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事件 平成 30年 (ネ) 10065号 特許権に基づく損害賠償請求権不存在確認等請求控訴事件
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2019/03/04
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴人らの当審における訴えの変更を許さない。
3 控訴費用は控訴人らの負担とする。
4 控訴人アップル インコーポレイテッドのために,この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
追加
第2事案の概要等(特に断らない限り,略称は原判決に従う。)1控訴人らの請求本件は,控訴人らが,被控訴人らに対し,控訴人らによる本件口頭弁論終結日までの下記の行為が本件特許権の侵害に当たらないなどと主張し,@被控訴人クアルコムについては,本件特許権の侵害に基づき,A被控訴人QTI,同QCTAP及び同クアルコムジャパン合同会社(以下,これら子会社3社を併せて「被控訴人クアルコム子会社」という。)については,実施料債権が侵害されたことを理由として,自ら又は被控訴人クアルコムに代位して,被控訴人らが損害賠償請求権及び実1 施料請求権を有しないことの確認を求めて,下記の請求をした事案である。
記被控訴人らは,控訴人らによる原判決別紙物件目録記載の各製品(以下「原告製品1」という。)の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,特許第4913343号の特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有しないことを確認する。
2訴訟の経緯原判決は,控訴人らの本件訴えはいずれも確認の利益を欠く不適法なものであるとして,これらを却下した。
控訴人らは,いずれもこれを不服として控訴し,東京地方裁判所への差戻しを求めた。
また,控訴人らは,当審において,平成30年11月15日付け訴えの変更申立書により,別紙物件目録2記載の各製品(以下「原告製品2」という。)を対象製品に追加することを求めた。
3前提事実前提事実は,原判決3頁7行目の末尾に改行の上,以下のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1(原判決1頁25行目〜3頁7行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
「?本件特許権の特許請求の範囲請求項9及び26に係る各発明(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明2」という。)の構成要件の分説ア本件発明11-A伝送サブシステムと,1-B前記伝送サブシステムに結合されていて前記伝送サブシステムのデータ伝送速度を制御するように構成されているプロセッサと,伝送待ち行列と,を具備し,1-C前記プロセッサは,現行のデータ伝送速度から限られた量だけ低下する2 ように制約されている新たなデータ伝送速度を決定するように構成されており,1-D前記プロセッサは,複数の制限を行うデータ速度を決定することによって及び前記制限を行うデータ速度のうちで最も遅いデータ速度を前記新たなデータ伝送速度として選択することによって前記新たなデータ伝送速度を決定するように構成されており,1-E前記制限を行うデータ速度は,前記伝送待ち行列内のデータ量に対応するデータに基づいて正当化されるデータ速度を少なくとも具備する,装置。
イ本件発明22-A伝送サブシステムと,2-B前記伝送サブシステムに結合されておりさらに前記無線通信システムがビジーでない状態のときに複数の制限を行うデータ速度から新たなデータ伝送速度を選択することによって前記伝送サブシステムの前記新たなデータ伝送速度を決定するように構成されているプロセッサと,を具備し,2-C前記制限を行うデータ速度は,現行データ伝送速度及びスティッキーレートのうちのいずれか速い方の速度と等しい速度に設定されるランプアップに基づいて制限されるデータ速度を含む,装置。」4争点本件における争点は,原判決「事実及び理由」の第2の2(原判決3頁8行目〜12行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当事者の主張1原判決の引用当事者の主張は,原判決11頁13行目冒頭から21行目末尾までを以下のとおり改めるとともに,後記2のとおり当審における主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の3(原判決3頁13行目〜12頁10行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
「原告製品1及び2は3G/UMTS規格に準拠した製品であるところ,少なく3 とも本件発明1の構成要件1-Cは,当該規格において必須とされていない。このため,本件特許は3G/UMTS規格における必須特許ではないから,原告製品1及び2は,少なくとも構成要件1-Cを充足しない。
同様に,少なくとも本件発明2の構成要件2-Cは3G/UMTS規格において必須とされていないことから,原告製品1及び2は,少なくとも構成要件2-Cを充足しない。
