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関連審決 無効2016-800067
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事件 平成 29年 (行ケ) 10113号 審決取消請求事件

原告サラヤ株式会社
同訴訟代理人弁理士 林雅仁 中野睦子 北野善基
同訴訟代理人弁護士 小原正敏 原井大介
被告 デブアイピー リミテッド
同訴訟代理人弁護士 岡田春夫 中西淳
同訴訟復代理人弁護士 駒木寛隆
同訴訟代理人弁理士 大ア勝真 岡本篤史 佐藤浩司
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2018/10/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 特許庁が無効2016-800067号事件について平成29年4月11日 にした審決を取り消す。
前提となる事実(証拠を掲記した事実以外は,当事者間に争いがないか,当
裁判所に顕著な事実である。) 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成25年8月13日,発明の名称を「シリコーン・ベースの界 面活性剤を含むアルコール含有量の高い発泡性組成物」とする出願(以下「本 件出願」という。)をし,平成28年3月4日,特許権の設定の登録(特許 第5891575号。請求項の数は33。)を受けた(以下,この特許を「本 件特許」といい,明細書を「本件明細書」という。甲36)。
本件出願は,平成18年3月7日を国際出願日とする国際出願(特願20 08-500017号。パリ条約による優先権主張 平成17年3月7日 米 国。以下「親出願」ということがある。),当該出願の一部について平成2 5年7月5日にされた特許出願(特願2013-141342号)を経て, その一部についてされた分割出願である。
(2) 原告は,平成28年5月30日,本件特許の請求項1ないし33に係る発 明につき無効審判を請求した(無効2016-800067号)。
特許庁は,平成29年4月11日,「本件審判の請求は,成り立たない。」 との審決をし,その謄本は,同月20日,原告に送達された。
原告は,平成29年5月18日,審決の取消しを求めて,本件訴訟を提起 した。
2 特許請求の範囲の記載 本件特許の請求項1ないし33に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおり である(以下,請求項1ないし33に記載された各発明を,請求項の番号に従 って「本件発明1」ないし「本件発明33」といい,これらを総称して「本件 発明」という。なお,以下において,「bis-PEG-[10-20]ジメチコーン」とは, 2 主鎖の両末端へのポリエチレングリコールの付加数が10〜20個のいずれかである個別のポリエチレングリコール変性ジメチコーン(bis-PEG-17ジメチコーン等)をまとめて表記したものである(甲36の段落【0048】)。)。
【請求項1】 発泡性アルコール組成物であって,低い圧力で空気と混合されるときに発泡性であり,下記の成分; a)全組成物の少なくとも40% v/vの量で存在する,C1-4アルコール又はその混合物; b)全組成物の0.01重量%〜10.0重量%の量で存在する,発泡のための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシリコーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン,又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物であり,組成物を空気と混合するディスペンサーポンプを有する無加圧ディスペンサーから分配されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて泡が形成される発泡剤;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水を含む発泡性アルコール組成物。
【請求項2】 上記C1-4アルコールがメタノール,エタノール,イソプロパノール,n-プロパノール,ブタノール及びその組み合わせからなる群から選択される脂肪族アルコールである,請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 上記シリコーン ベースの界面活性剤が bis-PEG-12ジメチコーン, ・ bis-PEG-17ジメチコーン,bis-PEG-20ジメチコーン及びその組み合わせからなる群から選択される,請求項1に記載の組成物。
【請求項4】 上記シリコーン ベースの界面活性剤がbis-PEG-12ジメチコーン, ・ bis-PEG-17 3 ジメチコーン,bis-PEG-20ジメチコーン,(3-(3-ヒドロキシプロピル)-ヘプタメチルトリシロキサン,エトキシレーテッド,アセテート),ポリエーテル改変ポリシロキサン,及び,ポリシロキサンベタインから選択されるシリコーン・ベースの界面活性剤の2つ又はそれ以上の混合物であり,前記シリコーン・ベースの界面活性剤の少なくとも1つがbis-PEG-12ジメチコーン,bis-PEG-17ジメチコーン,又はbis-PEG-20ジメチコーンである,請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】 上記アルコールが少なくとも40% v/v〜90% v/vの範囲で存在する,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】 上記アルコールが少なくとも60% v/vの量で存在するエタノールである,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】 上記アルコールが少なくとも60% v/vの合計量で存在するn-プロパノール及びエタノールの混合物である,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】 上記アルコールが少なくとも60% v/vの合計量で存在するイソプロパノール及びエタノールの混合物である,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】 上記アルコールが少なくとも70% v/vの量で存在するイソプロパノールである,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】 上記アルコールが少なくとも60% v/vの量で存在するn-プロパノールである,請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】 4 上記組成物から生成される泡の特性を調節するための少なくとも1種の追加の界面活性剤を更に含む,請求項1乃至10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】 上記追加の界面活性剤が0.10重量%〜5重量%の量で存在する,フッ素化界面活性剤,アルキルグルコシド,ポリ(エトキシル化)アルコール,ポリ(プロポキシル化)アルコール,ポリ(エトキシル化)エステル,ポリ(プロポキシル化)エステル,アルキルアルコール,アルケニルアルコール,多価アルコールのエステル,多価アルコールのエーテル,ポリアルコキシル化された多価アルコールのエステル,ポリアルコキシル化された多価アルコールのエーテル,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリアルコキシル化されたソルビタン脂肪酸エステル,ベタイン,スルホベタイン,レシチン,ホスファチド,アミンオキシド,スルホキシド及びその混合物からなる群から選択される,請求項11に記載の組成物。
【請求項13】 上記ベタインがコカミドプロピルベタインである,請求項12に記載の組成物。
【請求項14】 10重量%以下の量で存在する泡安定剤を更に含む,請求項1〜13の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】 上記泡安定剤が モノグリセリドの乳酸エステル, 陽イオン性乳化剤, 第四級アンモニウム化合物, トリ四級化ステアリン酸リン脂質複合体, ヒドロキシステアラミドプロピルトリアミン塩, 5 乳酸モノグリセリド, 食品乳化剤であって以下の群から選択されるもの,グリセリルモノステアレート,プロピレングリコールモノステアレート,及びナトリウムステアロイルラクチレート,セチルベタイン, グリコールエーテル, ブチレングリコール, シリコーンワックス, カプセル封入油, マイクロカプセル鉱油,並びに その組み合わせからなる群から選択される,請求項14に記載の組成物。
【請求項16】 上記泡安定剤がグリコールエーテル,グリセリン,ブチレングリコール,ベヘントリモニウムクロリド又はセトリモニウムクロリド及びその組み合わせからなる群から選択される,請求項14に記載の組成物。
【請求項17】5重量%以下の量で存在する, ラノリン; ビニルアルコール; ポリビニルピロリドン; グリセロール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,グリセリルオレエート及びソルビトールからなる群から選択されるポリオール; ココグルコシド; セチルアルコール,ステアリルアルコール,ラウリルアルコール,ミリスチルアルコール及びパルミチルアルコールからなる群から選択される脂肪アルコ 6 ール; セテアレス20; アルキルグルコシド; アルキルグルコシドとグリセリルオレエートとの混合物; PEG-200水素化グリセリルパルメート; ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロリド; PEG-7グリセリルココエート;並びに その組み合わせからなる群から選択される保湿剤,皮膚軟化剤,脂質層向上剤及びその組み合わせの何れか一つを更に含む,請求項1〜16の何れか1項に記載の組成物。
【請求項18】 上記組成物のpHを予め選択されたpHに調節するための酸又は塩基を更に含む,請求項1〜17の何れか1項に記載の組成物。
【請求項19】 pHを調節するために酸を使用する場合は該酸が塩酸,クエン酸及びリン酸からなる群から選択され,そしてpHを調節するために塩基を使用する場合は該塩基がセスキ炭酸ナトリウムである,請求項18に記載の組成物。
【請求項20】 抗菌剤を更に含む,請求項1〜19の何れか1項に記載の組成物。
【請求項21】 泡を分配する装置を有する無加圧ディスペンサーに収容されている,請求項1〜20の何れか1項に記載の組成物であり,前記泡を分配する装置が,前記ディスペンサーから前記組成物が分配される際に,低い圧力で空気と前記組成物とを混合して泡を形成するように構成されたディスペンサーポンプを有する,前記組成物。
【請求項22】 7 請求項1に記載の組成物を製造する方法であって, 第一の部分及び第二の部分を混合して前記発泡性アルコール組成物を調製することを含み, 第一の部分が, a)前記のシリコーン・ベースの界面活性剤; b)0.01重量%〜10.0重量%の量で存在する泡安定剤; c)0.05重量%〜5.0重量%の範囲で存在する,保湿剤,皮膚軟化剤及びその組み合わせの何れか一つ;及び d)水を含む濃縮組成物であり; 第二の部分が,前記のC1-4アルコール又はその混合物である方法。
【請求項23】 上記濃縮組成物は,該濃縮組成物を構成する成分を混合し,次いで該混合した成分を,該濃縮組成物の出荷の前に30〜80℃の温度に加熱する方法により製造する,請求項22に記載の方法。
【請求項24】 低い圧力で空気と混合されるときに発泡性であり, 下記の成分; a)全組成物の60% v/v〜80% v/vの量で存在するC1-4アルコール又はその混合物; b)全組成物の0.01重量%〜10.0重量%の量で存在する,発泡のための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシリコーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン,及びその混合物からなる群から選択され,組成物を空気と混合するディスペンサーポンプを有する無加圧ディスペンサーから分配されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて泡が形成されるように選択された発泡剤; 8 c)0.01重量%〜12.0重量%の量で存在する泡安定剤; d)0.05重量%〜5.0重量%の量で存在する保湿剤,皮膚軟化剤及びその組み合わせの何れか一つ;及び e)全組成物を100重量%とする量の水を含む発泡性アルコール消毒組成物。
【請求項25】 低い圧力で空気と混合されるときに発泡性である発泡性アルコール組成物を用いて泡を形成し分配する方法であって,該方法が, a)空気と発泡性アルコール組成物とを分配の際に混合して泡を形成するように構成されたディスペンサーポンプを有する無加圧容器から,低い圧力で発泡性アルコール組成物を分配する工程,を含み,該発泡性アルコール組成物が i) 全組成物の40% v/vより多い量で存在する, 1-4アルコール又はその混 C合物; ii) 全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,発泡のための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシリコーン・ベースの界面活性剤であって,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン,及びその混合物からなる群から選択される発泡剤;及び iii)全組成物を100重量%とする量で存在する水を含むものである,前記方法。
【請求項26】 前記ディスペンサーが無加圧ディスペンサーであり,それによって,使用者が前記ディスペンサーポンプを駆動したときに低い圧力下において空気が前記組成物と混合されるものである,請求項25に記載の方法。
9 【請求項27】 前記組成物が,泡を使用した後に洗浄する必要が無い,着けたままにしておくことができる製品(“leave-on” product)として調製されたものである,請求項24に記載の組成物。
【請求項28】 発泡性アルコール組成物であって,低い圧力で空気と混合されるときに発泡性であり,下記の成分; a)全組成物の40% v/vよりも大きい量で存在する,C1-4アルコール又はその混合物; b)全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水を含む発泡性アルコール組成物。
【請求項29】 泡の形成方法であって,泡を分配する装置を有する,該装置がディスペンサーポンプを有するものである,無加圧容器に,請求項1〜21および24の何れか1項に記載の組成物を収容し,該ディスペンサーを駆動して該組成物を低い圧力下に空気と混合してアルコールを含有する泡を形成し,これを該ディスペンサーから分配することによる,上記泡の形成方法。
【請求項30】 前記ディスペンサーが無加圧ディスペンサーであり,それによって,使用者が前記ディスペンサーポンプを駆動したときに低い圧力下において空気が前記組成物と混合されるものである,請求項29に記載の方法。
【請求項31】 前記組成物が,泡を使用した後に洗浄する必要が無い,着けたままにしておくことができる製品(“leave-on” product)として調製されたものである,請 10 求項29に記載の方法。
【請求項32】 上記組成物が第二の界面活性剤を更に含み,かつ,該第二の界面活性剤がシ リコーン界面活性剤である,請求項1〜21および24の何れか1項に記載の 組成物。
【請求項33】 低い圧力で空気と混合されるときに発泡性である発泡性アルコール組成物を 用いて泡を形成し分配する方法であって, 該方法が, a)空気と発泡性アルコール組成物とを分配の際に混合して泡を形成するよ うに構成されたディスペンサーポンプを有する無加圧容器から,低い圧力で発 泡性アルコール組成物を分配する工程, を含み, 該発泡性アルコール組成物が請求項1〜21および24の何れか1項で定義さ れる組成物である,前記方法。
3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書の写しに記載のとおりである。その要旨は, @ 本件発明は,国際公開第2006/066888号(平成17年12月 20日国際出願(パリ条約による優先権主張 平成16年12月21日), 平成18年6月29日公開。甲1)に記載された発明(2つの発明が記載 されており,以下,それぞれ「甲1発明」及び「甲1方法発明」という。) と同一であるとはいえないから,特許法29条の2の規定により特許を受 けることができないものとはいえない。
A 本件発明は,国際公開第2005/030917号(平成17年4月7 日公開。甲7)に記載された発明(2つの発明が記載されており,以下, それぞれ「甲7発明」及び「甲7方法発明」という。)及び特開2005 11 -289994号公報(平成17年10月20日公開。甲2)に記載され た事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえないから,特 許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえな い。
B 本件特許は,特許法36条4項1号が規定する実施可能要件に適合して いる。
C 本件特許は,特許法36条6項1号が規定するサポート要件に適合して いる。
D 本件特許は,特許法36条6項2号が規定する明確性要件に適合してい る。
というものである。
4 審決が認定した引用発明 (1) 甲1発明 「以下の組成(質量%)である皮膚および手の消毒のためのフォーム組成物 であって,ポンプ輸送によるフォームとして皮膚および手の消毒に供される フォーム組成物。
エタノール 80.0 PEG-14M 0.1 エチルセルロース 0.2 Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン 4.0 脱塩水 15.7」 (2) 甲1方法発明 「以下の組成(質量%)である皮膚および手の消毒のためのフォーム組成物 を,ポンプ輸送によりフォームを形成して皮膚および手の消毒に供する方法。
エタノール 80.0 PEG-14M 0.1 12 エチルセルロース 0.2 Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン 4.0 脱塩水 15.7」(3) 甲7発明 「非加圧式ディスペンサーの中に収容されているアルコール消毒用組成物で あって,該ディスペンサーが該消毒用組成物を空気と混合させてそのディス ペンサーからフォームを分配するためのディスペンサーポンプを有しており, 前記アルコール消毒用組成物が, a)該組成物全体の約60%v/v〜約80%v/vの量で存在しているアルコー ルC1-4又はその混合物; b)該組成物全体の約0.01重量%〜約2.0重量%の量で存在している生理 学的に許容されるフルオロ界面活性剤; c)約0.01重量%〜約12.0重量%の量で存在しているフォーム安定化剤; d)約0.05重量%〜約5.0重量%の量で存在している保湿剤,軟化剤及び その組合せのいずれか一つ; 及び e)該組成物全体を100重量%とする量の水; を含んでいる,前記アルコール消毒用組成物。」(4) 甲7方法発明 「アルコール消毒用組成物をフォームとして分配する方法であって, 非加圧式ディスペンサーの中に該アルコール消毒用組成物が収容されてお り,該ディスペンサーが該消毒用組成物を空気と混合させてそのディスペン サーからフォームを分配するためのディスペンサーポンプを有しており,前 記アルコール消毒用組成物が, a)該組成物全体の約60%v/v〜約80%v/vの量で存在しているアルコー ルC1-4又はその混合物; 13 b)該組成物全体の約0.01重量%〜約2.0重量%の量で存在している生理 学的に許容されるフルオロ界面活性剤; c)約0.01重量%〜約12.0重量%の量で存在しているフォーム安定化剤; d)約0.05重量%〜約5.0重量%の量で存在している保湿剤,軟化剤及び その組合せのいずれか一つ; 及び e)該組成物全体を100重量%とする量の水; を含んでいる,前記方法。」5 審決が認定した本件発明と引用発明との一致点及び相違点 (1) 本件発明1と甲1発明との対比 両発明は,次の<一致点>で一致し,少なくとも<相違点1>で相違する。
