• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 不服2017-17192 不服2017-17
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙2PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙3PDFを見る pdf
事件 平成 30年 (行ケ) 10180号 審決取消請求事件

原告X
被告特許庁長官
指定代理人長馬望
同 藤井昇
同 関口哲生
同 阿曾裕樹
同 上田真誠
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2019/05/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2017-17192号事件について平成30年11月5日 にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,平成28年12月27日,発明の名称を「キャリーバッグ」とす る発明について,特許出願(特願2016-258008号。請求項の数3。
以下「本願」という。乙1)をした。
原告は,平成29年2月28日,本願の願書に添付した図面について手続 1 補正(乙5)をした。
原告は,同年4月27日付けの拒絶理由通知(乙6)を受けた後,同年7 月27日付けで拒絶査定(乙8)を受けた。
(2) 原告は,平成29年11月2日,拒絶査定不服審判(不服2017-17 192号事件)を請求した(乙9)。
特許庁は,平成30年11月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」 との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月28日,原 告に送達された。
(3) 原告は,平成30年12月26日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を 提起した。
2 特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲は,請求項1ないし3からなり,その請求項1の記載 は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。乙 1)。
【請求項1】 キャリーバッグのレバーの取り付け部をキャリーバッグの外側の下部にし, 外レバー(2と13)の前傾角度を維持調整する機構を設け,キャリーバッグ を直立したままで移動できるようにしたキャリーバッグ3 本件審決の理由の要旨 (1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である登録実 用新案第3060008号公報(以下「引用文献1」という。乙12)に記 載された発明及び特開2004-81561号公報(以下「引用文献2」と いう。乙13)に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をするこ とができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ とができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒 2 絶すべきであるというものである。
(2) 本件審決が認定した引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」とい う。),本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。
ア 引用発明 旅行かばんの把っ手構造10の取り付け部を旅行かばんの外側の底部 にし,把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム40を設け, 旅行かばんを直立したままで移動できるようにした旅行かばん イ 本願発明と引用発明の一致点及び相違点 (一致点) 「キャリーバッグのレバーの取り付け部をキャリーバッグの外側の下部 にし,外レバーの前傾角度を維持する機構を設け,キャリーバッグを直立 したままで移動できるようにしたキャリーバッグ」である点。
(相違点) 本願発明のキャリーバッグは,「外レバーの前傾角度を維持調整する機 構」が設けられているのに対し,引用発明の旅行かばんは,「把っ手構造 10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム」が設けられているものの,こ の折り曲げアームによる傾斜角度の調整については,特定されていない点。
4 取消事由 引用文献1及び2に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 相違点の認定の誤り 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)には,キャリーバックを「押して 移動」する点の記述がないから,本願発明のキャリーバッグには,「押して 移動」するものを含まない。
他方,引用文献1においては,旅行かばんを「押し進める」ときについて 3 の記述(【0003】,【0004】,【0012】,【0014】,【0 015】)があるのに対し,旅行かばんを「引いて移動」するという記述は なく,「引いて移動」することを示す図面の記述もないことからすると,引 用発明の旅行かばんは,「引いて移動」するものが含まれず,「押して移動」 するものに特定されていると解すべきである。
そうすると,本願発明と引用発明は,本願発明のキャリーバッグが「押し て移動」するものを含まないのに対し,引用発明の旅行かばんは「押して移 動」するものに特定されている点で相違する。
