載と図3(A)及び図4によれば,甲6には,甲6(審判甲1)発明における「折線S1と折線S3とで挟まれた部分」(本件審決認定の「上部中間片」)(本件訂正発明の「第1の中間片」に相当)の長さ(幅)は,「折線S1はウェットテシューを略五等分して五分の三の位置に設定」し,「折線S3によって折り返された折り返し片11f,12f」は「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ」であるから(【0022】,【0023】),「ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二」であり,また,「折り返し片11e,12e」(本件訂正発明の「第1の折片」に相当)の長さ(幅)は,「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一」(【0023】)であることの開示があることが認められる。
そして,甲6には,「折り返し片11f,12f」の「先端」は「多重腰折ウェットテシュー14の中心線Y付近,好ましくは図3(A)に示すように,上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定され」(【0026】)との記載があること,図3(A)には,「折り返し片11f,12f」の「先端」が「ウェットテシュー14の中心線Y」に到達せずに,「中心線Y」との間に間隙があることが図示されていることからすれば,「折り返し片11f,12f」 42 の長さ(幅)である「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分 の一」にいう「略五分の一」とは,「五分の一」とおおよそ同じであるが, 正確には「五分の一」よりも小さい値を意味するものと理解できる。
そうすると,甲6には,甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェット テシュー11f,12f」の長さ(幅)は,「折線S1と折線S3とで挟 まれた部分」である「上部中間片」の1/2未満で,かつ,「折り返し片 11e,12e」の幅より短い幅であることの開示があることが認められ るから,甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェットテシュー11f, 12f」は,本件訂正発明の「第2の折片の幅」が「第1の中間片の幅の 1/2未満で,かつ,第1の折片の幅より短い幅」である構成を備えるも のと認められる。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
イ これに対し原告は,@甲6に記載された発明は,多重腰折ウェットテシ ューの縮小化とこれを収容する容器の小型化を解決する発明であるから, 第2の折片の幅は中心線上にまで達する幅が望ましいこと,A甲6の特許 請求の範囲(請求項1),【0022】及び【0023】の記載によれば, 甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅が,「按 分」すなわち,「2分の1」であることは明らかであること,B甲6の【0 026】の「上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれ に接近した」長さとは,右向き腰折ウェットテシューの折り返し片(第2 の折片)の幅と,左向き腰折ウェットテシューの折り返し片(第2の折片) の幅とが中央で按分される幅,すなわち,上部中間片(第1の中間片)の 2分の1の幅となることを指していると解すべきであること,C仮に甲6 における「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅が上部中間片 (第1の中間片)の2分の1未満の幅も含むとすれば,甲6の【0024】 記載の腰折ウェットテシューの製造工程では,「上部中間片がその分長く 43 なる」か,又は「下部中間片がその分長くなる」かのいずれかの状況が生じ,「ウエットテシュー長の略二分の一の腰折巾を有する多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と,これを収容する容器3の小形化」 【0006】 ( )の課題を達成することができず,「この発明では同五分の二の巾に縮小できる」(【0027】)との効果を得ることができないし,また,「下部中間片がその分長くなる」場合には,下部中間片は,長くなった分だけ中心線Yを超えることになるため,中心線Y近傍で左右のシート状物が重なり合うことになり,積層体の中央部分が嵩高となり,見栄えが悪く,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体とする(【0008】)という課題にも反することなどからすれば,甲6における「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅が上部中間片(第1の中間片)の2分の1未満の幅も含むものと解釈することは妥当でない旨主張する。
しかしながら,上記@の点については,前記2(2)認定のとおり,甲6には,従来の多重腰折ウェットテシューにおいては,上位の腰折ウエットテシューを取り出したときに,容器の取出口から下位の腰折ウェットテシューの略二分の一の折片が誘出されてしまい,誘出長が長すぎて美感を損ない,また,薬液等で湿潤した状態のウエットテシューの誘出された部分が乾いてその効用を喪失するので,誘出長をできるだけ短くすることが望まれ,さらには,多重腰折ウエットテシューの縮小化とこれを収容する容器の小形化が要望されていることなどが課題であることの開示があるが,このような課題との関係で,「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅は中心線上にまで達する幅が望ましいものとは直ちにいうことはできないし,かえって,甲6の【0026】には,「好ましくは図3Aに示すように,上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定され」との記載がある。
