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関連審決 無効2003-35233
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ 785特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成16ワ26728特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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平成11ワ21974損害賠償請求事件 判例 特許
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関連ワード 産業上利用(29条1項柱書) /  物の発明 /  方法の発明 /  生産方法の発明 /  製造方法 /  組立方法 /  加工方法 /  使用方法 /  物を生産する方法 /  新規性 /  公然実施(29条1項2号) /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  課題の共通性 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  実施料相当額 /  参酌 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  信義則 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  構成要件 /  方法の使用 /  侵害 /  損害額 /  算定方法 /  市場価格 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  対価 /  請求の範囲 /  新たな無効理由 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 860号 損害賠償請求事件
原告 タカラスタンダード株式会社
訴訟代理人弁護士 牛田利治
同 粕谷誠
同 森岡利浩
被告 サンウエーブ工業株式会社
訴訟代理人弁護士 飯田秀郷
同 栗宇一樹
同 早稲本和徳
補佐人弁理士 日高一樹
同 渡邉知子
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2004/04/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、原告に対し、金113万9040円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを50分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告は、原告に対し、金3億9060万円及びこれに対する平成14年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 原告及び被告は、いずれもシステムキッチン等の製造販売を目的とする株式会社である。
(2) 特許権 ア 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許出願の願書に添付された明細書を「本件明細書」といい、本件特許権に係る特許公報(甲第1号証)を「本件公報」という。)を有する。
特許番号 第2961502号 出願年月日 平成6年11月7日(平6-272534号) 登録年月日 平成11年8月6日 発明の名称 点検口の蓋の取付方法とその方法に使用される取付具 イ(ア) 本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に記載された発明を「本件方法発明」という。)。
板体に形成された点検口を閉じる蓋を、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と該挟持片より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形の取付具を用いて取り付ける方法であり、基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するように、この取付具を点検口の上下に取り付け、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口の前面に保持するようにしたことを特徴とする点検口の蓋の取付方法。
(イ) 本件明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおりである(以下、請求項2に記載された発明を「本件物発明」といい、本件方法発明と本件物発明を包括して「本件特許発明」という。)。
基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、挟持片は基板とほぼ同寸であり、掛支片は該挟持片より短く形成され、点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状態で、蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支することができるようになされたものであることを特徴とする点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。
(3) 特許発明構成要件 ア 本件方法発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
AT 板体に形成された点検口を閉じる蓋を、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と該挟持片より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形の取付具を用いて取り付ける方法であり、
BT 基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するように、この取付具を点検口の上下に取り付け、
CT 蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口の前面に保持するようにしたことを特徴とする DT 点検口の蓋の取付方法。
イ 本件物発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
AU 基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片が突設された断面ほぼS字形のもので、
BU 挟持片は基板とほぼ同寸であり、
CU 掛支片は該挟持片より短く形成され、
DU 点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状態で、
蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支することができるようになされたものであることを特徴とする EU 点検口の蓋の取付方法に使用される取付具。
(4) 特許発明実施 ア 本件方法発明の実施 (ア) 単純方法の発明物を生産する方法の発明 単純方法の発明物を生産する方法の発明を区別する基準は、その方法を実施する前後で対象物に物理的又は化学的な変化があるか否かである。また、
単純方法の発明とは、生産物を伴わない、時間的要素を必須構成要件とする発明であり、その例は、@物の使用方法、A測定方法、B検出方法などである。
特許庁の「特許法第36条の改正に伴う審査の運用指針」中には、
物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法などがあるが、いずれの場合も、@)原材料、A)その処理工程、及びB)生産物の三つから成る。」と記載されている。
(イ) 本件方法発明 前記(ア)記載の見地に立ってみると、本件方法発明は、取付具・蓋・点検口を組み立てる方法に関する発明であり、「取付具によって蓋を取り付けた点検口という一種の装置を生産する方法の発明」に他ならない。本件方法発明を実施する前は、「取付具によって蓋を取り付けられた点検口」は存在しないが、本件方法発明を実施した後は、「取付具によって蓋を取り付けられた点検口」という物が存在する。
点検口を備えるシンクキャビネット・ガスキャビネットの製造の過程においては、本件方法発明の実施によって点検口に蓋を取り付けることにより、シンクキャビネット・ガスキャビネットが完成するし、その設置の過程においても、
本件方法発明の実施によって蓋を取り付けることにより、据付けを終了するから、
本件方法発明の実施は、特許法上の「生産」に他ならない。
したがって、本件方法発明は、物を生産する方法の発明である。
(ウ) 実施 本件方法発明の技術的範囲に属する方法の使用は、本件方法発明の実施に当たる(特許法2条3項2号)。
また、本件方法発明は物を生産する方法の発明であるから、本件方法発明の技術的範囲に属する方法により生産した物の販売は、本件方法発明の実施に当たる(特許法2条3項3号)。
イ 本件物発明の実施 本件物発明の技術的範囲に属する物の販売は、本件物発明の実施に当たる(特許法2条3項1号)。
(5) 被告の行為 ア キッチンシステムの製造販売 被告は、キッチンシステム「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」を製造販売しているが、これらのキッチンシステムのシンクキャビネット・ガスキャビネットには、点検口が設けられたものがある(以下、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシンクキャビネット・ガスキャビネットのうち点検口が設けられたものを「被告キャビネット」という。)。被告キャビネットの点検口の蓋は、取付具により点検口に取り付けられている(以下、この点検口の蓋の取付けに使用されている方法を「被告方法」といい、この取付具を「被告物件」という。)。
イ 被告方法の使用等 被告は、被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに、被告方法を使用していた。
被告は、被告方法により、被告キャビネットを製造していた。
ウ 被告物件の販売 被告キャビネットには、被告物件が取り付けられているから、被告キャビネットを販売することは、被告物件を販売することとなる。
(6) 被告方法、被告物件の構成 ア 被告方法の構成 (ア) 被告方法の構成は、別紙1「被告方法目録(原告案)」(以下、別紙1ないし9の各目録を引用する際には、「別紙(番号)」部分の記載を省略する。)記載のとおりである。
(イ) 被告方法目録(原告案)記載の方法の構成を分説すると、次のとおりである。
(a1) 被告方法は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背板6に形成された点検口6aを閉じる蓋7を、被告物件目録(原告案)記載の被告物件8を使用することによって取り付ける。
被告物件8は、被告方法目録(原告案)別紙の第1図面のとおり、
基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片8aと該挟持片8aより短い掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b1) 被告取付方法は、まず、被告物件8を、基板8bと挟持片8aとの間で点検口6aの周端縁を挟持するように点検口6aの上下に取り付ける。
(c1) 次に、蓋7の下端縁を下方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間に差し込み、蓋7を点検口6a側に押し付けた状態で上方の被告物件8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端縁を上方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間に差し込み、蓋7を点検口6aの前面に保持するようにする。
(d1) 以上が、被告方法による点検口6aの蓋7の取付方法である。
イ 被告物件の構成 (ア) 被告物件の構成は、被告物件目録(原告案)記載のとおりである。
(イ) 被告物件目録(原告案)記載の物件の構成を分説すると、次のとおりである。
(a2) 被告物件8には、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片8aと掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b2) 被告物件8においては、挟持片8aは基板8bとほぼ同寸である。
(c2) 被告物件8においては、掛支片8cは該挟持片8aより短く形成されている。
(d2) 被告物件8は、点検口6aの周端縁を挟持片8aと基板8bとの間に差し込み挟持した状態で、蓋7の端縁を掛支片8cと基板8bとの間に差し込み掛支することができるようになされている。
(e2) 被告物件8は、点検口6aの蓋7の取付方法に使用される物件である。