しかるところ,本件審決は,本願発明と引用発明の上記相違点を認定して いないから,本件審決における相違点の認定に誤りがある。
(2) 相違点の容易想到性の判断の誤り 本件審決は,引用発明に記載された「把っ手構造10の傾斜角度を維持す る折り曲げアーム」を引用文献2に記載された「位置変更切換え機構7」と して,相違点に係る本願発明の構成を引用発明において得ることは当業者が 容易に想到し得た事項であり,また,仮に引用発明の旅行かばんは,後ろか ら押して移動するものであったとしても,引用発明の旅行かばんを引いて移 動することは当業者が容易に想到し得た事項である旨判断した。
しかしながら,引用発明の旅行かばんは,前記(1)のとおり,「押して移動」 するものであり,レバーは旅行かばんを後ろから押すためのものであるから, レバーの傾斜角度は,「押して移動」に適した範囲内の小さな傾斜角度であ る。このような引用発明の旅行かばんを引いて移動する場合,引く方向に働 く力は小さいので,大きな力が必要となり,疲れやすい。
一方,引用文献2のゴルフバッグの取っ手も,リヤポケット内のレバーで あるため,レバーの傾斜角度は小さいから,引いて移動するのに適さない。
そうすると,引用文献1及び2に接した当業者は,引用発明の旅行かばん の「押して移動」する構成を「引いて移動」する構成(前記(1)の相違点に係 4 る本願発明の構成)とすることを容易に想到することができたものとはいえ ないから,本件審決の上記判断には誤りがある。
(3) 小括 以上のとおり,本件審決は,本願発明と引用発明との相違点の認定及び容 易想到性の判断を誤り,その結果,本願発明は,引用発明及び引用文献2に 記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと 誤った判断をしたものであるから,取り消されるべきである。
2 被告の主張 (1) 相違点の認定の誤りの主張に対し ア 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本願発明は, 「キャリーバッグを直立したままで移動できるようにした」ことは特定さ れているが,直立したままで「引いて移動」できるようにしたことまでは 特定されていない。
また,本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本願明細書」 という。乙1,5)には,キャリーバックの移動方向に関し,「引いて移 動」できるキャリーバッグに限られることは記載されておらず,外レバー の前傾角度を維持調整する機構を設け,キャリーバッグを押すことによっ て,直立したままで移動できるようにしたキャリーバッグであっても,本 願発明の「キャリーバッグの移動のとき前傾をやめて直立で歩行できるよ うにする。」(【0004】)という課題を解決できることは明らかであ る。
したがって,本願発明のキャリーバッグには,引いて移動するキャリー バッグだけではなく,押して移動するキャリーバッグや,引いても押して も移動することができるキャリーバッグも含まれるから,本願発明のキャ リーバッグには「押して移動する」ものを含まないとの原告の主張は失当 である。
5 イ 次に,引用文献1の記載事項(【請求項1】,【0003】,【000 4】,【0007】ないし【0012】,図1ないし7)によれば,引用 文献1記載の旅行かばんは,「使用者が把っ手で旅行かばんを引っぱる場 合,使用者は依然として旅行かばんの重さの分力を受けるので,長時間使 用すれば疲れ易い」(【0003】)という従来の旅行かばんの課題を, 引っぱって移動させる場合においても解決したものであるから,引用文献 1記載の旅行かばんは,押して移動することに特定されるものではなく, 引っぱって移動することも想定されている。
したがって,引用発明の旅行かばんは,「引いて移動」するものが含ま れず,「押して移動」するものに特定されているとの原告の主張は理由が ない。
ウ 以上によれば,本願発明のキャリーバッグが「押して移動」するものを 含まないのに対し,引用発明の旅行かばんは「押して移動」するものに特 定されている点で,両発明は相違するとの原告の主張は理由がない。
また,仮に原告が主張するように本願発明が「引いて移動」するキャリ ーバッグに限定したものであったとしても,前記イのとおり,引用文献1 には,旅行かばんを押して移動するだけでなく,引っぱって移動すること も記載されているといえるから,原告の上記主張は理由がない。
したがって,本件審決における相違点の認定に誤りはない。
(2) 相違点の容易想到性の判断の誤りの主張に対し 引用文献1記載の旅行かばんの把っ手構造10及び折り曲げアームと引用 文献2記載の取っ手部材5及び位置変更切換え機構7とは,バッグを移動さ せるときに用いるレバーとその角度を維持する手段である点で共通すること からすると,当業者は,引用発明の「把っ手構造10の傾斜角度を維持する 折り曲げアーム」を引用文献2記載の「位置変更切換え機構7」の構成とし て,引用発明において,本件審決認定の相違点に係る本願発明の構成を得る 6 ことを容易になし得たことである。
また,前記(1)のとおり,本件審決における相違点の認定に誤りはなく,原 告が主張する本願発明と引用発明の相違点は両発明の相違点とはいえない。
(3) 小括 以上のとおり,本件審決における本願発明と引用発明との相違点の認定及 び容易想到性の判断に誤りはないから,本願発明は,引用発明及び引用文献 2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたと した本件審決の判断に誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由は理由がない。
当裁判所の判断
