関連審決 |
無効2017-800143 |
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事件 |
令和
1年
(行ケ)
10109号
審決取消請求事件
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原告株式会社コムスクエア 同訴訟代理人弁護士 ア仁 村島大介 同訴訟代理人弁理士 山内博明 被告TIS株式会社 同訴訟代理人弁護士 塩月秀平 江口雄一郎 岡田誠 友村明弘 同訴訟代理人弁理士 佐藤睦 大石幸雄 吉田幸二 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2020/03/11 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2017-800143号事件について令和元年6月25日にした審決のうち,特許第5075201号の請求項7に係る部分を取り消す。 |
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事案の概要
本件は,特許無効審判請求に対する審決の取消訴訟である。争点は,特許発明の新規性である。 1 特許庁における手続の概要等 原告は,名称を「情報管理方法,情報管理装置及び情報管理プログラム」とする発明に係る特許権(特許第5075201号。以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」本件特許の明細書及び図面を , 「本件明細書」という。)の特許権者である(甲11)。 本件特許は,平成19年7月31日に出願され(特願2009-525232号),平成24年8月31日に設定登録された(甲11)。 被告は,平成29年11月28日,特許庁に対し,本件特許の請求項1,4及び7に係る発明(以下,順に, 「本件発明1」「本件発明2」及び「本件発明3」とい ,う。)について無効審判(以下, 「本件審判」という。)を請求した。特許庁は,同請求を無効2017-800143号事件として審理して,令和元年6月25日, 「訂正後の請求項1及び4について訂正することを認める。特許第5075201号の請求項1及び7に係る発明についての特許を無効とする。特許第5075201号の請求項4に係る発明についての審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下,「本件審決」という。)をし,その謄本は同年7月8日,原告に送達された。 2 本件特許の特許請求の範囲(請求項1及び4は上記1の訂正後のもの。また,分節は本件審決による。)【請求項1】(本件発明1)(1A)ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先の電話器を識別する識別情報を管理するための情報管理方法であって,(1B)コンピュータによって実行され,(1C)前記識別情報に基づく架電が第1の架電先の電話器に接続される状態の該識別情報を,前記ウェブページを構築するウェブサーバであって前記コンピュータとは異なるウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップと,(1D)前記送出不可能な状態とされた前記識別情報に基づく架電を第2の架電先の電話器に接続される状態にするステップと,(1E)前記識別情報に基づく架電が前記第2の架電先の電話器に接続される状態となった場合の該識別情報を,前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態にするステップと,を有し,(1F)前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから3時間以内の一定期間が満了した場合に,又は前記ウェブサーバへアクセスされた回数が基準に達した場合に実行する(1G)情報管理方法。 【請求項4】(本件発明2)(2A)ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先の電話器を識別する識別情報を管理するための情報管理装置であって,(2B)前記識別情報に基づく架電が第1の架電先の電話器に接続される状態の該識別情報を,前記ウェブページを構築するウェブサーバであって前記情報管理装置とは異なるウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させる機能と,(2C)前記送出不可能な状態とされた前記識別情報に基づく架電を第2の架電先の電話器に接続される状態にする機能と,(2D)前記識別情報に基づく架電が前記第2の架電先の電話器に接続される状態となった場合の該識別情報を,前記ウェブサーバ又は他のウェブサーバに向けて送出可能な状態にする機能と,(2E)前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に,又は前記ウェブサーバへアクセスされた回数が基準に達した場合に実行する機能と,(2F)個人が自身のウェブページやブログ等に広告情報を掲載する場合にその個人ページや個人ブログごとに割り当てられたIDを含む管理情報を,当該個人ページや個人ブログを構築するウェブサーバから取得する機能と,を実現するコンピュータを有する(2G)情報管理装置。 【請求項7】(本件発明3)(3A)ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先の電話器を識別する識別情報を管理するための情報管理プログラムであって,(3B)コンピュータに,(3C)前記識別情報に基づく架電が第1の架電先の電話器に接続される状態の該識別情報を,前記ウェブページを構築するウェブサーバであって前記コンピュータとは異なるウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させる機能と,(3D)前記送出不可能な状態とされた前記識別情報に基づく架電を第2の架電先の電話器に接続される状態にする機能と,(3E)前記識別情報に基づく架電が前記第2の架電先の電話器に接続される状態となった場合の該識別情報を,前記ウェブサーバ又は他のウェブサーバに向けて送出可能な状態にする機能と,(3F)前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に,又は前記ウェブサーバへアクセスされた回数が基準に達した場合に実行する機能とを実現させるための(3G)情報管理プログラム。 3 本件審判において被告が主張した無効理由 本件発明1〜3は,甲1(米国特許出願公開第2005/0251445号明細書)に記載された発明(以下,「甲1発明」という。)と同一である。 4 本件審決の理由の要旨 (1) 甲1には,以下の甲1発明が記載されていると認められる。 固有の電話番号を節約及び再利用することが出来るペイ・パー・コールの実績型広告を提供するための方法であって, 前記方法を実行するシステムは, 「アカウント生成・管理モジュール34」「広告 ,発行モジュール36」「架電処理モジュール38」 , ,及び「請求モジュール40」を含み,さらに,前記「アカウント生成・管理モジュール34」は, 「広告作成モジュール46」を含み,また, 「広告発行モジュール36」は, 「広告描画エンジン74」と「広告配給エンジン76」とを含み, 前記システムは,特定の広告,広告主,又は要求パートナーに前もって割り当てられたり,関連付けられたりしていない電話番号である未割り当ての電話番号のプールを保持し, 前記「アカウント生成・管理モジュール34」は, 「ユーザインターフェースモジュール44」「広告作成モジュール46」「支払規定モジュール48」を含み, , , 前記「ユーザインターフェースモジュール44」は,ウェブページを顧客のブラウザに表示させ, 前記「広告作成モジュール46」は,広告主に割り当てられた固有の電話番号を自動的に広告主の広告に直接挿入するものであり,検索エンジン19を通じたキーワード検索が開始された際,広告主の広告が検索結果内に表示されるようにするためのキーワードを入力することができるようにするための「キーワード関連付けロジック57」と,固有の電話番号を生成し,固有の電話番号が架電されると広告主の電話が鳴るように固有の電話番号を広告主の実際の電話番号にマッピングし,固有の電話番号を広告主の広告に関連づける「電話番号自動生成ロジック56」を含み, 前記「固有の電話番号」は,エンドユーザから要求パートナー(ある検索エンジンのウェブサイト)に対して検索要求がなされ, 「ジャスト・イン・タイム方式」で,未割り当ての電話番号のプール内にある電話番号の中から「固有の電話番号」となる電話番号が検索要求におけるキーワードと関連付けがなされた特定の広告主の広告に対して直前に動的に割り当てられて,その広告に自動的に挿入されるものであり,そして,そのように「固有の電話番号」が挿入された広告は,検索結果のページ内に表示され, また,前記「固有の電話番号」は, 「表示されてからある一定期間」が経過した場合には,「再利用」のために「電話番号のプール」に戻され,また,「問合せをもたらすが架電がない場合」には,この「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間, 「動的に割り当てられた電話番号」は「その広告に関連付けられる」ものであり, 前記システムは,ある特定の広告主の広告がある時間にある特定のウェブサイト(ある検索エンジンのウェブサイト)にある特定の固有の電話番号と共に表示されたことを記録し,また, 「割り当てられた電話番号がそれぞれ最後に表示されたのはいつか」を記録し,この「電話番号についての最後の表示時間」の情報は, 「電話番号が例えば直近の24時間内に異なるコンテキストで表示されたかどうかをチェックする」等により「割り当てられた電話番号」が「所定期間内で最近表示されたかどうか」を「判定」するために用いられ,前記「割り当てられた電話番号」が所定期間内に表示されていた場合には,前記「割り当てられた電話番号」は,前記「特定の広告主の広告」以外の広告主の広告には割り当てられないものであり, さらに,前記システムは,選択された広告主又は広告主群に特定の期間特定の電話番号を提供するものであり,この特定の期間の後は再利用プロセスに入ることができる,方法。 (2) 甲1発明と本件発明1の一致点及び相違点 ア 甲1発明は,本件発明1の構成要件1A〜1Eをそれぞれ備えていると認められる。 イ 本件発明1の構成要件1Fの「一定期間の始期」に関連する甲1発明の構成は,以下のとおりである(以下,それぞれ,順に「構成要件(a)」などということもある。。 ) エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対して検索要求がなされたことに応じて,(a)検索要求を受信した要求パートナーの検索エンジンは,検索要求をシステムに伝え,(b)システムは, 「ジャスト・イン・タイム方式」で,未割り当ての電話番号のプール内にある電話番号の中から「固有の電話番号」となる電話番号が検索要求におけるキーワードと関連付けがなされた特定の広告主の広告に割り当ててその広告に自動的に挿入し,割り当てられた「固有の電話番号」が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し,(c)要求パートナーの検索エンジンは,検索要求に対する検索結果内に,システムから送信された「固有の電話番号が挿入された広告」を表示する,(d)システムは,ある特定の広告主の広告がある時間にある特定のウェブサイト(ある検索エンジンのウェブサイト)にある特定の固有の電話番号と共に表示されたことを記録し,(e)システムは, 「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過した場合には,「再利用」のために「電話番号のプール」に戻され,また,「問合せをもたらすが架電がない場合」には,この「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間, 「動的に割り当てられた電話番号」が「その広告に関連付けられる」 ウ 構成要件(c)の処理は,構成要件(b)の処理に付随するものであるから,構成要件(b)と構成要件(c)の処理は一連の処理と解するのが自然である。そして,構成要件(d)の処理については,甲1には, 「要求パートナーの検索エンジンからシステムへ固有の電話番号が挿入された広告を表示した旨の通知」を行うことについての記載又はそれを示唆する記載もないことを勘案すると,構成要件(b)の処理において「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し」た時点を「表示されたこと」として「記録」すると解される。 また, 「表示されたこと」として「記録」された「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信した時点」は,構成要件(d)の処理において, 「再利用」のために「電話番号のプール」に戻されるための「一定期間」の始期として用いられるものであるから,甲1発明でいう「表示されてから一定期間」の「表示されて」とは,構成要件(b)の処理における「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信した時点」と解される。 なお, 「再利用」のために用いられる「表示」のタイミングは,甲1の[0078]及び[0095]の記載によると,要求パートナーの検索エンジンにおける表示(表示のためのクライアントへの送信)のタイミングであって,クライアントにおける処理のタイミングではない。 他方,本件発明1の「一定期間」の始期は,特許請求の範囲の文言上, 「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから」である旨が特定されている。そして,本件明細書の【0061】【図3】【0088】の記載によると,本件発明 , ,1の「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出され」るタイミングは,表示を引き起こすような送出のタイミングを含んでいる。 以上によると,甲1発明の「一定期間」の始期である「固有の番号」が「表示されてから」は,本件発明1の「一定期間」の始期である「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから」に相当する。 エ 甲1のシステムは,エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対する検索要求に応じて,未割り当ての番号のプールからの電話番号を「ジャスト・イン・タイム方式」で割り当てるものであり,甲1の[0078][0086]及 ,び[0098]の記載は, 「第1の要求パートナーにより提供される『広告』に『割り当てられている電話番号』 『所定期間』 は, の間は,第2の要求パートナー(又は,異なるコンテキスト)により提供される『広告』には割り当てられない」との態様を示しており, 「第1の要求パートナーにより提供される『広告』に『割り当てられている電話番号』」の視点から換言すると,「第1の要求パートナーにより提供される『(電話番号が割り当てられている)広告』が『所定期間』内において,同じ『要求パートナー(又は,コンテキスト)』により提供されるのであれば,前記『広告』には,同じ『電話番号』が割り当てられ得る」態様といえる。 このように,エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対する検索要求に対して,広告に「ジャスト・イン・タイム方式」でプール内にある電話番号を割り当てるに当たって,同じ要求パートナー又は同じコンテキストにおいて,広告が表示されてから所定期間内の電話番号は,再度「固有の電話番号」として前記「広告」に割り当てられ,前記「所定期間内の電話番号」が挿入された広告が要求パートナーの検索エンジンに送信され得るのであり,このような電話番号は,表示されてから所定期間の間「送信可能状態」が継続しているものといわざるを得ない。 そうすると,甲1には, 「一定期間」の間「送出可能な状態」であることが事実上記載されているといえるから,本件発明1における「一定期間」が終了して「送出不可能な状態」となるまで「送出可能な状態」である点は一致点となる。 オ 以上によると,甲1発明は,本件発明1を構成している構成要件1Fのうち,「前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に実行する」との構成を備えているといえるものの,前記「一定期間」について, 「3時間以内の」という限定がされていない点において文言上相違している。 したがって,本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は,次のとおりとなる。 (ア) 一致点(1A)ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先の電話器を識別する識別情報を管理するための情報管理方法であって,(1B)コンピュータによって実行され,(1C)前記識別情報に基づく架電が第1の架電先の電話器に接続される状態の該識別情報を,前記ウェブページを構築するウェブサーバであって前記コンピュータとは異なるウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップと,(1D)前記送出不可能な状態とされた前記識別情報に基づく架電を第2の架電先の電話器に接続される状態にするステップと,(1E)前記識別情報に基づく架電が前記第2の架電先の電話器に接続される状態となった場合の該識別情報を,前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態にするステップと,を有し,(1F)前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に,又は前記ウェブサーバへアクセスされた回数が基準に達した場合に実行する(1G)情報管理方法 (イ) 相違点 構成要件1Fにおける「一定期間」について,甲1発明には「3時間以内の」という限定がされていない点 (3) 本件発明3についての判断 本件発明3は本件発明1をプログラムとして記載したものである。そして,本件発明3の構成要件3Fにおいては, 「一定期間」について「3時間以内の」との限定はないので,「構成要件1Fについて」の「『一定期間』について,『3時間以内の』という限定がされていない」との相違点は存在しない。 したがって,甲1発明は本件発明3に係る構成要件を全て備えているから,本件発明3と甲1発明との間に構成上の相違点はなく,本件発明3は,甲1発明と同一である。 |
