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関連審決 無効2017-800128
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事件 平成 30年 (行ケ) 10104号 審決取消請求事件

原告シーピー化成株式会社
同訴訟代理人弁護 士塩月秀平
同 森ア博之
同 長坂省
同 上野さやか
同 梨義幸
同訴訟代理人弁理 士深澤拓司
同 栗原弘
被告株式会社エフピコ
同訴訟代理人弁護 士三村量一
同 東崎賢治
同 近藤正篤
同 面山結
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2019/01/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求の趣旨
特許庁が無効2017-800128号事件について平成30年6月20日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,記載要件(特許法36条4項1号,同条6項1号,2号)及び補正要件(特許法17条の2第3項)の適否である。
1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,発明の名称を「容器および容器製造方法」とする発明について,平成20年3月3日に特許出願をし(特願2008-52392号。甲3),手続補正の上,平成25年7月5日,発明の名称を「容器」とする発明について,設定登録(特許第5305693号)を受けた(請求項の数3。甲14。以下「本件特許」という。。
) (2) 原告は,平成29年9月25日,本件特許を無効にすることを求めて審判を請求した(無効2017-800128号。甲15。以下「本件審判」という。。
) 特許庁は,平成30年6月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月28日,原告に送達された。
(3) 原告は,平成30年7月27日,知的財産高等裁判所に本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
2 本件発明の要旨 本件特許の請求項1〜3に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(甲14。以下,これらの発明をそれぞれ「本件発明1〜3」といい,本件発明1〜3を併せて「本件発明」という。本件特許に係る明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。。
)【請求項1】 熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられ,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層 シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成された容器本体部を有する容器であって, 前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高さが0.1〜1mmとなり隣り合う凸形状の間隔が0.5〜5mmとなるように凹凸形状が形成され,且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】 前記突出部の端縁部に係合される突起部が設けられ,該突起部を前記端縁部に係合させて前記容器本体部に外嵌される蓋体が備えられている蓋付容器である請求項1記載の容器。
【請求項3】 断面形状が波形,鋸歯形,半円形のいずれかの形状を有する線状の突起あるいは溝が,互いに交差された状態,または,交差されていない状態で前記突出部の端縁部に沿って列設されて前記凹凸形状が形成されている請求項1または2記載の容器。
3 審決の理由の要点 本件審決は,次のとおり,本件特許を無効とすることはできないと判断した。
(1) 原告(請求人)の主張する「本願発明の突出部の端縁部は他の部分に比して圧縮薄肉化されることによって第一の強度向上が図られており,更にその上面に凹凸形状が形成されることによって第二の強度向上が図られる」という作用効果(以下「特定作用効果」という。 に係る無効理由1-1 ) (特許法36条6項1号違反),同1-2(同条4項1号違反),同1-3(同条6項2号違反),同1-4(同法17条の2第3項違反)について ア 無効理由1-1(特許法36条6項1号違反)について (ア) 本件明細書(甲14)の記載からみて,本件発明1は,熱可塑性樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを用いて成形された容器の突出部の端縁での指等の裂傷を防止するために,「突出部の上下面に凹凸形状が形成された」従来技術(【0002】〜【0007】)において「蓋体との強固な係合状態の形成が困難であった」こと(【0007】)に鑑み, 「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器を得る」ことを解決すべき課題(【0009】)としたものである。
そして,本件発明1は,端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方でその下面は平坦とする形状を採用することを含む発明特定事項を備えることにより【0010】, ( )「断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる」【0012】 ( )という効果を奏し,上記課題を解決したものである。
そうすると,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる(【0001】〜【0012】【0017】【0019】【0020】 。また, , , , )本件発明2は,本件明細書の【0023】【0028】及び【0030】に記載さ ,れ,本件発明3は,本件明細書の【0044】に記載されている。
したがって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり,本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
(イ) 原告(請求人)の主張する「特定作用効果」は,本件明細書に記載されていないが,本件発明1において,発明特定事項の一部により「特定作用効果」が奏されるか否かということは,本件発明1が解決すべき課題を解決したこととは無関係である。
また,本件特許に係る拒絶査定に対する不服審判請求書(甲1)には, 「特定作用 効果」を奏することが,本件発明1の解決すべき課題の解決に必要不可欠なことであり,発明特定事項と解すべきものである旨が記載されているわけではない。
したがって, 「特定作用効果」を,本件発明1の発明特定事項とすべきものとする理由はない。
イ 無効理由1-2(特許法36条4項1号違反)について (ア) 本件明細書には,前記ア(ア)のような本件発明1の実施の形態について, 【0014】〜【0022】に,容器の形状,材質等に関する具体的な説明が記載され, 【0031】 【0043】 〜 には,金型を用いた製造方法も記載されている。
また,本件明細書には,本件発明2の実施の形態について, 【0023】〜【0030】に記載され,本件発明3の実施の形態について, 【0044】に記載されている。
したがって,本件明細書は,当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしている。
(イ) 上記ア(イ)と同じ。
ウ 無効理由1-3(特許法36条6項2号違反)について (ア) 本件発明についての特許請求の範囲の記載に用いられている用語や各発明特定事項の関係に不明確な点はない。
そして,本件明細書の記載を参酌すると,本件発明の発明特定事項の技術的意味についても不明確な点はない。
したがって,本件発明は,明確であるといえ,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしている。
(イ) 上記ア(イ)と同じ。
エ 無効理由1-4(特許法17条の2第3項違反)について (ア) 発明特定事項である「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱 可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており, (発明特定事項C) 」 ,「しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高さが0.1〜1mmとなり」 (発明特定事項D)「隣り合う凸形状の間隔が0.5〜5mmとなるよ ,うに凹凸形状が形成され, (発明特定事項E)は,拒絶査定不服審判請求と同時に 」された補正(甲2)により,請求項1に追加された事項である。
発明特定事項Cは,出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。甲3)に記載された事項である(【0019】。
) 発明特定事項D及びEは,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである(【0017】【0019】及び【0044】。
, ) 発明特定事項である「且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されていること」 (発明特定事項F) 当初明細書等に記載された事項である 【請求項1】 は, ( , 【0020】。
) したがって,発明特定事項C〜Fはいずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから,発明特定事項C〜Eを追加する補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
(イ) 前記ア(イ)と同じ。
(2) 原告(請求人)の主張する「凸形状の高さ」の定義に係る無効理由2-1(特許法36条4項1号違反),同2-2(同条6項2号違反),同2-3(同項1号違反),同1-4(同法17条の2第3項及び同法36条6項 1 号違反)について ア 無効理由2-1(特許法36条4項1号違反)について (ア) 前記(1)ア(ア)のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題及びその解決手段等についての技術上の意義を,当業者が理解するために必要な事項が記載されているといえる。
したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号で委任する特許法施行規則24条の2で定めるところにより,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえ,特許法36条4項1号 に規定する要件を満たしている。
(イ) 本件明細書の【0005】や【0007】の記載を踏まえると,本件明細書には,発明特定事項として「熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられ,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,(発明特定事項A)及び「該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り 」出した突出部とが形成された容器本体部を有する容器であって, 発明特定事項B) 」 (で規定される容器において,その端縁部で指等を裂傷するといった怪我が生じることや,仮に怪我が生じるとしても,発明特定事項D及びEを満たすものは怪我を防止できることが例証されていないとしても,当業者は,本件明細書の記載により,本件発明が解決すべきとした課題が存在し,その課題を如何に解決したかという課題解決の機序を理解し得たというべきである。
