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事件 |
平成
28年
(ワ)
38103号
損害賠償請求事件
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5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり | |
裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2018/10/17 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,原告に対し,1085万7600円及びこれに対する平成28年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 10 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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構成
本発明の一実施例に係る太陽光発電装置100の構成について図1を用いて説明25 する。太陽光発電装置100は,太陽光発電パネル101及びパネル載置架台10 3を有している。… 19 【0027】 パネル載置架台103は,足場パイプである単管を組み合わせて形成されている。 パネル載置架台103は,単管の組合せにより形成される太陽光発電パネル載置面 P103に沿って,太陽光発電パネル101を載置する。… 5 【0028】 また,パネル載置架台103は,基礎部材103a,柱部材103b,及び接続 部材103cを有している。…」 「【0030】 …また,接続部材103cは,基礎部材103aに内包されている。つまり,接10 続部材103cは,基礎形成用溝の内部で,柱部材103bの下部を接続する。 【0031】 このように,隣接する柱部材103bを接続する接続部材103cを基礎部材1 03aに内包させることによって,柱部材103bと基礎部材103aとを強固に 一体とできる。これにより,パネル載置架台103に太陽光発電パネル101を載15 置した際の強度,特に風荷重に対する強度を上げることができる。」 「【0034】 なお,足場パイプで組み上げられた構造物は一時的な構造物として施工される一 方,基礎部材103aは恒久的に構造物として施工される。このため,足場パイプ で組み上げられた一時的な構造物と,恒久的な構造物である基礎部材103aとを20 一体とするとの発想は生まれてこなかった。太陽光発電装置100では,一時的な 構造物と恒久的な構造物とを一体とすることによって,施工コストの低減を実現す るとともに,施工の簡略化を実現している。 【0035】 |
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太陽光発電装置100の設置方法
25 次に,太陽光発電装置100の設置方法について図2〜図4を用いて説明する。 図2Aに示すように,太陽光発電装置100を設置する施工者は,地面に基礎部材 20 103aを形成するコンクリートを流し込むための基礎形成用溝Dを形成する。こ こで,施工者は,一の太陽光発電装置100に対して基礎形成用溝Dを,2本,平 行に形成する。なお,基礎形成用溝Dの形状については,特に限定されないが,一 般的には,断面がほぼ矩形状である。 5 【0036】 次に,図2Bに示すように,施工者は,形成した基礎形成用溝Dに,所定の厚さ で砕石を敷き砕石層Sを形成する。さらに,施工者は,砕石層Sに転圧する。なお, 図2Bは,図2Aに示す基礎形成用溝Dの側面に沿って基礎形成用溝Dの内部を見 た断面の一部を示している。 10 【0037】 図3Aに示すように,施工者は,基礎形成用溝に沿って柱部材103bを配置し, パネル載置架台103を形成する。図3Aで形成するパネル載置架台103を図3 Bに示す。… 【0038】15 また,図4Aに示すように,施工の際,施工者は,柱部材103b一端面PEが 基礎形成用溝Dの砕石層Cの上面PUに頭接するように配置する。また,施工者は, 基礎形成用溝Dの内部に接続部材103cが位置するように,接続部材103cを 用いて隣接する柱部材を接続する。このように基礎形成用溝Dの内部に接続部材1 03cを位置させることによって,接続部材103cが,基礎部材103aの内部20 に位置することとなる。これにより,パネル載置架台103と基礎部材101とを 強固に一体にできる。よって,パネル載置架台103に太陽光発電パネル101を 載置した際の太陽光発電装置100の強度,特に風荷重に対する強度を上げること ができる。」 ? 本件発明の概要25 前記前提事実?イの本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載,前記?認定の本 件明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面に照らせば,本件発明の概要は次のと 21 おりであると認められる。 ア 本件発明は,太陽光発電装置に関し,特に,基礎部材を有するものに関する (【0001】)。 イ 従来技術の太陽電池パネル架台ユニット10では,基礎ブロック1が支柱2 5 に対して個別に形成され,また,基礎ブロック1と支柱2とは,アンカー8で固定 されていた。アンカー8によって基礎ブロック1と支柱2とを固定しただけでは, 場合によっては,太陽電池パネル架台ユニット10に取り付けられた太陽電池パネ ル5が受ける風荷重に耐えられず,また,基礎ブロック1が支柱2に対して個別に 形成されていたため,太陽電池パネル架台ユニット10の施工が煩雑になる,とい10 う課題があった(【0008】,【0009】)。 