したがって,原告製品1及び2は,本件発明1及び2の技術的範囲に属しないから,控訴人らが原告製品1及び2を実施しても,本件発明1及び2の実施に当たらない。
以上より,控訴人らが原告製品1及び2を生産,譲渡等する行為は,本件特許権を侵害しない。」2当審における主張〔控訴人らの主張〕原判決は,主として以下の4点において判断を誤ったものである。
?CMライセンス契約についてア原判決は,本件特許権が,被控訴人クアルコムと控訴人アップルの製造受託業者(CM)との間のライセンス契約(CMライセンス)の対象特許に含まれるとの,客観的証拠に基づかない誤った事実認定を行った。
イ控訴人アップルは,被控訴人クアルコムと特許ライセンスを締結したことはなく,原告製品1及び2は,これを製造するCMが受けているCMライセンスに依拠していた。
しかるに,本件ライセンス交渉当時,突如,被控訴人クアルコムがCMライセンスの対象特許について主張を変遷させ,CMライセンスの対象範囲は限定的であると示した上,CMライセンスの対象及び内容を明らかにしなかった。また,被控訴人クアルコムが,ドイツでの訴訟(事件番号第2O128/17号。以下「ドイツ訴訟」という。)において,CMライセンスの有効期間の延長を含めた再交渉義務4 があるにもかかわらず平成28年第4四半期以降そのような交渉がされていないことを自認したことや,台湾の競争当局である公平交易委員会によってCMライセンスの再交渉が命じられ,これを受けて再交渉が開始されたことにも見られるとおり,現在,CMライセンスは再交渉を要する状況にある。これにより,本件特許権がCMライセンスの対象特許であることに疑義が生じ,本件特許権に基づく損害賠償請求権等に関する紛争による現実の不安が顕在化した。
ウ本件特許がCMライセンスの対象特許であるか否かは,被控訴人クアルコムによる本件特許権に基づく権利行使の現実的な危険があるか,という評価に関わるとともに,被控訴人らによる損害賠償請求権等の不存在の自認は,CMライセンスの対象に本件特許が含まれていることを前提とすることから,本件訴訟における重要な争点である。それゆえ,この点に関する事実認定は,客観的な証拠に基づいて行われるべきである。
しかし,本件において,CMライセンス契約が現時点においても有効に存続していることを裏付けるに足りる客観的な証拠はない。
CMライセンスは,被控訴人クアルコムとCMとの間のライセンス契約であり,その対象範囲を含め,控訴人らは全くうかがい知ることができない。他方,被控訴人らは,自らが当事者であるCMライセンスの対象範囲につき,CMライセンスの抜粋等を提出するなど,客観的に明らかな方法でこれを容易に主張立証することができる立場にあるにもかかわらず,一切行っていない。被控訴人らは,控訴人らが,本件ライセンス交渉の当時から繰り返し開示を求め,本件訴訟でもこれを求めたにもかかわらず,なおCMライセンスの開示を拒んでいる。このような拒絶の事実自体,本件特許がCMライセンスの対象特許であることに強い疑義を生じさせる。
そうである以上,CMライセンスにおいて,本件特許がライセンス対象特許となっていることを認めることはできない。
?本件ライセンス交渉時における被控訴人クアルコムの主張に関する評価について5 ア原判決は,上記?の誤った事実認定を前提として,控訴人アップル及び被控訴人クアルコムとの間の本件ライセンス交渉におけるやり取りを誤解し,「被控訴人クアルコム担当者作成に係る…レターにおける原告製品が被控訴人クアルコムの保有する多くの特許を侵害する旨の記載は,…これらの特許権をライセンス供与の対象とすべきであるとの意見の表明にすぎない」と認定し,これに基づき,本件ライセンス交渉の過程において,被控訴人クアルコムが,控訴人アップルに対し,特許権侵害に基づく損害賠償請求権を有し,又はこれを行使する意思を有していることを表明したと認めるに足りる証拠はないとの誤った判示を行った。
イ本件ライセンス交渉における被控訴人クアルコムのレター中の「控訴人アップルの製品が被控訴人クアルコムの保有する多くの特許を侵害する」旨の記載は,両当事者間に本件特許を対象特許に含むライセンスが存在しないことから,被控訴人クアルコムによる控訴人アップルの製品(原告製品1及び2を含む。)についての侵害主張にほかならない。被控訴人クアルコムが控訴人アップルの製品による侵害を認識していた以上,被控訴人クアルコムは,控訴人らに対し,いつ本件特許権に基づく権利を行使してもおかしくない状況にあった。
以上のとおり,被控訴人クアルコムの認識を前提とすれば,上記記載につき「ライセンス供与の対象とすべきであるとの意見の表明」ということはできない。
ウ被控訴人クアルコムの前記レター中の「ライセンスなしでは(absentalicense)」という記載は,「CMライセンスなしでは」という意味ではない。CMライセンスからの切替えを前提として当該記載を解釈したとしても,前記のとおり,CMライセンスの有効な存続及びその対象特許は,客観的証拠によって認定できない。そうである以上,CMライセンスの存在により,対象特許につき被控訴人クアルコムは控訴人アップルに権利行使できないという評価は成り立たない。
?被控訴人クアルコムによる米国訴訟における訴訟追行と本件訴訟における被控訴人らの表明についてア原判決は,被控訴人クアルコムの米国訴訟(CaseNo.17-cv-6 0108GPCMDD。以下「米国訴訟」という。)における行動は,被控訴人クアルコムの本件訴訟での表明と矛盾する行動であるにもかかわらず,その評価を誤り,「被控訴人クアルコムは,本件特許に対応する米国特許侵害に基づく損害賠償請求権を有することの確認を求めているものではない」ことから,米国訴訟における行動をもって,権利行使の現実的な危険があるということはできないと判断した。