また,発明特定事項D及びEの数値範囲は,本件特許に係る容器に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したものと解されるから,当該数値範囲に係る例証がないからといって,課題解決の機序が不明であるとまではいえない。
イ 無効理由2-2(特許法36条6項2号違反)について (ア) 発明特定事項D及びEは,当初明細書等の【0019】の記載を根拠として,補正により追加された事項であり, 【0017】及び【0044】の記載からみて,発明特定事項の「凸形状の高さ」は, 【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」に相当する語句であり, ) 「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」を意味することが明確である。
) (イ) 発明特定事項Dは,二重の意味に解釈され得るものではない。
ウ 無効理由2-3(特許法36条6項1号違反)について (ア) 前記(1)アのとおり,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえるから,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
(イ) 発明特定事項D及びEに規定される数値範囲は,本件特許に係る容器に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したものと解するのが自然であり,本件発明の課題解決の機序が明らかである以上,例証がないことのみを理由に,本件発明は,課題を解決できないものを含むものとはいえない。
そして, 「凸形状の高さ」は,本件明細書の【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」を意味することが明確であるから,本件発明は, )発明の詳細な説明に記載したものといえる。
エ 無効理由2-4(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について (ア) 前記(1)エのとおり,発明特定事項Dを含む発明特定事項C〜Eを追加する補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また,前記(1)アのとおり,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえ,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
(イ) 本件発明における「凸形状の高さ」は,当初明細書等の【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」に相当する語句であり, )「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」を意味することが明確であるから, )本件発明は,発明の詳細な説明に記載したものといえ,また,発明特定事項Dを追加する補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3) 「下位となるように」及び「圧縮されて厚みが薄くなっており」に係る無効理由3-1(特許法36条6項2号違反)及び同3-2(同法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について ア 無効理由3-1(特許法36条6項2号違反)について (ア) 発明特定事項Cは, 「容器」という物の発明である本件発明1が, 「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位とな るように」なっているということと, 「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」ということの双方を構成要件としていることを明確に規定するものと理解される。
また,本件明細書の【0019】の記載から, 「端縁部15が圧縮され」るという方法により, 「前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となる」形状ないし状態と, 「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」という形状ないし状態との双方を具備した「容器」の発明が把握される。
このように,上記理解は,本件明細書の記載とも整合するから,発明特定事項Cを含む本件発明は明確であるといえ,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしている。
(イ) 本件明細書には,「端縁部の上面が,収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比べて下位となる」ことが, 「圧縮薄肉化を原因とし」なければならないことが,本件発明1の解決すべき課題と密接に関連している旨や,このことにより格別な作用効果を奏する旨の記載はないから,発明特定事項Cは, 「圧縮薄肉化を原因とし,端縁部の上面が,収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比べて下位となる」ものを意味すると解釈すべきものとはいえない。
イ 無効理由3-2(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について 「容器」という物の発明である本件発明1が, 「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように」なっているということと,「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」ということの双方を構成要件としていることを明確に規定する発明特定事項Cは,本件明細書の記載とも整合するものであるから,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえ,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
また,【0010】を除き記載内容が同じである当初明細書等の記載についても,同様の理由により,発明特定事項Cと整合するから,発明特定事項Cを追加する補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(「凹凸形状」に関する無効理由2-1〜4に係る判断の誤り)について (1) 無効理由2-1(特許法36条4項1号違反)について ア 本件審決は, 「本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1が『断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器を得る』ことを解決すべき課題とし,発明特定事項DないしFを含む,発明特定事項AないしG(判決注:発明特定事項Gは「を特徴とする容器」である。)を備えることにより,『断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる』という効果を奏し,上記課題を解決したものであることが記載されており,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題及びその解決手段等についての技術上の意義を,当業者が理解するために必要な事項が記載されているといえる」旨認定する。
しかし,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,その端縁部で指等を裂傷するといった怪我が生じること自体,本件明細書の発明の詳細な説明には,客観的・科学的な証明や事実が一切記載されていないし,仮に怪我が生じ得るとしても,本件発明における凹凸形状によればその怪我を防止できることも,発明の詳細な説明において,何ら客観的・科学的な証明はされていない。
イ 本件審決が引用する本件明細書の「熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差により,切断面(外側端面)に於いて硬い熱可塑性樹脂 フィルムが柔らかい熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,且つ熱可塑性樹脂フィルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷する虞があり」【0005】 ( )との記載には根拠がない。
また, 「フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成させる」 (【0007】 との記載は, ) 特許文献3(甲21)に記載されている,それ自体で形状を維持できる程度の厚さ・硬さを有する薄手シートのみで構成された容器に関するもので,本件発明が対象とする積層発泡シートの薄い樹脂フィルムとは異なる。
ウ したがって,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題及びその解決手段等についての技術上の意義を,当業者が理解するために必要な事項が記載されているとはいえないから,本件特許は,特許法施行規則24条の2に違反するものであって,特許法36条4項1号違反の無効理由がある。
(2) 無効理由2-2(特許法36条6項2号違反)について ア 本件発明における「凸形状の高さ」 (発明特定事項D)には,本件明細書の【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」がこれ )に対応する概念であると解し,「端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さ」(下図B。以下,下図を「原告主張図」という。)を意味するとする解釈と,「端縁部の上面の頂部から上面の底部までの距離」(原告主張図C)を意味するとする解釈の,二重の意味があり得るから,本件特許は明確性を欠き,特許法36条6項2号違反の無効理由がある。
イ 被告は,本件明細書の図2及び図3について,凸形状の底部から突出部の下面までの距離(E)を極めて短く記載しているために「h1」の下端が図自体から明確でないなどと主張する(甲16)が,そのこと自体,特許請求の範囲に規定されている「凸形状の高さ」は不明確であって,二重の意味を有し得ることを認めるものである。
ウ 本件審決は, 「請求人は,請求書24頁(2-6)等において,本件特許明細書の段落【0019】には,発明特定事項Dの『凸形状の高さ』の高さの定義が『波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”』と記載されているが,甲4 )に示される主張・・・は異なっており,二重に解釈され得る発明特定事項Dを含む本件発明1ないし3は明確であるとはいえない旨を主張している。」ことを前提として,『凸形状の高さ』は,本件特許明細書の段落【0019】に記載されたとお 「りに解釈されるから,請求人の『二重に解釈され得る発明特定事項Dを含む』ことを前提とした上記主張は,その前提を欠く主張であるといわざるを得ない。 と結論 」付けている(28頁)。
そして,「甲4」とは,「関連事件(平成28年(ワ)第29320号)の訴状,株式会社エフピコ,平成28年8月31日付け」 (判決注:本訴の甲4)であり, 「甲4に示される主張」とは,『凸形状の高さ』とは, 「 ・・・,すなわち,凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離(次の図(判決注:原告主張図と同じ) (・・・)でいえば,「丸C」(・・・)をいう)」である。
