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関連審決 無効2017-800037
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事件 平成 30年 (行ケ) 10092号 審決取消請求事件

原告 日本特殊陶業株式会社
同訴訟代理人弁理士 奥田誠
同 冨田泰久
被告株式会社デンソー
同訴訟代理人弁理士 岩倉民芳
同 高橋起
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2019/10/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2017-800037号事件について平成30年6月5日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 ? 被告は,平成25年9月25日,発明の名称を「ガスセンサ」とする発明について特許出願(優先権主張:平成24年11月20日,日本国)をし,平成27年6月26日,設定の登録を受けた(特許第5765394号。甲1。請求項の数5。以 下「本件特許」という。。
) (2) 原告は,平成29年3月15日,これに対する無効審判を請求し(甲19),無効2017-800037号事件として係属した。
被告は,平成30年3月7日付けで,本件特許の請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正請求をした(請求項5の削除を含む。以下「本件訂正」という。
甲34)。
(3) 特許庁は,平成30年6月5日,「特許第5765394号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。特許第5765394号の請求項1ないし4に係る発明についての特許の審判請求は,成り立たない。特許第5765394号の請求項5に係る発明についての特許の審判請求を却下する。 との 」別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月14日,原告に送達された。
(4) 原告は,平成30年7月12日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前 本件訂正前(設定登録時)の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は,以下のとおりである(甲1) なお, 。 文中の「/」 原文の改行箇所を示す は, (以下同じ。。
)以下,各請求項に係る発明を「本件訂正前発明1」などという。
【請求項1】被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/ 該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,/ 該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/ 上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられており,/ 上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該イ ンナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/ 該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており,/ 上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)が設けられており,/ 上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/ 上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあることを特徴とするガスセンサ(1)。
【請求項2】上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向先端位置(C2)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ(1)。
【請求項3】上記インナカバー(4)には,上記インナ導入開口部(42)の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側(X2)へ流れるようにするルーバー部(44)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項4】上記ルーバー部(44)は,上記インナ導入開口部(42)の軸方向先端側(X1)の端部(421)から上記インナカバー(4)の内側に折り曲げられ,軸方向基端側(X2)に向かって形成されていることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ(1)。
【請求項5】上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサ(1)。
(2) 本件訂正後 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,以下のとおりである(甲34。下線部は本件訂正による訂正箇所である。。以下,各請求項に係る発明 )を「本件発明1」などという。本件特許の明細書(甲1,34)を,以下,図面を含めて,「本件明細書」という。
【請求項1】多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,/該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられており,/上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており,/上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられており,/上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり,/上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42) より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されていることを特徴とするガスセンサ(1)。
【請求項2】上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向先端位置(C2)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ(1)。
【請求項3】上記インナカバー(4)には,上記インナ導入開口部(42)の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側(X2)へ流れるようにするルーバー部(44)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項4】上記ルーバー部(44)は,上記インナ導入開口部(42)の軸方向先端側(X1)の端部(421)から上記インナカバー(4)の内側に折り曲げられ,軸方向基端側(X2)に向かって形成されていることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ(1)。
(3) 本件発明1の構成要件の分説 本件発明1を発明特定事項ごとに分説すると,以下のとおりである。
構成P:多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって, 構成A:被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と, 構成B:該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と, 構成C:該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え, 構成D:上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられており, 構成E:上記素子カバー(3)は, 構成E1:上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と, 構成E2:該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し, 構成F:該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており, 構成G:上記インナカバー(4)には, 構成G1:該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と, 構成G2:インナ排出開口部(43)が設けられており, 構成H:上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり, 構成I:上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり, 構成N:上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり, 構成X:上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている 構成J:ことを特徴とするガスセンサ(1)。
3 本件審決の理由の要旨 ? 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件訂正を認めた上で,本件発明1ないし4は,@下記アの引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものではない,A下記イの引用例2に記載 された発明に基づいて容易に発明することができたものではない,B特許法36条6項2号に規定する要件に適合するから,明確性要件に違反しない,C同条6項1号に規定する要件に適合するから,サポート要件に違反しない,などというものである。
ア 引用例1:特開2007-316051号公報(甲5) イ 引用例2:特開2012-211858号公報(甲14) ? 本件訂正に係る訂正事項5は,特許請求の範囲の請求項1に「ことを特徴とするガスセンサ(1)」とあるのを, 。 「上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されていることを特徴とするガスセンサ(1)」に訂正するというものである。以下, 。 「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)」を「訂正事項5-1」といい, 「上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,…上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている」を「訂正事項5-2」という。
(3) 本件審決が認定した引用例1実施例2に記載された発明(以下「引用発明1A」という。,本件発明1と引用発明1Aとの一致点及び相違点は,次のとおりで )ある。
ア 引用発明1A 自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置するガスセンサ1であって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ素子2と,該ガスセンサ素子2を内側に挿通するハウジング3と,該ハウジング3の先端側に固定された素子カバー4とを有し,/素子カバー4は,インナーカバー41と該インナーカバー41の外周に配置されたアウターカバー42との二重構造を有し,/アウターカバ ー42は,側面部に外側開口部421を設けてなると共に,該外側開口部421よりも先端側に排出用開口部422を設けてなり,/インナーカバー41は,外側開口部421よりも先端側となる位置に内側開口部411を設けてなり,/インナーカバー41は,素子カバー4の外部に開口する先端開口部412を,先端部に形成してなり,/インナーカバー41は,先端側へ行くほど縮径するテーパ形状の内側径変部413,414を,軸方向の2箇所に形成してなり,基端側の内側径変部413に,上記内側開口部411が穿設されてなり,/ガスセンサ素子2は,ジルコニアを主成分とする固体電解質体の一方の面と他方の面とに基準ガス側電極及び被測定ガス側電極とを設けてなり,/内側開口部411は,アウターカバー42の外側開口部421と排出開口部422との略中間位置に形成されてなり,/側方から流れて来る被測定ガスGは,外側開口部421からアウターカバー42とインナーカバー41との間に導入され,排出用開口部422から排出され(G1),また,アウターカバー42とインナーカバー41との間に導入された被測定ガスの一部(G2)が,更に内側開口部411からインナーカバー41の内部に導入され,ガスセンサ素子2に到達する,/ガスセンサ1。
イ 一致点 多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,/該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており,/上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42) インナ排出開口部 と, (43)が設けられており,/上記アウタカバー(5) の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている,ガスセンサ(1)。
ウ 相違点 (ア) 相違点12,19 センサ素子(2)及びインナ導入開口部(42)について,本件発明1では, (構成D) 「上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられ」,構成G1のインナ導入開口部(42)が,上記センサ素子(2)の「上記ガス導入部(271)」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるのに対し,引用発明1Aでは,ガスセンサ素子2の先端部に「ガス導入部」を設けているかの特定がないため,内側開口部411が,上記ガスセンサ素子2の「上記ガス導入部」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるかも特定されない点。
(イ) 相違点13,20 センサ素子(2)のガス導入部(271)と,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)との軸方向位置関係について,本件発明1では, (構成H) 「上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあ」るのに対し,引用発明1Aでは,この位置関係についての特定がない点。
(ウ) 相違点14,21 センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)と,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)との軸方向位置関係について,本件発明1では, (構成I) 「上記セン サ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあ」るのに対し,引用発明1Aでは,この位置関係についての特定がない点。
(エ) 相違点15,22 被測定ガスの流れについて,本件発明1では,インナ導入開口部(42)からインナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,(構成X)「まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ」るように構成されているのに対し,引用発明1Aでは,この流れについての特定がない点。
(4) 本件審決が認定した引用例1実施例3に記載された発明(以下「引用発明1B」という。,本件発明1と引用発明1Bとの一致点及び相違点は,次のとおりで )ある。
ア 引用発明1B 自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置するガスセンサ1であって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ素子2と,該ガスセンサ素子2を内側に挿通するハウジング3と,該ハウジング3の先端側に固定された素子カバー4とを有し,/素子カバー4は,インナーカバー41と該インナーカバー41の外周に配置されたアウターカバー42との二重構造を有し,/アウターカバー42は,側面部に外側開口部421を設けてなると共に,該外側開口部421よりも先端側に排出用開口部422を設けてなり,/インナーカバー41は,外側開口部421よりも先端側となる位置に内側開口部411を設けてなり,/インナーカバー41は,素子カバー4の外部に開口する先端開口部412を,先端部に形成してなり,/インナーカバー41は,先端側へ行くほど縮径するテーパ形状の内側径変部413,414を,軸方向の2箇所に形成してなり,基端側の内側径変部413に,上記内側開口部411が穿設されてなり,/ガスセンサ素子2は,ジルコニアを主成分とする固体電解質体の一方の面と他方の面とに基準ガス側電極及び被測定ガス側電極とを設けてなり,/ガスセンサ素子2の先端位置は,インナーカバ ー41の内側開口部411よりも先端側にあり,/インナーカバー41における内側径変部413の複数箇所に凹部417を設け,該凹部417の基端を開口させることにより,内側開口部411を形成し,即ち,いわゆるルーバー形状の内側開口部411とし,/側方から流れて来る被測定ガスGは,外側開口部421からアウターカバー42とインナーカバー41との間に導入され,排出用開口部422から排出され(G1),また,アウターカバー42とインナーカバー41との間に導入された被測定ガスの一部(G2)が,更に内側開口部411からインナーカバー41の内部に導入され,ガスセンサ素子2に到達する,/ガスセンサ1。
