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関連審決 不服2015-19608
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事件 平成 30年 (行ケ) 10073号 審決取消請求事件

原告 珠海艾派克微電子有限公司 (アペックス マイクロエレクトロニクス カンパニー リミテッド)
同訴訟代理人弁理 士河野英仁 田中伸次 難波裕
被告特許庁長官
同 指定代理人荒井隆一 吉村尚 尾崎淳史 佐藤聡史 板谷玲子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2019/02/07
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
-1-3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2015-19608号事件について平成30年1月16日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許出願の拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。
争点は,サポート要件判断の誤りの有無である。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,名称を「インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ」とする発明について,平成25年9月6日(以下, 「本願出願日」という。 ,特許出願をしたところ(特願2013-1857 )29号,パリ条約に基づく優先権主張,優先日・平成24年11月22日,平成25年2月1日,優先権主張国・中国,請求項の数14,甲1〜5。以下, 「本願」という。,平成27年2月23日に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正を )したが(甲10),同年6月26日付けで拒絶査定を受けた(甲11)。
原告は,平成27年10月30日,拒絶査定不服審判請求をし(不服2015-19608号) 同日, , 特許請求の範囲を補正する手続補正をし(甲12) さらに, ,平成29年6月21日に特許請求の範囲を補正する手続補正をしたが(請求項の数17,甲17。以下, 「本件補正」という。,特許庁は,平成30年1月16日, ) 「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月30日,原告に送達された。
2 本願発明の要旨 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜17記載の発明(以下,請求項の番号に従って「本願発明1」のようにいい,本願発明1〜17を合わせて「本願発明」 という。)は,次のとおりである(甲17。なお,本件補正後の本願の願書に添付した明細書及び図面〔甲2,4,10〕を「本願明細書」という。。
) (1) 本願発明1【請求項1】 インタフェースユニットと制御ユニットを含むインクカートリッジICチップであって, 前記インタフェースユニットがイメージング装置に電気的に接続されており,イメージング装置から送られる光制御指令の受信に用いられ,前記光制御指令は発光指令と消光指令を含み,前記発光指令はインクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられ, 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられ, 前記インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態とを含むことを特徴とするインクカートリッジICチップ。
(2) 本願発明2【請求項2】 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが前記実行可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させ,前記インクカートリッジICチップが前記実行不可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させない制御に用いられることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジICチップ。
(3) 本願発明3【請求項3】 インクカートリッジ識別情報を記録する第1記憶ユニットと, 前記インクカートリッジICチップの状態を実行可能な状態又は実行不可能な状 態に変えるのに用いられる発光標識部のある発光標識ユニットと,を含み, 前記制御ユニットは,前記発光標識部が実行可能な状態にある場合,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるか,もしくは前記発光標識部が実行不可能な状態にある時に前記発光指令を実行させないようにすることを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジICチップ。
(4) 本願発明4【請求項4】 前記制御ユニットは,さらに,前記光制御指令のインクカートリッジ識別情報に基づいて,前記実行可能な状態または前記実行不可能な状態に前記インクカートリッジICチップの状態を更新するのに用いられることを特徴とする請求項3記載のインクカートリッジICチップ。
(5) 本願発明5【請求項5】 前記発光指令と前記消光指令はいずれも前記インクカートリッジ識別情報を含み,前記制御ユニットは,受信した発光指令又は受信した消光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があるときに前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ,前記受信した発光指令又は受信した消光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは,前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記憶されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,かつ,前記受信した発光指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合に前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれ る前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは,前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変え,かつ,前記受信した発光指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合に,前記発光標識部を実行不可能な状態に保持するか,または,以前に受信した消光指令とその後受信した最初の消光指令との時間間隔が前記第1制限値より小さいと確認された場合に前記発光標識部を実行可能な状態に戻すのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであり, 或いは前記制御ユニットは,受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変え,かつ,以前に受信した消光指令とその後受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいと確認された場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に保持するか,以前に受信した消光指令とその後受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より小さいと確認された場合,前記発光標識部を実行可能な状態に戻すのに用いられ,前記受信した発光指令に含まれる前記インクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報との間に関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであることを特徴とする請求項4記載のインク カートリッジICチップ。