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原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(「一定期間」の始期に関する取消事由) (1) 本件発明3の構成要件3Fの「前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップ」は,ウェブサーバに向けて識別情報が「送出」されてから「一定期間」が満了した場合に実行される。 この「一定期間」の始期は,本件発明3では, 「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出された」時点であるが,甲1発明では, 「ユーザのコンピュータ等に電話番号が表示された時点」であり,本件発明3と甲1発明には相違点がある。 本件審決は,この相違点を相違点として認定しておらず,その判断に誤りがある。 (2) 本件発明3について ア 本件発明3は,ペイ・パー・コール方式における電話番号を指標する識別情報を広告情報ごとに動的に割り当てて,識別情報の再利用を可能とすることにより,識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図ることのできる情報管理プログラムを提供することを例示的課題とするものであり,この課題に関する本件発明3の解決手段は以下のとおりである。 @ 第1の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,「ウェブページを構築するウェブサーバであって前記コンピュータとは異なるウェブサーバ」に向けて送出可能な状態から,送出不可能な状態へと,当該ウェブサーバに当該情報を送出してから一定期間が満了した時点(またはウェブサーバへアクセスされた回数が基準に達した時点)で変化させる機能(構成要件3C及び構成要件3F)と, A 送出不可能な状態とされた識別情報を,第2の架電先に架電接続可能な状態へと変化させる機能(構成要件3D)と, B 第2の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,前記ウェブサーバ又は他のウェブサーバに向けて送出可能な状態へと変化させる機能(構成要件3E)と,を「コンピュータ」に実現させる(構成要件3B)。 これにより,一定期間のみ,ある識別情報を第1の架電先の識別情報としてウェブサーバにおいて提供可能とし,当該期間経過後,ウェブサーバにおいて提供不可能とし,当該提供不可能とした識別情報を,今度は第1の架電先とは異なる第2の架電先に架電接続可能な状態にしてウェブサーバに向けて提供することができる。 このように,一つの識別情報を時期的にずらして様々な架電先へと関連付けることが可能となり,識別情報を有効に再利用することができる。 イ 本件発明3では,ユーザが自己のコンピュータ又は携帯端末(以下, 「ユーザ端末等」という。)を使って「ウェブサーバ」(構成要件3C)にアクセスし,ユーザ端末等の画面上に識別情報を表示する。当該ユーザの動作部分は対象としておらず,サーバの側で完結する技術思想を対象としている。また,本件発明3では,「識別情報をウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップ」(構成要件3F)を実行する時期は,「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合」とされており, 「コンピュータ」(構成要件3B)から,「ウェブページを構築するウェブサーバであって前記コンピュータとは異なるウェブサーバ」構成要件3C) ( に識別情報が送出されれば,直ちに「一定期間」の計測が開始される。 このように,本件発明3では「一定期間」の始期として,ユーザ側の識別情報の表示を前提としない「送出」の時点を特定している (3) 甲1発明について ア 本件審決は,甲1発明の「表示されてから一定期間」甲1の ( [0078])の「表示されて」とは, 「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信した時点」と解されるとした。 しかし,「表示(display)」という用語の通常の意味は,「情報が画面に映される(it shows it on its screen), 」「画面に単語や写真等を見せる(to show words,pictures, etc. on a screen), 」「コンピュータの画面に情報を見せる(to showinformation on a computer screen)」という意味である(甲30の10頁)。被告が提出する書証(乙2〜4)でも,「表示(display)」という用語は,「用法を画面に映す,または見せる」ことを意味しており, 「対象情報を送信する」という意味を含んでいない。 また,甲1の各記載([0032][0033][0045][0070][00 , , , ,75][0077][0089][0090][0092][0095][009 , , , , , ,7][0099][0100] , , )や請求項11を見ても,「表示(display)」という用語は,上記の通常の意味を有するものとして使用されており,甲1には「表示(display)」という用語が「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信した時点」を意味する語句として使用されている箇所はない。 被告は,情報を保有する装置等とこれを表示する装置等が異なる場合, 「表示」という用語は, 「前者が後者に送信し,後者側に当該情報を表示すること」を意味するのが一般的であると主張する。しかし, 「前者が情報を後者に送信する」という自明の事項の説明を省略することは日常会話でもよくあることであるから,そのように省略されているからといって, 「表示」という用語に,通常の意味と異なる「対象情報を送信する」という意味を混入させる根拠とはなり得ない。 イ 甲1発明において,構成要件(d)は,(c)要求パートナーの検索エ 「ンジンが検索要求に対する検索結果内に,システムから送信された固有の電話番号が挿入された広告を表示」したことを記録するものである。構成要件(c)において, 「固有の電話番号が挿入された広告」が表示されるのはユーザ端末等の画面である。 また,甲1の[0059]で引用され,甲1にその記載内容が組み込まれる米国公開公報(米国特許出願第60/552124号。甲31)の[0018][00 ,27]の記載によると,甲1発明の構成要件(c)における「表示」は,ユーザの「コンピュータの画面に情報を見せる(to show information on a computerscreen)」という意味を有するものとして使用されている。 そうである以上,甲1発明の構成要件(d)における「表示」も, 「ユーザのコンピュータの画面に情報を見せる」という意味で使用されているといえるから,本件審決の「表示」の認定に誤りがある。 ウ 本件審決は,甲1にはユーザ端末等での電話番号の表示時期をユーザ端末等からシステム側に送信する仕組みが記載されていないから,甲1には「再利用」のために用いられる「表示」のタイミングについての仕組みの記載がないとしている。 インターネット・サイトにおける個人の行動を調査・分析するアクセス解析技術の一つにウェブビーコンがある。これは,あるWebページ(又は電子メール)を閲覧する利用者をモニターするためにWebページ(又は電子メール)上にグラフィックを設置し,利用者が当該Webページ(又は電子メール)を開いた際に,自社のサーバに対してGET要求をし,どのIPアドレスのマシンが,いつ,どのWebページにアクセスしたについての情報をトレースすることができるものである。このウェブビーコンは,本件発明3の出願日当時,ウェブサイト等でも普通に紹介され,実際のウェブサイトに実装されている周知技術であった。そして,当該技術等を用いれば,システム(サーバ)は,ユーザが自己の端末等でいつウェブページを表示したか等を知ることができる。 日本法では,明細書は当該技術分野に関する周知技術を含む技術常識の全てを知る当業者を基準に作成され,周知技術を全て明細書に記載する必要はないが,これは米国法でも同様であり,米国特許の明細書には周知技術を記載する必要はなく,当該技術については記載を省略することが推奨されている(甲30)。 甲1では,ウェブビーコン等の「ウェブページが何時の時点でユーザ端末に表示されたか」を把握するための周知技術を知る当業者を基準に作成されているため,当該技術に関する記載が省略されているが,読み手は周知技術を参酌して甲1の記載を理解することが予定されている。そして,甲1の[0078]においても,当該周知技術を用いれば,電話番号を含むウェブページをユーザが表示した時期を容易に把握することができる。それゆえ,甲1の読み手は,同段落の「表示してから」を,文字どおり,ユーザ端末等に電話番号が「表示」された時点であると理解する。 エ 以上によると,甲1の[0078]に「固有の番号が表示されてからある一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を『クリーン』と見なして再利用し,番号のプールに戻すことができる」の「表示されてから」とは,文字どおり,ユーザ端末等に電話番号が「表示」された時点である。 (4) 本件発明3と甲1発明の相違点 ア 以上のとおり, 「一定期間」の始期について,本件発明3は, 「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出された」時点であるが,甲1発明は,「ユーザのコンピュータ等に電話番号が表示された時点」であり,本件発明3と甲1発明には,相違点があることになる。 「一定期間」の始期を「ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出された時」とする場合(本件発明3・構成要件3F)のメリットは,時間の管理を「コンピュータ」(構成要件3B)側で完結できるという点にある。「一定期間」の始期を「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出された時」とする本件発明の構成では,識別情報を「前記ウェブサーバ」に向けて送出しさえすれば,一定期間の計測が開始される。そのため,実際に表示された時期を把握しなくても,いつのタイミングで当該識別情報を送出不可能な状態にするかを決定することができる。これは,ユーザの利益(表示期間の確保)よりも,システム設計の便宜(一定期間の計測の容易性)を優先した技術思想である。 これに対して, 「一定期間」の始期を「(ユーザ端末等に)表示された時」 (甲1発明)とすると, 「一定期間」の始期に関する情報を持っているのはユーザ端末等のみである。そのため,「コンピュータ」(構成要件3B)は,当該情報をユーザ端末等から入手しなければならず,そのための仕組みを用意しなければならない。これは,システム設計の便宜(一定期間の計測の容易性)よりも,ユーザの利益(表示期間の確保)を優先した技術思想である。 以上のとおり, 「一定期間」の始期を「送出」とする場合の構成と「表示」とする場合の構成は,技術思想として異なる。 イ また,両者は時期としても同一ではない。甲1発明では,サーバに向けて電話番号が送出されても,通信エラーが発生したために,ユーザ端末等に当該番号が表示されなければ, 「一定期間」の始期が到来することはなく,電話番号がプールに戻ることはない。通信エラーが起きていないとしても,ネットワークで輻輳が生じている場合とそうでない場合とでは通信速度が異なるので,電話番号がウェブサーバに向けて送出されてからユーザ端末等に表示されるまでの時間は,それぞれ異なることになる。そのため,「電話番号が表示された時」と,「ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出された時」は同一の時点ではない。 (5) 以上によると,本件発明3と甲1発明には,相違点が存在する。 2 取消事由2(「送出可能な状態」に関する取消事由) (1) 本件発明3の構成要件3Fによると, 「前記識別情報」は, 「一定期間」の間, 「前記ウェブサーバ」に向けて「送出可能な状態」にあるから,本件発明3には,「情報管理サーバは, 『一定期間』の進行中,識別情報を広告提供サーバに向けて『送出可能な状態』にある」ことの開示があるが,甲1発明にはその開示がない。 しかし,本件審決は,甲1には, 「一定の期間」の間,識別情報が「送出可能な状態」であることが事実上記載されているといえると認定し,本件発明3における「一定期間」が終了して「送出不可能な状態」となるまで「送出可能な状態」である点は,甲1発明との相違点とはならないと判断したが,この判断は誤りである。 (2)ア 本件発明3の構成要件3Fの「識別情報がウェブサーバに向けて送出可能な状態」について,本件明細書の【0020】には, 「例えば,利用者がウェブページにアクセスしたときに,広告情報に関連付けられた識別情報がウェブサーバへと送信されてそのウェブページ上に表示され得る状態をいう」と記載されている。 上記記載中の「例えば,利用者がウェブページにアクセスしたときに」という部分は, 「例えば」との記載のとおり,送出可能か否かの判断時期に関する例示であるところ,特許請求の範囲には送出可能か否かの判断時期に関する技術事項はないから,当該部分に例示以上の意味はなく,「送出可能な状態」とは,「広告情報に関連付けられた識別情報がウェブサーバへと送信されてそのウェブページ上に表示され得る状態」を意味する。 本件明細書の図10などによると,本件発明3の識別情報には,@広告情報に関連付けられているか(割り当てられているか)否か,A送出可能か否か,B接続可能か否かの3種類の状態があるが,本件明細書の記載 【0090】 【0097】 ( 〜 )によると,識別情報が広告情報と関連付けられていても(割り当てられていても),当該識別情報は送出可能であり,かつ,接続可能であることもあるし,送出不可能であるが接続可能であることもあり得るから,識別情報が広告情報と関連付けられているか否かは送出可能か否かとは異なる概念である。 イ 本件明細書の【0020】及び【0078】には,識別情報と広告情報が関連付けられて初めて, 「送出状態情報」が送出状態変更部によって設定されることが記載されている。これは,識別情報と広告情報が関連付けられておらず,単に関連付けられる可能性があるだけの状態では,識別情報が送出可能な状態でないことを前提とするものである。 また,本件明細書の図10では,(c)管理IDとの関連付け状態」が「N」の 「場合(関連付けが解除されている場合),識別情報は送出状態が「0」(送出不能)であることが記載されている。この記載も,識別情報と広告情報が関連付けられておらず,単にその可能性があるだけの状態では,当該識別情報は「送出可能な状態」ではないことを示している。 したがって,広告情報を割り当て得る」 「 状態と「当該電話番号が送出可能である」状態は同義ではないことになる。 このように, 「広告情報に割り当て得る」状態は「送出可能な状態」ではないにかかわらず,本件審決は, 1 発明が実際に 甲 「割り当てられている」状態ですらない,「広告情報に同一の電話番号が割り当て得る」状態であれば,送出可能であると結論しており,その判断に誤りがある。 ウ 被告は,甲1発明では,顧客が特定の広告を見る直前に,当該広告に電話番号が割り当てられ(「ジャスト・イン・タイム」方式),当該番号が送出,表示されるから,当該方式では,広告に電話番号が割り当て得ることと,送出可能であることは同義と解すべきであると主張するが,「広告情報に同一の電話番号が割り当て得る(関連付け得る)」状態では,その可能性があるだけで,識別情報は広告情報と実際に関連付けられていないから,そのような状態は「送出可能な状態」ではない。 (3) 本件審決は,甲1の[0078][0086]及び[0098]の記載か ,ら,広告に「ジャスト・イン・タイム方式」で割り当てられたプール内にある電話番号は,表示されてから所定期間の間「送信可能状態」が継続していると判断した。 しかし,甲1の[0098]は,表示後,番号プールに戻った電話番号を再利用する際のステップに関する段落であり,当該電話番号は割り当てが解除され,番号プールに戻っている状態にある。これを本件発明3の構成要件3Fと対比すると,甲1の[0098]の「所定期間」は,電話番号の送出(実際には表示)から「一定期間」 (構成要件3F)が経過し,送出不可能な状態にある期間に含まれる期間であり,「一定期間」(構成要件3F)とは全く別の期間であるから,甲1の[0098]の「所定期間」は「一定期間」(構成要件3F)に該当しない。 また,甲1発明の[0086]の「所定期間,例えば30分以内」については,甲1において,「所定期間,例えば30分以内」[0086] ( )が満了した場合,第1のパートナーにおいて当該識別情報が「送出不可能」になることの記載や示唆はない。他方,本件発明3では,「一定期間」(構成要件3F)が満了すると,識別情報は送出可能な状態から送出不可能な状態に変化する。 したがって,本件審決の述べる「所定期間」は,本件発明の「一定期間」 (構成要件3F)とは異なるものであり,これを混同する本件審決の認定は前提において誤っている。 (4) 被告は,固有の電話番号が表示されてから一定期間,当該番号が送出不可能であるとすると,当該期間,同じ要求パートナー,同じコンテキストでも異なる番号が表示されることになり,その場合には必要とされる架電番号の総数が多くなり,甲1発明の課題を解決できないと主張する。 しかし,表示されてから一定期間,電話番号が送出不可能であったとしても,当該期間,同じ要求パートナーや同じコンテキストについて同じ番号を表示することは可能である。 下記の図は,ユーザAが特定のウェブサーバにアクセスし,電話番号が「コンピュータ」(構成要件3B)から「ウェブサーバ」(構成要件3F)に一度送出されると,その後の「一定期間」の進行中, 「コンピュータ」から再度送出されることなく,既に(ユーザAの要求により)識別情報が送出されたウェブページに当該識別情報が表示され続ける,という構成を図示したものである。 この構成では,一定期間, 「コンピュータ」から電話番号は送出されない。しかし,すでに送出された電話番号は「ウェブサーバ」に表示され続けられることになり,例えばユーザAが当該ウェブサーバに再度アクセスする場合だけでなく,ユーザBやユーザCが当該ウェブページにアクセスして電話番号を表示する場合も,既に識別情報が送出 表示された状態のウェブページを表示する構成とすることができる。 ・この構成においては,利用者BやCが電話番号を表示する場合,その度ごとに,当該ウェブページに表示される「一定期間」がさらに所定期間,延長される構成とすることができる。 甲1発明でも上記の構成を採用することが可能であり,表示されてから一定期間,電話番号が送出不可能でも,当該期間,同じ要求パートナーや同じコンテキストに同じ番号を表示することができるから,被告の主張は前提において誤っている。 また,被告の主張するように,表示されてから一定期間,当該番号が送出不可能である場合に,当該期間,同じ要求パートナーや同じコンテキストで同じ番号が表示されないとすると,必要とされる架電番号の総数は若干多くなる。しかし,その増加数は,当該期間中に「同じ要求パートナー,同じコンテキストについて」電話番号が要求される回数と同数である。一定期間の長さなどを適宜調整すれば,上記回数は相当程度に少ない頻度に調整が可能であり,そのように調整すれば必要とする電話番号の総数を減らすという甲1発明の課題は十分解決可能である。 (5) 以上のとおり,甲1には,「一定期間」の進行中,利用者(ユーザ)がウェブページにアクセスしたときに,情報管理サーバから広告提供サーバに向けて,その都度識別情報が送出されるかどうかに関する記載はなく,当該技術事項が開示されているに等しいと言えるだけの記載も存在しない。したがって,甲1発明には(ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから一定期間において)識別情報が「送出可能な状態」にあることについての開示はないのであるから,この点を相違点として認定していない本件審決の判断には誤りがある。 |
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被告の主張
1 取消事由1(「一定期間」の始期に関する取消事由)について (1)ア 「表示(display)」の用語は,対象情報(情報,文字,又は画像等)をコンピュータの画面に映す,又は見せるという意味に限られることはない。甲1の出願時点において,対象情報を保有する装置等(サーバやシステム側)と,対象情報を表示する装置等(クライアント側)とが異なる場合,サーバやシステム側が,対象情報をクライアント側に送信し,クライアント側に対象情報を表示するという用いられ方が一般的に行われている(乙2〜4)。 また,甲1の[0089],[0090],[0092]には,サーバやシステム側が,対象情報をクライアント側の画面に映す,又は見せることを意味するものとして,「表示(display)」という用語が用いられている。 以上によると,本件審決において,甲1の「表示」について,システムが固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信する処理(構成要件(b)の処理)と,検索エンジンが当該広告を表示する処理(構成要件(c)の処理)とを一連の処理と認定する解釈は,サーバやシステム側が,対象情報をクライアント側に送信し,クライアント側に対象情報を表示する,という「表示」の一般的な意味及び甲1における「表示(display)」の用法に合致するものであるから,本件審決の「表示(display)」の認定に誤りはない。 イ 原告は,米国の特許弁護士の意見書(甲30)等に基づき,甲1において用いられる「表示(display)」の意味を,「コンピュータの画面に情報を見せる」という意味であると主張している。 しかし,前記アのとおり,甲1における「表示」は,システム側がクライアント側に対象情報(電話番号)を表示するという意味でも一般的に用いられている。 したがって,本件審決の認定は, 「表示(display)」の一般的意味と一致するものであるから,本件審決における理由付け及び認定に誤りはない。 (2) 原告は,甲1発明の構成要件(d)についての本件審決の判断(構成要件(d)の処理は,構成要件(b)の処理において「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し」た時点を「表示されたこと」として「記録」すると解される)が誤りであると主張する。 しかし,甲1における「表示(display)」の意味についての原告の主張は上記(1)のとおり誤っており,構成要件(d)の処理における「表示」は,構成要件(c)の処理における「表示」のみを意味しているわけではない。 また,甲1には,固有の電話番号を「ジャスト・イン・タイム」方式で割り当て,広告に挿入する処理について,システム側の処理が,図22及び23に記載されており,当該図面に基づく段落([0096]〜[0106])には,システムがクライアント側から情報を取得することについては一切記載されていない。 本件審決は,これらを勘案して,上記のとおり認定したのであって,その理由付け及び認定に誤りはない。 (3) 原告は,甲1発明には「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから」という技術事項は開示されていないと主張する。 しかし,甲1発明は, 「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し」た時点をシステム側で記録するものとして理解することができるから, 「固有の番号が表示されてからある一定期間が経過した場合」の「表示されてから」とは,固有の番号が送出された時点を意味すると解釈することができる。 原告は,甲1発明における「表示」の用語の意味を限定的に解釈しており,誤った「表示」の解釈に基づく発明の構成に関する認定は失当である。 また,原告は,甲1発明がユーザの利益(表示期間の確保)を優先した技術思想の発明であるかのように主張するが,甲1には甲1発明が当該技術思想であることの記載は一切ない。 甲1発明においては, 「番号を再利用することによって,必要とされる番号の総数を更に減らす。」及び「固有の電話番号を節約及び再利用するため,必要な電話番号が少なくてすみ,コスト削減を可能にする。 という課題に対する課題解決手段の一 」つとして, 「固有の番号が表示されてからある一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を「クリーン」と見なして再利用し,番号のプールに戻」し,プール内の番号が再利用されることが記載されている [0078]。 ( ) 甲1発明において,一定期間」 「 の始期をユーザ端末等に電話番号が表示された時点としてしまうと,通信エラーなどが発生した場合,当該電話番号がユーザ端末等に表示されずに「一定期間」の始期が到来せず,その結果,当該電話番号がプールに戻らないことになり,甲1発明が解決しようとする上記の課題を解決することができなくなる。 このような課題解決の観点からすると,甲1発明において, 「一定期間」の始期がユーザ端末等に電話番号が表示された時点と解釈することはできない。 他方,甲1発明において, 「一定期間」の始期を電話番号が送出された時点とすると,通信エラーなどがあっても「一定期間」の始期は到来し,当該電話番号はプールに戻るのであるから,当該電話番号を再利用することができ,問題なく甲1に記載された課題を解決することができる。 (4) 原告は,電話番号の表示時期をコンピュータからシステム側に送信する仕組みは周知技術であり,当該周知技術を用いると,ユーザが電話番号を含むウェブページを表示した時期を容易に把握することができると主張する。 原告の主張によると,ウェブサイトを訪問するユーザの行動を調査・分析するアクセス解析技術は,サーバやシステム側からは取得できない情報(例えば,ユーザ側のコンピュータのIPアドレス等)を取得する場合に用いられる技術であるといえる。 しかし,甲1発明は, 「ある特定の広告主のある広告がある時間にある特定のウェブサイトにある特定の固有の電話番号と共に表示されたことをシステムが記録する」([0095])ことができればよいものである。広告に挿入された電話番号が表示されたことを記録する際,当該広告は,システムから送信され,ユーザの行動を伴うことなくユーザ端末側で表示されるものであり,ウェブサイトを訪問するユーザの行動を調査・分析する対象となるものではない。したがって,システムは, 「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し」た時点を記録することで,上記の「0095」に記載された構成を実現することができる。 このように,甲1において, 「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信し」た時点を記録することは,甲1全体として,システム側での処理が記載されていることにも合致する。 以上によると,甲1発明において,原告が説明するようなアクセス解析技術を用いる必要は全くない。 2 取消事由2(「送出可能な状態」に関する取消事由)について (1) 原告は,甲1の[0078][0086]及び[0098]のそれぞれに ,記載された「所定期間」と,構成要件3Fの「一定期間」とを個別に対比して解釈し,本件審決の判断に誤りがあると主張する。 しかし,本件審決は,甲1の[0078][0086]及び[0098]の三つ ,の段落の記載内容を考慮し,これらの記載から,甲1には, 「一定期間」の間「送出可能な状態」であることが事実上記載されていると認定しており,原告のように甲1の[0076][0086]及び[0098]の「所定期間」と,構成要件3F ,の「一定期間」とを個別に対比しているわけではないから,原告の主張は,本件審決の解釈を誤っている。 仮に,甲1発明において,固有の電話番号が表示されてから一定期間の間,当該電話番号が送出不可能であるとすると,一定期間の間,同じ要求パートナー又は同じコンテキストであっても,異なる電話番号が表示されることになる。この場合,表示された各電話番号は,各一定期間が経過しなければ再利用されなくなるから,必要とされる電話番号の総数が多くなってしまう。 したがって,甲1発明においては,一定期間の間,送出可能な状態とすることが妥当である。 (2) 原告は,所定期間の間, 「 広告情報に同一の電話番号が割り当て得ること」と, 「所定期間の間,当該電話番号が送出可能であること」とは,別の技術事項であると主張する。 しかし,甲1発明では,電話番号の割り当てについて「ジャスト・イン・タイム方式」を採用している。そして,甲1の[0079]の記載によると,甲1発明においては,顧客が特定の広告を見る直前に,当該広告に電話番号が割り当てられ,当該電話番号が送出され,当該電話番号が顧客の端末に表示されることが一連の処理として行われていると解すべきである。そうすると,広告に電話番号が割り当てられることと,当該電話番号が送出されることは同義であり, 「所定期間の間,広告情報に同一の電話番号が割り当て得ること」と, 「所定期間の間,当該電話番号が送出可能であること」とは同義であると解すべきである。 (3) 以上のとおり,甲1には,「一定期間」の間「送出可能な状態」であることが事実上記載されているといえるから,本件発明1における, 「一定期間」が終了して「送出不可能な状態」となるまで「送出可能な状態」である点は一致点となり,相違点とすることはできないのであって,本件審決の「一定期間における送出可能な状態」に関する認定に誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 本件発明の要旨について (1) 本件明細書(甲11)には次の記載がある。 【技術分野】【0001】 本発明は,情報管理方法,情報管理装置,情報管理プログラム及び架電受付装置に係り,特にペイ・パー・コール(Pay Per Call)方式において識別情報を再利用して情報資源を有効利用することのできる情報管理方法等に関する。 【背景技術】【0002】 従来より,インターネットのウェブページを利用した広告方法の一方式として,ペイ・パー・クリック(Pay per Click)方式というものが利用されている。ペイ・パー・クリック方式とは,広告代理業者が,ウェブページ上に表示された広告情報のクリック回数に応じて広告主に対して広告料を課金する方式のことをいう。 【0003】 例えば広告提供サイトのウェブページに広告主の広告情報が掲載され,そのページを閲覧した利用者が広告情報を選択(クリック)すると,広告主が管理する自社のウェブサイトへとリンクされてその広告情報に関する詳細情報を閲覧することができるようになっている。そして,その広告情報のクリック回数に応じて広告主がポータルサイトの管理者に広告料を支払うのである。 【0005】 しかし,このペイ・パー・クリック方式は,広告主が自社サイトを有していない場合には,リンク先を設定することができず広告情報に関する詳細情報を提供することもできないという問題がある。単に広告情報をクリックするのみで広告料の支払が発生するので,広告費用に対する効果として, 「利用者(顧客)との直接的なコンタクト(連絡)」を得ることもできない。 【0006】 また,利用者が何げなく広告情報をクリックした場合や意図的に繰り返しクリックした場合でも,クリック回数に応じて広告料が課金されてしまうので,広告効果と広告料との関連性が低くなってしまう場合もある。 【0007】 そこで,広告提供サイトのウェブページに広告情報とともに広告主ごとに対応付けられた電話番号を掲載し,それを見た利用者が広告主に対して電話を架けた場合に,その通話の成立に基づいて広告料の課金を発生させる方式も提案されている。 なお,この広告方法の一方式を,ペイ・パー・コール(Pay per Call)方式といい,例えば特許文献1に記載のものがある。 【0008】 しかしながら,多数の広告提供サイトに広告情報を掲載する場合に,掲載するすべての電話番号を一律に同じ電話番号にしてしまうと,利用者がどの広告提供サイトを見て電話を架けてきたのかわからない。そのため,どの広告提供サイトの広告効果が高く,どの広告提供サイトの広告効果が低いのかを把握することができないという問題がある。 【0009】 そのため,広告情報ごとに異なる電話番号を割り振って異なる広告提供サイトに掲載し,いずれの電話番号に電話が架かってきたかによって利用者がいずれの広告提供サイトを見て電話を架けてきたかを把握する方法も提案されている・・・。この方法によれば,広告提供サイトごとの広告効果を把握することができる。 