このように,本件審決は,甲4において凸形状の高さについて主張された解釈 「凸 (形状の高さ」=Cの高さ)はとり得ないから,「凸形状の高さ」とは,h1の高さ,すなわち,Bの高さとして明確であると判断したことは明らかである。
(3) 無効理由2-3(特許法36条6項1号違反)について ア(ア) 本件明細書において,端縁部の凹凸形状ないし突起の高さと怪我防止との関係について触れているのは, 「前記容器本体部10は,前記突出部14の端縁部15において,前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮された状態となっており, 前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1〜1mmとなり,隣り合う突起15aの間隔が0.5〜5mmとなるように形成されていることが怪我防止の観点から好ましい。( 」【0019】)との記載部分のみであり,怪我防止の効果を得るための構成として開示されているのは,「突起15aの高さ」,すなわち,「h1」を0.1〜1mmとする構成のみである。
本件明細書の図2及び図3の「h1」が,端縁部の下面から「凸形状」の頂点部分までの長さを指すことは,図2及び図3から明らかである。
したがって,本件明細書において,怪我防止の効果を得るための構成として開示されているのは,端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さ(B)を0.1〜1mmとする構成のみである。
(イ) 本件特許に係る出願と同日に出願された特許第5164609号(甲6。以下,この特許を「甲6特許」といい,その特許発明を「甲6発明」という。)の図面として,本件特許の図2及び図3bと全く同じ図が記載されており,甲6特許の明細書の【0023】には,「h1」について,「フランジ部12端面(外側の切断面)に於ける最も突出高さの高い凸部の頂点と反対面との距離(図2,図3の“h1”」であると説明され, ) 「h1」の下端が端縁部の下面であることが明記されている。
そうすると,本件明細書の図2及び図3の「h1」も, 「端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さ」を指す。
(ウ) 以上のとおり,本件明細書においては,怪我防止のための構成として,端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さが0.1mm〜1mmとする構成しか開示されておらず, 「凸形状の高さ」について「端縁部の上面の頂部から上面の底部までの距離」との解釈をとるならば,本件発明は, 「端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さ」が,0.1mm〜1mmの範囲でないものを含むこととなるから,本件明細書にサポートされていないこととなり,本件特許には,特許法36条6項1号違反の無効理由がある。
イ(ア) 本件発明は,パラメータ発明に係るサポート要件を満たしておらず,また,本件明細書には発明特定事項D及びEを備えることにより怪我を防止できることについて例証がないから,本件発明は,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件を欠く。
(イ) 本件審決は,@本件発明の発明特定事項D及びEに規定される数値範囲は,単に,本件特許に係る容器に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したものと解するのが自然であり,A本件発明の課題解決の機序が明らかである以上,例証がないことのみを理由に,本件発明は課題を解決できないものをも含むものであるとはいえないとする。
しかし,@について,本件発明の発明特定事項D及びEに規定される数値範囲は,出願時には, 「上面側に凹凸形状」と規定されていたところ,拒絶理由を解消するために,追加された限定であるから, 「単に,本件特許に係る容器に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したもの」と解するのは不当である。また,Aについて,本件明細書においては,凸形状の高さ及び間隔は,どのような高さ及び間隔であれば,切創等が生じ,どのような高さ及び間隔であれば切創等が生じなくなるのかは実施例や比較例等もなく不明であり,本件特許に規定した数値をどのようにして導き出したのか,その根拠,理由が不明であるから,サポート要件を欠く。
また,サポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うところ,本件明細書の記載からは,発明特定事項D及びEに規定された数値限定を満たす端縁部であれば怪我防止効果が得られるのか,その機序が不明であるし,被告は,本件明細書の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識することについて十分な主張立証をしているとはいえないから,サポート要件を欠く。
(ウ) したがって,本件特許には,特許法36条6項1号違反の無効理由がある。
(4) 無効理由2-4(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について 補正により追加された発明特定事項Dが,当初明細書等に記載されていない事項であることについては,前記(3)のとおりであるから,本件特許には,特許法17条の2第3項違反の無効理由がある。
2 取消事由2 「特定作用効果」 ( を奏すべきことに関する無効理由1-1〜4に係る判断の誤り)について (1) 本件発明は,被告が,従来技術では達成し得なかった技術的課題ないし効果として「特定作用効果」を掲げ,その解決手段として「本願発明の突出部の端縁部は他の部分に比して圧縮薄肉化されることによって第一の強度向上が図られており,更にその上面に凹凸形状が形成されることによって第二の強度向上が図られる」という構成を主張し,それが参酌された結果として,特許が付与されたものである(甲1)。
特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,出願審査段階における従来技術との差異に関する出願人自身の主張は,特許発明の実質的な解決課題やその解決手段(発明特定事項)を把握するに際して,十分に考慮されなければならない。
したがって,包袋禁反言の法理に則り,本件発明は, 「特定作用効果」を奏することを発明特定事項として有する(「特定作用効果」を奏するものに限定される)と解されなければならない。
(2) このような発明特定事項を有する本件発明は,発明の詳細な説明に記載したものではないから,本件特許は,無効理由1-1(特許法36条6項1号違反),同1-2(同条4項1号違反),同1-3(同条6項2号違反),同1-4(同法17条の2第3項違反)を有する。
3 取消事由3 「突出部の端縁部」 ( の構成に関する無効理由3-1及び2に係る判断の誤り)について (1) 無効理由3-1(特許法36条6項2号違反)について ア 本件審決は,本件明細書の【0019】には, 「前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるように端縁部15が圧縮された状態となっている。」及び「すなわち,前記突出部14は,開口縁13近傍から端縁部15にかけて厚みが減少されており,この厚みが減少している領域において丸みを帯びた形状が形成されている。」という事項が記載されていることを前提に,前者の記載から,「圧縮」という表現を抜き,後者の記載に,「圧縮」の記載を付け加えるという恣意的な操作を行って「前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となる」形状ないし状態と,「突出部の端縁部15において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」という形状ないし状態が把握されるとの不合理な結論を導いている。
イ 本件審決は,本件明細書の【0019】の記載文言から,圧縮を原因として,端縁部15の上面が収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となることが記載されていると正当に認定しているにもかかわらず,発明特定事項Cの意義については,「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように」なっていることと, 「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」ということの双方を構成要件としているにすぎず,圧縮(薄肉化)と「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように」なっていることとは何ら関連がないと理解しており,背理である。
このように,本件審決は,発明特定事項Cが二重に解釈され得ることを明らかにしているから,本件発明は不明確であって,本件特許には,特許法36条6項2号違反の無効理由がある。
(2) 無効理由3-2(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について 前記(1)のとおり,本件審決は,その文言上対応する発明特定事項Cと本件明細書 の【0019】について異なる意味に捉えているところ,発明特定事項Cは本件明細書にサポートされておらず,また,当初明細書等に記載されたものではない。
被告の主張
1 取消事由1について (1) 無効理由2-1について 特許法施行規則24条の2の趣旨は,発明の技術上の意義を明らかにし,審査,調査等に役立てるというものであるから,発明が解決しようとする課題の解決手段については,当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,請求項に係る発明の属する技術的分野の課題及びその解決手段の理解をすることができれば足りる。
本件においては,当業者は,本件明細書の記載によって課題やその解決方法を理解できるから,本件明細書の【0005】の記載内容が例証される必要はない。
(2) 無効理由2-2について ア 本件審決は, 「凸形状の高さ」 (発明特定事項D)につき, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」(原告主張図のC)を意味すると解しており,「端縁部の下面から上面の頂点部分までの高さ(原告主張図のB)を意味するとの認定は行っていない。
イ(ア) 「凸」とは,「物の表面が部分的に出ばっていること」をいい(甲10),一般に,物の表面の状態を表す言葉である。また,発明特定事項D〜Fの文言から, 「凸形状」とは,端縁部の上面に形成されている形状の一部であって,端縁部の上面が部分的に出ばっている箇所の形状を指す。
「凸形状の高さ」は,端縁部の上面に形成されている部分的に出ばっている箇所の形状の高さ,すなわち,「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」(原告主張図のC)を意味する。
(イ) 発明特定事項Dの効果は,「怪我防止」であり(本件明細書の【0019】,ある程度の波(凸形状)の高さがなければ, ) 「怪我防止」の効果を奏しない から, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」に下限(0.1mm)を設けたのである。