ウ 本件発明は,従来技術の太陽電池パネル架台ユニット10に上記イのような 課題があったことに鑑み,施工が容易で高い強度を有する太陽光発電装置を提供す ることを目的としてされたものであり(【0010】),太陽光発電パネル載置架 台を形成する基礎部材として,支柱2ごとに個別に形成される従来技術の基礎ブロ15 ック1に代えて,隣接する柱部材を接続する接続部材をコンクリートに内包して形 成される基礎部材に係る構成を採用したものである。 エ すなわち,本件発明は,太陽光発電パネル載置架台を有する太陽光発電装置 の施工方法について,基礎部材の形成過程として,「前記基礎部材を形成するため に地面に形成された基礎形成用溝に沿って前記柱部材を配置し,前記基礎形成用溝20 の内部において,隣接する前記柱部材を前記接続部材で接続し,前記基礎形成用溝 に所定のコンクリートを流し込んで,前記接続部材をコンクリートに内包する基礎 部材を形成し」(構成要件BないしD)という構成を採用したものであり,それに よって,基礎部材と柱部材とを強固に一体にすることができ,特に風荷重に対する 高い強度を有する太陽光発電装置を簡単な作業で容易に設置することができるとい25 う作用効果を奏する(【0020】,【0021】,【0031】,【003 8】)。 22 また,本件発明は,構成要件Aに示されるように,柱部材及び接続部材がいずれ も足場パイプにより形成されることを特徴としており,それによって,低コストな 太陽光発電装置を提供するとともに,施工を簡略化することができる(【0014】 ないし【0017】,【0034】)。 5 2 被告各方法について ? 被告方法1 前記第2の2前提事実?アのとおり,被告方法1の概要は別紙被告方法1説明書 記載の工程1ないし6のとおりであり,これを本件発明と対比させて分説すると, 次のとおりである(以下,分説に係る各構成を符号に対応して「構成1a」などと10 いう。)。 1a 太陽光発電パネル及びこれを載置する太陽光発電パネル載置架台であって, 地上梁,支柱となる単管パイプ及びこれを接続する長尺単管パイプを有する太陽光 発電パネル載置架台を有する太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法 であって,15 1b 地上梁を形成するために,木製の型枠板を互いに適当な距離を隔てて対向 するように起立配置することで地上に形成された底面が地面に接する型枠に沿って, 支柱となる単管パイプを配置し, 1c 型枠の内部において,隣接する支柱となる単管パイプを長尺単管パイプで 接続し,20 1d 型枠に,所定のコンクリートを流し込んで,長尺単管パイプをコンクリー トに内包する地上梁を形成し, 1e 地上梁の上に,太陽光発電パネル載置架台を生成し, 1f 生成した太陽光発電パネル載置架台に前記太陽光発電パネルを載置するこ と,によって太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法。 25 ? 被告方法2 前記第2の2前提事実?イのとおり,被告方法2の概要は別紙被告方法2説明書 23 記載の工程1ないし7のとおりであり,これを本件発明と対比させて分説すると, 次のとおりである(以下,分説に係る各構成を符号に対応して「構成2a」などと いう。)。 2a 太陽光発電パネル及びこれを載置する太陽光発電パネル載置架台であって, 5 地中梁,支柱となる単管パイプ及びこれを接続する長尺単管パイプを有する太陽光 発電パネル載置架台を有する太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法 であって, 2b 地中梁を形成するために地面に形成された溝に沿って支柱となる単管パイ プを挿入し,ユンボ(パワーショベル)で打撃して地中に差し込むことで自立させ10 て配置し, 2c 溝の内部において,隣接する支柱となる単管パイプを長尺単管パイプで接 続し, 2d 溝に,所定のコンクリートを流し込んで,長尺単管パイプをコンクリート に内包する地中梁を形成し,15 2e 地中梁の上に,太陽光発電パネル載置架台を生成し, 2f 生成した太陽光発電パネル載置架台に太陽光発電パネルを載置すること, によって太陽光発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法。 3 争点1(被告各方法は,文言上,本件発明の技術的範囲に属するか) ? 争点1-1(被告方法1は構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」20 を充足し,構成要件Bを前提とする構成要件A,CないしEを充足するか) ア 「地面に形成された基礎形成用溝」の意義 (ア) 構成要件Bは,「前記基礎部材を形成するために地面に形成された基礎形成 用溝に沿って前記柱部材を配置し」というものであるところ,一般に,「地面」に は「地の表面」という字義があり,「溝」には「細長いくぼみ」という字義がある25 ことからすると,文言上,底面が地面に接するように地上に形成された型枠であっ ても,「地面に形成された基礎形成用溝」に当たり得る。 24 また,上記のとおり,「基礎形成用溝」は,基礎部材を形成するためのものであ るから,コンクリートを流し込み基礎部材を形成することができる形状のものであ ることが必要であるものの,本件明細書に,それが地面を掘って地中に形成された ものでなければならないとする説明は見当たらない。 5 そうすると,底面が地面に接するように地上に形成された型枠で,そこにコンク リートを流し込み基礎部材を形成することができるものであれば,構成要件Bの 「地面に形成された基礎形成用溝」に含まれると解するのが相当である。 (イ) これに対し,被告は,構成要件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」は, 地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝であると解すべきであり,その理由と10 して,@上記の文言,【0035】,【0036】の記載並びに図4A及びBから 明らかであること,A本件発明は,太陽光発電装置を地面から引き抜こうとする力 への対策として考案されたものであり,基礎形成用溝が地上に形成される場合には, 上記の対策として機能しないこと,B基礎形成用溝を地上に形成するためには,地 中に形成するのと比べて余分の作業が必要になり,かつ,相応の追加の部材も必要15 になるから,「施工コストの低減」,「施工の簡略化」といった【0021】, 【0034】の記載の趣旨に反することなどを主張する。 しかしながら,@について,文言上,底面が地面に接するように地上に形成され た型枠であっても,「地面に形成された基礎形成用溝」に当たり得ることは上記の とおりであり,また,被告が指摘する本件明細書の説明及び図面は,いずれも実施20 例を示すものにすぎず,仮に,地面を掘って地中に形成された基礎形成用溝を開示 するものであったとしても,この説明によって,基礎形成用溝を地中に形成される ものに限定されるということもできない。 また,Aについて,本件発明は,前記1?認定のとおり,従来技術の太陽電池パ ネル架台ユニット10では,アンカー8によって基礎ブロック1と支柱2とを固定25 しただけであったため,場合によっては,太陽電池パネル架台ユニット10に取り 付けられた太陽電池パネル5が受ける風荷重に耐えられず,また,基礎ブロック1 25 が支柱2に対して個別に形成されていたため,太陽電池パネル架台ユニット10の 施工が煩雑になるという課題があったことに鑑み,施工が容易で高い強度を有する 太陽光発電装置を提供することを目的としてされたものであり,その作用効果は, 従来技術の基礎ブロック1に代えて,構成要件BないしDに示されているように, 5 隣接する柱部材を接続する接続部材をコンクリートに内包して形成される基礎部材 に係る構成を採用することによって,基礎部材と柱部材とを強固に一体にし,特に 風荷重に対する高い強度を有する太陽光発電装置を簡単な作業で容易に設置する点 にあるから,このような従来技術の課題,本件発明の目的,構成,作用効果に照ら せば,本件発明は太陽光発電装置を地面から引き抜こうとする力への対策として機10 能するか否かという観点から規定されているものではないのであって,上記の機能 を有するように「地面に形成された基礎形成用溝」について限定解釈をすべきであ るということはできない。 さらに,Bについて,基礎形成用溝を地上に形成することによって相応の作業や 部材が必要になるとしても,従来技術のように基礎ブロック1を複数形成すること15 による施工の負担は軽減されるから,本件発明の作用効果を損なうものともいえな い。 したがって,被告の主張は採用することができない。 イ 被告方法1の構成 前記2?のとおり,被告方法1は,構成1bを有する,すなわち,木製の型枠板20 を互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することで,地上に型枠を形 成し,この型枠は,地上梁を形成するためのものであり,底面が地面に接するもの であるところ,上記の地上梁は構成要件Bの「基礎部材」に相当するから,構成要 件Bの「地面に形成された基礎形成用溝」を充足する。 ウ 小括25 被告方法1のその他の構成は前記2?のとおりであり,本件発明の「柱部材」に 相当すると認められる支柱となる単管パイプ及び本件発明の「接続部材」に相当す 26 ると認められる長尺単管パイプは,いずれも足場パイプによって形成されていると 認められるから,被告方法1は,本件発明の構成要件を全て充足する。 よって,被告方法1は,本件発明の技術的範囲に属する。 ? 争点1-2(被告方法2は構成要件Bの「柱部材を配置し」を充足し,構成 5 要件Bを前提とする構成要件A,CないしEを充足するか) ア 「柱部材」の意義 (ア) 「柱部材」は,文言上,柱となる部材を意味するところ,本件明細書に,こ れを限定して解釈すべきことを示す説明等は見当たらないから,柱となる部材であ れば,どのように直立状態を維持するかにかかわらず,これに該当すると解するの10 が相当である。 (イ) 被告は,「柱部材」は,その性質上,配置された結果,直立状態に維持され るものでなければならないが,単に配置しただけでは直立状態を維持できないから, 構成要件Bの「柱部材を配置し」の意義は不明確であるとして,【0037】, 【0038】の記載を参酌し,「柱部材を配置し」については,各柱部材を,同一15 列の隣接するもの同士及び異なる列の対応するもの同士との間に,別途,何らかの 梁部材を掛け渡し,かつ各柱部材の下端部が基礎形成用溝の底面,すなわち,砕石 層の上面に当接した状態とすることを意味すると解すべきであると主張する。 しかしながら,構成要件Bは「基礎形成用溝に沿って前記柱部材を配置し」と規 定するにとどまり,柱部材の配置方法を具体的に特定して規定するものではないか20 ら,柱部材がどのように直立状態を維持するかにかかわらず,基礎形成用溝に沿っ て配置されていればこれを充足すると解するのが規定上自然である。 また,被告の指摘する【0037】,【0038】の記載は,本件発明の実施例 を示すものにすぎず,構成要件Bの「柱部材を配置し」を上記各段落に記載された 形態のものに限定する根拠として十分なものではない。 25 したがって,被告の主張は採用することができない。 イ 被告方法2の構成 27 前記2?のとおり,被告方法2は,構成2bを有する,すなわち,地中梁を形成 するために地面に形成された溝に沿って支柱となる単管パイプを挿入し,ユンボ (パワーショベル)で打撃して地中に差し込むことで自立させて配置するものであ るところ,上記の地中梁は構成要件Bの「基礎部材」に相当するから,構成要件B 5 の「基礎形成用溝に沿って柱部材を配置し」を充足する。 