1 本願明細書の記載事項について (1) 本願明細書(乙1,5)には,次のような記載がある(下記記載中に引用 する「図1」,「図2」,「図6」ないし「図11」については別紙1を参 照)。
ア 【技術分野】 【0001】 キャリーバッグに関するものである。
【背景技術】 【0002】 従来,キャリーバッグのレバーを引いて移動するときは前傾の型になるの で腕に重みがかかりだるくなったり,また,前の二輪だけに荷重がかかる ので荷が重いときは転がりが重かった。
【発明が解決しようとする課題】 【0004】 キャリーバッグの移動のとき前傾をやめて直立で歩行できるようにする。
【課題を解決するための手段】 7 【0005】 キャリーバッグのレバーの取り付けを外側の下部にする。
イ 【発明の効果】 【0006】 キャリーバッグを直立したまま歩行できるので腕に重みがかからず,また, 四輪すべてに荷重が分散するので荷が重くても転がりは軽い。
ウ 【発明を実施するための形態】 【0008】 本案はキャリーバッグに関するもので,従来のキャリーバッグ中にある内 レバー(1)とは別にキャリーバックの外に外レバー(2)を設けたもの である。
実施例1。本案は外レバー(2)の前傾をピン(6)の嵌合で維持するよ うにしたものである。1図はキャリーバッグにカバン(3)を載せて移動 する従来の側面図であるがキャリーバッグは前傾型である。2図は本案の 側面図であるが,キャリーバッグは直立型である。キャリーバッグの下部 の左右に内側へ取り付部用の空間を設ける。この空間に取り付け穴とこの 穴を中心とする円周上に複数のピン穴(4)をあけた取り付け板(5)を 設ける。外レバー(2)は従来と同様の伸縮式とし,その先端部に取り付 け穴とピン穴(8)をあけたレバー取り付け板(7)を角度を付けて設け, これにピンを付けた板バネ(9)を設ける。外レバー(2)の下パイプの 上部に中棒(11)を固定し,これの左右に紐などを付け,少し下に横棒 (12)を下げる。横棒(12)の左右に細い針金(10)などの一端を 付け,他端を左右の板バネ(9)に付ける。キャリーバッグの取り付け板 (5)に外レバー取り付け板(7)をボルトなどで取り付ける。使わない ときはキャリーバッグに外レバー(2)を係止するため最上のピン穴(4) にピン(6)を入れる。使用するときは中棒(11)と横棒(12)を握 8 り横棒(12)を上へ引いてピン(6)を抜き,外レバー(2)を伸ばし適した傾きまで倒しピン(6)を入れて準備はできる。歩行してもキャリーバッグは前にも後ろにも倒れないので直立型の移動ができる。
本案の直立型キャリーバッグは従来の前傾型キャリーバッグと比較すると次のような効果がある。腕に重みがかからず楽である。また,荷重が重量でも四輪全体に荷重が分散されるので転がりが軽い。
本案は以上に限らず安定性を増すために6図のように外レバー(2)の下のパイプ幅を広くしてもよい。また,取付け部を側面にしてもよい。
実施例2。図7,図8,図9は本案の図である。実1とは外レバー(2)に取り付け板(7)を設ける角度が違うだけである。取り付け板(7)を角度を付けずにまっすぐに設け,取り付け板(5)に取り付ける。外レバー(2)をキャリーバッグの方へたたむとキャリーバッグに当たるので係止できるようにキャリーバッグの外皮の中央部分をへこませて左右だけを元のままにする。この場合,従来の内レバー(1)は除去する。本案も直立型の移動ができるので実1と同じ効果がある。
本案は以上に限らず,外レバー(2)を係止するとき従来の内レバー(1)と重ならないように両方のレバー幅を変えて内レバー(1)を残してもよく,この場合,キャリーバッグ上の荷の支え用に内レバー(1)の上部だけ固定して残してもよい。
実施例3。本案は外レバー(13)の傾きを支持棒(14)により維持する方法である。図10は本案の外レバー(13)を引き歩行する側面図で図11は正面図である。外レバー(13)の取り付け部はキャリーバッグの正面下部である。支持棒(14)の上側に複数のピン穴(15)を設ける。外レバー(13)の下パイプの上部に中棒(16)を固定し,その中央部とキャリーバッグの上方中央部に支持棒(14)が少しゆるい状態になるような着脱部(18),(19)と外レバー(13)をキャリーバッ 9 グに係止する係止部を設ける。中棒(16)の下に少し離して横棒(17) を固定し,中央部に支持棒(14)を係止するための係止部を設ける。外 レバー(13)を使わないときは中棒(16)の着脱部(18)に支持棒 (14)の一端は取り付けたままであるので他端を横棒(17)に係止し, 外レバー(13)をキャリーバッグに係止する。使用するときは外レバー (13)を係止部から外し,支持棒(14)の端を着脱部(19)に取り 付ける。外レバー(13)を伸ばし適した傾きまで倒し,支持棒(14) のピン穴(15)にピンを入れて移動準備はできる。ピンは紐などで付け ておく。歩行してもキャリーバッグは前にも後ろにも倒れず直立型の移動 ができるので実1と同じ効果がある。
本案は以上に限らず,支持棒(14)の伸縮は3段でもよく,ピン式で なくネジ式でもよい。また,外レバー(13)の取り付け部を実施例2の ようにキャリーバッグの正面下部の内側に空間を設け,そこにしてもよい。
この場合,外レバー(13)をキャリーバッグの方へたたんだとき係止で きないのでキャリーバッグの正面中央部分をへこませて左右だけを元のま まにする。
(2) 前記(1)の記載事項によれば,本願明細書には,本願発明に関し,次のよ うな開示があることが認められる。
ア キャリーバッグに取り付けられたレバー(内レバー)を引いて移動する ときに前傾になる従来の前傾型キャリーバッグは,腕に重みがかかり,だ るくなったり,また,前の二輪だけに荷重がかかるので,荷が重いときは 転がりが重いという問題があった(【0002】,【0008】)。