「凸形状の高さ」が原告主張図のBの部分を意味するものと解した場合, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」 (原告主張図のC)が0.1mm未満であったとしても,凸形状と評価できる限り,構成要件Dを充足することとなるが,原告主張図のCが0.1mm未満では,「怪我防止」の効果を奏することはできない。
(ウ) したがって, 「凸形状の高さ」が, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味することは一義的に明らかである。
ウ 本件明細書の【0007】には,背景技術として,(容器本体の)「突出部の下面側にも凹凸形状が形成される」例が挙げられ,上面の凹凸形状と下面の凹凸形状とは分けて, 「凹凸形状」が形成される場所を端縁部の上面・下面という「面」単位で捉えている。
また,本件明細書には, 「突出部14の端面は,図2にも示されているように上部側の輪郭線が波形となり,下部側の輪郭線が直線となるように形成されている。すなわち,突出部14の端縁部15の上面側15uには,断面形状が波形となる突起15aが突出部14の端縁に沿って複数列設されて前記凹凸形状が形成されている。」(【0017】), 「前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1〜1mmとなり」【0019】 ( )との記載があり,「波形の突起15a」とは,波形の突起が複数列設されて形成される形状を意味することが記載されている。
これらの記載を併せて読むと,本件明細書の【0019】に記載された「波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」とは,端縁部の上面・下面という「面」 )を基準ないし基底として設けられた「突起」すなわち「突き出た状態」を意味することは,当業者にとって明らかであるから, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」(原告主張図のC)を意味する。
エ 前記第3の1(2)ウで原告が引用する本件審決の判断部分は,「凸形状の高さ」とは,凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離を指すことが一義的に明ら かであって,二重に解釈され得るとの原告の主張を失当と判断したものである。
仮に,本件審決が, 「凸形状の高さ」とは,端縁部の下面から上面の頂点部分までの高さを指すと判断したのであれば,本件審決は,本件特許が明確性要件に違反すると認めたはずであるが,本件審決は,本件特許は明確性要件に適合すると認めたものである。
(3) 無効理由2-3について ア 前記(2)のとおり,本件明細書の【0019】の「図2,図3の“h1”」が,「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」(原告主張図のC)を意味することは明らかであり,同段落には,「凸形状の高さ」である“h1”の数値範囲が0.1〜1mmとなるよう,その上面に凹凸形状が形成されていることが,怪我防止の観点から好ましいことが記載されているから,本件明細書の発明の詳細な説明には,「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」が0.1〜1mmである場合に怪我防止効果が得られることについて記載されている。
イ 原告は,甲6特許の図2及び図3bと,本件特許の図2及び図3bとが,それぞれ同じ図であることを指摘した上,両者の「h1」の意義を同様に解すべきであると主張する。
しかし,甲6発明が,フランジ端部の「厚み」,すなわち,端縁部の上面の凸形状の頂部から端縁部の下面までの距離に着目したものであるのに対し,本件発明は,突出部の端縁部の上面の凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離に着目するもので,両者は技術的特徴という観点から,別個の発明である。甲6発明がフランジ端部の「厚み」に着目していることは,本件発明の「凸形状の高さ」が,端縁部の上面の凸形状の頂部から端縁部の下面までの距離ではないことを示している。
したがって,技術的特徴を異にする本件発明と甲6発明において, 「h1」の意義を統一的に解すべき理由はない。
ウ 本件発明の発明特定事項D及びEに規定される数値範囲が拒絶理由を解消するために追加された限定であることにより,なぜ「単に,本件特許に係る容器 に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したもの」と解することができないのか,その論理関係が不明である。
本件審決は,本件発明における数値範囲は, 「単に,本件特許に係る容器に適用する際の凹凸形状の大きさの程度を示したもの」にすぎず, 「特性値を表す二つの技術的な変数を用いた一定の数式により示される範囲をもって特定したものではない」から,本件発明はパラメータ発明ではないと述べたものである。
(4) 無効理由2-4について 本件明細書の記載内容と出願当初の明細書の記載内容は, 【0010】を除き同一であるところ, 「凸形状の高さ」(発明特定事項D)が「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味することが出願当初の明細書に明示されていることは,前記(2)のとおりである。
したがって,本件特許は,新規事項追加禁止の要件に違反しない。
2 取消事由2について (1) 原告は,本件発明は,被告が「特定作用効果」を奏するものであると主張して特許査定されたのであるから,包袋禁反言の法理に則り,本件発明は, 「特定作用効果」を奏するものに限定される旨主張する。
しかし,被告が,拒絶査定に対する審判請求書(甲1)において,本願発明の突出部の端縁部は他の部分に比して圧縮薄肉化されることによって第一の強度向上が図られており,更にその上面に凹凸形状が形成されることによって第二の強度向上が図られる旨を記載したのは,本件発明において,@端縁部を圧縮することによる強度向上と,A凹凸形状を形成することによる強度向上とが存在することを述べたにすぎない。すなわち,本件発明は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,蓋体を強固に止着させうる容器を提供すること(本件明細書の【0009】)を課題の一つとし,上記@及びAの強度向上は,「蓋体などを強固に止着させうる」(本件明細書の【0012】)という本件発明の作用効果について,それがなぜ生ずるのかという観点から敷衍して述べたものにすぎず,上記@及びAの強 度向上を本件発明の新たな作用効果として主張したものではない。
したがって,被告は,拒絶査定に対する審判請求書(甲1)において,本件発明は「特定作用効果」を奏するものであるとの主張を行っていない。
また,本件特許の特許請求の範囲にも, 「特定作用効果」を奏するものに限定されると理解される記載は一切存在しないのであって,発明特定事項C〜Eは「特定作用効果」を奏するものに限定されるとの原告の主張は誤りである。
(2) 原告が主張する「特定作用効果」を奏するものは,物の製造方法及び強度向上の時間的先後関係を内容とするものであるが,本件発明は,方法の発明でなく,物の発明であり, 「突出部の端縁部」 (発明特定事項C及びD)並びに「凸形状」 (発明特定事項D及びE)について,その形状を示すことによりその構造を特定しているにすぎないから,端縁部を圧縮することによる強度向上と凹凸形状を形成することによる強度向上の時間的先後関係や強度向上に関する製造方法は,本件発明の発明特定事項ではない。
したがって,この観点からも,発明特定事項C〜Eは「特定作用効果」を奏するものに限定されるとの原告の主張は誤りである。
3 取消事由3について (1) 無効理由3-1について ア 原告は,本件審決は,本件明細書の【0019】の記載において, 「圧縮」という表現について恣意的な操作を行って不合理な結論を導いていると主張するが,原告が引用していない本件審決の記載箇所(31頁8行〜19行)を読めば,本件審決の解釈が恣意的なものではなく,不合理な結論を導くものではないことは明らかである。
イ 原告は,本件審決の発明特定事項Cの解釈は,本件審決が認定した本件明細書の【0019】の文言の解釈と異なっており,そのこと自体,発明特定事項Cが不明確であることを裏付けている旨主張する。
しかし,本件審決は,「上記方法により作られた容器は,『前記端縁部15の上面 は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となる』形状ないし状態と,『突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており』という形状ないし状態との双方を具備した物といえ,そうした物である『容器』の発明が,上記段落【0019】の記載事項から把握される」と述べており,本件明細書の【0019】において,圧縮を原因として端縁部15の上面が収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるという構成が開示されていると結論付けるものではない。
そして,本件審決は,発明特定事項Cについても,『容器』という物の発明であ 「る本件発明1が,『前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように』なっているということと, 『突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており』ということの双方を構成要件としていることを明確に規定する」と解釈しており,本件審決の発明特定事項Cの解釈と本件明細書の【0019】の文言の解釈は異なるものではない。
ウ(ア) 「ように」 「よう」 は, (様) 「に」 と が結合した言葉であり(甲11),「よう」(様)は,発明特定事項Cの文脈では,「その状態にあること。また,その状態にあると思われること。」を意味する(甲12)。すなわち,突出部の端縁部において熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが薄くなる構成としては,(@)「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」状態の構成と,(A)「前記突出部の端縁部の下面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の下面に比して上位となる」状態の構成とがあり得るところ,発明特定事項Cは,(@)の状態の構成であることを明示したものである。
そして,発明特定事項Cは,(状態A)となるように, 「 (状態B)なっており,」という構文であり,「ように」は,「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という状態と,「厚みが薄くなっている」という状態とを単に接続する語である。発明特定事項Cの「ように」は,動作を表 す語を修飾せず,状態を表す語を修飾するものであるから,『突出部の端縁部の上 「面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位』にすることを目的・目標とした」語とはなり得ない。発明特定事項Cの「ように」は, 「厚みが薄くなっている」という状態の一態様として, 「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という状態であることを表したものである。
このように,発明特定事項Cは, (A)突出部の端縁部の上面が,収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面より低くなっていること,(B)突出部の端縁部の厚みが,収容凹部の開口縁近傍の突出部の厚みより薄くなっていること,を規定しているのみであって,(A)が(B)に起因して生じたことを規定していない。