【発明が解決しようとする課題】【0011】 近年では広告提供サイトも数多く存在している。例えば,広告主が10,000の広告提供サイトに自社の広告情報を掲載する場合に,これらのサイトごとに異なる電話番号を割り当てて掲載する場合には10,000番号という膨大な数の電話番号を準備する必要がある。 【0012】 更に,1つの広告提供サイト内に複数の商材(商品やサービス等の広告の対象物。)の広告情報を掲載する場合もある。仮に,広告主が1つの広告提供サイト内に10,000種類の商材の広告情報を掲載し,各々の商材について各々異なる電話番号を割り当てるとすると,10,000サイト×10,000商材で100,000,000番号の電話番号を準備する必要がある。 【0013】 このように,数多くの広告提供サイト及び商材ごとに異なる電話番号を割り当てるには,桁数の多い電話番号とする必要がある。しかし電話番号の桁数が増えると,電話を架ける利用者の架け間違いが増えたり,煩わしさから架電を断念する利用者が増えたりしてしまい,広告効果の減退に繋がってしまう。架電受付システム側の仕様により,広告情報に対して割当て可能な電話番号桁数に制約があり,むやみに桁数を増加させることができない場合もある。 【0014】 また,広告主が広告情報を掲載する広告提供サイトの数や取り扱う商材の種類は変動することがあるため,広告主ごとに(又は広告提供サイトごとに)余裕を見て多めの電話番号数を確保しておく必要がある。そうすると,電話番号の桁数を例え多くしてもその電話番号資源がすぐに枯渇してしまい,更にどんどん電話番号の桁数を増やして広告主ごとの電話番号数の確保に対応しなければならない。 【0015】 本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので,ペイ・パー・コール(Pay Per Call)方式における電話番号を指標する識別情報を広告情報ごとに動的に割り当てて,識別情報の再利用を可能とすることにより,識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図ることのできる情報管理方法,情報管理装置,情報管理プログラム及び架電受付装置を提供することを例示的課題とする。 【課題を解決するための手段】【0016】 上記の課題を解決するために,本発明の例示的側面としての情報管理方法は,ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先を識別する識別情報を管理するための情報管理方法であって,第1の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,ウェブページを構築するウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップと,送出不可能な状態とされた識別情報を,第2の架電先に架電接続可能な状態へと変化させるステップと,第2の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,ウェブサーバ又は他のウェブサーバに向けて送出可能な状態へと変化させるステップと,を有する。 【0017】 第1の架電先に架電接続可能とされた識別情報を,ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させた上で第2の架電先に架電接続可能とし,ウェブサーバ又は他のウェブサーバへと送出可能とするので,1つの識別情報に対して動的に異なる架電先を接続可能とすることができる。したがって,識別情報の有効活用及び枯渇防止に寄与することができる。 【0018】 ここで, 「ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され」とは,ウェブページ上に文字情報として明示的に識別情報が表示される場合を含む。また,ウェブページ上に明示的に表示されないが,そのウェブページのデータに内部的に関連付けられており,ウェブページに対する何らかの操作に基づき明示的に提供可能であったり,その識別情報に関連付けられた架電先へと架電可能であったりする状態を含む。 【0019】 識別情報とは,架電先に関連付けられることによりその架電先を識別する情報であって,例えば複数桁の番号を含んで構成される。また,識別情報は,例えば広告情報にも関連付けられており,広告情報ごとに異なる識別情報が割り当てられるようになっていてもよい。 【0020】 識別情報がウェブサーバに向けて送出可能な状態とは,例えば,利用者がウェブページにアクセスしたときに,広告情報に関連付けられた識別情報がウェブサーバへと送信されてそのウェブページ上に表示され得る状態をいう。「識別情報が第1の架電先に架電接続可能な状態」とは,識別情報に基づく架電が第1の架電先に接続され得る状態をいう。 【0021】 識別情報をウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させるステップが,第1の所定条件の成立に基づき実行されてもよい。 【0022】 第1の所定条件の成立は,例えば一定期間の満了,一定回数の満了を含む。例えば,一定期間満了に基づき,識別情報をウェブサーバに向けて送出不可能とすれば,一定期間のみ識別情報をウェブサーバにおいて提供可能とし,その後ウェブサーバにおいて提供不可能とすることができる。 【0023】 そして,提供不可能とした識別情報を,今度は第1の架電先とは異なる第2の架電先に架電接続可能な状態にしてウェブサーバに向けて提供することができるので,1つの識別情報を時期的にずらして様々な架電先へと関連付けることができ,識別情報を有効に再利用することができる。 【0024】 一方,識別情報と広告情報とが関連付けられている場合には,1つの広告情報に関連付ける識別情報を時期的にずらして様々に変えることができる。したがって,利用者からの架電がいずれの識別情報に基づき行われたかを把握することにより,その広告情報が高い広告効果を発揮している時期や時間帯を把握することができる。 【0026】 第2の所定条件の成立は,例えばその所定期間内の識別情報に基づく架電の有無を含む。すなわち,所定期間内に,識別情報に基づく架電が有った場合に所定期間を延長したり,架電が無かった場合に所定期間を短縮したりすることができる。これにより,ウェブページに提供されなくなった識別情報であっても,依然その識別情報に関連付けられた広告情報の広告効果が残存して時々その識別情報に基づく架電が行われるような場合に,その架電を適正に第1の架電先に接続可能な期間(所定期間)を延長することができる。 【0027】 なお,ここで「架電接続不可能な状態」とは,その識別情報に基づく架電を架電先に非接続とすることをいう。すなわち,識別情報に基づく架電があっても,その架電を架電先に着信させず,話中処理したり,呼出し状態のまま保留したり,接続先が無い旨の応答アナウンス処理をしたりすることをいう。 【0028】 識別情報を,第1の架電先に架電接続不可能な状態へと変化させるステップの実行から第2の架電先に架電接続可能な状態へと変化させるステップの実行までの接続不可能期間を,第3の所定条件の成立に基づき延長又は短縮してもよい。 【0029】 第3の所定条件の成立は,例えばその接続不可能期間内の識別情報に基づく架電の有無を含む。すなわち,接続不可能期間内に,識別情報に基づく架電が有った場合に接続不可能期間を延長したり,架電が無かった場合に接続不可能期間を短縮したりすることができる。これにより,ウェブページに提供されなくなってから長期間経過した識別情報であっても,依然その識別情報に関連付けられた広告情報の広告効果が残存してその識別情報に基づく架電が時々行われるような場合に,しばらくは新たな第2の架電先への接続を行うことなく,その架電を非接続とする期間を延長することができる。 【0030】 本発明の他の例示的側面としての情報管理装置は,ウェブページにおいて明示的又は黙示的に提供され,かつ架電先を識別する識別情報を管理するための情報管理装置であって,第1の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,ウェブページを構築するウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させ,送出不可能な状態とされた識別情報を,第2の架電先に架電接続可能な状態へと変化させ,第2の架電先に架電接続可能な状態とされた識別情報を,ウェブサーバ又は他のウェブサーバに向けて送出可能な状態へと変化させる。 【0031】 第1の架電先に架電接続可能とされた識別情報を,ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させた上で第2の架電先に架電接続可能とし,ウェブサーバ又は他のウェブサーバへと送出可能とするので,1つの識別情報に対して動的に異なる架電先を接続可能とすることができる。したがって,識別情報の有効活用及び枯渇防止に寄与することができる。 【0044】 第1の架電先に架電接続可能とされた識別情報を,ウェブサーバに向けて送出可能な状態から送出不可能な状態へと変化させた上で第2の架電先に架電接続可能とし,ウェブサーバ又は他のウェブサーバへと送出可能とするので,1つの識別情報に対して動的に異なる架電先を接続可能とすることができる。したがって,識別情報の有効活用及び枯渇防止に寄与することができる。 【0045】 本発明の更に他の例示的側面としての情報管理プログラムは,ウェブページにおいて提供される広告情報を識別するための管理情報を,ウェブページを構築するウェブサーバから取得するための管理情報取得部,架電先を識別するための識別情報と取得した管理情報とが関連付けられているか否かを判別するための第1判別部,識別情報がウェブサーバに向けて提供可能な状態であるか否かを判別するための第2判別部,及び,識別情報と管理情報とが関連付けられており,かつ提供可能な状態である場合に,識別情報をウェブサー バに向けて送出する識別情報送出部としてコンピュータを機能させる。 【0046】 管理情報と識別情報とが関連付けられている場合であって,その識別情報がウェブサーバに提供可能である場合に識別情報送出部が識別情報を送出するので,管理情報と識別情報とが関連付けられていない場合や,関連付けられている識別情報が提供不可能な状態の場合に,識別情報をウェブサーバに向けて送出することがない。 したがって,識別情報の状態に応じて適正にウェブサーバへの送出/非送出を管理することができる。 【発明の効果】【0049】 本発明によれば,ペイ・パー・コール(Pay Per Call)方式における電話番号を指標し,架電先を識別するための識別情報を広告情報ごとに動的に割り当てて,識別情報の再利用を可能とすることにより,識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図ることができる。 【0050】 ウェブページへの提供期間や提供回数に応じて動的に識別情報を変化させることにより,広告効果を時期や時間帯に基づき把握することもできる。また,ウェブページへの提供が終了した識別情報に基づく架電の有無の程度に応じて架電先への接続期間や非接続期間を延長/短縮することにより,広告効果の確実な獲得や利用者の混乱防止,識別情報の資源の一層の有効活用を実現することができる。 【発明を実施するための最良の形態】【0051】[実施の形態1] 以下,本発明の実施の形態1に係る情報管理方法を用いた広告情報管理システムSについて図面を用いて説明する。なお,本明細書において,サーバはサーバコンピュータを意味し,サイト(ウェブサイト,インターネットサイトも略同義。)は,サーバ内に仮想的に構築されるウェブページの集合体を意味する。ウェブページとは,URLによって特定することができ,文字情報や画像情報等の種々の情報が掲載される仮想的な情報提供媒体である。ここにおいて, 「ウェブサイトに掲載」することを「ウェブページに掲載」することと同義に用い, 「ウェブサイトを閲覧」することを「ウェブページを閲覧」することと同義に用いる。 【0052】 図1は,この広告情報管理システムSの全体構成を示す概略構成図である。この広告情報管理システムSは,情報管理サーバ(情報管理装置)1,架電受付サーバ(架電受付装置)2を有して大略構成され,その情報管理サーバ1は,インターネットWを介して広告主サーバ3,事業者サーバ4,広告提供サーバ5a〜5c,利用者コンピュータ6と情報送受信可能に接続されている。広告主と利用者とは各々広告主電話器7,利用者電話器8を有しており,それらは電話回線網Nを介して架電受付サーバ2に接続されている。 【0053】 広告主サーバ3は,広告主Aが管理するサーバコンピュータであり,内部に第2のインターネットサイトとしての広告主のウェブサイト(広告主サイト)3aが構築されている。この広告主サイト3aは,後述する広告情報9a〜9cにリンクされており,利用者Uが広告情報9a〜9cをクリックすることによって利用者コンピュータ6に広告主サイト3aの内容(広告情報の詳細情報。 が表示されるように )なっている。また,広告主Aは広告主サーバ3を介して事業者サーバ4に向けてバナー画像9を送出することができるようになっている。 【0054】 このバナー画像9は,例えば利用者の注意を惹き付けるように種々の色彩や模様が付加された装飾的広告画像であったり,広告主Aの広告内容を簡単に説明する説明的広告画像である。 【0055】 事業者サーバ4は,広告事業者が管理するサーバコンピュータであり,インターネットWを介して複数の広告提供サーバ5a〜5cに接続され,これらの広告提供サーバ5a〜5cを統括管理するためのものである。事業者サーバ4は,広告主サーバ3からバナー画像9を受け取る機能を有している。そして,そのバナー画像9を情報管理サーバ1に向けて送出し,Flash等のスクリプト(指標情報)21と合成された合成後のバナー画像9を情報管理サーバ1から受け取る。更に,その合成後のバナー画像9を,複数の広告提供サーバ5a〜5cに向けて広告情報9a〜9cとして送出する機能も有する。 【0056】 事業者サーバ4は内部に図示しない記憶装置を有している。その記憶装置内には,図2に示すように管理IDデータベース4aが構築されている。この管理IDデータベース4aは,管理ID(管理情報)14とバナー画像9とが関連付けられて構築されている。 【0057】 この管理ID14は,広告情報9a〜9cごとの課金管理を行うのに用いる情報であって,広告情報9a〜9cを識別する情報である。管理IDは,例えばMID(広告主ID)14p,DID(広告事業者ID)14q,PID(商材ID)14r,SID(広告提供サイトID)14sを含んで構成されている。すなわち,管理ID14によって,いずれの広告事業者が管理するいずれの広告提供サイトに掲載されたいずれの商材の広告情報であるかを識別することができるようになっている。更に,管理ID14がUID(個人ページID)14tを含む場合は,管理IDによって,その広告情報がいずれの広告提供サイトの管理者(広告提供者)との契約に基づきいずれの個人ページ(又は個人ブログ等。 に掲載されたものである )かを識別することができるようになっている。したがって,広告情報9a〜9cには,各々管理ID14a〜14cが関連付けられている。 【0058】 広告提供サーバ(ウェブサーバ)5a〜5cは,それぞれ広告提供者が管理するサーバコンピュータであり,各々内部に第1のインターネットサイトとしての広告提供サイト12a〜12cが構築されている。図3は,広告提供サイト12aのウェブページの表示画面例である。 【0060】 広告情報9aは,バナー画像9とスクリプト21とが合成されて構成されており,利用者Uの注意を惹き付けつつ利用者Uに対してスクリプト21の機能により識別情報11aを表示する機能を有している。その識別情報11aは,架電先を識別するための情報であって,例えば前半7桁のサーバ識別番号と後半10桁の広告識別番号とを有する合計17桁の電話番号情報「0125423-0011002553」である。利用者Uは,この識別情報11aに基づいて架電を行うことにより,この広告情報9aの広告主Aと電話連絡(通話)を行うことができるようになっている。 【0061】 広告提供サイト12aにおける識別情報11aの提供方法としては,いくつかの方法が適用可能である。例えば,図3に示すように,バナー画像9と共に識別情報11aを広告提供サイト12a上に掲載して表示する方法もある。例えば, (a) 図4に示すように,通常状態,すなわちバナー画像9上にマウスポインタMがない場合にはバナー画像9のみが表示されて識別情報11aが表示されず,図4(b)に示すように,バナー画像9上にマウスポインタMを移動させた場合に識別情報11aがバルーン表示される方法もある。例えば,図5(a)に示すように,通常状態,すなわちバナー画像9上をマウスでクリックする前はバナー画像9のみが表示されて識別情報11aが表示されず,図5(b)に示すように,バナー画像9をマウスでクリックすると別ウィンドウが表示されてそのウィンドウ内に識別情報11aが表示される方法もある。 【0062】 広告提供サイト12b,12cにも同様に広告情報9b,9cが掲載される。