イ被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,実質的に,原告製品1及び2に対する本件特許権も含めた侵害の主張を行っている。すなわち,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,控訴人アップルに提示したライセンス案がFRAND条件を満たしていたことの確認や,仮にこれに適合していないとする場合のFRAND条件によるロイヤルティの確認の申立てを行っていた。この申立ては,控訴人アップルによる当該申立対象特許全ての侵害を主張し,かつ,「米国特許侵害に基づく損害賠償請求権を有することの確認を求めていること」にほかならない。このことは,被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,控訴人アップルが本件特許の米国対応特許を侵害している旨述べられている専門家意見書を提出したことにより,更に明らかとなった。
ウなお,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,上記FRAND条件でのロイヤルティの確認を求める申立てを取り下げた。しかし,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,いまだに控訴人アップルが真摯にライセンスを受ける意思を有しない者であるとの確認判決を求める申立てを維持するとともに,その主張書面において,繰り返し,控訴人アップルが「クアルコムのFRAND宣言による利益を享受する地位をもはや有しない」と主張している。このような被控訴人クアルコムの米国訴訟における主張は,同被控訴人が,本件特許を含む自社の必須宣言特許に基づき,控訴人アップルに対して,差止請求又はFRAND料率を超える料率でのライセンス料相当額の損害賠償請求を行う意思を有していることを示す事情にほかならない。
7 また,このように,被控訴人クアルコムは,自らが戦略上有利な立場に立とうという意図のみをもって,いつ,いかなる主張を行うか(又は行わないか)を絶えず変遷させている。被控訴人クアルコムの米国訴訟における上記主張の変遷は,日本においても容易に主張を変更するであろうことを強く示す事実であり,確認判決の必要性を裏付ける。
?被控訴人クアルコム子会社に係る確認の利益についてア原判決は,被控訴人クアルコム子会社についても,何ら具体的な検討を行わないまま,確認の利益が存しないとの誤った判断を行った。
イ被控訴人クアルコム子会社は,控訴人らが主張した被控訴人クアルコム子会社の具体的な役割について認否すら行っていない。そうである以上,被控訴人クアルコム子会社によって控訴人らの法律上の地位にいかなる危険又は不安が生じるかについては十分な検討を行うことができないのであり,このような段階で,被控訴人クアルコム子会社との関係で確認の利益が存しないということはできない。
〔被控訴人らの主張〕?CMライセンス契約についてア控訴人らは,被控訴人クアルコムの主張が変遷した旨主張する。
しかし,それらがそれぞれどのような表明であったかを裏付ける客観的な証拠は示されておらず,控訴人らの主観を述べるにとどまるものというほかない。
イ控訴人らは,CMライセンスにつき再交渉を要する状況にある旨主張する。
しかし,被控訴人クアルコムが,ドイツ訴訟においてCMとのライセンス契約の再交渉を行っていないことを認めた点については,現行のライセンス契約が引き続き有効に存在し,再交渉を行う理由がないからであり,むしろCMとのライセンス契約が有効に存続することを示すものである。また,被控訴人クアルコムが台湾の公平交易委員会の決定に従ってCM等とのライセンス契約の再交渉を行っているとする点については,現時点において,控訴人らのいう再交渉は開始されておらず,ライセンス契約の条件が変更されたという事実もない。
8 ウ控訴人らは,被控訴人らがCMライセンスの対象範囲につき主張立証し得る立場であるにもかかわらず,これを行っていないと主張する。
しかし,訴えの利益が存在することの立証責任を負うのは控訴人らである。また,本件においては,被控訴人らによる権利不行使の表明によって確認の利益を確定的に欠いているのであるから,CMとのライセンス契約を開示する必要性はない。
エ被控訴人らは,原告製品1の生産,譲渡等につき,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではないし,被控訴人らとして,控訴人らに対し当該請求権を行使する意思もない。
したがって,本件口頭弁論終結時において,現に控訴人らの有する権利又はその法律上の地位に危険又は不安が生じてはおらず,本件訴えが確認の利益を欠くことは明らかである。なお,被控訴人クアルコムは,米国において,控訴人アップルに対し,本件特許の米国対応特許に基づく訴訟を提起しないことを内容とする,全世界的かつ撤回不可能な誓約を行っている。
オ将来事情が変化して権利主張をされるおそれがあることは,確認の利益を肯定する事情にはならない。確認判決は,口頭弁論終結時に,現に原告の権利又は法律上の地位に危険又は不安が存在する場合に,当該時点を基準時とする確認判決によって,原告をその危険又は不安から解放する制度であり,将来事情が変化して権利主張をされる危険から原告を解放するためのものではない。