(6) 本願発明6【請求項6】 前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間にそれぞれ関連性がある場合,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 或いは,前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,しかも受信した前記二つの光制御指令の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいときに,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 或いは,前記制御ユニットは,受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報および前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があり,しかも受信した二つ目の光制御指令がその前に受信した消光指令との間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいときに,前記発光標識部を実行不可能な状態に変えるのに用いられ, 相次ぎ受信した二つの光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と前記第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間にそれぞれ関連性があることは,2種類の前記インクカートリッジ識別情報が互いに一致または整合し,または特定の関係を有していることであることを特徴とする請求項4記載のインクカートリッジICチップ。
(7) 本願発明7【請求項7】 インタフェースユニットと制御ユニットとを含むインクカートリッジICチップであって, 前記インタフェースユニットがイメージング装置に接続されており,イメージング装置からから送られる光制御指令の受信に用いられ,前記光制御指令は発光指令と消光指令とを含み,前記発光指令は前記インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられ, 前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられ, 前記インクカートリッジICチップの状態は,前記インクカートリッジICチップの指令受信状態であることを特徴とするインクカートリッジICチップ。
(8) 本願発明8【請求項8】 前記インクカートリッジICチップは,光制御指令を受信するインクカートリッジICチップの指令受信状態の統計をとるのに用いられる指令受信統計ユニットを含み, 前記制御ユニットが,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,前記指令受信状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうか制御するのに用いられることを特徴とする請求項7記載のインクカートリッジICチップ。
(9) 本願発明9【請求項9】 前記指令受信統計ユニットは,具体的には,受信した発光指令又は受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を記録することによる,前記インクカートリッジICチップの前記指令受信状態の統計に用いられ, 前記制御ユニットは,発光指令を受信したときに,指令受信統計ユニットに同じ発光指令又はインクカートリッジ識別情報が記録されていないと,第3制限値の後に発光ユニットを発光させ,指令受信統計ユニットに同じに発光指令又はインクカートリッジ識別情報が記録されていると,発光ユニットの発光を実行させないよう に制御するのに用いられることを特徴とする請求項8記載のインクカートリッジICチップ。
(10) 本願発明10【請求項10】 前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられることを特徴とする請求項9に記載のインクカートリッジICチップ。
(11) 本願発明11【請求項11】 前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,前記制御ユニットは,相次ぎ受信した二つの光制御指令間の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいときに,最後に受信した発光指令又はその前に受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録し, 或いは,前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,指令受信統計ユニットに記録されていない発光指令又はインクカートリッジ識別情報を受信したときに,前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録した上で,現在の光制御指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと 確認されたときに,指令受信統計ユニットに今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報を保持し,もしくは現在の光制御指令とその後受信した最初の光制御指令との時間間隔が第1制限値より小さいと確認されたときに,前記今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報をクリアし, 或いは前記制御ユニットは,さらに,受信した発光指令または受信した光制御指令に含まれる,前記指令受信統計ユニットに記録された前記インクカートリッジ識別情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,指令受信統計ユニットに記録されていない発光指令又はインクカートリッジ識別情報を受信したときに,前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を指令受信統計ユニットの中に記録した上で,前記発光指令を受信する前に受信した消光指令と前記発光指令を受信した後に受信した消光指令の間の時間間隔が第2制限値より大きいか,又は等しいときに,指令受信統計ユニットに今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報を保持し,もしくは前記発光指令を受信する前に受信した消光指令と前記発光指令を受信した後に受信した消光指令の間の時間間隔が第2制限値より小さいと確認されたときに,前記今回記録した発光指令又はインクカートリッジ識別情報をクリアすることを特徴とする請求項10記載のインクカートリッジICチップ。
(12) 本願発明12【請求項12】 前記指令受信統計ユニットが具体的には発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を記録するのに用いられ, 制御ユニットが発光指令を受信したときに,指令受信統計ユニットに既に記録されていた同じ発光指令又はインクカートリッジ識別情報に対応する標識情報がまだマークされていないときに,第3制限値の後に発光ユニットを発光させるか,もしくは発光ユニットの発光を実行させないようにするのに用いられることを特徴とす る請求項8記載のインクカートリッジICチップ。
(13) 本願発明13【請求項13】 前記制御ユニットは,さらに,前記指令受信統計ユニットに記録された,発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,前記制御ユニットが相次ぎ受信した二つの光制御指令の間の時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと判断したときに,指令受信統計ユニットが最後に受信した発光指令又はその前に受信した光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をマークし, 或いは,前記制御ユニットは,さらに,前記指令受信統計ユニットに記録された,発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を,前記インクカートリッジ識別情報および前記光制御指令に関する時間間隔に従って,記録,保持および/またはクリアするのに用いられ,具体的には,新しい発光指令を受信した後,指令受信統計ユニットの中で前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をマークし,その後受信した光制御指令との時間間隔が第1制限値より大きいか,又は等しいと確認したときに,今回マークした前記発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報を保持するか,もしくは前記今回の発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と対応する標識情報をクリアすることを特徴とする請求項12記載のインクカートリッジICチップ。
(14) 本願発明14【請求項14】 異なる光制御指令の受信ロジックを記録するための指令ロジック記録ユニットと, 前記インクカートリッジICチップの状態を実行可能な状態又は実行不可能な状 態にする指示を出すのに用いられる発光状態部を持つ発光状態ユニットと,を含み, 前記制御ユニットは,前記発光状態部が実行可能な状態にあるときに,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるか,前記発光状態部が実行不可能な状態にあるときに,前記発光指令を実行しない操作,および指令ロジック記録ユニットに記録された受信ロジックをもとに前記発光状態部の状態を変えるのに用いられることを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジICチップ。
(15) 本願発明15【請求項15】 前記制御ユニットは,具体的には相次ぎ受信した光制御指令が前記指令ロジック記録ユニットに記録された受信ロジックと一致したときに,制御により前記発光状態部の状態を実行不可能な状態に変えるのに用いられることを特徴とする請求項14記載のインクカートリッジICチップ。