(7) 対比 ア 本件方法発明 (ア) 被告方法の構成を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告方法の構成(a1)は構成要件ATを充足する。
被告方法の構成(b1)は構成要件BTを充足する。
被告方法の構成(c1)は構成要件CTを充足する。
被告方法の構成(d1)は構成要件DTを充足する。
(イ) したがって、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属する。
イ 本件物発明 (ア) 被告物件の構成を本件物発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告物件の構成(a2)は構成要件AUを充足する。
被告物件の構成(b2)は構成要件BUを充足する。
被告物件の構成(c2)は構成要件CUを充足する。
被告物件の構成(d2)は構成要件DUを充足する。
被告物件の構成(e2)は構成要件EUを充足する。
(イ) したがって、被告物件は本件物発明の技術的範囲に属する。
(8) 特許権の侵害 ア 本件方法発明の侵害 (ア) 前記(7)(対比)ア(本件方法発明)(イ)記載のとおり、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属する。
したがって、前記(5)(被告の行為)イ(被告方法の使用等)記載のとおり被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用することは、本件方法発明の侵害に当たる。
また、前記(5)イ記載のとおり被告が被告方法を使用して被告キャビネットを製造することは、本件方法発明の侵害に当たる。
(イ) 被告が被告キャビネットの設置を下請業者に委託して行う場合は、
その設置は被告の行為とみられる。
また、被告が被告キャビネットを業者に販売し、業者がこれを設置する場合、業者は、被告の定めた仕様・設置方法により設置する他ない。被告は、シンクキャビネットについて、「流し台 施工説明書」(甲第17号証)第2面「5」において、「点検口の取りはずし方」を記載しているが、点検口を閉じる場合は、必ず被告方法を使用しなければならない。そうすると、これらの業者は、被告から指示され、被告方法を使用せざるを得ないから、被告は業者に対して被告方法の使用を教唆している。したがって、被告は、このような販売後の業者による被告方法の使用についても、民法719条に基づいて損害賠償責任を負う。
イ 本件物発明の侵害 前記(7)イ(本件物発明)(イ)記載のとおり、被告物件は本件物発明の技術的範囲に属する。
したがって、前記(5)ウ(被告物件の販売)記載のとおり被告が被告キャビネットを販売することは、被告物件を販売することとなり、本件物発明の侵害に当たる。
(9) 損害 ア 被告が受けた利益 (ア) 算定方法 前記(8)(特許権の侵害)ア(本件方法発明の侵害)(ア)記載のとおり被告が被告方法を使用して被告キャビネットを製造、設置することは、本件方法発明の侵害に当たる。また、前記(8)イ(本件物発明の侵害)記載のとおり被告が被告キャビネットを販売することは、本件物発明の侵害に当たる。
本件方法発明、本件物発明の侵害によって被告が受けた利益は、被告キャビネットの販売により被告が得た利益の総額に、本件方法発明、本件物発明の寄与率を乗じることにより求めることができる。
(イ) 利益額 a 被告キャビネットの価格 被告キャビネットのうち「セクショナルGSシリーズ」の点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットの平均販売価格は3万5010円、「システムキッチン シェルトBM」の点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットの平均販売価格は7万5195円であり、被告キャビネットの価格の平均は5万5102円である((3万5010円+7万5195円)÷2=5万5102円)。
b 販売台数 被告キャビネットの平成14年8月22日までの販売総数は、63万台を下らない。
c 販売総額 被告キャビネットの販売総額は、347億1426万円である(5万5102円×63万台=347億1426万円)。
d 利益率 被告キャビネットについての利益率は、35%である。
e 利益総額 被告キャビネットの販売により被告が得た利益の総額は、121億4999万1000円である(347億1426万円×0.35=121億4999万1000円)。
(ウ) 寄与率 本件方法発明の技術的範囲に属する被告方法を使用し、又は本件物発明の技術的範囲に属する被告物件を備えた製品を販売することにより、被告は、製造工程におけるコストダウン、据付工事の利便性・容易性、耐久性・信頼性の向上、日本住宅性能表示規準による評価の向上等の利益を得ている。また、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシリーズ中には多くの製品があるが、各製品について、点検口付きのシンクキャビネット・ガスキャビネットは、点検口のないものに比べて、定価が1台当たり3500円高く、各製品のシンクキャビネット・ガスキャビネットの定価中に上記価格差が占める割合は、4.7%ないし7.8%であり、平均で約6.27%である。これらの事情を総合すると、上記点検口付きのシンクキャビネット・ガスキャビネットの販売により被告が得た利益に対する本件方法発明、本件物発明の寄与率は、6%とするのが妥当である。
したがって、被告が本件方法発明、本件物発明の侵害により得た利益は、7億2899万9460円である(121億4999万1000円×0.06=7億2899万9460円)。
(エ) 損害額 上記7億2899万9460円は、原告が受けた損害の額と推定される(特許法102条2項)。原告は、その内金3億9060万円を請求する。
実施料相当額 (ア) 算定方法 単純方法の発明実施は、その方法を使用することであって、その方法を使用した物を製造又は販売することは、実施に当たらないが、単純方法の発明実施料相当額は、その発明を使用した物の売上額に実施料率を乗じて算定される。したがって、本件方法発明が単純方法の発明であるとしても、実施料相当額は、被告キャビネットの販売総額に実施料率を乗じることにより求めることができる。
(イ) 実施料率 前記ア(ウ)記載のとおり、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」の各製品について、点検口付きのシンクキャビネット・ガスキャビネットは、点検口のないものに比べて、定価が1台当たり3500円高く、各製品のシンクキャビネット・ガスキャビネットの定価中に上記価格差が占める割合は、平均で約6.27%である。
点検口部分は、蓋、点検口、蓋の取付機構によって構成されているが、蓋や点検口はありふれた構成であるから、本件方法発明の実施料率は、点検口部分の約10分の1であり、製品全体に対しては、上記6.27%の約10分の1に当たる0.6%である。
また、被告キャビネット1台当たりの実施料相当額は、上記価格差の10分の1に当たる350円であるともいえる。
(ウ) 実施料相当額 前記ア(イ)c記載のとおり、被告キャビネットの販売総額は347億1426万円であるから、実施料相当額は、2億0828万5560円である(347億1426万円×0.006=2億0828万5560円)。
また、前記ア(イ)b記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は63万台であるから、実施料相当額は、2億2050万円である(350円×63万台=2億2050万円)。
これらの実施料相当額は、原告が受けた損害の額とされる(特許法102条3項)。
(10) 結論 よって、原告は、被告に対し、本件特許権の侵害による不法行為に基づく損害賠償として3億9060万円、又は本件特許権の侵害による不法行為に基づく損害賠償若しくは不当利得として実施料相当額2億0828万5560円、及び各金員に対する不法行為若しくは請求の後である平成14年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)(当事者)の事実は認める。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは認める。
(3) 請求原因(3)(特許発明構成要件)ア、イは認める。
(4)ア(ア) 請求原因(4)(特許発明実施)ア(本件方法発明の実施)(ア)(単純方法の発明物を生産する方法の発明)のうち、特許庁の「特許法第36条の改正に伴う審査の運用指針」中に「物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法などがあるが、いずれの場合も、@)原材料、
A)その処理工程、及びB)生産物の三つから成る。」と記載されていることは認め、その余は争う。
(イ) 請求原因(4)ア(イ)(本件方法発明)は争う。
(ウ) 請求原因(4)ア(ウ)(実施)のうち、本件方法発明の技術的範囲に属する方法の使用が本件方法発明の実施に当たる(特許法2条3項2号)ことは認め、その余は争う。ただし、被告方法は、本件方法発明の技術的範囲に属さない。
(エ) 物の組立方法は、物を生産する方法の発明である。しかし、被告キャビネットの点検口は、製品の開口部分を指すものであって、部品でも独立した物でもないから、点検口を組み立てるということ自体、無意味なことである。また、
本件方法発明により蓋の取付方法を実施することによって「点検口」が新たに出現するのではなく、もともと存在する点検口の蓋が外された状態(これも点検口であることに変わりはない)から取り付けられた状態になるにすぎず、これをもって物の生産方法の発明であるということはできない。本件方法発明は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの生産方法や組立方法に関する発明ではなく、点検口の組立方法に関する発明でもなく、点検口の蓋の取付方法に関する発明である。本件方法発明は、その記載の仕方をみても、点検口の蓋の取付方法を時間的要素に従って規定しているから、単純方法に関する発明である。
イ 請求原因(4)イ(本件物発明の実施)は認める。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)ア(キッチンシステムの製造販売)の事実は認める。
イ 請求原因(5)イ(被告方法の使用等)のうち、被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに、被告方法を使用していたことは認め、その余は否認する。ただし、被告方法の構成は、後記(6)ア記載のように、被告第1方法目録(被告案)及び被告第2方法目録(被告案)記載のとおりである。
ウ 請求原因(5)ウ(被告物件の販売)は認める。ただし、被告物件(取付具)の販売という本件物発明の侵害に対する損害賠償は、被告物件の価格を基準に算定すべきである。
(6)ア 請求原因(6)(被告方法、被告物件の構成)ア(被告方法の構成)(ア)、(イ)は否認する。
被告方法の構成は、平成8年5月ごろから平成12年9月6日までは、
被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであり、同月7日から平成14年8月22日までは、被告第2方法目録(被告案)記載のとおりである。
イ 請求原因(6)イ(被告物件の構成)(ア)、(イ)は否認する。
被告物件の構成は、被告物件目録(被告案)記載のとおりである。
(7)ア 請求原因(7)(対比)ア(本件方法発明)(ア)、(イ)は争う。
イ(ア) 請求原因(7)イ(本件物発明)(ア)は争う。ただし、被告物件目録(被告案)記載の被告物件の構成が本件物発明の構成要件を充足することは認める。
(イ) 請求原因(7)イ(イ)は認める。
(8)ア(ア) 請求原因(8)(特許権の侵害)ア(本件方法発明の侵害)(ア)は争う。
(イ) 請求原因(8)ア(イ)のうち、被告が被告キャビネットの設置を下請業者に委託して行う場合、その設置が被告の行為とみられることは認め、その余は争う。
被告の「流し台 施工説明書」(甲第17号証)には「点検口の取りはずし方」が記載されているが、本件方法発明の手順に従った「点検口の蓋の取付方法」は記載されておらず、しかも、被告キャビネットの点検口の取付方法には、
被告第1方法目録(被告案)及び被告第2方法目録(被告案)記載の2種類があるから、上記の「流し台 施工説明書」の記載をもって、被告が業者に対して点検口の蓋を取り付ける方法を指示したことにはならない。したがって、被告は、販売後の業者による被告方法の使用について、民法719条に基づいて損害賠償責任を負うことはない。
被告キャビネットの設置における被告の自社施工率は13%である。
イ 請求原因(8)イ(本件物発明の侵害)は争う。
(9)ア(ア) 請求原因(9)(損害)ア(被告が受けた利益)(ア)ないし(エ)のうち、被告キャビネットの平成14年8月22日までの販売総数が63万台を下らないこと((イ)b)は認め、その余は争う。
(イ) 本件方法発明は、物を生産する方法の発明ではなく、単純方法の発明であるから、仮に被告方法が本件方法発明の技術的範囲に属するとしても、本件方法発明に係る特許権の侵害による損害額を算定するに当たって、被告キャビネットの価格や点検口の価格を基準とすることはできない。