イ 一致点 多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,/該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており,/上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられており,/上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり,/上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記 インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている,ガスセンサ(1)。
ウ 相違点 (ア) 相違点10 センサ素子(2)及びインナ導入開口部(42)について,本件発明1では, (構成D) 「上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられ」,構成G1のインナ導入開口部(42)が,上記センサ素子(2)の「上記ガス導入部(271)」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるのに対し,引用発明1Bでは,ガスセンサ素子2の先端部に「ガス導入部」を設けているかの特定がないため,内側開口部411が,上記ガスセンサ素子2の「上記ガス導入部」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるかも特定されない点。
(イ) 相違点11 センサ素子(2)のガス導入部(271)と,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)との軸方向位置関係について,本件発明1では, (構成H) 「上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあ」るのに対し,引用発明1Bでは,この位置関係についての特定がない点。
(5) 本件審決が認定した引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という。, )本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 引用発明2 多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサ10であって,/対象ガスが含有する成分の濃度を検出するためのセンサ素子21と,/センサ素子21を保持するハウジングと,/該ハウジングの先端側に,センサ素子21を覆うように設けられ,その内部に対象ガスを導入する導入孔32を有するカバー31と,/カバー31の下流側の外面の一部を覆うように設けられたガイド壁51と,/センサ素子21とカ バー31との間に,該ハウジングの先端側に,センサ素子21を覆うように設けられ,その内部にセンサ素子21に到達させる対象ガスを導入する内側導入孔と,内側排出孔とを有する内側カバー41とを備え,/前記内側カバー41には,前記内側導入孔の内側において,ルーバー部が設けられており,/前記導入孔32は,前記内側導入孔よりも基端側にあり,前記内側排出孔は,前記内側導入孔よりも先端側にあり,/上記センサ素子21の先端位置は,上記内側導入孔よりも先端側にあり,/前記内側導入孔から前記内側カバー41内に導入された対象ガスは,まず,基端側へ向かって流れる,/ガスセンサ10。
イ 一致点 多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/該センサ素子(2)を保持するハウジング(13)と,/該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており,/上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられており,/上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり,/上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口 部(43)に向けて流れるように構成されている,ガスセンサ(1)。
ウ 相違点 (ア) 相違点4 センサ素子(2)を保持するハウジング(13)は,本件発明1では,センサ素子(2)を「内側に挿通して」保持する(構成B)のに対し,引用発明2では,その具体的な保持手段についての特定がない点。
(イ) 相違点5 センサ素子(2)及びインナ導入開口部(42)について,本件発明1では, (構成D) 「上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられ」,構成G1のインナ導入開口部(42)が,上記センサ素子(2)の「上記ガス導入部(271)」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるのに対し,引用発明2では,センサ素子21の先端部に「ガス導入部」を設けているかの特定がないため,内側導入孔が,上記ガスセンサ素子21の「上記ガス導入部」に到達させる被測定ガスを導入するためのものであるかも特定されない点。
(ウ) 相違点6 センサ素子(2)のガス導入部(271)と,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)との軸方向位置関係について,本件発明1では, (構成H) 「上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあ」るのに対し,引用発明2では,この位置関係についての特定がない点。
4 取消事由 (1) 訂正要件の判断の誤り(取消事由1) ア 訂正事項5-1の判断の誤り イ 訂正事項5-2の判断の誤り (2) 本件発明1について ア 明確性要件の判断の誤り(取消事由2) イ サポート要件の判断の誤り(取消事由3) ウ 引用発明1Aを主引用例とする進歩性判断の誤り(取消事由4) エ 引用発明1Bを主引用例とする進歩性判断の誤り(取消事由5) オ 引用発明2を主引用例とする進歩性判断の誤り(取消事由6) (3) 本件発明2ないし4についての進歩性判断の誤り(取消事由7)
当事者の主張
1 取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 訂正事項5-1の判断の誤り ア 訂正事項5-1は,構成Xのうちの, 「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)」との構成を加入するものであり,インナ導入開口部(42)を基準として上記インナ排出開口部(43)の軸方向位置を決めるものである。
本件審決は,訂正事項5-1の「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)を含み,構成Hを備えた請求項1のガスセンサ」は, 「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)を含み,構成H以外の全ての構成を備えているガスセンサ」よりも,いわば相対的な効果を奏するガスセンサといえ,新たな技術上の意義は追加されていないから,訂正事項5-1は,新規事項の追加ではないと判断した。
イ しかし,本件明細書には, 「インナ底面部415には,インナ排出開口部43が設けられている。」点は記載されているが, 「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)」についての明示的記載はない。また, 「軸方向基端側X2から順にインナ導入開口部42,インナ排出 開口部43が設けられていること」についても明示的記載はない。
また,本件発明1は,インナ導入開口部42とインナ排出開口部43の配置順を定めることにより,本件発明の課題を解決するものではないから,当業者は,本件明細書の図1,2を見ても,ガスセンサ1におけるインナ導入開口部42とインナ排出開口部43との「配置順」が記載されているとは理解しない。したがって, 【0043】の記載及び図1,2,12のガスセンサの形態や技術常識から, 「上記インナ排出開口部(43)は,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられている」との技術的事項が自明であるとはいえない。
ウ 図1,2に記載のガスセンサ1を変形し,インナ排出開口部43を,インナカバー4のうち,インナ底面部415でなく,インナ導入開口部42より軸方向先端側X1に位置する他の部位に設けたガスセンサ(仮想ガスセンサ)は,実施例1のガスセンサ(図2のガスセンサ)と比べて,インナカバー4内を流れる被測定ガスGの流れの形態(流路,軌跡)が同等でなく,気筒間インバランスを検出する応答性が大幅に劣る。本件発明1に構成X1を加入すれば,本件発明の課題を解決し得ないかかる仮想ガスセンサまで含まれることになるが,当業者は,このような形態まで本件明細書に記載されているとは理解しない。
エ 以上によれば,訂正事項5-1に係る訂正は,新規事項の追加である。
(2) 訂正事項5-2の判断の誤り ア 訂正事項5-2は,構成Xのうち, 「上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,…上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている」との構成を加入するものであり,ガスセンサの構成をインナカバー(4)内に導入された被測定ガスの流れで規定するものである。
イ しかし,本件明細書には,被測定ガスの「流れ」が, 「主流れ」である場合について明示的に記載されているが, 「傍流,拡散など」である場合について,明示的な記載はない。
ルーバー部を設けないガスセンサでは, 「傍流,拡散など」の被測定ガスの「流れ」が,構成X2に規定する形態で流れるとしても,ルーバー部を設けないガスセンサは, 「被測定ガスの多くを,インナ導入開口部からルーバー部を介してインナカバー内の軸方向基端側へ流れ込ませることが」できず, 「インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離をより適切に短くすることが」できないものとなり,応答性が大幅に低下するから,本件発明に含まれない。
そうすると, 「傍流,拡散など」の被測定ガスの「流れ」が,訂正事項5-2に規定する形態で流れるガスセンサが,本件明細書から自明であるとはいえない。
ウ よって,訂正事項5-2を加入し,被測定ガスGの「流れ」が「傍流,拡散など」である場合まで本件発明に含めることは,新たな技術的事項を導入するものであり,新規事項の追加である。
〔被告の主張〕 (1) 訂正事項5-1について 本件明細書に記載された事項に接した当業者であれば, 「インナ排出開口部(43)」と「インナ導入開口部(42)」との配置関係については,「インナ排出開口部(43)」が「インナ導入開口部(42)」より軸方向先端側(X1)に設けられていることが理解できる。
したがって,訂正事項5-1は,本件明細書に記載された範囲において行う事項である。
なお,原告のいう「仮想ガスセンサ」が訂正後の本件発明1に含まれていると解釈するのであれば,それは本件訂正前から含まれていたこととなるから,訂正事項5-1に係る訂正によって, 「仮想ガスセンサ」を含む範囲が追加されたという主張は,成り立たない。
(2) 訂正事項5-2について 本件明細書に記載された事項に接した当業者であれば,「上記インナ導入開口部 (42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,…上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている」ことが理解でき,従来の仕様のガスセンサにおいても存在していた, 「被測定ガスの流れ」を見える形として特定したものと理解できることから,新たな技術上の意義は追加されていない。
したがって,訂正事項5-2は,本件明細書に記載された範囲において行う事項である。
2 取消事由2(明確性要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 「被測定ガスの流れ」についての明確性要件違反 本件発明1は,気筒間インバランスの検出精度を高めることができ,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供するとの課題を達成できるものであるから,構成Xにおける「被測定ガスの流れ」の形態は,かかる課題を達成できる形態でなければならない。
構成Hは,図2のルーバー部44を有するガスセンサを用いた実施例3の調査結果及び図15のグラフから得たものであり,構成Xの「被測定ガスの流れ」が「主流れ」である場合に得た結果である。
一方,本件明細書には,構成Xが「主流れ」ではなく, 「傍流,拡散など」であるガスセンサについて,調査を行ったとの記載はない。
「ルーバー部なしの図2のガスセンサ」では,センサ素子2のガス導入部271に到達する被測定ガスは, 主流れ」 「によるものではなく, 「傍流,拡散など」の「流れ」によるものとなるが,その場合に,構成Hの規定を定立できるとは考えられないし,本件明細書にもそのような記載はない。
本件発明1は,構成Xに記載する被測定ガスの「流れ」を, 「主流れ」に特定する必要があるにもかかわらず,その記載がないのであるから,不明確である。
(2) 「被測定ガスの流れ」と「被測定ガスの到達」についての明確性要件違反 構成Xは,「被測定ガスの流れ」を,「まず,軸方向基端側(X1)へ向かって流れ,その後,…上記インナ排出開口部(43)に向けて流れる」と規定するが,センサ素子のガス導入部との関係についての記載はない。一方,構成G1では,インナ導入開口部(42)が,センサ素子(2)のガス導入部(27)に到達させる被測定ガスをインナカバー(4)内に導入するためのものであることを規定しているが,被測定ガスの「流れ」との関係,特に「流れ」の種類や形態との関係についての記載はない。
被測定ガスの「流れ」としては,例えば, 「主流れ」と, 「傍流,拡散など」の複数の流れが考えられる。また,軸方向に同位置あるいは異なる位置に複数のインナ導入開口部を設けた場合も,これらから導入される被測定ガスの流れは複数になる。
本件発明1のうち,構成Xでは,ある「被測定ガスの流れ」の形態が規定されている一方,構成Gでは,センサ素子のガス導入部への「被測定ガスの到達」が規定されるに止まる。そのため,構成Xで規定された形態に「流れた」被測定ガスが,センサ素子のガス導入部へも「到達」するのか,それとも,構成Xで規定された形態に「流れた」被測定ガスとは異なる別の流れによる被測定ガスが,センサ素子のガス導入部へ「到達」するのか不明確である。
(3) 「インナ導入開口部」についての明確性要件違反 本件発明のガスセンサには,インナカバーに複数のインナ導入開口部を有しており,特に,複数のインナ導入開口部の軸方向位置が互いに異なるガスセンサも包含していることが理解できる。
一般に,複数のインナ導入開口部の軸方向位置が互いに異なるガスセンサにおいては,一部のインナ導入開口部から導入される被測定ガスは,ガス導入部に到達するが,残りはガス導入部に到達しない。
したがって,複数のインナ導入開口部のうち,構成Hを充足するインナ導入開口部からの被測定ガスが,センサ素子のガス導入部に到達するならば,構成G1をも充足することになるが,構成Hを充足しないインナ導入開口部からの被測定ガスの みが,センサ素子のガス導入部に到達する場合には,当該ガスセンサは構成G1を充足しない。
このようなガスセンサにおいて,本件発明1を充足しているか否かを判別する手法は不明確であるから,本件発明1は不明確である。
〔被告の主張〕 (1) 「被測定ガスの流れ」についての明確性要件違反 本件発明1及び本件明細書の記載においては,ガス濃度検出が十分にできない程度の流れは一切想定しておらず,本件発明1は,当然にガス濃度検出が十分にできる量の流れを前提とした上で,ガス導入部等の位置関係を調整して完成させたものである。本件明細書の記載に接した当業者は,構成Xについては,ガス濃度検出が十分に可能な量の流れを前提としており,その上で,最適な配置関係を適用することが明確に理解できる。
したがって,本件発明1においては, 「構成Xの被測定ガスの流れが,センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達すればよい」のであって,被測定ガスの流れの形態の特定は必要ではないから,この記載がないことにより不明確とはいえない。
(2) 「被測定ガスの流れ」と「被測定ガスの到達」についての明確性要件違反 本件発明1には,構成Xの流れが存在しているにもかかわらず,その流れに含まれる被測定ガスが構成Hを具備するガス導入部に到達しない態様は含まれていない。
本件発明1における, 「被測定ガスの到達(構成G1) と, 」 「被測定ガスの流れ(構成X)」との関係については, 「構成Xの被測定ガスの流れが,センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達すればよい」という関係にあることが,当業者であれば容易に理解できるのであって,不明確性が生じる余地はない。
(3) 「インナ導入開口部」についての明確性要件違反 構成G1は,「インナ導入開口部」の本来の機能をそのまま表現したものであり,何ら不明確性はない。
3 取消事由3(サポート要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 実施例と異なる形態のガスセンサを含むことについてのサポート要件違反 ア 本件明細書には,従来のガスセンサでは,気筒間インバランスを検出する応答性が十分でないという課題を解決し,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を高めることができ,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサとするために,請求項1に記載の構成を採用したことが記載されている。