?本件ライセンス交渉時における被控訴人クアルコムの主張に関する評価についてア控訴人アップルと被控訴人クアルコムの本件ライセンス交渉は,CMへの既存のライセンスに依拠することに代えて,控訴人アップルに直接ライセンスを付与することを目的とし,直接ライセンスが成立すれば,その直接ライセンスが被控訴人クアルコムとCMとのライセンス契約のうち原告製品1に係る部分に実質的に置き換わるとの共通の前提を有していた。本件ライセンス交渉における控訴人アップルと被控訴人クアルコムとのやり取りは,この前提に立って理解される必要がある。
9 イ被控訴人クアルコムは,控訴人アップルに対し,平成28年3月18日付けで,被控訴人クアルコムがETSIに開示した特許の一覧表(本件特許の特許番号を含む。)を送付し,同年12月頃,被控訴人クアルコムが保有する特許権の一部が記載された「クレームチャート一覧サンプル」を提供している。また,被控訴人クアルコムは,同年6月12日付けレターにおいて,控訴人アップルの製品は,もしライセンスがなければ(absentalicense)被控訴人クアルコムの多くの特許を侵害することとなると考えていることに言及している。
これらの対応のうち,被控訴人クアルコムが特許の一覧表及びクレームチャート一覧サンプルを提供したのは,控訴人アップルの要請に応じたものである。また,同年6月12日付けレターは,被控訴人クアルコムが,通信機器が特定の通信規格を利用していれば,当該通信機器は必然的に当該通信規格に必須とされる標準必須特許を実施することになるとの一般的な(かつ当然の)認識を示すとともに,控訴人アップルの要請に応えて特許の一覧表及びクレームチャート一覧サンプルを提供した旨を説明するものにすぎない。加えて,当該レターの目的は,本件ライセンス交渉において被控訴人クアルコムがこれまで取ってきた行動を説明し,交渉態度を明確にすることにあり,特定の特許権の行使を行うことにあったのではない。
このように,以上のやり取りは,CMへのライセンスに依拠することに代えて,被控訴人クアルコムと控訴人アップルとの間の直接ライセンスの成立を目指す交渉の中で,そのライセンスの範囲の説明・検討のために行われたものである。その中で,被控訴人クアルコムが特定の特許権である本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を行使し,又は行使する旨の予告と解される発言はない。また,被控訴人クアルコムは,CMライセンスの存在を否定する発言も行っていないし,CMライセンスが存在するにもかかわらず本件特許権を行使するとの発言を行ったこともない。
ウ以上の事実関係を前提とすれば,被控訴人クアルコムのレター中の「控訴人アップルの製品が被控訴人クアルコムの保有する多くの特許を侵害する」旨の記載10 につき,被控訴人クアルコムによる原告製品1についての侵害主張と理解することはできない。また,CMライセンスの存在により,対象特許につき被控訴人クアルコムは控訴人アップルに権利行使できないという評価が成り立たないということもできない。
?被控訴人クアルコムによる米国訴訟における訴訟追行と本件訴訟における被控訴人らの表明についてア前記のとおり,被控訴人クアルコムは,米国において,控訴人アップルに対し本件特許の米国対応特許に基づく訴訟を提起しないことを内容とする,全世界的かつ撤回不可能な誓約を行っている。このため,米国訴訟における被控訴人クアルコムの行為は,もはやいかなる意味においても本件における確認の利益を基礎付けるものではない。
イ被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,控訴人アップルに提示したライセンス案がFRAND条件を満たしていたことの確認や,仮にこれに適合していないとする場合のFRAND条件によるロイヤルティの確認の申立てを行っていたことは,本件特許権の行使又は行使の意思の表明をなすものではない。
すなわち,被控訴人クアルコムは,既に上記申立てのうちFRAND条件でのライセンス料の確認を求める申立ては取り下げている。仮に控訴人らの主張を前提としても,被控訴人クアルコムは,本件ライセンス交渉において,平成28年6月及び同年7月,自らがFRANDと考える条件でライセンスの申入れをした。しかし,この提案は,FRAND宣言に適合していないとして,控訴人アップルにより拒絶された。そこで,被控訴人クアルコムは,上記申立てを行ったものである。このような経緯及び前記本件ライセンス交渉の性質に照らせば,上記申立ては,CMライセンスの存在を否定するものでも,本件特許権の行使又は行使の予告と評価されるべきものでもないことは明らかである。
ウ本件訴訟における確認の対象は,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権の存否という最終的な法的権利の存否である。これに対し,米国訴訟に11 おける確認の対象は,当該訴訟の対象特許は控訴人アップルが使用する規格に必須のものではないため特許の侵害がないということ,当該特許が無効であること,(それが認められない場合には)チップセットの販売により特許権が消尽したため執行不能であること等であって,確認対象が異なる。
そうである以上,被控訴人クアルコムによる本件訴訟での表明と米国訴訟における被控訴人クアルコムの請求内容は,矛盾するものではない。