(ウ) 本件物発明は「取付具」に係る発明であるから、その侵害行為は「取付具」の譲渡であり、これに対する損害賠償の額は、「取付具」の価格を基準に算定されるべきであり、被告キャビネットの価格に寄与率を乗じて算定するのは不適当である。
また、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」について、被告物件目録(被告案)記載の取付具を備える前の製品、及びその備付けを取りやめた後の製品についても、点検口付きの製品の定価は、点検口の付いていない製品の定価よりも3500円高いから、この価格差を寄与率算定の根拠とすることはできない。
被告は、被告物件目録(被告案)記載の被告物件(取付具)を訴外会社から購入しており、その発注単価は1個当たり7.12円であったから、本件物発明に係る特許権の侵害による損害賠償は、この金額を基準に算定すべきである。
イ(ア) 請求原因(9)イ(ア)ないし(ウ)は争う。
(イ)a 本件方法発明は単純方法の発明であるから、仮に被告方法が本件方法発明の技術的範囲に属するとしても、実施料相当額を算定するに当たっては、
被告キャビネットの価格や点検口の価格を基準とすることはできず、被告方法の使用(一種の役務提供と考えられる)の対価を基準としなければならない。
b 被告方法の使用という役務の原価、すなわち点検口の蓋を取り付けるのに要する費用は、次のように求められる。
(a) 被告キャビネットの場合、点検口の蓋を点検口に取り付けるのに、@)4個の取付具を取り付けるのに6秒、A)点検口の蓋を取付具に挟み込み、取付具をスライドさせるのに4秒の合計10秒を要する。
(b) 被告の平成14年当時の組立加工賃は1時間当たり4040円であり、1秒間当たり1.12円である。
(c) 被告キャビネットは自社生産しているので、被告方法の使用という役務の原価、すなわち点検口の蓋を取り付けるのに要する費用は、1点検口当たり11.2円(1.12円×10秒=11.2円)となる。
c 被告方法の使用という役務の原価に対する利益率は10%を超えることはないから、被告方法の使用という役務についての市場価格は、12.32円(11.2円×1.1=12.32円)である。
d 被告方法の使用という役務について得られる利益は、市場価格実施料率を乗じて算定されるところ、実施料率は10%を超えることはないから、実施料は1点検口当たり1.23円である(12.32円×0.1=1.23円)。
e なお、原告は、原告の製品について、点検口の蓋を取り付けるのに要する費用が1点検口当たり16円であるとしているから、その額を基準としても、実施料率が10%であれば、実施料は1点検口当たり1.6円である。
f 被告方法の使用による本件方法発明の実施料相当額は、次のとおり求められる。
(a) 製造についての実施料相当額 前記(9)ア(ア)記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は63万台であるから、製造についての実施料相当額は、1点検口当たりの実施料が1.23円であるとした場合は77万4900円であり、1点検口当たりの実施料が1.6円であるとした場合は100万8000円である(1.23円×63万個=77万4900円、1.6円×63万個=100万8000円)。
(b) 設置についての実施料相当額 前記(8)ア(イ)記載のとおり、被告キャビネットの設置における被告の自社施工率は13%であるから、設置についての実施料相当額は、1点検口当たりの実施料が1.23円であるとした場合は10万0737円であり、1点検口当たりの実施料が1.6円であるとした場合は13万1040円である(1.23円×63万個×0.13=10万0737円、1.6円×63万個×0.13=13万1040円)。
(c) 実施料相当額の合計 実施料相当額の合計は、1点検口当たりの実施料が1.23円であるとした場合は87万5637円であり、1点検口当たりの実施料が1.6円であるとした場合は113万9040円である(77万4900円+10万0737円=87万5637円、100万8000円+13万1040円=113万9040円)。
したがって、実施料相当額は、87万5637円であり、多くとも113万9040円を超えることはない。
3 抗弁 (1) 信義則違反又は時機に後れた攻撃防御方法 原告は、平成15年4月15日の第2回口頭弁論期日で陳述した同日裁判所受付けの原告第1準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく主張は撤回する旨主張した。しかし、原告は、同年10月15日の第5回口頭弁論期日で陳述した同年8月18日付けの原告第6準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく主張を再度行っている。
近時、知的財産権に関する訴訟の促進が図られ、計画審理が励行されている中で、原告のこのような訴訟態度は到底許容されない。原告のこのような訴訟態度は、訴訟手続における当事者間の関係を律する信義誠実の原則に反するものであり、また、いたずらに審理を複雑にし、その進行を著しく遅延させるものであって、時機に後れた攻撃防御方法の提出に当たる。したがって、原告の本件方法発明の侵害に関する主張は、却下されるべきである。
(2) 明白な無効理由 ア 本件物発明 (ア) 本件物発明の構成 本件物発明の構成要件EUには、「点検口の蓋の取付方法に使用される」という用途が記載されている。いわゆる用途発明は、構造等から見出すことが困難な未知の性質(属性)を発見し、その性質により物を一定の目的に利用したところに特許性(新規性)が認められる。そこで、ある請求項中に、物をその用途によって特定しようとする明示の記載(用途限定)がある場合、明細書及び図面の記載並びにその技術分野の出願時の技術常識を考慮して、その記載が@その用途に特に適した物、Aその用途にのみもっぱら使用される物、又はBその用途に特に適し、かつその用途にのみもっぱら使用される物のいずれを意味しているかを判断し(特許庁審査基準参照)、その新規性を判断しなければならない。
本件物発明の構成要件AUないしDUの構成を備える取付具は、その構造からして、双方向から板状の物を挟持するという性質(属性)を有しており、
それを点検口の蓋の取付方法という用途に使用することには何らの技術的な工夫も要らず、困難もない。そうであるとすると、構成要件EUに「点検口の蓋の取付方法に使用される」という用途についての記載があるとしても、本件物発明に係る取付具は、上記@ないしBの3種類の物に該当することはなく、本件物発明は、用途発明の実質を備えていない。したがって、本件物発明に係る取付具は、構成要件AUないしDUの構成を備える取付具ということとなる。
(イ) 特許法29条1項3号、2項 a ニフコ社製クリップ 本件方法発明と株式会社ニフコ社が昭和62年に作成したカタログ(乙第1号証、以下「乙1カタログ」という。)に掲載されたニフコ社製クリップ目録記載のクリップ(以下「ニフコ社製クリップ」という。)を対比すると、次のとおりである。
(a) 一致点 ニフコ社製クリップの「クリップ」、「基板73b」、「保持片73a」、「保持片73c」は、本件物発明の「取付具」、「基板」、「挟持片」、「掛支片」に相当し、ニフコ社製クリップと本件物発明はいずれも断面がほぼS字形であり、ニフコ社製クリップの構成(a8)ないし(c8)は、本件物発明の構成要件AUないしCUをそれぞれ充足し、客観的構成は一致している。
(b) 相違点 本件物発明は、点検口の周端縁を基板と挟持片との間に差し込み挟持した状態で、蓋の端縁を基板と掛支片との間に差し込み掛支することができるようにしたものであることを特徴とする点検口の取付方法に使用される取付具である。これに対し、ニフコ社製クリップは、車のフェンダープロテクターを保持片73cと基板73bとの間に差し込み挟持した状態でフェンダーを保持片73aと基板73bとの間に差し込み保持することができるようになされたものであることを特徴とする車のフェンダープロテクターの取付に使用されるクリップである。
(c) 相違点に対する検討 本件物発明とニフコ社製クリップは、単に用途が相違するにすぎないところ、前記(ア)記載のとおり、本件物発明は用途発明の実質を備えておらず、用途の相違によって新規性進歩性が基礎づけられることはない。したがって、ニフコ社製クリップは、構成要件AUないしDUの構成を備える取付具と同一であり、本件物発明と同一である。
b イートン社製クリップ 本件物発明とイートン社(Eaton Corporation)が昭和60年(1985年)に発行した製品カタログ(乙第5号証、以下「乙5カタログ」という。)に記載されたイートン社製クリップ目録記載のクリップ(以下「イートン社製クリップ」という。)を対比すると、次のとおりである。
(a) 一致点 イートン社製クリップの「クリップ」、「基板11b」、「挟持片11a」、「挟持片11c」は、本件物発明の「取付具」、「基板」、「挟持片」、「掛支片」に相当し、イートン社製クリップと本件物発明はいずれも断面がほぼS字形であり、イートン社製クリップの構成(a9)ないし(c9)は、本件物発明の構成要件AUないしCUをそれぞれ充足する。
そして、イートン社製クリップを点検口の蓋の取付方法に使用することに何ら不都合はなく、その場合、イートン社製クリップは、点検口の周端縁を基板11bと挟持片11aとの間に差し込み挟持した状態で点検口の蓋の端縁を基板11bと挟持片11cとの間に差し込み挟持することができる構造になっている。
(b) 相違点 本件物発明の取付具は、点検口の蓋の取付方法に使用される物であるのに対し、イートン社製クリップは、パネルの取付に使用されるクリップである。
(c) 相違点に対する判断 本件物発明とイートン社製クリップは、単に用途が相違するにすぎず、イートン社製クリップは、構成要件AUないしDUの構成を備える取付具と同一であり、本件物発明と同一である。
c その他の公知例 実開昭58-100691号公報(乙第4号証、以下「乙4公報」という。)の第3図に記載された取付具、乙5カタログの36頁に「゙S″CLIPS」として記載された各種クリップ(以下「Sクリップ」という。イートン社製クリップもその内に含まれている。)、及び実開平6-30509号公報(乙第6号証、以下「乙6公報」という。)の第8図に記載された取付具は、本件物発明の構成要件AUないしDUの構成を備えており、本件物発明と同一である。
d 新規性進歩性の有無 以上によれば、本件物発明は、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明と同一であるから、新規性がない。
仮に、点検口の蓋の取付方法に使用されるという用途に何らかの意味があり、本件物発明に新規性があるとしても、それは、当業者が、ニフコ社製クリップやイートン社製クリップを始めとする周知技術を蓋の取付方法に適用したものにすぎず、そのような用途は当業者が適宜選択することができる事項にすぎないから、本件物発明は、当業者が、その特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、進歩性がない。
したがって、本件物発明に係る特許は、特許法29条1項3号又は同法29条2項に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
(ウ) 特許法29条1項柱書 前記(ア)記載のとおり、本件物発明は、構成要件EUに用途が記載されているが、用途発明の実質を備えていない。
したがって、本件物発明は、産業上利用することができる発明に該当せず、本件物発明に係る特許は、特許法29条1項柱書に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
(エ) 特許法29条2項 後記のとおり、被告従来方法目録記載の方法(以下「被告従来方法」という。)は、本件特許発明の出願前に日本国内において公然実施をされていた。
被告従来方法における取付具を、本件特許発明の出願前に公知であったニフコ社製クリップ、イートン社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取付具又は乙6公報の第8図に記載された取付具に置き換えることは、当業者にとって容易であった。
したがって、本件物発明は、当業者が、その特許出願前に日本国内において公然実施をされていた被告従来方法に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件物発明に係る特許は、特許法29条2項に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
イ 本件方法発明 (ア) 被告は、本件特許発明の出願前、点検口の蓋を取り付けるために、
被告従来方法を使用しており、被告従来方法において点検口の前面に取り付けられた蓋は、被告従来方法蓋部目録記載の蓋であった。
本件方法発明と被告従来方法を対比すると、次のとおりである。
a 一致点 本件方法発明と被告従来方法は、取付具(蓋上エッヂ部材及び蓋下エッヂ部材)の基板と挟持片(保持片71a、72a)との間に点検口の周端縁(背板)を挟み込み、基板と掛支片(保持片71c、72c)との間に蓋(蓋本体)を挟み込んで、点検口を閉じる蓋を取り付ける、点検口の蓋の取付方法である点で一致する。