したがって,発明特定事項Cの意義は,特許請求の範囲の記載から一義的に明らかである。
(イ) 仮に本件明細書の記載を参酌するとしても,本件明細書の【0019】には, 「そして,前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるように端縁部15が圧縮された状態となっている。」と記載されており,同段落の「ように」も,発明特定事項Cの「ように」と同様,状態を表す語を修飾するものであるから,「端縁部15が圧縮された状態となっている」という状態の一態様として, 「収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となる」という状態であることを表したものである。
(ウ) 以上のとおり,特許請求の範囲の記載から解釈される発明特定事項Cの意義と,本件明細書の【0019】から解釈される発明特定事項Cの意義は,特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載から一義的に明らかであり,二重に解釈され得るものではない。
(2) 無効理由3-2について 本件審決は,特許請求の範囲の記載から解釈される発明特定事項Cの意義と本件明細書の【0019】から解釈される発明特定事項Cの意義について異なる意味に捉えていないから,これを前提とした原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 本件発明 (1) 本件発明は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲14)には,以下の記載がある。
「【技術分野】【0001】 本発明は,例えば,食品容器等として使用される,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられてなる容器,詳しくは,該発泡積層シートを用いて成形することにより,収容凹部と該収容凹部から外側に向けて張り出した突出部とが形成されてなる容器に関する。
【背景技術】【0002】 従来,熱可塑性樹脂発泡シートに,非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを用いて成形された容器は,優れた断熱性及び軽量性を備え且つ低価格であるといった熱可塑性樹脂発泡シート製容器(例えば,スチレン系樹脂発泡シート製容器)の特性の他,熱可塑性樹脂フィルムが積層されていることにより,容器強度が向上し,表面が平滑となり,かつ各種の印刷を施すことが可能となる等の特徴が加味され,弁当,惣菜等の食品容器等に使用されている。
【0003】 そして,この種の発泡積層シートを用いた容器は,通常,シート成形により製造されている。即ち,発泡積層シートを加熱し,これを雄型と雌型との間に送り,該雄型と雌型とで挟み押圧することにより該シートに凹形状(容器形状)を形成させた後,凹形状が形成されている部位の外側をトリミング刃等による打ち抜き等によって切断し,シートから凹部及び該凹部から外側に向けて張り出したフランジ状の突出部を分断するシート成形により製造されている。
【0004】 ところで,上記の如き容器に於いては,フランジ状の突出部の外側に蓋体が外嵌装着されたり,この突出部の外側端部を覆い隠すようにラップフィルムが被せられて使用されたりしており,下記特許文献1(判決注:特開平7-285531号公報)には,外側から内側へと凹入させた係合凹所を有する蓋体を容器本体部に止着させることが記載されている。
すなわち,内側に突出する突起部を蓋体に設けて,該突起部をフランジ状の突出部に係合させて蓋体を容器本体部に外嵌させることが下記特許文献1に記載されている。
【0005】 上述のごとく,斯かる容器は,トリミング刃等で打ち抜いて製造されるため,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差により,切断面(外側端面)に於いて硬い熱可塑性樹脂フィルムが柔らかい熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,且つ熱可塑性樹脂フィルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷する虞がある。
【0006】 このような問題に対し,下記特許文献2(判決注:特開平9-94875号公報)には,フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の端縁部を熱盤と接触させて又は熱線に曝して熱収縮させ,該突出部の外側端面(切断面)上下の角を丸く処理することが開示されている。
しかしながら,このように熱収縮させる処理が施された容器は,熱による収縮量の調整が困難であることから,寸法精度の良好なものとは言い難いものである。
・・・【0007】 また,下記特許文献3(判決注:特開2004-67122号公報〔甲21〕)には,フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成させることが記載されている。
しかし,このように突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合される突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなる。
特に,熱可塑性樹脂フィルムが内表面となるように発泡積層シートを成形した容器本体部の突出部の下面側に凹凸形状を形成させると,蓋体の突起部が,突出部の下面側の発泡シート表面に形成された凸部先端と接触することとなるため,凸部が潰れやすく,強固な係合状態を形成させることが困難となる。
すなわち,従来の容器構成では,発泡積層シートを成形した容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させることが困難であるという問題を有している。
また,従来の容器製造方法は,端縁部での怪我が抑制され,蓋体などが強固に止着され得る容器を簡便なる方法で製造することが困難であるという問題を有している。
・・・【発明が解決しようとする課題】【0009】 本発明は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】【0010】 前記課題を解決するための容器にかかる本発明は,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられ,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成された容器本体部を有する容器であって,前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁 部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,しかも,該突出部の少なくとも端縁部の上面側には,凸形状の高さが0.1〜1mmとなり隣り合う凸形状の間隔が0.5〜5mmとなるように凹凸形状が形成され,且つ該端縁部の下面側が平坦に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】【0012】 本発明の容器は,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられて形成されており,断熱性に優れた容器である。
また,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層シートが成形加工されて形成されている。
そして,本発明の容器は,前記発泡積層シートが成形加工されて,被収容物が収容される収容凹部と,該収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した突出部とが形成された容器本体部を有している。
さらに,突出部の上面側には前記熱可塑性樹脂フィルムが配され,下面側には熱可塑性樹脂発泡シートが配され,熱可塑性樹脂フィルムが配される端縁部の上面側に凹凸形状を形成させ且つ熱可塑性樹脂発泡シートの配される下面側を平坦に形成させている。
したがって,断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる。
すなわち,本発明の容器は,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させうる。
【発明を実施するための最良の形態】【0014】 以下に,本発明の好ましい実施の形態について蓋付容器を例示しつつ説明する。
・・・【0015】 以下に,この図1乃至3を参照しつつ蓋付容器1の各部の詳細構造について説明する。
まず,容器本体部10について説明する。
実施形態の容器本体部10は,底部11と,該底部11から立設された側周壁部12と,該側周壁部の上端縁13から外側に向けて張り出した突出部14とを有している。
【0016】 前記底部11は,前記容器本体部10に被収容物を収容させるべく設けられた収容凹部の底を形成すべく設けらており(原文ママ),本実施形態においては,角部が丸められた(Rが設けられた)正方形に形成されている。
前記側周壁部12は,前記底部11の外周縁からやや外向きに傾斜された状態に立設されており,本実施形態の蓋付容器1においては,該側周壁部12と前記底部11とにより被収容物を収容するための収容凹部が形成されている。
すなわち,本実施形態の容器本体部10は,前記側周壁部12の上端縁13がこの収容凹部の開口縁となるように形成されている。
【0017】 前記突出部14は,この側周壁部12の上端縁13(以下「開口縁13」ともいう)から外側に張り出して形成されており,該突出部14は,開口縁13からの突出長さが開口縁13全周において略均一となるように形成されており,その外周縁の形状が角部が丸められた正方形となるとなるように形成されている。
この突出部14の端縁部15には凹凸形状が形成されており,突出部14の端面は,図2にも示されているように上部側の輪郭線が波形となり,下部側の輪郭線が直線となるように形成されている。
すなわち,突出部14の端縁部15の上面側15uには,断面形状が波形となる突起15aが突出部14の端縁に沿って複数列設されて前記凹凸形状が形成されている。
そして,この端縁部15の下面側15dは,平坦に形成されている。
【0018】 前記容器本体部10は,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられて形成されており,しかも,前記熱可塑性樹脂フィルムが内表面側となるように前記発泡積層シートが成形加工されて形成されている。
すなわち,収容凹部の内表面から突出部14の上面側にかけての領域が,前記端縁部15の上面側15uを含めて熱可塑性樹脂フィルムで形成されており,前記底部11の外表面(裏面)から突出部14の下面側にかけての領域が,前記端縁部15の下面側15dを含めて熱可塑性樹脂発泡シートで形成されている。
【0019】 前記容器本体部10は,前記突出部14の端縁部15において,前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮された状態となっており,前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1〜1mmとなり,隣り合う突起15aの間隔が0.5〜5mmとなるように形成されていることが怪我防止の観点から好ましい。
そして,前記端縁部15の上面は,収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となるように端縁部15が圧縮された状態となっている。