(16) 本願発明16【請求項16】 請求項1乃至15いずれか一項に記載するインクカートリッジICチップを含むことを特徴とするインクカートリッジ。
(17) 本願発明17【請求項17】 インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる発光指令と消光指令からなるイメージング装置からの光制御指令を受信するステップと, 光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうか制御するステップと,を含み, 前記インクカートリッジICチップの状態は実行可能な状態と実行不可能な状態とを含み,発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させ,前記インクカートリッ ジICチップが前記実行不可能な状態にある場合には,前記発光ユニットを発光させないことを特徴とするインクカートリッジICチップの制御方法。
3 審決の理由の要点 本願明細書の記載(【0005】【0006】 , )によると,本願発明は, 「各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,インクカートリッジ位置検出におけるイメージング装置の誤報率増加」という課題を解決するために,「インクカートリッジ位置の検出過程におけるイメージング装置の誤報率を減らすための,インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジ」を提供することを目的とした発明であることが認められる。
そして,本願明細書の【0017】のとおり,課題解決のためには,少なくとも「制御ユニットはインタフェースユニットが発光指令を受信したときに,インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,発光ユニットを発光させる」ことが,本願発明1の発明特定事項として記載されていなければ,上記課題を解決することはできない。
しかし,請求項1の記載によると,本願発明1において,インクカートリッジICチップの状態に応じて,光制御指令を実行するものの,インクカートリッジICチップの状態が「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」のいずれの状態のときに実行するかについては,何らの限定もされていないから, 「インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態」であった場合に,インタフェースユニットが光制御指令として,例えば, 「発光指令」を受信したときに,制御ユニットは,この光制御指令を実行するか否か,また, 「消光指令」を受信したときに,制御ユニットは,この光制御指令を実行するか否かを特定することができない。
したがって,本願発明1において,インクカートリッジ位置検出に際して,インクカートリッジ上の光源の発光を制御するための光制御指令(「発光指令」又は「消光指令」 を受信したときに, ) 制御ユニットが光制御指令を実行するか否かが特定で きないから,本願発明1において発明の課題を解決するための手段が反映されているとは認められない。
以上のとおり,本願は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
原告主張の審決取消事由〜サポート要件判断の誤り
1 請求項1には, 「光制御指令は発光指令・・・を含み,前記発光指令はインクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられ」「制御ユニ ,ットは, ・・・光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態(「実行可能状態」又は「実行不可能状態」)に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御する」旨が記載されている。
このように,請求項1記載の制御ユニットは,「実行可能状態」にあるか,「実行不可能状態」にあるかに応じて,発光指令を実行するか否かを制御するものである。
したがって,請求項1記載の制御ユニットは,ICチップが「実行可能状態」にある際に,発光指令を含む光制御指令を受け付けた場合,これに応じて発光ユニットを発光させる制御を実行する。そして,これにより発光ユニットが発光する。
反対に「実行不可能状態」にある際に,発光指令を含む光制御指令を受け付けても,制御ユニットは発光ユニットの発光を実行しない。そこで,発光ユニットは発光しない。
このことは,本願明細書の【0084】及び【図5】の記載にも一致する。また,請求項1に記載した発光制御により,本願明細書の【図8a】〜【図8c】【00 ,87】〜【0090】に記載した検出を行うことができ,ひいては「誤報率を減らす」 (【0006】 という課題を解決することができることも当業者であれば常識的 )に理解することができる。
審決は, 「発光指令を受信したときに,インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,発光ユニットを発光させる」ことを請求項1に発明特定事項として追加しなければ課題を解決できないとしたが,上記のとおり,請求項1には,実行可能状態で光制御指令のうち発光指令を受信したときに,発光指令の実行によ り発光ユニットが発光することが記載されているから,審決の上記認定は誤りである。
2 被告は,本願明細書の【0084】及び【0095】の実施例(手順502〜503,手順1002〜1003)を指摘して, 「光制御指令」として「消光指令」を受信した際には,インクカートリッジICチップの状態」「実行不可能な状態」 「 がであるにもかかわらず, 「光制御指令」である「消光指令」を実行することが記載されている旨主張する。
しかし,本願明細書の【0099】の実施例は, 「制御ユニットは発光標識部が実行不可能な状態にあると判断したときに,インクカートリッジICチップをロックし,どんな消光指令でも受信又は処理しないようにする。」というものであって,請求項1記載のとおり, 「実行不可能な状態」であれば「消光指令」を実行しないことになる。このように, 「実行不可能な状態」における「消光指令」に対する請求項1記載の制御処理も,発明の詳細な説明にサポートされているといえる。
被告の主張
1 本願明細書の【0005】及び【0006】の記載によると,本願発明の課題は,インクカートリッジの実際の製造過程において多少の製造上の誤差が避けられず,各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,隣接するインクカートリッジの発光量が検出待ちインクカートリッジの発光量より多いか又は同じになる可能性があり,これによりインクカートリッジが正しい位置に装着されていないと識別されることを防止することにより,インクカートリッジ位置の検出過程におけるイメージング装置の誤報率を減らすことにあるといえる。
本願明細書の【0007】〜【0013】には, 【課題を解決するための手段】との見出しが付されているが,単に,出願当初の請求項1及び請求項14に係る発明と同様な事項が記載されているにすぎず,記載された手段では,本願発明の課題であるインクカートリッジ位置検出過程におけるイメージング装置の誤報率を効果的 に減らすことはできない。
そこで,本願発明の実施例を参酌すると,本願明細書の【0016】及び【0017】の記載によると,本願発明の課題を解決する手段には, 「制御ユニット」により, 「インタフェースユニットが発光指令を受信したとき」, 「インクカートリッジICチップが実行可能な状態」にあれば, 「発光ユニットを発光させる」ようにすることが含まれるということができる。
2 本願発明1は,「インクカートリッジICチップ」が有する「制御ユニット」は,「インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御する」のに用いられることが規定されており, 「インクカートリッジICチップの状態」が「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」を含むことについて規定されているが, 「制御ユニット」がインクカートリッジICチップの状態である「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」における, 「光制御指令」を実行するかどうかの応じ方(「実行可能な状態」においては「光制御指令」を実行するのか否か,及び,「実行不可能な状態」においては「光制御指令」を実行しないのか否か)は特定されていない。
また,本願発明1の「光制御指令」は, 「発光指令」と「消光指令」を含んでいるところ, 「制御ユニット」がインクカートリッジICチップの状態である「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」に応じて,「光制御指令」を実行する対象(「発光指令」なのか,それとも「消光指令」なのか,あるいはその両方であるのか)が特定されていない。
