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関連審決 不服2018-5143
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2019700557 審決 特許
異議2017700311 審決 特許
異議2018701011 審決 特許
不服201816824 審決 特許
異議2019700276 審決 特許
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事件 令和 1年 (行ケ) 10067号 審決取消請求事件

原告 株式会社山田養蜂場本社
同訴訟代理人弁理士 長谷川芳樹 清水義憲 吉住和之 坂西俊明
同訴訟復代理人弁護士 佐藤慧太
被告特許庁長官
同 指定代理人藤原浩子 光本美奈子 原賢一 豊田純一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2020/01/15
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2018-5143号事件について平成31年3月18日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物」とする発明につき,平成26年3月12日,特許出願(特願2014-49007号。以下「本願」という。)をしたが,平成30年1月26日付けで拒絶査定を受けた。
原告は,同年4月13日,拒絶査定不服審判請求をし,手続補正をした(甲6。
同補正を,以下「本件補正」という。。特許庁は,上記審判請求を不服2018- )5143号として審理し,平成31年3月18日, 「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同審決謄本は,同年4月2日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」といい,本願の明細書及び図面を「本願明細書」という。)は,以下のとおりである(甲3,6)。
「ローヤルゼリーを含有する加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって, 前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下であり, 生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる,予防用組成物。」 3 本件審決の理由の要点 (1) 平成24年4月4日発行の特許第4908769号公報(甲1。以下「引用文献1」という。)には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「一日の摂取量として,ローヤルゼリーとしての重量換算で好ましくは0.001〜30gを経口摂取されるように用いられる,ローヤルゼリー又はその抽出物を 有効成分とする,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤。」 (2) 本願発明と引用発明との一致点及び相違点 ア 一致点 ローヤルゼリーを含有する加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって,前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の骨疾患又は骨密度低下である,ヒトに対して経口投与されるように用いられる,予防用組成物である点 イ 相違点 (ア) 相違点1 加齢性疾患及び身体機能低下が,本願発明においては, 「加齢性の骨疾患または骨密度低下」に加えて「加齢性の筋疾患又は筋力低下」である,すなわち「加齢性の骨疾患または骨密度低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」であるのに対し,引用発明においては, 「加齢性の骨疾患または骨密度低下」に相当する老人性骨粗鬆症であって,「加齢性の筋疾患又は筋力低下」については特定されていない点 (イ) 相違点2 生ローヤルゼリー換算量で1日当たりのローヤルゼリーの投与量が,本願発明においては,600〜14400mgであるのに対して,引用発明において,好ましくは0.001〜30gである点 (3) 相違点についての判断 ア 相違点1について 「食品と科学」54巻2号(株式会社食品と科学社,平成24年1月10日発行)(甲2。以下「引用文献2」という。)の13頁には,牛凱軍准教授(以下「牛准教授」という。)が講演した内容が記載されており,その講演内容は,「ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーが,加齢による筋力の衰えを抑えるかをマウスを使って調べた。その結果,ローヤルゼリーが筋力の低下を抑え,増強させることが示された。ヒトでは圧力を高め,歩行速度を上げることが分かった。そのことから,酵素分解ローヤルゼリーは筋力を保ち,体をスムーズに動かし,高齢者が自立した日 常生活を送るのに役立つと期待される」というものである。
上記記載の「ヒトでは圧力を高め歩行速度を上げること」とは,マウスの結果からみて,ヒトにおいて筋力の低下を抑え増強させたことにより生じた結果であると解される。また,マウスの実験は, 「加齢による筋力の衰えを抑えるか」を調べたものであり, 「高齢者が自立した日常生活を送るのに役立つと期待される」と牛准教授が述べているということからみて,引用文献2の記載に接した当業者であれば,ローヤルゼリー又は酵素分解ローヤルゼリーは,ヒトにおいて,加齢による筋力の低下を抑え増強させる作用を有することが理解できる。
したがって,ローヤルゼリーを有効成分とする引用発明を,老人性骨粗鬆症の予防又は改善薬としてだけでなく,同時に,加齢による筋力の低下を抑え増強させるためのものとし,引用発明が相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。
イ 相違点2について 引用発明におけるローヤルゼリーの一日の摂取量「1日当たりの投与量」 ( と同義)は「好ましくは0.001〜30g」であり,本願発明とは, 「600〜14400mg」の範囲で重複一致する。
引用発明を,老人性骨粗鬆症の予防又は改善薬としてだけでなく,同時に,加齢による筋力の低下を抑え増強させる作用を発揮することを目的として使用する場合において,まず,当業者が試みる1日当たりの投与量は,引用発明に係る「好ましくは0.001〜30g」という範囲であるといえるところ,引用文献1には,0.001g未満では骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されないこと,30gを超えると摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済であることが記載されていることに照らし,骨粗鬆症に対する予防効果と,加齢による筋力の低下を抑え増強させる作用とが発揮される程度と経済的な面とを考慮して,「好ましくは0.001〜30g」の範囲内の数値である600〜14400mg(0.6〜14.4g)の範囲とすることは,当業者が容易に設定し得る事項であ る。
ウ 効果について ローヤルゼリーが,加齢性の骨密度低下だけでなく筋力低下も予防できることは,引用文献1及び2の記載から当業者が予測可能である。
また,ローヤルゼリーが,加齢性の骨密度低下を予防するのと同程度の投与量において,加齢性の筋力低下も予防できるということは,格別顕著なものとはいえない。
そして,本願明細書の実施例においては,老人ホームに入居している者に対して,ローヤルゼリーを3600mg/日(低投与群)及び14400mg/日(高投与群)の用量で投与した場合の効果が示されているが,本願発明の下限値である600mg/日に近い用量の試験は行われておらず,また,14400mg/日を超える用量との比較もされていないことから,本願発明の「600〜14400mg」の範囲に臨界的意義も見いだせない。
したがって,本願発明の効果は,当業者が予測できない格別顕著なものとはいえない。
エ 以上より,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
原告主張の審決取消事由
1 引用発明の認定の誤り (1) 引用文献1には,以下の発明(以下「原告主張引用発明」という。)が記載されている。
「飲食品として利用され,一日数回に分けて経口摂取される,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤。」 (2) 本件審決は,引用文献1からは, 「一日の摂取量として,ローヤルゼリーとしての重量換算で好ましくは0.001〜30gを経口摂取されるように用いられる,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする,老人性骨粗鬆症の予防又は 改善剤。」という発明が認定できると判断する。
ア しかし,引用文献1には, 「飲食品は,骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく,一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである。飲食品の一日の摂取量が0.001g未満では,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されない。逆に,飲食品の一日の摂取量が30gを超えると,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮される一方で,摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済である。」(段落【0021】)と記載されている。
そうすると,当業者は,引用文献1の「一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである」における「一日の摂取量」は, 「飲食品の一日の摂取量」の「飲食品の」が省略されたものであると推論する。
したがって,「飲食品として利用され」という限定が必要である。
イ(ア)a 引用文献1には,試験例1の正常マウスに対する骨形成能評価の方法について, 「C57BLマウス(9週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。CRF-1による1週間の予備飼育後,マウスを4群(各群10匹)に分け,うち3群のマウスに対しそれぞれ,CRF-1からなる通常の飼料,4%RJ混餌飼料(実施例1)又は4%RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を2ヶ月間与えて自由に摂取させた。(段落【0026】 」 )とされているところ,当該マウスの体重及び一日摂餌量はそれぞれおよそ19g,3.2gである(甲11の体重及び摂餌量のグラフ)という本願出願時の技術常識を参照すると,例えば,体重60kgの老人におけるローヤルゼリーの一日摂取量は,3.2(g)×0.04×60000(g)÷19(g)=404(g)となる。
そうすると,引用文献1には,一日の摂取量は, 「 特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである。(段落【0 」021】)と記載されているが,当業者は,飲食品におけるローヤルゼリーの一日の摂取量がごく僅かな0.001g(1mg)や0.01g(10mg)といった量で,老人性骨粗鬆症の予防又は改善が可能であるとは推認しない。
b 引用文献1には,試験例1の結果について, 「RJ混餌飼料(実施例1)を与えることによって灰化重量の増加傾向が認められ,RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を与えることによって灰化重量の有意な増加が認められた。」 (段落【0031】)と記載されているものの,同文献には,試験例1の結果以外に,臨床評価において灰化重量の増加に有効な用量を決定していくために必要な知見は全く記載されていない。
そして,骨の灰化重量(骨灰重量)の増加に関し,マウスの有効な用量をヒト,特に老人の有効な用量に換算する方法として,被告が主張する乙4,5記載の式を用いる方法が本願出願時の当業者の技術常識であったとはいえない。例えば,ダイドロネル錠のエチドロン酸二ナトリウムの用量(200mg。甲22)は,卵巣摘出成熟雌性ラットの骨塩密度の減少を抑制するエチドロン酸二ナトリウムの投与量(2mg/kg。甲22)から乙4,5記載の式に従い概算される量(2×6÷37×60=19.4mg)の10.3倍あり,また,ビビアント錠のバセドキシフェン酢酸塩の用量(20mg。甲23)は,OVX加齢ラットの骨灰重量の減少を抑制するバセドキシフェン酢酸塩の投与量(0.3mg/kg。甲23)から乙4,5記載の式に従い概算される量(0.3×6÷37×60=2.9mg)の6.9倍もあるので(なお,ラットの体重当たりの有効量をもとに概算した0.3×60=18mgとは同程度である),老人において灰化重量の増加に有効といえるローヤルゼリーの一日摂取量を乙4,5に従い概算すればよいとは,当業者は推論しない。