b 相違点 (a) 相違点@ 本件方法発明では、基板の表面側と裏面側に、挟持片と、挟持片より短い掛支片が突設された断面ほぼS字形の取付具が用いられる。これに対し、
被告従来方法では、断面形状が被告従来方法蓋部目録第1図面、第3図のような、
蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72が用いられる。
(b) 相違点A 本件方法発明では、取付具の基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持するようにして、取付具を予め点検口の上下に取り付けた後、蓋を取り付ける。これに対し、被告従来方法では、予め蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71cとの間に蓋本体70の上端部を、蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片72cとの間に蓋本体70の下端部を、それぞれ接着して挟み込み、蓋7とし、この蓋7を点検口に取り付ける。
(c) 相違点B 本件方法発明は、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口の前面に保持するようにする。これに対し、被告従来方法は、蓋7の蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71cとの間に背板6の上辺部を挟み込み、蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で下方に押し下げることにより、蓋7の蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片72aとの間に背板6の下辺部を挟み込み、蓋7を点検口の前面に保持するようにする。
(d) 相違点C 本件方法発明では、基板の表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片と掛支片とが突設され、その弾性力で点検口の周端縁及び蓋を挟み込む。
これに対し、被告従来方法では、蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72は、
基板71b、72bと保持片71c、72cとの間にそれぞれ蓋本体70の上端部、下端部を両面テープで接着して挟み込む。
c 相違点に対する検討 (a) 相違点@について 本件方法発明に用いられる取付具のほぼS字形の断面形状と、被告従来方法に用いられる蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72の断面形状は、厳密にみれば相違する。
しかし、本件方法発明に用いられる取付具がほぼS字形の断面形状に形成されているのは、基板と挟持片との間で点検口の周端縁を挟持し、蓋の端縁を基板と掛支片との間に差し込むように用いるためであり、そのためには、基板の表面側と裏面側にそれぞれ保持片が設けられていればよく、その断面形状は、被告従来方法蓋部目録第1図面、第3図に示されるようなもので足りる。
また、本件方法発明の取付具において、掛支片が挟持片より短く形成されている理由は、本件明細書の記載(本件公報5欄12行ないし19行)からも明らかなように、上方の取付具を下方に押し下げて蓋を保持した際に上方の取付具が点検口の周端縁から外れないようにするためであるから、下方の取付具の掛支片が挟持片より短く形成されている必要はない。そうであるとすると、被告従来方法の蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72は、本件方法発明の上方及び下方の取付具と同様の構造、機能を備えているといえる。
さらに、被告従来方法に用いられる蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72の形状をニフコ社製クリップの形状にすることは、当業者にとって容易なことである。
したがって、相違点@は実質的な相違点ではない。
(b) 相違点A及びBについて 点検口の蓋の取付という観点からみれば、本件方法発明と被告従来方法は、最初に点検口周端縁に取付具を付けた後に蓋を付けるか(本件方法発明)、蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72を蓋本体70に取り付けた後にその蓋を点検口開口部6aの周辺を形成する背板6に付けるか(被告従来方法)という差異はあるものの、いずれの取付方法も、取付具及びエッヂ部材が下方に押し下げられることにより蓋が保持され、取付具及びエッヂ部材の点検口の周辺に対する動きは同一であり、蓋の取付が完了した時点での上下の取付具及びエッヂ部材の位置も同一である。
また、点検口の蓋の取付方法に限らず、開口部を閉塞する部材を取り付ける場合、開口部上下に溝を切って鴨居と敷居とし、ふすまを鴨居の上部の溝にはめ込んでから垂直にして開口部に押し付けるようにしながら下方に落として設置する方法は周知であり、本件方法発明と被告従来方法は、背板に取付具をはめ込んで溝を作出するか(本件方法発明)、蓋本体にエッヂ部材を取り付けて蓋自体に溝を作出するか(被告従来方法)という取付の順序に差異こそあれ、取り付ける際の工程(上溝にはめ込み下方に下げる工程)は全く同様であり、相違点である取付の順序は、当業者が適宜選択し得る事項である。
さらに、本件方法発明も被告従来方法も、「取付具の裏面側に形成された挟持片は、中央の基板との間で点検口を形成した板体の端縁を挟持して取付具をこの板体に着脱可能に取り付ける。また取付具の表面側に形成された掛支片は、取付具が蓋の方向に移動されることにより、基板との間で蓋の端縁を掛支し、
蓋を点検口を閉じるように板体に固定する。この蓋は、ビスなどの固定具を用いること無く容易に着脱可能となる。」(本件公報4欄9行ないし16行)という作用効果を奏する点で同一である。
(c) 相違点Cについて 板状の物体を取付具の基板と片とによって形成される溝内に保持する方法として、片の弾性力を利用するかそれとも両面テープ等の接着力を利用するかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
また、ニフコ社製クリップのように、弾性力を有する保持片と基板との間に板状の物体を双方向から挟み込んで取り付ける取付具は、本件特許発明の出願前から周知であり、しかも、このような取付具は、板状の物体を双方向から挟み込むことによって開口部(ニフコ社製クリップの場合はフェンダーとフェンダープロテクターの間の開口部)を塞ぐという作用を有している。
したがって、被告従来方法の蓋上エッヂ部材71及び蓋下エッヂ部材72のように蓋本体70を挟み込んで保持し両面テープで接着することに代えて、弾性片によって挟み込んで保持することは、当業者であれば容易になし得ることである。
(イ) したがって、本件方法発明は、被告従来方法にニフコ社製クリップを組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかである。
4 抗弁に対する認否 (1)ア 抗弁(1)は争う。
イ(ア) 原告が本件方法発明の侵害に基づく主張を撤回する旨主張した第2回口頭弁論期日の時点では、被告が主張する本件物発明に関する無効理由は、特許法29条2項違反(進歩性欠如)のみであり、引用資料はニフコ社製クリップが記載された乙1カタログと被告従来方法だけであった。その後、被告は新たに特許法29条1項3号違反(刊行物記載による新規性欠如)、同条1項柱書違反(発明の不成立)による無効理由を追加し、引用資料として、乙4公報、乙5カタログ、乙6公報を追加し、かつ本件物発明について平成15年6月3日付けで無効審判(無効2003-35233号)を請求した。そこで、原告は、新たな無効理由や引用資料に対応するため、平成15年8月18日付けの原告第6準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく損害賠償の主張を予備的主張として追加した(以下「本件予備的主張」という。)。原告は、前記無効審判について、同月25日付けの審判事件答弁書を提出するとともに、同日付けで、本件物発明の構成要件EUの部分を「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用する取付具」と訂正することを内容とする訂正請求を行い、同訂正に関連する同年9月3日付けの原告第7準備書面を提出した。原告第6準備書面及び原告第7準備書面は、同年10月15日の第5回口頭弁論期日において陳述された。
(イ) このように、原告が原告第6準備書面において本件予備的主張を追加した時点においては、当事者間に侵害論の主張立証が継続していたから、本件予備的主張は、被告による無効理由の主張への対応として合理的な範囲内のものである。また、本件予備的主張は、本件方法発明が物を生産する方法の発明であること、損害額実施料相当額であることなど、従前の主張に含まれていない内容のものであるから、同一の主張を蒸し返しではない。さらに、本件予備的主張は、実体的真実に合致している。訴訟上の信義則違反とは、訴訟制度の目的や趣旨に照らして容認できないような訴訟行為を意味すると解すべきであるところ、上記のような事情からすると、本件予備的主張は、訴訟上の信義則に違反することはない。
ウ 本件予備的主張が行われた経緯は、前記イ(ア)記載のとおりであり、本件予備的主張は訴訟の完結を遅延させるものではなく、また計画審理を阻害するものでもないから、時機に後れたとはいえない。
(2)ア 抗弁(2)ア(本件物発明)、イ(本件方法発明)は、いずれも争う。
イ 抗弁(2)アについて (ア) 本件物発明は、構成要件DU及びEUによって、取付具の機能や用途が一義的に特定されており、当業者が明細書及び図面並びにその技術分野の出願当時の技術常識を考慮すれば、本件物発明に係る取付具は、点検口の蓋の取付のため特定の態様で用いられる取付具を意味していると理解される。用途発明の新規性を判断する上では、その発明と対比される発明も用途発明でなければならないが、
構成要件DU及びEUは、本件物発明の出願前に頒布された刊行物に記載されていないから、それらによって本件物発明の新規性が否定されることはない。
(イ)a ニフコ社製クリップは自動車部品であるから、技術分野の異なる流し台等の点検口に用いる動機付けに乏しい。
ニフコ社製クリップの課題は、フェンダープロテクターとフェンダーを連結することにあり、同クリップが掲載された乙1カタログにも、点検口のような空間を閉塞するという記載はないのに対し、本件方法発明の課題は、点検口を閉塞することにあるから、両者に課題の共通性はない。
ニフコ社製クリップは、一方の挟持部にフェンダープロテクターを差し入れ、他方の挟持部にフェンダーを取り付け、フェンダープロテクターのもう一方の端を車体にねじ止めするという方法で使用されるものであり、フェンダープロテクターは、点検口の蓋のように着脱することができない。したがって、ニフコ社製クリップの作用、機能は、本件方法発明のような、「取付具を点検口の上下端縁に取り付けておき、その後、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げる」という作用、機能とは相違する。
本件物発明の挟持片と掛支片は、弾性を有するとされているが、弾性を有するものとする技術的な意味は、点検口の上下端縁を比較的緩やかに挟み込み、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることができるようにするという点にある。しかし、ニフコ社製クリップは、フェンダープロテクターとフェンダーを挟持部に挟み込むものであり、乙1カタログには、挟持部が狭く剛性のあるクリップが掲載されている。このような挟持部が狭く剛性のあるクリップで、挟持部に点検口の上下端縁を挟み込み、本件方法発明のように蓋をスムーズに取り付けることは想定できない。
本件方法発明では、本件公報の図3のように、まず、点検口の下端縁に取り付けられた取付具の基板8bと掛支片8cの間に蓋7の下端縁を差し込むが、この際、掛支片8cがあまりに長いと差し込みが困難である。差し込んだ後、
本件公報の図4のように、蓋7を点検口側に押し付ける状態を保つ必要があるが、
この際、上方の取付具の掛支片8cが短くないと、蓋7が同掛支片8cに衝突してしまい、蓋7を点検口側に押し付けることができなくなってしまう。そこで、本件方法発明では、上下の取付具の掛支片8cは挟持片8a及び基板8bよりも短くされている。しかし、ニフコ社製クリップは、一方の保持片73cは他方の保持片73aよりもやや短くされてはいるものの、本件公報の図4のように蓋7を点検口側に押し付けることができる程度には短くなっているとはみられず、少なくとも乙1カタログからは、長さの程度は不明であり、乙1カタログに、本件方法発明の「挟持片より短い掛支片」が実質的に記載されているとはいえない。
したがって、ニフコ社製クリップを本件物発明及び本件方法発明に転用することは困難である。
b イートン社製クリップが掲載された乙5カタログには、各種の形状のファスナーが記載されているが、その説明文には、用途や機能に関する具体的な説明はなく、本件物発明の構成要件DU及びEUは記載されていない。
