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事件 平成 30年 (ワ) 34728号 特許権に基づく損害賠償請求事件
5
原告株式会社東京精密
同訴訟代理人弁護士 半場秀
同 筬島裕斗志 10 同前田直哉
同 三縄隆
同 松村啓
同 補佐人弁理士石田良平 15 被告浜松ホトニクス株式会社
同訴訟代理人弁護士 設樂隆一
同 塚原朋一
同 松本直樹 20 同尾関孝彰
同 寺下雄介
同 石川裕彬
同 大澤恒夫
同訴訟代理人弁理士 長谷川芳樹 25 同柴田昌聰
同 補佐人弁理士小曳満昭 1
同 今村玲英子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2019/12/17
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
5 事 実 及 び 理 由第1 請求1 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を製造し,譲渡し,若しくは貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を廃棄せよ。
10 第2 事案の概要原告は,分割起点形成方法及び分割起点形成装置の特許に係る特許権者であるところ,SDレーザソー(別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告各製品」という。)が搭載された,ウェーハに所定の条件でレーザ光を照射するための装置),研削装置を含めたSDBGプロセス(「SDBG」とは,「Stealth15 Dicing Before Grinding」の略。 を実行するために必要な全ての装置) (ただし,エキスパンド装置を除く。)からなるシステム(以下「SDBGプロセス実行システムB」という。)は,上記特許に係る特許発明技術的範囲に属すると主張している。
そして,本件は,原告が,被告に対し,被告各製品の製造販売等は,特許法20 101条2号による間接侵害に該当するから,上記特許権を侵害するとみなされる旨主張して,上記特許権に基づき,被告各製品の製造,譲渡等の差止めを求めるとともに,上記侵害行為を組成したものであるとして,被告各製品の廃棄を求める事案である。
1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番25 号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様))。
(1) 本件特許2原告は,発明の名称を「分割起点形成方法及び分割起点形成装置」とする特許権(特許第6197970号。請求項の数は4である。以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。原告は,本件特許につき,平成29年1月6日に特許出願をし,同年9月1日にその設定登録を受けた。
5 (2) 本件発明本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,別紙特許公報の該当部分に記載されたとおりである(そのうち請求項3の記載を,以下「本件特許請求の範囲」といい,これに係る発明を「本件発明」という。 。
)(3) 構成要件の分説10 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などのようにいう。 。
)A 内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを分割するための分割起点形成装置において,B 前記ウェーハの前記改質領域を研削除去するための研削手段であって,15 C 前記改質領域から延びる微小亀裂を前記ウェーハの表面に露出させない状態で前記ウェーハの裏面を研削除去する研削手段を有する,D 分割起点形成装置。
(4) 被告の行為等ア 被告は,被告各製品(ただし,別紙被告製品20 0DS)については,下記イのSDレーザソーに搭載されていると認めるに足りる証拠はない。 を製造し,) 訴外株式会社ディスコ(以下「訴外会社」という。)に販売している(甲3,4)。被告各製品は,レーザ加工を行うためのレーザエンジンであるところ,レーザエンジンとは,レーザ光源,光学系ユニット,自動焦点ユニット及びこれらの制御装置から成り,制御25 装置による制御の下で,レーザ出射装置からウェーハに向けて所定の条件でレーザ光を出射することにより,ウェーハ内部に改質領域が形成される。
3イ 訴外会社は,被告各製品(ただし,前記アのとおり,別紙被告製品目録1(2)の製品を除く。 を搭載したSDレーザソー) (型番はDFL7361,DFL7362),研削装置(型番はDGP8761)その他SDBGプロセス実行に必要な全ての装置(ただし,エキスパンド装置を除く。)からな5 るシステム(SDBGプロセス実行システムB)を製造販売等している(甲4,乙15)。