そうすると,当業者は,老人において灰化重量の増加に有効といえるローヤルゼリーの一日摂取量を,マウスの体重当たりの有効量をもとに概算するほかない。
なお,0.001g,0.01gといった量は,仮に乙4,5に従い概算した量(404×3÷37=33g)と比較してもごく僅かであり,また,健康補助食品としてのローヤルゼリーの一日摂取量(甲8)の下限すら大きく下回る量でもある。
(イ) また,マウスはローヤルゼリーを通常食しておらず,ローヤルゼリーの「ヒトにおける反応とは異なる可能性が考えられる」(甲13の3頁左欄15行〜22行)のに,引用文献1には,飲食品の一日の摂取量を0.001g,0.01gとして老人に投与し,老人性骨粗鬆症の予防又は改善ができたことを示す臨床試験の結果は記載されていないし,本願出願時の当業者の技術常識でもない。
(ウ) したがって,当業者は, 「一日の摂取量は, ・・・ロイヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g, ・・・である」老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤を製造して使用することができないから,本件審決が認定した「一日の摂取量として,ローヤルゼリーとしての重量換算で好ましくは0.001〜30gを経口摂取されるように用いられる, ・・・老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤」との発明は当業者が実施できないものということになり,そのようなものを引用発明として認定することはできない。
(3) 被告の主張について ア 被告は,マウスの種類によって体重や摂餌量が異なり,それらの数値自体も個体差などにより幅のある数値範囲である上,引用文献1の試験例1で用いられたマウスが具体的にどのような種類であり,体重や摂餌量がどの程度であったのかは,正確には把握できないと主張する。
しかし,引用文献1の試験例1においては,日本エスエルシー株式会社より購入した「C57BLマウス」が用いられ,当該発明の発明者は,その試験結果(表1)に基づいて「RJ及びRJ抽出物はいずれも,骨形成の促進を介して, ・・・老人性骨粗鬆症の予防及び改善に優れた効果を発揮する。(段落【0031】 」 )と結論付け ている。
一方,本願出願前の平成25年に日本エスエルシー株式会社が供給していたC57BLマウスには,C57BL/6NCrSlcとC57BL/6JJmsSlcがある(乙3)が,前者の特徴・用途は, 「細胞性免疫能に関しては加齢に伴う低下が少ない。自然発生腫瘍が少なく,加齢研究で使用されている。アルコール嗜好性が高い。新生仔に小眼又は無眼症が見られる。遺伝子改変動物作製等に使用されている。(甲11)であるのに対し,後者の特徴・用途は, 」 「遺伝子改変動物作製等に使用されている。(乙3)というだけである。
」 そうすると,老人性骨粗鬆症に関する請求項1に係る発明をよりよく理解するための試験例1についての「C57BLマウス・・・を日本エスエルシー株式会社より購入した」(段落【0026】)という記載に接した当業者は,この「C57BLマウス」が加齢研究で使用されている「C57BL/6NCrSlc」 (甲11)であると推論する。
しかも,引用文献1の「C57BLマウス(9週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。・・・マウスを4群(各群10匹)に分け,・・・」の記載によると,C57BL/6NCrSlcの9週齢のメスは少なくとも40匹購入され,一方,甲11に記載された♀の体重及び摂餌量の値も30匹の平均値であるのは明らかであるから,当業者は,「C57BLマウス(9週齢のメス)」の体重及び摂餌量の平均も,甲11に記載されたものと変わりはないと推論する。
したがって,当業者には,実際に引用文献1の試験例1で用いられたマウスが具体的にC57BL/6NCrSlcであり,体重や摂餌量がどの程度であったのかは,正確に把握できるというべきである。
イ 被告は,本願出願当時,動物実験から得られた薬物用量を,ヒト試験の薬物用量へ換算するに当たって,体表面積による正規化法を用いて換算する方法によることもよく行われていたと主張する。
しかし,前記(2)イ(ア)bのとおり,老人において灰化重量の増加に有効といえるロ ーヤルゼリーの一日摂取量を乙4,5に従い概算すればよいとは当業者は推論しない。
また,体表面積による正規化法を用いて換算する方法により,骨粗鬆症用薬として開発される新医薬品(新薬)のヒト初回投与量設定がよく行われていたということもできない。
2 本願発明と引用文献1に記載された発明との一致点及び相違点の認定の誤り (1) 本件発明と原告主張引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 一致点 ローヤルゼリーを含有する組成物であって,生ローヤルゼリー換算量で,ローヤルゼリーがヒトに対して経口投与されるように用いられる,組成物である点 イ 相違点(以下「原告主張相違点」という。) 本願発明が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下である加齢性疾患及び身体機能低下の予防用に,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが用いられる組成物であるのに対し,原告主張引用発明が老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤である点 (2) 仮に,本願発明と引用発明とを比較すると,その一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 一致点 ローヤルゼリーを含有する組成物であって,生ローヤルゼリー換算量で,ローヤルゼリーがヒトに対して経口投与されるように用いられる,組成物である点 イ 相違点(以下「原告仮定的主張相違点」という。) 本願発明が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下である加齢性疾患及び身体機能低下の予防用に,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが用いられる組成物であるのに対し,引用発明が,一日の摂取量として好ましくは0.001〜30gが用いられる老人性骨粗鬆症の予防又は改 善剤である点 (3) 本件審決は,本願発明と引用発明との一致点及び相違点を前記第2の3(2)のとおり認定する。
ア 本願発明でいう「加齢性疾患及び身体機能低下」が, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」であるというのは,加齢に伴う, 「筋肉量の減少等の症状を示す(加齢性筋萎縮症,及び筋力低下症状等の)加齢性の筋疾患又は筋力低下,並びに,加齢に伴う,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を示す(骨粗鬆症,及び骨粗鬆症による骨折等の)加齢性の骨疾患又は骨密度低下」(以下,「加齢性運動器疾患等」ということがある。)をいうものと当業者には解される。
イ 本願発明の加齢性運動器疾患等は,単なる骨粗鬆症等とは別の概念のものであるから,引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」は,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下の予防用」であって「前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」には相当しない。
ウ 見いだされた用途とその用途に使用するためのヒトにおける「用量」は当然技術的にも連関している。見いだされた用途とその用途に使用するためのヒトにおける「用量」が技術的手段として別個独立のものであるという認識は当業者にはない。
したがって,本件審決が,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって,前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下であり」と「生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる」を分断した上で,本願発明と引用発明とを対比し,相違点1と相違点2を認定した点は誤りである。
エ さらに,運動器とは身体運動に関わる骨,筋肉などの総称であって,運 動器がそれぞれ連携して働いており,どの一つが悪くても身体はうまく動かないというのが本願出願時の当業者の認識である(甲9,20)。
したがって,本願発明の加齢性運動器疾患等における「加齢性の筋疾患又は筋力低下」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」は連携しており,本願発明の加齢性運動器疾患等を「加齢性の筋疾患又は筋力低下」 「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」 とに分断して,後者の「予防用組成物」と引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」を対比するのは妥当ではない。
3 相違点及び効果についての判断の誤り (1) 原告主張相違点について ア 特定保健用食品の開発のアプローチには,用途からのアプローチと素材からのアプローチがあり,観察的疫学研究,体験者,研究者や生産者の発案などから素材の栄養面,嗜好面以外の機能が期待された場合,さらに有効性の評価が行われる。
原告主張引用発明は,「骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤を提供すること」(段落【0009】)を目的とする「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」のための飲食品であるから,本願発明の「ヒトの投与に適した加齢性運動器疾患等の予防用」という用途から特定保健用食品の開発にアプローチしようとする当業者がこのような原告主張引用発明に着目することはないし,また,その「加齢性運動器疾患等の予防用」のために,当業者が原告主張引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」という用途を変更し,更なる有効性の評価を行う動機も生じない。
また,素材としてのローヤルゼリーについては非常に多くの用途が提案されているところ,当業者がそれらのうちの「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」に係る原告主張引用発明に着目すべき事情はなく,また,当業者が原告主張引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」という用途を変更し,更なる有効性の評価を行う動機も生じない。
イ 以下のとおり,当業者が,引用文献2に記載された発明を原告主張引用発明に適用し両者を連携させて加齢性運動器疾患等を予防しようとする動機はない。
(ア) 引用文献1に記載された発明の技術分野は,同文献の技術分野の欄に記載された「骨粗鬆症の予防や治療に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤」 (段落【0001】)であり,一方,引用文献2には技術分野の明記はないが,少なくとも引用文献1に記載された技術分野とは異なっている。
(イ) 原告主張引用発明は, 「骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤を提供すること」を目的とするものであるのに対し,引用文献2に記載された発明は,ローヤルゼリーが加齢による筋力の低下を抑え増強することに関するものであるから,両者は課題が異なっている。
(ウ) 引用文献1によると,引用発明の有効成分であるローヤルゼリーは,「骨吸収の亢進…を抑える作用は強くなく,むしろ骨形成の低下を抑える作用」 (段落【0031】)を有するとされているのに対し,引用文献2によると,ローヤルゼリーは筋力低下抑制作用を有するとされ,両者の作用も異なっている。
(エ) 原告主張引用発明は飲食品として利用されるものであるが,引用文献1には,それを実際に飲食品として老人に摂取させ続けた例は記載されていない。
また,引用文献1によると,正常マウスに対する骨形成能評価(試験例1)に際し,C57BLマウス(9週齢のメス)に摂取させた飼料は「4%RJ混餌飼料(実施例1)又は4%RJ抽出物混餌飼料(実施例2)」であり,これに対応する老人の飲食品の一日摂取量は,例えば体重60kgの老人で約400gとなるが,老人が飲食品として一日にこれだけの量のローヤルゼリーを摂取し続けることが非現実的であるのは当業者に明らかである。