しかし,その具体例としては,本件図1,2の構成を有し,軸方向距離aのみ異ならせた複数のガスセンサ(実施例3のガスセンサ)の記載があるにすぎない。
本件発明1には,その文言上,インナ排出開口部43をインナ導入開口部42よりも軸方向先端側の他の部位(インナ第2側面部413)に設けた形態のガスセンサ,複数のインナ導入開口部42をインナカバー4の軸方向に異なる位置に設けた形態のガスセンサ,インナ導入開口部42にルーバー部44を設けない形態のガスセンサも含まれる。しかし,本件明細書には,これらの形態のガスセンサについて,構成H(a>0)の範囲とすれば,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサとできることは,記載されていない。
インナカバーの底部以外にインナ排出開口部を配置した「仮想ガスセンサ」の応答性は,図2のガスセンサよりも大幅に低下するはずであり,インナ排出開口部(43)の位置によっては,気筒間インバランスを検出する応答性をすら有しないガスセンサとなる場合があるから,本件発明1の作用効果を奏し得ない場合を含むことになる。また,当初からのインナ導入開口部42に加えて,他のインナ導入開口部をも設けたインナカバー4を有するガスセンサでは,構成Hを備えても,気筒間インバランスを検出する応答性が向上しないガスセンサとなる場合があるから,本件発明1の作用効果を奏し得ない場合を含むことになる。さらに,インナ導入開口部42にルーバー部44を設けないガスセンサでは,構成Hを備えたガスセンサの方が構成Hを備えないガスセンサに比して,相対的に応答性が劣り,本件発明1の作 用効果を奏するはずはない。
以上によれば,サポート要件違反は明らかである。
イ 構成Hは実施例3及び図15の調査結果を根拠に定立された構成であるが,この調査結果は,調査に用いたガスセンサのインナカバー(4)及びセンサ素子(2)の径方向寸法に影響される。構成Hで規定する範囲が,適切となる径方向寸法を規定しなければ,本件発明1に,その効果を奏しない範囲を含むことになるから,サポート要件違反である。
(2) 構成Xに規定する被測定ガスの「流れ」についてのサポート要件違反 ア 本件発明1では,センサ素子のガス導入部に到達する被測定ガスと,構成Xで規定される形態に流れる被測定ガスとが,どのような関係になっているのか明らかではない。したがって,構成Xに規定する被測定ガスの流れが,センサ素子(2)のガス導入部(271)に到達すると決めつけることはできず,別の流れによる被測定ガスが到達する態様についても考慮する必要がある。
後者の場合には,ガスセンサの応答性は低下するから,本件発明の課題を解決することはできず,サポート要件違反である。
イ 本件発明1では,構成Xにおいて被測定ガスの流れの量や流速については規定していない。被測定ガスの流れが少量で遅くセンサ素子(2)のガス導入部(271)に到達する本件発明1のガスセンサでは,応答性が大幅に低下し,気筒性インバランスを検出できる応答性を有していない場合もあるから,その効果を奏しないものを含んでおり,サポート要件違反である。
(3) ガスセンサの用途に関するサポート要件違反 本件発明1は, 「気筒間インバランスを検出できる応答性を有している」ガスセンサであることが前提であるが,本件明細書にも請求項1にも,当該ガスセンサを気筒間インバランスの検出が可能なガスセンサとするための構成は記載されておらず,本件発明1を充足しても,必ずしも気筒間インバランスの検出が可能なガスセンサになるとはいえない。したがって,本件発明1には,その課題を解決し得ないガス センサも包含されるから,サポート要件違反である。
〔被告の主張〕 (1) 実施例と異なる形態のガスセンサを含むことについてのサポート要件違反 ア 本件発明1は,構成Xを備えて,被測定ガスの流通経路が限定された発明であって,その上で,構成Hその他の必須要件を具備することによって,本件発明の課題を解決できる発明である。
原告は, 「仮想ガスセンサ」の中には, 「気筒間インバランスを検出する応答性」をすら有しないガスセンサが含まれるため,サポート要件違反である旨主張する。しかしながら,そのようなガスセンサとしての本来の機能を発揮しない構成は,本件明細書に記載された範囲に含まれないことは明らかである。
また,本件発明1が,少なくとも本件発明1の「インナ導入開口部」を具備し,かつ,被測定ガスの流れに関する「構成X」とガス導入部とインナ導入開口部との位置関係を規定する「構成H」を含む他の必須要件をすべて具備することにより,所望の作用効果が得られることは,当業者であれば,本件明細書の記載から容易に理解できる。そして, 「インナ導入開口部」が複数設けられ,その軸方向位置が互いに異なっている場合においても,被測定ガスの流れに関する「構成X」が実現でき,かつ,ガス導入部とインナ導入開口部との位置関係を規定する「構成H」を含む他の必須要件をすべて具備した場合には,構成Hを具備しない場合より気筒間インバランスの応答性が向上するということを,当業者であれば容易に理解できる。
さらに,本件発明1は,本件明細書に記載されたルーバー部(44)を必須とするものではない。
【0025】【0048】の記載から,本件発明1は,オプションと ,してルーバー部を設けることによって,より一層優れたものとなることが期待されることが明確に理解できるが,このことは,ルーバー部を設けない場合に,軸方向基端寄りにあるガス導入部に向かう被測定ガスの流れがないことを示すものではなく,ルーバー部を設けなければ一切軸方向基端側へ被測定ガスが流れないわけではない。
本件発明1は,ルーバー部の有無にかかわらず,被測定ガスの流れに関する「構成X」とガス導入部とインナ導入開口部との位置関係を規定する「構成H」とを含む他の必須要件をすべて具備することにより,所望の作用効果が得られるものであることは,当業者であれば,本件明細書の記載から容易に理解できる。
イ 本件発明1のガスセンサは,主に自動車等に搭載される内燃機関の排気管に挿入されて用いられるものであり,その排気管に挿入されるガスセンサの外径サイズも現在流通しているサイズに概ね集約されている。かかる技術常識からみれば,ガスセンサの外径が大幅に変更されることは通常は考えられず,特定の寸法を限定していなくても,本件発明のガスセンサが,技術常識の範囲内の寸法を有するものであること,そのような寸法の範囲内で所望の作用効果が発揮されることを当業者が理解できることは明らかである。
径方向寸法を本件明細書に記載された例と異なる寸法に変えた場合であっても,被測定ガスの流れに関する「構成X」とガス導入部とインナ導入開口部との位置関係を規定する「構成H」を含む他の必須要件をすべて具備することによって,構成Hを具備しない場合より気筒間インバランスの応答性が向上することを,当業者であれば容易に理解できる。
(2) 構成Xに規定する被測定ガスの「流れ」についてのサポート要件違反 ア 本件発明1においては, 「構成Xの被測定ガスの流れが,センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達する」ように構成したものであって,構成X及び構成H並びに本件発明1において規定されたその他全ての構成要素を具備することによって課題解決が可能なことは,当業者であれば理解できる。
構成Xの流れが存在しているにもかかわらず,その流れに含まれる被測定ガスが構成Hを具備するガス導入部に到達しない態様は,本件発明1には含まれていない。
イ 構成Xは,発明の趣旨及び技術常識から, 「(ガス濃度検出が十分可能な量の)流れ」を規定したものであって, 「構成X」を含み,かつ「構成H」を含む本件発明1の全ての要件を具備することによって課題を解決できることは,当業者であれば 理解できる。
(3) ガスセンサの用途に関するサポート要件違反 本件発明1は, 「気筒間インバランスを検出できる応答性を有している」ガスセンサを前提とし,さらに本件発明を適用した効果として,気筒間インバランスを検出する応答性が向上するものである。
本件発明1のガスセンサが,気筒間インバランス検出精度を向上させるという課題を解決できるものであることは,当業者であれば,本件明細書の詳細な説明の記載から十分に認識することができ,サポート要件違反は存在しない。
4 取消事由4(引用発明1Aを主引用例とする進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 引用発明1Aの認定の誤り 本件審決は,特許願書添付図面であることを理由に引用例1図4の正確性を否定し,ガスセンサ素子2の軸方向先端位置C3は,インナカバー41の内側開口部411の軸方向基端位置よりも軸方向先端側にあるとは認められないと認定した。
しかし,特許願書添付図面であっても,設計図面に近い,正確性の高い図面もある。そして,引用例1図4には,センサ素子の軸方向先端位置C3がインナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置D1よりも軸方向先端側X1に位置するという,構成Iに相当する軸方向位置関係が現われていることは事実であり,これを否定することはできない。
(2) 相違点13の判断の誤り 引用例1図4のガスセンサ1では,ガスセンサ素子2の軸方向先端位置C3は,インナカバー41の内側開口部411の軸方向基端位置D1よりも「少しだけ」軸方向先端側X1(図中下方)にある。
センサ素子の先端部に,センサ素子の内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部を設けることは,技術常識であるから,これにしたがってガス導入部をセンサ素子の先端に適宜設けるに当たり,ガス導入部の位置について,甲8等の証拠を参 考にすることができ,各証拠の記載によってガス導入部の配置が制限されることはない。センサ素子の先端部にガス導入部が設けられることが技術常識である以上,これを適用するのに,甲8等の証拠における構成Hとの関係を問題とすることはない。
したがって,ガスセンサ素子2の先端側のどこかの位置に,甲8の多孔質拡散抵抗層21を加えると,多孔質拡散抵抗層21の軸方向中間位置C1は,インナカバー41の内側開口部411の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2(図中上方)にあることとなり,構成Hの配置となる。
よって,相違点13(20)は,容易に想到できるものである。
(3) 引用発明1Aに基づく進歩性判断の誤り 以上のとおり,相違点13が容易に想到できるものであることに加え,相違点12も容易に想到できるものであること,相違点14,15は実質的な相違点ではないことによれば,本件発明1は,引用発明1Aより容易に想到することができたものである。
〔被告の主張〕 (1) 引用発明1Aの認定の誤り 引用例1の図2〜図4に記載されたセンサ素子2は,センサ素子2の先端位置やこれに描かれていないガス導入部の位置を示そうという意図を持って描いたものでない。図4は,実施例2が,実施例1のインナカバーにおける内側開口部411(インナ導入開口部に相当)の位置をずらしたことを説明するための図面であって,センサ素子2と内側開口部411(インナ導入開口部に相当)との位置関係や,ガス導入部とインナ導入開口部の位置関係を説明するものではない。よって,本件審決の認定した引用発明1Aに誤りはない。
(2) 相違点13の判断の誤り 引用例1は, 「被水割れ防止」を第1の課題とするものであり,気筒間インバランスの検出精度を高めるという課題は一切考慮していないため,構成Hのようなガス 導入部(271)とインナ導入開口部(42)の位置関係を全く問題にしておらず,これに関する技術的な記載や示唆も全くない。
したがって,引用発明1Aには,ガス導入部(271)とインナ導入開口部(42)の位置関係を,敢えて本件発明1の構成Hに限定することの動機付けはない。
そして,甲8に図示された,インナ導入開口部に相当する開口部とガス導入部との位置関係は構成Hと逆の関係であるから,引用発明1Aに甲8の記載を参酌しても,構成Hと逆の位置関係しか生まれない。甲8の配置関係を無視し,事実と異なる逆の関係に逆転させて組み合わせることは許されない。
よって,引用発明1Aに甲8を組み合わせることによって,相違点13に係る構成を容易に想到できるとはいえない。
(3) 引用発明1Aに基づく進歩性判断の誤り 以上のとおり,相違点13に係る構成が容易に想到できるものではない以上,本件発明1は,引用発明1Aより容易に想到することができたものではない。
5 取消事由5(引用発明1Bを主引用例とする進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 相違点11の判断の誤り センサ素子の先端部に,センサ素子の内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部を設けることは技術常識であるから,これにしたがってガス導入部をセンサ素子の先端部に適宜設けるに当たり,甲4,5,17等の証拠を参考にすることができ,各証拠の記載によってガス導入部の配置が制限されることはない。センサ素子の先端部にガス導入部が設けられることが技術常識である以上,これを適用するのに,甲8等の証拠における構成Hとの関係を問題とすることはない。
引用発明1Bのガスセンサにおいて,センサ素子のガス導入部をどこに配置するかの検討は,当業者が通常行う設計事項であるから,ガスセンサ素子2の先端部に設けるガス導入部の位置として構成Hの範囲内を選択し,ここにガス導入部を配置することは,当業者が適宜なし得たことであり,相違点11は,容易に想到できる ものである。
(2) 引用発明1Bに基づく進歩性判断の誤り 以上のとおり,相違点11が容易に想到できるものであることに加え,相違点10も容易に想到できるものであることによれば,本件発明1は,引用発明1Bより容易に想到することができたものである。
〔被告の主張〕 引用例1実施例3の構成において,構成Hの記載がないことは明らかである。
原告が提示する甲4,5,17等の証拠には,少なくとも構成Hが記載されておらず,むしろ,構成Hと全く逆の構成が記載されている。したがって,甲8等の記載を技術常識とするのであれば,構成Hは技術常識の範囲から除外されていると解されることになる。
構成Hを具備していない引用発明1Bを主引用発明として,これに,構成Hが除外された技術常識を組み合わせたとしても,構成Hが導かれる論理付けを完成させることはできない。
そして,甲8等には,いずれも,気筒間インバランス検出精度向上のために,本件発明1の他の要件ととともに「構成H」の位置関係を必須要件とすることを示唆する記載や動機付けは存在しない。
したがって,相違点11は,本件発明1と引用発明1Bとの明確な相違点であり,本件発明1は,引用発明1Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 取消事由6(引用発明2を主引用例とする進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 相違点6の判断の誤り センサ素子の先端部に,センサ素子の内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部を設けることは技術常識である。引用発明2のガスセンサにおいて,センサ素子のガス導入部をどこに配置するかの検討は,当業者が通常行う設計事項であり, 上記技術常識にしたがってガス導入部をセンサ素子の先端部に適宜設けることは,当業者が容易になし得たことである。技術常識にしたがってガス導入部をセンサ素子21の先端部に適宜設けるに当たり,ガス導入部の配置が,甲4,5,17等の証拠の記載によって制限される理由はない。
したがって,引用例2図1(a)に矢印で示された,内側カバー41内の対象ガスの流れを考慮して,ガスセンサの応答性が良好になるように,センサ素子21のガス導入部の配置を定めるに当たり,その位置として構成Hの範囲内を選択して,ここにガス導入部を配置することは,当業者が適宜なし得ることであるから,相違点6に係る構成は当業者が容易に想到できるものである。
(2) 引用発明2に基づく進歩性判断の誤り 以上のとおり,相違点6が容易に想到できるものであることに加え,技術常識に照らすなら,本件審決が判断していない相違点4も容易に想到できるものであることによれば,本件発明1は,引用発明2より容易に想到することができたものである。
〔被告の主張〕 引用例2には,センサ素子21におけるガス導入部の配設位置が全く記載されておらず,図1(a)から配設位置を把握することはできない。
同図の記載からは,センサ素子21に設けられるガス導入部は,インナ導入開口部よりも軸方向先端側にあるとしか読み取れない。同図では,センサ素子21の先端側半分程度がインナ導入開口部よりも軸方向先端側に位置している。この事実に,「センサ素子21の先端部にガス導入部が設けられることが技術常識」とする原告の主張を当てはめれば,引用発明2のセンサ素子21の「先端部」は,インナ導入開口部よりも軸方向先端側にあると解するのが自然であり,インナ導入開口部よりも軸方向基端側にあると認識することはない。
そして,引用例2には構成Hに関する記載や示唆はなく,気筒間インバランス検出精度向上に構成Hが寄与しうることの記載や示唆も全くないから,引用発明2が 構成Hを具備することが容易であることの論理付けは到底できない。
したがって,本件発明1は,引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 取消事由7(本件発明2ないし4についての進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 引用発明1Aからの容易想到性 ア 本件発明2について 本件発明2は,本件発明1のガスセンサにおいて,センサ素子2のガス導入部21の軸方向先端位置C2は,インナカバー41のインナ導入開口部411の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にあること(構成K)を規定するガスセンサである。
