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事件 平成 29年 (ワ) 6334号 特許権侵害差止等請求事件
5原告株式会社ミルボン
同訴訟代理人弁護士 小松陽一郎
同 川端さとみ
同 山崎道雄
同 藤野睦子 10 同大住洋
同 中原明子
同 原悠介
同 前嶋幸子
同訴訟代理人弁理士 合路裕介 15 同補佐人弁理士 村上雅秀
同 川口太一郎
被告株式会社ナプラ (以下「被告ナプラ」という。)
被告 株式会社ビー・エス・ピー 20 (以下「被告ビー・エス・ピー」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士 白波瀬文夫
同 白波瀬文吾
同訴訟代理人弁理士 濱田俊明
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2020/01/16
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 25 1 被告らは,別紙「被告製品目録」記載1及び2の毛髪化粧料を製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。
12 被告らは,前項記載の毛髪化粧料を廃棄せよ。
3 被告らは,原告に対し,連帯して,1003万0361円及びこれに対する平成31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 5 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの連帯負担とする。
6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
10 1 主文第1項及び第2項と同じ 2(1) 主位的請求 被告らは,原告に対し,連帯して,1511万1783円及びこれに対する平 成31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 予備的請求15 被告らは,原告に対し,連帯して,604万5535円及びこれに対する平成 31年4月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,発明の名称を「非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法」とする特許権を 有する原告が,別紙「被告製品目録」記載1及び2の毛髪化粧料(以下「被告製品」20 といい,同目録記載1のものを「被告製品1」と,同目録記載2のものを「被告製 品2」という。)を製造販売等した被告らに対し,特許法100条1項及び2項に 基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び被告製品の廃棄を請求するとともに, 不法行為に基づき,主位的には特許法102条2項に基づく損害及び弁護士費用相 当額の,予備的には同条3項に基づく損害及び弁護士費用相当額の賠償及びこれに25 対する不法行為の最終日である平成31年4月2日から支払済みまで民法所定の年 5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 なお,原告は特許法102条2項に基づく損害賠償請求を主位的請求と,同条3 項に基づく損害賠償請求を予備的請求としているが,これらは請求原因が異なるだ けで,訴訟物は同一と解される。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に 5 より容易に認められる事実) (1) 当事者 ア 原告は,医薬部外品,化粧品,化学工業薬品の製造・販売等を業とする 株式会社である。
イ 被告ナプラは,医薬品の製造及び輸入,販売,医薬部外品(パーマ液)10 の製造及び輸入,販売,化粧品の製造及び輸入,販売等を業とする株式会社である。
ウ 被告ビー・エス・ピーは,化粧品の製造販売,医薬部外品の製造販売, 化粧品用原材料の販売,理美容器具の販売等を業とする株式会社である。同社は被 告ナプラの関連会社であり,被告らの株主及び代表取締役は同一である。
(2) 原告が有する特許権(甲2)15 原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,請求項1に係る発明を「本件 発明」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。なお, 本件特許については,設定登録後,特許請求の範囲及び明細書について訂正請求が され,訂正することを認める旨の審決がされた。