さらに,引用文献1の正常マウスに対する骨形成能評価(試験例1)の方法(段落【0026】)及びその評価結果(段落【0030】【0031】 , ,図1〜3)を参照した当業者には,飲食品における老人のローヤルゼリーの一日摂取量がごくわずかな0.001g(1mg)や0.01g(10mg)といった量で,老人性骨 粗鬆症の予防又は改善が可能であるとは推認し得ないし,飲食品における老人のローヤルゼリーの一日摂取量が30gや20gといった量であっても,老人性骨粗鬆症の予防が可能かどうかは不明である。
したがって,引用文献1の記載に接した当業者は,原告主張引用発明における老人のローヤルゼリーの一日摂取量が「好ましくは,0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10g」でありさえすればよいとは理解しない。
(オ) 引用文献2には,圧力を高め,歩行速度を上げ,筋力を保ち,体をスムーズに動かすのに有効な,高齢者のローヤルゼリーの一日摂取量は記載されておらず,一方,引用文献1に記載された一日摂取量の「0.001〜30g」は,臨床評価によって裏付けられていないから,原告主張引用発明における老人のローヤルゼリーの一日摂取量と引用文献2に記載された発明における高齢者のローヤルゼリーの一日摂取量が同じであるともいえない。また,引用文献1には,加齢性運動器疾患等についての記載はないし,加齢による筋力の低下を抑え,増強することについての記載すらない。
したがって,当業者が,原告主張引用発明によって老人性骨粗鬆症の予防と同時に加齢による筋力の低下を抑え増強し,両者を連携させて加齢性運動器疾患等を予防しようとする動機はない。
(カ) ローヤルゼリーの用途に関する発明は多数ある(甲14〜19)が,当業者が,他の多くのローヤルゼリーの用途に関する発明ではなく,引用文献2に記載された発明に着目すべき事情はない。
ウ 本願発明は, 「生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる」ことによって,高齢者の加齢性運動器疾患等の予防,すなわち,加齢に伴う,筋肉量の減少等の症状を示す加齢性の筋疾患又は筋力低下のみならず,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を示す加齢性の骨疾患又は骨密度低下を同時に予防することができ るという効果を奏するが,引用文献1及び2にはこのような効果は記載されておらず,また,これらの文献からはこのような効果は予測できない。
老人性骨粗鬆症の予防と,圧力を高め,歩行速度を上げ,筋力を保ち,体をスムーズに動かすためとでは,老人のローヤルゼリーの一日摂取量が同じになると当業者が推論する根拠はないから,本願発明の効果は格別顕著なものといえる。
エ 以上より,原告主張相違点は容易想到ではない。
(2) 原告仮定的主張相違点について 前記(1)と同様の理由により,原告仮定的主張相違点は容易想到ではない。
また,本願発明の「1日当たり600〜14400mg」は加齢性運動器疾患等の予防のためヒトに対し経口投与するローヤルゼリーの量であるのに対し,引用発明におけるローヤルゼリーの一日の摂取量は,引用文献1の記載上,老人性骨粗鬆症の予防のための飲食品におけるローヤルゼリーの一日摂取量として「好ましくは0.001〜30g」とされているのであり,実質において本願発明とは, 「600〜14400mg」の範囲で重複一致しているとはいえない。
(3) 被告の主張について ア 本件審決が認定する相違点1について (ア) 被告は,骨粗鬆症は, 「加齢性疾患及び身体機能低下」に含有されるとして,当業者は,引用発明に着目すると主張する。
しかし,単なる骨粗鬆症それ自体は, 「加齢性疾患及び身体機能低下」に包含されるかどうかはともかく,本願発明でいう「加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」加齢性運動器疾患等) (に包含される関係にはない。
そして, 「ヒトの投与に適した加齢性運動器疾患等の予防用」という用途から特定保健用食品の開発にアプローチしようとする当業者が,「ヒトの投与に適した加齢性運動器疾患等の予防用」の特定保健用食品に着目せず,また,ローヤルゼリーとは素材を異にする他の老人性骨粗鬆症の予防又は改善のための特定保健用食品にも 着目せず,そもそも老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤として作ることができるかどうかが明らかではない引用発明に改めて着目するとはいえない。
(イ) 被告は,ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物の提供を目的とする上で,加齢による症状の予防・改善組成物に関する引用文献1に記載された発明に着目し,更なる有効性の評価を行うことは,自然な技術開発の流れであると主張する。
しかし,引用文献1には,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤が記載されているだけで,「加齢による症状の予防・改善組成物」に関する発明は記載されていない。
そして,素材としてのローヤルゼリーから特定保健用食品の開発にアプローチしようとする当業者が,これまで提案されたローヤルゼリーの多くの用途(甲14〜19)ではなく,ローヤルゼリーの用途として知られていない「加齢性運動器疾患等の予防用」という用途に着目することはないし,また,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤として作ることができるかどうかが明らかではない引用発明に改めて着目する事情もない。
仮に,当業者が老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤として作ることができるかどうかが明らかではない引用発明に着目し得たとしても,このような引用発明から出発して更なる有効性の評価を行うというのは不自然である。
(ウ) 被告は,老人は骨や筋肉などが衰えるという技術常識(甲9)に照らすと,ローヤルゼリーを有効成分とする組成物という技術分野の当業者が,老人の骨の衰えについての引用文献1と,老人の筋肉の衰えについての引用文献2との両方に着目し,ローヤルゼリーを有効成分とする引用発明を,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤としてだけでなく,同時に,加齢による筋力の低下を抑え増強させるためのものとし,引用発明が相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えるようにすることは容易に想到し得たと主張する。
しかし,甲9記載の技術常識を有するとしても,本願発明の「ヒトの投与に適した加齢性運動器疾患等の予防用」という用途から特定保健用食品の開発にアプロー チしようとする当業者が引用発明に改めて着目するとはいえず,また,当業者は甲9記載の技術常識のみならず,ヒトの疾患や機能低下に関する他の多くの技術常識を有するところ,素材としてのローヤルゼリーから特定保健用食品の開発にアプローチしようとする当業者が引用発明に改めて着目する事情もないから,引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」という用途を変更し,更なる有効性の評価を行う動機も生じない。
イ 本件審決が認定する相違点2について 被告は,本願発明の「600〜14400mg」の範囲に臨界的意義を見いだすことができないとして,相違点2は容易に想到できると主張する。
しかし,本願発明と引用発明との相違点は数値限定の有無のみではないし,本願発明と引用発明の解決しようとする課題及び効果も異なっているから,本願発明の数値限定に臨界的意義があることは求められない。
なお,本願明細書には,本願発明の下限値である600mg/日に近い用量の試験は行われたことは直接記載されていないものの,1日当たりのローヤルゼリーの服用量が600mgであっても,筋肉量の増加,骨密度の低下の抑制,骨質の改善等によって,加齢性運動器疾患等の予防,すなわち,その発症等の抑制ができるといえる。
ウ 効果について (ア) 被告は,甲8,乙7,乙8を示して,従来,様々な効果を期待して人が摂取する量の目安は,数百〜数千mg程度であることが,本願出願時の技術常識であったと主張する。
しかし,甲8には,健康補助食品であるローヤルゼリーの有用性につき「学術的根拠に基づき栄養補給,健康保持の目的で摂取するよう記載することができる」と,また,乙7には,健康食品であるローヤルゼリーにつき「毎日が忙しい女性の健康維持におすすめです」と記載されているにすぎず,一方で,乙8の記載からは,冷え性の女子学生に摂取させたローヤルゼリーの1日の摂取量は理解できるものの, 特定保健用食品において,様々な効果を期待して人が摂取するローヤルゼリーの量の目安が数百〜数千mg程度であることが,本願出願時の技術常識であったことは全くうかがわれない。
(イ) 被告は,乙9を示して,同じ摂取量で,骨と筋力に対する作用が両方とも発揮されることは,当業者が予測可能な範囲内のものといえると主張する。
しかし,本件審決は,乙9に記載された事項に基づいて当業者が容易に本願発明をすることができたと判断したのではないから,乙9は本件審決が適法であるとする根拠とはならない。
また, 「一日当たり600〜14400mg」で,高齢者の加齢性運動器疾患等の予防,すなわち,加齢に伴う,筋肉量の減少等の症状を示す加齢性の筋疾患又は筋力低下のみならず,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を示す加齢性の骨疾患又は骨密度低下を同時に予防することができるという効果は,乙9を参照しても当業者には予測できない。
被告の主張
1 引用発明の認定について (1) 引用文献1に記載された発明について,本件審決の認定に誤りはない。
(2) 引用文献1には,C57BLマウス(9週齢のメス)に対して,4%ローヤルゼリー混餌飼料又は4%ローヤルゼリー抽出物混餌飼料を2ヶ月間自由に摂取させた群は,通常飼料を与えた群に比べ,脛骨の灰化重量の増加傾向又は有意な増加が認められたことから,ローヤルゼリー及びその抽出物は,いずれも老人性骨粗鬆症の予防及び改善に優れた効果を発揮することが記載され(段落【0013】 【0024】〜【0032】,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする骨粗鬆 )症予防剤は,医薬品,医薬部外品又は飲食品として利用されるものであり,飲食品は,骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく,1日の摂取量は,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30gであることが記載されている(段落【0014】〜【0021】。
) したがって,当業者は,引用文献1の記載から, 「一日の摂取量として,ローヤルゼリーとしての重量換算で好ましくは0.001〜30gを経口摂取されるように用いられる,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤」という具体的な技術思想を抽出することができる。
(3) 原告は,引用発明について, 「飲食品として利用され」という限定が必要であると主張する。
しかし,引用文献1には, 「骨粗鬆症予防剤は,医薬品,医薬部外品又は飲食品として利用される。」と記載されている(段落【0020】)ことから,引用文献1に記載された「骨粗鬆症予防剤」は,医薬品,医薬部外品又は飲食品として利用されるものである。
また,引用文献1には, 「医薬品,医薬部外品及び飲食品中の有効成分の含有量はいずれも,・ ・ ・さらに好ましくは0.01〜30質量%である。」 (段落【0021】)と記載され,医薬品,医薬部外品,飲食品のいずれについても,有効成分の含有量は同じであること,引用文献1には,医薬品,医薬部外品における一日の摂取量について,別途,記載されておらず,一般に,予防剤として機能するための用量は,予防剤の形態により異なるものではないことなどを併せ考慮すると,「一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g, ・・・である。」の前後の文章において, 「飲食品は, ・・・一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。 , 」 「飲食品の一日の摂取量が・・・・」などと,飲食品の一日の摂取量についての記載がある(段落【0021】 ものの, ) それらの記載は,特段,医薬品や医薬部外品としての一日の摂取量が,飲食品としての一日の摂取量と異なることを前提とした記載であると当業者は理解せず,上記の一日の摂取量に関する記載(好ましくは0.001g〜30g)は,老人性骨粗鬆症の予防剤の一日の摂取量として当てはまり得るものと当業者は理解するといえる。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(4) 原告は,引用文献1の試験例1のマウスの体重及び一日摂取量を甲11から読み取り,同マウスのローヤルゼリーの摂取量を体重60kgの老人の摂取量に換算すると,一日摂取量は404gとなると主張する。