本件発明1は,引用発明1A及び甲8に基づき,当業者が容易に想到できたものである。そして,引用例1図4のガスセンサに甲8の多孔質拡散抵抗層21を加えたガスセンサ1は,センサ素子2のガス導入部21の軸方向先端位置C2は,インナカバー41のインナ導入開口部411の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にあるガスセンサとなっているから,構成Kを具えている。
したがって,本件発明2も,引用発明1A及び甲8に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明3について 本件発明3は,本件発明1又は2のガスセンサにおいて,インナカバーには,インナ導入開口部の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側へ流れるようにするルーバー部が設けられていること(構成L)を規定するガスセンサである。
本件発明1,2は,いずれも,引用発明1A及び甲8に基づき,当業者が容易に想到できたものである。そして,引用発明1Aは,引用例1図5に示すように, 「インナカバー41における内側径変部413の複数箇所に凹部417を設け,該凹部4 17の基端を開口させることにより,内側開口部411を形成し,即ち,いわゆるルーバー形状の内側開口部411とし」たものであり,内側開口部411にルーバー部を設けてある。
したがって,本件発明3も,引用発明1A及び甲8に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明4について 本件発明4は,ルーバー部を有する本件発明3のガスセンサにおいて,ルーバー部が,インナ導入開口部の軸方向先端側の端部からインナカバーの内側に折り曲げられ,軸方向基端側に向かって形成されていること(構成M)を規定するガスセンサである。
本件発明3は,引用発明1A及び甲8に基づき,当業者が容易に想到できたものである。そして,引用発明1Aは, 「インナカバー41における内側径変部413の複数箇所に凹部417を設け,該凹部417の基端を開口させることにより,内側開口部411を形成し,即ち,いわゆるルーバー形状の内側開口部411とし」たものであり,内側開口部411に,引用例1図5,6のルーバー部を設けたものである。
よって,引用発明1Aのガスセンサは,構成Mも充足する。もしくは,構成Mは,引用発明1Aのガスセンサにおけるインナカバー41の内側開口部411にルーバー部を設けるにあたり,甲6の図2,甲7の図11,図12などに例示されるルーバー部の形状に関する周知技術を適用し,あるいは甲6の図2,甲7の図11,図12,甲14の図1に示されたルーバー部の形状を採用することにより,当業者が容易に想到できたものである。
したがって,本件発明4は,@引用発明1A及び甲8に記載された技術的事項と周知技術に基づいて,A引用発明1A,甲8及び甲6に記載された技術的事項に基づいて,B引用発明1A,甲8及び甲7に記載された技術的事項に基づいて,又はC引用発明1A,甲8及び甲14に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容 易に発明をすることができたものである。
(2) 引用発明1Bからの容易想到性 引用発明1Bが構成K,L,Mをそれぞれ充足していることは明らかである。もしくは,引用発明1Bのガスセンサにおけるインナカバー41の内側開口部411にルーバー部を設けるにあたり,甲14の図1に示されたルーバー部の形状を採用すること,あるいは,甲6の図2,甲7の図11,図12などに例示されるルーバー部の形状に関する周知技術の形状を適用することは,当業者が容易にできたものであり,これらは構成Mをも充足する。
(3) 引用発明2からの容易想到性 引用例2の記載及びその図1から,引用発明2が構成K,L,Mをそれぞれ充足していることは明らかである。
したがって,本件発明2ないし4は,引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
〔被告の主張〕 本件発明2〜4が引用する本件発明1には無効理由はなく,特許性を有する発明である。
したがって,本件発明2〜4は,当然に特許性を有している。
当裁判所の判断
1 本件発明について (1) 本件明細書の記載 本件訂正前発明及び本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(本件訂正により付加した部分には下線を付した。下記記載中に引用する図1〜4,7,8,14,15は,別紙本件明細書図面目録参照。。
) ア 技術分野 【0001】本発明は,被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセン サに関する。
イ 背景技術【0002】従来,自動車の内燃機関の排気管等に設けられ,被測定ガスである排ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサが知られている。
ガスセンサとしては,例えば,被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と,センサ素子を内側に挿通して保持するハウジングと,ハウジングの先端側に配設された素子カバーとを備えたものがある。
【0003】例えば,特許文献1には,センサ素子の被水防止等のため,ガス導入部が設けられたセンサ素子の先端部を覆うインナカバーと,インナカバーの外側に配設されたアウタカバーとからなる二重構造の素子カバーを備えたガスセンサが開示されている。
このガスセンサにおいて,アウタカバーには,アウタカバー内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部が設けられている。また,インナカバーには,インナカバー内に被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部が設けられている。
ウ 発明が解決しようとする課題【0005】ところで,多気筒の内燃機関では,気筒間の燃料噴射量のばらつき等により,気筒間において空燃比のばらつき(気筒間インバランス)が生じる。近年,さらなる排ガス規制,燃費規制により,内燃機関の気筒間インバランスをガスセンサにおいてより精度良く検出し,内燃機関の各気筒の空燃比制御を行うことが求められている。したがって,気筒間インバランスの指標となるガスセンサの出力値(空燃比:A/F)の変化をより正確に把握するため,各気筒の空燃比変化に伴うガスセンサの応答性をさらに高めることが必要となる。具体的には,従来のA/F変化に対する応答性とは異なり,特にセンサ素子を保護する素子カバーにおいては,センサ素子のガス検出部(被測定ガスを検出するための部分)により多くの被測定ガスを短距離で迅速に到達させることに加え,センサ素子の検出部に到達するまでの間に,各気筒から順次排気されるA/Fの異なる被測定ガスが混合されにくくする ことが不可欠となる。
【0006】しかしながら,上記特許文献1のガスセンサでは,主にセンサ素子の被水を防止することに重点が置かれていたため,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を考えた場合には,気筒間インバランスを検出する応答性が十分でない。
この要因としては,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離が長いことなどが考えられる。この距離が長いと,時間的に前後して排気され,センサ素子のガス検出部に前後して到達する被測定ガスが混ざりやすくなってしまう。この被測定ガスの混合が生じると,いずれかの気筒から排気される被測定ガスの空燃比がリッチ側に変動し,他のいずれかの気筒から排気される被測定ガスの空燃比がリーン側に変動していたとしても,これらの被測定ガスが混合された状態の空燃比を検出することになってしまう。その結果,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度が低下し,気筒間インバランスを検出するためのガスセンサの応答性が低下するおそれがある。
【0007】本発明は,かかる背景に鑑みてなされたものであり,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を高めることができ,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供しようとするものである。
エ 課題を解決するための手段 【0008】本発明の一の態様は,多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって,/被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子(2)と,/該センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,/該ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え,/上記センサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部(271)が設けられており,/上記素子カバー(3)は,上記センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,該インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し,/該アウタカバー(5)には,該アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(5 2)が設けられており,/上記インナカバー(4)には,該インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられており,/上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記センサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり,/上記アウタカバー(5)の上記アウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり,/上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されていることを特徴とするガスセンサにある。
オ 発明の効果 【0009】上記ガスセンサにおいて,センサ素子の先端部には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部が設けられている。また,センサ素子の先端部を覆うインナカバーには,インナカバー内に被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部が設けられている。そして,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にある。
【0010】すなわち,アウタ導入開口部からアウタカバー内(アウタカバーとインナカバーとの間)に導入された被測定ガスは,インナ導入開口部からインナカバー内に導入され,センサ素子のガス導入部に到達する。
発明者らは,このような被測定ガスの流れにおいて,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの 距離が,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性に大きく寄与することを見出した。
【0011】そして,本発明者らは,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離を短くするためには,被測定ガスがインナカバー内に導入される部分であるインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも,被測定ガスがセンサ素子の内部に導入される部分であるガス導入部の軸方向中間位置を,軸方向基端側とすることが非常に有効であることを見出した。
【0012】これにより,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができる。また,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることができる。そして,内燃機関の各気筒の被測定ガスを順にセンサ素子のガス導入部に到達させ,センサ素子のガス導入部に到達するまでの間に各気筒の被測定ガスが混合されることを抑制することができる。
【0013】その結果,ガスセンサの応答性を高めることができ,内燃機関の気筒間インバランスの指標となるガスセンサの出力値(例えば,空燃比:A/F等)の変化をより正確に把握することができる。そして,ガスセンサにおける内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を向上させることができる。
【0014】このように,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を高めることができ,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供することができる。
カ 発明を実施するための形態 【0021】また,上記インナカバーの上記インナ導入開口部の軸方向基端位置から上記センサ素子の上記ガス導入部の軸方向中間位置までの軸方向距離aは,例えば,0mm この場合には,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをより一層短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができる。そして,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性をさらに高めることができる。
【0022】上記センサ素子の上記ガス導入部の軸方向中間位置と上記インナカバーの上記インナ導入開口部の軸方向基端位置との間の軸方向距離aが0mm以下の場合,3.0mmを超える場合には,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離が長くなってしまうおそれがあり,ガスセンサの気筒間インバランスを検出する応答性の低下を招く場合がある。
【0024】また,上記センサ素子の軸方向先端位置は,上記インナカバーの上記インナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向先端側にある。
これにより,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをより一層短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができる。そして,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性をさらに高めることができる。… 【0025】また,上記インナカバーには,上記インナ導入開口部の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側へ流れるようにするルーバー部が設けられていてもよい。
この場合には,被測定ガスの多くを,インナ導入開口部からルーバー部を介してインナカバー内の軸方向基端側へ流れ込ませることができる。これにより,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離をより適切に短くすることができる。
実施例 【0029】(実施例1)… 【0041】図2に示すごとく,アウタカバー5は,軸方向基端側X2から順に,軸方向Xに略同径のアウタ側面部511と,軸方向先端側X1に向かって縮径するテーパ状のアウタ縮径部512と,軸方向先端側X1を閉塞するアウタ底面部513とを有する。
アウタ側面部511には,複数のアウタ導入開口部52が周方向に所定の間隔で設けられている。アウタ導入開口部52の軸方向先端位置E1は,後述するインナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にある。また,アウタ底面部513には,アウタ排出開口部53が設けられている。
【0042】同図に示すごとく,インナカバー4は,軸方向基端側X2から順に,軸方向Xに略同径のインナ第1側面部411と,軸方向先端側X1に向かって縮径するテーパ状のインナ第1縮径部412と,軸方向Xに略同径のインナ第2側面部413と,軸方向先端側X1に向かって縮径するテーパ状のインナ第2縮径部414と,軸方向先端側X1を閉塞するインナ底面部415とを有する。
インナ底面部415は,アウタカバー5のアウタ底面部513と略同一平面上であって,アウタ底面部513のアウタ排出開口部53内に配置されている。
【0043】インナ第1縮径部412には,複数のインナ導入開口部42が周方向に所定の間隔で設けられている。複数のインナ導入開口部42は,軸方向Xに直交する平面において,ガスセンサ1の中心軸に対して同心円上に配置されている。
すなわち,すべてのインナ導入開口部42は,軸方向位置が同じである。また,すべてのインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1は,アウタカバー5のアウタ導入開口部52の軸方向先端位置E1よりも軸方向先端側X1にある。また,すべてのインナ導入開口部42は,ルーバー形状となっている。すなわち,インナ第1縮径部412には,インナ導入開口部42が設けられたそれぞれの内側位置において,被測定ガスGの流れを遮り,被測定ガスGが軸方向基端側X2へ流れるようにするルーバー部44が設けられている。また,インナ底面部415には,インナ排出開口部43が設けられている。
【0044】同図に示すごとく,センサ素子2のガス導入部271の軸方向中間位置C1は,インナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にある。本例では,すべてのインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にある。