以上のとおり,「制御ユニット」がインクカートリッジICチップの状態である「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」における, 「光制御指令」を実行するかどうかの応じ方,及び, 「制御ユニット」がインクカートリッジICチップの状態である「実行可能状態」と「実行不可能な状態」に応じて, 「光制御指令」を実行する対象が特定されていないことから,インクカートリッジICチップの実行可能な状態に,必ず,発光指令を実行させるものとはいえない。
3 本願発明1について,その記載(文言)から,当業者が技術常識参酌すると,「インクカートリッジICチップの状態」が「実行可能な状態」であれば,「光制御指令」を受信した際に「光制御指令」を実行し(「光制御指令」が「発光指令」であれば発光ユニットを発光させ, 「光制御指令」が「消光指令」であれば発光ユニットを消光させる。, )「インクカートリッジICチップの状態」が「実行不可能な状態」であれば,「光制御指令」を受信した際に「光制御指令」を実行しない(「光制御指令」が「発光指令」であれば発光ユニットを発光させず, 「光制御指令」が「消光指令」であれば発光ユニットを消光させない。)という解釈の余地がある。
しかし,本願明細書の【0084】の実施例では,光制御指令として「消光指令」を受信した際には,インクカートリッジICチップの状態に応じることなく(インクカートリッジICチップの状態が「実行可能な状態」であるか「実行不可能な状態」であるかにかかわらず)「消光指令」を実行し,発光ユニットを消光させてお ,り(手順502〜503)「インクカートリッジICチップの状態」が「実行不可 ,能な状態」であれば, 「光制御指令」として「消光指令」を受信した際に「光制御指令」を実行しない,すなわち,発光ユニットを消光させないというものではない。
加えて,本願明細書の【0095】の実施例にも,インクカートリッジICチップの状態が「実行不可能な状態」にある場合において光制御指令として「消光指令」を受信した際には,発光ユニットを消光させるという制御方法が記載されており(手順1002〜1003) 本願明細書に記載された本願発明1の実施例として , 「光制御指令」がインクカートリッジICチップの状態が「実行不可能な状態」であっても,「光制御指令」が実行されるものが記載されているということができる。
そうすると,原告主張のとおり,本願明細書の【0084】の実施例において,インクカートリッジICチップの状態が「実行可能な状態」にある場合,光制御指令として「発光指令」を受信した際に発光ユニットを発光させるということが記載されているとしても,本願発明1において,インクカートリッジICチップの状態」 「が「実行可能な状態」であれば, 「光制御指令」を受信した際に「光制御指令」を実 行し,「インクカートリッジICチップの状態」が「実行不可能な状態」であれば,「光制御指令」を受信した際に「光制御指令」を実行しないという解釈が当然に成り立つものではない。
以上のとおり,本願発明1においては,「インクカートリッジICチップの状態」における「実行可能な状態」という文言から,直ちに,光制御指令を受信した際に光制御指令を実行するものであると解釈できるとはいえず,同様に, 「実行不可能な状態」という文言から,直ちに,光制御指令を受信した際に光制御指令を実行しないものであると解釈できるとはいえないから,「インクカートリッジICチップの状態」における「実行可能な状態」又は「実行不可能な状態」と,光制御指令を実行すること又は光制御指令を実行しないこととの対応関係が,本願発明1において特定されているということはできない。
4 したがって,本願発明1には,発明の詳細な説明の記載から把握される課題を解決する手段が反映されておらず,その結果,特許請求の範囲の記載により,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものとはいえないから,特許法36条6項1号の要件を満たさない。
当裁判所の判断
1 本願発明について 本願明細書(甲2,4,10)には,以下の記載がある。
ア 技術分野【0001】 本発明は,インクカートリッジICチップの制御方法,特にインクジェットプリンター分野向けのインクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジに関するものである。
イ 背景技術【0002】 インクジェットイメージング装置はオフィス等で幅広く活用されており,その種 類も多様化を見せている。図1に示すものはインクジェットプリンターの内部構造で,インクカートリッジ1は取付部200の上に装着され,ロックフック105によって取り付け部200に固定されている。インクカートリッジケース103は包む形でタンク101を形成し,その内部にあるインクはインクカートリッジ底部にあるインク吐出口102を通じて,取付部にあるインク吸入口202に流れ,その後プリントヘッド203に送られる。プリントヘッドは紙媒体に向かってインクを噴出して文字や画像を形成する。プリンターのインクカートリッジは通常,移動可能なキャリッジの上に設置される。インクカートリッジ1の前側面と底側面が接する場所に取付部の接触部220と電気的に接続するインクカートリッジICチップ100が傾斜状に設置されている。インクカートリッジICチップ100が前側面と底側面が接する場所に設置されているため,インクカートリッジICチップ発光部110から発射された光はインクカートリッジの取付取っ手106及び取付部の部品に遮られ,使用者の目2や前側面の前,かつ上側面寄りに設置されたプリンター上の光受信部になかなか感知されにくい(不図示)。これを解決すべく,当該前側面に,インクカートリッジICチップ100の発光部110から発射された光をインクカートリッジの上側面まで導いて使用者が見えるよう,そして光受信部が感知できるようにするためのビームガイド104を設置した。図2aと図2bは,当該インクカートリッジICチップ100の外観構造を示したもので,インクカートリッジICチップ100はさらにプリンターと電気的に接続する複数の電気接点120と集積回路130を含み,集積回路130の中には通常は制御ユニットと記憶ユニットが設置されている。
【0003】 このようなインクジェットプリンターは複数のインクカートリッジを装着したり,色の異なるインクカートリッジを装着したりして,長時間の使用に適している。各インクカートリッジを正しく装着できるよう,インクカートリッジ位置検出技術を紹介する。
【0004】 インクカートリッジ位置検出機能は,光線の送受信によって実現される。従来の技術では,通常インクカートリッジ上に光源を,イメージング装置本体内部に受光部をそれぞれ設置している。いずれかのインクカートリッジの位置を検出すると,当該インクカートリッジが受光部と向かい合う位置まで移動し,インクカートリッジの光源が発光し,受光部がその光を受信して発光量を計測・記録する。次に,隣接するインクカートリッジを発光させて,受光部がその光を受信してその発光量を計測・記録する。受光部と検出待ちインクカートリッジが向かい合っているため, 検出待ちインクカートリッジから届く発光量が隣接するインクカートリッジの発光量よりも多く,しかも検出待ちインクカートリッジの発光量はあらかじめ設定した制限値よりも大きい。このような仕組みをもって,イメージング装置本体は,当該インクカートリッジが正しい位置に装着されたことを識別できる。その他のインクカートリッジの検出方法も同じである。
ウ 発明が解決しようとする課題【0005】 ところが,上記のインクカートリッジ位置検出方法にもある程度の欠陥がある。
実際の製造過程において多少の製造上の誤差が避けられず,即ち各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,隣接するインクカートリッジの発光量が検出待ちインクカートリッジの発光量より多いかもしくは同じになる可能性がある。これによりインクカートリッジが正しい位置に装着されていないと識別され,イメージング装置の誤報率増加の原因となる。
【0006】 本発明の目的は,インクカートリッジ位置の検出過程におけるイメージング装置の誤報率を減らすための,インクカートリッジICチップの制御方法,インクカートリッジICチップ及びインクカートリッジを提供することにある。
エ 課題を解決するための手段【0007】 本発明の一つの態様は,インタフェースユニットと制御ユニットで構成されるインクカートリッジICチップを提供することである。
【0008】 前記インタフェースユニットはイメージング装置に電気的に接続されており,イメージング装置からの光制御指令の受信に用いられる。前記光制御指令は発光指令と消光指令を含み,前記発光指令はインクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる。
【0009】 前記制御ユニットは前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御し,前記光制御指令をもとにインクカートリッジICチップの状態を更新するのに用いられる。
オ 発明の効果【0014】 本発明の上記の実施例で説明した解決手段では,インクカートリッジICチップの制御ユニットは,前記インタフェースユニットで光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御し,前記光制御指令をもとにインクカートリッジICチップの状態を更新できるため,インクカートリッジ位置検出過程におけるイメージング装置の誤報率を効果的に減らすことができる。