イ 「本案」は,キャリーバッグの移動のときに,前傾をやめて直立で歩行 できるようにすることを課題として,その課題を解決する手段として,キ ャリーバッグのレバーの取り付け部を外側の下部にする構成を採用し,こ れにより,キャリーバッグの移動のときに,キャリーバッグを直立したま 10 ま歩行できるので,腕に重みがかからず,また,四輪全てに荷重が分散す るので,荷が重くても転がりは軽いという効果を奏する(【0004】な いし【0006】,【0008】,図2,10)。
2 引用文献1の記載事項について (1) 引用文献1(乙12)には,次のような記載がある(下記記載中に引用す る「図1」,「図2」,「図6」及び「図7」については別紙2を参照。)。
ア 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 ローラを具有する旅行かばん本体と,一対の外管と,一対の 内管と,把っ手と,位置決めユニットと,折り曲げアームと,連動ロッド と,手で操作可能なフック係止ユニットとを備え, 前記外管は,底端が前記旅行かばん本体の底部の壁に枢設および接続され, 前記旅行かばん本体との間で開閉可能であって,前記一対の外管のうち少 なくとも一方の底段に内部と連通している切欠溝が形成され, 前記一対の内管は,それぞれ前記外管の中にはめられ, 前記外管の軸方向に沿って摺動可能であり, 前記把っ手は,前記内管の上端に接続され, 前記位置決めユニットは,前記外管と前記内管との間に設けられ, 前記折り曲げアームは,相互に枢設および接続された二本のロッドを有し, 一端は前記外管の管壁に枢設および接続され,もう一端は前記旅行かばん 本体の壁に枢設され,前記外管と前記旅行かばん本体との間の開閉作動に 応じて折り曲げられたりまっすぐ延ばされたりし, 前記連動ロッドは,一端が前記折り曲げアームの折り曲げ支点に枢設およ び接続され,もう一端は前記切欠溝を経由して前記外管の中まで延ばされ, 前記内管の底端によって作動され,前記外管の軸方向に沿って摺動できて 前記折り曲げアームを連動させ, 前記フック係止ユニットは,前記外管が前記旅行かばん本体の壁に閉じら 11 れたとき,前記旅行かばん本体の壁に位置決めしてその状態を保つことを 特徴とする旅行かばん。
イ 【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は,旅行かばんに関し,特に押し引き型の把っ手をもち,その把 っ手が傾斜して旅行かばんを押し進める機能を有する旅行かばんに関する。
【0002】 【従来の技術】 従来より,旅行かばんの把っ手は,旅行かばんにおいて伸縮自在である。
使用者の身丈に応じて長さを調整するばかりでなく,使用しない場合に収 納するために,把っ手を旅行かばんの中に縮めることもできる。
【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら,そのような従来の旅行かばんの把っ手は,使用者が旅行 かばんを引っぱったり提げたりするのに使われるだけであって,旅行かば んを押し進める機能がないので十分だといえない。また,使用者が旅行か ばんを提げる場合,かばんの重さが全て使用者の手にかかるので,骨が折 れるほど力がかかる。一方,使用者が把っ手で旅行かばんを引っぱる場合, 旅行かばんを傾斜させたあとで引っぱると力は少なくて済むが,使用者は 依然として旅行かばんの重さの分力を受けるので,長時間使用すれば疲れ 易い。
【0004】 したがって,本考案の目的は,本来の引っぱったり提げたりする機能以 外に,押し進めることができる旅行かばんを提供することにある。
本考案のもう一つの目的は,使用者が小さな力で移動させることができ る旅行かばんを提供することにある。
12 ウ 【0005】 【課題を解決するための手段】 上述の目的を達成するための本考案の旅行かばんは,次の要素を備える。
一対の外管があり,一対の内管はそれぞれ外管の中にはめられ,外管の 軸方向に沿って摺動可能である。把っ手は内管の上端に接続される。位置 決めユニットが外管と内管との間に設けられ,内管を外管の予定位置に位 置決めする。なお,外管の底端は旅行かばんの壁に枢設されるので,外管 は旅行かばんとの間で開閉できる。また,外管と連通している切欠溝が少 なくとも一つの外管の底段に軸方向に沿って設けられる。
【0006】 折り曲げアームは,相互に枢設および接続された二本のロッドから形成 される。その一端は外管の管壁に枢設および接続され,もう一端は旅行か ばん本体の壁に枢設されるので,外管と旅行かばんとの間の開閉作動に応 じて折り曲げられたりまっすぐ延ばされたりする。連動ロッドの一端は折 り曲げアームの折り曲げ支点に枢設および接続される。もう一端は切欠溝 を経由して外管の中まで延ばされ,内管の底端に支持される。連動ロッド は外管の軸方向に沿って摺動できる。なお,把っ手を収納するときに旅行 かばん本体の壁に当接させるために,手で操作できるフック係止ユニット が設けられる。
エ 【0007】 【考案の実施の形態】 以下,本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示す本実施例による旅行かばんの把っ手構造10は, 図7に示すように,若干のローラを具有する旅行かばん本体90の底部に 取付けられる。
支持板20の底端両側にはそれぞれ枢設および接続ブロック21がある。
13 L型の横方向断面をもつ枢設および接続プレート23を利用して,旅行かばん本体90の壁に取付ける。つまり,支持板20は,二本のピン24で二つの枢設および接続ブロック21を枢設および接続プレート23における枢設および接続ブロック25に枢設するので,枢設および接続部位を支点として,旅行かばん本体90との間で開閉の動作を行う。
【0008】 一対の外管30はそれぞれ支持板20の両側に設置される。
一対の内管33はそれぞれ外管30の中にはめられ,伸縮自在に摺動できる。
把っ手35は内管33の上端に接続され,手で握って提げることができる。
少なくとも一つの位置決めユニットは,外管と内管との間に設けられる。