<一致点> 発泡性アルコール組成物であって,低い圧力で空気と混合されるときに 発泡性であり,下記の成分; a)全組成物の少なくとも40% v/vの量で存在する,C1-4アルコール 又はその混合物; b)全組成物の0.01重量%〜10.0重量%の量で存在する,発泡のための, シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシリコ ーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,組成物を空気と混 合するディスペンサーポンプを有する無加圧ディスペンサーから分配 されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて泡が形 成される発泡剤;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水 を含む発泡性アルコール組成物。
<相違点1> シリコーン・ベースの界面活性剤が,本件発明1は「bis-PEG-[10-20] 14 ジメチコーン,又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物」であるのに対 して,甲1発明は「Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン」である点。(なお, シリコーン・ベースの界面活性剤の化合物名の接頭語として,「bis-」, 「Bis-」と表記されているのは,いずれも「ビス」又は「ビス-」と同じ 意味で用いられている。)(2) 本件発明24と甲1発明との対比 両発明は,少なくとも次の点で相違する。
<相違点2> シリコーン・ベースの界面活性剤が,本件発明24は「bis-PEG-[10-20] ジメチコーン,及びその混合物からなる群から選択され」るのに対して, 甲1発明は「Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン」である点。
(3) 本件発明25と甲1方法発明との対比 両発明は,次の<一致点>で一致し,少なくとも<相違点3>で相違する。
<一致点> 低い圧力で空気と混合されるときに発泡性である発泡性アルコール組成 物を用いて泡を形成し分配する方法であって, 該方法が, a)空気と発泡性アルコール組成物とを分配の際に混合して泡を形成す るように構成されたディスペンサーポンプを有する無加圧容器から, 低い圧力で発泡性アルコール組成物を分配する工程, を含み, 該発泡性アルコール組成物が i) 全組成物の40% v/vより多い量で存在する,C1-4アルコール又は その混合物; ii) 全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,発泡のための, シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシリ 15 コーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤;及び iii)全組成物を100重量%とする量で存在する水 を含むものである,前記方法。
<相違点3> シリコーン・ベースの界面活性剤が,本件発明25は「bis-PEG-[10-20] ジメチコーン,及びその混合物からなる群から選択され」るのに対して, 甲1方法発明は「Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン」である点。
(4) 本件発明28と甲1発明との対比 両発明は,少なくとも次の点で相違する。
<相違点4> 本件発明28は「bis-PEG-[10-20]ジメチコーン」を含むのに対して,甲 1発明は「Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン」を含む点。
(5) 本件発明1と甲7発明との対比 両発明は,次の<一致点>で一致し,少なくとも<相違点5>で相違する。
<一致点> 発泡性アルコール組成物であって,低い圧力で空気と混合されるときに 発泡性であり,下記の成分; a)全組成物の少なくとも40% v/vの量で存在する,C1-4アルコール 又はその混合物; b)全組成物の0.01重量%〜2.0重量%の量で存在する,発泡のための, 生理学的に許容される界面活性剤を含む発泡剤であって,組成物を空 気と混合するディスペンサーポンプを有する無加圧ディスペンサーか ら分配されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて 泡が形成される発泡剤;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水 を含む発泡性アルコール組成物。
16 <相違点5> 生理学的に許容される界面活性剤が,本件発明1は「bis-PEG-20ジメチ コーンのみを用いる場合を除く,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン,又はそ の混合物」(以下「限定されたbis-PEG-ジメチコーン」という。)である のに対して,甲7発明は「フルオロ界面活性剤」である点。
(6) 本件発明24と甲7発明との対比 両発明は,少なくとも次の点で相違する。
<相違点6> 生理学的に許容される界面活性剤が,本件発明24は「限定された bis-PEG-ジメチコーン」であるのに対して,甲7発明は「フルオロ界面活 性剤」である点。
(7) 本件発明25と甲7方法発明との対比 両発明は,次の<一致点>で一致し,少なくとも<相違点7>で相違する。
<一致点> 低い圧力で空気と混合されるときに発泡性である発泡性アルコール組成 物を用いて泡を形成し分配する方法であって, 該方法が, a)空気と発泡性アルコール組成物とを分配の際に混合して泡を形成す るように構成されたディスペンサーポンプを有する無加圧容器から, 低い圧力で発泡性アルコール組成物を分配する工程, を含み, 該発泡性アルコール組成物が i) 全組成物の40% v/vより多い量で存在する,C1-4アルコール又は その混合物; ii) 全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,発泡のための, 生理的に許容される界面活性剤を含む発泡剤;及び 17 iii)全組成物を100重量%とする量で存在する水 を含むものである,前記方法。
<相違点7> 生理学的に許容される界面活性剤が,本件発明1(判決注:本件発明2 5の誤記と考えられる。)は「限定されたbis-PEG-ジメチコーン」である のに対して,甲7方法発明は「フルオロ界面活性剤」である点。
(8) 本件発明28と甲7発明との対比 両発明は,少なくとも次の点で相違する。
<相違点8> 本件発明28は「限定されたbis-PEG-ジメチコーン」を含むのに対して, 甲7発明は「フルオロ界面活性剤」を含む点。
原告主張の取消事由
1 取消事由1(明確性要件適合性の判断の誤り) (1) 審決は,本件発明1における「泡」及び「発泡性」との語に関し,本件明 細書の段落【0036】に示されている泡の定義である「混合されて,可変 長の時間持続する構造を有する小さい気泡のマスを形成する液体及び気体」 との記載を根拠として,本件発明1の外延は明確であると判断した。しかし, 次のとおり,この定義は著しく曖昧である。
(2) まず,「可変長の時間」は,時間が変化し得ることを意味すると解される が,どの程度変化し得るのかは全く不明である。また,「可変長の時間」と は,「小さい気泡」又は「小さい気泡のマス」が「構造」を維持している時 間を意味すると解されるが,どの程度の時間「構造」が維持されることにな るかについても不明である。上記の定義によれば,起泡した直後に消泡する 泡でさえも,本件発明1における泡に該当し得るところ,そのような泡では, 本件発明1が解決しようとする課題である安定な泡を形成できない。被告は, 「可変長の時間」とは「少なくとも数秒程度の時間」を意味すると主張する 18 が,本件明細書の実施例2,6,7及び9の記載と整合しないし,一貫性を 欠く本件明細書の表からそのように理解することは困難であるから,当該主 張は失当である。
次に,「構造」とは,どのような構造を意味するのか全く不明である。
さらに,「小さい気泡」についても,何と比較して小さいのか,その基準 が示されていないため,当業者はどの程度の大きさの気泡を意味するのかを 理解できない。被告は,目で識別しやすい大きさであれば「小さい気泡」に 該当すると主張するが,存在の視認のしやすさは気泡の大きさによって直接 左右されるものではないから,当該主張は失当である。
(3) このように,本件明細書に記載された泡の定義自体が著しく不明確であっ て,本件発明1における「泡」及び「発泡性」との語の外延が明らかでないか ら,当業者は,ある「泡」を形成する組成物が,本件発明1における「泡」 及び「発泡性」との要件を満たすか否かを理解することができない。
したがって,本件特許の請求項1の記載は,第三者に不測の不利益を及ぼ すほどに不明確であるから,明確性要件に適合していない。
2 取消事由2(実施可能要件適合性の判断の誤り) (1) 審決は,本件明細書の記載を参照した上で,アルコールの濃度を80v/v%と いった高濃度とする場合に,評価が好ましく所望の持続時間を有する泡を得 ようとすれば,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンの濃度を,本件発明1で特定さ れる全組成物の0.01重量%〜10.0重量%の範囲内で,高い濃度を選択すれば よいのであって,このような高いアルコール濃度とする場合にも,当業者は 発泡性組成物を容易に製造できるといえるとして,本件明細書の記載は実施 可能要件に適合しないとはいえないと判断した。しかし,次のとおり,この 判断は誤りである。
(2) アルコールの濃度が80v/v%よりも高い組成物では泡が形成されないのに, その検討を怠っていること 19 審決は,アルコールの濃度が80v/v%の場合についてのみ検討し,アルコー ルの濃度が高い範囲についての検討を怠っている。
原告が提出した実験報告書14(甲18)記載の結果からも明らかなとお り,エタノールの濃度が99.5v/v%,bis-PEG-12ジメチコーンの濃度が0.01 重量%,組成物全体を100重量%とする残部が水である組成物は,本件特許の 請求項1が規定するa)〜c)の要件を充足するものの,空気と混合しても 泡は全く形成されない。また,本件明細書には,エタノールの濃度が高まる につれて,泡の評価が下がり,泡の持続時間も短くなる傾向が示されている。
そうすると,エタノールの濃度が99.5v/v%よりも高く,bis-PEG-12ジメチコ ーン濃度が0.01重量%,組成物全体を100重量%とする残部が水である組成物 は,空気と混合しても泡は全く形成されないといえる。このように,本件発 明には,アルコールの濃度が80v/v%よりも高い範囲において,泡が形成され ず,発泡性アルコール組成物を製造できない場合が存在する。
被告は,本件発明において,低級アルコールの濃度が99.5v/v%の場合,実 使用において想定される用途は存在しないと主張しているところ,これは低 級アルコールの濃度が高い場合には本件発明1の発泡性組成物を実施できな いという無効理由の存在を自認するものである。
したがって,本件発明に関し,アルコールの濃度が80v/v%よりも高い範囲 において泡が形成されるか否かについての検討を怠った審決には重大な瑕疵 がある。
(3) 実施例33〜36に基づいて,bis-PEG-20ジメチコーン濃度が高くなるほ ど泡(foam)の評価や持続性が高まることがわかるとはいえないこと 審決は,実施例33〜36とその「泡の評価/記述/特性」に関する記載 から,低級アルコールの濃度が高い場合に所望の持続時間の泡を得ようとす る場合には,高い濃度のbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを選択すると発泡性組 成物を容易に製造できると判断した。
20 しかし,本件明細書の表によれば,実施例33〜36の「泡の評価/記述 /特性」欄には,泡(foam)が生成されたことをうかがわせる記載があるも のの,「泡の生成」欄の記載はいずれの実施例も「無」と記載されているか ら,後者の記載に従えば,実施例33〜36では,泡(foam)は生成されて いない。そうすると,これらの実施例に基づいて,bis-PEG-20ジメチコーン の濃度が高くなるほど泡(foam)の評価や持続性が高まることがわかるとは いえないから,この表の記載を根拠として低級アルコールの濃度が高い場合 には高い濃度のbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを選択すると所望の持続時間の 泡(foam)が得られるとした審決の判断も誤りである。
(4) 80v/v%アルコール溶液にbis-PEG-12ジメチコーンを0.01重量%配合しても 発泡しないこと 本件明細書の表においては,実施例20につき,「泡の生成」欄には「有」 と記載されているものの,「泡の評価/記述/特性」欄に記載はない。そし て,当該表の上部には,「調製した溶液を泡が生成されたか否かについて評 価し,もしそうであったならば生成した泡を下記のように記述した」と記載 されているから,この記載に従えば,「泡の評価/記述/特性」欄に記載が ない実施例20では,泡は生成されなかったと解するべきである。
そうすると,エタノール75.00重量%にbis-PEG-12ジメチコーンを8.00重量% 配合しても泡(foam)は生成されないのであるから,80v/v%の低級アルコー ルにbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを0.01重量%配合しても,当然に泡(foam) は生成しない。
3 取消事由3(サポート要件適合性の判断の誤り) (1) 審決は,本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合すると判 断した。しかし,次のとおり,この判断は誤りである。
(2) 本件発明における低級アルコールの濃度の上限は99.99重量%又はそれに近 い値であること 21 審決は,原告の「低級アルコールの濃度が上限値(99.99重量%)である場 合に,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン濃度を下限値(0.01重量%)よりも高く することは不可能である」との主張に対し,本件発明の発泡性組成物は水も 必須の構成成分の一つとされているから,水の存在を無視した「低級アルコ ール濃度の上限値は99.99重量%である」との仮定は成立しないと判断した。
しかし,本件発明1において,水の含有量の下限値は定められていないか ら,本件発明1の発泡性組成物は,水がごく微量(例えば,0.0001重量%) である場合も想定している。そして,ごく微量の水を含有させることに伴っ て,その分低級アルコールの含有量がごくわずかだけ減ったとしても, bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを0.01重量%配合して泡が形成されるようにな るとは考えられない。すなわち,水の存在を考慮しても,低級アルコールの 濃度が99.99重量%又はそれに近い値である場合に,安定な泡の形成が可能な 発泡性組成物を提供するという本件発明の課題を解決することはできない。
したがって,上記の仮定は成立しないとの認定に基づいて,本件発明につ いてサポート要件に適合するとした審決の判断は誤りである。
(3) 本件発明において低級アルコールの濃度が99.99重量%である場合は想定さ れないとの判断の誤り ア 審決は,本件発明の主たる用途が「アルコール性皮膚/ハンド消毒組成 物」としての用途であることに鑑みれば,エタノールの殺菌力の観点から の最適濃度は50〜80%であって,90%以上では作用が弱くなるとの技術常 識からしても,本件発明において低級アルコール濃度が99.99重量%である 場合は想定されないといえると判断した。しかし,次のとおり,この判断 は重大な誤りであり,審決は取り消されるべきである。
イ 組成物の用途を不当に限定解釈した誤り 本件発明においては,請求項1に「発泡性アルコール組成物」とのみ記 載されており,その用途は全く規定されていない。かえって,本件明細書 22 の段落【0098】には,本件発明の発泡性アルコール組成物の用途とし て,「薬用泡,日焼け止め泡,ハンドクリーム泡,ブラシ不要のシェービ ングクリーム泡,シャワー又は浴用オイル泡,乾式髪シャンプー泡,メイ キャップリムーバー泡,鎮痛性泡マッサージ剤,整髪用泡及び,制汗性洗 髪用泡,制汗性泡,ヘアコンディショナー泡」が挙げられている。
そうすると,本件発明1の組成及び物性を満たす発泡性アルコール組成 物をこれらの用途で用いた場合も,当然本件発明1に該当するにもかかわ らず,「アルコール性皮膚/ハンド消毒組成物」の用途で用いる場合の事 情のみを考慮して,本件発明1のサポート要件適合性を判断することは, 不当に本件発明1の範囲を狭めて判断することにほかならない。
ウ アルコールの種類を不当に限定解釈した誤り 審決は,エタノールの殺菌力のみに着目して判断しているが,本件発明 1の組成物が含有するアルコールは, 1-4アルコール又はその混合物」 「C であるから,メタノールなどのエタノール以外の低級アルコールも本件発 明1のアルコールに該当する。したがって,アルコールがエタノールであ る場合の事情のみを考慮して本件発明のサポート要件適合性を判断するこ とは,本件発明1のアルコールをエタノールだけに限定解釈することにほ かならず,不当である。
エ 本件明細書の記載からも99.99重量%のアルコール濃度は想定されること 本件明細書の段落【0018】には,発明が解決しようとする課題とし て「特定用途のために表面上に容易に広がる泡として分配できる,アルコ ール含有量の高い発泡性組成物を提供する」と記載されている。また,本 件特許の発明の名称は「シリコーン・ベースの界面活性剤を含むアルコー ル含有量の高い発泡性組成物」である。これらの記載から,本件発明の課 題ないし目的が,「アルコールを高濃度で含有する発泡性組成物を提供す ること」であるのは明らかであり,99.99重量%といったアルコール濃度は, 23 まさにその目的に合致する。
オ 消毒液に最適なエタノール濃度は50〜80%ではないこと アルコールによる殺菌力及びその最適濃度は,無毒化する対象である微 生物やウイルスの種類によって変化するというのが技術常識である。例え ば,エンテロウイルスの中には,無毒化に濃度が90%以上のエタノールが 必要となるものも存在する。したがって,無毒化対象物の種類に応じて, 又は処理時間を短縮するために,エタノールの濃度を90%以上,例えば, 99.5v/v%又は99.99重量%と設計することは当然に想定される。