カ 発明を実施するための形態【0016】 本発明に係る実施例は,インクカートリッジ位置検出機能を搭載したイメージング装置に応用できる。具体的には,その中のインクカートリッジICチップは少なくともインタフェースユニットと制御ユニットを含み,このうちインタフェースユニットはイメージング装置に電気的に接続され,イメージング装置から送られる光制御指令の受信に用いられる。前記光制御指令は発光指令を含み,発光指令は,インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる。制御ユニットは前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御し,前記光制御指令をもとにインクカートリッジICチップの状態を更新するのに用いられる。
【0017】 具体的には,上記のインクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態を含み,前記制御ユニットは前記インタフェースユニットが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,前記発光ユニットを発光させるのに用いられる。
【0018】 インクジェットプリンターを例にすると,その代表的な位置検出方法は次のとおりである。
【0019】 インクジェットプリンターの正常な稼働を確保し,インクカートリッジが正しい位置に装着されなかったことによる印刷のずれを防ぐために,通常はインクカートリッジをプリンターに装着した後にインクカートリッジがインクジェットプリンターの所定の位置に正しく装着されたかどうかを検出する必要がある。図7a及び7bは,本発明に係る実施例におけるインクカートリッジ位置検出の原理を示す説明図である。図7aに示すように,仮にインクジェットプリンターに4つのインクカートリッジが設置されているとして,これらをはっきりと区別できるよう,色でインクカートリッジをマークする。即ちブラックインクカートリッジBK,イエローインクカートリッジY,シアンインクカートリッジCとマゼンダインクカートリッジMと名づける。各インクカートリッジをそれぞれ所定のインクカートリッジ装着部に嵌めこむ。なお,個々の正しい装着位置については図7aに示す位置A,位置B,位置Cと位置Dとする。インクジェットプリンター上に移動不能な受光部が設置されており,キャリッジを移動させることでインクカートリッジの位置を変え,ひいてはインクカートリッジ上の発光ユニットとプリンター上の受光部の間の相対的な位置を変えることができる。
【0020】 位置検出は,主に現在の検出待ちインクカートリッジの正対位置の検出と隣接するインクカートリッジの隣接光の検出に分かれており,イメージング装置にある全てのインクカートリッジを検出待ちインクカートリッジとして逐一検出する必要がある。このうち,正対位置検出とは,プリンターで受光部と相対的な検出待ちインクカートリッジの発光ユニットを発光させた後,受光部の受信した光の量が事前に 設定した数値を超えたかどうかを検出する過程をいう。これに対し隣接光検出とは,上記の検出待ちインクカートリッジを受光部と相対的な位置に保持し,プリンターで上記の検出待ちインクカートリッジと隣接する任意のインクカートリッジの発光ユニットを発光させた後,受光部がこのときに受信した光の量が上記の正対位置検出で受信した光の量より少ないかどうかを検出する過程をいう。図7aに示すように,検出待ちインクカートリッジYにあっては,インクカートリッジYを移動させて受光部と正対位置になるようにした後,検出待ちインクカートリッジYの発光ユニットを発光させ,受光部がこの光線を受信して第1光量S1を獲得し,前記第1光量が事前に設定した制限値を上回っているかどうかを判断する。上回った場合には,当該検出待ちインクカートリッジの正対位置検出が正しく行われたことを意味する。図7bに示すように,インクカートリッジ位置をそのままにして,検出待ちインクカートリッジYの隣接するインクカートリッジBKの発光ユニットを発光させる。受光部が光線を受信して第2光量S2を獲得し,これをもとに第1光量が第2光量より多いかどうかを判断する。多い場合,当該検出待ちインクカートリッジYの隣接検出が正しく行われたことを意味する。少ない場合,正対位置検出又は隣接検出にエラーが生じたことを意味する。上記の二つの検出に共に合格した場合のみ,当該インクカートリッジの位置が正しいと認められる。なお,上記の説明では,検出待ちインクカートリッジとは,正対位置検出を受けようとするインクカートリッジ,隣接インクカートリッジとは,上記の検出待ちインクカートリッジと隣接する認知〔判決注・「任意」の誤記と認める。〕のインクカートリッジであると理解されたい。
【0021】 本発明に係る実施例の提供する第1種のインクカートリッジICチップの構造については図3に示す通りである。これにはインタフェースユニット320,制御ユニット330,第1記憶ユニット340,発光標識ユニット350及び発光ユニット310が含まれており,このうち第1記憶ユニット340はインクカートリッジ 識別情報の記録に用いられる。発光標識ユニット350には発光標識部が設置されており,前記発光標識部は前記インクカートリッジICチップの状態が実行可能な状態なのか実行不可能なのかを識別するのに用いられる。前記制御ユニット330は,前記発光標識部が実行可能な状態にあるときに,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるときや,前記発光標識部が実行不可能な状態にあるときに,前記発光指令を実行させないときに用いられる。
【0022】 このうち,インタフェースユニットはイメージング装置に電気的に接続されており,イメージング装置からの光制御指令と光制御指令の受信に用いられる。前記光制御指令は発光指令と消光指令を含む。上記の光制御指令は少なくともインクカートリッジ識別情報と制御情報を含み,インクカートリッジ識別情報は特定タイプのインクカートリッジ,制御情報は発光ユニットを発光又は消光させるのに用いられる。・・・ 【0023】 第1記憶ユニットにはインクカートリッジ識別情報,メーカー,生産期日,インク消費量,インク残量等の,イメージングボックスに関する情報が記録されている。
このうちインクカートリッジ識別情報は,インクカラー情報或いは記憶ユニットのパーツアドレス,もしくはインクカートリッジタイプの区別に役立つその他の情報であっても構わない。・・・【0024】 発光標識部を持つ発光標識ユニット。発光標識部は,制御ユニットが発光ユニットを発光させる操作を実行するかどうかを指示するのに用いられる。当該発光標識ユニットは単独に設置しても,制御ユニットの中に設置しても,或いは記憶ユニットの中に設置しても構わない。デフォルトでは,発光標識部は制御ユニットが発光ユニットの発光を実行できる指示を出している。事前に設定したトリガー条件が満たされると,発光標識部は実行不可能な状態に変わり,この時,制御ユニットに発光ユニットの発光を実行しない指示(即ち発光ユニットを発光させない指示)を出すことになり,発光ユニットを消光の状態に保持することを意味する。
【0025】 制御ユニットは,インタフェースユニットの受信した光制御指令を処理し,光制御指令の制御情報と発光標識ユニットの状態に応じて,発光ユニットの発光又は消光を制御するのに用いられる。
【0026】 具体的には,インタフェースユニットが発光指令を受信すると,制御ユニットは,発光標識部が実行不可能な状態に変わったかどうかを判断する。変わっていない場合は,発光ユニットを発光させる。実行不可能な状態に変わった場合には,発光ユニットの発光を実行させないようにするか,インクカートリッジICチップをロックし,もしくは当該指令を受信しないようにする。さらに,異なる制御ユニットの反応速度の違いを考慮し,制御ユニットは,発光標識部が実行不可能な状態に変わ っていないと判断した場合は,そのまま発光ユニットを発光させるか,もしくはある程度の時間周期を遅らせて発光ユニットを発光させる。
【0027】 また,制御ユニットは,事前に設定したトリガー条件をもとに,発光標識部の状態を変えることができる。具体的には,インタフェースユニットは,相次ぎ受信した発光指令又は消光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と第1記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性があると判断したときに,発光標識部を実行不可能な状態に変える。
【0028】 本発明に係る実施例では,「受信した発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報と記憶ユニットに記録されたインクカートリッジ識別情報との間に関連性がある」とは,二つのインクカートリッジ識別情報がマッチングし,又は同じで,もしくは特定の関係があることをいう。例えば同じ数値をそれぞれ16進法と8進法で記録する関係などである。
【0035】 本発明に係る実施例では,さらに第2種のインクカートリッジICチップを提供する。第2種のインクカートリッジICチップの構造は第1種のインクカートリッジICチップとまったく同じで,インタフェースユニット,制御ユニット,第1記憶ユニット,発光標識ユニットと発光ユニットに接続された接続部品で構成される。