位置決めユニットは把っ手35のボタンに連動され,内管33を外管30に位置決めする。なお,外管30,内管33,把っ手35および位置決めユニットの構造および作動関係は既存の構造であるので,その説明を省略する。
【0009】 本実施例の特徴は次のとおりである。
外管30の側面底段には,管の内部と連通している切欠溝31が設けられる。切欠溝31は外管の軸方向に沿って平行に設けられる。
二つの折り曲げアーム40は,相互に枢設および接続された二本のロッド41,42から形成される。ピン43が二本のロッド41,42を通過して,それらを枢設および接続する。折り曲げアーム40はロッド42の末端を経由して,取付板44に枢設および接続する。取付板44は旅行かばん本体の壁に取付けられる。そうすると,二つの折り曲げアーム40は支持板20の開閉動作に応じて,折り曲げられて併合されたり,あけられ 14 たりする。弾性ユニット45はトルクスプリングを採用する。その両端は二本のロッド41,42の間に介入するので,二本のロッド41,42を併合状態から開けられた状態まで変更するのに必要な作用力を提供する。
また,ロッド41に位置制限部47が設置されることにより,二本のロッド41,42が予定の角度まで開けられるときに,位置制限部47がロッド42の本体を留めて二本のロッド41,42の開けられる角度が大きくなり過ぎないように制限する。
【0010】 二つの連動ロッド50の上端は折り曲げアーム40に接続される。その底端は切欠溝31を経由して外管30の中まで延ばされ,内管33の底端に支持される。連動ロッド50の底端には連結ユニット51が接続される。
ロッド52は連結ユニット51に接合され,連動ロッド50の底端として,切欠溝31から外管30の中まで延ばされる。ロッド52が外管30から脱離しないように,外管30の側壁にガイドプレート53が設置される。
ガイドプレート53と外管30との間に適当な間隔をおくので,スライドパス54が形成される。スライドユニット55はスライドパス54の中に設けられ,外管30の軸方向に沿って摺動できる。ロッド52はガイドプレート53のガイド溝531を通過したあとでスライドユニット55に接続され,外管30の中まで延ばされる。ロッド52の本体中段がスライドユニット55に留められ,外管30から離れない。もちろん,スライドユニット55を外管30の外部に設けるという制限はなく,外管30の内部に設けてもよい。連動ロッド50の上端は枢設および接続ブロック57に接合され,その枢設および接続ブロック57を利用して,折り曲げアーム40の折り曲げ支点に枢設および接続される。
【0011】 フック係止ユニット60は支持板20の上方に配置される。押しユニッ 15 ト61は支持板20の上端に設置され,係止の位置と解除の位置との間で 移行できる。二つの弾性ユニット63は支持板20と押しユニット61と の間に設けられ,その弾性により押しユニット61を係止の位置にかける。
押しユニット61は外向きに二つのフック65を形成する。それに対応し て,取付板44に二つのフック孔441がある。支持板20が旅行かばん 本体の壁に収納される場合に,押しユニット61の二つのフック65が二 つのフック孔441に係止されるので,支持板20が旅行かばん本体の壁 に併合されるのを保持する。
オ 【0012】 図3に示すように,把っ手構造が使用されない場合,旅行かばん本体の 壁に併合されると同時に内管33が外管30の最低点に置かれる。各連動 ロッド50の底端は,内管33が押されることにより最低点に戻る。図4 に示すように,各折り曲げアームは折り曲げの収納状態に回復する。
使用者が支持板20を外へあけると,図6に示すように,それと同時に 各折り曲げアーム40も支持板20の連動で収納の状態から展開の状態へ 変更され,各連動ロッド50を上昇させる。各折り曲げアーム40が全て 展開されると,支持板20も図7に示すように最大の展開状態になるので, 使用者は旅行かばん本体90を引っぱったり押し進めたりすることができ る。支持板20が全て展開されて力を受けていないとき,弾性ユニット4 5から提供された作用力が各折り曲げアーム40の展開角度を180°よ り少し大きくさせるばかりでなく,各ロッド41の位置制限部はロッドに 当接して位置決めさせる。使用者が把っ手を握って旅行かばん本体90を 押し進めると,旅行かばん本体90は移行し,全ての重さがかばんの底に おけるローラに支持されるので,省力かつ便利である。
カ 【0014】 つまり,前述した構造は次の利点がある。
16 (1)把っ手構造10は従来からの引っぱったり提げたりする機能以外に, 押し進める機能がある。使用者は便利に旅行かばんを移動させることがで き,操作方式は多様化する。
(2)旅行かばんを押し進めるとき,旅行かばんは床面に置かれた状態であ るので,使用者は旅行かばんの重さを受けず,のんびりと小さな力で旅行 かばんを扱うことができる。
【0015】 以上から分かるように,本考案による旅行かばんは,使用が便利であっ て省力であるなどの利点をもち,実用性が十分ある。
(2) 前記(1)の記載事項によれば,引用文献1には,引用発明に関し,次のよ うな開示があることが認められる。
ア 従来の旅行かばんの把っ手は,使用者が旅行かばんを引っぱったり,提 げたりするのに使われるだけであって,旅行かばんを押し進める機能がな かったため,使用者が旅行かばんを引っぱる場合,長時間使用すれば疲れ 易く,また,使用者が旅行かばんを提げる場合,かばんの重さが全て使用 者の手にかかるので,骨が折れるほど力がかかるという問題があった 【0 ( 002】,【0003】)。