カ 被告の主張について 被告は,低級アルコールの濃度が高い場合に本件発明1を現実的かつ実 用的な用途で使用することはできないと主張するが,これは,本件発明1 のうち,低級アルコールの濃度が高い範囲については,現実的かつ実用的 な用途で使用できる発明として本件明細書の発明の詳細な説明に記載され ていないということである。
したがって,この被告の主張は,本件発明1が低級アルコールの濃度が 高い範囲において,サポート要件を満たさないことを自認するものである。
4 取消事由4(本件発明と甲1発明及び甲1方法発明との同一性判断の誤り) (1) 審決が認定した甲1発明及び甲1方法発明,並びに本件発明と甲1発明及 び甲1方法発明との対比については認める。
(2) シリコーン ベースの界面活性剤としてbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用 ・ いることは,甲1に記載されているに等しい事項であること ア 審 決 は , 相 違 点 1 に 関 し , bis-PEG-[10-20] ジ メ チ コ ー ン と bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとは,化学構造が大きく異なる上に,界面 活性剤としての機能が同等であるとは到底いえないとして,甲1発明にお けるシリコーン ベースの界面活性剤としてbis-PEG-[10-20]ジメチコーン ・ を用いることは,甲1に記載されているに等しい事項であったとはいえな 24 いと判断した。しかし,次のとおり,この判断は誤りである。
イ 構造に大きな違いはないこと bis-PEG-[10-20]ジメチコーンと,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとは, ジメチルシロキサン鎖の両末端がポリエチレングリコールで変性されたシ リコーン系界面活性剤という点で共通し,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーン は,更に両末端にポリプロピレングリコールが付加されている点で相違す る。しかし,ポリプロピレングリコールの繰り返し単位であるプロピレン グリコールと,ポリエチレングリコールの繰り返し単位であるエチレング リコールとは,メチル基の有無が異なるだけで,構造が類似していること は明らかである。
また,界面活性剤が有する親水性基と疎水性基がそれぞれ採り得る構造 は多種多様であり,これらを組み合わせた界面活性剤の種類は実質的に無 数に存在しているから,このようなバリエーションの多さと比較すると, 末端にポリプロピレングリコールが存在するか否かの違いは大きくない。
したがって,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチ コーンの構造が大きく異なるとの審決の判断は誤りである。
ウ 機能は同等であること 本件発明において,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンは発泡剤として利用さ れているところ,発泡剤としての界面活性剤の機能として特に重要なのは, 液体の表面張力を低下させることである。
原告が提出した実験報告書(甲10)が示すように,40v/v%エタノール 水溶液の表面張力は25.8mN/mであるところ,これに1重量%のbis-PEG-12 ジメチコーン又はbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンを添加すると,表面張力 はそれぞれ21.6mN/m,22.3mN/mに低下する。これは,bis-PEG-[10-20]ジメ チコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとが,低級アルコール含有水溶 液の表面張力を低下させる機能において同等であることを示している。
25 エ 小括 以上のとおり,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメ チコーンとは,化学構造に大きな違いがなく,機能も同等であるから,シ リコーン ベースの界面活性剤としてbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用い ・ ることは,甲1に記載されているに等しい事項である。
(3) bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとを置換 することは技術常識であること ア 審決は,甲1発明のフォーム組成物と甲2記載の発泡組成物とは,組成, 用途及び使用方法において大きく相違するから,甲2にシリコーン化合物 としてbis-PEG-12ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンが同列に 記載されているとしても,この記載をもって甲1発明のフォーム組成物に 使 用 さ れ る 界 面 活 性 剤 と し て , bis-PEG-12 ジ メ チ コ ー ン と bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとが置換可能で同等のものであるとはいえ ないと判断した。
し か し , 甲 2 は , 次 の と お り , bis-PEG-[10-20] ジ メ チ コ ー ン と bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとを置換することが,当業者の技術常識で あることを示すものであるから,この点についての審決の判断は誤りであ る。
パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲 審決は,甲2の記載事項を参酌する前提として, 本件発明のうち, bis-PEG-20ジメチコーンを用いる発明については,優先基礎出願に基づく パリ条約上の優先権の利益を受けることができないとはいえないから,新 規性及び進歩性の判断基準日は,優先権主張日である平成17年3月7日 となり,一方,限定されたbis-PEG-ジメチコーンを用いる発明については, 優先基礎出願に基づくパリ条約上の優先権の利益を受けることができない から,判断基準日は,親出願の国際出願日である平成18年3月7日とな 26 るとした上で,甲2は,本件発明のうち,限定されたbis-PEG-ジメチコー ンを用いる発明に対してのみ公知文献となると判断した。
しかし,特許は請求項ごとに成立するから,パリ条約上の優先権の利益 を享受できるか否かの判断も,請求項ごとにされるべきである。そして, 本件発明1〜33は,いずれもシリコーン ベースの界面活性剤をbis-PEG-20 ・ ジメチコーンのみに限定していないから,パリ条約上の優先権の利益を享 受することはできない。
したがって,この点についての審決の判断は誤りである。
ウ 甲1記載のフォーム組成物と甲2記載の発泡組成物とは,その形態,用 途及び使用方法が共通していること 甲2の【請求項19】には,甲2記載の発泡組成物の身体洗浄のための 使用が掲げられているところ,この用途は,皮膚を衛生的な状態にすると いう点で,甲1発明の用途である皮膚の消毒(甲1の段落【0001】) と共通する。
また,甲2記載の発泡組成物の使用方法に関し,甲2には,当該組成物 を空気で噴気して泡を形成し,既製調合の泡製品として包装材中に存在さ せ得ることが記載されているものの(段落【0007】,【0056】), 当該発泡組成物を使用時に空気で噴気して発泡させることは容易に想到で きるし,甲2の記載もこの態様を否定するものではないから,使用方法の 点においても,甲2記載の発明は甲1発明と大きく異ならない。
さらに,甲2には,低級アルコールの濃度に関し,1〜30重量%の量で含 ませてもよいと記載されているところ,低級アルコールの濃度が30重量% を超えると泡の形成が急激に困難になるわけではなく,むしろ,低級アル コールの濃度が高まるにつれて徐々に泡が形成され難くなり,より多くの 界面活性剤を配合しなければならなくなるにすぎない。そうすると,甲2 に低級アルコールを40重量%以上の濃度で配合することが記載されていな 27 いとしても,甲2記載の発明の組成と甲1発明の組成とが大きく異なるも のではない。
以上によれば,甲1記載のフォーム組成物と甲2記載の発泡組成物とは, その形態,用途及び使用方法が共通しており,特にエタノール等の低級ア ルコールを含有する発泡性組成物であるという点で共通している。
エ 甲2の記載からbis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメ チコーンとが置換可能であることは当業者に自明であること 甲2の段落【0013】には,発泡組成物を得るための界面活性剤であ るアルコキシル化シリコーン化合物として,bis-PEG-12ジメチコーン及び bis-PEG-20ジメチコーン(これらは,いずれもbis-PEG-[10-20]ジメチコー ンに該当する。 並びにbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンが並列に好ましい ) ものであると記載されているから,甲2に接した当業者が,これらの化合 物が互いに置換可能な界面活性剤であると認識することは明らかである。
(4) bis-PEG-[10-20]ジメチコーンによる新たな効果は発揮されないこと 審決は,甲1記載のフォーム組成物において,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコ ーンに替えてbis-PEG-12ジメチコーンを採用しても新たな効果を奏しないと の原告の主張に対し,効果を比較するまでもなく,そもそも,甲2に記載さ れる技術事項から,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンに替えて(又はそれと共 に)bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いることは周知技術の付加ないし転用 であるとはいえないと判断した。
特許法29条の2が規定する要件の判断において,先願に開示された発明 と特許出願に係る発明との間に相違点があっても,当該相違点が課題解決の ための具体化手段における微差であれば,両者は実質的に同一と判断される べきである。そして,公開される発明が特許権を付与するに値する新たな発 明というためには,何らかの技術的意義のある新たな効果を有するべきであ るから,相違点が課題解決のための具体化手段における微差であるか否かは, 28 先願に開示される発明と比較して新たな技術的な効果を奏するか否かを考慮 して判断されるべきである。
この点に関連して,原告が実施した実験結果(甲5の1〜6の5)によれ ば,甲1記載の組成物におけるbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンに替えて bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いたとしても,その効果に実質的な差はな いか,むしろ前者を用いた場合の方が泡の安定性に優れている。
したがって,審決の判断には,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンに替えて bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いても何ら新たな効果は発揮されないこと を見落とした重大な瑕疵があり,違法なものとして取り消されるべきである。
(5) 小括 以上によれば,本件発明と甲1発明及び甲1方法発明とが実質的に同一で あることは明らかであるから,この点についての審決の判断は誤りである。
5 取消事由5(甲7に基づく容易想到性判断の誤り) (1) 審決が認定した甲7発明及び甲7方法発明は認める。
本件発明と甲7発明及び甲7方法発明については,後記(2)のとおり,甲7 はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンとの関係で公知文献となるから,生理学的に 許容される界面活性剤が,本件発明では「bis-PEG-[10-20]ジメチコーン」と なるとした上で,審決が認定した一致点及び相違点を認める。
(2) パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲 審決は,甲7は,本件発明のうち,限定されたbis-PEG-ジメチコーンを用 いる発明に対してのみ公知文献となると判断したが,この判断が誤りである ことは,上記4(3)イにおいて主張したとおりである。
(3) 甲7記載の界面活性剤を置換する動機付けが存在すること 審決は,甲7の記載を根拠に,甲7発明では,起泡剤としてフルオロ界面 活性剤が必須のものであり,これを従来の他の界面活性剤に変更しようとす る動機付けは甲7には存在しないと判断した。
29 しかし,本件特許の出願日当時,フッ素化化合物には,環境への影響に対 する懸念があることが知られていた。例えば,パーフルオロオクタンスルホ ネートに代表されるフッ素化界面活性剤は消火剤として広く使用されていた が,魚等への毒性が確認されたことを受けて,主な生産者は,平成12年5 月16日にフッ素化界面活性剤の製造から撤退した。また,海や河川,及び そこに生息する魚や鳥の体内で,パーフルオロオクタンスルホネートを含む 複数のパーフルオロアルキル界面活性剤の蓄積が確認されたとの報告もされ ていた。こうした背景から,甲7に接した当業者には,甲7発明のフルオロ 界面活性剤を非フッ素化界面活性剤に置き換える動機付けがある。
さらに,甲7の16頁23行〜17頁2行の記載は,商業的に適した製品 とするために,他の界面活性剤などを用いてフルオロ界面活性剤の配合量を 低減することが望ましいことを教示するものである。
これに対し,甲7の表6に示された結果は,炭化水素系界面活性剤と比較 してフルオロ界面活性剤が低級アルコール含有溶液の起泡剤として優れてい ることを示すものにすぎず,シリコーン系界面活性剤と比較してフルオロ界 面活性剤が起泡剤として優れていることも,フルオロ界面活性剤をシリコー ン系界面活性剤に置き換えることができないことも全く示唆していない。
したがって,この点についての審決の判断は誤りである。
(4) 甲2記載の組成物と甲7記載の組成物とは,組成,用途及び使用方法が共 通していること 審決は,甲7発明のアルコール消毒用組成物と甲2の発泡組成物とは,組 成,用途,使用方法において大きく相違するから,甲2の発泡組成物に使用 できるシリコーン化合物を甲7発明に直ちに適用できるものではないと判断 した。
しかし,甲2記載の組成物は,甲7記載の組成物と,組成,用途及び使用 方法に関して大きく相違するものではない。すなわち,甲2発明の発泡組成 30 物の用途には,皮膚の洗浄が含まれるところ,これは,皮膚を衛生的な状態 にするという観点で,甲7発明の用途である皮膚の消毒と共通する。使用方 法及び組成については,上記4(3)ウにおいて主張したところと同様である。
したがって,この点についての審決の判断は誤りである。
(5) 当業者は甲2に開示されているシリコーン化合物の中から当然にbis-PEG-12 ジメチコーン及びbis-PEG-20ジメチコーンを選択すること ア 審決は,甲2には,好ましいシリコーン化合物として複数の具体的な物 質が記載され,実施例1〜4で使用されるシリコーン化合物は,bis-PEG-20 ジメチコーンだけであることから,甲7発明のフルオロ界面活性剤と置換 する界面活性剤とし て,限定されたbis-PEG-ジメチコーンに該当する bis-PEG-12ジメチコーンを選択する理由が見当たらないと判断した。
イ しかし,上記4(3)イにおいて主張したとおり,本件発明のうち,bis-PEG-20 ジメチコーンのみを用いた発明の進歩性の検討に当たり,甲2は公知文献 に該当するところ,審決も認定したとおり,実施例1〜4の全てにbis-PEG-20 ジメチコーンが使用されているから,当業者は,甲2に開示されているシ リコーン化合物の中から当然にbis-PEG-20ジメチコーンを選択する。
ウ 仮に,本件発明におけるシリコーン・ベースの界面活性剤につき,審決 が認定したとおり,限定されたbis-PEG-ジメチコーンに基づいて進歩性が 検討されるべきであるとしても,甲2の実施例1〜4の全てにbis-PEG-20 ジメチコーンが使用されていること,甲2に開示されている好ましいシリ コーン化合物の中でbis-PEG-20ジメチコーンと最も構造が類似するものは bis-PEG-12ジメチコーンであることを踏まえると,当業者は,甲7発明の フルオロ界面活性剤と置換する界面活性剤として,甲2に開示されている シリコーン化合物の中から当然にbis-PEG-12ジメチコーンを選択する。
(6) bis-PEG-[10-20]ジメチコーンによる顕著な効果は発揮されないこと 原告が実施した実験結果(甲5の1〜6の5)によれば,甲7発明におけ 31 るフルオロ界面活性剤に替えてbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いた場合に 安定なフォームが形成されることは,当業者が予測し得たものである。
したがって,本件発明が格別顕著な効果を奏しないことについて検討を怠 った審決には重大な瑕疵がある。
(7) 小括 以上によれば,本件発明は,甲7発明及び甲7方法発明並びに甲2記載の 事項に基づいて容易に想到できたものであるから,この点についての審決の 判断は誤りである。
被告の反論
1 取消事由1(明確性要件適合性の判断の誤り)について (1) 原告は,無効審判手続において,本件明細書の記載が明確性要件に適合し ていない理由として,主位的に,本件発明1の範囲には,その発明を実施で きない一定の実施形態を含み,また本件発明の課題を解決することができる ように記載されていない一定の実施形態が含まれるとし,予備的に,本件発 明1の範囲の外延を把握するためには,安定な泡が形成されるか否かを正確 に判断できる必要があるところ,本件明細書の発明の詳細な説明参酌して も,本件発明1に係る発明の実質的な範囲を把握することは不可能であると 主張していた。
これに対し,審決は,本件発明1の範囲には,その発明を実施できない一 定の実施形態を含み,また本件発明の課題を解決することができるように記 載されていない一定の実施形態が含まれるとの前提自体が失当であると判断 しているのであるから,取消事由1に係る原告の主張の当否にかかわらず, 審決の結論は変わらない。
(2) 上記の点を措くとしても,本件発明1に係る「泡」の外延は,次のとおり, 明確である。
ア まず,「可変長の時間」の語は,「可変長の時間持続する」という文脈 32 において使用されており(本件明細書の段落【0036】),かかる「持 続」という用語の一般的な意味も参酌すれば,「可変長の時間」とは,少 なくともある程度の長さを持った時間を意味することは自明である。そし て,本件発明1において無加圧容器から吐出される泡は,少なくとも皮膚 /ハンド消毒組成物等として使用できる程度に安定であることや(同段落 【0002】,【0041】等),本件発明1は従来技術である液体製剤 やゲル製剤とは異なり,無加圧容器によって発泡可能な低級アルコール含 有量の高い組成物を初めて提供したパイオニア発明であり,その発泡性は それらの従来技術と比較した発泡性を意味するものであること(同段落【0 008】,【0015】等)などを勘案すれば,「ある程度の時間」が「少 なくとも数秒程度の時間」を意味することは明らかである。