登録番号 特許第6072965号20 発明の名称 非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法 出願日 平成28年6月29日 登録日 平成29年1月13日 特許公報発行日 平成29年2月1日 特許請求の範囲(訂正後のもの。請求項2以下は省略)25 【請求項1】下記(A)〜(C)の成分が配合されており,(A)紫外線吸 収剤として,2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香 3 酸ヘキシルエステルを含み,(A)成分の配合量が3質量%以上であって,濡れた 毛髪に塗布後,洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴と する非水系毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤 5 (B)イソノナン酸2-エチルヘキシル,または,安息香酸アルキルおよびイソ ノナン酸2-エチルヘキシル (C)揮発性の環状シリコーン (3) 被告らの行為(当事者間に争いがない。) ア 被告らは,遅くとも平成28年6月15日頃以降,業として,被告製品10 を製造し,販売し,また販売の申出をした。なお,被告製品の包装箱には「発売元」 として被告ナプラが,「製造販売元」として被告ビー・エス・ピーが記載されてい る。
イ 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する。
2 争点15 (1) 差止請求及び廃棄請求の成否(争点1) (2) 被告らの特許権侵害による原告の損害額(争点2) なお,被告らは,当初,本件発明の特許請求の範囲の記載は過度に広範であるか ら限定して解釈されるべきであり,その場合には被告製品は本件発明の技術的範囲 に属しないこと,本件特許は,公知,公然実施,進歩性欠如,サポート要件違反,20 明確性要件違反等により無効にされるべきものであることを本訴訟で主張し,特許 庁に対して本件特許の無効審判請求を行って,原告のした訂正請求に対しても,訂 正要件違反等を主張してこれを争ったが,特許庁の審決において前記1 (2)の訂正 が認められ,被告らのした無効審判請求は成り立たないとされたことから,本訴訟 においても,特許無効及び訂正要件違反に関する主張,並びに特許請求の範囲の限25 定解釈に関する主張を撤回し,前記1(3)イのとおり,被告製品が本件発明の技術的 範囲に属することを認めた。
4
争点についての当事者の主張
1 争点1(差止請求及び廃棄請求の成否) (原告の主張) 被告らは本件特許権を侵害する行為をしたから,原告は被告らに対し,特許法 5 100条1項に基づき,被告製品の製造販売等の差止請求権を有するとともに,同 条2項に基づき,被告製品の廃棄請求権を有する。
(被告らの主張) 原告の主張は争う。被告らは,令和元年6月21日以降,被告製品の販売を停 止するとともに,総合カタログからも被告製品を除外し,その後,ホームページか10 らも被告製品を除外するよう手配した。
2 争点2(被告らの特許権侵害による原告の損害額) (原告の主張) (1) 共同不法行為の成立 被告製品を製造したのは被告ビー・エス・ピーであり,その全製品を被告ナプ15 ラが販売していたところ,被告ナプラの従業員もその製造・開発に関与していた。
また,被告らの株主及び代表取締役は同一で,被告らは資本においても,業務にお いても緊密な関係にある。したがって,被告らは実質的に一体であり,被告らによ る特許権侵害行為は,共同不法行為を構成する。
(2) 主位的主張(特許法102条2項に基づく損害等)20 ア 被告製品の売上金額 平成29年2月2日(本件特許に係る特許公報発行日の翌日)から平成31 年4月2日までの被告製品の販売個数及び売上金額は,次のとおりである。
販売個数 売上金額(税込) 被告製品1 1万0056個 737万5231円 被告製品2 4716個 557万6552円 5 合計 1万4772個 1295万1783円 なお,被告ナプラは,平成29年2月1日以前から被告製品を多く販売していた ところ,同月2日以降に同月1日以前に出荷した製品の返品を受けていた。これを 同月2日以降の販売個数から控除する必要はない。
イ 被告らの経費の額 5 経費についての被告らの主張は否認し,争う。特許法102条2項の損害を 算定するに当たり,侵害者の売上げから控除されるべき変動費の額は侵害者が立証 責任を負うと解すべきであるが,変動費を要したことは立証されていないから,次 のとおり,被告らの経費は0円(予備的には364万7704円)である。
(ア) 商品原価10 (主位的に)0円 (予備的に)被告製品1 204円/個,被告製品2 330円/個 したがって,商品原価は,高くても合計360万7704円である。