その広告情報9b,9c中のバナー画像9は広告情報9aのものと共通であるが,スクリプト21の機能により表示される識別情報11b,11cは各々の番号が異なっている。すなわち,識別情報11bは,0125423-0011002554」 「であり,識別情報11cは, 「0125423-0011002555」である。したがって,利用者Uがどの番号に電話を架けたかを把握すれば,どの広告情報9a〜9cの広告効果があったかを把握することができるようになっている。 【0065】 利用者コンピュータ6は,広告提供サイト12a〜12cを閲覧する利用者Uが管理,使用するコンピュータである。利用者Uが利用者コンピュータ6によりインターネットWを介して広告提供サイト12aを閲覧すると,広告提供サイト12a内の様々な情報と共に広告情報9aが利用者コンピュータ6の表示画面に表示されるようになっている。 【0066】 そして,利用者Uが広告情報9aに興味を持ち,表示された「0125423-0011002553」の番号に自宅の利用者電話器8から架電を行うと,架電受付サーバ2によって受け付けられ,広告主Aと通話を行うことができるようになっている。 【0067】 情報管理サーバ1は,この広告情報管理システムSの主要部を構成するサーバコンピュータであり,インターネットWを介して事業者サーバ4に接続されている。 情報管理サーバ1は,事業者サーバ4から受け取ったバナー画像9にスクリプト21を合成して,合成後のバナー画像9を事業者サーバ4に向けて返送する動作を実行する。更に,広告提供サーバ5a〜5cから管理ID14a〜14cの情報と共に識別情報11a〜11cの要求信号を取得する動作も実行する。その要求信号に基づき,管理ID14a〜14cに対応する広告提供サーバ5a〜5cに向けて,識別情報11a〜11cをその状態に基づいて動的に割り振って送出する動作も実行する。更に,後述する架電受付サーバ2から識別情報11a〜11cを受け取ると,その識別情報11a〜11cの状態を指標する情報を架電受付サーバ2に向けて送出する動作も実行する。 【0068】 図6は,この情報管理サーバ1の内部構成の概略を示すブロック図である。情報管理サーバ1は,内部に演算処理装置(CPU)15,記憶装置16を有している。 このCPU15がコンピュータの主要部として上記の各動作を実行する。 【0069】 記憶装置16内には,情報管理プログラムP,情報管理データベースD,識別情報データベースEが格納されている。上記の各動作は,この情報管理プログラムPの指令に基づいてCPU15が実行する。すなわち,情報管理プログラムPにより,CPU15は,スクリプト合成部15a,管理ID取得部(管理情報取得部)15b,第1判別部15c,第2判別部15d,識別情報関連付け実行部15e,識別情報送出部15f,送出状態変更部15g,接続状態変更部15h,架電受付情報受信部15j,期間変更部15kとして機能する。以下,各部の機能及びその動作について図7を参照しつつ説明する。 【0070】 スクリプト合成部15aは,事業者サーバ4から受け取ったバナー画像9に対して所定のスクリプト21を合成し,事業者サーバ4に向けて返送する機能を有する。 そのスクリプト21が合成された合成後のバナー画像9は,広告情報9a〜9cとして事業者サーバ4から複数の広告提供サーバ5a〜5cに向けて送信される。 【0071】 スクリプト21は,例えばFlash等により構成され,識別情報11を要求する要求信号を情報管理サーバ1に向けて送出し,情報管理サーバ1から受け取った識別情報11をウェブページ内に表示する機能を有する動作モジュールである。すなわち,広告提供サイト12a〜12cのウェブページが利用者Uによって閲覧されると,ウェブページに掲載された広告情報9a〜9c内のスクリプト21の機能に基づき,情報管理サーバ1から受け取った識別情報11a〜11cがそのウェブページ内に表示されるようになっている。 【0072】 管理ID取得部15bは,広告提供サーバ5a〜5cから送出される管理ID14a〜14cを取得する機能を有する。例えば,利用者Uが利用者コンピュータ6を用いて広告提供サイト12aにアクセスすると,広告情報9a内のスクリプト21の機能に基づき,広告提供サーバ5aから情報管理サーバ1に向けて識別情報の要求信号が送出される。その際,広告提供サーバ5aからは要求信号と共に広告情報9aの管理ID14aも情報管理サーバ1に向けて送出され,その管理ID14aが管理ID取得部15bによって取得される。管理ID取得部15bは,取得した管理ID14の情報を第1判別部15c及び第2判別部15dに向けて送出する。 【0073】 第1判別部15cは,取得した管理ID14aといずれかの識別情報とが関連付けられているか否かを判別する機能を有する。この判別機能は,情報管理データベースDを用いることにより行われるので,以下,情報管理データベースDについて説明する。 【0074】 図8は,情報管理データベースDの内部構造の概略を示すデータ構造図である。 情報管理データベースDは,管理ID14,識別情報11,状態情報17が相互に関連付けられて構築されている。この情報管理データベースDにおいて,例えば管理ID14aに対応して識別情報11aが関連付けられている場合,管理ID14aが指標する架電先(すなわち,広告主Aの広告主電話器7。)と識別情報11aとが関連付けられていることを意味する。 【0075】 ここで,状態情報17は,識別情報11の種々の状態を指標する情報であり,例えば,送出状態情報17a,接続状態情報17bを有している。送出状態情報17aが1の場合,広告提供サーバ5a〜5cに向けてその識別情報11を送出することが可能な状態であることを意味している。送出状態情報17aが0の場合,広告提供サーバ5a〜5cに向けてその識別情報11を送出することが不可能な状態であることを意味している。 【0076】 また,接続状態情報17bが1の場合,識別情報11に基づく架電が,その識別情報11に関連付けられている管理ID14が指標する架電先に接続可能な状態であることを意味している。接続状態情報17bが0の場合,識別情報11に基づく架電が,その識別情報11に関連付けられている管理ID14が指標する架電先に接続不可能な状態であることを意味している。例えば,管理ID14aに対応して識別情報11aが関連付けられている場合であってその接続状態情報17bが1の場合,その識別情報11aに基づく架電が管理ID14aが指標する広告主Aの広告主電話器7へと接続されるようになっている。 【0077】 なお,情報管理データベースDにおいては,識別情報11の送出状態情報17aが1である場合には,接続状態情報17bは常に1であり,送出状態情報17aが0の場合には,接続状態情報17bが1の場合と0の場合とがある。また,1つの管理ID14に対して複数の識別情報11が関連付けられる場合があるが,そのうち送出状態情報17aが1である識別情報11は常に1つであり,他の識別情報11の送出状態情報17aは0である。 【0078】 記憶装置16内の識別情報データベースE内には,図9に示すように,予め複数の識別情報11がいずれの管理ID14とも架電先とも関連付けられていない状態で格納されている。その中の特定の識別情報11aが特定の管理ID14aと識別情報関連付け実行部15eによって関連付けられると,情報管理データベースD内において管理ID14aに関連付けられて識別情報11aが設定され,その識別情報11aに対して送出状態情報17a及び接続状態情報17bが送出状態変更部15g及び接続状態変更部15hによって設定されるようになっている。そして,管理ID14aと識別情報11aとの関連付けが識別情報関連付け実行部15eによって解除されると,情報管理データベースD内において管理ID14aに関連付けられた識別情報11aが削除されるようになっている。そして,情報管理データベースD内からすべての識別情報11aが削除されると,識別情報11aが再び識別情報データベースE内へと格納されるようになっている。その後,今度は別の管理ID14bと識別情報11aとが関連付けられると,情報管理データベースD内の管理ID14bに対応する欄に識別情報11aが設定されるようになっている。 【0080】 第1判別部15cは,情報管理データベースDを参照することにより,管理情報ID14aと関連付けされている識別情報11の有無を判別し,関連付けられた識別情報11(本実施の形態においては識別情報11a。)が有る場合には,「識別情報有り」を指標する情報を第2判別部15dに向けて送出する。管理ID14aに関連付けられている識別情報11が無い場合には, 「識別情報無し」を指標する情報を識別情報関連付け実行部15eに向けて送出する。 【0081】 第2判別部15dは,識別情報11がウェブサーバに向けて提供可能な状態であるか否かを判別する機能を有する。すなわち,第1判別部15cから「識別情報有り」を指標する情報を受け取った場合に,管理ID14aに関連付けられた識別情報11aの送出状態情報17aを情報管理データベースDを参照して確認する。そして識別情報11aの送出状態情報17aが1,すなわち送出可能状態を指標していれば,「送出可能」を指標する情報を識別情報送出部15fに向けて送出する。 【0082】 一方,管理ID14aに関連付けられたすべての識別情報11の送出状態情報17aが0である場合, 「送出不可能」を指標する情報を識別情報関連付け実行部15eに向けて送出する。 【0083】 識別情報関連付け実行部15eは,識別情報11と管理ID14とが関連付けられていない場合に,識別情報11と管理ID14との関連付けを行う機能を有する。 すなわち,第1判別部15cから「識別情報無し」を指標する情報を受け取ると,識別情報データベースEからいずれの管理ID14とも架電先とも関連付けられていない新たな識別情報11aを抽出し,管理ID14aとの関連付けを行う。 【0084】 なお,識別情報関連付け実行部15eにより管理ID14aに新たな識別情報11aが関連付けられると,送出状態変更部15g及び接続状態変更部15hにより,その識別情報11aの送出状態情報17a及び接続状態情報17bが共に1に設定される。そして,識別情報関連付け実行部15eは,識別情報送出部15fに向けて「識別情報有り」及び「送出可能」を指標する情報を送出する。 【0085】 また,識別情報関連付け実行部15eは,識別情報11が広告提供サーバ5a〜5cに向けて提供不可能な状態である場合に,その識別情報11とは異なる他の識別情報11eと管理ID14との関連付けを行う機能も有する。すなわち,第2判別部15dから「送出不可能」を指標する情報を受け取ると,識別情報データベースEからいずれの管理ID14とも架電先とも関連付けられておらず,管理ID14aに関連付けられた識別情報11aとは異なる他の識別情報11eを抽出し,管理ID14aとの関連付けを行う。 【0086】 なお,識別情報関連付け実行部15eにより管理ID14aに他の識別情報11eが関連付けられると,送出状態変更部15g及び接続状態変更部15hにより,他の識別情報11eの送出状態情報17a及び接続状態情報17bが共に1に設定される。そして,識別情報関連付け実行部15eは,識別情報送出部15fに向けて「識別情報有り」及び「送出可能」を指標する情報を送出する。 【0087】 識別情報送出部15fは,識別情報11と管理ID14とが関連付けられており,かつ提供可能な状態である場合に,識別情報11を広告提供サーバ5a〜5cに向けて送出する機能を有する。すなわち,第2判別部15dから「送出可能」を指標する情報を受け取った場合,又は識別情報関連付け実行部15eから「識別情報有り」及び「送出可能」を指標する情報を受け取った場合には,管理ID14aが指標する広告提供サーバ5aに向けて管理ID14aに関連付けられかつ送出可能な識別情報11を送出する。 【0088】 CPU15によるこれら一連の機能及び動作により,利用者Uが広告提供サイト12aにアクセスした場合に,その時点で管理ID14aに関連付けられ,かつ送出可能とされている識別情報が広告提供サーバ5aに向けて動的に送出され,広告提供サイト12aに表示されるようになっている。 【0089】 なお,本実施の形態1においては,第1判別部15cが「識別情報無し」を判別した場合も,第2判別部15dが「送出不可能」を判別した場合も,識別情報関連付け実行部15eが管理ID14aに新たな識別情報11を関連付けるように構成している。しかしながら,第1判別部15cによる「識別情報無し」を指標する情報や,第2判別部15dによる「送出不可能」を指標する情報が識別情報送出部15fに向けて送出されるように構成し,それらの場合には,広告提供サーバ5aへの識別情報の送出を行わないようにすることも可能である。 【0090】 次に,送出状態変更部15g,接続状態変更部15h,架電受付情報受信部15j,期間変更部15kの各機能について,図10の状態説明図を用いて説明する。 図10は,識別情報11aの各状態を説明するための状態説明図である。 【0091】 図中(a)で示す送出状態情報17aは,上述したように広告提供サーバ5aからの要求信号があった場合に,その広告提供サーバ5aに向けて識別情報11aを送出可能か否かを指標する情報である。この送出状態情報17aの送出可能を指標する1の状態と送出不可能を指標する0の状態とは,送出状態変更部15gの機能に基づき設定及び変更される。 【0092】 (b)で示す接続状態情報17bは,識別情報11aに基づく架電を架電先に架電接続可能か否かを指標する情報である。この接続状態情報17bの接続可能を指標する1の状態と接続不可能を指標する0の状態とは,接続状態変更部15hの機能に基づき設定及び変更される。ここで,架電先とは,識別情報11aが関連付けられている管理ID14aが指標する広告主の連絡先(広告主電話器7)である。 すなわち,識別情報11aが管理ID14aに関連付けされている場合は,その架電先は広告主電話器7(第1の架電先)であるが,識別情報11aが他の新たな管理ID14dに関連付けされた場合は,その架電先は広告主電話器7とは異なる他の架電先(第2の架電先)となる。 【0093】 (c)で示す管理ID14との関連付け状態は,識別情報11aが管理IDと関連付けられているか否かを指標する状態である。すなわち「Y」の場合は,識別情報11aがいずれかの管理ID14と関連付けられている状態であり,識別情報11aが識別情報データベースE内になく,情報管理データベースD内にある状態である。逆に, 「N」の場合は,識別情報11aがいずれの管理ID14とも関連付けられていない状態であり,識別情報11aが識別情報データベースE内にあり,情報管理データベースD内にない状態である。 【0094】 (d)で示す抽出信号は,識別情報関連付け実行部15eによる識別情報データベースE内からの抽出動作を表す信号である。この抽出信号が「ON」になったとき,識別情報データベースE内から識別情報11aが抽出されて管理ID14との関連付けが行われ,その識別情報11aの送出状態情報17a及び接続状態情報17bが共に1に設定される。 【0095】 例えば,図中の公開期間T1において広告提供サイト12aに利用者Uがアクセスした場合,識別情報11aは管理ID14aに関連付けられており,送出可能かつ接続可能であるので,広告提供サイト12aに識別情報11aが表示される。そして,その識別情報11aに基づく架電が広告主電話器7へと接続される。 【0096】 しかし,図中の非公開期間(所定期間)T2において広告提供サイト12aに利用者Uがアクセスした場合,識別情報11aは管理ID14aに関連付けられているが,送出不可能な状態であるので,識別情報11aは広告提供サーバ5aに向けて送出されない。このとき,識別情報関連付け実行部15eによって抽出された他の識別情報11eが広告提供サーバ5aに向けて送出される。この非公開期間T2においては,識別情報11aは送出不可能な状態であるが,接続可能状態であるので,識別情報11aに基づく架電が行われた場合には,その架電は第1の架電先としての広告主電話器7へと接続される。なお,この公開期間T1と非公開期間T2とを合わせて接続可能期間T12と呼ぶこととする。 【0097】 図中の無効期間T3において,広告提供サイト12aに利用者Uがアクセスした場合,識別情報11aは管理ID14aに関連付けられているが,送出不可能かつ接続不可能な状態である。したがって,識別情報11aは広告提供サーバ5aに向けて送出されず,識別情報11aに基づく架電は,接続不可能(話中,呼出し状態,非接続アナウンス等。)とされる。なお,広告提供サイト12aには他の識別情報11eが表示される。 【0098】 図中の関連付け解除期間T4において,広告提供サイト12aに利用者Uがアクセスした場合も,無効期間T3と同様である。ただし,この関連付け解除期間T4においては,管理ID14aと識別情報11aとの関連付けが解除され,識別情報11aが情報管理データベースDから削除されて識別情報データベースE内へと格納されている。したがって,識別情報11aは,他の広告提供サーバからの要求信号に基づいて,いずれの管理ID14及び架電先とも関連付け可能な状態となっている。なお,無効期間T3と関連付け解除期間T4とを合わせて接続不可能期間T34と呼ぶこととする。 【0099】 なお,これらの各期間T1〜T4は任意の時間又は期間に設定することが可能である。