イ また,本件特許の出願時に頒布されていた広辞苑第四版によれば,「構 造」とは「幾つかの材料を組み立ててこしらえられた一つのもの」を意味 する語であるから,当業者であれば,本件発明における「構造」とは,小 さい気泡の集合体である「マス」が有する構造であると当然に解釈する。
ウ さらに,原告は,「小さい気泡」について,「何と比較して小さいのか 基準となるものが示されていないため,どの程度の大きさの気泡を意味す るのか当業者が理解することは不可能である」と主張する。
しかし,本件発明においては,従来の液体製剤やゲル製剤のようなもの と異なり,泡が生成することで薬剤の存在をより容易に目で確認できるよ うになること,すなわち,薬剤の存在を目視により識別しやすくなればそ の意義を達成したといえるから,従来の液体製剤やゲル製剤と比較して, 薬剤の存在を目視により識別しやすくなる程度の「小さい」気泡であれば よいことは明らかである。
(3) 小括 以上によれば,この点についての審決の判断に何ら誤りはない。
33 2 取消事由2(実施可能要件適合性の判断の誤り)について (1) 審決が言及したアルコール濃度80v/v%は例示にすぎないこと 審決の説示全体をみれば,アルコール濃度を80v/v%とする場合についての 検討は,飽くまでも高濃度アルコールの代表例としてされているにすぎない ことは明白である。なお,審決がアルコール濃度80v/v%を高濃度アルコール の代表例として言及したのは,単に,原告が審判請求書において具体的に「フ ォームを形成することはできない」と論難した高濃度アルコール濃度が 「80v/v%」のみであったからにほかならないと推察される。
(2) 本件発明に係る発泡性アルコール組成物の実使用において,99.5v/v%のエ タノール濃度を想定することが不合理であること 原告は,エタノール濃度が99.5v/v%以上の場合に,泡は全く形成されない と主張するが,このエタノール濃度は,本件発明に係る発泡性アルコール組 成物の実使用において,想定すること自体が不合理な前提である。後記3(2) において主張するとおり,このような想定することが不合理な場合において, 無加圧容器によって発泡可能な低級アルコール含有量の高い組成物が提供で きないことがあり得たとしても,実質的にはそのような態様において実施さ れることはないから,発明が公開されていない不当なものとはいえず,実施 可能要件に適合しないことにはならない。
3 取消事由3(サポート要件適合性の判断の誤り) (1) 本件発明における低級アルコールの濃度の上限は99.99重量%又はそれに近 い値であるとの主張について 無効審判手続における原告の主張は,低級アルコール濃度が99.99重量%で ある場合には,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン濃度を下限値である0.01重量% よりも高くすることはできないというものであった。したがって,審決が, この主張に対し,この仮定は本件発明における必須成分である水の存在を無 視したものであるから成立しないと端的に結論付けたことは当然であり,誤 34 りはない。
また,原告は,低級アルコールの濃度が99.99重量%又はそれに近い値であ る場合に,安定な泡の形成が可能な発泡性アルコール組成物を提供するとい う本件発明の課題を解決することはできないと主張するが,後記(2)のとおり, そのような濃度は,本件発明に係る発泡性アルコール組成物の実使用におい て想定されていないから,本件特許のサポート要件適合性の判断において考 慮されるべき事項ではない。
(2) 本件発明において低級アルコール濃度が99.99重量%である場合は想定され ていないこと ア 審決は組成物の用途を不当に限定解釈していないこと 審決が本件発明の主たる用途であると認定した「アルコール性皮膚/ハ ンド消毒組成物」としての用途は,アルコール,界面活性剤及び水の3成 分のみからなる組成物でもその機能を発揮し得るという点において,最も 単純な組成を許容し得る用途である。これに対し,原告が指摘する本件明 細書の段落【0098】に列挙されているその他の用途に用いるためには, 多くの場合,上記のアルコール,界面活性剤及び水の3成分に加えて,さ らに第4成分,第5成分等の配合が必要である。そうすると,本件発明に 係る組成物を,原告が主張するその他の用途に適用するのであれば,上記 第4成分,第5成分等が必要とされる分,相対的にアルコール濃度はより 低いものとなる。したがって,最も単純な組成を許容し得る消毒用途でさ え99.99重量%のアルコール濃度が想定されていない以上,その他の用途に おいても99.99重量%のアルコール濃度が想定されていないことは明らかで ある。なお,原告は,本件発明に係る発泡性アルコール組成物について, 消毒用途以外の用途のうち,99.99重量%のアルコール濃度が実際に想定さ れるものの例示すらしていない。
また,本件発明の主たる用途が「消毒用途」であることや,エタノール 35 の殺菌力上の最適濃度に関する技術常識は,審決が結論に至る上で参酌し た主要な判断材料の一部にすぎない。
イ 審決はアルコールの種類を不当に限定解釈していないこと 原告は,審決が本件発明に係るアルコールの種類を「エタノール」に限 定解釈していると主張する。
しかし,上記アにおける主張と同様に,原告は,本件発明に係るC1-4 アルコールにはエタノール以外の低級アルコールも含まれると主張するに とどまり,当該エタノール以外の低級アルコールを99.99重量%の濃度で適 用することが想定される具体的な実施態様については一切言及していない から,審決の判断を覆す理由とならないことは明白である。
また,この点についても,審決が結論に至る上で参酌した主要な判断材 料の一部にすぎない。
ウ 99.99重量%のアルコール濃度は想定されないこと 原告の主張は,要するに,アルコール濃度が「高い」という以上,「99.99 重量%」も包含しているという極めて短絡的なものにすぎない。本件発明 に係る組成物は,現実的かつ実用的な用途に適用されることが意図されて いるのであるから,現実的かつ実用的な用途が全く想定できない99.99重量% の低級アルコール濃度は,本件発明のアルコール濃度として想定されない ことは明らかである。
また,原告は,エタノールの最適濃度は対象の微生物やウイルスの種類 によって変化するから,エタノールの濃度を90%以上に設計することは当 然に想定されると主張する。しかし,原告がその主張の根拠として提出し た証拠(甲19)に記載されているのは,消毒用途において80%のエタノ ールより,90%エタノールの方が有効な場合があり得るということにすぎ ず,原告が主張するような「99.5v/v%」や「99.99重量%」といった濃度 のエタノールが消毒用途において有効であることは教示も示唆もされてい 36 ない。
したがって,本件発明において「低級アルコール濃度が99.99重量%であ る場合は想定されていない」とした審決の結論に誤りがないことは明らか である。
(3) 小括 以上によれば,本件特許はサポート要件に適合するとした審決の判断に誤 りはない。
4 取消事由4(本件発明と甲1発明及び甲1方法発明との同一性判断の誤り) について (1) 原告は, 甲 1発明に おける シリ コーン・ ベース の界 面活性剤 として bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いることは,甲1に記載されているに等し い事項であると主張するが,次のとおり失当である。
ア 構造について bis-PEG-[10-20]ジメチコーンは両末端変性シリコーン系界面活性剤であ り,主鎖の両末端にポリエチレングリコールの繰り返し単位が10〜20 個付加された化合物である一方,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンは,主鎖 の両末端にポリエチレングリコールの繰り返し単位が20個付加され,さ らにその外側にポリプロピレングリコールの繰り返し単位が20個連結さ れた化合物であるという点において,両者は構造上大きく相違する。
イ 機能について 原告は,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコー ンは,表面張力を低下させる機能において同等であると主張する。確かに, 表面張力の低下作用は,発泡性組成物を得るために必要な界面活性剤の物 性の一つであると考えられるが,表面張力の低下作用が同等であることと, 発泡剤としての界面活性剤の機能が同等であることとはイコールではない。
また,原告は,実験報告書(甲10)に基づく主張をしているところ, 37 bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとが,高 濃度アルコールの表面張力を低下させる性質において同等であることが, 甲1発明の出願日当時において周知であったことは何ら立証されていない。
(2) 原告は,bis-PEG-12ジメチコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとは置 換可能な界面活性剤であると主張するが,次のとおり失当である。
パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲について パリ条約による優先権の主張の効果については,請求項ごとに判断する のが原則であるとしても,一の請求項において発明特定事項が選択肢で表 現されている場合は,各選択肢に基づいて把握される発明について優先権 の主張の効果が判断される。
イ 甲1記載のフォーム組成物と甲2記載の発泡組成物とは,その形態,用 途及び使用方法が大きく異なること まず,甲1記載のフォーム組成物の用途である「消毒」と,甲2記載の 発泡組成物の用途である「洗浄」とが異なるものであることは明らかであ る。
次に,「通常のポンプ輸送によるフォーム系」によって発泡を行う甲1 発明と,事前に加熱した未発泡の組成物を,速く動く攪拌機(ホモジナイ ザーなどに例示される装置)を使用して激しく攪拌・混合して発泡させる 甲2発明とでは,発泡のさせ方が全く異なる。この甲2発明における発泡 方法のみに照らしても,使用時に発泡させることは想定すらされていない といえるし,甲2の段落【0003】に「一時的な数分間で崩壊する泡を 作る製品は,それぞれの使用の前にまず泡を作らねばならず,これは使用 者にとっては面倒なことであるという欠点をもつ」と記載されていること からすると,甲2発明においては使用時に発泡することを明確に否定して いるというべきである。
さらに,組成についても,甲2発明におけるアルコールは,単に補助的 38 な成分の一つとして少量配合されている任意成分にすぎず,アルコールを 主成分として消毒用途に使用する甲1発明とは全く異なるから,甲2発明 において「30重量%を超えた場合」などと想定することは不合理である。
そもそも甲2では,bis-PEG-12ジメチコーンを,高い貯蔵安定性を有す る永続発泡のための「泡安定剤」として使用しており,組成物の発泡現象 自体を促す「発泡剤」として使用しているのではないから,甲1発明と甲 2発明とが全く異なる技術的思想に基づく別個のものであることは明らか である。
(3) bis-PEG-[10-20]ジメチコーンによる効果について 上記(1)及び(2)において主張したとおり,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンと bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンの効果を比較するまでもなく,甲2記載の技 術事項に基づき,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンに替えて(又はそれと共に) bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを用いることは周知技術の付加ないし転用であ るとはいえないとの審決の判断は正当である。
特許法29条の2の規定の適用において,審査対象である発明が,引用発 明との対比において,何らかの技術的に意義のある新たな効果を有しなけれ ばならないというのは,原告独自の見解にすぎない。
(4) 小括 以上によれば,この点についての審決の判断に誤りはない。
5 取消事由5(甲7に基づく容易想到性判断の誤り)について (1) パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲 上記4(2)アのとおり,審決の判断に誤りはない。
(2) 甲7記載の界面活性剤を置換する動機付けはないこと フッ素化化合物に共通した環境への影響に対する懸念が,本件特許の優先 日(平成17年3月7日)及び出願日(平成18年3月7日)よりも前から 存在していたのであれば,それは甲7の優先日(平成15年9月29日又は 39 平成16年7月28日)当時においても既に存在していたはずである。しか し,甲7記載の発明においては,技術課題を解決するために敢えてフルオロ 界面活性剤を採用しているのであるから,仮に,原告が主張するような懸念 が存在していたとしても,そのような一般的な懸念は,フルオロ界面活性剤 に特有の利点を凌駕する程のものではなかったといえる。フルオロ界面活性 剤を含有する商業製品が現在もなお市販されているという事実も,原告が主 張する懸念が,フルオロ界面活性剤の使用を断念させる程の強い動機付けを 与えるものではないことを示すものである。
また,甲7には,フルオロ界面活性剤は起泡するように意図された組成物 における主要な起泡剤であると明記されているから,甲7に接した当業者に おいて,これを非フルオロ界面活性剤に置換しようとする動機付けは生じな いし,むしろ,非フルオロ界面活性剤に置換することには阻害要因があると いうべきである。
(3) 甲2記載の組成物と甲7記載の組成物とは,組成,用途及び使用方法が大 きく異なること 上記4(2)イにおいて主張したところと同様に,この点についての原告の主 張は失当である。
(4) 当業者は甲7記載の組成物におけるフルオロ界面活性剤を置換しようとす る際に甲2記載の界面活性剤を参考にしないこと 原告は,甲2に接した当業者は,甲2に開示されているシリコーン化合物 の中からbis-PEG-12ジメチコーン及びbis-PEG-20ジメチコーンを当然に選択 すると主張する。
しかし,甲2には, bis-PEG-[10-20]ジメチコーンが永続発泡性の組成物 における好ましいシリコーン化合物であると記載されていることからすると, 甲2に接した当業者は,一時的な発泡が求められるアルコール性皮膚/ハン ド消毒組成物にbis-PEG-[10-20]ジメチコーンを採用しないよう動機付けられ 40 るというべきである。
したがって,当業者が甲7発明のフルオロ界面活性剤に替わる界面活性剤 を検討しようとする際に,甲2を参照することはない。
(5) 小括 以上によれば,この点についての審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 本件発明について (1) 特許請求の範囲 本件発明に係る特許請求の範囲は,上記第2の2記載のとおりである。
(2) 本件明細書の記載 本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲36。なお,本件明細書記載 の表については,別紙本件明細書表目録参照。)。
ア 技術分野 【0002】 本発明は,エアゾール包装システムを用いて達成される,無加圧容器及 び加圧容器の両者から低い圧力で泡として分配され得る,低級アルコール (C1-4)含有量の高い組成物に関する。… イ 背景技術 【0003】 少なくとも60% v/v(約52重量%)を含むエタノール及び/又はイソプ ロピルアルコール及び/又はn-プロピルアルコールの組成物は抗菌性であ ることがよく知られており,従って消毒目的のために広く受け入れられて いる。… 【0004】 アルコール消毒液は,無駄をなくし,かつ組成物を所望の範囲全体に塗 るのを容易にするために,一般的に増粘される。ゲル化剤以外には,アル 41 コール含有量の高い溶液の増粘を達成するためにパラフィン又はワックスを使用できることも知られている。…ゲル及び上記タイプの濃厚なアルコール含有組成物の欠点の一つは,…アルコール消毒液の使用を続ける前に増粘剤を最終的に洗い落とす必要があることである。…【0006】 洗浄目的のため以外の界面活性剤は,1種又はそれ以上の活性物質を含有する水性組成物をそれらの湿潤特性により表面上に急速かつ均一に塗布するためにも使用される。…【0008】 使用が容易かつ安全である40% v/v より多いアルコールを含む泡製品は,従来の液体,ゲル又は軟膏タイプの組成物製品よりも望ましい。このアルコール濃度は既にそれ自体が危険を及ぼすが,泡として分配できるならば,認められたリスクを減少し得る多くの用途がある。皮膚消毒剤として有用であることが意図される泡は,一様な稠度,塗布性,洗浄能力を持たねばならず,そして快適な感触を持たねばならず,すなわち,加圧したときに急速な破壊力を持たねばならず;それらの全ては低級アルコール含有量の高い組成物にとって課題を提示する。
【0010】 これまでに利用されている泡形成剤は,液相が高いアルコール含有量を有する場合には他の成分を用いないで安定な泡を形成することができなかった。更に,低級アルコールは,泡促進化学物質というよりはむしろ消泡剤と考えられている。…【0014】 シリコーン・ベースの界面活性剤は,表面張力の低下及び湿潤特性の上昇を必要とする用途,特に水以外の溶剤系と適合性であり,かつ組成物の他の成分と反応しない材料を必要とする用途に使用されている。シリコー 42 ン界面活性剤は,それらが興味ある組成物において比較的低い濃度で比較 的低い表面張力を達成し得るので望ましい。… 【0015】 低い圧力下で及び/又はエアゾール包装システムにより泡として分配し 得る,シリコーン・ベースの界面活性剤を含有するアルコール・ベースの 消毒製剤があることは,極めて有利であろう。更に,適用された部分に留 まることができ,そして蒸発後に残る残留物の量が少ないために洗い流し 又は拭き取りを必要としない生成物における使用を可能にする濃度で使用 し得る発泡剤を見出すことは,極めて有利かつ望ましいだろう。…ウ 発明が解決しようとする課題 【0017】 本発明は,ユーザーの皮膚又は手の乾燥を殆ど全く引き起こさず,そし て加圧及び無加圧分配システムから泡として分配できる界面活性剤/洗浄 剤,並びに消毒剤/洗浄剤/溶剤/担体を含有するアルコール含有量の高 い組成物を提供する。
【0018】 本発明は,特定用途のために表面上に容易に広がる泡として分配できる, アルコール含有量の高い組成物を提供する。本発明の組成物は抗菌性アル コール泡として処方することができる。これらの発泡性組成物は,適切な ディスペンサーから分配されるときに安定であり,そして噴射剤及び加圧 容器の使用を必要としないが,使用しても同様に発泡するだろう。
エ 課題を解決するための手段 【0019】 従って,本発明は,下記の成分; a)全組成物の40% v/vより多い量で存在する,C1-4アルコール又は その混合物; 43 b)全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,湿潤及び発泡のための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容される有効なシリコーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,ディスペンサーから分配されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて泡が形成されるように選択された発泡剤;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水を含む発泡性アルコール組成物を提供する。