イ 「本考案」の目的は,本来の引っぱったり提げたりする機能以外に,押 し進めることができる旅行かばんを提供し,また,使用者が小さな力で移 動させることができる旅行かばんを提供することにあり,上記目的を達成 するための手段として,旅行かばんの把っ手構造10を旅行かばん本体の 底部に取り付け,把っ手構造10の傾斜角度を維持する折り曲げアーム4 0を設ける構成を採用し,これにより,把っ手構造10は従来からの引っ ぱったり提げたりする機能以外に押し進める機能があるので,使用者は便 利に旅行かばんを移動させることができ,また,旅行かばんを押し進める とき,旅行かばんは床面に置かれた状態であるので,使用者は旅行かばん 17 の重さを受けず,小さな力で旅行かばんを扱うことができるという効果を 奏する(【0004】ないし【0007】,【0012】,【0014】, 【0015】,図1,7)。
3 相違点の認定の誤りについて 原告は,本願発明と引用発明は,本願発明のキャリーバッグが「押して移動」 するものを含まないのに対し,引用発明の旅行かばんは「押して移動」するも のに特定されている点で相違するが,本件審決は,本願発明と引用発明の上記 相違点を認定していないから,本件審決における相違点の認定に誤りがある旨 主張するので,以下において判断する。
(1) 本願発明について 本願の特許請求の範囲(請求項1)には,本願発明の「キャリーバッグを 直立したままで移動できるようにしたキャリーバッグ」にいう「移動」につ いて,移動の方向や態様を規定した記載はない。
次に,本願明細書には,「キャリーバッグを直立したままで移動できるよ うにしたキャリーバッグ」にいう「移動」の用語を定義した記載はないが, 【0008】には,「実施例3」として,「図10は本案の外レバー(13) を引き歩行する側面図で図11は正面図である。外レバー(13)の取り付 け部はキャリーバッグの正面下部である。」,「使用するときは外レバー(1 3)を係止部から外し,支持棒(14)の端を着脱部(19)に取り付ける。
外レバー(13)を伸ばし適した傾きまで倒し,支持棒(14)のピン穴(1 5)にピンを入れて移動準備はできる。ピンは紐などで付けておく。歩行し てもキャリーバッグは前にも後ろにも倒れず直立型の移動ができるので実1 と同じ効果がある。」との記載があり,また,図10には,人が左手でキャ リーバックに係止した外レバー(13)を引き,歩行する様子が示されてい る。他方で,本願明細書には,本願発明の「キャリーバッグを直立したまま で移動できるようにしたキャリーバッグ」にいう「移動」を,図10記載の 18 「外レバー(13)を引き歩行」する態様のものに限定する旨の記載はない。
かえって,本願明細書の記載事項全体から,本願明細書の「実施例3」記 載のキャリーバッグを直立したままで「押して移動」することができ,この 場合には,腕に重みがかからず,また,四輪全てに荷重が分散するので,荷 が重くても転がりは軽いという効果を奏し得ることを理解できる。
以上の本願の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本願明細書の記載事 項によれば,本願発明の「キャリーバッグを直立したままで移動できるよう にしたキャリーバッグ」にいう「移動」は,「引いて移動」に限定されるも のではなく,「押して移動」も含まれるものと解するのが相当である。
したがって,本願発明のキャリーバッグが「押して移動」するものを含ま ない旨の原告の主張は採用することができない。
(2) 引用発明について ア 引用文献1には,引用文献1記載の旅行かばんに関し,「図1および図 2に示す本実施例による旅行かばんの把っ手構造10は,図7に示すよう に,若干のローラを具有する旅行かばん本体90の底部に取付けられる。」 (【0007】),「各折り曲げアーム40が全て展開されると,支持板 20も図7に示すように最大の展開状態になるので,使用者は旅行かばん 本体90を引っぱったり押し進めたりすることができる。 【0012】 , 」 ( ) 「(1)把っ手構造10は従来からの引っぱったり提げたりする機能以外に, 押し進める機能がある。使用者は便利に旅行かばんを移動させることがで き,操作方式は多様化する。」(【0014】)との記載がある。
上記記載と図1,2及び7から,引用発明の旅行かばんは,「押して移 動」することができるのみならず,「引いて移動」することができるもの と理解できる。
イ これに対し原告は,引用文献1においては,旅行かばんを「押し進める」 ときについての記述があるのに対し,旅行かばんを「引いて移動」すると 19 いう記述はなく,「引いて移動」することを示す図面の記述もないことか らすると,引用発明の旅行かばんは,「引いて移動」するものが含まれず, 「押して移動」するものに特定されていると解すべきである旨主張する。
しかしながら,前記ア認定のとおり,引用文献1の記載事項(【000 7】,【0012】,【0014】,図1,2及び7)から,引用発明の 旅行かばんは,「押して移動」することも,「引いて移動」することもで きるものと理解できるから,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 小括 以上によれば,本願発明と引用発明は,本願発明のキャリーバッグが「押 して移動」するものを含まないのに対し,引用発明の旅行かばんは「押して 移動」するものに特定されている点で相違するものとは認められないから, 本件審決における相違点の認定の誤りをいう原告の主張は,理由がない。
4 相違点の容易想到性の判断の誤りについて (1) 引用文献2の記載事項について 引用文献2(乙13)には,次のような記載がある(下記記載中に引用す る「図1」,「図2」,「図8」,「図13」及び「図14」については別 紙3を参照。)。
ア 【0002】 【従来の技術】 一般にゴルフバッグは,ウッドやアイアンあるいはパターなどの複数本の クラブを収容すると,その重量がかなり重くなり,そのため,クラブを収 容したバッグを担いで持ち運ぶことは非常に重労働となり,特に年配のゴ ルファにとってはかなりの体力を消耗するものである。