計算式:204円/個×1万0056個+330円/個×4716個= 360万7704円15 被告らは商品原価が乙27記載のとおりと主張するが,運賃,関税輸送費及び手 間については試算日における仮定による試算にすぎない。また,「手間」として賃 金を考慮しているが,従業員は被告製品のみに携わるわけではないから,これを 控 除すべきではない。
(イ) UV防止効果の試験費用20 (主位的に)0円 (予備的に)4万円 被告ら主張の平成28年3月31日及び同年5月20日付け依頼分の試 験費用の金額自体は認める。しかし,前者は被告製品の処方が未確定の時点におけ る試作品の試験にすぎないし,後者は平成28年にビジュロアUVケアオイル(被25 告製品)を製造販売するための費用であって,平成29年2月2日以降に販売され 6 た被告製品についての試験ではない。仮に,後者の試験費用について,数量比例的 に費用として控除できるとの立場に立ったとしても,全期間に占める本件の損害賠 償請求の対象期間の調合量に照らせば,被告らに最大限有利に見積もっても,控除 額が4万円を超えることはない。
5 計算式:80万円×310s(本件の損害賠償請求の対象期間の調合量)/60 70s(全期間の調合量)≒4万円 ウ 被告らの利益額 以上より,被告らの特許権侵害行為による利益額は,1295万1783円 (予備的には930万4079円)を下らない。
10 エ 原告の損害額 被告らの特許権侵害行為による原告の逸失利益の額は,1295万1783 円(予備的には930万4079円)を下らない。
また,原告は侵害行為に対する差止めと損害賠償の請求をしており,本件特許に 対して被告ビー・エス・ピーが無効審判を2度にわたり請求したことへの対応を余15 儀なくされたことなどからすれば,被告らの特許権侵害行為と相当因果関係にある 弁護士費用相当額の損害は,216万円(税込)を下らない。
したがって,原告の損害額は,1511万1783円(予備的には1146万4 079円)を下らない。
(3) 予備的主張(特許法102条3項に基づく損害等)20 ア 原告と被告らとは,業務用ヘア化粧品総合メーカーという同じ業界の競 合関係にあり,特に,原告は同業界における売上及びシェア1位,被告ナプラは 同 2位という競合関係にあるから,原告が被告らに,産業財産権全般について実施許 諾をすることは考えられない。このように,ライセンス収入よりも,シェアを維持 しブランドイメージを含めて差別化することが最優先されるから,特許法102条25 3項に基づき損害額を算定する場合,実施料率は極めて高額になる。
しかも,業務用ヘア化粧品は,利益率が極めて高いという特徴がある。
7 さらに,本件発明の効果(紫外線防止,低温安定性,優れた指通り)は,洗い流 さないタイプのUVケアオイルにおける,商品の特性として重要な要素を占めるも のである。したがって,被告製品が本件発明に係る作用効果を享受しており,その 作用効果は,被告製品の売上げに寄与している。
5 特に,本件では,原告は2度にわたる警告をしたが,被告らがこれに応じず,現 在も被告製品の製造販売を続けているという事情もある。
以上の事情等に照らせば,実施料率は,少なくとも30%を下らない。
イ 被告製品の販売金額は,前述のとおり,合計1295万1783円(税 込)である。なお,販売後に返品がある場合でも,被告製品を製造し,販売するこ10 とによって,本件発明を実施した以上,実施料は販売した数量をもとに算定すべき である。
したがって,特許法102条3項に基づく損害は,388万5535円を下らな い。
計算式:1295万1783円×30%=388万5535円15 また,被告らの特許権侵害行為と相当因果関係にある弁護士費用相当額の損害は, 216万円(税込)を下らない。
ウ 以上より,原告の損害額は,604万5535円を下らない。
(被告らの主張) (1) 共同不法行為の成立20 被告らは株主と代表取締役が同一の関連会社であり,被告製品の名目上の製造 者や実質的な製造者の如何にかかわらず,被告製品の製造販売行為について被告ら が連帯責任を負うことを争う意思はない。
したがって,特許法102条2項に基づく損害の賠償を請求する場合は,被告ら の内部における金銭のやり取りは捨象して,被告らの得る利益額を算定すれば足り25 る。
(2) 原告の主位的主張について 8 ア 被告製品の売上金額 被告製品が一旦,原告主張の個数だけ販売され,原告主張の金額の売上げが あったことは認めるが,原告が損害賠償を請求している対象期間内の出荷分が返品 された場合,その売上げを差し引くべきである。同期間に出荷された被告製品1の 5 返品数は124個,被告製品2の返品数は21個であり,その売上金額は11万6 013円(税込)である。
したがって,被告製品の売上金額は,合計1283万5770円(税込)である。