【0020】 本発明の一態様において,有効なシリコーン・ベースの界面活性剤は,全組成物の約0.001%〜約10.0重量%の量で存在し,この量は生理的に許容されるので,それはパーソナルケア型製品に使用することができる。
【0021】 本発明の好ましい実施形態において,シリコーン・ベースの界面活性剤はBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,3-(3-ヒドロキシプロピル)-ヘプタメチルトリシロキサンエトキシレーテッドアセテート,エトキシル化シリコーン・ベースの界面活性剤,Bis-PEG/PPG 18/6ジメチコーン,ポリエーテル改変ポリシロキサン又はポリシロキサンベタイン,又はその混合物であってよい。…【0026】 本発明はまた,発泡性アルコール組成物を用いて泡を形成し分配する方法であって,該方法が,a)空気と発泡性アルコール組成物とを分配の際に混合して泡を形成するように構成されたディスペンサーポンプを有する容器から,発泡性アルコール組成物を分配する工程,を含み, 44 該発泡性アルコール組成物が i) 全組成物の40% v/vより多い量で存在する,C1-4アルコール又はそ の混合物; ii) 全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,湿潤及び発泡の ための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容される有 効なシリコーン・ベースの界面活性剤;及び iii) 全組成物を100重量%とする量で存在する水 を含むものである,前記方法を提供する。
オ 発明を実施するための形態 【0031】 本明細書で用いられる「界面活性剤(surfactant)」という用語は,親油 性及び親水性構造単位の両者が存在する結果として,界面で優先的に吸着 し,この吸着が系の表面又は界面特性の変化をもたらす材料のための一般 的記述用語である「界面活性作用物質 (surface active agents)」に対し て広く用いられる短縮形である。
【0032】 本明細書で用いられる「シリコーン・ベースの界面活性剤」という用語 は,構造単位が通常 -(R2Si-O)n- (式中,Rは1価の有機基である) を含む任意の有機ケイ素酸化物ポリマーとしても記述される,親油性鎖が シリコーン鎖を含有する界面活性剤であって,それを含有する組成物が洗 浄,湿潤及び発泡できるようにするものを指す。
【0036】 本明細書で用いられる「泡」は,混合されて,可変長の時間持続する構 造を有する小さい気泡のマスを形成する液体及び気体を意味する。
【0037】 気泡は,液体のフィルムで取り囲まれた気体のセルである。
45 【0040】 本明細書で泡を生成するという文脈で用いられる「低い圧力」というフレーズは,無加圧容器から泡を分配するときのような大気圧付近又はそれ以下の圧力を意味する。典型的には,泡がエアゾール容器から分配されるとき,この泡は高い「圧力」条件下で分配されると考えられる。
【0041】 本発明は,無加圧容器から低圧条件下で,又はエアゾール包装システムにより,泡として分配することのできる,シリコーン・ベースの界面活性剤を高い低級アルコール(C1-4)含有量と共に含む発泡性アルコール組成物を提供する。本発明の発泡性組成物は,空気と混合されるときに安定な泡を送出してアルコール性溶液を与え,この泡は,個人的洗浄用又は消毒目的のために使用でき,そして加圧時に,例えばユーザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れる。本明細書で与えられたパーセンテージは,別に指示しない限り,全重量に基づく。
【0042】 本発明に用いられるアルコールは低級炭化水素鎖アルコール,例えば,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のC 1-4アルコールである。好ましいアルコールはエタノール,2-プロパノール又はn-プロパノールから選択され,最も好ましくはエタノールであり,適正濃度で十分な消毒作用があるとして衛生管理職員により良く受け入れられている。
…本組成物には単一のアルコールを用いてもよく,又は上記のように2種又はそれ以上のアルコールのブレンドが組成物のアルコール含有量を構成してもよい。
【0043】 一実施形態では,前記アルコールは約40%〜約90%v/vの範囲で存在することができる。
46 【0044】 本発明の重要かつ驚くべき成果は,消毒に適する組成物が40% v/vより多量のアルコールを含有するようにされていること,そしてシリコーン・ベースの界面活性剤が低圧容器及びエアゾール包装容器の両者から化粧品として魅力的な泡として分配され得ることである。
【0045】 シリコーン・ベースの界面活性剤の使用は,発泡するように考案された組成物における主発泡剤として重要な成分である。シリコーン界面活性剤は,例えば残渣を殆ど残さないこと,過酷な化学的及び熱的環境において機能し得ることのような種々の興味深い特性を有し;それらは比類なき湿潤力,すなわち伝統的な界面活性剤よりも一般的に良好であるという特性を有し,有機溶剤中でより良い界面活性特性を示し,そしてそれらをコーティング,油田,材料仕上げ剤,クリーニング,塗料,農薬施用等における用途に広く使用されるようにしている。
【0046】 伝統的な界面活性剤は分子の疎水性部分として炭素鎖を有する。この炭素鎖に加えられる親水性部は,界面活性剤の溶解性を,そして陰イオン性,陽イオン性,非イオン性及び両性としての一般的クラスを決定するだろう。
本明細書に開示する組成物に適するシリコーン・ベースの界面活性剤は,シリコーン鎖 -(R2Si-O)n- を有し,そして特定の処方に用いられる他の成分と適合性である,ホスフェートエステル,スルフェート,カルボキシレート,イミダゾールクオート(quats),アミノクオート(Quats),アルキルクオート(Quats),アミノプロピオネート,エトキシレート,グリセロールエステル,アミンオキシド,アセチレン性アルコール誘導体,ホスフェート,炭化水素誘導,スルホネート,ベタイン,イセチオネート,エステル,ポリアミド,及び炭化水素界面活性剤を包含するが,これらに 47 限定されない。…【0048】 異なる界面活性剤を試した一方で,確認し得る何らかの相乗作用が存在して用法及び泡性能を最適化するかどうかを見出すために,2種又はそれ以上の混合物を評価した。若干の相乗作用が確認された一方で,特に二官能性のシリコーン界面活性剤Bis-PEG[10-20]ジメチコーンは単独で使用するときに最良であることも見出された。表記法Bis-PEG[10-20]は,10〜20個の反復オキシエチレン基を有する全てのBis-PEG化合物を意味する。…【0049】 本組成物の好ましい実施形態において,有効なシリコーン・ベースの界面活性剤は,全組成物の約0.01%〜約10.0重量%の,生理的に許容されるBis-PEG[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物であってよい。
【0051】 更に,加圧容器又は噴射剤を使用しない場合でも泡を生成することができるアルコール含有量の高い生成物を得るためには,表面張力はできるだけ低いことが必要である。そうすれば,手動ポンプ又は機械的手段により,このような泡を生成するために必要な圧力で足りる。
【0052】 本発明を開発する間に,80% v/wほどにも高いエタノールのみ及びシリコーン・ベースの界面活性剤を用いた場合に比較的安定な急速破壊性の泡が得られたが,伝統的な界面活性剤をより高いパーセンテージで使用すると少しも類似しない結果を与え,そして泡は全く得ることができなかったことを見出したことは,予想外であった。
【0053】 商業的に適切な製剤(消毒用途における使用目的のために十分長く持続するもの)を得るために行ったアプローチの一つは,シリコーン・ベース 48 の界面活性剤の使用量を,他の成分,例えば第二の界面活性剤,乳化剤,泡安定剤,香料,及び美容化粧品,エアゾール,バスルーム化粧品,パーソナルケア等に用いられる同様の成分の援助を用いながら減少することである。…【0060】 アルコールに水を添加することは,製品を発泡させるために必要なシリコーン・ベースの界面活性剤の量の減少を可能にする一方で,より安定な泡を生じさせる。例えば,50〜60% v/v アルコール水溶液と共に0.5〜1.0%のシリコーン・ベースの界面活性剤を使用すると安定な泡を生成し,この泡は容易に壊れず,そして逆さにしたときでさえ落ちず,また圧力を加える(例えば両手で又は表面上でこするときに)まで壊れない安定なひと吹き(puff)を生じてアルコール性溶液を与える一方で,アルコールの使用パーセンテージが65% w/wより多い場合には5%以下のレベルを必要とする。
【0061】 化粧品工業に広く使用される温和な非刺激性界面活性剤,例えばコカミドプロピルベタイン又はフッ素化界面活性剤,例えば DEA C[8-18]パーフルオロアルキルエチルホスフェート若しくはアンモニウムC[6-16]パーフルオロアルキルエチルホスフェートを第二の界面活性剤として使用することは,用いられるシリコーン・ベースの界面活性剤に応じて,本発明の発泡性含水アルコール組成物を製造するためにより適している。
【0062】 泡を安定化するために,泡安定剤,並びに乳化成分を試したところ,噴射剤及び/又は加圧容器システムを使用しない場合でさえ,生成物を泡として分配することを可能にするという良好な結果を得た。
【0064】 本発明の発泡性組成物に用いられる好ましい泡安定剤はセチルベタイン 49 である。別の好ましい泡安定剤はグリセリンである。別の好ましい泡安定剤はセトリモニウムクロリド,そしてまたベヘントリモニウムクロリドである。
【0072】 本発明者らは,全く驚くべきことに,本明細書に開示したシリコーン界面活性剤と,2007年4月3日に発行された米国特許7,199,090及びPCT公開WO2005/030917 A1に開示されたフルオロ界面活性剤との両者の組み合わせ含むアルコール泡を生成することが可能であり,生成した泡が,泡質に関して興味深い相乗作用を示すことを見出した。
【0076】 一方の界面活性剤又は他方(フルオロ界面活性剤に対してシリコーン界面活性剤)の使用における主な相違の一つは,フッ素化界面活性剤が表面張力をシリコーン・ベースの界面活性剤だけを用いて達成されるレベルよりも低いレベルに低下させ得るとい事実(判決注:原文のまま)であり,従ってシリコーン・ベースの界面活性剤だけを含む組成物が同様の結果を達成するためにはより高いパーセンテージのシリコーン・ベースの界面活性剤を一般的に必要とすることにも注目すべきである。
【0077】 同一組成物中で両方のタイプの界面活性剤を混合する重要な利点は,シリコーン・ベースの界面活性剤がより長い持続効果を与える一方で,フッ素化界面活性剤はより高いアルコールレベルでより良い抵抗性を有し,それ故に混合した場合にこの組み合わせは,同1条件下で何れか一方を個々に用いて得られるよりも大きい泡質の改善を与える。…【0079】 シリコーン・ベースの界面活性剤及びフッ素化界面活性剤の組み合わせは,アルコール濃度が高まるにつれて利点が増加するものであり,これは 50 微生物学的効力を改善するために望ましい。
実施例 【0081】 実施例1〜12は,異なる界面活性剤,並びに水及び50%エタノールの 溶液を用いて,泡として分配できるアルコール・ベースの消毒製剤を生成 する能力を説明するために製造した。実施例13〜16は,40%エタノー ルを用いて泡を生成するためのシリコーン・ベースの界面活性剤濃度の上 昇を説明する。実施例17〜32は,異なるシリコーン・ベースの界面活 性剤を用いて泡を生成するためのエタノール濃度の上昇を示す。実施例3 3〜36は,62%エタノールで許容される泡を生成するためのシリコーン・ ベースの界面活性剤濃度の上昇を説明する。実施例37〜52は,異なる 界面活性剤及び70% v/vイソプロパノールの溶液を用いて泡を生成する能 力を説明する。全ての部及びパーセンテージは,別に指示しない限り重量 により表現される。
【0082】 比較として,例えば,コカミドプロピルベタイン(CAPB)単独は,40% エタノール及び3% CAPBにおいてさえ,60% v/vエタノール,及び遥かに 低いパーセンテージ(1.0%未満)で用いたシリコーン・ベースの界面活性 剤による結果のようには良好な結果を生じさせ得なかったことも見出した。
…また,この溶液はアルコールが蒸発した後に皮膚上に許容されない感触 (すなわち,石鹸様の粘稠な感触)を残し,高レベルの界面活性剤を示す。
有利なことには,本発明の組成物の後感触は石鹸様でないのみならず,実 際に快適でもあり,本発明を多くの異なる用途にとって好適にする。
【0083】 下記の実施例は,エタノール,n-プロピルアルコール及びイソプロピル アルコールの異なる組み合わせと一緒にした異なるグループのシリコーン 51 界面活性剤の発泡能力を評価しようとしたものである。…【0084】 …異なるアルコールを用いる場合に異なるシリコーン界面活性剤を組み合わせることは,別のアルコールの添加が特定のシリコーン界面活性剤の発泡能力を結局は破壊する場合に泡を増加させる相乗作用を示すように思われるが,アルコール,皮膚軟化剤及び他の成分の組み合わせのために好ましいシリコーンは,Bis-PEG [10-20] ジメチコーンシリコーン界面活性剤である。
【0085】 シリコーン界面活性剤と他の界面活性剤との組み合わせも試みた;…石鹸様の後感触は付けたままにする製品に対して多くの界面活性剤にとって許容されなかったことを種々の実施例が示した。しかしながら,シリコーン界面活性剤を上記のフルオロ界面活性剤と組み合わせた組成物は,極めて有利にシリコーン界面活性剤のパーセンテージの低下を可能にして,コスト及び他の望まれる有効な成果に関して製剤中のパーセンテージを最適化するという改善を示した。…【0090】 以下は,組成物のためのより具体的な実施例であって,アルコール/シリコーン界面活性剤ハンド/皮膚衛生化発泡性組成物を製造する処方による;…【0091】実施例294アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒組成物 0.01〜5.0%* シリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.01〜1.0% ココアミドプロピルベタイン(第二界面活性剤) 0.05〜1.0% セチルベタイン(泡安定剤) 52 0.10〜1.5% 乳化剤脂肪アルコール ROH 16-22 炭素又は下記成分を含む最終製剤中で良く作用する組み合わせ 60〜70% v/v エタノール 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,3-(3-ヒドロキシプロピル)-ヘプタメチルトリシロキサンエトキシレーテッドアセテート,Bis-PEG/PPG 18/6ジメチコーンアセテート,ポリエーテル改変ポリシロキサン又はポリシロキサンベタイン,又はその混合物。
実施例295アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒濃縮組成物 0.1〜5.0%* 生理的に許容されるシリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.001〜12.0% 1,3-ブチレングリコール,2-ブトキシエタノール,又はグリセリン(泡安定剤) 0.05〜5.0% ココグルコシド,グリセリルオレエート(保湿剤,皮膚軟化剤等) 60〜70% v/v エタノール,n-プロパノール,イソプロパノール又はその組み合わせ 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物。
実施例296アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒組成物 0.01〜5.0%* シリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.01〜1.0% フッ素化界面活性剤及び/又は他のシリコーン・ベースの界面活性剤,又は混合物(第二界面活性剤) 0.05〜1.0% セトリモニウムクロリド(泡安定剤) 53 0.05〜1.0% ベヘントリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.10〜1.5% ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロリド,…又は下記成分を含む最終製剤中で良く作用する皮膚軟化剤,脂質,保湿剤の組み合わせ 1〜10% n-プロピルアルコール 60〜70% v/v エタノール 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物。
実施例297アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒組成物 0.01〜5.0%* シリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.05〜1.0% セトリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.05〜1.0% ベヘントリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.10〜1.5% ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロリド,…又は下記成分を含む最終製剤中で良く作用する皮膚軟化剤,脂質,保湿剤の組み合わせ 1〜10% n-プロピルアルコール 60〜70% v/v エタノール 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物。
実施例298アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒組成物 0.01〜5.0%* シリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.01〜1.0% フッ素化界面活性剤及び/又は他のシリコーン・ベースの界面活性剤,又は混合物(第二界面活性剤) 0.05〜1.0% セトリモニウムクロリド(泡安定剤) 54 0.05〜1.0% ベヘントリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.10〜1.5% ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロ リド,…又は下記成分を含む最終製剤中で良く作用する皮膚軟化剤,脂質, 保湿剤の組み合わせ 60〜70% v/v エタノール 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物。