また,センサ素子2の軸方向先端位置C3は,インナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向先端側X1にある。本例では,すべてのインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向先端側X1にある。
【0045】また,インナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1からセンサ素子2のガス導入部271の軸方向中間位置C1までの軸方向距離aは,0mm 【0049】次に,本例のガスセンサ1における作用効果について説明する。
本例のガスセンサ1において,センサ素子2の先端部201には,その内部に被測定ガスGを導入するためのガス導入部271が設けられている。また,センサ素子2の先端部201を覆うインナカバー4には,インナカバー4内に被測定ガスGを導入するためのインナ導入開口部42が設けられている。そして,センサ素子2のガス導入部271の軸方向中間位置C1は,インナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側X2にある。また,インナカバー4におけるインナ導入開口部42の内側位置には,インナ導入開口部42からインナカバー4内に流入する被測定ガスGが,軸方向基端側X2へ流れるようにするルーバー部44が設けられている。
【0050】これにより,図7に示すごとく,インナ導入開口部42からインナカバー4内へ流れようとする被測定ガスGの多くは,ルーバー部44によってインナカバー4内の軸方向基端側X2へ流れ込ませることができる。また,ガス導入部271の軸方向中間位置C1が,インナ導入開口部42の軸方向基端位置D1より も軸方向基端側X2にあることにより,インナ導入開口部42からインナカバー4内に導入された被測定ガスGをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子2のガス導入部271に到達させることができる。また,被測定ガスGを他のインナ導入開口部42から流れ込んだ被測定ガスGと混合させることなく,センサ素子2のガス導入部271に到達させることができる。そして,内燃機関の各気筒の被測定ガスGを順にセンサ素子2のガス導入部271に到達させ,センサ素子2のガス導入部271に到達するまでの間に各気筒の被測定ガスGが混合されることを抑制することができる。
【0051】その結果,ガスセンサ1の応答性を高めることができ,内燃機関の気筒間インバランスの指標となるガスセンサ1の出力値(空燃比:A/F)の変化をより正確に把握することができる。そして,ガスセンサ1における内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を向上させることができる。
【0052】図8には,多気筒の内燃機関において,いずれかの気筒71aの空燃比が理論空燃比に対してリッチ側にあり,他の気筒71bの空燃比が理論空燃比に対してリーン側にあるときの排気管82における被測定ガスG(排気ガス)の流れを示す。同図に示すごとく,各気筒71a,71bからの排気は順次行われ,排気管82内のガスセンサ1には,リッチ側の被測定ガスG1とリーン側の被測定ガスG2とが順次到達すると考えられる。
図9には,ガスセンサ1によって測定される被測定ガスGのガス濃度の時間変化を示す。同図に示すごとく,ガスセンサ1においては,リッチ側の被測定ガスG1とリーン側の被測定ガスG2とが交互に測定されることになると考えられる。
【0053】そして,時間的に前後して排気され,インナカバー4内に前後して流入する被測定ガスGが混ざりにくい状態にあることにより,所定の時間間隔で到達すると考えられるリッチ側の被測定ガスG1とリーン側の被測定ガスG2とが混ざりにくくすることができる。
本例においては,ルーバー部44に沿って軸方向基端側X2へ流れる被測定ガス Gが,センサ素子2のガス導入部271に到達するまでの距離を短くしている。これにより,時間的に前後して排気された被測定ガスGの混ざり合いを抑制し,ガスセンサ1における内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を向上させることができると考えられる。
【0054】また,本例において,センサ素子2の軸方向先端位置C3は,インナカバー4のインナ導入開口部42の軸方向基端位置D1よりも軸方向先端側X1にある。そのため,インナ導入開口部42からインナカバー4内に導入された被測定ガスGをより一層短距離で迅速にセンサ素子2のガス導入部271に到達させることができる。これにより,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性をさらに高めることができる。
【0059】このように,本例によれば,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサ1を提供することができる。
ク 【0064】 (実施例3)本例は,ガスセンサについて,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を評価したものである。
本例では,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置からセンサ素子のガス導入部の軸方向中間位置までの軸方向距離a(図2参照)が異なる複数のガスセンサを準備した。準備したガスセンサのその他の基本的な構成は,実施例1のガスセンサ(図1〜図4等参照)と同様である。
【0068】次に,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度の評価方法について説明する。図14に示すごとく,取得したガスセンサの出力値(空燃比:A/F)の波形から,1燃焼サイクル中の波形の振幅P(最大値と最小値との差)をインバランス応答値として求めた。
本例では,軸方向距離aが異なるガスセンサに対して,それぞれ上述したインバランス応答値を求めた。そして,軸方向距離aが-1.5mmのガスセンサ(従来の仕様のガスセンサ)のインバランス応答値を基準(=100%)とし,その他のガス センサのインバランス応答値比(%)を求めた。なお,インバランス応答値比が高いほうが内燃機関の気筒間インバランスの検出精度がより高いことを示す。
【0069】図15に,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度の評価結果を示す。同図の横軸は軸方向距離a(mm),縦軸はインバランス応答値比(%)である。… 【0070】同図から,軸方向距離aが0mmを超えると,すなわちセンサ素子のガス導入部の軸方向中間位置がインナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあると,インバランス応答値比が高くなることがわかった。
また,軸方向距離aが0.7mmあたりを超えると,インバランス応答値比がさらに高くなり,そのインバランス応答値比が安定していることがわかった。
一方,軸方向距離aが3.0mmあたりを超えると,インバランス応答値比が少し低くなることがわかった。
【0071】以上の結果から,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置がインナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあることにより,ガスセンサの応答性を高めることができ,ガスセンサにおける内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を向上させることができることがわかった。
(2) 前記(1)によれば,本件発明の特徴は,次のとおりである。
本件発明は,被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサに関するものである。【0001】 ( ) 多気筒の内燃機関では,気筒間の燃料噴射量のばらつき等により,気筒間において空燃比のばらつき(気筒間インバランス)が生じるところ,排ガス規制,燃費規制により,内燃機関の気筒間インバランスをガスセンサにおいて精度よく検出し,内燃機関の各気筒の空燃比制御を行うことが求められ,各気筒の空燃比変化に伴うガスセンサの応答性を高めることが必要になり,センサ素子を保護する素子カバーにおいて,センサ素子のガス検出部により多くの被測定ガスを短距離で迅速に到達させることに加え,到達するまでの間に各気筒から順次排気される被測定ガスを混合 されにくくすることが不可欠となる。しかし,従来のガスセンサでは,センサ素子の被水防止に重点が置かれ,気筒間インバランスを検出する応答性が十分でなかった。【0005】〜【0007】 ( ) そこで,本件発明では,センサ素子の先端部を覆うインナカバー(4)に,インナカバー内にセンサ素子の先端部に設けられたガス導入部に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42) (構成G1)を設け,インナカバー内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側(X1)に設けられたインナ排出開口部(43)からインナカバー外に排出されるように構成する(構成X)とともに,ガス導入部の軸方向中間位置(C1)を,インナ導入開口部の軸方向基端位置(D1)よりも,軸方向基端側(X2)とする構成(構成H)を採用し,被測定ガスがガス導入部に到達するまでの距離を短くして,混合が進む前の被測定ガスの測定を順次行うことができるようにし,もって,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供し得るようにしたものである。
そして,実施例3において,インナカバーのインナ導入開口部からの軸方向基端位置ガス導入部の軸方向中間位置までの軸方向距離が異なるガスセンサに対して,インバランス応答値を求めたところ,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置がインナカバーのインナ導入開口部からの軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあることにより,ガスセンサの応答性を高めることができること,軸方向距離を0.7mm以上,3.0mm以下とすることが好ましいことがわかったとされる。【00 (42】) アウタ導入開口部からアウタカバー内に導入された被測定ガスが,インナ導入開口部からインナカバー内に導入され,センサ素子のガス導入部に到達するという被測定ガスの流れにおいて,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離を短くすることが気筒間インバランスを検出する応答性に寄与する。本件発明は,被測定ガスがインナカバー 内に導入される部分であるインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも,被測定ガスがセンサ素子の内部に導入される部分であるガス導入部の軸方向中間位置を軸方向基端側とすることにより,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができるとともに,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることできるとされる。
(【0009】〜【0014】) 2 取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について (1) 訂正事項5-1について ア 訂正事項5-1は, 「上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)」を加入する訂正である。
イ かかる訂正は,本件訂正前発明1において特定のなかったインナ導入開口部とインナ排出開口部との位置関係について,インナ排出開口部(43)が,インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられたものに限定するものであるから,特許請求の範囲減縮を目的とするものである。
ウ 特許法134条の2第9項が準用する126条5項にいう「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内」の要件は,訂正が,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときに,これを充たすものということができる。
本件訂正前の本件明細書には, 「同図に示すごとく,インナカバー4は,軸方向基端側X2から順に,軸方向Xに略同径のインナ第1側面部411と,軸方向先端側X1に向かって縮径するテーパ状のインナ第1縮径部412と,軸方向Xに略同径のインナ第2側面部413と,軸方向先端側X1に向かって縮径するテーパ状のインナ第2縮径部414と,軸方向先端側X1を閉塞するインナ底面部415とを有する。( 」【0042】, )「インナ第1縮径部412には,複数のインナ導入開口部4 2が周方向に所定の間隔で設けられている。…また,インナ底面部415には,インナ排出開口部43が設けられている。( 」【0043】)との記載がある。これらの記載によれば,インナ底面部415に設けられたインナ排出開口部(43)は,インナ第1縮径部412に設けられたインナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられていることを理解することができる。
そうすると,訂正事項5-1は,訂正が,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから,本件明細書に記載した事項の範囲内における訂正である。
エ そして,訂正事項5-1は,発明特定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲拡張し,又は変更するものには該当しない。
オ 以上によれば,訂正事項5-1は,適法な訂正である。
(2) 訂正事項5-2について ア 訂正事項5-2は, 上記インナ導入開口部 「 (42)から上記インナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,…上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている」を加入する訂正である。
イ かかる訂正は,本件訂正前発明1において特定のなかったインナ導入開口部から導入される被測定ガスの流れについて,インナ導入開口部(42)からインナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ排出開口部(43)に向けて流れると限定するものであるから,特許請求の範囲減縮を目的とするものである。
ウ 本件訂正前の請求項3には, 「上記インナカバー(4)には,上記インナ導入開口部(42)の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側(X2)へ流れるようにするルーバー部(44)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ(1)」との記載がある。

また,本件訂正前の本件明細書には, 「また,上記インナカバーには,上記インナ導入開口部の内側において,被測定ガスの流れを遮り,該被測定ガスが軸方向基端側へ流れるようにするルーバー部が設けられていてもよい。この場合には,被測定ガスの多くを,インナ導入開口部からルーバー部を介してインナカバー内の軸方向基端側へ流れ込ませることができる。これにより,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離をより適切に短くすることができる。 ( 」 【0025】, )「また,すべてのインナ導入開口部42は,ルーバー形状となっている。すなわち,インナ第1縮径部412には,インナ導入開口部42が設けられたそれぞれの内側位置において,被測定ガスGの流れを遮り,被測定ガスGが軸方向基端側X2へ流れるようにするルーバー部44が設けられている。また,インナ底面部415には,インナ排出開口部43が設けられている。( 」【0043】)との記載があり,図2には,被測定ガスGが,インナ導入開口部42を通じて軸方向基端側(X2)に向けた矢印として示されている。
これらの記載によれば,図2における被測定ガスGの矢印は,被測定ガスが,インナ導入開口部42を通じて軸方向基端側(X2)方向へ流れる様子を示したものと理解できるとともに,軸方向先端側(X1)のインナ底面部にインナ排出開口部があることから,当該インナ導入開口部を通じて流入した被測定ガスGは,軸方向先端側(X1)のインナ排出開口部から排出されるものであることを理解することができる。
よって,訂正事項5-2は,訂正が,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるといえるから,本件明細書に記載した事項の範囲内における訂正である。
エ そして,訂正事項5-2は,発明特定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲拡張し,又は変更するものには該当しない。
オ 以上によれば,訂正事項5-2は,適法な訂正である。
(3) 原告の主張について ア 訂正事項5-1について 原告は,本件明細書には「上記インナ排出開口部(43)は,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられている」ことについての明示的記載はなく,また,本件発明1は,インナ導入開口部42とインナ排出開口部43の配置順を定めることにより,本件発明の課題を解決するものではないから,本件明細書の記載等から, 「上記インナ排出開口部(43)は,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられている」との技術的事項が自明であるとはいえず,訂正事項5-1は,新規事項の導入である旨主張する。