エ被控訴人クアルコムが,米国訴訟において,控訴人アップルが「真摯にライセンスを受ける意思を有しない者」であるとの確認を求める請求を維持し,主張書面でも控訴人アップルがFRAND宣言による利益を享受する地位を有しないと主張しているのは,控訴人アップルが非合理的かつ不誠実な交渉戦術をとったことを理由とするものであり,CMライセンスの存在にもかかわらず控訴人らに対して本件特許権を行使する意思を示したものではない。
?被控訴人クアルコム子会社に係る確認の利益について前記のとおり,被控訴人クアルコムに対する訴えは確認の利益を欠く。
また,本件特許権を有しない者がその実施品に関する事業等を行っているからといって,当然に本件特許権自体や実施料請求権を保有又は行使しているということはできないし,被控訴人クアルコム子会社による権利行使は立証されていない。
したがって,被控訴人クアルコム子会社はおよそ本件特許権を有しない以上,被控訴人クアルコム子会社に対する訴えも確認の利益はない。
?控訴人アップルジャパンの訴えに係る確認の利益の欠如控訴人アップルジャパンに対する本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権の行使についての具体的な主張立証はない。
したがって,控訴人アップルの訴えが確認の利益を欠く以上,控訴人アップルジャパンの訴えについて確認の利益が認められる余地はない。
?以上のとおり,原判決の判断は正当であり,控訴人らの主張はいずれも理由がない。
12 第4当裁判所の判断当裁判所も,本件訴えは訴えの利益を欠く不適法なものであるから,これを却下すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1国際裁判管轄について本件は,控訴人らが,被控訴人らに対し,控訴人らによる原告製品1の生産譲渡等の行為が本件特許権の侵害に当たらないなどと主張し,@被控訴人クアルコムについては,本件特許権の侵害に基づき,A被控訴人クアルコム子会社については,実施料債権が侵害されたことを理由として,自ら又は被控訴人クアルコムに代位して,被控訴人らが損害賠償請求権及び実施料請求権を有しないことの確認を求めた事案である。
まず,被控訴人クアルコムジャパンの本店所在地は日本国内にあるから,主たる事務所又は営業所が日本国内にあることによる管轄権(民訴法3条の2第3項)が認められる。
また,本件は,特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権の不存在が確認の対象とされていることから,不法行為に関する訴えに該当する。不法行為に関する訴えについては,「不法行為があった地が日本国内にあるとき」に我が国に国際裁判管轄が認められる(同法3条の3第8号)。本件では,被控訴人クアルコムの有する日本の特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権の不存在が確認の対象とされ,控訴人らが日本国内において原告製品1の輸入販売等の行為を行っていることが認められることから(弁論の全趣旨),日本の裁判所が管轄権を有する。
そして,他の被控訴人らとの関係では,不存在確認の対象とされる被控訴人らの控訴人らに対する権利は同一の事実上の原因に基づくものであるから,少なくとも併合請求における管轄権(同法3条の6,38条前段)が認められる。
なお,本件において,訴えを却下すべき特別の事情(同法3条の9)を認めることはできない。
したがって,本件においては,日本の裁判所が管轄権を有する。
13 2訴えの変更について控訴人らは,本件訴えの対象となる製品につき,別紙物件目録2記載の各製品(原告製品2)を追加する旨の訴えの変更を申し立てた。
しかし,原審においては,専ら確認の利益の有無及び国際裁判管轄の有無について審理が行われ,原判決は,このうち確認の利益を欠くことを理由に,本件訴えは不適法である旨判断したものであり,本件特許権に基づく損害賠償請求権又は実施料請求権の有無に関する審理は全く行われていない。もとより,追加が申し立てられている原告製品2についても,こうした観点からの審理は行われていない。
加えて,被控訴人らは,控訴人らの訴え変更の申立てにつき,不適法であるとともに著しく訴訟手続を遅延させるものであるとして,これを許さない旨の決定を求めている。
このような場合に,控訴審において訴えの追加的変更を認めた上で実体審理を行うとすれば,被控訴人らの審級の利益が侵害されることとなるとともに,被控訴人らにおいて追加に係る原告製品2がCMライセンスの対象か否かの調査を要することも含め,訴訟手続を著しく遅延させるものというべきである。
したがって,上記訴えの変更申立ては許されない。
3認定事実前提事実に加え,当事者間に争いのない事実,証拠(後記文中及び末尾掲記の各証拠)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
?控訴人らと被控訴人クアルコムとの関係被控訴人クアルコムは,同社が保有する特許権の一部(本件特許権を含む。)につき,原告製品1のCM(製造受託業者)である4社(以下「CM4社」ということがある。)に対し,原告製品1の生産,譲渡等に関しライセンス(CMライセンス)を付与しており,控訴人らは,CM4社から,全ての原告製品1の供給を受けている。(乙4,弁論の全趣旨)?本件ライセンス交渉の経過14 控訴人アップルと被控訴人クアルコムは,平成26年頃,被控訴人クアルコムが保有する本件通信規格に関する全世界的な必須宣言特許ポートフォリオについて,控訴人アップルが被控訴人クアルコムから直接ライセンスの付与を受けることを目的とした交渉(本件ライセンス交渉)を開始した。