次に,上記A及びBの点については,甲6の特許請求の範囲(請求項1) 44 には,「上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び各左向 き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端と各左向き腰折ウェットテシュ ーの上部短巾重畳端及び各右向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端 とが多重腰折ウェットテシューの左半部側と右半部側に按分され」との記 載があるが,甲6には,ここにいう「左半部側と右半部側に按分」が厳密 に2分の1づつに按分することを意味することを明示した記載はないのみ ならず,甲6(審判甲1)発明は,甲6記載の図面等に基づいて認定した ものであり,甲6の請求項1に係る発明そのものではない。また,前記ア で説示したところに照らせば,甲6の【0022】,【0023】及び【0 026】の記載から,甲6における「折り返し片11f,12f」の幅が 「2分の1」であるということはできない。
さらに,上記Cの点については,甲6には,多重腰折ウェットテシュー の厚さやサイズ,容器に収容する枚数等を特定する記載はないことに照ら すと,甲6(審判甲1)発明における「腰折ウェットテシュー11f,1 2f」の長さ(幅)は,「折線S1と折線S3とで挟まれた部分」である 「上部中間片」の1/2未満としたからといって,積層体の中央部分が嵩 高となり,見栄えが悪く,包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシー ト状物の積層体とするという課題に反する事態が直ちに生じるものと認め ることはできないし,また,甲6記載の課題を達成できなくなるというこ ともできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 相違点1のうち,本件訂正発明の「第2の折片の幅」について「第1の中 間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成に差異は ないとした判断の誤りについて ア 前記(1)ウのとおり,本件訂正発明の「上記第1の中間片から積層方向上 側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となる 45 ように調整する」にいう「調整」とは,シート状物の第1の中間片の幅が 所望とする積層体の幅寸法となるように,「第2の折片」の幅を「第1の 中間片の幅の1/2未満で,かつ,上記第1の折片の幅より短い幅」とな るように設定することを意味するものと解される。
そして,甲6(審判甲1)発明においては,その構造上,腰折ウェット テシューの展開長(サイズ)を変えることなく,「折り返し片11f,1 2f」を「中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法」に設定す ること(【0026】)により,上部中間片(第1の中間片)の幅を所望 とする積層体の幅寸法となるように設定することができることは自明であ る。
そうすると,甲6には,甲6(審判甲1)発明は,本件訂正発明の「第 2の折片の幅」について「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法 となるように調整する」構成を備えていることが開示されているものと認 められる。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
イ これに対し原告は,甲6に記載された発明においては,甲6における「折 り返し片11f,12f」は,シート状物全体の略5分の1の長さで固定 されるため(【0007】,【0008】,【0023】),そもそも「折 り返し片11f,12f」の幅を変えるという発想には至らないし,また, シート状物全体の大きさを変更すれば,積層体の幅も変更されてしまうか ら,「折り返し片11f,12f」の幅を変更しても,積層体の幅寸法を 所望の幅とすることはできない旨主張する。
しかしながら,前記ア認定のとおり,甲6(審判甲1)発明において, 腰折ウェットテシューの展開長(サイズ)を変えることなく,「折り返し 片11f,12f」を「中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸 法」に設定することができることは,その構造上自明であり,また,シー 46 ト状物全体の大きさを変更した場合であっても,「折り返し片11f,1 2f」を「中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法」に設定す ることにより,積層体の幅寸法を所望の幅とすることができるものと認め られる。
したがって,原告の上記主張は採用することはできない。
(4) 小括 以上によれば,甲6(審判甲1)発明の「折り返し片11f,12f」は, 相違点1に係る本件訂正発明の構成(「第2の折片」の構成)を備えている ものと認められるから,相違点1は実質的な差異ではないとした本件審決の 判断に誤りはない。
5 結論 以上のとおり,本件審決における相違点1の認定及び判断に誤りはないから, 原告主張の取消事由は理由がない。その他原告は縷々主張するが,いずれも理 由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 國分隆文
裁判官 筈井卓矢
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