しかし, 【0042】【0043】の記載によれば,インナ底面部415に設けら ,れたインナ排出開口部(43)は,インナ第1縮径部412に設けられたインナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられていることを理解することができることは前記のとおりである。また,発明が解決しようとする課題を解決し得ない構成を含むか否かは,サポート要件違反の問題とはなり得るものの,新規事項の追加に当たるか否かと関連するものではない。
原告は, 「上記インナ排出開口部(43)は,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられている」の加入により,インナ排出開口部をインナ底面部に設けない仮想ガスセンサも本件発明1に含まれるところ,仮想ガスセンサは応答性が低く,本件発明の課題を解決するものではないから,当業者は,本件明細書に記載されているものと同等とは理解しないとも主張する。
しかし,そもそも,訂正前の請求項1には, 「インナ排出開口部」を設ける部位については何ら特定されていなかったのであるから,インナ排出開口部を,インナ底面部に設けない構成は,訂正事項5-1によって導入されたものではない。また,発明が解決しようとする課題を解決し得ない構成を含むか否かは,新規事項の追加に当たるか否かと関連するものではないことは前記のとおりである。
よって,原告の主張は,いずれも採用できない。
イ 訂正事項5-2について 原告は,本件明細書には,被測定ガスの「流れ」が, 「傍流,拡散など」である場合について,明示的な記載はない,また,ルーバー部を設けないガスセンサでは,「傍流,拡散など」の被測定ガスの「流れ」が,構成X2に規定する形態で流れるとしても,ルーバー部を設けないガスセンサは,応答性が大幅に低下し,本件発明に含まれないから, 「傍流,拡散など」の被測定ガスの「流れ」が,構成X2に規定する形態で流れるガスセンサは,本件明細書から自明であるとはいえない旨主張する。
しかし,前記のとおり,発明が解決しようとする課題を解決し得ない構成を含むか否かは,新規事項の追加に当たるか否かと関連するものではないから,原告の主張は採用できない。
(4) 小括 以上によれば,訂正事項5-1,5-2は,適法な訂正と認められ,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(明確性要件の判断の誤り)について (1) 明確性要件について 特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。
(2) 明確性要件の適否 請求項1の記載から,本件発明1は,多気筒の内燃機関に用いられるガスセンサであって(構成P) @被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子 , (2)と,センサ素子(2)を内側に挿通して保持するハウジング(13)と,ハウジング(13)の軸方向先端側(X1)に配設された素子カバー(3)とを備え(構成AないしC),Aセンサ素子(2)の先端部(201)には,その内部に被測定ガスを導入す るためのガス導入部(271)が設けられ(構成D),B素子カバー(3)は,センサ素子(2)の先端部(201)を覆うように配設されたインナカバー(4)と,インナカバー(4)の外側に配設されたアウタカバー(5)とを有し(構成E),Cアウタカバー(5)には,アウタカバー(5)内に被測定ガスを導入するためのアウタ導入開口部(52)が設けられており(構成F),Dインナカバー(4)には,インナカバー(4)内にセンサ素子(2)のガス導入部(271)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられ(構成G),Eセンサ素子(2)のガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり(構成H),Fセンサ素子(2)の軸方向先端位置(C3)は,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向先端側(X1)にあり(構成I),Gアウタカバー(5)のアウタ導入開口部(52)の軸方向先端位置(E1)は,インナカバー(4)のインナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあり(構成N),Hインナ導入開口部(42)からインナカバー(4)内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられたインナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている(構成X)ことを理解することができる。
よって,請求項1の記載は,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず,明確性要件に適合するものというべきである。
(3) 原告の主張について ア 「被測定ガスの流れ」について 原告は,本件発明1において,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供するとの課題を解決するためには,構成Xに記載する被測定ガスの流れを「主流れ」に特定する必要があるにもかかわらず,その記載がないから,不明確であると主張する。
しかし,当業者であれば,請求項1の記載から,被測定ガスは,センサ素子のガス導入部に到達させる被測定ガスを導入するために設けたインナ導入開口部(構成G1)からインナカバー内に導入され,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側(X1)に設けられたインナ排出開口部に向けて流れること(構成X)を理解することができると認められる。
気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供するとの課題を解決することができるかどうかは,サポート要件の問題として検討すべきものであって,明確性要件の問題ではないというべきである。よって,原告の主張は採用できない。
イ 「被測定ガスの流れ」と「被測定ガスの到達」について 原告は,本件発明1では,構成Xで規定された形態に流れた被測定ガスが,ガス導入部に到達するのか,それともそれとは異なる別の流れによる被測定ガスが到達するのかが不明確であると主張する。
しかし,請求項1の記載から,被測定ガスは,インナ導入開口部からインナカバー内に導入され,まず,軸方向基端側へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側に設けられたインナ排出開口部に向けて流れるとの態様で流れることが理解できることは,前記のとおりであり,当業者であれば,本件発明1において,センサ素子のガス導入部に到達する被測定ガスは,構成Xで規定される形態で流れる被測定ガスであることを当然に理解できるものと認められる。よって,請求項1の記載自体が不明確であるとはいえず,原告の主張は採用できない。
ウ 「インナ導入開口部」について 原告は,インナ導入開口部が複数設けられ,そのうちの構成Hを充足しないインナ導入開口部からの被測定ガスのみがガス導入部に到達する場合には,当該ガスセンサは構成G1を充足しないことになるが,このようなガスセンサが本件発明1を充足しているか否かを判別することができないから,本件発明1は不明確であると主張する。
しかし,被測定ガスが,構成Hを充足しないインナ導入開口部から導入された場合は,本件発明1の技術的範囲に属しないことは明らかである。原告の主張は,本件発明1を充足しない場合を前提とするものであり,失当というべきである。
(4) 小括 以上によれば,請求項1は明確性要件に違反するとはいえない。
4 取消事由3(サポート要件の判断の誤り)について (1) サポート要件について 特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件発明の課題 本件明細書には,気筒間インバランスの指標となるガスセンサの出力値(空燃比:A/F)の変化をより正確に把握するため,各気筒の空燃比変化に伴うガスセンサの応答性をさらに高めることが必要となることから,センサ素子の検出部に到達するまでの間に,各気筒から順次排気されるA/Fの異なる被測定ガスが混合されにくくすることが不可欠であるところ(【0005】,従来のガスセンサでは,インナ )導入開口部からインナカバーに導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離が長いと,時間的に前後して排気され,センサ素子のガス検出部に前後して到達する被測定ガスが混ざりやすくなってしまうため,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度が低下し,気筒間インバランスを検出するためのガスセンサの応答性が低下するおそれがあった(【0006】。
) そこで,本件発明1は,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を高めることができ,気筒間インバランスを検出する応答性に優れたガスセンサを提供するもの である(【0007】。
) (3) サポート要件の適否 ア 請求項1には, 「インナカバー(4)内に上記センサ素子(2)の上記ガス導入部(271)に到達させる被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部(42)と,インナ排出開口部(43)が設けられ」 (構成G)「上記センサ素子(2)の上 ,記ガス導入部(271)の軸方向中間位置(C1)は,上記インナカバー(4)の上記インナ導入開口部(42)の軸方向基端位置(D1)よりも軸方向基端側(X2)にあ」り(構成H)「上記インナ導入開口部(42)から上記インナカバー(4)内 ,に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側(X2)へ向かって流れ,その後,上記インナ導入開口部(42)より軸方向先端側(X1)に設けられた上記インナ排出開口部(43)に向けて流れるように構成されている」 (構成X)ガスセンサが記載されている。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明には, 「センサ素子の先端部には,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部が設けられている。また,センサ素子の先端部を覆うインナカバーには,インナカバー内に被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部が設けられている。そして,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向位置よりも軸方向基端側にある。」(【0009】, )「このような被測定ガスの流れにおいて,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離が,内燃機関の気筒間インバランスの検出精度,及び気筒間インバランスを検出する応答性に大きく寄与することを見出した。( 」【0010】, )「インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスがセンサ素子のガス導入部に到達するまでの距離を短くするためには,被測定ガスがインナカバー内に導入される部分であるインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも,被測定ガスがセンサ素子の内部に導入される部分であるガス導入部の軸方向中間位置を,軸方向基端側とすることが非常に有効であることを見出した。( 」 【0011】, )「これにより,インナ導入開 口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができる。また,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることができる。そして,内燃機関の各気筒の被測定ガスを順にセンサ素子のガス導入部に到達させ,センサ素子のガス導入部に到達するまでの間に各気筒の被測定ガスが混合されることを抑制することができる。( 」【0012】, )「その結果,ガスセンサの応答性を高めることができ,内燃機関の気筒間インバランスの指標となるガスセンサの出力値(例えば,空燃比:A/F等)の変化をより正確に把握することができる。そして,ガスセンサにおける内燃機関の気筒間インバランスの検出精度を向上させることができる。( 」【0013】)との記載がある。
そして,実施例3において,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置がインナカバーのインナ導入開口部からの軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあり,軸方向距離を0.7mm以上,3.0mm以下とすることにより,ガスセンサの応答性を高めることができることがわかったことが記載されている。
ウ 以上の記載によれば,本件発明1は,インナカバーには,インナカバー内に被測定ガスを導入するためのインナ導入開口部が設けられ,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向位置よりも軸方向基端側にあるとの構成を採用して,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側に設けられたインナ排出開口部に向けて流れるとの構成(構成X)を備えることを前提として,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあるという構成(構成H)を採用することによって,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができ,また,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることができる ものであり,その結果,被測定ガスが混合されることを抑制することができ,ガスセンサの応答性を高めることができるものであると認められる。
したがって,当業者は,被測定ガスの流れについて構成Xを採用するとともに,構成Hの位置関係を採用することにより,本件発明の課題が解決されることを理解することができるのであるから,特許請求の範囲に記載された発明(本件発明1)は,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるというべきである。
(4) 原告の主張について ア 実施例と異なる形態のガスセンサを含むことについて (ア) 原告は,本件発明1は,@インナ排出開口部がインナカバーの底部以外に配置される場合を排除するものではなく,その形成位置によっては,気筒間インバランスを検出する応答性を有しないガスセンサを含む,A複数のインナ導入開口部を設ける場合を排除するものではなく,その配置や数によっては,気筒間インバランスを検出する応答性を有しないガスセンサを含む,Bインナ導入開口部にルーバー部を設けていない場合を排除するものではなく,気筒間インバランスの応答性が向上しないガスセンサを含む旨主張する。
しかし,原告の上記@Aの主張は,@インナ排出開口部がインナカバーの底部以外に配置され,被測定ガスの流れが,構成Xの流れとは異なる場合,Aインナ導入開口部の位置が,構成Hに規定される位置とは異なる場合を前提とするものであるところ,これらは本件発明1を充足しないものであるから,サポート要件違反の問題とはならない。
また,原告の上記Bの主張については,本件発明1は,ルーバー部を設けない構成であっても,構成Xに規定された態様の流れを構成することは可能であり,その場合に,インナ導入開口部の位置を構成Hに規定するものとすれば,気筒間インバランスを検出する応答性は向上するものと認められるから,ルーバー部を設けていない場合に気筒間インバランスの応答性が向上しないとはいえない。
よって,原告の上記主張はいずれも理由がない。
(イ) 原告は,図15の試験に用いたインナカバー及びセンサ素子の径方向寸法とは異なるガスセンサは,本件発明の効果を奏するものとはいえないので,本件発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえず,サポート要件違反である旨主張する。
しかし,本件発明1は,構成G1のインナ導入開口部からインナカバー内部に導入された被測定ガスが,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側に設けられた上記インナ排出開口部に向けて流れるという構成(構成X)を備え,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあるという構成(構成H)を採用することによって,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができ,また,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることができるものであることは前記のとおりである。実施例で用いられたものとインナカバー及びセンサ素子の径方向寸法が異なるものであっても,本件発明1に定められた構成X及び構成Hを備える以上,気筒間インバランスの応答性を向上させる効果を奏するから,原告の主張は理由がない。
イ 被測定ガスの「流れ」について 原告は,本件発明1は,センサ素子のガス導入部に到達する被測定ガスと,流れる被測定ガスとがどのような関係になっているのかについて特定しておらず,傍流や拡散等による被測定ガスが到達する場合や,被測定ガスの流れが少量で遅い場合には,本件発明1の効果を奏しないから,サポート要件に違反する旨主張する。
しかし,被測定ガスの流れが傍流や拡散等による場合や,被測定ガスの流れが少量で遅く,センサ素子のガス導入部に到達しない場合には,被測定ガスの流れが構 成Xの態様によるとはいえない以上,本件発明1の技術的範囲に含まれないから,サポート要件違反の問題とはならず,原告の上記主張は理由がない。