本件ライセンス交渉の経過は,以下のとおりである。
ア控訴人アップル担当者は,被控訴人クアルコム担当者に対し,以下の内容を含む平成28年2月5日付けレター(甲9)を送付した。
(●省略●)イ被控訴人クアルコム担当者は,控訴人アップル担当者に対し,以下の内容を含む平成28年2月17日付けレター(甲10)を送付した。
(●省略●)ウ被控訴人クアルコム担当者は,控訴人アップル担当者に対し,同年3月18日付けで,被控訴人クアルコムがETSIに開示した多数の特許が記載された一覧表を送付し,同一覧表のうち,控訴人アップルの製品が実施していない特許があれば知らせるよう求めた(甲7)。同一覧表には,本件特許の米国又は中国対応特許の「付与/公開/出願番号」,「名称」,「要約」,「規格公開」及び「地理的範囲」が記載されており,本件特許権の特許番号(「日本:4913343」)も掲載されている(甲7添付の一覧表2頁目)。
エ控訴人アップル担当者は,被控訴人クアルコム担当者に対し,以下の内容を含む同年4月18日付けレター(甲11)を送付した。
(●省略●)オ被控訴人クアルコム担当者は,控訴人アップル担当者に対し,以下の内容を含む同年6月12日付けレター(甲6)を送付した。
(●省略●)(以下,この記載を「本件記載」という。)被控訴人クアルコムは,控訴人アップルに対し,携帯通信規格に必須である請求項(FRAND提案の対象となる特許の請求項)が含まれている可能性があると認15 識する全ての特許のリストを提供し,かかる規格の中でこれらの請求項が適用される部分を示した。
(●省略●)カ被控訴人クアルコム担当者は,控訴人アップル担当者に対し,以下の内容を含む同年7月15日付けレター(甲15)を送付した。
(●省略●)キ控訴人アップルは,被控訴人クアルコムの上記提案をFRAND義務に違反するとして拒絶し,同年9月,被控訴人クアルコムに対し,それぞれの携帯電話の標準必須特許について相互ライセンスをすることを提案した(甲8)。
これに対し,被控訴人クアルコム担当者は,控訴人アップル担当者に対して同年10月12日付けレター(甲13)を送付し,控訴人アップルの主張する特許消尽は本件ライセンス交渉とは無関係であり,特許消尽理論は,特許権を具現化した製品の販売を購買者と合意するに当たり,別個に計算された特許ライセンス料の支払を当該製品の購買者に求めることを禁じていないなどと主張し,控訴人アップルの提案を拒絶した。(甲8)ク被控訴人クアルコムは,同年12月頃,控訴人アップルに対し,被控訴人クアルコムが保有する特許権の一部について,「クレームチャート一覧サンプル」を提供した(甲8,14)。当該クレームチャート一覧サンプルには,本件特許米国対応特許(特許番号7095725)が記載されている。
?中国での訴訟及び米国訴訟ア被控訴人クアルコムは,平成28年6月,中国において,携帯通信端末メーカーであるメイズ社を被告として,本件特許に対応する中国特許に係る特許権につき侵害訴訟を提起した(甲8)。
イ控訴人アップルは,平成29年1月20日,被控訴人クアルコムを被告として,米国南カリフォルニア地区連邦地方裁判所に訴訟(米国訴訟)を提起した。
控訴人アップルは,米国訴訟において,被控訴人クアルコムによるCMへの被控16 訴人クアルコム製ベースバンド・プロセッサ・チップセットの販売行為が,同チップセットに包含される特許権に関する被控訴人クアルコムの特許権を消尽させることの確認,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し,合理的な実施料率及び合理的な条件による非差別的なライセンスの申出をしていないことの確認,控訴人アップルが実施する被控訴人クアルコムが保有する特許について,合理的な実施料率を用いたFRAND料率の設定等を求めた。
これに対し,被控訴人クアルコムは,同年5月24日付け第1修正反訴状において,救済を求める事項として,@被控訴人クアルコムが本件ライセンス交渉において控訴人アップルに示したライセンス提案がFRAND条件を充足していること,A仮に,裁判所が,控訴人アップルにはなお被控訴人クアルコムからFRAND条件による申入れを受ける権利があると判断する場合は,移動体通信SEPのポートフォリオ・ライセンスのためのFRAND条件によるロイヤルティが既に申し入れられている旨を確認すること等を求めた。
もっとも,被控訴人クアルコムは,平成30年9月14日,本件特許の米国対応特許を含む9つの特許のいずれの請求項についても,誓約の発行日以前,当日又は以後に,控訴人アップル等が製造,使用,販売,販売の申出又は輸入を行った製品に関して,控訴人アップル等に対し,米国特許法によって生じ得る訴訟原因に基づく請求又は要求を行わないことを内容とする,無条件かつ撤回不能な誓約を行った。
また,被控訴人クアルコムは,同年4月11日付け第2修正反訴状において,上記@の確認の申立ては維持する一方,上記Aは取り下げた。(甲17,18,33,乙2,4,6,7)?被控訴人らの対応被控訴人らは,原審において,被控訴人クアルコムは,原告製品1のCM4社に対して本件特許権を含む特許権のライセンス(CMライセンス)を付与しており,控訴人アップルはCM4社から原告製品1全ての供給を受けているから,被控訴人らは,控訴人らに対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施請求権を有す17 るものではなく,行使する意思もない旨表明している。