また,特に公開期間T1等においては,時間を基準とするのでなく広告提供サーバ5aへのアクセス回数(すなわち,広告提供サーバ5aに向けての識別情報11aの送出回数。)を基準として設定することも可能である。 【0100】 この関連付け解除期間T4において,識別情報関連付け実行部15eによる識別情報11aの抽出(図中X)が実行され,新たな管理ID(新たな管理情報)14dとの関連付けが行われると,識別情報11aは新たな管理ID14dが指標する広告提供サーバへと送出され,また,識別情報11aに基づく架電は新たな管理ID14dが指標する第2の架電先へと接続されるようになる。 【0101】 架電受付情報受信部15jは,識別情報11aに基づく架電があったことを指標する架電受付情報18を架電受付サーバ2から受信する機能を有する。そして,情報管理データベースDに基づき,識別情報11aに関連付けられかつ接続可能とされている架電先の情報を架電受付サーバ2に向けて返送する。 【0102】 すなわち,情報管理データベースD内に識別情報11aが無い場合,又は識別情報11aが有ってもその接続状態情報17bが0である場合には, 「接続不可能」を指標する情報を架電受付サーバ2へと返送する。一方,情報管理データベースD内に識別情報11aが有り,かつその接続状態情報17bが1である場合は,識別情報11aに関連付けられた管理ID14aに基づき,架電先としての広告主電話器7の電話番号情報を架電受付サーバ2へと返送する。 【0103】 期間変更部15kは,識別情報11aを送出不可能な状態へと変化させてから広告主電話器7に架電接続不可能な状態へと変化させるまでの非公開期間(所定期間)T2内に,識別情報11aに基づく架電があった場合にその非公開期間T2を延長する機能を有する。すなわち,非公開期間T2内に識別情報11aに基づく架電受付情報18を架電受付情報受信部15jが受信した場合,識別情報11aに関連する広告情報9aの広告効果が残存しているとの判断のもとに,その架電を広告主電話器7へと接続可能な期間を延長する。 【0104】 例えば,非公開期間T2内の特定の時点(例えば中間時点。)において,識別情報11aに基づく架電が全く無かった場合に,非公開期間T2を短縮するように構成するのももちろん可能である。 【0105】 また,期間変更部15kは,識別情報11aを広告主電話器7に架電接続不可能な状態へと変化させてから第2の架電先に架電接続可能な状態へと変化させるまでの接続不可能期間T34内に識別情報11aに基づく架電があった場合に,接続不可能期間T34を延長する機能を有する。特に,無効期間T3内に識別情報11aに基づく架電受付情報18を架電受付情報受信部15jが受信した場合,識別情報11aを新たな架電先に関連付けるのは時期尚早であるとの判断のもとに,その架電を接続不可能とする無効期間T3を延長する。 【0106】 例えば,無効期間T3内の特定の時点(例えば中間時点。)において,識別情報11aに基づく架電が全く無かった場合に,無効期間T3を短縮するように構成するのももちろん可能である。 【図1】【図2】【図3】【図4】【図5】【図6】【図7】【図8】【図9】【図10】 (2) 上記(1)によると,本件発明3は,@インターネットのウェブページを利用した広告方法で,広告提供サイトのウェブページに広告情報とともに広告主ごとに対応付けられた電話番号を掲載し,それを見た利用者が広告主に対して電話を架けた場合に,その通話の成立に基づいて広告料の課金を発生させるというペイ・パー・コール(Pay per Call)方式における情報管理プログラムに係る発明であり 【0007】, ( ) A利用者がいずれの広告提供サイトを見て電話を架けてきたかなどを把握するために,数多くの広告提供サイトや商材ごとに異なる電話番号を掲載しようとすると,電話番号資源が枯渇するという課題を解決するため 【0 (014】,B電話番号を指標する識別情報を動的に割り当て,一定時間の経過又は )一定回数のアクセスを基準として,その提供を終了することで,識別情報の再利用を可能とし,識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図るものであると認められる(【0015】【0016】。 , ) 2 取消事由1(「一定期間」の始期に関する取消事由)について (1)ア 甲1(甲14,乙1)には,次の記載があることが認められる。 発明の分野[0002] 本発明は,架電トラッキングに関する。特に,本発明は,架電の活動を測定し,この活動に基づいて電話番号及びその広告主に請求を行うために架電をトラッキングすることに関する。 発明の要旨[0006] 一実施形態では,ペイ・パー・コールの実績型広告を提供するための方法及び装置が提供される。当該方法では,電話番号は,ジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てられ,所定期間,電話番号が表示されない又は架電されないと,そのとき当該電話番号は,割り当て解除されて,再利用される。 発明の詳細な説明[0025] 以下の説明において,本発明の完全な理解を提供するために,説明のための数多くの具体的な詳細を示す。ただし本発明は,こうした具体的な詳細がなくても実施できることは当業者には明らかであろう。他の例では,構造及びデバイスを,本発明を不明確にしないためにブロック図の形で示す。 [0027] 図1は,従来技術のペイドプレイスメント広告モデルやペイドインクルージョン広告モデルに従って,顧客と広告主がどのようにして互いに対話するかを示している。図1を参照すると,参照番号10で示す複数の顧客が,ワイドエリアネットワーク(WAN)14,例えばインターネットに通信経路12を介して結合されている。広告主16は,通信経路18を介してWAN14に結合されている。通信経路12及び18は,一実施形態において,TCP/IPプロトコルをサポートしてよい。各広告主16はウェブページ20を所有している。このウェブページは,上述したペイドプレイスメント広告モデルやペイドインクルージョン広告モデルによって,顧客10のユーザが開始したキーワード検索の結果ページに含められる。この検索は,オンラインの検索エンジン19によって実施される。ペイドプレイスメントモデル,又はペイドインクルージョンモデルに基づいて,広告主16のウェブページ20は,検索エンジン19によって集められた結果のページに含められ,検索を開始した顧客10に通信経路12を介して送られる。その結果,ウェブページ20が,検索を要求した顧客10のユーザによって選択又は閲覧することができるようになる。上述したように,広告主16が,ウェブページ20を持っていない,又はウェブの訪問者の評価を効果的に得ることのできるウェブページ20を持っていない場合,現時点では,このような広告主は,ペイドプレイスメントプログラムやペイドインクルージョンプログラムなど,実績型のマーケティングに参加することができないか,効果的に参加することができない。 [0030] 図3は,一実施形態による,図2の非ウェブベースの通信経路22を確立するための技術を示す。図3を参照すると,ブロック26で,固有の電話番号が広告主16に割り当てられる。その後,ブロック28で,広告主16に関連する広告が,広告主のために,発行又は媒体チャネル上に供給又は発行される。広告は,固有の電話番号又は固有の電話番号への参照を含む。ブロック30で,後で説明するように,この固有の電話番号への架電が監視される。ブロック32で,広告主は,後で説明するように,割り当てられた電話番号への架電活動に基づいて請求される。 [0031] 図4は,図3の方法を実行するためのシステムの機能的記載を示す。 図4を参照すると,システムは,アカウント生成・管理モジュール34,広告発行モジュール36,架電処理モジュール38,及び請求モジュール40を含む。別の実施形態では,発明から逸脱せずに,追加の,より少ない,又は異なるモジュールがシステムに含まれてもよい。 [0032] 一実施形態による,アカウント生成・管理モジュール34の構成要素を,図5により詳細に示す。図5を参照すると,アカウント生成・管理モジュール34は,ユーザインターフェースモジュール44,広告作成モジュール46,支払規定モジュール48を含むことがわかるであろう。ユーザインターフェースモジュール44は,ユーザに情報を提示し,ユーザから情報を受け取るためのロジックを含む。例えば,一実施形態において,ユーザインターフェースモジュール44は,ウェブページ,例えば図8のウェブページ112を顧客のブラウザに表示させる。 [0033] 広告作成モジュール46はテキスト作成ロジック50を含む。テキスト作成ロジック50の目的は,広告主16,又は広告主16のために働いている代理店が,最終的には広告作成モジュール46によって作成される広告用のテキストを入力できるようにすることである。本発明の理解を深めるために,本記述の残りにおいて,ここで開示される技術から恩恵を受ける広告主の例として, 「バート配管」と呼ばれる地方企業が用いられる。バート配管は,ネットワーク14に直接接続できても,できなくてもよい。バート配管がネットワーク14に直接接続できない場合は,バート配管の代表者(以下, 「バート」とする)は,図8Aのウェブページ112を閲覧するために,ネットワーク14に接続可能なコンピュータへのアクセス権を取得しなければならない。例えば,バートは,友人のコンピュータ,地域の図書館にあるコンピュータなどを使うことができる。別の実施形態において,検索オペレータ,インターネットの電話帳プロバイダ又は他のタイプの発行者が,バートに代わってこの活動を実施又は管理することができる。テキスト作成ロジック50によって,例えば「サンフランシスコのバート配管です。当社の特別サービスをご覧ください」という,描画されると広告に含められるテキストをバートは入力することができる。モジュール46は,キーワード関連付けロジック57も含む。 これによって,バートの広告に関連付けられるキーワードをバートは入力することができる。ここでのアイデアは,顧客10の1人が,バートにより入力されたキーワードの1つに合致するキーワードを用いて検索エンジン19を通じて検索を開始したとき,バートの広告が検索結果内に表示されるということである。バート配管は全国的な事業でも企業でもないので,バートの広告をある特定の地区内の顧客に表示することが必要である。したがって,モジュール46は,バートの広告への地理的位置の関連付けを構築する位置決定ロジック54を含む。一実施形態において,位置決定ロジック54は,対象としたいある特定の地理的位置,例えばサンフランシスコをバートに選択させる。その選択で,バートの広告はサンフランシスコ地域内の顧客にのみ表示されることになる。 [0034] モジュール46は,固有の電話番号を生成し,固有の電話番号が架電されるとバートの電話が鳴るように固有の電話番号をバートの実際の電話番号にマッピングし,固有の電話番号をバートの広告に関連づける電話番号自動生成ロジック56も含む。一実施形態において,自動生成される電話番号は無料通話番号でよい。一実施形態において,電話番号は,バートの実際の電話番号と同じ地域コードを有する市内番号でよい。一実施形態において,電話番号は,バートの事業用電話番号にマッピングされた独自の拡張によって修正された,認識しやすい800番でよい。例えば,一実施形態において,番号は, 「1-800-YEL-PAGES-1234」番でよい。800番の1234の部分は,バートの電話番号にマッピングされる独自の拡張であり,そうすることによって,検索者が1-800-YEL-PAGES-1234番を架電すると,架電は,以下でより詳細に説明するように,バートの電話に自動的に転送されることになる。 [0035] 一実施形態において,広告作成モジュール46は,バートに割り当てられた固有の電話番号を自動的にバートの広告に直接挿入する。或いは,バートの広告に自動的に挿入されるボタン,すなわちクリック可能な電話番号を生成するために,クリックコールロジック58を呼び出すことができ,顧客10を操作するユーザによってそのボタン又は電話番号が選択される,すなわちクリックされると,架電がバートの電話番号に対して自動的に開始される。 [0037] モジュール46は,様々な電話番号への架電の自動転送を可能にするスマート接続ロジック62を含む。例えば,バートは,自社の広告に関連付けられた,一次的な電話番号と1つ以上の二次的な電話番号を含むこともある。したがって,一実施形態において,スマート接続ロジック62は,最初にバートの一次的な電話番号に架電を転送し,接続できなかった場合,接続できるまで,バートの二次的な電話番号のリスト全体を循環して転送する。 [0038] モジュール46は,検索者がバートとの通話を希望する時間を検索者が入力できる架電手配ロジック64も含む。システムは次いで,検索者との架電を手配するために,バートに交信する。手配された架電に気付かせるために,バートには,例えばバートへのファクシミリの送信,バートへのeメールの送信,バートへの電話など,様々な方法で交信してよい。代替実施形態において,本発明から逸脱することなく,追加ロジック,より少ないロジック,又は異なるロジックを広告作成モジュールに含めることができる。 [0042] ここで,図6を参照すると,広告発行モジュール36の構成要素が詳細に示されている。図を見ればわかるように,モジュール36は,広告描画エンジン74と広告配給エンジン76を含む。広告描画エンジン74の目的は,バートの広告をある特定のチャネル上で自動的に描画することである。いくつかの実施形態において,広告描画エンジン74は,キャンペーン管理インターフェース113(図8Bを参照)を広告主に表示する。インターフェース113は,広告が供給/掲載されるべき,例えばSBC,QwestDex,Ingenioのチャネルとカテゴリを広告主に選択させる。インターフェース113は,選択したチャネルとカテゴリを用いて広告を供給するために支払うことを希望する最高入札金額を広告主に指定させる。図9は,本明細書で説明する技術によって描画/供給される広告を含むウェブページ112の一例を示す。一実施形態において,この掲載チャネルは,本発明のシステムのオペレータによって操作されるウェブベースの掲載チャネルでよい。 [0044] 図6を見ればわかるように,広告描画エンジン74は,架電単価ロジック78,活動履歴ロジック80,架電状態ロジック82,接続成功ロジック84,手動索引付けロジック86,及びランダムロジック88を含む。ロジック構成要素78〜88はそれぞれ,バートの広告が最終的にどのようにして描画されるかという基礎を形成するパラメータを制御する。架電単価ロジック78は,バートの広告を架電単価に基づいて掲載する。したがって,例えば,バートが各架電に対して低い金額しか払わないことを望む場合は,この広告は,検索結果ページ又は広告主のカテゴリにおいて,低く配置される又は低く順位付けされる。或いは,バートが高い架電単価を払うことを望む場合は,バートの広告は,検索結果ページ又は広告主のカテゴリにおいて高く配置される。 [0045] 活動履歴ロジック80は,バートが所与の期間,例えば前日/先週/先月中に受けた架電数を分析し,活動履歴に基づいて,表示ページ中でバートの広告を順位付ける。架電状態ロジック82は,バートの広告の状態(活動又は非活動)を調査し,その状態に基づいて,バートの広告を選択的に掲載する。接続成功ロジック84は,バートの広告に割り当てられた電話番号への架電の接続の成功率を測定し,接続の成功率に基づいて,表示ページ中でバートの広告を順位付ける。 例えば,バートの電話番号の接続成功率が低い場合は,ロジック84は,バートの広告を掲載ページ中で低く順位付ける。手動索引付けロジック86は,オペレータに掲載ページ中でバートの広告を手作業で索引付け又は順位付けさせる。ランダムロジック88は,バートの広告を結果ページ中でランダムに順位付け又は配置させる。一実施形態において,表示ページ中でのバートの広告の順位付けは,システムを利用する第三者が指示することができる,ロジック構成要素78〜88によって制御されるパラメータのどの組み合わせに基づいてもよい。代替実施形態において,本発明から逸脱することなく,追加ロジック,より少ないロジック,又は異なるロジックを広告描画エンジン74に含めることができる。 [0046] ここで,図7を参照すると,架電処理モジュール38中の構成要素は,架電転送エンジン92と架電監視エンジン94を含む。図を見ればわかるように,架電転送エンジン92は,バートの広告に割り当てられた番号へ架電をリダイレクトするためのリダイレクトロジック96を含む。リダイレクションは,広告作成モジュール46を用いた広告の作成において,バートによって指定された電話番号へのものである。架電転送エンジン92は,VoIPロジック98も含み,これは,顧客への又は顧客からの架電を,バートによって広告中で指定された電話番号に,VoIP技術を用いて転送するためのものである。 [0047] 架電転送エンジン92は,バートの電話番号に架電を転送する前に,プロンプトが架電者に対して行われるようにするプロンプトロジック99も含むことができる。一実施形態において,プロンプトロジック99は,架電者に情報のプロンプトを行って,架電者にバートの実際の電話番号を知らせる。したがって,架電者は今後,システムによってバートに割り当てられた電話番号ではなく,バートの実際の電話番号を用いて,バートに直接架電することができる。