c 乙4公報にはクリップ状の部材が記載されているが、同部材は、片方の溝に洗面ボール3の前縁を垂下させたエプロン部4を取り付け、カバーパネル6の上縁を同部材の差込溝5に嵌め込むものであって、点検口の蓋の取付とは関係がなく、乙4公報には、本件物発明の構成要件DU及びEUは記載されていない。
乙6公報にはクリップが記載されているが、同公報記載の考案は、
自動車部品に関するものであり、その目的は、クリップを被取付物へ取り付ける場合、被取付物に傷が付かずかつ取り付けた被取付物が容易に外れないようにすることにあり、上部挟持片1bの先端側を折り曲げて係合爪10を設け、上部挟持片1bに押圧片11を形成するものであって、点検口の蓋の取付とは関係がなく、乙6公報には、本件物発明の構成要件DU及びEUは記載されていない。
また、乙4公報及び乙6公報は、本件特許発明の審査の過程において、刊行物提出によって特許庁に提出され、審査官による審査を経ている。
(ウ) したがって、本件物発明に係る特許には、無効理由は存在しない。
ウ 抗弁(2)イについて 被告従来方法は、蓋体と取付具をあらかじめ一体化させ、その後、一体化させた部材を点検口開口部に取り付けるものである。したがって、本件方法発明のように、取付具のみを点検口の上下に取り付けておき、その後、蓋の下端縁を下方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げるだけで簡便に点検口をふさぐという技術的事項は、
被告従来方法には開示又は示唆されていない。
被告従来方法のエッヂ部材は、本件方法発明に使用される取付具と異なり、弾性体ではない。また、本件方法発明では、上下の取付具の形状が同一であるのに対し、被告従来方法では、被告従来方法目録第4図のように片側(上側)の係合状態を保ちつつ、他方側(下側)の係脱が行えるようにするため、蓋上エッヂ部材と蓋下エッヂ部材の形状が異なる。被告従来方法におけるエッヂ部材は、点検口の周端縁を挟み込む部分と蓋の端縁を挟み込む部分を別々に考えて単にこれを結合させたため、基板に相当する部分を延出させた複雑な形状となっており、対象物の端縁を固定するだけの従来技術以上のものではなく、本件方法発明に使用される取付具のように着脱性を考慮したものではない。さらに、効果の面からみても、本件方法発明には、着脱容易であることや製造上のコストダウンという点において、被告従来方法を超えた格段に有利な効果がある。
そうであるとすると、被告従来方法には、本件方法発明を想到する契機や動機付けが認められず、被告従来方法から本件方法発明を想到することはできない。
したがって、本件方法発明に係る特許には無効理由が存在しない。
理 由1 請求原因(1)ないし(8)について検討する。
(1) 請求原因(1)(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
(2) 請求原因(2)(特許権)ア、イは当事者間に争いがない。
(3) 請求原因(3)(特許発明構成要件)ア、イは当事者間に争いがない。
(4)ア(ア) 請求原因(4)(特許発明実施)ア(本件方法発明の実施)(ア)(単純方法の発明物を生産する方法の発明)のうち、特許庁の「特許法第36条の改正に伴う審査の運用指針」中に「物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法などがあるが、いずれの場合も、@)原材料、A)その処理工程、及びB)生産物の三つから成る。」と記載されていること、請求原因(4)ア(ウ)(実施)のうち、本件方法発明の技術的範囲に属する方法の使用が本件方法発明の実施に当たる(特許法2条3項2号)ことは、当事者間に争いがない。
(イ) 物を生産する方法の発明には、物の製造方法、物の組立方法、物の加工方法などがあり得るところ、特許法2条3項3号は、物を生産する方法の発明について、その方法により生産した物の使用、譲渡若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為が実施に当たる旨規定している。したがって、物を生産する方法の発明において、生産される物、すなわち製造、組立、加工などの対象とされる物は、少なくとも、譲渡又は輸入の対象となり得るような独立性のある物でなければならないというべきである。
本件方法発明は、点検口の蓋の取付方法に係るものであるが、点検口は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背面の板部に設けられた開口部であり、本件方法発明を使用して点検口に蓋が取り付けられたとしても、蓋の取り付けられた点検口は、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背面の一部分をなすにすぎず、譲渡又は輸入の対象となり得るような独立性のある物であるとは認められない。したがって、本件方法発明は、物を生産する方法の発明ではないというべきである。本件方法発明は、その内容からして、単純方法の発明であるというべきである。
(ウ) 原告は、点検口を備えるシンクキャビネット・ガスキャビネットの製造の過程において、本件方法発明の実施によって点検口に蓋を取り付けることにより、シンクキャビネット・ガスキャビネットが完成するし、その設置の過程においても、本件方法発明の実施によって蓋を取り付けることにより、据付けを終了するから、本件方法発明の実施は、特許法上の「生産」に他ならない旨主張する。
しかし、本件方法発明に係る点検口の蓋の取付方法がシンクキャビネット・ガスキャビネットの製造、設置の過程に組み込まれていたとしても、本件方法発明はあくまでも点検口の蓋の取付方法を内容としており、シンクキャビネット・ガスキャビネットの製造方法、組立方法の発明ではないから、本件方法発明によってシンクキャビネット・ガスキャビネットが製造されるとはいえず、したがって、
原告の主張は、採用することができない。
イ 請求原因(4)イ(本件物発明の実施)は当事者間に争いがない。
(5)ア 請求原因(5)(被告の行為)ア(キッチンシステムの製造販売)の事実は当事者間に争いがない。
イ 請求原因(5)イ(被告方法の使用等)のうち、被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに、被告方法を使用していたことは、当事者間に争いがない。
被告方法は、点検口の蓋の取付方法であるから、被告方法が被告キャビネットの製造、設置の過程に組み込まれていたとしても、被告が被告方法によって被告キャビネットを製造しているものとは認められない。
ウ 請求原因(5)ウ(被告物件の販売)は当事者間に争いがない。
(6)ア(ア) 請求原因(6)(被告方法、被告物件の構成)ア(被告方法の構成)について検討する。
弁論の全趣旨によれば、被告方法の構成は、平成8年5月ごろから平成12年9月6日までは、被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであり、同月7日から平成14年8月22日までは、被告第2方法目録(被告案)記載のとおりであると認められる。
(イ)a 被告第1方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、その構成を分説すると、次のとおりである。
(a3) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各右方部分と各左方部分の合計4か所を、それぞれ被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程 (b3) 蓋7の下端部の右方部分と左方部分を前記下部に保持された各取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程 (c3) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された各取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部を前記上部に保持された各取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程 b 被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、その構成を分説すると、次のとおりである。
(a4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各中央部付近の合計2か所を、それぞれ被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程 (b4) 点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の左右各中央部付近の合計2か所を、被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込む工程 (c4) 蓋7の下端部の中央部分を前記下部に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程 (d4) 蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部の中央部分を前記上部に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程 (e4) 蓋7を前記左右に保持された取付具8を点検口開口部6a内側に移動することにより、蓋7の左右端部の中央部分を前記左右に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程 イ(ア) 請求原因(6)イ(被告物件の構成)について検討する。
弁論の全趣旨によれば、被告物件の構成は、被告物件目録(被告案)記載のとおりであると認められる。
(イ) 被告物件目録(被告案)記載の物件は、被告キャビネットに設けられた点検口の蓋の取付方法に使用される取付具であり、その構成を分説すると、次のとおりである。
(a5) 基板8bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ弾性片8a及び8cが第3図に示される断面形状を有するように形成されている。
(b5) 弾性片8aは基板8bの一方端から略L字状に基板8bよりやや短く、先端部が基板外方に湾曲している。
(c5) 弾性片8cは基板8bの他方端部から略L字状に基板8bより約3分の1の長さを有し、その先端部は基板外方に折曲している。
(d5) シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成された点検口開口部6aの周辺を形成する背板6を基板8bと弾性片8aとの間に挟み込んだ状態で、点検口開口部6aを閉じる蓋7の端部を基板8bと弾性片8cとの間に挟み込むことができるように一体成形されている。
(7)ア(ア)a 前記(6)ア(イ)a認定の被告第1方法目録(被告案)記載の方法の構成を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、それに使用する被告物件目録(被告案)記載の取付具8は、基板8の表面側と裏面側に、それぞれ、弾性を有する弾性片8aと、弾性片8aより短い弾性片8cが、被告物件目録(被告案)第3図に示される断面形状を有するように形成されているから、被告第1方法目録(被告案)記載の方法は、本件方法発明の構成要件AT、DTを充足する。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法の構成(a3)は、本件方法発明の構成要件BTを充足する。
被告第1方法目録(被告案)記載の方法の構成(b3)、(c3)は、本件方法発明の構成要件CTを充足する。
b 前記(6)ア(イ)b認定の被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成を本件方法発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、被告キャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法であり、それに使用する被告物件目録(被告案)記載の取付具8は、基板8の表面側と裏面側に、それぞれ、弾性を有する弾性片8aと、弾性片8aより短い弾性片8cが、被告物件目録(被告案)第3図に示される断面形状を有するように形成されているから、被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、本件方法発明の構成要件AT、DTを充足する。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成(a4)は、本件方法発明の構成要件BTを充足する。
被告第2方法目録(被告案)記載の方法の構成(c4)、(d4)は、本件方法発明の構成要件CTを充足する。
(イ) したがって、被告方法(前記(6)ア(ア)認定のとおり、平成8年5月ごろから平成12年9月6日までは被告第1方法目録(被告案)記載のとおりであり、同月7日から平成14年8月22日までは被告第2方法目録(被告案)記載のとおりである。)は、いずれも本件方法発明の技術的範囲に属するものと認められる。