しかし,引用文献1の試験例1で用いられたC57BLマウスには,C57BL/6NCrSlc,C57BL/6JJmsSlcという複数の種類があり(乙3),その種類によって体重や摂餌量が異なり,それらの数値自体も個体差などにより幅のある数値範囲である上,実際に引用文献1の試験例1で用いられたマウスが具体的にどのような種類であり,体重や摂餌量がどの程度であったのかは,正確には把握できないから,原告が甲11の図から読み取った体重とローヤルゼリーの1日の摂餌量は,仮定の数値にすぎない。
また,例えば,乙4,5に記載されるように,本願出願当時,動物試験から得られた薬物用量を,ヒト試験の薬物用量へと換算するに当たっては,動物とヒトとで種が違っても体重当たりの薬物用量が同じであるとするのではなく,体表面積による正規化法を用いて換算する方法を採用し,マウスの薬物用量からヒトの薬物用量(ヒト等価用量)へは,「ヒト等価用量(HED)(mg/kg)=動物用量(mg/kg)×0.081」との式に基づいて換算することもよく行われていた。
したがって,原告が主張するヒトの一日摂取量404gとの数値は,技術的な根拠のある数値ではなく,原告の上記主張は理由がない。
2 一致点及び相違点の認定について (1) 本件審決が認定した引用発明に誤りはないから,それに基づいた一致点及び相違点の認定にも誤りはない。
(2)ア(ア) 本願発明は,これまでローヤルゼリーが齧歯類に対して筋力の増強等の作用を奏することが知られていたが,どのような投与方法又は摂取方法が,ヒトの加齢性疾患及び身体機能低下の予防又は治療に対して有効かまでは知られていなかった事情に鑑み,ヒトの投与に適した「加齢性疾患及び身体機能低下」の予防用組成物を提供することを目的とするものである(段落【0005】 【0006】。
, ) そして,本願明細書の段落【0010】には, 「加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の筋疾患又は筋力低下であることが好ましい。」と記載され,段落【0011】には, 「加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の骨疾患又は骨密度であることが好ましい。」と記載されていることからすると,本願明細書における「加齢性疾患及び身体機能低下」とは,「加齢性の筋疾患又は筋力低下」,又は「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」という,互いに区別できるいずれかの状態であってもよいことを意図していたと解される。
また,本願明細書の段落【0018】には, 「加齢性疾患及び身体機能低下」について, 「加齢性筋萎縮症」「骨粗鬆症」などが例示されていることによると,本願明 ,細書における「加齢性疾患及び身体機能低下」とは,例示された「加齢性筋萎縮症」や「骨粗鬆症」などの,互いに区別できるいずれかの状態となっていることも意図していたと理解できる。
さらに,本願明細書の実施例において,高齢者に酵素分解したローヤルゼリーを一年間飲用させ,握力(筋力)を測定した結果に基づいて「投与したローヤルゼリーの量に依存して,筋力(握力)が増加することがわかった。」と,骨密度・骨質を測定した結果に基づいて「投与したローヤルゼリーの量に依存して,それらの減少が抑制されることがわかった。」と,それぞれ区別して記載されている(段落【0041】。
) そうすると,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物」とは,加齢性筋萎縮症などの「加齢性の筋疾患又は筋力低下」と,骨粗鬆症などの「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」という,互いに区別できる疾患・状態を両方同時に予防するための組成物であると理解するのが相当であって,「加齢性の筋疾患又は筋力低下」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」とは,両者を切り離して一致点及び相違点を検討できないほど,連携しているとはいえない。
(イ) 上記(ア)は,次のような本願の審査経過からも裏付けられている。
a 出願当初の特許請求の範囲の請求項1〜3の記載(甲3)は,以下 のとおりのものである。
【請求項1】 ローヤルゼリーを含有する加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって,生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる,予防用組成物。
【請求項2】 前記加齢性疾患及び身体機能低下が加齢性の筋疾患又は筋力低下である,請求項1に記載の予防用組成物。
【請求項3】 前記加齢性疾患及び身体機能低下が加齢性の骨疾患又は骨密度低下である,請求項1に記載の予防用組成物。
b 審査官は,平成29年9月29日付け拒絶理由通知(乙1)において,請求項2(及び請求項1)に対しては,引用文献2を主引用例として,マウスにおいて加齢による筋力の低下を抑え増強させるローヤルゼリーを,その量を好適化しヒトに対して経口投与することは容易である旨,また,請求項3(及び請求項1)に対しては,引用文献1の公開公報を主引用例として,ローヤルゼリーを含有する老人性骨粗鬆症の予防剤において,ローヤルゼリーの投与量を好適化することは容易である旨の拒絶理由を,それぞれ通知した。
c これに対して,原告は,特許請求の範囲の補正を行うことなく,平成29年11月27日提出の意見書(乙2)を提出したところ,その際,マウスにおける加齢による筋力の低下又は老人性骨粗鬆症と,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下」とが,別の概念のものであるとの主張はしていない。
d また,原告は,平成30年4月13日提出の審判請求時の補正(甲6)において, 「請求項1は,旧請求項1に旧請求項2及び旧請求項3の要件を組み入れたもの」であるとして(甲5),請求項1の「加齢性疾患及び身体機能低下」は「加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」であること を特定し,さらに,平成31年1月16日提出の意見書(甲8)において, 「本願発明1では, 『加齢性の筋疾患又は筋力低下の予防用途』及び『加齢性の骨疾患又は骨密度低下の予防用途』の両用途を特定すると共に,当該両用途への適用を前提としたローヤルゼリーの用法及び用量を特定しています。 甲8の2頁27行〜30行) 」 (と主張して, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下の予防用途」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下の予防用途」とを,それぞれ異なる用途として記載している。
e このような審査経過を参酌すると,原告は, 「加齢性疾患及び身体機能低下」 (出願当初の請求項1)には, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下」 (出願当初の請求項2)と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」 (出願当初の請求項3)という,それぞれ異なる疾患・状態があると認識しており,本願明細書はその認識に沿って記載されている。
イ 本願明細書には, 「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」の具体例が骨粗鬆症であると記載(段落【0018】)されているから,本件審決が認定した引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤」は,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下」が, 「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」である「予防用組成物」に相当するといえる。
ウ 原告は,本願発明でいう「加齢性疾患及び身体機能低下」が, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」であるというのは, 「加齢に伴う,筋肉量の減少等の症状を示す(加齢性筋萎縮症,及び筋力低下症状等の)加齢性の筋疾患又は筋力低下,並びに,加齢に伴う,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を示す(骨粗鬆症,及び骨粗鬆症による骨折等の)加齢性の骨疾患又は骨密度低下」 (加齢性運動器疾患等)をいうものと当業者には解されるところ,運動器とは身体運動に関わる骨,筋肉などの総称であって,運動器がそれぞれ連携して働いており,どの一つが悪くても身体はうまく動かないというのが本願出願時の当業者の認識であり,単なる骨粗鬆症等とは別の概念であると主張する。
しかし,運動器を全体として捉えるという考え方は,甲9に記載されたロコモテ ィブシンドロームについてのものであって,本願明細書には, 「運動器」という用語は記載されておらず, 「身体運動に関わる骨,筋肉,関節,神経などの総称である運動器を全体として捉える」ことも記載されていない。
したがって, 「運動器」という用語を用いた原告の主張は,本願明細書の記載に基づくものではない。
(3) 医薬品や健康食品の開発過程では,ある物質が特定の「薬効」を奏することを見いだし,その「薬効」を発揮するのに適した「用量」を検討するものであり,何の薬効も想定せずに用量を決定するようなことは通常行われないことから,本件審決は,このような開発手順を踏まえ,進歩性の有無を検討するに当たっても同様に, 「薬効(用途)」について相違点1を, 「用量」について相違点2を認定したうえで,この順で検討したものである。
3 相違点及び効果の判断の誤りについて (1) 相違点1について ア 引用発明は,ローヤルゼリーを含む加齢による症状の予防・改善組成物という点で本願発明と技術分野は関連し,本願発明と関連する老人の骨に関する疾患・状態に着目している点で当業者が検討対象とする範囲内のものといえるから,引用発明は,ローヤルゼリーを有効成分とする組成物という技術分野の当業者が,検討対象とする範囲内のものから選択されたものといえる。
このように,ローヤルゼリーを含む加齢による症状の予防・改善組成物という同じ技術分野に属する引用文献1と引用文献2の記載に接した当業者であれば,ローヤルゼリーを有効成分とする引用発明を,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤としてだけでなく,同時に,加齢による筋力の低下を抑え増強させるためのものすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
イ(ア) ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物という用途からアプローチしようとする当業者を想定したとしても,「加齢性疾患及び身体機能低下」に包含される「骨粗鬆症」(本願明細書の段落【0018】)の予防 又は改善剤である引用発明に着目するといえる。そして, 「老人性骨粗鬆症」の予防又は改善に加え,他の「加齢性疾患及び身体機能低下」について有効性を有するかを評価する動機もあるといえる。
(イ) ローヤルゼリーという素材からアプローチしようとする当業者を想定したとしても,当該当業者は,ローヤルゼリーに関する様々な用途が記載された文献を検討対象とするのが通常である。しかも,ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物の提供を目的とする上で,加齢による症状の予防・改善組成物に関する引用発明に着目し,更なる有効性の評価を行うことは,むしろ自然な技術開発の流れであるともいえる。
ウ 原告の主張は, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」とは連携しており,また,本願発明の加齢性運動器疾患等は,単なる骨粗鬆症等とは別の概念のものであることを前提としているが,このような前提が誤りであることは,前記2(2)のとおりである。
エ 原告は,ローヤルゼリーについては非常に多くの用途が提案されていること,引用発明と引用文献2に記載された発明とでは,課題及び作用が異なることを指摘する。