このような場合,バートは,自社の実際の電話番号への架電に関しては,システムによる請求が行われない。一実施形態において,プロンプトロジック99は,情報のプロンプトがバートに対して行われるようにして,バートに架電の発信源を知らせることもできる。いくつかの場合において,プロンプトロジック99は,広告主に架電者の電話番号を知らせるために,eメール又はファクシミリによる警告が自動的に生成され,広告主に送られるようにすることができる。このようなeメールの一例を,図10に参照番号116で示す。代替実施形態において,本発明から逸脱することなく,追加ロジック,より少ないロジック,又は異なるロジックを架電転送エンジン92に含めることができる。 [0048] 架電監視エンジン94は,バートの広告に応答して生成される架電の数をトラッキングするための架電数ロジック100を含む。架電監視エンジン94は,バートに対して架電を行う架電者の固有の番号群のうちの番号を自動的に識別するための,自動番号識別(ANI)ロジック102も含む。架電監視エンジンは,バートへの各架電の長さを監視する架電長さロジック104も含む。接続状況ロジック108は,架電が成功したか,話中の音,すなわちビジー音が聞こえたか,又はバートが単に電話に応答しなかったのかを監視する。ロジック構成要素100〜106によって供給された情報に基づいて,報告が編集され,バートによる閲覧が可能となる。一実施形態において,報告は,複数の架電,固有の電話番号からの架電の数,架電者の電話番号,各架電の長さ,及び,話中音が返された又は応答されなかった架電に対する,成功した架電の数を含む。報告は,広告キャンペーンの有効性を監視し,キャンペーンを最適化するために,バートによる利用が可能である。代替実施形態において,本発明から逸脱することなく,追加ロジック,より少ないロジック,又は異なるロジックを架電監視エンジン94に含めることができる。 [0054] 上記のように,配給エンジン76はバートの広告を複数の第三者に配給するのに使用される。第三者の追加の例には,Yahoo!(登録商標),MSN(登録商標),AOL(登録商標),及びその他の同様の要求パートナーが含まれる。多くの場合,このような要求パートナー(本明細書では配給パートナーとも呼ばれる)は,本明細書に記載のペイ・パー・コールによる方法及びシステムを介して発生した広告収入の一定割合を受け取る。 [0059] 別の実施形態によれば,参照により本明細書に組み込まれる2004年5月10日出願の「A Method and Apparatus toProvide Pay-Per-Call Performance Based Advertising and Billing」と題する同時係属の米国特許出願第60/552,124号に記載の,クリックして表示する方法が提案される。図15のフロー図に記載されているように,プロセス1502において,広告が要求パートナーのウェブサイトを介してユーザに提示される。広告は,広告主の完全な電話番号を表示していないが,その代わりに広告主の電話番号又は電話番号の残りの部分を表示するためのハイパーリンクを含む。プロセス1504において,広告描画エンジン74は,広告主の番号を表示するためのクリックスルーの数を監視する。一実施形態において,要求パートナーからの各クリックスルーは各広告主への架電をもたらすものとされる。結果として,プロセス1506において,請求モジュール40は,広告主の電話番号を表示するためのクリックスルーの数に少なくとも部分的に基づいて要求パートナーの貸方に記入する金額をトラッキング及び/又は計算する。 [0070] 架電トラッキングは,物理的な職業別電話帳に加え,多様な広告媒体の効果を測定するのに使用可能である。新聞の告知欄は,消費者がかける電話番号を表示するテレビコマーシャルと同様に,架電トラッキングを利用することができる。そのような広告が受ける架電の数をカウントすることにより,キャンペーンの効果を測定することができる。これは広告主と電話帳のいずれにも利益がある。 [0075] ディレクトリが架電の要求ソースを特定することも希望するケースでは,1つの広告主に,それぞれがその広告主が現れる各要求ソースのためのものである複数の固有の電話番号が与えられる必要がある。例えば1人の配管工の広告は,2つの異なるオンラインディレクトリ及び3つの異なるオンライン検索エンジンに表示される場合がある。これらの要求ソースのうちのどれが顧客からの架電を生成したかをトラッキングするために,1人の配管工に5つの異なる固有の電話番号が割り当てられる必要がある。どの固有の電話番号がダイアルされたかを監視することにより,架電の生成がどの要求ソースの成果であるかを決定することができる。 [0076] このアプローチの潜在的な問題は,非常に多くの固有の電話番号が必要になる可能性があることである。1人の配管工が5つの異なる広告を有し,それぞれが100個のウェブサイトディレクトリに配給された場合,結果として単に1人の配管工の架電分散をトラッキングするために500個もの固有の電話番号が提供されることになる。10万の広告主を有するディレクトリには,架電分散をトラッキングするのに何百万個もの固有の電話番号が必要となる。固有の電話番号は,市内番号であれフリーダイアルの1-800番であれ,提供するのに費用がかかる可能性が高い。上記のように大量に使用することは法外に費用がかかる。 [0077] したがって,本発明の一実施形態は,電話番号の割り当て及び再利用を行うためのシステムを提供する。一実施形態において,電話番号は,必要とされる場合のみ動的に割り当てられる。結果として,必要な番号の数はかなり少なくなる。例えば, 「工業用シャワーヘッド」のための特定の配管工の広告は,ある検索エンジンのウェブサイトでは一度も表示されないかもしれない。したがって,そのウェブサイトのその広告に固有の電話番号を割り当てることは無駄である。顧客がその特定のウェブサイトで「工業用シャワーヘッド」を検索する場合のみ,システムは,その瞬間に固有の電話番号を動的に割り当てるほうがよい。このように,番号は必要なときのみ割り当てられ,無駄が削減される。 [0078] また,本発明の一実施形態は番号を再利用することによって,必要とされる番号の総数を更に減らす。例えば,固有の番号が表示されてからある一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を「クリーン」と見なして再利用し,番号のプールに戻すことができる。同様に,固有の番号が架電されてからある一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を「クリーン」と見なして再利用し,番号のプールに戻すことができる。このようなパラメータ及びその他のパラメータを使用することで,本発明の一実施形態は固有の電話番号を節約及び再利用するため,必要な電話番号が少なくてすみ,コスト削減を可能にする。 [0079] 図19は,一実施形態による電話番号を割り当てるプロセスを説明するフロー図を提供する。図19を参照すると,プロセス1902において,電話番号がジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てられる。例えば電話番号は,ある特定の広告主の電話番号が表示されることを要求するエンドユーザの検索が要求パートナーに提出されることに応答して割り当てられる。一実施形態において,未割り当ての電話番号のプールが保持される。未割り当ての電話番号とは,決して特定の広告,広告主,又は要求パートナーに前もって割り当てられたり,関連付けられたりしていない電話番号である。プロセス1902は,未割り当ての電話番号のプールから電話番号を選択し,選択した電話番号を広告にジャスト・イン・タイム方式で割り当てることにより実行される。 「ジャスト・イン・タイム方式」という言葉を使用することで,電話番号は未割り当ての電話番号のプール内にあり,顧客が電話番号を含む広告を見ようとする直前に特定の広告に割り振られる又は割り当てられることを意味する。 [0080] プロセス1904において,広告に割り当てられた電話番号が所定期間架電されない場合は,その電話番号は割り当て解除され,未割り当ての電話番号のプールにリサイクルされる。例えば一実施形態において,所定期間は固定日数でよい。その電話番号に架電が行われない場合は,その電話番号は割り当て解除される。 [0081] 図19に関連して,割り当てられた電話番号が所定期間内に架電された場合は,その電話番号は割り当てられた広告/広告主と関連付けられる。割り当てられた電話番号を使用した架電が行われると,割り当てられた電話番号は広告に関連付けられた(以下「関連付けられた広告」)広告主に割り振られる。そうではなく,割り当てられた電話番号が架電されない場合は,番号は自由なままで,全ての要求パートナーに使用可能である。 [0082] 一実施形態において,要求パートナーが提供する広告は問い合わせをもたらすが架電がない場合は,動的に割り当てられた電話番号は所定期間その広告に関連付けられる。動的に割り当てられた電話番号が所定期間内に架電された場合は,その電話番号はより長い期間その広告に関連付けられる。 [0086] 別の実施形態において,同じ電話番号を同じ広告主/広告のために異なる要求パートナーに割り当てることによって,必要な電話番号の数を減らすことができる。図21は,1つの広告主/広告のための1つの電話番号を複数の要求パートナーに割り当てるプロセスを説明するフロー図を示す。プロセス2102において,ある広告が第1の要求パートナーにより提供され,次に所定期間,例えば30分以内に第2の要求パートナーにより提供された場合は,プロセス2104において,第2の要求パートナーに新しい又は異なる電話番号が割り当てられる。しかし,第2の要求パートナーによる提供が所定期間(30分)を超えて行われる場合は,プロセス2106において,同じ電話番号を第2の要求パートナーに割り当てることができる。一般に,第1の提供後,架電が発生しない期間が長ければ長いほど,議論の余地がある電話である可能性が高いため,第1の要求パートナーに割り当てられた同じ電話番号を使用することがより実現可能になる。 [0089] 例えば,1つのウェブサイトにおいて,ユーザが「カンザスシティの歯科医」を検索した瞬間,広告会社はウェブサイトと通信し,カンザスシティ地域の広告を購入している10人の歯科医の広告を挿入する。10人の歯科医は,潜在的な顧客からの架電を着信した瞬間に,例えば5ドルの料金を支払うことを意味する「ペイ・パー・コール」に同意することにより広告を購入している。歯科医らは同業者よりも上に表示されることを望む場合に高い料金を支払うことができる。 広告会社は,架電単価が最も高いものから最も低いものへと降順に歯科医を表示する。 [0090] 広告会社は,ウェブサイト上に3つの広告を表示するとき,広告に現れる固有の電話番号を動的に割り当てる。このようにして,ある歯科医が潜在的な顧客から架電された場合,広告会社はどのウェブサイトが架電の発生に貢献したかを判定することができる。広告会社は架電の時間を求め,その瞬間に歯科医が同意したペイ・パー・コールの金額を歯科医に請求することもできる。このようなことが行われると,広告会社は架電をその歯科医の標準電話番号に転送し,歯科医は架電を受ける。 [0091] 表示された10個の固有の電話番号のうちのいくつかは,フリーダイアル1-800番又は1-866番であった。そのうちの1つは,その歯科医がローカルと思われる固有の電話番号を有する広告のみが示されるように要求したために,ローカルのカンザスシティ913地域コード番号であった。 [0092] 広告会社は,10人の歯科医の広告を1,000個の異なるウェブサイトに配給している。エンドユーザがたまたまカンザスシティの歯科医を検索するときはいつでも,広告会社は一日中10人の歯科医を何百もの異なるサイトに絶えず表示している。結果として生じる架電活動をトラッキングするために,広告会社が1,000個のウェブサイト各々の各歯科医に固有の電話番号を割り当てたい場合,10,000個の固有の電話番号を割り当てる必要がある。固有の電話番号を提供及び維持するには費用がかかるため,これにはとてもお金がかかる。広告会社は,割り当てる固有の電話番号を最小限に抑える方法を見つける必要があり,プールに有する合計50,000個を超える固有の番号を使用することは決してできない。 [0093] 割り当てる必要のある固有の電話番号を減らすために,広告会社は,本発明を使用して固有の電話番号を動的に割り当て,再利用する。カンザスシティの歯科医のケースにおいて,広告会社は,最初に10,000個の組み合わせの全てを割り当てるわけではない。その代わりに,特定のウェブサイトでカンザスシティの歯科医の検索が行われた瞬間に固有の電話番号を1つだけ割り当てる。動的な「ジャスト・イン・タイム」の割り当てによって,架電及び表示が行われないかもしれない広告への無駄な番号の割り当てを防ぐ。 [0095] 一実施形態において,ある特定の広告主の広告がある時間にある特定のウェブサイトにある特定の固有の電話番号と共に表示されたことをシステムが記録する。ますます多くの広告が異なるウェブサイトに表示されるため,一実施形態において,システムは割り当てられた電話番号がそれぞれ最後に表示されたのはいつかを記録する。 [0096] 図22は,電話番号を再利用する一実施形態を説明するフロー図を示す。一実施形態では,プロセス2202において,電話番号のアクティブな「表示キュー」が保持される。アクティブな表示キューは,表示された時間に従って(最近表示された)「最も若いもの」から(以前に表示された)「最も古いもの」の順に電話番号を掲載する。 [0097] 例えばある広告主の広告がある特定のウェブサイトに表示され,固有の電話番号が必要とされる場合,プロセス2204において,電話が表示キューの「最も古い」方の側から,すなわち比較的最近表示されたものではない電話番号が選択される。番号のプールは有限であると推定されるため,選ばれる電話番号は以前に使用されたことがあるということがあり得る。しかし,その電話番号は,恐らく5週間前に表示された「最も古い」番号であるため,この番号が過去に表示された広告のものと混同されない確率が高い。このように,電話番号は最後の表示時間に基づいて再利用され,混同の可能性が減少する。 [0098] 一実施形態では,プロセス2206において,システムは,選択された電話番号は所定期間内で最近表示されたかどうかを判定する。例えばシステムは,電話番号が例えば直近の24時間内に異なるコンテキストで表示されたかどうかをチェックすることができる。選択された電話番号が所定期間内に表示されていた場合は,プロセス2208において,番号プールは過剰再利用の危険にさらされており,選択された電話番号はそのとき割り当てられない。 [0099] 選択された電話番号が所定期間内に表示されなかったとシステムが判定した場合,一実施形態では,プロセス2210において,システムは選択された電話番号が所定期間内で最近架電されたかどうかを判定することに進む。例えばある電話番号がある歯科医の広告に3か月前に表示されたが,最後の架電が昨日であった場合,その番号が今日配管工に再割り当てされれば混乱を招くことが考えられる。 [0100] 選択された電話番号は所定期間(例えば24時間)内に表示されず,第2の所定期間(例えば直近の30日)内に架電されなかったとシステムが判定した場合,プロセス2212において,システムは選択された電話番号を安全と見なし,選択された電話番号を新しいコンテキストに表示されるよう割り当てる。 [0107] 一実施形態において,システムは,様々な要因に基づく固有の番号の別個のプールを保持することもできる。図24は,一実施形態による固有の電話番号の別個のプールを保持するプロセスを説明するフロー図を示す。プロセス2402において,システムは,異なる配給パートナーに対応する異なる電話番号のプールを保持する。例えば1つの大きい配給者が,番号が再利用されて競合配給者と混同されないよう要求することができる。プロセス2404において,システムは,異なる広告主のカテゴリに対応する異なる電話番号のプールを保持する。例えばシステムは,民主党員用及び共和党員用に別個の電話番号プールを保持し,架電者が間違って他党に接続される可能性を低くすることができる。 [0108] プロセス2406において,一実施形態では,システムは選択広告主又は広告主群に再利用されない安定した番号を提供する。例えば,番号が変わる又は再利用されることを望まない広告主もおり,システムは,このような広告主を再利用手順から削除して不変の電話番号を提供することができる。 [0109] 同様に,プロセス2408において,一実施形態では,システムは選択された広告主又は広告主群に特定の期間特定の電話番号を提供する。その後,電話番号は再利用されてよい。例えば日刊新聞は,特別な「本日のお買い得品」を有する5つの旅行代理店のトラッキング可能な電話番号を掲載することがある。この場合,電話番号は少なくとも1日間は変わるべきではないが,その後は再利用プロセスに入ることができる。 特許請求の範囲11 前記広告主に対応する広告が少なくとも2つの位置の第1の位置に表示された場合に,少なくとも2つの料率のうち第1の高い料率を前記広告主に請求することを更に含む,請求項10に記載の方法。 