また,被控訴人らは,当審においても,控訴人らに対し,原告製品1の生産,譲渡等につき,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではなく,また,これらの請求権を行使する意思もない旨明言している。
4争点?(確認の利益の有無)について?争点?(確認の利益の有無)については,原判決19頁26行目の「原告に対し」を「控訴人らに対し」に改めるとともに,控訴人らの当審における主張について後記?のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3の2(原判決17頁17行目〜21頁16行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
?控訴人らの当審における主張についてアCMライセンス契約について(ア)控訴人らが主張するとおり,本件において,CMライセンス契約の成立時期,対象範囲その他の詳細を客観的に示す証拠はない。
しかし,本件において,被控訴人らは,原審から当審までを通じ,口頭弁論終結に至るまで,「原告製品1のCM4社に対する本件特許権を含む特許権のライセンス(CMライセンス)の供与及び控訴人アップルが当該CM4社から原告製品1全ての供給を受けているという事実によれば,被控訴人らは,控訴人らに対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び実施料請求権を有するものではなく,また,これらの請求権を行使する意思もない」旨を繰り返し明確に表明している。
他方,被控訴人クアルコムが,ドイツ訴訟においてCMとのライセンス契約の再交渉を行っていないことを自認したとしても,本件におけるCMライセンスが現在効力を有しないことを示すものとは必ずしもいえない。また,台湾の公平交易委員会の決定に基づくCM等とのライセンス契約の再交渉に関しては,これを裏付ける証拠がないし,仮に認められるとしても上記と同様である。
これらの点に鑑みれば,少なくとも,本件口頭弁論終結時において,CMライセンス契約が有効に存続しており,原告製品1のCMに供与されたCMライセンスの18 対象に本件特許権が含まれることが認められる。
(イ)控訴人らは,本件ライセンス交渉当時,被控訴人クアルコムがCMライセンスの対象特許について主張を変遷させたことなどから,本件特許権がCMライセンスの対象特許であることなどに疑義が生じた旨主張する。
しかし,前記認定事実のとおり,そもそも,本件ライセンス交渉は,従前はCMライセンスに基づき製造された原告製品1全ての供給を控訴人アップルが受けていたところ,被控訴人クアルコムが保有する本件通信規格に関する全世界的な必須宣言特許ポートフォリオにつき,控訴人アップルが被控訴人クアルコムから直接ライセンスの付与を受けることを目的として,控訴人アップルからの申入れを契機に開始したものであり,原告製品1が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの特許権を侵害している(ないしその可能性がある)との警告ないし問題意識から開始されたものではない。また,被控訴人クアルコム担当者の控訴人アップル担当者に対する平成28年6月12日付けレター(甲6)の「控訴人アップルの製品が被控訴人クアルコムの多くの特許を(ライセンスがないとすると)侵害しており」との本件記載は,控訴人アップル担当者の被控訴人クアルコム担当者に対する同年2月5日付けレター(甲9)において,控訴人アップル側が,(ライセンスがないとすると(absentalicense))控訴人アップルの製品が侵害していると被控訴人クアルコムが考える携帯通信の必須特許全てのリストの提示を求めたこと,控訴人アップル担当者の被控訴人クアルコム担当者に対する同年4月18日付けレター(甲11)において,控訴人アップル側が,重ねてこれを求めたことを受け,これに対応するものとして記載されたことがうかがわれる。しかも,本件記載には,被控訴人クアルコムからCMライセンスの供与を受け,被控訴人クアルコムにロイヤルティを支払っているCMが製造した控訴人アップルの製品を,それと理解した上で控訴人アップルが購入しているとの認識を被控訴人クアルコムが示しているものと理解される記載が先行している。現に,この本件ライセンス交渉の過程で,控訴人アップルの製品の全部又は一部が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの特許権を侵害する19 (infringe)旨の記載は,この「(absentalicense)」との文言が付されたものしか見当たらない。
このような本件ライセンス交渉の経緯や上記レター自体の文脈を踏まえると,上記レターの本件記載は,本件特許権との関係につき,CMライセンスその他何らかのライセンスがなければ特許権侵害となる旨の被控訴人クアルコムの意見ないし見解を表明したものと理解するのが相当である。そうすると,本件記載をもって,控訴人ら主張に係る被控訴人クアルコムの主張の変遷を示すものということはできない。このことは,CMライセンスに関する客観的な証拠の有無に関わりがない。
その他本件特許権とCMライセンスとの関係に係る被控訴人クアルコムの主張に変遷があることを認めるに足りる証拠はない。
イ本件ライセンス交渉時における被控訴人クアルコムの主張に関する評価について控訴人らは,本件記載は被控訴人クアルコムによる原告製品1についての侵害主張にほかならないなどと主張する。