イ(ア) 被告物件目録(被告案)記載の物件の構成を本件物発明の構成要件と対比すると、次のとおりである。
構成(a5)は構成要件AUを充足する。
構成(b5)は構成要件BUを充足する。
構成(c5)は構成要件CUを充足する。
構成(d5)は構成要件DUを充足する。
被告物件目録(被告案)記載の物件は、被告キャビネットに設けられた点検口の蓋の取付方法に使用される取付具であるから、構成要件EUを充足する。
(イ) したがって、被告物件は、本件物発明の技術的範囲に属するものと認められる。
(8)ア(ア) 前記(7)ア(イ)認定のとおり、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属する。
したがって、前記(5)イ記載のとおり被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用することは、本件方法発明の侵害に当たる。
なお、前記(5)イ記載のとおり、被告方法は、点検口の蓋の取付方法であるから、被告方法が被告キャビネットの製造、設置の過程に組み込まれていたとしても、被告が被告方法によって被告キャビネットを製造しているものとは認められない。
(イ)a 請求原因(8)ア(イ)のうち、被告が被告キャビネットの設置を下請業者に委託して行う場合、その設置が被告の行為とみられることは、当事者間に争いがない。
b 被告が、被告キャビネットを業者に販売した後、業者に対して被告方法の使用を教唆しているかについて検討する。
甲第17号証によれば、原告作成の「サンウェーブ キッチンセット 流し台 施工説明書」と題する書面(以下「甲17説明書」という。)の第2面の「5」の「点検口の取りはずし方」には、「@」として、「点検口枠を上にスライドさせる。」と記載され、本件方法発明の取付具に当たる「点検口枠」を上方にずらす図が掲載されていること、また、「A」として、「手前に少し倒し、上に引き上げる。」と記載され、下方取付具が、蓋に密着した状態で、蓋と共に前方上方に引き抜かれて倒され、点検口の周囲の縁の上端から引き抜かれる直前の状態の図が掲載されていること、そして、上記「@」、「A」の下方に、「※取付けは逆の手順で行なってください。」と記載されていることが認められる。
甲17説明書の「※取付けは逆の手順で行なってください。」という指示に従って取付を行う場合、「A」の図面からすると、「A」の逆の手順で取付けを行うとすると、まず蓋に下方取付具を取り付けた後、蓋に取り付けられたその下方取付具を、点検口開口部の下方の周縁に取り付ける方法を採ると解し得る。
ところで、被告方法をみると、被告第1方法目録(被告案)記載の方法及び被告第2方法目録(被告案)記載の方法においては、点検口開口部6aの周辺を形成する背板6に取付具8を保持した後((a3)、(a4))、蓋7の下端部を、点検口の下部に保持された取付具8の基盤8bと弾性片8cとの間に挟み込むこと((b3)、(c4))とされている。
そうすると、前記のとおり、甲17説明書は、蓋に下方取付具を取り付けた後、蓋に取り付けられたその下方取付具を、点検口開口部の下方の周縁に取り付ける方法を採ることを述べていると解し得るから、それによって、取付具を点検口の周囲の背板に保持した後に下方の取付具に蓋を取り付けるという被告方法が教唆されているとはいえない。
したがって、被告が甲17説明書を配布していたとしても、それによって被告方法の使用を教唆していたとは認められないというべきであり、被告は、
販売後の業者による被告方法の使用について民法719条に基づいて損害賠償責任を負うことはないというべきである。
イ 前記(7)イ(イ)認定のとおり、被告物件は、本件物発明の技術的範囲に属するものと認められる。
被告キャビネットの点検口の蓋は、被告物件により取り付けられているから、被告キャビネットを販売することは、被告物件を販売することを含むものと認められる。
2 抗弁(1)(信義則違反又は時機に後れた攻撃防御方法)について検討する。
原告は、本件訴訟提起当初は、訴状で、被告物件は本件物発明の技術的範囲に属し、被告方法は本件方法発明の技術的範囲に属するとし、本件特許権侵害に基づく損害賠償請求をしていたところ、平成15年4月15日の第2回口頭弁論期日で陳述した同日裁判所受付の原告第1準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく主張を撤回する旨主張したこと、原告が、同年10月15日の第5回口頭弁論期日で陳述した同年8月18日付けの原告第6準備書面において、本件方法発明の侵害に基づく主張を再度行ったことは、訴訟上明らかである。
本件特許発明は、本件方法発明(請求項1)と本件物発明(請求項2)とからなるところ、被告物件が被告主張の構成を前提としても本件物発明の構成要件をすべて充足することは、当初から被告の自認するところであったものであり、本件特許権侵害による損害額を算定するに際しても、被告物件が物の発明である本件物発明を侵害することが立証されれば、本件方法発明の侵害について立証しなくても目的を達することができると考えられるから、本件物発明と本件方法発明のうちから、立証がより簡明な本件物発明の侵害だけに争点を絞るということも、その時点では合理性のある訴訟追行態度であったということができる。その後、被告の主張立証活動の状況に照らして、本件物発明については特許が無効とされる可能性があるとの判断に立って(そのように推測される。)、いったんは撤回した本件方法発明に基づく主張を再度行うということも、その後の訴訟進行状況に照らすと、やむを得ない面がある。原告が第5回口頭弁論期日において、本件方法発明の侵害に基づく主張を再度行ったことは、それ以前の同発明の侵害に基づく主張を撤回する旨の主張と相反するものであり、訴訟追行態度として問題があることは確かであり、
訴訟の進行状況によっては、そのような行動が時機に後れたものと判断され、あるいは信義則に反すると評価されることもあり得ると考えられる。しかし、本件訴訟に関しては、第5回口頭弁論期日においては、未だ侵害論の審理が終了しておらず、訴訟の進行状況に照らして、原告の再度の主張によって訴訟の完結を遅延させることになったとは認められず、また、原告の上記のような訴訟追行態度が信義則に反するものとまではいえない。
したがって、原告の本件方法発明の侵害に関する主張は、信義則に反し許されないとはいえず、また、時機に後れて提出された攻撃又は防御の方法に該当するとして却下すべきものではなく、抗弁(1)の主張は、採用することができない。
3 抗弁(2)(明白な無効理由)について検討する。
(1) 本件物発明について無効理由が存在することが明らかであるかについて ア 本件物発明の構成について検討する。
本件物発明は、構成要件AUないしCUにおいて、客観的な構成を定めており、さらに構成要件DUにおいて、「点検口の周端縁を挟持片と基板との間に差し込み挟持した状態で、蓋の端縁を掛支片と基板との間に差し込み掛支する」という用途に使用されるものとし、構成要件EUにおいて、点検口の蓋の取付方法に使用されるものとしている。
本件物発明は、物の発明であるところ、物の発明においては、原則として、物の構成をもってその内容を把握すべきであり、構成要件の中に、物の客観的な構成のほかに、特定の用途や使用方法に用いることが記載されていたとしても、
その用途や使用方法に適するようにするために物の構成が特定の構成に限られることがなければ、それらの用途や使用方法の記載は、発明の構成を更に限定するものではないというべきである。そして、そのような場合、発明の構成は、物の客観的な構成を記載した部分によって明らかにされているものと解すべきである。
そこで、本件物発明をみると、弁論の全趣旨によれば、構成要件AUないしCUに定められた形状であれば、基板と挟持片の間に点検口の周端縁を差し込み、掛支片と基板との間に蓋の端縁を差し込むことができるから、点検口と蓋の寸法を適宜選択することによって、構成要件DU所定の用途に使用することができ、
そして、そのような用途に使用することができるのであれば、それは、構成要件EU所定の点検口の蓋の取付方法に使用され得るものと認められる。また、本件公報(甲第1号証)によれば、本件明細書には、構成要件DU及びEU所定の用途及び使用方法に適するようにするために、構成要件AUないしCUに定められた以上に取付具の大きさ、形状、強度、構造等を限定することが記載されているとは認められない。そうであるとすると、構成要件DU及びEUには、上記のように用途及び使用方法が記載されているが、その用途及び使用方法は、本件物発明に係る取付具の物としての構成を、構成要件AUないしCUにおいて定められた客観的な構成以上に限定するものではないというべきである。本件物発明は、構成要件AUないしCUにおいて、取付具の客観的な構成を定めているから、本件物発明の構成は、構成要件AUないしCUによって明らかにされているものというべきである。
イ イートン社製クリップと本件物発明の対比について検討する。
イートン社製クリップは、本件特許発明の特許出願前の昭和60年(1985年)にイートン社が発行した乙5カタログに掲載されている取付具である。
イートン社製クリップと本件物発明を対比すると、イートン社製クリップの挟持片11aが本件物発明の挟持片に当たり、イートン社製クリップの挟持片11cが本件物発明の掛支片に当たり、その構成(a9)ないし(c9)は、本件物発明の構成要件AUないしCUと同一であるものと認められる。そして、弁論の全趣旨によれば、イートン社製クリップは、点検口と蓋の寸法を適宜選択することによって、
構成要件DU所定の用途に使用することができ、構成要件EU所定の点検口の蓋の取付方法に使用され得るものと認められる。そうであるとすると、本件物発明は、
イートン社製クリップと同一であるものと認められる。
したがって、本件物発明は、特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明と同一であり、本件物発明に係る特許は、特許法29条1項3号に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかであるというべきである。
原告は、イートン社製クリップが掲載された乙5カタログの説明文に、用途や機能に関する具体的な説明がなく、本件物発明の構成要件DU及びEUは記載されていない旨主張する。しかし、前記ア認定のとおり、本件物発明の構成は、取付具の客観的構成を定めた構成要件AUないしCUによって明らかにされており、
取付具の用途及び使用方法を定めた構成要件DU及びEUは、発明の構成を、構成要件AUないしCUにおいて定められた客観的な構成以上に限定するものではないというべきであるから、乙5カタログの説明文に、用途や機能に関する具体的な説明がなく、本件物発明の構成要件DU又はEUが記載されていないとしても、それにより、イートン社製クリップが本件物発明と同一であるという認定が妨げられることはないというべきである。
ウ 本件物発明の訂正請求について検討する。
乙第16号証の1ないし14及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件物発明に係る特許について、平成15年6月3日付けの審判請求書により、無効審判を請求したことが認められ(無効2003-35233号)、甲第15号証の1ないし3、乙第17号証によれば、原告は、同年8月25日付けの訂正請求書により、本件物発明の構成要件EUを「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用される取付具」とし、明細書の発明の詳細な説明の段落【0021】の「また本実施例では、・・(中略)・・蓋の上端縁のみをこの取付具で掛支することとしても良い。」という記載を削除することを内容とする訂正を請求したことが認められる。
仮に上記訂正請求のとおり訂正が認められたとしても、訂正後の構成要件EUの「請求項1記載の点検口の蓋の取付方法に使用される」という使用方法の記載は、その使用方法に適するようにするために、構成要件AUないしCUに定められた以上に取付具の物としての構成を限定するものではないから、訂正前の構成要件EUについて前記アに記載したのと同様の理由により、訂正後の構成要件EUの上記使用方法の記載は、本件物発明の発明の構成を定めるものではないというべきである。
したがって、仮に訂正が認められたとしても、訂正前について前記イに記載したのと同様の理由により、本件物発明に係る特許は、無効理由が存在することが明らかであるというべきである。
(2) 本件方法発明について無効理由が存在することが明らかであるかについて ア 被告従来方法について検討する。
(ア) 弁論の全趣旨によれば、被告は、本件特許発明の特許出願前、点検口の蓋を取り付けるために、被告従来方法を使用しており、被告従来方法において点検口の前面に取り付けられた蓋は、被告従来方法蓋部目録記載の蓋であったこと、
被告従来方法の構成は、被告従来方法目録の「方法の説明」の(a6)、(b6)記載のとおりであったことが認められる。
(イ) 本件方法発明と被告従来方法は、取付具(蓋上エッヂ部材及び蓋下エッヂ部材)の基板と挟持片(保持片71a、72a)との間に点検口の周端縁(背板)を挟み込み、基板と掛支片(保持片71c、72c)との間に蓋(蓋本体)を挟み込んで、点検口を閉じる蓋を取り付ける、点検口の蓋の取付方法である点で一致する。