ウ 小括 被告方法2のその他の構成は前記2?のとおりであり,本件発明の「柱部材」に 相当すると認められる支柱となる単管パイプ及び本件発明の「接続部材」に相当す ると認められる長尺単管パイプは,いずれも足場パイプによって形成されていると10 認められるから,被告方法2は,本件発明の構成要件を全て充足する。 よって,被告方法2は,本件発明の技術的範囲に属する。 4 争点3(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか) ? 争点3-1(本件発明は本件出願日前の原告関連会社による太陽光発電装置 の施工により新規性を欠くか)15 ア 証拠(乙4の7,15の3)及び弁論の全趣旨によれば,@本件出願日であ る平成24年8月2日より前の同年6月8日に発行された日本経済新聞には,山王 自治会装置について,「…近畿北都住設…のX@は明かす。建設現場の足場用パイ プで組んだ基礎と架台も工費節約に貢献した。基礎は地下1メートルまで掘削して 設置し,セメントで固めた。」という記事とともに,足場用パイプを組んで形成さ20 れた架台上に太陽光発電パネルが載置された太陽光発電装置の地上部分の写真が掲 載されていること,A原告の関連会社であるアルバテックが本件出願日より前に上 記@に係る山王自治会装置の施工をしたこと,Bアルバテックのウェブサイトには, 太陽光発電パネル載置架台の施工方法として,原告が特許取得した本件特許に係る 施工方法が「キャストイン工法」という名称で紹介されていることが認められる。 25 イ しかしながら,前記アBのアルバテックのウェブサイトには,山王自治会装 置が「キャストイン工法」によって施工されたとは記載されていないところ,前記 28 ア@の新聞記事及び写真によっても,山王自治会装置の地下部分の構成は明らかで ないから,これらによっても,山王自治会装置が本件特許に係る施工方法である 「キャストイン工法」によって施工されたことを認めるに足りない。 また,この点について,原告は,山王自治会装置の施工の際には,柱部材を配置 5 する位置に杭基礎を打設した後,杭基礎に柱部材を固定することによって,太陽光 発電パネル載置架台を施工したと主張しており,本件全証拠によっても,この原告 の主張を排斥することはできない。 ウ 以上によれば,本件発明が,本件出願日より前に,日本国内において公然実 施された発明であるとは認められないから,原告関連会社による山王自治会装置の10 施工により新規性を欠くとはいえない。 ? 争点3-2(本件発明は特開2011-181670号公報等により進歩性 を欠くか) ア 乙1発明 (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である乙1公報には,次の15 記載があり,図2は,別紙「図面(乙1公報図2)」のとおりである(乙1)。 a 技術分野 「【0001】 本発明は,防風壁を配置した大規模太陽光発電システムの設計法に関する。」 b 発明を実施するための形態20 「【0023】 図2は,本実施形態に係わる架台の概要を表す部分斜視図である。架台30は, 小型の基礎ブロック31と,基礎ブロック上に立てられた支柱32と,支柱の上端 に長方形状に連続して配置されたフレーム材33とから主に構成されている。その フレーム材上に配置した受け材34で太陽電池アレイ20を支持している。 25 【0024】 基礎ブロック31の大きさは,架台30が風圧荷重等で転倒しないように一定の 29 大きさ(重量)を確保する必要がある。基礎ブロック31の材質は特に限定されな いが,一定の重量のブロックを安価に施工できる点から鉄筋コンクリート製が好適 に用いられる。…また,基礎ブロック下に基礎梁を設けてそれぞれを接続してもよ い。 5 【0025】 …支柱32,フレーム材33,受け材34の材質は特に限定されないが,鋼材や 単管パイプが好適に用いられる。」 (イ) 上記(ア)a,bの各記載及び図2によれば,乙1公報には,次の乙1発明が 記載されていると認められる。 10 A1 太陽電池アレイ20及び前記太陽電池アレイ20を載置する架台30であ って,基礎ブロック31,単管パイプにより形成される支柱32及び基礎ブロック 31の下で基礎ブロック31同士を接続する基礎梁を有する架台30を有する大規 模太陽光発電システムの施工方法であって, E1 基礎ブロック31上に架台30を生成し,15 F1 生成した架台30に太陽電池アレイ20を載置すること,によって大規模 太陽光発電システムを施工する大規模太陽光発電システムの施工方法。 (ウ) 乙1発明と本件発明を対比すると,乙1発明の「太陽電池アレイ20」は本 件発明の「太陽光発電パネル」に,乙1発明の「架台30」は本件発明の「太陽光 発電パネル載置架台」に,乙1発明の「基礎ブロック31」は本件発明の「基礎部20 材」に,乙1発明の「支柱32」は本件発明の「柱部材」に,乙1発明の「基礎梁」 は本件発明の「接続部材」に,それぞれ相当すると認められる。 したがって,本件発明と乙1発明とは,太陽光発電パネル及び前記太陽光発電パ ネルを載置する太陽光発電パネル載置架台であって,基礎部材,足場パイプにより 形成される柱部材及び接続部材を有する太陽光発電パネル載置架台を有する太陽光25 発電装置を施工する太陽光発電装置の施工方法であって,前記基礎部材上に前記太 陽光発電パネル載置架台を生成し,生成した前記太陽光発電パネル載置架台に前記 30 太陽光発電パネルを載置すること,によって前記太陽光発電装置を施工する太陽光 発電装置の施工方法である点において一致する。 他方,本件発明と乙1発明とは,次の各点において相違する。 