しかし,ローヤルゼリーについて非常に多くの用途が提案されており,引用文献1と引用文献2に記載された発明の具体的な課題と作用が異なっていても,甲9に記載されるような,老人は骨や筋肉などが衰えるという技術常識に照らすと,ローヤルゼリーを有効成分とする組成物という技術分野の当業者が,老人の骨の衰えについての引用文献1と,老人の筋肉の衰えについての引用文献2との両方に着目し,ローヤルゼリーを有効成分とする引用発明を,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤としてだけでなく,同時に,加齢による筋力の低下を抑え増強させるためのものとし,引用発明が相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えるようにすることは容易に想到し得たものといえる。
(2) 相違点2について 本願発明の600〜14400mgの範囲について,本願明細書の実施例においては,老人ホームに入居している者に対して,ローヤルゼリーを3600mg/日(低投与群)及び14400mg/日(高投与群)の用量で投与した場合の効果が示されているが,本願発明の下限値である600mg/日に近い用量の試験は行われておらず,また,14400mg/日を超える用量との比較もされていないことから,本願発明の「600〜14400mg」の範囲に臨界的意義を見いだすことができない。
また,本願明細書においては,骨密度(BUA骨質)の測定結果を示す【図2】によると,3600mg/日(低投与)及び14400mg/日(高投与)で同じであるものの,骨密度(SOS)の測定結果を示す【図3】によると,低投与に対し高投与で単調増加的に効果の改善が見られているのに対し,握力(筋力)の測定結果を示す【図1】によると,握力(筋力)の測定結果は,骨密度(SOS)の測定結果と同様に,低投与に対し高投与で単調増加的に効果の改善がみられていることに照らすと,本願発明において, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下」 (握力)と, 「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」 (骨密度)の効果は,必要とされるそれらの予防効果と経済的な面を考慮して,適宜設定されるべきものといえるから,本願発明において,「加齢性の筋疾患又は筋力低下」(握力)と,「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」(骨密度)の両者を考慮しているとしても,本願発明の「600〜14400mg」の範囲に臨界的意義を見いだすことができない。
したがって,相違点2について,骨粗鬆症に対する予防効果と,加齢による筋力の低下を抑え増強させる作用とが発揮される程度と経済的な面とを考慮して,「好ましくは0.001〜30g」の範囲内の数値である600〜14400mg(0.6〜14.4g)の範囲とすることは,当業者が容易に設定し得えたものと判断した本件審決の判断に誤りはない。
(3) 効果について @ローヤルゼリー食品におけるローヤルゼリーの1日摂取目安量は,「500〜 3,000mg」であること(甲8),A本願出願前から原告が販売している商品である「酵素分解ローヤルゼリーキング」における,1日目安3粒中のローヤルゼリーの含有量が2160mg(720mg×3)であること(乙7),B引用文献1,2以外のローヤルゼリーに関する文献において,薬効(冷え性改善)を目的としてヒトに投与される量は,1400mg/日,2800mg/日程度であること(乙8)からすると,従来,様々な効果を期待してヒトが摂取する量の目安は,数百〜数千mg程度であることが,本願出願時の技術常識であったといえる。
そうすると,従来,様々な効果を期待してヒトが摂取する量の目安である数百〜数千mg程度の量を含む,本願発明の「600〜14400mg」において,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤としての作用と,加齢による筋力の低下を抑え増強させる作用とが,両方とも発揮されることは,当業者が予測できる程度のことにすぎず,格別顕著なものということはできない。
なお,引用文献2に記載された牛准教授が筆頭執筆者となっている論文(乙9)には,餌にローヤルゼリーを5%添加すると,老齢マウスの筋肉量及び握力の数値が増加したことが記載されており,この論文における餌のローヤルゼリーの含有量(5%)と,引用文献1の試験例1における餌のローヤルゼリーの含有量(4%。
段落【0026】)とが類似していることから見ても,同じ摂取量で,骨と筋力に対する作用が両方とも発揮されることは,当業者が予測可能な範囲内のものといえる。
当裁判所の判断
1(1) 本願発明 本願明細書には,以下の記載がある(甲3,6)。
【技術分野】 【0001】本発明は,加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物に関する。
【背景技術】 【0002】養蜂産品は,健康食品,医薬品,化粧料等に広く利用されており,血管拡張,血圧降下,抗菌作用等,種々の薬理作用及び栄養生理的作用が報告されている。
【0003】養蜂産品の1種であるローヤルゼリーは,タンパク質,ビタミン及びミネラルをバランスよく含んでおり,血流増加作用,血圧降下作用,成長促進作用,性ホルモン様作用,脂質低下作用,抗菌作用,抗腫瘍作用,創傷治癒促進作用,自律神経失調症治癒作用等が報告されている。
【発明が解決しようとする課題】 【0005】これまで,加齢マウス及び更年期モデルラットを用いた実験によって,ローヤルゼリーが齧歯類に対して筋力の増強等の作用を奏することが知られていた。しかしながら,どのような投与方法又は摂取方法が,ヒトの加齢性疾患及び身体機能低下の予防又は治療に対して有効であるのかまでは,知られていなかった。
【0006】本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】【0007】本発明者等は,鋭意研究を行った結果,ヒトに対してローヤルゼリーを投与すると,その投与量に応じて,加齢性疾患及び身体機能低下を有効に予防できることを見出し,本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は,ローヤルゼリーを含有する加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって,生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる,予防用組成物を提供する。
【0009】本発明に係る予防用組成物は,上述のような構成を備えることによって,ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物を提供することが可能になる。
【0010】上記加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の筋疾患又は筋力低下であることが好ましい。
【0011】上記加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の骨疾患又は骨密度であることが好ましい。
【0012】上記ヒトは,高齢のヒトであることが好ましい。
【0013】上記予防用組成物は,予防用栄養組成物であることが好ましい。
【発明の効果】 【0014】本発明によれば,ヒトの投与に適した加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物及び予防用栄養組成物を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】・・・【0017】本実施形態に係る加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物 以下, (単に「予防用組成物」という場合がある。 は,ローヤルゼリーを含有し,生ロー )ヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mg のローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる。
【0018】加齢性疾患及び身体機能低下( 以下,「加齢性疾患等」という場合がある。 とは,加齢に伴う,筋肉量の減少,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を )示す加齢に伴う疾患及び身体機能低下を意味する。加齢性疾患等としては,例えば,加齢性筋萎縮症,及び筋力低下症状等の加齢性の筋疾患又は筋力低下,並びに,骨粗鬆症,及び骨粗鬆症による骨折等の加齢性の骨疾患又は骨密度低下が挙げられる。
【0019】加齢性疾患及び身体機能低下の予防とは,上記加齢性疾患等の発症等を回避又は抑制することを意味する。具体的には,筋肉量の増加,骨密度の低下の抑制,骨質の改善等によって上記予防が達成される。
【0024】対象となるヒトとしては特に制限はなく,どの年齢層のヒトにおいても使用可能であるが,好ましくは高齢のヒトである。ここで,高齢のヒトとは,65歳以上のヒトを意味する。本実施形態において,高齢のヒトは,65歳〜92歳であることが好ましい。
【0025】予防用組成物は,投与の目的,投与方法,投与対象の状況(性別,年齢,体重,病状等)によって異なるが,生ローヤルゼリー換算量で,1日当たり600〜14400mg ,好ましくは1日当たり2400〜14400mg,より好ましくは1日当たり3600〜14400mgのローヤルゼリーが,ヒトに対して経口投与されるように用いられる。ここで「生ローヤルゼリー換算量」とは,乾燥 ローヤルゼリー,酵素分解ローヤルゼリー等の加工が行われているローヤルゼリーを原料として用いた場合において,用いられた量に対して同等の効果を得るのに必要な生ローヤルゼリーの量を意味する。例えば,1質量部の乾燥ローヤルゼリーは,生ローヤルゼリー換算量で3質量部に相当する。
【0026】予防用組成物は,上述の投与量で投与する場合,少なくとも1日以上,対象であるヒトに投与されるように用いられればよいが,好ましくは30〜365日,より好ましくは90〜365日,対象であるヒトに投与されるように用いられる。
【0027】予防用組成物は,1日当たりのローヤルゼリーの投与量が上述の範囲内であれば,1日当たりの投与回数に特に制限はないが,好ましくは1回〜3回であり,より好ましくは2回又は3回である。
【0028】1日当たり複数回の投与を行う場合,1回当たりのローヤルゼリーの投与量は,特に制限はないが,生ローヤルゼリー換算量で,600〜7200mgであることが好ましく,1200〜7200mgであることがより好ましく,3600〜7200mgであることが更により好ましい。例えば,予防用組成物は,生ローヤルゼリー換算量で,1回当たり1200〜4800mgのローヤルゼリーをヒトに対して1日あたり3回経口投与するように用いられてもよい。
【0029】予防用組成物は,医薬組成物として用いてもよい。医薬組成物の投与形態としては,例えば,錠剤,カプセル剤,顆粒剤,細粒剤,散剤,舌下錠,シロップ剤,懸濁液等が挙げられる。上記投与剤形は許容される通常の担体,賦形剤,結合剤,安定剤等に,ローヤルゼリーを有効成分として配合することにより製造することができる。
【0030】上記予防用組成物は,予防用栄養組成物として用いてもよい。栄養組成物としては,通常の食品,並びに,健康食品,機能性食品,栄養補助食品,サプリメント及び特定保健食品等の通常の食品より積極的な意味での保健,健康維持,健康増進等の目的をもった食品が挙げられる。
【0031】食品としては以下のようなものが挙げられ,これらの製造工程中の中間製品,又は最終製品にローヤルゼリーを混合又は噴霧等して,上記の目的に用いられる食品を得ることができる:コーヒー,ジュース及び茶飲料等の清涼飲料,乳飲料,乳酸菌飲料,ヨーグルト飲料,炭酸飲料,並びに,日本酒,洋酒,果実種及びハチミツ酒等の酒等の飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート,ドーナツ,パイ,シュークリーム,ガム,ゼリー,キャンデー,クッキー,ケーキ及びプリン等の洋菓子; 大福,餅,饅頭,カステラ,あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム,アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー,牛丼,雑炊,味噌汁,スープ,ミートソース,パスタ,漬物,ジャム,ハチミツ及びプロポリス等の調理済みの食品;ドレッシング,ふりかけ,旨味調味料及びスープの素等の調味料。
実施例】・・・【0033】高齢者(65歳〜92歳の男女)に酵素分解したローヤルゼリーを1年間飲用させ,筋力,骨密度及び骨質を測定した。詳細な方法を以下に示す。
【0034】対象 以下の条件を満たす者を対象とした。該当する対象者は全員で約190名であり,男女各90名以上であった。
1)65歳以上であり,かつ介護を受けておらず,アレルギー体質(食品アレルギー,喘息,アトピー性皮膚炎等)ではない者。
2)聴覚障害,視覚障害,うつ状態( 医師による診断又はSelf-rated Depression Scale(SDS)が45以上であることによって判断した。)及び認知症(医師による診断又はMini-Mental State Examination(MMSE)が18より下であることによって判断した。)を煩っておらず,ローヤルゼリーの服用に関する指導において意思の疎通ができること。