しかし,本件ライセンス交渉の過程で,本件記載以外に,原告製品1が本件特許権を含む被控訴人クアルコムの特許権を侵害することに関連する言及はない。また,本件記載については,本件特許権との関係につき,CMライセンスその他何らかのライセンスがなければ特許権侵害となる旨の被控訴人クアルコムの意見ないし見解を表明したものと理解されることは,前記アのとおりである。
ウ被控訴人クアルコムによる米国訴訟における訴訟追行と本件訴訟における被控訴人らの表明について控訴人らは,被控訴人クアルコムは,米国訴訟において,実質的に原告製品1に対する本件特許権も含めた侵害の主張を行っているなどと主張する。
しかし,前記認定事実のとおり,米国訴訟は,控訴人アップルが,被控訴人クアルコムが控訴人アップルに対し合理的な実施料率及び合理的な条件による非差別的なライセンスの申出をしていないことの確認や,控訴人アップルが実施する被控訴20 人クアルコムの特許について,合理的な実施料率を用いたFRAND料率の設定等を求め,これに対する反訴として,被控訴人クアルコムが,@被控訴人クアルコムが本件ライセンス交渉において控訴人アップルに示したライセンス提案がFRAND条件を充足していること,A仮に,裁判所が,控訴人アップルにはなお被控訴人クアルコムからFRAND条件による申入れを受ける権利があると判断する場合は,移動体通信SEPのポートフォリオ・ライセンスのためのFRAND条件によるロイヤルティが既に申し入れられている旨を確認すること等を求めたものである。しかも,被控訴人クアルコムは,後にAの申立てを取り下げている。このように,米国訴訟における被控訴人クアルコムの申立て及びこれに関する主張は,控訴人アップルが被控訴人クアルコムから直接ライセンスの付与を受けることを前提とする控訴人アップルの申立てに対抗して行われたものであって,その限度を超えて,本件特許の米国対応特許の侵害に基づく損害賠償請求権を有することの確認を求めるものとは理解できない。控訴人ら指摘に係る専門家意見書についても,このような米国訴訟の証拠として提出されたものにとどまることから,このような理解を左右するものではない。
エ被控訴人クアルコム子会社に係る確認の利益について控訴人らは,被控訴人クアルコム子会社は,いずれも被控訴人クアルコムの指揮命令の下に本件特許権のライセンス料を請求・徴収しているものであり,控訴人らによる本件口頭弁論終結日までの原告製品1の生産,譲渡,貸渡し,輸入又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)につき,実施料債権が侵害されたことを理由とする,自ら又は被控訴人クアルコムを代位して損害賠償請求権及び実施料請求権を行使する現実の危険があるとし,被控訴人クアルコム子会社に係る確認の利益につき,なおこれが存しないということはできない旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件特許権を有する被控訴人クアルコムとの関係においても,本件訴えにつき確認の利益は認められないところ,控訴人ら主張に係る被控21 訴人クアルコム子会社に対する訴えの確認の利益は,被控訴人クアルコムに対する訴えの確認の利益の存在を前提とする。
また,そもそも,被控訴人クアルコム子会社は,いずれも本件特許権を有しないことから,その実施品に関する事業等を行っていることのみをもって,控訴人らに対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権又は実施料請求権を有し,又は行使しているということはできない。被控訴人クアルコム子会社のいずれかが,実際にこれらの権利を行使したことを認めるに足りる証拠もない。
そうである以上,被控訴人クアルコム子会社がこれらの権利を行使する具体的なおそれがあるとはいえず,これらに対する本件訴えにつき確認の利益がないことは明らかである。
オその他控訴人らがるる指摘する事情を考慮しても,この点に関する控訴人らの主張は採用できない。
5結語以上のとおり,本件訴えは訴えの利益(確認の利益)を欠く不適法なものであり,これを却下すべきである。これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官高部眞規子裁判官杉浦正樹裁判官片瀬亮22 (別紙)当事者目録控訴人AppleJapan合同会社控訴人アップルインコーポレイテッド控訴人ら訴訟代理人弁護士長沢幸男矢倉千栄稲瀬雄一石原尚子雲居寛隆同弁理士大塚康徳同補佐人弁理士大塚康弘江嶋清仁前田浩次吉田晴人西守有人23 被控訴人クアルコムインコーポレイテッド被控訴人クアルコムテクノロジーズインク被控訴人クアルコムシーディーエムエーテクノロジーズアジア-パシフィックピーティーイーエルティーディー被控訴人クアルコムジャパン合同会社被控訴人ら訴訟代理人弁護士城山康文早田尚貴岩瀬吉和柴田義人高橋綾小島諒万24 宗川帆南同訴訟代理人弁理士市川祐輔同補佐人弁理士市川英彦25 (別紙)物件目録240iPhoneXS64GB41iPhoneXS256GB42iPhoneXS512GB43iPhoneXSMax64GB44iPhoneXSMax256GB45iPhoneXSMax512GB46iPhoneXR64GB47iPhoneXR128GB48iPhoneXR256GB以上26
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