【0003】 そこで従来では,例えば特開平7-328152号公報にも示されている ように,バッグ本体の底部の一端側に左右一対の車輪を回転自由に設ける 20 と共に,バッグの側部にキャリー用の取っ手部材を設けて,この取っ手部 材の握り部を手で握ってバッグ本体を車輪を介して走行移動させるように している。
【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら以上のゴルフバッグにあっては,取っ手部材を構成する支持 杆が,バッグ本体の側部に沿って配設されていることから,支持杆の上端 部に設け握り部がバッグ本体の開口部に近接することとなり,そのため, バッグを傾けて走行移動させる際に,バッグ本体に収容したクラブのヘッ ドが握り部を握っている手に当たって,バッグの走行移動が行い難くなっ たり,あるいはヘッドが取っ手部材に当接して,ヘッドが傷ついたりする 不具合がある。
【0005】 本発明は以上の実情に鑑みて開発されたものであって,その目的とすると ころは,バッグ本体に収容したクラブが取っ手部材や取っ手部材の握り部 を持つ手に不用意に当接することのないゴルフバッグを提供することにあ る。
イ 【0006】 【課題を解決するための手段】 前記した目的を達成するために,請求項1の発明は,バッグ本体の側部に おいて上下方向に延びる支持杆とこの支持杆の上端部に設けられる握り部 とを備える取っ手部材が,バッグ本体の側部に設けられているゴルフバッ グにおいて,取っ手部材の支持杆が,その上端側に向かうに従ってバッグ 本体から離間する方向に傾斜していることを特徴とするものである。
ウ 【0010】 図において符号1で示すゴルフバッグは,主としてゴルフクラブ(図示せ 21 ず)を収納するための筒状をしたバッグ本体2と, このバッグ本体2の下端に組み付けられてバッグ1の底を画成する有底筒 状の底筒3と, この底筒3の一端側に回転自由に取り付けられた左右一対の車輪4とが備 えられている。
【0012】 またバッグ本体2の背面側側部には,取っ手部材5が設けられている。
【0013】 この取っ手部材5は,図2にも示すように,左右一対の支持杆51a・5 1bと,これら両支持杆51a・51bの上端を連結する握り部52とか ら構成されている。
エ 【0020】 以上の構成において、図1から図12に示す実施形態では、収容筒部61 a・61bの下端部を下部ブラケット63に枢支して、この収容筒部61 a・61bをバッグ本体2に対して揺動可能とすると共に、上部ブラケッ ト62と収容筒部61a・61bとの間に位置変更切換え機構7を介装し て、この位置変更切換え機構7を介して、取っ手部材5の支持杆51a・ 51bが、その上端側に向かうに伴いバッグ本体2に対してバッグ本体2 から離間する方向に傾斜する位置とバッグ本体2の背面側部に沿う位置と に位置変更可能としたのである。
【0021】 即ち,図1〜図12に示す位置変更切換え機構7は,一対のスライド筒7 1とリンク部材72とを備え,スライド筒71を各収容筒部61a・61 bにスライド自由に挿通し,このスライド筒71にリンク部材72の長さ 方向一端部を枢支すると共に,このリンク部材72の長さ方向他端部を上 部ブラケット62に枢支して,スライド筒71のスライドとリンク部材7 22 2の揺動により,取っ手部材5の支持杆51a・51bが,その上端側に 向かうに伴いバッグ本体2に対してバッグ本体2から離間する方向に傾斜 する位置(図8において2点鎖線で示す位置)とバッグ本体2の背面側部 に沿う位置(図8において実線で示す位置)との間で揺動するようにして いる。
オ 【0037】 以上の実施形態では,位置変更切換え機構7を一対のスライド筒71とリ ンク部材72とから構成して,スライド筒71を各収容筒部61a・61 bにスライド自由に挿通し,このスライド筒71にリンク部材72の長さ 方向一端部を枢支すると共に,このリンク部材72の長さ方向他端部を上 部ブラケット62に枢支して,スライド筒71のスライドとリンク部材7 2の揺動により,取っ手部材5の支持杆51a・51bが,その上端側に 向かうに伴いバッグ本体2から離間する方向に傾斜する位置とバッグ本体 2の背面側部に沿う位置との間で揺動するようにしたが,これに限定され るものではなく,例えば図13及び図14に示すように構成してもよい。
【0038】 即ち図13及び図14に示す位置変更切換え機構7は,スライド筒75と, 長さ方向一端部をスライド筒75に枢支した揺動アーム76と,上部ブラ ケット62から延びて揺動アーム76遊端が係合可能な鋸歯状の複数の係 合部77を備えた係合体78とを備え,揺動アーム76とスライド筒75 との間に,揺動アーム76を係合部77と係合する方向(図14において 反時計方向)に揺動付勢させるためのスプリング79介装して成るもので ある。
【0039】 以上の位置変更切換え機構7は,揺動アーム76の遊端を,複数の係合部 77中,上部ブラケット62に最も近い係合部77に係合させることで, 23 取っ手部材5の支持杆51a・51bが,バッグ本体2の背面側部に沿う 位置(図14において実線で示す位置)にセットされるのである。
【0040】 そして,かかる位置から取っ手部材5をバッグ本体2の背面側部から離間 する方向に強制的に引くことで,揺動アーム76がスプリング79のバネ 力に抗して揺動しながら順次係合する係合部77が変更されるのであって, 揺動アーム76が係合する係合部77の選択により,支持杆51a・51 bのバッグ本体2に対する傾斜角度を任意調整することが出来る。
【0041】 尚,図14において2点鎖線で示すように上部ブラケット62から最も遠 い係合部77に係合している揺動アーム76を,図14において実線で示 すように上部ブラケット62に最も近い係合部77に係合させて,取っ手 部材5の支持杆51a・51bをバッグ本体2の背面側部に沿わせる時に は,スライド筒75を収容筒部61a・61bに対して上方に移動させて, 揺動アーム76と係合部77との係合を解除した上で,取っ手部材5を収 容筒部61a・61bと共にバッグ本体2側に揺動させればよい。