実施例299 アルコール性ハンド衛生化発泡性消毒組成物 0.01〜5.0%* シリコーン・ベースの界面活性剤(第一界面活性剤) 0.05〜1.0% セトリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.05〜1.0% ベヘントリモニウムクロリド(泡安定剤) 0.10〜1.5% ジヒドロキシプロピルPEG-5リノールアンモニウムクロ リド,…又は下記成分を含む最終製剤中で良く作用する皮膚軟化剤,脂質, 保湿剤の組み合わせ 60〜70% v/v エタノール 十分量 水 * 好ましくはBis-PEG-[10-20]ジメチコーン,…又はその混合物。
(3) 上記(2)の発明の詳細な説明の記載から,本件発明について,以下の事項が 認められる。
本発明は,エアゾール包装システムを用いて達成される,無加圧容器及び 加圧容器の両者から低い圧力で泡として分配され得る,低級アルコール(C 1-4 )含有量の高い組成物に関する。(【0002】) アルコール消毒液は,無駄をなくし,かつ組成物を所望の範囲全体に塗る のを容易にするために,一般的に増粘されるところ,これらの濃厚なアルコ ール含有組成物の欠点の一つは,アルコール消毒液の使用を続ける前に増粘 55 剤を最終的に洗い落とす必要があることである。(【0004】) 低い圧力下で及び/又はエアゾール包装システムにより泡として分配し得る,シリコーン・ベースの界面活性剤を含有するアルコール・ベースの消毒製剤があることは,極めて有利である。適用された部分に留まることができ,そして蒸発後に残る残留物の量が少ないために洗い流し又は拭き取りを必要としない生成物における使用を可能にする濃度で使用し得る発泡剤を見出すことは,極めて有利かつ望ましい。(【0015】) 本発明は,ユーザーの皮膚又は手の乾燥を殆ど全く引き起こさず,そして加圧及び無加圧分配システムから泡として分配できる界面活性剤/洗浄剤,並びに消毒剤/洗浄剤/溶剤/担体を含有するアルコール含有量の高い組成物を提供する。(【0017】) 本発明は,特定用途のために表面上に容易に広がる泡として分配できる,アルコール含有量の高い組成物を提供する。本発明の組成物は抗菌性アルコール泡として処方することができる。これらの発泡性組成物は,適切なディスペンサーから分配されるときに安定であり,そして噴射剤及び加圧容器の使用を必要としない。(【0018】) 本発明は,下記の成分; a)全組成物の40% v/vより多い量で存在する,C1-4アルコール又はその混合物; b)全組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在する,湿潤及び発泡のための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容される有効なシリコーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,ディスペンサーから分配されるときに,該発泡性アルコール組成物が空気と混合されて泡が形成されるように選択された発泡剤;及び c)全組成物を100重量%とする量で存在する水を含む発泡性アルコール組成物を提供する。(【0019】) 56 2 引用例について (1) 甲1には,概ね以下の記載がある。
(請求項1) a)フォーム組成物の全体量に対して少なくとも52〜99質量%以下のア ルコールまたはアルコール混合物, b)界面活性剤または界面活性剤混合物, c)少なくとも1つのポリアルキレングリコール, d)場合によっては少なくとも1つのフォーム安定剤ならびに e)場合によっては他の化粧用の助剤,添加剤および/または作用物質 および/または水 の成分を含有し,この場合成分b)の表面張力は,成分a)の表面張力の ±15dyn/cmの範囲にあるかまたは成分a)の表面張力に相当し,成分a) 〜f)(判決注:原文のまま)の総和は,フォーム組成物の全体量に対し て100質量%である,消毒のためのアルコール性フォーム組成物,殊にポン プ輸送によるフォーム調製物。
(請求項6) フォーム組成物の全体量に対してエタノール少なくとも80質量%または 90質量%が成分a)としてフォーム中に含有されている,請求項1から5 までのいずれか1項に記載のアルコール性フォーム組成物。
(請求項11) 消毒剤としての請求項1から10までのいずれか1項に記載のアルコー ル性フォーム組成物の使用。
(6頁24〜27行) この場合,例示的にメタノール,エタノール,1-プロパノール,2- プロパノール,1-ブタノール,イソブチルアルコール,第三ブチルアル コール,アミルアルコール1-,2-,3-ペンタノールまたはネオペン 57 チルアルコールならびに1-ヘキサノールを挙げることができ,この場合エタノールは,成分a)として特に好ましい。
(6頁29〜33行) 好ましくは,本発明によるフォーム組成物は,エタノールを少なくとも52〜99質量%,特に55〜96質量%,殊に60質量%超または65質量%超含有する。消毒効果に関連して,本発明によるアルコール性フォームがアルコールを80質量%を上廻ってまたは90質量%を上廻って含有しうることは,特に好ましい。
(7頁9〜12行) 界面活性剤または界面活性剤混合物の全体量は,フォーム組成物の全体量に対して0.5〜20質量%…である。
(7頁14〜25行) 界面活性剤は,なかんずくシリコーン化合物,例えばジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,環状シリコーンならびにアミノ変性シリコーン化合物,脂肪酸変性シリコーン化合物,アルコール変性シリコーン化合物,ポリエーテル変性シリコーン化合物,エポキシ変性シリコーン化合物,フルオロ変性シリコーン化合物,グリコシド変性シリコーン化合物および/またはアルキル変性シリコーン化合物である。本発明によれば,シリコーン化合物として好ましいのは,…ポリシロキサン-ポリエーテル-コポリマー[INCI(CFTA):Dimethicone Copolyol ジメチコンコポリオール],…である。特に好ましくは,本発明によるフォーム組成物は,ポリシロキサン-ポリエーテル-コポリマーを成分b)として含有し,この場合このコポリマーは,…入手可能である。
(7頁27〜33行) 他の適当な界面活性剤または界面活性剤混合物としては,単独でか,しかし種々のフルオロ界面活性剤の混合物として,殊にポリシロキサン-ポ 58 リエーテル-コポリマーとの混合物として本発明によるフォーム中に成分b)として含有されていてよいフルオロ界面活性剤の群を挙げることができる。このような適当な界面活性剤は,例えばテトラアルキルアンモニウムペルフルオロアルキルスルホネート,…である。
(8頁13〜26行) 本発明によるフォーム組成物は,フォーム組成物の全体量に対して0.01〜20質量%,…を成分d)としてフォーム中に含有している,場合によっては少なくとも1つのフォーム安定剤を含有していてよい。適当なフォーム安定剤は,例えば多糖類,…,セルロースエーテル,例えばカルボキシメチルセルロース,…である。本発明によれば,好ましいのは,アルキルセルロース,殊にメチルセルロースおよびエチルセルロースであり,これらは,…商業的に入手可能である(8頁28〜35行) 本発明によるアルコール性フォームは,水と共に,場合によっては助剤,添加剤および/または作用物質,例えば染料,溶解助剤,錯形成剤,金属イオン封鎖剤,光保護フィルターまたは香料または芳香剤,pH調整剤,安定剤,特にセテアリールアルコールおよび/または水素化ヒマシ油,例えばトリヒドロキシステアリン,保存剤,酸化防止剤および/または油性または水性の手入れ成分を成分e)として,フォームの全体量に対して特に0.05〜5質量%の通常量で含有することができる。
(9頁20〜23行) 本発明によるフォーム中での非揮発性の抗菌作用を有する物質の可能な場合による添加は,殊にアルコール成分の消毒特性を強化するために使用される。
(10頁5〜12行) 場合によっては本発明によるフォーム中に,殊に本発明によるフォーム 59 の使用のために皮膚および手の消毒剤として含有されていてよい手入れ作 用物質および/または湿分保持作用物質は,フォームのアルコール成分の 蒸発後に皮膚上に残留する本発明による作用物質,例えば通常の皮膚手入 れ剤,例えばデクスパンテノール,…の抗菌作用を有する物質である。
(11頁19〜24行) 本発明によるフォームは,殊にポンプ輸送によるフォームとして通常の ポンプ輸送によるフォーム系により,消毒の目的のため,特に皮膚および 手の消毒のために使用者に引き渡されてよく,殊にその理由は,このよう なポンプ輸送によるフォームは,通常エーロゾルをベースとするフォーム よりも安価であり,簡単に製造されるからである。
(12頁8〜20行) 皮膚および手の消毒のための本発明による好ましいフォーム組成物(質 量%での全ての記載,フォーム組成物の全体量に対する):【表2】(2) 甲2には,概ね以下の記載がある。
ア 発明の名称 耐久性ある発泡組成物 イ 特許請求の範囲 【請求項1】 水および下記の化合物の種類の一つ以上に属する少なくとも一種のアル 60 コキシル化シリコーン化合物を含む発泡組成物で, -ビスアルコキシル化シリコーン化合物 -アルコキシル化シリコーンワックス -脂肪酸およびアルコキシル化シリコーン化合物からのエステル -水不溶性アルコキシル化シリコーン化合物, 空気または不活性ガスで発泡され,持続性よく0.8g/cm3以下の密度を有す ることを特徴とする組成物。
【請求項2】 前記アルコキシル化シリコーン化合物が,未発泡のワックス分散物に基 づいて0.1ないし30重量%の量で含まれ,ポリジメチルシロキサンから成る 中央ブロックおよびポリ酸化エチレンおよび/またはポリ酸化プロピレン から成る末端ブロックを含むブロック共重合体,これらのブロック共重合 体の脂肪酸エステルおよびエトキシル化ジメチルシランメチルエーテルか ら選ばれることを特徴とする請求項1の組成物。
【請求項19】 適切な包装材料に入れた請求項1ないし14いずれか1項の永続発泡性 の組成物または請求項15ないし18いずれか1項の薬剤の,整髪,ヘア スタイリング,洗髪または身体洗浄または皮膚保護への使用。
ウ 背景技術 【0003】 使用の直前に発泡させた一時的な不安定な泡の形の化粧用毛髪処理製品 は公知である。この場合,燃料ガスを使った圧力容器からの取り出しによ って不安定な泡に発泡させるエアゾル製品か,または泡ヘッドに接続した 機械的なポンプによって包装材から取りだすことによって不安定な泡をつ くるいわゆるポンプフォームが問題となる。そのような一時的な数分間で 崩壊する泡を作る製品は,それぞれの使用の前にまず泡を作らねばならず, 61 これは使用者にとっては面倒なことであるという欠点をもつ。そのうえ, 製品販売システムの渋滞の危険が存在するので,必要な包装材はコストが かかり,間違いが起こりやすい。さらに,処方の自由度が制限され,すな わち全ての希望の皮膚保護および整髪効果が一時的な泡製品で実現可能で はない。
エ 発明が解決しようとする課題 【0004】 永続発泡性の化粧用既製調剤の製造のための種々の手がかりは,…公知 である。また,高温で特に貯蔵安定性がよく同時に皮膚または毛髪に使用 したときに良い使用特性をもつ発泡製品の製造は,まだ全ての点で満足で きるようには解決されていない。したがって,使用しやすい化粧用または 皮膚病用の向上した感覚的性質(例えば,触感,外観,聴覚)をもつ皮膚保 護剤および整髪剤を提供するという課題が存在する。この場合,主要な皮 膚保護性および整髪性を受容できないほど損なってはならず,その薬剤は コストがかかり,間違いが起こりやすい包装材を必要としてはならず,ま た高い貯蔵安定性で永続発泡(耐久性ある発泡)の形で存在しなければな らない。
オ 課題を解決するための手段 【0005】 この課題は,永久泡沫のための泡安定剤として,一定のシリコーン化合 物を使用することによって解決される。本発明の対象は,水および下記の 化合物の種類の一つ以上に属する少なくとも一種のアルコキシル化シリコ ーン化合物を含む発泡組成物であり: -ビスアルコキシル化シリコーン化合物 -アルコキシル化シリコーンワックス -脂肪酸およびアルコキシル化シリコーン化合物からのエステル 62 -水不溶性アルコキシル化シリコーン化合物,この組成物は空気または不活性ガスで発泡され,0.8g/cm3以下の密度を持続するものである。
【0006】 好ましい組成物は,(A)少なくとも一種の上記のアルコキシル化シリコーン化合物,(B)25℃でワックス状の固体から選ばれる少なくとも一種の稠度付与剤および濃化剤および(C)水を含む。
【0007】 本発明の組成物により,既製調合の泡製品として適切な包装材中に存在し,これは取り出すことができ,その場合,室温(20℃)で少なくとも一週間保存したあとの発泡度がなお少なくとも10%またはそれ以上であり得るような化粧用,医薬用または皮膚病用の皮膚または毛髪の処理剤が製造できる。この場合,組成物の稠度は固形でも,半固形でもクリーム状でもよい。
【0009】 水のほかに,親水相にはさらに水溶性の化粧品に適した有機溶媒を1ないし30重量%または5ないし20重量%の量で含ませてもよい。そのような溶媒は,例えばエタノールやイソプロパノールのような低級一価アルコールまたは例えばエチレングリコール,ジエチレングリコール,ブチレングリコールまたはグリセリンのような多価のC2-ないしC4-アルコールである。
【0010】[アルコキシル化シリコーン化合物] アルコキシル化シリコーン化合物は,未発泡の組成物に基づいて0.1ないし30重量%,または0.2ないし20重量%,特に好ましくは1ないし10重量%の量で含まれるのが好ましい。アルコキシル化シリコーン化合物は,ポリ 63 アルコキシル化シリコーン化合物,すなわちポリ酸化アルキレン基をもつものである。シリコーンワックスは,室温でワックス状の固体である物質,すなわち25℃より高い融点または滴点を有するものである。…【0011】 適切なビス-アルコキシル化シリコーン化合物は,2個の末端または側面のポリオキシアルキレン鎖をもつポリ(ジアルキルシロキサン)である。
好ましいのは,ポリジメチルシロキサンから成る中央ブロックおよびポリ酸化エチレンおよび/またはポリ酸化プロピレンから成る末端ブロックを含むブロック共重合体,特にABA型のものである。末端ブロックは,末端で無置換,すなわちヒドロキシル基を有するものでもよく,また例えばエーテル,エステルまたはウレタン基で末端置換されたもの,特に脂肪酸エステルでもよい。アルコキシル化度は,好ましくは2ないし40,…特に好ましくは12ないし20である。
【0012】 適切なシリコーン化合物は,一般式 R1-(AO)x1-B1-SiMe2O-(SiMe2O)x3 -SiMe2O-B2-(AO)x2-R2のものであり,ここにR1はヒドロキシル基,1ないし22個の炭素原子をもつアルキル基または2ないし22個の炭素原子をもつカルボキシアルキル基であり,B1およびB2は,異なっているか,または好ましくは同一で,単結合または二価の化合物基,特に1,2,3または4個の炭素原子をもつアルキレン基を意味する。AOは,オキシアルキレン基,特にオキシエチレンまたはオキシプロピレンを意味し,R2は,水素または隣接のオキシアルキレン基でエーテル化またはエステル化された1ないし22個の炭素原子をもつアルキル基である。x1およびx2は,1以上の数であり,その和がアルコキシル化度を決め,x3は1以上の数であり,ジメチルポリシロキサンの重合度を決める。
64 【0013】 好ましいシリコン化合物は,INCI名でビス-PEG-4ジメチコーン,ビス-PEG-12ジメチコーン,ビス-PEG-20ジメチコーン,ビス-PEG-12ジメチコーン蜜蝋,ビス-PEG-12ジメチコーン・キャンデリレート,ビス-PEG-15ジメチコーン/IPDI共重合体,ビス-PEG-15メチルエーテル・ジメチコーン,ビス-PEG-18メチルエーテル・ジメチルシロキサン,ビス-PEG/PPG-14/14ジメチコーン,ビス-PEG/PPG-20/20ジメチコーン,ビス-PEG/PPG-16/16PEG/PPG-16/16・ジメチコーン,ビス-PPG-15ジメチコーン/IPDI共重合体,ビス-PPG-7ウンデセネス-21ジメチコーンである。好ましいのは,特にビス-(ポリ酸化エチレン)ポリジメチルシロキサン,ビス-(ポリ酸化エチレン)ポリジメチルシロキサンの脂肪酸エステルおよび少なくとも一種のビス-(ポリ酸化エチレン)ポリジメチルシロキサンと少なくとも一種のビス-(ポリ酸化エチレン)ポリジメチルシロキサンの脂肪酸エステルとの混合物である。特に好ましいのは,脂肪酸でエステル化したビス-エトキシル化シリコーンワックスである。
【0056】[製造] 本発明の組成物および薬剤は,(A)少なくとも一種の上記のアルコキシル化シリコーン化合物,場合により25℃でワックス状固体の物質および濃化剤および水から選ばれる少なくとも一種の増粘剤を含む組成物を用意し,(B)ワックス状の物質を含む場合は,場合により,引続きまたは同時に組成物をワックス状の物質の要点(判決注:原文のまま)より高い温度に加熱し,(C)引続きまたは同時に組成物を空気および/または不活性ガスで噴気…するか,または発泡することによって,製造できる。
65 カ 実施例 【0064】 実施例1:永続発泡性ヘアスタイリング製品 ビス-PEG-12ジメチコーン・キャンデリレート(シリコニルキャン デリラ) 3.5g ビス-PEG-20ジメチコーン(SF1388,GEシリコーンズ) 2.0g ラノリンアルコール(Dusoran-登録商標-) 1.5g 酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体(Resyn28 -2930,ナショナル・スターチ) 1.5g カッパ-カラギーナン (Genugel-登録商標- X-901-02) 1g 蜜蝋 0.5g アミノエチルプロパノール 0.25g アシッド・レッド52(CI45100) 0.001g エタノール 10g 水 40g これらの材料を混ぜ合わせ,約90℃に加熱する。つぎに,熱い混合物を 速く動く攪拌器で噴気し,冷却によって凝固させる。促進のために,強く 冷却してもよい。稠度において固いムース・オー・ショコラを思い出させ る硬い泡(密度約0.2-0.3g/ml)を得る。それは,手の上に摺りこんだとき, 生クリーム状-クリーム状で,きゅッきゅときしむ。
泡が乾燥すると,塊の容積は約90%になったままでとどまり,泡立った ゴム状のべとべとしない固体が得られる。密閉したガラス容器のなかで, 泡は40℃で四週間保存してもその容積とその性質を保持する。塊の約5-10% の僅かな収縮が観察されるだけで,それは数日後に終息する。湿った塊の 66 摺りこみは,あわ立ちも砕けもなく,非常に容易である。クリーム上の無色透明な皮膜が,手の上に得られる。毛髪に使用した場合,ヘアセットは強固ないし特別に強固である。その泡は,ヘアスタイルのカーラー固定および容積増大に非常によく適している。
【0065】実施例2:永続発泡性整髪製品ビス-PEG-12ジメチコーン キャンデリレート(シリコニルキャンデ ・リラ,コスター・コイネン) 3.5gビス-PEG-12ジメチコーン蜜蝋(シリコニル蜜蝋,コスター・コイネン) 0.5gビス-PEG-20ジメチコーン(SF1388,GEシリコーンズ) 2.0gラノリンアルコール(Dusoran-登録商標-) 1.5gセテアリルアルコール(Lanette-登録商標-0) 2gステアラミドプロピルジメチルアミン (Tegoamid-登録商標- S18) 1gカッパ-カラギーナン (Genugel-登録商標- X-901-02) 1gPEG-7アミドメチコーン (Ultrasil-登録商標- A-21,ノベオン) 1gアシッド・レッド52(CI45100) 0.001gエタノール 10g水 40g【0066】実施例3:永続性発泡毛髪平滑化製品ビス-PEG-12ジメチコーン キャンデリレート(シリコニルキャンデ ・ 67 リラ) 3.5gビス-PEG-20ジメチコーン(SF1388,GEシリコーンズ) 2.0gラノリンアルコール(Dusoran-登録商標-) 1.5gイオタ-カラギーナン(Genuvisco-登録商標- X-904-02) 1g蜜蝋 0.5gアンモニア,25% 2.5gチオグリコール酸アンモニウム,70%(ATG) 10gジチオグリコール酸ジアンモニウム,40%(DADTG) 4gアシッド・レッド52(CI45100) 0.001gエタノール 10g水 40g ビス-PEG-20ジメチコーンを添加しながら,カラギーナンを熱湯に溶かし,ゆっくりATGおよびDADTGと混ぜる。この溶融したワックスを攪拌し,残りの成分を添加する。つぎに,この温かい混合物を早く動く攪拌器で噴気し,冷却して凝固させる。促進のために,強く冷却してもよい。稠度においてムース・オー・ショコラを思い出させる柔らかくて弾性のある泡(密度約0.7g/ml)を得る。