すなわち,前記突出部14は,開口縁13近傍から端縁部15にかけて厚みが減少されており,この厚みが減少している領域において丸みを帯びた形状が形成されている。
【0020】 このように,突出部14の上面側に前記熱可塑性樹脂フィルムが配され,下面側には熱可塑性樹脂発泡シートが配され,しかも,端縁部15の上面側15uに凹凸形状が形成され且つ下面側15dが平坦に形成されていることから前記蓋体20を外嵌させる際にこの平坦に形成された端縁部15の下面側15dに強固な係合状態を形成させることができる。
しかも,熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを防止できる。
【0021】 この容器本体部10の形成に用いられる発泡積層シートは,特に限定されるものではなく,従来公知のものを用いることができる。
例えば,スチレン樹脂単独,あるいは,スチレンモノマーと共重合可能なブタジエンなどのモノマーとスチレンモノマーとの共重合体樹脂単独,または,スチレン樹脂と前記共重合体樹脂との混合物,ポリプロピレン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂などを,ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や,アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させてなる熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムを積層させたものを挙げることができる。
なお,一般的な用途の容器に用いる場合には,前記熱可塑性樹脂発泡シートは,その厚みが1〜3mmのいずれかの厚みとされることが好ましく,坪量が,80〜550g/m3 のいずれかとされることが好適であるが,このような範囲を超えたものも適宜採用することが可能である。
【0022】 この熱可塑性樹脂発泡シートの片面に積層される熱可塑性樹脂フィルムには,例えば,熱可塑性樹脂発泡シートに用いられたスチレン樹脂や共重合体樹脂が用いられてなるフィルムや,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂が用いられてなるフィルム,ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂が用いられてなるフィルム,ポリビニルアルコール樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂などのガスバリア性に優れた樹脂が用いられてなるフィルムをそれぞれ単独で用いることができる。
・・・ なお,前記熱可塑性樹脂フィルムは,例えば,数μm〜数百μmの厚みのものを用いることができる。
【0023】 次に,蓋体20について説明する。
・・・ さらに,前記蓋体20には,前記垂直壁部25の下端縁から外方に向けて張り出したつば部26と,前記垂直壁部25の一部を他部よりも内側に向けて突出させて形成された突起部27とが設けられている。
・・・【0027】 この蓋体20は,その素材が特に限定されるものではないが,通常,透明な樹脂フィルムなどを用いて形成しうる。
【0028】 次いで,図4を参照しつつ,蓋体20を容器本体部10に外嵌させる方法について説明する。
前述のように,垂直壁部25は,容器本体部10の突出部14の外周縁と略同形に形成された四角枠形状を有しており,前記突起部27は,この垂直壁部25の一部を他部よりも内側に突出させて形成されている。
したがって,図4a)に示すように蓋体20を容器本体部10に外嵌する前には,前記突起部27の内面が,容器本体部10の突出部14の上面に当接する状態となっている。
・・・【0030】 さらに押圧を続けることにより,突起部27は,突出部14の丸みを帯びた形状に沿ってその当接箇所が下方に移動され,やがて突起部27が突出部14の端縁部15よりも下方に移動して,図4c)に示すように,垂直壁部25ならびに突出部14の復元力により端縁部15の下面側15dにまわり込んだ状態となる。
このとき,突出部14の上面が蓋体20の面接部24に面接された状態となるとともに,端縁部15の下面側15dが突起部27の上端部に当接された状態となる。
このように,突出部14の端縁部15と突起部27とが係合されることにより,蓋体20を容器本体部10に強固に止着させうる。
なお,本実施形態で例示しているような蓋付容器1ではなく,容器本体部10をラップフィルムなどで覆って収容凹部を密封するような場合においても,端縁部15の下面側15dが平坦に形成されていることで下面側に凹凸が形成されているような場合に比べてその密着性を向上させうる。
したがって,ラップフィルムなどの止着にも優れた効果が発揮されることとなる。
【0031】 次いで,容器本体部10を上記のような蓋体20などが強固に止着され得るように形成させて容器を製造する容器製造方法について,図5乃至9を参照しつつ説明する。
【図9】・・・【0033】 まず,雄型100について説明する。
この雄型100には,容器本体部10の形成に用いられる箇所の最も外側部分に位置する箇所に,前記容器本体部10の端縁部15に凹凸形状を形成させるための 凹凸形成部102が備えられている。
また,この凹凸形成部102の内側には,端縁部15以外の突出部14を形成するための突出部形成部103が備えられている。
さらに,この突出部形成部103の内側に容器本体部10の側周壁部12と底部11とを形成させるための隆起部104が備えられている。
【0034】 前記凹凸形成部102は,端縁部15の上面側15uに波形の突起15aを形成させるべく,前記容器本体部10の端縁部15に位置する箇所に備えられており,前記波形の突起15aとは逆形状となる凹凸形状が形成されている。
また,凹凸形成部102は,突出部14の端縁部15と同じく,角部の丸められた正方形を形成させた状態で雄型100に設けられており,その凹凸形状を前記基準面101よりも上方に突出させて形成されている。
【0035】 前記突出部形成部103は,前記凹凸形成部102の内側において前記基準面101よりも僅かに低位のレベル(掘り込まれた状態)となるように形成されている。
・・・【0036】 次いで,雌型200について説明する。
この雌型200には,容器本体部10の形成に用いられる箇所の最も外側部分に位置する箇所に前記容器本体部10の端縁部15の下面側15dを平坦な状態に形成させための平坦面形成部202が備えられている。
また,この平坦面形成部202の内側には,突出部形成部103とともに容器本体部10の突出部14を形成するための突出部形成部203が備えられている。
さらに,雌型200には,前記雄型100の隆起部104とともに,容器本体部10の側周壁部12と底部11とを形成させる掘り込み部204が備えられている。
【0037】 前記平坦面形成部202は,前記容器本体部10の端縁部15に位置する箇所に設けられ,端縁部15の下面側15dを平坦な状態に形成させるべく平坦に形成されており前記基準面201と同一レベルとなるように雌型200に形成されている。
すなわち,平坦面形成部202は,前記基準面201と面一な状態で雌型200に設けられている。
【0038】 前記突出部形成部203は,前記平坦面形成部202の内側に形成されており,前記基準面201よりも僅かに上位のレベル(突出した状態)となるように形成されている。
・・・【0039】 このような雄型100と雌型200を用いて,シート成形法によって上記のような容器本体部10を形成させて容器を製造する容器製造方法の具体的な手順について図9を参照しつつ説明する。
【0040】 前記雄型100を前記隆起部104などが下面側となるように雌型200の上方に配置するとともに,前記雌型200を前記掘り込み部204が上面側となるように雄型100の下方に配置して,互いの位置を合わせた状態で上下に配置する。
そして,発泡積層シートSを,用いられている樹脂がある程度軟化され得る温度に加熱し,しかも,熱可塑性樹脂フィルム側が上面となるように(熱可塑性発泡シート側が下面となるように)して,この上下に配置した金型(雄型,雌型)の間に挿入させる(図9a)。
【0041】 そして,雄型100と雌型200とにより発泡積層シートSを挟んで成形する(図9b)。
この成形においては,前記隆起部104を前記掘り込み部204に侵入させて容 器本体部10の収容凹部となる形状を発泡積層シートSに形成させるとともに,雄型100の突出部形成部103と雌型200の突出部形成部203とによって収容凹部の開口縁から外側に向けて張り出した状態となるように突出部14を形成させる。
また,同時に前記の前記凹凸形成部102と前記平坦面形成部202とによりこの突出部14の端縁部15を上面側が凹凸形状となり且つ下面側が平坦となるように形成させる。
【0042】 このようにして容器本体部10の各部形状を有する成形部Pを発泡積層シートSに形成させた後は,雄型100と雌型200とを離間させて(図9c),前記成形部Pの外周に沿った切断箇所Cをトリミング刃などにより切断して発泡積層シートSから成形部Pを分断させる。
このように成形部Pを発泡積層シートSから分断したものをそのまま容器本体部10とすることができ,要すれば,分断されたものに新たなる加工を施して容器本体部10とすることも可能である。
【0043】 上記に説明したように,前記突出部14の形成に用いられる箇所に凹凸形状が形成されている雄型100と,前記突出部14の形成に用いられる箇所が平坦に形成されている雌型200とを用いて,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートSを成型加工し,しかも,雄型100を前記熱可塑性樹脂フィルム側から当接させ,前記雌型200を前記熱可塑性樹脂発泡シート側から当接させて成型加工することにより前記突出部14の端縁部15の上面側15uに凹凸形状が形成された容器本体部を形成させて容器を製造することにより,収容凹部などの形成と同時に裂傷を防止するための構造(凹凸形状)をあわせて端縁部15に形成させることができる。
すなわち,端縁部での怪我が抑制され,蓋体などが強固に止着され得る容器を簡 便なる方法で製造しうる。
【0044】 なお,本実施形態においては,本発明の効果をより顕著に発揮させ得る点において,蓋付容器を例示して本発明を説明しているが,本発明は,容器を蓋付容器に限定するものではない。
例えば,ラップフィルムなどによって収容凹部の開口部が覆われて用いられるような容器も本発明の意図する範囲である。
また,本実施形態においては,断面形状が波型の突起が突起部の端縁部に沿って列設されている場合を例示しているが,このような突起に代えて,溝を端縁部に沿って列設させて突出部の端縁部の上面側に凹凸形状を形成させても良く,その形状も,波形に限定されるものではない。
ただし,形成する突起や溝の形状が複雑になると製造に要する手間を増大させるおそれがある。
したがって,より簡便に容器を製造させうる点において,形成させる突起や溝の断面形状としては,上記例示の波形の他に,鋸歯形,半円形のいずれかであることが好ましい。
また,これらを組み合わせて用いることも可能である。
さらには,本実施形態においては,線状の突起を外側に向けて延在させている場合を例示しているが,その延在方向も外側方向に限定されるものではない。
例えば,線状の突起や線状の溝を,容器の中心部から外方に向けた方向に対して傾斜する方向に延在させたり,互いに交差させたりして凹凸形状を形成させることも可能である。」 (2) 以上の記載によると,本件発明について,以下のとおり認められる。
ア 本件発明は,熱可塑性樹脂発泡シートの片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された発泡積層シートが用いられてなる容器に関する(【0001】。