カ 【0043】 【発明の効果】 以上のごとく請求項1に記載の発明によれば,バッグ本体の側部において 上下方向に延びる支持杆とこの支持杆の上端部に設けられる握り部とを備 える取っ手部材が,バッグ本体の側部に設けられているゴルフバッグにお いて,取っ手部材の支持杆を,その上端側に向かうに従ってバッグ本体に 対してバッグ本体から離間する方向に傾斜させたことにより,取っ手部材 の握り部がバッグ本体の開口部位より離間し,ゴルフバッグの走行移動に 際してバッグ本体に収容したクラブが取っ手部材や取っ手部材の握り部を 持つ手に不用意に当接するのを抑制することが出来る。
24 【0044】 しかも取っ手部材の支持杆が,その上端側に向かうに従ってバッグ本体か ら離間する方向に傾斜しているので,取っ手の握り部を手で持って,ゴル フバッグを傾斜させて走行移動させる際,バッグ本体の傾斜角度が従来よ りも小さくなり,そのため,手に加わるバッグの荷重がそれだけ少なくな って,バッグの走行移動が楽に行なえる。
(2) 相違点の容易想到性について ア 前記2(2)のとおり,引用文献1には,旅行かばんの把っ手構造10を旅 行かばん本体の底部に取り付け,把っ手構造10の傾斜角度を維持する折 り曲げアーム40を設ける構成を採用したことにより,旅行かばん本体を 引っぱったり押し進めて移動することができ,旅行かばんを押し進めて移 動するときは,旅行かばんは床面に置かれた状態であるので,使用者は旅 行かばんの重さを受けず,小さな力で旅行かばんを扱うことができるとい う効果を奏することが開示されている。
他方,引用文献2には,@バッグ本体の底部の一端側に左右一対の車輪 を回転自由に設けると共に,バッグの側部にキャリー用の取っ手部材を設 けて,この取っ手部材の握り部を手で握ってバッグ本体を車輪を介して走 行移動させる従来のゴルフバッグでは,バッグを傾けて走行移動させる際 に,バッグ本体に収容したクラブのヘッドが握り部を握っている手に当た って,バッグの走行移動が行い難くなったり,あるいはヘッドが取っ手部 材に当接して,ヘッドが傷ついたりする不具合があったこと【0003】 ( , 【0004】),A「本発明」は,バッグ本体に収容したクラブが取っ手 部材や取っ手部材の握り部を持つ手に不用意に当接することのないゴルフ バッグを提供することを目的とし,その目的を達成するために,位置変更 切換え機構7を介して,取っ手部材5の支持杆を,その上端側に向かうに 従ってバッグ本体に対してバッグ本体から離間する方向に傾斜させる構成 25 を採用したことにより,取っ手部材5の握り部がバッグ本体の開口部位よ り離間し,ゴルフバッグの走行移動に際してバッグ本体に収容したクラブ が取っ手部材や取っ手部材の握り部を持つ手に不用意に当接するのを抑制 することができ,しかも,取っ手の握り部を手で持って,ゴルフバッグを 傾斜させて走行移動させる際,バッグ本体の傾斜角度が従来よりも小さく なり,そのため,手に加わるバッグの荷重がそれだけ少なくなって,バッ グの走行移動が楽に行なえるという効果を奏すること 【0005】 【0 ( , 006】,【0010】,【0012】,【0013】,【0020】, 【0021】,【0037】ないし【0041】,【0043】,【00 44】,図13,14)の開示があることが認められる。
そうすると,引用発明の旅行かばんの折り曲げアーム40と引用文献2 記載の位置変更切換え機構7は,それぞれ旅行かばん本体又はゴルフバッ グ本体に対し旅行かばんの把っ手構造10及びゴルフバッグの取っ手部材 5を傾けた状態に維持するという機能又は用途において共通し,旅行かば ん本体又はゴルフバッグ本体の移動の際に使用者が受ける重さを軽減し, 移動を楽にするという作用においても共通するものといえる。
加えて,使用者の体格や旅行かばんの使用態様に応じて,旅行かばん本 体に対する把っ手構造の傾斜を最適な角度にするのが望ましいことは自明 であることに照らすと,引用文献1及び2に接した当業者は,引用発明に おいて,旅行かばん本体に対する把っ手構造の傾斜角度を最適な角度に調 整し得るようにするため,引用発明の折り曲げアーム40の構成に引用文 献2に記載された位置変更切換え機構7の構成を適用することにより相違 点に係る本願発明の構成とすることを容易に想到することができたものと 認められる。
したがって,本件審決における相違点の容易想到性の判断に誤りはない。
イ これに対し原告は,本願発明と引用発明は,本願発明のキャリーバッグ 26 が「押して移動」するものを含まないのに対し,引用発明の旅行かばんは 「押して移動」するものに特定されている点で相違することを前提として, 引用文献1及び2に接した当業者は,引用発明の旅行かばんの「押して移 動」する構成を「引いて移動」する構成(上記相違点に係る本願発明の構 成)とすることを容易に想到することができたものとはいえないから,本 件審決における相違点の容易想到性に誤りがある旨主張する。
しかしながら,前記3のとおり,原告主張の相違点は相違点であるもの と認められないから,原告の主張は,その前提において理由がない。
5 結論 以上によれば,本願発明は,当業者が引用発明及び引用文献2に記載された 事項に基づいて容易に発明をすることができたものと認められ,原告主張の取 消事由は理由がないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく, 本願は拒絶すべきものであって,本件審決にこれを取り消すべき違法は認めら れない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 國分隆文
裁判官 筈井卓矢
  • この表をプリントする