2 争点間接侵害(特許法101条2号)の成否(1) SDBGプロセス実行システムBの直接侵害該当性(争点1)10 (2) 被告各製品が,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物(中略)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか(争点2)(3) 被告が,本件発明が特許発明であること及び被告各製品が本件発明の実施に用いられることを知っているか(争点3)3 争点に関する当事者の主張15 (1) 争点1(SDBGプロセス実行システムBの直接侵害該当性)【原告の主張】SDBGプロセス実行システムBは,本件発明の構成要件AないしDを全て充足するから,同システムBの製造販売等は直接侵害に該当する。構成要件C(「前記改質領域から延びる微小亀裂を前記ウェーハの表面に露出させ20 ない状態で前記ウェーハの裏面を研削除去する研削手段を有する,」との文言)を充足する理由は,次のとおりである。
すなわち,被告作成の動画(甲6)からすれば,微小亀裂はウェーハの表面に露出しておらず,また,被告推奨の加工条件(甲12のA)によれば,被告は,研削によっても微小亀裂がウェーハ表面に到達しない方法(甲1225 のA)を推奨している。この点,被告が指摘する差替予定の新動画(乙3)は信用性がなく,また,訴外会社の品質保証条件については,ステルスダイ4シング加工の段階で微小亀裂のウェーハ表面への到達が「可能」であることをいうものにすぎない。
【被告の主張】SDBGプロセス実行システムBは,少なくとも構成要件Cを充足しない5 から,同システムBの製造販売等は直接侵害に該当しない。このことは,微小亀裂のウェーハ表面への到達が明確に示されている,差替予定の新動画(乙3) 訴外会社の品質保証条件, (ステルスダイシング加工の段階で微小亀裂のウェーハの表面への到達が可能であること)から明らかである。原告が指摘する甲6の動画をみても,エキスパンド工程に先立ち微小亀裂がウェーハの10 表面に到達(露出)していることが表示されており,また,甲12も,SDBGプロセス実行システムBにおいて考えられる各方法とその特徴及び長所,短所を解説したものにすぎず,構成要件C充足の根拠となるものではない。
(2) 争点2(被告各製品が,本件発明に係る「物」 「生産に用いる物の (中略)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか)15 【原告の主張】ア SDレーザソー(被告各製品搭載)及び研削装置は,本件発明の「分割起点形成装置」を構成するものであるといえるから,被告各製品は,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物」に当たるといえる。このことは,本件明細書の記載(段落【0165】ないし【0168】【0170】な,20 いし【0184】等)にあるように,改質領域の形成からウェーハの分割までの一連のプロセスを実行する装置が全てそろって初めて技術的に意味があることから裏付けられる。
イ 本件発明が,ウェーハの切断の際に,チップが割れたりチップ断面から発塵したりするという不具合によって,安定した品質のチップが得られな25 いという問題点を解決するために,新たに開示した従来技術に見られない特徴的技術手段は,構成要件C 「前記改質領域から延びる微小亀裂を前記(5ウェーハの表面に露出されない状態で前記ウェーハの裏面を研削除去する」)の点にある。
しかして,そのためには,研削手段による研削の仕方だけでなく,レーザ光による改質領域及びこれから伸びる微小亀裂の作り込みが重要であ5 ることが明らかであるから,ウェーハの裏面を研削除去しても微小亀裂をウェーハの表面に露出させないことが可能となるような改質領域を形成するレーザ光は,本件発明の特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成に該当するといえる。
そうすると,このレーザ光を照射する被告各製品は,当該構成を直接も10 たらす特徴的な部材に当たるといえ,SDBGプロセス実行システムBは,被告各製品を用いることにより,本件発明の課題を解決するものであるから,被告各製品は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるといえる。
【被告の主張】15 ア 被告各製品は,本件発明に係る「分割起点形成装置」(研削装置)の「生産に用いる物」に当たらない。すなわち,本件特許請求の範囲の記載には,「分割起点形成装置」 「内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハは,を分割するための分割起点形成装置」であるというように,「形成した」と明記されており,その内部にSDレーザソーによりレーザ光で改質領域を20 形成したウェーハを加工対象物とすることは明らかであって,この加工対象物に対し,改めてSDレーザソーによる加工をすることはない。
イ 被告各製品は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たらない。すなわち,本件発明の特徴的技術手段は,「研削手段」の点にあって,改質領域形成手段(レーザエンジン)の点にはない。本件明細書において25 も,研削工程における微小亀裂の進展は,専ら研削工程におけるウェーハの熱膨張の調整により制御されるとされ,改質領域形成工程と研削工程に6おける微小亀裂の進展との間に有意な関連性はない。
(3) 争点3(被告が,本件発明が特許発明であること及び被告各製品が本件発明の実施に用いられることを知っているか)【原告の主張】5 被告は,遅くとも本件訴状の送達により,本件発明が特許発明であること及び被告各製品が本件発明の実施に用いられることを知ったものである。
【被告の主張】原告の上記主張は,争う。