【0067】実施例4:永続性発泡染毛製品ビス-PEG-12ジメチコーン・キャンデリレート(シリコニルキャンデリラ) 3.5gビス-PEG-20ジメチコーン(SF1388,GEシリコーンズ) 2.0gラノリンアルコール(Dusoran-登録商標-) 1.5g 68 カッパ-カラギーナン (Genugel-登録商標- X-901-02) 1g 蜜蝋 0.5g アミノメチルプロパノール 0.25g ルビンロートY1) 0.3g 2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール(Rodol-登録商標- 9Rベース) 0.15g エタノール 10g 水 40g 1) 70重量%のHCレッドNo.10(3-[(4-アミノ-2-クロロ -5-ニトロフェニル)アミノ]1,2-プロパンジオール)および30重 量%のHCレッドNo. (3, - 11 3’ [(2-クロロ-5-ニトロ-1, 4-フェニレン)ジイミノ]ビス-1,2-プロパンジオール)から成る 混合物 【0068】 実施例1ないし4における本発明により得られるアルコキシル化シリコ ーン化合物の省略または本発明によらないアルコキシル化シリコーン化合 物によるその代用は,十分に安定な泡製品に導かない。
上記の実施例において,ビス-PEG-20-ジメチコーンは,それぞ れビス-PEG-18メチルエーテルジメチルシラン(Dow Corn ing-登録商標- 2501コスメチックワックス)で置き換えること ができる。
(3) 甲7には,概ね以下の記載がある。
(請求項1) (a) 該組成物全体の約40%v/vを超える量で存在しているアルコールC1 -4 又はその混合物; 69 (b) 該組成物全体の少なくとも0.001重量%の量で存在している湿潤及 び起泡に有効なフッ素化界面活性剤; 及び (c) 該組成物全体を100重量%とする量で存在している水;を含んでいる,組成物。
(請求項2) 前記組成物を空気と混合させたときに,該組成物と空気の混合物がフォームを形成する,空気を含んでいる請求項1に記載の組成物。
(請求項4) 前記有効なフッ素化界面活性剤が,生理学的に許容されるフルオロ界面活性剤であり,該フルオロ界面活性剤が,フッ素化エトキシレート類,フッ素化グリセロールエステル類,フッ素化アミンオキシド類,フッ素化アセチレン系アルコール誘導体,フッ素化カルボキシレート類,フッ素化ホスフェート類,フッ素化炭水化物誘導体,フッ素化スルホネート類,フッ素化ベタイン類,フッ素化エステル類,フッ素化ポリアミド類,フッ素化シリコーン類及びフッ素化炭化水素界面活性剤からなる群から選択される,請求項1,2又は3に記載の組成物。
(請求項5) 前記アルコールC1-4が,メタノール,エタノール,イソプロパノール,n-プロパノール,ブタノール及びそれらの組合せからなる群から選択される脂肪アルコールである,請求項1,2,3又は4に記載の組成物。
(請求項11) 前記アルコールが少なくとも60%v/vの量で存在しているエタノールである,請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9に記載の組成物であって,個人衛生用のアルコールフォームとして用いるためのものである,前記組成物。
70 (請求項14) 前記アルコールが少なくとも70%v/vの量で存在しているイソプロパノー ルである請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9に記載の組成物で あって,個人衛生用のアルコールフォームとして用いるためのものである, 前記組成物。
(2頁9〜11行) 本発明は,そのようなタイプの製品に処方されたとしても,ベタベタし た感触が残らず,繰り返し使用したあとでも洗い落とす必要がない。
(18頁14〜20行) 上記アルコールに水を添加することによりさらに安定なフォームが生成 されるが,同時に,生成物を起泡させるのに必要とされるフルオロ界面活 性剤の量を低減することができる。例えば,50%v/v〜60%v/vのアルコール 水溶液に0.5%〜1.0%のフルオロ界面活性剤を用いて,容易には壊れない安 定なフォームが生成され,そのフォームからは,逆さにしても落ちず,圧 力を加える(例えば,手を擦り合わせる場合や,表面全体に広げる場合な ど)ことで初めて壊れてアルコール性液体溶液を提供するような,安定な パフが生成される。
3 取消事由1(明確性要件適合性の判断の誤り)について (1) 原告は,本件発明1における「泡」及び「発泡性」との語の外延が明らか でないから,本件特許の請求項1の記載は不明確であり,明確性要件に適合 していないと主張する。
(2) 特許法36条6項2号の趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確 でない場合に,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となることによ り生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで,特許を受 けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず, 願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時にお 71 ける技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不 利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものと解 される。
(3)ア そこで検討するに,本件明細書には,泡に関し,「本明細書で用いられ る「泡」は,混合されて,可変長の時間持続する構造を有する小さい気泡 のマスを形成する液体及び気体を意味する。」(【0036】),「気泡 は,液体のフィルムで取り囲まれた気体のセルである。」(【0037】) との定義が記載されている。また,本件発明の発泡性組成物の作用効果に 関し,本件発明の組成物は,発泡性であるために,適用された部分に留ま ることができ(【0015】),表面上に容易に広がる泡として分配でき る(【0018】)ものであって,空気と混合されるときに安定な泡を与 え,この泡は,個人的洗浄用又は消毒目的のために使用でき,例えばユー ザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れること 【0 ( 041】 , ) 本発明の重要かつ驚くべき成果は,消毒に適する組成物が40% v/vより多量のアルコールを含有すること,そして低圧容器及びエアゾール 包装容器の両者から化粧品として魅力的な泡として分配され得ること 【0 ( 044】)がそれぞれ記載されている。
イ この点に関連して,泡に関する技術常識についてみると, 「入門講座 泡 の化学」と題する論文(オレオサイエンス第1巻第8号。2001年発行。
甲12)には,「深い井戸からくみ上げた水に生ずる泡はきわめて微小な 気泡が多数水中に分散している。このように気体が液体または固体に包ま れた状態を気泡(Bubble)という。泡は各種界面活性物質,または界面活 性剤の気・液界面への吸着によって起こる現象であって,洗濯時の洗濯機 の中の液やビールの泡のようにこれが多数集まって薄膜を隔てて密接に存 在するものを泡沫(Foam)と呼ぶ。気泡と泡沫の区別は形態的であるが前 者はただ一つの界面を有するのに対し,後者は2つの界面を有する。 (8 」 72 63頁左欄)との記載がある。
この論文の公開時期に鑑みれば,泡には,形態的に区別される気泡と泡 沫とがあり,気泡(Bubble)は,気体が液体又は固体に包まれた状態を指 し,ただ1つの界面を有するのに対し,泡沫(Foam)は,気泡が多数集ま って薄膜を隔てて密接に存在し,2つの界面を有するものであることは, 親出願の出願日当時における当業者の技術常識であったと認められる。
ウ 以上のとおり,上記アに摘示した本件明細書に記載された定義と,本件 発明における泡の作用効果に関する記載からすると,本件発明における 「泡」 との語は,上記イ記載の泡沫を意味するものであることは明らかである。
そして,本件明細書の記載及び親出願の出願日当時における当業者の技 術的常識を基礎とすると,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載が,第 三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(4) 原告の主張について 原告は,本件明細書の段落【0036】における@「可変長の時間持続す る構造」が表す時間の長さ,A「構造」とは,気泡と気泡のマスのいずれを 指すのか,B「小さい気泡」とは,何と比較して小さいのか,がいずれも不 明であるから,請求項1の記載が不明確であると主張する。
しかし,上記(3)において説示したとおり,当業者は,本件発明における 「泡」 との語が泡沫を意味すること,泡沫とは,気泡が多数集まって薄膜を隔てて 密接に存在するものであるから,これはすなわち気泡のマスであること,そ して,本件明細書の段落【0036】における「構造」とは気泡のマスであ ることをそれぞれ理解できるというべきである。
また,当該段落の「可変長の時間持続する」との語については,本件発明 の組成物が発泡性組成物であることによる作用効果に関する本件明細書の記 載からすると,本件発明の組成物は,適用された部分に留まることができ, かつ,表面上に容易に広がる泡として分配できるものであって,例えばユー 73 ザーが両手をこすったとき又は表面上に塗布されたときに壊れる程度の安定 性を有するほどに,泡の持続時間が様々であることと理解できる。
さらに,「小さい」との語についても,上記本件明細書における本件発明 の作用効果に関する記載に照らせば,化粧品として魅力的な泡といえる程度 の大きさをいうものと解するのが相当である。
したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。
(5) 小括 以上によれば,原告が主張する取消事由1は理由がない。
4 取消事由2(実施可能要件適合性の判断の誤り)について (1) 原告は,本件発明に係る組成物のうち,アルコールの濃度が80v/v%よりも 高いものでは泡が形成されないから,本件明細書の記載は実施可能要件に適 合していないと主張する。
(2) 明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというために は,物の発明にあっては,当業者が明細書及び図面の記載並びに出願当時の 技術常識に基づいて,その物を生産でき,かつ,使用できるように,方法の 発明にあっては,その方法を使用できるように,それぞれ具体的に記載され ていることが必要であると解される。
(3)ア そこで検討するに,本件発明1においては,組成物の成分として,a) 全組成物の少なくとも40%v/vの量で存在する,C1-4アルコール又はその 混合物,b)全組成物の0.01重量%〜10.0重量%の量で存在する,発泡の ための,シリコーン骨格を含有する親油性鎖を含む生理的に許容されるシ リコーン・ベースの界面活性剤を含む発泡剤であって,bis-PEG-[10-20] ジメチコーン又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物,c)全組成物を 100重量%とする量で存在する水を含むことが特定されているものの,それ 以外の成分を含むことを排除する記載は見当たらない。
イ まず,シリコーン・ベースの界面活性剤についてみると,本件明細書に 74 は,アルコールの濃度とシリコーン・ベースの界面活性剤の濃度に関し, 段落【0060】に「50〜60%v/vアルコール水溶液と共に0.5〜1.0%のシ リコーン・ベースの界面活性剤を使用すると安定な泡を生成し,」「アル コールの使用パーセンテージが65%w/wより多い場合には5%以下のレベル を必要とする。」との記載がある。また,実施例17〜19についての「泡 の評価/記述/特性」の記載から,bis-PEG-20ジメチコーンの濃度が同じ (0.01重量%)場合には,エタノールの濃度が40重量%,50重量%,60重 量%と高くなるほど,泡の評価が下がり,泡の持続時間も短くなる傾向が あること,実施例33〜36についての「泡の評価/記述/特性」の記載 から,エタノールの濃度が同じ(62重量%)場合には,bis-PEG-20ジメチ コーンの濃度が0.50重量%,1.00重量%,2.0重量%,5.00重量%と高くな るほど,泡の評価や持続性が向上することが読み取れる。さらに,段落【0 076】には,界面活性剤の濃度と表面張力低下作用の関係につき,一般 的に,シリコーン・ベースの界面活性剤だけを含む組成物が表面張力をよ り低いレベルに低下させるとの結果を達成するためには,より高いパーセ ンテージのシリコーン ベースの界面活性剤を必要とするとの記載がある。
・ そうすると,これらの記載に接した当業者は,アルコールの濃度が高い 発泡性組成物を得るためは,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンを多く配合しな ければならないことが理解できるというべきである。
ウ また,本件明細書の段落【0061】には,本件発明の組成物における 追加成分に関し,コカミドプロピルベタイン,及びフッ素化界面活性剤で あるDEA C[8-18]パーフルオロアルキルエチルホスフェート,アンモニウム C[6-16]パーフルオロアルキルエチルホスフェートが第二の界面活性剤とし て例示されており,用いられるシリコーン ベースの界面活性剤に応じて, ・ これらの第二の界面活性剤を使用することは,本件発明の発泡性含水アル コール組成物を製造するためにより適しているとの記載がある。そして, 75 段落【0072】,【0077】及び【0079】には,シリコーン・ベ ースの界面活性剤及びフッ素化界面活性剤を組み合わせることは,アルコ ールの濃度が高まるにつれて利点が増加するものであって,微生物学的効 力を改善するためにも望ましいことが記載されている。
さらに,段落【0062】には,泡を安定化するために,泡安定剤及び 乳化成分を配合したところ,噴射剤及び/又は加圧容器システムを使用し ない場合であっても,生成物を泡として分配できるとの良好な結果が得ら れたことが記載されている。
エ 以上によれば,本件明細書に接した当業者は,アルコールの濃度が高い との理由により,組成物が発泡しなかったり,良好な泡の性質が得られな かった場合には,上記に摘示した記載内容に基づき,bis-PEG-[10-20]ジメ チコーン又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物の含有量を増やしたり, フッ素化界面活性剤等の第二の界面活性剤,泡安定剤を追加したりするこ とによって,発泡性や泡質を改善できることを,格別の困難を伴うことなく 理解し得るというべきである。このことは,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン 又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物の含有量が,請求項1に特定さ れている下限値の全組成物の0.01重量%である組成物,ひいては本件発明 2〜33についても同様である。
(4) したがって,本件発明において,組成物の発明にあっては,当業者が本件 明細書の記載並びに親出願の出願日当時の技術常識に基づいて,その組成物 を生産でき,かつ,使用できるように,方法の発明にあっては,その方法を 使用できるように,それぞれ具体的に記載されていると認められる。
(5) 原告の主張について ア 原告は,原告が実施した実験において,エタノールの濃度が99.5v/v%, 界面活性剤としてbis-PEG-12ジメチコーンのみを0.01重量%含有する組成 物では泡が形成されなかったと主張する。
76 しかし,実施可能要件適合性は,出願時の技術常識を前提として,明細 書の発明の詳細な説明の記載に基づいて判断すべきであるから,当該実験 結果が本件特許の親出願時の技術常識であったと認められるのであればと もかく,単に出願後に行われたにすぎない実験結果に基づいて要件適合性 の有無の立証をすることはできないというべきである。
仮にこの点を措くとしても,上記(3)において説示したとおり,本件発明 は,アルコール,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン又はbis-PEG-[10-20]ジメ チコーンの混合物,水のほかに,第二の界面活性剤や泡安定剤を含有し得 るものであるから,アルコールの含有濃度には自ずと制約が存するにもか かわらず,そのような制約を考慮しない原告の主張は,その前提において 誤りである。
イ また,原告は,実施例33〜36では,泡(foam)が生成されていない から,これらの実施例に基づいて,bis-PEG-20ジメチコーンの濃度が高く なるほど泡(foam)の評価や持続性が高まることがわかるとはいえないと 主張する。
確かに,本件明細書記載の表において,実施例33〜36につき,「泡 の生成」欄にいずれも「無」と記載されていることが認められる。しかし, 同じ表の上記各実施例に対応する「泡の評価/記述/特性」の欄には,「急 速に次々と壊れる泡は1分間より長く持続する」(実施例33),「良い クリーミーかつソフトな泡は1分間より長く持続する」(実施例34), 「極めて良いクリーミーかつソフトな泡は1分間より長く持続する」(実 施例35),「極めて良いクリーミーかつソフトな泡は数分間持続する」 (実施例36)という極めて具体的な記載があり,かつ,これらの記載は, 他の実施例の記載との比較からしても,泡が発生していた場合の記載であ るとしか考えられないものである(なお,これらの記載が,他の実施例に 関するものを誤って記載したものであることをうかがわせる証拠はない。。
) 77 また,一般的に,界面活性剤の性質からしてその含有量が多いほど泡が 生成されやすくなると認められるところ(原告及び被告関係者が実施した 実験結果においても,同様の傾向が見て取れる(甲16,30)。),た とえ,エタノールの濃度が高くなるに従って泡が生成されにくくなる傾向 が認められるとしても,エタノールの濃度が実施例19の60重量%からわ ずか2重量%しか増加していない(約1.03倍)のに対し,50倍以上も のbis-PEG-20ジメチコーンを含有する実施例33〜36において,泡が生 成しないとは通常考え難い。