【0035】実施計画(1)対象者の募集と研究スケジュール 2011年6月〜2012年6月に中華人民共和国天津市にある三つの老人ホームから,参加者を老人ホームごとに募集した。その後,参加希望者に対し,説明文書を用いて研究の趣旨を説明し,研究に対する同意を得た。研究の同意を得た者に対して,後述する調査を実施した。また,対照群(プラセボ) ,低用量酵素分解ローヤルゼリー投与群(低投与群),及び高用量酵素分解ローヤルゼリー投与群(高投与群)の3群を設定し,ベースライン評価を行った次の月から介入(ローヤルゼリーの投与)を開始した。介入期間は12か月間(365日間)とした。
【0036】(2)ランダム割付 男女別に年齢及び筋力による層別化無作為割付比較試験(3重盲検) を行った。
対象者を無作為に以下の群に分けた。
a .対照群(プラセボ):男女合計67名(n=67)b .低投与群(酵素分解ローヤルゼリー:1.2g/日):男女合計65名(n=65)c .高投与群(酵素分解ローヤルゼリー:4.8g/日):男女合計69名(n=69)【0037】(3)測定項目介入前後に, (筋力) 骨密度 握力 , (超音波伝播速度Speed of Sound:SOS)及び骨質(超音波減衰係数Broad Ultrasound Attenuation:BUA) をそれぞれ測定した。
握力は,握力測定器(竹井機器工業株式会社製,グリップ-D(デジタル握力計)スメドレー式)を用いて測定した。
骨密度及び骨質は,超音波骨密度測定装置(Hologic,Inc.社製,HOLOGICSAHARA)を用いて,低周波超音波法(QuantitativeUltrasound法:QUS法) にて踵骨を測定した。
【0038】(4)介入内容 介入に用いたすべての物質は株式会社山田養蜂場製のものを用いた。対照群には トウモロコシから抽出したデンプンの加水分解物(デキストリン,1200mg/粒)が与えられた。ローヤルゼリーは,酵素分解したローヤルゼリー(1200mg/ 粒,)が用いられた。各群は,3回(朝,昼,夕)に分けて,1回当たり4粒(対照群: デキストリン4粒;低投与群:ローヤルゼリー1粒及びデキストリン3粒;高投与群:ローヤルゼリー4粒)を服用するよう指導を受けた。すなわち,各対象は,1日当たり12粒(対照群:デキストリン12粒;低投与群:ローヤルゼリー3粒及びデキストリン9粒;高投与群:ローヤルゼリー12粒)を服用した。
【0039】統計処理サンプルサイズの計算 予備試験の握力測定の結果に基づき,各群のサンプルサイズを算出した。また,性差は認められないと判断したため,サンプルサイズの計算は男女のデータを合わせて行った。予備試験の結果から,高投与群の握力は3か月間で平均して0.625キログラム増加し,対照群では平均して0.375キログラム減少していることが分かった。標準偏差を1.2,αエラーを0.05,検出力を0.80として計算すると,各群にそれぞれ25名の対象者が必要であるとの結果が得られた。さらに,脱落率を20%と推測し,結果として各群の対象者はそれぞれ約50〜60名ずつとなった。
【0040】全ての数値は,平均値±標準偏差又は平均値(95%信頼区間)で示した。統計的有意差の検定は,Tukeyの多重比較法を用いた。全ての統計解析には,Statistical Analysis System(SAS) Version9.1(SAS Institute Inc,USA)を用い,両側検定でのP<0.05を有意水準とした。
【0041】結果 各群における, (筋力)骨密度及び骨質の変化量を図1〜3にそれぞれ示す。
握力 ,1回当たり1200〜4800mgのローヤルゼリーをヒトに対して1日あたり3回経口投与することで,投与したローヤルゼリーの量に依存して,筋力(握力)が 増加することが分かった。骨密度,骨質については,1回当たり1200〜4800mgのローヤルゼリーをヒトに対して1日あたり3回経口投与することで,投与したローヤルゼリーの量に依存して,それらの減少が抑制されることが分かった。
【図1】 【図2】 【図3】 (2) 引用文献1 引用文献1には,以下の記載がある(甲1)。
【特許請求の範囲】 【請求項1】ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤。
【請求項2】さらに骨吸収抑制剤及び/又はカルシウム補充作用を有する食品素材を含有する請求項1に記載の老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤。
発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,骨粗鬆症の予防や治療に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤に関する。
【背景技術】【0002】 骨粗鬆症を基礎疾患に基づいて分類すると,明らかな原 因となる病気等がみられない原発性骨粗鬆症と,ステロイド剤の投与,糖尿病,卵巣摘出といった病気や疾患等が原因となり,子供や若者でもかかる続発性骨粗鬆症とに分けられる。原発性骨粗鬆症はさらに,年齢等に基づいて,若年性骨粗鬆症と,退行期骨粗鬆症(老人性/閉経後)とに分類される。若年性骨粗鬆症は,発生率は非常に低く,思春期に発症して自然に治ったり,青年期に発生して骨折を繰り返したりするケースもみられ,現在のところ原因が不明とされている。
【0003】 退行期骨粗鬆症は,閉経後骨粗鬆症(I型)と,老人性骨粗鬆症(II型)とに分類される。閉経後骨粗鬆症は,骨からのカルシウム吸収(破骨)を抑える女性ホルモン(エストロゲン)の欠乏が原因と考えられている。老人性骨粗鬆症は,加齢によって腸の働きが衰え,カルシウムの吸収率が落ちたり,腎臓の働きが弱まって,カルシウム吸収に必要な活性型ビタミンDの合成量が低下したりすることが原因と考えられている(非特許文献1参照)。
【0004】 近年,急速に進む高齢化に伴って退行期骨粗鬆症が大きな社会問題となってきている。
骨組織は,自身の形態変化や血中カルシウム濃度の恒常化を図るために,骨形成と骨吸収とによるリモデリング(骨代謝)を常に行っている。通常,健康な成人では,骨形成量と骨吸収量とのバランスが保たれており,骨重量の変化はほとんど見られない。骨粗鬆症は,骨形成量の低下又は骨吸収量の増加により骨重量の減少を起き起こし,それによって骨折を引き起こしやすくなる疾患である。骨粗鬆症の発症メカニズムを骨組織のリモデリングという観点から検討すると, (1)骨吸収の亢進による骨重量の減少(閉経早期の骨粗鬆症,甲状腺機能亢進に起因する骨粗鬆症等),(2)骨形成の低下による骨重量の減少(老人性骨粗鬆症,糖尿病性骨粗鬆症等),(3)骨吸収及び骨形成は正常であるが,カルシウム摂取不足等に起因して骨吸収量が骨形成量を上回ることによる骨重量の減少の3種類に分けられる。
【0005】 (1)に対する治療薬としてはエストロゲン,カルシトニン,ビスホスホネート誘導剤が主に使用されている。食品による予防という観点からは,エスト ロゲン様作用を持つ食用キノコ抽出物(特許文献1参照) 骨吸収抑制作用を示すざ ,くろ抽出物(特許文献2参照),カワラケツメイ抽出物(特許文献3参照)等が提案されている。また,特許文献4には,エストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するローヤルゼリー抽出物が開示されている。
(2)に対する治療薬としてはパラトルモン,アナボリック剤,フッ化物剤が主に使用されている。(3)に対する治療としてはカルシウムの補充が行われる。食品による予防という観点からは,カルシウム高含有食品,カルシウム吸収促進作用をもつ様々な素材が提案されている。
【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記(1)及び(3)に対しては,上記の食品等を摂取することにより,日々の骨粗鬆症予防を手軽に実施することができる一方で,上記(2)に対しては,予防効果の期待される食品素材に関する提案がなされていないのが現状である。骨形成を促進して骨代謝全体を活性化させることは,老人性骨粗鬆症や糖尿病性骨粗鬆症の予防や治療に限らず,閉経後骨粗鬆症を含む退行期骨粗鬆症全般に有効な予防効果をもたらし,明るい高齢化社会の実現に向けて大きく貢献することが期待される。
【0008】 本発明者らは,鋭意研究の結果,ローヤルゼリーに骨形成を促進させる作用を見出した。さらに,ローヤルゼリーに,骨基質の主要な蛋白質であり骨芽細胞の分化マーカーとして知られるプロコラーゲン1α1遺伝子の発現を高める作用があることも見出した。そして,これらの知見に基づいて,本発明を完成するに至った。
【0009】 本発明の目的とするところは,骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】【0010】 上記の目的を達成するために,請求項1に記載の老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤は,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とすることを要旨とする。
【0011】 請求項2に記載の老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤は,請求項1に記 載の発明において,さらに骨吸収抑制剤及び/又はカルシウム補充作用を有する食品素材を含有することを要旨とする。
【発明の効果】【0013】 本発明によれば,骨形成を促進させることにより骨粗鬆症の予防に有用な老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤を提供することができる。
【0020】骨粗鬆症予防剤は,医薬品,医薬部外品又は飲食品として利用される。
医薬品の場合,経口剤又は非経口剤として投与される。経口剤の剤形としては,錠剤,カプセル剤,散剤,シロップ剤,ドリンク剤等が挙げられる。非経口剤の剤形としては,軟膏剤,クリーム剤,水剤等の外用剤の他に注射剤等が挙げられる。医薬部外品の場合,錠剤,カプセル剤,ドリンク剤等の剤形で利用される。一方,飲食品の場合,ドリンク等の飲料品,飴,せんべい,クッキー等の食品,又は食品製剤として経口摂取される。飲食品には,食品製造上許容される基材,担体,賦形剤,添加剤,副素材,増量剤,着色剤,香料等が含有されていてもよい。食品製剤の剤形としては,粉末,錠剤,ドリンク剤,カプセル剤等が挙げられる。
【0021】 医薬品,医薬部外品及び飲食品中の有効成分の含有量はいずれも,好ましくは0.001〜100質量%,より好ましくは0.001〜50質量%,さらに好ましくは0.01〜30質量%である。前記有効成分の含有量が0.001質量%未満では骨形成を十分に促進することができない。また,飲食品は,骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく,一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである。飲食品の一日の摂取量が0.001g未満では,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されない。逆に,飲食品の一日の摂取量が30gを超えると,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮される一方で,摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済である。
実施例】【0024】 以下に実施例を示すが,これらの実施例は本発明をよりよ く理解するためのものであり,本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)中国産RJ凍結乾燥粉末をマウス・ラット・ハムスター用粉末飼料CRF-1(オリエンタル酵母株式会社製)に4%加えることにより,RJ混餌飼料を調製した。
【0025】(実施例2) 中国産生RJ1kgに95%容量エタノール2.5Lを加えて室温で2時間撹拌した後,吸引濾過した。この濾液を一次抽出液とする。一方,一次抽出液を採取した後の残渣に95%容量エタノール2Lを加えて室温で2時間撹拌した後,吸引濾過した。この濾液を二次抽出液とする。一次抽出液と二次抽出液とを混合し,減圧蒸留することにより溶媒を除去した後,CRF-1に4%加えることにより,RJ抽出物混餌飼料を調製した。
【0026】(試験例1:正常マウスに対する骨形成能評価)C57BLマウス(9週齢のメス)を日本エスエルシー株式会社より購入した。CRF-1による1週間の予備飼育後,マウスを4群(各群10匹)に分け,うち3群のマウスに対しそれぞれ,CRF-1からなる通常の飼料,4%RJ混餌飼料(実施例1)又は4%RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を2ヶ月間与えて自由に摂取させた。試験期間中,各群間で餌の摂取量に有意な差は認められなかった。なお,陽性対照として,通常の飼料を与えつつ,17β エストラジオール(シグマ社製,#E8875)を3μg/kg/日の投与量で2ヶ月間皮下投与(5日/週)した群も設けた。