(ウ) しかし、本件方法発明と被告従来方法は、次の点で異なる。
a 本件方法発明は、取付具を点検口の上下に取り付け(構成要件BT参照)、蓋を下方の取付具に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋を点検口の前面に保持する(構成要件CT参照)方法であるのに対し、被告従来方法は、点検口の周辺を形成する背板を挟むことができる蓋上エッヂ部材と蓋下エッヂ部材を蓋本体に固定した蓋を、点検口に取り付ける方法である。
b 本件方法発明は、基板の表面側と裏面側に、それぞれ挟持片とそれより短い掛支片とが突設された断面ほぼS字形の取付具を用い(構成要件AT参照)、蓋の下端を取付具に差し込み、蓋を点検口側に押し付けた状態で上方の取付具を下方に押し下げることにより、蓋の上端縁を上方の取付具の基板と掛支片との間に差し込み、蓋を保持するものである(構成要件CT参照)。したがって、上方の取付具の挟持片が掛支片より長いことを利用し、上方の取付具を押し下げてその基板と掛支片の間に蓋の上端縁が差し込まれた状態で、なお基板と挟持片との間に点検口の周端縁が挟持されるようにして、蓋を保持するものである。本件明細書にも、「図4に矢印で示すように、上方の取付具8を下方に押し下げると、蓋7の上端縁がこの取付具8の掛支片8cの内側に侵入し、このことにより、蓋7は、図2に示すように、上下の取付具8の掛支片8cでその上下端縁が掛支され、点検口6aを塞いだ状態に取り付けられる。この時、挟持片8aは掛支片8cより長く形成されているので、背面板6との挟持状態が外れる虞れはない。」(本件公報5欄12行ないし19行)と記載され、挟持片が掛支片より長く形成されていることによって点検口の周端縁(背面板)との挟持状態が保持されることが示されている。そして、本件方法発明においては、上方の取付具と下方の取付具は、同じ形状のものを使用することができる。また、蓋を差し込む取付具の掛支片と基板との位置関係に関して、蓋は、取付具の基板と、点検口の手前側に突設された掛支片との間に差し込むこととなる。
これに対し、被告従来方法は、蓋の蓋上エッヂ部材の基板と保持片との間に点検口の周辺を形成する背板の上辺部を挟み込み(構成(a6)参照)、蓋を点検口開口部側に押し付けた状態で下方に押し下げることにより、蓋下エッヂ部材の基板と保持片との間に背板の下辺部を挟み込むものであり、蓋が下方に押し下げられた状態において、なお蓋上エッヂ部材の基板と保持片との間に背板の上辺部が挟み込まれていなければならないから、蓋上エッヂ部材の保持片は蓋下エッヂ部材の保持片より長くなければならず、蓋上エッヂ部材の保持片が蓋下エッヂ部材の保持片より長いことを利用して、蓋を点検口に取り付けるものである。そこで、蓋上エッヂ部材の形状と蓋下エッヂ部材の形状は、少なくとも保持片の長さが異なることとなる。また、点検口の周囲の背板を差し込む取付具の保持片と基板との位置関係に関して、点検口の周囲の背板は、取付具の基板と、後ろ側に突設された保持片との間に差し込むこととなる。
(エ) このように、本件方法発明と被告従来方法は、取付具と蓋の点検口への取付けの順序、蓋を取り付けるために利用する寸法差、上下の取付具の形状の異同、蓋又は背板を差し込む取付具の掛支片又は保持片と基板との位置関係などが相違し、これらの点に関する本件方法発明の構成は、被告従来方法において示唆されているとは認められない。
イ 前記(1)イ認定のとおり、イートン社製クリップは、本件物発明、すなわち本件方法発明に使用される取付具と構成が同一であるが、イートン社製クリップ及びそれを含むSクリップ、ニフコ社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取付具、乙6公報の第8図に記載された取付具によっては、前記ア(ウ)に記載された被告従来方法との相違点に関する本件方法発明の構成は、示唆されていないし、それを当業者が容易に想到することができたとも認められない。
ウ 以上によれば、本件方法発明は、当業者が被告従来方法に基づいて容易に発明をすることができたとは認められず、被告従来方法とイートン社製クリップ及びそれを含むSクリップ、ニフコ社製クリップ、乙4公報の第3図に記載された取付具、乙6公報の第8図に記載された取付具を組み合わせたとしても、それらに基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
したがって、本件方法発明に係る特許は、特許法29条2項に違反して特許されたものであるとはいえず、同法123条1項2号の無効理由が存在することが明らかであるとは認められず、その他の無効理由が存在することが明らかであるとも認められない。
4 損害について検討する。
(1) 前記1(7)ア(イ)認定のとおり、被告方法である被告第1方法目録(被告案)記載の方法及び被告第2方法目録(被告案)記載の方法は、本件方法発明の技術的範囲に属し、前記1(5)イ記載のとおり、被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用していたことは、当事者間に争いがないから、被告が被告キャビネットを製造するとき及び設置するときに被告方法を使用していたことは、本件方法発明の侵害に当たる。
そこで、本件方法発明の侵害による損害の額について検討する。
(2) 請求原因(9)ア(ア)ないし(エ)のうち、被告キャビネットの平成14年8月22日までの販売総数が63万台を下らないことは、当事者間に争いがない。
(3) 原告は、被告キャビネットの販売により被告が得た利益の総額を算定し、被告の「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシリーズ中の各製品について、点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットは点検口のないものに比べて定価が1台当たり3500円高く、各製品のシンクキャビネット・ガスキャビネットの定価に上記価格差が占める割合が平均で約6.27%であることから、点検口付きシンクキャビネット・ガスキャビネットの販売により被告が得た利益に対する本件方法発明の寄与率は6%とするのが妥当である旨主張する。そして、利益の総額に寄与率6%を乗じて、本件方法発明により被告が得た利益(特許法102条2項)を算定する旨主張する。また、原告は、製品全体の売上げに対する本件方法発明の実施料率は、点検口部分の約10分の1であり、上記6.27%の約10分の1に当たる0.6%であるとして、販売総額に実施料率0.6%を乗じて、実施料相当額(特許法102条3項)を算定し、又は被告キャビネット1台当たりの実施料相当額が上記価格差の10分の1に当たる350円であるとして実施料相当額の総額を算定する旨主張する。
しかし、甲第6号証、乙第12ないし第15号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、「セクショナルGSシリーズ」及び「システムキッチン シェルトBM」のシンクキャビネット・ガスキャビネットの点検口付きの製品の点検口の蓋の取付方法について、従前は、被告方法と異なる方法を使用しており、平成8年5月ごろから平成14年8月22日まで被告方法を使用したが、同月23日以降は被告方法の使用をやめたこと、被告方法を使用していたときの製品のみならず、被告方法を使用する前の製品も、被告方法の使用をやめた後の製品も、点検口付きの製品は点検口のない製品に比べて定価が3500円高いことが認められる。
そして、弁論の全趣旨によれば、蓋の取付方法をどのようなものにするにせよ、点検口を設ける場合には、点検口を設けない場合に比べて、シンクキャビネット・ガスキャビネットの背面の背板に開口部を設け、その蓋部材を用意するなどのために余分の費用を要することが推認される。さらに、本件明細書には、本件方法発明の効果として、蓋の着脱操作が極めて容易かつ短時間で行え、洗面台や流し台を設置する際の配管接続工事やその後のメンテナンスが行い易くなること、蓋が確実に背面板に保持されること、点検口を設けた製品の生産性が向上するとともにそのコストダウンも図られること、本件方法発明に用いられる取付具についてコストダウンが図られ、耐久性及び信頼性に優れることなど(本件公報段落【0024】ないし【0027】)が記載されているが、本件方法発明は、点検口の蓋の取付方法に係るものであり、これらの効果は、点検口が設けられていることを前提として、点検口の取付方法を本件方法発明のようにしたことにより得られる効果である。甲第7ないし第10号証及び弁論の全趣旨によれば、蓋の取付方法に本件方法発明を使用することによる上記の効果とは別に、蓋の取付方法のいかんを問わず、
点検口を設けた場合は、点検口を設けない場合に比べて、配管の点検、清掃、補修等を容易に行うことができるなど、大きな効果が存するものと認められる。
このように、蓋の取付方法のいかんを問わず、点検口を設ける場合は、点検口を設けない場合に比べて、余分の費用を要し、また、点検口を設けたことによる大きな効果を得ることができるから、点検口付きの製品とそうでない製品の3500円の価格差は、このような費用や効果の差異に対する評価の額を含むものであり、蓋の取付方法の効果に対する評価の額にとどまるものではないと推認される。
したがって、点検口付きの製品とそうでない製品の3500円の価格差を基に、本件方法発明の実施がシンクキャビネット・ガスキャビネット全体に占める割合や本件方法発明の実施料を算定することは、相当とは認められない。
(4) 前記1(4)ア(イ)認定のとおり、本件方法発明は物を生産する方法の発明ではなく、単純方法の発明である。単純方法の発明侵害行為は、その方法を使用することであり、製造過程等の一部にその方法の使用を組み入れて物を製造する場合、その物の製造や販売は、単純方法の発明に係る特許権の侵害行為とはならないが、当該特許権の侵害による損害額を算定するに当たり、その物の販売価格を参酌することが相当とされる場合があるのは、否定し得ない。しかし、本件においては、前記(3)記載のとおり、点検口付きの製品とそうでない製品の価格差である3500円を基に、本件方法発明の実施がシンクキャビネット・ガスキャビネット全体に占める割合や本件方法発明の実施料を算定することは、相当とは認められない。
そうすると、本件においては、本件方法発明の実施により被告が得た利益の立証はないというべきであり、次のとおり、本件方法発明の実施に要する費用に基づいて算定した実施料相当額をもって損害の額とするのが相当である。
弁論の全趣旨によれば、被告キャビネットに点検口の蓋を取り付けるのに要する費用は、1点検口当たり16円を超えることはないと認められる。また、弁論の全趣旨(原告は、請求原因(9)イ(イ)において、本件方法発明の実施料率が点検口部分の約10分の1であることを主張している。)によれば、点検口部分に対する本件方法発明の実施料率は、10%が相当であると認められる。そうすると、本件方法発明の実施料は、1点検口当たり1.6円であると認められる。
前記(2)記載のとおり、被告キャビネットの販売総数は63万台を下らないから、製造についての本件方法発明の実施料相当額は、100万8000円(1.6円×63万台=100万8000円)である。
また、前記1(8)ア(イ)b認定のとおり、被告は、販売後の業者による被告方法の使用について民法719条に基づいて損害賠償責任を負うことはなく、被告自ら(下請業者による場合も含む。)が設置する場合の被告方法の使用が本件方法発明の侵害となる。弁論の全趣旨によれば、被告自らが設置する自社施工率は13%であることが認められるから、設置についての本件方法発明の実施料相当額は、13万1040円(1.6円×63万台×0.13=13万1040円)である。
したがって、実施料相当額の合計は、113万9040円(100万8000円+13万1040円=113万9040円)であると認められる。
5 結論 よって、原告の本訴請求は、本件方法発明の実施料相当額の合計113万9040円及びこれに対する不法行為及び請求の後である平成14年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
追加
別紙1被告方法目録(原告案)(a1)被告方法は、シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成された点検口6aを閉じる蓋7を、別紙被告物件目録(原告案)記載の被告物件8を使用することによって取り付ける。
被告物件8は、別紙第1図面のとおり、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片8aと該挟持片8aより短い掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b1)被告取付方法は、まず、被告物件8を、基板8bと挟持片8aとの間で点検口6aの周端縁を挟持するように点検口6aの上下に取り付ける。
(c1)次に、蓋7の下端縁を下方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間に差し込み、蓋7を点検口6a側に押し付けた状態で上方の被告物件8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端縁を上方の被告物件8の基板8bと掛支片8cとの間に差し込み、蓋7を点検口6aの前面に保持するようにする。