第3 当裁判所の判断10 1 本件事案に鑑み,まず,争点2(被告各製品が,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物(中略)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるか)について判断する。
(1) 本件特許請求の範囲は,前記第2の1 のとおりであり,その構成要件Cは,「前記改質領域から延びる微小亀裂を前記ウェーハの表面に露出させな15 い状態で前記ウェーハの裏面を研削除去する研削手段を有する,」分割起点形成装置という文言の記載であるところ,本件特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には,発明の詳細な説明として,次の記載がある(甲2)。
ア 技術分野20 【0001】本発明は,内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハに分割起点を形成する(中略)分割起点形成装置に関するものである。
イ 背景技術【0002】特許文献1(判決注,特許第3624909号公報)には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザを照射して基板内部25 に改質領域を形成し,半導体基板の裏面にエキスパンドテープを装着し,エキスパンドテープの上からナイフエッジを当てて改質領域を基点とし7て基板を割ることで,半導体基板をチップに切断することが記載されている。
【0003】また,特許文献1には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザを照射して基板内部に改質領域を形成した後で基板を研5 削して薄くし,半導体基板の裏面にエキスパンドテープを装着し,エキスパンドテープを伸張させることで改質領域を基点として基板を割ることが記載されている。
【0004】特許文献2(判決注,特許第3762409号公報)には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザを照射して基板内部10 に改質領域を形成することで半導体基板の厚さ方向に割れを発生させ,基板の裏面を研削及びケミカルエッチングすることで割れを裏面に露出させることで,半導体基板をチップに切断することが記載されている。そして,特許文献2には,自然に或いは比較的小さな力,例えば人為的な力や基板に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることにより,15 改質領域から厚さ方向に割れが発生することが記載されている。
ウ 発明が解決しようとする課題【0006】特許文献1に記載の発明では,ナイフエッジにより局所的に外力を印加することで基板を割るが,この局所的に外力を印加するために曲げ応力やせん断応力を基板に付与させることになる。しかし,曲げ応力20 やせん断応力は基板全面に一様に分布させることは難しい。例えば,曲げ応力やせん断応力を基板にかける場合,どこか弱い点に応力が集中することになり,効率的に所望の部分に対して必要最低限の応力を一様に付与できない。
【0007】したがって,基板の割れにばらつきが生じ,割れが緩やかに25 進行しなかった場合には基板がチップ内においても破壊するという問題がある。また,基板を切断する部分に対して,局所的に順番に応力を与えて8切断していく場合,例えば一枚の基板から多数のチップを収集する場合などでは,多数の切断ラインが存在するため,生産性が非常に低下するという問題がある。
【0008】また,外力を印加して基板を割る場合に,基板を薄く加工し5 ていない場合には,ウェーハを割る際に非常に大きい応力を必要とするという問題がある。
【0009】特にレーザ加工の改質深さ幅に対して,基板厚みが充分厚い場合は,外力を印加しても,急激な外力の影響によって,基板に対してきれいに垂直に割断できるとは限らない。そのため,いくつかレーザパルス10 を基板の厚み方向に多段に照射するなどが必要な場合がある。
【0010】また,特許文献1,2に記載の発明では,レーザの照射により基板内部に形成された改質領域は,最終的にチップ断面に残ることとなる。そのため,チップ断面の改質領域の部分から発塵する場合がある。また,チップ断面部分が局所的に破砕した結果,その破砕した断面がきっか15 けとなって,チップが破断する場合もある。その結果,チップの抗折強度は小さくなるという問題点がある。
【0022】本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,安定した品質のチップを効率よく得ることができる(中略)分割起点形成装置を提供することを目的とする。
20 エ 課題を解決するための手段【0025】本発明(中略)に係る分割起点形成装置は,内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハに分割起点を形成する分割起点形成装置において,前記ウェーハの前記改質領域から延びる微小亀裂を残存させて前記改質領域を研削除去する研削手段を有する。