ウ ガスセンサの用途について 原告は,本件発明1は,気筒間インバランスの検出に関する構成や応答性に関する構成を含まない以上,本件発明1の効果を奏しないものも含み,サポート要件違反である旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件発明1は,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスが,まず,軸方向基端側へ向かって流れ,その後,インナ導入開口部より軸方向先端側に設けられた上記インナ排出開口部に向けて流れるとの構成(構成X)を備えることを前提として,センサ素子のガス導入部の軸方向中間位置は,インナカバーのインナ導入開口部の軸方向基端位置よりも軸方向基端側にあるという構成(構成H)を採用することによって,インナ導入開口部からインナカバー内に導入された被測定ガスをできるだけ短距離で迅速にセンサ素子のガス導入部に到達させることができ,また,被測定ガスを他のインナ導入開口部から流れ込んだ被測定ガスと混合させることなく,センサ素子のガス導入部に到達させることができるものであるから,構成X,構成Hを具備している以上,ガスセンサの応答性向上に寄与する構成を備えているといえる。したがって,気筒間インバランスの検出に関する構成や応答性に関する構成についての直接的な特定がなくても,本件発明1の効果を奏しないものを含むことにはならず,サポート要件違反とはいえない。
(5) 小括 以上によれば,本件発明1は,サポート要件に適合するものであるから,取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(引用発明1Aを主引用例とする進歩性判断の誤り)について (1) 引用例1には,おおむね,次の記載がある(甲5。下記記載中に引用する図2,4,5,6,16は,別紙引用例1図面目録参照。。
) 【0001】本発明は,内燃機関の排気系等に配設され,被測定ガス中の特定ガス濃度を検知するガスセンサに関する。
【0009】本発明は,…ガスセンサ素子の被水割れを防止すると共に応答性に優れたガスセンサを提供しようとするものである。
【0010】本発明は,被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ素子と,該ガスセンサ素子を内側に挿通するハウジングと,該ハウジングの先端側に固定された素子カバーとを有するガスセンサであって,/上記素子カバーは,インナーカバーと該インナーカバーの外周に配置されたアウターカバーとを備えており,/上記アウターカバーは,側面部に外側開口部を設けてなると共に,該外側開口部よりも先端側に排出用開口部を設けてなり,/上記インナーカバーは,上記外側開口部よりも先端側となる位置に内側開口部を設けてなり,/該内側開口部は,上記インナーカバーの外部から内部へ向かう開口方向が上記ガスセンサの軸方向基端方向の成分を有する状態に形成されていることを特徴とするガスセンサにある(請求項1)。
【0011】次に,本発明の作用効果につき説明する。
上記素子カバーは,上記アウターカバーに上記外側開口部と上記排出用開口部とを設けており,上記インナーカバーにおける上記外側開口部よりも先端側となる位置に内側開口部を設けている。そのため,側方から流れて来る被測定ガスは,外側開口部からアウターカバーとインナーカバーとの間に導入され,排出用開口部から排出される。また,アウターカバーとインナーカバーとの間に導入された被測定ガスの一部が,更に内側開口部からインナーカバーの内部に導入され,ガスセンサ素子に到達する。
【0012】上述のごとく,上記内側開口部は,外側開口部よりも先端側となる位置に形成されていると共に,上記インナーカバーの外部から内部へ向かう開口方向が上記ガスセンサの軸方向基端方向の成分を有する状態に形成されている。それ故,アウターカバーの外側開口部から導入された被測定ガスの流れのうち,排出用 開口部へ向かう流れは比較的直線的な流れとなるが,内側開口部からインナーカバーの内部へ向かう流れは曲線的な流れとなる。
【0013】これにより,アウターカバーとインナーカバーとの間に導入された被測定ガスと共に流れる水滴は,その慣性力によって,排出用開口部へ向かって流れ,該排出用開口部から外部へ排出される。これは,水滴は被測定ガスに比べて比重が大きいため,慣性力が大きく働き,上記のごとく直線的な流れである排出用開口部へ向かう流れに沿って排出用開口部から外部へ排出されることとなる。一方,比重の小さい被測定ガス自体は,上記の直線的な流れ以外にも,曲線的な流れであるインナーカバーの内部へ向かう流れをも形成することとなる。
これにより,被測定ガスと共に流れる水滴がインナーカバーの内部に浸入することを防ぎ,ガスセンサ素子の被水を防ぐことができる。そして,被水に起因するガスセンサ素子の被水割れを防ぐことができる。
【0014】また,上記素子カバーには外側開口部及び内側開口部が形成されており,これらの位置関係によって,上記のごとく水滴の浸入を防ぐため,被測定ガスを素子カバーの内部に充分に導入することができる。それ故,応答性に優れたガスセンサを得ることができる。… 【0015】以上のごとく,本発明によれば,ガスセンサ素子の被水割れを防止すると共に応答性に優れたガスセンサを提供することができる。
【0032】(実施例1) 本発明の実施例に係るガスセンサにつき,図1〜図3を用いて説明する。
本例のガスセンサ1は,図1に示すごとく,被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ素子2と,該ガスセンサ素子2を内側に挿通するハウジング3と,該ハウジング3の先端側に固定された素子カバー4とを有する。
【0033】素子カバー4は,図1,図2に示すごとく,インナーカバー41と該インナーカバー41の外周に配置されたアウターカバー42との二重構造を有している。
アウターカバー42は,側面部に外側開口部421を設けてなると共に,該外側開口部421よりも先端側に排出用開口部422を設けてなる。
また,インナーカバー41は,外側開口部421よりも先端側となる位置に内側開口部411を設けてなる。
【0034】図2に示すごとく,内側開口部411は,インナーカバー41の外部から内部へ向かう開口方向Aが上記ガスセンサ1の軸方向基端方向の成分(Az)を有する状態に形成されている。… 【0035】また,排出用開口部422は,アウターカバー42の先端部に形成されている。
また,インナーカバー41は,素子カバー4の外部に開口する先端開口部412を,先端部に形成してなる。
アウターカバー42は,先端側へ行くほど縮径するテーパ形状の外側径変部423を形成してなる。
また,インナーカバー41は,先端側へ行くほど縮径するテーパ形状の内側径変部413,414を,軸方向の2箇所に形成してなる。そして,基端側の内側径変部413に,上記内側開口部4 1 1 が穿設されている。
【0040】次に,本例の作用効果につき説明する。
上記素子カバー4は,アウターカバー42に外側開口部421と排出用開口部422とを設けており,インナーカバー41における外側開口部421よりも先端側となる位置に内側開口部411を設けている。そのため,図3に示すごとく,側方から流れて来る被測定ガスGは,外側開口部421からアウターカバー42とインナーカバー41との間に導入され,排出用開口部422から排出される(G1)。また,アウターカバー42とインナーカバー41との間に導入された被測定ガスの一部(G2)が,更に内側開口部からインナーカバー41の内部に導入され,ガスセンサ素子2に到達する。
【0041】上述のごとく,内側開口部411は,外側開口部421よりも先端 側となる位置に形成されていると共に,インナーカバー41の外部から内部へ向かう開口方向Aがガスセンサ1の軸方向基端方向の成分Azを有する状態に形成されている。それ故,アウターカバー42の外側開口部421から導入された被測定ガスGの流れのうち,排出用開口部42へ向かう流れ(G1)は比較的直線的な流れとなるが,内側開口部411からインナーカバー41の内部へ向かう流れ(G2)は曲線的な流れとなる。
【0042】これにより,アウターカバー42とインナーカバー41との間に導入された被測定ガスと共に流れる水滴は,その慣性力によって,排出用開口部422へ向かって流れ,該排出用開口部422から外部へ排出される。これは,水滴は被測定ガスに比べて比重が大きいため,慣性力が大きく働き,上記のごとく直線的な流れである排出用開口部422へ向かう流れ(G1)に沿って排出用開口部422から外部へ排出されることとなる。一方,比重の小さい被測定ガス自体は,直線的な流れ(G1)以外にも,曲線的な流れであるインナーカバー41の内部へ向かう流れ(G2)をも形成することとなる。
【0043】これにより,被測定ガスGに含まれる水滴がインナーカバーの内部に浸入することを防ぎ,ガスセンサ素子2の被水を防ぐことができる。そして,この被水に起因するガスセンサ素子2の被水割れを防ぐことができる。
【0044】また,上記素子カバー4には外側開口部42及び内側開口部41が形成されており,これらの位置関係によって,上記のごとく水滴の浸入を防ぐため,被測定ガスGを素子カバー4の内部に充分に導入することができる。それ故,応答性に優れたガスセンサ1を得ることができる。… 【0050】(実施例2) 本例は,図4に示すごとく,インナーカバー41における内側開口部411の穿設位置を,より先端側にずらした例である。具体的には,内側開口部411は,アウターカバー42の外側開口部421と排出開口部422との略中間位置に形成されている。
また,インナーカバー41の内側径変部413も同様に,外側開口部421と排出開口部422との略中間位置に形成され,この内側径変部413に内側開口部411が形成されている。
その他は,実施例1と同様である。
【0051】この場合には,内側開口部411が外側開口部421からより離れた位置に配されることとなる。そのため,外側開口部421から導入された被測定ガスと共に流れる水滴が,内側開口部411からインナーカバー41の内部に浸入することをより防ぐことができる。
その他,実施例1と同様の作用効果を有する。
【0052】(実施例3) 本例は,図5,図6に示すごとく,インナーカバー41の側面部の一部に設けた凹部417の基端に,内側開口部411を形成した例である。
即ち,インナーカバー41における内側径変部413の複数箇所に凹部417を設け,該凹部417の基端を開口させることにより,内側開口部411を形成する。
即ち,いわゆるルーバー形状の内側開口部411とする。
その他は,実施例1と同様である。
【0053】本例の場合には,インナーカバー41の幅を大きくすることなく,内側開口部411の開口方向Aを,ガスセンサ1の軸方向基端方向へ近付けることができる。これにより,ガスセンサ素子2の被水を充分に防止すると共に,ガスセンサ1の小型化を容易にすることができる。
その他,実施例1と同様の作用効果を有する。
【0065】(実施例9) 本例は,図15,図16に示すごとく,インナーカバー41の先端面410とアウターカバー42の先端面420とを,互いに略同一平面上に配したガスセンサ1の例である。
実施例1のガスセンサ1においては,インナーカバー41がアウターカバー42 の先端面よりも先端側に突出した形状を有しているが,本例においては,インナーカバー41をアウターカバー42よりも突出させることなく,インナーカバー41の先端面410とアウターカバー420の先端面420とを略同一平面上に配したものである。
【0066】また,図15,図16においては,インナーカバー41の先端面410がアウターカバー42の先端面420よりも若干基端側にある状態を示しているが,このズレは,公差の範囲内のズレである。そして,公差を設ける場合には,インナーカバー41の先端面410がアウターカバー42の先端面420よりも基端側となる側に設ける。
【0067】また,インナーカバー41の最も直径の小さい部分を含む内側径変部414,即ち先端側の内側径変部414は,その基端部414aがガスセンサ素子2の先端21よりも先端側に配されている。
また,図16に示すごとく,内側開口部411は,ガスセンサ素子2に設けた被測定ガス側電極22の基端部221から該被測定ガス側電極22の軸方向長さLの半分の位置までの間の位置に形成されている。また,より好ましくは,内側開口部411は,被測定ガス側電極22の基端部221から該被測定ガス側電極22の軸方向長さLの3分の1の位置までの間の位置に形成する。… 【0072】また,内側開口部411は,被測定ガス側電極22の基端部221から該被測定ガス側電極22の軸方向長さLの半分の位置までの間の位置に形成されている。これにより,図16に示すごとく,内側開口部411から導入された被測定ガスGを,被測定ガス側電極22に即座に到達させることができると共に,被測定ガス側電極22の全体に行き渡らせることができ,一層応答性に優れたガスセンサ1を得ることができる。… 【0073】内側開口部411が,被測定ガス側電極22の軸方向長さの半分の位置よりも先端側に形成されている場合には,内側開口部411から導入された被測定ガスGを,被測定ガス側電極22の全体に行き渡らせることが困難となり,充 分な応答性を得ることが困難となるおそれがある。一方,上記内側開口部411が,被測定ガス側電極22の基端部221よりも基端側に形成されている場合には,内側開口部411から導入された被測定ガスが被測定ガス側電極22に到達するまでに時間がかかり,優れた応答性を得ることが困難となるおそれがある。
(2) 引用発明1Aの認定 原告は,引用例1図4のガスセンサ1では,ガスセンサ素子2の軸方向先端位置C3は,インナーカバー41の内側開口部411の軸方向基端位置D1よりも「少しだけ」軸方向先端側(X1)にあるから,構成Iを備えており,ガスセンサ素子2の先端側のどこかの位置に,甲8の多孔質拡散抵抗層21を加えた場合には,<拡散抵抗層及び補助線を加えた甲5の図4>に示す多孔質拡散抵抗層21の軸方向中間位置C1は,インナーカバー41の内側開口部411の軸方向基端位置D1よりも軸方向基端側(X2)にあることとなり,構成Hの配置となっている旨主張する。
しかし,引用例1に記載された発明は, 「ガスセンサ素子の被水割れを防止すると共に応答性に優れたガスセンサを提供」することを目的としてなされたものであるところ(【0009】,実施例2は,実施例1の「インナーカバー41における内側 )開口部411の穿設位置を,より先端側にずらした例」であり, 「内側開口部411は,アウターカバー42の外側開口部421と排出開口部422との略中間位置に形成されている」【0050】 ( )ものである。
そして,実施例1は, 「アウターカバー42は,側面部に外側開口部421を設けてなると共に,該外側開口部421よりも先端側に排出用開口部422を設けてなる。また,インナーカバー41は,外側開口部421よりも先端側となる位置に内側開口部411を設けてなる。( 」【0033】)という構成のものであり,これによって, 「被測定ガスGに含まれる水滴がインナーカバーの内部に浸入することを防ぎ,ガスセンサ素子2の被水を防ぐことができる。そして,この被水に起因するガスセンサ素子2の被水割れを防ぐことができ」【0043】, ( )「また,上記素子カバー4には外側開口部42及び内側開口部41が形成されており,これらの位置関係によ って,上記のごとく水滴の浸入を防ぐため,被測定ガスGを素子カバー4の内部に充分に導入することができる。それ故,応答性に優れたガスセンサ1を得ることができる。( 」【0044】)ものである。実施例1,2はともに,外側開口部42及び内側開口部41の位置関係によって,インナカバーの内部に浸水することを防ぐものであって,応答性の向上は,被測定ガスGを素子カバー4の内部に充分に導入することができることによって,もたらされる。
そうすると,引用例1の実施例2に係る図4に図示されたセンサ素子は,単にセンサ素子が存在することを示すにすぎないものであって,センサ素子の先端と内側開口部との位置関係を示すことまで意図したものでないから,図面上の位置関係のみに基づき,センサ素子の先端と内側開口部との位置関係を認定することはできない。
よって,引用例1には,本件審決が認定したとおりの引用発明1A(前記第2の3(3)ア)が記載されているものと認定することができる。
(3) 本件発明1と引用発明1Aとの対比 本件発明1と引用発明1Aとの一致点及び相違点は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(3)イ,ウ)であると認められる(当事者間に争いがない。。
) (4) 相違点13の容易想到性について ア 引用発明1Aに基づく容易想到性 引用例1には,内側開口部411は,外側開口部421よりも先端側となる位置に形成されていると共に,インナーカバー41の外部から内部へ向かう開口方向Aがガスセンサ1の軸方向基端方向の成分Azを有する状態に形成されている。それ故,アウターカバー42の外側開口部421から導入された被測定ガスGの流れのうち,排出用開口部42へ向かう流れ(G1)は比較的直線的な流れとなるが,内側開口部411からインナーカバー41の内部へ向かう流れ(G2)は曲線的な流れとなること(【0041】,これにより,アウターカバー42とインナーカバー41 )との間に導入された被測定ガスと共に流れる水滴は,その慣性力によって,排出用 開口部422へ向かって流れ,該排出用開口部422から外部へ排出される一方,比重の小さい被測定ガス自体は,直線的な流れ(G1)以外にも,曲線的な流れであるインナーカバー41の内部へ向かう流れ(G2)をも形成することとなること 【0 (042】,これにより,被測定ガスGに含まれる水滴がインナーカバーの内部に浸 )入することを防ぎ,ガスセンサ素子2の被水を防ぐことができ,そして,この被水に起因するガスセンサ素子2の被水割れを防ぐことができること(【0043】)の記載がある。
これらの記載によれば,引用発明1Aは,アウターカバー42とインナーカバー41との間に導入された被測定ガスと共に流れる水滴を含む被測定ガスについて,水滴は,排出用開口部422から排出させ,水滴を含まない被測定ガスを,曲線的な流れであるインナーカバー41の内部へ向かう流れを形成させるものである。
そして,引用例1には,インナーカバー41の内側に導入された被測定ガスの流れ方や,ガス導入部の配置位置により,被測定ガスの混合を防いで応答性を向上させることについて,記載も示唆もない。