計算式:1295万1783円-11万6013円=1283万5770円 イ 被告らの経費の額10 (ア) 商品原価(乙27) 被告製品の商品原価は,次のとおりである(内訳は乙27記載のとおり。
なお,この金額を税込の金額と扱われることに異存はない。)。
被告製品1 (中略)円/個×9932個=(中略)円 被告製品2 (中略)円/個×4695個=(中略)円15 合 計 419万4324円 (イ) UV防止効果の試験費用(乙34の1ないし35の2) 被告製品はUV防止効果を標榜する毛髪及び頭皮用化粧品であり,UV防 止効果やSPF値・PA値を謳うためには,その効果を裏付ける試験を経ることが 義務付けられている。そのために要した試験費用は次のとおりである(税込で合計20 172万8000円)。
平成28年3月31日付け依頼分 80万円(税抜) 同年5月20日付け依頼分 80万円(税抜) 原告はこれらを経費として控除することを争っているが,毛髪用を含む化粧料の 開発の通常のプロセスを考えると,被告製品の開発費用である前者が控除の対象と25 なることは当然であるし,後者を含め,被告製品の配合成分を決定するために行っ た試験であるから,その全額を控除すべきである(仮に全額の控除が認められない 9 としても,原告主張の4万円は控除すべきである。)。
(ウ) 合計 被告らの経費の額は,合計592万2324円である。
ウ 被告らの利益額・原告の損害額 691万3446円 なお,原告の弁護士費用相当額の損害に関する主張は,不知又は争う。
5 (3) 原告の予備的主張について 原告と被告らの関係は認めるが,原告のその余の主張は不知又は否認し,争う。
本件発明の技術分野における相当実施料率は,せいぜい5〜6%にとどまると解す べきである(乙41,42参照)。
当裁判所の判断
10 1 争点1(差止請求及び廃棄請求の成否)について 被告製品が本件発明の技術的範囲に属すること及び被告らが業として,被告製品 を製造し,販売し,また販売の申出をしたことについては,当事者間に争いがない。
したがって,被告らは本件特許権の侵害行為をしたことになる。
被告らは,被告製品の販売を停止したことを主張する。しかしながら,現在販売15 を停止している事実が認められるとしても,被告らは,本訴訟において当初は本件 特許の無効や構成要件の非充足を主張し,令和元年6月まで被告製品を販売すると ともに,総合カタログにこれを掲載していたとされるのであるから,被告らが被告 製品の製造等をするおそれはあると認められるし,被告らが被告製品を既に廃棄等 したことをうかがわせる証拠はなく,被告らはこれを所持していると認められる。
20 したがって,被告製品の製造等の差止請求及び被告製品の廃棄請求には理由があ る。
2 争点2(被告らの特許権侵害による原告の損害額)について (1) まず,原告の主位的主張について検討すると,被告らは被告製品を製造販 売等し,被告製品の包装箱には「発売元」として被告ナプラが,「製造販売元」と25 して被告ビー・エス・ピーが記載されていたこと,その株主及び代表取締役が同一 であることを踏まえると,被告らは原告に対して共同不法行為に基づく損害賠償責 10 任を負うというべきである。
そして,原告と被告ナプラは理美容室向け毛髪化粧品の分野の競業企業であり, 原告は被告製品と競合する「エルジューダ サントリートメント セラム」という UVケアオイル(アウトバストリートメント)を販売しているから(弁論の全趣旨), 5 特許権者である原告に,被告らによる特許権侵害行為がなかったならば利益が得ら れたであろうという事情が存在すると認めることができる。したがって,本件には 特許法102条2項が適用される。
(2) 特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵 害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその10 製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり, その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである(知財高裁令和元年6 月7日判決・最高裁ウェブサイト)。
このような観点から,被告らの利益額を検討するが,被告らに共同不法行為が成 立することから,被告らを一個の製造,販売の主体と見て,被告らにいくらの利益15 が生じたかという観点から検討する。
ア 被告製品の売上金額 被告らが一旦,被告製品1を1万0056個販売し,その売上金額が737 万5231円(税込)であったこと,被告製品2を4716個販売し,その売上金 額が557万6552円(税込)であったことは,当事者間に争いがない。