【0027】 2ヶ月後,各群のマウスをそれぞれエーテル麻酔下で屠殺し,脛骨を摘出して真空乾燥した後,乾燥骨重量を測定した。さらに乾燥骨を600℃で3時間かけて灰化し,灰化重量を測定した。各群のマウス(各群10匹)について乾燥骨重量及び灰化重量の平均値±標準偏差を求め,結果を下記表1に示した。また,通常飼料群に対して各群のt-検定を行った結果も表1に示した。
【0030】【表1】【0031】表1に示すように,閉経後骨粗鬆症のモデルである比較例1では,RJ混餌飼料(実施例1)を与えても,灰化重量(カルシウム等のミネラル成分の重量)の増加は認められなかった。これに対し,試験例1では,RJ混餌飼料(実施例1)を与えることによって灰化重量の増加傾向が認められ,RJ抽出物混餌飼料(実施例2)を与えることによって灰化重量の有意な増加が認められた。従って,実施例1のRJ混餌飼料及び実施例2のRJ抽出物混餌飼料は,骨吸収の亢進(即ち閉経後骨粗鬆症)を抑える作用は強くなく,むしろ骨形成の低下を抑える作用,つまり老人性骨粗鬆症を予防及び改善する作用に優れていた。以上より,RJ及びRJ抽出物はいずれも,骨形成の促進を介して,骨粗鬆症の予防に優れた効果を発揮するとともに,老人性骨粗鬆症の予防及び改善に優れた効果を発揮することができる。
【0032】 さらに,本実施例では,大腿骨等に比べて測定時の骨重量のバラツキが小さく,個体全体の骨重量の増減を的確に反映し得る脛骨の乾燥骨重量及び灰化重量を測定した。このため,試験例1の実施例1,2で脛骨の骨重量(特に灰化重量)が増加したことは,特定の骨の重量のみが増加したことを意味するのではなく,個体全体の骨重量が生理的に増加したことを意味している点で極めて重要である。
なお,表1に示す乾燥骨重量は,灰化重量と蛋白質等の有機物の重量との和からな り,同じ群内のマウスでも個体間に大きなバラツキが見られたことに加え,骨粗鬆症では通常,骨密度(灰化重量)が問題にされることにより,参考程度に参酌すべきであると考えられる。
2 引用発明の認定 (1) 前記1(2)で認定した引用文献1の記載からすると,引用文献1には,以下のとおりの引用発明が記載されていると認められる。
「一日の摂取量として,ローヤルゼリーとしての重量換算で好ましくは0.001〜30gを経口摂取されるように用いられる,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤。」 (2) 原告の主張について ア 原告は,引用発明について, 「飲食品として利用され」という限定が必要であると主張する。
しかし,前記1(2)のとおり,引用文献1の段落【0020】には,「骨粗鬆症予防剤は,医薬品,医薬部外品又は飲食品として利用される。」と記載され,また,段落【0021】にも「医薬品,医薬部外品及び飲食品中の有効成分の含有量はいずれも,好ましくは0.001〜100質量%,より好ましくは0.001〜50質量%,さらに好ましくは0.01〜30質量%である。」と記載されていることからすると,引用文献1に記載されたローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤が飲食品に限定されないことは明らかである。そして,引用文献1の段落【0021】には, 「飲食品は,骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく,一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである。飲食品の一日の摂取量が0.001g未満では,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されない。逆に,飲食品の一日の摂取量が30gを超えると,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮さ れる一方で,摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済である。」との記載があるが,上記のとおり,段落【0021】には,医薬品,医薬部外品,飲食品のいずれについても,ローヤルゼリーの有効成分の含有量は同じであると記載されていること,引用文献1には,骨粗鬆症の予防のために効果的なローヤルゼリーの摂取量が,飲食品として摂取する場合と医薬品や医薬部外品として摂取する場合とで異なることを示す記載はなく,それらが異なる理由があるとも認められないことからすると,上記のローヤルゼリーの摂取量が飲食品として摂取する場合に限定されるものと解することはできないというべきである。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ 原告は,引用文献1の試験例1のマウスの体重及びローヤルゼリーの一日摂取量をヒトに置き換えると,例えば体重60kgの老人のローヤルゼリーの一日摂取量は404gとなるから,当業者は,ローヤルゼリーの一日摂取量として,引用文献1に記載された0.001〜30gでは,老人性骨粗鬆症の予防又は改善が可能であるとは推認せず,したがって,当業者は,引用発明を実施することができないと主張する。
(ア) しかし,前記1(2)で認定したとおり,引用文献1には, 「飲食品は,骨粗鬆症の予防のために定期的に経口摂取されることが好ましく,一日数回に分けて経口摂取されることが特に好ましい。一日の摂取量は,特に限定されるものではないが,ローヤルゼリーとしての重量換算で,好ましくは0.001〜30g,より好ましくは0.001〜20g,さらに好ましくは0.01〜10gである。飲食品の一日の摂取量が0.001g未満では,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮されない。逆に,飲食品の一日の摂取量が30gを超えると,骨粗鬆症に対する予防効果が十分に発揮される一方で,摂取量の増加分に見合う程の予防効果の増大が見られないため不経済である。」と記載されている(段落【0021】)ところ,本件証拠上,上記のローヤルゼリーの摂取量が不合理であるとの技術常識が存在すると認めることはできない。
(イ) また,前記1(2)のとおり,引用文献1では,試験例1として,マウスに対して4%RJ混餌飼料を投与して灰化重量を測定することにより,マウスの骨形成評価を行っているが(段落【0024】〜【0027】【0030】〜【003 ,2】,ヒトとマウスとでは,体の構造が異なる以上,マウスに対して効果的である )とされるローヤルゼリーの体重当たりの摂取量が,ヒトに対しても効果的であるということはできないから,上記試験例1におけるマウスの体重を推測し,その体重をヒトの体重に換算して,ヒトにおける効果的な摂取量を求めることはできないというべきである。したがって,上記の試験例1についての記載から直ちに,上記(ア)の記載があるにもかかわらず,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤において,ローヤルゼリーの一日の摂取量を0.001〜30gとすることが不合理であると理解することはできない。
(ウ) したがって,当業者が,ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤において,ローヤルゼリーの1日当たりの摂取量を0.001〜30gとする引用発明を実施できないとはいえず,この引用発明を認定できるというべきであり,原告の上記主張は理由がない。
ウ 原告は,引用文献1には,老人性骨粗鬆症の予防又は改善ができたことを示す臨床試験の結果は記載されていないから,当業者が引用発明を実施できないと主張する。
しかし,前記1(2)のとおり,引用文献1には,ローヤルゼリーが骨粗鬆症の予防や改善に有用であることが明記されている(段落【0008】〜【0013】 【0 ,021】〜【0023】)から,引用文献1に,ヒトについての臨床試験の結果が記載されていないとしても,引用文献1に接した当業者は,1日当たりの摂取量を0.001〜30gとするローヤルゼリーが骨粗鬆症の予防や改善に有用であることを認識するというべきであり,当業者が引用発明を実施できないとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。
3 一致点及び相違点 (1) 前記2で認定した引用発明と本願発明を比較すると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
a 一致点 ローヤルゼリーを含有する加齢性疾患及び身体機能低下の予防用組成物であって,前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の骨疾患又は骨密度低下である,ヒトに対して経口投与されるように用いられる,予防用組成物である点 b 相違点 (a) 相違点1 加齢性疾患及び身体機能低下が,本願発明においては, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」であるのに対し,引用発明においては,「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に相当する老人性骨粗鬆症であって, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下」については特定されていない点 (b) 相違点2 生ローヤルゼリー換算量で1日当たりのローヤルゼリーの投与量が,本願発明においては,600〜14400mgであるのに対して,引用発明においては,好ましくは0.001〜30gである点 (2) 原告は,@本願発明の加齢性運動器疾患等は,単なる骨粗鬆症等とは別の概念のものであるから,引用発明の「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」は,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下の予防用」であって「前記加齢性疾患及び身体機能低下が,加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」には相当しない,A見いだされた用途とその用途に使用するためのヒトにおける用量が技術的手段として別個独立のものであるという認識は当業者にはないから,本願発明の用途と用量を分断して,本願発明と引用発明を対比するのは誤りである,B運動器とは身体運動に関わる骨,筋肉などの総称であって,運動器がそれぞれ連携して働いており,どの一つが悪くても身体はうまく動かないというのが本願出願時の当業者の認識であるから,本願発明の加齢性運動器疾患等における「加齢性の 筋疾患又は筋力低下」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」は連携しており,本願発明の加齢性運動器疾患等を「加齢性の筋疾患又は筋力低下」と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に分断して,本願発明と引用発明とを対比するのは妥当ではない旨主張する。
ア しかし,前記1(1)のとおり,本願明細書の段落【0018】には, 「加齢性疾患及び身体機能低下( 以下, 「加齢性疾患等」という場合がある。)とは,加齢に伴う,筋肉量の減少,骨密度の低下,骨質の低下等の症状を示す加齢に伴う疾患及び身体機能低下を意味する。加齢性疾患等としては,例えば,加齢性筋萎縮症,及び筋力低下症状等の加齢性の筋疾患又は筋力低下,並びに,骨粗鬆症,及び骨粗鬆症による骨折等の加齢性の骨疾患又は骨密度低下が挙げられる。」と記載され,「加齢性疾患及び身体機能低下」として, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下」 (以下「加齢性筋疾患等」という。)と「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」(以下「加齢性骨疾患等」という。)が挙げられることが記載されているが,本願明細書においては,本願発明の「加齢性疾患及び身体機能低下」が,加齢性筋疾患等及び加齢性骨疾患等が統合された一つの疾患を意味することや,加齢性筋疾患等及び加齢性骨疾患等が連携していることは記載されておらず,また,その示唆もされていない。
むしろ,本願明細書の段落【0018】には,加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等が,上記のとおり,例示の中で並列的に記載されており,また,段落【0010】には, 「加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の筋疾患又は筋力低下であることが好ましい。」と,段落【0011】には,「加齢性疾患及び身体機能低下は,加齢性の骨疾患又は骨密度であることが好ましい。 と記載され, 」 加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等が別々に記載されていることからすると,本願発明における「加齢性疾患及び身体機能低下」とは,加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等を意味するが,これらは別個の疾患及び身体機能の低下であると理解されるというべきである。