25 【0051】…本発明の方法においては,研削後(中略)においても,微小空孔が大きくなり亀裂が進展するものの,完全に基板は分割されていな9い。…【0052】…完全に分断されていない状態から亀裂をさらに進展させて完全に割断するためには,さらに割断する工程が必要となる。割断工程としては,ウェーハ裏面にエキスパンドテープを貼り付けた後,そのテープ5 を介して押圧部材を押圧して,局所的にウェーハに曲げ応力を与える。これにより,研削によって進展された亀裂を起点として,効率よく割断することが可能となる。
オ 発明の効果【0083】本発明によれば,割断が確実に効率よく行え,安定した品質10 のチップを効率よく得ることができる。
カ 発明を実施するための形態【0209】…本実施の形態によれば,研削によりレーザ光により形成された改質領域内のクラックを進展させることができるため,チップCの断面にレーザ光により形成された改質領域が残らないようにすることがで15 きる。そのため,チップCが割れたり,チップC断面から発塵したりするという不具合を防ぐことができる。したがって,安定した品質のチップを効率よく得ることができる。また,ウェーハの切断ラインに対して押圧部材の応力を集中させ,割断が確実に効率よく行うことが可能となる。さらに,ウェーハを載置する弾性体上に割断時の汚染を残さず,割断を連続し20 て行ってもウェーハに悪影響を及ぼさない。
(2) 以上を前提に,以下判断する。
ア 本件特許請求の範囲の記載をみると,本件発明に係る「物」である「分割起点形成装置」(構成要件A,D)は,「内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを分割するための」装置であるものであって,上記の「形25 成した」という記載文言からすれば,既にその内部にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを加工対象物として,その割断のための分割の起点10を形成する装置であることが明らかである。
このことは,本件明細書の各記載からも裏付けられる。すなわち,本件発明の課題は,チップ断面の改質領域の部分からの発塵やチップの破断等を防ぎ,抗折強度の高い,安定した品質のチップを効率よく得るようにす5 ることにあるところ(段落【0010】【0022】,本件発明は,研削, )後においても,微小空孔が大きくなり亀裂が進展するものの,完全に基板は分割されていない点に技術的特徴があり(段落【0051】,また,本)件発明の実施の形態によれば,研削によりレーザ光により形成された改質領域内のクラックを進展させることができるため,チップCの断面にレー10 ザ光により形成された改質領域が残らないようにすることができる(段落【0209】)というのである。これらによれば,本件発明は,その内部に既にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを対象として所定の加工等を行うに当たり,クラックの進展の程度を制御しようとする技術思想のものであることが認められる。
15 そうすると,SDレーザソーに搭載される被告各製品は,あくまでその内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを製作するためのものであり,本件発明に係る分割起点形成装置に対しては,その加工対象物を提供するという位置付けを有するものにとどまるというべきであるから,このような被告各製品をもって,同分割起点形成装置の生産に用いる物とい20 うことはできないというほかない。
したがって,被告各製品は,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物」に当たるということはできない。
イ また,上記のとおり,構成要件A,Dは,既にその内部にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを加工対象物として,その割断のための分割25 の起点を形成する装置であることを示すものであり,本件発明に係る上記技術思想を実現する構成を特定するものではないことからすれば,本件特11許請求の範囲の記載において,同技術思想について具体的に特定している構成は,構成要件B 「前記ウェーハの前記改質領域を研削除去するための(研削手段であって,)」 ,構成要件C(「前記改質領域から延びる微小亀裂を前記ウェーハの表面に露出させない状態で前記ウェーハの裏面を研削除5 去する研削手段を有する,)にいう「研削手段」であるものというべきで」ある。
そうすると,本件発明は,SDBGプロセス実行システムBを実現する複数の装置の中で,上記「研削手段」により,課題を解決する発明であると解されるものであって,本件発明において,課題解決手段による作用効10 果を直接もたらすものは,上記「研削手段」以外には存しないというべきであるから,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるものは,構成要件B,Cの「研削手段」であるというべきである。
しかして,SDレーザソーに搭載される被告各製品は,飽くまでウェーハ内部に改質領域を作るための装置であって,上記構成要件B,Cの「研15 削手段」を実現する装置ではない。そうすると,被告各製品は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるとはいえないというべきである。
ウ 以上のア,イによれば,被告各製品は,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物(中略)であってその発明による課題の解決に不可欠なもの」20 に当たるとはいえないというべきである。