20 もっとも,被告らは,原告が損害賠償を請求している平成29年2月2日から平 成31年4月2日までの被告製品の出荷分についても返品があったとして,その売 上金額を差し引くべきと主張する。
そこで,この点について検討すると,上記期間の出荷分に返品があり,その返品 に係る売上金額が計上されない場合には,被告らにそれに相当する利益があったと25 いえないことは明らかである。したがって,特許法102条2項の利益の額の算定 に当たっては,上記期間の出荷分に返品があった場合には,売上金額の算定に当た 11 って,返品に係る売上金額を控除すべきである。
そして,上記期間における被告製品の返品数は,乙39及び弁論の全趣旨によれ ば,被告製品1が124個(その売上金額は,合計9万1065円(税込)),被 告製品2が21個(その売上金額は,合計2万4948円(税込))と認められる。
5 原告は,返品されたのは平成29年2月1日以前の出荷分である旨主張するが, 乙39記載の返品時期に照らし,同月2日以降の出荷分である可能性は否定できず, 前記認定に反する証拠があるわけでもないから,被告らに上記金額に相当する売上 げないし利益が生じたことを認めるには足りないというべきである。
したがって,被告製品の販売個数及び売上金額は,次のとおりと認められる。
販売個数 売上金額(税込) 被告製品1 9932個 728万4166円 被告製品2 4695個 555万1604円 合計 1万4627個 1283万5770円10 イ 被告らの経費の額 (ア) 商品原価 被告らは,乙27記載の各経費を控除すべきと主張するのに対し,原告は これを否認して争い,予備的に,被告製品1について204円/個,被告製品2に ついて330円/個の限度で控除するにとどめるべきと主張する。そこで,乙2715 記載の各経費について,控除の可否を検討する。
a バルク原価(原料原価,調合光熱費及び調合手間) 乙40及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売するに 当たり,バルク原価として,原料原価及び調合光熱費を要したと認められ,その性 質上,これらは侵害者である被告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売する20 ことによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認め られる。そして,上記書証等によれば,原料原価は(中略)円/s,調合光熱費は (中略)円/sを下らないと認められるところ,これによれば,被告製品1個当た 12 りのこれらの費用は,被告製品1について(中略),被告製品2について(中略) を下らないと認められる。
これに対し,乙40では「調合手間」もバルク原価に含み,これは調合作業の人 件費に相当するものと説明されている。しかし,単に被告らの従業員が被告製品の 5 製造に関与しているというだけでは,侵害品である被告製品の製造販売に直接関連 して追加的に必要となった経費を要したと認めることはできず,これに当たること を認めるべき事情は主張立証されていない。したがって,「調合手間」については, 経費として控除すべきとはいえない。
b 容器,ポンプ,キャップ,一本箱,添付文書,内箱,外箱に係る費10 用 乙27及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売するに 当たり,これらの費用を要したと認められ,その性質上,これらは侵害者である被 告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売することによりその製造販売に直接 関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。そして,上記書証等に15 よれば,被告製品1個当たりのこれらの費用は,被告製品1について合計(中略) 円,被告製品2について合計(中略)円を下らないと認められる。
c 運賃,関税輸送費 乙27,39及び弁論の全趣旨によれば,被告らが被告製品を製造販売 するに当たり,これらの費用を要したと認められ,その性質上,これらは侵害者で20 ある被告らにおいて侵害品である被告製品を製造販売することによりその製造販売 に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。そして,上記書 証等によれば,被告製品1個当たりのこれらの費用は,被告製品1について運賃(中 略)円,関税輸送費(中略)円,被告製品2について運賃(中略)円,関税輸送費 (中略)円を下らないと認められる。
25 d 手間 乙27,39では「手間」も商品原価に含み,これは女性7名による作 13 業や添付文書の差込みに関する経費である旨説明されている。しかし,前記aの「調 合手間」と同様の理由により,これを経費として控除すべきとはいえない。