a 本件発明の「接続部材」は「足場パイプにより形成される」(構成要件A) 5 のに対し,乙1発明の「基礎梁」は足場パイプにより形成されることが明示されて いない点(相違点1) b 本件発明では,「前記基礎部材を形成するために地面に形成された基礎形成 用溝に沿って前記柱部材を配置し,前記基礎形成用溝の内部において,隣接する前 記柱部材を前記接続部材で接続し,前記基礎形成用溝に所定のコンクリートを流し10 込んで,前記接続部材をコンクリートに内包する基礎部材を形成」(構成要件Bな いしD)するのに対し,乙1発明では,これらに対応する「基礎ブロック31」の 形成過程が明示されていない点(相違点2) イ 乙2公報 (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である乙2公報には,次の15 記載があり,図1,図2,図4は,別紙「図面(乙2公報)」記載1ないし3のと おりである(乙2)。 a 発明の属する技術分野 「【0001】 本発明はビニールハウス,ベース・ベンチ(鉢載せベンチ)などの簡易建築物の20 基礎構造に関する。」 b 発明が解決しようとする課題 「【0003】 …独立基礎を構築するには,地面掘削,型枠組み,コンクリート流し込み,型枠 撤去の施工を要し,工期が長くなる。また,ベース・ベンチをコンクリートブロッ25 クや角材に載せるだけでは,横荷重に弱いという欠点がある。そこで,本発明の目 的は,@簡易ハウスにおいて工期の短い柱基礎構造,A横荷重に強い柱基礎構造を 31 提供することにある。」 c 発明の実施の形態 「【0009】 …図1は本発明に係るビニールハウスの正面図であり,ビニールハウス1は,本 5 発明の基礎構造10,10上に立設した主柱2,2と,支柱2,2上に掛け渡した アーチ屋根3,間柱5・・・(・・・は複数本を示す。以下同様。)と ,横桟 6・・・と,引き戸7,7と,図示せぬビニールシートとからなる。 【0010】 図2は本発明に係る基礎構造(第1実施例)を示す正面図(図1の要部拡大図)10 であり,主柱2を支える基礎構造10は,支柱11と,この支柱11の下部に取付 けた座板20と,支柱同士を連結するための長尺材30及びくさび31とからな る。」 「【0012】 以上の構成からなる基礎構造(第1実施例)の施工手順を次に説明する。図4は15 図1の4矢視図兼作用説明図である。地面に溝40を堀り,溝40の所定箇所に栗 石41,41を敷く。栗石41,41の上にモルタルなどの半固形物42,42を 載せる。予め,座板20と支柱11とを組んでおき,これらを半固形物42,42 に載せる。このときに,スパイク部22・・・が良好に半固形物42,42に噛み 込む。 20 【0013】 丸棒又はパイプなどの長尺材30を支柱11,11に貫通させて取付け,くさび 31,31を打込んで固定する。土43で溝40を埋め戻す。これで,支柱11の 地中部15,長尺材30,くさび31及び座板20が地中に埋ったことにある。半 固形物42,42がある程度固まったら,支柱11,11上に主柱2,2を載せれ25 ばよい。」 (イ) 上記(ア)aないしcの各記載,図2,図4によれば,乙2公報には,被告の 32 主張する乙2記載事項,すなわち,「簡易建築物の基礎施工方法であって,基礎構 造10を形成するために地面に形成された溝40に沿って支柱11を配置し,前記 溝40の内部において,隣接する前記支柱11をパイプ製の長尺材30で接続し, 前記溝40に土43を埋め戻して,長尺材30を土43に内包する基礎構造10を 5 形成すること」が記載されていると認められる。 ウ 乙3公報 (ア) 本件特許の出願前に日本国内で頒布された刊行物である乙3公報には,次の 記載があり,第1図ないし第5図は,別紙「図面(乙3公報)」記載1ないし5の とおりである(乙3)。 10 a 産業上の利用分野 「本発明は,建築物の基礎施工法に関するが,就中,軟弱地盤にコンクリート建 築物を建築するに適した基礎施工法に関する。」(第1列第22〜24行目) b 施工法 「地中梁仮止め工程:各縦向止着縁102をボルトで仮止めして構成したジヨイ15 ント金具Aの各横向差込孔3に各地中梁4の端部を差込んでボルトで仮止めする (第2図)。 据置工程:仮止め状態のジヨイント金具A及び地中梁4を地盤の掘削溝5に仮据 置して水平角度を調べ,適正な水平角度になつたら正式に据置する(第3図)。 柱打込み工程:ついでジヨイント金具Aの縦向貫通孔2に柱6を貫通せしめ,地20 中に打込み,打込み深さ及び垂直角度が適正か否か調べるが,とくに打込み深さ地 盤の硬軟の度合に応じて調節する(第4図)。 地中梁本止め工程:柱6の打込み深さと垂直角度が適正であつたら,ジヨイント 金具A自体及びジヨイント金具Aと地中梁4とを仮止めしているボルトを締めなお して本止めする(第4図)。そして,不図示であるが,地中梁4を被覆する鉄筋,25 柱6を囲む鉄筋などを所定の間隔ごとに配設し,建築物の壁内部に埋設する鉄筋を 地中梁4上に立設する。 33 基礎コンクリート打込み工程:上記のように本止め工程が終了したら,掘削溝5 に基礎コンクリート7を打込む(第4図)。 土盛り工程:基礎コンクリート7の打込みが終了したら土盛り8を行なつて工事 を終る(第4図,第5図)。」(第4列第34行目〜第5列第16行目) 5 (イ) 上記(ア)a,bの各記載,第1図ないし第5図によれば,乙3公報には,被 告の主張する乙3記載事項,すなわち,「建築物の基礎施工方法であって,建築物 の基礎を形成するために地面に形成された掘削溝5に沿って柱6を配置し,前記掘 削溝5の内部において,隣接する前記柱6を地中梁4でジョイント金具Aにより接 続し,前記掘削溝5に基礎コンクリート7を流し込んで,前記地中梁4を内包する10 建築物の基礎を形成すること」が記載されていると認められる。 