各ユニットの機能はほとんど同じであるため,ここでは説明を省略する。主な違いは発光標識ユニットにある発光標識部を変える事前に設定したトリガー条件である。
【0044】 本発明に係る実施例では,さらに第3種のインクカートリッジICチップを提供する。本実施例において,インクカートリッジICチップの状態はインクカートリッジICチップの指令受信状態で,第3種のインクカートリッジICチップの構造は一つ目のインクカートリッジICチップとほぼ同じように,インタフェースユニ ット,制御ユニットおよび発光ユニットに接続された接続部品を含む。各ユニットの機能はほとんど同じであるため,ここでは説明を省略する。主な違いは,本実施例におけるインクカートリッジICチップはさらに指令受信統計ユニットを含む。
当該ユニットは,インクカートリッジICチップの光制御指令を受信するときの指令受信状態の統計をとるのに用いられる。これに対して制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,前記指令受信状態に応じて,当該光制御指令を実行するかどうかを制御し,そして前記光制御指令をもとに,前記指令受信統計ユニットに記録された指令受信状態を更新するのに用いられる。
【0051】 本発明に係る実施例では,さらに第4種のインクカートリッジICチップを提供する。第4種のインクカートリッジICチップの構造は第1種のインクカートリッジICチップとほぼ同じように,インタフェースユニット,制御ユニットおよび発光ユニットに接続された接続部品を含む。各ユニットの機能はほとんど同じであるため,ここでは説明を省略する。その主な違いは,本実施例における指令受信統計ユニットは具体的には発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報とそれぞれ対応する標識情報を記録するのに用いられる。具体的には,ICチップの中に参照表を記録して,標識情報と異なる発光指令又は光制御指令に含まれるインクカートリッジ識別情報との間の関係を確認することで,ICチップがプリンターから送られた光制御指令を受信したときに,当該参照表を照合して所定の標識情報を見つけてマークしたかどか〔判決注・「どうか」の誤記と認める。〕を確認することもできる。
【0056】 本発明に係る実施例ではさらに第5種のインクカートリッジICチップを提供する。当該インクカートリッジICチップは上記のインタフェースユニットと制御ユニットのほかに,さらに指令ロジック記録ユニットと発光状態ユニットを含む。当該発光状態ユニットに発光状態部が設置されており,前記発光状態部は,前記イン クカートリッジICチップの状態を実行可能な状態又は実行不可能な状態にさせる指示を出すのに用いられる。前記制御ユニットは,前記発光状態部が実行可能な状態にあるときに,前記発光指令をもとに発光ユニットを発光させるか,前記発光状態部が実行不可能な状態にあるときに,前記発光指令を実行しない操作,および指令ロジック記録ユニットに記録された受信ロジックをもとに前記発光状態部の状態を変えるのに用いられる。
【0084】 図5は,本発明に係る実施例におけるインクカートリッジICチップの制御方法の流れを示す説明図その二である。図5に示すように,次のような手順が含まれている:手順501,光制御指令を受信する。手順502,指令のタイプをマークし,即ち当該は発光指令なのか,それとも消光指令なのかを判断する。発光指令の場合,手順504へ進み,違う場合は手順503へと進む。手順503,発光ユニットを消光させる;手順504,発光標識部の状態を判断して発光ユニットを発光させるかどうかを決める。発光標識部が実行不可能な状態にある場合,発光ユニットを発光させない。発光標識部が実行可能な状態にある場合,発光ユニットを発光させる。
手順505,インクカートリッジ識別情報に関連性があるかどうかを判断し,ある場合は手順506へ進み,なければ手順507へと進む。手順506,発光標識部を実行不可能な状態に変える。手順507,発光標識部を実行可能な状態に保持する。
- 30 - 【0085】 第2種のインクカートリッジICチップの発光ユニットを発光・消光させる流れは第1種のインクカートリッジICチップと似ており,詳細は図5の対応する部分を参照されたい。図6に示すものは図5と異なる部分で,即ち第2種のインクカートリッジICチップがいかにして発光標識部を変えるかの部分である。・・・【0086】 本発明の上記実施例では,イメージング装置に複数の本発明の上記実施例で説明された第1種又は第2種のインクカートリッジを装着したときにインクカートリッジ位置検出を行うと,次のようなことを確認することができる。
【0087】 最初はMインクカートリッジが受光部と向かい合い,イメージング装置がMインクカートリッジを発光させる光制御指令を送信し,すべてのインクカートリッジが発光し,インクカートリッジの前方(又は光ガイド部品によってインクカートリッジの前方まで導かれる)に向かって発光する。図8aに示すように,隣接光検出よりも長い時間を経て,イメージング装置は消光指令を発信し,すべてインクカートリッジが同時に消光される。このときは正対位置検出であるため,受光部に届く光の量は条件を満たしており,インクカートリッジが正しく取り付けられたことを意味する。これまでの実施例に関する記述で理解できるように,正対検出のとき,Mインクカートリッジの発光標識部は既に実行不可能な状態に変えられている。
【0088】 次に,キャリッジは複数のインクカートリッジを載せてCインクカートリッジが受光部と向かい合う位置まで移動する。このとき,イメージング装置はCインクカートリッジを発光させる光制御指令を送信する。このとき,Mインクカートリッジの発光標識部が既に実行不可能な状態に変わったため,図8bに示すように,Mインクカートリッジを除き,すべてのインクカートリッジが発光される。隣接光検出よりも長い時間を経て,イメージング装置は消光指令を発信し,発光されたインクカートリッジが同時に消光される。このときは正対位置検出であるため,受光部に届く光の量は条件を満たしており,インクカートリッジが正しく取り付けられたことを意味する。これまでの実施例に関する記述で理解できるように,正対検出のとき,Cインクカートリッジの発光標識部は既に実行不可能な状態に変えられている。
【0089】 次に,キャリッジはそのままにして,今度はCインクカートリッジに対して隣接インクカートリッジの隣接光検出を行い,イメージング装置がMインクカートリッジを発光させる光制御指令を送信する。このとき,MインクカートリッジとCインクカートリッジの発光標識部が既に実行不可能な状態に変わったため,図8cに示すように,MインクカートリッジとCインクカートリッジを除き,すべてのインクカートリッジが発光される。正対位置検出より短い時間を経て,イメージング装置は消光指令を発信し,発光されたインクカートリッジが同時に消光される。このとき,隣接インクカートリッジの隣接光検出であるため,受光部には光が届いておらず,又はわずかな光しか届いていなく,隣接光検出の要件を満たしているため,イメージング装置はインクカートリッジの装着が正しく行われたと判断する。
【0090】 上記の位置検出時の発光状況からもわかるように,位置検出が進むにつれ,同時に発光されるインクカートリッジの数も徐々に減っていき,最後には一つのインクカートリッジしか発光されなくなる。
【0091】 本発明の上記実施例の提供するインクカートリッジ,インクカートリッジICチップ及びその制御方法を活用することで,隣接光検出のときの一部の隣接インクカートリッジの発光をカットし,イメージング装置の誤報率を減らし,インクカートリッジの装着過程における問題点を解消し,ユーザーの利便性を高めることができる。
【0092】 イメージング装置の種類によっては,そのインクカートリッジの数,インクカートリッジ装着方法,検出順番と検出方法等も異なるため,上記のインクカートリッジ検出に関する説明はあくまでも参考例に過ぎず,すべての実施例ではない。
【0094】 これに対して,制御方法に関しては,本発明の上記の実施例では,まず光制御指令に対する判断を実行してから,発光標識部の状態を判断し,ひいては発光,消光又は発光ユニットの従来の状態の保持を制御する。本技術分野の一般技術者には次のことを理解されたい。上記方法の流れは,本発明の技術的な効果に影響を及ぼすことなく,一部の手順の順番をある程度調整することができる。図10に示すように,発光標識部の状態を判断する手順を光制御指令の制御情報を判断する手順と入れ代っている。
【0095】 図10に示すように,次のような手順が含まれている。手順1001,イメージング装置から送られた光制御指令を受信する。手順1002,発光標識部の状態をマークし,実行不可能な状態にある場合,手順1003,なければ手順1004へと進む。手順1003,光制御指令のタイプを判断し,発光指令の場合,発光ユニットを発光させず,消光指令の場合,発光ユニットを消光させる。手順1004,光制御指令のタイプを判断し,発光指令の場合,発光ユニッ〔判決注・ 「発光ユニット」の誤記と認める。 を発光させる。
〕 消光指令の場合,発光ユニットを消光させる。
- 36 - 【0096】 本発明の当該実施例では,事前に設定したトリガー条件を満たすかどうかで,発光標識部の状態を変更又は保持する制御を行う。
【0097】 このうち,発光標識部が従来の実行可能な状態にあるときに,光制御指令に含まれる制御情報をもとに発光ユニットを発光又は消光させる。