本願明細書には,身体運動に関わる骨,筋肉の総称が運動器であるとの説明はなく,そもそも, 「運動器」という用語自体も記載されていないから,本願発明におけ る「加齢性疾患及び身体機能低下」が,加齢性運動器疾患等として,加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等とが連携したものと解することはできないというべきである。
そして,本願明細書の段落【0018】には,上記のとおり, 「加齢性疾患及び身体機能低下」の例示として, 「骨粗鬆症」が記載されていることからすると,引用発明の「老人性骨粗鬆症」は,本願発明の「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に相当するものであるということができる。
イ 前記(1)のとおり,相違点1と相違点2に分けて相違点を認定しても,相違点2におけるローヤルゼリーの投与量は,本願発明については, 「加齢性の筋疾患又は筋力低下,かつ加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に対して有効な摂取量を意味し,引用発明については, 「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に対して有効な摂取量を意味することは明らかであるから,ローヤルゼリーの用途と用量を分断して認定するものとはいえない。
ウ したがって,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,前記(1)のとおり認定することができ,原告の上記主張は理由がない。
4 相違点についての判断 (1) 相違点1について ア(ア) 引用文献2には,以下のとおりの記載がある(甲2)。
「健康・自然食品 ミツバチ産品の研究成果を発表 山田養蜂場は12月21日,岡山市内で「みつばち研究助成基金健康セミナー」を開催した。セミナーでは同基金に採択された助成研究者が,ミツバチ産品の新たな可能性について講演した。
東北大学大学院医工学研究科の牛凱軍准教授は,ローヤルゼリーの筋力低下抑制作用について,講演した。同准教授はローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーが,加齢による筋力の衰えを抑えるかをマウスを使って調べた。その結果,ローヤルゼリーが筋力の低下を抑え,増強させることが示された。ヒトでは圧力を高め,歩行 速度を上げることが分かった。そのことから,酵素分解ローヤルゼリーは筋力を保ち,体をスムーズに動かし,高齢者が自立した日常生活を送るのに役立つと期待されると述べた。(13頁中段12行〜下段10行) 」 (イ) 引用文献2の上記記載によると,引用文献2には, 「ローヤルゼリーはヒトにおいて,加齢による筋力の低下を抑え,増強させる作用を有すること」 (以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
イ 前記2(1)のとおり,引用発明は,ローヤルゼリーを有効成分とする老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤であり,また,前記アのとおり,引用文献2記載事項は,ローヤルゼリーは,加齢による筋力の低下を抑え,増強させるというものであるから,ローヤルゼリーを服用することにより,加齢による身体機能の低下を予防し,改善するという点で,両者は,技術分野,課題及び作用を共通にする。したがって,引用発明に引用文献2記載事項を適用し,ローヤルゼリーを有効成分とする,加齢性の骨疾患や骨密度の低下を予防するとともに,加齢性の筋疾患や筋力低下を予防する組成物とする動機付けが存在するものと認められる。
ウ 原告の主張について (ア) 原告は,本願発明の「ヒトの投与に適した加齢性運動器疾患等の予防用」という用途から特定保健用食品の開発にアプローチしようとする当業者が, 「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」の発明に着目することはない,素材としてのローヤルゼリーについては非常に多くの用途が提案されているところ,当業者がそれらのうちの「老人性骨粗鬆症の予防又は改善」に係る引用発明に着目すべき事情はないと主張する。
しかし,前記3(2)アのとおり,引用発明の「骨粗鬆症」は,本願発明の「加齢性の骨疾患又は骨密度低下」に相当するものであるから,引用発明に着目して本願発明に至ることは十分に考えられるところである。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(イ) 原告は,本願発明と引用発明とでは,技術分野,課題,作用が異なっ ている上,ローヤルゼリーの一日摂取量において共通性がないこと,引用発明は,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤として作ることができるかどうかが明らかではないこと,引用文献1には,加齢性運動器疾患等についての記載はないし,加齢による筋力の低下を抑え,増強することについての記載はないこと,多数あるローヤルゼリーの用途に関する発明の中から引用文献2に記載された発明に着目すべき事情はないことから,引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けはないと主張する。
しかし,前記イのとおり,引用発明と引用文献2記載事項とは,技術分野,課題及び作用を共通にしているというべきである。そして,このような共通性からすると,引用文献2には,ローヤルゼリーの一日摂取量の記載がないこと,ローヤルゼリーの用途に関する発明は多数あること,引用文献1に,引用文献2記載事項を適用することについて示唆がないことを考慮しても,引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けは存在するというべきである。
なお,引用発明は,老人性骨粗鬆症の予防又は改善剤として作ることができるかどうか明らかではなく,また,本願発明における「加齢性疾患及び身体機能低下」が,加齢性運動器疾患等として,加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等とが連携したものと解すべきであるとの原告の主張を採用することができないことは,前記2(2)イ及び3(2)アのとおりである。
(2) 相違点2について ア 前記1(1)のとおり,本願明細書には,ヒトを対象に,ローヤルゼリーの投与の有無及び量の差異による握力,骨密度及び骨質の変化の差異を測定する比較試験を行い,対照群としては,ローヤルゼリーを1日当たり3600mg投与した低投与群,1日当たり14400mgを投与した高投与群及び投与しなかった対象群を設定した旨の記載がある(段落【0033】〜【0041】)が,上記以外の投与量による比較試験の記載はなく,また,低投与群の6分の1の投与量である本願発明における投与量の下限値の有効性や,低投与群よりも良好な結果を残している 高投与群の投与量を超える投与量を特許請求の範囲から除外したことについて説明した記載はなく,その他に,特許請求の範囲で特定された摂取量の範囲の意義について説明する記載はないから,本願発明におけるローヤルゼリーの1日当たりの摂取量の範囲に臨界的意義は認められず,ローヤルゼリーの好ましい1日当たりの摂取量を定めたにすぎないものというべきである。
そして,このことに,老人性骨粗鬆症の予防のために有効なローヤルゼリーの摂取量よりも,同予防に併せて加齢性筋疾患等を予防するために有効なローヤルゼリーの摂取量の方が多くなることを認めるに足りる証拠はなく,本願明細書にも,加齢性筋疾患等及び加齢性骨疾患等の双方の予防のためのローヤルゼリーの有効な摂取量が,そのうちのいずれか一方の予防のための有効な摂取量よりも多くなるとは記載されていないこと,引用文献1には,骨粗鬆症の予防のためのローヤルゼリーの 1 日の摂取量は,0.001〜30gが好ましい旨の記載があるが,上記摂取量が,骨粗鬆症の予防に特有のものであるとは記載されていないこと(引用文献1の段落【0021】,本件証拠上,身体的機能の低下を予防するために効果的なロー )ヤルゼリーの摂取量が,その個々の予防目的によって相当に異なるという技術常識が存在するとも認められないことを併せ考慮すると,当業者にとって,引用発明におけるローヤルゼリーの1日当たりの摂取量を参考にして,加齢性骨疾患等の低下の予防のみならず,加齢性筋疾患等の低下の予防のために,ローヤルゼリーの1日当たりの摂取量を600〜14400mgと設定することは容易であるというべきである。
以上より,当業者は,相違点2の構成を容易に想到することができるというべきである。
イ 原告の主張について 原告は,本願発明におけるローヤルゼリーの摂取量の範囲は加齢性運動器疾患等の予防のためのものであるのに対し,引用発明におけるローヤルゼリーの摂取量の範囲は,老人性骨粗鬆症の予防のためのものであるから,両者における摂取量の範 囲が重なることはない旨の主張をする。
しかし,前記3(2)アのとおり,本願発明が,加齢性運動器疾患等として,加齢性筋疾患等と加齢性骨疾患等とが連携したものの予防を目的としていると認めることができず,前記アのとおり,当業者は,本願発明の摂取量の範囲を容易に想到できるというべきである。
5 効果について (1)ア 文献の記載 (ア) 「ローヤルゼリー食品規格基準」(財団法人日本健康・栄養食品協会,平成16年4月15日発行)甲8 ( 〔原告が特許庁に提出した意見書の参考資料1〕。
以下「甲8文献」という。)には,以下のとおりの記載がある。
「H摂取量(召し上がり量)[別表]に定める量をそれぞれ1日当たりの摂取量の目安とし,分かりやすい表現で記載する。(13頁25行〜27行) 」 (14頁) (イ) 原告が開設したウェブサイト(平成25年6月25日時点) (乙7。以下「乙7サイト」という。)には,以下のとおりの記載がある。
「酵素分解ローヤルゼリーキング 養蜂業を営んで半世紀以上,品質と鮮度にこだわった養蜂家のローヤルゼリーを1粒中に720mg(生換算)含有,またローヤルゼリーは独自の酵素分解技術によって,タンパク質を摂取しやすくしています。さらに副原材料にも,大豆イソフ ラボン,コーラルカルシウム,ゼイン,還元麦芽糖など,身体にやさしい天然由来素材を厳選してつくった自信作です。毎日が忙しい女性の健康維持におすすめです。
1包に1日の目安量3粒が入った,持ち運びに便利な分包タイプもご用意しております。」 イ 前記アのとおり,甲8文献には,ローヤルゼリーの1日の摂取量の目安として,500mg〜3000mgの摂取量が記載されている。
また,乙7サイトには,1粒中に720mgのローヤルゼリーを含有した商品について,3粒が1日の摂取量の目安であると記載されていることから,ローヤルゼリーの1日の摂取量の目安は2160mg(720×3=2160)であることが記載されていると認められる。
(2) 前記第2の2の本願の特許請求の範囲の記載及び前記1(1)の本願明細書の記載によると,本願発明の効果は,1日当たり600〜14400mgのローヤルゼリーをヒトに対して経口投与することにより,加齢性の筋疾患又は筋力低下及び加齢性の骨疾患又は骨密度低下を予防することができるというものであると認められる。
しかるところ,ローヤルゼリーが加齢性の骨疾患又は骨密度低下の予防に効果があることは,引用文献1の記載により,加齢性の筋疾患又は筋力低下の予防に効果があることは,引用文献2の記載により明らかである。
そして,前記4(2)アのとおり,本願発明におけるローヤルゼリーの1日当たりの摂取量の範囲に臨界的意義は認められず,また,前記(1)の認定に照らすと,本願発明におけるローヤルゼリーの1日当たりの摂取量は,本願出願当時知られていた摂取量を概ね含んだ範囲となっている。
そうすると,本願発明の上記効果は,予測することができない顕著なものということはできない。
(3) 原告の主張 原告は,加齢性骨疾患等の低下の予防のためのと,加齢性筋疾患等の低下の予防 のためとで,ローヤルゼリーの1日当たりの摂取量が同じになるという点で,本願発明の効果は格別顕著なものといえると主張する。
しかし,本件証拠上,身体的機能の低下を予防するために効果的なローヤルゼリーの摂取量が,その個々の予防目的によって相当に異なるという技術常識が存在するとは認められず,ローヤルゼリーは,その用途によって有効な摂取量が変わるとは必ずしもいえないというべきであるから,原告の主張する上記の点が本願発明の格別顕著な効果と認めることはできない。
結論
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 佐野信
裁判官 熊谷大輔
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