) イ この種の発泡積層シートを用いた容器は,通常,発泡積層シートを加熱 し,雄型と雌型との間に送り,挟み押圧することにより該シートに凹形状を形成させた後,該凹形状が形成された部位の外側を切断し,シートから凹部及び該凹部から外側に向けて張り出したフランジ状の突出部を分断するシート成形により製造される(【0003】。
) トリミング刃等により打ち抜く際,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差により,切断面(外側端面)において,硬い熱可塑性樹脂フィルムが柔らかい熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,熱可塑性樹脂フィルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷する虞がある(【0005】。
) ウ 特許文献3(特開2004-67122号公報。甲21)には,フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成させることが記載されているが,これによれば,蓋体を外嵌させる際に蓋体の突起部が係合される突出部の下面側にも凹凸形状が形成される。特に,熱可塑性樹脂フィルムが内表面となるように発泡積層シートを成形した容器本体部の突出部の下面側に凹凸形状を形成させると,蓋体の突起部が,突出部の下面側の発泡シート表面に形成された凸部先端と接触するため,凸部が潰れやすく,強固な係合状態を形成させることが困難となる。
すなわち,従来の容器構成では,発泡積層シートを成形した容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させることが困難であるという問題を有している(【0007】。
) エ そこで,本件発明は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器を提供することを課題としている(【0009】。
) オ 本件発明は, 【0010】に記載の構成をとることによって上記課題を解決したものであって,容器の突出部の端縁部の上面側に凹凸形状を形成し,熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるようにすることで,利用者の怪我な どを抑制し,上記端縁部の下面側は平坦に形成することで,蓋体を強固に止着する係合状態を形成できるので,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強固に止着させることができる(【0012】。
) 2 取消事由1(「凹凸形状」に関する無効理由2-1〜4に係る判断の誤り)について (1) 無効理由2-1(特許法36条4項1号違反)について ア 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が, 「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器の提供」【0009】 ( )を「発明が解決しようとする課題」としていることが,当該課題に直面するに至った背景(【0002】〜【0007】)とともに記載され,当該課題を解決するために容器に係る本件発明が備えている「解決手段」が,【0010】に記載され,これにより,本件発明の容器が,「断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる」(【0012】という効果を奏し, ) 上記課題を解決することが記載されているから,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題及びその解決手段が記載されており,当業者は,その技術上の意義を理解することができる。
したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法施行規則24条の2で定めるところにより,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものということができ,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしている。
イ(ア) 原告は,断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,その端縁部で指等を裂傷するといった怪我が生じること自体,本件明細書の発明の詳細な説明には,客観的・科学的な証明や事実が一切記載されていないし,仮に怪我が生じ得るとしても,本件発明における凹凸形状によればその怪我を防止で きることが,発明の詳細な説明において,何ら客観的・科学的な証明はされていない旨主張する。
しかし, 「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,その端縁部で指等を裂傷するといった怪我が生じること」については,発泡積層シートの熱可塑性樹脂発泡シートや熱可塑性樹脂フィルムとしてどのような材料を用いたのか,発泡積層シートが圧縮前はどの程度の厚みがあり圧縮後にどのような厚みとなったか(圧縮の程度),発泡積層シートの切断面の状態,発泡積層シートに対して指先等がどのように接触するか(指を押し当てる強さ,指を移動させる方向・早さ等)に応じて,怪我が生じる可能性があることは,当業者において,客観的・科学的な証明がなくとも容易に理解でき,「凹凸形状によればその怪我を防止できること」も,端縁部の上面側に形成する凹凸形状の形状に応じて指と端縁部の端面との接触面積が異なる結果,怪我を防止することができることも,当業者において,客観的・科学的な証明がなくとも容易に理解できるから,原告の上記主張には理由がない。
(イ) 原告は, 「熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬 @さの差により,切断面(外側端面)に於いて硬い熱可塑性樹脂フィルムが柔らかい熱可塑性樹脂発泡シートよりも外側に突き出た状態となり,且つ熱可塑性樹脂フィルムの切断面の形状が鋭利になりやすく,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷する虞があり」【0005】 ( )との記載には根拠がない,A「フィルム端縁で指等を裂傷するという課題を解決するために,突出部の上下面にジグザグとなる凹凸を形成させる」【0007】 ( )との記載は,特許文献3(甲21)に記載されている,それ自体で形状を維持できる程度の厚さ・硬さを有する薄手シートのみで構成された容器に関するもので,本件発明が対象とする積層発泡シートの薄い樹脂フィルムとは異なると主張する。
しかし,上記@,Aについては,前記(ア)のとおりであって,特許文献3(甲21)に記載されているのが薄手のシートの成形品で,本件発明が熱可塑性樹脂発泡シートに非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートの成形品であること をもって,前記(ア)の認定は左右されない。
(ウ) したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(2) 無効理由2-2(特許法36条6項2号違反)について ア 本件特許の特許請求の範囲の記載によると,本件発明における「凸形状」は, 「端縁部の上面側」に形成された「凹凸形状」におけるものであるから(発明特定事項D及びE)「凸形状の高さ」の数値限定(発明特定事項D)は, , 「隣り合う凸形状の間隔」の数値限定(発明特定事項E)とともに, 「端縁部の上面側」に形成された「凹凸形状」の特徴を規定するものである。そうすると,「凸形状の高さ」(発明特定事項D)は, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味すると解するのが自然である。
イ(ア) 本件明細書の【0017】には,「断面形状が波形となる突起15aが突出部14の端縁に沿って複数列設されて前記凹凸形状が形成されている。」との記載があり,本件明細書の【0033】には,「雄型100」について,「容器本体部10の端縁部15に凹凸形状を形成させるための凹凸形成部102が備えられている。」との記載があり,本件明細書の【0034】には,「前記凹凸形成部102は,端縁部15の上面側15uに波形の突起15aを形成させるべく, ・・・前記波形の突起15aとは逆形状となる凹凸形状が形成されている。」との記載があるから,「凹凸形状」は,「雄型」により形成され得る端縁部の上面側の表面の突起の形状又は構造を表していると解される。このことは,前記アの理解と整合する。
(イ) 本件明細書の【0019】には,「前記波形の突起15aの高さ(図2,図3の“h1”)が0.1〜1mmとなり,隣り合う突起15aの間隔が0.5〜5mmとなるように形成されていることが怪我防止の観点から好ましい。,本件 」明細書の【0043】には,「裂傷を防止するための構造(凹凸形状)」との記載があり, 「凹凸形状」は,怪我防止,裂傷防止の観点から形成されている。このような観点からすると,「凸形状の高さ」として意味があるのは,「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」であることは明らかである。このことも前記アの理解と整合 する。
ウ したがって,特許請求の範囲及び本件明細書の記載によると,本件発明における「凸形状の高さ」は, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味するものと解される。
エ(ア) 原告は,本件発明における「凸形状の高さ」には,本件明細書の【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」がこれに対応 )する概念であると解し, 「端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さ」を意味するとする解釈と,前記ウの解釈の,二重の意味があり得るから,本件特許は明確性要件違反の無効理由を包含する旨主張する。
確かに,本件明細書の図2,図3においては, 「h1」の高さとして,端縁部の上面の凸形状の頂部から端縁部の下面までの長さが,矢印により示されている。
しかし,前記イ(イ)のとおり, 「凸形状の高さ」として意味があるのは, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」であるから,前記ア〜ウで述べたところに反して「凸形状の高さ」を「端縁部の下面から上面の頂点部分までの高さ」と解する理由とすることはできない。
前記ア〜ウのとおり,本件発明における「凸形状の高さ」は, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味するから, 「凸形状の高さ」の意味は一義的に明らかであり,原告の上記主張には理由がない。
(イ) なお,原告は,本件審決も「凸形状の高さ」とは,h1の高さ,すなわち,原告主張図のBの高さとして明確であると判断している旨主張する。
本件審決は,本件発明における「凸形状の高さ」が,本件明細書の【0019】に記載された「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」を意味する旨判断して )いる。そして,本件審決は,上記の「突起15aの高さ(図2,図3の“h1”」 )は,甲4の主張と二重に解釈され得る旨の主張を採用できないと判断しているところ,甲4の主張は, 「凸形状の高さ」 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」 をと主張するものであるから,本件審決は, 「凸形状の高さ」を「凸形状の頂部から凸 形状の底部までの距離」と判断しているのであって,原告主張図のBの高さであると判断しているものではない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(3) 無効理由2-3(特許法36条6項1号違反)について ア(ア) 特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