【0098】 発光標識部が実行不可能な状態にあると判断し,消光指令を受信したときは,発光ユニットを消光させる。もちろん,既に消光状態にある場合には,その状態を保持する。これに対して発光指令を受信した場合には,発光ユニットの発光を実行しない。言い換えれば,光制御指令を受信すると,制御ユニットはまず発光標識部の状態を判断し,既に実行不可能な状態にある場合には,前記の方法で実行するほかに,さらに光制御指令の内容に関係なく,そのまま発光ユニットを消光するか,もしくは発光ユニットの消光状態を保持する。
【0099】 別の方法としては,制御ユニットは発光標識部が実行不可能な状態にあると判断したときに,インクカートリッジICチップをロックし,どんな消光指令でも受信又は処理しないようにする。この場合,発光カウントユニットを設置し,発光ユニットが発光したときにカウントを開始し,発光カウントユニットがある所定値までカウントすると,自動的に発光ユニットを消光させる。これにより,たとえ発光標識部が発光ユニットが発光するときに実行不可能な状態に変えられ,インクカートリッジICチップがロックされた時でも,発光ユニットを消光することができる。
この他にも,異なるインクカートリッジICチップの連続発光時間を違わせるために,異なるインクカートリッジICチップ上にカウント時間の異なる発光カウントユニットを設置するか,もしくは一部のインクカートリッジICチップ上にコンデンサを設置し,発光カウントユニットのカウントが所定値になると,制御ユニット から発光ユニットへの電力供給を切る手段を採ることもできる。後者の場合,コンデンサは引き続き発光ユニットに電力を供給できるため,発光ユニットの連続発光時間を延長することができる。
【0100】 発光・消光又は消光状態の保持を実行してから,事前に設定したトリガー条件を満たしたかどうかを判断し,発光標識部の状態を変えるかどうかを制御する。具体的なトリガー条件については,上記の各実施例における詳細な説明を参照されたい。
【0101】 手順1005,さらにインクカートリッジ識別情報に関連性があるかどうかを判断する必要があり,関連性がある場合には,手順1006,なければ手順1007へと進む。手順1006,発光標識部を実行不可能な状態に変える。手順1007,発光標識部を実行可能な状態に保つ。
【0102】 本発明の上記各実施例では,発光指令を受信したときに,インクカートリッジICチップは発光を実行する前に,まず条件が満たされたどうか〔判決注・ 「満たされたかどうか」の誤記と認める。〕を判断する必要がある。また,次回も発光する必要があるかどうかを判断する。即ち二つの条件を判断する必要がある。これが別の実施例だと,インクカートリッジICチップは発光指令を受信すると,インクカートリッジICチップは条件を判断する必要もなく発光することができる。この場合,次回に発光する必要があるかどうかを判断するのみで,即ち一つの条件だけ判断する。具体的には,本発明に係る実施例では,インタフェースユニットと制御ユニットを含むインクカートリッジICチップを提供する。上記のインタフェースユニットはイメージング装置に電気的に接続されており,イメージング装置から送られる光制御指令を受信するのに用いられる。前記光制御指令は発光指令を含み,前記発光指令はインクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる。上記の制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信し たときに,当該光制御指令を実行した上で,前記光制御指令をもとに,インクカートリッジICチップの状態を更新するのに用いられる。
【0103】 このうち,インクカートリッジICチップの状態は,ロック状態とアンロック状態を含み,インクカートリッジICチップがロック状態にある場合には,前記制御ユニットは前記光制御指令を受信又は実行しない。
【0121】 いうまでもなく,上記の実施例は本発明に係る技術方案を説明するためのものであり,本発明を限定するものではない。複数の実施例を参照しながら本発明を説明したが,本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲内で,本発明に係る技術方案を変形したり,また,技術特徴を部分的に均等なものに置き換えたりすることも本願発明の請求の範囲に属することは,当業者にとって理解されるものである。
2 審決取消事由(サポート要件判断の誤り)について (1) 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。
(2) 前記1によると,本願発明1の課題について,次のとおり,認められる。
ア インクジェットイメージング装置のインクカートリッジ位置検出は,光線の送受信によって実現され,従来の技術では,通常インクカートリッジ上に光源を,イメージング装置本体内部に受光部をそれぞれ設置している。
いずれかのインクカートリッジの位置を検出すると,そのインクカートリッジ(以下,「検出待ちインクカートリッジ」という。)が受光部と向かい合う位置まで移動 し,インクカートリッジの光源が発光し,受光部がその光を受信して発光量L1を計測・記録する。
次に,隣接するインクカートリッジを発光させて,受光部がその光を受信してその発光量L2を計測・記録する。
受光部と検出待ちインクカートリッジが向かい合っているため,検出待ちインクカートリッジから届く発光量L1が隣接するインクカートリッジの発光量L2よりも多く(以下, 「L1>L2」 この の成否を検出する過程を「隣接光検出」という。 , )しかも検出待ちインクカートリッジの発光量L1はあらかじめ設定した制限値L0よりも大きい(以下,この「L1>L0」の成否を検出する過程を「正対位置検出」という。。
) このような仕組みをもって,イメージング装置本体は,そのインクカートリッジが正しい位置に装着されたことを識別する。
(以上につき,【0004】) イ ところが,製造上の誤差により,各インクカートリッジ上の光源の発光量がきっちり同じであると保証できないため,隣接するインクカートリッジの発光量L2が検出待ちインクカートリッジの発光量L1より多いか又は同じになる(隣接光検出の「L1>L2」を満たさない)可能性がある。従来技術には,検出待ちインクカートリッジが正しい位置に装着されているにもかかわらず,このような理由により,インクカートリッジが正しい位置に装着されていないと識別され,イメージング装置の誤報率増加の原因となるという課題があった。 【0005】 ( ) ウ 本願発明1は,インクカートリッジICチップに関し,前記イのようなインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことを課題とする【0 (001】【0006】。
, ) (3) 前記1によると, 「課題を解決するための手段」欄のインクカートリッジICチップに係る記載(【0007】〜【0009】)には,本願発明1に含まれるインクカートリッジICチップの構成が記載されているが,このようなインクカート リッジICチップの構成とすることにより,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができる理由については何らの記載も示唆もなく,当業者が本願出願日当時の技術常識に照らしても,上記記載のみによって,本願発明1の課題を解決できると認識できるものとは認められない。
そこで,実施例の記載を見ると,本願明細書には,具体的な実施例として,少なくともインタフェースユニットと制御ユニットを含み,インタフェースユニットは,イメージング装置に電気的に接続され,イメージング装置から送られる光制御指令の受信に用いられ,前記光制御指令は,インクカートリッジICチップ上の発光ユニットを発光させるのに用いられる発光指令を含み(本願発明1とは異なり,消光指令を含むか否かは明らかでない。,制御ユニットは,前記インタフェースユニッ )トが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じてその光制御指令を実行するかどうかを制御するのに用いられるインクカートリッジICチップにおいて,前記インクカートリッジICチップの状態は,実行可能な状態と実行不可能な状態を含み,前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが発光指令を受信したときに,前記インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合,前記発光ユニットを発光させるのに用いられる実施例が記載されている(【0016】【0017】。この実施例は,発光指令を受信したときに,イン , )クカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,その発光指令を実行するものであるが,これを含む上記実施例のように構成することにより,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができる理由については何らの記載も示唆もなく,当業者が本願出願日当時の技術常識に照らしても,上記実施例の記載のみによって,本願発明1の課題を解決できると認識できるものとは認められない。上記実施例記載のインクカートリッジICチップを用いても,前記(2)ア・イの従来技術と同じ機会に同じインクカートリッジのみが発光するように,発光指令が実行可能な状態において受信される構成では,本願発明1の課題が解決できないことは明らかである。