e 原告の主張について 原告は乙27記載の各経費を要したことを否認し,仮定による試算結果 5 にすぎないなどと主張するが,被告製品の製造販売に当たって前記aないしcで控 除を認めた諸経費を要することは明らかであり,また前記認定に反する証拠がある わけでもないから,前記認定は左右されない(被告らの利益額の立証責任が原告に あることは前述したとおりである。)。
f 控除すべき経費の額10 商品原価として控除すべき経費の額は,被告製品1について合計217. 02円/個,被告製品2について合計364.21円/個と認められ(弁論の全趣 旨によれば,これらの金額は税込みの金額と認められる。),これによると,商品 原価は合計386万5409円となる。
計算式:217.02×9932個+364.21円×4695個=386万515 409円(小数点以下切上げ) (イ) UV防止効果の試験費用 被告らは,平成28年3月31日と同年5月20日付けで依頼したSPF・ UVAPF測定試験に係る費用(乙34の1ないし35の2)を経費として控除す べきと主張する。
20 しかし,同年3月31日付け依頼分については,被告の主張によっても,被告製 品を研究開発する過程で支出された費用にとどまるものといわざるを得ず,被告製 品そのものについて試験をしたものとは認められないから,この費用をもって,侵 害品である被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる ということはできない。
25 これに対し,同年5月20日付け依頼分について,原告はこれが被告製品に関す る試験であることを前提としつつ,平成29年2月2日以降に販売された製品その 14 ものについて行われた試験ではないという理由で,経費として控除することを争っ ている。しかし,被告製品は,化粧料としての性質上,これを製造販売するために は,平成28年5月20日付け依頼分のような試験を行うことが必要不可欠であり, この試験は,平成29年2月2日以降に被告製品を販売するのにも必要であったと 5 いうことができる。そうすると,上記試験の費用(86万4000円(税込))は, その全てが侵害品である被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった 経費に当たるということはできないが,原告が本件で損害賠償を請求している期間 の被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となったと認められる部分につ いては,経費として控除するのが相当である。
10 控除する金額については,原告が本件で損害賠償を請求している期間における被 告製品の調合量(弁論の全趣旨によれば,310s)の,それ以外の期間も含めた 被告製品の調合量(弁論の全趣旨によれば,6070s)に対する割合によって按 分して算定すべきであり,原告が本件で損害賠償を請求している期間の終期の後に も被告製品が販売されていることをも考慮して,原告が主張し,被告らも予備的に15 主張する4万円の限度で,原告が本件で損害賠償を請求している期間の被告製品の 製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認めるのが相当である。
(ウ) 被告らの経費の額 以上によれば,被告らの経費の額は,合計390万5409円となる。
計算式:386万5409円+4万円=390万5409円20 ウ 被告らの利益額 前記ア及びイによれば,被告らの特許権侵害行為による利益額は,893万 0361円となり,この額が原告の損害額と推定される。
なお,原告は予備的に特許法102条3項に基づく損害を請求しているが,原告 が主張する同項に基づく損害額は上記金額を上回らないから,同条2項に基づく損25 害額をもって原告の損害額とすべきである。
エ 弁護士費用 15 原告は,原告訴訟代理人弁護士に委任して,本件の各請求をしているところ, 差止請求分も考慮し,被告らの特許権侵害行為と因果関係のある弁護士費用は,1 10万円と認めるのが相当である。
オ 以上より,原告の損害額は,1003万0361円となる。
5 3 以上より,原告の請求は,主文第1項ないし第3項に掲げる限度で理由があ るから,その限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄却するこ ととして,主文のとおり判決する。なお,原告は主文第1項及び第2項についても 仮執行宣言を付すことを求めているが,相当でないので,これを付さないこととす る。
裁判長裁判官 15谷有恒
裁判官 20野上誠一
裁判官 25島村陽子
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