(イ) 本件明細書には,「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器の提供」という解決すべき課題を,発明特定事項A〜Gを備えることにより,断熱性に優れ, 「上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成できる」という効果を奏し,上記課題を解決したものであることが記載されている 【0001】 【0 ( 〜012】【0017】【0019】及び【0020】。
, , ) そうすると,本件発明1は,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。また,本件発明2は,上記の本件明細書の本件発明1に係る記載のほか, 【0023】, 【0028】 【0 及び030】に記載され,本件発明3は,上記の本件明細書の本件発明1及び2に係る記載のほか,【0044】に記載されている。
したがって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり,本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号に規定する要件(サポー ト要件)を満たす。
イ(ア) 原告は,本件明細書には,端縁部の下面から上面の頂点部分までの長さを0.1〜1mmとする構成しか記載されていないから, 「凸形状の高さ」が「端縁部の上面の頂部から上面の底部までの距離」を意味するとする解釈をサポートする記載は,本件明細書には存しない旨主張する。
しかし,上記(2)のとおり,本件明細書の記載から「凸形状の高さ」は,「端縁部の上面の頂部から上面の底部までの距離」を意味するものと解される。また,原告の甲6特許に関する主張は,本件特許に関する上記判断を左右するものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(イ) 原告は,本件発明がパラメータ発明に係るサポート要件を満たしていない,本件明細書において,凸形状の高さ及び間隔は,どのような高さ及び間隔であれば,切創等が生じなくなるのか,実施例や比較例等がなく不明であり,本件特許に規定される数値をどのようにして導き出したのかその根拠,理由が不明であるなどと主張する。
しかし,前記(1)イ(ア)のとおり,圧縮されて厚みが薄くなっている(発明特定事項C)のみで凹凸形状が形成されていない突出部の端縁部に比べて,発明特定事項D及びEに規定される数値範囲の凹凸形状が形成されているものの方が,指と端縁部の端面との接触面積が増して指等の怪我が生じにくくなり,怪我防止の効果を奏することが容易に理解できる。
また,発明特定事項D及びEに規定される数値範囲は,当該数値範囲の凹凸形状であれば,指等の怪我防止という効果が生じるが,当該数値範囲の凹凸形状でなければ効果が生じないような数値範囲を規定したものと解する根拠はない。この点について,原告は,発明特定事項D及びEは,拒絶理由を解消するために追加された限定である旨主張するが,そうであるからといって,上記のような臨界的な意義を有するものと理解しなければならないということはできない。
したがって,本件明細書に実施例や比較例,数値範囲の根拠についての説明がな くとも,前記アの判断は左右されない。
(4) 無効理由2-4(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について 前記(2)のとおり,本件発明における「凸形状の高さ」 (発明特定事項D)は, 「凸形状の頂部から凸形状の底部までの距離」を意味していると解され,同発明特定事項は,本件明細書の記載によってサポートされているところ,当初明細書等(甲3)でも同様であるから,同発明特定事項を補正によって追加することが新規事項の追加となることはない。
したがって,原告の主張は理由がない。
3 取消事由2 「特定作用効果」 ( を奏すべきことに関する無効理由1-1〜4に係る判断の誤り)について (1) 被告の拒絶査定に対する審判請求書(甲1)には,「本願発明の突出部の端縁部は他の部分に比して圧縮薄肉化されることによって第一の強度向上が図られており,更にその上面に凹凸形状が形成されることによって第二の強度向上が図られると共に怪我発生防止機能も付与されている。このように本願発明では,突出部の端縁部において二段階の強度向上策が図られているのである。これに対して引用文献1記載の発明では,フランジ部の厚みは放射状の強化部においては局所的に薄肉化されているもののそれ以外の箇所では薄肉化されておらず,フランジ部においては強度が高い部分と低い部分とが周方向に交互に形成されている。」との記載がある。
審判請求書(甲1)の上記記載は,本件発明と拒絶査定の引用文献1(特開2000-313430号公報)記載の発明との構成の違いを説明するためにされたもので, 「引用文献1記載の発明」においては,フランジ部の厚みは薄肉化された部分とされていない部分があり,その結果,フランジ部においては強度が高い部分と低い部分とが周方向に交互に形成されているのに対し,本件発明においては,突出部の端縁部は他の部分に比して全部が圧縮薄肉化されること,及び,その上面に凹凸形 状が形成されることにより,端縁部の強度が向上していることを述べたものと解される。
(2) 本件発明は,「断熱性に優れた発泡積層シートを成形してなる容器において,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体を強固に止着させうる容器の提供」という課題を, 「断熱性に優れ,上面側に凹凸形状を形成させて熱可塑性樹脂フィルムの端縁を上下にジグザグとなるように形成させることにより利用者の怪我などを抑制させ,下面側が平坦に形成されていることから蓋体を外嵌させる際に強固な係合状態を形成」することにより解決したものであるところ, 「本願発明の突出部の端縁部はほかの部分に比して圧縮薄肉化される」こと及び「その上面に凹凸形状が形成される」ことは,端縁部の強度の向上と怪我の発生の防止という効果をもたらすものであって,「本願発明の突出部の端縁部はほかの部分に比して圧縮薄肉化されること」や「その上面に凹凸形状が形成されること」自体は,本件発明の作用効果ではないことは明らかであり,被告が審判請求書(甲1)において上記のとおり記載したからといって,原告が主張する「特定作用効果」を奏することが,本件発明の「発明特定事項(「特定作用効果」を奏するものに限定される)」になると解することはできない。そして,このように解することが禁反言に反するものではない。
したがって,原告が主張する「特定作用効果」を奏することが,本件発明の発明特定事項になることを前提とする無効理由1-1〜4は,いずれも理由がない。
4 取消事由3(突出部の端縁部の構成に関する無効理由3-1及び2に係る判断の誤り)について (1) 無効理由3-1(特許法36条6項2号違反)について ア(ア) 本件発明の発明特定事項Cは,「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となるように,突出部の端縁部において前記熱可塑性樹脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており,」というものであって,@「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という構成と,A「突出部の端縁部において前記熱可塑性樹 脂発泡シートが圧縮されて厚みが薄くなっており」という構成とを, 「ように」で結ぶことで,「容器」に係る物の発明を特定している。
そうすると,発明特定事項Cは,容器」 「 という物の発明の形状又は構造について,@とAの双方を構成として備えていなければならないことを規定しているといえる。
ここで,@とAとが「ように」で結ばれていることから,日本語としては,(A)端縁部において上記シートを圧縮して厚みを薄くする工程を行い,その結果として端縁部の上面が上記のとおり下位となることを規定していると解することも,(B)厚みが薄くなっている状態の一態様として,端縁部の上面が上記のとおり下位となっていることと解することもできる。そこで本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書の【0019】には,端縁部の圧縮により,前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる旨が記載されているが,本件発明の技術的意義,すなわち端縁部の上面側に凹凸形状を形成し,熱可塑性樹脂フィルムの端縁をジグザグとすることで端縁部での怪我を防止しつつ,端縁部の下面側は平坦にすることで蓋体を強固に止着させ得るようにすることからすると,端縁部が圧縮により強度が向上しており,また, 「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」構成を有していればよいのであって,「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」構成が圧縮のみにより得られることに,技術的意義があるとは認められず,「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」構成が圧縮のみによらずして得られる場合を,発明特定事項Cが排除していると解することはできない。
(イ) したがって,本件発明の発明特定事項Cは,上記(B)のとおり解されるのであって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件(明確性要件)を満たしている。
イ 原告は,本件審決は,本件明細書の【0019】の記載から, 「圧縮」という表現に関し,恣意的な操作を行って,不合理な結論を導いている,本件審決は, 本件明細書の【0019】の記載文言から,圧縮を原因として,端縁部15の上面が収容凹部の開口縁13近傍の突出部14の上面に比べて下位となることが記載されていると認定しているなどと主張する。
しかし,本件発明の発明特定事項Cが明確であることは,前記アのとおりであって,これと結論を同じくする本件審決の判断に誤りがあるということはできない。
(2) 無効理由3-2(特許法17条の2第3項及び同法36条6項1号違反)について 前記(1)のとおり,本件発明の「前記突出部の端縁部の上面が収容凹部の開口縁近傍の突出部の上面に比して下位となる」という構成は,圧縮のみに基づくものに限られない。
そして,本件明細書の図3b及び図4には,端縁部の下面の位置をその内側の突出部の下面の位置よりも低くする構成が記載されており,容器の端縁部が圧縮された状態となっていることは,本件明細書の【0019】に記載されているから,本件発明の発明特定事項Cは,発明の詳細な説明に記載されたものであると認められる。
また,本件明細書の図3b及び図4は,本件特許の特許願(甲3)に添付されていたものであって,容器の端縁部が圧縮された状態となっていることは,上記特許願に添付されていた明細書の【0019】に記載されているから,発明特定事項Cについての補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって,無効理由3-2には理由がない。
結論
以上によると,原告の主張する取消事由にはいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
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