以上によれば,当該表の上部に「調整した溶液を泡が生成されたか否か について評価し,もしそうであったならば生成した泡を下記のように既述 した」と記載されていることを考慮しても,実施例33〜36については, 「泡の評価/記述/特性」欄の記載及びその組成に照らし,泡が生成した と考えるのが合理的であるから,当業者は「泡の生成」欄の「無」は誤記 である可能性が高いと理解すると認めるのが相当である。
したがって,実施例33〜36の記載に関する原告の主張は採用し難い。
ウ よって,この点についての原告の主張を採用することはできない。
(6) 小括 以上によれば,原告が主張する取消事由2は理由がない。
5 取消事由3(サポート要件適合性の判断の誤り)について (1) 原告は,本件発明1において,低級アルコールの濃度が99.99重量%又はそ れに近い値である場合に,安定な泡の形成が可能な発泡性組成物を提供する という課題を解決することはできないから,本件特許の特許請求の範囲の記 載はサポート要件に適合しないと主張する。
(2) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについては,特許 請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に 記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説 78 明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識で きる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出 願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のも のであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
(3) そこで検討するに,本件発明1においては,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン 又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物の含有量につき,0.01〜10.0重 量%と上限値及び下限値がいずれも明示されているところ,アルコールの濃 度は下限値が40v/v%であることのみが明示されており,水は全組成物を100 重量%とする量と特定されている。そして,当業者が,アルコールの濃度が高 いとの理由により,組成物が発泡しなかったり,良好な泡の性質が得られな かった場合,本件明細書の記載内容に基づき,bis-PEG-[10-20]ジメチコーン 又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物の含有量を増やしたり,フッ素化 界面活性剤等の第二の界面活性剤,泡安定剤を追加したりすることによって, 発泡性や泡質を改善できると理解し得ることは上記4において説示したとお りである。
そうすると,本件特許に係る特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の 詳細な説明の記載を併せて考慮すると,本件発明1における組成の範囲にお いて,高い蓋然性をもって発泡性の組成物が得られる,すなわち,発明の課 題を解決し得ると認識できると認めるのが相当である。本件発明1は,アル コールとしてC1-4アルコールを含有するものであるところ,エタノール以 外のC1-4アルコールについても同様である。
(4) そして,上記の説示は,本件発明2〜33についても妥当するから,本件 発明は,発明の詳細な説明の記載から,本件発明の課題を解決できると認識 できる範囲内のものであるというべきである。
(5) 原告の主張について 原告は,本件発明1において,低級アルコールの濃度が99.99重量%又はそ 79 れに近い値である場合に,安定な泡の形成が可能な発泡性組成物を提供する という課題を解決することはできないと主張する。
しかし,上記(3)において説示したとおり,本件発明1は,アルコール, bis-PEG-[10-20]ジメチコーン又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物及 び水のほかに,第二の界面活性剤や泡安定剤を含有し得るものである。そう す る と , 本 件 発 明 1 に お い て は , bis-PEG-[10-20] ジ メ チ コ ー ン 又 は bis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物と水の各含有量のほか,追加される第 二の界面活性剤,泡安定剤の含有量によって,アルコールの濃度に事実上の 上限値が想定されているというべきである。
したがって,原告の主張は,本件発明1におけるアルコール,bis-PEG-[10-20] ジメチコーン又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合物及び水の含有量に関 する特定と,本件明細書の発明の詳細な説明における記載事項を考慮してい ない誤った前提に基づくものというべきであり,採用することができない。
(6) 小括 以上によれば,原告が主張する取消事由3は理由がない。
6 取消事由4(本件発明と甲1発明及び甲1方法発明との同一性判断の誤り) について (1) 甲1発明及び甲1方法発明,並びに本件発明と甲1発明及び甲1方法発明 との対比については,当事者間に争いがない。
なお,相違点1〜4は,いずれも,界面活性剤が,本件発明では 「bis-PEG-[10-20]ジメチコーン,又はbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの混合 物」であるのに対し,甲1発明及び甲1方法発明では「Bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコン」であるというもので,実質的に同一である。
(2) 原告は,相違点1に関し,甲1発明におけるシリコーン・ベースの界面活 性剤であるbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンをbis-PEG-[10-20]ジメチコーン 置き換えることは,甲1に記載されているに等しい事項であるか,親出願に 80 係る出願日当時の技術常識であったから,相違点1は実質的な相違点ではな いと主張する。
(3) そこで検討するに,そもそも甲1には,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンに関 する記載はなく,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとbis-PEG-[10-20]ジメチ コーンとが同等に使用可能であることをうかがわせる記載も見当たらない。
そして,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとbis-PEG-[10-20]ジメチコーン とは,ジメチルシロキサン鎖の両末端がポリエチレングリコールで変性され たシリコーン系界面活性剤という点で共通するものの,bis-PEG/PPG-20/20 ジメチコーンは,bis-PEG-20ジメチコーンの外側に,更にポリプロピレング リコールが20個連結されたものであるから,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコー ンとbis-PEG-[10-20]ジメチコーンとは構造上明らかに異なる物質である。
次に,機能の点についてみると,ある物質が表面張力低下作用を有するこ とは,界面活性剤として機能する上で重要な物性の一つといえることは原告 が指摘するとおりである。しかし,界面活性剤としての機能,性能には,表 面張力低下作用のみならず,各種の溶液に対する溶解度などの他の物性も影 響することが明らかであるところ,これらの表面張力低下作用以外の物性を 考慮した場合であっても,甲1記載のフォーム組成物において, bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとbis-PEG-[10-20]ジメチコーンとが置換可 能な同等な物質であると認めるに足りる証拠はない。
また,このほかに,界面活性剤としてのbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンと bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとが同等なものとして置換可能であることが, 本件特許の優先日あるいは親出願に係る出願日当時において,技術常識であ ったと認めるに足りる的確な証拠もない。
以上によれば,甲1発明におけるシリコーン・ベースの界面活性剤である bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンをbis-PEG-[10-20]ジメチコーンに置き換え ることが,甲1に記載されているに等しい事項であるとも,本件特許の優先 81 日及び親出願に係る出願日当時の技術常識であったとも認めることはできな い。
したがって,相違点1は実質的な相違点であるというべきである。
(4) 原告の主張について ア 原告は,原告が実施した実験結果(甲10)によれば,bis-PEG-12ジメ チコーンとbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンの表面張力低下作用は同等であ ったとして,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとbis-PEG-[10-20]ジメチコ ーンとが,低級アルコール含有水溶液の表面張力を低下させる機能におい て同等である主張する。
しかし,当該実験結果においても,bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンと bis-PEG-12ジメチコーンとでは,表面張力低下作用に差異があるところ, 当該差異が甲1記載の組成物におけるフォーム生成能力等に何ら影響しな いものであると認めるに足りる証拠はない。また,両者を比較する場合に は,表面張力低下作用以外の物性も考慮すべきことは既に指摘したとおり である。
イ さら に ,原 告は ,甲 2 の 記 載 は ,bis-PEG-[10-20] ジ メチ コー ン と bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとを置換することが,当業者の通常行う技 術常識であることを示していると主張する。
確かに,甲2の段落【0013】には,甲2記載の組成物に使用し得る 好ましいシリコーン化合物として,bis-PEG-12ジメチコーン,bis-PEG-20 ジメチコーン及びbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンが並列に掲記されている。
しかし,甲2には, bis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンとbis-PEG-[10-20] ジメチコーンとが同等で置換可能な物質であることを具体的に説明する記 載もそれを示唆する記載も見当たらない。そうすると,甲2の段落【00 13】の記載は,甲2記載の発明において,bis-PEG-12ジメチコーン, bis-PEG-20ジメチコーン及びbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンがいずれも使 82 用可能であることを示しているにすぎないと認めるのが相当である。
そして,公開特許公報である甲2にこのような記載がされていることの みに基づいて,界面活性剤としてのbis-PEG/PPG-20/20ジメチコーンと bis-PEG-[10-20]ジメチコーンとが同等なものとして置換可能であることが, 本件特許の優先日及び親出願に係る出願日当時の技術常識であったとは到 底認めることができない。
ウ このほか,原告は,bis-PEG-[10-20]ジメチコーンによる効果などについ て種々の主張をするが,いずれも採用することはできない。
(5) 小括 以上によれば,パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲について判断する までもなく,相違点1,ひいては相違点2〜4は,実質的な相違点であると いうべきである。
したがって,本件発明と甲1発明及び甲1方法発明とが実質的に同一の発 明であるということはできず,原告主張の取消事由4は理由がない。
7 取消事由5(甲7に基づく容易想到性判断の誤り)について (1) パリ条約上の優先権の利益を受ける範囲について 原告は,特許は請求項ごとに成立するから,パリ条約上の優先権の利益を 享受できるか否かの判断も,請求項ごとにされるべきであると主張する。
そこで検討するに,パリ条約4条F項は,発明の単一性を要件とした上で, 第二国出願に係る発明の構成部分のうち,第一国出願に係る発明に含まれる 共通の構成部分について,優先権を認める趣旨の規定と解されるから,第二 国である我が国における出願につき,一の請求項において発明特定事項が選 択肢で表現されている場合は,各選択肢に基づいて把握される発明について 優先権の主張の効果を判断するのが相当と解される。
したがって,本件発明に係る進歩性の判断基準日は,bis-PEG-20ジメチコ ーンを用いる発明については,優先権主張日である平成17年3月7日,限 83 定されたbis-PEG-ジメチコーンを用いる発明については,親出願に係る出願 日である平成18年3月7日と認められる。
(2) 本件発明のうちbis-PEG-20ジメチコーンを用いる発明について 上記(1)において説示したところによれば,本件発明のうちbis-PEG-20ジメ チコーンを用いる発明との関係において,平成17年4月7日に公開された 甲7及び同年10月20日に公開された甲2は,いずれも特許法29条1項 3号が規定する刊行物に該当するといえないから,その余の点について認定, 判断するまでもなく,本件発明のうちbis-PEG-20ジメチコーンを用いる発明 が甲7及び甲2に基づいて容易に想到できたものであるとの原告の主張は理 由がない。
(3) 本件発明と甲7発明及び甲7方法発明との対比について 甲7発明及び甲7方法発明,並びに本件発明と甲7発明及び甲7方法発明 との一致点については,当事者間に争いがない。
そして,上記(1)において認定した本件発明に係る進歩性の判断基準日によ れば,本件発明と甲7発明及び甲7方法発明との相違点は,審決が認定した とおりであるというべきである。
なお,相違点5〜8は,いずれも,界面活性剤が,本件発明では「限定さ れたbis-PEG-ジメチコーン」であるのに対し,甲7発明及び甲7方法発明で は「フルオロ界面活性剤」であるというもので,実質的に同一である。
(4) 相違点5〜8に係る構成の容易想到性について ア 原告は,甲7発明又は甲7方法発明及び甲2記載の事項に基づいて,当 業者は,相違点5〜8に係る構成を容易に想到できたと主張する。
イ そこで検討するに,甲7発明の組成物と甲2記載の組成物とは,アルコ ール,水及び界面活性剤を含有する発泡性の組成物である点で共通する。
しかし,甲7発明の組成物は,本件発明と同様に,約40%v/vを超える高 濃度のアルコールを含み,使用時に一時的に発泡させて用いる水性組成物 84 であるのに対し,甲2記載の組成物は,既製調合の泡製品として包装材中 に保存可能な永久泡沫組成物である。また,甲7発明における界面活性剤 であるフルオロ界面活性剤は,水性組成物を一時的に発泡させるための発 泡剤として添加されているのに対し,甲2記載の組成物における界面活性 剤であるアルコキシル化シリコーン化合物は,永久泡沫のための泡安定剤 として添加されているものである。
そうすると,甲7及び甲2に接した当業者において,甲7発明の組成物 におけるフルオロ界面活性剤を,組成物の形態も界面活性剤の役割も異な る甲2記載の組成物に用いられているシリコーン・ベースの界面活性剤に 置き換えようと考えるとはいい難い。
ウ また,甲2において,好ましいシリコーン化合物のうち,特に好ましい のは,脂肪酸でエステル化したビス-エトキシル化シリコーンワックスで あるとされているところ(【0013】),当業者が,同段落に掲記され た多数のシリコーン化合物の中から,限定されたbis-PEG-ジメチコーンに 該当する界面活性剤であるbis-PEG-12ジメチコーンに特に着目すると認め るに足りる事情はうかがわれない。
エ 以上によれば,甲7及び甲2に接した当業者において,甲7発明及び甲 7方法発明のフルオロ界面活性剤を限定されたbis-PEG-ジメチコーンに置 き換える動機付けがあると認めることはできない。
したがって,当業者が相違点5〜8に係る構成を容易に想到できたとい うことはできない。
(5) 原告の主張について ア 原告は,フッ素化化合物には,環境に対する影響があることが知られて いたから,甲7に接した当業者は,このような背景から,当然に甲7発明 のフルオロ界面活性剤を非フッ素化界面活性剤に置き換える動機を有して いたと主張する。
85 確かに,平成26年に発表された論文において,フルオロカーボン界面 活性剤であるパーフルオロオクタンスルホネートは,水生生物に有毒な, かつ,ヒト及び他の動物の血液中に蓄積する残留性化学物質であって,製 造者である3Mは,平成12年5月16日,フルオロカーボン界面活性剤 の製造を段階的に中止すると発表していたことや(甲13),平成18年 に発表された論文において,ニューヨーク州の水域での魚及び鳥の肝臓に おけるパーフルオロオクタンスルホネートの蓄積についての報告がされて いること(甲14)がそれぞれ認められる。
しかし,これらは,専らフルオロ界面活性剤の一種であるパーフルオロ オクタンスルホネートに関する報告であるところ(甲14には,本研究で は,食物連鎖における食用魚のPFOS(パーフルオロオクタンスルホネ ート)蓄積の影響について着目するとの記載がある。),フルオロ界面活 性剤には,これと異なるものも多数存在しているのであって,環境に対す る影響の程度についても,化合物によって異なっているのが通常である。
実際に,原告を含む複数の事業者が,親出願に係る出願日以降も,フルオ ロ界面活性剤を含有する製品を製造販売したり,フルオロ界面活性剤を含 有する組成物に関する発明について特許を出願していること(甲28,乙 10〜12)を考慮すると,当業者が,親出願に係る出願日当時,フルオ ロ界面活性剤であるとの一事で,これに属するあらゆる化合物の使用を差 し控えなければならないとの認識を有していたとは認め難い。
イ また,原告は,本件発明におけるbis-PEG-[10-20]ジメチコーンの効果に 関して種々の主張をするが,上記(4)において説示したとおり,当業者は, 相違点5〜8に係る構成そのものにつき,甲7及び甲2に基づいて容易に 想到することができたとはいえないのであるから,既にその点において進 歩性を肯定し得るものである。
ウ したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。
86 (6) 小括 以上によれば,原告が主張する取消事由5は理由がない。
8 結論 以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り 消されるべき違法があるとは認められない。
よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 高橋彩
裁判官 間明宏充
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