かえって,引用例1の実施例9(図15,16)では, 「内側開口部411は,ガスセンサ素子2に設けた被測定ガス側電極22の基端部221から該被測定ガス側電極22の軸方向長さLの半分の位置までの間の位置に形成され」 ( た 【0067】)ものであることが開示されており,内側開口部(インナ導入開口部)との関係において,構成Hとは反対側となる位置に被測定ガス側電極(ガス導入部)の軸方向中間位置が位置するものとなる。そして,このような位置関係とすることによって,「応答性に優れたガスセンサとすることができる」【0075】 ( )旨の記載もあることも併せるなら,引用例1においては,本件発明1の構成Hに係る位置関係とすることについては想定されておらず,相違点13に係る構成を採用する動機付けはない。
よって,本件発明1は,引用発明1Aから容易に想到できたものとはいえない。
イ 引用発明1A及び技術常識に基づく容易想到性 (ア) 甲8(特開2007-101353号公報)には,以下の記載がある(下記記載中に引用する図1,2は,別紙甲8図面目録参照。。
)【0021】(実施例1) 本例の実施例にかかるガスセンサにつき,図1〜図4を用いて説明する。
本例のガスセンサ1は,図1に示すごとく,被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するガスセンサ素子2と,該ガスセンサ素子2を素子挿通孔30に貫通させて保持する絶縁碍子3と,該絶縁碍子3が挿入配置されるハウジング5とを有する。
【0022】また,図1,図4に示すごとく,ガスセンサ素子2と絶縁碍子3とは,素子挿通孔30の基端側において密閉封止材6によって封止固定してある。
また,ガスセンサ素子2は,絶縁碍子3よりも先端側において,被測定ガス側電極23と基準ガス側電極25とを設けたセンシング部200を形成してなる。そして,図2に示すごとく,該センシング部200には,被測定ガス側電極23へ向かう被測定ガスを拡散させる多孔質拡散抵抗層21が配設されている。
【0024】本例のガスセンサ1は,自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して,排気ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサである。… (イ) 甲4(特開2012-127668号公報)には,以下の記載がある(下記記載中に引用する図5,表1は,別紙甲4図表目録参照。。
)【0001】本発明は,被測定ガス中の窒素酸化物濃度及びアンモニア濃度を検出するに適したマルチガスセンサに関する。
【0006】…本発明は,1つのガスセンサ素子でNOx濃度出力とアンモニア濃度出力を測定可能で,かつ高温のNOxセンサ部を通過してアンモニアが熱分解された被測定ガスがアンモニアセンサ部に到達するのを防止し,アンモニア濃度出力を正確に測定可能なマルチガスセンサの提供を目的とする。
【0017】…ガスセンサ素子100Aは,先端部105にNOxセンサ部30及びアンモニアセンサ部42を有し,アンモニアセンサ部42はガスセンサ素子100Aの外表面に露出している。又,NOxセンサ部30の内部に被測定ガスを導入 するためのガス拡散孔8aがガスセンサ素子100Aの側面に開口している。
【0047】次に、図5を参照し、プロテクタ141の内側ガス導入孔143a、
内側ガス排出孔143bと、NOxセンサ部30及びアンモニアセンサ部42との位置関係について説明する。… 【0052】…被測定ガスはプロテクタ141内を、外側ガス導入孔142aから内側ガス導入孔143aを経て内側ガス排出孔143bへ流れるようになっている(図5の破線の矢印の流れ)。
【0068】各実施例及び比較例において,内側プロテクタ141の内側ガス導入孔143a,内側ガス排出孔143bと,NOxセンサ部30及びアンモニアセンサ部42との位置関係を表1にまとめた。
(ウ) 甲17(特開2012-21895号公報)には,以下の記載がある(下記記載中に引用する図1は,別紙甲17図面目録参照。。
) 【0007】本発明は,…応答性を高めたガスセンサを提供することを目的とする。
【0018】図1に示すように,検知素子110は,軸線AX方向に延びる板状の素子である。…検知素子110は,検知素子110の先端側に検知部112を備える。なお,検知部112は,具体的には,検知電極117と基準電極118とが対極する位置におけるガス検知体の全部位のことをさす。検知部112には,ガス導入部111が設けられており,ガス導入部111は,検知素子110の内部に排気ガスを導入するための多孔質体である。ガス導入部111は,例えば,軸線AX方向の長さが2.5mm,幅が0.05mmの矩形状である。… (エ) 以上によれば,甲8には,ガスセンサ素子2が,絶縁碍子3よりも先端側において,被測定ガス側電極23と基準ガス側電極25とを設けたセンシング部200を形成してなるガスセンサが開示されていることの,甲4には,ガスセンサ素子100Aが,先端部105にNOxセンサ部30を有し,NOx30の内部に被測定ガスを導入するためのガス拡散孔8aが存在することを備えたマルチガスセンサ が開示されていることの,甲17には,検知素子110の先端側に検知部112を備え,検知部112には検知素子110の内部に排気ガスを導入するための多孔質体のガス導入部111が設けられていることの開示がそれぞれある。そして,これらの証拠によれば,ガスセンサにおいて,センサ素子の先端部に,センサ素子の内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部が設けられることは,本件特許の優先日前において技術常識であったといえる。
しかしながら,引用発明1Aに上記技術常識を適用し,センサ素子の先端部に,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部が設けられることができるとしても,その具体的な位置について直ちに決まるものではない。そして,前記アのとおり,引用例1の実施例9には,内側開口部(インナ導入開口部)との関係において,構成Hとは反対側となる位置に被測定ガス側電極(ガス導入部)の軸方向中間位置が位置することによって,応答性に優れたガスセンサとすることができることの記載があり,引用発明1Aにおいては構成Hの位置関係にすることは想定されていない以上,当業者が,ガス導入部の位置を適宜構成Hの位置にすることができるとはいえない。
よって,引用発明1Aに技術常識を適用しても,相違点13に係る構成を想到することが容易であるとはいえない。
(5) 小括 以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,本件発明1は,引用発明1Aに基づいて容易に想到することができたものとはいえない。
よって,取消事由4は理由がない。
6 取消事由5(引用発明1Bを主引用例とする進歩性判断の誤り)について (1) 引用発明1B,本件発明1との一致点及び相違点の認定 前記5(1)の引用例1の記載によれば,引用例1には,本件審決が認定したとおりの引用発明1B(前記第2の3(4)ア)が記載されていることが認められる(当事者間に争いがない。。
) 本件発明1と引用発明1Bとの一致点及び相違点は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(4)イ,ウ)であると認められる(当事者間に争いがない。。
) (2) 相違点11の容易想到性について ア 引用発明1Bは,引用例1の実施例1の構成に, 「ガスセンサ素子2の先端位置は,インナーカバー41の内側開口部411よりも先端側にあり,インナーカバー41における内側径変部413の複数箇所に凹部417を設け,該凹部417の基端を開口させることにより,内側開口部411を形成し,即ち,いわゆるルーバー形状の内側開口部411とし,」との構成を付加するものである。
引用例1に記載された発明は, 「ガスセンサ素子の被水割れを防止すると共に応答性に優れたガスセンサを提供」することを目的としてなされたものであること,引用例1には,インナーカバー41の内側に導入された被測定ガスの流れ方や,ガス導入部の配置位置により,被測定ガスの混合を防いで応答性を向上させることについて,記載も示唆もないこと,また,引用例1の実施例9では,内側開口部(インナ導入開口部)との関係において,構成Hとは反対側となる位置に被測定ガス側電極(ガス導入部)の軸方向中間位置が位置するものとなり,このような位置関係とすることによって, 「応答性に優れたガスセンサとすることができる」旨の記載があること,これらの記載によれば,引用例1においては,本件発明1の構成Hに係る位置関係とすることについては想定されていないことは,前記5(4)アのとおりであるから,相違点11に係る構成を採用する動機付けはない。
イ 原告は,センサ素子の先端部にガス導入部を設けることは,技術常識であり,当業者は,技術常識に従ってガス導入部をセンサ素子の先端部に適宜設けることができる旨主張する。
しかし,ガスセンサにおいて,センサ素子の先端部に,その内部に被測定ガスを導入するためのガス導入部が設けられるとの技術常識を引用発明1Bに適用したとしても,引用発明1Bにおいて構成Hの位置関係にすることは想定されていない以上,当業者が,ガス導入部の位置を適宜構成Hの位置にすることができるとはいえ ないから,相違点11に係る構成を想到することが容易であるとはいえない。
(3) 小括 以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,本件発明1は,引用発明1Bに基づいて容易に想到できたものとはいえない。
よって,取消事由5は理由がない。
7 取消事由6(引用発明2を主引用例とする進歩性判断の誤り)について (1) 引用例2には,おおむね,次の記載がある(甲14。下記記載中に引用する図1は,別紙引用例2図面目録参照。。
) 【0001】本発明は,ガスセンサに関する。詳しくは,本発明は,センサ素子を覆うカバーを備えるガスセンサの検出感度を高める技術に関する。
【0010】また,プラントや内燃機関等の実際の設備や機械においてガスセンサが設けられる箇所は,それらの設計仕様やセンサ搭載上の制約等により,必ずしも理想的な箇所ではない場合がある。例えば,内燃機関の排気通路に設けられる空燃比センサの配置は,エキゾーストマニホルドの形状等によって制約される。その結果,例えば,空燃比気筒間インバランスの検出に理想的な箇所に空燃比センサを設けることができず,空燃比気筒間インバランスの検出感度が不十分となる場合がある。
【0014】…本発明の目的は,検出対象となる気体(対象ガス)中に含まれる成分の凝縮液や不純物の付着によるガスセンサの汚損や破損を抑制しつつ,より高い検出性能(例えば,検出精度,検出感度,応答速度等)を有するガスセンサを提供することにある。
【0015】…ガスセンサは対象ガスの通路に設けられるため,対象ガスが流れる方向における下流側に位置する導入孔においては,上流側に位置する導入孔と比較して,対象ガスの流入量が少なくなる。そこで,本発明者は,鋭意研究の結果,前述のように,その内部に対象ガスを導入する導入孔を有するカバーによってセンサ素子が覆われているガスセンサにおいて,当該カバーの下流側の表面の少なくとも 一部を覆うガイド壁を設けることにより,当該ガスセンサの検出性能(例えば,検出精度,検出感度,応答速度等)を向上させることができることを見出し,本発明を想到するに至ったものである。
【0016】即ち,本発明の上記目的は,/気体の性状及び/又は気体が含有する成分の濃度を検出するためのセンサ素子,及び前記センサ素子を覆うように設けられ,その内部に前記気体を導入する導入孔を有するカバー,/を備えるガスセンサであって,/前記カバーの外面のうち前記気体が流れる方向における下流側に位置する部分の少なくとも一部を,当該部分との間に予め定められた間隔を空けて覆うように設けられたガイド壁,/を更に備えることを特徴とするガスセンサによって達成される。
【0021】(1)第1態様 本発明の第1態様は,/気体の性状及び/又は気体が含有する成分の濃度を検出するためのセンサ素子,及び前記センサ素子を覆うように設けられ,その内部に前記気体を導入する導入孔を有するカバー,/を備えるガスセンサであって,/前記カバーの外面のうち前記気体が流れる方向における下流側に位置する部分の少なくとも一部を,当該部分との間に予め定められた間隔を空けて覆うように設けられたガイド壁,/を更に備えることを特徴とするガスセンサである。
【0022】上記センサ素子は,上記ガスセンサが検出しようとする気体の性状や含有成分等に応じて適宜選択されるものであり,特定の種類や構造に限定されるものではない。例えば,対象ガスが含有する酸素の濃度を検出しようとする場合(即ち,上記ガスセンサが酸素センサを構成する場合),上記センサ素子としては,一般的には,高温に加熱された安定化ジルコニア(セラミックス)の酸素イオン伝導性を利用するタイプのものが採用される。
【0023】上記カバーは,上記ガスセンサが使用される環境(例えば,温度,圧力,及びガスの流量等)や検出対象となる気体(対象ガス)の性状(例えば,温度,腐食性等),上記センサ素子の作動条件(例えば,作動温度等)等に耐え,且つ所望 の形状及び大きさに加工することが可能である限り,如何なる材料によって構成されていてもよく,特定の材料に限定されるものではない。例えば,上記カバーは,ステンレス鋼によって形成することができる。
【0024】上記カバーの形状や大きさは,例えば,上記ガスセンサが配設される箇所の形状や大きさ(例えば,対象ガスの通路の形状や太さ等),上記センサ素子の形状や大きさ,対象ガスの流動性や流速等,種々の要因に応じて適宜設計することができる。また,上記カバーの内側に第2のカバーが設けられていてもよい。即ち,センサ素子のカバーは,多重化されていてもよく,前述のような「ラビリンス構造」を呈するように構成されていてもよい。更に,上記カバー(及び,存在する場合には,第2のカバー)及び上記センサ素子の間の間隔(空隙)もまた,例えば,上記ガスセンサが配設される箇所の形状,上記センサ素子の形状や大きさ,対象ガスの流動性や流速等,種々の要因に応じて適宜設計することができる。
【0025】尚,上記カバーが有する導入孔の形状及び大きさは,対象ガス中に含まれることが想定される異物や不純物等の大きさや性状,及び上記ガスセンサの検出性能(例えば,検出精度,検出感度,応答速度等)を考慮して適宜設計することができる。例えば,上記ガスセンサが酸素センサを構成する場合,上記導入孔は,例えば,1〜3mmの直径を有し,その数が4〜8個であることが望ましい。
(2) 引用発明2,本件発明1との一致点及び相違点の認定 以上によれば,引用例2には,本件審決が認定したとおりの引用発明2(前記第2の3(5)ア)が記載されていることが認められる(当事者間に争いがない。。
) 本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(5)イ,ウ)であると認められる。
(3) 相違点6に係る容易想到性 ア 引用例2には,検出対象となる気体(対象ガス)中に含まれる成分の凝縮液や不純物の付着によるガスセンサの汚損や破損を抑制しつつ,より高い検出性能(例えば,検出精度,検出感度,応答速度等)を有するガスセンサを提供するとの目的を 達成するため,気体の性状及び/又は気体が含有する成分の濃度を検出するためのセンサ素子,及び前記センサ素子を覆うように設けられ,その内部に前記気体を導入する導入孔を有するカバーを備え,前記カバーの外面のうち前記気体が流れる方向における下流側に位置する部分の少なくとも一部を,当該部分との間に予め定められた間隔を空けて覆うように設けられたガイド壁を更に備えることとし,ガスセンサの検出性能(例えば,検出精度,検出感度,応答速度等)を向上させるとの記載がある(【0014】〜【0016】。
) 他方で,引用例2には,検出性能の向上のため,構成Hを採用することや,気筒間インバランス検出精度向上に構成Hが寄与し得ることの記載や示唆はない上,引用例2図1には,センサ素子21におけるガス導入部の配設位置は記載されていないのであるから,引用例2においては,本件発明1の構成Hに係る位置関係とすることについては想定されておらず,相違点6に係る構成を採用する動機付けはないというべきである。
イ 原告は,引用発明2において,センサ素子21のガス導入部をどこに配置するかの検討は,例えば,甲4の図5〜8において適宜選択しているように,当業者が通常行う設計事項である旨主張する。
しかし,甲4は,NOxセンサとアンモニアセンサの2つのセンサをセンサ素子に設けたマルチセンサに係るものであり,高温のNOxセンサ部を通過してアンモニアが熱分解された被測定ガスがアンモニアセンサ部に到達するのを防止し,アンモニア濃度出力を正確に測定可能にするもの(【0006】)であって,本件発明1や引用発明2のようなガスセンサとはその目的が異なる。また,甲4の実施例3,4のNOxセンサのガス拡散孔8aは,ガス導入孔14より基端側にあるが(図6(b) (c),NOxセンサ部のNOx検知応答性は△であって(表1) ) ,良好ではない。そうすると,ガスセンサの応答性が良好になるように,センサ素子21のガス導入部の配置を定め,構成Hに相当する配置とすることで応答性を向上させることが適宜なし得たことであるとはいえない。
したがって,相違点6に係る構成を想到することが容易にできたものであるとはいえない。
(4) 小括 以上によれば,その余の相違点について判断するまでもなく,本件発明1は,引用発明2に基づいて容易に想到できたものとはいえない。
よって,取消事由6は理由がない。
8 取消事由7(本件発明2ないし4についての進歩性判断の誤り)について 前記5ないし7のとおり,本件発明1は,引用発明1A,1B,2に基づいて容易に想到できたものではなく,本件発明2ないし4は,本件発明1に限定を加えたものであるから,いずれも容易に想到できたものではない。
よって,取消事由7は理由がない。
9 結論 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 小林康彦
裁判官 関根澄子
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