エ 相違点に係る構成の容易想到性(乙1発明と乙2記載事項及び乙3記載事項 等の組合せ) 被告は,乙1発明に乙2記載事項を適用するに当たり,乙3記載事項を参酌して 取り入れることは,乙4記載事項からうかがい知ることができる本件出願日当時の15 技術水準を考慮すれば,当業者が容易に推考し得たと主張しており,その趣旨は必 ずしも明らかでないが,相違点1及び2に係る本件発明の構成は,乙1発明の基礎 ブロック31の形成過程に乙2記載事項を適用するに当たり,乙2記載事項である 溝40に土43を埋め戻して基礎構造10を形成する構成を,乙3記載事項である 基礎コンクリート7を流し込む構成に置き換えて適用することによって,当業者が20 容易に想到し得たと主張するものと解される。 しかしながら,乙2公報記載の発明は,「独立基礎を構築するには,地面掘削, 型枠組み,コンクリート流し込み,型枠撤去の施工を要し,工期が長くなる」(段 落【0003】)ことなどを課題とし,「簡易ハウスにおいて工期の短い柱基礎構 造…を提供すること」(同段落)を目的の一つとしてされたものであり,工期を短25 縮するためにあえて養生に時間を要するコンクリートではなく土43を溝40に埋 め戻す構成を採用したものであると認められるから,乙1発明の基礎ブロック31 34 の形成過程に乙2記載事項を適用するに当たり,土43を溝40に埋め戻す構成に 代えて,コンクリートを流し込む構成を採用することについては,その動機付けを 阻害する要因があるといえる。 また,乙3公報は,軟弱地盤にコンクリート建築物を建築するに適した基礎施工 5 法に関するものであり(第1列第22〜24行目),コンクリート建築物という堅 固な建築物を軟弱地盤に建設する技術に関するものであるのに対し,乙1発明は, 太陽光発電装置の設計に関するものであって,単管パイプで形成される簡易な構成 を含むものであり,また,乙2公報も,簡易建築物の基礎構造に関するものである から,いずれも乙3公報とは属する技術分野や解決しようとする課題が異なるとい10 うことができ,乙1発明の基礎ブロック31の形成過程に乙2記載事項を適用する に当たり,乙3記載事項を参酌する動機付けがあるとはいい難い。 さらに,被告が指摘する新聞記事(乙4)の中には,山王自治会装置の施工につ いて,足場パイプで基礎や架台を組んだことや,地下を掘削して基礎を形成し,セ メントで固めたことなどが記載されているものの,太陽光発電装置の地下部分の構15 成が明らかでないことは前記?イで述べたとおりであり,隣接する柱部材を接続す る接続部材をコンクリートに内包する基礎部材に係る構成を開示するものではなく, 示唆するものでもない。 したがって,乙1発明に乙2記載事項を適用するに当たって乙3記載事項を参酌 することなどによって,相違点1及び2に係る本件発明の構成を当業者が容易に想20 到できたと認めることはできない。 オ 相違点に係る容易想到性(乙1発明と乙5実施事項の組合せ) また,被告は,相違点1及び2に係る本件発明の構成は,乙5実施事項,すなわ ち,乙5説明書に記載された平成24年5月頃の実施事項を乙1発明に適用するこ とによって,当業者が容易に推考し得た旨を主張する。 25 しかしながら,乙5説明書は,証拠説明書において,被告訴訟代理人弁護士が本 件訴訟提起後の平成29年3月10日に作成した書面であるとされており,施工業 35 者名及び施工時期は記載されているものの,その作成経緯及び作成状況は明らかで なく,添付されている写真も建屋完成後に地上部分を撮影したものにすぎないから, 被告の主張する乙5実施事項,すなわち,「パイプづくりの簡易型駐車場建屋の基 礎構造の施工方法であって,地面に溝104a,104b,104c,105a, 5 105bを掘り,溝104a,104b,104c,105a,105bに支柱パ イプ108を配置し,溝104a,104b,104c,105a,105bの内 部で隣接する支柱パイプ108を水平な接続パイプ106a,106b,106c, 107a,107bで固定し,溝104a,104b,104c,105a,10 5bを生コンで埋め戻すこと」を客観的に裏付けるものではない。 10 また,原告は,乙5説明書に記載されているような工作物を作る場合,安価で一 般的に用いられる方法は,仮設資材の固定ベースに足場パイプを差し込み,鉄ビス で固定した上でコンクリートを打設する方法であると主張しているところ,乙5説 明書その他本件全証拠によっても,この工法によることの可能性を排斥することは 困難である。 15 したがって,被告の主張する乙5実施事項を認めることはできないから,上記の 被告の主張は前提を欠き,採用することができない。 カ 小括 以上によれば,本件発明は,当業者が本件出願日当時乙1発明等に基づき容易に 発明をすることができたものとは認められないから,乙1発明等に基づき進歩性を20 欠くとはいえない。 5 争点4(被告による被告各方法の使用は原告の実施許諾による通常実施権に 基づくものか) ? 証拠(甲24,25,乙19,21ないし25)及び弁論の全趣旨によれば, @被告は,平成25年7月以降,原告から購入した資材を用いて約30件の太陽光25 発電装置を施工したこと,A被告の上記@の施工について,原告は,現場を視察し, 本件特許に係る施工を助言するなどしており,特段異議を述べることはなかったこ 36 と,B原告は,平成25年12月15日,第三者との間で,本件特許権の実施許諾 契約を締結しているが,その際,契約書が作成され,実施料について,原告から資 材を購入する場合はその代金に含める形で支払われ,それ以外の場合は設置する太 陽光パネルの出力に応じた金額が支払われる旨の合意がされていること,C被告は, 5 平成28年4月から同年7月頃まで,本件土地1において,原告の関連会社である アルバテックから購入した資材を用いて,被告方法1により太陽光発電装置を施工 したが,その際,原告が現場を視察することはなく,本件特許に係る施工を助言す ることもなかったこと,D原告は,本件土地2における施工について被告に相談さ れ,現場を視察したが,その後はどちらからも同施工について連絡することがなく,10 被告は,同年6月から同年7月頃まで,本件土地2において,丸文から購入した資 材を用いて,被告方法2により太陽光発電装置を施工したこと,E原告は,同月1 9日付け通知書において,被告に対し,本件土地2及びその他の土地における被告 の施工は,本件特許権を侵害するものであるなどとして,施工の中止等を求めたこ とが認められる。 