【図1】【図2】【図3】【図4】【図5】【図6】【図7】【図8A】【図8B】【図9】【図15】【図19】【図22】【図24】 イ 上記アによると,甲1発明は,インターネットのウェブページを利用した広告方法で,広告提供サイトのウェブページに広告情報とともに広告主ごとに対応付けられた電話番号を掲載し,それを見た利用者が広告主に対して電話を架けた場合に,その通話の成立に基づいて広告料の課金を発生させるというペイ・パー・コール(Pay per Call)方式に係る発明であり,甲1には,前記第2,4(1)のとおりの甲1発明が記載されていると認められる。 このうち,エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対して検索要求がなされたことに応じて, 1 発明において行われている処理については, 甲 前記第2,4,(2)イの構成要件(a)〜(e)のとおりであると認められる。 (2) 原告は,甲1発明において,固有の電話番号が再利用のために「電話番号のプール」に戻されるまでの期間の始期である「表示されてからある一定期間」にいう「表示されてから」は,ユーザ端末等に表示されたときを意味し, 「固有の電話番号が挿入された広告を要求パートナーの検索エンジンに送信」されたときを意味しないし,甲1発明において,構成要件(d)は,構成要件(c)の「固有の電話番号が挿入された広告」がユーザ端末等に表示されたことを記録するものであると主張するので,この点について検討する。 ア 甲1では,「ウェブページ・・・を顧客のブラウザに表示させる」[0 (032], )「バートの広告は・・・顧客にのみ表示されることになる」[003 (3]「広告描画エンジン74は,キャンペーン管理インターフェイス・・・を広告 ,主に表示する」[0042], ( )「表示ページ中でバートの広告を順位付ける」[0 (045], )「クリックして表示する方法」「広告は,広告主の完全な電話番号を表 ,示していないが,その代わりに・・・残りの部分を表示するためのハイパーリンクを含む。( 」[0059], )「新聞の告知欄は,消費者がかける電話番号を表示するテレビコマーシャルと同様に」[0070], ( )「歯科医らは同業者よりも上に表示されることを望む場合に高い料金を支払うことができる。広告会社は,架電単価が最も高いものから最も低いものへと降順に歯科医を表示する。」[0089], ( )「広告会社は,ウェブサイト上に3つの広告を表示するとき,広告に現れる固有の電話番号を動的に割り当てる。」[0090], ( )「広告主に対応する広告が少なくとも2つの位置の第1の位置に表示された場合に・・・」(請求項11)などにおいては,「表示(display)」は,「情報が画面に映される(it shows it on itsscreen), 」「画面に単語や写真等を見せる(to show words, pictures, etc. on ascreen), 」「コンピュータの画面に情報を見せる(to show information on acomputer screen)」などの意味で用いられていることが認められる。 しかし,甲1には,「広告会社は,ウェブサイト上に3つの広告を表示するとき,広告に現れる固有の電話番号を動的に割り当てる。」([0090])「広告 ,会社は一日中10人の歯科医を何百もの異なるサイトに絶えず表示している。」([0092])などのように,「表示」について,ユーザ端末等の画面のみに情報を映すという意味に限定されず,システム(広告会社)が要求パートナーのウェブサイトに対して電話番号を割り当てた広告等の情報を提示することをも含むと理解することができる記載がある。 また,甲1の「一実施形態において,ある特定の広告主の広告がある時間にある特定のウェブサイトにある特定の固有の電話番号と共に表示されたことをシステムが記録する。ますます多くの広告が異なるウェブサイトに表示されるため,一実施形態において,システムは割り当てられた電話番号がそれぞれ最後に表示されたのはいつかを記録する。」([0095])との記載では,「システムが記録する」とされていて,システムが,ユーザ端末等の画面に電話番号が割り当てられた広告が映されたことを把握し,それを記録に反映することについての記載が全くないことからすると,ここにいう「表示」は,ユーザ端末等の画面のみに情報を映すという意味に限定されず,システム(広告会社)が要求パートナーのウェブサイトに対して電話番号を割り当てた広告等の情報を提示することを含む意味であると理解することができる。 そして,上記第2,4(2)イの構成要件(c)のとおり,甲1発明の要求パートナーの検索エンジンは, 「検索要求に対する検索結果内に,システムから送信された『固有の電話番号が挿入された広告』を表示する」ものであり,構成要件(b)(c) ,のとおり,要求パートナーの検索エンジンのウェブサイト等に情報を提示することは,システムが「固有の電話番号が挿入された広告」を当該要求パートナーへ送信することにより行われるのであるから,甲1発明において「表示」というときに,システムが, 「固有の電話番号が挿入された広告」を,要求パートナーのウェブサイトに提示させるために送出するという意味をも含むと理解することができる。また,構成要件(d)の「表示されたことを記録し」についても,システムが, 「固有の電話番号が挿入された広告」を要求パートナーのウェブサイトに提示させるために送出したことを含むと理解することができる。 イ これに対し,原告は,当業者は, 「ウェブページが何時の時点でユーザ端末に表示されたか」を把握するためのウェブビーコン等の周知技術を参酌して甲1の記載を理解するため,ユーザ端末等に電話番号が表示された時期を容易に把握することができるから,甲1における「表示してから」は,文字どおり,ユーザ端末等に電話番号が表示された時点と解すべきであると主張する。 しかし,上記アのとおり,甲1には,システムが,ユーザ端末等の画面に電話番号が割り当てられた広告が映されたことを把握することについて記載も示唆もなく,また,甲1のシステムは,「固有の電話番号が挿入された広告」を提供したことを記録することにより,要求パートナーのウェブサイトに「電話番号が割り当てられた広告」が提示されたことを把握できるから,甲1発明の出願時に,Webページ(又は電子メール)上にグラフィックを設置し,利用者が当該Webページ(又は電子メール)を開いた際に,自社のサーバに対してGET要求をし,どのIPアドレスのマシンが,いつ,どのWebページにアクセスしたについての情報をトレースすることができるというウェブビーコンなどの技術が周知技術であったとしても,甲1発明がこの技術を用いることを前提としたものであると理解されるとは認められない。 また,甲1発明は,固有の電話番号を提供するには費用がかかるため,広告及びウェブサイト毎に固有の電話番号を割り当ててペイ・パー・コールの実績型広告を実施するための架電トラッキングを実施すると,非常に多くの固有の電話番号,すなわち非常に多くの費用が必要になるとの課題([0076])に対して, 「当該方法では,電話番号は,ジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てられ,所定期間,電話番号が表示されない又は架電されないと,そのとき当該電話番号は,割り当て解除されて,再利用される。( 」[0006])ことにより上記課題を解決するものである。そうすると,このような甲1発明において,「所定期間」の始期を,ユーザ端末等に電話番号が表示された時点に限定するような技術的な必要性は特に認められない。原告は, 「一定期間」の始期を「送出されてから」とする本件発明3は,ユーザの動作部分を対象としておらず,サーバの側で完結するものであり, 「一定期間の始期」がユーザ端末等に「表示されてから」とする甲1発明は技術思想が異なると主張するが,甲1発明の上記のような意義を考慮すると,甲1発明において,システム設計の便宜(一定期間の計測の容易性)よりも,ユーザ側の利益(表示期間の確保)を優先させる必要性は特に認められないから,原告が主張するような本件発明3と甲1発明との技術思想の違いを認めることはできない。 かえって,甲1発明において, 「表示」をユーザ端末等に電話番号が表示された時点と解すると,通信エラー等で電話番号が送出されたがユーザ端末等に表示されなかった場合には, 「一定期間」が進行しないことになり,甲1発明の上記の課題が解決されないことになる。 したがって,原告の上記主張を採用することはできず,甲1発明において,固有の電話番号が再利用のために「電話番号のプール」に戻されるまでの期間の始期である「表示されてからある一定期間」にいう「表示されてから」は, 「固有の電話番号が挿入された広告が要求パートナーの検索エンジンに送出」されたときを含むものと解することができる。 ウ また,原告は,甲1の[0059]で引用されている米国公開公報(甲31)によると,甲1発明の構成要件(c)における「表示」は,ユーザの「コンピュータの画面に情報を見せる(to show information on a computer screen)」という意味を有するものとして使用されていると主張する。 しかし,甲1の[0059]には,広告が要求パートナーのウェブサイトを介してユーザに提示されるに当たり,広告が,広告主の電話番号又は電話番号の残りの部分を表示するためのハイパーリンクを含んでいる方法が記載されており,その中で,甲31に記載されている「クリックして表示する方法」が引用されているにすぎないから,仮に,甲31の「表示」が原告主張の「表示」の意味のみを有するものとして用いられているとしても,甲31の記載をもって甲1の「表示」を原告主張のように認めるべき事情があるということはできない。 原告は,甲1発明の[0078]の「表示された」の解釈について,原告の主張に沿った内容を記載した意見書(甲30)を提出するが,上記説示に照らし,この意見書の記載内容を採用することはできない。 エ 以上によると,甲1発明においての「表示されてから」とは,要求パートナーの検索エンジンに向けて電話番号が「送出」されたときを含むと認めるのが相当であるから,本件発明3と甲1発明にはこの点について相違点がないことになる。 よって,原告の主張する取消事由1には理由がない。 3 取消事由2(「送出可能な状態」に関する取消事由)について (1) 原告は,「所定期間の間,広告情報に同一の電話番号が割り当て得る」ことは,所定期間の間, 「 当該電話番号が送出可能である」ことではないことなどから,甲1には, 「一定の期間」の間,識別情報が「送出可能な状態」であることが事実上記載されているとはいえないと主張するので,この点について検討する。 (2)ア 前記2(1)によると,甲1発明では,エンドユーザから要求パートナー(ある検索エンジンのウェブサイト)に対して検索要求がされると, 「ジャスト・イン・タイム方式」で,未割り当ての電話番号のプール内にある電話番号の中から「固有の電話番号」となる電話番号が検索要求におけるキーワードと関連付けがされた特定の広告主の広告に対して直前に動的に割り当てられて,その広告に自動的に挿入されるものであり([0006][0033]〜[0035],そのように「固有 , )の電話番号」が挿入された広告は,検索結果のページ内に表示され, 「固有の電話番号」は,「表示されてからある一定期間」が経過した場合には,「再利用」のために「電話番号のプール」に戻され([0006][0077]〜[0081],また, , )「問合せをもたらすが架電がない場合」には,この「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間, 「動的に割り当てられた電話番号」は「その広告に関連付けられる」[0082] ( )のであるから,甲1発明の「固有の電話番号」は,広告情報と関連づけられて送出され, 「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間は,広告情報と関連付けられていることが認められる。 イ もっとも,甲1の[0078]には,固有の電話番号が表示されてから一定時間が経過した場合や固有の番号が架電されてから一定時間が経過した場合,システムは自動的にその番号を再利用し,番号のプールに戻すことができるなどの記載はあるが,甲1には,ある要求パートナー(検索エンジンのウェブサイト)に固有の電話番号が表示された後,番号のプールに戻るまでの間に,当該電話番号が,同じ要求パートナー(検索エンジンのウェブサイト)で新たに検索された際に同一の広告に表示されるのか否かについての明示の記載はない。 しかし,甲1発明は,固有の電話番号を提供するには費用がかかるため,広告及びウェブサイト毎に固有の電話番号を割り当ててペイ・パー・コールの実績型広告を実施するための架電トラッキングを実施すると,非常に多くの固有の電話番号,すなわち非常に多くの費用が必要になるとの課題([0076])に対して, 「当該方法では,電話番号は,ジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てられ,所定期間,電話番号が表示されない又は架電されないと,そのとき当該電話番号は,割り当て解除されて,再利用される。( 」[0006])ことにより上記課題を解決するものである。 そして,ペイ・パー・コールの実績型広告を実施するための架電トラッキングでは,支払先を特定するために,架電があった電話番号が,どの検索エンジンのウェブサイトで表示されたものなのかさえ特定できればよいのであるから,同じ検索エンジンのウェブサイトの第2の顧客の検索に対して,第1の顧客の検索によって割り当てた電話番号とは異なる電話番号を新たに割り当てて表示する必要はなく,同じ電話番号を再び割り当てて表示することにより,管理する電話番号の数を減らすことは,甲1発明が当然の前提としていると解される。そうでなければ,所定期間「固有の電話番号」を広告情報と関連付けておく意義が乏しいことになる。原告は,表示されてから一定期間,当該番号が送出不可能である場合に,当該期間,同じ要求パートナーや同じコンテキストで同じ番号が表示されないとしても,一定期間の長さなどを適宜調整するなどすれば,発明の課題は十分解決することができると主張するが,原告が主張する方法をとるよりも,同じ要求パートナーの同じコンテキストに同じ番号を表示する方が管理する電話番号の数を減らすことに資するのであるから,原告の主張を採用することはできない。 そうすると,甲1発明の[0078]の記載は,エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対する検索要求に対して,広告に「ジャスト・イン・タイム方式」でプール内にある電話番号を割り当てるに当たって,同じ要求パートナー又は同じコンテキストにおいて,広告が表示されてから所定期間内の電話番号は,再度「固有の電話番号」として前記「広告」に割り当てられ,前記「所定期間内の電話番号」が挿入された広告が要求パートナーの検索エンジンに送信されることを示していると解される。 これに対し,原告は,甲1発明において,表示されてから一定期間,電話番号が送出不可能であったとしても,すでに送出された電話番号を「ウェブサーバ」に表示させ続けることにより,同じ要求パートナーや同じコンテキストについて同じ番号を表示することは可能であるから,甲1発明において,所定の期間,電話番号が送出可能である必要はない旨主張するが,甲1発明は,ジャスト・イン・タイム方式であり,検索された都度,電話番号が割り当てられるものであるから,原告が主張するような構成を採るものであると解することはできない。 ウ 以上によると,甲1発明は, 「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間,識別情報(「固有の電話番号」)は広告情報(「その広告」)と関連づけられており,当該期間内の,エンドユーザから要求パートナーの検索エンジンに対する検索要求に対して,同じ要求パートナー又は同じコンテキストにおいて,広告に関連付けられた電話番号が挿入された広告が要求パートナーの検索エンジンに送信され前記エンドユーザに対して表示されることになるから,本件発明3における,「一定期間」が終了して「送出不可能な状態」となるまで「送出可能な状態」である点は,甲1発明との一致点となる。原告は,甲1の[0078][0086]及び[0098]の記載から,広告に「ジャスト・ ,イン・タイム方式」で割り当てられたプール内にある電話番号は,表示されてから所定期間の間「送信可能状態」が継続しているとの本件審決の判断は,本件発明の「一定期間」 (構成要件3F)と甲1発明の「所定期間」を混同するものであると主張するが, 1 発明の 甲 「所定期間」については前記イのとおり認められるのであり,原告の主張するところは前記イの判断を左右するものではない。 以上から,本件発明3と甲1発明には,上記の点について相違点は認められないから,取消事由2は理由がない。 4 結論 よって,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 森義之 |
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裁判官 | 眞鍋美穂子 |
裁判官 | 佐野信 |