また,本願明細書には,本願発明1に含まれる実施例として,第1種のインクカートリッジICチップ(【0021】〜【0033】,第2種のインクカートリッジ )ICチップ(【0035】〜【0042】 ,第5種のインクカートリッジICチップ )(【0056】〜【0057】)が記載されており,発光指令を受信したときに,インクカートリッジICチップが実行可能な状態にある場合には,その発光指令を実行し,実行不可能な状態にある場合には,その発光指令を実行しないものであるが(【0021】【0026】【0035】【0056】,これを含む上記各実施例の , , , )ように構成することにより,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができる理由については何らの記載も示唆もなく,当業者が本願出願日当時の技術常識に照らしても,上記各実施例の記載のみによって,本願発明1の課題を解決できると認識できるものとは認められない。なお,第3種のインクカートリッジICチップ(【0044】〜【0050】)及び第4種のインクカートリッジICチップ(【0051】〜【0055】)は,インクカートリッジICチップの状態はインクカートリッジICチップの指令受信状態であり,指令受信統計ユニットに記録された指令受信状態に応じて,インタフェースユニットが受信した光制御指令を実行するかどうかを制御するものであるから,本願発明7及びこれを更に限定した本願発明8〜13に係る実施例であって,インクカートリッジICチップの状態が実行可能な状態と実行不可能な状態とを含むものではない点において,本願発明1に含まれる実施例とは認められない。
さらに,本願明細書には,正対位置検出とそれに引き続く隣接光検出とからなるインクカートリッジ位置検出について,初期状態で発光指令を実行できる状態とされているインクカートリッジICチップにおいて,@インクカートリッジの正対位置検出のために,そのインクカートリッジを発光させる発光指令を受信した場合には,発光指令を実行できる状態に応じて,その発光指令を実行して,そのインクカートリッジを発光させる(発光指令を実行できる状態のその余のインクカートリッジも発光させる。 とともに, ) そのインクカートリッジを発光させる発光指令を実行 不可能な状態とし,A次いで受信する消光指令を実行してそのインクカートリッジを消光し(前記@で発光させたその余のインクカートリッジも消光させる。,B以 )後,隣接光検出等のために,発光指令を受信した場合には,実行不可能な状態に応じて,その発光指令を実行しないように制御する実施例が記載されている 【002 (0】【0024】【0084】〜【0091】。上記実施例の記載によると,正対 , , )位置検出時に比し,隣接光検出時に一部の隣接インクカートリッジの発光をカットすることにより,正対位置検出時に受光部に届く光の量が条件を満たすようにしながら,隣接光検出時には受光部に光が届かない又はわずかな光しか届かないようにして,イメージング装置の誤報率を減らすことができ,本願発明1の課題を解決できると認識することができる。
そして,本願明細書には, 「イメージング装置の種類によっては,そのインクカートリッジの数,インクカートリッジ装着方法,検出順番と検出方法等も異なるため,上記のインクカートリッジ検出に関する説明はあくまでも参考例に過ぎ」ない旨記載されているが 【0092】, ( ) 検出順番や検出方法等が異なるイメージング装置について,適切な制御手順を構築する方法についての記載や示唆はないし,上記実施例(【0020】【0024】【0084】〜【0091】 , , )以外に,前記(2)ウのインクカートリッジ位置の検出過程における誤報率を減らすことができ,本願発明1の課題を解決できると認識することができる実施例は見当たらない。
そうすると,本願明細書に接した当業者は,本願発明1のうち,上記実施例(【0020】【0024】【0084】〜【0091】 , , )に該当するものについては,本願発明1の課題を解決できると認識するが,本願発明1のうち,その余の構成のものについては,本願発明1の課題を解決できると認識することはできないと認められる。
(4) 本願発明1は,前記第2の2(1)のとおりであり, 「前記制御ユニットは,前記インタフェースユニットが光制御指令を受信したときに,インクカートリッジICチップの状態に応じて当該光制御指令を実行するかどうかを制御する」について, 「インクカートリッジICチップの状態」である「実行可能な状態」と「実行不可能な状態」のそれぞれに応じて, 「光制御指令を実行するかどうか」をどのように制御するのかが特定されておらず,また, 「インクカートリッジICチップの状態」の設定や変更についても特定されていないから,上記実施例【0020】 0024】 ( 【 , ,【0084】〜【0091】)のものに限定されていないことは明らかである。
そうすると,本願発明1は,発明の詳細な説明の記載及び本願出願日当時の技術常識により発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであり,本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合するものとは認められない。
(5) 前記1によると,本願明細書の【0084】【図5】においては,発光指令 ,を受信したときは,発光標識部の状態に応じて,発光標識部が実行可能な状態にある場合には,発光指令を実行することにより発光ユニットを発光させ,発光標識部が実行不可能な状態にある場合には,発光指令を実行しないことにより発光ユニットを発光させない一方,消光指令を受信したときは,発光標識部の状態にかかわらず,消光指令を実行することにより発光ユニットを消光させることが記載されている。また,本願発明1に含まれる【0095】【図10】においても,判断の手順 ,こそ違うものの,同様に,発光指令を受信したときは,発光標識部の状態に応じて,発光標識部が実行可能な状態にある場合には,発光指令を実行することにより発光ユニットを発光させ,発光標識部が実行不可能な状態にある場合には,発光指令を実行しないことにより発光ユニットを発光させない一方,消光指令を受信したときは,発光標識部の状態にかかわらず,消光指令を実行することにより発光ユニットを消光させることが記載されている。このような実施例の存在を参酌すると,本願発明1に係る特許請求の範囲請求項1の記載から,インクカートリッジICチップの状態が実行可能な状態にある場合には,光制御指令(発光指令と消光指令を含む)を実行し,インクカートリッジICチップの状態が実行不可能な状態にある場合には,光制御指令(発光指令と消光指令を含む)を実行しないものと一義的に解釈す ることはできず,この点からしても,インクカートリッジICチップの状態である実行可能な状態と実行不可能な状態のそれぞれに応じて,光制御指令を実行するかどうかをどのように制御するのかは特定されていないというべきである。この点について,原告は,本願明細書の【0099】の実施例には,インクカートリッジICチップの状態が実行不可能な状態であれば,消光指令を実行しないことが記載されているなどと主張するが,前記1のとおり,上記実施例は, 「発光カウントユニットを設置し,発光ユニットが発光したときにカウントを開始し,発光カウントユニットがある所定値までカウントすると,自動的に発光ユニットを消光させる」ものであり,発光指令,消光指令の実行の有無の制御という本願発明1の発明特定事項とは異なる方法を付加して発光ユニットの消光を達成するものである上,上記実施例を考慮したとしても,本願発明1に係る特許請求の範囲請求項1の記載が多義的であることが示されるにすぎず,上記判断を左右するものではない。
そうすると,本願発明1は,発明の詳細な説明の記載及び本願出願日当時の技術常識により発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであり,本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号(サポート要件)に適合するものとは認められない。
(6) 原告は,本願発明1の制御ユニットは,インクカートリッジICチップが実行可能状態にある際に,発光指令を含む光制御指令を受け付けた場合,これに応じて発光ユニットを発光させる制御を実行し,実行不可能状態にある際に,発光指令を含む光制御指令を受け付けても,発光ユニットの発光を実行しないから,本願明細書の【図8a】〜【図8c】【0087】〜【0090】に記載した検出を行う ,ことができ,ひいては「誤報率を減らす」という課題を解決することができることを当業者であれば理解することができるなどと主張する。
しかし,本願発明1の特許請求の範囲の記載が本願明細書の【図8a】〜【図8c】【0087】〜【0090】の実施例のものに限定されていないことは,前記 ,(4)認定のとおりであるから,本願発明1は,サポート要件に適合しないものである。
したがって,原告の主張を採用することはできない。
3 結論 以上によると,本願が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとの審決の判断は正当であり,審決取消事由は理由がない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 森岡礼子
裁判官 古庄研
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