15 ? しかしながら,上記?の認定事実によっても,被告各方法の使用についての 原告による本件特許権の実施許諾があったと認めることはできず,他にこれを認め るに足る証拠はない。 ?ア この点について,被告は,前記?@及びAの事実に照らせば,原告は,被 告に対し,本件特許権の実施を許諾していることが推認される旨主張する。 20 しかしながら,前記?Bのとおり,原告が本件特許権の実施許諾をした場合には 実施料の合意がされて契約書も作成された例があるところ,前記?@の施工(以下 「従前の施工」という。)において,そのような明確な合意がされたことや契約書 が作成されたことはうかがわれず,その後これらがされたとも認められない。そし て,本件各土地における被告各方法の使用においては,従前の施工と異なり,原告25 から資材の購入がされることはなく,原告による施工の助言などがされることもな かったのであるから,仮に従前の施工について原告による何らかの許諾があると認 37 められるとしても,このことによって,被告各方法の使用について,実施許諾があ ったと推認することはできない。 イ さらに,被告は,平成27年の年末に,原告に資材の値下げを要求したとこ ろ,原告から,一定以上の値下げには対応できないため,被告が他社から資材を購 5 入することもやむを得ないとの趣旨の説明がされ,今後の太陽光発電装置の施工に 関しても,被告の施工方法等について特段の異議を述べないとの趣旨を伝えられた ことを指摘するが,被告が平成27年末に原告から伝えられたとする内容は極めて 曖昧である上,前記?Bの事実に照らし,資材の提供や施工の助言もない場合にま で原告が本件特許権の実施を許諾していたとはいい難い。 10 ウ また,被告は,本件土地1における施工の際には,原告の関連会社であるア ルバテックより資材を購入している旨を指摘するが,アルバテックから資材を購入 する場合を原告から資材を購入する場合と同視し得るかを措くとしても,原告によ る施工の助言などの関与があったことは認められないのであって,被告の上記指摘 に係る事実が原告による実施許諾を基礎付ける事情となるということはできない。 15 エ したがって,被告の主張は採用することができない。 ? 以上より,被告による被告各方法の使用は原告の実施許諾による通常実施権 に基づくものであったとはいえない。 6 争点5(損害の発生の有無及びその額) ? 原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金20 額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440 0円を民法709条所定の損害であると主張する。 しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな25 いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である と認めることはできない。 38 ? 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1 02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり, これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許 5 法102条1項による損害額であると主張する。 しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装 置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり, これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本 件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の10 額を算定する根拠として不十分である。 その他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を 認定することはできない。 ?ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力115 kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗 じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。 イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1 5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契 約を締結しており,同契約3条?において,実施料については,本件特許に係る施20 工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた 額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高 額にすぎて不相当であると認めることはできない。 したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力 1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に25 よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの が相当である。 39 そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実? のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102 条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84. 24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k 5 wを乗じた833万0400円の合計)である。 ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる 旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。 10 第5 結論 以上によれば,原告の請求は,被告に対し,1085万7600円及びこれに対 する不法行為後の日であり,訴状送達日の翌日である平成28年12月14日から 支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があ るから,この限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文の15 とおり判決する。 |
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山田真紀裁判官25棚橋知子40裁判官西山芳樹541(別紙)当事者目録原告株式会社近畿北都住設5同訴訟代理人弁護士五十部紀英同八木田大将同大橋史典同堀向良介同田島清二10同訴訟代理人弁理士佐々木康同訴訟復代理人弁護士柳澤圭一郎同橋紗織同梶田慎介被告有限会社斉藤ハウジングサービス15同訴訟代理人弁護士高橋明人同片山有里子42(別紙)物件目録は省略543(別紙)被告方法1説明書工程1いずれも適当な間隔で直交クランプを仮止めしてなる2本の長尺単管パ5イプを,適当な距離を隔てて平行に寝かせ,U字クランプで地面に仮止めする。 工程2支柱となる第1の長さの単管パイプ複数本を,一方の長尺単管パイプの汎用クランプに垂直姿勢で差し込み固定し,また,支柱となる第2の長さの単管パイプ複数本を,他方の長尺単管パイプの汎用クランプに垂直姿勢で差し込み固定するとともに,同一列の単管パイプ同士及び異なる列の単管パイプ同士を,それぞれ10梁となる単管パイプでつなぐことにより,支柱となる各単管パイプを直立状態にする。 工程3木製の型枠板を,地面に仮止めされた2本の長尺単管パイプの各両側に,それぞれ長尺単管パイプを挟んで互いに適当な距離を隔てて対向するように起立配置することにより,生コンを流し込むための2本の型枠(溝)を形成する。この型15枠は,地面を掘り下げて形成されたものではなく,底面は地面に接している。 工程4型枠の一方に差し込まれた一連の第1の長さの単管パイプと型枠の他方に差し込まれた一連の第2の長さの単管パイプの間に,梁となる別の単管パイプを縦横に掛け渡して自在クランプで固定することにより,太陽電池パネル載置架台の基本構造を組み上げる。 20工程52本の型枠にそれぞれ生コンを流し込み,型枠内の適当な高さまで生コンを満たし,所定期間にわたって養生した上で,型枠を解体することで,長尺単管パイプを内包する所定の高さのコンクリート製の地上梁が完成する。 工程6完成した地上梁の上に太陽電池パネル載置架台を構築し,同架台の上に太陽電池パネルを載置固定することで,太陽光発電装置を施工する。 44(別紙)被告方法2説明書工程1太陽光発電装置の設置予定領域を含む一帯の地盤を,ユンボ(パワーシ5ョベル)を用いて盛土し,押圧することにより,強固な地盤に改良する。 工程2地盤を,適当な距離を隔てて,それぞれ適当な深さまで掘り下げ,2本の平行な溝を地中に形成する。 工程3地中に形成された2本の溝の内部に,それぞれ直交クランプを仮止めしてなる長尺単管パイプを寝かせて配置する。 10工程4支柱となる第1の長さの単管パイプ複数本を,溝の一方に沿って挿入し,また,支柱となる第2の長さの単管パイプ複数本を,溝の他方に沿って挿入し,支柱となる各単管パイプを,長尺単管パイプに仮止めされた直交クランプを介して,一本ずつ垂直姿勢で仮固定する。さらに,支柱となる各単管パイプを,ユンボ(パワーショベル)で打撃して押し下げ,適当な深さまで地中に打ち込むことにより,15自立させる。また,地中に差し込む深さを調整することにより,支柱となる各単管パイプの上端の位置を水平に整列させ,直交クランプを締め付けて固定する。 工程5溝の一方に差し込まれた一連の第1の長さの単管パイプと溝の他方に差し込まれた一連の第2の長さの単管パイプとの間に,補強用の梁となる別の単管パイプを縦横に掛け渡して自在クランプで固定することにより,太陽電池パネル載置20架台の基本構造を組み上げる。 工程62本の溝にそれぞれ生コンを流し込み,溝内の適当な高さまで生コンで満たし,所定期間にわたって養生することで,長尺単管パイプを内包するコンクリート製の地中梁が完成する。 工程7完成した地中梁の上に太陽光パネル載置架台を構築し,同架台の上に太25陽電池パネルを載置固定することで,太陽光発電装置を施工する。 45(別紙)図面(本件明細書)1図15462図2473図3484図4495図550(別紙)図面(乙1公報図2)51(別紙)図面(乙2公報)1図12図2523図453(別紙)図面(乙3公報)1第1図542第2図3第3図554第4図5第5図56 |
裁判長裁判官 | 20 |
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