(3) 原告の主張についてア 原告は,本件明細書の記載(段落【0165】ないし【0168】【0,170】ないし【0184】等)にあるように,改質領域の形成からウェーハの分割までの一連のプロセスを実行する装置が全てそろって初めて25 技術的に意味があるものであることからすれば,SDレーザソー(被告各製品搭載)及び研削装置は,本件発明の「分割起点形成装置」を構成する12ものであるといえ,被告各製品は,本件発明に係る「物」の「生産に用いる物」に当たるといえる旨主張する。
しかし,原告が指摘する本件明細書の記載(段落【0165】ないし【0168】【0170】ないし【0184】等)が,研削除去工程だけでな,5 く被告各製品が関わるレーザ改質工程についても触れたものとなっているとしても,本件特許請求の範囲の記載は,飽くまで「内部にレーザ光で改質領域を形成したウェーハを分割するための」(構成要件A),「分割起点形成装置」(構成要件D)というものであり,その記載文言上,既にその内部にレーザ光で改質領域が形成されたウェーハを加工対象物として,その10 割断のための分割の起点を形成する装置であることが,一義的に明確なものとなっているものと認められる。そうである以上,本件明細書の上記記載がレーザ改質工程についても触れたものとなっていることを指摘することによって,本件特許請求の範囲の記載文言から導いた前記認定を左右することはできないというべきである。
15 また,仮に,原告が指摘するように,改質領域の形成からウェーハの分割までの一連のプロセスを実行する装置が全てそろって初めて技術的に意味があるとしても,それぞれの工程を担う各装置自体は,不可分一体となっているものではなく,改質領域を形成したウェーハを製作するための装置,かかるウェーハに対して研削という加工をするための装置というよ20 うに,それぞれの各装置として具体的に把握できるものであって,上記の技術的な意味を指摘することから当然に,本件特許請求の範囲の記載文言から導いた上記認定が左右される根拠となるものとはいえない。
以上に照らせば,SDレーザソー(被告各製品搭載)及び研削装置が,本件発明の「分割起点形成装置」を構成するものであるとする根拠はない25 というほかなく,原告の上記主張は,採用することができない。
イ 原告は,本件発明の特徴的技術手段が,構成要件C(「前記改質領域から13延びる微小亀裂を前記ウェーハの表面に露出されない状態で前記ウェーハの裏面を研削除去する」 の点にあることは前提としつつも,) そのためには,研削手段による研削の仕方だけでなく,レーザ光による改質領域及びこれから伸びる微小亀裂の作り込みが重要であることが明らかであり,ウ5 ェーハの裏面を研削除去しても微小亀裂をウェーハの表面に露出させないことが可能となるような改質領域を形成するレーザ光は,本件発明の特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成に該当するから,このレーザ光を照射する被告各製品は,当該構成を直接もたらす特徴的な部材に当たるといえる旨主張する。
10 しかし,原告が指摘する,レーザ光による改質領域及びこれから伸びる微小亀裂の作り込みの重要性について検討しても,そもそも,本件発明の技術思想との関連で,研削工程と有意な関連性を有する改質領域形成手段(ウェーハの裏面を研削除去しても微小亀裂をウェーハの表面に露出させないことが可能となるような改質領域を形成するレーザ光)が備えるべ15 き具体的な構成,条件等についての説明は,本件明細書に何ら見当たらないところであって,原告の上記指摘は,明細書の記載に根拠を有しない主張といわざるを得ない。そうである以上,原告が指摘する上記改質領域形成手段が,本件発明の特徴的技術手段を特徴付ける特有の構成に該当するということはできないから,レーザ光によりウェーハ内部に改質領域を作20 るため,SDレーザソーに搭載される被告各製品は,本件発明に関して,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たるとはいえないものというべきである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
2 小括25 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件において,間接侵害(特許法101条2号)は成立しないものというべきである。原告14は,その他縷々主張するが,そのいずれを慎重に検討しても,上記説示を左右するに足りるものはなく,いずれも採用の限りでない。
3 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,5 主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官 田 中 孝 一10裁判官 横 山 真 通裁判官 奥 俊 彦1515(別紙)被告製品目録1 次の型番のレーザダイシング装置用のレーザエンジン5 (1) 800DS(2) 700DS2 株式会社ディスコが製造,販売するレーザダイシング装置(型番:DFL7362)に搭載される,波長1099nmのレーザ光を照射するレーザダイシング10 装置用のレーザエンジン15※ 別紙特許公報掲載省略16
事実及び理由
全容
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