(d1)以上が、被告方法による点検口6aの蓋7の取付方法である。
被告物件別紙2被告物件目録(原告案)(a2)被告物件8には、基板8bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片8aと掛支片8cが突設されており、断面はほぼS字形である。
(b2)被告物件8においては、挟持片8aは基板8bとほぼ同寸である。
(c2)被告物件8においては、掛支片8cは該挟持片8aより短く形成されている。
(d2)被告物件8は、点検口6aの周端縁を挟持片8aと基板8bとの間に差し込み挟持した状態で、蓋7の端縁を掛支片8cと基板8bとの間に差し込み掛支することができるようになされている。
(e2)被告物件8は、点検口6aの蓋7の取付方法に使用される物件である。
第2図面被告物件第1図面第2図面別紙3被告第1方法目録(被告案)下記「3方法の説明」に記載された工程からなる「セクショナルGSシリーズ」、「システムキッチンシェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法1図面の説明第4図(1)は下記「3方法の説明」(b3)の工程を説明する断面図である。
第4図(2)は下記「3方法の説明」(c3)の工程を説明する断面図である。
第4図(3)は各工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
2符号の説明6・・・・背板6a・・・点検口開口部7・・・・蓋8・・・・別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8a・・・弾性片8b・・・基板8c・・・弾性片3方法の説明(a3)点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各右方部分と各左方部分の合計4か所を、それぞれ別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程(b3)蓋7の下端部の右方部分と左方部分を前記下部に保持された各取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程(c3)蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された各取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部を前記上部に保持された各取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程別紙3被告第1方法目録(被告案)図面)別紙4被告第2方法目録(被告案)下記「3方法の説明」に記載された工程からなる「セクショナルGSシリーズ」、「システムキッチンシェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビネットに設けられた点検口の前面に蓋を取り付ける方法1図面の説明図(1)は下記「3方法の説明」(c4)の工程を説明する断面図である。
図(2)は下記「3方法の説明」(d4)の工程を説明する断面図である。
図(3)は下記「3方法の説明」(c4)、(d4)の各工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
図(4)は下記「3方法の説明」(e4)の工程を説明する断面図である。
図(5)は下記「3方法の説明」(e4)の工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
2符号の説明6・・・・背板6a・・・点検口開口部7・・・・蓋8・・・・別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8a・・・弾性片8b・・・基板8c・・・弾性片3方法の説明(a4)点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上部及び下部の各中央部付近の合計2か所を、それぞれ別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込んで保持する工程(b4)点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の左右各中央部付近の合計2か所を、別紙被告物件目録(被告案)記載の取付具8の基板8bと弾性片8aで挟み込む工程(c4)蓋7の下端部の中央部分を前記下部に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程(d4)蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で、前記上部に保持された取付具8を下方に押し下げることにより、蓋7の上端部の中央部分を前記上部に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程(e4)蓋7を前記左右に保持された取付具8を点検口開口部6a内側に移動することにより、蓋7の左右端部の中央部分を前記左右に保持された取付具8の基板8bと弾性片8cとの間に挟み込む工程別紙4被告第2方法目録(被告案)図面別紙5被告物件目録(被告案)下記「3構造の説明」に記載された構成を有する「セクショナルGSシリーズ」、「システムキッチンシェルトBM」のシンクキャビネット及びガスキャビネットに設けられた点検口の蓋の取付方法に使用される取付具1図面の説明第1図は取付具の正面図である。
第2図は取付具の斜視図である。
第3図は取付具の側面図である。
2符号の説明6・・・・背板6a・・・点検口開口部7・・・・蓋8・・・・当目録記載の取付具8a・・・弾性片8b・・・基板8c・・・弾性片3構造の説明(a5)基板8bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ弾性片8a及び8cが第3図に示される断面形状を有するように形成されている。
(b5)弾性片8aは基板8bの一方端から略L字状に基板8bよりやや短く、先端部が基板外方に湾曲している。
(c5)弾性片8cは基板8bの他方端部から略L字状に基板8bより約3分の1の長さを有し、その先端部は基板外方に折曲している。
(d5)シンクキャビネット及びガスキャビネットの背板6に形成された点検口開口部6aの周辺を形成する背板6を基板8bと弾性片8aとの間に挟み込んだ状態で、点検口開口部6aを閉じる蓋7の端部を基板8bと弾性片8cとの間に挟み込むことができるように一体成形されている。
別紙5被告物件目録(被告案)図面)別紙6被告従来方法目録下記「3方法の説明」に記載された工程からなるシンクキャビネット及びガスキャビネットに設けられた点検口の前面に別紙被告従来方法蓋部目録記載の蓋を取り付ける方法1図面の説明第4図(1)は下記「3方法の説明」(a6)の工程を説明する断面図である。
第4図(2)は下記「3方法の説明」(b6)の工程を説明する断面図である。
第4図(3)は各工程が完了して蓋を取り付けた状態を示す断面図である。
2符号の説明6・・・・背板6a・・・点検口開口部7・・・・蓋70・・・蓋本体71・・・蓋上エッヂ部材71a・・保持片71b・・基板71c・・保持片72・・・蓋下エッヂ部材72a・・保持片72b・・基板72c・・保持片3方法の説明(a6)点検口の蓋7の蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71aとの間に点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上辺部を挟み込む工程(b6)蓋7を点検口開口部6a側に押し付けた状態で下方に押し下げることにより、蓋7の蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片72aとの間に点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の下辺部を挟み込む工程(別紙6被告従来方法目録図面)別紙7被告従来方法蓋部目録下記「3構造の説明」に記載された構成を有するシンクキャビネット及びガスキャビネットに設けられた点検口の蓋1図面の説明第1図面第1図は蓋上エッヂ部材の正面図及び蓋下エッヂ部材の正面図である。
第2図は蓋上エッヂ部材の斜視図及び蓋下エッヂ部材の斜視図である。
第3図は蓋上エッヂ部材の断面図及び蓋下エッヂ部材の断面図である。
第2図面第1図はシンクキャビネットに点検口の蓋を取り付けた概略図である。
第2図はガスキャビネットに点検口の蓋を取り付けた概略図である。
2符号の説明6・・・・背板6a・・・点検口開口部7・・・・蓋70・・・蓋本体71・・・蓋上エッヂ部材71a・・保持片71b・・基板71c・・保持片72・・・蓋下エッヂ部材72a・・保持片72b・・基板72c・・保持片3構造の説明(a7)蓋7は、蓋本体70、蓋上エッヂ部材71、蓋下エッヂ部材72より構成されている。
(b7)蓋上エッヂ部材71の基板71bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ保持片71a及び71cが第3図に示される断面形状を有するように一体形成されている。
(c7)保持片71cは基板71bの一方の略中央部から略L字状に基板71bの約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(d7)保持片71aは基板71bの他方端部から略L字状に基板71bよりやや短く、先端部が基板外方に湾曲している。
(e7)蓋下エッヂ部材72の基板72bの一方表面側及び他方表面側にそれぞれ保持片72a及び72cが第3図に示される断面形状を有するように一体形成されている。
(f7)保持片72cは基板72bの一方の略中央部から略L字状に基板72bの約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(g7)保持片72aは基板72bの他方の略中央部から略L字状に基板72bの約半分で、先端部が基板外方に湾曲している。
(h7)蓋上エッヂ部材71は基板71bと保持片71aとの間に点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の上辺部を挟み込むよう形成されている。
(i7)蓋下エッヂ部材72は基板72bと保持片72aとの間に点検口開口部6aの周辺を形成する背板6の下辺部を挟み込むよう形成されている。
(j7)蓋上エッヂ部材71の基板71bと保持片71cとの間に蓋本体70の上端部を両面テープで接着して挟み込み、蓋下エッヂ部材72の基板72bと保持片72cとの間に蓋本体70の下端部を両面テープで接着して挟み込み、それぞれ点検口の蓋7の上エッヂ部及び下エッヂ部を構成するように取り付けられる。
被告従来方法第1図面第2図面別紙8ニフコ社製クリップ目録下記「3構造の説明」に記載された構成を有する昭和62年(1987年)9月発行の株式会社ニフコの製品カタログ195頁に掲載された「FENDERPROTECTORCLIP1」製品番号1851,1X45のクリップ1図面の説明第1図はクリップの正面図である。
第2図はクリップの斜視図である。
第3図はクリップの断面図である。
2符号の説明73a・・保持片73b・・基板73c・・保持片3構造の説明(a8)基板73bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する保持片73cと保持片73aが突設された断面ほぼS字形のもので、
(b8)保持片73aは基板73bとほぼ同寸であり、
(c8)保持片73cは保持片73aより短く形成され、
(d8)保持片73cと基板73bとの間に車のフェンダープロテクターを差し込み挟持した状態で、保持片73aと基板73bとの間に車のフェンダーを差し込み保持することができるようになされたものであることを特徴とする(e8)車のフェンダープロテクターを取り付けるクリップ。
(別紙8ニフコ社製クリップ目録図面)別紙9イートン社製クリップ目録下記「3構造の説明」に記載された構成を有する昭和60年(1985年)発行のイートン(Eaton)社のカタログに掲載されたクリップ1図面の説明第1図はクリップの正面図である。
第2図はクリップの側面図である。
第3図はパネルの取付を示す断面図である。
2符号の説明11a・・挟持片11b・・基板11c・・挟持片3構造の説明(a9)基板11bの表面側と裏面側にそれぞれ弾性を有する挟持片11cと挟持片11aが突設された断面ほぼS字形のもので、
(b9)挟持片11aは基板11bとほぼ同寸であり、
(c9)挟持片11cは挟持片11aより短く形成され、
(d9)挟持片11cと基板11bとの間に一方のパネル端縁を差し込み挟持した状態で、挟持片11aと基板11bとの間に他方のパネル端縁を差し込み保持することができるようになされたものであることを特徴とする(e8)パネルの取付に使用されるクリップ。
(別紙9イートン社製クリップ目録図面)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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